P「あずささん! アイドル幼稚園ですよ、幼稚園!」(282)



ここはどこかの国のとある幼稚園。
俺の名前はP、ここで新人保育士をしている。


やよい「ぷろじゅーしゃー!」 たたた

ちはや「た、たかつきさん! ろうかはしるとあぶない……」 たたたた


今日は元気いっぱいに遊ぶ子どもたちの、かわいらしい姿をご覧いただこう。


このSSは、以前自分が書いた
P「アイドル幼稚園」
P「ここがアイドル幼稚園か……」
というSSの続きものとなっております。
幼女アイドルを相手に妄想した完全なるオナニーです。
ちなみに、この世界では保育園=幼稚園であり、保育士=幼稚園教諭となっています。



~ 嵐を呼ぶやよい編 ~


やよい「ぷろじゅーしゃー! はい、た~っち!」

P「たーっち!」 ぱちん

P・やよい「いえーい!」

ちはや「たかつきさん……わ、わたしにも」 ぼそぼそ


もちろん、俺には俺でちゃんとした名前があるのだが、
園児たちと他の先生たちからは『プロデューサー』というあだ名で親しまれている。
以前芸能事務所のプロデューサーをやっていたことを、自己紹介のときに言ってしまったからだ。
子どもたちにとってはその意味がよくわからなくても、言葉の響きがなんだか面白かったのだろう。



やよい「ちはやしゃんも! はい、た~っち!」 ぱちん


ふわふわのオレンジヘアーをツインテールにしたこの子の名前は、高槻やよいちゃん。
やよいは年少さんの『なむこ組』であるが、俺によくなついてくれている。
この子にとっての眠りの季節である暖かな春が過ぎ、いまは夏まっさかり。
だから最近では、やよいも元気いっぱいに走り回るようになった。


ちはや「い、いえい! えへへ、たかつきさんかわいい……」 てれてれ


一方で、紺青に近い黒の長髪を携えたつるぺ……あ、いや細身の少女は如月千早ちゃん。
俺が担当する年中さん『765組』の園児であり、歌を歌うことが大好きな女の子。
いつもはわりと落ち着いた雰囲気を出す千早だが、やよいのこととなると途端にそわそわし始める……。



  ざあざあ……
           びゅうびゅう……


やよい「ぷろじゅーしゃー、えほんよんでくだしゃい」

ちはや「わたし、あれがいいです……ねずみさんのかぞくがひっこしするの」

P「ああ、いいぞ! ちょっと待ってろよ~……」 がさごそ


いまはあそび時間なのだが、本日は残念ながらざあざあ降りの悪天候……。
だから今日はみんな絵本を読んだり積み木遊びをしたり、ホールでアイドルごっこをしたりしているのだ。
と、そこへ……。


いおり「ちょ、ちょっとまって~」 とてとて



いおり「やっとおいついたわ……」

やよい「あー、いおりちゃん! あいどるごっこはー?」

いおり「みんなわたしがしらないのうたうんだもん! だからやよいとあそぶの」


このおでこが光り輝くブラウンのロングヘアーの女の子は、水瀬伊織ちゃん。
やよいと同じく年少さんの『なむこ組』であり、こんなにちっちゃいのにみんなに気配りができるやさしい女の子。
ちょっと素直じゃないときもあるが……それはきっと、芯の強いしっかりものという性格からくるものだろう。



いおり「あ、ちはやもいたの」

ちはや「…………」 ぎゅっ

やよい「?」 ぎゅ

いおり「とらないわよー……わたしにはこのこがいるもん♪」 ぎゅうう


P「伊織は最近、ずっとそのウサギのぬいぐるみを持ってるな。名前とかつけてるのか?」

いおり「もっちろん! しゃるる・どにゃりゅ……」 かみっ

ちはや「どにゃ?」

いおり「…………うさちゃん」 かぁああ

P「(噛んだな)」

やよい「(かみまみた)」



やよい「うさちゃん、わたしもだっこしたいでしゅ……」

いおり「しょ、しょうがないわねー。とくべつよ?」

やよい「うっうー! ありが――


  ピカッ!
        ゴロゴロゴロ……


P「おっ」

やよい「はわ!」

いおり「ひぃんっ」 ぴかっ!!

ちはや「んあ、まぶしいっ!」


やよい・いおり「…………」 がくがくぶるぶる


突然の落雷に、やよいと伊織はすっかりびびってしまったようだ。
千早もそれなりにびっくりしているようだが、ふたりに比べればまだ落ち着いている。
……何か、雷よりも気になるものでもあったのかな。



いおり「や……やよい。おへそをかくすのよ」

やよい「お、おへそでしゅかー?」

いおり「そうよ……おへそがかみなりにとられちゃうんだから……」

やよい「えー! たいへんでしゅ……」 がくがく

ちはや「…………」 ごそごそ

P「(ん? 千早が何かを持ってきたぞ……あれはタオルケットか)」


ちはや「みなせさん、たかつきさん……こうすればこわくないよ」 ふぁさっ

やよい「まっくらー……」

いおり「なにもみえないわ……」


千早が持ってきたお昼寝用の大きめのタオルケットに包まれ、3人は芋虫状態になった。
もぞもぞと動く姿がとてもかわいらしい。この子もすっかりお姉さんが板についてきたな……。



~ 絵本をよんであげよう編 ~


P「じゅうよんひきの、ひっこし」

いおり「…………」 わくわく


P「おとうさん、おかあさん、おじいさん、おばあさん。そしてきょうだいじっぴき……」

P「ぼくらはみんなで、じゅうよんひきかぞくです」


やよい「わぁ……だいかぞくでしゅ」

ちはや「うちはよにんかぞく……」


タオルケットにくるまれたやよいたちを相手に、俺は朗読を始めた。
少しだけあいた隙間から3人の目が見える。じーっと本の絵に集中しているみたいだな。
きっとこの子たちの頭の中には、絵本の世界のような大きな森が広がっているのだろう……。



P「……もりのおくめざして、さあしゅっぱ――


   ピカッ!!


いおり「!?」 びくっ


  ドゴォン……ゴロゴロゴロゴロ……!!


やよい「ぷ、ぷろじゅーしゃぁ~……」 がくがく ぶるぶる

P「……ほら、みんなこっちおいで」

ちはや「…………」 ぎゅっ

やよい・いおり「……うぅ……」 ぎゅう



  ざあざあ……
           ごろごろごろ……


P「みんな、大丈夫か?」

やよい「だだだいじょうぶでしゅ」 ぷるぷる

P「……はは、そうか。ようし、なら続きを読むぞ!」


P「――やっと見つけた、すてきなねっこ。みんなで力をあわせて……ぼくらのうちをつくるんだ――」


やよいと、伊織と、千早。
3人の小さな女の子は俺の体にぎゅっとつかまったまま、タオルケットの中で朗読を聞いていた。
どしゃ降りの雨の中を時折やってくる雷さまの声を聞く度に、ぷるぷると体を震わせている。

もうきっと、本の絵など見ていないだろう。
いろんな面で成長したと言っても、まだまだやっぱり小さな小さな子どもなんだよな……。
こんなことを言ったら、きっと伊織は怒るけど……俺は少しだけ、そのことが嬉しくなってしまった。



~ あ(み)まみはるか編 ~


  ざあざあ……
           びゅうびゅう……


あずさ「あらあら……本格的に降ってきちゃったわねぇ~……」

あみ「ざあざあだねー」

まみ「びゅうびゅうだよー」


こんにちは。私、三浦あずさと申します。
ここ『アイドル幼稚園』で保育士さんをしているんですよ~。
いまはせっかくのあそび時間なんですけど、今日はずっと雨が――


  ピカッ!! ドゴォン……!


あずさ「ひゃっ!」 びくっ

あみ「うぁ~!」 がくがく

まみ「ひぇ~!」 ぶるぶる



あみ「せんせーこわい~!」 ぎゅう

まみ「しんじゃう~!」 ぎゅうう

あずさ「だ、大丈夫よ~! せせせんせいが守ってあげるからね~」 びくびく


こ、このここたちは…………ごほん、失礼しました。
この子たちは、私が担当する年少さん『なむこ組』の双海亜美ちゃんと、双海真美ちゃん。
見ての通りの双子ちゃんで、いたずら大好きな元気姉妹です。

亜麻色の髪を正面から見て左に結んでいるのが亜美ちゃんで、その逆が真美ちゃん。
ふたりともまだ髪が短いから、パイナップルみたいにぴょんと飛び出ています。
でも髪型だけじゃなくても、なんとなくで判断できますけどね~。



はるか「だいじょーぶだよ! わたしもついてるもん!」

あみ「はるる~ん」

まみ「たよりになる~」

あずさ「ほんとね~」


チョコレート色のショートヘアをリボンで結んだこの女の子は、年中さん『765組』の天海春香ちゃん。
明るくて前向きで、どんなことにも一生懸命ながんばり屋さんです。
亜美ちゃんたち年少さんの前では、こんな風にお姉ちゃんになってあげることもできるんですよ~。



はるか「ほらほら、ぱずるのつづきやろ?」

あみ「でも、またぴかっ! て……」

まみ「ごろごろ! って……」

はるか「へーきへーき! あんなの、ちょっとびっくりするだけ――


  カッ!! ピシャーン!!


はるか「わっほい!?」 びくっ

あみ・まみ・はるか「…………」 がくがくぶるぶる

あずさ「……きょ、教室だと怖いでしょうから、お遊戯室に行きましょうか~」



  ざあざあ……
           ごろごろごろ……


あみ「まっくらだねー……」 とことこ

まみ「じめじめだよー……」 とことこ

はるか「は、はやくいきましょー! はやく!」 たたた

あずさ「ふふ、廊下は走っちゃだめよ~?」


私たちは階段を登って、2階にあるお遊戯室へと向かいました。
さっきまでいた年少さんの教室は1階にあって、しかも扉が透明なガラス張りになっています。
だから、大雨と雷の様子が全部伝わってきちゃうんです。お遊戯室なら窓も小さいし、大丈夫のはず……。
あら? あれは……。


P「……しっかり、つかまれ。もうひといきだ! いちばんうしろで……」



あずさ「プロデューサーさん……」


年中さん『765組』の担任であるプロデューサーさんが、教室の中で絵本を読んでいるのが見えました。
タオルケットにくるまった子どもたちを相手にしているみたいだけど、あれはどの子かしら?

プロデューサーさんは、いつだって子どもたちにとって頼れるお兄さん。
みんな彼のことがだいすきです。

そして、この私も……密かに彼のことを、ひょっとしたら運命の人なのかも~、と思っていたのです。
うふふ、なんだか恥ずかしいですね~。
いまだにこの気持ちは伝えられませんけど……。


はるか「あずさせんせい? ついたよー」 ぐいぐい

あずさ「あら。ごめんね、先生ぼんやりしちゃってたわ~」



~ ブロックパズルであそぼう編 ~


あみ「これがここにくるんだよ~」 がちゃがちゃ

まみ「え~? それはここだよ~」 がちゃがちゃ

はるか「えっと、ここじゃないかな……」 がちゃがちゃ


ようやくお遊戯室へたどり着いた私たちは、ブロックパズルの続きを始めました。
手のひらサイズの木製ブロックを、枠の中に正しい形になるように埋めていく遊びですね。
ひとりで遊べば考える力がつくし、みんなで遊べば協力しあうことが学べる、とっても良いおもちゃです。



あみ「ぜっったぁい、ここだもん!」

まみ「ちがうよ! ここだよー!」

はるか「うらに“みそじ”ってかいてあるから、このぴよこさんのところにはいるんだよー!」 びしっ


こういう遊びをしていると、ちっちゃい子どもたちはこんな風にときどきケンカになってしまいます。
ケンカをすることは、とっても大切なこと。
相手がなんで怒るのか、なんで悲しむのかを考えることができるし、ごめんねを言う勇気も身につきます。


あずさ「な、仲良くしようね~」 おろおろ


でも、私はやっぱりみんな仲良く笑顔でいてほしいから……
こうやっておろおろしてしまうんです~。


あみ「ま……まみのばかぁ~! うわぁああ゛ん!!」 じたばた



まみ「あ、あみのほうが……ばかだもん!」 うるうる

あみ「ばかじゃないもん! ばかっていったほうがばかなんだもん!」

まみ「あみから、ゆったのに……う、うぇ」 じわぁ

あみ・まみ「びぇええ゛えん!!」

あずさ「ほ、ほらほらふたりとも。泣かないで~……」


ああ、ついに泣き出してしまいました~……。
悲しくてしょうがないときは、ぎゅっと抱きしめて慰めてあげることもできるんですけど……

だけど、ケンカのときは違います。
子どもたちに、自分たちで仲直りさせるようにお手伝いすることが、保育士さんのお仕事なんです。
それでも……。


あずさ「も、もういっかい一緒に考えてみましょう? ね~?」


私はケンカしている子どもたちを仲直りさせてあげるのが、ちょっと苦手なのでした……。



はるか「……う、う……」 じわぁ

あずさ「春香ちゃんまで……」


子どもたちの涙は、不思議とシンクロしてしまうものです。
このままだと春香ちゃんも泣いちゃうわ……どうしましょう~……。


あずさ「だ、大丈夫よ春香ちゃん! 私がすぐに仲直りさせて……」

はるか「…………!」 ごしごし


はるか「あみ、まみ! ほら、こっちおいで!」



あみ「はるる゛~ん!」 ぎゅっ

まみ「あみ゛がわるいんだよ~!」 ぎゅう

はるか「うん、うん。でも、あみもまみもいけないよ」

あみ「なんでぇえ~!」

まみ「まみ゛はわるくないのにい゛~!」


はるか「ばかっていったほうがばかなんでしょ? ふたりともばかっていっちゃったから、ふたりともめっ」

あみ「うぅ……」

まみ「だ、だってぇ……」

はるか「ちがうぱずるやろ? こんどはもっともっとむずかしいの。いっしょにがんばろ?」

あみ・まみ「…………うん」 ぐすっ

あずさ「春香ちゃん……」



あみ「あ、これは……ここ」 がちゃがちゃ

まみ「それでこれは……ここ」 がちゃがちゃ

あずさ「すごいわふたりとも、大正解よ~」 ぱちぱち


はるか「う~ん……これは……?」

あずさ「うふふ、春香ちゃん。ヒントあげましょうか?」

はるか「いーの! じぶんでできるもん!」


春香ちゃんのおかげで、ふたりはようやく泣き止みました。
私……ほんとにだめな保育士さんですね。なんだか情けないわ~……。
でも、子どもたちの前でそんな顔をしちゃだめだから……いつも通りのあずさ先生でいないといけませんね。



がちゃがちゃ……


あみ「…………」

まみ「……あみ」

あみ「……なあに」

まみ「ごめんね……ばかっていっちゃった」

あみ「……いいよ。あみがさきにいっちゃったんだもん。ごめんね……」

まみ「うん……」


がちゃがちゃ……



あみ・まみ・はるか「できたー!」 じゃじゃーん

あずさ「上手に完成できたわね~! すごいわ~」 なでなで

あみ「んっふっふー!」

まみ「みんなでがんばったもんね!」


亜美ちゃんと真美ちゃんは、すっかり仲直りできたみたいです。
さっきまでの大泣きがうそだったみたいに、今では満開のひまわりのような笑顔を浮かべています。
よかったわ~……。


はるか「あ! まどのそとみてー! ぴかぴか!」


気が付けば、ずっと降り続いていた大雨もいつの間にか止んでいたみたいです。
グラウンドにできた大きな水溜りに、太陽の光がきらきらと反射してとても綺麗に光っていました。


あずさ「おてんとさまも元気になったみたいね~。さ、もうあそび時間も終わりだから教室にもどりましょう」

あみ・まみ・はるか「は~い」



~ あずさ先生の心模様編 ~


てくてく


あずさ「(私だけだったら、上手にふたりを仲直りさせてあげることができたかしら~……)」


ああいうとき……プロデューサーさんならどうするんでしょう。
私、少し油断してしまっているみたいです。

ちょっと前までは……
もっと私らしく、お気楽でマイペースな自分でいられたんです。
それにもっとちゃんと、保育士さんができていると思っていたんです。
でもみんなと心を通わせているうちに、なんだか私まで子どもに戻っているような気がします……。


はるか「あ、ぷろでゅーさーさんだ!」



あずさ「春香ちゃんは、ほんとにプロデューサーさんのことが大好きなんだね~」

はるか「うん! おっきくなったら、およめさんにしてもらうんだ~……えへへ」


私は、春香ちゃんのさっきのお姉さんっぷりを思い出しました。
……もしかしたら本当に、私は子どもたち以上に子どもなのかもしれませんね。
恋愛経験がないのはこの子も私も一緒なのに、私はこんな風に自分の気持ちをはっきり言えないもの……。


あずさ「あらあら……じゃあ春香ちゃんに負けないように、先生もがんばらなきゃね~」

はるか「? どーいうこと?」


空は晴れ色。でも、私の心はまだちょっぴり……くもり空なのでした。

飯により20分のハーフタイムをとります
今回は前回以上に長い



~ お昼寝タイム編 ~


はるか「ぷろでゅーさーさん!」 たたた

P「お、春香。ようやく戻ってきたな、そろそろお昼寝タイムだぞ!」

はるか「は~い! あれ……やよいおり?」


この幼稚園では、あそび時間のあとに全組一斉30分のお昼寝タイムが設けられている。
基本的に自分の教室で寝ることになるため、やよいと伊織も年少組に返さなきゃいけないんだが……。


P「はは……さっきから離してくれないんだよ」

やよい「……すや、すや……」 ぎゅ

いおり「……ぐぅ……ぐぅ……」 ぎゅ



あずさ「……あらあら。よく眠っちゃってますね~」

P「あ、あずさ先生! いやーすみません、今そちらにお返ししますので……」

あずさ「だめですよ、プロデューサーさん。起こしちゃったらかわいそうですから……」


ここに現れたるはあずさ先生じゃないか!
春香と遊んでくれていたらしいな……春香、おまえは毎度毎度ナイスプレイを魅せてくれる……!

あずさ先生は、年少さん『なむこ組』の担任だ。つまりここで寝ているやよいと伊織の先生だな。
彼女の柔らかな笑顔を見ると、誰だって優しい気持ちになれる……
そんな、みんなが甘えるお姉さんである。


あずさ「今日はそのまま、年中組の教室で寝かせてあげてください」

P「は、はい! 責任を持って預からせていただきます!」 キリッ


そして俺は密かに、彼女に憧れを抱いていたのだ……!
一目見たときからずっと……!



はるか「……むー」

P「どうした、春香?」

はるか「わたしもぷろでゅーさーさんとおひるねするっ!」

ちはや「わ、わたしも!」 ひょこ

はるか「あー、ちはやちゃんだ!」


ちはや「はるかとたかつきさんと、ぷろでゅーさーと……えへへ……」 ぼそぼそ

はるか「ぷろでゅーさーさん! みんなでいっしょですよ、いっしょ!」

P「わかったわかった……じゃあ自分のタオルケット、持っておいで」

はるか・ちはや「は~い」 とことこ



  ミーン ミンミン……
               ミーン ミンミン……



ちはや「……zzz……」 すやすや

はるか「……ぐぅ、ぐぅ……」 すやすや

P「(やっと眠ったか。なんだか知らんが、いつもよりテンションが高かったなあ)」

P「いやーしかし……よく晴れたな。さっきまでのどしゃ降りがうそみたいだ」


ようやくみんなが眠ったので、久しぶりの静寂が教室に訪れた。
耳に入る音は扇風機の稼動音と、みんみんと鳴くセミの声だけ……。
窓から入り込んでくる優しい風が、そよそよと子どもたちの髪を揺らしている。



ちなみにやよいと伊織は、俺に抱きついたままタオルケットの中で静かな寝息を立てている。
ときおりぴくぴくと動く様子がとてもかわいらしいが……この季節だとちょっとあついな。


P「さて、俺も少し……横になるか。ゆっくりと、起こさないように……」 ごろん

P「(ああ、なんて平和なんだ……)」


雨上がりの不思議な匂いと、やわらかな風。
そしてだっこちゃんみたいにくっついて離れない、伊織たちの高い体温を肌に感じながら……
俺もみんなと同じように眠りについた。


そして、俺は夢を見ることになる。
とても奇妙だけど、とても優しい気持ちになれる夢だ……。



??『ぷろでゅーさーさん。おはようございます~』

P『ああ、おはよう! えっと、君は……』



~ あずさちゃん(5)編 ~


あずさ「ぷろでゅーさーさん~」 うろうろ

P「……?」

あずさ「ぷろでゅーさーさん~?」 くるり くるり

P「どうしたんだ、さっきからくるくるまわって……」


この子は……そう、俺が担当する年中さん『765組』の三浦あずさちゃんだ。
青味がかった柔らかな黒髪を持つ少女であり、ガーネット色のくるりとした瞳がきらきらと輝いてる。

あずさはちょっとマイペースでおっとりしているけど、とても心優しくて……
他の子どもたちみんなの、お姉さん役だ。



あずさ「わたし、きょうはいつもとちょっとちがうんですよ~?」

P「(……ああ、なるほど。そういうことか)」


P「え~? どこが違うんだろう……あ、わかったぞ!」

あずさ「!」 あほ毛ぴこん


P「今日は、いつもよりたくさん朝ごはんを食べてきたな!」

あずさ「…………」 あほ毛しょぼん



あずさ「……も~、ちがいますよ~」 ぷんぷん

P「じゃあ、なんだろうな……あ!」

あずさ「!」


P「今日は、新しい靴下を履いてきたんだな?」

あずさ「それもちがいます~……」

P「はっはっは、冗談だよ。本当はわかってるさ……」




P「髪、短くしたんだな。すごくかわいいよ、よく似合ってる」 なでなで

あずさ「! ……ふふふ」 てれてれ



~ 夢の中でも迷子編 ~


P「あずさ、ここにいたのか……」 ぜえぜえ

あずさ「あらあら~、ぷろでゅーさーさん」

P「まったく、いきなりいなくなるから心配したぞ。こんなところで何をやってたんだ?」

あずさ「ちょうちょをおっかけてたんです~」

P「こんなところに蝶々がいるのか?」

あずさ「それが、とちゅうでどっかいっちゃって……ここはどこでしょうか~?」

P「ここは……あれ?」


気が付いたらどこか知らないところに、俺たちはいた。
辺りにはたくさんの木の葉が落ちていて、いろんな動物の声が聞こえる。

どうやら森の中みたいだな……。
そばには大きな樹が立っており、そのねっこから小さなねずみの家族がひょこひょこと顔を出している。



あずさ「おみずがきもちいいですね~」 ちゃぷちゃぷ

P「ああ、そうだな」


大きな樹のすぐそばには、小さな川が流れていた。
ときどきねずみの家族がやってきては、この川で洗濯をしているようだ。
夏の太陽は今日も元気にさんさんと輝いているが、ここでは暑さなんてまるで感じない。


あずさ「ふふふ……おさかなさんがあたって、くすぐったいわ~」

P「はっはっは、転ぶなよ~」

あずさ「きゃん!」 ずるっ

P「っと危ない。言わんこっちゃないな」 がしっ


あずさ「ふふ。ぷろでゅーさーさんは、いつでもわたしのことたすけてくれるんですね~」

P「……そりゃそうだ。だって……俺は、あなたのことが――



~ 雪解け水編 ~


P「……夢か」 むくり

はるか「……ぷろでゅーさーさぁん……えへへ……」

ちはや「……すぅ、すぅ……」

やよい「……はわ……べろちょろ……むにゃむにゃ」

いおり「……しゃるる、どにゃりゅ……かんでにゃいわよ……」


P「(みんな、よく眠っているな。しかし俺はなんという夢を……)」

P「はぁ……夢の中なら、名前で呼べるんだけどな」


ちょんちょん


P「ん?」

ゆきほ「ぷろでゅーさー……」 もじもじ



ゆきほ「あの、そのぅ……」 もじもじ きゅっ

P「どうしたんだ、雪歩? ……ああ、わかった。ちょっと待ってろよ」


栗色の髪をショートボブの形にしているこのかわいらしい女の子は、萩原雪歩ちゃん。
雪歩はちょっと臆病で気弱なところもあるが、いざというときには一生懸命になれる子だ。

男の人が苦手だったが、最近ではようやく俺になら心を許してくれるようになった。
だけど、この季節は……。


P「暑くて喉が渇くからって、お茶ばっかりごくごく飲んでちゃだめだぞ~。よっこらしょっと……」

ゆきほ「ひ~ん……ごごごめんなさいですぅ……で、でももう……だめぇ……」 ぷるぷる

P「ま、まじすか! すぐトイレ連れてくから! 頼む、もう少しだけ頑張れ!」 がしっ だだだ


この子は、まだひとりでトイレをするのが少し苦手なのだ。
できるにはできるのだが、誰かがそばにいないと落ち着かないらしい。



ゆきほ「あ、あ……だめですぅ……そ、そんなにゆれると…………ぁ」

P「あ」


  ちょろり……


ゆきほ「あ、あわ……あわわわわ……」


  ちょろちょろ……


ゆきほ「ひ~ん!!」 かぁああ

P「…………は、はは」


教室と直接繋がっているトイレに到達する一歩手前というところで……間に合わなかった。
あ、それと俺いま、雪歩を抱き上げていたんですよ。
おいおい……こいつはあったけぇな。雨はもう止んだんじゃなかったっけ? あは!



ゆきほ「……えぐ、ひっぐ……うぅ……」 しくしく ちょろちょろ……

P「(今回はまたたくさん溜めましたな~。おお、まだ出とる)」

P「ま、まあそんなに気にするな。誰にだってあることさ」 なでなで

ゆきほ「また、お、おもらししちゃいましたぁ……も、もももうこんなわたしなんて……」 ぷるぷる


このくらいの年齢の子どもには、たまにこうやっておしっこを限界まで我慢してしまう子がいる。
それは決して、病気でも悪いことでもないんだ。成長とともに自然と治る、癖のようなものである。
だが……やっぱり本人にとっては一大事みたいだな。



ゆきほ「わたしなんて……あ、あなほって……!」 がしっ

P「ちょーっと待ってくれ! いいか、よぉく聞くんだぞ……」

ゆきほ「なんですかぁ~……わたしには、もうこれしかないんですぅ……」 ふらふら

P「その、スコップ、おろす……それ、だめ……教室、穴、いけない……わかる?」


雪歩は落ち込んでしまったり恥ずかしくなったりすると、どこからともなくスコップを取り出し穴を掘るのだ。
先日ついに、目を離した隙に砂場の最下部のコンクリートに到達するという偉業を成し遂げた。
そのあと砂を埋めたのは当然俺なのだが。



~ 風に揺れるゆきぱん編 ~


  ぱたぱた……
           ぱたぱた……


P「うん、これで大丈夫。カラッとしたいい天気だし、帰る頃には乾いてるだろう」

ゆきほ「ご、ごめんなさいぃ……」 うるうる

P「はっはっは、気にするな! 慣れたもんさ!」


その後、俺は濡れてしまった衣類を洗濯機にかけて洗った。
物干し竿に俺のズボンと雪歩のぱんつが吊るされ、風に吹かれてぱたぱたと音を立てている。

ちなみにいま、俺はジャージ姿である。
そして雪歩には予備のスモックを着させている。もちろんその下はすっぽんぽんだ。
いやしかし、風がちょうどいい具合に強くて気持ちがいいなあ……。



P「ほら、もう泣くな泣くな。だっこしてあげよう」 だきっ

ゆきほ「…………」 ぎゅっ

P「(前はあんなに避けられてたのが、嘘みたいだな。かわいい)」


ゆきほ「……ぷろでゅーさー、わたし……だめだめですぅ」

P「そんなことないさ。雪歩はとっても良い子だ、俺が証人になってやる」 なでなで


ゆきほ「でも、いつもめーわくかけて……うぅ」

P「迷惑なんかじゃないよ。こうやってみんなに頼られるのが、俺の仕事なんだからな」



P「雪歩は、自分からちゃんとごめんなさいが言える。それはじつは、立派なことなんだぞ?」

ゆきほ「りっぱ、ですかぁ……?」

P「そうだ。わたしがいけないんだ、ってのを認める勇気がないと……ごめんなさいは言えない」

P「俺は、それができる雪歩がすごいと思うよ。大人だってなかなか難しいんだからな!」 なでなで

ゆきほ「……え、えへへ……りっぱ……」 にこにこ

P「ああ、雪歩は立派だ……だめだめなんかじゃ決してない、とっても偉い子だよ」


ようやく、雪歩が笑顔を取り戻したな。
普段なかなかお目にかかれないその笑顔は、夏の太陽にも負けないくらい輝いている。



P「さぁ、教室に戻ろうか。もうそろそろお昼寝タイムも終わりだ」

ゆきほ「……あ、あのぅ」

P「ん、どうした?」


ゆきほ「こ、このまま……だっこしたまま……つれてってくださいぃ……」 ぎゅう

P「……もちろん、いいとも」 ぎゅっ



~ プールであそぼう編 ~


まこと「ぷろでゅーさー! ほら、はやくはやく!」 ぴょんぴょん

P「ちょ、ちょっと待ってくれ~」

まこと「なにいってるんですか! ぷーるがにげちゃいますよー!」 とたたた


俺の周りを走り回っているこの女の子は、菊地真ちゃん。
動き回るたびに、真っ黒なショートヘアのてっぺんに生えた2本のあほ毛が雄雄しく揺れている。
真は見ての通りの元気っ子であり、そして貴重なボクっ子だ。
いまは水着姿なんだが……。


P「真……あの、その水着は……」

まこと「かわいーでしょ!」 ふふん


真の水着は桜の花もびっくりのパステルピンク、さらにはふりふりが付いていたのだ……。



P「うん、いいじゃないか! なんていうか、意外性ってやつだな!」

まこと「でしょー!? やっぱりぷろでゅーさーわかってくれたー!」


いや、本当にいいと思うよ。幼稚園生だもの、やっぱかわいいのがいいんだよ。
でもさ、わかるだろ? そんなの真に誰も求めていない、誰も得しないんだって。
雪歩もこの水着を見るなり卒倒してたしなぁ……。


まこと「でも、いがいせーってなんですか?」 きょとん

P「イメージ通り、ってことだよ。さあ行こう!」


だが内心どんな風に思おうとも、保育士たるもの園児のおしゃれセンスに口を出してはいけない。
そうして俺は、優しい嘘をついたのであった。



P「おいっちに! さんし!」 ぐいぐい

まこと「ごーろく! しちはち!」 ぐいぐい

P「よーし、みんな準備体操しっかりできたな! じゃあ、あそび時間だー!」

みんな「わ~!」 じゃぶじゃぶ


説明が遅くなってしまったが、今日はみんなが待ちに待ったプール開きだ。
昨日までのような悪天候にならずに本当によかった……。

うちの幼稚園には珍しく(最近ではそうでもないのかもしれないが)、園児用のプールが設けられてある。
ちなみに全員参加というわけじゃなく、参加希望の子どもだけがこうしてプールに入って自由に遊ぶのだ。


ちょんちょん


ひびき「ぷ、ぷろでゅーさー!」



ひびき「わんと、えと……じぶんと……いいっしょに……あ、あそぶさー!」

P「ああ、いいぞ。響」


この子は、年中さん『961組』の我那覇響ちゃん。
いつもは量のある黒髪をポニーテールにしているのだが、いまはキャップ姿だからそれが見えないな。
しかし無理やり詰め込んだのか、随分とこんもりしている……。


P「ずいぶん上手になったな、こっちの言葉」 こんもりつんつん

ひびき「えへへ……」


響は沖縄出身であり、親御さんの仕事の都合でこちらに引っ越してきたらしい。
最初は身に付いてしまった方言が原因でみんなとあまり馴染めなかったのだが……

一生懸命練習したおかげで、最近では標準語を使ってコミュニケーションがとれるようになった。
俺のことも、みんなの前では他の子どもたち同様プロデューサーと呼ぶようになったしな。



まこと「ぷろでゅーさー! あ、ひびきも!」

ひびき「まことー! あ、あそぼー!」


外に出るようになったおかげで、響は『765組』のみんなとも仲良くなった。
中でも真とは、一緒にかけっこをしたりして遊んでいる姿をよく見せてくれる。
どこか波長が合ったのだろう、ふたりとも元気いっぱいな子だからかな。


まこと「なにしてあそぼーか?」

ひびき「えと……んと……びーとばん!」

P「……よーし、とってくるからちょっと待ってろよ!」


考えながら喋るので、ときどき言葉が詰まってしまったりするが……
響がこうして他のみんなと仲良くしているのを見ると、とても嬉しくてなんだか涙が出そうになってしまう。



~ ビート板であそぼう編 ~


P「ほおら、ふたりともしっかりつかまってろよ~」 すぃー

ひびき「うひゃー……」

まこと「ぷろでゅーさー! もっとはやく~!」


ふたりが抱え込んだビート板をひっぱり、俺はプールの中をゆっくりと歩き始めた。
あんまりはやすぎると水が喉に入っちゃうかもしれないからな。
太陽の光を反射してきらきら光る水の上に浮かびながら、ふたりは一生懸命にビート板につかまっている。


P「よーし、このままちょっと泳ぎの練習してみようか!」



P「まず、ビート板につかまったまま足をばたばたさせるんだ。えっと、コツは……」

ひびき「じぶん、できる、ぞー!」 ばしゃばしゃ

まこと「こーですかー?」 ばしゃばしゃ


P「お、ふたりともいい感じだな。そしてこのまま俺が手を離すと……」

ひびき「すすんでる、さー!」 すいー

まこと「ボク、およいでます!」 すいー


P「(ビート板ありとはいえ、一発でできるとかこの子たちなんなの)」

P「まあ響は沖縄出身だからか……それにしても真もすごいな」

ひびき・まこと「わー!」 ばばばば すいすい



P「ふぅ……あずさ先生がいないのが悔やまれるが、水が気持ちいいな……ん?」

ひびき「…………」 たたたた きょろきょろ

P「どうした、響?」

ひびき「……にぃに」 ぼそ


みんなのことを見守りながらプールサイドに腰掛けていると、響が声をかけてきた。
キャップをはずしていてるため、しっとりと濡れた髪の毛から水滴がぽたぽたと落ちているのが見える。

なお先ほど、響は俺のことをプロデューサーと呼ぶようになったと説明したが……
このようにふたりのときはにぃにと呼んでくるのだ。どうやら俺がこの子のお兄さんと似ているかららしい。


ひびき「にぃに!」 ぎゅう

P「お、なんだどーした! 響は甘えん坊だなー!」

ひびき「ぁんすか、たいっきりんかいなれねぇんやっさぁもん!」 ※


※ あんまり、ふたりっきりになれなかったんだもん!



ひびき「わんぬみじぎ、ちゅらかぁぎいみん? ちゅらかぁぎいしょ!」 ※

P「ああ、よく似合ってるよ。響にぴったりだな、かわいい」

ひびき「~~! もー!」 ぱしぱし


P「ははは、やめろって! そんなことする悪い子にはこうしてやるぞー!」 わしゃわしゃ

ひびき「ん~! や~!」


P「(……かわいい)」 わしゃわしゃ

ひびき「ん~…………んふふ……♪」


※ じぶんのみずぎ、かわいい? かわいいでしょ!



まこと「…………」 じー

ひびき「あ、まこと! ……う~……」 かぁああ

まこと「ひびき! ボクときょーそーしよ!」 ぐいぐい

ひびき「あ、あ……にぃに~……」

P「いってらっしゃ~い」



~ 心は乙女編 ~


まこと「ひびき、ぷろでゅーさーのこと、すきなの?」

ひびき「え! ……そ、そんなこと、ないさぁ……」

まこと「へー。でも、さっきすごくうれしそーだったよ!」

ひびき「うぅ~……」

まこと「ねえねえ、どーなのさ!」


ひびき「……じぶん……えと、は、はずかしぃ……ぞ」 かぁああ

まこと「ねえねえ、どこをすきになったの!? おしえておしえて!」

ひびき「や~あ! まこと、いじわる!」 ばばば

まこと「あー、まってよ~!」 ばばばば


P「(あいつらめっちゃ泳ぐのはやいなぁ。ほんとに幼稚園児か?)」



~ プールで学ぼう格差社会編 ~


律子「プロデューサー殿。子どもたちをやらしい目で見ていないでしょうね~?」

P「何を言っているんだ、律子……みんな同じようなちんちくりんだぞ」


この2本のしょっか……あ、いやくせっ毛を持つ女性は、年長組『九六一組』の担当である秋月律子だ。
律子はまだ学生であり、この幼稚園に教育実習に来ている研修生である。

いまはプールなのでいつもの髪型とは違い、濃い茶髪をエビフライのようなふたつのおさげにまとめている。
それにしても……。


律子「そういうのが好きな変態もいるんです。いやですよ、私。知り合いから逮捕者が出るなんて」 たゆん

P「(律子は着やせするタイプか、とてもほどよい。はんぱねえ)」 ちら……ちら……



P「(いかんいかん、俺にはあずさ先生という憧れの人が……)」 もんもん

P「いやだめだ! いまそれを考えるのはむしろ危険だ!!」

律子「? 急に何を……」 たゆん


ちはや「……くっ」 ぺたぺた

はるか「ちはやちゃん?」



P「お、春香に千早。やっと出てきたか」

はるか「ちはやちゃん、あんまりみずぎになりたくないっていうから……」

ちはや「……りつこ。すごい……」 ぺたぺた

P「(何を考えているかわからんが、この子には未来の自分の姿が見えているのかもしれないな)」


P「ははは、気にするな千早。いまはみんな同じようなもんだよ」

はるか「? おんなじ?」

P「まあ、あくまで今だけはな……さあ、宝石探しでもしようか」

ちはや「はい……」 ずーん



~ 宝石探しであそぼう編 ~


P「ほ~ら、誰が一番たくさん見つけられるかな?」 ぽちゃんぽちゃん

はるか「ちはやちゃん! いっしょにがんばろうね」

ちはや「うん。りつこにはまけない……!」

律子「え!? 私も参加するの!?」


宝石探しというのは、プールの底に落ちている色とりどりのやわらかな石を探す遊びだ。
本来はこうやって遊びを交えて楽しみながら、徐々に水に慣らしていくのが正しいやり方なのである。
真と響は特別な例だな。



P「じゃあ、律子対春香・千早チームだな」

律子「まあ、適当に手加減してやりますか……」

P「そう言っていられるかな? 勝ったら何かご褒美をやろう」

律子「私までそうやって子ども扱いして……それなら、後悔させてあげますよ!」 ずんずん ばちゃばちゃ


P「子どもたちにケガさせんなよ~」

律子「え? 何言ってるんですか、当たり前です」

ちはや「よーい……」

はるか「すたーと!」



ばしゃばしゃ


律子「子どもたちにとってはわりと深いかもしれないけど……私にとっては膝上くらいね。楽勝よ!」

はるか「……ぷはあ!」 ばしゃーん

ちはや「はるかすごい、もうみつけたの?」

はるか「うんー! まっかなたいようのほうせき!」 きらん

ちはや「わたしも……ぶくぶくぶく」


律子「あら、意外と早いのね。よーし、私も……ってうわ!?」 ぐらっ

律子「(他の子たちが、足元に……!)」

律子「ぶつかるわけにはいかないものね……気をつけないと」

ちはや「……ぷは! わたしも、おつきさまのほうせきみつけた」 きらん

律子「え!?」



はるか・ちはや「かったー!」

律子「負けました……」 ずーん

P「苦戦するだろうと思ってはいたが、まさか一個だけとは」

律子「ちぃちゃな月の宝石だけですよ……」 きらん


このように、子どもたちと一緒に遊ぶときには細心の注意を払わなくてはいけない。
どこから現れるかわからなくても、絶対にケガをさせるわけにはいかないのだ。

まあ、それに律子は最近運動不足だったっぽいしな。
いつも走り回ってる春香たちが勝っても全然おかしくはない。


P「しかし……ぷぷ」

律子「あーもう! その顔腹立ちますね!」



~ 一方その頃、おさんぽ編 ~


やよい「あっるっこ~♪ あっるっこ~♪」 ぎゅ

あずさ「昨日までと違って、今日はとってもいいお天気ね~」

たかね「まこと、そのとおりですね。おひさまがきもちいいです」


ゆきほ「ぽぇ~……のどがからからですぅ……おちゃ……」

あずさ「雪歩ちゃん、ダメよ~? さっきもいっぱい飲んだでしょう?」


私たちはいま、幼稚園のすぐ隣にある公園へお散歩にきています。
本当は年少さんだけの予定だったんですけど、何人か年中さんの子もいますね。
この子たちはプール開きに参加しなかったので、こうして一緒に来ているんです。

よくわかりませんが
前も貼った参考画像おいておきますね



たかね「はぎわらゆきほ。おちゃばかりのんでいると、またきのうのように……」

ゆきほ「えぇ!? し、しじょうさん……なんでしってるんですかぁ~……」 かぁああ

たかね「ふふふ。わたくしは、なんでもしっているのです」


このふわふわの綺麗な銀髪を持つ女の子は、年中さん『961組』の四条貴音ちゃんです。
前髪がまっすぐでとってもかわいらしいですね~。

ミステリアスな雰囲気を感じるちょっと不思議ちゃんですけど……
みんなを思いやって行動できる、とても心優しい子なんですよ。



あみ「わ~!」 たたた

まみ「まって~」 たたた

あずさ「亜美ちゃん、真美ちゃん。走って列の外に飛び出しちゃダメよ~……」

たかね「わたくしにおまかせください……」 すすっ


たかね「ふたみあみ、ふたみまみ。あんまり、せんせいをこまらせてはだめですよ」

あみ「う、おひめちん……」

まみ「ごめんなさーい……」

たかね「わかればいいのです。さあ、いっしょにおててをつなぎましょう」

あみ・まみ「は~い」 ぎゅっ

いおり「たかねのいうことには、みょーにすなおよね……」


あずさ「ふふ。貴音ちゃん、すっかりお姉さんね~」

ゆきほ「し、しじょうさん……かっこいいですぅ……」 ぽー



~ 公園であそぼう編 ~


あみ「あ! よつばのくろーばーみっけ!」

まみ「あーいいなぁ~! まみもさがすー!」 もぞもぞ


たかね「いいですか、はぎわらゆきほ。これをこうしてですね……」 すっすっ

ゆきほ「わぁ、かんむりですぅ! ……しじょうさん、すごいなぁ……」 ぽー

たかね「ふふふ……これはあなたにさしあげましょう」

ゆきほ「!」 きゅん


あずさ「うふふ。みんな楽しそうに遊んでいるわね~……」

いおり「ねえねえ、あずさ。ききたいことがあるんだけど」

あずさ「あら、伊織ちゃん。なにかしら?」

まさかあのスキルが...



いおり「あずさは、ぷろでゅーさーのことすきなんでしょ?」

あずさ「!? え、ええそうよ~。みんなと一緒で、先生もプロデューサーさんのことだいす――

いおり「じゃなくて、およめさんになりたいんでしょ?」

あずさ「……な、なんのことかしら~」 かぁああ


幼稚園生の子にこんなことを聞かれて顔を赤くしている保育士さん、今までいたでしょうか~……。
もっとこう、上手にごまかして……でも伊織ちゃんなんだか真剣な目だし……
そ、そもそもなんで伊織ちゃんは、急にこんなこと言い出したのかしら?


いおり「だって、さっきことりがいってたもん!」

小鳥「呼んだかしら?」 ひょこ

あずさ「あら音無さん。ふふ、どこから出てきたんですか~ちょっとお話があるんですけど~」



小鳥「あずさ先生ったら、最初からいたじゃないですか。やよいちゃんと手をつないでいたのはあたしですよ」

あずさ「そ、そうだったんですか……年長さんは?」

小鳥「みんなプールに参加してますからね~。今日くらいはのんびりしたいですぴよ」


この緑かかった黒髪ショートヘアの女性は、年長組『九六一組』の担任である音無小鳥さんです。
私、音無さんに自分の思いを話したことはなかったんですけど……どうして知っているのかしら~。
優しくてとっても素敵な先生ですけど、謎が多い方ですね……。


小鳥「伊織ちゃん、あたしのこと噂してたかしら?」

いおり「ねえことり。あずさって、ぷろでゅーさーのことすきなんでしょ?」

小鳥「ええ、そうよ」 にこ

あずさ「ちょ、ちょっと音無さん?」



あずさ「音無さん、子どもたちにそんなこと吹き込まないでください! もう……」 ぼそぼそ

小鳥「え? なんですかあずさ先生? ふんふん、その通りですって?」

いおり「やっぱりね! そーだとおもった!」


あずさ「…………」 じー

小鳥「そ、そんな目で見られると……どきどきしちゃいますよ……」 どきどき

あずさ「……はぁ」


私ったら、本当にらしくないですね~……。
いつもは声を荒げたり、ため息をついたりなんてしないんですけど……はぁ。
もう、音無さんったら……!



小鳥「伊織ちゃんだって、なんとなくそう思っていたわよね~?」

いおり「まーね! あずさ、ぷろでゅーさーのまえだとぜんぜんちがうんだもん」

あずさ「そうかしら~……」

小鳥「それにプロデューサーさんだって、あずさ先生のことをこんな風に言ってましたよ?」



  P『あ、ああ、あずさ先生ですか? ええ、す素敵な先生ですね!』

  P『み、みんなが甘えられるお姉さん的存在かなーって思いますね!』

  P『え、そういうことじゃない? 好きかって? 愛してるかって?』

  P『そそそういう目で見たことはないですよぅ~ははは! やだなあ音無さんってばばば』



小鳥「この動揺っぷり、完全に脈ありじゃないですか! よっ!」

いおり「ひゅーひゅー!」 ※吹けていません

あずさ「…………もう、恥ずかしいわ」 かぁああ



あずさ「ごほん……ぷ、プロデューサーさんが、私のことをどう思ってるかはともかく!」

あずさ「私そんなに、わかりやすかったでしょうか……」 ずーん

小鳥「そりゃもう!」

いおり「ばればれよねー」



あずさ「……でも……」 ぼそぼそ

いおり「え?」


あずさ「……私なんかじゃ……きっと……彼に釣り合わないわ……」 ぼそぼそ

いおり「あずさ、なんていったのー?」


小鳥「(……あずさ先生)」



あずさ「……ふふ、なんでもないで~す。伊織ちゃん、みんなには内緒よ?」

あずさ「先生と伊織ちゃんだけの……秘密。ね?」 なでなで

いおり「えへへ……ひ、ひみつならしょーがないわね!」



小鳥「……あずさ先生? さっきのは……」

あずさ「…………」

小鳥「……いえ、なんでもないです。でも……」

小鳥「あたし、応援してますからね! 頑張ってください!」 ぐっ

あずさ「音無さん……ありがとうございます。ふふ、私なりに頑張ってみますね」

さるよけしえん



てくてく


小鳥「(帰り道……)」

小鳥「(遊びつかれて眠ってしまったやよいちゃんをおんぶして、あたしは歩いています)」


小鳥「(あたしがどういう気持ちで、あの人に……あずさ先生の印象を聞いたか)」

小鳥「(それは……あたしにしかわかりません)」


あずさ「貴音ちゃん、雪歩ちゃん。それなぁに?」 てくてく

ゆきほ「ひ、ひみつですぅ!」 さっ


小鳥「(あずさ先生……本当に、頑張ってくださいね)」



~ 体を拭いてあげよう編 ~


ひびき「にぃに、ふいてー」

P「まったく、響はしょうがないなぁ~」 ごしごし


楽しかったプールの時間も、もう終わりに近づいてきた。
子どもたちはそれぞれ濡れた体をごしごしと懸命に拭いているが……
中にはこのように、人にやってもらわないとだめな子もいる。家庭での教育方針の違いだな。


ひびき「んふふ…………ひゃん!」 ぴく

P「おっとすまん、くすぐったかったか?」

ひびき「…………」 かぁああ

ピヨちゃん(´;ω;`)ウッ…

あずささんがんばって



ひびき「……も、もぅ………」

P「どうした、急に黙っちゃって」


ひびき「……う、う~……へ」

P「へ?」



ひびき「……にぃに……へんたぃ……」 もじもじ

         ,イ         
       { /::|      ,, -....――........、
       ヽ:{:::;!z_ _>'"::::::::::::::::::::::::::::::::::\
      ィ⌒ヽ(;;; )⌒ヽヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
     /::::/,イ⌒Y、:/´⌒ヽ::::ヽ::::::::::::::::::::::::::::::)     ち
    //  {{ ゞ-'::::/    ヽ::::ヽ::::::::::::::::::::::::::::!
   署     ト.、{  ,,ィ=ミ \ト、:::ト.、:::::::::::リ      ょ
          |ヽ::{ 〃  __   ` \{ \::::::::i:
   ま      !:::N.  ,イんハ    ,ィ⌒ヾヽノ        っ
          ヽ;rヽ 圦ゝrリ         | 
   で    , 、  ヽ「ハ  `¨´   ' ノ   小      と
        ヽ ヽ   \   ` ̄    /:从
   来     }  >'´.-! >―ァ‐ァ― <イ ̄ヽ,
         |    -!   \` ー一'´丿 \
   い    ノ    ,二!\   \___/   /`丶、
        /\  /    \   /~ト、   /    l



P「(響もませてんなー。こんな言葉、誰に教えてもらったんだろう)」

黒井「ハーハッハッハ! おやぁ~? そこにいるのは765組の弱小プロデューサーではないか!」 てくてく

黒井「響ちゃん、体を拭いてもらっていたのか? だが前も言ったが、この男は変態だから気を許してはダメだぞ」

ひびき「へ、へんたい!」

P「(どうやら犯人が自らやってきたようだ)」



P「黒井先生、こんにちは。俺は変態じゃないですよ……」

黒井「何を言うか! あれほどのいやらしい目つきを、私はこれまで見たことがない!」

P「やめてください、子どもたちが真似するでしょ!」

ひびき「……へ、へんたい、でも……べつにぃ……」 ぼそぼそ



P「遅かったですね、もうプールも終わりかけですよ。美希の様子はどうですか?」

黒井「ハンッ! 貴様に教えてやるほど、私は甘くはないぞ! 天使のような寝顔であった!」


P「それはよかった……でも、だから遅れたんですね。それじゃここはあとよろしくお願いします」

黒井「君に言われなくても重々わかっている! ほらみんな、まだ体を拭き終わっていない子はだれかな~?」

P「(こっちのほうがよっぽど変態に見えるなぁ)」


P「さて、俺はこのあとどうしよう……美希のところにでも行ってやるか」 てくてく


“プールの監視係を途中で交代する”という黒井先生との男の約束を果たした俺は、
美希が寝ているであろう『961組』の教室へと向かった。



~ 汗だくみきみき編 ~


みき「…………うかつだったの」

P「え?」

みき「ずっとねてたの! みきも、ぷーるではにーとあそびたかったの!」 じたばた

P「ははは……そんなに暴れると、また汗かくぞ」

みき「むー……」 だらー


この金髪の女の子は、『961組』の星井美希ちゃんだ。
大好きなことには一生懸命になれる子だが、夏場は暑さのためかこうしてだらだらしていることが多い。
プールの時間になっても一向に起きないため、ずっと教室で寝かせておいたのである。


みき「むにゃむにゃ……」 だらー

P「(……ほっぺをつついてやろう)」 つん

みき「んむー」 ぷるん

P「(かわいい)」



みき「みきてきには、もっとやさしくぬがしてほしいっておもうな……」

P「10年早いわ」 ぺし


まあ、俺もちゃんとした年齢の女性の服を脱がしたことなんてないんだけどな。
そんなところまで、俺は園児たちと同じくピュア&チェリーボーイなのである。
う、うぅ……。


みき「はにー、ないてるの?」

P「な、泣いてなんかないやい! ぐすっ」

みき「やっぱりないてるのー! えへへ、みきがいいこいいこしてあげるね!」 なでなで

P「……美希は本当に良い子だなぁ。まるで天使のようだよ」


着ているものはぱんつだけ、あとはすっぽんぽんの美希によしよしされて慰められている俺の姿は……
なにも知らない人の目にはどう映るんだろう。あまり考えたくはないな……。

おっと間違えた>>188の前にこれだ



みき「あふぅ……」

P「また寝るのか……おーい、一回起きろ。汗ふくぞ」


みき「はーい、なの……」

P「返事ばっかりよくて……ほら、立ち上がって着てるものを脱ぐんだ」


みき「はにーがぬがせてー……」 ぐでー

P「しかたないな……あーらよっと!」 ずぼん

みき「ぷふぉっ!」 すっぽんぽん



P「ほら、腕ぴーんってあげて。ほっといたらあせもになるからな」 ごしごし

みき「んー」 ぴーん


P「……よし、こんなもんか。ちゃんと服着ろよー」

みき「……かぜがきもちーのー……」 ぐでー

P「そんなかっこで寝たら風邪ひくぞ……それに、夜眠れなくなる」

みき「よる! ……きょうはなにか、あったよーなきがするの?」


P「まさか忘れてたのか……。今日は、お泊り保育だよ」

みき「それなのー! はにーといっしょにおとまりなの! あは!」



~ お泊り保育編 ~


はるか「ぷろでゅーさーさぁん……おとまりですよぉ、おとまり……」

P「春香、無理しないで寝てていいぞ」

はるか「だいじょぅぶですぅ……ふわぁ……」

ちはや「…………」 こっくり こっくり


春香と千早の意識が夢の世界へと旅立とうとしている……まあプールの日にお泊り保育だもんな。
こんな時間から眠くなってもしかたない、寝かせといてやろう。
ええっと、プールに入ったにも関わらずまだ眠くないのは……



まこと「ぷろでゅーさー! きゃんぷふぁいやーみにいきましょー!」 ぴょんぴょん

ひびき「じ、じぶんも……えと、いっしょ!」 ぴょん

P「(この子たちなんでこんなに元気なんだろう)」



P「本日行われるお泊り保育は、厳密には保育ではない」

P「希望者だけが、年少から年長問わず参加して一緒に夜を過ごす……ただのお泊り会みたいなものだ」

P「一般の幼稚園でいうお泊り保育は、だいたい年長さんになって初めて行われる」

P「だが、年長さんとなると……な?」


まこと「ぷろでゅーさー? なにをいっているんですか?」 きょとん

P「なんでもないよ。さあ行こう!」



~ キャンプファイヤー編 ~


P「よし、じゃあ後は火を付けるだけなんだが……大丈夫か、冬馬?」

とうま「たいやくだな……」 ぷるぷる

P「男の子なんだから、しっかりいいとこ見せろよ」

とうま「お、おう!」 ぷるぷる


この子は、年長さん『九六一組』のあまがさき……あ、いや天ヶ瀬冬馬くんだ。
ブラウンの髪のてっぺんに存在するあほ毛がぷるぷる揺れているが……
本当に大丈夫かな?



うちの幼稚園のお泊り保育では、簡単ではあるがキャンプファイヤーを行うことになっているのだ。
高く積まれた薪台に、火が灯ったトーチを持った数人の園児が近づいていく……。
もちろん、先生方も一緒だ。


とうま「え、えい!」 ボゥ……

小鳥「ふふ、よくできたわねー」 なでなで

とうま「へ、へへ! あったりまえだろー!」


ボゥ、と音を立てて炎が燃え上がり、ついにキャンプファイヤーが始まった。
静かな暗闇の中に生まれた茜色が、少しだけ日焼けした子どもたちの顔を優しく照らしている。

……だがキャンプファイヤーとはいっても、この幼稚園ではちゃんとした様式にのっとるわけではない。
中央で燃える火を見ながら、みんなそれぞれ思い思いの時間を過ごすだけだ。


まこと「すごーい……」

ひびき「あぱらぎー……」


これでいいのかな、とは感じるが……それでもこの子たちのこんな表情を見れば、
やっぱり親睦の儀式としての役割は果たせているんじゃないかと思う。

ひびき「まはらぎー……」



P「(少しでも、みんなの心にこの炎の明るさが残るといいな。しかし……)」 ちら


たかね「もぐもぐ……これは…………なんひょも……」

みき「むしゃむしゃ……おいひーの!」

P「……ふたりとも、食べ終わってから喋らなきゃダメだぞ~?」

たかね・みき「ふぁ~い」

P「というかな、いくら自由参加だからって……もっとあっちに興味持たないのか」


せっかく大きくて綺麗な火が灯ったというのに、このふたりは見向きもしていなかった……。
貴音はカレーを、美希はおにぎりを、わざわざ自分の席に持ってきてひたすら頬張っていたのである。
膨らんだほっぺがとてもかわいいな……だが、俺は甘やかさないぞ。


P「えい」 つん

みき「ぷふぅっ!」



たかね「……ごくん。……まこと、“きゃんぷふぁいやぁ”というものはふぜいがかんじられますね」

P「いまさらなぁ……だが、可愛いから許そう」

みき「みきは!? ねーみきはー!?」

P「はいはい、美希もとっても可愛いから許しちゃうぞー」


みき「えへへぇ……」 てれてれ

たかね「ふふふ……みき、おそろいですね」 にこにこ

みき「うん!」

P「(ほんま天使かこいつら)」



~ ふしぎなお星さま編 ~


いおり「ちょ、ちょっとあんたたち! と、とまりなさいよ~……」 ぐいぐい

あみ「……まみ。めらめらだよ……」 ふらふら

まみ「うん……ぼーぼーだね……」 ふらふら


P「こーら! 炎に近づくんじゃない!」 むんず

あみ「はっ! に、にぃちゃーん!」

まみ「まみたちいま、いしきをうしなってたよー!」

P「どういう生き物なんだお前らは……」



たかね「ふたみあみ、ふたみまみ。これを“ぷれぜんと”しましょう」 すっ

ゆきほ「えへへ……あげますぅ」 すっ

あみ「あ! おひめちん! ゆきぴょんもー!」

まみ「まみたちにくれるのー?」

ゆきほ「はい、いおりちゃんにも……わたしとしじょうさんでつくったんだよ」

いおり「あ、ありがとう……なあに、これ? おほしさま?」


ゆきほ「おはなのくきであみこんだの……なづけて」

たかね「“わんだりんぐ・すたぁ”、です」

ゆきほ「わたしたちとも……も、もっとなかよくしてね……えへへ……」


P「(何この子たちめっちゃいいお姉ちゃんやん)」



~ ひびたかゆき編 ~


ひびき「たかねー!」 ぎゅうう

たかね「おや、ひびき……どうしたのですか?」

ひびき「んふふ……たかねにぎゅって、したかったん、だぞ!」

たかね「ふふふ。ひびきはあまえんぼうさん、ですね」

ゆきほ「……むぅ……」


ゆきほ「し、しじょうさん! わ、わたしも……」 もじもじ

たかね「ええ。こちらに……」 すっ

ゆきほ「えへへ……」 ぎゅう

ひびき「……むぅ……」



ひびき「ゆ、ゆきぽ! たかねは……じ、じぶんいちばんの……おともだちなんだ、ぞ! ね、たかね?」

たかね「ええ、そのとおりです……」

ゆきほ「そ、そんなの……ずるいですぅ! わ、わたしだって……」 うるうる

たかね「あ、あぁ……なかないでください」 おろおろ


ひびき「ゆきほ、まことと……いちばん、なかよしだろー!」

ゆきほ「まことちゃんは……その……と、とくべつ、だから……」 かぁああ

ひびき「じ、じぶんだって! たかねのこと、とくべつ!」

ゆきほ「え、えぇー!? そ、そうだったんですかぁ……」



たかね「ふたりはなんのかいわをしているのでしょう……」

P「貴音にはちょっと難しいかもな……だが、素晴らしいものだ」 にやにや

黒井「…………」 にやにや



まこと「ひびきー! いっしょにおどろーよ!」 たたた

ゆきほ「え!? ま、まことちゃん……わたしは……」

まこと「あ、ゆきほいたの! ごめんね、たかねのもふもふにかくれて、みえなかったんだー」

ゆきほ「…………」 ずーん

ひびき「……ゆ、ゆきほ?」


ゆきほ「まことちゃんにもきづいてもらえない……こ、こんなわたしなんて……あ、あなほっ」 ふらふら

P「待てぃ! させねーよ!」 がしっ

ゆきほ「ひ~ん……ぷろでゅーさーは、わたしのそんざいいぎまでぇ……」 しくしく

P「どこで覚えたそんな言葉……」



~ フォークダンスをおどろう編 ~


ひびき「んっ! はーっ!」 たたんっ……くるりん ぱっ

まこと「なんの! ほい!!」 くるくる……たん! たたたんっ!


ひびき「…………」

まこと「…………」

ひびき・まこと「……!」 がしっ!


ひびき「まこと! やるなー!」

まこと「へへ、ひびきこそ……いいだんすだったよ」


P「(オクラホマミキサー踊れよ)」



P「あ、あずさ先生! よろしければ一緒にフォークダンスでも……」

あずさ「あ、あらプロデューサーさん。こんばんは~」 ちら


P「? こ、こんばんは。いやーいい夜ですね! そういえば、やよいたちは……」

あずさ「やよいちゃんは、もうおねむみたいでした~。春香ちゃんと千早ちゃんも?」

P「ええ。プールに入った園児のなかで元気なのは、あそこでダンスしてる響と真だけですよ」

あずさ「……そ、そうですか~」 ちら


P「(なんだろう、さっきからちらちらと……心ここにあらず、って感じだな)」

あずさ「じゃ、じゃあ私、音無さんに呼ばれていますので……失礼しますね」 たたた

P「あ、はい……って、結局フォークダンスできなかったな……」

P「(あれ!? もしかして俺、避けられてる!?)」



小鳥「……あずさ先生」 ぼそぼそ

あずさ「音無さん……」


小鳥「あんなこと言われたから、ってのはわかりますけど……露骨に避けすぎじゃないですか?」

あずさ「な、なんのことでしょうか~……」 ちら

小鳥「いーから、みんな眠ったら部屋に来てください。ふふふ……今夜は寝かせませんよ?」


あずさ「まぁ……いったい何をされてしまうんですか~?」

小鳥「女子会、です! お酒もたんまり用意してますからねっ!」

あずさ「いいのかしら……一応、お泊り保育なのに」

小鳥「厳密には保育じゃないんだから大丈夫ですよ! それに酒の肴はやっぱり……恋バナですし!」



~ 夜の見回り編 ~


はるか「……むにゃむにゃ……う゛ぁい……」

ちはや「……すぅ、すぅ……ゆう……」

ゆきほ「……えへへ…………まことちゃ~ん……」

まこと「……う~ん……ゆきほ……すこっぷ……だめ……」

P「(よしよし。みんなちゃんと眠っているな)」

P「しかし……夜の幼稚園ってのは、なぜこうも雰囲気が違うのか……」 ブルブル


  ……ぅふふふ……


P「ん? なんだ……この声?」


 ふふふ……
         うふふふふ……


P「……ち、近づいてくる……ひぃ!?」

ちょっと30分ほど休憩するね。次からあずさ無双
幼稚園での飲酒、本当は絶対だめよ



~ あずさ先生と月見酒編 ~


あずさ「うふふふふ! プロデューサーさぁん!」

P「(あ、あずさ先生か! さすがにびびった……もう少しでちびるところだったな)」

あずさ「ご一緒にいかがですか~?」 からん

P「で、でもいまは見回り中ですから……」

あずさ「一杯くらい飲んでも平気ですよぉ~。ひとり酒は寂しいで~す」


P「……わかりました。それなら、一杯だけお付き合いしましょう」

あずさ「ふふ、ありがとうございま~す。じゃあ、外のベンチに行きましょう~!」

P「(これは既に結構酔ってるな)」


どうやら、あずさ先生と音無さんは部屋でこっそりお酒をいただいていたらしい。
音無さんが言い始めたらしいが、早々につぶれてしまい……
そしてひとりになってしまったあずさ先生が、俺のところに来たのだ。



  りーん…… 
          りーん……


あずさ「えーっと、なんでしたっけぇ……」 にこにこ

P「何ですか?」

あずさ「以前の飲み会でやっていただいた、プロデューサーさんの乾杯の音頭です」

P「ああ、やりましたね~……はは、なんかちょっと懐かしいな」

あずさ「うふふ。なんだかあれ、私気に入っちゃって……あ、これですよ、これ~」


俺とあずさ先生は、夜空に浮かぶまん丸な満月を眺めながらグラウンドのベンチに腰掛けた。
とても静かな夜だ……ここには、鈴虫たちの歌声しか聴こえてこない。
さっきまでの喧騒がまるで幻だったかのように、優しい静けさに包まれている。



  りーん…… 
          りーん……


あずさ「……子どもたちの笑顔というものは」

P「……何よりも、捨てがたいものだ」


あずさ「アイドルなんかには、全然負けていない……もっと」

P「もっともっと、きらきらと輝いている」


あずさ「そんな子どもたちの、健やかな成長を願って……」

P「そして、これからも……俺たちが」

あずさ「それに私たちが……それを、見守り続けられることに感謝して……」


P・あずさ「かんぱい」 からん



P「ごく、ごく……ぷはぁ」

あずさ「うふふふ。プロデューサーさん、相変わらずいい飲みっぷりですね~」

P「あずさ先生こそ。しかし……今日はいろんなことがあったなあ」

あずさ「私は今日、みんなと公園にいきました~。プロデューサーさんはプール開きでしたよね」

P「ええ。それに、キャンプファイヤーもしたし……」

あずさ「本当に、いろんなこと……ひっく。ありましたねぇ~」


P「子どもたちにとって、これらが少しでも良い思い出になればいいんですが」

あずさ「大丈夫ですよ~。みぃんな、とっても素敵な花丸笑顔でしたから~!」 にこにこ

P「(……かわいい)」

あずさ「ウィスキーがぁ……おすきでしょぉ~……んふふふ♪」 からん



P「そういえば、昨日も……」

あずさ「昨日ですか~? 昨日は大雨で大変でしたね~うふふふふ♪」

P「ええ。あずさ先生も知ってると思いますけど、絵本を読んでやっていたらやよいたちが……」

あずさ「あらあら~……」

P「それからそのあと、雪歩がですね……」


P「(酔っているあずさ先生は、なんだかいつもとは違う雰囲気で……)」


あずさ「ふふ……プロデューサーさんは、ほんとにみんなから好かれているんですね~」 にこにこ


P「(……火照った顔が月明かりに照らされて、とても……綺麗だった)」



~ あずさ先生と月見酒編2 ~


あずさ「こく、こく……ぷはぁ」

P「あずさ先生、大丈夫ですか? さっきからすごい勢いで飲んでますけど」

あずさ「……プロデューサーさんは~」

P「はい……」


あずさ「……どぅして、こんなときになってまで……名前で、呼んでくれないんですかぁ……?」


P「!! い、いや……ははは」

あずさ「いま言ってくれないとぉ……ぜっこぉです! もう口きいてあげないんですから~!」

P「そんな、子どもみたいなこと言って」

あずさ「いいんです……わたしは、子どもなんですぅ……」



P「(ど、どどどどうしよう! い、言わなきゃあかん、でも!)」 どっきんどっきん

あずさ「……さっきぃ……音無さんと、ひっく。いろぉんな話、してたんです」

P「……音無さん?」

あずさ「……それでぇ、やっぱり、私も……頑張らなきゃいけないなーって……だって」

P「…………」


あずさ「音無さん! ……な、泣いていたんですものぉ……」

P「(……音無さんが、泣く? なんのことだ?)」


あずさ「……や、約束したんです。おとなしさんと、女の……やくそく……私、がんばる、って……だから」

あずさ「おねがぃですぅ……名前で、呼んでください……」 うるうる


P「(わからないことだらけだ。なんで音無さんが泣くのか、なんでこんなに名前に執着するのか……だが)」

P「……わ、わかりました」



P「…………あ、……」 どきどき

あずさ「…………」 どきどき



P「…………あずさ!」

あずさ「……! ……」



P「…………あずさ!!」

あずさ「!!」 あほ毛ぴこーん


P「(やばいやばいやばいやばい)」 どっくんどくん



あずさ「…………やっとぉ……」 じわぁ

あずさ「……やっと、“さん”付けも、“先生”も付けないで……呼んでくれましたぁ……」 うるうる

あずさ「えへへ……うふふふ」 ぽろぽろ

P「(泣いている……そ、そんなに嬉しかったんだろうか。しかしこのあと何言ったらいいかわかんねぇ!)」

あずさ「嬉しい、うれしぃよぉ……」 ぽろぽろ



P「こ、これからもずっと……でしょうか。その、名前で呼ぶのは」

あずさ「ふふふ……さっきのだけ、でいいですよ~。たまに、がいぃんです」 にこにこ

P「そ、それなら良かった。正直心臓ばくばくでして」 どっきんどっきん

あずさ「で~もぉ、なるべく……せめて、あずささんって呼んでくださいね?」

P「……はい」



~ あずささんとお月さま編 ~


あずさ「…………」 にこにこ


あずさ先生……いや、あずささんが笑いながら急に黙ってしまった……。
さっきまでのお喋りさんはどこかに行ってしまったようだ。
かくいう俺も、内心ばくばくでうまく言葉が出ないのだが。


P「……あ、あずささん、もう部屋で休んでください。明日も朝早いんですから」

あずさ「……は~い」

P「立てますか? 手を貸しましょう」

あずさ「大丈夫でぇす…………ひゃんっ」 ふら~

P「ああ、言わんこっちゃない……」 がし


あずさ「うふふ……プロデューサーさんは、いつでも私のこと、助けてくれるんですね~」

P「(……そりゃそうだ。だって……俺は、あなたのことが……)」



あずさ「……プロデューサーさぁん」

P「ど、どうしたんですか?」

あずさ「どぉして、わたしが……名前で呼んでほしいか……教えてあげましょうか~?」

P「え!?」

あずさ「……な~んちゃってぇ……ふふふ、ひみつですよ~」

P「はぁ……」


あずさ「えへへ……プロデューサーさん?」 ぎゅう

P「(やめて! 心臓が破裂して死んじゃう! でも嬉しい! ふしぎ!)」 どきどき


あずさ「………………今夜は……そのぉ」

P「…………」 どきどき



あずさ「……月が、綺麗ですね~」



P「……月?」

あずさ「…………ぁ」 サー……

P「え、ええ。たしかにそうですね。綺麗な満月だ……」

あずさ「…………あ、あ……」 かぁああ


P「ど、どうしたんですか。青ざめたと思ったらまた赤くなって……酔いが回ったんですか?」

あずさ「……な、なんでもありません。何言ってるんでしょう、わたし……ふ、ふふふ~」

P「あずささん、何か変なこと言いました? 月がどうこうって……」

P「(月が綺麗ですね、って……どういう意味だ?)」


あずさ「…………わ、忘れてください」 ぷい

あずさ「(は、恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしいわ~! 酔いにまかせて私、さっきからなんてことを~!)」



P「いや、でも」

あずさ「もう! プロデューサーさんなんか、知りません~!」 たたたた!

P「(え~!?)」


やばい! あずささんがすごい勢いでどこかへ走り去ってしまった!
別に大したことないとお思いになる方もいるかもしれないが、これは一大事なんだ……!


P「あずささ~ん……どこですか~?」 たたた


その後、走っていった方向に行ってみたはいいが……案の定そこには彼女はいなかった。
こっそり女性職員用の部屋を覗いてみても、音無さんが静かに寝ているだけで他に誰もいない。
あずささんの携帯電話もそこに置きっぱなしである。


P「ぜぇ……ぜぇ……あずささん、本当にワープ機能が付いてるんじゃないだろうな……」


だが、諦めるわけにはいかない。夜明けまでに見つかるといいが……。


P「いや、絶対に俺が見つけ出してやるんだ! 園内にいないとなると、あとは……」



~ あずささん(21)編 ~


  ザザァ……
          ザザァ……


P「あずささん、ここにいたんですか……」 ぜえぜえ

あずさ「……プロデューサーさん」


P「まったく、いきなりいなくなるから……本当に心配しましたよ。こんなところで何を……」

あずさ「……気が付いたらここにいて……それでちょっと、海を見ていました」

P「こんな、暗い夜の海を?」

あずさ「とても綺麗なんですよ~。向こうに見える、きらきらした街の明かりが……」


P「(散々探して、あずささんを発見した場所。そこは……港の見える丘公園だった)」



あずさ「……ごめんなさいね……迷惑をかけてしまって……」

P「そんなこと、思っていません。それより何かあったんですか? さっきまでとは……」


あずさ「……ふふ、迷ってるうちにちょっとだけ、元気も落としてきちゃったみたいです……」

P「…………」


あずさ「……わたし、本当は……だめな保育士さんなんです」

P「……一体、どうしてそんなことを」


あずさ「……わたしは」



あずさ「わ、わたしは、ケンカして泣いている子も……上手に仲直りさせてあげることができません」

あずさ「……あなたはわたしのことを、みんなが甘えられるお姉さんだ、って言ってくれたみたいですけど……」

あずさ「本当は……春香ちゃんや、貴音ちゃん……みんなのほうが、よっぽどお姉さんなんです……」


P「……そんなことは、」

あずさ「そんなこと、あります! それに……!」


あずさ「それに私は、自分の……大切な気持ちですら……はっきりと、ちゃんと伝えることができません……」

あずさ「酔いにまかせて……はぐらかすことしか、できないんです……!」 じわぁ



あずさ「……う、うぅ……!」 ぽろぽろ

P「……あ、あずささん……!」


あずさ「……う……ぅ、うぇええ゛えええん!!」 ぽろぽろ…


P「(あずささんが、泣いている)」

P「(子どもたちと、同じように……自分の悲しい気持ちを隠せずに、泣いている)」


あずさ「……えぐ、ひっぐ……ご、ごべんなざいぃ……わ、わだしったら……」 ぽろぽろ


P「(考えてみれば……この人はまだ、ついこの間学校を卒業したばかりの……)」

P「(たった、21歳の……女の子なんだよな)」

P「(そんな彼女を目の前にして、俺にできることは……)」


P「……ひとつしかないだろう……!」



P「……あずさ」 ぎゅっ

あずさ「……え?」

P「無理しなくていい……俺に甘えればいいんです」

あずさ「…………ずびっ」

P「今まで、すこし無理してお姉さんであろうとしていたんですよね。だけど、もう頑張らなくていい」 なでなで

あずさ「…………」


P「(あずさの心臓の音が、直接伝わってくる。俺の心臓の音も、きっと伝わっているんだろうな)」


P「俺の前だけでは、あなたは……小さな子どもに戻っていいんです」

あずさ「……ぷ、ぷろでゅーさーさん……」 ぎゅう…



P「……夢を見たんです。とても優しい気持ちになれる夢だった」

P「その夢の中では、あなたはまだ5歳の女の子で……」

P「目を離したらすぐに迷子になってしまう、そんな手のかかる園児でした」


あずさ「……わたしったら、夢の中でさえ、迷惑かけっぱなしで……」

P「……迷惑なんかじゃない。俺はいつだって、あずさがどこに行ったって……一番に見つけ出してやるんです」


P「だって、俺は……あなたのことが……」

あずさ「……?」


P「…………」 どっくん どっくん

あずさ「…………」 うるうる



P「誰よりも、いちばん……大好きだからです」

あずさ「…………!!」



あずさ「…………ぇ、……」

P「…………」 どきどき

あずさ「……そ、そんな……ぅ、そ……ですよね……? わ、わたしがこんな、子どもだから――

P「嘘じゃないです。それにもちろん、子どもたちに対して言うような好き、でもありません」

P「それだったら、一番なんて言葉は使えませんしね。ははは……」


あずさ「…………で、でしたら」

P「俺は本当に、世界でいちばん……あずさのことが、大好きなんです」

あずさ「……!!」 ぽろぽろ


P「(え!? また泣いてしまった! そ、そんなに嫌だったのか!?)」



あずさ「……ぅ、うふふ……し、しんじられ、ません……うそみたい……」 ぽろぽろ

P「う、うそじゃないですよ? 俺は、真剣にですね……」


あずさ「…………」 ぽこぽこ

P「な、なんで叩かれているんでしょうか……」


あずさ「……そ、そうやって、えぐ……いつだって……あなたは、鈍感な人です…………それに……」



  でも、そんなあなたのことを……私は、ずっと探していたんです。

   ……やっと、やっと見つけました……あなたは、やっぱり……



あずさ「私の……運命の人でした……!」 ぽろぽろ



ここはどこかの国のとある幼稚園。
俺の名前はP、ここで新人保育士をしている。


あずさ「ぷ、プロデューサーさん。あの、その~……」 もじもじ

やよい「ぷろじゅーしゃー!」 たたた

ちはや「た、たかつきさん! ろうかはしるとあぶない……」 たたたた


今日は元気いっぱいに遊ぶ子供たちの、かわいらしい姿をご覧いただいた。
まあ今回はかなり、子供たちとは関係のない私事的なところを見られてしまったが……。


P「はっはっは、今日は何して遊ぼうか!」


今日も園児たちと、それを見守る俺たちは、元気いっぱいだ。
しかしこの子たちが卒園したら、これからどう成長していくのか……俺たちにはそれでもわからない。

きっと、みんな……



きっとみんな、いろんな夢を見つけるだろう。
普通の“お父さん”や“お母さん”になり、幸せな家庭を築いていく子。
あるいは俺たちのような……たくさんの子供たちを守り、成長を見守っていく“保育士”になる子。
もしかしたら……見る人みんなを笑顔にする、そんな“アイドル”になれる子だっているかもしれない。

夢は子どもの数だけあって、それが叶うかどうかまでは、俺たちにはわからない。
俺たち保育士はあくまでも、この子たちにとっての通過点でしかない。
唯一出来ることは、こうやって……“いつもの場所”で、子どもたちを守ることだけなのだ。

それでも……


P「ところであずさ……先生。どうしたんですか、さっきからもじもじして」


それでも。
みんながそれぞれ、自分だけの……


あずさ「…………もうっ」 ぷい


大切な、“運命の人”を見つけられると、いいと思う。



おわり

EDテーマ

『晴れ色』
http://www.youtube.com/watch?v=BqmIogBPDjI


おわりです。読んでくれた人ありがとう!
またまためっちゃ長くなってごめんね!
幼女はどこへいった!

続きはまだ考えてないけど、やるとしたら新年少さん『シンデレラ組』とかに出しそう
でもたぶんしばらくはやらないかなーって!

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom