姉「弟!?」
弟「えっ、うん」
姉「あんた、本当に弟!?」
弟「なに訳わかんない事言ってるんだよ、姉ちゃん」
姉「おっ……おかあさーん!」
弟「は!?」
姉「おかあさーん! 弟がー! 弟がー!」
弟「ちょっ」
姉「おかあさーん! 弟がー!」
弟「なんなんだよ!?」
姉「おかあさーん!」
弟「やめろよ姉ちゃん!」ガシッ
姉「いたっ」
弟「あ、ごめん」
姉「あんたね……」
弟「(ヤバ、また怒らせた)」
姉「あんたは、いつもそうやって、姉ちゃんをっ」ボロボロ
弟「えっ」
姉「姉ちゃんが、あんたのこと、どんだけ……」ボロボロ
弟「な、なんで泣いてるんだよ姉ちゃん!?」
姉「うっ……うわあん、弟が帰ってきた、帰ってきたよお!」ボロボロ
弟「訳がわからん……」
姉「うっ、うっ……」ジュル
弟「ほれ、ティッシュ」
姉「ありがと……」ブビー!
弟「それで?」
姉「ん?」
弟「なんで俺を見ただけでそんなに取り乱しちゃった訳?」
姉「……あんたね」
弟「……なんだよ」
姉「あんた、死んだのよ」
弟「……は?」
姉「覚えてないの?」
弟「え……俺が、死んだ?」
姉「うん。まあ、今生き返ったけど」
弟「は?」
姉「うん」
弟「どういう事?」
姉「私が聞きたいわ」
弟「つまり、俺は一回死んで、今、生き返ってきたって事?」
姉「そうね」
弟「なんじゃそりゃ……」
姉「ああ……しっかし、弟が生き返るなんて思ってもみなかった」
弟「普通そうだろうな」
姉「お母さん、出かけてるみたいだけど、帰ってきたら驚くわよ」
弟「それもそうだろうな」
姉「お父さんもきっと驚いて……あっ、あんたお父さんには会わなかったの?」
弟「え? 父さん?」
姉「あんた行ったんでしょ、天国」
弟「天国……残念ながら記憶はないな」
姉「えー、そうなの。残念」
弟「いや……姉ちゃんさ?」
姉「なに?」
弟「俺が死んだとか、生き返ったとかって……マジ?」
姉「……姉ちゃんがあんたに嘘ついた事ある?」
弟「数えきれないくらいあるな」
姉「そんなこと忘れちゃいなさいよ」
弟「おい」
姉「自分が死んだ事は忘れてるくせに」
弟「ずいぶん勝手な言い分だな」
姉「とにかくマジよ、マジ」
弟「ふーん」
姉「詳しい事聞きたいの?」
弟「うーん、そうだなあ」
姉「じゃあハーゲンダッツのバニラね!」
弟「は!? パシリかよ!?」
姉「……あははっ」
弟「なんだよ?」
姉「本当に弟だあ」ニコッ
弟「……」プイ
姉「帰ってきて、よかったねえ」ニコニコ
弟「(なんだよ……)」
姉「……あんたさ」
弟「ん?」
姉「死んだ日の事、とか……覚えてるの?」
弟「死んだ日ぃ?」
姉「いやっ、覚えてないんなら、いいんだけどさ!」
弟「ん~なんか思い出せそうな気がする……」
姉「い、いいの! 思い出さなくて! ね!」
弟「なんか引っかかるんだけどな?」
姉「忘れちゃいなさい!」
弟「なんだっけ?」
姉「やめなさいって!」
弟「はは、何ムキになってんだよ姉ちゃん」
姉「もう、弟ってば!」
弟「まさか姉ちゃんが俺を殺した訳でもあるまいし……」
姉「!?」ビクッ
弟「(えっ?)」
姉「ば、ばかね、そんな訳ないじゃない!」
弟「だ、だよな」
姉「……あ、お母さんからメールきてた。今日は遅くなるって」
弟「そっか」
姉「よし、じゃあ今日は姉ちゃんがとっておきの料理作っちゃおうかな!」
弟「……うん」
弟「(さっきの姉ちゃんの態度……なんか引っかかるな)」
弟「(それに、死んだ日の事……思い出さなくちゃいけない気がする)」
弟「(しかし……なんにも思い出せんな……)」
姉「はーい、できたよー!」
弟「おっ、やったー」
姉「お腹すいてるでしょ? 残り物ばっかで悪いけど」
弟「いえいえ、そんな」
姉「ふふ、早く食べちゃいなさい」
弟「ありがと、いただきま……」
姉「……弟? どうしたの?」
弟「……姉ちゃん、俺、これ、食べられないや」
姉「えっ?」
弟「いや、なんかさ、俺……これ、食べたらいけない気がするんだ……」
姉「……どうして?」
弟「いや、全然わかんないんだけど、なんとなく」
姉「……そっか」
弟「……ごめん」
姉「い、いいのよ! やっぱ生き返ったばっかりだといろいろ勝手が違うのかしらね」
弟「そうかもな……」
姉「あんた自分の部屋は覚えてるの?」
弟「ああ、それはわかる」
姉「じゃあ部屋でちょっと休んでたら? お母さんも帰ってくるしさ」
弟「うん……」
弟「(どうしてだろう)」
弟「(姉ちゃんの料理、大好きだったのに)」
弟「(直感で、食べちゃいけないって思ったんだよな)」
弟「(……俺が死んだ事と、何か関係あるのかな)」
弟「(だいたい俺、なんで死んだんだっけ……?)」
弟「(……思い出せない)」
弟「(なんで、なんだろう……)」
姉「おーい、弟ー!」
弟「ん?」
姉「弟ー? 入るよー?」
弟「ああ、はいはいどうぞ」
ガチャ
姉「お風呂に行きましょう!」
弟「は?」
姉「ほら、うちのお風呂場ってしばらく使えないじゃない?」
弟「……そうなの?」
姉「あ……そ、そうなの。だから銭湯」
弟「なるほどね」
姉「はい! そうとわかれば支度!」
弟「へいへい」
姉「ふんふーん」
弟「やけに楽しそうだな」
姉「だって、あんたとこうやって出かけるのって、久しぶりじゃない?」
弟「そうだっけ?」
姉「そうよ。私もう……二度と……」グスッ
弟「な、泣くなよ姉ちゃん」
姉「二度と、弟と一緒に、でかけたりなんて、できないと思ってた」グスッ
弟「……ばーか」
姉「……うるさい」
弟「ほれ、あれだろ? ナントカの湯」
姉「おおっ、着きましたかー! ささ、入りましょう入りましょう」
弟「はは、なんなんだよ」
弟「(さて、身体は洗ったし)」
弟「(湯加減はどうかな~っと)」ザブン
弟「(うん、悪くない。良い湯じゃ!)」
ヒソヒソ……
弟「(ん?)」
ヒソヒソ……弟君じゃないか……
弟「(なーんか、老人連中の視線を感じるんだけど)」
ヒソヒソ……そんな訳……もう……自殺……ヒソヒソ……
弟「(うわさ話もたいがいにしろよな)」
ヒソヒソ……
弟「(……自殺?)」
姉「あ、弟ー! こっちこっち」
弟「なあ姉ちゃん」
姉「ああ、外はまだ寒いねぇ」
弟「姉ちゃん」
姉「なぁによ、怖い顔して」
弟「俺、自殺したのか?」
姉「……誰から聞いたの」
弟「さっき、風呂ん中で、老人連中がうわさしてた」
姉「……あったまおかしいわね、その連中」
弟「なあ姉ちゃん、教えてくれよ。俺、自殺したの?」
姉「……そうよ」
弟「……」
姉「あんた、睡眠薬大量に飲んで、そのまま、風呂場で……死んだの」
弟「……はは」
姉「……」
弟「な、なんで俺が、自殺なんて、さあ、ばかなこと」
姉「わかんないわよっ!!!」
弟「……姉ちゃん?」
姉「あんたが……あんたが自殺した理由なんてね、私が知る訳ないでしょ!」
弟「……」
姉「そんなこと知ってたら、私、絶対止めてた……」グスッ
弟「姉ちゃん……」
姉「止めてたわよ! それなのにあんたってやつは、突然、私を、一人に……」ボロボロ
弟「な、泣くなって……」
姉「……」グスッ
弟「……コンビニでハーゲンダッツ、買おうか?」
姉「……バニラね」グスグスッ
弟「はいはい」
姉「……」グスン
弟「はい、買ってきましたよ、お姫様っと」
姉「それやめなさいって言ってるでしょ」
弟「へいへい……ん?」
姉「なによ」
弟「俺さ、前も姉ちゃんの事、お姫様とかって、呼んだ?」
姉「……」
弟「……姉ちゃんさ」
姉「うん」
弟「なんか隠してる」
姉「うん」
弟「やっぱり」
姉「うん」
弟「で、教えてくれないんだろ?」
姉「うん」
弟「連れないなあ」
姉「……うん」
弟「ただいま~っと」
姉「はい、おかえり」
弟「姉ちゃんもおかえりー」
姉「……ただいま」
弟「さて、俺は部屋に戻ろうかなっと」
姉「……じゃあ姉ちゃんもそうする」
弟「あ、そう」
姉「……じゃあね」
弟「……姉ちゃん」
姉「なによ」
弟「俺さ、ひとつ思い出した事があるんだけど」
姉「ふーん」
弟「聞きたくない?」
姉「聞きたくない」
弟「なんだよ」
姉「言わなくてもわかるもん」
弟「じゃあ何か言ってみろよ」
姉「言わない。じゃあね」
弟「姉ちゃん!」
姉「……」
弟「俺、俺さ……ずっと姉ちゃんの事!」
姉「それ以上言っちゃダメ」
弟「言うし」
姉「ダメ」
弟「俺、姉ちゃんが好きだ」
姉「……弟」
弟「好きなんだよ、姉ちゃんの事。ずっと」
姉「ダメだって」
弟「思い出したんだよ」
姉「弟!」
弟「姉ちゃんもさ……俺の事、好きでいてくれたんだろ?」
姉「弟……」
弟「姉ちゃん……」
姉「それ以上近づいちゃダメ」
弟「無理だよ」
姉「ちょ、弟……」
弟「もう止まらん」
姉「お母さん、帰ってきちゃうよ」
弟「じゃあ俺の部屋行く?」
姉「今すぐ止めなさいって言ってるの」
弟「それは無理」
姉「ちょ、ダメ……ダメだってば」
弟「なんで?」
姉「あんた……ねえ!」バシッ!
弟「あいたっ!」
姉「ばっかじゃないの!」
弟「な、なんだよ姉ちゃん」
姉「あんたね、本当に覚えてないのね!」
弟「何が?」
姉「あんた、あの日も……」
弟「俺が死んだ日?」
姉「あっ」
弟「……なぁ姉ちゃん、そろそろ教えてくれてもいいんじゃない?」
姉「……」
姉「あの日も……あんた、私に欲情してて」
弟「欲情って」
姉「どうでもいいでしょ今はそんなこと!」
弟「あー、ごめん。でも、俺らが両想いだったのはずっと前からだよな?」
姉「……そう、ね」
弟「うん……それで?」
姉「あの日、いよいよするかしないかみたいな話になって」
弟「……うん」
姉「私……こわくて」ボロボロ
弟「うん」
姉「弟の事が嫌だったんじゃなくて……ただ……」ボロボロ
弟「うん……ごめんな」
姉「明日になったら、謝ろうと思ってたの」
姉「なのに」
姉「朝になったら、弟が」
姉「大好きな弟が、お風呂場で死にかけてたの」
姉「死にかけてたのよ」
弟「……ごめん」
姉「……うっ、うわあああん」
弟「ごめんな、ほんとごめん……」
姉「……」グスッ
弟「ほれ、ティッシュ」
姉「……ありがと」ブビー!
弟「じゃあ、あれだな」
姉「なにが?」
弟「俺は、好きな女に振られたと思い込んで自殺した大馬鹿者、ってわけか」
姉「……」
弟「はは、情けねえな」
姉「……でも」
弟「ん?」
姉「姉ちゃん、不思議な事があって」
弟「なんだよ? 不思議な事って」
姉「あんた、どうやって睡眠薬なんか手に入れたの?」
弟「え……」
姉「それだけが引っかかるのよね」
弟「確かに……どうしたんだっけ、俺」
姉「かなり強い薬だったみたいだけど……あんた覚えてないの?」
弟「覚えてない……」
姉「馬鹿な弟を持って姉ちゃんは悲しいわ」
弟「おい……」
姉「なにかあるのよ……きっと……」
弟「俺が自殺に及んだ手段?」
姉「そう……というより」
弟「というより?」
姉「誰かがあんたを自殺に見せかけて殺した、とか」
弟「えっ」
姉「なーんて、そんなことあるのかな」
弟「なんだよ……」
姉「とにかく、なんか不自然なのよねー」
弟「まあ、確かになんか不自然なのはわかる」
姉「あんた、なんか覚えてないの? なんかこう、なんじゃこりゃー、みたいな」
弟「なんじゃこりゃーって……」
姉「知らない人にもらったモノ食べたー、とかさ」
弟「ない」
姉「じゃあ、知らない人にもらったモノ飲んだー、とか」
弟「ばかにすんなよ」
姉「じゃあなぁに~!? 睡眠薬は絶対どこかで口にしてるはずでしょ~!?」
弟「まぁ、そうでしょうね」
姉「あんた、一体誰に睡眠薬飲まされたのよ!?」
弟「……」
姉「……なによ」
弟「姉ちゃんこそ……」
姉「えっ?」
弟「姉ちゃんこそ、知らない人からもらった食べ物とか、食ってねえよな?」
姉「わ、私がそんな事する訳ないでしょ!」
弟「知らない人からもらった、調味料とか」
姉「え」
弟「そういうので、料理とか……してないよな?」
姉「……あ」
弟「えっ!?」
姉「えーっと……」
弟「したの!?」
姉「した……かも……」
弟「それじゃね!?」
姉「それ……かも……」
弟「あーもう絶対それ! 絶対それだわ!」
姉「えーっと……」
弟「あー、だから俺さっき、姉ちゃんの飯食えなかったのか」
姉「……」
弟「また死ぬと思ったんだな、俺! さすが俺! 直感で嗅ぎ分ける俺!」
姉「なんていうか……ごめん」
弟「えっ!? あ、いやなんかこっちこそごめん」
すまん俺はもうだめだねる
母、ストーカー被害にあう
姉、そのストーカーからの贈り物(睡眠薬入り砂糖)を知らずに料理に使う
弟、睡眠薬にばっちり身体が反応し、風呂の中で眠り込み死ぬ
姉&弟、母のストーカーと対決する
弟、もっかい死ぬ。姉泣く
みたいなところまで考えたけどもう書けないお
書きためは途中までだったんだ
ほんとごめん読んでくれてありがとう
弟「それで・・・どの調味料なんだ?」
姉「うん。この間、お歳暮届いたの。」
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません