ルパン三世「ロアナプラに火を灯せ」 (176)
―ラグーン商会―
ロック「ダッチ、電話。バラライカさんから」
ダッチ「ラブコール以外はお断りしてくれ」
ロック「相手が相手だ。それ以外にないだろ?」
ダッチ「だな。違うならコールが来る前に銃弾が飛んでくるか」
ロック「急ぎの仕事だってさ」
ダッチ「そうか。――ハロー、クイーン。元気か?」
バラライカ『ハァイ、ダッチ。久しぶりね。そちらも変わりないようで安心したわ』
ダッチ「故に無茶な仕事も任せられるってか?」
バラライカ『ご明察よ。運んで欲しいものがあるのよ』
ダッチ「物によっちゃあ、あんたの頼みでも断るぞ」
バラライカ『貴方たちとも面識がある人物からとっても大事なデータを預かったのよ。それを運んでもらいたいの』
ダッチ「誰だ? 心当たりが多すぎて絞れねえが」
バラライカ『ジャネット・バーイー。ジェーンと呼んだほうが馴染みがあるかしら?』
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―イエローフラッグ―
バオ「ふんふーん」ゴシゴシ
ルパン「やってるか?」
バオ「みりゃ分かるだろ」
ルパン「じゃ、やってるってことか」
バオ「やってねえよ。出ていきな」
ルパン「つれねえなぁ。俺はここに初めて来たもんでさ、右も左も分からないんだぜ? もうちょっと観光客に優しくしてくれてもいいんじゃないの?」
バオ「ここは観光客が来る場所じゃねえよ。地獄巡りツアーがしたいなら別だけどな」
ルパン「そんなに治安が悪いのか、ロアナプラって」
バオ「俺らにとっては天国みてぇな場所だけどな」
ルパン「ふぅん。そうか」
バオ「とにかくここは夜からだ。出ていけっ」
ルパン「そうさせてもらうか。ありがとよ」
バオ「ふんっ」
次元「どうだ?」
ルパン「門前払いだ。ここは部外者に厳しいねぇ」
次元「本当にあるんだろうな。お宝が」
ルパン「それは間違いねえよ。情報は確かな筋から手に入れてる」
次元「不二子から、だろ。あやしいもんだ」
ルパン「いいじゃないの。女は妖しいほうが魅力的つってな」
次元「しるか。それよりハズレなら次に行こうぜ。蒸し暑いところは苦手なんだよ」
ルパン「そうだったのか? 年がら年中暑苦しい格好しておいてよくいうぜ」
次元「お前な」
ルパン「はいはい。怒らない。事実だろ?」
レヴィ「……」
ルパン「お? 見ろよ、次元。いい女だ。ぬっふっふっふ」
次元「お前の好みはわからん」
ルパン「そうかぁ? 俺の好みはかわいこちゃんだから、はっきりしてると思うけどなぁ」
次元「早く行くぞ。全く」
―ロアナプラ市内―
次元「しかし、ルパン。お前にしては珍しいな。下調べを殆どせずに現地に来るなんてよ」
ルパン「しょーがないじゃないのぉ。情報がないんだから」
次元「なんで無いんだよ。いっちゃあ何だが、こんな国からならいくらでも知ることができそうなもんだがな」
ルパン「ここのことはよーくしってるさ。世界中からならず者が集まる場所だからなぁ」
次元「なら」
ルパン「ただ、俺の狙っているお宝はそうも行かないわけ。不二子が知り得たのも「ロアナプラにある」ってだけみたいだしな」
次元「雲を掴むような話にお前は乗ったわけか。あきれるな」
ルパン「何言ってんだよ。俺がその気になれば雲だって掴んでみせるぜぇ?」
次元「やれるもんならやってみろ。俺は不二子に利用されているだけだと思うがな」
ルパン「いい女に利用されるっていうのはな、いい男の条件だろ」
次元「言ってろ。これ以上、進展がないなら俺は降りるぞ」
ルパン「まぁ、そういうなってって、次元ちゃん。何も闇雲に歩いてるわけじゃないんだからよ」
次元「当てでもあるか?」
ルパン「ぬふふふ。まぁな」
―ラグーン商会―
ダッチ「オーライ。その時間に海上でプレゼントを引渡せばいいわけだな」
バラライカ『ええ。ああ、言っておくけど、プレゼントのリボンは解かないでね』
ダッチ「クレイモアかもしれねえのに、覗くわけねえだろ」
バラライカ『うふふ。それもそうね。それじゃ、明日の1300時に会いましょう』
ダッチ「了解だ」
バラライカ『愛してるわ、ダッチ』
ダッチ「――ふぅ」
ロック「なんだって?」
ダッチ「愛してる、だってよ」
ロック「よかったじゃないか」
ダッチ「バカ言うな、ロック。バラライカに愛されて骨を残した奴はいねえんだぞ」
ロック「仕事の内容は?」
ダッチ「とあるジェーンから預かったデータを誰かさんに渡してほしいんだとよ」
ロック「ジェーンって……偽札の原版データか?」
>>8
ダッチ「とあるジェーンから預かったデータを誰かさんに渡してほしいんだとよ」
↓
ダッチ「ジェーンから預かったとあるデータを誰かさんに渡してほしいんだとよ」
ダッチ「だろうな。ブツの内容は秘匿らしいが」
ロック「どうしてあれをバラライカさんが……」
ダッチ「詮索しても仕方ねえだろ。色々準備もしねえとな。レヴィとベニボーイはどうした?」
ロック「レヴィはイエローフラッグ。ベニーは珍しい基板が届いたって言って、出て行ってるよ」
ダッチ「自由だな。うちの会社は」
ロック「それが売りだろ」
ダッチ「ま、仕事をこなしてくれるなら、文句はねえが。とりあえずレヴィを呼び戻してくれ。どうせ、昼間から酒を浴びてるんだろ」
ロック「今日は仕事がなかったからね」
ダッチ「あいつが酒水を浴びてもいい女になりゃしねえ。頼むぞ」
ロック「オーライ。すぐに戻ってくるよ」
ダッチ「おう」
ダッチ「……」
ダッチ「偽札がらみかぁ。それで俺らに依頼とはなぁ」
ダッチ「フェイクってのは最後までバレないようにさせてこそだろに……」
ダッチ「最初から分かってたら、何も面白味がないだろ。なぁ、バラライカ?」
―三合会タイ支部 アジト―
張「それで、あの件については?」
不二子「申し訳ありません、張さん。こちらでも情報はまだ」
張「そうか。君を雇ったのは間違いだったか?」
不二子「そんなこと仰らずに」
張「……まぁ、いい。雇用期限が過ぎるまでは期待させてもらう。峰不二子」
不二子「はい。ご期待に添えられるように尽力いたしますわ」
張「そうか」
不二子「それでは失礼します」
張「――食えない女だ。化粧が濃いな、あれは。ベッドの上だろうと素顔を見せることはまずない」
彪「信用に値する女ではないように思えますが」
張「だから目は離すなと部下にも言ってある。このタイミングで俺に近づく女だ。普通じゃないだろう」
彪「ええ」
張「能動的な女っていうのはどうにも苦手だ。俺の経験上、そういう女の懐から出てくるのは血か銃か金だけだからな」
不二子(バラライカと太い繋がりがあるはずなのに、一向に裏の部分が見えてこないなんて。信頼されているのね、あの人)
ルパン「――よう。不二子ちゃん。こんなところで会うなんて奇遇だなぁ」
不二子「ルパン……。何をしているの?」
ルパン「何って、不二子ちゃんに会いたくなったのさ」
不二子「ここではまずいでしょ。夜にイエローフラッグで落ち合いましょう」
ルパン「それもいいけど、俺とホテルで……チュー……」
不二子「ダメよ」
ルパン「ありゃ?」
不二子「私は信頼されていないのよ。ここではね」
ルパン「ほう? そりゃあ、見る目がねえなぁ。ここのボスは」
不二子「単純な男ばかりじゃないってことね」
ルパン「俺以上に複雑な男は世界を探してもいねえだろがな」
不二子「情報はあるんでしょうね?」
ルパン「情報屋ってどこにでもいるのよねぇ。ぬふふふ」
不二子「安心したわ。それじゃあ、夜にね」
―ラグーン商会―
レヴィ「なんだよ、ダッチ。今日は休みだろ」
ダッチ「十分、胃に酒を詰め込んだだろ?」
レヴィ「酒樽には程遠いんだよ」
ベニー「レヴィ、今日の腹筋は何回の予定だい?」
レヴィ「ヘイ、ベニー? そりゃ遺言かよ」
ダッチ「仕事の話だ。依頼人はバラライカ。内容は海の上までデリバリーだ」
レヴィ「しけた仕事だな。ダッチとロックだけでもいいじゃねえか」
ロック「バラライカさんが依頼してきたことと、デリバリーする物品が厄介なんだ」
レヴィ「なんだよ?」
ダッチ「ベニボーイ。ジェーンとはまだ連絡は密にとってるのか?」
ベニー「たまにね。ジェーンがどうかしたのかい?」
ダッチ「至急、確認してほしいことがある」
ベニー「……聞きたくないね」
ダッチ「嫌でも耳があるんだから、聞こえちまうだろ。ジェーンが持っていた偽札原盤のデータがコソ泥に盗られてやしねえかどうか、訊いてくれ」
レヴィ「あのインド女のか? あの件は終わっただろ」
ロック「終わったことが始まった。だから問題だ」
レヴィ「考えすぎだろ」
ダッチ「それならいいんだがな」
レヴィ「仮にそれを渡してどうなるんだ? どっかの馬鹿の懐が潤うだけだろ?」
ロック「レヴィが偽札を乱用する分にはそうだけど」
レヴィ「あたしが馬鹿だっていいたいのかよ!?」
ダッチ「馬鹿ならいいが、無駄にインテリなやつが持っちまうと面倒だろうよ」
レヴィ「は?」
ダッチ「偽札で一国を終わらせることもできるんだからよ」
レヴィ「あたしたちには関係ないことだな」
ダッチ「甘いぜ、レヴィ。その見通しの悪い目ん玉はクリーニングに出したほうがいい」
レヴィ「あぁ!?」
ダッチ「渡す相手を間違えれば、世界中から狙われる羽目になる。俺たちは海賊だが、国際指名手配犯や賞金首になりてえわけじゃねえ。平和に商いができればいいんだ」
レヴィ「そんなにヤバいヤマなのか?」
ロック「ただ、バラライカさんがそんな仕事をダッチに回すとも思えない」
レヴィ「そりゃそうだろ。姉御は義理堅いからな」
ダッチ「良くも悪くもな。祝いの酒が爆発する可能性も捨てきれない」
レヴィ「いい金が入ってくるんだろ? やろうぜ」
ダッチ「せめて、物の内容ぐらいはしりてぇんだよ。アホ面下げて蜂の巣はあの世での恥だ」
ベニー「連絡取れたよ」
ダッチ「どうだった?」
ベニー「偽札の原版データは手元にはないそうだ。バラライカに渡したって言っていた」
ダッチ「それで?」
ベニー「渡した理由は喋りにくそうだったから追求はしてない」
ダッチ「おいおい……」
レヴィ「姉御を疑うのは馬鹿らしいだろ。あたしはやるぜ」
ダッチ「ロックはどう思う?」
ロック「バラライカさんを信じよう。でも、何かに利用されていると思ったほうがいい」
ダッチ「いい女に利用されるのは、チェリーボーイだけでいいのになぁ」
―イエローフラッグ―
ルパン「よう。来てやったぜぇ」
バオ「いらっしゃい。歓迎してやるよ。客としてな」
ルパン「やめてくれよ。俺ぁ観光客だっての」
不二子「ルパーン、こっちよぉ」
ルパン「んほぉ!! 不二子ちゃぁーん!!」
不二子「もう、遅いわ。ここの男が群がってきて、大変なんだからぁ」
ルパン「美しいお前が悪いんだろ?」
不二子「臭い男はお断りだって言っても、聞いてくれなくてねぇ」
ルパン「なっはっは。不二子に釣り合う男なんざぁ。こんな掃き溜めにはいねえよなぁ?」
不二子「……それで、貴方が得た情報は?」
ルパン「ホテルモスクワって知ってるか?」
不二子「勿論よ。私が潜入しているところとも仲良しみたいだしね」
ルパン「最近、そこがどうにも騒がしいらしくな。近くフェスティバルでも始めるんじゃないかって噂なんだよ」
不二子「へぇ。楽しそうねぇ。参加は自由かしら?」
ルパン「さぁ、どうだろうな。最近でも、結構大きな花火が上がったらしいからなぁ」
不二子「ディエゴの一件かしら?」
ルパン「だーいせいかい。このロアナプラ、色んな奴が入り込んでるからそっち方面でも面倒みたいだぜぇ」
不二子「ふぅん」
ルパン「で、不二子ちゃんの情報は?」
不二子「ラグーン商会が明日、海へ出るらしいわ。お宝を持ってね」
ルパン「……そりゃ、本当か?」
不二子「私を疑うのぉ?」
ルパン「疑うわきゃねえだろぉ?」
不二子「そうよねぇ。嬉しいわぁ」
ルパン「んじゃまぁ、この仕事は楽勝だなぁ」
不二子「期待してるわね、ルパぁン?」ギュッ
ルパン「にょほほほほぉ。まかしておきなぁ。俺に盗めないお宝はないぜぇ」
「――よう、あんちゃん。ここじゃあ、みねえ顔だな? その女、俺にも分けてくれよ」
ルパン「んー? 男なら女は腕ずくで奪えってパパから教わらなかったかぁ?」
