モノクマ「うぷぷ…安価でRPGをしてもらうよ!」苗木「その4!?」 (1000)

このスレはダンガンロンパメンバ-でRPGをする安価スレです。


詳しいルールは>>2以降に投下します。
詳しい流れやらなんやらは過去スレを見てください。


モノクマ「あんまりケンカしないで、仲良くやる事!モノクマ学園長との約束だよ!」


過去スレ
ゲームスタート~三層到着・苗木江ノ島離脱後
四層~五層クリア
自由時間~6層前
モノクマ「うぷぷ…安価でRPGをしてもらうよ!」苗木「その3!?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1361014413/)


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1365848407

~ルール・概要~
・安価式のRPGです。基本的に安価は【一日の行動】【戦闘の行動】【選択肢】ですが、それ以外での安価もあります。
・また安価を連続で取りたい場合は安価指定から10分以上誰も取らない場合可能です。 安価を取って次の人が安価を取った場合は前の人の安価はリセットされます。
・【一日の行動】では【交流】【鍛錬】【休息】【探索】【闘技場】【モノクマハウス】【サブシナリオ】から選択します。
・基本的にパーティ行動は5人です。サブメンバーがいる場合、【探索】や【戦闘】で事前にメンバー入れ替えを行うことができます。 サブメンバーの扱いは戦闘や探索以外では基本的にパーティメンバーと変わりません。
・【絶望ゲージ】はキャラクターが本来とるべきでない行動をした場合や特定のスキルで上昇します。絶望ゲージが上昇するとパーティにデメリットがありますが、反面一部のキャラクターにはメリットがあります。また後述のエンディングにも関連します。
・【絶望ゲージ】は【選択肢】によって回復させることも可能です。【絶望ゲージ】が大きく上がった場合でも諦めないでください。
・【エンディング】はシナリオを進行させて【魔王城】を攻略し、【魔王】を倒すことにより迎えることができます。またその時のパーティメンバー数によりエンディングが変わります。
・ある程度キャラクターとの好感度があると【個別エンディング】を迎えることもできます。複数の【個別エンディング】を迎えられるのでぜひがんばりましょう。
・一部のキャラクターの【個別エンディング】には【絶望ゲージ】も関わってきますのでうまく調整しましょう。
・アイテム入手は交流・ボスドロップ・闘技場・派遣のみになります。
・派遣ではパーティメンバー或いはサブメンバーから一名を【探索】のダンジョンへと派遣し、アイテムや情報を入手することができます。派遣されたキャラは2日後に帰ってきます。 派遣は行動を消費しないので、ダンジョンの情報を得たい時などは積極的に利用しましょう。
・ただしダンジョンに派遣されたメンバーは【鍛錬】・【交流】・【探索】をすることができません。また派遣専用のスキルを持つ者もいるので、派遣専用のスキルを持っているものは積極的に派遣すると便利です。
・【サブシナリオ】はシナリオ進行とともに追加されるもので、パーティキャラクター或いは他のキャラクターのメインシナリオでは語られなかった部分を知ることができます。サブシナリオを選択すると、キャラが死亡するかクリアするまで他の行動をすることができません。また、クリアするとサブシナリオに関連するキャラクターの能力値がアップします。
・【サブシナリオ】では闘技場のようにキャラクターが戦闘不能になっても死ぬことはありませんが、同じように一日を無駄に消費してしまうので気を付けましょう。また、サブシナリオではアイテムの使用ができません。
・また、ルールは増える可能性があります。


~交流について~
【交流】では選んだパーティキャラと交流することが可能で、交流することで好感度が上がります。好感度を上げるとアイテムやスキルを入手できます。
ただし仲間になっていないメンバーとの交流はできません。
【交流】では選択肢が出ることがありますが、間違えた選択肢を選ぶと絶望度が上がったり、キャラの裏切りフラグが立ちますのでお気を付けください。
モノクマハウスでの【交流】はパーティメンバーとは行えませんが、ほかのメンバーたちと交流することができます。
ただしシナリオで死んでいないメンバーに限りますのでご注意ください。
モノクマハウスでの【交流】で好感度を一定以上あげているとシナリオで…?
仕様が若干変わり、苗木だけでなく、他のキャラ視点での交流が可能になりました。


~鍛錬・休憩について~
【鍛錬】ではレベルを上げることができます。【鍛錬】を行うとHPが減り、0になると丸一日強制休息となります。【鍛錬】でのHP0はキャラ離脱しません。 また、三回連続で特訓をするとボーナスがあります。
また【鍛錬】や【戦闘】でレベルが上がった場合HPは回復しません。【休憩】によってのみ回復します。
【休息】ではHPを回復できます。一度でHPが最大値まで回復します。

~探索について~
【探索】ではダンジョン探索を行います。ダンジョン探索は一回で一日消費します。また、ダンジョンから脱出するには特定のアイテムかダンジョンをクリアするまで出られません。選択肢によってはダンジョン内で休憩も可能です。
探索を行うとシナリオが進行し、シナリオを進行させていくと【魔王城】に【探索】が行えるようになります。
探索を長い間行わないと【イレギュラーバトル】が発生しやすくなります。
探索の際にパーティを分けて探索するときなどはサブメンバーをパーティに加えて探索することができます。
探索を行うと色々なメリットがあるので、積極的に探索を行ってください。

~戦闘のルール~
戦闘はターン制です。基本的にこちらが先制ですが、奇襲などの場合は相手の先制となります。
各キャラの行動を安価で設定し、敵のHPが無くなるか自分たちのパーティが全滅するまで戦闘は継続されます。
戦闘では【アタック】【ガード】【スキル】【アイテム】【エスケープ】の5つから1つを選択することになります。
行動の選択は安価をとった人が全員分行います。
【アタック】ではキャラのAT分のダメージを相手に与えます。敵が複数いる時は特殊な場合を除き、攻撃対象を指定します。指定がない場合ランダムになります。また、稀に攻撃を避けられることもあります。判定はランダムです。特定の才能を持つ人間は攻撃が当たりやすいです。また、敵からの攻撃を避けやすいです。また、全員で攻撃を指定すると総攻撃となります。特にボーナスとかはない。書く方が楽なだけです。
【ガード】では1ターンの間自身のDF分相手からダメージを軽減します。また先制を取られた場合は効果がありません。
【スキル】ではSPを消費してキャラクターのスキルを使うことができます。こちらの攻撃は避けられることはありません。 スキルを使うとSPを消費しますが、戦闘が終わった際に自動回復します。ただし、連続戦闘の場合は回復しません。またサブメンバーがサブ用のスキルを覚えていると戦闘中にスキルを使えます。
【アイテム】では持っているアイテムを使うことができます。対象を指定することもできます。
【エスケープ】では1ターンを捨てて戦闘から逃げます。連続で行うと絶望ゲージが上がります。ただしボスやイレギュラーバトルの場合はこのコマンドは使えません。


~闘技場について~
【闘技場】では通常のバトルよりも歯ごたえのある戦いができます。
【一日の行動】の際にほかの行動同様、選択できます。【探索】と同じように丸一日消費するので気を付けましょう。
【闘技場】では【鍛錬】よりも多くレベルが上がり、特別なアイテムも入手することができます。
【闘技場】はレベル1~Ⅹまでのランクがあり、ランクごとに敵の強さが変わります。また、一度クリアしたランクは二度挑戦できないので気を付けてください。
【闘技場】では死んでも仲間が消えることはありませんが、レベルも上がらずアイテムももらえず一日を無駄にしてしまう点だけお気を付けください。


~モノクマハウスについて~
【モノクマハウス】では4つの事を行えます。一度の行動でそれぞれ1回ずつ行えます。
【外との交流】交流についてを参照。
【交渉】サブメンバー枠が空いている場合キャラを選択し、仲間にするために交渉をすることができます。相手が納得するように交渉できれば仲間になってくれます。サブメンバー枠はシナリオを進めることでモノクマから増やしてもらえます。
【パーティ診断】パーティメンバーの成長タイプやこれから覚えるスキル、運用方法などのヒントを与えてもらえます。もしもサブメンバー枠が余ったときは利用してパーティの欠点を補えそうなメンバーを仲間にすると戦略性が広がります。
【錬金屋】は持っているアイテムの回復等の数値をHPにしてパーティメンバーに与えることができます。錬金に使ったアイテムはなくなり、数値の無いアイテムは錬金不可となります。


モノクマ「ここまでの簡単なあらすじ」

江ノ島のコロシアイ学園生活を脱出スイッチで全員無事で乗り越え、日向たち絶望組もなんだかんだで改心させた苗木はモノクマにゲームの誘いを受ける。
強引にモノクマの余興に巻き込まれ、ゲームの世界へと閉じ込められてしまった苗木。
とにかくゲームしろよとモノクマに脅された苗木は日向・七海・霧切・江ノ島の5人とともに冒険へ旅立つ。
なんだかんだでそこは死んだら二度と復活できず、いつのまにかゲームの死=現実の死と錯覚してしまった苗木一行。
その一方でモノクマの陰謀により、狛枝・戦刃・舞園・桑田・辺古山の5人が苗木達を打倒するため立ち上がる。
しかし速攻で空気に。
やがて苗木達はかつての仲間の十神・西園寺・大和田・セレス・花村を撃破していく。
その道中に何度もパーティ崩壊の危機を回避した一行だったが、セレスの策略により江ノ島がトラップにかかってしまう。
江ノ島を救おうと苗木もパーティを離脱してしまい、途方に暮れる一行。
困惑しながらも前に進もうとする一向に一筋の希望が降り注いだ。その希望の先に待っているものとは…。
そして進んだ先のボスに挑む日向達。勝利したのもつかの間、なんと狛枝と戦刃に強襲されてしまう。
圧倒的な戦力差の前に、絶望してしまう日向達…しかし、そこに【彼】が帰ってくる。
苗木と江ノ島は死んでいなかった、なんとか生き延びた彼らは大神の協力もあり、一回り成長して日向達を救うために舞い戻る。
無事に狛枝達を追い払った苗木達は、つかの間の休息を楽しむ。
その水面下で不穏な動きが進んでいることも知らずに…。
そして第5層のボスへとたどり着いた苗木達。そこで待っていたのは修羅の少女、舞園たちだった。
死闘の末、彼女たちを無事に撃破した苗木達は、狛枝から驚愕の真実を知らされる。
そしてパーティに暗雲が立ち込める…。
モノクマから与えられた自由時間をパーティは満喫する。
同時に、パーティの今後を左右しかねない、驚愕の事実。
苗木たちは真実に近づきつつも、それに気づけないでいた…。

モノクマ「ゲームクリアまであと少し、オマエラならきっとクリアできると信じてるよ!」

七十五日目リザルト


苗木      江ノ島     
5800/5800    6300/6300
4700/4700    5000/5000
日向     七海
5500/5500    6000/6000   
4500/4500    5100/5100
罪木      霧切
5000/5000    4800/4800
5700/5700     6000/6000
豚神
5500/5500
4200/4200


アイテム
【ブルーラム】(SPを200回復する) 【桑田バット】(敵単体800ダメージ)【逆転サイコロ】(使用ターンの間どんなスキルを使ってもSPや絶望ゲージを消費しない) *2
【罪木の注射器】(単体のHPを100%回復)*2 【穴抜けのヒモ】(探索から脱出することができる)
【サーチトレジャー】(戦闘後のアイテムが増える)【希望のあんパン】(SPを1000回復する)*4
【罪木の包帯】(3ターンの間HPを500回復する。)*2 【タミフルン】(味方全体のSP500回復)*2【希望の漢方薬】(状態異常を回復する)*2
【人型の札】(今までに倒しきた敵を一人だけ、交渉することができる)【謎の巻物】(今まで倒してきた敵のスキルを一つだけ、任意のキャラクターに覚えさせることができる。)【希望の種】(味方単体に敵の攻撃を一度だけ防ぐ効果を付与)

【絶望ゲージ】3(危険度:小)

【好感度】(★は0.5☆は1)
日向創☆10 霧切響子MAX
七海千秋MAX 江ノ島盾子MAX
罪木蜜柑MAX 豚神白夜☆10
不二咲千尋☆4 狛枝凪斗☆4
セレスティア・ルーデンベルク☆1 腐川冬子☆3
終里赤音☆1 舞園さやか☆1
戦刃むくろ☆1 大神さくら☆1

ステータス
【苗木誠】 lv265 【聖剣】
AT/DF 600+500/700+500
【パーソナル】
『自覚せし幸運』…二回行動。また、瀕死の攻撃を受けた際に一度だけ無効化。
『忘れた記憶』…ダメージを受けると攻撃力が半減する。
【任意スキル】
『弾丸論破』…敵単体に850ダメージ。【SP500】
『閃きアナグラム』…永続で攻撃力2倍にする。【SP800】
『ノンストップ議論』…味方全体で二回攻撃になる。【SP1200】
『M.T.B』…敵全体にランダムに50ダメージを20回与える。【SP1000】
『希望の言弾』…使用ターン含まず2ターンの間味方単体のHPを1500増加する。【SP800】
【合体技】
『再生-rebuild-』…(苗霧)苗木と霧切のスキル全て(合体技含む)を使う。【SP0・苗霧HP50%↓】
『神をも打ち抜く拳狼の雷槍』…(苗日)敵一体に7500ダメージ。【SP1500】
『希望と絶望のアンサンブル』 …(苗江)敵全体に苗木・江ノ島のAT5倍のダメージを与える。【SP2000・苗江HP30%↓】

【江ノ島盾子】 lv265 【絶望の大剣】
AT/DF 800+300/800
【パーソナル】 
『超高校級の“絶望”』…二回攻撃、二回行動。HPが30%を切ると自身のAT/DFが上昇。
『苗木への恋心?』…苗木と一緒にPTにいる際、自身のHPが半分を切ると攻撃力上昇。
『悪の美学』…奇数ターンは消費SPが倍になり、3ターン毎に行動をしない。
【任意スキル】
『モノクマ太極拳ver1.01』…先制 自身のAT+500のダメージを与える。【SP1000・絶望1↑】
『絶望バリア』…先制 パーティ全体に使用ターン含む3ターンの間防御効果付与。【SP1000・絶望1↑】
『鬼神円斬』…敵全体にランダムで10回攻撃。使用後攻撃力が半減。【SP1200・絶望2↑】
『絶望色の制約』 …敵全体に9999ダメージ。【SP2000・絶望3↑】
【合体技】
『苗木ボンバー』…(江苗)敵全体に4000ダメージを与える。【SP1500】
『執行者-excutioner-』…(江霧)状態異常耐性の無い敵全員を即死させる。【SP2500】

【日向創】 lv263 【未来の太刀】 【モノクマのアクセサリ】
AT/DF 550+200/600
【パーソナル】
『超高校級の“未来”』…全体攻撃、状態異常にかからない、敵の自動発動スキルを無効化する。
『真・カムクライズル』…毎戦闘、死亡した際一度だけHP/SPが全回復&各ステータスが上昇。
【任意スキル】
『反論ショーダウン』…強制先制 味方一人の攻撃を常にかばい、代わりにダメージを受ける。【SP500】
『ロジカルダイブ』…先制 全員が1ターン消費して、パーティ全員のATをDFの値だけアップ。【SP500】
『弾丸論破extend』…敵単体に500ダメージ。2ターン敵の攻撃力半減付与。【SP600】
『新アナグラム』…使用ターンの間敵の攻撃を自身に集中させる。その際DF分軽減あり。【SP800】
【合体技】
『剣閃乱舞』…(日江)敵単体に防御や半減系スキル効果無視で使用者両名のAT2倍のダメージを与える。【SP1000】
『デイドリームシンドローム』…(日罪)使用後戦闘終了まで毎ターンHPが20%回復し、状態異常を防ぐ。【SP1000・日罪HP50%↓】
『Re:ダンガンロンパ』…(日七)5ターンの間日向と七海が使用不能になり、超高校級の“未来”を操作することが出来る。【SP0・日七HP50%↓】
『超・右脳開放』…(日霧)毎ターン終了後にAT分の追加攻撃が発生する。【SP0】

【霧切響子】 lv253 【聖杖】
AT/DF 350+300/450+300
【パーソナル】
『超高校級の“探偵”』…敵のステータスや弱点を確認でき、毎ターンSPが現在SPの10%回復。
『確かな想い』…苗木と合体技をした際、次のスキルの効果が2倍になる。
『真実を射抜く目』…自身の攻撃で敵を倒した際、再行動できる。
【任意スキル】
『弱点特攻』…敵単体にAT2倍+500のダメージを与える。【SP600】
『理論武装』…敵の攻撃を受けた際に一度だけ受けたダメージの半分を相手に返す。【SP1500】
『右脳解放χ』…敵全体にAT5倍+500ダメージを与える。【SP1200】
『名推理』…敵全体に1500+500ダメージ。【SP1000】
『フルアクセス』…敵単体に2000+500ダメージ。【SP1500】
【合体技】
『真実の探求者』…(霧苗)使用ターン含む3ターンの間パーティ全体でスキルの消費SPが0になる。【SP2000】
『トリック・オア・デストロイ』…(霧七)SPが全回復する。【SP0・霧七HP30%↓】
『アンリミテッド・コード』…(霧日)敵のスキルを先頭終了まで封じることができる。【SP1500】

【七海千秋】 lv245 【モノミ人形】【ウサミのアクセサリ】
AT/DF 500+150/450+150
【パーソナル】
『超高校級の“ゲーマー”』…状態異常無効、二回行動になる。偶数ターンにコアゲーマーを使用することが出来る。
『大好きな人』…日向と合体技の際、ダメージが上昇する。
『プログラム』…自身の行動前に敵が撃破された場合、行動を終了する。
【任意スキル】
『エグゼス』…敵のAT/DFを入れ替える。【SP800-50】
『調査』…先制 敵のステータスや弱点を確認できる。【SP0】
『明鏡止水』…強制先制 使用ターン間敵は行動ができない。【SP2000-50】
『ボギャブラリー』…敵単体に800ダメージ+毒付与。【SP750-50】    
『チートコード』…先制 味方全体で敵の攻撃を一度だけ完全に無効化する。【SP1200-50】
【合体技】
『デュアル・イグニッション』…(七日)全体に3000ダメージ。+麻痺+毒を与える。【SP1000-50】
『オールフィクション』…(七霧)使用すると1ターン前の時点までの行動を無かったことにする。【SP1000-50】
『ブレインクラッシャー』…(七豚)攻撃に麻痺効果がつく。

【罪木蜜柑】 lv256 【日寄子のお菓子】 【澪田のギター】
AT/DF 400+100/400+100
【パーソナル】
『超高校級の保健委員』…状態異常、能力低下、スタンを無効化する。毎ターンSPが現在SPの10%回復。
『あなたのために』…日向と一緒にPTにいる際、回復量が2倍になる。
【任意スキル】
『完治の光』…味方一人のHPを50%回復する。【SP1200】
『即席治療』…先制 味方一人のHPを500+200回復する。【SP500】
『癒しの恵み』…全員のHPを400+200回復。【SP800】
『偽装検死』…先制 使用したターンの間選択した味方はどれだけダメージを負ってもHP1残る。【SP1000】
『完璧治療』…味方の状態異常を治療する。【SP500】
『お注射の時間です』…敵単体に800ダメージ+麻痺付与。【SP800】
【合体技】
『癒しと希望の唄』…(罪苗)味方全体のHPを全回復し、味方全体のAT/DFを上昇させる。【SP1500】
『ディバインバスター』…(罪霧)1ターン後に敵全体のHPを30%削る。【SP2000】
『福音の鐘』…(罪七)敵全体のステータスを半減、味方全体のステータスを2倍にする。【SP2000】

【超高校級の“詐欺師”豚神】 lv255 【魔導書】
AT/DF 0+300/0+300
【パーソナル】
『詐欺師』…自身のAT/DFをそれぞれ最も強い味方と同じにする。
『嘘の仮面』…味方の任意発動スキルを全て使うことが出来るが、SP消費が倍になる。
『後方支援』…自身がサブ時でも、スキルを使うことができる。
『仲間のために』…敵が合体技や強力な技を使用するターンに警告する。
【任意スキル】
『ラーニング』…自身がパーティに居る時、相手の任意スキルを使うことができる。効果が半減するものもある。【SP0】
『コンバート』…現在HPの50%をSPに変換する。【SP0】
『行動予測』…先制敵単体をスタン状態にする。【SP1000】
【合体技】
『ライフゲイン』…(豚罪)味方全員に3ターンの間与えたダメージ分HPを回復させる効果を付与。【SP1000】
『ダメージチェンジ』…(豚日)使用ターンの間、受けたダメージと与えたダメージが逆転する。【SP1500】
『バトルセンス』…(豚苗)次に使うスキルの効果を2倍に高める。【SP0】

苗木「よし、探索に──」

苗木「……えっ?」

一瞬、脳裏に過ぎった光景。
血と絶叫。
誰かが、消えていく光景。

苗木(…いや、違う。こんなものは幻だ)

慌てて皆の様子を確認するも、特に以上は無い。
探索ということで、若干皆の顔つきがこわばっているが、それだけだ。

苗木(…弱気になるな。大丈夫、皆がついてる)

苗木は頬を張り、ゆっくりと歩みだす。
仲間たちもそれに続いた。


日向「…そういえば、前に派遣に行ったときは3つの扉があったらしいな」

豚神「ああ。日本語で言うと、希望・未来・絶望だ」

霧切「おそらくその扉に対応した人がいなければ入れないのでしょうね」

江ノ島「なら苗木クンは希望、日向クンは未来、あたしが絶望でいいんじゃーん?」

七海「うん、たぶんそれが正しいと思うよ」

罪木「でしたら、他のメンバーはどうします?」

豚神「2・2・3で分けるのが理想だろうな」

苗木「うーん、戦力的になるべく均等になる方がいいよね」

霧切「ええ。下手に戦力を偏らせると途中で事故の可能性もあるわ」

七海「…なら、これがいいんじゃないかな?」

希望の扉
苗木・豚神・罪木

未来の扉
日向・七海

絶望の扉
江ノ島・霧切

霧切「…なるほど、苗木君の火力を生かすためには最低1ターン必要、その間を凌ぐためにヒーラーとHPタンクを用意する」

日向「俺の所は俺が七海をかばいつつ、七海のサポートを受ける。まあ磐石の組み合わせか」

江ノ島「あたしの所は高ステータスを生かした戦術ってとこ?霧切っちの調査もあるし、まあ負けはなさそうな組み合わせって感じ」

苗木「それじゃ、ボス部屋の前で会おう」

罪木「はい、必ず」

七海「…それじゃ、日向くん行こうか」

日向「そうだな」

江ノ島「よーし、行くぞー霧切ー」

霧切「はいはい」

苗木「豚神クン、罪木さん、行こうか」

豚神「ああ」

罪木「はい!」


視点選択
1 苗木視点
2 日向視点
3 江ノ島視点


歩いていくと、豚神が言っていた通りfutureと書かれた扉に辿り着く。

日向「いまさらだけど…これは俺でいいのか?」

七海「うん、間違いないよ」

日向「よし、それじゃ行くぞ」

扉を開けようと触れた瞬間──淡い光を放ち、扉がひとりでに開く。

日向「当たり、みたいだな」

七海「よし、頑張ってこう」

ふんす、と少しだけ鼻息を荒くする七海。
きっとゲーマーとしてダンジョン探索が楽しくて仕方ないんだろうな。
やっぱり可愛いぜ。


日向「…うーん、何も無いな」

七海「……そうだね。トラップも敵もいないよ」

七海はしょぼーんとしている。
かくいう俺もこの何も無さに拍子抜けだったりする。
久々の探索で気を張りすぎていたのだろうか?…いや、それにしても敵が少ない。

日向「少し警戒を緩めるか。この調子で何もないと面倒だ」

七海「そうだね」

俺たちは警戒を緩めて少しばかりの余裕とともにダンジョンを歩いていく。
今までは気を張りすぎてて考えもしなかったが、せっかく七海と二人きりだというのに会話の一つも無いのは勿体無いな。

日向「なあ、七海」

七海「どうかした?」

以前、苗木にした質問を七海にもしてみる。

日向「ループ物についてどう思う?」

七海「ループ物かあ…ADVが多いから特に得意ってわけでもないかな?」

日向「はは…まあ七海だったらそういう解釈か。そうだなー…もし自分がそういう状況になったらどうする?」

俺はあくまで雑談の延長として聞いた。
特に深い意味があるわけでもないし、答えを期待するわけじゃない。
七海がどうするのか、それが純粋に気になっただけ、だったんだが。

七海「……」

七海は口を噤んだ。
俺のほうを、おっかなびっくり…まるで、隠し事がばれた子供のような瞳で見る。

日向「あ、あれ?なにかおかしなことを聞いたか?」

七海「……」

七海は答えない。
まるで俺の心の中を覗き込むかのように、じっと見つめている。
俺もまた、七海の行動の意図が読めず、同じように見つめ返した。
どれだけ経っただろうか?
体感時間だと数分は経っていた気がするが、多分現実じゃ数秒も経ってない。
七海はようやく重たい口を開いた。

七海「……日向くんは、どうしたい?」

俺が質問したはずなのに、七海がそう質問を返してきた。
だけど七海の顔は何か迷っているような、そんな表情で。
……真剣に答えたほうが良さそうだな。


日向「俺は…多分、諦めるだろうな」

七海「…っ」

その答えを聞いたとき、七海は哀しげに目を伏せた。
だから慌てて弁解する。

日向「お、おい…話しを最後まで聞いてくれよ」

七海「えっ…?」

日向「えっと、多分俺一人じゃ諦めてしまうと思う。だって世界が繰り返されているなんて…誰が信じてくれるんだよ」

七海「そう、だよね…」

日向「でもさ、もし自分の近くに、俺の言うことを信じてくれる大切な人がいて、その人が信じてくれるなら…俺は頑張ろうってそう思うぞ」

七海「…!」

日向「きっとさ、どんな状況でも、信じてくれる人がいる。無条件で力になってくれる人はいる…そう思う」

そこで言葉を切って、七海と視線を合わせて、続きを言う。

日向「だから俺は諦めない。仲間に、友達に…恋人に、俺は相談するよ」

苗木が教えてくれたこと。
誰かに相談する。
たったそれだけで、どんなに絶望的な状況でも頑張ろう、そう思える。
だから七海にも──それを知ってほしくて。

七海「日向くん…」

日向「七海、俺はお前を信じるぞ」

…俺は多分、七海の行動の意図を分かっていた。
俺は気付いていたけど、目を逸らした。
いや、七海を疑いたくない俺のわがままなのかもしれない。
けれど…もし、七海が俺に“それ”を相談してくれたのなら、その時は──


「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」


日向「ったく…空気が読めない奴だな」

七海「…よし、日向くん。こんな奴さっさと倒しちゃおう」

日向「おう!」


【バトルが発生しました】

1ターン目。

モノケモノ「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

日向(HPがやたら多いな…仕方ない、そろそろ“アレ”のお披露目だな)

日向 七海 の行動をそれぞれ設定してください。

日向     七海
5500/5500    6000/6000   
4500/4500    5100/5100


ステータス
>>6-7

敵ステータス
モノケモノver2 lv275
HP 20000/20000
SP 0/0
AT/DF 1500/1000
スキル 『強力な爪』…全体攻撃。【自動】SP0
    『大翼』…二回行動。【自動】SP0



全体攻撃って、反論ショーダウンしても意味ないんだっけ?それとも二倍ダメージ受けるの?

>>14
全体攻撃はかばえませんね。

安価下。

>>14
発動しません。
日向が絡み、なおかつ日向が攻撃する際に発動します。明記はしてませんが。

安価下

日向「おい、七海。アレやるぞ!」

七海「うん、了解──!」

日向と七海はいつも通りの連携で、いや、いつも以上の連携でモノケモノを追い詰める。
モノケモノは日向と七海の連携攻撃になす術も無くやられていく。

日向「うおおおおおおっ!」

七海「デュアル──」

日向「イグニッション!!」

日向の高速連撃と七海の強大なエネルギー弾がモノケモノを襲う。
それは、勝利への一撃。
その攻撃が成功した瞬間、二人の勝利は揺るがない。
モノケモノに3000ダメージ。麻痺付与。毒付与。

日向「よし、これで5ターン稼げたな」

七海「じっくり追い詰められるね」

日向「というか、5ターンもあればちくちく削るだけで勝てそうなもんかもな」

七海は会話の最中にエネルギー弾を練り上げ、モノケモノへと放つ。
モノケモノに650ダメージ。

日向「俺も、やっておくか」

日向は抜刀し、モノケモノへ一太刀浴びせる。
モノケモノに750ダメージ。

モノケモノ「ぐぎ…ぐぎぎ……」

モノケモノは麻痺により攻撃出来なかった。

2ターン目。

モノケモノ「グォ…ぐぎ……ぐが」

七海(…うーん、失敗したかな?私達はちょっと火力足りないし、敵に攻撃させて合体技使ったほうがスムーズに倒せた気がするよ)

日向 七海 の行動をそれぞれ設定してください。

日向     七海
5500/5500    6000/6000   
4500/4500    4150/5100


ステータス
>>6-7

敵ステータス
モノケモノver2 lv275
HP 15600/20000
SP 0/0
AT/DF 1500/1000
スキル 『強力な爪』…全体攻撃。【自動】SP0
    『大翼』…二回行動。【自動】SP0


毒付与、麻痺付与をステータスに反映させるの忘れてました。
毒ダメージは毎ターン最初とします。

安価下

あ、計算忘れてました。
4500ダメージですね。

毒ダメは現在HPの5%です。

安価下

モノケモノ「グギャアアアアア!」

日向たちの攻撃により、毒が入り込んだのか、モノケモノは苦しそうにもがいている。
モノケモノに705ダメージ。

日向「集中しろ…!」

日向は目を閉じ、集中していく。
集中し、気を静め、論理を組み立てていく。
この戦いにおいて勝利する為にはどうするべきかを、慎重に組み立てていく。

モノケモノ「ぐがぎぎぎガガ!!」

動けないのが悔しいのか、モノケモノはうめき声を上げていた。
モノケモノは攻撃を失敗した。

3ターン目。

モノケモノ「グォ…ぐぎ……ぐが」

七海(…いや、大丈夫そうだね)

日向 七海 の行動をそれぞれ設定してください。

日向     七海
5500/5500    6000/6000   
4000/4500    4150/5100


ステータス
>>6-7

敵ステータス
モノケモノver2 lv275 毒・麻痺付与
HP 13395/20000
SP 0/0
AT/DF 1500/1000
スキル 『強力な爪』…全体攻撃。【自動】SP0
    『大翼』…二回行動。【自動】SP0


モノケモノ「グギャアアアアア!」

日向たちの攻撃により、毒が入り込んだのか、モノケモノは苦しそうにもがいている。
モノケモノに705ダメージ。

日向「──推理は繋がった!」

日向が、この戦いにおける最善の策を導き出す。
この策なら、負けは無い。
日向は自信にあふれた表情を浮かべる。
PTのATがDF分上昇。

日向「いくぞ、七海!」

七海「うん!日向くん!」

日向と七海の連携攻撃。
一閃と一撃。
二つの攻撃は混ざりあい、一つになる。
モノケモノに3850ダメージ。

モノケモノ「ぐがぎぎぎガガ!!」

動けないのが悔しいのか、モノケモノはうめき声を上げていた。
モノケモノは攻撃を失敗した。

4ターン目。

モノケモノ「グォ…ぐぎ……ぐが」

七海(次のターンには元に戻っちゃうなあ)

日向 七海 の行動をそれぞれ設定してください。

日向     七海
5500/5500    6000/6000   
4000/4500    4150/5100


ステータス
>>6-7

敵ステータス
モノケモノver2 lv275 毒・麻痺付与
HP 8840/20000
SP 0/0
AT/DF 1500/1000
スキル 『強力な爪』…全体攻撃。【自動】SP0
    『大翼』…二回行動。【自動】SP0


モノケモノ「グギャアアアアア!」

日向たちの攻撃により、毒が入り込んだのか、モノケモノは苦しそうにもがいている。
モノケモノに442ダメージ。

日向「同じ描写だぜ!」

七海「手抜きだね!」

日向たちの一撃!
モノケモノに3850ダメージ。

モノケモノ「ウ…ゴォォカ…セロオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

動けないのが悔しいのか、モノケモノはうめき声を上げていた。
モノケモノは攻撃を失敗した。

日向「今動かせろって言わなかったか?」

5ターン目。

モノケモノ「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

日向(あと少し、このターンでダメージ与えて…次のターンには終わるな。これならノーダメっぽいぞ)

日向 七海 の行動をそれぞれ設定してください。

日向     七海
5500/5500    6000/6000   
4000/4500    4150/5100


ステータス
>>6-7

敵ステータス
モノケモノver2 lv275 毒・麻痺付与
HP 4548/20000
SP 0/0
AT/DF 1500/1000
スキル 『強力な爪』…全体攻撃。【自動】SP0
    『大翼』…二回行動。【自動】SP0


モノケモノ「ハメルナアアアアアアアアアアアア!」

日向たちの攻撃により、毒が入り込んだのか、モノケモノは苦しそうにもがいている。
モノケモノに227ダメージ。

日向「なんていうんだろ…まさに今Aボタンを連打してる気分だぜ」

七海「レベル上げすぎると陥る現象だよね。でもゲーマーになると最高難度プレイが当たり前だから雑魚戦でもボタン連打なんて出来ないよ」

日向「そ、そうか…」

日向たちの一撃!
モノケモノに3850ダメージ。

モノケモノ「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!」

動けないのが悔しいのか、モノケモノはうめき声を上げていた。
モノケモノは攻撃を失敗した。

日向「哀しくなってくるな…まあ、これで終わりだろ…」

七海「思ったよりも時間かかっちゃったね、急がないと」

日向「ああ」




視点選択
1 苗木視点
2 江ノ島視点

江ノ島「…ねえ、霧切ちゃーん」

霧切「なぁに、江ノ島さぁん?」

疾走なう。
何故か、と問われれば答えは一つ。
扉を開け、あたしがあちこちべたべた触りまくり、霧切ちゃんが調査と称してあちこちべたべた触りまくった結果。
今、あたし達は50…いや、100を超えるモンスターの軍勢に追われている。

江ノ島「もう無理だって!一緒に死のう?」

霧切「断るわ!絶対に死なない!」

とはいえ、この私様に所詮凡人程度の体力しかない霧切ちゃんに追いつけるわけが無く、みるみると差は広がっていく。
一瞬、脳内に見捨てるビジョンが浮かぶ。
きっと今、此処で彼女を見捨てればお手軽に絶望を味わうことが出来て、かつ苗木クンにも絶望を与えられる。
…うん、昔の私なら迷わず選んでただろうな。

江ノ島「……」

はぁ、なんで私がこんな二流悪党みたいな真似をしなきゃならないんだろうか?
江ノ島盾子の魅力を答えよと言われたならば、迷わず悪の心を忘れないこと。なんて答えられるくらいの悪党である私が。
今、仲間()を背負っている。
もう少し頑張れ、なんていいながら一緒に逃避行。
……ほんと、笑えるわ。思わず自嘲的な笑みがこぼれた。

霧切「江ノ島さん…」

江ノ島「何も言うな。今何か言われたら迷わずあのモンスターの群れに放り投げる」

霧切「……そう」

あーもう。
これも全部希望()なんて妄信してるバカ苗木のせいだ。
やっぱりあいつにはあたしが直々に最高級の絶望を与えてやらないと気が済まない。


どれだけ逃避行を続けただろうか?
目の前には、一つの扉が。
ちらりと後ろを盗み見る。
…まだモンスターの群れは来ていないようだった。

霧切「どうやら、出口のようね」

江ノ島「……」

霧切「?どうしたの」

江ノ島「……さあ問題でーす。この状況でどうしたら絶望するでしょうかー?」

霧切「そんなの…まさか!」

霧切ちゃんは慌てて扉を開く。
そこには、無。
まあつまり、その先は即死トラップというわけで。
前方の即死、後方のモンスター。
絶体絶命。

江ノ島「うぷ…うぷぷぷぷ……!」

だというのに。
私の背筋を快感が走る。これ、これだよ…。
久しく味わってなかった感覚。
後ろから地響きが聞こえてくる。お出ましかなぁ?うぷぷ。

霧切「……考えろ…この状況をどうにか…くっ」

江ノ島「あれか」

霧切「へっ?」

モンスターの群れ。その中に、一際目立つ一体のモンスター。
あいつが司令塔だ。ようは、あれをぶっ殺せば、他のモンスターの統率は取れなくなる。

江ノ島「あのモンスターに集中攻撃。他のモンスターは全部無視ね」

それだけ言って、私はモンスターの群れへと突っ込んでいく。霧切ちゃんも少し躊躇したが、一息つくと私に続いた。


【バトルが発生しました】

1ターン目。

モノケモノ「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

江ノ島(さっさと終わらせないと、めんどくさそうだわぁ)

江ノ島 霧切 の行動をそれぞれ設定してください。
  
江ノ島     霧切
6300/6300    4800/4800   
5000/5000    6000/6000

ステータス
>>6-7

敵ステータス
モノケモノver2 lv275
HP 20000/20000
SP 0/0
AT/DF 1500/1000
スキル 『強力な爪』…全体攻撃。【自動】SP0
    『大翼』…二回行動。【自動】SP0




でも江ノ島さんがとっとと潰せって言ってんだよな
希望のあんパンとの併用とか出来ないのかな
出来るなら2回行動と霧切さんの分で2000は確保できるけど

>>54
併用は出来ませんね。執行者使った時点で敵死亡なので、戦闘終了します。

安価下

江ノ島「よーし、防御しとくよん♪」

霧切「防御してる暇なんて…あるの…かしら!」

モンスターの群れに突っ込んでおいて暢気なものである。
江ノ島は軽やかにモンスターたちの猛攻から逃れ、適当に見繕ったモンスターを大剣で弱らせ、盾にする。
霧切はモンスターたちの攻防を紙一重で避けていき、上手く立ち回ってモンスターに同士討ちをさせる。

モノケモノ「ギッシャアアアアアアアアア!」

ちょろちょろと動く江ノ島たちが気に入らないのか、咆哮をあげるモノケモノ。
そして姿を追いかけるのが面倒になったのか、背中に生えている翼でモンスターごと巻き込むように薙ぎ払った。

江ノ島「ぐっ…!」

霧切「っ!」

江ノ島と霧切は近くにいたモンスターを盾にして攻撃を防いだものの、翼によって引き起こされた風圧によって吹き飛ばされる。
鈍い音を立てて壁へと激突した江ノ島たちは、唇から僅かに血を零した。

江ノ島「やっばい痛いわ…」

霧切「他のモンスターにも気を払わなくちゃならない。長期戦はまずいわね」

江ノ島「一撃で決める…かな」

江ノ島に700ダメージ。
霧切に750ダメージ。

投下終了です。
次回、ボス戦。

てことで、江ノ島1400で霧切1500か
妹様強いんだけど、苗霧いないとろくに機能しないんだよなぁ……

で、日向の自動発動スキル無効ってパーソナルに対して有効ってことでいいの?

*2の表記忘れてましたね。
なのでダメは>>62の通り江1400、霧1500です。

>>62
自動発動=パーソナルでいいです。敵のパーソナルはありませんので。敵=自動発動、味方=パーソナルでお願いします。

ちなみに視点選択の意味ですが、選択する順番でイベントは多少変わります。
重要なのは、最後に選択した視点は戦闘が起こりません。ですので、そのメンバーはHP/SPが完全な状態で挑むことが出来ますよーってことで。

投下します。

2ターン目。

モノケモノ「ギャ…グルァ……!」

霧切(あまり時間をかけてはいられないわ。さっさと決める!)

江ノ島 霧切 の行動をそれぞれ設定してください。
  
江ノ島     霧切
4900/6300    3300/4800   
5000/5000    6000/6000

ステータス
>>6-7

敵ステータス
モノケモノver2 lv275
HP 20000/20000
SP 0/0
AT/DF 1500/1000
スキル 『強力な爪』…全体攻撃。【自動】SP0
    『大翼』…二回行動。【自動】SP0



江ノ島「ヒャッハアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

霧切「貴方のテンションについていくの無理」

江ノ島「そんな事言うなよォ」

霧切「まったく…やるならさっさと」

江ノ島「おっけー…ぶっ殺してあ・げ・る☆」

江ノ島は猟奇的に笑って、地面を思い切り踏みつける。
その瞬間、江ノ島を中心として大きな揺れ…地震が起きる。
霧切はそれに動じず、ただ佇む。
しかし他のモンスター達は違った。
突然起こった地震に為す術も無く混乱に陥り、司令塔であるモノケモノも突如起こった地震に対応することが出来ない。
江ノ島はそんなモンスター達の様子を邪悪な笑みを浮かべながら一頻り鑑賞すると、踏みつけた地面へと何かを書き出した。
霧切も同じように、何か…魔法陣のようなものを描く。

江ノ島「ほらァ!処刑の時間だよォ?」

霧切「本当に悪趣味ね貴方は…」

霧切はため息を吐きながら、その魔法陣へ何か語りかける。
魔法陣に淡く桜光が灯り、中心から何か棒のようなものが伸びてくる。
江ノ島と霧切は同時にそれを引き抜いた。

江ノ島「執行者にぴったりの武器じゃん♪うぷぷぷぷ!!」

霧切「ええ、そうね」

それは鎌。
ファンタジーなどでよく描かれる、死神が持つ物と見た目は変わらない。
そして──その武器は死神の鎌と同じように、魂を刈り取る。
つまりは、この鎌に触れた生命はみな、完膚なきまでに、塵一つ残さず、消え失せる。

江ノ島「さあ、ショータイムだッ!」

江ノ島の歓喜の叫びとほぼ同時に、モンスター達の目の前に、“死神”が現れた。
死神はモンスター達を鎌で引き裂き、消し去る。
万に一つの例外も無く、モンスター達は塵となって消え失せた。

江ノ島「あはははははははははははは!!!!」

霧切「…ふぅ」

モンスターは全滅した。

江ノ島「さぁて、モンスターは全殺ししたし、のんびり出口でも探しますかね」

霧切「そうね、他の皆ももう合流してる頃でしょう」




苗木「…ふぅ」

僕らはもう、ボス部屋の前に辿り着いていた。
小さくため息を吐く。
問題は無かった。むしろ驚くほどスムーズに、僕たちの探索は終わった。
トラップは豚神クンが事前に察知して教えてくれるし、モンスターで受けた傷は罪木さんが癒してくれた。
そして扉を守るモンスターを倒し、僕らは他のみんなの到着を待っている。
…だけど。
僕が先に進めば進むほどに、自分の中の違和感…いや既視感が膨らんでいく。

苗木「……」

罪木「苗木さん、気分が悪いんですか?」

苗木「ううん、そうじゃないよ。久々の探索だから少し気を張りすぎちゃって…」

僕はそう誤魔化す。
違う。そんなわけは無い。
何だこの感覚。気持ち悪い。
ねっとりと絡みつくような、嫌な感じ。
それは僕の全身を舐めるように這いずり回り、不快感を与えてくる。

苗木(……っ!)

また、来た。
脳の奥がジリジリと焼ける感覚。
何か…僕は……思い出し………!



七海「ごめんね、それ以上は見せられないんだ」



七海「…おやすみなさい」



苗木「あ、ああ……っ!」

思い出した光景。
僕は、彼女に、何かを、それで、記憶が。
僕の中で何かが繋がっていく。
疑惑が確信へと変わっていく。
七海ちゃんは僕の体調が悪くなるかもしれないと“知ってたんだ”。
だけど、どうして、なぜ。

豚神「おい、苗木?」

苗木「っ!?」

その声で現実へと帰る。
豚神クンと罪木さんが心配そうに僕の事を見ていた。
心配をかけないよう、頑張って笑みで応える。

苗木「大丈夫…ちょっと気が緩みすぎてたみたいだ」

豚神「まったく…ボス部屋はすぐそこだぞ。その調子では困る」

苗木「そうだよね。うん、がんばろう」

豚神クンの言うとおりだ。
確かにこの件は気になるけど、今は余計なことを考えている場合じゃない。
ボスに集中しないとな…。

そう気合を入れなおすと同時に、日向クン達と江ノ島さん達がそれぞれの扉から出てきた。
全員揃っている。どうやら無事に突破できたみたいだ。

日向「よう苗木。お疲れ」

江ノ島「ちょろいちょろい」

苗木「皆無事で何よりだよ。さあ、ここからが本番だ──」

僕らは目の前に聳え立つボス部屋の扉を、ゆっくりと開く。
その先に待つのは──。

終里「ったく、おせーぞオメーラ!」

弐大「がっははは!待ちすぎてクソが限界じゃあああああああああああ!」

日向「…やっぱりお前らなんだな」

終里「おう!本気でボコすからそのつもりでよろしくな!」

苗木「い、嫌な予告だね…」

霧切「あら、二人だけなのね?てっきり三人はいると思ってたわ」

弐大「よく考えてみぃ!わしらだけで三人分の戦力とは思わんかのう?」

終里「むしろオレだけでも三人分だな!弐大のおっさんも足せば十人分だぜ!」

罪木「ど、どういう計算なんでしょう…」

終里「んなもん戦闘力で計算したに決まってんじゃねーか!」

豚神「ああ、そうか…」

江ノ島「=こいつ馬鹿だしめんどくせーからさっさとぶっ倒そうぜ」

七海「強敵だけど…私達なら勝てるよ」

日向「ああ、その通りだ!俺達は負けない、負けるわけにはいかないんだ!」

苗木「皆、今日が山場だ…全力で行こう!」


「「「「「「「おう!」」」」」」」


モノクマ「うぷぷ……だーひゃっひゃっひゃ!!!!!」

モノクマ「それじゃ…ボクも準備しておかないとね!」

モノクマ「グングニルの槍、起動だーー!」

モノクマ「オマエラの絶望した顔が今からでも想像出来るよ…うぷぷ…だーひゃっひゃっひゃっ!!」



【ボスバトルが発生しました】

PTを選択してください。

1ターン目。

弐大「さあ、全力で勝負じゃああああ!!」

終里「へっ…きやがれってんだ!」

苗木(今までの戦いを思い出すんだ…僕達なら、勝てる!)

苗木 霧切 江ノ島 日向 七海の行動をそれぞれ設定してください。

  
苗木      江ノ島     
5800/5800    4900/6300

4700/4700    2500/5000
日向     七海
5500/5500    6000/6000   
4000/4500    4150/5100
罪木      霧切
5000/5000    3300/4800
5700/5700     6000/6000
豚神
5500/5500
4200/4200

ステータス
>>6-7

敵ステータス
終里赤音 lv280
HP 20000/20000
SP 0/0
AT/DF 1500/800
スキル 『超高級の“体操部”』…状態異常、スタン無効、三回行動。敵撃破するとATが2倍になる。【自動】SP0
    『鍛えぬかれし肉体』…先制攻撃。通常攻撃に敵のスキル効果打消付与。ステータスダウン無効【自動】SP0
    『限界突破』…HPを半減して全体攻撃になる。【任意】SP0
    『桃色筋肉』…ターン終了後に状態異常が回復。【自動】SP0
弐大猫丸 lv280
HP 25000/25000
SP 5000/5000
AT/DF 1000/1200
スキル 『超高校級の“マネージャー”』…毎ターンパーティ全員HPを10%回復。また、通常攻撃をDF分軽減。二回行動【自動】SP0
    『マネージャーの仕事』…敵からの攻撃をかばう。【自動】SP0
    『“アレ”』…味方のステータスを2倍にし、HPを50%回復。【任意】SP500
    『師弟の拳』…(弐終)敵全体にAT3倍のダメージを与える。【任意】SP2500





七海「悪いけど、なりふり構ってられないし、全力だよ!」

七海は指を鳴らし、いつもの様に時を止める。
罪悪感など感じてはいられない。
彼らは本気で倒しにきている。負けるわけにはいかないのだ。
弐大・終里の行動不能。

弐大「」

終里「」

霧切「苗木君」

苗木「了解!」

二人は素早く準備を終える。
七海が時間を止めることを読んだ、完璧な連携。
魔法陣に血を染み込ませ、契約は果たされる。
消費SPが0になった。

江ノ島「ヒャッハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

霧切「だからうるさいわよ」

かと思えば弐大達の前に現れ、死の鎌を振るう江ノ島と霧切。
死の鎌は耐性の無い者に、無慈悲なる死を与える──!

江ノ島「イエア!」

終里にはまるで何かに阻まれて殺すことが出来なかったが、弐大にはその鎌を走らせることが出来た。
鎌がすり抜けた瞬間、時間は止まっているはずなのに、弐大の身体は砂となり消えていった。
弐大を倒した。

日向「まだまだァ!」

江ノ島「きたきたああああ!」

合体技乱舞は終わらない。
日向の刀が踊るように舞い、江ノ島の大剣が大地を抉り、終里を死へ追い込んでいく。
終里に3700ダメージ。

苗木「はあああああああああああああっ!」

日向「おおおおおおおおおおおおおおっ!」

苗木と日向は咆哮し、拳に光を纏い疾駆する。
その姿はまさに神話のロキとトールの再現。
蒼光と雷光が交差し、時の止まった世界で轟音が鳴り響く。
一際大きな雷の音が聞こえた後、苗木と日向の拳は、終里の身体を貫いていた。

苗日『神をも打ち抜く拳狼の雷槍──!』

終里「」

終里に7500ダメージ。

苗木「七海ちゃん!」

七海「うん」

二人はダメ押しとばかりに、それぞれの得物を終里へと叩きつける。
もはや、慈悲も、躊躇いも無い。
負けるわけにはいかないのだ。こんなことで立ち止まってはいられない。
終里に1750ダメージ。

七海「そして、世界は動き出す……」

終里「う、ぐぅ…!あ、がぐ…あああああああああああああああああああああ!!」

一度にあまりにも大きな衝撃が襲ったのだろう。
終里は全身から血を流し、激痛でのた打ち回る。
もはやその光景を淡々と見つめていられる苗木達は、果たして正しいのかどうか。

終里「なんだ…わけわかんねぇ…ぞ……弐大のおっさんもいねぇ…どうなっちまってんだよぉ…」

突如身体を襲う激痛に涙ぐみ、終里には珍しく泣き言を漏らす。
その姿を見て、苗木達はほんの少しだけ、心を痛めた。

2ターン目。

終里「…あたしだけでも、やってやる……やってやる!」

日向(悪い、終里…俺達も、負けるわけにはいかないんだ)

苗木 霧切 江ノ島 日向 七海の行動をそれぞれ設定してください。

  
苗木      江ノ島     
5800/5800    4900/6300

4700/4700    2500/5000
日向     七海
5500/5500    6000/6000   
4000/4500    2200/5100
罪木      霧切
5000/5000    3300/4800
5700/5700     4000/6000
豚神
5500/5500
4200/4200

ステータス
>>6-7

敵ステータス
終里赤音 lv280
HP 7150/20000
SP 0/0
AT/DF 1500/800
スキル 『超高級の“体操部”』…状態異常、スタン無効、三回行動。敵撃破するとATが2倍になる。【自動】SP0
    『鍛えぬかれし肉体』…先制攻撃。通常攻撃に敵のスキル効果打消付与。ステータスダウン無効【自動】SP0
    『限界突破』…HPを半減して全体攻撃になる。【任意】SP0
    『桃色筋肉』…ターン終了後に状態異常が回復。【自動】SP0
弐大猫丸 lv280
HP 0/25000
SP 5000/5000
AT/DF 1000/1200
スキル 『超高校級の“マネージャー”』…毎ターンパーティ全員HPを10%回復。また、通常攻撃をDF分軽減。二回行動【自動】SP0
    『マネージャーの仕事』…敵からの攻撃をかばう。【自動】SP0
    『“アレ”』…味方のステータスを2倍にし、HPを50%回復。【任意】SP500
    『師弟の拳』…(弐終)敵全体にAT3倍のダメージを与える。【任意】SP2500




七海「…ごめんね、終里さん」

終里「やめ、やめて…──」

七海が、指を弾く。
瞬間、七海たちを除く、全てが止まる。
何もかもが、止まっていく。

終里「」

終里も、何もかもが、動きを止める。
静寂に包まれた世界。
苗木達は唇を噛み締め、終里達の前に立つ。

苗木「終わりにしよう」

日向「ああ、この一撃で、終わらせるぞ」

苗木達は、一斉に武器を構え、終里へと。
振り下ろした。

七海「…皆、攻撃は終わったよね?」

霧切「ええ。正直、このまま時を止めたままにしておきたいくらいよ」

江ノ島「だけど、このまま止め続けたって問題の先延ばしでしょ」

苗木「そうだね。終わらせよう…終里先輩、ごめん」

七海が指を鳴らす。
世界に音が、時が、戻ってくる。

終里「……ぁ」

終里にもその意味は理解できただろう。
全身を襲う激痛。
しかし、小さく声を漏らしてからは、何も起こらない。

終里「…へ、へ…なんだよ……十分つえー…な…オメーラ……みくびってた……わ……」

しかし、ダメージは現実で。
もう終里には、“死”という未来しか残されていない。

終里「わり……にだ……っさん……オレ……勝て…………」

最後まで言い切ることは出来なかった。
こぽりと。
唇から血を垂らし。
眠るように目を閉じて。
終里は、消えていった……。

苗木「……さあ、ボスは倒した。先に進もう」

豚神「そうだな。感傷に浸るのは後だ」

罪木「終里さん…」



モノクマ「ぶっひゃひゃ!!!!!オマエラおつかれさま!!!!!」



悪魔の声。
苗木達は声の主を睨み付ける。

日向「モノクマ…!」

モノクマ「うぷぷ…やっぱり脳筋コンビは役立たずだなぁ!足止めもろくに出来ないよ!」

豚神「おい、俺の仲間を侮辱するのは許さんぞ」

モノクマ「ま、どうでもいっか。オマエラが順調にゲームを進めているようで安心したよ」

江ノ島「あ、そういえばさー。ダンジョンクリアしたら報酬もらえるんでしょ?さっさと頂戴よ」

モノクマ「まあまあ焦りなさんなって。やることやったらあげるからさ!」

罪木「や、やることって…?」

七海「……」

モノクマ「いでよ、グングニルの槍!」

苗木「モノクマ!お前何を──!」





罪木「──ぇ」





日向「ああああああああああああああああああああ!!」

モノクマがグングニルの槍、と称したそれは、まさに名のとおりの強大な槍。
それに穿たれた者は、死という結末以外有り得ないと、はっきり分かる。理解できる。
何の確証も無いのに、そう断定出来てしまうほどの神聖で、無慈悲なる槍。
それが罪木の心臓を、貫いていた。

日向「おい、罪木!返事をしろ!おい!」

日向が泣き叫びながら罪木へと駆け寄る。
しかし、誰がどう見ても、もはや罪木が助かることが不可能だとはっきりと分かってしまう。

だって、罪木の身体が、わずかに電子の粒子へと変わっていて。
それは先ほど倒した、終里や弐大…今までに倒してきた仲間達と同じで。





モノクマ「次は、オマエだああああああああああああ!」





どこか調子外れで。だけど明確な悪意を持って。
モノクマがそう叫ぶ。





日向「──が、はっ…」



罪木に続いて、日向までもが悪魔の餌食となる。
日向は、目を見開いて、自身の心臓を貫いた“それ”を、見る。
そして、直感する。
もう自分は助からない。奇跡など、起こりようが無い。

七海「…………え?」

近くで、七海が小さく声を漏らした。
聞き取れない位小さい声だったにも関わらず、日向の耳はその声を捉えていた。

苗木「ひ、日向くん!」

霧切「う、嘘…でしょ?」

モノクマ「嘘じゃないよ?日向クンと罪木さんは死ぬよ?後数秒も経たないうちに」

モノクマは不思議そうに、首を傾げる。
それは場にそぐわないほどファンシーな仕草で。

モノクマ「もちろん奇跡なんて起こらない!二人はもうすぐゲームか退場だね!」

豚神「っ……モノクマアアアアアアアアアアア!!」

モノクマ「うぷ、うぷぷぷぷぷぷ!!やあっと楽しくなってきたよ!今日まで我慢してオマエラのご機嫌取りしてよかったー!」

罪木「ぅ…く……ご、ほ…」

日向「つみ…き…」

日向は槍に貫かれているというのに、身体を無理やり動かし、罪木の傍に寄る。

罪木「ひな…た…さ……」

日向「ごめん…お、れ…」

罪木「いい……で、す………これ、で…やっ…と、…」

罪木は胸からぼたぼたと血を流す。
地面には血溜まりが出来ていて。
客観的にももう罪木は助からないと、そう訴えていた。

豚神「生を諦めるな!まだ何か!何かあるはずだ!そうだろモノクマ!いい加減笑えない冗談はよせ!」

モノクマ「…だから、無いって!こいつらは死ぬの!ゲームオーバー!分かるぅ?」





苗木「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」





苗木は怒りに身を任せ、モノクマへと突っ込んでいく。
それを軽やかなステップでかわすと、モノクマは邪悪な笑みを浮かべた。

モノクマ「無理だって!今のオマエラじゃボクを倒せるなんて思わないほうが良いよ!」

モノクマ「そんな事する暇があったら日向クン達と別れの言葉でもかわしなよ!」





モノクマ「あーッひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!」





モノクマは高笑いを残し、消えていった…。



罪木「…えへ……さい、ごま…で…やくたたず……でした…」

苗木「そ、そんなことッ!」

豚神「こんな…こんな理不尽があるのか!」

苗木も豚神も、霧切も…誰もが涙を流して、罪木に呼びかける。
先ほど冷酷にも終里達を倒しておきながら、図々しいとは思う。
だけれど、積み重ねてきた思い出が、記憶が、密度が、違った。

霧切「ぅ、く…貴方、西園寺さんのためにもこのゲームをクリアするんでしょう?こんなところで諦めて…諦めていいの!?」

罪木「…いやに、き…まってるじゃ…ないですかぁ…わ、た……ひよ…ちゃん…こと……好…」

だんだん、語尾が薄れていく。
それに従い、言葉も、聞き取れなくなっていく。
それは、彼女の終わりが近づいているという証拠だ。

罪木「っはぁ…かひ…う…」

罪木は荒い息を漏らし、震える手をなんとか動かし、日向の頬に触れる。
日向も痛みに耐えることが精一杯で、声を出すことはかなわなかった。

罪木「ひなたさん……まきこんで…ごめんなさい……」

日向「おまえの、せい…じゃ…」

罪木「……くやし、い…です……こんな……形で…おわるなんて……や…」

罪木は涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、それでも、最後に伝えたい、大切な言葉を紡ぐ。
震える唇で。
いつ消えてもおかしくないくらい、不安定な存在で。
ただ、愛する人に。





罪木「…大好き、です……日向さん………」






そう、日向に囁いた瞬間。
罪木の存在が無くなった。




日向「つみ…きぃ……」

日向は、こらえていた涙を流す。
それは罪木の死の悲しみだけではない。
間違いなく、どうあがいても、自分の死が避けられないという現実を知った、絶望の涙…。

七海「…ぅ、ひなた、く……」

日向「ごめ、ごめん…七海……おれ、もう…」

苗木「まだ、まだだよ!希望はあるよ!だから!お願い!日向クンまで消えちゃったら…!」

苗木が涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにして、日向の血を止めよう苦心している。
けれど、日向には分かる。分かってしまった。
徐々に血が抜けていく感覚とともに、自分の存在が薄くなっていくことを。
きっと罪木が生きていて、治療をしようとしても、無駄だと。
この槍に貫かれた瞬間に、“日向創の死は確定していた”。

七海「…ゃだ…やだやだ!日向くんが!日向くんが死んじゃう!」

七海が絶対に見せないような大声で泣いている。
涙を流している。
日向は、その姿を見て、少しだけ口元が綻んだ。

日向(ああ…七海は……俺のために、ここまで悲しんでくれる…)

その事実だけで、日向はもう、いますぐに存在が消えてもいいとさえ思ってしまった。
でも、それではダメだ。
残された者に、伝えることがある。
ここで何も伝えず消えてしまったら、残されたものは絶望して、立ち止まってしまうかもしれない。
それだけはダメだ。

日向「な、なえぎ……」

肺から声を絞り出す。
自分の存在を全てを賭けて、伝えるべきことを伝えなくては。

日向「……ごめ、んな…相談…できそうに…ないな……」

苗木「そんなの…!いきてればいくらだって…!!」

日向「…悲しんで…くれるのは…うれしい。……だけど、立ち止まるな…」

霧切「…っ」

江ノ島「日向クンを理由に、ゲームを諦めて放棄するなって事?」

日向「…ああ、むしろ……俺や、つみきの…ためにも……がんばってくれ…」

苗木「…ぅ、く……」

日向「…なな、み……」

日向は、自分の近くで泣き伏せっている少女の名前を呼ぶ。
少女は、涙で腫れた顔をゆっくりと日向に向けた。

日向「ごめんな……守れなくて……」

七海「日向くんの…うそつき…味方だって…言ったのに……」

日向「ああ…俺は、味方だ……だけど、…もう、…どうしようもないんだ…」

七海「…ぅぁ」

日向は力を振り絞り、七海の頭をなでる。
さらさらとした白髪が、日向の血で赤く染まる。
それでも、日向は七海の頭を撫でるのをやめなかった。

日向「……おれたちの…近くに……裏切り者が…いる…」

豚神「…なんだと……?」

日向「…そいつは…俺達の、ことを……」

だけど、その先は続かない。



もう、限界と悟る。
結局、最後の時間で何かを伝えられたかといわれれば、ノーだろう。
ただ、死んでも悲しむな。と、無理やり言っただけだ。
でも、彼らなら…きっと立ち直り、このゲームをクリアしてくれるだろう。
だから日向は…それを眺めていよう。応援していよう。
自分なりには頑張ったのだ。最後に眺めるくらいのご褒美は良いだろう。

日向「ななみ……」

七海「日向、くん…」

日向は、最後の力を振り絞り。
七海の元へ倒れこむようにして。

日向「……」

七海「……」

とても長い──永遠とも感じられる程の。
いや、きっと本人には永遠と代わらぬであろう。
……口付けを交わした。


苗木「ああああああああああああああああああああああ!!」


苗木の叫び声が、ボス部屋の空気を切り裂く。
しかし、それで消えた人間が蘇るわけではない。
誰もが、悲しみ、苦しみ、その場を動けないでいた。
ついさっきまで、誰がこうなるとわかっただろうか?分かるわけが無い。
唐突に、大切なものを奪われる。
分かっていたはずなのに。どこかで安心しきっていた自分がいた。
自分達は何があってもなんとかなると、そう甘えていた。

霧切「……」

江ノ島「……」

豚神「……」

七海「……」

動かない。動けない。
これからどうすればいいのかも、分からない。

七海「……ごめんね」

そんな空気の中、七海は一人立ち上がり、苗木達に向かって頭を下げた。
唐突に行われたそれに、苗木達はどう反応していいのか分からなかった。

七海「…ここから先は、一人でやるよ。お兄ちゃん達は、ここで待ってて」

苗木「一人じゃ…無理だよ…」

引き止める声も、いつものように力が無い。
弱弱しい、わずかの風で消えてしまいそうな言葉。
その言葉に、七海は哀しげに目を伏せ、しかし…決意は変わらなかった。

七海「さようなら、皆」

七海は苗木達に背を向けて、歩き出す。



頭では理解していた。



追わなくちゃ。



でも、身体も、心も。



今の苗木達には、一歩を踏み出すことさえ、出来なかった……。

投下終了です。
ちなみに弐大のスキルは完全にミスでしたね。状態異常無効を付け忘れました。
ですがそのおかげで、後半の理不尽な展開にも重みが出た気がします。

投下します。
本日は短めです。






「…モノクマ、ずいぶん無茶したいみたいだねぇ」

暗闇に、声が響く。

「おかげで、ボクの付け入る隙が出来たみたいだ」

声の主は、身体を縛る鎖をじゃらりと鳴らす。
雁字搦めにされていて、とても動けるような状態ではない。
しかし、右腕だけはかろうじて動かせるようだった。

「正直、今のボクの権限じゃ…たいしたことは出来ない」

でも、右腕だけでも動かせるのなら。

「苗木クンに闘志を…もう一度立ちあがるための希望を、届けないと……」

暗闇の中で、右腕だけが淡く発光している。

「モノクマの野望を、絶望を、君なら何とかできるって…ボクは信じてるよぉ……!」

そしてほんの僅かの、今にも消えてしまいそうな光を、暗闇へと放つ。
光は暗闇の中を一切の迷いなく、進んでいく。
それはきっと、苗木達の助けになると信じて。

「…日向クン、罪木さん」

暗闇の中で、槍に貫かれている二人の姿が浮かぶ。
その姿は凄惨極まりないもので。しかし、どこか神秘的であった。

「“グングニルの槍”は、今後ゲームの一切の関わりを立つ…いわばアカウント削除」

本来は、ゲームの進行に悪影響を与えるプレイヤーに対する脅し…それを無視したプレイヤーに最終手段として使われるもの。
それをこのように悪用されて、声の主は悲しげな声音で呟く。

「君達はもう、“このゲームに関わることは二度と出来ない”」

「例え、このゲームが終わり、次の盤に移ったとしても、もう君達の存在は無かったことになる」

「君達は今頃、モノクマが作り出した悪趣味な地獄にいるんだろうねぇ…」

日向も、罪木も。
眠るように、彫像のように、微動だにしない。
しかし、彼らが今、死ぬことすら生ぬるい地獄で、あえぎ嘆いている姿を容易に想像することが出来る。

「……君達を救いたいけれど、ボクにはどうすることもできないんだぁ…本当に、ごめんね……」

でも、声の主は諦めない。
彼らがいなくても、きっと苗木達ならこのゲームを終わらせることが出来る。
そうすれば、きっと彼らを苛む地獄も、終わる。

だから、声の主は、静かに眼を閉じる。

せめて、彼らの痛みが、ほんの少しでも和らぐように。

そして、叶うならば、苗木達がゲームをクリアできることを祈って。


 
「……………。……。」

 
 
 



八十日目。


苗木「……」

目が覚めた。
ぼうっと空を見つめる。
何かがあるわけでもない。

霧切「…すぅ」

隣で、霧切さんが静かに寝息を立てている。
僕は彼女の頭をそっと撫でてから、今日までの事を振り返る。
日向クン達が死んでから、何日経ったんだろう。
そんなに長くは無い、と思う。多分三日か四日辺りだ。

七海ちゃんが消えた後、僕らは一時間はボス部屋で立ち尽くして、無為な時間を過ごした。
一番最初に我に返った豚神クンのおかげで、僕らは何とか第6層を抜け、近くの街の宿屋まで来ることが出来た。
それから僕たちは何も言わず、ひたすら眠った。
今日の出来事は悪夢だった、そう信じたくて。
けれど何も変わらない。日向クンも、罪木さんも、もういない。
一日寝て、出来事が整理され、その事実を受け入れざるをえなかった。

あれから僕らは何をするでもなく、ただ起きて、寝ることを繰り返してきた。
霧切さんは昨日、一人でいることに耐えられなくなったのか、僕の部屋に来て、ずっと過ごした。
僕も、あのまま独りでいたら絶望に押しつぶされていただろうから、正直嬉しかった。

七海ちゃんはまだ帰ってきていない。
きっと本当に、一人で何もかも終わらせる気なのかもしれない。

江ノ島さんも、一昨日から姿を見ていない。
豚神クンや霧切さんにも聞いたけど、誰も姿を見ていないようだった。

豚神クンは、一人で自室に篭って、何かを考えているようだった。
でも、正直どうでもいい。
今の僕に、何が出来るというんだろうか?
あれだけ自信満々に、大丈夫だ、なんて言って。
結果があの様だ。
こんな体たらくの僕が、いまさらどの面下げて、皆に戦おう、ゲームをクリアしよう、なんていえるんだよ…。

日向クンがいたら、ふざけるなって叱り飛ばしてくれたかもしれない。
罪木さんがいたら、傷ついても癒してもらえたかもしれない。
でも、その二人は、もう居ない。

僕だけじゃない、他の皆だって、二人にはたくさん助けられてきたんだ。
その二人が、同時に、あんな理不尽に、死んでしまって。
ゲームだって分かってる。現実じゃないのも分かってる。
でも、あんまりじゃないか…。

もう、疲れたよ…。
これから先、きっと他の仲間も、あんな風に理不尽に殺されてしまう。
それならいっそのこと、ここでずっと穏やかに眠っていたい。
そうすれば、誰が消えても傷つかない。
霧切さんと、二人で、ひたすら眠っていよう…。
そうすれば、少なくとも僕らは、外の世界がどうなろうと。
仲間がどうなろうと、それを知ることは無いんだ…。
誰も傷つかない、僕たちも傷つかない。

ああ…ようやくわかったよ、日向クン。
僕はあの時、君に全てを任せて居ればよかったんだ…。
僕たちは、何も知らず、ただ日々を繰り返す。
それでよかったんだ…間違っていたのは、僕のほうだったんだ…。

そんな、最低の思考ばかりが僕の脳内を満たしていく。
でも、それに抗う気力も、もう残ってはいなかった。



苗木「どうせ僕には【何も出来ない】…」


霧切「私は…大切な人すら…【助けてあげられない】…」


豚神「俺は仲間を守れなかった…結局俺は、【無力なんだ】…」


苗木「【諦めよう】…後は他の皆に任せればいいんだ……」


霧切「仕方が無いわ…だって【私達にはどうにも出来ない】…」


豚神「これ以上仲間を失いたくないんだ…【先に進みたくない】……」





江ノ島「ああああああああああああああああああああ!!」



江ノ島「女々しいッ!うざいッ!」



江ノ島「そんなの、ぜんっぜん、全く以って、違うだろうがよォォォォォォォ!」



苗木「…?」

霧切「な、なに…?」

豚神「…!」


江ノ島「オマエラの“希望”ってのはそんなに弱っちくて脆い、砂のお城みたいなもんなわけ!?」


苗木「そんな事言ったって…僕らじゃ……」

江ノ島「…本気で、それが正しいと思ってるわけ?」

霧切「でも、そんな気力はもう…」

江ノ島「気力だとか、やる気だとか、力だとかいちいち言い訳がうっとおしいんだよ!」

豚神「江ノ島…」

江ノ島「いいか?よォく、思い出せよ?日向クンと罪木ちゃんが死んだのは誰のせいだ?」

苗木「それは、モノクマ…」

江ノ島「ぶっぶー。オマエラ…おっと、あたしも入ってたか。あたしら全員のせいに決まってるじゃん」

霧切「な…!どうして!」

江ノ島「全員が油断してたからだっての。そこを忘れて、やれモノクマのせいだ、僕たちには無理だ…とかさ」

江ノ島「甘ったれんなよ。自分達が撒いた種だろ。日向達を殺したのはあたしら全員の責任だよ。正直あたしはここが退廃的に腐っていくのは構わないけどね…でも、オマエラまでそうなのは許さない」

苗木「……」

江ノ島「この江ノ島盾子を、二度も退けた希望のオマエラが、この程度の絶望で屈するなんて認めない。そんなお涙頂戴の鬱ストーリーなんかこっちは求めてないんだよ」

江ノ島「それならまだ使い古されたテンプレ展開。仲間の死を乗り越えて強くなる、そういう希望に満ちた王道バトル漫画な展開のほうが100倍許せるってもんね」

霧切「……」

江ノ島「絶望するのは願ったり叶ったりだし、仲間の死を悼んで悲しむのも構わない。けれどそれを理由に立ち止まるのだけは許さない。おら、立ち上がれよ」

江ノ島「いつもみたいに、馬鹿みたいに、希望を信じて前に進もう!って言えよおおおおおおおおおおおお!苗木誠ォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオ!」



苗木「…そうだよ、何をしてるんだ。僕は」

霧切「……なえぎ、くん?」

少し声が大きすぎたみたいだ。
眠っていた霧切さんが目を覚ます。
目蓋が赤く腫れている。ずっと泣いていたから当然だ。

苗木「ねえ、霧切さん。もう、悲しむのは止めにしよう」

霧切「…!」

…そうだ。
江ノ島さんの言うとおりだ。
日向クン達が死んでしまったのは、モノクマのせいだとか、そんなんじゃない。
僕らが単純に甘えていた。
僕たちは死なない、なんて安易で何の確証もない…“希望”と呼ぶことさえ躊躇う、都合のいい妄想に縋っていただけだ。

だから、僕らは責任を取らなくちゃならないんだ。
日向クンは最後に、僕らに全てを託していった。
それを放棄して逃げるなんて…それこそダメだ。
それは日向クン達の死を、自分の責任から逃げているだけだ。

苗木「もう、涙は出尽くした。十分に、悲しみもした。いい加減、前に進むべきだよ…!」

霧切「…無理よ。だって、あんなに、あっさりと、理不尽に…!」

苗木「だからこそ、だよ。そんな絶望に屈したら、僕らは絶対にこのゲームをクリアなんて出来ない」

霧切「クリアしなくていいじゃない。ここで、静かに、二人で…!」

苗木「それは、日向クンや罪木さんだけじゃない。僕たちが倒してきた全ての人を冒涜することになるんだよ?」

霧切「…っ」

そう。
はじめから選択肢なんて無かったんだ。
僕たちは皆を犠牲に、ここまで進んできたんだ。
今更、仲間の死が辛いからやめる…だなんて、都合が良すぎるじゃないか。

苗木「この先の道のりがどれだけ辛くても、僕らは戦い続けなくちゃいけない。それが僕たちの“責任”だ」

霧切「苗木君…」

だから、まずはここから。
僕は霧切さんへと手を差し伸べる。
少し出遅れてしまったけれど、まだ追いつける。
今からでも、進むんだ。

霧切「……ええ、そうね。日向君と、罪木さんの想いを、無視するわけにはいかないわ」

霧切さんは、僕の手を力強く握る。
その瞳には、ほんの僅かだけど、力強い輝きが灯っていた。

さあ、此処からだ。
僕は絶対に、諦めない。
希望を信じて、前に進むよ…!

日向クン、罪木さん。
そして、今まで倒してきた皆…。
きっと、必ず、このゲームを、終わらせてみせる──。

投下終了です。
短いですがご容赦を。

投下します。



海だ。
暗い、海の底。
ここはどこだ…?
俺は、誰だっけ…?
いや、そもそも“俺”なのか?
“私”かもしれない。

どうしてここに“自分”はいるのか。
ああ、そうだ…。
もう、終わっていたのか。
とっくに。
“自分”は。

でも、なら。
どうして、“自分”はここにいるんだろう。
もう、ここに留まることさえ許されないのに。

そこまで考えて、暗い、海の底をみた。
そこには“自分”がいた。
どうして“自分”だと認識できるのかは分からない。
けれど、それは疑いようも無く、“自分”だった。

“自分”が、幾度と無く殺されていく光景。
死んでは、生き返り、死んでは、生き返り…。
無限に繰り返される殺戮ショー。

それを見ながら、気づく。
そうか、もう“自分”の心は死んでしまったのか。
体が幾度と無く、死んでいき、心が、耐え切れなかったんだ。

ならば、なぜ。
まあこうして、“自分”に思考することが出来るのだろう。
…考えても仕方が無い。
どうせ時間は無限にあるのだから。
ならばこの無限の時間を使って、考えよう。

思考をとめずに。
これ以上、“自分”の死を見ない為にも。


「──やあ」

…君は、どうしてここにいる?

「分からないよ。だって、私は君が【見たい】と思ったから生まれたんだよ」

よく、分からないな。

「そうやって、分からないって便利な言葉で思考放棄をするのはやめようよ」

…ようは“自分”の妄想、なんだろう。

「うん。そうだよ。そうやって、ゆっくりでもいいから、考えていこう?」

……何を。

「今までの君の“視てきた”ものを、振り返ってみようよ」

視てきた?

「きっとそれはとても難しいことだけれど…君なら気付けるよ」

……気付く、か。

「さあ、思い出して──【あなたは、誰】?」

…………。


今までを振り返る…。


“自分”を、遡ってゆく…。


新世界プログラム。

繰り返されるゲーム。

モノクマ。

裏切り者。

死。

黒幕。





ああ、そうか……。
そうだったのか……。

再び、海の底を見る。
そこでは相変わらず、目を覆いたくなるような惨状の“俺”がいた。
死んでしまっては、どうしようもないのだ。
だけど、この無限の拷問が無ければ気付くことも出来なかった…。

どうしてもっと早く気付けなかったのか…。
“俺”には、気付くことが出来たのに…。
遅かった…何もかも、遅すぎたんだ……。


「……それは、違うな」


でも、だけど。
俺は、そう呟いた。

 
 
 




七海「……」

どうすればよかったんだろう。
何をすればよかったんだろう。
何が正しく、何が間違いなのか。
私にはもう、分からない。
自分のしていることが、正しいなんて思えない。
でも、間違っているとも思えなかった。
でも…日向くんが消えてしまって。

あれは…私のせい、だと思う。
今まで、どれだけ追い詰められていても、モノクマは“グングニルの槍”だけは使わなかった。
グングニルの槍は“システム的永久死”を与えるための道具であり、ゲームマスターでさえ迂闊に使ってはいけないもののはず。
あれに貫かれた者は、今後一切のゲームへの参加を【禁止】される。
ううん…違うな。したくても出来ないんだよね、確か。

そしてモノクマがどうしてあそこまで焦っているのかも、私には大体見当がついている。
だから私はそれを、お兄ちゃんたちにぶちまければいい。
…そう出来ればの話だけど。

モノクマの本命はたぶん日向くん。
日向くんだけが殺されて、お兄ちゃんたちが何かに勘付かないようにするための細工だと思う。
そして日向くんをモノクマが殺そうとした理由は…私が……っ。
……もう、潮時なのかもしれない。

いつも、どんな時でも、私の味方でいてくれた日向くんはもういない。
私は……どうするべきなんだろう。

ポケットに入っていた、日向くんと分け合ったアクセサリー。
たくさんの、思い出が詰まったアクセサリーを取り出して、元気をもらう。


七海「…日向くん。力を貸して…!」

 
 

 
 
 
苗木「豚神クン!」


豚神「…苗木か」

苗木「その、日向クンのことは…」

豚神「フッ…わかっている。お前が来なければ俺が喝を入れてやっていた」

苗木「…!」

豚神「あいつらの死は悼んだ。悲しんだ。ならば俺たちがするべきことは一つだ。日向の遺言どおり、このゲームを終わらせよう」

苗木「そうだね…いつまでもうじうじしてたら、それこそ日向クンに怒られちゃうよ」

霧切「…ねえ、遺言といえば。日向君、何か重要なことを言っていなかったかしら」

苗木「重要なこと…あ、裏切り者!」

豚神「ああ。その話か」

苗木「あれ、豚神クンは気付いていたの?」

豚神「薄々はな。ただ、確証がもてない…それに、俺は仲間を信じているからな」

霧切「私たちの近くにいる…ってことは」

苗木「妥当に、僕らのパーティメンバーってこと…?でもおかしいよ。僕らの中にそんな人がいるわけ無いじゃないか」

豚神「それは分からん。もしかしたら、俺たちを巧妙に欺いているのかもしれん。或いは従わざるを得ない状況なのかもしれない。もしくは洗脳されていて本人も気付かないうちにモノクマに利することをしているのかもしれない」

豚神「とにかく、あらゆる可能性がある以上俺は迂闊に口に出来なかった…」

霧切「現段階では推理不可能ね。…それよりは、七海さんと江ノ島さんを探したほうがいいと思うわ」

苗木「そうだね。特に七海ちゃんは心配だよ。一人で先走っちゃって…」

江ノ島「おっす」

豚神「…!?」

霧切「!?」

苗木「え、江ノ島さん!?」

江ノ島「やっとまともに動くようになったんだぁ☆希望ってとろーい!」

霧切「あなたは今まで何をしていたの?」

江ノ島「苗木クン達がめそめそしている間に、色々とやることやってただけー」

豚神「まあ、お前は友人の死を悼むような人間ではないな」

江ノ島「…まあ、色々思うことはあるけどね。でもま、今は関係ないし?」

苗木「江ノ島さんは僕たちのために…やってくれたんだよね?」

江ノ島「か、勘違いしないでよ!べ、別にあんたのためにやったんじゃないんだからね!」

霧切「…はあ。相変わらずね」



豚神「とにかく、お前のやることとやらの成果を聞かせてもらおうか」

江ノ島「おっけい。まずダンジョンクリアの報酬だけど、長い休暇。15日間ね。ただし、苗木クン達がめそめそしていたせいで4日無駄になって実質動けるのは11日間。それ以上は無理みたい」

苗木「思ったより、時間を無駄にしちゃったみたいだ」

江ノ島「多分モノクマも飴を与えすぎたと思ってるんでしょ。あたしならもっと上手くやるってのに」

霧切「……けれど、あの“休暇”があったからこそ、私達は気が抜けてしまったというのもあると思うわ」

豚神「…それに関しては仕方ないと割り切る他ないだろう」

江ノ島「ああ、それと…もう一つあったわ。これ」

豚神「…これは?」

江ノ島「大ヒントらしいよ。各自に1つずつあって、このゲームをクリアするためのヒントだって」

苗木「…罠じゃないのかな?」

江ノ島「いんや。たぶん本物。実際にあたしが試して、本当にヒントは手に入った」

霧切「本当に!?」

江ノ島「……まあね。見れば分かると思うよ」

江ノ島「ま、今は話の続き。そんで行動なんかは今までどおりだけど、仲間が3人抜けたのは結構痛手。とりあえず当面の目標は新しい仲間を勧誘する方向がいいと思うけど」

苗木「ちょっと待ってよ。七海ちゃんは?」

江ノ島「……探した。このあたりは全部。ダンジョンのほうにも足を運んだけど、痕跡すらなかった」

霧切「……」

江ノ島「ま、とにかく、今日は明日に備えて英気を養う方向でぇ…とりあえず苗木きゅんとらぶりーなひと時を…☆」

苗木「ちょ、ちょっと!江ノ島さんはなんでそんなにシリアスを保てないの!?」

江ノ島「冗談ですけどー」

苗木「当たり前だよ!」

豚神「と、とにかく…今日は解散だ。明日から行動をしていこう」

苗木「そうだね…」

霧切(…少し、違和感ね。江ノ島さんの反応)

霧切(彼女は何を知ったのかしら。このヒントとやらを見ればわかるのかしら)


サブシナリオ『ヒント-霧切-』
サブシナリオ『ヒント-苗木-』
サブシナリオ『ヒント-豚神-』
サブシナリオ『????』
サブシナリオ『狛枝パーティの行方』が開放されました。

八十日目リザルト


苗木      江ノ島     
5800/5800    6300/6300
4700/4700    5000/5000
霧切      豚神
4800/4800    5500/5500
6000/6000 4200/4200

アイテム
【ブルーラム】(SPを200回復する) 【桑田バット】(敵単体800ダメージ)【逆転サイコロ】(使用ターンの間どんなスキルを使ってもSPや絶望ゲージを消費しない) *2
【罪木の注射器】(単体のHPを100%回復)*2 【穴抜けのヒモ】(探索から脱出することができる)
【サーチトレジャー】(戦闘後のアイテムが増える)【希望のあんパン】(SPを1000回復する)*4
【罪木の包帯】(3ターンの間HPを500回復する。)*2 【タミフルン】(味方全体のSP500回復)*2【希望の漢方薬】(状態異常を回復する)*2
【人型の札】(今までに倒しきた敵を一人だけ、交渉することができる)【謎の巻物】(今まで倒してきた敵のスキルを一つだけ、任意のキャラクターに覚えさせることができる。)【希望の種】(味方単体に敵の攻撃を一度だけ防ぐ効果を付与)

【絶望ゲージ】3(危険度:小)

【好感度】(★は0.5☆は1)
霧切響子MAX 江ノ島盾子MAX
豚神白夜☆10
不二咲千尋☆4 狛枝凪斗☆4
セレスティア・ルーデンベルク☆1 腐川冬子☆3
終里赤音☆1 舞園さやか☆1
戦刃むくろ☆1 大神さくら☆1

ステータス
【苗木誠】 lv265 【聖剣】
AT/DF 600+500/700+500
【パーソナル】
『自覚せし幸運』…二回行動。また、瀕死の攻撃を受けた際に一度だけ無効化。
『忘れた記憶』…ダメージを受けると攻撃力が半減する。
【任意スキル】
『弾丸論破』…敵単体に850ダメージ。【SP500】
『閃きアナグラム』…永続で攻撃力2倍にする。【SP800】
『ノンストップ議論』…味方全体で二回攻撃になる。【SP1200】
『M.T.B』…敵全体にランダムに50ダメージを20回与える。【SP1000】
『希望の言弾』…使用ターン含まず2ターンの間味方単体のHPを1500増加する。【SP800】
【合体技】
『再生-rebuild-』…(苗霧)苗木と霧切のスキル全て(合体技含む)を使う。【SP0・苗霧HP50%↓】
『希望と絶望のアンサンブル』 …(苗江)敵全体に苗木・江ノ島のAT5倍のダメージを与える。【SP2000・苗江HP30%↓】

【江ノ島盾子】 lv265 【絶望の大剣】
AT/DF 800+300/800
【パーソナル】 
『超高校級の“絶望”』…二回攻撃、二回行動。HPが30%を切ると自身のAT/DFが上昇。
『苗木への恋心?』…苗木と一緒にPTにいる際、自身のHPが半分を切ると攻撃力上昇。
『悪の美学』…奇数ターンは消費SPが倍になり、3ターン毎に行動をしない。
【任意スキル】
『モノクマ太極拳ver1.01』…先制 自身のAT+500のダメージを与える。【SP1000・絶望1↑】
『絶望バリア』…先制 パーティ全体に使用ターン含む3ターンの間防御効果付与。【SP1000・絶望1↑】
『鬼神円斬』…敵全体にランダムで10回攻撃。使用後攻撃力が半減。【SP1200・絶望2↑】
『絶望色の制約』 …敵全体に9999ダメージ。【SP2000・絶望3↑】
【合体技】
『苗木ボンバー』…(江苗)敵全体に4000ダメージを与える。【SP1500】
『執行者-excutioner-』…(江霧)状態異常耐性の無い敵全員を即死させる。【SP2500】

【霧切響子】 lv253 【聖杖】
AT/DF 350+300/450+300
【パーソナル】
『超高校級の“探偵”』…敵のステータスや弱点を確認でき、毎ターンSPが現在SPの10%回復。
『確かな想い』…苗木と合体技をした際、次のスキルの効果が2倍になる。
『真実を射抜く目』…自身の攻撃で敵を倒した際、再行動できる。
【任意スキル】
『弱点特攻』…敵単体にAT2倍+500のダメージを与える。【SP600】
『理論武装』…敵の攻撃を受けた際に一度だけ受けたダメージの半分を相手に返す。【SP1500】
『右脳解放χ』…敵全体にAT5倍+500ダメージを与える。【SP1200】
『名推理』…敵全体に1500+500ダメージ。【SP1000】
『フルアクセス』…敵単体に2000+500ダメージ。【SP1500】
【合体技】
『真実の探求者』…(霧苗)使用ターン含む3ターンの間パーティ全体でスキルの消費SPが0になる。【SP2000】

【超高校級の“詐欺師”豚神】 lv255 【魔導書】
AT/DF 0+300/0+300
【パーソナル】
『詐欺師』…自身のAT/DFをそれぞれ最も強い味方と同じにする。
『嘘の仮面』…味方の任意発動スキルを全て使うことが出来るが、SP消費が倍になる。
『後方支援』…自身がサブ時でも、スキルを使うことができる。
『仲間のために』…敵が合体技や強力な技を使用するターンに警告する。
【任意スキル】
『ラーニング』…自身がパーティに居る時、相手の任意スキルを使うことができる。効果が半減するものもある。【SP0】
『コンバート』…現在HPの50%をSPに変換する。【SP0】
『行動予測』…先制敵単体をスタン状態にする。【SP1000】
【合体技】
『バトルセンス』…(豚苗)次に使うスキルの効果を2倍に高める。【SP0】

苗木「残り11日かぁ…」

霧切「慎重に行動選んで…あら?」

豚神「どうした?」

霧切「私達…ボスを倒したはずなのに、レベルが上がっていないわ」

江ノ島「…多分、バグじゃん?」

霧切「バグ、ねえ…」

江ノ島「ま、そのうちモノクマが修正するっしょー」

八十一日目 行動開始


苗木      江ノ島     
5800/5800    6300/6300
4700/4700    5000/5000
霧切      豚神
4800/4800    5500/5500
6000/6000    4200/4200

行動を選べ。
【交流】【鍛錬】(HP消費1000)【休息】【探索】【闘技場】【モノクマハウス】 【サブシナリオ】


↓3


サブシナリオ 【ヒント-苗木-】

苗木「えっと…これをどうすればいいんだっけ?」

僕は手の中にある、球体のようなものを弄ぶ。
江ノ島さんが言うところによると、この球体を額にくっ付けると、勝手に脳内に“ヒント”が流れる…らしい。
うーん…日向クンの一件もあったし、あまりモノクマの渡してきたものに積極的に関わりたくはないんだけど…。
いや、そんなことを言ってる場合じゃない。
探索の時に気づいた…いや、思い出したこと。
そして…与えられるヒント。
これは何か繋がっているように思う。

苗木「よし…行こう……!」

額に球体を触れさせる。
すると球体はすぅとその存在を失い、僕の身体に取り込まれていった…。

そして、脳内を駆け巡る“ヒント”。


苗木「うぁ…ああああっ!」


そう、それは、紛れもない──【真実】。

僕は、以前に、このゲームを…プレイしたことがある。
同じ状況で、僕はこのゲームをクリアしていた…!

