勇者「世界も平和になったし、後は子作り三昧の毎日だな!」(646)

勇者「な! 僧侶ちゃん!」ポン

僧侶「はい? あ、ちょっと気安く触れないでくれませんか」

勇者「……。な!盗賊ちゃん」ポンッ

盗賊「……きも」

勇者「え……せ、戦士ちゃぁん」ポニュ

戦士「……魔王の次はお前を倒せばいいのか?」

勇者「……ッ」

勇者「な、なななんあんだよおまえら!!! 約束が違うじゃねーか!」

勇者「魔王倒したら結婚してくれるっていったじゃん!!」

僧侶「はぁ……呆れた」

盗賊「私この先なにしようかな」

戦士「私は王様の褒美で王宮付きの騎士になるんだ!」ワクワク

勇者「……・」

魔王娘「……の、のう勇者」ポンッ

勇者「……・あ?」

魔王娘「わしでよければ……そのっ///」

勇者「国へ帰れお前にも家族が、あ、俺が殺したんだった」


魔王娘「世界も平和になったし後は子作り三昧の毎日じゃな!」

勇者「ちくしょーお前なんなんだよこんなとこまでついてくんなよ! ここ人間の国だぞ!」

魔王娘「なんなんじゃ、って! 魔王の娘じゃ!」

勇者「知っとるわ! だからなんでここにいるんだって聞いてんだよ!!」

魔王娘「お前の妻になる女だからじゃ! 追ってきたんじゃ!」

勇者「……どこまでついてくんだよ」

戦士「よっ! 少女性愛」

僧侶「変態」

盗賊「犯罪者予備軍」

勇者「ま、まって僧侶ちゃん……僧侶ちゃん……っううう」

僧侶「泣きついたってだめですよ気色悪いです」

盗賊「とにかく、私たちはここで解散するからあとは自分でなんとかするんだな」

戦士「そうだな。だいたいお前言ってたろ」

戦士「『俺は罪を犯しすぎた……この戦いが終わったら……どんな咎でも受けるつもりだ(キリリッ』 ってな」

勇者「いや、あれはその、俺の信念っていうかね、最後の戦いにおける意気込みを」

魔王娘「トガってなんじゃ?」


僧侶「はい、かいさーん♪」

戦士「じゃあ、またそのうち」

僧侶「お疲れ様でした! 今度お昼食べにいきましょう!」

盗賊「私はしばらくこの街をぶらぶらするよ」


勇者「……え」


……


勇者「……は、まじで解散しやがった」

魔王娘「ふたりっきりじゃのう……」

勇者「僧侶ちゃん……盗賊ちゃん……戦士ぢゃん。まさかこんな別れ方をするなんて」

魔王娘「人望がないって悲惨じゃ」

勇者「俺がいったい何を……」

魔王娘「顔にスケベってかいとるぞ」

勇者「まさかみんな生まれ故郷にすでに男が……?」

勇者「いやいやいやそれは無い、絶対無い」

魔王娘「じゃ、じゃがなそんなスケベ心丸出しのおぬしでも///」

勇者「一体なにが……おかしい何か裏があるにちがいないそうだみんな俺のことをびっくりさせようと」ブツブツ

魔王娘「……おい聞け!こっち向かんか!」

勇者「あ?」

魔王娘「……ゴホン……わ、わしには思う存分を粗相をはたらいてもいいんじゃぞ……?///」

勇者「ほら、帰りの駄賃だ。落とすなよ」

魔王娘「……なっ」

勇者「船の切符は船着場の入り口で子供用を間違えず買うんだぞ」

魔王娘「なぁんでそうなるんじゃ!!」

魔王娘「なしてそんなあからさまに冷たいんじゃ!」

勇者「馬鹿かお前魔物じゃねーかふざけんな誰が結婚するか!」

魔王娘「種族差別じゃあ……せっかく平和が訪れたというのに」

勇者「そうだよお前の親父をぶったおして得た平和がこれだよ!!」

魔王娘「ひ、ひどいんじゃ。それはあんまりなんじゃ」

勇者「だいたいなぁ! 宿敵の娘となにが悲しくて結婚せにゃならんのじゃ! あ移った」

魔王娘「……嫌なのか?」

勇者「ヤだね。だいたいお前何歳だよ青りんごじゃねーか。蒙古斑とれてんのか?」

魔王娘「こう見えて180歳くらいじゃ」

勇者「なおさら嫌だっつの!!」

魔王娘「冗談じゃ。本当はお主とそう変わらん、はず」

勇者「……まぁ、年齢はどうでもいいや」

魔王娘「なにが気に食わんのじゃ。見た目か? たしかにわしは少し幼い容姿をしとるが」

勇者「違う」

魔王娘「なら口調かのう? でもなかなか矯正できんのじゃ」

勇者「違う」

魔王娘「じゃあ……ん?」

勇者「さっきも言っただろ」

勇者「『種族』だ……!!!」ピキピキ

魔王娘「勇者ともあろうものが器の小さいこと言いよる」

勇者「俺はだいたいこんなもんだ買いかぶるな!」

勇者「逆に聞くが……お前、俺のどこが……ていうかなにをもってホの字になった」

魔王娘「おぬしの顔を見てピンときたんじゃ」

勇者「そんな、おたずねものじゃあるまいし」

魔王娘「類まれなる才能! 我が父を倒す力! 体力! 勇気!」

魔王娘「そしてたくさんの仲間に支えられる愛と人徳……は無かったのぅ」ヨシヨシ

勇者「やめろ放っとけ」

魔王娘「高貴な魔王の一人娘にはぴったりじゃとは思わんか!?」

勇者「おもわない」

魔王娘「それにわし、ずっと心に決めとったんじゃ」

魔王娘「いつか勇者が父を倒すその日がきたら、抵抗せずに無理やりすべて奪われよう/// って」

勇者「どうしてそういう考えに至った」

魔王娘「ひとつの様式美なんじゃろ? そういうもんなんじゃろ? 父が言うとった」

勇者「はぁ?」

  魔王『俺が死んだらお前は……そうだな』
  魔王『勇者一行に拘束され、悪戯され、無理やり孕まされ』
  魔王『いずれ快楽に溺れ、自ら身を破滅へと堕とすだろう、わはは』


魔王娘「とな……」

勇者「殺して正解だったわそんな糞オヤジ」

魔王娘「ようわからんが、わしはそれを聞いてから……おぬしがくるのも待ち望んでおった、じゃろ?」

勇者「じゃろ?じゃねーよ知るか!」

魔王娘「でも女の子は好き……じゃろ?」

勇者「あぁ! 俺はたしかに女の子は大大大、大好きだ! 正直陵辱願望もある!」

魔王娘「りょーじょく? えっと……わしは『わし』って言っとるけど女の子じゃぞ? おぬしの大好きな♀じゃぞ?」

勇者「でもな! 人間に限る!!」

魔王娘「……けっ」

魔王娘「ほれ、顔だけじゃなくて体もそんなに人間とかわらんぞ」ペロン

勇者「ブグッ…………しまえっ!」

魔王娘「なぁんじゃ。見とうないのか?」チラッ チラッ

勇者「俺は、あの、できた大人だから、ほらご存知のとおり」

魔王娘「そう、そんな勇者に一目で惚れたんじゃ……///」

勇者「だいたい俺は……お前の親父をぶっ殺したんだぞ……いわば仇だぞ」

魔王娘「なにを言う。おぬしらとわしらじゃ死生観がそもそも違うわ!」

魔王娘「それに父上も母上のところへ遊びにいけて、いまごろ夫婦水入らずのラブラブ中じゃ」

魔王娘「な? そういうわけで、わしらもイチャイチャしてええんじゃぞ?」ピトッ

勇者「……は、はじめてみるタイプのたくましさだ」

勇者(やっべぇ……どうするんだよ俺、これもう早速裏ボスじゃねぇか)

魔王娘「腕、けっこう太いんじゃな///」

……


【城下町】【繁華街】


魔王娘「この後おぬしはどうするんじゃ?」

勇者「あ? 俺? さぁなぁ」

魔王娘「世界は平和になったから勇者は用済みじゃろ? 隠居か? 金はあるのか?」

勇者「まぁーそうだなぁ。スロットでもすっかなぁぁぁあ」

魔王娘「スロット?」

勇者「おう、仕事しなくてもじゃかじゃか金を稼げる魔法の機械だ」

魔王娘「なんと! 腐っとるな人間」

勇者「冗談。娯楽だよ娯楽」

魔王娘「娯楽か……で、子作りは? 娯楽か?」

勇者「はぁ……僧侶ちゃんたちと娯楽感覚で子作り三昧できると思ったのになぁ」

魔王娘「わし……がんばる、あの三人娘の分も……」

勇者「はぁ~~~、あ゛~~……僧侶ちゃん……」

勇者「出会ったころから君の笑顔を快感に歪ませることをずっと夢見てきたのにぃ」

魔王娘「そんなにあの女がええのか?」

勇者「僧侶ちゃんは可愛いしお前とちがっておっぱいでかいし優しいし頭いいし」

魔王娘「……」

勇者「おっぱいでかいし、髪の毛つやっつやだし、料理うまいし、あとおっぱいでかいし」

魔王娘「何回言うんじゃぁ」

勇者「はぁ~~僧侶ちゃんに毎朝スープつくってほしかった……」

魔王娘「スープか……腹へったの。とりあえずどこかで飯にせんか?」

勇者「なんで俺がお前と……はぁ~~~」

魔王娘「ため息ばっかりつくな! 幸せが逃げるぞ!」

勇者「はー~~、どうだ俺の幸せの臭いは。嗅いでみろ」

魔王娘「歯みがいたほうがええんじゃ」


……


【飯屋】


魔王娘「わしこの魚介のスパゲッチィスープセットってやつ」

勇者「じゃあ俺もそれとあとデザートにホットケーキをください」

魔王娘「ホットケーキ? わしも!」

店員「はい、かしこまりました」

魔王娘「……人間世界の飯屋は綺麗じゃのう」キョロキョロ

勇者「おーはじめてか」

魔王娘「そうなんじゃ! 若い女から死にかけの男までいろんな人間どもが来とるのぉ」

勇者「おう、そんだけあちこち観察してたらそろそろ気づくかなと思ったから言うけど……」

魔王娘「……?」

勇者「……向かいの席に、座ってくんね?」

魔王娘「え!?」


勇者「お前それ人間界のルールだから」

魔王娘「す、すまん! わっ、ほんとじゃみんな向い合わせに座っとる! こりゃ失礼した!」イソイソ

勇者「あっぶねー!」

勇者「あっぶね、お前なぁ! いまので魔物なのバレてたかもしれねーわ! あーあ」

魔王娘「ひっ!」ドキッ

勇者「魔物だってバレたらあのウエイターさんに蹴り飛ばされて店追い出されるんだぜ! あぶねーなー」

魔王娘「すまん……すまん……わしが浅はかじゃった」

勇者(あ、こいつ馬鹿だわ)

