伊織「アンタたちは夢と魔法の国をナメすぎよ!」(385)

いち

―――

伊織「あら、どうしたの3人揃って」

真「ああ、伊織か」

響「いやぁ~、それが、貴音が『ディズニーランド』に行ってみたいって言い出してさぁ」

伊織「……は?ディズニー?」

真「そうそう」

貴音「……」

伊織「なんでまた、ディズニーランドなの?」

貴音「はい……先日、春香と千早が遊びに行ってきた、と聞きました」

真「そうだね。お土産ももらったし」

貴音「あの二人、普通の遊園地には何度も行くということは無いのに……でぃずにーらんどは何度も行っているそうです」

響「……まあディズニーは普通とはちょっと違うしな」

貴音「そこです、そこなのです」

貴音「一体なにが、あの二人をそこまでさせると言うのか……非常に興味があるのです」

伊織「ふーん……」

伊織「で、それで3人で行く計画でも立ててたの?」

真「ああ、そんなとこだね」

響「ほかのみんなは予定が合わなくてさぁ……実は全員、ディズニーは初めてなんだ」

伊織「あら、そうだったの」

真「まあね」

響「自分もけっこー楽しみだぞ」

真「うん、ボクもなんかワクワクしてきたよ」

貴音「ふふ……仲間たちと遊園地で遊ぶ、というのも良い思い出になりますね」

伊織「…………」

伊織「で……アンタたち、当日の予定は?」

真「え?」

響「予定って?」

伊織「何時に集合するか、とか。どんなアトラクションに乗るか、とか」

伊織「あとパレードを見るのか見ないのか、キャラクターと写真撮る気はあるのか、とかね」

貴音「……集合時間は決めておりましたが……普通、そこまで決めるものなのですか?」

真「そうだよ。その時その時に乗れるやつに乗って、パレードも見れるなら見て……で大丈夫なんじゃないの?」

響「うんうん。自分だって他の色んな遊園地には行った事あるし、なんくるないさー」

響「……って、…………伊織?」

伊織「……」

貴音「ど、どうかしたのですか伊織?」

真「なんか怖い顔してるけど」

伊織「…………」

伊織「あ、んたたち、ねぇ……」


伊織「アンタたちは夢と魔法の国をナメすぎよ!」


真「うわっ!」

響「び、びっくりした!」

貴音「……ナメすぎ、とは……どこがでしょうか?」

伊織「いい!?まずディズニーを普通の遊園地と一緒にするなんて言語道断よ!」

真「どういう意味?」

伊織「ディズニーランド自体に熱狂的なファンがたくさんいることもそうだけど……」

伊織「何よりも、混み方が段違いよ。休日にでも行ったら、アンタたちの想像を超えるくらい混むわよ」

響「ど、どのくらいだ?」

伊織「人気のアトラクションに乗りたいなら……1、2時間は並ぶのが当たり前ね」

貴音「……成程」

伊織「新しいアトラクションが出来たりなんかしたら……4、5時間並ぶこともザラよ」

響「うえぇ!?ひとつのアトラクション乗るだけでご、5時間!?」

伊織「ええ、だから無計画にあっちこっちフラフラしてたら、ロクに回れないわよ」

真「そ、そうなの……?」

伊織「そうよ。それにパレードやショーも、本気で見たいなら2、3時間前から場所取りするのが普通だし」

貴音「見る準備をするためだけに2時間以上も費やすのですか……」

真「うわぁ……ど、どうしよう響、貴音。……別の遊園地にするかい?」

響「うーん……」

伊織「…………」

伊織「ディズニーに行くの、いつなわけ?」

真「え?」

貴音「……ちょうど3人が休みだったので、来週の水曜日にしようかと」

伊織「……それは何よりね」

伊織「……」

伊織「私も、一緒に行かせてもらっていいかしら?」

響「え、伊織も来るのか?」

伊織「ええ。……いや、別にイヤなら、アドバイスだけでもいいわよ?」

響「いやいやいや!そういう意味じゃないさぁ!……ていうか、むしろ本当に来てくれるのか?」

伊織「まぁね。アンタたちだけじゃ心配だもの」

真「……なんかシャクに触るけど……じゃあ、伊織が居れば並ばないで遊べるのかい?」

伊織「……並ばないで遊ぶ手段もあるにはあるけど、日帰りならそこまでは無理ね」

伊織「でも安心していいわ。比較的スムーズに、かつ楽しませる自信くらいはあるもの」

真「わかった……じゃあとりあえず、伊織のプランを教えてくれよ」

伊織「……そうね。……まず、本当にスムーズに回りたいなら……ディズニーシーがおススメよ」

響「シー?」

貴音「でぃずにーらんど、とは違うのですか?」

伊織「まったくの別物よ。ディズニーリゾートって呼ばれる一帯に、ランドとシーの二つのテーマパークがあるの」

伊織「ランドはキャラクター性を前面に押し出して、シーは『海』っていうテーマを重視してるわ」

伊織「……そもそも、3人はランドじゃなくてシーでもいいのかしら」

真「え?えーと……ボクはどの道初めてだし、楽しめるならどっちでも」

響「じ、自分……それ聞いたら、シーの方が興味出てきたかな……」

貴音「……では、響がそう言うのであれば、わたくしも『しぃ』で構いません」

伊織「じゃあ、ディズニーシーにしましょう」

真「なんでシーならスムーズに回れるんだい?」

伊織「ランドの方には、修学旅行生が来やすいのよ。それに新アトラクションもあるし」

伊織「まぁシーにも今度トイストーリーの新アトラクションが出来るから、それが出来たら結構混むわね」

真「へぇ~、なるほどね」

伊織「あと水曜日は良い曜日よ。平日ならそれだけ人も少ないもの」

伊織「ただ『県民の日』がある場合は、千葉県民が入場料割り引きになるから混むわね」

伊織「月曜日なんかも、日曜日にやる小学校の運動会、の振り替え休日だったりするわ」

貴音「……中々、奥が深そうですね」

伊織「……にひひっ、世界中のディズニーランドを回った私に任せなさい!」

響「おおぉ、伊織が凄く頼もしく見えるぞ」

伊織「で、アトラクションとパレード、どっちがいいかしら」

真「うーん……初めて行くし、やっぱりアトラクションかなぁ」

響「そうだよな。ディズニーは行った事ないけど、遊園地って言ったらそうだもんな」

伊織「……じゃあ、アトラクション中心に回りましょう」

伊織「いい?まずは―――」

―――

8:50、ディズニーシーエントランス前

響「うわー!開園前なのにこんなに!」

真「……確かに、平日でコレはちょっと予想外だったな」

伊織「ま、そこはしょうがないわ。やっぱりディズニーだもの」

貴音「前の入り口の方で、何やら歓声が上がっておりますが……」

伊織「ああ、アレは開園前にディズニーのキャラクターが、エントランスでパフォーマンスやってるのよ」

真「そうなんだ?」

伊織「ええ。それに、開園してからしばらくは入り口にキャラクターが集まってくれるから……写真を撮ったりもできるってわけ」

伊織「ミッキーとかドナルドとか、いわゆる人気キャラクターたちがね」

響「へぇ~、それじゃあみんな夢中になるわけだぁ」

貴音「……わたくし、みっきー殿の実際に動いている姿を見るのは、おそらく今日が初めてになるでしょう」

伊織「……あ、そう。……写真も撮ってもらおうかしら?」

貴音「……いえ、興味はありますが、……最初はあくまで打ち合わせ通りに参りましょう」

伊織「わかったわ。……ミッキーに会いたくなったら言いなさい。連れてってあげるから」

真「連れてって?」

伊織「パレードとかショーで見ることも出来るけど、ミッキーは専用の会えるスペースがあるのよ」

伊織「時間はかかるけど、確実に写真を撮ったり握手したりできるわ」

貴音「ふふ……では、みっきー殿に会いたくなったらそこに伺うようにしましょう」

伊織「……よし、そろそろ開園時間よ」

伊織「いいわね?真。地図も持ったかしら?」

真「よーっし、任せてよ。昨日調べてきたし、場所もバッチリだよ」

伊織「……キャラと写真撮る人もいるから、そこまで必死にならなくてもいいけど」

伊織「なるべく急いで行きましょう」

響「お、おう」ドキドキ

貴音「…………」


開園

伊織「よし、走らず急ぐわよ!」

響「行くぞぉー!」

真(よし、で、ボクはみんなとは違うところに……走る!)

ダッ

響「うわぁ……み、みんな走っててちょっと怖いぞぉ」

貴音「……とても夢と魔法の国に来ているとは思えない形相ですね」

伊織「開園直後はどうしてもそうなるわね。あとはパレードの場所取りとか」

伊織「……ま、しばらくしたら落ち着くわよ」

響「えぇと……最初に行くのが……『センター・オブ・ジ・アース』だな」

貴音「名前しか聞いておりませんでしたが……どういった施設なのでしょう?」

伊織「簡単に言えば『ジェットコースター』系のアトラクションよ」

伊織「……ていうか貴音」

貴音「はい、どうかしましたか?」

伊織「有名人なんだから変装して来い、とは言ったけど……そのサングラス似合わないわねぇ」

貴音「な、なんと!?」ガーン

響(ジェットコースターかぁ。どんな感じなんだろうなぁ)

―――

真「ハッ……ハッ……」

タッタッタ

真「……!よしここだ!」


いい、真?

真はまず開園したら、全員分の入園チケットを預かって

そして「タワー・オブ・テラー」の「ファストパス」を取りに行って欲しいの


真(ファストパス……これを取っておけば、パスに指定された時間に行くことで、並ぶよりもスムーズに乗れる!)

真(発券には入園チケットが必要だから、こうやって一人に預ければ、それ以外のメンバーは別のアトラクションに並ぶことが出来る!)

真(で、全員のパスを発券したら、ボクは後から伊織たちの列に合流すればいい……あんまり良くない事らしいけど)


真「……よし、これで4枚だな。ふーん、10時から11時の間まで有効……かぁ」

真「パスは取ったから……あとはアレだな。……で、合流すればいいのか」

タッタッタ……

―――

真「あ、す、すいません……!」

真「ちょっと、前、失礼します」

真「……フゥー」

伊織「……お帰りなさい。ありがとう真」

響「お疲れ様~」

真「えーと、まずこれがファストパス」

貴音「……ま、真、それよりも……!」

真「ははは……はい、これがポップコーン」

貴音「おお、なんという甘美な香り!……真、感謝いたします!」

伊織「悪かったわね、ポップコーンの買出しまで頼んじゃって」

真「いやぁ、でも結構楽しかったよ?景色もいいしね」

伊織「そうなのよねぇ。ランド以上に、シーは景観も良いのよ」

響「……ていうか凄いなぁ。本当に入れてくれるんだ」

貴音「……」モグモグ

真「ボクも最初は半信半疑だったけど……」

―――

真「クランベリー味ひとつ……このカゴにお願いします」

―――

真「ちゃんとカゴいっぱいになるまで入れてくれたよ」

伊織「当たり前じゃないの。だってカゴ自体もポップコーン売り場で売ってるもの」

真「ああ、そういえば見たよ。柄は違ったけど」

貴音「……」モグモグ

伊織「カゴ自体はちょっと値が張るけど……一度買ったら、そのまま使いまわせるってわけ」

伊織「で、以前使ったカゴを持参してもOKだから、私のを使えば安く済むのよ」

響「……へぇ~、モグモグ……それは知らなかったなぁ」モグモグ

真「クランベリーとブラックペッパー……売り場が近くて助かったよ」

伊織「……もうクランベリーの方は無くなりそうよ」

真「えぇ!?た、貴音ぇー、ボクの分も残しておいてくれよ!」

貴音「……」スッ

貴音「では、響の食べているこちらを……」モグモグ

響「おお貴音、ブラックペッパーもおいしいぞぉ」

真「……モグモグ……あとどのくらいだろう?」

伊織「そうねぇ……私たちが最初に並んだときは30分待ちになってたわ」

真「じゃあ……あと15分くらいかな」

真「……モグモグ……そういえば、なんでファストパスはタワー・オブ・テラーだったんだい?」

伊織「どういうこと?」

真「だって、センター・オブ・ジ・アースをファストパスにして、最初にタワー・オブ・テラーに乗っても良かったんじゃないの?」

伊織「……そうねぇ。……ま、そこは個人差の範囲内かしらね」

伊織「まず地図があるでしょう?」

真「ああ」ペラッ

http://www.tokyodisneyresort.co.jp/tds/map.html
http://www.tokyodisneyresort.co.jp/pdf/map/sea_atrc.pdf

伊織「下がエントランスで、私たちがいるのが中央の『ミステリアスアイランド』」

伊織「タワー・オブ・テラーは、『アメリカンウォーターフロント』にあるわね」

真「そうだね」

伊織「入り口に近いアトラクションだったら……わざわざ並ぶよりは、私だったらファストパスを取るわね」

伊織「その代わり、ちょっと遠いところにある人気アトラクションに乗るわ」

真「それが伊織のやり方、ってことか」

伊織「そういうことになるかしら」

伊織「ま、そういう意味じゃあセンター・オブ・ジ・アースじゃなくて『インディジョーンズ』とかでも良かったわね」

真「インディジョーンズだと……一番上だから……入り口から一番遠くかぁ」

伊織「そうなのよねぇ。気軽に行けないのが難だわ」

貴音「……」モグモグ

9:24、センター・オブ・ジ・アース…「エレベーター前」

係員「では、こちらのエレベーターに乗って乗り場までご案内致します」

……

プシュー!

