のび太「もう我慢はやめたんだ」(284)

ドラえもん「の・・のび太くん・・・いつからさ?」
のび太「体力も学力も無い、そんな僕だけど一生懸命生きてきた」
のび太「そんな僕を否定するこんな世の中は間違っているんだよ」
ドラえもん「だからって何をやってもいいってわけじゃないだろ!!なんだよあれは!?」
のび太「ああ、あれね」

ジャイアン「ウ・・アア・・ゴロジデ・・モウ・・ゴロジデグダザイ・・」
スネヲ「マ・・・マ・・ヴアアヴアアアア・・・」

のび太「手足を切断し顔を焼き鼻と耳をそぎ落とし片目を潰し舌を切り落とし歯を全て引き抜いただけさ」
のび太「人間が感じられる痛みを全て与えてやったのさ、お医者んカバンで延命処置を繰り返してね」
のび太「イジメられ続けた僕の苦しみの100分の1程度の痛みにも満たないが、多少は反省するだろ?」

ドラえもん「な・・なんてことを!!スペアポケットが無いと思えばそんな事をしてたのか!?」
のび太「まぁね、ちなみにこいつらの家族はこいつら自身の手で殺されたよ」
ドラえもん「どういうことさ?・・・そ、それは『命れいじゅう』じゃないか!!何を命令したんだ!?」
のび太「さぁ?僕は何も知らないよ~?」

のび太「たださ、自分の意志とは逆に大切な人間を包丁でメッタ刺しにするのってどんな気分だろうねぇ~??」
のび太「酷いよねぇ~実の妹をグチャグチャに潰れるまで指し続けるなんてさぁ」
のび太「最後の言葉は『酷いよお兄ちゃん・・何で・・』だってさぁ~」

のび太「プ・・・プ・・・プププププププププププ」
のび太「プギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアハッハッハッハッハッハハハハハハ!!!!!!!!」

ドラえもん「・・・」

のび太「ああそれとね、君は未来に帰ってたから知らないだろうけどさ」
ドラえもん「なんだよ!まだ何かあるのか!?」
のび太「もうこの街に僕を馬鹿にする人間は一人もいないんだよ」
ドラえもん「・・・どういうことさ?」

のび太「ちょっと散歩にいこうか」

ドラえもん「なんだよ、駅前なんかに連れてきて・・ウッ・・この臭いは・・!?」
のび太「ほら見てごらん、あれが僕を馬鹿にした人間とその親族縁者達だよ」
ドラえもん「・・・何てことを・・・」
のび太「大昔にさ、罪人の死骸をああやって吊るしたんだろ?それの再現だよ」
ドラえもん「あ・・・赤ん坊までいるじゃないか・・!!」
のび太「何言ってるんだよドラえもん」

のび太「罪人を産んだ母親も罪人」
のび太「罪人を養育した父親も罪人」
のび太「罪人と血を分けた兄弟も罪人」
のび太「罪人から生まれた子供も罪人」
のび太「罪人を放置してきた親戚も罪人」

のび太「家系図に載っている人間は全て罪を償ってもらったよ」

ドラえもん「き、君は馬鹿でマヌケだけど・・心は優しかった・・何があったんだよ!?」
のび太「僕は優しいよ?だから今の今まで我慢をしてやっていたんだ」
のび太「でも気がついたんだよ、押入れのスペアポケットを見ていてさ・・」
のび太「僕が我慢をしてやっているから奴らが生きていられた事にね」

ドラえもん「だからって殺すことないだろ!死んだら和解する事すらできなくなるんだぞ!!」
のび太「ああそうだね、ちゃんと理解してるさ、だからそれぞれに最後のチャンスはあげたよ」

ドラえもん「・・・どういうことさ?」

のび太「僕を馬鹿にした連中一人一人に会いに行ってさ、こう言ってやったんだよ」
のび太「『地面に頭を擦り付け今まで僕にした仕打ちを詫びろ、靴の裏を舐めれば命だけは助けてやる』・・てさ」
のび太「奴らどうしたと思う?鼻で笑って『何いってんだ?死ねバ~カ!』だってさ」
のび太「最後のチャンスを無駄にした人間ってのは本当に哀れに見えたよ」

ドラえもん「・・・だから道具でなぶり殺しにしたのか!!その最中に謝ったはずだろ!!」
のび太「何言ってるんだよドラえもん?」

のび太「自分の足元が危うくなってから下げる頭に何の意味があるのさ?」

のび太「それはね、相手に申し訳なくて下げてる頭じゃない、自分が助かりたくて下げてる頭さ」
ドラえもん「それは・・」
のび太「あ、タイムテレビで途中経過見る?何度みても命乞いが笑えるんだよホラ」
ドラえもん「な、何を言って・・・ウプ・・・!!」

出木杉「やめくれえええ!!悪かった!!僕が悪かった!!助けてくれえええ!!!」
出木杉「ヒギャアアアアアア!!!腕が!!僕の腕がああああああああ!!!」
出木杉「な、なんで僕の家族がここにいるんだよ!?お・・おい!やめろ!!やめろおおおお!!!」

のび太「ク・・・プクククククククククク」
のび太「プギャッハアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
のび太「だ、駄目だ!こいつの断末魔の叫び何度聞いても笑えるわ~」

ドラえもん「なんて・・・ことを・・」

ドラえもん「こんな事して・・警察が黙っている訳無いだろ!!」
のび太「警察~??ああ、そんなのが来たねぇ」
のび太「僕はねぇ・・今でも友情ってのが大事だと思うんだよ」
ドラえもん「突然何を・・」

のび太「『友情カプセル』で僕は警察とも大親友になれたのさ」
のび太「あの死骸を駅に吊るすときも手伝ってくれたんだぜ?今も側で警備してくれてるだろ?」
のび太「死骸を下ろそうとした奴は容赦なく射殺してくれてるよ」

