マミホーム。
っかり!・・・っかり!
マミ「・・・何の音かしら?」
うっかり!うっかり!
マミ「誰!?ベランダに誰かいるの!?」
八兵衛「あっしの名は八兵衛といいやす・・・へへっ」
マミ「へ・・・・?」
八兵衛「えーっと、巴マミさん・・・でよろしいでござんすか?あっしと契約して魔法少女になってくれやせんか?」
マミ「いやぁーー!!!!」
八兵衛「おっと、こいつはいけねえや。もっと慎重に挨拶するべきでやしたね」
八兵衛「ついうっかりしちまいました・・・へへっ」
マミ「ベランダに変な物が出た!!!!」
八兵衛「仕方ありやせんが、この場は一旦ドロンさせて頂きやす」
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マミパパ「マミ、一体何を騒いでいるんだい?」
マミママ「そうよ、こんな夜に・・・ゴキブリでも出たの?」
マミ「パパ、ママ!!ベランダに!!」
マミパパ「ベランダ?何も居ないじゃないか」
マミ「でも、さっきは居たの。喋る猫っぽいぬいぐるみが」
マミパパ「ははは、マミ。きっと夢でも見たんだよ」
マミママ「そうよ。マミったら何時まで経っても子供なんだから」
マミ「むー、本当に居たの。それに私はもう子供じゃ無いのよ。もう中学生なんだから!」
次の日の放課後。
マミ(昨日のアレ・・・本当に夢だったのかしら?魔法少女がどうとか言っていたけど)
マミ(もしかして!!私って選ばれし者とかだったり!?)
マミ(それで異世界に召喚されて魔王を倒したりして!!)
マミ「大変、こうしちゃいられないわ。早くお家に帰って色々考えないと・・・・あれ?」
そこには白い猫の様なぬいぐるみが居た。
マミ「あの白いぬいぐるみは昨日と同じのかしら?しかも、動いているから・・・ぬいぐるみじゃ無い?」
マミ(えーっと、どうしよう。話しかけて見ようかしら?)
マミ「あの・・」
八兵衛「おや?そこに居られるのはマミのご隠居じゃありやせんか」
マミ「ご・・ご隠居?」
八兵衛「昨日は大変失礼いたしやした、へへ」
マミ「あなたは一体・・なんですか?」
八兵衛「おっと、コイツはうっかりだ。まだ自己紹介がすんでやせんでしたかね?」
八兵衛「あっしの名は八兵衛と言いやす。あっしと契約してくれる少女を探しておりやして」
マミ「契約?」
八兵衛「へぃ。あっしと契約して魔法少女になってよ・・・ってな具合でして。もちろん、只でとは言いやせん」
八兵衛「契約してくれたらなんでも・・・とはいきやせんが、可能な限り願い事を叶える事ができやす」
マミ「願い事を?本当に?」
八兵衛「へぃ。ですがあくまで可能な願い事に限りやすが・・・言ってみれば劣化版シェ○ロンですかね?」
マミ「わぁ♪凄い!何にしようかしら♪」
八兵衛「いやいや。マミのご隠居、そうは問屋が卸しやせん。人生楽ありゃ苦もあるさってなもんでさぁ」
マミ「とんや?楽?」
八兵衛「願い事を叶える代わりにご隠居には魔法少女になって頂きやす、へぃ」
マミ(またご隠居って言った)
マミ「それで魔法少女ってなんなの?」
八兵衛「へぇ、簡単に言いやすと悪いヤツと戦う仕事人って所でやすかね?」
マミ「悪いヤツ?」
八兵衛「この世には普通の人間には見えない魔女や使い魔って云うふてぇ野郎が居りやす」
八兵衛「魔法少女にはその連中を退治してもらいやす」
マミ「魔女?それって魔法少女とは違うの?」
八兵衛「えーご隠居にも分かる様に簡単に言いやすと・・・魔法少女はアナ○ン・スカイウォーカーでして」
マミ「ジェ○イの騎士の?」
八兵衛「へぃ、そうでござんす」
八兵衛「そいで魔女って言うのは」
マミ「○スの暗黒卿ね」
八兵衛「いえ、それはちょいと違いやす。正確にはダース・ベ○ダー・・・ですかね?」
マミ「ふーん・・・・え?」
マミ「それって魔法少女が・・・・暗黒面に落ちると魔女になるって事?」
八兵衛「へえ、その通りでござんす」
マミ「そんなの無理!!絶対無理!!むーりー!!」
マミは慌ててその場を逃げ去った。
八兵衛「おっと、こいつはうっかり。つい秘密を喋っちまった、へへっ」
数日後、なんやかんやで事故ったマミカー。
マミ「パパ・・ママ・・・・・どうしたの?返事をして・・・パパ、ママ」
マミ(私・・・このまま・・死んじゃうの?)
マミ「誰か・・助けて・・」
八兵衛「こいつぁてえへんだ!ご隠居無事ですかい?」
マミ「・・・・誰?」
八兵衛「あっしです。八兵衛です」
マミ「・・・八兵衛?」
八兵衛「ご隠居、このままじゃご隠居はお陀仏ってなもんですぜ」
八兵衛「生憎とあっしにはご隠居を助ける様な力はありやせんが、ご隠居ならこの状況を何とか出来る事を思い出してくだせえ」
マミ「・・なにを・言ってるの?」
八兵衛「契約の話でさぁ。何でもご隠居の願いを一つ叶えるってやつでさぁ」
マミ「・・・・・・」
八兵衛「手遅れになる前に、清水の舞台から飛び降りる覚悟って奴を見せて下せえ!ご隠居!」
マミ「・・・助けて・・・」
八兵衛「合点承知のすけでさぁ!」
八兵衛(さぁ、助ける・・・・ってありゃ?一体誰を助けりゃいいんでしょうかね?)
八兵衛「ご隠居?・・・ご隠居!」
八兵衛(こりゃあ、うっかり。誰を助けるのか聞き忘れちまいやした。ご隠居は気を失っちまいやしたし)
八兵衛(普通に考えればご隠居を助ければ良いんですかね?いやいや、ご隠居のご両親の事・・・いや、もしかするってぇと・・・このボロボロになった車を助けて欲しいって可能性も)
八兵衛(ああー、面倒な事になっちまいやした・・・・いや、まとめて全部助けりゃ良いって事ですかね?)
八兵衛「契約は成立しやした、ご隠居の願いはイントロペーを凌駕しやした」
こうして事故自体が無かった事になった。
結果、巴マミとマミパパ、マミママは無傷。マミカーも新品同然に修復された。
マミホーム。
マミ「・・・あれ?私・・・事故は?」
八兵衛「ご隠居、ご無事でなによりでさあ」
マミ「八兵衛?八兵衛が助けてくれたの?」
八兵衛「正確にはご隠居の願いをあっしが叶えたっていうのが正確でして」
マミ「願い?・・・!?もしかして、私!あなたと契約しちゃったの?」
八兵衛「へい」
マミ「私・・・魔女になっちゃうの?」
八兵衛「その可能性も否定は出来やせんが・・・先ずはそうならねえ様に現状を正しく認識するのが良いと思いやす」
マミ「・・現状?」
八兵衛「へえ、先ずはソウルジェム。こいつぁ、魔法少女にとっての魂でありやして」
マミ「ソウルジェム」
八兵衛「魔法少女はこのソウルジェムを使って変身しやす。ちょっとやってみてはどうですかねえ」
マミ「・・・こうかしら」
マミは変身した。
マミ「ほ、本当に変身した。私・・・魔法少女になったの?」
八兵衛「そうでやす」
八兵衛「それから変身中、ソウルジェムはご隠居の頭についておりやすので気を付けてくだせえ」
マミ「えーと、これかしら?」
八兵衛「あとソウルジェムの有効範囲は100メートルほどになっておりやすので、こっちも気を付けてくだせぇ、へへっ」
マミ「有効範囲?何それ?」
八兵衛「ですから、そのソウルジェムはご隠居の魂でして」
マミ「・・・・え?」
八兵衛「魂をあんまり体から離すと体の機能が止まってしまいやす。その距離が100メートルでして」
マミ「どうして私に黙っていたの!?八兵衛!!」
八兵衛「いやぁ、説明する暇がありやせんでしたので・・・・」
マミ「こんなのじゃ私・・・ゾンビにされた様なモノじゃない!ゾンビにされたらもう死ぬしかないじゃない!」
八兵衛「いやいやいや、ご隠居。ゾンビとは違いやす。体は別に腐っておりやせん」
八兵衛「そもそもゾンビっちゅうのはブードゥー教のもんでして、ご隠居の思って居る一般的なゾンビのイメージを世界中に定着させたのはとある映画監督でして・・」
マミ「・・・」
八兵衛「ああ、でも死者を蘇生させてこき使うって事では間違っては居ないかも知れやせんが」
マミ「出てって・・・出てって八兵衛!!」
八兵衛「わかりやした。今日はこの辺でドロンとさせて頂きやす、へい」
八兵衛(またうっかり口が滑っちまいやしたね)
マミ(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
マミ「私・・・もう人間じゃなくなっちゃったの?・・・ぐすんっ・・・・・」
マミ(石ころに変えられて・・・・その内に魔女になっちゃって・・・・・こんなのってあんまりだよ)
マミ(・・・・異形の姿になって・・・滅びの運命を背負って・・・・人知れず人類の為に戦う・・・魔法少女になっちゃった・・・)
マミ(・・・・・・・・でも、異形の姿になってまで皆の為に闘い続ける私を・・・ちょっと格好良いかもなんて思ってしまうのでした)
深夜の公園で変身したマミが魔法の練習をしていた。
マミ「えい!・・・・えっと・・この技の名前は『トッカ』ね」
八兵衛「普通にリボンで切っただけに見えやしたが?」
マミ「八兵衛!?あなた、何時の間に!」
八兵衛「ついさっき来た所でして、へへっ。それにしてもリボンが武器って云うのはちょいと珍しいですねぃ」
マミ「・・・どっかに行ってちょうだい」
八兵衛「いやいや、ご隠居。そう邪険にしなさんな。これでもこの八兵衛、インキュベーターの端くれ」
八兵衛「色々と助言も出来やすし、情報ももっていやす」
マミ「・・・インキュベーター?何それ?」
八兵衛「へえ、あっしの種族名みたいなもんでやして・・・例えばご隠居には巴マミと云う名がありやが、地球人類に分類されやす」
マミ「と言う事は八兵衛は他にも居るって事なのかしら?」
八兵衛「へえ、おりやす。あっしの他にはキュゥべえって野郎が居りやして」
マミ「九兵衛?」
八兵衛「と言うよりあっし以外は殆どがキュゥべえでござんす」
マミ「その九兵衛もあなたと同じ様な外見なのかしら?」
八兵衛「へい、見た目はあっしと同じでございやす。違うのはあっしの様にうっかりもんじゃ無えって所と、とても可愛らしいって所ですかねぇ」
マミ「可愛らしい?」
八兵衛「へい」
マミ「・・・だったら、私・・・契約するなら九兵衛の方が良かったわ。あなた、頼りにならなそうなんですもの」
八兵衛「へへっ、あっしも良く言われやす」
マミ「それで、そのうっかり者さんは私にどの様なアドバイスを下さるのかしら?」
八兵衛「そうですねぃ、ご隠居は飛び道具は持って無いんですかい?」
マミ「飛び道具?」
八兵衛「弓でも鉄砲でも風車でも投擲武器でもかまいやせん」
マミ「・・・・でも」
八兵衛「でももヘチマもありやせんぜ。飛び道具のリーチが人類の今日の繁栄を形作ったと言っても過言ではないんですぜぃ」
マミ「それは本当なの?」
八兵衛「ほら・・この漫画にも書いてありやすし」
マミ「漫画?私、漫画はあまり読まないのよ。・・・それでどんな内容の漫画なの?」
八兵衛「火星でゴキブリと戦う話でさぁ」
マミ「ゴ、ゴキブリ?」
八兵衛「それよりもご隠居。飛び道具でさぁ」
マミ「・・・飛び道具・・・飛び道具・・・急に言われても・・・」
八兵衛「しかたありやせんねぇ、武器大全集~♪」
マミ「どうしたの八兵衛、急に変な声を出しながら背中から本を取り出して・・・」
八兵衛「いえね、前に知り合った魔法少女から物を取り出す時はこうやると女の子は受けるって言っておりやしたので」
八兵衛「それでご隠居にはこの本を貸す事にしやす」
マミ「え?」
八兵衛「これを見てどの武器が自分に合うのかじっくり考えてみてくだせぇ、へへっ」
マミ「あ・・ありがとう」
マミは武器大全集を受け取った。
一週間後、とある魔女結界。
マミ「これで止めよ、ティーロ!!」
バンッ!
魔女「ギャー、ヤラレタ!」
マミ「やったわ♪」
子供「うわーん、ママー」
マミ「もう大丈夫よ」
マミは魔女を撃破し、結界に囚われていた子供を救出した。
マミ「どう?八兵衛♪私、勝ったわ!!」
八兵衛「へい、見事な勝利でやした」
マミ「所で魔女の落としたこれって何なのかしら?」
八兵衛「そいつぁ、グリーフシードっていいやす。」
マミ「グリーフシード?」
八兵衛「簡単に言いやすと魔女の卵です」
マミ「た、卵!?」
八兵衛「ですが、その状態では特に危険はありやせんので安心して下せぇ」
八兵衛「それとグリーフシードにはソウルジェムの穢れを吸収する作用がありやす」
マミ「・・・本当だわ、ソウルジェムが綺麗になってく」
八兵衛「ソウルジェムは出来るだけ綺麗に保つのが強い魔法少女の秘訣ってやつでさぁ」
マミ「なるほど、そうなのね」
八兵衛「へい、ソウルジェムが真っ黒になっちまうと・・・魔女になっちまいやすからねぇ」
マミ「・・・分かった、十分に気を付けるわ」
八兵衛「所でご隠居には必殺技とかは無いんですかぃ?」
マミ「ひ、必殺技?」
八兵衛「へい」
マミ「そんな、急に言われても・・・どうすれば良いのか分からないし・・」
八兵衛「要はイメージが大切でやして」
マミ「イメージ?」
八兵衛「魔法少女に大切なのは難しい理屈理論じゃありやせん。大体は不思議な力で何とかなるもんでして」
八兵衛「その不思議な力を具現化するのに一番必要なのが・・・」
マミ「・・・・イメージね。でも・・・精々、大きな大砲くらいしか」
八兵衛「何でも良いんでやすよ。好きなアニメとかゲームとか漫画から取っても良いですし」
マミ「私、あんまりそう言った物はあまり知らないのよ」
八兵衛「そう・・でやしたね。でしたら、これをお貸しいたしやす」
八兵衛「サブカルチャー♪」
マミ「八兵衛の背中から段ボールが出て来た?一体なんなの?」
八兵衛「中には色々なものが入っておりやす。ぜひこれでイメージを鍛えてくだせえ」
マミ「わ・・分かったわ」
マミは漫画、ゲーム、アニメDVD等を手に入れた。
一週間後。
八兵衛「おや?ご隠居、それはリボルバーですかい?」
マミ「ええ、そうよ。イメージを鍛えたお蔭で作りだす事が出来たのよ、ふふ」
八兵衛「そいつぁ、おめでとうございやす」
マミ「私の装填はリヴォルツィオーネよ」
八兵衛「・・・・・」
マミ「ガットセルヴァティコは獲物を逃がさない」ビシッ!!
マミ「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
マミ(・・・チラッ・・・チラッ・・・)何かを期待する視線
八兵衛「・・・なるほど、良いセンスでやすね」
一週間後。
マミ「私は生み出す者。イメージするのは常に最強の自分自身」
八兵衛「・・・・・・・・・」
マミ「八兵衛・・・あの魔女だけど、別に倒してしまっても構わないのよね?」
八兵衛「・・へい」
マミ「体はリボンで出来ている。血潮は糸で心は宝石。幾度の結界を越えて不敗、ただの一度も敗走は無く、ただの一度も理解されない」
マミ「少女は一人、魔女の結界で銃を撃つ。ならば私の生涯に意味は要らず!この体は無限の糸で出来ている!!」
マミ「無限の魔弾(パロットラ・マギカ・エドゥ・インフィニータ)」
魔女「ギャーー、チュウニクサイ!!」
一週間後。
八兵衛「あの、ご隠居・・・その不知って書いてある仮面はなんなんですかい?」
マミ「私は巴マミでは無い。今の私の名は・・エニグマよ」
エニグマ?「魔法少女は生きて死ぬだけよ」
エニグマ?「私は一度死んだわ。精神的には兎も角、肉体的には死んだわ。でも、その死を否定した人が居たわ」
魔女「ミテテイタイタシイ、シネ」
エニグマ?「不許(ゆるさず)。その行為を許す訳には行かない」
エニグマ?「お前は私には絶対勝てない、何故なら私はお前だからだ」
エニグマ?「不知法・不生不殺(しらずのほう・いかさずころさず)」
魔女「ギャー、マケタ。アト、ワタシハオマエノヨウニイタイヤツジャナイ」
一週間後。
マミ「当たらなければどうと云う事は無いわ。・・・見えた、そこ!!」
バン!バン!
使い魔A「ギャース」
マミ「出て来なければやられなかったのに・・・」
八兵衛「・・・・・・」
マミ「遊びでやっているのじゃないのよ?」
八兵衛「・・・・・・・・」
使い魔B「ヤベッ・・ヘンナノニミツカッタ」
そして、変な仮面を装着するマミ。
マミ・ル・クルーゼ「これが魔女の夢よ。魔女の望み、魔女の業。他者より強く、他者より先へ、他者より上へ。競い、妬み、憎んでその身を食い合う」
使い魔B「ナニイッテンノ、コノヒト?」
マミ・ル・クルーゼ「私は結果よ、だから知っているわ。自ら育てた闇に喰われて、魔女は滅ぶと・・・。」
バンッ!バンッ!
使い魔B「ドギャース!」
マミ・ル・クルーゼ「まったく厄介ね、魔法少女って。・・・こんなのあってはならない存在だというのに・・・きっと、知れば皆が望むでしょうし」
マミ・ル・クルーゼ「魔性少女になりたい、魔法少女でありたいって・・・だから許されないのよ。魔女も魔法少女という存在も」
使い魔C「イヤ、ソノリクツハオカシイ」
マミ・ル・クルーゼ「いくら叫んでも今更変わらないわ。これが定め・・・知りながら突き進んだ道でしょ?正義と信じて分からないって逃げて」
使い魔C「マジョハ、ソンナモノジャナイ」
マミ・ル・クルーゼ「知らないで引かないで・・・その果ての終局よ。もう止められないわ。そして滅ぶ・・・魔女は滅ぶべくして・・」
使い魔C「ソレシカシラナイアナタガ!」
マミ・ル・クルーゼ「私にはあるのよ、すべての魔女を滅ぼす権利が!」
使い魔C「ソレデモ、守リタイ結界ガアルンダ!」
バンッ!バンッ!
使い魔C「アハハ、ボクハ・・・ボクハネェ・・・」
マミさん仮面解除。
マミ「人の命を大切にしない魔女はダメよ、生きてちゃいけない奴らなのよ」
使い魔D「キサマ、マジョガ、マジョガイッパイシンダンダゾ!」
マミ「あなたもその仲間に入れてあげるって言っているのよ?」
バンッ!
使い魔D「マミ・・オマエハオレノ・・」
魔女「ワケガワカラナイヨ」
八兵衛「あっしもさっぱりでさぁ」
マミ「あなたの様な分からず屋は・・・撃ちます」
バンッ!
