まどか「さやかちゃんってバカだから何でも信じそう」(151)

ほむら「そうね」

マミ「確かに」

杏子「だな」

まどか「というわけでさやかちゃんに『>>10』を信じさせよう!
    安価SSじゃないんで>>10が決まったら後は勝手に書いてくからその辺は期待しないでね!」

マミ「アッチェレランド!」

サンタクロース

まどか「というわけで、さやかちゃんにサンタクロースを信じさせようと思います!」

マミ「わー」パチパチ

ほむら「普通にいけそうね」

杏子「そうかぁ?」

まどか「昔の人はいいました」

まどか「敵を知り己を知れば百戦危うからずと」

まどか「まずは敵、さやかちゃんがサンタクロースについてどんな認識を持っているか調べようと思います」

杏子「誰が行くんだ?」

マミ「鹿目さんが適任だと思うわ。一番そういう話しても不自然じゃないもの」

まどか「ですね。じゃ、行って参ります!」

まどか「さやかちゃ~ん」

さやか「お、まどかー。どうしたの?」

まどか「ティヒヒ、そこ通ったの見かけたから」

さやか「そっかそっか」

まどか「ね、さやかちゃん」

さやか「ん?」

まどか「サンタさんっていつまで信じてた?」

さやか「……うーん」

さやか「小4くらいかな? 確か同級生の男子が『サンタってかーちゃんなんだぜー!』って言ってるのを聞いて……」

まどか「なるほど。そのときどんな気持ちだったのかな?」

さやか「結構ショックだったよ。ほら、あたしって夢見る乙女だったから?」

まどか「あ、冗談は言わなくていいよ。えっと、今クリスマスプレゼントはどうしてる?」

さやか「親から普通に手渡し。ま、それでもありがたいけどねー」

まどか「ふーん。あ、いけない! お使い頼まれてたんだった。さやかちゃん、またねー!」タタタッ

さやか「……」

さやか「何だったんだ?」

――マミの家――

まどか「報告いたします!」

ほむら「早かったわね」

まどか「さやかちゃんがサンタを信じてたのは小4まで。知った時は割とショック。
    現在は親御さんから手渡しでプレゼントを貰ってるとのことです」

マミ「普通ね」

杏子「普通だな」

まどか「じゃ、どうやって信じさせようか」

ほむら「魔法少女に正義の味方なんて幻想を求めてたくらいだから、資質はあると思うわけよ」

杏子「魔女になっても人魚姫だしな」

マミ「ということは美樹さんはヒーロー/ヒロインに憧れがちで、自分もそうなりたいと思う傾向にあるようね」

まどか「あぁー、確かに。その辺りを上手く使えばいけそうですね」

ほむら「やっぱり設定としてはベタだけど、サンタを信じなくなったから来なくなったっていうのがいいと思うわ」

杏子「でも親はどーすんだよ。親自身がサンタの正体は自分だって明かしてんだよ?」

マミ「そこさえクリア出来ればいい設定なんだけどね……」

まどか「……こういうのはどうかな」

まどか「さやかちゃんがサンタを信じなくなった時点で、『サンタの正体は親だった』と『過去が書きかえられた』」

マミ「ちょ、ちょっと壮大すぎない?」

杏子「さすが宇宙再編した奴は言うことが違うね」

まどか「……」シュン

ほむら「……こういうのはどうかしら」

ほむら「さっきも触れたけど、美樹さやかは正義の味方に対する憧れを抱いていた。
    わたしも『あんたたちとは違う魔法少女になる』とか言われたわ。美樹さやかには、
    周りがそうでも自分だけは違うっていう反骨心がある。自分に酔ってるだけとも言うけど」