ドラえもん「・・それは・・・友情じゃないだろ・・!!!」

ドラえもん「これじゃあ・・しずかちゃんとの幸せな未来なんて来ないぞ!!」
のび太「しずかちゃん~??あーいたねそんなの」
ドラえもん「そんなのって・・ま・・・まさか・・・!?」
のび太「僕はね、あの子だけは信じてだんだよ・・だから本気で告白したんだ」
のび太「僕の内に秘めていた想いを全て吐き出して、あの子にぶつけたんだ」
のび太「そしたら何て言ったと思う?」

しずか「ごめんなさい・・気持ちは嬉しいけど私・・出木杉さんが好きなの・・」
しずか「将来あなたと結婚するとか話をされても・・正直困るわ」

のび太「解るかい?拒絶したんだよ、この僕を」
ドラえもん「・・・」

ドラえもん「そ、それはまだ時期が早かっただけで・・もっと深い仲になってからなら・・」
のび太「もう遅いよ」
ドラえもん「え?」
のび太「ちょっと遠出しようか・・」
ドラえもん「どこに行く気だ!ちょ・・待ってよ!」

のび太「『どこでもドア』!!アメリカへ!」

のび太「えーと、たしかここらへんだっけな・・」
ドラえもん「なんだよここ・・スラム街じゃないか」
のび太「お、あそこの建物だな!ほら、窓から覗いてご覧」
ドラえもん「一体何が・・・・・え・・」

しずか「嫌ああああああ!!!やめて!!もうやだああああああ!!!」
しずか「注射やめて!!痛いのやだ!!臭い!!汚い!!こないでええ!!!」
しずか「もう産みたくない!!!やめてえええええええ!!!」

のび太「ハハッざまーないねぇ、手足も切り落とされて使いやすくなってるじゃないか」
ドラえもん「なんて・・・こと・・を・・・」

のび太「いやー、驚いたろ?外人のロリコンって本当に容赦ないんだよ」
のび太「ありゃボロボロになったら捨てられるなきっと、プクククク」
ドラえもん「君は・・こんな事して何も感じないのか!?」
のび太「何言ってるのさ、もちろん感じてるよ」

のび太「今までの自分がいかに愚かであったのか」
のび太「僕の優しさにつけ込んできた外道どもの叫びが心地よいこと心地よいこと」

のび太「知ってるかい?街を歩けば皆道をあけ僕に頭を下げるのさ」
のび太「まぁその顔は恐怖に引き攣っているんだけどねぇ~最高の気分さ」

ドラえもん「・・・・」

のび太「おっと、連中を助けようとか考えるなよ」
のび太「助けようとした瞬間に全員の頭が吹き飛ぶように細工してあるよ、全員な」
ドラえもん「な!?」
のび太「そもそも君は僕の為に未来から来たんだろ?なら僕の幸せを一緒に喜ぶべきじゃないのか?」
ドラえもん「僕は君を真人間にする為に来たんだ!欲望任せに好き勝手やらせる為じゃない!!」

のび太「欲望だぁ~?」
のび太「何を勘違いしてるんだ?僕はね、優しい世界を作りたいだけなのさ」
のび太「人に危害を加えれば何百倍にもなって返って来る、その痛みを理解できれば誰もが人に優しくなれるだろ?」
のび太「今まで僕が受けた痛みや苦しみを味わってもらっているだけさ、別におかしな事じゃない」

ドラえもん「のび太くん・・恐怖で人を支配しても心までは動かせないんだぞ」
ドラえもん「そんな薄っぺらい物・・力を無くしたら一瞬で全て崩れるぞ!」

のび太「その通りだねぇ、だから奴らの支配は崩れ『力』をもった僕に殺されたんだろ?」

のび太「しかし気分がいいねぇ、弱者を追いかけて追い詰めて死に追いやるのは・・プクククク」
のび太「奴らもこんな感覚で僕を苦しめていたんだろ?なら自業自得だねぇ」
のび太「平然と人にやった事を自分にやり返されてるんだ、文句なんて間違っても言える訳ないよなぁ」

ドラえもん「・・・解った・・・もう解った・・・」
のび太「ようやく理解してくれたのかい?じゃあ手伝ってくれるよね?僕の幸せの為に」

ドラえもん「僕はもう未来へ帰る・・二度と戻らない」

ドラえもん「道具も全て持って帰る、そして君がもう何の力も無い事を街の皆に伝えておくよ」
のび太「・・・そんな事したら連中は僕をなぶり殺しにしようとするぞ?」
ドラえもん「当然の報いだろ・・・犯した罪がどれだけ重いのか理解してもらうにはもうこれしか・・」
のび太「寝ぼけるなよガラクタ」
ドラえもん「!?」

のび太「僕は被害者だ!やられた側の被害者なんだよ!!!」
のび太「連中は加害者だ!人に危害を加え『やり返された側』だ!!!」
のび太「ここで僕が力を失えば勘違いした奴らはもう一度加害者として『やり』にくるぞ!!!」
のび太「僕の話を理解してないのか!?最初に『やる』人間を無くす為に僕は努力してるんだぞ!!」

ドラえもん「そ、その憎しみの連鎖を断ち切る為にこうするしかないだろうが!!」
のび太「断ち切るなら『やった側』がやり返されてプラマイ0で終わりだろうが!!!」
のび太「君はまた『被害者』を作る気か!?今までの僕の苦しみを何も理解していないのか!?」

ドラえもん「ウ・・・グ・・・」

のび太「解るかい?最初に撃つ人間がいなければ撃ち合いなんて始まらないんだよ」
のび太「知ってるかい?人間は道徳を掲げているがその行動は実に利己的な事を・・・」

のび太「『人を殺すのはいけないこと』なんて理由で殺すのを躊躇ってるんじゃない」
のび太「『人を殺せば自分が罰を受ける事になる』から殺すのを躊躇うのさ」

ドラえもん「そ・・そんな事は・・」

のび太「だから重要なのは『確実に返って来る痛み』なのさ」
のび太「人にやった分が確実に自分に跳ね返ってくる、何十倍にも何百倍にもなってな」
のび太「加害者やその身内に人権なんて無い、『やったからやりかえされるのは当たり前』なんだから」
のび太「そういう世界になればどうなるか解るかい?」

のび太「自分が罪を犯せば家族が死ぬ、家族が罪を犯せば自分が死ぬ」
のび太「家族に無関心な人間はいなくなり、徹底的な教育をするようになるのさ・・自分の命可愛さにな」
のび太「他人に迷惑をかけることも無い、常に他人を気遣う心優しい人間だけが世の中に残る」
のび太「その過程で僕を苦しめてきたような蛆虫どもはグチャグチャに潰れて死んでいくのさ」
のび太「子供たちは吊るされたクズの死骸を見て『こうはなりたくない』と律されていくんだよ」

ドラえもん「それは・・恐怖政治という奴だよ・・今まで長続きした例はないんだぞ・・」
ドラえもん「確かに未来の道具があれば前提は作れるだろうさ」
ドラえもん「でもね、その『優しさ』は他人を想っての物じゃなくなるんだぞ」
ドラえもん「どこまでも利己的で自分の身可愛さに他人に優しくする、そんな人間だけの世界に君はしたいのか?」

のび太「・・・」

のび太「・・・なんの問題があるんだよ」
ドラえもん「え?」
のび太「今の世界で受ける優しさは本物なのか?何の打算もない純粋な善意なのか?」
ドラえもん「それは・・」
のび太「ホラ見ろ!判別なんて出来ないだろうが!!だったら中身なんて問題じゃない!!」

ドラえもん「・・・君のおばあちゃんの優しさには・・打算なんて物があったのかい?」

のび太「!?」

おばあちゃん

きたーー(°∀° )ーー!!

のび太「おばあ・・ちゃん・・・」
ドラえもん「僕は思うんだ、君のその気持の根本は、失った優しさを求めている事からきているんじゃないかって」
のび太「・・・」
ドラえもん「受けた愛情を、もう無い物を、誰かに強く求めているんじゃないのか?」
ドラえもん「確かに世界は君に優しくないかもしれない、むしろ残酷な事が多いだろうさ」
ドラえもん「それでも今まで耐えてこられたのは、反抗する力が無かったからだけじゃないだろう?」
のびた「僕は・・・」

ドラえもん「少しでいい、思い出してみてよ、幼かった君に人のあり方を見せてくれた人の事を・・」

のび太「僕・・僕は・・僕は・・・」
ドラえもん「辛かったんだろう?耐えて耐えて、何をされても他人に優しくあろうとしたんだろう?」
のび太「あ・・・あああああ!!!」


ドラえもん「ごめんよ・・こんなに側にいたのに気付いてあげられなくて・・・」
のび太「うあああああああああああああああああああああ!!!!!」


     
 ていう夢を昼寝してたらみたんだけどさ

 どう?凄くいい話じゃない? 
            ___                _
        / ____ヽ           /  ̄   ̄ \
        |  | /, -、, -、l           /、          ヽ
        | _| -|  ・|< ||.          |・ |―-、       | スペアポケット返せ
    , ―-、 (6  _ー っ-´、}         q -´ 二 ヽ     .|
    | -⊂) \ ヽ_  ̄ ̄ノノ          ノ_ ー  |     |
     | ̄ ̄|/ (_ ∧ ̄ / 、 \        \. ̄`  |     /
     ヽ  ` ,.|    ̄  |  |         O===== |
       `- ´ |       .| _|        /          |
.          |       (t  )       /    /      |


        


          - 完 -

夢オチかお…

ほっこり(*´ω`*)ほっこり

ごめんよ、酒入っててそろそろ限界だ

少し寝るお休み

ドラえもん「のび太くん、どちらに味方するか心は決まったかい?」
のび太「わかんない……わかんないよ……」
ドラえもん「やれやれ……いいかい、笹尾山からも桃配山からももう何度も狼煙があがってるんだよ!」
のび太「ぼくだってわかってるよそんなこと!でも……でも決められないんだ」
ドラえもん「ジャイアンからは寝返れば上方に国二つ与えると言われてるんだよ」

のび太「でも出来杉からは関白に就けると……」
ドラえもん「そんなのどうせ秀頼が元服するまでの繋ぎに決まってる!」
のび太「そりゃあ、そうかも知れないけどサ」
ドラえもん「大体出来杉はのび太くんの朝鮮での頑張りを太閤殿下に報告するどころか讒言して北ノ庄に飛ばそうとした張本人じゃないか!」
のび太「うん……」

ドラえもん「朝鮮ではあんなに活躍したのに!蔚山で明・朝鮮連合軍に包囲されていた加藤清正を救出した時なんか陣頭に立って馬を走らせたのに!」
のび太「えへへ」
ドラえもん「少ない兵でいち早く駆けつけて敵の大軍を蹴散らしたんだ」
のび太「よせやい」

ドラえもん「さらに追撃して多くの敵を討った。数え切れないほどの首を挙げた」
のび太「うふふ」
ドラえもん「女子供だからって容赦しない。朝鮮人は手当たり次第に皆殺しにした。首を斬ってたら切りがないから耳を千切り鼻を削ぎ落として……」
のび太くん「もうよせ」

ドラえもん「それを何だ!出来杉はのび太くんの手柄を一切伝えず、代わりに讒訴した!」
ドラえもん「勝手に飛び出して行っただの非戦闘員を虐殺しただのと、些末なことを声高に言い立てた!」
ドラえもん「挙げ句のび太くんを越前北ノ庄に減転封するように仕向けて!越前だよ?とんだド田舎じゃないか!」
のび太「」
ドラえもん「暖かな豊かな筑前博多からクソ寒い越前なんかに。」

のび太「落ち着けよ……」
ドラえもん「それを救ってくれたのがジャイアンなんだよ。大きな恩があるんだ」
のび太「うん」
ドラえもん「なのに君はまだ迷っているだなんて!さっさと寝返らないと機を失っちゃう!そうなったら誰も君なんか見向きもしなくなるぞ!」
ドラえもん「君みたいなグズでマヌケでアホで弱虫で骨皮筋右衛門の腐れ童貞なんか」

のび太「そんなこと言うなよ……」
ドラえもん「君が判ってないから言ってるんだ!さっさと寝返りの指示を出すんだ!」
のび太「……でも」
ドラえもん「でもじゃねぇ!出せ!」

のび太「出来杉たち頑張ってるみたいだし……」
ドラえもん「あんなもん蝋燭が燃え尽きる前の最後の輝きみたいなもんだ。崩れるのも時間の問題だ!」
のび太「でもまだ南宮山の毛利も長宗我部も戦ってないし……」
ドラえもん「内応してるからに決まってんだろ、ボケ!」
のび太「そんなこと判んないじゃん。ドラえもんだって現場に行って本人に聞いた訳でもない癖に」

ドラえもん「はぁ……そのくらい聞かなくたってここから見てりゃ簡単に判るよ」
のび太「それは決めつけだろ。根拠を示せよ、根拠を」
ドラえもん(チッ バカのクセにしつこく食い下がりやがって)
のび太「えっ?」
ドラえもん「とにかく!伝令を飛ばして寝返りを命じるんだよ。君に残された選択肢はもうそれしかないんだ」

のび太「解ったよ。でも念の為にもう少し様子を見守ることにする」
ドラえもん「ハァ?」
のび太「もしものことがあるだろ。もしもしの」
ドラえもん「……」
ドラえもん(こうなったら奥の手を出した方が良さそうだな)

ドラえもん「しずかちゃん」
のび太「え?」
ドラえもん「大坂城のしずちゃんのこと考えなよ」
のび太「しずちゃん……」
ドラえもん「もし出来杉が勝ったらしずちゃんは出来杉のものになっちゃうんだよ!」

のび太「まさか!?そんなことないよ。出陣する前ぼくの手を握って『のび太さんの帰りを待ってる』って」
ドラえもん「どこまでウブなんだ君は。まあ腐れ童貞だから仕方ないけど」
のび太「何だと」
ドラえもん「いいかい、それくらいのことしずちゃんはみんなに言ってるよ」

のび太「え!?」
ドラえもん「出来杉には抱きついて何か囁いていたし」
のび太「嘘だ!」
ドラえもん「3ヶ月前にはジャイアンにだって手を握って剛さん無事に戻ってねって」
のび太「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だーーッ!!!!!」

のび太「う……う……う……」
ドラえもん(これでいい加減目を覚ますだろうて)
のび太「うっ うっ うっ」
ドラえもん「……ん!?」
のび太「うっ うっ うわーん!!!しずちゃあああん!!!!!」
ドラえもん「何だと!?」

ドラえもん「いかん、この反応は想定外だ」
のび太「じずぢゃーん!!!じずぢゃーん!!!」
ドラえもん「落ち着いてのび太くん!出来杉がいなくなれば万事解決なんだから!」
のび太「うわーん!!うわーん!!」
ドラえもん「出来杉と君とじゃ勝負にならないけど、ジャイアンとだったら勝ち目がある。だから頑張るんだよ!」

のび太「う"っ え"っ ぐっ……でっ、出来杉さえ、いな、ければ?」
ドラえもん「そう、そうだよ。しずちゃんにとって大事なのは秀頼様と豊臣家だけ。出来杉がいなくなれば彼女は君のものさ」
のび太「ほっ、ほんと、だね?」
ドラえもん「ああ」(ふぅ……てこずらせやがって)
のび太「で、でも、ジャイアン、が」
ドラえもん「アイツは汚いしブサイクだから君の圧勝!大丈夫!」

のび太「でも今しずちゃんは秀頼様と豊臣家が一番大事だって言ったじゃないか。ジャイアンが勝てばその権力に靡くかも知れない」
ドラえもん(チッ 余計なこと言っちまったな。こういう時だけ鋭いから始末が悪い)
ドラえもん「心配性だなあアハハ。この戦に勝てば君は上方で2ヶ国の大大名になるんだから……」

のび太「ジャイアンは関八州255万石の大大名じゃないかー!」
ドラえもん「……」
のび太「やっぱりダメなんだー!うわーん!!じずぢゃーん!!!」
ドラえもん 「ええい、埒が明かねえ。こうなったらこっそり伝令出しちまうか……」

ジャイアン「おせーな、のび太の奴。一体いつまで待たせるんだよ! おいっ」
使番「はっ」
ジャイアン「スネ夫んとこ言ってのび太が本当に裏切るのか確かめて来い!」
使番「はっ」
ジャイアン「くっそう、のび太の癖に俺を焦らすなんて生意気だぞ!」

左近「殿、松尾山はまだ動きませぬな」
出来杉「のび太がグズでノロマなのはともかくドラえもんがついていながら何故動かないのか……」
左近「恩賞が足りなかったのでは」
出来杉「馬鹿な。関白の位は本来あんな愚か者に就けるような役職じゃないんだよ。事実涙を流して有り難がっていたじゃないか」
左近「寝返り工作にかかったのかも」

出来杉「まさか。のび太はジャイアンにいじめ抜かれて憎んでいるはずだよ。靡くものか」
左近「そうだと良いのですが……」
使番「申し上げます!もしもしはクッキーがリセットされるため字数制限が厳しく空けにくいとのこと」
出来杉「何のことやら」

使番「申し上げます!」
ジャイアン「おう」
使番「骨川殿は『今になってそんなこと言われてもぼくの知ったこっちゃないよ』とのことにございます」
ジャイアン「何だと!舐めやがって!スネ夫め!!」

使番「申し上げます!」
ジャイアン「ああ!」
使番「福島勢、宇喜多勢の猛攻に支えきれず崩れ初めております」
ジャイアン「何!」
清長「福島勢が崩れればいよいよ我ら本隊とぶつかることになりますぞ」
ジャイアン「うっせー!んなこと解ってら!!」

