ほむら「まどかから>>2を借りパクしてしまったわ……」 (367)

ほむら「前回の時間軸でまどかから>>2を借りていたのを忘れて時間遡航してしまったわ」

ほむら「どうしよう……」

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ブルマ

ほむら(まどかからこのブルマを借りたのは……あの日)

ほむら(そう、あれは雨上がりの朝のことだったわ)

ほむら(前日の大雨の影響で通りには大きな水溜まりが沢山出来ていて……)

ほむら(誰もが濡れないように足元を見ながら歩いていた)

ほむら(もちろん私も例外ではなく、地面に映る空を眺めながら学校へと向かっていたわ)

ほむら(それが、いけなかったのよね)





まどか「ほむらちゃん、危ない!!」

悲鳴にも似た声が聞こえたときには既に遅く。

ほむら「え……きゃあ!?」

前を見ていなかった私のすぐ傍を、猛スピードで自転車が走り抜けていった。

突然の出来事に加えて、襲いかかる泥水に怯んだ私は足を取られ……

ざぶん、と大袈裟な音を立てて、尻餅をついてしまったのだった。

深く大きな水溜まりの中へと。

全身が泥水にまみれ、肌に張り付いた衣服が重たくなる。

特に直接水の中へ浸かってしまったスカートは致命的なまでに水分を吸い込んでしまったようで、一気に下着まで湿らせて私の体温を奪っていった。

ぶるり、と身体が勝手に大きく震える。

ほむら(……最悪ね)

考えるまでもなく、タオルで少し拭けば何とかなるという状態ではない。

全て着替えなければ、とてもではないが授業は受けられないだろう。

ほむら(なんでこんな馬鹿みたいな……私、何をしているのよ……)

髪から水滴が一つ滴り落ちるたびに、私の心を陰鬱なものにしていく。

ほむら(こんな愚図だからお前は何も出来やしないのよ、暁美ほむら……)

自虐的な思考が渦を巻いて私の身体を飲み込んで沈めていく。

立ち上がる気力なんて、ちっとも湧いてこなかった。

……この時の私は、ちょうど巴さんのこととか美樹さんのこととか、色々と上手くいっていなかった時で。

精神的に弱っていたところだった、という事情もある。

まどか「ほむらちゃん!! 大丈夫!?」

水溜まりに足を踏み入れることも厭わず、まどかは私のほうへと駆け寄ってきてくれた。

嗚呼、本当に彼女は優しい。

こんな馬鹿な私のために、心の底から心配してくれている……。

ほむら「…………っ」

だからそんなまどかの善意が眩しすぎて。みっともない自分の姿が嫌で嫌で堪らなくて。

私はこみ上げてくるそれを押さえ切れず……。

ほむら「うっ……うう……うあああっ……!」

子供みたいに大声をあげて、恥も外聞も忘れて泣いてしまった。

まどか「ほ、ほむらちゃんっ?! どうしたの、どこか怪我したの?」

ほむら「う、うう……うああん……!」

心配してくれているまどかに答えられるほどの冷静さはなくて、道行く人たちの好奇の視線を気にする余裕もなくて……

私はひたすら涙を流し続けていた。

こうして思い返すと、とんでもなく恥ずかしいけれど……

まあ、この時の私には、周りなんて見えていなかったのだから仕方がない。

まどか「ど、どうしよう、えと……そ、そうだ、とりあえず着替えよう? ね、ほむらちゃん?」

まどかはうろたえながらも手を引いて、同い年の幼児と化した私をなんとか立たせようとしてくれた。

そんなことしたら、まどかの綺麗な手が汚れてしまうのに。

まどか「えと、私の体育着があるから、学校まで行って着替えよう? ね?」

ほむら「ぐすっ……う、うん……」

そうして言われるがまま、優しい声に従って……

私はのろのろと立ち上がり、まどかに着いていくことにしたのだった。



私たちは人目を避けて裏口から校内に入り、更衣室にやってきた。

道中の記憶は曖昧だけれど、まどかが赤子をあやすように優しい言葉をかけてくれていたことだけは、うっすらと覚えている。

まどか「はい、ほむらちゃん。風邪引いちゃう前に着替えよう?」

更衣室で差し出されたのはまどかの体育着。綺麗に折り畳まれており、清潔そのものだ。

……ちなみに、私の体育着は先ほどの『行水』の結果使い物にならなくなっている。

ほむら「でも……」

まどか「あ! ちゃ、ちゃんと洗ってあるからそこは心配しなくていいからね! 臭くないよ!」

そんな心配はしていないのだけれど……。

ほむら「本当にいいの? 借りちゃって……」

ここまで親切にしてもらうのが申し訳なくて、私はそれを受け取れない。

一応は身体を拭いたとはいえ、私が着たら絶対汚れてしまうもの……。

決心のつかない私がそう告げると、まどかは意外なことにクスっと笑って、

まどか「なーんだ、そんなこと気にしてたの?」

と、言ってのけた。

まどか「そんなこと気にしなくていいんだよ、だって私たち友達でしょ?」

ほむら「あ……」

冷え切った身体にじんわりとまどかの言葉が染み入ってくる。

胸の奥に小さな、でも確かな灯火がともって、私のことを温めてくれた。

ほむら「うん……ありがとう……」

ここまで言われたら、断るわけにはいかない。そんなのまどかに失礼だ。

私は差し出された体育着を両手でしっかりと受け取った。

それはとっても柔らかくて、ふわふわで、まどかみたい。

まどか「えへへ、どういたしまして♪」

まどか「それじゃあ私は外で待ってるね」

これから着替える気を使ってくれたのか、まどかは更衣室から出て行こうとする。

でもその前に……

ほむら「あ、ま、待って……!」

私には言っておかなければならないことがあるのだ。

まどか「?」

言わないほうがいいような気もするけれど、きっと言わないのもモヤモヤするから。

ほむら「その……さっきのことだけど」

まどか「さっき?」

ほむら「だから……転んだときのこと」

まどか「うん」

ほむら「私が泣いちゃったのは……その、内緒にしておいてほしいの……」

まどか「ふぇっ?」

まどか「……ふふ、うん! 分かったよ」

まどか「クラスのみんなには内緒だね!」

ちょっとしたアクシデントはあったけれど、平穏と呼べる日常の一幕。

魔法少女にとって何ものにも代え難い宝物。

まどかと過ごした幸せな時間の一つ────。

それが、このブルマが私の手元にある理由だった。





ほむら「……結局、返せなかったのよね」

ほむら「あの後すぐに、まどかは……」

ほむら「…………」

ほむら「どうしましょうか、これ……」

ほむら「こっそり返す? 私が持っておく?」

ほむら「……ここは、そうね……」



>>22

1.こっそり返す

2.隠し持っておく

3.はいて漏らす

2

ほむら「……とりあえず、盾にしまっておきましょう」

ほむら「こんなもの、いきなり渡されてもまどかが困るだろうし」

ほむら「こっそり返しても、知らない間にブルマが増えたら気味が悪いだろうし……」

ほむら「……このブルマは私だけの秘密、ね」

ほむら「さて、そろそろ学校にいかないと」





四時限目は、この時間軸に来てから初めての体育の授業だ。

休み時間の間に着替えを終えた生徒たちが校庭に現れはじめ、思い思いに会話を楽しんだり、軽いストレッチを行っていたりしている。

ほむら「……ふぅ」

私は人の輪から少し離れたところで、一人で突っ立っていた。

今回はまだクラスに打ち解けられていないのだ。

別にそれでも構わない、と思うけれど半分くらいは強がりなのも自覚している。

特に今朝はあんなものを見てしまったせいで気持ちが弱って……。

ほむら「……?」

ふと、視線を感じて思考を中断する。

まどか「…………」

視線の主は、まどかだった。

彼女は夢の中にいるかのような、そんな具合の惚けた表情をしていた。

ぽけーっ、とした半開きの口元がちょっぴりマヌケで可愛らしい。

でも、なんでそんな顔して私を見ているのかしら。

……いや、私を、というよりは少し視線が下に向かっているような気がする。

あれではまるで────。

さやか「ちょっとまどかー、なに転校生のブルマに見取れてんのさ!」

まどか「え? ……ふえっ!?」

私の考えていたことを代弁してくれたのは、美樹さんだった。

ちょっと言い方がアレだけれど……。

さやか「んもー、まどかのエッチ! いくら太ももが綺麗だからってそんなやらしい目を……」

まどか「ちちち、違うよさやかちゃん! やめてよ!」

両手をブンブンと振り回して、必死に弁解するまどか。見る見るうちに頬を赤く染めていく。

……きっと私のホッペタも、彼女と同じ色になっているわね。

まったく、美樹さんはデリカシーのないことを平気で言うんだから……。

羞恥やら何やらが入り混じって、私は俯いて固まってしまう。

まどか「あっ、ご、ごめんねほむらちゃん! さやかちゃんが変なコト言っちゃって!」

そんな私の様子に気が付いたらしい。まどかは慌てた様子でパタパタと駆け寄りながら声をかけてくれた。

さやか「えー? 見たままを言っただけなんだけどなー」

まどか「もうっ! さやかちゃんは黙ってて!」

当然のようについてきた美樹さんは、当然のようにまどかをからかい続けている。

にやけた口元が、その、なんていうか……ウザキャラっぷりを存分に発揮していた。良い意味で。

まどか「えと、ち、違うんだよほむらちゃん? わ、私は、え、エッチな目で見てたわけじゃなくて、その……」

まどかは何度もつっかえつっかえ話すから、可哀想になるくらい動揺しているのが伝わってくる。

ほむら「わ、分かってる。分かってるから落ち着いて?」

落ち着かせてあげようとした私のほうも、少しどもってしまった。

冷静な私を装おうとしたのに、失敗だ。格好悪い。

まどか「う、うん……」

それでもまどかは少しは落ち着いたのか、すう、はあ、と呼吸を整え始めた。

しかし、どうしてまどかは私の太ももを……もとい、私のことを見ていたのだろうか。

ほむら「その……まどか?」

まどか「ふぇっ? な、なに?」

一呼吸置いて、私は少し遠回しに尋ねてみることにした。

ほむら「もしかして私の体育着、何か変なところがあったのかしら」

まどか「ううん、違うよ。そうじゃなくて……あ、そうなのかも」

ほむら「え、嘘っ? どこが?」

まさか思い付きで言ったことが当たりだったなんて。

身嗜みには気を使っているつもりだったのでちょっとショックだ。

まどか「あ、ううん、やっぱりそれも違うの! 変なのはほむらちゃんじゃなくて私の方っていうか」

ほむら「……?」

私の体育着が変、という発言は訂正されたが……ますます良く分からない。

さやか「ねー、まどか。あんた言ってることメチャクチャだって気が付いてる?」

まどか「う、うう……」

美樹さんのストレートな言葉に、困り果てた表情を見せるまどか。

可哀想だけど私も同感だったので、美樹さんを責めることは出来ない。

まどか「うーん、その、何て言えばいいのかな……」

まさしく『悩んでいます』といった風に小首を傾げるまどかだったが、しばらくあれこれ考えて結論を出したようで……

まどか「えと、あのね……笑わないって約束してくれる?」

と、上目遣いで尋ねてきた。

……うっすらと頬を赤らめたまま。

ほむら(……そんな表情、卑怯だわ)

