ルルーシュ「マオ無双だと!?」(376)

■前回まで

前スレ:カレン「やっぱりわたしの紅蓮弐式!!!1」ゼロ「そうだな」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1383833467/)

これまでのまとめ:http://geassfun.at.webry.info/

 01 ルルーシュ「お前のせいなんだろうッ!」C.C.「私のせいですぅ!」
 02 C.C.「ボク、チーズクンダヨ!」ルルーシュ「えっ?」
 03 シャルル「いーむゎあぁ……」神官「えっ?」
 04 スザク「死なせてよ!」ルルーシュ「えっ?」
 05 ルルーシュ「デートか……」/ユフィ「デートです!」
 06 C.C.「デートねぇ……」/コーネリア「デートだと!?」
 07 カレン「わたしの紅蓮弐式!!!!!1」ゼロ「うむ」
 08 カレン「やっぱりわたしの紅蓮弐式!!!1」ゼロ「そうだな」
 09 ニーナ「ホモォ……」スザク「違うから!」ニーナ「ホモォ……///」

彡 ⌒ ミ 
(´・ω・`) はげるほどに!

.
■アッシュフォード学園 生徒会室 ─────

「……昨日未明に発生した爆弾テロの捜査のため、トウキョウ租界の埠頭は現在、」
「全面封鎖されています……このテロで、ブリタニア軍兵士約100名近くの命が失われ、」
「また付近の倉庫や建物が破壊されました」
「総督府は、これを黒の騎士団の仕業と断定し……」


 リヴァル「……うひゃぁ……こりゃすげえや……」

 ミレイ「ひどいわねぇ……」

.
昼下がりの生徒会室でオレは、ミレイ会長やシャーリーと一緒に、TVのニュースを
見ていた。昨晩起きたという、爆弾テロ事件を報じている。
埠頭の映像は、すさまじいものだった……何もかもが吹き飛ばされ、破壊されている。


 シャーリー「これも、黒の騎士団のやったことなのかな……?」ボソッ

 ミレイ「……そうね……」
 
 リヴァル「シャーリー……」

.
彼女がナリタで父親を失ってから、まだ日が浅い。
あれが、黒の騎士団の仕業だったという噂を聞いて以来、シャーリーは騎士団に対して、
不信感を募らせているようだった。
以前のオレは無邪気にも、騎士団を弱者の味方だと信じていたのだけど……


 リヴァル「……やっぱ、ロクでもない連中だよな、こいつら!」

 ミレイ「弱者救済を掲げていても、やってる事はテロだもんねえ……」

 シャーリー「うん……」

.
と、生徒会室のドアが開き、ニーナが入ってきた。
……のだけど、その後から見知らぬ男も入ってきた。誰だ、こいつ?
しかもイレヴンじゃん……ニーナ、イレヴンが嫌いじゃなかったっけ?


 ニーナ「あっ、みんないたんだ!」
     「ちょうど良かった!」

 シャーリー「あれっ?スザクくん……?」

 スザク「シャーリーさん、こんにちわ……」

.
スザクと呼ばれた男は、苦笑いを浮かべている。なんだか、すごく居心地が悪そうだ。
というか、ニーナとシャーリーの知り合いってのが、ものすごく意外だ。
連れてきたのがニーナだということもあり、オレは妙に興味が湧いた。


 リヴァル「シャーリーも知ってるって……」
      「ニーナ、誰だいこの人?」

 ニーナ「こちら、枢木スザクくん……ほら、カワグチ湖のときにナイトメアで、」
     「私たちとユーフェミア様を助けてくれた人よ!」

 ミレイ「あああ!あの人お!?」

 ニーナ「そう、うちの大学でお会いしてね、」
     「まだちゃんとお礼言ってなかったし、いい機会だからって思って……」

.
 リヴァル「なぁるほどねえ……」ウンウン

 スザク「枢木スザクといいます、お邪魔して申し訳ありません」ペコリ

 ミレイ「いいのよ~、ウチはそういうの全然気にしないトコだから!」
     「生徒会は、誰でもウェルカムよ~!」

 リヴァル「それに、オレらの命の恩人なら、なおさらだしねぇ~!」

 シャーリー「そういえばそうだったね……」

 ニーナ「えっ?どういうこと?」

.
 シャーリー「あっ、ああ……」
       「……彼、ルルの知り合いでもあるからさ!」
       (もう指名手配でもないし、言ってもいいよね……)

 ニーナ「そうなんだ!?」

 ミレイ「へえええ!?」

 スザク「以前、ルルーシュを訪ねた時に、シャーリーさんとお会いしたんです」

 リヴァル「なんか、すごい巡り合せだなぁ……」
      「ルルーシュの知り合いで、しかも命の恩人かぁ……」

.
 ミレイ「もう少ししたらルルーシュも来ると思うわよ、」
    「それまでここでゆっくりしてく?」

 スザク「いいんですか……?」
     「部外者がいたら、まずいんじゃ?」

 ミレイ「いいっていいって!」
    「会長権限で許します!」ニコニコ

.
■租界 とある病院 ─────

 ゼロ「しかし、よく全員が生き残れたものだ……」
    「ナイトメアに乗っていた藤堂やカレンはともかく、朝比奈や新人もだからな」

 カレン「確かにそうですけど、あんなの紅蓮に乗っててもダメだと思いましたよ……」

 藤堂「ゼロ、この病院は我々がいても大丈夫なのか?」

 ゼロ「問題ない、ここは騎士団のシンパが経営する病院だ」

.
埠頭事件の翌日……

あの爆発で、ブリタニア軍と同様に彼らも吹き飛ばされたのだが、いち早く離脱をしたことに
より、奇跡的に生還できた。もっとも、ナイトメアに乗っていた藤堂とカレンはまだ良かった
ものの、朝比奈たちはトレーラーが爆風に煽られ、操作を誤って建物に激突した衝撃で
重傷を負った。
現在彼らは、集中治療室で手当てを受けているが、幸いにして命に別条はない。


 カレン「でもゼロ、よくわかりましたね、あの爆発のこと……」

 ゼロ「常に最悪を想定し、それに対処できなければリーダーたる資格はないからな」
    「だが、キョウトがあれほど素早い動きをするのは予想外だった」

.
 藤堂「よほど、ブリタニアに尻尾を掴まれたくなかったようだな……」

 ゼロ「うむ……」
    「ケガの具合についてだが、君たちは数日入院すれば問題ないレベルらしい」
    「休養を兼ねて少し休むといい」

 カレン「……わたし、寝てるのって苦手なんですよね……」ハァ…

 藤堂「ぼやくな、ゼロの好意だと思って休養するんだ」
    「退屈なら本でも読むと良い」フゥ…
    「……朝比奈たちの状態はどうだ?」

 ゼロ「彼らは、当分安静だな」
    「転がったトレーラーの中にいたからな……ダメージは相当なものだ」

.
 カレン「あの新人も、とんだ研修になりましたね……」

 ゼロ「死ななかっただけでも儲けものだ」
    「……早い復帰をお待ちする、では……」カツカツ…


俺は、そう言って病室を後にした。
実際のところ、あの爆発で誰も死ななかったのは奇跡に近い……今朝からの報道で
言っているように、ブリタニア側の人間およびたまたま現場にいた民間人合わせて、
百名以上の死者が出た大惨事だ……

しかも、だ。それを、我々黒の騎士団の仕業だと総督府は断定してくれた。この濡れ衣は
早急にぬぐう必要がある。

.
俺は、病院の地下駐車場に待たせていた黒塗りの車に乗り込む。
車は滑るように、静かに走り始めた。乗り合わせていた者たちが俺に尋ねる。


 ディートハルト「……彼らの具合はどうでしたか?」

 ゼロ「うむ、命に別状はない」
    「朝比奈たちはしばらく安静にする必要があるが、藤堂たちはすぐにも現場に
    復帰できるだろう」

 ディートハルト「そうですか……それは良かった」

 扇「ゼロ、マスコミでは爆発事件が我々の仕業だと盛んに訴えているようだ」

.
 ゼロ「ああ、間違いなく総督府の差し金だろう」
    「ディートハルト、対応策は?」

 ディートハルト「はい、現在は、ネット上の世論を誘導すると同時に、」
       「マスコミの現場スタッフの身辺調査を進行中です……」
       「我々のシンパや懐柔可能な者、あるいは弱みを握ることで操れる者などを」
       「リスト化しつつあります」

 ゼロ「これからは、銃火での語り合いだけでなく世論を舞台にした言論闘争においても」
    「我々は勝ち抜かなければならない……そちらは任せたぞ」
    「君の采配には期待している」

 ディートハルト「ご期待に沿うよう、努力しております……」

.
 ゼロ「ときに扇、君はディベートは得意か?」

 扇「ディベート?」
   「いや、大学で多少かじったぐらいで、本格的には……」

 ゼロ「ふむ……ではディートハルト、彼にレクチャーしてくれ」
    「扇は今後、マスコミに登場する機会が増える」
    「公開討論会などへの参加も、場合によっては必要となるだろう」

 扇「おっ、オレがか!?」ギョッ!!
   「そういうのは君が得意だろう……」

 ゼロ「言ったはずだぞ、君は我々の神輿になる、とな」
   「黒の騎士団の顔として、君には今後、マスメディアで熱弁を奮ってもらう」
   「そのための話法などを、彼から教わるんだ」

.
 ディートハルト「おまかせください、扇さんを立派なディベーターに仕立てましょう」

 扇「あ、ああ……」
  「……そうだな、オレが選んだ道だ、がんばってみるさ」

 ゼロ「頼むぞ、期待している」


……実際はあまり期待していないが。
ディベーターとしての才能はないが、彼はその実直なキャラクターと熱い語り口で、
我々の正当性を民衆に訴えることができるだろう。後は、想定される我々の弱点への
指摘に対し、反論を用意しておけばいいだけだ。

何よりも、俺が目立つことは避けたいからな……

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 ディートハルト(……全く、なぜこのような、凡庸な男を取り立てるのだろうか、ゼロは)
       (ゼロ自身がメディアに出る方が、遥かに話題性があるというのに……)


私は、ゼロの指示に対し心の中でため息をついた。
この扇という男、最古参のメンバーでかつてのリーダーだったという話だが、
あまりに凡庸すぎて逆に驚く。
良く言えば正義漢、だが優柔不断で自分に自信を持ってなく、いつも自分の立場に
懐疑的なくせにその立場を降りる決断もできない。

.
 ディートハルト(確かに、お飾りには丁度良いが……)
       (こういう男が持て囃され、己を過信した時が危ういのだ……)ジー

 扇「……?」

 ディートハルト「TVに出る時は、色々といじらないといけませんなあ」

 扇「いじる!?」

 ゼロ「そのあたりのイロハは君の独壇場だろう」

 ディートハルト「はい、おまかせください」ニヤ

.
……だが、ゼロの方向性は間違っていない。

民衆は、正義や善意が大好きだ……不幸や惨劇と同じくらいには。
彼らの興味を少しばかり刺激してやれば、うまくコントロールできるだろう……
何しろ、あちら(ブリタニア)には"私"がいないのだからな……

.
■アッシュフォード学園 生徒会室 ─────

……オレは、断り難い強引さでニーナさんに連れてこられた学園の生徒会室で、
彼らの好奇の目に晒されながら居心地の悪さに落ち着かないままでいた。
ルルーシュを驚かせてみたいという悪戯心もあってのことだったけど、今となっては
ただここから去りたいという気分の方が勝っていた。


 ニーナ「……でね、スザクくん、ユーフェミア様ともよくお会いするらしいの!」
     「今度、わたしも一緒にお会いさせてもらうのよ!」ニコニコ

 ミレイ「ほんとに!?すごいじゃない!」

 スザク「いやっ、それは、まだ……確定じゃないから……」

.
 ニーナ「そうなの?」

 スザク「僕も、望んでお会いできるわけじゃないんだ」
     「ユーフェミア様から連絡のある時だけ……」

 ニーナ「じゃ、連絡があったらわたしも呼んでね!」ニコニコ

 スザク「あ、ああ……わかったよ」ニコ…


どうもこの子、ユフィに会いたいという気持ちが相当に強いのか、大学の研究棟で
ユフィの話が出てからというもの、事ある度にオレにユフィと会わせろとせがんでくる。
カワグチ湖でユフィに助けられたのでそのお礼を……ということだが、自分でそれを
伝えたいらしい。
オレも、そう簡単には逢えないし、どうしたものかな……

.
 リヴァル(……なんか、ニーナ、すっごく積極的じゃないスか?)ヒソヒソ

 ミレイ(うん……カワグチ湖の件以来、ニーナってユーフェミア様にぞっこんみたいなの)
     (ちょっと怖いくらいにね)ヒソヒソ

 リヴァル(……もしかして、スザク君を連れてきたのも……)ヒソヒソ

 ミレイ(そういう感じね……)ヒソヒソ

 スザク「……ルルーシュは、来ないのかな……」

 シャーリー「あっ、ああ……今日は来ないのかな?」
       「ルルって、気まぐれなとこがあるし……」

.
 スザク「気まぐれ……に、見えるだけだよ」ニコッ
     「彼は、他人から自分自身を隠そうとするクセがあるから」

 シャーリー「ほえー?」

 ニーナ「……」

 ミレイ「へえ……」

 リヴァル「ほほう……」

 スザク「……な、なにか?」キョトン

.
……いきなり、部屋の皆から顔を凝視され、オレは何事かと思った。
なにかマズいことでもいったかな……?


 ミレイ「いやあ……よくわかっていらっしゃる、と」ウンウン

 スザク「へ?」

 リヴァル「ルルーシュって、努力とかぜんぜんしてない風に見せるよねぇ~」
      「あれって、子供の頃からなのか?」

 スザク「うーん、子供の頃はそうでもなかったけど……」
     「でも、やせ我慢はしてたね、昔っから」

.
 ミレイ「ねね、ついでに教えてほしいんだけどー」
    「彼の弱点とか秘密とか、知らな~い?」ニヤー

 スザク「秘密……?」ピクッ

 ミレイ「そそ!なんとゆーか、例えばぁ……」
     「人には明かせない、とぉーっても恥ずかしいポエムを書いてるとかぁ……」

 シャーリー「」ピクッ

 スザク「はは……そういう弱点ですか」
     「そういうのは、絶対に表に出さない奴ですよ……」

.
 ミレイ「あらー、スザク君も知らないのかぁ……」
     「残念だわあ、それがわかれば、彼をもっとこき使えると思ったのに……」

 リヴァル「うわっ、えげつねー……」

 スザク(彼がゼロだというのは、本当の秘密だけどね……)
     「……これ以上の長居も申し訳ないですし、そろそろ……」

 ミレイ「そうねえ……今日は彼も、来そうにないしね……」
    「クラブハウスにはいるかも、シャーリー、案内してあげたら?」

 シャーリー「えっ?は、はい……」

 スザク「それはご迷惑じゃ……」

.
 ミレイ「いいからいいから!」グイッ


そう言って、ミレイさんはオレの首根っこを掴んで引き寄せた。
初対面でこういうスキンシップは、ちょっと苦手なんだけど……


 ミレイ(……あのね、彼女、ルルーシュとケンカしたみたいなの)ボソボソ

 スザク(えっ?)ボソボソ

 ミレイ(いきなりで申し訳ないんだけど……)
    (仲直りのきっかけ、作ってあげてみてくれない?)

 スザク(ええっ!?)

.
 ミレイ(私たち相手じゃ、話し難そうなのよ……)
     (ねっ、あなたなら二人とも知ってるし……)

 シャーリー「何を話してるんですか?」

 ミレイ「なーんでもない!」ニコーッ
     「……ほらシャーリー、スザクくんを連れてきなさい!」

 シャーリー「うん……じゃ、スザクくん、ついて来て」
 
 スザク「よろしく……」

.
 ニーナ「あっ、わ、わたしも……」

 スザク「ユーフェミア様から連絡あったら、君にも知らせるよ」ニコッ
     「今日はありがとう!」

 ニーナ「うん!待ってるね!」パアッ!!

 リヴァル(……こいつ、意外と言う時は言うタイプなのか?)

.
■クラブハウス ルルーシュ自室の前 ─────

 シャーリー「ここが、ルルの部屋だよ……って、スザクくんは知ってるよね?」

 スザク「うん、ここで君と出会ったしね」ニコッ

 シャーリー「だよね」ニコッ
       「さてと……」スーハースーハー


彼女は軽く深呼吸をした。なんで深呼吸を……?
やはり、ミレイさんの言った通り、ケンカしてるのかな?

.
 シャーリー「今日は、いるかな……」コンコン
       「ルル、ルル?」コンコン

 スザク「……反応がないね」

 シャーリー「うーん……いないっぽいね」ホッ
       「でかけてるんだろうねー」

 スザク「……彼とケンカしてるんだ?」

 シャーリー「えっ?ええっ!?」
       「なんで?どうしてそういう風に!?」

 スザク「いま、彼がいなくてホッとした感じだったし……」
     「それにさっき、ミレイさんから聞いたんだ」

.
 シャーリー「会長があ?もう、会長ったら……」

 スザク「何があったんだい?」

 シャーリー「ううん、ケンカじゃないんだけどね……」
       「なんとなく、っていうのかな……」

 スザク「僕でよければ相談に乗るよ?」ニコッ

 シャーリー「……」

.
■ペンドラゴン コードR研究所 ─────

 研究員A「さて……最終調整も滞りなく済んだ」
       「ジェレミアとキューエルのテストを開始する」パチパチパチ


様々なコンソールが並ぶ研究所内を、十名近くの研究員が慌ただしく動いている。
テスト開始を告げた研究員は、スイッチを次々と立ち上げる。
巨大な水槽の中に裸の姿で浮かぶ、ジェレミアおよびキューエル両名のまぶたが、
ゆっくりと開いた。


 ジェレ&キュー『……おはようございました』

.
 研究員A「よし……二人とも、いま何が見えている?」

 ジェレミア『真っ赤な世界……』

 キューエル『灰色ばかりが……』

 研究員A「オーバーライドも問題なしだ」
       「ヴィレッタでの経験があった分、随分と早く完成できたな」

 バトレー「ほう……もう調整できたのか、大したものだ」カツカツ
      「その技術、軍の傷病兵に応用できそうだな」

 ヴィレッタ「……その二人も、改造なさったのでありましたか」カツカツ

.
研究員の背後から、バトレーがヴィレッタを引き連れて近づいてきた。
彼女は、以前着用していた軍服を着ている……その喋り方と、頭部の機械を除けば、
以前の彼女と変わりがないようにも見える。


 研究員A「将軍、ヴィレッタをどちらに……?」

 バトレー「うむ、殿下が、ヴィレッタからコードRについての情報を得たいと」
      「おっしゃられてな……」

 研究員A「記憶野も相当に切除しましたが……」
       「どうでしたか?」

.
 バトレー「シンジュク事件の時、彼女はアッシュフォード学園の理事長に頼まれ、」
      「とある生徒を探していたようだ……」
      「その生徒が、何らかの手がかりを知っているのではないかと思われるのだ」

 研究員A「生徒が誰なのか、分かったのですか?」

 バトレー「いや、そこまでは覚えていなかった」
      「だが理事長が知っているだろう」

 研究員A「なるほど……そうですね」

 バトレー「ジェレミアとキューエルの調整が完了したら、この3名でチームを組ませる」
      「コードR捜索隊だ……」

 研究員A「わかりました、調整を急ぎましょう」

.
■アッシュフォード学園 礼拝堂 ─────

……わたしたちは、学園の礼拝堂に来た。
催し物でもない限り、ここには人が滅多に来ない。静かで、とても落ち着く場所だ。

スザク君とは殆ど面識がないけれど、ルル自身が彼を「大切な友人」と言っていたこと、
そしてその優しそうな笑顔に、この間から一人で抱えていた悩みを、ちょっとだけでも
聞いてもらいたいな……と思った。


 スザク「……ここにいるとなんだか、厳かな気分になるね」

 シャーリー「そういう場所だしね」ニコッ

.
左右にずらりと並ぶ礼拝席の、中央あたりにわたしたちは並んで腰掛けた。
ステンドグラスを通した、色彩あざやかな光が横から差し込み、机の上に模様を
投げかけている。
わたしは、その美しい色合いをぼんやりと眺めながら、彼に聞かせるでもなく
一人ごとのようにつぶやいた。


 シャーリー「ルルってさ……」

 スザク「うん?」

 シャーリー「……ああ見えて、意外と優しいよね」

 スザク「そうだね」
     「特に、ナナリーに対しては別格だね」

.
 シャーリー「うん……いつも気にかけてるよね」
       「ルル、今まで女の子と付き合ったこと、あるのかな……」

 スザク「さあ……僕が知っている限りじゃ、ないと思うよ?」

 シャーリー「そうなんだ……」

 スザク「……彼が、好きなんだろう?」


微笑ながらそう言ったスザク君の言葉に、わたしは顔を赤らめながら小さく頷く。


 スザク「なかなか告白できないのかい?」
     「僕が代わりに伝えてあげようか?」

.
 シャーリー「ううん、そうじゃないの!」
       「というかね……」

 スザク「??」

 シャーリー「……好きだ、って言われたんだけど……」

 スザク「えっ!?」
     「ルルーシュに?」

 シャーリー「うん……///」

 スザク「……なら、何が問題だい?」キョトン

.
 シャーリー「ちょっとね……あの、わたし……」
       「……卑怯なこと、しちゃったんだ……」ショボン…

 スザク「卑怯なこと?」

 シャーリー「……」


わたしはスザク君に、お父さんが死んでからのことを、ぽつりぽつりと話した。
ルルとデートの約束をしてた日に突然の父親の訃報を受けたこと、自分でも気持ちが
混乱し、ルルを困らせてしまったこと……

.
 シャーリー「あんなこと、言われたら……」
       「……誰だって、好きだ、って言うよね……」
       「そう言ってくれってせがんだようなものだもん……」

 スザク「……」

 シャーリー「わたし……ほんと、間違えちゃったんだな、って……」
       「なんであの時、あんなことを……」ニコ…

 スザク「……彼と君の関係について、深くは知らないけれど……」
     「彼はいつだって、言葉を大切に使ってる」

 シャーリー「……」

.
 スザク「君が好きだ、っていう言葉も、嘘じゃないと思う」
     「いくら相手が可哀そうだからって、自分の気持ちまで嘘はつかないだろう」

 シャーリー「うん……」

 スザク「……君は、彼の言葉を信じてあげるべきだよ」

 シャーリー「……そうだね……」ニコッ


スザク君の優しいアドバイスに、わたしは微笑んでみせた。
そうだ……いつまでも、ルルを避けるような態度を取り続けるのはやめなきゃ。
だって、彼は別に、何も悪いことをしたわけじゃない……悪いのはわたしの方だ。

.
 シャーリー「……うん、そうだ」
       「ルルの言うこと、信じなきゃね……!」

 スザク「僕も応援してるよ」ニコッ
     「でも、いきなりだったんだね、君のお父さん……」

 シャーリー「うん……ほんとうに……」

 スザク「事故か何かだったのかい?」

 シャーリー「……ナリタでね……」

 スザク「ナリタ……?」
     「……ナリタだって!?」

.
スザク君は、わたしがナリタと言うと、すごく驚いたみたいだった。
目を大きく見開いて、わたしを見つめている。


 シャーリー「うん……あの時、山崩れに巻き込まれたの……どうしたの?」

 スザク「……ルルーシュが、好きだって言ったのは、その後だよね……?」

 シャーリー「うん、そうだよ?」

 スザク「…………」

.
 シャーリー「……スザク君?」

 ??「はぁ~、やっと気づいたのか……」
    「すっかり待ちくたびれたよぉ」

 シャリ&スザ「!?!?」


この礼拝堂には誰もいないと思っていたのに、突然、わたしたちの背後からそういう声が
聞こえてきて、わたしは飛び上がるほどに驚いた。
礼拝堂の入口の方をくるりと振り向くと、そこにはサングラスとヘッドホンをつけた、
銀髪の男が立っていた。

.
男は、まるでわたしたちをからかうかのように、手をぱちぱちと叩きながら喋る。


 ??「シャーリー……君に、ようやっと真実を知る機会が訪れたよ!」
    「これから君には、もっと悲惨な運命が待ち構えているんだよ……」
    「悲劇、大好きだろお?楽しみでしようがないねえ~!」パチパチ

 シャーリー「真実……!?」

 スザク「誰だ、お前は!」

 ??「誰だって、いいだろお?」
    「それよりもさ、ほら、早く真実を教えてあげなよ、スザク!」
    「シャーリーのお父さんを殺したのは、誰なのか……ってさ!」ニヤ

.
 スザク「な……!」

 シャーリー「えっ……どういうこと?」
       「お父さんが……?」

 スザク「……」


男の言葉に、スザク君は険しい顔をして黙り込んでしまった。
わたしのお父さんのこと……どうして、この男が?スザク君も、何かを知ってるの!?


 ??「ほら……どうして言わないんだ?」
    「スザク、君の性格上、こんなのは許せないことだろう?」
    「シャーリーに教えてあげなきゃ、真実を……!」

.
 スザク「…………」グッ…

 シャーリー「スザク君……何か、知ってるの?」


スザク君の様相の変わりように、わたしは不安な気持ちを掻きたてられた。
彼は、わたしに関係あることで、でも言えないことを知っている……?


 スザク「……お前、何者なんだ?」
     「一体、どこまで知っているんだ……?」

.
 ??「あはは、僕は何だって知っているよお~」
    「ルルーシュがゼロだっていうことや……」

 スザク「!!」

 シャーリー「え……?」

 ??「……そして、君がかつて父親を殺したこともねえ……」ニヤア

 スザク「!!!!!」


……なに、一体何なの、この人……?
ルルがゼロ……?スザク君が……父親を、殺した……?
何を言ってるの?わけわかんない……

.
 シャーリー「あっ……あなた……」

 ??「シャーリー、君はほんとにひどい子だ……」
    「お父さんの死で、ルルーシュの同情を誘おうなんて……」

 シャーリー「え……」


銀髪の男はあごを引き、サングラスの隙間から見上げるような視線でわたしを見る。
わたしを憐れむような……いや、違う……わたしを見透かすような、全てを知り尽くし、
軽蔑するような目で……!

.
 ??「雨の中のキス……ドラマチックだったねぇ……」ニヤ

 シャーリー「!!!」

 ??「あの時、心の奥底で感じた悦び……自分でもわかってたよね?」
    「唇で……そして、首筋で感じた、彼のくちびるの柔らかさ……」
    「君を抱きしめた腕の力強さ……君の名を呼ぶ声の甘美な響き……」
    「今も時々、夜中に思い出してる……」ニヤニヤ

 シャーリー「……してない……」

.
 ??「あれあれえ?嘘はダメだよお?」
    「このスザク君、嘘は大嫌いなんだよ?そんなこと言ってたら、」
    「彼に刺されちゃうよお?おなかを、グサッとね!」

 スザク「……」プル…プル…

 ??「シャーリー……正直に認めないと、苦しいままだよぉ?」
    「君は、ルルーシュが欲しかった……」
    「彼を好いている子を、押しのけてでも……父親の死を利用してまでも……」

 シャーリー「違う!」

.
 ??「でも、皮肉な話だ……」
    「君の父親を殺したのは、他でもない、ルルーシュなんだから……!」
    「君は、君の父親を殺した相手に、キスをねだったのさ……」
    「うーん、ドラマチック!」パチパチパチ

 シャーリー「ちがうっ!」

 ??「嘘じゃないよ?ほらスザク君に聞いてみなよ、」
    「この、父親殺しのスザク君に、ゼロの正体はルルーシュなのか、ってさ?」

 スザク「きっ……貴様……!」プルプル…

.
 ??「貴様と呼ばれる筋合いはないね、この死にたがりが」
    「ユーフェミアのために死にたい、だって?笑わせてくれるねぇ!」
    「そんなに罪を償いたいなら、とっとと死ねばいいのにねえ……いま死ねば?」

 スザク「……ぐ……」ワナワナ…

 ??「おっと……ごめんごめん、ユフィ……って呼んでるんだっけ?」
    「彼女を愛称で呼ぶことに幸せを感じてるね」
    「ユフィの騎士か何かになったつもりかい?イレヴンのくせに……!」

    「毎日毎日、廃墟で汗を流してるのも、君は罪滅ぼしのつもりでいるけど、」
    「そんなことしたって、君のせいで死んだ人たちは戻ってこないよぉ?」
    「君は、ブリタニア人の奴隷でいるのがお似合いだねえ~」パチパチパチ

.
 スザク「お……オレは……」ワナワナ…

 ??「シャーリー、スザク、それにルルーシュも……」
    「君たちは、本当に、どうしようもない奴らだ……」クスクス

 シャーリー「ちがうわッ!!」バンッ!!

 ??「何が違うんだ?僕が嘘をいっているとでも?」
    「そんなに疑うなら……ほら、ダイニングに行ってみなよ?」ニヤ
    「いま、彼は妹と、楽しそうにおしゃべりしてるよ?」


彼は、そう言ってクラブハウスのダイニングの方を向いた。
ここからは全く見えないにも関わらず……それは、確かにダイニングの方角だった。

.
彼は、そう言ってクラブハウスのダイニングの方を向いた。
ここからは全く見えないにも関わらず……それは、確かにダイニングの方角だった。


 ??「いやあ……彼には驚かされるよお~」
    「ゼロに化け、人を殺しながらこうやって、平然と学生をやってるんだから……」
    「相手の父親を殺しておいて愛の告白くらい、朝飯前だよなあ……」ニヤニヤ

 シャーリー「……!!」ダダッ!!

.
わたしは、彼の言葉を最後まで聞くことなく、ダイニングへ向かって走りだした。
これ以上、こんなやつの言葉を聞いててもしようがないし、ルルに聞けば済む。

ルルはきっと否定するはずだ、だってルル、優しいしそんなことするはずないし。
それにルルがゼロだとかあり得ない。彼、頭を使おうとしないんだから、そんな
めんどくさいことするわけがない。だからルルに聞いてみよう。というかルルは
出かけてたんだからいるはずがない。いなければあの男を嘘つきだとののしって
やる。でもいたら、ルルに謝らなきゃ、ごめんなさいって。あとお父さんにも、だ。
ごめんなさいって。わたし、悪い子だ。どうしよう。また嘘をついちゃった。
とにかくルルに……

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 マオ(……ふふ……仕上がってきたな……もう一息かな……?)
    (ルルーシュ……君を、殺してあげるよ……)
    (君が騙してきた奴らに、君は殺されるんだ……!)


僕は、呆然自失状態で床に突っ伏したスザクの頭を踏みつける。
彼は全くの無抵抗だ……頭の中で、言葉にならない言葉を呟いている。

僕が"耳"を澄まさないと聞こえない程度の、その呟き……
なんて心地よいんだ!世の中の連中が皆こうなればいいのに!

.
 マオ「スザクぅ……まーだ迷っているんだ?」ゴリッ…
    「ゼロであるルルーシュをそのまま見逃してるのは、正義じゃないよねぇ……」
    「えっ、友情?彼はもう君に、友情なんて感じてないよ?」

 スザク「…………」


つま先で彼の頭をねじりながら、言葉のナイフでより深く彼の心を抉り込む。
でもここの加減が難しいところだ。抉りすぎると壊れて使い物にならなくなる。
失敗して何人か壊してきたけれど、最近はだいぶうまく使えるようになった。

.
 マオ「そう、行政特区のことで彼を怒らせた」
    「君は彼に、死ねと言ったに等しいのさ……」ゴリゴリ
    「彼は、君を殺す気でいる……どうする?死・に・た・が・り・くん?」

 スザク「………………」


こいつの心は疑心暗鬼の闇に陥った。肥大化した罪悪感で押し潰されかけている。
ただ、普通のやつならもっと生存本能が強いから、プレッシャーから攻撃性に
転じる作用が強く働くんだけど、こいつはそれが弱いんだよなあ……

.
 マオ「まあ、今すぐ死ねばいいんじゃない?」
    「ルルーシュという"悪"を残したまま……"トモダチ"らしいしね?」クスクス
    「父親を殺せた君が、トモダチは殺せないんだから、不思議なものだよねえ?」

 スザク「………………」


まあ……こんなところかな。後はまた、どう動くか観察してみよう。
それよりも、シャーリーの動きが楽しいことになってきた。
僕は、スザクに手を振ってみせながら礼拝堂を後にする。


 マオ「じゃあね、スザクくん!」
    「部外者がいつまでもこんなとこで寝てると、捕まるよぉ?」カツカツ…

.
■クラブハウス ダイニング ─────

 咲世子「あら、おかえりなさいませ!」

 ナナリー「お兄様、今日はお早いお帰りだったんですね!」ニコニコ

 ルル「ああ……ただいま、ナナリー」ニコッ
    「身体の調子はどうだ?」

 ナナリー「はい、もうだいぶ良くなりました」
      「いま、みかんをいただいてたところです」

.
 ルル「そうか、あまり食べすぎるなよ?」
    「みかんは医者いらずとは言うが、過ぎれば身体を壊すからな」

 ナナリー「はい、ほどほどにします!」


病院から戻った俺は、生徒会へ顔を出す前に一旦クラブハウスに寄った。
先日からナナリーが風邪をひいて休んでいるので、その具合を見に寄ったのだ。
ナナリーは、暖房をきかせたダイニングで、咲世子と一緒にみかんを食べていた。


 ナナリー「お友達の具合はいかがでしたか?」

 ルル「問題なかったよ、ちょっと身体を痛めた程度らしい」
    「数日もすればまた学校に来るんじゃないかな」

.
 ナナリー「良かったですね!」ニコッ
      「お兄様も、みかん、いかがですか?」

 ルル「そうだな……生徒会に行くんだが……」
    「その前に、食べていくかな?」


俺は、ナナリーの傍に腰掛け、テーブルについた。
テーブルの上には、みかんと一緒に小さな折鶴がいくつか置いてある。
多分、ナナリーが折ったものだろう。

ナナリーは目が見えない。本当なら折り紙もできるわけがない。
咲世子から手添えで折り方を教わった当初は、ひとつ折っては指で形を確認しながら、
という手順なので10分も20分もかかり、しかも形はお世辞にもきれいとは言い難かった。

.
だが、ナナリーはいくつもいくつも、辛抱強く折り鶴を折り続けた。
そうして、折り方を指先で覚えてしまったのだ。
今では、誰が見ても盲目の少女が折ったものだとは思えないほどの出来栄えだ。
しかも、最初の頃は大きな紙を使っていたのが、その大きさもどんどん小さくなり、
手のひらにこぢんまりと乗るほどの鶴も折れるようになった。


 ルル「ほう……かわいらしい折り鶴だな」

 ナナリー「ふふっ、どうですか、きれいに折れてますか?」

 ルル「ああ……こんなにきれいな折り鶴は、俺には無理だよ」

.
 ナナリー「あら、お世辞をありがとうございます、お兄様!」ニコッ

 ルル「お世辞じゃないさ、本心だよ」ニコッ


ナナリーの折り鶴は、彼女の心の象徴だ。
華奢な身体に秘めた、その忍耐強さと……そして、誰よりも強く平和を希求している
彼女の心が形となったものだ。だからこそ、余計に美しく見える。

……俺の手は、すでに数多の死人の血にまみれている。
ブリタニア人の血、日本人の血……そして、シャーリーのお父さんの血……
どんなに見た目がきれいであろうと、俺が折った鶴は物理的な折り鶴以上の意味はない。

.
と、いきなりダイニングの扉が開いた。


 ルル「ん?……シャーリー?」

 ナナリー「えっ?シャーリーさんですか?」

 咲世子「?」

 シャーリー「…………」

.
そこに立っていたのは、シャーリーだった。意外な来客に、俺は思わず目を丸くした。

生徒会室と同じ建物内で営んでいる俺たちの生活にまでは、シャーリーを含む生徒会の
メンバーたちは、不要に立ち入らないように気を遣ってくれている。
それに加え、"あの件"以降、彼女はなんとなく俺を避けているように思っていた。

それが、いきなり、だ。


 ルル「……どうしたんだ?」

 シャーリー「ルル……いたんだ……」

.
俺は、シャーリーの顔から血の気が引いていることに気付いた。
同じく彼女の異常に気づいたらしい咲世子と、思わず顔を見合わせる。
蒼白のシャーリーは、焦点の定まらない目で俺の顔を見つめていた。


 シャーリー「……ルル、違うよね……?」

 ルル「何がだ?」

 シャーリー「ルルは……ゼロじゃないよね……?」


誰がいつソンナコトヲカノジョ──────!
ここはともかく!

.
 ルル「なんだって?」キョトン

 シャーリー「……わたしのお父さん、殺した……?」


………………。
細心の注意を払い、決して悟られないようにしていた事実。
それが、彼女の口から出たことで、俺は一瞬、思考が止まってしまった。
だが、咲世子やナナリーが代わりに反応をしてくれた!助かった……


 ナナリー「ええっ!?」

 咲世子「シャーリーさん、一体何を言い出すんですか!?」

.
 シャーリー「ルルに聞いてるの……」
       「ルル、わたしのお父さん、殺したの……?」

 ルル「いいや、殺してない」
    「……シャーリー、なぜそんなことを?」

 シャーリー「スザクくんも、自分のお父さんを殺した、って……」

 ルル「!?!?」

 ナナリー「え……?」

 咲世子「!?」

.
シャーリーの言葉のあまりの異常さに、ナナリーも咲世子も息をのんでいる。
しかし、スザクの名まで出るのはどういうことだ?彼女は、誰から何を聞いたんだ!?
俺のこと、スザクのこと、シャーリーのこと……すべてを知っている人間か?
それに該当するのは、俺か…………まさか、C.C.なのか!?

シャーリーは、自分の肩を抱くようにしてその場でぶるぶると震えだした。
咲世子は慌ててシャーリーに駆け寄る。


 咲世子「シャーリーさん、落ち着いてください……!」

 シャーリー「ルル……わたし、わたし……!」フラ…ッ

 ルル「シャーリー!」

.
気を失い、倒れ込むシャーリー……危ういところで、咲世子が彼女を支える。
俺も椅子から立ち上がり、彼女の傍に駆け寄り声をかけるが、シャーリーは
目を瞑ったまま何の反応も示さなかった。


 ルル(まさか……シャーリーは事実を知ってしまったのか!?)
    (一体、誰が彼女に……!)



   ────── 続く

彡 ⌒ ミ  くぅ疲です。以降、使い切るまでこのスレで継続いたします。
(´・ω・`)  はげるほどがんばります。

乙です。

マオやスザクも気になるけど、やっぱりジェレミアが一番気になる(><)

おつー待ちわびたよ!あいかわらず面白いね!

>>77
おつありです!コードR特捜隊、ご期待ください!

>>78
大変お待たせいたしました!はげる勢いでがんばっております!

マオってそうとうめんどくさい敵だな

>>80
中身が子供な分、余計にやっかいですよね!

同じスレで書いてくれたほうがお気に入りに登録できて便利だから感謝感謝!

>>82
お気に入り入り、めっさ恐縮です!一夜にして脱毛しそうです!

木曜日更新はかわらずですか?

>>84
それを目標に励んでおります!

.
■租界内 病室 ─────

 シャーリー「……」スゥスゥ…

 シャーリー母「……シャーリー……」

 ルル&咲世子「……」


……オレは、クラブハウスのダイニングで失神したシャーリーを、咲世子と二人で病院まで
運んだ。病院から彼女の母親にも連絡を入れると、彼女も慌てふためいて飛んできた。
咲世子の話だと過呼吸状態に陥っていたようだが、直後の彼女の適切な応急処置で
事なきを得た……

.
病室のベッドで、今は静かに眠るシャーリーの顔を見つめる母親は、すっかりと
憔悴しきっていた……無理もない、父親を失って間もないのに今度は娘が倒れたのだ。
その心境は、推し量るにもあまりに重い。

その様子を目にした俺の脳裏には、葬儀の場で土の中に埋められる夫の棺に向かい、
埋めないでくれと泣き叫んだ姿が思い起こされた。


 ルル「……突然でした……」

 母親「……」

.
シャーリーの言動については、言わずにおいた……無論、俺のためでもあるが、母親が
いまそれを聞けばさらに心労を重ねるのは目に見えている。
母親は、言葉少なに礼をした。


 母親「……ご迷惑をおかけして……」

 咲世子「お気になさらないでください、ご無事で何よりです」


咲世子の微笑は、見る者に暖かな安心感を与える。シャーリーの母親も、その表情を見て
わずかに頬を緩ませながら、眠るシャーリーの頭を優しくなでた。

.
 母親「この子、普段は気丈に振る舞うものだから……」
    「どれだけ苦しんでいるのか、今日は本当によくわかりました……」

 ルル「……申し訳ありません……」


俺が彼女たちの父親を殺したことが、ではない。
そんなことは言葉で謝罪できるものではないことは分かっている。
友人なのに、彼女の苦しみに気付けない自分に対して、だ。


 母親「……ルルーシュ君、気にしないでね」
    「あなたが謝ったと聞いたら、この子、ますます苦しんでしまいますわ」

 ルル「……?」

.
 母親「あなたのこと、よくこの子から聞いております……」
    「いつも仲良くしていただいてるようで……ありがとうございます」


俺に対し、深々と頭を下げた母親の姿を見た瞬間……俺は突如、その場で催して
しまいたいほどの吐き気を覚えたことに驚いた。この善良な家族を破壊した俺の行為に
対しての、わずかに残っている俺の良心の呵責の証だろうか。
おそらく顔が蒼ざめていたのだろう……俺の表情をちらりと見た咲世子の訝しげな視線に、
その時は気づいていなかった。

黙って俯いている俺に代わり、咲世子が言葉を継いだ。


 咲世子「失礼ですが、しばらくは、ご自宅から通学される方が宜しいのでは?」

.
 母親「ええ、今日はこの後、学園に行ってその旨の手続きをするつもりです」
    「この子次第ですけど、場合によっては休学も考えております」

 ルル「……」

 咲世子「こういう時は、ご家族と一緒の方が心強いでしょう」

 母親「はい……落ち着くまでは……」


その時、ベッドで眠るシャーリーが動いた。見れば、うっすらと目を開けている……
やっと気が付いたようだ。母親は、安堵の溜息をもらした。
シャーリーは、傍らに立つ母親を不思議そうに見る。

.
 シャーリー「……あれ、お母さん……?」

 母親「具合はどう……?」ニコッ

 シャーリー「わたし、確か……」


彼女はそう呟きながら部屋の中を見回す。
母親の後ろに立っていた咲世子と俺の姿を見つけると、表情をやや曇らせた。


 シャーリー「……夢じゃ、なかったんだ……」

.
 母親「咲世子さんと、ルルーシュ君があなたを助けてくれたのよ、」
    「お礼を言いなさい……」

 シャーリー「……咲世子さん、ルル……ごめんなさい……」

 ルル「俺たちのことは、気にするなよ……」
    「色々とあったんだ、少し身体を休めた方がいい……」

 シャーリー「……」


……誰からかは判らないが、あの時シャーリーは真実を知ったのだと俺は思う。
少なくとも俺に関しては事実であり、スザクに関しても荒唐無稽とは思い難い。
しかし、そのことをシャーリーが知ったのは、果たして偶然だろうか……

.
俺、スザク、シャーリーの3名の関係を知っていた者は、後はC.C.しかいない。
だが、奴がシャーリーに話すメリットも必然も一切ない。
とすれば……正体不明の、別のプレイヤーが存在するのか……?


 シャーリー「……お母さん、ちょっと、ルルと話したいの……」

 ルル「……」チラッ

 母親「……」コクッ

.
シャーリーの言葉に、母親は俺に頷いてみせた。咲世子と目配せをし、シャーリーの頬に
キスをすると、二人は病室を後にする。部屋には、俺とシャーリーだけが残った。
俺は彼女のベッドに静かに歩み寄り、傍らにあった椅子に腰かける。


 ルル「……気分は、大丈夫か……?」

 シャーリー「……うん」

 ルル「驚いたよ……君が倒れるなんて、想像すらしたことなかったから……」

 シャーリー「……ごめん……」

.
 ルル「謝る必要はないよ」

 シャーリー「……あんなこと言って、ごめんね……」

 ルル「…………」
    「俺が、君の父親を……って、誰が言ってたんだ?」

 シャーリー「……初めて会った人だよ、学園の生徒じゃなかった、」
       「今思えば、変な人だったな……」


やはり……第3の存在か!
最悪のパターンだ……!

.
 ルル「変な人?どういう風に?」

 シャーリー「どう言ったらいいのかな……」
       「わたしの考えてることがわかってるような……」

 ルル「考えが?……先を読まれているような、か?」

 シャーリー「ううん、全然違う……」
       「私が考えたことに返事をしてる、って感じだった……」

 ルル「考えに、返事を、だって?」

 シャーリー「うん」

 ルル「……ふむ、それは確かに変だな……」

.
彼女は、「変な人」の容貌を俺に説明した。
サングラスにヘッドホン、そして銀髪……そういうナリの人間は、俺の記憶にも全くない。
完全に、第3の男だ……この対処は、かなり難しそうだ。状況によっては、騎士団を
使うことができない。俺単独で対処せざるを得ない可能性も考慮しないと……


 シャーリー「それで……ルルが、わたしのお父さんを、って言われて……」
       「そう言われたら、信じるしかないのか、って……」

 ルル「そうか……」

 シャーリー「……ほんとに、ごめんね……」

 ルル「いいって……俺は全然気にしちゃいないよ」
    「それよりも、そいつの事が気にかかるな……」

.
 シャーリー「……スザクくんは、どうなった?」

 ルル「えっ?スザク?」

 シャーリー「変な男に話しかけられた時、スザクくんも一緒にいたの」

 ルル「なんだって?」


それで、あの時にスザクの名も出たのか……

彼女は俺に、スザクが学園に来るまでの経緯を簡単に説明した。
なるほど……ニーナの仕業(?)か……それは、さすがの俺でも予測不可能だ、
もし何も知らず生徒会室に行っていたら、驚愕の表情を会長に見られてしまう
ところだった……危うい、あやうい。

.
 ルル「礼拝堂には行ってないからな……」
    「後で様子を見に行ってみよう」

 シャーリー「お願いね……」
       「彼、あの変な人の言葉にすごく傷ついてたみたい……」

 ルル「……一体、何の目的があって、俺たちを……」
    「そういうことは、何か言ってたか?」

 シャーリー「ううん……」

 ルル「そうか……」

.
俺たちは、少しの間沈黙した。
こうして彼女と二人きりになるのは、彼女の父親が死んで以降、久しぶりのことだった。

彼女は、あの絶望の雨の中、俺に助けを求めた。
間違ったことをした、と彼女は言ったが……本当は、俺こそが"間違った返答"をして
しまったのだ。彼女を愛おしく感じたことに嘘はなかったが、接吻で彼女の孤独を
埋め合わせようというのは、明らかに感情の暴走だった……


 ルル「……シャーリー、」

 シャーリー「なに?」

 ルル「あの時のこと……つらかったら忘れてくれ」

.
 シャーリー「えっ?」

 ルル「間違ったのは、俺の方さ……」
    「君の気持ちを、もっと真剣に考えるべきだった……」

 シャーリー「え……?」

 ルル「……今は、お母さんと一緒に、心も身体もしっかり休めるといい」
    「俺は、アッシュフォードで待ってるから……」ニコ…

 シャーリー「…………ルル……」

.
彼女は、かけていたタオルケットから両腕を出し、手を俺に向け伸ばした。
俺はやや戸惑いながらも、彼女の手をそっと握る……彼女は、その愛らしい大きな瞳に、
涙を浮かべていた。


 シャーリー「……ごめんね……待ってて……」ポロ…

 ルル「ああ……」

.
■アッシュフォード学園 ─────

俺は学園へ戻ると、すぐに礼拝堂へ足を運んだ。
シャーリーが倒れてから相当に時間が経過しており、すでにいないだろうとは思っていたが、
念のため行ってみるとやはりスザクの姿はなかった。
何らかの痕跡でも残ってないかと礼拝堂の中を調べてみたが、めぼしい情報もない。

試みに、スザクに電話をかけてみたが、いくらコールしても出ない。
シャーリーの言っていた通り、例の男の言葉で奴が精神的なダメージを受けたのは
間違いなさそうだ……

.
シャーリーは、その男は自分の考えに返事をしていた、と言っていた。
ごくまれに、その人のそぶりや目線の動きだけで、今何を考えているのかが瞬時にわかる
才能を持つ人間がいるが……その類の異能者だろうか?


 ルル(あるいは、ギアスだ……!)

.
■租界 貿易商事務所 ─────

俺は、答えを求めて即座に貿易商事務所へ向かった。
ビルの廊下を足早に歩み、事務所の扉を乱暴に開くと、室内ではC.C.がソファに座り、
笑いながらTV番組を見ているところだった。


 C.C.「あはははは、いいぞいいぞ!」
   「……おや、お早いお帰りだな?」

 ルル「話がある」…バタン

.
 C.C.「……そういう表情だな」
   「ところで、この『モーレツ!チーズ君』の視聴を中断せざるを得ないほどの話か?」

 ルル「切れ」

 C.C.「…………」


C.C.は、小さくため息をつくとTVをオフにし、俺の方に向き直った。


 C.C.「……どうした?」

 ルル「俺以外にも、ギアスを持つ者はいるのか?」

.
 C.C.「そんなこと……」

 ルル「シャーリーに、俺の作戦で彼女の父親が死んだことを話したのはお前か?」

 C.C.「!」ピク


俺はC.C.の表情の僅かな変化を見逃さなかった。
こいつは、何かを知っている……!

.
 C.C.「いいや、話さない」

 ルル「スザクが自分の父親を殺した、という話は?」

 C.C.「話していない」

 ルル「ではなぜ、そのことを知っている男がいるんだ?」

 C.C.「……どんな男だ?」

 ルル「銀髪、サングラス、そしてヘッドホン」

 C.C.「…………ああ」

.
 ルル「ああ、だと?……知っているんだな、その男を?」

 C.C.「……」

 ルル「そいつは何者だ!」
    「なぜ、シャーリーやスザクを傷つけるようなことをするんだ!」

 C.C.「…………」


C.C.は、俺の詰問に答えようとしない……チーズくん人形とやらを抱きしめたまま、
俯いている。その姿に、俺は怒りを覚えた……ただし、燃え上がる炎のようなものでは
なく、背筋が凍るような、冷たい怒りだ。

.
 ルル「……お前は、俺の共犯者ではなかったのか!?」
    「なぜ俺の質問に答えないんだ!」

 C.C.「強制は嫌だ……」

 ルル「……なら、どうすれば答えるんだ?」

 C.C.「……」

 
奴はその問いにも応えず、人形をさらに強く抱きしめた。
俺は、事務机の椅子を引きずり、背もたれをC.C.の方に向けて置く。
そして、背もたれに腕を乗せる形で座った。

.
 ルル「その男……ギアス保持者だな?」

 C.C.「……そうだ」

 ルル「お前がギアスを与えたんだな?」

 C.C.「…………そうだ」

 ルル「人の心を読む能力だな?」

 C.C.「……そこまでわかったのか?」


C.C.は顔を上げ、意外そうな表情で俺を見る。
こいつは、俺がわからなければ、そのことも黙っているつもりだったのか……?

.
 ルル「シャーリーが言ったことがヒントになった」
    「だが、どうしてもわからないことがある……そいつの、目的だ」

 C.C.「……」

 ルル「……ブリタニアの手先か?」

 C.C.「違う」

 ルル「なぜ断言できる?」
    「そいつが手先ではない証明を、お前はどうやってする気だ?」

 C.C.「証明の必要など、ない」

.
 ルル「ある、手先であるならそいつは始末するからだ」

 C.C.「手先ではないと言っているだろう」

 ルル「証明しろ」

 C.C.「…………」ギュゥ…


腕の中の人形を、さらに強く抱きしめるC.C.……
俺は、おもむろに胸ポケットからケータイを取り出し、電話をかける。

.
 C.C.「……?」

 ルル「私だ、ゼロだ……井上、扇はいるか?」

 C.C.「!!」


俺の言葉に、C.C.は目を見開いた。
その表情を冷ややかに見つめながら、俺は話し続ける。


 ルル「扇か……ひとつ、懸案事項ができた」
    「俺たち騎士団の事を探っている奴がいる、そいつを見つけ出」

 C.C.「待て!」

.
 ルル「して殺……ちょっと待て」ピッ
    「証明は?」

 C.C.「……あの子は、そんな素性じゃない……」

 ルル「あの子、だと!?」


C.C.のその言葉は、さすがに意表を突かれた。
こいつと何らかの関係がある者だろうとは思っていたが、「あの子」だと……?
俺は、C.C.を凝視しながら少しの間考えたが、


 ルル「……扇、もう少し情報を精査してからかけ直す」…ピッ
    「"あの子"のこと、聞かせてもらおうか?」

 C.C.「…………」

.
■エリア11近海 上空 ─────

太陽の光を浴びて煌めくシズオカ近海の上空……
太平洋側からエリア11に接近する、一機の軍用機の姿があった。それには、研究所にて
調整を済ませたジェレミアたち「コードR特捜隊」が乗り込んでいた。


 ヴィレッタ「……あれを見たでしょうか?」

 ジェレミア「ふむ、エリア11のフジマウンテンか?」

 キューエル「フジイイイッ!おのれおのれイレヴンめおのれおのれ!」

.
 ヴィレッタ「……キューエルはどうしていたのでしょうか?」

 ジェレミア「ふむ、フジマウンテンと聞いてイレヴンどもへの怒りを」
       「思い出したようなのか?」

 ヴィレッタ「先が思いやられるのでした……」

 キューエル「フジッ!フジコフジコフジコ!」
        「……奇怪な景観だな」

 パイロット(……あと30分、あと30分耐えればこの、理解不能な会話の海から)
       (脱出することができる……耐えろ、耐えるんだ、オレ!)

.
 ジェレミア「ところで、このチームのリーダーについてだが、」
       「帝国への比類なき忠節を誇る私で異論はない」

 ヴィレッタ「私こそ適任でした!」

 キューエル「リッ、リリリリリリリィィィダアアァ!」
        「……私がなるべきだと思いますが?」

 ジェレミア「しょっちゅうそんな状態になる君では任務が果たせないか?」

 ヴィレッタ「キューエルは、ほんとは調整が失敗のミステイクですか?」

 キューエル「ミスッ!?ミミミミミミスッ!?ミミミミミミミミ!」
        「……大丈夫、5秒で通常状態に復帰できます」

.
 ヴィレッタ「今度こそ私がリーダーでした!」
       「私は手柄をヴィクトリー、そして騎士候になりたかったのです!」

 ジェレミア「忠節なき功は強欲か、ヴィレッタ?」

 ヴィレッタ「欲の何が悪かったでしょうか!」

 キューエル「ストッストッストッストッストッストッストッ!」
        「……ストップ、間をとって、やはり私がなるべきでしょう」

 ジェレミア「率直に言うか?」
       「この中で、調査のためのコミュニケーションが可能なのは、」
       「かろうじて私しかいないとしか思えないか?」

.
 ヴィレッタ「……それは反論ができなかったのです」

 キューエル「おのれおのれおのれおのれおのれ」

 パイロット(あんたら全員、理解不能だよ!)
       (隣で聞いてるオレがおかしくなりそうなんだよ!)

 ジェレミア「だが……我々それぞれが、得意な分野があるのか?」
       「だから三位一体で事に臨めとバトレー将軍は言われた?」

 キューエル「そうだな」

 ヴィレッタ「それはまさしくソリューション……」

.
 ジェレミア「だから、君たちはわたしの部下ではなく、同僚なのか?」
       「互いに助け合うか?帝国への忠義を示すは今か?」

 ヴィレッタ「わかります、互いに協力をギブアンドテイクです」

 キューエル「どっ、どどどどどどど!」
        「……同僚ならば、よしとしよう」

.
■租界内 病室 ─────

……ルルたちが帰り、わたしは一人ぼっちで病室のベッドに横たわっていた。
礼拝堂で、あの変な男から言われたことが、まだ頭の中から消えてくれない……


 (君は、ルルーシュが欲しかった……)
 (彼を好いている子を、押しのけてでも……父親の死を利用してまでも……)


……そんなことない。

あの時は、お父さんが死んだショックで、本当に何もわからなくなってた。
でも、ルルとの約束はちゃんと守らなきゃ、って思って、待ち合わせ場所にいって……

.
ぼおっとしたまま行ったからケータイを忘れてて、時間が過ぎてもルルは来なくて、
雨も降ってきて、自分がだんだんすごくみじめな人間に思えてきて、どうしたらいいのか
途方にくれて……

その時に、ルルが来てくれて……
雨の中で何してるんだ、ってルルに叱られた時、わたしのこと、考えてくれてた、
って思って……その瞬間に、気持ちがぐちゃぐちゃになって、ルルに抱きしめられて……


 シャーリー(嬉しかった……ルルのキス……)

 ??「それが、利用してるってことじゃないのぉ?」

 シャーリー「!!」

.
その声……あの男の声だ!わたしは驚いて、上半身を起こして病室の入口を見た。
そこには、ルルにも言った銀髪の男が、口元に薄笑いを浮かべながら立っていた……


 シャーリー「ど、どうしてここが……」

 ??「僕は何でもお見通しなんだよぉ……」
    「君の考えることは、ぜーんぶわかってるんだ……」


銀髪の男は、そう言いながらゆっくりと私のベッドに近づいてきた。


 シャーリー「やめて、来ないで!」

.
 ??「ふーん、君、随分といい趣味を持ってるんだねぇ……」

 シャーリー「!?」

 ??「ボーイズラブ、って言うのか、へぇ……」
    「ルルーシュとスザクの絡みだって?気持ちわるいなぁ……」

 シャーリー「な……!」


なんでそのことを!?そのことはニーナしか知らないはずなのに!?
本を売るのだって委託だからわたしが書いてるってのは他に知ってる子はいない!
どうして!?一体誰が

.
 ??「何度言わせるんだお前は?」
    「お前の考えは全部わかってるんだって言ってるだろ?」

 シャーリー「……!」


まさか、本当に……考えが読まれてるの!?
でもわたし、自分の作品のことについてはいま全然考えても


 ??「考えだけじゃない、記憶も読めるのさ……」
    「例えば……そう、彼に内緒で唇を奪ったこととかね……」

.
……うそ、そのことまで……!
本当なんだ、この人……わたしを、読んでる……!
そんな、やだ……やだ、絶対いやだ、ルルに知られたくない!


 ??「そうだねぇ、ルルーシュが知れば、きっと軽蔑するだろうねぇ……」
    「強引にキスはする、自分が同性の友達と抱き合ってるなんてことにされる……」
    「そんな女、誰が好きになるっていうんだ?」ニヤニヤ


でもルルはさっき、学校で待ってるって言ってたし


  ??「このことを知ったルルーシュが、果たして同じことを言ってくれるかねえ……」
     「気持ち悪い……って言うんじゃない?」

.
……いや、いやっ!イヤイヤイヤイヤイヤ、イヤッ!
どうしたらいいの、どうしたら黙っててもらえるの?
何を言えば


 ??「口先だけで丸めようとするのかぁ……」
    「シャーリー、君はほんっとに最低の人間だ……」


そんなこと!……わたし、思っ


 ??「ほらまた嘘ついた!」
    「考えが読める相手にまで嘘をつこうとする……」
    「もう病気だよ、君は……」ニヤリ

.
……思ってた、の……わたし……?
でも……


 ??「自分が何を考えてるのかもわからないんだ?」
    「それで僕を嘘つき呼ばわりする気だったんだから、ひどいよなぁ……」
    「ルルーシュに直接聞いて、はいそうです私がゼロですと言うと思った?」


……だって…………

.
 ??「君は、否定してほしかっただけ」
    「事実なんてどうでもいい、ただ彼がゼロであってはいけないと思ってただけ」
    「だから、彼が否定しやすいような聞き方をした」
    「否定するのを聞いて、安心したかっただけだ」


………………


 ??「つまり、父親の死の真相なんてどうでもいいのさ、君は」
    「ルルーシュさえ傍にいればいい、彼とキスをし、彼に抱かれたい……」
    「そうなるなら、母親だって捨てるだろう」

.
……やめて……


 ??「君は自覚するべきだ、自分の罪を……」
    「己の情欲のために父親の死すら悪魔に捧げるエゴイズムを……」
    「君は、それが許せるのか?」
    「知り合いが同じ真似をしても、君は許せるのか?」


……許して…………


 ??「赦しを与えるのは、僕じゃない……君自身だ」
    「罪を赦されたいなら、罪を許してはいけない」

.
…………


 ??「そう、ルルーシュの罪だ……」
    「君の父親を殺した彼の罪を見逃すのは、悪だ」
    「それを許し続ける限り、君は赦しを得ることはない」


……


 ??「彼が言い逃れのできない証拠をつかむ必要がある」
    「彼がゼロだという、確固たる証拠が……」
    「それを彼に突き付け、父親を殺したことの贖罪をさせるんだ……」
    「それでようやっと、君も、彼も、赦しが得られるだろう」

.
……しょうこ……


 ??「そう、証拠だ」
    「早いとこ、ここを抜け出そう……」ニヤリ

.
■租界 貿易商事務所 ─────

 CC「……あの子の名は、マオという」
    「中華連邦の人間だ……そこの住民という意味でしかないが」

 ルル「マオ、か……」


CCは観念したのか、ようやく謎の男……マオのことを語り始めた。


 C.C.「孤児だったマオにギアスを与えたのは、6歳の時だった……」
    「マオは、人の考えが聞こえるギアスを手に入れた」

 ルル「ふむ」

.
 CC「望みが叶い、当初は良かったが……」
    「……ギアスが暴走した」

 ルル「暴走?」

 CC「お前も持つその"力"は、使うほどに能力を増してゆく」
    「そして所持者が制御をできなくなるほどに強大になると……」
    「……その時、己の意思に関わらず能力が発現するようになる」

 ルル「なんだと……?」
    「今初めて聞いたぞ?ギアスが暴走?それは……」


制御できなくなる?使うほどに、だと?
ということは、ギアスを使用する限り暴走は免れないということか?

.
 CC「マオは、私との契約を果たせない状態になった……」
    「だから、私はマオの元を去ったのだ」

 ルル「……契約内容について、説明する気はないのか?」

 CC「時が来ればすると言っているだろう……」

 ルル「……まあいい、それでその、マオとやらがなぜ俺に関わろうとする?」
    「ブリタニアの者でもないのに、なぜだ?」

 CC「……目的は、私だ」

 ルル「お前だと……?」

 CC「……」

.
C.C.は、少しの間俯いていたが、やがて顔を上げる。
湖畔の水面のように静かな……琥珀色の澄んだ瞳が、俺を見つめていた。


 C.C.「……能力が暴走してからは、あの子は人と接することができなくなった」
    「己の助けであったはずのギアスが、他人の考えが否応なしに頭に飛び込んでくると
    「いう、際限のない責め苦に変わったからだ」

 ルル「……」

 C.C.「だから……それからは、私は他に誰もいない場所で、あの子と二人で暮らした」
    「私はマオの母親であり、兄弟であり、恋人だったのだ……」

.
 ルル「……つまり、お前を連れ戻しに来たというわけか?」
    「だが、その目的と俺に関わる理由が全くかみ合わない」

 C.C.「……お前が、ギアス能力者だと悟ったからだろう」
   「ギアスを与えることができるのは私しかいない、ならばお前の近くには」
   「私がいるはずだからな」

 ルル「……なるほど、ようやっと見えてきた」


俺は椅子から立ち上がり、テーブルの上に置いたコーヒーメーカーからコーヒーを
一杯注いだ。砂糖もミルクも入れず、ブラックのまま一口啜ると、カップを手にしたまま
再び椅子に戻る。

.
 ルル「奴は、お前を取り戻したがっている」
    「しかし、契約がある限り、お前は俺から離れない」
    「だから、俺に契約を破棄させる、あるいは……契約を履行できない状態に」
    「追い込むつもりか」

 C.C.「……たぶん、そうだろうな」

 ルル「……」ズズッ…
    「ひとつ、確認がある」

 C.C.「なんだ?」

 ルル「俺がマオを始末してもいいのか?」

.
 C.C.「……無理だ、お前ではマオには勝てない」

 ルル「どういう意味だ?」

 C.C.「人の考えが読める、といっただろう」
    「マオは、その気になれば本人の記憶まで読むことができる」
    「ルルーシュ、お前にとっての天敵のようなものだよ……」

 ルル「そんなことは聞いていないだろう!」
    「俺が始末してもいいのか、と聞いてるんだ!」


声を荒げた俺を、C.C.は少し驚いた様子で見た。

.
 ルル「契約が何なのかを未だに言わない、ギアスの暴走のことも今まで言わなかった!」
    「そして俺が俺の敵を排除しようとすると止めようとする!」
    「C.C.、お前は俺の敵か、味方か、どっちだ!」

 C.C.「…………」
    「私は、お前の共犯者だ」

 ルル「……」フゥ…


俺は、軽くため息をついて俯く。
とりあえず、敵の存在と正体、その目的は判明した。今はそれだけで良しとしておく。

.
 ルル「……マオの弱点は?」

 C.C.「ない、あの子の能力には制約がない」
   「望めば、その人間の全ての思考や記憶が読める」

 ルル「どうやってその対象を選ぶんだ?」

 C.C.「最大で半径500mにいる人間なら、その存在を察知し対象にできる」

 ルル「奴の能力は暴走している、と言ったな」
    「半径500m内の人間の考えが全て聞こえてるのか?」

 C.C.「いや……自分に向けられていない思考なら、20m程度だろう」
   「遠くを走る車の走行音が聞こえないのと同じ道理だ」

.
 ルル「なるほど……」


俺は、これまで得た情報を頭の中で整理する。
マオという男が今回の敵だ。奴は人の考えが読めるギアスの保持者だが、能力を行使
するには最低でも対象に500m以上近づかなければならない。20m以内の人間の思考は
無条件で聞こえてくる。恐るべきは、いま考えていることだけでなく記憶も読めることだな。

基本戦略は、奴に近づかずに対処する……狙撃や遠隔爆破が主体になる。
あるいは、完全な包囲陣で圧殺だ。だが、こいつはマオを殺して欲しくないらしい……


 C.C.「……お前も、私を恨むか?」

 ルル「ん……?」

.
C.C.のつぶやきに、俺は顔を上げる。
……彼女は、憂いをおびた目を伏せていた。その言葉にはわずかに、自嘲とも思える
響きを含んでいることに気付いた。


 C.C.「いずれは暴走するかもしれない"力"を与えられたことを……」
    「ルルーシュ、私を恨んでもいいのだぞ?」

 ルル「……」

 C.C.「だが、マオを殺すのは勘弁してやってほしい……」
    「あの子は……ちょっと、幼いだけなんだ……」

.
 ルル「……フッ、そんなにマオが大事か……?」
    「なぜ、マオの元を去った?」

 C.C.「…………言っただろう、マオが契約を」

 ルル「違うな、それは嘘だ」
    「契約が理由なら、暴走した時点で捨てているだろう?」
    「なぜだ?」

 C.C.「……そんなこと、聞く必要ないだろう」

 ルル「意外なんだよ……」
    「お前が、その人形とピザの他に執着するものがある、ということがな」ニヤッ

 C.C.「下品な男だ……」

.
あるいは、この女の弱点とでも言えるモノが、初めて把握できた。
確かに、マオを始末するのは少し惜しい気がしてきた……という程度の冗談が頭に
思い浮かぶほどには余裕もできた。


 ルル「……恨んでなどいないさ」
    「むしろ、感謝している」

 C.C.「え?」

 ルル「お前がギアスを与えてくれなければ、俺は今でも、ブリタニアへの怒りを」
    「内心で燃やすだけの、"頭でっかちの童貞"のままでいただろう」

 C.C.「……」

.
 ルル「行動こそが世界を変えうる……そう分かっていても、きっかけが掴めなかった」
    「……お前が、きっかけを与えてくれたんだ」

 C.C.「……」

 ルル「マオとかいう奴はお前を連れ戻したいのかもしれんが……」
    「俺から離れることは許さない、お前は、すでに俺のものだ」

 C.C.「……口説いているつもりか?」

 ルル「口説く?フッ、そんな面倒臭いことを俺がすると思うか?」
    「そんな暇があるならギアスをかける」

.
 C.C.「私には、ギアスは効かないぞ……」ニヤ
    「いいだろう、契約もあることだしな……お前に口説かれてやる」

 ルル「……フン」
    「先日から検討中の、中華連邦行きの日程は近日中に決まる、それまでに」
    「準備をしておけよ……俺はクラブハウスに戻る」

 C.C.「マオはどうするんだ?」

 ルル「よそ者が、いつまでも隠れおおせることができる街ではない……」
    「今や、トウキョウは騎士団の庭だよ」ニヤリ


   ────── 続く

.
彡 ⌒ ミ  短めですがくぅ疲です。 
(´・ω・`)  進行遅くて申し訳ないです……

おつです!

ロボット三人組バグッてますね…

乙!
もう最後の展開まで考えてるの??

>>151
おつありです!

>>152
ジェットストリームアタックって感じですね!

>>153
ぼんやりと考えてる、くらいです!

こうやってみるとマオってすげー頭よく見える

>>155
いわば心理TASさんですね!

.
彡 ⌒ ミ  申し訳ありません、脳みそ充電のため、今週木曜はお休みとさせていただきます。
(´;ω;`)  より良いSSをご提供できるよう奮闘いたします、何卒ご了承下さい。

来週がんばってね!

>>158
お心遣い恐縮です!脱毛が加速しそうです!

.
■租界 とある病院 ─────

 カレン(……退屈だわ……)
     (藤堂さんは、めっちゃ眠ってるし……)チラッ

 藤堂「……」Zzz…


入院して2日後……わたしは、ヒマで死にそうな気分になっていた。

自宅なら、退屈な時はアレイで筋トレしたりするんだけど、ここじゃ何もできないし、
したら怒られる。さっき、ベッドの上で腹筋やってたら看護婦が泡食って止めた。
「こんなに元気なけが人は見たことない」って呆れてたな……

.
 カレン(……というか、ケガだって大したことないし、)
     (打ち身でちょっと痛いくらいだし……なんか、もういいでしょ)
     (自主的に退院しちゃおうっと……)


隣で眠ってる藤堂さんの目を覚まさないように、わたしはベッドの傍らに置いてあった
バッグから騎士団の制服をそろそろと取り出すと、ふとんの中で器用に着替える。
腕や足に痛みが走るけど、こんなもん動いてりゃ治るし、うん。

……制服を身につけると、気力が充実してくる。
ベッドでぼんやりとしてるより、とにかく動くのが一番の薬だわ、やっぱり。
忍び足でベッドを抜け出たわたしは、部屋を出る前に眠る藤堂さんに軽く一礼をする。

.
 カレン(……それじゃ、藤堂さん、お先に!) 

 藤堂「千葉たちによろしくな」

 カレン「!?!?」


いつの間にか藤堂さんは、薄目を開けてわたしを見ていた。
制服まで着ているわたしの姿に、やや呆れ顔でつぶやく。


 藤堂「……紅月君、本当に身体は大丈夫なのか?」

 カレン「は、はい、問題ありません!」

.
 藤堂「慌てて戻っても、今は我々のナイトメアもメンテナンス中だそ?」

 カレン「わたし、やっぱ動いてないとダメみたいで……」
     「ほんとに動けないんじゃない限り、何かしていたいんです……」エヘヘ

 藤堂「それが君の性格か……覚えておこう」フゥ…
    「今は喫緊の作戦もないようだし、私はもう2・3日静養するつもりだ」
    「ゼロや千葉たちにはそう伝えておいてくれ」

 カレン「はい!」

 藤堂「若いというのは、羨ましいものだな……」フッ

.
■ゲットー 騎士団トレーラー内 ─────

 ゼロ「ふむ……そうか……引き続き、頼む」ピッ

 C.C.「見つからないのか?」

 ゼロ「ああ、少し安易に考えていたかもしれん……」


C.C.からマオについての情報を得て、数日が経過した。
俺は騎士団の連中を使い、マオが潜む可能性のある地区で捜索を行ったが、いまだに
網にかかってこない……

.
 ゼロ「人気のない場所で潜伏していると思っていたが、」
    「そういう場所に捜索の手が及べば奴には事前に察知できる」

 C.C.「そういうことだな」

 ゼロ「……厄介な相手だ……」

 C.C.「珍しいな、お前が弱音を吐くとは」

 ゼロ「……フン」

.
と、そこへドアをノックする音が鳴った。


 カレン「紅月カレン、只今復帰しました!」

 ゼロ「なに?カレンだと?」


ドアを開くと、そこには制服姿のカレンが立っていた。
彼女は少し恥ずかしそうに、はにかんでいる。

.
 ゼロ「どうした?もう病院を出てきたのか?」

 カレン「えへ……病院はどうも退屈で……」

 ゼロ「……身体は問題ないか?」

 カレン「はい、動いてる方が治りも早いくらいです!」

 ゼロ「それならいいが……」フゥ

 C.C.「お前はいつも、元気いっぱいで羨ましいよ」ニヤ

 カレン「……何よ、文句あるの?」

.
 C.C.「悪気はない……」
   「……子供はすべからく元気であるべきだと思っているだけだ」

 カレン「子供ぉ!?」カチン
     「あんたもわたしと大して違わない年でしょ?」

 ゼロ「カレン!戻ってくるなりケンカをするんじゃない!」


……先日のデート以来、カレンと俺の関係と同様、C.C.との間も近くなったのはいいが、
二人は事あるたびに口ゲンカをするようになった。両者とも気が強い上に、C.C.はカレンの
反応を面白がってるフシがある。
毎回こうして、俺が仲裁をするわけだ。面倒な……

.
 カレン「はい……でも今の、C.C.が悪くないですか?」

 C.C.「私が何か間違ったことを言ったか?」

 ゼロ「C.C.もこれ以上煽るな!」

 C.C.「はいはい」

 カレン「……フン!」

 ゼロ「フウ……」
    「……カレン、体調に問題ないなら、早速任務がある」

 カレン「何でしょうか?」

.
俺はカレンに、マオ捜索の任務の説明をした。
奴の風貌と、潜伏していそうな場所のリスト、そして通常の捜索とは異なるポイント……


 ゼロ「奴は、自分を探している者の存在を敏感に察知する」

 カレン「……勘が鋭い、ってことですか?」

 ゼロ「そうだ、だから本人を見つけるのはまず無理だろう」
    「奴の移動経路が把握できればいい」

 カレン「ふーん……聞き込みが主体ってことですね?」

.
 ゼロ「そうだな」
    「何らかの情報が入り次第、逐一連絡をくれ」

 カレン「わかりました、では!」カツカツ、シュイーン


軽く敬礼をし、足早に部屋を後にしたカレン。
その後ろ姿を見送った俺は、仮面の中で横目でC.C.を睨む。


 ゼロ「……"子供"はないだろう?」

 C.C.「あまりにかわいらしいのでな、つい言ってしまった」クスクス

.
 ゼロ「あまり迂闊なことを言うな」
    「お前は俺の秘書ということにしてるんだからな」

 C.C.「気を付けるよ」


……カレンも加わった捜索隊だが、その日も芳しい成果は得られなかった。
奴の目的からすれば俺に接触を図ってくるはずなのだが、今のところは
その気配もない。一体何をしているのか……

.
■租界内 シャーリー病室 ─────

……今日も、マオはシャーリーの病室を訪れた。
誰にも気づかれないように、人の目をかいくぐりながら……

ルルーシュを破滅させるための"下準備"に手間取っていたが、今日ようやっとそれが
整った。後は、シャーリーを連れ出し、決定打を与え、ルルーシュをおびき出す予定だ。
ここまで手間をかけたのは、自分の方がルルーシュよりも"格上"だということを
C.C.に認めさせたかったからだ。


 マオ(そうすれば、C.C.も僕の下に帰ってくる……)
    (僕には勝てない上にケイヤクも果たせない男なんて、彼女も願い下げだろう)
    (そして結局、僕しかいないってことを認めるはずだ)

.
マオは内心、浮足立った気分で病室を覗いた。
シャーリーは、向こうを向いた形でベッドの上に横たわっていた。


 マオ「シャーリー……準備ができたよ!」

 シャーリー「!」ピク


マオの声に、シャーリーはゆっくりと顔を向ける。
ここ数日のマオの執拗なマインドコントロールにより、彼女はマオしか頼れるものがいない
という思い込みを抱くに至った。ここでルルーシュがゼロであるという証拠を見せることで、
それは決定的になる。

.
 マオ「さあ、出よう……僕が案内するよ」

 シャーリー「出る……?」

 マオ「そうだ、君が赦されるための旅に出よう」
    「全てが君の前に晒される、君は全てを知り、そして赦しを得るんだ」
    「さあ、靴を履いて……」

 シャーリー「……」

.
彼女は、ぼんやりとした様子で、ベッドから足を下ろすと靴を履いた。
上着かけにかけてあった厚手のコートを羽織ると、大人しくマオの傍に歩いてくる。

 マオ「いい子だ……」ニヤ
    「ちょっと待って、まだ人がいる……まだ近くにいる……」
    「……今だ、行こう!」

.
■クラブハウス ルルーシュ自室 ─────

 シャーリー(……ここ、ルルの部屋だ……)

 マオ「そう、ここに証拠があるのさ……」
    「それを今から、君に見せてあげるよ」


わたしは、ルルの部屋の前に立っていた。マオさんは笑っている。マオさんは扉を開いた。
わたしは、ルルの部屋の中に入った。ここはルルの部屋の中だ。


 マオ「しばらくはここには誰も来ない」
    「安心していいよ」

.
わたしは、安心しなきゃいけない。
わたしは、目を瞑った。わたしは、わたしの心臓の音を聞く。


 マオ「そこの、彼のベッドの下……見てごらん?」ニヤ


わたしは、目を開いた。わたしは、ルルのベッドの下を見た。
ベッドの下には大きなトランクがあった。わたしは、トランクを引っ張り出した。


 マオ「これが、彼がゼロだという証拠さ」
    「そこをどいて、僕が開けてみせるよ」

.
マオさんはトランクのナンバーロックをくるくると回した。
カチリと音が鳴ってトランクが開いた。わたしは、トランクの中を見た。
何かの衣装と銃みたいなものが入っていた。


 マオ「シャーリー、見覚えがないかい……?」


わたしは、見覚えがあるはずだ。わたしは、その衣装を見つめた。
真っ黒な仮面と真っ黒なマント。わたしは、見覚えがあるはずだ……


 マオ「君は、あの時に見ているよ」
    「カワグチ湖で……」

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

「我々は……黒の騎士団だ!」バッ!!

~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 シャーリー「!!!」


思い出した、そうだ思い出したこれはゼロの服だ、TVでも見た
ことがあるゼロの服だ、お父さんを殺したゼロの服だ、わたしか
らお父さんを奪ったゼロの服だ、テロリストで人殺しのゼロの服
だ、みんなを裏切りわたしを苦しめているゼロの

.
 マオ「落ち着いて考えてみよう、」
    「どうしてこれが、彼の部屋にあるのかな?」ニヤリ


ゼロの服がどうしてここにあるんだろう、どうしてゼロの服がここ
にあるのか、それはどうしてなんだろう、ゼロの服はなぜここに
あるのか、その理由は一体何だろう、ゼロの服がここにあるの
はなぜなのか、なぜここに、ゼロの服が


 マオ「ここはルルーシュの部屋だ、他に誰もいない」
    「ここにあるものは全て、彼の物だよね?」
    「ということは……」

.
そうだ、ここはルルの部屋でここにはルルの物しかないのだか
らこれはルルの物だ、ということはこのゼロの服はルルの物だ
からこれはルルの物なんだ、じゃあこれはルルが使っている物
でつまりルルは、ゼロなんだ!ゼロだったんだ!ルルがゼロだ
ったんだ!やっぱりマオさんの言っていたことは本当だった!
ルルはゼロだった!ルルは……ルルは……!


~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~


 マオ(随分と手間取ったけど、これでスイッチが入った)ニヤリ
    (これからいよいよ、お楽しみの始まりだ……!)

.
ショックで震えているシャーリーを放っておいて、僕はルルーシュのPCの電源を入れた。
ログインのパスワードを要求されるが、それはとっくに彼から"聞いて"いる。
彼のPCの中は、まさに証拠の宝庫だった……!


 マオ(ふふ……この情報を、全て外部に公開してやる……)
    (これを送られた政庁は送信元を突き止めようとする、するとここ、)
    (ルルーシュの部屋に行きつく……)


僕は、PC内の様々なファイルを探っては、当局が動き出しそうなデータをピックアップ
してゆく。メールアカウントも、ちゃんと彼のものを使ってやろう……

.
 マオ(ルルーシュ、君は数時間後には重要参考人として当局に連行されるんだ)
    (ははっ、その運命に絶望するがいい…………ん?)


と、突如画面の反応が止まった。どのキーを叩いても反応しない。
わずかの後、画面に「LOCK」という文字が表示された。


 マオ(!!しまった────)


まさか、さらに防御を施していたのか!?
PCの画面に、新たなウィンドウが表示される。そこには……ルルーシュが写っていた。
彼は口元に嗤いを浮かべていた。

.
 ルル「はじめまして……と言うべきかな?マオ?」

 マオ「挨拶は抜きでいいみたいだな」
    「まさか……僕がお前のPCを操作することを読んでいたとはね……」

 ルル「C.C.から話は聞いている」
    「お前の目的を考えれば、俺のPCがターゲットになることは容易に想像がつく」

 マオ「けど、いつ来るかなんて……」

 ルル「そのPCはな、もともと俺にしか使えないんだよ」
    「正確には、俺が常に持っている小型端末以外を経由して通信をした瞬間、」
    「ロックがかかり小型端末に警報が届く仕組みになっている」

.
 マオ「なるほど……」

 ルル「勿論、中のデータの抹消もこちらから自由自在だ」
    「そうして、お前の居場所もこうして俺に知れてしまった」
    「お前に残された道は、中華連邦へ逃げ帰るくらいしかないぞ?」ニヤ


こいつの思考は全く感じられない……近くにいないんだ。
どうやら、僕の能力についてC.C.は色々と喋ったみたいだな。
いけないなぁ、C.C.……全てが終わった後で、おしおきしてあげるよ……


 マオ「ふ……ふふ……この泥棒猫め……」

.
 ルル「お前が今いる学園も、じきに騎士団の連中が包囲する」
    「お前に逃げ道はない」

 マオ「……」

 ルル「もし、中華連邦へ帰り、二度と俺たちに関わらない、俺たちの事を誰にも」
    「喋らないと約束できるなら、命だけは助けてやる」
    「もっとも、喋らないという約束は"強制的に"させてもらうがな」

 マオ「……随分と余裕じゃないか……」
    「これを見ても、まだ余裕でいられるのかな……?」

 ルル「ん?」

.
僕は、シャーリーの腕をつかんでPCのカメラの前に立たせた。
それを見た瞬間、ルルーシュの顔がこわばる。


 ルル「シ……シャーリー!?」ギョッ!!

 マオ「ふふ……彼女も、真相を知りたがっていたからね」
    「見せてあげたのさ……君が、ゼロだという証拠をね……」ニヤリ

 ルル「きっ……貴様……ッ!」

 マオ「彼女は今、とても苦しんでいる……」
    「人殺しの君が好きでたまらないという罪悪感に押し潰されそうに……」

.
 ルル「貴様がそう仕組んだんだろうッ!」

 マオ「僕のせいにされちゃ、かなわないなあ?」
    「あの災害は、お前が起こしたんだろう……?」
    「お前が、殺したんだ……彼女の父親を、ね」

 ルル「……シャーリーを解放しろ」ギリッ…

 マオ「はははっ、さっきまでの優越感はどうしたのかな?」
    「人にお願いする時、そういう態度をとれって教わったのかなぁ?」

 ルル「俺にだけ復讐すればいいだろうッ!」

.
 マオ「そうはいかない」
    「僕も、彼女も、決着をつけたいって考えてるのさ」

 ルル「決着だと?」

 マオ「そう、決着だよ……」
    「ここに待ち合わせ場所のメモを残しておく、お前一人で来るんだ」
    「誰か助けを呼べば、その時点で全てが終わると思え」

 ルル「待て……!」

 マオ「再見」

.
僕はそう言って、PCの電源ケーブルを乱暴に引っこ抜いた。
奴を社会的に破滅させる計画は破綻したけど、シャーリーはまだこちらの手の中だ。
思考が読める場所に奴をおびき出しさえすれば、後はこちらの思うがままだ……!


 マオ「シャーリー、もう少しで全部終わるよ?」ニヤリ

 シャーリー「……」プルプル…

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

……約1時間後、俺はクラブハウスの自室に戻っていた。
念のため、シャーリーが入院していた病院に人を送ったが、やはり彼女の姿はなかった。
映像に映った姿は、シャーリー本人だったと見ていいだろう。

先ほどのマオの言葉を考慮し、C.C.には事務所で待機しておくよう連絡をして俺一人で
戻ってきた。ドアの鍵は壊されていない……あらかじめ合鍵を作っておき、侵入したようだ。


 ルル(ぬかった……)
    (病院から連れ出すのは容易ではないという思い込みを突かれた形だ……)
    (それに、彼女が唯々諾々になるとは思ってもみなかった……!)

.
マオという敵に対する見通しの甘さが招いた今回の事態。
当然反省が必要だが、今はそれどころではない。

薄暗い部屋の中、ベッドの下を探ったが、あるはずの衣装ケースがなかった。
重要な証拠になるものだ、奴が奪っていたのだろう。
PCのキーボードの上にはメモが載っていた。メモにはただ一言、


 「ナリタ ケーブルカー」


とだけ書かれていた。

.
 ルル(なるほど……)
    (今日は平日、観光客もいない上に、先日の騒動でナリタに来る者は殆どいない)
    (ケーブルカーで山頂まで上がれば、俺たち以外の人間が近寄ってくるのも)
    (奴には簡単に察知できる、か……)


そして何よりも、俺にとっても、シャーリーにとっても因縁の場所だ。
奴が言った「決着」という言葉とこのシチュエーションを合わせて考えれば……


 ルル(シャーリーに俺を殺させる気か……!)ギリッ…!

.
……最も確実な対処方法は、二人とも殺すことだ。
そうすれば、俺がゼロであるという秘密は守られ、マオという障害は取り除かれる。
俺の今後の戦略にもさほどの影響を与えずに済む……だが、シャーリーは全く報いのない
結末を迎えることになる。ただ俺と知り合ったというだけの理由で。

それ以前に……俺に、シャーリーが殺せるだろうか……


 ルル(……クロヴィスは、撃てた)
    (揺るぎない決意の証として、そして俺を踏み躙ったブリタニアへの反逆の証として)
    (だが、シャーリーは……)…グッ

.
彼女の、弾けるような明るい笑顔が脳裏に浮かんだ。
俺が、彼女の父親を巻き込みさえしなければ、今でもあの笑顔を見せてくれたはずだ。
彼女は、クロヴィスとは違う……俺が、変えてしまったのだ。

その責任を、俺は取らねばならない。
そう……奴に言われるまでもない。


 ルル(……決着を、つけてやるッ!)

.
■租界 貿易商事務所 ─────

ナリタ山までの移動時間を考慮すると、現地に到着するのは夕暮れになりそうだ。
俺は、予備の銃を手に入れるため、急いで事務所へ戻る。
事務所のドアを開くと、C.C.はソファで横になっていた。
彼女は俺の素振りに、緊急の状況が起きたことを悟ったようだ。


 C.C.「事務所で待つように言ったから、そうしたが……何事だ?」

 ルル「……マオがシャーリーをさらった」カツカツ

 C.C.「なに?」

.
 ルル「それだけじゃない、クラブハウスの俺の部屋を漁っていった」
    「俺がゼロである証拠を見つけ、持ち去った」ガタッ
    「ナリタのケーブルカ乗り場に一人で来いというメッセージまで残して、な」ガサガサ


俺はC.C.に状況を説明しながら、机の引き出しを開き隠していた銃を探す。
最近は事務処理ばかりしていたので、銃は書類の奥に隠れてしまっていた。


 C.C.「……まずいな」

 ルル「ああ、事態は悪化の一途だ……くそッ、銃は……あった!」ガタガタ
    「俺はナリタに行ってくる、万一の場合に備え、騎士団の連中を待機させてくれ」

.
 C.C.「待て、私も行こう」

 ルル「一人で来いと言われてるんだぞ?」
    「マオの能力なら、どんなに隠れていてもバレてしまうだろうが」
    「お前は騎士団に……」

 C.C.「言っただろう、私にはギアスが効かない、と」

 ルル「なに?」

 C.C.「マオには、私の存在が察知できない」

.
 ルル「……それは、確かか?」

 C.C.「間違いない」

 ルル「……戦術が増えたぞ、そういうことは早く言え」

 C.C.「だからこのあいだ言ったじゃないか」

 ルル「待て、いま考えている…………」
    「……C.C.、お前が必要だ、一緒に来てくれ」

 C.C.「いいだろう」

■ナリタ行き列車内 ─────

俺とC.C.は、ナリタ行きの列車に飛び乗った。

目的地への移動途中に……街中で、あるいは閉鎖空間となる列車内でマオが仕掛けてくる
可能性も考えたが、C.C.の能力(近くにいる契約者の存在を感じることができる)では、
近くには存在しないということだった。目的地で待ち構えていると見てよいだろう。

C.C.と向かい合わせで座り、俺は車窓を流れてゆく夕刻の風景を眺めながら、今後の事を
考えていた。そんな俺の横顔を見つめていたC.C.が、おもむろに口を開く。

.
 C.C.「……もし、」

 ルル「……なんだ?」

 C.C.「シャーリーとやらがお前の秘密を知っていたら……」
    「お前は、どうするつもりだ?」

 ルル「……」

 C.C.「始末できるのか?」

 ルル「!!」キッ

.
俺は、俺の葛藤を責める風なC.C.の言葉に、思わず強く睨みつけた。
だが彼女は、責める気はなくただ単純に、合理的な解答を確認しただけのようだった。
……いつもの俺ならば、選ぶであろう解答の、確認だ。


 C.C.「……本当に失いたくないものは、遠ざけておくものだ」

 ルル「その"失いたくないもの"が寄ってきたお前はどうなんだ?」

 C.C.「……」プイ

 ルル「答えないのか」
    「お前こそ、契約が失効したなら始末するべきじゃなかったのか?」

.
 C.C.「……」

 ルル「先日は俺の事を好き放題言ってくれたが……」
    「お前も俺同様に、ぬるいものだな」フン

 C.C.「…………」


俺の挑発を、C.C.は窓の外を眺めることで無視した。
小さくため息をついた俺は、C.C.と同様に窓の外に目をやる。

マオとまともに対峙すれば、俺に勝ち目はない。俺が抱いた策略は全てマオに見抜かれる。
今の俺に残された残り少ない手札は、C.C.という存在ともうひとつ、記憶について、だ。
俺の推測どおりなら、奴は……

.
 C.C.「…………誰でも……」

 ルル「ん?」

 C.C.「……」


C.C.は、窓の外から目を離さず、そう呟いたきり黙りこむ。
何を言おうとしたのか……おぼろげながら、俺は理解していた。


 ルル「……厄介なものだ、過去というしがらみ、現在というしがらみ……」

 C.C.「……そうだな」

.
 ルル「だが、俺は乗り越えるぞ」

 C.C.「……」

 ルル「もう腹は決めている」

 C.C.「なに?」


C.C.は、その言葉に振り向いた。
琥珀色の瞳が、俺の顔を静かに見つめる。


 C.C.「そうか……」

.
 ルル「ああ、そうだ」
    「だから、お前も腹を決めろ」

 C.C.「……」ジッ…


俺も、C.C.の方に振り向き、正面から奴を見据えた。
言葉もなく、音もなく、二人の間で静かな火花が散る。
それは、随分と長い間のようでいて……しかし、ほんの瞬きの間の出来事だっただろう。


 C.C.「時間が……」

 ルル「十分あったはずだ」

 C.C.「……そうだな……」

.
彡 ⌒ ミ  ひと段落であります!
(´・ω・`)  続きは、近日中に公開するよう努力いたします!

おつ!

ハゲ乙!

>>209
おつありであります!
>>210
ハゲ増し感謝であります!

楽しみにしてるよー

>>212
ありがとうございます!産毛まで抜けそうです!

.
彡 ⌒ ミ  申し訳ありません、進行、詰まりまくりです!
(´;ω;`)  代わりに、ネタ系をひとつご用意いたしました!

ルルーシュ「世界よ…我に従え!」スザク「」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1388055764/)

長期連載ものってむずかしいんだね

勢いで書いてみたら?

気になるから最後まで書いてね

>>215
私の能力不足が大きな要因です!申し訳ありません!
>>216
勢い欲しいです!テンション上げてかないと!
>>217
あきらめません結末までは!よろしくお願いいたします!

.
⌒ ミ  小ネタ終わればこちらも再開します!
ω;`)  脱毛フルパワーです!ごめんなさい!

.
■ナリタ山ふもと ケーブルカー駅 ─────

……夕焼けの空の下。

俺は、マオが指定したケーブルカーの駅に足を踏み入れた。
係員がいるかと思っていたが、構内には全く人影がないようだ。
先日の騒動以降、閉鎖されていたのかもしれない。

構内でしばらく周囲を見回した俺は、ベンチに腰かけた男がこちらを見ているのを
見つけた。先ほど、モニタ越しに見た風貌そのままの男だ……

俺の姿をずっと見ていたらしいその男……マオは、愉快そうに手をパチパチと
叩きながら立ち上がる。

.
 マオ「やあ、ルルーシュ……言われた通り、一人で来たんだねぇ……」パチパチ
    「改めて自己紹介をしようか?」

 ルル「ごたくはいい!」
    「シャーリーはどこだ!?」

 マオ「ふふ……焦ってるねえ……」
    「君のその焦燥感、手に取るように感じられるよ……」
    「気持ちいいなあ……」ニヤリ

 ルル「貴様……」キッ

 マオ「……僕の目的は、もうわかってるよね?」
    「そう……C.C.を返してもらいたいのさ」

.
マオは、本題を切り出してきた。
奴の顔から、うすら笑いが消えた。


 ルル「……」

 マオ「僕にとっては、家族以上の存在なんだよ……」
    「彼女は、僕と一緒にいるべきなん」

 ルル「……C.C.は、そう思ってなさそうだがな」フッ

 マオ「だ……!!」ピク
   「……お前に、彼女の何がわかるというんだ?」

.
 ルル「俺にもあいつのことはわからん」
    「しかし、C.C.はお前の元を離れた、という事実こそが重要だろう」

 マオ「クッ……!」

 ルル「お前がいうように大切な存在なら、お前の元を離れるわけがない」
    「お前は……C.C.に、捨てられたのさ」

 マオ「……違う」

 ルル「それに、俺は奴が離れたがっているのを無理に引き留めてるわけじゃない」
    「C.C.は自分の意思で、俺の傍にいるんだがな」

.
 マオ「ちがう!ケイヤクで縛ってるからじゃないか!」
    「お前がケイヤクをしてるから、C.C.は……」

 ルル「その"契約"は、奴から持ちかけたものだ……」
    「どう説明する?お前の意見と、現実との矛盾を?」ジッ…

 マオ「……くそ……!」


フッ……推測通りだった、こいつは、論理的思考能力が貧弱だ。
人の思考が読めるのが仇となり、自分で論理を組み立てることが未だにできない。
ガキ特有の、歪んだ帰納法でしか物事をとらえられないようだな……

.
 マオ「……何がだ……何が、論理だ!」キッ
    「お前が考えていることは全部わかって」


フフ……そうさ、今の俺の思考を読んでいることも百も承知だ。
しかし、心が読めたとて、強固な論理も確固たる現実も、全く覆らない。
それがお前の能力の限界だ。

C.C.がお前の元を離れ、俺と契約をした。
それが示す事実はただ一つ……お前は、見放されたんだ。


 マオ「だっ……黙れ、だまれえっ!!」
    「……忘れてるのか?シャーリーは、僕の手の内にあるんだぞ?」

.
 ルル「……」ジロ

 マオ「ふふっ、そうさ……切り札がこっちにあるうちは、お前は何もできない」
    「それこそが、今のお前にとっての現実だよ!ハハハッ……!」

 ルル「……お前はC.C.を取り戻したい、俺はシャーリーを取り戻したい」
    「互いに条件は揃っているが」

 マオ「嘘をついた!」ニヤ
    「お前は、C.C.を手放す気はないだろう?」

 ルル「……さあ、どうだろうな」

.
 マオ「嘘だ!お前は、彼女が自分のものだと言っただろう!」
    「僕はお前の心をずっと見ていたから知ってるんだよ!」

 ルル「……なら、どうしたいんだ?」

 マオ「……ケーブルカーに乗れ」キッ
    「彼女にとって、どちらが相応しい男か……」
    「山の上で、決着をつけようじゃないか」

 ルル「いいだろう……」カツカツ

.
■ケーブルカー内 ─────

俺たちが乗り込んだケーブルカーは、自動運転によりゆっくりと山頂の駅へ向けて動き出す。
時折、ごとん、ごとんと緩やかに揺れる車内で、マオはまるで俺の顔を"読む"ように、
じっと見つめながら愉快そうに俺に話しかける。


 マオ「なるほどね……そう推測したんだ?」
    「いいよ、銃は持ったままで……山頂までに、お前を殺す気はない」ニヤニヤ

 ルル「……」

 マオ「そうか……やはりC.C.は、僕の事を色々教えたんだな」
    「彼女の言ったことに嘘はないよ、僕のギアスはその通りの能力だ」

.
 ルル「……」

 マオ「そう、わかったところで、お前には何もすることができない」ニヤ
    「なにせ、お前が考えることは全て僕にもわかってしまう……」
    「僕を罠にはめることは無理だってこと」

 ルル「…………」

 マオ「ははは、負けず嫌いだなあ、君は」
    「同時に複数のことを考えても、君ができる選択はひとつしかないし、」
    「選択した瞬間に僕にはわかるんだ」

 ルル「……」チッ

.
 マオ「そうそう、大人しくいう事を聞いているべきだと思うよお?」
    「やっと正しい答えが見えたようだねえ……」パチパチ

 ルル「……」

 マオ「……なに?」ピク


突如、マオの表情がこわばり、拍手がやんだ。
俺は確証を得られたことで、ほくそ笑んでみせる。

.
 ルル(フッ、やはりそうか……記憶の"読み"は思考ほどではないようだな)
    (強く印象に残っている記憶しか読めないのか)

 マオ「…………ほんとに、君はなんて奴だ……」
    「びっくりしたよ、僕にカマをかけ、その反応を見ようなんて……」ヒクッ…


思考を読むことと、記憶を読むことはレベルが違う、と俺は推測していた。
おそらく、記憶の場合は本人が"覚えていること"に限定されるはず。
つまり、忘れたことまでは読めない……いや、読めるわけがないのだ。

.
人間の脳は、コンピュータと違う。

無意識に押し込めた記憶ならまだしも、覚える必要のない記憶はどんどん忘れる。
だから、例えば俺の1年前の朝食が何だったのかは、俺が思い出せないのと同様に
マオにもわからないだろう、と推測していた。

俺はそのことを唐突に、頭の中でマオに問いかけ、その反応を見て確証を得たのだ。
マオの表情から、うすら笑いが消えた。

.
 マオ「それは、C.C.も知らなかったことだ……そこに気付くなんてね……」

 ルル「……」

 マオ「そう、だからと言って状況は何も変わっちゃいない」
    「君が忘れたことなら、僕が知らなくても問題はないからね」
    「君は、僕の言う通りにするしかないのさ……」

 ルル「……」

.
■ナリタ山頂 ケーブルカー駅 ─────

……やがてケーブルカーは、山頂の駅に到着した。俺は、マオに促されるまま、
駅に降り立つ。ふもとの駅と同様、ここにも人気は全くなかった。
冬の空は、じきに夜の闇に支配されようとしている。

だが、ここにもシャーリーの姿が見当たらないことに、俺は軽い苛立ちを覚えた。


 ルル「……マオ、どういうことだ?」

 マオ「シャーリーかい?」
    「どこにいるんだろうねえ……」ニヤニヤ

.
 ルル「貴様ッ!」

 マオ「ハハッ、うそうそ!彼女もここにいるよ!」
    「シャーリー……出ておいで!」


マオは、ケーブルカーの操作室に向かって声を上げる。
と、部屋の扉がゆっくりと開き、シャーリーが姿を現した。
俺たちの方へ向かって、一歩一歩あるいてくる。


 ルル「シャーリー……」ホッ…

 シャーリー「……」トッ、トッ

.
しかし俺は、彼女の手に握られている物の違和感に気付く。
シャーリーは……その手に、見覚えのある銃を握っていた。


 ルル「……おい、それは……」

 シャーリー「うん、ゼロの銃だよ……」


彼女はそう言うと、その場に立ち止まって俺の顔を見た。
落ちくぼんだ彼女の眼孔……わずか数日見なかっただけなのに、
あまりに変わっている彼女の様相に、俺は言葉を失った。

.
 ルル「……!」

 シャーリー「ルル……」スッ…


彼女はゆっくりと腕を上げ、俺へ向けて銃を構えた。


 ルル「シャーリー……!」

 シャーリー「わたし、ね……全部わかっちゃった……」

 ルル「……何がわかったんだ?」

.
 シャーリー「ルルが、ゼロだっていうことも……」
       「わたしのお父さんを殺したっていうことも……」

 ルル「……」グッ…

 マオ「……」ニヤニヤ


……何を言うべきか?どうすれば彼女を思いとどまらせることができるか?
いや、どう言うべきだろうか……彼女への、謝罪を……


 ルル「……その事は、後で全部話すよ、」
    「シャーリー、銃を下ろすんだ……」

.
 シャーリー「話しても無駄だよ……わたし、もう……」

 ルル「無駄じゃない、何もかも話す……」
    「だからシャーリー、俺の話を聞いてくれ……!」

 シャーリー「……わたし、赦されないから……」

 ルル「えっ?」


許さない、じゃなくゆるされないと言った彼女の言葉に、俺は引っかかる。
彼女が一体、何を許されないと言うんだ?

.
 マオ「……シャーリー、どうする!」
    「このまま彼の優しさに身を任せるかい?」

 シャーリー「!!」ビク

 マオ「求めてたんだろう、彼を……」
    「そうやって、まだ過ちを繰り返すのか?」ニヤリ

 ルル(こいつは、何を言い出すんだ?)
    (なぜ、そんなことを……)

 シャーリー「……うっ……」

.
マオの言葉を聞いたシャーリーは、突如身体を小刻みに震わせ始める。
彼女は、震える手で銃の安全装置を外した。


 シャーリー「……赦されないから……」プル…

 ルル「シャーリー!?」

 シャーリー「終わらせなきゃ……」プル…プル…
        「ルル、いっしょに……」

 ルル「……」ゴクッ

.
彼女は、震えながら銃を構えた。

だが……彼女の態度から垣間見えているのは、俺を撃ちたいのではなく、
撃ちたくないという気持ちだ……これはどういうことだ!?
なら、なぜ銃を構えているのか?"ゆるし"という意味は?

彼女の言葉は、謝罪ではなく、贖いのニュアンスだ……そうであるならば、
それは一体、誰に対しての贖いなのか……まさか、父親か?
父親に対しての贖いとして、俺を撃つ?つまり……そうか、そういうことか!?

.
 ルル「……わかった、シャーリー……」スッ…チャッ

 シャーリー「……!」

 マオ「……へええ?」ニヤリ


俺は、懐から銃を取り出すと、銃口を彼女へ向けた。
彼女は、おそらく俺に銃口を向けられる事態など今まで考えたこともなかっただろう。
彼女の身体の震えが、止まった。

.
 ルル「シャーリー、俺を撃て」

 シャーリー「……」

 ルル「俺も君を撃つ……しかし、最初の一発は必ず君に撃たせる」
    「それが、君に対する……俺の謝罪だ」

 マオ「ふうん……面白いな、さすがルルーシュ君だ」
    「とっさの判断で、よくそんなことが」

 ルル「黙っていろ、マオ!」
    「お前が干渉する間などない、これは俺と彼女との問題だ!」

 マオ「……」ニヤニヤ

.
 ルル「シャーリー……君が撃てば、俺は必ず撃つ」
    「だから……絶対に、外すなよ?」ニコッ

 シャーリー「ルル……?」


俺は、微笑みながら自分の額に指を当て、ここを狙えと暗に告げる。
生気を失っていた彼女の瞳に、かすかに光が戻ってきたのを俺は見た。
と同時に、マオは俺の背後で、しまったという風に舌打ちをする。

.
 マオ「……シャーリー、撃て!」
    「どこを狙ったっていい、ルルーシュが死にさえすれば、君は」

 ルル「黙っていろ!」
    「……シャーリー、君が自分で決めろ!俺を撃て!」

 シャーリー「……ルル……」プル…

 マオ「いいから撃てよ!」
    「君の"贖い"の為に、僕がどれだけ手間をかけてきたと思ってるんだ!?」
    「赦されたくないのか!?永遠に苦しみ続けたいのか?」

 シャーリー「……マオさん……」プル…プル…

.
 ルル「俺を撃てば、赦される……なんて思うな、シャーリー!」
    「相手が許したと言わない限り、赦しなんて決して得られない!」

 シャーリー「!?」

 マオ「ルルーシュ、お前……ッ!?」

 ルル「君は、君のけじめのために撃てばいい」

 マオ「嘘をつけ!」
    「お前は今、頭の中で、シャーリーが撃てないだろうと予測をして……」

.
 ルル「予測じゃない……信じたんだ!」
    「それと同時に、そうでなくとも構わないという覚悟をした!」

 シャーリー「……!」

 ルル「シャーリー……お父さんのことは、済まなかった……」
    「言葉での謝罪などでは、到底足りないことはわかっている」
    「だから、俺の運命を君に委ねる……最初の一発は、君の権利だ」…ニコッ

 シャーリー「……」プル…プル…

.
 ルル「……だが、俺は黒の騎士団のリーダーだ、」
    「俺には、成さねばならないことがある……ナナリーのためにも……!」キッ…

 シャーリー「ナナリーちゃん……の?」

 マオ「(チッ!!)……シャーリー、撃て!」
    「こいつは、君に撃たせまいとして!」

 ルル「マオ……」クルッ
    (……お前、いま嘘をついたな?)ニッ

 マオ「!!」

.
振り向いて嘲笑った俺に、マオはショックを受けた様子だった。

そう……俺は今、本当に、撃たれてもいい覚悟で臨んでいた。
勝率の計算もしていない、彼女の行動に対する推測もしていない、
ただ、彼女の、俺への気持ちと、彼女への謝罪のために、全てを賭けた。

再びシャーリーの方を向いた俺は、微笑みながら言葉をつづける。


 ルル「撃っていいのは……撃たれる覚悟のある奴だけだ」
    「俺は、"撃っていい奴"なんだよ、シャーリー……」

 シャーリー「……」ブルブル…

.
彼女の身体は、押しとどめられない程に震えていた。
己が愛する男が彼女の父親を殺し、しかもそいつは己の額を指さしながら
自分を殺せと言う……それは、彼女のキャパシティを遥かに超えた状況だった。


 マオ「撃て!いいから撃てよおッ!」 

 ルル「……撃て、シャーリー!」キッ

 シャーリー「ルル……」…ブルッ!!
       「……ルルうぅ!!」…パン!!

.
俺の名を叫んだ彼女は、銃の引き金を引いた。
銃口から放たれた銃弾は、瞬きする間もなく俺の肩を打ち抜く。
瞬間、俺は肩に焼けるような痛みを覚えた。そのあまりの苦痛に、俺は銃を落とす。


 ルル「ぐう……ッ!」…ズザッ

 マオ「!!」

 シャーリー「……あ…………」

.
撃たれた箇所を抑えながらうずくまった俺を見て、彼女は小さな悲鳴を漏らす。
俺は、荒く息つぎをしながら、彼女に微笑んでみせた。


 ルル「ハアッ、ハアッ……よく撃った、シャーリー……それでいい」ニコッ

 シャーリー「ルル……わたし、わたし……!」

 マオ「どうした、こいつはまだ死んでないじゃないか!」
    「撃て!死ぬまで撃て!撃て、撃てよ!撃てっていうんだ!」

 シャーリー「……!」フラ…

 ルル「シャーリー!!」ダッ!!

.
その場に倒れ込みそうになったシャーリーに、俺は駆け寄る。
片腕で彼女を抱きかかえ、その瞳を覗き込んだ。
先ほどまでの、人形のように凍りついた瞳はすでに消え失せ、かよわいほどに
怯え震える彼女の瞳がそこにあった。


 シャーリー「……わたし、撃つの……?」

 ルル「ふふ……撃つわけがないだろう?」ニコッ

 シャーリー「ああ!……ルル!ごめんなさい、ルルぅ!」ギュッ…

 マオ「…………」

.
彼女は俺にしがみつき、何度も俺の名を叫び謝りながら、泣きじゃくった。
彼女が父親を失った、あの日のように……
俺は何も言わず、彼女が感情を爆発させるがままに任せた。

ふと、俺は背後に気配を感じる。
振り向くと、そこにはマオが蒼ざめた表情で、俺たちを睨みながら立っていた。
その手には、俺が先ほど取り落とした銃が握られていた。


 マオ「……反吐がでるよ、君たちには……」

 ルル「マオ……」…キッ

.
 マオ「せっかく償いをさせてあげようとしたのに……」
    「シャーリー、台無しだよ、全てが……」

 シャーリー「……」ビクッ

 マオ「もういいや、君たちの演劇には飽きたよ……」
    「君たちは、ここで死ね」チャッ

 ルル「……」

 マオ「ふふ、ルルーシュ、どうしたんだ、この事態も想定してたんじゃないのか?」
    「君には、最後の武器が残されてるじゃないか……お上手な、その口が……」
    「それを使って、いつものように、僕を言いくるめてみなよ」

.
 ルル「…………」ギリッ

 マオ「僕はどっちでも良かったのさ、君が彼女に撃たれようが、僕に撃たれようが」
    「君が死ぬまで悶え苦しめば、それで十分だったのさ」ニヤリ

 シャーリー「マオさん……?」

 マオ「話しかけるな!気持ち悪いんだよお前は!」
    「いつも自分のことばかり考えてッ!」

 シャーリー「ひっ!!」

.
 ルル「黙れ、貴様ッ!」 

 マオ「おや、いつものように"命令"かい?」ニヤ
    「でも無駄だよねえ……サングラスしてるからね、僕は」

 ルル「……ッ」

 マオ「ほら……もっと"命令"してごらんよ、ルルーシュ?」
    「銃を撃つな、とかね」…チャキッ


マオは、銃の安全装置を外す。照準は、狙いたがわず俺の額に定まっていた。
俺は、銃口の向こうで薄笑いを浮かべるマオを睨みつけた。
夜のとばりが降りつつある中、俺たちは最期の決着の時を迎えていた。

.
 ルル「……フッ、最初から、こうしていればよかっただろう?」

 マオ「……ふうん、同情するフリか、」
    「最後まで、余裕を見せる気とはね」

 ルル「矜持だよ、マオ……」
    「お前に、決定的に欠けているものだ」

 マオ「……もういい、お前の頭を覗くのもめんどくさくなってきた」
    「さよなら、ルルーシュ」スッ

 ルル「!!」グッ…

.
俺が、マオの銃口が火を噴く瞬間を覚悟した……そのとき。
やや離れた場所で銃声がしたかと思うと、マオがうめきながら銃を落とした。


 マオ「ばっ、馬鹿な……!」ポロ…ッ
    「他に誰もいないのに!?」

 ルル「!?」

 マオ「誰だッ!誰……まさか、まさか!?」
    「C.C.だろう?ねえ、C.C.だよね!?シーツウッ!」

.
見れば、マオは右腕から血を流していた。
マオは傷口を抑えつつ、C.C.の名を叫びながら周囲をぐるぐると見回す。
やがて木陰から、無表情のC.C.が姿を現した。


 C.C.「……」カツ、カツ…

 マオ「しっ、C.C.!」パアッ!!

 ルル「お前、なぜここに……!?」

 C.C.「お前の指示だよ、ルルーシュ」

 ルル「なに!?」

.
C.C.のその言葉に、俺は驚く。そのような指示は出していない。
事務所にはいなかったし、ナリタ山でマオと対決することは伝えてなかった……


 マオ「そうだ、そのはずだよ!」
    「こいつは一人でここに……」

 C.C.「ルルーシュ、お前は"忘れた"のさ、そのことを」

 ルル「忘れた?俺が……?」

.
■約1時間ほど前 列車内 ─────

 ルル「……以上がプランだ、何か疑問はあるか?」

 C.C.「……いや、後はやってみるしかないだろう」

 ルル「ああ……ないなら、早速始めるぞ」

 C.C.「よかろう……私の責務は果たすよ」

.
C.C.は、うなづいてみせると席を立ち、列車の別車輛へと移動した。
彼女の姿が完全に見えなくなったのを確認した俺は、席を立ちトイレに入る。
そして扉を閉めると、洗面台の蛇口を開き、その上にかけられた鏡を見た。
そこには、俺の顔が……瞳が映っていた。


 ルル(以前、鏡越しにギアスをかける実験は成功した……)
    (つまり、俺のギアスは光学現象だ)
    (であるなら、おそらく俺自身にもギアスをかけることはできる)

.
問題は、通常使用する場合と同じ……俺にも1回限りしかギアスがかけられない。
特に、俺自身にかけるとなると、代わりの人間など存在しない。
もし今後、自身にギアスをかけたい場面が現れようと、ギアス抜きで乗り越えなくては
ならなくなる。


 ルル(……果たして、今使うべきなのか)
    (今使わずとも、ナリタ山を騎士団で包囲し山狩りを行う方がいいのではないか)

.
……ということを、先ほどC.C.にも問われた。

だが、そうなればマオは"次善の策"として、シャーリーを殺して自分だけ逃げるという
手段に出るだろう。それでも、俺に対してダメージを与えられる上に、奴一人であれば
逃げ出すこともたやすいはずだ。

シャーリーが傍にいることで、それがマオの足かせにもなっているのだ。
ここで奴を逃すわけにはいかない。だから……今しかない。

意を決した俺は、鏡を覗き込みながら小声で命令を下す。


 ルル「……ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる……」
    「マオとの対決にまつわる、C.C.の関与を全て忘れろ……」キュイィィィ…!!

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 ルル(……ん?)


蛇口から出る水の音に俺は気付いた。

先ほどまで、ナリタ山でのマオとの対決のあらゆるパターンをシミュレートしていたはずだが、
洗面台の前に立ち、手を洗っていたら張り詰めていた神経が緩んだのだろうか。

.
 ルル(クソッ、奴についてのおおよその推測はできたにせよ……)
    (結局は、何の策も抱かずに、奴の前に立つしかないとは!)

    (あるいは、C.C.を何らかの手助けで呼ぶべきだったか?)
    (いや……それは俺の記憶を読んだ奴にバレる、どうしようもない……!)

~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 ルル「……忘れた?俺が……?」

 C.C.「思い出す必要はない……」
    「さあ、全てのことに決着をつけよう」

.
C.C.は、そう言うとマオに銃口を向ける。
マオは、笑いながら彼女に話しかけた。


 マオ「ははっ、C.C.、どうしたんだい?」
    「僕がやりすぎたから、おしおきする気かい?」
    「でも見てよ、こいつは結局、僕に殺されかかった!」
    「どっちが上か、これでよくわかっただろう?」

 C.C.「……ルルーシュ、」

 ルル「??」

 C.C.「……これが、私の矜持だ」…パンッ!!

.
C.C.は、ためらうことなく引き金を引く。
銃弾はマオの左肩を打ち抜き、彼は叫びながら倒れた。


 マオ「ぐああっ!」…ドサ
    「しっ、C.C.……どうして?なぜなんだ?」

 C.C.「……」カツ、カツ

 マオ「ぼっ、僕を……殺すの!?」
    「どうして!?だってC.C.、僕のことが好きじゃないか……!」

.
 C.C.「……好きだったよ、マオ」カツ、カツ

 マオ「!!」

 C.C.「ルルーシュ本人は覚えていないが、今回のことについてこいつは、」
    「"腹を決めている"と言った……」
    「そう言えば、お前には意味がわかるよな、ルルーシュ?」ジッ…

 ルル「……!」


俺が、腹を決めたと言った、だと……?
それは、この騒動について、最終的な結論を出した、ということだ。
この場合の結論とは、つまり……

.
 ルル「……」ジッ…

 シャーリー「……!」ピク


俺は、シャーリーの顔を黙って見つめる。俺の表情から、何か違う気配を
感じたのだろうか、彼女は身体を強張らせた。
C.C.は、再び視線をマオに戻すと、言葉を続ける。


 C.C.「ルルーシュは、私の共犯者なんだよ、マオ……」
    「こいつを殺すことは、許さない」

.
 マオ「だっ……だって、だって……!」
    「じゃあ、どうやったら君は戻ってきてくれるんだ!?」

 C.C.「……」

 マオ「わかったよ、二度とこいつには関わらない!こいつなんかどうでもいいんだ!」
    「僕はただ、C.C.と一緒に暮らしたいだけなんだ!」
    「戻ってきてよ、C.C.!昔みたいに、二人だけで一緒に暮らそうよ……!」

 C.C.「無理だ……と、言ったはずだよ、マオ」…ニコッ

 マオ「!!」

.
C.C.の口調が、変わった。
いつもの、冷たい響きのある口調から、慈愛を感じさせる柔らかなものに……
しかしその返事は、マオにとって絶望とも呼べる言葉であった。


 C.C.「お前には、ひとりで静かに暮らして欲しかった……」

 マオ「……しーつー……?」

 C.C.「だが、お前は来てしまった」
    「私の姿を追って……」

 マオ「……し……」

.
 C.C.「成長もしてなかった……それは、全て私の責任だ」

 マオ「……」

 C.C.「だから……」

 ルル「シーツウッ!」

.
俺の突如の呼びかけに、彼女はゆっくりと顔を向けた。
俺は、怯える様子のシャーリーを見つめながら話す。


 ルル「……そいつが、俺のギアスを受け入れるなら、」
    「殺すまでもない」

 C.C.「!」

 マオ「……!」

.
彡 ⌒ ミ 
(´・ω・`) ひとまず!

乙はげ、

待ってたよー!おつ!

>>279
はげありです!
>>280
お待たせしましたごめんなさい!

おつおつ
次はいつごろになるかしら

>>282
1週間以内を目指して!全力です!

おうハゲ次も頼むよ

>>284
かしこまりました、ハゲるほどの勢いで!

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

ナリタ山は、すでに夜の闇に包まれていた。
ケーブルカーの駅構内に設置された明かりが灯り、誰も観客のいない中、
俺たちの人生という舞台を静かに照らし出していた。

マオにギアスをかける、という俺の突然の提案……
今にもマオを撃とうとしていたC.C.は、引き金にかけた指を外し、俺を黙って見る。
銃創を抑えながらうずくまっているマオも、俺を見つめていた。

.
俺は、二人の方に顔を向け、話を続ける。


 ルル「……お前が、俺のギアスを受け入れるなら……」
    「C.C.のことを忘れ、中華連邦に帰るという"命令"を受け入れるなら、」
    「お前はまだ生きていられる」

 マオ「……」

 C.C.「ルルーシュ、いや、坊や……」


C.C.の口調は、元の冷ややかなものに戻っていた。
彼女は、俺とシャーリーを見下ろしながら話す。

.
 C.C.「……危機を脱した途端、甘い事を言うとはな」

 ルル「ただ提案しただけだ」

 C.C.「その娘を殺したくないから、だろう?」

 シャーリー「!!」

 ルル「……不要な殺しはしない」
    「それだけのことだ」

 C.C.「私を失望させるな……と、言ったことを覚えているか?」

.
 ルル「……マオ!お前が選べ!」
    「C.C.に殺される結末か、俺に全ての記憶を消される結末か!」
    「そのくらいの選択肢は残してやる!」

 C.C.「……」…フゥ


彼女は、小さくため息をつくと、俺から目を離しマオの方を向いた。
その間中、マオはずっと、C.C.を見ていた。


 マオ「し……しーつー……」

.
 C.C.「マオ……選ぶんだ」チャッ

 マオ「……シ……」


彼は、呆けたような表情で、俺とC.C.を交互に見る。
しきりに考え事を巡らしているようだったが、徐々に表情がこわばってきて……


 マオ「……い、いやだ……!」

.
 ルル「……」

 マオ「いやだ、いやだいやだいやだいやだ!」
    「どっちもいやだ!いやだ!いやだ!いやだ!」

 C.C.「マオ……」

 マオ「ルルーシュ!お前が死ねばいいんじゃないか!」
    「お前が死ねば全て終わる!なんで僕が死なないといけないんだ!」
    「死ね!お前が死ね!死ね、死ね!今すぐ死ね!」

 ルル「……」

.
 マオ「しーつー、こいつ殺そうよ!こんなやついらないよ!」
    「こいつ、自分の兄弟まで平気で殺すテロリストじゃないか!」

 シャーリー「え……!」

 ルル「!!」

 C.C.「……」

 マオ「……は、ははっ!」
    「そうか、その女に知られたくなかったことだったのか?」

 ルル「……黙れ」

.
 マオ「ルルーシュ、お前が殺したエリア11の総督は、お前の兄だった!」
    「お前は、お前の野望と復讐のために兄弟を殺した!」

 ルル「黙ってろ……」

 マオ「お前は、元皇族だった!だが皇帝に捨てられ、全てを失った!」
    「挙句の果ては、テロリストに成り下がって……!」

 ルル「それ以上喋るな、マオ……」

 マオ「シャーリー、こいつはブリタニアへの復讐心のみで生きている奴だ!」
    「そのためなら誰だって利用する!」
    「君の父親の死だって、こいつにかかれば都合のいい道具にしてしまう!」

.
 シャーリー「……」

 ルル「黙れ、マオ……!」

 マオ「いや、君だって、ルルーシュにとっては復讐の道具のひとつに過ぎない!」
    「そいつは悪魔のような奴だ!そんな奴を信用するな!」

 ルル「黙れッ!」

 マオ「いいや黙らない!お前は報いをうけるべき奴だ!」
    「シャーリー、今の内だ、そいつを殺せ!」

.
 シャーリー「…………」

 マオ「そいつを今殺しておかないと、君も必ず殺される!」 
    「今まで何人も殺してきた男だぞ、ルルーシュはそういう奴だ!」

 ルル「黙れえッ!!」

 マオ「ははははは!本性が現れてきたか!」
    「シャーリー、やれ、やるんだ!君の父親だって、それを……」

.
突如、乾いた銃声が構内に鳴り響いた。

狂気の表情で叫んでいたマオの、口の動きがぴたりと止まり、拍子ぬけしたような
顔つきになった。次の瞬間……マオの喉元に、ぽつりと赤い球が膨らみ、そこから
血がどくどくと流れ出した。
マオは、震えながら喉元を手のひらで抑えるが、血は次から次へとあふれ出てくる。
俺も……そしてC.C.も、突然のことに呆然とした。


 マオ「あ……が……」パクパク

 ルル「な……!?」

 C.C.「……娘か!」

.
俺は、ハッとして腕の中の彼女を見る。
シャーリーは、銃を構えた腕を硬直させながら、マオを睨んでいた。
やがてマオは、ゆっくりと脱力しながら仰向けでその場に倒れ、痙攣を始める……


 シャーリー「……」プル…

 ルル「シャーリー!……君は……!」


俺はその時、とんでもない過ちをしたことを悟った。
シャーリーに、人殺しをさせてしまった、という過ちを……!

.
 ルル「……バカな!なぜ君が撃った!」

 シャーリー「……わかったから……」プル…

 ルル「!?」 

 シャーリー「こいつが、わたしのお父さんを利用してた……」
       「これ以上、こいつにお父さんのことを……」
       「言わせ……たく……」プル…プル…

 ルル「……!」

.
 C.C.「……」…カツ、カツ


C.C.は、身体を痙攣させているマオの元へ歩いてゆき、その傍らへ腰を下ろすと、
彼の頭を抱きかかえた。マオは口をぱくぱくと動かしながら、それでも彼女を
見ようとしていた。
彼女は、マオのサングラスをそっと外し、優しく微笑む。


 C.C.「今まで、よくがんばったな、マオ……」ニコ…

 マオ「……シ…………ツ……」パク…パク…

.
 C.C.「……先に待っていろ、Cの世界で」

 マオ「…………」…パク…


やがて、マオの口の動きが止まった。彼の瞳から、ギアスの紋章がすうっと消える。
彼女はマオの目に手のひらをかざし、その瞼をそっと閉じてやった。


 C.C.「やっと、静かになったな……」

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

……マオ達が奪ったゼロの衣装ケースの中には、応急セットも入れてあった。
C.C.はそれを俺の肩の傷口に用い、きつく縛り上げる。その強さに、俺は思わず
うめき声をもらした。


 ルル「痛ッ……!」

 C.C.「我慢しろ、男の子だろう?」グッ、グッ

.
肩の手当てを済ませた俺は、銃を握ったまま固まっているシャーリーの傍らに
腰掛け、その手をそっと握った。彼女の指を一本々々開き、手から銃を離すと、
それをコンクリートの床の上に置く。

彼女は、マオの死体を覆い隠した大きなシートから目を逸らそうともせず、
ずっと睨んだままだった。


 ルル「……シャーリー……?」

 シャーリー「……」

.
 ルル「もういい……もう、終わったんだ……」

 シャーリー「……ルル……」


俺は、冬の夜で冷え切った彼女の身体を温めるかのように、その肩を強く抱きしめた。
このまま、ここにいては身体をこわしてしまう。


 ルル「約束したな、何もかも話す、って……」
    「今さっきのマオの話も含めて、全てを話すよ……」

 シャーリー「……」

.
 ルル「……ここは冷える」
    「ケーブルカーの中に入ろう……」


俺たち3人は、ケーブルカーの中に入り、シャーリーを座席に座らせた。
C.C.と共に運転席の操作盤などを観察し、暖房のスイッチを見つけると「強」にして
座席に戻る。

俺は、シャーリーの隣に座った。C.C.は、通路を挟んで反対側の席に座り、
こちらをじっと見つめている。

.
 ルル「……なんだ?」

 C.C.「その娘に、言っておくべきことがある」

 シャーリー「……?」

 C.C.「……アレは、私がけじめをつけるべきだった場面だ」
    「感謝はしない」

 ルル「お前……」

 C.C.「だが、気に病むことはない……マオは、やっと救われたんだ」
    「お前には想像すらつかない、地獄のような日々から……」

.
 シャーリー「……そんなの、知らない」

 C.C.「ふっ……そうか、ならそれでいい」

 ルル「C.C.、全て話すぞ……止めるなよ?」

 C.C.「……好きにしろ」

.
それから俺は、シャーリーに、俺の生い立ちから今に至るまでのことを語り始めた。
皇帝の子として生まれたこと、幸せだったアリエス宮での日々、突然起きた惨劇、
日本への追放、ブリタニアの日本侵攻、名を変えアッシュフォードに身を寄せたこと……

……そして、C.C.との出会い……
不思議な力を手に入れたことを機に、運命への反逆を始めたこと……
黒の騎士団という存在、そして、ゼロという存在、ナリタ侵攻……

嘘は、一切交えなかった、隠し事もしなかった。
俺は初めて、俺のことを、包み隠さず他人に語った。

……話し終えた頃には、すでに深夜に近い時間になっていた。

.
 シャーリー「ルルが、お父さんやお母さんのことを話すのを聞いたことがないな、」
        「……って思ってた」

 ルル「ああ、そういうことだ」
    「俺の母親はすでにいない、そして父親は、ブリタニアの皇帝だ」

 C.C.「……」

 シャーリー「……お父さんを、恨んでるんだね」

 ルル「……そうだな」

.
 シャーリー「……でも……」
       「いきなり、かな……」

 ルル「ん?」

 シャーリー「それまでお父さん、ルルやナナちゃんを嫌ってたわけじゃ」
       「ないんだよね?」

 ルル「……ああ、奴が離宮に来た時は、母上と睦ましくしているところを、」
    「俺たちはそっと覗いたりしていたな」
    「あの、いつも仏頂面の男が、俺たちの様子を見て口元を緩ませていた」

 シャーリー「……」

.
 ルル「そうだ……母上が死んでからだ、何もかもが変わったのは」

 C.C.「…………」


これまで俺は、シャーリーの指摘に思い至ったことがなかった。
確かに奴は、子煩悩などとは最も縁遠い男だったが、少なくとも俺たちを遠ざける
ようなことはしなかった……あの惨劇までは。


 ルル(やはりそうか……!)
    (あれが、全ての終わりであり、全ての始まりか!)ギリッ…

.
 シャーリー「ルル……」

 ルル「なんだ?」

 シャーリー「……いちど、お父さんとお話をしてみたら、どうかな……」

 ルル「え!!」

 C.C.「!?」

.
彼女のその言葉に、俺は心底から驚いた。
そのアイデアは、完璧に、全く、一切想定したことがなかった。
と同時に、彼女の言葉は、ごく普通の感覚ならば当然に出てくる助言で
あることに思い至った……


 ルル「……びっくりしたよ、」
    「そんなこと、考えたことがなかった」

 シャーリー「えっ?」
       「そ、そんなに変なこと言った、わたし?」

 ルル「そうじゃない、俺を取り巻く環境が異常すぎるっていうことさ」
    「俺は、すでに"死んでいる"からね、奴にとっては」ニコッ

.
 シャーリー「うん……でも……」

 ルル「ん?」

 シャーリー「生きてるって知ったら、やっぱり喜ぶんじゃないのかな……」
       「それが、親子だと思う……」

 C.C.「……」

 ルル「…………」

.
……今は、彼女は普通に話をしている。
多分それは、先ほどまでの異常な状況から日常感覚に戻ってきたからだ。

しかし、いま脳裏に浮かんでいるであろう彼女の父親のこと、それにマオを
撃ち殺したことは、後日必ず彼女を苦しめるはずだ……
これ以上、俺のために彼女を苦しませるわけにはいかない。

俺は、やはり決めた通りのことをするしかあるまい。
それもあって、彼女に全てを話したのだ。贖罪の意味でも……

俺が忘れてしまっている"俺"が決めた内容とは違うかもしれないが、
彼女の幸せを考えれば、おのずと出る結論に従うことにした。

.
 ルル「シャーリー……」

 シャーリー「……?」

 ルル「お父さんのことは、本当に済まなかった……」グッ

 シャーリー「??」


俺は、横に座る彼女の方を向き、その肩を掴んだ。
俺を見つめる彼女の瞳に、かすかに不安の色が浮かぶ。

.
 ルル「……俺が、全て忘れさせてやる」

 シャーリー「えっ……?」

 ルル「俺のせいで君が抱えてしまった苦しみを、哀しみを……」
    「君の罪を、全て俺が背負ってゆく」

 シャーリー「ルル……まさか……」

 ルル「……ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる……」キュイイィ…

 シャーリー「……あ……」

.
俺の左目に、呪わしき紋章が浮かび上がった。
シャーリーは、まるで吸い込まれるかのようにそれに見入る。

彼女に初めて告げた、俺の本当の名……
しかし今後、決して彼女はそれを思い出すことはないだろう。
父親を失って以来からこの瞬間までに抱いた、あまりに重い苦難……
そしてこれまで、彼女が抱いていた俺への想いと共に。

……全ては、忘却の河に!


 ルル「マオに関する記憶、そして俺に関する全ての……」ィィィィ…

.
 シャーリー「……!!」
       「嫌よッ!私を殺さないで!」バッ!!

 ルル「……!!」…ッ

 C.C.「!?」


ギアスが発動せんとしたまさにその時、彼女が放った鋭い言葉が、俺の心に
突き刺さった。
怯んだ俺は発動する意思を失い、ギアスは途中で消散する。
彼女は俯き、弱々しくかぶりを振っていた。

.
唐突に、俺はカワグチ湖のホテルでの、草壁の抵抗を思い起こす。
奴は俺の目から視線を逸らせなかったものの、発動後に抵抗を見せた。
そしてシャーリーは、発動する直前に俺の瞳から目を逸らすことができた。


 ルル(そうか……やはりそうだ!)
    (ギアスは、相手が強い抵抗の意思を持っていると、効き難くなるのか!)


もう一度、彼女に俺の目を見せることは、難しいだろう。
ギアスをかける前に、彼女を説得する必要が生じた。

.
 ルル「……シャーリー?俺は、君を殺しはしない、」
    「ただ、君が苦しむことになる記憶を忘れさせるだけだ」

 シャーリー「……嘘だよ、いま、ルルの目は違ってた……」
       「わたしの何もかもを消す気だった……」

 ルル「シャーリー!」

 シャーリー「……わたし、ルルが好きなの!」

 ルル「だから、それは……」

.
 シャーリー「ルルがお父さんを殺したことは許せない!」
       「怒りに任せてあの人を殺した自分も許せない!」
       「でも……それでもわたし、ルルが好きなの……本当に!」

 ルル「……君は……」

 シャーリー「わたし、逃げない!」
       「ルルが逃げないのなら、わたしだって逃げない!」

 ルル「……」

.
 シャーリー「そういうわたしの気持ちを忘れさせるのなら……」
       「それは、私を殺すってことだよ!」

 ルル「!……」グッ…

 C.C.「…………」


……勿論、そういう意味になることは分かっている。
だが、シャーリーは本当にわかっているのだろうか。
それらを抱えて生きる苦しさが、一体どれほどの……

.
 C.C.「……ルルーシュ」スッ…

 ルル「何だ……ッ!?」


C.C.の呼びかけに振り向くと、奴はその手に先ほどの銃を握り、
俺に差し出していた。どちらかを選べ、ということか……くそッ!


 ルル「……シャーリー、俺は君に生きていてほしいんだ!」
    「だから、頼む……全てを忘れさせてくれ!」

.
 シャーリー「ルルを忘れた学校生活なんて……」
       「わたしには、無意味だよ……」

 ルル「忘れたら、君はそんなことすら考えずに過ごせる!」
    「今までどおり、みんなと……」

 シャーリー「じゃあ!」キッ

 ルル「!」

 シャーリー「……責任、とるんだよね、ルル?」

.
彼女は、俺を睨みながら、そう呟く。
俺は、彼女の言葉の真意を掴みかねながらも、ゆっくりと頷いた。


 ルル「……ああ、俺がしでかしたことの責任は、俺が取る」

 シャーリー「じゃあ、これまで通り……」
       「みんなを騙し続けて……わたしも含めて」

 ルル「……え?」

.
 シャーリー「わたしが忘れたら、ルルが今話したことは、ルルとその人しか」
       「知らないことになるよね……それって、楽になるってことだよ?」

 ルル「!?」

 シャーリー「許さないから……」ポロ…
       「悪かったと思うのなら、わたしが知っているっていうことに、」
       「ルルも耐え続けてよ!」
       「ほんとにわたしの事を想ってくれるなら……わたしに忘れさせて、」
       「逃げるようなことはしないで……!」ポロポロ…

 ルル「……!」

 C.C.「!!」

.
俺とC.C.は、彼女のその言葉に息をのんだ。
驚くほどに強い心……彼女は、俺なんかよりも余程に強かった。
学園での生活では、それほどの意思を見せたことのなかった彼女が、
一体、どうしてこれほどまでに……

……静寂の間を打ち破ったのは、C.C.の笑い声だった。


 C.C.「……ふふ……はは、はははは……!」

 ルル「……何がおかしい?」

.
 C.C.「ふふっ……ルルーシュ、諦めろ」
    「これは、心優しきお前が背負わざるを得ない宿業のようだ」

 ルル「なんだと?」

 C.C.「無理やりにでも、その娘にギアスをかければよかろうに……」
    「やりようなど、いくらでもあるだろう?銃もあるぞ?」

 ルル「……」

 C.C.「だが、できない……"逃げ"だと言われたら、尚更だろうな」
    「ギアスをかけようとしたのもその娘を思ってのこと、」
    「やめたのもその娘のため……」クスクス

.
 ルル「貴様……ッ」

 C.C.「お前は、とんだ甘ちゃんだ……」
    「孤独を恐れるお前には、"王の力"はまだ早かったようだな」スック

 ルル「シーツウッ!」

 C.C.「私は先に帰る……」カツカツ

.
C.C.はそう言って、ケーブルカーから出ようとした。
俺は、慌てて奴を呼びとめる。


 ルル「おい、どうやって山を降りる気だ?」

 C.C.「どうやって登ってきたと思っている?」
    「街中で、どこぞの若造からバイクを奪った、それで帰る」カツカツ…バタッ

.
C.C.はそれだけ言い残すと、足早にケーブルカーを出て山中へと姿を消した。
俺はそれを見届けながら、ため息をつく。


 ルル「あいつ……ッ!」ハァ…

 シャーリー「……」


……しばらくの間の後、俺はおもむろに、シャーリーの顔を見た。
彼女も、涙に濡れた目でまっすぐに俺を見つめる。
今なら、ギアスをかけることができる……という考えが脳裏に浮かんだが、
悔しいことにC.C.の指摘は的確だった……

.
 ルル「……わかった、ギアスは使わない」
    「だが……警告だけはしておく」

 シャーリー「……」

 ルル「……もし、俺の事を誰かに喋ったりすると……」
    「その時は、たぶん、俺ではない誰かが、君を殺すことになる」
    「それは、俺でも止めることはできないだろう……」

    「また、喋らずとも、君が俺の事を知っているようだと知れたら、」
    「君は支配者に狙われることになる……」
    「そして、捕まれば全てを喋るまで拷問されるだろう」

 シャーリー「……」ゴクッ

.
 ルル「……君が今、抱えようとしている秘密は、そういう類のものだ」
    「それでも、君は、忘れずにいようというのか?」

 シャーリー「……わたしも、あの人を撃った、って秘密ができたんだよ……」

 ルル「フフ……その事実は、消えるよ」
    「マオの後処理は騎士団にさせる、奴は中華連邦から来てここには身寄りも」
    「いないしな……姿を消しても、誰も一切気にしないさ」

 シャーリー「でも、撃ったのは確かだよ……」

.
彼女は、そう言って俯き、くすんと鼻をすすった。肩が震えている。
マオの最期の姿が頭に浮かんだのだろうか……
俺は、彼女の肩にそっと腕を回すと、嗚咽を漏らす彼女の頭を優しく抱きしめた。


 ルル「……彼を撃った事実だけ、消すこともできる」

 シャーリー「……どうしても、耐えられなくなったら……」
       「でも、それまでは……それも、わたしがしたこと、だから……」

 ルル「フッ……君は、強いな……」

 シャーリー「そんなことないよ……」

.
 ルル「いや、強いよ……」
    「俺も、君ほどに心が強ければ……」


シャーリーが、頭を起こす気配を感じ、俺は腕を緩める。
彼女は俺の腕の中で、頭をゆっくりと上げて俺を見た。
彼女の、涙がにじむ大きな瞳が、震える唇が……俺のすぐ間近にあった。


 シャーリー「……ルルが、好きだからだよ……」

 ルル「……!」

.
その間は、ある期待を告げていた。
好意だけでなく、もはや秘密までも共有した異性との間に起きる、ある期待。
俺は、俺がそれを求めていることのみならず、彼女も求めていることに気付いた。


 シャーリー「ルル……」

 ルル「…………」


湧き出た生唾を飲み込むのも憚られるような緊張感……
俺は、彼女が耐え切れずに瞼を閉じたのを見て、心が震えた。

.
彼女とは、すでにキスはしている。しかし、今は、俺たち以外に誰もいない夜中の
山中で、しかも暖かなケーブルカーの中だ。キスは目的ではなく、手段となる……

……俺は、何も言わずに彼女を強く抱きしめる。
思わず漏れる彼女の暖かな吐息が、俺の耳をくすぐった。

だが、そのまましばらくの間、彼女の体温を味わった後、俺は何とか身体を離すこと
ができた。


 ルル「……帰ろう、シャーリー」

 シャーリー「えっ……?」

.
 ルル「お母さんがきっと心配している」
    「早く戻って、安心させないと……」

 シャーリー「……うん」


彼女は俺の言葉を聞いて、ほんの少し悲しそうな表情をしたが、すぐに小さく頷いた。

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

俺はケーブルカーの操作室をしばらくの間観察し、操作方法を把握した後に作動させる。
俺たちを乗せた車両は、ナリタ山をゆっくりと下り始めた。
その間に俺は、扇に連絡を入れ、後に残したマオの死体の始末を指示する。


 ルル「……ああ、俺が先ほど片をつけた、数名をよこしてくれ」
    「跡を残すとまずい、処理に慣れている奴がいいな……うむ、そいつらでいい、」
    「夜遅くにすまないな、頼む……」…ピッ

 シャーリー「……想像つかなかったな」

 ルル「ん?」

.
 シャーリー「ルルが、そんな電話をしてる姿……」

 ルル「そうか……」

 シャーリー「だって、いつも教室じゃ寝てたし……」

 ルル「……そうだな、いつも居眠りしてるな、俺は」
    「眠るために出席してるようなものだからな」ニッ

 シャーリー「ちゃんと起きて聞いてなきゃ、ダメだよ」

 ルル「ハイハイ」

 シャーリー「ハイは1回だけ!」ニコッ

.
授業に関する、学生らしい、たわいのない会話。
それは、当たり前のようでいて……でも、俺たちにとってはこれからは、
かけがえのない貴重な時間となるだろう。
いや、俺はこれまでもそうだったが、彼女はこれからそうなる。


 ルル「……今からでもいい、いつでもいい」
    「つらくなったら、俺に言ってくれ」

 シャーリー「ありがと……」
       「でも、逆かな……むしろ、もっと聞かせて?」

 ルル「……」

.
 シャーリー「わたしに相談して……」
       「何でもいい、いつでもいいから……」

 ルル「……シャーリー」


俺は、困ったような表情をしていたのだろう。
彼女は俺の顔を見て、にこりと微笑んだ。


 シャーリー「わたし、もう誰にも言えないんだよ?」
       「ルルがそう言ったよね?相談相手に最適だよ?」

 ルル「……」フゥ…

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

租界へ戻り、シャーリーを彼女の家まで送ると、俺はそのまま、事務所にも寄らずに
クラブハウスへ帰った。
が、すぐ近くまで戻った俺は、自分の部屋の明かりがついているのに気付く。
まさかと思いながら部屋の扉を開けると、C.C.がソファに寝転んでこちらを見ていた。


 ルル「……なぜいる?」

 C.C.「別に……」

.
 ルル「事務所で寝ればいいだろう」カツカツ

 C.C.「……」プイ


そっぽを向いたC.C.を俺は一瞥し、小さなため息をついて荷物を下ろす。
衣装ケースは無事に取り戻した。そしてマオは死に、俺の秘密は守られた。
シャーリーは全てを知ったが……あの子は決して誰にも話さないだろう。


 C.C.「……早かったな」

 ルル「何がだ?」

.
 C.C.「……私が、先に帰ってやったというのにな……」
    「お前は、相変わらずのようだ」フン

 ルル「……」フゥ…
    「文句があるなら、ちゃんと言え」

 C.C.「……ひとつ、聞かせろ」

 ルル「何だ?」…ギシッ


C.C.は身体を起こすと、俺の方を向いた。
俺も、書斎机の席に腰かけ、奴を見る。

.
 C.C.「お前のことだ、策があるだろうと思って黙って見ていたが……」
    「なぜ、あの娘にお前を撃たせた?」

 ルル「……」

 C.C.「間違って頭に当たっていれば、お前は死んでいた」
    「どういうつもりだ」

 ルル「……だから、頭を指定したんだ」

 C.C.「??」

.
 ルル「シャーリーは射撃経験などない、撃てばまず狙いを外す」
    「加えて、狙いを絞らせることでより強い緊張を与え、」
    「失敗するように誘導した」

 C.C.「ふむ……」

 ルル「だから、あの場面でシャーリーが外したのは、必然だ」
    「肩に当たったのはまぐれだよ」

 C.C.「マオの時は?」

 ルル「適度な怒りは、人を集中させる……俺の時よりも条件は良かったはずだ」
    「だが当たったのは、やはり偶然だろう」

.
 C.C.「……そういうことか」

 ルル「ただ……」ギシッ

 C.C.「ん?」

 ルル「……あの時、頭を撃たれても構わない、とは思っていた」
    「それだけの報いはあってしかるべきだろう」

 C.C.「……前にも言ったが、」ジー
    「そのような賭けは、するな」

 ルル「フッ、契約を果たすまでは、か?」

.
 C.C.「……ああ、そうだ……」プイ


彼女は、俺の視線から顔を逸らす。
その表情に俺は、物憂げな気配を感じた。


 ルル「怒っているのか?」

 C.C.「……私が、何に対して怒っていると言うんだ?」

 ルル「俺が、思っていたのと違う結果を出したことに……だ」

.
 C.C.「……お前の好きにすればいい」
    「私はただ、最後に契約を果たしてもらいさえすれば」

 ルル「C.C.」ガタッ…カツカツ


俺は席を立ち、C.C.の傍までゆくと同じソファに並んで腰かけた。
C.C.は、じろりと俺を見る。


 C.C.「なんだ」

 ルル「マオ以外にも、俺に話していないことがあるだろう?」
    「今のうちに話せ」

.
 C.C.「……」ジー

 ルル「今回のマオのような、お前に由来する突発的なアクシデントは」
    「可能な限り避けたい」

 C.C.「……もうないよ」

 ルル「……────」ボソッ

 C.C.「!!」キッ!!


俺が、ある名を口にした途端、C.C.は俺を鋭く睨みつけた。
その反応を見て、俺は口角を上げる。

.
 C.C.「……その名は忘れろと言ったはずだ」

 ルル「もう俺には、俺自身にギアスをかけることができない」
    「無理だな、忘れるのは」ニヤリ

 C.C.「…………」

 ルル「C.C.などという記号よりも、ずっといい名じゃないか……」
    「なぜ、こちらを名乗らない?」

.
 C.C.「……」スッ…
    「名前、なんて……」ボソッ

 ルル「ん?」

 C.C.「…………」


俺から視線を逸らし、俯いたC.C.は、ぽつりと呟く。

.
 C.C.「忘れたんだ、全部……何もかも……」
    「今日のマオのことだって……私は、忘れなきゃいけない……」

 ルル「……」

 C.C.「今さら名前、なんて……」
    「名前……なんか……」ジワ…

 ルル「!」


……この女が、己の弱さを俺に見せたのは、これが初めてだった。
そのような意図はなかった俺にとって、その反応は唐突に過ぎた。
俺は戸惑いを覚え、そのまま黙り込む。

.
しばらくの間、沈黙が続いたが……


 ルル「……C.C.、」

 C.C.「……?」

 ルル「俺は……マオのように"力"に負けはしない」
    「どれほど強大になろうとも、これを捻じ伏せ従わせ……俺の目的を達する」

 C.C.「……」ジ…ッ

 ルル「そして、必ずやお前との契約を果たす、だから……」

.
 C.C.「……だから?」

 ルル「俺から離れるな、絶対に……」
    「お前は、俺にとって必要な存在だ」

 C.C.「…………同情か?」

 ルル「同情ではない、契約だ」
    「これは、俺からお前への……取引だ」

 C.C.「……」ジー

.
彼女は、その瞳にうっすらと浮かべていた涙を拭い、
しばらくの間、無言で俺を見つめる。
俺の言葉をこいつがどう捉えたのか、俺は把握しかね訝しんでいると……


 C.C.「……小指を出せ」

 ルル「ん?」

 C.C.「小指を出せ」

 ルル「……?」…スッ

.
 C.C.「……」…キュ

 ルル「……なぜお前の小指を絡ませる?」

 C.C.「先日、ナナリーに教わった」
    「日本式の、契約のしかたを……」

 ルル「は?」


俺がきょとんとしていると、C.C.は何かの歌らしきことばを口にしながら、
小指を絡ませ合った手をゆっくりと、上下に振る。

.
 C.C.「……うそついたら、はりせんぼんのーます、ゆびきった……」
    「契約成立だ、良かったな」

 ルル「……はりせんぼん?」
    「あの、海の中に生息する魚類か?」
    「それとも、千本の針のことか?」

 C.C.「どちらでも構わない……」
    「お前がより困る方でいい」

 ルル「違約したらそれを飲め、と?」
    「なんだその呪術のような契約は!」

.
 C.C.「ただ契約するだけではつまらないだろう?」
    「契約に、違約条項は付き物だ」

 ルル「なぜ俺にだけ、そんな制裁を───ッ!?」


俺は、突然飛びかかってきたC.C.に怯み、言葉を遮られた。
次の瞬間、奴の唇が俺の唇と重なっていることに気付く。


 ルル(な……に……!?)カチーン…

 C.C.「…………」

.
……彼女の唇から洩れる熱い吐息を感じた俺は、脳髄が即座に麻痺させられた。
間近で香る彼女の髪の甘い匂いが、俺の鼻孔をくすぐる。
のしかかる彼女の重さがあまりにリアルで、俺は完全にパニックに陥った。


 ルル(なんだ……何だこれは!どういう意味なんだこれは?)
    (好意なのか、今の俺の言葉をこいつは告白だと受け取ったのか!?)
    (しかしちゃんと「取引」だと言ったぞ、俺は!)

 C.C.「……」

.
 ルル(というか俺がシャーリーを好いていることは知っているだろうこいつも!)
    (どういうつもりだ、まさか俺達に嫉妬してこういう行為に及んだのか!?)

 C.C.「……」

 ルル(いや待て、その前に、こいつにとってこれは本当に好意の表現なのか!?)
    (違うのではないか!?なんか古代の風習で呪いとかそういうのではないのか?)

 C.C.「……」

 ルル(ああっ、くそッ!確認したい!聞いて確認したいがすれば嘲笑されそうな)
    (予感がしている!また童貞とか罵られそうな気がしてすごく怖いッ!)
    (どうすれば……俺はどうすべきなんだッ!?)

.
柔らかく官能的な暴力の行使に、俺の思考は混乱の渦に叩き込まれた。
そのまま数秒間、俺は完璧な硬直状態に陥る……
……やがてC.C.は、頭に血が上った状態の俺からゆっくりと身体を離すと……


 C.C.「……今のは、付帯条項だ」
    「私は帰る、また明日だ」…スック、テクテク

 ルル「……」ボーゼン…

.
 C.C.「……ああ、それと、」クルッ
    「やはり私はクラブハウスに戻るぞ、数日中に手配しろ」

 ルル「…………」ボーゼン…

 C.C.「ではな……童貞坊や」
    「一人で寝るがいい……お・や・す・み」…バタン

 ルル「………………」ボーゼン…

.
彡 ⌒ ミ   マオ編完結です、次は新スレになります!
(´;ω;`)  二人ともかわいすぎて脱毛しそうです!

それ以上?

はげ乙…っ脱毛剤

>>366
ほえ……?

>>367
彡彡 ミ
( ´ω` ) おつありです!!

乙!!

>>370
あり!!

おつ!ルルーシュモテモテすぎうらやましい…
次スレたてたらここにも貼っておくれやす

>>372
ルルのバカバカって感じですね!
こちらにもリンク貼ります、了解であります!

.
お待たせしました!
C.C.「わ、私がショタコンだと!?」マリアンヌ「クスクス」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1391267265/)

彡 ⌒ ミ  今回以降、なるべく公開頻度をあげてく気構えでゆきます。
(´・ω・`) はげるほどに!

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年04月03日 (金) 21:47:30   ID: EoezBBco

ルルシャリ派としては、シャーリーがルルーシュとともにあるこのような展開を待ってました。

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