エレン「ワンピース……?」 (116)

――1年前

〝両鉄拳のフルボディ〟「ジョン・ジャイアント中将、メイナード中将! 間もなく目的の島に到着いたします!」

ジャイアント(巨人族)「ようやくか……。〝凪の帯〟にある島に行くのは面倒だな」

〝追撃のメイナード〟「巨人化実験の失敗で世界政府があの島を撤退してから100年は経っているんだろ?」

メイナード「そんなところに行って成果が得られるとは思えんがね」

ジャイアント「100年交流が無かったとはいえ、あの島も一応は世界政府加盟国なのだ。世界徴兵の対象となる」

ジャイアント「もっとも、徴兵よりもむしろ、実験失敗の結果、今あの国がどのような状況になっているのか確かめたいというのが政府の目的だろうがな」

メイナード「ふん……。まあほとんど情報のねえ国だ。イッショウさん並の猛者がいないとも限らんか」

〝寝返りのジャンゴ〟「……着岸します! これより、シンゲキ島カベタケーナ王国への上陸作業に移ります!」

――海岸近くの廃村

ジャイアント「どうにも寂れているな……」

〝黒檻のヒナ〟「調査が終わったわ」

メイナード「で、どうだった? ヒナ少将」

ヒナ「ダメね。人っ子一人見つけられません。――ヒナ失望」

メイナード「だろうな。どう見ても廃墟だこりゃァ」

ジャイアント「この荒れ様からすると、無人となって数十年は経っているな」

メイナード「巨人化実験失敗と無関係とも思えねェ。こいつは徴兵どころか生きている人間に会えるかどうかも怪しくなってきやがった」

ジャイアント「ともかく進んでみるしかあるまい。偶々ここが廃村となっていただけで、内陸部には人がいる可能性はある」

ジャンゴ「ご報告します! ヒナ嬢!」

ヒナ「何事です?」

フルボディ「あちらから多数の人間が全速力で駆けてきています!」

ジャイアント「なに……? ほォ、たしかに」

ジャイアント「巨人族に……3メートル程度の人間もいるな」

メイナード「なんだ、生存者がいたか」

フルボディ「し、しかしながら、少々不可思議なことが!」

メイナード「あァ?」

ジャンゴ「駆けてくる者達が全員揃って全裸なのです!」

メイナード「全裸ァ?」

ジャイアント「……確かに。全裸だな」

ジャンゴ「はっ! しかしながら! 満面の笑みの者も多く、我々を歓迎してはいるようです!」

メイナード「……どう思うよ、ジョンさん」

ジャイアント「おそらくは、全裸がこの国の文化なのだろう」

メイナード「そこまで非文明的な国が、世界政府加盟国にあんのか?」

ジャイアント「100年外界と交流が無かったのだ。退化したのではないか」

メイナード「まァ何にしろ、巨人ってのは実験の成功例だろう。政府にとっちゃ朗報だな」

メイナード「さて、せっかく出迎えてくれているんだ。応えてやるかね」

メイナード「とりあえず俺が接触してみる。ジョンさんとヒナは上陸作業を終えといてくれ」

ジャイアント「あァ、任せる」

ヒナ「了解ですわ」

巨人「」ドドドドドドドッ!

メイナード「カベタケーナ王国の諸君! 出迎えご苦労!」

メイナード「我々は世界政府海軍本部の者である!!」

巨人「」ドドドドドドッ

メイナード「我々は、カベタケーナ王国との交流の再開!」

メイナード「そして、諸君らの中から海軍の新戦力に相応しい人材を選出することを目的としてやってきた!」

巨人「」ドドドドドドドッ

巨人「」ピタッ

メイナード「お前が代表か? なら、国王のところまで案内してもらおう」

巨人「」ガシッ

メイナード「うおっ……」

ジャンゴ「き、貴様! いきなり何しやがる!? メイナード中将を放せ!」

メイナード「いや、いい。銃を降ろせ」

フルボディ「はっ、しかし!」

メイナード「王宮まで運ぼうとしてくれてんだろ」

メイナード「おい。こっちも鍛えてるんでね。運んでもらわずとも自分で歩け」




巨人「」パクッ

巨人「」ゴックン

ジャンゴ「め、メイナード中将おおおおおおおおおお!!」

フルボディ「め、メイナード中将が……食われたあ!!」

ジャンゴ「う、撃てええええええ! メイナード中将を助けるんだ!」

ドンドンッ 

巨人「」シュウウウウウ

フルボディ「だ、ダメだ! 巨人族相手が相手ではほとんど効果がねえ!」

ジャンゴ「や、ヤベェぞ、これは……!」

ギャアアアアアア!!

ジャンゴ「何事だァ!?」

海兵A「べ、別の巨人族が仲間を次々に食っています!」

フルボディ「なんだとォ!?」

海兵A「さ、さらに! 後続の巨人族が多数接近中! 3メートル程度の人間達もです! しかも全裸で!」

巨人「」グアッ

ガシッ

フルボディ「ぎゃあああ! は、放せ! 放せええええ!」

ジャンゴ「ぶ、ブラザァアアアアア!!」

海兵A「ふ、フルボディさんが、メイナード中将を食った巨人に!!」

フルボディ「助けてくれえええええええええええ!!」

巨人「」ビクンッ

フルボディ「いやあああああ……あれ?」スルッ ドサッ

メイナード「お、お、お、おぉぉぉ……」ビリビリビリッ

巨人「」ビクンッビクンッ

メイナード「おらあああああ!!」ベリィッ

フルボディ「め、メイナード中将おおおおおおおお!」

ジャンゴ「や、やった! 腹を突き破ってメイナードさんが出てきたぞ!」

海兵A「グロい!」

メイナード「ふうううう」ドンッ!!

巨人「」バターンッ

ジャンゴ「ご無事ですか!?」

メイナード「ああ、死ぬほど臭ェがな……」

メイナード「なんなんだ、こいつらは。いきなり人を食いやがって」

ギャアアアアア

フルボディ「……! そ、そうだ、あっちにも巨人が!」

メイナード「チッ、どいてろお前ら」

メイナード「月歩!」トンッ

巨人「」ンアー

メイナード「うらあっ!!」ドンッ!

巨人「」ドスーンッ

フルボディ「おお! 巨人を吹き飛ばしたぞ!」

ジャンゴ「さすがは海軍本部中将だ!」

海兵A「あァッ!?」

フルボディ「どうした!?」

海兵A「う、後ろから大量の巨人族が!」

ジャンゴ「!! そ、そうだった!! まだいたんだ!」

フルボディ「め、メイナードさん、一体どうすれば!!」

メイナード「くそっ……数が多すぎるな」

海兵A「う、うわあああああ!」

ジャンゴ「こ、今度は何だ!?」

海兵A「きょ、巨人が……メイナード中将が倒した巨人達が……立ち上がりました!」

メイナード「なにィ!?」

巨人「」ヨロッ

巨人「」ズシンズシン

メイナード「おいおい、嘘だろ。一匹は腹までかっさばいたんだぞ」

ジャンゴ「……お、終わりだ。もうダメだ……」

メイナード「クソったれ。なら何度でも」バッ

メイナード「倒してやるだけだ!!」ドンッ

巨人「」ドサッ

海兵A「こ、後続の巨人達が到達しました!!」

巨人「」グアッ

メイナード「チッ」バキッ

巨人「」ドスーンッ

フルボディ「め、メイナード中将! 後ろです!」

メイナード「なに!?」

巨人「」グオッ

バキャッ

メイナード「ぐあっ!」

フルボディ「め、メイナード中将おおおおお!」

ジャンゴ「メイナード中将に巨人の拳が直撃いいいいいいい!!」

メイナード「クソが……!」バッ

ギャアアアアアアア タスケテクレエエエ

メイナード「!」

海兵A「み、味方が次々に巨人に食われていきます!」

ジャンゴ「え、援護だ! 援護するんだ!」

フルボディ「だ、だが、あんな数の巨人が相手じゃ……」

メイナード(マズいな……一体一体は大したことないが数が多すぎる。戦ってる間に部下が皆殺しに)

巨人「」バッ

メイナード「……! しつけェッ!!」ドンッ

フルボディ「……い、いかん、メイナード中将が押されている!」

フルボディ「これは、メイナード中将の特性が原因と考えられるぞ!!」

ジャンゴ「ど、どういうことだ兄弟!?」

フルボディ「メイナード中将は〝追撃〟の二つ名の通り! 撤退している敵に追い打ちを仕掛けることにかけては右に出る者がいない!」

フルボディ「だが! 反面! 向かってくる敵に対してはめっぽう弱いッ!」

フルボディ「この状況、メイナード中将にとってはあまりに不利だ!」

ジャンゴ「く、くそ! 一体どうすれば良いんだ!?」

海兵A「あ、あああ!!」

巨人「」ドドドドッ

海兵A「きょ、巨人が一体こちらにいいいいいい!」

ジャンゴ「なんだとォ!?」

フルボディ「い、いやだ……死にたくねえ! 死にたくねえよォッ!」


ドンッ!!

巨人「」ドシャァ

ジャイアント「何を騒いでいるのかと思えば、これは一体どういう状況だ」ドンッ

ジャンゴ「お……おお! ジョン・ジャイアント中将!!」

巨人「」ググッ

フルボディ「な!? ジャイアント中将に殴られてまだ立ち上がるだと!?」

巨人「」グワアッ

巨人「」ガブッ

ジャンゴ「あ、あああ!! 中将の腕に噛みつきやがったッ!!」

ジャイアント「……」

巨人「」ガジガジガジッ

巨人「」ボキンッ

ジャイアント「……どうした? 歯が折れたぞ。それで噛んでいるつもりか?」

巨人「」アムアムアムアム

ジャイアント「貴様が実験体の生き残りだとすると、たかだか100年しか巨人をやっとらん若造ということになるな」グッ

ジャイアント「覇気も知らんただの巨人じゃァ……」グググッ

ジャイアント「海軍中将に傷一つつけられんわァッ!!」バキィッ!

巨人「」ドスゥゥンッ

フルボディ「きょ、巨人の頭を一撃で吹き飛ばした!?」

ジャンゴ「なんて強さだ!」

海兵A「グロい……ああ!?」

海兵A「も、もう一体こちらに接近中!」

巨人「」ドドドドドド

ガキィィィィンッ

巨人「」グラッ ドサァッ

ジャンゴ「きょ、巨人の足が拘束され転倒した! あ、あれは……っ」

ヒナ「わたくしの身体を通るものは全て緊縛される」ドンッ

フルボディ「で、出たぁっ! ヒナ嬢のオリオリの実の能力!!」

ジャンゴ「助かった! この2人が来てくれたならもう安心だぜ!!」

メイナード「ふー……悪いなジョンさん、ヒナ」

ジャイアント「この程度の連中に情けないぞ、〝追撃〟」

メイナード「連中、異常にタフなんだよ。殴ってもまた立ち上がってきやがる」

ヒナ「いかにタフとはいえ、あのように頭が失われれば死ぬでしょう」

ヒナ「わたくしが足を止めるので、お二人でとどめを……」

巨人「」ノソッ

『!?』

ヒナ「……え?」

メイナード「おいおい……」

ジャンゴ「じゃ、ジャイアント中将に頭を吹き飛ばされたのに……」

フルボディ「立ち上がりやがった、だと……!?」

巨人「」シュゥゥゥウ

ジャイアント「頭が生えてきておる……」

メイナード「何の冗談だこりゃァ……細切れにすれば死んでくれるのか?」

ギャァァァッ ヒィィィィ

ヒナ「……っ、こうしている間にも部下が次々に襲われていますわ」

ヒナ「一体一体を細切れにしている余裕は……」

「うなじを狙え!!」

ヒナ「……!?」

メイナード「……ようやく下船してきやがったか」

ジャイアント「CP0……」

CP0「連中の弱点はうなじだ。そこを破壊すれば例外なく死ぬ……はずだ」

メイナード「……ヒナ! 連中を転倒させろ!」

ヒナ「了解!」

ヒナ「袷〝羽檻〟!」バッッ

ガキンッ ガキンッ ガキンッ

巨人「」ドサッ

巨人「」バタッ

巨人「」ズシンッ

巨人「」ジタバタジタバタ

メイナード「よし、うなじだったな」

メイナード「ふんっ!」バキッ

巨人「」グシャ

巨人「」シュゥゥゥ

ジャンゴ「ひいっ」

フルボディ「か、身体が溶けていやがる……」

海兵A「グロい……」

メイナード「どうやら情報は正しいみたいだな」

ジャイアント「そうと知れれば最早殺すのは容易い」

――――――
――――
――

メイナード「ふぅ……これで全滅させたか」

ヒナ「捕らえて尋問しなくて良かったのですか?」

ジャイアント「話の通じるような奴らではなかった」

ジャイアント「それに、奴らに訊くよりもこちらの方が話が早そうだ」

CP0「……」

メイナード「貴様等の秘密主義は知ってるが、そのせいでこっちは余計な犠牲を出している」

メイナード「まだ情報を隠すつもりじゃねえだろうなァ?」

CP0「……良いだろう」

CP0「まさか私もここまで実験体共が強力だとは予想していなかったものでな」

CP0「このカベタケーナ王国は元は天竜人の祖先……創造主が治めていた国だ」

メイナード「そうらしいな。だからCP0なんかが付いてきてんだろ」

CP0「それだけではなく、この国での巨人化実験を推し進めたのも、かの天竜人の一族だったのだ」

ジャイアント「……そういうことか」

メイナード「ってことはだ、持ってんだろ? ここの巨人達についての情報を」

CP0「ああ。もちろん不完全な記録だが。何しろ政府は実験を途中で中断し、撤退したのだからな」

CP0「だが、残っている限りの情報を伝えよう」

CP0「100年前、実験の指揮をとっていたのは、当代最高の科学者だった男だ。今のベガパンクに匹敵する程の彼が考案した巨人化の技術は、ただ人間の身体を巨大化させるものではない」

CP0「当時のドルドルの実の能力者の力を転用した技術で、『蝋のような物質を人間体に模し、それにより本体を覆う』というものだった」

メイナード「……悪魔の実の能力の転用だと!?」

ジャイアント「パシフィスタに黄猿さんのレーザーを搭載したようにか? 100年前にもそんな技術があったとは……」

CP0「……ベガパンクによってなされた血統因子の究明は出来ていなかった為、その技術は不完全だったがな」

CP0「その巨人には自動修復機能も搭載され、うなじ部分にある本体が絶命するか、巨人体から切り離されるまで、体を維持し続けるそうだ」

メイナード「頭を吹っ飛ばしても再生していたのはそのせいか……」

ヒナ「ちょっと待ってください。先ほど倒した巨人達のうなじには、本体らしき者など見あたりませんでしたわ」

ヒナ「しかも、あのように理性を失っていたのでは、何の役にも立たないのでは?」

CP0「……そう。本体はうなじ部分に置かれ、巨人体は本体の意志が反映される……はずだった」

CP0「いや、初期の犯罪者数名を使った実験では実際その通りの結果になったらしい。本体はうなじに残り、意志を保持し、更にはこちらからもコントロール可能だった」

メイナード「コントロール? 一体どうやって言うことを聞かせるってんだ」

CP0「それは不明だ」

ジャイアント「なに?」

CP0「言ったはずだ、不完全だと。実験を統括した科学者は騒動の際に死に、また計画の全貌を記した書物も行方不明だ」

CP0「ゆえにその内容は残っていないが、実験体を従わせる為の仕掛けを用意していたそうだ……結局失敗に終わったわけだが」

ヒナ「初期は成功していたということは、失敗はその後の?」

CP0「ああ、当時のカベタケーナ国王の依頼により、王政府に反抗的だった複数の少数民族自治区にて、そこの住民全員を実験体にすることとなった」

メイナード「おいおい……」

ジャイアント「それほど大量の人間を……いや、そもそも巨人化の方法とやらをまだ聞いていないぞ」

CP0「薬物だ。それを注入するだけで、巨人化の能力を任意に発動することが可能になるというものだった」

CP0「当時のガスガスの実の能力者……つまり、シーザー・クラウンの先祖が研究班に加わっていてな。そいつの能力で薬をガス状に変え、少数民族自治区にバラまいた」

メイナード「それが全ての誤りだったってわけか」

CP0「そうだ。自治区の住民が巨人になったまでは良かったが、連中はこちらの制御を受け付けず、理性も失い、無差別に人間を食い殺すようになってしまった」

CP0「しかも、うなじにあるはずの本体がどこにも存在しない……どうやら肉体が融解し、巨人体と融合してしまったものと思われる」

ヒナ「けれど、さっきの連中もうなじはたしかに弱点だったわ」

CP0「本体は存在しないが、うなじ部分を破壊すれば死ぬのは変わらない」

メイナード「なあ、再生ってのは巨人体だけの話か?」

CP0「いいや、本体も自動修復される」

ヒナ「な!?」

メイナード「マジかよ……人間の肉体を再現だと?」

メイナード「いや、ちょっと待て。ドルドルと言やァ、千両道化の腹心だろ? それほどの能力だとは聞いたことねェぞ」

CP0「鍛え方が全く違う。当時のドルドルの能力者は我らサイファーポール・イージスゼロのメンバーだった」

CP0「もっとも、彼ですら自力で人間1人の複製は無理だったようだがな。実験体の体に最初からある設計図があってこそのようだ」

CP0「だが結局、巨人化薬の詳細も残されぬまま実験責任者が死亡し、計画は打ち切られた」

CP0「その日には実験を推進していた天竜人の一族が観覧にいらしていてな」

CP0「当時のCP0も海軍も彼らを守るので精一杯だったようだ」

メイナード「……んで、そのまま島は放置、今に至るってか」

ジャイアント「先ほど我らが倒した奴らも、元はその少数民族ということだな」

CP0「おそらくはな」

ヒナ「……」

メイナード「で、これからどうするよ」

CP0「やるべきことは変わらんだろう。生存者――もちろん巨人を除いてということだが――の捜索が先決だ」

ジャイアント「今の話を聞いた限りではますます絶望的だがな」

ジャイアント「海軍本部ですら手を焼いた連中に、残された国民だけで抗する術があったとは思えん」

CP0「いなければいないで巨人をサンプルとして連れ帰るだけだ。いずれにしろ、捜索せんことには始まらん」

――内陸部

ジャイアント「……なんだ、あれは」

ヒナ「なにか? ジャイアント中将」

ジャイアント「前方に、巨大な壁が見える」

メイナード「壁? ってことは久々の居住区か」

メイナード「この数時間は巨人の相手だけで、建造物すらなかったからな……どうせ無人なんだろうが」

ジャイアント「いや、そうとは限らんぞ」

メイナード「あァ?」

ジャイアント「巨大な壁と言っただろう……あれは……50メートルはあるぞ」

『!?』

メイナード「50メートルの壁……?」

ジャイアント「しかも、それが果てしない範囲に広がっている。壁の内部は相当な規模だ。崩壊している様子もない」

CP0「馬鹿な! そんなものがあったなどという記録は残っていないぞ!」

ヒナ「ですが、そんなものがあるのなら、生存者がいる可能性は格段に高まりますわ。――ヒナ期待」

――シガンシナ区門前

CP0「このような壁が……」

メイナード「デケェなこりゃあ」

ヒナ「100年前には無かったものなのですか?」

CP0「こんなものがあったのならば、確実に記録に残っているはずだ」

ジャイアント「つまり、政府が島を放棄した後に建造されたということか」

メイナード「あの巨人共の猛攻を防ぎながら、この数百キロは続いてそうな壁を造ったってのか?」

CP0「馬鹿な……辺境の民共にそんな技術あるわけが……」

ヒナ「十中八九、悪魔の実の能力でしょう。それこそ実験に使われたドルドルの実の能力者ではなくて?」

CP0「いや、彼は事件当日に政府の艦で撤退しているはずだ……」

メイナード「能力だとしたら相当鍛えてあるな。この壁を造った奴がいりゃァ、テキーラウルフの橋もすぐに完成しそうだ」

ジャイアント「この壁があったのなら、生存者も多くいそうだ……と言いたいところだが」

メイナード「穴が開いていやがる……」

ジャンゴ「……報告します!!」

ヒナ「どうだったの?」

フルボディ「はっ! やはり壁の中には大規模な居住区がありました!」

ジャンゴ「しかし、中には巨人が複数確認されまして、我々だけでは奥までは……」

メイナード「やはり、巨人が侵食済みだったか……ともかく中の連中を片付けるぞ」



――シガンシナ区

メイナード「荒廃して無人だ。が……」

ヒナ「無人となって100年経っているようには見えませんわね」

CP0「せいぜい数年というところだろうな」

CP0「100年耐えてきたのに突破されたのか……チッ、来るのがもう少し早ければ……」

ジャイアント「結論を出すにはまだ早いぞ。向こう側にも壁が見える」

メイナード「ここは突出した形になっていたからな。壁内部のほんの一部に過ぎん」

CP0「だが、よく見てみろ。あちらの壁にも穴が開いているだろうが。その残りの区域にも既に巨人が入り込んでいるということだ」

ヒナ「けれど、外観からして中は相当な広さ。おまけにこのような壁を短期で製造できる力があるのならば、生き残りがいても全く不思議ではないですわ」

――トロスト区近郊

ジャンゴ「ハァ……ハァ……」ガクガク

フルボディ「ゼェ……ゼェ……」ブルブル

ヒナ「情けないわね、この程度の行軍でへばるなんて。――ヒナ失望」

ジャンゴ「し、しかし、ヒナ嬢……この中、広すぎます……」

フルボディ「ほぼ休みなく歩き続け……しかも巨人が断続的に襲ってくるというのでは……他の海兵もみな死にそうです……」

ヒナ「ほとんど私たち将官しか戦っていないじゃない」

ジャイアント「まあ、たしかに想像以上の広さだったな。居住区だったとおぼしき場所もいくつも通った」

メイナード「だが、出会うのは巨人か動物だけ……あの巨大な森林も巨人化実験の影響か?」

CP0「分からん、情報がないものが多すぎる……」

メイナード「途中、ゾオン系能力者らしき巨人までいたからな。能力者が巨人になるとああなんのかね」

CP0「出来ればあれも生け捕りにして調べたかったのだがな」

メイナード「無茶を言うな。ゾオン系だけあって身体能力が他と違った。そんな余裕はねえよ」

ジャイアント「……待て」

CP0「何だ……?」

ジャイアント「……壁が見える」

メイナード「あァ? またかよ」

ヒナ「二重の壁ね。用意の良いこと。――ヒナ感心」

ジャイアント「そうだ、そして喜べ……壁の上に人間が見える。服を着た、な」ドンッ

『!?』

――トロスト区壁上
見張りA「で、結局巨人のガキは調査兵団預かりか」

見張りB「だそうだ。全く連中は何を考えてんだか……あんな危険なもんを戦力にしようだなんて」

見張りC「まあ、実際あの巨人のお陰でウォールローゼが救われたのは事実なんだ」

見張りC「しかも、壁外に連れ出してくれるってんなら妥当な落としどころじゃねえか?」

見張りA「何かあってもリヴァイ兵長が何とかしてくれるだろうしな」

見張りB「だけどなあ……」

見張りC「巨人訓練兵は郊外で精鋭に監視されるらしいし、調査兵団の出発もカラネス区からが予定されているという話だ」

見張りC「少なくともこっちにとっちゃァ、それほど大きなリスクはないさ」

見張りC「本来ならここから出発した方がシガンシナ区には近いんだろうが、ここの扉は……」クルッ

見張りC(……ああ、また巨人が来やがった)

見張りC(15……いや17メートルくらいはあるか? 結構デカイな……)

見張りC(もっとも17メートルあろうが壁の前には関係ないが。扉部分も岩、で……?)

見張りC(…………)

見張りC(…………?)

見張りC(……? …………??)

見張りA「おい、どうしたんだ。突然固まって」

見張りC「…………きょ、巨人が……」

見張りB「あ? ……ああ、巨人がこっち来てんな。それが?」

見張りC「ち、ちが……ふく……」

見張りA「なんだよ」

見張りC「あの、巨人……服、着てやがる……」

見張りB「は? 何言ってんだお前」

見張りC「……帽子も、かぶってる」

ジャイアント(やれやれ、巨人でない連中とは歩幅が合わんのが困るな)ドスンッドスンッドスンッ

ジャイアント(まあ良いわ。壁上の連中に声をかけるにはわしが適任なのは確かだ)

ジャイアント(……ん、最初よりも数が増えとるな。仲間を呼んだか)

ジャイアント(丁度良い、なるべく地位の高い奴と話した方が事は簡単に……)

ドンッ ドンッ ドンッ

ジャイアント「ん?」

ドカンッ!

ジャイアント「……!?」

ジャイアント(……砲撃か!)