私には肯定以外の選択肢は残されていなかった。

ほむら「ええ、約束するわ」

まどか「えへ、ありがと……」

まどか「あのね、私なんだか……」

そして、まどかから告げられた言葉は────

まどか「ほむらちゃんのブルマ姿を、見たことがある気がするの」

ほむら「え……?」

まどか「夢の中で、見たような……そんな気がして」

ほむら「……!?」

私を大きく揺さぶって、心を乱すには充分過ぎる力を持っていた。

さやか「んっほぉ! な、なにソレまどか! まさかあんた、そんな願望が夢に出ちゃった的な!?」

硬直した私よりも先に、大袈裟なリアクションを返したのは美樹さんだった。

……年頃の女子にあるまじき、はしたない笑い声(たぶん)を鼻から吹き出していたのは言及しないであげたほうが良いのだろう。

まどか「が、願望って! そんなんじゃないよ、もぉさやかちゃん!!」

さやか「くくっ、あはは! いやいや照れるなって!」

心底面白がっているのか、興奮を隠しきれない様子で意味もなく飛び跳ねたりしている。

……ちょっとこの子のこういうノリにはついていけない。正直ニガテだ。

さやか「いやー、まさかホントにまどかにこんな形で春が来るとはねー!」

まどか「うううー!! さやかちゃんの馬鹿!!」

姦しくもある意味微笑ましい、二人のやり取りを尻目に……私は一人で思考に没頭していた。

────まどかは、別の時間軸のことを覚えているの?

私の体育着姿を見たような気がする、と。彼女はそう言った。

体育着といえば、脳裏に過ぎるのはまどかからブルマを借りたあの日の思い出だ。

まさか、あの記憶がまどかの中にあるのだろうか。

しかし、あれは何でもないごく普通の日常のワンシーンであったし、この平行世界のまどかがわざわざ覚えているというのも腑に落ちない。

私にとってはとても大切な、幸せな記憶だったけれど……一言で言えばブルマを借りただけなのだから。

それに、私が転校してきてからもう三日ほど経つけれど

これまでまどかは過去の時間軸の記憶を持っているような素振りは全く見せていなかった。

なのになぜ、私のブルマ姿にだけ反応したのだろうか……。

ほむら(もしかしてまどかはブルマ好きなのかしら)

そんな益体もない考えまで浮かんでしまう。

……まあ、ブルマがきっかけとなった理由なんて考えても仕方がないのだろう。

もっと重要なのは……ある可能性が出てきたということ。

もしも別の時間軸の記憶が、まどかの内に眠っているのなら……

────もしかしたらまどかは、私のことも全部思い出してくれるかもしれない。

やり直す度に、時間を巻き戻す度に、私とみんなの距離は広がっていった。

私だけがみんなのことを覚えていて、みんなは私のことなんて知らなくて。

世界に独りだけ取り残されるようなこの感覚は、私の心をジワジワと蝕んできた。

最近では少しずつ、その感覚に慣れてきたとはいえ……決して受け入れたくないことだった。

だから、もしも。

もしもまどかが私のことを思い出してくれる可能性があるというなら……。

ほむら(…………)

こんなこと、本当は考えてはいけないのかもしれない。

時間を歪めてやり直すだけでなく、まどかの記憶も歪めてしまうなんて……許されないことなのかもしれない。

でも私は……。

ほむら(ワガママね、私)

ほむら(……少しだけ。少しだけ試してみましょう)

ほむら(今のまどかと、過去のまどかの記憶をつなぐ手がかりは、今のところブルマだけ……)

ほむら(なら、ブルマを使ってまどかの記憶を刺激してみるのが良いわよね)

ほむら(例えば……>>49>>50するとか)



>>48

1.まどかのブルマを

2.ほむらのブルマを

3.杏子の段ボールハウスを


>>49

1.まどかの机に内緒で収納する

2.まどかに直接手渡しする

3.着て1日生活する

4.匠の技でリフォームする

1







まどか「それじゃ、お茶持ってくるから待っててね!」

ほむら「ええ、ありがとう」

ドアが閉まり、まどかの足音が遠ざかっていったのを見計らい、私は魔法の盾からブルマを取り出した。

ほむら(これを、まどかの机に……)

あの子が戻ってくる前に、収納してしまおう。

……数日前の体育の一件であの子の記憶を取り戻す決心をした私は、今、まどかの部屋に遊びにきていた。

目的は、前の時間軸のまどかのブルマを、彼女の机にしまうこと。

そして、ブルマを見つけたまどかの反応を伺うことだ。

ほむら(ごめんなさい、少し開けるわね)

許可なく机を開けることに罪悪感はあったが、今更やめる気はない。

……部屋中のぬいぐるみ達の視線が気になったけれど、無視。

一番下の大きな引き出しを慎重に引くと、中にはまどかの参考書やドリルなどが入っていた。

ドリルといっても巴さんの髪の毛のことではない。

そっと、その上に紺色の布を乗せて、引き出しを元に戻す。

ほむら(これで良し……と)

あとはまどかが戻ってくるのを待って……。

まどか「ほむらちゃん、お待たせー」

私が机から離れて、元のクッションに腰を下ろしたのとほぼ同時。

お盆にコップを二つ乗せたまどかが帰ってきた。

並々と注がれた茶色の液体は麦茶だろうか。

まどか「粗茶ですが……なんちゃって♪」

ほむら「ふふ、ありがとう。いただくわね」

コップを受け取り、口を付ける。

ウーロン茶だった。

ほむら「それじゃあ早速だけれど……」

まどか「はい! お願いしますほむら先生!」

ほむら「ふふっ……では鹿目さん、教科書を出してください」

まどか「はーい」

一応、今日の集まりは『勉強会』という名目になっていた。

数学が苦手だというまどかのために今度の小テスト対策を行うのが目的で、私は先生役。

まどかに勉強を教えるという経験は初めてなので、実はいくらか緊張しているのだけれど……

……時間遡航者である私にかかれば、小テストで満点を取る方法なんていくらでも教えてあげられるわけで。

赤ペン先生に負けないくらい、的確に出題範囲を把握しているのだから、まあ何とかなるだろう。

ちなみに美樹さんも誘ったのだが彼女は、

さやか『べ、勉強会? いやー、あたし今日はちょうど予定があってね、あははー』

と、言ってそそくさと逃げ出していった。

閑話休題。

さあ、お勉強会を始めよう。



部屋の中央に置かれた、勉強机とは別のテーブルに筆記用具一式を広げて……

私達は肩を並べて、二人きりの個人授業を進めていった。

ほむら「……ここはさっきの公式を使って……」

まどか「あ、そっか。なるほど……」

時々、分かりやすい教え方を考えるのに苦労した箇所もあったけれど、基本的には順調だった。

まどかは飲み込みが良く、少し丁寧に教えてあげればすぐにコツを掴んでくれる。

教えがいのある生徒だ。

ほむら「…………」

こうしてまどかの隣に座って一緒に一つの机に向かって勉強をしていると、自分が普通の女の子に戻ってしまったかのような錯覚に襲われる。

ずっとこの平穏な時間を過ごしていたい、という想いも生まれるけれど、でも。

ほむら(今更後には退けないわ)

後ろ髪を引かれる思いだったが、意を決して行動に移す。

ほむら「……教科書の例題くらいならもう問題なさそうね」

まどか「うんっ」

ほむら「それじゃあ問題集のほうに取りかかりましょうか。何処にあるの?」

まどか「ちょっと待ってて、今出すから」

そう言うとまどかは立ち上がり、勉強机の方へ向かう。

……いよいよだ。

ごくり、と。私は無意識のうちに、音を立てぬように生唾を飲み込んでいた。

まどか「んしょっ……と」

私の計算通り、まどかは一番下の引き出しに手をかけた。

慣れた動作で中の問題集を取り出そうとして……そして。

まどか「あれ?」

────紺色のソレを見つける。

まどか「これ……」

ほむら「…………」

まどか「私の、ブルマ?」

両手で包み込むようにして、優しく、ゆっくりと……まどかはブルマを手に取った。

力を入れたら壊れてしまうと信じ込んでいるかのように。

私の位置からではその表情を細かく伺い知ることは出来ないが、彼女の視線は手の中の紺色に釘付けとなっているようだった。

空気がどこか張り詰めたモノに変質した気がしたのは……私だけの錯覚だろうか?

ほむら「……まどか?」

恐る恐る声をかけると、まどかは────

>>75まで、もしくは19時まで多数決。
今後のまどほむ度が変化します。


・1

まどか「これ……ほむらちゃんの匂いがするよ……」

吸い込まれるように自然な流れでブルマに顔をうずめて、まどかは大きく息を吸い込むのだった。


・2

まどか「これ……ほむらちゃんに貸してあげた……?」

その視線はブルマに向けられてはいたが焦点が定まっておらず、何処か遠く、果てしなき遠い世界を見ているようだった。


・3

まどか「えへ、間違えて引き出しにしまっちゃったみたい♪」

てへぺろ、という言葉が聞こえてきそうなほど軽いノリでまどかは振り向いた。

>>75までなら>>75も含むやろ、1

3→1の順で4票獲得したので、
一度はてへぺろで誤魔化すけどなんやかんやでくんくんしちゃうルートに決定。

ほむら「……まどか?」

恐る恐る声をかけると、まどかは────

まどか「えへ、間違えて引き出しにしまっちゃってたみたい♪」

てへぺろ、という言葉が聞こえてきそうなほど軽いノリで、こちらへ振り向いた。

まどか「てへぺろー」

というか本当に言った。ベロをちょろっと出して。

まあ、照れ隠しなのだろう。

はにかみながら頬をほんのり赤らめるまどかは可愛らしくて、いつもなら私の心を和ませる魔法をかけてくれるけれど……

ほむら「…………」

今は胸が締め付けられるように苦しい。

……駄目だったの?

まどかがブルマを手にしたときに何かが起こりそうな予感があったのだが、どうやらそれは錯覚だったようだ。

やはり別の時間軸のことを思い出してもらうなんて無理な話だったのだろうか。

また、あの頃のように、同じ時間を歩んでいけるなんて、実現できない奇跡に過ぎないのだろうか……。

ほむら「…………」

まどか「ほ、ほむらちゃん? どうしたの?」

ほむら「え……?」

どうやら落胆が顔に出てしまっていたらしい。

気が付けばまどかが心配そうに私の顔を見つめていた。

ほむら「あ、ううん。なんでもないの」

まどか「でも、なんだかとっても悲しい顔してるよ……?」

ほむら「なんでもない……なんでもないわ、大丈夫よ」

愚かにも程がある。

『まどかに思い出してもらいたい』、なんて身勝手な理由でこんなことをして……

何も起こらなかったからってガッカリして、それを態度に出してしまうなんて。

私は、やっぱり最低の人間だ。

ほむら「…………」

自己嫌悪に陥ってしまうが、今度はまどかに気取られないよう頬の筋肉を意識する。

私はなんとか笑顔を取り繕おうとして────

まどか「あ、も、もしかして、てへぺろがムカついたとか……!?」

ほむら「……え?」

まどかの唐突な発言に、間の抜けた声を返してしまった。

まどか「ご、ごめんねほむらちゃん? てへぺろ嫌いだったんだね……」

……何を言っているのだろうこの子は。

場を和まそうとして、ふざけてみせているのだろうか。

まどか「えと、私もね、最近さやかちゃんから聞いた言葉なんだけど可愛いかなあって思って使ってみたんだけど」

いや、どうやら冗談で言っているわけではないらしい。

まどかは必死に弁明を始めた。

まどか「あ、ち、違うんだよ? 可愛いって、私のことじゃなくて、そんな自惚れたコト言いたいんじゃなくて、えと……っ」

ほむら「……っ」

一生懸命に言葉を探して、身振り手振りを交えるその姿はあまりにも……

ほむら「ぷっ……くくっ」

あまりにも可愛すぎて。

私はつい吹き出してしまったのだった。

ほむら「ふ、ふふっ。違うわ、怒ってるとか、嫌いとか、そういうのじゃないわよ」

まどか「ふえっ?」

ほむら「ふふっ、と、とっても可愛かったもの、てへぺろ……うふふっ♪」

まどか「え、え……?」

まどかはしばらくきょとんとした表情を見せていたが……少し遅れて状況を把握したらしい。

まどか「あっ……な、なんか馬鹿にしてるでしょ、ほむらちゃん!」

ほむら「そんなことないわ……また見せてもらいたいくらいで……ふふ、あははっ」

まどか「むぅーっ!!」

まどかは目を三角にして、猛犬のようなうなり声をあげる。

猛犬といっても小型犬の類なのだが。

……それにしても、このまどかは表情がコロコロ変わるわね。

まどか「もう! 酷いよほむらちゃん、そんなに笑うなんて!」

まどかは怒っているのに、吊り上がった眉が全然迫力がなくて、顔をリンゴみたいにしているのが可笑しくて、愛おしくて……

ほむら「ふ、ふふっ♪」

私のにやけた口元はしばらくは元に戻らなそうだった。

まどか「あ、あんまり馬鹿にすると私怒っちゃうよ! 激おこプンプンまどだよ!」

ほむら「ぷっ! あは、あははっ!」

また妙なフレーズが飛び出して、私にトドメを刺した。

まどか、もしかしてわざと私を笑い殺そうとしているんじゃないかしら……。



ほむら「あははっ……はあ、はあ、ふぅ……」

まどか「ほむらちゃんのバカ、もう知らないんだからっ!」

ひとしきり声をあげて笑った後には、まどかのご機嫌を取るお仕事が待っていた。

ほむら「ごめんなさい、まどか……あなたがあんまり可愛かったから、その」

まどか「そ、そんなお世辞なんかじゃ誤魔化されないんだからねっ」

まどかはほっぺたを膨らませてそっぽを向いてしまう。まるで子供だ。

いや、まあ確かに私たちは子供なのだが、少なくとも中学二年生のとる態度ではないだろう。

ほむら「……ふふ」

そんな幼なさが残るところも、微笑ましい。

……結局、ブルマを見せることで記憶を取り戻すという狙いは失敗したけれど。

でも、私の落胆と陰鬱な気分は、もうとっくに何処かへ行ってしまった。

ほむら(……これで良かったんだわ、きっと)

私のことを思い出してくれなくたって、まどかはこんなにも愛おしくて、私を笑顔にしてくれる。

それだけで充分に幸せなのだから。

むしろ、過去の時間軸の記憶を取り戻したらきっと辛いことも思い出してしまうかもしれないし……。

ほむら(うん……これでいいんだわ……)

もう忘れよう。まどかに無理やり過去を思い出させるなんて、そんな身勝手な考えは。

ほむら「本当にごめんなさい、まどか」

ほむら「お詫びになんでもするから……許してくれないかしら?」

まどか「……なんでも?」

ほむら「ええ、なんでもよ」

まどか「ホントにホントになんでもしてくれる?」

ほむら「本当よ」

まどか「……えと、そ、それなら……」

(まどかの要望の候補を三つ安価で決めて、その内のどれか一つを採用)

>>105
>>106
>>107

ほむらちゃんのブルマちょうだい

私の背中を洗って、お風呂で

私の背中に乗って

1.ほむらちゃんのブルマちょうだい!

2.私の背中を洗って、お風呂で

3.私の背中に乗って

4.ほむらちゃんの今はいてる黒ストちょうだい

>>112



※ブルマくんくんはなんやかんやが済んでからになります

2

まどか「一緒にお風呂に入って、とか」

ほむら「……え?」

まどか「私の背中を流してほしいな、とか……そういうのでも、いいの?」

まどかのお願いは、私の想像の遙か斜め上だった。

ほむら「っ……!?」

頬が熱い……ううん、顔だけじゃなくて身体に火がついて一瞬で私の脳みそが沸騰してしまう。

一緒にお風呂に入ってほしい? 背中を洗って欲しい?

なんでも聞くとは言ったけれど、何故お風呂なのだろうか。

まどかはそんなに私と裸の付き合いがしたいのだろうか。

でも、今回の時間軸じゃ、まだ少ししか交流がないのに、まだそんなに親しいわけでもないのに、なんで?

ほむら「そ、その……まどか? お風呂って……本気で……?」

まどか「え……ふえっ!?」

私が尋ねると、まどかは目を見開いて飛び跳ねた。

ほむら「まどかは、私とお風呂に入りたいの?」

まどか「え、あ、ち、違っ、その……あ、あれ、わ、私なんでお風呂だなんて……ひゃああっ!」

取り乱して、妙な悲鳴をあげるまどか。

どうやらさっきのお願いは、無意識でうっかり口にしてしまった類のものらしかった。

私に指摘されて、自分の発言の大胆さに気が付いたのだろう。

……でも無意識で言った、ってことなら、なおさらまどかは……そういう願望が、えと。

まどか「う、うううー……!」

まどかは両手で自分の顔を覆い隠してうずくまってしまったが、指の隙間から真っ赤な頬が見え隠れしていた。

ほむら「ええと……」

なんて声をかけてあげればいいのかしら……。

まどか「ち、違うのほむらちゃん! 今のは、その、口が滑ったっていうか、変な気持ちがあったわけじゃなくて」

ほむら「そ、そう……」

まどか「なんだかずっと前にもそんな約束をした気がするっていうか、ずっとほむらちゃんとお風呂に入りたかったっていうか……」

ほむら「……え?」

まどか「って、ひゃっ!? わ、私また変なこと言って……い、今のはナシ! なしだからねほむらちゃん!」

……今、まどかは何て言った?

ずっと前にもそんな約束をしたような気がした?

ずっとほむらちゃんとお風呂に入りたかった?

……後半は凄く気恥ずかしく聞こえるものだけれど、そっちの意味では深く考えないでおこう。

それより私にとって重要なのは、『ずっと』という言葉の意味だ。

会って間もないはずの彼女が『ずっと』なんて言い方をするのはおかしい。

いや、おかしくはないかもしれないが違和感がある。

まるで私のことを『ずっと』知っていたかのような口振りではないか。

ほむら(それって、もしかして)

時間遡航者である私にだけ感じ取れるその違和感は、一度諦めた私のワガママを再び燻ぶらせる火種となる。

ほむら(やっぱり、まどかは記憶が……?)

だかそうなると疑問も生まれる。

まどかは『ずっと前にもそんな約束をした気がする』と言ったけれど……

しかし、私には一緒にお風呂に入る約束なんてした覚えはない。

この時間軸ではもちろん約束していないし、過去の時間軸全ての記憶を辿ってもそんな事実はないのだ。

ほむら(なら、まどかはなぜ『約束した気がする』なんて言ったの?)

ほむら(この奇妙な齟齬は何を意味するの……?)

ほむら(ただ単に、慌てて変なコトを口走ってしまっただけ?)

ほむら(『一緒にお風呂に入りたい』なんて大胆なことを言ってしまったから誤魔化そうとしただけなのかも……)

ほむら(あるいは、別の時間軸の記憶が混ざり合って、過去の記憶を捏造してしまったとか……?)

ほむら(記憶がこんがらがって、したこともない約束をしたような錯覚に陥っているのかもしれないわ)

ほむら(だとしたら少し危険な兆候なのかもしれない……)

ほむら(…………)

ほむら(……考えすぎかしら)

ほむら(とりあえずどうするか決めましょう。ここはひとまず……)

1.まどかは単純に私とお風呂に入りたいだけなのかしら……
背中を洗ってあげて反応を確かめてみましょう。

2.下手なことをするとまどかの記憶がおかしなことになってしまうかも……
お風呂には入らないでおきましょう。

3.間をとってみんなでスーパー銭湯にいきましょう。
たまたま来てた魔法幼女の入浴シーンが見れる気がするわ。

>>132まで多数決
締め切りは24時

3だ

ほむら(……そうだわ)

さてどうしようか、と悩んでいた私に突如として天啓の如く一つのアイデアが降りてきた。

ほむら「ねえ、まどか。確か最近この近くにスーパー銭湯が出来たのよね」

まどか「えっ?」

急な話題の転換に目を白黒させるまどかに構わず、私は続ける。

ほむら「ほら、学校でも話題になっていたでしょう。岩盤浴も露天風呂もあるって」

まどか「あ、うん……」

ほむら「……良かったら、みんなで行ってみない?」

まどか「え? みんなで?」

ほむら「そう、美樹さんと志筑さんも誘って。ダメ……かしら?」

まどか「だ、ダメなんかじゃないよ。でもどうして急に、みんなでなんて」

まどかの疑問ももっともだ。

だから私は躊躇いながらも正直に答えることにした。

ほむら「……だって、二人きりでお風呂なんて、ちょっと恥ずかしいし……だから、その」

まどか「っ……! そ、そっか、そうだよね」

みなまで言わなくても察してくれたらしい。

まどか「う、うん! 今度、二人を誘ってみよっか!」

まどかは大袈裟に頷いてみせると、私の提案を受け入れてくれた。

ほむら「……決まりね」

……良かった。もし断られたらちょっぴりショックだものね。

ひとまずはホッと胸をなで下ろす。

これで、一緒にお風呂に入って、まどかの様子を見てみることが出来る。

どんな反応をするのか、じっくりと観察しなければ……。

……いや、観察と言ってもイヤらしい意味ではない。

ただ、まどかの記憶を取り戻す手掛かりを見つけられるのではないかと思っているだけなのだ。

決して裸が目当てなのではないことを私の名誉のために主張しておこう。

ほむら(……私は誰に言い訳しているのよ)

どうやら今から既に緊張してしまっているらしい。

まどかとお風呂に入るなんて初めての経験だから、色々と余計なことを考えてしまう。

まどか「えと……えへへ」

まどかは、どうなのだろうか。

私とお風呂に入ることに何か特別に思うことはあるのだろうか……。

まどか「約束だよ、ほむらちゃん」

ほんのりと頬を染めたまどかの笑顔からは、私の思い上がりでなければ……

確かな『期待』を伺い見ることが出来た……気がした。

お風呂回参加メンバーはまどか、ほむらと、
>>155から>>159になります。

という具合で安価で決めようかと思っていましたがマミさんが五人くらい登場することになっても困るので中止。

しないんかいwww
重複下とか対処法もあるけど
本編5人組に囲まれるピンのキリカとかにすれば面白いのにww

杏杏杏杏杏子「「これもロッソ・ファンタズマのちょっとした応用だ」」



その翌日の放課後。

美樹さんと志筑さんを誘ってみたところ話はトントン拍子に進んで、私達は早速スーパー銭湯へ来ていたのだった。

さやか「わお、結構キレーなとこじゃん」

エントランスに入っての美樹さんの第一声は、概ね同意出来るものだった。

新築なだけあって汚れや埃なんてものは一切見当たらないし、ホテルのような清潔感ある内装は私の想像する銭湯とは全く異なっていた。

平日の夕方ということもあり、お客さんの姿は疎らだ。

仁美「私、お友達と裸のお付き合いをするのが夢でしたの?♪」

幸運にもお稽古事のスケジュールが空いていた志筑さんは、ちょっと意外なことに、かなり上機嫌。

さやか「でも仁美、銭湯のマナーとか分かるの? タオルを湯船につけちゃいけないんだよー?」

仁美「ふふ、それくらい知っていますわ♪」

よっぽど楽しみだったのだろうか。

普段の彼女よりも柔らかい表情を浮かべている。

まどか「私もみんなとお風呂なんて初めてだから嬉しいな、えへへ」

まどかも嬉しそうで、私も嬉しい。

嬉しいのだけれど……。

さやか「でもあたしらは修学旅行で一緒に入ったことあるじゃん?」

まどか「うーん。それはそうだけど、なんか違うっていうか」

仁美「あの夜のあそこはキツキツでしたわよね、みなさんで入るには」

どうやら三人は過去に一緒にお風呂に入ったことがあるらしく、修学旅行の思い出話に花を咲かせた。

さやか「あー、それに出るの早かったしね」

まどか「だよねだよね、あんまし気持ち良く入れさせてくれなかったし」

仁美「やっぱりもっとゆっくり味わいたいものですわよねー」

記憶の中の入浴時間に不平不満を漏らしながらも、その思い出を共有できる彼女たちはどこか楽しげだ。

……でも、転校生である私には、その輪に入ることが出来ない。

ほむら「……………」

小さなトゲがチクリと私の胸を刺した。

やっぱり私は、単なるクラスメートに過ぎないのだ、と。

部外者に過ぎない、別の時間を歩む『外れた』存在なのだと、改めて現実を見せつけられて────

まどか「……ほむらちゃん!」

ほむら「えっ?」

と、私の思考を中断させたのはまどかの呼ぶ声。

まどか「今年の修学旅行は一緒に楽しもうね♪」

満面の笑顔を咲かせて、愛しい彼女はそう言う。

ほむら「……まどか」

また、気を遣わせてしまったみたいね。

ほむら「……ふふ、そうね。一緒に、修学旅行に行けると嬉しいわね」

まどか「うん!」

そのためにも、今度こそまどかを……。

決意を新たにして、気持ちを引き締め、私は脱衣所へ向かう。

さやか「あははっ、ほむら顔がシリアス過ぎ!」

……笑われてしまった。



お風呂というものは、落ち着いてリラックスして楽しむべきものだと思う。

そう、お風呂に入る時は誰でも自由でなんというか救われてなければダメなんだ、静かで豊かで安らかで……。

などと、ほんの数分前まで考えていたのだけれど。

────やはり、緊張する。

ほむら「…………」

やたらと広い脱衣所に入ってから、私の動きは目に見えて鈍くなってしまった。

銭湯がそういうものとはいえ、どうしても他人の前で服を脱ぐことに抵抗を感じてしまう。

ほむら(どうしよう)

そもそも銭湯経験が少ない私には色々と勝手が分からないことばかり。

私はみっともなくあちこちに視線を泳がせて、皆の様子を伺った。

上から脱げばいいのか、下から脱げばいいのか……いや、そんなこと悩んでも仕方がないのか……。

さやか「もぉ、ほむら! 何ジロジロ見てんのよ、えっち!」

ほむら「ふえっ?!」

不意を突かれて、変な声を出してしまった。

さやか「そんなにさやかちゃんの下着が気になるのかー? うっふん♪」

おどけた口調で茶化しながら、下着姿の美樹さんはいかにもなセクシーポーズをとってみせた。

強調された胸に目が行きそうになってしまい、私は慌てて顔を背ける。

……美樹さんって結構あるのね。

ほむら「わ、私は別にジロジロ見てなんかいないわ」

さやか「あはは、冗談だよ冗談」

ほむら「もうっ……」

美樹さんの相変わらずのデリカシーのなさに閉口していると、

まどか「……むーっ」

ほむら「?」

まどかの方から何か不満げな唸り声が聞こえた……ような気がした。

ほむら「どうかしたの?」

まどか「えっ? あ、な、なんでもないよ!」

……勘違いだったのかしら?

まどかの様子も気になるけれど、しかしいつまでもここでモタついているわけにもいかない。

キョロキョロしてたらまた美樹さんにからかわれてしまうし、私は意を決して周りの目は一度完全に忘れることにする。

ほむら(……よしっ)

さっさと用意してお風呂に入ってしまおう。

自宅でしているのと同じように手早くシャツとスカートを脱ぎ捨て、下着に手をかけてブラのホックを外して……

仁美「まあっ、暁美さんの肌、とっても綺麗ですわぁ♪」

ほむら「っ!!」

急激に耳が熱くなって、手を止める。

何を言い出すのよこの子は。

仁美「色白で、きめ細かくて……少し触ってみても?」

ほむら「や、やめてくださいっ……」

私は身構えて後ずさり、手を伸ばしてきた志筑さんから逃げて……

その拍子に、先ほどホックを外したブラがずり落ちてしまった。

ほむら「あっ……」

無防備に晒された私の乳房が生暖かい室内の空気に触れる。

何とも言えない開放感を一瞬味わって、背筋をぞくりとしたものが駆け上がって────

ほむら「……っ!!」

私は慌ててタオルで胸元を隠した。

仁美「あ、ごめんなさい。びっくりさせちゃったみたいで」

ほむら「い、いえ、平気です……」

羞恥で身体が燃えるように熱い。ここ最近そんなことばっかり言ってるような気がする。

このままでは入浴する前にのぼせてしまうんじゃないかしら。

そうだわ、まずは水風呂に入りましょう。そうしましょう。

というか、よくよく考えたら湯船に浸かるときは結局全裸になるんだから、えと、胸を見られたくらいで慌てるのもナンセンスなわけだし……。

ほむら(……落ち着きましょう、いったん)

アレコレ考えているうちに、少しは冷静さを取り戻す。

別に肌を見られたって死ぬ訳じゃないのだ、気にするな、と私は自分に言い聞かせた。

ほむら「……私なんかより、志筑さんのほうが綺麗な肌だと思うわ」

平静を装って、志筑さんの手足を眺めながらそう言ってみたりする。

仁美「あら? うふふ、そうでしょうか。お世辞でも嬉しいですわ♪」

ほむら「お世辞ではなくて本心よ?」

仁美「まあっ、照れちゃいますわぁ」

そんな冗談めかしたやり取りをしていたら少し余裕も戻ってきて……

まどか「……むむむーっ」

ほむら「?」

また、まどかの方から何か聞こえたような?

