春香「てぃんくるてぃんくる♪」 (50)



本SSはノりで書いたので随分とキャラ崩壊が起こっています。
ジュエルペットてぃんくる準拠です。

ここはジュエルランド。

女王、コトリーナ様が妄想で作った国です。

私、天海春香はこの国の魔法学校へ通っている、リボンがトレードマークの個性的な女の子です。

ここで私はみんなが幸せになれる魔法を学んでいます。



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私がこの魔法学校に入学してちょうど一週間になります。

今日も元気よく教室へ入ります。

春香「おっはよー!」

伊織「おはよう、春香」

雪歩「春香ちゃん、おはようございますぅ」

私の学友たちが挨拶を返してくれます。

最初に返事をしてくれたのは伊織。年下なんだけど魔法学校では先輩です。

まだ小さいけれど、口が達者でわがままです。どこかのお嬢様らしいです。

逆に、女の子ぶって挨拶をしてくれたのは雪歩。

私の1つ年上で、この教室では一番の先輩にあたります。

いつもスコップを持っていますが、掘ることしか興味が無い、変わった子です。

私はこの二人と一緒に毎日魔法の勉強をしています。


ルビー「春香ちゃん、知ってる?今日はね、新しい子が魔法学校に入ってくるんだよ?」

私の肩からひょっこり顔を出した兎みたいな変な生物はルビー。

このジュエルランドで生まれたジュエルビー…ペットです。

魔法学校に通う子は、みんなこのジュエルペットとペアになって魔法を習います。

そして私のパートナーがこのあんまり頼りにならないルビーです。

ガーネット「あら、ルビーにしては情報が早いじゃないの」

サフィー「どんな子が来るか楽しみだね、雪歩」

伊織のパートナーはガーネット。伊織と似て生意気なペットです。

雪歩のパートナー、サフィーは他のジュエルペットと比べると大人の雰囲気があり、失敗も少なくとても優秀です。

入学時期の差といいペットの質といい、私と雪歩の扱いに大きな隔たりがあるような気がします。


律子「皆さん、おはようございます。今日は新しい転校生を紹介します」

担任の律子先生が来ました。若づくりをしていますが、結構なお年だそうで、そろそろ引退です。

P「は、はじめてまして皆さん。今日から一緒に勉強するPです」

入ってきたのは…ところどころはイケメンですが、ヘタレてそうな眼鏡の男の子(CV:赤羽根P)でした。

それと同時に、横からこの世のものとは思えない声が聞こえました。

雪歩「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」

雪歩は男と犬が大嫌いです。近くに寄られるとそれだけで予想もつかない行動をします。

チラリと雪歩を見ると、それはもう人には見せられない顔でした。

口をガクガクと震わせ、瞳孔は拡張と縮小を繰り返しています。ちょっとしたホラーです。

しかし、男の庇護欲を煽るそれは、女の私にとっては非常に不愉快でした。

せめて男嫌いか犬嫌い、どちらかは私にくれても良かったのではないかと思います。


雪歩「ティンクルティンクル ポッポーレ。ポッポーレ!!」

雪歩がいきなり魔法を唱えました。

ポッポーレは簡単な魔法で、小さな火を作る魔法です。火事の危険があります。

ルビー「春香ちゃん、雪歩を止めないと!!」

春香「うん、分かった!」

私の左の拳は雪歩の顎を下から的確にとらえました。ガリガリと気持ち良い音が伝わってきました。

ポッポーレの魔法は初級魔法の割にやたら危険な魔法で、以前は伊織が失敗して校舎を半分燃やしたことがありました。

春香「雪歩、新入生を驚かしたらダメだよ?」

雪歩「ふえぇ…ごめんね、P君」

伊織「まったく、雪歩の男嫌いは全然直らないわね」

春香「P君、よろしくね。私たちはちょっとだけ先輩だけど、気軽に呼んでね」

P「分かりました。春香さん、伊織さん、雪歩さん」

伊織「別に呼び捨てで構わないわ、そうよね、雪歩」

雪歩「うう、そうですぅぅ…てぃんくるてぃ」

ぱーんち。


P「よし、じゃあ俺もやってみよう。ディアン、頼むぞ」

なんと、入学早々にP君は魔法の実演を始めました。

彼のパートナーはディアンという名前のようです。

何も言わずにジェスチャーで会話をしていることから、どうも喋れないようです。

ただ、そんな仕草でも何となく凛々しさが伝わってくるペットです。

うちのルビーもせめて喋らなかったらいいのに。

P「グリーラグリーラ レオノーラ! 名刺よ、大きくなれ!」

レオノーラは物を生みだしたり物を変化させたりするとても便利な魔法です。

これだけ学べば他はいらないと思える程便利な魔法なのですが、皆はあまりこれを使いたがりません。

初級魔法だからでしょうか。

魔法を実行したP君は名刺をA4のコピー用紙程のサイズに拡大させました。

伊織「へぇ…もうレオノーラを使えるのね。なかなかやるじゃない」

P「ありがとう、伊織さん。実は結構練習した甲斐があったよ」

伊織「べ、別にそこまで褒めたわけじゃないわ」

伊織のツンデレは相変わらずです。案外伊織も男性に耐性が無いのかもしれません。

これは私がお姉さんとして、ある程度は教えておかないと、悪い道に進んでしまうかもしれません。

春香「ティンクルティンクル ポッポーレ。 あの紙を燃やせ」

P「……」

P君の気まずそうな表情が気持ちいい。


しばらく経つと、皆はそれぞれ順調にジュエルストーンを集めることができました。

ジュエルストーンは何か良い事をしたら貰えるようで、その権限は律子先生か高木校長が持っています。

12個集めるとジュエルスターグランプリに出場でき、優勝するとどんな願い事も叶えてくれるそうです。

現在のトップは伊織の9個。ムカつきますが、伊織は努力家なので仕方ありません。

まだランドセルを背負っている歳なのに、雪歩より何倍も頼りになります。

伊織には悪いですが、私も負けていられません。

私には皆を幸せにすると言う大きな願いがあるのです。

どんな手を使ってもジュエルスターになってみせます。


雪歩「あのP君、ちょっといいかな?」

P「どうかした、雪歩?」

雪歩「あのね、律子先生に訊いたんだけど、ジュエルストーンを貰うためには男嫌いを治す必要があるんですぅ」

P「それは…大変だ。でも雪歩なら頑張れるさ!時間はかかったけど、俺ともこんなに話せてる」

雪歩「だからね、その、P君で練習できたらなって…」

雪歩にしては大胆な発言です。ちょっと邪魔をしたくなりました。

春香「じゃあ私もお手伝いするね…っと…わっわっわっ」どんがらがっしゃーん

私はどんなところでも自然に転ぶことができます。

今回は転ぶことでP君を突き飛ばし、雪歩を押し倒させることに成功しました。


雪歩「あががががががががががががががが」

雪歩の顔が小刻みに震え始めました。良い顔です。

もし私がP君の立場なら、ここは自分の口で雪歩の口を塞ぎますね。ちっ。

P君はまずいと思ったのか、すぐさま体勢を立て直しに入りました。

そうは行かない!!

春香「ティンクルティンクル ジュエルフラッシュ。ティンクルティンクル エルボーレウィード!」

私の強化された雷魔法がP君に当たりました。そのまま感電し、彼は気絶しました。

私はここで畳みかけることにしました。

春香「ティンクルティンクル レオノーラ!!」

P君の服が透明になりました。本当は消したかったのですが、まだその魔法は知りません。

雪歩「ひぃぃぃぃぃぃぃががあが@ew[}@wer」

何とも言葉にならない声を挙げた後、雪歩は気絶しました。清々しい気分です。

裸で覆いかぶさるP君とその下で気絶する雪歩。

私もこんな恋がしてみたいです。


伊織「もう、どうしてこの私が2位なのよ!!」

ガーネット「伊織、落ち着くにゃー」

伊織は普通の世界(ここではレアレア界と呼ばれています)ではアイドル候補生をやっているとのことです。

しかし、どのオーディションでも万年2位の、いつまで経ってもデビューできないZクラスアイドルでもあります。

きっと今回もコンテストで2位を取ったんでしょう。

春香「伊織…どうしたの、そんなに荒れて」

伊織「春香には関係ないわよ!!」

春香「仲間が悲しんでるのに…私は無視することなんてできないよ!」

伊織「あんたには関係ないって言ってるでしょ!付いてこないで!」


これだからツンデレは困ります。付いてきてほしいんでしょう。

春香「ティンクルティンクル ルラロイト」

ルラロイトは相手に無理矢理お礼を言わせる魔法です。

伊織「は、春香…くっ…ぐっ…」

私の魔法に必死で抵抗しています。でもガードが弱いツンデレにそこまで抗う力はありません。

伊織「春香、こんな私を気にかけてくれて…ありがとう」

ニヤニヤが止まりません。

伊織「あんた何度この魔法を私に使えばいいのよ!!」

春香「ルラロイト ルラロイト ルラロイト」

伊織「いつも春香には感謝してるわ。もう言葉だけじゃ感謝しきれない…大好きよ、愛してる春香」

春香「あはははははははははははは」

伊織「この外道!!!」


いろんなことがあり半年程経った頃、雪歩は一皮むけました。

雪歩「えへへー。やっぱりP君×高木校長だよね」

以前のようにP君を怖がる雪歩はもういません。

私の知らない暗黒面に落ちたようですが、それでもジュエルストーンが集まっているのは良い事です。

律子先生が言うには、今の雪歩はコトリーナ様に一番近い存在とのことです。

今の雪歩は服を燃やして素っ裸にしても一切動じません。

私にとってはつまらないこと、この上ないです。

しかし、伊織をおちょくることを覚えたようで、時折一緒に伊織で遊んでいます。


P「やった、やったぞ……!」

雪歩「おめでとう、P君!」

伊織「おめでとう、P」

春香「おめでとう、P君!」

P「みんなからいろんな事を教えてもらったから…特にその、伊織…」

なんと、一番最後に入ってきたP君が一番最初にジュエルストーンを12個集めたのです。

これで彼はジュエルスターグランプリに出場できます。

一方、伊織は11個の状態で数ヶ月過ごしていました。

ある課題がクリアできていないからです。それは素直になるという課題。

春香「伊織…どんな気分?どんな気分?」

雪歩「最後に入った子に抜かれた気分ってどんな感じ?どんな感じ?」

雪歩と二人で楽しく伊織を慰めました。


とうとう伊織の最後のジュエルストーンが手に入る瞬間が来ました。

伊織「春香、雪歩。いい、絶対に邪魔しないでよ?」

春香「もちろん、伊織、頑張ってね!」

雪歩「伊織ちゃん、ファイトですぅ!」

伊織が深呼吸をしています。

これから彼女にとっては一世一代の大きなイベントがあります。表情は真剣そのものです。

私と雪歩は表情が緩みっぱなしです。

私たちのツンデレ姫がデレデレ姫になるのです。

P「い、伊織、話って何だ?」

伊織「(いい…水瀬伊織。ここで素直にならないと一生後悔する。絶対…!!)」

伊織「P…私は素直になるわ…その…その…」

春香「(押せ!押せ!)」

雪歩「(押し倒せ!押し倒せ!)」


伊織「あんたのことが好きよ!!」

P「えっ…」

伊織「い、今まで生意気なことばかり言ってたけど…本当は…あなたの事、誰よりも好き!」

ニヤニヤが止まりません。ついルビーの毛を毟ってしまいます。

横を見ると、サフィーが泣いています。雪歩も毛を毟っているようです。

P「伊織…ありがとう、嬉しいよ。俺なんかで良かったら…」

伊織「ほ、ほ、ほんと?」

P「あ、ああ!本当だ!」

伊織「ぐすっ…ぐすっ…私…嬉しい」

春香「えんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

雪歩「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

春香雪歩「ティンクルティンクル レニアーム!」

私と雪歩はずっとお祝いの魔法を使いました。

伊織の周囲に千夜一夜草が一瞬で咲き乱れました。

伊織「春香ぁ…雪歩ぉ…ありがとう…」

千年に一晩しか咲かない花に囲まれた伊織はとても可愛かったです。


伊織「はい、あーんして♪」

