『ねえ、凛ちゃん。プロデューサーさんとは仲良くやってる?』
そう声をかけられて、ふと我にかえった。
何気なく目線を向けていたバック。中で着信音をオフにした携帯が震えているのだろう、光沢ナイロン地のソレが振動でキラキラと光っている。
「仲良く……? うん、仲は良いと思うよ」
仕事が終わって事務所に戻っても最近はすぐに家へ帰らず、少しだけプロデューサーと話をしてから帰宅している。
事務所と家とは駅二つ分しか離れていないから送迎は要らないと断りを入れるのだが、その都度プロデューサーの説得で折れ、車で家まで送ってもらうのが当たり前になっているけど。やっぱりわるいな……とは思う。
『そうなんだ……それは羨ましいことで』
『でも、オフの日までは一緒じゃないんだね?』
「プロデューサーは他にもアイドルを抱えているから……忙しいしね」
言いながら、トートバッグから携帯を取り出す。見ると画面には新着メールの表示が一件。
「…………そうだね。やっぱり、仲……良いのかも」
思わず口元が綻ぶ。私は、液晶に映し出された文を指でなぞる――
――…【今日はオフだけど暇なら付き合えるか? 期間限定の美味しい食事処の話を今さっき耳にしてさ】
さあ、どうするか。
悩むのは誘いへの断りではなく、
目の前でニヤついている同僚に、どう説明をすれば冷やかされずに済むかの……上手い口上についてだった。
『メールですか?』
P「はい。いま音無さんに教えてもらった店に、凛を連れていってやろうと」
小鳥「なるほど~凛ちゃん最近お仕事頑張ってくれていますし、そのご褒美ですね?」
P「まあそんなところです」
小鳥「そこのお店、テイクアウト可能ですから最悪家に持ち帰って食べらせてあげたらいいですよ」ニコ
P「そうですか、凛もたまの休日なのでおそらく友達と遊んでいるでしょうし……」
収録の都合上、着信音をオフにしていた携帯が、机の上で小刻みに震え メールの返信を告げた。
P「……」
小鳥「凛ちゃんですか?」
P「はい……」
小鳥「そういえば現場の都合上、またプロデューサーさんの家に凛ちゃんが長期的にお泊まりする事になりそうなんですけどぉ」
P「凛の親御さんには前回、了承を得てますから……でもやはり、高校生に遠出の仕事は良くないですよね」
P「次からは断る事も考えないと……」
小鳥「まあまあ、凛ちゃんも嫌がっているワケではないように見えますし。親睦を深める良い機会と思って」フフ
P「親睦……まあ、愛想が良くないのはこの業界的に如何し難いところですが…」チラ
【了解。抜け出せたら私からまた連絡するから】
P「抜け出せたらって……アイツ、拘束でもされているのか?」タラ
ガチャッ
伊織『あ~もう、早い時間の収録だと午後から予定が空くのよね』
P「伊織。戻ったか、ご苦労様」
伊織「プロデューサー」
伊織「まあ、私にかかれば軽い仕事だったけどね」
伊織「よかったら、これから一緒に食事に行ってあげても良いわよ」ニシシ
P「そうか、丁度いま凛を誘って食事に行こうとしていたところだ。一緒に来るか?」
伊織「凛……ですって?」ピク
伊織「なに? またあの子だけ贔屓ってわけ?? あ~やだやだ」
P「そんな事ないだろう。今日オフなのはアイツだけだし、伊織とはこの前も食べに行ったじゃないか」
伊織「……家」ボソ
P「?」
伊織「プロデューサーの家に泊まったの、あの子だけじゃない」ボソ
P「あ~その件か」
P「そういえばまた今度ウチに泊まるらしくてな」
伊織「はぁっ!?」
P「女の子、仮にもアイドルがそう大きい声を出すもんじゃないぞ」
伊織「"また"って、また何日も泊まるワケ!?」
P「仕事の方が長引けばそうなるかもしれないが……必要な時に送り迎えが出来るし、色々と都合が良いんだよ」
伊織「小鳥っ」
小鳥「はいっ?」ビク
伊織「私のスケジュールには入れられなかったワケ? その仕事」
小鳥「先方から要求された身体的特徴的に、凛ちゃんが最適だと……律子さんも言っていましたし」ハハ…
伊織「律子……後で文句言ってやるんだから」
伊織「それで? その身体的特徴っていうのは??」
小鳥「髪が長くて……」
伊織「あら、それなら私でも…」
小鳥「出来れば足の長い子がご希望らしく……」
伊織「あ……足、ですって…」
伊織「……」ハァ
伊織「いいわ、もう。決まったことなんだろうし」ハァ
P「……それで、行くのか?」
伊織「聞きたい事があるんだけど?」
P「……なんだ、言ってみろ」ハァ
伊織「手は出してないでしょうね?」
P「……俺は、叱る時にでも手は出さないと決めているし。出すわけないだろう」
伊織「そういうことじゃなく…」
伊織「アンタとあの子が、い、イチャイチャしてないかって事!」
P「な、なにを言ってるんだ。あるワケないだろうそんな事」
P「第一、あの凛だぞ? 友好関係と恋愛関係はバッサリ区別を付けていると思うからな」
伊織「わからないじゃない、そんなの」
伊織「案外、プロデューサーから来たメールでも見てニヤニヤしていたりするかもね」ジト
P「な、なんだその目は……断じて有り得ないから、可能性はゼロだっ」
伊織「…………そう、わかったわ」
伊織「あと、私は行かないから。二人で楽しくデートなりしてくることね」ヒラヒラ
P「……そうか」
P「残念だ。伊織が美味しそうに食べる姿、可愛いから久しぶりに見たかったんだけどな」
伊織「っ」
伊織「もうっ、そういうところがアンタのわるいところなのよ!」カアァ
――…
P「わるい、少し話し込んで遅れた」
凛「いいよ。プロデューサーも仕事、お疲れさま」
P「それじゃあ、行くか。助手席に乗ってくれ」
凛「うん。……あっ」
P「? どうかしたか」
凛「そういえば、プロデューサーの家に忘れ物してさ。良かったら取りに行きたいんだけど……ダメかな」
P「ああそうだ。その必要は無い」
凛「?」
P「また泊まりになるかもしれないんだ。大丈夫か?」
凛「また、プロデューサーの家に?」
P「ご家族にも相談するけど、無理に受ける必要は無いからな」
凛「いや……大丈夫」
凛「仕事だから。私、それくらいの事で断ったりなんか、しない」
凛「それに、プロデューサー。ウチの親に気に入られてるから、お父さん達も文句は言わないと思うな」
P「そうか……それなら安心だ」ホッ
ブロロロロロ…
P「そうだ凛」
P「765プロの先輩アイドル達の事なんだが」
凛「? みんな良い人だし、特になにもないけど」
P「そうじゃなく、な……その、余計な詮索をしてくる子がいないとも限らない」
凛「というと?」
P「ほら、泊まったりなんだりしていると茶化したりしてくるかもしれないだろう」
凛「ああ……そういう事」
凛「大丈夫だよ」
P「そうか……」
凛「みんな根掘り葉堀り聞いてくるから」
P「っ」ブッ
P「どこが大丈夫なんだ? どこが」ゴホゴホ
凛「えっ……会話をして、コミュニケーションは出来てる。ってことだけど…」
P「……まあ、お前が何も気にしていないというなら良いか」
P「そろそろ着くからな」
凛「……ちょっとは、照れる時もあるけど」
P「?」
凛「なんでもないっ。さあ、ウインカー上ゲ忘れてるよプロデューサー?」ニコ
――…
凛「……美味しい」
P「たしかに美味いな。音無さんに感謝しないと」
凛「プロデューサーと小鳥さんって、お似合いだよね」
P「……またお前はなにを…」
凛「嘘じゃないよ。いつもそう思うんだ」パク
P「いつもそんなこと思って見ていたのか……」
凛「なんとなく、目で追うと仲良さそうに話しているし」
P「そりゃまあ……音無さんは皆に愛想が良いだろうし」
凛「……愛想ね」
凛「愛想の無さなら自信があるんだけど」パクリ
P「凛は凛らしくしていればいいんだよ」
P「"愛想が尽きる"という言葉がある通り、愛想ってものは元々備わっているものじゃなく作るもんだ」
P「音無さんは確かに明るくて周りを元気にする…でも」
P「凛と一緒にいれば自然体で落ち着けるし。俺はそっちも好きだぞ」
凛「……」
凛「ちょっと、甘いね」
P「甘いのは苦手か?」
凛「……いや」パク
凛「すこしなら……わるくない、かも」カァ
――…ブロロロロロ…
P「お土産も買ったし、俺は事務所に戻るけど?」
凛「私は、帰るかな。明日からに備えてゆっくりしようと思う」
P「そうか、あと備えるといえば、荷造りの方も近い内に頼むぞ」
P「じゃあ家まで送る」
凛「うん。ありがとう」ニコ
――…
ガチャッ
P「音無さん、評判通りとても美味…」
亜美『おぉっと話題の二人がお帰りになられましたよ真美記者!』
真美『デスク! 明日の見出しは"プロデューサーとアイドルの熱々デート"で決まりですよ!』パシャパシャ
P「……なにをしているんだ。亜美、真美」
亜美「あれー?凛々は??」
真美「いないね……はっ、まさか破局…デスク! 明日の見出しは"禁断の愛が早くも破局… P「やめないか」チョップ
真美「ぐはーっ」
亜美「大丈夫か真美隊員! くっ、敵は強大だ……」ギリッ
P「設定をコロコロ変えるなよ…ほら、お土産」ガサ
亜美「わ~っありがと兄ちゃん!」ニコ
真美「向こうで食べようよ、亜美!」ニコッ
P「はあ……少しは大人になっていると思うんだけどな…」ハァ
P「凛も美味しいと言っていました」
小鳥「わぁ、お土産ですか? ありがとうございます」ニコ
小鳥「凛ちゃんにそう言ってもらえたなら教えた甲斐がありますね」
P「それでですが……どうして亜美達が凛との食事の事を…」
小鳥「それは……伊織ちゃんが、帰る前に二人に…」
P「伊織か……」ハァ
『ハニーっ♪』
ダキッ
P「っと…」
P「……美希。重いぞ」
美希「ひどいのハニー。女の子に重いは禁句なの」
美希「それとね、ハニー」
P「?」
美希『凛とのデート。楽しかった? なの』ニコ
P「あ、ああ……いや、デートではないけどな」タラ
美希「…………そう、わかったの」
P「美希には一番、色々と食べ物を買ってあげてるだろう。一回くらいで文句を言うな」
美希「最近、ハニーは凛ばかり構ってるの」
美希「ミキは少し寂しいな」
P「そうは言うが凛はまだ事務所に入ったばかりだし……」
美希「寂しいのは皆だって一緒だと思うの」
P「皆? みんなって、春香達のことか??」
美希「そうなの」ニコ
P「貴音もか?」
美希「そうなの」ニコ
P「まさかとは思うが…………千早もか?」
美希「勿論なのっ」
美希「ミキはー、貴音も千早さんも……みんな構ってくれなくて不満だと思うの」
P「千早が…」
P「……無いな、たぶん」
美希「だから、ハニーを凛に取られないようにミキは頑張るってワケなの♪」ムギュッ
P「あーわかったから離れろ美希、今日は気温も高いんだ」ハァ
――…【スーパー】
凛「まずは……ペットコーナーかな」
スタスタ…
凛「あっ」
『……あら』
凛「如月さん。奇遇ですね」ペコ
千早「千早でいいと言っているでしょう」クス
千早「仕事には慣れた? 渋谷さん」ニコ
凛「千早さんこそ、凛で良いですよ」
千早「そう……じゃあ、凛…今日は久しぶりのオフだからリフレッシュ出来たかしら?」
凛「そうですね。プロデューサーと食事に行って…それ以外は家でゆっくりしていましたし」
千早「プロデューサー?」
凛「えぇ」
凛「美味しいスイーツのあるお店があるとのことだったので」ニコ
千早「そう……」
千早「凛とプロデューサーは、とても仲が良いわよね」ニコ
凛「……そうかなぁ」ウーン
千早「そう。私は、笑い話というものを提供出来るほど面白い人間ではないから」
千早「プロデューサーも、話をしていてつまらないんじゃないかしら」
凛「そんなことないですよっ」
千早「……後ろ向きな発想ばかりして、ごめんね」
凛「千早さんは、千早さんで良いんです」
凛「仕事にも本気で、歌にも本気で。レッスンや私生活でもストイックで…」
凛「……こう言ってはなんですが、私の知り合いにも『働きたくない』だの『替え玉作戦』だの言うアイドルがいます」
凛「私は少し、その子の不真面目な部分は好きじゃありません」
千早「……」
凛「けど、千早さんは違います」
凛「私が今のプロダクションで一番尊敬しているのは千早さん。貴女です」
千早「……そう」
千早「ありがとう。後輩に励まされているようではまだまだね」ハァ
千早「それと」
千早「『働きたくない』子にも、アイドルとして輝く資質があると思うわ。あまり悪口は言わない方がいいわね」ニコ
凛「アイツは…」
凛「良いんです。ラジオの収録もサボろうとするヤツですから」ハァ
夕飯の材料を買いにスーパーに来たら、事務所のアイドル二人が口論をしていた。
「いや、落ち着け……少し強めの意見交換かもしれない」
片方は、先ほどまで行動を共にしていた渋谷凛。真面目で、年上や業界の先輩への礼儀も正しいアイドル。
方や、我が事務所の誇る歌姫――…如月千早。とても真面目で、年上や業界の先輩への礼儀も素晴らしく正しいアイドル。
この二人は例えるなら水と水。油と油。温度や沸点が多少違えど、本質は似ているクールビューティ。と俺は認識していた。
P「しかし……」
話の内容は聞こえないが、気落ちした千早に凛が叱責しているようにも見える。もしかしたら全くの見当違いかもしれないが――…
……よし、とにかく。俺はプロデューサーとしてあの場を丸く、なめらかに。円滑に治める必要がある。
P「……よし、行くか」
P「少しおっかないが…そこは大人としてなんとかしないと」
俺は、戦場へと一歩を踏み出した。
凛「生意気いってすみませんでした。けどこれからも千早さんは……」
『二人とも!』
凛「!」ビクッ
クルッ
振り返ると、そこにはプロデューサーがいた。
……右手に大根を持って。
P「二人とも……まずは落ち着け。ここは人の目もある公衆の場だ」
ハッとした。そう言われてから辺りを見渡すと、たくさんのギャラリーとまではいかないけど……何人かの野次馬が私と千早さんのやり取りを好奇の目で見ていた。
失敗だ。熱くなると周りが見えなくなるのは高校生になった今でも変わっていないみたい。なにより千早さんに迷惑をかけてしまった。こらソコで写メを撮っている中学生、今すぐやめろ。
P「二人とも……まずはこの場を離れよう」
P「話は俺の車の中でするんだ」
凛「いや、話はもう…」
P「凛。こういうのは冷静な第三者を交えて気持ちをぶつけるのが一番だ」
千早「あの、プロデューサー。まずは会計を済ませた方が……」
千早さんが、プロデューサーが左手に持つ茄子を指差して言う。私たちの方が幾分か冷静なのかもしれない。
プロデューサーは、走ってレジに向かっていった。
……小脇に抱えていた納豆を落としながら。
――…
P「千早。詳しい話を聞かせてもらえないだろうか」
千早「……プロデューサー。大したことではないので…」
P「……話しづらい気持ちもわかる」
P「けど俺はお前達をプロデュースする立場にある。二人三脚、三人四脚で一緒にやっていきたいと思っているんだ」
千早「あの……それについては私も同じ気持ちです」
P「なら教えてくれてもいいんじゃないか?」ズイッ
千早「ぷ、プロデューサー……か、顔が近いです…」フイ
P「千早。目を逸らさないで正直に話してほしい」
千早「ええと……」チラ
P「……」
千早「……その…」モジ
凛「(千早さんがモジモジしてる…可愛い)」
凛「(……じゃなく、なにか恥ずかしいのかな)」
凛「(やっぱり、『プロデューサーは自分と話すのがつまらないと思う』から始まったとは言えない感じなのかな)」
P「俺は、隠し事をせず、悩みがあるなら相談に来る。千早のそういうところがとても好感が持てるし、好きだ」ズイッ
千早「いや……あの…」
千早「………………その」カアァ
凛「私が、相談をしたんだ」
P「?」
凛「仕事については、プロデューサーに相談するけど…」
凛「他の……例えば、恋愛…とかさ。そういうのは同性の先輩の方が相談しやすいから」
P「恋愛相談……?」
P「そ、そうだったのか」
P「俺は、勘違いをしていたみたいだな……すまない」ペコ
千早「頭を上げてください、プロデューサー」アセ
P「……で、俺で良ければ恋愛相談もなにかしらの知恵を授ける事が出来るかもしれない」
凛「え?」
P「言えないなら良いが……」
凛「ええっと…」ポリ
凛「私が、気になる人がいるって話」
P「ほーそれは初耳だな。応援するぞ」
凛「でもさ、いまは気になるってだけだし…」
凛「……仮に、本当に好きでも。その人は子供なんか相手にしてくれないと思うから」
P「そうか……力になれそうになくてスマン」ハァ
千早「……」フム
――…
あの後、私と千早さんはそれぞれの買い物をしてからプロデューサーに家まで送ってもらった。幸い、二人とも徒歩だったし。
「なんであんな事言ったんだろ……」
自慢じゃないけど恋愛には疎い方だ。恋愛感情の機微というやつは、相手も……私自身の気持ちもわかりにくい。いっそ顔や胸にメーターが付いていたら分かりやすいのに。
……プロデューサーへ向ける想いは、そういうものでは無いと思う。
誉められたり、頭を撫でられたりすると顔が赤くなったり、心臓が跳ねたりしたり。
待ち受けはあの人とのツーショットだけど特に意味はない。会う用事が無いときに、代わりに液晶であの人の顔を見たりするだけ。
「よくわかんないな……」
ベッドへ横になり、天井を見る。
少し、ウトウトしてきた。こういう時はそのまま仮眠をとって、その後にお風呂へ向かう方がスッキリする。
寝る前は、大概プロデューサーの事を考えるけど。それは少しだけ、
だって、そうすると不思議と安心して……すぐに寝てしまう…か…………ら…。
ムニャ。
ほんのすこしだけお昼ごはん食べマス
――…
『プロデューサーは、その、り、凛とは恋人同士なのか!?』
P「……もうすぐ本番だから、口を慎め。響」
響「だ、だって自分……見たんだ携帯で…」
P「……携帯?」
響「ほらコレだぞ。掲示板に【765プロのプロデューサー、歌姫 千早と新人アイドルとで恋の板挟みか!】って見出しが……」
P「これは……昨日の…」
P「マズイな、誤解とはいえネットに画像が流れたら回収は不可能だ」
P「これから真偽追求の電話が鳴りまくるんだろうな……」ハァ
P「しかし、今は響。お前の仕事が最優先だ」
P「完璧にこなしてこい」ポン
響「…………ん」
響「うん! 自分完璧だからなっ! 仕事も完璧にこなしてみせるゾ!!」
P「そうだ、その調子だ」
P「…………しかし、マズいな」
――…
P『―……はい、スミマセン。はい……はい…』
ピッ
P「ふぅ……」
P「幸いゴシップ記者は数人ほどしか来ていないみたいだな」
P「それよりもファンからの電凸が鳴り止まないみたいだ」
P「……凛と千早はどうしているだろうか」
P「こっちの収録が終わり次第向かってみるか」チラ
響『じぶん、完璧だからペンギンとも仲良くなれるさー!!』ニコッ
P「……」
P「響の笑顔を見ると癒されるな……さすがアイドルだ」
P「あっちの二人は満面の笑顔が得意じゃ無さそうだけどな……」ハハ
――…
「事実無根です」
今日のフラッシュは不快だ。
グラビアのソレも好きなものではないが、白い光が花火のように焚かれる度に……まるで黒い意志で空間が埋めつくされるような、眩しさが灰色で、気持ち悪い。
『ではネットに上がっている写真は?』
本当なら、ここは無視をして然るべしなのだろう。相手は大人で、その道のプロだ。一度その口車に乗ったら、行き着く先は各駅停車の無い特急。如月千早のスキャンダル一直線だ。
だから。ここは無視。シカト。逃げではないと自分に言い聞かす。
『如月千早は沈黙を守ったまま。事務所は否定。これではつまらないんですよ』
「っ」ピク
あ……ダメだ。これはもう抑えられないやつだ。つまらない? はあ??
考えるより早く、先の発言をした記者の方を向く。
私は子供だ。つい最近まで中学生で、言うなれば小学10年生だ。まだまだ義務教育の域を出ていないガキ。あーダメだ血が頭に上がってきた。
口を開いて、言葉を発するために大きく息を吸った。
『すみません通してください!!』
凛「……?」
変装はしているけど、この声の主たる男性は――…
『通して!!』
凛「プロデュー…むぐっ」
P「今はなにも話すな……」
凛「……」コク
――…【事務所】
P「っはぁ~」プハ
凛「……」
P「なに、数日 我慢すればほとぼりも冷めるさ」
凛「……ごめん、なさい」
P「なにを責める事がある」
凛「あの時、プロデューサーが来てくれなかったら私。事務所に迷惑をかけるような事を言っていたと思う」
P「間に合ったんだし……なに、それにその時はその時でなんとかするさ」
凛「……ありがとう」
凛「……それと」
P「?」
凛「長髪のカツラ。似合ってない」
P「わるかったな」
――…数週間後 【P宅】
凛「……お邪魔します」ヒョコ
P「おー入れ入れ」
凛「洗濯物。溜まってるね」
P「最近忙しくてな……」
凛「洗い物に…冷蔵庫も空、か」
凛「洗濯と食器洗いが済んだら買い物に行くから」
P「しばらく凛には頭が上がらなくなりそうだ」
凛「しばらくといわず一生頭が上がらなくなる提案もあるんだけど」
P「そうだな、もう凛を嫁さんにもらうのが一番な気がしてきたよ」
凛「…………」
P「黙るなよ」
P「ああ、そこら辺に転がってる洋服で欲しいものあったら言ってくれ。凛の友達とかにあげればいい」
凛「……そう、わかった。じゃあ」
P「ああなんでもいいぞ」
凛「………………Yシャツ」
凛「掃除、終わったよ」
P「すまないな、本当。こっちも持ち帰りの仕事、一段落したから」
P「少し休んだら買い物に……ああ」
P「また前みたいになったら困るな、俺が行ってくるよ」
凛「……りょうかい」
――…
凛「……」ゴク
凛「お茶飲んで、くつろいで……」
凛「専業主婦って大変だって聞いたけど、洗濯や食事作りの家事を終えたら暇だな……」
凛「観たいTV番組はやってないし…」
凛「お菓子を咀嚼して韓国ドラマを見るくらいしか楽しみが無くなるのかな……」
凛「……独り言も多くなるみたいだ。余計に寂しくなるね」
ピンポーン
凛「郵便? ……出た方が良いのかな。前は、気にせず出たけど…」
凛「覗き穴から……」チラ
『プロデューサーさん! ホームヘルパーですよ! ホームヘルパーっ』
凛「っ、この声は……」
ガチャッ
凛「春香……さん?」
春香「おはようございます! って、あれ? 凛ちゃん??」
春香「あーそうか、そういえば今日からプロデューサーさんと同棲だったもんね」
――……天海春香さん。765プロの先輩で、老若男女に幅広くファンを持つ正統派アイドル。趣味はお菓子作りに、長電話。あと、ちょっぴりドジというのがこれまた可愛い。
そういえば春香さんの実家は、電車で2時間かかる距離にあると聞いた。ここは事務所から大分離れているし、もしかしたら意外と近い距離にご自宅があるのかもしれない。
凛「今日は……さっき、ホームヘルパーって」
春香「えっとね、プロデューサーさん忙しいから また散らかってるんだろうな~と思って家事手伝いに来たの」ハハ
凛「そう……ですか」
春香「プロデューサーは?」
凛「いま買い物に……」
春香「上がってもいいのかな?」
凛「それは勿論、どうぞ」
春香「おじゃましま~っす!」ニコッ
春香「わ~っ、綺麗だね! 凛ちゃんが掃除してくれたの?」
凛「はい……」
春香「洗濯物とかたくさんあったでしょ? あっ、洗剤もうそろそろ切らす頃だと思ったから持ってきたから」ニコ
凛「あ、ありがとうございます」
春香「そうか~じゃあもう私が来る必要も無いみたいだね」
凛「でも、春香さんが来ればプロデューサーもきっと喜びます」
春香「そう? そうかなぁ えへへ」
凛「そうですよ、春香さん可愛いですし。プロデューサーも… 春香「プロデューサーの好みは、髪が長くて、スラッとした子なんだって」
凛「え? ……」
春香「千早ちゃんみたいな子とか、凛ちゃんみたいな子とか?」ニコ
凛「……春香さん?」
話をする前に、言い訳というか、前口上を述べておく。
人は、誰しもなにかしらの狂気を含んでいる。
悪い意味ではなく。
例えば、私が尊敬していると言った千早さん。
千早さんはレッスンをひたむきにこなす。皆が帰っても、トレーナーが帰っても、……事務所の明かりが消えても。
その話を聞いた時に、私は恐怖を感じた。熱中していたから。夢中になると時間の経過に気づかない。よくある。
明かりが消えても歌う?
その話を千早さんが失敗談のように照れながら教えてくれた時は、失礼ながら笑えなかった。少しだけ、後ずさりをした。
例えば三浦あずささん。
彼女はよく道に迷う。
道を覚えられないのはまあ、仕方ないのかもしれない。
深夜の3時になっても暗闇の中を歩き続けるらしい
まあ、ヒトの事をとやかく言うのは良くない。
でも……目の前の、天海春香さん。
私は、この人が一番怖い。理由は明白。
考えが読めないからだ
「凛ちゃん」
「……はい」
「プロデューサーはあとどれくらい帰ってこないのかな?」
凛「1時間もかからないかと……」
春香「そうかぁ、じゃあもう少しだけ二人きりで話せるね」ニコ
凛「そうですね」ニコ
他人からすれば、私もどこかしら常軌を逸した行動をしているのかもしれない。でもそれは、私にとっての普通。
それと同じで、春香さんに対するこの気持ちも私だけのマイノリティで勝手な思い込みなのだろう。
なぜこの話をしたかというと。もう一度、自分自身に言い聞かせるためだ。誰かと同棲するということは、その人の色々な部分が見えてくること。
春香「凛ちゃん?」
凛「っ、あ……すみません」
春香「大丈夫? 気分が優れない??」
凛「大丈夫です、ありがとうございます」
やっぱり春香さんはアイドルだ。心配する顔も、真摯で、可愛いではないか。
春香「そうだ、私材料持ってきたからプロデューサーにお料理作ってあげたいんだ」ニコ
凛「そうですか、では……プロデューサーに電話で、その事を…」
春香「ダメでしょ凛ちゃん」
春香「サプライズだよ、サプライズっ」ニコ
春香「豪華な料理を作って驚かせちゃおうよ!」
凛「……なるほど、わかりました」
春香「えっとぉ、海老に、鯛に……」ガサゴソ
凛「……」
――…
春香「出来たーっ!」
凛「すごい……美味しそう」
春香「やったね凛ちゃんプロデューサーさんも驚くよ絶対!」ニコッ
凛「はいっ」ニコ
P「ただいま~」
凛「あっ、おかえりなさいプロデューサー!」
P「おっ、ん? どうしてご飯が?? それもやたら豪華な」
凛「ああ、春香さんが来て二人で作ったんです」エヘン
P「そうか春香か」
P「靴は凛のしか無かったけど帰ったのか?」
凛「……?」
このSSはほのぼのニヤニヤSSですので安心してお読みください
P「おっ、美味いな」モグ
凛「うん」パク
P「春香のやつ、ウチの場所誰かから聞いたのかな」パクリ
凛「ええと、前にもお掃除に」
P「ん? 誰が??」
凛「………………なんでもない」
P「美味しいな、春香はともかく凛も中々料理上手じゃないか」ニコ
凛「……ありがとう」
P「どうした? 元気無いぞ」
凛「少しだけ疲れたのかも……ね」
たまに不在の時に来て掃除するくらいあってもおかしくないよね。一人暮らしの男の人のアパートに、お母さんが来て勝手に掃除して料理と置き手紙を残して帰るなんてのはよく聞く話だし。
大丈夫。ちょっとの"変"くらい認められない方が狭量なのだ。目をつむるくらいが人間関係を円満にする。だから、帰ったと思った人が廊下に立ってようが私は気にしない。黒いや白いではない。人間は元々が白黒ない交ぜになった灰色なのだから。
凛「美味しいね。プロデューサー」ニコ
私がことごとくを見逃すのも、他人からすると異常なのかもしれない。それだけのこと。
――…【事務所】
凛「あっ」
凛「ネクタイ、曲がってるよ」シュル
P「ああ、すまない」
小鳥「ほほぅ~」ニマニマ
P「……どうしたんですか? 音無さん」
小鳥「いえ、新婚さんみたいだなぁと思って微笑ましくて」
P「また、茶化さないでくださいよ」ハハ
凛「……」カァ
P「固まってないで。終わったらネクタイから手を話してほしいんだが」
凛「……そうだ、今日の夕飯なんだけど…」
P「ああ……」
美希「あれ? 朝からハニーに会えるなんてミキ、今日 超ツイてるのっ」
ダキッ
P「またか美希……おはよう」
美希「おはようなの、ハニー♪」ニコッ
凛「おはよう、美希」
美希「……おはようなの。凛」ニコ
美希「凛が羨ましいの」
凛「……」
美希「凛の仕事、ミキが代わりにやってもいいんだよ?」ニコ
美希「ほら、ミキも髪は長いし……凛は身長高いけどぉ、ミキも足は長い方だよ?」
凛「お断りします」
美希「冷たいの、凛」
凛「ミキには任せられないってこと」
凛「知り合いのニートアイドルの次に、ミキの不真面目さが嫌なの」
凛「最近はマシになってきてるらしいけど、才能にあぐらをかいてるようじゃ成長しないよ」
美希「……ふぅん」
美希「じゃあ仕事は良いの」ニコ
美希「でもぉ、ハニーはミキのハニーだから。凛にはあげないよ?」
凛「…………プロデューサーは私のってわけじゃない」
凛「ミキのものでもないけどね」
美希「……むぅ」
美希「つまらないの。千早さんならもっと面白い反応してくれるのに」
凛「先輩であそぶな」ハァ
凛「まったく、美希ってば」ハァ
P「アレは美希なりの挨拶なんだろう」
凛「どんな挨拶? アイドルってみんなどこが普通じゃないよね」ハァ
P「そうだな……一際、突出したなにかを持った人間というのはそういうところがあるのかもしれないな」
凛「そうかな……」
春香『おはようございます! 凛ちゃん! プロデューサーさんっ!』フリフリ
P「おはよう春香」
凛「おはようございます春香さん」ペコ
P「この前は料理、ありがとうな。美味しかったよ」
春香「そうですか? へへっ、やーりぃ! すごく嬉しいです」ニコ
凛「真さんの真似ですね」クス
春香「うんっ、凛ちゃんもあの日ありがとうね」ニコ
春香「帰るの遅くなってごめんね?」
凛「いえ、私は気にしてませんから」ニコ
凛「あと朝に帰るのはお泊まりっていうんですよ。春香さん」クス
――…
『はいOKー!』
凛「お疲れさまでした~」ニコ
律子『ご苦労様、凛』
凛「律子さん、今日の撮影は上手くいった自信があります」
律子「そうね。様になってきたじゃない。アイドルって感じよ」
凛「律子さんがそう言ってくれると自信がつきます」
律子「そう? なら何度でも誉めてあげるけど…」
律子「……後は、恋愛の方ね」
凛「はい……?」
律子「聞こえなかった? 凛、最近恋の悩みがあるでしょう」
凛「ないですよ、全然」
律子「そう? ため息ばかりつくからてっきりそうなのかと……」
凛「無意識の内についてるのかもしれませんね」
凛「なんか、せつない気持ちにはなるんですけど」フゥ
律子「それよソレ」ハァ
モバマスやったこと無いけど面白いな
新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内
新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内
律子「凛ってモテるでしょう」
凛「全然。自慢する事じゃないですけど」
律子「そう、意外ね。彼氏の一人や二人いてもおかしくなさそうだけど」
凛「二人いたらマズいって」
律子「私は、凛には歳上の男性が合うと思うわよ。プロデューサーくらいの、少しだけお兄さんな年齢あたり」
凛「……そう、かな…」
凛「…………そうかな?」チラ
律子「ああ可愛いわねこんちくしょう」
律子「ちなみに凛、二人きりの時くらい私に敬語は使わなくていいわ」
律子「765の中には私への敬語を強いてる子もいるけど……貴女は、そっちの方が素直な感情をぶつけてこれるみたいだから」ニッ
凛「……わかった」
凛「ありがとう、律子。頼りになるお姉さんだよ……本当に」ニコ
律子「お姉さんかぁ……ウチのアイドルは歳上でも世話がやけるから、嫌でも老けた事 言うようになるのよ」ハァ
彼氏は出来た事が無い。
むしろどうやって作るのだろう。どちらかが告白するという行動があって、始めて恋人同士になるタイミングが生まれるのだろうか。
中には、気づいたら「俺らって付き合ってるんじゃね?」的な曖昧かつナアナアな流れでいつの間にか既成事実があって、いつの間にか交際する流れに発展する熱の入りきらない生焼けな状態で形成されるカップルもいたり。
それは、ちがうと思う。
恋愛は、キチンと火を通してキチンと皿に盛り付けるもの。そんなワンセンテンスが浮かぶ。脳内ではソレを咀嚼するたびにほどよい甘さに頬を緩ませる私が映し出される。食べすぎは、身体に良くないよ。
食べたら無くなるものなのだろうか、時間が経てば熱々カップルから新婚ホヤホヤに……熱々の鍋料理がやがてホヤホヤに、そうして冷めていくのが恋愛というもの……なのだろうか。
閑話休題。話が逸れたね。
特異な例を除いて、どちらかがアクションを起こすとそれが晴れて彼氏彼女の関係になれるチャンスが発生する。ようは、告白。
相手がしてくれないのなら、こちらからするしかない。想うだけではただの人と人というわけか。
「凛、聞いてる?」
「ごめん、聞いてなかった」
「もうこの子は……」
そうだ、まずは仕事。後のことはそれからにしなくちゃ。
年期の入った社用車が、渋めのアクセル音を段階的に上げていきながら青へと変わった交差点を進んでいく。
コンプガチャ終了らしいので美希回収してました。再開します
ガチャッ
律子「戻りました」
P「おかえり。ご苦労様」
凛「お疲れさまです」
P「おう、お疲れ」
凛「ええと、プロデューサー… 『まだ話は終わってないわよっ』
P「いま戻るよ」
伊織「ったく……」
伊織「あ。…………お疲れ」
凛「お疲れさまです」
P「伊織との話が終わったら帰るから。どうする? 待っているか」
凛「どうしようかな……」
律子「じゃあ、私が送っていくわよ。時間、勿体無いでしょう」
凛「……ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えて」
P「そうか、すまないな律子」
律子「プロデューサーも大変ですね……」ニィ
P「なんだよその顔は……」ハァ
キィ…バタン。
P「……」
伊織「なによ。お気にの子が来たからってお出迎え? 殊勝な事ね」
P「またお前は……」
P「……で、その話だが」
伊織「事務所がホテルなり取ってあげればいい話じゃない」
伊織「プロデューサーの家に泊めるなんて普通じゃないわ」
P「そうは言うがな…」
P「ウチも財布に余裕があるわけじゃないんだ」
伊織「凛が襲われたらどう責任をとるのよっ」
P「誰が襲うか!」
P「それに、責任は取るよ。俺も男だからな」
伊織「やっぱり……襲う気満々じゃない…」ヒク
P「甲斐性の話だ。ヒくな」タラ
prrrr
伊織「また、メール来てるわよ」
P「凛からだろう。後でまとめて見るよ」
伊織「10件以上来てるじゃない……急ぎの用とかだったりして?」
P「いや、いつもこんなんだぞ」フワァ
伊織「じゅ、10って……なに、強要でもしてるの?」
P「いや、そんなことない」
伊織「親が厳しいから定期連絡の癖がついてるとか」
P「アイツの実家は花屋でさ、そこまでガチガチに厳しい親御さんじゃない」
伊織「…………よかったら、メールの内容を教えてほしいんだけど」
P「まあ、特に意味の無いものばかりだぞ……」
ピッ
【そういえば、今日の夕飯~~ ~~だから楽しみにしていてね】
ピッ
【明日の収録だけど~~ ~~だと思うんだ。だから本気でやりたいと思う】
ピッ
【伊織との話。終わった?】
【返信が無いって事はまだ話してるんだ】
【……長いね】
P「特に異常ないな」
伊織「…………早く帰ってあげなさい」ヒク
prrrr…
伊織「……せめて返信しなさいよ」
P「したよ。【いま伊織と大事な話をしているから】って」
伊織「やめてよ、私の名前出すの」
P「どうしてだ?」
伊織「こわいじゃない」
伊織「歳上だし…………独占欲強そうだし」
伊織「いま気付いたんだけど」
P「そうか?」
P「畳んだ洗濯物を崩した時とかさ、怒られたから『出ていく!』って言ったら」
P「『はいはい、夕御飯までには帰ってくるんだよ』って」
伊織「なにイチャついてんのよ」
P「だから独占欲なんて無いって話… prrrr…
ピッ
【そう……なんか寂しいかも】
P「お腹減ってるのか」
伊織「知らないわよバカップル」ハァ
帰省してる妹を駅まで送るので7時から少し開くかもしれません
最近、凛へのファンレターが増えてきた。
この業界に入って驚いたのは、女性ファンも少なくないということだ。凛のようなクールで、カッコイイアイドルにはその傾向が顕著で。男性アイドルへのファンレターだと勘違いしてしまいそうになるような、熱い文面もあったりする。
一応、事務所として先に目を通すが……やはり人の手紙を見るのは忍びなく、あまり好きな作業ではない。
兎も角、凛の知名度も上がってきているということ。人気が上がってファンも増えればトップアイドルに近づく。シンデレラガールの階段を好調にかけ上がってるというわけだ。
――…よって、余計な躓きでその階段を踏み外してはいけないのだ。例えばそれが……男関係であったり、
ましてやそれがプロデューサーという立場であったりして良いはずがない。
そう、言い聞かす。
ベッドで寝ている俺の目の前に、パジャマ姿の渋谷凛がねているからって……なにも事は起こらないのだ。
ファンの女子が見たら羨ましいと思いだろうか……
「ん……プロデューサー…」
犬かなにかと間違えているのか。抱きつかれては身動きがとれない。
保守ありがとうです投下していきます
凛「……プロデューサー…」
P「……」
凛「…………ムニャ」
P「……」ハァ
さてどうしたものか。それなりに大きな胸に、くびれ、腰……悩ましい曲線が身体に密着している。
アイドルになるにはやはり、容姿は重要なのだろう。人々を魅了するだけの資質を、渋谷凛も持ち合わせているということだ。寝る時もブラはするのか
余計な思考を挟んでしまったが、パステルカラーの下着がチラチラと見えたところで俺にはなんの効果も無い。
凛「トレーナー……」
P「なんだ、俺の夢でも見てるのか?」
凛「………………伊織がプロデューサーを独り占めするんだ…ひどいな」zzz
P「……そんなことないだろう」
凛「…………そうかな…ムニャ」
P「そうだ」
トレーナーってだれだ百合ちゃう
トレーナー ×
プロデューサー ○
――…チュンチュン
凛「……?」ムク
凛「ふわぁ……よく寝…」チラ
P「……」スゥ
凛「……た…?」
凛「っ」ビクッ
凛「な、なんでプロデューサーが私のベッドに……」カアァ
凛「いや、待て。落ち着いて考えるの…」キョロ
凛「……ここは、プロデューサーの部屋…みたい」
凛「でも、どうして私が……」
凛「っ」
凛「い、いつの間にかパジャマが脱げ…ど、どこっ?」
凛「……ベッドの下にあった」
さ、さて。考えられる二択を提示しよう。
①私が寝ぼけてプロデューサーの部屋に来て、上着は寝相の悪さで脱げてしまった
②ぷ、プロデューサーが寝ている私を連れてきて。上着をぬ、脱がし…て……
凛「……」
凛「…………きゅう」カァ
ど、どういうことなんだろう……。
P「……ん」ムクリ
凛「っ」ビク
P「ああ……おはよう凛」
凛「お、おはようございま…す……プロデューサー」
P「今日の入りは多少遅めだけど、事務所寄っていくから支度は早めにな」
凛「は……はい」コク
――…
凛「ぷ、プロデューサー」
P「ん?」パク
凛「あの……さ。寝ている時に…その……」
凛「なにかした? とか」
凛「いやなんでもないならごめん変なこと聞いt P「ああ…………(凛が)抱きついたとか、かな」
凛「だっ……」カァ
凛「…………抱きついたんですか?」
P「結構強めにな……」フワァ
凛「…………」カアァ
凛「その……さ」
凛「怒るとこなのかな、そこって」
P「人によるだろうけど、俺は気にしないぞ」
凛「そ、そう気にしないんだ……ん? プロデューサーが??」
P「ああ」
P「こんな美少女と密着出来て怒る男の方が稀だよ」
凛「……? はあ」
P「ごちそうさま」
凛「……ごちそうさまでした」
P「でもなぁ今度からこういうことはは少なくしてほしい」
P「もし俺の理性が耐えられなくなったらどうするつもりだ?」
凛「ぇ……」
凛「耐えられなくなったら……って」
P「こう……」
P「ガバァっと」ガバッ
凛「……」
凛「…………」プシュー
P「おい顔から湯気出てるぞ」
――…【事務所】
凛「……」
凛「ガバッとされちゃったらどうしよう……」
凛「……」カァ
凛「ああもう私らしくない」
『凛さん。"ガバッ"がどうしたんですか?』
凛「?」
凛「ああ、やよいちゃん。おはよう」ニコ
やよい「おはようございます~っ!」ニパァ
凛「可愛いねやよいちゃんは」ナデ
やよい「えへへ、私。元気だけが取り柄ですからぁ!」ニコッ
やよい「それで、さっきの"ガバッ"ですけどぉ」
凛「あ、ああ……それ」
凛「……やよいちゃんなら。しっかりしているし秘密も守れるよね」
やよい「?」
――…
やよい「えぇ~っ! プロデューサーさんにガバッってされちゃうかもしれないんですかぁ!?」
凛「声が大きいよっ」アセ
やよい「その……"ガバッ"というのは…」
やよい「つまり……」チラ
凛「…………」コク
やよい「ゎわわわゎ」カァ
凛「落ち着いてやよいちゃん。なにも決まったわけじゃ……」
やよい「で、でも……」
やよい「わたし、凛さんはお姉さんだと思うんです……」
凛「まだ子供だよ……」
やよい「ですからぁやっぱりぃ…」
やよい「……大人ってすごいんですね!」カアァ
凛「ちがうって! スゴくないっ」カァ
やよい「でも……どうしよう」
やよい「誰か頼りになる人に相談とか……」
凛「それなら……律子さ… やよい「伊織ちゃんなら安心して話せます~っ」ニパァ
凛「……へ?」
――…
伊織『よく私にそんな話が出来たわね』ジト
凛「ええと……はは」ハァ
やよい「うっうー! 秘密を話すなら伊織ちゃんが一番かなーって!」ニコ
伊織「ふ……ふん、やよいに免じてこれ以上は文句言わないけど」
伊織「ぷ、プロデューサーがそんな大胆な事を言うなんてね……」
凛「ねえ……どうすればいいのかな」
伊織「しらないわよ、年下になに聞いてんのよばかっ!」カァ
凛「そう、だよね」ハハ
凛「ごめん。子供に聞いてもわからないよね」
伊織「……ちょっと、待ちなさいよ」
凛「?」キョトン
――…
『あらあら~それは大変ねぇ』ニコニコ
凛「……どうしてこんな大事に…」ハァ
凛「ええと……あずささん?」
あずさ「そういうことは、運命の人とだけよ凛ちゃん」ニコニコ
凛「……はあ、運命の人。ですか」
あずさ「私は、運命の人だと思えば受け入れるのも悪くないと思います~」ニコ
凛「そうは、いいますが……」
あずさ「凛ちゃんは美人だし、プロデューサーさんが好きになるのも少し、わかるわぁ」フフ
凛「"好き"……ですか?」
あずさ「えぇ。好きだから、そういうことを言うんだと……?」
凛「す、好きってこと……なの?」
凛「ぇ……こ、告白だったってこと?」カァ
チョップ
凛「痛っ」
伊織「なにふざけたことぬかしてんのよ」ジィ
凛「……ごめん」ヒリヒリ
あずさ「ん~じゃあ、ちょうど今来てるあの……」
凛「今度は誰ですか?」タラ
支援は紳士の嗜み
『なるほど……話はわかりました』
凛「お茶しているところ、すみません」
貴音「気にする必要などありません。私は、アイドル…そして人生の先立ちとして相談にのれる事を嬉しく思います」クス
凛「は、はいっ。ありがとうございます!」ペコッ
伊織「……なによこの対応の差」ボソ
あずさ「まぁ……凛ちゃんたらあんなにかしこまっちゃって」フフ
やよい「貴音さん。頼もしいですぅ」
貴音「では、私から二言ばかり……」
凛「はい……」ゴク
貴音「アイドルを続けるなら、それ相応の備えというものを……」
凛「準備……ですか?」
貴音「えぇ。二つ目、"事"に及ぶ気なら避妊の備えを… 凛「どっちも避妊道具の準備についてじゃないですかっ!」
貴音「……なにか、間違えていたでしょうか」キョトン
凛「いえ、そんなことありません。確かに大事な事ですよね」フゥ
貴音「では……私より適任がいます」ニコ
凛「?」
――…
『じ、じぶんそんなこと聞かれてもわからないゾっ!』カアァ
申し訳ないがキャラdisはNG
貴音「響。貴女は私よりも現世の事柄ついて詳しいではないですか」
響「う、うつつよってなんだ!? 難しい言葉を使わないでほしいゾ貴音!」
凛「あの、変なこと聞いてすみません」
響「で、でもじぶんも先輩として色々と教えないととは思うんだ」
響「……うーん…」
凛「無理はしなくても……」
響「……うーん」
響「…………そうだ!」
響「真に聞こうっ!」
凛「」ガクッ
――…
真『えぇえっ、なに言ってるのさ! ボクだってそういうのは全然ダメなんだってば!』カアァッ
凛「……同じ反応…」
うっ
ほ
真「どどど、どうしてボクなんだよ」
響「真! 協力してほしいさーっ!」ウルウル
真「で、でもぉ……」チラ
凛「あの、もう結構で…S 真「わかるよ凛の気持ち!」
凛「わ、わかりますか?」
真「うん! 白馬に乗った王子様が起きてる時に迫ってきたら眠り姫もビックリだよね!」
凛「? はあ??」
チョップ
凛「痛っ」
伊織「ちょっと、少しイラつかないでよ」
凛「ごめん……」ヒリヒリ
真「あーじゃあもう頼るしかないか」
凛「誰に?」
真『眠り姫にさ』ニッ
――…
『…………凛』
凛「す、すみません……」タラ
千早「……」
凛「…………」タラタラ
千早「大所帯でなにを騒いでるかと思ったら……」ハァ
千早「それで、私に何の用かしら」
凛「ええと……」チラ
一同『…………』フイ
凛「(こらっ、さっきまでの活気はどこにいったんだ)」ハァ
凛「その……ですね」
千早「これから収録があるの。出来れば手短にお願いするわ」
凛「……」
千早「……」
凛「…………ぇ、ええっとぉ」
真『声裏返ってるぞ凛』ヒソ
凛「(だれのせいだ誰の)」
凛「じ、実は……ぷ、」
凛『今度プロデューサーに襲われる事になって!』
千早「ふぇ?」
凛「あの、千早さんにご教授のほどを……」
千早「え、えぇえ?」カァ
( ゚д゚ ) !!!
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
\/ /
 ̄ ̄ ̄
( ゚д゚ ) ガタッ
.r ヾ
__|_| / ̄ ̄ ̄/_
\/ /
 ̄ ̄ ̄
⊂( ゚∀゚ )
ヽ ⊂ )
(⌒)| ダッ
三 `J
ど、奴会!
千早「な……」
凛「本当はこんなこと相談するべきじゃないのはわかっています……」モジ
凛「でももし、千早さんがよければっ」
凛「心構えといいますか、色々と……教えてくれませんか」
千早「……」パクパク
千早「ぁ……」
凛「……」ギュッ
千早「…………」コホン
千早「……論外だわ」
凛「千早さん……」
千早「当人達の問題だし…」
千早「……凛がアイドルを続けるという気があるならば、答えは始めから決まっています」
凛「そう……ですよね」
凛「………………すみませんでしたっ」バッ
タッタッタ…
真「あっ」
伊織「凛! 待ちなさい!!」
真「千早、もっとこう……言い方が無かったのか?」ハァ
千早「さて、あの子を唆したのは誰かしら」ニコ
真「ひっ、ま、待って少し落ち着いて……」サアァ
タッタッタ……
階段を猛スピードで降りる。ブーツの底がカツカツ、カツカツカツとタップダンスを踊っているかのように忙しなく、屋内に破裂音に似た甲高い衝撃を屋内に谺させる。
顔が熱い。
おそらく真っ赤になっているであろうその原因は、恥ずかしさではなく……自分への情けなさからくるものだろう。
なにを舞い上がっていたんだ。先輩達に少し祭り上げられただけて、冷静を装っていながらきっと私もテンションが上がっていたのだろう。
(『……論外だわ』)
確かにそうだ。論外なのだ。論ずる必要も無いほど、当たり前で。問題外な。
ついこの前、尊敬する先輩に偉そうな事を言っておいて……自分はこの体たらくだ。目も当てられない。
千早さんに呆れられただろうか……ううん、それ以前に社長や他の関係者にこの話が伝われば、プロデューサーにまで迷惑がかかる。
「最悪だ。ガキよりタチわるいじゃん、変に知識ばっかつけて」
自己嫌悪……いや、自己嫌嫌悪悪くらい。もう考えるのも嫌になってくる。
もう少しで階段を降りきる。事務所を出たら何処に行こうか。実家……は、プロデューサーが向かいにくるし…プロデューサーの家なんてそれこそ戻れない。
そこで気づく。階段の手すりに誰かの手が添えられた事を。
ヤバっ、ブレーキが間に合わな――…っ
――…意識が徐々に覚醒していく……。
重い瞼を少しずつ開けると――…
『だ、大丈夫? 凛ちゃんっ』
……天使がいた。
いや、天使のように神々しい可憐さを持ち合わせているという比喩。その正体は……
「よ、よかったぁ~。私、ノロマだから凛ちゃんが無理に避けるしか無かったんだよね……うぅ」
事務所の先輩アイドル。萩原雪歩さんだ。
少し気弱で、落ち込むような事があれば穴を掘って埋まろうとする。とても可愛らしい儚げな美少女。
……なんとなく、現状の把握が出来てきた。私は雪歩さんをかわして、無理な体勢のまま床に落下。彼女の膝枕の上で目を覚ましたというわけか。こんな時になんだけど……すごく、得した気分。
雪歩さんに膝枕をしてもらえるなら、何人もの男性が床にダイブをかますかもしれない……そんなくだらない絵面を想像して苦笑する。
「凛ちゃん、具合……悪くない?」
「少し、頭が重たいくらいで……なんともないです。ありがとうございます」
涙目で何度も謝罪を繰り返す彼女を見ると、悪いのはこちらの方なのにとても庇護欲が湧かされる。さすが清純派の人気アイドルだ。
雪歩「とにかく、一旦事務所に戻ろう?」
凛「いや……今は戻りたくないので」
凛「すみません。介抱してくれてありがとうございます」ペコ
クラッ
凛「っ」
ガシッ
『おっとと、珍しいね。凛ちゃんが倒れかけるなんて』
凛「……ぁ」
春香「私なら日常茶飯事なんだけど。なんて、テヘ」
凛「春香さん……」
春香「事務所に……戻りたくない理由があるんだ」
凛「……はい」ギュ
春香「スケジュールは?」
凛「まだ余裕が……」
春香「じゃあ、少しお外に行こっか?」ニコッ
凛「え?」
天海春香は有名人だ。
それは新人の私と対比してではなく、純粋な知名度として。
目立つのかな? A.いや、違うと思う。
印象に残るなにかがある? A.……ごめん、普通のアイドルという感想しか。
アイドルの王道を行くのは今どき逆に珍しいから? A.わからない。媚びたような仕草はあまり、好きじゃない。
765のアイドルといえば?
A.天海 春香だ。
『ここの朝スイーツ、スっゴく美味しいんだよぉ。ん~幸せ』
目の前でプリンを幸せそうに口へ運ぶ彼女、春香さんは前にも説明した通り老若男女に愛されるアイドルだ。
どうして人気かはまだよくわからないけど……
雪歩さんは、私が春香さんと一緒に行動する旨を事務所の皆へ届けるメッセンジャーの役を買って出てくれた。
春香さんが一緒なら心配せずとも、もう大丈夫。そんな安堵にも似た空気間を漂わせながら、事務所へ続く階段を上っていった。
「食べないの? 凛ちゃん」
「あ…………はい」
そしてもう一度言おう。
私は、天海春香が苦手だ。
春香「ん~っ」パク
凛「……」パクリ
春香「食が進まないねぇ? ふっふっふ、私が食べちゃうぞぉ~」ワキワキ
凛「あ……どうぞ」
春香「ありゃ」ガクッ
春香「凛ちゃんは真面目なんだねぇ……」ハハ
凛「……不真面目です」
凛「どうしようもなく、子供で……短慮で」
春香「そんなことないと思うけどなぁ私は」ニコ
凛「いいです。気、使わなくて」
春香「うーん、どうしたものか」
春香「あっ」
春香「そういえば、事務所で……なにかあったんだよね?」
凛「……」
春香「……」ジィ
凛「…………」
春香「じぃ~」ジィー
凛「……」ハァ
凛「わかりました、話します」
春香「やった」パチパチ
凛「聞けばわかりますよ。どれだけ私がガキなのか」
春香「まあ……とりあえず、話してよ。ね?」ニコッ
――…
凛「という経緯です」
春香「ほ、ほえぇ~」カァ
凛「……どう思いましたか?」
春香「ぇ?」
春香「う~ん、そうだなぁ」
春香「可愛いなって」クス
凛「はあ?」
春香「可愛いよ。凛ちゃん」
春香「恋する乙女はそれだけで可愛いよ。えへへ」
凛「……怒りますよ」
春香「ふぇっ? なんで?? 誉めたつもりなのにぃ」
凛「では、春香さんの意見が聞きたいです」
春香「私の……う~ん、私の意見かぁ」
春香「好きなら、受け入れるべきだと思うな」ニコ
凛「?」
春香「千早ちゃんには『なにを言ってるの?』って怒られそうだけど…」
春香「……恋にも仕事にも全力! それが悪い事なんて思わないな私は」ニコ
凛「……ですが私の仕事は、アイドルで。相手はその……関係者の方で」
春香「じゃあ、やめよう」ニコ
凛「え?」
春香「ダメなら受け入れる事をやめる。それしかないよね」
凛「あの……」
春香「じゃあ、受け入れる?」
凛「それは……」
春香「じゃあやっぱりダメだね。丁重にお断りしましょう」ニコ
凛「……そう、ですよね」
凛「わかりました。私、決心しまし 春香「ちがうでしょーっ」
凛「へ?」
春香「そこは、『やっぱり、あの人を拒絶することなんて出来ない! きららんっ ←涙』みたいな感じだよ凛ちゃん!」
凛「は、……え?」
春香「もしかして……本当に、プロデューサーの事、好きじゃなかったり?」
凛「えっと……」
春香「そうだったら私の見当違いだったね。ごめんっ余計な事を言って!」ペコ
凛「好きじゃないって…」
凛「……嫌いなんかじゃ、絶対ないけど」カァ
春香「?」
春香「……ふっふっふ~ん」ニマ
凛「? どうしたんですか」アセ
P「おはようございます」
シーン…
P「?」
真「……」ソソソ…
P「ああ、おはよう。真」ポン
真「ひゃっ」ビク
真「お、おはようございますプロデューサー」ハハ
P「? なにか変だな。調子でも悪いのか??」
真「い、いえ……」チラ
P「?」チラ
響「えっ? じ、じぶんか!?」アセ
P「なにかあったのか? 響」
響「えっ、ええと……」チラ
貴音「……」チラ
あずさ「あらあら……」チラ
伊織「……なんで私までくるのよ…」チラ
やよい「?」
伊織「……いや、私で良いわ」ハァ
P「なにがあったんだ?」
伊織「それは自分が一番よく知ってるんじゃない?」
P「俺が?」
P「すまない、心当たりが無い」
伊織「その……アンタが凛に、が、"ガバッ"って話よ」
P「ガバッ? あーその話か」
P「凛のやつ皆に言ったのか……」ハァ
伊織「当たり前よ、まともな人間だと思っていたのにとんだ狼ね」
P「そこまで言われるほどか……確率的には微粒子レベルに低いんだが」
伊織「微レ存でもなんでもいいけど、可能性があるってだけでキモいのよ変態っ」
P「いや、可能性がゼロってことはないだろう?」
P「凛は美人だし……なにより」
P「ここのアイドルなら誰でもそうなる可能性が……」
伊織「は?」カァ
伊織「な、なに言ってんのよこの変態! ド変態っ!」ポカポカ
P「ちょっ、待て伊織落ち着け!」
P「み、皆もなんとか……」チラ
真「ぷ、プロデューサーの…」
真「…………えっち」カァ
P「味方はいないみたいだ……」タラ
P「そういえば、凛はどこだ?」
伊織「えっと……」
伊織「春香と二人で近くのお店に言ってるわ」
P「春香と二人で……そうか、良かった」
P「なんとなく、凛は春香の事避けているように見えたからな」
P「じゃあ迎えに行ってくるよ」
千早「あの、プロデューサー」
P「? どうした千早」
千早「今回の事、私も直接凛の口から聞きました」
P「……はあ」
千早「プロデューサーに、今度お、襲われる事になったって……」
P「は?」
千早「いくらプロデューサーでも私、目を瞑れません!」
P「な、なんだソレは勘違い甚だしいぞ!」
千早「もっと節度を守った……え?」
千早「勘違い……ですか?」
P「ああ、勘違いだ……というかどう考えてもおかしいだろ襲うのを予告って」ハァ
千早「誤解……そうですよねプロデューサーがそんな事を言うわけ…」
千早「すみません。つい動揺して、冷静な判断が……」
P「いいよ。気にしなくて」
P「なら今勘違いしているのは凛と……春香の二人か」
P「春香はわかってくれるとして」
P「凛はな……自分の勘違いでしたなんて知ったら、顔真っ赤にして走り出しそうな気配がある」
伊織「ぐちぐち言ってないで。男ならさっさと迎えにいきなさい」ハァ
P「……そうだな」
P「ありがとう。迷惑かけたな」ナデ
伊織「……ふん、本当そうね」カァ
プイ
P「たしか……この辺りの店だったよな」
タッタッタ…
伊織「……」
真「なに照れてるんだよ、伊織」ニィ
伊織「う、うっさいわね関係ないでしょっ」カァ
――…
凛「春香ったら……」
春香「凛こそ、あはは」
凛「でも、春香ってプロデューサーが留守の時に勝手に掃除とかしてるでしょ。あれ、やめた方がいいよ」
春香「そうなの? 『誰が掃除してくれたんだろう……小人さんかな?』って感じに…」
凛「ならないよ」ハァ
春香「あと私も聞いた話なんだけど」
春香「凛って、独占欲が強いって話」
凛「……そんなことないけど?」
春香「1時間の内に50件もメールしてるなんて普通じゃないと思うなぁ」
凛「ちょっとだけじゃないかな」
春香「あと、他の子がプロデューサーと話していると5分毎にデスクのボールペン折るでしょ? あれも小鳥さん困っていたからやめた方がいいと思う」
凛「後でまとめて弁償しようと思っていたんだけど……」
凛「あと春香。帰ったと見せかけて家に残るのってどうなの? 私はまだいいけど、怖いよ」
春香「他人が入ってきたら怖いから、自宅警備のつもりだったんだけど……」
凛「独占欲かあ」
春香「それって、好きだからだよね」
凛「好……そうなの、かな」
春香「間違いないね。天才探偵はるるんの鷹の目チェックは完璧だから」フフン
凛「でも、意識したら恥ずかしくなってきた……」
春香「恥ずかしくなるようなことしたの?」