魔王娘「ところで勇者よ。さっきの話の続きじゃが、今後のアテはあるのかのう?」

勇者「アテはなぁ……そうだな、無い! 俺の人生設計は白紙だぜ」

魔王娘「仮にあの三人娘の誰かと結婚してた場合、どう生活してたんじゃ?」

勇者「んー、僧侶ちゃんは天使だから俺のこと慈悲深く養ってくれるだろうし」

勇者「盗賊ちゃんと王宮の宝かっぱらって一生遊んでくらすのもわるくないし」

勇者「戦士ちゃんの稼ぎで新築建てるのもわるくないなぁ」

魔王娘「基本的に働く気ないんじゃな」

勇者「おう」

勇者「だって俺、偉業をなした英雄じゃん? 超すげぇじゃん?」

魔王娘「自分で言っちゃう辺りが可愛いんじゃ」

店員「おまたせしました~」

勇者「あ、ども。いただきます」ニヘラ

魔王娘「若い女相手にへらへらしおって」

魔王娘「いただきます」ペコッ

勇者「……で、その神にも等しい俺がよぉ、ズルズル……ズズッ」

勇者「いまさらしみったれた下働きからなんてズルズル……できっかよ」

魔王娘「わぁ、これうまいのう!」ガタッ

勇者「座れ」

魔王娘「魔物の国にはこんなうまいものないんじゃ! やっぱり勇者と結婚してここで暮らす!」

勇者「あーはいはい。コレ食ったら帰れよおごってやるから」

魔王娘「これが庶民の食い物……おおう、この国の王族はいったいどんなすごいもんを食っとるんじゃ」

勇者「王族? ……あ! あああっ!」ガタッ

魔王娘「座らんか」


勇者「そうだそうだ! 俺にはアテがあるじゃねーか!」ニヤニヤ

魔王娘「なんじゃ? たかる相手思い出したのか?」

勇者「そう! お前よくやった」

魔王娘「う……ふふ。なんじゃ急にそんなこと言われると照れる///」

勇者「さっさと食えよ。流しこめ」

魔王娘「無理じゃあそんな早う食えん」

勇者「あとお前。言うの遅れたけど、そのシロップはそっちのホットケーキのだからな」

魔王娘「なんじゃ。先に言わんか。麺と混ぜてもうたわ」

勇者「けどアホヅラでうまいっつってるし……ま、いいかなって」

魔王娘「交換して……」

勇者「……あ? ったく」カチャカチャ

勇者「……ヴ……ゲロ甘゛……」


……

【王宮】


魔王娘「ほぅ! 立派な建物じゃのぅ」

魔王娘「で、おぬしには無縁そうなここに何のようじゃ?」

勇者「王様の褒美だよ褒美! はっはっは! これで生活は保障されんじゃねぇのか」

魔王娘「王族が住んどるのか。どうして思い出さなかったんじゃ?」

勇者「なにか先程とても哀しい出来事があったような気がして……僧侶ちゃん……グスッ」

魔王娘「好きな相手にふられるって哀しいの。わしそんな経験ないからおぬしの気持ちはわからんが」ヨシヨシ

勇者「お前が異常に前向きなのは認める」

魔王娘「んふふ」

勇者「んで聞けよチビすけ! さらにここにはなぁ、イ~イ女がいるんだよほんと」

魔王娘「な、なにぃ!?」

勇者「ふふふ、はははは!」

勇者「きっといまごろ俺の噂を耳にして待ち焦がれているんじゃねぇかな!」

魔王娘「まさか……」

勇者「その ま さ か だよ」

勇者「その人は、たぶんこの国でもっとも金持ちで気品があって高貴な女性だ」

魔王娘「……わし?」キョトン

勇者「ちげぇよ!! お姫様にきまってんだろうが!」

魔王娘「お姫様…………ぇ、わし!?!?」ビクッ

勇者「あ、そうかお前も一応、一応だけど姫様なんだよなぁ。違うけど」

勇者「俺がいってんのはこの国のお姫様! そりゃあもうべっぴんさんでよ、んでおしとやかと来たもんだ」

魔王娘「はあ……」

魔王娘「僧侶とかいう女はどうしたんじゃ」

勇者「僧侶ちゃんと天秤にかけても負けず劣らずのイイ女だぜ。おっぱいもでかいしよ」

魔王娘「ほぅ、楽しみじゃな。闇に葬ってくれる」

勇者「お前ここにいろ、な?」ガシッ

魔王娘「冗談じゃ。せっかくの平和を乱したりはせん」

勇者「つっても魔王の娘だろ。お前がいるとややこしいことになる」

魔王娘「角隠せば問題ないじゃろ? どうじゃ?」

勇者(ここで機嫌損ねてだだこねられてもめんどうだな……)

勇者「言っとくけど、王様には俺しか会えねーからな」

勇者「お前は王宮の入り口あたりでボケーッと突立ってろ」

魔王「わかっとる」

勇者「よし、行くぞ」

門番「あ!」

勇者「お! 元気してたか!」

門番「あじゅじゃやすwww勇者先輩うぇーいwwwどっしたんスかww」

勇者「王様に報告にきたんだよ。凱旋だ凱旋」

門番「ちょマジやべぇっすねwww噂ききゃしたよなんちゅか超ぱねぇっつかヌゲェんすわwww」

魔王娘「何語じゃ」

門番「ちょちょちょぉwwwだれしゅかこの子wwwこれ?wwこれスか?ww先輩のコレwwwちょま」

勇者「違う。不審者だこの娘を取り押さえろ」

魔王娘「!!」

門番「ひひゃwwwwちょ俺ちと仕事なさすぎてにぶてんすわわwwwwむりスからwww」

勇者「お前ぇ仕事をなめすぎだろ……」

魔王娘「平和で結構じゃ」

【王座の間】


門番「ちょぉまじ先輩帰宅しましたみたいな感じうけましたスwwwww」

大臣「なにごとじゃあ!! ……おお! その顔!」

勇者「よ!」

大臣「これはこれは勇者どの、お久しゅうございます」

勇者「おう」

大臣「この度は世界の危機に対し、貴殿はその勇敢で誇り高い魂とともに」

勇者「あーあの前置きとかいらねぇからさ。俺の話をまず」

大臣「おお! 早速次の戦いへ赴くと申すか! さすが王の見込まれた男よ!」

勇者「えっ違う何いってんのお前! 独自解釈やめてくれよ」

大臣「では……?」

勇者「ほらぁ、約束したじゃん? 旅立つ前にさぁ」ニタニタ

大臣「お、おおそうであったな!! では王の御前へ」

勇者「へへ、いったいいくら貰えっかな。まさかこのまま王族になれたりして!」

大臣「……」

王「……」

勇者「王様! 私勇者、魔王を討ち、無事ここへと生還いたしました!」

勇者「つきましては約束の褒美をいただきたく」

王「……」

勇者「あの、王様聞いてます?」

王「……」

勇者「王様……じじい!? おい」ユサユサ

王「ん……!」パチクリ

勇者「あ、王様! 私こと勇者、この度魔王を討ち」

王「ぁーどうもどうもはじめましてわたすこの国の王様でひゅ御年83歳を迎えまひて恐縮ながらたいへん長生きさせてもらってます好物は母のあっぷるぱいでございましてフガ……」

勇者「…………」

大臣「……というわけなのです」

勇者「じじい……嘘だろ……おい!!」

王「スピー……zzz」

勇者「うほぁあああああ!!!」

大臣「というわけなのでどうかもうお静かに」

勇者「じゃあお前! かわりに褒美くれよ!!! よこせよ!!!!」

大臣「申し訳ありませんな。約束したのは国ではなく王個人ですので」

勇者「ふっっざけんなよ……!! 死ぬ気で世界救って報酬なしとかありえねぇぞ」

王「勇者!!」ガバッ!

勇者「お、おお王様ァ! 俺だよ俺!!」

王「おお勇者よ……」ジワッ

勇者「そうだぜ! 魔王たおしたぜ! 平和になったぜ!! 褒美貰いに来たゼェええ!!!」

王「死んでしまうとはなさけない……勇者が次のレベルになるには13423の経験値が必要じゃ僧侶が次のレベルになるには」

勇者「……」

おなかすいたから 飯くいます

王「盗賊が次のレベルになるには4890の経験値が」

勇者「そんな……」

大臣「たまに思い出したかのように口を開いてはこうなのです……」

王「冒険の書に記録しておくか?」

勇者「もういい。あんたが休んでくれよ……」

大臣「さぁ、王はそろそろお昼寝の時間です。どうかご退室を」

勇者「俺の褒美が……生きるアテが……」

大臣「しかしその武勇をたたえ、特別な賞状を進呈しよう。受け取れ」

 勇者殿
  あなたはこの混迷の時代、果敢にも悪の元凶である魔王討伐に旅立ち
  見事その使命を果たされました。
  よってその功績をたたえ、深甚なる感謝の意をここに表します。

 大臣より


勇者「川で溺れる子供救った時にもらえるやつだろそれ!!」



……



魔王娘「どうじゃった!? たんまり貰えたかの!?」

勇者「……くそぉおお!!」

魔王娘「くそ? なんじゃ、お腹痛いのか?」

勇者「まだだ……まだ姫を陥落させれば、資産はまるっと手に入る!」

勇者「そのまま俺が次の国王になればいままでの損失全部取り戻せるどころか大勝利!!!」

魔王娘「ほぉ、いい気迫じゃ。ますます気に入った。でもわしを正妻に置くんじゃぞ?」

勇者「断る」

魔王娘「それで、その手にもった立派な紙はなんじゃ」

勇者「ケツふく紙だ」

魔王娘「そんなかたいので拭いたら痛いぞ」

勇者「しってる」


【姫の部屋前】


勇者「うぉぉ……なんか、緊張してきた。この緊張は魔王との決戦並だぜ」

魔王娘「どうどうと行け。お主は勇者じゃぞ。身分相応だとわしは思うぞ」

勇者「だ、だよな! お前いいこと言うなぁ」ワシャワシャ

魔王娘「ほふぅ……か、かわりにノックしてやろうか!?」

勇者「結構。バーンと入って驚かせてやるんだ」

勇者「きっと照れながらも飛びついてくるぜ。んで、腰をくねらせてもじもじしながら潤んだ目で俺を見つめるんだ」

魔王娘「そういうのが好きなのか。覚えておこう」

勇者「よぉし入るぞぉ……入るぞぉお! ……いや待て。何か声がする。誰かいんのか?」ピタッ

 


 『あんっ、やっ、あんっ……もっと突いてぇ』
 『おお、なんと可憐で美しや』
 『あっ…あっ……騎士様ァ騎士様ぁ……騎士様のおっきいランス好きィ……』
 『おお姫さま姫さま……中でだしまするぞ!』
 『あああん、やん、んはぁ、あっ……んうぅ、あっ、だめぇ……』
 


勇者「   」デロッ

魔王娘「なっ! なんでいきなり腹の中のもん召喚するんじゃ! 背中さするか!?」ナデナデ

勇者「おぇえぇええ……紙、紙あってよかった……」


 『あっ、あんっ! やぁんっ!!』
 『はぁはぁ! ふぅ! はぁはあはぁ! おおおっううう!』


魔王娘「な、なんの声じゃ。中で何しとるんじゃ?」

勇者「もう俺かえる」

魔王娘「どこへ……? この床にちらばった昼飯片付けんでええのか!?」

勇者「しらない。もうむりここにいたら死んでしまいます」

魔王娘「おいシャキっと歩かんか危ないぞ」

【城外】


門番「おつかれしゃっすwwwせんぽあいどしたスかwwwww」

勇者「……」

門番「しぇんぱい?wwwwちょまっwww身投げはやめましょうやwww」ガシッ

魔王娘「おい何しとるんじゃ! 危ないんじゃ!」ガシッ

勇者「うるせー! 殺せー! しなせろー!」

魔王娘「一体どうしたというんじゃ!」

勇者「どうしたってあはは王様がっ姫がっっいひひっひひひひやべぇもうだめだ」

門番「そっすよ人生笑っときゃいいんすわwwwwwんふふふ!」

魔王娘「姫は何をしとったんじゃ? いやに艶やかな声が響いとったが」

勇者「何ってナニしてたんだろうがよぉ!!」

魔王娘「だから何じゃ!???」

勇者「あぁ……これが咎か……」

魔王娘「人生うまくまわらんもんじゃのう」

魔王娘「むしろわしの父を討ってすべての運を使い果たしたとしか」

勇者「それありえるわ……だってあいつ、あろうことか滑ってころんだもん」

魔王娘「最近ずっと寝る前に足痛い足痛い言うとったからのぅ……」

勇者「俺はどうしたらいいんだ……一体なんのために魔王と戦ったんだ」

魔王娘「おかしな事を言うのう。全世界のために、じゃろ?」

勇者「あ、おう……まぁな。でもさすがにその結果がコレじゃ堪えるぜ……」

魔王娘「住む家はないのか?」

勇者「借家ならあったけどそんなもん旅にでたとき引き払っちまったよ」

魔王娘「そうか。いま金ないんじゃったな」

勇者「親父もおふくろももういねぇしなぁ。あー」

魔王娘「こうなった以上頼れるのはわしだけじゃな!」ピョンピョン

勇者「僧侶ちゃんもだめ、戦士ちゃんも盗賊ちゃんも……王様もだめ、姫もだめ……もう俺はおしまいだぁ!」

僧侶「私たちの何がだめなんですか?」

勇者「おわっ! 僧侶ちゃん! と盗賊ちゃんと戦士ちゃん!」

僧侶「まだこんな所ほっつき歩いてたんですか」

勇者「いや、今しがた王様に……報告を」

盗賊「へぇもう褒美もらいに行ったのか。さすが強欲の塊!」

勇者「でもな……」

僧侶「わたしたちいまから三人でご挨拶に参るんですよ! うふふ」

勇者「あ、そうなんだぁ……アハハハ」

戦士「私は騎士団入りを正式に認めてもらうために!」

僧侶「私は大僧正あての推薦状かいてもらうんです! 大聖堂のシスターって素敵じゃないですか?」

盗賊「私は旅の資金をもらって世界をまわるよ。今度はゆっくりとな」

勇者「いやお前ら……聞け……実はな」


……


僧侶「う゛ぞっ。その話ほんとですか!?」

戦士「まじかよ……」

盗賊「はぁ……お前の泣きべそをみると冗談じゃないんだろうな」

勇者「そうなんだって……」

魔王娘「あげくの果てに姫が部屋でナニをしとってな」

僧侶「ナニ? 何ですか?」

勇者「やめてもう思い出したくない」

盗賊「……ま、こうなった以上はしかたない」

戦士「そうだな。おのおので何とかするしかねーよ」

勇者「なんで割り切れるんだよぉ……大臣しめあげてごっそりもらおうぜ」

盗賊「さすがに強盗とか脅迫は気が乗らないなぁ」


僧侶「はー、とりあえずの金策から考えないとですねぇ」

魔王娘「なんじゃ、金がないとなにもできんのかこの国は」

勇者「そういうもんなんだよ」

魔王娘「そうなのか、わしは姫じゃからそんなこと気にしたことなかった」

盗賊「勇者はこの子と結婚したら安泰じゃないか」

魔王娘「そうじゃぞ! いいこと言うのう!」

勇者「金が多少あってもめんどくせーのはごめんだっつの」

戦士「へぇ結婚かぁ。野暮な話だけど魔王家は実際どれくらい蓄えが……」

魔王娘「うーん……」

勇者「1万Gか? 10万Gか? なんにせよお前みたいなちんちくりんはごめんだけどな」

魔王娘「ざっと1億くらいじゃの」

「「「「1億!?!?」」」」

勇者「お、おま……1億って……」ガタガタ

魔王娘「なんじゃ血相かえて」

盗賊「0の数まちがってない!? ていうか通貨は!? Gなの!?」ユサユサ

魔王娘「間違っとらん! ばかにするな! 金もお主らが使っとるのと同じやつじゃ!」

勇者「お、おおおおっ、お前さっき食べたスパゲチィの値段おぼえてるか!?」

魔王娘「二人で14Gくらいじゃったのう。えらく安くて気に入ったってわしは言ったぞ」

勇者「うおおおおマジで1億G!? 何万回パフパフ屋いけんだよ!!!」

戦士「高いお酒飲み放題だな……」ジュル

僧侶「礼拝堂いくつ建てられるでしょう……」ゴクリ

盗賊「国家予算じゃなくて君の家の資産なんだよな!? な!?」ユサユサ

魔王娘「そうじゃと言っとるじゃろ無礼な」

盗賊「よし勇者。私とも結婚しよう。ていうかして」ポンッ

僧侶「勇者さま、末永く私が幸せにいたします」ペコッ

戦士「勇者。好きだ。お酒より好きかもしれない」ガシッ

勇者「お、おおお!?」

魔王娘「どうしたんじゃ? さきとは打って変わってモテモテじゃのう。じゃあついでにわしも結婚してくれ!」

盗賊「うん! ていうかお願いします勇者と結婚してあげてくださいお姫様!」

勇者「なんでお前が許可してんだよ!!」

魔王娘「ふふ……勇者、よかったのぅ丸く収まって///」

勇者「いや……まぁ丸く……丸い、よな?」

僧侶「はい!」

勇者「よ、よっしゃああああ丸い!!! 全員結婚しようぜぇ!! 多重婚だ!!!」

勇者「きた……ついに我が世の春がきた!!!」

勇者「さっそく子作り三昧だぁあ!! うひ、うひひひ」

魔王娘「あ、でも金は人間たちにほとんど全部没収されたんじゃった」

魔王娘「だからいまは手元に2000Gしかないんじゃスマン」

盗賊「 解 散 。さよなら勇者お元気で」

僧侶「いましがたの婚約を破棄させていただきます」

戦士「右に同じ。さぁて仕事さがすか。そんなうまい話があるわけないんだよ結局」

勇者「はぁ……?」

魔王娘「おぬしらどうしたんじゃ気まぐれな」

勇者「はぁぁあ……・?」

魔王娘「な、なんじゃ……? そんなジッと見つめんでくれ///」

勇者「お前……」

魔王娘「ん/// 照れるぞ」クネッ

勇者「お前ええええええ!!!」

ガシッ グリグリグリグリ

魔王娘「あががが痛い痛いんじゃなにするんじゃ!!!」

勇者「ちくしょー! なんの恨みがあるんだよお前! あ、さてはそうか! 俺への復讐か!!」

勇者「親父を倒した俺にとびっきりの不幸を届けに来たんだなあああ!! あれもこれもお前のせいだああ!!!」

魔王娘「ご、誤解じゃ! わしは何もせんし、しとらん!」

勇者「だったらどうしてぇ……」ガクッ

魔王娘「2000Gじゃちょっと少ないか?」

勇者「うん……」

魔王娘「でも愛はいっぱいじゃ!!」

勇者「気持ちはうれしいけどよぉ……お前……魔物じゃぁああん……」シクシク

魔王娘「……やはり種族の垣根を越えるのはそう容易ではないということか」

勇者「いや俺の個人的な好みの話なんだけどな。普通に魔族と結婚する人とかいるし」

魔王娘「やっぱり器が小さいんじゃお主は」

勇者「自分のことはよく知ってる。あいつらのこともよくわかってる……」

魔王娘「だんだんかわいそうを通り越して哀れになってきたぞ」

勇者「早く俺に愛想をつかせてくれ……」

魔王娘「勇者……」

僧侶「はぁ、いつになく落ち込んじゃってますね。こうなったらめんどくさいですよこの人」

魔王娘「おお! 乳の女、まだおったのか」

僧侶「やめてくださいそんな呼び方」

僧侶「ちょっと気になって戻ってきただけですよ。私だっていまのところアテがないですしね」

勇者「そうりょちゃん……」グスッ

僧侶「ほら、鼻水ふいてください。ちーんして。カッコ悪い」

勇者「優しいな。毎朝スープつくってくれ」

僧侶「はい? スープ? それくらいかまいませんけど……」

勇者「 本 当 に !? 」

僧侶「え? ん……? うーん……あっ!」

僧侶「そ、そういう意味ならお断りします! 私、旦那様にするなら紳士な人って決めてるんで」


勇者「さっきは自分から婚約申し込んできたのに……」

僧侶「あれはちょっと……あまりの大金と場の空気に気が動転しただけです! 今思えばなんてはしたない事を」ペコリ

勇者「だよなー! 1億Gは人間狂うわ。うん僧侶ちゃんのせいじゃないよ大好き。あははは」

僧侶「はい、恥ずかしながら精神の修行がまだまだ足りないってことですね、うふふ」

魔王娘「なんか仲良いみたいじゃ……」

勇者「みたいじゃなくて! 良いんだよ仲! な?」

僧侶「えぇ、なんだかんだで長い旅の付き合いですしねぇ」

勇者「だろぉ? 仲間のよしみで養ってくれよ」

僧侶「お仕事さがしたらどうです?」

勇者「だって俺勇者だぜ?」

僧侶「……え?」

勇者「あ、聞こえなかった? だって俺ってば勇者だぜ?」

僧侶「無職の間違いでしょう?」

勇者「……」

僧侶「私、なにもしないぐうたらな人なんて断じて御免ですからね」

勇者「……う゛、なんかまた吐き気が……」

魔王娘「そうかおぬし無職か」

勇者「嘘だろ……魔王を倒したのに無職!? ていうか倒したゆえに無職!?」

魔王娘「乳の女は無職じゃないのか?」

僧侶「私は僧侶の資格も薬師の資格ももってますから」

魔王娘「なるほど、できる女と言うやつじゃな」

勇者「僧侶ちゃんすげぇだろ!? さすが俺の妻だよな」

僧侶「はいはい。で、無職の旦那様はこれからお仕事探されるんですか?」

勇者「旦那様っていった!?」

僧侶「の、ノリですよ……馬鹿ですねぇ」

僧侶「それにさっきも言ったとおり私紳士な人が好きなので」

勇者「じゃあ仕事を探して紳士になったら結婚してくれる!? 子作り三昧してくれる!?」

僧侶「う゛……うーん……そんなこと言ってる時点で紳士になれない気が」


僧侶「それになれたとしてもお約束なんてできませんよ……そりゃあ多少好きになる努力はしてみますけど」

勇者「すこしでも僕の方に傾いてくれるなら僕は君のためになんでもやるよ!」

魔王娘「なんでいまさら僕っていうんじゃきもいんじゃあ」

勇者「おまえはひっこんでろ」スコン

魔王娘「ぎゃっ」

僧侶「あ、そういうの減点ですよ。暴力なんてもってのほかです」

勇者「うぐ……」

魔王娘「やーい怒られとる」

僧侶「あ、じゃあこういうのはどうです?」

勇者「?」

僧侶「一週間あげます。その一週間は仕事をさがしつつ、その子に紳士的な振る舞いをしてあげてください」

勇者「お、おおお!?」


勇者「紳士的ってこいつに対して!?」

僧侶「紳士とは常に人に平等です」

勇者「こいつ人じゃないよ」

魔王娘「魔物じゃ。怖いぞー」

僧侶「……ゴホン、イインデスヨそんなの気にしなくて」

勇者「じゃあこいつに紳士的態度をとって、なおかつ仕事がみつかったら僧侶ちゃんその時は!」

僧侶「……はい、がんばって好きになってあげます……たぶん、きっと」

勇者「たぶんとかずるいよ! 俺のしってる僧侶ちゃんはそんな曖昧なこと言わない」

僧侶「……じゃあなります」

勇者「  神  に  誓  っ  て  ?  」

僧侶「ウグ……ち、誓います」

勇者「よっしゃああ!」

勇者「聞いた!? 聞いた!? 神に誓うって!」

魔王娘「神に誓って好きになるってなんじゃ。ままごとか」

勇者「ちがうって。俺たちくらいの歳になると好きの延長線には結婚しかねーの」

僧侶「……」ジトォ

勇者「だよね!? そういう意味で誓ったんだよね!?」

魔王娘「なるほど」

僧侶「あ、あっ、でも少しでも紳士的な態度を崩したらその時は、これ以上のご縁は無かったということで!」

勇者「はい!!」

僧侶「それじゃあがんばってくださいね」

勇者「え、行っちゃうの!?」

僧侶「私も教会をまわって仕事場を見つけなくちゃだめですから、さよなら」

勇者「残念……」

魔王娘「またふたりっきりじゃな」

勇者「……やった……僧侶ちゃんとグフフ、結……グフ」

魔王娘「紳士のう……」

勇者「よし、俺いまから紳士だから。お前も紳士相手の振る舞いってものを考えろよド田舎娘」

魔王娘「はあ……」

勇者「ゴホン。では仕事を探しに行こうかお嬢さん。ついてきなさい」

魔王娘「……なんだか思ったより人生楽しそうじゃな」

勇者「はっはっは。勇者は廃業した。俺は紳士だ」

魔王娘「無職の、をつけ忘れとるぞ」

勇者「なぁに一週間もあれば道具屋の見習いくらいにはなれる」

魔王娘「あれほど下働きはしたくない言うとったのに……」

勇者「僧侶ちゃんはいつも俺のやる気に火をつけてくれるのさ」

魔王娘「あやつも罪な女よのぅ……」


……


僧侶「それでは一週間よろしく頼みます」

盗賊「うん。しっかり監視するよ」

僧侶「うふふ、どうせ勇者さまのことです。3日も経てばあの子を買収か懐柔にかかるでしょう」

盗賊「あのチビッコは勇者に心底惚れてるみたいだしね」

僧侶「態度を崩したらすぐに報告してください」

盗賊「任せてくれ。ヌカリはない」

盗賊「尾行や隠密行動は大の得意だ」

僧侶「はい」

盗賊「報酬は二割引きでいいよ。仲間だからな」

僧侶「え゛っ、ちょ……お金、え?」

盗賊「任務開始」 ヒュン――


僧侶「……あの……お金…とるんですか……?」


……


【繁華街】



道具屋「はぁ、元勇者ねぇ……」ジロジロ

勇者「はい。剣の腕には多少自信があります」

道具屋「じゃあ行商屋に弟子入りしたら? ここは平和だから剣の腕なんていらんよ」

勇者「いえ、行商屋では毎日子作り三昧ができませんので」

道具屋「はあ……? そちら奥さん?」

魔王娘「うむ!」

勇者「いえとんでもない……まさか道具屋さん、あなたも『視える人』だったとは。ますますご縁があることでしょう」

勇者「視える人にしか視えないこの悪霊、じつはとんでもなく格の高い困った奴でしてね例えば寝てる間に商品を」

道具屋「悪霊憑きを雇う気なんてないよ。帰った帰った」

勇者「え、待って俺なら仮に悪霊からでも商品を守って見せますよっていうアピールを」

道具屋「あんた、絶対騒動引き起こすタイプだから。俺にはわかる、じゃあな」




魔王娘「これで四軒目じゃな」

勇者「……クッ」

魔王娘「まったく、人を悪霊に仕立て上げおって」

勇者「悪霊ならまだましだ……お前はそう、俺にとっての貧乏神だよ」

魔王娘「魔王の娘じゃ! 噛むぞ!」

勇者「にしてもなんだ、どいつもこいつもあの取りつく島のなさは……そ、そうか!」

魔王娘「なんじゃ、いつも一人で納得するのはやめい」

勇者「平和になった代償に、職にあぶれた奴が巷を埋め尽くしてるんだ」

魔王娘「どういうことじゃ」

勇者「たとえばよー、いままでは国の予算で国境に兵隊とか置いたり、傭兵雇ったりしてたろ?」

勇者「平和になったら兵隊なんてそんなにたくさんいらないからなぁ」

魔王娘「なるほど……就職難というやつじゃな?」


勇者「まずい……この街には思ったより仕事がないのかもしれない……」

魔王娘「はよう探さんと」

勇者「魔王たおしたあと浮かれて豪遊してる場合じゃなかったな。いやあのときはまさかこんなことになるとは」ブツブツ

魔王娘「父上にまさかそれほどの影響力があるとは思わんかったぞ」

              スロット
勇者「こうなったら魔法の機械で……」

魔王娘「だ、だめじゃあこれ以上人間が腐ったら二度と紳士にはなれんぞ!」

勇者「……そうだったな」

魔王娘「やはり剣の腕を思う存分活かせる仕事がむいとるんじゃないか?」

勇者「うーん……あんまり好きじゃないんだけどなぁ」

魔王娘「ほれ、仲間に剣をもった娘っ子がおるじゃろ? あやつはどうしたんじゃ?」

勇者「なるほど、戦士ちゃんが仕事をみつけたなら俺も縁故でなんとか潜り込めるかもな」

魔王娘「探すんじゃ!」


【守備隊-兵舎-】



戦士「え? 剣士になりたい?」

勇者「そうなのだ」

戦士「なのだ?」

勇者「俺も戦士ちゃんと一緒に世のため人のために剣を振るいたいんだよ」

戦士「といってもなぁ。私は単純に元の鞘にもどったというか」

勇者「え?」

戦士「ここ、もともと私が旅立つ前にいた街の守備隊の兵舎なんだ」

勇者「あー……あー……」

戦士「どういう心変わり? できれば剣はもう使いたくないって言ってたよな?」

勇者「ははは……あまりに仕事がなくて、この際しょうがねぇかなって」

戦士「そうなんだ? うーん、どうしよっかな。私の一存じゃどうにもならないんだよな」

戦士「兵士長にあってみる?」

勇者「紹介してくれるのか!?」

戦士「うん、勇者ならきっと受け入れてくれるんじゃないかな」

魔王娘「そりゃよかったのう!」

勇者「おう! あの、ちなみにここは人員整理はされてないの……?」

戦士「なにを気にしてるんだらしくない」

勇者「え、でも俺が入りこめる余地なんてあるのかなぁって」

戦士「大丈夫! 次の戦いにむけて少数精鋭の手練をあつめてるところだ!」

勇者「次の戦い……はぁ、大臣のおっさんもなんかそんなこと言ってたな」

魔王娘「人間は戦ってばっかりで大変じゃのう」

戦士「いましがた世のため人のためって言ったろ?」

勇者「うん……紹介して」


……



兵士長「ほう、噂には聞き及んでいたが、まさか君のような青年とはな」

勇者「恐縮です兵士長殿」

兵士長「歴戦の勇者と言うほどだ、もっと顎髭などを蓄えたたくましい豪傑かとおもっていたが」

勇者「正直ルックス的には兵士長のほうが勇者には向いてるかとおもいます」

兵士長「わはは! 俺の手にかかれば魔王なんぞイチコロだったろうよ」

魔王娘「なんじゃと! お前みたいな中途半端な髭もじゃに父上gもがふがフガ」

勇者(こらっ、あほっ! 面接中だぞ!)

魔王娘「ふがふが」ジタバタ

兵士長「? その子は?」

勇者「あーえっと、妹です。いえ嘘です従姉妹でした」

兵士長「ほう、君ににて勇ましいな」

魔王娘「失敬な。こいつと一緒にせんでくれ」

兵士長「ははは。ずいぶんと気が強い」

勇者「で、兵士長! 俺、腕にはそこそこ自信があります!」

兵士長「ほう! では試してみるか、入隊試験だ」

勇者「……」ゴクリ

兵士長「戦士、相手をしてやれ」

戦士「わ、私ですか!?」

勇者「げぇ! 戦士ちゃん!?」

兵士長「君なら俺以上によく知ってるだろうが、コイツは優秀な兵士だ。君ほどの相手には十分だろう」

勇者「……よし、わかりました」

戦士「兵士長がそういうなら……」

兵士長「広場へでよう。危険ですので付き添いの方はこちらへ……」

魔王娘「がんばるんじゃぞ勇者!」

勇者「おう!」


【訓練場】



勇者「うお、こんなにギャラリーがつくのか」

戦士「お前と私、世紀の戦いといっても過言ではない……ごめん言いすぎた」

勇者「ところで兵士長は? 見守ってくれるんじゃないの?」

戦士「あれ? どこいったんだろう」

勇者「ふうー緊張してきた」

戦士「私と刃をまじえるのは出会った頃以来だな」

勇者「おもいだしたくもねー、あの時はこてんぱんにされたからな」

戦士「むろん今回も手は抜かないぞ」

勇者「当然! っとそのまえにちょっといいかな?」

戦士「え?」

勇者「お花をつみに……へへへ」

戦士「相変わらず緊張に弱いなァ……すぐ戻れよ。あそこの通用口入って右に曲がればすぐだから」

勇者「どうもすみません、みなさんすぐ戻りますのでどうぞそのままで~」ペコペコ


……



魔王娘「わしらはどこへ行くんじゃ? 特別席かいのう」

兵士長「……」

魔王娘「勇者は強いぞぉ! お主も一度戦ってみるといい!」

兵士長「……ふっ、まさか。着いたぞ」

魔王娘「なんじゃここは。なんもないぞ」

兵士長「ここは、お前の処刑場だ」

魔王娘「え……?」

兵士長「ふ、ふふふふ、ははは! 俺は運がいい」

兵士長「まさか次の目標がのこのことやってくるとは」

魔王娘「な……」

兵士長「お前が魔王城から消えたと報告されたのち、あちこちの街で目撃情報が入るようになった」

魔王娘(こやつ……!)

