魔王「夢と現実、お前の選択はどっちだ」(384)
勇者「魔王!」
魔王「くくく、良くぞここまで来た、勇者」
魔王「まさかたかが人間一人がここまでも余を楽しませてくれるとはな」
魔王「一応聞いておこう。勇者よ。余の者となれ。さすればこの世界の半分をお前にあげよう」
勇者「断る!誰が魔王の下僕なんてなるものか!」
魔王「ふふっ、愚か者め。良いだろう。このまま余の手で葬ってくれる」
カー、カー
勇者「な、なんだ、これは。カラスの鳴き声が…」
魔王「魔王からは逃げられない、覚悟しろ!」
勇者「い、意識が…急に眠くなってき……」
>>1 代行感謝
勇者「はっ!」
勇者「魔王!」
勇者「どこだ!」
勇者「……居ない」
勇者「ここはどこだ?魔王の玉座の前ではない……?」
勇者「俺は…一体どうなって……」
魔王「貴方様、如何なさったのですか?」
勇者「!?」
魔王「…顔が真っ青です」
魔王「何か怖いものでも見たのですか?」
勇者「だ、誰だ、貴様は…!」
魔王「!!」
魔王「……貴方様…?」
魔王「私です…魔王です」
勇者「なっ…!!」
勇者「馬鹿な…お前はさっきと全然違うだろ…大体お前女だろ」
魔王「私は…生まれた時から女性でした」
魔王「もしかして…貴方様にはそういう趣向が…」
勇者「ねーから!」
勇者「男と寝るような性向も、魔王と寝る性向もないから!」
魔王「…!」
魔王「貴方様…一体どうなさったのですか」ジワッ
勇者「え、泣く?」アワテル
勇者「あの、すまん、泣かないでくれ」
勇者「…………ちょっと、昔夢を見ちゃってさ……頭が混乱したんだ」
魔王「……昔の夢と言いますと……もしかして、私と戦っていた頃のことですか?」
勇者「ああ、あの時、始めてお前に会った時は口では言わなかったが本当に恐ろしかったんだからな」
魔王「ふふっ、そうでしたか」
魔王「でも、それはもう過ぎたことです」
魔王「あなたは見事を私に勝ち抜きました」
魔王「それだけではなく、私の命を奪うことなく人類の勝利を宣言した」
魔王「そして、そんな貴方様に惹かれた私は、こうしてあなたの妻になった」
魔王「貴方様が見た『夢』は、もう昔のことなのです」
勇者「そう…だな」
勇者「今はお前とこうして夫婦になってるんだよな」
勇者「都から離れた村でこうして一緒に住んでいる」
勇者「最初は村人たちも怯えていたが」
勇者「今じゃすっかり馴染んできて…」
魔王「色々助けてくださいましたからね」
魔王「良い人たちです」
勇者「そうだったよな」
カー…カー…
勇者「う…ううん…」
魔王「どうなさいました」
勇者「なんか、急にまた眠……く…」
ちょっとだけ支援。
勇者「!」
勇者「何だったんだ、今のは…」
勇者「『夢』?」
勇者「俺と魔王が結婚する夢を見たのか」
勇者「なんてことだ。そんなことあるはずが……」
魔王「くくく、怖いのか、勇者!」
勇者「!魔王!」
勇者「今のは貴様の仕業だな!」
魔王「くくく、貴様のような気弱な人間ごときがここまで来たのは褒めてやろう」
魔王「だが、ここが貴様の墓場になるのだ!」
勇者「っ!!」
勇者「強い……」
魔王「魔王の前では逃げられぬ!」
勇者「いや、しかもやっぱり魔王男だろ!」
勇者「さっきの夢がなんだったのかは知らんが」
勇者「今は戦いに集中しよう」
勇者「いくぞ、魔王!」
魔王「……」キカナイ
勇者「なにっ!?」
魔王「くくく、軟弱者め」
魔王「この程度で余を倒す勇者だと?」
魔王「そんな攻撃では、余にかすり傷一つもさせられない!」
勇者「うわぁっ!」
勇者「なんて重い攻撃だ。一撃でもちゃんとくらったら致命傷だ」
魔王「良く避けたものだ。だが、いつまで持つかな」
カー…カー
勇者「っ!…また…眠く…」
勇者「気を抜いては……」
勇者「!!」
魔王「お目覚めですか、貴方様」
勇者「…ああ」
勇者「なんか、また夢見ちゃったな」
勇者「しかも…なんか魔王が男になってる」
魔王「……最近の貴方様は疲れていますからね」
魔王「今日は少し休んだ方がいいかもしれません」
魔王「今お城からお迎えの兵士が来ていますけど、今日は帰らせましょう」
勇者「頼む…今日はなんか…調子がおかしいな」
魔王「わかりました。じゃあ、そう言っておきます」
勇者「あとさ」
魔王「はい?」
勇者「俺マジであっちの趣味ないから」
勇者「…」
勇者「なんかおかしい」
勇者「さっき『夢』の中に居た時は、今ここが『夢』だと思っていた」
勇者「なのに、ここに来てはあっちの方が『夢』だと思っている」
??「くくく、気付いたか」
勇者「!お前は…さっきから気を失う度に鳴いていた鴉!」
鴉「やっと状況の異常さに気付いたようだな、勇者」
勇者「俺に何をした!」
鴉「貴様は魔王さまの呪いにかかったのだ」
勇者「呪い?」
鴉「今貴様が私の鳴き声を聞いたら眠りにつき、この世界で寝たら向こうの世界で起きて、向こうで寝たらこっちで起きる」
鴉「一つの世界はお前と魔王さまが戦っている」
鴉「もう一つの世界では、お前と魔王さまは夫婦だ」
鴉「この二つの世界のうち、一つは夢で、一つは現実だ」
勇者「!!」
鴉「このループから脱出したければ、お前はどっちかの世界で死ななければならない」
鴉「ちゃんと夢で死んだら現実で起きるだろう」
勇者「…じゃあ、もし現実で死んだら」
鴉「じゃあ、死ぬだろう。だから『現実』というのだからな」
カー…カー
勇者「うっ、また…眠気が…」
鴉「くくくっ、ちなみに貴様が眠ってる間でも両方の世界とも時間は進む」
鴉「せいぜい頑張るんだな」
鴉「二つの世界。どっちが夢か、どっちが現実か」
鴉「貴様の夢は、貴様の現実は、どっちだ」
とここまでプロローグだけど、この書き方ってどうなの?
紛らわしいかな
ちょっと飯食べてくる。
勇者「…っ!」
勇者「ぐあああああああ!!!」
勇者「痛い…!」
勇者「全身が……ぁぁ!!」
側近「ふふふ、やっと目覚めたか」
勇者「!ここは牢屋か」
勇者「私を出せ!」
側近「愚かな人間だ」
側近「そう喚かずともちゃんと明日になったら出してやろう」
側近「全ての魔族と人間どもが見てる前で貴様の処刑をする時にな」
勇者「!!」
側近「その時までせいぜい大人しくしていることだな」
夢で死んだら現実で起きる。
現実で死んだら……わかるよね
勇者「待て!」
勇者「っ!」
勇者「体が傷だらけだ」
勇者「俺が寝てる間、魔王の攻撃を食らったせいだ」
勇者「道具が入った武器も道具も全て奪われている」
勇者「このまま死ぬのを待つしかないのか?」
カー…カー
勇者「っ…これは…また……」
勇者「!」
魔王「貴方様」
勇者「……魔王?」
魔王「はい?」
勇者「何故、お前が俺を真上から見つめているんだ」
勇者「後、頭がやたらと心地いいのだが」
魔王「はい、貴方様がお疲れのようでしたので、私が何か力になってあげられるものがないかと思いまして」
魔王「こうして膝枕をしている最中でございます」
勇者「……」
魔王「…余計なことだったでしょうか」
勇者「あ、いや…そんなことじゃない」
勇者「ただ、なんというか…」
勇者「気持ちいいな。魔王の膝の上って」
魔王「ふふっ、そう思ってくださって嬉しい限りです」
魔王「城には今日一日休むと伝えておきました」
魔王「今日は私とゆっくり休日を満喫してください」
勇者「ああ……」
勇者「そういえば、魔王と一緒にお出かけしたのも久しいな」
勇者「今日一緒にどこかにでも出かけるか」
魔王「ほんとですか?」
勇者「どこか良いかな」
魔王「私は貴方様と一緒ならどこでも…」
魔王「それと…貴方様の子供と三人で一緒に居れたらどこだって幸せです」サスッ
勇者「ニヶ月だな」
勇者「そろそろお腹が膨らんでくるか?」
魔王「最近、なんだか、お腹が重くなってくる気がします」
勇者「立ってるのが疲れたりはしないか?悪阻とかは」
魔王「流石にまだそこまでは…悪阻もあまりありません」
勇者「腹が大きくなったら、しばらくお城の仕事は休もう」
勇者「家事も俺がやるから、魔王は休んでると良い」
魔王「貴方様……嬉しいです」
カー…カー
勇者「……あ、また…」
魔王「ぐっすり寝てください。私がお側で見守っていますから…」
勇者「!」
魔王「やっと起きたか、ヘタレ勇者め」
勇者「魔王…!」
勇者「俺をここから出せ!もう一勝負しろ!」
魔王「馬鹿め、お前はもう余のものだ。放すわけがないだろ」
魔王「ここには貴様を笑ってやるために来たのだ」
魔王「それ程の力で余に挑むなどと、笑わせる!」
魔王「お前ごときが人間どもを代表する強者なら、これ以上人間どもを相手に手こずる必要もない」
魔王「明日貴様を処刑した後、魔王軍は全力攻勢に入る」
魔王「想像できるか?お前の死で絶望した人間どもが余の強力な魔物たちの手に殺される光景が」
魔王「助けてくれと叫ぶ声。腕と脚を千切られた痛みで醜く絶叫する様」
魔王「さぞかし滑稽であろうな」
勇者「貴様ーー!!」ガーン!!
