リヴァイ「観念しろ」(141)
リヴァイ「エルヴィン」
ブレードの刃先がエルヴィンに向けられる。
リヴァイは、巨人と対峙した時よりも険しい表情をして睨み付けていた。
かつて、彼がゴロツキだった頃を彷彿とさせる表情だ。
いや、その頃よりも強くなった分、更に凶悪になっているとも言える。
しかし、いくら鋭く睨み付けられようが、エルヴィンは怯まない。
否、実は怯みそうになっていたが、なんとか自分を奮い立たせて平静を装っているのだ。
エルヴィン「待つんだ、リヴァイ。話をしよう」
リヴァイ「ほう……命乞いか? いいだろう、かつての団長様の頼みだ。少しくらいなら聞いてやる」
そうは言うものの、リヴァイは決して刃先を下ろそうとしない。
隙を窺っているようだ。
……ここで言葉を間違えてはいけない。
エルヴィンは自分に言い聞かせる。
少しでも間違った言葉を口にすれば、その次の瞬間にエルヴィンの首は地に落ちるだろう。
数秒、考えを巡らせて、エルヴィンは口を開いた。
エルヴィン「リヴァイ……なぜこんなことになってしまったのだろうな。戦友と対峙するなど……」
戦友、という言葉に、リヴァイが反応したのをエルヴィンは見逃さなかった。
エルヴィン「“彼ら”はもっと他にやり方を思い付かなかったのか? これはあまりに愚策だと思うが……」
リヴァイ「……さぁな。だが、愚策だろうが何だろうが、俺達はそれに従わなければならねぇ」
エルヴィン「従う、か。お前らしくないな」
その言葉に、リヴァイの瞳が揺れた。迷いが生じたのだろう。
……今だ!
エルヴィンは、勢いよくブレードを抜いた。
突然の出来事に、リヴァイは怯んだ。
ほんの一瞬だけのそれを、エルヴィンは逃さない。
ブレードを構えたまま、彼の脇をすり抜け、そのまま全力で走った。
切りつけるという選択肢はエルヴィンには無い。
攻撃が成功する確率はかなり低かったし、何より戦友に刃を向けるなど、例えフリであっても出来なかったのだ。
リヴァイ「待て! エルヴィン!」
後ろからリヴァイの制止する声が聞こえてくるが、追っては来ていないようだ。
すまない、と、小さく呟きながら、エルヴィンは走った。
残されたリヴァイは、エルヴィンの走り去っていった方向を見つめながら大きく舌打ちをした。
先程、エルヴィンがブレードを抜いた時と走り出した時。
反応は遅れたかもしれないが、決して止められなかったわけではない。
だというのに、体が動いてくれなかった。
“戦友”、エルヴィンの発したその言葉が、リヴァイの動きを止めたのだ。
リヴァイ「クソッ……」
ブレードを収め、リヴァイは俯いた。
ハンジ「あ、いたいた。リヴァイ!」
そこへ、もう一人の戦友のハンジがやって来た。
リヴァイは顔を上げ、ハンジの方へと振り向く。
ハンジ「こっちはいなかったけど、そっちは?」
リヴァイ「いた、が……逃した」
ハンジ「は!? リヴァイが!?」
リヴァイ「悪いか」
ハンジ「いや、悪いとは言ってないよ。ちょっと驚いただけだ。……そうか、でも、無理ないよ。私だって本人を前にしたら……」
ハンジが俯き、唇を噛む。
彼女もまた、かつての戦友のエルヴィンを想っているのだろう。
ハンジ「けど、仕方ないんだ、リヴァイ。エルヴィンは……」
リヴァイ「……」
ハンジ「ハゲなんだから、捕らえないと」
人通りのない路地裏に逃げ込み、エルヴィンは溜め息をついた。
何とか逃げ切れたことへの安堵と、これからのことを憂いての溜め息だ。
リヴァイは何度も同じ手に引っ掛かるような男ではない。
先程の“戦友作戦”も、次は使えないだろう。
恐らく、次にリヴァイと対峙したら……。
エルヴィンの命は無いにも等しい。
どうしてこんなことになってしまったのだろう。
どうして薄毛(※ハゲ)というだけで、追われなければならないのだろう。
エルヴィンは、歯噛みした。
そして思い返す。あの日のことを。
……それは、一週間ほど前に遡る。
全ての始まりは、とある貴族の娘の一言だった。
「髪の薄い人を見てると悲しくなってくる」
それを聞いていた娘の父親は愛しい娘を悲しませる存在に怒り狂った。
そして、娘を悲しませる存在は根絶やしにしてしまおうと考えたのだ。
さすがに猟奇的すぎると思われるだろうが、彼は娘を溺愛しているので仕方がない。
幸か不幸か、その貴族は兵団の雇い主とは旧知の仲だった。
そこで、彼は雇い主に言ったのだ
。
世のハゲを根絶やしにしろ、と。
俗にいう“ハゲ狩り”の始まりである。
後に全ての発端となる発言をした娘はこう語る。
「まさか自分の発言であんなに大事になるとは思わなかった。けどハゲを見ると悲しくなるのは本当だ」と……。
そして、ハゲ狩りは、すぐに3つの兵団及び訓練兵に伝わることとなる。
当然ながら、エルヴィンの元にもすぐにその報せが届いた。
しかし、それを聞いた時、エルヴィンは自分は大丈夫だろう、と高をくくっていた。
自信があったのだ、自分の使用しているカツラに。
どんなにハゲしく動こうが、決してずれないそのカツラに。