魔女「ボ、ボウリョクハイケナイ」
マミ「あなたを殺します」
バンッ!バンッ!
魔女「オカシイ、オカシイデスヨ、マホウショウジョサン」
そして、魔女は死んだ。
八兵衛「お疲れさんです、ご隠居。っとご隠居、怪我をなさっておいでですが大丈夫でござんすか?」
マミ「大丈夫、問題はないわ。身体(こんなの)ただの飾りよ、八兵衛にはそれが分からないのね」
さらに一週間後。
マミ「なるほど、今回は音楽対決って訳ね」
八兵衛(いやいや、今回も普通の魔女なんでやすが・・・)
マミ「やれやれね。私はカントリーミュージックはあんまり好きじゃないんだけど・・・」
使い魔「オマエハ、一体ナニヲ言ッテイルンダ」
マミ「でも、あなたにも私にも・・・音楽なんて無理よ」
使い魔「ファッ!?」
マミ「だって、私もあなたも・・・ただのメトロノームなんですもの」
ザクッ!!
使い魔「ギャー」
八兵衛(・・・・普通にリボンで切りやしたね)
マミ「・・・今回の魔女は手強そうね。もしかしたら生きて帰れないかも知れないわね」
魔女「マジデ!?」
八兵衛(・・・・いやいやいや、普通に倒せそうな魔女でやすが?)
マミ「でもね・・・私は言われたのよ?あの子達に・・また・・ピアノを弾いてねって・・」
魔女「本当ニ、ナニヲ言ッテイルンダ?」
八兵衛(ご隠居がペアノ?)
マミ「私は拍手と共に言われたのよ!!また、ピアノを弾いてねって!!」
バンッ!バンッ!
魔女「訳ノ分カラナイ事ヲ!!思考回路ガ壊レタノカ?」
マミ「私は言われたのよ!また・・・ピアノを弾いてねって!!」
バンッ!バンッ!
魔女「ギャーーー!!」
マミは魔女を倒した。
そして・・・
マミ「ああ・・・次は・・・あの子達に何を弾いてあげよう・・・・かしら・・・・・・」
八兵衛「ご隠居」
マミ「・・・・なに?」
八兵衛「帰りやしょうか」
マミ「・・・・そうね」
そして一週間後、とある魔女結界。
マミ「夜よりもなお深き者、闇よりもなお暗き者。我ここに汝に願う、我ここに汝に誓う」
マミ「我らが前に立ち塞がりし全ての愚かなるものに、我と汝が力もて、等しく滅びを与えんことを『神滅弾(ティーロ・スレイブ)』」
バーンッ!!
使い魔A「ギャー!!」
マミ「・・・うーん、今のはちょっとしっくり来ないわね」
マミ「我は放つ、閃光の魔弾!!」
バンッ!
使い魔B「コノ極悪魔法少女メーーー!!」
マミ「これもいまいちね。・・・我は見る、コッポラさんの先殴り!!」
ドゴッ!
使い魔C「訳分カラン!!」
八兵衛(今日は乗りが悪いでやすね)
マミ「小さき者よ、魔女の目に砂を撒け・・・永遠の眠りに誘いなさい」
バンッ!バンッ!
魔女「ディードッ!!」
八兵衛(・・・普通に銃で撃ちやしたね)
マミ「八兵衛」
八兵衛「なんでやんしょ?」
マミ「やっぱり相性って言うのは大切なのね」
八兵衛「・・・・でやすね」
また一週間後、魔女結界内にて。
マミ「ピザ・モッツァレラ♪ピザ・モッツァレラ♪レラレラレラレラレラレラ♪ピザ・モッツァレ~ラ♪」
使い魔A「侵入者ハッケン!」
バンッ!
使い魔A「ギャー」
マミ「ゴルゴン・ゾーラ♪ゴルゴン・ゾーラ♪ゾラゾラゾラゾラゾラゾラ♪ゴルゴン・ゾ~ラ~♪」
使い魔B「人間認識、人間認識」
バンッ!
使い魔B「機能・・停止」
マミ「チーズ♪レラレラ、モッツァレラ♪」
八兵衛「ご隠居、今日は何時になく・・・普通?でやすね」
マミ「そうね・・・新しいイメージが沸かないのよね。何て言うか・・・銃にピタッと噛みあう様なイメージが・・・」
使い魔C「オ姉サン、一緒ニピクニックニ行キマ・」
バンッ!
使い魔C「・・綺麗ダワ・・・空・・」
マミ「銃・・・大砲・・・爆弾・・・」
八兵衛「そういう時は発想の転換が必要でやすかね?」
マミ「発想の転換・・・発想の転換・・・私の武器はそもそも銃じゃない・・・・銃は・・」
使い魔D「オ前ニハ、怒リガ足リナイ」
バンッ!
使い魔D「フューリー!!」
マミ「私の武器・・・いえ、力の起源は『リボン』」
マミ「!?リボンが収束して・・人の形に!?これが私の新しい力?」
使い魔E「・・・!?」
マミ「使い魔がこんなに近くに!?」
だが、使い魔が襲って来る寄りも先にリボンで出来た人型が使い魔を殴り付けた。
ボコッ!
使い魔E「ハギッ?」
マミ「これは眠れる奴隷から目覚めた心・・そして、走り出す・・未来を描く為に!!・・・これが私の新しい力『クラ☆リス』よ」
そして、マミはクラ☆リスを使って使い魔を殴り続けた。
マミ「ティロティロティロティロティロティロティロティロティロティロォ!!!」
マミ「・・・アリーヴェデルチ(さよならね)」
使い魔E「ギャーーーー!」
八兵衛「ご隠居」
マミ「・・・・八兵衛」
八兵衛「なんでやんしょ?」
マミ「今の・・・ディ・モールト、ベネ(凄く良し)だったわ」
マミ「ふふ、うふふふ・・・」
使い魔F「!?」
マミ「何球続ける?ティロティロティロティロティロティロォ!!・・・千球よ!」
使い魔F「ギャース!!」
マミ「私は絶望に落ちても、魔女結界の中で星を見て居たい」
魔女「ヤベッ!!逃ゲロ!!」
マミ「逃がさないわよ」
魔女「!?」
マミ「既にこの結界内に私のリボンを張り巡らしたわ!喰らえ、魔女!半径20メートルのクラ☆リスを!!」
マミ「ティロティロティロティロティロティロティロティロティロティロォ!!!」
マミ「・・・ボラーレヴィーア(飛んで行きなさい)」
魔女「コンナ・・貧乏人ノカスニ!!」
そして魔女は死んだ。
八兵衛「ご隠居、喜びの所すいやせん。一つ気になった事がありやして・・」
マミ「どうしたの、八兵衛」
八兵衛「ティロ(射撃)って言っていやすが・・・殴っていやすよね?」
マミ「・・・・え?」
後日、魔女結界にて。
マミ「これが私の新しい力。最後の奇跡を起こす力・・・名付けて『カラフィナ』」
マミ「行きなさい、カラフィナ」
カラフィナと名付けられたのは飛行船と戦闘機を合体させた様な全長1メートルほどの物体。
そして、カラフィナは迫りくる使い魔に向かって飛びながら
マミ「ティロティロティロティロティロォ!!」
バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!
