勇者「魔王が殺しても死なない」(323)

魔王「ぐおおおおおお……人間の分際で私を倒すとは……」

魔王「だが私はいつか必ず復活する……その時お前たちは生きてはいまい」

魔王「お前たちの子孫ともどもいつか滅ぼしてくれるわ!はーっはっはっはーー!」

ヴォーン……

戦士「んなことになったらその時の人間がお前をまた倒してやるだけだ!」

僧侶「人間は負けない……」

魔法使い「あんたこそその時負けるのを楽しみにしてるのね!」

勇者「あ?逃がさねーよ?」

ガシッ

戦士「え?」

僧侶「え?」

魔法使い「え?」

魔王「え!?」

ガシッ

ズルルル

魔王「お、おい」

勇者「おりゃあ!」

ドテーン

魔王「ぐあ!」

戦士「ちょっ!勇者なにしてんだ!?」

僧侶「終ったのに……」

魔法使い「何連れ戻してんの!?」

ヴォーン……

魔王「ああ……魔界へのゲートが……」

勇者「いや、最後まで殺さなきゃだめだろ?」

戦士「いや、いーじゃねーか!どうせ数百年後とかだろ!?」

勇者「俺心配事があると眠れねーし」

戦士「どんだけ将来心配してんだよ!」

勇者「とりあえず国に連れてって処刑しようぜ」

ズルズルッ

魔王「痛い!剥げる!髪の毛ひっぱるな!ハゲ!」

勇者「はげてねーよ!」

ズルズル

魔法使い「ちょっと、やりすぎでしょ。そのまま返しちゃえばよかったじゃない」

勇者「よくねーよ。こいつは確実に殺す」

勇者「んじゃ帰るか」

僧侶「本気?」

勇者「ああ、目の前で殺せば王様も国民も一安心だろ」

スライム「魔王様のお城から煙が上がってる……」

スライム「何かあったのかなぁ」

スライム「とりあえず門番さんに聞いてみるかな」

ピョンピョン

スライム「あれ?門が開いてる……」

スライム「門番さーん!」

スライム「……」

スライム「おーい!」

スライム「な、何かあったのかなぁ。魔王様困ってるのかな……会った事ないけど」

スライム「先生が言ってたな。困った人がいたら助けなさいって」

スライム「よし!行くぞ!」

ピョンピョン

スライム「ん?あれは門番さん?」

ピョン

スライム「門番さー……」

スライム「あ……あ……」

スライム「顔が……焼かれてる……」

スライム「……」

勇者「さて、城から出たら転送魔法で帰るぞ」

ズルズル

魔王「ぐぅぅ……こ、これは……よくここまで残酷な事を……」

勇者「あ?何が?」

魔王「城中血まみれではないか……よくも私の眷属を……」

勇者「あったりまえだろうが。魔物は殺す」

魔王「外道め……」

勇者「魔王が何をいう」

ズルズルッ

勇者「ん?」

スライム「……」

スライム「お前が……やったのかー!」

ピョンピョン

勇者「はぁ?何?」

スライム「何でこんな酷いことをするんだよう!」

勇者「?」

スライム「先生が言ってたぞ!人を傷つけてはいけないって!」

勇者「なんだ雑魚か。行くか」

ズルズルッ

スライム「待てー!」

勇者「ああ?やんのか?」

魔法使い「ちょっと!こんな小さい魔物まで殺すつもり!?」

勇者「それもそうか。さっさと行くか。転送魔法!」

ヴォーン

スライム「待てー!」

ピョンピョンッ

―――王国

王様「おお!勇者よ!戻ったか」

勇者「はい」

王様「して、魔王は倒せたか」

勇者「ええ、この通り」

ドサッ

魔王「んーっんーっ」

王様「こ、これは……?」

勇者「捕らえてまいりました」

王様「なっ……生け捕りだと……」

勇者「公開処刑にするのがよいかと」

王様「な、なるほど……しかし、なかなか美しい顔をしておる……殺すには惜しいな」

グイッ

魔王「むぐーっ!」

勇者「何を言っているのですか?こいつはいつか人間を滅ぼすと宣言しています。即刻殺すべきかと」

王様「じゃ、じゃあ一晩だけ……」

勇者「何を言ってるんですか!」

ダンッ

王様「ひっ」

勇者「さっさと殺さないと心配で眠れないんですよ!」

王様「わ、わかった……さっそく処刑の準備をしよう」

モミモミ

魔王「!?」

勇者「何さり気に揉んでんですか……」

―――処刑場

勇者「よく聞け!魔界の王は俺が捕らえた!」

勇者「魔物達の軍団は壊滅だ!」

勇者「もう魔物を恐れることはない!」

勇者「人間は勝利したのだ!」

勇者「今より魔王の処刑を執り行う!」

「勇者様ー!」

「ひゃっはー!」

「平和が……本当の平和が訪れたのね……」

王様「わしの役目が……」

戦士「なんだかなぁ」

僧侶「天狗になってる……」

魔法使い「ホントにこれでいいの?」

勇者「言い残すことはないか?」

魔王「貴様らー!必ず復活して皆殺しに……」

勇者「うおりゃああ!」

ザグゥ

王様「おお……首が……」

戦士「落ちた……」

コロコロ

魔王「」

勇者「魔王は死んだ!これで世界は……」

ブワッ

魔法使い「なっ……」

僧侶「魔王の体が……」

勇者「消えた!?いや……これは……」

ヴヴヴヴヴヴ

勇者「黒い霧に……」

ブワッ

魔王「うぐぐ……」

王様「首に……」

勇者「体が復元しただと!?」

ザワザワ

「なにあれなにあれ不死身?」

「やばくね?」

「あれが……魔界の王?」

勇者「くっ……恐れるな!所詮最後の悪あがきにすぎない!」

グイッ

魔王「あうぅ」

勇者「こいつは俺が責任を持って処刑する!安心しろ!」

「お……おお勇者様」

「勇者様ならやってくれる……はず」

「あ、ああ。そうだよな。大丈夫だよな」

勇者「皆は安心して生活をするがいい!」

ザッ

王様「お、おい。どうするんじゃ。なっなっ?どうするんじゃよ!責任とるなんていって大丈夫か?なっ?」

勇者「ちょっと黙っててください!」

ズルズルッ

魔王「髪の毛がああああ」

―――王城

勇者「さて……どういうことだ?」

魔王「……」

王様「答えんか!この!この!」

ゲシゲシッ

魔法使い「ちょっと!王様なにしてるんですか!」

王様「え?だって……」

僧侶「拷問は法律で禁止……」

戦士「うーん、わからん」

勇者「うりゃあ!」

ズバッ

魔法使い「ちょっ!」

コロコロ……ヴォーン

勇者「魔王が殺しても死なない」

魔法使い「いきなり斬りつけることないでしょ」

勇者「俺は魔王を殺さなきゃならねーんだよ!」

戦士「やっぱ魔界なりなんなりに何百年だか何千年だか封じておいて方がよかったんじゃねえか?」

勇者「また復活するだろうが!」

僧侶「もう復活してる……」

勇者「こんな魔力からっぽの状態なら別にいいんだがな……」

魔王「馬鹿め!魔力なら少しずつ回復しておるわ!いつか回復したら……」

勇者「……」

ズバッ

魔王「」

勇者「どうするか……」

王様「そうじゃ!鉄の箱にでも詰めて海に沈めてしまってはどうじゃ?」

魔王「なっ……」

勇者「鉄が錆びたら浮いてくるでしょう。それに何千年もの間に海が陸になるかもしれない」

王様「ずっと牢に入れておけば……はぁはぁ」

勇者「何考えてんですか?」

王様「い、いや、わしは人間のために……」

勇者「この王国も数千年もあるとは限らないでしょう」

王様「王の前でなんということを言うんじゃ……」

勇者「よし!色々試してみるか」

王様「は?」

勇者「殺し続けても死なないとは限らないですから」

勇者「おい!覚悟しておけよ!」

グイッ

魔王「うぅ……」

―――魔王城

スライム「逃げられちゃった……」

スライム「あの引きずられてた人が魔王様かなぁ」

スライム「会った事ないけど……助けに行かないと!」

スライム「でもその前に……」

チラッ

スライム「みんな……死んじゃってたな……」

スライム「ううっ……酷い」

スライム「弔ってあげないと……」

スライム「先生が死んだ人には魂の安らぎの場所が必要だって言ってたし」

ザクザクッ

スライム「みんな生きていたのに……」

―――数日後

スライム「お墓はこんなところかな」

スライム「南無……」

プルプル

スライム「……」

スライム「よし!じゃあ魔王様を助けに……ってどっちだろう」

スライム「うーん」

スライム「先生に相談だ!」

ピョンピョン

―――魔王城

勇者「よっしゃ。到着」

戦士「なんでこんなとこにまた来るんだよ」

僧侶「……面倒」

魔法使い「はぁ……なんであたしまで」

勇者「あんな街中で派手なことできないだろ?」

戦士「派手?」

勇者「ああ、ここなら多少無茶しても大丈夫だろ?城も頑丈だしな?魔王」

魔王「むぐーっ!」

勇者「とりあえず地下室っぽいところに行ってみようぜ」

ザッ

勇者「ん?」

戦士「ありゃ?魔物の死体がないぞ」

僧侶「あれ……」

魔法使い「あっ、お墓?」

勇者「あ?墓ぁ?魔物のくせにか?」

魔法使い「あのスライムの子かしら」

勇者「うぜーな!魔物が何やってんだ。ゾンビにでもしようとしてんじゃねーのか?」

ガッ

魔法使い「なっ、何する気!?」

勇者「二度と蘇らないように焼き尽くす。おい、魔法使い。やれ」

魔法使い「いやよ!」

勇者「はぁ?なんで?」

魔法使い「ただのお墓でしょ。そこまでしなくても……」

勇者「俺は心配事があると眠れねーんだよ!だったら俺がやる!」

ゴゴゴゴゴゴゴ

勇者「灼熱!」

ゴォオオオオオオ

魔法使い「酷い……」

勇者「よっしゃ!灰になってまでゾンビにはなんねーだろ」

ズルズルッ

勇者「じゃ、いくぞ」

僧侶「お城も綺麗になってる……」

勇者「今から血まみれにしてやるけどな」

戦士「勇者、お前……」

―――地下室

勇者「地下室発見!」

ゴンゴンッ

魔王「ぐっぐっ」

魔法使い「ちょっと魔王の頭が階段に……」

ゴンゴンッ

勇者「これから殺すやつのことなんか気にすんなよ」

勇者「よし、ここでいいか」

戦士「で、どうやって殺すんだ?」

勇者「んー、とりあえず首飛ばし続けてみるか」

魔王「んーっ!」

ブンブンッ

勇者「うりゃりゃー!」

ズバババッ

勇者「ぜぃ……ぜぃ……駄目か。やっぱり体が霧になって復元しちまう」

勇者「じゃ、次は焼いて灰にしてみるか。おい、魔法使い」

魔法使い「もうあたし嫌!見てらんないわ!」

ダダッ

勇者「んだよ、あいつ」

僧侶「懺悔してくる……」

勇者「ここ破壊神の教会しかねーぞ?」

勇者「んじゃ戦士……は魔法使えなかったな。お前使えねーな」

戦士「うるせえ!」

魔法使い「まったく……なんであんなやつが勇者に……」

魔法使い「殺すことないのに……話し合えばきっと……」

ザッ

戦士「……」

魔法使い「戦士?勇者と一緒じゃなかったの?」

戦士「うぷっ……勇者のやつあんなことまでやるとは……気分わリぃ」

魔法使い「え……」

戦士「魔王がしぶとすぎるんだろうけどな……」

ザッザッ

勇者「おい、戦士、どこいくんだよ」

魔法使い「ゆ、勇者……なにその手に持ってる血だらけの……」

勇者「ん?これ?おろし金。魔王をすりつぶして見たらどうかなーっと」

魔法使い「なんてことを……」

勇者「だが、途中で霧になっちまってだめだったわ」

勇者「悲鳴がうるさくてかなわねーよ。まったく」

勇者「首を落としても駄目、灰にしても駄目、すりおろしても駄目、内臓えぐったり色々してみたんだけどなぁ」

魔法使い「ちょっ……」

勇者「マジであいつしなねーのな。参ったわ。まったく。ありゃ?僧侶は?」

魔法使い「邪神の教会で祈ってるけど……」

勇者「あいつ聖水持ってたよな」

魔法使い「それが何?」

勇者「いや、魔王を聖水風呂にでも突っ込んで溶かしちまったらどうかなってな」

魔法使い「なっ……」

―――地下室

勇者「待たせたな」

魔王「も、もうやめて……」

勇者「次はこれだ」

チャプチャプ

魔王「?」

勇者「風呂だぞ。喜べ」

グイッ

魔王「な、何を……」

勇者「ほれ、入れ」

ザブンッ

魔王「ぐあああああああああああ!体が燃えるう」

勇者「どうだ、霧になって逃げられるか?どうだ?」

グイグイッ

―――廃村

スライム「先生!せんせー!」

スライム「大変なんだ!魔王様が捕まっちゃったんだよ!」

スライム「それに魔物がいっぱいしんじゃってた!」

スライム「どうすればいいの!」

スライム「え?うん」

スライム「そうだね。僕だけじゃ無理かも」

スライム「分かった!仲間を集めるんだね」

スライム「信じる心が仲間を繋ぐ、だね。わかった。ありがとう先生!」

ピョンピョン

勇者「どうだ?体の中と外同時に焼け爛れる気分は」

魔王「ごぼぼぼぼぼ」

勇者「おっ……溶ける溶ける」

魔王「……」

勇者「やったか!?」

勇者「駄目だった……」

魔王「下種が……」

勇者「あ?」

魔王「貴様らは魔物を殺すのに何のためらいもないのだな」

勇者「当然だろうが」

魔王「魔物にも心があるのだぞ」

勇者「はぁ?破壊の神に作られたような魔物の心がどうした」

魔王「確かに私は人間を滅ぼす!だが、そんな魔物ばかりではないのだぞ!」

勇者「あー、はいはい。何を言われようと俺は魔物を殺すだけだからな」

魔王「人間がそんなだから私は……」

ザグゥ

勇者「あー、うっせー。マジで」

戦士「勇者ー。終ったか?」

勇者「ああ、今回も駄目だったよ」

勇者「だからちょっと方針変えようかと」

戦士「は?」

勇者「こいつ肉体は死なない。マジで」

戦士「諦めんのかよ」

勇者「だから精神を殺してやる」

魔法使い「ちょっと勇者!」

勇者「法律違反?魔物に法律なんてねーよ」

勇者「拷問だ」

魔法使い「何をする気!?」

勇者「二度と人間を滅ぼそうなんて思わないように痛みと屈辱を与える」

魔法使い「そんなことは許されないわ!」

勇者「お前に許してもらう必要なんてねーよ」

魔法使い「いいえ!許さない!」

グッ

勇者「あん?俺とやる気か?戦士、お前はどうよ?」

戦士「俺は……うーん……」

僧侶「腐っても勇者……」

戦士「僧侶いたのかよ」

勇者「お前につく奴はいねーみてーだな。どうする魔法使い」

魔法使い「魔王!あなたが人間を滅ぼさないって言えばそれで終るでしょ!」

魔王「私は人間を滅ぼす。それは絶対だ!」

魔法使い「なっ……」

勇者「見ろ。こいつはめちゃ許せんよなぁ」

魔法使い「それでもあたしは……」

勇者「魔王は人間の敵だ」

魔法使い「あー!もう!!それでもあたしは!」

ゴゴゴゴゴゴゴッ

勇者「ちょっ!」

戦士「あ」

僧侶「私おわた」

魔法使い「爆裂魔法!!」

カッ

魔法使い「もう知らないわよ!」

魔法使い「あんたたち地獄に落ちるわよ!ばーかばーか!」

ダダダッ

ガラガラガラッ

勇者「げほっ……げほっ」

戦士「死ぬかと思った」

僧侶「わざとはずした……?」

魔王「……」

―――廃村周辺

スライム「よーし!仲間を集めるぞー!」

スライム「でも魔王様を連れてってあいつ誰なのかなぁ」

スライム「魔王様の敵っていうと勇者かなぁ」

魔法使い「まったく!勇者はまったく!」

スライム「勇者ってどこにいるのかなぁ」

魔法使い「鬼畜すぎでしょ!あれのどこが勇者よ!」

スライム「それに仲間を集めないと勇者から魔王様を助けられないなぁ」

魔法使い「結局魔王助けられなかったなぁ」

スライム「え?」

魔法使い「ん?」

魔法使い「魔、魔物!?」

ザザッ

スライム「君も魔王様を助けたいのかい?」

プルプル

魔法使い「え?あ、あの時のスライム」

スライム「あの時?」

魔法使い「気づいてない?」

スライム「?」

魔法使い「えーっとあの……」

スライム「僕スライム!」

魔法使い「あ、あたしは魔法使い」

スライム「魔法使いさんかー。なんだか珍しい魔物だね!」

魔法使い「え?」

盗賊「これを試してみたらどうだ?
こいつの部屋にあった『人類の死因34862通』」


武闘家「いや死なないことを逆手にとって
最大ダメージ検証に使わせてくれ」

遊び人「いや遊び過ぎて歩く毒壺と化した俺の性病を全てうつしてみようぜ」

スライム「違うの?」

魔法使い「そ、それより、魔王を助けに行くって?」

スライム「うん!魔王様が連れらさられちゃったんだ!」

ピョンピョン

魔法使い「待って!あんたじゃ殺……」

スライム「ころ?」

魔法使い「えー、うーん、や、やめておいたほうがいいわよ?」

スライム「なんで?」

魔法使い「危ないし……」

スライム「大丈夫だよ!僕は先生の弟子なんだ!」

魔法使い「先生って?」

スライム「先生は先生だよ!」

魔法使い「じゃ、じゃあその先生と一緒に」

スライム「駄目だよ」

魔法使い「え?どうして?」

スライム「駄目なんだ。それに先生は僕に仲間を集めるように言ったんだ」

魔法使い「仲間?」

スライム「信じる心が仲間を繋ぐって!」

魔法使い「なにそれ?」

スライム「わかんない!」

魔法使い「はぁ?」

スライム「?」

魔法使い「あんた魔王に会った事あるの?」

スライム「んーん、でも聞いてるよ」

魔法使い「なんて?」

スライム「世界を平和に導く人なんだって!すごいよね!友達が言ってた!」

魔法使い「へ、へぇ……私は人間を滅ぼす滅ぼす言ってるやつと思ったけど」

スライム「そんなことないよ!魔王様はすごい人なんだ!」

プルプル

魔法使い「わかったわよ。そんなプルプルしないで。かわいいから」

―――魔王城

魔王「貴様ら皆殺しにしてくれるからなー!」

勇者「あー、もう聞き飽きたっての、それ」

チャプチャプ

魔王「また聖水か」

勇者「いや、今度は普通の水だ」

魔王「なんのつもりだ」

勇者「これなら溶けて霧になっちまうこともないだろ。おぼれ続けろ!」

ガシッ

魔王「や、やめ……がぼぼぼぼ」

勇者「まだまだこれからだぞ」

スライム「一緒に来てくれるって?」

魔法使い「魔王を逃がすだけだからね!」

スライム「うん!ありがとうおねーさん」

魔法使い「どうしてこうなった……」

スライム「じゃ、行こうよ」

魔法使い「あ、それより先生って人から言われた仲間だけど」

スライム「え?」

魔法使い「あんたの友達とかいないの?」

スライム「いるいる!でもすっごい弱いよ」

魔法使い「そうなんだ」

スライム「うん!トロルくんっていうんだ!」

ピョンピョン

魔法使い「この洞窟にいるの?」

スライム「うん、でもすごい泣き虫なんだ。一緒にいけるかなぁ」

魔法使い「トロルってあのトロルでしょ?泣き虫?」

スライム「うん、いつも人間にいじめられて……」

トロル「うおおおーん!」

魔法使い「何か聞こえる……」

スライム「あーあー、また泣いてる」

ピョンピョン

スライム「トロルくん元気だしなよー」

トロル「スライム……おで……おで……うおおおん」

魔法使い「トロルが泣いてるって」

スライム「あ、こっちは魔法使いさんって魔物だよ」

トロル「魔法使い?まるで人間みだいな……」

魔法使い「あー!魔法使いです!よろしくね!」

ガシッ

トロル「?」

スライム「何があったんだい?」

トロル「おで人間とながよぐしようと村にいっだら……」

スライム「またやられちゃったんだ」

魔法使い「うわぁ傷だらけ……ってかあんた達人間と交流あるの?」

スライム「うん!僕はたまにパンくずを貰ってるよ!」

魔法使い「ハトみたいな扱いされてるわね……」

トロル「おでもながよぐしたい」

魔法使い「何か魔王城の魔物と違うわね……」

トロル「おでたちここで生まれだ。この世界の仲間」

魔法使い「……」

スライム「わかった!僕に任せてよ!」

スライム「じゃあ、トロルくんはここで隠れててね」

トロル「わがっだ」

ピョンピョン

魔法使い「何するつもり?」

スライム「昔先生に読んでもらった本に書いてあったんだ」

魔法使い「はぁ?」

スライム「それに先生が言ってた!人は目ではなく心で観なさいって!」

魔法使い「あんた分かっていってんの?」

スライム「わかんない!」

魔法使い「……」

―――村

「ん?なんだ?」

「何か来る?」

スライム「がおー!」

スライム「僕は悪い魔物だぞー!」

ピョンピョン

魔法使い「あぁ……これってあの鬼が泣く絵本の……」

スライム「がおー!がおー!」

スライム「いたずらしちゃうぞー!」

「なんだスライムちゃんか」

「今日ってハロウィンだったかな」

「ほれっ、あめちゃん舐めるか?」

魔法使い「なんか最初から違っちゃってるけど……」

トロル「わ、悪いごとはやめ゛ろー!」

ドスドスドスッ

「ひぃ!ト、トロルだあああ!」

「きゃああああああああ」

「に、逃げろー!」

「武、武器を……」

スライム「なんだとー。僕は悪いことしちゃうんだぞ!お前なんてこうだ!」

ペチッ

「お、おお!スライムちゃんが戦ってくれている!」

「た、助けないと!」

魔法使い「逆になってるし……」

「この魔物め!」

トロル「お、おでは……」

「でていけー!」

トロル「ううっ……」

スライム「やめてー!僕が悪い魔物だよ!」

ピョンピョン

「ほらっ、スライムちゃんは下がってて」

「危ないから、ねっ」

スライム「トロルくんが何をしたんだよ!ちゃんと心で観てよ!」

「え」

スライム「僕は悪い魔物なんだぞー!こんなあめちゃんなんてこうだ!」

ポイッ

「ああ、わしのあめちゃんが……」

トロル「スライム!そんなことしたらだめだど!」

スライム「だって!」

トロル「あめをひろっで謝るんだど!」

スライム「う、うん……」

プルプル

スライム「ご、ごめんなさい」

「え、えっと……」

「何この茶番?」

「スライムちゃんのお友達?」

ザワザワ

「最初から言えよなー」

「まぎらわしいんだよ」

トロル「おで……怖ぐないのが?」

「スライムちゃんの友達に悪いやつぁいねーよ」

「がはははは、ちげぇねぇ」

トロル「う、うおおおおおん!」

ボタボタッ

スライム「ああ、また泣いちゃった……」

魔法使い「スライム……あんたどんだけ人望あんのよ」

スライム「?」

スライム「トロルくんも村に受け入れてもらえたし帰ろう」

プルプル

トロル「うおおおん!」

スライム「まだ泣いてるし」

魔法使い「っていうか完全に魔王のこと忘れてない?」

スライム「え?なんだっけ」

魔法使い「……」

―――魔王城

勇者「お前いったい何なんだよ」

魔王「ぜぃ……ぜぃ……」

勇者「なぜ耐えられるんだ」

魔王「お前ら人間が……」

勇者「はぁ?」

魔王「お前ら人間への憎しみに比べたらこの程度の苦痛など!」

勇者「てめぇに憎まれるような覚えはねぇ!」

グシャッ

戦士「十分あると思うが……」

勇者「戦士か、僧侶はどうした?」

戦士「また邪神に祈ってる」

勇者「……」

スライム「あ!」

トロル「?」

魔法使い「?」

スライム「魔王様を助けなきゃ!」

魔法使い「本当に忘れてたのね……」

トロル「魔王ざまがどうじだ?」

スライム「さらわれちゃったんだ!」

トロル「なっ……」

スライム「ごめんね、トロルくん。僕たち急ぐから!」

ピョンピョン

魔法使い「はぁ……じゃあ村の人と仲良くね」

トロル「お、おでも……」

スライム「だめだよ」

トロル「な、なんで……」

スライム「弱虫だから」

魔法使い「どう見てもあんたのほうが弱そうだけど……」

スライム「先生が言ってた。男が泣く時は人生に3度だけ許されてるって」

スライム「トロルくん泣きすぎだよ」

魔法使い「せ、先生って体育会系?」

スライム「それに泣くなら人のために泣きなさいって」

トロル「お、おでもう泣かない!」

トロル「だ、だからおでも……」

スライム「弱虫だから」
                        ____

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          |彡三|                          |三ミミ|

          |彡/  /";;‐-,,,_               _,,,-‐;;"\ \ミミ|
          |彡| /;; '^'''‐-;;;;_"';;‐,,,_      _,,-‐;;;"";;;;;-‐`ヽ;;;ヽ |ミ|
          |彡|    ,,----,,,,,-''-;;;;_X   l、,i_;;;-.‐-'",,,,--、、     |ミ|
          |〃   <  (。;;;;;;`) ヽ、.:::ヽ    ,'" (;。;;;;;ヽ  ,>    |ミ|
          | |     `ー‐`'''''''"_,,-'' ::::|    \"'''''ー‐'‐‐'"      | |
        ,--、||         ''""   ::::::|      ゙''''‐-        ||,--、
        /へ. |                 ::::::|                |/⌒ヽ、
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       | ヽ -|            ::l 、"ヽ_,,r''‐、 ,i           |  _,,,i'/
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        ヽ、 |              _,,,--、_,--,,,_               |  /
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           iヽ          ('''"""        "''‐- ノ       / |
           | ゙、        `ー───────‐'"       / |
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           |   .:.:::゙、                         /  |
              |    .:.:::゙、                       /    |

スライム「魔法使いさんは甘いなぁ」

トロル「おでがんばるお」

魔法使い「いいでしょ。それにあたしが守ってあげるから」

スライム「魔法使いさんはやさしいなぁ」

魔法使い「え///」

トロル「顔赤いど」

魔法使い「赤くない!」

トロル「でも……」

魔法使い「うっさい!」

スライム「?」

魔法使いとスライムのこと掘り下げすぎ
勇者が魔王に拷問して精神をへし折るところが楽しみなのに
まじで>>72からクソになったな

―――魔王城

勇者「水責め、火責め、焼き土下座、石抱……どうだ、そろそろ参ってきたか?」

魔王「ううぅ……殺す」

勇者「次はこれだ。お前がおかしくなるまで続けるからな」

魔王「棺?」

勇者「そしてこのビンだ」

ガサゴソ

魔王「うっ……」

勇者「棺の中で虫に体を食われ続けてみろ」

魔王「や、やめ……」

戦士「ま、まじでやんのか?」

僧侶「鬼畜……」

戦士「うおっ!僧侶いるし!祈ってたんじゃないのかよ」

僧侶「嫌な予感がした……」

―――魔王城門

スライム「え?ここなの?」

魔法使い「たぶんまだいると思う」

スライム「あっ!お墓が!」

ピョンピョン

トロル「酷いど……」

スライム「死者を冒涜しちゃいけなんだよ!先生が言ってた!」

プルプル

スライム「ごめんなさいをさせてやる!」

魔法使い「待って!魔王連れ出したらすぐ逃げるんだからね!」

スライム「えー」

魔法使い「まともに戦ったら危ないから!ねっ!命大事に!」

スライム「生きていることが一番大事って先生が言ってた……」

魔法使い「そうそう!」

魔王「ぐあああああああああああああああ」

ガサガサガサ

魔法使い「まだ地下にいるようね……」

スライム「あ、あれ魔王様の悲鳴!?」

トロル「ま、魔王ざま……」

魔法使い「しっ、静かに」

勇者「どうだ?魔王。虫が色んな穴から体に入ってくるだろう」

魔王「うぐぐぐぐ」

ガタガタ

勇者「おっと。俺が乗ってるから棺はあかねーよ?」

勇者「さっさと狂っちまったほうが楽だぞ」

戦士「……」

魔法使い「勇者と……戦士か」

>>131
お前は何もわかっちゃいない
そんなお前みたいなのはROMって大人しくしてろ

スライム「すぐに助けないと!」

トロル「おでも!」

魔法使い「待って……あたしに任せて。相手は地下にいるわ」

スライム「う、うん」

魔法使い「風もない密閉空間よ」

スライム「みっぺいくうかんってなに?」

魔法使い「あ、なんか説明するの無駄な気がしてきた……」

スライム「?」

魔法使い「とにかく、あそこで火を燃やしたらどうなると思う?」

スライム「暑い!」

トロル「んだ!」

魔法使い「違う!だからー!」

勇者「誰だ!」

戦士「魔法使い!?」

魔法使い「あー、もう!とにかく息とめて!」

スライム「」

トロル「」

魔法使い「広域灼熱魔法!」

ゴゴゴゥ

勇者「はぁ?攻撃の全然方向ちげーぞ?」

戦士「うっ……」

クラッ

勇者「いつっ……頭が……」

ゴゴゴゥ

勇者「うっ……」

バタッ

戦士「……」

バタッ

魔法使い「やった!今よ!息を止めて助けに行きましょう!」

スライム「すごい!」

トロル「ま、魔王ざまー」

ダダッ

僧侶「酸欠……?」

魔法使い「僧侶!?」

僧侶「頭いい……」

ナデナデ

魔法使い「そ、僧侶あなたは……」

僧侶「でも言った……腐っても勇者」

僧侶「疾風魔法……」

ドヒュウウウウウ

戦士「うっ……頭いてぇ」

勇者「つーっ!俺達の周りの酸素を燃やし尽くしたのか」

勇者「サンキュー僧侶!お前の風がなかったらやばかったぜ」

僧侶「……」

勇者「で……やってくれたなぁ!魔法使い!」

ジャキンッ

スライム「魔王様を帰せー!」

ピョンピョン

トロル「かえぜー!」

ドスドス

勇者「これお前の仲間か?」

支援!

魔法使い「そうよ!悪い!?」

勇者「はぁ……お前はダークサイドに落ちたようだな」

魔法使い「どっちが!」

スライム「魔王様にひどいことをするなー!」

プルプル

勇者「あ?」

スライム「はやくやめないと許さないぞー!」

勇者「あっ!お前なんか前みたことあるわ!」

スライム「お城のみんなにも謝れー!」

勇者「もしかして俺の焼いた墓作ったのもお前か?」

スライム「お墓壊したの!?謝れー!」

勇者「で、俺が謝って、魔王を解放したとしてどうするのよ」

スライム「そしたら……」

勇者「そしたら?」

スライム「友達になろう!」

スライムかわいい

勇者「はぁ!?」

魔法使い「スライム……」

トロル「おお……おおおお」

戦士「こいつらホントに魔物か?」

僧侶「……」

勇者「何こいつ。うぜえ!冗談だろ?魔物が友達だと!?なにそれ笑えねー!」

スライム「冗談じゃないよ!」

勇者「じゃあ、その体が串刺しになっても同じこと言えるか試してやる!」

ドスッ

スライム「ぎゃっ!」

スライム「……」

スライム「痛くない

スライム「ぎゃっ!」

スライム「……」

スライム「痛くない?」

魔法使い「ううっ……」

ボタボタッ

スライム「ま、魔法使いさん!」

勇者「んだよ!横から出てきやがって!おかげで人間切っちまっただろうが!」

ガスッ

魔法使い「ぐっ……勇者……殺さないで」

勇者「はぁ?自分の命ごいか?」

魔法使い「この子を殺さないで……」

勇者「?」

魔法使い「ううっ……」

勇者「マジで言ってる意味わかんねー」

スライム「魔法使いさん!魔法使いさん!」

勇者「なぁ、おい。スライムよ。これでもお前は俺と友達になるとか言えるかよ、なぁ?」

スライム「ううううううー!」

勇者「なぁ、聞かせてくれよ。おい」

スライム「な、なれるよ……」

勇者「はぁ!?」

スライム「先生が言ってた!いつか人とは分かり合えるって!」

勇者「分かりあえねーよ!死ね!」

ザッ


なんかスライムのせいでつまんなくなったなー

勇者「そして魔法使い、てめぇも死ねカス」

グサッ

魔法使い「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!」

>>162
じゃあ見るな
話の流れをつかめよks

魔法使い「がはぁ……ト、トロル……スライムを連れて逃げて……」

トロル「わ、わがっだ!」

ガシッガシッ

スライム「あっ!」

魔法使い「うっ……」

勇者「逃がすかよ!」

ズバッ

トロル「うっ……」

スライム「トロルくん!足が……」

トロル「だ、だいじょうぶだ……もう泣がねえから」

ドスドスドス

魔法使い「爆……裂」

勇者「またかよ!伏せろ!」

カッ

>>170
IDかえて御苦労

>>171
うわぁ・・・

僧侶「とても痛い……」

戦士「地下が瓦礫だらけになっていくな」

勇者「これか?僧侶が言ってた嫌な予感って奴は?確かに嫌な気分にはなったが」

僧侶「違う……」

勇者「はぁ?じゃあ何だよ」

僧侶「分からない」

勇者「だったら言うなよ……それより早いところ魔王をどうにかしないとな」

戦士「まだやんの?」

勇者「薬……使ってみるか?」

魔王「うあああああああああ」

ガタガタ

ドスドスドス

トロル「ぜぃぜぃ……」

魔法使い「うう……」

ボタボタッ

スライム「血、血が止まらないよう……」

魔法使い「」

スライム「魔法使いさん!」

スライム「トロルくん、まだ走れる?」

トロル「あ、ああ大丈夫だ……問題ない」

ドスドスドス

スライム「先生のところに連れて行こう!」

トロル「先生?」

スライム「うん!あっちだよ!」

―――廃村

スライム「この家だよ!」

ガシャ

トロル「わがっだ……」

スライム「ベッドに魔法使いさんを寝かせて!」

魔法使い「」

トサッ

スライム「確かこの辺りに……」

ガチャガチャ

スライム「これだ!先生が大怪我したら使いなさいって言ってたやつ!」

スライム「これを傷口にかけて……」

シューシュー!

魔法使い「ううー!」

バタバタ

トロル「い、痛そうだけどだいじょうぶが?」

スライム「ほらっ!トロルくんの足も!」

トロル「え゛」

スライム「はやく」

魔法使い「ああああーーーー!」

シューシュー

バタバタ

トロル「お、おではいい……」

スライム「だめだよーほらっ」

ポタタ……

トロル「ぎゃーーー!」

シューシュー

魔法使い「治って……る?」

トロル「すごぐ痛がっだど……」

スライム「何かを得るには痛みを伴うこともあるって先生がいってたよ」

魔法使い「それ違うと思う……」

グッ

スライム「あ、だめだよ!まだ動いちゃ!傷が開いちゃう!」

魔法使い「ここが……先生の家?」

スライム「うん」

魔法使い「先生は?」

スライム「先生は外だよ」

魔法使い「外?出かけてるの?」

スライム「うん」

魔法使い「でもこれ……すごい。高度な魔道書がこんなにたくさん……」

魔法使い「それにさっきの薬も……」

魔法使い「先生って何者なの?」

スライム「?」

スライム「先生は先生だよ」

魔法使い「……」

スライム「あ、あの、それから……その……」

魔法使い「?」

トロル「?」

スライム「ごめんなさい!」

魔法使い「何を謝ってるの?」

トロル「そうだど」

スライム「僕のせいで怪我させちゃって……死んじゃうところだった……」

魔法使い「ああ……でも助けてくれたじゃない」

スライム「んーん。僕……甘えてた……」

魔法使い「え?」

スライム「なんか魔法使いさん……先生に似てたから」

プルプル

魔法使い「似てた?」

スライム「でも僕、それで大切な人を失うところだった」

魔法使い「……」

スライム「先生が言ってたんだ。人を好きになりなさい、そして守りなさいって!」

スライム「だから僕……行くよ!」

ピョンピョン

魔法使い「ちょっ!」

トロル「ま、まで!」

バタンッ

魔法使い「あの馬鹿……いっ……」

トロル「むりだど……走れないど……」

魔法使い「そうだ!先生!先生ってのがいるんでしょ!ここに……」

トロル「みだいだ」

魔法使い「みたい……って会った事ないの?」

トロル「ないど」

ズルズルッ

バタッ

魔法使い「外にいるっていってたわね……先生を探せば……」

ヒュー

魔法使い「何……ここ……」

魔法使い「とても誰かが住んでるような街には見えない……」

魔法使い「それに『人を好きになりなさ』ってどこかで聞いたような……」

魔法使い「まさか……」

支援

―――魔王城

勇者「何コイツ。薬がきかねー」

プスッブスッ

魔王「ふん」

勇者「レジスト特性か?なんだよこれ」

魔王「痛みの次は薬か。お前たち人間はいつまでたってもやることがかわらんな」

勇者「なに?」

魔王「私がどれだけ長さを生きていると思っている。同じことをやった人間がいないとでも思ったか」

勇者「ちっ。耐性ついてんのかよ」

魔王「人間と分かり合おうとしたこともあったのだがな……」

ボソッ

勇者「はぁ?何か言ったか?」

魔王「なんでもない」

勇者「あー、もう薬切れたわ」

勇者「戦士、僧侶から貰ってきてくれ」

戦士「いや、それが……」

勇者「なんだ?」

戦士「こんな置手紙が……」

(僧侶「嫌な予感がするので実家に帰ります。探さないでね(はぁと」)

勇者「な……」

勇者「手紙だと普通に喋んのかよ!」

戦士「そこ!?」

勇者「どうせまたあの変な青いのがくるだけだろ」

―――魔界

側近「皆のもの!時は来た!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

側近「人間界へのゲートが完成した!これで魔王様を救い出せるぞ!」

「おおお!魔王様ーーー!」

「殺せ!殺せ!人間を殺せえええええええ!」

側近「人間は卑怯にも勇者などと言う化物を送り込み、魔王様を捕らえた!」

「卑怯は魔王様を置いて逃げたお前だろー!」

「そうだそうだー!」

側近「戦略的撤退と言え!」

側近「ごほんっ!我ら一万の軍団で魔王様を救い出すぞー!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

―――魔王城門

スライム「よし、いくぞぉ」

プルプル

スライム「あんなやつでも……魔王様を助けて……謝れば……友達になる!」

スライム「先生は言ってた!過去は引き摺るものではなく、背負うものだって!」

スライム「先生……僕……やるよ!」

ピョンピョン

勇者「あー、もう面倒になってきたな」

戦士「おい」

勇者「うーん、もう魔王を王様にやっちまうか」

戦士「え?」

勇者「王様は大喜びだろうし、魔王は……」

魔王「……」

ガクブル

勇者「みたいだしな……毎日嫌になるくらい……」

スライム「待てー!」

ピョンピョン

勇者「またお前か。ってか一匹だけかよ」

勇者「魔法使いとあのでかいのは死んだか?」

スライム「ううー!」

プルプル

勇者「怒ったか?戦士、やっちまおうぜ」

戦士「いや、あんな小さいのとやりたくねーよ」

勇者「けっ!魔物は魔物だろうが!」

スライム「ぼ、僕と!」

勇者「あ?」

スライム「僕と友達になるんだ!」

勇者「はぁ!?いきなりそれかよ」

スライム「違った!魔王様を離して友達になるんだ!」

勇者「うっせー!潰れろ!」

ブンッ

スライム「あう!」

シュタタタッ

勇者「おっ、結構すばやいじゃねーか」

スライム「そんな剣をつかったらだめだよ!」

ダッ

勇者「おっと」

スッ

スライム「刃物は食べ物のために使うものだって先生がいってたぞ!」

勇者「うるせえ!これは魔物を殺すための剣なんだよ!うりゃ」

スライム「うわわっ」

シュタタ

スライム「剣を捨てるんだ!」

ゴッ

勇者「いでっ!」

スライム「ふーっ!ふーっ!」

勇者「何こいつスライムなのにかてぇぞ」

戦士「あの体の周りの……闘気じゃね?」

勇者「はぁ!?魔物がそんなん仕えるわけねーだろ?それもスライムが」

スライム「この!この!」

ゴッゴッ

勇者「い、いでっ……がああっ!肩が……」

ガシャーン

戦士「勇者に剣を落とさせた!?」

勇者「てめぇ……魔法で一気に……」

ヴォーン

ドドドドドドドド

側近「魔王様ー!!!」

ブチッ

側近「ん?なにか踏みつけたか?」

「足元に青いのが」

「うわ、きたねぇ」

「っていうかあれ勇者じゃね?」

「殺せええええええええええええええええええええ!!!」

ドドドドドドドド

勇者「な、なんだこいつら……」

戦士「すげぇ数……」

魔王「側近!貴様よくも逃げ……」

側近「い、いけえええええええ!」

これはこれでアリ

勇者「魔界から増援がお出ましか」

戦士「勇者……その腕じゃあ……」

勇者「ふふふふふふ、はーっはっはっは!」

戦士「勇者?」

勇者「まだ殺してない魔物がこんなにいたなんてな!」

側近「なっ……」

勇者「簡単じゃねーか!こいつら皆殺しにすりゃいいだけだろ!」

戦士「うわぁ……でも、お前のそういうところ嫌いじゃねーぜ」

ジャキン

側近「こ、この数に勝てるとでも……」

勇者「うるせえ!」

ズバッ

勇者「全員まとめてかかって来い」

―――???

スライム「あれ?ここどこだろう」

フワフワ

スライム「足元がふわふわするなぁ……」

スライム「勇者はどこだろう。誰かに踏まれたような……」

スライム「うーん、なんか真っ白だなぁ」

フワフワ

スライム「あ、誰かいる」

スライム「おーい!!」

女神「あー、だるー」

女神「次のコミケまだかなー」

女神「BL本買いたーい」

女神「あ、またこいつ寝落ちしたー」

女神「晒してやろっと。メモメモ」

スライム「ねーねー」

女神「今忙しいの、後にして」

スライム「ねぇ、おばさん。ここどこ?」

ピキッ

女神「お…ば…さ…ん?」

スライム「おばさんだれ?」

女神「おばさん言うな!」

スライム「?」

女神「な……なんで魔物が天界に……」

スライム「天界?」

女神「ありえない……ここは心の清いものしか……」

スライム「おばさんは清いの?」

女神「し、失礼な!そりゃちょっとは腐ってるかもしれないけど!」

スライム「?」

プルプル

女神「うっ……かわいいかも……でもなんで……」

スライム「おばさんは?」

女神「私?私は神です」

スライム「うそだ!」

女神「え、な、なんで?」

スライム「神様っていうのはねー」

女神「う、うん……」

スライム「もっと真っ黒で」

女神「え?」

スライム「角が耐えててね」

女神「え?え?」

スライム「口には牙がいっぱいはえてるんだよ!」

女神「それ破壊神だから!」

スライム「うそつきー!」

女神「こ、この子は……」

スライム「僕もどらなくっちゃ!」

女神「あー、えーっとさ。面倒だから単刀直入に言っちゃうけど」

スライム「ん?」

女神「あんた死んじゃったの」

スライム「え」

女神「ここは天界。普通魔物なんかが来るはずないんだけど……」

スライム「えっ、えっ、だって僕……踏まれて……」

女神「あー、つぶれちゃったのねー。ご愁傷様」

スライム「……」

女神「あら?ショックだった?」

スライム「先生……僕……」

女神「先生?っていうかそもそもどういう感じにここ来たわけ?」

スライム「それは……」

女神「あー、喋らなくていいわ」

ペタッ

スライム「?」

女神「ふむふむなるほど。っていうかあんた賢者の弟子!?」

スライム「そうだよ!先生の弟子だよ!」

女神「でも賢者は随分前に死んでるんじゃ……」

スライム「死んでないよ!ずっと色々教えてくれてきたんだ!」

女神「いや、ほんとに死んで……」

スライム「なんでそんないじわる言うのさ!おばさん!」

女神「3度目よ?ねぇ、これでそれ言ったの3度目……」

ビキビキッ

スライム「先生は言ってたんだ!例え肉体が動かなくなっても心と心で対話できるって!」

女神「おばさん発言はスルー!?」

スライム「先生は動かなくなっても心で話しかけてきてくれたよ!」

女神「はぁ……賢者の弟子なら納得ってとこかしら」

スライム「?」

女神「まぁ、今回は特別にここはあなたの来るべき場所じゃないってことで生き返らせてあげてもいいけど」

女神「ほんとに来るべき場所じゃないしね」

スライム「生き返らせる?」

女神「特別よ?」

スライム「そんなの駄目だよ!」

女神「はぁ!?」

スライム「死んだ人はそれをそのまま受け入れなきゃいけないんだ!どんなにつらくても!先生が言ってた!」

女神「頭固いわねー!」

スライム「死んでるみたいに生きたくないって!」

女神「あー、はいはい。ご立派ご立派」

スライム「立派なのは先生だよ!」

女神「うーん、でもあんたなら……」

スライム「?」

女神「あんた、世界を平和にしたい?」

スライム「世界は平和だよ!ちょっと誤解しあってるだけなんだ!」

女神「分かった。あんたを生き返らせたりしない」

女神「死んだ人は大地に帰るのよ」

パァァ

スライム「何この光」

女神「さぁ?でも何かが変わるかもね」

スライム「大地に……帰るの?」

女神「ええ、最後はね」

スライム「そっか。仕方ないよね」

ピョンピョン

スライム「じゃあね。神様の偽者のおばさん」

女神「……」

ゴゴゴゴゴゴ

スライム「」

スゥ

女神「神威クラーシュ!」

ドゴーン

賢者「もういってしまいましたよ」

女神「また言った!あいつまたおばさんって言ったわ!」

賢者「まぁまぁ」

女神「ぜぃぜぃ……」

女神「はぁ、あんたも会ってあげればあの子喜んだのにね」

賢者「会えませんよ。とても……」

女神「そお?」

賢者「私なんて口だけであの子のような行動は一つもできませんでしたから……」

女神「まぁそうね」

賢者「あ、酷い」

女神「口だけ立派で結局世の中なーんにも良くならなかったものね」

賢者「あぅ」

―――魔王城

魔王「殺せ殺せえええええ!」

「おおおおおおお!」

勇者「戦士!まだ生きてっかー!」

ズバッズバッ

戦士「ああ……何とかな」

勇者「お前血だらけだぞ」

戦士「もう敵のだか俺のだかわかんねーよ!」

勇者「ちげーねー!」

ズバッ

魔王「殺せ!殺……むっ!?」

勇者「うっ!?」

戦士「な、なんだ……?」

魔王「これは……なんだこのヴィジョンは……」

勇者「この視点……」

戦士「頭の中に……あのスライムの視点か!?」

勇者「うがああああ」

戦士「ど、どうした!?」

勇者「こ、これが……俺!?そしてあいつの心……」

(友達になろうよ!)

勇者「うっせええええええええええええ!」

ブンブン

魔王「ううううううっ」

魔王「なんだこれは……呪いの類か!?この醜い姿が私!?」

(いつか人とは分かり合える)

魔王「うるさいうるさいうるさい!」

勇者「くっそ!やめだ!帰るぞ!」

戦士「は?」

勇者「こんな気分で戦えねー!」

魔王「撤退だ!」

「は、はい!」

「撤退だー!」

「おおおおおおおおおおお!」

ヴォーン

勇者「なんだよ。くそ!俺が悪者みてーじゃねーか!」

戦士「うーん……」

僧侶「ただいま……」

戦士「うお!」

僧侶「……生きてた?」

勇者「はぁ……もう怒る気もねーわ」

僧侶「生きてたならいい……」

―――廃村

魔法使い「聞こえた?」

トロル「ああきごえだ」

魔法使い「スライム……死んじゃったのね」

トロル「うおおおおおおおおん!」

魔法使い「泣かないんじゃなかったの?」

トロル「あんだもないでるど」

ポタポタ

魔法使い「あたしは女だから何度泣いてもいいのよ……ぐすっ」

魔法使い「これって先生のお墓よね」

トロル「たぶん……」

魔法使い「死んじゃってたんだ……」

トロル「……」

魔法使い「ここで先生と話してたのね」

トロル「お、おでも……」

魔法使い「ん?」

トロル「おでもスライムとここで話すど……」

魔法使い「そうね、あたしもたまに会いに来ようかな」

魔法使い「先生って賢者……おじいちゃんのことだったのね」

魔法使い「何か昔言われたお小言みたいだなぁって思ってたのよね……」

トロル「……」

魔法使い「スライム何か言ってた?」

トロル「泣ぐなって」

魔法使い「ふふっ」

魔法使い「きっとスライムの声、届いたわよね」

トロル「ああ、こごにいる」

魔法使い「うん、今もここにいる」



おしまい


近年まれに見る駄作

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