しかし、その自信はすぐに砕かれることとなった。
リヴァイ「エルヴィン、いるか」
ノックもせずに、リヴァイがエルヴィンの書斎に入ってきた。
エルヴィン「リヴァイ、何度も言っているがノックを」
リヴァイ「悪いがお小言を聞いている暇はねぇんでな……」
エルヴィン「……何のつもりだ?」
リヴァイはブレードを抜き、刃先をエルヴィンに向けている。
その行動に驚きつつも、平静を装いながら、エルヴィンは静かに問い掛けた。
ふん、とリヴァイが鼻を鳴らした。
リヴァイ「それはお前が一番分かっているはずだが?」
エルヴィン「……いや、分からない、分からないな。お前は何を考えている?」
リヴァイ「本気か? エルヴィン。俺達がその、お前の頭に乗っているものに気付いていないと、本気で言ってるのか?」
エルヴィン「……ッ!?」
まさか、そんなはずはない。
まさか、気付かれているはずがない。
このカツラは、完璧なのだ。
自分にそう言い聞かせながら、しかし頬に冷や汗を伝わせながら、エルヴィンはリヴァイを見る。
彼の目は……本気だ。
息を吐く、吸う、吐く、吸う。
なんと落ち着こうと努めながら、エルヴィンはゆっくりと、唇が震えないように注意しながら口を開いた。
エルヴィン「……何を言っているか、分からないな。頭に……何が乗っていると言いたい?」
リヴァイ「ほう、あくまでしらを切るか……」
エルヴィン「……」
リヴァイ「ならばハッキリ言ってやろう。俺達がお前がカツラだということに、気付いていないと思っていたのか?」
リヴァイの言葉を聞いた瞬間、エルヴィンの全身から汗が吹き出した。
体幹を、上肢を、下肢を、そして頭皮を……汗が流れ、蒸らしていく。
どうして。
いつから。
俺“達”ってどういうことだ。
様々な疑問がエルヴィンの頭の中を駆け巡る。
冷や汗を滝のようにハゲしく流すエルヴィンを見ながら、リヴァイはもう一度鼻を鳴らした。
リヴァイ「……お前も既に知ってるだろう、“ハゲ狩り”を。このままだと、俺はお前を殺さなければならねぇ」
エルヴィン「リヴァイ……待て、これはカツラではない」
リヴァイ「チッ、まだ言うか……見苦しいぞ。じゃあ聞くが、日によって生え際の位置が微妙に違うのは何故だ?」
エルヴィン「……ッッ!!」
その指摘に、エルヴィンは遂に何も言えなくなってしまった。
位置調整は完璧にしているはずだった。
しかし、どうしても僅かなズレは生じてしまうものだ。
それも、ほんの数ミリ程度のズレなのだが……。
だが、エルヴィンは夢にも思っていなかった。
まさかそんな僅かなズレに気付く者がいようとは。
すっかり何も言わなくなったエルヴィンを見て、リヴァイはブレードを下ろした。
リヴァイ「エルヴィン。俺は本当はお前を殺したくねぇと思っている。だから、選べ」
エルヴィン「……」
リヴァイ「このまま殺されるか、植毛するか」
今日はここまで
頭皮は大切に
リヴァイが口にした言葉、植毛。
それは、ハゲ達が唯一生き残れる方法だった。
エルヴィンは、植毛がどのようなものかよく知っている。
有用ならば使わない手はないと調べたからだ。
調べた結果。
植毛はナシ、という結論に至った。
確かにメリットもあったが、その代償があまりにも大きすぎたのだ。
成功すればいい。
しかし、失敗したら……残り僅かな髪すらも、抜け落ちてしまう可能性があるというのだ。
……なので、植毛するという選択肢は、エルヴィンには無い。
もちろん、殺されるという選択肢も無いのだが。
しかし、ここで口を滑らせてしまうと、リヴァイのブレードがエルヴィンに襲いかかってくるだろう。
エルヴィンは目を閉じ、慎重に、慎重に言葉を選んだ。
エルヴィン「分かったよ、リヴァイ……」
リヴァイ「ほう……」
エルヴィンの言葉を聞き、リヴァイはブレードを収めた。
どうやら、その言葉を“植毛する”という意味で捉えたらしい。
リヴァイ「話が分かるな。既に準備は万端だ。行くぞ」
リヴァイがエルヴィンに背を向けた。
その、瞬間。
エルヴィンは机にあった本を持ち、リヴァイの背後に歩み寄った。
そして。
本の角で、リヴァイの頭を殴ったのである。
まともに衝撃を受けてしまったリヴァイが、膝から崩れ落ちていく。
そこそこの威力で殴ったので気絶をしたかと思ったが、そこは人類最強と呼ばれる男だ。
意識は保っているようだった。
だが、衝撃のせいで未だ立ち上がることは難しいらしい。
リヴァイ「エルヴィン……テメェ……!」
エルヴィン「悪く思うな。これも自分自身……そして頭皮を守るためなんだ」
リヴァイ「なに……?」
エルヴィン「すまない、リヴァイ」
待て、とリヴァイが言いかけたが、その言葉を聞く前に、エルヴィンは逃げ出した。
……これが、彼の命と頭皮を守る長い逃亡生活の始まりだった。
……そして今に至る、というわけだ。
さて、リヴァイを振り切ってから数十分後。
どうやら追ってきてはいないらしい。
エルヴィンは懐から手鏡を取り出して、カツラの位置を確かめる。
ズレはない。
生え際も不自然ではない。
これなら人前に出ても、カツラとは気付かれないだろう。
人通りを気にしながら、エルヴィンは路地裏から出た。
と、その時だった。
「エルヴィン」と、誰かに話し掛けられたのである。
エルヴィンは体を硬直させた。
まさか、これほど早く見付かってしまうとは思わなかったのだ。
どうすれば、いい。
逃げるか。
それとも、戦うか。
いや、その前に声の主を確かめなければ。
こくん、と息を飲んで、エルヴィンは振り返った。
そこにいたのは。
エルヴィン「ピクシス司令!」
人類の最重要区防衛の全権を託されており、そしてエルヴィンの薄毛(※ハゲ)仲間……ドット・ピクシスだった。
まさかの人物の登場に、エルヴィンは驚きを隠せなかった。
だが、“あること”に気付くと、更に驚き、そして戦慄した。
ピクシスの頭に、無いはずのものが乗っていたからだ。
エルヴィン「ピクシス指令、それは……一体……?」
ピクシス「気付いたか……」
ピクシスが自身の頭部に触れる。
まるで、壊れ物を扱うように慎重な手付きだった。
ピクシス「植毛した」
嘘だ。
嘘だ。
嘘だ、嘘だ!
そう叫びたい衝動を抑え込み、エルヴィンはピクシスを……いや、ピクシスの頭を見つめた。
軽い風に揺られて靡くそれは、確かにピクシスの頭皮から生えているようだ。
エルヴィン「なぜ……司令、あなたはよくご存知のはずでは……? 植毛の危険を……!」
ピクシス「もちろん、よく知っておる」
エルヴィン「では、なぜ!」
ピクシス「……禿げ頭が原因の死など、受け入れられん。ワシはの、死ぬなら超絶美女の巨人に食われるか、美女の膝の上と決めておる」
エルヴィン「それは……そのお気持ちはよく分かります。しかし」
反論しようとしたところを、ピクシスの手によって制される。
エルヴィンは口をつぐんだ。
ピクシス「お主の言いたいことはよう分かる。ワシとて、相当悩んだ」
ピクシス「しかしな、エルヴィン。時には選択することも必要じゃろう」
ピクシス「ワシは選んだ。頭皮か……美女を」
ここまで
自分なら迷うことなく美女を選ぶ
ピクシスの声は、目は、あまりにも真剣だった。
とうとうエルヴィンは何も言えなくなって、俯いた。
ピクシスはそんな彼の肩に手を乗せる。
憐憫の情を感じさせるような、優しく、そしてどこか温もりを孕ませた触り方だった。
ピクシス「エルヴィン……こうなってしまったが、ワシはお主の味方でありたいと思っておる」
エルヴィン「……」
ピクシス「植毛に堕ちたワシを信用出来ん気持ちも分かる。じゃが、信じてほしい。ワシは……世の禿げ頭の味方であるということを」
エルヴィン「ええ、分かっています……分かっていますとも」
ピクシス「……ワシはそろそろ行かねばならんが、何かあったら呼んでくれ。お主の力になろうぞ」
エルヴィン「ありがとうございます」
ぽん、とエルヴィンの肩を叩き、髪を軽やかに揺らしながらピクシスは去っていく。
ピクシスの後ろ姿に敬礼をして、エルヴィンはその背が見えなくなるまでその場から離れなかった。
因みにピクシスの行き先は、植毛をした施設だ。
そう、今日はメンテナンスの日だったのである。
さて、ピクシスと別れたエルヴィンは、なるべく人通りの少ない道を選びながら歩いていた。
そろそろ夕刻、日が傾き始める時間だ。
暗くなる前に、一晩を過ごせる宿を探さなくてはならないのだ。
なるべく宿泊客が少なく、エルヴィンのことを知らない人物が経営している宿がいいが、中々そんなところは見付からない。
どうしようか、と、頭を悩ませていた時だ。
「エルヴィン団長」と、誰かに声を掛けられた。
今日はよく話し掛けられる日だ。
そう思いながら、振り向く。
先程のピクシスの件があり、少々警戒心が薄れてしまっている。
そこにいたのは……。
アルミン「探しました! 団長!」
部下のアルミン・アルレルトだった。
エルヴィン「アルミン……!」
彼の姿を見たエルヴィンは、腰のブレードに手を掛けた。
アルミンは薄毛(※ハゲ)ではない。
ということは、つまり、エルヴィンを狙っているかもしれないのだ。
そんなエルヴィンの行動を見て、アルミンは慌てて両手を挙げた。
攻撃をする意思はない、と伝えようとしているようにも見える。
アルミン「落ち着いてください! 僕はハゲ狩りをするつもりは一切ありません!」
エルヴィン「……俄には信じがたいな」
アルミン「し、信じられないのは仕方ありません……。ですが、話だけでも聞いてください。その間、手はこうして挙げておきます」
ここでアルミンの話を聞かずに切り捨ててしまうことは簡単だ。
だが、いくらアルミンが髪がフサフサとはいえ、かつての部下。
少しくらい、話を聞いてもいいかもしれない……。
そう思い、エルヴィンはブレードから手を離した。
エルヴィン「分かった、聞こう」
アルミン「あ、ありがとうございます!」
エルヴィン「しかし少しでもおかしな動きをしたら……分かっているな?」
アルミン「は、はいっ」
そして、両手を挙げたまま、アルミンは話し始めた。
アルミン「開拓地にいた頃……とても良くしてくれたおじさんがいました。
パンを分けてくれたり、僕の分の仕事を引き受けてくれたり。
おじさんにも僕くらいの年の子供がいたらしいから、放っておけなかったらしくて。
……そのおじさんは、口減らしのために殺されてしまいましたが……。
その人の顔ははっきりと思い出せないけど、しっかり覚えていることがあります。
その人は、おじさんは、ハゲだった。
髪が、一本もない、そう、ハゲだったんです!」
アルミン「だから、僕はハゲ狩りに反対なんです。だって、ハゲに悪い人はいないと思うから!」
アルミンの話に、エルヴィンはハゲしく心を揺さぶられた。
“ハゲに悪い人はいない”
そうきっぱりと言ってくれた彼のことを、信じられないわけがない。
アルミンへと歩みより、エルヴィンは右手を差し出した。
その行動に、アルミンは目を見開き驚いている様子だ。
エルヴィン「疑ってすまなかった」
アルミン「! 信じてくださるのですね!」
エルヴィン「もちろんさ」
二人は固い握手を交わした。
アルミン「信じて頂けたところで、早速行きましょう」
エルヴィン「どこへ?」
アルミン「身を隠せる場所へ。見たところ、宿に困っているようでしたので」
エルヴィン「ああ、助かる……」
思わぬ協力者の出現に、エルヴィンはホッと息をついた。
今までずっと一人で行動していたのだ。
それが二人になると、安心感が違う。
アルミンは戦闘は得意ではないが、頭が切れる。
強力な助っ人になってくれることだろう。
アルミン「では、行きましょう」
そう言って歩き出したアルミンの後を、エルヴィンも追った。
エルヴィン「君が見付けてくれて助かった。本当にありがとう」
アルミン「いえ、僕の方こそ……信じて頂けるか不安だったので、良かったです」
エルヴィン「あんな話を聞かされたら、信じないわけにはいかないだろう」
そう言うと、アルミンは嬉しそうに笑った。
アルミン「本当に……ありがとうございました」
アルミン「信じてくれて」
ぴたりと歩みを止め、アルミンが振り向く。
その表情は笑顔だ。
エルヴィン「……アルミン? どうしたんだい。ここから先は行き止まりのようだが……」
アルミン「はい。ここで合っています」
アルミンは、笑顔のままだ。
エルヴィン「……何を考えている?」
アルミン「そうですね……どうやってあなたを殺そうか、ということでしょうか」
アルミン「エルヴィン“元”団長」
エルヴィン「何……だと……?」
アルミンは笑顔だ。
だが、エルヴィンはその笑顔に、獲物を追い詰めて喜ぶ獣の姿を連想した。
エルヴィン「罠だったのか……!」
アルミン「はい。まさかこんなに簡単に嵌まってくれるとは思いませんでした」
エルヴィン「……さっきの話も、言葉も、嘘だったのか?」
アルミン「いいえ。開拓地にいいハゲがいたのは本当です。ハゲに悪い人はいないというのも、まあ、本心です」
エルヴィン「では、なぜ」
アルミン「……。何かを捨てなければ、何も変えられない。だから僕は捨てたんです。ハゲへの想いと」
アルミン「あなたへの尊敬の念を」
アルミンがブレードを抜き、刃先を向けてくる。
迷いのない、真っ直ぐな目がエルヴィンを捉える。
彼は本気で、ここでエルヴィンを討ち取るつもりらしい。
しかし。
アルミンは、甘い。
いくらここまで追い詰めようと、エルヴィンとの実力差は明らかだ。
特に戦闘が不得意のアルミンは、エルヴィンに傷ひとつ負わせられるかさえ怪しい。
エルヴィンもまた、ブレードを抜き、アルミンに刃先を向けた。
エルヴィン「勝敗は目に見えている。それでも、やるのか?」
アルミン「はい。……それに、僕一人ではありませんから」
その言葉と同時に、エルヴィンの背後から足音が聞こえた。
それも、一人分ではない。
聞いたところ、二人分だろう。
目の前にいるのはアルミン。
と、なると、足音の主は容易に想像できる。
エルヴィン「……エレンとミカサか」
そう言って、エルヴィンは振り向いた。
そこには、想像した通りの二人が……、
エレン・イェーガーとミカサ・アッカーマンがいた。
二人の手にもまた、ブレードが握られている。
エレン「団長……」
ミカサ「……」
エルヴィン「やはりか……」
エルヴィンとエレン、ミカサが見つめ合う。
いや、睨み合うといった方が正しいかもしれない。
エレンは未だ信じられないといった目で、ミカサは感情の読み取れない目で見つめてくる。
何も言わずに睨み合うこと、数秒。
最初に口を開いたのらエレンだった。
エレン「団長……俺を、俺達を騙していたんですか……?」
エルヴィン「騙す?」
エレン「だって、だって、その髪が……!」
エレン「カツラだったなんて!!」
エレンの手は震えているようだった。
エルヴィンがカツラだったという事実を受け入れたくないと思っているのだろうか。
エレン「本当に……カツラ、なんですか……?
違いますよね? 確かに生え際が……怪しいとは思っていましたけど……、
嘘ですよね?
団長が……団長が!
ハゲだなんて!!」
とりあえずここまで
ちょっと自分が何を書いてるか分からなくなってきた
そんなエレンの悲痛な語りかけに、エルヴィンは答えなかった。
エレン「何か言ってくださいよ!」
エルヴィン「……」
エレン「エルヴィン団長!!」
エルヴィン「……」
エレン「だん……」
更にエレンが語りかけようとしたところで、ミカサが一歩前に出た。
彼女はブレードを構え、エルヴィンを睨み付ける。
ミカサ「……エレン。これ以上、何を言っても無駄」
ミカサ「不毛……」
ミカサ「ハゲだけに」
ミカサ「削ぎ落としてやる。首も、カツラも」
その声色も、表情も、本気だ。
今、エルヴィンが立たされている状況を整理してみよう。
彼は今、エレンとミカサに向かい合っている。
そして後ろには、アルミンがいる。
しかも、アルミンの後ろは行き止まりだ。
ここから逃げるには、エレンとミカサを倒さなければならない。
だが、二人は……特にミカサは、一筋縄ではいかないだろう。
いや、彼女に勝てるかどうかすら怪しい。
彼女は訓練兵時代、すでに並みの兵士百人分の働きをすると言われていた相当の実力者だ。
実践経験を積み、戦い方を覚えた今では、その頃よりも更に強くなっているだろう。
ミカサだけではない。
エレンもまた、厄介な力を秘めている。
巨人化だ。
ここは壁内なのでその力を使用する可能性は低いが、全くのゼロとは言い切れない。
そしてエレンとミカサが揃ったとなると、アルミンにも気を付けなければならない。
彼は切れ者だ。
状況判断に長けている。
エルヴィンがどんな行動を起こそうが、すぐに作戦を考え、二人に指示を出すだろう。
つまり、この状況……。
どこにも逃げ道がない。
打つ手がない。
八方塞がり、四面楚歌、絶体絶命。
エルヴィン(これまでか……)
ブレードを持つ手から、力が抜けていく。
エルヴィン(ここまでよく生き延びることが出来たものだ。
素晴らしい人生とは言えないが、悪くはなかったな……)
生を諦め、エルヴィンは目を閉じた。
……その時だ。
脳裏に、ピクシスの言葉が浮かんだ。
ピクシス『時には、選択することも必要じゃろう』
次に、つい先程のアルミンの言葉も浮かんだ。
アルミン『何かを捨てなければ、何も変えられない』
エルヴィン(……ああ、そうだ)
エルヴィン(まだ、諦めるべきではない)
閉じた目を見開く。
ブレードは放り投げる。
その突然の行動に、三人が驚いた様子を見せた。
エルヴィン「すまないな、まだここで死ぬわけにはいかないのでな!」
そう言ってエルヴィンは……、
カツラに、手を掛けた。
ミカサ「何をする気!?」
エルヴィン「こうするのさ」
不敵に笑いながら、エルヴィンは勢いよくカツラを外した。
ミカサ「……ッ!」
エレン「な、何だ!?」
アルミン「そんな、そんな! 嘘だ!」
その瞬間。
エルヴィンの頭皮がピカピカとハゲしく光を放った。
三人は、あまりの眩しさに目を開けていられない。
エルヴィンの放つ光。
それは、
太陽の如く、眩しく、白い。
三人が怯んだ隙にブレードを拾い上げてエルヴィンはその場から逃げ出した。
もちろん、カツラを被るのも忘れない。
さて、残された三人は、ようやく眩しい光から解放されて目を開けた。
エレン「本当に……カツラだったのか……!」
ミカサ「自分の頭皮を利用した!? あの人にはプライドというものがないの……?」
アルミン「……捨てたんだ。自分の命を守るために、プライドを。めちゃくちゃだけどこうなったら手強い
一旦、戻ろう。新しい作戦を練らないと」
寝る
目を閉じてから数分後、エルヴィンはすっかり夢の中にいた。
そんな彼に、近付く足音があった。
それは、確実にエルヴィンに向かってくる。
だが、エルヴィンは気付く様子もなく、眠り続けている。
足音は一歩、また一歩と近付いてきて、
ついにエルヴィンの前で止まった。
足音の主は彼の顔を見て目を見開いた。
???「……この男……」
そして、眠っている彼の頭に手を伸ばし……あろうことか、カツラを少しずらしたのである。
???「やはりそうか……エルヴィン・スミス。こんなところで出会うとは」
足音の主はそっとずらしたカツラを戻しながら呟いた。
???「来てもらうぞ、エルヴィン」
どれくらいの時間、眠っていただろう。
光の眩しさで、エルヴィンは目を覚ました。
エルヴィン「朝、か……?」
薄く目を開けたエルヴィンだったが、その次の瞬間にはカッと見開き、飛び起きた。
昨夜、エルヴィンは建物の陰で眠りについたはずだ。
しかし、今、彼がいる場所はどう見ても室内なのだ。
混乱しながらも、辺りを見回してみる。
室内には、エルヴィンが寝かされていた簡素なベッドと椅子しか置かれていない。
壁の高い位置には窓があり、どうやらそこから差し込んだ光がエルヴィンを照らしたようだった。
エルヴィン「ここは一体……?」
???「目を覚ましたか」
エルヴィン「あ、あなたは……」
部屋の扉が開き、入ってきた人物を見て、エルヴィンは驚愕した。
エルヴィン「キース、団長」
キース「その呼び方はよせ。私はもう団長ではなく、ただの教官だ」
エルヴィン「はっ。……しかし、ここは一体?」
キース「そうだな、説明しよう。その前に何か食べておけ」
持っていたパンと水をエルヴィンに渡すと、キースは椅子に腰掛けた。
人前……ことさら、キースの前で物を食べるということに少しばかり抵抗があったエルヴィンだが、空腹には勝てずにパンを口に運んだ。
固いパンだ。
しかし、空腹は最大の調味料とはよく言ったもので、今のエルヴィンには何よりのご馳走だった。
一分も経たないうちに、パンは無くなった。
エルヴィンが食べ終えたのを見て、キースは口を開いた。
キース「ここは我々、薄毛(※ハゲ)が身を隠している建物だ。ハゲ狩りが始まってすぐ、ピクシス司令が用意して下さった」
エルヴィン「ピクシス司令が……」
エルヴィンは、ピクシスのあの言葉を思い返した。
ピクシス『ワシは……世の禿げ頭の味方であるということを』
その言葉に嘘偽りは一切なかったのだ。
植毛をしたとはいえ、ピクシスはハゲの味方、そして希望の光(頭が光るという意味ではない)だ。
キース「そして我々は、反ハゲ狩り……通称、ハゲスタンス」
エルヴィン「ハゲ、スタンス……?」
キース「そうだ。この世からハゲ狩りを無くすことを目的としている」
この世からハゲ狩りを無くす。
それは、エルヴィンにとって悲願である。
ハゲ狩りを無くし、以前のような世界。
カツラに気付いていても、何も指摘せずにいてくれたあの優しい世界。
そんな世界に戻れたのなら、なんと喜ばしいことだろう。
しかし。
エルヴィンは、知っていた。
それが叶わぬ願いであるということを。
エルヴィン「……ハゲ狩りは、この世の薄毛(※ハゲ)以外の全員と言っても過言はありません。
失礼ながら、だんちょ……いえ、キース教官の仰ることは無謀かと……」
キース「貴様はそう言うと思っていた」
椅子から立ち上がり、キースは扉へと向かっていく。
キース「ここに残るか、出ていくかは好きにしろ。貴様が薄毛である限り、追い出したりはしない。
私はこれから出掛ける。何かあれば建物内にいる者に伝えておけ」
窓から差し込む光を頭で反射させながら、キースは出ていった。
エルヴィンは、その後ろ姿を眩しそうに見つめていた。
キースが出ていった部屋の中。
エルヴィンは横になり、考えていた。
エルヴィン(ハゲスタンス……ハゲ狩りの無い世界……。
理想だ。しかし、あまりにも無謀だ。
ハゲ狩りは数もさることながら、その力も凄まじい。
リヴァイにミカサ……。
あの二人がいる限り、ハゲスタンスに勝ち目は無いだろう。
だが……)
そうやってぐるぐると考えを巡らせているうちに、エルヴィンは眠ってしまった。
寝る
シリアス難しいわ
眠りについてから約二時間。
建物内が騒然としているのに気付き、エルヴィンは目を覚ました。
ベッドから降りて部屋を出る。
すると、数名が廊下を慌ただしく行き交っていた。
ちなみに彼らは皆、ハゲである。
その内の一人を捕まえて、エルヴィンは聞いた。
エルヴィン「何があった?」
問われた人物は、顔面……いや、すっかり禿げ上がったその頭までも青く染めながら、震える声で答えた。
ハゲA「キースさんが……!」
男の後ろについて、エルヴィンは走った。
髪の乱れ……ではなく、カツラのずれなど、今は気にしていられない。
先程の男の言葉を思い出す。
“キースさんが、ハゲ狩りに襲われました!”
今は前線から遠退いているとはいえ、キースとて相当な実力者だ。
簡単にやられるはずがない。
もしも、彼に深手を負わせることが出来る者がいたとしたら、それは……。
エルヴィン「キース教官!」
ベッドで横になっているキースの姿を認めると、エルヴィンは駆け寄った。
キースは頭に包帯を巻いている。
キース「エルヴィン……心配ない、見た目は派手だが、場所が場所だけに出血が酷かっただけだ。傷も深くない」
確かに、頭部には血管が集中しているので少しの怪我でも出血量は多くなる。
キースの言う通り、傷は大したことはないのかもしれない。
そのことに関してはホッとしたエルヴィンだったが、怒りは収まらない。
エルヴィン「一体、誰がこのような無惨ことを……。我々には髪というクッションがなく、頭部への外傷はダイレクトに食らうというのに……!」
キース「……。奴等はどうやら、エルヴィン、貴様を探しているらしい」
エルヴィン「!!」
キース「気を付けろ。或いは既に、この場所を突き止めている可能性が……」
と、キースの言葉を遮るように、カツン、と足音が響き渡った。
リヴァイ「よく分かってんじゃねぇか……」
エルヴィン「お前……リヴァイ……!?」
リヴァイ「よう、エルヴィン。
今日の生え際はその位置か。
……今度こそ、観念しろ」
リヴァイの登場には驚いたエルヴィンだが、心のどこかでは“やはり”と納得していた。
キースに傷を負わせられる者……。
それを考えた時にエルヴィンが真っ先に思い付いたのが、リヴァイだったのだ。
エルヴィン「お前がキース教官を……!」
リヴァイ「そうだ。……キース・シャーディス。ハゲスタンスを統べる男。
前から目をつけていたが……偶然、発毛剤を品定めしているところを街中で見付けてな……叩いてやったんだ」
エルヴィン「そんなところを……卑怯だとは思わなかったのか!?」
リヴァイ「卑怯だと? お前には言われたくねぇな……。忘れたとは言わさねぇぞ、二度、俺から逃げた時のことを」
エルヴィン「……ッ!」
確かに、リヴァイの言う通りだった。
一度目は背後から本で叩き、
二度目はリヴァイのエルヴィンに対する気持ちを利用した。
卑怯と言われても、反論できない。
エルヴィンは絶句してしまった。
そんな彼を見てリヴァイは鼻を鳴らし、左右のブレードを抜いた。
そして一本の刃先をエルヴィンに、もう一本の刃先をキースに向ける。
リヴァイ「まとめて仕留めてやる」
キース「……待て。貴様に聞きたいことがある」
リヴァイ「ほう……言ってみろ」
キース「あの時、貴様なら私を殺せたはずだ。だが、わざと逃がしただろう。なぜ、そんなことをした?」
その質問に、リヴァイは愚問だとばかりに鼻で笑った。
リヴァイ「テメェをここに戻ってこさせる為に決まってんだろ。もしかしたらエルヴィンの野郎が……と思っていたが、当たりだったな」
キース「……」
リヴァイ「無駄話は終わりだ」
リヴァイが構える。
エルヴィンも迎え撃とうとしたが、ブレードを先程の部屋に置いてきていることに気付いた。
キースもまた、何も装備していない。
つまり、この状況からの生存は絶望的。
相手がリヴァイということもあり、その絶望はひとしおだ。
エルヴィン(ここは……やはり“あの手”を使うしかないな)
あの手、とは。
アルミン達と対峙した時に使った、カツラを外すというエルヴィンの奥の手だ。
リヴァイに使うのは少しばかり気が引けるが、自分とキースの命を守るためだ。
エルヴィンは、カツラを掴もうと手を動かした。
しかし。
リヴァイ「カツラを外すか……」
エルヴィン「……!」
リヴァイ「いいだろう、エルヴィン、外せ。ただし俺はこれを使わせてもらう」
そう言いながら、リヴァイはブレードを持ちながらも器用に懐へ手を入れ、あるものを取り出した。
それは……。
エルヴィン「色つき眼鏡……?」
それは、レンズが薄黒の眼鏡だった。
リヴァイがそれを掛ける。
彼の目が、レンズで覆われた。
リヴァイ「これで光は遮断される」
エルヴィン「なぜ、それを」
その時。
コツン、と、足音が響いた。
それは、リヴァイのものではない。
エルヴィンのものでもない。
では、誰のものか?