内臓してある銃を撃ちまくる。
マミ「今よ!カラフィナ、第一の能力『マギカ』」
魔女「!!」
だが、その能力を発揮するよりも先に突然現れた魔女の攻撃を受けてカラフィナは粉々に砕け散った。
マミ「カ・・カラフィナーーーッ!!!!!・・・・・・・・・ガクッ」
魔女「・・・?」
八兵衛「あの、ご隠居。あれは別にご隠居の魂のヴィジョンとかじゃありやせんので、ダメージのフィードバックは無ぇはずでやすが?」
マミ「はっ・・・そ、そういえばそうだったわね。ビックリしたじゃない、もー!!」
マミ「魔女さん・・・覚悟は良いかしら?私は出来ているわよ」
魔女「モ、モシカシテ・・・ティロティロデスカーッ!!!」
マミ「ペッラプント(その通り)」
マミ「ティロティロティロティロティロティロティロティロティロティロォ!!!」
マミ「ティロ・フィナーレ!!」
その後、いつも通り魔女は死んだ。
またまた一週間後、魔女結界内。
魔女「!!」
マミ「待ちたまえ、こんな顔をしてはいるが私は魔法少女では無い。巴マミ・・・いや、オリジナルに敬意を表して巴マミ・ファンタズマとでも名乗って置こうかな?」
マミ・F?「あの時、あの魔女は僕のオリジナルの意識をスキャンした様だね。いわば、魔女が死の瞬間に見た死神のトラウマ・・・それが私の様だ」
魔女「・・?」
マミ・F?「そして、あなたも私も同じ魔翌力の量子振動を意識の座として共有しているらしい」
魔女「ガァアアア!!」
マミ・F?「どうやら、あなたは世界の敵ね」
襲い来る魔女だったが、その動きが急に硬直した。
魔女がそれを認識した時には、魔女の全身に細く強靭な糸が絡み付いていた。
マミ・F?「同情はしないわ。なにしろ、私は自動的なんでね」
・・・魔女は死んだ。
八兵衛「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そして、別れの時がやって来た。
八兵衛「えーーーご隠居、あっしは一度この辺でお暇させて頂きやす」
マミ「・・・え?どうして?」
八兵衛「ご隠居はもう十分強いと思いやす。あっしが傍にいてもあんまり助けにはならないと思いやして・・・」
マミ「・・・そんな」
八兵衛「それから、あっしの代わりにキュゥべえの野郎が来ると思いやすが」
マミ「・・・九兵衛」
八兵衛「あの野郎は行く先々で色々と面倒事を起こすのが得意でしてね。よく契約した魔法少女と喧嘩するらしく・・」
マミ「そうかしら?八兵衛も色々と面倒を起こしそうな感じがするけど?」
八兵衛「おっと、こいつぁうっかりしてやした、へへっ」
八兵衛「では、あっしはこの辺で失敬させて頂きやす」
マミ「また、会えるわよね?」
八兵衛「そいつぁ、御天道様にで聞いてくれでござんす」
こうして八兵衛は旅にでた。
巴マミ編終了。
佐倉杏子編。
※一部他作品のキャラっぽいのが登場します。
見滝原の隣町風見野。
杏子パパ「今の教会の教えでは・・・本当に苦しんでいる人々を救う事が出来ない」
杏子パパ「教典の文言はもう古い。山羊を飼ってローブを着ていた時代の文言では・・・今の時代の人々を救う事は出来ない」
杏子「と、父さん」
杏子パパ「こんなにも絶望があふれている世の中には・・・新しい信仰が必要だ」
杏子パパ「今こそ新しい教えが必要なんだ、暗く荒んだ今だからこそ・・・・・。」
杏子パパ「だが・・・私がこんな事を言っても誰も受け入れてはくれないだろう」
杏子「あたし、父さんの言っている事正しいと・・」
八兵衛「そいつぁ、せかっちってもんだ」
杏子「え、誰?」
杏子パパ「急にどうしたんだい、杏子?」
杏子「今、誰か知らない人の声が・・」
杏子パパ「ん?誰も居ない様だが」
杏子「・・・気のせいだったのかな?」
教会の庭を掃除している杏子。
杏子「さっきのアレ・・・本当に気のせいだったのかなあ?」
八兵衛「一体何がですかい?」
杏子「うわっ!誰・・・何だよお前?ぬいぐるみか?喋った?」
八兵衛「あっしは八兵衛というケチなインキュベーターでござんす」
杏子「八兵衛?インキュ?ベータ?」
八兵衛「まあ、何かよく分からない不思議生物とでも思っていただければ幸いでござんす」
杏子「夢・・・じゃないよな」
八兵衛「さっそくですが契約の内容を説明いたしやすね」
杏子「え?契約?そんな行き成り言われても困るよ」
八兵衛「いえね、前に契約した娘には『契約する前にきちんと全部話しやがれコンコンチキメ』と叱られちまいやしてね」
八兵衛「まあ、あの場合自体が切迫していたって言うのも事実なんですがねぇ」
八兵衛「ですから、今回はなるべく早く丁寧に説明する事にしたんでやんすよ、へへっ」
杏子「???・・・だから話が全然見えないよ、契約って何?新聞でもとって欲しいの?」
八兵衛「おっと、こいつぁいけねえや。ついうっかり一番大切な事を言い忘れちまいやした、へへっ」
八兵衛「佐倉杏子、あっしと契約して魔法少女になりやせんか?」うっかり♪
八兵衛「とりあえず一通り説明いたしやす、親分」
杏子「お、親分?」
八兵衛「親分はあっしと契約して魔法少女になって欲しいんでやんす。その代わり、あっしは親分の願いを一つ叶える事が出来やす」
杏子「願いを?それって何でも叶うのか?」
八兵衛「何でもとは言い切れやせんね。あくまで親分の魔法少女の才能に見合った程度の願いって事になりやす」
八兵衛「まあ、シェン○ンが地球にやって来るサイ○人を倒せなかったのと同じですかねぇ」
八兵衛「ただあっしだったらサ○ヤ人は倒せませんが、ナ○パとベ○ータの乗っている宇宙船の軌道を変えて太陽に突っ込ませる事で解決いたしやすが」
杏子「ああ、なるほど。そうすれば解決するよな、うん」
八兵衛「で、話を戻しやす。魔法少女になるとソウルジェムっちゅう変身アイテムをもらえやす」
八兵衛「そいつを使って魔法少女に変身し、魔女やその子分の使い魔と戦って貰う事になりやす」
杏子「ソウルジェム?魔女、使い魔?」
八兵衛「ちなみにソウルジェムは魔法少女の魂でして」
杏子「魂?それって・・・刀は武士の魂だ・・・そんな感じか?」
八兵衛「いえね、文字通りの意味でしてね。契約した少女の魂を体から抜き出してソウルジェムに変えるって事でして」
杏子「・・・え?」
八兵衛「ソウルジェムから体を操作出来る範囲は100メートルになりやす。それを越えると体は停止しやす」
杏子「・・・・え・・え?」
八兵衛「次は魔女の説明ですかねぇ。魔女は色々な姿をしておりやす。そして、普段は結界の奥深くに隠れ潜んでおりやして」
八兵衛「精神的に参っている人間を自分の結界の中に引きずり込んで殺したりしやす」
八兵衛「ああ、ちなみにソウルジェムは魔法を使ったり魔法少女の気分が落ち込むとドンドン穢れて行きやして」
八兵衛「限界まで穢れると、魔法少女は魔女になりやす、へぃ」
八兵衛「まあ、こんな具合でやして・・・親分、是非あっしと契約して魔法少女に・」
杏子「そんなの絶対やらないよ!!」
八兵衛「・・・あ」
杏子は走り去って行った。
八兵衛「またうっかりとやっちまったみたいですねぇ、へへ」
例によって今の信仰は古いと言って新興宗教っぽい事を言いだす杏子パパ。
杏子パパ「何故だ、何故誰も分かってくれないのだ」
そして、例によって信者から総スカンされ本部からも破門される杏子パパ。
杏子「・・・父さん」
杏子妹「お姉ちゃん・・・お腹空いた」
杏子「ちょっと待ってて、裏庭に確か野イチゴが・・・」
杏子妹「リンゴは?」
杏子「今日は果物屋さんがお休みなんだ」
杏子妹「えー、昨日もお休みだったよ」
杏子「きっと連休なんだよ」
八兵衛「リンゴでしたらあっしが持ってやすぜ」
杏子「・・・おまえ!?」
杏子妹「お姉ちゃん?どうしたの?」
杏子「モモ?こいつが見えないか?」
杏子妹「????」
八兵衛「普通の人間にはあっしは見えやせんぜ。それよりも・・・リンゴ~♪」
杏子「・・・・・」
八兵衛「どうしたんだい?親分、うーふふー。大好きなリンゴだよ~」ドラ声
杏子「・・・いらない」
八兵衛「何をそう警戒してるんですかい?別に普通のリンゴですぜぃ」
杏子「・・・・」
八兵衛「流石にあっしもリンゴの一つ二つと交換で魔法少女になれとは言いやせん、これは単純な好意と計算でやんす」
杏子「・・・・・分かった、貰って置いてやるよ」
その後、信者がどんどんと減って行った杏子パパは寄付を貰えなくなりその日の食べの物にも困る様になった。
杏子「なんでだよ、なんで誰も父さんの言う事を聞いてくれないんだよ」
杏子「父さんは間違った事は言ってない、ただ人と違う事を言っているだけなのに・・・」
八兵衛「人と違う事って言うのが問題なんじゃないでやすかねぇ」
杏子「・・八兵衛!?」
八兵衛「2000年くらい前に神の子と言われている人も最後には磔刑になりやしたし」
八兵衛「その後しばらくの間はその信者たちも迫害の対象になりやした」
杏子「・・・・・」
八兵衛「親分だってそれくらいは知っておりやすでしょ?」
杏子「でも・・・・・。なあ、八兵衛・・・私はどうすれば良いと思う?」
八兵衛「そうですねぇ。選択肢は大きく分けて四つですかねぇ」
杏子「・・・四つ」
八兵衛「一つ目は親分のお父上が聖職者を止めて普通に働く事ですかね。次は教会の本部にご免なさいをして破門を解いてもらう事」
八兵衛「三つ目は親分と妹さんは教会を出て、親戚さんや児童福祉施設に御厄介になる事ですかねぇ」
八兵衛「四つ目はあっしと契約する事ですが・・・最後のはあんまりお勧めはしませんねぇ」
杏子「なんでだよ、あんたはあたしに契約して欲しいんだろ?」
八兵衛「おっと、ついうっかり口が滑っちまいやした・・・へへっ」
杏子「あんたさあ・・・絶対営業職には向いて無いと思うよ?」
八兵衛「あっしもそう思いやす」
更に厳しくなる杏子の境遇。
碌な食べ物は無く、塩を食べ、水を飲んで飢えをしのぐ毎日が続く。
杏子「せめて豆のスープでいい、神様お願いします」
家畜王「家畜に神はいない」
杏子「え?」
八兵衛「どうかしやしたんですかぃ?」
杏子「今、変な声が・・・」
八兵衛「ああ、時々ありやすね。まあ、幻聴みたいなもんですよ、へぃ」
そして、ついに杏子にも限界がやって来た。
杏子「なあ、八兵衛・・・あんたと契約すれば・・父さんを助けられるんだよな」
八兵衛「それは親分の願いの内容によりやす」
杏子「皆が父さんの言葉を真剣に聞いてくれます様に・・・って」
八兵衛「それは難しいですねぃ」
杏子「どうしてだよ!?願いは叶うんじゃなかったのかよ!」
八兵衛「いえねぇ、願い自体は叶える事は簡単なんですが・・・親分の願いは抽象的過ぎやす」
八兵衛「願いっちゅうのはもう少し具体的にして貰えるとありがたいって所でして」
杏子「具体的?」
八兵衛「つまり、話しを聞くって言うのはですねぇ・・」
杏子「そんな事はどうでも良いだろ!!」
八兵衛「いやいや。親分、願いとか契約はもっと慎重に・・」
杏子「皆が父さんの言葉を真剣に聞く様にしてよ、八兵衛!!さあ、早く叶えてよ!!」
八兵衛「・・・・分かりやした、親分の願いはイントロペーを凌駕しやした」
こうして杏子は契約した。
その後、杏子パパの教会はみるみる繁盛し、大量の信者が押し寄せる様になった。
そして魔法少女になった杏子も日々魔女退治に勤しんでいた。
杏子「そらそらそらっ!この前は逃がしたけど、今日は逃がさないよ!!」
魔女「邪気ガナイ?子供カ?」
杏子「さあ、どっちがあたしか当てて見な!」
杏子は幻惑の魔法を使い魔女を翻弄する。
魔女「チィ、見エタ!ソコ!」
杏子「外れ♪そっちは偽物だよ♪そらっ!!」
魔女「ブッタネ!」
杏子「・・・これで止めだ!!」
魔女「二、二度モブッタ!」
杏子「一丁あがり♪」
???「・・まだよ!!」
杏子「え?」
魔女「・・・・モットブッテェーー!!」
倒したと思った魔女は復活し、杏子を拘束する。
杏子(・・やられる!)
???「疾風のティロプリーモ」
魔女「認メタク無イモノダナ・・・・若サユエノ自分自身ノ過チトイウモノヲ」
???「なるほど。魔女の本体は武器の斧の方ね。そこのあなた、私が魔女の注意を引いている間にとどめをよろしくね」
杏子「は、はい」
???「それから、さっきのセリフは『残像だ』の方が格好いいわよ」
杏子「・・・え?」
そして魔女は二人の連携で倒された。
杏子「ありがとうございます、おかげで助かりました」
???「どういたしまして。改めまして、私は巴マミ。この見滝原で魔法少女をしているの」
杏子「あたしは佐倉杏子、隣の風見野で魔法少女をやってるんだ」
こうして二人の魔法少女の運命が交差した。
その後杏子は隣町の魔法少女巴マミに師事し、メキメキと実力を付けて行った。
杏子「ただいま、八兵衛」
八兵衛「おかえりなすって親分。ご隠居の様子は如何でしたかい?」
杏子「元気だったよ、それにマミさんって凄いよね。とても強いし技もいっぱい持ってるし」
杏子「ただ、あたしにも色々なポージングを進めて来る事だけはちょっと・・・」
八兵衛「相変わらずで安心しやした」
杏子「それから、マミさんの所に居る九兵衛は八兵衛と違って可愛かったよ」
杏子「あたしもどうせならあっちの方と契約した方が良かったな」
八兵衛「へへっ、良く言われやす」
それは杏子にとって幸せに満ちた日々だった。
だが、そんな幸せな日々も長くは続かなかった。
ふとしたきっかけから杏子が魔法少女だと云う事が杏子パパに露見し、杏子パパは杏子の願いを知ってしまった。
そして杏子パパは娘の話の真偽を試す為に歓楽街で演説を始めた。
杏子パパ「皆さん、聞いて欲しい。私は私の言葉を訂正する。この世は地獄である、そして絶望こそがこの世で一番大切な物なのである」
杏子パパ「希望など無駄なのだ。皆さん希望を捨てて欲望のままに生きなさい。この世に神は居ない!」
杏子パパ「神は死んだ、種死こそ至高である、ジーク・ジオン!!」
杏子「父さん、何言ってるの?そんな出鱈目な事を・・」
信者A「ジーク・ジオン!!」
信者B「ヒャッハー、希望は消毒だ!!」
信者C「神を殺せ!!」
杏子「・・・え?」
杏子パパ「なんと・・いう事だ。これでは・・・私の意のままでは・・ないか。恐ろしい・・何て恐ろしい」
信者D「種死こそ至高である!!キラ最高!!」
杏子パパ「や、やめろ!!私がいま言った事はまったくの嘘だ!!」
信者E「そうだ!嘘だった!!」
信者F「種死はクソだ!!」
信者G「種もクソだ!!」
杏子パパ「あああ、何てことだ。これでは私自身が悪魔の様ではないか・・・。あと、種はクソじゃない」
信者G「種はクソじゃ無い!!」
杏子「あたしは、そんな積りじゃ・・ただ、父さんの為を思って・・・あと種死はクソじゃない」
杏子パパ「私を思ってだと!?ふざけるな!!私は騙された!この魔女め!!あと種死はクソだ!!」
信者達「魔女!魔女!魔女!魔女!お前こそ魔女だ!あと種死はクソだ!」
杏子「や、やめて・・・やめてぇええええ!!」
杏子パパ「お前こそが魔女だ!」
信者達「然り!!然り!!然り!!」
杏子「・・・・もう、止めて」
杏子パパ「何勝手にアレンジしてるんだ!あと、私も『然り』ってやってみたい!」
杏子パパ&信者達「然り!!然り!!然り!!」
杏子「もう・・やめてぇええええええ!!!」
こうして杏子の絶望の日々が始まった。
その後、杏子パパは酒浸り説法を止めてしまった。
杏子「なあ、八兵衛。あたしって間違っていたのかな?」
八兵衛「・・・あっしには何とも言えやせんね」
杏子「あたしはどうすれば良いの?」
八兵衛「親分がしたい様にすれば良いと思いやす」
杏子「八兵衛・・・・助けて」
八兵衛「親分、前にも言いやしたが・・・そう云う事はもっと具体的にお願いしやす」
杏子「・・・父さんを助けて」
八兵衛「分かりやした。少し時間がかかりやすが期待しないで待って居ておくんなし」
八兵衛(まあ、助けるとは言いやしたがあっしは人間の複雑な心をくみ取ってどうこうするのは苦手でしてねぇ・・・)
八兵衛(ここは仕方ありやせんが、先達の人達にお願いする事にしやすか)
八兵衛(自分と同じ様な立場にいる人たちの声でしたら、杏子パパさんも少しは聞いてくれやすかもしれないですしねぇ)
こうして八兵衛は日本中、いや世界中にいる知り合いの元を訪ねて声を掛けて回った。
とある町はずれの丘にある教会。
八兵衛「・・・失礼しやす、へへっ」
???「ようこそ、神の家へ・・・八兵衛君」
八兵衛「どうもお久しぶりで」
???「ふむ、それで今日は何用かな?」
八兵衛「実はかくかくしかじかでして」
???「なるほど、事情は承知した。準備が整いしだい向かうとしよう」
八兵衛「助けて頂けるんですかぃ?」
???「助けを求められたからには努力はしよう。まあ、その男の姿を眺めるだけでも楽しいと思うが、それだけでは娘に叱られてしまうからな」
八兵衛「助かりやした」
???「なあに、礼には及ばん。・・・ああ、実は私は食事の途中でね。別に片付けてしまっても構わんのだろう?」
八兵衛「へい」
???「ああ、良かった。今日の昼食は私の大好物のマーボーでね・・所で八兵衛君も・・・食うか?」
八兵衛「遠慮しやす」
とある刑務所内の教会。
???「汚らわしい淫獣如き薄っぺらな藁の家が、深遠なる私と神の家に踏み込んで来るんじゃあ無いッ!!!」ズッギャーン!!
八兵衛「失礼しやす」
???「・・・誰かと思えば八兵衛君か。てっきり奴かと思ってしまった、いや失敬した」シャザーイ!!
八兵衛「いえ、こちらこそ・・へへっ」
???「所で本日は何用かな?」スクッ!!
八兵衛「へい、実はかくかくしかじかでして・・・」
???「なるほど、妹の恩人の頼みだ。断る訳には行くまい・・・私はその神父に覚悟の何たるかを説けば良いのだな?」シュタッ!!
八兵衛「その辺りはお任せいたしやす」
???「では、早速向かうとしよう。天にまします主よ、私を導いて下さい」スタスタスタッ!!!
とある下水道内の工房兼教会。
八兵衛「失礼しやす」
???「誰かと思えば・・・・八兵衛殿では御座いませぬか」
八兵衛「実はかくかくじかじかでして」
???「まるまるもりもりと云う訳ですね。分かりました、かつての私の主君を救済いただいたそのご恩を、今こそ返しましょう」
立川某所。
八兵衛「失礼しやす・・・・ありゃ?」
『所用でしばらく留守にします』
八兵衛「・・・一番の頼りが留守ですかぃ。仕方ねぇや・・・不本意だけどアイツラに頼む事にしやしょうか」
とある南公園、超親友の殿堂。
キリスト「仏陀、いい加減にそれ(コカイン)を止めなさい。問題になりますよ?」
仏陀「仕事中にエロサイト見てる人に言われたくありません」
キリスト「エロと薬や違いますよ、このカマ野郎が」
八兵衛(・・・・ちょいと気は進みやせんが仕方ありやせんね)
八兵衛「失礼しやす、ちょいといいですかい?」
キリスト「おや、誰かと思えば八兵衛君ではないですか?」
仏陀「あら、本当」
八兵衛「実は皆さんにお願いしたい事がありやして・・・かくかくしかじかで」
モーセ「なるほど、状況は把握した」
ジョセフ・スミス「しかし、我々は色々と立て込んでいて忙しいのだ」
老子「トム・ク○ーズから、あの街に■■■■■(検閲入り)を連れて来いとの要求があったのだ」
シーマン「だから、今はそちらに協力する事は出来ない」
仏陀「ええ、ザ○メンの言う通りです」※
一同「はははははははっ♪」
シーマン「・・・シーマンだ」
仏陀「だから、そう言っているだろ?ザー○ン」
一同「はははははははっ♪」
シーマン「・・・ざけんなよ」
キリスト「そういう訳でして、八兵衛君の頼みは」
八兵衛「いえ、忙しいのでしたら無理にとは言いやせん。これで失敬させて頂きやす、へい」
八兵衛(この方達は親分には刺激が強すぎやすね)
八兵衛(後は面識はありやせんが、あの人にもお願い致しやすかねぇ)
※英語ではザーメン(シーメン)とシーマンの発音が似ていて、それをからかったジョークらしいです。
日本語で例えるなら生死と精子みたいな感じ?
とあるヒマラヤ山頂。
???「おおお、ハレルヤ!!」
八兵衛「すいやせん、ちょいとよろしいでやすか?」
???「むむっ、お主は腹黒白饅頭・・・とは別の饅頭」
八兵衛「あっしは八兵衛といいやす。実はお願いがありやして・・・かくかくしかじかでして・・・」
???「ふむふむ、では愚僧はその八幡頭の知り合いのアンコとやらに会いに行けばよいのだな?」
八兵衛「へい」
???「善哉、善哉。これも何かの縁か。袖振り合うも多少の円環の理。理を断りするのもシャクティーパットッ!!」
八兵衛(まったく、あっしにはさっぱりでさぁ)
見滝原のとある魔女結界。
???「あ、アウチ、アウーチ!白もこが、ハサミと白もこが喪男の全てを否定する時、アラフォーは絶滅する!」
???「分かり辛いですか、そうですか。では具体的に言うと、小生、正体不明な髭モフモフに追われている!」
マミ「・・・・・えっと、初めて見るタイプの使い魔ね」
キュゥべえ「マミ、あれは使い魔じゃなくて人間だよ」
???「何処かの誰か、至急迷える信者を助けに参られぃ!ゴッド・セーブ・ミー!」
???「ぬおぉおおおおお、モフい!とにかくモフい!あと髭っぽい!白くてモフモフした髭とハサミと棘に襲われておる!」
マミ「え?」
キュゥべえ「きっと結界に取り込まれたんだろうね。それよりマミ、助けなくても良いのかい?」
マミ「あ・・そ、そうだったわね」
???「無軌道な人間は消毒か!何と言う世紀末、まさに汚物はクォ・ヴェディス!」
???「帰りの階段はいずこ?あれ?小生、もしかして閉じ込められた?うおおおおおおおおおお!ライフガード、大・募・集!」
バンッ!バンッ!
使い魔「イキナリ後ロカラ!?」
マミ「あの、大丈夫ですか?」
???「捨身飼虎図!!そこな少女、よくぞ来てくれた。小生、わりと大ピンチ。カルヴァリアの丘が見える」
マミ「!?」
???「我が苦しみは人間に文明を与えたプロメテウスの如し、比喩的にはトネリコの木で臨死するオーディンでも良い」
マミ「プロメテウス・・・オーディン」ウズウズ♪
キュゥべえ(やれやれ、マミが喰い付きそうな話題を振るのは止めて欲しいな)
???「我が麗しの神にちょっと似ているかもしれないお嬢さん!ビューティフルなお嬢さん!!」
マミ「え、そんな・・・美の女神の様にビューティフルだなんて・・・・/////」
???「小生、実は迷子である。正しく孤島のラビリンスで永遠に彷徨い続けるミノタウロスの如し!」
マミ「取りあえず・・・この結界から出ましょう。ミノタウロスの話はその後で・・えっと・・」
???「おお、小生はしがない求道僧である。少女よ、気軽に坊さんと呼ぶがいい」
マミ「私は巴マミといいます」
坊さん「では、さっそく風見野にあるアンコ教会とやらまえ案内プリーズ!」
マミ(ええっ!?どうして結界の外までじゃなくて、隣街まで案内する事になってるの?)
マミ(あれ?でも、隣町の教会って佐倉さんのお家だったわよね?もしかして、佐倉さんのお父さんの知り合いなのかしら?)
マミ(でも、この人ってお坊さんよね?・・・あれ?よく見ると数珠だけじゃなくて、十字架も下げてるわね)
マミ(・・・・・考えれば考えるほど謎の人ね)
杏子パパの教会。
八兵衛「どうも、親分。お久しゅうでござんす、へへっ」
杏子「・・・八兵衛」
八兵衛「あっしが留守にしている間、何か変わった事はありやしたか?」
杏子「別に無いよ。父さんは相変わらず酒浸りだし・・・最近じゃ信者の人達も教会には寄り付かない」
杏子「・・・・・少し前の状態に逆戻りさ」
八兵衛「それでは、まだあっしの呼んだお客たちはいらしてない訳ですかい?」
杏子「客?・・・来てないよ」
???「いや、つい今しがた到着した所だ」
杏子「わっ・・・」
???「おや、驚かせてしまった様だ。これは失礼」
杏子「あの・・・もしかして本部から来られた方ですか?」
???「どうしてそう思うのかね?」
杏子「その・・服装が」
???「服?ああ、なるほど・・・確かに・・・。残念ながら私は本部から派遣されてきた者ではない」
???「ただの丘の上の辺鄙な教会で神父をしている者だ」
杏子「・・神父様?」
???「娘からは良く麻婆と呼ばれている」
杏子「麻婆・・・神父」
麻婆「ああ。それから弟子からはエセ神父とも呼ばれている。他には・・・外道神父と呼ぶ者もいるがね」
杏子「エセ?・・外道?」
麻婆「実に私を良く表現した呼び名とは思わないかね?」
杏子「は・・・はぁ」
麻婆「キミも好きに呼びたまえ。エセでも麻婆でも外道でも」
杏子「では・・・麻婆神父で」
麻婆「ふむ・・・君は娘と違ってまともな人間なのだな」
杏子「ま、まとも?」
麻婆「実は私の娘も君と同じ魔法少女でね。てっきりアレに選ばれる人間は私や娘の様な人格破綻者だけなのかと思って居たのだが」
杏子「え・・ええ?」
麻婆「あんがい君の様な人間も多いのかも知れないと認識を改めた所だ」
杏子「は、はぁ・・・」
杏子(なんだろう、この人。なんか・・・嫌な感じがする)
麻婆「喜ぶがいい、少女。君の願いは叶う、そして君のその思いは正しい」
杏子「・・・・え?」
そう言うと麻婆は教会に向かってすたすたと歩き出した。
杏子「ちょ、ちょっと待って」
八兵衛「親分、ここはあの神父に任せておきやしょう」
杏子「でも・・・あの人何かおかしいよ」
八兵衛「確かに普通じゃありやせんが・・・お父上の心の闇は普通の人にはどうしようもないんじゃありやせんか?」
杏子「だからって・・・」
麻婆神父を引き留め様としている杏子の前に更に別の客が現れた。
???「2、3、5、7、11、13、17、19、23」スタスタスタ!!
杏子「え?何、あの人・・・神父さんみたいだけど、何か数を数えながらこっちに歩いて来る」
???「只の数では無いッ!素数だッ!」ビシッ!!
杏子「ひっ・・・」
素数神父「おっと、驚かせてしまったか」シャザイッ!!
杏子「あの・・・なぜ素数を?」
素数神父「素数は一と自分の数でしか割る事の出来ない孤独な数字だからだ。そして、私に勇気を与えてくれるッ」シュタッ!
杏子「ええ?」
素数神父「素数は誰にも砕けないッ!そしてここから先はこの世界の悲惨の線だ!私はそこを乗り越えて行く!!」バーンッ!
杏子「・・・・・・。」
素数神父「例えばだ・・・悪い出来事の未来も知ることは「絶望」と思うだろうが、逆だッ!」ズキューン!
杏子「!?」
素数神父「明日「死ぬ」とわかっていても「覚悟」があるから幸福なのだ。「覚悟」は「絶望」を吹き飛ばすからだッ!」シュパーンッ!!
杏子「!!!」
素数神父「覚悟こそ幸福だッ!!」ダギャーーンッ!!
杏子「覚悟・・・こそ幸福・・・」
素数神父「では失礼する」スタスタスタ!
そう言うと素数神父も教会に向かって消えて行った。
杏子(覚悟・・・・いずれ、魔女になるとしても・・・覚悟があれば幸福。そしてそれは絶望じゃない!!覚悟!そして、幸福!!)
杏子「そうだ・・覚悟こそ幸福ッ!!」ドシャーン!!
八兵衛「・・・まったく訳が分からんぜよ」
時間が経ったお蔭で、とりあえず杏子は正常へ戻った。
杏子「なあ、さっきの神父様を呼んだのって八兵衛なのか?」
八兵衛「へへ、そうでござんす」
杏子「なんか良く分からないけど・・・凄味のある人達だったな。そう言えばあの二人って」
八兵衛「親分、二人ではありやせん」
杏子「え?」
八兵衛「力になってくれそうなあっしの知り合いに片っ端から声を掛けてきやした」
杏子「・・片っ端って、おまえそんなに知り合いがいるのかよ?」
八兵衛「へえ、あっしはこれでも顔は広いと自負しておりやす。ちなみに知り合い以外にも助けてくれそうな方々にも声を掛けて置きやした」
???「おや、そこに居るのは八兵衛殿では?・・という事はこの教会でよろしいのでしょうか?」
杏子「ひっ・・・」
???「怖がらなくても良いんだよ、お嬢ちゃん」
八兵衛「これは旦那、態々お出で頂いてありがとうございやす」
杏子「あ、あのあなたも八兵衛に呼ばれたんですか?」
???「ええ、その通りです。希望を失いかけている少女よ」
杏子「え?」
???「幸福というものには鮮度があります。甘受すれば甘受するほど幸福とは減って行くものなのです」
???「真の意味での幸福とは、静的な状態では無く変化の動態。絶望が希望へと切り替わる、その瞬間の事を言うのです」
杏子「切り替わる・・・瞬間?」
杏子(確かに・・・そうだった。願いを叶えた頃のあたしはこれでもかって言うくらい浮かれて・・・幸せだった)
杏子「その・・・あなたは」
???「おっと、申し遅れました。私は・・・そうですね、人呼んで青髭・・ともうします」
杏子「青髭さん?」
八兵衛「そんじゃお願いしたしやす」
青髭「お任せあれ」
青髭も教会の中へと向かって歩き出した。
風見野のアンコ教会。
坊さん「アルゴー船を導く鳩の如き道案内感謝にたえん」
杏子「あれ?マミさんと・・・誰このおっちゃん?」
坊さん「おっちゃんでは無い、坊さんと呼べ」
杏子「坊さん?」
マミ「実は魔女結界の中で迷子になっていたの」
杏子「ええ!?それ一歩間違っていたら死んでたって・・よく無事だったね」
坊さん「ふむ、それは正確ではないな。小生は迷子になった所で、あの不可思議な空間を見つけ・・・とりあえず入ってみたのだ」
杏子「とりあえずで魔女結界に入るなよ!!」
マミ「・・お坊さん、危ないので今後は変な物を見かけてもホイホイ入ったりしないで下さい」
杏子「そうだよ、ああいうのはさ魔法少女に任せておけば」
坊さん「はははは、魔法少女だろうがなんだろうが今生は常に死との隣り合わせである!小生の修業は誰にも止められん」
坊さん「それにゴージャスでビューティフルな魔法少女に触発されて、小生も更にあそこを探索して見たくなったとしてもおかしくあるまい」
マミ「ええー?」
杏子「いやいやいや、十分おかしいって・・・勇ましいのはいいけどさぁ、そう言うのは勇気じゃなくて蛮勇っていうんだよ」
マミ「勇気って言うのは恐怖を知る事なんですよ?ただ勢いだけで突っ走るのは蚤と一緒です、今後は自重して下さい」
杏子「そうそう、キョーフを知らないのは蚤と同類ってね。坊さん・・・勝算って知ってる?」
坊さん「無論、知っておる。その単語にはこう振り仮名を付けるが良い。『イイワケ』・・とな」
坊さん「勝算がなければ窮地に挑まぬのであれば、それは屍と同じ事。小生はこの通り、まだ生きているのでな」
坊さん「危険だから、という理由だけでは足は止められぬのだ。よいか、少女達よ。挑む事、それ自体に価値のあるピンチ・・これを逆境と呼ぶ」
坊さん「そして逆境とは越える為に現れるもの。この頂きを前にして、命の炎をぶつけなくてなんとする!」
マミ「!?」
杏子「!?」
坊さん「だが、ビューティフルな少女に救って貰ったこの命、今後は自重するとしよう」
そう言うと坊さんも教会の中へと入って行った。
マミ「なんだか凄い人だったわね」
杏子「ただのバカだと思ったけど・・・凄い人だったな」
マミ「やっぱり人を外見や第一印象だけで判断するのはいけないわね」
杏子「ピンチ、逆境は越えるもの・・・か」
マミ「そうね、私も心にとめておくわ」
八兵衛「ご隠居、お久しぶりでやんす」
マミ「八兵衛!!久しぶりね・・・元気だった?」
八兵衛「へへっ、あっしはこの通りでさぁ」
杏子「なあ、あの坊さんも八兵衛の知り合いなのか?」
八兵衛「いえね、呼んだのは確かにあっしなんですが・・・別に知り合いって訳じゃあございやせん」
杏子「どういう事だよ。知り合いじゃないのに呼んだって・・・」
八兵衛「あのお坊さんからは何やらすごい気配を感じやして、その気配をあっしの第六感がビビッと」
マミ「え?という事はあのお坊さんは八兵衛の事が見えるって事?」
八兵衛「へい」
杏子「あ・・・そう言えばあの神父様たちも八兵衛の事・・」
八兵衛「へい、見えやすし話せやす」
マミ「どういう事なの?八兵衛や九兵衛が見えるのは魔法少女だけじゃなかったの?」
八兵衛「いえね、ごくまれに男の方でもあっしの事が見える人達がおりやす」
杏子「へー、そうなんだ。・・・なあ、もしかして坊さんとか神父の様な神職の人とか・・・あとは霊能力者って呼ばれている人なら八兵衛の事が見えるか?」
八兵衛「うーん、その辺はちょいと違いやす。そういう連中が見えるって言うより、見える連中がそういう方面に進むって事が多いと思いやす」
マミ「じゃ・・・じゃあ、あの有名な占い師さん『元太木☆細木』さんも八兵衛が見えるのかしら?」
八兵衛「生憎とあっしには面識が御座いませんので何とも言えやせん」
杏子「マミさんってその人のファンなの?」
マミ「いえ、私じゃなくて・・・その私の友達が・・。そんな事より佐倉さん、魔女の反応が」
杏子「あ・・誤魔化してる」
マミ「ほ、本当よ。ほら・・あっちの方に・・・」
杏子「はいはい、分かりましたよ」
マミは足早に、杏子は若干後ろ髪を引かれる様な形で魔女がいるらしき場所へと向かった。
アンコ教会。
そこに本来この場所の主の他に3人の人間がいた。
教会の主である神父は椅子にもたれ掛る様に座り、時々思い出した様に酒を飲み、それ以外の時は何かをブツブツと呟いている。
当初は無断で教会に侵入してきた者達に対して出て行く様に話しかけたが、彼らがそれに答える気が無い事を理解した神父は
侵入者の事を無視し、酒盛りと独り言を続けながら現実逃避を続けていた。
一人目の侵入者はただひたすら口元に薄い笑みの様なものを浮かべ、酒盛りを続けている教会の主の姿を観察している。
二人目の侵入者は手を合わせ祈りの言葉を口にしている。
そして、三人目の男は椅子に座り読書に勤しんでいる。
そんな中で一人目の男が口を開いた。
麻婆「揃ったのは三人・・・いや、彼を入れれば四人か」
麻婆がそう呟いた瞬間、教会に大音量の声が響き渡った。
坊さん「捨て鉢はいかんぞおっさん!人生半ばで諦めるなどイコノクラスム程に許せん行為なり!」
坊さんに反応したのは酒を飲んでいた神父だけであった。
麻婆はただそのまま言葉を続けた。
麻婆「ここにいる全員・・・名も素性も知らぬ者同士。それが何かの縁で一つの目的の為に一堂に会したのだ」
目的・・・すなわち、酒を飲んで・・・いや酒に飲まれ現実逃避をしている杏子パパを救う事だ。
麻婆「では、そろそろ切開を始めよう」
そのセリフがスタートの合図になったらしく、教会内では何やら良く分からない事が始まった。
素数「ドミネ・クオ・ヴァディス?お前は『磔刑』だーーーーッ!!!」ドジャーンッ!!
麻婆「私が[ピーーー]、私が生かす。私が傷つけ私が癒す」
青髭「神は決して人間を罰しない!ただ玩弄するだけです!!」
坊さん「人間とは―――奪い、殺し、貪り、そして忘れるもの!おお、まさにスーパーニート!」
杏子パパ「な・・何が・・・始まったのだ?」
素数「カエルにスネイクが敗北する訳がないッ!!」バシッ!!
麻婆「我が手を逃れうる者は一人もいない。我が目の届かぬ者も一人もいない」
青髭「だが、殺せども穢せどもこの身に下るはずの神罰は無くっ!!」
坊さん「嘆かわしきかな、人間とはそもそもニートなのだ!何も悪いことではない!」
杏子パパ「た、頼むから出てってくれ!」
素数「呪われるべきはこの私だッ!!」バァアンッ!!
麻婆「打ち砕かれよ、老いたもの、敗れた者を私が招く。私の委ね、私に学び、私に従え」
青髭「邪悪の探求は数年に渡って放置され、看過され続けました」
坊さん「神々は人間を救わない。人々の理想によって性格を得た神は、人間の望み通り、人間を悪として扱う」
杏子パパ「出て行け!!出て行くのだ!!」
素数「人の出会いとは重力だッ!!」シュタンッ!!
麻婆「休息を。唄を忘れず、祈りを忘れず、私を忘れず、私は軽く、あらゆる重みを忘れさせる」
青髭「娯楽の何たるかを心得ているのは神だけでは無いと云う事を、天上の演出家どもに知らしめるのです!!」
坊さん「神とはこれ、人間への究極の罰なのだ。これが地上を駆け回り、すべての宗教を学んだ小生の結論である」
杏子パパ「ここは神聖な神の家だぞ!神の・・・神の家だぞ・・・出て行くのだ・・・」
一時間後。
取りあえず騒ぎは決着を見せないまま一段落した。
杏子パパ「何故だ・・・何故誰も・・私の言う事を聞かないのだ・・・」
麻婆「ふむ、その言いようでは・・・言う事を聞かせたい様に聞こえるが?」
杏子パパ「そ、その様な事はない!!断じて!あれは・・私の所為ではない!」
麻婆「では誰の責任と?」
杏子パパ「娘・・いや、娘の皮を被った魔女だ!!魔女の仕業なのだ!!」
麻婆「魔女?」
杏子パパ「そうだ、魔女だ。あれは魔女なのだ」
麻婆「所で話は変わるが、佐倉神父。立てますかな?」
杏子パパ「・・・何を?」
麻婆「少し外を歩かないかね?」
多少は酒は抜けたのか、或いは変な連中が屯している教会にはもう居たくないのか。
或いは久しぶりに自分とまともにコミュニケーションが出来る人間に会え嬉しいのか・・・杏子パパは麻婆に言われるがまま彼について行った。
廃ビル。
杏子パパ「・・・ここは?」
麻婆「実はさきほど佐倉神父が言っていた魔女とやらに私も興味があってね」
杏子パパ「・・・・」
麻婆「この辺では最近自殺未遂が多いと聞いている。きっと、魔女とやらも・・・ほう。さっそくか」
杏子パパ「え?」
麻婆「あのビルの屋上を見るが良い」
そこには今にも飛び降りようとしている女性がいた。
例のOL「わ、私は、何回飛び降りるの!?次は・・いつ・・どの作品で・・飛び降りるの?」
杏子パパ「・・・あれは一体何をしているの」
麻婆「見た所飛び降り自殺をしようとしている様だな」
杏子パパ「た、助けなくては」
麻婆「今からでは到底間に合うまい」
杏子パパ「なにを悠長な・・ダメだ!飛び降りてはいけない!!」
声の聞こえる距離であったのなら結果が変わったであろうがそうはならなかった。
そしてこの様な状況でもまるで変った様子の無い麻婆に対して杏子パパはイライラを募らせた。
だが、それを爆発させるよりも先にOLが飛び降りた。
OL「私のそばに近寄らないで!!」
杏子パパ「あああ・・・・・・そんな・・・」
だが、OLが地面へと到達するより先に突然現れた人影が空中でOLを確保した。
杏子パパ「・・・今のは・・・いったい」
麻婆「ふむ・・・赤っぽい服を着た少女の様に見えたが?」
杏子パパ「・・・・・・あれは・・いや・・・でも・・・まさか・・・」
麻婆は自問自答に入っている杏子パパに対して「あの少女に見覚えは?」などと言う無粋な問は投げかけなかった。
替わりに口の端を愉快そうに歪めた。
麻婆「では、行こうか」
杏子パパ「・・・行くとは?」
麻婆「あの飛び降りた女性の安否を確認しなくてはな」
杏子パパ「わ、私も行こう」
麻婆「では共に・・」
麻婆について行く杏子パパ。
そして、廃ビルの入口付近に倒れているOLを発見した。
麻婆「ふむ・・・どうやら眠っているだけの様だ。目立った外傷はないが・・・これは拙いな」
杏子パパ「・・え?」
麻婆「これを見るがいい」
杏子パパ「それは?」
OLの首筋には何かの模様の様なものが浮き上がっていた。
麻婆「魔女の口づけというものだ」
杏子パパ「魔女の・・・口づけ」
麻婆「精神的に弱っている人間が魔女に魅入られた時に発生するものだ」
麻婆「こうなってしまってはこの女性は自殺、心中、突発的な通り魔のどれかを選択する事になるだろう」
麻婆「さてと、では行こうか」
杏子パパ「何処にだね?」
麻婆「もちろん、元凶を見にだ」
杏子パパ「元凶?それは一体・・」
麻婆「・・・魔女だ」
麻婆は魔女結界への入り口を見つけると杏子パパを半ば強引に引き連れて中へと入った。
杏子パパ「こ、これは・・一体・・」
麻婆「これが魔女結界。魔女が隠れ住んでいる場所だ」
そして、驚愕と恐怖の入り混じった感情を全身で表現している杏子パパを観察し、麻婆は僅かに唇の端を歪める。
そんな二人に何やら白くてモコモコした髭が迫って来る。
杏子パパ「あ、あれは何なのだ?」
麻婆「恐らく魔女の使い魔だな、どうやら我々を敵と認識した様だ」
白モコ髭は何やら訳の分からない言語を発しながら二人に迫って来る。
杏子パパ「ひ、ひぃい」
麻婆「さて、一匹二匹では何とかなるが・・これだけ多いと・・・・」
バンバンバンッ!!
使い魔A~G「フザケルナ、フザケルナ、バカヤロー」
突然の銃撃で使い魔は倒された。
麻婆「ふむ、どうやら命拾いした様だな」
マミ「大丈夫ですか」
麻婆「ああ、君のお蔭で助かった」
マミ「直ぐ出口まで案内しますので着いて来て下さい」
杏子パパ「はぁ、助かった」
麻婆「いや、それは無用だ」
杏子パパ&マミ「え?」
麻婆「目的を果たすまで帰る訳には行かない」
マミ「目的?魔女や使い魔退治は私達に任せて・・」
麻婆「いや、私もそこまでそちら側の領分を侵す気はない」
マミ「それじゃあ一体・・」
麻婆「なぁに・・ただの父兄参観だ」
マミ「えぇ?父兄・・参観?それって・・」
麻婆「親が子供の頑張っている姿を見に来たという訳だ」
マミ「は・・はあ。でも・・危ないですよ?」
麻婆「なあに、その際は君が守ってくれるのだろう?」
マミ「・・・分かりました」
マミ(なんで今日は結界で変な人とばっかり会うんだろう)
麻婆「では、行こうか」
麻婆「あれが魔女か」
マミ「ええ、そう・・です」
杏子パパ「なんと・・おぞましい」
麻婆「ふむ、何とも形容し難い形だ」
杏子パパ「あれが・・外に出てくれば・・・大変な事に」
マミ「いえ、魔女はこの結界から出て来る事はないので大丈夫です」
麻婆「だが、外に居る人間を中へと誘い込む事はあるがね」
マミ「ええ・・そうですね」
そして、その魔女と戦っている少女が一人。
杏子パパ「あ、あれは・・・」
麻婆「ふむ、どうやら先客が居た様だな。あれは君の知り合いかね?」
マミ「はい、彼女はこの街の魔法少女で・」
麻婆「彼女は・・と言う事は君は違うのかな?」
マミ「私は隣の見滝原の魔法少女です。今日はちょっと用事があって風見野に来ました」
麻婆「そうか。ちなみにこの街には何人の魔法少女が居るのかね?」
マミ「・・・私が知っている限りではさ・・彼女一人です」
麻婆「なるほど、あの少女は一人で戦い続けていると言う訳か。中々泣かせる話ではないか」
マミ「はい」
杏子パパ「こんなのと・・一人で・・・杏子・・・」
マミ(・・・やっぱりこの人は佐倉さんの・・)
杏子「こいつで・・終わりだよ!」
魔女「死ンデ完結!!」
何だかんだで倒される魔女。
そして解除される結界。
杏子「一丁あがり♪」
マミ「お疲れ様」
杏子「マミさんと神父様・・・・と、父さん?」
マミ(・・やっぱり)
杏子「こんな所で・・・一体何をしてるんだよ!?」
麻婆「なに、ただの父兄参観だ」
杏子「父兄参観って・・・」
杏子パパ「杏子・・お前は・・ずっとこんな事をやっているのか?」
杏子「う、うん・・そうだよ」
杏子パパ「何故、こんな・・危ない事を!!」
杏子「あたしは魔法少女だから・・あたしがやらないとだめな事だから」
杏子パパ「杏子・・杏子・・」
杏子「・・父さん」
杏子パパ「・・・杏子・・・きょうこ・・・」
杏子パパは娘に縋り付く様に抱き着くと、ただひたすらに娘の名を呼びながら号泣し、そんな父親にもらい泣きする杏子。
そして、マミは何だか良く分からないけど『良い話だったのかな?』と納得した。
そして、麻婆はこれはこれで面白いと唇の端を歪め・・・
麻婆「ああ、そう言えば結界内で死ぬ魔法少女は死体も残らないのではなかったかね?」
杏子パパに対して更に燃料を投下した。
マミ「ちょっと、今言う事ですか?」ぼそぼそ・・・・
麻婆「後で言っても仕方あるまい、それに魔法少女を家族に持つ身では知っておいた方が良い事だ」ぼそぼそ・・・
麻婆「それに死んだのか、行方不明か、家出かを判断する一つの基準が必要だろう?」ぼそぼそ・・・
マミ「でも・・」ぼそぼそ・・・・
麻婆「まあ、葬式も墓も不要で楽かも知れないが・・・・私の様な者にとっては商売の一つが減る訳だが」ぼそぼそ・・・
マミ「・・・」
麻婆「君も家族に内緒でやっているのならば、考えておきたまえ」ぼそぼそ・・・
マミ「お気づかいなく」ぼそぼそ・・・
その日の繁華街。
一人の男がかつての様に演説を始めた。
杏子パパ「みなさん、みなさん、聞いて下さい。これが私の最後の話です。どうか少しだけ聞いて下さい」
杏子パパ「私は自分の娘に対して酷い仕打ちをしました。私はいままでその残酷な事に気付きませんでした」
杏子パパ「子供の心を傷つけた事を謝っても、とても許される事ではないのは知っています。でも、その事に私はやっと今日気が付く事ができました」
杏子パパ「私の子供の名前は佐倉杏子・・・今まで一人で誰にも知られず・・・そしてこれからもこの街を・・・」
言葉に詰まる男。
当初は男に興味を示していた通行人達も、やがて興味を失ったかの様に散って行った。
それは男に掛かっていた奇跡が失効したのか、或いはただ単に言葉を詰まらせた結果なのかは誰も知らない。
ただ、これを最後に男が大衆の前で何かを語りかける事は生涯を通して一度しか無かった。
一か月後。
マミ「それで結局はどうなったのかしら?」
杏子「うーん・・父さんは知り合いの神父様の紹介で海外に行ったよ。しばらくは帰ってこないって」
マミ「海外へ?」
杏子「うん、言葉が通じなければ問題無いって・・・。それで、母さんとモモは教会を出てアパート暮らしさ」
杏子「まあ、お金は沢山残っているから前の様な貧乏暮らしにはならないと思うけどね」
マミ「佐倉さん、あなたはこれからどうするの?」
杏子「あたしも一応母さんと一緒に暮らす事になったよ」
杏子「後、あの教会は何だかんだあって・・・結局は児童養護施設になったよ。敷地だけは馬鹿みたいに広いからね」
マミ「そう」
杏子「そんな訳だから・・これからもよろしくお願いします!マミさん」
マミ「こちらこそ、よろしくね」
杏子「それから・・八兵衛も・・ってあれ?八兵衛は?」
マミ「そういえば見ないわね」
キュゥべえ「彼ならもう居ないよ」
マミ&杏子「・・・え」
杏子「でも・・・また、会えるよな」
マミ「そうね」
そして、時は流れ・・・物語は動き出す。
佐倉杏子編、終了。
小ネタ※本編とは関係無し
キリカ「どうしたのキミ。こんな所で座り込んで?」
オリコ「私は沢山の人を殺したの。結果として沢山の人を救ったけど、それでも私には重すぎて立てないの」
キリカ「ふーん、良く分かんないけど、でっかい荷物を持ってるって事かなぁ。」
キリカ「じゃあ私が半分持ってあげよう」
オリコ「・・え」
麻婆「では、私がその荷物の重みを二倍にするとしよう」
オリコ&キリカ「・・え?」
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