兵士長「覚悟はいいな? 子供であろうが容赦はせんぞ」


兵士長「魔王の娘……お前を殺せばすべて片がつく」

兵士長「人に化けて勇者に近づき、仇討ちの隙をうかがっていたか悪魔め」ジャキン

魔王娘「ちが……わしは勇者の!」

魔王娘「そ、その物騒な剣を収めるのじゃ!! 絶対痛いじゃろそれ!」

兵士長「もはや問答無用! 残党狩りは俺たちの使命! 成敗!!」ギラリ

魔王娘「ひぅ!! 助っ」

ギィィィン……

兵士長「……なに……? 防いだ……?」

魔王娘「はぅ……?」パチクリ

勇者「あー、あーあー。お手洗いをさがしてるんですが迷ってしまって……」

魔王娘「勇者……」

兵士長「……なぜ邪魔をする。いまごろ君は戦士と戦っているはずだが?」

勇者「兵士長いなくちゃ始まるもんも始められませんよ。やだなぁ」

兵士長「それよりいますぐ剣を引け。いいか勇者、この娘は」

勇者「あ、やべ! すんません兵士長! 入隊の話はやっぱ無しで! 俺実は剣の腕なんてたいしたこと無いんですよ」

兵士長「ほぅ……やはり運のいいだけの男か、私の見込み違いだったようだ」

勇者「つーわけでさよなら! おい行くぞ」

魔王娘「う、うむっ」

兵士長「ま、待て! その娘はおい! 聞け! お前は魔物に騙されているんだ!!」

兵士長「……とまれ!」

兵士長「逃したか……なんて逃げ足の速さ」

兵士長「騙されている……? いや、違う……何が目的か知らんが」

兵士長「あいつは魔物の味方をしている……これは許されるものではない」

兵士長「逆賊だ!!」

勇者様かっこよすぎだろ
いいぞもっとやれ

あーあ
国家を敵に回しちゃったか


兵士「兵士長! なにごとですか!」ドタドタ

兵士長「逃げられた以上はしかたあるまい」

兵士長「お前たち、いますぐ勇者とその一味をひっとらえろ、まだこの街にいるはずだ」

兵士「兵士長!? なぜ勇者様を」

兵士長「やつらは魔物に肩入れし、その身を匿う悪魔の手先だ」

兵士「まさか勇者殿が……信じられません」

兵士長「俺のことは信用ならんか? 今俺がこの目でみたのだ、そして目標の処刑を阻止された」

兵士「な、なんと! 魔王の娘がこの街に!?」

兵士長「あぁアイツの連れの小さい女がそうだ。しかしこれは好機。この街で片をつけるぞ」

兵士「は!!」



……

戦士ちゃん逃げてー


【街の宿屋】

勇者「……っぶねー」

魔王娘「勇者ァ……」ヒシッ

勇者「あー、やばかった。兵士長まじこええ。あれ絶対何人か殺っちゃってる目だぜ」

魔王娘「勇者ぁ、わし怖かったー」スリスリ

勇者「あぶなかったなー」

魔王娘「ありがとう助けてくれてぇ」

勇者「当たり前だろ……お前に傷ひとつでもつけたら……約束が違うから」

魔王娘「約束……なんのじゃ?」

勇者「……」

魔王娘「まさか……なにか父上と……?」

勇者「紳士にしないと僧侶ちゃんと結婚できないじゃん!」

魔王娘「が……」ガクッ

勇者「あと一週間まもりきれば、うん!」

魔王娘「お、おいその後は見捨てる気か! 正気か! 妻じゃぞ!」


勇者「いいかよく聞け。お前は魔物だ。しかも最悪なことに魔王の娘だ」

魔王娘「そうじゃが……」

勇者「残念だけど、どんな目にあってもしかたない、ここは人間の国だ」

魔王娘「そんなのって非道じゃ」

勇者「でも! 俺が守ってやるから」

魔王娘「一週間だけじゃろ……?」

勇者「だから死にたくなけりゃ、その後は安全な場所へ逃げろ。それはお前の自由だ」

魔王娘「とはいってものう……いまさら安全な場所なんて……それにおぬしと離れるのも嫌じゃ」

勇者「とにかく言えるのは、俺といても危険ってことだな」

勇者「魔物には魔物の帰る場所があるんだ。お前もこの街に来てわかっただろ?」

勇者「強制はしないけど、俺は他人の生き死にに責任はとれない」

魔王娘「うぅ……」



……

戦士「兵士長! これはどういうことです!」

兵士長「お前も運がいいのか悪いのか」

戦士「鎖を外してください!」

兵士長「だめだ。事が済んだら開放してやる」

戦士「事……?」

兵士長「俺たちの次の戦い、何だか知っているか?」

戦士「いえ、私は隊に復帰したばかりですので」

兵士長「なら教えておかねばならんな。魔王軍の残党狩りだ」

戦士「残党狩り……魔王軍にもう戦意はありません……なんて無意味な」

兵士長「その内で俺たちの任務は最も重要な魔王一族の打倒」

戦士「魔王の娘……!」

兵士長「哀しいなお前も共犯だったとは。奴は俺たちの獲物だ。あとはわかるだろ?」

戦士「でも、あの子に罪は…」

兵士長「お前も小僧同様に肩入れするのか? 俺を悲しませないでくれ最愛の弟子よ」

戦士(勇者……・・お前はどうするつもりだ……)



……


僧侶「キャッ! きゃあちょっとなんなんですかあなた達ずかずかと! ここは神聖な場所ですよ!」

兵士「ええい黙れ魔物の手先め!」ジャキン

僧侶「えぇ!? 私は勇者様の一味ですよ!! 無礼です!! 訂正しなさい!」

兵士「その勇者が魔物の仲間だと判明した」

僧侶「ゲッ……」

兵士「なんだ今の可愛い顔は! どうした? まさか知らなかったとでも……?」

僧侶「……。え~~びっくりです~~っっ!」

兵士「しらばっくれるな! いいから我々と来い!」

僧侶「うう……せっかくお仕事にありついて平和な毎日を過ごせるとおもったのにぃ……」

僧侶(も~~勇者様のばかぁ。ほんとロクなことにならないんですから)


兵士「にしても君可愛いな。どう、疑いが晴れて解放されたら一杯やらない?」

僧侶「お断りします!」ムカッ



……



盗賊「二重尾行か……参ったな」

兵士「勇者の仲間の盗賊だな? さぁ我々と来い」

盗賊「うーん……」

兵士「お、それにしても君美人だな。どう、疑いが晴れて開放されたら一晩ご一緒しない?」

盗賊「まいったな……」

兵士「ねぇねぇ。お、おいどこへっ!」

盗賊「私を捕まえようだなんて甘かったね」

兵士「速いぞ! 追いかけろ!」



盗賊(これ、やっぱまずい状況だよなぁ……)

盗賊(勇者も見失っちゃったし。本気でそろそろずらかる準備しようかな)


【街の宿屋】


勇者「今日はここに身を隠すか」

魔王娘「でも宿泊費がないんじゃ」

勇者「お前2000Gはどうした」

魔王娘「家じゃ」

勇者「げっ! なんでそんな大事なことを今いうんじゃよ」

魔王娘「聞かれとらんし」

勇者「聞かれてなくても言うべきことは言わなきゃだめなんだよ!!」

魔王娘「うう……」

勇者「ほかに何かいってないことはないか」

魔王娘「えっとえっと……あ!」

勇者「なんだ。ろくな事じゃなかったらそのちっこいツノ更に短くしてやるからな」

魔王娘「そういえばわし、魔族と人間の混血じゃ」

勇者「あ……?」

魔王娘「……なんじゃ? それでもわしは誇り高い魔王の娘じゃ!」

勇者「混血……うん、言われてみれば」

魔王娘「なんじゃ? 人の顔をじろじろみて、恥ずかしい///」

勇者「お前の親父は青白い肌してたもんなぁ」

魔王娘「あれは貧血じゃが」

勇者「んなわけあるか!」

魔王娘「記憶の中での母上は色白で美人でのぅ。おまけに乳がでかかった」

勇者「ほぅ、会ってみたいな。美人かぁ、ほぉ」

魔王娘「でも母上はもうこの世におらんでの……」

勇者「……そうだったな」

魔王軍「美人薄命というやつじゃ。そう考えるとわしももう長くないかもしれんのぅ」チラッ

勇者「……へー」

魔王娘「父上もどこぞの誰様に殺されてしもうたし」

勇者「いやおまっ、やめろよしみったれた話するの。死生観違うっつったろ」

魔王娘「気にしとらんぞ! 父上は勇者に負けるのは本望じゃ言うとった!」

魔王娘「お主のことをずっと待ちわびてじゃ! 宿命じゃからな! おぬしもそうじゃろ?」

勇者「俺は魔王に殺されるのはこれっぽっちも本望じゃねーけどな」

魔王娘「……人間に殺されるのは?」

勇者「フッ……もっと御免だぜ」

魔王娘「ほぁ……今の顔かっこええのう。もう一回やって!」

勇者「……もっと御免だぜ!」

魔王娘「おぉ……! かっこいいんじゃ」

勇者「俺はだんだん調子にのるからそこらへんでおだてるのはやめときな」


魔王娘「それよりお主の仲間の三人娘は無事かのぅ」

勇者「……うん、心配だ。戦士ちゃん、うまく逃げてるといいけど」

魔王娘「不安じゃな……」
                       
勇者「それに僧侶ちゃんはとってもか弱いからな……」

魔王娘「見るからにな」

           ダークネスドラゴン
勇者「暗黒大陸で絶望の飛龍とやり合ったときは、漆黒の炎二発でたおれちゃったし」

魔王娘「一発耐えたんじゃな……」

        ガーディアンゴーレム
勇者「魔王城で門番の巨像にふみつぶされた時はさすがにダメかと思ったよ」

勇者「みんなで駆け寄って手握って泣いちゃったもん」

魔王娘「以外とあの小娘も苦労しとるんじゃな」

僧侶硬すぎだろ

勇者「僧侶ちゃんは黒焦げになってもぺしゃんこになっても俺についてきてくれる健気な子だよ」

魔王娘「おぬしが惚れるのもしかたあるまい。悔しいが闇に葬ることにしよう」

勇者「その時は俺がお前を光に変えてやる」

魔王娘「もうひとりおったじゃろ、あの細い女はどうなんじゃ?」

勇者「盗賊ちゃんはまぁ強いし速いし頭も回るしなんとかなるだろ」

魔王娘「信頼しとるんじゃな。ええ仲間じゃ」

勇者「信頼か。もちろんだ! 俺たちはずっと一緒に旅してきた仲だからよぉ!」

魔王娘「その割におぬしの扱いが雑な気がしたが……」

勇者「飯にすっか!」

魔王娘「都合の悪いことは聞こえん耳なんじゃな」



……



勇者「あー食ったくった。風呂入って寝るかぁ」

魔王娘「寝るのか? 明日からどうするか考えんのか?」

勇者「考えてもしゃあねぇよ。適当に逃げまわるしかない」

魔王娘「勇者ともあろうものが逃げまわるなんて情けないのう。倒せばいいじゃろう」

勇者「俺はいまは紳士だから。穏便にことを運びたいの」

勇者「……ていうかお前のせいでこうなってんだろうがぁ」グリグリ

魔王娘「うぎゅう……申し訳ないぃぃいいだだだ、紳士はどうしたんじゃああ」

勇者「おっと。あぶね」

魔王娘「乳の女にチクる」

勇者「やめろぉ! 俺は案外気が短いぞ」

魔王娘「よぅわかったわ!」

勇者「それと、いいか、外では絶対に帽子をとるな」

魔王娘「うむ」

勇者「角と尻尾さえ見えなきゃ人間の糞ガキにしかみえねーんだからよ」

魔王娘「わかっとる何回言うんじゃ」

勇者「じゃ、俺は風呂に入る。お前は先にねんねしてろ」

魔王娘「……むぅ、子供扱いはよさんか」

勇者「子供じゃねーか」

勇者「いいか。絶対おとなしくしてるんだぞ」

魔族「娘「ふんっ」

魔族「は?」

娘「え?」


【風呂】


勇者「ふぅ~、あー生き返る。今日はさんざんだったなぁ」


勇者(にしてもきな臭いぜ)

勇者(魔物の残党狩りだぁ? そんなことしたって無駄に金も時間もかかってめんどくせぇだけだろうに)

勇者(あのおっさん、どうもガキを消して終わりって腹じゃねぇ)

勇者(こりゃもしかしたら俺も僧侶ちゃんたちも相当危ないか……?)

勇者(やっべぇなぁ。どうしよう)

勇者(明日は朝からみんなを探すか……)


魔王娘「ずいぶんうわの空じゃな」ヒョコッ

勇者「おわっ!! なんで入ってきてんだよ!」

魔王娘「気づかなかったのか? お背中流すのは妻の役目じゃ?」

ちっぱいprpr

勇者「……人が悩んでる時にずけずけと」

魔王娘「悩みを分かち合うのが夫婦じゃと聞いている」

勇者「……」ジトー

魔王娘「なんじゃ? どこみとるんじゃ///」

勇者「……・」ジィ

魔王娘「そ、そんなに見られたらわし……おかしくなってしまう///」

勇者「こういうのを発育障害っていうのかなぁ」

魔王娘「だからどこ見て言っとるんじゃ!」ベシッ

勇者「ってぇなぁ! お前それで俺と同じような歳とか、新手の詐欺だ!」

魔王娘「女の裸体を見てなんじゃその言い草は!」

勇者「俺は魔物相手に興奮する変態じゃないんでね」

魔王娘「なぬぅ。半分は人間みたいなもんじゃぞ!」

勇者「考えてもみろよ。お前、ナメクジとかカエルの♀相手に興奮すると思うか?」

魔王娘「そんなもんと比べとるのか!!」

勇者「じゃあお前は魔族のくせに人間相手に興奮する変態ってことでいいな」

魔王娘「おぬし限定じゃが」

勇者「子作りしたいほどに?」

魔王娘「子作り三昧とやらをしたいんじゃ」

勇者「……」ピコッ

魔王娘「ぃだっ」

勇者「10年早い」

魔王娘「むっ」

勇者「だいたいお前……自分が子作りできるほど成熟した体だと思ってんのか?」

魔王娘「どういうことじゃ? 子作りどうやるんじゃ? ♀ならできるって父上から聞いとるが」

勇者「お、おいおい……」


魔王娘「どうやるんじゃ!?」

勇者「知らないでいってたのか……!」

魔王娘「教えてくれ!」

勇者「教えるかあ! どこのド変態じゃ!」

魔王娘「子作りは変態なのか!?」

勇者「あぁそうだ。お前みたいなのと子作りしたら変態で大変だ」

魔王娘「そうか……がっかりじゃ。なにやらきもちいらしくて楽しみにしとったのに」

勇者「俺と僧侶ちゃんが子作りしてるとこならいくらでも見せてやるから、しっかり勉強してくれたまえ」

勇者「ま、それと俺がお前とするかは別問題だがな! あっはっはっは」

魔王娘「そろそろ泣いてもええか」


……


勇者「電気けすぞー」

魔王娘「うにゅ……真っ暗は嫌じゃ」

勇者「あぁ? 闇の国の住人が情けねぇ」

魔王娘「そばにいてくれるなら消してもええぞ」

勇者「おう。消した」

魔王娘「優しいのう大好きじゃ」ピトッ

勇者「いや俺も早く寝たいからな、勘違いすんなよ」

魔王娘「うふ、なんじゃ照れとるのか。暗くてもわかるぞ」

勇者「寝ろ」パスッ

魔族娘「ぐふふ」


魔王娘「zzz」

勇者「……」

勇者「……魔王、か」


――――― 


 魔王『ぐふっ、見事……!』

 勇者『勝負あったな! たった一瞬が命取りだぜ』

 魔王『ふふははは俺が死んでも闇はいずれこの世に蔓延り』

 勇者『あ、ちょっと待て死ぬ前に聞きたいことが』ガシッ

 魔王『な……ぬ?』

 勇者『お前の財宝全部よこせ。どこにおいてある!!』

 魔王『ふ、ふふふ、ははははは! ガハッ』

 勇者『やめろー! 死ぬなー! 魔王ー!』

 戦士『とどめさしたのお前だろ』

 盗賊『勇者! 締め上げてでも聞き出せ!! 爪とか剥げ! やれ!』


 僧侶『はー早く街に帰ってお風呂はいりたーい』

 戦士『あびるほど酒を飲みたい』

 勇者『たっぷり貯めこんでんだろ!? なぁ!?』ユサユサ

 魔王『ぐ……くくく、そんなにほしいか……』

 盗賊『当然! 私たちはそれがなによりの目的だし!』

 僧侶『それじゃただの押し入り強盗じゃないですか! 違いますって!』

 魔王『勇者、貴様もか……・?』

 勇者『おう! おら早く言え時間稼ぐな! くたばるぞ』

 魔王『約束しろ、絶対に大切にすると……』

 勇者『当然だろうが! へへへ財宝ってのは人の命よりもこの星よりも重いんだぜ』

 盗賊『うんうん!』

 戦士『それはどうだろう……』

 僧侶『でもたしかに、私たちの旅の中で、お金があれば救えた人々もたくさんいましたよね』 

 戦士『この二人はあきらかに私利私欲な気がするけど……』



 魔王『ぐふっ、見事……!』

 盗賊『勝負あったな! たった一瞬が命取りだぜ』

 魔王『ふふははは俺が死んでも闇はいずれこの世に蔓延り』

 盗賊『あ、ちょっと待て死ぬ前に聞きたいことが』ガシッ

 魔王『な……ぬ?』

 盗賊『お前の財宝全部よこせ。どこにおいてある!!』

 魔王『ふ、ふふふ、ははははは! ガハッ』

 盗賊『やめろー! 死ぬなー! 魔王ー!』

 盗賊『とどめさしたのお前だろ』

 盗賊『勇者! 締め上げてでも聞き出せ!! 爪とか剥げ! やれ!』


違和感なし


 魔王『そうか……・ならこの鍵をもって三階の奥の部屋へ行け』
 
 勇者『そこが金庫か!!』

 
 魔王『俺の大切な大切な宝だ……! お前にならグハァ……くれてやる!!』 
 
 勇者『サンキュ! じゃあ死後やすらかにな! たたるなよ!』


 戦士『軽っ!!』

 盗賊『よし行こう!』

 僧侶『えー私もう歩けませんよぉ。足も怪我しちゃってますしぃ』

 勇者『ふへへ俺がおぶってあげるよ僧侶ちゃん、いや俺の未来のお嫁さん』
 
 僧侶『あ、歩けました』

 魔王『ふはは勇者よ聞け! 俺を倒しても闇はいずれ人間界を飲み込……えっ、おいもう行くのか(´;ω;`)」

 勇者『こっちの階段だ! みんなこい』


 魔王『おい! 俺の最期見届けてくれんのかガハァアアアッ――』


 盗賊『こ、ここだ! この扉! 勇者鍵鍵!』
 
 勇者『あせるなって。お宝は逃げも隠れもしねぇよ』

 僧侶『きゃー! わたしたち大金持ちですか!』

 戦士『貧乏旅はここで終わりだ。ついに苦労が実ったな』

 勇者『開けるぜぇ!』カチャ

 盗賊『!』ワクワク

 ガチャリ……

 ???『どなたかの?』
 
 勇者『は……』

 盗賊『え……誰?』

 ???『無礼な! こっちが誰じゃと聞いておる!』

 勇者『あ、勇者です』

 ???『ゆ、勇者!? おぬし勇者ともうしたか!? ということは父は……』

 勇者『間違えましたすいません』ガチャン
 
 ???『なぁんで閉めるんじゃぁ!』ガンガンガン




――――――― 
 


勇者「……」

勇者「とんでもねぇもん残して逝きやがって」

勇者「なーにがお宝だよ」

魔王娘「zzz」

勇者「あーだまされたー……」

魔王娘「zzzz」ピトッ

勇者(なぁ、俺たちにくっついて来たのは、やっぱり間違いじゃなかったのか?)

勇者(お前はどうして魔王の娘なんだ……)


勇者「さて……明日は忙しくなるぞォ」


……


魔王娘「おはよう勇者」

勇者「ん? あぁもう朝か」

魔王娘「腹がへったぞ」

勇者「飯くったら変装して宿を出るから準備しとけ」

魔王娘「変装か」

勇者「俺が一時期使ってた鉄仮面やるよ、ほれ」

魔王娘「ほぅ……ペッ臭いんじゃ!」

勇者「最後につかったっきり洗ってねぇからな」

魔王娘「とほほ、今日もたくさん歩かなきゃならんのか」

コンコンコン

勇者「?」

「さすらいの剣客様。お手紙がとどいております」

勇者「……扉の隙間からいれてくれ」


勇者「……手紙?」ガサガサ

魔王娘「なんじゃ? みせい」

勇者「ちょっと待て焦るな。差出人は不明か……」

魔王娘「みーせーいー」ピョンピョン

勇者「……」
  

  -敬愛なる勇者-
 
  日が真上に昇るまでに魔王の小娘を連れて兵舎の訓練場へ来い。

 
  お前の旅の仲間の女は預っている。もし来なければどうなるかわかるな。 

  余談だが、俺の可愛い部下たちは、今ちょうど伴侶をさがしているところでな。
  
  誰と一番相性がいいか体で存分にためしてみるのもいいかもしれんな。

  では待っているぞ。ふはははははは。

  -兵士長より-


魔王娘「みーせーてー」ピョンピョン

勇者「……」ビリビリビリビリ

魔王娘「あ゛ー! 何やっとるんじゃァ!」

勇者(ここがわかっててわざわざ呼び出したってことは、やっぱり俺の予想は正しいみたいだな)

勇者(わかりやすい悪党で助かるぜ)


魔王娘「なんて書いてあった? 王様からか? 僧侶からか!?」 

勇者「あぁ? はっはっは、ただのラブレターだ。俺はモテるからなぁ」

魔王娘「おお! それを破り捨てるということはやっぱりわし一筋なんじゃな!」

勇者「……そゆこと。さ、みんなに会いに行こうぜ」ツンッ

魔王娘「うふふ、なんじゃ今頃になって! 好きなら好きと早う言え///」



……


【訓練場】


兵士A「はぁ僧侶さん可愛いなぁ」クンクン

兵士B「これが淑女ってやつだよおめぇ」

兵士C「なるほど、聖職者の気品というものだな」スゥー

僧侶「う゛……昨日お風呂入ってないんでかがないでください……」

兵士長「おい、まだ手をだすなよ」

兵士A「げへへ俺僧侶さんと結婚できるなら死んでもいいぜ」

兵士B「俺もだぁ。こんな可愛い子街中さがしてもそういねぇべ」

兵士C「どうです? 私年収3万Gほどありますが、よろしければぜひ家庭を守ってもらいたい」

僧侶「……お断りします」

兵士長「俺は5万だが、どうだ?」

僧侶「……」プイッ

僧侶「言っときますけど。私勇者様以外と結婚する気なんてさらっさらありませんから!!」

兵士長「ほう、あのナヨナヨした男と?」

僧侶「……ええそうです! わ、私もう婚約してるんで!」

兵士A「えぇ~~!」

兵士C「うそだといってくれえええ!!」

兵士長「フフフ、だとすれば、お前を捕まえたのは正解だったな。素早い女には逃げられたが、まぁいい」

僧侶「……」

兵士長「惚れた女を捕まえたとあれば、勇者は必ずくる。そうだろう?」

僧侶「来ますよ! 魔王娘ちゃんを一度引き渡してそれで終わりです」

僧侶「国の取り決めで捕虜に手出しはできません! 重罪ですよ!」

僧侶「そしてさらに言えば子供を長期間拘束、尋問することもできません!」

兵士長「捕虜ねぇ……クックク。それがまかり通る国ならまだしも、相手は魔物の親玉の娘だぜ?」

僧侶「……!」

兵士長「この国には外道がおおい。俺にはどうなるかわからんぞ?」

僧侶「……なんて人」


兵士長「それにお前、あろうことか、自分が無事でここから帰れるとおもってないか?」

僧侶「え……」

兵士長「こいつらも独り身が長くて、そろそろ飢えててな」

兵士A「へへへへ早く昼にならねぇかな」

兵士B「んだ。こんなべっぴんさんと仲良しできるなんておら生きてて良かったべ」

兵士C「俺興奮してきた」

僧侶(最悪……勇者様の馬鹿ぁ……)

兵士長「さぁて来るかな。いや、来るだろうなぁあいつは馬鹿だから」

僧侶(勇者様来ちゃだめです……!)

僧侶「そ、そういえば戦士さんは……」

兵士長「可愛い弟子だ。手にはかけん。あいつには重要な任務をまかせている」

僧侶「重要……?」

兵士長「入り口の警備だ。勇者が娘をつれてきたら通す、一人で攻めこんで来たら娘の居場所を吐かせて殺す」

兵士長「それ以外は誰もいれないようにする。それだけの簡単な任務……」

僧侶「戦士さん……」

兵士長「お前をダシに使えば言うことを聞かせるのなんて簡単なことだ。いい友達をもって良かったな」

僧侶(うぅ……私の馬鹿。なんて失態を……)



……


【兵舎外】



戦士「……来たか」

勇者「戦士ちゃんおっす。昨日の決着をつけにきたよ」

戦士「そうか……ならば」

戦士「通るといい。中で兵士長が待ってる」

魔王娘「ななななんでここに来るんじゃァ!」

勇者「だまってろって」

魔王娘「でもここは……」

勇者「みんなに会いにきたんだ。今日はそういう予定だろ?」

勇者「僧侶ちゃ~~ん!」

僧侶「勇者さま!! どうして来たんですか!!」

兵士長「やはり来たか。フフフ……バカ正直なやつ」

魔王娘「うぐ……やっぱり昨日の顔いかつい奴じゃ」

勇者「おら、お望みのもん連れてきたぜ。僧侶ちゃんを離せ」

魔王娘「ゆ、勇者!?」

兵士長「まて。そこで止まれ」

勇者「早く解放しろっつってんだろ」

兵士長「あぁ解放するとも、そのためにはわかるな」

勇者「……こいつを渡せばいいんだろ。交換だ!」

魔王娘「……ひぐ」

兵士長「いや、違うな」

勇者「……?」

兵士長「剣を抜け。貴様がそこでそいつを手にかけろ」

勇者「……」

兵士長「そうすれば貴様が魔物の使いでないという、身の潔白を俺が証明してやろう」

勇者「……」

僧侶「なんてことを……」

勇者「なるほど、捕虜にしてからじゃ手にかけるのは難しいから、俺に殺させようって腹か」

兵士長「察しがいいな。俺はそこらのゴロツキではなく、国の守備隊だからな、簡単に法規を破ることはできんのだ」

勇者「昨日の件はどう言い訳する気だよ。殺そうとしたくせに」

兵士長「貴様があらわれなければ秘密裏に処理できたものの。こう話が広がってはな」

勇者「……わかった。そういうことなら」

僧侶「勇者さま……だめですよ……私のことなんて気にせずその子と逃げて!」

兵士長「お前はだまってろ! 殺されたいのか!」


魔王娘「わしを斬るんじゃな……仕方がない。あいつに捕まるよりマシじゃ」

魔王娘「好きなようにせい。父上が倒された時点でわしの命など本来無きも同然……」

魔王娘「短い間の付き合いじゃが迷惑かけたのぅ」

魔王娘「あとは、乳の女と幸せにな……」

勇者「……ごめん」シャキン

魔王娘「おぬし……そんな哀しい顔をするな。父と同じで、おぬしの手にかかるなら本望じゃ……」

僧侶「勇者様! 勇者様ぁ! だめ!!」

兵士長「はっはっは! これで俺たちは手を汚さずに任務達成だ!」

兵士長「いいか! すべて終わるまで女を離すなよ! 不振な動きをしたらかまわん斬り殺せ」

兵士達「はっ!」


【勇者は剣を高くふりあげた】


僧侶「えっ! うそっ! そんなっ」

魔王娘「ひっ……」

勇者「俺は……紳士にはなれない! ごめん!!」

魔王娘「泣くな勇者……我が最愛の夫……出会えただけでも幸せじゃった……」

兵士長「はっはっは! ……は!!?」

兵士長「おいお前らァその女から離れろ!!」

兵士達「はい?」

勇者「ごめんなさい僧侶ちゃん!!」

テロリロ

【いかづちが僧侶たちの頭上に降り注いだ】


兵士達「うおああああ!!!」

僧侶「きゃあ゛ぁぁぁあああああ゛!!!」


魔王娘「!!?」



兵士長「き、貴様ァ……! なぜ……」

勇者「約束、したからよ」

勇者「宿命の相手からもらった、大事な大事なお宝を……」

勇者「傷つけるわけには……いかんじゃろ?」

僧侶「ゲホケホ、大事なトコで移ってますよ……ケホ、痺れま゛ず……」コテッ

魔王娘「なん……と……」


兵士長「くっ! まさかそんな非道な手が! おいお前ら立て!」

勇者「殺しちゃいねぇよ。けど丸一日はしびれてうごけねー」

兵士長「ぇ、ええいクソ! かくなる上は俺が皆殺しにしてくれる!!」ジャキン

勇者「早速法規無視かよ。楽しいやつだな」

勇者「いいぜ。昨日の決着をつけようじゃねぇか」

兵士長「ははは! 魔法はずいぶん達者なようだが剣の腕で俺に敵うとでも?」

魔王娘「勇者、大丈夫なのか!?」

兵士長「そうだ、俺は貴様のよく知る戦士の10倍は強いんだぜェ!!?」

勇者「かまえろよ」

兵士長「二秒だ! 貴様なんぞ二秒で血の海に沈めてくれる! はぁ!!」

勇者「……!!」ヒュン


――ザシュッ


僧侶「あ、一秒で終わった」

兵士長「がっ……! はっ……ッ」


勇者「10倍って、お前それ何年前の話だよ」

兵士長「ぎさま……ッ!!? がふ、う、息がっ」

勇者「戦士ちゃんはいまやお前の100倍つええ」

兵士長「ッ!!」

勇者「それと、運が良かったな……」

兵士長「な゛っ……」

勇者「もしお前らが僧侶ちゃんを傷もんにしてたら……峰打ちじゃすまなかった」

兵士長「あ゛……――――」バタリ

僧侶「勇者さま……」


兵士達「―――」ピクピク

勇者「あーあ、やっちまった。もうこの国には居られねーな」

魔王娘「勇者……」

僧侶「……」

勇者「僧侶ちゃん。ゴメンね? 痛かったでしょ?」

僧侶「……いいえ。私こそむざむざ捕まっちゃってごめんなさい」

勇者「ううん、元はといえば俺が僧侶ちゃんを危険な目に」

魔王娘「どれもこれもわしのせいじゃ。すまん……」

僧侶「いいんですよ? 助かったんだから悲しそうな顔しないで」

僧侶「そ、それよりも服がまる焦げなんでなんとかしてください」

勇者「え、あ、俺の上着どうぞ。汗臭いかもしれないけど」ササッ

僧侶「まったく。髪の毛もぼさぼさになっちゃったじゃないですか手加減してくださいよ」

勇者「だって、あのときは余裕なかったし」

僧侶「正直剣をふりあげた時点でもう諦めてましたけどね、実際にくらうとけっこう痺れます……」

勇者「ほんとすいません……えへへ」チラッチラッ

僧侶「もう!! どこ見てるんですか!! サイッテー!!」パチーン

魔王娘「なんですでに動けるんじゃ化け物か!?」

勇者「よし。きもちいビンタももらったし、さっさとトンズラしようぜ!!」

魔王娘「こやつらの口封じはせんでええのか?」

勇者「いいんだよ! つまんねーやつ斬るために俺の剣はあるわけじゃないから!」

僧侶「ふふ、戦いたくないときはいつもそれですね」

兵士長「ふふふ……はははは勇者ァ!!」

勇者「うお! もう気が付きやがった」

魔王娘「実はこいつも魔物なんじゃなかろうか」

兵士長「逃げられやせんぞ……昼をすぎて俺たちが中から出てこなければ、他の守備隊が突入する手はずになっている……ククク」

兵士長「すでにお前たちは袋のねずみだぁ!! はははははは!!」

勇者「横になりながらそんなに笑われても……」


僧侶「早く逃げましょう!」

勇者「おんぶしようか?」

僧侶「結構です! 自分で歩けますから!」

魔王娘「だからなんで歩けるんじゃおかしいんじゃ!」

勇者「俺の嫁は頑丈なんだよ! ドラゴンに燃やされても巨像にふみつぶされてもこのとおり!」

僧侶「ぉ、お嫁さんなんかになりませんし! ひとの事おかしな人みたいにいわないでください」ペシン

魔王娘「わしも将来頑丈になるんじゃ」

僧侶「馬鹿言ってないで早く脱出しないと! もうこれ以上のいざこざはヤですからね!」

勇者「あ~とりあえずは大丈夫だって!」

魔王娘「……誰も突入してこんのぅ?」

兵士長「一体なぜ……ググ……まさか!」

僧侶「外にでましょう」



魔王娘「あ! なんじゃこれは!」

【屋外】


守備隊「――――」ピクピク

戦士「あ、終わったの?」

勇者「おおおさすが俺の未来の奥さん」

僧侶「浮気者っ!」ゴツッ

勇者「ぃでっ!?!?!」

魔王娘「全部おぬしが倒したのか……? 30人くらい倒れとるぞ」

戦士「いや、兵士長に誰も通すなといわれたから……なんてね」

魔王娘「恐ろしい……」

戦士「さっき中から雷の音がきこえてさ。あー片付いたんだぁって」

魔王娘「たったそれだけで全員ぶったおしてしもうたのか!?!?」

戦士「だって勇者は負けないよ。伊達にあんたのお父さん倒してないから」

魔王娘「ほぅ……ま! 当然じゃ!」

勇者「君たちいいこと言うねぇ!」

戦士「僧侶もしかして巻き込まれた? 真っ黒じゃん」

僧侶「はい、このひとでなしに素っ裸にひんむかれちゃいました」

勇者「そのとき僧侶ちゃんに恋の電流走る!」

僧侶「ばかばかばか!」

戦士「事情は後で聞くよ。それより早くここ離れたほうがよくないか」

勇者「……だな。国王軍の騎士級がでてくるとさすがにめんどうだ。これ以上戦いたくねぇ」

僧侶「逃げましょう!」

魔王娘「その必要はないぞ」

勇者「?」

魔王娘「わしを国に引き渡せばええじゃろう」

戦士「!」

魔王娘「さきみたいに手荒なやつらじゃなければ、きっとお主らのことは見逃してくれる……じゃろ?」

勇者「お前……」


僧侶「うーんそうかもしれませんねぇ。特に私!」

僧侶「ほんとなんのいわれもないですから! 完全に被害者!」

僧侶「あ、勇者様と戦士さんは残念です! しばらく塀の向こうで暮らしてください、面会くらいはいきますよ!」

勇者「……」

戦士「……」

僧侶「……っていうのも個人的に虫唾が走るんで、みんなで逃げちゃいましょう! ね?」


戦士(なぁ、半分本気じゃなかったか?)

勇者(さすがだぜ僧侶ちゃん手厳しい! さっきはごめんね!)

魔王娘(ほんとは燃やされてキレとるんじゃなかろうか……)


戦士「でも逃げるっていっても……」

勇者「走るにしてもチビひとり抱えてとはいかねぇしなぁ」

魔王娘「うう、やっぱりわし……」


パカパカ
ガラガラガラガラ


盗賊「あ、みんななにしてんの? 悪巧み?」

馬「ヒヒンwww」

僧侶「わぁ!」

魔王娘「でっかい荷馬車じゃ!」 

戦士「盗賊! それどうした!?」

盗賊「あぁこれ? 兵舎からちょっと拝借した。いいでしょ」

勇者「盗賊ちゃん! お願いだ乗せてくれ!! 俺たちいまから逃げなきゃなんねーんだよ!」

盗賊「え? そのつもりで盗ってきたんだけど……? 見張り誰もいなくて楽勝だった」

勇者「盗賊ちゃん……!  さすが俺の嫁候補のうちの一人!」

僧侶「盗賊さんすごい!」

盗賊「はやく乗りな。やっかいなのが城の方からぞろぞろ来るよ」


魔王娘「わかっておったのか??」

盗賊「これでも結構長い付き合いだしね。バカの行動なんて考えなくてもわかる」

魔王娘「!」

勇者「バカ? おい戦士ちゃん、怒っていいんだぞ」

戦士「お前だっ!」

僧侶「うちにバカなんて一人で十分です」

盗賊「あははっ、僧侶真っ黒じゃん、やっぱ勇者のアレ?」

僧侶「そうなんですっ! ひどいんですよ~聴いてくださいよ~~」

盗賊「はいはい、たっぷり聞いてあげるから」


魔王娘「……・」

魔王娘(なんじゃあ……愛も人徳も、あるではないか……!)



……


【草原】



魔王娘「これからどうするんじゃ?」

戦士「こりゃおたずねものかな。王国騎士団入りの夢はお預けだ」

僧侶「私も仕事にありついたんですけどねー。まぁいっか」

盗賊「私は最初からこのつもりだったけど」

魔王娘「みんなすまぬ……わしのせいで」

勇者「誰のせいでもねぇよ、気にすんなって! 俺たちはもとから旅に生きる勇者一行だぜ」

戦士「『元』だな。いまは無職一行だ」

僧侶「貧乏旅は嫌ですよ?」

勇者「さっそく気分を盛り下げるのやめてくれ!」

魔王娘「しかし……旅のアテはあるのか? どこへ行くんじゃ?」

僧侶「アテ……?」ニコ

盗賊「アテ……ふふ」

戦士「アテか。はは」


魔王娘「なんじゃみんなしてニヤつきおって」

勇者「アテなんて! この国以外にゃありまくり! 俺らはどこでも顔が効くんだぜ!」

魔王娘「ほ、ほんとなのか……?」

僧侶「この人、腐ってますけど一応勇者ですので」

盗賊「それも、ただの職業じゃなくて、経歴としてな」

戦士「感謝されたことは数知れずってね。ま、助けた人にたかるのはかっこ悪いから、ずいぶん嫌がってたけど」

勇者「こらこら余計なことは言わない約束だろ」

魔王娘「なんと……そうであったか……」

勇者「よしあそこ行こう! あのでっけーカジノあった国! 前は3日しか滞在できなかったからなぁ!」

僧侶「お金もないくせに」

戦士「あそこは海をこえなきゃだめだからまだしばらく無理だな」

勇者「えー! そんな遠かったっけ」

盗賊「そこを目指すついでにいろいろ回ろうよ。みんな元気にしてるかな」

僧侶「わぁ! 世界旅行ですね!」

魔王娘「……」

勇者「どした? パァーっといこうぜ!」

魔王娘「わしもついて行ってええのか……?」

勇者「……おいおい」

盗賊「なに言ってるの」

僧侶「そうですよ」

戦士「ほら、顔上げな」

魔王娘「……うぐ?」

勇者「俺たちが決死の旅で手に入れた唯一のお宝を、そう簡単に手放すかっての」

魔王娘「!」

盗賊「そうそう。結局なぁんにも報酬もらえなかったし、これくらいはとっておきたいよね」

僧侶「私なんて何回死にかけたことか……ほんと苦労続きの旅だったんですから」

戦士「あんだけ旅して、何も無しじゃ締まらないよな」

勇者「そういうこった。ま、生きてりゃいいことあるって」

魔王娘「……うん」ギュ

僧侶「めちゃくちゃぞんざいに扱ってたのにすごい心変わりですね勇者様」

勇者「そりゃあ俺は紳士ですから! な、僧侶ちゃん!」ニコッ

僧侶「え゛っ、あれまだ続いてたんですか!?」

勇者「え、まだって? 当然じゃん! 昨日の今日だぜ!」

勇者「俺は次の街で旅人に転職する! あとは僧侶ちゃんに紳士と認められれば条件達成!」

勇者「それに、神に誓ったじゃん」ボソッ

僧侶「……ウグ」

盗賊「あれ? 僧侶、結婚したいんだろ?」

僧侶「えっ」

盗賊「こっそり聞いてたよ『私は勇者様としか~」

僧侶「イヤー! だめだめだめ! 幻聴ですか!? お薬用意しましょうか!?!?」

盗賊「……あんだけ威勢よく啖呵切っといて」

僧侶「だ、だいたい女性にむかって雷おとすバカに惚れるわけないじゃないですか」

勇者「ぐぐ……根に持ってるよねぇそりゃ」


魔王娘「大丈夫じゃ! 僧侶にふられてもわしがおるぞ!」

勇者「いや俺はやっぱ人間のほうが……」

魔王娘「人間の血もはいっとる! なにが不服じゃ!」

勇者「えっと……あの……」

魔王娘「だめかの……?」

勇者「ひぃっ!」

戦士「少女性愛」

僧侶「変態」

盗賊「犯罪者」

勇者「やーめーろ!」

魔王娘「でもやっぱり。わしと父上の目に狂いはなかったの?」ピト

勇者「あ、そう? そりゃどうもって、コラァ離れろ暑いんだよお前はよぉ」

僧侶「……ふーん」


勇者「僧侶ちゃ~ん。どうやったら許してくれる?」

僧侶「責任とってその子を幸せにしてあげてください」

勇者「え゛ぇ~!? 俺は僧侶ちゃんをだれよりも幸せにしたいんだよ~~」

僧侶「ふんっ。知りません……プフ」


戦士「コゲ僧侶笑ってるよ」

盗賊「また騒がしい旅になるのかな。楽しけりゃそれでいいけどさ」

戦士「そうだな。あとお酒」


魔王娘「次の街に教会があったらそこで婚姻の義を執り行うんじゃ!」

勇者「あー俺と僧侶ちゃんな。楽しみだなぁ!」

魔王娘「こっち向いてほしいんじゃ!!」


勇者「僧侶ちゃんの焦げた髪ちょっと近くで嗅いでみていい? 貴重だから」

僧侶「きゃー! 気持ち悪いっ! あっち行ってください!!」

魔王娘「のう勇者~?」

勇者「なぁんだよいま大事なところだから!」

魔王娘「ほんとに僧侶との子作り三昧みせてくれるのか?」

僧侶「~~~っ!?」

勇者「ぶっ、おまっ!」

魔王娘「子作りのしかた教えてくれるっていったじゃろ!!」

僧侶「勇者様~??」

盗賊「勇者、それはちょっと人としてどうかと思うよ」

戦士「いつにも増して幻滅した」

僧侶「あなたって人はいたいけな少女になんて……なんてことを……私、悲しくなってきました」

勇者「こ、こいつの冗談!! 魔族ジョークってやつっ!!」

勇者「おもしろいだろ? はははっ笑おうぜ一緒にっ!!」


僧侶「なにが紳士ですか! このっド変態!!!!」ゲシッ

勇者「おわぁあぁぁあ、僧侶ちゃああぁぁ―――」ゴロゴロゴロ


魔王娘「ギャー! 勇者ぁ~~!!」

戦士「うわっバカが落ちた! 馬車止めて!」

盗賊「何、いまのジョーク? バカとめてって、あははは」

僧侶「盗賊さん、笑ってないでちゃんと走らせてくださいよぉ揺れるじゃないですか、うふふ、あははは」

魔王娘「わしの旦那蹴り落として何笑っとるんじゃあ!! 悪魔か!」

僧侶「あははは! だって、どろんこですよアレ見てっ、あははっ」

盗賊「人のこと笑えないだろ僧侶。あとで鏡みせてあげる」

魔王娘「ええから早うとめんかぁ~!」



-おわり-

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年11月21日 (土) 01:18:35   ID: kRtIY_09

ほどよくまとまった

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