京子「愛って何だろう」(99)
こほんっ。
この物語は、私、歳納京子が愛とは何かを自問する物語である。
愛って何なんだろうね。
私の解釈としては、まあ簡単に言うと「何時も一緒に居ること」なんだけど。
どうやら、他の子は違う解釈をしているみたい。
船見結衣という女の子がいる。
私と幼馴染の女の子。
私をずっと守ってくれた、頼もしい親友。
私はきっと彼女を愛している。
肌と肌を合わせるくらいの距離で身を寄せ合って、ずっと一緒に居たいと思っている。
少し前に、私はそのことを彼女に伝えて。
彼女もその想いを受け止めてくれた。
……だが、彼女は「身を寄せ合う」だけでは嫌みたいだった。
結衣の部屋で、2人で身を寄せ合う。
優しい時間。
その時間がずっと続けばいいのになと思ってる時に。
結衣「ねえ、京子」
京子「何、結衣」
結衣「……もっと、触れていい?」
京子「……うん」
こういうやり取りが行われて。
最終的にはちょっとえっちな事に及んでしまうのだ。
気持ちいいのは嫌いじゃないのだけど。
けど、「その行為」が愛なのだとは、私にはとても思えない。
だって、何だか不純じゃない?
それでも、結衣の想いを大切にしてあげたいから。
えっちな事をする回数が増えて。
その度に、私の中で疑問は膨らんで行った。
愛って何だろう。
これが愛なのかな。
結衣の指でいっぱい気持ち良くされるのが、愛なのかな。
やっぱり何か違うと思った。
だからその事を結衣に伝えたら、結衣はちょっと不機嫌になった。
結衣「そりゃあ、えっちな事をするだけが愛だとは思わないけど……それも愛の一部ではあるんじゃないかな」
京子「ううーん、そうなのかなあ……」
結衣「京子は……あの、えっちな事をするのが、いやなの?」
京子「嫌ってわけじゃないけど……」
結衣「……もし、嫌なら、あの……私は、我慢できるから」
京子「結衣……」
結衣「だって、わたし、京子の嫌がる事はしたくないし」
京子「……」
その時は、結衣に凄く悪いことをしちゃったような気がした。
だから「えっちなことしてもいいよ」って伝えたら、結衣は凄く喜んだ。
喜んで、私をいっぱい気持ち良くしてくれた。
杉浦綾乃と言う女の子がいる。
私と同級生の女の子。
生徒会副会長で、一生懸命頑張ってる楽しい親友。
彼女はきっと私を愛している。
口調や仕草で、何となくそれは判った。
綾乃の愛はどんな形なんだろう。
ずっと疑問に思っていたが確認する術は無かった。
きっと、知ることが出来ないまま終わるのだと思っていた。
けれど……それを知る機会が訪れた。
ある日の放課後、彼女から愛の告白を受けたからだ。
綾乃「歳納京子、私はあなたのことを」
綾乃「愛しています……」
赤面したまま私と向かい合って10分後。
彼女はそう告白してくれた。
愛って何だろう。
愛されるって何だろう。
愛するって何だろう。
私は色々悩んだけど、最終的には綾乃の想いを受け止めることにした。
だって、私の中での「愛」は、「一緒に居ること」なんだもん。
例え結衣の事を愛していたとしても、綾乃からの愛も受け止められると思っていたから。
それに、前記もしたけど、興味があったしね。
綾乃の愛の形に。
その日は、生徒会室で綾乃と二人で過ごした。
一緒に居るけど、向かい合ったまま、触れ合いもしない時間。
些細なことを語り合って、笑って、ちょっと怒って、また笑って。
そうやって優しい時間は過ぎて行った。
最終下校時間の放送が流れて。
もう帰ろうかと語り合ってる時。
ふと、寂しくなった。
綾乃の体温を感じたくなった。
だから、綾乃の手をそっと握った。
ちょっと不安だったんだけどね。
私がえっちな事を嫌がるのと同じように。
綾乃も手を触れあうことさえ嫌がるんじゃないかって思ってたから。
けど、綾乃はちょっと赤面した後、そっと私の手を握り返して、笑ってくれた。
凄く優しい笑顔だった。
ひょっとして、私が考えている愛の形と。
綾乃が考えてる愛の形は。
一緒なのかもしれない。
そう思うと、私も嬉しくて、綾乃に笑みを返した。
夜は結衣とえっちなことをして。
夕方は綾乃と手を握り合う。
そういう生活を、しばらく続けてみた。
好きな人達と一緒に居る時間は凄く幸せだった。
結衣も、幸せだったのだと思う。
けど、綾乃は何か無理をしているように感じた。
もしかして、綾乃も結衣みたいに、えっちな事をしてみたいのかな。
そう疑問に思ったから、ちょっと綾乃に提案してみた。
京子「綾乃?」
綾乃「ん?なあに?」
京子「……キス、してみる?」
綾乃「……!」
綾乃「……うん、私、歳納京子と、キス、したい……」
京子「そっか……」
綾乃「……あの」
京子「ん?」
綾乃「……しても、いいの?」
綾乃は赤面したまま呟いた。
どうも、今まで私に遠慮していたみたいだ。
綾乃に少しでも幸せになって貰いたいと思っての発言だったから。
勿論、OKを出した。
綾乃との初めてのキスは、凄く情熱的だった。
溜まっていた物をすべて吐き出す勢いでキスされた。
私はそのまま押し倒されて。
首元にキスをされて。
そのまま服をずらされて。
身体にいっぱい印をつけられた。
多分、結衣以上にえっちだった。
私は、気持ちよさに流されながら、こんな事を思っていた。
京子(ああ、綾乃も私とは違うんだな)
その夜、結衣に酷く責められた。
私の身体にいっぱい、綾乃の印が残っていたからだ。
私は正直に答えた。
結衣の為を思ったら、なるべく隠しておいた方が良かったのかもしれないけど。
何か凄く疲れていたから、ついつい全部喋ってしまったのだ。
京子「これはね、綾乃とえっちな事をした時についたの」
結衣「……は?」
京子「言ってなくて、ごめん、わたし、綾乃ともつきあってるんだ」
結衣「……!」
京子「あのね、私はね、好きな人と一緒にいたいの、一緒に居るだけで幸せなの」
京子「だから、結衣や綾乃と一緒に居られて、幸せだよ?」
結衣はブチ切れた。
翌日、私と結衣と綾乃は、放課後に対面した。
結衣は凄い剣幕で綾乃を責めた。
綾乃は私と結衣との関係を知らなかったんだから、責められるのは可哀そうだと思った。
だから、私は綾乃をかばった。
まあ、焼け石に水だった。
というか、綾乃からもめちゃくちゃ怒られた。
私は、2人に一生懸命説明した。
京子「だから、私は好きな人と一緒に居る事を愛情だと思ってるの」
京子「結衣も綾乃も、好きだよ?だから一緒に居たいって思うの」
京子「わたし、間違ってる?」
結衣「間違ってる」
綾乃「間違ってるわ」
私の愛の形を否定されて、凄くショックだった。
吉川ちなつと言う女の子がいる。
私の後輩の女の子。
少し小悪魔的な所が可愛らしい女の子。
彼女はきっと私を愛していない。
結衣と綾乃との板挟みの関係で疲れていた私は。
彼女とのじゃれあいのような関係に癒しを求めていた。
京子「ちなちゅー」ギュ
ちなつ「ちょ、京子先輩やめてくださいっ!」グイーッ
京子「もう、そう冷たい子と言わないでさー、癒させてよ~」
ちなつ「も、もう!結衣先輩に言いつけますよ!」
京子「うう、それはやだなあ……」
ちなつちゃんは、私とのスキンシップを完全には否定していなかった。
ある程度の距離を置いて接してくれる彼女のことを、私は本当に愛おしく思っていた。
京子「ちなつちゃん、だーいすき!」
ちなつ「はいはい……お茶でも飲みます?」
京子「うん!」
ちなつちゃんの愛の形は、どんななのだろう。
ある日の放課後
私は結衣と綾乃との「話し合い」を終え、疲れたまま部室に向かい、そのまま寝てしまった。
余程疲れてたんだろう、起きると周囲はもう暗かった
あー、そろそろ帰らないとなあ……と思って周囲を見渡すと
暗がりの中から、誰かが私を見ていた
密林の藪の中から獲物を狙う肉食獣のように
ちなつちゃんだった
京子「ちなつ……ちゃん?どうしたの、怖い顔で……」
ちなつ「……結衣先輩に、聞きました」
京子「え?」
ちなつ「……京子先輩、レズビッチだったんですってね……」
京子「レズ、ビチ?」
良く判らない単語だったけど、ちなつちゃんの様子がおかしい事は判った
具体的に言うと……私との距離が、近かった
あんなに私と距離を取ることに長けていたのに
私が近付くと、すぐに逃げてしまっていたのに
ちなつ「京子先輩、色んな女の子と愛し合うのが、好きなんですよね……?」
京子「え、あ、あの……」
ちなつ「色んな女の子の愛の形を、知りたがってるんですよね……?」
京子「そ、そう……だけど……」
ちなつ「……じゃあ、私の愛の形も……受け止めてくれますか……」
京子「ち、ちなつ……ちゃん……顔が、近いよ……」
ちなつ「……結衣先輩には、こんな性癖、打ち明けられませんから……」
ちなつ「だから……京子先輩……受け止めてください……」
京子「ま、待って、あの、私は……私は、私を好きだって言ってくれる子じゃないと……愛せないよ……」
ちなつ「それは大丈夫です……」
ちなつ「私……京子先輩の泣き顔、大好きですから……」
結論を言ってしまうと、ちなつちゃんはドSだった。
私はそのまま縄で縛られて、動けない状態のまま、いっぱい責められた。
足の指を舐めさせられもした。
何か、ピンク色の振動する道具とかを、パンツの中に入れられたり。
玩具の注射器でお水をいっぱい、お腹の中に入れられたりもした。
私は、それを全て受け止めた。
私は本当に「好きです」という言葉に弱いらしくて。
それを言われただけで、ちなつちゃんが喜ぶ事をしてあげたくなったからだ。
けど、嫌悪感は無かった。
だって私にとって、結衣や綾乃とする「えっちな事」と。
ちなつちゃんがする「ドSな事」は、似たようなものだったのだから。
どちらも「違和感」はあるけど、相手が喜ぶのならしてあげてもいいと思う事だったから。
愛って何だろう。
私にとっては「相手と一緒に居ること」が愛なんだけど。
他の子達は全然違うみたい。
私の愛は誰にも理解されないのかな。
私は1人なのかな。
えっちな事をされるのにも。
ドSな事をされるのにも。
耐えられはするけど。
理解してくれる人が誰も居ないというのは、凄く辛かった。
その事が私の心を摩耗させた。
赤座あかりという女の子がいる。
私と幼馴染の女の子。
私といつも一緒に居てくれて、私に笑顔をくれた大切な友達。
私はきっと、彼女を好き。
彼女もきっと、私を好き。
それは友達としての「好き」なんだろうけど。
摩耗していた私は、それに縋りたくなった。
だから、あかりの家に行って、全部をぶちまけた。
私の愛の事も。
結衣や綾乃やちなつちゃんとの事も。
1人が辛いという事も。
あかりは、何も言わず私を抱っこしてくれた。
抱っこだけをしてくれた。
えっちな事とかはしなかった。
ただ、私が望んだことだけをしてくれた。
余程弱っていたのだろう。
私は、その場で泣いてしまった。
子供の時のように。
あかりちゃん、あかりちゃんと、彼女の名前を呼びながら
あかりは、私が泣きやむまで一緒に居てくれた。
泣きやんだら、美味しいお菓子を持ってきてくれた。
京子「おいちい……」
あかり「えへへ、お姉ちゃんに頼んで、買って来て貰ったんだ」
京子「……わたしね、あかりの事が大好き」
あかり「あかりも、京子ちゃんが大好きだよ」
和やかにお喋りして。
一緒にお風呂に入って。
一緒の布団で寝て。
あかりの体温を感じて。
笑顔を交わし合って。
それだけで、その日を終えた。
私と、あかりの、愛の形は、きっと同じなのだと思う。
「好きな相手と一緒に居たい」
それだけなのだと思う。
だから、私はあかりに強く惹かれた。
結衣や綾乃ゆちなつちゃんに感じていた以上の愛情を、あかりに感じていた。
だって、あかりと2人で寄り添っているだけで、他には何もいらないんだもん。
えっちな事とか。
そういうのは、雑音なのだと感じるんだもん。
だから、翌日、私は再びあかりの家に向かった。
あかりと会いたかったから。
ただ寄り添うだけの時間が、欲しかったから。
玄関の扉は開いていたので、私は特に遠慮する事も無くあかりの家に上がった。
そのままあかりの部屋に向かった。
あかりの部屋の扉を開けた。
部屋の中では、あかねさんが、あかりにえっちな事をしていた
それを見ても、私は特に驚かなかった。
だって、あかりは私と同じなんだもん。
私が結衣や綾乃やちなつちゃんから「好き」って言われて。
彼女たちが望む事をしてあげたのと同じように。
あかりも、きっとあかねさんから「好き」と言われたのだろう。
だから、あかねさんが喜ぶ事をしてあげてるんだろう。
私の姿を見ると、あかねさんは驚いて、何か言い訳をして去って行った。
その内容は本当にどうでもいいから割愛する。
京子「あかり、お疲れ様」
あかり「あ、あはは……京子ちゃん、いらっしゃい……」
京子「……今日も、泊ってもいいかな……」
あかり「……うん、いいよ」
昨日は気付かなかったけど。
あかりも、私と同じように摩耗してるみたいだった。
その日も、一緒に寄り添い合って。
一緒にお風呂に入って。
一緒の布団に入って。
笑みを交わして。
そのまま寝た。
寝る前に、少しお話をした。
京子「……こうして、寄り添い合ってるだけで、幸せだよね」
あかり「……うん」
京子「どうして……他の事が必要なのかな……」
あかり「みんな、不安だからだよ……」
京子「不安……?」
あかり「……うん」
あかり「きっと、寄り添い合うだけでは、相手の愛情を確信できないんだと思う……」
あかり「だから、えっちな事をしたり、相手の心に傷をつけようとしたり、するんだと思う……」
あかり「そういう印をつけて……相手がそれを否定しなければ……愛されている証拠になるから……」
京子「……そっか」
あかり「……」
京子「……」
あかり「……」
京子「……じゃあ」
京子「私達が誰かを愛し続ける限り……」
京子「ずっと、こういう事が、続くんだね……」
あかり「……うん」
その日、私達は結論を出した。
まあ、子供の出した結論だから間違ってるかもしれないけど。
私とあかりにとって、愛と言うのは「相手と一緒に居ること」だ。
けど、他の子達にとっての愛は。
「相手を信じないこと」なのだ。
だから、色々な証を求める。
一緒に居るだけでは相手を信じることが出来ない。
多分、私達の愛と、他の子達の愛は、交わることが出来ないのだろう。
なら。
京子「……もう、いいよね、あかり」
あかり「……うん」
放課後、私達は夕陽の良く見える校舎屋上に2人で立った。
あかり「うわあ……京子ちゃん、夕日がきれいだねえ……」
京子「うん……凄く綺麗……」
あかり「えへへ、あかりも、京子ちゃんも真っ赤だね」
京子「あ、ほんとだ……」
真っ赤な色が世界を染めている。
今から、私達も、この赤色と同じに染まるのだと思うと、少しドキドキする。
あかり「京子ちゃん」
京子「ん?」
あかり「あかりはね、京子ちゃんの事が、大好き」
京子「うん……私も、あかりの事が大好き」
あかり「皆の事も、大好き」
京子「わたしも、皆の事が、大好き」
あかり「えへへ、一緒だね」
京子「うん」
あかり「一緒な子がいると、怖くないね」
京子「うん」
私はあかりの手を握った。
これが私の愛の形。
あかりは私の手を握った。
これがあかりの愛の形。
私達はこれだけで幸せ。
だから、この幸せがずっと続くと、いいな。
夕焼けに包まれた空の中。
私達は浮遊感に身をゆだねた。
風が、冷たかった。
あーあ
まじ
で
ない
死ね
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
綾乃「歳納京子!またプリント忘れてるわよ!」
結衣「京子、あんまり綾乃に迷惑かけちゃ駄目だよ?」
ちなつ「ほんとに、京子先輩はしょうがないんですから……」
あかね「あかり、お弁当忘れてたから、持ってきたわよ」
京子「えへへ、みんな、ごめんね」
あかり「おねえちゃん、ありがとう!」
みんな、大好き
大好き
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
グシャッ
完
京子「という夢をみたんだけど」
ちなつ「妙にリアルで怖いです、ゆいせんぱ~いたすけて~」ギュッ
結衣「あはは、でも夢は今の自分の健康状態を映し出すっていわれてるしそんな夢を見るってことはなにか悩み事でもあるのか?」
京子「う~ん、特には思いつかないなぁ~、強いて言えば次の同人のネタが思い浮かばないってことかな」
ちなつ「あれっ、そういえばあかりちゃんさっきから一言も喋ってないけど」
あかり「」
結衣「気絶してるっ!」
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