ユミル「エロ本を見つけた」(178)

ユミル「これは……紛れもなくエロ本だ」

ユミル「用足しに来たら男子用厠の出入り口前に落ちていたが……誰かの忘れ物か?」

ユミル「おそらく厠の個室で処理した後に落としたってところだろうな」

ユミル「でも普通気付くだろ。本一冊だぞ。手拭じゃねぇんだから」

ユミル「まあいい、面白いもんが手に入った。どれ、どんな内容かなー?」

ユミル「ふむふむ、色んな女性の写真集か……」

ユミル「おー、モロ出しじゃねぇか。普通こういうのって修正が入るんじゃないのか?」

ユミル「今更気付いたが黒髪の女ばっかだな。ああなるほど、黒髪特集なのか」

ユミル「持ち主の趣味だろうな。分かりやすい」

ユミル「さてと、パラ見するのはこれくらいにして、こいつをどうしてやろうかなー」

クリスタ「ユミル? 何してるの?」

ユミル「うわっ、クリスタ!?」

クリスタ「そんなに慌ててどうしたの? あ、今何か隠さなかった?」

ユミル「い、いや別に? それよりお前こそ何の用だよ」

クリスタ「厠に来てすることなんて一つじゃない。ユミルもそうでしょ?」

ユミル「あ、ああ。そのつもりだったんだけどやっぱり今はいいかなーって」

クリスタ「変なの……じゃあまた後でね」

ユミル「ああ、またな」

ユミル「……ふう、びっくりした」

ユミル「咄嗟に隠してしまったが、あいつがエロ本を見てどういう反応をするかは興味あるな。年頃の女だし、気にならないはずはない」

ユミル「まあそれは次の機会に確かめるとして、今はこれをどうするか」

ユミル「持ち主がここに探しに来ないってことは、まだ落としたことに気付いてないんだろうか」

ユミル「いずれは来るだろうが、それで普通に返してやるのもつまらんな」

ユミル「じゃーどうしよっかな……」

エレン「おい、何持ってるんだ?」

ユミル「うおっ!?」

エレン「驚き過ぎだろ。それより何か隠したな?」

ユミル「そ、そうか? 気のせいだろ」

エレン「そんなわけあるか。声かけられてすぐ背中に入れただろう。薄くて四角い……雑誌みたいなやつを」

ユミル「ちっ……これだよ」

エレン「意外に大人しく差し出したな……て、なんだよこれ!」

ユミル「見りゃ分かるだろ、エロ本だ」

エレン「そりゃ分かるけど、お前こういう趣味だったのか。しかも厠の前で読んでるなんて」

ユミル「違うわ! いや厠の前で読んだのは確かだが、断じて私の趣味じゃねぇ!」

エレン「そう言われてもこの状況ならそうとしか思えないぞ」

ユミル「あーもう、つまりだなあ……」

エレン「ふーん、つまりこのエロ本は誰かの落とし物ってことか」

ユミル「そうだ。私はこれをどうしようかと考えていてだな……つーか待て」

ユミル「まさか……お前じゃねぇだろうな?」

エレン「は? 何が?」

ユミル「このエロ本の持ち主だよ。自然に話してるが、実は内心焦ってるんじゃないか?」

エレン「いや違うぞ。オレはただ用足しに来ただけだ」

ユミル「本当だろうなあ?」

エレン「本当だって」

ユミル「怪しい……」

エレン「凝視されても違うもんは違うぞ」

ユミル「……ふん、どうやらそうみたいだな。嘘吐くの上手いタイプには見えないし、お前」

エレン「まあ、そうかも」

ユミル「つまんね。お前だったら黒髪好きでも違和感ないんだが」

エレン「なんでオレが黒髪好きなんだ?」

ユミル「そりゃミカサが黒髪だからだ。普段は邪険にしてるが実は……とか、面白いだろ?」

エレン「勘弁してくれ。オレにとっては面白くもなんともねぇよ」

ユミル「ふうん? じゃあどういうのが好みなんだよ?」

エレン「そうだな、強いて言うなら……待て。なんで自分の性的嗜好を暴露しなきゃなんねぇんだ」

ユミル「ち、自然な流れで聞き出せると思ったが」

エレン「うわ、危ねぇ」

ユミル「しかし、お前のじゃないとすると誰のなんだろうな。心当たりないか?」

エレン「そう言われてもな。男同士でそういう話することもあるけど、黒髪好きの奴なんていたっけ?」

ユミル「この本自体に見覚えは?」

エレン「それもない。持ち主を探してやるのか?」

ユミル「ああ。こういう内容だから教官に届けるわけにもいかねぇし。まあ持ち主をからかってやるのが目的だが」

エレン「お前の目的はともかく、普通に聞き回っても素直に自分のだって言うとは思えないが」

ユミル「それが問題なんだよな」

クリスタ「あれ? ユミルまだいたの?」

ユミル「おおうっ!?」

クリスタ「また驚いてる。あ、エレンもいたんだ。もうすぐ夕ご飯だよ、二人とも食堂行った方がいいんじゃない?」

ユミル「あーそうだな。そうするよ」

エレン「オレは用足しに来たんだった」

ユミル「おいエレン、飯食い終わったらまたここに来い」

エレン「なんで?」

ユミル「いいから来い。こいつの持ち主を探すの手伝え」

エレン「んー、まあいっか。オレも興味あるし」

クリスタ「何話してるの?」

ユミル「何でもない何でもない。さ、早く行こうぜ」

クリスタ「う、うん?」

ユミル「――さて、夕飯も食い終わったし、再びここに集まったわけだが」

エレン「ああ」

ユミル「夕飯中に挙動不審な男がいないかと観察してみたが、特におかしな奴はいなかった」

エレン「まだ落としたことに気付いてないって可能性は?」

ユミル「ないことはないが、エロ本を見つけてからそこそこ経ってるんだ。普通は気付く」

エレン「まあそうか。じゃあ態度には出してないわけだ、その持ち主は」

ユミル「そうなるな。そういう奴が相手だと、お前の言ったようにただ聞き込んでも正直に答えることはないだろう」

ユミル「つーわけで、ここからはお前に協力して貰う」

エレン「というと?」

ユミル「男子が所有しているエロ本の傾向を掴んでこい」

エレン「は?」

ユミル「その傾向から黒髪好きの男を割り出す。男のお前にしかできない仕事だ」

エレン「つまり他人のエロ本を無断で漁れってことか?」

ユミル「まあ普通に頼んでも見せて貰えるとは限らないから、その時は無断でやることになるな」

エレン「やだよ。そんなことできるか」

ユミル「お前の性格からしてそう言うと思っていた。だから、報酬を出そう」

エレン「報酬?」

ユミル「私もお前と同じように女どもの性的嗜好を調べて、それを教えてやる」

エレン「なっ」

ユミル「どうだ? お前も思春期の男、興味あるだろ? ミカサやサシャ、アニにミーナ。クリスタは教えられないがな」

エレン「ぬぬ」

ユミル「それにこれはエロ本を落として困っているであろう男のためでもある」

ユミル「もし漁っているところを誰かに見られても言い訳できるだろ。こっちには大義名分があるってな」

ユミル「ほら、自分の好奇心を満たすと同時に人助けもできるんだ。悪くない条件だと思うが?」

エレン「くっ……いや、しかしそれは」

ユミル「なかなか強情だな。仕方ない、もう一つ出そう」

エレン「これ以上何を……」

ユミル「ちょっとついて来い」

エレン「引っ張るなよ。いったいどこに……待て待て! なんで厠に入っていくんだ! しかも男子用!」

ユミル「お前は男なんだから男子用使うのは当たり前だろ?」

エレン「お前は女だろうが!」

ユミル「喚くな。周りに聞こえる」

エレン「やめろー!」

エレン「……どういうつもりだよ。個室に連れ込んで鍵まで閉めて」

ユミル「さすがに厠の真ん前はまずいからな。詰めの一手は……こいつだ」

エレン「ユミルが拾ったエロ本?」

ユミル「お前が手伝ってくれるなら、これを見せてやろう。私と二人で観賞会だ」

エレン「はあっ!?」

ユミル「黒髪趣味ではないと言っても見てみたくはあるだろ? それにこいつは無修正だ!」

エレン「む、無修正だと……! いや違う違う! 見せてくれるなら普通に渡してくれればいいだろ。なんでお前と個室でなんだよ」

ユミル「なんとなく、面白そうだから」

エレン「ただの好奇心かよ」

ユミル「さっさと承諾してしまえ。ほら、こんな感じだぞー?」

エレン「おおっ、すごい……!」

ユミル「だろう? もっと見たければ……分かるな?」

エレン「……分かった、協力しよう」

ユミル「よし。じゃあそこ詰めろ。私と隣り合えるくらいのスペース空けな」

エレン「お、おう」

ユミル「私もパラ見しただけだったからな。じっくり見るのは初めてだ」

ユミル「ほうほう、男はこういうのが好みなのか」

エレン「この人すげぇ。胸も尻もでかい」

ユミル「やっぱり男は巨乳好きか?」

エレン「小さいより大きい方が好きって奴は多いだろうな。大き過ぎるのはあれだけど」

ユミル「なるほど。お、こいつの髪綺麗だな」

エレン「本当だ。長い髪が似合ってるなあ」

ユミル「長髪と短髪だとどっちがいい?」

エレン「その人によるな。似合ってるならそこまで気にしないかも」

ユミル「ふーん」

エレン「あれ?」

ユミル「どうした?」

エレン「この女の人……ユミルに似てないか?」

ユミル「は?」

エレン「身長高くて、ちょっと目つき悪くて、髪を後ろで結んでて……特徴がいくつか当てはまる気が」

ユミル「偶然だろ。似てるとこ挙げるだけなら誰だってできる」

エレン「そうかなぁ……」

ユミル「ほら、次のページ行くぞ」

エレン「ううむ……本当にすごい」

ユミル「どの辺がすごい?」

エレン「やっぱり修正が入ってないところだな。オレが持ってるのには全部入ってる」

ユミル「なら女の秘部を見るのは初めてか」

エレン「まあ、そうなるかな」

ユミル「つまりお前は童貞ってことだ」

エレン「う、うるせえ。訓練兵で経験済みの奴なんてフランツとかの彼女持ちくらいだろ」

ユミル「いや分からんぞ? 辛い訓練のストレス発散にやってる奴がいるって噂を聞いたことがある」

エレン「マジかよ。初耳だ」

ユミル「あくまで噂だけどな」

エレン「……お前はどうなんだ?」

ユミル「何が?」

エレン「だから経験だよ……あるのか?」

ユミル「……さあ、どうだろうな」

エレン「はぐらかすなよ」

ユミル「女にそういうこと聞くもんじゃねぇ。デリカシーってもんがないのか」

エレン「お前だって聞いてきただろうが。それに二人でエロ本見てる時点でデリカシーも何もないと思うが」

ユミル「うるせーうるせー」

エレン「口割らないなら無理矢理確認するぞ」

ユミル「なんだ、強姦か? それともエロ本だけじゃ満足できなくなったか?」

エレン「……その通りだ」

ユミル「は? ちょっ――おい!」

エレン「今更慌てたって遅いぞ。この状況を作ったのはお前なんだからな」

ユミル「お、おいおい、ちょっとした冗談じゃねぇか」

エレン「個室で男とエロ本観賞が冗談? お前、男舐めてるだろ」

ユミル「わ、私は本当にそんなつもりは」

エレン「知るか」

ユミル「……ま、待ってくれ。私にも心の準備ってもんが」

エレン「心の準備? もうオレにやられることへの抵抗はなくなったのか? ああそうか、最初からその気だったわけだ」

ユミル「ち、違っ」

エレン「違わないだろ。そうじゃなけりゃ強姦されそうなこの状況を受け入れるわけがない」

ユミル「うぅ……」

エレン「随分と軽い女なんだな、ユミルって」

ユミル「……」

エレン「……あ。そういやこのエロ本、さっきのページで最後だったな」

ユミル「……え?」

エレン「残念だけどここまでだな。読み終わったならここにいる理由ないし」

ユミル「お、お前……」

エレン「ほら、ユミルもさっさと出ようぜ」

ユミル「い、いったいどういう」

エレン「ん? ああ、ちょっとした冗談だ。お前も分かってて乗ってきたんだろ?」

ユミル「……」

エレン「え? もしかして本気にしてたのか?」

ユミル「ぅ……」

エレン「……ぷっ、ぎゃははははははははっ!」

ユミル「わ、笑うな」

エレン「あはははははははっ!」

ユミル「……」

エレン「ほ、本気にするとかっ、ありえねぇだろ! ははははははっ!」

ユミル「……」

エレン「じゃああの弱々しい態度も素だったのかよ! あーはっはっはっはっ! 腹痛ぇ!」

ユミル「……ね」

エレン「あはははは! な、何か言ったか? い、息できないぃっ!」

ユミル「死ねぇえええええっ!」

エレン「ぎゃあああああああああああああああ」

今日はここまで
パンツ脱いでくれた人本当にすまん
その期待にはそのうち応えられる……と思う

ユミル「……つーわけで、明日もここに来い」

エレン「はい」

ユミル「調査の結果はその時に報告して貰う」

エレン「はい」

ユミル「真剣にやらないとこの程度じゃ済まさないからな」

エレン「はい」

ユミル「去勢もするから」

エレン「……」

ユミル「返事は?」

エレン「……はい」

ユミル「よろしい」

エレン「……行ったか」

エレン「はあ……本当に殺されるかと思った。確かにやり過ぎたかもしれないが、あんなに怒るとは」

エレン「まあいいか。無修正のエロ本見れたし、他の女子の趣味も聞けるし……ちょっと可愛かったし」

エレン「よし、さっそく男子寮で調査開始だ。誰か戻って来てるかな?」

コニー「おーエレン、お帰り」

エレン「コニー、お前一人か?」

コニー「ああ」

エレン「相手はたった一人で、それもコニー。これは無断で漁るよりも……」

コニー「おい、何ぶつぶつ言ってんだ?」

エレン「……突然だけどさ、お前ってエロ本持ってるか?」

コニー「は? そりゃ持ってるけど、急に何だよ?」

エレン「もし良ければどういうのを持ってるか見せて貰いたいんだが、駄目か?」

コニー「んー、別にいいけど代わりにお前も見せろよ。持ってるだろ」

エレン「分かった。お互い見せ合おう」

コニー「よし決まりだ。ちょっと待ってろ」

コニー「これで全部だ」

エレン「おおー、多いな。三十冊くらいあるんじゃないか?」

コニー「コツコツ貯めてたらいつの間にかこんな量になっちまった。お前は?」

エレン「オレはこんな感じだ」

コニー「たったの五冊か。少なくないか?」

エレン「確かに物足りなく感じる時もあるけど、多過ぎるのもどうかと思ってさ」

コニー「じゃあそういう時はオレに言えよ。いくつか貸してやるぜ」

エレン「本当か!?」

コニー「その代わり何らかの見返りは要求するからな?」

エレン「もちろんだ」

エレン「にしてもジャンルがバラバラだな。何か特別に好きなやつとかないか?」

コニー「基本的にエロければ何でもいいからあまり拘りはなけど……一番気に入ってるのは、これだ」

エレン「これは……コスプレ?」

コニー「一人の女が色んな衣装を着てる写真集だ。メジャーなものからマニアックなものまで」

コニー「この女がなかなか好みでさ、いろいろと妄想が捗る。悪いがこれだけは貸し出し禁止だ」

エレン「……茶髪か」

コニー「そうそう、この茶色の髪がまた良い。お前もそう思うだろ?」

エレン「ああ」

エレン「……実はな、急にエロ本の話題を出したのには理由があるんだ」

コニー「理由?」

エレン「皆がどんな趣味してるか気になってさ。いろいろと探りを入れようかと」

コニー「ふうん、確かに気になるな」

エレン「だろ? コニーは他の奴がどんなエロ本持ってるか知らないか?」

コニー「どうだったかな……あ、ライナーとジャンの隠し場所はだいたい分かるかも。夜中にごそごそしてるのを見たことがある」

エレン「本当か? よければ教えてくれないか? どうしても気になるんだ」

コニー「いいぜ。あいつらまだ戻って来ないし、今のうちに覗いちまおう」

コニー「まずはライナーからだ。確かこの辺に……おっ、ビンゴだ!」

エレン「早っ!」

コニー「楽勝だぜ。オレには物探しの才能があるかもしれない」

コニー「全部で十五冊……おい見ろよ、見事に金髪ばっかりだ」

エレン「うわ本当だ。分かりやすい趣味だな……待て。金髪だけじゃないぞ、あいつの好みは」

コニー「確かに、全体的に女の身長が低くて幼いような」

エレン「金髪で低身長……やっぱりあいつのことか」

コニー「ん? 誰?」

エレン「いや、何でもない……お?」

コニー「今度はなんだ?」

エレン「適当にめくってたら、本の間からもう一冊出てきた。まるで隠すかのように」

>>56
> エレン「金髪で低身長……やっぱりあいつのことか」


アルミン「呼んだ?」

コニー「たまたま挟まってただけだろ」

エレン「……そうじゃない。ちゃんと見ろ、この本に写っている人間の局部を」

コニー「こ、これは!」

エレン「……あれが、ついてる」

コニー「……」

エレン「……」

コニー「……なあ、見なかったことにしないか?」

エレン「……そうだな。ライナーは低身長で金髪の女が好き。それ以外には何も知らない」

コニー「ああ! その通りだ!」

エレン「調査開始二人目でとんだ地雷を踏んじまった」

コニー「気を取り直してジャンのとこ行こうぜ。えーと、あいつはベッドの下だったような……あったあった」

エレン「また分かりやすい所に」

コニー「ジャンも十冊くらいだ。おー、趣味丸出しのチョイスだな」

エレン「……黒髪ばっかり!」

コニー「声でけえって! 誰かに聞かれたらどうすんだ!」

エレン「あ、悪い」

コニー「みんな髪の色に拘りがあるんだなぁ。十冊全部が黒髪って、どれだけ好きなんだよ」

エレン「……これはもう、決まりだろ」

コニー「なんか言ったか?」

エレン「何でもない。ジャンはなんで黒髪が好きなんだろ。ライナーの金髪好きは分かるんだが」

コニー「はあ? そんなの簡単じゃねぇか。むしろライナーの金髪好きの理由の方が分からねぇよ、オレは」

エレン「え?」

コニー「え?」

エレン「……ま、まあいいや。ジャンのもちょっとパラ見させて貰おう」

コニー「そうだな……あ、こいつも何か挟んである」

エレン「見るのが怖いんだが」

コニー「挟んであるのは本じゃなくてノートの切れ端だから、さっきみたいなことにはならねぇよ」

エレン「ノートの切れ端?」

コニー「何か絵が書いてあるみたいだ……え、これって」

エレン「……えーと」

コニー「……ミカサの、似顔絵?」

エレン「……あいつが自分で書いたのか」

コニー「だろうな」

エレン「……ああ、黒髪好きの理由が分かったよ」

コニー「お前にとっては色んな意味でショックだよな。うわ、一枚だけじゃねぇ。色んな所に挟んである」

コニー「顔だけじゃない。全身の絵もある……あ、裸の絵も」

エレン「コニー、もうやめてくれ」

コニー「わ、悪い」

エレン「純粋に、気持ち悪い」

コニー「ま、まあ、人の趣味はそれぞれだからさ。なっ?」

エレン「ああ……」

コニー「オレが知ってるのはこの二人だけだ。エレン、お前はアルミンの隠し場所とか知らないのか?」

エレン「知らない。持ってはいるだろうけど、あいつは隠すの上手そうだし、そう簡単には見つからないと思う」

コニー「マルコやベルトルトも慎重そうだから難しいかもな。かなり知りたいけど」

エレン「時間的に他の奴らが帰って来そうだし、ここまでにしよう」

コニー「なかなか楽しかったな」

エレン「忘れたい記憶もいくつかあるけど」

コニー「気にするな。特別にオレのエロ本貸してやるからさ、元気出せよ」

エレン「コニー……」

コニー「ほら、好きなの選んでいいぞ」

エレン「お前、いい奴だな」

ユミル「――よおエレン、昨日の調査結果を聞かせて貰おうか?」

エレン「ああ。調べられたのはコニー、ライナー、ジャンの三人だけど、あのエロ本の持ち主は分かったぞ」

ユミル「本当か? 誰だよ?」

エレン「ジャンだ。あいつが持ってる十冊のエロ本全部が黒髪のやつばかりだった」

ユミル「あーそっか。言われてみれば納得だ。どうして思い至らなかったのか」

エレン「で、ユミル……もし忘れてなければ、報酬を聞きたいんだけど」

ユミル「本当はやめるつもりだったが、手伝ってくれたのは事実だ。持ち主もつきとめられたみたいだし、聞かせてやるよ」

エレン「ふう、よかった」

ユミル「私が調べたのはミカサ、アニ、サシャ、ミーナの四人だ」

ユミル「口頭で伝えるだけじゃつまらないと思って、特別に一冊ずつ拝借してきた」

エレン「おいおい」

ユミル「嬉しいだろ? さ、個室に行こうぜ」

エレン「えっ。お前、昨日あんな目にあっておいてよく入る気になるな」

ユミル「変な真似したら去勢するから、平気だ」

エレン「あの時は抵抗一つできなかったくせに……お前がいいならいいけど」

ユミル「さ、誰のからいく? お前の希望は?」

エレン「そうだな……じゃあアニから」

ユミル「やっぱアニの好みは気になるよな。あいつが持っていたのは、これだ」

エレン「これは?」

ユミル「漫画だ。女向けのな。意外にも二十冊くらい持ってやがった」

エレン「漫画か……そういう描写はあるのか?」

ユミル「もちろん。女が性欲弱いと思ってたら大間違いだぞ。ある意味男向けよりすごいかもな」

エレン「どれどれ……お、おおー」

ユミル「すごいだろ?」

エレン「確かに写真とはまた違った良さがあるかもしれない」

ユミル「うわ、尻に入れてるよ」

エレン「こういうのって実際にやってる奴いるのか?」

ユミル「少ないだろうがいるんじゃないか。男女間だけじゃなくて、男同士とか」

エレン「男同士……」

ユミル「ん?」

エレン「嫌なこと思い出しちまっただけだ。気にしないでくれ」

ユミル「なんだ、もしかしてやられたことあるのか?」

エレン「あるか!」

ユミル「アニの他の本も見てみたが、ほとんどがアブノーマルな内容ばかりだった」

エレン「例えば?」

ユミル「SMとか露出とか放尿とか、女側の羞恥心を煽るようなのが多かったな」

エレン「へえ、もしかしてあいつの願望とか?」

ユミル「かもしれないな。普段の言動からは考え辛いが、逆にああいう奴の方が被虐願望あったりするのかもな」

エレン「なるほど。よし、次行こう。サシャを頼む」

ユミル「サシャはえぐいぞ。少し読んだだけで全部を確認する気になれなかった」

エレン「ユミルが断念するほどのものって……うっ! これは……」

ユミル「……リョナだ」

エレン「うわあ、こういうのは無理だ」

ユミル「四肢欠損に切断、屍姦まで。途中で吐きそうになった。見るか?」

エレン「やめとく。せっかくアニので少し興奮できたのに、表紙だけで萎えちまった」

ユミル「そう言うと思った。持ってこなければよかったかな」

エレン「もしかしてあいつのエロ本全部そっち系なのか?」

ユミル「いや、この一冊だけで他は何の変哲もないものばかりだった」

エレン「そっち持ってきてくれよ」

ユミル「悪い。これが衝撃的過ぎて思わず……次にいこうぜ」

エレン「ミーナを頼む」

ユミル「あいつは色んな種類を持っていた。数だけなら一番だ。写真集もあったし、漫画もあった」

ユミル「だがこいつもサシャみたいに異色の本を一冊だけ持っていた」

エレン「まさかまたそれを持ってきたのか?」

ユミル「女共の嗜好を探るのが目的なんだから仕方ないだろ。一応見ておけ」

エレン「これは……豚?」

ユミル「獣姦ってやつだな」

エレン「十匹くらいにやられてないか? 女がブヒブヒ言ってるし」

ユミル「こんなので興奮する奴もいるんだな。私は無理だ」

エレン「オレも無理。やめとこうぜ。普通でいい」

ユミル「二つ連続でゲテモノは辛いな。最後はミカサだが……どうした?」

エレン「いや……知りたいような知りたくないような。家族の性的嗜好ってのがどうにも……」

ユミル「分からんでもないが、変なやつはなかったぞ。むしろこの四人の中じゃ一番まともだ」

ユミル「数こそ少なかったが粒揃いでな。ぱっと見一番画力が高そうな漫画を持ってきた」

エレン「お、確かに上手いかも」

ユミル「あらすじを読むにストーリーにも力を入れてるみたいだからさ、最初から読んでいこうぜ」

エレン「分かった」

ユミル「……ふむふむ」

エレン「ほうほう」

ユミル「……なんか、普通に面白いな。王道の恋愛ものだけど、こんなに引き込まれる漫画は初めてだ」

エレン「早くページめくってくれ。続きが気になる」

ユミル「焦るなって。お、そろそろ告白か?」

エレン「どきどき」

ユミル「口に出てるぞ」

エレン「……おおっ。つ、ついに結ばれた!」

ユミル「そして、そして……き、キスした! おいエレン! こいつらキスしたぞ!」

エレン「見れば分かる! 狭いんだから暴れるなって!」

ユミル「わ、悪い。でも、女も男も幸せそうな顔しやがって……感動しちゃうじゃねぇか」

エレン「この先濡れ場があるんだろうけど、ここまででも十分すごい」

ユミル「こんなキスシーン見せられたらな……いいなあ」

エレン「……ユミルさ、お前もこういうのに憧れたりするんだな」

ユミル「え? そ、そりゃまあ、私も女なわけだし」

エレン「……オレもこれ見て、してみたいなあって思ったんだよ」

ユミル「へ、へえ?」

エレン「……やってみないか?」

ユミル「は、はあっ!?」

エレン「もちろんユミルが良ければだけど」

ユミル「な、なんだよ、また冗談か? そう何度も引っかかると思って」

エレン「冗談じゃない。本気だって言ったら?」

ユミル「き、きき、去勢するぞ!?」

エレン「ユミルとキスできるなら、いいぞ」

ユミル「なっ――」

エレン「もういいか? そろそろ我慢の限界なんだが」

ユミル「う……うぅ……」

エレン「ん?」

ユミル「うわぁああん!」

エレン「あ! おいユミル! 逃げるなよ!」

ユミル「知るかバカぁっ!」

エレン「おーい!」

エレン「殴られるかと思ったら逃げ出すとは……残念だな。本当にその気だったんだけど」

エレン「二回目だし嫌われたかなぁ……お?」

エレン「あーあ、あいつエロ本忘れてるじゃねぇか。ミカサとジャンのやつを」

エレン「ジャンにはオレが返してやればいいけど、ミカサはそうもいかないし、明日ユミルに渡そう」

エレン「……そういえば、ミカサのエロ本はこれからが本番だったよな」

エレン「ちょっとくらい……いいよな」

エレン「……おおー、すげぇエロいなぁ」

今日は終わりにする
次は少しだけエロ書くつもり
そんなわけで今更だけどエロ注意です

エレン「……いやー、良かった良かった。今日はいい気分で眠れそうだ」

エレン「と、その前に寮に戻ったらジャンに返してやらないとな。ミカサの似顔絵を思い出すから嫌だけど」

エレン「――ジャン、いるか?」

ジャン「あ? 何の用だよ?」

エレン「昨日落とし物しただろ? それを届けに来てやったぞ」

ジャン「は? 落し物? してねぇぞ」

エレン「え、まだ気付いてないのか? よく思い返してみろよ。ほら、食堂に続く廊下の厠で」

ジャン「いや、昨日その厠は使ってないはずだ」

エレン「本当か? 絶対にお前のだと思ったんだが」

ジャン「その落とし物ってなんだよ。言ってみろ」

エレン「……エロ本」

ジャン「ぶふっ!? エロ本!? 落とすかよそんな大事なもの! オレたちにとっちゃ宝だぞ!?」

エレン「だから持ち主が困ってると思って探してたんだよ」

ジャン「そもそも持ち歩かねぇだろエロ本なんて……だが、一応確かめてみるか」

ジャン「……あれ? なんか微妙に配置が変わってるような」

エレン「き、気のせいじゃないか?」

ジャン「オレのエロ本は全部あったぞ。やっぱオレじゃねぇよ」

エレン「違ったのか。じゃあ誰のなんだろ」

アルミン「二人とも、どうしたの? ジャンはベッドの下を漁ってたみたいだけど」

ジャン「アルミン。こいつがエロ本の話を」

エレン「あ、バカ!」

アルミン「エロ本?」

エレン「勝手にバラしやがって……でももういいか。ジャンには知られちまったし」

エレン「えーと……ベルトルト! ちょっと来てくれ!」

ベルトルト「何か用? エロ本がどうのって話が聞こえてきたけど」

ライナー「エロ本だと? 俺も混ぜてくれよ」

エレン「うっ。ら、ライナー……」

ライナー「ん? どうした?」

エレン「い、いやっ。何でもない……実は、お前たちがどんなエロ本を持ってるのか知りたいんだ」

アルミン「急な話だね。それにエレンがこういう話題を出すなんて珍しい」

エレン「ま、まあオレも男だしな」

ジャン「は? そんな話だったか? エロ本の落としも」

エレン「お前は黙ってろ、ジャン」

ベルトルト「コニーとマルコはいいの? さっきは呼んでなかったけど」

エレン「コニーには昨日聞いたから大丈夫だ。マルコはもう寝ちまってるしな。ああ、コニーも寝てるか」

エレン「それで、できれば皆でエロ本を出し合いたいんだが」

ライナー「面白そうだな。俺は構わんぞ」

ベルトルト「少し抵抗あるけど、男同士だし、いいよ」

アルミン「……」

エレン「アルミンは?」

アルミン「……あ、うん。僕も大丈夫」

エレン「本当か? 嫌なら無理しなくていいんだぞ?」

ジャン「おいおい、躊躇することねぇだろ。ベルトルトも言ったが男同士だ。そんな気にすることねぇよ」

アルミン「わ、分かってるよ」

ライナー「よし、じゃあ自分が持っているエロ本を全部出そう。全部だぞ、全部」

ベルトルト「つまり隠し事はなし、か」

ジャン「お前らズルするなよ」

ライナー「お前もな」

アルミン「ズルはなしか……でも、やっぱりあれは……」

エレン「アルミン?」

アルミン「何でもないよ。僕も持ってくるね」

エレン「ああ……どうしたんろ。様子がおかしい」

ライナー「持ってきたぞ。全部で十五冊だ」

ジャン「オレは十冊。ベルトルトは?」

ベルトルト「ふっ……五十冊だ」

ライナー「五十、だと……!?」

ジャン「どこに隠してんだよ」

ベルトルト「それは秘密だ。でも工夫すれば何とかなるものだよ」

エレン「お前がこんなに助平な奴だったとは」

ベルトルト「何を言ってるんだ。男は誰だって助平だろ?」

ライナー「うむ、その通りだ」

ジャン「至言だな」

アルミン「どこがだよ……僕も持ってきたよ」

エレン「よし、じゃあさっそく始めよう!」

エレン「――もうほとんどの奴が寝たか。オレも寝よう」

エレン「かなり長いこと話しこんでたな。とっくに消灯時間過ぎてる」

エレン「案の定ジャンとライナーはあれを出してこなかったな。なにが隠し事なしだよ」

エレン「そして新たにアルミンとベルトルトの嗜好が分かったけど、あのエロ本の持ち主ではなさそうだ」

エレン「ベルトルトはコニーみたいにエロければ何でもいいみたいだったし。クールな感じの女の写真集が目立ったかな?」

エレン「アルミンは確か七冊くらいで、そのうち四冊くらいが金髪の女だったか。ライナーと似てる」

エレン「でもあいつ、ずっとソワソワしてた気がするのはなんでだろ?」

エレン「んー、分からん。まあいいや、今日はもう寝よう」

アルミン「……」

アルミン「……エレン、ようやく眠ったかな」

アルミン「隠し事なしって言われた時は焦ったけど、やっぱりあれを出すわけにはいかない」

アルミン「子供の頃、道端に捨ててあったエロ雑誌。エレンと一緒に読んだんだよな」

アルミン「僕もエレンもエロ本読むの初めてだったから、すごく興奮したのを覚えている」

アルミン「その時我慢できずに出てしまったエレンの精が、この雑誌にかかって……」

アルミン「はあぁぁ……たまらないよ、エレン」

アルミン「ふふ……ふふふ」

アルミン「エレンはとっくに捨てたと思っているだろうけど、僕がこれを手放すわけがない」

アルミン「大好きなエレンの精を手に入れることが出来た唯一の品だからね」

アルミン「とっくに乾いてしまってるけど、雑誌に着いた染みはずっと残ってる」

アルミン「エレンは夢にも思わないだろうなぁ……僕が毎晩これで自分を慰めているなんて」

アルミン「いつか僕のものにしてみせる。そしてその可愛らしいお尻に僕のものを入れて喘がせてあげる」

アルミン「だから……待っててね、エレン」

アルミン「ふふふふふふふ」

エレン「――ユミル、おはよう」

ユミル「え、エレン……お、おはよ」

エレン「その、昨日は悪かった。すまない」

ユミル「べ、別に……気にしてねぇよ。で、何の用だ?」

エレン「実はあの本の持ち主、ジャンじゃなかったんだ。直接聞いて確認したけど違うらしい。自分のは全部あるって」

ユミル「そうか……じゃあまた探さないとな。再調査だ」

エレン「そう思って昨日他の奴にも聞き込みをしておいた。アルミンとベルトルトの二人だ」

エレン「ここじゃ詳細は話し辛いから、また夜にあの厠の前で落ち合いたいんだが……駄目か?」

ユミル「……分かった」

エレン「――よっ、ちゃんと来てくれたな」

ユミル「まあな。約束したし……個室に行くぞ」

エレン「え? 今日は観賞会するわけじゃないし、報告だけならここでも」

ユミル「いいから来い。通りすがりに聞かれるかもしれないだろ?」

エレン「わ、分かったから引っ張るな……んん?」

ユミル「どうした? 早く来いよ」

エレン「いや……なんか、視線というか気配を感じた気が」

ユミル「でも周りには誰もいないぞ。隠れられる場所もないし」

エレン「だよな……」

ユミル「気のせいだ気のせい。ほら、行こう」

ユミル「んで、アルミンとベルトルさんだっけ?」

エレン「ああ。と言ってもその二人が持ち主である可能性は低いと思う。あいつらが持っていたエロ本は……」

ユミル「……なるほど、クール系と金髪女子か」

エレン「ベルトルトは全部で五十冊くらい持ってたから一つ落としても気付かないんじゃないかと思って、それとなく聞いてみたんだ」

エレン「そしたら……愛しのエロ本の状態は完璧に把握している、落とすなんてあり得ないって言われた」

ユミル「堂々としてるのがすごいな。そういう奴だったのか、ベルトルさんって」

エレン「オレも思った。まあそれはともかく、オレが調べた奴らは持ち主じゃないと思う」

ユミル「コニー、ライナー、ジャン、アルミン、ベルトルさん……あれ、マルコは?」

エレン「寝てたから聞けなかった。でも可能性はある……どうするか」

ユミル「直接聞いてみたらどうだ? ジャンやベルトルさんには聞いたんだし、あまり隠す意味がなくなってきた」

エレン「確かに。明日にでもあたってみる」

ユミル「頼む。あ、そうそう。話は変わるが、昨日ここに置き忘れたミカサのエロ本だけど」

エレン「ああ、それならちゃんと持ってきた。ほら」

ユミル「すまん」

エレン「丸一日無くなってミカサにバレてないか?」

ユミル「大丈夫だろ。昨日今日とそんな素振りは見せてなかった」

エレン「じゃあこっそり返しておいてくれ。落し物のエロ本はオレが預かっておく」

エレン「……よし、話はこんなもんだよな。じゃあこの辺で。また明日な」

ユミル「……ま、待て!」

エレン「ん? まだ何かあったか?」

ユミル「あ、ああ……えーと、さ」

エレン「うん」

ユミル「そのぉ……このまま終わるのもつまらないし、さ。えと……」

エレン「うん?」

ユミル「だ、だからその……き、今日も、エロ本読まないか? ふ、二人で」

エレン「え? でも落し物とミカサのやつしかないだろ。一回読んだじゃねぇか」

エレン「あ、そっか。ミカサの方はまだ途中だったっけ、ユミルは。オレは昨日読んじまったけど」

ユミル「そうじゃなくて……新しいの、持ってきたんだ」

エレン「また誰かの借りてきたのか? さすがにそろそろバレるんじゃ」

ユミル「それも違う……わ、私のだ」

エレン「ユミルの!?」

ユミル「な、なんだよ。そんなに驚くようなことか?」

エレン「いや、ユミルは自分の趣味教えてくれないと思ってたからさ。意外だったんだよ」

ユミル「お前が昨日調べてくれた分の報酬だ。私が忘れた本もちゃんと持ってきてくれたし」

エレン「そっか。ならありがたく頂戴する」

ユミル「ああ」

エレン「ユミルはどういうのが好きなんだ?」

ユミル「……漫画」

エレン「へえ、女性は写真より漫画の方がいいのか?」

ユミル「どうかな。私は一瞬を切り取っただけの写真より、一つの話として読める漫画の方が好きってだけだ」

エレン「ほうほう。で、この漫画はどんな話だ?」

ユミル「……普通の、恋愛もの」

エレン「ミカサのやつみたいな感じか」

ユミル「まあ、近いかな。一番好きなのを選んで持ってきたけど、ミカサのには敵いそうにない」

エレン「いいじゃねぇか。最初から読んでいこうぜ」

ユミル「ん」

エレン「……おーっ。なんだ、かなり面白いじゃないか」

ユミル「そ、そうか……あっ、ここ! この男が女を助けるシーンが好きなんだ!」

エレン「うん、確かに格好いいな!」

ユミル「だろだろ?」

エレン「なるほど……ユミルは王道の純愛ものが好きなんだな」

ユミル「えっ」

エレン「ユミルが持ってる中で一番好きなのがこれで、ミカサのやつにもすごく食いついてただろ? 違うのか?」

ユミル「……そうです」

エレン「うーん……なんかいいなぁ」

ユミル「何がだよ」

エレン「ユミルみたいな女がこういう純愛を好きってところ。そのギャップが可愛いなって」

ユミル「か、かわっ!?」

エレン「ああ。意外な一面と言うか、想像してなかったから不意打ち喰らった感じだ」

エレン「……ん? ページめくる手が止まってるぞ。次頼む」

ユミル「お、おう? ……何なんだよこの自然な感じ。どういうつもりだ?」

エレン「おーい、ユミル? 次めくってくれって」

ユミル「わ、悪い悪い……気にしないでおこう」

エレン「……ついに来たな、濡れ場だ」

ユミル「ああ」

エレン「お、おぉ……いい」

ユミル「……こ、興奮するか?」

エレン「もちろん。個人的にはミカサのやつにも引けを取ってない」

ユミル「そっか」

エレン「ユミルは? 興奮してるか?」

ユミル「……ばか、聞くんじゃねぇ」

エレン「……終わったな。すごくよかったぞ」

ユミル「そう言って貰えるならわざわざ持ってきた甲斐があったかな。満足できたか?」

エレン「えーと……満足って言われると」

ユミル「なんだ、物足りなかったのか?」

エレン「いやその、漫画自体には満足できたし興奮できたんだが、その、な? 分かるだろ?」

ユミル「……あ、そうか。つまり興奮しっぱなしってこと、か?」

エレン「ああ。だから、報酬のついでという形でお願いしたいんだが……」

ユミル「な、何だよ」

エレン「……ユミルにして欲しいなあって」

ユミル「なっ!? 何言ってやがる!?」

エレン「ここで終わりにされると不完全燃焼もいいところだ。頼む」

ユミル「自分でやればいいだろうが! 黒髪特集の本があるだろ!」

エレン「あれは一度全部見ちまったし、それにオレはお前にして貰いたいんだよ」

ユミル「む、無理だ無理! できるわけない!」

エレン「手で触るだけでいいからさ。な?」

ユミル「触れるわけねぇだろ! お、男のっ、あああ、あれなんて!」

エレン「……ユミル」

ユミル「な、何だ」

エレン「こうやって個室で二人きりになるのは、これで三度目だ。本当は、お前も望んでるんじゃないか?」

ユミル「そ、そんなわけあるか!」

エレン「そうか? 今までに二度も襲われかけておきながらこの状況をつくるなんて、そうとしか思えない」

エレン「一度目は冗談だったけど、昨日の二度目はかなり本気だったんだぞ?」

ユミル「ほ、本気……?」

エレン「ああ、そして今もだ。昨日以上にな。証拠を見せようか?」

ユミル「へ? お、おい、なに顔近づけて……んんっ!?」

エレン「ん……んむ……」

ユミル「んっ、ふぅ……んくっ」

エレン「……は」

ユミル「ふはぁ……」

エレン「どうだユミル? オレの本気が伝わったか?」

ユミル「え、えれん……おまえ、き、き……」

エレン「ああキスだ。人生で初めての、な」

ユミル「わた、私だって初めてで……ひっ!? ちょっ、どこ触って……んくぅっ!」

エレン「ユミルの股間だけど? まだ証拠が必要みたいだったから。それに、して貰うならまずオレからと思ってさ」

ユミル「や、やめっ……あぁ……くひっ!」

エレン「……お、やっぱりちゃんと興奮してる。ズボンと下着越しでも分かるくらい濡れてるぞ」

ユミル「それは……ふあっ! え、エレン! いい加減に……」

エレン「抵抗するのは口だけで体の方は全然だな。それに、いい加減にするのはお前だ」

エレン「いい加減、認めちまえよ。オレとしたいって」

ユミル「う、うぅ……」

エレン「ユミルのこと、ちゃんと満足させてやるからさ。な?」

ユミル「……」

エレン「な?」

ユミル「……はい」

今日は終わり
なんかエロは難しいし本筋に関係ないからやめていい?
もしエロなしでいいなら次で完結できる

意見ありがとう書かないことにする
エロエロ詐欺ばかりで本当に申し訳ない
もう一度だけ詐欺があるけどそこは妄想で補って欲しい

ユミル「――じゃあ、また明日」

エレン「大丈夫か? 一人で寮に帰れるか?」

ユミル「だ、大丈夫だ、それくらい」

エレン「オレが言うのもなんだけど無理はするなよ。今日はゆっくり休め」

ユミル「そうする……」

エレン「マルコへの調査結果は明日報告するから、またここに来て欲しいんだが」

ユミル「分かった……じゃ、お休み」

エレン「お休み……あ、そうだ」

ユミル「ん?」

エレン「――ありがとな。すごく、気持ちよかった」

ユミル「んなっ……!? ば、バカ! 死ね! もげろ! もげて死んじまえーっ!」

エレン「ふらふらな体で走ると危ないぞー?」

エレン「本当に大丈夫なんだろうな、あいつ」

エレン「それにしてもすごかったなあ……お互い手で触るだけだったけど、自慰とは段違いだ」

エレン「ユミルもめちゃくちゃ可愛かった。あんな表情や声を出すなんて。それに、イった時のあの感じもたまらなかったし」

エレン「……これは本当に惚れたな」

エレン「……ん? また気配を感じる」

エレン「厠の中だと感じなかったのに、入り口になると気になるな……」

エレン「んー……まあこのことは後で考えることにして、まずはマルコだ」

エレン「寮に戻ってるかな? 昨日みたいに寝てなきゃいいけど」

エレン「と思ったら、あそこに一人でいる……おい、マルコ!」

マルコ「エレン? どうしたんだ?」

エレン「ちょうどお前を探してたんだ。昨日聞けなかったことがあったから今日こそはと思って」

マルコ「昨日? だったら今日食事の時にでも言ってくれればよかったのに」

エレン「いや、あまり人目につく場所で話すことじゃないんだ。今みたいな二人きりの状況がちょうどいい」

マルコ「そうなんだ……? で、その話っていうのは?」

エレン「ああ……お前のエロ本のことなんだが」

マルコ「えっ……!? 僕のエロ本!?」

エレン「何をそんなに慌ててるんだ? やっぱりお前があのエロ本の……」

マルコ「……エレンは、知ってしまったのか?」

エレン「ん? まあそうだな。でもちゃんと本人に確かめなきゃいけないだろ?」

マルコ「そうか……あれを見られたからには言い逃れはできないね」

エレン「言い逃れ?」

マルコ「本当はいけないことだと分かっていた。けれど、どうしても我慢できなかった」

エレン「いけないことって、そりゃ教官に見付かったら没収されるだろうけど、そこまでのことか?」

マルコ「エレンは優しいな。あれを見ても価値観の相違にすぎないと、人の好みはそれぞれだと言ってくれるなんて」

エレン「なんか大袈裟だけど、その通りじゃないか?」

マルコ「全て分かった上で、それでも認めてくれる人がいるなんて、思っていなかった」

マルコ「こうやって話しにきてくれたのは、もしかして気にするなと僕を応援するためなのか?」

エレン「んん? 応援? それに気にするなって……まあオレは気にしなけど」

マルコ「エレン……! ありがとうエレン!」

エレン「お、おう? なんか話が噛み合ってないような」

マルコ「そうだね。君に勇気づけて貰ったからにはいつまでも隠しているわけにはいかない! だから自分の口から正直に告白するよ!」

エレン「はあ」

マルコ「エレンはもう知ってしまったことだけど、僕は、僕は……」

マルコ「――ドット・ピクシス司令が大好きだ!」

エレン「……」

マルコ「……ふう、なんだかすっきりした」

マルコ「今まで隠さなければと抑圧していた気持ちを解放して、大声で叫んだからだろうな」

エレン「……」

マルコ「こうして正直になることができたのも、君が応援してくれたおかげだ」

マルコ「改めてお礼を言わせてくれ。ありがとう、エレン」

エレン「……は」

マルコ「は?」

エレン「はあああああっ!?」

マルコ「うわっ!? 急にどうしたんだ!?」

エレン「……ど、どうしたもこうしたもねぇよ! いきなり何言ってんだお前!?」

マルコ「何って、聞いていただろ? 僕がピクシス司令のことを好きだっていう話で」

エレン「い、意味が分からねぇ! ピクシス司令ってあのピクシス司令か!?」

マルコ「もちろん。駐屯兵団の司令官のことだよ。当然エレンも知ってるだろ?」

エレン「そ、そのピクシス司令とエロ本に何の関係が」

マルコ「は? 君はその目で見たんだろう? 僕のエロ本の間に隠しておいた、秘蔵品の数々を」

エレン「ひ、秘蔵品……?」

マルコ「ああ。教本などの資料に載っている彼の写真の切り抜きとコピー。彼が書いた書籍の保存用、観賞用、布教用、実用用四点セット」

マルコ「さらに彼への想いを綴ったポエム百冊。いや、さっき一冊仕上げたからこれで百一冊かな」

マルコ「他にも僕が創作した彼との大長編恋愛小説、デュエットソング、エロ漫画、肖像画……それからそれから」

エレン「も、もういい! 勘弁してくれぇ!」

マルコ「あ、一人で喋り過ぎたね、すまない。僕の気持ちを理解してくれる人に出会えて興奮してしまったんだ」

エレン「ああ分かった。お前の気持ちはよーく分かった。だから、だから……」

エレン「もう二度とオレに近づかないでくれぇえええっ!」

マルコ「え、エレン!?」

エレン「うわああああああっ! 来るなあああああっ!」

マルコ「エレン……行ってしまった」

エレン「こわいこわいこわいこわいこわいこわい……」

ジャン「なあ、エレンの奴どうしたんだ? 寮に帰って来てからずっとこの調子だぞ」

エレン「いやだいやだいやだいやだいやだいやだ……」

ライナー「ものすごい勢いで布団に潜り込んだな。何やらぶつぶつ呟き続けているし、おかしいぞ」

エレン「たすけてたすけてたすけてたすけてたすけて……」

ベルトルト「エレンがこれほど恐怖するだなんて、余程のことがあったんだろう」

エレン「わすれろわすれろわすれろわすれろわすれろ……」

コニー「今はそっとしておいてやろうぜ」

エレン「ねむれねむれねむれねむれねむれねむれ……」

アルミン「布団にくるまって怯えるエレン……可愛いなぁ」

エレン「――今日も時間通り来てくれたな」

ユミル「そ、そりゃ行かない理由はないし、来るだろうよ」

エレン「なんだか厠の前で落ち合うのが日課みたいになってきたなあ」

ユミル「日課か……それよりお前、今日はどことなく元気がなかったように感じたんだが」

エレン「あ、やっぱり分かるか?」

ユミル「分かるよ、一日中お前のこと見てたらな……何かあったのか?」

エレン「うーん……実はオレにもよく分からん」

ユミル「は?」

エレン「昨日の夜ユミルと別れた後に、とてつもなく怖い目に遭ったはずなんだが、どうにも記憶が曖昧でさ」

エレン「具体的に何があったのかは全く覚えてなくて、でも恐怖だけは続いてる感じが気持ち悪いんだ」

ユミル「悪夢でも見たんじゃねぇのか?」

エレン「いや、昨夜寝る時に布団にくるまって何かに怯えていたってアルミンたちが言ってたから、それはないと思う」

ユミル「ふーん、つまり忘れなければ耐えられないほどの恐怖だったわけか」

エレン「多分そういうことだ。でも今はほとんど良くなったから大丈夫だ」

ユミル「それなら良かった。あまり心配かけるなよ……こっちまで不安になるんだから」

エレン「悪い」

ユミル「……それで、昨日そんな調子だったならマルコへの調査はできなかったのか?」

エレン「いや、できた。ひどい目に遭ったのはマルコに聞き込みした直後みたいで、会話の内容もあまり覚えてないんだが」

エレン「それでもマルコはエロ本の持ち主じゃない、ってことだけは鮮明に記憶できてる」

ユミル「どんな話をしたかも曖昧なのに?」

エレン「ああ、断言できる。マルコは違うと。もう一度聞く必要は絶対にないってな」

ユミル「そこまで言うなら信じるが……となると、持ち主の正体は分からないままだな」

エレン「三日間調査して手掛かりは無きに等しい、か」

ユミル「……そもそも調査対象を訓練兵に絞ったことが間違いだったのかもしれん」

エレン「どういうことだ?」

ユミル「教官の可能性もあるって話だ。あの人たちだって男なわけだし」

エレン「そうか。訓練兵なら相部屋の中でやっても、みんな自分たちの性欲の強さを理解してるから見逃して貰える」

エレン「一方教官たちの場合、体裁を気にしてなかなか事に及べないのかも」

ユミル「もし見つかりそうになっても用足しだと誤魔化せばいいしな。本当に体裁を気にするなら厠の中でもどうかと思うが」

エレン「エロ本まで落としてるし」

ユミル「でもその可能性もあるってことは、ますます特定するのは難しくなるな」

エレン「どうする?」

ユミル「うーん……なんかもう面倒臭くなってきたな。持ち主を見つけたらからかってやろうってくらいの気持ちだったし」

エレン「やめるか?」

ユミル「私はそれでいい。お前にばかり働かせておいて悪いが」

エレン「気にするな。皆の嗜好を知ることができて楽しかったし……報酬もたくさん貰ったしな」

ユミル「あぅ……」

エレン「それじゃあさ、このエロ本はどうしようか?」

ユミル「お前に任せる。そのまま自分の物にしてしまってもいいぞ」

エレン「それは盗むみたいでちょっとな……またここに置いて、元の状態に戻すか。これも無責任かもしれないが」

ユミル「いいんじゃないか。誰かが見つけたら勝手に持っていくだろ」

エレン「そうだな、そうしよう」

エレン「……なあ、ユミル」

ユミル「なんだ?」

エレン「実はオレ、持ってきてるんだ、新しいエロ本」

ユミル「え?」

エレン「ユミルと一緒に読もうと思って。だから今日も個室に……いいだろ?」

ユミル「……わ、分かった。元は私から言い出したことだしな」

エレン「よし、行こうぜ」

ユミル「ああ……へへ」

エレン「ん? ……やっぱり、誰かの視線を感じるな」

ユミル「――そ、それで? どんなエロ本なんだ?」

エレン「これだ。内容をざっくり言うと、一人の女性がとある公園の厠で男に犯される漫画だ」

ユミル「なっ……そ、それって」

エレン「ベルトルトに借りてきたんだ。五十冊持ってたけど、まさかこんな内容のものまであるとは」

ユミル「どうしてそのエロ本を選んだんだ……?」

エレン「さあ、どうしてだろうな? なんとなく面白そうだったからかな?」

ユミル「ほ、本当になんとなくか?」

エレン「そんなことどうでもいいじゃねぇか。早く読もうぜ」

ユミル「あ、ああ……」

ユミル「……すごい」

エレン「だろう? 処女を散らされた女性は二度とこの厠に行くまいと誓うが、何故か再び足を運んでしまい、同じ男に犯される」

ユミル「なんで行っちまうんだよぉ」

エレン「厠に行っては犯される。そんな日々が続くうち、最初は嫌がっていた女性は徐々に快楽を感じてしまうようになるんだ」

ユミル「あぁ……こんなに気持ち良さそうにして……」

エレン「それでも女性はその快楽を認めない。とはいえ、抵抗するのは口だけで体はされるがままだけど」

ユミル「本当に嫌なら死に物狂いで抵抗するはずだよな……」

エレン「しかし、男が初めて放った言葉を聞いた時、女性はついに気付く」

エレン「……自分はこの快楽を求めていたのだ、と」

ユミル「……」

エレン「そして、己の欲求に気付いた女性は、男との関係をいつまでも続けていく……」

エレン「……これで終わりだ。なかなか良かっただろ?」

ユミル「あ、ああ……」

エレン「……なあ、そういや気付いたんだけど、ユミルとここで会うのも今日で最後になっちまうな」

ユミル「え?」

エレン「だってそうだろ? エロ本の持ち主を探すのは終わりにするんだし、ここで落ち合う理由がない」

ユミル「そ、それは」

エレン「まあオレとしては、毎日楽しみにしてたからかなり残念ではあるが」

ユミル「……そっか、残念と思ってくれてるのか」

エレン「ああ。それに本音を言うと、理由なんかなくても続けたいんだけどなあ」

ユミル「……」

エレン「……ユミル」

ユミル「え、エレン? 何で肩掴んで」

エレン「動くな。それより、さっきの漫画見てどう思った? オレに何か言うことがあるんじゃないか?」

ユミル「ど、どうって……普通に、エロかったって……」

エレン「それだけか? もっとあるだろ? 言ってみろよ」

ユミル「別に他には……ない」

エレン「……なあユミル、よく聞け」

ユミル「ぁ……耳元で囁くなあっ。そ、それにこれって漫画のシチュエーションと同じ……」

エレン「いいから、黙って聞け」

ユミル「う……」

エレン「――もう認めろ。お前は快楽を求めている……オレとこのまま続けたいと、そう思っているんだ」

ユミル「はぅ……」

エレン「……」

ユミル「うぅ……」

エレン「……」

ユミル「……み」

エレン「……」

ユミル「……み、認め……ます」

ユミル「わ、私は……あなたとの快楽を……続けたい、です」

エレン「……ぃよっしゃあっ!」

ユミル「……うぅ」

エレン「ようやく言ってくれたな、ユミルの気持ちを」

ユミル「ば、バカやろう……は、恥ずかし過ぎる」

エレン「はは。昨日もオレとしたいって認めてくれたけど、それだけじゃ満足できなくてさ」

エレン「ちゃんとユミルの口から聞きたかったんだ、オレとこのまま続けたいって」

ユミル「あのエロ本を持ってきたのは、このためかよ」

エレン「その通りだ。あの男の言葉がオレの言いたい事とぴったり合ってたからさ」

ユミル「くそぅ」

エレン「それにしても、漫画の状況に近い形で同じ台詞を言うってのもなかなか良いもんだな。ユミルはどうだった?」

ユミル「ま、まあ私も……それなりには」

エレン「だよな! ううむ、これは目覚めてしまったかもしれない」

ユミル「つまり、お前の新しい性的嗜好ってことか?」

エレン「ああ!」

ユミル「そうか……ならこれからはたくさん買わないとな、エロ漫画」

エレン「オレの嗜好に付き合ってくれるのか?」

ユミル「もちろんだ……さっきそう言っただろ?」

エレン「ありがとなユミル!」

ユミル「……ああ」

エレン「じゃあ、始めようか」

ユミル「……優しくしてくれよ」

エレン「それはどうかな? 漫画通りにするなら、乱暴に犯さないと」

ユミル「そ、そんな……」

エレン「冗談だ。お互い初めてだし、ちゃんと優しくする」

ユミル「うん……頼む」

エレン「……あ、そうだ。これを言わないと」

ユミル「なんだ?」

エレン「漫画の二人の間には恋愛感情はなくて、ただ肉体的な快楽を求めるだけの関係だったけどさ」

エレン「オレはユミルのこと、好きだから」

ユミル「……ば、ばか。そんなあっさり言いやがって」

エレン「ユミルが好きな王道とは程遠い状況での告白だけど、許してくれ」

ユミル「気にしなくていい……嬉しいから」

エレン「ってことは、ユミルはオレのことを?」

ユミル「……好き」

エレン「ありがとう」

ユミル「うん……それじゃあ、きてくれ」

エレン「ああ、いくぞ」

エレン「――もう消灯時間が近いな。そろそろ寮に戻るか」

ユミル「ああ」

エレン「ユミル、初めてを経験したご感想は?」

ユミル「そ、そうだな……正直なところ、痛みやら熱さやら何やらで最中はよく分からなかったんだが」

ユミル「全部終わってから思い返すと……まあ良かった、かな」

エレン「そうか! オレもすごく良かったぞ、ユミルとの初めて」

ユミル「私はすごくとは言ってねぇけどな……それよりさ、エレン」

エレン「ん?」

ユミル「……お別れのキス、してくれないか?」

エレン「オレはもちろん大歓迎だけど、厠の前だから誰かに見られるかもしれないぞ?」

ユミル「今は周りに誰もいないし、もし見られても構わねぇよ」

ユミル「それに……このまま別れるのが寂しいからさ。エレンのキスで、安心させて欲しいんだ」

ユミル「……分かった。それでユミルが安心できるなら、いくらでもしてやるよ」

ユミル「エレン……んっ」

エレン「ん……」

ユミル「んぅ……ふ、ん……」

エレン「はっ……これで、寂しくなくなったか?」

ユミル「……ああ。ありがとう、エレン」

エレン「よかった……それじゃあ、また明日。お休み、ユミル」

ユミル「お休み。これからも、よろしくな」

エレン「ああ! よろしく頼む!」

クリスタ「……」

クリスタ「……ユミルとエレン、すごく長いこと厠の中にいたなぁ。二時間くらい?」

クリスタ「でも、今日で終わりみたい……エロ本の、持ち主探し」

クリスタ「エレンが帰る時に厠の前に置いていったけど、元の状態に戻そうってことなのかな?」

クリスタ「私にとっては好都合。ようやくこの手に戻ってきた……私のエロ本が」

クリスタ「……黒髪特集エロ雑誌、八十三ページ目の女性」

クリスタ「身長高くて、ちょっと目つき悪くて、髪を後ろで結んでて……」

クリスタ「……ユミルに似てる」

クリスタ「……」

クリスタ「ユミル!ユミル!ユミル!ユミルぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!」

クリスタ「……はっ、はっ、はぁ……はあ、はあ、はあぁぁ」

クリスタ「ふう……我慢できずに厠の前でしちゃった。誰にも見られてないよね?」

クリスタ「……三日ぶりだし、すごく興奮できたけど」

クリスタ「でもこれを落としちゃった時は焦ったなあ……あの時もすごかったからその余韻ですぐ気付けなかった」

クリスタ「慌てて厠に戻ったらまさかのユミル本人に拾われちゃってるし、その上持っていかれるなんて」

クリスタ「仕方ないからあの二人がここで落ち合う度に様子を窺うしかなくて……」

クリスタ「エレンには何度か気付かれそうになったけど、女子用厠にいるとは思わなかったみたい」

クリスタ「もしそのままエレンの物にされちゃったらどうしようかと思ったけど、手放してくれてよかった」

クリスタ「貴重なユミル似の女性が載ってるエロ本だから、次からは気を付けないと」

クリスタ「でも、二人は男子用厠で何してたんだろう? 中に入られると様子が分からなくなるんだよね」

クリスタ「やっぱり……エッチなことかな? エロ本を読むとも言ってたし」

クリスタ「最初から怪しかったけど、昨日と今日の様子を見るにそうなんだろうなあ」

クリスタ「それにエッチなことだけじゃなくて、恋人になっちゃったかもしれない」

クリスタ「さっき厠から出てきて、別れ際にキスしてたし」

クリスタ「ユミルは私を好きだったはずだけど、エレンを好きになっちゃったのか……」

クリスタ「私たちは、相思相愛だと思ってたのに……」

クリスタ「……でも」

クリスタ「寝取られも……いいかもっ!」




おわり

以上で終わり
読んでくれた人ありがとう

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年02月21日 (金) 22:05:53   ID: hBsfESz0

乙!面白かったよ

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