凛「すごく眠たい時とか、座ったままの私にプロデューサーが歯磨きしてくれたり……」
春香「……」プッ
凛「熱い日は下着の上にプロデューサーから貰ったYシャツを羽織って家の中をうろついたり」
春香「好きじゃなくても恥ずかしいよ、それ……」
凛「……そう、かな」
春香「そうだよ……」
『凛!!』
凛「っ?」
P「……凛、そのなんというかな」
凛「ぷ、プロデューサー」
P「朝の件なんだが」
凛「わ、私っ」カァ
P「?」
凛「その……プロデューサーが言うなら」
凛「受け入れようかな、って……」チョン、チョン
P「え?」
P「いや、あのだな……」
凛「その……少しだけ気付いたんです。自分の気持ちに」
凛「確かにアイドルの恋愛スキャンダルは命取りです」
凛「でもっ」
P「っ」
凛「…………二人で、内緒に出来るならそれが…そっちの方が、幸せかなって」モジ
P「……凛」
凛「……プロデューサー」
P『襲う襲わないとか、どこで話が膨れたのかしらないけど、全部勘違いで俺にはそんな気持ちは毛頭ないんだ』
凛「うん…………え?」
P「そういうことだから」
凛「? ああ、そういう方向でって話ね」
P「いやだから、正直グッとくる時もある。お前、可愛いし……痩せてるのに胸はあるしさ」
凛「大丈夫。事務所の皆には言わないから」ニコ
P「でも、俺とお前はそういう関係になるにはまだ早すぎるんだ。せめてアイドルの内は…」
凛「アイドル内は……秘密、だね。了解」ニコ
春香「噛み合ってるのか噛み合ってないのか……あはは」タラ
凛「春香」
春香「?」
凛「そういうことだから……他言はしないでほしいんだ」キリ
春香「……うん、ヒトには言えないよ。凛ちゃんの名誉のために」グッ
P「よくわからないけど丸く収まったみたいだな……」フゥ
――…【P宅】
P「そろそろ寝るぞー」
凛「う、うん……」
P「おやすみ……」フワァ
スタスタ…
凛「…………」
トコトコ…
P「……ん」
P「どうして付いて来る?」
凛「ええと」
凛「その……Pさんがわざわざ出向く必要が無いように…って」カァ
P「? 朝起こさなくても良いようにってことか??」
P「……まあ、凛もわかってくれたみたいだし大丈夫か…あとさりげに本名を呼ぶな」
凛「は、はい……」カアァ
ギィ… ガチャン。
P「……ベッドあまり広くないから、もう少し詰めてくれ」
凛「は、はい……」ドキドキ
凛「その、ですね……」
P「……」
凛「遊んでるように見られるんですけど、全くその……そういう経験が無いので…」
P「なにアピールだよ。寝なさい」
凛「で、でも好…しゅきなら良いんだと思って……」カアァ
P「……ん…」ウト
凛「身持ちは固い自覚があるので……こういう事は本当、慣れなくて…」グルグル
P「…………」
凛「プロデュー……Pさん、名前で呼びたいなぁって…」
P「……」スピー
凛「す…………好き……ですっ」カアァッ
P「」zzz
――…1時間後
凛「P、Pさん……」ドキドキ
P「」クカー
凛「そ、その……私わからないので…セオリーというかマナーというか……」
P「」zzz
――…1時間後
凛「じょ、女性の方から行動するべきなんですか?」モジ
P「……ムニャ…」
凛「そ、そうなんですかやっぱり……」カァ
凛「じゃ、じゃあ……い、いくよ。Pさん」
ギュッ
P「グガ」スピー
凛「て、手ぇ恋人握りで繋いでる……」カアァ
P「」zzz
P「うーん」
ゴロッ
凛「ゎっ」
ドサッ
P「……」クー
凛「P、Pさんの顔がこんな近くに……」プシュー
P「」zzz
――…1時間後
凛「Pさん……」
P「……」クカー
凛「き、キ、キス……し、しますよ?」
P「ん……」ゴロッ
凛「きゃっ」ステンッ
P「」zzz
凛「m……」
凛「……」プハァ
凛「き、キス……しちゃった…えへ」モジモジ
P「……凛…」スピー
凛「はっ……はい!」カアァ
P「明日も仕事だぞ……早くねろよ…」
凛「わ、わかりました」ドキドキ
凛「じゃ、じゃあ最後に……今度は私から…」
チュッ
凛「(…………きゃーっ)」プシュー
凛「お、おやすみ。Pさん」ニコ
P「ん……」zzz
凛「えへへ……」
――…2時間後
P「起きろ朝だぞ!」
凛「まだ眠いです……うーん」
P「夜更かししたなコイツ……」ハァ
――…【事務所】
春香「どうだったの?」ニィ
凛「昨日……というか今日だけど」
凛「き……キスしちゃった」カァ
春香「きゃー」バシバシ
凛「もう暫くは良さそうかも、少し刺激が強いからね」
春香「さすがに4時間もかけてキスしたら疲れると思うなぁ」ニコ
凛「そう? 時間確かめてなかったから……」
春香「今日はオフの中来てくれてありがとうね」ニコッ
凛「平気だよ。春香が後押ししてくれたおかげでもあるから」ニコ
春香「そう? 嬉しいなぁ えへへ」テレ
凛「ああ、スーパーで特売があるんだった」
春香「トイレットペーパーなら昨日交換しておいたから」ニコ
凛「ありがとう。やめてね」ニコ
――…
『ねえ、凛ちゃん。プロデューサーさんとは仲良くやってる?』
そう声をかけられて、ふと我にかえった。
何気なく目線を向けていたバック。中で着信音をオフにした携帯が震えているのだろう、光沢ナイロン地のソレが振動でキラキラと光っている。
「仲良く……? うん、仲は良いと思うよ」
仕事が終わって事務所に戻っても、プロデューサーの仕事が終わるのを待ってから一緒に帰宅している。
事務所とPさんの家は少し離れているから、二人で帰るのが効率的にも金銭面的にも優れているしね。
『そうなんだ……それは羨ましいことで』
『でも、オフの日までは一緒じゃないんだね?』
「プロデューサーは他にもアイドルを抱えているから……忙しいしね」
言いながら、トートバッグから携帯を取り出す。見ると画面には新着メールの表示が一件。
「…………そうだね。やっぱり、仲……すごく良いのかも…」
思わず口元が綻ぶ。私は、液晶に映し出された文を指でなぞる――
――…【今日はオフだけど暇じゃなくても付き合えるか? 部屋にある縫いぐるみの中に盗聴器らしきものを見付けてさ】
さあ、どうするか。
悩むのは誘いへの断りではなく、
目の前でニヤついている同僚に、どう説明をすれば冷やかされずに済むか。と……親友の危機を脱させる上手い口上についてだった。
<了>
保守&支援ありがとうございました。
前に千早と同棲する話も書いていましたが、>>1レス目のような真面目系で話は進んでいきます。
今回はこれから渋谷凛のSSを書くにあたり、どうしても【ちょっと独占欲が強い】設定を前に出していきたかったので。あと周りのアイドルも皆、変なところがあったり。
今回は春香さんでしたが、【ちょっと独占欲が強い】凛ちゃんが他の【ちょっと変な部分がある】アイドル達と一人一人絡ませていきたらいいなって。
出来ればこのスレで続きを書きたいですが、どうでしょう。
乙です。
基本、軽くプロットを書いてから本文を書きますけど。
GW中の今がチャンスなので、闇のまさんのSSもありますが流れ的に続行した方が良いのかな
渋谷凛の他にもモバマスには可愛いアイドルがいることを広めたいんですが。
了解です。
出来ればこのスレに新しいスレのurlを貼りたい気もありますが、落としてくださって結構です。
おつ
せめて立て直すときのスレタイだけ頼む
>>317
仮眠をはさんでから『神崎蘭子』でワード検索お願いします。
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