P「あーん…おいしいなぁ…いおりん♪」

あれからP君と伊織は付き合い始めました。

毎日一緒。毎日バカップル。周囲にいると砂糖を吐きそうで堪りません。

ただでさえ小さな教室で少人数学級なのに、こんなことをやられると殺意も芽生えます。

雪歩は詩を創ることに集中して、なるべく視界に入れないようにしています。

羨ましい限りです。私はそこまで集中してできる趣味がありません。

精々、ちょっかいを出すのが関の山です。

春香「ティンクルティンクル レオノーラウィーガ 愛の矢よ、P君に当たれ」

誘惑の矢が当たったP君は私にメロメロになりました。

P「春香…君が一番だ、愛してるよ」

伊織「ちょっと…!!!春香、あんた何やってんのよ!!」

こっちは砂糖を吐くのをずっと我慢していたのである。

伊織も少しはこの苦しみを味わうべきだと感じました。

春香「ティンクルティンクル ルラロイト」

伊織「春香…ありがとう、だーい好き」

別れさせたお礼を言われた気分になる。こういうNTRプレイもありかもしれない。


三ヶ月後、ジュエルスターグランプリが始まりました。

皆、腕に12個のジュエルストーンが輝いています。

それはジュエルスターグランプリへの参加が認められたと言う証です。

すでにグランプリ会場は大きく盛り上がっています。

一体誰が優勝できるのかは分かりません。

ここからは本当の力と力のぶつかり合い。

もし仲間同士で戦うことになっても、ベストを尽くそうと誓い合っていました。


一回戦。今日はPと伊織の試合があるので、私は雪歩と一緒に観客席で応援をします。

P「春香ーお前のために勝つぞー」

愛の矢の効果はまだ続いています。

試合開始の合図です。

P「グリーラグリーラ レオノーラ。剣よ!」

P君は器用にもボールペンでペン回しをしながらそれを剣に変えました。

そして一瞬の剣閃で相手を倒しました。さすがP君です。

魔法学校なのに剣術を磨くなんて、いろいろとやることが矛盾しています。

「うがー!どうしてクッキー対決なのに剣を使うんだ!卑怯だぞ……ぐふっ」

対戦相手が何か文句を言って倒れ、医務室へ運ばれて行きました。

男にお菓子対決なんて無粋なものをぶつける方が悪い。


次は伊織の番です。伊織も楽勝だと思います。

種目は素敵な衣装対決。審判のお眼鏡に叶えば勝つという、極めて判定が偏る試合です。

雪歩「私なら、裸で勝ちにいきますぅ」

ぱーんち。

伊織「にひひっ…にひひっ…にひひっ…にひひっ」

虚ろな表情の伊織が戦場にやってきました。

私がP君を間違って誘惑したあの日から、伊織は薬でもしているかのような顔になりました。

何やらモアイ像の地下に研究室を作り、そこで夜な夜な怪しい研究をしていました。

そう言えば、ついこの間、伊織は中学生になったみたいです。

早くも厨二病をこじらせてしまったんだなーと思いました。


伊織「春香…絶対に…許さない…今日…ここで…ここで…」

何か伊織が呟いているようでしたが、ここまでは聴こえません。

ただ、その様子を察した対戦相手は、遠くにいる私から見ても分かるほど、おどおどしていました。

「うっうー。あのぉ、大丈夫ですかぁ?」

オレンジのツインテールの女の子は心配しているようでした。

可愛らしい仕草で伊織の顔を覗き込みました。

瞬間、伊織が叫びました。

伊織「ファァァァァイナルフラァァァァァァァッシュ!!」

会場の4割程が消し飛びました。

私と雪歩の隣が綺麗さっぱりなくなっています。

おでこツンデレキャラはあれが使えるようです。

対戦相手どころか審判すら消えています。伊織の勝ち。

ここは魔法の国です。きっと消えた方々も魔法ですぐに元通りでしょう。

その後、私は頭に付けてあるバッデストであの魔法を封印しました。

こういう時、バッデストは便利です。

魔法そのものを封印することで、相手にその魔法を使うこと自体を禁止してくれます。


本日最後の試合。そこで意外なことが起きました。

優勝候補と言われていた、通称金髪毛虫が一回戦にして早々に敗退したのです。

相手は、青いロングヘアの根暗な女の子でした。

毛虫「あふぅ、ミキね、このグランプリに優勝してもっとキラキラ」

根暗「あおぃぃぃぃぃぃとりぃぃぃぃぃぃぃ」

耳元で大声で叫ばれた自称ミキは耳をやられたようで、卒倒しました。

鬼ごっこ対決なのにまさかの物理攻撃。大波乱の幕開けでした。


雪歩の二回戦をP君と一緒に応援します。

P君は相変わらず私にベタベタしてくるので鬱陶しいです。

何度か突き放すように軽く攻撃をしていますが、ヘタレなのかスルースキルはやたら高く、中々想いが通じません。

彼はいろんなものが鈍い様です。バッデストに封印したいくらいです。

雪歩「私の相手は…あっ、真ちゃんだぁ」

どうも対戦相手は雪歩の知り合いのようです。

雪歩がいつものようにニヤリと微笑みました。

真「参ったなぁ…雪歩が相手だなんて。でも、ボクは手加減しないよ!」

勝負内容は魔法クイズ対決。

教科書から出される魔法の問題を早押しで解答。実演できれば得点になります。


審判「問題。複数の風船を出す魔法は何でしょう?レオノーラ以外でお答えください」

真「もらいー!」

鈍い雪歩に早押しは厳しいところがあります。

真「ティンクルティンクル レオノーラ!」

風船が出現しました。さすがレオノーラ。汎用性は随一です。

問題で禁止されているのに答えてしまった真という子は頭が少々残念なようでした。

審判「第二問。物を一瞬で消す魔法は何でしょう?」

真「今度こそ! ティンクルティンクル リクネーラ!」

審判「正解!真選手1ポイント」

なんと、正解です。もしかしたら彼は教科書を丸暗記しているのかもしれません。

ただ、自分の解答ボタンを消しているのは、やはり頭が残念な証拠でした。


雪歩「真ちゃん、ボタンを消したら解答できないよ?」

真「…あっ!」

気付いていなかったようです。

そんな彼の姿を見て雪歩が優しく微笑みました。

雪歩「それにね、真ちゃん。ずっとずっと気になってるんだけど、どうして間違った魔法を使うの?」

真「えっ?」

雪歩「真ちゃんはティンクルティンクルじゃなくて、グリーラグリーラでしょ?」

雪歩の声が数トーン、低くなりました。


確かに、あの子は男の子なのに、ずっと女の子の呪文であるティンクルティンクルと言っていました。

男の子は錬金術師の魔法であるグリーラグリーラを普通使います。

雪歩「真ちゃんはもっとお勉強が必要みたいだね」

雪歩「ティンクルティンクル ロンペピーラ 開け、漫画の世界!」

ロンペピーラは二次元に招待する、成人男性なら誰もが夢見る魔法です。

真は雪歩が作った漫画の世界に消えて行きました。

雪歩の漫画なので、それはもうおぞましい光景が広がっていることでしょう。

春香「やったね雪歩、二回戦突破おめでとう!!」


準々決勝。

P君の相手は…一回戦で大波乱を巻き起こした…あの音波少女、如月千早でした。

彼女、千早は笑顔なんて忘れました、と言わんばかりの無表情っぷりで立っています。

反対に、P君は熱血漢溢れています。

P「俺は春香のために戦う…!絶対に勝って見せる!」

相変わらず迷惑なことを言うヘタレ眼鏡です。

春香「P君、恥ずかしいからやめてー!」

P「俺は何度でも言うぞー!春香、愛してるー!」

千早「そう…あなたにも大事な目的があるのね。でもそれは私も同じ!!」

千早がP君を睨みつけています。

怒りを露わにしたその顔は、この戦いが再び嵐に巻き込まれる…そう感じさせてくれました。


対決種目は水泳200m自由形です。

P君と千早が水着に着替えました。

何ということでしょう…千早はまるで板のようでした。

全体的に細い上に、女とは思えない胸の薄さ。脂肪がまるで付いていません。

運動不足でちょっぴり太り気味なP君の方が胸が出て言います。

あまりにも残酷な競技です。

私は自分の目にうっすらと涙が浮かんでいるのを感じました。

それを隠すように横を向くと…雪歩も泣きながら大笑いしています。

私は彼女の事を小さい胸に敬意を込め、これから千早ちゃんと呼ぶことにしました。

P君には悪いけど、私、千早ちゃんを応援するね。

春香「頑張って千早ちゃん、頑張っても胸は大きくならないけどね!」

物凄い顔で睨まれました。


勝ったのは私の千早ちゃんでした。

P君は金槌でした。入った途端、足が付かないと慌て、ディアンと一緒に溺れてしまいました。

伊織、雪歩と一緒にP君を引き上げ、介抱をしました。

P「ああ…俺は負けたのか…だが、春香、お前のために俺は全力を尽くしたぞ」

いい加減、面倒になってきました。

これ以上、大好きな伊織に嫌われるのもあれなので、ここで目を覚ませることにしました。

春香「ティンクルティンクル 右ストレート。元に戻れ!」

がつーん。久しぶりのクリティカルヒットです。


P「はっ…俺はいったい何を…伊織、俺は何か悪い夢を見ていたようだ」

伊織「ばかっ…やっと、やっと元に戻ってくれた…」

魔法が解けてP君はまた伊織と結ばれることになりました。

久しぶりにクリティカルが出てすっきりしたので、今日は二人の邪魔はしないでおこうと思います。

さすがに今回の一件は私も懲りました。あの誘惑魔法はバッデストに封印することにしました。

伊織「ぎゅっと…ぎゅっとして…」

P「ああ…ごめんな、伊織」

むっ…折角解決してあげたのに、私には何のお礼もないのか、この二人。

私はディアンとガーネットを3Fの窓から投げ捨てました。ついでにルビーも。


今日は12/24。世間ではクリスマスイヴです。

カップルがいちゃついているのはこのジュエルランドも同じです。

伊織「はい、あーん」

P「あーん…美味しいよ、伊織…ちゅっ」

伊織「ちゅっ」

何か腹が立ちます。床が砂糖だらけです。

もう一度誘惑をしてやろうかと脳裏に過りましたが、バッデストに封印した手前、面倒くさいです。

サフィーがいたので、何となく毛を毟ってみましたが、中々ストレス解消にはなりません。

あ、そういえば、今日って雪歩の誕生日だっけ?サフィー、ナイス!

思い立ったら吉日。サフィーを十字架に磔にして、私は雪歩のところへ行くことにしました。

誕生日プレゼントは何がいいかなぁ?


雪歩は上野駅にいました。それもちょっと離れた13番線のトイレでした。

雪歩は姿を消す魔法を使っていました。男子トイレですから、仕方ないのでしょう。

私も姿を消しつつ、雪歩に接触をしました。

雪歩「えへへ…えへへ…いひっ」

春香「雪歩、何してるの?」

雪歩「あ、春香ちゃんだぁ。えへへ、見て分かる通りだよぉ。ここって天国に一番近いところなんだぁ」

雪歩が示した先は、クリスマスイヴということもあり、カップルでいっぱいでした。

ただ、その光景は私には少々荷が重かったようで、すぐにその場を離れることにしました。

雪歩は夢中で写真を撮り、デッサンに励んでいました。

レアレア界からジュエルランドへ移動する際、レアレア界での時間の進みは極限まで遅くなります。

雪歩はそれを活用し、レアレア界にいても同様の現象が起こる魔法を編み出しました。

まさに、躍動感あふれる静止画の世界です。

雪歩の手がみるみる内に多くのイラストを仕上げていきます。

私からのプレゼントなんて不要のようです。今の彼女は、誰よりも幸せです。


2/14バレンタインデーです。

いつもラブラブな伊織はP君にどんなチョコをプレゼントするのか楽しみでした。

お菓子作りが得意な私は皆に友チョコを作って持ってきました。

伊織「P。これが私の気持ちよ…」

P「ありがとう、伊織。伊織からチョコを貰える事を楽しみにしてたよ」

相変わらずのバカップルを見せつけてくれます。

私もニヤニヤが止まりません。やはりデレデレ姫は私の癒しです。

伊織のチョコはかなり大きめのハート型チョコでした。おそらく、手作りでしょう。

反対に私のは一口チョコ。早速、皆に手渡します。

P君は伊織以外のものを受け取りたくなかったようですが、友チョコと伝えるとすぐに受け取ってくれました。

春香「あとで伊織のを食べたら私のは帳消しになりますから!」

適当な事を言っておきます。

春香「今回は私の自信作ですから、食べてください!」

雪歩と伊織にも勿論プレゼントしています。

伊織は私の以前の所業からかなり警戒していましたが、私が同じものを食べたのを見ると安心して手を付けました。

春香「もう…伊織ってば、疑い深いんだから…」


当然、魔法薬入りです。言うまでもありません。

今回は1時間程度、体が入れ替わるというものです。

そしてその入れ替わる先すらも指定できてしまう、まさに自信策と言えるものでした。

効果が出るのは10分後。伊織も遅延型の薬とは予想していなかったようです。

雪歩「や…やられた…」

雪歩が生意気な口調で喋っています。中には伊織が入っています。

ただ…今の雪歩は素っ裸です。先にお願いをして裸になっていてもらいました。

雪歩「あ、あんたね…なんで雪歩が裸かと思ったら…これが目的だったの!!」

恥ずかしがっている雪歩の姿をした伊織。前の雪歩もこんなに恥ずかしがり屋さんだったのに…。


春香「春香…な、何をしたんだ…さっきのチョコか!」

P君は私の中です。私は先手を打って、自分に手錠をかけていましたので、もう自由に動けません。

ガチャガチャと手錠の音が空しく響きます。

助けようとしたディアンは窓から投げ捨てました。ついでにルビーも。

伊織「春香ちゃん…また変なお遊びだね、楽しいね」

なんとも素直な伊織です。中には雪歩が入っています。

そして…私は…そう、P君の体を手に入れました。

P「えへへ、これがP君の体かぁ…」

念願のP君の体を手に入れたぞ!

ということで、私は伊織(in雪歩)に向かって言いました。

P「伊織、愛してる」

伊織「えへへ、私もだよ、はる…じゃなかった。P君」

雪歩(in伊織)が地団駄を踏んでいます。両手で恥ずかしい場所を必死で隠しているのに、大変です。

雪歩の体なんだから、そこまで気にしなくてもいいのに。

ということで、私は伊織(in雪歩)に濃厚な口づけをしました。

えへへ、伊織と雪歩、二人の唇を同時に頂きました。

どうせなので、雪歩(in伊織)にもたっぷりとキスをしました。

抵抗されましたが、素っ裸な上、P君の力でねじ伏せるとあっけなかったです。

春香「バレンタイン、ごちそうさまでした」

ちなみに友チョコと言っても、私のチョコは全部本命です。


ジュエルスターグランプリ、準決勝は悲しい試合になりそうです。

伊織と雪歩がとうとう対戦することになりました。

二人は互いに悔いが残らないような戦いにしようと誓い合っていました。

しかし、すでに水面下では激しい戦いが繰り広げられているということも分かっていました。

これはあくまでもスクリーンに映っていたときだけ。

影では二人揃って陰湿な心理戦が展開されていました。


先手を打ったのは伊織でした。

まず手始めに雪歩の妄想グッズを、絵柄は確認できるが修復はできない程度に破り捨てました。

遅れを取った雪歩はP君の下の毛を完全に毟りつくしました。

対する伊織は雪歩の靴にレアレアドロップをドロドロに溶かしたものを流し込みました。

雪歩は負けじとP君の首元にキスマークを残し、『by高木』と刻み込みました。

続いて雪歩は伊織がいつも持っているウサギの縫いぐるみを魔法で藁人形に変えました。

連続行動を許してしまった伊織は雪歩の詩集をネットで大々的に流しました。

二人の応酬を見て寂しくなった私も参加したくなり、二人のジュエルチャームをハードオフに売りました。

買い取り価格は3時間粘っても2個で60円が限界でした。

未成年だったので売れませんでした。仕方なく寄付してきました。


そして準決勝当日。

二人とも変身ができず、両者失格ということになりました。

まさに大波乱。ジュエルスターグランプリ史上、初の出来事でした。

まさかの事態に会場からも驚きの声が尽きません。

春香「ここまで来て引き分け…やっぱり…二人は仲良しさんだね!」


次の戦いが事実上の決勝戦。

これから行われるのはジュエルスターが決まる歴史的な一戦になるのです。

そして入口から彼女が現れました。

胸無しグランプリ殿堂入りの、千早ちゃんです。

今日の千早ちゃんは意気込みが違っています。

これで勝てば優勝だからでしょうか。

きっと、願い事は胸を大きくしてくださいって言うんだろうな…。


千早ちゃんの対戦相手は…同じ青髪でありながらも、胸の大きさがあまりにも違う相手でした。

名前は三浦あずさと言うそうです。

春香「さすがにあの年で魔法少女は…」

千早「くっ…くっ…!!」

あずさ「あらあら、あなたがお相手なのね。互いに頑張りましょう」

のほほんと言っていますが、わざと胸を揺らして挑発しています。

千早ちゃんをいじめるなんて…私は我慢なりませんでした。

春香「千早ちゃん、胸が抉れてたって、千早ちゃんは千早ちゃんだよ!!」

春香「あの巨乳に千早ちゃんの悲しい貧乳を見せつけて!!」

わっ。雷魔法を撃ってきた。もう…照れ屋さんなんだなぁ。


千早「私は絶対に負けられない。私は勝って、絶対にバッデストを手に入れるわ!!」

あずさ「バッデスト…あんなものを欲しがって…どうするの?」

千早「いえ、それは手に入れてから考えるわ」

あずさ「あらあら〜」

千早ちゃんは大声で何ともこっぱずかしいことを言っていました。

案外、後先考えないタイプなのかもしれません。


事実上の決勝戦。対戦種目はグラビア対決です。

春香「oh.....」

観客からもため息が漏れました。勝負はあっけなく終わりました。

優勝は三浦あずささん。年齢的にもこれが最後の戦いだったのでしょう。

千早ちゃんが悔しそうに地面を叩いています。自分の胸と勘違いしているのでしょうか?

さて、あずささんはどんな三つの願いをするのでしょうか。


?「あずささん、おめでとう。あなたがジュエルスターピヨ」

会場が拍手で包まれる中、上から声が聞こえてきました。

あずさ「あなたは…コトリーナ様!」

このジュエルランドを創った、コトリーナ様が姿を現しました。

…何ということでしょう。

コトリーナ様はそれはもう悲しい程歳をお取りになられているようでした。

服装はどこぞの事務員かと思えるような完全にOLスタイル。現実味があります。

この会場に響き渡る声も魔法ではなく、片耳につけたインカムを通して出ているようです。

コトリーナ「あなたはこれで三つの願い事を叶えることができるピヨ」

結婚式用のブーケが上から降ってきました。

あれが三つの願いをかなえることができる、ミラクルジュエルマジックです。

てっきり、薄い本か何かだと考えていた私は、少し驚きました。

ブーケ。それはあずささんの一番欲しかったもののようです。

もしかしたら、コトリーナ様は叶わなかった結婚式の花嫁的プレイをしているのかもしれません。

コトリーナ「三つの願いはじっくりと考えるピヨ」

あずさ「もう願い事はすでに決まっています」


あずさ「まず一つ目は、私の運命の人が見つかりますように!」

あずさ「二つ目は、迷子になりませんように!」

あずさ「最後は…千早ちゃんの胸が大きくなりますように!!」

会場が拍手と涙で包まれました。

千早ちゃんはあまりにも感動したのか、あずささんに抱きついていました。

ブーケは空へ飛び、願い事を叶えるために輝きました。


いよいよ、ミラクルジュエルマジックのお披露目です。

私が、伊織が、雪歩が、P君が、そして観客のみんなが見つめる中。

悪魔春香「(おい、邪魔しようぜ)」

悪魔の声が聞こえてきました。

天使春香「(邪魔なんてしてはいけません。ちょっかい程度にしましょう)」

悪魔春香「(あんな願い、叶わなくなってもいいじゃないか)」

天使春香「(ダメよ…半分くらい叶うくらいにしないと!)」

悪魔春香さんは、千早ちゃんの胸が大きくなりますように、という願いを妨害しろと言っているのです。

私にはそんなこと、できるはずがありません。多分。

私の中で天使と悪魔が戦っていると…肩をポンっと叩かれました。

伊織「春香…」

雪歩「春香ちゃん…」

P「春香…」

三人が私を優しい笑顔を向けてくれました。


伊織「無理はしないで、春香!」

雪歩「私、春香ちゃんの気持ち、知ってるから!」

P「俺たちは仲間だ。さあ、素直になろう!」

春香「伊織…雪歩…P君…」

天使春香「(悪魔春香、分かった?あなたなんていらないのよ!)」

悪魔春香「(けっ…こんなに良い心しやがって…もう出番はねぇな…)」

春香「(ごめんね…)」

悪魔春香さんはどこかへ消えていました。

春香「みんな、ありがとう。私、やってみるよ!!」

伊織雪歩P「行け、春香!!」


ミラクルジュエルマジックはとても強い魔法です。さすがコトリーナ様です。

あれに対抗するには、それこそ膨大な量の魔法力が必要です。

時間が無い以上、手段は選んでいられません。

私はバッデストで周囲にいる人たちの魔法力を奪い取り、呪文を唱えました。

春香「ティンクルティンクルジュエルフラーッシュ。ティンクルティンクル レオノーラウィードォォォ!!!」

春香「願いなんて消えろぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

激しい力と力のぶつかり合い。

でも、負けられない。この魔法は私が魔法学校で習ってきた集大成。

傍らで伊織達が歌い始めました。応援歌のようです。

伊織「しー…………でー」

雪歩「のぼ……のー…えー」

P「ギ……背…してー」

何を言っているか聴こえない。


皆との思い出が蘇ります。

伊織にはよくイジメの手ほどきを身をもって教えてあげたね。

雪歩にはコトリーナ様の世界を紹介したね。

P君には…記憶に無いや。

ルビー…ごめんね、もう毛が生えてこない体になっちゃったね。

結局、私のジュエルストーンは0個だったけど、それでも大切な友達を手に入れたよ。

だから…だから…

春香「千早ちゃんの幻想をぶち壊す!!」


ジュエルスターグランプリから一週間経ちました。

春香「みんなー、おはよっ大好き!」

千早「春香…おはよう、大好き」

あずさ「春香ちゃん、おはよう、大好き」

伊織「あら、春香。今日も遅かったわね、大好き」

雪歩「春香ちゃん、おはようですぅ、大好き」

P「春香、良い天気だな、おはよう、大好き」

春香「えへへ、大好き!」

結局、ミラクルジュエルマジックの発動を阻止することはできませんでした。

ただ、願い事の内容については一瞬でしたが干渉することができました。

だから、私は願いました。

皆が語尾に『大好き』と付けますようにと。

一つだけでした。でも、それだけで十分でした。


レアレア界も同様の影響を受けていました。

アメリカの大統領が戦争の演説をしながら『大好き』と発しているのには笑いが止まりませんでした。

どうも筆談やその他の方法でコミュニケーションを取っても語尾についてしまうようです。

モールス信号にも文の区切りには出てしまうようです。

大好きという相手に対しては人はどうしても悪意を抱くことはできません。

世界中から戦争が無くなりました。

その後、私たちは魔法学校を卒業しました。

伊織は相変わらずZランクアイドルをやっているようで、テレビで時々姿を見かけます。

雪歩はとうとうコトリーナ様を超え、スーパージュエルランドを創造しました。

P君は勉強をして、アイドルのプロデューサーになったそうです。

あずささんは気が付いたらいませんでした。

千早ちゃんは相変わらず胸のことを気にしていますが、私と一緒に楽しく暮らしています。

私は…みんな、幸せになってるかなーと、今日も空を見上げてお祈りをしています。


春香「ティンクルティンクル ジュエルフラーッシュ」

春香「ティンクルティンクル みんな幸せになーれ。大好き、だーい好き!」


終わり

以上になります。
いおりんに無理矢理感謝の魔法をかけたいが為に長文書いてしまいました。

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