男「安価で何だってする」(34)


男「俺が何をすべきか……分かった気がするんだ。きっとそれは>>2なんだ」


(安価内容の他、秒数末尾によりこのSSは以下のようになります)

1.ダークな裏社会風
2.ラッキースケベ
3.ボラギノール
4.熱血少年マンガ
5.ワケが分からないよ
6.USA!USA!USA!
7.この猿野郎がァ!
8.筋肉以外は普通
9.劇画調
0.諸行無常也

踏んでやるけどわざわざ俺が踏む意味ねぇよな?
>>1が自分で踏めば済む話だもん

そんなにレス欲しい?


男「なーんか楽しい事ねぇかなぁ……」

日の落ちた歓楽街、まだ若い青年はネオンの中を闊歩していた。

あちらこちらから漂う香水と煙草のケム……それから目を逸らすように、手元のスマートフォンに目を向けながら。

男「最近はまとめも大したもんやってねーし……俺の立てたSSスレも不評だし……」

男「クソッ! なんだってんだ、つまらねぇ……」ガンッ

落ちていたcolaの缶を蹴飛ばしたのさ。それは、路地裏から出てきた黒いスーツの足首にカランと当たった。

男「あっ、す、すいませんッ!」ペコ

しかしその黒いスーツの男は、目の下の向こう傷を撫でながらこう言ったのさ……。


?「そんなに……レスが欲しいか……?」ニヤァ


?「おい、お前ら。やれ」パチン

黒服の男は後ろに向かって指を鳴らす……。

すると、今度は後ろの路地から大きな黒人の男が1人、2人、いや、5、こっちに向かってきた!?

男「おっ、おい! なんだってんだ!?」

?「騒ぐな餓鬼……騒いだらお前のスマホの利用料金を2.5倍にしてやる」


男「なんだって!? うぉわ、クソッ、離せッ、やめろッ」グイッ

黒人『チッ、大人しくしやがれッ!』バキッ

男「……!」グラッ

黒人『こんなひょろいガキが使い物になるのか、James?』ガッ!ガッ!

黒人『そうしたらSHINJUKUの2番街にでも売り飛ばしちまいな』バキィ!ドゴッ!

黒人『そりゃあ良い、HAHAHAHAHAHAHAHA!』

大人の世界の暴力ってこういうものだって、初めて思ったよ。顔蹴られて、背骨踏まれて、腹パンされて、こりゃあもう無理だ。

俺はそのままコンクリート舐めて、気を失っちまったんだ……。


……。

男「ぅうう……」

気が付きゃ、俺は冷たい床に転がされてた。
口にはガムテープ、腕はビニールテープでがんじがらめ。

頭ン中、ウチのおかぁとおとんの事でいっぱいよ。
俺、ここで死んじまうのかなぁ?

ダメだよ……誘拐とか、身の代金とか、そういう事ばっかよぎってしょうがなかったね。

今頃心配してんだろうなぁ……帰りてぇよぉ。

ああ、蹴られた頬の骨がジンジンしやがる。口の中鉄臭いし。

?「起きたか」

男「!」


?「騒ぐなと言ったのに……クック」

?「お前のスマホの利用料金、あいつらに殴られる度に0.5倍上乗せしておいた……クク」

?「ざっと11.5倍……、ククク、払えるかい坊や?」

男「なっ、話が違う!」ググッ

?「お前のスマホはこっちの手中にある……こいつ、をッ!」ブンッ

男「や、やめろッ!」

黒服は思い切り俺のスマホを叩き付けようとしやがった……。
その瞬間、俺、血液が沸騰したみたいだったね。捕まってるのも忘れて、やめろッ!だってさ。
やめてくれ……また利用料金を増やされるのはゴメンだ。


?「クククククク……! 分かっただろう? 分かれば、いい……」

?「イヤホンジャックにスポイトで水を入れられたくなければ、大人しくしている事だな……クック」

男「くっ、くそッ……防水じゃないのを、一目で見破りやがった……!」

?「俺はプロさ……この町で知らない奴はいない……」

俺は恐怖していたよ。コイツなら本当にヤる、ってね。いや、さらに電子レンジに掛けられてもおかしくない……。
俺はすっかり抵抗する気力を失っちまった……。


ああ、俺もサ……俺も、『スマホ』の味に、どっぷり浸かっちまったスマホ依存症だったんだよ……。

そこをまんまと見抜かれたってわけさ……おかぁ、ごめんな……。


男「……クソ。目的は何なんだ」

?「ククク……諦めが良いな……お前には、果たすべき務めを果たしてもらおう……」

男「くっ……」ゴクリ

おとん、ごめんな……悪い事したら、一生這い上がれないって言われてきたのに……。
スマホジャンキーの俺には、逆らえねぇよぉ……。



?「お前、初めに言った事を、覚えているか……? クククク……」

男「わ、分からねえよう。レスがどうとか……?」

?「フフ、違うな……上を、見たまえ……!」

男「う、上……?」

?「そぉだ、一番上だ……!!」


男「安価で、何だってする……!?」


?「フフ、フハハハハハッ! そぉだ、それこそがスレタイ! スレッドに与えられたたったひとつの命題……!」

?「安価、指し示す安価は>>2…… お前は、踏まれてしまった安価に従い、そんなにもレスを欲さねばならない……!」


男「そ、そんな……レスを……!? そんなにも欲しがったら、レス乞食という餓鬼道の末路に……!!」

?「裏切ったら分かっているな……? ククク、スレチ……重犯罪……!!町の住人から追い出され、NGに入れられ空気同然……!」

?「契約不履行だ……!! 『ARASHI』の烙印を押されたお前は、二度とこの町に戻ってくる事は叶わない!!」

男「うぁぁあああッ!!」


?「お前に選択権はない……母も父も、お前を擁護など出来はしない……」

男「そんな、だって……」

?「そんな事をしたら……分かるな?」



男「……一族揃って『自演ド』か」



?「分かってるじゃないか、スマホジャンキー……夜の町に逃げ場など存在しない」

男「う、うるせぇ! 俺はまだ、この町に染まってなんか……!」

?「では、何故俺がお前の前に現れたか……分かるかい?」

男「! な、何でだ……?」


?「隣町は2番街……通称『2ちゃんねる』。ここは外れのスラム街、『したらば』」

?「お前は、隣の2番街をシメている恐ろしい集団の存在を知っているか……?」


男「……まさか。まさかッ!?」



?「そう。俺こそがその『VIPPER』さ」ニタァ



男「そ、そんな……エリートの町から隔離されると共に決起、一夜にして2番街の覇権を握った、選ばれしクズの集団……!」

男「実在していたのかッ!!」


男「く、くそッ、やめろクズッ! 何をする気だッ」

?「ククク……俺がする事は変わらない。匿名掲示板の秩序を破ろうとするものを『シメた』、ただそれだけ」

?「こうして、スマホジャンキーのお前の前に現れたのさ」


?「決して、この闇の町からは逃れられない……VIPPERのスーパーハカーがお前の住所すら割り出し、お前の親父さんに年賀状を送りつけてやる」

男「や、やめろ……知らない人から年賀状を貰ったりしたら、おとんのハゲがますます進行してしまう!」

?「ククク、ハゲに人権などない……」



…………。

こうして、その日は縄をほどかれ、解放された。
しかし俺はこれから安価に従い、レス乞食として生きていかなければならない……。

男「く、くぅう……!」ポロポロ

手に持ったスマホが震える……なんだ迷惑メールか。



他人からのレスを貰い続ける事がどれだけ難しいか……道化じみているのか……青年は良く分かっていた。

ああしかし、この町に堕ちてゆく……まとめ民と無法者、2番街の避難所としてあらゆる者が集う、この『したらば』のスラム街へ……。


次の日起床すると、俺はお気に入りの巡回を終え、ひとまず昨日言われた事を吟味する。

目的があるならまず行動しなければならない……俺は画面に対しフリックを始めた。


男「ひとまずは腹筋スレから……レスがもらいやすいしな」

男「とりあえずは、自分の知識の中で戦っていくんだ……!」


スレタイ

女「おっぱい増えた」

男「ゲームの中に入れるだって?」

勇者「聖水(意味深)撒いてたら仲間も寄り付かなくなった」

キリン「13kmや」

雪だるま「焼肉食いたい」


?「クククク……足りない頭で必死に頑張っているようだな……」

男「なっ、一体どこから……」

?「どれ、2時間経ったようだし見てやろう……」

――――――――

女「おっぱい増えた」(5)

男「ゲームの中に入れるだって?」(14)

勇者「聖水(意味深)撒いてたら仲間も寄り付かなくなった」(8)

キリン「13kmや」(3)

雪だるま「焼肉食いたい」(1)

――――――――

?「ククク……見事にクソスレ製造機と化しているな……哀れ……!」

男「うっ、うるせぇ、こんな事したくなんか……!」


?「では指摘してやろう……『女「おっぱい増えた」』。小学生並みの下ネタが面白いと思えるなら続けるといい……」

男「くっ」

?「『男「ゲームの中に入れるだって?」』。なんだこれは、SAOの二番煎じか。例の如く早々と乗っ取られてるな」

男「確かに……」

?「『勇者「聖水(意味深)撒いてたら仲間も寄り付かなくなった』。淫夢に媚びればレスが貰えるといった思考回路……堕ちたものだな」

?「お前ニコ厨か? ならば生かしては返さんぞ」ギロッ

男「ち、違います……」

?「『キリン「13kmや」』……南蛮煎じだ」

男「う、うるさい」

?「『雪だるま「焼肉食いたい」』。なんだこれは、小学生の作文か? 香ばしそうな香りしかしないだろうが」


?「良いか、レス乞食に大切な事はペテンだ。ブラフだ。裏切りだ」

?「釣りをするなら餌が大事。SSを書かずに餌を大きく見せるには、未知の部分を『期待させる』しかない」

?「お前は副乳女子とセクロスしたいのか?」

男「うっ……」

?「何のゲームか分からない体験談に惹かれるか?」

男「ち、ちくしょう……なんでそんな詳しいんだよ……」



?「他者の批判が『VIPPER』の仕事だからさ」

?「明日IDが変わったらまた頑張りたまえ、クックック」バサッ

男「き、消えた……」


翌日

?「ククク……レスを欲しているかね?」

男「あ、あぁ……これでどうかな?」

――――――――

野球ボール「この中にひとつ仲間外れがいまーすwwwwwwwwwwww」(16)

淫魔「オナホ売ります」(29)

アイアンマン「壁殴り代行?」(31)

――――――――

男「もう全部乗っ取られたけどな」

?「ククク……少しは良くなったようだな……」


?「しかし、腹筋スレに適さない題材が多いな」

男「そうか……」

?「開いた側に『クマー』と思わせられなければ、それはただのスレタイ詐欺だ、ククク……」

?「ムカついたら反応したくなくならないかね……?」

男「わ、分かった……とにかくレスの為に行動すれば、それで良いんだよな……」

?「ククク……応援してるぞ……」


さらに翌日

?「例のデータ。出来上がっているかね……? ククク……」

男「あ、あぁ……」

――――――――

ルイージ「掃除機の販促でジャパネットに雇われた」(30)

――――――――

?「何だ……ひとつしか立てていないのか」
?「そんなんで飢えきったレス乞食が務まると思うのかね? スマホの基本料金を値上げされたいか? ん?」

男「ま、待ってくれ、今回は違う試みがしたかったんだ……!」

――――――――
ルイージ「掃除機の販促でジャパネットに雇われた」
1:以下、名無しが深夜にお送りします
??/??/??(?) 06:48:55 ID:????????

ってのを誰か頼む
――――――――

?「! クククククク……餓鬼の道に染まりつつあるな……」

男「へ、へへっ……これが禁じ手、『立て逃げ』ってやつさ」


男「どうせ堕ちるなら、ヤるとこまでヤってやるさ……!」カタカタ

?「フフ、吹っ切れたな……お前がこちら側の住人になるのもそう遠くはなさそうだ、クックック……」ニヤァ


………………。

おかぁ、おとん。ごめんな……。

レス乞食なんていう、身内に居ちゃ世間様に顔向けできねぇ息子になっちまって……。

でもよ、『腹筋スレ大杉』『立て逃げどうにかならんのか』『またこいつかよ氏ね』なんていうレスを貰いながら……。

路地裏でしゃがみ込んで飲む缶コーヒーが旨くて仕方ねぇんだよ……。


でもさぁ。俺の中に溢れるこの満たされない欲望と別に……もう一つの欲望が、少しずつ芽吹いてきやがったんだ……へ、へへっ……。

今に見ていやがれ、『VIPPER』……!


明くる日……


?「寝てたか……」ゴシゴシ

?「とりあえずフリースポット巡りして、あいつのスレの反応、を……?」



?「こ、これは、まさかッ!!?」



ガチャ! バタン!

?「おい貴様ッ! これは一体どういう心変わりだ……!?」

待ちわびていた声に、俺は余裕の表情で振り返る。奴は……顔を真っ赤にし火病っていやがった。

?「いったい、お前は、どうして……くぅっ……!」

いや、泣く子も黙る『VIPPER』が泣きはらしていたんだ……。

――――――――
雪だるま「焼肉食いたい」

76:以下、名無しが深夜にお送りします
??/??/??(?) 20:59:02 ID:????????

また書いてくれ


77:以下、名無しが深夜にお送りします
??/??/??(?) 21:17:33 ID:????????
良く乗っ取りからここまで書けたな……


――――――――






男「――乗っ取ったやったのさ。俺は、かつての俺に打ち克ったんだ……」

男「本来なら書き手のみに使用を許された最終奥義……『KAKI=TAME』。俺が使うなんて、畏れ多いにも程がある」



男「でもよ? レス乞食として、一度だけシャバで味わってみたかったんだ……」


?「くそぉぉ……ッ!!」ポロポロ


男「偽りの無い、乙の味が」フゥ…


潰れかけた焼き肉屋の店長……店先に積もった雪を、何となく雪だるまにしてみたんだ。

したら、雪だるまが意志を持つじゃねえか。閑散とした店を見かねて、自分が客寄せダルマになりたい、ってな。

アツアツの肉に融けちまいながら、融けちまいながら……それでも「溶ける程美味いぞ」って。

目から雪解け水を流して、すんげぇ美味そうに、道行くサラリーマンに言うんだよ……。

店はいっぱい繁盛して……雪だるまは春風と共に消えちまった……。


そんな、つまらない話さ……。


男「なあ、おっさん……」


…………。

?「……」カタカタカタ

……俺はあの後あいつにスマホの明細を手渡し、あの町を去った。
何? 料金は当然もとのままさ。言わせんな恥ずかしい

あの餓鬼、大した事言いやがる。

『あの町でスレてた俺に、誰かから反応を貰う努力と楽しさを教えてくれたのはアンタさ』
『雪だるまの話……俺とアンタみたいだなって思って、書いてたよ』
『春になれば雪だるまは消えちまう……アンタも、俺ばかりに構ってないで行くところがあるだろ?』

?「クック……久しぶりに泣いちまったなぁ……」


?「きっと疲れてたんだな……」カタカタ

『アンタみたいになれるなら、俺もVIPPERになってみるかな。へへ……』

?「やめとけっての馬鹿野郎……これだから新参は……」グスッ
1人のVIPPERが、熱いドリップコーヒーを呷る。



?「――お? やたら伸びてんなこのスレ。んじゃ、行きますか……」カタカタッターン

......


【書き込みました】

78:以下、名無しが深夜にお送りします
??/??/??(?) 06:24:31 ID:????????
最高に良かったぜ


おわり。

もしもしなのでどなた様か完結スレに貼っていただけないでしょうか、お願いします。

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