エルヴィンは音のした方へ目を向けた。
そこにいたのは。
アルミン「僕ですよ」
アルミンだった。
彼もリヴァイと同様に、色つき眼鏡を掛けている。
アルミン「あなたのカツラの下の光を兵長達に全て話して、準備したんです」
エルヴィン「君か……さすが、侮れない」
アルミン「ありがとうございます」
アルミンが口角をつり上げる。
笑っている、のだろう。
眼鏡のせいで目が見えないため、表情が分かりにくい。
……今度こそ、逃げ道は全て断たれてしまった。
助けは期待できない。
リヴァイだけでなくアルミンがここにいるということは、他のハゲ狩りもいると思っていいだろう。
ハゲスタンスの実力は知らないが、ハゲ狩りに抵抗できるとは到底思えなかった。
これまでか……。
そう思い、エルヴィンが遂に諦めかけたその時だ。
キースが口を開いた。
キース「……貴様ら、ハゲスタンスが薄毛(※ハゲ)の者のみで構成されていると思っているのか?」
リヴァイ「……何だと?」
キース「将来の心配をする者もいるということだ」
キース「そうだろう」
キース「フーバー」
その、刹那。
リヴァイとアルミンが反応するよりも早く、いつの間にか二人の背後に立っていたフーバー……ベルトルト・フーバーが、二人からサングラスを取り上げ、高く手を掲げた。
お世辞にも身長が高いとはいえない二人は、ベルトルトの手には届かない。
アルミン「ベルトルト……! どうして!」
ベルトルト「……訓練兵の時から不安だった。日に日に後退していく生え際が、将来の毛根が。
けど、そんな時、親身になってくれたのがキース教官だった。
僕の気持ちがよく分かると、言ってくれたんだ」
アルミン「何を言ってるんだ! 君にはちゃんと髪が生えてるじゃないか!」
ベルトルト「君には分からないさ、アルミン。フサフサの君には……」
ベルトルトは持っていた色つき眼鏡を掛け、もうひとつをキースへと投げ渡した。
受け取ったキースは直ぐ様それを掛け、叫ぶ。
キース「今だッ! エルヴィン!!」
負けじとリヴァイも叫んだ。
リヴァイ「やめろ! エルヴィン!!」
だが、エルヴィンはここで自分が何をすべきか分かっている。
例えそれが、戦友を裏切ることになろうとも。
エルヴィン「すまない、リヴァイ」
ゆっくり、カツラに手を掛ける。
そして……。
その瞬間、
エルヴィンは地上の太陽になった。
その後のことを簡単に書き記そう。
エルヴィンの光を直視してしまったリヴァイとアルミンはしばらく目を開けられず、涙も止まらなかった。
だが、幸いにも後遺症などはなく、数時間ほどで元の状態に戻ったようだ。
ハゲスタンスの隠れ家にはエルヴィンの想像通り、エレンやミカサを始めとするハゲ狩りが攻め込んで来ていたが、
ハゲスタンスのメンバーは必死に抵抗。
負傷者は出たが、死人は一人も出なかった。
命を賭けたハゲの底力とも言えよう。
そして、ハゲ狩り。
次から次へと現れるハゲに、ついに貴族が根絶やしにするのは無理だと悟り、収束が宣言された。
期間にして一週間強の短いようで長かったハゲ達の戦いは、彼らの毛根と共に終わりを迎えたのである。
そして、ハゲ達はというと。
ピクシスは自身の経験を活かし、ハゲ達に植毛のメリットとデメリットを説いている姿をよく目撃されている。
キースはハゲ狩りが始まって以来休職していた教官へと復帰。
今も頭皮を光らせながら訓練兵へ怒号を飛ばしていることだろう。
ベルトルトは調査兵団の兵士としての職務をこなしつつ、これ以上生え際が後退しなくなる方法を調べている。
たまにアルミンとああでもない、こうでもないと話し合っている姿が見られているという。
そして、エルヴィンは……。
リヴァイ「エルヴィン、いるか」
ノックをせずに書斎に入ってきたリヴァイを見て、エルヴィンはやれやれと溜め息をついた。
エルヴィン「何度も言っているだろう、リヴァイ。ノックをしろ」
リヴァイ「小言はいい。それより、次回の壁外調査についてだが」
エルヴィン「ああ、そのことか、それならハンジも呼んだ方が……」
リヴァイ「……いや、待て。その前にエルヴィン」
リヴァイ「カツラがずれてるぞ」
リヴァイの指摘に、エルヴィンは朗らかに笑い、ありがとうと礼を言いながらカツラを元に戻した。
エルヴィンは、あれからもカツラを被り続けている。
しかし、もう以前のように隠したりなどしていない。
堂々と、胸を張って被っているのだ。
エルヴィン「では、改めて説明をしよう。ハンジを呼んできてくれないか」
リヴァイ「……ッチ。行ってくる」
エルヴィン「頼んだ」
リヴァイが出ていくのを見送り、エルヴィンは窓の外を見る。
今日は、晴れ。
雲が少なく、太陽が燦々と光輝いている。
エルヴィンは眩しそうに目を細めた。
エルヴィン「いつかあの太陽よりも熱く輝ける存在になりたいものだ」
ちなみにその言葉は、頭が、という意味ではない。
終わり
お付き合いありがとうございました。
シリアスの練習のつもりで書いたけど、難しいわ。精進します。
乙
くそ笑った
良かったら過去作を教えてほしい
>>135
期待だけはしないでください
・アルミン「海」
・コニー「覚えてるか?」
_人人人人人人人人人人人人人人人_
> ハゲがいるぞ殺せ!!! <
 ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
三 ( ´・ω)
三 ー(‐∪─→
三 / ̄ ̄ ̄ 》  ̄\
三三 | U ・ | 彡⌒ ミ
三 と| ι| | ヽ(´・ω・`)ノ
三 /_∧∨ ̄ ̄/_∧U (___)
人人人人人人人人人人人人人人人_
彡⌒ ミ > ハゲしかいないぞ!!!! < 彡⌒ ミ
ヽ(´・ω・`)ノ  ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄ ヽ(´・ω・`)ノ
(___) (___)
三 (;´・ω)
三 ー(‐∪─→ 彡⌒ ミ
彡⌒ ミ 三 / ̄ ̄ ̄ 》  ̄\ ヽ(´・ω・`)ノ
ヽ(´・ω・`)ノ 三三 | U ・ | (___) 彡⌒ ミ
(___) 三 と| ι| | ヽ(´・ω・`)ノ
三 /_∧∨ ̄ ̄/_∧U (___)
彡⌒ ミ
彡⌒ ミ ヽ(´・ω・`)ノ
ヽ(´・ω・`)ノ (___)
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このSSまとめへのコメント
すごく上手いと思った