駐屯兵A「今だ! いけええ!!」

ヒュンッ ヒュンッ

サクッ サクッ

ジャイアント(体に何か刺さった……!?)

駐屯兵A「うおおおおおお!!」ヒュンッ

駐屯兵B「ああああああああ!!」ヒュンッ

ジャイアント(殺気……!!)

ジャイアント「ふんっ!!」バキャッ

駐屯兵A「ぎゃっ……」グシャッ

駐屯兵B「……!! この野郎おおおおお!!」バッ

ガシッ

駐屯兵B「ぎっ(マズイ……!! 握られた……っ)」

ジャイアント「貴様等……いきなり何のつもりだ……!!」グググッ

駐屯兵B「ぐ、あ、あ(喋っ……!?)

グチャッ

ジャイアント(……!? いかん、潰してしまった! 加減を間違えたか……いや異様に脆いぞこいつ!)

駐屯兵C「あ……あああ……う、撃てえええええ!!」

ドンッ ドンッ ドンッ

ジャイアント「ぐおお!! 服が!」

ジャイアント「」ブチッ

ジャイアント「……巨人の軍服を作るのに」グググッ

駐屯兵C「……え? 喋っ……屈ん……え?」

ジャイアント「どれだけの費用がかかると思う貴様等ああああああ!!」バッ

駐屯兵C「……跳、ん、だ」

ドゴンッ!!


ヒュンッ バッ

リヴァイ(……!? 壁の上部が移動砲台ごと抉れてやがる)タッ

リヴァイ(……壁上には何も見あたらねえが……下か?)バッ

リヴァイ(……!)

ジャイアント(……新手か)ギロッ

リヴァイ(本当にいやがった……服を着た巨人……!!)

リヴァイ(破片で街にも被害が……さっきのバカデケェ吠え声……こいつが……!?)

リヴァイ(しかし奴はせいぜい17メートル級……どうやってここまで……まさか超大型巨人がまた……!?)

駐屯兵D「リ、ヴァイ……兵長……」

リヴァイ「!」

駐屯兵D「き、来てくれたんですね……」

リヴァイ「しっかりしろ! これをやったのは超大型巨人か!?」

駐屯兵D「い、いえ……奴です……服を着た、巨人が……跳ねて、この高さまで……」

リヴァイ「なに……!?」

駐屯兵D「一撃で……みんな吹っ飛ばされました……あ、あいつ、は……」ガクッ

リヴァイ(……この高さを、跳んだだと)

ジャイアント(平和的に済ませるつもりだったが……こう敵対的となればこちらも相応の対応をとる)グッ

リヴァイ(……!! 屈みやがった!!)

ジャイアント(岩で穴を塞いだ痕はあるが、部隊が残っているということは侵入した巨人を撃退したのだろう)

ジャイアント(ならばわしが壁を飛び越え、この中の司令部を制圧する!!)

ジャイアント(この海軍の軍服に攻撃を仕掛けたということは、この国の連中は海軍を知らぬ)

ジャイアント(最初に見せつけてやるのも良かろう。彼我の戦力差……海軍本部の絶対的正義を!!)グググッ

リヴァイ(跳ぶ気だな……)

リヴァイ(知性のある巨人……さっき奴が放った言葉のような唸りも聞こえた。だが)

リヴァイ(危険の排除が優先だ)ヒュンッ

ジャイアント(……!? なっ)

ヒュンッ ヒュンッ

ジャイアント(速い……!! さっきの連中とは全く違う!)バッ

ヒュンッ ヒュンッ

ジャイアント(何だあの腰の装置は……!! どこだ、どこに消えっ)

ヒュンッ スパッ

ジャイアント「くっ……うなじか!!」バンッ

ヒュンッ

リヴァイ(斬った……が、浅い……一撃で刃もイカレた)

リヴァイ(やべえな。今までの巨人と硬度が違う)ヒュンッ

スパッ

ジャイアント(ぐぅっ……逃がしたか!)

リヴァイ(妙だな……こいつ、回復してねえぞ)

リヴァイ(もし回復できねえんだとしたら、勝機はある)

リヴァイ(後続が到着するまで時間を稼ぐしかねえか)ヒュンッ

ズバッ ヒュンッ ズバッ

ジャイアント「うぐっ……」

ジャイアント「おのれェ……!」バッ

ヒュンッ

ジャイアント(全く捕まらん! あの見慣れん装置のせいで動きが読めん)バッ

ヒュンッ スパッ

ジャイアント「くっ」

ジャイアント(ダメージ自体は大したことないが……このわしを翻弄するとは)ビキビキビキッ

ヒュンッ ズバッ

ジャイアント「」ブチッ

リヴァイ(次は腕の関節を……!)ヒュンッ

ガキンッ

リヴァイ(……!? アンカーが刺さらねえ!)

ヒュンッ 

ジャイアント「ふんっ!!」バッ

ヒュンッ

ジャイアント「チィ……壁に逃げおったか」

リヴァイ「危ねえな」スタッ

リヴァイ(あの野郎、全身がいきなり黒くなりやがった……硬度が増したのはあれのせいか)

リヴァイ(マズイな。アンカーが刺さらねぇとなると……)

リヴァイ(!)

ジャイアント「」グググッ

リヴァイ(まさか、壁を破る気か?)

リヴァイ(超大型も鎧も扉部分しか狙っていない……つまり、壁の破壊は連中にも困難だと考えられるが)

リヴァイ(こいつは上部の一部をえぐりやがった……万が一のことがあれば……チッ)ヒュンッ

リヴァイ(一か八か間接を狙うしかねぇ!)キュイィィィッ

ジャイアント(畏れよ! これが海軍の……正義の力だ!!)ブンッ

リヴァイ(止められるか!?)

メイナード「ふんっ!!」ドンッ

ジャイアント「!?」バキッ

ヒナ「〝緊縛(ロック)〟!!」ガキーンッ

リヴァイ「……!? なんだ、こいつら」

リヴァイ(立体機動装置も持たず……空を歩いた!? あっちの女はどうやって巨人を拘束しやがったんだ!?)

ジャイアント「……何の真似だ、〝追撃〟に〝黒檻〟」

メイナード「そりゃァ、こっちの台詞だジョンさん」

ヒナ「我々の任務はあくまで交流再開による調査と徴兵」

ヒナ「現地民との戦闘行為は避けるべきですわ。――ヒナ困惑」

ジャイアント「わしが接触を求めて近づいたら突然攻撃してきたのだ」

メイナード「……まァ、100年間も巨人を敵視していた国だからな。ジョンさん1人に行かせたのは失敗だったか」

CP0「最悪のファーストコンタクトだ……」

ジャイアント「示威行為も兼ねておる。その方が今後の交渉も楽になろうが」

CP0「……野蛮な海軍の猿め」ボソッ

ジャイアント「あァ?」ギロリ

リヴァイ「おい」

メイナード「……ようやく理性を持った人間に会えたな」

リヴァイ「テメェ等は何者だ? なぜ俺たちを攻撃してきた。これまで侵攻してきた巨人はテメェ等の仲間か?」

ジャイアント「先に攻撃してきたのはそちらの方だ」

リヴァイ(……恐怖にかられて問答無用で手を出したか。超大型巨人の出現はつい最近の話だ。ありえるな)

リヴァイ「だとしても、やり過ぎだとは思わなかったのか? てめえのやったことは明らかに自衛の範囲を超えている」

リヴァイ「殺された兵士、それに、壊した壁の破片の下敷きになって何人が死んだと思う?」

ジャイアント「そんなことはわしの知ったところではない」

リヴァイ「……てめぇ」

CP0「待て! 君の言い分も解るが、ここは不幸な事故だったということで納得してくれないか?」

CP0「先ほどの君のもう一つの質問だが、これまで君らを襲った巨人と我々は無関係だ」

ヒナ「……」

CP0「なぜなら、我々は今日この島に着いたのだからな」

リヴァイ「……しま? しまってのは何の話だ?」

CP0「あ……?」

CP0「……あー、なら言い方を変えよう。このカベタケーナ王国に着いたのが今日、ということだ」

リヴァイ「……かべたけーな? 言っている意味がまるで分からんぞ変態仮面野郎」

CP0「!?」

ヒナ「どうやら、100年の間に国名も失われているようですわね」

メイナード「みたいだな。まあ他国との交流が皆無だったなら、必要ないと言えばそうなんだろうが」

CP0「……まあ良い。君のような末端の兵士といつまでも話していた所で埒が明かない」

CP0「我々を王宮に案内したまえ。国王と直接話す」

リヴァイ「……バカ言ってんじゃねぇ。てめえらみたいな得体の知れない連中を王都に連れて行けるか」

CP0「我々は君たちの王よりも上位の存在から遣わされている。さすがに王宮ならばそれくらいの情報は残っているだろう」

CP0「案内しなければ後悔することになるのは君だぞ」

リヴァイ(……なんなんだ、こいつらは。王政府よりも上位の存在だと?)

