照「咲にどうしても会わせたい子がいてね」(337)

照「ほら大星、挨拶して」

淡(この人が妹さん……?えっと、高校生……中学生?かな)

照「早く」

淡「あの、どうも、大星淡です」

咲「あ、はい……宮永咲です。は、はじめまして」

照「それだけ?」

淡「……え?」

照「名前だけじゃだめでしょ?もっとちゃんと挨拶して」ニコニコ

淡(……なんでこんなことに)ハァ

~数時間前~東京駅~

照「……遅い」

淡「無茶、言わないでくださいよ……ちゃんと時間通りじゃないですか」

照「言い訳を聞くつもりはない、早く行くよ」スタスタ

淡「言い訳……ってどこ行くんですか!まだ他の皆来てませんよ!?」

照「他?」

淡「私たちだけじゃないですか」

照「そうだよ」

淡「そうって、待たなくていいんですか?」

照「誰を待つつもり?」

淡「麻雀部の皆に決まってるじゃないですか」

照「なんで?」

淡「なんでって、遠征行くんですよね?」

照「あぁ、そういうことね。行くのは私と大星だけ」

淡「……は?」

照「だからこれで全員。分かったなら早く行こう」

淡「……帰ります」

照「切符買ってあるんだけど?」

淡「それがどうかしました?」

照「新幹線往復二人分、3万5千円、無駄にするつもり?」

淡「いや、それは、その……」

照「大星が埋め合わせてくれるのか?それなら私は何も言わない、好きにすればいい」

淡「あの……、すみませんでした」

照「じゃあ、気を取り直して行こうか」

淡「……はい」

照「今日はね、大星も絶対に満足する、そんな人に会いに行くんだ」

淡「はぁ、そうですか」

照「そう、IH前にいい刺激になればいいと思ってね」

淡「それは、まあ、ありがとうございます」

淡(満足する相手、か。北大阪の全国2位とかかな……うん、だったら期待できるかも)

淡「でもなんで私と先輩だけなんですか?そんな人に会うならやっぱり皆で行ったほうが部全体の向上になりませんか?」

照「迷惑がかかるから。本当ならIH後の予定だったけどね。無理を言って早めてもらった」

淡「……まさか、私のために?」

照「それもあるけど、私のためというのも大きい。3連覇もかかっている。IHに向けて気合を高めたいから」キリッ

淡(先輩、本気……?先輩がここまで言うってことは、本当に凄い人に会えるのかもしれない)

淡(話の内容から同じ高校生って感じじゃないし、……プロ、かな?もしかして小鍛冶プロ、とか……)

淡「あの、誰に会いに行くんですか?」

照「それは、着いてからね」

淡「気になるじゃないですか」

照「それはそうと、はいこれ」サッ

淡「なんですかこれ。本?……短編集ですか?」

照「そう。その人、本が好きだから。付け焼刃だけど、車内で読んでおくといい。会話の良いきっかけになる」

淡「あ、はい」

淡(そこまでするんだ、一体どんな人なんだろう……う、なんか緊張するかも……)

~新幹線内~

淡「あの、これ、長野行きですよね?」

照「そうだよ」

淡(長野って……有名な人、いたかな……うーん、出てこない)

照「考え込まなくても2時間もすれば会える。本に集中して」

淡「あ、はい。すみません……って、何してるんですか?」

照「レンズの手入れ。いい写真とりたいから」

淡「写真……先輩って写真好きでしたっけ?」

照「……長野には、好きな景色がある、それだけだけど?」

淡「いえ、少し気になったもので、特に深い意味は……」

照「そう」

~長野駅~

淡「着きましたね、やはり東京よりは涼しくていい感じですよ」

照「在来線に乗り換える。もう少し電車には乗るから」

淡「あ、はい。わかりました」

照「本はどうだった?」

淡「うーん、そこそこ面白いとは思うんですけど、私には少し難しかったです」

照「すぐに慣れる。これを機に本に興味を持つといい」

淡「あー……考えておきます」

照「少し電話してくる、待ってて」

咲「もしもし、宮永です」

照「あ、咲?いま長野駅着いたよー」

咲「え……お姉ちゃん!?早くない?まだ八時過ぎだよ?」

照「うん、始発できたからね」

咲「十時に長野駅じゃ……あれ?私勘違いしてた?」

照「大丈夫、家近くの駅まで行くからね。そこで落ち合おう」

咲「うん……ごめんね、急いで行くから」

照「無理しないようにね。あ、あと咲に会わせたい子も連れてきてるんだ」

咲「え、お姉ちゃん一人じゃないの?」

照「うん、楽しみにしててね。それじゃあ、また後で」ピッ

照「お持たせ」

淡「終わりました?」

照「ああ、少し急ごう。待たせると悪いから」

淡「もう少しで会えるんですよね。少し緊張してきましたよ」

照「そう気構えなくていい」

淡「でも有名な人なんですよね?」

照「有名?まだそんなことないと思うけど」

淡「またそんなこと言って。ところで一体誰なんですか?そろそろ教えてくれてもいいじゃないですか」

照「そうか。もう長野着いたし、教えてもいいかな。あ、この電車ね」

車掌「ドア閉まりまーす」プシュー、ガタンゴトン

淡「本当ですか?誰なんです?」

照「宮永咲。私の、妹だよ」

淡「……?」

照「聞こえなかった?私の妹に会いに行くんだよ」

淡「すみません。少し、少しだけ質問させてもらっていいですか?」

照「かまわないよ」

淡「えぇっと……、妹さん?」

照「そうだよ」

淡「先輩、妹はいない、みたいなこと言っていませんでしたか?」

照「あぁあれね、あれは私、東京では雀士モードだから」

淡「はぁ……」

照「やっぱりね、プロを見据えた私としては、公私混同はしないように気をつけていきたいから」

淡「へぇ……」

照「でもね、長野に帰った私は違うよ。お姉ちゃんモードだから」

淡「あーそうですか……」イラッ

淡「……で、これが一番今気になっているんですが」

照「何?」

淡「先輩はなんで私を騙すんですか?」

照「騙す?」

淡「私も喜ぶような人に会わせる、みたいなこと言ってたじゃないですか」

照「そうだよ」

淡「で、なんで先輩の妹さんに会わなくちゃいけないんですか?」

照「なんでって……咲に会えるんだよ?」

淡「なんですかその不思議そうな表情。私、先輩の家族とか心底どうでもいいんですけど?」イラッ

照「そっか……大星はまだ知らなかったんだね。可哀想に……」

淡「は?」ムカッ

淡「何なんですかその言い草?馬鹿にしてます?」

照「落ち着いて、悪かった、私が悪かったよ」

淡「本当に悪いと思ってますか?」

照「うん、ごめんね。でも本当なんだよ。会ったら絶対ビックリするよ」

淡「はいはいそうですか」

照「信じてない」

淡「今更私の心証をよく出来ると思わないでくださいね」

照「出来るよ。咲に会わせてあげるんだから、むしろ光栄に思ってほしいくらい」キリッ

淡(この人うっとおしいなぁ……)

照「大星の前ではいつも雀士モードだったから、大星は咲の魅力を知らない」

淡「はいはい」

照「でもね、今の私なら一晩中でも大星に語れる。というか語りたい。むしろ咲を知らないなんて人生の汚点だよ」

淡「やめてください」

照「ああそうだね、もう数分で実際に会えるんだからね。私が幾億の言葉を紡ぐよりよっぽど効果的だ」

淡「はいはい」

照「本音を言うとね、咲を誰かに会わせることに抵抗があるんだ。だって咲を前に自制できるなんて私くらいだからね」

淡(シスコンって実際に目の当たりにするとここまで面倒くさいなんて……)

照「だけど、大星は特別なんだよ?特例中の特例。そこら辺、理解してほしいな」

淡「はい?」

淡(何言ってるんだこの人?)

照「大星はね、咲に並びうる唯一の素材なんだよ」ニコッ

淡「……っ!!」ゾワゾワッ

車掌「○○駅~ドアが開きまーす」プシュー

照「あ、着いたね。降りようか」スッ

淡「ひ……っ!」

淡(やめて手をとらないでやめてくださいお願いしますごめんなさい勘弁してください)

照「咲はもう来てるかな?」キョロキョロ

照「あ、いた。咲ーー!お姉ちゃんだよー!!」ブンブン

淡(よかった離してくれた……でも大声出さないでほしい)

咲「おはようお姉ちゃん」

照「ごめんね、予定より早く着いちゃった。咲にどうしても会わせたい子がいてね」

咲「ううん、大丈夫だよ。それより会わせたい人って……?」

照「ほら大星、挨拶して」

淡(この人が妹さん……?えっと、高校生……中学生?かな)

照「早く」

淡「あの、どうも、大星淡です」ペコリ

咲「あ、はい……宮永咲です。は、はじめまして」ペコリ

照「それだけ?」

淡「……え?」

照「名前だけじゃだめでしょ?もっとちゃんと挨拶して」ニコニコ

淡(……なんでこんなことに)ハァ

淡「あの…私は、お姉さんとは同じ高校に通わせてもらっていて、えっと、白糸台麻雀部の一年生です」

咲「あ、そうなんですか?私も麻雀部員なんです。高校は清澄高校です」

淡(高校生なんだ……清澄?清澄ってたしか、IHで長野代表の……咲、宮永咲ってまさか)

照「そうなんだよ。それに大星も咲と一緒で、麻雀が上手なんだ。なんと一年生で白糸台の大将なんだよ」ドヤァ

淡(麻雀が強いってことは、やっぱりこの子があの清澄の大将なんだ。へぇ、こんな人なんだ)

咲「一年生からあの白糸台でレギュラーなんてすごいです!」

淡「咲さんも似たようなものじゃないですか。県予選突破おめでとうございます」

咲「あ、ありがとうございます!」

照「もう、二人とも改まっちゃって。同い年なんだからもっとフランクに、ね?」

咲「お姉ちゃん、でも大星さんとは初対面だし……」

照「大丈夫だよ。大星はできた子なんだから。ね、大星」ニコニコ

淡(なんという不気味なテンション……機嫌をとっても損ねても後が怖い……)

淡「えーっと、なんというか、その……」ドモリドモリ

照「大星?」

咲「……あ、そういえば、お姉ちゃんが知り合いの人を連れてくるなんて初めてだね」

照「えー、やっぱり気になっちゃう?」エヘヘ

咲「気になるよー。それに急に予定を早めて帰ってくるんだもん。びっくりしちゃって」

照「うーん。言っちゃおっかなー、まだ早い気もするけどなー」

淡(先輩の気が逸れた……咲さん、空気を読んでくれた?姉と違って本当にいい子だったり……?)

淡「あ、私も気になりますよ。何も言わずに長野まで連れられて」

照「よーし、じゃあちょっと早いけど、ここで発表しちゃいます」ニコニコ

照「実は……、咲と大星にはサプライズプレゼントがあります!」ワーパチパチ

咲「へ、へーそうなんだー!」アセアセ

淡(……若干咲さんが焦ってるような。いや、私も嫌な予感しかしていないんだけど)

照「なんとー……二人にはー……」ニヤニヤ

淡(どうか少しでもまともな答えでありますように……)

照「姉妹が増えまーす!!!」イェーイ、ドンドンパフパフ

咲、淡「……は?」

照「咲には淡お姉ちゃんが!!」

咲、淡「……は?」

照「淡にはなんと、照お姉ちゃんと咲が進呈されます!二倍!!これはすごい!うらやましい!」ヒューヒュー

咲、淡「……はぁ?」

咲「お、お姉ちゃん!?何、急に何言ってるの!?」

照「どう?うれしいでしょ?お姉ちゃんが増えたよ!」ニコニコ

咲「増えたって……ふ、増やせないでしょ!?」

照「……?今増えたよ?」

淡「いやいやいやいや!おかしいでしょう!?私、いますから!東京に家族いますから!」

咲「そーだよお姉ちゃん!大星さん困ってるよ!?」

照「もー、淡は頭が固いんだからー」プンプン

淡「固くないです!先輩の頭がゲル状なだけですよ!あとさっきから淡とか、なんで下の名前なんですか!気持ち悪いんですけど!」

照「え?妹を苗字で呼ぶほうが気持ち悪いでしょ?」

淡「誰が!いつ!あんたの妹になったって!?」

照「淡が、今、ここで」

淡「」(駄目だこの人……)

咲「お姉ちゃん……さすがに、やりすぎかなぁ……って」

照「そうかな?」

咲「そうだよ……私、お姉ちゃんの言ってること、全然わかんない。そんなことして、大星さんの家族も、きっと悲しむと思う」

照「あっ、勘違いだよ、咲。なにも本当に姉妹になったってわけじゃないよ?」

咲「どういうこと?」

照「仮だよ、仮。あくまでもね。何も本当に戸籍を移したとかそんなんじゃないよ?」

咲「あぁ……うん。そうなんだ」ヘー

淡「だとしてもです。姉妹とか何言ってるんですか?頭打ちましたか?」

照「もう、淡は厳しいなー」エヘヘ

照「ほら、電車でも言ったでしょ?長野にいる時だけ、姉妹モードって、ね」ニコニコ

淡「拒否、出来るんですよね?」

照「え?」

淡「私、そんな話聞いてません、拒否しますよ」

照「え……?」ウルウル

咲は良識人か
咲×淡くるでこれ

咲「あの……」チョイチョイ

淡「何ですか咲さん」

咲「あの……、本当に申し訳ありませんが、少しだけ、お姉ちゃんのわがまま聞いてもらって下さいませんか?」ヒソヒソ

淡「いや、咲さん、これはおかしいですって。何ですかいきなり、姉妹になるだなんて」ヒソヒソ

咲「私も、とんでもないことだとは思います。でも、ここだけはお願いできませんでしょうか」ヒソヒソ

淡「そうは言われても……」ヒソヒソ

咲「お願いします。お姉ちゃん、もう泣きそうで、火がついたら本当に止められないんです」ヒソヒソ

淡「……止められない?」ヒソヒソ

咲「あの……、暴れちゃって……その、精神的にも、結構長い間荒れちゃうんです」ヒソヒソ

淡「そんな……たかがあんな無茶なわがまま断っただけでそこまでいきます?」ヒソヒソ

咲「……3連覇かけたIHの前で、少し不安定なのかもしれません。特に、今はお姉ちゃんモードですから」ヒソヒソ

淡「でも、なぁ……」ヒソヒソ

咲「お願いします!今度埋め合わせはいたしますので」ヒソヒソ

淡「あーあーあーもう!わかりました、わかりましたよ。IHに影響でたら私にも高校にも迷惑かかりますから」ヒソヒソ

咲「あ、ありがとうございます!」ヒソヒソ
淡「いいよいいよ。咲さんも、苦労してるんですね」ヒソヒソ

この前の三尋木プロとこの3人の勝負書いてた人か

照「……う、……」ウルウル

淡「長野にいる間だけですからね」ハァ

照「え……?」

淡「わかりましたよ。長野にいる間は、姉妹ということで」

照「いいの?」パァ

淡「いいのもなにも、先輩が言い出したことじゃないですか」

照「咲は!?咲はどう思う!?お姉ちゃんが増えるよ!?」

咲「う、うん。とってもいいと思うなぁ」

照「だよねーそうだよねー」ウンウン

咲「ちょっと急だったから、びっくりしちゃったよ」

照「大丈夫だよ。お姉ちゃん、全然怒ってないから」

淡「あの、先輩、それでこれからどうするんですか?この後の予定とか全然聞いていませんけど」

照「こら。私を呼ぶときは、お姉ちゃん、でしょ?」ニコニ

淡「」

本編で照が出てきても頭の弱い子にしか見えなくなりそう

>>68
ソレといいこれといい
淡ちゃんが不遇キャラになっていく…

照「ほら、呼んで呼んで。お姉ちゃん、って」ニコニコ

淡(ちょっと甘くしたら直ぐに調子にのって……)イラッ

照「ほーら、お姉ちゃん、待ってますよー?淡が呼んでくれるの待ってますよー?」

淡(あーうざいうざいうざい)チラッ

咲「……」ペコペコ

淡「くっ……ぉ、…姉、さん」ボソッ

照「えっ?えっ?聞こえないよ?」モウイッカイ、モウイッカイ

淡「あーっ!お姉さんお姉さんお姉さん!これで満足ですか!?」イライラ

照「お姉さん、かぁー。うーん……、いや、有りだね!」キリッ

淡(……うっとうしい)

照「うんうん。じゃあ改めて、挨拶しよっか!はい咲」

咲「えっ?えっ?」

照「よろしく淡お姉ちゃん、でしょ?」

咲「えっと……」

咲「……よろしくね、えと、……淡お姉ちゃん」
淡「よろしく、……咲」

照「よし!じゃあ三人で写真とろっか!駅員さーん、ちょっといいですか?」スタスタ

淡「……はぁ」

咲「あの、本当に申し訳ありません!こんなことに付き合っていただいて」

淡「いや、咲さんが悪いわけじゃないよ、たぶんね」

照「ありがとうございます。咲ー、淡ー、写真とってくれるからこっち来てー」ブンブン

咲「はーい」

淡(咲さんはまともであってほしいけど、姉がこんなんだからなぁ、油断はできない)

照「あ、私が真ん中ね。じゃあよろしくお願いします」ハイ、チーズ

照「うん。良い絵が取れてる。ありがとうございました」

照「じゃあ次は私が取るから、咲と淡で並んでね。はーい笑って笑ってー」パシャ

照「あーもう、予想通りだなぁ。二人ともお似合いだよ。最っ高にかわいい!」キャピキャピ

淡「ところで、そろそろ移動しませんか?何時までも駅にいるわけにも」

照「あ、そうだね。じゃあ行こっか」

淡「えっと、どこに?」

照「もちろん家だよ。荷物を置いて、ちょっと休憩しよう。移動で疲れたでしょ」

淡「あ、ご家族の方には説明するんですか?その、姉妹とか」

照「いらない」

淡「はい?」

照「説明することなんてない」

淡(なんか雰囲気が……そういえば先輩の家族って、これ、地雷踏んだかな)

咲「お父さんは一週間程出張に行ってるんだ。だから、今は家に私だけだから大丈夫だと思う」

淡「あ、そうなの?」

咲「うん。お父さんもお姉ちゃんに会いたがってはいたんだけどね、ちょっと予定が早まっちゃったから」

照「別に、私は会いたくないし」

咲「あ、ごめんねお姉ちゃん」
淡(あー、完全に地雷だなぁ。家庭環境は人格成長に影響を与えるっていうけど……)

照「そんなことよりさ、咲、高校生活はどう?」

咲「とっても楽しいよ。麻雀部に入って、新しい友達もできたんだ」ニコニコ

照「そっか、楽しそうでよかったよ。少し、心配してたんだ」

咲「大丈夫だよ、私、これでももう高校生なんだから」

照「あはは、そうだったね。でも、咲が麻雀部に入ったって聞いたときは驚いたよ」

淡「あれ?そうなんです?みやn……お姉さんの妹なr……咲なら麻雀部に入るのも自然な感じですけど」

照「うん、麻雀はあんまり好きじゃないってい言ってたよね?」

咲「確かに、そう思ってたけど、高校に入って色々あって、また、麻雀を打ちたいなって思ったの」

淡「……ということは、高校に入って久しぶりに麻雀を打ったってこと?」

咲「そうなる、かな。中学生の頃は全然牌に触っていなかったから」

淡(それであの牌譜か……確かに面白そうな子だなぁ)

照「色々あった、かぁ。ちょっとお姉ちゃん気になっちゃうかな」

咲「そんな、たいしたことじゃないよ。あ、もう見えてきた。淡お姉ちゃん、あそこの家だよ」

淡「あ、よかった。意外と駅から近いんだね」

咲「えへへ、結構便利なんだよ」ガチャガチャ

咲「どうぞー」

淡「お邪魔しまーす」

照「そんな他人行儀に。ただいま、でいいんだよ」

淡(いきなりそんなアットホームな気分にはなれませんって)

咲「あ、じゃあお姉ちゃんたちは居間で待っててくれる?今お茶を淹れてくるから」タッタッタッ

淡「そう?ありがとうね」

照「居間はこっちだよ」ガチャリ

淡「へぇー、広いですねー。こんなに広い部屋、東京じゃなかなかお目にかかれませんよ」キョロキョロ

照「荷物は、とりあえずその辺に置いておこうか」

淡(あ、雀卓発見。ちょっと古めだけど、一応全自動はあるんだ)

咲「お待たせー。麦茶だけどいいかな?」カラン

淡「大丈夫大丈夫」

照「んー、どれにしようかなー……」ウーン

咲「どれもおんなじだよお姉ちゃん」

照「違うよー、だって咲の淹れたお茶だよ?妥協せずに選び抜きたいのは当然じゃない」キリッ
淡(しかし本当に、東京でのキャラと全く違うなぁ)

>>84
なぜそんな奴がいて優勝どころか準優勝もできないんだ・・・

淡(その後は、長野に来た意味がないくらい、普通に過ごした)

淡(ファミレスで昼食をとって)

~「はい、あーんしよ!あーん!」~

淡(ビデオを借りて見て)

~「麻雀ものといったら雀鬼だよね」~

淡(晩御飯の材料を買って、夏なのに鍋を囲んだ)

~「鍋やろうよ!鍋!絶対に鍋がいい」~

淡(一緒にお風呂は断固反対して、結局咲さん、私、先輩の順になった)

~「あーあ、一緒に入りたかったのになー」~

淡(しかし、今日の先輩は本当に……何度貴女誰ですかと聞きたくなったことか)

淡(テンションは高いし、やたらスキンシップしようとしてくるし)

淡「お姉ちゃんモード、ね……なんだかなぁ」スタスタ

淡「あ、お風呂頂いたよ」ガチャリ

>>86
たしか臨海とあたって副将でダヴァンが他校トバして
衣の出番なく終わった
ちなみにダヴァンは冷やしトーカに怖気づいて他校を狙った

照「ん、早かったね」サワサワ

淡「……何、してるんです」

照「咲がね、本を読みやすいようにしてあげようって」サワサワ

淡「後ろから抱き抱えて身体を弄ることが?」

照「落ち着くと思って、良かったら淡にも」

淡「早く入ってきたらどうです?」

照「んー、淡は照れ屋さんだなぁ」スタスタ

淡(……案外素直に出てった……まぁそれならそれでいいんだけど)

淡「咲さん、あんなことされて大丈夫なんですか?」

咲「うーん、あの程度は慣れてるから。それに、下手に刺激するよりずっと安全なんだよ?」

淡「ちなみに、刺激すると?」

咲「……あまり口にしたくない感じになるかな」

淡「……そうなんだ」

咲「……うん」

淡「それより、ちょっと居間のほうに行かない?」

咲「?いいよ」

淡「咲さん、団体の大将なんだっけ?」

咲「うん。大将って器じゃないかもしれないけど、点数計算くらいならそれなりに得意、だからかな」

淡「試合の牌譜、見たよ。面白い試合だった」

咲「あ、そうなんだ。大星さんって凄いね。他校の研究もしっかりしてるんだ」

淡「そんなんじゃないよ。代表校の大将しか見てないし、それも斜め読みだしね」

咲「そう?でも面白いとか、覚えていてくれてるんだよね?やっぱり凄いよ」

淡「ぱっと見て、興味が湧いた試合だけはちゃんと見てるよ。長野はその中の一つ」

咲「そっかー、他にはどんなところがあるの?」

淡「知りたい?」

咲「うん。私、強い人と沢山麻雀が打ちたいんだ」

淡「へぇー、強い人と、ね」

咲「うん!県予選決勝のときもね、強い人たちがいっぱいいて、とってもワクワクしたんだよ」

淡「今は……、今はワクワクしない?」

咲「大星さん?」

淡「私はね、今ワクワクしてるよ。咲さんと打ちたいって思ってる。咲さんはどう?私を見て、ワクワクしない?」

咲「あの、私、大星さんがどんなに強い人なのか、まだよくわかって」

淡「牌譜は見ないタイプなんだっけ?大丈夫だよ、私、とっても強いから」ゴゴゴゴゴ

咲「……凄いよ、大星さん。まだ一局も打ってないのに、こんなに大星さんの力が伝わってくる」

淡「ねぇ、ちょっと遊ばない?ちょうどそこに卓もあるんだし」チラッ

咲「遊ぶって、今二人しかいないよ」

淡「うん。正式にじゃなくてさ、配牌して18巡回すだけの遊び。でもそれなりに楽しいと思うよ」

咲「大丈夫かな……代表校どうしは大会まで打っちゃだめだって」

淡「まさか、大丈夫だよ。こんなのただの遊びなんだから」

咲「そう、だよね。うん、やろうよ!私も大星さんと遊んでみたい」

>>99
冷やしとーかに場の支配されてる中で他校を狙い撃ちで飛ばすとかパネーって本編でも言われてたしダヴァンさんは相当強いはず

遊ぶ(意味深)

>>103
去年までは平凡なルールって言われてるけど
一般のルールと一緒と考えていいんだよね?

淡(さて、県予選決勝で場を手玉に取ったその実力、期待させてもらうよ)

~東一局~7巡目~

咲「……」タンッ

淡(あ、テンパイしたかな。牌譜どおりだと和了牌は嶺上にありそうだけど……じゃあ一応)

淡「カン」パタッ

咲「……」ピクッ

淡(反応した。てことはやっぱりこの嶺上牌の2索がアタリかな。で、こっちの浮いてる生牌の西だけど)タンッ

咲「カン」

淡(うわぁ、本当にカンした)

咲「ツモ、嶺上開花のみです」

淡(また2索きたんだ。それにしても、綺麗に花[オーラ]を背負うなぁ)

淡(見させてもらってばっかりもあれだし、私もいこうかな)グワグワ

~10分後~

淡「ツモ、満貫」

淡(うーん、どうなのかなぁ。確かに強いけど先輩の妹ってほどじゃないなぁ)

咲「凄い。本当に強いよ大星さん」ヒュオオオ

淡(あっ……雰囲気が変わった。もしかして私も様子見されてた?)

咲「もっと打とうよ!私、今とっても楽しいよ」ニコニコ

淡「そうだね、私も楽しくなってきたところだよ」

~10分後~

咲「ツモ、断ヤオ、三暗刻、三槓子、嶺上開花」

淡(……いい、すごくいい。同学年にこんな子がいたなんて……)ゾクゾク

咲「ん、……そろそろお姉ちゃんが出てくるかも」

淡「そう?先輩に見られると流石に厄介そうだからここまでにしとく?」

咲「そうだね、ちょっと残念だけど」

淡「咲さん強いね。大会が楽しみだよ」

咲「うん!」

~浴場~

照(……牌の音が聞こえる)

照(…………駄目だなぁ、淡も咲も……)

照(……)

照(……それにしても、いい湯だなぁ。何時間でも浸かれそう)チャプチャプ

良かった
いつもだと泣かされる淡しかイメージしてなかったから
この2人が仲良くなってって良かった

~就寝前~

照「寝床を決めようと思います」

咲「お布団は一応来客用のが二組と、お姉ちゃん用のが一つあるから十分だとは思うけど」

照「咲の部屋でいいかな。ベッドもあるし、布団二組くらいなら敷けたよね」

淡「あ、私居間で十分ですよ。勝手に敷いて寝ますから」

照「何言ってるの?」

淡「いや、狭いと悪いかなぁって」

照「一人で寝るなんてお姉ちゃんは許しませんよ?」

淡「あー……まあそうですよね」

咲「あっ、じゃあお姉ちゃんがベッド使う?一番下の私だけベッドっていうのも変な感じだし」

照「うーん……」

照「咲のベッドも十分すぎるほど魅力的だけど、布団で密着して寝るのも捨てがたいなぁ」ブツブツ

淡(邪な妄想が聞こえてくる気がする)

淡(私として一番被害が少ないのは、私がベッドに行くか、先輩がベッドに行くか、か)

淡(……案外確率的には悪くないな)

照「ここは皆で一つのベッドを使うっていうのは」

淡「それはない!」

照「えぇー……咲はどう思うの?」

咲「流石に狭いんじゃないかなぁ……ほら、誰かがベッドから落ちたら大変だよ」

照「大丈夫じゃないかなぁ、ちゃんと密着すれば。心配ならお姉ちゃんが抱きかかえてあげr」

淡「ここは公平にジャンケンしましょうよ、ジャンケン。勝った人がベッドということで」

咲「あ、私もそれに賛成かな」

照「……まぁしょうがないかな」

淡「いきますよ、ジャンケン」

照「チョキ」淡「チョキ」咲「グー」

淡(な、なんていうことに……)

照「ということは私と淡が布団か」

咲「いいのかなぁ、私がベッドで。お姉ちゃんたちに変わってもらったほうが」

淡「わ、私ベッドで寝t」

照「そんなこと言っちゃだめだよ。咲は勝ったんだからね。お姉ちゃんたちはなんの不満もないよ、ね?」ギロッ

淡「あ……はい」

淡(なんだろう、凄い迫力)

照「じゃあ後は布団の配置だけど、淡は何か希望がある?」

淡「いえ、特には」

照「なら私がドア側に行くね、淡は奥でいい?」

淡「はぁ、それでいいですけど」

照「何かあってもお姉ちゃんが守ってあげるから」

淡(私はそのお姉ちゃんを一番危険視してるんですけどね)

照「寝床も決まったし、もう寝ちゃおうか。明日は早いからね」

咲「明日は何かあるの?」

照「ピクニックに行くから」

淡「ピクニック?」

照「咲は一度行ったことあると思うけど、高原に行こうと思って」

咲「高原って、あの高原?」

照「うん。サンドイッチでも作ってそこで食べようよ。きっと楽しいよ」ニコニコ

淡「距離があるんですか?私、あまり運動とかは」

照「問題ないよ。小さい頃の咲でも十分行けるところだから。とっても景色がいいんだ。楽しみにしてて」

淡「そうなんですか?」

咲「あんまり有名じゃないけど、とっても凄い景色なんだよ。あそこなら淡お姉ちゃんもきっと気に入ると思う」

淡「へー……なんか、少しワクワクしますね」

照「そうと決まれば、ちゃちゃっと布団敷いて寝ちゃおうか。目覚ましは5時にしとくね」

>サンドイッチでも作って
ん?

照「電気消すよー。豆電球にしとくけどいい?」

淡「了解です」

照「咲もいいよね、じゃあ消すよ」パチン

淡(5時か、とっとと寝ちゃおう)

照「……」ゴソゴソ

淡(……先輩、何かしてるのかな。まあいいや)

咲「……」スースー

照「……」ゴソゴソ、ダキッ

淡「ちょ……っ!!な、何してるんですか!?」

照「静かに、咲が起きちゃうでしょ」

淡「だからって何背中に抱きついてるんですか!?」

照「ちょっとだけ、ちょっとだけだから」

淡「意味わかんないですって!」

照「大丈夫。何もしない、何もしないから」

淡「今してるじゃないですか!?」

照「お願い、抵抗しないで。ね、お願いだから。静かにしてくれたらこれ以上は絶対に何もしないから」

淡(くっ……この変態が)

~回想~

咲「うーん、あの程度は慣れてるから。それに、下手に刺激するよりずっと安全なんだよ?」

淡「ちなみに、刺激すると?」

咲「……あまり口にしたくない感じになるかな」

~回想終わり~

淡(下手に抵抗したら……何をされるかわかったもんじゃない)

淡「……約束ですよ、これ以上何かしたら絶交ですから」

照「約束する。指を懸けてもいいよ」スンスン

淡「嗅ぐのも禁止です」

照「わかった」

淡(やっぱりこの人、どこか異常だ)

>照「ちょっとだけ、ちょっとだけだから」
男「先っちょだけ先っちょだけだから」
とやってるのと同じじゃないですか―

TR「お前の事が好きだったんだよ」

~翌日~

淡「結構歩くじゃないですか」テクテク

照「そんなに歩いてないよ」テクテク

淡「駅からもう三時間くらい歩いてる気がするんですけど」テクテク

咲「たしかもうすぐだよ。あの丘越えたあたりだったっけ?」テクテク

照「丘を越えると見晴らしのいいところにつくんだ」テクテク

淡「ようやくですか。……それにしてもかなり日が射しますね」テクテク

照「ほら、帽子被っててよかったでしょ」テクテク

淡「麦わら帽子なんて生まれて初めて被りましたよ」テクテク

咲「とっても似合ってるよ」テクテク

淡「そ、そう……///」テクテク

照「すっごい可愛い!!」テクテク

淡「はいはい」テクテク

照「あれ?なんか咲と態度違うけど?」テクテク

淡「姉さんの言葉に一々反応なんかしてられないですから」テクテク

照「えぇー……」テクテク

咲「たぶん淡お姉ちゃんは照れてるんだよ」テクテク

淡「咲はなんとも思わないの?朝一からパシャパシャと片っ端から写真とられて」テクテク

咲「うーん、せっかくだし、記念になっていいんじゃないかな?」テクテク

淡「記念ねぇ……白糸台の人には見せないでくださいよ?」テクテク

照「もったいなくて見せられないよ。こんな可愛い淡は私と咲だけが知ってれば十分」テクテク

淡「またすぐ変なことを言って、一言多いんですよ」テクテク

咲「しょうがないよ、照お姉ちゃんは思ったことを口にしちゃうから」テクテク

照「何一つ隠さなくていいからストレスフリーだよ」テクテク

淡(少しは隠してくれたほうがこちらもストレスなく過ごせるんですけどね)

照「あ、もう着くよ」

淡「うわぁ……本当に良い眺めなんですね」

照「でしょ?ここはお気に入りで大切で思い出の場所なんだから」

咲「晴れててよかったね。すっごく遠くまでよく見えるよ!」

淡「凄い……東京じゃこんな景色……日本じゃないみたい」ポカーン

咲「写真とろうよ!お姉ちゃんいいでしょ?」

照「もちろん。そのためのカメラと三脚なんだから。ほら、並んで並んで」

咲「お姉ちゃんは入らないの?」

照「お姉ちゃんは後でね、まずは二人で」

咲「そっか。淡お姉ちゃん、こっちこっち」

淡「あ、うん……」

照「笑って笑って、いくよー、はい」パシャ

あれ?これ実はいい話なんじゃね?

~数分後~

照「見て、花が咲いてる」

咲「あ、本当だ。こっちこっち淡お姉ちゃん」

淡「あー……これがあの?」

咲「そうだよ!」

淡「へー、小さいけど、綺麗なもんだね」

照「あれ?淡に話したことあったっけ?」

淡「昨日咲とm……夜に少し話したんですよ。その時に教えてもらって」

照「へー……ずるいよ咲、私が話したかったのに」ムー

咲「え?ごめんねお姉ちゃん。そんなこと思ってたなんて知らなくて」

照「そんな妹には……こうだ!」コチョコチョ

咲「え、ちょっ、お姉、ちゃん!?あは、あははははは!ごめん、ごめんって!あははははは!」ケラケラ

~夜~宮永宅~

咲、照「ただいま~」淡「おj……ただいま」

咲「結局夜ごはんお外で食べちゃったね」

照「まぁいいんじゃない?二人とも疲れちゃったでしょ」

淡「それなりには。聞いてた話と違って結構歩きましたからね」

照「そこまで根に持つようなことじゃないでしょ」

淡「それはそうですけど。ところでお風呂のほうはどうします?」

照「昨日と同じでいいんじゃないかな」

咲「じゃあ私、後が遅くなるとあれだし、もう入ってきちゃうね」スタスタ

照「急がなくていいよ。ゆっくり汗を流してきて大丈夫だから」

咲「はーい!」

照「…………さて」チラッ

淡「……っ!私洗濯物とりこんでおきますね!お姉さんはゆっくりしていて下さい!」タッタッタ

照「あ……いっちゃった……まぁちょうどいいかな」

~1時間半後~

照「じゃあ、私もお風呂に入ってくるかな」スタスタ

咲「いってらっしゃーい」パタパタ

淡「…………いったかな?」

咲「ん?行ったと思うよ?」

淡「じゃあさ、昨日の続き、ちょっと打たない?」

咲「あ、いいね。打とうよ!」

淡「決まりだね。実はちょっとウズウズしてたかも、同い年でこんなに競る相手って、初めてだから」

咲「淡さんはインターミドルには出なかったの?」

淡「三年の時は出てないよ。その頃、ちょっと海外に行ってて」

咲「そーなんだ。その時に優勝した原村さんって人が清澄に居るんだけどね、その人も同い年で、とっても強いよ」

淡「あっ、聞いたことあるかも。デジタルの人だっけ?強いの?」

咲「大会で会えるよ。個人戦の代表なんだ」

淡「えっと……たしか2位だっけ?咲さんは3位だったよね。個人戦、楽しみだなぁ」

咲「個人戦の結果まで覚えてるの?」

淡「興味があったものだけだって。長野はその一つって言ったじゃん」

咲「そうだったね」

淡「特に咲さんなんて面白いスコアだからね。私以外にも興味を持ってる人もいるんじゃない?」

咲「買いかぶりだよ」

淡「そう?少なくとも私にとっては期待以上だったけどね」

咲「……あんまり褒められると、どうしていいか分かんないよ?」

淡「ごめんごめん。あんまり長話してもしょうがないから、始めよっか?」

咲「うん!」

~10分後~

淡「……流局、か。テンパイ」

咲「テンパイ」

淡「チートイで待ってたんだけどなぁ、咲さんってなかなか振り込まないね」

咲「私も振り込む時は振り込むよ」

淡「そんなこと言ったら誰だって振り込m」

肩ポンポン

照「何してるのかな?」ニコニコ

咲「お姉、ちゃん……?」

淡「な、なんで!?お風呂にいったんじゃ……?」

照「そんなことはどうでもいいけど、二人で何してたの?まさか、大会規則を破って、代表校どうしで打ってたりしてないよね?」ニコニコ

咲「あ……その……これは、その……」

淡「まさか、打ってませんよ。ちょっと古めの卓だったから掃除ついでに牌でも磨いてただけですって」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

照「そっか、淡は偉いね」

淡「そんなことないですよ、ほんのついでですから」

照「よかった。規約違反をするなんてとんでもないからね」

淡「それよりどうしたんです?急に戻ってきたりなんかして」

照「カメラをこの辺に置き忘れたのを思い出してね。不安になって見に来たんだ。あ、あったあった」

淡「見つかってよかったですね」

照「うん。あれ?おかしいな」ピッ

淡「どうかしました?」

照「いや、ビデオ録画がオンになってたから」

淡「……は?」

照「まぁいいか、ちょうどよかった。淡と咲が良いことしてる絵が撮れてるなんて僥倖だね」ニコニコ

淡(……ばれてる!?)

照「せっかくだし、ちょっと確認してみるね」

淡「ちょっ、ちょっと待ってください!」

照「どうかした?」

淡「いや、何も今確認しなくてもいいんじゃないかなぁって、ほら、お風呂上がりにでもゆっくりと。カメラは私たちが管理しておきますから」

照「うーん、そうかなぁ」

淡「そうですって!ほら、冷たい麦茶でも用意して待ってますから」

照「あ、いいねそれ」

淡(よし。先輩が身体を洗ってるときならいくらでもねつ造出来る)

照「やっぱり今見よう」ピッ

淡「」

~10分後~

照「どういうことかな?」

淡、咲「……」

照「大会規則を破って、しかも、お姉ちゃんに嘘をついたって、……どういうことなのかな?」

咲「あのっ!ごめんなさい!」

淡「申し訳ありませんでした!」

照「残念だけどさ、これは大会の運営委員に連絡しないとね」

咲「えっ……?」

照「代表校が変わったりとか、その辺りまでどうにかなるかは分からないけど、少なくとも咲と淡は出場停止になるかな」

淡「そんな……!!」

照「じゃあ、私はお風呂に行ってくるからね。その間ゆっくり反省すること」スタスタ

淡「待って!待ってくだs……いっちゃった……」

何をたくらんでるんだ・・・

淡「ど、どうしよう……?本気、なのかな?」

咲「お姉ちゃん……本気だった、本当に連絡するつもりだよ」ガクガク

淡「……そんな、だってもし高校ごと駄目になったら先輩だって……」

咲「でも!淡さんもお姉ちゃんの目、見たでしょ……?あの時と一緒だよ……」ガクガク

淡「あの時って……?」

咲「お姉ちゃんが東京に行くって言った時、私、最初は冗談だって思ってたんだけど、本当にいっちゃったんだ」ブルブル

淡「……私たち、どうなるのかな?」

咲「最悪、だよ。出場停止になんかなったら、部長は今年が最後のチャンスなのに……っ!私のせいで!!」

淡「あ、謝ろうよ!謝ろう?それしか、ないよ。謝るしか……」

>>165
背中流し…で、すめばいいな…

~30分後~

淡、咲「ごめんなさいっ!!」ドゲザァ

照「……」

淡「本当にごめんなさい!あの時は気分が高揚して魔がさしちゃって、ごめんなさい!嘘ついてすみませんでした!」ボロボロ

咲「ごめんなさい!ごめんなさい!ルールを破ってしまって、ごめんなさい」ボロボロ

照「ふーん、それで?」

淡「なんでもします!お姉さんが気が済むまで、なんでもいうこと聞きますから!」

咲「全部、全部私たちが悪いんです!」

照「……反省してる?」

咲「はい……っ!」

淡「もう、もう二度とこんなことはしません!」

照「そっか、じゃあ顔あげて」

照「お姉ちゃんも鬼じゃないからね、通報はしないであげるよ」

ん?

咲「お姉ちゃん……っ!」

淡「ありがとうございます……っ!」

照「うん、ただね、一つだけお願いを聞いてほしいなぁ」

咲、淡「……はい」

照「今度のIHでさ、私が個人3連覇したら、その時にプレゼントが欲しいな」

淡「プレゼント?」

照「うん。まだ具体的には決めてないけど、咲と淡にお祝いしてほしいんだ」

咲「もちろんだよ!そんなこと、お願いされなくてもお祝いするよ、ね?」

淡「そうですよ!盛大にお祝いしますよ!」

照「ありがとう」ニコッ

この時は・・・まだ知るよしもなかった・・・っ!

照「じゃあこの話はもうおしまいね」

淡「じゃ、じゃあ……」

照「うん。二人とも反省してるし、お祝いもしてくれるそうだし」

咲「ありがとう、お姉ちゃん」

淡「あの、……3連覇したときだけでいいんですか?」

照「どういうこと?」

淡「いや、その、大会ですし、万が一ってことも」

照「その時は、無しでいいよ」

淡「へ?あの、残念会的なものとか」

照「いらないいらない。そうじゃないと私も大会に向けて身が引き締まらないからね。勝った時だけで大丈夫」

淡「あ、はい」

照「大会で私と当たった時も手加減なしだからね」

咲「わかったよ、お姉ちゃん」

淡(こうして、最後に一悶着ありつつも、二泊三日の長野遠征は無事に終わってくれた)

淡(先輩に厄介な借りは出来たもののそう大したものじゃないと思っていた)

~数日後~

prrrrr、prrrrr

咲「もしもし、宮永です」

淡「あ、咲さん。あの、突然でごめんなんだけど」

咲「淡さん?……もしかして、プレゼントのこと?」

淡「うん……もう聞いてる?」

咲「昨日、お姉ちゃんから電話がかかってきて……」

淡「あ、そうなんだ……あの、それなんだけど……」

咲「三人で年末年始にハワイ旅行だってね……プレゼント……」

淡「……どうしよう。色々と無茶がありすぎるよ」

年末年始のハワイは有名だからな
咲世界の有名人とばったり…

咲「あの映像ってまだ残ってるんだよね」

淡「うん、見せられながら説明されたから……」

咲「……勝とう」

淡「え?」

咲「私たちで、お姉ちゃんに勝つんだ。それしかないよ」

淡「そうだよね、私も、それしかないとは思ってたんだ」

咲「出来るよ、私たちなら、お姉ちゃんが相手でも出来る」

淡「……ありがとう、覚悟がついたよ。私と咲さんがいるんだ、先輩なんかに負けるわけないよね」

咲「うん、頑張ろうよ」

淡「うん、じゃあもう切るね。IHで会おう」

~IH個人戦~

アナ「さあ、IH個人戦もそろそろ大詰め!一万人以上の高校生がふるいにかけられ、残りは最早両の指で数えられる程度!」

アナ「この中から、その頂点に立つ若者とはいったい誰なのか!?対局室Aの選手をご紹介します!」

アナ「まずはご存知ミスIH、揺るぎ無き王者、暫定1位、宮永照!」

アナ「続いては、その宮永照の後継者と名高い、白糸台の若きエース、暫定3位、大星淡!」

アナ「更には長野の山奥から突如現れたダークホース、期待の新星、暫定5位、宮永咲!」

アナ「最後にご紹介するのは、強豪の名を守り抜くため一人戦い続ける雀士、暫定7位、愛宕洋榎!」

アナ「優勝のためにはこの一戦、非常に大きな意味を持ってきます!この対局室Aではどのような戦いが行われるのか?」

~東一局~

洋榎「お、ウチが起親やな。いくでー、負けられへん戦いがここにはあるんや!」

淡(このままのペースでいけば先輩の独走を止められない。もはやここしかない。ここで先輩を叩く!)

咲(個人戦も終盤。ここで負けて順位を落とせばもうお姉ちゃんと直接打つ機会は無い。ここでお姉ちゃんに勝つんだ!)

照「……」

~数順後~

洋榎「ろん、4800や!」パタッ

アナ「おーっと、ここで愛宕選手、照選手から50符二飜の直撃!幸先の良いスタートを切りました」

洋榎「ウチもケツに火がついとんねや。悪いけど東一局は狙わせてもろたで」

淡(愛宕さん、流石は姫松の主将。先輩を削ってくれるならありがたい)

洋榎「いくでー、どんどんいくでー!」

~東一局一本場~

洋榎「……ってなんで流局やねん!」

~東二局一本場~二順目~親、大星

照「ツモ、ツモのみ」

洋榎「来たか、相変わらず早いな、いつも通りの連荘狙いか?」

淡(ここだ。先輩の親番、これをいかに早く流せるかがこの対局の急所。それは咲さんも愛宕さんも承知のはず)チラッ

洋榎(ん、白糸台の一年、わかっとるみたいやな。こっちの子は)チラッ

洋榎(あかん、こっちはポーカーフェイスっちゅうのか、表情からは読めへんな)

~東三局~二順目~

洋榎(来よった。東を切ればテンパイやけど、いや、こないなとこで躊躇してどないすんねん)タンッ

照「ロン、ダブ東」

洋榎(くっ……あかん、このままやと王者のいつものペースや)

洋榎(安定した異常なテンパイ速度、こいつにツモを回すこと自体危険やけど、どうしたもんか)

淡(……相変わらずの異常な早さ。2,3回のツモでこうも都合よく手を作るなんて)

~東三局一本場~一順目

淡(この牌を切ったら先輩のツモ順だけど、極力先輩にチャンスを与えたくない)

淡(だから……咲さんならこれを鳴いてくれるはず!)タンッ

咲「ポン」パタッ

洋榎(なるほどな、……じゃあこの辺も鳴けるやろか)タンッ

咲「ポン」パタッ

洋榎(よし、決まりや。奴に動かせないことが最重要や。その上で清澄に差し込みに行くで)タンッ

淡(先輩が鳴けずに咲さんだけの有効牌、となると……)

淡「カン」

洋榎(嶺上牌!これはいけるで!)

淡(この嶺上牌は100%のはず)タンッ

咲「カン」パタッ

淡、洋榎(よし!)

咲「ツモ、嶺上開花のみ」

アナ「おーっと!照選手、連荘をたった一つで止められました!流石は全国から選りすぐられた強豪たち!照選手といえど独走は許されないか!?」

洋榎(これやな、王者が連荘気配を見せたらツモらせずに誰かが和了ことや。通常ならほぼ無理でも)

淡(いける!この三人なら先輩の支配に抗いつつ場を回せる)

~南三局~

アナ「とんでもないことになってきました!南二局、愛宕選手の七対子が照選手を直撃!これで照選手は一人沈みの状況」

アナ「照選手と現在三位の咲選手との点差は2万以上!!ここまで苦しむ王者の姿を誰が予想したでしょうか!」

淡(調子がいい。思い通りに場が進む。個人戦トータル順位で私は今3位。1位の先輩をまくるには私。私が今一番優勝に近いんだ)

洋榎(王者のラス親か。ここやな、今までで一番集中せなあかんのは。油断したら一気に持ってかれる。頼むで、ちびっ子二人。ここが千秋楽や)

淡(この配牌、倍満イーシャンテン。ツモ上がりでも先輩をトばせる!)

淡(……来た、テンパイ。超えられる、先輩をトばせる。私が一番になるんだ!!)タンッ

洋榎(おい!なにしてんねん!清澄の現物捨ててどないするちゅうんや。くそっ)チラッ

咲「……」コクッ

洋榎(清澄の子はまだ生きとるか、……ウチの手配は順子手、ウチから嶺上牌は送り込めん)

洋榎(ウチの番、何を切るか…………どれも嫌な感じがしよるけど)タンッ

咲「ポン」パタッ

洋榎(……まずは一つ、か)チラッ

淡「……」ポワポワ

洋榎(あかん、戻ってきてくれへん……清澄、これはどうや)タンッ

咲「……」フルフル

洋榎(あかんか……)

淡(来い……っ!!くっ、かすってるのに)タンッ

照「ロン、18000」パタッ

淡「え……っ!」

照「気分が高揚して魔が差す、か。何を反省したのやら」

負けて姉ちゃんが泣き出す展開ではなかったか
そしてここからが(ry

アナ「照選手、この親番でトップの淡選手にハネ満直撃!あっという間に形勢逆転、反して淡選手は非常に厳しい状況に追い込まれた!」

淡(そんな……なんてミスを……)プルプル

洋榎(まずいで、心が折れてもうたか……?)

咲「……凄いよ、こんな状況から巻き返すなんて」

淡(咲さん……?)

咲「でも、負けないよ。私だって、あきらめてないから」

洋榎(ほぉ、巧いやないか、周囲に気取られずに励ましにきたか)

洋榎「1年が良いこと言うてくれるわ、逆転ホームランは大阪の専売特許やで!」

淡(そうだ、まだ諦めちゃだめ……先輩はまだ3位、先輩の親さえ流せばまだ叩ける)

淡(この対局で先輩がマイナスになれば、トータル2位の荒川さんがまくってくれる可能性が高くなる)


~南三局一本場~

淡(配牌は……悪くない)チラッ

咲「……」コクッ

洋榎(ルーキーも復活したか、まぁさっきの振り込みのおかげで今はウチがトップやからな)

洋榎(一旦崩れかけたが、この親を流してオーラス勝負や。待っとれや、優勝旗はウチが姫松に持って帰る)

照「……」

洋榎「……?何しとるん?親が切ってくれんと始まらせんがな」

淡「……どうしたんです?」

咲「…………っ!」ゾクゾク

照「……終わりだな」パタン

照「ツモ、16000オール」

アナ「な、な、な、なんとーーっ!!天和!信じられないことが起きました!親の役満!16000オール!」

アナ「そしてこの和了りで淡選手のトビが確定!対局終了です!!」

アナ「更に、この結果により照選手はプラス65の加算!総合得点においても圧倒的な差が広がりました!」

淡「あ……あ……あ……」カタカタ

咲「こん、な……」

洋榎「……信じ、られへん、天和やと……!!ごめんな絹、お姉ちゃんな……生きて帰られへんかもしれん」

照「……」ガタッ、スタスタ

洋榎「おいおい……天和ぶちかましといて、そないなノーリアクションはないやろ……」

照「……まだ最終戦が残っている。気を抜く気はない」

洋榎(あかん……この化け物には、敵う気がせえへんわ……)

~個人戦終了~

記者「IH3連覇おめでとうございます」

照「ありがとうございます」

記者「史上初の3連覇を達成した今のお気持ちは?」

照「技術面から指導してくれた方たち、気持ちの面から支えてくれた方たち、そして麻雀に出会えたこと、全てに感謝申し上げます」

記者「はい、ありがとうございます。今回は特に対局中苦しい場面も見受けられましたがいかがでしたか?」

照「そうですね、個人的なことですが、苦しい局面ではまず、未来のことを考えますね」

記者「と、申されますと?」

照「苦難を乗り越えた先には、代え難い喜びが待っているはずですから」ニコッ

記者「なるほど、それが今回の3連覇ということですね。では優勝者のコメントでした、ありがとうございます」

~清澄高校選手控室~

和「……残念、でしたね」

咲「うん……」

和(咲さん、落ち込んでる……でも、私も……これで最後、東京に引っ越さなければ……なりませんね)ウルウル

咲「……ねぇ、和ちゃん」

和「なんでしょう?」

咲「パスポートってどうすればとれるのかな?」

和「はい?」

咲「どうしよう……海外なんて、行ったことないよぉ」ウルウル

和(海外!?……まさか、咲さん……優勝できなかったから、海外に引っ越し!?)

~白糸台高校選手控室~

淡「」ポカーン

菫「大星、大丈夫か?」

淡「」ポカーン

菫「まぁ、凡ミスがそのまま敗因になったのがショックなのは分かるがな。まだ一年だ、良い経験になったといえるだろ」

淡「」ポカーン

菫「場馴れしていた分、少しだけ照が有利だっただけだ。これを教訓にすればお前はもっと強くなれるよ」

菫「大星には次代の白糸台を背負っていけるだけの地力はあるんだからな」

淡「……先輩」

菫「どうした?」

淡「……お金ってどうしたら手に入るんですか?」

1巡で倍満張って次巡親ハネに振り込むのが凡ミスと言われるレベル

>>245
能力が当たり前の白糸台ならあるいは・・・

菫「何、言ってるんだ」

淡「例えば、ですよ。ハワイに一週間いくとしたら、いくらかかるんですかね」

菫「なんだ、傷心旅行にでも行くつもりか?だから言っただろ?あのミスはしょうがない部分もあるんだ。深く考えすぎるな」

淡「例えば、ですよ。旅行シーズンの旅客チケットって、いくらするんですかね」

菫「大星?」

淡「例えば、ですよ。何ていえば、親はそんなこと許してくれるんですかね」

菫「渋谷、お前って今気つけになるようなもの持ってるか?」

渋谷「……とびきり濃い抹茶」

菫「ああ、それでいいよ。用意してくれるか?大星がよくない状況だ」

渋谷「……」コク

東京→長野の金は照が出したのか
こう見ると良いお姉ちゃんだな

~数日後~

菫「あ、大星、照が呼んでたぞ」

淡(……先輩の呼び出し……あぁ、行きたくない)

菫「正門の前で待っているそうだ。私は伝えたからな」

淡「あ、あの、先輩も一緒に来てくれませんか?」

菫「私が?私は関係ないだろ」

淡「細かい場所がわかんないと困るかなぁって」

菫「正門に細かい場所などあるわけないだろ。大会が終わったばかりで私は今色々と忙しいんだよ」スタスタ

淡(あぁ……行ってしまった)

~正門~

淡「……こんにちは、宮永先輩」

照「ん、あぁ。遅かったな」

淡(……良かった、東京モードだ。まぁ周りは知り合いだらけだし当たり前か)

照「菫から少し聞いていてな、親がどうとか呟いていたそうじゃないか」

淡「あ……はぁ、まぁそうですね」

淡(誰のせいで悩んでいるのかと、……3割くらいは私のせいだから余計に辛い)

照「原因はなんとなくわかるよ、時期が時期だからな」

淡(あー……あんな約束忘れてくれないかなぁ)

照「だから代わりに私が説得してあげることにしたよ」

淡「はぁ……そうですか」

まてまてまて、この流れは…

照「で、今から行こうと思うんだけど、家まで案内してくれるか」

淡「は?」

照「家だよ、大星の。そういえば私は大星の住所を知らなかったことを思い出してね。迂闊だったよ」

淡(住所バレ?宮永先輩に?やだやだ勘弁してください)

淡「そんな!わざわざ先輩の足を運ぶようなところじゃないですよ!学校からだと距離がありますし」

照「あれ?そんなに遠いの?」

淡「遠いですよ!だから、後日、待ち合わせを決めてそこにしましょう。そうしましょう」

照「徒歩15分以内ってそんなに遠いか?」

淡「え?」

照「え?」

淡「待ってくださいよ、なんですかその情報?」

照「待つのは大星じゃないか?大星って防犯カード持ってたっけ?」

淡「防犯カード?なんですかそれ?」

照「知らないのか?寮生じゃなく、部活動を行う生徒で通学に15分以上かかる生徒は防犯上の理由で防犯カード一式を渡されるんだ」

淡「はぁ……」

照「帰りが遅くなるときに、昇降口近くにある機械に通すと家の方に連絡が行くんだけど」

淡(なんか嫌な流れになってきた気がする……)

照「カードを通してから家に着くまでに不自然に時間がかかったら何かアクシデントに巻き込まれた可能性が高いってことだ」

照「まぁ実際防犯に役立つかといったら微妙なところだけどね」

照「で、大星は防犯カードの存在を知らなかったわけだ。改めて聞くが、徒歩15分ってそんなに遠いか?

淡「と、遠いに決まってるじゃないですか!徒歩3分以上は長距離通学ですよ!朝というのは一秒が貴重なんですから」

照「そうか?」

淡「そうですよ」

照「まぁいいよ、私は15分くらい気にしないから案内頼むよ」

淡「私が気にしますよ」

照「どうして?」

淡「ほら、親を説得するとしたら時間がかかるかもしれないじゃないですか。そしたら外はもう暗くなりますよ?」

淡「先輩に一人で暗い夜道を歩かせるなんてこちらが不安になりますよ」

照「うーん……じゃあいざとなったら大星の家に泊めてもらうよ」

淡「馬鹿言わないでくださいよ。いきなり人一人泊めるなんて簡単に言わないで下さいって」

照「流石にそれは冗談だよ。でもタクシーチケットがあるから遅くなっても大丈夫」

淡「……なんでそんなもの持ってるんですか」

照「雑誌の取材とかで遅くなるとくれるんだ。余らせてもしょうがないからね、今日使うことにしよう」

照「もちろん、泊めてくれるならそれが一番なんだけどね。あんまり大星に迷惑をかけるわけにもいかないし」

淡(先輩が家に来ること自体が問題なんですよ!)

照「さ、時間がもったいないから早く案内して」

淡(言い訳、言い訳、先輩が納得するような言い訳…………出てこない……っ!)

グニャァ

~一時間後~

母「まぁそうなんですか」テレテレ

照「えぇ、淡さんは素晴らしい才能を持ってますよ。私が保証します。」

照「加えて礼儀正しい行いが身についていてこちらとしても非常に助かっています。良い教育がされている証ですよ」

母「またお世辞ばかり」テレテレ

照「いえいえ、特に、こうしてお母様と直接会って確信しました。お母様の理知的な雰囲気など正に瓜二つですよ」

母「もう、宮永さんったら」テレテレ

淡(なんで盛り上がっちゃってるんですか!?こんな見え見えのお世辞にひっかかる人のどこが理知的なんだか……)

照「そこで、なんですけど」

母「年末に海外ねぇ……」

照「えぇ、お母様が心配なさる気持ちも十分に理解できます。淡さんは一度海外の滞在経験がおありだとか」

母「そんなに長く行ってないんだけどねぇ、ほんの数カ月ですから」

照「多感な時期の数カ月は、実際の期間よりも何倍も有意義に過ごせるものですよ」

照る「その時期に海外滞在した淡さんはグローバルな感覚を十分に養っています」

母「そんなものかねぇ……」

照「そうですよ。私も短い付き合いではありますが、淡さんの多角的な視点には、勉強になることも多々ありました」

母「またまたぁ、宮永さんともあろう人が買いかぶりですよ」テレテレ

照「もちろん、私含め、淡さんも完璧というわけではありません。しかし、お母様、この世には切磋琢磨という言葉があります」

照「今回の海外行きには淡さんとは違ったベクトルで優秀な方たちも共に行くことになっています」

照「そのような方たちと共に過ごす、特別な時期の一週間は、淡さんのさらなる成長に代え難いものになるかと」

母「そうねぇ、宮永さんも一緒にお行きになるんですよね」

照「はい、そのつもりです」

母「わかったわ。宮永さんのような方がいるなら、淡のためにもなるでしょうし」

照「では?」

母「淡をよろしくお願いしますね。旦那のほうには私から言っておくから安心して。あの人、私には弱いのよ」

照「ありがとうございます。淡さんの一週間という貴重な時間、決して無駄には致しません」ペコリ

淡(簡っ単に折れてるよ!もうちょっと反対してくれてもいいんじゃないの!?)

母「ほら、淡も。まだ先とはいえお世話になるんだから挨拶くらいしなさい」

淡「あ、……あの、よろしく、お願いします。宮永先輩」

照「あぁ、よろしく」ニコッ

~玄関先~

母「本当に送らなくて大丈夫かしら」

照「ええ、そのお気持ちだけで十分です」

母「そう?またいつでも遊びに来てくださいね。淡もきっと喜びますわ」

淡(あぁ……時を選ばずに先輩が家に来るようになったら、私はいったいどうすれば……っ!)

照「では、あまり長居してしまうのもあれなので、今日はありがとうございました」

母「こちらこそ、お気をつけてお帰りくださいね」

母「……宮永さんって本当に良く出来た方ね。白糸台に入って正解だったわね、あんな人と知り合えて」

淡(失敗だよ、大失敗だよ……同じ宮永でも清澄の宮永だったらどんなによかったか……っ!!)

~翌朝~

照「おはよう」

淡「」

淡(なんで先輩が家の前にいるんですか!?ああ……居ても不思議じゃないですね。家がバレてるんですから)

照「どう?昨日はそれなりに説得出来たでしょ?」

淡「……それはそれとして、なんでここにいるんですか?」

照「一緒に学校行こうと思って。話したいこともあったしね」

淡「……まさか、これから毎日来るんじゃないでしょうね?」

照「そうしたいのはやまやまなんだけど、ほら、私が誰か後輩一人を贔屓にするわけにもいかないから。こうして用事があるときだけかな」

淡(よかった……毎日だったらどうしようかと)


淡「それで、用事ってなんなんですか?昨日の話でも掘り返す気ですか?」

照「まさか。昨日の話は一段落ついたしね。今日は別の用件」

淡「はぁ……」

照「9月ってさ、連休があるよね?」

淡(本当にもう勘弁してください。私が何したって言うんですか?)

淡「行かないですよ、長野には」

照「違う違う。逆だよ。咲がこっちに来るんだって」

淡「咲さんが?」

淡(咲さん……なんでわざわざ死地に飛び込むような真似を……?)

照「なんでも、向こうの友達がこっちに引っ越したらしくて、遊びにくるんだって」

淡「あぁ、それで。でもそれって私たちはあんまり関係ないんじゃ」

照「そんなことないよ。咲が東京に来るんだよ?当然もてなさなきゃいけないよ」

淡「……あの、咲さんには了解とってあるんですか?」

照「今日とるつもり」

淡(ご愁傷様です)

照「でもあんまり咲の予定を乱すのも悪いから、とるのは一日だけだけどね。譲歩に譲歩を重ねて」

淡「……東京では雀士なんじゃないんですか?」

照「うん。だから家の中で歓迎会を開くつもり」

~夜~

prrrr、prrrrr

淡「はい、大星です」

咲「あ、淡さん?私だけど、宮永咲」

淡「あぁ、咲さん」

咲「本当にごめんね、まさかお姉ちゃんに伝わっちゃうなんて……」

淡「ううん、たぶん咲さんは悪くないよ」

咲「ごめんね、また巻き込んじゃうみたいで」

淡「いいよ、もういいんだ、咲さん」

咲「……淡さん?」

淡「3年、高校卒業するまでの3年は我慢しようと思う。3年たったら縁を切るつもり」

咲「……うん、ごめんね。本当に、ごめんね」

淡「ううん、だから咲さん………………ぅ」

咲「……え?」

淡「3年経ったら、一緒に逃げよう。先輩に見つからないところに、二人で」

咲「淡さん……本気なの?」

淡「本気だよ!このままだったら私たちあの人に食いつぶされちゃうよ!だから、逃げようよ!」

咲「……うん」

淡「咲さん……っ!!」

咲「うん、逃げよう。私もこのままじゃ駄目なんだって、ずっと前から思ってた。お姉ちゃんのためにも、距離を置くことは大切だと思う」

淡「そうだよね。私、間違ってないよね?」

咲「うん。約束だよ、3年後、あの丘に来てくれる?嶺上の花が咲いてたあの場所に」

淡「行くよ、必ず行くから!」

咲「待ってる。私、絶対に待ってるからね」

淡、咲「約束だよ!」

おわり

時間的に限界なので終わります
次の機会があれば3人とも恵まれる展開にしたい

あと公式で淡のキャラ付けはよ

乙です
次回作も期待してます

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