仮面P『顔も声も出さなくていいなら働きます』キュキュ (130)

高木「……」ティン

高木「ちょっとそこのキミィ」

P「?」

高木「君、うちで働いて見る気はないかね」

P「!?」

高木「そう慌てないでくれ。うちは765プロというアイドル事務所していてね。人手不足だから君に声をかけたんだ」

P「……」ゴソゴソ

高木「どうしたんだね」

P『顔も声も出さなくていいなら働きます』キュキュ


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高木「そうか、そうか。働いてくれるか。いやぁ助かるよ」

P「……」

事務所

P『今日からここで働くことになったPです。よろしく』キュキュ

一同「……」

春香「あの、何で仮面にフリップなんですか?」

P『喋ると嫌われるし、顔を見られても嫌われるからです』キュキュ

春香「は、はぁ? そんなことじゃ嫌いませんよ」

P『その程度の言葉で私は人を信じることはできません』キュキュ

P『すみません』キュキュ

春香「(変わった人だなぁ)」

P『それでも仕事なので頑張ります』キュキュ

春香「よ、よろしくお願いします」

P『私が担当する方はどちらですか、社長』キュキュ

社長「ん? ここにいる皆だよ?」

P『!?』キュキュ

P『皆ですか。まぁ頑張ります』

真美「ねぇ、亜美」

亜美「何、真美」

真美「あの兄ちゃんの仮面取りたくない?」

亜美「取りたいね」

亜美真美「よし!」

真美「ねぇ兄ちゃん」

亜美「こっちきて→」

P『何ですか?』キュキュ

亜美「まだだよ」ボソ

真美「うん」ボソ

P「……」スタスタ

亜美「今だ!」

真美「とりゃ!」

P『!?』キュキュ

亜美「あれ?」

真美「とったと思ったのに」

P『私の顔は見たくても絶対に見せてあげませんよ。これは貴方達のためでもあるんです』キュキュ

亜美「むぅ」

真美「いつか絶対取ってやっかんね→」

P『取らない方が貴方達のためだと忠告はしておきますよ」

P「……」カタカタ

真「プロデューサー、ご飯食べに行きませんか?」

雪歩「……」

真「(ほんとは顔がみたいだけだけどね)」

P『いいですよ』キュキュ

真「やっりぃ!」

雪歩「(この人男の人なんだろうけど仮面のせいか、いつもより恐くない)」

P『私がおごりますから好きに頼んでください』キュキュ

真「え、いいんですか?」

P『その代わりに皆さんのお話を聞かせてください』キュキュ

真「そのくらいお安い御用ですよ!」

P『じゃあ、注文してください。私はこれで』キュキュ

真「はい。すみませーん。これとこれと……」

P『萩原さんはどうしますか?』キュキュ

雪歩「え、あ、こ、これで」

真「うん、じゃあこれを」

P『そういえば萩原さんは犬と男性が苦手らしいですね』

雪歩「は、はい」

P『もし、私が女だと言ったら、いえ、書いたらですか。どうしますか?』キュキュ

雪歩「え、し、信じられません。だって服装が男性だし手も男の人の手だし」

P『ははは、そうですね。私は男です。でも、もしもの世界って私は好きですよ』キュキュ

雪歩「ど、どういうことですか?」

真「パラレルワールドってやつですね」

P『そうです。例えば、もしも私が仮面も付けず声を出していたら。もしも萩原さんが犬も男性も怖くなかったら』キュキュ

雪歩「パラレルワールドですか。怖がりじゃない人生を送ってみたいですぅ」

P『そう考えることはありませんよ。もしもに過ぎないんですから』キュキュ

P『でも、もしもを追いかければ現実にすることも夢ではありませんけどね』

雪歩「え?」

真「え?」

P『あ、料理がきましたよ。食べましょう』

真「(これが目的だった。よーし、これで顔が拝めるぞ)」

真「そうですね。プロデューサーもどうぞ」

P『あ、少し待ってください』ガサガサ

雪歩「?」

P『はい、食べましょうか』キュキュ

真「(仮面を口元だけ開いてるのに変えた)」

P『美味しいですね』キュキュ

雪歩「はい、とっても」

P「……」モグモグ

雪歩「(そういえばこの人喋れないんだった)」