リヴァイ「……てめぇらについてこっちも調べる必要がある。少し待ってろ。まずはここの責任者と会ってからの話だ」

CP0「我々は忙しい。すぐに王と会わせろと言っているんだ」

リヴァイ「つべこべつべこべうるせぇな……どっちにしろ扉は石で塞がれてる。こっちがリフトでテメェらを運ぶ時間もかかるんだよ」

CP0「……」フゥ

CP0「ジャイアント中将」

ジャイアント「なんだ?」

CP0「ここから大音声で中の人間に向かって名乗り挙げてみてくれ。この下っ端と違い、中には世界政府について知らされている人物もいるだろう」

ジャイアント「良いだろう」

CP0「メイナード中将は穴を塞いでいる岩を破壊してくれ」

リヴァイ「おい、ふざけるな。その岩がなくなれば……」

CP0「安心しろ、巨人は全て我々が処理する」

リヴァイ「なに?」

CP0「我々がどうやってここまで来たと思っているんだ? 既に援軍も向かっている。近日中に巨人はこの国から一人残らずいなくなる」

リヴァイ(こいつら……)

メイナード「おい、そんなことよりも向こう側の奴らを岩から遠ざけとけ。破片が当たっても知らねぇぞ」

リヴァイ(本気であの大岩を壊す気か? 見たところそんな武器は持ってねぇが……はったりとも思えん)

リヴァイ「……チッ」ヒュンッ

――壁上

エルヴィン「リヴァイ! どうだ?」ヒュンッ

リヴァイ「来たか。下を見りゃぁ分かるが、服を着て言葉を話す巨人を連れた訳の分からん人間共だ」

エルヴィン「人間……?」

リヴァイ「どうも外から来たようだ。いきなり王に会わせろだと」

リヴァイ「だが、まずはあの岩の付近から人を離せ。奴らあれを壊して入るつもりらしい」

エルヴィン「そんなことが可能なのか?」

リヴァイ「少なくとも連中はそう言ってる」

エルヴィン「……分かった。すぐに手配する。本気で入ってくる気ならそれにも備えなければ」ヒュンッ

CP0「では中将、頼む」

ジャイアント「……」スウゥゥゥゥゥゥゥゥ

フルボディ「やべ、お前ら耳を塞げ!」

海兵達「は、はっ」バッ

ジャイアント「壁の中の諸君に告ぐ!!!」

リヴァイ「……! なんだこのバカでけぇ声は……!!」


――トロスト区内部

エレン「……!?」

ミカサ「なに……!?」

アルミン「声!?」

ジャイアント『我々は世界政府より派遣された海軍本部の者である!!! 諸君等を襲う脅威から救い、諸君等との交流を再開することが我々の望みである!!!』

ジャイアント『その為に、まずは我々はこの国の王との会談を希望する!!!』

ジャイアント『我々世界政府について知っている者がいれば!!! 至急、王宮へこのことを伝えるべし!!!』

ジャイアント『また、迎えが来ない場合は、直接我々が王宮へと向かう!!! 以上!!!』

クリスタ「……お、終わった?」

ジャン「何だったんだ、今のは……」

サシャ「み、耳が……」

ユミル「くそっ、でけぇ声出しやがって」

コニー「頭いてぇ……」

ライナー「何なんだ? 脅威から救いに来た? 世界政府だと?」

アニ「……」

ニック「……せ、世界政府」

ニック「ほ、本当に、来たのか……」

ニック「すぐにこの事を中央へ伝えよ! 今すぐだ!!」

信徒「はっ」


メイナード「さァて、んじゃやるかね」

メイナード「ふんっ!!」ドンッ!

ビキッ ビキビキビキッ!

ドガーッン!!

駐屯兵E「う、うわあああ!!」

駐屯兵F「い、岩が……」

ザッザッザッザッザ…

メイナード「ほぉ、意外としっかりした街だな」ドンッ

ヒナ「清潔みたいね。――ヒナ安心」ドンッ

ジャンゴ「おおお……やっと人が住む街に」ドンッ

フルボディ「ふらふらだぜ……ベッドで休みたい」ドンッ

CP0「さて、王からの使いが来るかどうか……」ドドンッ


――壁外

ジャイアント「……なぜわしが門番など」


ザワザワザワ・・・

「何なんだ……あいつら」

「あの巨大な岩を、どうやって……」

「巨人を操ってたってのは本当なのか……?」

エルヴィン「止まれ」

CP0「! 君が王の使いか? では王宮まで案内してくれたまえ」

エルヴィン「いや、私はエルヴィン・スミス調査兵団団長……壁外を調査する部隊の長だ」

CP0「そうか。で?」

エルヴィン「まず、あなた方には一通り調査を受けて頂いた後、このトロスト区の区長、それに、南側領土の司令官と会ってもらう」

CP0「……先ほどの兵士にも言ったはずだ。我々は下っ端と会っている時間などない。王宮に伝達はしていないのか?」

エルヴィン「中央へはもう報告してある。だが、それにも時間がかかる」

CP0「? 電伝虫は……?」

エルヴィン「なに?」

CP0「……あァ、いや、いい」

CP0「ともかく、我々は王と会う。案内する気がないのならば邪魔なだけだ。そこをどけ」

エルヴィン「……お前達が何者なのか知らないが、いきなり現れ戦闘行為を行った来訪者を、そうおいそれと好きにさせられると思うか?」

CP0「思わないな。だが、そんなことは我々には関係ない」

CP0「我々は王に会う。これは決定事項であり、貴様等の意志が介在する余地はない」

メイナード(……やってることジョンさんと変わらなくね?)

リヴァイ「……そうか、なら」

ニック「待て!」

エルヴィン「ニック司祭……?」

ニック「待ってくれ……彼らは我々がご案内する」

リヴァイ「おい、ウォール教がそんな勝手な真似を」

ニック「いや、これは王政府の意志だ」

リヴァイ「なんだと?」

ニック「世界政府の者が来た場合は、王は必ずお会いになる」

ニック「エルヴィン団長……彼らが来たからには、もうすぐ真実が明かされる」

エルヴィン「!」

ニック「どうか、ここは我々に任せて、あと少しだけ待って頂きたい」

エルヴィン「……良いでしょう」

リヴァイ「おい、エルヴィン!」

CP0「ようやく話の通じる者が現れたか」

ニック「こちらへ。まずは教会へご案内します。その後、王都まで……」

ザッザッザッザッザ・・・

リヴァイ「……良いのか、エルヴィン」

エルヴィン「どちらにしろ、奴らを止めるのは無理だろう」

エルヴィン「ここは、司祭の言う真実の開示とやらを待つしかあるまい」

リヴァイ「……」

――王宮

国王「……まさか、100年も待たされるとはな」

国王「先祖より伝えられし話とはいえ、世界政府など本当に存在するのか半信半疑であったぞ」

CP0「我らにも事情というものがあるのだ。なに、こちらとしても対価は支払うさ」

大臣「この慮外者! 陛下に対してその口の効き方はなんだ!?」

CP0「……言ったはずだがな。私はこの国を含めた加盟国170カ国以上を統べる天竜人からの遣い」

CP0「我々を敵に回すということは、170カ国以上もの国を敵に回すのと同じだぞ……そちらこそ口の効き方には気をつけるんだな」

大臣「ぐっ……」

国王「よい、今の我々にはこやつらに頼る以外に手はないのだ……だが、本当に壁外の巨人共を何とか出来るのだろうな?」

CP0「安心しろ、既に駆除は始まっているし、すぐに増援も来る。世界政府の戦力からすればあんな奴らなど物の数ではない」

CP0「この島は加盟国でも有数の広さのようだ。巨人を駆逐し土地を取り戻した暁には、貴国は栄華を極めることになろう」

国王「おお……」

CP0「当然、その為に我ら世界政府は復興支援を惜しまない……それが100年待たせた対価と考えてもらいたい」

国王「うむ……して、我らは何をすれば良い?」

CP0「巨人発生の原因は民に隠しているのだろう?」

国王「そうだ」

CP0「ならばそれを続けてもらう。加えて、巨人発生は海賊共のやったことだと民には知らしめる。お前達もその話に合わせろ」

国王「海賊……国の外にある海というものに跋扈する賊徒だったな」

CP0「そうだ。我々のもう一つの目的はこの国から有望な人間を徴兵することでもあるからな。今後海軍に属するうえで海賊を敵視してくれれば都合が良い」

CP0「お前達にとってもそうだろう? まさか、民に向かって王家が巨人発生の片棒を担いだとは言えまい」

国王「……たしかに。真実が露呈すれば王家の信用は失墜し、のみならず民に対して『壁外の少数民族を犠牲にしている』という罪悪感を抱かせてしまう」

国王「だからこそ、我が一族と家臣達は、この秘密を100年に渡り守り続けてきた……」

国王「だが、まだ続けるのか……? 巨人……いや、我らが巨人にしてしまった民達が死ぬ今となっても、まだ我らは秘密を隠し通さねばならんのか……?」

大臣「陛下……」

国王「今しかないのではないか……真実を言えるのは、今しか……」

CP0「滅多なことを考えるな」ズイッ

国王「……!」

CP0「そんなことをして誰が得する? 貴様ら王家はその地位を危ぶめ、民は余計な罪悪感を抱き、我々は仕事がやりにくくなる」

CP0「そうなればこの国は荒れ果て、手にはいるはずだった栄華も、民に与えられるはずだった豊かな暮らしも夢のまた夢となるぞ」

国王「……う、む」

CP0「良いか? 真実などというものは歴史という書物に刻まれた焼き印だ」

CP0「消え難く……誰の目にも明かで……そして作ることが出来る」

CP0「この国は、海賊の魔の手にかかり、巨人という悪夢に苦しめられた。世界政府と王家はその悪夢から民を救った……これこそが真実だ」

CP0「貴様も王ならば、国のために何が正しい選択かよく考えろ……益体も無い感傷に浸るな」

国王「…………そう、だな。分かった。貴様の言うとおりにしよう」

CP0「それで良い」


CP0「……ところで、だ」

国王「?」

CP0「あの壁だ。貴様等はあんなものを一体どうやって造ったんだ? 悪魔の実の能力者か?」

国王「悪魔の実か……書物の記述で知ってはいるが、100年前も今も、この国に能力者はいない」

CP0「いない……!? では、馬鹿な、悪魔の実の能力も無しにあんな壁を……」

国王「巨人だ」

CP0「なに?」

国王「あの壁の中には無数の巨人が入っている」

CP0「……は?」

国王「お前も知っているのだろう? 巨人は本体から特殊な物質を出し、それにより構成されている。それの応用だ」

国王「巨人体を構成しているものと同様の物質であの壁は出来ている」

CP0「つまり、貴様等は巨人を操れるのか?」

国王「操れるのだとしたらお前達など待っとらんわ」

国王「100年前、誰かが巨人を操って壁を造らせた。だが、その方法も、人物も記録に残されていない」

国王「詳しい調査など当然出来るわけないからな。我々にはとうとう分からず仕舞いだ」

国王「巨人がいなくなっても、当面は壁を残しておくしかあるまい。世界政府の方で調べてくれ」

CP0「……巨人に、こんな力が」

CP0(出来ればこの技術、海軍ではなく我々が独占したい……しかし、ベガパンクを抱き込めるか……)

国王「……しかし、なぜなんだ」

CP0「ん?」

国王「なぜ、100年前、こんな事態になってしまったのだろう」

CP0「それは政府にも分かっていない。残っている巨人を何体か連れて行き研究すれば、いずれは判明するはずだ」



――100年前

シーザー ・セプター(シーザー・クラウンの曾祖父)ドンッ

シーザー「シュロロロロロロ! さァて、そろそろガスによる薬品散布を始めるとするか」

シーザー「だが、散布するのはあの忌々しい野郎が作った欠陥品じゃァない」

シーザー「奴の薬をベースに俺様が改良を加えた進化版よ! シュロロロロロ」

シーザー「この薬を投与された人間は巨人化するだけじゃなく、理性を失い人を食らい始める!!」

シーザー「巨人を操るなんて回りくどいことをせずとも、俺様の薬を使えばあっという間に国一つを滅ぼせるぜ! シュロロロロロロ!」

シーザー「甘っちょろい政府の連中も、実際にこの国を滅ぼしてみせれば俺様の才能を認めるはずだァ!!」

シーザー「さあ! 散布開始だ! シュロロロロロロ!!」

シュオオォォォ・・・

シーザー「そうだ、奴が作った旧版の方もついでに散布するか。俺の巨人と奴の巨人のどちらが強いのかを比べられる!」

シーザー「奴の方はこの辺の小規模な集落だけで良いな。シュロロロロロ」シュゥゥゥゥ

シーザー「奴の薬の配合表、それをベースにした俺様の改良薬の配合表も、そして今回の実験の計画書も俺様が盗んでこの手に持っている!」

シーザー「この国の壊滅という成果を持って五老星と直接交渉すれば、俺こそが世界政府科学者のトップに立てることは間違いない!」

シーザー「シュロ! シュロロロ! シュロロロロロロ!」ツルッ

シーザー「あ」

ヒュゥゥゥゥゥゥ…

シーザー「あああああああああああああ!? しまった落っことしちまったあああああ!!」

シーザー「マズイぞ、あれがなけりゃァ俺の成果だと証明できねェし、何より二度と同じ薬が作れねえ!」

シーザー「くそ、どこだ! よりによって森の中に落ちやがっ……ん?」

シーザー「……あれは、世界政府の船じゃねえか! まさか出航する気か!?」

シーザー「待てえェ! 俺がまだいるだろうが、置いていくんじゃねえ!」ヒューン

――――――
――――
――

「ハァ……ハァ……」

「何なんだ……何なんだよ……一体」

「巨人が、急に現れて……ハァ……みんな、みんなはどこだ……!」

「落ち着け、騒ぐと奴らに見つかるぞ! ともかく安全な場所まで逃げるんだ!」

「安全な場所なんてどこにあるんだよ!?」

「ともかく、中央に行くしか……」

「おい、なんだ、この紙の束は……?」

「なに?」

「……巨人化実験、計画書……?」

ナ「……なぜわたくし達は王都に行けないの。不満よ。――ヒナ不満」

メイナード「仕方ねえだろ、王宮との交渉はCP0の管轄だ。俺たちには俺たちの任務がある」

メイナード「増援もそろそろ着くだろうし、ヒナはジョンさんと周囲の巨人狩りをやっといてくれ」

メイナード「その間に俺はこの街で徴兵を進める」

メイナード「丁度この街にいる調査兵団って部隊が、この国の精鋭らしいからな」

ヒナ「了解ですわ」

ジャンゴ「ではヒナ嬢……」

フルボディ「俺がエスコートします!」

ジャンゴ「あっ、ずるいぞ兄弟! ヒナ嬢ここは俺が!」

メイナード「あァ、お前等は残って俺を手伝え」

ジャンゴ・フルボディ「え?」

メイナード「どうせ巨人狩りじゃ役に立たねえだろ」

エレン「……急に集められて一体なんだってんだ」

アルミン「分からない……でも、事態が急激に変化している」

ミカサ「……」

ザッ

メイナード「諸君ッ!」

『!』

メイナード「既に聞き及んだ者もいるだろうが、俺は世界政府海軍本部中将メイナードだ」

ジャン「世界政府……さっきのデカイ声も言ってやがったな」

メイナード「諸君等は知らんだろうが、この壁の外には、この国以外にも170を越える国が存在する!」

コニー「……は?」

アルミン「170!? この国以外に、それだけの数の国が!?」

メイナード「世界政府とは、それら170カ国の上に君臨し、文字通り世界を統べる機関のことだ!」

メイナード「そして、俺が所属する海軍とは、その世界政府直轄の軍事組織!」

メイナード「すなわち、世界170カ国の精鋭中の精鋭が集った最強の集団である!」

メイナード「今日は、諸君等の中から、我らと共に海賊共と戦う勇士を募りたい!」

ちょっと20分ほど皿を洗ってくる・・・

アルミン「あ、あの! 質問をよろしいでしょうか!」

メイナード「なんだ?」

アルミン「海賊とは一体なんでしょうか!?」

メイナード「良い質問だ! 海賊とは、海に跋扈し、世界政府に反逆する凶悪な犯罪者のことである!」

アルミン「海……果てしなく広い、塩の湖のことですね!?」

メイナード「その通り!! 今、この世界には海賊共が跳梁跋扈し、罪のない人々を恐怖のどん底に沈めている!」

メイナード「我々海軍の任務はそんな海賊共を駆逐し、平和を維持することである!」

メイナード(…………)