杏子「随分手厳しいな、おい」

ほむら「つまり美樹さやかにサンタを信じていない周りの人間が『俗物』で、サンタを信じる自分は『ヒロイン』……
    そう思わせればいい」

杏子「つってもよ、やっぱサンタは親なわけで……」

ほむら「悪役がいなければ正義の味方はいらないわよね」

マミ「? どういう意味?」

ほむら「魔法少女にとっての魔女……サンタクロースとは相反する存在をでっちあげればいいのよ」

まどか「なるほど……信じる力がサンタを支えているんだから、
    サンタを信じなくさせる何かがいるってことにすればいいんだね」

マミ「『悪夢』よ」

まどか「はい?」

マミ「サンタクロースを信じなくさせる存在の名称」

まどか「そ、そうですね……。じゃあ『悪夢』……ブフッ……がサンタを信じる心を奪ってるってことで」

杏子「シナリオはこんなとこでいいだろ。あとはどうやって信じさせるかだ」

ほむら「己を知るの部分ね。わたしたちがそれぞれ美樹さやかにとってどういうポジションにいるのか」

まどか「ほむらちゃんは『やな奴!』」

マミ「鹿目さんは『気の置けない友だち』」

杏子「マミは『頼れる先輩』」

ほむら「杏子は『喧嘩仲間』といったところでしょうね」

マミ「うーん、いまいち説得力がない気が……」

QB「やあ。四人が揃いも揃って何の話しだい?」

まどか「QB!」

杏子「……『魔法の使者』」

ほむら「確かに、コイツに喋らせれば反則級に説得力が増しそうね」

QB「何のことだい?」

マミ「かくかくしかじか」

まどか「じゃあそれぞれ自分の役目を確認したところで、明日から作戦実行だよ!」

――翌日、通学路――

まどか「ふぁ~、おはよーさやかちゃん」

さやか「お、まどか! 昨日はお使いちゃんとできた?」

まどか「馬鹿にしないでよ……。小麦粉買い忘れただけだったよ」

さやか「ぷっ」

まどか「……さやかちゃん」

さやか「んー?」

まどか「サンタって……本当にパパやママなのかな……」

さやか「またまた、何言い出すの」

まどか「うん……昨日さやかちゃんと話した後、家に帰ってママとサンタの話をしたんだよ」

さやか「ああ~。実はあの時家計が苦しかったーとか、色々裏話出てくるよね」

まどか「それでなんだけど、わたしの記憶とママの言ってることが違ったんだよ」

さやか「と、言いますと?」

まどか「わたしの小5の時のプレゼントは『くまさんぬいぐるみ』だったの。だけどママは『小顔ローラー』を買ったって」

さやか「記憶違いじゃないのー?」

まどか「あの『くまさんぬいぐるみ』は今でも大好きで、貰った時のこと忘れるはずないよ!」

さやか「じゃあママさんの方が勘違いしてるんだよ」

まどか「そうかな……。うん、そうだよね!」

さやか「ま、中学入るまでサンタさん信じてたまどかなら、また信じたくなっちゃうのも無理ないかー」

まどか「そ、そんなことないよ! わたしはただ……」

さやか「ごめんごめん。からかっただけだって」

まどか「もー!」

さやか「はは……」

さやか「(……)」

さやか「(しっかし小学生の娘のプレゼントに『小顔ローラー』? まどかのお母さん、酔ってたのかな?)」

――学校、休み時間――

まどか「仁美ちゃんがまたラブレター貰ったらしいよ」

さやか「なぬっ! おのれ仁美め……この美少女さやかちゃんを差し置いてどこまで先へ……」

ほむら「先も何も、あなたにはもともとこの先なんてないじゃない」

さやか「転校生! それは聞き捨てならんぞ!」

ほむら「哀れね……きっと今年のクリスマスも一人でCDを聴きながら過ごすのよ」

さやか「ちょっと屋上行こうか」

まどか「まーまー」

さやか「だいたい転校生! あんたは人のこと言えるの?」

ほむら「……わたし?」

さやか「いつもまどかまどか言ってばかりで、浮いた話なんて一つも出てこないじゃん」

ほむら「それは……」

さやか「あんたこそ寂しいクリスマスを過ごすんじゃないのー?」

ほむら「……クリスマスはどっちにしろ」

さやか「え?」

ほむら「わたしのところにはサンタさんが来るから、恋人となんて過ごさないわ」

さやか「は~あ?」

ほむら「ああ、ごめんなさい。来ない方の人に言っても仕方ないわよね」

さやか「どういう意味さ」

ほむら「どうせあなたもサンタを信じないでサンタが来なくなったクチでしょう?
    わたしのところにはまだ来るのよ」

さやか「……」プルプル

さやか「(ま、まどか……聞いた? 転校生、あのキャラでまだサンタ信じてるのかよ!)」クスクス

まどか「(えー、夢があっていいと思うなー)」

さやか「(いやー、結局のところサイコなデンパさんだったわけですねー)」

ほむら「コンクリートロードは止めたほうがいいわよ?」

さやか「やなやつ!」

――放課後、通学路――

さやか「あ、マミさーん!」

マミ「あら、美樹さん」

さやか「一緒に帰りましょうよ」

マミ「いいわよ」

さやか「マミさん、聞いて下さいよ。転校生ってまだサンタ信じてるんだって!」

マミ「……暁美さんが?」

さやか「はい。まどかならともかく、転校生のキャラで……笑っちゃいますよね」

マミ「……そう、暁美さんが」

さやか「……マミさん?」

マミ「……」

さやか「(……? はっ! そ、そうだ……マミさんは交通事故で両親を亡くしてるんだった……。
     それなのにあたしサンタの話なんて……無神経だったかな)」

さやか「マ、マミさん! 欲しいものとかない?」

マミ「どうして?」

さやか「あたしがマミさんにクリスマスプレゼントあげようと思って! ……まだ早いけど」

マミ「まぁ、ありがとう」

さやか「へへっ」

マミ「……でもいいの」

さやか「え?」

マミ「欲しいものなんてそんなにないし……あったとしてもサンタさんがくれるから」

さやか「……何ですって?」

マミ「美樹さん、わたしの家にはまだサンタさんが来る……なんて言ったら笑うかしら」

さやか「マミさんの家に……サンタ……!?」

マミ「そう。信じてとは言わないけどね」

さやか「(マミさんは独り暮らしだから、誰かがサンタのフリをしているなんてことはあり得ない。
     じゃあどうして……。からかってるだけかな?)」

マミ「――それより、この前うちの近くに新しいケーキ屋が」

さやか「マミさん!」

マミ「!」

さやか「あたし……信じるよ」

マミ「……ありがとう」

さやか「(マミさんすっごく笑ってる……。あたしに信じてもらえたことがそんなに嬉しかったのかな?)」

さやか「だから……サンタの話、聞かせてほしいな」

マミ「本当に、そのまんまな話よ。毎年12月25日の朝、わたしの欲しかったものが枕元に置いてあるの。
   去年はティーセットだったわ」

さやか「……でも、うちには来なくなった。というか、親が渡すようになった」

マミ「それは……多分、美樹さんがサンタさんの存在を信じなくなったからじゃないかな」

さやか「あたしが……信じなくなった……?」

マミ「サンタさんは信じない人のところには来ない……そんな気がするの」

さやか「(信じる……確か、転校生もそんなことを言っていたような……)」

――数分後――

マミ「じゃ、わたしはここで」

さやか「うん。さよなら、マミさん」

さやか「……」テクテク

さやか「……サンタさん、かぁ」

さやか「(マミさんがあんまり悲しそうな目をしてるから思わず信じるなんて言っちゃったけど……)」

さやか「(……)」

さやか「(本当にいるのかな?)」

杏子「お、さやかじゃん」

さやか「……杏子」

――教会跡――

杏子「食うかい?」ポイッ

さやか「……いただくよ」

杏子「どうしたー? 何か思いつめてるみてーな顔してたじゃんか」

さやか「いや、下らないことなんだけどさ」

杏子「何だよ」

さやか「サンタクロースって、信じてる?」

杏子「ああー、ウチには来たことないからな」

さやか「え?」

杏子「ウチって教会だろ? 何かサンタは主の教えに対する冒涜とか考えてる宗派でさ、
   もともとサンタクロースっていう行事をやってねーのさ」

さやか「おお……逆にそうなのか……」

杏子「……ただ、別にサンタがいないとまでは思ってないけどな」

さやか「どういうこと?」

杏子「信じるものは救われるってね。神様もサンタも、信じないよりかは信じた方が面白いよ」

さやか「そういうもんかねー」

杏子「ま、あたしみたいな宿なしのところにはサンタもプレゼントの寄越しようがないだろうけどな」

さやか「……」

さやか「あんたもプレゼント欲しいとか思ったりするの?」

杏子「そりゃ何かくれるつったら貰うだろ」

さやか「そうだけど……」

杏子「……周りの子が貰ったクリスマスプレゼントの話で盛り上がってる輪に入れなかった。
   ちょっとは羨ましかったよ。もっとも今となっては、プレゼントくれる親もいないってか」

さやか「杏子……」

杏子「だからあんたはサンタのいるいないに関わらず、クリスマスは楽しみゃいいんだよ。
   そこんとこ、何一つ不自由なく暮らしていけてるんだったらさ」

さやか「そう……だね……」

――さやかの部屋――

さやか「(……マミさんも)」

さやか「(杏子も)」

さやか「(ちゃんとクリスマスを迎えられてない)」

さやか「(それなのにサンタを信じて……)」

さやか「(あたしは……家族に囲まれて、毎年クリスマスを祝ってるっていうのに)」

さやか「(周りに合わせて、サンタを信じなくなった)」

さやか「(あたし……嫌な子だ)」

さやか「(……)」

――マミの部屋――

まどか「お疲れさまでした~」

マミ「お疲れ」

ほむら「今日一番最後に接触したのは?」

杏子「あたしだよ」

QB「僕はさやかの前に姿を現さなかったけど、これでいいんだね?」

まどか「初めからQB出ちゃうとつまらないからね。さ、報告&反省だ!」

まどか「多分最初はわたしかな」

まどか「わたしが『サンタっているのかな?』って思っていることにして会話したよ」

ほむら「確かにまどかなら、そういう疑念を抱いても不自然じゃないわね」

まどか「またまた。まあ流されちゃったけど、ママが小顔ローラーをプレゼントにしたっていうことについては、
    さやかちゃんもちょっとは引っかかったんじゃないかな?」

マミ「鹿目さんの役目は伏線張りみたいなものだから、それで十分だったわね」

ほむら「次はわたしね」

ほむら「思い切ってわたしがサンタを信じてるってことにしてみたわ」

杏子「そんなキャラじゃねーだろ(笑)」

ほむら「まあ二番目だし、笑い話程度に受け取ってもらえればいいと思ったわ。
    のちのちサンタを信じかけてきた美樹さやかが『そういえば転校生があの時……』とか思ってくれればいいのだけど」

マミ「で、次がわたしね。自分のところにはサンタが来るんだけど、誰にも理解してもらえないってことで
   頑張って悲しそうな表情を作ってたんだけど」

杏子「あたしのときにはあいつ半ば信じてたじゃねーか」

マミ「美樹さんが信じるって言った時には吹きそうになったわ。半信半疑とはいえ、騙されやすすぎよね」

杏子「で、最後があたし。『まともにクリスマスお前は恵まれてるよな~』オーラを出しまくってやった」

ほむら「性格悪いわね」

杏子「あたし自身、一応サンタを信じてるってことにしたし、大分効いてたみたいだよ」

マミ「美樹さん、思いつめてないかしら……」

まどか「サンタでですかwww」

QB「で、僕の出番は明日なんだよね?」

まどか「うん、QBは最後のまとめをお願い。今日のところは順調ですね。
    明日あとひと押し! 頑張って行きましょう!」

――翌日、通学路――

さやか「ふぁ~」

まどか「さやかちゃん、眠そうだね」

さやか「昨日は一晩中窓の外見てて……」

まどか「え、どうしたの?」

さやか「な、何となくだよ。あはは……」

さやか「(サンタが空飛んでないかなと探してたとは言えない……)」

まどか「(さやかちゃんバカすぎだろ)」

――学校――

さやか「……ん?」

さやか「ちょっと転校生、あんた鞄替えた?」

ほむら「ああ、これのこと?」ヒョイ

さやか「それ、めっちゃ人気のやつじゃん! どこで買ったの?」

ほむら「……サンタさんに貰ったのよ」クス

さやか「まーたそんなこと言って~!」

ほむら「あなたもサンタさんを信じればいいわ。そうしたらプレゼントが貰える」

さやか「別に親から貰えるからいいですよーだ!」

ほむら「何言ってるの? 親から貰うプレゼントは家計を圧迫するけど、サンタさんからのプレゼントは無料なのよ?」

さやか「分からんこと言うなー」

さやか「(……やっぱり本気で言ってるのか?)」

ほむら「ま、信じないのなら強制はしないけど。せいぜい損してなさい」

まどか「ほむらちゃんったら、すっかりさやかちゃんをからかうのが楽しくなっっちゃったみたいだね」

さやか「(本当にからかってるだけなのか……?)」

――昼休み、屋上――

さやか「――ってことなんですけど」

マミ「……」

さやか「確かに転校生、いちいちいいもの持ってるからなー」

マミ「……ねえ、美樹さん」

さやか「はい?」

マミ「ひょっとしたら、暁美さんのところにもサンタさんが来ているのかも……」

さやか「えっ」

マミ「QB、ちょっと話を聞きたいわ」

QB「呼んだかい?」

マミ「人々の『信じる心』に支えられて存在する『サンタクロース』なるものがいる……これは正しい?」

QB「『信じる心』は希望のエネルギーだ。どんな奇跡を起こしても不思議じゃない」

マミ「そういう点では魔法少女とサンタクロースって似ているわね」

QB「そういう見方も出来るね。でも希望を求めた分、同量の絶望が撒き散らされるのは当然の摂理だ」

マミ「絶望……。! QB、こうは考えられないかしら」

QB「何だい?」

マミ「人々の希望を振りまくのがサンタクロースなら、絶望を撒き散らす存在を『悪夢』とでも名付けましょう」

さやか「(即興で名前付けちゃうんだ……)」

マミ「『悪夢』は人々からサンタクロースを信じる心を奪っている……」

QB「希望と絶望は互いに打ち消し合う性質を持っている。そのような仮説は妥当だと言えるだろう」

マミ「つまり『悪夢』によって、成長した子どもはサンタを信じなくなり、その両親は自分たちがサンタの正体だと思い込む」

QB「興味深い考察だね。論理的に破綻はしていないよ」

さやか「……」

マミ「ねえ、美樹さん」

さやか「は、はい!」

マミ「サンタさんを信じる子っていうのにも色々いると思うの」

さやか「色々?」

マミ「わたしは……まあ普通にサンタさんを信じているわ。だけど中にはその力を利用する者もいる」

さやか「利用って……まさか……」

マミ「サンタさんを信じることによって自分に利益<<プレゼント>>が与えられることを知って……サンタさんを敢えて信じている」

さやか「そんな! サンタさんは子どもたちの夢なのに!」

マミ「悲しいけど、そういう子もいるでしょうね」

さやか「じゃあ転校生は……」

マミ「ええ。彼女も恐らくその一人」

さやか「……マミさん」

マミ「何?」

さやか「あたし、謝らなくちゃいけない。昨日は信じるなんて言ったけど、正直半信半疑だった……」

マミ「美樹さん……」

さやか「でもあたし、信じるよ! あたしが信じることで『悪夢』を減らせるなら!」

マミ「大変だよ? クラスのサンタさんを信じてない子と話が合わなくなっちゃうよ?」

さやか「それでもサンタを信じるマミさんに、あたし、憧れてるんです」

マミ「ブフォッ」

さやか「? 大丈夫ですか?」

マミ「ごめんなさい、少し咳込んでしまったみたい。でもありがとう。他にもサンタさんを信じてくれる子がいて心強いわ」

さやか「ええ、一緒にサンタを守っていきましょう!」

――放課後、通学路――

ほむら「……サンタを信じるって決めたのね」

さやか「……」

ほむら「歓迎するわ。このネックレスは挨拶よ。これもサンタから貰ったの。受け取って」

さやか「……いらない」

ほむら「っ!?」

さやか「あんたたちとは違うサンタ信者になる……あたしはそう決めたんだ。
    あたしだけは、自分の為にサンタを信じたりはしない」

ほむら「あなた……死ぬわよ」

さやか「? 何で?」

ほむら「いえ、雰囲気的に口走ってしまっただけよ。ま、勝手になさい」クルッ

さやか「……」

――放課後、さやかの家の近く――

さやか「……杏子」

杏子「よ、今日も会うなんて偶然だな」

さやか「あたし、サンタを信じることにしたよ」

杏子「……」

さやか「恵まれた家庭で育ちながらサンタを信じてこなかったあたしが今更……都合がいいかな?」

杏子「なーに難しく考えてんだよ」

さやか「え?」

杏子「信じるって決めたんだろ? 逃げないって決めたんだろ? なら後は突っ走るしかないじゃん」

さやか「……ありがと、杏子」ヘヘッ

――さやかの部屋――

さやか「(あたし、忘れてた。サンタを信じてた頃の純粋な心を……)」

さやか「(これから取り返せるかな?)」

さやか「(とにかくサンタはあたしたちが守っていくしかないんだ)」

さやか「(……プレゼント、くれるのかな)」

さやか「(いやいや! あたしはプレゼントの為に信じるんじゃなくて……!)」

――マミの部屋――

杏子「wwwwwwwwww」バタバタ

ほむら「杏子、笑いすぎよ」

杏子「だってwwwwww何でシリアスムードになってんだよwwwwww
   あたしほとんどやることなかったし、マミ頑張りすぎだろwwwwwww」

マミ「ああいう設定考えるのって結構楽しいわね。もちろん魔法少女のシステムを参考にさせてもらったけど」

杏子「ある程度素でやってるとこあるよなwwwwwww」

マミ「?」

まどか「ほむらちゃんはすっかり悪役だね」

ほむら「美樹さやかに対しての悪役ならいくらでもなってやるわよ」

QB「で、もうこれは作戦成功なんじゃないかい?」

まどか「うん、半分はこの計画は成功」

QB「半分?」

まどか「ネタばらしまでがドッキリです」キリッ

マミ「もうここまでくるとあのまま信じさせて上げた方が優しい気もするわね」

杏子「あいつどんな顔すんだろwwwwww」

突然ですが、今は11月です。

まどか「ま、今度のクリスマスでいいんじゃないかな」

ほむら「今から楽しみね」

――12月24日夜、さやかの部屋――

さやか「……」ギンギン

さやか「(……眠れない)」

さやか「(寝てないとサンタ来ないんじゃないかな……)」

さやか「(羊が一匹……羊が二匹……)」

さやか「(五十六匹……六十……ん?)」

さやか「(どこまで数えたっけ)」

さやか「(あー、やばいぞコレは)」

シャンシャン……

さやか「!」

さやか「(き、来た!)」ギュッ

さやか「(何であたし寝たふりしてんだ……?)」

ゴソゴソ

「起きているんだろう?」

さやか「!」

「はは、別に怒ったりはしないよ。わたしのことを信じてくれて嬉しく思う」

さやか「(――サンタ!)」

「キミが喜びそうなプレゼントを持ってきた。目を開けて見てみるといい」

さやか「サンタさん!」ガバッ

バーン

さやか「……」

さやか「……CDラジカセ?」

ラジカセ「喜んでもらえたかな? CV:中沢でした~」

さやか「は?」

パチッ

さやか「(電気がついた……?)」

杏子「メリークリスマス」

さやか「……おい」

杏子「よっと、プレゼントだったな」

さやか「何やってんのアンタ」

杏子「心配すんな。この袋の中にちゃんとあるからさ」

さやか「いや、人の部屋勝手に入って、サンタのコスプレして……色々とツッコミが」

杏子「ほいよ」

さやか「……看板?」

ド ッ キ リ 大 成 功

さやか「」

杏子「……というわけで」

まどマミほむ「ごめんなさーい!!」

QB「僕の首に鈴をつけられるとは思わなかったよ」

さやか「」

杏子「つーわけで、一ヶ月ほど前のサンタの話は全部ドッキリで……」

さやか「いや、説明しなくていいよ。余計惨めになるから」

杏子「あ、そう?」

さやか「誰かの幸せを祈った分、他の誰かを呪わずにはいられない……わたしたち魔法少女ってそういう仕組みだったんだね」

杏子「お、おい……。何もそんなに絶望すること……」

さやか「あたしって、ほんとバカ」




さやか「っていうのは冗談だけど」

杏子「ヒ、ヒヤヒヤさせんなよ~」

さやか「あああああああああ~~」ガンガン

まどか「さ、さやかちゃん! ベッドの柱に頭打ち付けるのやめなよ!」

さやか「あたしって、ほんとバカ! ほんとバカ! ほんとバカ!」ガンガンガンガンガン

ほむら「そうよ。ただでさえバカなのにもっとバカになったらどうするの」

さやか「なにをー!!」

マミ「まあまあ」

さやか「マミさんまで……」

マミ「美樹さん、ドッキリはごめんなさいだけど……プレゼントはあの看板じゃないの」

さやか「え?」

まどか「じゃ、出かけましょうか」

――教会――

さやか「……ってここ、アンタの教会じゃない。ここでイエス様の誕生を祝えっての?」

杏子「まあそれもそうなんだけどさ」

QB「いーち!」

さやか「!?」

ほむら「に!」

マミ「さん!」

まどか「はい!」

♪~

さやか「! これは……」

さやか「(恭介の……アヴェ・マリア)」

♪~

さやか「(そういえば、恭介が退院してから一度も聴いてなかったっけ)」

さやか「(何だか話しかけるのが億劫で……)」

♪~

恭介「メリークリスマス、さやか」

さやか「恭介……」

恭介「鹿目さんたちがね、さやかが僕のヴァイオリンを聴きたがってるって言ってね。
   クリスマスプレゼントに弾いてくれと言うものだから、喜んで引き受けたよ」

まどか「ティヒヒ、ちゃんとプレゼントになったかな」

ほむら「男で喜ぶんだから単純よね」

さやか「あんたら……」

さやか「……」

さやか「ありがと」

マミ「良かった。上条君もありがとう」

恭介「いえ、さやかには昔からヴァイオリンを聴かせてきましたから」

杏子「こいつのヴァイオリンがあればさやかに何しても許されるな!」

さやか「調子に乗るな!」ポコッ

杏子「あいた」

さやか「……まあ正直ドッキリかけられたのはショックだったし」

さやか「恥ずかしさで魔女化しかけたけど……」

さやか「音楽の力は偉大だね! 今はとてもいい気分」

ほむら「上条君の力は、じゃなくて?」

さやか「うっさい」

さやか「……まあ、これでいいよ」

まどか「じゃ、さやかちゃん。メリークリスマース!」

さやか「……」ニコ

さやか「メリークリスマス」

おわり

> さやか「あんたら……」
>
> さやか「……」
>
> さやか「ありがと」

木の実ナナっぽいな

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