真「(顔が見れない上に気まずい)」

P『ご馳走様でした』キュキュ

真雪歩「ご馳走様でした」

真「(口元がちょこっとだけ見えたけどあまり大差ないなぁ)」

雪歩「(ご飯美味しかったなぁ)」

P『では、会計を済ませてきますのでお二人は車の中で待っておいてください』キュキュ チャラ

真「あ、はい。行こう雪歩」

雪歩「うん」

P「……ふぅ」

P「……」ペラ チャリンチャリン

店員「ありがとうございましたー!」

P『お待たせしました』キュキュ

真「いえ、僕たちこそ奢ってもらってありがとうございます」

雪歩「ありがとうございますぅ」

P『そんなことは気にしないでください。皆さんのお話は楽しかったですよ』キュキュ

真「そのくらいいつでもしてあげますよ」

P『ではまたお願いしますね』キュキュ

P『それじゃあ帰りましょうか』キュキュ

事務所

P『ただいま帰りました』キュキュ

真「ただいまー」

雪歩「帰りましたぁ」

P『あれ、音無さんはどうされたんですか?』キュキュ

あずさ「……」

P「……」トントン

あずさ「あら?」

P『あれ、音無さんはどうされたんですか?』

あずさ「あぁ、音無さんなら今日は春香ちゃんのCD販売のお手伝いです」

P『それなら僕はお役立そうにないですね。面目ない』キュキュ

P『そういえば三浦さんは』キュ

P「……」

あずさ「どうかされたんですか?」

P「……」アタフタ

P「……」ガサガサ

あずさ「?」

P『インクが切れました』サラサラ

P『マジックありますか?』サラサラ

あずさ「ええ、確かこっちの方に」

あずさ「あ、ありました~」

P『ありがとうございます』サラサラ

あずさ「でもあげません~」

P『!?』

P『何でですか?』

あずさ「お顔を見せてくれたらあげます」

P「……」

P『なら、いいです。自分で取りますから』サラサラ

あずさ「え?」フワッ

P「……」キュポ

P『すみません。あずささん』キュキュ

あずさ「あら? あらあら? 何が起こったのかしら」

P『分からくていいですよ。でも、顔を見られたくないことはわかってもらえましたよね?』キュキュ

あずさ「は、はい。すみません」シュン

P『あ、ああ、そんなに落ち込まないでください』

あずさ「じゃあ、お話しましょう?」

P『筆談でよければ』

あずさ「むぅ、まぁ仕方ないですよね」

あずさ「プロデューサーさんは人が恐いんですか?」

P『どうしてですか?』キュキュ

あずさ「だって喋らないし、お顔も見せてくれない」

P『まぁ、そうですね。恐いです。人はどんなに信頼していた人も自分に不利益だと考えた瞬間に裏切りますから』キュキュ

あずさ「(字が震えてる)」

あずさ「そうでしょうか。ここにいる皆はそんなことは……」

P『何で言い切れるんですか。自分以外が考えていることなんてわからないのに』キュキュ

あずさ「私はここに入って皆と楽しい日々を過ごしてきたから」

P『私も皆さんと仕事をするのは楽しいですよ。皆さんのことも信用しています』キュキュ

あずさ「なら、何で」

P『私が顔を出せば、声を出せばもしもの世界の可能性は消える』キュキュ

あずさ「もしもの世界?」

P『ええ、私が顔と声を隠していれば、皆さんにたくさんの可能性が生まれる』キュキュ

あずさ「え、え~っと」

P『分かりやすく言えば僕がブサイクである可能性とイケメンである可能性が生まれるということです』キュキュ

P『だから皆は気になって私から自ら離れようとはしない』キュキュ

あずさ「そんなことを考えて」

P『単に嫌われたくない言い訳に過ぎないですけどね』キュキュ

あずさ「いえいえ~、プロデューサーさんはとっても謙虚な人なんですね」

P『え?』キュキュ

あずさ「だってプロデューサーさんは皆に好かれたいじゃなくて嫌われたくないってずっと書いてるじゃないですか」

P『私が好かれるなんて無理な話ですから』キュキュ

あずさ「私はまだプロデューサーさんのことあまり知らないですけど、悪い人じゃないってことはわかります」

P『あいがとうございます』キュキュ

あずさ「ふふ、プロデューサーさん。『り』が『い』になってますよ」

P『す、すみません。この姿になってもそんなことを言われたのは初めてで』キュキュ

あずさ「あら~、そうなんですか? でも、プロデューサーさんはプロデューサーさんでいいと思いますよ」

P『あいがとつございます』キュキュ

あずさ「ふふ、これから頑張っていきましょうね」

P『はい』

あずさ「私もプロデューサーさんも」

翌日

『仕事とってきます』

小鳥「あら、プロデューサーさんの書置き。喋れないのにどうやって仕事を?」


テレビ局


P「……」トントン

関係者「ん?」

P『すみません、お時間よろしいでしょうか』

関係者「君は誰だね? その仮面を取って自分でしゃべりなさい」

P『申し訳ありませんが、私は声を出したくても出せず、顔を見られると緊張して字をかけなくなってしまいますのでご了承願います』キュキュ

関係者「病気なのかね?」

P『それに近しいものです』キュキュ

関係者「む、仕方ない。で、どうしたんだね」

P『三秒でいいのでうちのアイドルを起用してくれませんか?』

関係者「三秒?」

P『ええ、三秒で十分です』キュキュ

関係者「君、珍しいね。普通ならどうか多く出させてくれと言うのに」

P『それほどうちのアイドルは質が高いですから』キュキュ

関係者「ほぉ、宣材写真はあるかね?」

P『もちろんありますよ』ピラ

関係者「ん? 十二枚? 全員起用しろと?」

P『いえ、そこまではいいません。そちらがイイと思う人のみで結構ですよ。いなければいないでもよろしいです』キュキュ

関係者「ふーむ、この娘とこの娘とこの娘かなー」

P『名前は左から』

P『我那覇 響(がなは ひびき)』キュキュ

P『四条 貴音(しじょう たかね)』キュキュ

P『星井 美希(ほしい みき)』キュキュ

P『です。よろしいですか?』

関係者「うん、じゃ、頼むよ」

P『ありがとうございます』

P『ただいま、戻りました』キュキュ

小鳥「あ、おかえりなさーい」

P『重大な発表があります』

P『星井さん、我那覇さん、四条さんの三人を呼んでくれませんか?』

小鳥「え、はい、わかりました」

P『お願いします』



P『皆、揃いましたね』

響「どうしたんだ、プロデューサー」

貴音「重大な事と聞きましたが」

美希「んにゅうzzzz」

P『三人にはこの先にある映画に三秒だけ出演してもらいます』キュキュ

響「え!? それほんとか? 自分嬉しいぞ!」

貴音「ですが、三秒だけとは」

P『たかが三秒、けれど三秒』

P『この三秒に貴女方のアイドル人生がかかっていると言っても過言ではありません』キュキュ

P『プレッシャーをかけるようですが、これは貴方達への期待でもあるのです』キュキュ

響「でも、何で自分達を選んだんだ?」

P『選んだのは私ではありません。関係者の方です』

貴音「それはまた面妖な。何故ご自分で選ばなかったのですか?」

P『私が選んでも成功する可能性は低いでしょう』

P『しかし、目が肥えた関係者の方々の選択に間違いはない』

P『私は意思より経験を選んだ。それだけです』キュキュ

響「よ、よくわからないけど自分頑張るぞー!」

貴音「ええ、そうですね。私も力を振るわねばなりません」

P『あとで星井さんにも伝えてくださいね』キュキュ

事務所

P『(o´Д`)=з』キュキュ

小鳥「あれ、プロデューサーさん、お疲れですか?」

P『あ、わかります?』キュキュ

小鳥「顔文字見えたんで」

P『疲れてるのは悩んでるからなんですけど』キュキュ

小鳥「何をですか?」

P『いえ、文字書くの時間かかるんで顔文字導入しようかなと思いまして』キュキュ

小鳥「いいじゃないですか。皆も喜ぶと思いますよ」

P『ヽ(・∀・)ノ』キュキュ

P『今日から使ってみます』キュキュ

小鳥「(プロデューサーさんって文字書くのとっても早いわよね)」

春香「プロデューサー」

P『何ですか?』キュキュ

春香「少し付き合って欲しいことがあるんですけどいいですか?」

P『いいですよ』キュキュ

春香「これなんですけど」ドス

P『これはカラオケの割引券?』キュキュ