メイナード「……何を隠そう、この国で100年に渡り君たちを苦しめてきた巨人達……」

メイナード「あれも海賊共の手によるものだ!!」

エレン「……!?」

ミカサ「なんですって……」

ジャン「おいおい……」

ライナー「海賊が……巨人を!?」

ユミル「本気かよ……」

クリスタ「……そんな」

コニー「……?」

サシャ「……??」

アニ「……」ググッ

メイナード「原理は不明であり、現在世界政府が調査中だが、間違いなく当時存在した海賊団がやったことだとは判明している!」

メイナード「巨人に対抗する為に100年もの歳月がかかってしまい、諸君等を苦しめてしまったことは遺憾に思う」

メイナード「直接の下手人である海賊団ももう死滅しているだろう……」

メイナード「だが、それでも! 今なお君たちにとって仇同然の海賊がこの海に蔓延っているのだ!!」

メイナード「だからこそ俺は求める! 海賊という悪に立ち向かい、罪なき人々を救う戦士を!!」

メイナード「もう二度と、この国で起きた悲劇を繰り返させない為に……どうか、諸君! 我々に力を貸して頂きたい!!」

ザワザワザワ・・・

「海賊……その海賊ってのが巨人に俺たちを襲わせたってのか?」

「信じられるか、そんな話……」

「だが、奴らは外から巨人を倒して辿り着いたと言うぞ」

「しかも、巨人の味方がいるらしい。15メートル級で、服を着て、理性を持ってるとか」

「15メートル級の服なんてどうやって作ったんだよ……」

「待てよ、あいつら見張りの駐屯兵を殺しやがったんだぞ。しかも、壁の破片で死人が出てる」

「だが、こっちから攻撃しかけたせいらしいぜ」

「そりゃ服を着た15メートル級なんて現れたら誰だって攻撃するだろ」

「逆に言えば、それが奴らの強さの証明でもあるからな……」

「この国以外に170も国があるって……? この壁の外はどれだけ広いんだよ……」

「何よりも、連中がいま巨人を駆逐してくれているらしい」

「ホントかよ……」

「俺は見てきた……変な力を使う女と、服を着た巨人があっさり巨人を蹴散らしてやがった」

メイナード(さて、志願者は何人出るやら)

メイナード(……そうだ、忘れてた)

メイナード「おい、巨人化の力を操れる小僧がいるらしいじゃねェか。どいつだ?」

「え、あ、あの、あそこにいる、エレン・イェーガーです……」

メイナード「……あれか」

ズカズカズカッ

エレン「!!」

ミカサ「……!」

メイナード「お前が巨人の小僧だな」

エレン「は、はい!」

エレン(デケェ……こいつが巨人じゃないのか)

メイナード「よし。お前は既に入隊決定だ」

エレン「え?」

ミカサ「!?」

アルミン(……そうなるのか)

メイナード「お前の体のことを調べる必要があるしな。嫌かもしれんが、拒否権は……」

エレン「いえ!!」

メイナード「!」

エレン「最初から志願するつもりでした!!」

ミカサ「エレン!?」

エレン「巨人が現れたのが海賊のせいだって言うんなら……俺はその海賊共を駆逐したいんです……!!」

エレン「この世から、一匹残らず……全て!!」

ミカサ「エレン……」

メイナード(ほお……)

メイナード「よし、なら腕試しをしてやろう」

エレン「?」

アルミン「どういうことですか……?」

メイナード「言葉通りの意味だ。巨人となった小僧……エレンと俺がサシで戦う」

メイナード「今のお前がどれくらいの強さか計ってやるよ」

アルミン「そ、そんな!?」

メイナード「安心しろ、殺さねえように気をつけるよ」

エレン(嘘だろ……?)

ミカサ(この髭、何を言ってるの……)

アルミン(でも、本当に彼らが噂通りの非常識な強さを持っているんだとしたら)ゴクッ

メイナード「さァ、いつでも来て良いぜ」

エレン(巨人)「……」グッ

ザワザワザワ

ジャン「ありえねぇだろ、丸腰だぞあのオッサン」

ライナー「勝負って言うからてっきりリヴァイ兵長くらいの強さがあるのかと思ったが……」

コニー「立体機動装置もなしにどう戦うってんだよ……」

ジャンゴ「はーい、押さないでくださーい」

フルボディ「このラインから出ないでー。危ないので下がってくださーい」

リヴァイ「おい、エルヴィン。こんなバカ騒ぎを認めて良いのか?」

エルヴィン「我々に決定権は最早ないさ……それに、良い機会だ」

エルヴィン「世界の広さをこの目で確かめる、な」

リヴァイ「……世界か」

エレン(良いのか? 本当に良いのか?)

メイナード「何やってんだ、さっさと仕掛けてこい」

エレン(仕掛けろたって……殴れば良れってのか!? どう考えても死んじゃうだろ!?)

メイナード「……おい、なんだ、ビビってんのか?」

エレン(!)

メイナード「俺一人にも腰が引けてるようで、一体どうやって海賊共を駆逐するってんだ!? あァ!?」

メイナード「さっきの決意は口先だけか、小僧!」

エレン「……!!」カァッ

エレン(……もう知らねぇぞ)ググッ

エレン(やってやる……全力で!)グググッ

エレン(あの髭面をぶん殴る!!)

グオッ

ドゴーッン!!

クリスタ「ひっ」

コニー「ダメだ、おっさん死んだ!」

メイナード「ふー」ググッ

エレン「!!!?」

メイナード「まあ、こんなもんか」グイッ

アルミン「そん、な……」

ジャン「……は?」

ライナー「……受け止めた、だと!?」

リヴァイ「……! あの腕」

エルヴィン「……? 黒く変色している? 何か知っているのか、リヴァイ」

リヴァイ「服を着た巨人も黒くなって硬度を増しやがった……巨人だけの能力じゃねぇのか?」

メイナード「そんじゃ、終わらせるか」トンッ

タンッタンッタンッタン

エレン「!?」

メイナード「おらァッ!」バギッ

エレン「……!!」ドサアッ

コニー「は……!?」

アルミン「空中を、歩い、た……!?」

ライナー「何なんだよ、こりゃ……俺の頭がどうかしちまったのか……」

エレン(グッ……! ま、まずい……)ググッ

メイナード「ふんっ」ドカッ

エレン「ゴァッ」ドサッ

メイナード「さらにもう一発!」ドンッ

エレン「……ッ」

ミカサ「エレン!!!」

ジャンゴ「さすがだぜメイナード中将……!」

フルボディ「ああ、追撃の名の通り、劣勢の相手には圧倒的だな!」

エレン「」ドシャアッ

メイナード「……よっと、うなじだな」ズブッ

グググッ ブチブチブチブチッ

エレン「」

メイナード「これで良いのかね」

ドサッ

ミカサ「エレンッ!!」ダッ

アルミン「エレン、しっかり!」

エレン「……う、あ」

「…………」

「……つ、強ぇ」

「マジで、巨人を素手で倒しやがった」

「つーか空中を跳んでたぞ……!?」

「何なんだ、あれは……俺等にも出来るようになんのか?」

「これが、海軍本部中将……」

メイナード「……ま、最初から期待しちゃいなかったが、ハズレだなこの国は」

メイナード「巨人化できる奴がいると聞いた時は多少は期待したが……ただ巨人になるだけでてんで弱えェ」

ミカサ「……!!」キッ

メイナード「よーし、見せ物は終わりだ。お前ら、志願者を集めとけ」

ジャンゴ「はっ!」

フルボディ「了解です!」

メイナード「さて、じゃあ俺もジョンさんとヒナを……」

ミカサ「……待ってください」

メイナード「あァ?」

アルミン「ミカサ!?」

メイナード「なんだ、嬢ちゃん」

ミカサ「私とも、手合わせしてください」

アルミン「……!?」

メイナード「……ほぉ」

アルミン「な、何言ってるんだミカサ!?」

ジャン「そうだ!! さっきの見ただろうが!! 巨人になったエレンを素手で倒したんだぞ!」

ジャン「いくらお前でも勝てっこねえ……いや、殺されちまうぞ!」

メイナード「良いぜ、戦るか」

ジャン「……!?」

ジャンゴ「さすがはメイナード中将!」

フルボディ「ああ、女子供が相手でも一切躊躇しねえ」

アルミン「な、何言って!!」

ミカサ「アルミン……エレンを連れて下がっていて」

アルミン「!」

ミカサ「この髭は、私が倒す……!」

アルミン「ミカサ……」

メイナード「ジャンゴ、フルボディ。邪魔者をさげろ」

ジャンゴ「はっ! おい、こっちに来い!」グイッ

ジャン「うお……っ!」ズルズルズル

フルボディ「お前もだ!」グイッ

アルミン「……! ミカサ!!」

メイナード「先に言っておくが、俺は相手が弱ければ弱いほど実力を発揮できる」

メイナード「女子供だからこそ、容赦はできねェぜ」

ミカサ「……御託は良い」ヒュンッ

ヒュンッ ヒュンッ ヒュンッ

メイナード(……ジョンさんを苦戦させてたやつか。確か立体機動とか言ってたな)