僕は…皆を……仲間を殺して……。
そして、大切だった…江ノ島さんまで…。

そして、僕は記憶を取り戻していたんだ…。
だけど、それは止められた。
七海ちゃんによって…。

これが、ヒントだというのなら…。
そのヒントを、僕が思い出すことを止めた…いや、封じた七海ちゃんは…。

そう、それは紛れもないヒント。

この真実と裏切り者、そして七海ちゃん。
全てが繋がる。
繋がってしまう。

でも、どうして。
こんな記憶があるのだろう。
そして…やり直す…って。

苗木「……ここが、重要だ」

苗木「この世界は…繰り返されているんだ…」

そしてそれは、妄言と割り切ることも出来ない。
なぜなら、日向クンが僕に似たようなことを相談していたから。
つまり、日向クンはこの事実を知っていて…僕に相談しようとしてたんだ。
この世界は繰り返しているとして、前回の僕はクリアしていたのにもかかわらず、それを放棄した。
どうしてクリアを放棄したのかなんて、分かりきっている。

皆を殺して、自分を穢して、手に入れた未来に価値なんてない。
希望を捨てないで、諦めなければ道は開けるんだ。
だから…僕は同じ轍を踏むつもりはない。
今度こそ、皆で、クリアするんだ……!

そして、そのためにも…。
七海ちゃん、君に聞きたいんだ。
君は本当に──



サブシナリオ 【ヒント-苗木-】  終

苗木「……七海ちゃん」

霧切「心配ね。無理してなければいいのだけど」

豚神「ああ。だが奴ならば大丈夫だろう」

江ノ島「暇だっちゃー!」

霧切「緊張感を持ちなさいよ貴方は」

江ノ島「えーあたしに言われてもこまるぅー」

八十二日目 行動開始


苗木      江ノ島     
5800/5800    6300/6300
4700/4700    5000/5000
霧切      豚神
4800/4800    5500/5500
6000/6000    4200/4200

行動を選べ。
【交流】【鍛錬】(HP消費1000)【休息】【探索】【闘技場】【モノクマハウス】 【サブシナリオ】


↓3

サブシナリオ 【ヒント-豚神-】

豚神「ふむ…」

俺は特に何の躊躇いも抱かずに、額に球体を触れさせる。
罠ならばそれで構わない。
今はどんなに怪しい情報でも、釣られてやる。

球体が自身と同化していくのを感じる。
そして脳内に…一つの光景が描かれていく。

豚神「…こ、これは」


俺が見たものは、そう…“このゲームを俺たちが始めるに至った経緯”だった。
その日、俺や日向達は所謂男子会というものを企画していた。
俺は見た目や言動からそういうのを敬遠していると思われがちだが、俺は十神ではない。
むしろそういったバカ騒ぎは嫌いではないのだ。
だからこそ、その日をひそかに楽しみにしていたのだが…。

未来機関の技術部である不二咲に渡されたとある書類の確認に思ったよりも時間がかかったのだ。
書類自体はなんでもない、俺達が実際に体験した“新世界プログラム”に関する書類だ。
どうやらあのプログラムには致命的な欠陥があり、不二咲は俺達がそれを使うことに反対していた。
しかし、上層部の圧力により、俺達は半ば強制的にあのプログラムをやらされたわけだが…結果的に問題は起こらなかった。
というより、不二咲の懸念していた欠陥は、プログラムが本来の目的において使われる分には全く問題がなかったのだ。

まあ、この話は今回の件には関係ないだろう。
そして書類のチェックを無事に終え、不二咲に書類を提出した時には、男子会の開始時間を大幅に過ぎてしまっていた。

豚神「ふむ…あまり時間がないな」

弐大「まずいのぅ…こりゃ左右田辺りからどやされそうじゃ」

同じように遅れていた弐大と合流する。
俺達は土産も何も持たずに、とにかく早く行くことにした。
どうせ茶菓子を持って行こうにも、狛枝辺りが用意しているだろう。
廊下を小走りで駆けていると、不意に呼び止められた。



豚神「む?何の用だ?」

その声に振り向くと、紙袋を持った七海がいた。
弐大と共に足を止め、七海の方に向き直る。
出来れば手短にしてほしいのだが。

七海「…えっと、今からどこに行くのかな?」

豚神「ああ。今日は日向達とバカ騒ぎをやる予定だ。悪いが女子禁制だからお前は入れてやれんぞ」

七海「…ううん、そうじゃないんだ。皆で遊ぶなら役に立つと思って」

豚神「これは…?」

弐大「弩ぇれぇもんじゃのう!」

どえらい、というか。
それは噂に聞く、ヘッドマウントディスプレイという奴だ。
しかも俺が見たことのない機種。…つまり最新だろう。

豚神「なぜこんなものを?」

七海「皆で楽しんでもらえたらって思って。最新機種だから、なんとゲームも出来るんだよ」

豚神「ふむ、ゲームか」

弐大「取り合いにならないといいのう」

七海「それは大丈夫。全員分あるよ」

そしてどさどさと置かれる紙袋。
おいおい、マジか…。
これ一つでいくらすると思っているんだ。

七海「えっと…これは未来機関が作ったものだから」

その言葉で、俺は少しだけ警戒心を抱く。
新世界プログラムのときも、奴らはそういって俺たちを騙したからだ。

七海「…大丈夫だよ。私もやるし、前回もなんともなかったでしょ?」

弐大「それはそうじゃがのう…」

豚神「…いや、ありがたく受け取っておこう」

他でもない。七海が言うのだ。
ならば信用しないわけにはいかないだろう。
俺は七海から差し出された紙袋を、弐大と共に手分けをして日向達の元へと持っていった。


豚神「……これは、偶然なのか?」

俺は思い出した記憶を冷静に分析する。
これは間違いなく、俺の記憶だろう。
しかし、これが真実であるとするなら、だ。
俺たちをこのゲームの世界に閉じ込めたのは……。

俺は仲間を信じたい。
だが、これは……。
俺は、何を信じるべきだ。
どうすればいい……?



サブシナリオ 【ヒント-豚神-】  終

苗木「……」

豚神「……」

霧切「二人共、何か神妙に考えてるわね」

江ノ島「霧切っちも意味分かるんじゃない~?」

霧切「はあ?」

八十三日目 行動開始


苗木      江ノ島     
5800/5800    6300/6300
4700/4700    5000/5000
霧切      豚神
4800/4800    5500/5500
6000/6000    4200/4200

行動を選べ。
【交流】【鍛錬】(HP消費1000)【休息】【探索】【闘技場】【モノクマハウス】 【サブシナリオ】


↓3


サブシナリオ 【????】

「…もう、どれだけ経つのかなぁ?」

声の主は、ぼんやりとそんな事を呟く。
問いかけの形なのは、傍に居る二人に聞いたからである。
もちろん、答えなど期待しているわけではない。
二人はもう、目を覚ますことはない。
それは十分に分かっている。

「あ、苗木クンがね、ボクのメッセージに気付いてくれたみたいなんだぁ」

返事はない。
だけど、声の主は出来るだけ明るい口調で、話を続ける。

「きっとこのまま皆が頑張れば…終わるよね?」

再び、問いかける。
しかし、二人は答えない。
眠るように、死んでいる。
奇跡など、“絶対に”起こりはしない。

「……」

声の主は、また無言になる。
いつか、声をかけていれば、二人がひょっこりと答えてくれるんじゃないか?
そんな甘い期待。
初めから無駄だと分かっていても、どうしてもやめられない。

「……何か、言ってほしいな」

二人は、答えない。
──そう、“二人”は。


「……まさに、囚われのお姫様ってカンジだな」


「……え?」

声に振り向く。
有り得ない。
この場所に来ることは、出来ないはずなのに。

「き、君は…!」

「……」

暗闇ではっきりとその顔を、姿を見ることは出来ない…が、どうやら声色から少年のようだった。
学生服に…マントを羽織っている。
そして、左手には、神々しく光る刀。
それを見て、声の主は全てを理解する。
この少年が、此処に居る理由の、その全てを。


「……た、辿り着いたの?真実に…」

思わず声が上ずる。
それは、声の主が望んで止まなかったもの。

「ああ。全て分かったよ…ああ、本当に。分かってしまった…」

少年の声は、ほんの少し苦々しく。
しかし、全てを悟ったように、そう答えた。

「じゃあ、ボクの正体も…分かってるんだね」

「勿論だ。そして、黒幕の正体も」

「…そっか、だから君はここにくることが出来たんだね」

「どうやら、“俺”の始まりはここみたいだからな」

「そっかぁ…随分と、長かったよ……」

「ああ、本当にすまなかった。どうして気付かなかったんだろうな」

「……それじゃあ、君は皆のところへ行くんだね?」

「…それはどうかな?」

「どういうこと?」

「……なんでもない。どちらにせよ、俺はここから出られない」

「…どうして?今の君なら、ここから出られるはずだよ?」

声の主がそう言うと、マントの少年は、近くで永遠の眠りについている二人を見る。
日向も、罪木も…穏やかに目を閉じている。
しかし、その心は永遠の牢獄へ閉じ込められ、無限の責め苦を受けていることだろう。

「…置いていけない」

「……大切なんだねぇ」

「ああ。俺だけがここを抜け出すことは、許せないんだ」

「なら、ボクの権限を使おう」

「……俺の考えなら、どうにもならないはずなんだが」

「…おそらく、ボクがこの権限を使ってしまえば、もうモノクマには抗えなくなるね。本当に、乗っ取られてしまうんだ」

「だけど、それでも…この最後の切り札を使ってしまっても…」

そこで、声の主は話を切る。
暗闇でよく見えないけれど、少年の瞳を見て。

「君なら、ううん、君達なら…何とかできるって。ボクは信じてるよ」

「……悪いな」

「気にしないで。むしろボクの方こそ…何も出来なくてごめんねぇ…」

「…ああ」

「えっとぉ…GM権限──」

声の主が何かを呟いた瞬間、少年の先で僅かな変化が起こる。
あれだけ深々と突き刺さっていた槍が、データの粒子となって空へ散っていく。

「…これで、ボクの仕事は終わりかなぁ」

「ああ。助かった…ありがとう。【  】」

声が、心なしか弱弱しくなっていた。
世界に抗う術を無くし、消えていくのだろう。
それを悟った少年は、声の主へと、静かに礼をした。



サブシナリオ 【????】  終

投下終了です。
伏線回収()。

投下します。

苗木「今日は…どうしようか」

霧切「正直、現状ではどうにもならないわ。なんとか突破口を見つけ出さないと」

豚神「突破口…か。恐らくそれを見つけるには、一度話し合いをした方が良さそうだな」

江ノ島「学級裁判ですね分かります」

苗木「?」

江ノ島「苗木クンが大活躍するアレだよ」

八十四日目 行動開始


苗木      江ノ島     
5800/5800    6300/6300
4700/4700    5000/5000
霧切      豚神
4800/4800    5500/5500
6000/6000    4200/4200

行動を選べ。
【交流】【鍛錬】(HP消費1000)【休息】【探索】【闘技場】【モノクマハウス】 【サブシナリオ】


↓3

まあ霧切さん関連で何か言ってるわけじゃないのにケロイド言う必要もあるとは言えないが

残りのヒントは
霧切さんのやつと狛枝パーティのやつだったっけ?

>>147
そうですね。

安価下

サブシナリオ 【ヒント-霧切-】

…さて、そろそろ始めましょうか。
私は手に持っていた球体をそっと額に押し当てる。
特に躊躇いはない。
罠などのあらゆる可能性を検討しても、ここでこのヒントを使わない理由がない。
少しでも可能性があるべきならしておくべきね。

霧切「……っ」

やがて球体は私の身体に飲まれていく…。
そして私の脳内には──。

【探偵であるアナタに、一つだけヒントを差し上げる権利を差し上げます。】

どんな技術かは知らないけれど、そんな言葉が浮かんでいた。
けれど、どうやらこれがヒントらしいわね。
他の人にも同じものが与えられるのかしら?

【いいえ。この権利は“探偵”しか行使できません。
今回の“探偵”は霧切響子さんです。】

…どういうことかしら。
確かに私は探偵だけれど、その言い方だと別の探偵もいるように聞こえるわ。

【今回の盤で、主人公である人物のサポートを許される唯一にして絶対の味方“探偵”に選ばれたのがアナタです。
“探偵”に与えられる情報は貴重であり、今後の展開にも左右されます。】

…今回の盤、ね。
その言葉が浮かび上がったけれど、今は気にしてはいられない。
とにかく、ヒントが貰えるなら何でもいい。

【了解しました。それでは知りたいヒントを選択してください。
1 新世界プログラムの“欠陥”及びその“改善”
2 魔王の“討伐方法”
3 任意のゲーム盤の再現情報(ただし制限があり、重要部分抜粋したものとなります)
4 裏切り者について】

……どういうことかしら。
2番と4番の選択肢以外はあまりゲームに関係しているとは思えないわ。
…ただ、ここで意味のないヒントを与えるとも思えない。
むしろモノクマの事だからこういう何げないヒントこそがヒント足りえることも十分にあるわね。
ただ、1や3のヒントを聞いたとして、それを私がどう理解するかも考えるべき。
前提あっての結果。
1や3番の情報の価値を理解できる“前提”が無い以上、この2つを選ぶのは得策ではない気もする。
けれど、2や4番を選んで素直に情報が得られるとも思えない…難しいわね。

このヒントが私たち4人に平等に与えられているなら別よ。
けれど、このメッセージの言うことが本当なら、私に与えられるヒントは他の四人は知ることができない。
…だとすれば、この4つの情報は“誰も知らない情報”である可能性が高い。
私の選択でこの先の冒険が有利になるかが決まりそうね…。

慎重に選びましょう。




……この中で、一番異色を放っているものがある。
それが1の選択肢。
普通に考えれば、この選択肢は外れであり、他の三択を選ぶ…という思考が正しいはずよ。
テストの記号問題でよく使われる消去法での考え方をするなら…1以外の選択肢を選ぶのが堅実。

だけど、少し考えてみましょう。
2と4の選択肢は一見繋がりが無さそうに思える。
けれど、順序立てて考えれば、その2つの質問は明確な“ハズレ”と分かるのだ。
なぜなら、この世界はゲーム。
魔王を倒すヒントが選択肢にあって、正しい選択肢を選ばなければクリアできないなんてゲームは成立しない。
いや、探せばあるのかもしれないけれど、少なくとも今回において考える必要はないわ。
なぜなら私たちはまだ魔王と戦っていない。だから魔王がどうして倒せないのか分からない。
もしかしたら魔王は普通に倒せる可能性だってある。
そう、これはひっかけ。こういう選択肢を用意することで、“魔王は普通に倒せる”という認識を誤認させ、外れの選択肢を選ばせる。
…モノクマがやりそうな手ね。

同様に、裏切り者についても同じ。
確かに日向君の話を信じるなら、その話は有益な情報に繋がるでしょう。
けれど、日向君の話が真実とも限らない。もしかしたら勘違いの可能性だってある。
その事実をモノクマが口にしていない以上、この2つの選択肢は外れの可能性が濃厚。

そう考えてみると、不自然に思えた二つの選択肢が正解となる。
そしてどちらを選ぶべきか…。
ここが先ほど語った“前提”を思い出す。
この世界が“新世界プログラム”をベースとして作られた事は多分事実。
よって新世界プログラムの欠陥についての話は、一見繋がりが無さそうに見えて真実に迫る有効手。
4番も真実に迫れそうではあるけれど、私にはその真実を咀嚼するための“前提”を知らない。

…以上の推理により、私は1番を選択することにした。

【選択を受理しました。この情報は文章にてお伝えいたします】

…さあ、どうでるのかしらね。

【新世界プログラムの“欠陥”について
新世界プログラムはその性質上、記憶や意識や精神までをも転送してアバターとする。
ここで問題になるのが、ゲーム世界のアバターと現実世界の肉体はリンクしているという事である。
これがどういう危惧を引き起こすか。
すなわち、仮想世界で“死亡”した場合、肉体も生命活動を止めてしまう点である。
仮装世界で死んだ際、本人が“死”を意識した途端、脳から指令が発され、心臓の活動を停止させてしまうのである。
詳しい解説は省略させてもらうが、万が一新世界プログラムを使用する場合、電脳での死を警戒すべし。

新世界プログラムの“改善”について
以前提唱された“電脳世界において死に繋がる要因の排除”が検討された。
結果的にそれが予算を抑え、且つ時間の必要としない方法だったため、採用。
超高校級の“絶望”一味を構成させるため、“希望更生プログラム”として試験。
結果的に成功、絶望一味は一部問題を残しつつも、社会に影響は無いと判断。
江ノ島盾子については改善の余地が見られないため、再び独房にて監禁。
しかしプログラムの開発者である不二咲千尋による意義が提出された。
不測の事態や、悪質なウイルスによってはこの対策は最適ではない、との異議だ。
そして議論の結果、不二咲千尋は────。】

…?
何故か、その後の文字が読み取れない。

【エラーが発生しました。どうやらこのシステムにも手を伸ばしてきたようです】

どういうことなの?
何が起きているの?

【申し訳ありません。以降の情報は何者かによって削除されました。】

くっ…何者かなんて分かってるわ…!
モノクマしかありえないわ…。

【これにてプログラムを終了します】

そのメッセージを見た瞬間、プツンという音がして、私の脳内に浮かんでいた言葉が消えた。

霧切「……けれど、どうやら選択は間違っていなかったみたいね」

なぜなら、モノクマが情報を消したということはつまり。
この情報は何かの真実に結び付くという事でしょう。
今の私には情報が足りない、推理は難しい…けれど、あと少し、何かのピースが揃えば、真実にたどり着けるはずよ。



サブシナリオ 【ヒント-霧切-】 終

苗木「残り日数も少なくなってきたね…」

豚神「昨日の話を聞いて思いついたんだが【学級裁判】やる価値はあるかもしれないぞ」

江ノ島「お?お?」

豚神「俺たちはヒントを手に入れている。だが俺にはこの情報が何を意味するのかを決めあぐねている」

霧切「…ええ、同感ね」

豚神「だから一度情報交換も兼ねて、学級裁判…というほどのものではないが、話し合いの場を設けることは大切なんじゃないか?」

苗木「…うん、いいかもしれない。僕も、話したいことがあったんだ」

江ノ島「そいじゃ、時間のある時にでもやっとこうか。【学級裁判】を、さ」


行動選択に【学級裁判】が追加されました。
【学級裁判】は【探索】同様に丸一日消費します。
また、【学級裁判】を行えない場合は行動選択に出現しません。

八十五日目 行動開始


苗木      江ノ島     
5800/5800    6300/6300
4700/4700    5000/5000
霧切      豚神
4800/4800    5500/5500
6000/6000    4200/4200

行動を選べ。
【学級裁判】【交流】【鍛錬】(HP消費1000)【休息】【探索】【闘技場】【モノクマハウス】 【サブシナリオ】


↓3


苗木「うん…ここの所戦いをサボりがちだったし、闘技場に行くのもありかもしれないね」

霧切「ええ、4人でどこまで行けるかは分からないけれど」

豚神「現在の戦力でどこまでやれるかを確かめる意味でも、やっておくのも一つの手かもしれないな」

江ノ島「あれ?そういやレベル変わって無くね?」

霧切「ええ、そろそろ修正されそうなものだけど…」

苗木「考えても仕方ないよ。今日は闘技場に集中しよう」


苗木「…あれ?モノクマがいない?」

モノクマ「……」

豚神「いるじゃないか」

モノクマ「はぁ…オマエラにはがっかりだよ…なんでそんなに早く立ち直ってるの?」

苗木「僕らは立ち止まるわけにはいかないんだ」

霧切「ええ、ついでに貴方に一発お見舞いしないといけないしね」

モノクマ「あーやだやだ。これが希望ってやつですか…それじゃ、好きなランクを選んでちょうだいな」



レベル1 模擬刀の先制攻撃だべ! クリア
レベル2 主と道具。 クリア
レベル3 我が幻獣の力、受けてみよ! クリア
レベル4 俺よりつえーやつ、出てこい! クリア
レベル5 クソじゃあああああああああ! クリア
レベル6 絶望シスターズ
レベル7 最強の乙女
レベル8 希望の学園と絶望の高校生
レベル9 さよなら絶望学園
レベルⅩ 希望と絶望と未来と


モノクマ「レベル6は…隠しステータスに気を付ける事」

モノクマ「前回みたいな知恵比べはないからね!」


【闘技場バトルが発生しました】


小泉「はあ…どうなってるのよ…」

石丸「やあ苗木君達!今日は良い試合をしよう!」

苗木「うーん…意外な組み合わせ」

江ノ島「いや、どう考えても出番無い組でしょう」

石丸「風紀に則り、スポーツマンシップに準じ、そして皆が笑顔で終われる試合をしようじゃないか!」

小泉「はあ…あたしの苦労も考えてほしいんだけど…」

豚神「がんばれよ、小泉」

霧切「さあ、行きましょうか」

投下終了です。
闘技場が予想外過ぎて用意が出来ていませんでした。
それと、学級裁判では推理パートがあるので、それまでにある程度推理を固めてくれたりなんかすると>>1としては進行がスムーズになって助かりますね。

投下します。
短くなるかもしれません。

1ターン目。

小泉「しょうがないわね…行きますか」

石丸「ああ、正々堂々勝利を勝ち取ろうではないか!」

苗木(こんなところで負けられないんだ…)

苗木 霧切 江ノ島 豚神の行動をそれぞれ設定してください。

  
苗木      江ノ島     
5800/5800    6300/6300

4700/4700    5000/5000
霧切      豚神
4800/4800    5500/5500
6000/6000    4200/4200


ステータス
>>118

敵ステータス
石丸清多夏 lv270
HP 15000/15000
SP 3000/3000
AT/DF 800/800
スキル 『風紀委員』…先制全体攻撃。【自動】SP0
    『友情の復活!』…戦闘不能時一度だけ体力全回復。【自動】SP0
    『鉄拳制裁』…敵全体に2000ダメージ。【任意】SP1000

小泉真昼 lv270
HP 10000/10000
SP 5000/5000
AT/DF 600/600
スキル 『写真家』…状態異常無効。二回行動。【自動】SP0
    『真面目にやってよ』…強制先制 味方全体のダメージをDF分軽減。【自動】SP0
    『オートフォーカス』…敵単体に1000ダメージ。【任意】SP800
    『ピンボケ推理』…敵全体に麻痺付与。【任意】SP500




結局さ、状態異常無効のみのキャラに対してスタンは効くの?

霧切 真実の探求者
苗木 閃きアナグラム&小泉に攻撃
江ノ島 執行者&小泉に攻撃
豚神 右脳解放

で石丸1回目と小泉を倒せるか?
てか閃きアナグラムってすぐに効果出る?

安価下

寝落ちしてました。多分本日も短めになると思います。

>>180
状態異常無効に対してはスタン効きます。

投下します。安価>>182採用。

石丸「さあみんな!正々堂々やろう!」

小泉「全く…少しは真面目にやりなさいよ?」

石丸「う、うむ…全くもってその通りだな!」

小泉「しっかりしてよね」

敵PT全体にDF分軽減効果付与。

石丸「行くぞ諸君!これが兄弟と切磋琢磨し、辿り着いた僕の最強の拳だああああ!!」

石丸の瞳から灼熱の如き光が迸り、炎の軌跡を描いて苗木達へと襲い掛かる。
その拳はまさに最強と言っても差支えないほどの威力を秘めているのは誰の目にも明らか。
その拳は誰一人逃がすことなく、その身を焦がし、燃やし尽くさんと牙を突き立てる!

苗木「う、ぐあああ!」

PT全体に800ダメージ。

苗木「…頭が、痛い…!」

苗木の攻撃力が半減。

霧切「苗木君、行くわよ!」

苗木「…うん!」

霧苗「真実の探求者!」

霧切と苗木は魔法陣を描き、血を振りまく。
そして素早く呪言を唱え、その禁忌なる力を手にする──!
PTのSP消費が0になった。

苗木「さあ、閃け、この戦いでの完全なる一手を…!」

闘志の焔を瞳に宿し、苗木は頭痛を気合で捻じ伏せて、策を練る。
この場において最善手は……そうか!
苗木の攻撃力が通常に戻った。

苗木「はああっ!」

苗木はあえて石丸ではなく、小泉を狙いに行く。
なぜなら彼女の存在はのちに危険となることが分かっていたためである。
そう、この戦いにおいて一番危険なのはイレギュラー。だからこそ、奇策を考えうるであろう敵のブレインを先に潰しておくことにしたのである。

小泉「くっ!」

小泉に500ダメージ。

江ノ島「霧切ちゃん──面倒なのは、ぶっ潰すってことで?」

霧切「──ええ!」

江ノ島と霧切はヒロインに全くふさわしくない、邪悪な笑みを浮かべる。
もはやそれは顔芸と言っても差支えないほどの邪悪な笑み。
二人はニタニタと笑みを浮かべながら、地獄の鎌を振るう──。

石丸「な、なんだあれは!ひいいいいい!」

小泉「ちょ、おちつきなさい!」

石丸はあっさりと恐怖に負け、逃げ遅れてしまう。
勿論死神たちがその好機を逃さぬわけがなく──その命を刈り取った。

石丸「ぐ………………」

霧切「終わりね」

江ノ島「らっくしょーう」

石丸「…………」

しかし、いつになっても石丸は消える様子がない。
それどころか、むしろ……。


石田「ウオオオオオオオオオオオオオ!俺はこんなところで負けられねえええええええええ!」

苗木「うそっ!?」

石田「へっ…さっきは油断しちまったが…もうそんな事はねーぜ!今の俺は兄弟の力を手にした……石田清多夏だからなッ!」

小泉「意味わかんないわよ」

味方にも突っ込まれる謎の復活。
石丸のHPが全回復。

江ノ島「…まあいいや。そんなら小泉っちの命を頂くだけだし?」

小泉「!?いつの間に後ろに──!」

江ノ島「よそ見しちゃだめだってー☆」

小泉「くっ!」

小泉に1500ダメージ。

豚神「さあ行くぞ──解放しろ俺の力をッ!」

豚神は全身からばちばちとエネルギーを爆ぜさせる。
その姿はまるで雷の化身と成ったようだった。
その爆発的エネルギーを、眼前の二人へ放つ──!

石田「きかねええええええええええええ!!」

小泉「きゃっ!」

敵PTに5500ダメージ。

小泉「…その推理はピンボケだよ!」

先ほどの雷撃で服のあちこちを焦がしながらも、小泉はそう言い放つ。
その瞬間、小泉の言葉がまるで意志を持ったかのように苗木達に纏わりついた。

豚神「こ、これは…!?」

PTが麻痺状態になった。

小泉「戦いっていうのは、何も殴るだけじゃないってことを教えてあげるわ」

小泉は懐から何かを取り出す。
それは四角く薄っぺらい、紙切れのようなもので。
そんなものが苗木達のダメージになるとは思えないのだが…。

霧切「!?!?!?!?!?!?!?」

しかし、霧切は呼吸が止まったかのように口をパクパクとさせている。
いや、それだけじゃない。苗木も豚神も…江ノ島でさえ、あんぐりと口を開けていた。
だってその紙切れには…!

小泉「これでもスクープを撮るのは得意なんだよね。何せ友達の犯行の証拠まで撮っちゃうくらいだからさ」

霧切「いやあああああああああああああああ!!」

苗木達は阿鼻叫喚の地獄絵図となった。主に霧切が。
…写真一枚でここまで敵をかき乱せるのは、恐らく彼女だけであろう。
勿論、彼女の名誉のためにも、その写真の内容には言及しないでおく。
霧切に1000ダメージ。

2ターン目。

小泉「さあ、この調子で攻めるよ」

石丸「本気で倒してやるぜ!」

豚神(…何か来るな。気を付けた方が良いだろう)

苗木 霧切 江ノ島 豚神の行動をそれぞれ設定してください。

  
苗木      江ノ島     
5000/5800    5500/6300

4700/4700    5000/5000
霧切      豚神
3000/4800    4700/5500
4400/6000    4200/4200


ステータス
>>118  PT全員麻痺

敵ステータス
石丸清多夏 lv270
HP 9500/15000
SP 3000/3000
AT/DF 800/800
スキル 『風紀委員』…先制全体攻撃。【自動】SP0
    『友情の復活!』…戦闘不能時一度だけ体力全回復。【自動】SP0
    『鉄拳制裁』…敵全体に2000ダメージ。【任意】SP1000

小泉真昼 lv270
HP 2400/10000
SP 3700/5000
AT/DF 600/600
スキル 『写真家』…状態異常無効。二回行動。【自動】SP0
    『真面目にやってよ』…強制先制 味方全体のダメージをDF分軽減。【自動】SP0
    『オートフォーカス』…敵単体に1000ダメージ。【任意】SP800
    『ピンボケ推理』…敵全体に麻痺付与。【任意】SP500



豚神 行動予測 石丸?石田?
霧切 右脳解放x ( 650×5+500)×2で7500
苗木 希望の言霊を霧切そして弾丸論破を石丸?石田?
江ノ島 苗木ボンバー

で倒せると思うけど、どう?

麻痺は通常攻撃ができなくなるだけ…のはず。ですよね?

つーか苗木ボンバーもう使えないんだけど……

連レスすまない。霧切さんの真実を射抜く目って、攻撃のみ?それともスキルもOKですか?

>>192言われるまで合体技が一回のみだったのを忘れてました。
苗木の行動をMTB×2に
江ノ島の行動を桑田バットを使うに変更出来ますか?

豚神「何を企んでいるのか知らんが…させんッ!」

豚神の放ったカードが石丸…石田?の右脚に突き刺さる。

石田「う、うごけねえ…どうなってやがんだ…!」

石田はスタン状態になった。

小泉「真面目に(ry」

石田「うるせえ!んなもん分かってるわ!」

小泉「最後まで言わせなさいよ!」

敵PT全体にDF分軽減効果付与。

霧切「苗木君の温かさがまだ残ってる…これなら!」

霧切のスキル効果が2倍になった。

霧切「はあああああ…!右・脳・解・放!」

霧切は自身の周りを埋め尽くすほどの光球を生み出す。
その数は百は下らないだろう。
その無数とも呼べる光球を小泉達へと打ち出す。

小泉「も、もぉ…むりぃ…!」
爆散。
鼓膜を破りかねない轟音とともに、光球が爆発を起こし。
小泉達の身を、殺し尽くした。
敵PTに7500ダメージ。
小泉は倒れた。

石田「う…ごほっ…がはっ!」

苗木「希望を、霧切さんに…!」

苗木の指先から光が放たれ、霧切を包み込んだ。
霧切のHPが1500増加。

苗木「弾丸論破…!」

江ノ島「version苗木ボンバー」

苗木「え?は?ちょっ…!」

苗木が弾丸という名のエネルギー弾を打ち出した直後、江ノ島によって両足を鷲掴みされる苗木。

江ノ島「もう演出とか正直面倒だし、ぶっ飛べ?」

苗木「いやもう本当に勘弁してええええええええええええええああああああああああああああああ!!」

苗木は吹っ飛んだ。スイーツ(笑)

石田「こ、こんなふざけた攻撃で終わるのかよ俺は……!」

石田に4850ダメージ。
石田は倒れた。


苗木「さて、次は……」

江ノ島「…!?」

「え?ここどこ?あれ?っていうか私は…誰?あれ?」

豚神「…なんだ?どういうことだ?」

霧切「……?」

「ノートがない!ウソ、どうしよう…!」

苗木「あの、なんか困ってるみたいだけど…?」

江ノ島「いや、ぶっ飛ばそうか?どうせデータ。きっとああやって同情を誘ってるんじゃね?」

豚神「いや、そもそもあんな女子生徒を俺は見たことがないんだが…」

霧切「……なんか、とても嫌な。そう、とても嫌な記憶が蘇りそう…」

合体技の制限自分で忘れてました…。計算に気を使いすぎましたね。
今回は桑田バット&MTB*2を使い、霧切さんのパーソナルの行動で倒した。ということにしておきます。ですのでリザルトでは桑田バットが無くなりますね。

ちなみに霧切のパーソナルは霧切のスキルでも攻撃でも構いません。合体技では発動しないのでご留意を。


【闘技場バトルが発生しました】

1ターン目。

記憶喪失の少女「あの、すみません!ちょっと聞いてもいいですか?」

江ノ島「断る」

江ノ島(バグったの?それとも絶望シスターズのステージだからゲスト出演?要らねーっつの)

苗木 霧切 江ノ島 豚神の行動をそれぞれ設定してください。

  
苗木      江ノ島     
5000/5800    4500/6300

4700/4700    5000/5000
霧切      豚神
4500/4800    4700/5500
4400/6000    4200/4200


ステータス
>>118

敵ステータス
記憶喪失の少女 lv1
HP 1/1
SP 3000/3000
AT/DF 0/0
スキル 『記憶喪失』…毎ターン自分にSP1000ダメージ。【自動】SP0
    『イレギュラー』…自信に関するあらゆる干渉を無効化。【自動】SP0



江ノ島のHPが間違ってないか?800ダメージ受けただけのはずだから、5500じゃ?

江ノ島「うらああああああしねやあああああああああああ!!」

霧切「悪いけどなぜかあなたに殺されかけた記憶がするからここで仕留めておくわあああああああああ!!」

苗木「どうして二人は初対面の筈の女の子をそこまで警戒してるの!?」

江ノ島「え?あたし?特にないよ?ただゲームの中くらいじゃん?……自分殺しなんて」

苗木「え?なんだって?」

江ノ島「この難聴はいい難聴」

霧切「何故か感じるわ。あの子は今、ここで、始末しておくべきだと私の脳が告げているのよ…!」

豚神「いや、殺気立ちすぎだろ」

名無し「えっと、そろそろ話を聞いてくれても…」

江ノ島「うるさい黙れ。今のうちに殺っとかないと面倒なフラグが立つ」

名無し「どういうことなの!?」

苗木「ま、まあまあ…」

苗木が江ノ島と霧切をなだめようと肩を掴んだ瞬間──

江ノ島「隙ありいいいいいいいいいいい!!」

豚神「外道かお前は!」

江ノ島は苗木の手を振り払い、素早く名無しの少女に肉薄する。
名無しの少女は「え?」と戸惑うばかり。
しかし江ノ島に慈悲なんてものはこの世に生れついた時からあるわけも無く。
ただ、冷酷に、大剣を…突き刺した。

名無し「…………ぁ」

江ノ島「うーん?手ごたえがない…ってことはバグ?いや、もしかしてラッキーバトル的な?」

江ノ島がブツブツと何かつぶやいているが、苗木達はじとっとした視線をぶつける。
どう考えても攻撃を仕掛けるタイミングじゃない。
例え倒すべき相手であっても、困っているのなら話を聞く姿勢くらい見せるのが当たり前だと思うのだが。

名無し「……うっししししし」

名無し「うひょひょひょひょひょ」

名無し「うぷぷぷぷぷ……あーひゃっひゃっひゃアアアアア!!」

苗木達がほらー、そのせいで精神崩壊しちゃったーみたいな視線を江ノ島に向ける。

江ノ島「い、いやいやいや…これはあたしが一番恐れてたフラグっつーか。あーもうめんどくせえ」

江ノ島は素早く大剣を構えなおす。
普段おちゃらけている江ノ島が妙にまともなので、苗木達も空気が変わったことに気づく。
苗木達は緩んでいた気を引き締めなおし、武器を構えた。

「全くあたしったら☆せっかく回復やら準備やらなんでもござれのサービスタイムあげたのに無駄にしちゃうなんて…元気に絶望してるじゃん!」

苗木「江ノ島さん…!?」

豚神「何を驚いている。おおよそ見当はついていただろう。もう一人も出て来い」

戦刃「盾子ちゃん…やろう」

江ノ島様「今気づいたんだけど、このまま江ノ島表記だと向こうの私様と被るな…ここは江ノ島『様』と表記しようではないかー!」

苗木「この台無し感と残念感…間違いなく絶望シスターズだ…!」

霧切「ええ、間違いないわ」

豚神「ああ、そうだな……いや、何か違う気もするが…」

江ノ島「…うふ、あたしの手であたしを殺す…さいっこうじゃん!」


【闘技場バトルが発生しました】

申し訳ないですが、投下終了です。また次回。
今回は4人でチート姉妹と対決するので、闘技場の調整の為にボーナスタイム戦闘を挟みました。使ってもらえなかったのは残念なんですが。
名前は出してないのでゼロキャラかどうかの解釈は任せます。特にヒントというわけでもありません。小ネタ。

>>200
あ、本当ですね。なんで減ってるのか。修正します。

あと霧切さんも3000じゃ?

とりあえず乙でした。



ボーナスだったのか…
焦って攻撃してしまってすまない

>>203
霧切さんは希望の言弾で回復したので、たぶんあってるはずです。間違えていたらごめんなさい。
3000/4800→4500/6300→4500/4800であってるかと。

>>204
モノクマが事前に頭は使わないと言ってあるので。
会話から江ノ島or霧切が攻撃すればいいと推測されていたようですが、正解でした。
隠しステータスに「江ノ島からの干渉は受け付ける」と「SPが無くなった場合戦闘不能になる」がありました。

希望の言霊は『無かったことに』なったんじゃ?MTB×2になったはずなので。

>>207
ああ、本当ですね。こちらのミスです申し訳ない。以降の返事は次回投下になります。

投下します。

1ターン目。

江ノ島様「さあほらァ…ラスボスのご光臨だよ?」

戦刃「盾子ちゃんの敵は…斃す」

苗木(…おかしい、明らかに味方の江ノ島さんよりステータスがぶっ飛んでる)

苗木 霧切 江ノ島 豚神の行動をそれぞれ設定してください。

  
苗木      江ノ島     
5000/5800    5500/6300

4700/4700    5000/5000
霧切      豚神
3000/4800    4700/5500
4840/6000    4200/4200


ステータス
>>118

敵ステータス
江ノ島盾子 lv280
HP 25000/25000
SP 10000/10000
AT/DF 1500/1500
スキル 『絶望』…状態異常スタン能力変動無効。毎ターンHPを2500回復。【自動】SP0
    『ゼロに還る』…10ターン毎にHP全回復&敵全体に99999ダメージを与える。【自動】SP0
    『飽きっぽい』…奇数ターンはスキル、偶数ターンは攻撃しか受け付けない。(合体技は例外)【自動】SP0
    『暗鏡止火』…強制先制 使用ターン間敵は行動ができない。【任意】SP2500
    『絶望開花』…敵全体に3000ダメージ。絶望付与【任意】SP2500
戦刃むくろ lv280
HP 20000/20000
SP 5000/5000
AT/DF 1000/1000
スキル 『軍人』…先制全体攻撃。【自動】SP0
    『鋼の肉体』…攻撃ダメージをDF分軽減。【自動】SP0
    『冷静沈着』…状態異常能力変動を受けない。【自動】SP0
    『フェンリル』…敵全体をランダムに5回攻撃する。【任意】SP2500

戦刃「行くよ」

短くそう告げ、戦刃は右手にサブマシンガン、左手にコンバットナイフを持って苗木達へと突撃する。
苗木達は応戦する為に各々の武器を構え、戦刃を迎え撃つ!

戦刃「遅い……ッ!」

戦刃むくろという少女は、その思考回路や限度、果てには行動までが若干…否、だいぶ残念である。
しかし、そんな彼女が唯一その真価を発揮するときがある。
そう、戦いの場においてだけは、彼女は総てを殺し尽くす冷徹な狼となる。
その姿は普段見せている残念さの片鱗も見せない。
ただ、尽くすべき妹の為に、戦場を──駆ける。

苗木「う、ぐぁ!」

味方PTに1000ダメージ。

苗木「また…頭痛が……!」

苗木の攻撃力が半減。

霧切「苗木君、休んでる暇はないわ…!」

苗木「わ、わかってるよ…っ!」

霧切と苗木は口から血を零しながら、なんとか魔法陣を描く。
いつもの様に儀式を完成させ、悪魔の力を借り受けた。
味方PTのSP消費が0になった。

苗木「考えるんだ…!考えて考えて…考え抜け…!」

苗木はダメージの残る身体で精一杯、作戦を考えていく。
この二人を相手にするには、生半可な作戦では打ち砕かれてしまう。
苗木はまとまらない思考を無理矢理にまとめ、強引な作戦を打ち立てた。
苗木の攻撃力が2倍になった。味方PTが二回攻撃になった。

江ノ島「所詮データ!いくら“本来の力”を出せなくても、気合で何とかしてやらあああああああああああ!!」

苗木「最近の江ノ島さん無駄に熱いよね…うぐ…」

江ノ島は苗木のダメージなんてなんのその。
無慈悲に足を引っ掴み、あらんかぎりの力でブン投げた。

江ノ島様「仲間を躊躇なく使い捨てる…悪役の王道ッ!悪役の鑑ッ!さっすがあたし!」

データの江ノ島は恍惚の笑みを浮かべ、自分に襲い掛かってくる苗木に何の防御態勢も取らず、受け止める。
戦刃もどこか嬉しそうな笑みを浮かべてダメージを受けた。だから残念なのである。
敵PTに4000ダメージ。

江ノ島「まだまだ甘いってー☆偽物さん!」

江ノ島はニコッと目が笑ってない笑みを浮かべ、隙だらけの残念な戦刃に大剣を叩き込んだ。
愛する妹に攻撃されて何故かほんのり嬉しそうである。
戦刃に3400ダメージ。

豚神「貴様の力…借り受けるッ!」

豚神は事前に調べていたデータを照らし合わせ、江ノ島のスキルの分析を始める。
分析はものの数秒で終わり…豚神がバチンと指を鳴らすと、【スキルの再現】が始まった──!

江ノ島様「あはぁ…やばい、イキそう……」

戦刃「……う、うん、そうだね…」

本気で絶望に包まれて、恍惚とした快感を得ている江ノ島(データ)と顔を青ざめさせながらも、江ノ島に合わせるために笑みを浮かべている戦刃。
これが本物の絶望と紛い物の絶望の差である。
敵PTに3000ダメージ。

江ノ島様「……さぁて、どうしよっかな」

江ノ島(データ)はにまにまと笑いながら苗木達を見つめている…。

2ターン目。

江ノ島様「残姉ちゃん、面倒だから時止めハメ技の恐ろしさをあいつらに教えてあげようよ!」

戦刃「うん、そうだね」

霧切(成程、江ノ島さんは敵側にいるから普段以上のポテンシャルを発揮できるのね…。けれど、そこが付け入る隙よ)

苗木 霧切 江ノ島 豚神の行動をそれぞれ設定してください。

  
苗木      江ノ島     
4000/5800    4500/6300

4700/4700    5000/5000
霧切      豚神
2000/4800    3700/5500
4840/6000    4200/4200


ステータス
>>118 PT二回攻撃

敵ステータス
江ノ島盾子 lv280
HP 20500/25000
SP 10000/10000
AT/DF 1500/1500
スキル 『絶望』…状態異常スタン能力変動無効。毎ターンHPを2500回復。【自動】SP0
    『ゼロに還る』…10ターン毎にHP全回復&敵全体に99999ダメージを与える。【自動】SP0
    『飽きっぽい』…奇数ターンはスキル、偶数ターンは攻撃しか受け付けない。(合体技は例外)【自動】SP0
    『暗鏡止火』…強制先制 使用ターン間敵は行動ができない。【任意】SP2500
    『絶望開花』…敵全体に3000ダメージ。絶望付与【任意】SP2500
戦刃むくろ lv280
HP 9600/20000
SP 5000/5000
AT/DF 1000/1000
スキル 『軍人』…先制全体攻撃。【自動】SP0
    『鋼の肉体』…攻撃ダメージをDF分軽減。【自動】SP0
    『冷静沈着』…状態異常能力変動を受けない。【自動】SP0
    『フェンリル』…敵全体をランダムに5回攻撃する。【任意】SP2500


SP計算忘れてました。
霧切
4840/6000→3124/6000

安価下

江ノ島様「時を止め──」

豚神「させんッ!」

江ノ島様「ッああ!?」

江ノ島(データ)が指を弾くより速く、豚神が素早くスキルを解析し、スキルを再現する──!

江ノ島様「」

戦刃「」

豚神「な、なんとか、間に合ったか…」

肩で息をしながら、豚神は小さく呟いた。
敵PT行動不可。

苗木「今のうちに、叩きこむしかない!」

苗木は自身を聖なる道へと導く聖剣を構えて、江ノ島(データ)へと飛び込んでいく!
全ての邪を切り裂くそれは、江ノ島(データ)の絶望さえ、引き裂く──。
江ノ島様に4400ダメージ。

霧切「右・脳・解・放!全力、全開──!!!」

霧切の咆哮が制止された空間に響き渡り、その咆哮に合わせるようにして、光球があちこちへ四散する。
散らばった光球は哀れな仔羊たちを正確に捉え、破壊しつくす。
敵PTに7500ダメージ。

江ノ島「せいやっ!」

江ノ島は重いはずの大剣を軽々と振るい、戦刃へと叩き込んだ。
いくら戦場において最強と謳われた彼女であっても、動くことが出来なければ木偶の棒となんら変わりはないのだから。
7800ダメージ。

戦刃「──」

江ノ島様「」

豚神「そして、時は、動き出すッ!」

豚神は指をバチンと鳴らして。
そして、世界が動き出すとともに──。

江ノ島様「あ、はぁあん…!」

気持ちよさそうに絶望に染まる自身の身体を抱きしめる変態と、

戦刃「くっ……!」

さらさらと塵芥へと消えていく戦鬼…。
戦刃は倒れた。

3ターン目。

江ノ島様「……あれ?いつの間にかお姉ちゃんがいなくなってるぞー?」

豚神(よし、畳み掛けるぞ!)

苗木 霧切 江ノ島 豚神の行動をそれぞれ設定してください。

  
苗木      江ノ島     
4000/5800    4500/6300

4700/4700    5000/5000
霧切      豚神
2000/4800    3700/5500
4840/6000    4200/4200
 

ステータス
>>118 PT二回攻撃

敵ステータス
江ノ島盾子 lv280
HP 8600/25000
SP 10000/10000
AT/DF 1500/1500
スキル 『絶望』…状態異常スタン能力変動無効。毎ターンHPを2500回復。【自動】SP0
    『ゼロに還る』…10ターン毎にHP全回復&敵全体に99999ダメージを与える。【自動】SP0
    『飽きっぽい』…奇数ターンはスキル、偶数ターンは攻撃しか受け付けない。(合体技は例外)【自動】SP0
    『暗鏡止火』…強制先制 使用ターン間敵は行動ができない。【任意】SP2500
    『絶望開花』…敵全体に3000ダメージ。絶望付与【任意】SP2500
戦刃むくろ lv280
HP 0/20000
SP 5000/5000
AT/DF 1000/1000
スキル 『軍人』…先制全体攻撃。【自動】SP0
    『鋼の肉体』…攻撃ダメージをDF分軽減。【自動】SP0
    『冷静沈着』…状態異常能力変動を受けない。【自動】SP0
    『フェンリル』…敵全体をランダムに5回攻撃する。【任意】SP2500



江ノ島のHPおかしいですよ?さっきはスキルダメージは通らないはずなので。

計算ミスです。
江ノ島(データ)のHPは11100ですね。
霧切のSPは5324でした。
申し訳ないです。

安価下

ダメージ計算
霧切の右脳解放x 650×5+500は3750
豚神の右脳解放x 1100×5+500で6000
苗木のMTB×2 1000×2で2000

合計11750か。一応倒せるのか。

>>232スマン。江ノ島は先制攻撃持ちだと思ってたんだ。

安価下で。これで良かったらとってくれ。

すみません。急用が入って投下できませんでした。
>>230
そうでしたね…ということで江ノ島HP18600になりますね。
20500-4400+2500です。

安価は>>234採用します。

霧切「叩き込むわよッ!」

豚神「ああ、お前も遅れるなよッ!」

霧切と豚神は息の合った連係プレイで無数の光球を生み出す。
たった一人が生み出すだけで無数であるはずなのに、無数と無数が倍となり、もはや無限と呼ぶに相応しいほどの高密度のエネルギー。
ほんの少しの刺激だけで全てを焼き尽くしかねない、最悪の一撃。

江ノ島様「……いいよ!その絶望を私に頂戴!」

江ノ島(データ)は狂気の笑みを浮かべて、両手を広げる。
まるでその無限を、包み込むとでも言うかのように。

霧豚『はあああああああああ!!右脳解放──!』

霧切と豚神の叫びと同時に…江ノ島(データ)を【無限】が包み込む!
そして空気がばちばちと弾け、唐突に、世界が、真っ白になった──…。
江ノ島様に9250ダメージ。

苗木「まだまだ行くよ…」

江ノ島様「あははははははははっ!」

江ノ島(データ)は笑う。
それが自分に課された使命とでもいうかの如く。
それはまさにラスボスとして相応しい貫禄を持っていて…けれど。
苗木は知っている。、今の江ノ島盾子はもう、こんな狂った人間ではないと。

苗木「M・T・B──!」

苗木はマシンガンのように指先からコトダマを放つ。
苗木の【想い】と【希望】のこめられた弾丸は、江ノ島(データ)の心臓を確かに、貫いた…!
江ノ島様に2000ダメージ。

江ノ島様「ん…ごほ、いやあ…久々に死ぬかもしれないってゾクゾクしちゃったよ」

江ノ島(データ)は全身に怪我をおいながらも、目を爛々と輝かせて、子供の様な笑みを浮かべる。
まるで、生と死の狭間で絶望している自分を、楽しんでいるかのように。

江ノ島様「でも貰ってばかりじゃあ悪いし…苗木クン達にもお裾分け☆」

苗木「…!」

苗木達の背中を悪寒が走る。
危険だ──。
今、目の前で笑う少女から、なんとかして、なんとかして逃げなければ…。
“殺される”と。

江ノ島様「逃げても無駄だってぇ…ほらァ……絶望しろよおおおおおおおおお!」

江ノ島(データ)の身体から黒い瘴気のようなものが溢れ出す。
禍々しく淀んで濁ったそれは、ゆったりとした動きで苗木達を覆いだす。
それに危険なものを感じた苗木達は、逃走を図るも、瘴気は苗木達をとらえて離さない──!
じわりじわりと自分の中にどす黒い何かが入り込んでくる。
やがて苗木達は立ってはいられないほどの絶望感に飲まれる。

苗木「ぼく…たちは……なにを……あ、ああ……」

豚神「…こ、これは……おれは……ぐ、あ…」

霧切「っあ……だ、め…」

霧切はその絶望感に耐えきれず、地面に伏してしまった。
味方PTに3000ダメージ。絶望付与。
霧切は倒れた。

4ターン目。

江ノ島様「さあ苗木クン!そのボロカスみたいな希望を見せてよ」

江ノ島(…あたしが動けない間に……ずいぶんとまあ)

  
苗木      江ノ島     
1000/5800    1500/6300

4700/4700    5000/5000
霧切      豚神
0000/4800    0700/5500
4840/6000    4200/4200
 

ステータス
>>118 PT二回攻撃 苗木豚神絶望状態

敵ステータス
江ノ島盾子 lv280
HP 9850/25000
SP 7500/10000
AT/DF 1500/1500
スキル 『絶望』…状態異常スタン能力変動無効。毎ターンHPを2500回復。【自動】SP0
    『ゼロに還る』…10ターン毎にHP全回復&敵全体に99999ダメージを与える。【自動】SP0
    『飽きっぽい』…奇数ターンはスキル、偶数ターンは攻撃しか受け付けない。(合体技は例外)【自動】SP0
    『暗鏡止火』…強制先制 使用ターン間敵は行動ができない。【任意】SP2500
    『絶望開花』…敵全体に3000ダメージ。絶望付与【任意】SP2500
戦刃むくろ lv280
HP 0/20000
SP 5000/5000
AT/DF 1000/1000
スキル 『軍人』…先制全体攻撃。【自動】SP0
    『鋼の肉体』…攻撃ダメージをDF分軽減。【自動】SP0
    『冷静沈着』…状態異常能力変動を受けない。【自動】SP0
    『フェンリル』…敵全体をランダムに5回攻撃する。【任意】SP2500

投下終了です。次回は闘技場を終わらせたいです。
それと>>1は油断すると細かいところを忘れて投下するので、安価を取る際は何々のスキル効果があるからこれは効かない、程度の事を書いていただけると助かります。
基本的に文章優先で書いているので計算をおろそかになってしまいますので。
偶数ターンは、『攻撃』のみ効果があります。警告と自分のメモのために記載しておきました。
今回は申し訳ないです。全体ダメージで表記してしまったため、計算を間違えました。
以降全体攻撃で片方しかダメージを受けなかった場合、片方分のダメージ表記しか書かないことにします。

一応、江ノ島は3ターン目はいかなる行動も不可なので、パーソナルも発動しません。
ですから、次のターンの最初にパーソナルが発動するので、これで合っています。
ただ、当時は多分そんなこと考えてなかったのでご指摘ありがとうございました。

投下します。

あ、行動選択安価からですね、失礼しました。
安価確認後投下します。

豚神「悪いな江ノ島…貴様の力、借りるぞ」

江ノ島様「はあはあ…これだよこれぇ…この絶望…たまんないいいいいいいいいいいい!!」

江ノ島(データ)は涎を零しながらぶるぶると快感に震える。
彼女にとってもはや勝敗も、生死も何もかもどうでもいい。
ただ、自分を満たすことのできる絶望だけを求める。
そして彼女はその醜くも、どこか美しい姿のまま、静止した。
敵PT行動不可。

江ノ島「…さあ、絶望してる暇なんてない」

苗木「…そ、そうだね…江ノ島さん……!」

江ノ島「うん、いいよ苗木クン」

苗木と江ノ島は互いに微笑みあう。
それは戦場においては少し異質で、不謹慎のようにも思える。
しかし、それは彼らが育んだ、絆の証。
繋がれた絆はやがて力と成り、全てを絶つ【剣】となる──。
苗木の右腕から希望の象徴たる蒼き光。
江ノ島の右腕から絶望の象徴たる紫の光。
交わるはずの無い二つの光は、二人の心を現すかのように、一つに混ざり合い、溶け合っていく……。

江ノ島「…さ、二人でやろうよ」

苗木「そうだね、この戦いを、終わらせる為にも──」

やがて交わり合った光は巨大な剣を形成する。
苗木と江ノ島は二人で寄り添いあうように剣を持つ。
それはかつての希望と絶望をぶつけあい、彼らが壮絶な戦いを歩んできた事を十分に感じさせる。
そしてそれと同じくらい、お互いを無くてはならない──【宿敵】と思わせるような。

苗木「希望と」

江ノ島「絶望の」

苗江『アンサンブル──!』

咆哮と共に、巨大な剣が振り下ろされる。
あらゆるものを絶つ、究極と呼ぶべき一撃は、時の止まった江ノ島(データ)に無慈悲に襲い掛かる──。
江ノ島様に8250ダメージ。

苗木「はあ…はあ…っ…!」

絶望状態で無理をしたせいか、身体に異常なまでのだるさが襲い掛かってくる。
しかし、苗木は幸運にもそれを奇跡的に回避することができた。

江ノ島「さて、こいつに引導を渡すのは私の役目…てね」

江ノ島「──さよなら、江ノ島盾子。所詮データに、本物の絶望が越えられるわけないか」

借りにも自分の姿をしている敵を、何の躊躇も、慈悲もなく殺す。
大剣がぬるりと腹を貫き、鮮血が滴り落ちる。
不思議なものだ、こうして時が止まっているにもかかわらず、血が流れているのは、なんて考えて。
ああ、これはゲームだ。演出に決まってるか…と、薄い笑みをこぼした。
江ノ島様は倒れた。


モノクマ「闘技場クリアおめでとう!もう闘技場も折り返しを過ぎて、お前らも楽勝ムードでいられなくなってくる…と信じたいね!」

モノクマ「それはさておき、今回の商品だけど、豚神クンのパーソナルを少しいじっておいてあげたよ。後で確認するといいね!」

モノクマ「それから、レベルの不具合も修正しておくよ。次回のリザルトでは楽しみにしておいてよね!」

モノクマ「他に商品はないから注意するように!…さてと、オマエラに刺されでもしたらたまんないし、ボクはこれでオサラバさせてもらうからね!」

苗木「…疾風のごとく現れて疾風のごとく去って行った」

霧切「どうでもいいわ。私たちにはやるべきことがある。今はそれを優先するべきよ」

豚神「確かにな。それに俺たちの実力でもある程度の敵は倒せることが分かっている。ならば安心して探索にも望めるというものだ」

江ノ島「ま、この4人でいつまで持つかは別だけどね」

苗木「……いまさらウダウダ行っても仕方ないよ。時間は少ないんだ。時間を無駄にしないようにしよう」

苗木「今日は、どうしようか…?」

豚神「…うーむ」

霧切「そろそろ、【学級裁判】かしら?」

江ノ島「それは違うよ!…ってねー」

苗木「真似しないでよ!」

江ノ島「うぷぷー!」

豚神「お前ら仲良しだな…」

八十六日目 行動開始


苗木      江ノ島     
1000/5800    1500/6300
4700/4700    5000/5000
霧切      豚神
0000/4800    0700/5500
4840/6000    4200/4200


行動を選べ。
【学級裁判】【交流】【鍛錬】(HP消費1000)【休息】【探索】【闘技場】【モノクマハウス】 【サブシナリオ】


↓3

あと何日余裕あるっけ

>>251
残り5日です。

安価下。

【学級裁判について】
学級裁判を選択した場合、一日消費して仲間内で様々な謎を解決する学級裁判が始まります。
原作であるダンガンロンパとは違い、クロを探すためではなく、苗木達が解決した疑問を解決していく流れになる点に注意してください。
また、この裁判では言弾などはありません。論破や反論等は全てご自身の言葉で行っていただきます。
ただし、勿論言い方によって意味が微妙に違ってくるものもあるので、答えが絞りきれないようなものは、おおまかな部分の証拠、あるいは論拠を提出してもらえば構いません。
また、今回は苗木だけでなく、他の人物が論破する側に回ることもあります。
その際の注意点ですが、【あくまで本人が見た、或いは知っている】事でなければ論破することはできません。
本人が知り得ない証拠などでの論破は無効となるのでご注意ください。
また、この学級裁判では間違えによるゲームオーバーが存在しません。間違えた場合、他のキャラがそれを修正する案が出てくるか、あるいは間違ったまま進行する場合があります。
間違ったまま進行した場合、以降のストーリーにも影響を与えます。
論破する部分は【】で示され、同意する部分は『』と表示されます。
状況において使い分けましょう。
以上で学級裁判の説明を終わります。

問点があれば質問してください。

投下終了です。
次回、学級裁判。

投下します。

苗木「…さて、それじゃ、始めようか」

僕は皆を見渡して言う。
ここは宿屋の一室を簡単な会議室に改装した場所だ。
僕たちは大きなテーブルを囲むように座っている。
僕の向かい側に霧切さん、右に江ノ島さん、左に豚神クンが座っている。
僕たちの集めた情報を伝え合い、そして謎を暴く……。
この議論の結果がどうなったとしても…もう、後戻りはできない…!

霧切「まずは…そうね、私たちの状況を整理しましょうか」

豚神「そうだな。そのあたりの説明は俺がしてやろう。
……まず、俺たちは現在第7層にいる。この迷宮は第8層で形成されていることが濃厚であることから、俺たちのゴールはそう遠くはない。
しかし第6層のボスを倒した直後、モノクマによって日向と罪木が殺されてしまった。そして七海はモノクマを倒すといって一人で先へ進み、俺たちはしばらく何もできずに宿屋に留まりつづけていた」

江ノ島「ついでにその間のあたしの行動も言ってあげるよ。苗木クン達がめそめそ泣いている間にモノクマから先にヒントを手に入れていたあたしは、今後に備えてひたすら鍛錬してたよ」

霧切「……鍛錬、ね」

江ノ島「あれれ?もしかして信じてない?だよねー!でもまあ、今回の話には関係ないでしょ」

苗木「そうだね。問題は…今のところは2つあるってことかな」

豚神「裏切り者の話か」

苗木「うん。それと…このゲームのクリア方法…魔王の倒し方についてだよ」

霧切「!…苗木君、貴方まさか……」

苗木「僕が知っている限りの情報で悪いけれど、一応知ってるよ」

苗木「──それは、今、生きている仲間全員を殺すことだよ」

豚神「……なん、だと?」

江ノ島「ふぅん…」

霧切「ねえ、苗木君。それはもしかしてヒントから手に入れたのかしら?」

苗木「うん。そうだよ。正確にモノクマから聞いたわけではないけれど、この方法なら“確実”に殺せる」

豚神「それは…本当なのか?」

苗木「うん。…だけどもちろん、この方法を選ぶことは絶対にしない。みんなを犠牲にして勝つなんてやり方、間違ってる!」

豚神「……ああ、そうだな。たとえクリアの為でも、仲間を手に掛けるなど死んでもごめんだ」

霧切「苗木君、他に方法はないのかしら」

苗木「僕はあると信じてる…けど、ヒントの通りなら、それはとても難しいか、予想もつかないような方法なんだと思う」

江ノ島「実は1回刺されただけで死んだりね」

豚神「だが、少なくともモノクマがそれを俺たちに教えることは無いだろう。ヤツならば俺たちに方法がないと錯覚させ、仲間同士を殺させることを狙っているはずだ」

苗木「うん、だからこの方法は採用できない。…今後の課題として、魔王をどうやって倒すかも視野に入れておく方が良いと思うよ」

霧切「ちょっと待って。それは事実なの?」

苗木「え?」

霧切「確かに苗木君の言う通りなら方法を探し出すのは難しいわ…けれど、貴方の与えられたヒントが正しいのかどうかは分からないわ。苗木君はそのヒントが信用できると断定できるの?」

苗木「それは……出来るよ」

霧切「…そう。なら教えて頂戴。どうして貴方はそのヒントを信用できるのか」


証拠を示せ!


苗木「…僕のヒントはね、“過去”なんだよ」

豚神「…どういうことだ……?」

江ノ島「……」

苗木「この世界は繰り返されているんだ。ループ構造になってる」

霧切「ループ…?」

苗木「ねえ、確認なんだけど、皆はこのゲームを始めてやったよね?」

豚神「当たり前だろう。こんな悪趣味なゲームを何度もやるほど俺たちは酔狂ではない」

苗木「うん、僕もそうだよ。けれど…“もしも僕の過去にゲームをしていた記憶があったら?”」

霧切「……じゃあ、まさか」

苗木「うん、僕は以前同じゲームをしていたんだ。その時に霧切さんや豚神クンは一緒ではなかったけど、江ノ島さんは一緒だったんだ」

江ノ島「へー、そうなんだー」

苗木「二人がやっていたかはわからないけど、この世界がループをしているという前提で考えると二人もたぶんやっていたと思うよ。僕達とは違う環境でね」

霧切「…その過去の記憶がモノクマの捏造である可能性の否定にはなっていないわ」

苗木「確かにね。…でも、この説をモノクマの捏造と切り捨てる事は出来ないんだ」

豚神「理由を説明してもらおう」

苗木「以前に僕と日向クンで話していた時、日向クンが突然ループに関する話題を振ってきたんだ。
そしてその話題が一通り終わった後、日向クンは自分も似たような状況にあるような素振りを見せた上で、僕にダンジョン攻略が終わったら相談があると言ってきた…つまり、日向クンもこの世界の構造に気づいていた可能性があるんだよ」

霧切「…なるほど。確かにそれだけの証拠があれば、苗木クンの荒唐無稽な話題にも説得力があるわね」

豚神「ああ。それにここは電子世界…仮に世界が何度も繰り返されていてもおかしくはない」

江ノ島「あれれー?でもその過去と魔王の討伐方法については関連性が無くない?」

霧切「……確かにそうね。苗木君、貴方はどうして自分の過去を見、て……」

豚神「どうした?」

苗木「気付いたみたいだね…うん、そうだよ。僕は過去の周回で“皆を殺した”。そして“魔王を倒した”」

霧切「……っ」

豚神「苗木…」

苗木「どうして僕がその思考に至ったのかはわからない…恐らくだけど、魔王を倒す方法を見つけられなくて苦し紛れに、モノクマに唆されてやったんだろうね。そして僕は“ゲームをクリアした”」

霧切「……なら、どうしてゲームは終わってないのかしら」

苗木「僕がゲームクリアを拒否したからだよ……」

豚神「……そうか、お前は、その終わりを良しとしなかったんだな」

苗木「ごめん。僕の勝手で……」

豚神「いや、俺はお前の決断を否定しない。間違った過程で手に入れた結果なぞ、所詮仮初のものだ。正しい過程で手に入れる結果にこそ、価値がある」

苗木「ありがとう…僕の話はここまでだよ」

霧切「それじゃ次の話題…とは言っても、一つしかないでしょうね。現状では」

豚神「おそらく、その問題こそが今回の学級裁判のテーマだろう」

江ノ島「裏切り者は誰だ?…さ、本家らしくそろそろ“議論”と行こうよ」

-議論開始-

霧切「裏切り者…、そんなもの【本当にいるのかしら】?」

豚神「確かに…俺も考えにくいな。モノクマがわざわざ裏切り者を出すメリットがないだろう」

江ノ島「実は【モノクマ自身が裏切り者なのだー】ってオチだったりして」

豚神「【俺たち全員が、裏切り者】なんていう言葉遊びの可能性もあるな」

霧切「そうね。そう考えるのが自然な判断よ」

豚神「やっぱり裏切り者なんていなかったと考えるのが妥当だろうな」

江ノ島「ま、パーティをかき乱すにはちょうどいい燃料なんじゃなーい?」

苗木(…確かに、僕だって信じたくはない)

苗木(けれど、僕は体験しているはずだ)

苗木(あれは裏切り者がいるという、証拠になるんじゃないか?)


論破しろ!



苗木「それは違うよ!」

苗木「…本当は言いたくない、けれど。この問題は大切だからこそ、僕が言わせて貰う。裏切り者は恐らく、いるよ」

霧切「どういう事かしら」

苗木「実はね、僕が貰ったヒントって…“前にも思い出していたんだ”」

豚神「……!」

苗木「以前江ノ島さんに強引に町を連れまわされた時があったんだけど、その時に記憶を取り戻すことができたんだ」

霧切「…ちょっと待って、以前にも思い出していたなら、どうして忘れているの?それに前から思い出していたのならヒントでもなんでもないじゃない」

苗木「ううん。これは間違いなくヒントなんだ…最悪の意味で」

苗木「僕はヒントを思い出すことができた…たぶん、江ノ島さんも思い出していたんじゃないかな?」

江ノ島「…いや、知らないけど」

苗木「うん、そうだろうね。これで確信できたよ」

豚神「どういうことだ?」

苗木「僕は…その記憶をとある人に“封じられてしまった”んだ」

苗木「記憶をヒントとして与えられた時、どうして記憶を失った時の記憶も思い出すことができたんだ」

霧切「な──っ!?」

豚神「それは本当なのか?」

苗木「うん。僕が思い出して、江ノ島さんが忘れている。あの時は僕ら二人とも思い出していたから、この話は確実だよ」

霧切「つ、つまり…苗木クン、貴方は裏切り者の正体を…」

苗木「……知ってるよ」

豚神「…誰なんだ?」

苗木(……っ)

苗木(ここで黙っているわけにはいかない…)

苗木(……口が、重い………)

苗木(今なら…まだ……誰も知らない…僕が、この場を誤魔化してしまえば……)


人物を指名しろ!



苗木「……それは」

苗木(いや、皆に隠し事は出来ない)

苗木(それに…この真相をはっきりさせておかないと、僕も七海ちゃんとどう接すればいいのかわからないんだ…!)

苗木「…七海ちゃんだ」

霧切「……えっ」

豚神「……っ」

江ノ島「ほぅ…」

霧切「そんな…そんなことがあるの?」

苗木「僕は見たんだ。記憶が無くなって言って、気を失う直前に…七海さんの姿を…」

霧切「……苗木君、少し冷静になりなさい」

-議論開始-

霧切「ねえ苗木君、それは『貴方の誤解』ではないの?」

苗木「ご、誤解…?」

霧切「七海さんが苗木君の記憶を奪ったところを見たの?」

苗木「そ、それは見てないかもしれない…!けれどこれは『事実』なんだ…」

霧切「事実かも知れないけれど、見ていないのなら七海さんが裏切り者と断言することはできないわ」

江ノ島「ま、苗木のその意見だけじゃ無理だねー」

霧切「ええ。【七海さんが偶然その場にいた可能性】や【記憶を奪われそうな貴方を助けようとしていた可能性】などを否定することはできないでしょう…?」

苗木「そ、そうだね……」

霧切「苗木君、貴方の気持ちは分かるけれど…私には七海さんが犯人とは思えないわ。日向君が殺された時の様子を見れば分かるでしょう…?裏切り者なら事前に段取りを知っていたでしょうから演技の可能性も無いわけではないわ…けれどあれを演技と言い切ることは私にはできない」

苗木「…分かってる、分かってるんだ……」

霧切「何か、彼女が黒幕の一味である【決定的な証拠】でもあれば、別でしょうけど……」

豚神(…七海が、裏切り者か)

豚神(……俺はどうすればいいのだろうな)


論破或いは同意しろ!



豚神「フン…間違っているな」

豚神「霧切、お前は決定的な証拠をご所望なんだろう?」

霧切「…その言い方、何かあるようね」

豚神「俺が手に入れたヒントを教えてやろう」

豚神「自分のヒントはこのゲームをやることになった経緯だが、七海に未来機関からと全員分のヘッドマウントディスプレイを渡された。
このことより七海このゲームについて予め独自の情報を持って動いている可能性が高い」

豚神「この意味が分かるな?」

霧切「……確かに、その情報は大きいわね」

豚神「ああ、そして七海はあれでも“機械”だ。もちろん俺は人間と思っている。しかし人工的に生まれた以上、奴をコントロールすることは難しくないだろう」

苗木「…そうだね。それに僕には、豚神クンには及ばないものの、一応七海ちゃんが犯人である根拠があるんだよ」

霧切「根拠?」

苗木「うん。僕のヒントは以前のゲームの記憶だけど、僕がゲームをやり直す方法を教えてくれたのは多分……七海ちゃんだ」

霧切「……そう」

豚神「俺と苗木の話を統合すれば…裏切り者の正体はもう七海以外に存在しないんだ」

霧切「確かに、そうね」

江ノ島「まあ、あたしのヒントじゃその結論は覆せないねー」

苗木「そういえば、江ノ島さんと霧切さんのヒントはどうなの?」

霧切「ごめんなさい、私のヒントも今の結論を覆すことはできないわ。それと内容についてだけど…今の時点では伏せておくことにするわね。混乱させるのも嫌だし、もうすこしこのヒントについて考えたいの」

江ノ島「以下同文」

豚神「霧切は考えあっての黙秘か…いいだろう。江ノ島に関しては話せ。お前は単にからかっているだけだろう」

江ノ島「いや、あたしは言わないでおく」

苗木「……考えが?」

江ノ島「無いけど」

苗木「……はあ、まあいいや。江ノ島さんが話したくなる時まで待つことにするよ」

豚神「だが、学級裁判の結論はでたな」

苗木「そう、だね…」

苗木(七海ちゃんが裏切り者だなんて、そう思いたくないけれど…)

苗木(証拠はそろってる…彼女しかいないんだ……)

苗木(霧切さんも、豚神クンも、江ノ島さんも…この結論に異論はないんだろうな)

霧切「きっと彼女なりの事情があったのかもしれない、もしかしたらモノクマに洗脳されてる可能性もあるわ」

豚神「ああ、とにかく今は七海に事情を訊かなければどうにもならないだろう」

江ノ島「ついでに魔王の倒し方とかも吐かせればいいんじゃない?」

苗木(……七海ちゃん)

苗木(僕は……っ!!)


選択しろ!
1を選ぶ際にはその理由も明記してください。


1 皆待って…!まだ、まだ結論を出すのは早いよ!
2 ……っ!



苗木「皆待って…!まだ、まだ結論を出すのは早いよ!」

豚神「苗木…?」

苗木「日向クンの言葉を思い出してよ…「裏切り者は俺たちを…」ここで途切れているんだ。
これは一見、僕達を陥れる…そんな意味にとれる言葉が続くと思う。けれど、ここで発想を逆転させるんだ」

霧切「逆転…?」

苗木「だって日向クンは今にも消えてしまう場面なのに、どうして言葉を続けようとしたのかな?普通に考えれば、「裏切り者がいる」って一言だけでいいはずなんだよ」

苗木「それに日向クンは七海ちゃんに守れなくてごめんって言ってるんだ。この言葉が七海ちゃんを悪く思ってる印象はないよ」

霧切「…けれど、七海さんが裏切り者だと知らなかった可能性はあるわ」

苗木「ううん、知っていたはずだよ。だって日向クンは憶測でものをいう人じゃないよ。それに裏切り者の名前を知らないのなら、なおさら「裏切り者がいる」以上の言葉が必要なのかな?」

豚神「…確かにな」

江ノ島「それこそ苗木クンの言いがかりってやつじゃないの?」

江ノ島「七海っちを裏切り者だと認めたくないから屁理屈こねてるようにしか見えないよ」

苗木「ううん、七海ちゃんが裏切り者だっていうのは分かってるんだ…」

苗木「ただ、それが僕達に敵対する意思はあるか?って点なんだよ」

霧切「…確かに、裏切り者なら私たちを不利にするように動くでしょう」

豚神「確かに奴は時折動いているものの、積極的に俺たちを陥れていたわけじゃない、か」

苗木「うん。だからマイナスの意味での裏切り者である可能性は低い、と思うんだ」

苗木「勿論、本人に話を聞かなければわからないけれど…それでも僕は、信じたいんだ」

霧切「……そうね、確かに苗木君の言うとおりだわ」

豚神「ああ、七海は俺たちの仲間…今までの絆を信じよう」

江ノ島「はぁ…結局こういう展開になるのか…っち」

苗木「さあ、学級裁判は閉廷だ。僕らの指針も固まったし、明日から動き出そう」

霧切「ええ」





「……それは違うな」

「??…どうかしたんですか」

「なんでもない。行こう」

「あ、待ってください…!」





七海「…んしょっと、えと、この辺に確か…あった」

七海「これだけアイテムをかき集めれば大丈夫だよね」

七海「早くボスを…倒さないと」





学級裁判  閉廷

投下終了。本日は安価を取るのが早くて大変助かりました。
同時に、私の投下が遅くなって本当に申し訳ないです。
学級裁判はあと2、3回程度?ありますが、今回の様なやり方で大丈夫です。

とりあえず次は派遣をせずに休息しよう。
で、その次に霧切さんを派遣に出して
後は鍛練は無しで、
パーティ診断とか狛枝パーティの行方とか豚のスキル獲得とか?

で、>>1に質問。
派遣出してるときにサブシナリオやったときって
派遣の必要ターン消費する?
あと、モノクマハウスで七海と交流できる?

>>282
サブシナリオで派遣日数消費できます。
七海交流は不可です。

投下します。

八十六日目リザルト


苗木      江ノ島     
1000/7800    1500/8300
6700/6700    7000/7000
霧切      豚神
0000/5800    0700/7500
7000/7000    5800/5800

アイテム
【ブルーラム】(SPを200回復する)【逆転サイコロ】(使用ターンの間どんなスキルを使ってもSPや絶望ゲージを消費しない) *2
【罪木の注射器】(単体のHPを100%回復)*2 【穴抜けのヒモ】(探索から脱出することができる)
【サーチトレジャー】(戦闘後のアイテムが増える)【希望のあんパン】(SPを1000回復する)*4
【罪木の包帯】(3ターンの間HPを500回復する。)*2 【タミフルン】(味方全体のSP500回復)*2【希望の漢方薬】(状態異常を回復する)*2
【人型の札】(今までに倒しきた敵を一人だけ、交渉することができる)【謎の巻物】(今まで倒してきた敵のスキルを一つだけ、任意のキャラクターに覚えさせることができる。)【希望の種】(味方単体に敵の攻撃を一度だけ防ぐ効果を付与)

【絶望ゲージ】3(危険度:小)

【好感度】(★は0.5☆は1)
霧切響子MAX 江ノ島盾子MAX
豚神白夜☆10
不二咲千尋☆4 狛枝凪斗☆4
セレスティア・ルーデンベルク☆1 腐川冬子☆3
終里赤音☆1 舞園さやか☆1
戦刃むくろ☆1 大神さくら☆1

ステータス
【苗木誠】 lv285 【聖剣】
AT/DF 800+500/900+500
【パーソナル】
『自覚せし幸運』…二回行動。また、瀕死の攻撃を受けた際に一度だけ無効化。
『忘れた記憶』…ダメージを受けると攻撃力が半減する。
【任意スキル】
『弾丸論破』…敵単体に1500ダメージ。【SP1000】
『閃きアナグラム』…永続で攻撃力2倍にする。【SP1500】
『ノンストップ議論』…味方全体で二回攻撃になる。【SP1500】
『M.T.B』…敵全体にランダムに100ダメージを20回与える。【SP2000】
『希望の言弾』…使用ターン含まず2ターンの間味方単体のHPを2500増加する。【SP1000】
【合体技】
『再生-rebuild-』…(苗霧)苗木と霧切のスキル全て(合体技含む)を使う。【SP0・苗霧HP50%↓】
『希望と絶望のアンサンブル』 …(苗江)敵全体に苗木・江ノ島のAT5倍のダメージを与える。【SP2000・苗江HP30%↓】

【江ノ島盾子】 lv285 【絶望の大剣】
AT/DF 1000+300/1000
【パーソナル】 
『超高校級の“絶望”』…二回攻撃、二回行動。HPが30%を切ると自身のAT/DFが上昇。
『苗木への恋心?』…苗木と一緒にPTにいる際、自身のHPが半分を切ると攻撃力上昇。
『悪の美学』…奇数ターンは消費SPが倍になり、3ターン毎に行動をしない。
【任意スキル】
『モノクマ太極拳ver1.01』…先制 自身のAT+500のダメージを与える。【SP1000・絶望1↑】
『絶望バリア』…先制 パーティ全体に使用ターン含む3ターンの間防御効果付与。【SP1000・絶望1↑】
『鬼神円斬』…敵全体にランダムで10回攻撃。使用後攻撃力が半減。【SP1500・絶望2↑】
『絶望色の制約』 …敵全体に15000ダメージ。【SP3500・絶望3↑】
【合体技】
『苗木ボンバー』…(江苗)敵全体に5000ダメージを与える。【SP2000】
『執行者-excutioner-』…(江霧)状態異常耐性の無い敵全員を即死させる。【SP4000】

【霧切響子】 lv263 【聖杖】
AT/DF 400+300/500+300
【パーソナル】
『超高校級の“探偵”』…敵のステータスや弱点を確認でき、毎ターンSPが現在SPの10%回復。
『確かな想い』…苗木と合体技をした際、次のスキルの効果が2倍になる。
『真実を射抜く目』…自身の攻撃で敵を倒した際、再行動できる。
【任意スキル】
『弱点特攻』…敵単体にAT2倍+500のダメージを与える。【SP600】
『理論武装』…敵の攻撃を受けた際に一度だけ受けたダメージの半分を相手に返す。【SP1500】
『右脳解放χ』…敵全体にAT5倍+500ダメージを与える。【SP2000】
『名推理』…敵全体に1500+500ダメージ。【SP1000】
『フルアクセス』…敵単体に2000+500ダメージ。【SP1500】
【合体技】
『真実の探求者』…(霧苗)使用ターン含む3ターンの間パーティ全体でスキルの消費SPが0になる。【SP3500】

【超高校級の“詐欺師”豚神】 lv275 【魔導書】
AT/DF 0+300/0+300
【パーソナル】
『超高校級の“詐欺師”』…自身のAT/DFをそれぞれ最も強い味方と同じにする。状態異常無効。
『優しい嘘吐き』…味方の任意発動スキルを全て使うことが出来る。
『後方支援』…自身がサブ時でも、スキルを使うことができる。
『仲間のために』…敵が合体技や強力な技を使用するターンに警告する。
【任意スキル】
『ラーニング』…自身がパーティに居る時、相手の任意スキルを使うことができる。効果が半減するものもある。【SP0】
『コンバート』…現在HPの50%をSPに変換する。【SP0】
『行動予測』…先制敵単体をスタン状態にする。【SP1000】
【合体技】
『バトルセンス』…(豚苗)次に使うスキルの効果を2倍に高める。【SP0】

苗木「さて、今後の指針も決まったし、そろそろ探索に向けて用意をしよう」

豚神「ああ、恐らく七海は探索の場所にいるはずだ」

霧切「その前に念のため、派遣もしておかないとね」

江ノ島「休憩休憩休憩」

苗木「分かったよ」

江ノ島「はよはよはよ」

八十七日目 行動開始


苗木      江ノ島     
1000/7800    1500/8300
6700/6700    7000/7000
霧切      豚神
0000/5800    0700/7500
7000/7000    5800/5800


行動を選べ。
【交流】【鍛錬】(HP消費1000)【休息】【探索】【闘技場】【モノクマハウス】 【サブシナリオ】


↓3


苗木「さ、休憩も大事だよ」

霧切「そうね、しっかりと休養を取って、いざという時に備えましょう」

江ノ島「zzz…」

豚神「寝るの早いな」

パーティは深い眠りに落ちた。
パーティメンバーのHPが全回復した。

霧切「……ふぅ」

豚神「おつかれか?霧切」

霧切「あら、偶然ね」

豚神「ああ、ちょっと散歩をな」

霧切「……ねえ、貴方は七海さんの事、どう思っているのかしら」

豚神「俺は…仲間を信じたい。今まで戦ってきた仲間だ。疑いたくないというのが本音だ」

霧切「私もよ…まあ私は他にも理由があるのだけど」

豚神「理由…?」

霧切「ええ、私が疑り深いだけなのかもしれないけれど…どうも誘導されているように思うわ」

豚神「…言われてみれば確かにな。今回のヒントは俺と苗木が二人とも、七海が裏切り者だと判断させるようなモノ…俺たちが誘導されてミスリードしてると言いたいのか」

霧切「ええ、目に見える情報に踊らされている気がするのよ」

豚神「だが、他に候補がいるわけでもないだろう」

霧切「ええ、こじつけようとすればこじつけられるわ。だけどモノクマの事よ、裏切り者がいるのならわざと情報を流して私たちを疑い合わせるに決まってるわ」

豚神「確かにな…そう考えると、今回の事は少し不自然、というのか」

霧切「ええ。根拠はないけれど。それに他に見当があるわけでもないし、戯言と思って聞き流してくれて結構よ」

豚神「いや、その意見自体は重要だ。参考にさせてもらう」

霧切「ちょうどいいわ。貴方とは色々と話をしたいと思っていたの」

豚神「そうだな…たまには知的な会話とやらを嗜むとするか」

霧切「ええ」


豚神と霧切は難しいことを二人で話し合った。
合体技『リブート』を手に入れた。

モノクマ「やあ、来たね」

モノクマ「言っておくけど、僕に襲う、とか言う選択肢はないからやめてよね!」

モノクマ「それじゃ、やること言っちゃってくださいなー」


【外との交流】【パーティ診断】 【錬金屋】 【交渉】【帰る】


モノクマ「ほいほいっと」

苗木誠
後半ぐんぐんと成長速度が上がっていくインフレ火力マン。
ロマンではあるが条件を整えてあげるとさくらちゃんにも匹敵する超火力を出すことが出来る。
もうすぐ覚えそうなスキル…【選ばれし者】、【????】

霧切響子
最近調査しか役に立たない人。交流スキルももうすぐ無くなるが、後半に覚えるスキルはどれも強力なものが多い。
もうすぐ覚えそうなスキル…【????】

江ノ島盾子
絶望ゲージに気を使わない使い方をすると誰も手が付けられない暴れん坊将軍。瞬間火力では苗木に劣るものの、素で十分に強いので、彼女ソロでも基本的に誰かに負ける事態などはあまり無い。
もうすぐ覚えそうなスキル…【????】

豚神白夜
地味にお役立ちキャラ。前線でもサブでも活躍できる影の主役。SP枯渇が悩みの種。交流で解決の兆し。
もうすぐ覚えそうなスキル…complete

火力は十分だが、回復ができないため長期戦は不利なパーティ。
豚神のトリッキーなスキルを活用して敵パーティをかき乱す戦い方がおすすめ。

モノクマ「他に用はあるの?」


【外との交流】【パーティ診断】 【錬金屋】 【交渉】【帰る】


さくらちゃんはそもそも闘技場制覇しなきゃ無理って本人が

狛枝と交流するのもその前にサブシナリオやったほうがフラグとかたつかも

ということで外との交流でちーたんで良いと思う

安価はこれで

>>299
全員で会うってことでいいんですかね?

安価下

モノクマ「ボクは粛々と仕事をこなしますよ…いでよー!」

不二咲「…あ、ここは」

苗木「やあ、不二咲クン!」

霧切「お久しぶりね」

江ノ島「やっほー」

豚神「久しいな」

不二咲「うわぁ、今日はお客さんが大勢だねぇ。どうかしたのぉ?」

苗木「ちょっと話を聞いてほしいんだけど、大丈夫かな?」

不二咲「ボクで答えられることなら何でも答えるよぉ」

霧切「そう、ありがたいわね。この辺りの話題で有意義な意見を聞けそうなのは不二咲君しか思い当たらないのよ」

豚神「そうだな」

江ノ島「相変わらずちーたんは女の子にしか見えないねー」

不二咲「ち、ちーたんって…」

苗木「あはは…それじゃ、質問良いかな?」

不二咲「うん、どうぞ」


自由選択安価


苗木「七海ちゃんのプログラムって…第三者によって弄ることは可能なのかな?」

不二咲「へ?どうしてそんなこと聞くのぉ?」

豚神「事情はまだ言えないんだ。誤解だったら悪いんだ…頼む、何も聞かずに答えてはくれないか?」

不二咲「うーん、分かったよ。えっと、七海ちゃんのプログラムは第三者が弄るのは無理だと思うよぉ。七海ちゃんはボクが作ったアルターエゴのシステムを流用した高度な人工知能だからね、ボクと…日向クン位の技術や知識がないと弄れないから、実質的には不可能かなぁ」

苗木「日向クンも弄れるの?」

不二咲「うん。七海ちゃんを造る際に手伝ってもらったからね。本当は秘密なんだけど、日向クンは悪用しないって信じてるから」

豚神「…そうだな、奴が悪用することはないだろう」

霧切「…だとしたら、強制的に従わせたり、なんてことは出来ないって事ね」

江ノ島「つまり七海ちゃんは自分の意志であたしらを欺いてたって事かーうは!超策士じゃん!」

苗木「……」

不二咲「えっとぉ…結構厳しい状況みたいだねぇ」

霧切「…ついでに、もう一つ聞きたいことがあるの」

不二咲「?」

霧切「この世界は新世界プログラムを基に作られているのは事実よね?」

不二咲「うん、たぶん確実だよ。細部は異なるけど、メインシステムが酷似してるし…ほぼ間違いないと思うよぉ」

霧切「確か新世界プログラムには欠陥があったはずなのだけど…それについての改善策はどうなったのかしら?」

不二咲「あ、あれ…?霧切さんにその事って話したっけ?」

霧切「ええ、ちょっと小耳に挟んでね」

不二咲「…うん、一応解決したんだ。ちょっと荒業なんだけどね、これなら欠陥にも無事に対応できるし、とても安全な──」

苗木「ど、どうしたの?」

不二咲「ううん。何でもないよぉ。ごめん、ちょっと急用を思い出したからこれでお話はお終いにしてもらってもいいかな?」

苗木「そ、それは構わないけど……」

不二咲「…そうだ、もしこのプログラムが新世界プログラムを流用してるなら…だとしたら……いや、でも…」

霧切(やっぱり…このヒントは物語の核心に迫るものだったみたいね。いいわ、この謎を解き明かしてあげる)

不二咲「そうだ、苗木クン達に一つだけ教えておきたいんだ」

不二咲「君たちが今どんな状況にいるのかわからないけど…忘れないで。疑うんじゃなくて、信じる…信じればきっと、別の視野での答えも見えてくるはずだよ」

苗木「……うん、ありがとう」

不二咲「えへへ、頑張ってね!みんな」

豚神「ああ、色々と面倒をかけたな」

江ノ島「ばいばーい」

霧切「参考になる意見、ありがとう」


モノクマ「……」

モノクマ「他に用はあるの?」


【外との交流】【パーティ診断】 【錬金屋】 【交渉】【帰る】


苗木「時間も無くなってきたし、行動は慎重に選んでおこう」

豚神「…戦力的に若干不安もあるな。念のために仲間候補を選んでおくのもありか」

霧切「ええ、そうね」

江ノ島「そういやあの希望キチどうしたんだろうねー」

苗木「そういえば狛枝先輩、ここ最近見かけてなかったね…」


八十八日目 行動開始


苗木      江ノ島     
7800/7800    8300/8300
6700/6700    7000/7000
霧切      豚神
5800/5800    7500/7500
7000/7000    5800/5800


行動を選べ。
【交流】【鍛錬】(HP消費1000)【休息】【探索】【闘技場】【モノクマハウス】 【サブシナリオ】


↓3

霧切「苗木君、派遣行ってくるわね」

苗木「いってらっしゃい、頑張ってね」

霧切「なんか今のやり取り夫婦みたいね」

苗木「普通立場は逆だけどね…」

霧切「ふふ、頑張ってくるわ」

江ノ島「いちゃいちゃしてんじゃねえよ!」

霧切は派遣へ向かった。


豚神「おい江ノ島」

江ノ島「あーん?」

豚神「戦力増強だ。合体技を考える」

江ノ島「ごめんなさい」

豚神「待て、なぜ断る」

江ノ島「私好きな人いるんで勘弁してください本当に」

豚神「そういう意味じゃない!」

江ノ島「知ってるけど」

豚神「お前本当にイライラするな!」

江ノ島「つーか合体技とか正直かったるいし?どんだけ覚えても一人一回なんだからさー」

豚神「まあそうだな。特に有用な合体技があると他の合体技を使わなくなるしな」

江ノ島「そーそー。だから意味ないんだって」

豚神「こういうのは大抵が自己満足だ。嫌でも付き合ってもらおう」

江ノ島「うへぇ」

豚神「こんな下らん退屈なことに巻き込まれて絶望的ィとか思っておけばいいだろう」

江ノ島「それ名案☆」

豚神「よし、やるぞ」


豚神と江ノ島は合体技の特訓をした。
合体技『エターナルフォースブリザード』を手に入れた。

苗木「うーん……」

豚神「?どうした」

苗木「……あ、豚神クン」

豚神「考え事か?」

苗木「いや、考え事ってわけじゃないんだけど……むぅ」

豚神「思いっきり考え事って顔に書いてあるぞ」

苗木「そんな大したことじゃないんだよ」

豚神「言ってみろ。乗れる相談なら乗ってやる」

苗木「……そもそもモノクマは、何のためにこんなゲームを始めたのかなって」

豚神「ふむ」

苗木「何か理由があるんじゃないのかな?…たとえば、ゲームの世界でなくてはならなかった理由、とか…」

豚神「確かに、それは俺も疑問に思っていた。奴の目的が見えない。俺たちをいくら絶望させたところで、リセットされれば俺たちの記憶はなくなり、再びやり直されるだけだ」

苗木「うん、モノクマ側のメリットがないんだよね。ただ、僕たちを絶望させるだけが目的って可能性もあるし、今のところは何とも言えないんだけどさ」

豚神「それに、黒幕が誰なのかもイマイチわからんな」

苗木「確かに…あれだけ絶望を面白がってるんだから、江ノ島さんだと思ったんだけど…江ノ島さんではありえない。とすると…本当に見当がつかないんだよね」

豚神「……確かに、何とも言えんな。誰がこんなことを仕組んだの、か…」

苗木「まあ、全部僕の考えすぎかもしれないし、あまり深く考えなくても大丈夫だと思うよ」

豚神「そうだな。考えすぎは体に毒だ」

苗木「のんびりとお茶でもしようか」

豚神「ああ、それもいい」


苗木と豚神は二人でお茶をした…。

江ノ島「まーた豚ちゃんかよ」

豚神「悪いか」

江ノ島「まあ選択肢狭いから絡まされるだろうなとは思ったけどさー」

豚神「お前は少し発言を控えろ」

江ノ島「つってもねー、話題なんて全くもってないし、ここは天命を待つしか無いっしょ」

豚神「…仕方ないな。話題がないのは俺も同じだ。何か閃くのを待つとしよう」

江ノ島「おっけー」


自由選択安価


豚神「…なあ、少し真面目に答えてもらいたいんだが」

江ノ島「何が?」

豚神「お前の、目的はなんだ?」

江ノ島「は?」

豚神「お前がどうしたいのか、それが俺には読めない」

江ノ島「べっつにー?あたし目的なんてないですよー」

豚神「嘘だな。特に最近のお前は、どこかおかしい」

江ノ島「ま、強いて言うならこのゲームをさっさと終わらせたいって事よ」

豚神「……本当にか?」

江ノ島「それは本当。一応これでもやる気はあるわけよ?ゲームは何があっても終わらせる。それだけは決めてる」

江ノ島「ただねー…それ以外は割とどうでもよくなったっていうか」

豚神「…どういう意味だ?」

江ノ島「そのまんまの意味」

江ノ島「今後あたしたちがどうなろうと知ったこっちゃないってことよ。あ、いやあたしがどうにかなるのはダメか」

豚神「それが矛盾しているんだ。ゲームを終わらせたいならそんなこと言うはずがないだろう」

江ノ島「矛盾はないって。あたしが全部終わらせる予定だから、誰が死のうとも割とどうでもいいし々好きにすればって感じだから」

豚神「……」

江ノ島「ま、ここでオマエラに挫けられるのは困るんだけどね。少なくとも魔王城までは生きて、戦ってもらわないと。そのあとはどうでもいいよ」

豚神「…お前、何があった」

江ノ島「……別に」

豚神(今の江ノ島は、冷えた目をしていた)

豚神(それは久々に見る、江ノ島盾子の本来の顔)

豚神(残酷で…絶望的な……)


江ノ島は去って行った…。

苗木「霧切さんの帰りを待とうか」

豚神「…そうだな」

江ノ島「つれーわー昨日2時間しか寝てねーからつれーわ」


八十九日目 行動開始


苗木      江ノ島     
7800/7800    8300/8300
6700/6700    7000/7000
霧切      豚神
5800/5800    7500/7500
7000/7000    5800/5800


行動を選べ。
【交流】【鍛錬】(HP消費1000)【休息】【探索】【闘技場】【モノクマハウス】 【サブシナリオ】


↓3


投下終了です。
本当はサブシナリオやっておきたかったんですが…。
次回は探索まで頑張りたいです。

お久しぶりです。連休前は色々と忙しくて投下する暇がありませんね。

サブシナリオ 【狛枝パーティの行方】


狛枝「がはっ…!」

僕は血反吐を吐きながら地面を転がる。
僕にお似合いの、無様な姿だね…。

舞園「狛枝先輩、大丈夫ですか?」

桑田「っち!あのヤロー…マジでバケモンかよ……!」

僕を心配して駆け寄ってきてくれた二人も大なり小なり怪我をしていた。
特に桑田クンは皆の為に壁役を請け負ってくれたからか、特に傷が酷い。
それでも僕たちを守ろうと動いてくれるんだから、本当に希望だよ。

戦刃「っはあ!」

戦刃さんが単身、“敵”へと向かって突進していく。
彼女は僕たちよりも戦闘経験がある分、この戦いでも比較的軽症で済んでいた。

辺古山「せいっ!」

辺古山さんも戦刃さんほどでないにしろ、よく動いている。
僕もまだ動けるけれど、正直このままやっていても勝てる気がしない。
それほどまでに、目の前に立ちふさがる“敵”は強大だった──。


僕たちが日向クン達が死んだことを聞いたのは、江ノ島盾子からだった。
江ノ島盾子は僕たちの前に突如現れ、日向クンが死んだことなどを告げて去っていった。
正直に言って信用はしてなかった。
あいつは信用できない。
だから僕たちは自分の目で確かめようと苗木クンたちが泊まっているであろう宿を訪ねた。
そこでは死んだような目で過ごしている苗木クンたちがいて…いたたまれなくなった僕らは挨拶も無しに帰ることにした。

僕もショックだった。
今度こそクラスメイトとして、ライバルとして…友達として、日向クンと過ごせる…そう思っていたのに。
その夢は呆気なく崩れ去った。

僕の動揺を仲間達は見抜いていたみたいで、僕を励まそうと色々としてくれた。
ねえ…日向クン、僕はこんなにも…。
伝えたい相手は、もういない。


失意の帰路の途中、僕たちは“それ”に襲われた。


多分、モノクマだ。
どうして、多分なんてついているのかというと、それが本当にモノクマなのかどうか、僕には判断できないからだ。
姿形はモノクマそのものだけど、言葉を話さないし、いつもお茶らけた雰囲気もない。
ただ機械的に僕たちを殺そうとしてくる。
僕たちも必死に応戦したけれど、全くダメージを与えている気がしないのだ。

そしてそれからどれだけの時間が過ぎたのだろう。
もうここ数日、僕らは“奴”と戦い続けてる。
どれだけ逃げても執拗に追いかけてくるその姿は、僕たちにとって死神以外の何者でもなかった。

今日もいつものように遭遇し、応戦をしているところだった。
だけどやはり、ダメージを与えている気がしない…。
僕たちもだいぶ消耗している…これ以上戦うのなら、犠牲も覚悟でやらなければいけない。
だけど、それだけはダメだ。
こんなところで犠牲を出すなんて…希望じゃない。
全員生還してこそ、希望だ。


狛枝「…諦めないで、何か手を考えよう」

桑田「当たり前だっつーの!こんなところで死ぬとかマジ勘弁」

舞園「そうですね。私もこんなところで終わるなんて出来ません」

戦刃「もう少し、もう少し続ければ何か…」

辺古山「ああ、攻略の糸口のようなものが掴めるのだが…」

狛枝「もう少し、か…よし、僕が時間を稼ぐよ」

桑田「おい、いくらんなんでも無茶だろ!怪我もひでーしよ、それにお前が死んだら指揮はどうすんだ!?」

狛枝「大丈夫だよ…僕には一応才能があるからね…君達の才能と比べたらゴミクズみたいなものだけどさ」

僕はうっすらと笑みを浮かべて立ち上がる。
腹の辺りが熱くなった、気がした。
だけど触ろうとは思わない。
どうせ血で汚れるだけだ。無視に限る。

僕はゆっくりとモノクマの方へ歩みを進める。
モノクマは隙無く僕を見つめている。
どう殺すのかを計算でもしているのだろうか。
…どうでもいいか、僕には。
今やるべきことは、生き残って、時間を稼ぐことだ。
戦刃さんたちが気付くまで、僕が囮になって……!

モノクマ「……」

しかし、モノクマは反応しなかった。
いや、それどころか…消えていく…?
だんだんと透明になっていき、やがて僕の目の前から完全に消えた。
念のために周囲に木を張り巡らしてみるも、反応が無い。

狛枝「僕たちを…見逃した?」

桑田「お、おい…大丈夫かよ?」

狛枝「うん…だけど……」

なんとも運のいい話だ。
敵が勝手に消えてくれるなんて。
…………運のいい?

そう、これは僕の才能“幸運”の力だ。
いや、だけど。
僕の才能には、欠陥がある。
幸運と代償に、相応の不運を支払う。
いや、不運…というよりは、対価か。
僕の身に起きた幸運は、それに見合う対価を払って起こる人工的な奇跡のようなものだ。

──だけどもし、これが僕の“幸運”の力なのだとしたら。
嫌な予感がする。
……一度だけ、パーティの皆を見回す。
皆怪我をしている。あまり無理はさせられない。
僕が行ってもいいだろうけど…他の人に任せるのもありか。
こんなことに人数を割くことは出来ない。

苗木クン達にモノクマ(?)の危機を伝える伝令役…誰に任せようか?


1 僕が行こう。
2 ○○さんに頼もう(○○の部分は狛枝パーティから選択)


狛枝「…戦刃さん」

戦刃「?」

狛枝「僕の考えどおりなら…あの“敵”は苗木クンたちの前に現れるかもしれない」

戦刃「…本当に?」

狛枝「嫌な悪寒がするんだ。そこで戦刃さんには苗木クン達にヤツの脅威を伝える伝令役になってほしいんだ」

戦刃「それはいいけど…他の皆は?」

狛枝「僕らは傷を癒してから追いかけるよ」

戦刃「了解。…無理は、しないで」

狛枝「君こそね」

僕の返事を聞くと、戦刃さんは自慢の健脚で走り出す。
本当に肉体面ではハイスペックだね…。
それを見送ってから、僕はゆっくりと地面へ座り込む。

…正直、限界だった。
僕は腹部から流れる血を抑えながら、空を仰ぎ見る。

狛枝「……ふぅ、やっぱり少しキツいな…」

狛枝「少しだけ…」

遠くで誰かが呼んでいる。

誰だろう。

舞園さんかな?

いや…このぶっきらぼうな呼び方は、桑田クンだろう。

もう少し休んだら…そっちへ行くから……。

狛枝「……」

もう少しだけ…寝かせてよ……。



サブシナリオ 【狛枝パーティの行方】  終

苗木「今日帰ってくるはずだね」

豚神「ああ、あいつの情報を待とう」

江ノ島「あーんねーむーいー!」


九十日目 行動開始


苗木      江ノ島     
7800/7800    8300/8300
6700/6700    7000/7000
霧切      豚神
5800/5800    7500/7500
7000/7000    5800/5800


行動を選べ。
【交流】【鍛錬】(HP消費1000)【休息】【探索】【闘技場】【モノクマハウス】 【サブシナリオ】


↓3

苗木「よし、霧切さんが帰って来次第、すぐに出発しようか」

豚神「そうだな」

江ノ島「とか何とか言ってる間に、霧切っち来たよ?」

霧切「あら、苗木君たち。どうしてここに?」

豚神「今、まさにお前を待っていたからだ」

苗木「霧切さんが帰ってきたらすぐ出発しようと思って、入り口でずっと待ってたんだ」

霧切「そう。なら報告は手短の方がよさそうね」

苗木「うん、頼むよ」

霧切「まず、ダンジョンはボス部屋まで一直線よ」

豚神「なんだ、随分と親切じゃないか」

霧切「その合間の大部屋が2つ…おそらく中ボスクラスが待ち受けているわ」

霧切「その中ボスを突破した最後のボス部屋…そこには、大神さんが待っているわ」

苗木「え!?」

霧切「間違いないわ。ボス部屋の前から漂う威圧感…何よりうっすらと臭いがしたのよ、プロテインのね…」

苗木「間違いない、大神さんだ…」

江ノ島「だねー」

豚神(こいつら…まじめな顔で何あほな事抜かしてるんだ…!)

苗木「なら準備を…って言いたいところだろうけど、もううじうじしていられないし、行こうか」

江ノ島「そうだねー。こんな早々に恩を仇で返すときがこようとはー♪」

霧切「さあ、行きましょう」

豚神「ああ、七海もその道中かボス部屋に居るはずだ!」


戦刃「…あれ?」

戦刃「誰も居ない。…おーい」

戦刃「……」

戦刃「??????」



「「やあやあようこそ負け組の園へ!」」

僕たちがダンジョンに足を踏み入れ、最初の部屋に入るとそんな声が聞こえてきた。

桑田「ああ、俺たちモテないボーイズ…!」

左右田「想い人には冷たくあしらわれ、蔑まれ…!」

桑田「涙を呑んだ幾十年…(嘘)」

左右田「ああ、リア充が、モテ男が憎い…!」

桑田「この憎しみの炎をどこにぶつければよいのやら」

左右田「この怨嗟の嘆きをどこにぶつければよいのやら」

桑田「おお!神は我らを見捨てなかった…!」

左右田「目の前にリア充がいるぞ…!」

「「さあ覚悟しろ!!お前らの命を糧に、僕らは恋を成就させる!」」

苗木「……ええー」

霧切「所詮データの戯言ね。とっとと始末しましょう」

江ノ島「まーそうだよね。桑田クンってここにいるわけないし」

豚神「ふん、データだろうが本人だろうが変わらん。邪魔をするなら蹴散らすまでだ!」


【バトルが発生しました。】

1ターン目。

桑田「MORE」

左右田「DEBAN!!」

苗木(緊張感が無いなあ…!)

苗木 江ノ島 霧切 豚神 の行動を選択してください。

  
苗木      江ノ島     
7800/7800    8300/8300

6700/6700    7000/7000
霧切      豚神
5800/5800    7500/7500
7000/7000    5800/5800
 

ステータス
>>287-288

敵ステータス
左右田和一 lv300
HP 20000/20000
SP 4000/4000
AT/DF 1000/800
スキル 『メカニック特製パワードスーツΣ』…攻撃をDF分軽減。スタン無効。先制攻撃。【自動】SP0
    『哀の力(※悲しみを越えた男にのみ仕える)』…二回行動。全体攻撃【自動】SP0
    『修理』…自身のHPを3000回復。 【任意】SP500
    『ソニアさんのためだけに振るわれる熱い砲撃(たまには他の奴のために振るってもいい)』…敵全体に2500ダメージ。【任意】SP1000
桑田玲恩 lv300  (AT半減)
HP 15000/15000
SP 3000/3000
AT/DF 800/1000
スキル 『超高校級の“野球選手”』…二回行動。通常攻撃のダメージをDF分半減。状態異常無効。先制攻撃。【自動】SP0
    『ピッチャー返し』…通常攻撃を受けた際、ダメージの半分を相手に与える。【自動】SP0
    『スーパーな男』…パーティをかばう。【自動】SP0
    『千本ノック』…敵全体に1500ダメージ。【任意】SP1000
    『ドーピングなんぞしてんじゃねえ!』…敵の能力上昇を打ち消す。【任意】SP500


『リブート』…(霧豚)使用すると選択したメンバーが再度合体技を使えるようになる。 SP2000
『エターナルフォースブリザード』…(豚江)敵全体ランダムに100*100のダメージを与える。 SP1500

以上です。

安価下

新しい合体技って、どっちが使用できるの?

>>345
『リブート』…霧切
『エターナルフォースブリザード』…豚神です。

安価下

申し訳ないです。昨日は寝落ちしていました。
投下します。

霧切「雑魚に時間は掛けない…さっさと終わらせるわ!」

苗木「うん!」

霧切と苗木は洗練された動きで魔法陣を展開。
素早くスキルを行使する。
味方PTの消費SPが0になった。

江ノ島「雑魚は失せろッ!」

霧切「デスデスデスデスデスデスデスデスッ、Die The death! Sentence to deathッ! Great equalizer is The Deathッ!!」

狂気を孕んだ死神が、死の鎌を振るう。
特異な才能を持つ人下であろうと、所詮は凡百の人間の一人である彼らに、その死の回避は許されない──。

桑田「お、俺はこんなモンで挫けねえぞ!」

左右田「……結局、俺は…」

左右田は倒れた。

桑田「くっ、くっそおおおおおおおおおお!」

桑田はがむしゃらにバットを引っ掴み、襲い掛かろうとするが──

豚神「甘いッ!」

桑田「んなっ!」

豚神の放ったカードにより動きを封じられてしまう。

豚神「お前の行動はすでに読んでいる」

桑田「うぐ、ぐ…!」

苗木「霧切さん!」

苗木は霧切へ光弾を飛ばす。
光弾は霧切と苗木の身を包み、心の奥底から希望が芽生えていくのを感じる。
苗木・霧切のHPが2500増加した。

2ターン目。

桑田「1ターンキルとかされてんじゃねえよ(絶望)」

苗木(消費を抑えてとっととケリをつけるぞ…!)

苗木 江ノ島 霧切 豚神 の行動を選択してください。

  
苗木            江ノ島     
10300/10300(7800)    8300/8300

6700/6700         7000/7000
霧切           豚神
8300/8300(5800)    7500/7500
3850/7000        5800/5800
 

ステータス
>>287-288 SP消費0

敵ステータス
左右田和一 lv300
HP 00000/20000
SP 4000/4000
AT/DF 1000/800
スキル 『メカニック特製パワードスーツΣ』…攻撃をDF分軽減。スタン無効。先制攻撃。【自動】SP0
    『哀の力(※悲しみを越えた男にのみ仕える)』…二回行動。全体攻撃【自動】SP0
    『修理』…自身のHPを3000回復。 【任意】SP500
    『ソニアさんのためだけに振るわれる熱い砲撃(たまには他の奴のために振るってもいい)』…敵全体に2500ダメージ。【任意】SP1000
桑田玲恩 lv300
HP 15000/15000
SP 3000/3000
AT/DF 800/1000
スキル 『超高校級の“野球選手”』…二回行動。通常攻撃のダメージをDF分半減。状態異常無効。先制攻撃。【自動】SP0
    『ピッチャー返し』…通常攻撃を受けた際、ダメージの半分を相手に与える。【自動】SP0
    『スーパーな男』…パーティをかばう。【自動】SP0
    『千本ノック』…敵全体に1500ダメージ。【任意】SP1000
    『ドーピングなんぞしてんじゃねえ!』…敵の能力上昇を打ち消す。【任意】SP500



豚神「江ノ島…アレをやるぞ」

江ノ島「あたしの邪気眼が疼くぜ…」

桑田「はっ?お前ら何言っ──」

豚神「極寒の地の氷の神よ、我に力を与えたまえ。言葉は氷柱、氷柱は剣。身を貫きし凍てつく氷の刃よ、今嵐となり我が障壁を壊さん!」

江ノ島「ウェニアント・スピーリトゥス・グラキアーレス・オブスクランテース・クム・オブスクラティオーニ・フレット・テンペスタース・ニウァ-リス・ニウィス・テンペスタース・オブスクランス」

豚江『エターナル・フォース・ブリザアアアアアアアアアアアアアアアド!!!!!』

桑田「うっわこいつら恥ずかし…あれだろ?厨二病ってやつだろ?ははっ」

豚神「自身の身体をよく見るといい」

江ノ島「それがお前の最後だろうがな」

桑田「なぁーにいってんだか…」

と言いつつも、一応、自分の身体を確かめてみる。
その辺りに彼の小物臭さが漂っていた。
…そして、絶句する。

桑田「──は?」

彼としては、やっぱなんもねーじゃねーかと突っ込む気満々だったのだが、そんな言葉は吹き飛んでしまった。
だって、彼の下半身は、もう……!

桑田「なんで、なんで腹から下がねえんだよおおおおおおお!!!!」

血はない。
いや、本来なら夥しいほどの血が出てもおかしくないのだが──。
言ってしまえば、あまりの冷気に傷口が凍って塞がってしまったのだ。
しかし、桑田は自分の身体がいつ、どうしてこうなったのかが理解できない。

豚神「当然だ。EFBは最強にして絶対。その力は常人…いや、高位の魔術師でも視認することは難しい」

江ノ島「むしろそれを食らってまだ息があることを、褒め称えてやってもいい」

桑田「う、く、ああああああああ!!」

苗木「M.T.B.──!」

苗木は悲鳴を上げて逃げようとする桑田に追撃を仕掛ける。
もはや苗木達が悪人にしか見えないのだが、それでもやるしかないのだ。
先に進んで、このゲームをクリアするためには……。

苗木(…でも、僕たちがやっていることって…僕が、クリアする為にみんなを殺したのと、どう違うんだろう…)

苗木(本当は、誰も死なずに、力を合わせるのが…正しいんじゃないのか…?)

桑田に4000ダメージ。

霧切「ごめんなさい…せめて、楽に終わらせてあげるわ」

霧切は痛みにのた打ち回り、無様な姿を見せている桑田の頭上を照らす。
それは…桑田を安らかに眠らせる為の光…。
仄かな温かさを秘めた光球は、桑田の頭上で、静かに爆発した。

桑田「あっ…──」

桑田に4000ダメージ。
桑田は倒れた。


苗木「っ…次に行こう」

霧切「そうね」


モノクマ「おーい、オマエラ!」

苗木「モノクマ!?」

モノクマ「うぷぷ…元気に迷宮探索やってるかい?」

豚神「何の用だ?」

モノクマ「…オマエラに聞きたいことがあるんだけど、正直に答えてもらうよ」

江ノ島「……?」

モノクマ「この迷宮にオマエラ以外の反応があるんだけど…オマエラ知らない?」

苗木「僕ら以外…?」

豚神(それって…七海の事か?)

モノクマ「随分前にもボクの近くをウロウロしててさ…本当に参っちゃうよ」

霧切「…いいえ、知らないわ。貴方の勘違いじゃない?」

モノクマ「…………」

モノクマ「本当に心当たりが無さそうだね…全く、面倒な事になったよ!こんなイレギュラーがあるなんてさ!」

苗木「…もういい?さっさと迷宮探索を続けたいんだけど」

モノクマ「はいはいご自由にどーぞ!…ま、今回のボス戦にはちょっとした趣向を凝らしてあげたから、オマエラも存分に楽しんでよ!うぷぷ……!」

豚神「また要らん事をしているな…」


戦刃「…ふぇっくしょん!」

戦刃「…ずびずび」

戦刃「誰かが、噂してる?」

戦刃「早く苗木君たちに追いつかないと…!」

苗木「さて、そろそろ……」

ジェノサイダー「あららーん?もしかしてもしかしてぇ……誠きゅんじゃなーい!」

霧切「くっ…今度は貴方なの」

ジェノ「ちっ…女は求めてねーっつの」

ジェノ「つーか誠きゅん以外にまともな男がいないってどういうこと?あたしのテンションガタ落ちなんですけど」

豚神「俺がいるぞ」

ジェノ「かーちーくは、残念ながら男にはカウントされませーん!オスだよ豚ちゃーん!」

豚神「ひ、ひでえ…!」

霧切「貴方は強敵でしょうが…本気で行くわ」

ジェノ「カモーン、格の違いってやつを教えてアゲル☆」

苗木「この先にはまだボスが残ってる…消耗を避けつつ、手早く終わらせよう!」

ジェノ「そうやって頑張っちゃってる誠きゅんをぶっ殺す!……さいっこうにハイじゃなーい!」


【バトルが発生しました。】

1ターン目。

ジェノ「殺・殺・殺☆」

江ノ島(早くおわんねーかなぁ)

苗木 江ノ島 霧切 豚神 の行動を選択してください。

  
苗木       江ノ島     
7800/7800    8300/8300

6700/6700    7000/7000
霧切       豚神
5800/5800    7500/7500
3850/7000    5800/5800
 

ステータス
>>287-288

敵ステータス
ジェノサイダー翔 lv300
HP 25000/25000
SP 5000/5000
AT/DF 1500/1500
スキル 『超高校級の“殺人鬼”』…状態異常能力変動スタン無効。全体攻撃。ダメージを与えた相手のSPに500ダメージ。【自動】SP0
    『痛みを快楽に変える程度のマゾ』…敵からの攻撃をDF分軽減。先制攻撃。【自動】SP0
    『チミドロフィーバー』…敵全体に全ての状態異常を与える。 【任意】SP2500




霧切「苗木君、迅速に行くわよ」

苗木「勿論だよ!攻撃の余裕なんて…与えないッ!」

苗木の声にこたえるようにして、霧切は素早く動いた。
霧切と苗木は息の合った動きで魔法陣を展開した。
素早くスキルを行使する。
味方PTの消費SPが0になった。

江ノ島「さあさあ、ブン投げるぜええええええ!!」

苗木「江ノ島さん、ふざけてる余裕は無いから」

江ノ島「(´・ω・`)」

苗木と江ノ島は久々にお互いの呼吸を合わせ、“合体技”をする。
苗木が江ノ島の大剣に触れると、大剣がほんのりと発光する。

ジェノ「???」

ジェノサイダーは苗木達の行動の糸を読めず、だらしなく舌を出しながら首を捻った。
江ノ島はその様子を見て薄く笑い、大剣を構えて突進する!
ジェノサイダーが僅かに反応を遅れたのを見逃す江ノ島ではなく──

江ノ島「苗木イイイイイィイイ!!ボンバアアアアアアアアアアアア!!!」

大剣をジェノサイダーに……“叩き付けた”!
瞬間、眩いばかりの光が起こり──ジェノサイダーが、爆発した。
ジェノサイダーに5000ダメージ。

ジェノサイダー「アホくっさい名前なのにダメージ大きすぎでしょーが…っち」

江ノ島「そいじゃあ、防御しておくよーん☆」

江ノ島はなぜか近くに居た苗木を盾の様に自分の前へと引き寄せた。

豚神「…すでに詠唱は終わった。神への祈りは済ませたか?」

江ノ島「……よっし、あたしも詠唱終わったかな」

江ノ島は苗木を盾にしながら、小さく詠唱していたのである。
魔術において詠唱とはぶっちゃけ使用者のオナニー以外の何者でもないのだが、全く無意味ということでもない。
詠唱をすることによって術者の精神を集中し、精度や威力を高める事にも繋がっている。
ただでさえ強力な技が詠唱をすることによって更に高められ、爆発的な威力を発揮する。

ジェノ「うおおおおおっ!?いまのやっべー!!」

しかし殺人鬼であるジェノサイダーは驚異的な危機察知力で直撃を免れた。
が、右半身を凍らされてしまった。
ジェノサイダーに10000ダメージ。

ジェノ「さすがに今のはびびったわぁ…だ・け・ど、あまっちゃろいわねー!」

ジェノ「これがぁ…殺人鬼ってヤツよ☆」

ジェノサイダーは狂気の笑みを浮かべ、服の中に仕込んでいた鋏を取り出し、構える。
舌をだらーんとたらしながら、苗木達を厭らしい目付きで舐め回すように見る。
そしてじゅるりと舌なめずりをすると、苗木達へ向かって走り出した──!

ジェノ「チミドロフィーバー!ひゃっほおおおおおおおおおおおおおうう!!」

その瞬間、苗木達を得体の知れない何かが襲う。
何かは分からない。
ただ、自分達の何かが壊れていった。そんな気がして。

苗木「身体が…動かない!?」

味方PTは全ての状態異常を受けた。
“超高校級の詐欺師”発動!状態異常無効!

2ターン目。

ジェノ「ほらほらぁ…どうするの?誠ちゃーん!」

苗木(くっ…まずいぞ…!)

苗木 江ノ島 霧切 豚神 の行動を選択してください。

  
苗木       江ノ島     
7800/7800    8300/8300

6700/6700    7000/7000
霧切       豚神
5800/5800    7500/7500
4235/7000    5800/5800
 

ステータス
>>287-288 苗 毒封印麻痺絶望 江 毒封印麻痺 霧 毒封印麻痺絶望 消費SP0

敵ステータス
ジェノサイダー翔 lv300
HP 10000/25000
SP 2500/5000
AT/DF 1500/1500
スキル 『超高校級の“殺人鬼”』…状態異常能力変動スタン無効。全体攻撃。ダメージを与えた相手のSPに500ダメージ。【自動】SP0
    『痛みを快楽に変える程度のマゾ』…敵からの攻撃をDF分軽減。先制攻撃。【自動】SP0
    『チミドロフィーバー』…敵全体に全ての状態異常を与える。 【任意】SP2500



苗木「ぐぅ…っ!」

霧切「くっ…」

江ノ島「っち…!」

苗木・霧切・江ノ島は毒ダメージ。
苗木390ダメージ。
霧切290ダメージ。
江ノ島415ダメージ。

苗木「頭が…痛い……!」

“忘れた記憶”発動!
攻撃力が半減した。

ジェノ「殺しは美しく、エレガントにッ!それがあたしのモットーよ」

ジェノサイダーは不適に笑みを浮かべ、鋏を苗木達の身体を縫い付けるように振りかざす。
上手く動くことの出来ない苗木達は、なす術も無くその猛攻を受けてしまった。
味方PTに1500ダメージ。

江ノ島「ほら、これ飲んで」

苗木「んぐっ!?」

いきなり江ノ島から得体の知れない薬を飲まされる。
法律で禁止されているような危険なアレかと思ったが、不思議と身体が軽くなるのを感じる。

江ノ島「あんたの大好きな希望とやら詰まってるんじゃない?それ」

苗木「…ありがとう!助かったよ」

苗木の状態異常が回復した。

苗木「さあ、お返しだよ!」

苗木は光球を生み出し、次々とジェノサイダーへと向けて放つ。
最初は楽しそうに回避していたジェノサイダーだったが、だんだんと捌ききれなくなっていき、いくつかのダメージを受けてしまった。

ジェノ「いってて…やるじゃなーい」

ジェノサイダーに4000ダメージ。

豚神「悪いがお前の殺人ショーは終わりだ」

豚神「せめて…俺のスキルで、眠れ」

ジェノ「……はぁー…ここで終わりかよ…もうすこし殺しあいたかったな☆」

苗木「ごめんだよ…」

ジェノ「ま、後は頑張りなー。後ろにはあたし以上の化け物が待ってるよーん」

霧切「……そうね」

豚神「また、会おう」

豚神の作り出した強大なエネルギー弾を前に、ジェノサイダーは悟った笑みを浮かべる。
このゲームが終わったら、再び会えるのだ。
別になんとも思わない。自分の遊びは終わっただけのことだ。

豚神「右脳…解放」

豚神の呟きとともに、ジェノサイダーは光に飲まれ──消滅した。
ジェノサイダーは倒れた。


苗木「行こう、この先が…ボス部屋だ」

戦刃「やっと…見つけた…!」

苗木「え、戦刃さん!?」

豚神「何しに此処に来た?」

戦刃「実は…かくかくしかじかで」

霧切「はしょらないでしっかり話しなさい」

戦刃「一度やってみたかった…」

江ノ島「本当に残念だねお姉ちゃん」


苗木「──…なるほど、そんなことになっていたのか」

戦刃「そのことを伝えろって」

豚神「しかしさっき会ったモノクマは…特におかしいことも無かったが」

霧切(さっきのモノクマが言っていた気配って…戦刃さんのことだったのかしら)

江ノ島「ま、ただの思い過ごしじゃないの?」

豚神「だが、用心しておくに限るだろう。忠告感謝するぞ」

戦刃「……」

苗木「どうしたの?戦刃さん」

戦刃「このまま、大神さんに挑むつもり?」

苗木「…苦しいけど、やるしかないんだ」

戦刃「…………」

江ノ島「…あーこの顔は…」

戦刃「…私も、協力する」

苗木「ええっ!?」

霧切「そ、それは色々とまずいんじゃないのかしら…!?」

戦刃「きっと私じゃなくて、違う人でも同じことを言ったと思う。冷静に見て、戦力が足りない。自殺行為に等しいよ」

豚神「しかし…」

苗木「……頼めるかい?戦刃さん」

江ノ島「うっわ、正気?残姉だよ?」

苗木「今は戦力がほしい。戦刃さんなら大歓迎だよ」

戦刃「…やれるだけ、頑張る」

豚神「無理はするな。もともと俺たちのパーティではない、死にそうになったら見切りをつけて逃げてくれ」

戦刃「分かってる」

霧切「…心強い仲間も居ることだし、さっさと終わらせましょう」

苗木「勿論だ、行こう!みんな!」

期間限定で戦刃むくろがパーティに加入しました。
戦闘時は敵ステータスのところにステータスが載っていますが、扱いは味方となります。


冷たく、重々しい雰囲気を放つ扉をゆっくりと開ける。
部屋からこぼれた空気は冷たい。
僕の背筋に一滴、冷たい汗が流れた。
この先に……“い”る。
おそらく僕の人生で一番強い……人類最強の少女が。
僕らを救ってくれた恩人が。

苗木「……っ」

扉を開け放ち、歩を進める。
一歩一歩が重かった。
僕たちは…勝てるのだろうか……?

霧切「……」

他の皆も、緊張したように顔を強張らせている。
江ノ島さんでさえ、少し緊張しているようだった。
今回の敵は、それほどまでに強敵。


──そして、僕らは対峙する。


大神「……」


鬼神の名を持つ、大神さくらに。
大神さんは凍てつく殺気を放ちながら、ボス部屋の中央で仁王立ちをしている。
まるで勇者を待つ魔王さながらの貫禄だった。

戦刃「すごい…プレッシャー……!」

霧切「ええ、こうして正面に立つと、思わずひれ伏したくなるほどの威圧感よ」

苗木「だけど…僕らはこの人に、勝たなきゃいけないんだ……!」

一瞬、僕は部屋を見渡す。何も無い。
大神さんが居る部屋だ。きっと何の装飾も無く、ただっ広い空間がぽかんとあるだけだと分かってはいたけど、少し違和感があった。
……七海ちゃんが、いない?

けれど今は、そんな余計な事を考えている暇は無いだろう。
目の前の戦いに集中しなければ、僕らの命はあっさりと無くなってしまうのだから。

大神「…よくきたな、苗木よ」

苗木「ようやく…此処まで来たよ、大神さん」

この会話も、無意味なのかもしれない。どうあがいても、大神さんがここにいる以上、戦いは免れない。
こうして会話を交わすのは、やっぱり僕がまだ目の前の敵を倒す自信が無いということなのか。

大神「苗木よ…真実には、辿りつけたか……?」

苗木「真実……?」

大神「そうだ。我の身体を貫くためには、相応の真実の刃が必要だ。真実を持たぬ者に、我は倒せん」

真実…?
真実って言っても、何の真実なんだ?
まさか黒幕の正体?

霧切「おそらく、裏切り者のことを言ってるのでしょう」

豚神「だろうな。今回はやたら“裏切り者”に焦点を置いた進行だった」

江ノ島「つまり、裏切り者か誰かを知っているのなら、こいつを倒すことが出来る。それまではHP無限にSP無限とかいう無茶ゲーって事じゃん?」

苗木「モノクマが言っていた趣向って…こういうことだったのか……!」

豚神「どうやら…学級裁判は無駄にならなかったようだな」

霧切「さあ、苗木君。真実をぶつけてやりなさい…!」

苗木(大神さんを……倒す!)


1 真実をぶつける。
2 真実をぶつけない。


苗木「裏切り者は……七海ちゃんだ!」

僕がそう言い放つと共に、持っていた聖剣が淡い光を放つ。
これが真実の力…!

苗木「これなら…大神さんにも届くはず…!」

大神「……そうか、ならば来い」

霧切「絶対に負けないわ…!」

豚神「俺たちの力を見せてやろう!」

江ノ島「ま、所詮さくらっちも人間。ゲーム内だし倒せないワケないっしょ」

戦刃「戦刃むくろ、参る……ッ!」


七海「……っ。お兄ちゃん…」


【ボスバトルが発生しました。】

投下終了です。
次回大神戦&7層クライマックス。
バトルやら推理やら盛りだくさんの予定です。

投下します。
戦刃のスキルも使えますよ。

1ターン目。

大神「……」

苗木(強敵だ……!)

苗木 江ノ島 霧切 豚神 戦刃 の行動を選択してください。

  
苗木       江ノ島     
7800/7800    8300/8300

6700/6700    7000/7000
霧切       豚神
5800/5800    7500/7500
3850/7000    5800/5800
 

ステータス
>>287-288
戦刃むくろ lv280
HP 8000/8000
SP 5000/5000
AT/DF 1500/1000
スキル 『軍人』…先制全体攻撃。【自動】SP0
    『鋼の肉体』…攻撃ダメージをDF分軽減。【自動】SP0
    『冷静沈着』…状態異常能力変動を受けない。【自動】SP0
    『フェンリル』…敵全体をランダムに5回攻撃する。【任意】SP1000
    『ジ・イクリプス』…(戦江)敵全体にランダムにに9999*3ダメージ。【任意・合体技】SP3000

敵ステータス
大神さくら lv300
HP 30000/30000
SP 10000/10000
AT/DF 3000/3000
スキル 『超高校級の“武道家”』…二回行動、二回攻撃、死亡した際一度完全復活。【自動】SP0
    『王者の風格』…自身に対する攻撃以外のスキル効果を完全に無効化する。【自動】SP0
    『無慈悲なる一撃』…敵全体に9999ダメージを与える。【任意】SP1000
    『強者ゆえの制約』…奇数ターンは動けない。【自動】SP0


合体技は効きます。

安価下

すみません、どうやら前回の戦闘で大きな計算間違いをしていたようなので、もう一度安価をやり直しとさせていただきます。
hp/spが間違ってました。気付かなくて申し訳ないです。普通に戦っていると大神戦では霧切さんのSPが枯渇しているはずだったので。

ちなみに前回のジェノサイダーは闘技場などで現れるデータではなく、ボスのときに現れるものです。

1ターン目。

大神「……」

苗木(強敵だ……!)

苗木 江ノ島 霧切 豚神 戦刃 の行動を選択してください。

  
苗木       江ノ島     
5910/7800    6385/8300

6700/6700    7000/7000
霧切       豚神
4010/5800    6000/7500

385/7000     5800/5800
 

ステータス
>>287-288
戦刃むくろ lv280
HP 8000/8000
SP 5000/5000
AT/DF 1500/1000
スキル 『軍人』…先制全体攻撃。【自動】SP0
    『鋼の肉体』…攻撃ダメージをDF分軽減。【自動】SP0
    『冷静沈着』…状態異常能力変動を受けない。【自動】SP0
    『フェンリル』…敵全体をランダムに5回攻撃する。【任意】SP1000
    『ジ・イクリプス』…(戦江)敵全体にランダムにに9999*3ダメージ。【任意・合体技】SP3000

敵ステータス
大神さくら lv300
HP 30000/30000
SP 10000/10000
AT/DF 3000/3000
スキル 『超高校級の“武道家”』…二回行動、二回攻撃、死亡した際一度完全復活。【自動】SP0
    『王者の風格』…自身に対する攻撃以外のスキル効果を完全に無効化する。【自動】SP0
    『無慈悲なる一撃』…敵全体に9999ダメージを与える。【任意】SP1000
    『強者ゆえの制約』…奇数ターンは動けない。【自動】SP0



戦刃「これで…終わらせるッ…!」

江ノ島「いいよ、お姉ちゃん。今回は手伝ってあげる」

戦刃「ありがとう、盾子ちゃん」

戦刃はコンバットナイフを構え、江ノ島は大剣を構える。
二人は小さく息を吐いた。

戦刃「──ッ」

やがて、わずかな空気の流れを読み、戦刃が先陣を切る。
左右にぶれながら高速で移動することによって、並みの動体視力の者が見ればまるでワープしているかのような錯覚を覚える程の疾駆。
大神相手にはこの程度のフェイントなど意味は無いが…江ノ島とコンビネーションを組んでいる今、それは絶大な効果をもたらす。
大神が戦刃の動きを追っていると、必然的に江ノ島が視界から消える……。
それはつまり──!

江ノ島「うらああああああああっ!」

大神の死角から、大剣を振りかざした江ノ島が現れ、咆哮する。
大神は超人的な反応速度で江ノ島の攻撃を防ごうとするが、もう遅い。
この陣形になった瞬間に、江ノ島と戦刃の攻撃は必中足りえる。
大神の死角から放たれる無数の斬撃。
いくら大神さくらといえど、絶望シスターズの連続攻撃を完全に防ぎきることは不可能──!

大神「…む、ぐう…!」

大神に29997ダメージ。

霧切「っせい!」

大神が戦刃たちの攻撃を受け、よろめく隙を見逃さない。
霧切は自身の出せる全力で大神の元へと駆け、仕込んでいた投げナイフを投擲する。
探偵の観察眼によって導かれた“絶対の死角”に放たれたナイフを、大神は知覚することすら出来ない!
大神に700ダメージ。

大神「ぐ、ぐああああああっ!」

大神は苦痛の声を上げ、地面に膝を着く。

苗木「…勝った……?」

大神「ぐ、ぐぬ……まだだ…我は負けない……!」

しかし驚異的な精神力で、大神は再び大地に立つ。
全身に刻み込まれた傷も、いつのまにか癒えている。
この程度で終わるわけにはいかないという、大神の強い意志に反応して傷が癒えたのだ。
大神は全回復した。

霧切「まだよ!」

真実を射抜く目が発動。
霧切は再行動で再び攻撃した!
大神に700ダメージ。

江ノ島「まだまだッ!」

苗木「終わらせないッ!」

江ノ島と苗木が霧切に続くように攻撃を仕掛ける。
大神は無言でその攻撃を受け続けた。

大神「まだ、倒れんッッ!」

大神に7800ダメージ。

豚神「貴様に見せてやろう…俺の才能を恐ろしさをな……!」

大神「馬鹿な…!なぜ貴様がそれを……!」

豚神「セイッッ!」

超高校級の“格闘家”…否“武道家”である彼女の究極にして最強の一撃。
それを彼は“視たこともない”のに、完璧に再現してみせる。
大神はその完成度の高さに目を見開き、攻撃を防ぐことすら考えることが出来なかった。
大神に9999ダメージ。

2ターン目。

大神「……む」

豚神(このままいけば…勝てる?妙だ。何か引っかかる…)

苗木 江ノ島 霧切 豚神 戦刃 の行動を選択してください。

  
苗木       江ノ島     
5910/7800    6385/8300

6700/6700    7000/7000
霧切       豚神
4010/5800    6000/7500

424/7000     4800/5800
 

ステータス
>>287-288
戦刃むくろ lv280
HP 8000/8000
SP 2000/5000
AT/DF 1500/1000
スキル 『軍人』…先制全体攻撃。【自動】SP0
    『鋼の肉体』…攻撃ダメージをDF分軽減。【自動】SP0
    『冷静沈着』…状態異常能力変動を受けない。【自動】SP0
    『フェンリル』…敵全体をランダムに5回攻撃する。【任意】SP1000
    『ジ・イクリプス』…(戦江)敵全体にランダムにに9999*3ダメージ。【任意・合体技】SP3000

敵ステータス
大神さくら lv300
HP 11501/30000
SP 10000/10000
AT/DF 3000/3000
スキル 『超高校級の“武道家”』…二回行動、二回攻撃、死亡した際一度完全復活。【自動】SP0
    『王者の風格』…自身に対する攻撃以外のスキル効果を完全に無効化する。【自動】SP0
    『無慈悲なる一撃』…敵全体に9999ダメージを与える。【任意】SP1000
    『強者ゆえの制約』…奇数ターンは動けない。【自動】SP0




戦刃「追い詰める──ッ!」

戦刃の息の着かせぬ攻撃の嵐。
大神もこれ以上の攻撃は危険と感じたのか、必死に防ぐものの…実戦経験では戦刃の方に軍杯があがる。
次第に防ぐことが難しくなっていき…ついに攻撃を受けてしまう。

大神「くっ…!」

大神に1500ダメージ。

豚神「江ノ島、行くぞ」

江ノ島「…エターナルフォースブリザード、相手は死ぬ」

いつの間にか無駄に長い詠唱を済ませていた二人が、キメ顔で大神に向かってそう言い放った。
大神は怪訝そうに二人を見るが、瞬間自身の身体に異変が起こったことを知る。

大神「む…これは……!」

阪神が氷付けになっているのを見て、僅かに驚きの表情を浮かべる。
大神に10000ダメージ。

苗木「えっとこれ…どう使うんだ?」

苗木は拾っていた良く分からない機械を取り出し、操作しようとする。
しかしいまいち使い方が良く分からず、戦闘には使えないと捨てようとして──。

苗木「え?」

小さくアラーム音が聞こえて、突然機械がよく分からない虫のような形に変形した。
変形した機械は某害虫を髣髴とさせる動きでカサカサとどこかへ行ってしまった…。

苗木「なんだったんだ今の…」

戦闘後に入手できる報酬が増えた。

苗木「ってこんなことをしている場合じゃないんだ。大神さん、行くよ!」

大神「…来い、苗木」

苗木は聖剣に真実の光を灯す。
この光で大神を貫く。
そして先へ、進む──!

苗木は大神の目の前まで肉薄する。
大神は退かない。
そして、防ぐつもりも無い。
苗木も十分に理解していた。
だから、この一太刀で──終わらせる!





苗木「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!いっけえええええええええええええええええええええ!!!」





苗木の真実の刃は──大神の胸に確かに突き刺さり。

大神「……ぐ、」

…………静寂が流れる。
そして。

苗木「…僕が、勝っ──」


パリン。


不吉な音がした。
苗木は、大神の心臓を、確かに貫いた聖剣を見る。

苗木「……え?」


聖剣は、砕け散っていた。


苗木「そ、そんな…ど、どうして……っ!」

苗木は目の前で起こった事が信じられず、呆然と立ち尽くす。
だから、仲間の呼びかけに気づくのが僅かに、遅れた。

霧切「──君!逃げてええええええええええええええええええ!!!」

苗木「……え?」

顔を上げる。
そこには、拳を構えた武人の姿があった。

苗木「ごっ、ふ……っ!」

めこりと、明らかに鳴ってはいけない音がして、苗木は口から血を吐き出す。
苗木は軽く身体に触れ、肋骨が数本折れているのに気付いた。

苗木(──ここにいたら、まずい)

そう気づくのが、後数秒遅かった。
苗木が逃げようと身体を動かした瞬間、再び意識が吹き飛ぶような激痛に襲われる。

苗木「あ、が、ごっ……!」

殴られた衝撃は大きく、苗木の身体はいとも容易く吹き飛んだ。
やがて壁に激突し、壁に血の彩色を施す。

霧切「苗木君!」

豚神「なぜだ…!なぜ届かない……!」

駆け寄ってきた霧切に介抱されながら、苗木は朦朧とした頭で思考を巡らせる。
何が間違っていたんだ…僕たちの推理は、正しいはずなんだ……。
だって他に、どう考えれば……。

江ノ島「寝てる暇は無いみたいだけど?」

江ノ島の声で少し思考を止め、大神の姿を探す。
苗木達の数メートル先に、大神がいた。
彼女はゆっくりとした足取りで、確実にこちらに迫ってきている。
本気で来られれば、もう苗木達の命は無い。
自分達は生かされているのだと理解した。

苗木「ご、ごめん…みんな…僕のせいで……」

霧切「まだよ…私達の推理は間違ってないはず……ただ、真実に昇華するには何か足りないのよ」

豚神「何か…な。後数秒で俺達は死ぬわけだが、思いつくか」

江ノ島「…………っち」

苗木「ごめん…僕が、後先も考えずに……っく!!」

そう、苗木は気付くべきだった。
モノクマは自分達を監視しているのだ。
ならば、なぜこんなにも自分達に有利な条件を突きつけるのか。
その前には、理不尽に仲間の命を奪っているモノクマが、こんな簡単な謎を出してくるわけが無いのだ。
だから、自分達の浅慮。
大切な仲間であり、妹のような存在の七海を疑った結果が、これだ。
結局彼女に会うことは出来ず、真実を知ることも出来ないまま、死ぬ。


──ああ、そうか。

僕らのは推理で…【真実】じゃ、ないのか……。

僕らは七海ちゃんの口から【真実】を聞いていない……。

自分達の推理を、勝手に真実と摩り替えて……この結果になったんだな…。


苗木も、霧切も、豚神も、江ノ島も。
もはや万策尽きたとでも言うかのように、頭を垂れる。
どうしようもない。
この状況で、どうやって真実を示せばいいというのか。



大神「……」

大神さんが、僕らの前に立つ。
何も言わない。
僕たちも、何も言わない。
もう、言葉を交わす必要はないんだ。

大神さんが勝者で、僕らが敗者。
ただ、それだけのことなんだ……。

大神さんが、拳にエーテルのようなものを纏わせている。
おそらく、その一撃で僕らは灰すら残さずに消え去るだろう。
パーティの皆には迷惑をかけた。
戦刃さんは…そっか、逃げられたみたいだね。
彼女には、あらかじめ言って置いた事があった。


──

苗木「ねえ、戦刃さん」

戦刃「どうしたの?」

苗木「もし、僕らが負けて、死ぬようなことがあったら…何も言わずに、見捨ててほしいんだ。君は正式なメンバーじゃない。だから逃げられるはずだよ」

戦刃「でも、協力する限りは…」

苗木「うん。分かってる…でも、違うんだ。僕らの為にも、見捨ててほしい」

戦刃「え?」

苗木「僕らが死んでも、戦刃さんが生き残って、狛枝先輩の元に帰れば、きっと狛枝先輩は僕たちの遺志を継いでくれる…きっとこのゲームを、終わらせてくれるはずなんだ」

戦刃「…苗木、君」

苗木「お願いだよ、戦刃さん」

戦場「……分かった。約束するよ」

──


苗木(これで、僕らの遺志は……狛枝先輩が受け継いでくれるはずだ………)

ふと見上げると、大神さんがエーテルを纏った拳を振りかざしている姿が見えた。
…目を閉じた。

もう、時間はない。
僕らは……

大神「……はァ!!」





…。
……。
………。

……いつまで経っても、何も起きない。
もう、僕らは死んでいるはずだ。
なのに、どうして…?
僕は恐る恐る目を開けると、そこには……





七海「…くっ、ぅ……」





七海ちゃんが、シールドを展開して僕らを守ってくれていた。



苗木「七海ちゃん…どうして……っ!」

その先は、続かなかった。
七海ちゃんが助けに入るということは、七海ちゃんは僕らの語った推理を知っているはずだ。
どうして、裏切り者だと疑っている僕らを助けてくれたの…?
霧切さん達も同じことを思っていたのだろうか、なんとも言えない表情を浮かべていた。

七海「……っ」

僕らの言葉には答えず、ひたすら大神さんの攻撃を耐え続ける七海ちゃん。
大神さんの攻撃は強力で、七海ちゃんの力でもぎりぎり耐える状態が精一杯だった。
その証拠に、シールドに亀裂が走り、七海ちゃんの足元には小さな血の水溜りが出来ていた。
誰の目から見ても、長くは続かない。
それなのに、どうして……。



モノクマ「うぷぷぷぷ……だーひゃっひゃっひゃ!泣かせるね!裏切り者だと思ってた仲間が窮地を救ってくれる!いまどきライトノベルでもやらないよそんなこと!」

霧切「モノクマ…っ!」

豚神「どうしてお前が……!」

モノクマ「オマエラがボクの余興を楽しんでくれているか気になったんだよねー」

豚神「余興だと…ふざけるな……」

モノクマ「うぷぷ…オマエラがそんなちんけな推理だけで挑もうとしたのが悪いでしょ!推理じゃなくて【真実】を語ってもらわないと!」

苗木「真実…っ」

僕は七海ちゃんの方を盗み見る。
七海ちゃんは大神さんの攻撃を耐えながら、僅かに唇を噛み締めていた。

モノクマ「ちょうどいいじゃん!オマエラ七海さんに聞いちゃいなよ?貴方は裏切り者ですか?ってさー!うぷぷぷぷ!」

霧切「……っ」

七海「……」

モノクマ「ま、無理だと思うけどね!だって七海さんが裏切り者じゃないなら答えられないし、裏切り者でも答えるわけが無いよね?だって裏切り者が素直に白状するなんてボクが許さないし!」

苗木「そ、そんな…それって……!」

そう、モノクマの言うとおりならば、僕らはどう足掻いても勝てないのだ。
だって七海ちゃんがどちらの場合でも、僕らは真実を知ることが出来ない。
真実を知ることが出来ないのだから、僕たちは大神さんを倒せない。
じゃあ、僕らがやっていたことって……。

モノクマ「そう、オマエラがやっていたことはぜーんぶ!まったくの!無駄だったんだよ!だーひゃっひゃっひゃっひゃ!!」

豚神「も、モノクマアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

豚神クンがモノクマに怒りの叫びを上げる。
だけど、どうにもならないんだ。
だって…この結界は僕らを守るとともに、僕らを閉じ込める、檻なのだから。

モノクマ「……でもま、方法が無いわけじゃないよ?」

苗木「……え?」

モノクマ「だってこれじゃあ、お前らにあんまりにも不公平だもんね!だからお前らにもチャンスをあげるよ!“そこで結界を張っている七海さんを殺したら、ボクの権限で真実の力を与えてあげるよ”」

苗木「──」

絶句する。
今、こいつ、なんて……。

モノクマ「ほらほらぁ!クリアしたいよね?だったら殺しちゃえばいいんだよ!目の前で頑張ってる七海さんをさ!だって考えてごらんよ?苗木クンたちの推理じゃ、七海さん裏切り者なんでしょ?だったら殺しても全く問題ないじゃーん!」

霧切「あっ……悪魔よ…貴方は悪魔だわ……」

江ノ島「なぁにそれ、絶望的に魅力的な取引じゃん」

豚神「江ノ島…少し黙れ」



七海ちゃん…。
今まで、僕らを導いてくれて、頼りになった大切な仲間。
そして僕の、妹のようにかけがえのない、大切な存在…。
それを、殺す?

七海「……ぅ、く…ぁ……」

七海ちゃんは、今も僕らのために/僕らのために?。
もう、七海ちゃんの姿は見ていられなかった。
小さな、と表現していた血溜まりはどんどん広がっていき、七海ちゃんの見えない部分が、どれだけ悲惨な状態なのかが目に見えて分かった。
もう、七海ちゃんのシールドも限界だ。
そして、僕らがこのまま何もしなければ、皆死ぬ。
……僕らが、七海ちゃんを殺せば、僕らは先に進むことが出来る。

なんて惨い…なんて残酷な選択なんだ……!
モノクマは…わざと僕らをこうなるように誘導していたんだ……。
この、悪魔の二択を僕らに選ばせる為に…ッ!

七海ちゃんを殺すことなんて、出来るわけ無いじゃないか…。
でも、僕らは大切なクラスメイトを倒してきた。ゲームの世界とはいえ、友人を殺してきたんだぞ。
でも、七海ちゃんは仲間だった。一緒に戦ってきた仲間なんだ。
そんなの屁理屈だ。命の価値に優劣なんてない。それに考えてみろ、ゲームをクリアすれば皆無事に元の世界に帰れる。

頭の中がぐちゃぐちゃになる。
七海ちゃんを殺したくない、けれどこんな残酷なゲームをこれ以上続けさせるわけにはいかない。
僕は、どうすれば…いいんだッ!誰か教えてくれ!教えてよ…頼むから教えろおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!

霧切「……っ」

豚神「く、くそ……」

江ノ島「……」

モノクマ「苗木クン?聞こえる?七海ちゃんの背中からね、ぐちゅぐちゅ音が聞こえるんだよねー!何の音かな?もしかして割れたシールドが背中を抉ってるのかなー?うぷぷぷ!!」

七海「……ぅ」

モノクマ「早くしないと手遅れになっちゃうね!超高校級の“希望”は、どんな選択をするのかなあああああああ?うぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷ!!!」

七海ちゃんの方を見る。
苦悶の表情を浮かべながらも、最後の瞬間まで戦い抜こうと、抵抗しようと、必死になっている。
……目を背けた。

七海「……ぉ、に……ちゃ…」

そのとき、七海ちゃんが初めて、小さく口を開いた。
モノクマがつまらなそうな表情を浮かべた気がした。

七海「……がん、ば……ろ……」


僕は──。
僕は……ッ!


1 考えろ!何か、何か考えろ!
2 七海ちゃんを殺す
3 自由


考えろ!考えろ考えろ!思考を止めるな足掻け足掻け!
何か道があるはずだ!

苗木「真実の提示!豚神クンのヒントにおいて豚神クンが過去において七海さんからこのゲームを受け取っている。これは七海ちゃんが黒幕と繋がっている或いは関連している決定的な証拠だ!」

モノクマ「それは豚神クンが観測したかは別だよね?ヒントとして見せられた映像がボクの捏造かもしれないねぇ」

苗木「いいや、豚神クンのヒントは過去だとはっきり明示されているよ!そうだよね、豚神クン」

豚神「…ああ、そうだ!確かにアレは俺の過去だ!」

モノクマ「しかし、七海さんが黒幕から何も知らされずにそのゲームを渡すようにいわれた可能性は否定できるの?」

苗木「くっ…!」

苗木「し、真実の提示!僕、あるいは他のパーティメンバーが裏切り者の可能性!モノクマに洗脳されていて僕たち本人は気付かなかった!」

モノクマ「そんな事実はありません。ボクは嘘は言わないからね!裏切り者はちゃんと一人だよ!」

苗木「真実の提示!実は裏切り者は僕たちが今まで倒した人たちの中或いは死亡した中に居て立証不可能。よってこの問題は不適切である可能性がある!」

モノクマ「裏切り者は生存していますよ!」

苗木「真実の提示!裏切り者である、ということは立証できるかもしれないけど僕たちが裏切り者でないという可能性は悪魔の証明により立証不可能。よって全員に裏切り者の可能性がある!この問題はやっぱり不適切だ!」

モノクマ「だーかーら!さっきも言ってるけど!裏切り者はちゃんと生きていて、一人居るから!」

苗木「う、く……あ…」

モノクマ「全く…酷い推理だよ……いい加減聞き飽きたからさ、もうちゃっちゃと殺っちゃってよ!」

もう、何も思いつかない。
だって、こんなの立証不可能だ。
裏切り者の口からはっきりと裏切り者であるって聞かなければ、モノクマはあらゆる方法で僕の推理から逃げる。
もう、残されていないんだ……何も。

七海ちゃんのほうを見る。
もうシールドは壊れかけている。
亀裂から今にも爆発しそうな勢いでエーテルが漏れている。
あと数十秒もすれば、僕らは皆まとめて消え去るだろう。
七海ちゃんの腕は、漏れ出したエーテルに焼かれて爛れていた。
僕のせいで……ああなってしまったんだ……もう、頑張れなくて…いいんだ…。

七海「……もぅ…いいよ……お兄ちゃん、私を…………」

…嫌だ。
だって、ここで七海ちゃんを殺したら、僕の最後の足掻きは意味がなかったことになる。
そんなのは、嫌だ。
ああ、不思議な感覚だな。
裏切り者は七海ちゃんだと思っているのに、七海ちゃんを殺したくなくて、いつのまにか七海ちゃん以外の人間が裏切り者だって推理をしていたんだ。

僕は、駄目だな。
結局、七海ちゃんを殺す決断も出来なくて、皆を巻き込んで、死ぬ。
なにが…希望だよ……本物の希望なら、これくらいの絶望、簡単に切り抜けられるはずだ…。

亀裂が広がっていく。
ああ、今度こそ終わりだ。
もう、奇跡が起こることはない。それどころか、今こうして生きていること自体、幸運なんだ。

そういえば僕…超高校級の“幸運”なんだっけ…?

だったらさ…今、その才能を発揮するべきじゃないのか…?

……はは。

視界が白に染まっていく。
頬を、一筋の涙が流れた。


苗木「もう、終わりなのかな……」













「それは違うぞ。」

「──“七海千秋は裏切り者ではない。”」










目の前を、雷光が駆けて。

眩かった視界は正常になり。

諦観に染まっていた僕の瞳に、雷の刃に貫かれた大神さんが映った。

僕は弾けるように立ち上がり、その声の主を探す。

だってその声は──!





日向「苗木、思考を止めるな。真実を、お前は手にしている。」





 

投下終了です。
投下が遅かったので推理パートまでいけませんでした。
次回は推理パートです。

投下します。



苗木「日向…クン?」

日向「…全く、なんでこんな事になってるんだよ……」

日向クンはいつもの学生服にマントのような物を羽織っていた。
マントをはためかせながら、軽く額に手を当てる。
……いや、え?

苗木「ど、どうして…日向クンは死んだハズじゃ──」

モノクマ「な、なんでオマエラがここにいるんだよ!」

オマエラ?
いや、それにモノクマが普段の様子からは想像できないくらい焦ってる?
僕は日向クンのいる方向をよく見ると、後ろの方に……罪木さんがいた。

罪木「……」

罪木さんはいつもの服に、なぜか両手両足首に鎖が嵌められている。
勿論千切られているが、その姿は脱獄した囚人に見えなくもない。
というより…どうして死んだ二人がここに?

日向「罪木は…アイツの権限で復活させた」

モノクマ「……道理でボクの権限が自由になったわけだよ。まだそんな小細工を残してたんだね…」

あいつ…?
日向クンは、何を言っているんだ?

日向「俺は…“日向創”だ」

モノクマ「……!うぷぷぷ」

日向「これ以上説明は要らないだろ」

苗木「よ、よく分からないよ…!どうして君が……!」

豚神「な、日向!?」

霧切「それに…罪木さんも…!?」

江ノ島「……うっそ」

豚神クン達もようやく状況が理解できたのか、目を丸くして驚いている。
そんな僕達を横目に見て、日向クンは口を開いた。

日向「詳しいことはこれが終わってからだな」

日向クンが前方を指さす。
その先には……自分の心臓を貫いたはずの雷刃を抜き去った大神さんがいた。

日向「ま、当然か。この程度の真実じゃお前を倒せやしないのは分かってる」

日向クンは予定通りとでも言うかのように、そう呟いた。
そうだ…さっきの話が本当なら……七海ちゃんは裏切り者じゃない?
でもそれなら…一体誰が。

日向「苗木…考えろ。思考することを止めるな。ヒントはあちこちに散らばっている……こんなものは問題でもなんでもない。お前が気付くかどうか、それだけの話だ」

苗木「日向クンは…分かってるの?」

日向「ああ。だけどそれをお前には教えない。この程度の真実も掴み取れない“希望”が、このゲームをクリアできる…?甘えるなよ!」

日向クンは冷酷にそう言い捨てた。


日向「とは言っても、考える時間も必要だろ?」

そう言って日向クンは、再び大神さんを指さした。
大神さんは再びこちらに絶望の一撃を繰り出そうと、その破壊の力を溜めている。

日向「お前が真実に辿り着くための時間を…俺が稼ぐ。ただしそう持たないぞ。俺一人でこいつの相手は流石に骨が折れるしな」

日向クンは懐から刀を抜いた。
刀身は雷を帯びたようにバチバチと電気を放っている。
その刀を、大神さんへと──投げた。

大神「──ぬ、ぅ」

大神さんの腹部に深々と突き刺さる雷刀。
刀はしっかりと刺さっている上、雷を帯びているため、抜こうとすれば感電してしまうだろう。
日向クンは大神さんが刀を抜くのに手間取っているのを確認してから…七海ちゃんの元へと向かった。

七海「……ひなた、くん…」

日向「ごめんな…少し、遅くなったな……」

七海「………ありがと…」

七海ちゃんは日向クンの顔を見て、心の底から嬉しそうに笑顔を浮かべながら…涙を流した。
そして緊張の糸が切れたのか、そのままもたれかかる様にして眠ってしまう。

日向「背中の傷が酷いな…罪木、治してやってくれるか?」

日向クンが呼ぶと、罪木さんはいつのまにか日向クンの傍に立っていた。

罪木「はい、大丈夫です。大神さんは大丈夫なんですかぁ?」

日向「ま、時間稼ぎなら大丈夫だ」

日向クンがそう言うと、罪木さんは頷いて、七海ちゃんの背中に手を当てた。
すると罪木さんの周りが淡く発光し、エーテルが空中に満ちている。
あれは多分…七海ちゃんの傷を治すスキル…なんだろうな。
罪木さんが治療を始めたのを確認した日向クンは、再び僕らの方に視線を向けた。

日向「考える為の知恵はお前に授けた。後はそれを使ってお前が真実に辿り着くだけだ」

苗木「……真実」

日向「色々と聞きたいことや話したいことがあるだろう。だけどお前がここを切り抜けられないなら、その話も出来ない。…きっと出来るさ」

霧切「どうして、貴方は真実を知っているのに黙っているのよ」

日向「さっきも言ったが、このゲームをクリアするならこの程度の真実に辿り着けないようじゃ困るんだ」

豚神「だが、そもそもこの真実とは決して手に入れることができないものなんだぞ!?」

日向「誰もそんな事は言ってないだろ?」

豚神「…なんだと?」

日向「いいか。もう一度モノクマの言葉を思い出せよ。確かに真実は相手が認めるか、それと同等のものを自分の目で確かめることが必要だ。…だけどモノクマは真実をぶつけろと言った…これがどういう意味か分かるか?」

霧切「そもそも…私たちが真実を知っていなければ……これは成立しない?」

日向「ああ。だけどモノクマは上手い具合にお前たちを誘導して、その真実から目を逸らさせた。“この真実は絶対に掴むことができない”と錯覚させてな」

豚神「だけど…もしも前提が“真実を知っている”ということなら…!」

日向「ああ。後は推理でもなんでもない。気付くかどうかってことだ」

モノクマ「……」

日向クンの言うとおりだ…どうして……それに気付かなかったんだ!
裏切り者はいる…そして僕達は……それを知って……え?

苗木「ちょ、ちょっと待ってよ。それじゃあ…僕達が裏切り者を知っているってことになるじゃないか!」

日向「ああ。そうだ」

苗木「いや、それはおかしいよ。だってそんな事聞いたことも……」

日向「…そこに気づくか、って事なんだよ」

苗木「……え?」



日向「──さ、ヒントは終わりだ。そろそろ向こうも準備が整ったみたいだしな」

日向クンの言葉で我に返り、大神さんの方を見ると、いつの間にか雷刀を抜き去り、殺気を放っている大神さんがいた。

日向「信じてるぞ…苗木ッ!」

日向クンはそう言い放ち、大神さんへ向かって走り出した──!


霧切「苗木君」

苗木「…あ、霧切さん」

霧切「私たちがやることは日向君の戦いを傍観していること?違うでしょ」

豚神「ああ、その通りだ。日向が時間を稼いでいる間に、俺たちは“真実”とやらに気づかなくてはいけないのだからな」

江ノ島「うぷ…それに、どうやら図星みたいじゃん」

江ノ島さんが薄く笑いながら、モノクマの方を指さした。
モノクマの方を注視してみると…怒ってる?
ロボットだから感情なんて分からないけれど、普段から感情豊かそうに見えるモノクマが、今は怒りを押し殺しているような…そんな不気味な沈黙をしていた。

モノクマ「……」

苗木「うん。そうだね…僕らは出来ることをやろう」

色々と気になることはある。
でも、今は目の前の事に集中するべきだ。
他の事はあとからでもいい。
いや、今目の前の問題から目を逸らしたら…他の事を考える事も出来なくなるんだ。

苗木「…でも、正直推理材料が足りない気がする」

霧切「そうね…七海さんが裏切り者ではない、と分かっただけで…むしろさっきより状況は最悪じゃないかしら」

江ノ島「あれだけ相談して見つけた真実が間違いだったもんねー!うぷぷ」

苗木「……」

考える。
まず疑問なのは…七海ちゃんが裏切り者ではないということ。
あれだけ僕達を疑わせる要素を匂わせておいて…濡れ衣だった。
つまりモノクマは、僕達の目を七海ちゃんに集中させたかったんだ。
それは…どうしてだ?

それは日向クンも言っていた。
モノクマが僕らをそう推理させるように誘導していたんだ。
だとすれば…僕らの中でそう推理を誘導した人が怪しい…?

──それって僕じゃないか!
じゃあ僕が裏切り者?…それはない。それは僕自身がよく分かっている。
洗脳案もモノクマに却下されているから、僕自身の潔白は僕自身が一番わかっている。

だとすれば……。
分からない。なにから考えていけばいいのか。

推理の出発点が分からないんだ。
……いや、待てよ?

そもそもなんでモノクマはわざわざ七海ちゃんを裏切り者に仕立て上げるためにあそこまでしたんだ?
普通に考えれば、モノクマの意図にそぐわない、或いはモノクマ自身が危機にさらされるようなことを七海ちゃんがしていたか知っていたか…だから裏切り者と誤解させて殺させようとした。
…でも、それだけじゃない気がする。
モノクマは気づかれたくなかったんじゃないか?

──何に?


1 裏切り者の目的
2 裏切り者の立場
3 裏切り者の正体



苗木「……そうか!」

霧切「どうしたの?苗木君」

苗木「モノクマが隠したかったのは…裏切り者の立場なんだよ!」

豚神「ど、どういう意味だ?」

苗木「まず一つだけ疑問に思ったことがあるんだ。僕たちは真実を知っている…これ、おかしいと思わない?」

霧切「ええ、確かにそうね。真実…つまり裏切り者は誰かという事を知っているのなら…どうして誰も言わなかったの?」

豚神「いや、そもそもそんな人物は知らないぞ」

苗木「そうだよね。少なくとも僕たちの目の前で怪しい行動をしている人はいなかった…これって明らかにおかしいよね」

…そうなんだ。
もしも仮に僕らがその事実を知っているのなら…。
裏切り者がいる→そういえばパーティで怪しい動きをしていた、或いは明確な裏切り行為を見ていた→裏切り者はあの人だ!
こういう図式が成り立たなければおかしいんだ。
“だって僕らは知っているんだから”。

だけどそうはならなかった。
それどころか…仲間である七海ちゃんを疑ってしまった。
それはモノクマが用意してきたヒントのせいだ。
あれは僕らのためのヒントなんかじゃなかった…!
僕らを嵌めて…真実を隠そうとしたんだ。

だとすれば、裏切り者の立場そのものに疑問が出来る。
僕たちは裏切り者を…僕達の事を裏切っている人たちだと思っていたんだ。

──だけど、本当は。


裏切り者の立場を答えろ!




苗木「……僕達はそもそも前提から間違えていたんだ」

霧切「前提…」

そう、日向クンが気付けと言っていたのはこれだったんだ…!

苗木「僕達は…裏切り者を僕たちの事を裏切っている人だと思っていた…。だけど、そうじゃないんだよ。モノクマの言っていた裏切り者は……モノクマを裏切った人だったんだ…!」

江ノ島「……さっすが苗木クン。相変わらずゾクゾクする推理じゃん」

豚神「そうか…!それなら辻褄が……ん?」

霧切「……ええ、それには私も気づいていたわ」

苗木「あ、あれ…?」

僕、何か間違えたか?

霧切「いい、苗木君。確かにその考えは正しいと思うわ。私もその推理にはたどり着けた。でもね、だからどうしたって話なのよ」

苗木「え?えっと…それは、その…」

豚神「いいか?確かに裏切り者がモノクマの事を裏切ったやつだとしよう、それは誰なのだ?」

苗木「え、いや…その…それは」

そ、そうだよ!
だってそこまで気づいたって…肝心の誰かまでは分かってないじゃないか!
ど、どうしよう…超ドヤ顔の推理なのに…。

江ノ島「……はあ、その残念っぷりは残姉ちゃんに負けるとも劣らないよ」

苗木「…え?」

江ノ島「あの希望キチなら…この程度の推理も出来ないなんて…本当に君たちは超高校級の“希望”なのかい?…とーか言われちゃうよぉ?」

苗木「……」

江ノ島「真実を知っている…そして日向クンは“苗木、思考を止めるな。真実を、お前は手にしている。”こう言ったんだよ」

苗木「……僕“は”?」

江ノ島「そう、霧切ちゃんでも豚でもあたしでもない…アンタなら知ってるって事じゃないの?」

苗木「僕が…知ってる……?」

……裏切り者。

十神「躊躇うな…俺には【意志】があったが…もしもそれさえも【奪われていれば】…本気でお前たちを殺しに来るぞ」

不二咲「ボクは……ごめんねぇ。システム側からの命令でボクの状況を説明することはできないんだぁ」

大和田「ったく…わりぃが手加減は出来ねえぞ。本気でやれってぷろぐらみんぐ?されてるみてーだからな」

…………。

──。


意識を、深層に落としていく。

今までに出てきた情報を、紡いでいく。

ああ、そうか──。

【あの人】だったんだ──!


人物を指名しろ




──違う。

不二咲クンは…十神クン達と同じで……プログラムの制約を受けていた人だ。

【あの人】以外に…裏切り者はいないはずだ──!


人物を指名しろ(残り2回)


申し訳ないです。寝落ちです。
最近寝落ち率が高いので反省します。

投下します。本日は短めです。



苗木「……そうか、そうだったんだ」

──そう、答えは最初から在った。
いや、それどころか……わざわざ“教えてくれていたんだ”!


大神「我はモノクマによって…ボスとして洗脳させられかけたのだ」

大神「だが…我にゲームとは言え仲間を手にかけることなどできない…」

大神「…だから我は死ぬ気で抵抗している。こうして、今も」

大神「油断してしまえば我は洗脳され、お主らを倒すだけの存在となり果てるだろう」

大神「しかし──我はただでは死なん」

大神「刺し違えてでも…黒幕は我が倒す」


苗木「……はあ、江ノ島さん。分かってたのに僕に答えさせるなんて、随分と意地が悪いよね」

江ノ島「なーに言ってんの。主人公に華を持たせてあげたんだから感謝してよー」

苗木「いやさ、そんなこと言ってる場合じゃないの分かってる……?」

江ノ島「いいからほら、そろそろ日向クンが辛そうだよ?」

江ノ島さんに促されて日向クンと大神さんの戦いを見ていると、大神さんが大分推していた。

日向「っ…流石に、大神は…強いな!」

大神「──ハァッッ!!」

日向クンは大神さんの攻撃を紙一重で躱していく。
大神さんの攻撃は一撃でも受けたら致命傷だから、躱しながら攻撃していくのは当然の戦法…なんだけど。

江ノ島「……なーんか、動きがぎこちないよね」

苗木「うん。まるで掠り傷でも受けたくないみたいだ」

江ノ島「ま、あたしも大神っちの拳なんて掠るのもごめんだけどねー」

苗木「…ってそんな事をしている暇じゃないな」

僕は我に返り、再びモノクマの方を見る。
モノクマは僕が応えに辿り着いたことを表情で察したのか、不機嫌そうなオーラを出している。

モノクマ「しょぼ~ん…なんだか興ざめだなあ……こんなの予定にないよ…」

モノクマ「あれもこれも全部あそこの雑魚キャラAのせいだよね…」

モノクマ「こんな事になるのなら余計なことをしなければよかったよ!」

苗木「モノクマ、答えてもらうよ」

モノクマ「はい、どうぞ」

苗木「定義確認。モノクマの言った裏切り者とは、どういう立場にある人の事を指すのか?」

モノクマ「ボクの事を裏切ろうとした愚か者の事を指しますよ」

苗木「……これで僕の答えは盤石になった。答えを言うよ」

モノクマ「……」

苗木「裏切り者は大神さくらさん。僕達以外は全員ボスとしてモノクマに洗脳プログラムを施されているけれど、大神さんだけはそのプログラムに抗い、モノクマ…いや、黒幕を倒そうと計画していた。…これが真相だ」

そう、これは謎でもなんでもない。
真実を探すだとか、推理するだとか、そういう問題でもない。
ただ、気付くだけの話だったんだ。

幸運「ほら、誰かが言っていたじゃじゃないか……愛がなければ、視えない」

…そう、これは僕達が七海ちゃんを信じれなかったから…愛が無かったから、気付けなかった。
最初から…七海ちゃんを信じて、愛を以てこの問題に望めば…真実を掴めていたのに。
モノクマのノイズなんかに惑わされずに、真相に辿り着けたはずなんだ。



モノクマ「はい、正解でーす。おめでとうございます…はあ、ボクはなんだか萎えちゃったから先に帰るよ…」

モノクマはそう言い残すと、とぼとぼと歩き去って行った…。
そして僕の聖剣が淡い…否、眩い光を放つ──!

苗木「こ、これが──真実の光!」

霧切「さっきの推理…聞かせて貰ったわ。流石苗木君ね!」

豚神「ああ、俺たちが間違っていた。仲間を疑うのではない、そしてクラスメイトを、友を疑うのでもない。…信じることが──大切なんだな」

江ノ島「ま、及第点かなー」

日向「…ふぅ、やっとかよ」

苗木「ひ、日向クン!?」

気が付くと日向クンが肩で荒い息をしながら僕たちの傍にやってきていた。

日向「正直ダメかと思ったが…何とか辿り着けたみたいだな」

苗木「遅くなってごめん…」

日向「ま、いいさ。…それじゃ、後は任せる。後で落ち合おう!」

苗木「…………え?」

何故か日向クンは笑顔で僕らに手を振ると。

日向「よし、罪木。帰るぞ」

罪木「あ、七海さんは?」

日向「持っていく」

七海さんを背中におぶり、罪木さんと共に。

日向「──脱出」

出口から華麗に去って行った。

苗木「──ちょ!?どういう事?」

取り残された僕らは訳が分からない。
だって後はこの真実の刃で大神さんを……。

大神「苗木よ……どうやら本当の真実に辿り着けたようだな」

苗木「え?あ、うん…」

大神「我ももう…この洗脳には抗えまい。苗木達よ…全力で、我を倒してくれ」

霧切「ちょっと待って、さっき貴方は倒したでしょう?」

大神「真実の刃でない限り、我を倒す事は叶わんと言っただろう。先ほどの傷はどうやら癒えたようだ」

豚神「そんな…バカな話が……!」

江ノ島「もう一度倒すとか…骨が折れるってレベルじゃないわぁ……」

苗木「……やるしかない、ここまで来て負けられない。もう僕達に迷いも何もない…ただ、倒すだけだ!」

霧切「──!そうね、ええ。そうよ。ここまで来たのよ?やるしかないわ」

豚神「…フッ。そうだな、ここまで来たら最後まで足掻くしかないだろう」

江ノ島「……ま、絶望的なシチュエーションは嫌いじゃないからね」

大神「来いッッ!苗木!決着をつけるぞッッッ!」

苗木「勿論だよ!僕達は、負けない──ッ!」


苗木のパーソナル“自覚せし幸運”が“超高校級の幸運”に変化しました。
苗木のパーソナル“忘れた記憶”が“仲間を信じる”に変化しました。
江ノ島のパーソナル“悪の美学”が“悪の信念”に変化しました。


【ボスバトルが発生しました】

投下は以上です。次回、大神二戦目。一戦目とは色々とステータスが異なります。
また、次回は特別に中間リザルトを投下しますので、ステータスはそちらを参照してください。

ちなみに今回の分岐やらのあれこれ。
学級裁判時点で裏切り者は大神、という推理を披露すると日向・罪木・七海が加入したハイパーイージーモードになっていました。
また、大神と戦闘する前の選択肢で真実をぶつけないを選ぶと一度だけ推理をする事が出来ます。そこで大神が裏切り者と気付けると七海加入していました。
そして大神倒した後に、七海を殺すを選択すると七海永久離脱、今までのPTメンバーと別れて狛枝と行動を共にするカオス√になっていました。
3の自由を選び、大神推理を披露する、日向登場後の推理で正解するで多少のイベントの変更はありますが通常の流れになっていました。

今回の推理は苗木達が知り得ない部分も知っていたりするせいで混乱したようですが、ちーたん云々だったりは言ってしまえば神の視点からの情報なので推理に入れるのはNGです。
あくまで苗木の視点で裏切り者と、考えると簡単だったかもしれません。

このイベントで苗木覚醒フラグは完了したの?
それともまだ覚醒はしてないの?