しずか「ふふ、今頃男たちが私のために命がけで闘っているのね」
秀頼「かあさまこわい」

重忠「もしこのまま本隊が宇喜多勢と戦端を開けば後方の毛利や長宗我部が勝機と見て攻めかかってくるやも知れませぬ」
ジャイアン「んなこと一々心配してられっか!よーし俺様は腹をくくったぞ!!」
清長「殿?」
ジャイアン「本陣を前へ出せ!!!」
清長&重忠「おやめください!」

出来杉「左近、戦況は?」
左近「宇喜多隊が福島隊を崩しかけております。小西隊は防戦一方、大谷隊も同じですがこちらにはまだ余裕があります。
左近「そして島津隊と南宮山松尾山の諸隊は動こうとしませぬ」
出来杉「宇喜多隊のみが突出している訳だね。援護しないと挟撃に遭う」
左近「御意」
出来杉「そろそろ奥の手の出番のようだね。フフフ」

出来杉「左近、国友村で鋳造させておいたフランキ砲をこれへ」
左近「ははっ」
出来杉「放て!」
ドドーン
左近「おうおう、慌てふためいておりまする」
出来杉「ハハッワロス」

出来杉「これで動かぬ者共も腹を決めるだろう」
左近「そうだと良いのですが……」

ジャイアン「おい、何だありゃ」
重忠「どうやら敵は石火矢を用意しておったようですな」
ジャイアン「ぐぬ、出来杉のクセに生意気な!」
清長「されば本陣をお下げ下さい!」
ジャイアン「だが断る!」

のび太「ひっく、ひっく」
ドラえもん(やれやれ、やっと泣き止んだか。これで……)
ドドーン
のび太「えっ!?何、あれ?」
ドラえもん「笹尾山から煙が上がってる、大砲を撃ったみたいだ」
のび太「見て見て!凄い威力だよ!!慌てて寝返らなくて良かったあ~」
ドラえもん(また振り出しかよっ)

出来杉「左近、連中の様子はどうだ?」
左近「狼煙は上げておるのですが……」
出来杉「ちっ まだ足りないのか。やはりジャイアンの手が伸びていたんだな。左近、松尾山に使番を送れ」
左近「はっ」
出来杉「のび太なんかに命運を握られる何てね……」

使番「申し上げます。骨川殿の陣から大久保殿が参られました」
ドラえもん「ほらぁ~のび太くんが早く寝返らないから痺れを切らして催促に来たじゃん」
のび太「どうしよう、ドラえも~ん」
ドラえもん「どうしようもこうしようも、さっさと寝返ればいいだけの話だよ」
のび太「うん、わかった……」

使番「申し上げます。出来杉殿の陣から舞殿が参られました」
のび太「うわぁ~出来杉からも来たぁ~あ」
ドラえもん「言わんこっちゃない。君が優柔不断だから」
のび太「ぼくはどうしたらいいんだよお~」
ドラえもん「はぁ、ドラミに代わって貰いたいよ」

猪乃助「わが主は野比様がいつ約束を果たされるのかといたく気にしてござる。ジャイアン様のご機嫌を損ねておると」
のび太「え、いや、その」
兵庫「むっ、そこにおるのは骨川の家臣ではないか!野比様っ、よもや返り忠のご所存かっ!」
のび太「ち、違うよ。たまたま遊びにきて」
ドラえもん「ダメだこりゃ」

猪乃助「やはりまだお心を決めておられなかったのですな」
のび太「いやその」
兵庫「野比様っ、はようそやつを追い出しなされ!」
のび太「いやその」
ドラえもん(はぁ~)「のび太くん、ちょっと」

のび太「ドラえも~ん……」
ドラえもん「まあまあ落ち着いて」
のび太「落ち着けないよ!双方から脅されてんだよ!」
ドラえもん「あいつらはどっちも君に味方して欲しくて必死なんだよ。君があたふたしたら舐められちゃう」
のび太「ぼくに味方して欲しくて必死……」

ドラえもん「そう、だからね……てあれ、ちょっと、まだ話は終わってないよ」
のび太「ねえねえ君たち」
猪乃助&兵庫「は?」
のび太「そんなにぼくに味方して欲しい?ねえ?ねえ?」
猪乃助「そ、それは……」
兵庫「もちろん」
のび太「じゃあさあ~ちょっとぼくの言うこと聞いてくれるかな~」
ドラえもん(いかん、バカが調子に乗り始めた)

のび太「じゃあ~まずイノちゃん!」
猪乃助「い、猪乃ちゃん!?」
のび太「そう、イノちゃんはね3べん回ってワンて言って」
猪乃助「な、何ですと……」
のび太「そんでマイマイは~」
兵庫「舞舞!?」
のび太「猿の真似でもしてもらおうかな、むふふ」

ドドーン
重忠「むっ、近いぞ」
ジャイアン「んーっ!くっそう、くっそう。おい、狼煙は!!」
清長「さっきから上げ通しです」
ジャイアン「ぐわあああ!!!のび太ーッ!!のび太ーッ!!」
重忠「殿、殿、お気を確かに!」

猪乃助「ウ~ワン!ワンワン!」
兵庫「ウキーッキキキッ」
のび太「ギャハハ。いいぞーもっとやれ~あはは」
ドラえもん「……」

左近「殿、段々フランキの効果も薄れて参りましたぞ」
出来杉「音はデカいけど破壊力はそれほどでもないからね。敵も気付き始めたんだな……兵庫はまだ帰って来ない?」
左近「はい」
出来杉「ふん、ま、あの兵庫のことだ。今頃のび太を締め上げて号令を出させるよう仕向けていることだろう」

のび太「マイマイ、そんなとこじゃダメ。もっと上まで登って!あの枝だよ、あれあれ」
兵庫「ウッウキー……」
のび太「イノちゃん、まだおしっこ出ないの?あと12本に引っ掛けないと縄張りが完成しないよ。急いで」
猪乃助「ガルル……」
ドラえもん「……」

ジャイアン「のび太ーッ!!のび太ーッ!!!のび……」
清長「いかん、泡を吹き始めた」
重忠「こうなったらあの人を連れて来るしかない……」
清長「……うむ。それしかないな」
重忠「前線に使いを送れーっ!」
清長「ジャイアンに過ぎたるものが二つあり。唐の兜に……」

のび太「関白だーれだ?あっ、またぼくぅ~?参ったなぁ。やっぱ持ってんだねエヘヘ」
猪乃助&兵庫「……」
のび太「じゃあねぇ~1番がぁ~2番とぉ~チュウする!」
猪乃助「ち、ちゅうなど」
兵庫「そ、それだけはご勘弁を」
のび太「だ~め!あと10秒!9、8、7……」
ドラえもん「……」

母ちゃん「こらっ、剛!何へばってんだい!!」
ジャイアン「あっ、母ちゃん!!」
母ちゃん「戦に勝って天下人になるんじゃないのかい!」
ジャイアン「でも、のび太が……」
母ちゃん「バカっ」
ベチン
ジャイアン「いでーっ」

ドラえもん「の・・・のび太くん!ダメだっ!!」

のび太「もう我慢はやめたんだ、ふんっ!!」 

のび太「ああっ、もうダメッ!!はうあああーーーーっっっ!!!
ぁあ…うんこ出るっ、うんこ出ますうっ!!
ブリイッ!ブボッ!ブリブリブリィィィィッッッッ!!!!
いやぁぁっ!あたし、こんなにいっぱいうんこ出してるゥゥッ!
ぶびびびびびびびぃぃぃぃぃぃぃっっっっ!!!!ボトボトボトォォッッ!!!
いやああああっっっ!!見ないで、お願いぃぃぃっっっ!!!
いやぁぁっ!あたし、こんなにいっぱいうんこ出してるゥゥッ!
ぶびびびびびびびぃぃぃぃぃぃぃっっっっ!!!!ボトボトボトォォッッ!!!
ぁあ…うんこ出るっ、うんこ出ますうっ!!
ビッ、ブリュッ、ブリュブリュブリュゥゥゥーーーーーッッッ!!!
いやああああっっっ!!見ないで、お願いぃぃぃっっっ!!!
ブジュッ!ジャアアアアーーーーーーッッッ…ブシャッ!
ブババババババアアアアアアッッッッ!!!!
んはああーーーーっっっ!!!アッ、アアッ、うんこァァァァァァ!!!
ムリムリイッッ!!ブチュブチュッッ、ミチミチミチィィッッ!!!
おおっ!うんこァ!!あっ、ああっ、うんこぁぁ!!!うんこ見てぇっ」

母ちゃん「店番サボって戦支度してるの見つかった時あんた何て言った?必ず天下取って帰って来るからって言っただろ!」
ジャイアン「母ちゃん……」
母ちゃん「あんたの思うようにやりな。ダメだったら戻って店番やりゃいいじゃないか。さあ、もいっちょ踏ん張って見せな!」
ジャイアン「うんっ」

ジャイアン「よーし!」
重忠「おお、殿が見違えるように」
ジャイアン「半蔵を呼べっ」
清長「はっ」
ジャイアン「のび太め、目に物見せてやっからな」

のび太「ぶぶーはずれ。ドラえもんはネコ型ロボットでした~。はい脱いで」
兵庫「くっ」
のび太「マイマイはもう褌一枚か~あんま頭良くないんだね」
兵庫「……何じゃ猪乃助、そんな目でこっちを見るな!」
猪乃助「風が冷たかろう」
兵庫「よせっ、よせと言うに!」
ドラえもん「……」

半蔵「お呼びでございますか」
ジャイアン「おう半蔵、あれを持って来い」
半蔵「は、あ、あれをでございますか!?」
ジャイアン「そうだ。さっさと持って来い!」
半蔵「しかしあれは」
ジャイアン「うっせー!つべこべ言わねえでとっとと持って来いったら持って来い!!」
半蔵「は、ははー」

のび太「ちょっと、ダメだよ、ぼくそっちのけで取っ組み合ったりしちゃ。ん?何か違うね。もしかしてじゃれ合ってる?」
ドラえもん「……」

半蔵「殿、これに」
ジャイアン「おう、これこれ。久しぶりだが手にしっくり馴染むぜ」
清長「とっ、殿、それはまさか」
ジャイアン「おう、そのまさかよ」
重忠「そ、それだけはおやめくだされ!兵が、兵が死にまする!!死に絶えまする!!!」
ジャイアン「やかましい!のび太の目を覚まさせてやるッ!」
清長「永久に覚めなくなるのではあるまいか」

ジャイアン「あーゴホンゴホン……行くぞ」
清長「万一の用心に兵に耳栓を携帯させておいて助かったな」
重忠「されど十分に行き渡ってるとは言い難い。一刻も早くのび太が動くことを期待するしか」

ジャイアン「おぅれぃはジャイア~ン、な~いだ~いじ~ん>>>>>>>>♪」

ボエ~ッ

のび太「ギャハーッ」
猪乃助「ぐえええっ」
兵庫「た、たすかギャーッ」
ドラえもん「ぎえーっ」

ボエ~ッ

出来杉「ひぃやあああああッ」
左近「ぐ、ぐはぁ」

ビキビキッ(←フランキ砲にひびが入る音)

ボエ…ッ

しずか「うっ」
秀頼「かあさま?」
しずか「何か今とてつもなく不吉な予感がしたわ。近い将来私に身の毛もよだつ悲劇が襲いかかってくるような」
秀頼「かあさまこわい」

ボエ~ッ

のび太「し、死ぬぅ」
ドラえもん「のび太くん、早く、早く号令を出すんだ!でないと全滅するぞ!!」
のび太「う、うん、かかれーっ!」
ドラえもん「行先、行先」
のび太「あ、敵はせ、西軍!西軍だよ!大谷の陣へ突っ込めえ~」

ジャイアン「あったまでっかで~か>>>>>>>♪だっけどぴかぴ~か>>>>>>♪」
清長「と、殿、殿っ!」
ジャイアン「そ~れがど~した……ん?」
重忠「のび太勢が動き出しておりまする!」
ジャイアン「どっちに?」
清長「西軍大谷刑部の陣へ向かっております!」
ジャイアン「そうか!のび太め、とうとう腰を上げたか!よ~し、全軍に突撃を命じろ!西軍を一気に潰すぞ!」
清長&重忠「御意!」

兵庫「くっ、糞っ!ここまでしたのに!ひどいっ!ひどいわっ!覚えておいでっ!!」
猪乃助「おい兵庫、褌を忘れておるぞ!」
ドラえもん「やれやれ、これで何とか御家を潰さずに済んだか。……のび太くん?ありゃりゃ、ショックで気絶してるよ。おしっこまで漏らして」

左近「殿、のび太隊が大谷隊の方へ攻め下っておりまする!」
出来杉「……ッ」
使番「申し上げます。大谷様よりの書状が届きましてございます」
出来杉「……松尾山麓の4隊、赤座・脇坂・小川・朽木の各隊ものび太に呼応して寝返ったと。スネ夫の工作らしい」
左近「何と……」

出来杉「ぼくは逃げるぞ。こんなところで死んでたまるか。左近、あとは頼むぞ」
左近「御意」
出来杉「ぼくほどの人材がこんなところで死んでたまるか。死ぬはずがない。死ぬはずがないんだ……」

ジャイアン「ガハハ。殺せ殺せーっ!!!俺様の勝ちだ!!俺様は勝ったんだーっ!!!」




ジャイアン「スネ夫、冷や冷やさせてくれたよな」
スネ夫「ご、ごめんよジャイアン」
ジャイアン「まあとりあえず勝ったからいいけどよ。それとお前大谷の首の在処を知ってるらしいじゃねーか」
スネ夫「ぼくの家来が大谷の家来が首を埋めるところを見たらしいんだけど、他言しないと誓ったらしくてぼくにも教えないんだよ」
ジャイアン「……ふーんなかなか度胸あんじゃねえか。好きだぜそういう骨のある奴」
スネ夫「ほっ」

ジャイアン「おう、のび太」
のび太「や、やあ」
ジャイアン「よく寝返ってくれたなあ。感謝するぜ」
のび太「う、うん。」
ジャイアン「必ずこの報いは受けさせてやるからな。待ってろよ。へへへ」
のび太「ぼ、ぼくとジャイアンは心の友だもんね……へへ」
ジャイアン「……そうか。心の友か」

のび太「ドラえもんドラえもん!」
ドラえもん「どうしたのそんなに興奮して」
のび太「出来杉がとうとう捕まったらしいよ!伊吹山に潜んでたところを田中隊に捕縛されたんだって。
のび太「残念だよねえ。ぼくらも捜したのにさ」
ドラえもん「そう」
のび太「今大津城の門前で晒し者になってるんだって!ねえ、観に行こうよ」

ドラえもん「観に行く?なぜ?」
のび太「なぜって、ジャイアンに楯突いてボロ負けした身の程知らずを笑ってやるんだよ」
ドラえもん「……」
のび太「何たってぼくは西軍にトドメの一撃を食らわした東軍最大のヒーローだからね」
ドラえもん「のび太くん……」

のび太「ドラえもんどうしたの?ノリ悪いよ」
ドラえもん「……君は何も感じないのかい?出来杉は君のせいでこうなったんだぜ?君が寝返ったせいで」
のび太「そ、そうさせたのはドラえもんじゃないか!あんなにぼくに寝返りを進めた癖に!今になって責めるなんてひどいよ!」
ドラえもん「寝返り自体は仕方がないさ。生き延びるためにやらなきゃならなかったことだ」
ドラえもん「しかし落ち目の敵を辱めるなんて人の道に外れたことだ。まして土壇場で寝返ったぼくらなら尚更だ」

のび太「そんなのずるい、ずるいよ!」
ドラえもん「のび太くん……」
のび太「昨日の敵は今日の友ってことなの?そんなのは奇麗事だ!戦はもっと汚いものだよ。そうだろ」
ドラえもん「戦はもう終わったんだよ」
のび太「いいやまだ終わってない!ぼくはまだ敵としての出来杉を観ていない。しっかりこの目に焼き付けておきたいんだ」
のび太「ぼくが、ぼくが裏切った男の姿を」
ドラえもん(笑ってやるとか言ってたクセに)

のび太「そんな訳でやってきました大津城!wktkするねーっ」
ドラえもん「……」
のび太「さーて、出来杉はどこかな~と。あっ!いたっ!」
ドラえもん「あんな姿に……痛ましい」
のび太「うひひひひ……ぼくが目の前に出て行ったらあいつびっくりするだろうなあ。おしっこ漏らしちゃうかもw」
ドラえもん「……」

のび太「どーれ。まずは物陰から観察っと。にひひ」
ドラえもん「……」
のび太「そーっとそーっと……」
出来杉「のび太かっ!」
のび太「ひっ」
出来杉「こっちへ来い!裏切り者めがっ!」

のび太「ドラえも~ん、た、助けて」
ドラえもん「何言ってんだい。君が来たがったんじゃないか。ほら、好きなだけ観てきなよ。自分が裏切った男の姿を」
出来杉「さっさと出て来いっ!」
のび太「あわあわ」

ドラえもん「ほら、行けったら」
のび太「うわっ」
出来杉「貴様あんな真似をしておいてよくものこのこぼくの前に出てこれたな!」
のび太「ぼ、ぼくは」
出来杉「一度は太閤の殿下の養子となった身で豊臣家に仇なすとは見下げ果てた愚か者よ!」
のび太「な、何を言う。ぼくは戦に勝ったんだぞ。お前は負けたじゃないか。そしてそんな惨めな格好して」

出来杉「ふはは。ふはははっ」
のび太「何がおかしいんだ!」
出来杉「戦に勝っただと?本気でそう思っているのか」
のび太「ど、どういう意味だ」
出来杉「お前が勝者だなどと誰が認めるものか」
のび太「何だとっ」

出来杉「裏切り者。それも最後の最後になって寝返ったような薄汚い男を誰が認めるものかと言ってるんだ!」
のび太「ぐ……」
出来杉「生きている限り周囲から指を刺され嘲りの対象となる。大名たちからは爪弾きにされ、誰も仕官しようとしない」
のび太「適当なこと言うな!」
出来杉「ならば本日のぼくとジャイアン及び東軍諸将との面会に、誰かに誘われたか?」
のび太「え、いや……」
出来杉「そういうことだ」

出来杉「他の諸将はもうとっくに城内に入って行ったよ」
のび太「そんな……」
出来杉「この羽織に気付かなかったかい?罪人には不釣り合いだろ?」
のび太「そう言えば……」
出来杉「これはね、スネ夫がくれたんだよ。労いの言葉と一緒にね」
のび太「スネ夫が?あいつは散々寝返り工作して……」

出来杉「そうか、お前のところにも来たのか」
のび太「……」
出来杉「そんなスネ夫ですら戦が終わればこれだけの配慮を見せる。これが武人だよ。お前には思いも及ばないだろうがね」
のび太「く、くそっ。そもそもお前がしずちゃんと……」
出来杉「しずちゃん!?貴様たかが女子のために豊家を裏切ったのか!呆れ果てた馬鹿者だ。もう話したくもない。言ってしまえ」

出来杉「貴様の暗愚ぶり、殿下にはあの世でしかと伝えておく」
のび太「……ッ」
ドラえもん「」

のび太「ドラえもん」
ドラえもん「何だい」
のび太「誰もぼくと目を合わせてくれないんだ。中には露骨に顔をしかめる奴もいて……」
ドラえもん「出来杉の言った通りだったね」
のび太「……」
ドラえもん「出来杉との対面が最後のチャンスだったんだよ」
のび太「え?」
ドラえもん「あの時立派な態度で臨んでいれば諸将は君を見直したかも知れない。でも君は恥の上塗りをした」

のび太「何で言ってくれなかったんだよ!」
ドラえもん「あの時言って素直に聞いたかい?」
のび太「……」
ドラえもん「……今日は大坂城で秀頼様に挨拶するんだろう?」
のび太「そうだ!ついにしずちゃんに会えるんだ!」
ドラえもん「良かったね」

ドラえもん「お帰り。どうだった?」
のび太「しずちゃんもぼくを避けるんだ。ジャイアンやスネ夫たちには労いの言葉をかけたのにぼくの前は素通りして」
ドラえもん「そうか」
のび太「きっと照れてるんだよ。ぼくの二の丸へ続く抜け道を知ってるんだ」
ドラえもん「……湯殿を覗くための道だね?」
のび太「へへ……今夜会いに行ってくるよ」

しずか「きゃーっ!のび太さんのエッチ!」
のび太「えへえへ、しずちゃーん。じゃなかった、ぼく会いに来たんだよ!しずちゃんに言いたいこ」
しずか「有り得ない」
のび太「早い。早いよしずちゃん」
しずか「私貴方を恨んでるわ。すごく、すごく恨んでる」
のび太「えっ!?どどうして??」

しずか「貴方が寝返りさえしなければ、出来杉さんが勝っていた。私は今頃出来杉さんの腕の中に……」
のび太「えっ、じゃあしずちゃんは出来杉と……」
しずか「当たり前じゃないの!とっくの昔に通じ合った仲だったのよ」
のび太「そんな」
しずか「あの人が帰ってくると信じて待っていたのに……帰ってきたのは剛さんだった。あのがさつで醜いジャイアン……」
のび太「ぼくがいるじゃないか!」

しずか「有り得ないって言ったでしょ!」
のび太「だっていくらなんでもジャイアンなんかよりは」
しずか「貴方には人望がないわ。見苦しい寝返りのお陰で評価は地に堕ちている」
のび太「うう……だからって」
しずか「私が何のために湯浴みをしていると思うの?私は秀頼のため、豊臣家のため最良の選択をしなければならないのよ!」
のび太「う、うわああああ」
しずか「いやっ、何するの、やめてーー」

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ジャイアン「何だ何だ。おっ、のび太!てめえ!」
のび太「いやジャイアンこれには訳が」
ジャイアン「うっせーこの変態野郎!」

ボカスカ

のび太「し、しずちゃん。た、たしゅけ……」
しずか「のび太さんなんて知らないッ」
ジャイアン「そういやお前には寝返りの褒美をやってなかったっけなあ。しっかり味わわせてやるぜ……」

のび太「ど、ドラえも……ん……」
のび太「誰も……いな……い。真っ暗だ……。どう……して。どこ……に」
のび太「痛い……痛いよ。誰も……ぼくを助けて……くれ……ないん……だ」
のび太「それどころ……か……笑う……んだ。町人やひにんまで……もが」
のび太「そうそう……ぼく……改易……され……ちゃったよ……領地が……なくなっ……ちゃっ……た」

のび太「なんで……こうな……ちゃったんだろ……う。ぼくはただ……かっこいい……武将……になり……た……かっ」

……
……
……

ジリリリリリ……

のび太「はっ」
ドラえもん「汗びっしょりだよ」
のび太「ここは……そうか、もしもしボックス」
ドラえもん「君が大河ドラマにはまって戦国武将になって関ヶ原で戦いたいなんて言うから望みを叶えてやったんじゃないか」
ドラえもん「のめり込み過ぎて忘れちゃってたみたいだね。これ欠陥商品かも」
のび太「それでみんなも誘ったら面白そうだって……」
ドラえもん「でもその顔じゃ期待とは違ったみたいだね」
のび太「うん、ドラえもん、ぼく、現代に生まれて本当に幸せなんだって思うよ」

永い間ご愛読有難うございました。

支援して下さった皆様、
叩きながらも保守に協力して下さった皆様、
する必要のないNG登録までして構って下さった皆様、
そして何よりこのスレを立てて前半を盛り上げて下さったID:WCHBNoWl0様、

何とか完結まで漕ぎ着けられたのは皆様の叱咤激励のお陰です。

本当に有難うございました。

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