魔王「くはははは!!!」
勇者「待て!魔王!待てっつってんだろおおお!!」
勇者「クソ!このまま終わってたまるか!」
鴉「何をそうムキになっている」
勇者「!貴様は…!」
鴉「いい方向に考えるんだ」
鴉「もしかすると、この世界が夢なのかも知れないぞ」
鴉「快く死んで、向こうの現実でまたいつものように楽しい日々を過ごすのだ」
勇者「ふざけるな!」
勇者「あんなの幻に決まっている!」
勇者「ここが現実だ」
勇者「俺と魔王が結婚することが現実であるわけがない!」
勇者「しかも…こ、子供まで居るだと!」
鴉「なら、ここが現実というのか」
鴉「魔王に負け、人間ども滅亡を目前としているこの世界を現実と思うのなら」
鴉「それもまた一興だな」
カーカー
勇者「ほざけ!」
勇者「うっ…、また…眠くなって…」
勇者「くそ…早く、なんとか…しないと……」
これどんだけやると猿っちゃうの?前それで凄く苦労したんだけど
勇者「!!」
勇者「…どんどんわけが分からなくなってくる」
勇者「…魔王?」
勇者「居ない。どこへ」
魔王「貴方様、お食事の準備が出来ています」
勇者「あ」
魔王「…申し訳ありません、急に居なくなってしまって」
魔王「ですが、そろそろ食事にしないといけないと思いまして…」
勇者「あ、いや、別に良いさ」
勇者「良いよ。一緒に食べよう」
魔王「はいっ」ハート
勇者「……」
魔王「…どうですか?」
勇者「うん?あ、美味しいよ」
勇者「(やっぱ、ここが現実だ)」
勇者「(こんな幸せな日々、しかも、妻と子が居る生活…)」
勇者「(否定することなんて出来ない)」
魔王「………」
勇者「ほんとに美味しいよ。魔王が作る料理はいつも美味しい」
魔王「…ほんと、ですよね?」
勇者「嘘ついてるような顔に見える?」
魔王「……」
魔王「いいえ」
魔王「美味しく食べて頂いて良かったです」ニッコリ
勇者「ふぅ…食った、食った」
魔王「ふふっ、片付けますね」
勇者「…幸せだな」
魔王「?…いつものことですよ?」
勇者「だからだよ」
勇者「勇者と魔王で、戦いあったお前と俺が…」
勇者「こうして二人で普通の生活をしている」
勇者「お前と一緒に居られる俺は、この余で一番幸せな人間だ」
魔王「……」
魔王「私も貴方様のものになれて幸せです」
ドンドンドン
勇者「?この音は」
魔王「外に誰か来ているみたいですね」
勇者「俺が行こう」
カー…
勇者「っ!」
魔王「大丈夫ですか!?」
勇者「あ、あぁ…」
魔王「私が行ってきますね」
勇者「うっ…あの鴉……」
勇者「…!」
勇者「またこっちか」
勇者「ダメだ。あっちではあっちが現実だと完全に思い込んでいる」
勇者「こっちでもそれは同じ」
勇者「どっちでも夢であるならどこかおかしな所があるはずだ」
勇者「向こうでは魔王を結婚してる。しかも魔王が俺の子を孕んでる」
勇者「こっちでは…俺が魔王に負けてる」
勇者「夢としては両端を走ってるな」
勇者「とにかく、どっちが現実でどっちが夢か確信するまで、どっちも時間を有効に使わなければならない」
勇者「最小限でも、明日の朝俺が処刑されるまでまだ時間がある」
勇者「それまでなんとか脱出しなければ…」
看守「飯だ!」
勇者「!」ネテルフリ
看守「ちっ、寝てるのか。こんな人間に俺たち魔族が手こずるとはな……」鍵ヲ開ケル
勇者「(今だ!)」
勇者「はあああっ!!」ユウシャパンチ
看守「うっ!」ガクッ
勇者「よし、他の連中が来る前に……」
勇者「看守を中に入れて外から鍵を閉めた」
勇者「しばらくは時間を稼げるだろう」
看守2「なっ!勇者が脱獄したぞ!」
勇者「っ!もうバレたか」
看守3「囲め!囲め!!」
勇者「武器も道具も無しで大勢を相手するわけにはいかない。逃げなければ…」
カー……カー……
勇者「なっ…!」
勇者「駄目だ!ここで寝ちまったらおしまいだ!」ニゲル
鴉「ほう、呪いの力に逆らうつもりか?その度胸は良いな」
カー
勇者「っ!!」
鴉「耳を塞ぐか。いい考えだな。効くかは別だが…」
勇者「黙れ!」
勇者「どこか時間を稼げるような場所が……」
勇者「あっちだ!取り敢えずあの部屋に入ろう」
ガチャ カー
勇者「な……何か門を塞ぐものを置いておかないと……」
カー
勇者「も、もう無理か」
勇者「せめて…鍵でも……」
勇者「はっ!」
魔王「貴方様!良かった…!」
勇者「魔王…?」
勇者「どうしたんだ?」
魔王「大変です。王国の騎士団が家を囲んでます」
勇者「…は?」
魔王「今は私の力で周りに結界を張っていますけど」
魔王「ここは人間のする世界」
魔王「私の力も半減されています」
魔王「教会の僧侶の部隊も来ていて、結界が破られるのも時間の問題です」
勇者「…な…ぜ」
魔王「はっきりは判りませんが…おおよそ検討はつきます」
勇者「何?」
魔王「あなたと私は、この世界で一番強い者たちです」
魔王「平和になったとは言え、私たちがその気になれば、この国を乗っ取ることは容易いこと」
魔王「人間の王はそれを恐れ、我々を殺そうとしているのでしょう」
勇者「馬鹿な…!!」
魔王「今日も貴方様がお城に言っていたら、途中で貴方様を暗殺しようとしたかも知れません」
魔王「そして、家に居る私も……」
勇者「……」カジッ
勇者「ここに居ろ」
魔王「貴方様」
勇者「寝室に行って、そこだけまた小さく結界を張っておいてくれ」
勇者「あと、念のために移動魔法の準備も」
魔王「…ここは人間の国です。しかも向こうは、私に対抗する術を全て準備しています。移動魔法も、時間稼ぎぐらいにしかならないでしょう」
魔王「せめて貴方様だけでも逃げてください。私さえ居なくなれば、流石に貴方様にまでは手を出してこないはずです」
魔王「王も勇者の名声を知っていますから、コレほどの軍を持ちかけて勇者を殺したとなると民たちの反乱が起きる可能性もあります」
魔王「私さえこの首を差し出せば……」
勇者「ふざけんな!!」
魔王「!!」
勇者「俺と戦っていた頃は違うんだ!」
勇者「魔族と人間と存亡を賭けて戦っていた時と違うんだよ!」
勇者「お前は魔王以前に俺の妻だ!」
勇者「俺の子を身ごもった母親だ!」
勇者「夫として、父としてそんな真似できるか」
勇者「国が何だ!俺がお前と戦ってる時に王は何も出来ず城に引きこもってやがった」
勇者「なのに今更俺とお前の力を恐れてこんな大軍を連れて俺に俺の妻の首を捧げろというのか?」
勇者「俺が屍になる前に俺の妻に指一本も触れられると思うな!」
魔王「…貴方様……」ジワッ
ガチャ<<扉を開く音
騎士長「………」
勇者「何の真似だ」
騎士長「王の命令だ。魔王を殺し、そして魔王を殺さずに人間の国に入らせ、人々を危地に追い込んだ勇者を捕縛せよとのことだ」
勇者「話にならねー」
勇者「お前ら俺がこんな軍勢で来ればはいそうですかと首差し出すと思ったのか?」
騎士長「そんなことはしらない。国の安寧のためだ」
勇者「王の安寧のための間違いだろ」
騎士長「王こそが国だ」
勇者「民こそが国だ」
ペチャッ
騎士長だったもの「」
勇者「そしてお前らはもう俺が守るべき民じゃねえ」
>>騎士長が一瞬で!
>>勇者ともあろう方が人を殺したぞ!
勇者「今からこの家に入り込もうとする奴らは憶えておけ!」
勇者「貴様らが自分たちが正義だと思うかはどうで良い」
勇者「だがな、かつてこの世のどの人間も恐れていた魔王」
勇者「そして、その魔王を倒した勇者がここに居る」
勇者「その二人に立ち向かう度胸がある者だけこの家に足を踏み入れろ」
勇者「後、王に首洗って待ってろって伝えろ」
ガチャッ
魔王「貴方様!」
勇者「連中をビビらせた」
勇者「しばらくは誰も近づけないだろう」
魔王「…貴方様」
勇者「気にするな」
勇者「俺は勇者以前にお前の夫だ」
勇者「家族を守るためなら、それがどんな外道だろうが歩き抜いて見せる」
魔王「……はい」
カー…カー…
勇者「っ…!こんな時に……」
魔王が敵の世界と魔王が嫁の世界、両方でそれまでの記憶があるの?
勇者「!!」
??「あ、起きた」
勇者「なっ!」
勇者「誰だ、貴様は!」
??「それはこっちのセリフよ」
??「あんた誰?」
??「ここ、私の部屋なんだけど」
勇者「へ?」
>>54 基本的な記憶はあると思って欲しい。
どっちも記憶だけでは夢だと疑えない程の知識が頭にある、って考えて欲しい。
ただどっちの世界でも自分が立っている世界が現実だという思いが強くて、向こうの世界でのものは夢だと決め付けやすくなる。
勇者「(そういえば、さっきは眠気で周りを見る余裕なんてなかったけど)」
勇者「(ここ、誰かの部屋だったのか)」
勇者「(そして、目の前には魔族の女の子が一人)」
??「ちょっと、私を無視するつもり?」
勇者「え?」
??「あんたが誰か聞いてるじゃないの」
??「無礼な奴ね」
コンコン
勇者「!!」
??「何者?」
(外から)魔物「姫さま、報告することがあります」
??「報告?そんなのパパにしなさいよ。私に言ってどうするの?」
魔物「先程、勇者が牢屋から脱出してこの辺りに逃げ込みました」
??「…」
勇者「!!」
??「……へー」
勇者「(不味い。このままだと…どうすれば…!)」
勇者「(そういえば、さっき姫さまとか言ったな。まさかあの魔王の娘?)」
勇者「(いっそこいつを人質にして逃げきるか?)」
勇者「(いや、馬鹿な。そんなことしては勇者としての俺のプライドが…)」
魔娘「話はわかったわ。パパが気づく前にさっさと見つけて戻しておきなさい」
魔物「はっ、それでですが…」
魔娘「…あんた、まさか私の部屋にその勇者か何かが入ってきたかも知れないとか言うつもりじゃないでしょうね」
魔娘「私の部屋のドアにその手の垢の一つでも付けてみなさい。パパに言って一番苦しい方法で殺してあげるから」
魔物「ひぃっ!し、失礼しました!」
勇者「!!」
勇者「お前…なんで」
魔娘「あんたが勇者なの?」
勇者「……ああ、そうだ」
魔娘「…ぷっ」
勇者「なっ!」
魔娘「なっさけないわね。勇者のくせに負けを認めずに逃げ出すなんて」
魔娘「元々だとパパに負けた時点であんたは屍なのよ?」
魔娘「それがせっかく自分の弱さを恨む時間を残してあげたというのに…」
魔娘「人間ってほんと恩知らずなんだから」
勇者「なっ、ふざけるな」
魔娘「言っておくけど。私に指一本でも触れようとしてみなさい」
魔娘「私がここで叫ぶと、直ぐに十人以上は魔物たちが集まって来るから」
魔娘「武器もないのにそんな状況になったら、どうなるのかしらね」
勇者「ぐぬぬ…」
貯め分切れた。
ここから一気に速度が遅くなるよ。
勇者「ところで、どういうつもりだ」
魔娘「は?」
勇者「お前、魔王の娘なんだろ。何故俺を助けた」
魔娘「暇だったからね」
勇者「は?」
魔娘「ねぇ、何か面白いことないの?」
魔娘「あんた、勇者だったら面白いエピソードの一つや二つぐらい持ってるわよね」
勇者「…俺にお前の話し相手になれってことか」
魔娘「だってこの城にいる魔物たちは皆つまんないんだもの」
魔娘「ぶさいくだし…女の魔物も皆うざいし、まともな奴らが居ないわ」
魔娘「その上に、パパに心配性だから外にもろくに出してくれないし」
魔娘「だから暇なのよ」
魔娘「あんたは少なくとも外の豚どもよりは面白そうだし」
魔娘「だから助けたのよ」
勇者「……」
魔娘「…何よ、黙りこんで、なんか喋りなさいよ」
勇者「俺は勇者なんだぞ。お前の父の敵だ」
勇者「悠長に話なんてできると思うのか?」
カーカー
魔娘「…やっぱ人呼んだ方がいい?」
勇者「呼ぶのは別に構わんが、それまで自分が無事だろうとは思わないことだな」
魔娘「え、ちょっ!」
魔娘「な、なにする気よ!いきなり押し倒して」
魔娘「ま、まさか…!」
勇者「喋るな」
魔娘「ひっ!」
勇者「……ちぇ…もうダメか」
勇者「!」
魔王「貴方様、移動魔法の準備が出来ました」
勇者「外からの動きは」
魔王「判りません。でも、もう時間もあまりないはずです」
勇者「…そうだな」
勇者「取り敢えず、どこにでも逃げよう」
魔王「はい」
魔王「場所は、後で魔法を追跡されても時間が稼げるように、ランダムにしておきました」
魔王「こっちにもリスクはありますけど、こんな状況だとどうなっても仕方がありません」
勇者「わかった」
ドーン!!
>>勇者と魔王を探せ!
勇者「!あれは…王の声?」
勇者「自らここに来たのか」
魔王「貴方様」
勇者「あ、始めてくれ」
魔王「はい、魔方陣、発動させます」
勇者「ここは…どこだ?」
魔王「わかりません」
魔王「取り敢えず移動する場所を周り50kmから100kmぐらいに限定させたのですが」
魔王「どこかの砦…?それとも…」
勇者「外は森のようだな」
勇者「…恐らくここは山で旅人が休んでいけるように作った小屋みたいな感じだろ」
勇者「当たりを引いたな」
魔王「…しばらくは安心できますね」クルッ
勇者「魔王!大丈夫か」
魔王「だ、大丈夫です。ちょっと…疲れちゃっただけ…です」
勇者「無理をさせたな…済まん。俺のせいだ」
魔王「貴方様のせいでは…ありません」
勇者「……休んでおけ」
魔王「では…少しだけ……」
魔王「……」
勇者「……」
勇者「そこにあるんだろ」
鴉「ククク、気づいていたか」
勇者「やっぱ俺をつきまわってるんだな」
勇者「どうやって付いてきた
鴉「お前にかかった呪いの一種…かもな」
鴉「それとも、ここが夢であるからこそ、こうして難もなく移動魔法を使ったお前に付いてきたのかもしれん…」
勇者「これもお前の仕業か」
鴉「悠長に悩んでいるだけではつまらないだろ」
鴉「少し緊迫感があった方が、お前も決めやすいと思ってな」
鴉「だが、この状況の原因はお前にあるぞ」
勇者「…そうだな」
勇者「魔王と結婚するために、俺は王の娘、つまり姫君の求婚を断った」
勇者「それとさっきの話が混じったら、王も俺を殺さずには一晩も安心して眠れないだろう」
鴉「そういうことだ」
カーカー
勇者「!」
魔娘「あ、起きた」
魔娘「なにあんた、急に押し倒したかと思えば急に倒れちゃうし」
魔娘「そんな病気なの」
勇者「病気…か。ある意味そうかも知れんな」
魔娘「…何なわけ?」
勇者「俺にも分からん」
勇者「ひとまず考えよう」
勇者「向こうでは魔王に子供、こっちは俺が魔王に負けて逃げている…」
勇者「……待て」
勇者「お前、なんで誰も呼ばなかった」
勇者「俺が寝てる間、誰か呼べたはずだろ」
魔娘「い、言ったでしょ?私は暇なのよ。せっかくの玩具をこのままパパに渡しちゃうわけないでしょ」
勇者「…そうだ。そもそも魔王に娘なんておかしいだろ」
魔娘「……」ベシッ
勇者「痛っ!なにすんだ、おい!」
魔娘「いきなり人の存在否定しないでくれる」
魔娘「何なのよ。あんた、最悪」
勇者「…はぁ…結局どっちも夢とははっきり言えない」
魔娘「夢?」
勇者「取り敢えず、その場でそこが現実であることに集中しよう。そしたら何かわかるかもしれない」
魔娘「ちょっと、それどういうこと?」
勇者「貴様は知らなくて良い」
魔娘「…ちゃんと言ってくれないと人呼ぶわよ」
カーカー
勇者「っ…」
魔娘「あ、ちょっと、寝ないでよ!起きなさいってば!」
勇者「こっちが現実…こっちが現実…」
勇者「はっ!」
魔王「……」スー
勇者「…こっちが現実だ」
勇者「いや…それとも…」
勇者「もう早くどっちかを決めないと、両方とも危うくなってしまう」
勇者「早く決めなければ……」
魔王「……う…ん…」
魔王「貴方様…?」
勇者「あ、魔王…まだ寝てもいいんだぞ」
魔王「……」
魔王「今日の貴方様は、なんだか少し変です」