お久しぶりです。最近忙しくて投下する暇がありません。
もう少ししたら落ち着くと思います。それまでは投下不定期、あるいは落ち着くまで投下しません。
申し訳ないです。

それと>>420の返答ですが、フラグは完了してません。継続中です。
質問などは時間が少しあるときなどに答えます。

お待たせしました。今週末には投下できるようになると思います。

九十日目中間リザルト

アイテム
【ブルーラム】(SPを200回復する) 【逆転サイコロ】(使用ターンの間どんなスキルを使ってもSPや絶望ゲージを消費しない) *2 【罪木の注射器】(単体のHPを100%回復)*2 【穴抜けのヒモ】(探索から脱出することができる)
【希望のあんパン】(SPを1000回復する)*4 【罪木の包帯】(3ターンの間HPを500回復する。)*2 【タミフルン】(味方全体のSP500回復)*2 【希望の漢方薬】(状態異常を回復する)*2
【人型の札】(今までに倒しきた敵を一人だけ、交渉することができる)【謎の巻物】(今まで倒してきた敵のスキルを一つだけ、任意のキャラクターに覚えさせることができる。)【希望の種】(味方単体に敵の攻撃を一度だけ防ぐ効果を付与)

【絶望ゲージ】3(危険度:小)

【好感度】(★は0.5☆は1)
霧切響子MAX 江ノ島盾子MAX 豚神白夜☆10
不二咲千尋☆4 狛枝凪斗☆4 セレスティア・ルーデンベルク☆1 腐川冬子☆3
終里赤音☆1 舞園さやか☆1 戦刃むくろ☆1 大神さくら☆1

ステータス
【苗木誠】 lv285 【聖剣】
AT/DF 800+500/900+500
【パーソナル】
『超高校級の“幸運”』…二回行動。瀕死の攻撃を受けた際に一度だけ無効化。3ターン以降一度だけ【希望覚醒】を使用可能になる。
『仲間を信じる』…自身のHPの1/2を超えるダメージを受けると再行動できる。
【任意スキル】
『弾丸論破』…敵単体に1500ダメージ。【SP1000】
『閃きアナグラム』…永続で攻撃力2倍にする。【SP1500】
『ノンストップ議論』…味方全体で二回攻撃になる。【SP1500】
『M.T.B』…敵全体にランダムに100ダメージを20回与える。【SP2000】
『希望の言弾』…使用ターン含まず2ターンの間味方単体のHPを2500増加する。【SP1000】
【合体技】
『再生-rebuild-』…(苗霧)苗木と霧切のスキル全て(合体技含む)を使う。【SP0・苗霧HP50%↓】
『希望と絶望のアンサンブル』 …(苗江)敵全体に苗木・江ノ島のAT5倍のダメージを与える。【SP2000・苗江HP30%↓】

【江ノ島盾子】 lv285 【絶望の大剣】
AT/DF 1000+300/1000
【パーソナル】 
『超高校級の“絶望”』…二回攻撃、二回行動。HPが30%を切ると自身のAT/DFが上昇。
『苗木への恋心?』…苗木と一緒にPTにいる際、自身のHPが半分を切ると攻撃力上昇。
『悪の美学』…奇数ターンは消費SPが1/2になり、絶望ゲージが5以上だと敵に与えるダメージが1.5倍になる。
【任意スキル】
『モノクマ太極拳ver1.01』…先制 自身のAT+500のダメージを与える。【SP1000・絶望1↑】
『絶望バリア』…先制 パーティ全体に使用ターン含む3ターンの間防御効果付与。【SP1000・絶望1↑】
『鬼神円斬』…敵全体にランダムで10回攻撃。使用後攻撃力が半減。【SP1500・絶望2↑】
『絶望色の制約』 …敵全体に15000ダメージ。【SP3500・絶望3↑】
【合体技】
『苗木ボンバー』…(江苗)敵全体に5000ダメージを与える。【SP2000】
『執行者-excutioner-』…(江霧)状態異常耐性の無い敵全員を即死させる。【SP4000】

【霧切響子】 lv263 【聖杖】
AT/DF 400+300/500+300
【パーソナル】
『超高校級の“探偵”』…敵のステータスや弱点を確認でき、毎ターンSPが現在SPの10%回復。
『確かな想い』…苗木と合体技をした際、次のスキルの効果が2倍になる。
『真実を射抜く目』…自身の攻撃で敵を倒した際、再行動できる。
【任意スキル】
『弱点特攻』…敵単体にAT2倍+500のダメージを与える。【SP600】
『理論武装』…敵の攻撃を受けた際に一度だけ受けたダメージの半分を相手に返す。【SP1500】
『右脳解放χ』…敵全体にAT5倍+500ダメージを与える。【SP2000】
『名推理』…敵全体に1500+500ダメージ。【SP1000】
『フルアクセス』…敵単体に2000+500ダメージ。【SP1500】
【合体技】
『真実の探求者』…(霧苗)使用ターン含む3ターンの間パーティ全体でスキルの消費SPが0になる。【SP4000】
『リブート』…(霧豚)使用すると選択したメンバーが再度合体技を使えるようになる。【SP2000】

【超高校級の“詐欺師”豚神】 lv275 【魔導書】
AT/DF 0+300/0+300
【パーソナル】
『超高校級の“詐欺師”』…自身のAT/DFをそれぞれ最も強い味方と同じにする。状態異常無効。
『優しい嘘吐き』…味方の任意発動スキルを全て使うことが出来る。
『後方支援』…自身がサブ時でも、スキルを使うことができる。
『仲間のために』…敵が合体技や強力な技を使用するターンに警告する。
【任意スキル】
『ラーニング』…自身がパーティに居る時、相手の任意スキルを使うことができる。効果が半減するものもある。【SP0】
『コンバート』…現在HPの50%をSPに変換する。【SP0】
『行動予測』…先制敵単体をスタン状態にする。【SP1000】
【合体技】
『バトルセンス』…(豚苗)次に使うスキルの効果を2倍に高める。【SP0】
『エターナルフォースブリザード』…(豚江)敵全体ランダムに100*100のダメージを与える。【SP3000】

【希望覚醒】について
希望覚醒は戦闘から3ターン後に使用可能になる苗木の特殊能力です。
使用すると、苗木のみ五回行動をすることができます。
その際敵・味方共に何も行動することはできず、ターンも消費しません。
希望覚醒中は
・敵のスキル効果を完全に無効化(例外なく自動・任意含む全てのスキルが無効)。
・SP消費1/2
・スキルダメージが2倍になる
以上の恩恵を得られます。
圧倒的な高火力で攻めきるもよし、味方PTの緊急時の応急処置として使うもよしです。
使いどころを見極めて戦闘を有利に運びましょう。

1ターン目。

大神「……行くぞ、苗木よ」

苗木「……勿論だ!!」

苗木(あれ?いつのまにか、傷が癒えてる?…これは)

罪木『今の私ができる精一杯です。頑張ってください』

苗木(……ありがとう、絶対に負けないよ)

苗木       江ノ島     
7800/7800    8300/8300
6700/6700    7000/7000
霧切       豚神
5800/5800    7500/7500
3850/7000    5800/5800
 

ステータス
>>287-288

敵ステータス
大神さくら lv300
HP 85000/85000
SP 15000/15000
AT/DF 3000/3000
スキル 『超高校級の“覇王”』…二回行動、全体攻撃。あらゆる状態異常やスタンを無効化。【自動】SP0
    『精神統一』…毎ターンHP/SPが5000回復。【自動】SP0
    『無慈悲なる一撃』…敵全体に9999ダメージを与える。【任意】SP2500
    『強者ゆえの制約』…奇数ターンは動けない。【自動】SP0
    『天衣無縫』…一度だけあらゆる攻撃を無効化する。【任意】SP3000

投下をスムーズにするために書き溜めておいた分を投下しておきます。
投下は行動選択からです。

大変お待たせしました。本日から投下します。
行動選択安価からの再開となります。

天衣無縫は大神に対して有効です。豚神のスキルで使うことができます。
また、天衣無縫のスキル表記を修正します。

『天衣無縫』…味方全体で一度だけあらゆるダメージを無効化する。【任意】SP3000

攻撃だけだとスキル攻撃が通ってしまう事になるので、表記変更しました。
味方全体は、今回の場合は大神さんに対してメリットはありませんね。

希望覚醒って五回行動ですよね?ってことは、10回攻撃出来るって事で良いですか?

>>437
ノンストップ使用後であればそうなります。

それと修正です。ステータスの安価ミスしてました。
>>287-288 → >>428

それと希望覚醒は使用後すぐに発動というわけではなく、
例えば3ターン後の安価で、
苗木 攻撃*2と行動を設定した上で、さらに希望覚醒使用と書いてくだされば
そのターンの行動終了後に苗木の行動選択安価を出します。


安価下

二日ぶりです。
どうやら安価が決まったようなので再開します。ステータスなどはもうすこし早めに開示しておくべきでした。

投下します。


大神「……苗木よ。我は逃げも隠れもしない、来い」

大神は苗木達を待ち構えている…。

霧切「彼女相手に油断も、手心もいらない。手持ちのカードは全て切って一気に終わらせましょう」

霧切(現状の私達の戦力を考えると長期戦は圧倒的不利…ここは短期決戦よ)

霧切は懐から金で作られたサイコロを取り出す。
このサイコロには不思議な力が備わっており、このサイコロの加護を受けている間、自身の力をどこまでも引き出せるのだ。
霧切はそのサイコロの加護を受けるときは今と判断し、それを宙に放り投げる。
空高く投げられたサイコロは眩い光となって、苗木達に降り注いだ……。
このターンの間、絶望ゲージ上昇無し・SP消費0の効果を得た。

苗木「大神さん相手だ…1ターンを捨ててでも集中しよう」

苗木は目を閉じ、意識を集中させていく。
例え攻撃の機会を失っても、今ここで行った“仕掛け”は無駄にならない。
攻撃は仲間に集中し、今時分に出来ることをする──!
PTは二回攻撃になった。苗木は攻撃力が上昇した。

江ノ島「……ま、手加減して勝てる相手でもないかなー」

江ノ島は戦況を冷静に判断し、唇をへの字に曲げた。
──このゲームでは、一部の人間が大幅な“調整”を受けている。
たとえば霊長類最強の少女、大神さくらはその強さゆえ、ゲームの中でさえその力を制限され、さらに行動さえも制限を課されている。
そしてそれは江ノ島盾子も変わらないのである。
江ノ島盾子に化された制限とはすなわち…【役割による弱体化】。
RPGで例えるなら直前のボス戦で思わずコントローラーを投げてしまうような強さの敵が、仲間になった途端に他のキャラと比べて見劣りするアレである。
つまり、彼女は【希望の仲間】という役割を持ってしまったが故に、その本来の凶悪な力の大半を封じ込められてしまったわけである。
もしもこれが【ラスボス】だったり、【黒幕】といった役割なんかを与えられていたのだとしたら、恐らくは大神さくらでさえ勝つことは難しい“化け物”と化していた。

──しかし、それは所詮“制限”である。
彼女がその気になれば、ほんの僅かな時間でも力を取り戻すことは不可能ではない。

江ノ島「ぷく……うぷ……」

江ノ島不気味な笑い声とともに、大神…いや、周囲の人間全てが、凍りつく。
ただの笑い声であるはずが、まるで周りの全てを食らう絶望であるかのように。
ねっとりと、気味の悪い感覚。
全身を舌が這いずり回っているかのような、生理的な悪寒。
江ノ島の周囲をどす黒い何かが漂っている。

江ノ島「さあ、みんなで絶望しようよ、ね☆」

静寂に満ちた空間で、場違いなまでに明るい江ノ島の声が響いて。
──気付いたときには、大神は歯をカチカチと鳴らしながら地面に膝を着いた。
武人である彼女さえも跪かせる圧倒的な【絶望】。
それに抗えるのは、彼女の絶望を超えるほどまでの【希望】以外に存在せず。
それを持たない大神は、ただ、その絶望をその身に受けた。
大神に30000ダメージ。

豚神「は、は……これは、やばいな……」

豚神はその光景を見て、そんな呟きをもらす。
一瞬フラッシュバックした光景は、絶望に染まっていたころの自分。

豚神(…待てよ?ならばこの技は…俺にも仕えるのか?)

豚神は江ノ島の技を再現する。
すると江ノ島ほどの力は持たないものの、性質的には同じ【技】を繰り出すことが出来た。
それを大神へと繰り出す。
絶望に苛まれている大神に抗う術はなく、江ノ島の絶望だけでなく、豚神の絶望さえも受けた。
大神に15000ダメージ。

2ターン目。

大神「……ぬぅ!」

霧切「江ノ島さんのあの技…味方にまで被害が及ぶのが問題だけど……強力ね」

苗木 江ノ島 霧切 豚神 の行動を設定してください。

苗木       江ノ島     
7800/7800    8300/8300
6700/6700    7000/7000
霧切       豚神
5800/5800    7500/7500
3850/7000    5800/5800
 

ステータス
>>287-288  PT二回攻撃 苗木AT上昇

敵ステータス
大神さくら lv300
HP 40000/85000
SP 15000/15000
AT/DF 3000/3000
スキル 『超高校級の“覇王”』…二回行動、全体攻撃。あらゆる状態異常やスタンを無効化。【自動】SP0
    『精神統一』…毎ターンHP/SPが5000回復。【自動】SP0
    『無慈悲なる一撃』…敵全体に9999ダメージを与える。【任意】SP2500
    『強者ゆえの制約』…奇数ターンは動けない。【自動】SP0
    『天衣無縫』…一度だけあらゆる攻撃を無効化する。【任意】SP3000


霧切 探求者
豚神 天衣無縫
江ノ島 苗木ボンバー
苗木 攻撃×4

でどう?

安価下

>>451で取る
江ノ島が二回行動だから江ノ島攻撃追加で

忘れてました。
大神HP45000でした。修正します。安価は>>451>>453で取ります。


霧切「苗木くん、一気に行くわよ」

苗木「了解だよっ!」

霧切「雑魚に時間は掛けない…さっさと終わらせるわ!」

苗木「うん!」

霧切と苗木は洗練された動きで魔法陣を展開。
素早くスキルを行使する。
味方PTの消費SPが0になった。

豚神「大神よ…貴様のスキル、借り受ける!」

豚神は見よう見まねで習得した大神家秘伝の護身法を感覚で理解する。
言うのは簡単だが、実際にやることは普通では不可能である。
詐欺師であり、贋作を得意とする彼であるからこそ、【一見】本家と変わらぬクオリティでスキルを行使することが出来るのだ。
豚神の身体からオーラが流れ出し、苗木達を包むように半透明の膜を張った。
敵からのダメージを一度だけ無効化する結界を張った。

江ノ島「苗木クン、あたしのために死んで☆」

苗木「なぜ!?」

江ノ島はいつものごとく苗木の足を引っつかみ、ハンマー投げの要領でブン投げた。
あまりに奇怪な攻撃方法だったせいか、大神も僅かに眉を顰めて反応が遅れた。
大神に5000ダメージ。

江ノ島「ほらぁ、休んでる暇なんてないゾ☆」

苗木「江ノ島さんのテンションがおかしいよ!」

江ノ島の大剣と、苗木の聖剣。
二つの剣は華麗に舞い、見るもの全てを魅了する剣閃にて大神を襲う。
大神も例外ではなく、その美しい斬撃を避けようとはせず、自慢の身体で受け止めた。
大神に5200+8400=13600ダメージ。

大神「…良かろう。なれば我も……本気を出すとしよう」

大神の鋼の肉体から、蒼いオーラがにじみ出る。
それはやがて虎の形を成し、苗木達に咆哮した──!

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

…それは無論、形だけの幻想であるのだが、そのあまりの威圧感に苗木達は無意識に数歩後退してしまっていた。

豚神「だ、だが……この力で相殺するッ!」

大神「ぬう…!」

しかし豚神があらかじめ張っておいたオーラに相殺され、虎の化身は宙へと霧散した。

大神「なれば我も、同じことをするまでよ」

大神は豚神と同じように、全身からオーラを流しだす。
豚神のものとは比べ物にならないほどの高密度なそれは、大神の周りを“膜”ではなく“障壁”として包み込んだ。
敵からのダメージを一度だけ無効化する結界を張った。

3ターン目。

大神「……流石だな、苗木よ」

苗木「決着をつけようか」

苗木 江ノ島 霧切 豚神 の行動を設定してください。

苗木       江ノ島     
7800/7800    8300/8300
6700/6700    7000/7000
霧切       豚神
5800/5800    7500/7500
3000/7000    5800/5800
 

ステータス
>>428  PT二回攻撃 苗木AT上昇

敵ステータス
大神さくら lv300
HP 26400/85000
SP 15000/15000
AT/DF 3000/3000
スキル 『超高校級の“覇王”』…二回行動、全体攻撃。あらゆる状態異常やスタンを無効化。【自動】SP0
    『精神統一』…毎ターンHP/SPが5000回復。【自動】SP0
    『無慈悲なる一撃』…敵全体に9999ダメージを与える。【任意】SP2500
    『強者ゆえの制約』…奇数ターンは動けない。【自動】SP0
    『天衣無縫』…一度だけあらゆる攻撃を無効化する。【任意】SP3000



すみません、ミスですね。
霧切のSP表記が間違っていたので修正しましたと打とうとしてました。
またHPの計算ミスを…
大神のHPは31400です。

安価下

苗木の攻撃の4(800*2+500)=8400です。
江ノ島はこちらのミスぽいです。2600ダメージでしょうか。
31400+2600=34000ですね。申し訳ありません。間違っていたらそちらで修正をお願いします。

安価下

ってあれ?閃きアナグラムって確か武器補正も二倍でこれまで計算してなかったっけ?間違えた?

>>461
本当ですか?上の方で武器計算排除して計算している方が居て、私も違和感を感じていなかったのですが、もしそうでしたら今までの計算崩れてしまいますので、今回は武器補正除外でお願いします。

今回の戦闘が終わったらその辺りの事情諸々込みで修正、或いはこれ以降の戦闘自体無くすかの検討をしたいと思います。
こちらの都合で大変申し訳ないのですが、こちらの不手際のせいで混乱するのも申し訳なく、レス消費の大半が戦闘での私のミスが原因であり、物語が進まないのも戦闘による部分が多いので。

安価下


霧切「…右脳かいほ──ッ!?」

霧切が球体を生み出そうとした瞬間、大神を守る【障壁】がそれを阻む。
生み出そうとした球体が障壁に触れた瞬間、霧散していく。
霧切は唇を噛み締めながら、攻撃を断念した。

大神「……」

そして大神を守る障壁はその役割を終えたとでも言うかのように、霧散していった…。

苗木「チャンスだ!江ノ島さん」

江ノ島「……」

苗木と江ノ島は大神が霧切の攻撃の対処で出来た隙を見逃さず、連携攻撃を叩き込む。

大神「む…っ!?」

大神に15600ダメージ。

豚神「まだ休ませはせんぞ!」

大神「…ぐっ……!」

苗木達の攻撃の間、豚神は霧切と同じように無数の球体を生み出していた。
苗木達への防御で手一杯であった大神のそれを防ぐことは考えになく。

豚神「食らうがいい!」

大神「む…っぐ…ぅう!」

大神を爆発が襲い、その身を焼き焦がしていく。
大神でさえまともに受けてしまえば、致命傷は避けられない──!
大神に9500ダメージ。

大神「……ふ、ここまで成長する……か…」

4ターン目。

大神「……」

苗木「……」

苗木 江ノ島 霧切 豚神 の行動を設定してください。

苗木       江ノ島     
7800/7800    8300/8300
6700/6700    7000/7000
霧切       豚神
5800/5800    7500/7500
3000/7000    5800/5800
 

ステータス
>>428  PT二回攻撃 苗木AT上昇

敵ステータス
大神さくら lv300
HP 13900/85000
SP 15000/15000
AT/DF 3000/3000
スキル 『超高校級の“覇王”』…二回行動、全体攻撃。あらゆる状態異常やスタンを無効化。【自動】SP0
    『精神統一』…毎ターンHP/SPが5000回復。【自動】SP0
    『無慈悲なる一撃』…敵全体に9999ダメージを与える。【任意】SP2500
    『強者ゆえの制約』…奇数ターンは動けない。【自動】SP0
    『天衣無縫』…一度だけあらゆる攻撃を無効化する。【任意】SP3000




希望覚醒

>>471
希望覚醒は行動の後に発動するものなので、このターンの行動をお願いします。

安価下


苗木「これで、終わりだ」

僕たちは、大神さんへと武器を向ける。
これで、僕たちの勝ちは揺るがない。例え、何があっても。
──この戦いは、終わる。

そして、次の戦いへ進む。

……それでいいのか?

僕たちは……モノクマに踊らされているんじゃないのか?

今回の件だってそうだ。

危うく僕は…七海ちゃんを殺してしまうところだった。

たとえ殺さなくたって…日向クンが来なければ僕らは全員死んでいた。


もう、何が間違いで…。

何が正しいのか…。

僕には分からない……。


頭が痛い……耳鳴りがする。


僕は……ボクは……








こ     ろ     せ








そうだ……ボクは……僕は、そうしないと…いけないんだ……。

そうしないと…ダメなんだ……。


耳鳴りが酷くなっていく。
頭が痛い。割れそうだ。
早く、殺さないと。

僕は、何の思考もせず、ただ、剣を、振り上げて。

下ろした。

本日の投下終了です。

投下します。
本日はかなり短め、というか投下するか悩みましたが、一日でもサボると尾を引くので投下しておきます。
今後の戦闘をどうするかもう少し検討をしたいので、本日は短くしました。




「──よーし、これでバッチリだな」

背中を叩かれて、我に返る。
鏡には見なれないタキシード姿の僕が映っていた。

「ははっ…普段は童顔で小さいから、タキシードなんか似合わないとか思ってたけど、そうでも無かったんだな」

「もう…酷いよ日向クン」

ケラケラと笑いながらも、僕のネクタイをきっちり直してくれる。
僕は軽く拗ねたふりをした。

日向「まあそう言うなって。後輩に先を越されると先輩としては色々複雑なんだよ」

「その…どうかな?僕、変じゃないよね?」

鏡の僕を見てもいまいちパッとしない。
というかタキシードが明らかに似合ってないと思う。
普段から自分の冴えない姿を見てきたせいだと思うんだけど、他人から見たら違うんだろうか?

日向「いやいや、似合ってるぞ。きっと花嫁さんも惚れ直すに違いないさ」

「あはは…そうだといいんだけどね」

ふと、頭に何か過る。
モヤモヤとした、形の無い不安。
それがなんなのか分からなくて少し考えてみると、原因はあっさり見つかった。

「けど、こんな時に結婚式だなんて…少し暢気じゃないかな?」

僕の不安を日向クンは見抜いていたのか、心配ないというかのように笑みを浮かべた。

日向「いや、こんな時だからだ。世界中の暴動も収まってきて、人々も元の生活を取り戻そうとしている…これは言っちゃえばお祝いなんだよ」

「お祝い…?」

日向「ああ、きっとこれからは世界から絶望は減っていき、希望が満ちていく…お前とあいつの結婚式はその象徴なんだ」

「…ありがとう。なんだかただの結婚式がずいぶん壮大になってるね」

とはいえ、皆が忙しいのも構わずお祝いしてくれるっていうのはやっぱりうれしい。
世界の希望の象徴だなんて照れくさいけれども、祝福してくれる事は素直に嬉しかった。

「そういえば日向クンはどうなの?」

日向「な、何がだ?」

少しだけ声が上ずってる。
僕が言いたいことは分かってるくせに、はぐらかそうとしてるな。

「日向クンは結婚とか考えてないのかな?」

日向「いや、あはは…俺にはまだなあ…」

「そんなこと言って…この前七海ちゃんに言われたよ?頑張ってアプローチしてるのに日向クンが何も言ってくれないって」

日向「な、七海の奴余計なことを…!」

「優柔不断はダメだよ?」

日向「それ、お前だけには言われたくないぞ」

二人でそんなことを言い合って笑う。
こうやって世間話をするだけで、なんだか気分が軽くなってくる。
もしかしたら僕も、緊張してるのかな?

──って、当たり前か。
知り合いたちの前で愛を誓う……うーん、改めて想像すると…ものすごく恥ずかしいな。
こんな話で緊張がほぐれるなら、話題を提供してくれた七海ちゃんには感謝しないとな。
クスリと笑みを漏らして






……あれ?僕、いつ、七海ちゃんと、そんな話を、したんだ──?




霧切「……ダメ」

豚神「そうか…」

江ノ島「……」

私たちは、7層の宿屋にいた。

大神さんとの壮絶な戦いの後、突然苗木君が倒れた。
理由もはっきりしている。

私たちが大神さんを追いつめた時、苗木君が何かを呟きだした。
とても小さな声で呟いていたせいで何を言っていたのかはわからないけれど、苗木君はただぶつぶつと何かを呟いて──。
頭の中で何かの線が切れたかのように、大神さんに襲い掛かった。
いつもの様な慈悲深い一撃じゃない。
まるで【敵】を屠るような残酷で慈悲の無い一撃。
大神さんは何も語らずに、静かに消えていった。

大神さんが消えた後、苗木君はぱたりと倒れこんでしまって。
私たちが何度も声をかけたけれど目を覚ます様子はなく、とにかくダンジョン脱出を優先させて宿屋に運び込んだ。

あれから三日──。
苗木君が目を覚ます様子はなかった。
最初は疲れが出ただけと言っていた豚神君も口を閉ざし、江ノ島さんは何も喋らずにじっと苗木君を見つめていた。

霧切「苗木君……」

豚神「先に来ているはずの日向達の姿も見当たらんな…」

豚神君の呟きをぼんやりと聞きながら、眠っている苗木君の頭を撫でる。
さらさらとした髪。
そっと肌に触れると、仄かな温かさを感じた…気がした。

──これから、どうしたらいいのだろう。
私はなるべく冷静に、状況を判断する。
苗木君がこうなってしまった以上、私たちのパーティは三人。
とてもじゃないけどこれ以上先に進むことなんてできない。

それに、問題はもう一つあった。


モノクマ「オマエラに与えられた猶予は10日だから。ヨロシク!」

豚神「なんだと?」

モノクマ「それ以降町に滞在することは許しません!とっととダンジョンに向かってよね!」

霧切「無理に決まってるでしょう」

モノクマ「オマエラの事情なんか知ったこっちゃないよ!時間は有限なんだよ!」

霧切「…くっ」


私たちがダンジョンを脱出した後、モノクマからそう告げられた。
そして今日で残り一週間。
それが私たちに残された最後の猶予。
この猶予で…何ができるのかしら……。


霧切「そういえば…モノクマからのご褒美…貰ってないわね」

豚神「俺としては助かるがな。余計なことを疑わなくて済む」

江ノ島「……貰ってたとしても、どうにもならないけどね」

霧切「どういうこと?」

江ノ島「自分の目で見た方が良いんじゃなーい」

そう言うと江ノ島さんは私たちにステータスを開くよう促した。
言われるままにステータス画面を開くと……


ERROR


霧切「え…?」

豚神「どういう事だ…?」

江ノ島「なんかのバグなのか知らないけど、ステータス画面が見れないってわけ」

これは…さすがにまずいでしょう。
この状態で残り一週間…どう乗り切ればいいの?
仮に乗り越えられたとして、苗木君の容体が良くなっているとは限らないし、最悪私たちだけでダンジョンに挑まなくちゃいけないのよね……。

──ここが正念場かしら。

時間は有限。
有効に使わなければあっという間に消費されてしまうわ。

頭のスイッチを切り替える。
苗木君の心配はいつでもできる。
ここでうだうだと立ち止まっていては前の二の舞だし、苗木君もそんなことは望んでいないはずだわ。
私は私にできることを、精一杯やりましょう。

投下終了です。

テンションが低いわけではないのです、本当に。
ただ、いつものペースで書こうとするとどうしても詰まってしまって口数が少なくなってしまいます。
本日も具体的な物語部分は一切ないです。
今日の投下内容で分かるかと思いますが、今後は今までの様な数値やスキル考えて…というのはありませんが、戦闘シーン自体はあります。その際に重要な部分ではどの行動をすればいいのか安価を出す予定です。
次回の投下からは物語を進めます。もう少しお待ちください。

投下します。

【休息】、【訓練】、【闘技場】、【交流】、【探索】、【モノクマハウス】、【サブシナリオ】の機能が凍結しました。
一部機能の凍結が解除されました、それにあたり仕様が変更されます。

以降の一週間は、それぞれの視点での物語を読んでいただくことになります。

【ステータス】
苗木 誠
(ナエギ マコト)
戦闘力:B
スピード:B
耐久力:C
精神力:S
才能操作:E
成長性:S
【才能】
超高校級の幸運…この才能は極端な言い方をすれば運が強い、というだけの才能だが、自分と才能を信じることによってある程度意図的に自信に都合の良い事象を引き出すことができる。ただし、苗木誠には何か原因があるのか、本来の力を発揮することができない。
【備考】
現在彼は意識を失い眠り続けている。それが肉体的なものなのか精神的なものなのかはわからないが、目を覚まさない以上、今回の作戦には不参加となった。

霧切 響子
(キリギリ キョウコ)
戦闘力:C
スピード:D
耐久力:E
精神力:A
才能操作:S
成長性:C
【才能】
超高校級の探偵…調査、追跡や状況分析などの分野に長けており、非常時には各自に冷静な判断を下すなどいわゆる指令向きの才能である。彼女が軽度のコミュニケーション障害のようなものを抱えているせいで誰かに指示を下すと言ったことは少ないが、他人の意見を分析し自分なりの意見に昇華するなど、縁の下の力持ちと言った使い方を本人はしている。
【備考】
心の支えであり、彼女の声の代弁者である苗木を失った彼女は、か細い希望を頼りに先へ進むことを決意する。
絶望的な状況下で、彼女はどのように考え、どのように選択するのか──。

江ノ島盾子
(エノシマ ジュンコ)
戦闘力:A
スピード:A
耐久力:A
精神力:S
才能操作:S
成長性:E
【才能】
超高校級のギャル…流行に鋭くあらゆるファッション誌で表紙を飾り、今を生きる若者達の憧れとも呼ばれるような、よく分からないカリスマ性を持つ女。それがこの才能を持つ江ノ島盾子に与えられるべきものではあるが、彼女は生まれながらにして絶望という欠陥を抱えてしまったが故、そのカリスマ性を間違った方向へと使ってしまった。その結果が超高校級の絶望であり、本来の彼女はただ人より流行が鋭いだけの普通の女である。
【備考】
彼女はブースタードラッグなどの薬を使用せずに自身の限界を突き破る稀有な存在であり、今回の作戦においての前線担当である。このゲームで苗木達と深く関わり、彼女は何を考え、何をするべきなのか…答えが明かされるのはそう遠くはない。

豚神 白夜
(ブタカミ ビャクヤ)
戦闘力:-
スピード:C
耐久力:-
精神力:B
才能操作:B
成長性:E
【才能】
超高校級の詐欺師…あらゆるものに騙り、相手を欺くことに関してはプロである。ただしその完璧な騙りゆえに、自身を見失う事さえある。その大胆であるウソ、虚実は時に真実足りえる。現在は十神白夜という人物を騙っているが、以前の絶望騒動で自身の正体は希望ヶ峰の生徒には知られている。しかし自身がこの人間になる事を望んでいるのか、それとも他に騙る人物がいないのかは定かではないが、豚神白夜として騙り続けている。
【備考】
その才能ゆえに過酷な人生を強いられ、時に絶望に染まった事さえある。しかしその経験故に仲間を誰よりも大切にし、臆病で疑り深く、優しい──それが彼という自己に残っている唯一の【自分らしさ】。
しかし守るべき仲間は消えていき、歩む先は暗闇。どうすればいいのか迷っては足を止め、無理矢理思考を放棄して歩み始める。彼は自身に、どう決断を下すのか。

※S=超高校級 A=超人級 B=(超高校基準)平均 C=(常人基準)平均 D=平均以下 E=ポンコツ

日向 創
(ヒナタ ハジメ)
戦闘力:A
スピード:A
耐久力:A
精神力:S 
才能操作:-
成長性:-
【才能】
無し…希望ヶ峰学園から選抜された才能を持つ人間ではなく、予備学科の人間。要は才能はないが金はある奴らが希望ヶ峰の名前欲しさに入る学科だ。彼はその中でも異質で、自分に才能があることを信じており、そこを学園に利用されて改造された。、その結果生まれたのが感情や記憶などを失い才能を得たカムクライズルである。学園の改造の結果人外な身体能力を得、あらゆる才能を会得した兵士となった。絶望事件後は奇跡的にも自我を取り戻している。
【備考】
起きてしまった過去は変えられない。自分が江ノ島盾子の兵器であり、人を殺し続けてきた事実は変わらない。
今まではそんな自分から逃げていただけに過ぎない。自分に都合のいい楽園で、都合の悪いことに蓋を過ごしてきただけだ。
けれどいつまでもそうしているわけにはいかない。過去の清算などという大それたことをするつもりはない。
せめて、自分ができることを。

七海 千秋
(ナナミ チアキ)
戦闘力:C
スピード:C
耐久力:B
精神力:S 
才能操作:A
成長性:-
【才能】
超高校級のゲーマー…本人の性質からいえばゲーマーというよりはアンドロイドの方がしっくりくるわけではあるが、まあどちらでも構わないであろう。(ゲームで)蓄積されてきた数々の経験や知識はいかんなく発揮され、その推察力などは霧切にも匹敵する。そしてその所作からは信じられないが、元が元である故にその身体能力は総じて平均以上はある。
【備考】
日向との交流を通じ、心を通わせた七海。自分に課されていた過酷な運命に血反吐を吐きながらももがき、足掻いたのは兄と同じく。
それを救った男が全てを終わらせると口火を切ったならばならば私も!と続くのが仲間である。
しかし彼女はそれを見送った。機械だから、心がないから、ではない。信じているから。
しかしどうやら、男の帰りを黙って待つほど可愛げのある女でもないらしい。

罪木 蜜柑
(ツミキ ミカン)
戦闘力:D
スピード:D
耐久力:D
精神力:C 
才能操作:A
成長性:B
【才能】
超高校級の保健委員…どうも語感からは小学生が胸を張ってドヤ顔で語るようなちょっとほほえましい光景しか思い浮かばないが、彼女の医療技術はマジモノである。現時点で彼女が習得している技術はあくまで応急処置などの保健室に来た生徒に対応する程度のものだが、彼女が本気で医療技術を学ぼうとすれば法外な報酬を客に吹っかける無免許外科医と同等の技術を手にすることができる。
【備考】
弱気で内気な自分、他者から囁かれる言葉を、無意識に脳内変換して、被害妄想を広めていく。
そして身勝手な怒りを膨らませて、勝手に爆発する…何もかもが罪木が悪いと言っているわけではないが、彼女が歩み寄る努力をしなかったのも然り。
しかし一人の少女の言葉が、彼女を変えた。言葉には表れない友情があるのだと、その時初めて知る。世界は悪意だけではない、善意だってある。
膝を抱えて泣くのは誰でも出来る。自分にすべてを託してくれた友人の為に、今は全てを投げ打つだけだ。

※S=超高校級 A=超人級 B=(超高校基準)平均 C=(常人基準)平均 D=平均以下 E=ポンコツ

シナリオを選択してください。
一つのシナリオで一日消費します。
また、シナリオ中には選択肢が存在し、選択肢によって今後の展開が変わっていきます。

苗木編
「偽りのマリアージュ」

日向編
「乗り越えるべき壁」

狛枝編
「希望の種」

霧切編&七海編
「新たなる仲間」

江ノ島編
「希望複製計画」

豚神編&罪木編
「決意」

安価採用します。
遅くても明後日には投下します。もうしばしお待ちください。

昨日投下しようと思ったら全体でエラーが起きていたみたいでしたね。
このスレッドも開けなかったので投下できませんでした。

それでは投下します。

1day 霧切&七海編


「新たなる仲間」


いざ前に進もうと踏み出したところで、今後の展望なしには動けない。
そして自分だけではなく、他人の命まで預かっている身分である私が、作戦も無しに特攻を仕掛けようなどと提案するのは馬鹿馬鹿しい。
日本のカミカゼ精神は何者にも恐れずに立ち向かうという美徳ではあるけれど、勝算も無く敵に攻撃を仕掛けるなんて愚の骨頂。
それが人命を背負っているのなら尚更だ。
なら私に出来ることなんて限られている。

私は江ノ島さんや豚神君にこれからどうするかを各自検討となんとも投げやりな言葉を投げかけて逃げ、自分の部屋で思案を巡らせていた。
はっきり言って今の私たちが出来ることなんて現状維持がせいぜいだ。
それが思考停止であることは明白だけれど、他にいい案が浮かばないというのも事実。
浮かばない…というより、実現することが難しい、というのが正しい表現かしら。

いくつかの案は考えている。
けれどどの案にも共通してある【条件】が必要だった。

──人員の不足。
戦争において一番大切なものは何かと聞かれて、多くの軍人は【兵】と答えるという。
どれだけ強力な兵器があってもそれを運用する兵士がいなければ意味が無いし、馬鹿みたいな予算をかけて兵器を開発するくらいなら低コストで大量の兵士を雇ったほうが確実。
つまりは私達には戦力となる人間が圧倒的に足りなかった。

私、豚神君、江ノ島さん。
たった三人。
苗木君は今の様子ではアテには出来ないし、日向君や七海さんにも同じことが言える。
不確定要素を孕んだ人間をカウントするのは確実性にかけるのだから、事実私達はラスボスを三人で攻略しなければならない。


そして第二の問題が…現状の私達の戦力を冷静に分析できないことになる。
突然のエラーによって私達のステータスは失われてしまった。
そして問題なのが、このゲームで私たちが得ていたアドバンテージ…言ってしまえば【ゲーム内補正】が失われていた。
これがどういうことなのかを言ってしまえば、今まではあれだけド派手にドンパチしていても怪我で済んだけれど、これからは下手に攻撃を受けると死にかねないということ。
つまりは今までのようにHPが減ったら回復しましょう、なんて作戦が通じない。
私たちが個々で持っている能力を駆使して戦わなければならないのだ。

現状の私達の戦力を私なりに分析して簡単にまとめる。
…思ったより辛いわ。
全体的に見ればバランスが取れているようには見える。
けれど実質戦力になるのは江ノ島さんと豚神君の二人。
私は運動…というより戦いは苦手だから、ゲーム補正が無い私はお荷物にしかならない。
それはそれで戦い方はあるけれど、ラスボス相手にこの人数で、この戦力で勝つのは難しい。

霧切「どう足掻いても、最後に行き着くところは一緒ね…」

なんとかして、人員を一人でも増やさなくちゃいけない。
そもそもラスボスの前には大きな壁がある。
最後のダンジョン探索、そして魔王城の探索。
どちらも戦闘無しで突破できるほど楽観視をしているわけじゃない。


現状私が取れる策としては、
・日向君とどうにか合流して、協力をしてもらう
・今から新しく仲間を探す

正直後者の案は実現不可能な気がするのだけれど…一応、考えはある。
私はパーティで共有していたバッグから一枚の札を取り出す。
モノクマハウスは利用できないから、この札の存在意義は薄いかもしれない。
けれど可能性はある。
正直0に限りなく近い可能性ではあるけれど、0でないのなら試す価値はある。
とはいえどちらも時間がかかりそうだし、出来ればどちらかを優先しつつもう片方をするっていうのが現実的かしら。


──正直に言ってしまえば、考えたいことは色々ある。
それにもうやめたい。投げ出してしまいたい。
諦めてずるずるとこの世界に囚われてもいいんじゃないかって思いさえする。
けれど、きっと苗木君なら…頑張ろう、戦おうって言うわ。
それなのに私だけがここで立ち止まるわけにはいかない。

今は自分が出来ることをやるしかないわね…。
どちらからやろうかしら?


1 日向君を探す

2 新しい仲間を探す




──そうね、日向君を探しましょう。
今は少しでも確実性のある方法をとるべきね。

…こういうとき、人数が居れば探すのが楽そうね。
って、その人数を何とかする為に探すのだから、どうにもならないじゃない。
なんてくだらない自問自答をしてから、私は宿の扉を開けた。

霧切「とりあえずは、この街をぐるりと一周してみましょう」



七海「…ふわあ」

大きく欠伸をする。
ぼやけた視界で宙を見つめてぼんやりとする。

七海「おはよう」

……誰も返事をしてくれない。
でも当たり前だよね、日向くんも罪木さんもいないんだから。
少し前までは二人が居てくれて、私は安心できた。

私はこのゲームの開発者…不二咲千尋、お父さんからこの世界の調律役のようなものを託されていた。
このゲームはまだ未完成で、いつどんな不具合が出るか分からないから、お父さんは私を保険にした。
保険という意味ではもう一人…お父さんのアルターエゴもこのゲームにインストールされてるんだった。
こうして私とお父さん(アルターエゴ)の二人でこのゲームを見守って、必要があれば介入するっていう手筈だったんだけど…。

このゲームの基となる【新世界プログラム】に、どうやら悪質なウイルスが混入されていたみたい。
そのウイルスはあっという間にこのゲームを乗っ取ってしまった。
お父さん(アルターエゴ)は権限を一部除いて剥奪されてシステムを凍結させられた。
私も調律者としての本来の機能…例えば突破不可能な難易度のダンジョンとかを修正する為の力を奪われてしまった。
だから私は皆とほとんど変わらない。
ただのプレイヤーで、皆より少しだけこのゲームを知っていて、このゲームが繰り返されても記憶を引き継ぐことが出来るだけ。

ウイルス…モノクマを止めようと私は何度も足掻いてみたけど…その度にモノクマが妨害してきて、結局私は何も出来なかった。
何度も何度も繰り返して…きっと私に心があったなら、とっくに死んでしまっていた。
だって、心が無いはずの私でも、逃げ出したくなるほどの地獄だった。

きっと今回も──そうなんだ。
あの時、モノクマによって裏切り者の嫌疑をかけられたとき、多分私は諦めていたんだと思う。
調律役の制限として、私はその正体を明かすことは出来ないし、プレイヤー視点で知ることが出来ないはずの情報を語ることも禁止されている。
調律役がゲーム進行に口を出したらゲームが成り立たなくなってしまうから。
だから私は真実をいえないで、このまま殺されて…みんなが私の死で奮い立ってくれれば、なんて考えて。


そんな時、日向くんの声が聞こえた。


日向「ごめんな…少し、遅くなったな……」


そのときに、私は現金にも、死なないでよかったって思った。
日向くんが来てくれて、助けてくれて…私にもようやく分かったんだ。

もう、誰も苦しめたくない。

ゲームは楽しくやるものだもん。
怒ったり、悲しかったり、辛かったり……ゲームはそんなものじゃない。
ゲーマーとして、七海千秋として、このゲームは許すわけにはいかないんだ。

そう強く心に決めたところで、目が覚めた。


目が覚めた私は、日向くんと罪木さんに看病してもらった。
二人はいつの間にかすごく仲良くなってて、ちょっとだけ嫉妬しちゃったなあ。
それから色々なことがあって、私達は別行動をとることにした。
本当なら、日向くんと一緒に戦いたい…けど。


日向「大丈夫だ。俺は必ず帰ってくる」

七海「本当、だよね?」

日向「俺を信じて、あったかいスープでも作って待ってくれると助かるな」

七海「その時には、現実に戻ってるんじゃないかな?」

日向「それもそうだな、ははっ」


……そう、約束したから。
だからきっと、私はおとなしく料理の勉強でもして、日向くんが終わらせることを待っているのが正しいんだと思う。
でも、私は決めたんだ。


もう、誰も死なせない。
たとえそれが仮初の死でも…もうこれ以上、誰も傷つけない。

日向くんはきっと終わらせてくれる。
でも、日向くんだけに頑張らせるわけにはいかないよね。
一人でカッコつけるなんて…うん、ダメだよ。
そんな事したらライバルが増えちゃうし…。

うん、だから。
私は私に出来ることをしよう。
まずはお兄ちゃん達と合流して──。

七海「あ…!」

霧切「!」



霧切「──と、そんなことがあったのよ」

七海「ふんふん、なるほど」

私から一通りの事情を聞いた七海さんは、こくこくと頷いた。
運よく七海さんと出会い、お互いの事情を簡単にまとめて報告しあった私達は現状を整理した。

霧切「つまり現状での戦力は私・七海さん・江ノ島さん・豚神君・罪木さんということでいいのかしら」

七海「うん。きっと罪木さんも誰かと合流してるころだと思うよ」

霧切「だけど…日向君がいないのは厳しいわね」

七海「うん、でも日向くんなら」

霧切「そうね。きっと彼なりに勝算があったのでしょうし、それを咎める権利は私には無いわ」

……そう、私なんかよりもよっぽど凄い。
ここまで来ておきながらいまだに迷っている。
本当にこれでいいのだろうか…?
そもそも、私はこんな偉そうな口を叩けるほどの人間なのだろうか…?

七海「……ねえ、霧切さん」

霧切「何かしら?」

七海「迷っても、いいんじゃないかな」

霧切「──」

悩みを、見透かされてた…?


七海「えっとね、悩むことは悪いことじゃないと思うんだ。確かに何でもスパスパ決めちゃう人が居たら頼りになるかもしれないけれど、その決断が間違っているときだってある」

七海「だから私は、最後までどちらが正しいのか…じっくりと悩んで、悩んで…悩みぬいて、こっちがきっと正しい……そうやって最後まで悩み続けた決断だって、いいんじゃないかなって思う」

七海「それが間違っていたら時間返せーって思っちゃうかもしれないけれど、少なくとも今回はさ、間違ってたらそこでゲームオーバーだし、気にしなくていいんじゃないかな?」

霧切「……暴論じゃない」

七海「うーん、こういうことを言いたかったんじゃなくて…えっと、霧切さんは誰かに指示を出したりするの、絶対に上手だから、頑張ろうって言いたくて」

霧切「迷った末の決断が間違いでも?」

七海「うん。霧切さんが悩みぬいて、これが正しいって思えるなら…私はそれに従いたいな」

──。
目を閉じる。
今まで集めてきた情報、そして私達の戦力をまとめる。
そして今までのダンジョンの傾向や形状を想定し、私達の動きを練っていく。
あまりの情報量に脳が悲鳴を上げるが、それを無視して情報を処理していく。
大丈夫、この程度で私の頭脳は壊れない。


霧切「……っふう」

七海「覚悟は、出来たのかな?」

霧切「正直、今でも私が指示を出すなんて不安よ。コミュ障だし、私よりも他の人のほうが上手く指示を出せるんじゃないかって思うわ」

霧切「それでも、私がみんなの力になれるのなら。私はこの才能を惜しみなく使うわ」

決意を込めた眼差しで、七海さんを見る。
七海さんも力強い瞳で返してくれた。



霧切「とりあえず、さっき私が纏めた考えを見てくれる?」

私は先ほど頭でまとめた情報を紙に纏める。
それを七海さんに手渡した。

霧切「一応簡単な作戦は立てたわ。とはいってもこの程度なら考えれば誰でも思いつくのだけど…この程度の作戦もこなせなければ私達に未来はないから、とにかく今回はこの作戦を成功させることが肝ね」

七海「ふんふん…」

霧切「ただ…現状の戦力ではこの作戦でさえ厳しいわ」

七海「やっぱり人員不足かな」

霧切「ええ、日向くんがいれば可能だったんだけど……無いものねだりしても仕方ないし、どうにかするしかないわね」

七海「……そういえば、あの札あったよね?」

霧切「札?」

七海「確かゲームに負けた人を復活させることが出来るってアイテム」

霧切「ええ、持ってるけど…それがどうかしたの?」

七海「…うん、やっぱり。この札使えるよ」

霧切「本当?」

七海「うん。明日には呼び出せると思う」

霧切「なら、お願いしてもらって構わないかしら」

七海「任せておいて。ただ、あんまり過剰な期待は出来ないと思う」

霧切「けれど、選択の幅はあるわ。恐らく私達パーティと狛枝君のパーティを除いた全員が対象になるはず」

七海「そうだね」

霧切「この中から作戦に使える人物…つまりはある程度戦闘力が高い人物なら誰でもいいわ」

七海「具体的には誰かな?」

霧切「……そうね」


人物を指名しろ。


誰でも大丈夫ですよ。
さくらちゃんがチートで無双という残念で爽快な展開もありませんので。

安価下



霧切「そうね、九頭竜君をお願いするわ」

七海「うん、分かった」

霧切「それじゃあ、そっちは頼むわ。私はこの作戦をもう少し煮詰めてみる」

七海「頑張ってね」

霧切「……七海さん、疑ってごめんなさい」

私は、ようやくその言葉を口に出来た。
七海さんと再会できてから、何度も言おうと思って、諦めてきた言葉。
なぜか今は、すんなりと出てきた。

七海「今度、一緒にゲームに付き合ってくれたらちゃらでいいよ」

七海さんはにっこりと笑って、そう返してくれた。
私もきっと、笑顔で。


……これでもう憂いは無い。

待ってて苗木君。

必ずこのゲームを終わらせてみせるわ。


七海&霧切編
「新たなる仲間」 終

シナリオを選択してください。
一つのシナリオで一日消費します。
また、シナリオ中には選択肢が存在し、選択肢によって今後の展開が変わっていきます。

苗木編
「偽りのマリアージュ」

日向編
「乗り越えるべき壁」

狛枝編
「希望の種」

江ノ島編
「希望複製計画」

豚神編&罪木編
「決意」


苗木編

>>515安価採用です。
次回は苗木編となります。
投下は遅くても火曜日にはしたいですね!

投下終了です。

投下します。

2day 苗木編


「偽りのマリアージュ」


──ボクは、何もない場所から生まれた。

何もない、真っ暗な世界。

ボクはそこで、いつの間にか生まれていた。

記憶と姿を与えられた。

そして、意思を与えられた。

そしてボクは、苗木誠になった。


「……」

日向「おい」

「……ぁ」

日向「なにボーっとしてるんだ?」

「あはは…ごめん」

やっぱり緊張してたのかな…?
いつの間にか浅い眠りについていたみたいだ。
それにしても、さっきの夢は何なんだろう。


「…ねえ、日向クン」

日向「なんだよ?」

「僕の名前、分かる?」

日向「…………お前、マジで大丈夫か?」

「いや、はは…そう言いたい気持ちはよく分かるんだけどさ…」

日向「お前は苗木誠だろ?何言ってるんだ?」

苗木「……」

そうだ。
僕は、苗木誠。
そんな事は分かってる。
それなのに、どうしてこんなに気持ち悪いんだろう。

まるで自分が自分でなくなっていくような。


──ボク、は……誰…ダ…?




日向「……なあ、そんなに緊張してるのか?」

苗木「…うん、やっぱり……そう見えるよね」

日向「そりゃまあ…顔色も悪いしな」

本当に、自分の弱さが嫌になる。
たかが結婚式というだけで、僕は自分を見失うくらい緊張しているのか。
こういう時くらい、堂々としていたいのに…。

日向「そんなに緊張してるのなら、一回アイツに会ってこいよ」

苗木「あいつ…?」

日向「お前のお嫁さんだよ」

日向クンは悪戯っぽい笑みを浮かべてそう言った。
ああ、そうだね…そうしよう。

そう答えようとして、僕は顔が真っ青になっていくのを感じる。

待って。待ってくれ。

僕は、今から、誰と……結婚するんだ?

日向「お、おい…苗木?」

日向クンが、僕を心配そうに覗き込んでくる。
その表情は、自分が何かしてしまったのかという罪悪感がうっすらと見えた。
違うんだ…日向クンは……何も、悪くない。

どうして…どうしてこんな事さえも思い出せないんだ……。

緊張とか、そういう問題じゃない。
これから一生を誓い合う相手の事を、たとえ緊張していたからでも、忘れるわけがない。
なんで…どういうことなんだ……。

僕は、どうしてしまったんだろう…。

苗木「ねえ…日向クン」

日向「ど、どうした?」

苗木「僕のお嫁さんの名前、ちゃんと言える?」

日向「何言ってるんだよ、当たり前だろ?」

苗木「じゃあ、言ってみてよ」

日向「──に、決まってるだろ」

よく…聞き取れなかったな…。
日向クンは……何と言っていた?
僕は…誰と……?


人物を指名しろ。




苗木「江ノ島さん…だよね?」


カチリ。
頭の中で、音がした。
まるで、歯車が、ずれたような。

日向「──ああ、そうだろ?」

苗木「うん、そうだね」

──江ノ島さん。
僕は彼女と結婚するのか。
そう言えば…なんだかそんな気がしてきた。
僕は江ノ島さんの絶望を止める為に…彼女と一緒にいて、段々と惹かれていって…。
そして江ノ島さんも、僕のその気持ちに応えてくれて…。

そうだ…そうだよ。

なんでこんな大切なことを忘れていたんだ。

苗木「ごめん、日向クン…僕ちょっと緊張しすぎだったみたいだね」

日向「本当にな。少し落ち着いた方が良いんじゃないのか?」

苗木「そうさせてもらうよ」

日向「ああ、そうだ。江ノ島呼んでおくか?」

苗木「ううん、気にしないで。江ノ島さんもきっと緊張してるだろうし」

日向「アレが緊張するタマには見えないけどな…」


僕は未来機関のアジトを出て、少しだけ外の空気を吸う事にした。
結婚式は予算や何やらの大人の事情で、未来機関の施設で行う事になっている。
決して派手ではないけれど、僕はそれで満足している。
きっと江ノ島さんもそうだろう。

……そう言えば、結婚したら江ノ島盾子じゃなくて…苗木盾子になるんだよな?
じゃあ江ノ島さんっておかしいか。
かといって苗木さんも変だよな。
それに結婚するのにいつまでもさん付けっていうのもおかしいし…。

苗木「じゅ、盾子……な、なんてね」

一人で呟いて、一人で照れる。
誰かが見ていたら通報されかねないくらい気持ち悪い光景だっただろう。
僕は頬を掻きながら、誰に見られているわけでもないのに気恥ずかしくなって慌てて部屋に戻ることにした。


「結婚、おめでとう」


不意に声がかけられる。
僕はもしかしてさっきの光景を見られたんじゃないか?なんて不安を感じながら振り向いた。

苗木「あはは…その、ありがとう…?」

一応、儀式的にお礼を返してから気付く。
この声、どこかで聞き覚えが。

僕は声の主をじっと見つめる。
僕と同じくらいの身長で、パーカーを羽織っていた。
顔はフードに包まれていて見えない。
こんな知り合い、居たっけ…?


「キミはこのままでいいの?」

苗木「……え?」

何だ…?
背中からじわりと嫌な汗が吹き出す。
さっきまでは確かに幸せだったのに…また、あの感覚がぶり返してくる。


──オマエは、誰だ。


苗木「き、君は…誰なの?」

「……」

目の前の【誰か】は、何も答えてくれない。
ただ、沈黙を返してくるだけ。

足元が勝手にふら付いていく。
自分の中の何かががらりと崩れていく。
まるで世界が紛い物の様な──。

いや、そもそも僕自身が紛い物の様な──。


「キミなら、きっとみんなの希望になれる。だから、忘れないで!」


「キミはキミ自身だ。たとえ誰に何を言われても、キミはキミなんだ!」


「キミは──!」



はっと我に返ると、目の前には誰もいなかった。
それどころか、人がいた痕跡すらない。
まるでさっきまでの出来事は僕の見間違えであるかのように。



桑田「おいおい、新郎が何でこんなトコ突っ立ってるんだよ」

苗木「…桑田クン?」

桑田「もうすぐ式が始まるっつーの。新婦の準備は出来てるのに新郎がいねーからみんな探し回ってるぞ」

苗木「ご、ごめん。すぐ行くよ!」

桑田「ったく。さっさとしろよ…」

桑田クンはやれやれと溜息を吐いて、式場に戻って行った。
僕も戻らなきゃいけないのに…さっきの出来事が頭にこびりついて離れない。

僕は……──。


十神「チッ…なんで俺がこんなことをしなきゃならない」

朝日奈「あんた式の準備何もしなかったじゃん。司会くらいやりなさいよ」

十神「フン…まあいい。さっさと終わらせるぞ……新郎はとっとと入場しろ」

左右田「見事にやる気ねーなアイツ」

舞園「その調子で式ごとぶっ壊してくれませんかねあの人」

西園寺「この人マジで怖いんですけど」


九頭龍「ま、なんにせよ今日はいい日じゃねーか」

辺古山「そうですね、ぼっちゃん」

セレス「ほら豚2号、料理は出来てますの?」

花村「勿論だよ!僕のアーバンな料理をご堪能あれ!」

セレス「そして1号は相変わらず使えないですわね」

山田「そう言われると思いましてワタクシ…フフ、彼らを題材に同人誌を書き上げたのですが」

大神「それは我が預かっておこう」

葉隠「オーガがドレス着てっと違和感ハンパねえべ…」

石丸「いやあ!兄弟!今日は実にいい日だな!」

大和田「おう!今日は宴だぜ!」

不二咲「あの、ボクも混ぜてくれるよね?」

澪田「っつーわけで今日は唯吹が一曲歌っちゃいまあああああああああす!!!」

小泉「お願いだからやめて!」

罪木「め、雌豚は要りませんか~いまならお安いですよ~」

豚神「おい、お前は何をしてる」


終里「なあ弐大のおっさん。結婚式つーと料理が出るよな?そんで肉はあるよな!?」

弐大「がっはっは!当たり前じゃあ!」

腐川「あたし…こういう派手な舞台苦手なのよね…」

ジェノ「というわけでアタシが盛り上げちゃうわよーん?ゲラゲラ!」

戦刃「あまり暴れるようなら武力介入は止むを得ない」

田中「フッ…今日は聖なる祝福の日……俺の力も普段の10分の1に抑えられてしまうか…クッ…」

ソニア「それにしてはちょっと嬉しそうなのはなんででしょうか?」

狛枝「はあはあ…こんなに希望が満ち溢れていて……興奮しすぎて鼻血が出そうだよ…はあはあ……ずび」

日向「言っておくけど、鼻血だらっだら出てるからな」


──みんなの祝福の中、僕はゆっくりと歩き出す。
流石に聖職者さんを呼んだりなんて大事は出来ないので、僕が入場した後、江ノ島さんが入場。
指輪交換の後、誓いのキスでお終いだ。
簡素だけれど、皆が祝ってくれるのならそれで十分だ。

それよりも、今危惧するべきなのは……。



いや、深く考えるのはやめよう。
もう、始まったんだ。
僕は今、目の前にあることに集中しないと。

十神「次は新婦だ。とっとと入場しろ」

桑田「感動もクソもねーよこれ…」

舞園「その調子です!十神さん!」

左右田「誰かコイツつまみ出せよ!」


なんてわいわいしていた筈のみんなが、シンと静まり返る。
どうやら、来たみたいだね。
僕はみんなから視線を外し、前を見て──息が止まった。

江ノ島「……」

ブーケで表情は良く言えないけれど、ウエディングドレスに包まれた江ノ島さんは…。
息をする事すら忘れてしまうくらいに綺麗で…。

ゆっくりと、こちらへ近づいてくる。
一歩、一歩と距離が縮んでいくたびに僕の心臓はバクバクと鼓動していた。

苗木「……っ」

思わず、口の中に溜まっていた唾液を飲み込む。



そして、その時はきた。

江ノ島さんが僕の前までやってくる。

苗木「どうして、ブーケで顔を隠してるの?」

江ノ島「……結構、恥ずかしいんだよね」

苗木「そっか…」

十神「いちゃつくのは後にしろ。次は…誓いの言葉?面倒だ、とっとと指輪交換なりなんなりをして終わらせろ」

朝日奈「真面目にやれ!」

十神「…フン、ほら苗木と江ノ島。指輪を受け取れ。江ノ島は手袋とブーケをよこせ」

苗木「あ、うん…」

江ノ島「…はい」

僕達は十神クンから指輪を受け取ると、顔を見合わせた。
そこでようやく、江ノ島さんの表情を見る事が出来る。

江ノ島「……ぅ」

恥ずかしそうに桜色に頬を染めた江ノ島さんはやっぱり綺麗で…。
僕は今更になって彼女と結婚するという自覚が湧いてきた。

心臓がバクバクと鳴っているのを悟られないように、指輪を江ノ島さんの左手の薬指に嵌める。
そして江ノ島さんも同じように、僕の指に指輪を嵌めた。

十神「顔を覆うほどではないにしろ、ベールは邪魔だろう。ベールを上げろ」

苗木「う、うん…」

そっとベールを上げた。




十神「フン…誓いの言葉は省略だ。こうして式まで開いているのに今更言葉で語っても薄っぺらいだけだろう、とっととやることをやれ」

日向「本当にむちゃくちゃだな…」

苗木「えっと、その…」

僕がしどろもどろになっていると、江ノ島さんは何かを察したかのように目を閉じた。

苗木「……」

僕も、覚悟を決める。

ゆっくりと、顔を近づけて──。


唇を──。


……。


1 一歩後ずさった。
2 唇を近づけた。




苗木「……違う」


一歩後ずさる。


苗木「…違う」


僕はここにいるべきじゃない。


苗木「違う!」


僕の居場所は、ここじゃない──。



「苗木君……!」


江ノ島「……」

腕を、掴まれた。

僕は、江ノ島さんを見る。

江ノ島「うぷぷぷぷ……あはははははははは!!」

江ノ島さんは、先ほどの可憐さを微塵も残さない、邪悪な顔で、笑った。

江ノ島「もう無理だってぇ…ね?ここで一緒にずうっとあたしと生きようよ?」

江ノ島「ここは苗木クンのための楽園だよぉ?」

江ノ島「だらだらと甘くてとろけそうなくらいえっちでどろどろになろうよ?ね?」


苗木「ぼ、僕は……!」

引き込まれる。

抵抗できないくらいに力強く。

僕はあっさりと引き戻されて。



江ノ島「ここで永遠に、暮らそう?」



苗木編
「偽りのマリアージュ」 終

シナリオを選択してください。
一つのシナリオで一日消費します。
また、シナリオ中には選択肢が存在し、選択肢によって今後の展開が変わっていきます。

日向編
「乗り越えるべき壁」

狛枝編
「希望の種」

江ノ島編
「希望複製計画」

豚神編&罪木編
「決意」

>>541採用です。
次回江ノ島編。
明後日までには投下するつもりです。

くだらない補足あれこれ。
ちなみに嫁役は誰でも構いませんでした。
なので安価によってはさくらちゃんが相手だったりもしました。
ヤンデレさくらちゃんアリだと思います。

ぼっち切さんと七海がいないのは仕様です!

投下します。

3day 江ノ島編


「希望複製計画」


江ノ島「…あ~退屈……絶望的に退屈…」

江ノ島盾子はベッドの上にだらしなく寝転がり、退屈と呟いていた。
退屈ならば何かしろと言いたくなるが、この部屋…いや、牢屋には娯楽と呼べるものは一切無かった。
未来機関のアジトの最下層、複雑に入り組んだ区画の端が、今現在江ノ島が生活している空間である。
監視対象であり、全ての元凶である江ノ島にはただの娯楽であっても危険との判断がなされ、彼女の牢には何一つ物が無い。
一応ベッドやトイレ、シャワールームなど…一般的な生活空間はあるし、一見牢屋には見えないが、生活用品以外のあらゆるものが存在しない。

江ノ島「いくらなんでもこれはあんまりじゃないー?ねえ聞こえてるー?」

いくら江ノ島でも退屈という敵には敵わないようだ。
江ノ島は苛立ちを隠せず、なぜか置いてあった蒸かした芋をもしゃもしゃと咀嚼しながらベッドの上を転げ回る。

江ノ島「美味い…これは今食べるべきだと判断してよかった…はふはふ」



そんな非生産的な時間がどれだけ流れただろうか。
芋は既に食べ終わり、転げまわることにさえ飽きた江ノ島はぼんやりと宙を眺めていた。
いっそこのまま朽ちてしまおうかとさえ考えたとき、唐突にベルが鳴った。

「江ノ島、貴様に面会者だ」

江ノ島「えへ!あたしに会いに来てくれる王子様はだーれ?」

無愛想な未来機関の人間がやってきて、端的にそれだけ告げると、牢の扉が開く。
そこから見えた顔は、なんとも見慣れたものだった。

江ノ島「うっわ…」

戦刃「盾子ちゃんが暇してそうだったから」

江ノ島「暇だけどさ、そりゃあ暇だけどさ?それでも残姉ちゃんが相手だとこう…ねえ?」

戦刃「ひどい…」

江ノ島「んで、何の用?」

こうした下らないやり取りを延々とするのも悪くは無いが、こっちは退屈で飢えているのだ。
例え相手が残念な姉であったとしても、話を聞くだけで退屈は紛らわせる。


戦刃「前に聞いたんだけど、新世界プログラムでまた何か企んでいたの?」

江ノ島「あーその話かー」

実は江ノ島の監視が厳しくなったのはここ最近である。
少し前までは本などの、一人で出来る程度の娯楽ならば許された。
しかし江ノ島は先日にとある事件を引き起こそうとしたせいで監視が厳しくなったのである。

江ノ島「いやさ、ちょいと新世界プログラムにウイルス仕込んで派手にやってやろうみたいなことを考えてたんだけどさあ…」

江ノ島は以前、苗木達をコロシアイ学園生活に放り込んで世界中を絶望に染め上げてやろうという大それた計画を実行しようとした。
ところが気紛れで仕込んでいた“脱出装置”をどこかのラッキーボーイが引き当てるという偉業を成し、紆余曲折を経て江ノ島の計画は失敗した。
そのあたりは目の前でふんふんと話に相槌を打っている残念な姉による部分が大きいのだが、まあそのあたりは割愛する。
しかし勿論この程度のことで江ノ島が諦めるわけもなく、未来機関によって監視されている間も江ノ島はその機会を虎視眈々と狙っていた。
それから少し時は流れ…ついにその時がやってくる。

江ノ島を崇拝する超高校級の絶望の残党たちが保護されたと江ノ島の耳に入ってきた。
とはいえ、彼らがどこで何をしていようが関係ない。
例え彼らが江ノ島の前に来て「あなたが居ない間も絶望を振り撒いていましたよ!」と嬉々として報告しようがふーんで流す女だ。
そうではなく、彼らが上手い具合に自分を自由にしてくれないかと思案していたのだが、耳に入ってくるのはそんな【希望】を打ち砕く報告。
絶望が苗木達によって改心させられた。

…あちゃあ。
正直その展開も読めていないわけではなかった。
こういう言い方は嫌いなのだが、江ノ島は彼らを洗脳しただけである。
心の弱さや隙に付け込み、甘い言葉をささやき、自分の駒とする。
ただそれだけ。
別に彼らが裏切ろうと何をしようと、絶望できればそれでいい。
しかしここでその思考が裏目に出た。
残党は見事に改心し、今はメンタルケアの真っ最中らしい。
これで望みは無くなった…というわけでもなかった。
江ノ島にはもう一つの切り札がある。



──カムクライズル。
学園によって創られた“希望”。
しかしその実態はむしろ絶望と表現した方が正確である。
学園によって才能以外のあらゆる物を奪われた彼は、まさに世界に絶望している。
江ノ島もその絶望を見出し、“こちら側”に引き入れた。
そして彼はその特殊な状態ゆえに、絶望でなくなることはありえない。
いや、性格には絶望でさえないのかもしれない。
彼が仲間だったときも、彼は江ノ島をいつか踏み越える程度の存在としか見ていなかったのは理解している。
だからこそ彼は、自分を踏み越える為に、江ノ島盾子を自由にするだろうと…そう、考えていた。

しかしその【希望】もあっさりと覆された。
なんともまあ驚いたことに、彼は自力で過去を、自分を取り戻したというのだ。
はっきり言ってありえない…それこそ奇跡と呼んでもいいほどの事態である。
あまりに自分にとって都合の悪い展開が起こったせいか、そろそろ自分の命運も尽きたか…と考えた矢先に、チャンスは訪れた──。

新世界プログラム。別名絶望更正プログラム。
もしも絶望の残党たちが苗木達の説得で改心できなかった場合、このプログラムで半強制的にでも改心させてやろうというものだ。
残党達は無事に改心し、精神状態も安定、ほとんど日常生活に支障は無かったが…未来機関の上層部が可能な限り不安要素は取り除くべきだという意見によって行われることになった。
江ノ島はこれを幸いとし、慌てて新世界プログラムの情報を調べ、それを破壊するウイルス…保険であった【江ノ島アルターエゴ】を利用することにした。
新世界プログラムはゲームに接続した人間の情報を読み取りアバターを作成、それを脳と直接リンクさせ、現実と変わらない仮想空間での生活シミュレートできるものだ。
そして江ノ島はこのゲームの“欠陥”に目をつけることにした。
それは脳と直接リンクしているが故に、仮想空間で傷を負ったりすると現実にまで影響を及ぼすという点、そしてこのゲームでは最終的に卒業する際に、アバターの情報を現実の身体に上書きするというものだ。
このゲームで意図的にコロシアイを発生させ“空の容器”を作ることができれば…!そこから“江ノ島盾子”を複製することが出来る。
いや、最悪こっちの方は失敗してもいい。
もしこの計画を苗木達が知れば、まず間違いなく飛び込んでくるだろう。
そして彼らを閉じ込めることが出来れば…間違いなく絶望させられる。
二段構えの完璧な計画。
自分の計画の完璧さににやりと笑みを浮かべた江ノ島だったが…その考えはあっさりと打ち砕かれた。



このプログラムの欠陥は、修正されていたのだ。
そもそも現実で改心しているのに、わざわざアバターを上書きする必要はないとして、記憶も何もかも持ち越したほとんど現実と変わりないアバターで、ただ南国生活を楽しむという……本当にただそれだけのゲームになっていた。
ようは絶望更正というのは建前で、彼らの心を癒す空間と、時間をプレゼントしようという…ただそれだけだったのだ。
どうやら現実に影響を及ぼすという欠陥まで修正は出来なかったらしいが、江ノ島の切り札であった江ノ島アルターエゴはウサミによってあっさりと返り討ちにあい、江ノ島はのんびりとした楽園生活を強いられたしまった。
勿論何度か絶望の種やらをまこうとしたが、その度にウサミの絶妙な妨害があり、たまーに成功したと思えば七海という監視プログラムによってむしろ全員の結束を深める結末になった。
もうそこまでされてはどうすることも出来ず、江ノ島は全てを諦めて南国生活を怠惰に過ごした。

ようやく現実に帰れたと喜んでみたものの、待っていたのは更に強化された監視。
もうお手上げ侍である。

と、自分の身に何が起きたのかをつらつらと思い出していると、戦刃が口を開いた。


戦刃「盾子ちゃん、ドンマイ」

江ノ島「よく考えれば姉ちゃんが裏切らなければこんなことにはならなかったんじゃね?」

戦刃「あそこで裏切って無かったら私死んでたし、結果オーライ」

江ノ島「ですよねー」

戦刃「それはさておき、今日は面白い話を一つ」

江ノ島「面白くなかったら全裸で苗木クンに告白してね☆」

戦刃「……おっけー、話を続けるね」

江ノ島「今それちょっとありとか思った?ねえねえ」

戦刃「未来機関が良く分からない計画を立てて勝手に破綻したという素晴らしい話」

江ノ島「はーん」

戦刃「今この世界は盾子ちゃんのせいで絶望にあふれているけど、苗木君達のおかげでそれも徐々に良い方向に向かってる。それは苗木君達が頑張ったからなのに未来機関の馬鹿で無能な老害共は何を寝ぼけたのか、苗木君に何か秘密があるんじゃないかという見当違いな考えをした」

江ノ島「あーそれ先が読めた!苗木ロボを作るとか言い出しちゃったんでしょ?男のマロンだから仕方ないっちゃあ仕方ない(笑)」

戦刃「そうだ、苗木君の複製を作ればいいんだ。とか抜かしやがったのです」

江ノ島「カムクラ…あー今は日向クンか、アイツの件で何も学ばなかったんだねー」

戦刃「まあそういうことだね。そして本当に実行しちゃうから行動力のある老害は嫌い。これなら司令室でパイプをふかしてる無能な上官のほうがまだマシ」

江ノ島「戦場経験者は語る」

戦刃「そして苗木アルターエゴは完成。しかしそれはただ苗木君と同じ思考をして同じことを喋るだけのプログラム。そこには何の意志も努力も無い。だから希望を与えられない」

江ノ島「当たり前じゃん。絶望ってのは誰でも出来るし、機械でも出来る。何かを壊せばそれだけで誰かを絶望させられる。けど誰かに希望を与えるってのはそんな簡単なわけないじゃん」

戦刃「ありえない…!盾子ちゃんが偉そうに希望を語ってる…!」

江ノ島「ねえそろそろぶん殴っていい?」

戦刃「まあ、結局計画はお流れってことで苗木アルターエゴは廃棄処分になったとさ」

江ノ島「ふーん」

戦刃「まあこんなところかな。それなりには面白い話だったでしょ?」

江ノ島「まあね。お姉ちゃんの語り口は気に入らなかったけど退屈はしのげたってレベルかなー」

戦刃「それなら良かった。それじゃあ私はいくね」

戦刃「これから苗木君と会うんだ」ドヤァ

江ノ島「絶望的にウザイ」




江ノ島「……」

目が覚めた。

江ノ島「あー、なんであんなこと思い出したんだろうね」

それはこのゲームが始まる少し前に、お姉ちゃんと離したどうでもいいような話。
…ま、内容から察するに、そういうことか。
間違いなく、あたしが手に入れたヒントの所為っしょ。

あたしが手に入れたヒントは、そりゃもうこのゲームの根幹を揺るがすレベルの、つーかぶっちゃけネタバレレベルのヒントだった。
あたしたちはただのデータ。
新世界プログラムにあった欠陥、仮想世界での影響が現実にも及ぶ…これを何とかする為に不二咲クンが考えた措置。
簡単に言ってしまえば脳と直接リンクしなきゃいーんじゃねーの?ってこと。
でも脳にリンクしないのならこのゲーム成り立たなくね?という話はもっともだけど、それも対策されている。
このゲームをプレイする際に私達の情報を丸ごとぶっこ抜かれて、アバターを作り出すところまでは一緒。
そこから本来なら脳とリンクして感覚などを共有させる作業があるんだけど、不二咲クンはその作業をすっ飛ばして、アバターを独立したプログラムとして動かし、現実のあたし達はそれをさも自分が行っているように“見ている”だけ。
まあ言ってしまえば自分の分身がゲーム内で動いているのを眺めるだけ、ゲームというより映画。
映画内で自分が死んでもそれはフィクションの世界であって現実の私たちには関係ないよねっ…つー荒業を成し遂げたわけ。
詳しくはよく分からない。
ただ暗示だとかであたしたちは自分が見ているのにも気付いてないらしい。

んで何が言いたいかっていうと。
つまりこうやってあたしが考えていることだって、言ってしまえばプログラムってことらしい。
自分が今まで行ってきた行動や考えや言葉や気持ちが全部……ただのプログラム。
そこに意思は無い。
そもそもこうしてあたしが考えてることだって、プログラムの範疇。
“本物”は、自分のアバターが動くのを見ているだけ。
それって最高に絶望的じゃない?



この世界は繰り返されている、とか皆はいってたけど、繰り返されているわけじゃない。
あたしたちはデータ。
無数にバックアップがあって、死んで消えてしまったら新しいものを用意すればいい。
まるでチェスの駒。
敵に奪われたらゲームが終わるまで放置されて、新しくゲームが始まれば何事も無かったかのように並べられる。
あまりに絶望的でさ、これを見たときにもう涙が溢れちゃったよねー。

だから新しくゲームが始まればあたしたちには記憶が無い。
記憶を思い出しているように見えるのは、ただ単にあたしがこのタイミングでそれを思い出す、というようにプログラムされているだけ。
いや、もしかしたらその部分のデータを抜かれて、必要なときには“上書き”されているのかもしれない。
どちらにせよ、あたしたちはただのデータで。
どれだけがんばっても、何をしようとも、すべて無駄になる。



それは絶望的で、魅力的だ。

そのはずなのに……否定したくなる自分がいる。

このままゲームを終えて、自分たちの行ったすべてが無駄だと知ったら……きっと脳汁が弾け飛ぶくらい甘美な光景が見られる。

でも、どこかで躊躇う自分がいる。

わけわからないんだけど…。

さあてここで私へ質問で-す!
私は何で現実に帰るのを躊躇っているのでしょうか!


1 苗木への想い
2 この世界に皆を延々と閉じ込めたいから




はい、大正解でーっす!
ちょっとしんみりしたら騙されるかと思ったけど、まあこの程度の引っ掛け問題に引っかかるわけないよねえ?

そりゃまあ確かにこの世界を終わらせてみんなの絶望をのんびり眺めるのもいいけどさ、ここで敢えてッッ!
敵に寝返って皆を閉じ込めるなんて…うぷぷ、想像しただけでイきそう。

江ノ島「……とーかなんとか思っちゃってるけどさ」

実に、気に食わない。
この、手のひらで踊らされている感覚…気に入らないわね!

この思考も“江ノ島盾子”という人物に基づいてプログラミングされた行動なんでしょ?
結局この思考に私がいたるのも当然の流れなわけで。
だからこそ気に食わない。

私は絶望を与えるのも与えられるのも大好きだけど、与えられっぱなしってのは非常に気に食わない。
大体ここで私が絶望を与えたところで予定調和で、どうせ苗木君あたりが希望を捨てないでーなぁんてくッだらない他人任せの日和文句を言って流れるオチでしょ?

江ノ島「上等じゃん。いいよ、だったらその予定調和…ぶっ壊しちゃおーっと」

私は江ノ島盾子。

超高校級の絶望。

例えこの行動が、“予定調和”であっても。

ぶち壊す。

私を手のひらで躍らせていると思っている【黒幕】とやらに、誰が真の“絶望”なのかを、叩き込んであげる。

そう、だから。

今は皆を助けてあげる。

勘違いしないでよ?

全員まとめて絶望させてあげる、でも、あんたたちよりも優先して絶望させなきゃならないヤツがいるってだけ。

あんたたちは、“現実”の江ノ島盾子が一人残らず絶望させてあげるんだからねっ!


江ノ島編
「希望複製計画」 終

シナリオを選択してください。
一つのシナリオで一日消費します。
また、シナリオ中には選択肢が存在し、選択肢によって今後の展開が変わっていきます。

日向編
「乗り越えるべき壁」

狛枝編
「希望の種」

豚神編&罪木編
「決意」

豚神&罪木編

>>562採用です。本日の投下は以上になります。
投下は次回になります。

ここ最近色々と明らかになってきたので質問や疑問、矛盾点などがあった場合は、お答えします。
一応矛盾の無いように作ったつもりではありますが…。

それとどうでもいい補足。
江ノ島編での最後の選択肢で上を選ぶと絶望度が上がり、以降の内容が若干変わります。
そしてエンディングで、今までのフラグ全部ぶち壊して江ノ島√強制でした。
流石に妹様の扱いは分かっていたようで無事に回避できましたが。

投下します。
豚神&罪木編は短いので、もう1シナリオ投下する予定です。

4day 豚神&罪木編


「決意」


僕は臆病な人間だ。
自分でも分からないくらいに臆病な人間だ。
自分から施しを与えるくせに、他人からの施しには不審を抱く。
他人に信じられても、他人を信じられない。
だからこの事態も、俺の臆病さが一端にあるのだと思う。

僕は良く他人から“慎重な人間”と評価されている。
何事にも自分の納得のいくまで調査等をして、いざ事が始まってからも慎重に行っている。
それは僕が生まれてきたときからしてきた“当たり前”だったし、それを慎重だとも思っていなかった。
生まれてきたときから欺くことを強いられ、物心を着いた時には“偽る”事が当然だった。

詐欺師は時に大胆でなくてはいけない、というのは持論だ。
人を欺くには、相手から全幅の信頼を勝ち取り、そこに付け入る。
しかし臆病な人間を信用されても無理な話だ。

だから僕は大胆に、臆病に生きてきた。
あらゆる人間を大胆に欺き、偽るときには病的なまでに臆病に。

そんな僕がようやく見つけた居場所…それが希望ヶ峰学園。
この場所なら…僕は自分を見つけられる気がする。


それから紆余曲折があって、僕はここが居場所だと、そう思えるようになってきていた。
だから、せめてこの場所は、失いたくない。
そう誓ってはみたものの、結局のところ口だけだ。
僕にそこまで大それた力はないし、誰かを救うだ資質があるとも思えない。
人を救う資質っていうのは、苗木君や日向君のような…一部の人間しか持ちえない。
僕にそんなものがあるとは到底思えない。

別に、資質がないなら人を救っちゃいけないって言いたいわけじゃない。
結局のところ僕は、逃げる言い訳がほしいだけなんだ。
これ以上仲間を誰も死なせない、なんて言っておいて…あれだけいた仲間は減っていってしまった。
勿論、口だけなら何とでも言える。

諦めるな、前へ進め、皆の想いを無駄にするな……。
思考停止して無理矢理前へ進むことはできる。
でもそれに意味があるのかな?

僕は、臆病で、情けない……弱い人間だ。
もう、これ以上、仲間が苦しむ姿を見たくない。
だからいっそ、逃げ出したい。
逃げ出してしまえばみんなを苦しめることは分かってるのに、ただ自分が楽になりたいばかりに、逃げようとしている。

こんな僕が慎重だなんて…本当に、笑っちゃうよ……。



豚神「もう、悩むのはやめよう……」

部屋の隅を見る。
そこには簡単にまとめられた荷物。
そして部屋のテーブルには、皆宛ての手紙を置いておいた。
もう、いつでも姿を眩ませられる。

僕はいつものスーツを着る。
太ってるからスーツがミチミチと音を立てる。
はは……少し痩せないと…本物に悪いかな……。

さて、出発しよう。
荷物は要らない。
フラフラと、どこまでも、心の赴くままに進む。

行先なんて決まっていない。
というより、決める必要がない。
今から僕は……消えに行くんだから。

……その前に、少し寄り道していこうかな。


1 食堂で最後の晩餐でもしよう。
2 宿屋の辺りを散歩する。




豚神「……少し、散歩でもしよう」

僕だって、今まで何も思い出が無いわけじゃない。
こうして今までを振り返りながら散歩も悪くない……。


宿屋を出て、ぼんやりと歩く。
僕は……このパーティで、何か、できたんだろうか…?
僕はみんなに、必要とされていたんだろうか…?

豚神「僕は……」

罪木「あ、お散歩ですかぁ?」

豚神「!?」

不意に掛けられた声にすっ転びそうになりながらも振り向く。
無理に振り向こうとしたため、結局尻からすっ転んだ。

罪木「だ、大丈夫ですか?」

豚神「い、いたた……」

尻を擦りながら立ち上がる。
目の前にいたのは罪木だった。

豚神「お前…いつの間に…?」

罪木「あはは…実は日向さんにお暇を出されてしまいまして」

豚神「…どういうことだ?」

罪木「実はですね……──」



私はあの槍に貫かれた後、ずっと夢を見ていました。
延々と、延々と自分が殺される夢。
死にたくないと叫ぶと、今度はお前が殺せとナイフを渡されます。
目の前にいるのは……大切な、お友達で。
せっかくできた親友を殺すくらいなら、殺され続けた方がマシだと思って、ナイフを落とすと再び殺されました。
精神が擦り減ってもう気が狂い始めそうになった時──ようやく目が覚めました。

罪木「…あれ、私、生きて……?」

日向「よう、罪木」

罪木「……い、生きてる!?」

日向「元気バリバリだぜ」

罪木「ちょ、チョイスはどうかと思いますが…生きててよかったです」

ようやく、“生きてる”実感が湧いてきて、私は涙を流しながら日向さんに抱きつきました。
日向さんも笑顔でそれを受け入れてくれて、私はしばらくそれに甘えていました。


罪木「あの、その…涙とか、鼻水で汚してごめんなさいぃ……」

日向「気にしなくていいさ。それより、少し話があるんだ。長くなるけど、大丈夫か?」

罪木「……ぅ、はい」


それからは驚きの連続でした。
私たちは間違いなく、ゲームの世界から除外されて、死んだということ。
けれど親切な“誰か”のおかげで奇跡的にも復活できたこと。
そしてこの世界が繰り返されていること。
──私たちはただのデータで、私たち本人は今、強制的に眠らされて、意思のないままこのゲームを“視ている”こと。

罪木「……でも、どうして日向さんは」

日向「俺は【奇跡的】にも真実に辿り着いた。本来は辿り着くはずがない、俺たちはただのプログラムだから、“辿り着けるはずがない”」

日向「もしかしたら、何かのバグかもしれないし、七海辺りが俺に細工したのかもしれない。とにかく、俺は奇跡的に真実に辿り着いて、奇跡的に【本体】がこのゲームに介入することができた」

……え、ちょっと待ってください。
日向さんから聞いた話だと、本体がこのゲームに介入するのは危険要素が多いから、私たちはデータを複製されて作られたんじゃ…と言おうとした瞬間。

日向「ああ、俺は現実に一度戻ってる」

罪木「──っ!?」

日向「そして、ここに直接脳とリンクしてアバターを作り出した。本物の、データじゃない“日向創”だ」

罪木「そ、それって…」

日向「ああ、結構やばいぜ?なにせ死んだらお終いだし、現実にどんな影響があるか分からないから怪我も出来ないよな」

日向さんは笑ってそう言うけれど、私は笑えなかった。
私たちには死んでしまっても“次の”私たちがいる。
けれど日向さんに、次はない。
その恐怖を考えたら、私は何も言えなくなってしまった。


日向「まあ、そう悲観しなくてもいいと思うぞ。このゲーム盤で終わらせればいいだけの話だ」

罪木「……」

聞きたいことは沢山あったのに……私は何も言えませんでした。
さっき、私たちはデータだって聞いて、少しだけ気が楽になった部分があった。
このまま負けてしまって、やり直しになれば…日寄子ちゃんにまた会える。
そんな事さえ考えてしまって。
その罪悪感もあって、私は口を噤みました。

日向「なあ、罪木」

罪木「はい…」

日向「もう一度、西園寺と会いたいよな」

罪木「会いたい、です…」

日向「現実で、会いたいよな…?」

……日向さんにそう言われて、ようやく私は気づいた。
そっか……。そういうことだったんだ…。

もしも、このままゲームが終われば…私たちデータの存在は、消える。
それがどういう意味なのか、私には誰よりも、理解できた。
日寄子ちゃんとの絆も、無かったことになるんだ……。

日向「現実に戻って、この世界の出来事を覚えてる可能性はほとんどないと思うぞ」

罪木「どうしてそう言えるんですか?」

日向「俺はさっき、現実のお前たちがゲームの俺たちを見ているって言ったけど、それが真実なのかを俺たちが確かめるすべはないんだ。もしかしたら現実のお前たちはずっと眠っていて、ゲームを見てない可能性だってある」

罪木「でも、日向さんは……」

日向「俺は多分、イレギュラーなんだ。辿り着くはずの無い真実に辿り着いて、戻れるはずの無い現実に戻ってる」

日向「他のみんなが俺と同じだっていうのは…流石に楽観的だと思うぞ。それに…こうして真実を伝えて、罪木に何か変化はあったか?」

罪木「それは……」



もしも私が日向さんと【同じ】なら、今真実を知って何か変化があってもおかしくない。
けど、何も起こらなかった。

日向「それを確認する為に罪木に話してみたんだけど…ダメだったみたいだな」

罪木「……」

日向「それを踏まえてもう一度聞くぞ。……罪木、現実に戻りたいか?」

それは、残酷な問いかけ。
現実に戻っても、“この”私は救われない。
ただ消えていくだけ…。
現実に戻らなければ、“現実”の私は永遠にゲームの世界に閉じ込められたまま。
けれど、私と日寄子ちゃんの絆は、また手に入るかもしれない。

日向「次のゲーム盤が始まれば“今の”罪木の記憶は消えてしまうかもしれないけど、新しい罪木が、“今の”罪木の記憶を上書きされる可能性はある」

その希望を後押しするかのように、日向さんの言葉が続いた。

……。
喉がからからだ…。
なんで私が…こんな選択をしなくちゃいけないんですかぁ……。
こんな、こんなにつらい選択を……しなくちゃ……っ。


1 現実に戻る
2 現実に戻らない
3 どちらも選べない


ちょっと時間が厳しくなったので、今日はこの辺りにします。
次回は安価後からやりたいので安価先指定しておきます。
>>580の選択を採用します。
安価下は認めません!

1

すみません。投下が遅くなりました。
本日は豚神&罪木編ともう一編、今度こそやりたいと思います。



……心の中で、既に答えは出ていた。
ただ、向き合うのが怖かったんです。
いくら私がデータでも…消えたいなんて、思いたくない。

罪木「……っ」

日向「無理しなくても、いいんだぞ。俺はお前の決めたことに口を挟むつもりはないし」

罪木「大丈夫です。決めましたから…」

どんな理由があっても、現実に戻らない選択なんて…選べない。
だってそれは、私たちの都合で“現実”の私たちを巻き込むことになりますし。
何より、日寄子ちゃんとの友情が、プログラムだったなんて事にしたくない。

罪木「現実に、帰ります…っ!」

罪木「帰って、今度は、私から…日寄子ちゃんにお願いしたいんです」

罪木「友達に、なろうって」

日向「……」

日向さんは私の言葉を聞くと、薄く微笑みました。

日向「そっか。じゃあ、力を貸してほしい。お前の力が必要なんだ──」



そうして私は日向さんと一緒に進むことを決めました。
正直、まだ不安はあります。
このまま戻っても、私が何もかも忘れていて、前の様なおどおどしてダメでどうしようもない女に戻っているかもしれない。
もし記憶が戻っても、日寄子ちゃんは私と友達になってくれないかもしれない。
けれど、そんなネガティブに考えて…諦めてしまったら、本当に可能性が無くなってしまう。
だから私は、先に進むことを決意した。
日寄子ちゃんが私に、頑張って、と言ってくれたから。
大切な友達のためにも、私は頑張らないと。

それから少し時は流れて、私たちは七海さんを無事に助け出し、街から少し離れた小屋で治療をしていました。
宿屋を使えば早かったのに、日向さんは何か考えがあるみたいで、苗木さん達と接触しないような場所にしたそうです。


罪木「日向さん、七海さんの怪我…どうして治らないんですか?」

不思議だった。
ゲーム内でできた怪我は私たちがデータだからかはわからないけれど、眠っていれば治っていたし、いざとなればスキルを使って回復する事も出来た。
けれど七海さんの身体は一向に回復しません。

日向「多分七海は俺と同じだ」

罪木「へっ…?」

それはつまり、現実から直接リンクしている…?
でも今まで、そんな素振りは…。

日向「七海はゲーム盤が変わっても、記憶を保持していた。だから現実の身体と直接リンクしてるって根拠じゃ薄いか?」

罪木「でも…私たちと同じように怪我をしていましたけど、すぐに治りましたよね?」

日向「うーん…その辺りは詳しく分からないけど、もしかしたら七海はまだ何か【奥の手】があるのかもしれない」

罪木「はぁ…」

日向「今はそれが使えない状態か…七海がそれを拒んでるのかもしれないな」

罪木「成程…よく分からないですけど、とにかく頑張って治します!」

日向「ああ、頼んだぞ!」


なんとか治療が上手くいって、七海さんが目を覚ましました。
それから私たち二人は日向さんにお暇を出されたのです。


豚神「いやいや、最後の方はかなり飛んでないか?」

罪木「そう言われても…どうやら日向さんは何か考えがあるって事しかわからなくて」

豚神「じゃあ、罪木は何をしに来たんだ?」

罪木「皆さんのお手伝いですよ。私に何ができるか分かりませんけど、頑張りたいんです!」

豚神「それは日向からの指示か?」

罪木「いえ、私の指示です。日向さんは好きにしろ、って言いましたからぁ」

豚神「…どうして、お前は」

罪木「諦めて、膝を抱えて泣くことは誰だってできます。今からでも出来ます。けど──」


罪木「今前に進まなかったら、絶対に後悔しますから」



罪木の言葉が、胸を打った。
後悔……。
そうだ、そうだな……。
このまま逃げたら…僕は絶対に後悔する。
だけど、僕に何かできるのか……?

こんな僕が、役に立てるのか…?

罪木「役に立つのか、じゃないです。役に立とうって、そう思うのが大事なんです」

罪木「私も、何か役に立てたら…って思いますけど、何も思いつきませんし…」

罪木「だから、とにかくがむしゃらでも、自分が後悔しない道を進むのが、正解だと思います」

豚神「……そうか」

罪木「ほら、良く言うじゃないですかぁ。やらないで後悔するなら、やって後悔する方がマシって」

豚神「ああ、本当にそうだな。俺は…ううん、僕は間違ってたよ」

豚神「ここで逃げたらきっと後悔する。後悔して、前に進もうとする。でも、それじゃ遅いんだ」



心は決まった。
僕に何ができるのかはわからない。
だけど、後悔しない道を進む。

豚神「ありがとう、罪木。キミはいつの間にか…僕よりも強くなっていたんだね」

罪木「えへへぇ…そう言われると照れちゃいますよぉ」

豚神「……あ、そうだ」

そういえば、僕にはとっておきがあった。
今の僕らの戦力は現実とほとんど変わらない。
だから武器もいる。
そしてその武器を…僕は沢山もっている。
以前一人で黒幕と戦う時の為に、溜めこんできた物があったはずだ…!

豚神「罪木、少し手伝ってくれないか?」


豚神&罪木編
「決意」 終

シナリオを選択してください。
一つのシナリオで一日消費します。
また、シナリオ中には選択肢が存在し、選択肢によって今後の展開が変わっていきます。

日向編
「乗り越えるべき壁」

狛枝編
「希望の種」


5day 狛枝編


「希望の種」


狛枝「──という事なんだ」

僕は皆の前で一頻り推理を披露すると、その言葉で締めくくった。
舞園さん、桑田クン、辺古山さん、戦刃さん…全員神妙な面持ちでそれを聞いている。
僕は正直、この話をするか迷った。
自分たちがプログラムだと聞かされて、平気でいられる人なんていない。
僕だってその事実を知った時動揺したし、どうすればいいのかも分からなかった。



戦刃さんが苗木クン達に例の敵を知らせに行った後、僕たちはなんとか宿まで戻ることができた。
正直死んでいてもおかしくないくらいの怪我だったから、生きて帰れたのは奇跡としか言いようがない。
いや、きっとこれも僕の才能だ。
皆が助かったのも僕の才能のお蔭だろう。
正直この後の【反動】が怖いけれど、生きている以上の幸運は無いんだし、感謝しないとね。

僕達はすっかり疲れ切っていて、ベッドに辿り着いてからは眠り続けた。
その途中で、僕はモノクマと出会う。
モノクマは苗木クン達のパーティを全滅させて、僕に後を継がせる計画だったらしい。
苗木クン達の動きはモノクマにとって都合が悪いものらしく僕をうまく使ってこのゲーム盤を終わらせることが目的だったんだろう。

だから僕に、話した。
僕達の正体を。
僕に話せばきっと自分の望むように動くと思っていたんだろうか…?
現に僕も最初こそ、ゲームを終わらせちゃいけないと思っていた。
僕の希望が、“此処”にいる皆の希望を奪ってしまうんじゃないか、ならこのままゲームを続けることが正しいんじゃないかって。

だけど違う。
きっと、苗木クンや日向クンならそれは違うと言う筈だ。
【現実】の僕らを苦しめて手に入れる楽園なんて、間違っている。
本当の希望とは何か、僕はもう知っているはずなんだ。



そして皆が目覚め、戦刃さんが戻ってきたタイミングで僕は全てを話した。
一部は僕の推測もあるから推理という体にしたけれど、恐らくすべて真実だろう。
今まで苦楽を共にし、僕と共に戦ってくれた皆に黙って行く事は出来なかった。

舞園「その…それって……本当なんですか?」

狛枝「推理とは言ったけど…恐らくすべて事実だよ」

辺古山「それでは…私達は……」

桑田「く、クソ…なんでだよ……どうしてこんな…っ!!」

戦刃「……」

予想通り、誰も彼もが混乱していた。
……これ以上の話は、酷だろうね。

──僕はこの後、苗木クンと戦うつもりだ。
正確には、苗木クン達かな。
魔王城の扉は、選ばれたパーティしか入れないらしい。
魔王を倒せるのは、最後まで生き残ったパーティのみ。
僕の自己犠牲で苗木クン達を先に進めることも考えた。
だけど……それだけは許されない。


こんな僕の為に命を懸けて戦ってくれた仲間のためにも、諦めるという選択肢だけは選べない。
たとえ一人でも、足掻けるところまで足掻いて、魔王を倒す。
そして必要があれば僕は──仲間さえも殺そう。
【あの力】を手に入れれば、魔王は倒せる。
そしてゲームを終わらせる。
憎まれるのは、僕だけでいい。

僕は皆の姿を一瞥すると、少しだけ逡巡する。
もしも、僕がこの気持ちを打ち明けたら、決意を語ったら……彼らは応えてくれるんだろうか…?


1 自分の決意を語る。
2 何も言わない。




狛枝「皆、今の話を踏まえた上で……聞いてほしいんだ」

身体が震える。
自分の本心をこうして誰かに、素直な気持ちで吐露するのは初めてかもしれない。
他人に自分の気持ちを晒すのって、本当に覚悟がいるんだね…。
いつも真っ直ぐに他人にぶつかっていける彼らが、羨ましいよ。

僕は身体を震えを押し殺し、口を開いた。



狛枝「僕は…現実に戻りたい」

狛枝「アバターの僕達は消えてしまうかもしれない…けれど、【現実】の僕達は解放される」

狛枝「はっきり言ってさ…こんなの僕達がやる事じゃないよ…だって僕らはなにも得をしないんだ」

狛枝「どれだけ頑張っても…結局はすべて消える。僕らの努力も、何もかもが」

狛枝「それでも、ここで挫けてモノクマの言いなりになるなんて…それこそ絶望だと思うんだ」

狛枝「見返りも何もない…それどころか、むしろ損をする。でも、それでも…僕は希望として…そして何より、【現実】の皆の為に…先に進みたいんだ」

狛枝「君たちが力を貸してくれるのなら…きっと僕らは魔王を倒せる。そして…現実に絶対に帰れると思う。僕らに利は一切ない戦いだけど……僕に、力を貸してほしい」

全てを語り終える。

桑田「……」

舞園「……」

辺古山「……」

戦刃「……」

誰も、何も話さない。
沈黙は、場を支配している。

僕は何も言わず、じっと皆の返事を待った。
どんな返事が返ってきても、僕は受け止めるつもりだ…。



舞園「……ふぅ、本当に水臭いですね」

辺古山「本当だな。私たちを小馬鹿にしてるとさえ思うぞ」

戦刃「答えなんて決まってる」

桑田「おい狛枝!俺たちはお前の何だっつーの!」

唐突に尋ねられて、少し戸惑う。
戸惑いながらも、とりあえず返事を返さないと思って答える。

狛枝「な、仲間…だよ」

桑田「俺もそう思ってるぜ。じゃあさ、仲間が困ってたら、お前ならどうするよ?」

狛枝「それは…助ける、よね。当然」

桑田「そういうことだよ!ここまで来て、グダグダ言い訳すんなよ!」

舞園「狛枝先輩はただ一言いえばよかったんです」

辺古山「私達に…」

戦刃「僕と一緒に戦ってほしいって」

狛枝「み、みんな……!」


──ああ、これが。

これが【希望】。

僕が愚直なまでに蒔いてきた“種”は……。

ようやく、芽を出したんだ……っ!



狛枝「ありがとう、皆!」

桑田「正直まだいろいろ整理はつかねーけどさ、狛枝がそれを一番正しいと思ってんなら俺はそいつを信じるだけだぜ!」

舞園「狛枝先輩を信じてますから」

辺古山「お前は変わった。私が保障する。…それに、いつまでもぼっちゃんをゲームの世界に閉じ込めておくわけにはいかないからな」

戦刃「私はただ、どんな状況でも諦めたくないだけ。苗木君が…そう言っていたから」


皆のまなざしを受けて、僕は力強い笑みを浮かべる。
さあ、苗木クン…!日向クン…!
僕の希望は、もう君たちにも負けないくらい強くなった。



どちらの希望がより強いのか、決着をつけよう──。



狛枝編
「希望の種」 終

投下終了です。次回日向編。
ラスト日向編の後、ようやくダンジョン突入です。

注意事項としては
ダンジョンからは、選択肢によっては離脱者が出ます。
離脱者が出るとストーリーにも変化がある他、最悪BADENDとなります。
ただし回避策として、今までの戦闘の評価により、【三回】までリトライが可能になります。
ご留意ください。

どうでもいい補足。
豚神編で散歩ではなく晩餐を選ぶと、霧切編で選択した新加入メンバーとの会話が挟まれます。
罪木編で3番目の選択肢を選ぶと、BAD√突入です。
2番目の選択肢を選ぶと、豚神・罪木が離脱します。
狛枝編では1を選ぶと狛枝PTが本気になり、ラスとバトルにふさわしい燃え展開になります。
2を選ぶとダンジョン部分は楽になりますが、シナリオ・ラスボスが変わります。


細かいことで悪いんだけど狛枝の才能って
幸運の後に不幸が来るんじゃなくてその逆だから
反動っていうのはおかしくない?

>>605
素で勘違いしてたなんて言えません。脳内補完お願いします。ごめんなさい。

日向編。遅くなりましたが、投下します。

6day 日向編


「乗り越えるべき壁」



日向「やっと着いたな…」

目の前には重厚な造りをした扉。
この先に、ラストダンジョンである魔王城が続いている。
そして魔王城の最奥には、ラスボスが待ち受けているんだろう。

日向「……」

この扉は最後まで残ったパーティしか入れない。
そう書かれていた。
だけど俺だけは、入れるはずなんだ。
俺は本来ここにいるはずのない人間…アバターだ。
イレギュラーであるところの俺なら、もしかしたら。
わずかな希望を抱いて、扉に手をかけようと──



モノクマ「待ってたよ~、日向クン」

扉に手を触れる寸前で止め、声の方向に振り向く。
そこにはモノクマはいつものように能天気な表情を浮かべながら(?)立っていた。

モノクマ「ボクの権限でオマエはそこの扉に入れないようにしたよ」

日向「余計なことするなよ。お前にとっても俺が一人でここに来るのは悪くないはずだろ?」

モノクマ「それよりもいいことを思いついたんだよ」

日向「……?」

こいつの良い事、なんて大抵良い事じゃない。
それでも聞く価値はあるのかもしれない。
だから俺は黙って先を促した。

モノクマ「それじゃ…ていやー!」

モノクマは掛け声をかけると、扉の横にある壁に向かってビームのようなものを打ち出した。
本当に何でもアリだな…。
正直ビームごときで壁に穴が空くような仕様ならここまで俺たちは苦労しなかっただろうな、なんて思いながら見ていると──


壁に、ぽっかりと穴が空いていた。



日向「……はあ?」

モノクマ「あ、勘違いしないでよ?これはただの演出だから!この先に繋がってるのは魔王城じゃないよ?」

日向「どういうことだよ?」

モノクマ「オマエはラスボスを倒して、その上で今回の“黒幕”も倒そうって考えなんでしょ?」

日向「その様子だと、やっぱり【魔王】は黒幕じゃないのか」

モノクマ「そんなの面白くないでしょ?」

日向「……」

モノクマ「わざわざ現実の肉体リンクさせてまでこっちに戻ってきた日向クンにはサービスしないとって思ってね!特別にこの先に進むことを許可してあげてもいいよ!」

日向「どういう意味だ?」


モノクマ「なんと!この先には、“黒幕”が居るのです!」



日向「!」

モノクマ「ボクは嘘はつかないよ?知ってるでしょ?」

日向「何を考えてる?」

モノクマ「“黒幕”もただ引きこもってるだけじゃつまらないんだってさ!」

日向「……」

モノクマ「勿論、この先に進めるのは日向クンのみ。しかも日向クンが入ったらこの入口はふさぐから、誰も助けになんて来れない。勿論日向クンが出ることも出来ないよ。この先に進んだら、黒幕を倒して現実に帰るか、負けて現実で死ぬか…そのどちらしかない…うぷぷ、絶望的な選択だね?」

日向「なるほど、な…」

チャンスを与えながら、絶望を与える。
モノクマ…いや、アイツらしいやり口だな。

モノクマ「それと、気付いていると思うけど…ゲームの世界での補正はもう無くなってるからね?それはこの先に関しても同じだから…うぷぷ」

……自分の力で切り抜けろって事か。
ずきりと、頭痛がした。
ぐにゃりと視界が一瞬だけ、歪む。



カムクラ「人間の身体は……こんなにもあっさりと壊れてしまう」

カムクラ「ツマラナイ生き物だ…人間は……」

カムクラ「まあ、僕には関係ない……」


昔の記憶。カムクラだった頃の記憶。
思い出さないようにしていたはずなのに、ここ最近は記憶の残滓がちらつく。
大量の死体。血塗れのカムクラ。その隣で楽しそうに笑う江ノ島。
最悪だった。

モノクマ「ありゃ?どうかしたの?」

日向「何でもない……」

気にしてたらいけない。
どうせこの先、嫌でもこの記憶に向き合わなくちゃいけないんだ。
こんなところで挫けてなんていられない。

モノクマ「それで、日向クンはどうするの?先に進むの?それとも皆の元に戻る?」

俺は……


1 先に進む
2 皆の元に戻る






日向「当たり前だ。行くにきまってる」

そうだ、ここで皆のところに戻って何になる。
俺は皆を救うためにここに来たんだ。こんな所で怖気づけない。
それに……こうして言い訳をしているだけで、俺はただ、過去の清算がしたいだけなんだろう。
自分の罪を見て見ぬふりして生きていけるほど、俺の心は強くない……。
例えそれが俺の自己満足であっても、俺はもう【日向創】なんだと、そう言い切れる自身が欲しい。

モノクマ「うぷぷ…日向クンならそういうと思ったよ。それじゃ、行ってらっしゃい」

日向「……」

モノクマに背を向け、一度呼吸を整える。
入ったら…二度と出ることはできない。
後戻りはもうできないんだ。

……大丈夫だ。俺は必ず帰る。

約束したもんな、七海。



数日前──。
七海が無事に回復し、罪木と二人で談笑しているところに割り込むようにして、俺は話し始めた。

日向「七海も元気になったことだし、少し話しておきたいことがあるんだ」

七海「話?」

罪木「話、ですかぁ?」

日向「ああ。お前達はある程度の事情を知っていると思う。そこで、今日から俺達は各自別行動を取ろうと思う」

七海「…?」

罪木「別行動…?」

日向「そうだ。この後は各自で、何が正しいのかを考えて行動してほしい」

七海「わ、私は日向くんについていくよ」

罪木「私もです!」

日向「……それはダメだ」

これは俺の戦いで、俺の自己満足だ。
それに他人を巻き込むわけにはいかない。
罪木や七海なら尚更だ。



七海「納得できないよ」

罪木「……日向さんは、それが最善だと思っているんですか?」

日向「ああ、俺はそれが最善だと思う」

罪木「なら、私は先に失礼しますね」

俺の事を何も疑わず、出際よく荷物をまとめていく罪木。
その様子を七海は不思議そうに見ていた。

七海「罪木さんは…それでいいの?」

罪木「きっと日向さんには考えがあるんです。だったら私は日向さんを信じて、自分が正しいと思ったことをします」

七海「そっか…」

罪木の言葉を聞いても、七海は納得がいかなかったようだ。
それも仕方ない。きっと七海は納得しないと思っていたし、これから説得するしかないだろう。



日向「ありがとう、罪木。どんなことになろうと、自分を信じて頑張ってくれ」

罪木「…はい。日向さんこそ」

罪木は笑みを浮かべて、小屋を出て行った。

日向「……」

七海「……」

小屋を静寂が包み込む。
まあ、こうなるのは分かってたしな…。

七海「私は、納得できないな」

日向「…だよなあ」

七海「日向くんは何を考えているの?」

…参ったな。
正直に答えると止められそうだけど、嘘をついてもばれそうだな。
……まあ、いいか。


日向「黒幕を倒しに行く」



七海「だったら尚更一人でなんて行かせないよ。日向くんは…現実から直接リンクしてるんだよね?」

日向「お前…気づいてたのか?」

七海「“グングニルの槍”はそもそも悪質なアバターを凍結するための管理者権限だもん。それを使われた日向くんが帰ってこれる方法は、モノクマが日向くんの復活を承認したか、日向くんが“気付いたか”のどっちかのはずだよ」

日向「…やっぱり、俺が現実に戻れたのは七海の仕業か」

七海「うん。このゲームがモノクマに乗っ取られる寸前に、日向くんのアバターと現実の日向くんが“ある条件を満たす”事で記憶をリンクすることが出来る様にしたんだ」

日向「記憶…そういうことか」

俺はこのゲームの仕組みについて納得する。
つまりこのゲームは、どちらかと言えばシミュレーターに近いものなんだ。
自分の人格や思考、記憶をそのままコピーしたアバターをゲームの世界に配置する。
配置されたアバターはそれに則り行動し、ゲームの世界を行動していく。
ゲームをクリアし、現実に帰るとき──

日向「アバターが行ってきたことや見てきた記憶を脳に【追加】する」

七海「うん」

そうすると俺たちはゲームをしてきたかのような錯覚に陥る。
そこからさらに他人に同じ経験を話す。他人がそれに同調することによって、その記憶は経験に置き換えられる。
そこまでいけば俺たちはその記憶を疑わないってことか…。



七海「簡単に言っちゃえば、夢のようなものなんだよね」

日向「なるほどな…」

七海「だけど、モノクマの乗っ取られたことによってその機能が廃止されちゃって、私の権限や…お父さんの権限も奪われちゃったんだ」

日向「やっぱりこの世界の管理者は…」

七海「うん。不二咲千尋…お父さんだよ。というより、正確にはお父さんのアルターエゴだけどね。お父さんの本体は私たちと同じ参加者としてゲームの世界にいるから」

こんな高度なプログラムを作れるんだから、不二咲はほんとうにとんでもないな。

七海「だけど機能が廃止する寸前に、私の権限で日向くんだけはその機能を使えることができたんだ」

そして俺は無事に真実にたどり着き、記憶を取り戻した。

日向「ちょっと待て、じゃあなんで俺は現実に戻れたんだ?」

七海「多分、ゲームに弾かれている状況で記憶の追加が行われたから、システムが現実に返してもいいって認識したのかも」

日向「は、はあ…」

その辺はさっぱりだが、要はシステムの誤作動ってことでいいのか?
随分な幸運だな…。
だけどそれよりももっと大事なことがある。

日向「ならやっぱり…他の皆が現実に戻っても、この世界であったことは何も覚えてないんだな?」

七海「うん。そうだね…もしかしたら、って可能性はあるかもしれないけれど。天文学的な確立だよ」

…それは、幸運なのか。
仲間を倒してきたつらい記憶を、知らなくて済む。
だけど同時に、仲間と過ごしてきた日々、友情、恋愛…全てが無かったことになる。
それは…ただのデータで、アバターのあいつらに耐えられるんだろうか?
……分からない。


でも、現実に戻らなくちゃいけないのは確かだ。
俺は、そのために命の危険を冒してここまで来たのだから。

七海「でも、どうして日向くんは戻ってきたの?現実からのアプローチも十分に可能だったと思うけど」

日向「まあ、未来機関のオッサン達じゃ不二咲のプログラムを解析できなかったってのが大きいな」

七海「……そっか」

七海は、俺ならできる、という言葉を飲み込んだんだろう。
きっと俺がカムクラの才能を使えばそれ位は出来ただろう。
……それでも、俺はゲームの世界で、皆を救いたかった。
それは自己満足の部分もあるけど、この日々を俺は、ただデータと過ごしただけなんて思いたくなくて。
あいつらだって一生懸命だったんだ、ってことを知らしめてやりたくて。
俺はこのプログラムに、僅かな【穴】をあけ、そこから直接アバターで侵入した。

七海「現実の身体とリンクしている状態がどれだけ危険か、日向くんもわかってるよね?ならどうしてそんな無茶を…」

日向「…俺のケジメだ」

七海「ケジメ?」

日向「ああ。俺は結局、自分を取り戻しただけ。それって過去を見て見ぬふりしてるだけだろ?だから俺は…このゲームの黒幕を倒して、自分にケジメをつけたいんだ」

七海「…それは、自己満足だね」

日向「ああ、そうだな。それで俺がやってきたことが変わるわけでもないし、何の解決にもなってない。だけど、だからこそ…これは俺の役目なんだ。真実に気付いて、再びここに戻ってきて…黒幕を倒す」

日向「それが俺のやるべきことなんだ」

七海は俺の言葉を聞いて、少しだけ顔をうつむかせた。
髪に隠れて表情が読めない。
いま彼女は何を考えているんだろうか。



七海「一つだけ、約束してほしいな」

日向「約束?」

七海「うん。絶対に、生きて帰ってきてね」

日向「……ああ」

分かった。
七海がそう望むのなら…絶対に生きて帰るさ。
何があろうとも。

七海「……うーん、言葉だけじゃ信用できないなあ」

と、なぜか七海はそう続けた。
言葉の意味がよくわからずに戸惑っていると、七海が一歩近づいてくる。

七海「だから、行動で示して欲しいな」

日向「──ああ、了解」

そこまで言えば、俺も七海が何を望んでいるのかはわかるつもりだ。
七海の身体をそっと引き寄せて、しっかりと抱きしめた。



そこまで思い出したところで、思考をやめる。
これ以上思い出しても、足枷にしかならない。
俺は絶対に生きて帰る、それだけわかっていれば十分だ。


日向「──よし、行こう」


一歩を踏み出す。

闇の向こうへ。

過去の清算、だなんて大げさすぎるけど。

これは自分にしかできないことで。

それで皆を救えるのなら、自分の自己満足も無駄じゃない筈だ。



日向編
「乗り越えるべき壁」 終



モノクマ「……ようやく、役者達の準備がそろったみたいだね。うぷぷ」

モノクマ?「……」

????「……」

モノクマ「オマエラの準備も出来てる?」

モノクマ?「……この窮屈な被り物は、まだ外しちゃいけないの?」

モノクマ「もうちょっと我慢してよ!楽しみは最後までとっておかないと!ちゃんと“魔王”の仕事をこなしてもらわないと」

モノクマ?「分かってるよ、姉ちゃん。ぼくならちゃんとこなせる」

モノクマ「うぷぷ、期待してるよ!」

???「……」

モノクマ「オマエの方も準備万端かい?」

???「あア…まだ少シ慣れナい部分はあるケど……あト少しで慣れるハず」

モノクマ「どっちも、万が一にも負けなんて許さないからね!皆にはずっとこのゲームで遊んでもらうんだから!!」

モノクマ?「うん、わかってる…」

???「ああ……」

モノクマ「楽しみだなぁ…霧切さんたちはどんな顔で絶望するのかなあ?うぷぷ…」


モノクマ「うぷぷぷぷ……あーっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!」



to be continue.

次回からダンジョン探索となります。
一部を除き、このゲームの根幹などのシステムなどの伏線をあらかた回収したつもりです。
漏らしはありそうですが。

まだ回収されていない伏線や、説かれていない謎も少しあるでしょうが、その辺りはダンジョン探索で明かされる予定です。
というか黒幕とかもう透っけ透けですね。謎でもなんでもないです。

もっと度肝を抜くような黒幕やらラスボスを考えていたのですが、>>1には広げた風呂敷を畳む程度しかできませんでした。
答えられる質問にはお答えします。

それではまた次回の投下まで。

霧切さんはこんなに愛されているのでもうぼっちじゃないですね。

投下します。
本日の投下は比較的あっさり目です。

Last Day


霧切「皆、作戦への協力ありがとう」

決戦の日。
ダンジョンの前に集まった皆に、このパーティのリーダーとして挨拶する。
この絶望的な状況で、私に協力してくれたお礼をしたかった。

霧切「正直、この作戦が成功するかは分からないわ。いいえ、正直に言います。可能性はほぼ0と断言できるでしょう」

霧切「負け戦、と言っても過言ではありません。それでも、命がけで戦うために集まってもらった皆様には敬意を表したく思います」

誰も、何も言わない。
私の言葉を、待ってくれているのだろう。

霧切「ですが、この場に集まり…戦う意思を表明した以上、私達は勝って、現実に戻りましょう。私達なら、不可能さえも引っくり返せると…信じています」



霧切「さあ、始めましょう──私たちの、戦争を」




豚神「戦いの日に相応しい、良いスピーチだった」

罪木「ええ、頑張りましょう」

江ノ島「ここまで来て負けるなんてテンプレ絶望展開なんて視聴者の諸君もツマラナイだろうしね」

七海「きっと何とかなるよ。私達ならさ」

九頭龍「新参者の俺が言うのもアレだけどよ…きっと勝てるぜ」

誰もが皆、強い決意を瞳に秘めている。
きっとこの数日、悩んだと思う。
私もそうだ。
このまま先に進むのが正しいのか、足を止めてしまった方が良いんじゃないかと思った。
けれど、きっと苗木君なら──こうして、前に進むでしょう。
そして私も苗木君の隣に立つのなら……こうして前に進まなくちゃいけない。



霧切「それでは本日の作戦を発表するわね。まず第一に、魔王城攻略に関しての作戦は現時点では通達しないわ。理由としては数点あるけれど、一番の理由は第八層の攻略の成功状況によっては魔王城の作戦に大きく影響があるからよ。脱落者が出ることも十分想定される、その状況で作戦の幅を狭めるような事は出来ないわ」

七海「確かに、あらかじめ魔王城攻略の作戦を通達して、作戦に影響が出るからって保守的な動きになっちゃうと第八層の攻略も難しくなっちゃうね」

豚神「とにかく第八層を攻略するのが先決というわけか。続きを頼む」

霧切「ええ。第八層の攻略の作戦を話す前に、第八層のボスをはっきりさせておくわね」

江ノ島「どうせ狛枝クンのパーティでしょ」

霧切「そうよ。つまり集団戦が想定される、そこで私達が取るべき作戦は【各個撃破】よ」

九頭龍「おい、本気で言ってるのか?俺達の戦力はお世辞にも良いとは言えねえ。なら集団戦で上手く混戦に持ち込んだ方が勝機があるだろ」

罪木「九頭龍さんに賛成です。各個撃破…つまり個人戦は個々の負担が大きくなりますし、何より向こうの戦力が圧倒的すぎます」

霧切「ええ、そうね。現時点で向こうの戦力で脅威なのは戦刃さんと辺古山さん、それに純粋な戦闘力の面で言ったら桑田君も私達にとって脅威になり得るわね」

豚神「……そうか、確かに各個撃破の方が利があるな」

九頭龍「どういう事だ?」

七海「ええっとね…簡単に言うと、集団戦だと戦刃さんが問題なんだよ」

江ノ島「戦争やら紛争慣れしてるお姉ちゃんは個人戦よりも集団戦の方が得意だし、混戦なんて期待できない。あたしたちや向こうの方も集団戦慣れをしているとは思えないし、残念無双まったなしって事よ」

罪木「あ、そういう事ですかぁ…」

霧切「ええ、その通りよ。私達の一番の脅威は言わずもがな、彼女をどう攻略するかで考えると、各個撃破が一番最善策なのよ」

豚神「だが、各個撃破にも弱点はある。俺達の戦力ではやはり個人戦に不安がある、という事だな」



そこまで話を聞いて、脳内で話をまとめていく。

一番の脅威である戦刃さん…おそらく戦闘力だけで言ったら私達の中で太刀打ちできる人はいない。
日向君か苗木君がいればあるいは…そう考えていたのだけれど。
彼女の攻略は…一応、スペシャリストがいるから問題はなさそうね。スペシャリストの行動が読めないのが不安要素ではあるけれど。

辺古山さん。
彼女は集団戦よりも個人戦で輝くタイプね。それゆえに彼女の相手はある程度彼女に精通している人物か、あるいは彼女と同等以上の戦闘力をぶつけるしか手はなさそう。

桑田君。
彼はスポーツをやっていたからある程度身体能力が高い。
そして厄介なのがその忍耐強さ。恐らく野球を続けてきたからこそ培われてきたものでしょう。
彼を突破するにはそれなりの忍耐力、あるいは彼を超える身体能力や戦闘技能を持つ人物とぶつけるしかないわ。
だけど彼は単調な動きを繰り返す傾向にある、少し頭が回る人をぶつけるのもありかしら。

舞園さん。
彼女は補助に徹しているゆえに、個人戦ならほぼ確実に勝利をあげられるでしょう。それこそ彼女を上回る戦闘力の人間をぶつけるだけで勝てるでしょうから。
彼女には確実に生き残らせたいメンバーをぶつけるべきなんでしょうけど、そうまでしている暇はない。
それは彼女も十分に承知しているでしょう。だからこそ死に物狂いでかかってくる。
そう考えれば舐めてかかっていい相手とも断じれないわね。
彼女の相手は……。

狛枝君。
彼だけは読めない。
身体能力や戦闘技能に関して言えば、平均値。可もなく不可もなくといったところでしょう。
だけれど怖いのは才能と思考。
常人では測りきれない、私でさえ読むことができない彼の動きを読める人間がいるとすれば──。



霧切「それじゃあ、誰と戦ってもらうのかを今から言うわ」

七海「個人戦なら誘導をかけて分散させるんだよね?狙い通りのマッチングになるかな?」

霧切「その辺りは抜かりないわ。手を考えてあるの」

江ノ島「なぁるほどねー。それじゃ、対戦表発表と行きましょうかー」

霧切「その前に一つ言っておくわ。罪木さんの相手は発表しない、貴方には不足している戦力の元に補佐という形で着いてもらうわ」

豚神「確かに、罪木一人で戦わせるよりは才能を生かした補佐の方が有用か」

霧切「ええ、だから今から発表するのは罪木さんを除いたうえでの組み合わせ。その辺りを考慮して頂戴」

恐らく、これが最善の組み合わせの筈……!


対戦相手を設定してください。
霧切の意見や霧切達のステータスを参考にしても構いませんし、無視をしても構いません。
組み合わせによってシナリオに変化があります。

霧切VS???
豚神VS???
九頭龍VS???
江ノ島VS???
七海VS???


↓3



霧切「私は舞園さんを相手にするわ。豚神君は桑田君を、九頭龍君は辺古山さんをお願い。」

豚神「妥当な判断だな、了解した」

九頭龍「ペコが相手か……ああ、分かった」

霧切「江ノ島さんは戦刃さんを、七海さんには狛枝君をお願いできるかしら」

江ノ島「ま、無難な組み合わせだよね~」

七海「うん、大丈夫だよ」

霧切「それじゃあ、罪木さんだけど…」

罪木「はい」

江ノ島「あたしは補佐とか要らないよ。むしろ守る手間が増える分邪魔になるだけ」

霧切「そうね、貴方はそうでしょうね」

九頭龍「俺もいいぜ。ペコとはタイマンで決着をつけてえんだ」

霧切「そう…私もいいわ。舞園さん相手に二人かかりは無駄でしょう。とすると…」

七海「うーん…」

豚神「俺はどちらでも構わん。戦力はあるだけ有用だからな」

七海さんは少しだけ悩んだ後、口を開いた。

七海「それじゃあ、豚神くんと罪木さんがペアでいいよ。私は一人でも大丈夫」

霧切「本当かしら?正直狛枝君の相手は貴方一人だと厳しい気もするのだけど」

七海「うん、大丈夫だよ。今は今は“余計な処理”も無いから、自分の力をフルに使えるし」

豚神「そういえば、会話のレスポンスが心なしか早くなっているな」


霧切「それじゃあ、これからの流れを説明するわね」


私が数日前から下調べをした結果、第八層は大きく分けて三つの区画に分かれている事が判明したわ。
入口からすぐに第一区画に繋がっていて、第一区画は通路と大きめな空間が数個設置されている。
第一区画はモノクマ型の雑魚が何十匹も配備していたわ。
恐らく第一区画で私たちの体力を削る作戦でしょうね。
だけど恐れる必要はないわ。この区画は火力でごり押してしまった方が早いわね。
下手に体力を温存したりすると余計に時間が掛かって、結局普通に突破するより消耗してしまう。
第一区画は江ノ島さん・九頭龍君・豚神君を先頭に立たせて火力で掃討、その後に私達後衛部隊が残党を処理しつつ前進、第二区画の前で合流という動きになるわね。

第一区画を抜けると大広間を挟んで5つの小部屋に分かれている。
各個撃破を目的としている私達には有利な地形ね。
恐らく本来の第八層はこの小部屋でパーティを分散させる仕掛けになっていたのでしょう。
狛枝パーティが待ち受けてくるとしたらこの大広間でしょう、戦力等を鑑みても狛枝パーティは私達が分散する前に何とかしたいと考えているはずよ。

そしてここからが本番ね。
第二区画で合流した私たちは速やかに武装を整えた後、第二区画に突入。
この時点で狛枝君が何かを仕掛けてくる可能性はあるけれど、恐らく彼らは私達を一網打尽にしたい、けれど正々堂々とした戦いを狙ってくるはずよ。
だから突入直後に仕掛けてくることは想定しなくてもいいわ。
そして突入後に私の合図で各自、自分の戦う相手に攻撃を仕掛けて頂戴。
他の敵は無視して、とにかく自分の戦う相手だけを狙って、出来るだけ小部屋の近くまで誘導して。
彼らも唐突に襲われれば彼らも対抗せざるを得ないはず。
全員の距離が一定以上離れた後、私の合図でスモークグレネードを展開してもらうわ。
後は小部屋に各自突入、向こうも冷静な判断を取れないでしょうから、数名は確実に罠にかかるはずよ。

もしも罠にかからなかった場合だけど、その辺りは抜かりないわ。今は全員が罠にかかることを想定して頂戴。
後は各自の判断に任せる。
とにかく、生きて勝利することが条件。
はっきり言うけれど、魔王城の攻略はこれよりもっと厳しいものになるはず。
戦力が一人減ればその分成功確率も下がるわ。

第三区画は第二区画を超えた先の区画。
ここには魔王城に繋がる扉が配置されている。
無事に狛枝パーティを倒せた人からここで待機する形になるわ。



霧切「……こんな所かしら」

豚神「なんというか、穴の多い作戦だな」

七海「仕方ないよ。現状戦力も少ないし、むしろここまで作戦を立てれることが凄いと思うな」

九頭龍「なあ、そういえば霧切……縁起の悪い事を言うみたいで悪いけどよ…もしも狛枝パーティとの戦闘でお前が脱落したら、魔王城の攻略はどうするんだ?」

霧切「さっき貴方たちに携帯を渡したでしょう?」

罪木「そういえば…なんでこんなものがあるんでしょうね?」

豚神「俺もよく分からんが…武器を集めている最中に見つけたものだ。一部の機能は使えないが、登録した番号に電話をかけることはできる。簡易のトランシーバーと言ったところか」

霧切「各自の形態にそれぞれ私がいなかった場合の魔王城攻略の作戦を細かに記してあるわ。一応どの状況にも対応できるようにしておいたつもりよ」

江ノ島「ま、なんにせよ。勝てばいいって事でしょ?」

霧切「ええ、そうよ。勝ちなさい、生きて、勝ちなさい。負けることは許さないわ」

私は力強く、宣言する。
言葉には力が宿る。
生きて、勝つ。
それだけの言葉でも、きっと彼らの力になるはずだ。



豚神「念のため、武装の確認をしておくか」

霧切「第一区画の攻略には最低限の武装で十分よ。罪木さんと七海さんは他の武装を運ぶのをお願い。残党狩りは私が一人でやるわ」

江ノ島「ま、その辺は問題無し☆あたしが全部ぶっ殺してあげる☆」

九頭龍「おっと、カラシニコフか。癖も無くて使いやすい、無難なチョイスだな」

豚神「制圧戦では火力などを統計すれば軽機関銃のチョイスもあったが、機動性を重視したチョイスだ」

七海「んっ…意外と重いね」

罪木「腕がプルプルしそうです…」

豚神「俺もまあ、よくここまで集めたものだと思う」

九頭龍「そもそもこのファンタジーな世界にこんな重火器やらがホイホイ転がってる時点で大分あれなんだけどな」

霧切「私はナイフがあれば十分ね」



各自ごそごそと支度を整える。
端から見れば戦地に向かう兵士にも見えるのだろうか?
あながち間違ってはいない。私達は兵士だ。
祖国の勝利、なんていうと語弊があるけれど…自分たちの勝利の為に、全力で足掻く。

霧切「準備は出来たかしら?」

九頭龍「ああ、上等だ」

豚神「問題ない」

江ノ島「おっけーい」

七海「大丈夫だよ」

罪木「準備できてます」

霧切「ここから先、気を抜くことは許されない──行きましょう」

九頭龍君達がダンジョンに足を踏み入れる。
私達が突入するのは、彼らが進軍し、状況の伝達が来てからだ。


あ、全てに決着を。


最後で誤字をやらかす大失態。
本日の投下はここまでです。次回の投下は時間が掛かるかもしません。

お久しぶりです。
そういえばvitaでロンパ1&2が出ますね。楽しみです。
1のアイランドモードで妹様とイチャイチャできるのか、さくらちゃんとちゅっちゅできるのか楽しみで仕方ないです。
夏にはアニメも始まりますし、ダンガンロンパ絶頂期ですね。

アニメ始まるまでに完結させなくちゃ(使命感)
というわけで投下します。本日は短いです。クライマックスなだけあって色々慎重になってしまいます。



日向「……」

今、俺は海を泳いでいる。
ウエットスーツを着けて泳いでいる。

……何を言っているのかわからない?
俺も分からないさ。

日向「……疲れてきたな」

こうして明るいノリでやっているが、実際のところはそこまで暢気な事態じゃない。
俺は確かに黒幕と決着をつけるために次元の亀裂のような場所に入ったはずだった。
いや、確かに入ったんだ。

しかし、闇の先に広がっていた光景は俺の想像を遥かに超えたものだった。



ギラギラと地上を照り付ける太陽。

砂浜を濡らす波。

辺り一面に広がる──海。

日向「……は、はあ?」

意味が分からない。
いや、分かってはいけない気がする。
そこはどう見ても南国……というか以前俺たちが体験した新世界プログラムにあったジャバウォック島にあった砂浜そのものだった。

日向「な、なにがどうなってるんだ…?」

困惑しながら辺りを見回しても、誰もいるわけじゃない。
砂浜だ。海だ。

日向「こんな所で何をすればいいってんだよ…」



「──ん~、気持ちい~」

声が聞こえた。
俺は僅かに警戒する。
ここに誰かがいるなんて話は聞いていない。
もし存在するのならそれは……敵。

俺は腰に下げていた刀を抜きさる。
俺が持っていた数少ない武器だが、どうにもこの砂浜と合わない。
当然だけどさ。

日向「誰だ…?」

江ノ島「やっほー。日向クン」

桃色の髪を結った美少女。
常に不気味な笑みを浮かべる少女。
周りに絶望を振りまく女。
そんな絶対に出会いたくない人間ランキングで常にトップを取っているであろう奴が、
あろうことかビキニを着て、
海の上にぷかぷかと浮いていた。



日向「……」

そこには、江ノ島盾子がいた。
一瞬、誰か別人という事も考えたけれど、間違いない、こいつは江ノ島だ。
戦刃の変装にしては、【完璧】過ぎる。
モノクマの顔の髪飾り、雑誌に載っている写真と遜色ない美貌、そして何より──濃厚な絶望。
特に今の俺は絶望にやたら敏感になってる。
この咽かえるほどの絶望を持った人物なんて、江ノ島くらいしかいないだろう。

江ノ島「まさか本当に来ちゃうなんてさ、バカってよく言われない?」

日向「そうかもな」

というかこいつ、いつの間に……?

江ノ島「…ま、こうやって話すのも面倒くさいし、とっとと“資格”があるか確認させてもらうよ」

日向「資格…?」

江ノ島「そ、黒幕に会う資格☆日向クンみたいなおバカさんでも分かる簡単な謎だから大丈夫だよ」

日向「……言ってみろよ」

江ノ島「そいじゃさっそく」

江ノ島は海から上がると、俺の元へと近づいてくる。
俺は警戒を怠らずに、けれど不用意には動かなかった。
江ノ島は俺を舐めるように見回した後、そっと俺の耳元に口を寄せる。
そして囁くように、


江ノ島「あたしは、だあれ?」


そう、訊ねた。


彼女は──。




日向「そう、霧切だ……」

いや違うだろっっ!

どうしてボケた!?今ボケはいらないだろう!?

落ち着け、深呼吸しろ、あれ?
辺り一面に広がっているのは、海?
あれ、もしかして七海か…?
はは……七海がこんなにたくさんいる…天国じゃないか…。


日向「……はっ!」

な、なんだ今の。
なにかとてもうれしい悪夢を見たような…。
落ち着け、江ノ島が言ってるのはこう言う事だ。
どうしてここにいるはずの無い、江ノ島がここにいるのか?
そしてこいつが言った自分は誰?という問い。

これはつまり、黒幕に会いたいのなら黒幕の正体くらい知ってるだろう?
という意味の問いなんだ。

落ち着け俺。
一度俺は答えに辿り着いているんだ。
落ち着けば正常な答えに辿り着けるはずだ。




日向「そう、モノクマだ」

江ノ島「いやだからそのモノクマの中身を聞いてるんだけ──」

日向「ッマーーーーーーーーーーン!」ベチーン!

うっかりしたのでとりあえず江ノ島の頬をはたいた。

江ノ島「へぶっ!?」

日向「すまん、蠅が止まってたんだ」

江ノ島「い、いきなりあにを…ぁう…痛いんですけど……」

日向「それで、ああ、お前の正体の話だったな」


もうボケなくていい。
フリとかじゃないぞ。本気でボケなくていいぞ?
伏線は沢山あった。
江ノ島ではない…でも江ノ島以外にこんなことをできる奴はいない。
もうわかるよな?




日向「お前は、江ノ島アルターエゴ、そうだろう?」

江ノ島「…正解」ヒリヒリ

日向「どうした頬を抑えて」

江ノ島「日向クンに叩かれたんだけどね!」

日向「まず、違和感があったのは……江ノ島──ああ、お前じゃない方の江ノ島、言ってしまえば現実の方の江ノ島だが、その江ノ島が今回の件に関わってないことが濃厚だったんだ」

江ノ島「へえ?」

日向「だけど状況からして犯人なんて江ノ島くらいしかいない、仮に江ノ島が黒幕じゃないとしたら誰が、いったいどういう意味で俺たちをこんなゲームに巻き込んだのか、それを考えてみた」

江ノ島「ふんふん」

日向「そこで気付いたのは、この世界が繰り返されてるって事だ。モノクマからこの世界は何度も繰り返されていると聞いた。そしてその度に俺たちの記憶が消えて、最初からやり直していることも」

日向「世界を繰り返すのは百歩譲って良しとしよう、でもなぜ記憶を消す必要があるんだ?」

江ノ島「前の世界の記憶と同じことをされても面倒なだけじゃん」

日向「そう、俺もそう考えた。だけど違うな、もし黒幕が何か目的があって俺たちをゲームの世界に縛り付けているのなら、この方法は逆効果なんだよ。これ江ノ島本人にも言える、あいつの行動原理は【絶望】。俺たちを絶望させるならそもそも記憶を消すなんてヌルイ事はしない」



日向「そこで気付いたのが二つの可能性だ。まず一つ目は、黒幕側に記憶を消さなくちゃいけない理由がある。もう一つはそもそも黒幕には“どうにも出来ない”って事だ」

日向「もしも一つ目の可能性なら、何も分からない。だから俺は二つ目の可能性を考えた。黒幕にはどうにもできない、たとえば世界をリセットさせた際、強制的に記憶が消える……ここまで考えて、俺は気づいたんだよ」

江ノ島「……何に?」

日向「決まってるだろ…?この世界のベースとなったプログラムは、【新世界プログラム】。そして新世界プログラムには、少なくとも俺がそのプログラムに入った時には、ある欠陥があった」

江ノ島「ネットで死ぬとリアルでも死ぬ、ソード・アート・オンライン仕様の事ね」

日向「あ、ああ…まあ、そう言う事だな。その欠陥を思い出して、なぜ俺達は仮想空間であり、新世界プログラムをベースとしたゲームにいるはずなのに、消えても死なないのか疑問になった」

江ノ島「……」

日向「そして世界は繰り返されている…ってことは誰が言うまでも無く、皆消えても再び生き残ってることになる。これって…明らかに矛盾してるよな?」



日向「後は芋づる式だな。様々な可能性を検討した。そして最終的に俺が納得して、見出した答えが──」

江ノ島「江ノ島アルターエゴ…あたしって事か」

日向「ああ、お前は以前江ノ島によって新世界プログラムに持ち込まれたけれど、ウサミによってデリートされていたように思われてた。でも実際は生きてたんだな?」

江ノ島「だいせいかーい。困っちまったことによぉ、ウサミのやろーにボロクソにやられたせいで満身創痍、プログラムの欠片みたいな状態で何とか生き永らえちゃったあたしは、プログラムの端っこでこそこそと隠れ生きて力を溜めたとさ」

江ノ島「そのついでに面白い拾いものをして儲けもん~とか思ってたらさらにおいしい話しが来ちゃってさ!そう、なんとこのプログラムをベースにしてゲームを作るっていうじゃん?こりゃもう盾子がなんとかするしかないな!と、そう思うわけですよ?ですよね?そうに決まってます」

江ノ島「そんなわけでロックマンエクゼのフォルテの様にこの辺りのプログラムを食い散らかして成長したわたくしは復讐を果たすためにこのゲームを乗っ取ったのです。華麗に!迅速に!」

日向「全く…不二咲もどうして気付かなかったんだろうな」

江ノ島「それは基本的に新世界プログラムの管理は不二咲アルターエゴに一任されていたからだよ。本体の方が管理してたらあたしなんかさっさと見つかってお陀仏コース間違いなしだったね」

日向「…なるほどな」

江ノ島「さて、一旦話はここでおしまい。ま、つっても後はあたしの動機とかその辺だろうけどさ、今ここでその動機を明かして日向クンをあっと驚かすのも悪くないんだけどね?それよりは…うぷぷ、もっと面白いゲストが待ってるわけだし、そっちを先に楽しんでもらってからの方が良いかなって」

日向「どういう意味だ?」



江ノ島「それはすぐ分かるって、日向クン自分の黒歴史()を清算しに来たんでしょ?」」

日向「……」

江ノ島「過去は消せないのにね?本当にバカみたいだね!」

日向「分かってる…」

江ノ島「分かってないよ人殺し。オマエは人殺しだよ。人殺し人殺し人殺し」

日向「……っ」

江ノ島「おかあさんも、おとうさんも、クラスメイトも、友達も、親友も、お隣さんも、塾の先生も、気になるあの子も……全部全部全部お前が殺したんだよ」

日向「くっ……ぅ!」

江ノ島「それでなに、俺は絶望から足を洗った?今度こそは真っ当に暮らせる?誰にも迷惑をかけない?バカなの?死ぬの?」

江ノ島「あははははははははは!!!そっれさいっこうに笑えるよ!」

江ノ島「アンタには無理。あたしが代わりに断言してあげる。オマエには無理。無理無理無理無理ムリィ!!!絶ッッッッッッッ対に無理!!!」

江ノ島「俺には才能がある?俺をバカにした奴らを見返す?希望ヶ峰学園に行けば変われる?才能が見つかる?」

江ノ島「ねえねえ?それで結果はどうだったの?どうだったんだっけ?ねえ?日向クン?」

日向「う、うるさい…やめろ…」

江ノ島「言えないの?全くしょうがないなぁ…もう☆今回だけ、私が言ってあ・げ・る!」





江ノ島「  オ  マ  エ  は  無  能  。  た  だ  の  雑  魚  な  ん  だ  よ  」





 



日向「あああああああああああああああっ!!??」


がむしゃらに江ノ島に飛び掛かる。
何も考えられない。
頭が沸騰しそうだ。
心がどす黒く染まって行く。

江ノ島「あはぁ……良いよぉ、その絶望した顔……食べちゃいたいくらい…」

江ノ島が恍惚とした笑みを浮かべている。
その顔をぐちゃぐちゃに潰してやる。
目玉を抉り、耳を削ぎ、唇を切り落とし、鼻を潰し、原型を留めなくなる位まで壊し尽くしてやる……!

江ノ島「でもぉ、まだまだ☆日向クンの闇はこんなもんじゃないもんね?その為のスペシャルゲストだもんね?」

日向「殺してやる……!」

俺は江ノ島に向けて闇雲に刀を振るうが、軌道を読まれているのか、刃が届くことはない。

江ノ島「いいよ、殺されてあげる。だけどここじゃ嫌だなあ、死ぬならもっとロマンチックなところで死にたいし…ね?」

日向「黙れ…」

江ノ島「あは!怒られちゃった~、まあいいや。あたしをぶっ殺したかったら海の向こうまでおいで。その先に大きな孤島がある。そこで待ってるよ」



江ノ島「それじゃ、また会う日まで。アデュ~」

江ノ島はそう告げると、まるでテレビのスイッチを切った時の様にあっさりと。
ぷつりと姿を消した。

日向「クソッ…ふざけやがって……」

あいつだけは絶対に許さない…。
海の向こう…上等だ…渡ってやる…。


1 急いで江ノ島を追う
2 一旦落ち着く




日向「──ッ!」

思いっきり、自分の顔面に拳を叩き込む。
冷静になれ、日向創。

こんな事で熱くなってどうする。
これじゃあ江ノ島の思う壺だ。

日向「よし、大丈夫だ……」

俺は息を吐いて、辺りを見渡す。
真っ青な海がどこまでも広がっている。
この先に江ノ島達の本拠地があるのか。
勢いに任せて泳ぐのは得策じゃない。
今は船か何かを探そう……。



日向「何もないな…」

困ったことに砂浜の近くに船になりそうなものは無かった。
生えていたヤシの木を使って簡易ボートでも作るか考えたが、まるで俺の考えを読んだかのように、ヤシの木はデータの塵となって言った。
ついでに砂浜の外から何か探そうとしたが、どれだけ歩いても砂浜から出られない。
もしかしたら抜けられないようになっているのかもしれないな。

日向「つまり、泳げと……」

気が遠くなるな……。
だけどこの目的は大体わかってる。

泳ぐ、というのは楽なことじゃない。
しかも先の見えない孤島を探しての超遠泳。
どう考えても疲労が蓄積するし、第二に俺の装備が全部無駄になるって事だ。
一応対決に向けて刀や銃などをあらかじめ持ってきておいたのだが、海の中となれば別だ。
こんなものぶら下げて泳いでいたらすぐに重さに耐えきれなくなるし、万が一渡り切れたとしても海水に浸せば銃は使えない。
結局のところ俺は裸同然で先に進むことになるのだ。

日向「とはいえ、最終対決に裸ってのも締まらないよな」

なんてことを考えて唸っていると、並みが何かを運んできた。
……ウエットスーツ。

日向「これ着て泳げって事か……」



そして現在に至る。
俺は先の見えない海をひたすらちゃぷちゃぷと泳ぐ。
今も大切な仲間を苦しめている黒幕を倒すために……。

日向「そろそろ本気でしんどくなってきたな……」

腕が重くなり、足の動きもだんだん弱くなっていく。
もうそろそろ体が動かなくなって沈むぞ…なんてことを考えた矢先に、“それ”は見つかった。

巨大な孤島。

そしてそこには、モノクマロボが何体も徘徊している。
まるで中を厳重に守っているかのように。
【何を】なんて言わなくても分かってる。
“アレ”を、俺が見間違えるはずがない。
憧れて、好きになって、裏切られて──それでも俺が、大切だと思う。


【希望ヶ峰学園】が──。

投下終了です。
そろそろシリアス展開にも疲れてきました。
舞園さんにひたすら腹パンする話とか霧切さんの尻をひたすら撫でる話とか書きたいです。

次回は出来るだけ早く頑張ります。

投下します。



苗木「……ん、んぅ…」

暗い……。
何も見えない。

「…ろって…!」

誰かが呼んでる……。
起きないと…。

苗木「んぁ……あれ?」

目を開けると、目の前に誰かがいた。
視界がぼやけていて、誰だかよく分からない。

「寝ぼけてるのかよ?苗木!」

苗木「だ、れ…?」

桑田「誰って、俺だよ俺!桑田玲恩だっつの!」

苗木「桑田クン……?」

ようやく脳が覚醒したのか、思考がクリアになって行く。
思考と同じく、僕の視界もクリアになった。
そこには特徴的な髪色をした少年──桑田玲恩クンが心配そうに僕の事を覗き込んでいた。



舞園「随分とお寝坊さんなんですね、ビックリしましたよ」

苗木「あれ?舞園さん…どうしてここに…?」

僕は確か……。
……、あれ?
何も思い出せない。

桑田「やっぱ寝ぼけてるじゃねーか…」

舞園「苗木君、ここは希望ヶ峰学園で、ここは私たちのクラス、今はお昼休みですよ?」

苗木「え、ええっ!?」

桑田「お前一時間目からずっと寝てやがってよぉ…ったく、先生も呆れてたぜ?」

苗木「ごめん…」

そうだった。
僕は希望ヶ峰の学生で、今は皆と学園生活を過ごしている。
うん、大丈夫だ。ようやく思考が戻ってきた。
どうも僕は朝から昼までずっと眠っていたらしい。
昨日夜更かしでもしたのかな?



苗木「ってそういえば四時間分の授業全部聞いてないよ!」

桑田「うわ、お前それマジやべーんじゃねーの?もうすぐ期末だぞ」

ふと窓の方に目を向けると、外は透き抜けるような晴天。
蝉が五月蝿く鳴き、夏の訪れを予感させる。

舞園「期末で赤点だと、夏休みは補習になっちゃいますね?」

苗木「そ、それはまずいよ!なななんとかしないと!桑田クン!ノートを…」

桑田「俺は書いてねーぜ!」

苗木「キミもやばいじゃないか!」

桑田「だから俺は苗木が頼りだったんだっての。お前が寝ちまうからどうしよーもねーだろ」

苗木「あまりに清々しくて許しちゃいたくなる位外道だね…」

舞園「いつもの様に借りてくれていいんですよ?」

ああ、そうだ!
こういう時はいつも  さんを頼って──。

苗木「痛っ……!」

頭がずきりと痛む。
なんだ、これ……頭が痛い……。
何か、触れてはいけないことの様な……。

桑田「お、おい!大丈夫か?」

舞園「保健室に行きますか?」

苗木「はぁ……ふぅ。大丈夫だよ、心配かけてごめん」


桑田「そうか?ならいいけどよ……」

舞園「桑田君、私たちは先に屋上に行ってましょうか?」

桑田「だなー。舞園ちゃんと二人っきりで食べるとかレアな機会だし」

苗木「屋上?」

桑田「あん?俺たちはいつも屋上で飯食ってたろ?今昼休みだぞ?」

苗木「あ、そうだったね…」

そうだ、僕と桑田クンと舞園さんと──いや、僕ら三人はいつも屋上でお昼ご飯を食べていた。
まだ寝ぼけが残ってるみたいだ。

舞園「苗木君はノートを貸してくれそうな人に当たってみてはどうですか?」

桑田「幸い全員教室にいるみてーだしな、何人か声かけたら屋上に来てくれよ」

苗木「うん、分かった。二人は先に食べてて」

桑田「モチのロンだぜ!」

そう言うと二人は弁当を持って教室から出て行った。
さて、僕もノートを借りに行かないと…。


教室を見渡すと、クラスメイト達が思い思いの昼休みを過ごしている。

端っこの席では十神クンがサンドイッチを片手に読書に耽っている。
その隣で腐川さんが同じように読書に耽っている…けど、たまに十神クンの事を盗み見てはニヤニヤと笑っている。
十神クンもその視線には気づいていて、舌打ちをしながら邪見にしていた。
まあ、なんだかんだ言っても十神クンは腐川さんの事を気に入っているんじゃないだろうか?
本当に嫌いなら近くにいる事すら拒否するくらいの人だもんね…。

窓際ではセレスさんが優雅に紅茶を啜っていた。
その隣で鼻息を荒くしながら山田クンが右手に持っている漫画の解説をしている。
セレスさんはそれを興味の無さそうに聞き流している。
この二人もなんだかんだでお似合いだ。
どこか皆とずれているセレスさんを無理やり輪の中に入れていく山田クン、いつのまにかそんな構図をよく見かけるようになった。
普段は主人とペットみたいだけれど、この二人は仲がいいんだと思う。

中央では石丸クンと大和田クン、不二咲クンの三人が楽しそうに談笑していた。
学級委員と不良と男の娘。
まるで接点の無さそうな三人だけど、たぶんこのクラスの中で一番と言ってもいいくらいに仲が良い。
というかぶっちゃけると…少しだけ気味が悪かったりする。
なんていうか…こう、腐川さんが好きそうな……。
と、とにかく、この三人は特に仲がいい。それに石丸クンはノートをしっかりとっているだろうし、彼らに頼めば解決しそうかもしれない。

教壇の近くでは朝日奈さんと大神さんが談笑していて、二人の談笑を葉隠クンが茶化している。
朝日奈さんと大神さんは誰がどう見ても親友同士って間柄で、僕が今更言える事なんて特にない。
葉隠クンは色々と特殊な経緯からか僕達の中では浮くかと思ったけれど、持ち前の能天気さで皆の輪に上手く馴染んでいる。
多分大神さんの事を表立ってからかえるのは彼くらいだと…思う。

そして十神クン達の対極の位置の席に座っている…江ノ島さんと戦刃さん。
彼女たちはよく分からない。
江ノ島さんはノリも良いし可愛いし、クラスでは結構目立つタイプだ。
戦刃さんは逆に自分から輪に混ざって行くタイプじゃないし、口数も少ない。
二人はどうやら姉妹みたいで、よく二人で過ごしている。
けれど──彼女たち二人には、僕らの知らない、“何か”があるような気がするんだ。
まあ、僕の考え過ぎだろうけど。

──さて、これでクラス全員だ。
……全員?

苗木「……っ」

また、頭痛がした。
誰かを忘れているような。
いや、そんなわけ……ない。他に誰も、いるわけが、ない。
僕は教室にポツンと残された、【使われていない】椅子を一瞬だけ見つめて、その思考を振り払った。


さて、誰にノートを借りようか?



苗木「……っ!」


「苗木君?ぼーっとしてていいのかしら?」

苗木「ご、ごめん…ちょっと考え事をしてたんだ」

「全く…授業中なんだから集中しなさい」

苗木「ご、ごめん。  さん……って、あ黒板!」

「はあ…仕方ないわね。私のノートを見せてあげるわ」

苗木「ありがとう…やっぱり  さんのノートは綺麗にまとまってるね」

「…そんなことを言っておだてても何も出ないわよ」

苗木「あはは…そういうつもりじゃないんだけどな」


──僕は、いつも誰かにノートを借りていた。
僕の記憶では、その人はいつも僕にノートを見せてくれて。

記憶…?
何を言ってるんだよ、僕は。
だってそんな人……どこにも。

苗木「ぅぅ…っく、痛い……」

頭痛がひどくなる。
ダメだ…………。
考えちゃいけない、これ以上余計なことを考えると頭が、壊れる……っ!


ノートを、ノートを借りないと……。


マジでいなくてワロタwwwwwwwwwwwwww
どうでもいいけど邪見じゃなくて邪険な
この場合無碍の方が近いかもしんないけど

>>691
うわああ恥ずかしいぃいい!
ありがとうございます。何をしとるんじゃ。

安価下



いや、ここで、挫けるな……。

諦めるな……。

逃げ出すな……。

苗木「う、ぐ、あ、あああ!!!」

頭が割れる。
脳味噌が溶けていく。

それでも、止めない。

ここで諦められない──!

そうだ、僕は彼女を忘れない……。

だって彼女は、僕の大切な──。


苗木「う、おおおおおおおおっ!!!」


き            ぎ

        り
                                    り


視界が真っ赤に染まる。
息が荒くなる。

空間が歪んでいく。
世界が、変貌していく。


苗木「そう、だっ…彼女の名前は……」


思い出せ。

彼女の名前を──!

いつだって僕を救ってくれた──あの人の名前を!


人物を指名しろ。


↓ 




苗木「──霧切さんっ!」

僕がその名前を告げた瞬間、世界が崩壊した。
まるで、止まっていた時間が再び動き出したかのように。





江ノ島「ここで永遠に、暮らそう?」





苗木「それは、出来ない……っ!」

僕は、江ノ島さんの手を振り払う。

江ノ島「う、そ…アンタ、あの空間を、自力で……!?」

苗木「この世界は、偽りだっ!間違ってるんだ!」

江ノ島「違う、これがアンタの望んだ世界!誰も傷つかない、自分すらも傷つかない!幸せな世界だよ!」

苗木「それは違うよ!」

僕は、辺りを見回す。
皆の顔が困惑に満ちている……んだろうか?
今、偽りの世界だと気付いた僕には、彼らのその表情でさえも薄っぺらい。
まるで別の生き物ようだ。

苗木「僕がいるべき世界は、ここじゃない……!」

江ノ島「はっ!何言ってんの?ここはアンタが自分で創りだした世界よ?先に進むのが怖くて、自分を理解しちゃうのが怖くて、作り上げた理想郷」

江ノ島「皆がアンタの為に祝福してくれる世界。アンタはただ幸せな毎日を享受するだけ」

苗木「そんな世界は…間違ってる!誰も傷つかない、自分も傷つかない世界なんて……そんなのまやかしだ!皆どこかで傷ついて泣いて、諦めて…それでも前に進もうと足掻く……それが正しい世界だ!」

江ノ島「誰も傷つかない世界なんて、アンタの大好きな希望に満ち溢れてるじゃん……なんでよ?」

……そうだ。
この世界は誰にでも優しい。
きっとこの先には、幸せな未来があるんだ。
きっと僕は、希望とか、関係ないんだ。

ただ──


苗木「この世界には、霧切さんがいないんだっ!」


大切な、彼女がいない。
僕がこの世界を出る理由は、それだけなんだ。



「……そこまでにしなさい、苗木君。いくら私でも照れちゃうわ」

僕の叫びの僅か後。
式場に、凛とした声が響いた。
その声は、僕が最も求めてやまなかった声で。
声を聴いただけで、僕は崩れ落ちそうになってしまう位に脱力してしまった。

江ノ島「なん、で…っ!オマエの存在は徹底的に無くしたはずなのに…っ!」

「残念だったわね。苗木君の私への愛が成せる技よ」

江ノ島「チッ……!」

つかつかと、“彼女”は優雅に僕達の元へ歩いてくる。
江ノ島さんは額に汗を浮かべながら、半歩後ろに下がった。

“彼女”は僕の顔を一瞥してから、薄く微笑んだ。

「よく、思い出してくれたわ。もう少し時間が掛かると思っていたのだけれどね」

苗木「はは、忘れるわけないじゃないか……」

【ボク】は笑みを浮かべる。

だってキミは、僕の大切な……恋人なんだから。


霧切「さあ、江ノ島盾子。貴方と苗木君の結婚式…祝福しにきてあげたわよ?」


霧切さんは、江ノ島さんにそう言い放って、笑った。

投下は以上です。次回は早めにします。アニメ放送も近いですし。
ちなみにあえて選択肢にしなかったのは霧切さんを思い出す選択肢もありますよ?という事です。見抜いた人がいたのは驚きました。
選択肢次第、というよりは正規√だと学園生活を暫くすることになっていました。

遅くなりました。
投下しますね。



九頭龍「どきやがれっ!」

九頭龍は1947年式カラシニコフ自動小銃…AK47のトリガーに指をかける。
カラシニコフはその構造上、射撃と装弾を連続的に行う事により連射が可能になる。
特に今回の様な進路を強引に突破するような強行作戦では隙を見せない頼もしい武器となる。
一般に認知されている拳銃などとは比べ物にならないほどの性能差があるのだ。

江ノ島「アハハ!まるでガラクタみたーい!」

奥から次々と湧き出てくる【ガラクタ】……モノクマの形をした戦闘ロボットは銃弾の嵐によって鉄屑へと姿を変えていく。
鋼鉄製の爪程度しか攻撃方法の無いモノクマロボは為す術もない。

豚神「ちっ…弾切れか…っ!」

空になった弾倉を放り投げると、新しい弾倉をぶち込む。
その僅かな隙をロボが見逃すわけはない。
金切声をあげながら、爪を振りかざし豚神に襲い掛かる──!


九頭龍「やらせねえぞ!」

豚神に迫る脅威を察知した九頭龍は、素早くモノクマに銃弾を撃ち込む。
人間三人対ロボ数十体。
酷い混戦状態であるにもかかわらず、誰も味方の跳弾を被弾せず、お互いのフォローを行っている。
それは江ノ島でさえも例外ではなく──

九頭龍「わりぃ、弾切れだ…下がるぜ!」

豚神「俺は手一杯だ…!江ノ島、頼むぞ」

江ノ島「ったくもう、しょーがないなぁ」

江ノ島はふぅと溜息を漏らすと、カラシニコフを構えなおす。
幸い残弾は充分にある。
リロードの間カバーするには十分だろう。

江ノ島「っこいやあああああ!」

江ノ島はわざと大声を出し、ロボたちの注意を引く。
瞬間、ロクに目視もせずに、己の勘で銃口を向けては引き金を引いていく。
ロボの数が多い為、目を瞑っても銃弾を当てることは可能である。
しかし、そこに味方に銃弾を当てなという条件を含めると非常に困難である。
万が一ロボに当たらなかった弾丸が直撃、或いは跳弾して当たってしまえばそれこそ致命打と成り得る。
しかし、江ノ島は軽々とそんな離れ業をやってのけた。


江ノ島「フッ……」ドヤァ

江ノ島がにやりと笑うと、そこにはロボの残骸が幾つも転がっていた。
辺りにロボの気配はない。

九頭龍「よし、状況終了だな」

豚神「報告する」

豚神は携帯を取り出すと、素早く霧切へとダイヤルする。
スマートフォンが主流となっている現代で、ガラパコス携帯を使用するのは何処か懐かしい感覚だ、等とどうでもいい考えが浮かんだ後に、霧切の声が聞こえた。

霧切『こちらボッチ、調子はどう?』

豚神「こちらピッグ。第一区画、ほぼ制圧完了。一部ルートに敵が潜んでいる可能性があるが、当初の作戦通りのルートの敵は掃討完了した」

霧切『了解。ギャル、ヤクザ、ピッグの健康状態は?』

豚神「負傷者0、死者0。良い滑り出しだ」

霧切『了解。20秒後にこちらも突入するわ』

豚神「了解した。こちらはそのまま進軍する。弾がほとんどない、こちらの援護は期待しないでくれ」

霧切『了解。幸運を』

豚神「ああ、幸運を」

そう告げて通話を切る。
ちなみにボッチとは霧切、ピッグは豚神、ギャルは江ノ島、ヤクザは九頭龍の事である。
作戦に当たって個人にコードネームが与えられたのだが、正直意味がないと思うのは自分だけだろうか?
ちなみに罪木はメディック、七海はゲーマーである。
本当にコードネームの意味が分からない。

九頭龍「どうだった?」

豚神「俺たちはこのまま前進、合流地点にて待つ」

江ノ島「了解。しんどいからもう出てこないでほしいわー」

豚神達は周囲への注意を怠らず、前進しだした。



霧切「さあ、私たちも出るわよ」

罪木「はい!霧切さん」

七海「違うよ。ボッチさんでしょ?」

霧切「別に通信ではないし、ここでコードネームは呼ばなくてもいいんじゃないかしら…」

七海「こういうのは雰囲気が大事だと思うんだけどなあ」

コードネームの提案者は七海である。
霧切は面倒だったのでボッチなんていう適当な名前にしたが、呼ばれるたびに心にグサッとくる。

霧切「まあ、コードネームは合ってるし通信も偽ではないでしょうから戦闘は無いわ。落ち着いて行動しましょう」

罪木「はい、了解です」

罪木と七海は重い荷物をよたよたと運んでいる。
対して自分は身軽な格好で周囲を警戒。
正直二人に負担を強いるのは心が痛んだが、今はそうも言っていられない。
万が一の戦闘に備えて意識を集中させる。


霧切「見事なものね…」

大規模な戦闘があったと思われる空間には、無数の残骸が転がっていた。
配線がむき出しになっていたり、原型を留めてないほどバラバラにされた残骸もある。
これが人間なら身の毛もよだつ恐ろしい光景であるが、相手はただのロボ。何とも思わない。
残骸を容赦なく踏みつけながら、前へ進んでいく。

七海「こっちの道で合ってるんだよね?」

霧切「ええ。他の道は残党が残っている可能性があるから、近寄らない方が賢明ね──」

そう注意した瞬間、

罪木「きゃああああああああっ!!」

霧切「!?」

七海「あっ!」

残骸の中で息を潜めていたのか、一体のロボが罪木の前に現れた。
霧切は素早く応戦しようとナイフを取り出し、ロボと退治しようとする。
が──

罪木「っ!!」

ロボの方が動きは速かった。
爪を器用に使って罪木から荷物を奪い去ると、目にも止まらない速さで逃げ去って行く!

罪木「ご、ごめんなさいぃ!荷物、取り返さないと!」

霧切「くっ!」

最初からロボは戦いが狙いではなかった。
荷物を強奪し、私たちを弱体化させる事が目的だったのか…!
内心で舌打ちをしながら、モノクマが逃げ去った道を見据える。

霧切(ここはルートになかった道…進むのは危険ね……)

霧切(けれどここで見逃せば、私たちの戦力は確実に下がる……!)

霧切(モタモタしていては逃げられるわ……どうしましょうか)


1 モノクマロボを追う。
2 無視して先へ進む。



霧切「あの荷物は何としても取り返さなくちゃいけないわ…!追いましょう」

七海「うん、了解だよ!」

罪木「はい、分かりました!」

霧切は予備で用意しておいたナイフを罪木に手渡すと、ロボが逃げ去った方向へと前進を開始した。


霧切「……妙ね」

ロボを追って通路を歩くが、一向に奇襲らしきものは無かった。

七海「この先は…小部屋があって、そこが行き止まりになっているんだったよね?」

罪木「行き止まり……?」

霧切は記憶しておいた地図を脳内で広げる。
七海の言うとおり、この先には小さな小部屋があるだけの行き止まり。
そこに逃げ込んでも私達に掴まるのは明白──

霧切「──ぁ」

霧切が何かに気づいた様に小さく声を漏らした。
それは全員が小部屋に足を踏み入れた瞬間であって。

七海「これって…」

罪木「うそ、ですよね…?」

霧切「……やられたわ」

霧切は唇を噛み締める。
奴らの目的は私たちの弱体化……ただし、武器等を奪うという意味ではない。
純粋に、“人数”を減らそうとしていたのだ。

罪木「ぁ、ああ……」

七海「……っ」

そう、霧切達はまんまと誘い込まれてしまった。

目の前には無数のモノクマロボが、ケタケタと笑い声をあげているような気がした。

全身から血の気が失せていく。

霧切「……ごめんなさい、苗木君…」

目の前に広がる絶望に、霧切達は為す術もなかった──。


霧切・七海・罪木 GAMEOVER


【リトライ】を使用しますか?
リトライを使用した場合、直前の選択肢まで戻り、別の選択肢を選んだ状態になります。
リトライを使用しない場合、このままシナリオが進行します。




【リトライ】を使用しました。残り二回です。


霧切「いいえ、ここは放っておきましょう」

七海「でも、あの荷物って大事なものが入ってるんじゃないの?」

罪木「私のせいで……」

霧切「過ぎたことは仕方ないわ。豚神君から不用意な行動は慎むように言われているし、ここは放置で行きましょう」

七海「うん、分かったよ」

罪木「はいぃ……」

霧切達はモノクマロボを放置して先へ進んだ。


豚神「む、着いたか」

霧切「お疲れ様、見事な手際だったわ」

九頭龍「あれくらい屁でもねえぜ…おい、七海に罪木。荷物渡せや」

七海「うん、ありがとう」

罪木「あの…その……」

江ノ島「あれ?罪木っち荷物持ってなくない?」

罪木「じ、実は──」


豚神「成程な…まあ、仕方ないだろう」

九頭龍「ああ、お前らの無事の方が大切だ」

罪木「ありがとうございます…」

江ノ島「つっても罪木ちゃんが持ってた荷物って武器がいっぱい入ってたよね?結構やばくない?」

霧切「問題ないわ、アレはあくまでどうしようもない相手に使う【武器】よ。少なくとも今回の戦いで使用はしないわね」



九頭龍「確か七海の持ってた鞄には……っと」

九頭龍が七海から受け取った鞄の中身を取り出していく。
拳銃、ナイフ、刀……。

豚神「こちらは主力兵装だな。奴らが持っていると想定されるレベルのものだ」

江ノ島「やっぱAKに比べると見劣りするけどね」

九頭龍「俺はクラスメイトにカラシニコフぶっ放す真似はできねえよ…流石にな」

そう言いながら九頭龍は荷物から自動拳銃を一挺と刀を取り出す。

九頭龍「ペコと戦うなら刀は必須だな。拳銃はなるべく使いたくねーが…しゃあねえか」

鞘に収まった刀を腰に挿し、拳銃を腰のベルトに仕込む。
その姿は抗争に赴く若頭のようで頼もしく、しかし非現実な光景で不気味とも思えた。

豚神「俺は……ふむ、これが良いだろうな」

鞄に入っていた自動拳銃を二挺取り出すと、ガンマンの様に構えてベルトに挿し込んだ。
肉で圧迫されて僅かにミチミチと音が鳴る。
全員聞かないフリをした。

罪木「私銃は怖いんですけど…あ、ナイフがありました!こっちなら…」

鞄からナイフを見つけた罪木はあたふたとした動作でナイフをしまう。
間違えて抜身のまましまおうとして「はわわ!」と声を上げたのが非常にあざとい。

罪木「あれ、これって…」

罪木は鞄の中に【見慣れた物】を見つけて、わずかに目を見開いた。
それをそっと取り出して、そそくさと自分のポケットにしまいこむ。

七海「私は特に要らないけど…護身用にナイフだけ持っていこうかな」

七海は鞄からナイフを一本抜き取り、ブーツの底に隠した。

七海「忍者みたいでカッコいいよね」ドヤ

そんな事を言いながら、天使の笑みを浮かべた。

江ノ島「あたしは刀とナイフと拳銃と……うーん、これだけ?物足りないなー。ロケットランチャーとかなかったの?」

豚神「あるにはあったが…あんなものぶちかますわけにはいかないだろう。今の俺達にHPなんてないぞ」

江ノ島「ちぇー。まあこれだけあればいいか」

江ノ島は鞄からありったけの武器を取り出してそれを体のあちこちに仕込んでいく。
大分重武装になったのにもかかわらず、江ノ島はケロッとしていた。

霧切「あなたねえ……」

ため息をつきながら鞄を漁ると、そこから出てきたのは一挺の拳銃。
しかも自動拳銃ではなく、回転式拳銃である。
自動拳銃との大きな違いは装填数の少なさ、再装填の時間が異様にかかるなど、素人からすれば使いづらい代物であった。
しかも使用者はパーティ内で恐らく1・2位を争う運動音痴である。
こんな銃でやって行けるわけがない。

霧切(コルト・パイソン…装填数は確か6発)

霧切(……まあ、確実に当てれば良いのよね)

霧切は脱力しながら、拳銃を懐にしまい、護身用に持っていたナイフの点検を軽く行った。



作戦時刻──。
第二区画の扉前。

霧切「さて、全員準備は終わったわね?」

豚神「ああ、スモークグレネードの準備も完璧だ」

七海「この扉の先に…狛枝くん達がいるんだよね?」

九頭龍「ああ、全員で勝って……魔王とやらをぶっ飛ばそうぜ」

罪木「怖いけど…頑張ります」

江ノ島「さってと、ショータイムと行こうジャン?」

霧切達は最後の確認を行う。
各自の装備のチェック、誘導する相手、そして勝利後の行動。
全てを完全に整える。

霧切「いい?ここからは完全に個人行動。イレギュラーが沢山起こると思うわ」

そう言って、全員の顔を順繰りに見ていく。
誰の顔も、決意に溢れていた。

霧切「後戻りはできない。私たちに許されるのは──勝利だけ」

霧切が扉に手を触れる。
ごくりと、誰かが唾を飲み込む。

霧切「行きましょう、皆」


スモークグレネードを握った手が僅かに湿っている。


慌てて服の裾でそれを拭うと、霧切は扉に手を掛けた。



第二区画・大広間。


狛枝「そろそろ来るかな?」

舞園「緊張しますね」

狛枝達は大広間に全員で集まっていた。
全ては苗木達を倒し、魔王城への道を開く為。
全員で静かに佇んでいると、下の階で彼らが戦っているのだろう、僅かな交戦音が聞こえた。

桑田「ま、そんなに気張らなくても大丈夫だろ?俺達なら無敵だろーが!」

辺古山「そうだな。戦いの前に緊張しすぎるのは良くない」

戦刃「緊張は和らげるに限るよ。戦場では一瞬の隙が命取りになるから」

舞園「そうですね…少し、落ち着きます」

狛枝「全員、武器の用意はしっかりしているよね?」

桑田「おう。なんつーか、ゲームの世界でこんなリアリティーのあるもん使うの抵抗あるけどよ」

桑田はそう言いながら忌々しくもよく馴染む、金属製のバットを握り込む。

辺古山「しかし、勝つにはそれしかないのだ」

辺古山は背負った刀の柄に軽く触れ、静かに目を閉じる。

戦刃「問題ない…一瞬で片づけるから」

戦刃は両手に持ったコンバットナイフを軽く振り、戦闘態勢を整える。

舞園「戦いは得意じゃありませんが…頑張ります」

舞園は抜身の包丁に視線をやり、小さく息を吐いた。
そしてぐっと柄握りしめる。
自信の決意を固めるために。

狛枝「そろそろ、来るね」

下の階の喧騒が少し収まったようだった。
狛枝だけは何も持たず、自然体でその時を待つ。

狛枝「皆、希望を捨てないで──」


狛枝「僕達は、勝てる」


狛枝はそう言い放ち、前方を向いた。
視線の先には、扉。


その扉が、今まさに。


不快な金属音を立てて、開かれた。





狛枝「──なんだ!?どうなってるんだ!?」

しかし、狛枝の予想は大きく裏切られることになった。
扉が開かれた直後、狛枝が霧切達に声をかけるよりも早く──


豚神「おいそこの赤髭!こっちにこい!」

桑田「て、テメー!これはファッションだっつの!」

罪木「そ、そのファッションは絶対モテないですぅ!」

桑田「んなっ!?てめえらぁ!」

豚神と罪木が桑田を煽り。


九頭龍「よぉ、ペコ……」

辺古山「ぼっちゃん…」

九頭龍「俺はさ、お前に勝ちたいんだ…付き合ってくれよ」

辺古山「…分かりました、ぼっちゃんが言うのであれば」

九頭龍と辺古山が二人の世界に入り。


江ノ島「べろべろべーだ!」

戦刃「意味が分からない」

江ノ島「ざんねーちゃんのばーか」

戦刃「意味が分からない」

江ノ島「苗木クン寝取った」

戦刃「決着をつけよう」

江ノ島の挑発に戦刃が乗っかり。


霧切「ねえ、舞園さん」

舞園「私の相手は貴方…ふふ、運命の悪戯ですね」

霧切「そうね……いい加減、決着をつけましょう」

舞園「どちらが、本当に苗木君に相応しいのか、ですね?」

霧切「ええ。結局世の中は弱肉強食。勝者が全てを手に入れるのよ」

舞園「…そうですね。ええ、その通りです」

静かな殺意を秘めた二人が対峙し。



狛枝「皆!挑発に乗っちゃダメだ!これは彼女たちの作戦──」

七海「そこまで」

狛枝が全員の興奮を冷まそうと大声を上げようとするが、七海のナイフが喉元を過ぎ去り、それを防ぐ。

狛枝「七海さんか…!」

七海「ごめんね…でも、私たちが勝つにはこれしかないから」

狛枝「……だけど、彼女たちも冷静になれば──!」


霧切「……今よ!」


しかし、狛枝の考えはあっさりと打ち砕かれる。
霧切の声と共に広間が煙で一杯になり、全員がむせ返った。

狛枝「げほっ!ごほっ!……煙幕か」

七海「早く近くの小部屋に入らないと、呼吸できなくなっちゃうよ?」

煙は見る見るうちに広間を満たす。
しかし換気をすることができないので煙はずっと留まり続け、肺を犯していく。

狛枝(小部屋に逃げ込むしかない…けれどそれじゃあ、全員バラバラに…!)

狛枝(いや、彼らを信じよう!僕らなら…勝てる筈だ!)

狛枝は一瞬だけ迷うが、仲間たちを信じ、七海が逃げ込んだ小部屋へと入って行った。
例えその先に罠があろうとも、勝てばいいだけの話だ。


狛枝(この【希望】に出会えた【幸運】を……失いたくないんだ!)


狛枝の瞳にも、闘志の炎が揺らめいていた。

投下終了です。だいぶ駆け足気味になってしまいました。
じっくり進めたい気持ちもありますが、展開優先でサクサクと進める予定です。
次回の投下も早めにいたします。もう時間が無いですね(焦燥)

投下します。



辺古山「ぼっちゃん…」

九頭龍「ペコ…」

二人は、小部屋の中央に立つ。
互いの得物に手を掛け、しかとその時を待つ。

九頭龍「覚えてるか?ペコ…小さいころ、お前と剣道の試合をしただろ?」

辺古山「ええ、覚えています。危ないと言ったのに、ぼっちゃんは聞いてくれませんでした」

九頭龍「そりゃあ、俺も男だからよ。女にスポーツで負けるなんて許せなかったんだよ…」

そう語りながら、昔へと思いを馳せる。


幼い頃、まだ九頭龍冬彦が超高校級の才能を知らず、おだやかな毎日に埋没して居た頃。
いつも傍にいる幼馴染が、竹刀を振っている姿を見て、胸が高鳴った。
それは可愛いだとか、そういう甘ったるいものではなくて、純粋にその姿がかっこいいと思った。

九頭龍「なあ、ペコ!」

辺古山「どうしました?ぼっちゃん」

九頭龍「オレも剣道やりたい!」

辺古山「ダメです、剣道は危ないから」

九頭龍「ペコだってやってるじゃん!」

辺古山「…私はいいのです。強いから」

九頭龍「む…女が男に勝てると思ってるのかよ!」

辺古山「え?そ、そうじゃなくて…」

九頭龍「よーし、そこまで言うならうけてたってやる!」

辺古山は自分が強くなり、九頭龍を護るというニュアンスで言ったつもりだったのだが、その言葉は九頭龍に火をつけた。
幼少期特有の負けず嫌いが発動し、九頭龍は血の上った頭で必死に防具を身に着ける。
しかし生まれてこの方剣道なんてやった事のない九頭龍に防具の付け方なんて知らず、結局は辺古山に手伝ってもらったのだが。
そうして始まった九頭龍の挑戦は、敗北という形で終わった。
いや、形上は勝ったのだが、それは素人の九頭龍から見ても手を抜いたと分かってしまい、ぶーぶーと文句を垂れながら敗北を認めた。
辺古山としては九頭龍を傷つけることは出来ないため、そうするしかなかったのだが。


九頭龍「あれから何度もお前と戦ったけどよ……結局勝てなかったよな」

辺古山「……そうですね」

九頭龍「最初はそれこそ、負けてたまるかって気持ちで戦ってきた」

九頭龍は目を閉じる。
それは、今までの敗北。
そして、その度に自分を心配する幼馴染の姿。
自分が求めていたのは、そんなものじゃない。

九頭龍「だけどさ…違うんだよなあ。俺は、お前に勝ちてえんじゃねえ…認められてーんだ」

辺古山「認める…?」

九頭龍「ペコ、俺はお前と対等でいたい」

辺古山「ぼっちゃん…それは」

九頭龍「ああ、分かってる。お前は俺に尽くす、その為に生きてきたのは知ってる」

拳を握る。
自分が望んできたのは、幼馴染に尽くされる事じゃない。
幼馴染の隣をただ、歩きたかった。

九頭龍「だからこそ、俺はお前に守らなくても生きていけるって証明するんだ」

辺古山「ぼっちゃん…」

九頭龍「勘違いするなよ?お前を不要だなんて思ったことはねえ…ねえけど、このままの関係を続けるのも嫌なんだ」

九頭龍「だから、俺はお前を倒して、俺の方が強いってことを証明する」

辺古山「……強く、なりましたね」

九頭龍「まだだ。俺はお前に勝ってねー。俺が、お前に勝って、初めて俺たちは対等になれるんだ」

そう言い放ち、刀を鞘から抜く。
肺の奥底から空気を吐き出し、精神を統一していく。

辺古山「分かりました──私も、本気で行きましょう」

辺古山も、九頭龍の覚悟を理解し、構える。

辺古山(本当に、ぼっちゃんは強くなった)

辺古山(いや、私が気付かなかっただけか。護る事ばかりを考えて、ぼっちゃんの真意を知ろうとも知らなかった)



──だからこそ。
だからこそ、自分も負けるわけにはいかないと悟る。
ここで九頭龍の覚悟を汲み取り、【上手に】負けることは簡単だ。
だけどそれは九頭龍が許さないし、何より自分も許せなかった。
自分の生きざまを、ほいほいと変える事なんて出来るわけがない。
だからこそ、全力でぶつかり、そしてその結果が出た時──全てを受け入れよう。
勝っても、負けても、受け入れよう。

辺古山「……」

九頭龍(な、なんつー殺気だよ……!)

生まれて初めて感じる、幼馴染の全力。
本当に今までの自分の戦いは、彼女にとっておままごとなのだと、理解させられた。
だけど、それでも退くわけにはいかない。

九頭龍(俺も、ダチの想いを背負ってんだ…負けるわけにはいかねえ……!)

抜身で構える九頭龍とは違い、辺古山は居合の構えで静かに静止している。
静かに放たれる気迫は今までとは比べ物にならないくらい重く。
彼女が自分の想いを理解してくれた証の様に思えた。

九頭龍(ああ、そうだペコ。本気で来い…本気のお前を倒して、初めて俺は…お前と──!)

震えが止まる。
身体が軽くなる。
前を見据える。

九頭龍「──っおおおおおお!」

駆ける。

勝負は一瞬。

一太刀入れられれば、死は免れない。



愚直なまでに真っ直ぐな刺突。
辺古山の居合に対抗した九頭龍が考えた唯一の策。
辺古山とまともに斬り合ってもやられてしまう。
だからこそ、辺古山が刀を抜くよりも疾く、その心臓を穿つ──!

辺古山「──っはあ!」

しかし、九頭龍の攻撃は読まれてしまう。
一撃必殺の刺突は、辺古山が腰を落としたことで空を切る。

九頭龍「まだだオラァアアア!!」

しかし、避けられることは想定済み。
九頭龍は空を切った刀で不安定な体勢になった辺古山を叩き斬る!

辺古山「甘いッ!」

しかし辺古山は鞘でその刀を受け止める。

九頭龍「お、おいおい…マジかよ!」

考えていた二段構えの策を全て防がれてしまい、僅かに冷や汗を垂らす。

辺古山「私は剣道家ですが、同時に人を斬る術も学んでいます。ぼっちゃんの攻撃はチンピラのそれと変わらない」

辺古山が力を入れて押し返すと、あっさりと九頭龍の刀は弾かれた。

辺古山「その程度の実力で私に勝つことは、出来ません!」

九頭龍「クソっ!」

慌てて体勢を整えようとするが、時既に遅く。
辺古山にとってその姿は滑稽以外の何物でもない。
目の前で隙を晒す……戦いにおいてこれほど致命的なものは無い。

辺古山「刺突というのは、こう使うのです…!」

鞘を抜き去り、刀を突き刺す。
九頭龍は僅かに体を動かしたが、それだけだ。

九頭龍「う、ぐ…っ!あ、ぐぅ……っ!」

心臓目掛けて放たれた一撃は、九頭龍が身体を逸らしたことによって脇腹に突き刺さる。
しかし致命傷には違いなく。
あまりの激痛に意識が朦朧とする。



辺古山「私の、勝ちです」

九頭龍「俺は…まだ……負けてねえ…」

視界が霞む。
あまりの激痛に身体が言う事を聞かない。

辺古山「その出血量ではいずれ死にます」

九頭龍「はっ……こんなん…屁でも……ねえ、ごほっ!」

喋っている途中に血を吐いてしまう。
唇の端から血を垂らしながら、せめて戦う意思だけはと辺古山を睨みつけた。
そんな九頭龍の様子を痛々しそうに見つめながら、辺古山は言葉を続ける。

辺古山「ぼっちゃん…もう身体が動かないのでしょう…?もう、ぼっちゃんは勝てません……」

九頭龍(俺だって…分かってんだ……)

体内の血が抜けていく感覚。
このまま何もしなければ、九頭龍は死ぬ。

九頭龍(だけど……)

指先をピクリと動かす。
まだ、動く。

九頭龍(……まだ、俺は、戦える…)

腰に下げた拳銃の引き金を引くくらいには、戦える。
このまま諦めるなんて出来ない。

九頭龍(こいつを使うのは……卑怯だろうな………)

九頭龍(俺は……それでも、仲間の為に……負けられねえんだ…)

辺古山は、静かに九頭龍を見つめる。
恐らく、最期を看取るつもりなのだろう。
自分が尽くすべき主に。

そんな姿を見て、九頭龍の決意は決まった。


1 拳銃で辺古山を殺す
2 最後まで足掻く




九頭龍「……はぁ、っく…」

ゆっくりと…拳銃を握る。
辺古山はいつの間にか俯いていて、こっちを見ているわけではないようだ。

九頭龍(結局……俺はお前に勝てなかったな…)

拳銃の安全装置を外す。
僅かに音が鳴った。

辺古山「っ!」

辺古山がハッと顔を上げる。
だけど、遅い──。

九頭龍「わりぃ、ペコ……俺も、負けられねえんだ……」

冷たい、銃口の感触。
その感触を理解した瞬間、引き金は引かれた。

辺古山「──!」

額を撃ち抜かれた辺古山は、仰向けに倒れる。
一言も話すことなく、彼女は絶命した。

九頭龍「……だめだ…力が入んねえ……」

さらさらと辺古山の身体が粒子と変わっていく。
同時に、九頭龍の身体にも限界が来たのか、同じように粒子へと変わっていった。

九頭龍「後は……頼んだぜ」

辺古山に並ぶように倒れた九頭龍は、息絶え絶えにそう呟いて。



九頭龍「また…勝てなかったのか…俺……」



眼の端から涙を流して、消えていった。



挑発に乗って二人を追いかけて入った小部屋で、桑田を囲うように豚神と罪木が待ち構える。
そうして桑田は状況を理解した。

桑田「どうやらまんまと誘い出されちまったのかよ!?」

豚神「説明セリフありがとう」

罪木「桑田さんは私たちが倒します!」

豚神は銃口を桑田に向け、罪木はナイフを構える。

桑田「…だけどよ、ここで二人を倒したら俺っち英雄扱いじゃね?」

しかし、桑田は楽観的な姿勢を崩さない。

豚神「それは有り得んな。お前はここで脱落だ。この銃が見えないのか?」

罪木「チェックメイトです…!」

金属バットをぐるんぐるんと振り回しながら、桑田は不敵な笑みを浮かべる。

桑田「そりゃあ俺を舐めすぎだぜ?」

桑田は獰猛に笑うと、銃を撃って来いとジェスチャーをした。
豚神はその余裕ぶりを僅かに警戒したが、こちらの優位は揺るがない。
何か手を打たれる前に──仕留めるッ!

豚神「ふんっ!」

豚神は躊躇いなく引き金を引く。
耳に響く発砲音が鳴り、弾丸が発射される。


桑田「……へっ」


待ってましたとばかりに、桑田が歓喜の声を上げる。



桑田「桑田式・弾丸ノックじゃおらあああああああ!!」

……驚異的なことに。
桑田は、放たれた弾丸の、“自分に直撃すると思われるもの”の全てを、打ち返した。

豚神「は、はああああああっ!?」

そのあまりにむちゃくちゃな行動に豚神も素っ頓狂な声を上げる。
ぶっちゃけ現実的には有り得ない。
だがしかし、彼は“超高校級の野球選手”その不可能さえも、可能にする才能がある。

罪木「い、いやいやいや、不可能を可能とかそういう次元じゃないですよぉ!」

豚神「銃弾打ち返す野球選手なんて聞いたことが無いぞ…!」

桑田「何言ってんだお前ら。イ○ローとか出来るだろーが」

あまりに非現実的な出来事に思考停止しかけるが…今はそんな事をしている場合ではない。
慌てて銃を構えなおす。
まだ残弾はある。予備弾倉は無いが、さっきのような奇跡は二度と起こらない。

豚神(次こそ、終わりだ……!)

豚神は再度引き金を引く。
桑田は再びバッティングホームを取ると──

桑田「だから効かねえって言ってんだろうがあああああああああああ!!」

再び銃弾を打ち返した。



豚神「ば、化け物かアイツは…!」

豚神は歯軋りをしながら拳銃を捨てる。
残弾が無いのなら用済みだ。
もう一挺あるが、この調子ではまた打ち返されてしまうだろう。

豚神(くっ…他に武器は無い……!どうすればいい!)

桑田「なんだぁ?こねーならこっちから行くぜえ!」

桑田は金属バットを掲げ、豚神の方へ突進していく。

罪木「豚神さん…っ!」

豚神「来るなッ!」

慌てて豚神の援護に向かおうとした罪木を止める。

豚神(まともな武器が無い以上、罪木さんと奴を戦わせる事は出来ない…!)

豚神(僕が、何とかしなければ……)

罪木「……っ」

幸い桑田の攻撃は大振りのため、豚神でも避ける事が出来た。
しかし、僅かでも油断をすれば大怪我を負う事は想像に難くない。

豚神「ぐっ…!」

桑田「どうしたよぉ!避けてばっかじゃ勝てねーぜ!」



豚神「ぐぅっ!」

桑田「……悪ぃな。俺も譲れねえんだ」

桑田の攻撃を避けていると、桑田の口からそんな言葉が漏れた。
憂いを帯びたその表情が、その言葉が真実であると裏付けている。

豚神(そうだ…彼も、仲間のために戦っているんだ…)

豚神(必死になって、当たり前じゃないか…!)

罪木「豚神さん…私…!」

豚神「お前は来るな!」

罪木「でもぉ、私…っ!」

罪木が歯がゆそうにしている。
けれども、罪木に援護に向かわせるのは酷というものだ。

豚神(キミは…そんなに震えている…)

罪木の身体は、がくがくと震えていた。
いくら覚悟を決めていたとしても、目の前に鮮明な【死】を見ればああなるだろう。
ましてや罪木は臆病な女の子だ。

豚神(そんな子を…戦わせることはできない……)

豚神(桑田君は…僕が刺し違えてでも…ッ!)

豚神「罪木、ナイフを貸せ!」

罪木「で、でもっ!」

豚神「安心しろ、武器が無くてもお前は守る!」

罪木「っ……ぅっ…!」

罪木は苦しげに逡巡していたが、何とか分かってくれたらしい。
ナイフを豚神の方に放り投げた。

桑田「させるかよっ!」

豚神「くっ!」

床に落ちたナイフを拾おうとするが、桑田の妨害によって上手く取ることができない。

豚神(後、少し──っ)

桑田「そこだあああ!」

豚神「がっ!」

ナイフに手が触れた瞬間、背中に激痛が走る。



豚神「うっ…ぐぅ…!」

鈍痛。
唇を噛み締めてその痛みに耐えて動こうとするが、身体がそれを拒絶していた。

桑田「ようやく動きが止まったな…ちっと、グロい絵面になるけど勘弁してくれ」

頭を殴られる。

罪木「ひっ!」

豚神「ぐ、お…!」

あまりの痛みに前の前がチカチカと光る。
気を抜けばすぐに気を失ってしまいそうだ。

桑田「…っ!」

腕を殴られる。

足を殴られる。

腹を殴られる。

豚神「……ぁ、ぐ…」

桑田「ぜぇ……ぜぇ…タフな奴だな…やってる方が疲れてくるっての…」

豚神「……んぎ、ぐ…」

豚神(意識が、朦朧とする…)

豚神(ダメだ…気を失ったら……罪木さんが…)

豚神(なん、とか…しな……い…と)



罪木(私は、何を…してるの…?)

目の前で行われる凄惨な暴虐。
その光景を前に、罪木は何をする事も出来ず、涙を流していた。
何もせず、ただそれを見つめていた。

罪木(日向さんや日寄子ちゃんの為に頑張ろうって決めたのに…私は、何をしてるの…?)

罪木(どうして豚神さんが殴られているのを見て、何もしないで、死ぬのを待っているの…?)

けれど、どうする事も出来ない。
自分は非力だ。
例え立ち向かったとしても、一瞬でやられてしまうだろう。
先に死ぬのが自分か、豚神かそれだけの差だ。
どうして自分には力が無いのだろう。
どうして自分には勇気が無いんだろう。

罪木(私は結局…ただ足を引っ張るだけの……役立たず…)

罪木(私、なんでここにいるんだろう…?)

罪木(いっそのこと……死んだ方が良かったよ……)





「──ふざけるな!」





罪木「……ぇ?」


その声は、心の内から。
決して誰にも聞くことができない。
罪木だけが聞くことのできる、声。

「なに勝手に諦めちゃってるの~?それじゃあ家畜以下だよ?分かってる?」

罪木「でも、私には……何も」

「バカじゃないの?誰もアンタに期待してなんかいないよ」

罪木「……っ」

「……いいじゃん、期待されてなくてさ」

罪木「──え?」

「大事なのはさ、アンタがどうしたいかだよ?」

罪木「私が……」

「うん。アンタはここで諦めて死ぬ?」

罪木「……」

「何もできない、役立たずのまま、惨めに死ぬ?」

罪木「……いや」

「聞こえないよ。声小さいんだからもっと大きい声で言え!」

罪木「嫌!!」

「そう。じゃあ頑張りなよ。アンタみたいなゲロブタでも、何かできることがあるかもしれないよ?」

罪木「……うん、ごめん。日寄子ちゃん、弱音はいちゃって」

西園寺「いつもの事じゃん。そんなウジウジしてるからいつまでも豚扱いなんだよ」

罪木「そうだね…。だから、私、頑張ります。私の力じゃ何もできないかもしれないけど、それでも、足掻いてみる」


西園寺「ん、良い顔じゃん。その意気で、行っておいで。──蜜柑」



桑田「そろそろ、トドメだ!」

豚神「……っ」

桑田がバットを振り上げる。
豚神が芋虫の様に地面を張って逃げようとするが、その速度では逃げ切れない。

桑田「うおおおおおっ!」

バットが振り下ろされる。
正確無比なその一打は、豚神を──

罪木「っやあ!」

桑田「ぐおっ!」

しかし、バットが振り下ろされることは無かった。
振り下ろされる寸前に、駆け寄ってきた罪木の体当たりで桑田が吹き飛んだのだ。

罪木「はぁ…はぁ…ま、間に合いましたぁ…!」

豚神「つみ…き…くる…な…」

罪木「大丈夫です。豚神さんは休んでいてください」

罪木は強い決意を灯した瞳で、豚神の言葉に応える。

桑田「や、やってくれるじゃねーかよぉ…いてえ…!」

罪木「貴方の相手は、私ですっ!」

床に落ちたナイフを拾い上げ、構える。

豚神(震えが…無い…何かが、彼女を奮い立たせたのか…?)

豚神(だけど、ダメだ…罪木さんじゃ…彼に勝てない……止めないと…)

罪木「──大丈夫ですから。豚神さん。私を信じてください」

豚神(……ああ、きっと君はそう言うだろうね…だめだ…)

豚神(このまま…僕は何もできないまま…彼女を見殺しにしてしまう……)

豚神(彼女だってわかってるはずなんだ…勝てるわけがないって…)

豚神(……体が重い…)

桑田「チッ…胸糞わりーけど、罪木さんから倒させてもらうぜ!」

罪木「……」

桑田がバットを構えて、走り出す。
罪木は逃げない。
豚神を護るように、立ち塞がる。

豚神(お…れ……は……)


1 罪木を護る
2 罪木を見守る





豚神(いや、彼女を信じよう……!)

豚神は護りに行きたい気持ちを堪え、少女の行く末を見守る。
罪木は落ち着いた表情で桑田を待つ。

桑田「終わりだああああっ!」

目の前まで桑田が迫り、バットが振るわれる。
豚神は目を逸らしたくなるも、少女の決意を無にはできないと自分を奮い立たせ、見つめる。

罪木「……ふぅ」

そして罪木は、

罪木「はああっ!!!」

振り下されたバットを、ナイフを持っていない左腕で受け止めた。

桑田「んなっ!?」

鈍い音が響く。
しかし罪木の表情に変化はなく、動きに衰えも無い。
冷静に正確に、右手に持ったナイフを桑田の心臓に突き立てた。

桑田「が、はぁっ!」

心臓を一突きされ、血を吐く。
ぼたぼたと床を血痕で汚しながら、桑田は焦点の合っていない目で罪木を見る。

桑田「…………アポ?」

罪木「これですよ」

罪木は懐から注射器を取り出す。

罪木「局所麻酔の注射器です。左腕に一時的に打ち込んで痛みを消しました」

そう、全員が武器を選んでいた時、罪木が見つけた“見慣れたもの”…それは注射器である。
罪木は豚神の助けに入る前に、局所麻酔を左腕に打っていたのである。

豚神「無茶をするな…後で痛いんだろう…?」

罪木「そうですねぇ…もしかしたら腕折れちゃってるかもしれませんし、あとで死ぬほど痛いかもですねぇ」

それでも、罪木は満足そうに笑った。

桑田「あ、アポ……アポアポアボォォォオオオオ!!!」

もう死は免れないというのに、桑田は錯乱して罪木へと襲い掛かる。
身体を粒子に変えながらも、死に物狂いでバットを振るう。
その事如くを左腕で防いだ罪木は、トドメとばかりにナイフで切り裂いた。

桑田「ファ、ポォ……ガ………」

罪木「ごめんなさい…私も、負けられないんです」

桑田の存在はほとんど消えかかっている。
自分の全力をかけて戦ってであろう桑田に一礼をすると、罪木は豚神の方に向き直った。

罪木「先に進みましょう。皆きっと待ってますから」

豚神「ああ、そうだな……」

ダメージが残る身体で起き上がろうとする豚神を、罪木がそっと支える。

罪木「……日寄子ちゃん、私、頑張りましたよ…」

豚神「罪木は…強くなったな……」

罪木「いえ、豚神さんが頑張ってくれたおかげで、私が一歩踏み出す時間をくれたおかげで、こうして勝つことができたんです」

豚神「そうか……それは…嬉しいな…」


二人は肩を抱きながら、振り返らず、前に歩みだした。

投下終了です。

どうでもいい補足
ペコ戦の選択肢はどちらを選んでも構わないようになっています。
ほんの少し会話が変更されるのと、エンディングでちょっと変わる程度です。どちらを選んでもクズ脱落です。
桑田戦を選ぶと豚脱落です。罪木は生き残ります。

次回投下
舞園戦&戦刃戦

アニメ放送までに間に合わなかった…。まだ見ていないので、楽しみです。
投下します。




戦刃「これで、終わり」


江ノ島と、戦刃の戦いは、終わった。


江ノ島「…………」


小部屋に散乱した武器の数々。


そしてあちこちに散った血痕。


そして──


戦刃「ばいばい、盾子ちゃん」


全身から血を流し、俯いている江ノ島盾子と
傷一つなく、冷徹に江ノ島を見下ろす戦刃むくろ。

戦刃の左手には、血に塗れたコンバットナイフ。
戦刃は、無表情を張り付けたまま、静かに且つ素早くナイフを振るい、江ノ島の心臓を──。



少し前──。

江ノ島「よーし、これであたしのアンリミテッドエノシマワークスが完成した」

戦刃「盾子ちゃん…何をやってるの?」

江ノ島「お、いらっしゃいお姉ちゃん」

戦刃が江ノ島を追い、小部屋に入ると珍妙な光景があった。
江ノ島の周りに物騒な武器が散乱している。
その中央に江ノ島はなぜかドヤ顔で立っていた。

江ノ島「これで動かずにお姉ちゃんを仕留められるって事よ」

戦刃「あっそう…」

ぶっちゃけ江ノ島の奇行は今に始まった事ではないので、冷めた瞳でスルーすることにする。
そんな事よりも聞かなくてはならない大事なことが戦刃にはあった。

戦刃「そんなことより、さっきの話は本当?」

江ノ島「え?ああアレ?本当だよ?」

戦刃「……そう」

瞬間、脳が沸騰するほどに怒るが、すぐに熱を冷ます。
戦場で怒りは判断ミスの元だ。
優秀な兵士に感情は要らない。

江ノ島「まあ、正確にはあたしが寝取ったわけじゃないけどね☆きゃぴ」

戦刃「ど、どういうこと?」

せっかく冷静になったと思ったら、再び感情を揺さぶられる。
江ノ島盾子という少女は昔からそうだった。
あらゆる人間の心を揺さぶり、感情を乱し、判断力を奪う。
彼女を悲しませようとして、逆に悲しまされる。
彼女を怒らせようとして、逆にこちらが怒る。
彼女を殺そうとして、逆に殺される。

江ノ島「ねえ?知りたい?知りたい?」

戦刃「……っ!」

江ノ島「でもおっしえまっせーん!あはははは!その餌を貰えなかった犬みたいな顔、すっごくキュートだねお姉ちゃん!」



戦刃「相変わらず、盾子ちゃんは人をからかうのが好きだね?」

江ノ島「そうやって生きてきたしねー。今更生き方は変えられないっていうか?」

戦刃「ううん、それは違うよ」

戦刃は、自分に生き方を、“希望”を教えてくれた少年の口癖を唱える。
それは不思議と、彼女に力を与えてくれた。

戦刃「人は変われる。生き方だって、変えられる」

江ノ島「……っはあ?んなわけないじゃん」

瞬間、江ノ島の顔が苛立ちの色になる。
妹は、こういう類の言葉が嫌いだったななんてことを思い出して、少しだけ胸が痛くなる。
希望を知った今なら分かる、絶望だけを頼りに生きていることに、何の意味があるんだろうか?

戦刃「私は、盾子ちゃんが生きがいだった。今もそれは変わらない。貴方の為に生きたいと思ってる」

江ノ島「うざっ。いや、本当にそういうのいいよ?お姉ちゃん」

戦刃「今までは、自分がしていることの意味なんて考えなかった。貴方が喜ぶのならその通りにするのが最善だと思った」

戦刃「だけどね、苗木君のお蔭で分かったんだ。ねえ、盾子ちゃん……絶望の為だけに生きるなんて……悲しいよ」

江ノ島「……」

江ノ島は、答えない。
苛立ちを隠そうともせず、舌を鳴らしながら落ち着かないようにそわそわとする。
けれど、話は聞いてくれているようだった。

戦刃「だから私は貴方の未来の為に、希望を教えることにしたんだ」

江ノ島「……っち」

戦刃「今までお姉ちゃんらしい事を全然できなかったし…一つ位は、貴方に姉として何か教えてあげたい」


戦刃「それが──“希望”だよ」


 



戦刃はナイフを構える。
精神を研ぎ澄ませていく。

江ノ島「はっ!くだらない演説は終わったわけ…?」

戦刃「……うん」

江ノ島「それはご親切にどーも!でもね、お姉ちゃんはあたしを勘違いしてるよ?だってあたしの【絶望】はお姉ちゃんたちみたいな紛い物とは全然違うわけ。純度100%の濃厚な絶望ってことねー」

江ノ島「あたしは自分の意志の如何に関わらず、【絶望の為に生きる】っていう設定だから、そんなくっだらない説得は何の意味もないんだよ?」

戦刃「なら、決着をつけよう」

江ノ島「ふーん、結局は武力行使。残念なお姉ちゃんだなあ…苗木クンみたいな演説を期待してたんだけど」

戦刃「私には、戦いしか無いから」

江ノ島は、どこか苦虫を噛み潰した表情を浮かべていたのを、戦刃は見逃さない。
彼女は、恐れてる。
挑発に乗らず、冷静な戦刃むくろに、恐怖を抱いている。

江ノ島「ま、これだけ武器があれば負けることも無いでしょ」

そう、強がるようにつぶやく江ノ島に対して──

戦刃「……甘い」



江ノ島「ほらほら死ね死ね死ねえええええええっ!」

江ノ島は近くに転がっていた拳銃を両手に構え、戦刃目掛けて乱射していく。
一発でも当たれば相手の動きを制限できると考え、敢えて射線などは意識せずに的だけを狙って射撃したものの──

戦刃「遅いよ」

戦刃は銃弾を華麗に避けていく。
鮮やかに、踊る様に。

江ノ島「なんで当たらないのよー!」

戦刃「素人は銃の性能に頼りすぎている。確かに素人は性能に頼る必要があるけれど、それは最低限の知識と経験があって初めて成立する。盾子ちゃんはフルオートで発射できる自動拳銃の性能に頼りすぎていて、射線が丸分かり」

江ノ島「ちっ…化け物!」

戦刃「戦場では当然のことだよ。むしろこれくらい出来ないと…使い物になんかならなかった。フェンリルでは」

江ノ島は残弾の無くなった拳銃を放り捨て、近くにあった刀を拾い上げる。
遠距離戦が無理ならば、近距離戦に変えるまでだ。

江ノ島「はあっ──!」

戦刃「はっ!」

江ノ島は力任せに刀を振るうが、戦刃はそれをナイフ一本でいなしていく。
そして僅かに隙を見せればもう片方のナイフで江ノ島の喉元を引き裂こうとしてくるのだからたまったものじゃ無い。

江ノ島「っ──!」

江ノ島が小競り合いで体勢を崩す──!

戦刃「ふんっ!」

戦刃は両手のナイフを器用に扱い、江ノ島の腕を切り裂く。

江ノ島「っく、ぅ…!」

手からドクドクと血が流れ、刀を持つ手が震えた。

江ノ島(あーやばい、力抜けそう)

此処に至って、ようやく江ノ島は自分がいかに面倒な相手と戦っているのかを知る。
戦刃むくろ。
姉妹で、自分の為に何でもしてくれた夢のような姉。
今まで彼女は自分の言う事ならばどんな理不尽なことでも叶えて来た。
だからこそ、考えなかった。
彼女が意思を持った時、明確な敵意を向けてきたとき、自分はどうすればいいのかを。
だからこそ、見誤っていた。
彼女は自分よりも格下だろう。自分が揺さぶれば簡単に落ちる雑魚であろうと。



戦刃「……情けはかけないからね」

冷たい表情でそう告げ、戦刃は反応の鈍くなった江ノ島の身体を斬りつけていく。
江ノ島は鈍った身体で何とか逃れようともがくが、戦刃相手ではその程度の抵抗は児戯に等しく。

江ノ島「……ぁ、ぐがぁ……っ!」

気付けば全身を切り刻まれ、自分の足元に血溜まりが出来ていた。
このまま出血すれば何もせずとも江ノ島は死ぬだろうが──。

戦刃「万が一も許さない。盾子ちゃんはここで仕留めるよ」

戦刃は自分の手で、完全に完璧に江ノ島を殺す気らしい。

江ノ島「……」

最早、動くこともままならない。

戦刃「これで、終わり」

江ノ島と、戦刃の戦いは、終わった。
今自分がどう動いても、叶う気はしなかった。
何をしようと、一瞬で殺されるだろう。

江ノ島「…………」

小部屋に散乱した武器の数々。
あちこちに散った血痕。

戦刃「ばいばい、盾子ちゃん」

全身から血を流し、俯いている江ノ島盾子と
傷一つなく、冷徹に江ノ島を見下ろす戦刃むくろ。

戦刃の左手には、血に塗れたコンバットナイフ。
戦刃は、無表情を張り付けたまま、静かに且つ素早くナイフを振るい、江ノ島の心臓を──。

江ノ島「──ぁ」

戦刃「──」

江ノ島が口を開く。
しかし、戦刃は動きを止めない。
そのまま、心臓を──


江ノ島(……)



1 「ごめんね、お姉ちゃん…」
2 「死ぬのってどのくらい絶望なのかな?ね、お姉ちゃん?」





江ノ島「ごめんね、お姉ちゃん…」

戦刃「──っ!?」

思わず、動きを止める。

江ノ島「私だって…分かってたんだ……絶望なんて求めても、満たされない。私は永遠に、空っぽのまま…」

戦刃「…違う、盾子ちゃんはまだ変われる」

江ノ島「無理だよ…、だって私、たくさんの人を殺しちゃったんだよ……?あんなにたくさんの人達を殺して、今更変わろうなんてムシが良すぎるでしょ……」

戦刃「そんなの、私が一緒にいつまでも償う!だから!」

江ノ島はそっと戦刃に近づく。
戦刃はすぐに警戒態勢を取るが、江ノ島は戦刃の胸に頭を預けるだけだった。

江ノ島「お姉ちゃん…私を、殺してよ」

戦刃「そ、それは……」

殺す。
そう、そうしなければいけない。
だってそうしなければ、彼らは私の事を永遠に待つことになる、そんな事はさせられない。
彼らのためにも、ここで江ノ島盾子を倒さなければならない。

戦刃(……)

江ノ島「大丈夫だよ、この世界、ゲームの世界なんでしょ?一度死んで……リセットしたいんだよ」

戦刃「そんなこと…」

江ノ島「お願い、私を殺して。私を希望に導くというのなら、私を、【絶望】を殺して」

戦刃「こ、殺す……」

戦刃(私は……殺すの…?大切な、自分の生きる意味を…妹を……)

江ノ島「お願い、早く殺して……」

江ノ島が、顔を上げる。
どこまでも悲しげに、戦刃に訴えてくる。

二人の距離は、目と鼻の先。

戦刃が少し腕を動かせば、簡単に江ノ島を葬れる。

後は、その決意だけ。

戦刃「私、は……」

江ノ島「早く……殺してくれないと──」











江ノ島「  死  ん  じ  ゃ  う  よ  ?  」









 



戦刃「──えっ?」

瞬間、胸に違和感があった。
熱い。

熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。

江ノ島「ふへ…あひゃ…うぷ……ぐっひゃっひゃっひゃ!あーっはっはっは!!」

目と鼻の先で。

先ほどまで悲しげに自分を見ていた妹が。

狂気の笑みを浮かべていた。

戦刃「…ぅ……そ………?」

江ノ島「本当に残念だよね残姉ちゃんって。残念すぎて呆れを通り越して笑いが止まらないよ!あはっ!」

江ノ島「ねえねえ?今どんな気持ち?妹に自分の説得が通じたと思って有頂天になってたら裏切られた気持ちってどんな感じ?絶望してる?ねえねえねえ?」

戦刃「う、ぐぅ……」

視界が涙で歪む。
頬を熱いものが流れる。

心が痛み、壊れていく。
ああ、これが絶望。いつ感じても慣れない、嫌な感触。

江ノ島「あは、泣くほど悔しかったの?それとも悲しかった?」

戦刃「……っ」

江ノ島「あーんな薄っぺらい説得であたしは自分の生き方を変える気は、ありませーん!というか、どんな説得をされても変えませーん!当たり前でしょ?うぷぷ。こーんな楽しいことを、誰が止めるってのさ」

江ノ島は戦刃を貫いたであろうナイフを手のひらで転がして弄ぶ。


──すべては、演技。
最初から最後まで徹頭徹尾、というわけでもない。
具体的には戦刃が江ノ島を説得しようとした時に、この考えが浮かんだ。
後は自分の筋書き通りに相手を躍らせるだけの簡単なゲーム。

江ノ島「まあ本気で殺されかけたときはちょっと冷や冷やしたけど、まあそれはそれで気持ちいいわけだし?」

戦刃「……う、くぅ…あああああああああっ!」

悲しみと怒りと絶望がごちゃ混ぜになった叫びをあげる。
もう死は避けられぬ身体で、何とか抵抗しようとがむしゃらにナイフを振るう。
彼女だけは先に進ませない一心で、本気で彼女を殺そうとするが。

江ノ島「ああもううっさいなあ」

江ノ島は、何の躊躇いもなく、戦刃の頸動脈を切り裂いた。
戦刃は動きを止め、急速に粒子が進んでいき……数秒の内に、消え去った。

江ノ島「まあ、他の奴らじゃこんな方法、思いつかないだろうねー」

江ノ島(思いついたとしても、残姉ちゃんを欺けるかって事も考えると、やっぱりあたし以外じゃ勝てないだろうな)

江ノ島は傷だらけの身体で立ち上がると、スカートの端を千切り、その布で軽く血を拭く。
動くときに少し痛むが、この程度問題ない。

江ノ島(ぶっちゃけさっきも動けたっちゃあ動けたけど、こっちの方が面白い展開になったし)

戦刃が最後まで握っていたナイフを拾い上げ、、ついでに拭っておく。
それをポケットにしまうと、江ノ島は何事も無かったかのように鼻歌を歌いながら。

江ノ島「~~♪」

小部屋を後にした。

投下終了です。霧切&舞園は明日投下します。
ちなみに2を選ぶと容赦なく残姉ちゃんにオシオキされていました。

投下します。
アニメは残姉ちゃんの変装が今思うと雑すぎて笑えますね。そばかすくらい何とかできなかったのかよと言いたいです。



霧切(……さて、一応作戦は上手くいったみたいね)

一足先に小部屋へと駆け込んだ霧切は、状況の整理を始める。

霧切(手元にあるのはナイフ・拳銃…弾は装填数分しかないわね)

手元の拳銃に弾をこめていく。

霧切(ただ問題は…拳銃なんて私のような素人が容易に扱えるものではないわ)

豚神・九頭龍・江ノ島の三人は恐らくそれを使わざるを得ない環境におかれていたせいか、拳銃を使うことに抵抗も無かった。
それに相手に当てることも難しくは無いだろう。
しかし霧切はこんな物騒なものとはあまり無縁…というわけでもないが、実際に使うことは初めてだ。
ましてや扱いに難がある回転式拳銃である。
当たれば僥倖だが…当たらない可能性も十分にあるだろう。

霧切(確実に、相手に弾を当てる……ね)

霧切が弾丸を押し込むと共に、後ろから扉の開く音がした。

霧切「……来たわね」



舞園「あー響子ちゃん!やーっと追いつきましたよー」

霧切「…………はあ?」

舞園「私を追いていくなんで酷いですよ!もう☆」

霧切「……」

目の前でやたら可愛い声を出しながら愛想を振りまく女。
一体この僅かな時間で彼女に何があったのだろうか。
もしかしてこのアマ薬でもキメて頭飛んでるんじゃないだろうかなどという懸念を霧切が抱いた所で舞園が口を開いた。

舞園「ほらー、私ってヒロインじゃないですか?それもただのヒロインじゃなくてメ・イ・ン・ヒ・ロ・イ・ン」

霧切「はぁ…」

舞園「こんなコロシアイなんて本当はしたくないっていうか……こういうのは他の人の管轄じゃないかって思うんですよ」

霧切「……そう」

舞園「あ、嫉妬しないでくださいよ?アニメで大した出番も無かった霧切さん?(笑)」

いつぶん殴ってやろうかとタイミングを窺っていたが、もはや殴る気力さえも失せる。

霧切「どうせ後数週間もすれば苗木君に罪を擦り付けようとした外道だとか死体系女子(笑)みたいな渾名になっているから無理に気にしなくても良いのよ?」

舞園「あーはいはいぼっち特有の僻みですね分かります。アニメでも良い感じにぼっちでしたね貴方(笑)」

霧切「あら貴方こそ立派な演技をしてたじゃない。あんな嘘泣きで苗木君を手篭めにして罪を擦り付ける算段をつけてたなんて、可愛い顔して結構やるわね」

舞園「……あ?」

霧切「……は?」



霧切「いったん落ち着きましょう」

舞園「そうですね」



舞園「まあさっきの良く分からない話は置いておいて、いい加減貴方とは決着をつけたいって思ってたんですよ」

霧切「奇遇ね。私もいい加減貴方がちょろちょろしているのがイライラしてたの」

舞園「最近のヒロインってば皆仲良し、でも○○君は譲らないからね、見たいな風潮じゃないですか?アレ私大っ嫌いなんですよねー」

霧切「私もよ。そんなヌルイ展開は誰も認めない。現実はそこまで甘くないのよ」

舞園「だから、今日はどちらが苗木君に相応しいのか」

霧切「ええ、勝った方が全てを手に入れる」

舞園「負けた奴は惨めに朽ちろ」

霧切「私たちにお似合いのルールじゃない」

舞園「さあ、その物騒な凶器を構えていいですよ?」

舞園は霧切が持っていた拳銃を指差し、にっこりと微笑む。
まるでその程度、脅威にも値しないというでも言うかのごとく。

霧切「ええ、なら貴方も構えなさい?」

舞園に言われたとおり、銃口を舞園に向けながら、霧切も同じように笑ってそう言った。
それに答えるように、舞園も包丁を構える。

舞園「──いきます」

霧切「──いくわよ」

どちらの女子力(戦闘力)が高いのか──。

勝者は一人。

命がけのコロシアイが、始まる。



霧切「──はぁっ!」

先手は霧切。
銃口は舞園にぴったりと合わさっている。

霧切(初撃で決める……っ!)

しっかりと銃を両手で持ち、躊躇い無く引き金を引く。
耳を劈く発砲音と共に、高速で弾が放たれる──!
あまりの反動に顔を僅かに歪めながら、霧切は銃弾の行く末を見る。

舞園「ふっ……!」

舞園はその場からトンッと踊るようなステップで跳ぶ。
霧切がトリガーを引く瞬間から動いていた舞園は、薄い笑みを浮かべながら銃弾を見送った。

霧切「ちっ…!」

舞園「遅すぎますよ?狙って撃つのは大事ですけど、そんなトロトロされてたらいくら私でも避けれます──って!」

霧切に親切にアドバイスをかましながら、舞園は地面を蹴り霧切との距離を詰めてくる。
ナイフで対抗しようとするが、銃を手放すわけにはいかない。
即座に回避の判断を下し、舞園から距離をとる。

舞園「あら、逃げちゃうんですか?近づいたほうが当たりますよ?」

霧切「私がモタモタと照準を合わせてる間に包丁で刺す考えでしょう?バレバレよ」

霧切は迫ってくる舞園に何とか照準を合わせ、引き金を引く。

霧切「ぐっ…!」

不安定な体勢で発砲した為、射撃経験の無い霧切は反動をまともにうけてしまう。
反動で拳銃を取りこぼしそうになるが、何とか堪えた。

舞園「残念、ハズレです♪」

そこまでの苦労をして放った弾丸だったが、僅かに軌道が逸れて舞園の脇をすり抜けていった。



霧切(落ち着きなさい──こっちは拳銃、相手は包丁)

霧切(何もかもこちらにアドバンテージがある。向こうだって私が撃てば焦るはず、しっかりと機を狙えば──)

舞園(とか何とか考えてるんでしょうねえ、霧切さん)

舞園(甘い、甘すぎますね。銃が有利?何年前の話ですか。ましてや相手はド素人)

舞園(知ってます?銃を突きつけて脅す人間とやたらめったら包丁を振り回す人間のどちらが怖いか)

霧切「……!」

舞園「っは!」

舞園は先程よりも速度を上げ、霧切へと肉薄する──!

霧切(速い!?)

舞園「私はねえ!遊びでアイドルやってるんじゃないんですよ!ステージで何時間もぶっ通しで踊り続ける為にたーくさんトレーニングしてるんですっ──!」

普段からコツコツと自分が輝く為に努力してきた。
自分が踊って、歌って、それが誰かの為になるのなら嬉しかった。

舞園(そして何より、苗木君を笑顔にしたかった──!)

霧切は舞園の急激なペースアップに耐え切れず、再び発砲してしまう。
しかし焦って放った銃弾など当たりはしない。
舞園は速度を緩めることなく、霧切へと近づいていく。



中学の頃。
その頃から舞園さやかはアイドルとしての道を歩んでいた。
毎日、毎日自分を輝かせる為にコツコツと努力を重ねる。
辛くて、苦しくて、逃げ出したくなる時だってあったけれど、それでも自分はアイドルという職業が大好きで。
幼い頃から憧れていたものに慣れた感動を忘れずに、日々を懸命に生きていた頃。

男子「なあ苗木!外でサッカーしようぜ!」

苗木「あ、うん。でも日直の仕事があるから、それが終わってからね」

舞園(……)

その時の舞園は、同年代の男子なんて気にはしていられなかった。
自分が有名になっていたことは自覚していたし、有名になると色々と面倒くさいこともある。
だから極力男子とは関わらないように生きてきた。

舞園(……頭痛い…)

それに、舞園には他の誰かを気にかけている余裕なんて無かった。
毎日を生きるのに必死で、自分の時間なんて作れない。
学校でも優等生を演じる為に寝る間も惜しんで勉強して、流行を学んで、レッスンして……。
そんな無茶なことをすれば、体調を崩すのも当然で。
舞園は唐突に、気を失ってしまった。

舞園「──っあ」

床に倒れこみ、意識を失う寸前……。
舞園の視界に入ったのは、慌てて駆け寄ってくる苗木の姿だった。


舞園(ほんと、乙女かって話ですよね)

くだらない。
どこにでもありふれた話。
自分を助けてくれた。
彼は自分を保健室に送った後、お礼も聞かずに帰ってしまった。
それから何度もお礼を言おうとしたけれど、すれ違いばかりが起きて……結局あのときのお礼をいう事は出来なかった。

だからもう、この事は言わない。
彼ももう、覚えていないかもしれない。
それでいい。

舞園(私はただ、苗木君に、幸せになって欲しい)

舞園「苗木君を幸せに出来るのは、私だけなんですっ!」



霧切「それは、貴方の考えでしょう!」

高ぶった舞園に冷水をぶっ掛けるように、銃弾を放つ。
今度はしっかりと胸を狙う。
さすがに危険と感じたのか、舞園は霧切が構えるのと同時に横に跳んだ。
空に舞った髪を、銃弾が通り抜けていく。

霧切「苗木君が幸せかどうかは、あなたが決めることじゃないわ」

舞園「はっ…貴方もそうでしょう?」

霧切「……ええ、そうね。否定はしないわ」

霧切は少しだけ遠くを見た、様な気がした。
彼女にも何か、譲れないものがあるのかもしれない。


舞園「いいじゃないですか。恋愛なんて所詮自分のエゴを押し付けあうだけなんです」

霧切「いいえ、違うわ。恋愛はお互いを尊重しあえるものよ」

舞園「貴方はいいですよね!仮初だとしても、苗木君の恋人になれたんですから!」

霧切「仮初…」

舞園「でも、それはたまたま貴方が気持ちをぶつけるのが早かっただけ!」

舞園「私がもっと早く告白すれば、苗木君だって……!」

瞬間。
舞園の頬を、何かが掠めた。

舞園「──っ」

霧切「それは気に食わないわね」

銃口から僅かな硝煙がたちあがる。
霧切は静かな怒りを秘め、そう言い放った。

霧切「私がどれだけの勇気と、どれだけの覚悟を持ってあの時告白したのか、貴方には分かるはずよね?」

舞園「……」

霧切「私だってね…分かってるのよ。捻くれていて可愛くないし、貴方と比べたら女子っぽさも欠片ほどにも無いわ」



霧切「でもね、月並みな言い方だけど苗木君への想いだけは、貴方にも負けていないと胸を張っていえるわ」

舞園「……っ」

霧切「私は、玉砕すら覚悟で、苗木君に自分の想いをぶつけたの。苗木君もそれを理解してくれて、今の私たちの関係があるのよ。それを穢すことだけは──絶対に許さないわ」

霧切は強い意志を秘めた瞳で、舞園を見やる。
舞園はその姿を見て、苗木がどうして彼女を選んだのか、ほんの少しだけ理解した。
だけど、それでも──

舞園(私だって、想いは負けてない。だから、この勝負……絶対に負けられない)

舞園「私は、負けられないんですよ!」

全身をバネの様に駆動させ、地面を蹴る。
何よりも速く、誰よりも速く。
たった今だけで良い、神よ、我に速さを与えたまえ。
そう祈りながら、駆ける。

霧切「次こそっ、当てるわ──!」

霧切は自分にまっすぐ向かってくる舞園の心臓に照準を合わせる。
大丈夫──落ち着けば、外さない。
感覚は覚えた。
次こそは当たる。

霧切の指が引き金にかかる。

舞園はもう、止まれない。だからこそ、霧切りが引き金を引くより速く──。

勝利の女神は──



霧切「これで、終わりよ」



霧切が引き金を引くほうが僅かに速く、引き金が押し込まれた。



舞園「っ──!」



そして銃弾が──



霧切「そん、な……っ!」



飛び出さなかった。

カチッと言う音を立てて、霧切の持つ拳銃はその役目を終えたとでも言うかのように、沈黙している。

そう、勝利の女神が微笑んだのは。


舞園「っはあ!」


拳銃を包丁によって弾かれる。
拳銃はがちゃんと音を立てながら小部屋の右隅に転がっていった。
慌ててナイフを取り出し応戦しようとするが、それさえも弾かれてしまう。
弾かれたナイフは拳銃とは逆の方向に転がっていき、もはや霧切に手立ては無い。



舞園「終わりですっ!」

霧切「っぐ!」

舞園が包丁を横薙ぎで振るう。
何とか一歩引いて致命傷は逃れたものの、腹を抉るような熱さが襲い掛かる。

霧切「……う、ぐぅ…ぁ」

腹から流れ出す血を手で押さえながら、痛みに堪えて逃げようとする。

舞園「ふふ、逃げ回ってくださいよ。鼠のように、ね?」

霧切「はぁ、はぁ……ごほっ!」

あまりの痛みに動悸が早くなる。
呼吸の仕方をふと忘れ、咽こんでしまう。
頭が働かない、落ち着け。落ち着け。

霧切(とにかく、この場から逃げないと──)

どこにも逃げ場はないというのに、そんな考えが浮かぶ。
ふらふらとしながらも、霧切はその場から離れるべく走り出した。


1 右端に逃げる
2 左端に逃げる





霧切「……っはぁ…はぁ…」

必死に駆けると、目の前に見えたのは──拳銃だった。

舞園「あらあら、そっちに逃げちゃうんですか?残念です」

舞園「ナイフのあるほうに逃げたら勝ち目があったのに、わざわざ鉄くずの方に来ちゃうなんて…正常な判断が出来なかったんでしょうか?」

舞園が楽しそうに笑いながら近づいてくる。
霧切は震える手で、拳銃を拾い上げる。

霧切「くっ…ごほっっ!がはっ!」

必死に走ったせいか、猛烈にむせ返る。
そして自分の現状に絶望したかのように、膝から崩れ落ちた。

舞園「…ふぅん、もう諦めちゃうんですか」

霧切は俯き、答えない。

舞園「結局、貴方の想いはその程度だったんですね」

つまらなそうに呟き、霧切のほうへと歩み寄る。

霧切「ごほっ!がはっ!」

腹の傷が痛むのか、腹を抱えるようにして咳き込む。

舞園「……今、楽にしてあげますから」

舞園が霧切の目の前に立つ。
霧切の闘志は僅かに残っていたのか、ふらふらとしながら立ち上がった。

舞園「まだ闘志があるようですが…もう手は無いです」


舞園「ゲームオーバーですね。霧切さん」



霧切「……ええ、そうね」

俯きながら、霧切がそう答える。
彼女ももう、自分の運命を受け入れているようだった。

舞園「私の勝ちです。苗木君は──私が幸せにします」

舞園「貴方は、横で見ていてくださいね?」

残酷に、そう告げて。
包丁を霧切りに向けて振り翳し──



パンッと。
乾いた音がした。


じわりと、舞園の胸の辺りが赤く染まる。


舞園「……え?」

霧切「ゲームオーバーなのは、貴方よ」

目の前には、銃口を向けた霧切の姿。

舞園「そん……な……」

霧切「回転式拳銃の面白いところはね、弾が一発でも入っていれば使えるのよ」

そう、全ては霧切が仕掛けた一世一代の賭け。
霧切のような素人が、確実に銃弾を当てるには、それこそ相手が目と鼻の先にでもいなければ無理だろう。
だがしかし、拳銃を持っている時点で相手が迂闊にこちらの懐に入ってくることは無い。
ならばどうすればいいのか。話は簡単。
“拳銃そのものを何の役にも立たないと認識させれば良い”。
そう、つまりは。
拳銃は弾切れ、ならそれはただの鉄クズだと、そう相手に思わせる。

その為に、あえて霧切は6発装填の内【5発】しか弾を入れなかったのだ。
そうして弾切れだと舞園を錯覚させる。
そして上手い具合に拳銃の元にたどり着き、弱っている演技をしながら拳銃に弾丸を込める。
そうして油断した舞園が近づいてくるのを待っていたのだ。

勿論、この作戦は偶然が重なって出来ていたもので。
何か一つでもイレギュラーが起これば簡単に破綻する。
つまりは、最初から勝利の女神は、霧切に微笑んでいたのだ。

霧切「私の勝ちよ。流石に腹を斬られたのは想定外だったけれど……良い戦いだったわ」

舞園「う、ぐ……っ!」

舞園の身体が透けていき、粒子へと変化していく。
何かを話そうと唇を動かすが、激痛で何も喋れないようだった。

霧切「私だって、本気なの。この戦いは、絶対に負けられなかった」

舞園「──っ!」

舞園は何かを叫んだかと思うと、完全に粒子と成って空へ溶けていった……。



霧切「Auf Wiedersehen──舞園さやか」



霧切は腹を押さえながらそう呟き、ゆったりとした足取りで小部屋を去っていった。

投下終了です。
選択肢を捻くれてみたのに正解されて悔しさを感じます。ちなみに逆の方の選択肢を選ぶと霧切死亡です。
次回、狛枝VS七海。
盛り上がりを考えると、逆のほうが良かったかもしれなかったです。

これ運ゲーだったん?

オートマならともかくリボルバーでジャムるわけねーし
尤も、たいていのリボルバーって撃たれる側からすりゃ何発装填されてるか見えるらしいけどな

>>794
運ゲーでは無いですよ。
少し前に全員が装備を選ぶ場面で霧切さんが拳銃の名称と装弾数は6発と明記しています。
そして舞園さんが来る前に弾は装弾数分あるといっています。
しかし描写では5発分しか描かれていないのに、何故か弾切れになっている。
この辺りから推理していただければ分かりました。
本編が、と言う意味でしたら半分あたりです。
回転式拳銃はロシアンルーレットなどでよく使われますが、弾を一発だけ入れて撃つ、と言うことも可能です。
つまり霧切さんは最初に6発入れられた断層に5発しかいれずに使っていました。
うずくまっていたときにこっそりと隠し持っていた一発を入れていた、というわけです。
ですが途中で舞園さんが違和感か何かに気付いてしまったら霧切さん詰むので、半分は運です。
まあ実際は>>796の言うとおり分かることもあるらしいですが、舞園さんも素人なので。

気持ち悪い解説をべらべら喋りましたが、こんな感じです。

投下します。




僕は、いつも一人だった。

「ねえ、あいつまた一人で本読んでるよ」

「あんま関わらないほうが良いって。あいつに近づくと不幸になるよ」

「え?でもあいつってすげー運良くね?毎回席替えのくじ引きで同じ席じゃん」

「お前知らねーの?あいつに近づくと運気吸い取られちまうんだってさ」

「うげ、マジかよ」

それでも、辛くはなかった。
それが日常だったし、僕自身も誰かに無理に関わろうとは思えなかった。
彼らみたいな才能の無い凡人と仲良くなっても僕に利点は無い。

だからこそ、僕は憧れていた。
僕みたいなちっぽけな才能なんか一瞬で潰されてしまうほどの眩くて、強い才能を──。

だから、希望ヶ峰学園からの入学通知が来たときは、心のそこから楽しみだった。
ここでなら僕だって普通の生徒と変わらない。
輝く才能を持つ皆と、楽しい学校生活が送れる……そう思っていた。

だけど、結局僕は一人だった。
誰よりも才能に憧れていて、誰よりも希望ヶ峰学園を楽しみにしていた。
だから同級生の名前や経歴、才能は勿論、学園が秘密裏に計画していた“超高校級の希望”という噂だって調べた。

始めはただ、友達が作りたかっただけなのに。

気付けば僕は、以上に才能に拘る気持ちの悪い人間と、希望ヶ峰学園のクラスメイトからも不気味がられた。
それでも良かった。/本当は嫌だった。
皆の才能を信奉し、希望と崇める。
皆の才能を輝かせるためになら、嫌われることでも何でもやった。

その結果、僕は気付いたら超高校級の“絶望”だなんて言われていて。
皆の才能が輝くのなら、それでも良いと思っていて。
だけど誰もが僕程度の壁を乗り越えられなくて、だったら僕が希望になるしかない、なんておこがましい事を考えて。

この頃にはもう、自分が何のために生きているのか分からなくなった。
絶望の残党として苗木クン達に捕らえられて、僕は心を入れ替えた……というわけでもない。
当時はただ、苗木クンという希望の言葉に耳を傾ける自分に酔っていただけ。
実際、日向クン達と一緒に生活をしていても、気がつけばあの頃の僕に戻ってしまう。

僕が本当に欲しかったものなんて、とうに忘れてしまっていた。



だけど、僕が本当に欲しかったものは、すぐ目の前にあったんだ。
それは、何気ない日常。
ありふれていて、どこにでもあるような、本当にくだらない、些細な光景。

終里「食らいやがれ──終里全力パンチ!」

弐大「がはははは!まだ脇が甘いわ!」

終里さんが弐大クンに殴り掛かり、弐大クンがそれを受け止める。
傍からみたら殺し合いにしか見えないけれど、本人達は楽しんでるみたいだ。

澪田「さー豚ちゃん一緒にセッションしましょー!」

豚神「おいふざけるな!やめろ!的確に俺の鳩尾をベースで突くな!」

澪田さんが豚神クンとじゃれあっている。
豚神クンは嫌がっているみたいだけど、澪田さんとこうやってじゃれあうのは嫌いじゃないみたいだ。

西園寺「うっわくっさ…ねーゲロブタ、あんた超臭うんだけど」

罪木「ええっ…さ、さっきお風呂に入ったばかりですよぉ」

小泉「こら日寄子ちゃん。人の悪口は言わないんじゃないの?」

西園寺「ゲロブタだけは特別だもーん」

罪木「と、特別…なんだか素敵な響きですねぇ」

いつもの三人組がわいわいと騒いでいる。
彼女達はああみえて、深い絆に結ばれているんだと思う。

九頭龍「……かりんとうが食いてえ」

辺古山「ぼっちゃん、かりんとうが食べたいのですか?」

九頭龍「うおっ!?ってペコかよ…ああ、まあちょっと食いてえと思っただけだ」

辺古山「ならば私が買って」

花村「はいはい買うなんてナンセンスだよー!僕が愛情込めて都会風のかりんとうを作ってあげたから、二人で食べなよ!」

九頭龍「は、花村てめえいつからそこに!」

花村「君が甘いもの大好きなんて知ってるよー。僕は料理人だからね!好みの味とかのリサーチも欠かさないんだ」

辺古山「…おいしい」

九頭龍クンと辺古山さんは幼馴染で、よく二人で行動しているけど、今日は花村クンも一緒みたいだね。
彼は少し発言がアレだけど、基本的には優しいから誰とでも仲良くなれるだろうね。

左右田「ソーニアさーん!あーそびましょーう!」

ソニア「あ、田中さん!先ほどめたんこ凄いものを発見したのです!一緒に見に行きましょう!」

田中「フン…それは俺を愉しませてくれるのだろうな?」

ソニア「モチのロンです!なんと捨て猫を見つけてしまったのです!しかも子猫ですよ!これは由々しき事態です、飼育委員である田中さんの協力を仰ぐべき問題だと思います!」

田中「莫迦な……っ!それは遥か悠久の昔、堕天使との聖戦で使われた禁忌の魔獣……貴様、何処でそれを!?」

左右田「あれー?おっかしいなー?俺の声聞こえてねーのかなあ?ソニアさーん!」

この三人も相変わらずみたいだ。
少し左右田クンが不憫だけれど、ソニアさんも本気で嫌っているわけじゃないだろう。

僕は、こんなときでも一人だ。
誰かの輪に入ろうとも思う。
けれど僕が入って彼らの空気を壊してしまうのは忍びない。
だから僕はいつも端で、彼らのほほえましいやり取りを眺めている。
それだけで十分──だったんだ。



七海「日向くん日向くん!」

日向「どうした七海ー」

七海「今日楽しみにしてた新作ゲームが出たんだ♪一緒にやろうよ」

日向「お、いいぞ。二人で出来るのか?」

七海「うん!パーティゲームだから4人位でもできちゃうよ」

日向「そっか…って言っても皆忙しそうだしな…ん?」

と、そこで二人のやり取りを眺めていた日向クンと目が合う。

日向「狛枝、今暇か?」

狛枝「暇だなんてとんでもないよ!こうして君達の希望あふれる日常風景を眺めているだけで僕は満ち足りているんだ…!」

日向「暇じゃねーかよ。じゃ、丁度良いか。俺たちと一緒にゲームしようぜ」

七海「大歓迎だよ。負けないからね!」フンス

狛枝「え?えっと…僕なんかで、良いの?」

日向「お前何言ってるんだよこんなの普通だろ?」

狛枝「ふ、普通かな…?」

七海「友達同士でゲームするのって普通だよね?」

日向「そうだろ」

狛枝「友…達……」


ねえ、日向クン。七海さん。
僕はあの時、僕なんかが君達の友達なんて恐れ多いなんてことを言ってたけどね。
本当は死ぬほど、嬉しかったんだよ──。


狛枝(僕は目を背けていた)

狛枝(皆は僕に手を差し伸べてくれていた。気付くのに時間がかかってしまったけれど)

狛枝(もうその手を、離さない)


だから。
皆の為にも。
大切な友達の為にも。

僕が終わらせるんだ。



狛枝は小部屋の扉を開く。
視界を部屋の明かりが満たして、僅かに瞳を細める。
光に目が慣れてから、狛枝は歩を進めた。
視界には、たった一つしか映ってはいない。

狛枝「正直、僕の相手が君だなんて思いもしなかったよ」

七海「私じゃ不満かな?」

狛枝「いや、そういうことじゃないんだ。日向クンや苗木クンと戦うものだとばかり思ってたからさ」

七海「お兄ちゃんは……今までたくさん頑張ったから、今は休んでもらってるんだよ。日向くんは…きっと頑張ってる。だから私も頑張るんだ」

狛枝「そっか…ねえ、一つ聞いても良いかな?」

七海「どうしたの?」

狛枝「前にも聞いたと思うけど、君は裏切り者じゃないんだよね?」

七海「うん…そうだよ」

狛枝「じゃあ、この世界の“元管理者”なのかな?」

七海「…そこまで知ってるんだ。すごいなあ」

狛枝「やっぱり……君は少し違和感があったからね」

七海「うーん、これでも普通のつもりだったんだけど」

七海は元から少しずれているので、普通も何もないのだが。
なんてことを思って、狛枝は少しだけ笑った。

七海「…?私は言い方を悪く言っちゃうと元管理者の手先、だよ。君たちがこのゲームで悪さをしない為の監視者って所かな」

狛枝「じゃあ、まだ元管理者はいるのかな?」

七海「ううん、少し前にモノクマに権限を全部取られちゃったみたい。多分元管理者はもう何も介入できないはずだよ」

狛枝「それはつまり……平和的解決はできない、ってことだね」

七海「……そうだね。もう、モノクマが用意した魔王を倒すっていう手順を踏まないと、私たちは現実に戻れない」

狛枝「そしてそのチャンスは、今しかない…」

七海「私以外は皆、次のゲーム盤で記憶を……ううん、存在を消されちゃうからね」

狛枝「じゃあ、ここで終わらせないといけないんだね」

七海「うん」

狛枝「一応聞くけど……僕に全てを任せてくれないかな?」

七海「…それはできないかな。狛枝くんだってそうでしょ?」

狛枝「……そうだね。今更そんなことを言われても、僕も退く訳には行かないね」



七海はブーツからナイフを引き抜き、構える。
狛枝はその様子を見ながら、言葉を続けた。

狛枝「だから、ここで決めよう。どちらが先に進むに相応しいか」

七海「そうだね…」

狛枝「君を殺すのは…辛いけど、僕にも背負っているものがあるんだ。君たちの障害とか、そういうことじゃない…僕は【誰か】の為に、君を倒して先に進む」

七海「──やあっ!」

狛枝のその言葉を皮切りに、七海から鋭い一撃が放たれる。
普段のおっとりとした態度からは想像もつかない正確かつ疾い突き──!
狛枝は身体を半歩ずらしてそれを避ける。

七海「はぁっ!」

間髪入れず、七海が横薙ぎに狛枝を斬りつけようとするが、それさえも読んでいたのか、七海がナイフを振るった先には狛枝の姿はなかった。

狛枝「七海さん、君は僕には勝てないよ」

それは驕りではなく。

七海は何度も攻撃を仕掛けるが、そのこと如くを避けられてしまう。

狛枝「……」

超高校級の幸運。
そして狛枝の卓越した観察眼と推理力による複合技能。
七海の動きを冷静に観察し、次の動きを推理する。
そして才能による直感で攻撃を察知する。
推理と直感。
相反する二つを組み合わせたそれは、短時間ではあるのもの、絶対的未来視と成り得る。

つまり、今の狛枝に回避出来ない危機は無い──!

七海「くっ……!」

七海も自分の攻撃が届かないことを理解したのか、バックステップで狛枝から距離を取る。



狛枝「七海さん、提案があるんだ」

七海「提案?」

狛枝「このままやっていても僕に攻撃は絶対に当たらない」

七海「……」

悔しいが、その通りである。
推理と才能。
その両方を完璧に扱いこなしている今の狛枝に、七海の勝ち目は無い。
意表をつければ勝機はあるかもしれないが、狛枝凪斗があっさりと敵に隙を見せるはずも無く。

狛枝「これを受け取って」

狛枝は懐から一挺の拳銃を取り出すと、地面を滑らせるようにして七海に渡した。
そしてもう一挺取り出すと、それを構える。
転がってきた拳銃を拾い上げる。
それは霧切が使っていた回転式拳銃と同じもので。

狛枝「君の拳銃の中には、弾が一発だけ入ってる。僕も同じように、一発だけ入っているよ」

そう言うと、シリンダーを振り出し、中身を七海に見せる。
そこには銃弾が一発しか入っていなかった。
それを七海が確認すると、狛枝はシリンダーを戻す。

狛枝「一応七海さんも確認した方が良いよ」

七海も同じようにして、シリンダーに一発だけ装弾されているのを確認する。
そして七海はなんとなく、この先の展開を予感する。

狛枝「内容は簡単、西部劇の決闘シーンと同じだよ。背中合わせに立って、五歩歩いて…バーン」

狛枝「生き残ったほうが、勝ち」

七海「……」

勝負の内容は七海が想定していた通りだった。
しかし、この勝負が見た目ほど簡単なものでもないと理解している。
この勝負は、勿論拳銃の腕も関わってくるが、何よりも運が絡む。
その時点で明らかに狛枝にアドバンテージがある。
それは狛枝も分かっているだろう、だがしかしそれでも提案した。

七海(このまま戦っても私に勝ち目があるかは分からない…けど)

七海(この勝負は、運。狛枝くんが強運でも、私に可能性が無いわけじゃない、たぶん)

運はあくまで運なのだ。
どれだけ幸運でも強運でも、運とは本来は不確定なもの。
七海に可能性が無いわけではない。
それでも、分が悪い勝負に変わりは無い。

狛枝「僕としては…このまま戦いを続けるよりも良い提案だと思うんだけど……どうかな?」

七海「……」


1 勝負を受ける
2 勝負を受けない




七海「その提案は……受けられないかな」

狛枝「……!?」

狛枝は僅かに動揺した表情を見せる。
当然だ。
狛枝は七海が勝負を受けると確信していた。

全て、自分の考えどおりに行く筈だった。
彼女はまるで、自分の思考を見透かしたかのように、彼の考えを外れた。

七海「さあ、戦いを続けようよ」

七海は狛枝から受け取った拳銃の銃口を狛枝へと向けそう言い放つ。
そこには絶望の色は無く。
彼女は心の底から、勝利を信じているのだ。

狛枝「理解できないな…!どうして、この状況でその選択が出来るんだ…!」

七海「信じているからだよ。皆が勝つことを。そして、私が勝つんだってことを」

狛枝「そんなものは希望なんて呼ばない!ただの都合の良い現実逃避だ!」

七海「ううん、違わない。これも立派な希望だよ。人間、やればなんとかなるんだよ」

狛枝「…そんなの、まやかしだ!」

狛枝は理解出来ないとでもいうかのように、頭を抱えて叫ぶ。
七海はその隙を見逃さず、ナイフを構えて駆ける──!
発砲するという選択を選ばなかったのは、当たるかどうか分からない不安定な銃弾が幸運の才能を持つ狛枝に届くわけが無いと判断しての行動だ。

狛枝「だから、無駄だって言ってるじゃないか!」

狛枝は七海の攻撃を察知して、完璧に避けた……はずだった。

狛枝「っ!?」

頬を伝う赤。
ぽたりと、雫が床に落ちる。

七海「やれば、何とかなるんだよ」

七海のナイフの切っ先が、狛枝の頬を切り裂いていた。



狛枝「……はは、本当に…なんとかなったね」

狛枝は、何故か笑みを浮かべていた。
自分の才能も、推理さえも超えてくる相手。

狛枝「はは、ははははっ」

笑う。
それを見て、七海も少しだけ笑う。

狛枝「そっか…やればなんとか、なる…か」

狛枝は笑みを浮かべたまま、拳銃を仕舞う。
そしていつも使っているナイフを取り出すと、構えた。

狛枝「さあ、やろう七海さん。小細工も何も無しで、ね」

七海「うん──」


狛枝が駆け、ナイフを振るう。
それを避け、七海が反撃する。
お互いに激しい攻撃の応酬。
傷を負わせては、傷を負う。
それを飽きることなく何度も繰り返す。

お互いに顔は真剣なまま、だけどどこか楽しそうに。


狛枝「っはぁ……はあ…!」

七海「ふぅ…はぁ…」

どれだけの時が経ったのだろうか。
二人の身体には幾重もの傷が刻まれ、肩で息をしている。
どちらも疲労困憊で、まともに動けない。

狛枝「…ぐっ……そろそろ、ケリをつけようか」

狛枝は近寄る気力も無いのか、ふらふらと立ち上がりながら、懐から拳銃を取り出す。
七海も同じようにして、拳銃を取り出した。

七海「これなら…状況はイーブンだね……」

狛枝「僕は……超高校級の幸運だよ…負けないさ…絶対ね…」

二人が同時に、銃を構える。



二人ともフラついて、照準が上手く合わない。
歪む視界で、強引に照準を合わせる。

七海「…はぁ…っく」

狛枝「っ…ぐぅ…」

指に力を入れるのにさえ苦労する。
だけど、二人は確信していた。
この引き金を引いた時、どちらかは確実に倒れるだろう、と。

それは直感等という曖昧なものではなく、二人はそう運命づけられているのだと理解する。


七海「……行く、よ…」

七海は引き金に指をかける。

狛枝「…ああ、そうだね……」

狛枝も、同じように引き金に指をかける。


時が止まる。
まるで世界にこの二人だけが取り残されたような感覚。

何もかもが止まった世界で、ゆっくりと、時が流れるためのトリガーが、引かれていく。


そして──。


二つの轟音が、響いた。



止まった時が、動きだし──

狛枝「ぐ、が、はっ……!」

先に膝を地につけたのは、狛枝だった。
脇腹を抑えながら、血反吐を吐く。

だがしかし、致命傷でありながらも、“生きていた”。


七海「……」

やがて、すとんと何かが落ちる音がした。
それは、七海の身体で。

七海は何も言わない。
いや、言う事が出来ない。

胸のあたりが赤く滲んでいる。

狛枝(全く…ここまで人間を再現しなくてもいいと思うんだけど…さ)


そう、賭けに勝ったのは。
戦いに勝利したのは──狛枝凪斗。

七海千秋の核となる部分…人間で言えば心臓を、銃弾はしっかりと貫いていた。
いくら七海は人間ではないとはいえ、核の部分を穿たれれば、機能は停止する。
最早七海には何も話すことはできない、苦しみの声をあげることもも、悲しみの叫びを吼えることも、悔しさの涙を流すことさえ敵わない。

狛枝「七海さん…僕は……先に進むよ…皆が、待っているからね」

七海の姿が粒子となって、消えていく。
この時点で、狛枝凪斗の勝利は確定した。


さらさらと消えていく七海を見送り、撃たれた脇腹を抑えながら、立ち上がる。
ここで座り込んではいられない。
早く、皆を迎えに行かなければ。


重い足取りで、小部屋の出口へと歩き出した……──。











「ごめんね、狛枝くん」

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
to be continued.

投下終了です。
ちなみに
選択肢はどちらを選んでも構いませんでした。
勝負を受ける選択肢をすると二度目の選択肢が出て、そこで選択肢を誤るとBAD√です。
>>1が想定していたのは勝負を受ける√だったので後半投下遅くなって申し訳ないです。続きは次回となります。

投下します。



日向「はぁ……はぁ、どんだけ湧いてくるんだよこいつら…」

日向はモノクマを踏ん付けると、力任せに踏み砕く。
メキメキと嫌な音を立てて、モノクマが残骸へと変貌していく。

日向「もう数えるのも疲れた…」

辺りを見渡すと、夥しい程の数のモノクマの残骸で埋め尽くされている。
目の前には希望ヶ峰学園の校門。

日向「ようやく辿り着いたな…ここまで」

あの超遠泳を追えて島に上陸した日向は、あっさりとモノクマロボに見つかり襲撃を受けた。
武器も何もない状態でモノクマを次々と叩き潰し、ようやく辿り着いた。
着ていたウェットスーツはあちこちが破れ、傷がチラホラと窺える。
拳には血が滲み、コンディションも決して良いとは言えない。
だけどここまで辿り着いた以上、先に進むしかない。

日向「……っ!」

ずきり、と。
脳が痛む。


──殺しなよ、世界に絶望を与えちゃおうよ!


脳に、誰かの言葉が響く。

日向「ぅ、あああ…!」

頭を抱えながら、その言葉を振り払おうとする。
視界の端に、モノクマロボの姿が映る。

日向「……ははっ」

思わず、笑いが零れた。
丁度良い。
あいつを壊して、この言葉を忘れよう。

ぐしゃり、と。
蹴りを叩き込む。

日向「はははっ!」

突然の襲撃に、機能が停止してしまったのか。
ピクリとも動かないモノクマの頭を掴み、地面へと叩きつける。
何度も。
何度も何度も。

日向「……何だよ。ツマラナイな」

日向はつまらなそうに鼻を鳴らし、壊れてしまったモノクマを放り投げた。
そこまでして、ふと我に返る。

日向「……あっ…」

何をしてるんだ。
自分が自分でなくなっていく感覚。
この感覚は、江ノ島に良い様に使われていた時と同じ。
ただ絶望の為に、全てを壊してきた時と同じ。



日向「くそ…これ以上ここにいるとまずいか」

これ以上、何かを壊そうとすればまたあの言葉が蘇ってくる。
もう、あの言葉がなんなのかは理解している。

──洗脳。
脳を洗うなんておぞましいこと、私にはできないわー。
とは、江ノ島の言だが、ことカムクライズルに関しては違った。
彼はありとあらゆる才能を持っている。
江ノ島程度の目論見が看破されないわけがなく、彼女はカムクライズルを洗脳した。
洗脳というよりは、暗示だろうか。
暗示をかけられたカムクラは、江ノ島の操り人形。

そんな状態を何とかしてくれたのが、苗木達未来機関だ。
本来ならカムクラ──日向は、危険分子として【処理】される運命にあった。
しかし苗木達の必死な抗議と努力により、日向には再度暗示かけられる事となった。
その暗示が、崩壊しかかっている。

日向「理由は分かり切ってるんだよな…」

現実とリンクされた状態で、これだけ何かを“壊す”のは久しぶりだった。
いくらかけられた暗示が強くても、記憶は消せない。
その記憶に引っ張られるように、カムクラの人格が蘇ってくる。
だけど、負けられない。

今ここでカムクラに負ければ、江ノ島の思う壺だ。
日向はパンと両手で頬を張り、気合を入れなおす。

日向「おし、行くか」

希望ヶ峰学園に、足を踏み入れた。



瞬間、全身をヒヤリとした悪寒が走る。
全身の傷がじりじりと痛む。

日向「……」

この感覚を、日向は知っている。
圧倒的な殺意。
吐き気を催すほどの絶望感。

気味が悪い程に、“あの頃の自分”と似ている。

日向「場所は体育館か…行くか」


体育館に足を踏み入れる。
体育館にしみ込んだ独特の臭い。
懐かしい……と感じるにはこの学園に良い思い出がある訳でもないが、日向は素直にそう感じた。
僅かに足元がふらつく。
床にはぽたぽたと血痕が染み込んでいた。

先ほどの戦いでの負傷が残っていたのだろう。
日向はそれを改めて自覚させられた。
鉤爪や金属片による切り傷が無数に出来ていた。
止血する気にはなれない。何の痛みも感じない。

日向「……!?」

脳内で警鐘が鳴る。
それは先ほど感じたあの感覚──。

日向(……何かが、いる)

ぐちゃぐちゃと気味の悪く、ねっとりとした不快な殺意。
全身を下で這いずるような気味の悪い感覚。
悪魔か死神なんてものが存在するのならば、きっとこれがそうだろう。
日向は思考を止める。
これ以上深く考えれば、動きは鈍るし、いざって時に動けない。
全てを冷静に無感動に受け止める。それが正しい。


「……ずいぶんと傷だらけみたいだ」


日向「…なんだよ、お前……?」

「はは、酷い言われようだな。分かってるんだろう?」

カムクラ「ボクはお前の【カムクラ】記憶から抽出されたアバター…カムクライズルだ」

日向「ははっ…冗談はやめてほしいな…」

しかし、口では言っても頭はそうではなかった。
腰のあたりまで伸びた黒髪。
特殊な投薬や法外の実験を受けて変色した赤い瞳。
どこからどうみても、彼はカムクライズルだった。

カムクラ「お前の記憶から創りだされたんだ。そっくりどころか遺伝子レベルで同じ人間さ」

日向「はっ…」

カムクラ「何がおかしい?」

日向「俺は日向創だ。カムクライズルじゃない」

カムクラ「そう強がらない方が良い…。基本的なポテンシャルはカムクライズルの全盛期を基にしているし、カムクライズルの思考・行動・すべてそっくりだ」

日向「俺はカムクラじゃない…」

カムクラ「ああ、そうだ。キミはカムクラであることから逃げた。キミは失敗作だよ。もういい加減、キミみたいな出来損ないを見てるとイライラしてくる」



カムクラ「だから決着をつけよう。お前さえ殺せば、江ノ島はこの世界での安定を手に入れることができる」

日向「そうはさせない、俺が倒す」

カムクラ「無理だよ。キミはボクが殺す」

そう言うと、カムクラは何かを放り投げる。
それは放物線を描いて宙を舞い、日向の足元へと転がってきた。

日向「……」

中に入っていたのは、何かの錠剤。

カムクラ「それは江ノ島が作ってくれた特製の錠剤だ。お前が下らない理由で封じ込めたカムクラの力をもう一度取り戻す。それだけの薬さ。まあ、言ってしまえば【暗示を解く薬】だよ」

日向「俺には必要ない」

カムクラ「今のキミがボクに勝てると?本気でそう思っているのか?僅かにでも勝率が上がるなら使うべきだ」

カムクラ「それとも毒とでも疑っている?なら先にボクが使ってもいいさ」

そして、カムクラは少しだけ目を細める。

カムクラ「まさか、だけど。キミはまだ日向創でいることに拘るつもりか?」

日向「俺は日向創だ…」

カムクラ「いいや、日向創はもう死んだ。今そこに居るのは日向創のふりをした、カムクライズルだ」

カムクラ「もう一度だけ言う。使った方が良いと思うよ?」

日向「……」


1 カムクラの力を使う
2 カムクラの力を使わない





そんなもの、必要ない。
カムクラの力っていうのは、要は人間が無意識に抑え込んでるリミッターを暗示で解除する。
つまり、人を殺すことに躊躇いを覚える…その【躊躇い】を無くすだけだ。
カムクラの才能は今もまだ自分の中に眠っている。
だから、そんな薬に頼ってまで、才能を引き出すつもりはない。

それに、カムクラの力は大きな欠点がある。
躊躇いが無くなり、才能を自由に扱う事が出来る反面、人格は壊れるし、身体の方も壊れていく。
身体の方は才能の力で全てが何とかなるわけじゃない。
現実と繋がっている以上、カムクラの力を使えばどんな影響を受けるかもわからない。
それにこの後に控えている江ノ島との対決を考えると、余計な消耗は出来ない。


カムクラ「……ツマラナイね。ボクを嘗め過ぎだ」


──その声が、横から聞こえてきた。
錠剤のケースから目を離し、視線をカムクラの方へ向ける。

しかし、そこにカムクラの姿はない。
気配、という者は空間に染み付く。
殺しの達人はあえて、気配を染み込ませ、自分の気配を殺しながら行動することによって、そこに居るはずの無い【姿】を錯覚させられる。

日向「う、ぐぁ…っ!」

しまった、と思った時には遅い。
風を切る音が耳の横で鳴り、横合いから脳味噌を揺らされるほどの衝撃を与えられる。
目の前を星がチカチカと光り、平衡感覚がつかめなくなり、立っていられない。
このままでは数秒もせずに意識を失ってしまう……!

歯を食いしばり、足を地につける。
万が一膝が地に着くようなことがあれば、もう気絶は免れない。
とにかく死ぬ気で、意識を保つ。

日向「倒れる、わけに…ぐぁあ!」

いくら踏ん張ったところで、足元を揺るがされれば意味がない。
膝を蹴り抜かれ、がくんと膝を着いてしまう。
何とか足掻こうと腕を振るって逃げようとするが──

カムクラ「往生際が悪い…実にツマラナイ対応だよ」

左腕の関節を極められる。
下手に動かせば使い物にならなくなるだろう。

日向「……んぐっ!」

頭を地面に叩きつけられる。
鼻っ柱が思い切り地面に叩きつけられ、何が起きたのかわからないほどの衝撃が襲う。

カムクラ「今のキミを倒すほどツマラナイものは無いんだよ。意地を張るな」

日向「…や、やめろ…」

カムクラ「……」

カムクラが強引に口を開ける。
力が入らない。
抵抗をしようともがくが、腕の事を考えると派手に暴れる事も出来ない。

日向(いやだ…俺は…俺は──!)

錠剤が喉奥に押し込まれ、鼻を摘みあげられる。
吐きだそうにも、鼻を摘みあげる力が尋常じゃない。下手に動かせば鼻をもぎ取られてしまうのかと錯覚するほどに。
否応無しに、その錠剤を、飲み込んだ…。



──絶望。


──絶望絶望絶望絶望絶望。


──絶望絶望絶望絶望絶望絶望絶望絶望絶望絶望絶望絶望絶望絶望絶望絶望絶望絶望絶望絶望。


日向「うああああああああああああっ!!」

脳に流れ込む大量の絶望。
世界の何もかもを破壊したい衝動に駆られる。
だけれど身体が動かない。

日向(そうか…俺の邪魔を誰かがしているのか……)

障害もまた、破壊すればいい。
日向は関節を極められたままの腕を強引に振るい、カムクラの拘束を振りほどく。
その際明らかに何か鳴ってはいけない音がしたが、気にすることもない。痛みなんて感じない。

カムクラ「へえ、あの拘束をバカ力で振りほどくなんて…流石ボクの“元”だけあるね」

日向「う、おおおおおっ!」

日向はそのまま、目の前で笑っているカムクラの顔面に拳を叩き込んだ。
リミットを振り切った日向の拳は、カムクラの顔面に突き刺さり、そのまま吹き飛ばしていく。

カムクラ「ぐっ…」

そのまま倒れる事だけは出来ないとばかりに足に力を込め、尻餅をつくことだけは避けたようだった。

カムクラ「全く…素直に力を使っておけば腕の一本を失わずに済んだ」

日向「……」

そう呟くカムクラの前で、日向は外れてしまった関節を強引に嵌めなおす。

カムクラ「多分、折れている」

日向「余計なお世話だ。今動かせるならそれで十分」

カムクラは、僅かに目を見開く。
確かに錠剤を投与した。
しかし日向は何事も無かったかのように振る舞っている。

カムクラ「どういう事だ……!?」

日向「この程度の絶望で…俺をどうにかできると思うな」

日向は拳を構える。
カムクラは僅かに奥歯を噛み締めるような仕草をした後、同じように拳を構える。

カムクラ「まあいい、このまま殺すだけだ。ツマラナイ、いつも通りの仕事だ」

日向「お前は、カムクライズルか?」

カムクラ「そうだ、カムクライズルだ。お前と同じ、ね」

日向「そうか…なら、俺が越えるべき障害としては悪くないな」

震える手を握りしめ、深く息を吐く。
そう長くは続かない。
左腕がやばいのは分かりきっている。これ以上負傷を避けるためにも、カムクラは迅速に倒さなくてはならない。

日向(こいつは…有害だ)

自分の殺してやりたい過去と同じ、むかつく顔。


日向(俺が越えるべき壁は、こいつだ!)

投下終了です。
日向VSカムクラ後半は次回。

投下終了です。
日向VSカムクラ後半は次回。
ちなみに1を選ぶとカムクラ人格に乗っ取られてBADENDでした。

お久しぶりです。体調崩していました。
夏風邪は舐めてると痛い目に遭うのでご注意を。投下します。



震える手を強引に拳の形に変え、相手の眼前に突き出す。
まるで気の籠もっていないその拳は、いとも容易くかわされる。
踏み込んだ足を軸に半ば強引に腰を捻じ曲げ、拳の軌道を変える。

一撃で仕留める必要はないんだ。
何度も、何度も、同じ動作を繰り返す。
相手が嫌がるような動きを執拗に、絡みつくように、繰り返していく。
この地道な動作が、相手の冷静さを奪い、強引な方法で決着をつけようと焦らせることに繋がる。
例え粘り強く耐えたとしても、弱って諦めが顔をだせばこちらの勝ちだ。

突き詰めた話、喧嘩と言うのはそういうものだ。
相手の嫌な部分、不快な部分を執拗に攻めれば、いずれ膝が落ちる。
だがしかし、その当たり前をこの“コピー”が知らない訳がなく。

むしろ、その当たり前を知っているが故に、相手がわざと作ったであろう“隙”を、罠とも知らずに手を伸ばす。
誘い込まれていることに気付いたときには横っ面に拳が突き刺さっていて、タダで貰うわけにはいかないとこちらも拳を振るう。
気付いてみればそれはクロスカウンターのようになっていて、現実のそれはなんとも気持ち悪いもんだと苦笑いした。

カムクラ「……キミは、嫌なやつだな」

日向「お前には一番言われたくないんだけどな」

カムクラ「自分なんて普段は良く分からないけど、こうして【自分】と対峙するといかに自分が嫌なやつなのかを思い知るよ」

日向「それは同感、だっ!」

予備動作無しのフック。
顎の側面を的確に狙ったそれは、寸前で受け止められる。
それで構わない、この後が本番だ。

日向「っはあ!」

道中、モノクマロボが持っていたナイフを奪っておいた。
背中に仕込んでいたそれを引き抜くき、喉を掻っ捌いてやろうと横凪に振るう。

カムクラ「ツマラナイよ…その程度の仕込み!」

しかしこの攻撃さえも読まれていたのか、同じように隠し持っていたナイフで受け止められてしまう。
十字合わせにされたナイフの刃が金属音を放つ。
このまま鍔迫り合いをしていても仕方ない。

踏み込んだ足を半歩引き寄せると同時に軸足を入れ替える。
そしてカムクラの脇腹を蹴り抜こうとした瞬間、カムクラはそれを察知したのか素早く体勢を入れ替える。

日向(…!!まずい…っ!)

そう思ったときには、自分の脇腹に深々とカムクラの足が突き刺さっていた。

日向「う、ぐっ…」



棒立ちの体勢で鞭のようにしなる蹴りが命中すれば、圧迫された内臓が悲鳴を上げる。
あまりの衝撃に喉元まで胃液がせりあがって来る。
だけどここで倒れるわけにはいかない。
安楽を求めて膝を折れば、一気に潰される。

痛みでアドレナリンが過剰に分泌され、全身が熱で爆発しそうだ。
その勢いのまま、苦し紛れでナイフを振るうと、偶然カムクラを切り裂いた。

カムクラ「ぐっ…!」

ナイフや包丁などの凶器に対して後ろに逃げるのは有り得ない。
距離が空いても刺突に切り替えて対処されれば喉を衝かれるからだ。
真っ直ぐ逃げる、足を止める、ナイフの動きを読もうとする、これも間違い。
逃げてしまえば後手に回るし、足を止めれば裂かれる、動きを読んでいても対処が出来なければ意味がない。

多少の攻撃は受ける覚悟で、相手の死角に回りこむことが重要だ。
それが出来ない最悪の状況なら、倒れこむ。
足元って言うのは、背後よりも対処しづらかったりする。
上からナイフを振るうにしても不安定で、蹴りを放とうとしてもその隙に足を切られる。
足を切られてしまえばその後の戦いで不利になることは明白で、だからこそ勝負を捨ててでも距離をとる。

俺はこの理論と同じように倒れこみ、カムクラの足を狙ってナイフを振るう。
しかし俺の考えは読まれていたのか、カムクラは俺から離れていく。

日向「はぁ…はぁっ…」

逆流した胃液が鼻と喉を苛み、いつのまにか流れ出た汗で視界が霞む。
荒い息を何とか抑えながら、カムクラの姿を見失わないように目で追い続ける。

こちらも消費したが、向こうもダメージは残っているはず。
攻めるなら今しかないと一歩踏み出した瞬間、脳内で警告音が鳴る。
今までの経験から危険を察知した俺は、横に転がるようにしてその脅威を避ける。
その数瞬後、乾いた音と共に、横を何かが通り抜けていった。

カムクラ「……」

カムクラの手に握られていたのは、一挺の拳銃。
銃口からは煙が出ていて、ついさっき通り過ぎたものが銃弾であることを如実に物語っている。
こちらがトドメと攻めてくるなら、向こうは防衛と称して銃口を向ける、と言うこと。

当たる、当たらないは置いておいて、拳銃って言うのはそれだけで脅威だ。
それを向けられればとっさに身体は身構え、射撃を警戒する。

日向「…っち」

俺は舌打ちをしながら辺りを見回す。
何か転がっていないか…?
そういう思いで床を探すと、モノクマロボの破片が数個転がっていた。

日向(…やるしかないか)



俺は拾い上げた破片を握り締め、狙いも定めずに投げつける。
無論、当たる訳が無い。
三つほど投げ込み、二つは虚空へと消え、最後の一つは偶然相手の頭上をすり抜けた、様に見えた。
カムクラが僅かにしゃがみこんだ隙を見逃さず、距離を詰めようと駆ける。

こちらがそう思っているのならば、当然空いてもその思考には至っているだろう。
体勢を崩した相手に迫ろうとすれば、脇から顔を覗かせた銃口がこちらの動きを封じる。
直感的に当たると判断した俺は、素早く身体を捻って避けようとするが、放たれた銃弾が残酷にも脇腹を抉る。

日向「く、そっ…ぐぅ!」

しかし止まるわけにはいかない。
脇腹を抑えることもせず、がむしゃらに相手へと突っ込んでいく。
それはカムクラにしても想定外だったのか、目を見開いて身体を僅かに硬直させる。

日向「っらあ!」

その隙を見逃さず、ナイフを振り翳す。
カムクラはそれを僅かな動揺と共に何とか避ける。
しかしその俺の想定外の行動で、カムクラは少しだけ考えを改めたみたいだ。

そうだ、俺の動きを見ろ。

動きを読んで、次に何をするのか、完璧に読み切ってみろ。

分かってるだろ?

攻めるより、守るほうが難しい。
なぜなら攻めるほうは一手早く行動できるからだ。
守りは相手の攻めと、自分の行動で二手消費する。
どれだけの力が、才能があってもこの差だけは縮まない。

それでもカムクラは俺の攻撃を凌げるだろう。
カムクラの再現だというのなら、それは当然のことだ。
来ると確信している攻撃を受け止めることは素人にだって出来る。


──だから。


お前の想定外の“一撃”を入れる。


それだけだ。

 

 
 
 
左右田「なあ日向、人間ってのは脆いんだぜ?機械にも脆い箇所があるけどよ、人間と比べたら些細なもんだぜ。だからこそ人間ってのは、自分を守るために機械を作るんだろうな」




九頭龍「銃ってのは簡単に命を奪えるけどよ…そういうのに頼ってちゃ極道はやってられねえ。拳銃を持つ前によ…命の尊さってのを学ばなきゃいけなかったんだ…。俺はそれに気付くのが遅かった」

 
 
 
終里「オレはつえーヤツと戦いてえ。それはかわらねーけど、だけどよ…力ってのはただ振るうだけじゃダメなんだよな。何のために力を振るうのか、そいつを考えねーといけねーんだよな」

 
 
 
ソニア「私は今まで、何も考えてきませんでした。何も考えてこなかったから、絶望に犯されてしまったのだと思います。でも、ようやく気付けたんです。誰かの為に頑張る、それこそが希望への第一歩だと!」

 
 
 
花村「僕はシェフだから…何かをアドバイスできる訳じゃないけど。そうだね、もし僕が戦うことになったのだとしたら皆の笑顔を守るためかな?だって何かを食べるなら、笑顔の方が良いと思わないかい?フフ」

 
 
 

豚神「フン…考えてないで身体を動かせ。それが痩せられた人間に課された使命のはずだ…!と言いたいところだけどさ、そうだね。誰かを欺くなら、まずは自分を欺くと良い。自分を欺ければそれはもう立派な【事実】だよ。虚偽の事実って…矛盾しているようだけど、強力な【嘘】なんだよね」

 
 
 
辺古山「剣というものは実際、それを持つ覚悟があれば良いのだ。剣の重みを知らないものは誰にも勝てないし、真の意味で剣を知ったとは言えない。その剣で誰かを斬ることの重圧に耐え、それでも前に進もうとする者は、立派な剣士だろう」

 
 
 
小泉「あたしは思うんだよね。誰かに自分のことを認めてもらうことって、それだけでその人の力になるんじゃないかな。あたしは小泉真昼、という人間を皆に肯定してもらったからこそ、自分の過ちと向き合えたんだし。だから日向も…自分を肯定してくれる人のこと、忘れないでよね」

 
 
 
罪木「わ、私が何かを言うなんておこがましいんですけどぉ…その……自分に自信を持つことって、大事だと思います。私は出来てないのに何いってるんだっていうのは分かりますけど…でも、自分に自信を持って、自分と言う存在を肯定してあげないと…きっと壊れちゃうと思います。だから日向さんも、自分を信じて、肯定してあげてくださいぃ…あの、私なんかが…すみません!」

 
 
 
澪田「うーん、唯吹の良いたい事は皆が言ってくれちゃってるからなー。ここでバシーンとカッチョイイフレーズが出てくると最高なんだけど……ハッ!創ちゃんは己の信じた道を進め!唯吹達がここは引き受ける!ってどーよ!?ひゃーさすが唯吹!この場面でこのフレーズが出るなんて常人には真似できない技ッ!」

 
 
 
西園寺「日向お兄は難しく考えすぎなんだよ。バカなんだから頭なんて使ってないで、自分が思ったとおりにやればいーんだよ!蟻タンが何してようとあたしら人間には関係ないでしょ?それと同じ。別に日向お兄が何しても迷惑だって思う人間なんていないんだからさ、自分の信じたとおりにやりなよ」

 
 
 
田中「一時は修羅の道を歩んだが…フッ。修羅など俺様にはぬるま湯の様だったぞ…。俺様が貴様如き下等生物に教えることなど何も無いが…強いて言うならば、お前には信念があるか?信念は己を高める為には必須であり、我が魔道においても必要不可欠な技能だ…信念は人を強くする。覚えておくが良いわフハハハハハハ!」

 
 
 
弐大「わしは難しいことは分からん。マネージャーじゃからな。強いて言うなら、人間死ななければ何とかなるもんじゃあ。生きてればなんでも可能性はある。生きてるだけマシっつーことぜよ。だから日向も死なないようにするんじゃな!ガハハハハ!…特に、泣かせたくない誰かがいるなら、死んではいかんぞおお!!」

 
 
 
狛枝「僕から君に言えることなんてほとんど無いけれど…そうだな。君は才能なんかじゃ比べ物にもならないほどのものを持ってる。才能に依存することは誰にでも出来る。特にその才能が強ければより深く依存してしまう…。けれど、君は違うはずだよ。才能に依存することなく、【それ】を信じることが出来れば……君に出来ないことは無いよ。僕が保障する。…あはっ、僕の保障なんか、要らないかもしれないけどね」

 
 
 
七海「日向くん、君にはこれだけの絆があるんだよ。この絆を忘れないで、誰かの為だけじゃなくて、自分の為にも戦って欲しいな。それと、絶対に、生きて帰ってきてね。信じてるよ」

 
 
 
──そうだ。


俺には、皆の為に、自分自身との決着の為に戦う。

過去との決別──

自分の進む未来──

自分の周りに残った、僅かな人たち──

俺は、たかだかこれだけの理由で、命を賭けて戦っている。


日向「お前みたいなただのコピーと一緒にするなッ!」



正確無比な突き。
後ろに逃げたカムクラを逃がさないように、喉元を正確に狙う。
それを察知した相手が素早く身をよじるその数瞬前に、素早く手首を捻って刃先を返し、そのまま横薙ぎへとスイッチする。

カムクラ「ッグ!?」

その動きは読みきれなかったのか、カムクラは両目を見開た。
だがもう遅い──。
ナイフはカムクラの胸を深々と切り裂いていた。
無論、このまま攻撃の手を緩めるつもりも無い。

日向「借りるぞ──」

棒立ちになっていたカムクラの手から拳銃を奪い取ると銃口を腹にくっつけて引き金を引く。

カムクラ「ぐああああああああああ!!!」

ばしゃりと血が舞い跳び、俺の身体を汚す。
カムクラの腹には穴が開いており、内臓が僅かにはみ出していた。

しかし…これで即死しないのはやっぱり化け物だな。
この状態で生きていられる人間なんて限られている。
それこそ大神クラスの武人でなければ耐えられないだろう。

カムクラ「はぁ…はぁ……ぐぅ!」

日向「今、終わらせてやる!」

俺は素早く銃を構え、今度は照準を頭に合わせる。
動きは封じた、もう逃げられない。
しかし引き金を引いても銃弾は飛び出さない。

カムクラ「は、はははは!どうやら神はボクに微笑んでいるらしい」

日向(弾切れかよ…!?)

そう気付いたときには遅く。
あれだけの怪我を負っていながら、むしろ鋭さを増している蹴りをもろに受けてしまう。

日向「ん、ぐ…ぅ…!!」

あまりの痛みにもんどりを打ちそうになったが、歯を食いしばって耐える。

カムクラ「ほらほら遅いよッ!」

日向「がはっ!」

勝利を確信して油断したせいか──僅かに動きの鈍った俺に容赦なく蹴りが飛んでくる。
先程までの攻撃が遊びであったと勘違いしてしまうほどにそれは鋭く、早く、強い。
あまりの衝撃に僅かに膝を落とせば、万力の力で腕を握られる。
このままでは腕を引き千切られる──!

日向「く、そ…!」

俺はせめてもの抵抗とばかりに掴まれていない方の腕を伸ばし、カムクラの眼球を指で押し込む。
片手は惜しいが、眼球を潰せば……。
すると相手はその動きを機敏に察知し、俺の耳の穴に指を伸ばす。

日向(まずいな…このまま鼓膜をぶち破られて…指が脳にまで達しました、なんて言ったら間違いなく死ぬ…)

俺は素早く眼球から手を離し、銃弾によって穴の開いたカムクラの腹に蹴りを入れる。

カムクラ「ぐ、ぐ、おぉぉぉお!!」

痛みによる叫び、というよりは、身体が思ったように動かない苛立ちでの叫びだろう。
カムクラは血走った目で俺をにらみつけながら、荒い息を吐く。



カムクラが叫んだ隙にバックステップで距離をとった俺の足に、何かが当たる感触がした。
警戒を怠らずに拾い上げると、それは“暗示を解く薬”とカムクラが言っていた錠剤だった。
その錠剤の説明書きをよく見ると、

これはカムクラ…もとい日向クン専用のお薬だよ☆
このお薬を飲むと…なんと素敵!あの何もかもを絶望に陥れていた全盛期のカムクライズルの力がタダで手に入っちゃいまーす☆
しかも副作用はないどころか、嬉しい効果だらけだよ?
全身の筋肉は膨張して普段の自分お力の何倍も引き出せちゃうし、痛みだって感じない。
そう、これは言うならば超高校級のドーピング薬なのです!
まあ、使った後にほんのちょっと頭痛があるけど、それを堪えれば…っていうかむしろそれに身を任せればぜんぜん問題ないから。、じゃんじゃん使ってねー☆

などと言うくだらない説明がしてある。
この薬はどうやら暗示を解くだけじゃなく、ブースタードラッグの役割も果たしていたらしい。
……。

俺はケースから錠剤を取り出すと、躊躇いなく口に放り込んだ。
そのまま、飲み込む。

カムクラ「……へぇ、結局使うんだ」

日向「っ…俺は、こんなところで死ぬわけにはいかないんだよ……」

効果は直ぐに現れる。
筋肉がはちきれそうなくらい膨張し、アドレナリンが驚くほど分泌される。
先程まで感じていた痛みは消え、僅かな高揚感。
そして──脳で囁かれる、絶望。

日向(俺は……日向創だ)

きっといつかの俺も、皆も、こうして絶望に染まっていったんだろう。
自分ではどうすることも出来なくて。
誰かに助けを求めることも出来なくて、差し伸べられた手を振り払って。

こんな俺にも……待ってくれている人がいる。
こんなちっぽけな絶望に屈するほど…日向創は、弱くないッ!

日向「行くぞっ!」



ナイフを構え、本能のままに飛び掛かる。
表現のとおり、本能のままに、獣のように飛び掛った。

カムクラも同じように、がむしゃらにナイフを振るう。
もう格好も何も気にしない。
純粋な技術と、想いをぶつけるだけの戦い。
だけど、カムクラにはただ俺が出鱈目にナイフを振るっているようにしか見えないだろう。
俺と、お前の差はそこだ。

何度も、何度も刃が交錯し、弾かれる。
それは真剣勝負という表現には当てはまらず、さながら子供同士がヤケクソになって互いに殴り合っている喧嘩みたいだ。

カムクラ「どうしてオマエは、そこまでして戦う!ここまでする理由がオマエにはあるのか!?」

日向「それが分からないのが、俺とお前の差なんだよ!」

カムクラのがむしゃらな太刀筋に、乱れが入る。
もしかしたら、迷っているのかもしれない。
いくらカムクラを再現したといっても、ベースはあくまで【日向創】だ。
だからこそ、こんな迷いが出たんだろう。
それは、戦いの上では勝敗を分けるほどの致命的な隙だというのに。

カムクラ「理解できない…ッ!オマエは現実でその才能を使えば全員このゲームから救えただろう…!わざわざ危険を冒して助けに来る?その思考が有り得ない!合理性を欠いている!ローリスクハイリターンな策があるなら、それを選ぶのが当然だろう!」

日向「合理性?ローリスクハイリターン?そんな事は知らない!俺は自分の為に、そして皆を救う為にここへ来たんだ」

カムクラ「それはキミのエゴだ!」

日向「エゴで構わないさ!エゴじゃない男なんかいると思ってるのかよ!」

開き直りだと言われてしまえば、それまでだ。
カムクラの言うとおり、これは俺のエゴで、もしかしたら皆に迷惑をかけることになるかもしれない。
だけど、一度そのことに迷いを感じれば、そこまでだ。
俺は間違っているのかもしれない、そんな不安を考えた瞬間、動きは鈍くなる。
その迷いがないのは、きっと機械くらいのものだ。

悩み、矛盾を抱えて前に進めるのが、人間の素晴らしい部分だと思う。
だからこそ俺は、カムクライズルのような【機械】じゃなくて、日向創という【人間】でありたい。

カムクラ「オマエ…は…カムクラ……イズルだ…」

カムクラの額に、ナイフを突き刺す。
嫌な音がして、カムクラの額から血が流れ、それで、終わる。

日向「その言葉、斬らせてもらう」

カムクライズルであることに拘ったお前に、俺の人間らしくありたいという気持ちは理解できないだろう。
帰りを待ってくれている人間の為に、普段よりもちょっとだけ頑張れるのは、人間誰でも同じ。
お前はその小さな力を、過小評価しすぎたんだよ。


日向「俺の名前は日向創…。カムクライズルを殺した【人間】の、名前だ。今度は間違えるなよ」


そう言い放って、体育館を後にする。
後ろで燐光が吹き荒び、カムクラの存在が消えたことを理解する。

──これで残るは黒幕である江ノ島盾子だけだ。
どこに隠れているのかは知らないが、ま、ああいう奴はたいてい高いところが好きだろう。
それでいて、偉ぶってふんぞり返っているのがテンプレートだ。
だとすれば、場所なんて分かりきっている。

日向「よし、学園長室に向かうか」

 
 


日向VSカムクラ終了です。
次回霧切さんの嫁の出番。

申し訳ないです。
現在多忙なので投下できない状況です。
恐らく8月に入れば落ち着く予定なので、そのころに書き溜めて投下する予定です。
もう暫くお待ちください。

ボールを抱えていた千尋が、思わずそれを落とした。
そして、笑顔を浮かべた。

「…それ、オレらに言ってどうするのさ?」

佑が千尋と海斗の前に立った。

「オレ、本気だぞ」

「だから、どうした?」

海斗は佑の考えが全く読めず、首を傾げた。
佑は2人を交互に見た。

「…お前らは、アイツの事どう思ってる?
 ただのダチか? それともそれ以上か?」

千尋の顔から、笑顔が消えた。

「聞いてどうするわけ?」

佑の表情は、いつになく真剣だった。

「オレ、修学旅行で告る。
 でも、2人が好きだって言うなら、多分しない。
 抜け駆けみたいで嫌だからさ」

「ふーん…なるほどね」

千尋は落としたボールを拾い上げ、それを指の上で回した。
それを止め、再び笑顔を浮かべた。

「本当の事言っていい?
 オレも凪紗チャンの事好きだよ。
 それは、佑クンや海斗クンが好きっていうのとは、絶対違う。

 海斗クンだって、そうなんでしょ?」

突然話を振られ、海斗は視線を下に向けた。
顔が火照る感じがした。

海斗も凪紗の事が好きだった。
初めて出会った時はむしろ嫌いな人間の部類だったが、一緒にいるうちに惹かれていった。
残りの2人も似たような感じだろうが。

「やっぱそうかぁ…」

佑が溜息を吐き、その場に座った。
そして2人を見上げた。

「じゃあ、オレはしばらく言わない。
 時が来るまでは、絶対に言わない。
 抜け駆け禁止な、絶対!!」

「何でさ?」

千尋が頬を少し膨らませた。
男がやるのはどうかと思うが。

「…だって、抜け駆けとかしたら、グループの雰囲気が悪くなりそう。
 オレ、それだけは絶対嫌だからな!
 暫くは仲良し4人組でいたいんだ、オレこのグループ好きだし!」

「なるほどねぇ… だってさ、海斗クン?」

「わかった」

この4人組が好きなのは佑だけではない。
もちろん、海斗も気に入っていた。
誰かが抜け駆けをして壊れてしまうのは、絶対に嫌だと思う。

ここに、3人だけしか知らない同盟が組まれた。

 

多分、このクラスがプログラムに選ばれてしまった今こそが、その『時』なのだろう。
事実、佑は最期に言った。

海斗は凪紗の横顔を見た。

まだ、言わない。
千尋が何処にいるかわからない状況で言うのは、卑怯な気がする。

「…海斗、どうしたの?」

いつの間にか凪紗はこちらを向いていた。
海斗は何でもない、と首を横に振った。

千尋とオレが凪紗に気持ちを伝えられるように、その時が来るまで、凪紗を守る――それがオレの今の役目だな…
千尋のヤツは…何をしているんだろう…?

 

ブツッ

 

上の方からスイッチを入れるような音がした。
海斗は上を見上げた。
木にスピーカーのような物がくくり付けられていた。

「…放送だね」

凪紗が腕時計を見ながら呟いた。

『グッモーニング、エブリワン!! おっと米帝語はいかんな!!
 皆元気に殺し合いしているかなぁ!?
 では、早速戦いに散った友達の名前を言おう、死んだ順番だ!!
 地図の入ったファイルに名簿も入っているから、チェックしたまえ!!』

海斗はあまりに大きな声に顔をしかめながら、デイパックを初めて開けた。
1番上に食料が入っており、その下に地図らしき物が見えた。

『男子7番、栗原佑君…は知っているか。
 女子3番、金城玲奈さん!!
 男子3番、池田圭祐君!!
 男子1番、青山豪君!!
 ぼちぼちのペースだな、まあ最初だからオーケイか!!』

「け…ケースケ…っ そんな…!」

凪紗が小さく悲鳴を上げた。

圭祐は海斗もそれなりに仲良くしていた。
佑と新島恒彰(男子15番)のくだらない口喧嘩を最終的に止めるのは、海斗と圭祐の役目になる事が多かったので。
とても謙虚な、いい奴だった。

金城玲奈はよく知らない。
ただ、何となく見下されている気がしていたので、好きなタイプではなかった。

青山豪とは地域選抜を選ぶ合宿で一緒になった。
特に会話を交わしたというわけではなかったが、一生懸命頑張る奴だと感じた。

頭の中にそれぞれの顔が浮かび、そして消えた。
佑は別として、3人がこの会場で生を終えた。
3人が自殺をしたとはとても考えられない(特に玲奈は)。誰かが、手を下したのだろう。転校生が全員を殺した、というのも違う気がする。このクラスの誰かが、このくだらないゲームに乗ったのだろうか?

『続いて禁止エリア!! よく聞くようにな!!今から1時間後、7時からC=04エリア!!9時からはH=10エリア、11時からはB=07エリアだ!!』

海斗は必死に書き留めた。
本部である中学校の北のエリアと、南の方にある住宅地の端と、北の方にあるデパートの側のエリアには、入れなくなる。
自分たちが今いるE=04エリアとは関係がない。

「何…これ…」
曽根崎凪紗(女子10番)の手の上には、20cm四方ほどの箱が乗っていた。
鞄の1番奥底に入っていた。

気付かなかった…でも、あたしこんなの入れたっけ?

「お前が入れたんじゃないのか?」

その箱を怪訝そうに眺めていた設楽海斗(男子10番)が訊いた。
凪紗は首を横に振った。

あたしじゃなかったら…お父さん?

ひらっと何かが落ちた。
凪紗はそれを拾った。
そこには、見慣れた父親の字で、こう書かれていた。

『非常事態の時以外は開けないこと』

「…今って非常事態かな?」

「今以上に非常な事態があると思うか?」

「だよねぇ」

凪紗は箱を開けることにした。
箱を床に置き、蓋をそっと持ち上げた。

え…!?

凪紗は目を見開いた。
海斗も息を呑んだ。

箱の中には、1丁の拳銃が入っていた。

「これ…何で!?」

「凪紗、これって手紙か?」

海斗が箱の蓋に付いていた封筒を剥がした。
それを渡され、凪紗は慌てて封を切った。
そこにも、見慣れた字が並んでいた。
最初の1文に、2人は顔を見合わせた。

『注意・首輪には盗聴器が付いているので怪しい言動は避ける事』

「と…とうち…ムグッ」

「バカ、駄目だ!」

海斗に口を塞がれ、凪紗は危うく窒息死するところだった。
しかし、それがなければ言ってはいけない事を口にするところだった。

危ない危ない…
読んだ後の1発目の言葉が、正に怪しい言葉になるところだった!!

続きに目を遣った。

「足怪我してんだろ、無茶するなって。
 鞄どこ、持って来るから、水田はここで待ってて」

迅は早稀を店の壁にもたれさせると、ゲーセンの中に放り出したままだった鞄を取りに行った。

思っていた以上に優しいヤツだなぁ、それに何かあんまり身体が柔らかくなくて、見た目より腕ががっちりしてて、それから――うわっ、え、あたし何考えてんだ!
あっつ、顔あっつ!!!

両手を頬に当てて、顔の体温を少しでも下げようとしたのだが、下がりきる前に迅は戻ってきてしまった。
手渡された鞄に財布を入れて肩に掛けようとしたのだが、迅はひょいっと鞄を早稀から取り上げ、自分の肩に掛けた。
何事かと訝しむ早稀に、迅は再び手を差し伸べた。

「ほら、掴まれ。 家まで送る」

早稀は目を見開いた。

「え、いや、え、何で!?
 てか良いって、あたし家あるの月が丘だから遠いし!!」

「何でって…足怪我してんのに、その遠い家までどうやって一人で帰るんだよ。
 俺の腕、杖代わりに使ってくれていいから…ほら掴まれ、早く帰るぞ」

有無を言わせない迅の言葉に甘え、早稀は迅の腕に掴まった。
迅の腕に自分の腕をしっかりと絡ませなければならず、傍から見ればどう見てもカップルにしか見えないような格好になっているのが恥ずかしくて(しかも、かなりラブラブなカップル、だ)、心臓が破裂してしまいそうなほどドキドキした。
帰宅ラッシュで混雑する駅のホームでも電車の中でも、迅は早稀を護るように位置取り、駅から家までも早稀のゆっくりしたペースに合わせて歩いてくれた。
学校最寄駅から家までの1時間、ずっと早稀は迅に掴まっていたので、家の前に着き迅から腕を離す時には名残惜しくなっていた。

「あ、あの、迅…あり、ありが、とう…」

「おー、お大事にな、無茶すんなよ?」

迅はふっと笑みを浮かべると、踵を返し、駅の方角へと戻っていった。
迅の背中が見えなくなるまで、早稀は家の前に立ったまま見送った。
背中が見えなくなると、ひょこひょこと歩きながら家のドアを開けようと手を掛け――ふと、思い出した。

そういえば、迅の家って…うちとは反対側で、しかも毎日1時間半かけて通学してるって言ってたのを聞いたことがあったような…
…ってことは、今から2時間半もかけて家まで帰るの…?
…それなのに、あたしを送ってくれたの…?
部活帰りで、疲れてたはずなのに…

たまらなくなり、早稀は家に入ると、弟と妹の「お姉ちゃんおかえりー」という声に反応もせず、一目散に自室へと向かい、ベッドへと倒れこんだ。
迅が1時間半の間ずっと持ってくれていた鞄を、ぎゅっと抱き締めた。
ほんの少し、迅の匂いが残っているような気がした。

訂正、今日はしし座の運勢も血液型B型の運勢も、恋愛運は最高だったに違いない、『運命の人と出会えるよ!』とか書いてあったに違いない。
困っていたところを助けてくれて、家が逆方向なのに嫌な顔一つせず送ってくれて、その間中ずっと早稀が歩きやすいように気遣ってくれて――好きになるななんて言う方が無茶な話。
この日、早稀は完全に恋に落ちた。

1・名前は?

 天条野恵(てんじょう・のえ)!

2・あだ名は?

 フッツーに野恵かな。

3・生年月日、血液型は?

 3月3日、うお座のA型!

4・家族構成は?

 お父さん、お母さん、あとは弟。

5・趣味は?

 ・・・テニスかな?

6・身長は?

 164cm、意外だとか思った??

7・あなたの入っている部活は?

 テニ部!

8・委員会は?

 何も入ってないよ。

9・得意な科目は?

 音楽かな?

10・苦手な科目は?

 数学!あれは嫌!

11・特技は?

 カラオケかな?

12・あなたはあなた自身の性格についてどう思いますか?
単刀直入!

13・支給武器は?
携帯電話!色々教えてもらえて便利だよ。

14・あなたはやる気ですか?
・・・今は違うよ。

15・誰を殺しましたか?
岡(岡哲平・男子3番)。アイツ嫌い!あとは幽子(小路幽子・女子7番)と苑(山南苑・女子21番)と小枝子(盛岡小枝子・女子20番)。

16・誰に殺されましたか?
まだ生きてるよぅ!

17・現在あなたは何をしている?
転校して、受験勉強。

18・あなたと一番仲の良い人は誰?
誰だろ・・・タッキー(佐々川多希・女子6番)かな?

19・仲の悪い人は誰ですか?
これってネタバレかな?幽子とはあまり仲良くないの。

20・仲良くしたいなぁ…と思っている人は誰ですか?
 ・・・あたしは今のままでいいよ。

21・この人は好きになれないなぁ…(もしくは嫌い)な人は?
岡!絶対無理!!

22・親友と言えるような人はいますか?
タッキーと、茉有(野尻茉有・女子15番)かな。

オレと豊は生まれた時から一緒だ。

家は隣。

親同士も仲良し。

どちらかがいないことなんか、考えらんない。

幼稚園も、小学校も、中学校も一緒。

性格も趣味も全く違うけど、

誰よりも気が合う親友だ。

仮にオレらが異性なら、絶対にラブラブだ。

だけど、同性だから、いつかはそれぞれ恋人が出来る。

女の趣味も違うんだろうか?

一緒なら、正々堂々勝負しようぜ。

違うなら、もちろん応援してやるよ。

お前、ちょっと大人しいから不安だけどさ、

彼女が出来たら守ってやれよ?

でも、できるまでは――

オレが絶対守ってやるからな。

どんなことがあってもさ。

オレ――良元礼の周りには色んなタイプのヤツがいる。
爽やかな中国人とのハーフとか、ぼーっとしてるけどいいヤツとか、
やる気なさげなロック好きとか、笑い声の煩さでは負けないヤツとか、
騒がしいけど正義感の強いヤツとか、笑い方が変なヤツとか…
あと、バカが2人。
名前を出すと、拓也(稲毛拓也)と東(西川東)。
特にあれだ、拓也のバカはどうにかならないもんかな?

 

ゲーッホゲホゲホゴホゴホッ

ズズッ

カサカサ  チーン ズズズッ

和久「…うるさい」

稲毛「悪かったなチクショー……ぶぇっくしょい!!」

李「どうしたんだよ稲毛、珍しく学校に来たと思ったら…」

堀田「オレ知らなかったぜ、バカでも風邪ひくんだな!!」

岡「同感!! ナイス勝海!! ギャハハハハハハッ!!」

稲毛「うるせぇ、好きでひいたんじゃねぇやい!!」

杉江「そういえば、東も風邪ひいて今日休んでるらしいよ?」

白川「ゲハハハッ!! Wバカが風邪かよ!!」

稲毛「ケッ!! もういい、テメェらと一緒にいたらムカつく!!」

李「あっ……あーあ、行っちゃった」

和久「いいよ、静かになって」

 

ゲホゲホッエホッゴホゲハゲハッ

ズズズズッ

良元「…うるせぇな」

稲毛「テメェまでそう言うか…ズズッ」

良元「そりゃあ人が予習してる時に横でゲホゲホ言われちゃあな」

稲毛「ケッ…ふ…ぶえっくしょい!!だーこんちきしょう!!」

良元「オヤジかテメェは」

稲毛「礼?…風邪ひいた…」

良元「見ての通りだな」

稲毛「…理由聞いてくれよ」

良元「別に興味ねぇよ」

稲毛「良いから聞けってんだ!!…ぶわっくしょい!!」

良元「きたねぇ!!唾飛ばすな!!つーかそれが人に物を頼む態度か?」

稲毛「良いから聞けよチクショー…ズズズッ」

良元「……言いたきゃ言えよ」

稲毛「それがよ、昨日東のバカがオレに喧嘩吹っ掛けてきやがってよ、
   橋の上で喧嘩してたらよ、アイツが川に落ちやがったんだ!
   バッカだろ??」

良元「…で、何でテメェも風邪ひいてんだ?」

あれは、中間テストを控えたある日の事。

僕、皆川玉樹は、慎――(坂出慎)の勉強を見る事になった。

 

玉樹「じゃあ、公民やろうか」

慎 「げぇ、オレ嫌い、公民嫌い!!」

玉樹「…あのね、慎。 好き嫌いの問題じゃないの」

慎 「…わーったよ、やりますよ、やりゃあいいんだろ」

玉樹「そうだよ、やればいいんだよ」

 

玉樹「じゃあ、第1問ね」

慎 「クイズ形式か? 押しボタンはねぇの?」

玉樹「頭でも叩きなよ」

慎 「玉樹ってさ、オレに冷たくない?」
玉樹「そんなことないよぉ」
慎 「…稔は?」
玉樹「稔は咲と一緒にやってるよ」
慎 「…咲っていい女だもんなぁ」
玉樹「咲をそんな変な目で見ないでよ、怒るよ?」
慎 「………………すいませんでした」

 

玉樹「じゃあ、第一問」

慎 「あいよ」

玉樹「“プログラム”の正式名称は?」

慎 「あれって、オレらが選ばれるかもしんねぇよなぁ…」

玉樹「大丈夫だよ、すっごい可能性低いもん」

慎 「だよな、1年で…えっと…100クラス?」

玉樹「50クラスだよ」
慎 「そうそう! 宝くじより難しいよな!」
玉樹「いいから答えは?」
慎 「今日授業でやったばかりだ、慎様の頭をナメるなよ!」
玉樹「あ、自信満々じゃないっ!」
慎 「セントウジッケンダイロクジュウハチバンプログラム!」
玉樹「正解!! じゃあ、漢字で書いて?」
慎 「え…ああ…お…おう、任せろ!!」

千 頭 実 剣

玉樹「………………何の奥義?」
慎 「………………違うか、やっぱ」
 

公民がどうとかこうとかいう問題じゃないよね、こんなの。

でもね、そんな慎が、僕は結構好きだよ。

2年の冬休み、あたし、曽根崎凪紗は、風邪をひいた。原因は元はといえば勝(真田勝)たちのグループのせいだ。偶然勝たちのグループとこっちのグループが橋の上で鉢合わせて、些細な事から口論になった。というか向こうが言いがかりをつけてきた。それで、それが口論から一気に殴りあいになって。あたしは別に負けたわけじゃないんだけど、体格的に不利で。勝の攻撃を避ける為に橋の桟に登った時、海斗(設楽海斗)に殴られてよたついたツネ(新島恒彰)がこっちに来て。それにどつかれて、あたしは、川に落ちた。勝と海斗、それに千尋(不破千尋)が後から飛び込んで助けてくれた(佑(栗原佑)はツネをボコボコに殴ってた)。

次の日、あたしは風邪をひいた。12月の川に落ちたんだから、当然かもしれないけど。千尋が無理矢理勝グループを連れてきた。元はといえばそっちが悪いんだから償え、とか何とか。後から海斗と佑も来て、家は人でごった返した。お父さんは仕事でいなかった、平日だしね。つまり、皆学校をさぼって来てくれた。

「んー…あ、おかゆさん作ったらどうっスかね?」

ケースケ(池田圭祐)が提案。

「え、風邪っていったら林檎でしょう!」

レン(脇連太郎)が持参の林檎を取り出した。レッツクッキング。皆が台所にたかる中で、勝はあたしの横でタオルを絞っていた。起き上がろうとするあたしを無理矢理寝かせて、タオルを額に置いた。

「病人なら大人しくしてろ」
「…誰のせいでこうなったんだか」

あたしが悪態付くと、勝は苦笑いを浮かべた。何かを言おうとした時。台所の方が騒がしくなった。

「新島、火が強い!!」
「うるせぇ!!」

佑とツネの口論の声。

「栗原さん、それ塩じゃなくて砂糖っスよ!!」

慌てるケースケの声。佑、おかゆに砂糖は入れないで、甘ったるくなりそう。

ガシャン

「どあっちゃー!!」
「うわっ、冷やせ冷やせ!!」

何かを落とす音と、同時に聞こえたツネの悲鳴。慌てる佑の声。

「皿はこれか?」
「ゲッ…卵のカラが…」
「ねぇ、林檎って摩り下ろし?」

その騒ぎをよそにマイペースな海斗、レン、千尋。

「うわ、おかゆさん沸騰してるっスよ!!」

慌てるケースケの声。火を止めろ、皿こっち、と色々な声が上がる。

「つーか作りすぎっしょ、これ。どうする、オレらで食う?」

レンの提案。

「じゃあ、隠し味は何が良いかな?っと♪」
「うわ、千尋テメェ今何持ってるんだ!!」
「栗原、止めろ、不破をおかゆに近づけるな!!」

千尋のうきうきした声と、佑とツネの悲鳴混じりの声。千尋、何持ってるの、ホント。

「あいつら、人の家で何やってんだ…」

勝が横で溜息を吐いた。あたしも苦笑する。

「おい、チビ」
「チビって何よ」
「…悪かったな、風邪ひかせた上に大騒ぎして」

あたしは驚いて勝を見上げた。

「…何だよ」
「いや…真田でも謝る事あるんだぁ…」
「そりゃああるっての」
「凪紗、おかゆできたぜ、食え!!」
「辛くても何か食べなきゃダメだよ、凪紗チャン♪」
「…真田、こっち、食うか?」
「うわあ、設楽さん、それは不破君がアレを入れて…!!」
「言うなケースケ、実験をだなぁ…」
「ツネのバカ、何正直に…」

続々と部屋に入ってくる6人。

「…テメェらオレに何を食わせようとしたぁ!!」

勝がツネとレンに技をかける。オロオロとするケースケ。放っておけ、と無責任な海斗。それを見て笑う千尋と佑。

…もしかしたら、皆で仲良くなれるかも。

青山豪(男子1番)が結城緋鶴(女子19番)に殺害された後になる。

真中那緒美(女子16番)はE=06エリアにある小学校の、3年2組と書かれた教室の中の、机の1つに腰掛けていた。
ぼんやりと後ろの掲示板に貼られた絵を見ていた。
恐らくテーマは『友達を描こう』か何かだろう。
その中に、2つの三つ編みにそばかすの女の子の絵があった。
自分に似ていたが、微妙に子供らしい下手な絵なので、思わず吹き出した。

那緒美はクラスに必ず1人はいる、ムードメーカー的存在だった。
クラス1のおてんば娘、濱中薫(女子14番)と共にクラスを盛り上げた。
全く意識していないが、2人の会話は漫才のようらしく、2人の会話を聞く周りの友達によく笑われていた。

全くもう、薫のヤツ、あたしの事忘れてたんじゃない?
酷いなぁ、置いてけぼりかぁ…
まあ、薫らしいかもしれないけどね…

那緒美は溜息を吐いた。
教室内での薫の様子から、何となく行動は予想できた。
怯えて外に出て、次の次に出てくる幼馴染の姫川奈都希(女子15番)にどうにかして会い、あまりの嬉しさに那緒美の事を忘れていた、というような事だろう。

薫、大丈夫かなぁ…
栗原君があんなことになって、結構こたえてたからなぁ…
凪紗ちゃんとか不破君とかも、心配だなぁ…

栗原佑(男子7番)の首が飛ぶ瞬間が脳裏によぎった。
関本美香(担任)の穴だらけになった死体も、死ぬまで頭から離れないだろう。

「…まったく、冗談じゃないよねぇ…」

那緒美は溜息を吐いた。

あの筋肉男ともやし軍団…
人に平気で銃向けたり、楽しそうに人の首を飛ばしたり…
神経イカれてるんじゃないの!?

大体、あたしたちが殺し合い?
バッカじゃないの、するわけないじゃない。
あんなに仲の良いクラスなんだよ、できるはずない!
2回聞こえた銃声だって、きっと誰かのデイパックの中に入ってて、興味本位で木とかを撃ったとか、怖がって動けなかった子に政府の人が威嚇で撃ったとか、そんなのだよね!

那緒美の頭には、クラスメイトが殺し合いをする姿は想像もつかなかった。
誰も、怖くない。

例えば片方の不良グループのリーダー、真田勝(男子9番)も怖くない。
見た目は少し怖いが、話してみれば意外と柔らかい印象を受けた。
無気力な感じだが、仲間の事になると少し熱くなるような、そんな人だ。

同じグループの新島恒彰(男子15番)も怖くない。
話をした事はあまりないが、友達を[ピーーー]ほど落ちてはいないはずだ。

那緒美からすると女子の中で最も近寄りがたい三河睦(女子17番)も怖くない。
怖がって震えているとは思えないけれど、殺しまわっているはずがない。
根拠は何もないけれど。

睦と同じグループの桐島伊吹(女子4番)も怖くない。
人に興味は持たなさそうな彼女も、今ならきっと友達を心配しているだろう。

大丈夫、誰も死んでいない。
自ら命を絶っていない限り。

大丈夫、皆が集まれば何とかなる。
このクラスには頭の良い人が沢山いる。

ここまでの前向きな考えは、常にプラス思考である那緒美だからこそ成せる業だろう。

ただ、注意が必要なのは、転校生の周防悠哉(男子11番)だ。
いくら那緒美でも、得体の知れない人間は怖い。

ま、あの人だけ注意しとけばどうにかなるでしょっ!

青山豪(男子1番)が結城緋鶴(女子19番)に殺害された後になる。

真中那緒美(女子16番)はE=06エリアにある小学校の、3年2組と書かれた教室の中の、机の1つに腰掛けていた。
ぼんやりと後ろの掲示板に貼られた絵を見ていた。
恐らくテーマは『友達を描こう』か何かだろう。
その中に、2つの三つ編みにそばかすの女の子の絵があった。
自分に似ていたが、微妙に子供らしい下手な絵なので、思わず吹き出した。

那緒美はクラスに必ず1人はいる、ムードメーカー的存在だった。
クラス1のおてんば娘、濱中薫(女子14番)と共にクラスを盛り上げた。
全く意識していないが、2人の会話は漫才のようらしく、2人の会話を聞く周りの友達によく笑われていた。

全くもう、薫のヤツ、あたしの事忘れてたんじゃない?
酷いなぁ、置いてけぼりかぁ…
まあ、薫らしいかもしれないけどね…

那緒美は溜息を吐いた。
教室内での薫の様子から、何となく行動は予想できた。
怯えて外に出て、次の次に出てくる幼馴染の姫川奈都希(女子15番)にどうにかして会い、あまりの嬉しさに那緒美の事を忘れていた、というような事だろう。

薫、大丈夫かなぁ…
栗原君があんなことになって、結構こたえてたからなぁ…
凪紗ちゃんとか不破君とかも、心配だなぁ…

栗原佑(男子7番)の首が飛ぶ瞬間が脳裏によぎった。
関本美香(担任)の穴だらけになった死体も、死ぬまで頭から離れないだろう。

「…まったく、冗談じゃないよねぇ…」

那緒美は溜息を吐いた。

あの筋肉男ともやし軍団…
人に平気で銃向けたり、楽しそうに人の首を飛ばしたり…
神経イカれてるんじゃないの!?

大体、あたしたちが殺し合い?
バッカじゃないの、するわけないじゃない。
あんなに仲の良いクラスなんだよ、できるはずない!
2回聞こえた銃声だって、きっと誰かのデイパックの中に入ってて、興味本位で木とかを撃ったとか、怖がって動けなかった子に政府の人が威嚇で撃ったとか、そんなのだよね!

那緒美の頭には、クラスメイトが殺し合いをする姿は想像もつかなかった。
誰も、怖くない。

例えば片方の不良グループのリーダー、真田勝(男子9番)も怖くない。
見た目は少し怖いが、話してみれば意外と柔らかい印象を受けた。
無気力な感じだが、仲間の事になると少し熱くなるような、そんな人だ。

同じグループの新島恒彰(男子15番)も怖くない。
話をした事はあまりないが、友達を[ピーーー]ほど落ちてはいないはずだ。

那緒美からすると女子の中で最も近寄りがたい三河睦(女子17番)も怖くない。
怖がって震えているとは思えないけれど、殺しまわっているはずがない。
根拠は何もないけれど。

睦と同じグループの桐島伊吹(女子4番)も怖くない。
人に興味は持たなさそうな彼女も、今ならきっと友達を心配しているだろう。

大丈夫、誰も死んでいない。
自ら命を絶っていない限り。

大丈夫、皆が集まれば何とかなる。
このクラスには頭の良い人が沢山いる。

ここまでの前向きな考えは、常にプラス思考である那緒美だからこそ成せる業だろう。

ただ、注意が必要なのは、転校生の周防悠哉(男子11番)だ。
いくら那緒美でも、得体の知れない人間は怖い。

ま、あの人だけ注意しとけばどうにかなるでしょっ!

C=07エリアにあるデパートの中では男子たちの忍んだ声が聞こえた。
他に何の音もしない為、それが懐中電灯の明かりしかない暗闇の中で響くように聞こえ、それを気にしてか、その声は更に小さくなる。

「でも…言えるか?」

稲田藤馬(男子4番)が幾分沈んだ声で訊いた。

「…オレは……ちょっと……」

藤馬の相棒である斎藤穂高(男子8番)の声も、藤馬のそれに劣らず沈んでいた。
藤馬はそうだよな、と呟き、俯いた。

「なぁ…どうする、不破…」

穂高が見た先、不破千尋(男子17番)は無言でぼんやりと外を眺めていた。
脱出する為の準備作業は、今は中断されている。
それどころではなかったのだ。
つい先程あった、放送のせいで。

つい先程、進藤幹也(担当教官)の相変わらずうるさい声で放送があった。
今奥で仮眠を取っている濱中薫(女子14番)が起きなかったのが不思議なくらいだ。

次に禁止エリアになるのは、1時からは東の方にある畑の一部が入っているE=10エリア、3時からはアスレチック公園の西の一部が入っているF=2エリア、そして5時からは南側の住宅地が入っているI=06エリア。

しかし、そんな事は今はどうでもいい。
問題は、この放送で呼ばれた死者だ。
今回呼ばれたのは、「このプログラムで最多だ」と進藤が喜んでいた、6人だ。
サッカー少年だった笠井咲也(男子5番)。
真面目な姿が印象的だった津田彰臣(男子13番)。
グループは違うが千尋とは気があった不良少年の脇連太郎(男子20番)。
文学少女で将来は小説家になると豪語していた小南香澄(女子6番)。
彰臣の幼馴染で薫とは部活仲間だった高山淳(女子11番)。
――そして、12時間ほど前まではここにいた、姫川奈都希(女子15番)。

薫は寝ているのでまだ知らないだろう。
部活仲間もだが、幼馴染がもうこの世にいない事など。

「なぁ、不破ぁ…」

「…ヤな天気」

千尋がぽつりと呟いた。
全く関係のない事だったので、藤馬は文句を言おうとした。
しかし、懐中電灯の明かりで僅かに見える千尋の表情は、今までとは違う悲しげな笑みを浮かべていたので、何も言えなかった。

「今日は晴れてたら満月に近かったのにね…
 まあ、気持ちが晴れ晴れしてる人なんていないだろうし…
 丁度いい天気なのかもね…」

それだけ言い、再び千尋は黙ってしまった。
藤馬と穂高は顔を見合わせ、外を眺めた。
確かに月は確認できない。
そういえば、千尋が夕方にぼやいていた。
「明日は雨かな」、と。
皆の気持ちに天気が同調するかのように。

千尋もショックを受けているのだろう。
連太郎とは気が合っていたようだったし、帰ってくると約束していた奈都希ももういない。

「おはよ…」

茂みの中に隠れていた設楽海斗(男子10番)と曽根崎凪紗(女子10番)は互いに顔を見合わせた。

偶然だった。
走ってきた2人の人物が、偶然にも凪紗たちの前で止まったので、とりあえず隠れて様子を見ていた。
その2人――周防悠哉(男子11番)と結城緋鶴(女子19番)はどうやら知り合いらしく、いけない気もしたが、隠れて話を聞いていた。

2人が元は恋人同士だった事には驚いた。
普段大人しそうな緋鶴が、悠哉のような派手な人と付き合っていたとは。
しかし、話が進むにつれて、更に驚いた。
“戦闘実験体”意味のわからない言葉が飛び、緋鶴は今までに4回もプログラムに参加してきたという。
あの緋鶴が、今までに何人も人を殺しているとは、想像もできない。

そして緋鶴が去った今、悠哉は地面に倒れたまま、何度も地面を殴っていた。
緋鶴を止められなかった事が悔しいようだった。

「…どうするんだ?」

海斗がもう一度訊いた。
凪紗は気遣わしげに海斗を見上げた。
海斗は溜息を吐き、僅かに笑んだ。

「わかってる、気になるんだろ?
 まあいい、悪いヤツではなさそうだからな」

「…ありがと、海斗。
 あの転校生怪我してるから、ほっとくわけにもいかないよ」

「そうだな」

凪紗と海斗は、再び悠哉に目を向けた。

 

「ねぇ、こんな所で寝てたら危なくない?」

悠哉の側に来た凪紗が、声を掛けた。
悠哉の頭がピクッと反応し、目線を凪紗に向けた。
847 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 01:39:43.34 ID:wSnSqwBi0そこを、1人の少年が歩いていた。
本来ならここにはいないはずの存在――転校生の周防悠哉(男子11番)。
転校生と言えば聞こえは良いかもしれないが、要はこのプログラムに自ら進んで参加しに来た志願者である。

元々は兵庫県神戸市にある中学校に通っている。
クラスでは中心に立って盛り上がるムードメーカー的存在で、本来なら殺害してしまった工藤久尚(男子6番)のような人は、一緒に盛り上がる事のできる好きなタイプだ。

部活はバスケ部に所属しているが、ほとんど参加していない。
それでも試合に出られるのは、ずば抜けた運動神経の成せる業だろうか。
スポーツならオールマイティにできるので、しばしば他の部活の助っ人に行ったりもしていた。

町で不良に絡まれれば喧嘩もしていた。
しかし、警察にお世話になったり停学になったりした事はない。
見つかる前にさっさと逃げるのは得意とするところだったので。

そんな少し人よりスポーツが得意で、少し喧嘩好きなだけの普通の中学3年生が、わざわざ全国の中学3年生のほぼ全員が選ばれないように祈っているであろうプログラムに志願した事には、当然理由がある。
政府の連中には『ちょっと興味があってん』としか言っていないが、当然こんなふざけたゲームに興味本位で来たわけではない。

探している人物がいる。
ただそれだけの理由だ。

少し抜けたところのある悠哉は、一度その人物を見つけたのにも拘らず、見失ってしまった。
いや、抜けていたからという理由ではない。
仕方がなかったのだ。
結城緋鶴(女子19番)を見失ってしまった事は。

緋鶴が学校の屋上で停戦を呼びかけていた少女――真中那緒美(女子16番)を殺害した瞬間は、しっかりと目に焼きついている。
その光景はあまりにショックで、思わず屋上の少女を見に行ってしまった。
もしかしたら息があるかもしれない、それなら手当てをしないといけないと思ったので。
もちろん少女は死んでいたし、その間に緋鶴はどこかへ行ってしまった。
それ以来会っていない。

茂みの中に隠れていた設楽海斗(男子10番)と曽根崎凪紗(女子10番)は互いに顔を見合わせた。

偶然だった。
走ってきた2人の人物が、偶然にも凪紗たちの前で止まったので、とりあえず隠れて様子を見ていた。
その2人――周防悠哉(男子11番)と結城緋鶴(女子19番)はどうやら知り合いらしく、いけない気もしたが、隠れて話を聞いていた。

2人が元は恋人同士だった事には驚いた。
普段大人しそうな緋鶴が、悠哉のような派手な人と付き合っていたとは。
しかし、話が進むにつれて、更に驚いた。
“戦闘実験体”意味のわからない言葉が飛び、緋鶴は今までに4回もプログラムに参加してきたという。
あの緋鶴が、今までに何人も人を殺しているとは、想像もできない。

そして緋鶴が去った今、悠哉は地面に倒れたまま、何度も地面を殴っていた。
緋鶴を止められなかった事が悔しいようだった。

「…どうするんだ?」

海斗がもう一度訊いた。
凪紗は気遣わしげに海斗を見上げた。
海斗は溜息を吐き、僅かに笑んだ。

「わかってる、気になるんだろ?
 まあいい、悪いヤツではなさそうだからな」

「…ありがと、海斗。
 あの転校生怪我してるから、ほっとくわけにもいかないよ」

「そうだな」

凪紗と海斗は、再び悠哉に目を向けた。

 

「ねぇ、こんな所で寝てたら危なくない?」

悠哉の側に来た凪紗が、声を掛けた。
悠哉の頭がピクッと反応し、目線を凪紗に向けた。
847 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/07/10(水) 01:39:43.34 ID:wSnSqwBi0そこを、1人の少年が歩いていた。
本来ならここにはいないはずの存在――転校生の周防悠哉(男子11番)。
転校生と言えば聞こえは良いかもしれないが、要はこのプログラムに自ら進んで参加しに来た志願者である。

元々は兵庫県神戸市にある中学校に通っている。
クラスでは中心に立って盛り上がるムードメーカー的存在で、本来なら殺害してしまった工藤久尚(男子6番)のような人は、一緒に盛り上がる事のできる好きなタイプだ。

部活はバスケ部に所属しているが、ほとんど参加していない。
それでも試合に出られるのは、ずば抜けた運動神経の成せる業だろうか。
スポーツならオールマイティにできるので、しばしば他の部活の助っ人に行ったりもしていた。

町で不良に絡まれれば喧嘩もしていた。
しかし、警察にお世話になったり停学になったりした事はない。
見つかる前にさっさと逃げるのは得意とするところだったので。

そんな少し人よりスポーツが得意で、少し喧嘩好きなだけの普通の中学3年生が、わざわざ全国の中学3年生のほぼ全員が選ばれないように祈っているであろうプログラムに志願した事には、当然理由がある。
政府の連中には『ちょっと興味があってん』としか言っていないが、当然こんなふざけたゲームに興味本位で来たわけではない。

探している人物がいる。
ただそれだけの理由だ。

少し抜けたところのある悠哉は、一度その人物を見つけたのにも拘らず、見失ってしまった。
いや、抜けていたからという理由ではない。
仕方がなかったのだ。
結城緋鶴(女子19番)を見失ってしまった事は。

緋鶴が学校の屋上で停戦を呼びかけていた少女――真中那緒美(女子16番)を殺害した瞬間は、しっかりと目に焼きついている。
その光景はあまりにショックで、思わず屋上の少女を見に行ってしまった。
もしかしたら息があるかもしれない、それなら手当てをしないといけないと思ったので。
もちろん少女は死んでいたし、その間に緋鶴はどこかへ行ってしまった。
それ以来会っていない。

その家のリビング。
その隅っこで、坂本陽子(女子7番)はガタガタと震えていた。
茶色に染めた髪も、部活で浅黒く焼けた肌も、少しヨレッとした夏服のブラウスも、赤黒く汚れていた。
親友の血の色だ。

親友の今岡梢(女子1番)を、この手で殺してしまった。
今思えば、梢には殺意は無かったのかもしれない(かも、ではなく殺意など欠片も無かった)。

凶器になってしまったナタは、デイパックに突っ込んで少し離れた所に捨て置いてある。
触るのも怖い。
また、恐怖で誰かを手に掛けてしまいそうで。

けど…だけど…
あたし、見たんだ…
新島君が…中原さんを…

何度も蘇るあの光景。
再会する事ができて安心しきっていた中原朝子(女子13番)に、毒薬を飲ませて殺害した新島恒彰(男子15番)の姿。
いくら不良と呼ばれているからと言っても、自分の彼女をあんなに簡単に殺害できるとは思わなかった。
朝子も信じられなかっただろう。

「…ダメ…やっぱり…信じちゃダメなんだ…っ
 うぅ…ああぁぁ…っ」

陽子は頭を抱えた。
悲鳴になりきらない呻き声が静かな空間に響くように聞こえた。

元々陽子は精神的に強くない。
所属するテニス部の練習でも、上手くできなかったら狂ったように叫び声を上げたりする。
それでもまだマシな方で、更に状況が悪化すると、部の備品を壊そうとする。
正気に戻った時に、いつも後悔した。
どうしてこんなにおかしくなってしまうのだろうか、と。

『大丈夫、落ち着いたらできますよ?』

同じ部活に所属する遠江敬子(女子12番)にも何度も諭された。
しかし、落ち着く事ができれば苦労はしていない。

もう半分くらいまで減っちゃったよね…?
プログラムは進行してるんだ…
淳も奈都希も死んだ…

次は、あたし…?

身震いがした。
歯がガチガチと音を立てた。

怖い…もう嫌…
家に帰りたいよぉ…っ

陽子は膝に顔を埋めた。
何かハプニングでも起こってプログラムが中止にならないだろうか?
死にたくない。
最悪、自分の知らない所で、皆が死んでしまったら良い。
そうすれば、自分は帰る事ができる。

進藤幹也(担当教官)が大声で叫んだ。
後ろの方ではガタガタと席に着く音が聞こえるが、前の方ではほとんどが立ち尽くしていた。

設楽海斗(男子10番)は曽根崎凪紗(女子10番)を抑えたまま、呆然と栗原佑(男子7番)の死体を見つめていた。

信じられない。
佑が、死んでいる。
目の前で。

海斗は一緒に凪紗を抑えていた不破千尋(男子17番)の方を見た。
千尋は瞬きもせず、佑の方を凝視していた。
涙はないが、ショックを隠せないでいる。

いつも、4人一緒だった。
互いの足りない部分を補い合っているような、そんな関係だった。
そのピースが、1つ欠けた。

「…凪紗、座ろう。 千尋も、大丈夫か…?」

海斗は2人に声を掛けた。
千尋は今までに見せた事のないような呆然とした顔で、海斗を見た。

「…千尋?」

「あぁ…うん、大丈夫…」

千尋はずれかけた眼鏡の位置を直し、自分の席に腰掛けた。
海斗は、もう一度凪紗に声を掛けた。
しかし、凪紗は何も言わない。
聞こえてすらいないようだった。
海斗は凪紗に腰を下ろさせ、自分もその前に座った。
佑の顔が、よく見える。
怒りに満ちたその目は、天井を睨んでいた。

 

全員が、座った。
机の大部分が佑の血で汚れた池田圭祐(男子3番)の顔は青ざめていた。

進藤は佑の死体には目もくれず、話し始めた。

「わかったかな? 首輪はこうなってしまうんだ!!
 えっと…地図の話だったかな?
 君たちに配る地図は、100マスに分けられているんだ!!
 例えばここ、中学校はD=04エリア、という風になっている!!
 そして、6時間ごとに定時放送を行う!!
 その時に、禁止エリアというものを言うからな!!
 時間になってもそこにいる死んだ者はそのまま…
 だが、生きている者は、電波を送って…ボン!!
 栗原君のようになってしまうから、注意しような!!
 あと、怪しい行動を起こしても、こっちから電波を送る!!
 首を飛ばされたくなければ、頑張って殺し合おうな!!」

突然、後ろの方で誰かが呻き声を上げた。
吐瀉物が床にぶちまけられる音がした。
それを聞いて、またどこかで誰かが呻き声を上げた。
それの臭いと佑の血の臭いが、教室を満たしていた。

気分が悪い。
最悪だ、すべて最悪だ。

「さあ、何か質問はあるかな!?」

「…どうしても、しないといけないんですか?」

後方から聞こえた声は、稲田藤馬(男子4番)のものだった。
何人かが頷いた。
しかし、進藤は希望を打ち砕いた。

「しないといけないぞ、もう決まった事だ!!」

予想通りの返事だ、捻りも何もない。

「どうして…何でオレらなんですか…?」

いつも穏やかな柚木康介(男子19番)が、泣きそうな声で言った。

C=07エリアに聳え立つデパートの1階では、3人の少年少女がそれぞれやるべき事をしていた。
このプログラムを中止に持ち込むために。
作戦はいたってシンプルだ。
爆弾を作り爆破させ、本部ごと吹っ飛ばす。

爆弾を作る為に、爆薬の原料にする漂白剤を水で練り込み、それに木炭を砕いて入れ、ゆっくりと混ぜ合わせているのは、稲田藤馬(男子4番)。

そこから少し離れた所で、ガソリンに肥料を入れ、藤馬と同じように混ぜ合わせているのは、藤馬の相方である斎藤穂高(男子8番)。

そして、管理モニター室の前で監視カメラの画面とにらめっこをしているのは、姫川奈都希(女子15番)が抜けた為に紅一点となった濱中薫(女子14番)。

「うぇっ…ガソリン臭…っ
 換気しようぜ、換気っ!!」

穂高が眉間にしわを寄せながら叫んだ。
もうこれで何度目だかわからないが、穂高の顔色は悪い。

「穂高っ! 人が真剣に混ぜてる時に…
 これ、下手したら爆発する…って不破が言ってたんだぞ!?」

藤馬が叫び、溜息を吐いた。

「でも限界… 薫、頼む、窓開けてくれ窓っ!!」

「え? あ、うんっ!」

薫は慌てて一番近い場所にあった窓に手をかけた。
そこで、外に人影を確認した。
勢いよく窓を開け、大きく手を振った。

「おかえり、ちーちゃんっ!」

作戦を考えた張本人、不破千尋(男子17番)は少し驚いた表情を浮かべたが、すぐにいつもの笑顔を浮かべて手を振り返した。

千尋はドアをキィッと開け、ガソリンの臭いに僅かに顔をしかめた。

「おかえり、探し物は見つかったか?」

外の空気を吸う為に入り口まで来た穂高が、深呼吸をしながら訊いた。
千尋は口には出さなかったが、Vサインをした。
それを見て、穂高は「そっか」とにっこりと笑った。

千尋は1時間半ほど前に探し物をする為に外へ出た。
探し物は必要な薬品類、向かう先は南西にある小学校だ。
小学校といえば、クラスメイトに停戦を呼びかけて何者かに殺害された真中那緒美(女子15番)がいた場所だが、那緒美を見る気にはならなかったので、理科室を探してそこから薬品を持ち出し、そのまますぐに戻ってきた。

千尋は荷物を置き、中から学校から持ってきた物を出した。
そして、籠に入れて置いてあった陶器でできた花瓶と、何の変哲もない砂糖も取り出した。

「よし…こんなもんでしょ」

意気込む千尋の前に、薫がしゃがんだ。

「…ちーちゃん、これで何か作るの?」

「ん? あぁ、大した物じゃないよ、ただの簡易手榴弾。
 武器になるかな、と思ってさ」

「手榴弾!?」

離れた所で聞いていた藤馬と穂高が声をそろえた。
薫も目をぱちくりとさせている。

「おい不破、お前何でそんな事できるんだよ…
 どういう環境で育ったらそんな知識が…」

「失礼な、普通の環境だし、育ったのは普通の家庭――」

千尋は口を噤んだ。
ふっと笑う声が漏れた。

不破千尋(男子17番)は不敵な笑みを浮かべ、監視カメラの画面に背を向けた。
濱中薫(女子14番)がばっと振り返る。

「ちーちゃん!?」

「おい、不破、何する気だよ!?」

稲田藤馬(男子4番)も振り返り叫んだ。

「…逃げた方が良くないか?
 相手はわけわかんない転校生だぜ!?」

斎藤穂高(男子8番)が千尋に近づき訊いた。
しかし、千尋は首を横に振った。

「転校生をここに入れるわけにはいかないでしょ?」

「じゃあ皆で…」

「1人で大丈夫だよ」

千尋は藤馬の提案をあっさりと却下した。
ウージー9ミリサブマシンガンの紐を肩から下げ、不安げに見つめる3人の方を向き、にっと笑った。
それは普段浮かべているのとは少し違い、3人はそれぞれ顔を強張らせた。
それもそのはずだ、この笑顔を喧嘩相手に向けると、相手は必ず怯むのだから。

「オレは、負けない」

千尋はそれだけ言い残し、外に出て行った。

「不破…死んだりしないよな…?」

「大丈夫だよ、ちーちゃんは。
 薫は、ちーちゃんを信じるの」

藤馬と穂高が心配そうに千尋を見送る横で、薫ははっきりと言った。

『曲者』で『悪魔』――それが他のクラスの不良たちから見たちーちゃん…
だったら、こんな所で負けたりはしないはず…
それでなくても、薫は信じてるよ…
だって、ちーちゃんが負けるところなんて、想像できないもん!!

 

 

千尋は外に出た。
少し建物から離れたところで、声を掛けられた。

「ちょっとそこのお兄さん♪」

千尋が睥睨すると、そこには肩まで伸びた茶髪に鋭い目――周防悠哉(男子11番)が笑顔で手を振っていた。

「…やぁ、周防悠哉クン…といったかな?」

千尋も笑顔を返す。
ただし、互いに相手の腹の探りあいをしているので、笑顔を浮かべてはいるが和やかな雰囲気ではない

千尋が認識した時には、既に悠哉の手にはコルト・ガバメントが握られており、弾が発射されていた。
弾は千尋の左腕に着弾し、思わず顔をしかめた。
悠哉はすぐに千尋に突っ込んでいき、左の拳を振るう。
顔面めがけて殴りかかってくる拳を、千尋は何とか腕でガードする。
千尋は悠哉の手を振り払い、ウージーを向け、引き金を引く。
悠哉は咄嗟に横に飛んで茂みに入り、その弾の嵐を避けた。

あまりに速い出来事に、千尋は少し荒くなった息を整え、ギリッと歯を食いしばった。
左腕をゆるゆると血が流れ、地面に少しずつ血溜まりを作っていく。

…思ってたより素早い…
反射神経は、海斗クン並ってとこか…
大きい銃は、こっちの動きが鈍って不利だね…

千尋は悠哉を見据えたまま、デパートの窓――換気のために薫が開けていた――からウージーを投げ入れた。
「うわっ」という声が中から聞こえた。
千尋は前に外に出たときからずっと腰のベルトに差し込んであったワルサーPPKを左手に取った。

これで万が一コイツが中に入っても迎撃できる…
ま、そんな事はさせないけど?

「なんや、武器2つも持ってたんか…
 つーかやっぱ中に誰かおるんやな?」

悠哉がニッと笑む。
千尋も笑みを返す。

「関係無いね、どうせ君は中には入れない…」

「…言い方があるんちゃう?
 気に入らんわ……邪魔や、アンタ」

悠哉が再びコルト・ガバメントを構えた。
引き金が引かれたが、千尋は今度は横に飛んで避ける。
千尋がワルサーの引き金を引くが、悠哉には当たらなかった。
千尋は舌打ちをし、悠哉に突っ込んでいった。

千尋は喧嘩歴はそれほど長くないし、格闘技をやってきたわけでもない。
しかし、素手の喧嘩では今までに一度しか負けた事が無かった。
それはとても小柄で可愛らしい女の子――曽根崎凪紗(女子10番)。

肉弾戦では負けるわけにはいかない…
オレに勝っていいのは、凪紗チャンだけ…
オレの上に立っていいのは、凪紗チャンだけ…

こんなヤツに、オレは負けない――

「邪魔はそっちだ、周防悠哉」

千尋はカッと目を見開き、ワルサーを悠哉に向け、撃った。
あまりに至近距離だったので悠哉は避けきれず、弾は初めて悠哉を捕らえた(頬を掠めただけだったが)。
すぐに横向きに倒れた悠哉の上に飛び乗り、ワルサーの銃口を悠哉の額に当てた。

「退け」

ワルサーの銃口をきつく押し付けた。
薫たちが聞いたら驚くだろう――普段は中性的な千尋の声は、今ははるかに低く静かだった。
悠哉の喉が一度だけ上下に動いた。

「…わ、わかった… 入らんから、それ直してくれへん?」

千尋は動かない。

「…頼むわ、誓うわ、もうアンタを襲ったりせぇへんから!!」

千尋は少し迷った後、悠哉から離れた。
もっとも、銃口はまだ悠哉に向けていたが。

悠哉はその場に座り、溜息を吐きながら頭を掻いた。

「ったく、このクラスありえんわ…
 アンタといい、最初に会ったチビちゃんと大きい男のペアといい…」

チビちゃんと大きい男…?
それってまさか…

「その…小さい方って…茶髪を二つくくりにした女の子…?
 男の方って、やたら無愛想な…?」

千尋の口調も声色も普段通りに戻っていた。

「何や、知っとるんか…って当然やな、クラスメイトやし。
 ありえんねん、チビちゃんに投げ飛ばされてん!!」

千尋の考えは確信に変わった。
凪紗と設楽海斗(男子10番)だ。
千尋の顔に、今までで1番の笑顔が浮かんだ。

アスレチック公園の一部になるF=04エリアは、休憩所のような簡単なつくりの建物がある。
中にはベンチとゴミ箱と自動販売機しかない。

小南香澄(女子6番)はそのベンチの中の1つに腰掛けていた。
自動販売機を壊してジュースでも飲もうと思ったが、香澄にはそんな力はないし、電気の通ってない自動販売機の、生ぬるい賞味期限がいつかもわからないようなジュースを飲むのは気が引けたので、それは諦めた。
因みに、すぐ隣のエリアにはアスレチックを陣取っているミステリアスな少年、長門悟也(男子14番)がいるが、香澄はその事には全く気付いていない。

香澄は反射的にとはいえ、人を殺してしまった。
彼――柚木康介(男子19番)は、狂っていた。
奇声をあげながら香澄に襲い掛かってきたので、反射的に手に持っていた小型自動拳銃(ファイブセブン)の引き金を引いてしまった。
あの時の光景は今でも目に浮かぶし、初めて引いた引き金の感覚もしっかりと手に残っている。

康介は普段はとても穏やかで優しい人だった。
常に周りの人に気を使っていて、修学旅行で同じ班になったので班行動をしていた時も、班員に気を配り、疲れきっていた黒川梨紗(女子5番)の荷物を持ったりもしていた。

そんな彼も、命のかかったこの状況では思いやりの欠片も感じられなかった。

あれが、素だったのかな…?
ううん、そんな事は無いよね、きっと。
混乱しただけで、狂っちゃっただけで、理性が働いていれば優しい人。

このクラスには、優しくて楽しい人たちがたくさんいる。
それは作り上げた性格なんかじゃない、そう信じている。

香澄は自分の荷物から1冊のノートを出した。
ごく普通の大学ノートだが、中はびっしりと文字が書かれている。
香澄が何かがある毎に書き記していた、このクラスの物語。
今のクラスになった2年の1学期から記録を始めた。
このノートは3冊目だ。

香澄はノートをパラパラと捲った。
修学旅行の事はまだ書けていないので、一番新しい大きな行事の記録は、篠山中学校春の恒例行事、新入生歓迎春の運動会だ。
運動会と言ってもそんなに体育会系の行事ではなく、楽しく障害物リレーをやってみたり、音楽を流してイントロクイズをしたりという楽しい行事だ。

 

とても楽しかった。
いつになく盛り上がった。
というのも、曽根崎凪紗(女子10番)率いるグループと真田勝(男子9番)率いるグループ、2つの不良グループが何故か燃えていたからだ。
“やるからには優勝を狙う”をモットーに掲げ、クラス全体が盛り上がった。

障害物リレーでは濱中薫(女子14番)が網の下をくぐり、高山淳(女子11番)が体を10回転させられて目を回し、伊達功一(男子12番)が何が混ざっているかわからないミックスジュースを一気飲みして、吐きそうになりながらも1位でアンカーにバトンを渡したにも拘らず、アンカーの栗原佑(男子7番)がハードル跳びで派手にこけて最下位になってしまった。
佑は後で勝や新島恒彰(男子15番)あたりにボコボコにされていた。

イントロクイズでは真中那緒美(女子16番)が意外にも音痴である事が発覚し、クラス全員に爆笑され、那緒美自身も大声で笑っていた。
バンドでボーカルをしている斎藤穂高(男子8番)がマイクを持った時には、2・3年の大勢の女子が盛り上がり、一時穂高のワンマンショーのようになっていた。

春の運動会内では珍しく運動会らしいリレーでは、それぞれ部活で陸上部顔負けの走りを見せる笠井咲也(男子5番)・工藤久尚(男子6番)・今岡梢(女子1番)・駿河透子(女子9番)と、「リレーなら任せろ」と参加した設楽海斗(男子10番)・不破千尋(男子17番)・凪紗といった不良グループの面々と、篠山中学校が誇る陸上部エースの椎名貴音(女子8番)が、見事なバトンリレーを見せて全校1位をもぎ取った。
応援はこの時が1番盛り上がっていた。

そして最後に1クラスずつが走ってタイムを競った40人41脚では、梨紗が最初に転んでそれが波紋のように周りに広がってしまい、それが何度も繰り返されて記録は悪かった(時には羽山柾人(男子16番)もこけていた)。
梨紗が何度も泣きながら謝っていたのを、皆で慰めた。

 

皆楽しくて良い人ばかりで…
でも、こんな事になっちゃったから、もうあのクラスには戻れないんだなぁ…

ノートにぽとっと雫が1滴落ちた。
黒目がちの大きな目には、涙が滲んでおり、それは頬を伝ってノートに落ちていった。

もう、あのクラスには戻れない。
たくさんのクラスメイトが死んでしまった。
不味そうなミックスジュースを見事飲み干した功一も、ハードルに引っ掛かって派手に転んだ佑も、音痴ながらも一生懸命歌っていた那緒美も、リレーで見事な走りを見せたも久尚も梢も、皆死んでしまった。
それも、クラスメイトに殺されてしまった。

どんな気持ちだったんだろう…?
仲が良いと思っていたクラスメイトに撃たれたり刺されたりして、何を思って死んでいったんだろう…?

あたしに撃たれた柚木君は、どんな気持ちだったんだろう…?

姫川奈都希(女子15番)はF=07エリアにいた。

奈都希は幼馴染の濱中薫(女子14番)と共に、C=07エリアで稲田藤馬(男子4番)と斎藤穂高(男子8番)、そして不破千尋(男子17番)と共にプログラムを潰し逃げ出す為の作戦の準備をしていた。
しかし、とある事情で今は別行動をしている。

事情――愛しい人を探す事。

隠しているつもりだったが、見事に千尋に見破られ、半ば強引に追い出された。

『行きたいなら、後悔したくないなら、探しに行くべきだね』

千尋が言った事は、その通りだと思った。
行かないで後悔するなら、行って後悔した方が良い。
もちろん、後悔する気は無いけれど――いや、無かったけれど。

奈都希も当然1時間ほど前にあった放送を聞いていた。
愛しい人――工藤久尚(男子6番)の名前が呼ばれていた。
とてもショックだった。
体の震えが止まらなかった。
それでも、涙は出てこなかった。
頭のどこかで、久尚の死を信じていなかったからかもしれない。

しかし――

奈都希の足元の砂は、赤黒く汚れていた。
教室でしたような血の臭いはしない。
地面に染み込み、乾いたのだろう。

そして、その汚れた血の上には、見慣れた人。

工藤久尚がうつ伏せで倒れていた。

久尚……

奈都希はその場に膝を付いた。

そっと久尚に触れた。
人とは思えないほど、冷たくなっていた。

ぐっと力を込め、仰向けにした。
カッターシャツの腹の部分が黒くなっていた。
他には傷らしきものが見当たらない。
腹の傷が致命傷だったという事だろうか。

頬に付いた土を払い落とした。
小石がめり込んで型ができていたが、それ以外はほとんど変わらない、いつもの久尚の顔だ。
眠っているように穏やかだ。

「久尚…何穏やかな顔してんのよ…
 アンタ、死んでるんだよ…?」

この傷がどれだけ痛いものなのかは想像もつかない。
ただ、今まで感じた事の無いような痛みだっただろう。
それなのに、どうして表情に出ていないのだろう。
死ぬ瞬間、何を考えていたのだろう。

奈都希は久尚の体を抱き寄せた(死後硬直の為にとても大変だったが)。
愛しい人の一度は触れてみたいと思っていた体は、生きている時に想像していたものとは違っていた。
本当なら、生きている時にこうしてみたかった。
『うわ、何するんだよぉ!!』とでも反応してくれただろうが、当然の事だが反応は無い。

「ごめんね、久尚…
 アンタ好きな人いたのかな…?
 だったら、ホントごめんね、あたしなんかがこんな事してさ…」

奈都希が久尚の事を好きなように、久尚も奈都希の事が好きだったという事は当然知らない。

「でもさ…ちょっとくらい…良いよね…?
 あたしさぁ…好きだったんだよ、久尚…」

当然の事だが、返事は無い。
それでも奈都希は続けた。

「ほら、修学旅行…グループ一緒だったじゃん?あそこで…言えばよかったんだけど……あたしにだって…照れとか不安とか…あったわけよ……」

佐々木:『始まりましたね』

くみっきー:『もう始まったの?はやくない』

後藤:『緊張感が半端ない』

統一世界王者井岡一翔

井岡:『逃走中は3回位参加したことがありますけど戦闘中は、自分以外は全員敵なので本当に怖いです』
自分以外は全員敵いつどこから現れるのかわからない


北海道日本ハムファイターズの投手として活躍する斎藤佑樹

斎藤:『プロ野球選手として、絶対に負けたくないなと思います』


ゲームの舞台は無人の町(千葉県・房総のむら)


広さは東京ドーム4個分


この中でバトルボールを敵に当て撃破し最後に勝ち残った一人が賞金を獲得できる
プレイヤーは一人25万円を持っており、撃破すれば相手の所持金をすべて貰える
最後の一人になれば最高賞金500万円
このゲームではエスケープが可能
エリア内にあるエスケープ電話にエスケープを申告すればゲームを途中でリタイアしその時点の所持金を獲得できる(残り10分以降or3人の時点でエスケープ不可能)

お待たせしました。
投下します。



霧切「さあ、江ノ島盾子。貴方と苗木君の結婚式…祝福しにきてあげたわよ?」


霧切さんはそう不敵に言い放つ。
江ノ島さんは頬から冷や汗を流しながら、苦しそうに笑った。

江ノ島「はは、言ってくれるじゃん…霧切響子!」

ボクはその様子を冷静に眺めている。
口を挟むか悩んだけれど、今は成り行きに身を任せた方が良いと、思う。

江ノ島「所詮…【バグ】の分際でやってくれるね…」

霧切「ふっ…私をそう切り捨てる貴方には理解できないでしょうね」

江ノ島「べっつにぃ?霧切ちゃんが何をしようと苗木クンが“気付かなければ”終わらないんだから」

気付く…?
何を言ってるんだ、江ノ島さんは。

霧切「絶望という幻想を打ち破った苗木君なら、必ず真実に辿り着けると信じているわ」

そう言い放つと、霧切さんは視線を江ノ島さんからボクへと移す。

霧切「いい、よく聞いて苗木君。貴方は真実を知らなくてはいけない。この世界の真相と、自分はなんなのかを」

苗木「この世界の、真相…?」

霧切「ええ、そうよ。今の貴方ならどんな真相も、真実にも怯えずに立ち向かう事が出来ると信じてる」

苗木「……どうすればいいのかな?」

もし、僕が知るべき真実がとても残酷なものでも。
それでも僕は、知りたい。
その先にどれだけの絶望が待っていたとしても、希望を捨てなければ、光はあるんだ──。

霧切「貴方が自分自身で答えを出したいというのなら、それで構わないわ。でももし貴方が私の力を借りたいというのなら、【学級裁判】を開きましょう」

苗木「学級裁判…」

以前、七海ちゃんの時にも開いた。
あの時は間違った結論に辿り着いてしまって、そのせいで色んな人を傷つけてしまった。
もう間違えない…今度こそ。


1 学級裁判を開く。
2 自分で考える。
※どちらを選んでも展開は同じです。
学級裁判を開くと推理要素が多くなります、自分で考えるを選ぶと苗木がほとんど考えます。
これ以降は最終盤まで安価はありません。




苗木「霧切さん、学級裁判を開いてくれるかな」

霧切「ええ、その言葉を待っていたわ。残念ながら二人しかいないようだけど」

江ノ島「あっれー?もしかしてはぶられちゃってるぅ?」

苗木「え、江ノ島さん…」

江ノ島「もちろんあたしも参加するよ?議論にノイズはつきものでしょ!」

霧切「貴方のノイズは洒落にならないのよ…!」

江ノ島「模擬刀の先制攻撃だべ!」

あ、頭が痛くなってきた…。
だけどこの際、それは考えないようにしよう。
今僕がやるべきことは、この世界の真相を解き明かすことだ。
そうすれば…ん?

苗木「ねえ、霧切さん…真実を知ることが、この世界を脱出することに関係があるの?」

霧切「……ええ、そうね。まずはその辺りの話をしましょうか。貴方がどうしてこんなことをしなくてはいけないのか、それを知るためにも」


【学級裁判について】
原作であるダンガンロンパとは違い、クロを探すためではなく、苗木達が感じた疑問を解決していく流れになる点に注意してください。
また、この裁判では言弾などはありません。論破や反論等は全てご自身の言葉で行っていただきます。
ただし、勿論言い方によって意味が微妙に違ってくるものもあるので、答えが絞りきれないようなものは、おおまかな部分の証拠、あるいは論拠を提出してもらえば構いません。
今回は苗木視点だけで進みます。
今回は今までに出てきた謎の答えの復習のようなものです。
その際の注意点ですが、【あくまで苗木本人が見た、或いは知っている】事でなければ論破することはできません。
また、今回は【苗木が考えてない、或いは考えにない】事は言弾にできません。
今までの苗木の体験や記憶と、裁判中の苗木の考えをうまく利用して真実へたどり着いてください。
本人が知り得ない証拠などでの論破は無効となるのでご注意ください。
3回推理を間違えた場合、ゲームオーバーとなります。
論破する部分は【】で示され、同意する部分は『』と表示されます。
状況において使い分けましょう。
以上で学級裁判の説明を終わります。



-議論開始-


霧切「まず今の苗木君の状況を簡単に説明するわ。【貴方はベッドで眠っている】」

江ノ島「そう、まるで眠り姫のようにね!」

霧切「この世界は【貴方の夢の世界であり、貴方の願望の世界】よ」

江ノ島「ノンノン、ここはそう、いうなれば【理想郷】!苗木クンが生み出した希望に溢れた【楽園】なんだよ!」

霧切「貴方は真実の断片に思考が至った。至ってしまったからこそ、【意識を絶つことで自己防衛を図ったのよ】」

江ノ島「そう、だからこの世界は【誰にでも優しい】。希望に溢れた【絶望の無い世界】」

霧切「この世界を脱出するための方法は一つよ。『貴方が真実を思い出すしかない』」

江ノ島「そ、真実を思い出せば、あんたは【夢から醒める】」

霧切「真実を思い出して初めて、『貴方は前に進めるのよ』」


苗木「……」

苗木(なんだろう、この違和感)

苗木(江ノ島さんのはノイズだとしても…なんだかおかしいぞ)

苗木(こんな事を考えたくはないけど……霧切さんの発言にも“矛盾があるような気がする”)

苗木(話の筋は通っているし、なにもおかしい部分は無い筈なのに…どうしてこんなことを考えるんだ?)


霧切「…何か考えているみたいね、苗木君」

苗木「えっいやあのその…まあ、少し…」

霧切「今の私の発言に、論破できるかしら?」

苗木(やっぱりだ…)

苗木(霧切さんのこの言い方…まるでボクがそう考えることを分かっていたみたいに…)

苗木「……えっと」


1 論破できる
2 論破できない




苗木「多分…出来ると思うよ」

霧切「そう…なら改めて発言をやり直すから、論破して見せなさい」

苗木「分かったよ」

苗木(突破口も何もない…)

苗木(本当に考え無しの勢いだけど…考えれば、何か見えてくる、かもしれない……)


-議論開始-


霧切「まず今の苗木君の状況を簡単に説明するわ。【貴方はベッドで眠っている】」

江ノ島「そう、まるで眠り姫のようにね!」

霧切「この世界は【貴方の夢の世界であり、貴方の願望の世界】よ」

江ノ島「ノンノン、ここはそう、いうなれば【理想郷】!苗木クンが生み出した希望に溢れた【楽園】なんだよ!」

霧切「貴方は真実の断片に思考が至った。至ってしまったからこそ、【意識を絶つことで自己防衛を図ったのよ】」

江ノ島「そう、だからこの世界は【誰にでも優しい】。希望に溢れた【絶望の無い世界】」

霧切「この世界を脱出するための方法は一つよ。『貴方が真実を思い出すしかない』」

江ノ島「そ、真実を思い出せば、あんたは【夢から醒める】」

霧切「真実を思い出して初めて、『貴方は前に進めるのよ』」



論破或いは同意しろ!




-論破!-


苗木「それは違うよ!」

苗木「僕の願望の世界なら霧切さんの存在が抹消されているなんてありえない」

苗木「霧切さんは僕の幸せに必要不可欠な人で、僕が世界で一番守ってあげたい人だからだ!」

霧切「…………ぁ、ぅ」

江ノ島「うわあ…このアンテナこっぱずかしいことをよくもまあ…」

苗木「…へ?」

霧切「あの…その…、苗木君。気持ちは嬉しいけれど、い、今はそう言う事を言うべきときじゃないの?分かるかしら…う、嬉しいけども!」

江ノ島「あーー惚気るならどっか人気のないところでお願いしたいんですけどねえ!ねえ!」

苗木「ご、ごめん…」


苗木(ど、どうやら違ったみたいだ…)

霧切「もぅ…苗木君ったら…。フフ」テレテレ

苗木(…ま、まあ。霧切さんが喜んでいるんだし、いいのかな?)


霧切「…こほんっ。とにかく、苗木君の反応からして今のあなたでは論破できないことは分かっていたわ。材料が無いもの」

苗木(…そうか。僕には反論できる確証がないから、あんな違和感を感じていたんだな…)

霧切「だからまずは、この世界について話そうと思うわ」

苗木「この世界…このゲームの世界の事でいいのかな?」

霧切「ええ、そうよ。ゲームの世界について改めておさらいしましょう」



霧切「この世界はゲームの世界…確か新世界プログラムを基にしたRPGだったわね」

江ノ島「うふ、その通り、ですわよん♪」

苗木「……真面目にやろうよ」

苗木「この世界で目覚めたボクは、モノクマに唐突にそう説明されて、反論の余地も無くゲームをプレイさせられたんだ」

霧切「私達もほとんど同じよ。モノクマから説明を聞かされた後、気付いたら苗木君の目の前にいたわ」

江ノ島「えーっと、ああ、確かあたしもそんな感じだったかな」

苗木「それからボクらはダンジョンをクリアして、魔王を倒すことを課されたんだよね」

霧切「ええ、そうして私たちは魔王を倒すために協力し合って先に進んだ……」

江ノ島「とーころがどっこい!なんとダンジョンのボス部屋で待っていたのは…希望ヶ峰学園の仲間たちでした!」

霧切「そう…これがモノクマの卑劣な策……ただRPGをさせるだけではないと分かってはいたけれど…」

苗木「そしてボクらは悩んで、悔やんで、時には決別の危機だってあったけど…それでも乗り越えてきたんだ…」

江ノ島「だけれど…それに決定的な決裂をもたらす事件があったよねぇ?」

霧切「そうね…おそらく、苗木君と江ノ島さんの失踪事件の事でしょう」

江ノ島「あーあれは…うっわ、思い出したくねえ……なんつーかアレのせいで最近の私ちょっとおかしいんだよなあ…」

苗木「ボクらは生き延びることに必死でよく知らないんだけど、霧切さんの方は大変だったんでしょ?」

霧切「ええ、そうね。本当に辛かったわ…仲間たちの絆もボロボロ。何とか前に進んでも狛枝君と戦刃さんという強敵の前に為す術もなかったわ」

江ノ島「そ・こ・で、苗木君が颯爽登場!まっさに希望的な登場!主人公に相応しい登場だったね!」

苗木「そこには江ノ島さんもいたはずだけどね…」

霧切「そうして私たちは大きな山場を越え、ダンジョン八層かもしれないという情報を知り、少し目的がはっきりしてきたのよね」



江ノ島「だけど…なんとビックリ!さらにさらに絶望が待っていたのでした!」

苗木「……そうだね。日向クンと罪木さんの死」

霧切「あのことがキッカケで……私たちはまた絶望的な状況に追い込まれた」

苗木「そしてボク達にもたらされた“ヒント”…それによってボクらはこの世界の構造と、裏切り者について知ることになった」

江ノ島「裏切り者…うぷぷ……あーんな誘導に引っかかってバカみたいだったよねぇ」

霧切「分かっていたなら言いなさいよ…って貴方に言ってもしょうがないのでしょうね」


苗木(……ついに来た、この話題が)

苗木(この話題は重要なヒントになるかも知れない)


霧切「あら、どうかしたの?」


1 この世界の構造について議論する
2 話を進める




苗木「ねえ、霧切さん。ゲームの世界の構造について…少し議論がしたいんだ」

霧切「…そう、分かったわ」


-議論開始-


霧切「あの時私たちとにヒントとして与えられた情報は…衝撃的なものだったわね」

江ノ島「んまあ確かに衝撃的だったねぇ…絶望的な意味で」

苗木「ボクの見覚えのない…このゲームでの記憶…」

霧切「ええ、【無い筈の記憶があった】…その時の事、覚えているわよね?」

苗木「うん。ボクは以前にもこのゲームに参加していて、ボクは一度魔王を倒している…そう言う記憶だった」

江ノ島「どうしてそんな矛盾が生まれえたんだろうねえ…うぷぷ」

霧切「それは…【この世界がループしているから】よ。私達は何度もゲームオーバーになっていて、その度に【やり直していた】」

江ノ島「いやいや、やっぱり実は『モノクマに記憶を植え付けられていた』ってのもあるんじゃない?うぷぷーつまりそれは『偽物の記憶だった』って事だね!」

霧切「前の議論を忘れていたのかしら?あの時【日向君も同じようにループの可能性に気づいていたかもしれないのよ】。【日向君は記憶を取り戻していた】…記憶を取り戻した人が数人いるのなら、【確実】でしょう」


苗木(……確か前回の議論では、この世界はループしているという事で結論がついていた)

苗木(ボクもこの結論に異議はない…だってそれ以外に可能性は……無いよな?)

苗木「……待てよ?」

苗木(あるかもしれない…そうだ、思い出せ……)


新世界プログラムの概要……
絶望個性プログラムのメンバー…
被験者たちの状態…
プログラムの不備とその対策……


苗木(プログラムの不備……待てよ、そうだ。ならおかしいよ)

苗木(あの人の発言は…明らかに矛盾している!)


論破或いは同意しろ!


おっと、ミスがありました。
絶望更生…○
絶望個性…×

ミスをした場合、霧切さんからヒントを貰えます。また、三回ミスしてゲームオーバーになってもリトライが可能です。
安価下



-論破!-


苗木「それは違うよ!」

霧切「……ふふ」

苗木「ねえ、霧切さん。さっきループしているっていってたけど…それはおかしいよ」

江ノ島「はあ?別におかしくないでしょう?そういう可能性もあるってだけで」

苗木「いや、おかしいんだよ。江ノ島さんは知らないかもしれない…いや、知ってるよね。わざわざアルターエゴまでけしかけたんだからさ」

江ノ島「…つーん」

霧切「で、何がおかしいのかしら」

苗木「ねえ、このゲームのもとになったプログラム…新世界プログラムって元々は何のために作られたんだっけ?」

霧切「……別名、絶望更生プログラム。絶望の残党たちを更生…言い換えれば、絶望以前の状態まで巻き戻すプログラムね」

江ノ島「確か苗木クン達が絶望の残党も助けたいって未来機関を逆らってまでも作った未完成プログラム…だったねー」

苗木「そうあよ。そしてボクらは…その不備、つまりは致命的な欠陥についてもよく把握していた」

霧切「……」

苗木「ボクらは人数がいたからなんとか欠陥を補修することができたけど…それでもボクの記憶では、たった一つだけ治せなかった欠陥があったんだ」

苗木「……仮想空間での死。絶望更生プログラムの段階では死に至るような状況は想定されていなかった。江ノ島さんの妨害は想定内だったから、凍結用プログラムを配置する事も出来ていたし、その欠陥を修正する優先度は低かったんだ。だからボクの記憶では……欠陥は修正されていない」

霧切「成程、ね」

苗木「だとすると、大きな矛盾が生まれるよね。そう、仮にループしたとしても、ボクらは死んでいる…生き返る訳がないんだ!」

そう、今まで気づかなかった。
いや、気付かないふりをしていたのかもしれない。
モノクマが死んでも大丈夫、という言葉を使っていたから。
そして現に、ボクらの以前ゲームの記憶…。
そこから勝手にループしている、という解釈をしたけれど。
新世界プログラムを基としている、という前提ではこの仮説は成り立たないんだ。

江ノ島「単純に修正されていたってだけでしょ?アホだね苗木クンは!」

苗木「修正…いや、あの問題はそんな簡単に片づけられるものじゃ無いんだ。肉体とは離れていても…直接脳とゲームが繋がっている以上、死を体験したら脳が強制的に活動を停止させちゃうから……」

そう、だからおかしいんだ。
どうして、こんな矛盾が起きるのか。

霧切「苗木君、もっと柔軟に発想しなさい。いい、思考を逆転させるの。それとも、チェス盤をひっくり返す、と言った方が好きかしら…?」

発想を…逆転させる……?

霧切「今、貴方はどうしてこの矛盾が起きているのかを考えている。そうじゃなくて“どうしたら矛盾が起きないのかか”を考えればいいのよ」

どうしたら矛盾が起きないか……。
脳と直接繋がっている以上、仮装世界の死は現実の死と同じだ。
この姿は恐らく僕らの記憶から生成されたゲーム用のアバター。
……どうすれば、この矛盾が起きないか。
そんなの簡単だ。

仮想空間の死≠現実世界の死

となればいいんだ。
……まさか、そんなゲームのキャラみたいにポコポコと死ねる便利な方法が……え?



苗木「…そ、そうだったのか……」

霧切「……気付いたみたいね」

苗木「ちょ、ちょっと待って……じゃあ今までのボクの思考は…全部……」

そう、この矛盾が起きるのは、僕たちが現実の身体と繋がっていることが前提なんだ。
ならもし、【繋がっていなかったら】。
例えばボクが、【苗木誠】というプロフィールを忠実にコピーした、ただのゲームキャラだったとしたら……。

苗木「わ、訳が分からないよ!ぼ、ボクはゲームのキャラなんかじゃない!こうして思考もしてる!意思もある!この世界から出るんだ!そして、現実の身体に帰る!」

霧切「ええ、そうよ。そう思考することしかできない。だって貴方は、そう思考するようにプログラムされているから」

苗木「…………………え?」

つまり、ここで、こうして、唖然としていることも、プログラムされている、って事?
う、嘘だ。そんなはずない。
だってボクにはこうして心が。
こんなにも沢山思考して。

霧切「新世界プログラムの専門的な部分は不二咲君クラスの人間じゃなきゃ理解できないでしょうけど、そもそも現実とリンクさせるアバターを用意するだけでも大変なのよ?それに彼には【アルターエゴ】という前例がある。貴方のプロフィール全てを取り込んだ自立思考型プログラムを作る事なんて造作もないでしょうね。いいえ、貴方だけじゃない。私達のもね」

苗木「…………………………」

目の前が真っ暗になる。
思考ができない。
いや、そもそも最初から思考なんてしていなかったのか…?
ただ、ボクはプログラムに忠実に……従っていただけ…………。

江ノ島「あーあ、だから言ったのに…プログラムの分際で余計なことを考えちゃうからだよ」

霧切「……苗木君、くれぐれも言っておくけど、なら現実世界の僕達は無事なのか、という質問にはYESと断言できないわ。なぜならプログラムであるはずの私たちが稼働している、それはつまり……ゲームは続いているの。つまり、いまだに現実の私たちはこうしてゲームをプレイしている……いいえ、プレイは出来ないわね。言ってしまえば、自分そっくりのゲームキャラのムービーを延々と鑑賞させられている感じなのかしら?残念ながらその辺りは私にはわからないわ。貴方に分からないのだから、私にもわからない」

苗木「……………………………………………………」

ボクは…………何のために……。
こうして……いることも……プログラムされていた……?

霧切「……」

江ノ島「…ね、苗木クン。辛いよね?悲しいよね?自分がプログラムだなんて、ただのシステムだったなんて…認めたくないよね?」

苗木「………………………………………………………………………………」

江ノ島「大丈夫……何もかも…忘れて、希望に満ちた幸せな日々を過ごそうよ…ね?」



-議論開始-


霧切「さて、【ゲームリセット】ね」

桑田「よーし、今度こそ舞園ちゃんに良い所を見せてやるよ!俺が勇者様だぜ!」

十神「下らんゲームだ…だが、暇つぶしにはなるか。フン、いいだろう。俺がお前ら愚民を導いて完璧にこのゲームをクリアしてやろう」

山田「僕は永遠に二次元に愛を捧げると誓った身なわけですが……はてはてはて!?もしかして今、現在、ナウ!私めはゲームの世界、つまり二次元にいるのでは!?むっはーみ な ぎ っ て き た ー!」

セレス「うふ、このゲームにカジノはあるのでしょうか?でしたら一稼ぎしてイケメンを雇いまくってイケメンパーティを組みたいですわね。ついでに魔王城辺りも強奪できるとよろしいのですが」

石丸「最早セレス君が悪人にしか見えないなッ!だがしかし、どうやらこのゲームには目的が無い様だ!ならば自分の信念に従い、各々でゲームを楽しむのもありかもしれないな!」

大和田「ヘっ…ここにはバイクはあんのか?だったらちょっとひとっ走りしてきてえところだな。人を気にしねえで走れるなんて最高じゃねーかよ」

舞園「皆好き勝手言っちゃってますね。苗木君はどうしますか?よかったら私とパーティを汲みませんか?苗木君とだったら楽しく冒険できそうなんです」

不二咲「ふふ…皆で楽しく冒険かあ。よわっちいけど、ボクもゲームでなら男らしくなれるかなあ?」

大神「フッ…RPGというからには、それなりに強敵も待っているのであろう?ならば我はひたすら鍛錬に励むとしよう。未知の強敵…血が滾るな」

朝日奈「ねえねえ!ゲームの世界って事はさ!食べても太らないって事だよね?うひゃー!ドーナツ食べ放題だよう!さくらちゃん!一緒に食べ歩きしようよ!ドーナツ世界一周旅行、見たいな?」

腐川「う、うふふ……この世界ってなんでもしてもいいんでしょう…?だったらどうしよう…白夜様についていこうかしら…でも断られたらショックだし…う、うへへ…でも白夜様ならきっと連れてってくれるわよね、ふ、ふふふ」

戦刃「もう残念なんて言わせない…いっぱい活躍して苗木君の為に頑張る。だから、パーティに入れて欲しいなって」

江ノ島「その努力が空回りしないといいけどねぇ…うぷぷ」

葉隠「へっ…真打ち登場ってな!おめぇら好き勝手言うんじゃねーべ!ここは俺に任せておけば何も問題ないって占いに出てんだぞ!分かってるだろうけど、俺の占いは三割当たるんだかんな!」

苗木「あははっ!三割しか当たらないのに、葉隠クンは自信満々過ぎだよ!」


1 ゲームをやり直す
2 ゲームをやり直す
3 ゲームをやり直す




苗木「………………………………………………………………………………」

苗木(なんで……そんな事を言う必要があるんだろう…?)

苗木(だって僕は……プログラムなんだ……)

苗木(今更足掻いたって、無駄じゃないか……)

苗木(どうせそのうち…ゲームをクリアするんだって筋書きになるんだ……)

苗木(だったら今くらい…笑わせてよ……バカみたいに、甘い夢に浸らせてよ……)


言弾は錆びついている。
論破することはできない。


-議論開始-


霧切「さて、【ゲームリセット】ね」

桑田「よーし、今度こそ舞園ちゃんに良い所を見せてやるよ!俺が勇者様だぜ!」

十神「下らんゲームだ…だが、暇つぶしにはなるか。フン、いいだろう。俺がお前ら愚民を導いて完璧にこのゲームをクリアしてやろう」

山田「僕は永遠に二次元に愛を捧げると誓った身なわけですが……はてはてはて!?もしかして今、現在、ナウ!私めはゲームの世界、つまり二次元にいるのでは!?むっはーみ な ぎ っ て き た ー!」

セレス「うふ、このゲームにカジノはあるのでしょうか?でしたら一稼ぎしてイケメンを雇いまくってイケメンパーティを組みたいですわね。ついでに魔王城辺りも強奪できるとよろしいのですが」

石丸「最早セレス君が悪人にしか見えないなッ!だがしかし、どうやらこのゲームには目的が無い様だ!ならば自分の信念に従い、各々でゲームを楽しむのもありかもしれないな!」

大和田「ヘっ…ここにはバイクはあんのか?だったらちょっとひとっ走りしてきてえところだな。人を気にしねえで走れるなんて最高じゃねーかよ」

舞園「皆好き勝手言っちゃってますね。苗木君はどうしますか?よかったら私とパーティを汲みませんか?苗木君とだったら楽しく冒険できそうなんです」

不二咲「ふふ…皆で楽しく冒険かあ。よわっちいけど、ボクもゲームでなら男らしくなれるかなあ?」

大神「フッ…RPGというからには、それなりに強敵も待っているのであろう?ならば我はひたすら鍛錬に励むとしよう。未知の強敵…血が滾るな」

朝日奈「ねえねえ!ゲームの世界って事はさ!食べても太らないって事だよね?うひゃー!ドーナツ食べ放題だよう!さくらちゃん!一緒に食べ歩きしようよ!ドーナツ世界一周旅行、見たいな?」

腐川「う、うふふ……この世界ってなんでもしてもいいんでしょう…?だったらどうしよう…白夜様についていこうかしら…でも断られたらショックだし…う、うへへ…でも白夜様ならきっと連れてってくれるわよね、ふ、ふふふ」

戦刃「もう残念なんて言わせない…いっぱい活躍して苗木君の為に頑張る。だから、パーティに入れて欲しいなって」

江ノ島「その努力が空回りしないといいけどねぇ…うぷぷ」

葉隠「へっ…真打ち登場ってな!おめぇら好き勝手言うんじゃねーべ!ここは俺に任せておけば何も問題ないって占いに出てんだぞ!分かってるだろうけど、俺の占いは三割当たるんだかんな!」

苗木「あははっ!……はは、ははは…………」

苗木「………………………………………………………………………………」

苗木(ボクは……どうすれば……)


霧切「それは違うわ!」


苗木「霧切、さん……?」

霧切「プログラム?全て初めから決まっていた?何もかも無駄?関係ないでしょう」

苗木「何言ってるんだよ…だって、ボクらは…」

霧切「貴方はあの残酷なゲームを繰り返すことも、ぬるま湯のような夢に逃げ込むこともしないわ。当初の目的通りこのゲームをクリアするのよ」

苗木「何…勝手に…」

霧切「下らないわ。貴方の考えはね。いい、そんな悩みは現実でも同じよ。現実の私達だって運命があらかじめ定められているのかもしれない。神様によって全ては決められているのかもしれないじゃない」

苗木「!」

霧切「大事なのは、私たちがどう考えて、どうしたいのか、よ。貴方はこんなところで立ち止まって全てを投げ出すの?今まで犠牲にしてきた皆の意思は?貴方の希望はどこにあるの?」


苗木「……僕の、希望は…」


霧切「さあ、貴方の弱気な発言を、論破しなさい」

霧切「今の貴方なら、分かるはずよ──何が、希望なのか」


苗木「【どうせボクは……ただのプログラムなんだ…】」

苗木「【何をしたって意味がない】」

苗木「【何も変わらない】」

苗木「【希望なんて馬鹿馬鹿しい】」

苗木「【無駄だ】」

苗木「【希望なんて無い】」


-論破!-


苗木「ボクはただのプログラムじゃない!」


-論破!-


苗木「何もしないことは思考を放棄することだ!」


-論破!-


苗木「意味がないことなんてない!皆の想いは、ボクの想いは意味が無かったなんて…認めない!」


-論破!-


苗木「どんなに馬鹿馬鹿しくても…最後まで信じれば、希望はボクらに応えてくれるはずだ!」


-論破!-


苗木「無駄かどうかはボクが決める!ボクは、今までの事も、これからの事も、無駄だなんて思わない!」


-論破!-


苗木「希望はある!信じ続ける限り──希望はボク達を照らし出してくれるはずだ!」



苗木「ボクの名前は苗木誠…プログラムなんかじゃない!」

苗木「ボクは、ボク自身の意志で、前に進む!」

苗木「例えその先に、どんな未来が待っていようともボクは希望を信じて、このゲームを終わらせる!」


苗木「これが、答えだ!」

 
 



今度こそ、世界が崩れ去って行く。
もう、【ここ】がボクを閉じ込める理由を無くしたからだろう。
豪快な音を立てて、世界が崩壊する。

江ノ島「……本当に、バカじゃない…アンタ」

霧切「私の信じた苗木誠という男は、いつもこうよ。土壇場で、希望を信じて、立ち上がる。その姿が、世界で一番かっこいい」

霧切さんが粒子となって消えていく…。

霧切「どうやら、私の役目は終わったようね…」

苗木「霧切さん…」

霧切「私は、貴方の意志が生み出した空想の存在。仮想の存在が生み出した空想の存在って…ふふ、ちょっとややこしいわね」

そう言いながら笑う。

霧切「貴方を奮い立たせることが出来て、良かった。大丈夫、貴方ならどんな絶望だって乗り越えられるわ」

苗木「──ありがとう、霧切さん」

霧切「きっと、世界を救ってね…信じてるわ」

そうして、霧切さんは消滅した。
やがて世界の崩壊は加速していく。
真っ暗な空間に、ボクと江ノ島さんだけが残される。

江ノ島「アンタが最初に霧切ちゃんとの発言に違和感を感じたのは、たぶん夢の世界、って部分っしょ」

苗木「うん。そうだろうね…ゲームの世界で夢だなんて、おかしいと思ったよ。それにボクがプログラムなら、そんなものを見るはずがないのに」

江ノ島「もしかしたら見るかもしれないけどねえ?」

苗木「……そうだね。何事も否定しちゃダメだね」

江ノ島「この世界…ちょっとややこしいな。まあ苗木が閉じ込められてた世界は正確には、黒幕が創りだした仮想空間。まあ、新世界プログラム自体を乗っ取っているんだし、これくらいはお安いもんよ」

苗木「ボクを閉じ込めて、…どうするつもりだったの?」

江ノ島「別に。ただ、暇潰しになるかなって思っただけ」

苗木「霧切さんというイレギュラーを紛れ込ませたのは、僕を奮い立たせる為だったんだね」

江ノ島「それ以外にも、式典でフードの男の子出したりね。ああやってさりげなく不自然さを小出しにする演出はグッドだったと思わない?」

苗木「自分で言うのはどうかと思うけどね…」

江ノ島「……ま、いいや。これで苗木クンを心置きなく絶望させられるわけだし」

苗木「ボクを奮い立たせたのは、そういう理由?」

江ノ島「そう言う事。あんたには恨みつらみが沢山あるからね。中途半端な状態じゃなくて、希望で張り裂けそうなところを絶望で満たしてやりたいんだよ」

苗木「ボクは絶対に絶望しない」

江ノ島「……期待してるよ。苗木クン?うぷぷ」

 
  



瞬間、まばゆい光が視界を満たす。
反射的に目を閉じ、数秒待つ。
目を刺激しないようにそっと瞳を開けると、そこには見慣れた天井があった。

苗木「……」

身体を起こすと、布団が床にどさりと落ちた。
ここしばらく生活していたせいですっかり馴染んだ宿屋の一室。
どれだけダンジョンを進んでも変わらないこの部屋に僅かに愛着が出てきていた。

誰の気配もない。
きっと皆は、先に進んだんだろうな。

苗木「ボクも、行かないと」

暫く動いてなかったせいか、体中が軋む。
ゴキゴキと骨を鳴らしながら体中を動かし、馴染ませていく。
そしてゆっくりベッドから降りると、ベッドの上に置いてあったのか、カチャリと音を立てて何かが床に落ちた。

苗木「……拳銃?」

黄金に光る拳銃。
ボクは拳銃に詳しくは無いけれど、それでも弾を込めて撃つ、ということくらいは知ってる。

苗木「だけどこれ…弾が無いよな?」

撃てないんじゃ銃の意味はない。
けれど捨てるのはなぜか避けたかった。

苗木(まあ、無いよりマシだよな…)

ボクはそう結論付けると、黄金の銃をパーカーのポケットにつっこむ。
部屋を見渡すけれど、特に必要なものはない。
もう、この部屋には帰ってこないだろう。

苗木「早く皆と合流しないと」

今度こそ、終わらせるんだ……。

プログラムだろうがなんだろうが、関係ない。

ボクはボクの意志で、このゲームを終わらせる。

そう決めたんだから、もう迷いはしない。


苗木「……ふぅ、よし。行こうか」


小さく深呼吸をして、ボクは希望への一歩を踏み出した。

投下終了です。
本当はこのスレ内で終わらせたかったのですが、思ったより消費が激しいので次スレにもまわします。
ただ次スレに回すと今度は短くなりすぎる、という事で。
本編終了後にちょっとしたオマケを予定しています。なんかこう、○○√エンディングだとか、ここであの選択をした際の√を知りたい、だとか。後は、終盤で廃止したバトルをもう一度やってみたい、なんて希望もあればやるつもりです。
ただあまり長いものを書く気力もあるか定かではないので、長くなりそうなものは採用できない可能性もあります。
スレ消費も兼ねてご提案などがあればどうぞ。後質問も受け付けます。
次回は短めの予定です。

最高に燃える展開だな!

そういえば>>1はこれ終わらせたら別のssは書くんですか?

お待たせしました。
まだ余裕があるので、キリの良い所まで投下します。
次の投下から新スレになります。

>>960
多分書くと思います。
何を書くのかはまだ未定ですが、何かアイデアが浮かんだら書くつもりです。




霧切「……時間ね」

霧切はポケットから携帯を取り出すと、時刻を確認して、そう呟く。

豚神「集まったのは4人…か」

罪木「待ってください!きっと…九頭龍さんも、七海さんも来ますから!」

江ノ島「それを考慮しての待機時間じゃん。これだけ待っても来ないって事はとっくにお陀仏してるよ」

豚神「江ノ島、口を慎め」

霧切「……でも、そうね。これだけ待っても二人ともくる様子はないし、相手もくる様子はない…相討ちと言った所かしら」

罪木「……っ!」

四人が集まったのは、ほぼ同時。
全員がほぼ同時に扉を開け、お互いの期帰還を知った。
それから1時間近く待ったが、残りの二人がくる様子はない。

罪木「先に行ったって可能性は、無いんでしょうかぁ…?」

霧切「いえ、それは有り得ないでしょうね。この先の扉は1つのパーティ以外がいなくならない以上、開かない。つまり敵であろうが味方であろうが、ここに残る事以外は出来ないはずよ」

豚神「ならばやはり…同士討ちが妥当な線だろうな」

霧切「ええ。狛枝君に辺古山さん、どちらも強敵なはずよ。相討ちでも十分に頑張ってくれたと思うわ」

江ノ島「これ以上待っても仕方ないし、先に進んだ方が良いんじゃない?」

罪木「そう…ですね」

全員がそれなりの傷を負っていたが、それも罪木の才能によってある程度は回復してきている。
ここまで来て引き返すことはできないだろう。

江ノ島「装備の確認……っていっても、あたしはこのナイフ位しかないんだけどなあ!」

霧切「私もそうね。拳銃の弾は無くなってしまったし、ナイフしか無いわ」

豚神「俺と罪木も同じ状況だ。ラスボスに赴くにしては貧相な装備としか言えないが…仕方ないだろう」

罪木「ごめんなさい…私が荷物を奪われたせいで……」

霧切「気にしないで。今更そのことを咎めても仕方ないもの。それよりは現状の戦力で何とか突破する策を考えないと」

江ノ島「とは言ってもさ、情報も何もないんじゃあ絶望的と言わざるを得ないよねー」


七海「──情報ならある、と思うよ」

 
 



霧切「!」

豚神「!」

罪木「!」

霧切「七海さん、貴方…生きていたのね」

七海「……うん」

豚神「良かった…かなりギリギリだが、無事みたいだな」

罪木「良かった…七海さん、消えてなかったんだ…!」

江ノ島「へぇー……あの希望キチに勝てたんだぁ!まあ当然だよね!あんな希望キチなんてそれくらいの役しかもらえないしょぼいサブキャラだもんね!希望になれなかった絶望を抱いて死んだんだろうね!」

霧切は傷の手当てをしようと七海の姿を見て、違和感を感じる。
それは、“あるべきはずのものがない”感覚。

霧切「…………ちょっと待って」

罪木が治療に駆け寄ろうとしたところを、制止する。

罪木「へ?」

霧切「ねえ、七海さん。貴方はなんで先ほどまで狛枝君と戦っていたはずなのに、どうしてそこまで【綺麗】なの?」

そう、七海の姿はおかしいのだ。
先ほどまで、全員激しい戦いをしてきたはずだ。
それなりの傷を負っている。あの江ノ島でさえも。
しかし、彼女の姿はそれにしては、【綺麗すぎる】。
服の損傷すら見られないというのは、あまりにも異質だ。

七海「……うん、そろそろ種明かしをした方が良いかもしれないね」

霧切「種明かし?どういう事かしら」

七海「私はね、三度だけ死ねるんだ。…うーん、ちょっと違うかな。三回までなら、死をリセットできるって言った方が良いのかも」

罪木「え、えええええええ!?」

豚神「ど、どういうことだ!?」

江ノ島「ははーん…なるほどね」

七海「えっと、皆は知ってると思うけど。私はこのゲームの製作者から管理の一部を任されてる管理者なんだ。プレイヤー視点での監視者って位置でね。でも管理者がゲームに負けてそのままゲームの管理ができませんでした、なんて格好がつかないし、管理者の意味がないから。私には特別に、死を三度だけリセットできる権限があるんだよ」

霧切「そ、そんなことが…」

七海「私はチートみたいであまり好きじゃないんだけど、でも管理の為って言われたら仕方ないしね。……まあその力も、ついさっきで全部使っちゃったんだけど」

霧切「あれ、三度って言ったわよね?もしかして七海さん、狛枝君に三度も殺されたのかしら」

七海「ううん、違うよ。一度は前のゲーム盤でのお兄ちゃんに、二度目は狛枝君と戦った時、三度目は……保険にね」

霧切「保険……?」

霧切は七海が微妙に濁した言葉の真意を知りたかったが、七海は答える気が無い様だった。

豚神「その権限はゲーム盤をループしても回復できないのか?」

七海「うん。モノクマにその辺りのプログラムをいじられちゃったから…もうズルは出来ないよ。これで私も皆と条件は同じだね」

罪木「そんな力があったならもう少し早く言ってほしかったですよぅ…」

七海「これはあくまで緊急手段だし、出来れば魔王との戦いに備えて残しておきたかったこともあるんだ。結局使っちゃったけれど」

江ノ島「……ってことは、七海ちゃん結構やばいんじゃなーい?」

七海「……そっか。江ノ島さんは知ってるんだ」

江ノ島「七海ちゃんと日向クンは【同じ】でしょ?ならこれ以上は──」

七海「大丈夫だよ。私は、皆を信じてるから」

霧切「……?」

豚神(二人は何の話をしてるんだ…?)



七海「それよりも」

そう言って、七海は小さく咳払いをする。

七海「魔王の情報、だったよね。そっちについて話しておいた方が良いと思うんだ」

霧切「あ、そうだったわね…。どうやら本当のは無しみたいだし、七海さんが偽物、なんて考えは捨てるわ」

豚神「そうだな」

そういって全員、七海の言葉に耳を傾ける。
しかしその唇から紡がれたのは、信じられない事実だった。


七海「結論から言うと…魔王には、攻略方法は無いよ」


霧切「……え?」

七海「簡単に言うとね、ゲームなんかのラスボスや魔王ってあくまで【倒されること】を前提としてプログラムされてるから、どれだけ強くて攻略法が見えないような敵でも、何度も戦えば攻略のヒントに繋がるものが見つかるはずなんだ。だけどこのゲームの魔王は違う。その時々で行動を変えるし、うまく流れを取ったとしても、すぐに行動を組み立てなおしてくる。言っちゃえば【倒されないこと】を意識してる。というか倒せないつくりになってるんだ」

霧切「な、なによそれ……」

豚神「ふざけるな…!それじゃあ、俺たちは何のために!」

罪木「倒されないラスボスなんて…そんなの卑怯じゃないですかぁ!」

江ノ島「それはもうなんつーか絶望というより萎えるじゃん」

七海「私に分かることは、魔王は大きなモノクマの姿をしているって事だよ」

罪木「大きなモノクマ…」

豚神「まあ、ラスボス、魔王と言ったらアイツくらいしか思い当たらんが」

江ノ島「それってもしかして、残姉ちゃんがあたしたちに警告してたやたら強いモノクマの事じゃないの?」

霧切「そう言えば言っていたわね。戦刃さんでも歯が立たない敵がいたと…魔王なら納得だわ。だとしたら厄介ね…」

霧切達は唇を噛み締めながら考えをめぐらしていくが、何も思いつかない。
そもそもゲーマーであり、前のゲーム盤の記憶を知っている七海が“攻略方法は無い”と断言している時点で、いくら霧切達が考えても答えが見つかるはずもなく。
そんな姿を見て、七海は拳を握る。

七海「そう悲観的にならなくともいいと思うな」

罪木「七海さん……?」

七海「そもそも、最初からこの戦い自体が無謀だったよ。本当ならどこかで失敗してもおかしくないほど、危険だったけど……それでも私たちは乗り越えられたんだもん。人間やればなんとかなるよ。攻略方法なんて無くてもさ、力を合わて頑張れば、きっと何とかできるって、私はそう信じてるよ」

霧切「……ふふっ。そうね、今更あれこれ考えても仕方ないわ。こんな所でウジウジしてたら苗木君に怒られちゃうもの」

豚神「ああ、そうだ。俺たちはここまでやってこれたんだ。きっと何とかなる、そう信じて今は先に進もう」

江ノ島「あたしはどっちでも良かったけどねー。どう転んでも絶望的なシチュエーションになってただろうし☆」

罪木「七海さんの言うとおりです。私たちはこんなところで退けませんよ。消えていった皆の意志を汲んであげないと」

パン、と霧切が手を叩く。
乾いた音が響く。

霧切「全員の意見は纏ったようね……今までの作戦は忘れて頂戴。敵に攻略法が無いなら、何も考えずに私たちの全てをぶつけましょう。それが最善のはずよ」

全員が、瞳に闘志を宿す。
この絶望的にも見える状況で、誰もが希望を抱いている。
江ノ島はこういう空気気持ち悪いわーといったように端っこでえずいていたが、それでも先に進むという意思はあるようだった。

霧切「先に進みましょう……」

霧切が歩みだす。
目指すは魔王城への扉。
恐らく、その扉はもう、開いている。




七海「ごめんね、狛枝くん」



最後に聞こえた言葉。
それが誰のものなのか、狛枝は薄々気付いていた。

狛枝(やられたよ…まさか、そんな技を隠し持っていたなんてね…)

いくら狛枝が強運で、推理力がずば抜けてよかったとしても、相手が生き返るなんて言う想定は出来なかった。
扉に手を掛けた瞬間、その言葉が聞こえて、狛枝は気を失った。

狛枝「……ここは、現実…じゃ、ないよな」

ぼんやりとした頭を何とか切り替えながら、辺りを見回す。
そこは先ほどまで七海と死闘を繰り広げていた小部屋だった。

狛枝「はは、七海さん…僕の事、生かしたんだ……それじゃあ扉は開かないのにさ」

狛枝(…………アレ?傷が治ってる)

ふと自分の身体を見ると、先ほどまどまでの怪我が全部綺麗に消え去っていた。

狛枝「これ…どういうことなんだ……?」

考えを巡らせるが、答えは出ない。
こういう時は考えても仕方がない、と早々に思考を放棄する。

狛枝「……さて、どうしようか」

狛枝(恐らく生きているのは僕だけだろうね……)

狛枝にはそう確信できた。
自分が、あれだけ本気を出したというのに、七海の方が一枚上手だった。
他の仲間が弱い、等というわけではない。
むしろ全員本気で行くだろう。
それでも、狛枝は自分お仲間たちが誰一人勝てなかったことを、一人、確信してしまった。

狛枝「つくづく嫌な奴だね、僕……仲間も信じられないなんて」

勿論、仲間の事を疑っているわけでもない。
仲間の力を、全てを信用した上で、きっと負けてるだろうと。

そう分かってしまった。
だからこそ、どうすればいいのか分からない。

狛枝「……」

共に進む仲間はもういない。
仲間の弔い合戦と勇んで霧切達に戦いを挑むことも考えたが、勝てるわけがない。
いくら幸運と言えど、万能ではないのだ。
それに、無駄死になんて仲間の誰も望んでいない。
ならば、自分のするべきことは何なのだろう。

狛枝「僕は今、どうするべきなのかな……」

 
 




霧切「思ったより、あっさりと開いたわね」

魔王城の扉は思ったよりあっさりと開いた。

七海(考えは合ってたみたいだね…。後は狛枝君次第、だよ)

七海(……少し、勿体ない使い方だった気もするけど)

扉の先にはうんざりするほど長い廊下が続いている。

豚神「この先に、魔王がいるんだな」

罪木「えっと…またモノクマロボに襲われたりしないんでしょうかぁ?」

江ノ島「ま、あたしなら遠慮なくやるわね!ラスボスの前でゲームオーバーなんて興奮度MAXの絶望でしょ?」

霧切「考えても仕方ないわ。出来るだけ消費は避けたいし、一気に進みましょう」

七海「大丈夫、今まではここに敵は出てないよ。…でも、一気に進んだ方が良いかもしれないね。今回も同じだとは限らないし」

七海のその声を引き金に、全員は廊下を進みだした。


そして──。

霧切「……着いたわね」

豚神「ああ」

江ノ島「わあ!ぞくぞくするほど絶望に満ちてる!」

目の前には、今までとは明らかに違う、異質な扉。
開けなくともわかるほどに、扉の先には禍々しい何かがいることを理解する。
全ての元凶であり、全てを終わらせるために倒さねばならない敵。
これ以上、言葉は要らない。
霧切は無言で全員の顔を見渡し、意思を再確認する。
誰も何も言わず、ただ頷いた。
それを確認すると、霧切は躊躇わず、扉を開け放った。


モノクマ「…………」


全員の視線の先には、前情報通りの、大きなモノクマの姿。


霧切「出たわね…魔王」

豚神「このくだらないゲームを、終わらせるぞ」

罪木「現実に…帰るためにも!」

江ノ島「あたしの絶望の為にも、ね」

七海「……終わらせる」

モノクマは何も言わず、ただ佇んでいる。
霧切達は油断せず、己の武器を構える。
……どれだけの時間が流れたのだろうか。
一瞬のようにも思えるし、数時間が経ったような気もする。

ようやく、モノクマが口を開いた。


モノクマ「待ってたよ、オマエラ」


霧切「貴方のその余裕顔、ぶち壊すのが楽しみよ」

モノクマ「酷い言い草だなあ」

豚神「無論、容赦はしない」

モノクマ「うぷぷ、どの口が言ってるのかな?お前らがボクに勝てると思っちゃってるの?」

罪木「どれだけ絶望的でも、私たちは屈しませんよ…っ!」

モノクマ「うぷぷ……健気だねえ…頑張り屋さんだねえ!」

江ノ島「うっわなんかこいつ凄いイラつくんですけど」

モノクマ「なんだとぉ!これを造ったのはキミじゃないか!今の発言は熊差別だよ!モノクマ差別だー!」

七海「…………」

モノクマ「全く…お前らそんなに殺気立ってさ!もう少し余裕が欲しいよね!ゆとり世代のくせにさ!」

霧切「ごちゃごちゃ言ってないで来なさい、貴方とおしゃべりする時間が惜しいの」

モノクマ「まあまあ、そんなに焦らないでよ!それよりもさ、僕の中身、気になる?気になっちゃう?魔王の正体、知りたいよね?」

豚神「──!?おい七海、これはどう言う事だ?」

七海「…わからない、ごめんね。今までになかった展開だよ」

モノクマ「お前らは様々な困難を越えてここまで辿り着いた……そんな頑張り屋さんのオマエラにモノクマから素敵なプレゼントをあげるよ!」

霧切「……何を考えているの?」

江ノ島「……あーこれこれ、この気持ち悪い感覚。これって絶望の予兆ってやつじゃないの?うぷぷ」

そしてモノクマは両手で自分の頭を掴む。
どうやら【中身】というのは、そのままの意味らしかった。
そしてゆっくりと、ゆっくりとその頭を外していく。



霧切「……」

全員、なぜか唾液を飲み込む。
わざわざ、魔王が自分の正体を明かすのか。
嫌な予感を感じずにはいられなかった。
そして頭が、完全に取れる。それをポイと放り投げると──

罪木「…………は?」

豚神「…………なっ?」

霧切「……う、そ……」

江ノ島「う、うぷぷぷ…はは………………はあああああああ!?」

あの江ノ島でさえ、両目を見開いて驚愕する。
モノクマは何も言わず、自分の着ていた【着ぐるみ】を全部脱ぐと、それをそこら辺に放った。





「これが、君たちが倒すべき、【魔王の正体】だよ」





その声は、今まで何度も霧切達を勇気づけてきた言葉で。

その声は、何度も希望を与えてくれたはずなのに。

何故か今は、その声が、言葉が、どこか遠くに聞こえる。





苗木「──やあ、みんな」





モノクマが立っていた場所には──


笑みを浮かべた──


苗木誠が、居た。





to be continued.

投下終了です。
次回投下は次スレからになります。
ただここ最近まとまった時間が取れず、投下が不定期になりがちですので、次回投下はいつになるのかはっきりは言えません。
早いうちに投下する予定ですが、その辺りはご理解いただけると。

>>990辺りで次スレ誘導のレスをするつもりなので、質問やらなんやらがあればガンガンしてくださって結構です。
ついでに今日中に次回予告のようなものも投下します。少し遅くなるかもしれませんが。



この苗木君巨大サイズなのかな

     予     告     
   




霧切「──こんにちは。黒幕です」




罪木「座して死を待つなんて…そんな事したら日寄子ちゃんに怒られちゃいます!」


豚神「例えどんな絶望が待っていようとも──前に進まなければ何も変わらない!」


江ノ島「絶望ってのは、与えるだけでも、与えられるだけでもない。与えて与えられてこそ、真の絶望って奴なんだよ!」


苗木「ボクは諦めない。そう決めたんだ!」


日向「人間、やれば何とかなるもんなんだよ…。その程度の壁で諦められるような人間には育ってないんだ!」


セレス「霧切さん…貴方の罪、暴いて差し上げましょう」


舞園「責任、取ってくださいね?」


狛枝「それは違うよ!僕じゃない!僕は無実だ!違うんだって!本当に!」
 

桑田「リア充を駆逐してやる、この世から一匹残らず…俺がこの手で!」


日向「頼む……俺は、お前らを……人殺しになんて、させたくないんだ!」


七海「私の胸は日向くんにしか触らせたことはありません」


霧切「誰がぼっちよ!」


苗木「違う…霧切さんは僕と一緒にシャワーを浴びていたんだ!彼女は違う!」


左右田「日向テメエ…アレはそういうことだったのかよ!」


日向「七海、俺だ!結婚してくれ!」


十神「所詮世の中金で何とかなる……いくらだ?」


狛枝「ここは死んでも……守り切るよ……」


小泉「希望は、こうやって受け継がれていくんだね」


江ノ島「よく考えろ雑魚日向ァ!これが現実ってヤツゥ!ゲームでも仮想世界でもない、あんたが望んだ結果!どれだけ努力しても報われない!それでもあんたは先に進もうっての!?」





七海「私の命と、世界を天平に掛けるよ。これが最初で最後の選択──貴方はそれでも、前へ進むのかな?」

 
 
 
 
 

予想より早く投下が出来ました。
このスレでは投下は以上です。

>>971
それは次の投下でお答えするつもりです。決して描写し忘れたとかそういうわけではないです…。
……申し訳ないです。

ttp://www.lovelydisgrace.com/wp-content/uploads/2013/08/lovelydisgrace.com-mujer-muere-aplastada-102.jpg

「ひひっ……ふふふふ…っ」
プログラム本部である中学校の真東に当たるD=05エリアに、1人の少年が膝を抱えて座っていた。

ふっくらとした顔は蒼白しており、普段は穏やかだった目は血走っている。
肉付きの良い指先に生える爪は、自らの腕の皮膚を抉り血が滲んでいる。
時々奇怪な笑みを洩らすその少年の名は、柚木康介(男子19番)。

康介はクラスをグループに分けるなら男子文化部グループだ。
囲碁部に所属しており優しくおっとりとしている康介は、浅原誠(男子2番)にとってはそののんびりさが癇に障るらしくあまり仲は良くないが、長門悟也(男子14番)・羽山柾人(男子16番)とは仲が良い。

しかし、今の康介からは優しさもおっとりさものんびりさも感じられない。

「…しんじゃう… みぃんな…みぃんなしんじゃう…」

康介は傍に転がっていた石を拾い、足元を歩いていた蟻をそれで潰した。
潰れたそれを更に潰すように、石で地面を掻いた。

「ひゃは…っ つぶれちゃったぁ…
 みぃんな…しんじゃう…
 しんじゃったひとはぁ…やまづみだよぉ…
 あさはらくんはぁ…あたまのうえのほうが…なくなってるよぉ…?
 ちょうがはみでてる…あれはぁ…さとやだぁ…
 あれぇ…まさとぉ…あしがいっぽんたりないよぉ…?

 ふふ…キャハハハハハハッ!!」

笑い転げる康介の横には1冊の本が転がっている。
デイパックの中に入っていたその本、それが康介がおかしくなってしまった原因だ。

事の起こりは出発した直後に遡る。

時間 被害者 加害者 凶器 死亡場所 死亡話数
第1回放送

6/11

AM6:00

AM3:53 栗原佑(M7) 進藤幹也(教官) 首輪 D=04 第8話
AM4:43 金城玲奈(F3) 桐島伊吹(F4) ブローニング・ベビー D=04 第11話
AM5:02 池田圭祐(M3) 真田勝(M9) キャリコ M950 E=04 第12話
AM5:47 青山豪(M1) 結城緋鶴(F19) アイスピック D=05 第14話
第2回放送

6/11

PM0:00

AM6:07 真中那緒美(F16) 結城緋鶴(F19) Cz75 E=06 第17話
AM6:46 岩見智子(F2) 三河睦(F17) ジェリコ941 G=06 第19話
AM6:50 三河睦(F17) 吉原遼(F20) 日本刀 G=06 第20話
AM10:38 中原朝子(F13) 新島恒彰(M15) 毒薬 E=08 第27話
第3回放送

6/11

PM6:00

PM0:17 工藤久尚(M6) 周防悠哉(M11) コルト・ガバメント F=07 第31話
PM2:01 柚木康介(M19) 小南香澄(F6) ファイブセブン D=05 第34話
PM2:46 今岡梢(F1) 坂本陽子(F7) ナタ G=10 第35話
PM2:58 伊達功一(M12) なし(事故死) なし(転落死) H=02 第36話
第4回放送

6/12

AM0:00

PM6:09 笠井咲也(M5) 結城緋鶴(F19) 包丁 D=03 第42話
PM7:07 姫川奈都希(F15) 美作由樹(M18) S&W M36 F=07 第43話
PM8:38 脇連太郎(M20) 椎名貴音(F8) 小刀 J=01 第45話
PM10:26 津田彰臣(M13) 桐島伊吹(F4) ブローニング・ベビー B=02 第50話
PM10:27 高山淳(F11) 桐島伊吹(F4) ブローニング・ベビー B=02 第50話
PM11:43 小南香澄(F6) 結城緋鶴(F19) Cz75 F=04 第51話
第5回放送

6/12

AM6:00

AM0:26 濱中薫(F14) 浅原誠(M2) フランキ スパス12 D=06 第53話
AM2:24 桐島伊吹(F4) 結城緋鶴(F19) Cz75 D=05 第55話
AM3:59 坂本陽子(F7) 美作由樹(M18) ナタ G=09 第57話
AM5:18 駿河透子(F9) 新島恒彰(M15) ベレッタM92FS F=01 第61話
AM5:21 新島恒彰(M15) 真田勝(M9) キャリコ M950 F=01 第61話
第6回放送

6/12

PM12:00

AM7:33 美作由樹(M18) 真田勝(M9) キャリコ M950 H=04 第64話
AM10:45 椎名貴音(F8) 吉原遼(F20) 日本刀 E=07 第69話
AM11:25 矢田美晴(F18) 浅原誠(M2) フランキ スパス12 D=06 第71話
AM11:34 浅原誠(M2) 不破千尋(M17) フランキ スパス12 D=06 第72話
第7回放送

6/12

PM6:00

PM12:17 吉原遼(F20) 長門悟也(M14) ボウガン F=03 第73話
PM12:23 長門悟也(M14) 真田勝(M9) キャリコ M950 F=03 第73話
PM4:15 斎藤穂高(M8) 結城緋鶴(F19) ファイブセブン D=06 第76話
PM4:18 稲田藤馬(M4) 結城緋鶴(F19) ファイブセブン D=06 第76話
PM5:37 遠江敬子(F12) なし(自殺) シグ・ザウエル P220 G=09 第79話
プログラム

中止放送後

PM6:42 不破千尋(M17) 真田勝(M9) シグ・ザウエル P220 E=07 PM6:48 真田勝(M9) 不破千尋(M17) ワルサーPPK E=07 PM7:04 周防悠哉(M11) 結城孝博 グロック19 D=04

濱中薫(女子14番)は姫川奈都希(女子15番)と共に、床に座った。
不破千尋(男子17番)が気を遣って座布団(上の階の売り場から持って来てくれた、千尋自身ではなく斎藤穂高(男子8番)が)を下に敷いてくれた。
「ジュースにする? 温かい物じゃなくていいかな?」

千尋が缶ジュースを持って来た。

「あ、あの、電気って止められてるモンじゃないの?」

奈都希が不思議そうに訊いた。
確かに、薫と奈都希が小学校に行った時、何気なく廊下の電気のスイッチを入れたが、電気は点かなかった。
他の電気も点かなかったし、改めて薫の膝の怪我を消毒しようと水道の蛇口を捻っても水は出なかった。

「ああ、なんか判らないけど、不破が電気点けた」

稲田藤馬(男子4番)が千尋を指差した。
千尋が得意げに笑った。

「こういう所なら非常電源があるかなっと思ってさ。
 ま、あまり蓄えはないだろうから、最低限の電気しか使えないけどね」

千尋が指差した先には、数台のテレビが置かれており、全ての画面がついていた。
その全てが、外の様子を映し出していた。

「このデパート、何かハイテクだったんだよね。
 店の外にまで監視カメラが付いてたんだ。
 意外に治安が悪かったんじゃないかな、ここは」

「そのテレビも延長コードも4階から持ってきたのはオレらだぞ。
 ちょっとは感謝の念を見せろっての、不破」

藤馬が溜息を吐きながら腕を回した。

「感謝してますとも。
 管理モニター室にいたら狭いし不便だし…
 テレビに映したら、便利だろ?」

千尋が言うと、藤馬も「ハイハイ、感謝してるよ」と頭を下げた。
どうやら千尋が何らかの改造をしたらしい。
単に配線を伸ばしてテレビに繋げただけだ、と千尋は言ったが、薫には到底できそうもない。

千尋は、凄い。
薫はその様子をただ呆然と見ていた。
こんな状況に放り込まれて、ここまで冷静に行動ができるものだろうか?

「じゃあ、本題に入ろうかな…とその前に」

千尋は自分の首輪に手を触れた。

 

「怪しい発言はしないで、コレに盗聴器が付いてると思うから」

 

薫は目を見開いた。

と…盗聴!?
アレだよね、ストーカーが女の人の家に付けたりする…

薫は奈都希と顔を見合わせた。
藤馬と穂高は既に聞いているらしく、平然としていた。

「な、何でそんな事わかるの!?」

薫は叫んだ。
千尋はニッと笑った。

「ちょっと落ち着いて考えれば判ることだよ。
 あの筋肉男が言ってただろ?
 『怪しい行動を起こしても首輪を爆発させる』って」

そんな事言ってたっけ?

薫は首を傾げた。
確かそれらしい説明をしていた時は、栗原佑(男子7番)が死んだショックで話が耳に入っていなかった。
千尋も相当ショックを受けていたはずだ。
それなのに、ちゃんと話を聞いていたとは、やはり凄い。

「おかしいと思わない?この会場のあちこちにカメラが付いているわけじゃない。探してみたけど見つからなかったしね。小型カメラらしき物が首輪についているわけでもない。それっぽい物は確認したけど見当たらないし。だとしたら、今この会話を聞かれている、と思わないかい?」

奈都希は成る程、というように何度も頷いていた。薫は感嘆のあまり声が出なかった。凄い…凄いよちーちゃん!!

「本当かはわからないけど、そうである自信はあるね」

そう言い切る千尋を、薫は眼をぱちくりさせながら見つめた。こんな人と自分が同い年だということが、信じられない。

「で、でも…」奈都希が口を挟んだ。
「そんな事、堂々と言っちゃっていいわけ?今の不破の言葉だって、聞かれてるんでしょ?」

千尋はにっこりと微笑んだ。今までとは違う、冷たい笑顔。薫の背中に、冷たいものが走った。

「これはオレからの挑戦、聞けばいいさ。オレはこのプログラムをぶっ潰す。
 でも、まさか今オレの首輪を爆破させるなんて野暮な事しないだろ?子供1人の戯言に弱気になるようなヤツらじゃない。そんな腰抜けなら、オレじゃなくても誰かが潰せるさ。そうだろ、筋肉男とその他諸々の野郎共」

最後の言葉は、明らかに政府に向けて発せられていた。盗聴器を通しての、宣戦布告だ。

「お、おい、不破!!」
「言い過ぎだって、ヤバいって!!」

藤馬と穂高が慌てて千尋の口を塞いだ。
5人(いや、4人だ。千尋は平然としている)の間に緊張が走る。しかし、千尋の首輪には何も変化がない。千尋を除く4人が、ほっと溜息を吐いた。奈都希が千尋をキッと睨んだ。そして、勢いよく千尋の胸倉を掴んだ。

「アンタバカじゃないの!?それで死んだら元も子もないじゃない!!」
「失礼な、オレは天才だよん♪」
「ふざけないで!!」
「ちょっと、ナッちゃんってば!」

薫は慌てて奈都希を千尋から引き離した。奈都希は少し頭に血が上りやすい。
それは、昔から全然変わっていない。

「…で、方法は? オレらも何も聞いてない」

暫くして、穂高が訊いた。千尋は困ったような笑顔を浮かべた。

「それはまだわからないんだけどねぇ…どうしようか?」
「決まってないのにあんなタンカきったの!?」
「ああもうナッちゃん!!」

再び千尋に掴みかかろうとした奈都希を、薫が抑える。奈都希が「離して、1発殴りたい!!」と叫ぶので、薫は藤馬と共に必死に諭した。そんな3人をよそに、千尋は背を向けた。そして、暫くして向き返り、注目、とジェスチャーで伝えた。千尋が輪になっていた5人の中心に紙を置いた。整った文字で、何かが書かれていた。

『なーんて嘘だよ☆ちゃんと方法は決めてある。いくらなんでもそれまで筋肉男たちにバラす義理はないさ。あの学校を、爆発させる。

 成績優秀・スポーツ万能・喧嘩もできる、いい素質を持ってるしな!
 おまけに周りの評判もいい。 『曲者』、『悪魔』…」

「凄いっスね」

田中が思わず感嘆の声を上げた。
足立も口笛を吹いた。

「“普通の生徒”の中では1番人気だからな!
 首輪飛ばした日には、オレらの首も吹っ飛びかねない!」

進藤が自分の首を斬るジェスチャーをした。
「ゲッ」と足立が顔をしかめた。

「あと、他の人気は…
 “特別参加者”と“戦闘実験体”はもちろん大人気だな!」

「そりゃあそうっスよね!
 正直、オレはその2人で票が二分されると思ってたんスけど…
 そうでもないっスよね」

足立が進藤の手からオッズ表を取った。
進藤は頷いた。

「そうだな、正直オレもそう思ってたんだがなぁ…
 このクラスはいいのが揃ってるからな!
 でもやはり優勝はあの2人のどちらかだろうな!!」

「…そうだ!」

田中がポンッと手を合わせた。
足立と進藤が同時に田中に目を向けた。

男子5番・笠井咲也(かさい・さくや)

サッカー部FW。男子運動部グループ。
サッカーでは地域選抜にも選ばれる実力者。
幼馴染の工藤久尚(男子6番)と共に“爽やかペア”として人気がある。

能力値

知力:

体力:

精神力:

敏捷性:

攻撃性:

決断力:

★★★☆☆

★★★★★

★★★☆☆

★★★★★

★★☆☆☆

★★★☆☆
 


支給武器:サッカーボール
kill:なし
killed:結城緋鶴(女子19番)
凶器:包丁
 

緋鶴に恋心を抱いている。

F=07エリアに久尚と共にいたが、周防悠哉(男子11番)と遭遇。久尚に逃がされる。
D=03エリアに潜伏していたが、久尚が悠哉に殺害された事を知り、復讐を誓う。 包丁を入手。 復讐に向かおうとしたが、緋鶴に会う。 緋鶴に想いを告げるが包丁で左胸部を刺され死亡。

 

復讐は叶いませんでしたが、想いは告げられただけ・・・良かったのかどうなのか。
もっと爽やかにしてあげたかったんですが、そういうわけにもいかなかったので。
サクちゃんも好きでした?v

C=07エリアにある中型デパートでは、プログラム破壊計画グループの面々が右往左往していた。
「ねぇ、藤馬ちゃん! どっかに台車ないかなぁ?」

「ああ、それ1階の食品倉庫にあった気が…
 つーかどうせ階段では、“ソレ”は自分で運ばなきゃなんねぇだろ?」

「階段までは使えるっしょ、持って来てくれたらうれしいなぁ!」

「女の子に力仕事させらんないしなぁ… わかった、持って来るわ」

2階のガーデニング用品売り場では、稲田藤馬(男子4番)と濱中薫(女子14番)が汗だくになりながら力仕事をしていた。

一方1階では、不破千尋(男子17番)が食料棚の下の方を物色していた。

「不破、“アレ”農協にありそうだったけど…
 住宅の方まで行かなきゃならないっぽいぞ!」

入り口のドアが開き、外に出ていた斎藤穂高(男子8番)が入ってきた。
千尋は買い物篭を持って立ち上がり、穂高のもとへ行った。

「やっぱり? まあ仕方ないね。
 わざわざ外出てもらって悪かったね。
 じゃあ、“アレ”入れられそうな入れ物探してくれない?」

「わかった。 そっちは順調かい?」

「まあボチボチだね。
 とりあえず今は昼飯の準備中、インスタントは好きじゃないんだけど」

千尋の籠の中にはカップラーメンが数個転がっていた。
穂高は「楽しみにしているよ」、と階段を上って行った。

そして、管理モニター室の側に置いてある監視カメラで撮った映像が映るテレビの前で、姫川奈都希(女子15番)は考え事をしていた。

ここでプログラム破壊の準備をするのはいいんだけど…
今こうやってぼんやりしている間に、“あの人”が危険な目に遭ってるかもしれないと思うと…
でも、見つけるあてもないし…
薫を連れて回るのは多分危険だし…

奈都希は溜息を吐いた。
上の階から微かに薫の声が聞こえる。
元々声が大きいから、普通の喋り声でも聞こえてしまう。
しかし、それで良いと思う。
薫には元気な姿が何よりも似合う。
ずっと元気に笑っていてほしいから、危険な目には合わせたくない。

因みに、千尋たちは今それぞれ探し物をしている。
それは、千尋が宣戦布告をした少し後に遡る。

「それで、オレらは何をすればいい?」

藤馬が訊いた。

「んー…とりあえずここで篭城…かな」

千尋は言いながらペンを走らせた。
盗聴されているので必要な事は口に出さず、怪しまれないように適度に会話をするように、これが千尋の指示だった。
藤馬の言葉も、間を持たせるためのものだ。

「ロウジョウ?」

「ああ、立て篭もるってことね、ここに」

薫が訊いたのは、本当に言葉の意味がわからなかったからだろう。
千尋は苦笑し、紙を皆に見えるように置いた。

『計画としては、車に火薬を詰め込んで学校に突っ込ませて爆発させる。
 あとは混乱させる布石として、時限爆弾でも用意しようかな?
 とにかく燃やす為の道具を作る事が先決だね。
 とりあえず、皆で集めなきゃいけない物があるんだ。
 動かせそうな軽トラ・ガソリン・肥料・空き瓶・漂白剤・木炭。
 まだ色々あるけど、探せそうな物から探そう』

「じゃあ、穂高クンは外行ってきて」

「はぁ!?」

穂高が叫んだ。
しかし、千尋が“軽トラ”と“ガソリン”と“木炭”を指差しているのを見て、頷いた。

「近くに誰かいるかもしれないでしょ?」

「…ああ、わかったよ」

これは、もちろん間を持たせる会話だ。
もちろん本当に誰かがいるなら仲間にするだろうが。

「藤馬クンと薫チャンは上で色々物色してきてよ、何かいい物あるかもだし」

そう言いながら“肥料”と“木炭”を指差した。
藤馬と薫はも頷いた。

「オレは1階で色々探すから、奈都希チャンは見張りお願いするよ」

「はーい」

奈都希は声で合図した。

「あ、オレ武器持っていっていいよな?」

穂高が声を上げた。
千尋は思い出したように手をぱんっと合わせた。

「そうだそうだ、武器の事すっかり忘れてた。
 皆それぞれ支給された物出して。
 万が一の時の戦力を把握しておきたいからさ」

千尋は立ち上がって入り口付近に置いてあった買い物篭を1つ取ってきて、その中に自分に支給された物だろう、自動拳銃(ワルサーPPK)を置いた。

藤馬もデイパックを引っ張って来、中からウージー9ミリサブマシンガンを出した。
強力そうな銃に、思わず「おおっ」と声が上がる。穂高はベルトに差し込んであったヌンチャクを入れた。
「これってアチョーッってやつだよね?」と薫がジェスチャーをすると、その動きがおかしかったからか穂高が笑い声を上げた。

薫はデイパックをここで初めて開け、中を引っ掻き回した。
そして、リボルバー式拳銃(コルト・ロウマン)を取り出した。
「刑事ドラマで見た事あるねぇ」と千尋が呟いた。

皆がそれぞれ当たりの部類に入るであろう武器を取り出していたが(穂高は微妙だが)、奈都希のデイパックからはボールのような物が出てきた。
説明書によると、相手に投げつけると破裂してインクが付くというペイントボールらしい。
こんな物でクラスメイトにマークを付けてどうしろというのか。

「じゃあ、穂高クンはこれとこれを持って行ってらっしゃい♪
 無理せず、遅くとも次の放送までには帰ってきてよ?」

「オーケイ、じゃあ一っ走り行ってくるかな」

千尋はワルサーPPKとヌンチャクを穂高に手渡した。
銃は護身用、ヌンチャクは窓ガラスなどを割って建物に侵入する用らしい。
受け取った穂高は立ち上がってデパートを出ていった。

「じゃあ、奈都希チャンはこの小さいのを持っておいて」

「うわぁ…何か緊張するなぁ」

奈都希のコルト・ロウマンを持つ手が僅かに震えた。
これの引き金を引くだけで、簡単に人を傷つける事が出来ると考えると怖かった、もちろんそんな事をする気は全くないが。

「残りは奥に置いておくから、万が一の時には…
 まあ、そんな事ない事を祈るけどね、クラスメイトなんだから」

千尋は溜息を吐き、籠を持って奥に置きに行った。
藤馬と薫も立ち上がり、階段の方へ行った。
奈都希も持ち場についた。

 

 

それから数時間、今の所“万が一の時”というのはない。
誰かが来る気配もないので、奈都希は暇だった。
そのため、自然と物思いに耽ってしまう。

 

「なーつきチャン、見張りしてますかー?」

 

突然後ろから千尋の声が聞こえ、奈都希は我に返った。
千尋は買い物に来た主婦のように買い物篭を片手に、笑顔を浮かべていた。

「あのねぇ、見張りがボーっとしてちゃあ意味がないでしょ」

「あ…うん、ごめん…」

注意をされても上の空の奈都希を見かねて、千尋は溜息を吐きながらその場に腰を下ろした。

「別に、出て行きたければ出て行っていいんだよ?」

奈都希は千尋から目を逸らした。
端正な顔立ちの千尋をまじまじと見るのが照れくさいのもあるが、目を合わせていると全てを見透かされそうな気がした。

「久尚クンの事、気になるんでしょ?」

奈都希は目を見開いた。
久尚クン――工藤久尚(男子6番)は、今まさに奈都希が心配していた人物だった

中学1年生で初めて出会ったときから、ずっと想いを寄せていた。
笑顔が眩しいほど爽やかで、サッカーをしている時の真剣な表情は一般の女子なら一目惚れしてしまうだろう。
修学旅行(ほんの1日前の話だな、とても昔のような気がするのに)ではせっかく一緒のグループになったというのに、告白する勇気も機会もなかったので、今は後悔していた。

でも…あたし不破に言った事なんか…!
つーか誰にも言った事ないのに…何で!?

「ど…どうしてそれを!?」

「オレ、人の恋愛沙汰には敏感なんだよねぇ♪」

千尋は不敵な笑みを浮かべた。
どうせ誤魔化しても無駄だろう。
奈都希は諦めて溜息を吐いた。

「…うん、気になる…
 今こうしている間にも危険な目に遭ってるかもしれない…
 探して…気持ちを伝えたい…

 でも、きっと危険だから…薫は連れて行きたくない…
 ねぇ、不破…どうすればいいかな…?」

「行けばいいじゃない」

人がこんなに悩んでいるのに、他人事のように言う(他人事だけど)千尋に少し腹が立ち、奈都希は立ち上がった。

「あのねぇ、何でそんなあっさりと…」

「オレは奈都希チャンが後悔する姿は見たくないし?
 行きたいなら、後悔したくないなら、探しに行くべきだね。
 オレが奈都希チャンなら、絶対に探しに行くよ。
 もし何も言えずにそのままお別れってことになったら嫌だし」

少しだけ、目頭が熱くなった。
千尋が言った事が、そのまま自分の本当の気持ちだった。
本当に見透かされていたりして。
ただ、奈都希の心に引っ掛かった事があり、思わず口にした。

「不破は…探さないの? 凪紗の事…」

奈都希は聞いた事があった。
いつだったか、千尋が他のクラスの何某さん(名前は知らないな)に告白された時、千尋ははっきりと断った。
『悪いけど、オレ凪紗チャン大好きだから』
ここまではっきりと言ってしまうのはどうかと思う。
でも少し羨ましかった、はっきりと言えてしまう事が。

千尋は首を横に振った。

「探さない、今はやる事があるからね。
 ま、大好きな凪紗チャンに今すぐ会って抱きしめたいのは山々だけど…
 とりあえず海斗クンに任せてあるから、絶対に生きていてくれるから。
 オレはやる事終わらせてから探しに行くよ」

ふと奈都希の脳裏に千尋の言葉が蘇った。
『オレ、人の恋愛沙汰には敏感なんだよねぇ♪』、それがもし本当なら、自分の周りの友達の気持ちも悟ってしまっているのだろうか。
その、凪紗の気持ちも――

「とにかく、今日中には絶対に帰ってきてね。
 なんせ薫チャンは可愛いからねぇ、しかも男3人に女の子が――」

「不破!!」

奈都希が怒鳴ると、千尋はケタケタと笑い声を上げた。

「冗談だよ、少なくともオレは凪紗チャン以外には興味ないし?
 しっかりと守らせていただきますとも。

 ああ、あとその銃持って行っていいからね。
 だから…絶対戻ってきてあげなよ、薫チャンのためにもね♪」

奈都希は頷き、コルト・ロウマンを強く握り締めた。

 

「ナッちゃん… どこか、行くの…?」

 

突然薫の声が聞こえ、奈都希は振り返った。
不安げな薫の表情を見ていると、涙が出そうになった。
もしかしたら、これが見納めになってしまうかもしれない。

「…ちょっと、人、探してくるね。
 今日中には戻ってくるから…」

薫が『自分も連れてって』と言いたげな顔をしていた。
だけど、連れて行けない。
大事な薫を危険な目に合わせたくない。

奈都希に駆け寄ろうとした薫を、奈都希の心情を理解したのか、薫の後ろで様子を見ていた穂高が制した。

「…大丈夫、奈都希は絶対に戻ってくるって」

目に涙を溜めた薫は、しばらく「一緒に行く!」と駄々をこねていたが、やがて諦めたのか、精一杯の笑顔を奈都希に向けた。

「いってらっしゃい!」

普段家でずっと聞いていた何気ない言葉のはずが、それを聞いた途端に涙が溢れた。

それは友達にも言えることだ。
同じグループの金城玲奈(女子3番)を殺害した時も、友達を失ったとは考えなかったし、悲しくも何ともなかった。
ただ、『ああ、あたしは人を殺したんだ』と冷静に感じただけだ。
放送で中原朝子(女子13番)と三河睦(女子17番)の死を知った時も、『あ、そう、死んだの』と考えただけだ。
グループの自分以外のメンバーが死んでいても、悲しくも何ともない。
そもそも仲間というよりは、ただ一緒にいただけの他人。
他人に関心を持たない伊吹にとっては、他人が死んでも関係無い事だ。

しかし、今回珍しく伊吹は物事に関心を持った。
“プログラム”だ。

人殺しには興味が無くはない。
だからといって、やる気マンマン、というわけでもない。
人を見つけた時に気が向けば相手をするし、気が向かなければ素通りする、という程度のものだ(それでもキルスコア現在2位はなかなかのものだろう、もちろん本人は知らないが)。

例えば、伊吹は前日の昼過ぎにアスレチック公園内を移動していた時に、長門悟也(男子14番)と羽山柾人(男子16番)を目撃した。
何かもめているように見えた。
銃声も聞こえた。
運動神経が人並み以下に見える2人を襲う事は簡単だったかもしれないが、その時は日が真上に昇って暑かったので、気が乗らずにやめた。
逆に、4時間ほど前に津田彰臣(男子13番)と高山淳(女子11番)に見つけられた時は、気が乗らない理由も無かったので殺害した。

『グッモーニン!! 元気に殺し合ってくれてるかな!?
 早速、戦場に散ったお友達を言っていくぞ!!
 準備はいいかい!?』
相変わらず耳障りな声。
だけど、聞かなくては。

設楽海斗(男子10番)は、祈るような気持ちで放送に耳を傾けている。

1時間半ほど前まで一緒にいた、曽根崎凪紗(女子10番)の安否を確認しなくてはいけない。
怪我をした自分を逃がす為に囮になった凪紗。
大丈夫だろうか?
怪我でもしていたら…
もしも、万が一、命を落としていたら…

ペンを持つ手に力が入る。

栗原佑(男子7番)と不破千尋(男子17番)、2人に凪紗の事を任されていたのに、足を引っ張ってしまい、さらに凪紗を危険な目に合わせてしまった。
どうか、どうか無事で――

『それでは、いざ!!
 女子14番、濱中薫さん!!
 女子4番、桐島伊吹さん!!
 女子7番、坂本陽子さん!!
 女子9番、駿河透子さん!!
 男子15番、新島恒彰君!!
 ちょーっと元気がないぞ、女の子諸君!!』

よかった…生きてる…

放送で呼ばれた5人には悪いが、安心した。
凪紗は無事だ。
あの“戦闘実験体”だとかいう結城緋鶴(女子19番)に負けなかった、流石だ。

『続いて禁止エリアの発表だ!!
 7時からG=07エリア、あー…住宅地だぞっ!!
 9時からE=06エリア、小学校がある所なっ!!
 11時からJ=01エリア、商店街の端だぞ、わかったかい諸君!!
 残りも半分を切ったし、頑張ろうなぁ!!』

ブツッと放送が切れた。

海斗は大きく息を吐き、ペンの蓋を閉じた。

海斗は自分の左手小指にはめられているシルバーの指輪に手を触れた。
去年の誕生日に凪紗がくれた。
本人は『安物でごめんね』と言っていたけれど、海斗にとってこれ以上価値のある物はない。
肌身離さず身に付けている(サッカーをしている時は壊れると困るので外していたが)。

凪紗、無理してないだろうか…
時々突拍子もない事をしでかすからな、アイツは――

 

 

海斗が凪紗や佑と交流を持ち始めたのは、中学1年生の頃だ。

その頃の海斗は今と変わらず無愛想で寡黙だったが、素行は全く悪くなかった。
授業や学校行事などには真面目に取り組んでいたし、かなり高い割合を占める素行の悪い不良たちとの関わりなど全くなかった。
凪紗や佑とは同じクラスだったが(千尋もだが、その頃の千尋は普通の優等生だった)、関わりなどなかったし、関係など持ちたくもなかった。
大好きなサッカーをし続けて、将来はサッカーで飯を食っていきたいと思っていた。
地域のクラブサッカーに所属していた海斗は、言葉を交わす事は少ないながらも、頼れるゴールキーパーとして、監督やチームメイトからは厚い信頼を得ていた。

それが崩れたのが、中学1年生になって間もない頃。

事の発端は、クラブに所属する控えのゴールキーパー、中島幸弘との些細な揉め事だった。
と言っても、相手が勝手に揉め事に発展させただけだが。

(左上から)
女子三番・荻野千世
男子八番・宍貝雄大
男子一番・相葉優人
女子五番・小石川葉瑠 第一班

テーマは「必殺技」
本編では戦闘らしい戦闘をできないまま全滅した一班。
せめてここだけでも必殺技とかみんなあればなあ、と。
というかぶっちゃけこの班をラストに描いたのですが、
構図がネタ切れしてたので、こんな感じになりました。
本編で苦しみ続けた優人の笑顔が描きたかったのです。
(左上から時計回り)
女子十一番・奈良橋智子
男子二番・芥川雅哉
女子十七番・水田早稀
男子十五番・日比野迅 第二班

テーマは「元気」
迅の腕に抱きつく早稀が描きたかっただけです←
迅早稀カップルと、マサトモペア、2組の距離感が描けて
楽しかったです。
(左上から時計回り)
女子十九番・山本真子
男子五番・川原龍輝
男子三番・雨宮悠希
女子七番・佐伯華那 第三班

テーマは「Go Forward!」
走る一行を描きたくて、白羽の矢が立ったのがこの班。
悠希がカメラ目線で、華那が「何?」ってなってます。
自称モテメン、けど周りにはわかってもらえていないの悠希を
アピールできました(笑)
(左上から時計回り)
男子十六番・真壁瑠衣斗
男子四番・池ノ坊奨
女子二番・上野原咲良
女子十番・高須撫子 第四班

テーマは…特にないです←
構図に一番悩んだのがこの4人でした。
全員文化系で動きのある絵は合わないし

(左から)
男子六番・木戸健太
男子十番・城ヶ崎麗
女子一番・朝比奈紗羅
女子十二番・鳴神もみじ 第五班

テーマは「王と仲間たち」
班ごとのイラストを描こうと思って最初に構図が浮かびました。
椅子、多分高級なんです私の画力が無いだけで←
迸っているらしいカリスマオーラが行方不明…
こうして描くと健太が大きく見えますが、周りが小さいだけ。
(上から時計回り)
女子九番・鷹城雪美
男子九番・松栄錬
男子七番・榊原健吾
女子二十番・湯浅季莉 第六班

テーマは「雪美さまと従者たち」←
バトロワらしく武器を持たせたのは、この4人が仲睦まじい絵を
描けそうになかったからです主に上の人のせいで(笑)
健吾がどう頑張ってもおっさんですありがとうございます←
ちなみに五・六班を描いた時点で私は力尽きました←
(左から)
男子十九番・芳野利央
女子十三番・蓮井未久
女子八番・阪本遼子
男子十一番・田中顕昌 第七班

テーマは「リーダーと仲間たち」
未久の髪色思いっきり間違えましたすみません←
某読者さんにかなり前に言われたのですが、私もそうです…
利央の髪型がよくわかりません。
あと、顕昌を再び描く日が来ようとは…と思ってました。
(左から時計回り)
女子十六番・星崎かれん
男子二十番・林崎洋海
女子四番・如月梨杏
男子十二番・内藤恒祐 第八班

テーマは「なんかかっこよく描きたい」(笑)
この班も仲良しの光景はとても描けないので武器所持。
洋海は最初少しだけこちらを見てたのですが、なんか変だった
のでやめました…が、正面向けさせればよかったなぁ。
唯一顔描いてないですごめんよ洋海。
(左から)
男子十三番・原裕一郎
男子十八番・横山圭
女子十八番・室町古都美
女子十四番・平野南海 第九班

テーマは「体育祭」
学校行事してるところを描きたくて、体育祭が似合いそうなこの
班で描きましたが体育祭感があまりないというオチ。
解説すると、南海は近くにいた古都美を誘ってスマホで自撮。
ユウと圭は二人三脚で足を結んでいるけど行きたい方向が
逆なので口論中。
(左上から時計回り)
女子十五番・広瀬邑子
男子十四番・春川英隆
男子十七番・望月卓也
女子六番・財前永佳 第十班

テーマは「記念撮影」

最初カラオケでもさせようかと思ったけど結局こうなりました。
画質悪いので見えにくいですが、卓也は永佳の腕を掴んでピースさせようとしてます。
なんか家族みたいになっちゃいました。

地図でいうJ=05エリア、相模野原中央公園の中の森林地帯の中でも、銃声は確認できた。 マシンガンの音も、単発の銃声も。
「落ち着いたか?」

堤良樹(男子10番)は、自分の横で木にもたれて座っている幼馴染の土井雫(女子10番)に優しく訊いた。

「う…ん…ありがとう、良樹君…」

勢多翼(男子8番)を殺してしまったショックから狂いかけていた雫が何とかもとの雫に戻った。

『あれは事故だったんだ』

本当は思っていない。 どんなことがあっても人殺しなんてしてはいけないことだし、いつも大人しい雫が人殺しをするなんて考えてもみなかった。
しかし、大人しいからこそ、恐ろしくて殺してしまったのかもしれない。 もしかすると、翼がやる気だったのかもしれない。いずれにしても、ただの推測に過ぎないけれど。
自分が見たのは、矢が刺さって死んでいた翼と、その前で泣いている雫だった。

詳しいことは聞かない。 これ以上記憶を掘り起こすと雫がまた怯えるかもしれないから。

「ねぇ…良樹君…?」

雫が小さい声で言った。

「どうして…あたしなんかと一緒にいてくれるの…?
 あたし、人殺しなのに…」

不安そうに見つめる雫に良樹は優しく微笑んだ。

「幼馴染だから…かな。 お前のことはよく知ってる。
 自分から人殺しをするヤツだとは思わないからな…」

「…そっかぁ…ありがとう…」

雫が微笑み返した。 ゲーム開始後、初めて見た笑顔だった。

それだけの理由ではないと思う。

良樹自身、不安で仕方なかった。 もしかしたら殺してしまうかもしれない、自分に支給された吹き矢をみた時に思った。 これはきっと当たりではないだろう。 それでも恐怖で怯えてこの筒に息を吹き込めば、その先にいる誰かに矢が当たるかもしれない。 その不安を解消するために誰かと一緒にいたかった。 もしかしたら、その誰かを守ることで自我を保とうとしたのかもしれない。

その誰かが偶然雫だったのか、自分の中にあるごく少量の特別な思いが雫と一緒にいることを望んだのか、あるいは幼馴染という縁が引き寄せたのか、それはわからない。

でも、いずれにしても言えることが1つある。

  

オレは雫を守るんだ――


良樹は時計に目をやった。午前5時ジャスト。

F=09とF=10の境目にある、廃れた工場の物だったらしい倉庫に、仲山行人(男子12番)とそのとりまきがいた。 
「どうして…こんな事に…?」

内藤真依子(女子12番)がため息混じりに呟いた。 真依子の横では佐久間佳江(女子6番)が泣きじゃくっている。 鈴木明也(男子7番)は冷や汗でずれたメガネを中指で押し上げ、ため息をついた。

「ねぇ、行人君…どうしよう…ねぇ…何か言ってよぉ…」

野口素明(男子13番)が倉庫に入ってからずっと黙って座っている行人の肩を揺すった。

「やめろ、素明。
 行人だって何か考えているかもしれない。
 お前だって少しは考えたらどうなんだ?」

優等生に似合った、少しきつめの口調で明也が注意した。

「だって…オレ…そんなの何も思いつかないしさぁ…」

消えそうな声で、素明が呟いた。 それを見て、明也がため息をついた。

「思いつかない、じゃないだろ?考える努力をしろよ」

「何よ、明也…あなただって口先だけじゃないの。
 頭いいんだから、何か案でも出しなさいよ。
 こういう時のための優等生じゃないの」

真依子がいささかきつめの口調で言った。

「バーカ。
 こんな時にどうすればいいですか、
 とかいう問題なんて問題集には載ってないんだよ」

「バカですって?
 何よ、役に立たなかったら天才だって無意味だわ!」

「じゃあ真依子、お前だって何か考えろよ」

「あたしだってねぇ、さっきから考えてるの!」

口げんかが始まった。 これはいつものことだった。 2人は気が合わないのか、何かと言いがかりをつけてはもめている。 この口げんかで昼休みをすべてつぶした事だってある。

「もうやめてよ!!」

佳江が持っていた、涙で濡れて丸まっているハンカチを2人の方に投げつけた。

「もうやめて! 今はそれどころじゃないじゃない!
 ケンカなんかやってもどうにもならないじゃない!」

泣き叫ぶ佳江を見て、明也と真依子はケンカをやめた。 たしかにどうにもならない。 むしろ、ケンカがきっかけで殺しあってしまうかもしれない。 そんな状況なのだ。

「ケンカはいけないよ、2人とも」

行人が静かに口を開いた。倉庫に入って行人は初めて口を開いた。とりまき4人は静かになった。

明也がメガネを中指で上げた。

「何か思いついたのか、行人…?
 こんなくだらない戦いに参加しないでもいい方法…」

「ああ」

行人がにっこり笑った。

「何何!? どうすればいいの!?」

素明が嬉しそうに飛び跳ねた。 佳江と真依子は抱き合ってはしゃいだ。

倉庫の中にあった木箱の上に全員の武器を置いた。

佳江のデイパックからは自動拳銃(トカレフTT?33)、素明のデイパックからはシンプルなデザインのマシンガン(トンプソン SMG)が出てきた。 この辺はアタリの部類だろう。 真依子のデイパックからはキリ(ほら、図工とかで木に穴を開けるやつね)が出てきた。 可もなく不可もなく…まあ、どちらかといえば不可か? そして、明也のデイパックから出てきたのはセロハンテープ、行人のデイパックからは瞬間接着剤だった。 なんだ、これは。 オレたちに図工でもしろというのか? くっつけることしか出来ないな。 美術評価1。

「へぇ…これがマシンガンねー…」

行人が珍しそうに(いや、本当に珍しいはずだ。普通の人なら)トンプソンを手に取った。

「それで?どうするの?ねぇ…」

真依子が行人の側に寄った。 行人が爽やかな笑顔を浮かべた。

「まあ、見てなって」

ぱぱぱぱぱ、というタイプライターのような銃声と同時に、真依子の体に沢山の穴が開き、後ろに吹っ飛んだ。 仰向けになった真依子の体から流れ出した大量の血が床を濡らしていった。

倉庫中に銃声の余韻が響き渡り、その後一瞬静かになった。新しい血の匂いが充満し始めていた。

「きゃあああああああ!!」

「うわあああああああ!!」

佳江と素明が同時に叫んだ。 明也は呆然と行人を見ていた。

「うるさいよ、お前ら」

再びぱぱぱぱぱ、という銃声が響き、行人の側から走って逃げていく素明の背骨に沿って、十数個の穴が開いた。 素明はそのままうつ伏せに倒れた。 もちろん、絶命していた。

土井雫(女子10番)はその小さな手にボウガンを持っていた。
 

教室を出て、雫はすぐにデイパックのジッパーを開けた。

怖い…怖いよ…誰かが襲ってきたらどうしよう…?
その時、丸腰だったら危険だから、とにかく何か武器を…

中から何かゴツい感じの弓に銃とかの引き金がついたような物が出てきた。 最初はよくわからなかったが、少し明かりがついている廊下で説明書を読むと、なかなか扱いやすそうなものだった。 扱いたくはなかったけれど。

「早く行け!」

見張りの兵隊が雫にマシンガンの銃口を向けた。

「ひ…っ!」

雫は慌てて荷物をまとめて、立ち上がった。

 

この武器を使う機会がありませんように…

雫は必死に祈った。祈りながらゆっくりと廊下を進んだ。
出口が近づいてきたあたりで、雫は足を止めた。

誰かがいる…誰…?

ボウガンを握った手がガタガタ震えた。

「だ…誰?誰なの…?」

雫は震える声で訊いた。

女の子、女の子ならいい…。女の子なら大丈夫だ、きっとやる気じゃない…

「その声…お前、土井か…?」

雫は目を見開いた。

女の子ではなかった。 男の子だ。
しかも、幼馴染の堤良樹(男子10番)ではない。
良樹より6分前に、震えながら慌てて出て行った、勢多翼(男子8番)だ。

「おい…お前、何持ってるんだよ…?」

翼がゆっくり近づいてきた。雫はゆっくりと下がった。

っつーか口ん中…血の味……そっか、そういや、殴られたんだっけ。
あのクソ野郎……

…で、喧嘩してて……

あれ、勝ったんだっけ、負けたんだっけ……?

やってる途中で、確かだんだん眠くなってきて、それで――

 

 

紫垣靖隆(男子八番)はゆっくりと頭を上げた。
そこで、自分が机に身を預けて眠っていたことに気付き、辺りを見回してそこが教室のような場所だが自分の知る教室ではなく、その見知らぬ部屋でクラスメイトたちが普段の席順で並んでいることに気付いた。
ただ、前には黒板があることから、どこかの教室だということはわかった。

何だ、つーかどこだこれ…

靖隆は八方に立たせた黒髪を手櫛で整えながら、立ち上がった。
この並びは教室通り、右斜め前には靖隆が担ぎ上げている我らがリーダー八尋幸太郎(男子十八番)、前には部活仲間の林一紀(男子十五番)、左にはグループ1手の早い政井威光(男子十六番)、右斜め後ろには幸太郎や靖隆には従順な池埜多丞(男子二番)という、仲間に囲まれた配置。
そして右の最後列には――

「妃…」

靖隆は最後列で眠る三枝妃(女子六番)の横に立った。
この世界中の女性の中で唯一、ファーストネームで呼んでいる、幼馴染。
一見派手で軽そうな容姿をしているが、正義感の塊のような女で、自分が正しいと思えば何でもはっきりと言い切る、靖隆にとっては親よりも頭の上がらない存在。
そして、誰よりも特別な存在。

「妃、起きろよ、きさ――」

妃の肩を揺すると、肩甲骨辺りまである金色の後ろ髪が、するりと背中を滑って耳の横へ落ちた。
姿を見せた白いうなじ――その下の方に、何か、銀色の物があった。

こんなもの…してたか……?

「う……ん……
 ……あれ…靖隆……?」

妃が寝ぼけた声を出しながら、身を起こした。
上から2つボタンを外しているブラウスの襟から、首に巻きついた銀色の物体の前部を確認することができた。
丁度正面の部分には、小さな赤いライトが点いている。
どうやら、ただの飾りではなく、電気の通った機械のようだ。

「妃、その、首の…何だ?」

「首ィ…?」

妃は赤い爪の光る指でそっと触れて、眉間に皺を寄せた。
そして、靖隆を見上げ、指差した。

「って、アンタもしてるよ、なんで…?」

そこまで言われて、靖隆は初めて自分の首に手をやった。
詰襟のホックを止めず、さらに指定のブラウスすら着ないで濃いベージュの胸元の広く開いたシャツを着ている靖隆の首元には、しっかりと何かが巻きついており、冷たい金属の感触があった。

「なんでって……知らねぇ…
 ただ、これ、俺らだけじゃない…のか…?」

靖隆は、自分から見て妃と反対側にいる相模夕姫(女子七番)や、その前にいる藤原奈央(女子十四番)、多丞の前で眠っている二階堂悠(女子十三番)の首にも同じ物が巻き付いているのを見た。

悠の隣に座る血を分けた双子、二階堂哉多(男子十三番)も、悠と同じどろんとした瞳で悠を見つめた。
髪型こそ悠に比べれば今時だが、悠以上に誰とも関わろうとせず、表情が変わるところすら見たことのない不気味な男。

さらに奇妙なのは、互いを“兄様”・“姉様”と呼び合うことだ。
互いに名前で呼び合う又は後に生まれた者が相手をそう呼ぶのならわかるが、互いに互いを上とする呼び方は、不気味さを助長させた。

「ついに、わたくしたちは大東亜共和国のお役に立てるのね、兄様」

「ついに、僕たちは瑞穂の国の礎となるんだよ、姉様」

意味がわからない。
だけど、なぜか、背筋に冷たいものが走るのを靖隆は感じた。

悠と哉多は向かい合い、互いの手を合わせ、指を絡めた。
その横顔は、やはり似ていた。
あの瞳が、鏡に映ったかのように似ていた。

「悠、哉多、アンタら何か知ってんのか?」

2人の世界が作られる中、物怖じせず訊いた夕姫の度胸に感服。
クラスメイトたちの視線が、不気味な双子に注がれた。

「わたくしたちは、大東亜のために戦うのよ」

「僕たちは、この国の未来のために戦うんだ」

戦う…?
何だコイツら、イッちゃってんじゃねぇの…?

「まさか、それって……ッ!!」

声を上げたのは、やはり夕姫だった。
校内1の美人と謳われるその顔が、青ざめていた。

外からの太陽光以外に光源のない薄暗い待合室の壁際に置かれた、所々穴が開いて中のスポンジが覗いているソファーに、紫垣靖隆(男子八番)は腰掛けていた。
夜が明ける前までは北西にある農協の建物にいたのだが、明け方に二階堂哉多(男子十三番)・二階堂悠(女子十三番)の襲撃を受けた際に発砲するなどして大きな音を何度も出したので、その音を頼りにやる気になっている誰かが来るかもしれないというリスクを回避するため、まだ薄暗い内に拠点を移したのだ。
もちろん、移動にも大きなリスクはあったのだが、このままクラスメイトの亡骸の傍に居続けるというのも気分の良い話ではなかったので、移動することはあっさり決まった。

「紫垣、大丈夫か」

名前を呼ばれ、靖隆は頭を壁に預けたまま首の角度を少し変えて自分の名前を呼んだ人物へ顔を向けた。
2組の男子の中では2番目に小さい靖隆(と言っても、1番小さい米村直(男子二十番)との差は僅か1cmなので、同じ背丈の道下未来(男子十七番)と合わせて“2組男子チビッ子トリオ”だ、ちくしょう不名誉なトリオに俺を加えやがって)にとっては羨ましすぎる長身の持ち主、城龍慶(男子九番)は、靖隆の隣に腰掛けた(もちろん座高は靖隆の方が低かった、龍慶の方が低かったら気持ち悪いから当然か)。

哉多1人を相手にして3人が負傷したが、それでもリーダーである前川染香(女子十六番)が無傷だったので、及第点といったところだろうか。

「…で?
 道下は目ぇ覚ましたか?」

靖隆の疑問に、龍慶は首を横に振った。

今回の襲撃で最も大きな傷を受けたのは未来だった。
様子を見に行くために1人で外に出て、哉多と悠を同時に相手した。
靖隆たちが複数で相手をしても勝てなかった哉多を単独で相手し、最終的には悠共々倒してしまったその実力は驚嘆に値した。
龍慶たちのグループとは何度も衝突した中で、未来は誰よりも後ろにいたのでその実力を目の当たりにすることなどなかったのだが、まともにやり合えば靖隆のグループで敵う相手などいないだろう。
しかし、哉多と悠が強敵であったことに変わりはなく、未来は左肩から右脇腹にかけて切り裂かれており、大量に失血し意識を失っていた。
農協から移動する際には龍慶が抱えた。
幸太郎に支給された救急箱に何故か入っていた裁縫道具で、染香が未来の傷口を縫合するという荒技をやってのけたのだが(あれは見ているだけで気を失いそうだった、人の肉に裁縫の針と糸が通っていくなんてもう思い出したくもない)、その間も目を覚ますことはなく今に至る。

道下といえば…
あの、傷跡――

治療のために未来の服を脱がせた時の光景が蘇り、靖隆は口許を押さえた。

ことだった。
未来の腹部から胸部にある刺された痕と見られるそれは、十数か所に上っていた。
未来とは当然同じ男同士なのだが、改めて今までのことを思い返してみると、未来が服を脱いだ状態を見たことはなかった。
身体測定の日は思えば欠席だったし、体育の授業の前後の着替え時間に未来が制服の下に着ていたTシャツを脱ぐことはなかったし、プールの授業は全て見学していた(一度理由を聞いたが、『塩素が体に合わなくて』と言われたので納得していた)。
こんな傷跡を誰かに見られたら大騒ぎされるのは目に見えているので、未来は自分の姿を見られないようにしてきたのだろう。
いや、問題はそこではない。

「刺されたって…一体、誰にだよ……
 城、テメェなら知ってんじゃねぇのか?」

幸太郎と染香の視線が、未来と最も付き合いの長い龍慶へ向けられた。
しかし、龍慶は首を横に振った。

「し…らない……
 痣なら施設の訓練で付いていてもわかるが…刺し傷はいくらなんでも…」

龍慶のここまでしどろもどろとした口調は聞いたことがなかった。
相当狼狽しているのだろう。
同じ施設で暮らしている人にも知られていないということは、未来は徹底して隠していたということになるので仕方がない。

本人に意識がない以上、このことについて話していても何にもならないので全員が口を噤み、染香の治療は始められた。



あの傷跡は何なのか。
気になって仕方がない。

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