次回は入浴シーンの予定ですが皆さんの要望にお応えしてガチホモシーンになるかもしれません。



女子らしく騒々しい脱衣をようやく終えて、私達は大浴場に移動した。

……色々とモタついたせいで物凄く時間がかかった気がするわ。脱衣場に入ってからもう五日くらいたったんじゃないかしら。

もちろんそんなわけはないのだが、そんなくだらないことを考えてしまう原因は……

ほむら(……やっぱり恥ずかしいわね)

タオル一枚しか身に纏うものがないこの状況が、私の思考を鈍らせているのだろう。

さやか「さーて、まずはどのお風呂入る?」

湯気で霞む浴場内を見回しながら、美樹さんが言う。

当然ながら彼女も一糸まとわぬ姿なのだが、私ほど周囲の目を気にした様子はない。

大ぶりな二つの膨らみが大胆にその存在を主張しており、中学生でありながら『オトナ』のボディラインを形成し始めているのが窺えた。

仁美「悩んでしまいますわねー」

志筑さんは美樹さんほど肉付きが良いわけではないが、お嬢様らしい上品な立ち振る舞いが、ある種の艶っぽさを生み出している。

歩き方一つ取っても、私のような庶民とは違う。
凛と背筋を伸ばした姿勢でありながら堅苦しさはなく、柔らかな印象を見る者に与えた。

確か日本舞踊か何かを習っているのだと言っていたから、きっと稽古で身に付けた動作が日常でも自然と出ているのだろう。

そんな二人に対してまどかは……

まどか「ううー……」

俯いて、縮こまって、肌をほんのり朱色に染めて。

可愛い猫のキャラクターが描かれたタオルで、その凹凸の少な……小柄な身体を隠していた。

……色んな意味で親近感が涌く。

若干、私の緊張もほぐれる気がした。気がしたのだけれど……

まどか「……あっ」

ほむら「っ……」

まどかと目が合ってしまい、また頭の中が真っ白になって、私は反射的に天井を見上げて誤魔化した。

うん、染み一つない天井ね。よく清掃が行き届いている証拠だわ。

感心感心。

さやか「どったの? 天井に何かあるの?」

きょとんとした顔で美樹さんが尋ねる。

まあ彼女の反応は当然だ。突然連れが天を仰いだら気にもなる。

ほむら「あ、いえ……水滴の数を数えていただけよ」

口からデマカセ。

我ながら適当な返答だったが、美樹さんは特に追及してこなかった。

さやか「はあ。ま、いーや、ほむらは何のお風呂に入りたい?」

ほむら「ええと……」

この銭湯では通常のお風呂からジャグジー風呂、電気風呂、ワイン風呂、おりこ風呂と多種多様なお風呂が楽しめることが売りになっていた。

ある意味、アミューズメントパークのようなものとも言えるのかもしれない。

しかし私にそれを楽しむ精神的余裕は今のところなくて。

ほむら(正直、どれでもいいから早くお風呂に逃げ込みたいわ……)

湯船に浸かればこの貧相な身体を晒さずに済むだろうという発想しか出てこかった。

……誰が貧相な身体よ。

まどか「あ、あのねさやかちゃん」

などとどうでも良い一人漫才をしていたら、私が答える前にまどかが口を開いた。

さやか「お、まどかは入りたいのがある?」

まどか「ううん、そ、そうじゃなくて、その……」

視線をあちこちに泳がせて、太ももをモジモジと擦り合わせるように動かして……あからさまに落ち着かない様子だ。

もしかして催しちゃったのかしら?

さやか「なーに、トイレ?」

まどか「ち、違うよ! もうっ、さやかちゃんのバカっ」

仁美「さやかさん、もう少し婦女子としての自覚を持たれたほうが……」

さやか「うっ……ご、ごめんなさい……」

……トイレならあっちよ、とか言わなくて良かった。

仁美「こほん。ええと、それでまどかさん……どうかしましたの?」

まどか「あ、うん。あのね……」

既に入浴した後のように上気した顔で恥じらうその姿は、例えるなら愛の告白を成そうとする乙女。

まどか「お風呂に入るなら、その」

でも、まどかの口から告げられた言葉は……

私にとって、甘酸っぱい青春の一幕と言うには少々刺激的過ぎるものなのだった。

まどか「まずは、か、身体を洗わないといけないと思うの!」

ほむら「!」

ちらり、と。まどかが一瞬だけ私に視線を送る。

間違いなく、私に何かを期待している眼で。

次回背中を洗いつつ小学生魔法少女登場回。

登場する魔法少女のヒントは『チ』です、などと意味のない予告をしてみるテスト。

仁美「ああ、確かに……公衆浴場ではまず身体の汚れを落としてから入浴するのがマナーですわよね」

さやか「まどかはマジメだねー」

まどか「え、えへへ」

美樹さん達はそういうふうに解釈したみたいだけれど、私は違う。

まどかが何を意図しているのか、はっきりと分かってしまった。

ほむら(そ、そうよね……元はといえば、そういう約束だったわけだし……)

あえて考えないようにしていたけれど、やはり駄目なようだ。

私は、まどかの背中を流してあげなければならないのだ。

さやか「じゃあパパッと洗って、早くお風呂入ろっか!」

仁美「パパッとじゃダメですわよ? ちゃんと洗わないと♪」

さやか「へーい」

そんな他愛のないやり取りをしながら、美樹さんと志筑さんは洗い場のほうへと向かう。

ほむら「…………」

まどか「……わ、私たちもいこ? ほむらちゃん」

ほむら「え、ええ……」

嫌な訳じゃないけれど、私の足はやけに重たくて、『牛歩戦術』とかいう単語が脳裏を過ぎる。

いや、牛さんはこんなコトで動揺したりしないはすだ。

友人の肌に触れることを想像してドキドキしたりなんてしないはずだ……。

ほむら(……何を考えているのかしら、私)

訳が分からないわ。

…………。

のろのろ歩いたところで未来が変わるわけでもなく。

結局私達たちはシャワーが備え付けられた洗い場にたどり着いてしまったのだった。

さやか「へえ、ちゃんとシャンプーもリンスもあるもんなんだね」

仁美「その辺りに関しては店舗によるそうですよ」

さやか「ふーん。ま、さやかちゃんは持参した入浴セットを使うんだけどねー」

気楽な様子で雑談しながら、椅子(銭湯特有のアレだ)に腰を下ろす二人。

彼女らが着々と身体を洗う準備を進めていく横で、私とまどかは……。

まどか「…………」

ほむら「…………」

チラチラとお互いの顔を窺って、どちらも座ることが出来ずにいた。

端から見れば、不審そのものだろう。

ほむら(……この状況で『背中を流してあげるわ』、って言い出すのも……)

絶対に、美樹さんにからかわれる。

志筑さんも必要以上にイイ顔になってしまうに違いない。

それは少し……いや、かなり恥ずかしい。

なんとか自然な流れで、まどかの背中を洗ってあげたいのだけれど、難しそうだ。

まどか「ねえ、ほむらちゃん……その……」

まどかは落ち着かない様子で指先をクルクルと動かして、何度も何度もお腹に円を描いている。

『ほむらちゃん……早くしてよぉ……私もう我慢出来ないよぉ』

そんな心の声まで聞こえてくる……ような気がした。

ほむら(くっ……)

あまりまどかを待たせるわけにはいかない、と分かってはいるのだ。

モタモタしていたら美樹さん達にも不審がられるだろう。

しかし。

ほむら(とは言っても……どうすれば良いの……?)

決して、まどかの背中を洗うのが嫌なわけではない。

むしろ、友人として信用されている証と思えば光栄なことだし、小躍りしたくなるような心境だ。

でも、ひたすらに……恥ずかしい!

してあげたいけどするには私の勇気が足りなくて、嗚呼、あと一歩が踏み出せない自分が恨めしい。

……いっそ隕石が墜ちてくるとか、魔女が現れるとか、都合の良い展開は訪れないかしら……。

「わー! こんなにおっきいの初めて!」

ほむら「っ……!?」

「キョーコ、キョーコ! こっちこっち、早くきてよー!」

ほむら(この声は……)

聞き覚えのある、子供らしい甲高い声が銭湯に響いた。

杏子「おいおい、あんまはしゃぐなよ」

ゆま「はーい、ごめんなさーい。……えへへっ♪」

現れたのは隕石でもなく魔女でもなく────二人の魔法少女。

ほむら(佐倉杏子。それに、チ、千歳ゆま……!)

仁美「ふふ、元気の良いお子さんですわね」

さやか「姉妹かな? 似てないけど」

準備万端だった二人も手を止めて、佐倉さん達のほうへ視線を向ける。

その目は騒がしい子供を非難するようなものではなく、微笑ましく見守っている、といった感じだ。

まどか「どうしたの、ほむらちゃん? あの子たちをじっと見つめて……」

ほむら「あ、いえ……その」

まどか「もしかして、知り合いだったりする?」

ほむら「……違うわ。そういう訳じゃないわ」

嘘はついていない。

この時間軸ではまだ、顔を合わせるのも初めてなのだから。

次回ようやく背中を洗います(予定)

……あの子たちの登場に少し驚いたけれど、あまりジロジロ見ない方がいいわね。

まどかにも少し不思議がられているし、佐倉さんに警戒されても困る。

私は千歳ゆまからまどかの方へ向き直り……

ゆま「そうだ、ねえキョーコ! ゆまが背中を洗ってあげるよ!」

ほむら「!?」

少女の無邪気すぎる発言に、全身が強ばって固まった。

杏子「はあ? いらねーよそんなの」

ゆま「ダメダメ! キョーコってばいっつもテキトーなんだもん、たまにはゆまが洗ってあげないと!」

杏子「ったく……わーったよ、好きにしろ」

ゆま「わーい♪」

全く邪な気持ちのない、純粋な厚意が眩しい。

私もあんなふうに言えたらどんなに楽か……。

さやか「あはは。ほほえましいねー」

仁美「ふふ、そうですわね。洗いっこだなんて羨ま……あ、そうですわ!」

さやか「うん?」

仁美「せっかくだから私たちも洗いっこ致しましょう!」

さやか「ええっ?!」

ほむら「!?」

仁美「わたくし、お友達と流しっこするのが夢でしたの~♪」

さやか「い、いや、さすがにそれは恥ずかしいっていうか」

なんと好都合なのだろうか。

志筑さんの提案は私にとって正しく渡りに船。この機を逃すわけにはいかない。

ほむら「……良いんじゃないかしら。面白そうじゃない」

さやか「ほ、ほむらまでっ」

まどか「う、うん! 私もいいと思うなー、えへへっ」

さやか「お、おおう……」

仁美「ふふ、そうと決まれば早速……さあさあさやかさん、お背中を流して差し上げますわー」

さやか「……ま、いっか♪ 頼むぞ仁美ー」

……やった。

まどかが後押ししてくれたことで、美樹さんもその気になってくれたようだ。

しかも志筑さんがペアを組んでくれたことで、自然と私とまどかの組み合わせが出来上がる。

ありがとう、志筑さん。

こうも上手くコトが運ぶと何者かに踊らされている気がしないでもないけれど構わない。

ほむら「じゃあ……わ、私がまどかの身体を洗ってあげるわね」

まどか「う……うん、よろしく、ね……」

いよいよ、その時が来たのだ。

まどか「えと、ここに座ればいい……かな?」

ほむら「何処でも構わないわ」

まどかを座らせて、私はタオルを手に取った。

白くシミ一つないまどかの背中が、私の目の前に、すぐに触れられるほど近くにある……。

ほむら「……っ」

改めて、これまでの時間軸でも経験したことのない裸の距離を実感し、また鼓動が早くなった。

やっぱり、緊張するわ……。

まどか「……えへへ」

まどかは何度もモジモジとお尻をずらしては座り直している。

私の位置からでは後頭部しか見えないけれど、洗い場に設置された大きな鏡を見れば……。

口元が緩んだ、幸せそうなまどかの顔が映っていた。

ほむら(……しっかり、洗ってあげなきゃ)

まどかの期待を裏切るわけにはいかないものね。

私は、余計な雑念は捨てて、この行為に専念することにした。

ほむら「じゃ、じゃあ……こするわね……」

まどか「うん……」

そっとタオルをまどかの背に触れさせて、両の手を上下運動させる。

ほむら「こう……かしら?」

まどか「あっ……つっ!!」

悲痛な声と共にまどかの身体が跳ねた。

しまった、なんてこと……!!

ほむら「ご、ごめんなさい! 痛かった?」

まどか「う、うん、ちょっとだけ……」

布をどけてみれば、まどかの陶器のような美しい肌がうっすらと紅くなってしまっている。

嗚呼……まどかを傷つけてしまった……!

まどか「その……も、もっとちゃんと濡らしてからにしてほしいな」

ほむら「ごめんなさいまどか……私、こういうの初めてだから、下手で」

鏡の私は今にも泣き出しそうな顔をしている。

情けなくて、悔しくて、私はまどかの背中に隠れて鏡の世界を遠ざけた。

まどか「ううん、大丈夫だよ。初めてなら、仕方がないもんね」

ほむら「まどか……」

まどか「でも、今度は、もうちょっと優しくしてね……えへへ」

痛かったはずなのに、私のことを嫌いになってもおかしくないのに、まどかはそう笑ってくれた。

こんな私にもう一度チャンスをくれるのね……まどか。

ほむら「わ、わかったわ」

同じ過ちを犯すわけにはいかない。名誉挽回しなければ。

ほむら「優しく……優しく……」

美術品の手入れをするかのように慎重に。

それでいて、幼子をあやしてやるかのように愛情を込めて。

私の手はまどかの背を撫で回していく。

まどか「んっ……」

ほむら「どう、かしら……?」

恐る恐る尋ねた私にまどかは、

まどか「はふぅ……うん、気持ちいいよ、ほむらちゃん……」

と、目を細めて切なげな吐息を一つ吐く。

私の指先からも、まどかの身体から緊張が抜けていったことが感じられた。

ほむら「……! そう、良かった……」

まどかが私の手で気持ち良くなってくれることがこんなに嬉しいなんて……。

幸せすぎて、気絶してしまいそう。

次回も背中を洗います

ほむら「え、えと……次は、この辺を……」

小さな背中の上半分は大体洗い終えたので、次は下半分。

タオルを握る手が肩甲骨の周辺部から下りていって、腰辺りに触れた瞬間────

まどか「ん……ひぁっ!」

再び、まどかの悲鳴が上がる。

頭の中で、サア、と血の気が引く音が聞こえた。

ほむら「ご、ごめんなさい! 私ったらまた……!」

まどか「ち、違うよ、痛かったんじゃないよ」

ほむら「え?」

またしてもまどかに痛い思いをさせてしまった、と狼狽える私に、まどかは予想外の言葉を返す。

まどか「ちょ、ちょっと……その、今のトコが……ビックリするくらい気持ち良くて……」

ほむら「っ……!」

決してイヤらしい意味ではないと分かってはいるのだけれど……

あまりにも刺激が強すぎて、頭がクラクラして、本当に意識を手放すところだった。

ほむら「そ……そう、なの……」

絞り出した声はか細く、まどかの耳に届いたかどうかも怪しい。

ほむら(まどか……まどかは、ここが弱いのね、ここが……)

まどか「あんっ……! あ、ほ、ほむらちゃ……?」

こうやって軽く撫でただけなのに、なのに……あんな声を……。

まどか「だ、ダメっ、ほむらちゃ……私ヘンになっちゃうよぉっ……」

ほむら「えっ? あ……!」

嫌がるまどかの台詞で正気に戻り、慌てて手を止める。

私は気がつけば無意識の内に、もう一度まどかのソコに触れてしまっていたのだった。

いや、触れたというよりは……その、あ、愛撫するみたいな手つきだったような……。

ほむら「っ!! ご、ごめんなさい!」

ああ、また馬鹿な真似を……!

ほむら「ご、ごめんなさい。その、私、調子に乗っちゃって……」

まどか「だ、大丈夫だよ! ちょっと気持ち良過ぎただけだし……」

ほむら「でも……私なんかにヘンなところを触られて、嫌だったんじゃ」

まどか「ううん! わ、私、ほむらちゃんにならドコを触られたって嬉し……」

ほむら「……えっ?」

まどか「あ……ひゃあっ?! い、今のは、そのっ……」

……なんだか、とんでもない爆弾発言が飛び出したような気がする。

ほむら「と、ところでこのボディーソープ、どうかしら! 私のお気に入りなのだけれど」

あえて何も聞かなかったことにして、強引に別の話題を振ることにした。

まどか「えっ!? あ、ほ、ほむらちゃんも自分で持ってきてたんだ!」

ほむら「え、ええ。いつものじゃないと落ち着かないから……」

まどか「ふ、ふぅん……くんくん。そっかこれがほむらちゃんの匂いなんだー」

若干……いや、かなりわざとらしかったけれど、流れを変えることは出来たようだ。

まどか「あ……でも……じゃあ今、私……」

ピンク色の会話を公共の場で繰り広げる勇気は私にはない。

このまま普通の雑談を続けたいところだけれど……私の思惑とは裏腹に、まどかは。

まどか「私……ほむらちゃんとおんなじ匂いになっちゃったんだね……えへへ……」

ほむら「っ……!」

またなんとも妖しい発言で、私の不意を突いてくれた。

頭の中に浮かんだイメージは、私の肌とまどかの肌が触れ合う光景。

裸の私たちが絡み合って、互いの匂いを嗅ぎ取って、じゃれあう……そんな、そんな淫靡なワンシーン……。

ほむら(……だ、ダメ! 変なこと想像しちゃ……!)

まどかの不意打ちに、良からぬ妄想を繰り広げてしまった。

こ、こんなこと考えて……私まるで、発情しっぱなしの、へ、ヘンタイさんみたいじゃない……。

ほむら「っ……!」

頭を振って、R指定の映像を脳内から追い出して、妙な空気を誤魔化そうとして……

ほむら「えと、その……じゃあ、次は前を……洗う?」

まどか「えっ!?」

……って、何を口走っているのよ私は!

まどか「ま、前も……洗ってくれるの?」

ほむら「い、いえ! 前は自分でやるわよね。ごめんなさい、今のは忘れて頂戴」

まどか「え……う、うん……」

流石にそれは絵的にも私の理性にも不味いので、慌てて前言撤回。

期待の籠もった眼差しを向けられていたような気がしないでもないけれど、心を鬼にして無視する。

ほむら(も、もう下手に喋らないほうが良いわね……)

また妙な展開になっても困るので、私は口を閉ざすことに決めたのだった。

まどか「……ほ、ほむらちゃんになら……でも、そんな、ううう……!」

……何も聞こえないわ。ええ、何も。

明日もこの時間に投下して安価を出します
と、宣言して自分を追い込んでみるテスト。



黙々と背中を擦り続けること1、2分。

粗方洗い終えたので最後にシャワーで泡を洗い流してやり……私の戦いは終わった。

まどか「ふぅ……気持ちよかったぁ……」

ほむら「それは良かったわ」

まだ心臓がバクバクしているわね……。

それに、まどかの柔らかな、滑らかな肌の感触と温もりが手に残ってる。

こんなの初めて……幸せなような、何かが変わってしまいそうで怖いような……

ぼんやりとした不思議な感覚が、私のなかでいっぱい。

仁美「はい、終わりですわ」

さやか「ふひー、さんきゅー仁美!」

と、ちょうど美樹さんのほうも終えたらしく、大袈裟な溜め息が聞こえてきた。

さやか「おっ、ほむらも任務完了したとこみたいだね」

ほむら「任務……? ええ、終わったわ」

仁美「ふふ。それじゃあ、交代と参りましょうか?」

ほむら「……! あ……そ、そうね」

言われて初めて気がつく。

もう全部やり遂げたような気になっていたけれど、よくよく考えればまだ半分。

次は私が洗われる番なのだ。

ほむら(そ、そうよね……当たり前よね)

しかし私は、まどかに直接身体を触られるなんてことに……耐えられるのだろうか。

彼女の前で無防備に背中を晒して、そして優しく撫で回されるなんて……

ほむら(……だ、ダメっ……そんなの私、死んじゃうわ……!)

想像しただけで、羞恥心やらなんやらで今度こそ本当に気を失いそうになる。

こ、これは、断らなければならないわ……

嗚呼、しかしそれも、その、勿体ないような……。

まどか「じゃ、じゃあ次は私がほむ……」

さやか「よーし、じゃあ次はあたしがほむらを洗って進ぜよう!」

ほむら「えっ?」

まどか「!?」

さやか「ほれほれ、こっち来なよほむら! さやかちゃんが気持ち良くしてあげるよグヘヘ……」

仁美「まあ、さやかさんたら……はしたない笑い方!」

さやか「ぐへへー」

わざとらしい笑い声をあげておどけてみせる美樹さん。

……この展開は想定外だった。

正直に言ってまどかのことしか頭に無かったので、美樹さんという選択肢が存在するなんて思いもよらなかった。

……でも、彼女にしてもらったほうが……そっちのほうが気が楽で良いかも……?

まどか「ほ、ほむらちゃ……」

……まどかが捨てられる直前の子犬のような眼で私を見ている。

さやか「どしたのほむら、はよはよ」

何も気がついていないのか、美樹さんは私を急かす。

仁美「あらあらまあまあ……! うふふ♪」

……この子は全部察してるわね。

ほむら「その……ええと」

あまり悩んでいる時間はない。私がとっさに返した返事は……

>>254

1.ほむら「わ、私は……まどかに洗ってもらいたいわ」

2.ほむら「……そ、それじゃあ、美樹さんに洗ってもらおうかしら」

3.ほむら「間をとって志筑さんで」

4.ほむら「ロッソ!!!! ファンタズマ!!!!」



※まどかのヤキモチっぷりが変化します。

ほむら「わ、私は……まどかに洗ってもらいたいわ」

……言った。言ってしまった。もう取り消すことなんて出来ない。

まどか「ほむらちゃん……!」

まどかの方を見やれば、パアッという効果音が聞こえて来そうなほど笑顔を輝かせていた。

……その愛らしい表情を見れただけでも、私の選択は間違っていなかったのだと胸を張れる。

ただ気がかりなのは、美樹さんの反応だけれど……。

さやか「ありゃりゃ、フられちゃった。じゃああたしは仁美を洗ってやるーっ」

仁美「ふふ、お手柔らかに」

私の心配とは裏腹に、意外にも美樹さんはあっさり引き下がってくれた。

いつも通りのお馬鹿な……あ、いや、おどけた様子であり、特に私の発言が気に障ったということもなさそうだ。

仁美「……ふふっ♪」

ほむら「…………!」

志筑さんも何やら満足げに頷くと、意味深なウィンクを私に向けて放った。

……やはり彼女は、私達の関係に感づいているみたいね。

いえ、関係といってもやましいことがあるわけではないのだけれど……ええ、やましいことなんて……。

まどか「じゃあ、わ、私がほむらちゃんを洗ってあげるね?」

ほむら「え、ええ」

まどか「えへへっ……嬉しい……」

ほむら「お、大袈裟ね……背中を洗うだけなのに」

まどか「でも、嬉しいんだもん」

林檎ほっぺのまどかは、照れ臭そうに指先をもじもじと遊ばせながらも微笑んでみせた。

ほむら「っ……!」

私の心臓が大きく跳ねる。

……その笑顔が、親友に向けるようなものとはまったく別種のものに見えてしまったから。

ほむら(そんな顔されたら……まるで……)

それは喜びと、恥じらいと、愛しさが入り混じった……そう、例えるなら初恋が実った少女の微笑み……。

……じゃあ、恋の相手は私なの?

ほむら(……私ったら、また馬鹿な妄想を)

そんなことあるわけないのに。

あるわけないのに……私の胸の鼓動は、この想いが高ぶるのを強く訴えて続けていた。

ほむら(これじゃむしろ、恋してるのは……)

……駄目。考えちゃ、駄目。

まどか「さ、どうぞ座って?」

ほむら「……分かったわ」

まどかに促されるまま、私は彼女の前に用意された椅子に腰掛けた。

目の前の鏡には私とまどかが並んで映っており────

ほむら「っ……」

改めてその光景を目にしてみれば、これからされることを嫌でも意識させられる。

全身の筋肉が、無意味に強張ってしまう。

ほむら(このままじゃ、まどかに気付かれちゃう……)

こんなガチガチに緊張していることがバレてしまったら、嫌だ。

何とかして平静を装いたい私は、必死の抵抗を始める。

ほむら(……こんなのなんてことないわ。ただ単に、友達とスキンシップするだけ……なんだから……)

変に意識することなんて何もないんだ、と自分に言い聞かせた。

ほむら(そう、なんてことないんだから……だからこうやって鏡を見つめたって大丈夫……)

その自己暗示を真実とするべく、私は鏡に映る二人の少女の姿をじっくりと見比べる。

これは単なる裸。自分の裸。それと、同性の友達の裸……。

私とまどか、小柄な体格は似ているけれど細部は全くことなっていた。

肩、二の腕、腰回り、太股。私の身体はどこも筋張っていてまるで鳥の骨のようだ。

でもまどかは私と違って健康的な体つきをしている。

男の子からすれば美樹さんや巴さんみたいにもっと色気があるほうが良いのかもしれないけれど……

私から見れば、まどかも十分過ぎるほどに魅力的な肢体だ。

きっと抱きしめたら柔らかいに違いない……と、想像が勝手に膨らんでゆく。

……どんな感触がするのかな……ぎゅっ、ってしてみたいな……。

まどか「……ほ、ほむらちゃんのえっち」

ほむら「!?」

まどか「そ、そんな目で見られたら、その、私……」

まどかは私の身体の陰に隠れながら、小さく呟いた。

どうやら私の視線はイヤらしい意味合いのものに受け取られてしまったようだ。

……えっち、なんて可愛いんだか卑猥なんだか良く分からない言葉で非難されたのは初めてだわ。

ほむら「ち、違うわ、そんなつもりじゃ……。その、えと」

しかし言い訳しようにも、まどかの裸体を見つめてしまっていたことは事実。続く言葉は出てこない。

というか、最後のほうは少し邪念が混じっていたような気もするし……尚更後ろめたい。

ほむら「ご、ごめんなさい。私、目を瞑ってるわね」

これ以上まどかを視線で汚すわけにはいかない。

私は瞼を閉じて、黒の世界に逃げ込んだ。

まどか「あ……」

まどかの寂しげな声が聞こえたけれど、その真意は考えないようにしよう。

まどか「……べ、別に良いのに……」

もしかしたら本当は……

本当は見てほしかったのかしら、なんて……。

まどか「んと……じゃあまずはシャワーかけるね?」

ほむら「任せるわ」

返答の直後、私に温かな雨が降り注いだ。

頭頂部から髪が水分を含んでいき、毛先から雫が滴り落ちる。

雫はすぐに滝となり私の肌を洗い流していった。

……と、そこでふと気がつく。

ほむら(……視界を閉ざすと、余計に肌が敏感になるわね)

どの毛穴が濡れているのか、まだ乾いているのか……一つ一つ確認することが出来そうなくらい、触覚から繊細な情報が届いてくる。

いや、肌だけでない。聴覚も嗅覚も積極的に周囲を『見よう』としている。

美樹さん達の会話。浴槽に注がれる熱湯の音。私に降り注ぐ水の音。

石鹸の香り、小さな子供のはしゃぐ声、わずかに口に入った水道水の味……。

瞼を閉ざしても、私は世界を鮮明にとらえることが出来た。

これはおそらく、戦いに身を置く魔法少女としての本能なのだろう。

ほむら(いえ、魔法少女というよりは……まるで武人。武の境地に至った達人ね……ふふ)

新たな発見に何やら少し楽しくなってくる。

まどか「……うん、だいたい流せたし……そろそろ、始めよっか」

ほむら「ええ、お願いするわ」

私の発見を余所にまどかの作業は進む。

シャワーの音が止まり、代わりにどびゅ、びゅるっ、とボディーソープが吐き出される音が背後から聞こえてきた。

まどかの小さな手が白濁した液体に覆われていく様子が目に浮かぶ……。

……いよいよまどかの手によって、私の身体が洗われてしまう時が来たのだ。

ほむら(……でも、それだけのことよ)

しかしながら、私は意外にも平静を保つことが出来ていた。

まどかの吐息が聞こえても、まどかの体温さえ感じ取っても、私の心は驚くほど静か。

波一つない湖面の如き心象風景が私の奥に広がっている。
澄み切った意識の底には邪念の欠片も沈んでいない。

……どうやら感覚が研ぎ澄まされてゆくのと比例して、頭の中も落ち着いたらしい。

これはまさしく……そう、明鏡止水の境地というやつなのではないだろうか。

まどか「と、ところで……ねえ、ほむらちゃん……知ってる?」

ほむら「なにかしら?」

突然のまどかの問いかけにも動じない。凄いわ明鏡止水。

まどか「身体を洗うときはね……その、えと」

まどかは何やら躊躇うことがあるらしく、二の句を継げないでいる。

ほむら「ふふ、どうしたの? 言ってみて?」

そんな彼女に対して、優しく促してあげられるくらいの余裕が今の私にはあった。

……こんな穏やかな気持ちになれるなんて初めて……もう何も怖くない。

まどかにどんなことを言われたって、きっと冷静に受け答え出来るはずだわ……

まどか「う、うん……あのね、ほむらちゃん。身体を洗うときはタオルを使うよりも……」

ほむら「ええ」

まどか「……て、手で直接こすってあげたほうがお肌に良いんだって……」

ほむら「……えっ?」

……手で、直接?

待ってそれはつまりどういうことなの何故このタイミングでそんな知識を披露するの嗚呼分かっているわまどかつまり貴女は……!

まどか「ほむらちゃんのお肌、こんなにきめ細かくて、ツルツルなんだもん……」

ほんの数秒前まで明鏡止水などとぬかしていた愚かな私はもうとっくに居なくなってしまった。

何か喋るどころか呼吸すら危うくなりかけている。

まどか「き、傷付けちゃいけないし、私……私が、手で、してあげるねっ……」

ほむら「ま、待っ……!!」

やけに鼻息が荒いまどかを制止しようとするも間に合わず────

ぬちゃり、と。私の背中にぬめった両手が密着した。

ほむら「────っ!?!?」

声にならない悲鳴をあげ、私の身体は大きく跳ねた。

ほむら(なにっ、コレっ……!?)

ずっと目を閉じていた分、研ぎ澄まされていた触覚が鮮明にまどかの指先の柔らかさを訴えかけてくる。

私の肌は、魔法少女としての優れた感覚は……まどかの手の、ボディソープでぬめった指先の感触を、何倍にも増幅して私の脳髄を犯していく……!

ほむら「っ……あっ、ま、まど、かっ……!」

一瞬で頭の中は真っ白になってしまった。もはやまともに言葉を紡ぐことも出来ない。

まどか「えへへっ……それじゃ、する、ね?」

そんな私のことなんてお構いなしに……石鹸塗れの手のひらは、身体を撫で回し始める。

ほむら「っ……!!」

まどかの指裁きは繊細で、それでいて激しいものだった。

肩甲骨の周りにグルグルと円を描いたかと思えば、背骨をなぞるように下りてゆき……

私の両脇を抱くように挟み込み、そのままなぶるように上下運動を繰り返した。

ほむら「っ……くっ、う……!」

その動きはまどかがしているとは思えないくらい大胆で……

ひょっとしたら私の後ろにいるのは別の子なんじゃないかと想像してしまうほどで……

まどか「んっ……しょっ……」

けれども、時折漏らす可愛らしい声が、間違いなくまどかであることを証明していた。

ほむら「やっ……やめっ……!」

辛うじて絞り出した弱々しい声で懇願しても、その手は休まることはない。

ぐちゅ、ぬちゅ、と音を立てて、まどかは私の背を弄り続けた。

……聞こえないほど没頭しているの? それともわざとなの……?

まどか「……はぁっ、はぁっ……ほむらちゃん、どう……私の手、どう……?」

鋭敏な私の感覚は、まどかのその声だけで甘い痺れを覚えてしまう。

全身は燃え上がっちゃいそうなくらい熱くなって、喉はカラカラで、心臓は爆発寸前だった。

ほむら「っ……んぁぁっ……!」

何とかしないと……このままじゃ気がおかしくなっちゃう……!

ほむら(……そ、そうだわ、感覚を遮断すれば……!)

突如、天啓の如く閃いたのは魔法少女の秘密の一つとも言うべき特殊能力のことだった。

痛みを無くして戦える私なら、皮膚の感覚を一時的に無くすことも可能なはずだ。

それなら何も感じずに済む。まどかの指でどんなことをされたって、これ以上の醜態を晒さずに済む……!

ほむら(無視するみたいで、一生懸命頑張ってくれてるまどかには悪いけれど……でも)

でも……その、よ、良過ぎちゃうから……刺激的過ぎすぎるから……。

ほむら(……ごめんなさい)

胸中で詫びてから、私は気づかれぬように全身に魔力を走らせた。

そして感覚を遮断する魔法を発動させる────その直前で。

まどか「ね……ねえ、ほむらちゃん。ちょっとゲームしない?」

ほむら「えっ……?」

不意にまどかは手を止めて、そんなことを言い出した。

ほむら「げ、ゲームって?」

いったい何のことだろうか。この状況で何をするのだろうか。

……何故だか酷く嫌な予感がして、私は思わず唾を飲み込む。

まどか「その……えと、ね? 今から……」

ほむら「え、ええ……」

まどか「ほ、ほむらちゃんの背中に文字を書くから……なんて書いたか当てて欲しいのっ」

ほむら「っ……!?」

お風呂シーン長引き過ぎワロタ。
お休みなさい。

やっべ間違えた

メール欄に酉入れちゃった気がしたけどそんなことはなかったのです

まどかが持ちかけたのは……小さな頃に誰でも一度は経験したことがあるだろう、他愛のない遊戯だ。

でも、待って、それってつまり、そのゲームをするのであれば────。

ほむら(感覚を消すことが出来ないじゃない……!)

それどころか……書かれた文字を判別するためには今まで以上にまどかの指の感触を、じっくりと味わう必要さえある。

今の私にとって、これほど恐ろしい遊びはない……!

まどか「じゃ、じゃあ一文字め、いくね?」

ほむら「っ! ま、待っ……!」

慌てて止めようとするが、制止の言葉はまたしても間に合わず……

まどかの指によって、勢い良く大きな横棒が一本引かれる。

ほむら「んぅっ!!」

堪え切れなかった嬌声が、私の口から飛び出してしまった。

まどか「ん、しょ……」

ほむら「あっ、ひっ……!」

一画、一画、描かれる度に私の身体は電流を流されたように跳ねてしまう。

ほむら(だめ、いけないわ、みんなが見てるし、いえ、その)

まどか「えいっ、えいっ」

ほむら「ん、あっ!」

やめさせようとして説得の言葉を考えるけれど、まとまらない。

まどか「……えいっ!」

ほむら「っ……!!」

一際勢い良く、大きな一画が書き殴られると、

まどか「……ふぅっ♪」

まどかの満足げな溜め息が私の背にかかった。

ほむら「きゃっ!?」

まどか「あっ、ご、ごめんね、これで終わりだよ?」

予想外なオマケまでついてしまったけれど……どうやら出題は終わったようだ。

ほむら「っ……くっ……」

警戒を解き、肩の力を抜く。

全身がグッタリとして重い。気をつけなければ倒れてしまいそうだった。

まどか「えへへ……な、なんて書いたか……わかる?」

ほむら「っ……ご、ごめんなさい、さっぱり……」

背に書かれた文字は一つたりとも読み取ることが出来なかった。

……そんなの当たり前よ、無理に決まってるわ……。

だって、まどかの指……か、感じ過ぎちゃうんですもの……。

まどか「……そっか、残念……」

まどかの声のトーンがいくらか下がる。

どうやら私の不甲斐ない回答に不満な様子だ。

ほむら(……正解を出して欲しかったのかしら……)

……まあ、まどかには悪いけれど、これでこのお遊びは終わ……

まどか「じゃ、じゃあ、第二問だよ!」

ほむら「ええっ!?」

ほむら「ちょ、ちょっと待って。あまり時間もないし、もうやめに……」

まどか「だ、大丈夫だよっ、だからもう一回……しよ?」

ほむら「う……」

そんな甘えた声でおねだりされたら……ずるいわ。

……断ることなんて出来ないじゃない。

ほむら「ちょ……ちょっとだけにしてね?」

まどか「……うん!」

……嗚呼、私ってホント馬鹿ね。

まどか「じゃあ、い、いくよ……えいっ!」

私の心の準備が出来るより先に、まどかは一画目を背中に走らせた。

ほぼ真っ直ぐに引かれた横棒だ。

ほむら「ひぁっ……!」

また、身体が過敏に反応してしまう。

ほむら(で、でも……仕方がないわ……!)

また不正解では、きっとまどかは満足してくれないだろう。

私は覚悟を決め、まどかの指の動きに全神経を集中させることにした。

……たっぷり、じっくりと、まどかの感触を確かめるために。

まどか「つつつ……っと」

ほむら「んっ……んぅっ!」

まどかの指が上から下へ、するりと降りてくる。

……ただ、それだけのことなのに!

ほむら(これっ……マズい、ダメっ……!!)

意識を集中したせいで、指紋のごくわずかな凹凸さえも……き、気持ち良く感じてしまう……!

まどか「……これが一文字目だよ、ほむらちゃん?」

まどかはご丁寧に解説までつけてくれるが、そんなことを言われても……

ほむら「っく、はぁ、はぁ……」

どんな文字だったか、判別するどころではなかった。

ほむら(こ、これじゃあまた、まどかががっかりしてしまうわ……)

そうなった場合……どうなるのだろうか。

下手をすれば第三問目に突入するかもしれない……。

ほむら(そ、それだけは避けないと)

私は必死に記憶を……肌に残った甘い痺れを再生して、まどかの描いた軌跡を辿る。

ほむら(ええと、一画目は長い横棒だったはず……)

ほむら(そして二画目は、一画目を貫く縦の棒だった……)

ほむら(でも、途中で円を描いていた、ような気がするわ……)

ほむら「……んっ……はぁ……!」

……思い出しただけなのに、身体は勝手に小さく震えた。

まどか「次、二文字目だよ……」

ぬめり気を帯びた指が一画、二画、とテンポよく平行な横棒を二本引く。

ほむら「あんっ、あんっ……!!」

ほむら(や、やだ、私ったらなんて端ない……!)

まどか「……えへへーっ♪」

羞恥に悶える私の姿は、まどかの瞳にはどう映っているのだろうか……

彼女は楽しげな声と共に、第三画目を引いた。

ほむら「っひ……!」

三画目は斜めの直線。最初の二画を貫きながら、私の左肩から右腋へと降りていった。

まどか「これで……最後っ」

四画目はUの字を描くような曲線だ。

先の三画と比べて随分と下の方に線が引かれた。

ほむら「ひゃんっ!?」

……ちょうどお尻の辺りを撫でられるような形になってしまい、思わず腰を浮かせてしまう。

ほむら「こ、これで終わり……?」

まどかの宣言通りならこれで書き終わったことになるはずだけれど……。

まどか「うん、そうだよ」

ほむら「そ、そう……」

……良かった。少なくとも今はこれ以上の『責め』を味わわなくて済むようだ。

私はほぅ、とため息を一つ吐く。

まどか「ふふ、でも……」

ほむら「?」

まどか「ほむらちゃんって敏感なんだね……♪」

ほむら「っ……!」

何気ないその一言は……なんだか私には、その……やらしい意味に聞こえてしまった。

まどかに他意はないのだろうけれど……。

……ないわよね?

まどか「……ね、ほむらちゃん。今度はなんて書いたか分かる?」

ほむら「え、ええと……」

まどかの指の感触を充分に味わった私の身体は、どくんどくんと全身で大騒ぎしている状態だけれども……

でも、先ほどよりは背に書かれた文字を読み取ることが出来た。

ほむら(一文字目は二画の文字。二文字目は四画の文字だった……)

そして、どちらも比較的シンプルな文字だったような気がする……きっとひらがなに違いない。

ほむら(ひらがな二文字で……ああいう字……ってことは)

も、もしかして……?

ほむらちゃんの背に書かれた文字を当ててください。
(などと突然クイズをぶっこんでみるテスト)

>>346

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年04月11日 (金) 22:35:10   ID: E-X2tj6D

353 :1 ◆okuJ0cvot2 [saga]:2014/03/02(日) 19:41:49.93 ID:8HdvzUqK0このSSは打ち切ります。
今までありがとうございました。

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