魔王「このことじゃなく、別にことについて悩んでいるように見受けられます」
魔王「何をお悩みか、私に言ってはくれませんか」
勇者「べ、別に悩み事なんて…」
魔王「………」
勇者「…わ、わかった。話す、話すからそんな悲しい目で見ないでくれ」
勇者「というわけなんだ…」
魔王「…夢と現実…どっちがどっちか見分けがつかないなんて」
魔王「一体誰がそんなことを…」
勇者「分からない。王の所の魔法使いの仕業かもな」
魔王「それで、向こうに行く時は鴉の鳴き声がするのでしたね」
勇者「ああ、俺にしか聞こえなかったようだが……」
魔王「………」
勇者「…ごめん」
魔王「構いません。一番混乱しているのは勇者さまなはずですから」
魔王「ですが……私にとっては、貴方様と今までの記憶」
魔王「例え今追われてる身だとしても、私にとってはこれだけが現実で、私が知っている全てです」
魔王「少し…寂しいとは思います」
魔王「やはり、こっちが夢かも知れないと思っていらっしゃってるのですか?」
勇者「そんなわけでは…!」
勇者「…でも、あっちに行くとまたあっちの世界が鮮明すぎて、また否定できなくなってしまう」
勇者「こっちでもそれは同じだ」
勇者「俺には、どっちも現実のように感じるんだ」
魔王「しかし、現実が二つであるはずはありません」
魔王「どちらかは夢、どちらは現実です」
勇者「…その通りだけど…」
魔王「………」
魔王「勇者さま」
魔王「ここに居てくださいませ」
魔王「ここで、私と一緒に現実に立ち向かってください」
魔王「貴方様が居たからこそ、私は今まで頑張って来れたのです」
魔王「貴方様が居なければ、私は今までこんな幸せを味わうことなく、ただただ破壊と殺戮ばかりをしていました」
魔王「なのに貴方様に出会って、貴方様に負けて、貴方様の妻になって、貴方様の子を身篭って」
魔王「この全ての幸せ…全部貴方様が居たから得られたのです」
魔王「そして、今この瞬間だって、私は貴方様が居るならそれで良いです」
魔王「貴方様の側ならどんな場所だって一緒に行けます」
魔王「だから…どうか私を夢だと…幻だとは思わないでください」
勇者「……魔王…」
>>83 の勇者さま→貴方様に脳内変換して
なんかちょっとパソコンの前に居すぎておかしい。
休んでくるね
休憩終わり。
一時間パソコンに十分休み、
健康のために大事です。
勇者「…わかった」
魔王「!」
勇者「俺だって、魔王とのこの幸せだった日々を、幻だとは思いたくない」
勇者「こんな幸せを味わって…それが夢だったというのなら」
勇者「僕はきっと壊れてしまうだろう」
カーカー
勇者「っ…」
魔王「…貴方様」
勇者「……魔王」
勇者「あっ」
魔娘「…そろそろあんたに馬鹿にされるのも嫌になってきたわ」
勇者「……魔王…」
勇者「…おい、ここに剣はないか」
魔娘「は?あんた馬鹿」
魔娘「あるとしてもあんたにやるわけ…」
勇者「良いから渡せ!」
魔娘「嫌よ!ってか静かにしなさい。パパにバレたらどうするのよ」
勇者「バレて上等だ。どの道ここで死ぬことには変わらないから」
魔娘「死ぬ?!」
魔娘「ちょっと待ちなさい。何いきなり死ぬとか言ってんの?」
勇者「早く、あの鴉がまた鳴く前に…」
魔娘「ちょっと落ち着きなさいって!」ベシッ
勇者「へぶっ!」
魔娘「あんた何?いきなりご乱心になったの?」
魔娘「あんた勇者でしょ?最後まで人間のために戦わなきゃなんないでしょ?」
魔娘「なのに何自決しようとしてるわけ?」
勇者「………」
魔娘「さっきなんか一人でぶつぶつ言ってたのも気になるし」
魔娘「ちょっと言ってみなさいよ」
勇者「……誰が魔王の娘なんかに…」
魔娘「…」ベシッ、ベシッ
勇者「いて!いてぇって!話すから殴るのやめろ!」
勇者「…てなわけで…」
魔娘「………」
魔娘「でここが夢だと思ったわけ」
勇者「そうだ」
魔娘「あんた馬鹿でしょ」
勇者「なっ!」
魔娘「だってあんたをはめる罠なら、夢であなたをそっちに誘って現実で死なせるに決まってんじゃない!」
魔娘「むしろ向こうであんなこと言った時点で、もうあっちが夢よ」
魔娘「ここが夢だなんてありえないわ」
勇者「貴様はそう簡単に言えるだろ。でも俺はほんとにわからねーんだよ」
魔娘「分からないから自分の心行くまま楽な方を選んだわけ?」
魔娘「こっちはもう負けたし詰んだから、パパが女の世界でキャッキャウフフして過ごすって?」
魔娘「誰よ、こんなのを勇者に選んだヘタレ人間は」
勇者「……」
勇者「…結局一緒じゃないか」
勇者「あっちではあっちが現実だというし。こっちはこっちで現実だと思っている」
勇者「だからもっと紛らわしいんだよ」
勇者「しかも、ころころと世界が変わるせいでどっちももう絶体絶命」
勇者「もう運に任せてどっちかを選ぶしかない」
魔娘「…だったらこっち選びなさいよ」
勇者「…は?」
魔娘「こっち選んだら、私がパパに勝てるようにしてあげる」
勇者「!!」
勇者「でも、お前は…」
魔娘「さっきあんた、私が魔王の娘というのがありえないって言ったでしょ」
魔娘「それ、あながち嘘じゃないわ」
魔娘「私は、魔王の本当の娘じゃない」
勇者「…どういうことだ」
魔娘「魔王はいつも魔族の中で一番強い者がならなければならないから」
魔娘「小さい時から魔力に素質があったら魔王にさせるのよ」
魔娘「私も小さい時に魔王の気に入ってこの城に閉じ込められた」
魔娘「酷いと思わない?」
魔娘「誰も魔王がなりたいなんて言ってないのよ」
魔娘「なのに小さい頃からこの城に閉じ込めて、一度も外に出たこともない」
勇者「一度も!?」
魔娘「しかも、パパは魔族に対してもいい魔王じゃないわ」
魔娘「あんたを殺して、人間どもを滅亡させたら次は魔族たちに自分の欲望をぶつけるでしょうね」
魔娘「パパが強いから誰も文句言わないけど、いざとなったらクーデターでもなんでも起きるわよ」
勇者「…そして、お前は時代魔王候補」
勇者「お前が動いたら、一緒に反旗を起こす連中もあるだろうってことか?」
魔娘「確信はできないけど、でもそうでなければ私をこんな長く孤立させる意味がないわ」
魔娘「この年だともっと魔力増強のための修行でも勉強でもさせるはずだわ」
魔娘「私が自分を越えるのを恐れているのよ。パパは…」
魔娘「でも、私だけじゃやっぱ怖いから、今まで黙って居たの」
勇者「……」
魔娘「でも、勇者あんたさえ手伝ってくれたら、あんたと強力して、パパを倒すことを可能かもしれない」
魔娘「あんただって、このまま勇者が負けて人類が滅亡しましたって終わりは嫌でしょ?」
魔娘「だったら、私に協力しなさい」
魔娘「あっちの『夢』なんて捨てて、私のところに来なさい」
勇者「……魔王を倒せる…」
魔娘「そうよ。私が魔王になったら人間たちにももう手をつけないって約束する」
魔娘「だから、私に手を貸しなさい」
魔娘「そ、そして、あんたさえ良ければ……」
カー…カー…
勇者「うーっ」
魔娘「あ、ちょっと、寝ないでよ。今大事なこと言おうとしてるのに」
魔娘「いいわね!絶対あっちから戻ってくるのよ!」
勇者「!」
魔王「貴方様!」
勇者「………」
勇者「…ごめん……死ねなかった」
魔王「あ……」
勇者「…俺は……やっぱりどっちも見捨てることができない」
勇者「あの世界では、俺が居ないと人類はきっと滅亡する」
勇者「それだけじゃなくて、あの魔王を放っておいたら魔族だってどうなるか分からない」
勇者「そして…この世界に俺が居ないと…」
勇者「お前とその子は……」
魔王「……貴方様…」
勇者「……」
勇者「うああああああ゛!!!」
ドーン<<壁を殴る音
ドーン!
ドーン!
勇者「!!なんだ、この音は…」
魔王「念のために張っておいた結界が割られています」
魔王「まさかこんな早く付けてくるなんて…!」
勇者「…俺が時間を稼ぐ、お前はまた次の魔法を準備してくれ」
魔王「無茶です!相手ももう勇者さまだからって手加減は致しません」
魔王「また急に眠ったりなんてすれば勇者さまは…」
勇者「俺は勇者だ!」
勇者「…俺は何かを壊すことは苦手だ」
勇者「俺にできることは、何もかも守ること」
勇者「それだけだ」
勇者「どっちも…守ってみせる」
がちゃ
勇者「…」
王「姿を表したか、人類の裏切り者め」
王「この場で葬ってくれる」
勇者「お前を交わる事ばなんてもうない」
勇者「俺の妻と子を怪我そうとした罪」
勇者「自分の欲望と身の安全に人類をかけるこの傲慢さ」
勇者「タダで済むとは思うな」
王「ほざけ」
王「皆の者、あいつを殺せ!」
王「もはやあんな者、勇者と呼ぶにも及ばん!」
王「あの人間の異端者を殺せ!」
勇者「…参る」
勇者「はぁーーっ!!」
兵士たち「」ペチャッ
勇者「はぁ…はぁ……」
カーカー
勇者「うっ…くっ」
王「ふ、ふふふ、もう疲れきたのか」
勇者「…ほざけ…まだまだだ(クソ、数だけは揃えて来やがって…)」
勇者「(あの鴉の声さえなければまだまだやれるのに…)」
勇者「(このまま倒れては魔王を守れない…)
勇者「魔王……済まん……」
勇者「…!」
魔娘「勇者!」
勇者「……ダメだ」
魔娘「勇者?」
勇者「おい!鴉!どこにある!もう一度鳴け!」
勇者「でないと魔王が…魔王が…!!」
魔娘「落ち着いて!大きい声を出すと周りにバレちゃ……」
がちゃ
魔王「!勇者、余の娘に何をしている!」
魔娘「!パパ!」
魔王「己ー!!」
勇者「ぐあっ!!」
魔娘「勇者!」
魔王「野郎どもが…腑抜けて勇者を逃しおって」
魔王「貴様…もう公開処刑などどうでも良い!」
魔王「ここでこいつを殺してやる」
勇者「う…ぅぅ……」
魔娘「待って、パパ!」
魔王「何だ、魔娘。これは俺の仕事だ。お前は口を挟むな!」
魔娘「…そんな勝手にやっちゃっても言い訳?」
魔王「何ぃ」
魔娘「私、知ってるんだから、最近パパに逆らう魔物たちが多くて困ってるんでしょ」
魔娘「だから勇者の公開処刑で魔族たちの不満を鎮めようとしてたんじゃない」
魔娘「いいのかしら、こんな所で殺しちゃっても」
魔王「………」
魔王「確かに、その通りだな」
魔王「こいつはまた牢屋に突っ込んでおく」
魔王「だが魔娘。今回のこと、ただで見逃すわけにはいかないぞ」
魔娘「……分かってるわ」
魔王「…ふん」
魔王「おい、こいつを牢屋に運べ!」
魔娘「私がするわ。あんたら私の部屋に足跡一つでもつけたら全部丸焼きにしてやるわよ」
勇者「……」
魔娘「…勇者…」
牢屋
勇者「……うっ」
魔娘「気づいた?」
勇者「……お前…」
魔娘「ごめん、もう私もこれ以上あなたを助けることはできないわ」
魔娘「……これ、この牢屋の鍵よ」
魔娘「深夜、一度だけ牢屋の番を入れ替える時があるから、その時こっそりコレを使って逃げなさい」
勇者「…どうして……ここまで……」
魔娘「………」
魔娘「私もわからないわ」
魔娘「でも…あなたに生きていて欲しい」
魔娘「それだけよ」
勇者「……」
鴉「どっちも絶望的だな」
勇者「…失せろ」
鴉「もうどっちを選んでも、どっちも失うかも知れない」
勇者「黙れ……」
鴉「勇者、人間の希望を背負って生きる人間よ。お前はその荷を担うには弱すぎた」
鴉「いや、その荷を一人で背負える人間なんてこの世に存在しない」
鴉「最初からお前の冒険は、不可能なものだったんだ」
鴉「勇者の冒険は、ここで終わるのだ」
鴉「勇者が魔王に勝つという伝説は、永遠に『夢』物語になるだろう」
勇者「ゆ……め…」
カーカー
勇者「そうなって……たまる…か…」
勇者「勇者は…守るんだ……」
勇者「それが何であろうが……」
勇者「守ってみせるんだ」
わるい、ここでちょっと休憩。
頭が痛い
皆おまたせ
じゃあ、片付けようか
勇者「…!」
勇者「ここは…!」
魔王「……貴方…様」
勇者「!」
勇者「魔王!」
魔王「……はぁ……はぁ…」
勇者「からだが…そんなになるまで…俺を……」
勇者「一体どれだけ…」
魔王「貴方様との日々、このまま失うわけにはいきませんから」
勇者「……」
王「ふん!大した夫婦愛だな」
王「だが、一人が二人になった所でこの大軍の前では無力」
王「この誰も知らぬ森の中を貴様らの墓場にしてやろう!」
勇者「魔王、休んでろ」
勇者「ここは俺が引き受けた」
勇者「勇者は!」ペチャッ!
勇者「人を守るからこそ勇者なんだ!」ペチャッ!
勇者「守るべき者を持った勇者は負けるわけには行かない!」ペチャッ!
勇者「貴様のような自分の欲望しか知らない連中に俺の戦いが分かるか!」ぐちゃ
勇者「貴様らに俺の大切なものたちを奪われてたまるものか1」ぐちゃっ!
勇者「魔王を殺したいなら俺から先に殺せ!」
勇者「うおおおお!!!」
さるったよ。
わけがわからないよ(´;ω;`)ブワッ
王「ば、馬鹿な……」
王「あんなにあった軍隊が……壊滅だと」
王「たかが人間一人に…!」
勇者「勇者を甘く見るな」
王「ひぃっ!」
勇者「勇者を魔王を倒すために居るんじゃない」
勇者「人を守るから勇者なんだよ」
勇者「そしてお前は…俺が守るべき存在を貶めた」
勇者「貴様はもう俺に守られる者ではない」
王「ま、待て!」
王「俺を殺したら、魔王の命はないぞ!」
勇者「!」
魔王「……あなた…さま」
勇者「魔王!」
勇者「貴様、魔王になにをした!」
王「く、くくく、なーに、私がお前たちを相手するに、ただの軍で来たと思うのか?」
王「お前が倒れている間、お前を庇って戦っていた魔王は」
王「何度か猛毒を塗った剣や矢に掠ったのだ」
勇者「!!」
王「私が持ってきた解毒剤がなければ、魔王は助からない」
勇者「……!」
勇者「その薬を出せ!でないと」
王「そう強く出ていいのかな」
王「私が死ねば、薬も得られないぞ」
勇者「くっ…!!」
勇者「…っ」王から剣を放した
王「くくくっ、そう来なくちゃな」
勇者「解毒剤を出せ」
王「……これだ。持っていけ。早くしないと魔王が死ぬぞ」
勇者「……魔王、大丈夫か。直ぐに解毒剤を」
魔王「…貴方様………罠です…」
勇者「え?」
魔王「私たちを殺すために使った毒です。解毒剤なんて用意したはずがありません」
王「今更気づいても遅い」
勇者「!!」
魔王「貴方様…!」
勇者「なっ!!」
グサッ
勇者「魔王!!!」
魔王「………ぁ」
王「ちっ、化物め。最後まで邪魔しやがって」
魔王「赤ちゃん……」
魔王「私と…貴方様の…赤ちゃんが……」
王「直ぐにお前も子の側に送ってやろう」
勇者「王、貴様ーーー!!!」
王「なっ、しまっ!!」
ペチャッ
王「」
勇者「魔王!!」
魔王「………ぅ」
勇者「……ぁ……ぁぁ」
勇者「魔王…」
勇者「俺のせいだ……俺が……俺がはっきりしていれば…」
魔王「…ぁ…貴方様…」
勇者「…ま…おう……」
魔王「……あ」
魔王「愛して…いました」
勇者「まおおおお!!!!」
勇者「………」
魔王「」
勇者「……」
魔王「」
勇者「……もう…未練は…ない」
勇者「…」グサッ
勇者「」
・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・
パーティーは全滅しました。▼
勇者ひとり旅っぽかったからパーティーってことないだろ、と思ったけど勇者と魔王でパーティーなんだな
・・・・・・
・・・・・・
勇者「……」
勇者「(……生きてる)」
鴉「……守るべき相手に守られ、その守るべき者を失って」
鴉「だからこそその存在がアレほど否定しないで欲しいと言っていたその『現実』から逃げたか」
鴉「で、結局この世界を選んだ……」
鴉「正解だ」
鴉「しかしどうする」
鴉「牢屋にぶち込まれ」
鴉「体は魔王に負けてボロボロ」
鴉「この現実を覆すことはできるのか?」
鴉「……」
鴉「まあ、私が負けたんだ」
鴉「これぐらいの補償はしてやろう」
カーカー
看守「うっ、急に眠く……」バタン
鴉「牢屋周りのものを眠らせておいた」
鴉「傷ついた体も回復してやろう」ベホマ
勇者「…!」
鴉「さあ、もう一度魔王に挑むのだ」
鴉「今度は正々堂々と、お前の力で」
鴉「今のお前なら勝てるだろう」
鴉「お前の武器は看守長が居る部屋に保管されてある」
勇者「……お前は…」
鴉「それでは、負けた私は去るとしよう」
鴉「せいぜい頑張ることだな、勇者」
勇者「…分かった」
勇者「…分かったぞ、お前の正体が…」
鴉「…!」カー
鴉「……そんなはずがない」
勇者「失せろ」
勇者「次に会った時…丸焼きにしてやる」
鴉「……」
カーカー
勇者「……さて」
勇者「行くか」
勇者「守るべき者を守るために」
一方、魔王の部屋
魔娘「きゃっ!」
魔王「良くも…余の邪魔をしたな」
魔娘「…目を覚ましてよ、パパ」
魔娘「今のパパについていける魔物なんてほんのちょっとよ」
魔娘「ほとんどがパパのその凶悪な政治に喚いている」
魔娘「人間たちだけでなく、魔族まで滅ぼすつもりなの?」
魔王「黙れ!」
魔娘「痛い!」
魔王「最初からお前という奴が居たから余に逆らう連中が現れたのだ」
魔王「お前さえ居なければ、また余の世界になる」
魔娘「パパ…!」
勇者「その娘から離れろ!」
魔王「!!」
勇者「……」
魔娘「勇者!!」
勇者「…魔王、もう一勝負だ」
魔王「ちっ、どうやって牢屋から出たのかは知らんが」
魔王「貴様など余の相手ではない!!」メラゾーマ
勇者「…ふん!」切り裂く
魔王「なぬっ!」
勇者「守るべき者が居る勇者の力を……ナメるな」
勇者「その腕でどれだけの人間と魔族の血を浴びた」ズシャッ
勇者「その脚で、どれだけの街と畑を塵に変えた」ズシャッ
勇者「その心で、どれだけの人々の心を凍てつかせた」グサッ
魔王「ふぐぉ……ば、馬鹿な……こんな力が…どこから……」
勇者「お前の前には殺すべき相手、自分の欲望を満たすべきものしか見えなかっただろう」
勇者「お前に映ったその世界」
勇者「俺には全て守るべきものにしか見えない」
勇者「ソレがお前と俺に力の差だ」
途中で分かった人居ても何も言わないこと
魔王「……余が……」
魔王「これから…全て余のものになるというのに……」
魔王「ぅぁ…」
魔王「」
勇者「……虚しい奴め」
魔娘「勇者!」ダキッ
勇者「!」
魔娘「勇者!良かった!…良かった…」
勇者「…魔娘」
勇者「……あっちの魔王は死んだ」
魔娘「……そっか…」
魔娘「でも、これで…やっと言える」
魔娘「勇者、あんたのこと、暇で助けたって実は嘘よ」
魔娘「実は最初に見た時に…あなたを見て惚れてたの」
魔娘「今更こんなこと言ったら胡散臭いかもしれないけど、でも……」
勇者「もう言わなくて良い」
勇者「分かってるから……」ダキッ
魔娘「…勇者…」
魔娘「じゃあ、じゃあ、こ、これからどうしよう」
魔娘「パパ死んじゃったから…取り敢えず、勇者の、つまりに人間の勝ちだよね」
魔娘「これから魔王の後継者の権利を持って、魔族は人間に降伏します」
魔娘「そして、あの…良かったら」
勇者「魔娘」
魔娘「うん、何?」
勇者「……『夢』だよ」
魔娘「……え?」
勇者「……」
魔娘「ちょ、ちょっと待って!」
魔娘「なんで剣で自分の首を斬ろうとするの?」
勇者「痛みは一瞬だ」
魔娘「そういう問題じゃないよ!」
魔娘「なんで!どうして」
魔娘「向こうの夢で辛かったことは分かるよ」
魔娘「でも、これから幸せになれるよ」
魔娘「私と…私と一緒にいてよ」
勇者「……あの鴉は、最初から俺に選択強要した」
勇者「でも、実はあの鴉は夢の中でしか力を使えない」
勇者「つまり、『どっちも夢』だったんだよ」
魔娘「どうして…どうしてそんな事言うの?」
魔娘「どうして、私が『夢』だって言うの?」
魔娘「なんでさっきまではあんなに悩んでたのに、どうしてやっと選んだ後こんなにあっさりと」
勇者「なぜなら」
勇者「この夢が何かやっと分かったからだよ」
「でも…あなたに生きていて欲しい」
「この全ての幸せ…全部貴方様が居たから得られたのです」
勇者「お前のせいじゃない」
勇者「俺のせいだ」グサッ
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
パーティーは全滅しました。▼
鴉「カーカー」
勇者「……」メラ
鴉の丸焼き「」
勇者「……ここか」
勇者「魔王の玉座の間」
勇者「そこに居るんだろ、魔王」
勇者「いや、魔娘」
シーン
勇者「…出てこないならそれで良い」
勇者「俺が知っている限りで説明しよう」
勇者「最初から全部夢だったんだ」
勇者「魔王に負けた俺も、魔王と結婚した俺も」
勇者「もっとも」
勇者「俺がここに来た時はもう魔王なんて居なかった」
勇者「魔王は……」
魔王の玉座に残っている白骨「」
勇者「既に死んでいた」
勇者「勇者として選ばれてここまで来た俺が魔族の土地で見たのは」
勇者「魔族同士の戦いの末に死んでしまった魔族たちの姿だった」
勇者「人間同士でも良くあることだ」
勇者「あまりにも自分たちの欲望に充実していたせいで、自ら全てを葬ってしまうこと」
勇者「魔族だって、大したことなかったんだ」
勇者「魔族は自分たちの内分の末に、人間たちと戦いもする前に、自分たちで同士討ちしてしまったんだ」
勇者「夢の中でお前もそう言っていたな」
勇者「魔王の凶悪さは魔族さえも反感を覚えるようなものだったって」
勇者「それが原因かどうかは良く知らないけどね」
勇者「と、なにはともあれ俺は慌てた」
勇者「そんな時、お前を見つけたんだ、魔王の娘」
勇者「どうやってお前がここに居たのかは、多分夢の中でお前が話した通りなのだろう」
勇者「全てが消え去ったこの場所で独りだけ生き残ったお前が思った感情は」
勇者「寂しさだった」
勇者「お前は夢の中で何度も俺に言っていた。独りだけだって寂しいって…」
勇者「俺の妻としてのお前も、魔王の娘にしてのお前も俺に一緒に居て欲しいと言っていた」
勇者「お前はただ寂しかったし、それで俺が欲しかったんだ」
勇者「でも勇者の俺が魔族のお前を、しかもこんな惨状を見てただで話を聞いてあげるとは思えない」
勇者「だからお前は罠を仕掛けた」
勇者「この指定された場所にお前は幻覚魔法をかけ」
勇者「俺とお前に同時にその魔法をかけた」
勇者「そして俺がこの幻覚から逃げられないようにするため」
勇者「二つの夢を作ってどちらかは現実であることを俺に刻印させた」
勇者「一人は魔王の娘でずっと一人で居続けたお前」
勇者「一人は俺の妻としてのお前」
勇者「一つはお前の過去の姿」
勇者「一つはお前がなりたかった姿」
勇者「あまりの寂しさにお前は」
勇者「例えそれが夢の中だとしても」
勇者「どっちの夢でも」
勇者「俺と…誰かと幸せになる方を選んだんだ」
勇者「例え偽りの幸せでも、こんな所で一人で死んでいくよりはマシだと」
勇者「でも、お前の予定は外れた」
勇者「お前の魔法に鴉が一匹流れ込んだんだ」
勇者「慌てたお前は、臨機応変その鴉を二つの夢を渡りながら、俺の選択を誘うための道具に使った」
勇者「でも、両方の世界でのお前が同一人物でないことを俺が気付けないようにした一方」
勇者「突然現れた鴉にはそれが出来なかった」
勇者「だから俺と同じく、鴉もまた二つの世界を両方とも意識のあるまま渡っていたんだ」
勇者「そしてその鴉によって、お前は俺に自分の本当の気持ちを教えてしまったんだ」
「牢屋周りのものを眠らせておいた」
「傷ついた体も回復してやろう」
「さあ、もう一度魔王に挑むのだ」
勇者「無意識的にお前は、俺に助けを求めたんだ」
勇者「俺に、お前を守って欲しいと言ったんだ」
勇者「俺は勇者だ」
勇者「例え俺自身は地獄を味わっても」
勇者「絶望と痛みが体に染みこんでも」
勇者「諦めることなんて出来ない」
勇者「そこに守るべき者が居るなら」
勇者「例えそこがどこだろうと、誰だろうと、助けに行くのが勇者だ」
勇者「だから、俺はここに来た」
勇者「夢か現実かもはっきりとしないあの世界から」
勇者「『現実のお前』を守ってあげるためにここに来たんだ」
勇者「俺との『夢』は楽しかったか、魔王!」
勇者「さあ、選べ!」
勇者「俺はお前の質問に答えた。今度はお前が俺の質問に答える番だ」
勇者「夢と現実、お前の選択はどっちだ」
………
………
勇者「……」
勇者「……そうか」
勇者「…それが、お前の選択か」
勇者「分かった」
勇者「俺は戻る」
勇者「戻って王に魔王の死を、魔族の滅亡を報告しなければならない」
勇者「…胸糞悪いな。お前のせいで王殺しちまっただろ」
勇者「行って謝っとくか…訳は分からんだろうけど」
??「マ、マッテ」
勇者「!」
??「イ、イカナイデ…」
勇者「…やっと姿を表したか」
??「オネガイ…イッショニ…イテ」
魔王(あるいは魔娘)「独りは…もう嫌…」
勇者「…解っている」
勇者「こっちにおいで」
魔王「……」
スベッ
魔王「あっ!」
勇者「おっと」
勇者「大丈夫か」
魔王「……うん」カァァ
勇者「…夢で見た時よりかなり貧相だな」
魔王「うぅ……だって…『夢』だから」
魔王「……騙して、ごめんなさい」
勇者「良い…とばかりは言えないんだけどな」
勇者「今日俺は二度も地獄を見たんだから」
勇者「一緒に、ココ(現実)で幸せになるか」
魔王「…………うん」ジワッ
おわり
乙
魔王「……」
スベッ
魔王「あっ!」
勇者「おっと」グサッ
勇者「」
おわり
じゃなくてよかったw
ここまでお疲れ様でした。
分かる人が居るかもしれないけど、
このストーリーの基本ネタとなる、『夢と現実の罠』はイギリスの某SFドラマの話を借りていることをここで話しておきます。
基本ストーリーラインはそこを借りましたけど、それ以外成り行きです。
後、自分は日本人じゃないんで、いろいろおかしな所があっても大目に見てください。
またどこかでお会いしましょう。
ノシノシ
手紙や日記の人でしょ?
>>245 そだよ
子勇者とか
その他はあまり乗ってないから知らない人多いかもだけど
マコちゃんとか
♀魔王「私もまた勇者の助けを待つか弱いお姫様…」とか書いた
お前のSS全体的に黒い話多いよなーって言われたので考えたんだけど…
…あれ?これも割りと黒い?
えっとね…
子勇者「お前を倒さないとママに会えない」ウルッ
魔王「毎晩寝る前に勇者の日記を覗くの」wktk
勇者「『なんとか王さま』から毎日手紙がくるの」
勇者「マコちゃん、ボク来たよ」魔王「あなたね…」
♀魔王「私もまた勇者の助けを待つか弱いお姫様…」
こんぐらいかな…リンクはググって
エピローグって要る?
自分咄嗟に書くと格下がると言われるから
書くと言ったらちょっと長くかかるかもしれないけど
♀魔王「私もまた勇者の助けを待つか弱いお姫様…」は見たことある気がする
書いたの最近だよね?
>>256 多分前週の火曜日だと思う
書くのか……十時半ぐらいに来るね
あやっぱやめる。
このSSの趣旨は夢から逃げ出したことにあるからそれを果たした以上もう語っても皆の妄想には及ばない。
ここで閉めよう
…書いた後
後半なかった方が良かったとか言わないよね
勇者「………」スー
魔王「……」
魔王「…あの」
魔王「…ご飯出来たよ」ユサユサ
勇者「……」
魔王「……あの」
魔王「起きないと…お目覚めのちゅーしちゃうよ」
勇者「……」
魔王「……あ」
魔王「あ、貴方様」
勇者「さて、そろそろ食べるか」
魔王「!」ビックリ
とこんな感じで
焦げた卵焼き
焦げた魚
焦げたサラダ
勇者「」
勇者「…いただきます」
魔王「せ、せめてなんか言って」
勇者「んじゃあどうすればサラダが焦げるかに付いて」
魔王「……ぁぅ」
勇者「ふっ」
勇者「食べようか」
魔王「…うん」♪
勇者「ごちそうさまでした」
魔王「な…」
勇者「ん?」
魔王「なんで全部食べたの?」
勇者「食べ物を粗末にする勇者がいるか」
魔王「こ、焦げたの食べちゃ駄目だよ。健康に悪い」
勇者「俺に健康が心配だったらお前が料理を焦がさないように料理頑張ることだな」
魔王「……ぁぅ」
勇者「片付けるのは俺がやるから」
魔王「わ、私が……あの、やっぱ良い」
勇者「?」
魔王「私がやると…また全部割っちゃうから」
勇者「……」
勇者「俺が食器洗うから、横で布で水拭いてくれるか?」
魔王「!」
魔王「……うん!」
勇者「(あの日、俺は魔王を連れて魔族の地を出た)はいっ」
魔王「うん」こちこち
勇者「(『現実』の魔王は『夢』の中のように綺麗な体を持ってることもなく、強い心持ったわけでもなく、ただ立ってるだけでも危なっかしい、そんな娘だった)はい」
魔王「うん」こちこち
勇者「(『夢』の中では、自分がなりたかった姿になれたけど、『現実』ではそう行かず、体も弱ければ、家事もそう器用じゃない)はい」
魔王「うん…」
スベッ
魔王「あ」
ガシャーン
勇者「あ」
魔王「………」
魔王「ごめんなさい」
勇者「(こうして一緒に暮らしてまだそう長くないが、魔王の不器用さは想像以上だった)」
勇者「(『夢』の中で魔王との幸せな記憶がある分、そのギャップは激しいものだった)」
勇者「(でも、彼女を守るって約束したのだから、俺はその約束を、魔王を守る勇者になる)怪我はない?」
魔王「…ごめんなさい」
勇者「謝ってなんて言ってないよ。怪我とかない?」
魔王「…ない」
勇者「じゃあ、大丈夫だね。行ってなんかほうきとゴミ取り持ってきて」
魔王「…うん」てってって
勇者「走らない」
魔王「!…うん」おそおそ
勇者(魔王は魔族の戦いの末に独りで残されていた)
勇者(王には、魔王のことを話しては居ない)
勇者(ただ魔王城で、囚われて居た娘が一人居たので、自分が預かるとだけ言った)
勇者(王は俺を軍の名誉将軍にして、近くに居させようとしたが)
勇者(国の官位を断って、生活のためのある程度の後援金だけを願った)
勇者(……別に、夢の時のアレが気になって仕えなかったわけじゃない)
勇者(ただ、今は魔王のことだけを守るだけに俺の全てを尽くしたいと思った)
魔王「ごめんなさい」
勇者「うん?」割れた食器を掃きながら
魔王「私…何やっても下手で……」
魔王「何もちゃんと出来なくて…」
魔王「め、迷惑ばかりかけて」
勇者「…俺お前のそういうの嫌なんだよ」
魔王「」ビックリ
勇者「お前は俺の何だ」
魔王「………」
勇者「何?」
魔王「……お嫁さん」
勇者「俺はお前の何だ」
魔王「…貴方様」
勇者「いつも俺に他人行儀するのはやめろ」
勇者「お前が何をしようが、俺だけはお前の味方だ」
勇者「だから、俺にまでそう畏まるな」
魔王「……」
勇者「俺のこと嫌いか?」
魔王「!」フルフル
勇者「俺のこと怖いか」
魔王「…ううん」
勇者「じゃあ?」
魔王「……好き」
魔王「…大好き」
勇者「俺もお前のこと大好きだから」
勇者「もうそんな事言うな。分かったよな」
魔王「……うん」
なんか死にたくなってきた
ちょっとお父さん帰ってきたからご飯用意してくる
>>285 死んだらダメだよ!?ここまでの展開のどこに自殺衝動を起こすような話があったの?!
勇者「食べたし、片付けたし、ちょっと散歩でもするか」
魔王「う、うん」
勇者「ああ、俺出かける準備してくるからお前は外でちょっと日でも浴びてろ」
魔王「…うん」
勇者(仕事は別にしなくても二人生活できるほどのお金が城から入ってくる)
勇者(たまに街周りの下級魔物を退治する仕事を受けるが、それも大したお金はもらわないし、というかほぼタダやってる)
勇者(大体の時間は魔王と一緒に過ごす)
勇者(あいつは俺が居ない時はどうやって生きていたかと思うぐらいに何事にも不器用だ)
勇者「よう」
魔王「……」すー
勇者「ってその間に庭のベンチ寝てるし」
魔王「……んぅ」
勇者「他のことは出来ないくせに、朝ごはんつくろうと俺より先に起きるのだけは無理にでもやるんだよなー」
勇者「疲れてるみたいだし、今日の散歩はパスにするか」
勇者「ちょっと隣座るぞー(小声)」
魔王「……」すー
勇者「……」
魔王「……」トン
勇者「肩に頭寄せてきた」
魔王「……」すー
勇者「……」
勇者「日差しがちょうど良いな」
勇者「寝るのも無理ない…」
魔王「……ん?」
魔王「…ぇ」
勇者「起きた?」
魔王「……私、どれぐらい寝た?」
勇者「一時間ちょっとさ」
魔王「……いつから、膝枕されてた?」
勇者「結構最初から」
魔王「……」///////
魔王「……もっとこうしていて良い?」
勇者「良いよ」
魔王「……えへへ」ニコッ♪
勇者「散歩に行くつもりが、昼まで寝過ごしたな」
魔王「…ごめ」
勇者「…」ジー
魔王「……気持よかったから」
勇者「まぁ、俺も一緒にねたから別に良いんだけどね…(トン)うん、なに?頭寄せてきてまだ眠い?」
魔王「ううん」
魔王「ただ貴方様にもっと寄っていたいだけ」
勇者「……そうか」
魔王「うん…嫌?」
勇者「なわけあるか」だきっ
魔王「!!」
勇者「夢じゃこういうのは出来なかったからな」膝の上に座らせる
魔王「は、恥ずかしいよ…」
勇者「いいじゃん、別に見られてるわけじゃないんだから」
魔王「……」/////
魔王「ちゅ、昼食の準備しないと」
勇者「と、それもそうだな」
魔王「あ」
勇者「何」
魔王「……パンしかない」
勇者「そっか……」
勇者「じゃあ、パンだけで適当に食べて、後は夕食の材料買いに出かけるか」
魔王「…うん」
雑貨屋
勇者「おっさん、なんか食材いいの入ってる?」
雑貨屋「おお、勇者さまとお嫁さんじゃねーか。朝見かけなくて心配したよ」
勇者「まぁ、ちょっとね」
魔王「……」///////
雑貨屋「ははっ、いやー、朝から盛んでますな」
勇者「そういうんじゃないから」
雑貨屋「それはそうと、そうだな。今日は色々入ってきてるからな。見てみなよ」
魔王「……このキャベツは?」
雑貨屋「おお、それか。やっぱ花嫁さんは目が良いな」
雑貨屋「そりゃ今度魔族の地から入ってきたキャベツだよ」
勇者「え、あっちって今開墾やってんの?」
雑貨屋「らしいな。こんな上品の野菜も入ってくるしな」
雑貨屋「しっかし、まさか魔族が滅ぶとは思わんかったな」
雑貨屋「ウチら人間にとっては良い話だけど…」
雑貨屋「なんかさ、未来俺たちもそうなるかもって思って来てな」
魔王「………」
勇者「んなことにはさせないさ」
勇者「せっかくの平和なんだ」
勇者「人間同士の戦いなんて馬鹿馬鹿しいもので壊されてたまるかってんだ」
勇者「俺の目が黒いうちにはそんなことさせないよ」
雑貨屋「はははっ、流石だな」
雑貨屋「そういう健気な勇者夫婦にはキャベツを半額にしてやる!」
勇者「えー、そこはタダって言えよ」
雑貨屋「や勘弁してって」
魔王「……へへ」
勇者「んじゃあ、買い物はこんぐらいで良いか」
魔王「……うん」
街の子A「あ、勇者のおじさんだ」
子B「ほんとだ、お嫁さんと一緒だ」
勇者「誰がおじさんだこらー!」
子C「ねえ、お姉ちゃん遊んで」
魔王「え?あ、あの……」
子D「パンツ何色?」バッ
魔王「きゃ、きゃーっ!隠す
子D「お、黒だ。大人だ」
魔王「い、言わないで」
勇者「てめぇら、こっちこーい!!」
子A「わー、おじさん怒った、逃げろーー!」
子D「にげろーー」
勇者「むぁあてええええ」
魔王「あ、貴方様、待って!」
スベッ
魔王「あ」
魔王「きゃうっ!」
勇者「!大丈夫か!」
魔王「うぅ…」
魔王「あ、買った食材が…」
勇者「大丈夫か。怪我は」
魔王「……」
魔王「…うぅ…」ジワッ
魔王「ふええ……ごめんなさい」
勇者「ど、どうしたんだ、痛いのか?」
子A「えー、おじさんがお嫁さん泣かした」
子B「泣かしたー」
勇者「ちょっと見せてみろ」
魔王「ふぅぅ……うぅぅぅ…」
勇者「血は出ない。掠っただけだ」
勇者「まだ痛いか」
魔王「…痛くはない」
魔王「でも……」
勇者「…」
魔王「私…やっぱり貴方様に迷惑ばかりで…」
勇者「……」
勇者「…ほら」
魔王「…え?」
勇者「おんぶしてやるから、ほら」
魔王「え、なんで…」
勇者「いいからさっさと来い」
魔王「あ、うん……」
勇者「……」
魔王「…あの、重くない?」
勇者「重くない。ってかお前もっと体重つけろ。軽すぎ」
魔王「……」
勇者「誰が見ると俺が嫁に飯もちゃんと食わせないで苦労ばかりしてるみたいじゃないか」
魔王「…が、頑張って食べろ」
勇者「うん、良し。今日魔王のご飯は大盛りだな」
魔王「え!?む、無理だよぉ」
勇者「よし、じゃあ、俺は買ってきたの片付けるから、お前はまず洗ってきな」
魔王「うん…」
勇者「……うん?なんだこの瓶」
『この前入ってきたドラゴンのアレで作った媚薬だ。俺より勇者さんちで使い所ありそうだから入れとくわ』
勇者「あのエロオヤジ……」
勇者「こんなん使うかっての…」
魔王「何か使えないの?」
勇者「え?ああ、なんでもない、なんでもない」
魔王「…?貴方様、なんか隠してる?」
勇者「隠す?ないよ。全然そんなのないよ。それよりほら、早く夕飯の準備しないと」
魔王「……うん」
勇者「はい、いただきます」
魔王「……いただきます」
勇者「?どうしたの?」
魔王「……貴方様って、料理うまくなったなぁって」
勇者「」ギクッ
魔王「私は、最初の時から全然変わらないのに…」
勇者「まぁ……アレだ」
勇者「その…お前は、俺よりジャガイモとか綺麗に剥けるから」
魔王「…半分しか残らないのに」
勇者「それが良いんだよ!」
勇者「俺が向いたら所々皮が残っちゃって食べる時に苦味するんだよ」
勇者「それに、ジャガイモは芯の方がもっと美味しいんだから」
魔王「…ジャガイモに芯とかあるの?」
勇者「あ、あるさ!」
勇者「ご馳走様でした!」
魔王「…ご馳走様」
勇者「さて…」
魔王「ま、待って」
勇者「?」
魔王「あ、あの…今回は私一人でやってみる」
勇者「……」
魔王「だ、大丈夫だから。貴方様は部屋で休んでて」
勇者「…そうだな」
勇者「じゃあ、そうしてもらおうか」
魔王「…うん、私、今日は三枚までに抑えてみる」
勇者「う、うん、その意気だな」
勇者「はぁ……」
勇者「……」スッ
勇者「ったく」
勇者「こんなん使えるか」
勇者「つか、まだ一度もやってないっての」
勇者「まだ体も弱いのに、無理にやらせて何が起こるか知ったこっちゃないし」
勇者「……はぁ…」
ガシャーン
勇者「まず一個目…」
勇者「はぁ……取り敢えず、どっかにしまっとこうか」
魔王「…貴方様」
勇者「!!」
勇者「ど、どうしたの?」
魔王「…お湯、沸かしといた。先に入って」
勇者「そ、そうか。じゃあ、先に入らせてもらおうかな」
魔王「……」
魔王「…貴方様、今ここになんか隠したね」
魔王「……これ…って…」
勇者「ふぅ……魔王、お風呂空いたぞ」
魔王「!…うん…背中流そうと思ったのに」
勇者「良いよ。また今度で」
魔王「…うん、じゃあ私も入ってくる」
勇者「ああ」
魔王「……」
勇者「さて、寝る準備するか」
魔王「……ふぅ。温かい」
勇者「風呂終わったか」
魔王「うん…あ、あのコレ…飲んで」
勇者「うん?なんだコレ」
魔王「ハーブティー…村長さんの奥さんに寝る前に飲むと良いってもらってた」
勇者「お、いつそんなものを…ありがとう」
勇者「……ん?」
魔王「!…ど、どうしたの?」
勇者「いや、ちょっとな…変な味だなぁって」
魔王「ちょ、ちょっと、入れすぎたかも知れない…ごめんなさい」
勇者「あやまんなくても良いって」ガブッ
魔王「……」
勇者「じゃあ、お休み」
魔王「…お休みなさい」
勇者(…アレ?)
勇者(眠れない)
勇者(というか、昼時よりなんか……え?)
ハァ……ハァ……
勇者「……魔王」
魔王「……はぁ……はぁ…」
全員バンツ履いて
勇者「お、おい、魔王、まさか…」
魔王「…あなた、様……」ヌギッ
勇者「ちょ、ちょっと待て、魔王」
魔王「……どうして?」
魔王「…私じゃやっぱり駄目?」
魔王「こんな貧相な体なんて、抱きたくない?」
勇者「そんなんじゃ…ないっ」
勇者「お前、もしかしたあの媚薬をお茶に…」
魔王「……うん」
勇者(マジかよ)
魔王「ね……貴方様」
勇者「ま、待て、魔王」
魔王「……駄目」
魔王「もう待てない」
魔王「私だって、夢の時みたいに、貴方様の赤ちゃん、欲しい」
勇者「魔王……」
魔王「だから……お願い、抱いて」
魔王「貴方様には会った時から迷惑ばかりかけた」
魔王「私の勝手な思いで幻覚見させて」
魔王「夢の中で私に永遠に付き合わせようとして」
魔王「なのにそんな私を許してくれたばかりか」
魔王「こうして現実の私を娶ってくれた」
魔王「貴方様が素敵な人で、私、こんなに沢山幸せになれた」
魔王「だから、貴方様にも私から何かしてあげたい」
魔王「だから、お願い…貴方様の子…身篭らせて」
勇者「…俺だって、お前が嫌いで抱かなかったわけじゃない」
勇者「むしろ出来るものなら今まで何度もお前のことを愛したかった」
勇者「でも、今のお前の体じゃ、子供を産むなんて到底ムリだ」
勇者「産む途中で死ぬかもしれないんだぞ」
魔王「………」
魔王「私…頑張るから」
勇者「……」
魔王「もう嫌なの」
魔王「弱くて、何も出来なくて、大切な人に何の力にもなれないなんてもう嫌なの」
勇者「…あ」
勇者「…そうか」
勇者「お前だって、できるものなら守りたかったんだよな」
勇者「家族のように親しかった魔族たちを……あんな風に失いたくなかっただろうな」
魔王「……」
魔王「……貴方様…お願い」
魔王「一度だけ、今回だけで良いから」
魔王「私の我侭……聞いて」
勇者「……分かった」
魔王「…」パァーッ
勇者「でも、これだけはわかっとけよ」
勇者「お前が飲ませた薬のせいで、俺は今正気じゃないんだ」
勇者「しかも、今までだってお前を抱きたくなかったわけじゃない」
勇者「……今までみたいに優しい俺だろうとは思うなよ」
魔王「……はい」
勇者「……ちゅっ…」
魔王「!!」
魔王「……あなた…さま……」
パンツ履いて、ここまででエロシーンないから皆脱ぐな
十ヶ月後
魔王「……ぅん……ああぁぁぁあ!!」
勇者「頑張れ!もうちょっとだから」
村長の奥さん「…このままだと産婦も子も危険だ」
魔王「…大丈夫…ですから……」
魔王「私……貴方様のために…頑張りますから」
勇者「……お前…」
魔王「貴方様…」
勇者「頑張れ、もうちょっとだから。もうちょっとだけ頑張って」
エーーオエーー!!
奥さん「出たわよ、お嫁さん、かわいいお姫様よ」
勇者「……頑張ったな」
魔王「…はい…貴方様…」
魔王「私…今とても幸せです」
勇者「ああ、俺もだ」
勇者「これからも、ずっと幸せに居よう」
魔王「…はい」
おわり
終わりだよ。
外人にエロシーンなんて無理だよ。
そういうのはネイティブの妄想に任せるよ。
どうだった?頑張ってエピローグ書いたけど
やっと終わった……
SSで1000レスとか行く人たちは一体どうなってるのか分からないよ。
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません