友「俺男の娘ウイルスに感染したらしい」男「──は?」(205)

友「最近体調悪いから病院に行ったんだけど、もう感染しちゃって手遅れなんだってさ」

男「いやそもそもなんだよその男の娘ウイルスってのは、聞いたことねーぞ」

友「近年発見された新種のウイルスらしくてさ。若い男にだけ感染するみたいなんだ。一度感染したら初期症状が出るまでにワクチンを接種しないともう二度と治療できないらしい」

男「で、それに感染するとどうなるんだよ」

友「何か知らないけど、体つきや心が女の子っぽくなっていくらしい」

男「──マジ?」

友「男の子なのに女の子っぽくなるから男の娘ウイルスって呼ぶんだって」

男「いや、その、なんていうか」

男(こいつが……女みたいに?)

男(信じられないっていうか……想像つかねえ……)

男「それでそのウイルスって危険はないのか?」

友「それが命に影響を及ぼすような危険性はないんだってさ。あ、でも体つきが変化してくるかもしれないからそれは気をつけろって言ってた」

男「うーん……」

友「ま、なるようになるでしょ。面白いじゃん女みたいになるって」

男「いやお前もっと深刻に」

友「別に死んだりするわけじゃないんだし、とりあえず様子みてみる」

男「お、おう……」

~一週間後~
男「うぃーっす」

友「あ、おはよう」

男「よう、昨日のアレ見た?」

友「うん見た見た。見たけど全然面白くなかったなー。つまんない芸人ばっかりで」

男「え?あれはくだらねー芸人のシュールさと滑稽さを楽しむ番組だぞ?」

友「そ、そうなの?」

キーンコーンカーンコーン

友「あ、ボクそろそろ戻る」

男「あいよー」
ふわっ

男「──ん?」

男(あいつ一人称ずっと「オレ」だったよな……それに今あいつが立ち上がった時になんかいい匂いがした気が……)

男「まさか……」

ごめん書き始めたはいいけど明日仕事早いの思い出したから切るわ
残ってたら続き書くし落ちてたらSS速報にでも行く

結果的に二人とも男の娘ウイルスに感染して、って話だと思ったのに

なら僕はお姉さんぶりたいロリ姉がいいです!

友「おーい、男、昼ご飯食べようよ」

男「ああ、今日は学食と購買どっちにするんだ?」

友「えーと……今日はボク、お弁当を作ってきていて……」

男「」


こんな感じでだんだんと女の子っぽくなっていくのにドン引きする展開オナシャス!

友「あ、男の分も作ってきておいたよ。どうせ購買でしょ?」

男「」

友「たまに弁当が食べたくなるんだよなー。どこで食べる?」

男「て、定番で言えば、屋上か?」

友「もうそろそろ梅雨だから、今のうちに行くのもいいかなぁ」

男「ああ」

男「(おい、こいつなんか仕草が女の子っぽくなっているぞおい)」


こんな感じでドン引きしつつも戸惑っちゃう展開を誰かオナシャス!

男「(なんやかんやで屋上に来てしまったわけだが)」

友「はい、これ箸」

男「弁当箱が重箱ってどういうことだ……」

友「男同士なんだから、別々とか気にしないでしょ?」

男「まあ、そうだな」

友「それじゃ、さっさと食べちゃおっか。時間もないしね」

男「ああ」

男「(意外と友の料理がうまかったことは措いておこう、不衛生な気分になる)」

男「しかし、おまえ、食うの遅いな。それに量も少なくなっていないか?」

友「仕方ないじゃん、どうしてかこうなっちゃったんだからさ」

男「待っているだけなのも暇だし、っと」

友「携帯? メールでもするの?」

男「いや、男の娘ウイルスについて調べるだけだ」

友「ふぅん、でもボクは手遅れだよ?」

男「自意識過剰め、ただの知的好奇心で調べる。というか、おまえはさっさと食べろ」

友「はいはい」

男「」ポカーン

友「男ぉー? どうしたの?」

男「……」

友「もしかしてエロサイトのワンクリ詐欺踏んだ?」

男「…………」

友「えっ、図星? エロサイト見ようとしてたの?」

男「おまえ」

友「うん?」

男「知っていたのか?」

友「なにを?」

男「男の娘ウイルスは、その名の通り感染するってことを」

友「え、えっ?」

男「知らなかったようだな……ま、見てみろ」

友「携帯? ん?」

男「(政府の発表では、男の娘ウイルスは粘液感染らしい)」

男「(その感染能力はHIVとは比較にならないほどだそうだ)」

男「(ただ初期症状が発生するまで一週間はある、まだ手遅れにはならなそうだ)」

友「お……男ぉ……」ウルウル

男「抱きついてくるな、鬱陶しい」

友「でも、でもボク……」

男「知らなかったなら仕方ないだろうが、まだどうにでもなるし気にしてはいない」

友「ご……ごめんね、本当にごめんね……?」

男「(おいこいつタマついてんのかもぐぞコラ)」

男「というわけで、だ」

男「(放課後まで落ち込んでいた友をなんとか慰めて、家に帰ってきた)」

男「(慰めるって言葉さ、卑猥じゃね?)」

男「さてと」

男「(家のPCで男の娘ウイルスについて調べてみた)」

男「(初期症状は概ね一週間程度で出るらしい、早い人では三日)」

男「(それまでにワクチンを投与すれば問題ないそうだ)」

男「(どういうウイルスなのかは追々として、今は病院に行くことが先決だな)」

コンコン

妹「兄さん、入りますよ」

男「ああ、入ってくるな帰れ」

妹「なんでそういういじわるなこと言うんですか!」

男「べつに。それより、母さんに明日でも病院に連れてけと言ってくれ」

妹「どこか調子が悪いんですか?」

男「……男の娘ウイルスって知っているか」

妹「ええ、昨今は有名ですよね?」

男「それにかかったみたいだから、明日の夕方でも病院に行くつもりだ」

妹「そうなんですか? 行かなくてもいいと思いますけど」

男「おまえの意見は聞いていない、さっさと伝えてくれ」

妹「横暴なんですから、兄さんってば」

男「はいはい、さっさと行け」

次の日

男「(なんだか友が近付いてこようとしたり、離れたりしている)」

男「(いつもなら迷わず話しかけてくるんだが……昨日のことを気にしているのか?)」

男「(かといって俺から話しかけるのも気恥ずかしい)」

男「(お? 近付いてきたぞ? ……なにこいつ泣きそうな顔しているんだ、キモい)」

友「あ、あのな、男」

男「どうした、告白でもして断られたのか?」

友「じゃなくて、病院は行ったの?」

男「……まだだな」

友「ならさっさと行かないと、大変なことになっちゃうかもしれないよ?」

男「それ以前にだ、もう手遅れかもしれん」

友「手遅れ!?」

男「いやな、母さんに病院連れて行けって頼んだわけだ」

友「ボクのせいだよね? ご、ごめん、本当にごめんなさいっ」

男「違う、母さんがニート予備軍なんだからカマバーで働く準備をしておけって」

男「(……我ながら酷い言い訳だな)」

友「そう、なんだ」

男「というわけで気にするな、これからも今まで通りで問題ない」

男「(友が一人で悩むくらいなら、と思ったがホモホモしくてキモい)」

友「えへへ、今まで通り、うんっ!」

男「(ま、タマがなくならないだけ幸せだと思えばいいか)」



こんな感じで誰かラブラブしていくのオネシャス!

電撃の締切が近いんだよぉ……お家に返してよぉ……

十日後――

男「(初期症状の発症は五日目で起きた)」

男「(母さんは俺が男の娘ウイルスのワクチンを打たないことを反対しなかった)」

男「(妹に関しては言うまでもない)」

友「おはよー」

男「おっす」

友「今日は雨だし、蒸し暑いね」

男「(友に関しては男の娘ウイルスの影響なのか、かなり女の子っぽくなっている)」

男「(元々、女っぽい顔立ちをしていたやつだし、今では遠くから見れば美少女に見えんこともない)」

友「無視? 無視なの? 泣いちゃうよ?」

男「おまえな……男捨てるなよ……」

友「え?」

男「自覚症状なしかよ、重傷だな」

友「なに、どういうことなの?」

男「(明日は我が身と考えるべきか、やっべ、俺も泣きたくなってきた)」

男「しかし、どうしてこう雨の日の教室って臭いんだろうな」

友「前は気にならなかったのにね?」

男「ああ、部屋とかの汚れが気になって昨日は徹底的に掃除をしてしまった」

友「こういう影響もあるなら、意外と悪くないかもって思っちゃうよ」

男「そうか? まだ発症して六日目だというに俺はどんぶり物がきつくなって最悪の気分だ」

友「ボクもだよ。前まではよく食べていたのに、最近は軽いものが多くなっちゃった」

男「そのせいで痩せてしまう……見事な悪循環だな」

友「べつに、ボクは嫌じゃないけどなぁ」

男「俺は嫌なんだ、前まで辛いものが大好きだったのに今では苦手になったんだぞ」

友「ええと、それはご愁傷様?」

男「デスソースを少しつけたぐらいで痛くてたまらないとか、本当にどうなってんだ」

友「あ、そんな男のこと見てみたいかも」

男「(こいつ……Sなのか……?)」

男「さあてと、昼飯の時間になったが」

友「男ぉー、今日はどこで食べる?」

男「(あれからというもの、毎日のように友が弁当を作ってくる)」

男「(友に迷惑だろうし、そろそろやめてもらわないといかん)」

男「あれだ、また弁当なのか?」

友「うん、そうだよ」

男「明日からは弁当じゃなくていい」

友「えっ」ウルッ

男「泣くな」

友「嫌、だったの? 最近はサンドイッチとかにしたの……嫌で……」

男「それは構わんが、あれだ、おまえに迷惑がかかる」

友「べつに、ボクは迷惑とか思っていないもん……」

男「おまえが思っていなくても、俺がそう思っているんだ」

友「で、でも、ボクは迷惑じゃないから――」

男「だから、交代で作るようにしないか?」

友「――え?」

男「おまえにばかり負担はかけられん、せめて一日おきに交代して弁当をだな」

友「な、なんだ……弁当を持ってくるなって、言うのかと思った……」

男「正直な話、おまえの弁当はうまいしな。それを遠ざける気にはならない」

友「お、男……」カァァ

男「おい、なんだ、おい、やめろ、おい、キモいぞ」

友「ちちちちがっ、そういうんじゃないから、本当だよ!?」

男「焦るな、疑いたくなるだろうが!」

友「焦ってなんかないし!」

男「焦っているだろ、絶対」

友「そんなことよりっ! 男ってさ」

男「なんだ?」

友「料理……壊滅的に下手くそだったよね……?」

友可愛いよハァハァ
でも顔は男なんだろ?

男「(料理が壊滅的に下手くそだからと、弁当の件を却下されてしまった)」

男「(なんでか、ものすごく威厳を傷付けられた気がする)」

男「(だからキッチンに立とうとしたわけだが――)」

……
…………
………………

母「あ、ああああ、あんた、どうしてキッチンに!?」

妹「え? 今日はオリーブオイルで野菜を煮詰めたスープが出てくるんですか!?」

母「そんなこと、私が絶対にさせない。妹ちゃん、男はお母さんに任せなさい」

妹「お母さん! あとは私にまかせてください! ちゃんとした料理を出しますから!」

……
…………
………………

男「(と、いった感じでキッチンから追い出されてしまった)」

男「することもないし、どうしたものかな」

男「(>>82とか、ウイルスの情報についてでも調べるか?)」


ウイルスがどういうもので、どう作用するのか設定を調べる? どうする? >>88に任せた

>>85の修正

男「(料理が壊滅的に下手くそだからと、弁当の件を却下されてしまった)」

男「(なんでか、ものすごく威厳を傷付けられた気がする)」

男「(だからキッチンに立とうとしたわけだが――)」

……
…………
………………

母「あ、ああああ、あんた、どうしてキッチンに!?」

妹「え? 今日はオリーブオイルで野菜を煮詰めたスープが出てくるんですか!?」

母「そんなこと、私が絶対にさせない。妹ちゃん、男はお母さんに任せなさい」

妹「お母さん! あとは私にまかせてください! ちゃんとした料理を出しますから!」

………………
…………
……

男「(と、いった感じでキッチンから追い出されてしまった)」

男「することもないし、どうしたものかな」

男「(>>82とか、ウイルスの情報についてでも調べるか?)」

患者の情報

男「(>>88か)」

男「(患者の情報、つまりウイルスがどう作用するかということだが)」

男「(言ってしまえば男性ホルモンの低下、女性ホルモンの増加だ)」

男「(それだけでなく、遺伝情報の破壊から体内細胞の変化を起こして)」

男「(中性的から女性的と言うまでに外見的特徴の変化を起こしてしまうらしい)」

男「(簡単に言えば、朝目覚めたら美少女になっていましたの過程存在バージョンだな)」

男「(医学的な分野では染色体やアポトーシスの活性化による――とか色々と説明があるわけだが)」

男「(ニート予備軍には理解できないわけで……)」

男「(ただ男性機能の低下と、女性的感覚の鋭敏化があるらしいな)」

男「(部屋が気になったり、臭いが気になったり、料理でムキになったのもその影響だろう)」

男「(友が〝俺〟から〝ボク〟に変わったのも女性的感覚の鋭敏化が原因だと思う)」

男「(ほら、キチガイの集団に普通の人が入ると、普通の人がキチガイになるってやつ)」

男「(脳内でアニマが表面化されつつあり、男性的な自分がそれに染まっているって感じ)」

男「(そういう仕組みで女の子染みた感じになってしまうわけだ)」

生殖機能とかはどうなんだろ。

男「>>91に補足しておくと、アポトーシスはプログラムされた細胞死のこと」

男「アニマというのは男性が無意識に持つ女性的意識のこと」

男「メタると細かい設定は存在しないから、単純に外見美少女になる病気と思えばいいよってことだ」

男「ただ遺伝情報の破壊から細胞の変化の過程で外見が決まってしまうから」

男「そのときに大きな変化があると、変化が終わるまで酷い目に遭うそうだ」

男「俺は徐々に変化をするからセーフだと思いたい、友は言わずもがなだな」

キチガイの集団に普通の人が入ると、普通の人がキチガイになるってやつ

これマジなん?

意識の抵抗さえあればならないで済むけどある程度トラウマが残る

>>93
男「生殖機能に関しては、染色体XXY、つまりはクラインフェルター症候群に似た状態だ」

男「クラインフェルターと同じでモザイクでない場合、不妊になってしまう可能性がある」

男「ただ第二次性徴が来ている場合はモザイクになるのが当然とのことだ」

男「来ていない場合は、モザイクにならない場合がある」

男「補足すると、第一次性徴の終わりから、第二次性徴の終わりまでが若い男性の範囲だ」

>>95
男「>>96の意識の抵抗があればならないで済むというのはあるが」

男「それが一生解放されないとなれば?」

男「キチガイの中に一生、自分だけ普通のままいることはできるのか?」

男「もし出られるのならPTSDで済むかもしれないが、出られないのならキチガイになる」

男「ただし精神的に強い人間で、自分は正しいのだと自己暗示をし続ければ発狂状態であれどキチガイにはならない」

男「まあ、キチガイと意思疎通をしようと思うのが、普通の人なわけだが」

男「そこまでいくのは普通ではない、と言っても過言ではない状態だ」

いつからここは説明スレになったwwww

男「(もう一つ補足、初期症状までにワクチンを打てば平気だが、それに気付かない人も多い)」

男「(だから解決方法として、国家レベルで予防接種が行われるようになった)」

男「(手遅れだった人間には障害手帳という話も出ているが……どうなることやら)」

男「(>>102、地の文が書けないからどうしても説明が必要になってしまうんだ)」


男「……ということみたいだが、俺はまだ男なわけで」

男「これから変わると思うと、少しだけ憂鬱だな」

男「(あのときは、友を一人で悩ませたくないという一心でワクチンを打たなかった)」

男「(そのことに後悔をしているわけではない、むしろ俺が選んだことだ、言い訳はしない)」

男「ただ」

男「(結婚とかの問題ではなく、純粋に恐い)」

男「(今までの自分という存在が、これから変わっていくということ)」

男「(時間の経過によるものなら平気だが、さすがに異分子によるものだと……)」

男「……いや」

男「(ここで恐いと言ってしまえば、それこそ変わってしまうということだ)」

男「(せめても内面だけは変わらないように、生きていかなければ)」

ブサメンがなってもブサイク女子だろ・・・
てか女子が男子になる病気もあるんじゃね?

友「おはよー、ってどうしたの!?」

男「あー寝不足だー」ポケー

友「今日はせっかく晴れているのに、そんなんじゃぷーだよ、ぷー」

男「寝不足だと太陽が鬱陶しく感じる……どうして俺は吸血鬼に生まれなかったのだろう……」

友「吸血鬼だと夜しか外出れないんだよ?」

男「それでいい……俺は夜だーって奇声上げながら飛び回りたい……」

友「やめといたほうがいいと思うよ? 絶対にほしいものが手に入らなくなるから」

男「ほしいものが手に入らなくなるのは、べつに構わないんだがな」

友「ほしいもの、あるの?」

男「ああ、もう諦めたが、実は竹内力になりたかった」

友「あー、それじゃあ、ボクは哀川翔になれば良かったのかな?」

男「合体して飛び立ったりな」

友「……たまに思うんだけど、男って本当の年齢はいくつなのさ?」

女の子っぽくなるだけだろ
後天的にホルモンバランスが崩れる病気なんだべ

>>108
人間の男を男として決定づけているY染色体はX染色体よりも少ないというか、なんというか
簡単に言うと、女はY染色体を追加しなければいけないから、
女が美少年になるのは男が美少女になるより難しいんだよ

>>110
ちなみにだけど、後天的にホルモンバランスが崩れても女の子っぽくはならない
男性的部分が目立たなくなるというだけだな、それを女の子っぽくなるといえばそうなんだろうが

男「あー、くそ、身体がだるい……」

友「保健室に行ったら? 顔色がすごく悪いよ?」

男「実は女の子の日なんだ……察してくれ……」

友「女の子の日? なにそれ?」

男「このジョークを知らないのか。まあ、保健室にでも行ってくるわ」フラフラ

友「あっ! ふらふらして歩くの大変そうだから、ついていくよっ!」

男「おまえが三時限目の授業に遅れるだろう、気にするな」

友「いいからいいから、ボクは男よりも授業を優先したりしませんっ」

男「優先しろよ。そしてあとでノートを貸せ」

友「そういうのは命令じゃなくて、ちゃんとお願いするべきだと思うんだよね、ボク」

男「というわけでだ、教室に戻れ」フラフラ

友「あ、待ってよ! だからついて行くってば!」

先生「体調が悪い、ね。友くんは戻っていていいわよ」

友「あ……でも……」

先生「いいから戻りなさい、休み時間にまた来ればいいわよね?」

友「……はい」シュン


男「(出て行ったか、あと少しで一息つけるな)」

男「(どうも誰かが同じ部屋にいると、休んでいる気がしないんだよ)」

男「(保健の先生を追い出すとでもすっか)」ピピピ

先生「測り終わった? 熱は……35.6ね、平熱は?」

男「36.5ぐらいが平熱だったはずです」

先生「あなたは最近流行りのウイルスにかかっているんでしょう?」

男「ええ、まあ」

先生「たぶん、その体調の悪さは生活に原因があると思うわよ」

男「……はい?」

先生「今日は寝不足な顔をしているし、余計かもしれないけれどね」

先生「低体温、女性だとよくあることなのよ。原因は睡眠不足や食生活とか」

男「でもそれ、女性にですよね?」

先生「ええ、主に生理が原因だけれど、女性的な身体だと免疫力が弱くなってしまうの」

男「せっ……ああ、はい」

先生「あら、顔を赤くして可愛い。男性よりも女性のほうが免疫力が弱いというのはわかるわよね?」

男「可愛いとか言わんでください、死活問題なんです。免疫が弱いのは知っていますが」

先生「ホルモンと身体の構造の問題なのよね。あなた、今の自分の身体がどういうものだかわかる?」

男「いえ、馬鹿なんでさっぱりです」

先生「女性ホルモンの増加で体力が落ちているのよ、今まで通りの生活をしていたら身体を壊すわ」

男「(……あれ? だとすると友は、どうして?)」

先生「友くんは平気そうだったし、色々と教えてもらったら?」

男「そう、ですね。そのほうが良さそうなんで、そうします」

先生「それじゃあ、次の休憩時間に来るから休んでなさい」

男「はい、わかりました。……ありがとうございます」

男「(体力が落ちている、か)」

男「(男の娘ウイルスはそこまで身体に影響を及ぼすのか)」

男「(階段が上がるのがつらくなったり……こりゃ老人だわ)」

男「(ただ今まで通り、男の生活はできないってことか)」

男「(当たり前だな、最近はちゃんと夜に眠るようになってしまった)」

男「(今までは深夜アニメを見たりしてから眠っても問題なかったのに……)」

男「(食生活に関しても、少しは見直さないといけないな。分量も適度を知らないと)」

男「(しかし、友はどうして問題なく過ごせているんだろうか?)」

男「(あいつも……俺と変わらない生活の……)」

――
――――
――――――

男「友と出会ったのは中学二年生のとき、三年前のことだ」

男「あのころの俺は年齢通りに中二病で、ハードボイルドに憧れて」

男「煙草を吸ったり、酒を飲んだり、男らしさを求めていた」

男「そんなある日に、あいつと出会ったんだ」


――三年前、体育館倉庫裏

友「……っ」

不良A「金持って来いって言ったよな? なんで持ってねえの?」

不良B「殴られたくてたまらないマゾヒストなんだろ、お望み通り殴ってやろうぜ」

友「い――っ」

不良C「それ殴ってるんじゃなくて蹴りだろ、馬鹿だな、おまえ」

不良B「どっちも同じだろ、こいつ痛いの好きな変態野郎なんだから」

不良A「ぶっ……はははっはっはははは、ツボっ! ひっ、ははははっ!」

不良C「なんでツボ入るんだよ、わかんね」

――教室

生徒A「またやっているな、あれ」

生徒B「あんま見るなよ、関わると面倒臭いぞ」

男「(……ん? あいつら、なにを見ているんだ)」

男「(ああ、イジメか。たった一人に三人でかかるとか、情けない)」

男「(どうしたものか、ああいった低能と関わるのは通知表に響く)」

男「(なにより、わざわざ他人事に首を突っ込むのは男らしくないな)」

男「(さすがに目の前でやられていれば、男として止めなければならないが)」

男「(……反撃もせずにやられているだけだなんて男らしくない)」

男「(ああいう人間だけにはなりたくないものだな)」

――次の日

男「……?」

男「(トイレに入ったら、昨日のやつら+αがいた。またイジメだろう)」

不良A「あん? 今使っているから出て行けよ」

男「使っている、な。ホモだろう、おまえ」

不良A「てめえなめてんのか、コラ!」

男「腹を下しそうなものを舐めるわけない、頭に蛆虫でも湧いているのか?」

不良B「おい、こっちは先輩がヤクザの知り合いなんだぜ? 今さらビビっても遅いけどな!」

男「ならそのヤクザでも連れて来てみろ、どうした、連れて来れないのか?」

不良C「チョーシこきやがって……面倒だからボコっちまえおうぜ?」

不良A「だな。不良B、後ろから押さえておけよ」

不良B「任せろ、こいつ裸で土下座させてやるよ!」

男「(正直な話、弱かった)」

男「(不良なんて喧嘩慣れしている程度)」

男「(今はやめたが、柔道を習っている相手に勝てるわけがない)」

男「(まだ身体は鍛えているしな、三人までならどうとでもなる)」

友「あ、っと……」ボロボロ

男「…………」

男「(気に入らない)」

友「ありが――」

男「話しかけるな」

男「(気に入らないから、殴った)」

友「っ、づ……」

男「(清々する、こういうやつが大嫌いなんだよ、俺は)」

――放課後、屋上

男「煙草が肺に染みる……」

男「(どうして大人は、こんなものがうまいだなんて思うのか)」

男「(でも、煙草を吸い続ければわかるはずだ)」

男「……」

男「(気に入らないから、殴った――)」

男「(なんで、俺は殴ったんだろう?)」

男「(あんなことをしなければ良かった、な)」

男「(たまに、自分がしたいことがわからなくなってしまう)」

男「(本当にこれで良いのか、本当にこれは過ちではないのか……なんて)」

男「(どこかで読んだ、歌劇の科白を持ちだしてみたが、格好良くはないな)」


――ガタッ

男「!?」

友「あ」

男「あ」

友「ええと、お礼を言おうと思って……」

男「いや、べつに、お礼を言われるつもりはないが」

友「……でも、お礼は言いたい。殴ったことはべつとして」

男「そうか」

友「ありがとう。それと煙草はやめたほうがいいよ、身体に悪いんだからさ」

男「煙草に関しては俺の勝手だろうが」

友「お礼は言った、それじゃあ」

男「チクったら殺すぞ」

友「さすがに言わないよ、〝また〟ね」

男「じゃあな」

――――――
――――
――

男「(その日から、友が俺にまとわりつくようになった)」

男「(吸っていた煙草も、飲んでいた酒も、格好つけでしかないと気付いて)」

男「(ようやく、俺は憧れから抜け出すことができた)」

男「(思い出すだけで恥ずかしくなる黒歴史なわけで……)」

男「(もしも、あのときに友と出会わなければ、未だ黒歴史を量産していたのだろうか)」

男「(……いや、今でも黒歴史を量産している、かな)」

――
――――
――――――

友「昼休みになったんだけど」

男「」スヤスヤ

友「男が起きてくれません、どうしたらいいんでしょうか」

友「なんか、起こすのも可哀想だから……うぅん……」

男「……友」

友「」ビクッ

男「」スヤスヤ

友「な、なに、寝言?」

友「(悪戯しようと考えているのが、バレたのかと思った)」

友「に、しても……」

友「(男は、ものすごい美人さんになったなー)」

友「(でも釣り目だったり、昔の面影は残っている)」

友「(元々、男は髪の毛を伸ばしていたけど、今では違和感なく伸びているなぁ)」

友「あ」

友「(髪の毛が唇についている)」

友「(取ってあげよ)」

男「……うぅん」

友「(よし、できた)」

友「(それにしても男の髪の毛はさらさらしてるなぁ、シャンプーなに使っているんだろ?)」サワサワ

思ったんだけど元々>>1ってこういうss書こうと思ってたんじゃないのか?

男「(……目覚めたわけだが)」

男「(友が髪の毛を触っていて起きるに起きられません、どうしたらいいでしょうか)」

男「(ちょっと唸ってみたんだが、それを気にせず触りやがるし)」

男「(なんなんだ、少しぐらい隙を与えろ)」

友「男ぉ……起きろーっ……」

男「(起きているよ、このド畜生が)」

友「うん、起きてない、起きてないよね?」

男「(うん、起きている、起きているよ?)」

友「マジックペン、マジックペン♪」

男「(おい、それやったら拳の骨が折れるまで殴り続けるぞ)」

友「水性はどこだっけ……」

男「(油性なら飛び起きて殴っていたところだ)」

友「あったあったっと」

男「(薄目で見てみたが、ポケットに入っているのはどういうことだ?)」

男「(……考えるのはやめよう、そのうち俺もああなるかもしれないんだ)」

>>145
SSを書いたことないうえに、こういうSSを考えたこともなかった


男「ふぁあ~」

友「」ビクッ

男「お、いたのか、友」

男「(つい、水性ペンで書き終わるまで眠ったふりをしてしまった)」

友「お、おはよう?」

男「……怪しいな」

友「え、え? なにが? ボクぜーんぜんわかんない」ソワソワ

男「まあいい、今は何時だ?」

友「お昼休みが終わりギリギリだよ? 帰ろう、教室に帰ろう、ね?」ソワソワ

男「さて、おまえがしたことはわかった」

友「ななな、なんのことかなぁ?」

男「トイレに行ってくる、あとで同じことをしてやるから覚えておけ」

――放課後

男「……言い訳はあるか、友」

友「ええと、寝顔って見ていると悪戯したくなるでしょ?」

男「奇遇だな、俺もおまえの顔を見ていると真っ黒に染めたくなる」

友「あの、油性はやめてね?」

男「冗談だ、帰りになんか奢ってくれ」

友「夕ご飯前だよ? いいの?」

男「ああ、父さんと母さんは会社の飲み会で、妹は友達の家に避難だそうだ」

男「だから夕飯は自分で作らないといけなかったわけだしな」

友「じゃ、じゃあ、ボクが作ってあげようか?」

男「材料ないし、買うのも面倒臭いだろう」

友「一回帰ってから、もう一度スーパーに行けばいいんじゃないかな?」

男「また、どうして俺が面倒臭いことをしなければいけない?」

友「だって先生に聞いたんだけど、男が調子悪いのって食事とかが原因なんでしょ?」

男「まあ、そうらしいが、今始めたところで問題ないだろう」

友「だったらさ、その辺りのこと、ボクが教えてあげるよ。こういうの早いほうがいいだろうから」

男「……自分で調べるから問題ない」

友「まぁまぁ、今日ぐらいいいじゃん? ね?」

男「(どうしてこう必死なのかは知らんが)」

男「まあ、そうだな」

友「それじゃあ、近くのスーパーに待ち合わせでいい?」

男「問題ない」

友「先に中に入っているから、頑張って探してね?」

男「入口で待っている」

友「ちゃんと見つけてよ? それじゃあ、またね!」タッタッタッ

男「……行ってしまった」

――スーパー

男「(探すのは存外、難しいものではなかった)」

男「(いやなにせ、嫌な予感ばかりがしたもんだからな)」

男「(……友が女が着るような服を着ていた、どういう顔をすればいいんだろう)」

男「(ちょっとだけ距離を感じてしまうわけで)」

男「友さん、どもっす」

友「うん? いきなりどうしたの?」

男「いいや、べつに。なにを作るつもりなんだ?」

友「野菜を中心にして、パスタかな」

男「スパゲッティか?」

友「ミートソースだよ?」

男「なるほどな、そうか、スパゲッティとミートソースの違いがわからん」

友「全然違うよー、っと。レジに行こっか」

男「もう揃ったのか?」

友「うん、最初に作るものを決めておいたからね。そうすれば買い物も早く終わるし」

レジのおばさん「あら、友くんは彼女さんできたの?」

男「(ああ、俺ももう外見は女にしか見えないのか)」

友「ち、違いますよ、これ友達ですって」

男「(これ……)」

おばさん「ふうん、彼女のために料理をするんだと思ったんだけれど」

友「だから違いますって、料理はしますけど……」

男「(なんか会話についていけない、昔も今もオバサンだけは苦手だ)」

おばさん「それじゃあ、お会計は――」

男「(こういうときは、俺が払っておくべきだな)」

友「あ、男、ボクが払うから」

男「しかしだな……」

友「奢るって約束したでしょ? こっちのほうが安上がりだし」

男「そう、か」

男「(なんとなく違う気がするんだよな……)」

――家

友「キッチンにあるものは自由に使っても平気だよね?」

男「ああ、問題ない。それより、そのエプロン……」

友「持ってきておいたんだ、男が持っているとも思えないし」

男「そうか。なにか手伝えることはないか?」

友「いいよ、男はテレビでも見て待っていて」

男「わかった」

男「(……とはいったものの)」

男「(面白いテレビがやっているわけでもない)」

男「(ニュースは男の娘ウイルスのものばかり)」

男「(録画しておいたアニメも見る気が起きない)」

男「(自分という存在が崩されているって、改めて実感してしまうな)」

友「男ぉー! 薄味と濃味、どっちが好きー?」

男「ん、薄味だ!」

友「やっぱり? わかったーっ!」

男「(夕食ができるまで暇すぎて、キッチンを覗いてみることにした)」

男「(友がピンク色のエプロンをして料理をしているのは、まあ、なにも言わん)」

男「(鼻歌を歌いながら、なにかをしているのだけが見える)」

友「~♪」

男「(stand by meだな、懐かしい)」

男「(……いやいやいやいやいやいやいやいや!)」

男「(おかしいよ、それ絶対におかしいよ! stand by meはおかしいってば!)」

男「(ぐぬぬ……彼奴は英語が苦手だと言っていた……あれがどういう歌詞か知らぬのであろう)」

男「(いや私も英語苦手だけれどな)」コンランチウ

男「(しかし、どうしたものかな。手を出す部分はなさそうだ)」

男「(リビングに戻るしかない、か)」

男「(うーん、なんだろうな、この違和感)」

男「あ」

男「(気付かなかったことにしよう、この違和感は存在しなかった、うん)」

死ぬかとおもたwwwまとめにもはれよwww

友「できたよ、冷める前に食べよ?」

男「ああ、そうするか」

友「薄味っていっても、ミートソースは薄味って感じじゃないからね」

男「それぐらい知っている。というか薄味のミートソースってどういうものだ」

友「さぁ? ミートソースの材料が濃いものばかりだから、薄味にはならないんじゃないかな?」

男「材料? 手作りなのか?」

友「うん、意外と簡単に作れるよ?」

男「へえ。とりあえず、いただきます」

友「うん、めしあがれ」

男「……」

友「あ、あれ? 感想は?」

男「いや、普通にうまいぞ」

友「なにも言わずに食べているから、おいしくないのかと思っちゃったじゃん!」

男「いやな、俺も料理ができるようになりたいと思っただけだ」

>>165
まとめとか遠慮したいです

友「料理、教えてあげよっか?」

男「いらない、俺は自力で作れるようになる」

友「もう、男って意地っ張りだよね」

男「そうか? 自覚はないが……」

友「そうだよ、ずっと一緒にいるとわかっちゃうもんなんだよ?」

男「そういうものなのか」

男「(俺は、おまえのことが全然と言っていいほどわからないけれどな)」

男「(男の娘ウイルスにかかるまで、料理ができることなんか知らなかったし)」

友「あ、男ってさ、格ゲーの家庭版持っていたよね?」

男「持っていたな」

友「食事が終わったらやろうよ、久しぶりにやりたいし」

男「……アケコンは譲らないぞ」

友「アナコンでも充分だよ」

男「(食事が終わり、友が食器を洗っている)」

男「(それを眺めていると、なんだか眠くなってしまう)」

男「(食器の音……水の音……蛇口が閉められる音……)」

男「(お腹がいっぱいになったから、眠くなるのだろう)」

友「おーい、男、眠っちゃダメだよ。食後は三時間、起きているの」

男「……ふぁあ、どうしてだ?」

友「消化の問題かな、お風呂のあとはすぐに眠っちゃったほうがいいし」

男「風呂に入ると目覚めるから眠れないな」

友「慣れると意外と楽だと思うよ? ボクは昔からそんな感じだったから、わからないけど」

男「そうだったのか、意外と俺と変わらない生活をしているんだと思っていた」

友「たまに夜更かししたりとかぐらいだよ、それ以外は規則正しい生活かな」

男「へえ」

男「(興味がないというよりは、少しだけ驚いた)」

男「(男なんて誰でも規則正しい生活をしないもんだと思っていたから)」

男「……あいむうぃーん」ASTRAL FINISH

友「ちょ、え、どうして? なんであのコンボ繋がるの?」

男「弱い姫様でも頑張れば強くなれるんだよ……そうヒマワリのように」

友「それじゃあさ、次はハクメンかバング使ってもいい?」

男「おい馬鹿やめろ、やめて、やめてください」

友「あ、そろそろお風呂に入る時間だ」

男「帰る時間か、あまり遅くなると家族が心配するしな」

友「え?」

男「え?」

友「泊まるつもりで来たんだけど」

男「えっ」

友「もしかして、迷惑だった……?」

男「いや、それは構わないが」

男「(母さんは飲み会の日は絶対に帰ってこないし、妹も帰ってくるとは思えん)」

男「まあ、そうか、なら風呂にでも入ってこい」

友「あれ、男は入らないの?」

男「あとからでいい」

友「男同士なんだからいいじゃん、一緒に入っちゃおうよ」

男「そういう問題ではなくてだな」

友「それじゃあ、どうして?」

男「男同士で風呂は入らないだろう」

友「そう?」

男「ああ、入らない、絶対に入らない」

友「あ、もしかしてギャランドゥを気にしていたり?」

男「……どうしてギャランドゥを知っているんだ、おまえ」

友「ほら、ボク、目が悪いから。コンタクト外したら見えなくて恐いんだよね」

男「気持ちはわからんでもないな……仕方ない……」

――――裸の付き合い(男湯上級編)――――


友「男ぉー、頭洗ってあげよっか?」

男「いらん、自分で洗える。おいこっち来るな」

友「いいじゃんいいじゃん。それとどうして腰にタオル巻いているの?」

男「はあ?」

友「男同士なんだからタオル必要ないでしょ」

男「普通はつけるだろう……なにを言っているんだ……」

友「ボクはつけてないのに、男だけ巻いていたら気になるよ」

男「気にしなければいい、というかなんで気にする?」

友「隠されると気になるじゃん、ねえ?」チラチラ

男「チラチラ見るな! いいか、俺は外さない、絶対に」

友「もしかして男って……火星人なの……?」

男「違う、どうしてそうなる、日本人の八割は火星人だ!」

友「あ、図星?」

男「だから違う!」

友「男ぉー、身体洗ってあげよっか?」

男「いらん、というかさっきから鬱陶しい」

友「いいじゃんいいじゃん、洗ってあげるよ」

男「おい近付くな、なにを企んでいるか知っているんだよ」

友「じゃなくて、男の娘ウイルスにかかってから肌が弱くなったでしょ?」

男「実感はないが、そうだな、赤くなりやすくなった」

友「身体を洗うときの加減とか、わかっておいたほうがいいかなって」

男「なるほどな、肌を痛めるとあとが大変そうだ」

友「だから、タオルとってくれない?」

男「だからどうしてそうなるんだよ!」

友「そうしないと洗えないでしょ?」

男「下は自分で洗う!」

友「まぁまぁ、大船に乗ったつもりで任せなって」

男「どう考えても泥船だろう、それ! ……あっ」ピラッ

友「……あ」

男「」シクシク

友「ボクが悪かったって……ね?」

男「知るか……俺は火星人なんだよ……悪いかよ……」シクシク

友「ほら、某有名アーティストもラジオで火星人だって言ってたし!」

男「イケメンは火星人でも許されるんだ……俺は許されざる存在……絶対に許さない……」シクシク

友「まぁまぁ、ボクは気にしないからさ、ね?」

男「俺が気にするんだよ!」

友「あはは……まぁ、うん、こういうときは眠って忘れるのがいちばんだよ?」

男「そうだな……眠る……。おまえベッド使え……今日は床で眠りたい……」

友「うん、おやすみ」

男「あー……おやすみ……」

男「…………」

男「(ふと、夜中に目覚めたときに思う)」

男「(今までのことは夢で、本当は私も友もなにも変わっていない)」

男「(淡い希望、昔通りのままでいたいという気持ち)」

男「…………」

男「(でも、それは叶わないことで)」

男「(少しずつ変わっていってしまう)」

男「(友が変わっていったように、俺も変わっていってしまう)」

男「(どうして変わっていくのだろう、だなんて子供みたいなことを考えたり……)」

男「(過去に帰りたいと、叶わない願いを望んでみたり……)」

男「(私は、いったいどうしたいのだろうか?)」

男「……っ!?」

男「(今、俺は、自分のことを……)」

男「(違う、俺は、俺だ)」

男「(俺はこのままでいなければならない)」

男「(絶対に認めない。身体は変わっても、俺は俺でありたいんだ)」

男「(〝私〟というのは間違いで、〝俺〟が正しい)」

男「……っ」

男「(わかっていた。次第に自分が自分でなくなるというのは、わかっていた)」

男「(でも、今、ここで変わっていこうとしなくても、いいだろうに)」

友「ん……男……?」

男「(もしも俺が変われば、なにもかもが変わってしまうかもしれない)」

男「(だから俺は、絶対に変わりたくない……少しでも変わらずに過ごしていたい……)」

男「(このままでいたいから――)」

友「男っ!」

男「……ん、どうした、友?」

友「どうしたって言いたいのはこっちだよ! どこか痛いの? 苦しいの?」

男「問題ない……ただ寝違えただけだ……」

友「ただ寝違えただけなのに、なんで泣いているの?」

男「――――」

友「なにかつらいことがあるなら、相談してくれないとわからないよ」

男「べつに、つらくなんかない」

友「男はさ、いつもそうやって意地っ張りだよね。たまにはボクに頼ってほしい」

男「……」

友「頼りないかもしれないけど、ボクだって男に頼られたいんだ」

男「……でも」

友「でももだってもない。そうして一人で抱え込んでいると、苦しいだけでしょ?」

男「それは――」

男「(情けなく、友に色々と言い訳をして)」

男「(それでも自分が変わっていくのが恐くて、そのことを話してみた)」

男「(友は、なにも言わずに聞いてくれて……)」

友「自分が自分じゃなくなる、ね。ボクはあまり気にしなかったな」

友「だってさ、ボクが変わったからって男は気にしないでしょ?」

男「少しは驚いたけれど」

友「うん、だから少し驚く程度で終わっちゃうんだよ」

男「そんなもの、なのか?」

友「たぶんね、男は少し女性的な面で過敏になりすぎているんだと思う」

友「女の子って友情を深めるんじゃなくて変わらないように、多くを持とうとするんだ」

友「男はそれを元にして、〝変わってしまうこと〟を恐がっていたんだよ」

男「ああ、それで……」

男「(最初に自分が変わらないように、と思ったのもそういうわけか)」

男「(恐かったのも、そういう部分が先に表面化したからで……)」

男「(気にすることなんて、なかったことなのに)」

友「だからさ、そんなに深く考えなくていいことなんだ」

友「下手に考えているほうが、適応障害とかになりかねないしね」

友「たぶん、体調が悪かったのは生活習慣じゃなくて、そっちだったんじゃないかな?」

友「いつもの男なら、こんなに情緒不安定になることがないはずだし」

男「よく、俺のことをわかっているんだな」

友「うん。だって一緒にいることが多いからね」

男「そっか。うん、そうだな。……でも、もし俺が変わったら」

友「気に入らないから殴って、元通りにするっ」

男「それは、また、痛そうだからやめてほしい」

友「でもまぁ、男は男のままなんじゃない? 口調が変わっても、なんにしてもさ」

男「俺は、俺のまま?」

友「うん。だから心配しないで、今日は眠ろう、ね?」

男「……私は、俺のまま。そうだな、まだ朝まで長いし」

友「それじゃあ、おやすみ」

男「おやすみ」

――
――――
――――――

妹「突然ですが、兄さんに帰ってきたと報告するつもりでした」

妹「なのに部屋を覗いてみたら、誰かと眠っているんです」

妹「こういうとき、いったいどういう顔をすればいいんでしょうか」

妹「彼女……ではなさそうですね。女っぽいものの、あれは男です」

妹「ああ、兄さんにこんな趣味ができていたなんて、まあ」

妹「しかし、起こすのは邪推といったところですか」

妹「いつもは部屋に入ってきただけで目覚める兄さんが、誰かと眠っているんですから」

妹「ぐっすり眠っているんでしょうね、まったく」

妹「とりあえず、お二人、仲良く遅刻でもしてください」



終わり

願わくは、このスレがどこにも転載されず、忘れ去られますように

拙作の中で男の娘ウイルスや、医学用語でわからなかったところとかないよね?
あと男の娘大好きな方々には、その方面を鼻で笑う俺が書いて申し訳ない

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom