勇者「魔王は死にたいようです」 (6)
王様「魔王軍が退却した…? ついに、勇者が魔王を倒したのか!」
側近「いえ、どうやら違うらしく…」
王様「ならば、どういう事なのだ?」
側近「……勇者殿がもうじき帰還なさいます、その際にお聞きください」
王様「何故か」
側近「…にわかに信じがたい話なのです」
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勇者「久方ぶりです、王よ」
王様「勇者……一体これは何事なのだ…魔王は、どうしたのだ」
勇者「王様、率直に申し上げます」
勇者「私は魔王に惨敗を喫し、そして死にました」
王様「……は?」
勇者「人類は魔王に敗北したのです」
王様「な、なれば何故に魔王は軍を退却させた! 何故だ!!」
勇者「『領土は魔族が世界の半分頂く、それで問題ないだろう』との事です」
王様「馬鹿な…ならば、今までの数百年に渡る永き戦争はなんだったと!?」
勇者「………魔王は」
王様「なんだ!」
勇者「……」
勇者「魔王は死にたいようです」
・・・・・・【四日前】
勇者(……倒した)ハァハァ
勇者「ゼェ…はあ……っ」ドサッ
勇者(四天王…これで四人目、あとは最上階の魔王を倒すだけです)ハァハァ
勇者「っ……」グググッ
勇者(立てない…) ゼェ…ゼェ…
勇者(強かった、魔王が誇る四人の魔族長達…四人目の風を操る魔族長に至っては…)
勇者( あの風の防壁を何とかしなければ傷すらつけられなかった… )
勇者(……静かですね)ハァハァ
勇者(外には魔王軍の主力隊がいたはず、何故……?)ヨロヨロ
勇者(あそこの窓から外が見れそうですね)
勇者(……?)
勇者「なぜ、主力隊が魔王城を囲んで…まさか、四天王が倒された事が分かって?」
勇者(私を中級魔族ごときが倒せると? 嘗められたものですね…)フラフラ
勇者(少し休む間に雑魚が来ても、この四天王の間ならば戦いやすい)
勇者(数では私は倒せない、それを教えてあげますかね)ヨロヨロ
勇者(・・・)
勇者(もう傷は回復した、疲労もない)
勇者(だが既に何時間も経つ、魔王達はなぜ私を倒しに来ない?)
勇者(……だがしかしチャンスだ、私は今なら魔王を倒せる)
勇者(今こそ世界を救う…!)
勇者「待っていろ、魔王……ッ!!」ザッ
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