不二子「――それじゃあね。あいしてるわぁ、ルパン」
ルパン「俺もさ、不二子」
バオ「おいおい、揉め事なら外でやってくれ。お客さんよ」
ルパン「だから、観光客だって」
バオ「そこでくたばってる連中が邪魔だって言ってんだ」
ルパン「メスを奪えなかったオスはハイエナのエサになるしかねえだろ? ここはサバンナみたいなところだからな」
バオ「よくわかってるじゃねえか」
ルパン「まぁね。これでも色々あったから」
バオ「お前みたいな奴が来ると、碌な事がねえ。いつも店をメチャクチャにされるんだ」
ルパン「商売に向いてないんじゃないの?」
バオ「俺もそう思ってるところだよ」
ルパン「トイレ、どっち?」
バオ「あぁ? 男なら外でしてこい。トイレを汚すんじゃねえよ」
ルパン「そんなこといわずにぃ」
バオ「勝手に探せ。お前の目は飾りか?」
レヴィ「――バオ、来てやってぜ」
バオ「レヴィか。昼も夜も来てくれるとは、嬉しいね」
レヴィ「その割には顔が死んでるぞ?」
バオ「生まれつきだ」
レヴィ「高い酒をあけてやっから、機嫌直せよ」
バオ「羽振りいいじゃねえか。でけえ仕事でも入ったか?」
レヴィ「まぁな」
バオ「それならラグーン商会の奴ら全員でこいよ。あの腐った面もこういうときに限っては天使に見える」
レヴィ「大仕事はそれなりに準備もいるけど、ロックの野郎がトロいからよぉ。ダッチとベニーはその付き添いでこれない」
バオ「はっはっは。お前が邪魔者扱いじゃないってところがすげえな」
レヴィ「うっせえ。さっさと酒を出せ」
バオ「はいよ」
レヴィ「ところで、ションベンかけられたみてえに伸されてるこいつらはなんだよ?」ゲシッ
バオ「それは――」
ルパン「ふぅ。出た出たぁ。今日も絶好調だねぇ」
バオ「あいつがやりやがったんだ」
レヴィ「あいつが……?」
ルパン「ん? おほぉ。昼に見たかわいこちゃんじゃないのぉ」
レヴィ「なんだよ、てめえ」
ルパン「君みたいな女には、バラが似合う」パッ
レヴィ「なっ。マジシャンかよ」
ルパン「ま、そんなところかな」
レヴィ「ロアナプラは芸人の巣窟かよ」
ルパン「で、このバラは受け取ってくれないの?」
レヴィ「……」チャカ
ルパン「あぶねえなぁ。女の子が振り回していいもんじゃないぜぇ?」
レヴィ「消えろ。その額で煙草ふかせるようになりたいのか?」
ルパン「はいよ。お代はここにおいとくぜ、マスター」
バオ「また来いよ」
ルパン「こんなにいい女がいるんだ。来るにきまってんだろぉ?」
レヴィ「……」
バオ「どうした? 一目ぼれか?」
レヴィ「あぁ? あんな優男は趣味じゃねえよ」
バオ「なら、どうしてロックといつもつるんでるんだ?」
レヴィ「この店、10秒で半壊させてやろうか」
バオ「落ち着けよ。素朴な疑問ってやつだろ」
レヴィ「それならママにきけ。バァーカ」
バオ「もういねえよ」
レヴィ「さっきの野郎。抜かなかったな」
バオ「そうだな。獲物を確かめたかったのか?」
レヴィ「新顔の情報は欲しいからな」
バオ「新しい風を吹かせるのはいいけどよぉ。もうメイドみたいなハリケーンはつれてくるんじゃねえぞ」
レヴィ「あたしに言うな」
バオ「てめえに言わないで誰にいうんだ!!」
レヴィ「んだとぉ!?」
―ロアナプラ市内 ホテル―
次元「帰ったか」
ルパン「おう。土産もあるぜ」
次元「ふん。お前の土産ほど迷惑なもんはないな」
ルパン「またそんなこという。明日、ラグーン商会ってところがお宝を運び出すらしい」
次元「ほう、そうかい。信憑性ゼロだな」
ルパン「不二子だってたまには確かな情報くれんだろぉ? 信じてやろうぜぇ」
次元「で、そのラグーン商会のことはわかってるのか?」
ルパン「ああ。大体な。ここらじゃ名の売れた運び屋だ。やってることは海賊そのものだけどな」
次元「運び屋ねえ」
ルパン「まぁ、向こうは俺たちに狙われてるとは夢にも思ってないだろうし、らくしょーよ」
次元「俺がひっかかっているのは不二子が情報源ってところだ。そのお宝、フェイクじゃないだろうな」
ルパン「それはこれから確かめるんだって」
次元「これから?」
ルパン「素敵な出会いにかんぱーいってなぁ」
―翌日 港―
ロック「そろそろ時間だ」
ベニー「ダッチがギリギリまで待たせるなんて珍しいこともあるもんだ。今日の海は荒れるかな?」
ロック「予報では快晴だ。救命胴衣は捨ててもいいってキャスターも言ってたよ」
ベニー「ははっ。そのキャスター、洒落てるなぁ。僕たちの行動を知っているみたいじゃないか」
レヴィ「おい。まだかよ、ボスは。船の燃料が固まっちまうぞ」
ロック「何かトラブルでもあったかもしれないな」
ベニー「連絡を――」
ダッチ「その必要はねえよ、ベニボーイ」
レヴィ「遅いじゃねえかよ。糞でもつまったか?」
ダッチ「あいにくとそっちで渋滞はしてねえ。まぁ、バラライカに色々と訊いてたんだよ」
ロック「喋ってくれたのかい?」
ダッチ「徒労だった。まぁ、一つだけ確かなこともある」
ロック「なんだい?」
ダッチ「受けた仕事はクールにこなすってことだ、ロック」
―船内―
ダッチ「ここから約10キロ先にいるらしい。目を凝らしてくれよ。お前の目つきがどうして猛禽類みたいなのか、ここで証明してくれ」
レヴィ『はいよ』
ロック「受け渡しの相手は分かっているのか?」
ダッチ「それぐらいはな。クルーザーに真っ白な旗を掲げてるらしい」
ベニー「他の奴に教われないかい、それ」
ダッチ「ここいらはまだ穏やかなほうだ。それに、向こうが俺たちをしらねえってことはないだろう」
ロック「俺たちが見えたら白旗を揚げるってことか」
ダッチ「そういうこったな」
ベニー「一見するだけなら楽な仕事だけど……」
ダッチ「楽すぎて肩がこりそうだ」
ロック「……」
ダッチ「なんだ、ロック? 言いたいことがあるなら今のうちに言えよ」
ロック「いや、その……もしも、俺たちが囮役ならぴったりだなって。海の上には他に逃げ場がない。俺たちを追ってきてしまったら、戻るまでに時間がかかるし」
ダッチ「良い線いってるぜ、ロック。俺もそれを考えていた。俺たちを誰かに狙わせている。そして狙っているそいつは多分、俺たちとドンパチするつもりはねえだろうな」
>>33
ベニー「他の奴に教われないかい、それ」
↓
ベニー「他の奴に襲われないかい、それ」
「ぬふふふ。なるほどなぁ」
ダッチ「……客なら呼び鈴ぐらい鳴らせ。不法侵入で逮捕されるぞ」
ルパン「残念。俺を逮捕できるやつはこの世に一人しかいねぇのよ。ダッチ」
ロック「だ、誰だ!!」
ベニー「どこにいたんだ……」
ルパン「そう慌てなさんなって。俺の目的はただ一つ。あんたたちが運んでいるお宝だけだ。渡してくれるかい?」
ダッチ「残念だが、俺たちは運び屋だ。荷物は指定の場所まで届ける。お前さんも頼んだ物が砂漠の真ん中に落とされたら困るだろ?」
ルパン「まぁ、確かになぁ。でも、俺の仕事は荷物を砂漠の中からでも探して持ち出すことなんだよ、旦那」
ダッチ「ほう。いい仕事してんじゃねえか」
ルパン「上にいるかわいこちゃんは今、動けないから期待するだけ無駄だ」
ダッチ「……」
ルパン「さぁて、お宝はあんたがポケットに仕舞っているのは分かってる。出してくれるか?」
ダッチ「……いいぜ」
ルパン「おー。顔に似合わず、素直なことぉ。それじゃあ――」
ダッチ「俺は鉛しか持ち歩かない趣味だ」チャカ
次元「おっと。そうはいかねえ」
ダッチ「……」
ルパン「遅かったなぁ、次元?」
次元「早く済ませろ。お前らしくも無い」
ルパン「わかってんだけどもね。このタコ入道が強情でさぁ」
ロック「レヴィはどうした?」
ルパン「動けないっていっただろう。安心しな。眠ってるだけだ」
ダッチ「レヴィのやろう。減給だな、こりゃ」
ベニー「妥当だね」
次元「さっさと渡してもらおうか」
ダッチ「これだ」ポイッ
ルパン「おぉー。サンクスぅ」
ロック「ダッチ!!」
ダッチ「ロックの言うとおり、ここには逃げ場がねえからな」
ルパン「さてと、このディスクの中身はなんなのか。見せてもらえるかい?」
ベニー「それは出来ないな」
ルパン「なんで? いいじゃん、ケチ」
ベニー「僕の機材に触れないでくれ」
ルパン「あぁ、あんたそっちの人ぉ? 面倒だぁ」
ロック「それが何なのか、お前もわかっていないのか?」
ルパン「そうさ。悪い?」
ダッチ「価値もわからねえで盗むとはな。コソ泥らしい」
ルパン「なっはっはっは。まぁ、そう言いなさんな。俺だって巻き込まれた側なんだから」
ロック「なに?」
次元「おい、ルパン。どういうことだ?」
ルパン「わかんだろ、次元? これはフェイクだ」
次元「なにぃ!? お前、分かっててあの女の法螺に付き合ったのか!?」
ルパン「待て待て。こうしないと、不二子は動かない。だからだよ」
次元「……」
ルパン「本当のお宝をあいつが俺に教えてくれるわけないだろ?」
ダッチ「お前も女に利用されたのか?」
ルパン「ああ。こればっかりは良い男の特権だからなぁ」
ダッチ「ふん。哀れな野郎だな」
ルパン「なんとでもいえ。ベニーちゃん、たのむよぉ。これ、中身みせてくれ」
ベニー「どうする、ダッチ?」
ダッチ「……見てやれ。恐らくバラライカは、俺たちが見ることまでは想像していないだろうしな」
ベニー「了解」
ロック「裏をかいたら後が怖くないか?」
ダッチ「後ろから掘られるのは慣れてる」
次元「苦労してんだな、おっさん」
ダッチ「人間は生まれたときから罪を背負っているからしかたねえな」
ルパン「いい考えだなぁ」
ロック「それはそうとあんたたちは何だ? 誰に雇われた?」
ルパン「俺か? 俺は誰にも従わない。俺はオレだけに従う」
ダッチ「組織にいれば真っ先に排除されるな、お前みたいにすかした野郎は。俺ならお前なんて雇いたくねえな」
ルパン「そりゃあ、助かる」
ベニー「――出てきたよ」
ルパン「んほぉ。仕事はやいじゃないのぉ、ベニーちゃん」
ロック「……」
ダッチ「それで、何が詰まってたんだ?」
ベニー「何もない。真っ白だ」
ルパン「ありゃぁ。そうなの。残念っ」
次元「ルパン、これからどうするつもりだ?」
ルパン「どうするって、そりゃあ、不二子に文句言ってやらないとな。ベッドの中でさ。ぬふふふ」
次元「付き合いきれねえなぁ。俺ぁ、降りる」
ルパン「そういうなってぇ。何で不二子とバラライカが似たようなことをしたのか、興味ないのか?」
次元「……なに?」
ダッチ「お前は女に俺たちを追えと言われた」
ルパン「あんたらはフェイクを持って、俺たちに狙われろと言われた。なぁ、にてんだろ、俺たち」
ロック「その目的はなんだ? あんたなら知ってるんじゃないのか?」
ルパン「それはこれからだ。まだ何も分かってないからなぁ」
ロック「本当か……」
ルパン「人を疑うのはよくないぜぇ? まずは信じることから始めようじゃないのぉ。信じる者は救われるっていうだろ?」
ダッチ「生憎と信じた奴は悉く悪人だったんでなぁ。本当に信じられるのは自分と銃だけだ」
次元「気が合うな。今度、飲みにでも行くか?」
ダッチ「機会があればな」チャカ
ルパン「おっと、物騒だねぇ」
ロック「ダッチ、ここでは……」
ダッチ「心配するんな。この海域では潮の関係で死体は岸にながれてこねえ」
ルパン「やめてくれよぉ、社長さん」
ダッチ「言った筈だ。お前は雇わねえってな」
次元「ちっ。話し合いでなんとかなる相手じゃないことぐらいわかんだろ」
ルパン「悲しいねえ」
レヴィ「――てめえが臓物待ち散らしても悲しむやつぁいねえよ!!!」
ルパン「あらぁ、おきちゃったのぉ? 目覚めはどう? いい夢、見れただろぉ?」
レヴィ「てめえの頭に弾丸ぶちこんでからそれは見ることにする」
ルパン「こわいこわい。まぁ、俺はそっちのほうが好みだけんども?」
次元「……」
ダッチ「逃げられると思ってるのか?」
ロック「待ってくれ!! 殺すのはよくない!! もっと聞き出すことが……!!」
レヴィ「ぬるいこといってんじゃねえぞ、ロック!! こいつがあたしに何をしたのかわかってんのかぁ!?」
ルパン「男に寝かされるのは初めてだったかなぁ?」
レヴィ「このっ!!」チャカ
ロック「待て!! レヴィ!! 撃つな!!!」
ルパン「――あらよっと」ポイッ
ボォンッ!!
ダッチ「なに……!?」
レヴィ「煙幕なんざぁ意味ねぇよ!!!」
ベニー『甲板に逃げた!!』
レヴィ「待ちやがれ!!!」
―甲板―
レヴィ「おらぁ!!! ふざけたことばっかしやがってぇ!!! どこだぁ!! 出てきやがれぇ!!!」
ダッチ「焦るな、レヴィ。どうせここから逃げるには泳いでいくしかねえんだ」
レヴィ「好き放題やられて黙ってられっかよぉ。死ぬまでジルバを躍らせる……!!!」
ダッチ「その血走った目で的には当たるのか?」
レヴィ「どこだぁ!!! こらぁ!!!」
ロック「ごほっ……ごほっ……。ダッチ、レヴィ、待ってくれ。せめて彼らの目的ぐらいは聞き出さないと」
ダッチ「そんなことは意味ねえだろうよ」
ロック「でも……」
ダッチ「奴はホテルモクスワの敵だろう。そうなってくるとだ。俺たちにとっては害悪でしかねえ」
ダッチ「ロアナプラに疫病を運んできたんだろうな」
ロック「そんなことは……」
レヴィ「ちっくしょう!! どこだぁ!!! でてこい!!!!」
ダッチ「レヴィ。きぃつけろ。魚雷もあるんだからな」
レヴィ「あぁぁ!!! ふざけやがってぇぇ!!!! あいつらが昼に何食ったか調べるまで気が治まらねえよぉ!! くそったれがぁ!!!」
―船内―
ベニー「どうだった?」
ダッチ「ダメだ。どこにもいやしねえ。そっちは?」
ロック「ベニーと一緒に隈なく探したけど、どこにも……」
レヴィ「本当に探したのかよぉ!? えぇ!? ロック!? 手ぇ抜いてたら、ゆるさねえぞ」
ロック「抜くわけ無いだろ」
レヴィ「けっ」
ダッチ「船にいねえとなると、海の中か」
ベニー「それなら諦めるしかない。ボートでもなきゃ岸に向かっても沖に流されるだけだしね」
ダッチ「そうだな」
レヴィ「あいつが身投げするように見えるのかよ、ダッチ」
ダッチ「そうはおもえねえよ。ただ……」
ロック「ただ?」
ダッチ「逃げ出す算段がなきゃ、こんな大海原にある敵本陣まで乗り込んではこねえだろ」
レヴィ「そりゃあ、そうだけど……。くっそ!!」ガンッ
ダッチ「――こちら、ラグーン商会。バラライカを頼む」
バラライカ『ハァイ、ダッチ。仕事は終わったかしら?』
ダッチ「どうだろうな。お前の狙い通りなら、終わったといってもいい」
バラライカ『私の作戦が失敗したことはないのよ。ありがとう、ダッチ。報酬は期待しててね』
ダッチ「そらぁ、嬉しいな。だったら、この茶番はなんだったのか、教えてくれないか」
バラライカ『チップを貰うなら、もう少し控えめに言ったほうがいいわよ?』
ダッチ「わりぃな。育ちがよくなくてよ」
バラライカ『――ルパン三世は知っているか?』
ダッチ「噂ぐらいはな」
バラライカ『その男が狙っているものがある。我々はそれを守っている』
ダッチ「ほう? で、それとここで起こったホームパーティーは繋がるのか?」
バラライカ『少なくともこのロアナプラに入り込んだ鼠は見つかった』
ダッチ「鼠?」
バラライカ『峰不二子という女だ』
ロック「不二子……?」
―港―
ダッチ「俺はバラライカのところに顔を出してくる。詳しい話も聞きたいからな」
ロック「いいのか?」
ダッチ「もう乗船しちまったんだ。今更降りるなんていったら、サメに食われる」
レヴィ「姉御からルパンとかいうやつのことも聞いて来てくれよ」
ダッチ「分かってる」
ベニー「ロック、ちょっと手伝ってくれ。運びたい機材があるんだ」
ロック「分かった」
レヴィ「あたしは戻るからな。あぁー、くそ。腹の虫がおさまらねえ……!!」
ロック「――不二子のやつも利用されてたのか」
ベニー「もう降りたほうがいいぜ、ルパン。バラライカなんて大物が絡んでるなら尚更だ」
ロック「おぃ、次元。それはちょっと人道的にどうよ」
ベニー「人道的な奴はな、泥棒なんてしねえんだよ」
ロック「ぬふふふ。いえてらぁ」
ベニー「俺は酒を買って帰る。一人で白馬の王子様でもしてろっ」
―ラグーン商会―
レヴィ「はぁ……」
エダ「よぉ。レヴィ。おそかったじゃないのさぁ」
レヴィ「な……!? てめぇ……。今、あたしはキレてんだよ。お前のツルツルした脳みそを綺麗に割るかもしれねえぞ?」
エダ「そりゃ、あんたの脳みそじゃないのかい?」
レヴィ「あぁぁ!?」
「――エダ。話をややこしくせんでくれ。お前たちを逮捕することがワシの目的ではない」
エダ「はいよぉ」
レヴィ「……誰だよ?」
銭形「ワシはインターポールの銭形だ」
レヴィ「な……!? な……な……!?」
エダ「あははは。ぶるってやがんなぁ」
レヴィ「エ、エダ、ちょっとこい」
エダ「なにさぁ。乙女みたいに震えてぇ。男が怖いのぉ?」
レヴィ「な、なんでここにサツがいるんだよぉ。おい……」
エダ「それは――」
銭形「ワシから話そう。安心しろ。お前を捕まえに来たわけではない」
レヴィ「……」
銭形「ここロアナプラにルパンが滞在しているという情報を掴んだ」
レヴィ「ルパンだとぉ?」
銭形「そのことをワトサップに伝えたのだが、奴は協力的でなくてな」
エダ「あの野郎は市民のために働くようなタマじゃないからねぇ」
銭形「そこでエダに情報協力を求めたら、ここに案内されたわけだ。何か知っているだろうとな」
レヴィ「なんでお前が頼られるんだ?」
エダ「シスターだからに決まってるじゃないのさぁ」
銭形「ルパンのことは知らないか? 基本的な人相写真はこれだ」
レヴィ「基本的ってなんだよ」
銭形「奴は素顔になったことがない。奴の本当の顔は相棒の次元ですら知らないはずだ」
レヴィ「どれどれ……。って、こいつは……」
銭形「知っているのか?」
銭形「そうか。船でな」
レヴィ「だけど、あいつはもう海の底か大海原を遊泳してるとこだろうぜ。残念だったな、おっさん」
銭形「船内は調べたのか?」
レヴィ「当たり前だろ」
銭形「隈なくか?」
レヴィ「あぁ? なんか文句でもあんのか?」
銭形「船に案内しろ」
レヴィ「できるわけねえだろ」
エダ「言うこと聞いておいたほうがいいんじゃないのぉ?」
レヴィ「てめぇはその臭い上下の口を閉じてろ」
銭形「ここラグーン商会には4人いるらしいな」
レヴィ「それがどうしたよ」
銭形「お前の同僚は船にいるのか?」
レヴィ「さぁな。仲良く釣りをするほど仲良しってわけでもないけど」
銭形「だが、仲良く縄で縛られている仲であるかもしれんぞ?」
―港―
銭形「ここか」
レヴィ「おい!? 本当なんだろうな!?」
銭形「ルパンは変装の達人だ。お前たちを騙すことなどわけもない」
レヴィ「あのなぁ、こっちだってそれなりに血と硝煙は浴びてんだぜ」
銭形「ルパンの技能を目の当たりしたのは今日が初めてのはずだ。奴はお前の仲間に変装にやり過ごしたのだろう」
レヴィ「だはははは!!! そんなことできるなら、ケツからウォッカ飲んで火に向かって屁をしてやるよぉ!!!」
エダ「……」
レヴィ「んなことできるなら、盗めないものなんてこの世にはねえだろうなぁ」
銭形「その通りだ」
レヴィ「あ?」
銭形「奴に盗めないものは、存在しない」
レヴィ「……バカじゃねえのか?」
銭形「ここを開けさせてもらうぞ」
レヴィ「待て。あたしがやる。サツになんかゴミひとつ触られたくもねえ」
ロック「んー!? んー!?」
ベニー「……」
レヴィ「げ……!? ロック!? ベニー!? てめえら、なにやってんだ!?」
銭形「やはりか」
エダ「……ルパンは手ごわいんですね」
銭形「手ごわいという言葉では表現できんな。奴に敵うものがいるとすれば、ワシだけだ」
エダ「……」
ロック「す、すまない、レヴィ……」
レヴィ「こんなところで仲良く緊縛プレイかよぉ!! 気持ちよかったかぁ!? あぁ!?」
ベニー「一瞬の出来事で為す術がなかった」
ロック「彼らは以前から俺たちのことを知っていたに違いない」
レヴィ「なんでだよ?」
ロック「あのとき真っ先にベニーへディスクの解析を頼んだんだ。俺とダッチもいたのに……」
ベニー「僕が専門家であることを奴らは分かっていた。つまり、銃をもつのが苦手だってことも筒抜けだった。というわけだ」
レヴィ「なさけねえ!!! てめぇらの股間にあるもんはナッツかなんかかよ!!!」
ロック「レヴィだって簡単に眠らされたじゃないか!!」
レヴィ「てめえとあたしとではわけが違うんだよ!!! 一緒にすんなぁ!!!」
エダ「はいはい。痴話喧嘩はそのへんにしてさぁ」
レヴィ「誰が痴話げん――」
エダ「ケツからウォッカ、飲んでくれんだろぉ? ヘイヘイ」
レヴィ「が……」
エダ「知ってるぅ? そっちから飲むとビールでもひでぇ酔い方するんだよねぇ。昔、馬鹿がそれやって死んだのを見たことあるし」
レヴィ「……」
エダ「まぁ、安心しなよぉ。屁はいっぱいしてたからぁ。あははははは」
レヴィ「この……!!」
銭形「何はともあれ、これでルパンがここにいることは分かったな。エダ、助かった」
エダ「いえいえ。それでこれから警部は一人でこのロアナプラの街をご観光するつもりかぁ?」
銭形「そうなるな」
レヴィ「どうでもいいけどさぁ、その暑苦しいコートぐらいは脱いどけよ。この街じゃ新顔が必ずやられるぞ」
銭形「心配無用。チンピラにくれてやるのは、この手錠だけだ」
エダ「ワトサップは暫く所内に缶詰だねぇ、こりゃぁ」
レヴィ「ほら、ロック、ベニー。いつまで寝てんだよ。帰るぞ」
ロック「あ、あぁ」
エダ「あらぁ? レヴィのファイアーダンス期待してるんだけどもぉ?」
レヴィ「なんのことだよ? てめえもさっさと帰れ、クソ尼」
エダ「嘘つきは泥棒の始まりだってママに言われなかった?」
レヴィ「はんっ。泥棒したくなきゃ糞でも食えって言われて育ったんだよ」
エダ「どうりで口が臭いわけだ」
レヴィ「殺すっ」チャカ
エダ「できるの?」チャカ
ロック「やめろ。二人とも」
エダ「だってぇ、レヴィがぁ」ギュッ
レヴィ「てめぇ……ロックからはなれろ……!!」
ロック「レヴィ。ダッチは?」
レヴィ「ボスなら姉御のところだよ。行くのか?」
―ホテル・モスクワ支部 客間―
ダッチ「ふぅー……」
バラライカ「――待たせたわね、ダッチ?」
ダッチ「いや。お前のためなら何時間でも待ってやれる」
バラライカ「あら。素敵な殺し文句ね。惚れちゃってもいいの?」
ダッチ「待たないと、自分の血を見ることになる」
バラライカ「もう少し紳士的に対応してくれないかしら。こっちだって色々と話す気になっているのに」
ダッチ「そいつは悪かったな。煙草の火も消そう」
バラライカ「茶番に付き合ってほしいってことは貴方たちに言えなかった理由があるのよ」
ダッチ「理由だと?」
バラライカ「ルパンが既にラグーン商会に忍び寄っていた可能性もあったからね」
ダッチ「ほう。そういうことか」
バラライカ「奴は神出鬼没であり、本当の顔は誰も知らない。もしかしたら、貴方がルパンという可能性だってある」
ダッチ「それで、俺は黒か?」
バラライカ「肌の色だけを見ればね。でも、中身はルパンではない」
ダッチ「それは確かか? 今の自分に自信がもてねえよ」
バラライカ「ここで待ってもらったのは、貴方のことを調べさせてもらうため。行動、仕草、癖、その他諸々をね」
ダッチ「怖ぇ話だぜ、バラライカ。いつからそんな探偵みたいなことを始めたんだよ」
バラライカ「いくら変装の名人とはいえ、昨日今日あったばかりの人間に成りすますのは不可能。ただじっとしているだけでも、ボロがでる」
バラライカ「まぁ、そんなことは泥棒さんも分かっているだろうから、変装して単身でここまで乗り込んでもこないでしょうけど」
ダッチ「なるほどな。世も末だ。昔馴染みすら疑わないといけねえとは」
バラライカ「私だって心苦しいのよぉ? わかってちょうだい」
ダッチ「なら、本題に入るか。その大怪盗の狙いと、峰不二子っていう女の話をな」
バラライカ「――ルパンの目的はこれだ」
ダッチ「これは……?」
バラライカ「ジェーン……ジャネット・バーイーが生み出した金のなる木」
ダッチ「だが、これは以前に……」
バラライカ「その完成版よ。以前のものは本人たちが納得してなかったみたいだからね。これを欲しがるやつはごまんといる。月に届くぐらい金を積んでもいいという輩も含めて」
ダッチ「これ一つで国は終わる。偽札は革命にも使える代物だしな」
バラライカ「その通り。そして、これを使われると我々にとっても不利益が生じることになる」
ダッチ「経済テロでも考えてるやつがいるのか」
バラライカ「ディエゴ・ホセ・サン・フェルナンド・ラブレス暗殺の一件で不安定になっている。好景気に傾いていた分だけしわ寄せも激しい」
ダッチ「あのメイドは関わってねぇだろうな?」
バラライカ「それはない。奴の動きは私たちでも監視している。それに戦える状態ではない」
ダッチ「それなら安心だ」
バラライカ「これが世界に流れれば、我々も三合会も動かざるを得なくなる。様々な場所で金の流れが不穏になるのは目に見えている」
ダッチ「その所為で、ロアナプラの平穏も崩れ去るか」
バラライカ「敵が多いのよね。私たちは」
ダッチ「俺もだ」
バラライカ「絶妙なバランスで保たれている今、それを瓦解させる要因であるコレを泥棒なんかに渡すわけにはいかない」
ダッチ「消せばいいだろう」
バラライカ「あら? 金のなる木を枯らせるの? 私は嫌よ? 利用価値は大いにあるんだし、もっと水をあげて育てないと」
ダッチ「嘘は最後まで貫け。さすれば真実になる、か」
バラライカ「その通り。これは私たちが有効活用させてもらうわけだ。故にジェーンから譲ってもらった」
ダッチ「それさえあれば、ホテル・モスクワは強大な軍事力をもったも同然か。戦争でもするのか?」
バラライカ「まさか。張とも話し合って、これをどう使うのかは決めるわ」
ダッチ「話し合いか。わるくねえ」
バラライカ「弾だって安くないもの。命は掃いて捨てるほどあるのに、皮肉よね」
ダッチ「同感だな」
バラライカ「そうそう。今、この街にルパンを追っているICPOの犬が紛れ込んでいるらしいわ。何かあれば報告してね。野犬の駆除は得意だから」
ダッチ「オーライ。それで、不二子ってやつは?」
バラライカ「今は三合会が可愛がっているみたいね。あの女はこのデータを盗むようにルパンに仕向けた。黒幕ってわけよ」
ダッチ「それならもう話は早いな」
バラライカ「ええ。すぐにルパンの居場所も分かるわ。ただ、峰不二子が簡単な相手ならだけど」
ダッチ「ロアナプラの女にひ弱なやつぁいねえな。口もケツも締りがいい」
バラライカ「あら、下品よ?」
ダッチ「事実だ」
ボリス「――失礼します」
バラライカ「どうした、軍曹?」
ボリス「ラグーン商会のレヴィ、ベニー、ロックが来ていますが、どうされますか」
―ロアナプラ市内 ホテル―
次元「さっきから何を聞いてんだ、ルパン?」
ルパン「夜のラジオぉ。いい曲がながれてんのよぉ、これが」
次元「ふぅん」
ルパン「俺のリクエストもそろそろ流れると思うぜ。次元も一緒にきくぅ?」
次元「遠慮しておく」
ルパン「あ、そう」
次元「で、お宝はどこにあるんだ? もうこんな場所には居たくないんだがなぁ」
ルパン「ホームシックか、次元? まだ早いだろぉ?」
次元「シックになるほどのホームが欲しいもんだ」
ルパン「なっはっは。いつもアジトは爆破してるからなぁ」
次元「ふん」
ルパン「お。俺のリクエストソングが流れはじめたぞ」
次元「何をリクエストしたんだよ」
ルパン「勿論、いい女の居場所だよ」
―三合会タイ支部 倉庫―
不二子「くっ。――な、何をするのよ」
張「悪いな、峰不二子。お前には暫くここにいてもらうことになった」
不二子「……」
張「そう睨むな。興奮して引き金を引いちまうだろ?」
不二子「あら、それなら私が丁寧に処理してあげてもいいわよ?」
張「そそる提案だが、俺は抱く女を選ぶ」
不二子「あら、そうなの? 残念ね」
張「これ以上、大きくなると小便も満足に出来なくなるからな」
不二子「ふっ」
張「さて、まだお前の処遇については保留だ。何故だか分かるか?」
不二子「……さぁ。分からないわ。ローワンだったかしら。あの店に売るつもり?」
張「そんなことをするぐらいなら、ここで俺の部下たちを慰めてもらう。もっと大事なことだ」
不二子「なにかしら?」
張「お前の知っていることをいい加減吐いてもらおうか。こっちも仏の顔ではいられなくなるぞ?」
―翌日 ラグーン商会―
ダッチ「どう思う?」
ロック「全てを鵜呑みにはできない。でも、ルパンがいたことは事実だ」
レヴィ「あのアホ面に銃創つけてやらなきゃな。でかい借りがあるんだしよぉ」
ダッチ「だからって、向こうは逃走のプロフェッショナルだ。尻を追っかけてつかまるようなことはないだろうな」
レヴィ「なら、どうすんだよ!!!」ガンッ
ダッチ「クールになれ、レヴィ。俺たちは別にルパンとかいう奴と戦うつもりはない」
レヴィ「あたしにはあんだよ」
ロック「でも、ダッチ。完全に無関係ではいられないんじゃないか?」
ダッチ「……」
ロック「ルパンのやろうとしていることは、ロアナプラを、いや世界を混乱に陥れることだ。黙っていれば俺たちの身だって……」
ダッチ「ま、そうだな。あれが盗まれれば、近い将来俺たちの商いも制限させ、明日食うメシの心配ばかりすることになる」
ロック「捕まえる価値はあると思う。バラライカさんに協力しないか」
レヴィ「お! たまにはいいこと言うじゃねえか、ロック!! あたしはロックにつく。いいな、ダッチ?」
ダッチ「途中下船は不可なら、やるか。怪盗とやりあうなんざ、今後一生めぐり合えないほどのイベントだ。楽しいゲームになることを祈るぜ」
―ロアナプラ市内 屋台―
ルパン「ぬははははぁ。これは参ったなぁ」
次元「どうした?」
ルパン「いや。ここの料理は美味しくなくてよぉ。これ以上、くいたくねえのよぉ。これ、どうしましょ?」
次元「そうか。さっさと食え」
ルパン「さぁて、不二子の居場所も分かったし、お宝の場所も突き止めた。あとはどっちを先に盗むか、だな」
次元「考えるまでもねえ。お宝だ。不二子なんてついでだ」
ルパン「おいおい。お姫様が待ってるんだから、行ってやろうぜぇ。王子様」
次元「誰が王子様だ。考えても見ろ。一つを奪えばもう片方の守りはより堅守になる。向こうは戦争のプロだぞ。いくら俺たちでも捌ききれねえだろう」
ルパン「その通りだ。巧妙なトラップよりもやっぱり錬度の高い人間のほうがよっぽど怖いからなぁ」
次元「怖いのはバラライカの部下だけだがな。あいつらの統率力は並じゃねえってことは知ってる」
ルパン「部下ねぇ……」
次元「やるならお宝が先だ」
ルパン「いつに無く弱気じゃねえのさぁ、次元? ロアナプラの雰囲気にのまれちゃった?」
次元「いくらなんでも一個小隊とは撃ち合いたくねえって言ってんだよ」
ルパン「だけども、やるしかねえわけだ。そろそろとっつぁんも来るころだろうしな」
次元「言えてる。だからこそ――」
銭形「すいません。ラーメンをもらえるか?」
「はいよっ」
銭形「ルパンめぇ。ワシの勘だとこの辺りにいるはずなんだがぁ……」
「どうぞ」
銭形「これ、お代だ」
銭形「まずは腹ごしらえでもせんとな。いただきますっ!!」
ルパン「(ほぁら、みろ。噂をすれば銭形のとっつぁんときたもんだ)」
次元「(そういえば、麺類が好きだったな。うっかりしてたぜ)」
ルパン「(とにかくここから離れるっきゃねえ。いくぞぉ、次元)」
次元「(異議なしっ)」
銭形「(ルパンめぇ。絶対に捕まえてやる……。だが、奴の目的もまだ不明瞭だ……)」
銭形「(ラグーン商会と接触した以上、何か関係があるはず)」
銭形「最近、ラグーン商会が何を運んだのか調べてみる必要がありそうだ」
―イエローフラッグ―
レヴィ「けっ!! かったるいなぁ!! こういうことはロックがやりゃあいいだろ!!」
ロック「ルパンを探したいって一番熱望していたのはレヴィだろ」
レヴィ「あぁー、だりぃー」
ロック「全く……」
バオ「なんかあったのか? この前は失禁してもおかしくないほど浮かれたのによ」
レヴィ「うっせ」
ロック「ルパンを探しているんだ。この店にも居たとか。この顔に見覚えはないかい?」
バオ「おぉ。こいつか。よく覚えてるぜ。粗大ゴミをだしやがった野郎だからな。外に出すのが大変だった」
レヴィ「なんか話したか?」
バオ「実のある話はしてねえな。えらい別嬪とは楽しそうに話しこんでたけどよ」
ロック「峰不二子だな」
レヴィ「何を話してたか聞こえたか?」
バオ「ここではなぁ、卑しい声のほうが大きくて、大切な話はカウンターまで届かないんだよ」
レヴィ「つっかえねえなぁ。ここに九官鳥でも置いておいたほうが役に立つんじゃねえか?」
バオ「なんだとぉ!?」
ロック「まぁまぁ」
銭形「――失礼」
レヴィ「げ……」
バオ「まだ開いてねえよ。とっとと出ていきな」
銭形「私はインターポールの銭形だ。ここでこの男を見かけたという情報を聞いてな」
バオ「インターポール……って」
銭形「どうなんだ? いたのか? いなかったのかぁ?」
バオ「い、いたけど、何も話すことはない。その男の話は聞こえなかったからなっ」
銭形「ふん。まぁ、奴が他人に聞こえるようなところで居場所や目的を漏らしているとは考えにくいがなぁ。――ところで、どこにいくのかね、レヴィ?」
レヴィ「……んだよぉ? 便所だ」
銭形「そちらは外だろう。便所は向こうのようだが?」
レヴィ「うっかりしてたんだよ……うっせえなぁ……」
銭形「早くしてくれ。お前たちにも訊きたいことがあるんだ」
ロック「俺たちから銭形さんに話せることはなにも無いですよ?」
銭形「ルパンのことをお前たちから聞きだせるとは思っておらん。訊きたいのは、何を運んだかだ」
ロック「それは昨日、言ったはずです。守秘義務があると」
銭形「だろうなぁ。ならば、ワシの推論を喋らせてくれるか?」
ロック「え?」
銭形「君たちはあのホテル・モスクワとは友好関係にあるそうだな」
ロック「それがなんですか?」
銭形「ルパンが狙っているものは、ホテル・モスクワにあるか?」
ロック「さぁ。どうでしょうね」
銭形「嘘は通じんぞ。ロック。いや、岡島と呼んだほうがいいかな?」
ロック「なっ……!?」
銭形「お前たちの素性なぞ、容易く調べられる」
ロック「(なんだ、この人……。出会ってからまだ十数時間で……)」
銭形「どうなんだね。君たちが運んでいたものをルパンは盗もうとしたが、失敗したんだろう? お前たちから盗みそこなうとは考えにくいから、目的の物はなかった。違うか?」
ロック「銭形さん。言っておきます。ここで黙っているのは……」
銭形「それも大体見当がつく。犬に嗅ぎ回られるのが気に入らないんだろう、バラライカは。マフィアとはそういうものだ」
ロック「だったら、もう訊かないでください。俺たちから話せることはないんです」
銭形「では、バラライカが所持しているということでいいな?」
ロック「……」
銭形「助かった。ホテル・モスクワの支部にいってみるか」
ロック「待ってください。貴方がそれにたどり着いたら、消される」
銭形「消されるだぁ? はっはっはっは!!!」
ロック「な……?」
銭形「ルパンを捕まえるまでは誰もワシを殺すことなどできん。たとえ、相手が歴戦の軍人だろうとなぁ」
ロック「どこからそんな自信が」
レヴィ「頭のネジがぶっとんでるな」
銭形「当然だぁ。それぐらいでなければルパンは追えん」
レヴィ「ヘイ、おっさん」
銭形「おっさんではない。銭形だ」
レヴィ「あたしもルパンのことを追ってんだよ。手を組まないか?」
ロック「レヴィ、なに言ってるんだ? 銭形さんと一緒に行動なんてしたら……」
レヴィ「いいんだよ、ロック」
ロック「よくないだろ!?」
レヴィ「(あたしらのことを一晩で調べてくるサツだぜ? 利用しない手はねえだろ)」
ロック「(だけど、銭形さんは向こうの人間だ。もしものことがあったら俺たちが警察に狙われることになるかもしれないぞ)」
レヴィ「(うっ……)」
銭形「折角だが、遠慮しよう」
レヴィ「なんだよ」
銭形「相棒に手錠をかけたくないのでな」
レヴィ「そうかい。サツはやっぱり、どこまでいっても同じ頭してんだな。どっかの工場で大量生産されてんじゃねえの?」
銭形「ならば、それはお前たちにも言えるな」
レヴィ「あぁ?」
銭形「罪を犯すものは、どこの国でもお前たちのような人間だ」
レヴィ「言うじゃねえか。ここじゃあ、強い奴が正義だ。生ぬるいこと抜かす奴はイエスさまからも唾と糞を吐き捨てられる場所なんだよ」
銭形「便所に沸く蛆のようだな」
レヴィ「てめぇ……。サツだからって調子にのんなよ? ロアナプラじゃ、転がってる死体に興味をもつやつぁいねえんだぜ?」
ロック「やめろ、レヴィ」
銭形「気をつけよう。ではな」
レヴィ「けっ。消されちまえばいいんだよ、あんな奴」
バオ「手を組めといったり、罵ったり相変わらず忙しいやつだな」
レヴィ「あたしたちも行こうぜ、ロック。バオの話なんて聞いてても耳垢にしかならねえよ」
バオ「そう思うならとっととでていけ」
ロック「……レヴィ」
レヴィ「んだよ?」
ロック「銭形さんは本当にバラライカさんのところへ行ったと思うか?」
レヴィ「そんなことしねえだろ。サツなら姉御がどんな奴かぐらいしってるだろうし」
ロック「仮に、銭形さんが乗り込んだら……」
レヴィ「外に出るときはアタッシュケースの中だろうな」
ロック「……」
レヴィ「おい。冗談だよな? あいてはサツだぜ? あたしらの天敵だろ?」
ロック「行くだけ行こう」
―ラグーン商会―
ベニー「……」カタカタ
ダッチ「ここに居たのか、ベニボーイ。レヴィとロックはホームズごっこしてるが、お前も一緒にどうだ?」
ベニー「特別手当はでるのかい?」
ダッチ「ルパンとかいうコソ泥の首をバラライカのところに持っていけば、撫でてもらえるかもな」
ベニー「できることがあるなら協力するけど、僕が出張っても足手まといになるのはわかりきってる」
ダッチ「なら、ベニボーイが今やってることぁ、俺たちにとっては何の利益ももたらさねぇことなのか?」
ベニー「だろうね」
ダッチ「否定しねえのかよ。何してる?」
ベニー「これさ」
ダッチ「こりゃあ、フェイクのディスクじゃねえか。空っぽだったんだろ? まさか、火であぶるとデータが浮き出てくるなんていわねえよな」
ベニー「僕もそう思って調べてたんだ。でも、これは正真正銘の偽者。ルパンが捨て置いていったのも頷けるね」
ダッチ「それならこのディスクは猫よけにしかならねえな。吊るしておくぜ」
ベニー「いや、他のデータを保存するのに使えるよ。空っぽなんだから」
ダッチ「はっはっは。いい考えだな。ローワンのところからキワモノでも借りてコピーしとくか」
―ロアナプラ市内 倉庫―
ルパン「おーい。悪かったなぁ。お留守番させちゃってよぉ」
五ェ門「いつまで待たせる」
ルパン「だから、謝ってんだろぉ。ここじゃあ、用心棒がいないと不安で不安で夜も眠れやしねえのよ」
五ェ門「あの女狐からの情報というだけで、気乗りしていないのだ。早急に終わらせてくれ、ルパン」
ルパン「次元と同じようなこといってらぁ。仕事は巻きでやってもいいことはないぜ。女を扱うように丁寧に順序を守ってこなしていかないとなぁ?」
五ェ門「……」
ルパン「あら、だんまり?」
次元「ルパン。本当にいいのか? 後悔することになるぜ?」
ルパン「後悔? 後悔なんざ、失敗したあとにすることだ。俺ぁ、そんなヘマしねえよ」
次元「女絡みでお前が何度失敗してきてるか俺は知ってるぜ」
ルパン「なっはっはっは。それは騙されてもいい女に巡り合えたってだけさ」
次元「……やるなら急ぐぞ」
ルパン「わかってるよ。行くぜ、次元、五ェ門」
五ェ門「承知」
―ホテル・モスクワ支部―
銭形「いいから、バラライカにあわせろと言っている」
「帰れ。大尉は貴様に用はないと言っていた」
銭形「きさまぁ……!!」
バラライカ「――いいだろう、通してやれ」
「しかし」
バラライカ「ミスター銭形。うちの者が失礼なことを言ったようね。謝罪するわ」
銭形「謝罪するなら頭を下げるものだがな」
バラライカ「私が頭を下げるときは死刑台の上と決めている」
銭形「そうかぁ。その日が一日でも早く来るといいな」
バラライカ「中へどうぞ」
銭形「失礼」
ボリス「……どうされるつもりですか?」
バラライカ「目的如何で、それなりのおもてなしをする。準備しておけ」
ボリス「はっ」
―客間―
銭形「中々、いい部屋だな。マフィアらしく無駄に豪奢だ」
バラライカ「これでも地味にしているほうなのだがな」
銭形「率直に訊ねようか、バラライカ。ルパンは何を盗もうとしているの?」
バラライカ「答えられない」
銭形「答えろ」
バラライカ「もっと分かりやすく言ってやろう。ICPOの犬に食わせるエサはない」
銭形「そうか。ロアナプラは随分と治安が良いようだな」
バラライカ「この街は我々がいるからな。海の向こうからやってきた者はまずそれなりの洗礼があり、それに耐えれぬものには敗走以外の道はない」
銭形「だが、日本は違う。お前が日本でやったことは、ただの殺人だぁ」
バラライカ「……」
銭形「お前を逮捕する理由は腐るほどある。この街に住まう蛆虫共のようにな」
バラライカ「くくく……ふふふ……ハハハハハハハ!!!!」
銭形「気でも触れたかね?」
バラライカ「ミスター銭形。私を捕まえてもルパンは現れないと思うけど?」
銭形「そんなことは分かりきっている。貴様から引き出したいのは、ルパンが狙っているものだ」
バラライカ「そこまで調べられているのだから、もう少し頑張ってみたらどうかしら?」
銭形「確証が欲しいだけだ」
バラライカ「……それはある程度絞り込めている、ということ?」
銭形「可能性が高いのはジャネット・バーイーが――」
バラライカ「……」チャカ
ボリス「……」チャカ
銭形「何の真似かね。ワシはこれを肯定と受け取るが」
バラライカ「どうやら、貴方は相当腕がたつ人材のようね。私の部下に置いておきたいぐらいよ」
銭形「そいつぁ光栄だ」
バラライカ「確証はなくとも確信している。違う?」
銭形「ロアナプラに持ち込まれた物を洗っていけば、ここに辿り着くのは当然だ。奴は銃器や薬をかき集めるような男ではない」
バラライカ「どこでその情報を手に入れたのか、是非とも訊いておきたいわね」
銭形「それはできんな。マフィアの犬に食わせるエサは用意しておらん」
バラライカ「ほう……」
ボリス「大尉」
バラライカ「待て。――ミスター銭形。貴方の目的は?」
銭形「ルパンの逮捕だ」
バラライカ「それだけ?」
銭形「何が望みだぁ? ワシに逮捕されたいならそう言え」
バラライカ「逮捕できるのか?」
銭形「証拠さえ見つかればな」
バラライカ「……」
銭形「……」
バラライカ「面白い。好きにするがいい」
銭形「ルパンの狙っているものはなんだぁ?」
バラライカ「察している通り、偽札の――」
「大尉!! 失礼します!!!」
バラライカ「騒がしいぞ。どうした?」
「そ、それがたった今、三合会が襲撃されたと……!!」
―三合会タイ支部―
張「……それはSSKか?」
ルパン「そうだよ。イカすだろぉ? ぬふふふ」
張「この街では目立つぞ。隠しておいたほうがいい」
ルパン「今まで湿度のたっかーい場所で眠らせてたのよ。だから、こうして大暴れさせたってわけさ、張さん?」
張「向かいのビルから飛び込んでくるとは、お前がどういう教育を受けてきたのかよく分かる」
ルパン「あんたよりゃぁマシな人生をおくってるぜぇ?」
張「なんだと?」
ルパン「こんなところで暗く高い場所でひよっちゃう人生なんざぁ、退屈だろ? それで満足なのか、あんた?」
張「ははははは。お前さんは何も知らないだけだ。ここでは刺激が強すぎてな。毎日、どう血を冷ますのかで悩んでいる」
ルパン「それにしちゃあ、やってることは小さいんじゃないの?」
張「コソ泥風情に理解できる世界じゃない」
ルパン「トゥーハンドの実力がどれほどのもんか見てみたいっけども。まずはお宝が先だ。失礼するぜ」
張「これだけ派手な侵入をしておいて、無事で済むと思うな。ルパン三世?」
ルパン「それが済んじゃうんだなぁ。だって俺は、ルパン三世、だから」
「侵入者だ!! 撃ち殺せ!!!」
「このやろぉ!!! 俺たちに喧嘩を売るとはいい度胸だ!!!」
ルパン「胆とシンボルのデカさじゃ誰にも負けないんだよ、俺はぁ」
張「タイヤを狙え!!」
「はい!!」
ルパン「なっはっはっはっは!! 当たってねえぞぉ!!!」
張「……」バァン!!
ルパン「あぶねっ!?」
張「追え!! 不二子のとこへまっすぐ向かっている!!!」
ルパン「やっぱり、腕はいいねぇ。こりゃ、のんびりしてたら真っ黒焦げになっちまうぜぇ」
張「ルパンを逃がすな!!!」
ルパン「にょほほほ!! もっと追ってきなぁ、張。ゲームは始まったばかりだぜ?」
張「てめえみたいなふざけた野郎に俺の休日とアジトを潰されるのは、もうまっぴらだ」
ルパン「そういうセリフを吐いちゃうところがひよった証拠じゃないかなぁ?」
張「……言えてるな」バァン!!
彪「ここの守りを固めていれば、奴はなにもできない」
「はいっ」
ルパン「――どけどけぇ」ギュルルル!!
彪「撃て」
「くらえ!!」ダラララララ!!!!
ルパン「あわわわわぁ」
張「上出来だ。さぁ、上客のお帰りだ。派手に見送れ」
「了解!」ジャキン
ルパン「おいおいおい!! 屋内でロケット弾撃つ気なのぉ!?」
張「土産だ。とっとけ」
ルパン「えんりょしまぁぁす!!」ブゥゥゥン!!!
「死ねぇ!!!」ドォン!!!
ルパン「ありゃぁぁぁ!!!!」
ドォォォォン!!!!
張「ちっ。出入り口で押さえろ!!」
―倉庫―
不二子(やけに騒がしいわね……。まさか、ルパンが……?)
「ハァァァ!!!」
ズゥゥゥン……
不二子「……!」
五ェ門「……」キィン
不二子「あらぁ、ごえもーん。助けにきてくれたのぉ? ありがとぉー」
次元「ふん。てめえ、よくも俺たちを利用してくれたな」
不二子「ちがうのよぉ。私だって騙されてたのぉ。ホントよぉ? 信じてぇ」
五ェ門「そろそろだ。いくぞ」
不二子「行くって?」
次元「迎えが真下に来てる」
不二子「ここ7階よ?」
五ェ門「問答無用だ!!」グイッ
不二子「きゃぁ!!」
―ロアナプラ市内―
ルパン「はい。おかえりぃー」
次元「よっと。さ、出せ」
ルパン「あいよぉ」
不二子「あーん。ルパーン、信じてたわぁ。助けにきてくれるって」ギュッ
ルパン「のほほほほぉ。俺が不二子を見捨てるわきゃねえだろぉ?」
不二子「うふっ。好きっ」
ルパン「俺もだ」
次元「おい、ルパン!! 前を見ろ!!」
ルパン「わかってるよぉ。どういう経緯で手を組んだのかしんねえけど、最悪のコンビだな」
銭形「ルパーン!!! 遂に見つけたぞぉ!!!!」
バラライカ「……構えろ」
五ェ門「ルパン!! 囲まれているぞ!!」
次元「やべぇ!! ありゃあ、バラライカの兵隊だ!! 逃げろ、ルパン!!!」
ルパン「うっせぇ、黙ってないと舌きっちまうぞぉ。舌無しで地獄にいったら、閻魔さんも仕事へって寂しがるってもんだ」
ロック「――銃声か?」
レヴィ「そんなに珍しいことじゃねえだろ?」
ロック「でも、尋常じゃない」
レヴィ「そんなことより、姉御のところに――」
ルパン「のほほほほ!! こりゃぁ、あぶねえったらねえなぁー!!!」ブゥゥゥン!!!
次元「前見て運転しろ!!」ドォン!!!
五ェ門「ふんっ!!」キィン
不二子「ルパーン、こわーい」
レヴィ「な……!!」
ロック「ルパン!!」
レヴィ「待ちやがれ!!! このやろう!!!」チャカ
ロック「相手は車だ。追うならこっちも車を使わないと」
レヴィ「なら、あそこのを借りるぞ!!」
ロック「レヴィ!! 待つんだ!!」
レヴィ「あそこに置いてある車がわりぃんだよ!! こい、ロック!!! ここで借りを返す!!! あのマヌケ面を変形するまでボッコボコにしてやるぜぇ!!」
―ラグーン商会―
ダッチ「おう。ロックか。午後のティータイムはどうする?」
ロック『今、ルパンを追跡している。ダッチ、合流できるか?』
ダッチ「おう。そりゃ、クールなおやつだな。ちょっと待て、どこを走ってる?」
ベニー「どうしたの?」
ダッチ「――なるほど、そっちか。お前が犬なら相手は羊だ。追う方向を考えりゃあ、柵のほうへ誘導できる」
ロック『だけど、バラライカさんや銭形さんも一緒みたいだ。それでもできるか?』
ダッチ「バラライカもチェイスに参加してんのか。モナコグランプリも真っ青だな」
ベニー「車、出すよ。ダッチ」
ダッチ「――ロック。そのまま奴のケツを追いながら、何とか誘い込め。この街で俺たちが新参に負けるわけにはいかねえからな」
ロック『わかった。やってみる』
ダッチ「幸運の女神が微笑むのを祈るぜ」
レヴィ『まっちやがれぇぇぇぇ!!!!』
ダッチ「――隣には悪魔がいるけどな」
ベニー「ダッチ、急ごう」
―ロアナプラ市内―
ルパン「おっと。後ろからしつこく喰らいつくのは、ラグーン商会のお嬢ちゃんかい」
次元「どこかにつれていきたいみたいだな」
ルパン「なははは。乗ってやっても良いが、至る所にバラライカの兵隊アリがいやがるもんだがらなぁ」
五ェ門「ルパン、逃げ回るだけではいつか捕まるぞ。地の利は向こうにある」
ルパン「あんのなぁ、五ェ門? 俺はいつだって地ならしから始める堅実派よ?」
次元「ほう? そうだったのか? イチかバチのスリルを楽しんでる馬鹿野郎とばかり思ってたぜ」
ルパン「まぁ、そっちのほうが楽しいけどよ。簡単にやられるのはこっちもあっちも面白くなんねえだろ?」
次元「それもそうか」
レヴィ「おらぁ!! てめえの後ろから9ミリ弾ぶち込んでやるぜ!! 覚悟しやがれぇ!!!」
ルパン「あらぁ、やさしいのねぇ。ぼくちゃん、そっちは初めてだから小さいほうからやってくれるとたすかるぅ」
レヴィ「最終的にはRPGねじ込んで泡吹かせてやる。想像しただけで、いっちまうだろぉ!!! ハッハー!!!」ドォン!!!
次元「あの嬢ちゃん、大丈夫か?」
ルパン「ロアナプラ三恐女の一人らしいからなぁ。あれぐらいがいいんじゃないの?」
五ェ門「世も末だ……」
バラライカ「ルパンは?」
ボリス「西へ向かっているようです」
バラライカ「そうか」
銭形「あんたの統率力も大したものだが、ルパンは軍隊にも勝利したことがある男だ。ただ追い回すだけでは影すら踏めんよ」
バラライカ「闇雲に追っているわけではない」
銭形「なに?」
バラライカ「ラグーン商会もいるようだが、ついでだ。案内してやれ」
ボリス「了解」
バラライカ「ミスター銭形。この街で生きていくには、静かに、穏やかに、息を殺していくことが肝要だ」
銭形「長生きのコツかね?」
バラライカ「いや。それが行き過ぎて、卑下した者は瞬時に尻の毛一本まで燃やされる」
銭形「難しいなぁ。ワシはここに住もうとは思わん」
バラライカ「それが正常だ。とはいえ、貴方も随分と狂っているように思えるが?」
銭形「狂ってなければルパンは追えん。奴こそ、世界でも一、二を争う狂人だ」
バラライカ「そうか。ならば、その狂人が炎の中で踊る様をご覧にいれよう」
―イエローフラッグ―
バオ「ふんふふーん」ゴシゴシ
「マスター、またきてやったぜぇ?」
バオ「あぁ? まだ開いて――」
バァァァン!!!
ルパン「自家用車でなぁ。かっこいいだろぉ?」
バオ「てめぇ!!! なにやってんだぁ!!! 弁償しろぉ!!!!」
次元「あーあ。派手にぶっこわしたなぁ」
五ェ門「……」
不二子「ごめんねぇ、マスター?」
バオ「なにしてくれてんだよぉ!!!」
ダッチ「遅かったな」
ベニー「先に飲んでるよ」
ルパン「へぇ。先客が居たか」
レヴィ「――追い詰めたぞ、糞泥棒。散々、虚仮にしてくれたなぁ。今のうちに空気の味をかみ締めとけよ」
次元「……」スッ
ダッチ「待ちな。あんたもリボルバー好きなのか?」チャカ
次元「オートマチックは信用できなくてな」
ダッチ「気が合うなぁ。あの世で飲むか」
次元「美味い酒はあるんだろうな、おっさん?」
ダッチ「天使に訊け」
五ェ門「ルパン」
ルパン「まぁ、待てよぉ。五ェ門。こいつらにはお世話になったんだ。お礼だって言いたいしなぁ」
レヴィ「なんかくれんのか?」
ロック「煙幕はなしだ」ガシッ
ルパン「んほほぉ。バレてやんの」
ロック「もう諦めろ」
ルパン「なんの話だぁ?」
ロック「峰不二子を連れて、ロアナプラから出て行ってくれ」
ルパン「そいつぁきけねえなぁ、ロック? この街にはまだお宝があるんだからよぉ?」
レヴィ「ヘイ、ロック!! 勝手なこと言ってんじゃねえぞ!!! あたしはそいつに一発かましてやんねぇと酒の味がわからねえまま過ごさなきゃならねえんだよ!!!」
バオ「またレヴィか!! いい加減にしやがれぇ!!! こんちくしょう!!!」
レヴィ「あたしじゃねえよ!!!」
ロック「ルパン。お前が盗もうとしているものがどういったものか分かっているのか?」
ルパン「さぁなぁ。まだどんなモノかも具体的にわかってねえよしぉ」
五ェ門「なに?」
次元「嘘だろ、ルパン?」
ルパン「ん百億ドルの値打ちがあるとしか聞いてねえよ」
五ェ門「呆れ果てるばかりだ」
次元「右に同じ」
ロック「……偽札の原版データだ」
ルパン「へぇ……」
不二子「あんっ。いっちゃったぁ」
次元「そりゃあ、確かにお宝だな」
ルパン「それを聞いて、俄然やる気がでてきたぜぇ。あんがとなぁ、ロックぅ? ぬほほほほ」
ダッチ「大怪盗が品物をしらねえってわきゃねえだろうよ」
ルパン「泥棒は信用できないか?」
ダッチ「嘘つきが泥棒になるからな」
ルパン「なっはっはっは」
ロック「世界を壊すつもりか?」
ルパン「世界を壊す? そりゃあ、面白いじゃないのぉ」
ロック「なに……」
ルパン「手始めにロアナプラを壊してやろうかぁ?」
ベニー「できるわけがない」
ダッチ「ルパンさんよぉ。アンタの仕事を否定するつもりはねえが、大多数が迷惑を被るようなことをしてくれんなよ。あんただって、生きたいはずだろ」
ルパン「生きたいねえ。楽しいうちに死ねるなら俺ぁ、死んでもかまわない」
レヴィ「あぁ? 腹上死がお好みか?」
ルパン「それもいいが、俺としてはこうしてる今が死んでもいい瞬間だな」
ロック「大人しく帰ってくれるのか?」
ルパン「誰がそんなつまんねえこといったよぉ? なぁ、ロック? あんただって俺と一緒だろ? 削いで剥いでを繰り返し、刺して刺されてをし続ける毎日に陶酔してんじゃないのか?」
ロック「……」
ルパン「お前の言葉の端々からは、それを求めるもんが聞こえてきたぜぇ?」
ロック「なに?」
銭形「――そこまでだぁ、ルパーン!!!」
ルパン「あーら、とっつぁん。案外、おそかったなぁ。バラライカとしっぽりしてたのか?」
バラライカ「仲良くはさせてもらったわ」
次元「おい、ルパン」
ルパン「落ち着けって」
レヴィ「姉御!! 殺すのはいいけど、まずはあたしにやらせてくれよ!!」
バラライカ「勝手にどうぞ。でも、逃がさないでね」
レヴィ「ここまで来て逃がすようじゃあ、あたしはとっくに死んでるよ」
ルパン「何するつもりだ、かわいこちゃん?」
レヴィ「このヘヴィな空気を感じられないようじゃ、毒ガス吸ってもわかんないだろうな」
ルパン「なははは。そうかもしれ――」
レヴィ「おらぁ!!!」ドゴォ!!!
ルパン「ぐぇ!?」
不二子「ルパン!!」
レヴィ「こんなもんじゃすまさねえぞ!! 立ちなっ」グイッ
ルパン「あったぁ~。なんとまぁ強烈なパンチだこと。正直、痺れたぜぇ?」
レヴィ「次は痙攣させてやるよ」
次元「おい、やめろ」
五ェ門「……」スッ
ダッチ「好きにやらせてやれよ。どうせお前らがここから母国の土を踏むことはないんだからよぉ」
次元「故郷なんて、どこにあったのか忘れちまったよ」チャカ
ダッチ「抜いたな? そうなったら俺が撃っても文句はねえな?」
次元「何を言ってやがる。好きなときに撃ちな。こいつを持ったときから、その覚悟はいつだって持ち合わせてる」
ダッチ「いい心がけだ」
レヴィ「このやろぉ!!」ドガァ!!
ルパン「ぐっ……!?」
ロック「レヴィ!! よせ!!」
ルパンたちなら簡単に原作なら勝てそうな気もするが
まあなかなかに面白い ルパンも泥棒を楽しんでやってるしスリリングな世界の楽しさとかは知ってるしな
どっちかっていうと原作ルパンだ
そして最後は
レヴィ「あん、なんだよサツやろう、ぶちころすぞ!」
銭形「奴は大変なものを盗んでいきました。」
銭形「あなたの心です。」
レヴィフラグはないか
レヴィ「ロック。うちらの世界じゃ落としどころが大事だって何度も言ってんだろ?」
ロック「だけど……」
銭形「そこまでだぁ、レヴィ。ルパンの身柄は――」
バラライカ「そうはいかないわ」チャカ
銭形「……なんの真似かな、バラライカ?」
バラライカ「銭形警部はルパンとの銃撃戦の中、殉職した。そうでしょ?」
銭形「ふん」
ルパン「とっつぁんもたいへんだぁねぇ」
バラライカ「これでこの一件に関しては片がつく」
銭形「果たしてそうかな? 偽札は既に外にまで情報が流れている。そのうち、災厄が濁流となってロアナプラを襲うぞ」
バラライカ「その前に防波堤を作ってしまえばいいのよ」
銭形「なるほどぉ」
ルパン「くくくく……なっはっはっはっはっは!!!! おい、聞いたか、レヴィ?」
レヴィ「あたしの名前を気安く呼ぶな」
ルパン「バラライカはこの街をベルリンよろしく塀で囲っちまうらしい。確かにそうすれば何もきやしねえ。自由気ままなマフィアライフが楽しめるって寸法だ」
レヴィ「それがどうした。みんなハッピーだ。ここではそうして生きてる奴が温かいメシにありつける」
ルパン「長いものに巻かれて、簀巻きにされたやつだっているんだぜぇ?」
レヴィ「そいつがどっかのホワイトカラーみてぇに不器用だっただけだろ?」
ルパン「それぁどうかなぁ。火が消えちまった街は闇に沈む。月明かりさえも遮られているような、こんな場所じゃぁな」
レヴィ「それがあたしらの生き方だ。部外者の分際で、偉そうに講釈たれてんじゃねえぞ」
ルパン「……面白くねえなぁ、ロック?」
ロック「なんだよ?」
ルパン「こんなつまんねえ街になっちまうとはなぁ。タバコをふかして、金数えて、遠くから聞こえる銃声を音楽にコーヒーでも飲むのかい?」
ロック「……」
レヴィ「ヘイ、ルパン。あんたの相手はあたしだろ?」
ルパン「人生において死よりも怖ぇのはよぉ、退屈だろ?」
ダッチ「そらぁ、共感できるな」
ルパン「敵が多いなら背を向けようぜ。危ない橋こそわたっていこうぜ」
ルパン「消えた火に魅力はねえ。違うかい、ロック?」
ロック「お前は何をいって……」
ルパン「バラライカ。予告してやるよ」
バラライカ「……構えろ」
ボリス「……」チャカ
バオ「お、おい!! やめろぉ!!!」
ルパン「今宵、9時ジャストにお前の持つ偽札原版データを頂戴する、バァーイ、ルパン三世ってな」
銭形「……! 全員、この建物から離れろ!!!」
バラライカ「撃て!!!」
ルパン「さよならさんかく、またきてしかくってかぁ?」ピッ
レヴィ「てめぇ――」
ドォォォォォン!!!!
ロック「うわっ!?」
ダッチ「な……!?」
ベニー「くっ……!! 便所が爆発したのか!?」
銭形「ちぃ……!! ルパンめぇ……!!!」
レヴィ「あのやろう……また……!!!」
バラライカ「――引き上げだ。ルパンは必ず来る」
銭形「まてぇ。バラライカ」
バラライカ「なにかしら?」
銭形「偽札原版データとやらはワシが預からせてもらおうか。ルパンを逮捕するためには必要なものだ」
バラライカ「できないわね」
銭形「なにぉ」
ボリス「……」チャカ
銭形「殺すつもりか」
バラライカ「やれ」
ボリス「了解」
銭形「おそいっ!!」バァン!!!
ボリス「つっ!?」
レヴィ「ひゅぅ。あのおっさん、早撃ちもできんのかよぉ」
銭形「ここには居たらマズいようだな。ワシは行くが追ってはくるな。弾の無駄遣いになる。使いすぎると経費で落ちないかもしれんのでなぁ」
バラライカ「……邪魔立てするというのであれば、貴様も我々の敵だ。それを努々忘れるな、ミスター銭形」
ダッチ「ベニボーイ、無事か?」
ベニー「なんとかね。お守りのおかげかな」
ダッチ「はっ。それなら大したもんだな」
レヴィ「ヘイ、ダッチ。あたしはもう一度、ルパンとタイマンで決着つけっからよ。今夜は自由にさせてもらうぜ」
ダッチ「待てよ、レヴィ」
レヴィ「んだよ。止める気か?」
ダッチ「俺たちもつれてけ」
レヴィ「お? マジかよ!」
ダッチ「新参者にあそこまでいわれちゃあな。折角だし焚き木をまいてまってやろうじゃねえか」
ベニー「ルパンの居場所、調べてみよう」
ロック「できるのか?」
ベニー「さぁね。ネットの海にそういう情報が眠っている可能性は否定できない」
レヴィ「よぉし。今度こそ、あいつに……」
ロック「レヴィ。ちょっと付き合ってほしいところがある」
レヴィ「あ? どこだよ? ホテルか?」
―ホテル―
不二子「張から聞いたわ。ごめんね、ルパン。まさかあのディスクがフェイクだったなんて思いもよらなくてぇ」
次元「嘘も続ければ真実になるたぁ、よくいったもんだぜぇ」
不二子「ほんとよぉ」
五ェ門「ルパン。勝算はあるのか?」
ルパン「あるから予告したんでしょうよ、ゴエちゃん?」
五ェ門「軍隊を相手にするのは聞いておらんぞ」
ルパン「なぁに。俺たちの敵はバラライカじゃねぇよ」
次元「そいつは興味深い話だな。一体、誰が敵なんだ?」
ルパン「バラライカからブツを盗るのは難しい話じゃない。逃げるときに銃弾の雨が横から降るから鉄傘さしていかなきゃなんねえけどな」
五ェ門「では、それよりも後か」
ルパン「そう。そのあとが問題よぉ。障壁になるのは間違いなく、ラグーン商会と銭形のとっつぁんだ」
次元「銭形は分かるが、たった4人のあいつらに何ができるってんだ」
ルパン「この街で一番面白い奴があの4人ってだけだ。それってかなりこわいぜぇ?」
次元「ちがいねぇ。特にあのレヴィって嬢ちゃんはかなりキレてるからな。何をするかわかったもんじゃねえ」
不二子「そんなことよりぃ、ルパァン?」
ルパン「にょほほほぉ。なぁに、不二子ちゃぁん?」
不二子「データのほう手に入れたら……分け前、おねがいねぇ?」
ルパン「もちろんろん!」
不二子「今回は迷惑かけちゃったからぁ、五割でいいわよぉ」
ルパン「あらぁ。いいのぉ? よし、のったぁ」
次元「ふざけんな、ルパン!!」
五ェ門「ルパン。いつでも手を引く所存だ」
ルパン「あぁ、はいはい。不二子、悪いけど、6:4だ」
不二子「えぇ~? いじわるしないでぇ」スリスリ
ルパン「うほほほほぉ!! 五割でぇ!!」
次元「五ェ門。飛行機の時間、調べてくれ」
五ェ門「あい、分かった」
ルパン「あ、おい!! ま、まてよぉ!! じげーん、ごえもーん!!」
不二子「ルパーン、だーすきよぉー」ギュゥゥ
―三合会タイ支部―
張「おう。来たか。少しばかり風通しのよくなった部屋で悪いな」
レヴィ「ルパンにやられたのかよ」
張「SSKで乗り込んできやがった。誰に弁償させりゃあいいのか悩んでるところだ。実行犯は隠れちまったからな」
レヴィ「仇はうってやるから、安心しな」
張「はっはっは!! そいつは助かる。こっちはこっちで仕事があるからな」
ロック「張さん。ルパンは車でここに突入して、峰不二子を監禁していた場所まで一直線に向かったんですよね?」
張「奴の行動を見る限りは、最初から不二子の居場所は分かっていたらしいなぁ」
レヴィ「あぁ? なんだそりゃ。内部に裏切り者でもいんのかよ」
張「信じたくないがそうなるな」
ロック「峰不二子の居場所も……そしてバラライカさんがデータを持っていることも彼は知っていた……」
レヴィ「ロック?」
ロック「レヴィ……」ガシッ
レヴィ「な、なんだよ!? はなせ!! こらぁ!! それ以上顔近づけたらなぐるぞ!!」
ロック「じっとしてくれ」
―ロアナプラ市外―
銭形「――ええ、そうです。タイ警察は動いてくれそうにないんです。お願いします」
銭形「……よし」
エダ「――銭形警部」
銭形「エダか。どうした?」
エダ「これ以上の単独行動は危険です」
銭形「心配はいらん。お前は隠れていればいい」
エダ「現時刻から私が貴方のサポートを」
銭形「君の組織とは特別仲がいいわけではない。不要だ。お前もワシの動向を探っているだけなのだろう?」
エダ「ロアナプラはとても不安定なところで左右に揺れながら立っている。貴方だけでも簡単に倒れてしまうほど……」
銭形「だからバラライカには目をつぶれと? 馬鹿馬鹿しい」
エダ「まだそのときではないのですよ」
銭形「悪に時期などない。手が染まったときが始まりで終わりだ」
エダ「……殺されるよ、あんた?」
銭形「ワシが死ぬときはルパンの死刑を見届けてからだ。失礼する」
―ホテル・モスクワ支部―
ボリス「警備を増やしますか」
バラライカ「そうだな。暇そうな連中を引っ張ってきてくれ」
ボリス「はっ」
バラライカ「……」ピッ
ダッチ『――バラライカか?』
バラライカ「よく分かったわね。エスパーにでも目覚めたのかしら?」
ダッチ『それができるなら、どこぞの怪盗の根城に踏み込んでドンチャン騒ぎだ』
バラライカ「ねぇ、ダッチ? 知っていることがあるのなら、今のうちに言っておいてね」
ダッチ『お前に隠し事はねえよ、ハニー』
バラライカ「うふふ。あら、そう。その言葉を神父の前でも言える?」
ダッチ『そいつは自信がねえな。元より神に祈る資格がねぇ』
バラライカ「今夜は仮面舞踏会になりそうね。貴方にも招待状は送っておくわ」
ダッチ『そりゃあ助かる。心の準備ができるからな』
バラライカ「それでは、また会いましょ。ダッチ」
―ホテル―
ルパン「――時刻は20時。そろそろいきますかぁ?」
次元「ふぅー……」
ルパン「俺にも火、つけてくれ」
次元「はいよ」
ルパン「すっ……ぱぁー……。いい空だ。月がねえ。盗むには絶好のシチュエーションだなぁ、次元?」
次元「楽しんでるなぁ。ルパン」
ルパン「あったりまえよぉ。この街で一暴れできるんだ。ワクワクもすんだろ?」
次元「お前の行動が世界を混乱に導くとしてもか」
ルパン「祭りっていうのはなぁ、騒いだやつが正義なんだよぉ。ぬふふふふ」
次元「はっはっはっはっは。ああ、そうだ。やるなら全力で馬鹿になんねえとなぁ」
ルパン「ようやくらしくなってきたじゃねえか。少し前までは降りるだの降ろせだの逃げ腰になってたのによぉ?」
次元「そうだったか? 忘れちまったなぁ」
ルパン「んじゃ、行くか。――ロアナプラに火を灯しにな」
次元「あいよ」
―ホテル・モスクワ支部―
レヴィ「姉御、あたしに警護させてくれよ」
バラライカ「突然来たと思ったら、どうしたの?」
レヴィ「姉御の傍にいりゃあ、あのサルは絶対に飛びついてくるだろ?」
バラライカ「私はバナナかなにかなわけぇ?」
レヴィ「そうはいってねえけどさぁ」
張「いいだろ。レヴィは実力だけなら申し分ないし、ルパンとも二度接触している」
バラライカ「私には優秀な同志がいるからねぇ」
レヴィ「たのむぜぇ。姉御ぉ」
バラライカ「はいはい。好きにしてちょーだい。ただし、殺すな」
レヴィ「分かってるよ」
張「俺ぁアジトに戻る。仕事があるんでな」
バラライカ「はぁい。また連絡するわ」
張「そのときはルパンの悲鳴を第一に聞かせてくれ」
バラライカ「お安い御用よ」
レヴィ「警備員にですだよ姉ちゃんやゴス女もいたみたいだけど、ありゃ戦力になんのか?」
バラライカ「いないよりはマシでしょう?」
レヴィ「まぁな」
バラライカ「レヴィ? 何が狙い?」
レヴィ「……姉御の持ってるミリオンダラーのお宝って言ったら?」
バラライカ「悪い冗談はやめて。殺したくなっちゃうでしょ?」
レヴィ「狙いは単純。あの顔面にもう一発拳を打ち付けて、それから……」
バラライカ「21時ね」
レヴィ「……」チャカ
バラライカ「……」
レヴィ「こねえな」
バラライカ「ルパンは見えた?」
『いえ、確認できません』
レヴィ「姉御、ブツはあんのか?」
バラライカ「内ポケットにあるわ。心配しないで」
ボォンッ!!!
バラライカ「……!?」
レヴィ「ちっ……!! また煙幕かよぉ!!!」バァン!!!
バラライカ「ふっ!!」ゴッ!!
ルパン「あたぁー!?」
レヴィ「いたのか!?」
バラライカ「私の胸を触るにはお頭が足りていないようね」
ルパン「そりゃあ、どうも」
レヴィ「どっから入ってきたんだよ。ゴキブリかてめぇ?」
ルパン「ぬふふふ。ここの連中はお互いをよく信頼しあってる。だから変装すりゃあ、すんなり入れちゃうわけよ」
バラライカ「違うだろう?」
ルパン「んー?」
バラライカ「私の部下は身内すらも必要とあらば撃ち殺す。変装しただけでは突破できないはずだ」
ルパン「こりゃぁ、手厳しい。でもまぁ、お宝はいただいたぜぇ?」
レヴィ「待ちやがれ!!!」
バラライカ「逃がすか」バァン!!!
ルパン「っと! すんなりお家にかえしてくれないかぁ」
バラライカ「ゆっくりしていけ。いい女が二人もいるのだからな」
レヴィ「あたしなら10分もありゃあ、お前を立てなくできる。サイコーだろ?」
ルパン「んほぉ。いいねぇ。その引き締まったお尻で顔を挟んでほしいところよぉ」
レヴィ「チップは弾めよぉ!!! この色猿がぁ!!!!」バァン!!
ルパン「おっとっと。やめようぜ。可愛い顔が台無しだ」
バラライカ「お前ほどの能力があれば金などいくらでも奪えるはずだ。銀行の地下まで穴でも掘れ。モグラのように」
ルパン「そんなのかーんべーん。それに俺ぁ、お宝を盗むのが好きなんであって、お宝は別にどうでもいいのよ」
レヴィ「じゃあ、てめえは泥団子でもお宝だって言われれば奪うのかよ?」
ルパン「ああ、奪うねぇ。その泥団子に最新の防犯システムや軍隊ばりの警護がついてるっていうなら、だけどもな」
バラライカ「よく分からん男だ。理解の範疇を超えている」
ルパン「ミステリアスな男だろ? 惚れてもいいんだぜ?」
バラライカ「残念だが、馬鹿は嫌いでな」
レヴィ「おらぁ!!」ゴッ!!
ルパン「ぐっ……!?」
レヴィ「とどめだ。あの世で天使の輪でも集めてろ」
ルパン「一緒に輪投げでもするかい?」
バラライカ「お断りだ」チャカ
レヴィ「バイバイ」チャカ
ルパン「……ふっ」ダッ
レヴィ「やろぉ!!」
ルパン「お宝ガード」サッ
バラライカ「あらあら。姑息なことをするのね」
レヴィ「てめぇ!! ディスクを盾にすんじゃねえ!!」
ルパン「下手に撃ったら当たっちゃうぜ? まぁ、撃たれたら割るけど」
バラライカ「……」
ルパン「んじゃ、また遊ぼうぜ子猫ちゃん。おねーさん。にゅふふふふ」
レヴィ「あー!!! こらぁ!!! まちやがれぇ!!!」
バラライカ「ルパンだ。今、1階へ向かった捕らえろ」
レヴィ「にがすかぁ!!」
ルパン「しっつこいねぇ。とっつぁんかっての」
ボリス「――排除する」ダラララララッ!!!
ルパン「あわわわ!! あっぶねえなぁ!!! お宝に当たったらどうすんだぁ!! こんにゃろぉ!!」
レヴィ「おりゃぁ!!!」ブンッ!!
ルパン「お。いい足だぁ。思ってたけど、寝相悪そうだなぁ」
レヴィ「黙れ!!」バァン
ルパン「なぁ、レヴィは今が楽しいかい?」
レヴィ「むかついてんだよぉ!! てめえに!!」
ルパン「ありゃ、なんで?」
レヴィ「そりゃあ――」
バラライカ「一斉掃射だ」
「了解」チャカ
ルパン「うわぁぁぁ。そりゃやりすぎでしょう? ガトリングって装甲車かなんかについてないとだめでしょぉ?」
バラライカ「撃て」
ズガガガガガガガガッ!!!!
レヴィ「やったか!?」
五ェ門「――無駄だ」キィン
レヴィ「げぇ!? ジャップは変人しかいねえのかよぉ!! くそがぁ!!」
ルパン「ごえもーん。ナイスタイミングじゃないのぉ」
五ェ門「次元がそろそろ来るころだ。急げ」
ボリス「はっ!!」ブゥン
五ェ門「むっ!!」ギィン
ボリス「惜しいな。お前もルパンも。何故このようなコソ泥に堕ちた?」
五ェ門「おぬしが軍人からマフィアに成り下がったことと似ているか?」
ボリス「……!」
五ェ門「それに拙者たちは堕ちてなどおらん」
ボリス「だが……」
ルパン「俺たちは最初からここに立ってんだよ。勝手に落とすんじゃないの」
五ェ門「その通りだ。さらばっ」
次元「このやろぉ!!」ドォン!!!
ロットン「無月の夜空に背を向けて、男の美学に星屑を落とす。俺はロットン――」
次元「そっちにもかぁ!!」ドァン!!
ロットン「ぐっ……名スナイパー……星を落とすほどに……」
次元「なんだ、あのやろうは……」
ルパン「じげーん!! ずらかるぞぉ!!」
次元「早くしろ!!」
五ェ門「であ!! きぇぇい!!!」ザンッ
「うわ!?」
「銃が……!?」
五ェ門「今だ」
ルパン「とばせぇ、じげぇん!!」
レヴィ「にがすかよぉ!!!」
ルパン「また会おうねぇー。ばいばぁーい」
レヴィ「このやろう……!! ――ヘイ、ロック!!! 車もってこい!!!」
―港―
ルパン「ぬはははは。案外ちょろかったなぁ」
次元「それでお宝は?」
ルパン「ここにあるって」
五ェ門「では――むっ?」
ルパン「あら、つけられちゃってたかな?」
レヴィ「ヘイヘイ。大泥棒。詰めが甘いなぁ」
次元「……」スッ
ダッチ「あんたの相手は俺だ」
次元「何で先回りしてやがるんだ?」
ルパン「とっつぁんがいねえな。ラッキーか……?」
ロック「ルパン。あんたと同じ手を使わせてもらったよ」
ルパン「同じ手だぁ?」
ベニー「小型盗聴器。レヴィのホルスターに仕込んだろ?」
レヴィ「多分、イエローフラッグでお前がバラをあたしに見せたときだ。常套手段だもんな。別のもんに意識を集中させるのはよ」
ルパン「気づかれちゃったわけね」
ロック「あんたは知りすぎていた。短時間に色んなことをな。そして、俺のことも」
ルパン「ぬふふふ。ロック。お前の発言は色々面白かったぜ? まるでラグーン商会一同をこの祭りに扇動していたかのような口ぶりだったじゃねえか」
ロック「そんなことはない」
ルパン「聞いててすぐにわかったぜ。お前は俺と似てるなってなぁ」
ロック「……」
レヴィ「そんな話はどうでもいいんだよ。さっさと渡せよ」
ルパン「そしてお前は望んでいるはずだ。この街がもっと騒がしくなるのをな」
ロック「お前のやり方は間違っている」
ルパン「それはあんたが決めることじゃねえのさ。何が正義で悪なのかなんて、便所の中に捨てちまえ」
ルパン「大事なのは、面白いか面白くないか。だろぉ? えぇ、ロック?」
ロック「……!」
レヴィ「こっち向けよ、クソ野郎。それ以上、ロックになんか言ったら前歯から抜いていってやっからな」
ルパン「そりゃ恐ろしい。そんなにディスクが恋しいのか?」
ダッチ「恋人が丹精込めてつくったケーキを勝手に奪われたら、誰だって本気になるだろう?」
ルパン「あれぇ? 教わらなかったかい? 男なら腕づくで――」
ダッチ「奪い返せ!!!」バァン!!!
次元「おっさん!! 狙いが甘いぜ!!」ドォン!!!
ダッチ「いい腕してやがる」
レヴィ「ルパン!! てめぇだけはあたしがぁ!!!」
五ェ門「……通さん」
レヴィ「サムライはだまってなぁ!!!」バァン!!!
五ェ門「……」キィン
レヴィ「だぁぁぁ!!! イエローモンキーがぁ!!!」
五ェ門「口を慎め。小娘」
レヴィ「ぶっちぎれたぁ!!! てめえから蜂の巣にしてやっぜぇぇぇ!!!!」
五ェ門「いざ、まいる!!」
ルパン「おふたりさーん。終わったらおってきてよーん」
ロック「ルパン!! 待て!!」
ベニー「ロック、追うよ」
ルパン「やっぱりあの4人はおもしれやぁ」
カチャン
ルパン「カチャン? ありゃぁ?」
銭形「遅かったなぁ。ルパン」
ルパン「とっつぁん。なにしてんの、こんなとこで?」
銭形「貴様の行動などお見通しだ。はっはっはっはっは。ラグーン商会の連中がいい囮になってくれた」
ルパン「なるほど。とっつぁんもラグーン商会を追ってきたわけね」
銭形「さぁ、いくぞ。その偽札原版データのことも訊きたいからな」
ルパン「とっつぁん。これのこと知ってんのか?」
銭形「当たり前だ。それは巨悪を撃つ武器となるものだ。渡してもらうぞ」
ルパン「そいつぁ、できねえな。これは俺が命をかけて盗んだもんだからよ」
銭形「チンピラが軽々しく命など吐くな。人命はお前が考えているほど、軽くは無い」
ルパン「あら、そう?」
ロック「ルパン!! あ、銭形さん……?」
銭形「ロックか。お前たちのおかげでルパンを逮捕することができた。感謝するぞ」
ベニー「銭形。そのディスクの中身をどうしても見てみたいんだが、ダメかい?」
銭形「それはできん相談だ。この中にあるのは――」
バラライカ「巨万の富の苗木だ」
ルパン「あららぁ。結局、全員がラグーン商会を利用してたってわけね」
ロック「バラライカさん……」
バラライカ「ミスター銭形。渡してもらおうか。いや、渡さなくても結構だ。お前は渡すことになるのだからな」
銭形「(包囲されてるか)」
ルパン「(そうなるなぁ)」
バラライカ「どうした? ルパンは逮捕された。もう思い残すこともあるまい?」
銭形「罪人は法で裁かれなければならん」
バラライカ「大きすぎる罪は人間では裁けん」
銭形「人間の罪は人間が裁く。そんな当たり前のことも分からず夜のボスをしているのか?」
バラライカ「もういい。――同志諸君、彼らは我らの敵である。撃鉄を下ろせ」
銭形「そんなに欲しけりゃ……」
ルパン「くれてやらぁ!!」シュッ
バラライカ「くっ……」パシッ
銭形「おりゃぁ!!!」ガバッ
バラライカ「きさま」
銭形「がっはっはっはっは!!! うてるもんならうって――」
スガガガガガガガッ!!!
銭形「ああっ!?! おぉぉ!?!」
バラライカ「甘いな。人質に動揺するような弱卒は我が兵にはいない」
銭形「こしゃくなぁ」
バラライカ「これは返してもらったわね。ありがとっ」
ルパン「そりゃ、どういたしましてっ!!」
バァン!!!
ルパン「くっ!! まだだぁ!! こんにゃろぉ!!」
バラライカ「ふんっ!!」ドガッ
ルパン「ぐっ!? おりゃぁ!! お宝は返してもらうぜぇ!!!」バシッ!!!
バラライカ「ちっ!!」
ルパン「とっつぁん!! ディスクを!!」シュッ
銭形「おぉ!!」
ロック「そうはいくか!!」パシッ
銭形「貴様ぁ!! 逮捕されたいのかぁ!!」
ロック「ベニー!!」シュッ
ベニー「ナイス、パスだ。ロック」
バラライカ「よくやった。さぁ、渡してくれ」
ルパン「……」
バラライカ「運が良いな。そうして土を舐めていろ。数刻だけ寿命が延びる」
ルパン「くっ……」
銭形「(数が多すぎる……)」
バラライカ「こちらによこしてもらおうか?」
ベニー「……ああ」
ルパン「まちなぁ。それをバラライカがもっちまえば、凶悪なほどの軍事力を手に入れることになるんだぜぇ? 一国すら潰せるほどの力をな」
バラライカ「喋った分だけヘブンズ・ドアが開いていくぞ、ルパン?」
ルパン「想像してみろよぉ。そうなったあとのロアナプラを。外壁で固められた難攻不落の街ができあがる」
ルパン「その中で暮らすやつらは権力者に媚び諂ってさえいれば、メシも酒も女にも不自由しねえ毎日が送れる」
ルパン「そんな世界にスリルなんてねえよなぁ、ロック?」
ロック「……」
バラライカ「黙れ」
ルパン「密閉された堅牢な要塞になったロアナプラにゃあ、酸素もない。輝かしかった灯火はあっけなく消える」
ルパン「なぁ、ロックさんよぉ。岡島に戻りたいのかぁ? それならもう止めやしねえ。ベニーちゃんのディスクはバラライカに渡しなぁ」
ロック「……!」
ルパン「俺はそんな世界はごめんだぁ。一ミリも面白いことが存在しねえからよぉ」
バラライカ「撃て」
ズガガガガガガ!!!!
銭形「ルパーン!!! バラライカぁ!!!」
バラライカ「次はお前だ。ミスター銭形。野犬の駆除は得意なのよ」
ベニー「バラライカ。これを――」
ロック「ベニー、ま、待ってくれ」
ベニー「……!」
バラライカ「何の冗談、ロック?」
ロック「バラライカさん。この件に三合会は絡んでいるんですか?」
バラライカ「……当然じゃない」
ロック「なら、どうして張さんがこれに拘っていないんですか」
バラライカ「……」
ロック「張さんは峰不二子とルパンの存在は知っていた。けれど、張さんからは偽札の話は一つも出てきていないじゃないですか」
バラライカ「たまたまでしょう?」
ロック「世界すらもひっくり変えるほどのものなら、ここに張さんがいなければ納得できない。もしこの話が張さんの死角で進んでいるのなら、このデータを貴女に渡すことはできない」
ベニー「ロック、やめろ」
ロック「貴女がやろうとしていることは、ただの支配だ。俺は、いや、ロアナプラの住民もそんなことは望んじゃいない」
バラライカ「一つ訊ねようか、ロック。お前は私の味方か?」
ロック「俺は……俺の味方だ」
バラライカ「よく言った。敬意を評し、苦しまずに殺してやろう」
「ぬふふふ……なははははは!!!! あーっはっはっはっは!!!!」
バラライカ「なに……!? 足元の死体は……!?」
銭形「気が付かなかったのかぁ? それは人形だぁ」
バラライカ「お前は……!!」
ルパン「俺かい? 俺の名はルパン三世さ」
ロック「ルパン、このディスクは渡せない。ここで破壊する」
ルパン「それは簡便してくんねえかなぁ、ロック? 一応、お宝なんだよぉ」
バラライカ「それは誰にもやらん。――それを渡せ」チャカ
ロック「……!」
ベニー「ロック!!」
次元「おっと。年上なら素直に男気を買ってやったらどうだ、バラライカ?」チャカ
バラライカ「……」
ダッチ「わりいなぁ。うちの社員が。撃つなら撃ってくれ、バラライカ」チャカ
バラライカ「ダッチ? 同盟関係は終わりかしら?」
ダッチ「どうだろうな? そっちのほうがおもしれぇなら、そっちでいいかもな」
バラライカ「そう、残念ね」
ルパン「期待しても無駄だぜぇ。あんたの部下は……正確には銃器は破壊させてもらったかんなぁ」
バラライカ「なに」
五ェ門「……」キィン
レヴィ「よぉ、姉御ぉ。姉御ならそんな贋作に頼んなくてもなんとでもなんだろ?」
バラライカ「貴女も同意見と言うわけね」
レヴィ「金や財宝は奪ってなんぼ。力こそが正義。あたしはそう教わった」
ルパン「俺もだ。さぁて、バラライカ。潮時じゃねえかなぁ? このまま争っても、無駄死にするだけだぜ。お互いになぁ。無念の死なんて、一番怖いだろ? あんたにとっては」
バラライカ「……ねえ、ルパン三世?」
ルパン「なんだい、ハニー?」
バラライカ「ホテル・モスクワは貴様に賞金がかかるように手配する」
ルパン「うっひょぉ。うっれしいねぇ。毎日、安心して眠れないじゃないのぉ」
バラライカ「精々、余生を楽しむがいい。――引き上げるぞ」
ボリス「はっ」
レヴィ「あぁ、こえぇぇ……」
ダッチ「今日は締まりのいい自分の穴に乾杯だな」
銭形「さぁてと、ベニー。そのディスクを――」
ルパン「あらよっと」パシッ
ベニー「あ!?」
ルパン「バラライカがいなくなって安心しちゃったか? ぬほほほほ!!」
ロック「待て!! ルパン!!」
レヴィ「てめえとのケリはまだついてねえからなぁ!!! ここでやっちまうかぁ!!! こらぁ!!!」
ルパン「ワルサーP38さ」
レヴィ「……!」
ルパン「ほら」チャカ
レヴィ「てめぇ……」
ルパン「俺の得物に恋焦がれてたんだろ?」
レヴィ「あたしが抜かせなきゃ意味ねぇえんだよぉ!! そりゃノーカンだぁ!!!」
ルパン「乙女心は難しいねぇ」
レヴィ「黙りやがれ!! 今すぐその緩んだ口を溶接してやるよ!!!」
ルパン「そりゃ困る。女を口説くのに言葉は大切だかんなぁ」
次元「用が済んだならいくぞ!!」
ルパン「あいよぉ」
五ェ門「さらばっ」
レヴィ「まちやがれぇ!!!」
銭形「待て!! 逃がさんぞぉ!!! ルパーン!!!! 逮捕だぁー!!!」
ダッチ「わざと盗ませたか?」
ベニー「分かったかい?」
ダッチ「なんとなくなぁ」
ロック「彼があれを悪用するとは思わないけど……」
ダッチ「そんなのどっちでもいいだろうぜ。重要なのはあいつがバラライカに、いやぁ、ロアナプラに火を放っていきやがったことだ」
ロック「確かに。あれが流失したとなれば、ホテル・モスクワも三合会も、ロアナプラにいる荒くれ者が腰を上げる。何があるか分からないから」
ダッチ「そして訪れるのは混沌の毎日だな。兵力と資金を潤沢にするために銃器密輸や薬の動きも活発になるだろうし、騙まし討ち、同士討ち、テロ、なんでもござれだ」
ロック「とんでもない火だな。ルパンがロアナプラに灯していったのは」
ベニー「まぁ、それはルパンの手にデータが渡ったときの場合だ。――ディスクはここにあるから、問題ないよ」
ロック「え……?」
―翌日 ホテル―
ルパン「苦労したけど。見事に盗んできましたよっと」
不二子「すてきぃ。もっと、よく見せて。ルパァン」
ルパン「その前に、お前が俺に見せるもんがあるんじゃないのか?」
不二子「あ……だめよ……」
ルパン「俺に労いがあってもいいだろ?」
不二子「ちょっと……ルパ……ン……」
ルパン「不二子ぉ……」
不二子「……」シューッ
ルパン「ありゃぁぁ……ぁぁ……?」
不二子「ごめんね、ルパン? これは貰っていくわ」
ルパン「ぐぅー……ぐぅー……」
不二子「張さんから持ってこないとローワンの変態ビデオで出演させるって言われえてるの」
不二子「だ、か、ら。ごめんねぇ。あいしてるぁ、ルパーン」
ルパン「ふじこ……ちゃぁ……ん……」
―教会―
銭形「世話になったな、エダ。お前の情報が役に立った。結局、ルパンもバラライカも取り逃がしたが」
エダ「もう行かれるのですか?」
銭形「奴はもうこの国にはいない。居たとしても今から探しては間に合わんからな」
エダ「そうですか」
銭形「滞在中に逮捕した連中はワトサップに預けておいた。これで少しは警官の仕事がどういうものか思い出せるだろう」
エダ「ふふっ。いい薬になったと思います」
銭形「それとバラライカの一件だが」
エダ「偽札の原版データが回収できなかった以上、攻め方を変えるしかないでしょうね」
銭形「そうか。ワシにできることはもうないということだな」
エダ「貴方の任務はルパンを追うことでしょう? 足止めさせて申し訳ありません」
銭形「その通りだ。ワシが手を下さなくとも悪は勝手に潰えるようにできているが、ルパンだけは別だぁ」
エダ「……楽しかったぜ。またこいよ、おっさん」
銭形「もう二度と来るか。ルパンがここに来ない限りはな。あと、おっさんじゃない。ワシは銭形だ」
エダ「はいはい。お勤め、ごくろーさん」
―三合会タイ支部―
張「峰不二子から渡されたディスクの解析が終わった」
不二子「どうでしたかぁ? これで私が最初からデータを貴方に渡そうとしていたこと、信じてもらえたでしょう?」
張「中々、いい趣味をしているな。不二子? 緊縛プレイがお望みか?」
不二子「え?」
張「見てみろ」
不二子「こ……これは……?」
張「見ての通り、ゲイポルノだ。お前はこれを俺に渡したかったというわけか?」
不二子「あぁ……いや……」
張「ハハハハハハハハハ!!!! 気に入ったぞ峰不二子!!! その度胸、女にしておくには惜しい」
不二子「ルパン……はかったわねぇぇ……!!!」
張「さてと、まずは天井から吊るすか」
不二子「ま、まって……」
張「冗談だ。バラライカの手に渡ってないならまだいい。ルパンはよく働いてくれた。不二子、奴に伝えておけ。この礼は必ずするとな」
不二子「は、はぁーい……」
―ラグーン商会―
レヴィ「だはははははは!!! 天下の大泥棒も形無しだなぁ!!!」
ロック「あの状況下でよくすり替えようと思ったな」
ベニー「ジェーンのモノだからね。誰にも渡すつもりはなかったよ」
ダッチ「やめろよ。こっちまで甘い香りがただよってくるだろ?」
ベニー「コーヒーで中和するといい」
レヴィ「つーか、これであたしらも億万長者ってことだよなぁ!!」
ロック「レヴィ」
レヴィ「あぁ? こっちは姉御と確執もできちまったし、まとまった金はいるだろうがよ」
ロック「まとまりすぎだ、こんなものは!!」
ダッチ「ダメだ。このオフィスには、シュガーが充満してやがる」
ベニー「ダッチ、これはどうしようか?」
ダッチ「砕いて粉にして捨てたほうがいいな。持ってるとまた怪盗がやってくる」
ベニー「そうだね。ジェーンに断りを入れてからこれは破棄しよう」
レヴィ「なにいってんだよぉ!!! やめろぉ、おらぁ!!!!」
―イエローフラッグ―
バオ「はぁ……」
ルパン「よぉ。やってるか?」
バオ「みりゃあ、わかんだろ」
ルパン「いいじゃないの。青空の見える酒場なんて世界中探してもここだけだぜ?」
バオ「てめえの仕掛けた爆弾の所為でこうなったんだ!! 弁償しやがれ!!!」
ルパン「いいぜ。ちぃーっとばっかし待ってな。東の島にこんなにおっきなダイヤモンドがあるんだ。それをマスターにくれてやるよ」
バオ「信じないぜ。泥棒の言うことだからな」
ルパン「なっはっはっはっは。その通りだぁ」
バオ「ふん。早く消えろ。てめえは賞金首なんだぜ?」
ルパン「わかってるよぉ。ただ、一つきかせてくれねえか?」
バオ「なんだ?」
ルパン「カモフラージュはしてたけど本当に気が付かなかったのか? あんたほどの男が便所にある爆弾をさ」
バオ「バカ野郎。気づいても怖くて取り外せねえだろうが。だから、放置してやったんだ」
ルパン「ぬはははは。マスター、あんたが一番面白いな。また来るぜ」
次元「挨拶は済んだか?」
ルパン「ああ。んじゃま、次いきますか。五ェ門。飛行機の時間は? 調べてくれたんでしょ」
五ェ門「今からなら午後の便に間に合うはずだ」
ルパン「オッケー。それにのっかぁ」
次元「結局、今回は収穫なしかよ。ルパン、いい加減不二子に関わるのはよせ」
ルパン「これからロアナプラは暫く浮き足立つんだ。それに伴い、ここと関係もっちゃってる国や都市も足元ぶるぶるよぉ。となれば、資金源はがっちり確保したくなるだろ?」
次元「お宝が埋もれちまうんじゃないのか?」
ルパン「逆だって。動かせばそれだけ情報ってのは漏れやすくなる。ま、俺にとってはだけどな」
次元「なら、もうお前のセンサーに引っかかってるお宝はあるんだな?」
ルパン「あったりまえよぉ。俺がただで転ぶわけないだろ、次元? まぁ、寝ちゃってたわけだけども。ぬふふふ」
次元「はっはー。不二子のうろたえる姿は見てみたかったがなぁ」
ルパン「心残りがあるとすれば、ベニーちゃんのディスクの中身がどんなものだったかだなぁ。それだけはもうわからねえ。今度、不二子に聞いとくか」
五ェ門「参ろう。時間は有限だ」
次元「五ェ門の言うとおりだぜ、ルパン。この間に面白ぇことが一つ終わっちまうだろ?」
ルパン「終わってもまた灯せばいいだけよ。俺がいくらでも火をつけてやろうじゃないの。――世界を退屈にはさせねえさ。このルパン三世がいるかぎり、な」
END
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