梓「どれがお好み?」 (16)




今日は私の二十歳の誕生日。

というわけで大学から近いちょっと落ち着いた雰囲気のお店で、先輩達と憂と純がお祝いしてくれることになった。

憂「なんか大人な所だね…」

純「やっぱ大学生は違うねえ」

梓「うん…」

お店に入って店員さんに席に案内してもらう。

律「お!梓達来たか。こっちこっち」

紬「最近、見つけたお店なのよ~」

唯「なんかかっこいいとこだよねえ」

澪「さあ三人とも座って」

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律「皆、ジュース持ったか?」

では、と律先輩の先導でおめでとうの乾杯。
ありがとうございます、と一人ひとりに返し、次々と運ばれてくるご馳走を食べている最中にフっと店内の照明が暗くなった。

「あれ?」

すると聴いたことのある誕生日ソングが流れだし、通路の方からろうそくの付いたケーキが運ばれてきた。
…ん?後ろからろうそくとは別の明かりが…


純「花火!?」

なんとその正体は花火の刺さったカクテルだった。ブルーハワイのような真っ青の液体には色とりどりの花もちりばめられていて、すごくきれいなんだけれど、
その、薄暗い店内では大変目立っており周囲のお客さんまでこちらに注目している。
ケーキとグラスを目の前におかれ、唯先輩の音頭でみんながハッピーバースデーを歌ってくれた。
それからうながされて火を吹き消すと、皆さんからはもちろん持ってきた店員さんや周りのお客さんにまでおめでとうの言葉をいただてしまった。

嬉しいけど…ちょっと恥ずかしい。

律「いやあ、梓はこういう演出を恥ずかしがるだろうなと思ってな!」

澪「ちょ、ちょっとやり過ぎかと思ったんだけどさ」

唯「花火すごかったでしょ~」

紬「ねー」

純「さすが軽音部…」

憂「あはは」

梓「…確かにびっくりしましたし、少し恥ずかしかったですけど…ありがとうございます」

おお、梓が素直だ、なんて少々失礼な台詞も聞こえたけれど、正直嬉しい気持ちの方が強いので反論するのは今日はやめだ。


そうして、ケーキをきり分けていると、

律「ただプレゼントを渡すのも面白くないだろ?」

唯「それでね、あずにゃんもやっとお酒飲めるようになったから、プレゼントと一緒にね」

紬「まだお酒を飲んだことのない梓ちゃんに私達それぞれのオススメのを飲んでもらうっていうのはどうかなって」

澪「それぞれのオススメを一口ずつ飲んでみて、気にいったのを貰えばいい。残された分は頼んだ人が責任持って飲むよ」

純「誰が梓の舌をうならせられるかって事ですね!」

憂「私はあと三か月お預けだなー」

いや面白そうですけど、なぜみな勝負モードなんです…?




最初は澪先輩。

澪「プレゼントは律と合同なんだ」

梓「わあ。かわいいブラウスです」

律「襟元にギターのワンポイントがあって、これは!ってね」

梓「ホントだ…。お二人ともありがとうございます!」

澪「で、私のおススメは『ピナコラーダ』だよ。前に読んだ小説の中に出てきて飲んでみたいと思ったんだ」

梓「トロピカルな味ですね」

澪「名前もかわいいだろ」

梓「そうですね」




次は律先輩。

律「プレゼントは先に渡したからな。私のはこれだ!『レッドアイ』!!」

梓「赤い、ですね」

律「インパクト勝負だ!」

梓「これは…トマトですか?」

律「おう、健康的だろ?あとビールの苦みが無くなっていいんだよ」

梓「うーん。トマトですね…」




三番目はムギ先輩。

紬「はい、梓ちゃん。おめでとう」

梓「ありがとうございます。これはポーチですね」

紬「カバンの中にいれるのにいいサイズだと思って」

梓「はい、ちょうどいいくらいです!ファスナー口のファーもかわいいです」

紬「よかったぁ。それで私のおススメは『ハイボール』よ」

梓「…ちょっと意外な雰囲気のが出てきました」

紬「シンプルでいいでしょう」

梓「味もすっきりした感じですね」

紬「あら。梓ちゃん、結構お酒に強いのかもしれないわね」

梓「ええっ、そうですかね?」




その次は純。

純「どうぞ!」

梓「…ブロックのギター?」

純「自分で組み立てる奴なんだけど、梓のギターにそっくりだったからさあ」

梓「確かにむったんっぽい…」

純「でしょ、でしょ!それで私はこれを『スクリュードライバー』!名前がかっこいい!」

梓「なんか飲んだことないみたいにきこえるんですけど?」

純「ありません!」

梓「純らしいよ…。あ、でも飲みやすいかも」

純「あ、そうなんだ。やはり純ちゃんの目に狂いはなかった!」

梓「…そうだね」




五番目は唯先輩。

唯「じゃじゃーん!あずにゃんどうぞー!」

梓「ありがとうございます。唯先輩、とりあえず離れて下さい」

唯「ええー」

梓「ええと、黒猫の髪ゴムですね」

唯「あ!あずにゃんだ!かわいいって!」

梓「ど、どうもです…」

唯「ではでは私はこの『ピーチフィズ』で!かわいいでしょー」

梓「色が先輩らしいです」

唯「えっへへ~」

梓「あまっ」

唯「そこがジュースみたいでいいんだよぉ」

梓「味も先輩らしいです」




最後は憂。

憂「私はまだ飲めないからプレゼントだけだけど」

梓「それだけで充分だよ。あ、靴下」

憂「前に冬用の欲しいって言ってたから」

梓「暖かそうだし、柄もかわいい。ありがとう」

憂「私の誕生日には梓ちゃんのおススメの飲み物を紹介してね」

梓「うん!」


律「これで全員分すんだかー?」

梓「皆さん、本当にありがとうございました!」

唯「それであずにゃん、どれが一番おいしかった?」

梓「うーん。これが一番飲みやすい気がしました」

紬「やった!私のー!」

ガッツポーズをするムギ先輩のそばで他の方々が悔しがる…、のかと思えばそうでもない。
私の分だと新しく注文したハイボールを店員さんから受け取ると皆なんだかにやにやしている。

あれ?憂はなんか顔赤い…?お酒は飲んでないはずなのにどうしたんだろ?


紬「ハイボールってウィスキーのソーダ割りの事なの。知ってた?梓ちゃん」

梓「へぇ、そうなんですか。初めて知りましたけど、でもそれがどうかし…」


…ウィスキー?


え、ウィスキーってお酒の名前デスヨネ?

「ういすきー」

だ、だだだ誰が憂が好きだって?!

突然の事に頭の処理が追いついていない私に「いやあ、やっぱり憂が好きなんだねえ、梓は」と純が言う。
「私もコーラで割ったやつはまあまあ好きなんだけどねえ」と唯先輩。
その隣りで苦笑いしている憂。


律「私も『澪スパークリング』好きだぞ!」

澪「お前はいきなり何を言い出すんだ!」

紬「うふふふふふ」

梓「わ、私は、憂が好きだからって選んだわけでは!!あっ!」

憂「梓ちゃん…」

紬「うふふふふふふふ」


「あずにゃん、憂の事よろしくね!」と何も言わなくてもわかってるよと言いたげな唯先輩の素敵な笑顔に、私はただただうなずくしかなかった…。


おしまい!


なんだか雑になってしまいましたが、あずにゃん誕生日おめでとう!!

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