ゴトンゴトン……

ガタッ!ゴゴゴゴゴゴ……!

…プシュー!

……

真「ふーん、エレベーターの後もちょっと並ぶのか」

伊織「……初めての人は絶対に勘違いするわね。エレベーター降りてすぐ乗るのかしら、って」

響「じ、自分なんか……あのエレベーターがアトラクションなんだと思ってたぞ……///」

貴音「……」

伊織「結構物々しい演出だから、その勘違いも無理ないんじゃない?」

貴音「…………」

響「……?貴音、大丈夫かぁ?」

貴音「ハッ!?……ど、どうかしましたか響?」

響「……それは貴音の方だろぉ。ポップコーンも手ぇついてないぞ?」

真「ひょっとして……怖いのかい?」

貴音「な、……そんなわけありませぬ!」

伊織「(ありませぬ……)……貴音がジェットコースター系に強いって聞いたから乗るつもりだったけど」

伊織「……本当に強いのかしら?」

貴音「え、ええ……本来ならばそのはずだったのですが……」

貴音「先ほどからの、不安を煽るような会場の物言いや演出を見ていると……」

貴音「……ハッ!?い、いえ!わたくし、決して怖くなどありません!」

伊織「……一応、乗る直前だったらリタイヤ用の出口もあるわよ」

響「貴音、隣に乗るから心配いらないさぁ」

真「……もうちょっとで乗り場に着くね」

貴音「…………」ドキドキ

伊織「で、本当に大丈夫なわけ?」

貴音「もち、ろ、ん、です……!」

響「じ、自分が隣にいるからな、貴音!」

真「……フゥー」ドキドキ


『センター・オブ・ジ・アース』

謎の天才科学者、ネモ船長によって明かされる、
いまだかつて誰も見たことのない地底世界へようこそ。

地底走行車で、神秘と驚異の世界をめぐりましょう。
まばゆい光にあふれた水晶の洞窟、巨大キノコの森、地底に生息する珍しい発光生物。
と、そのとき、なんだか不気味な振動が…。


ジリリリリッ!

火山活動発生!火山活動発生!

ゴゴゴゴゴ…………


響「うぎゃあー!!うわー!」

真「うおおおおお!」

伊織「ひゃあー♪!」

貴音「ひ……ひぃぃ……!」

―――

シュー…シュー…

アナウンス「ステーションに到着すると、セーフティバーは自動で上がります」

アナウンス「出口は、左側です」


真「はあぁー、凄かったなぁー!」

響「……はぇー…………」

伊織「フゥ……」

貴音「はうぅ……伊織……いけずです」

伊織「……にひひ!」

貴音「うぅ……こ、このような恐ろしい仕掛けだとは……」

響「なんか……龍みたいな化け物出てきたところで貴音の悲鳴が聞こえたもんなぁ……」

真「ボクはやっぱり、落ちる瞬間が一番ヒヤッとしたなぁ」

貴音「そ、そこ自体は大丈夫だったのですが……あのように恐ろしいモノたちが出てくるなどとは……」

伊織「ディズニーならでは、ってところかしらね」

伊織「普通のジェットコースターで終わらないで、ちゃんと演出してるあたりが」

真「これもう一回乗りたくなるよ、凄く良かった」

響「じ、自分も……怖かったけど楽しかった!」

貴音「ハァ……わ、わたくしはこの乗り物はもう結構です」

伊織「……安心しなさい。一日に同じの何回も乗ったりはしないから」


9:40、センター・オブ・ジ・アース前

真「……次は何に乗るんだい?」

伊織「そうねぇ……タワー・オブ・テラーまでちょっと時間があるわね」

伊織「ちょっとブラブラ歩きながら、見て回りましょう」

響「おっしいいぞー!」

貴音「や、休めるのならば幸いです……」

―――

響「えっとここは……『ポートディスカバリー』かぁ」

伊織「……あら、『アクアトピア』なんて丁度いいんじゃないかしら」

響「アクアトピア?」

真「どれ?」

伊織「あの池をグルグル回ってるやつよ」

響「……お、本当だグルグル回ってる!」

貴音「確かに……あれならば、化け物が出てくることもないでしょう」

真(まだ気にしてたんだ……)

伊織「夜になるとライトアップされて綺麗だけど、その分混むのよねー」

伊織「空いてるから今のうちに乗っちゃいましょ」

貴音「ええ、そう致しましょう」


「アクアトピア」は、新しい航海システムの開発のためにつくられた研究施設。
今日はフェスティバルを記念して、一般のみなさんにも開放されています。
ウォーターヴィークルを走らせるプールには、実験用につくられた渦巻きや間欠泉、滝が…。
研究者たちが生み出した、画期的なヴィークルの乗り心地を体験してみてください。

ヴィーグル1:貴音・響

響「あれっ?操作できると思ったのにできないのかぁ」

ウィーン、ウィー

貴音「そうですね……自動で進むようです」

響「お……こ、このまま行ったらぶつかるんじゃあ……」

貴音「……!」

ピタッ……ウィーン

貴音「と、止まりました。危なかったですね……」

響「うわぁ!こ、今度はこっちにぃ……!」


ヴィーグル2:真・伊織

伊織「真夏じゃなかったのが惜しいわね」

真「惜しいって?」

ウィーン、ウィーン、ウィー

真「うわ、危ない!」

ピタッ、ウィーン……

真「フゥ、ぶつかるかと思った」

伊織「……あんな感じで、色んなところに勝手に行くのが面白いんだけど」

伊織「夏になると、『びしょぬれコース』っていうのが出来るのよ」

真「びしょぬれ……って間欠泉が!危なーい!」

ピタッ、シュワワワー……

ウィーン、ウィーン

真「ハァ……水がかかるかと思ったよ」

伊織「……で、そうね。びしょぬれコースはわざと水にかかるようなコース設定がされてるのよ」

伊織「暑い日なんかはちょうどいいわよね」

真「そ、それはいいけどさぁ伊織……」

伊織「どうしたの?」

真「ぼ、ボクだけハラハラしてバカみたいじゃないかぁ!」

伊織「……だって本当にぶつかったりしたら大変でしょう?ギリギリで止まるようになってるのよ」

真「それは、わかるけどさぁ……うわっ!」

―――

伊織「にひひっ、どうだったかしら?」

真「どういう動き方するのかわからなくて、面白かったよ。……ちょっと疲れたけどね」

響「じ、自分はハラハラしっぱなしだったさぁ」

貴音「……仕掛けを理解してしまえば、奇怪な動きを楽しむ余裕も出てきました」

伊織「……貴音は、もう調子は回復したかしら?」

貴音「そうですね。先ほどの恐怖は、この施設で拭えたのではないかと」

伊織「……そう、……それは良かったわぁ」ニヤリ


10:05、アクアトピア前

真「お、もうファストパスの時間みたいだよ」

響「じゃあタワー・オブ・テラーに行くのか」

伊織「……あ、ちょっと待ってちょうだい」

響「ん?」

伊織「真、別のファストパスの発券、お願いできるかしら?」

真「え!?無理じゃないの?」

響「えぇ、……どういうことだぁ?」

貴音「……響、こちらの券には、『次のふぁすとぱす発券は11:00以降』となっております」

貴音「まだ10時ですから、この時点での発券は無理なのでは、ということですね」

響「……あ、本当だ。自分のもそうなってる」

伊織「大丈夫よ、出来るのよ」

真「なんで?」

伊織「ファストパスはそこに書いてある通り、発券してから2時間は連続で発券できないようになってるわ」

伊織「でも例外があって……」

伊織「ファストパスの指定時刻が発券してから2時間以内だったら、それに乗れるようになった時点で、次のファストパスが取れるようになるの」

真「あ、なるほど!」

響「へえぇー、そうなのかぁ」


※実際は、この場合ならちゃんとファストパスに

「次のファストパスは10時以降に発券できます」

と書いてあります。今回はファストパスについて説明するためにわざと違くしました。

真「じゃあ取ってくるのはいいけど、何にするんだい?」

伊織「そうねぇ……ここから比較的近くて、ファストパスが早めに切れそうなアトラクションがいいわね」

響「切れることもあるのか」

伊織「もちろんよ。ファストパスは『指定時間にパスを持って来れば優先的に案内してくれる』システムよね」

伊織「みんながファストパス取ったら、それだけ優先案内できる時間も繰り下がっていくわ」

響「パス取ってるのに、そこで混んだらおかしいもんな」

伊織「ええ、そうね。そしてそれが閉園時間を越えたりしたら、もうファストパスはそこでオシマイね」

貴音「ふむ……では、皆が券を取りに行くものほど、早く無くなるということですね」

伊織「そういうことよ」

伊織「……じゃあ、インディジョーンズでいいかしら?」

響「インディジョーンズはパスが早く無くなるのか?」

伊織「人気だもの、そりゃあ早く無くなるわよ」

伊織「真、お願いできる?」

真「よっし……『ロストリバーデルタ』か。じゃあみんなの入園チケット貸して。行ってくるよ」

タッタッタ……

伊織「ここからなら近いから、すぐ戻ってくるわね」

響「じゃあ普通に待ってるか」

伊織「それもいいけど……そうねぇ」

スッ

ピッ…プルルルル

真『はい、どうしたんだい伊織?』

伊織「ああ、そのままインディジョーンズに向かって頂戴」

伊織「私たち、『うきわまん』を買っておくわ。真も食べるかしら?」

真『うきわまん?なにそれ?』

伊織「アクアトピアの真下にあるお店で売ってるの。うきわの形をした食べ物よ」

真『へぇ~……あ、着いた。……じゃあ買っておいてよ!』

伊織「わかったわ」ピッ

貴音「う、うきわまん……」ジュルリ

響「ここの真下にあるのかぁ。食べてみたいぞ」

伊織「ええ、真にも位置は伝えてあるから行きましょう」

―――

気象コントロールセンターのメンバーが実験成功の喜びをわかち合うフェスティバルを開いたときに、
ゲストのみなさんのためにレストランやフードワゴンをつくりました。
そのひとつがこのお店です。
ポートディスカバリーらしい斬新な形のこのスナック、
未来のマリーナを散策しながら味わってみてください。


貴音「……なるほど、確かにうきわの形をしております……ハムッ」

響「エビが入ってるんだなぁ。美味しいぞ!」

タッタッタッタ

真「フゥ~、はい、ファストパスお待たせ」

響「おう、ありがとうな真!」

貴音「いんでぃじょーんずの指定時刻は、13時ですか」

真「並んで入るほうの入り口見たら、45分待ちって出てたよ」

真「あれ見たらやっぱりファストパスの方がいいよなぁ」

伊織「……お疲れさま。はい、真の分のうきわまんね」

真「モグモグ……うん、おいしい」

貴音「……ご馳走様でした」

伊織「早いわね……」

貴音「……」ジッ

響「……じ、自分の分はあげないぞ?貴音……」

貴音「…………」ジッ

真(……もっかい並んで買えばいいのに…………)

響「う、うぅー、食べずらい……」

貴音「……一口」

響「……じゃ、一口だけ」

―――

貴音「……♪」モグモグ

真「まさか本当にまた並んで買ったなんて……」

伊織「食欲が異常ね」

貴音「ふふ……何か、この場にいることで感じる、より一層の美味しさがあるのです」モグモグ

響「あぁー、でもそれはあるかもなぁ」

伊織「そうね、ディズニーランド……ここはシーだけど、ランドにいると日常とは違う感覚になるのよね」

真「うん……なんか、ファストパス取りに走ってただけで、ちょっとワクワクしてたよ」

貴音「……」モグモグ


10:20、タワー・オブ・テラー前

伊織「……さぁて、着いたわよ。……貴音はさっさと食べ終えなさい」

貴音「ふふ、言われずとも……ご馳走様でした」

響「早っ!」

真「……でっかいなぁ……。これがタワー・オブ・テラーかぁ」

響「うわぁ、すごく混んでるなぁ。……90分待ちだってさぁ」

伊織「まぁ、これでも空いてるほうかしらね」

伊織「……にひひっ、そしてここで、この『ファストパス』の出番よ!」

―――

貴音「本当に、最前列へ来てしまいました」

響「ファストパス用の入り口から入ったと思ったら……」

真「ほとんどの行列すっとばして、ここだもんなぁ」

伊織「アンタたちにもわかったでしょ?ファストパスがどれだけ大事か」

貴音「正に、今この場で痛感しております」

真「……にしても……どういうアトラクションなんだい?」

響「なんか、物々しい雰囲気だなぁ……」

伊織「……」

伊織「……建物についての説明は、ちゃんと係の人からされるわ」

伊織「それまでは気持ちを落ち着かせましょ」

真「ん?うん……」

貴音「……はぁ。しかし、うきわまんのなんと美味であったことか……」

響「ま、また買ってくるかぁ?……あはは」

伊織「…………」

伊織(……貴音、ここはセンター・オブ・ジ・アースとは比べ物にならないくらい凄いわよ)