ヒュンッ ヒュンッ ヒュンッ

メイナード(だが、ジョンさんはその巨体ゆえに翻弄出来たかもしれねェが、俺はそうはいかん)

ヒュンッ ヒュンッ ヒュンッ ヒュンッ

メイナード(たしかに見慣れねェ装備だが……)

メイナード(動きが単純過ぎんだよ!!)グググッ

ヒュンッ!

メイナード(来た! 見え見えなんだよ! 完璧にカウンターを決められる!)

メイナード(その可愛らしいツラを、二度と拝めねェよう粉砕してやるぜ!!)グアッ

タンッ

メイナード(!!?)ブンッ グラッ

メイナード(な……!?)

メイナード(き、軌道が……変わった!?)

ヒュンッ

メイナード(ま、まさか……月歩だと!?)

メイナード(馬鹿な!? この国に月歩の使い手がいねぇのはギャラリーの反応で分かる!!)

メイナード(つまり、こいつは……さっきの俺を見ただけで月歩を習得しやがったってのか!?)

ギュオッ

メイナード(……!! 今度こそくる……が、体勢は戻らねえ)

メイナード(だがなァ!! そんなナマクラで、俺の武装色が破れるわけがねェんだよ!!)ググッ

メイナード(このまま受け止めて、反撃に出るだけだ!)

ヒュンッ!

ズバッ

メイナード「……!?」ガハッ

メイナード「ご……ハッ……」ドシャッ

ジャンゴ「……?」

フルボディ「…………え?」

ミカサ「……」キンッ

メイナード「ば、か……な」

メイナード「この、一瞬、で……武装色に、覚醒、した、だと……」ガクッ

――数日後、カベタケーナ王国港(仮)

ヒナ「では、わたくし達はお先に本部へ帰還しますわ」

ジャイアント「あァ、わしも巨人を狩り終えたら戻る」

ジャイアント「……しかし、巨人狩りを、海軍の巨人部隊でやることになるとはな」

ヒナ「仕方ありません、体格的にその方が効率が良いのですから」

ジャイアント「まァな……メイナードは?」

ヒナ「いま船室へ運んでいるところです」

メイナード「うーん……うーん……」

ジャイアント「……で、奴に未だ起き上がれん程の深手を負わせたというのが、あの女か」

ヒナ「ええ」


ミカサ「エレン、大丈夫なの?」

エレン「大丈夫だって……もともと怪我したわけじゃねえんだし」

ジャイアント(こんな小娘が下位レベルとはいえ中将を倒すとはな)

ジャイアント(しかも、メイナードの僅かな戦闘を目にしただけで月歩と覇気を習得か……末恐ろしい娘だ)

ジャンゴ「出航―!!」

アルミン「海……!! これが本物の海……!!」キラキラキラ

ライナー「話くらいは聞いたことあったが、本当に広いな……」

サシャ「ああ! いま何かいた、いました! 食べられるかも!」

クリスタ「あ、危ないよサシャ!!」

ユミル「国元の飯よりずっとマシなもんが食えてるってのに、まだ腹すかせてんのか……」

ジャン「……う、うお、おええ」

コニー「なんでいきなり気分悪くなってんだてめぇは!? うわこっち向くんじゃねえ!」


エルヴィン「さて、リヴァイ。どんな場所だと思う? 海軍本部は」

リヴァイ「さぁな……こっちはこの海ってやつを見るだけで気分が悪くなる」

ペトラ「リヴァイ兵長! 大きな魚がいました!」

リヴァイ「……お前ら、家族がいるってのに本当に出てきて良かったのか?」

オルオ「当然です! リヴァイ兵長が行くところにはどこまでもお供します!」

グンタ「まあ、今回は短い期間の訓練で帰国できるそうですから」

エルド「これだけ状況が変われば外の世界を知っておくべきでしょう……残してきた家族を案じる必要はもうなくなったわけですしね」

リヴァイ「そうか……」

海兵A「……ん?」

ジャンゴ「どうした?」

海兵A「はっ、いえ、前方に何かが」

フルボディ「なにか?」

海兵A「あれは……小舟?」




ルフィ「レイリー! デカイ船が来るぞ!」

レイリー「海軍の軍艦か。まさかこんなところで出くわすとはな……」

レイリー「まあルスカイナから離れた場所で良かったが」

レイリー「ルフィ君、海王類狩りの修行は中止だ」

ルフィ「ええー、俺、海王類食べたかったんだけどなー」

レイリー「後で私がとってきてやる」

ルフィ「ホントか!? じゃあ、代わりに何すりゃ良いんだ?」

レイリー「なに、せっかくだから少し修行の成果を見てみようじゃないか」

ジャンゴ「あ、あれは……!」

フルボディ「麦わらァあああ!?」

ビヨーン

ヒューン

ダンッ

ルフィ「おお! おまえら久しぶりだなあ」

ジャンゴ「ぎゃああああああああああ!?」

フルボディ「ヒナ嬢おおおおおおおおお!!」

ヒナ「何事です……麦わら!?」

ルフィ「あ、檻のやつもいたのか」

ヒナ「……! 総員戦闘用意!!」

ジャンゴ「麦わらのルフィが甲板に侵入ううううううう!!」

フルボディ「い、急げ! おまえらああああああああ!」

エレン「……? 何だ?」

アルミン「分からない、戦闘用意と聞こえた気がしたけど……」

ミカサ「……エレン、アルミン、下がって」


リヴァイ「……何かあったみたいだな」チャキッ

エルヴィン「そのようだ」

ルフィ「おー、海兵がいっぱいだ!」

ルフィ「にしし、そんじゃいっちょやるか! ふんっ!」

ズオオオオオォオォォォ!!

海兵A「」ガクンッ

ジャンゴ「」バタッ

フルボディ「う、ぐ……またか!? ブラザー!」

ヒナ「覇王色……!」

エレン「……!? な!?」ガクッ

アルミン「」ドサッ

ミカサ「アルミン!?」

リヴァイ「……んだ、こりゃぁ」

エルヴィン「……っ」

ペトラ「ううっ……!」

エルド「頭が……!」

グンタ「くそっ」

オルオ「」

ルフィ「よっしゃ、だいぶ減ったな。んじゃ次はー」タンッ

ヒナ「空中に……っ」バッ

ルフィ「ゴムゴムのー!」

ヒナ「マズイ……伏せなさい!!」

ルフィ「JET銃乱打(ガトリング!)」

ドドドドドドドドドドドドッ

――――――
――――
――

エレン「う、くっ」

ミカサ「大丈夫!? エレン!」

エレン「あ、ああ……」

アルミン「……う、い、一体、何が」

ミカサ「敵襲……詳しくは分からないけど、甲板中に攻撃をしかけてきた」

ミカサ「ここに来た攻撃は私が何とか防いだけど……他は……」

エレン「え?」

コニー「……お、終わった……のか」

コニー「うわ……船がズタズタに……おい、ジャン、無事か?」

ジャン「」

コニー「……ジャン?」


ユミル「……っ、何だってんだ」

ユミル「……! クリスタは!?」

ライナー「こっちだ!」

クリスタ「う……」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2013年12月20日 (金) 16:45:12   ID: ZqzP1I3q

いまいちよくわからん。

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom