魔王「ほおーら毛虫だぞー」少女勇者「いやああああああああ」(409)

地下の独房

魔王「ほおーれほおーれ毛虫だぞー」

勇者「いひゃああああああ」

魔王(割りばしに毛虫を乗せて近づけるだけでもこの反応とは)

魔王「毛虫だぞー?」

勇者「近づけないでえええええ」ガシャガシャ

魔王「くくっふはははは!」

魔王「楽しかったぞ」

側近「まったく……人質を弄ぶのは程々にしてくださいね」

魔王「殺さない程度にしておこう」

側近「いや殺したら人間との交渉が成り立たなくなりますから」

魔王「わかってるわかってる」

側近「こっちだって魔従妹様を人質に取られているのですから」

魔王「わかってるっての」

側近「あんまりやりすぎると極悪非道だと思われますよ」

魔王「人間からしたら魔王なんて元々そんなもんだろう」

側近「それもそうですが……」

魔王「それにあいつ、いじめた方が元気になるし」

魔王「大画面でホラーゲームをプレイしてやろう」

勇者「や、やめて!」

ヒギャアアアア バンッ バンッ ユルサナイ…… ユルサナイ……

勇者「ひっひいいい!」

勇者「せめて目を閉じ続けることが出来ないようにする魔法だけでも解いてよおお」

魔王「瞬き程度しかできぬものなあくっくっくっ」

勇者(首も魔法で固定されてるし!)

勇者「い、いや、お化けが来るううううう!」

魔王「お前は仮にも勇者であろう?」

魔王「この程度で怖がってどうする」

勇者「呪われるううういやああああ幽霊いやああああああ」ガシャンガシャン

魔王「くくっくくくくく」

勇者「もう一人でトイレ行けない……いや牢屋の中についてるんだけどね」

魔王「お前が用を足しているところをまじまじと観察してやろうか」

勇者「やめてよ! 無理! 変態!」

魔王「変態で結構だ」

勇者「えええ……」

魔王「男なんて皆変態だ」

勇者「し、紳士な人だっているもん!」

勇者「僕のお兄ちゃん、すっっっごく格好良いんだから!」

魔王「俺よりも?」

勇者「魔王よりもずうぅっっっっっっっっっっっと!!」

魔王「……ふーん」

魔王「ちょっと待ってろ。飯を持ってこさせる」

勇者「……まともなご飯なんだよね?」


魔王「よし食え」パカッ

勇者「…………」サァー

勇者「……この青紫色の物体何? 異臭もしてるんだけど…………」

魔王「食わぬのか? 食わぬのか?」

勇者「食べられないよ……人間の食べ物じゃない……」

魔王「好き嫌いは良くないぞ?」

勇者「っ!?」

魔王「ほら、料理が勇者に食べてほしいと泣いておるぞ?」

勇者「え……」

魔王「このまま食べず、食べ物を粗末にするのか?」

魔王「人間とは卑劣な生き物よのう……」

勇者「う……たべ、るよ…………」

勇者「食べ物さん、可哀想だもん……」ゴクリ

勇者(スプーンですくって……)ヌチャ

勇者(口まで運ばなきゃ…………)プルプル

魔王「…………」

勇者「……………………」ドクッドクッドクッドクッ

勇者「い、いた……だき…………ま…………」プルプル

魔王「ククッ……ブフォッくはははははは!」

魔王「それが本当に食い物だと思ったのか? くははははは!!」

勇者「え……?」ポカーン

魔王「これほど簡単に騙せるとはww腹がよじれるwwww」ダンダンダン

勇者「うそ……ついたの…………?」カラン

魔王「安心しろ、まともな飯も用意してある」

勇者「ひどい…………」

一方人間の国

魔従妹「ふう……お茶がおいしいですわ」

勇者兄「此処の居心地はどうだい」

魔従妹「悪くありませんわ」

魔従妹「私は人質だというのに、こんなに丁寧にもてなしていただけるなんて」

魔従妹「部屋も綺麗ですし」

勇者兄「人質だからこそだよ。乱暴にしたら、魔族との交渉が上手くいかなくなるからね」

魔従妹「向こうに捕らえられているのは貴方の妹さんでしょう?」

魔従妹「酷い扱いを受けていなければ良いのですが……」

勇者兄「きっと大丈夫さ。魔族もおそらくこちらと同じ考えのはず」

魔従妹「我が従兄(じゅうけい)が、妹さんに危害を加えていないことを祈ります……」

勇者「…………」ブスッ

魔王「そう拗ねるな」

勇者「…………」ツーン

魔王「詫びの品だ」プリンッ

勇者(……緑色のゼリー?)

魔王「メロン味だ」

勇者「……本当なんだよね?」

魔王「さあ食え」

勇者「…………」ツンツン

キラキラプルプル

勇者「………………」クチュ アム

勇者「っ……!?」

勇者「うっうぁぁ……ああぁぁぁ……」

魔王「ブフゥッ……ククククク……」

勇者「にがああぁぁぁ……」

魔王「本当にメロン味だと思ったか?」

魔王「それはゴーヤ味だwww」ダンダンダン

勇者「も、もったいないから食べるもん……食べられない味じゃないもん……」

魔王「妙に真面目だなwだから余計騙しやすいんだがww」

勇者(苦い……)

魔王「なあなあどんな味? こんなの食べてどんな気分?」

勇者「…………」ムカッ

魔王「魔族の間では大ブレイクしているが、人間のお前にとってはただ苦いだけであろう?」

なんつーか、よわっちぃ勇者っスね
(よくなれたな勇者に・・・)ボソ

勇者「うるさいよっ」

魔王「すまん」

勇者「……お母さんが、時々ゴーヤのお料理作ってくれたの」

勇者「それ、すっごくおいしかったから」

勇者「オキ・ナーワ国民じゃないけど、ゴーヤそのものには慣れてるの」

勇者(お母さん、心配してるだろうな……)

魔王(母親が恋しそうだ)

魔王(ちょっと可哀想かもしれない)

魔王(母親代わりを用意してやろう)

>>19
勇者の一族というだけで
正式に勇者になったわけではないようです

サキュバス「はじめまして勇者ちゃあん。私サキュバスっていうの。よろしくねえ」ボイン

勇者「は、はあ」

勇者(すごいナイスバディ……ぼんきゅっぼんだ……)

サキュ「おうちに帰れなくて寂しいでしょう?」

サキュ「私が癒してあ・げ・るぅv」ギュ

勇者「え、ちょっ」

勇者(女同士なのに刺激が強すぎぎるるるうう)

サキュ「ん……か・わ・いv」ギュムウ

勇者「は、はなひへっ」

勇者(おっぱいで溺れ死ぬううううう)

魔王(ふむ、良い眺めだ)

サキュ「あん、勇者ちゃん、年齢はいくつなの?」サスサス

勇者「も、もうすぐじゅうにさいれふう」

勇者(肩撫でられてる……)

サキュ「そうなのぉ、じゃあお胸はこれから大きくなるのね?」サワ

勇者「ひぃぁっ!?」

サキュ「安心して、乱暴にはしないからぁ……」

勇者「ひぁめて! ひゃめええ!」

勇者「そこさわっちゃだめえ!」

サキュ「恥ずかしがらなくて良いのよ」

勇者「あぅっだめえっ!」

魔王(うほっ)

勇者(やっと解放された……)ゼハー

勇者(さっきの魔族淫魔だよね?)

勇者(ちょっと触られて済んだだけマシか……)

魔王「くくく……」

勇者「この変態スケベ!」

魔王「お前が寂しそうだったから女を用意してやったと言うのに」

勇者「何それ!?」

魔王「まだかーちゃんに甘えたい年頃だろう?」

勇者「僕のお母さん貧乳だもん! ああいうナイスバディの人を呼んでも無駄だからね!」

魔王「貧乳なサキュバスか……側近に言って探させるか」

勇者「何でそうなるの!? そもそもお母さんの代わりになる人なんていないし!」

魔王「ぐぬぅ……」

魔王「淫魔は、夢の中であれば対象の理想の姿になることができるのだがな……」

勇者「淫魔がお母さんの姿に変身しても全く嬉しくないし」

勇者「理想の姿って、え……えっちをしたい相手の姿になるってことでしょ?」

勇者「なんかいろいろと違う気がする」

魔王「お前はどのような相手に抱かれたいんだ?」

勇者「まだそういうことする年頃じゃない!」

魔王「人間はどのくらいの年齢で性交をするのだ」

勇者「子供の前でそういうこと言わないでよ!」

勇者「……赤ちゃんを産むのは16歳くらいだと思うけど」

魔王「ふむ。そうか」

魔王「ほお~れほお~れ人間の腕だぞ~もぎたてだぞ~」

勇者「ひいいいいい」

魔王「まだ血肉が生暖かいぞ?」

勇者「いひゃあぁああぁああああ」

魔王(あ~良いわ~この恐怖と気色の悪さに怯える表情)

勇者「うっうぅ……うぷ……」

魔王「どうした? 吐きそうか?」

魔王「勇者の一族なのにか? 剣で敵をバッサバッサと斬るのが仕事の一族なのにか?」

勇者「相手を戦闘不能にはするけど……殺したりしたことはないし……」

勇者「おええ……やば……吐きそう……といれ……」

魔王「この腕偽物なのにか?」

勇者「え?」

魔王「精巧な偽物に決まっておるだろうがwww」

勇者「…………」

魔王「よぉ~く近くで見てみろw紛い物だぞw」

勇者「別にいいよ……見たくなんてない……おえぇ」ムスッ

魔王「お前何回騙されれば学習するの?」

勇者「…………ほっといてよ」プイッ

魔王「ぷぷっくくく」

勇者「……そっちこそ精神年齢いくつ? こんな風に何回も幼稚にいやがらせしてきてさ」

魔王「そのことに関してはほっといてくれ」

魔王「ほぉ~ら鉄球兵士を連れてきてやったぞぉ?」

鉄球兵士「……」ガシャンガシャン

勇者「……!?」

魔王「怖いだろぉ~恐ろしいだろ~」

鉄球兵士「…………」ゴゴゴガガ



勇者「…………か、かっこいい!!」

魔王「え?」

鉄球兵士「!?」ゴガッ!?

魔王「なんだと……」

勇者「ゼ○伝に出てたね! うわあ、生で本物を見れるなんて……!」

鉄球兵士「…………」ドキッ

勇者「ねえねえ、サインちょうだい!」

鉄球兵士「……」ブンブン

勇者「え? だめなの? 鉄球兵士さん格好良いのになぁ~」

鉄球兵士「……」テレテレ

魔王(怖がると思ったのに……)

勇者(敢えて喜べば面白くなくなって飽きるかもしれない)

魔王(もっと怖がらせるにはどうしたら良いのだろうか)

魔王「大画面ではないが」

勇者「……」

魔王「貴様の目の前でホラゲーをプレイしてやろう」ジリ ジリ

勇者「ちょ」

魔王「くっくっく」

勇者「こっち来ないで!」

魔王「くくく……」

勇者「ひぃぃ!」

魔王「よし俺の膝に乗れ」

勇者「乗らない!」

魔王「魔法でお前の身体を操ってやろうか」

勇者「……わかったよ行けばいいんでしょ行けば!!」

勇者「……けど、その前に」

魔王「何だ」

勇者「ちょっとだけ出てって」

魔王「理由は? なあなあ理由は?」

勇者「……トイレするの! 言わせないでよ!」

魔王「俺の目の前ですれば良いであろう」

勇者「いや!」

魔王「なら我慢しろ」

勇者「漏れちゃうよ!」

魔王「構わん漏らせ」

勇者「…………」

魔王「何だそのゴミを見るような目は」

魔王「わかった出て行けばいいんだろう。二分後に戻ってくるからな」

二分後

勇者「……」チョコン

勇者(NI○T○NDO○S……?)

魔王「よく見ていろよ」カパッ

勇者「…………」

魔王「ちゃんと見ていなかったら魔法で体を拘束して」

魔王「この間と同じように、強制的に視界に入るようにしてやるからな」

勇者「…………わかったよ」

勇者(何で魔王なんかと密着しなきゃいけないの)

魔王(小尻の感触が……やばい)

魔王(反応するなよ……)

魔王「ナナ○ノゲ○ムというソフトだ」

勇者「……あそ」

魔王「…………」

勇者「…………」

魔王「おおう早速死体だ」

勇者「…………あそ」

魔王「怖くないのか?」

勇者「別に……こ、怖くなんてないもん…………」

魔王「本当にか? ほんとぉ~にぃ~?」

勇者「しつこい!」

…………
……

勇者「ひぎぃ!?」

魔王「やはり怖いのではないか」

勇者「そりゃいきなり天井から『ばぁ!』ってされたらびっくりするよ!」

勇者「怖いんじゃなくて驚いただけだから!」

魔王「…………そうかそうか!」

勇者「間を置いてるのがむかつく……」


勇者「ここ、処理落ちでさ」

魔王「ああ」

勇者「女の子のスカートの前の所だけ……」

魔王「一瞬表示されなくなっているな」

勇者「スカートめくってサービスしてるみたい」

勇者「ホラーなのになんか怖くなくなってきた」

魔王「やはり怖かったのだろう」

勇者「うっ……そりゃポリゴン気味が悪いし……」

勇者「やっと終わった……」

魔王「よし続編やるぞ」

勇者「え? まだあるの?」

魔王「ナ○シノ○エムEYEだ」

勇者「縦にしてプレイするのってさ……」

魔王「愛プラスとか言うなよ」

勇者「ちえっ」

…………
……

魔王「怖くなかったか?」

勇者「流石に慣れた」

魔王「くそっ」

勇者「ラスボスに捕まった時の顔のドアップは気持ち悪かったけど」

勇者「段々敵の顔がぷ○ちょに見えてきたし」

魔王「言われれば似ているな」

魔王(次は別方向のホラゲ―を用意しておこう)

魔王「『くまぜみの吠える頃に』だ。怖いと評判だぞ」

勇者「アニメは全部見た」

魔王「アニメのみを見るのは低レベルだ。原作をやってこそこれの価値がわかる」

勇者「それは耳にタコができるくらい聞いたよ……」

魔王(ふむ……効果音が非常に不気味だ。実際にプレイしているこっちが怖くなってきた)

勇者「話には聞いてたけど、やっぱりアニメってかなり省いてたんだね」

勇者「ああーこういう考察もできるのか……これかなり重要な伏線だよね……」

魔王(普通に楽しんでいる……だと……?)

勇者「文章メインっていうのも、キャラの壊れっぷりが頭に浮かんで逆に深みがあるかも」

魔王(くそっ……)

魔王(こうなったら原点回帰だ)

魔王「ほお~れほお~れゴキブリだぞ~」

勇者「うあぁあぁああああ!! やめてえ!」

魔王「割り箸で挟まれて、抜け出そうと必死にもがいている元気なゴキブリだぞ~」

勇者「同じ命だってことは分かってるけど生理的に無理いいいいいい!!」

魔王「俺がうっかり指を滑らせたら……大変なことになるなぁ?」

勇者「ひぁめてえええ!!」

魔王「カサカサと素早くお前の身体を駆け上り、衣服の中に侵入し……」

勇者「ぎぁああぁあああああああ」

魔王(そうだこの表情だ)

魔王「やがてお前の顔を犯すのだろうなぁ」

勇者「ゴキブリさんごめんどっか行ってええええ」

ゴキ「キモチワルクテ ゴメンネ!」ワタワタ

魔王「ほおーれほおーれ」

勇者「いひゃあああああ!!」

魔王「あ」ポロッ

勇者「え?」

ゴキ「ワーイ ジユウダー」カサカサカサカサ

勇者「こっちこないでええええ!!」

ゴキ「ワーイワーイ」カサカサカサカサ

勇者「いぎゃあああああ!!」ガキィン

魔王「あれ?」

勇者「ひいいいいい」バタバタ

ゴキ「オネエチャン マッテー」カサカサカサカサ

魔王(手枷に繋いでいた鎖が千切れただと……)

勇者「助けてえええええええ!!」

魔王(火事場の馬鹿力か……)

…………
……

勇者「ぜは……死ぬかと思った……」

魔王「鎖を新調する破目になった」

勇者「も……虫系はだめぇ……」

魔王(反応は良いが、事故が起こって危険すぎるな……)

魔王(ホラゲーじゃなくてホラー映画だとどうなるだろうか)

勇者「ひぃっ」

魔王(ホームシアター設置した。スピーカーの位置を工夫し、立体音響になるよう設備を整えた)

魔王(これは恐ろしいだろう)

勇者(出てくる出てくる幽霊出てくるううぅぅ)

ショギャアアァアアァアアアア

勇者「ひぎゃあああああ!!」

魔王(そうだ、この声だ。この恐怖に歪んだ表情だ)

勇者「ひいぃぃいいい」バタバタ

魔王(映画には耐性がないようだ。くっくっく)

勇者「いやああああああああああああ」

勇者「真っ赤ああああああ画面が血で真っ赤ああああああああああああ」

魔王「勇者の叫び声の方が怖いのだが」

勇者「ぜは……もういや」

魔王「本当はこんなことされて嬉しいんだろ? な?」

勇者「なっ……そんなことないよ!」

魔王「お前マゾだろ」

勇者「違うもん! そんなんじゃない!」

魔王「ぜってえマゾだ。ぜっってぇマゾだ」

魔王「俺にいじられて嬉しいんだろ? 喜んでるんだろ?」

勇者「違うし! ばか!」

魔王「やーいマゾヒストー」

勇者「んもー!」

魔王「ガキの頃からマゾに目覚めているとかお前才能あるぞ」

勇者「何の才能!? というか僕のことガキって言うけど四歳しか違わないじゃん!」

勇者「もうすぐ三歳差になるしー!」

魔王「年下は年下だガキ」

勇者「ムキィィイイイイイ」

魔従妹「あら、この焼き菓子とてもおいしいですわ」

魔従妹「魔族の国では食べたことがありません」

勇者兄「人間の国の中でも、この国でしか採れない穀物を磨り潰して焼いたものだよ」

勇者兄「俺も妹もこれが大好きでねえ」

魔従妹「ぜひ我が国へ輸入したいですわ」

魔従妹「人質交換が無事に済んだ暁には、貿易を開始いたしましょう」

勇者兄「良いなそれ! 国王陛下にも相談してみよう」

勇者兄「それにしてもすまないね。一日中見張りがついていたらまともに休めないだろう」

魔従妹「いえ、貴方とおしゃべりするのはとても楽しいですから、全く苦になりませんわ」

勇者兄「魔従妹さん…………///」

勇者「もういや……」

鉄球兵士「……」コト

勇者「花瓶? わぁ、綺麗なお花」

鉄球兵士「…………」コクコク

勇者「わざわざ用意してくれたの? ありがとうね」

鉄球兵士「……」テレテレ

勇者「はあ……僕、無事におうちに帰れるのかなあ」

勇者「いつになったらこんな寒くて狭い牢屋から出られるんだろう……」

鉄球兵士「…………」ガシャ……

勇者「大丈夫だよ。僕、このくらいじゃへこたれたりなんてしないから!」

鉄球兵士「……!」ガシャン!



魔王(あいつら仲良いな…………くそっ)コソコソ

勇者兄は勇者の兄ってだけで一般人じゃ

魔王「何? 奴をもっと暖かくて広い部屋に移動させてやれ?」

鉄球兵士「……」コクリ

魔王「ううむ……まあ確かに哀れではあるな」

鉄球兵士「…………」コクコク

魔王「だが、耐久性のある客室を用意するのには金が必要だしな……」

鉄球兵士「……!」ドゲザァッ!

魔王「お、おい」

鉄球兵士「…………」ズリズリ

魔王「わかった。用意してやるから土下座はやめろ。みっともないぞ」

鉄球兵士「……!」ペコペコ

>>81
勇者の一族なので一般人よりはかなり強い

ガガガゴゴゴ

勇者「なんか上の方がうるさい」

魔王「お前のための部屋をわざわざ用意してやっているのだ」

勇者「何それ」

魔王「ここでは体に悪いだろう」

勇者「そりゃあね」

魔王「物理的な攻撃や魔術による衝撃に耐えられる部屋でないと駄目だからな」

魔王「大工事になっているのだ」

勇者「虫でも沸かない限り暴れたりなんてしないのに……。どうして今更?」

魔王「鉄球兵士に懇願されてな」

勇者「え……」

魔王(まずい。奴の株を上げてしまった)

魔従妹「……はあ」

勇者兄「故郷が恋しいかい?」

魔従妹「ええ……少しだけ」

勇者兄「きっともうすぐ王様が魔族と話をつけてくれるさ」

魔従妹「……そうだと良いと思うと同時に」

魔従妹「ここを離れることに、戸惑いを感じるのです」

魔従妹「……魔族の国に帰れば、貴方とは滅多に会うことができなくなりますわ」

勇者兄「魔従妹さん……」

魔従妹「ああ、勇者兄さん……!」

魔従妹「どうして魔族であるこの私を恐れず、対等に接してくださるのですか?」

魔従妹「人は魔族を恐れ、魔族は人を下等だと蔑視しているこの時代だというのに……!」

勇者兄「種族なんて関係ない! 君は……一人の女の子じゃないか」

勇者兄「俺は、君の純粋さを知ってる。心の優しい女の子だってことも知ってる」

勇者兄「きっと、心の在り方に、人間と魔族の違いなんてないんだ」

魔従妹「勇者兄さん…………」

勇者兄「魔従妹さん…………」


窓の向こうに広がる景色を背景に、二人の唇は近付いていった。

魔王「今日はとっておきのグロ画像を見せてやろう」

勇者「あそ」

魔王「どうだ。気持ちが悪いだろう」

勇者「そりゃそうでしょ」

魔王「怖くないのか?」

勇者「もう完全に慣れてきた気がする」

魔王「えー……」

勇者「勇者が虫くらいで騒いでたら情けないにもほどがあるし」

勇者「ホラーゲームは慣れたし」

勇者「ホラー映画もまあ……怖いけど同じく慣れてきたし」

勇者「勇者として、グロいものの耐性くらいつけとかなきゃいけないし」

勇者「低レベルな嫌がらせがずっと続いたから」

勇者「魔王がしてくることにはほとんど耐性がついたっていうか」

勇者「なんかそんな感じ」

魔王「何だと…………」

勇者「もう何やっても無駄だから」

魔王「ううむ…………」

勇者「何されても怖がらないし」

勇者「仮に怖くなっても、前みたいに叫ぶことはないと思う」

魔王「ええー…………」

魔王「ここがお前の新しい部屋だ」

勇者「わ……パッと見豪華な客室。ただし鎖付き」

魔王「この部屋にクモの大群を住まわせてやろうか」

勇者「うへ……軍曹なら良いよ。役立つし」

魔王「くそっ」

勇者「ほとんど魔力を封じられていても」

勇者「半径一メートル以内に虫が入らないようにする魔法くらいは使えるし」

勇者「というかゴキブリ事件の時に開発したしね!」

魔王「…………」

魔王「最近勇者の反応が面白くない」

側近「耐性がついたのでしょう」

魔王「あんなに良い声で叫んでいたというのに」

側近「あなたが子供のような悪戯ばかりしているからですよ」

魔王「なら大人の悪戯なら良いのか?」

側近「…………」

魔王「何だそのゴミを見るような目は」

側近「貴方もまだ子供でしたね。いえ、子供と大人の中間くらいでしたか」

すまんネットの調子が悪くて遅くなりそう



魔王「おい勇者入るぞ」コンコンガチャ

勇者「ノックをしたのは良いけど、どうせなら返事をしてから入ってきてくれない?」

魔王「すまん」

勇者「こんな夜に何? 怪談でもしにきたの?」

魔王「そんなことしてもどうせ怖がらぬのだろう」

勇者「じゃあ何」

魔王「…………」

勇者「ちょ……近づかないでよ」

魔王「……………………」

魔王「俺が何をしても怖がらぬと言ったな」ギシ

勇者「えええどうしてベッドに乗ってくるの!?」

魔王「…………」ガッ

勇者「ひっ!?」ギシィ

魔王「………………」サワサワ

勇者「ひぅっ!」ゾクッ

勇者「ま、まお、それ……はんざ……ぃ……」

魔王「…………」ナデナデ

魔王(全身撫で繰り回してやろう)

魔王(胸も尻も小さいなこいつは)サワサワサワサワ

勇者「ひぁっ、だ、だめっ」

勇者「あっ……ああっ、ぅ、ん……んぅ……」ビクッビクッ

魔王(さあ泣け)

魔王(泣き喚け。足掻け。その可愛い顔を恐怖に歪ませろ)

勇者「あ……ああ…………」ガクガク

魔王(…………あれ?)

勇者「や…………いやぁ…………」ポロポロ

魔王(泣い……てる……)

勇者「ひっく……ぅぅ……ぅああ……ぁぁ…………」

魔王「お……おい」

勇者「おか……さ…………おかあさ……ぅ…………」

勇者「こわいよ…………おかあさん………………」

魔王「…………!」

勇者「たす…………けて…………」ガクガク

魔王(そうか……普段、こいつは気丈に振る舞っていたが)

魔王(まだ、幼い子供だったな…………)

勇者「ぁ……あ……」ブルブル

魔王「…………」

勇者「い……ぁ…………」ガタガタガタガタ

魔王「………………」

魔王(こんな風に怖がらせたいわけじゃなかったのに)

勇者「こわ……いよぉ…………」

魔王(怖がった後、怒っているところを見たかったのに)

勇者「うう…………あ…………ぐすっ……ぅ……」

魔王(……俺は、取り返しがつかないほど、こいつを傷つけてしまったのだろうか)

魔王「ゆ、勇者……」

勇者「…………」

魔王「その…………」

勇者「………………」

魔王「……………………」

勇者「……ぅ、……んて……」

魔王「…………」

勇者「魔王なんて……だいっきらい…………」

魔王「…………そうかよ」

翌日

魔王「…………」

側近「本当に勇者に大人の悪戯をしに行ったんですか」

魔王「……完全に嫌われた」

側近「当り前でしょう」

魔王「……勇者が元気に怒っている時は楽しかったのに」

魔王「力なくただ泣いているのを見たら、どっと罪悪感が溢れてきてな……」

側近「ばーかばーか」

魔王「…………」

側近「これが原因で和平の交渉がブッ潰れたら貴方の責任ですよ」

魔王「ちょっと身体に触っただけで泣きじゃくるなんて想像がつかなかった」

側近「あほー」

魔王「…………やっぱ俺なんかに魔王なんて無理なんだって」

側近「そう言わないでくださいよ。先代に顔向けできないじゃないですか」

魔王「未熟な俺に魔王の座押し付けた親父が悪いんだよ」

側近「女の子に関する倫理観だとかをお教えしていなかった私の責任もあるわけですし」

魔王「はあ……いっそのこと本当に極悪非道になれたら良いのに」

側近「貴方は、あの子の気を引きたかっただけなんじゃないですか」

魔王「何だそれ。好きな女の子をいじめる小学生かよ……」

側近「同じじゃないですか。正に最近の貴方ですよ」

魔王「…………そうか」

勇者「うっ……ぐすっ……」

鉄球兵士「…………」ガシャ……

勇者「僕、体、触られちゃった……触られちゃったよ……」

鉄球兵士「……」ナデナデ

勇者「ん……ありがと」

勇者「ぅ……うぅっ……ぁ……えぐっ……う……」

鉄球兵士「…………」

勇者「今日ね、僕の誕生日なんだ」

勇者「こんな状況だから、家族に祝ってもらえるのは無理だなって覚悟はしてたけど」

勇者「こんな悲しい気持ちの誕生日、初めてだよぉ……」

鉄球兵士「……!」

鉄球兵士「…………」ガシャンガシャン

魔王「あ? お前か……」

鉄球兵士「……」ガシャ! ガシャ!

魔王「お前、怒ってんのかよ…………まあ、お前あいつと仲良かったもんな」

鉄球兵士「…………っ!」ドゴォ

魔王「ごふっ!?」

魔王(殴られた…………?)

鉄球兵士「……! ……!」フー! フー!

魔王「何? まだあいつが泣いてる? 謝りに行け?」

魔王「いや、顔を合わせづらくてな」

魔王「……一応行ってみるが」

鉄球兵士「…………」

魔王「仕事で忙しくて滅多に会えない娘の面影を勇者に重ねてた? そうかそうか」

鉄球兵士「……! …………!」

魔王「家族に祝ってもらえない誕生日はとても寂しいものだ?」

魔王「仕事で娘の誕生日を祝うのが遅れて、酷く泣かれたことがある?」

鉄球兵士「……」コク

魔王「……今日、あいつの誕生日なのか?」

鉄球兵士「……」コクコク

魔王「マジかよ…………」

鉄球兵士「…………」ガシャン

魔王「……何で剣差し出してるんだよ。主君を殴ったから裁けってか?」

鉄球兵士「……」コクリ

魔王「そんな気起きねえよ……」

鉄球兵士「……」ガシャ

魔王「だからって自決しようとすんなよ……お前が死んだら、お前の娘が悲しむだろ……」

鉄球兵士「…………」ガシャ……

魔王「それに、お前がいなくなったら俺も寂しいし…………」

鉄球兵士「……!」ガション!

鉄球兵士「…………」ドゲザァ ズリズリ

魔王「いや、土下座はやめろって」

魔王「正直あいつに謝りたいんだけどよ……どういう顔で会えば良いのかわからねえし」

魔王「誕生日なら、何か贈り物でもしてやるべきだよな」

鉄球兵士「……!」コクコク

魔王「……女って、何を贈れば喜ぶんだ」

鉄球兵士「…………」

魔王「宝石とかの装飾具?」

魔王「あいつ男っぽい格好してるし、そういうの好きかなぁ……」

側近「ボーイッシュな子でも、実は女の子らしいものが大好きというパターンと」

側近「本当に女の子らしいものを好まないパターンがありますからねえ」

側近「ちょっとその判断つけられないですよね」

魔王「…………じゃあどうすりゃいいんだよ」

側近「まあ、仮に好まない物をもらったとしても」

側近「迷惑だと思うと同時に、心のどこかでは喜びを感じる場合もあるでしょうし」

側近「お詫びのついでにダメもとで何か用意してみたらいかがです」

鉄球兵士「……!」コクコク

魔王「…………」

側近「まあ、本気で嫌われているのなら」

側近「上手くいかない場合も想定しておいてくださいね」

魔王「…………」ズーン

サキュ「そもそもどういう反応を予想してたのよぉ」

勇者『きゃーえっち変態―!』バチコーン

勇者『ばーかばーか変態!! さっさと帰れあほー!』プンスカ

魔王「みたいなの」

サキュ「時と場合とやり方によってはそんな反応が返ってきただろうけど……」

魔王「……はあ」

サキュ「減るもんじゃなしちょっとお触りするくらい良いだろーって気持ちでセクハラしたんでしょ」

魔王「お前だってやっていたではないか」

サキュ「私は淫魔だしぃ、女の子同士だし」

サキュ「貴方、女心の勉強はしときなさいよね」

魔王「…………」

サキュ「あ、責任取ってあの子と結婚するとかどう?」

魔王「……拒絶されるに決まっている」

サキュ「さあねえ」

魔王「………………」

サキュ「元気ないわねぇ? なんなら今夜……どう?」

魔王「お前の奉仕はいらん」

勇者「…………」

魔王「な、なあ、勇者…………」

勇者「……」

魔王「悪かった。ごめん」

勇者「………………」

魔王「ごめんって…………」

勇者「…………」

勇者「……僕、いつ殺されてもおかしくないんだよね…………?」

魔王「なっ……」

勇者「もし人間の国に捕まってる人質が殺されれば、僕だって当然殺される」

勇者「そうじゃなくても、人間と和平を結びたがっていない魔族に殺されるかもしれない」

勇者「ねえ……僕、やっぱり……」

勇者「散々痛めつけられて、穢されて、最終的には……殺される運命なのかな……?」

魔王「そ、そんなことをするか!」

勇者「そう……しようと……してたでしょ…………?」

魔王「っ…………」

勇者「本当に……おうちに帰れるのかな…………?」

勇者「怖い……怖いよ…………」

魔王「…………ごめん」

勇者「何で今更謝るの……? あんなに楽しんでたでしょ……?」

魔王「……怖がらせて、怒っているところを見ようとしていただけで」

魔王「そんな……深いことをしようとしていたわけでは」

勇者「でも触ったじゃん!」

魔王「…………」

勇者「撫で……られた……体中、触られちゃった……」

勇者「やだ……いやだよ…………怖いよ……」

勇者「本当は……ずっと、ずっと怖かった。捕まった時からずっと」

魔王「…………」

勇者「……出てって」

魔王「……」

勇者「ここから出てって!!」

魔王「勇者、どうか話を聞いてくれ」

魔王「今日……誕生日なんだろ」

勇者「……そうだよ。こんな最低な誕生日はじめてだよ!」

魔王「な、なあ」

勇者「うるさいうるさいうるさい!」

勇者「お前の話なんてもう聞きたくない!」

魔王「…………」

勇者「も……いやあ……」

勇者「お父さん……お母さん……お兄ちゃん…………」

勇者「会いたい……会いたいよお……」

勇者「も……二度と会えないのかなあ……」ガタガタ

魔王「…………」




魔王(渡せなかった……)

魔従妹「うふふ」

勇者兄「あはは」

魔従妹「はい、あーん」

勇者兄「あむっ! 魔従妹が作った料理はおいしいなあ」

魔従妹「まっ、あなたったらあ」

勇者兄「人質交換の後も、こっそり会おうな」

魔従妹「もちろんですわ」

魔従妹「できることなら、こちらに嫁ぎたいですわ」

魔従妹「私、本当は……あちらに帰ってはなりませんもの」

魔叔父「そうか、人質交換の日が決定したか」

魔叔父「ふん……人間などという下等生物と和平を結んで一体何になるというのだ」

魔叔父「勇者を殺せ。人質を殺せば、人間共も黙ってはおらぬだろう」

部下A「はっ」

魔叔父「戦争さえ起きれば、娘はどうなっても構わん」

魔叔父「幸い、魔王は腑抜けておる」

魔叔父「仮に暗殺に失敗したとしても、傀儡にする準備はもうじき整うだろう」

魔叔父「そうなれば、娘を取り戻し、魔王と婚姻を結ばせれば良いのだからな」

魔叔父「万が一魔王が私に従わなかった場合は、生まれた子を洗脳するまでだ」

数週間後

魔王(結局、あれから一言も話さないまま)

魔王(あー…………)

側近「時間が経てば、きっと勇者の気も落ち着くでしょうって」

魔王「俺もうほんとだめだわ……」

側近「歴代、これほど情けのない魔王が存在したでしょうか」

魔王「魔歴史上最も情けない魔王で良いよもう……」

側近「たかが小娘一人に嫌われたくらいでだめになる魔王ですか」

側近「……はあ」

側近「勇者が人間の国に帰るまでの日数も少ないんですから」

側近「せめて人質交換の日までには気を取り直してくださいよ」

勇者「あ、鉄球兵士さん」

鉄球兵士「……」ガシャ

勇者「またお花持ってきてくれたの? ありがとうね」

鉄球兵士「…………」ナデナデ

勇者「……えへへ。ありがとう」

鉄球兵士「……」

勇者「魔王を許してあげてほしい?」

鉄球兵士「……! …………!」

勇者「あいつは馬鹿でガキでしょうもない奴だけど、すごく後悔してる?」

勇者「……サキュバスさんからも、側近さんからも、そう言われたよ」

勇者「でも、でも……」

勇者「体を触られたことだけは、どうしても……許せないよ」

勇者「ほら、もう時間だよ。持ち場に戻って戻って!」

部下A「勇者の部屋はここで間違いないな」

部下B「ああ」

部下A「手っ取り早く済ますぞ。隙を付いて一瞬で殺せ」

部下A「標的は魔力を封じられている。手こずりはしないだろう」



魔王「お前達、そこで何をしている」

部下A「ま、魔王陛下!」

魔王「……勇者を殺すのか」

部下B「いえ、私達は」

魔王「…………お前達は叔父上の部下だったな」

部下A「ひっ」

魔王「すぐに殺すわけにはいかんが」

魔王「…………覚悟しろよ」

勇者「ねえ、何か騒がし……」ガチャ

魔王「っ!?」

勇者「あ……」

勇者「……戦ってるような音が聞こえたんだけど」

『人間と和平を結びたがっていない魔族に殺されるかもしれない』

魔王(……不安がらせるようなことは言わない方が良いな)

魔王「兵士同士が取っ組み合いをしていたから沈めただけだ。心配するな」

勇者「……そう」ガチャン

魔王「………………」

魔王「此奴等を牢に入れておけ」

兵士「はっ」

側近「甘くないですか。直ちに処刑するべきです」

魔王「……尋問してからだ」

側近「そりゃそうですけど」

魔王「……」

側近「魔叔父殿が怖いんじゃないですか?」

魔王「……馬鹿な事を」

側近「ずっと避け続けているじゃないですか」

魔王「…………」

…………
……

側近「魔叔父殿の策略だったようですね」

側近「やはり、魔叔父殿は危険な存在です」

側近「しかし、魔王様に次ぐ権力の持ち主ですから、下手に手出しも出来ない」

魔王「…………」

側近「下手をすれば貴方の貞節も奪われかねない」

魔王「それは言うな」

側近「勇者ちゃんも、魔叔父殿に狙われる貴方と同じ気持ちだったのではありませんか」

魔王「なっ……」

魔王「俺は、俺はそんなんじゃ…………」

人質交換の日・国境

魔王(結局許してもらえないままかよ……)

魔王(…………まだ、あれも渡せていないのに)

勇者兄「勇者ー! 無事かー!?」

勇者「おにーちゃーん!!」

魔王「おいー魔従妹ー……無事かー……?」

魔従妹「やる気ないわね貴方……」

勇者兄『じゃあ、約束の場所で』コソコソ

魔従妹『ええ、必ず行くわ』コソコソ

国王「よし……同時に人質を交換しろ」

勇者「お母さん! お母さん!」ダキッ

勇者母「ああ、勇者……良かった……」

勇者父「勇者……!」

勇者「お父さん!」

勇者兄「勇者……向こうで大切にしてもらえたか?」

勇者「全然。地獄だった」

勇者兄「え……」

勇者兄「重要な人質なんだから、蔑ろにされたなんてことは……」

勇者「人間から見えないところでならさ……何されてたってわからないでしょ?」

勇者兄「勇者…………」

魔従妹「ただいま戻りました、お父様」

魔叔父「よくぞ帰った、我が娘よ」

魔王「お帰りー……」

魔従妹「何不貞腐れてるのよ、貴方……」

魔従妹「ところでお父様、城に戻ったらお話したいことが……」

夜 窓際

勇者(帰って来れた)

勇者(お父さん達にも、また会えた。ちょっと遅れたけど、誕生日も祝ってもらえた)

勇者(僕は、幸せなんだ)

勇者(生きて自分の家に戻って来れて)

勇者(この場所にいる)

勇者(それだけで、この上なく幸せなんだ)

勇者(寂しさを感じるわけなんて、ない)


勇者(鉄球兵士さん達、今頃どうしているのかな……?)




勇者兄「何故ですか国王陛下!」

勇者兄「魔族との和平は締結されました」

勇者兄「それをより強固なものにするためにも、悪い話ではないでしょう!?」

国王「ならん! 穢れた血と交わることなど許せん!」

勇者兄「ならば私が魔の国へ行きます!」

国王「ふざけるでない! お主は自分の立場を分かっておるのか」

国王「人間にとってなくてはならない、貴重な勇者の血を引いておるのだぞ!」

国王「その血を魔族に混ぜ合わせれば、どのような化け物が生まれることか……!」

勇者兄「遙か南の大陸では、」

勇者兄「魔王と勇者が結ばれることにより、長き平和がもたらされたのです」

勇者兄「我等も追随すべきです!」

国王「口が過ぎるぞ。己の身分を弁えよ」

勇者兄「くっ……」


勇者兄「何だよ……いつだって、お前等を守ってきたのは俺達の一族じゃないか」

勇者兄「それなのに、どうして我が儘の一つを通しちゃくれないんだ……!」

勇者兄「魔王に唯一対抗できる力を持ってるってのに、いつの時代も俺達は国家の犬……」

勇者「お兄ちゃん? どしたの?」

勇者兄「いや、何でもないんだ。ちょっとイラついちゃって」

勇者「そっか」

勇者兄「……なあ、人間と魔族が結婚するってそんなにおかしなことかな?」

勇者「…………そんなことはないんじゃない?」

勇者「魔王城にいる時、側近さんから聞いたんだけど」

勇者「南以外の大陸でも、最近は勇者と魔王が結婚してるんだって」

勇者「北や西の大陸では、もう子供が生まれたって」

勇者兄「……! やっぱり、俺達はおかしくなんてないんだよな……?」

勇者兄「くそっ……この国は血に拘りすぎてるんだよ……!」

勇者兄「魔族の血が汚いとか、位が高いほど血が清らかとか……!」

勇者「お兄ちゃん……?」

勇者兄「あ、すまんすまん。お前はもう寝な」

勇者「うん…………」

数日後

勇者兄「国王陛下も、誰も俺達のことを認めてはくださらなかった」

魔従妹「私も、お父様は認めてくださらなかったわ……」

魔従妹「ああ、でも、私……このままでは……」

勇者兄「どうしたんだい」

魔従妹「……あなた以外の人と結婚させられてしまうの!」

勇者兄「な……なんだって……」

魔従妹「お父様は、私と魔王を結婚させることによって実権を握ろうとしているのです」

魔従妹「人間嫌いの父のことです。実権を握れば、戦争を起こすに決まっていますわ!」

勇者兄「そんな!」

魔従妹「あなた以外の人と結ばれるなんて嫌!」

勇者兄「なあ、魔従妹……」

勇者兄「俺達…………一緒に逃げないか」

魔王「…………はあ」

側近「まーた溜息ですか」

魔王「……別に」

側近「そんなにあの子が好きなんですか」

魔王「っ……」

側近「好きな子の怖がっている表情や怒っている表情を見るのが楽しかったんですよね」

魔王「……自分がガキすぎて情けなすぎる」

側近「そう思いながら大人になるもんですよ」

勇者「…………はあ」

勇者母「勇者ちゃん、どうしたの?」

勇者母「せっかく無事に帰って来られたのに、このごろ元気がないわよ?」

勇者「……別に」

勇者母「向こうで好きな人でもできたの?」

勇者「そんなんじゃない! 正反対だもん!」

勇者母「そう? じゃあ一体何を悩んでいるのかしら」

勇者「……何でもないよ。ただ、自分の気持ちがよくわからないだけ」

勇者(セクハラされる前は、本当は……そんなに嫌いじゃなかった)

勇者(だって…………)

半年後

勇者「あれ? お兄ちゃん? どこー?」

勇者「いない……一緒にゲームしようと思ったのに」

勇者(置き手紙……?)

勇者「愛する人と共に遠い地で暮らします。捜さないでください……?」


国王「なんということだ……人間に必要不可欠な戦力が消えてしまった」

国王「魔族に隙を突かれなければ良いのだが……」

臣下「陛下、以前人質に取っていた魔族の女も行方不明だということです」

国王「なん……だと……」

臣下「勇者兄は誘惑されたのでしょう」

国王「魔性の女め……」

魔叔父「くっ……!」ダンッ

魔叔父「何ということだ……これでは計画が……」

魔叔父「この私が裏から実権を握るという計画が成り立たん…………!」

魔叔父「…………ああ、そうか。その手があったか」


魔王「叔父上、お呼びですか」

魔叔父「近くに寄りなさい」

魔王「…………」

魔叔父「……」ガッ

魔王「っ!?」

魔王「お、叔父上……?」

魔叔父「魔王よ」サスサス

魔王「ひっ……」

魔叔父「我がものになれ」

魔王「なっ…………」

魔王「……ふざけないでください」

魔王「勇者を殺そうとした貴方を、俺は決して許しません」

魔叔父「お前が私に抵抗できるのか?」

魔叔父「まだ未熟なお前を、魔の王として立ててやっているのはどこの誰だ」

魔王「…………」

魔叔父「兄者と義姉者によく似ている」サワ

魔王「っ…………」ゾワ

魔叔父「魔王を務めるには、この体は細すぎるな」スーー

魔王「触れな、いでくだ……さ……い」

魔叔父「どうした? 反抗しないのか?」

魔王(何だこれ……力が入んねえ)

魔叔父「お前は私の言うことを聞いていれば良い」

魔王「貴方に従いなどしない!」

魔叔父「いつまでそう言っていられるかな」

魔王「や、め……やめろ…………」

魔王(気持ちわりぃ…………)

魔王(勇者……お前もこんな気持ちだったのか……?)

翌日

魔王(尻が痛ぇ……)

側近「魔王様? 何か悪いことでもあったのですか」

魔王「なっ……なんでもねえよ」

魔王(気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い)

魔王(……死にてえ)

側近「…………」

魔王(……メッセでもやって気を紛らわすか)

南東魔王:嫁にアヘ顔見せてくれってせがまれてるんだが

南東魔王:男のアヘ顔なんて気持ち悪いだけではないだろうか

北東魔王:嫁さんが見たがってるんなら見せてやればいんじゃねえの

南東魔王:だが流石に抵抗があってな……

北魔王:お前が無意識にアヘ顔を晒してしまう程

北魔王:嫁さんがとてつもない責めをすれば良いのではないか

南東魔王:あ、なるほど。嫁にそう言ってみるわ


魔王(下ネタ混ざる気になれねえ……)

…………
……

側近「魔王様、まさか……」

魔王「いいって。俺が我慢してれば、叔父上もあんまし勝手な事はしないっつってるし」

側近「しかし……」

魔王「いいんだよ、もう。下手に逆らったら、今すぐにでも人間を襲いに行きかねねえし」

鉄球兵士「…………」ガシャ……

魔王「もう……放っておいてくれ…………」

勇者兄と魔従妹が共にいるところを目撃したという情報が入り、

人間側は、魔従妹が勇者兄を誘惑した、

魔族側は、勇者兄が魔従妹を誘拐した、とそれぞれ主張した。

二人の望みとは裏腹に、事態は悪い方向へと進んでいった。

さらに半年後

国王「魔王城より帰還してからの一年で、お主は勇者の一族に相応しい力を身につけた」

国王「お主の兄の代わりに戦ってくれるか」

勇者「はっ」

国王「完全に開戦する前に」


国王「魔王を抹殺せよ」

魔王「……」

魔叔父「お前がどう足掻こうと、もしくは私がどう動こうと」

魔叔父「和平の決裂は避けられなかっただろう」

魔叔父「人間が魔王族の娘を攫ったのだからね」

魔王「…………」

魔叔父「魔族と人間が争うのは当然の摂理なのだよ。そう重く受け止めることはない」

魔王「ですが、叔父上…………」

魔叔父「お前はただ戦えば良い。こっちにおいで」

魔王「…………」

魔叔父「良い子だ」ナデ

魔王「…………」

魔王(勇者…………)

勇者(魔王城……妙に静かだ)

鉄球兵士「…………」ガシャガシャ

勇者「あ、久しぶり……元気だった?」

勇者「……って、今は敵同士……なんだよね……」

鉄球兵士「……」クルッ

勇者「……案内してくれるの?」


勇者「そっか、皆避難してるんだね。勇者の一族に対抗できるのは魔王族くらいだから」

勇者「余計な被害は出さないようにしてるんだね……」

勇者「一年振りだね、魔王」

魔王「…………」

勇者「元気ないね? 去年とは大違い」

魔王「…………勇者」

勇者「………………」

魔王「そこに……そこに、いるんだな」

魔王「勇者…………」

勇者「魔王……?」

勇者(どうして、そんなに虚ろな目をしているの)

勇者「ねえ、始めようよ。僕達戦わなくちゃいけないんだよ」

魔王「…………」

勇者「……そっちから来ないなら、こっちから行くから」



ガキィイン

勇者「ねえ、どうして防御しかしないの!?」ブンッ キィン

勇者「ちゃんと戦ってよ!」

魔王「…………」ググ

勇者「……あの時、僕が貴方を許していれば、こんな事にはならなかったのかな」

勇者「あの時、意地を張らずに、側近さん達の言うことを聞いていれば……」

勇者「貴方がこんな抜け殻みたいになることはなかったのかなあっ!」

魔王「……勇者、ごめんな」

魔王「俺さ、自分が汚されて初めて」

魔王「お前がどれほど苦しんでいたのか理解できたんだ」

勇者「……どういうこと」

魔王「…………ごめんな」

勇者(戦いたくない)

勇者(戦いたくないよ)

勇者(でも、戦わなくちゃいけないんだ)

勇者「はっ!」

魔王「うっ……」

勇者「……ねえ、本気出してよ」

勇者「そうしてくれないと、こっちだって思う存分戦えないでしょ」

勇者「本気で戦ってよっ!!」

勇者(魔王は、戦争なんて望んでいなかった)

勇者(でも、魔王じゃどうしようもないほど、開戦しそうになってるんだ)

勇者(魔王を殺せば、戦争は止められる…………!)


勇者「…………はぁああああああ!!」

ザシュッ

勇者「…………」

魔王「…………」

勇者「……ねえ、どうして避けてくれなかったの」

魔王「…………」

勇者「どうして、この手で貴方を殺さなくちゃいけなかったの」

魔王「…………」

勇者「……本当はさ、魔王のこと、そんなに嫌いじゃなかったんだよ」

勇者「最初に牢屋に連れて来られた時、怖くて怖くて仕方がなかった」

勇者「でも、貴方は……僕を殺そうとするどころか、嫌っている様子も全く見せなくて」

勇者「幼稚で馬鹿らしかったけど、ありのままで接してくれた」

勇者「そういうのがさ、気が紛れて、逆に癒しになってて」

勇者「ホラーゲームだって、元々感じてた怖さを忘れさせてくれた」

勇者「ゲームの怖さと、現実で殺されそうになる怖さってなんだか違うんだよね」

魔王「…………」

勇者「嫌がらせされたらすっごくむかつくんだけど、一人で怯えるよりはずっとマシだったし」

勇者「叫んだ後は何故かすっきりしててさ、多分ストレス解消になってたんだろうね」

魔王「…………」

勇者「魔王の言う通り、僕Mっ気があってさあ」

勇者「正直いじめられて嬉しいなんて思っちゃったりさ」

魔王「…………」

勇者「それに、ずっと一緒にいるうちに、まるで幼馴染同士がじゃれ合ってるような感覚になったんだ」

勇者「押し倒して体を触ったことだけはどうしても許せなかったし」

勇者「魔王のことを男の人として意識しちゃって、怖くなっちゃったけど」

勇者「貴方が本音で接してくれたから」

勇者「きっと分かり合えるんじゃないのかなって思ったこともあった」

勇者「もしかして、部屋の外で物音がした時、貴方は僕を守ってくれたんじゃないの?」

勇者「倒れてた人達の服装が普通の兵士さんと違ったから、そう思っただけなんだけど」

勇者「ねえ、実際はどうだったの?」

魔王「…………」

勇者「答えてよ……答えてよぉ……」

魔王「……ぅ、しゃ…………」グ

勇者「魔王…………? 生きてるの…………!?」

魔王「…………」ギュウウ

勇者「…………!?」

勇者「ま、まお…………」

魔王「…… …… …… ……」

勇者「ごめんな? って……何回謝れば気が済むの?」

魔王「…… …… …… …… ……」

勇者「え? 何て言ったの? 聞こえないよ……」

魔王「…… ……」

勇者「ね、ねえ……もう一回言ってよ……」

魔王「……」

勇者「魔王? ねえ、魔王ってば」

魔王「」


勇者「もう一回言ってってばぁ…………」

勇者(あれ……いつのまにか、手の中に……何かが…………)

勇者「髪飾り……?」

勇者「魔王、僕こんなの似合わないよ。全然女の子らしくないもん」

勇者「こんな可愛らしい飾りなんて、付けてても笑いものになるだけだよ……?」

  

勇者「何か言ってよ……」

勇者「どうしてこんなのくれたの?」

  

勇者「一体何のために? ねえ、どうして?」

  

勇者「誕生日、覚えていてくれたの……?」

  

勇者「そっか、最期は」

  

勇者「『おめでとう』って、言ってくれたんだ」

勇者「…………」

勇者「起きて! 起きてよ!」ユサユサ

勇者「まだ、僕は『ありがとう』って言ってない!」

勇者「セクハラなんて、責任とって結婚してくれればもう許すからさあ!」

勇者「起きて、また前みたいにいじめてよ!」


勇者「起……き…………て…………よ…………」

勇者「……………………」

魔叔父「そうか、魔王は負けたか」

勇者「……」

魔叔父「裏から上手く操って戦争を引き起こしたかったのだがねえ」

魔叔父「これでは致し方ないな」

勇者「……」

魔叔父「なあ、勇者殿。世界が欲しくはないか」

魔叔父「その力があれば、この大陸全土を支配する事も可能だろう」

魔叔父「だというのに、いつまでも国の言いなりではつまらなくないのか」

勇者「…………」

魔叔父「それにしても情けのない甥だ」

魔叔父「これほどあっさりと敗北してしまうとは」

魔叔父「いや、自ら敗北を望んだのか」

勇者「……」

魔叔父「やんちゃが過ぎるため躾けたのだが、大人しくさせすぎたようだ」

勇者「……魔王に、何をしたの」

魔叔父「なあに、ちょっと懐柔してやっただけさ」

魔叔父「意気消沈しているところを付け込むのは容易かった」

魔叔父「最初は少々生意気だったが、段々と従順になっていってね」

魔叔父「戦争を起こす旨を含むことを言えば反抗したが」

魔叔父「少し脅してやればすぐに扱いやすくなった」

勇者「…………」

魔叔父「我が娘も、私に実権を握らせまいとして姿を晦ましたのであろうが」

魔叔父「無駄な足掻きだったな」

勇者「……」

魔叔父「さあ、回答を聞こうかね」

魔叔父「この大陸を共に治めないか」

勇者「…………ざけるな」

勇者「ふざけるな!」ゴオッ

魔叔父「……そうか。君の答えがそうならば、私も終わりだ。潔く死のう」

勇者「殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる」

勇者「殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる」

勇者「殺してやる殺してやる殺してやる許さない許さない許さない許さない」

勇者「許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない」

勇者「許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない」



勇者「魔王を傷付けた、その汚い性器から打っ潰してやる」

勇者「ねえ、魔王」

勇者「僕、本当に、昨日までは、魔物も魔族も、一度も殺したことなんてなかったんだよ」

勇者「でも、僕、殺しちゃった。今日、二人も殺しちゃった」

勇者「そう、僕が殺した」

勇者「こ、ころ、ころし、ころ、ころした」ガクガクガクガク

勇者「ころ、した、ぼくがこ、ろ、したんだこ、ころ、ころ、ころ、し、た」

勇者「あかい、ち、まっか、いや、いやだ、こんなのいやああ」

勇者「ころしたしんだしんだころしたころしたころしたもううごかない」ガクガクガクガク

勇者「にくへんになってぐちゃぐちゃになってちとあぶらがひろがってぐちゃぐちゃにああああ」


勇者「僕、勇者向いてないや。虫を殺すことにすら抵抗あるもん」

勇者「ほら、髪飾りつけてみたよ」

勇者「こんな僕だけど、似合ってるかな…………?」


勇者「今、そっちに、行く……から……」


UNFORTUNATE END

バッドエンド嫌いなのに
ほのぼのイチャラブエンドばかり書いているとバッドエンドを書きたくなる法則
これから分岐投下する

魔王(酷い夢を見た)

魔王(やけにリアルな夢だったな。まるで、実体験して戻ってきたような…………)

魔王(ただの夢じゃ……ないような気がする)

魔王(叔父上に抱かれ始めてから三ヶ月か……)

魔王(マジ気持ちわりぃ)

魔王(なんか叔父上は俺と魔従妹を結婚させようとしてみたいだけど)

魔王(俺の子供を産んでくれる人っつったら勇者しか思い浮かばないんだよな。何でだろ)

魔王(まあ、もうあいつに触れることなんてできないんだろうけどな)

魔王(仮に許してもらえたとしても)

魔王(おっさんに犯されたような野郎に抱かれたいと思う女なんていねえだろ)

ポコン

魔王(メッセか? 誰だよこんな時に。無視でいいか)

ポコン ポコン ポコン

魔王(っだー! るっせえ! 見りゃあいんだろ見りゃあ)

北東魔王:お前最近元気なさげだけどどうしたの?

北東魔王:おい答えろよ

北東魔王:答えろやDT

北東魔王:ちなみに俺DT卒業したからwww

魔王(うぜえ……俺なんて非処女だよほっといてくれ)

魔王:お前にゃ俺の気持ちなんてわかんねえよ

北東魔王:なんという思春期

北東魔王:心配だからメッセしてやってんのに

魔王:ほっとけ。お前みたいな暇人ゲーオタとは違うんだよ

北東魔王:俺だって人間との交渉で頑張ってんだぞ?

北東魔王:はやくあったけえ土地に住みてえし

北東魔王:お前のとこ、和平が決裂しそうだって聞いたけどどうなの

魔王:叔父上はなんとかなるだろっつってるけど

魔王:どうせ俺の見えないところで人間との戦争を起こそうとしてるんだろうな

北東魔王:その叔父さんまずくね? 解雇しろよ

魔王:無理だって

北東魔王:何で

魔王:だって叔父上だぞ? 親父の弟だぞ?

北東魔王:だから何だよ

魔王:は?

北東魔王:まあお前まだガキだもんな大人怖いよな

北東魔王:お前の親父さんには何か言ったのか? メッセで連絡取れるだろ

魔王:親父は叔父上を信用してるし何言っても無駄

北東魔王:じゃあさ、お前の国で一番偉いの誰だよ

魔王:俺。でも叔父上がかなり権力握ってるし

北東魔王:じゃあお前と叔父さんが戦って勝つのはどっちだよ

魔王:俺だろ。魔王の力継承したし

北東魔王:ならこわがんなよ

魔王:力使ったら制御できなくて暴走するかもしれねんだもん

魔王:俺お前と違って上手く魔王の力扱えねえし

北東魔王:お前だせえ

魔王:は?

北東魔王:だっっっっっせえええええええええ

北東魔王:少しくらい暴走してもいいだろ

北東魔王:そっちの大陸の魔王はお前だろ?

北東魔王:邪魔な奴とか、権力握り過ぎてる奴とかはとことん排除すりゃいいんだよ

北東魔王:人間のじめじめした政府じゃねえんだからさ

北東魔王:いくらなんでもお前怖がりすぎwww

魔王:それができりゃ苦労してねえよ

北東魔王:だっせええええ

魔王:お前こそ男に掘られたことあんのかよ? あ?

北東魔王:ねえよ

北東魔王:西魔王はあるらしいけど

魔王:へ?

北東魔王:ガキの頃ずっと親兄弟に掘られ続けてたらしい。カワイソス

魔王:マジ?

北東魔王:当時はめっちゃ塞ぎこんでたな。今のお前みたいに

北東魔王:あ、俺がバラしたこと言うなよ。他人に知られるの嫌がってたから

北東魔王:その上、一番上の兄貴が死ぬ前までは魔王に必要な訓練受けてなかったらしい

北東魔王:まあそういう奴でもちゃんと魔王やってんだしお前も元気出せや

魔王:あいつ元々勉強はできたんだろ

魔王:俺どうせ落ちこぼれだし

北東魔王:だからそうネガティブなのがだせえんだって

北東魔王:お前は魔王らしくすればいいんだよ

北東魔王:かなり悲惨な目に遭ってても魔王続けてる奴なんてたくさんいるし

北東魔王:まだ親父さんや叔父さんのことが怖いかもしんねえけど

北東魔王:今の魔王はお前なんだから多少のわがままくらいゴリ押しでも通しちまえよ

魔王(俺より悲惨な奴もいるんだな)

魔王(へこんでるのがアホ臭くなってきた)

魔王:わかったよ頑張りゃいいんだろ頑張りゃあ

北東魔王:そうそう。なんかお前危なっかしくて心配なんだよなあ。俺と境遇似てるし

北東魔王:まだガキだったのに魔王とかいう重苦しい仕事押し付けられてさ

北東魔王:親父無責任すぎだっての

魔王:帰って来たらボコるわ

北東魔王:ボコりてえのに俺の親父行方不明なんだよなくそっ

北東魔王:他なんか悩みとかある?

魔王:好きな女の子に嫌われた

北東魔王:何したんだよ

魔王:いじめまくった挙句セクハラした

北東魔王:馬鹿だろお前

北東魔王:元いじめられっ子の俺に何てことを言うんだ

魔王:お前が言えっつったんだろ……

魔王:何かいじめてる内に親近感沸いてさ

魔王:なんとなーく仲良くなったような気がしたんだよ

魔王:で、怖くて怒ってるところを見たくてセクハラしたら本気で悲しませてしまったというか

北東魔王:うわあ

北東魔王:ちゃんと謝ったのか?

魔王:謝ったけど聞き入れてもらえなかったんだよ殺してくれ

魔王:しかもあいつ故郷に帰っちまったからもう会えねえし

北東魔王:あちゃー

北東魔王:まあお前から会いに行くなりしてもっかい謝っとけ

北東魔王:じゃあ嫁がピク○ン誘ってるから落ちるわ

北東魔王:お前も一段落ついたらス○ブラ付き合えよ

北東魔王:何かあったら言えよ。先輩たくさんいるんだから

もしかして勇者パーティーに凌辱される魔王の人か?

魔王(こいつ、しばらく話さない内に大人っぽくなってやがる)

魔王(うぜえのは治ってねえけど)


魔叔父「魔王、私の部屋に来なさい」

魔王「…………」


魔叔父「ベッドに行って服を脱ぎなさい」

魔王(どうして今までこいつの言うことなんて聞いていたんだ)

魔王(こいつの権力が厄介なら)

魔王(分捕れば良いだけじゃないか)

魔叔父「……魔王」


魔王「…………いい加減きめえんだよ」

魔王「散々嬲りやがってよお!」ドゴォッ

魔叔父「うぐふっ!?」

魔王「男を犯して一体何が楽しいんだよ!? あ゛あ゛!?」

魔王「てめえの操り人形なんてもうこりごりだっつの!!」ドガッドガッ

魔叔父「ぐぅっ……魔王、わかっておるのか」

魔叔父「私に手を出せば……」

魔王「魔の王は俺なんだよお前なんかじゃねえ!」

魔王「親父の弟だからって偉そうにしてんじゃねえよ!」ドスッドスッ

魔王「よくも魔従妹を駒扱いしたな」

魔王「よくも俺を犯しやがったな!」

魔王「よくも勇者を殺そうとしたな!!」

魔叔父「この、ことが知れれ、ばお前も、もう人前には」

魔王「お前だって同じだろ!? 魔王を凌辱していた上」

魔王「それが原因で男じゃなくなったなんて知れたらなあ……?」

魔叔父「な、何をする気だ」

魔王「引っこ抜いてやるよ、お前のそのきたねえ棒」

魔王「玉まで全部打っ潰してやる」

側近「この頃、覇気がお戻りになられましたね」

魔王「まあな」

魔王(胸糞悪さは残るが、何もしないよりはマシだったな)

魔王「戦争起こしたがってる奴等を黙らせるぞ」

魔王「どうせ叔父貴が裏から煽ってたんだろ?」

魔王「あいつはもうまともに動けねえから」

魔王「容赦なくやっちまえ」

三ヶ月後

側近「だいぶダメージは与えなのですが」

側近「完全な制圧は困難だと思われます」

魔王「マジかよ」

側近「貴方が直接潰しに行ってくださいよ」

魔王「下手に魔王の力使ったら関係ない者まで巻き込みかねないしなあ」

魔王「ちょっと人間の国行ってくるわ」

側近「……はい?」

魔王「ちょっと考えがあるし」

魔王「どっちにしろ用があるし」

>>322
西魔王=女勇者パーティに凌辱されていた魔王

勇者(お兄ちゃん、今頃何処にいるんだろう)

勇者(魔従妹さんを誘拐したとかって噂が立ってるけど……)

勇者(戦争、起こらなければ良いんだけどなあ)

勇者(魔王も、必死に開戦を防ごうと頑張ってるみたいだし)

勇者(……今頃どうしてるんだろ)

勇者「あーもうばかばかばかばか!」ジタバタ

勇者「魔王のいじめっ子! 変態! スケベ!」ジタジタ

勇者「変態変態変態変態!!」バタバタ

魔王「だからごめんって…………」

勇者「うぇっ……?」ポカーン

>>335
それってなんてタイトル?

勇者「ひびゃあああなんかいる!?」

魔王「……会いに来ちまった」

勇者「どどどどうしてここがわかったの!?」

魔王「お前の魔力を追うくらい簡単だ」

勇者「いやででででもこっちに魔王が来てるって他人にバレたら大変な事に」

魔王「だから手短に済ませたい」

勇者「…………何の用」

魔王「その……」

魔王「すまなかった!!」ドゲザァッ

>>339
女勇者「魔王凌辱する」
でググれば出てくると思う

勇者「…………!?」

魔王「マジでごめん。ごめんごめんごめん」ズリズリ

勇者「……」

魔王「お前の気持ちが痛過ぎるほどよくわかった」

勇者「……どういうこと」

魔王「叔父貴に犯された」

勇者「えっ……?」

魔王「お前をいじめていたバチが当たったんだろうな」

魔王「抵抗しようにも、押し倒されたら体に力が入らなくなって」

魔王「なんかもう上手く表現できないけどすっげえ怖いんだよな」

魔王「叔父貴に犯されて初めて、お前がどれほどの恐怖を味わったのか理解できた」

勇者(どういうことなの……)

魔王「だから好きなだけ、殴るなり蹴るなりしてくれ」

魔王「お前が苦しんだ分痛めつけろ」

勇者「そ、そんなこと言われても」

魔王「…………あーやっぱ駄目だわ」

魔王「俺なんかに触ったらお前が汚れちまう」

魔王「おっさんに撫で繰り回された上舐められまくった体なんて気持ち悪いだろ!?」

勇者「うん超気持ち悪い」

魔王「…………」グサッ

勇者「……でもさ、そんなことされて一番気持ち悪い思いをしたのは魔王でしょ」

勇者「よくわかんないけど、僕なんかよりずっとつらい目に遭ったんだよね」

勇者「…………かなり苦労してるみたいだし、もういいよ」

魔王「許して……くれるのか……?」

勇者「許さないと何回でも謝るでしょ?」

勇者「それはそれで激しくうざい」

魔王「……ごめん」

勇者「……冗談だよ」

勇者「こっちの気持ちを分かってくれたどころか」

勇者「僕が経験したことがないほど苦しんでるでしょ」

勇者「そんな相手を許さない方が、僕にとっては難しいから」

勇者「……魔王のことなんて大っ嫌いなはずなのにさ」

勇者「離れたら、なんだか寂しかった」ギュウ

魔王「ゆ……うしゃ……?」

勇者「あんなにいじめられたのにさあ……何でかな? 僕、おかしいよ」

魔王「勇者、俺なんかに触ったら」

勇者「そんなの関係ない!」ギュッ

勇者「捕らえられている時、貴方が一緒にいてくれたら安心したの」

勇者「すっごく嫌な奴だったのに、本当に何でだろうね?」

バイさるくらったからルーターの電源切ってIP変えてた。
再開

魔王「……お前さ、怒ってる時の方が元気に見えるんだよな」

魔王「初めてお前を見た時、お前、怯えて震えてたんだ」

魔王「どうせなら、ひたすら叫ぶ方が楽しいだろ……?」

勇者「……ばーか。ドS」

魔王「お前こそドMだろ」

勇者「違うもん」

魔王「あ……もう日付回ったか?」

勇者「……12時丁度だね」

魔王「…………これ。受け取ってほしい」

勇者「何これ……髪飾り?」

魔王「……何渡せばいいのかわかんなくてさ」

魔王「今日……誕生日だろ」

勇者「何で覚えてるの?」

魔王「……去年渡せなかったことが心残りだったからな」

勇者「……そっか」

魔王「…………おめでとう」ボソ

勇者「…………ありがと」カアア

魔王「……勇者、戦争を止めたいか」

勇者「当たり前でしょ」

魔王「なら、協力してくれないか」

勇者「僕が協力すれば、止められるの?」

魔王「ああ。一緒に開戦を望む輩を制圧しないか」

勇者「する! 絶対する!」


魔王「あ、あとさ」

勇者「何? 子供はもう寝る時間」

魔王「…………お前さえ、良ければさ」

魔王「…………結婚して、責任取りたいなって」

魔王「あーでも断るに決まってるよな! ごめん! 帰るわ!」

勇者「えーちょっと待ってよ!」

魔王「だって俺散々お前をいじめてたし!」

勇者「それももういいから! というかいじめられてなかったら逆に精神死んでたし!」

魔王「どういうことだよ」

勇者「…………あーもう自分でもよくわかんないよ!」

勇者「心の整理がついたら教えるから!」

魔王「……じゃあ、どうすんだよ」

勇者「まだ僕13歳になったばかりだよ!? 結婚なんてよくわかんないって!」

勇者「でも、大人になったらそういう気になるかもしれないし!」

勇者「……それに…………」ガシッ

勇者「…………すき。なんでかよくわかんないけど、すき」

魔王「なっ…………」カアア

勇者「密着してゲームした時なんてさ……ゲームが怖いのとは別の理由でドキドキしちゃって…………」

魔王「お、俺、お前に嫌われる覚えならたくさんあるけど」

魔王「好かれる覚えは全くないぞ」

勇者「……」

魔王「やっぱおまえまz」

勇者「違うもん!!」

魔王「じゃあ何でだよ!?」

勇者「わかんないよそんなの! 落ち着いてから言うから!」

魔王「やーいマゾヒストー」

勇者「ムキイィィイイイイ」

開戦は防がれた。

決裂しかけた和睦の修繕には相当の時間と労力を要したが、

魔王と勇者の決死の努力により、平和は保たれた。


魔王「叔父貴がオカマ趣味に目覚めた」

勇者「えええ」

魔王「男根引っこ抜いたのは俺なんだが、まさかこんなことになるとは……」

側近「まあ良いんじゃないですか」

側近「すっかり腑抜けて大陸の征服なんて考えなくなりましたし」

サキュ「でも流石にみっともなさすぎだしい」

サキュ「お顔のお手入れの仕方は教えてあげようかしら……」

鉄球兵士「魔王陛下、平和になりましたし休暇を頂きたいのですが」

魔王「ああ、しばらく休め……って、お前喋れたのか。いつもテレパシーだけだったのに」

鉄球兵士「娘に声が気持ち悪いと言われていたのですが」

鉄球兵士「昨日届いた手紙に、普通に話しても良いと書いてありましたので」

魔王「何だそれ……」

勇者「でも良かったね! 娘さんに会えるよ」

側近「まあ最近やっと落ち着いてきましたし、他の部下にも休暇を与えましょうか」

側近「あ、そうそう」

側近「結婚式の日取りの相談がまだでしたね」

勇者「ん…………」カアア

勇者「お兄ちゃん達も見つかったし、招待したいな」

勇者「ああでもほんとにいつにしよう? な、なんか心臓がドクドクしてきた」

魔王「あー……まあゆっくり考えれば良いだろ。急ぐもんじゃなし」

勇者「……結婚しても、あんまりいじめちゃやだよ」

魔王「大切にするけどよ、お前いじめられたら絶対喜んでるだろ」

勇者「そんなことないもん! んもー!」

魔王「くくく……」

勇者「…………幸せにしてね」


FORTUNATE END

勇者が魔王に惚れたのは
勇者がマゾなのと、じゃれてる内に恋しちゃったから的な

あと、
北東魔王=女勇者「脱ぎたくないのにぃいい」魔王「脱げ脱げふははは」の魔王
です

勇者かわいかった乙!

あと北東魔王間違えて把握してた、ごめんなさいギャー

体を触られたのも、心の中のどこかでは悦んでいたはず
変態

あと
南東魔王=お前の一族ふたなりしか生まれないから の魔王
北魔王=愛しているので肉改造します の魔王

>>398
もしかして勇者「おしりをかじって~の方だと思ってたのか?
おしりの奴は脱ぎたくないの息子な

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