伊織(事前の説明で、覚悟しておいた方がいいわよぉ……)ニヤリ

―――

『タワー・オブ・テラー』
時は1912年のニューヨーク。舞台は、1899年に起きたオーナーの謎の失踪事件以来、
恐怖のホテルと呼ばれるようになった「タワー・オブ・テラー」。
今日は、ニューヨーク市保存協会による見学ツアーに参加していただきます。
さあ、エレベーターで最上階へ…。


『これ先に行ってはならん……!』

『私の忠告を聞け……!呪いは本物だ!』

『シリキウトゥンドゥの眼が……!』


ドシャーン!バリバリバリ


…………

真「えぇと、『ハイタワー3世』がホテルのオーナーで、落下したエレベーターから消えていた、と……」

真「で、そこで見つかったのが『シキリ……』シキリなんだって?」

伊織「『シリキウトゥンドゥ』よ。呪いの偶像って呼ばれてるわ」

貴音「い、伊織……あなたという人は、本当にいけずですぅ」

伊織「……ま、アトラクションの説明を事前にしなかったのは悪かったわ」

伊織「でも貴音がそんなに怖がりだとは思わなかったわよ。……嫌味じゃなく、ね」

響「た、貴音ぇ……イヤなら抜けようか?自分も一緒に行くぞ?」

貴音「い、いえ……!」

貴音「伊織にそこまで言われて、引き下がれるわけがありません」

貴音「いいでしょう……この恐怖、見事に克服してみせようではありませんか!」

響「む、無理するなよ……?」

真「ていうかボクも普通に怖いんだけど……」

伊織「……このアトラクションがディズニー史上『最恐』ですもの」

伊織「逆に、これをクリアすれば、これ以上怖いアトラクションは無いわよ」

貴音「ふ、ふふ……望むところです」

ギュウゥ

響「痛い痛い!貴音、手ぇ握りすぎだって!」

―――

真「3コースあるのか……」

伊織「乗るエレベーターが違うだけで、ショーの内容は一緒よ」

伊織「一説にはどのコースが一番怖いとか、あるみたいだけどね」

貴音「……」ギュウウ……

響「……(痛い……)」

―――

『さぁ手を振って、この世の自分に別れを告げたまえ……』

伊織「そろそろね……」

響「……」ドキドキドキドキ

真「フゥー……」

貴音「…………」


ガシャン

真「眩しっ!」

伊織「にひひっ、良い景色ねぇ~」

響「こ、この高さから……!」

貴音「…………」ギュッ

ガシャン!

―――

真「は、はは……まだ脚がガクガクするよ……」

響「すごかった……とにかくすごかったな……」

響「た、貴音……大丈夫かぁ?」

貴音「……なんとか…………」ガクガク

伊織「ふぅ~。このスリルが病みつきになるのよね~」

響「じ、自分はしばらくは乗らなくていいぞぉ……」

真「ボクもかなぁ……はは」

貴音「……わたくしは……」

貴音「も、もう一度……乗ってみたいと思いました」

響「うえぇ!?」

伊織「あら、意外ね。二度と乗りたくないって言うと思ったのに」

貴音「……は、恥ずかしながら……最後の方は、気が抜けかけてしまって……」

貴音「ほ、ほとんど覚えてないのです……」

真「それって普通に危ないじゃん……」

貴音「いつの日か、これを平然と思えるような強靭な精神を身につけられるよう……」

貴音「そのために、もう一度乗ってみたい、と思ったのです」

響「そ、そうかぁ~……」

響(ていうか貴音から手ぇ握られすぎててまだ痛いぞ……)

伊織「ふーん……じゃあ別の機会に、また連れてきてあげるわよ」

貴音「ふふ……ありがとうございます、伊織」

伊織「まぁ、またアンタの怖がってる顔が見られるなら安いものよ」

貴音「……つ、次はそうは行きませんよ…………?」

ギュッ

響「はいはい、貴音。大丈夫だからな?」

―――

『タワー・オブ・テラー・メモラビリア』
恐怖のホテルと呼ばれる「タワー・オブ・テラー」のツアーの開催にともない、
ニューヨーク市保存協会は当時の内装をそのまま公開することにしました。

ハイタワー三世のお気に入りのプールも、
現在ではツアーのおみやげを売るショップとして営業しています。
「タワー・オブ・テラー」ならではのユニークなグッズや、
ツアー中のゲストの決定的瞬間をとらえた写真も販売しています。


伊織「……で、出口を過ぎたらここに入ってくるってわけ」

真「そういえばショップに入るのは初めてだなぁ」

響「……写真……うわ、本当に写ってる」

伊織「プ……た、貴音……アンタすごい顔してるわよ?」

貴音「……このような醜態を公衆の面前に晒されるとは……///」

真「ボクも凄い顔してるなぁ。って笑ってるの伊織だけじゃないか」

真「ふーん……一枚買っていこうかな」

伊織「そうね、じゃあ……しばらくここで買い物していきましょう」

響「わかった。自分、ちょっとあっちの方見てくるよ」

11:00、タワー・オブ・テラー・メモラビリア前

伊織「そろそろ昼ごはんにしようかしら」

響「もうか?早いんじゃないか?」

伊織「ちょうどお昼に行ったら、どこも混んでるわよ」

真「ちょっと早いくらいがいいのか……」

貴音「わたくしは今からでも一向に構いませんよ」

伊織「まぁアンタはね……」

響「あ、ゴミ箱だ……ちょっと自分、ゴミ捨ててくるな!」

真「ああ」

伊織「…………」

伊織「…………!!」

真「で、どこで食べるんだい伊織…………伊織?」

伊織「ちょっと待って!」

真「え?」

伊織「……ラッキーね。面白いものが見れるわよ」

貴音「響の居る方に何かあるのですか?」

真「……清掃のお兄さんしかいないけど」

伊織「……ふふふ」

―――

響「あ……掃除中だったのかぁ」

清掃員「……」ペコリ

響「えーと、ゴミ捨てても大丈夫……かなぁ?」

清掃員「……」ペコリ

響「あ、じゃあ……」


『ガブリッ!』


響「え!?」

響「…………え?え?」

清掃員「……」

響「な、なんだ今の!?ゴミ箱が喋ったぞ!?」

響「……こ、このゴミも……」

キィ

『ガブリッ!』


響「や、やっぱりだ!」

真「……ど、どういうこと!?」

響「あ、真」

清掃員「……」ペコリ

真「ぼ、ボクもゴミ捨てて……いいですか?」

清掃員「……」ペコリ

真「じゃあ……」


『ニャーオ』


真「しゃ、喋った!ゴミ箱が喋った!」

貴音「……どういうことなのですか、伊織?」

貴音「わたくしの目から見ても、ゴミ箱が喋ったようにしか……」

伊織「……にひひっ!気になるんなら、貴音も何か捨ててきたらぁ?」

貴音「…………」


真「も、もう一回……」

キィ

『ニャーオ』

真「うわ、やっぱり喋った!」

清掃員「……」

響「自分のときは噛まれた音だったのに……真は猫の鳴き声……」

貴音「失礼致します」

響「あ、貴音」

貴音「この『うきわまん』の包み紙を捨てたいのですが……よろしいですか?」

清掃員「……」ペコリ

貴音「……」


『ブブーッ!』


貴音「……!な、なんと!」

響「……ゴミ箱にダメ出しされたぞ、貴音」

真「捨てちゃダメってことかなぁ」

貴音「わたくしにだけ、許可を下さないというのでしょうか」

キィ

『ブブーッ!』

貴音「……な、何がいけないのでしょう……」

清掃員「……」

清掃員「……」スッ

貴音「……?手、ですか?……はい」スッ

清掃員「……」シュッシュッ

響「何かかけてるな……」

清掃員「……」スッ

貴音「これでもう一度、ということですね……」

貴音「……」

キィ

『ピンポーン』

貴音「!」

響「おお良かったなぁ貴音」

真「手がいけなかったのか……」

貴音「し、しかし……これは一体どのようにして……」

清掃員「……」

清掃員「b」グッ!


『キラリーン』


真「!?お兄さんの『グッ!b』に反応した!?」

響「ど、どうなってるんだぁ……」

清掃員「……」カチャカチャ

清掃員「……」

貴音「……行ってしまわれるのですか」

響「……他のところも掃除しなきゃいけないもんなぁ」

清掃員「……」

真(にしてもデカイ清掃用具だなぁ。車輪ついてるし。ここのゴミ箱と同じくらいの大きさだ)

清掃員「……」


コロコロ……

『ピヨピヨピヨピヨ』


貴音「!?」

響「!?」

真「!?」

ピヨピヨピヨピヨピヨ……


響「……」

真「す、すごい……」

貴音「…………」

伊織「……どうだったかしら?『ファンカストーディアル』は」

響「い、伊織……」

真「ふぁんかす……え、何て?」

貴音「……ということは、あれも一つの『あとらくしょん』なのですか?」

伊織「そういうことになるわね」

伊織「ファンカストーディアル……清掃員そのものはカストーディアルって呼ばれてるわ」

伊織「でも中には、普通の清掃員に見えて、とんでもないパフォーマンスをする人たちがいるの」

伊織「それがファンカストーディアルよ。どこに現れるか、何をするのか、一切知らされていない」

響「そ、その人に会ったっていうのか……!」

真「……それじゃあ確かにラッキーだよ」

貴音「伊織は……あの時点で、あの方がそうである、と見抜いていたのですね?」

伊織「まぁね。ファンカストには追っかけも多いし、有名な人は顔もよく知られてるもの」

響「はぁ~~……」

伊織「……で、どこでお昼ご飯を食べようかしら?」


―――

11:20、ケープコッド・クックオフ前

伊織「わたしのおススメでいいなら……ここね」

響「さっきタワー・オブ・テラーまで行くのに、通ったとき見たな」

真「メインはハンバーガーかぁ」


『ケープコッド・クックオフ』
今日は村人たちが集まって誰の料理が一番かを決める、伝統的な料理大会「クックオフ」の日。
会場は白い時計台が目印のタウンホール(村役場)です。
1等のブルーリボンを獲得したメニューやハンバーガー、フライドポテトをたっぷり味わってくださいね。

ダイニングエリアの一部では、
レギュラーショー「マイ・フレンド・ダッフィー」も楽しめます。

伊織「私はコッドフィッシュバーガーセット……これで全員かしら」

真「そうだね」

伊織「……じゃあ、ショーを見ましょうか」

響「ショーって?」

伊織「この店はね、ショーを見ながら食事ができるのよ」

真「どんなの?」

伊織「『ダッフィー』って知ってるかしら?」

貴音「……『みっきー』殿のような、物語の登場人物でしょうか」

伊織「まぁ、そんなものね」

伊織「ディズニーシーじゃないと、ダッフィーには会えないの。ランドにはいないわ」

真「へぇ」

伊織「で、そのダッフィーがどうして生まれたのかがショーでわかるわよ」

―――


ミニー「~♪~」


響「……モグモグ……へぇ~、ミッキーのために作った人形かぁ」

貴音「……モグモグ……モグモグ」

真「やっぱりミニーもミッキーも可愛いなぁ」ホワワーン

伊織「ダッフィーはミニーがミッキーのために作った、意思が宿ったテディベアーね」

貴音「……モグモグ……モグモグ」

伊織「貴音……ちゃんと聞いてるの?」

貴音「ええ、もちろんですとも……モグモグ」

貴音「みっきー殿は世界中を冒険をするのですね。中々行動派ではありませんか」

響「モグモグ……ダッフィー可愛いなぁ」

伊織「今回のショーじゃ出てこないけど、ダッフィーの彼女もいるわよ。『シェリーメイ』って言う」

真「ふ~ん……モグモグ」

―――

真「うっし、美味しかったぁ!」

響「ごちそーさま!」

貴音「……たまには『はんばぁがぁ』も悪くありませんね」

伊織「ふぅご馳走様。……ショーの第二部があるから見るとして、この後はどこに行きたいかしら?」

真「あれ乗ってみたいなぁ、アクアトピアに乗るときに見えた……『ストームライダー』!」

伊織「いいんじゃないかしら」

響「どんなアトラクションなんだ?」

伊織「……そう、ねぇ……」

伊織「乗ってみてからのお楽しみ、かしらね」

貴音「そ、それは一体……」

伊織「……タワー・オブ・テラーよりは怖く無いから安心しなさい」

―――

12:10、ストームライダー前

真「30分待ちかぁ」

伊織「むしろラッキーね。ストームライダーは一度に入る人数が多いから、30分かからないで乗れる可能性もあるわ」

響「そうなのか」

伊織「ええ、だからここにはファストパスもあるけど、他の施設にファストパスを回したほうがいいわね」

貴音「……ところで伊織、そのぽっぷこぉんをわけてくれますか?」

伊織「……さっきあんだけうきわまんとハンバーガー食べて、よく入るわね」

貴音「ふふ……やはり、普段とは違う環境に居ることで、わたくしの胃袋も仕様が変わっているようですね」

伊織「もう、せっかく買ったばっかりなのに……ストロベリー味でいいわけ?」

貴音「はい、ではいただきます」

―――

真「あ、ボクたちも入れるみたい」

響「本当だ……ちょっと早く乗れるぞ」

伊織「列が進む時も一気にだものね。このくらいの待ち時間なら並んだほうが得だわ」

貴音「なるほど、確かに伊織の言うとおりでしたね」

カラッ

伊織「……最後まで食べてくれちゃってまぁ……」

―――

ドガーン!バリバリバリバリ!


貴音「嵐を消す兵器……凄まじい爆音でしたね」

響「い、今聞いた音の100万倍くらいデカイ音がするって……」

真「ほ、本当かなぁ……」


『ストームライダー』
気象コントロールセンターが開発した「ストームディフューザー」。
これをストーム(嵐)の中心で爆発させれば、
なんとストームを消滅させることができるのです。

折りしも、史上最大のストームが接近中!
さあ、ストームライダーに乗って、ストームの中心部へと出発!

―――

『ストームライダー、発進』

『待ってましたぁ!さぁみんな行くぞ!』


響「うわぁ凄い凄い!……うひゃ!」


―――

『……スコット!後は俺たちが引き受けたからな!』

『キャプテン・デイビス、ミッションは中止です』

『え?何だって聞こえないなぁ?』

貴音「……ふふ、面白いお方ですね」


―――

『爆発まで、20秒』

『みんな捕まってろよ!』

真「ひ……!うわっ……!ひゃあ!」

―――

真「ひゃ~……すごいアトラクションだったなぁ……」

響「じ、自分……こっちの方が怖かったかも」

伊織「……貴音は平気そうね」

貴音「ええ。恐怖と言うよりは、嵐に向かっていく『でいびす』殿に、感動と興奮を覚えました」

貴音「この施設でしたら、何度も乗ってみたいものですね」

伊織「へぇ~意外ね」

真「うん、でも確かに楽しかったよ」

響「は、はは……」

貴音「……大丈夫ですよ響、わたくしがついていますから」

響「そ、そこで貴音に心配される覚えはないさぁ!」

すまんちょっと休む。


できれば昼ごろまで保守しててください。

何でもしますから。お願いします!

今おきました。もうちょっと待っててね

夢と魔法の国ってランドの方だよね
シーはなんていったっけ?

伊織「さて……インディジョーンズが13時からだから……まだ時間があるわね」

真「どこか時間をつぶせる場所ないかなぁ」

響「伊織、どうだ?」

伊織「うーん……」

伊織「……そうねぇ、何かに乗るかどうかは置いといて」

伊織「とりあえず、まだ行ってない『アラビアンコースト』のエリアに行ってみましょ」

貴音「あらびあん……どのような所なのでしょうか」

伊織「そのまんまよ。アラビアっぽい雰囲気の所ね」

真「ディズニーだと……『アラジン』みたいな感じか」

響「よっし、行くぞー!」

―――

貴音「いんでぃじょーんず、はこの建物なのですね」

伊織「そうよ、ファストパスの入り口はこっち」

真「ここも70分待ちか……取っておいてよかった」

響「このまままっすぐ行くとアラビアンコーストに着くのか?」

伊織「着くわね。……あ、あと丁度いいわ」

伊織「今から『レイジングスピリッツ』っていうアトラクションも通り過ぎるんだけど……」

伊織「13時過ぎて、インディジョーンズに向かう途中で、そこでファストパスを取るといいわ」

真「へぇ~、人気のアトラクションが2つ並んでるのか」

響「レイジングスピリッツって、どんなアトラクションだ?……全然イメージ湧かないなぁ」

伊織「……レイジングはジェットコースターそのものね。特に怖い演出があるわけでもないわ」

貴音「それならば……わたくしも平気かと」

伊織「あ、そうそう、これね。これがレイジングスピリッツ」

真「……うわぁ…………こっちは80分待ちだって……」

響「レイジングの方が人気なのかぁ」

伊織「……ま、時と場合によるわね」

伊織「最近までは、事故で運転休止してたから……再開して、それで混んでるのもあるわよ」

貴音「成程……む、あれが『ふぁすとぱす』の発券機ですか」

真「あ、あれか。……アトラクションごとに発券機の形も違うんだよなぁ」

響「タワー・オブ・テラーも違うのか?」

真「うん、全然違った」

響「……なんか上に時間がかいてあるな」

貴音「仮に今から発券すれば……利用は16時から……ですか」

伊織「まだパスは切れなさそうね。慌てることはないわ」

―――

真「うわー、本当にアラビアみたいだ」

貴音「……先ほどの密林のような一帯とは、まるで雰囲気が違いますね」

響「でっかい宮殿がたくさんあるなぁ……」

伊織「エリアごとに景観がガラッと変わるのもシーの魅力の一つよぉ」

真「す、すごいなぁ。……どこを見る!?」

響「真、落ち着くさぁ……」

伊織「並ばないで乗れる……『シンドバッド』が丁度いいわね」

貴音「しんどばっど、とは……どのような施設なのですか?」

伊織「あの建物よ」

伊織「船に乗ってストーリーを楽しむ……ランドの『イッツ・ア・スモール・ワールド』の系統ね」

真「……ランドも行ったことないから良くわからないよ」

伊織「……そうだったわね、悪かったわ」


『シンドバッド・ストーリーブック・ヴォヤッジ』
かけがえのない宝物を手に入れるために、
未知なる海の冒険へと旅立つ船乗りシンドバッド、そして、トラの子ども、チャンドゥ。
さあ、“心のコンパス”を信じて! あなたも一緒に船に乗って、
最高の宝物を見つけに行きましょう。

響「……ホントにすぐ乗れるんだなぁ…………」

伊織「ま、いつでも行列があるような、大人気のアトラクションじゃないわね」

伊織「……でもやよいと一緒に来たときは、やよいが一番楽しんでたアトラクションだったわ」

真「ふーん……」

―――

~じんせいーは、ぼーうけーんだ♪~

真「チャンドゥ!チャンドゥ埋まってる!」

響「え、あ、ホントだ!埋まってる」

―――

~しーんじーて、コーンパースを♪~

響「なんか……良い歌だなぁ」

貴音「そう……ですね……」

貴音「心を揺さぶられるような……素晴らしい歌です」

―――

響「はぁ~……」

真「しーんじーて、コーンパースを♪……か」

貴音「……『童心に帰る』とは、このようなことを言うのかもしれませんね」

貴音「何よりも確かに、曲が素晴らしいと感じました」

伊織「そうねぇ、やっぱりここの中心は音楽よねぇ」

伊織「あと真、あれは『コンパス・オブ・ユア・ハート』って言ってるのよ」

真「え!?」

伊織「歌のタイトルもそう。……あと作曲者もディズニーでは有名な人なの」

響「そうだったのかぁ……。はぁ、心のコンパスかぁ……」

伊織「……時間が良いわね。そろそろインディジョーンズに向かいましょう」

―――

貴音「真、どのようにすれば?」

真「入園チケットの……そう、そこのバーコードを通して」

貴音「ふむ……確かに出てきましたね」

響「レイジングスピリッツは16:20からだってさぁ」

伊織「全員そうみたいね。さ、インディに行くわよ」


13:15、インディジョーンズ

真「やっぱりファストパスだとスイスイ進むなぁ」

貴音「しかし……この並ぶための場所も中々に凝っていますね」

響「よく出来すぎてて……ここもちょっと怖いぞ」

貴音「……わたくしは今のところ大丈夫です」

伊織「……まだ何も聞いてないわよ」

『インディ・ジョーンズ・アドベンチャー~クリスタルスカルの魔宮』
インディ・ジョーンズ博士の助手パコが、
博士に内緒で“若さの泉”を探す魔宮ツアーを企画しました。
さあ、さっそくあなたも参加しましょう。

ところが招かれざる客の侵入に、魔宮の守護神クリスタルスカルの怒りが大爆発!
無事に脱出できるのでしょうか!?


貴音「……非常に物々しい雰囲気になってきましたね」

響「ていうかあのパコって人、勝手に企画してるんじゃないかぁ!」

真「……注意書きも凝ってるんだなぁ、面白いや」

伊織「もうそろそろよ。……貴音、覚悟は出来たかしら?」

貴音「!?……も、もちろんです」

―――

テーッテレッテー、テーレレー♪

貴音「!?なんと……あの人は危なくないのですか!?」

伊織「人形、人形だから」

―――

『きーえーさーれー!』

ドゥーーン!!

真「うひゃあ!?」

響「うぎゃあ!!」

貴音「ひ、ひぃ!」

伊織「……♪」

―――

ゴロゴロゴロゴロ……

真「危ない……危なーい!」

ガクン!

響「ひ……ひぇ~……」

貴音「……助かりました」


テーッテレッテー、テーレレー♪

『後は自分たちで切り抜けるんだな』


真「は、はー……終わりかぁ……」

伊織「やっぱりコレは何回乗ってもいいわ~♪」

響「楽しかったけど……す、すごい疲れたぞ……」

貴音「ええ……あの教授というお方の助けが無ければ、今頃どうなっていたことか……」

伊織「だから人形だって」

真「コレ……今までで一番面白かったよ!」

真「うん……すごくよかった」

伊織「真は気に入ると思ったわ」

真「いやぁ~、へへ……もう一回乗りたいくらいだよ」

響「ああ、でも自分もコレは楽しかったぞ!」

伊織「にひひっ、楽しんでくれたのなら何よりだわ!」

貴音「そうですね。……しかし、あの方が『インディ・ジョーンズ』と言うのですか」

貴音「あの方の助けなくして、今ここには居られないのかと思うと……」

伊織「人形だって言ってるでしょ!」


―――

『エクスペディション・フォトアーカイブ』
ここは、発掘調査隊が撮影した現場記録写真の保管室。
現在も記録写真を取り扱っているのですが、
そこに写っているのはクリスタルスカルの魔宮に挑む探険家たちの勇猛果敢な(恐怖の?)姿です。
手に入れたい探険家の方は、キャストまでどうぞ


伊織「タワー・オブ・テラーと同じね。写真を撮られてたから、ここで買うことができるの」

伊織「……また貴音が凄い顔になってるわ」

響「さっきのは魂が抜けたような顔だったけど……」

真「……こっちは物凄いしかめっ面だな……」

貴音「し、仕方が無いでしょう!?」

貴音「あの様な物が迫ってくるなどと考えたら……この様な顔にも、な、なります///」

真「……伊織はまた笑顔だ」

伊織「そりゃあ写真のポイントくらい、ちゃんと押さえてるもの。……にひひっ」

響「そうだなぁ……自分、一枚買おうかな」

貴音「!?ひ、響……このような間抜けな顔をしたわたくしの写真を……買うというのですか?」

響「……どうしよう」

伊織「……ま、ゆっくり決めなさい」

伊織「私はこっちのショップでも見てるわ。……『ペドラーズ・アウトポスト』ってところね」

真「あ、じゃあボクも行くよ」

貴音「響……考え直してはくれませんか?」

響「た、貴音ぇ……ちょっと近すぎる……」

―――

真「あ、この帽子いいなぁ」

伊織「……こっちの方が似合うんじゃない?」

真「本当?……へぇ~、確かにいいね」

真「あ、Tシャツも売ってるんだ。……何か買っていこうかな」

―――

貴音「……響、薄情です…………」

響「だ、だからぁ……誰にも見せないって。……それならいいだろぉ?」

貴音「ほ、本当に……本当にそうだ、と約束してくれますか?」

響「約束するよぉ……」

貴音「……ありがとうございます」

響(貴音ってこんなこと気にするようなタイプじゃないはずなのに……)

響(やっぱりディズニーの魔力……なのかな)

―――

真「あ、お帰り」

響「おう」

貴音「……フゥ」

伊織「……こっちはもう買い物終わっちゃったわよ。何か買うかしら?」

響「そうだなぁ。ちょっと見てみるよ」

伊織「……じゃあ、私と真はこれからの打ち合わせでもしましょ」

真「ん?あ、ああ。わかった」

響「ほらほら、貴音も来いよ!」

貴音「あ、待ってください響……」

…………


13:40、ペドラーズ・アウトポスト

真「で、次はどうするんだい?ファストパスまで結構時間あるよ」

伊織「そうねぇ……アラビアンコーストと、『マーメイドラグーン』の方に行ってみるのがいいかしら」

真「まだ行ったことない所か」

伊織「マーメイドラグーンに行くなら、やっぱりショーを見るべきね」

真「ショーってどういうのだい?」

―――

響「うわっ!可愛い!可愛すぎるぞこのぬいぐるみ!」

貴音「……響……このカエルのぬいぐるみが可愛いのですか……?」

貴音「わたくしにはとてもそのようには……」

響「む~……自分は可愛いと思ったんだから良いんだよ!」

響「……!そっか、貴音ってカエル苦手だもんなぁ……うりゃ!」

貴音「ひえっ!……ひ、響……勘弁してくださいまし……」

響「へっへ~……うりゃうりゃ!」

貴音「あうぅ……い、いけずですぅ……」

響「おっまたせ~!」

貴音「……」

伊織「……買い物してきただけで随分やつれたわね」

貴音「そ、そのようなことは……」

伊織「……まぁいいわ。次はマーメイドラグーンに行きましょう」

響「マーメイド……『リトル・マーメイド』のところかぁ」

伊織「ええ、そこの特徴はやっぱりショーね」

伊織「『マーメイドラグーン・シアター』でやっているわ。もう少しで始まるわよ」

真「じゃ、行こうか」

響「よーっし、レッツゴーだ!」

貴音「参りましょうか」

14:00、マーメイドラグーン…トリトンズ・キングダム

響「広いな」

真「外から見ても大きかったけど、中はこんな感じなんだね」

貴音「ふむ……この中に色々な施設が総合されているのですね」

伊織「マーメイドラグーンのエリアの特徴ね」

伊織「外にもアトラクションはあるけど、大体は『トリトンズ・キングダム』の中にあるわ」

真「で、シアターはどこだい?」

伊織「このまままっすぐ行くとあるわよ」

響「お、5分待ちだって!すごく早く見れるんだなぁ!」

貴音「……しんどばっど、のようにそこまで人気あるわけではない施設なのですか?」

伊織「うーん、ちょっと……違うわね」

伊織「ショーが結構長いから、この待ち時間って、ほとんどショーの区切りの時間と同じね」

真「ああなるほど……次のショーが始まるまでの時間、ってことか」

伊織「そういうことね。……ただ普通に混む場合もあるわよ」

ザワザワ……

真「本当だ。たくさん人がいるのに……それでも5分待ちなんだ」

伊織「一度に入れる人数が多いもの。次のショーまでお預け、ってかなり混まなきゃ無いわよ」

響「ふぅーん」

貴音「……どのような見世物なのでしょうか?」

伊織「普通にリトル……貴音の場合は『人形姫』ね。人魚姫をモチーフにしたショーよ。話はかなり違うけど」

伊織「あと、自由に座れるから……最前列とか、通路側の席が空いてればそこに座るといいわ」

響「なんでだ?」

伊織「……座れればわかるわよ。座れなかったら教えてあげるわ」ニヤリ

真「もう……いちいち含みを持たせないでくれよ」

貴音「そ、そうですよ伊織……」

伊織「……」

伊織「……アンタが思うほど怖い目には会わないわよ」

―――

『マーメイドラグーン・シアター』
海底王国の奥に眠る沈没船が、「マーメイドラグーンシアター」への入口です。
このシアターでは、アリエルと海の仲間たちが海の魔女アースラに立ち向かう、
勇気と友情のミュージカル「アンダー・ザ・シー」を上演中!


真「……で、見事に最前列に座れたわけだけど……」

伊織「じゃ、そのときが来るまで内緒ね♪」

真「もう……」

響「でっかいなぁ……あ、宝箱ってアレかぁ」

貴音「『ありえる』嬢の宝箱を中心に座るように、と言われましたね。成程」


―――

アリエル『~♪~』

響「綺麗だな、アリエル」

真「あれ……結構筋肉使うだろうなぁ。頑張るなぁ」

伊織「どういう目で見てんのよ」

―――

パンッ

響「……そうか、コレのことか」

貴音「あれは、ヒトデ……でよろしいのでしょうか?」

伊織「ヒトデね」

真「くそう……アリエルの方に集中しすぎてボクだけ出来なかった……」

伊織「にひひっ、まだチャンスはあるわよ?」

―――

響「セバスチャンだー!」

貴音「……誰ですか?」

伊織「アリエルのお目付け役ね……アンタんとこの『じいや』とか、うちの新堂みたいなものかしら」

貴音「ふむ……」


セバスチャン『変わった娘だねぇ、人間の世界に興味を持つなんて……』


貴音「……苦労しておられるようですね」

―――

フロットサム『可哀想な娘だねぇ』

ジェットサム『アースラ様に会わせてあげよう』


響「あ、アリエル、そいつら悪いやつだぞ!聞いちゃダメだ!」

真「言ってもしょうがないよ響……」

―――

セバスチャン『アンダザッシー♪』


真「へへーっ、今度はセバスチャンとタッチできたよ!」

伊織「良かったじゃない」

貴音「……ふむ」

貴音「多くを望みすぎず、身近な幸せを感じることが大切……深い話ですね」

響「……そ、そうだ、なぁ……」

響(……楽しすぎて、全然そんなこと考えてなかったぞ……)

―――

14:30、トリトンズ・キングダム

伊織「さて、どうしようかしら?」

響「……この中にあるやつ、乗ってみてもいいかなぁ」

伊織「いいんじゃない?どれにするの?」

真「そうだなぁ……」

貴音「……わたくしは、あの回っているモノが気になります」

響「コーヒーカップみたいだな」

真「うん……ボクは、あの上がったり下がったりしてるやつが面白そうだ」

伊織「『ジャンピンジェリーフィッシュ』ね。貴音が言ってるのは『ワールプール』よ」

響「じゃあ……自分はジェリーフィッシュに乗ってみるぞ!」

真「お、じゃあ一緒に乗ろうか」

響「おう!」

伊織「……じゃ、私は貴音と一緒にワールプールに乗るわ」

貴音「ふふ、よろしくお願いします」

ごめんなさい、お昼ご飯食べてきます。

少ししたら戻るので保守しててください。何でもしますから。お願いします!

『ジャンピン・ジェリーフィッシュ』
ミステリアスな海の底で、みんなに愛されている不思議な乗り物があります。
それは、カラフルなジェリーフィッシュ(くらげ)たちが吊り下げた貝がら。
みんなを乗せて、ふわりふわり、上ったり、下りたり。
あなたも、たくさんの仲間たちがいる海中をゆったりとただよってみませんか?


響「お、結構高くまで上がるんだな」

真「……あ、伊織たちが見えた!おーい!」

響「……聞こえてないのかな」

真「うーん……手でも振ってみようか」

フリフリフリフリ

響「……反応無いなぁ」

真「はぁやれやれ……。しっかし……景色いいなぁ」

響「……ホントだなぁ」

真「今流れてるのが……『アンダー・ザ・シー』だっけ」

響「そうだぞ、リトル・マーメイドのテーマ曲だな!」

真「思ったよりゆっくりだけど……こういうのも良いなぁ……」

『ワールプール』
色とりどりのケルプ(海藻)でできた、ちょっとユニークなカップ。
ここに乗り込んだら、ゆかいな時間の始まりです。
潮のうず巻きに身をまかせ、8の字を描きながら、くるくる、ぐるぐる。
目を回さないように気をつけて!


貴音「おや……響から聞いていた話と違いますね」

伊織「何か違ったかしら?」

貴音「響からは……こぉひぃかっぷは、自分で回すものだ、と教えていただきました」

貴音「しかしこれには……何も回すための装置が無いようですが」

伊織「そうね、これは自動で回るわよ。……あ、始まったわ」

貴音「……ふむ」

貴音「成程……この程度の回転ですか」

伊織「……にひひっ」

貴音「どうかしましたか、伊織?……急に近づいてきて何を……」

貴音「!?」

貴音「か、回転が速くなっている!?」

伊織「このカップはねぇ、座っている人同士が近ければ近いほど、速く回るようになってるのよ」

貴音「な……そ、そんな仕掛けがされていたとは……!」

伊織「かなり速くなったわね」

貴音「た、確かに……」


「ぉーぃ」


貴音「……今、何か聞こえましたか?」

伊織「さぁ?」

伊織「そんなことより……もっと密着してもっと速くするわよぉ」

貴音「ふ……この程度で目を回すようなわたくしではありませんよ!」


―――

真「あぁ~楽しかった……って伊織と貴音、なんでちょっと良い顔してるんだよ」

響「良い顔すぎてちょっと気持ち悪いぞ」

貴音「ふふ、ふ……人知れぬ対決があったものですから……」

伊織「……流石にあんだけくっつくと暑いわ」

14:50、トリトンズ・キングダム

伊織「次なんだけど……アラビアンコーストでいいかしら?」

響「お、いいぞいいぞー!」

貴音「しんどばっど殿にはもう会いましたから……次は何をするのですか?」

伊織「アラビアンコーストの目玉は『マジック・ランプ・シアター』だけど……」

伊織「……ちょっと待ちなさいよね」

スッ

真「スマホか……いいなぁ」

響「何調べてるんだ?」

伊織「……ふっふっふ。ディズニーのHPで、待ち時間が調べられるのよ」

真「あ、そうなんだ!?」

伊織「ええ。しかも今から取った場合のファストパスの指定時間もわかるわ」

貴音「まこと、便利な代物なのですね」

伊織「……60分待ちで、ファストパスは18:20……」

伊織「……まだ無理に並ぶ必要ないわね。ファストパスも余裕ありそうだわ」

真「どうするんだい?」

伊織「『フライングカーペット』でも乗りましょうか」

響「フライング……空飛ぶじゅうたん、ってことか?」

伊織「行ってみればわかるわ。こっちよ」

―――

『ジャスミンのフライングカーペット』
ディズニー映画『アラジン』に登場するジャスミンの庭園の上空を、
空飛ぶ絨毯に乗って旋回するライドタイプのアトラクションです。
空飛ぶ絨毯を自分で上下に動かしたり、傾きを変えたりと、
まるで自由に空を飛んでいるかのような気分を味わうことができます。


響「あ、これかぁ。通るときに見たな」

真「4人乗りみたいだね。ちょうどいいや」

伊織「これ、前後の席にそれぞれレバーがあるわ」

伊織「前のレバーはカーペットの上下、後ろは傾きを変えられるわよ」

貴音「お互いのレバーを動かしあうことで、奇妙な動きをする……ということですか」

―――

響「じゃ、後ろはよろしくなー?」

真「ああ、任せてくれよ!」


『それでは、楽しい空の旅をお楽しみください』


グイーン

響「お……おぉー!ホントだ!ホントに上下に動くぞ!」

貴音「響……あまりやりすぎぬようにしてくださいね……」

真「結構傾くもんなんだね、面白いや」

伊織「……調子乗りすぎないでよね、危ないから」


響「たっかいなぁー!ジェリーフィッシュよりはやーい」

貴音「……この開放感は、えもいわれぬ感覚ですね」

真「あっはっはっはっは」グイングイン

伊織「調子乗るなっつーのに!」

―――

響「気持ちよかったなぁ!」

真「ああ本当だよ!」

貴音「……ふふ、いい『りふれっしゅ』になりましたね」

伊織「……ハァ、喜んでもらえたなら何よりよ」


15:05、フライングカーペット前

真「まだ一時間以上あるなぁ」

伊織「…………」

スッ

伊織「…………」

伊織「そうね……ここらでアレに行きましょう」

響「アレ?」

伊織「ミッキーよ」

貴音「!?み、みっきー殿に会うのですか?」

真「会うって……さっきのダッフィーのところに行くのかい?」

伊織「違うわよ。ミッキーとミニー、あとグーフィー……」

伊織「それぞれ個別で写真撮影ができる場所があるの」

響「じゃあ、そこに行くんだな!?」

伊織「ええ、今から行けば……30分待ちくらいだわ」

伊織「ミッキーの『グリーティング』にしては待たない方だし、時間も消化できていいわ」

真「グリーティングって?」

伊織「……簡単に言えば……キャラクターと触れ合うこと、かしら」

伊織「専用のグリーティングスペースがあるのは、あとダッフィーとかドナルド、アリエルとかね」

伊織「各エリアをうろついてる、『フリーグリーティング』ってキャラクターたちもいるわよ」

貴音「で、では……みっきー殿に会いに、行ってみようではありませんか……!」

15:15、ロストリバーデルタ…西端

『ミッキー&フレンズ・グリーティングトレイル』
ロストリバーデルタのジャングルに囲まれた場所で、古代文明の遺跡や、
植物や昆虫などの調査・研究をしているディズニーの仲間たちと記念撮影をしたり、
触れ合ったりして楽しもう!
道の途中にもいろんなしかけが施されていて、探険家気分で楽しめます。


真「ミッキーとミニーが30分待ちで、グーフィーが20分待ち……」

響「…………」

響「……な、なぁ、自分……グーフィーの方に行ってあげてもいいかなぁ……?」

伊織「……別に止めないけど……グーフィーはいつも大体こんなものよ」

貴音「アイドルと同じですね……人気があるものとないもの、明暗がはっきりわかれてしまうという……」

響「う、うぅ~ん……ミッキー見たいけど……グーフィーが……」

伊織「……ハァ」

伊織「……ここのグリーティングで、『ミッキーよりは』人気ないだけで、グーフィーも人気キャラクターよ?」

伊織「むしろ……響のほうがグーフィーから心配される立場なんじゃないかしらぁ?」

響「う、うがー!そんなことないってばぁ!」

真「で、どうするんだい?グーフィーに会いに行くかい?」

響「……いや!伊織の言うとおりだ!」

響「自分なんかが心配することがもう失礼だったんだ!」

響「ミッキーには勝てなくたって……グーフィーは立派にやってるはずさぁ!」

貴音「ふふ、そうですね。わたくしと響、それぞれ持つものが違うように……」

貴音「みっきー殿とぐーふぃー殿にも、それぞれの良さがある。……そういうものでしょう」

伊織「……余計な心配されて、グーフィーも気の毒よ」

―――

真「あはは、これ可愛い!」

響「ふぇ~、さっきまで何だったかわからなかったのに……」

貴音「真正面から見ることで、みっきー殿のように見える石群。……面白いですね」

伊織「ここのグリーティングは待ち時間用の通路も面白いもの。退屈はしないはずだわ」

真「いや、ホントだよ伊織!そこかしこにミッキーがいるんだもの!」

伊織「そこかしこに、ねぇ……」

伊織「……『隠れミッキー』って知ってるかしら?」

真「隠れミッキー?なにそれ」

貴音「みっきー殿が、どこかに隠れているのでしょうか」

伊織「そういうものじゃないわよ。……ミッキーのシルエット、ていうか輪郭、はわかるわよね」

響「ああ、そりゃあなあ」

真「●が3つ」

伊織「ええ。……実は、シーの至る所に……そのミッキーのマークが隠れてるのよ」

響「ど、どういうことだ?」

伊織「例えば、最初に行ったセンター・オブ・ジ・アース」

伊織「あそこの通路の外壁……ただのゴツゴツした岩肌だと思ってたでしょう?」

真「え、だってそうだったじゃないか」

伊織「あそこの外壁の一部が……ミッキーマークの模様の形になってるのよ」

真「そうだったの!?」

響「し、知らなかったぁ~……」

貴音「……成程、一目見ればすぐにみっきー殿とわかる形をしていながら、簡単には見つけられない……」

貴音「それが、隠れみっきー殿というわけですね」

伊織「にひひっご名答!」

真「……じゃ、じゃあ最初に教えてくれればよかったのに!」

伊織「言われて探したんじゃ面白くないわよ。……自力で見つけるのが楽しいんだから」

響「う、うわぁ~……なんかそう言われたら、あれもこれもミッキーの形に見えてきちゃうぞ」

真「くっそー、悔しいなぁ……絶対に自力で見つけてやる」

伊織「頑張りなさいよね~♪」


※今調べなおしたら、センター・オブ・ジ・アースにはナイっぽかったです
でもミステリアスアイランド地帯にもいくつか隠れミッキーはあります

―――

真「いよいよみたいだね」

貴音「……」ゴクリ

真「あ、写真だ……」

真「……!わ、わ、面白いよ響、貴音!」

響「なん、なんだなんだぁ?」

貴音「どれでしょうか?」

真「ほら、このミニーの写真に写ってる蝶々なんだけど……」

響「……!は、羽がミッキーの顔になってる!」

貴音「す……素晴らしい蝶々ですね。……こちらはみにー嬢のりぼんの柄の羽です」

真「なんだよこれ……こんなとこにも仕込んであるのかぁ」

伊織「……言ったでしょ?退屈はしないはずだって」

貴音「はい……つくづく、その言葉の意味を噛み締めております」

響「すっごいなぁ……」

―――

伊織「やっぱりミッキーはジェントルマンよねぇ~。どんな時でも優しいし、立ち振る舞いもオーラがあるわ」

貴音「みっきー殿……わたくしは、非常に貴重な体験ができました」

真「かっわいかったなぁ~……それにカッコよかったよ……」

響「ほんとだよなぁ……ハム蔵とも違う可愛さだなぁ……」

伊織「……ミッキーに夢中になる人の気持ちも、少しはわかったかしら?」

貴音「ええ、わたくし……感動で胸がいっぱいです」

真「ギューッてさ、ギューッてしてくれるんだよね」

響「そうそうそう!しかもちょっとお茶目なんだよなー!」

真「あれがたまんないよねー」

…………

15:50、グリーティングトレイル前

真「そういえばさ、伊織」

伊織「なぁに?」

真「あそこ走ってるような……船には乗らないのかい?」

伊織「ああ、『トランジットスチーマーライン』のことね」

伊織「そうねぇ……ここから出る船は、パークの反対側の『メディテレーニアンハーバー』行きのものよ」

伊織「アトラクションじゃなくて、移動手段としても使えるわ……後で乗ってみるのもいいんじゃないかしら」

響「へぇ~、楽しみだなぁ」

貴音「……あと30分程度、時間がありますね」

響「!?」ハッ

真「響?」

響「……」チラッ

響「……うん……よし……」

伊織「…………」

貴音「響、どうしたのですか?」

響「あ、……あはは……えっと、なぁ」

伊織「……いいわよ」

響「え?」

伊織「グーフィーと写真撮りたいんでしょう?……いいわよ。私もついていってあげるわ」

真「響……本当に?」

貴音「……確かに、ぐーふぃー殿の待ち時間は25分程度。指定時刻には間に合いますね」

響「あ、あぅ、う……」

伊織「どうしたのよ。別にそこらへんのレストランで、おやつ食べながら時間つぶしたっていいわよ?」

響「……」

響「い、いいかなぁ……みんな。グーフィーと、写真撮りたいんだ……」

貴音「ふふ……では、参りましょう?」

真「ああ、ボクもグーフィーに会ってみたいからね」

伊織「まったくもう……はっきりしなさいよね?……別に迷惑だなんて、思ってないんだから」

響「そ、そう……かぁ……みんな、ありがとうなぁ!」


―――

16:30、グリーティングトレイル

響「はぁう……グーフィーが可愛かったよぉ~」

貴音「やはりみっきー殿には無い、別の魅力がありましたね」

伊織「にひひっ、ちょうどいい時間じゃないの!」

真「そうだね。レイジングスピリッツに行こうか」

伊織「……待って!」

響「……どうしたんだ伊織?」

伊織「真……ファストパスとポップコーン、お願いできるかしら」

真「……ここに来てそれかぁ」ハァ

伊織「ちゃあんと、後でご褒美くらいあげるわよ」

真「はは……期待しないで待っておくよ」

真「で、どのアトラクションのファストパスだい?」

伊織「マジック・ランプ・シアターのパスをお願い。それと、近くに『カリー』味のポップコーンがあるわ」

真「マジック・ランプ・シアターと、カリー味……よし!」

ダッ!タッタッタッタ……

貴音「……流石に、真にあれこれと頼みすぎなのでは?」

伊織「まぁ、悪いとは思ってるわよ。……後で、しっかりしたご褒美あげなきゃね」

16:40、レイジングスピリッツ前

真「ポップコーン、ちょっと混んでたよ。お待たせ」

伊織「ありがとう、真」

貴音「指定時刻が……19:40とは……」

響「だいぶ後になっちゃったなぁ」

伊織「いや……ちょうどいいわね。最後にここに行くようにすればいいだけよ」

真「マジック・ランプ・シアターを見て、帰るってことか」

伊織「そういうこと。……で、レイジングスピリッツね」


『レイジングスピリッツ』
燃え上がる炎、立ち込める蒸気…。
古代神をまつった遺跡の発掘現場で、数々の異常な現象が!
復活した神々の怒りによって、中断を余儀なくされた調査隊。

ところが、あなたに見学のチャンスがやってきました。
さあ、自らの体でこの超常現象を確かめにいきましょう


伊織「ここのコースターは1回転するのが特徴ね」

伊織「ま、ある意味だと他の遊園地でも似たようなのは乗れるかしら」

真「響は、他の遊園地で一回転コースター乗ったことあるのかい?」

響「あ、あははー……恥ずかしながら、まだ無いんだ」

貴音「丁度良い機会ではありませんか」

響「そうだなぁ……ははは……」

伊織「今回は貴音は心配なさそうね。むしろ響かしら」

響「だ、だぁ!大丈夫だぞぉ!?」

真「声、声が上ずってるよ」

―――

伊織「本当は……並んで乗るほうが良い場合もあるのよ」

真「どうして?」

伊織「私たちはファストパスでさっさと乗ることが出来るけど……」

伊織「並んでいると、コースターの様子がまじまじと見えるの」

伊織「それで恐怖心が煽られる人もいるでしょうけど……何度も見せられるから、次第に慣れてくるわ」

響「……自分たちは……こ、心の準備ができないまま乗ることになる、ってことかぁー!?」

伊織「……にひひっ♪」

―――

貴音「響……しっかりしてください」

響「……」ポケー

真「係の人にも心配されちゃったじゃないか。大丈夫かい?」

響「ああ……うん……なんくるないさー」

伊織「……真はどうだったかしら?」

真「え、ボクかい?……そうだなぁ。一回転に気を取られて、気がついたら終わってたよ」

貴音「そうですね。思ったよりも短い、というのが正直な感想でした」

響「ああ……うん……短かったなぁ」

伊織「いつまで放心してるのよ」

響「なんかもう……すごかった……グワーンってなってグルーンってなって」

響「気がついたら終わってたさぁ……」

伊織「……ハァ」

伊織「あ、グーフィーだわ」

響「!?ど、どこだどこだ!?」

響「……あれ?グーフィーは?」

伊織「……ウ・ソ」

響「えぇー!?それはあんまりさぁー伊織ぃー!」

伊織「あはははは、でも元気になったじゃないの!」

響「ムフー!グーフィーがいないんじゃ元気になんてなれないぞぉ!」

貴音「ふ、ふふ……響、落ち着いてください」

真「はははは!もう、二人とも」


…………

『ディズニーシー・トランジットスチーマーライン』
東京ディズニーシーの海をめぐる蒸気船。
ここ、ロストリバーデルタのドックからは、メディテレーニアンハーバー行きの船が出航しています。
見えてくるのはエキゾティックなアラビアの宮殿、
珊瑚でできた美しい城、火山の中に潜む秘密基地…。
風を感じながらの船旅を、ゆったりとお楽しみください。


伊織「じゃ、これに乗って反対側まで行くわよ」

響「走っているのはさっきから何回も見たけど……乗るとどんな感じなんだろうな」

真「はふぅ~……ボクは走りっぱなしで疲れたよ」

貴音「色々な施設を巡りながらの船旅とは、風情があっていいものですね」

―――

響「お、アラビアンコーストだ。カーペットも飛んでるな!」

真「……あ!ジャファーがいる!」

伊織「あら、本当?ジャファーはアラビアンにしか出ないフリーグリーティングね」

響「見つけた、ホントにジャファーだ!」

貴音「……じゃふぁーとは……あの、何やら気難しい顔をしている男性の方でしょうか」

伊織「そうよ。『アラジン』に出てくる悪役キャラクターね」

貴音「成程……確かに、不穏なことを考えていそうな顔をされていますね」

真「へぇ~、やっぱりフリーグリーティングっているんだぁ」

伊織「アラビアンコーストなら、ジーニーにも会えるわね」

響「そっかぁ。……色んなキャラクターに会ってみたいなぁ……」

―――

真「こっちは……マーメイドラグーンか」

響「そういえば、外のアトラクションには乗らなかったな」

伊織「そうねぇ、どっちも子供向けのアトラクションだったもの」

貴音「伊織、ここでも登場人物に会えるのですか?」

伊織「会えるわよ。アリエルは専用のグリーティングスペースがあって……」

伊織「あとはフリーならリトル・マーメイドのエリック王子とかかしら」

伊織「ドナルド、グーフィーもたまに来るわね」

響「え、グーフィーがあそこにいるのかぁ!?」

伊織「今は多分いないわよ!」

―――

貴音「みすてりあす・あいらんど……でしたね」

伊織「センター・オブ・ジ・アースのところね」

真「……そういえば、海底2万マイルには乗らないのかい?」

伊織「乗りたいの?」

真「いや……他のファストパスが必要な施設は全部回ったのに、ここだけ何も言ってなかったからさぁ」

響「ん……あ、そうだな。ここだけ何もやってないな」

伊織「ああー……2万マイルはねぇ……そこまでして乗るほどのアトラクションでもないわよ」

真「そ……そうなの?」

響「どうしてだ?」

伊織「他のファストパスが必要なアトラクションに比べると、地味だし動きも少ないのよ」

伊織「それに、19時を過ぎたら5分で乗れるようになったりもザラよ」

貴音「後になるほど、待ち時間が少なくなる……ということですか」

伊織「そうよー。タワー・オブ・テラーはその時間でも30分待ちが当たり前だわ」

伊織「それを考えたら……わざわざ並ぶ必要も、ファストパスを取る必要もないわね」

伊織「夜になって空いてたら乗る、くらいの気持ちで構わないんじゃないかしら」

真「……ひどい言われようだ。2万マイル」

響「逆に興味が出てきたぞ……」

17:00、メディテレーニアンハーバー

響「うわぁ~!凄くおしゃれな建物ばっかりだなぁ」

真「いいなあぁ……こういうところに住んでみたいやぁ……」

貴音「これは……何か基となる建造物があったりするのでしょうか?」

伊織「イタリアのヴェネツィアがモチーフになっているらしいわよ」

響「うわ、うわぁ~……うわぁ~……」キラキラ

真「はぇ~……ひゃ~……」キラキラ

伊織「……目的地、ここじゃないんだけど」

貴音「確か……『たぁとる・とぉく』でしたね」

伊織「そー。ここからアメリカンウォーターフロントまで歩くわよ」

真「ちょ、ちょ、ちょっと待ってよぉ……もうちょっと見てたいんだ」

響「じ、自分もぉ……」

伊織「あとで連れてきてあげるから!」

―――

伊織「メディテレーニアンハーバーは、ホテルミラコスタも併設されてるわ。ちょうど今見えるアレね」

貴音「……!この中に宿泊施設まで備えてあるのですか!?」

伊織「ええ。私もよく泊まるわよ。ていうか、本気でディズニーに浸かる気ならミラコスタは定石よ」

響「ホテルの中ってどうなってるんだ?」

伊織「メディテレーニアンハーバーに合った、イタリアンなホテルね」

伊織「……シー側の部屋なら、窓からパレードも見放題よ」

真「うわっ、それいいなぁー!」

伊織「あとは、時間指定の無いファストパスがついてくる特典があったりするわね」

響「好きなときに乗れるってことかぁ!」

貴音「……それならば、宿泊施設を利用する人がいるのも必然でしょうね」

伊織「……ま、その分安くはないけどね」

真「い、伊織が泊まる部屋は……いくらくらいするんだい?」

伊織「……10万以上する、とだけ言っておくわ」

響「じゅ……!」

真「……ふはぁ~…………」

貴音「……しかし、それによって得るもののために、利用する人がいるのでしょう」

伊織「そうねぇ。朝は時間より早く回ることができたりもするし」

伊織「キャラクターたちの練習風景なんかも窓から見えるわよ」

真「はは……一生に一回は泊まってみたいなぁ」

響「夢みたいな話だなぁ……」


―――

17:20、アメリカンウォーターフロント…タートルトーク前

伊織「着いたわね」

響「タートル・トーク……亀とお話できるのか」

真「25分待ち……ちょっと待つくらいだね」

伊織「40分待ちくらいも想定してたけど……上出来よ」

伊織「じゃあ今から並ぶけど……貴音」

貴音「なんでしょう」

伊織「並んでいる間にポップコーンが食べたかったら、自分で買ってきなさい」

貴音「!?」

真「い、伊織……それくらいボクが買ってくるよ」

伊織「いえ、真はいいわ。……貴音、アンタどんだけポップコーン食べたと思ってるのよ」

貴音「!」ギクッ

貴音「うぅ……確かにわたくしが、今ある分もほとんど食べてしまいましたが……」

伊織「……流石に食べすぎよ。これ以上は自分で買ってきなさい」

伊織「近くにならクランベリーとブラックペッパーがあるわ」

伊織「2個とも買ってくるならカゴも2つ貸すけど……どうするの?」

貴音「……」

貴音「…………」

貴音「では二つ」

―――

響「へぇ~、この亀、クラッシュっていう名前なんだ」

真「人間と喋れる……って、どうやってだい?」

伊織「……ふっふっふ、見ればわかるわ」

貴音「……モグモグ……くらっしゅ殿に質問をしても良いということでしたが……モグモグ」

伊織「流石にフルネームはまずいわよ?……下の名前だけならギリギリセーフかしら」

響「え、名前言わなきゃいけないのか?なんで?」

伊織「……それも、始まればすぐにわかるわ」


『タートル・トーク』
ここはS.S.コロンビア号の船尾にある海底展望室。
大きなガラス窓越しに、ウミガメのクラッシュとお話しすることができます。
クラッシュにどんな質問をするか考えておいてくださいね!

―――

お姉さん「それでは、みんなでクラッシュを呼んでみましょう~」

せーの

「「「「クラッシュー!!」」」」


デンデケデン、デデン、デンデケデン、デデン~♪


クラッシュ『ぃょぉおおおお~!!ほっほ~』

クラッシュ『みんな、こんにちわ~』


「「「「こんにちわー」」」」


クラッシュ『はっはっは~、元気があっていいねぇ~』

クラッシュ『それじゃあ早速……みんなとお話をしてみようかなぁ』

クラッシュ『まずはそうだなぁ……こっちの前から3列目の……真ん中の通路から4番目に座ってる大人の男性』

クラッシュ『そうそう、君と話をしてみたいなぁ~』

響(え?く、クラッシュ……本当に見えてる……!?)

真(……どういうことだろう。全然わからない……)

貴音(声……は別としても……くらっしゅ殿の動きまで合わさっていますね……)


クラッシュ『こんにちわ~』

男「こんにちわ」

クラッシュ『名前なんてーの?』

男「としあきです」

クラッシュ『としあき……はぁ~~……あぁ~……』

クラッシュ『……良い名前じゃあないかぁ~』

としあき「……///」

クラッシュ『よぉーしときあき、出会った記念だぁ』

クラッシュ『俺が、最高だぜーっ!って言ったら……としあきは両方のヒレを大きく上げて』

『うぉー!!』

クラッシュ『って言うんだぁ~』

クラッシュ『……照れてる場合じゃないぜぇ~』

クラッシュ『じゃあ行くぜぇ……としあき、最高だぜー!』

としあき「うぉおー!」

クラッシュ『やれば出来るじゃあないかぁ……みんなとしあきに拍手だぁー』

パチパチパチパチ

貴音(……まったく会話に澱みがありません。素晴らしい話術です)

響(…………)ハェー

真(ぼ、ボクも当てられないかなぁ……)ドキドキ

クラッシュ『よーしじゃあ次はみんなでやってみようぜぇ~』

クラッシュ『みんな~、としあきに負けるなよぉ~』

クラッシュ『みんな……最高だぜぇー!』

響「うぉー!」

真「うぉー!」

貴音「ぅぉー……」

クラッシュ『……としあきに負けてるぞー』

クラッシュ『みんな……最高だぜー!』

真「うおー!」

響「うおー!」

貴音「う……うぉー」

クラッシュ『……やればできるじゃないかぁ』

クラッシュ『よぉ~しみんなぁ、自分に拍手だぁ』

パチパチパチパチ

貴音(く、くらっしゅ殿にペースを握られています……)

真(た、楽しい……!)

クラッシュ『よぉ~し、次は前の子供たちに聞いてみようかなぁ……』


―――

クラッシュ『そうかそうかぁ。……りんちゃん、お話ししてくれてありがとうなぁ』

クラッシュ『お前たち……最高だぜぇ~』

真「うおー!」

響「うおー!」

貴音「うぉー」

クラッシュ『……としあきぃ~、何でヒレ上げてないんだぁ』

真「ちょっ、あははは!」

響「うえぇ!?」

としあき「……///」

クラッシュ『ちゃんと上げなきゃダメだぞぉ~、みんなのリーダーなんだからなぁ』

貴音「いつの間にそのような事に……」

伊織「……ふふふ♪」

―――

クラッシュ『よぉ~しそれじゃあ、俺に質問のあるやつはいるかなぁ?』

クラッシュ『いたらヒレを大きく上げてくれー』

響(……!こ、ここだ!)バッ

クラッシュ『そうだなぁ……じゃあまずは、前の列の……』

響(あう……)ガックリ

貴音「……次もありますよ、響」ボソッ

響「貴音……うん」


クラッシュ『ひろゆき~、何が聞きたいの?』

ひろゆき(9)「どんな食べ物が好きなんですか?」

クラッシュ『食べ物ぉ~!俺な、食べ物の話が大好きなんだよぉ~』

―――

クラッシュ『よぉし、他に質問あるやついるかぁー?』

響「は、はい!」

伊織「……」

クラッシュ『そうだなぁ~……じゃあ後ろから2番目の列の……』

響「!」ドキッ

クラッシュ『右から2番目の……お嬢ちゃんに聞いてみようかなぁ』

響「!!じ、自分かぁ!?」

真(凄い響!)

貴音(やりましたね!)

伊織(へぇ~、ラッキーじゃないの)

クラッシュ『こんにちわ~』

響「こ、こんにちわ」

クラッシュ『名前なんてーの?』

響「え、と、響です」

クラッシュ『響ぃ~、俺に聞きたいことは何かな?』

響「そうだなぁ……クラッシュにはどんな家族がいるんだ?」

クラッシュ『家族ぅ~。いいねぇ~』

クラッシュ『俺にはさぁ~息子のスクワートと、あと大切なパートナーがいるんだぁ』

クラッシュ『シェリーって言うんだけどさぁ……もう130年も一緒にいるんだぁ』

クラッシュ『二人ともぉ、俺の大切な家族なんだぜぇ~』

響「へえぇ~……」

クラッシュ『はっはっは~、響にも家族がいるのかぁ~?』

響「あ、いるぞ!すごく大切だ!」

クラッシュ『そうかそうかぁ。そりゃあ何よりだ~。響、ありがとうなぁ』

クラッシュ『お前たち……最高だぜー!』

真「うおー!」

貴音「うぉー」

響「うおぉー!」

―――

響「最高だったぜー!」

真「うおぉー!」

伊織「……いつまでやってるのよまったく」

貴音「まぁまぁ。……くらっしゅ殿と話が出来た響を見て……わたくしまで一緒に嬉しく思いますよ」

伊織「……まあねぇ」

18:10、アメリカンウォーターフロント

貴音「それで……次の指定時間まで何をしていれば良いのでしょう?」

伊織「それなんだけど……響、真!」

響「んあ?」

真「なんだい?」

伊織「自分の欲しいものも、お土産も……この時間を使って買うわよ」

真「今からかい?」

伊織「ええ」

響「どこで?」

伊織「メディテレーニアンハーバーにお店が集中してるわ。ロッカーもあるからそこで買うのがいいわね」

伊織「あとは、ここにもダッフィーグッズ専用のお店があるの。寄りたいならそこも寄るわ」

真「この時間なのは意味があるのかい?」

伊織「大有りよ!マジック・ランプ・シアターを見た後に買い物するなんて危険すぎるわよ」

貴音「危険……とは?」

伊織「マジック・ランプ・シアターのファストパスは19:40からでしょう?」

響「そうだな」

伊織「シーでは、20:00から夜のショーが始まるの」

伊織「『ファンタズミック!』や『マジック・イン・ザ・スカイ』っていうやつね」

伊織「そしてシーに来る客のほとんどは、ショーが終わると同時に帰るようになるわ」

貴音「……!成程、それでは確かに危険ですね」

真「え、なんで?なんで?」

伊織「いい?私たちがマジック・ランプ・シアターを見終わるのが20時前後」

伊織「そこから買い物を始めたとして……おそらくパレードに人が集中してるから、店内は空いてるかもしれないわ」

響「そ、そのほうがいいんじゃないのか?」

伊織「違うの……もし買い物中にショーが終わったりしたら……」

真「あ……帰る人ですごく混むのか!」

伊織「……そういうこと。今日は新堂の迎えで来たからいいけど、もし電車を使うことになってたりしたら……」

響「そ、うか……そこもすっごくたくさん人が集まっちゃうのか……」

伊織「ええ。ショーの間に絶対に買い物を終わらせる自信があるなら別だけど……」

真「……そうだね。今のうちに買ったほうがいいのか」

響「なるほどなぁ~。そこまで気がつかなかったなぁ」

貴音「それでは、今のうちに買い物を済ませておきましょう」

伊織「ええ……じゃあ一番近いから、『マクダックス』から行きましょう」


―――

『マクダックス・デパートメントストア』
ニューヨークの街の一区画を占領する大きな建物は、
世界で一番リッチなアヒル、スクルージ・マクダックが経営する百貨店。
お菓子やアクセサリー、ステーショナリーなどさまざまなグッズが手に入ります。
質屋から始めたスクルージの商売は大繁盛して、
今では金貨でできた噴水までつくるほど!
まさに、アメリカンドリームを手に入れたアヒルですね。


伊織「スクルージもフリーグリーティングで現れることがあるわよ」

真「ドナルドの伯父さんで、お金大好き、かぁ……」

響「あんまりディズニーっぽくないけど、面白い人だな!」

貴音「……面白いアヒル、の間違いでは?」

真「……シーのグッズが色々あるって聞いたけど……ダッフィーのグッズが多いね」

伊織「ま、『シーと言ったらダッフィー』って考えてもおかしくないもの」

伊織「だからグッズもダッフィーやシェリーメイのものが多くなるわよね」

響「……へぇ、自分で着せ替えられる衣装もあるのかぁ」

貴音「こちらの裸のだっふぃー殿に着せるのでしょうか」

響「……間違ってないけど、裸って……」

貴音「何かおかしなことを言いましたか?」


真「ダッフィーも可愛いよなぁ……」モフモフ

真「……はあぁ~」モフモフ

真「ショーでしか見れなかったもんなぁ。グリーティングもしたかったよ」

伊織「……次来た時にグリーティング行けばいいじゃない」

真「え~!?……だってさぁ、次が何時か、なんてわからないじゃないか」

伊織「……そんなに気に入ったんなら、また連れてきてあげるわよ」

真「え?」

伊織「何回来ても楽しいのがディズニーだもの。雪歩ややよいも一緒に誘ったっていいわよ?」

伊織「……今度はランドに行こうかしら?にひひっ」

真「……」モフモフ

真「そう……だね……」モフモフ

真「うん……!また、みんなで来ようよ!」モフモフ

伊織「…………」

伊織「……どうでもいいけど、そのダッフィー買うのよね?」


―――

18:40、メディテレーニアンハーバー…中央

『エンポーリオ』
とにかくたくさんお買い物したい! そんな人におすすめなのが、
パーク内で一番大きなこのショップ。
イタリア語で“百貨店”という名前のとおり、
ぬいぐるみ、ステーショナリー、生活雑貨などさまざまなグッズがそろっています。
天井に描かれた夜空もこのお店の自慢。ぜひ見上げてみてくださいね

『ヴァレンティナーズ・スウィート』
お店の壁には、ミッキーやミニー、ドナルドとデイジーなど、
ディズニーの恋人たちが描かれた絵画が飾られ、とってもロマンティック!
キャンディーやチョコレート、クッキーなどのお菓子がいっぱいのこのショップでは、
毎日がヴァレンタインデー。
大好きなあの人へ、甘~い愛を贈りませんか?


伊織「この二つの店を中心にして、近辺も含めればだいたいのお土産は揃うわね」

貴音「それぞれのお店を伺う、ということですね」

伊織「そうよ。バラバラだと連絡取りづらいから……2人1組で行動しましょ」


響「うぅ~ん、イヌ美たちに食べさせられるお菓子ってなんだろうなぁ……」

伊織「……普通に止めときなさい。ペット用品はエンポーリオにもあるから」


貴音「真、この帽子はどうでしょうか?」

真「プ……た、貴音にスティッチは似合わないよぉ……ククク……」

貴音「はて、そうでしょうか。とても良いと思ったのですが……」

伊織「ほら、チケットもこういうパスケースに入れれば……」

響「うわ可愛い!そっかぁ……こういうの買うのもいいのかぁ」

伊織「チケット入れなら、また来た時にも使えるもの。いいと思うわよ」

響「ま、また、か……そうだな!」

響「自分、今日はすっごくすっごく楽しかった!また来たいから……これ買うよ!」

伊織「……柄はそれでいいの?」

響「え?……ちょ、ちょっと待ってくれよ……うーん、こっちもいいなぁ……」

伊織「……♪」


貴音「……真」

真「なんだい?」

貴音「今まで遊園地という娯楽施設、ましてやでぃずにーという作品たち」

貴音「どちらとも、わたくしには必要のないものだと思っていました」

真「…………」

貴音「ですが、今日という日を体験して……その考えを改める必要が出てきたようですね」

晩飯食って来ます

すいません何でも(ry

自分ほ

真「……そっか」

貴音「はい。……心踊り、気持ちが軽やかになる」

貴音「ひょっとすると、皆でこういうことをするのが初めてだから……」

貴音「『でぃずにーらんど』でなくとも、この気持ちは味わえたのかもしれません」

真「……うん」

貴音「しかしわたくしは、みっきー殿や、数々の仕掛けたち」

貴音「それら全てに、心奪われてしまいました」

貴音「このような気持ちにさせてくれたこと……」

貴音「そして、このような時間をともに過ごせたこと……たいへん嬉しく思います」

真「……へへっ」

真「それだったら、ボクなんかよりも響や伊織に言ってあげなよ」

真「怖がる貴音にずっとついてあげたのは響だし、ボクたちを導いてくれたのは伊織なんだ」

真「それに……ボクだって、貴音たちと一緒に遊べて、すごく楽しかった。こっちからもありがとう」

貴音「……ふふ、真らしいお言葉ですね」

―――

19:20、メディテレーニアンハーバー・中央

真「も~、どうしたんだよ二人とも。遅いよ」

響「ご、ごめん。思ったよりも混んでて……」

伊織「……いいのよ響。真にはあげないってだけの話だもの」

真「なにが?」

貴音「……!」ピクッ

貴音「この香り……何を持っているのですか?響、伊織!」

伊織「……あんたイヌじゃないんだから」

伊織「これよ……私たちの晩ごはん」

真「うわ、たくさん……これってパン?」

響「へっへ~、そうだぞぉ!伊織と一緒に、晩ごはん買ってきたんだ!」

貴音「ああ……鼻をくすぐる芳しい香りが……」

伊織「……ちゃんとあげるから、袋から顔を離しなさい」

―――

『マンマ・ビスコッティーズ・ベーカリー』
村人たちから“お母さん(マンマ)”と呼ばれて親しまれている、
ビスコッティー夫人が営むパン屋さん。
香り豊かな焼きたてのパンは、朝早くから働く村人たちの元気のもとです。
さまざまな種類の手づくりパンやペイストリーを、
いれたてのコーヒーと一緒に心地よいオープンエアの席でどうぞ。


伊織「……モグモグ……席は混んでたから、テイクアウトにしたわ」

真「…………」

貴音「……これは……モグモグ……みっきー殿の形をしたパンですか……モグモグ」

伊織「人気だから無くなる直前だったわね……モグモグ」

真「…………」

響「モグモグ……ま、真……」

真「伊織さぁ……」

伊織「どうしたの?」

真「さっきあんなこと言ってたけどさぁ……本当にくれないとは思わないじゃないか!」

伊織「にひひっ、冗談冗談よ、ほら」スッ

真「もうっ……モグモグ」

伊織「お土産もかさばらなかったし……ロッカーは使わなくて済みそうね」

ガサガサ

響「そもそもどこにあったんだ?ロッカーって」

伊織「エントランスの近くにあるわよ」

貴音「……入り口近くで土産を買って、それらを仕舞いつつ錠をする」

貴音「そして身を軽くして楽しみつつ、帰る際に必ず通るから、そこで土産を回収する」

貴音「……非常に無駄のない、洗練された配置なのですね」

伊織「そりゃあそういうことだけど……そこまで難しく考えてどうするのよ」

貴音「……ふふ」

貴音「次回の参考に……と」ニッコリ

伊織「……ふーん、あんたもその気アリ……なわけね」ニヤリ

貴音「ええ」キラーン

伊織「じゃあ……次来るときは……タワー・オブ・テラーに2回は乗ってもらうわよ?」ニヤリ

貴音「……!ぜ……善処致します……」

―――

19:40、アラビアンコースト

『マジック・ランプ・シアター』
ここは、宮殿の中庭に張られたテントの中。
自称“世界で一番偉大なマジシャン”シャバーンによる、
初めてのワンマンショーが始まります。

コンビを組んでいるはずのランプの魔人、ジーニーの姿が見えないけれど…。
もしかして、意地悪なシャバーンのしわざ?


真「いよいよ最後かぁ……」

響「なんか名残惜しいなあ……」

伊織「始まる前からそんなしんみりしてどーすんのよ!」

貴音「……そう、でしたね。……最後まで楽しまなければなりませんね」

伊織「……アンタも無駄に使命感帯びすぎよ」


―――

貴音「この眼鏡はまだ使わないのですか」

伊織「途中で指示が出るわ。それまではいらないわよ」

―――

響「シャバーン悪いヤツじゃないか!」

真「ホントだよジーニーを閉じ込めるなんて!それにアシームも助手とは言え可哀想だよ」

貴音「……伊織、じーにー殿は大丈夫なのでしょうか」

伊織「……ま、物語に任せなさい」

―――

アシーム『みんな、鍵はない?席の下を調べてみて!』

響「え?え?え?」

ガサゴソガサゴソ

響「ま、真あったか!?」

真「いや、こっちもないよ」

貴音「わたくしの席も……見当たりませんでした」

伊織「私もないわね」

響「あぁ、アシームが困ってるのに……」

―――

シャバーン『偉大なるマジシャン、シャバーーーンのマジックショーへようこそぉ!』

シャバーン『これから行われるマジックは大変危険を伴いますぅ』

シャバーン『お座席のシートベルトをしっかり締めてくださいねぇ!』


響「……」

スカッ

響「……ん?」

真「……あ、あれ?」

貴音「…………」キョロキョロ

伊織「……♪」


シャバーン『ありませんよぉそんなもの!』

シャバーン『ぬははははは!』

響「く、悔しいぃ……」

真「……ふ、ふふ…………」

貴音「……まんまと一杯食わされましたね」

伊織「……♪」

―――

ジーニー『イヤァン』

ジーニー『……なぁに見てんのよぉ!』

真「やっぱりジーニーはこうでなくちゃなぁ」

貴音「……ここまで常識破りな方だったのですか」

伊織「そりゃあ精霊に常識は通用しないでしょ……」

―――

ジーニー『いい!?3つ数えたら立ち上がって~?』

『いち』

『にぃ』

…………!

―――

20:05、マジック・ランプ・シアター前

響「ジーニーが飛び出してたし、最後もすごかったなぁ……これもまた見たいな」

真「そうだね、また今度見に来よう」

貴音「……見世物がもう始まっているようですね」

真「あっという間だったなぁ……。……なあ伊織!」

伊織「……?どうしたの?」


真「今日はすっごく楽しかったよ、ありがとう!……また来ようよ!」

響「ああ!自分も、今まで行ったどの遊園地よりも楽しかったし、また来たいって思ったぞ!」

貴音「……わたくしがわたくしで無くなるのではないか……と思うほどに羽目を外してしまいました」

貴音「伊織……改めて、ありがとうございました」ペコリ

伊織「……ふんっ」

伊織「アンタたちが初めてのディズニーで失敗しないように、勝手に気を回してあげただけよ」

伊織「私のわがままなんだから……感謝される覚えはないわ!」

真「……へぇ~」ニヤリ

響「ふ~ん……」ニヤニヤ

貴音「そうでしたか。……それは失礼致しました」ペコリ

伊織「……ムキ~~!」

伊織「なんなのよその顔はぁ!何か言いたいならはっきり言いなさいよ!」

伊織「もう新堂も迎えに来てるけど……乗せてあげないわよ!?」

真「え~!?それはズルいよぉ!」

響「自分、もう帰りの電車賃もないくらい使っちゃったんだぞぉ!?」

伊織「それはアンタの責任でしょうが!」

響「いいじゃないか乗せてくれたってー」

真「ケチ!ケチ!」

伊織「ムッカー!この伊織ちゃんをケチ呼ばわりとはいい度胸じゃないの」

貴音「……ふふふ」

~~~

ガチャ!

P「おっすおはよーございまーす」

小鳥「おはようございますプロデューサーさん」

P「……あ、ディズニーランドのクッキーだ」

P「また春香と千早が行ってきたんですか?」

小鳥「……ふふ、違いますよ」

P「ん?じゃ誰です?」

小鳥「伊織ちゃんですよ」

P「ああ伊織かぁ。……てことはやよいもですよね?」

小鳥「いいえぇ?違いますよ」

P「え!?じゃあ誰です?」

小鳥「うふふふ……」

―――

雪歩「……わぁ。四条さん、スティッチのボールペンなんて使うんですか?」

貴音「はい。……何か、不都合な点でもありましたでしょうか?」

雪歩「い!?いいいいえいえいえいえ、……四条さんって、そういうキャラクターものとか、使わないと思ってたから……」

貴音「ふむ、成程……」

雪歩「……?」

貴音「いえ……なんでもありません。……皆が集まれる日が来れば、そのときに……」ニコリ

雪歩「へ?……は、はいぃ……」

―――

真「ランドだったら……プーさんのハニーハントかなぁ」

響「うーん……モンスターズインクのアトラクションも乗ってみたいなぁ」


やよい「……!お二人とも、ディズニーランドの話ですかぁ!?」

真「あ、やよい」

響「そうだぞ!ランドでどこに行ってみたいかって、話してたんだ」

やよい「ランドは私、行ったことありますよ!ハニーハントも乗りました!」

真「へぇー……じゃあ、色々教えてもらおうかな」

やよい「あ……で、でも、モンスターズインクはすっごく人がいて……」

響「別に気にしなくていいさぁ。やよいの知ってること、教えてくれよ!」

やよい「……は、はい!」

―――

律子「伊織、お疲れ様」

伊織「はいはい、律子もお疲れ様」

律子「フゥー……何とか終わったわねー」

律子「今日は伊織の調子が良くて助かったわ、本当に」

伊織「そうかしら?」

律子「ええ、この前までが普段どおりの……80%くらいだとすると……」

律子「今日は140%くらい!それくらいキレキレだったわよ」

伊織「ふーん……」

律子「つれないわねぇ。何かあったなら教えてくれてもいいじゃない」

伊織「…………」

伊織「……そう、ねぇ」

伊織「じゃあ、私が元気になった所に、律子も一緒に行きましょうよ」

律子「……ん?どっか行けばいいの?」

伊織「ええ」

伊織「なんなら、竜宮小町のみんなで行くのもいいわね」

律子「へぇ~、行くと元気になれる……パワースポットみたいね」

伊織「律子と二人でも面白そうだけど……みんなで行ったほうがもっと楽しいわ」

律子「ふーん……まぁ、来週は丁度オフの日もあるけど……どこに行けばいいわけ?」

伊織「……にひひっ」


伊織「ディズニーランドに行きましょう!」




おわり

こんなに時間かかると思ってなかったです。
軽い気持ちで始めたのが間違いでした。

長い間、支援や保守し続けてくれてありがとうございました。



ランドもシーも、それぞれ各々の回り方があります。
今回のものもあくまで一例として捉えてください。

またキャンペーンやショーの内容も季節ごとに変わります。
ファンカストやフリーグリーティングのキャラも出てこない日があったりします。

リアルがSSの通りにならないこともままありますのでご了承ください。



本日はこのSSをご覧頂き、真にありがとうございました。

乙乙、楽しかった

「真にお礼しなきゃね…」的な伏線って回収されてたっけ

>>364
忘れてた、ごめんw
まぁ伊織のことだから、みんなのお土産の中に、
真のために買ったものも入ってたことでしょう

ランドは勘弁して下さい……w
まるまる一日かかるとか……

俺も実は全く同じネタを考えたことがあるし、微妙に書き溜めもしてたが
ひびたかまで被ってて先を越されたようだな。こんな出来のいいものありがとう。
おつでした

おいおい「夢と魔法の国」はランドの方だろ
シーは、「冒険とイマジネーションの海」だってGoogle先生が言ってたぞ
タイトル詐欺かよ


というわけで、ランド編もよろしくお願いいたします

>>380
早く書きなさい。ネタ被りなんて気にするな

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