春香「はい、この前千早ちゃんと行ってもらったんですけど。今日誘ったら用事があって」

P『(´・д・`)』キュキュ

春香「え!?」

P『あ、顔文字も使ってみてるんですよ』キュキュ

春香「あ、そうなんですか。いいじゃないですか。面白いですよ」

P『で、この隣の大量のノートのは何ですか?』キュキュ

春香「これは今までの足跡ノートです。今まで歌った歌と得点が書いてあります」

P『(゜д゜)』キュキュ

P『努力家なんですね』キュキュ

春香「まぁ、大半が千早ちゃんのなんですけどね」

P『それでも天海さんが頑張っていることには変わりないですよ』

春香「えへへ、ありがとうございます。それでですね、カラオケに付き合って欲しいんですけど」

P『お安い御用です ( ´ ▽ ` )』キュキュ

春香「ここです」

P『最近のカラオケは凄いですね』キュキュ

春香「そうですか? 私が来始めた頃からこんな感じですけど」

P『私自身最後にカラオケに来たのは随分と前ですしね』キュキュ

春香「喋れないと辛いですか?」

P『いえ、これはこれで楽しいですよ』キュキュ

春香「へぇ、じゃあ、早速歌いますよ!」

P「……」シャカシャカ

春香「ふぅ、どうでした?」

P『やっぱり凄いですね。流石アイドルって感じですよ』キュキュ

P『あ、点が出ますよ』キュキュ

『93.367』

P『ヽ〔゚Д゚〕丿』

春香「やったー。いきなり高得点ですよ。プロデューサーさんのおかげです!」

P『私は何もしていませんよ。天海さんの努力の賜物です』キュキュ

春香「この調子でどんどん行きますよー」

P「」シャカシャカ

春香「ちょっと疲れましたね。少し外に行ってきます」

P『(^o^)/』

バタン

P「……ふぅ」

P「……」

ガチャ

P「……」キョロキョロ

P「いないか」

バタン

P「はぁ、疲れた。天海春香。お前はいつしっぽを見せるかな」

P「仮面は……外したときに帰ってきそうだからやめるか」

ガチャ

春香「すみませーん」

P『あ、遅かったですね。また、歌いますか?』キュキュ

一時間後

P「……」シャカシャカ

春香「はぁー! 今日もよく歌いましたね。プロデューサーさん、付き合ってくれてありがとうございます」

P『いえいえ、こんなことだったらいつでも大歓迎ですよ』キュキュ

P『では会計を済ませてきますので天海さんは車の中で待っていてください』チャラ

春香「ええ!? そんな悪いですよ。わがままに付き合ってもらったのに」

P『素晴らしい歌を聴かせてもらったお礼ですよ。気にしないでください』キュキュ

春香「す、すみません」シュン

P『じゃあ、先に行っててください』キュキュ

春香「はい、じゃあ待ってますね」タッタッタ

P「……ふぅ」

P「……」

店員「ありがとうございましたー」

P「……ここの奴らは人を疑うことを知らないのか」







P『お待たせしました』キュキュ

春香「全然待ってませんよ」

P『じゃあ、出発しますよ』キュキュ

春香『d(ゝc_,・*)♪』キュキュ

P「……」

春香「えへへっ」

P『面白いですね。私も今度から使ってみます』

春香「ほんとですか? なんだか照れちゃいますね」

春香「あ、あれ、千早ちゃんじゃないですか?」

P「……」コク

春香「どうしたのかな。プロデューサーさん、降ろしてもらっていいですか」

P「……」フルフル

春香「え、何で」

P『如月さんは用事で天海さんとのカラオケを断ったのですから用事の途中でしょう』キュキュ

P『事情を知らずに突っ込むのはダメですよ』キュキュ

春香「あ、そっか。すみません」

P『信号が青になります。喋れなくなるのでフリップを持っておいてください』

春香「はい」

P『着きましたよ』キュキュ

春香「……」zz

P『……』


事務所


P『ただいま戻りました』キュキュ

小鳥「あ、おかえりなさい。あら、春香ちゃん寝ちゃったんですか?」

P『みたいですね。仮眠室に運んできます』キュキュ

仮眠室

P「……」

やよい「……」スースー

伊織「……」スースー

P「寝てやがる」

P「……」ソッ

春香「……」スースー

P「……」

P「(左のオレンジのが高槻やよいでこのデコが水瀬伊織だったか)」

P「(こいつら境遇は真逆の癖に中はいいらしいな。理解できねえ)」

伊織「んっ」

伊織「あれ、今何時よ?」

P「三時だ」

P「(しまった!?)」

伊織「もう三時なの? ふぁ、やよい~。起きなさ~い」

やよい「伊織ちゃん~? ふにゅぅ」

P「(あっぶね。寝ぼけてたのがラッキーだった)」

P『お二人ともお越してしまいましたね』キュキュ

伊織「でもまぁいい時間だわ」

やよい「起こしてくれてありがとうございますー」

P『いえいえ、せっかくの睡眠を邪魔してしまって』キュキュ

伊織「あんたはほんとに腰が低いわね。もっと堂々としてなさいよね」

やよい「伊織ちゃん、言いすぎだよ」

P「……」

伊織「まぁいいわ。やよい、行きましょ」

やよい「い、伊織ちゃん~ あ、プロデューサー。失礼しますー」

バタン

P「……金持ちのガキが調子に乗るなよ……」

春香「(ぷ、プロデューサーさんが喋ったぁぁぁぁぁ!!)」

春香「(しかもいつもフリップで言ってることと全然違う!)」

P「……」ピク

P「……」ジッ

春香「……」

春香「……」ニヤァ

P「お前、起きてるな。今聞こえた声、忘れろ。忘れないければ……」

春香「す、すいませんでした。許してください!」

春香「(すごい声。低くて悪そうで。まるで絵に書いたような極悪人の声)」

P『それでいい』キュキュ

P『誰かに言いふらしでもしたら……わかってるな』キュキュ

春香「は、はい」

P『お前は俺の秘密を知ってしまった』キュキュ

P『この際、お前に話してやろう。何で俺がこんな姿なのかを』キュキュ

春香「え、いいんですか?」

P『声を聞かれてしまった以上俺がここにいれるのも時間の問題だ』キュキュ

P『もしかしたら、外の三人に声が聞こえてしまった場合は特にな』キュキュ

春香「(プロデューサーさん、日本語がおかしい。動揺してるのかな)」

P『俺が仮面を被ったのは二十歳の時、声を出すのを辞めたのは十八歳の時』キュキュ

P『ちなみに今は二十五だ』キュキュ

春香「もう五年以上もやってるんですか」

P『やりたくてやってるわけじゃない。仕方なくだ』キュキュ

P『聞いたとおり俺の声はあんなドスの聞いた声で何人もビビってしまう』キュキュ

P『顔はまだ見せれないが』

P『正直に答えろ。お前は俺の声と顔をどうイメージしていた?』キュキュ

春香「えっと格好良くて紳士でって思ってました」

P『だろうな。人は情報が少ない時、分かる情報だけで人を判断する』キュキュ

P『俺はフリップで会話。常に敬語。顔も分からない』キュキュ

春香「私達の気をひいていたんですか?」

P『当たり前だ。嫌われない必要があるからな』キュキュ

P『生涯たった一人信頼した人に裏切りを受けてからそう思うようになったよ』キュキュ

春香「裏切り?」

P『ああ、きっかけになった十八の頃だ。俺にも彼女ってのがいてさ、初めての彼女は俺の声を受け入れてくれた。俺はそれまで一人ぼっちだったからそりゃあ嬉しかった』キュキュ

P『でもよ、やっぱり俺はボッチなんだ。奴は俺を利用して陰キャラと付き合ってあげてる良い奴を演じたかっただけだって気づいた』

春香「……」

P『俺はそれっきり声を出さなくなった』キュキュ

P『んで、顔だ。これはなんてことはない。見せたくないんだ』

春香「顔がよくないとかそういうのですか?」

P『お前、デリカシーねえな。まぁそうだよ。もとは普通だったんだけどな』

P『二十歳の時家が燃えた』

P『アパートに一人暮らししてた俺の隣の部屋のおばさんが火事起こしてさ』

P『助けに行って顔の半分が焼けちまったんだよ。焦って水も被らなかったしな』

春香「それで……」

P『ああ、助けたおばさんも俺にビビって何も言ってくれなかったよ』

P『それで顔を隠して、声を出すのもやめた』

春香「話してくれてありがとうございます」

春香「私、プロデューサーさんのこと誤解してました。もっとカッコよくて、イケメンなんだって思ってたけど
プロデューサーさんはもっと深い人で私達のことを心配してくれる人なんだって」

P『そんなこと言われても信じられねえよ。こっちにゃ経験があるからな』キュキュ

P『信用じゃなくて信頼されたいなら頑張ってくれ。まぁそんなことをする必要なんてないけど』

春香「私、頑張ります」

P『お、おいおい』キュキュ

春香「頑張ります!!」

P『(´・д・`)』

翌日 

P「困ったな。昨日は勢いでいろいろ喋ってしまった」

P「今日はできるだけ顔文字乱用しよう」

P『おはようございます』キュキュ

小鳥「あ、おはようございます」

律子「おはようございますー」

千早「おはようございます。プロデューサー」

P『( ´ ▽ ` )ノ』

千早「(これはどういう意味なのかしら。今日も頑張ろうって意味なのかしら)」

千早「ええ、今日も頑張りましょう」

P『o(^▽^)o』キュキュ

千早「(あたり……なのかしら)」

千早「そういえば、プロデューサー」

P『(・ω・)?』キュキュ

千早「春香から聞いたんですけど」

P『(ヾ(´・ω・`)』ダッ

千早「一緒にカラオケに行ったって……プロデューサー!? ど、どこへ行くんですか?」

P「(あれ? カラオケ?)」キッ

P『( *`ω´)<何でもないよ』キリ

千早「あ、えっと春香と一緒にカラオケに行ったんですよね?」

P『はい、行きましたよ』キュキュ

千早「で、ノートを返して欲しいんですけど」

P『あ、ああそういえば私が書いて持ったままでしたね。ちょっと待ってくださいね』ガサガサ

千早「プロデューサーも歌ったんですか?」

P『私が歌うわけないでしょう。春香さんだけですよ』キュキュ

千早「そ、そうですよね」

P『あ、これですね。はい』キュキュ

千早「ありがとうございます。あ、春香、凄いわね。最初に比べてとても点が上がっているわ。私も頑張らないと」

P『へぇ、そうなんですか。皆さん努力家ですね』

千早「いえいえ、そんな。このくらい普通です」

千早「あの、では私レッスンがあるので失礼します」

P『そうですか。頑張ってくださいね』キュキュ

千早「はい」

P「あいつは確か、弟が……健気だな」

真美「!?」コソコソ

真美「(に、兄ちゃん?)」

真美「(今のほんとに兄ちゃんの声なの!? 殺人犯かと思っちゃったYO)」

真美「(とりあえず、亜美に……)」ガタ

P「!?」

P「……」スタスタ

P『おはようございます。双海さん』

真美「あ、あはは。おはよう兄ちゃん」

P『今、私の声、聞きましたよね』キュキュ

真美「え、声? き、聞いてないよ」

P『聞きましたよね?』キュキュ

真美「……」

P『今聴いたこと全て忘れろ』キュキュ

P『どうにかして助けを求めたいか?』ヒョイ

真美「あ」

P『例えば、メールを送るとか』ピッピ

真美「あ、やめてYO! 兄ちゃん!」

真美「ま、ま、っ真美パーンチ!」ベコ

P『仮面を割ろうとするとは何とも無駄な』キュキュ

真美「こ、怖いよ。兄ちゃん。こ、これドッキリだよね?」

P『黙っておけばドッキリにしてあげるよ』

真美「ま、真美フック!!」ブン

P「!?」カランカラン

P「(俺の目の前に仮面がある。俺が顔に手を当てれば自分の体温を感じる)」

P「(仮面が外された)」

真美「え、兄ちゃん。そ、それ」

P「(しまった。火傷の痕が)」

真美「と、特殊メイク? そ、それとも……本物?」

P「双海真美。来い」グイ

真美「え、兄ちゃん?!」

真美「こ、怖いよ。兄ちゃん」

P『悪かったな。でも俺を恨まないでくれ』キュキュ

真美「恐い兄ちゃんは嫌だよ! 何で皆に黙ってたのさ!」

P「!!」

P『別にいいだろ。俺にだって事情があってフリップを使って顔を隠してるんだから』キュキュ

真美「もういい。皆にメール送る!」

P『ま、待て。早まるな! お前には話が!』キュキュ

真美「……」

真美「何?」

P『俺の顔を見たのはこの事務所でお前が初めてだ』キュキュ

P『皆に今、来られると、俺はこの事務所にいられなくなる』キュキュ

真美「……どういうこと?」

P『確かに仮面もフリップも使わなくてよくなるが俺は視線に耐えられないだろう』キュキュ

P『それに皆に恐怖感を植え付けてしまう』キュキュ

真美「真美は兄ちゃんのこと、恐い顔と怖い声だとは思うけど怖い人だとは思わないよ」

真美「今まで、ちょっと間だったけど兄ちゃんは優しいし、よくお菓子くれるし、遊んでくれるし、前にお姫ちんも言ってたけど兄ちゃんは夜遅くまで残ってデスクの上で寝てたって」

P『それ、知ってたのか』キュキュ

真美「だから、心配しないでよ」

真美「じゃあ、メール送っていい?」

P『ダメだ。やっぱり、こんな発表の仕方は良くないと思う。時が来たら俺から言うよ』キュキュ

真美「そっか。でも兄ちゃんがそういう気になったならもう安心だね。これからも頑張ろうね兄ちゃん!」

P『ありがとう。真美』キュキュ

真美「うん、じゃあ、お菓子頂戴!」

P『いいぞ。ほら、いっぱいあるから好きなの持ってけ』キュキュ

真美「やったー!」

P『じゃあ、このままレッスンに行ってきてください』キュキュ

真美「あ、もう敬語モードに戻るんだ」

P『普段はこれじゃないとよくないですからね』キュキュ

P「……」カタカタ

響「プロデューサー!」

P『何ですか?』キュキュ

響「あの映画の撮影のあと自分の仕事が増えたんだ。やっぱりこれってプロデューサーのおかげだよね!」

P『僕は何もしていませんよ。ただ、皆さんを輝かせたいだけです』キュキュ

響「それでもあの映画がきっかけなのはわかりきってるぞ。プロデューサーはすごいさー!」

P『お菓子をあげるのでそれ以上褒めないでください。恥ずかしいです』キュキュ

響「きょうはいないけどきっと貴音も美希も感謝してると思うよ。ありがとうね、プロデューサー」

P『恥ずかしいので、顔を見ないでください』キュキュ

響「顔って言っても仮面だよね」

春香「ただいま帰りましたー」

真「ただいまでーす」

雪歩「帰りましたぁ」

P『もうすぐ、皆帰ってきましたから皆と遊んでください』キュキュ

響「うん、わかったぞ。じゃあ仕事頑張ってね。プロデューサー」

P『はいはい』キュキュ

P「……」カタカタ

P「(腹減ったな。ラーメン食いに行こう)」

ラーメン店

P「(あれは……四条か?)」

P「……」チョンチョン

貴音「……」ゴクン

貴音「あら、貴方様。どうかされたのですか?」

P『いや、四条さんがこんなところにいるなんて珍しいこともあるもんだなと』キュキュ

貴音「確かにこの店には久方ぶりに来ましたが」

P「(この店には?)」

貴音「それよりも貴方様も一緒にらぁめんを食べましょう」

P『は、はい。そうですね』

貴音「貴方様、仮面が邪魔なのでは?」

P『ああ、これ口の部分取れるんですよ』キュキュ

P「……」パカ

P『いただきます』

貴音「いい食べっぷりですね」

P『ごちそうさまでした』

貴音「それでは、私も行きましょう」

P『あ、四条さん。少しついて来てくれませんか?』

貴音「はて、よろしいですが。わたくし何か?」

P『いえ、少し用があって』

P『歩きながらですみませんが、四条さん、私の顔見ました?』キュキュ

貴音「ええ、見ましたが。それがどうかいたしましたか?」

P『怖くて嫌いになりましたか?』キュキュ

貴音「人の顔を見て恐れ忌み嫌うなどしてはならないことです。わたくしは貴方様の顔はとても暖かく感じましたよ」

P『そう……ですか』キュキュ

貴音「して、用とは?」

P『いえ、やっぱりいいです。また今度で』キュキュ

貴音「そうですか。それではわたくしは事務所に戻ります」

P『私はもう少し外にいます。気を付けて』キュキュ

貴音「ふふ、心得ております」

P「とても暖かく……か」

P「もう少しかな」

美希「あ、プロデューサーなの!」

P『あら、星井さんどうしたんですか?』キュキュ

美希「今日はオフだから買い物なの。見て、いちごババロアだよ、プロデューサーにも一つあげる」

P『ありがとうございます』

美希「どういたしましてなの!」

美希「あ、プロデューサーはまだ戻らないの?」

P『いえ、ちょっと考え事がありまして』

P『アイドルにいうようなことでは……』キュキュ

美希「えー、気になるの!」

P『分かりました。一緒に事務所に行きましょう』キュキュ

事務所

P『ただいま、もどりました』

美希「美希も~」

P『皆さん集まってください』キュキュ

皆「ガヤガヤ」

P『もう腹をくくりました。私の声と顔を晒します』キュキュ

P『もうここで自分を隠すようなことはしたくない。でも多分、皆さんは私の声と顔を聞いて見て恐ると思います』キュキュ

P『俺は皆に嫌われることが怖い』キュキュ

あずさ「プロデューサーさん……」

P『それでも私は皆さんに伝えなきゃ気が済みません』キュキュ

春香「頑張って……」ボソ

P『もう、自分の言葉でしゃべります』キュキュ

P「俺はこんな声です。殺人犯かと思いました?」

雪歩「こ、怖いけど……我慢しなきゃ……」

P「そして、俺の顔。皆さん、今まで隠しててすみませんでした」プルプル

P「……」

真美「兄ちゃん、あとちょっとだよ」

P「……」

響「プロデューサー! 自分達! プロデューサーのこと信じてるぞ! 自分達のために一生懸命なプロデューサーは絶対に格好良いさー!」

P「我那覇……」

伊織「あんたね、そういうのはひと思いにやっちゃいなさい! どうなっても勇気を出したあんたを私が庇ってあげるわ!」

P「水瀬……」

真「プロデューサー、ボク達を信用じゃなくて信頼してくださいよ! ボク達、もう仲間じゃないですか!」

P「……」カタ

P「ありがとう、菊地。そうだよね。仲間だよな」

P「これが俺の顔だ。半分、とても醜いだろう。でもこれが現実だ。今まで、俺の顔を想像してた奴には申し訳ない」

貴音「貴方様、よくぞ勇気を振り絞りましたね」

P「俺はこれからもプロデューサーを続けたい。こんな顔のプロデューサーを隣に立たせてくれるか」

千早「私は気にしません! プロデューサーがくれた仕事を全てこなします。だからどうかここにいてください」

雪歩「……私は、プロデューサーがいいです。とっても誠実なプロデューサーがいいですぅ!」

亜美「兄ちゃんとトップアイドルになるまでは離してあげないYO!」

P「皆、ありがとう。俺は皆をこれ以上なく信頼している。心の底から」

やよい「ぷ、プロデューサーさん! 泣いちゃだめですー! 笑ってください!」

P「そうだな。笑ってたほうが皆も笑顔になれるもんな」

春香「プロデューサーさん! 私達のこと、これからもプロデュースしてくれますよね?」

P「おう、もちろんだ。皆まとめてトップアイドルにしてやる」

それから数年後

P「もう、皆、トップアイドルだな」

美希「そうなの! ぜーんぶハニーのおかげなの」

P「頑張ったのは皆だよ」

春香「プロデューサーの頑張りは私達が一番知ってますから強がりはよしたほうがいいですよ」

P「昔は声も顔も出してなかったのにな」

真「あ、そういえば、プロデューサーにきてた引き抜きの依頼はどうしたんですか?」

P「ああ、あれは会社のポストに手紙を入れてきたよ」


○○会社

社長「む、これは、彼からの手紙か。いい返事だろうな」

社長「な、なんだこれは!!」

社長「声も顔も出さなくていいなら働きます!?」


P「声も顔も出さなくて働けていたなんて夢のようだよ」

終わり

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