古畑「キルミーベイベー……?」(358)

古畑「いつもおしゃべりな人の口数が減ったら、
   何かあったんじゃないかと気にしてあげてください。
   もしかしたら何か悩みがあるのかもしれませんし、
   あるいは身体の具合が悪いのかもしれません。
   ひょっとしたら、人を殺した後なのかも……」

~教室~

やすな『やあ、やすな。実は私は、海外に住んでいたことがあるから外国語を話せるんだ』

ソーニャ「……」

やすな『へー、すごいねソーニャちゃん。まるで私のオサイフみたいだね』

ソーニャ「…………」

やすな『え、やすな。それはどういう意味だい?』

ソーニャ「………………」

やすな『ペラペラってことさ!』

ソーニャ「………………おい」

やすな『あははははははははははははははは』

ソーニャ「いい加減にしろ、まだそのパペット持ってたのか!
     しかも面白くないし!」ぐいっ

やすな『いたっいたたたた、首が、首が折れる!』

ソーニャ「まだ余裕ありそうだなっ」ぎゅうう

やすな「ちょっ、本当に痛いっ、指が折れちゃう!」

ソーニャ「だいたいなんだよさっきの声は。
     妙に甲高い声しやがって」

やすな「へっへ~ん。知らないの?
    吸い込むと声が変わるガスがあるんだよ。
    パーティーグッズだよ、パーティグッズ。
    元々は別の用途に使われていたんだけど……」

ソーニャ「あーそう」

やすな「ソーニャちゃんも使ってみたい?
    でも残念でしたー、もう使い切っちゃったから残ってませーん」

ソーニャ「……いや、別に興味ない」

やすな「またまたそんなこと言ってー
    本当は興味津々なくせにー」

ソーニャ「ないって言ってるだろ!」

~放課後~

やすな「ふんふんふ~ん♪」

ソーニャ「あれ、お前携帯変えたのか?」

やすな「そうなのです。最新の超薄型スマホに機種変しました!
    どう、ソーニャちゃん。スマートでしょ」

ソーニャ「使ってるお前はバカっぽいけどな」

やすな「ひどい!」

ソーニャ「だいたい、お前がスマホを使いこなしている図が想像できない。
     むしろ機械に使われるタイプだろ」

やすな「そんなことないよ!
    今もこうやってケータイ向けの
    お得なサービスを使ったりして……あ」

ソーニャ「どうした?」

やすな「ソーニャちゃん。帰り、カラオケ寄って行かない?」

ソーニャ「メルマガの割引クーポンか。
     まあ、お前にしては使いこなしてるな」

やすな「えへへー、このカラオケボックス、よく行くんだー♪」

……。

?「ふふふ、アイツら油断してるな。隙だらけだ」

~カラオケ店・505号室~

やすな「キルミーベイベー♪ どしたのワサワサ」

ソーニャ「キルミーベイベー♪ なんでもナーミン」

やすな「キルミーベイベー♪ やるならカモカモ」

ソーニャ「キルミーベイベー♪ あんだとドーン!」

やすな「ふー、次は何歌おうかなー」

ソーニャ「待て、次は私の番だ。『アナザー・ウェイ・トゥ・ダイ』を……」

やすな「えい、割り込みー」ピッ

ソーニャ「貴様……」

やすな「ええっ!? 銃を抜くほどお怒りに!?」

ソーニャ「リモコンをこっちに渡せ」

やすな「はい……と見せかけて、ていっ!」ヒョイッ

ソーニャ「あ、お前、銃を!」

やすな「へへーんだ! って何この銃。
    よく見ると可愛いー。オモチャみたい」

ソーニャ「可愛いとか言うな! 
     大統領暗殺に使われた銃がルーツになってる
     由緒ある暗殺用の拳銃なんだぞ!
     って言うか返せバカ!」ばっ

やすな「ダメだよ、没収だよ没収!
    こんなの女の子が持ってちゃダメだよ!」ジタバタ

ソーニャ「お前が持ってる方がもっとおかしいだろ!」ぐぐぐ

やすな「痛い痛い離してー」ジタバタ

ガチャ――

没キャラ「やいお前ら、ここであったが百年……」

パァン!

没キャラ「め……?」

――バタリ。

やすな「え……?」

ソーニャ「ば、バカ! お前なんで撃つんだよ!!」

やすな「だ、だってソーニャちゃんが掴みかかってくるから……」

ソーニャ「おい、アンタ大丈夫か!?
     しかっりしろ――」

没キャラ「……」

ソーニャ「ダメだ、死んでる」

やすな「ええ――っ!?」

ソーニャ「……」

やすな「あわわわ、どうしよう……。
    人を殺しちゃうなんて……」

ソーニャ「まあこうなったら仕方ないな。
     ……自首してこい」

やすな「殺し屋に自首をすすめられた!?」

ソーニャ「だって撃ったのお前だし」

やすな「ひどいよ、ソーニャちゃんは知らんぷりなの!?」

ソーニャ「知らない」

やすな「あれれー、良いのかなそんなこと言っちゃってー。
    凶器の拳銃は誰のものなんでしょうねー」

ソーニャ「ちょ、お前……」

やすな「警察に捕まったら、拳銃についてあることないこと言っちゃうかも」

ソーニャ「じゃあ、口封じをするしかないな」

やすな「ああ、目が仕事をする人の目にっ!」

ソーニャ「冷静に考えると、店員に二人で来たところを見られているから
     ここでやすなを殺すのはまずいな」

やすな「そう思うなら私の首から手を離してください……」

ソーニャ「とりあえずドアを開けっ放しで死体をそのままってのはマズイ。
     部屋の中に引っ張り込むぞ」

やすな「へへーん、一蓮托生だからねソーニャちゃん」

ソーニャ「くそ、なんでこんなことに……」

~カラオケ店・503号室~

今泉「キルミーベイベー♪ あそぼよワサワサ」

西園寺「キルミーベイベー♪ だまってナーミン」

今泉「キルミーベイベー♪ どしてもカモカモ」

西園寺「キルミーベイベー♪ うるさいドーン!」

古畑「…………なんなのその歌」

今泉「え、古畑さん知らないんですか?
   今流行ってるんですよ、キルミーのベイベー」

古畑「ああそう」

今泉「いつもオールライト♪ だけどソータイト♪」

古畑「……私お手洗い行ってくるよ。
   あ、『サントワマミー』入れておいて」

西園寺「承知しました」

~カラオケ店・505号室~

ソーニャ「しかし、どうしたものか……」

やすな「このまま帰る……ってわけには
    いかないよねー……」

ソーニャ「そりゃ死体置きっぱじゃな……」

やすな「…………」

――コンコン

ソーニャ「っ!」ビクゥ

やすな「はいっ!」

「あのー、ちょっとよろしいでしょうか」

ソーニャ「やばい、隠せ隠せ!」

やすな「あわわわわわわわ……」

「すみません、警察の古畑と申します」

やすな「警察!? もう警察が来たの!?
    誰かが通報を……?」

ソーニャ「いいから隠せ!
     ソファーの影に押し込んで、荷物でも前においとけ」

やすな「あわ、あわわわわ」

「あのー」

ソーニャ「はいはい、どうしたっ?」

「いやー、ドアの前にですね、血の跡が……
 この部屋のすぐ前なので気になりまして……」

ソーニャ「しまった。血痕を拭き取ってなかった。
     もはやこれまでか……」

やすな「どんだけドーン!」ドガッ

ソーニャ「!?」

~カラオケ店・5階廊下~

ガチャ――

古畑「あ」

やすな「すいません、古畑さんでしたっけ?」

古畑「どうされたんですか、ティッシュで鼻を抑えて。
   なんというかその、赤く染まっていますけど」

やすな「さっき転んだ時に鼻血が……
    えーと、それで何の用ですか」

古畑「えー、ドアの前に血の跡があったので気になったんですが」

やすな「……うわ! こんなところにも血が」

古畑「んーふふふ、相当派手にぶつけられたみたいですね」

やすな「ううう……部屋に入るときに垂れたのかな。
    恥ずかしい」

古畑「あっはっは……いや、失礼しました。
   私、殺人が専門なもので血を見るとつい気になってしまって」

やすな「殺人が専門……あの、何か事件でも……?」

古畑「いえいえ、そんなことはないのでご安心ください。
   今日はプライベートで遊びに来ているだけで」

やすな「そうですかー、あっはっは……」

ソーニャ「お、おい、次の歌始まるぞ」

やすな「あ、ゴメンねソーニャちゃん。
    じゃあ失礼します。すいません、なんか驚かせてちゃって」

古畑「いえいえ、とんでもない。
   こちらが勝手に気になっただけですから。
   失礼しましたー。
   ……あれー?」

やすな「……ど、どうかしました?」ビクッ

古畑「いえー、なんか匂いませんか?
   火薬の匂いがするような」

ソーニャ「……っ!!」

やすな「あ、さっきクラッカー鳴らしたからかな?」

古畑「クラッカー?」

やすな「そう、パーティーとかで使うあのクラッカー。
    盛り上がるかなーと思ってパンパン鳴らしたんですよ。
    ね、ソーニャちゃん?」

ソーニャ「あ、ああ、そうだな」

古畑「なるほど、だから火薬の匂いが……
   それは楽しそうだー。
   あ、すみませんでした、邪魔してしまって」

やすな「いえいえー」

――バタン。

~カラオケ店・505号室~

やすな「行ったね……」

ソーニャ「行ったな……」

やすな「心臓止まるかと思ったよー」

ソーニャ「カラオケに来る前に止まってればよかったのにな」

やすな「ひどい!」

ソーニャ「それにしても、血痕の件はお前の鼻血ってことで
     なんとかごまかせたみたいだな……」

やすな「何しろ体張ったからね!
    でも痛かったよおおおおお」

ソーニャ「ああ、お前はよく頑張ったよ。
     急に壁に向かって思いっきり顔をぶつけた時は
     ついにおかしくなったのかと思ったけど」

やすな「怪我までしたのにこの言われよう!」

ソーニャ「あと、火薬の匂いをクラッカーって言ったのも
     咄嗟によく思いついたな。
     そう言えば、銃規制のない国では
     実際に銃で事件を起こした犯罪者が硝煙反応を
     クラッカーのせいだと主張することもあるらしいが……」

やすな「ふっふっふ、それには理由があるのです」

ソーニャ「?」

やすな「えい」パンッ!

ソーニャ「うわあああああああああっ!?」

やすな「えへへー、びっくりした? びっくりした?
    実は本当にクラッカーを持っていたのでしたー。
    昨日買ったんだよ!」

ソーニャ「そんなもんばっか買ってるから、
     いつも金欠になるんだろ!」

やすな「それにしてもソーニャちゃんって結構ビビりだよね。
    クラッカー鳴らしたくらいでそんなに驚いちゃって。
    あ、もしかして銃声だと思った?」

ソーニャ「うるさいっ!!」パンパンパン!

やすな「ぎゃー!! 人に向けてクラッカーを鳴らさないでー!!」

ソーニャ「全くお前は本当に懲りない奴だな……」

やすな「うう……」

ソーニャ「……ちょっとトイレ行ってくる。
     余計なことするなよ」

やすな「はい……」

だれか古畑じゃない方の参考画像を

~カラオケ店・5階女子トイレ~

ソーニャ「……ん、このトイレ窓があるのか。
     ここから死体を運び出したりできないかな」

――ガラッ

ソーニャ「ダメそうだな……5階から下まで降りるのは無理だ。
     せめてロープか何かあればな……。
     掃除用具入れに使えそうなものはないか?」

ガチャ――

ソーニャ「モップにバケツにゴミ袋にホース……
     ホースは10メートルくらいか?
     ロープ代わりに使うには……長さはギリギリだな」

ウロウロ……

ソーニャ「でも待てよ、窓からなんとか下に降りても、
     この構造じゃその後どうすればいいんだ……?
     それに、エレベーターホールに監視カメラもあったし、
     トイレに死体を運び込む時にホールを通るから映っちゃうよな……」

――ピシャン

ソーニャ「ダメだ。出よう」

>>47
ttp://killmebaby.tv/chara.html

~カラオケ店・5階廊下~

ソーニャ「やっぱりエレベータホールに監視カメラがあるな……
     でも、角度からすると映してるのはホールだけか?
     廊下までは映っていないみたいだ」

スタスタスタ……

ソーニャ「廊下の先には外の非常階段に続くドア……
     ここからなんとかできないか……?」

ガチャ――ガチャガチャ――

ソーニャ「なんだ? ドアが開かない?
     ドアの外に何か置いてあるみたいだな……
     くそ、消防法違反だろっ!!」

ガンッ

ソーニャ「結局、いい方法はなさそうだな……
     しょうがない、部屋に戻るか。
     ん……あれは?」

店員(梶原善)「うーん、おかしいなあ」

ソーニャ「あの部屋は……空き部屋か?
     何やってんだ、あの店員?」

古畑「あのー、どうかされました?」

ソーニャ「っ!」ビクッ

店員「ああ、すみません。
   この部屋にお客様をご案内したはずなのですが、
   なぜかいらっしゃらないみたいで」

古畑「お客さん……? 部屋に誰もいないの?」

店員「誰も……と言うか一人です。
   赤っぽい髪の、元気そうな女子高生が一人」

古畑「一人でカラオケに? んー、なんというか寂しい子だね」

店員「いえ、ヒトカラ……つまり一人でカラオケに来るお客様はそれほど珍しくはありません。
   現に他にも一人で来ているお客さんはいますし。
   あの、ところで失礼ですが、アナタは?」

古畑「私? 私こういうものなんだけど」

店員「え、警察の方? 何か事件でも?」

古畑「いや、部下と遊びに来ただけ。
   それより、そのお客さん本当にこの部屋に来たの?」

店員「間違いありません」

古畑「じゃあトイレに行ってるんじゃない。
   あのー、ソーニャさん?」

ソーニャ「え、私!?」

古畑「ええ、ソーニャさん、ソーニャさんですよね?
   さっき、そう呼ばれてました」

ソーニャ「ああ、アンタさっきの……
     私がどうかしたか?」

古畑「いやー、聞こえていたと思いますけど、
   この部屋のお客さんがどっかに消えちゃったみたいで。
   もしかしてトイレにいなかったかな……と」

ソーニャ「なんで私に聞くんだ?」

古畑「えー、女の子にこんなこと聞くのあれなんですけども、
   今トイレから戻ってきたところですよね?
   だってそのー……手に水滴が」

ソーニャ「……なるほど、アンタ目ざといな」

古畑「んーふふふ、仕事柄細かいとこに目が行くたちでして。
   えー、それで、トイレで見かけませんでしたか?
   赤っぽい髪の元気そうな女子高生らしいんですが」

ソーニャ「えーと……ど、どうだったかなー……
     いなかったと思うけど……」

古畑「だってさ。やっぱり勘違いんじゃない?」

店員「そんなことありませんよ!
   あ、そうだ。エレベーターホールの監視カメラに姿が映っているはずです。
   そこまで言うなら、管理室で確認してみますか?」

古畑「んー、お願いできる?」

店員「では、こちらへどうぞ。
   管理室は一階です」

古畑「ありがと。じゃ、行こう」

ソーニャ「…………」

~カラオケ店・505号室~

やすな「あ、ソーニャちゃんお帰りー」

ソーニャ「なんでそんな呑気な声が出せるんだよお前……
     それよりマズイことになったぞ。
     客が行方不明になってるって店員が騒いでて、
     さっきの古畑って刑事が監視カメラを確認しに行った」

やすな「え、えーと……つまりどういうこと?」

ソーニャ「その客を本格的に探そうという話になったら、
     この部屋も調べられるかも……」

やすな「え、ええーっ!?
    どうしよう、死体あるのに」

ソーニャ「と、とりあえず死体を運び出すぞ。
     向かいの部屋が今、誰もいないはずだ」

やすな「そんな行き当たりばったりな……」

ソーニャ「うるさい! 誰のせいでこんなことになってると思ってるんだ!」ぐぐぐ……

やすな「ギブ! ギブギブ! ギブ!」タップタップ

ソーニャ「だいたい私たちの部屋で死体が見つかるよりはいいだろ!
     ほら、行くぞ!!」

~カラオケ店・5階廊下~

ソーニャ「とりあえずなんとか隠したが……」

やすな「あんなんでバレないかなあ……」

ソーニャ「しょうがないだろ!
     監視カメラのせいで死体を持ち出すのも無理そうだし、
     他に良い方法も思いつかないんだから!」

あぎり「お困りですかー?」

やすな「うわっ!! あぎりさん!?」

ソーニャ「なんでこんなところにいるんだよ!?」

あぎり「カラオケボックスですから、歌いにきたんですよー」

ソーニャ「ああ、そうか。一人で?」

あぎり「はいー。そこの部屋ですー」

ソーニャ「私たちの隣の部屋じゃないか」

やすな「あの、あぎりさんっ。
    死体を隠す忍術とかないですかウプッ!?」

ソーニャ「お前、聞きかたがストレートすぎるだろ!!」

あぎり「えー、何を隠すんですかー?」

ソーニャ「いや、こいつの言うことは気にしないでくれ!!」

やすな「ムグーっ! ムグーっ!」

あぎり「隠れると言ったら遁術セットがありますけどー?」

ソーニャ「へ、へえ……? 火遁とか、水遁とか?」

あぎり「はい。これが火遁の術ですー」

やすな「ぷはっ! 火遁ってそれ、爆弾じゃないですか!!」

ソーニャ「そんな物騒なもの出すな!」

あぎり「大丈夫ですよー、見た目は爆弾ですけど、
    実はただのライターですからー」

やすな「ああ、全然忍術じゃなかった!」

あぎり「色んな武器の形したライターを売っているお店があるんで、
    そこで買いましたー」

やすな「しかも市販品!?」

ソーニャ「ほ、他にはないのか?」

あぎり「次はこちら、水遁の術ー」

やすな「ゴーグルにアクアラング!」

あぎり「今なら水かきも……あ、水グモの術もついてきますよー」

ソーニャ「今、水かきって言ったぞ!」

やすな「あのー、他には?」

あぎり「はい、土遁の術ー」

やすな「棺桶っ!?」

ソーニャ「ある意味ではタイムリー!!」

あぎり「今ならセットでお安くしますよー」

ソーニャ「気が向いたらな……」

あぎり「では、気が向いたらいつでもどうぞー」

ソーニャ「…………」

やすな「…………」

~カラオケ店・505号室~

ソーニャ「とりあえず、やれるだけのことはやったな……」

やすな「…………」

ソーニャ「あとは、死体が見つからないことを祈るしかないな……」

やすな「ねえ、ソーニャちゃん。
    拳銃もどこかに捨てておいた方がいいんじゃないかな。
    ほら、凶器を持ちっぱなしなのもマズイでしょ?」

ソーニャ「でも、この銃手に入れるの苦労したから手放したくないんだよ……
     特殊な軽量金属でできていて結構高かったし。
     それに、凶器を処分しようにも、監視カメラのせいで
     ばれずに持ち出すのがまず無理そうだしな」

やすな「そっか……」

ソーニャ「…………」

やすな「ごめんね、ソーニャちゃん。
    こんなことになっちゃって……」

ソーニャ「今さらそんなこと言っても仕方ないだろ。
     ……気にするな」

やすな「ううん、気にするよ。
    私のせいでソーニャちゃんを巻き込んじゃってさ……」スッ

ソーニャ「お、おい。やすな……!?」

やすな「でも、ソーニャちゃんって優しいよね。
    こんな私のことも見捨てないで助けてくれてるし」ダキッ

ソーニャ「……っ!!」

やすな「ありがとね。感謝してるよ」ギュッ

ソーニャ「き、気にするなって言ってるだろ!///」

やすな「……ふふっ」パッ

ソーニャ「……あ」

やすな「あれ、どうしたのソーニャちゃん?
    もっと抱きしめてて欲しかったー?」

ソーニャ「ば、馬鹿! そんなワケあるはずないだろっ!!」

やすな「ぎゃー! 痛いっ、暴力反対!!」

ソーニャ「全くお前は……」

やすな「てへへへ……あ、そうだ。私もトイレに行ってくるね」

ソーニャ「わかった」

~カラオケ店・管理室~

店員「ほら、確かに映ってるでしょ?」

古畑「んー、本当だ。
   あの階には他に出入り口はないの?」

店員「非常口があるにはありますけど」

古畑「うーん、お客さんが非常口から出ていくとは考えにくいなあ」

店員「ええ、それに……」

古畑「何?」

店員「いやー、その……
   まあ、実際にその場で説明します。
   こちらへどうぞ……」

~カラオケ店・505号室~

ソーニャ「やすなの奴、ずいぶん遅いな……
     ちょっと様子見に行ってみるか……」

ガチャ――


~カラオケ店・5階廊下~

ソーニャ「あ、やすな」

やすな「…………」

ソーニャ「戻ってくるのが遅かったから、
     ちょうど今、様子を見に行こうとしてたところだったんだ」

やすな「…………」プイッ

ソーニャ「え、おい。ちょっと、どこに行くんだ?」

やすな「…………」スタスタスタ

ソーニャ「おい、待てって――」

ポーン


ソーニャ「ん、エレベーターが……」

古畑「ここの監視カメラってさー、
   エレベーターホールしか映してないの?」

店員「はい」

古畑「で、非常口はこの廊下の突き当りだっけ……
   ん、あれ。ソーニャさん?」

ソーニャ「うわっ、あ、アンタか……」

古畑「あのー、どうされたんですか?
   こんなところで突っ立って……」

ソーニャ「い、いや、何でもない」

古畑「……?」

ソーニャ「私は部屋に戻る。じゃあな」バタン!

店員「……何だったんですかね?」

古畑「さあ? それより非常口だけど、何か問題があるの?」

店員「いや、そのー……」

ガチャガチャ

古畑「あれ、この非常口開かないじゃない。
   外に何か置いてあるの?」

店員「ええ、その、荷物がですね……
   ダンボールに入って幾つも積んでありまして……」

古畑「それじゃ非常口にならないじゃない。
   ダメだよちゃんと片づけておかなきゃ」

店員「すいません……」

古畑「んー、でもおかしいなあ。
   ここが開かないんじゃ、結局あの女の子、
   どこに消えちゃったんだろうね」

店員「ええ、ですから、変なんですよ」

古畑「うーん……」

~カラオケ店・503号室~

今泉「あらーしーがすぎたーあとにー♪ かーたーるーにもおちていくー♪」

ガチャ――

西園寺「あ、古畑さん」

今泉「めーまいーをふりーほどいてー♪ いちにーさんでおーどりだすー♪」

古畑「ちょっといい?
   実は、この階で女子高生が一人行方不明になってるんだけど……」

今泉「しーごーろくでもおーどりだすー♪」

古畑「……」ピッ

今泉「ああ、なんで止めるんですか!? 歌ってたのに!!」

古畑「真面目な話してるんだからちゃんと聞きなさいよ」ペチンッ

今泉「あ痛っ」

西園寺「女子高生が行方不明になっているとおっしゃっていましたが」

古畑「そう。赤っぽい髪の元気そうな娘」

西園寺「外に出て行ったのでは?」

古畑「それが妙なんだよ。エレベーターホールにある監視カメラには、
   この階に来たところは映っていたんだけど、出て行くところは映っていないんだよ。
   非常口は外に荷物が積んであって開かないし」

西園寺「他に出入口はないんですか?」

古畑「店員さんに確認したんだけど、ないみたい」

西園寺「なるほど、確かにそれは妙ですね」

古畑「でしょ? 悪いんだけど二人でこの階を探してみてくれる?」

西園寺「わかりました。行きましょう、今泉さん」ガチャ

今泉「え? あ、ちょっと待って……」

――バタン

古畑「……」

古畑「…………」

ピッ

古畑「キルミーベイベー♪ どしたのワサワサ♪」

~カラオケ店・5階廊下~

西園寺「我々の503号室以外にも504号室、505号室にはお客さんがいるみたいですね」

今泉「ねえねえ、どこから探すの?」

西園寺「空いている個室から調べてみましょう。
    店員さん、そのお客さんは本来どの部屋を使う予定だったんですか?」

店員「501号室です」

西園寺「では、その部屋から」


~カラオケ店・501号室~

西園寺「別に変ったところはありませんね」

今泉「本当はさ、アンタの気のせいなんじゃないの?」

店員「そんなことありませんよ!
   さっきの方にも監視カメラの映像を確認して貰ったんですから」

西園寺「やっぱり何もないな……
    今泉さん、そちらには何かありますか?」

今泉「何もないと思うよ」

西園寺「この部屋には何もないみたいですね。次の部屋に行ってみましょう」

~カラオケ店・502号室~

今泉「この部屋にも何もなさそうだけどなあ」

西園寺「念のため、隅々まで調べてみましょう」

今泉「めんどくさいな。僕、座って待ってるよ。
   ……ん? うわ!?」

ガターン!

西園寺「今泉さん、どうされたんですか?」

今泉「知らないよ! ソファーに座ったら、座席の部分が外れて……」

店員「ちょ、ちょっと、それ!」

西園寺「……中に人が!?」

今泉「ひいっ!! し、死んでる!!」

西園寺「赤っぽい髪の女子高生……
    店員さん、この人で間違いありませんか?」

店員「は、はい……」

~カラオケ店・503号室~

古畑「死んでいた?」

西園寺「はい。胸を拳銃で撃たれていました。
    死体は隣の部屋のソファーの中に」

古畑「拳銃……拳銃?」

西園寺「はい、傷口からすると小型の拳銃と思われます」

古畑「その拳銃はあったの?」

西園寺「いえ、死体のあった502号室からは発見できませんでした」

古畑「署への連絡は?」

西園寺「既に」

古畑「うーん……私も、その部屋の様子見てみるよ」

西園寺「はい、ではこちらへ」

~カラオケ店・502号室~

古畑「んー……確かに、これは銃創だね」

西園寺「古畑さん。確か、古畑さんは管理室で監視カメラの映像を確認されたんですよね?」

古畑「確認した」

西園寺「被害者がここに来た後、人の出入りはあったんでしょうか?」

古畑「いいや。少なくとも私が確認した範囲では」

西園寺「と言うことは、犯人はまだ、この階にいるのではないでしょうか」

古畑「だろうね。ん、これは……?」

西園寺「どうされました?」

古畑「被害者の服についてたんだけどさ、何だと思う、これ?」

西園寺「紙の切れ端……ですか? 黄色いですが」

古畑「……」

西園寺「古畑さん。僕は今泉さんと一緒にこの階を調べてみようと思います。
    どこかの部屋に犯人が隠れているかも知れませんし」

古畑「西園寺君さー、署に連絡して用意して貰いたいものがあるんだけど」

西園寺「はい、なんでしょう?」

~カラオケ店・505号室~

ソーニャ「なあ、さっきから外が騒がしくないか?
     もしかして、死体が見つかったんじゃ……」

やすな「もー、ソーニャちゃんってば、本当に小心者だなー」

ソーニャ「何だと!?」

――コンコン

ソーニャ「っ!?」ビクッ

やすな「やーい、ビビってやんのー!
    はいはいー、今開けます」

ソーニャ「お、おい」

ガチャ――

古畑「どーも、先ほどは」

やすな「あ、さっきの刑事さん。
    えーと、確か……」

古畑「古畑です」

やすな「あ、そうだ。古畑さんだった。
    私は折部やすなです。よろしくー」

古畑「んーふふふ。よろしくお願いしますー」

ソーニャ「な、何か用か?」

古畑「はい。えー……その、どうか落ち着いて聞いて欲しいんですが。
   えー、その……」

ソーニャ「な、何だよ……勿体ぶるなよ」

古畑「はい、実は向かいの部屋で死体が発見されまして」

ソーニャ「っ!」

やすな「ええ!?」

古畑「ソーニャさんはご存知かと思いますが、この階で女子高生が一人行方不明になりまして……」

ソーニャ「あ、ああ……さっきそんなこと言ってたな」

古畑「本格的に探してみたら、向かいの部屋で死んでいたというわけで」

ソーニャ「そうなのか……犯人は見つかったのか?」

古畑「いえ、それがまだでして――あれ?
   んー、おかしいなあ……」

ソーニャ「何だよ?」

古畑「いえ、今ソーニャさん、『犯人は見つかったのか?』と仰いましたよね?
   確かに、その女子高生は胸を拳銃で撃たれて殺されていました。
   でも私、殺されたなんて一言も言っていないんですよ?」

ソーニャ「う……」

古畑「なぜ、犯人なんていると思ったのか、
   理由を説明していただけるとありがたいのですが」

ソーニャ「いや、それは……」

やすな「あ、それは仕方ないんですよ。
    ソーニャちゃんは殺し屋だから、人が死んだって聞くと、
    まず殺しと結び付けて考えちゃうんです」

ソーニャ「おいっ!!!」

古畑「え、殺し屋?」

やすな「話を合わせてください古畑さん。
    ソーニャちゃんはこの年で厨二妄想をこじらせて
    自分のことを殺し屋だと思い込んでいるちょっと痛い子なんです。
    でもそれを真っ向から指摘すると泣き出しちゃうんです」(ヒソヒソ

ソーニャ「おい聞こえてるぞ」

古畑「え? あー……」

ソーニャ「……」

古畑「これは失礼しました。
   殺し屋じゃ仕方ないですね」

ソーニャ「(ああっ、人を憐れんだ目に!!)」

やすな「それにしても、向かいの部屋で人が殺されたなんて怖いよー。
    もう帰ろうか、ソーニャちゃん」

ソーニャ「え、あ、ああ……」

古畑「いえ、申し訳ないんですが、それはちょっと困ります。
   犯人はまだこの階にいる可能性が高いんです。
   せめて、安全が確保されるまではここにいて貰わないと」

やすな「えー、でもー」

古畑「今、私の部下がこの階を調べています。
   そんなに時間はかからないと思います。
   お二人の安全のためにも、どうかご協力を」

やすな「まあ、そこまで言うなら」

ソーニャ「……」

古畑「んーふふふ、ご協力感謝しますー」

やすな「どういたしまして」ニコッ

――コンコン

古畑「おや、私の部下かな? ちょっと失礼」

ガチャ――

西園寺「古畑さん、一通りこの階を調べ終えました」

古畑「ご苦労様。外で話そうか」

――バタン。

ソーニャ「……」

やすな「……」

ソーニャ「誰が厨二妄想をこじらせた痛い子だって……?」ぐぐぐぐ……

やすな「しょうがないじゃん、他に言い訳思いつかなかったんだから……」ジタバタ

~カラオケ店・5階廊下~

西園寺「隅々まで探したんですが、どこにも怪しい人間は隠れていませんでした」

古畑「だろうね。拳銃は見つかった?」

西園寺「いえ。この505号室以外は徹底的に探しましたが、どこにも」

今泉「もう犯人は逃げちゃったんじゃないかな。
   いつまでも犯行現場にいてもしょうがないだろうし」

西園寺「でも今泉さん。この階から出て行った人間はいないんですよ」

古畑「西園寺君さー、じゃあ犯人はどこに隠れていると思う?」

西園寺「はい。考えてみたんですが、犯人は隠れてなんかいないんじゃないでしょうか。
    個室の中で、客として堂々と振る舞っているのでは?」

古畑「んーふふふ」

西園寺「我々を除くと、504号室に一人、505号室に二人の客がいて、他の三部屋は空き部屋です。
    この中の誰かが犯人……そう言えば、古畑さんはなぜ、505号室の二人と話していたんですか?」

古畑「さて、何だと思うー?」

西園寺「もしかして、この二人を犯人だと考えてらっしゃるのでは?」

古畑「んーふふふふ」

西園寺「そうなんですね?」

古畑「ところで、さっき頼んだものはある?」

西園寺「はい、こちらに」

古畑「ありがと。ちょっとここで待機してて」

~カラオケ店・505号室~

ガチャ――

古畑「すいません、お待たせして――」

やすな「犯人は見つかったんですか?」

古畑「いえ、それが見つからなかったんです。はい」

やすな「えー……それじゃあ、もう逃げちゃったんじゃないですか」

古畑「……」

やすな「何にしろ、犯人が近くにいないなら、もう帰ってもいいですよね?」

古畑「ええ、私としましてもお二人をお帰ししたいのは山々なんですが――
   私の部下がですね、お客さんの中に犯人がいるんじゃないかと言い出しまして」

やすな「え、それってもしかして私たちも疑われてるってことですか?
    どうしよう、ソーニャちゃん。私たち容疑者だって」

ソーニャ「……え、どうしようって、その――」

古畑「いえいえ、決してそんなことはないんです。
   お気に障ったのなら申し訳ありません。
   ただ部下がですね、死んだ赤毛の子がこの部屋に来ていないか
   確認するべきだと言っていまして……」

やすな「やだなー、知りませんよ。
    ね、ソーニャちゃん」

ソーニャ「……ああ、知らないな。
     何でそんなこと言ってるんだか」

古畑「ええ、それがですね。死体の服にこんなものがついてまして」

やすな「何ですかそれ、紙切れ?」

古畑「はい、えー黄色い紙の切れ端です」

ソーニャ「それがどうかしたのか?」

古畑「はい。この紙切れ何なのかと考えてみたところ、
   一つ思い浮かぶことがありまして……
   これ、クラッカーの紙ふぶきじゃないでしょうか?」

ソーニャ「あ……」

古畑「それでですね、最初にこの部屋に来たとき、
   折部さんがクラッカーを鳴らしたと言っていたことを思い出しまして。
   そのことを部下に話したら、
   被害者はこの部屋に来ていたんじゃないかと言い出しましてね」

ソーニャ「それは……」

やすな「えー、でもそんな人、来てませんよ?」

古畑「しかし、クラッカーの紙が……」

やすな「はあ。あの、それが?」

古畑「……」

やすな「え? だってクラッカーなんて日本中どこでも売ってるし、
    紙切れがついてたからって、
    その人がこの部屋に来たってことにはならないですよね?」

古畑「えー……はい。私も部下にそう言ったんです。
   ところが部下は頑固な奴でして、念のためこの部屋と
   お二人の荷物を調べるべきだと言って聞かないんです。
   凶器の拳銃が見つかるかも知れないと」

やすな「やだなー、私たち、ただの女子高生ですよ?
    拳銃なんて持ってるわけないじゃないですか」

古畑「いやー、でもソーニャさんは殺し屋なんですよね?
   んーふふふ、拳銃ぐらい持ってるんじゃありませんか?」

ソーニャ「う……それは」

やすな「やだなー古畑さん。ソーニャちゃんが殺し屋って言うのは
    あくまで本人がそう思い込んでいるだけですよ。
    別に本当に殺し屋なわけじゃないんだから銃なんて……」(ヒソヒソ

古畑「はい、承知してます。でも殺し屋だと思い込んでるなら
   ここで私が疑わないのも不自然かと思いまして……
   んーふふふ。ご協力お願いできませんか?」(ヒソヒソ

やすな「…………」

ソーニャ「おい、やすな……?」

やすな「……そこまで言うならご協力しましょう!
    どうぞ好きなだけ調べてください!」

ソーニャ「おい!」

古畑「ご協力ありがとうございます」

やすな「ほら、ソーニャちゃん。
    ここにいると邪魔になるから私たちは外に出てようよ」グイグイ

ソーニャ「わ、こら。引っ張るな!」

古畑「廊下で立ちっぱなしと言うのもなんですから、
   我々の部屋で待っていてください。
   ご案内します、こちらへどうぞ」

~カラオケ店・503号室~

ガチャ――

今泉「黄色いサクランボ♪ 黄色いサクランボ♪」

古畑「ちょっと……何やってるの?」

今泉「え、カラオケを……」

古畑「そんなこと聞いてるんじゃないよ。
   なんでこんなとこで遊んでるのかって聞いてるんだよ。
   ほら、西園寺君を手伝ってきなさい。
   ほら、早く!」

今泉「うわ、ちょっと、押さないでくださいよ古畑さん!」

古畑「バイバイ」バタン

ソーニャ「……」

やすな「…………」

古畑「いやー、すみません。お見苦しいところを。
   今の奴、今泉って言うんですがどうにも役に立たない奴で――
   あ、どうぞおかけください。何でしたら何か歌っていただいても」

ソーニャ「いや、私は別に……」

やすな「あ、今の人の歌の点数が出てるよソーニャちゃん。
    すごい、96点だって!」

ソーニャ「ああ、そうだな。すごいな……」

古畑「では、折部さんどうです。一曲」

やすな「えー、前の人がこんな高得点だと歌いにくいなー。
    それより古畑さんこそ何か歌ってくださいよー」

古畑「え、私ですか? あ、いや参ったなー……
   それじゃ失礼して」ピッ

やすな「イエーッ!」

ソーニャ「……(まあ銃はポケットに入ってるから
     さっきの部屋を調べられても大丈夫だが……)」

古畑「あなたの好きな人と♪ 踊ってらしていいわ♪」

ソーニャ「……(持ち物調べられたら終わりだよなあ……)」

~カラオケ店・503号室~

古畑「ラスト・ダンス♪ 忘れないで♪」

やすな「さあさあ、点数はー?」

ソーニャ「……58点」

やすな「さっきの人より低い……
    古畑さん、歌ヘタですね」

古畑「んー……マイマイクじゃないと調子が出ない」

――コンコン

古畑「あ、終わったのかな。
   ちょっと失礼します」

ガチャ――

古畑「どう、見つかった?」

西園寺「いえ、荷物も部屋の中も徹底的に探しましたが、見つかりませんでした」

古畑「……そう」

やすな「古畑さーん。どうでした、何か見つかりました?」

古畑「……いえー、何も」

やすな「だから言ったじゃないですかー、
    私たち、ただの女子高生なんだから銃なんて持ってるわけないって。
    さ、もう帰ってもいいですよね?」

古畑「いえー、まだです」

やすな「えー、何でですか?」

古畑「いやー、部下がですね、
   ボディチェックもするべきだって言ってまして」

ソーニャ「……っ!!」

古畑「申し訳ないんですがご協力願えませんか」

やすな「いい加減にしてくれませんか古畑さん。
    あんまりしつこいと、ソーニャちゃんの暗殺拳が火を吹きますよ?」

ソーニャ「そ、そうだ……私の暗殺拳が火を吹くぞ!」

古畑「なに、時間は取らせません。すぐに終わります」

ソーニャ「何でそんなに私たちを疑うんだよ!
     犯人は逃げちゃったって考えた方が自然だろ!」

古畑「いやー、それがですね。エレベーターホールの監視カメラには、
   この階から出て行った人間は映っていないんです」

ソーニャ「非常口から逃げたのかも知れないだろ!」

古畑「いえ、ありえないんです。非常口、外に荷物が置いてあって開かないんですよ。
   だから犯人はまだこの階にいるはずなんです。
   お願いです、ご協力ください」

ソーニャ「うぐぐ……で、でもほら、あんまり身体とか触られるの嫌だし……」

古畑「ご安心ください。署から金属探知器を持ってきて貰いました。
   指一本触れずにチェックできます」

ソーニャ「ううう……」

やすな「分かりました。じゃあそれで調べてください」

ソーニャ「おい、やすな――」

やすな「しょうがないよソーニャちゃん。
    良いって言うまで帰してくれなさそうだしさ。
    でも古畑さん。これで最後にしてくださいよ?」

古畑「はい、お約束します」

やすな「では、私からどうぞ」

古畑「はい、では失礼して――」

…………。

やすな「……どうですか?」

古畑「んー、何も反応しませんね」

やすな「じゃ、私はもういいですね」

古畑「はい、ご協力ありがとうございます。
   それでは、ソーニャさんも」

ソーニャ「ちょっと待て、私は――」

古畑「失礼」サッ

ピー! ピー!

ソーニャ「……(……終わった)」

古畑「んー、反応してますね。
   お手数ですが、そのポケットの中のものを取り出して貰えませんか」

ソーニャ「ああ……」スッ

古畑「これは……ナイフ?」

やすな「ほら、何しろソーニャちゃんは殺し屋ですから」

古畑「んー、あんまりこういうものを持ち歩くのは
   褒められたものではないんですが、刃渡りが短いので今は不問としましょう。
   えー、続けます」

ピー! ピー!

ソーニャ「……」ガサゴソ

古畑「んー、またナイフだ……
   あのすいません、まだナイフ持っていたら全部取り出してください」

ソーニャ「……分かった」ガサゴソ

古畑「んー、随分ナイフを持ち歩いてますねー……」

やすな「何しろ殺し屋ですから」

古畑「これで全部ですか?」

ソーニャ「ああ……。(銃を取り出すわけにはいかないし……
     でもこのままじゃ見つかるし……どうすれば……)」

古畑「では、また失礼します」

ソーニャ「……(ダメだ。打つ手がない……終わった……)」

…………。

古畑「んー……」

やすな「反応ないみたいですね、古畑さん」

ソーニャ「え……」

古畑「うーん、確かに反応がありません」

ソーニャ「(え……何でだ? 銃はこのポケットに入れてたはずなのに……)」ガサゴソ

やすな「じゃあもういいですよね。私たちいい加減に帰りたいんですけど」

ソーニャ「(……ない。あれ、銃がないぞ……どこに行った?)」ガサゴソ

古畑「うーん、おかしいなあ……他のところは全部探したんですが」

やすな「やっぱり、犯人はもう逃げちゃったんじゃないんですか?」

古畑「いやー、しかしこの階から出て行けたはずがない」

やすな「それ、私も考えてみたんですけど、
    やっぱり犯人は非常口から出て行ったんじゃないかなー」

古畑「しかしですね、ドアの外には荷物が……」

やすな「きっと犯人が出て行った時には塞がっていなかったんですよ」

古畑「店員さんの話では、結構前から荷物が置きっぱなしだったみたいですが」

やすな「だったら、犯人は荷物をどかして非常口から入ってきて、
    その後に非常口から出て行ってまた荷物を積みなおしたんじゃないかなー」

古畑「……」

やすな「それで説明はついてますよね?」

古畑「…………んー、はい」

やすな「じゃあ、私たちはもう帰っていいですよね。
    さ、行こっか。ソーニャちゃん」グイッ

ソーニャ「あ、ああ……」

古畑「すいません、最後に一つ確認しておきたいことが」

やすな「……まだ、何か?
    さっきこれで最後だって言ってましたよね?」

ソーニャ「……」

古畑「そんな怖い顔しないでください。
   一応、連絡先だけ教えて頂きたいなと思いまして。
   ご自宅か、携帯電話の番号、よろしいですか?」

ソーニャ「……ああ、ちょっと待て、確認する」ガサゴソ

やすな「……」

ソーニャ「私の携帯の番号はXXX-XXXX-XXXXだ」

古畑「……メモしました。ありがとうございます。
   あ、折部さんも教えて頂けますか?」

けすな「携帯……携帯……」ガサゴソ

ソーニャ「……?」

やすな「あれ、どこ行ったかな……
    ソーニャちゃん、悪いんだけど私の番号、
    古畑さんに教えてあげて」

ソーニャ「ああ……分かった。
     えーと、やすなの番号はXXX-XXXX-XXXX……」

古畑「…………。
   はい、ありがとうございました」

やすな「それじゃあ、私たちはこれで失礼しますね。
    さようなら、古畑さん」

古畑「……はい、ご協力ありがとうございました。
   それでは、また」

やすな「……行こ、ソーニャちゃん」

ソーニャ「あ、ああ……」

――バタン。

古畑「…………」

~カラオケ店・エレベーター内~

ソーニャ「……なあ、やすな。私の銃、どうしたんだ?」

やすな「え、何のこと?」

ソーニャ「とぼけるな! さっき私に抱きついた時にすりとったろ!」ぐぐぐ……

やすな「だ、大丈夫、大丈夫! 後で取りに行けると思うから!」ジタバタ

ソーニャ「本当か……?」

やすな「……タブン」

ソーニャ「……」ぐぐぐぐぐぐぐ……

やすな「痛い! 外れちゃう外れちゃう!」

~カラオケ店・503号室~

古畑「…………」

――コンコン

古畑「どうぞ――」

ガチャリ――

西園寺「失礼します。もう一度この階を調べてみましたが、
    やはり拳銃は見つかりませんでした」

古畑「うーん、そう」

西園寺「また、監視カメラの映像も確認し直してみましたが、
    やはり5階で人の出入りは無かったみたいです」

古畑「そう」

西園寺「ただ、人の出入りではないんですが、
    非常に気になる映像が映っていました」

古畑「何?」

西園寺「はい、古畑さんが管理室にカメラの映像を確認しに行っていた間、
    折部やすながエレベーターホールを何度も横切っているんです。
    個室と女子トイレの間を往復していたみたいなんですが、
    その回数が異常に多くて」

古畑「どのくらい?」

西園寺「百往復以上です」

古畑「ひゃく……え、何往復だって?」

西園寺「百往復以上です」

古畑「百往復以上!? 何でそんなに」

西園寺「そこなんです。彼女は一体なぜそんなことをしていたのでしょう」

古畑「何か手に持っていなかった? 例えば、拳銃を持ち運んだりとかは」

西園寺「いいえ、手ぶらでした。
    ただ、凶器の拳銃は恐らく小型のものですから、
    服の下に隠して持ち運ぶことはできたと思いますが――」

古畑「うーん……」

西園寺「もしかしたら、拳銃をトイレの排水溝から流したのかと思って
    調べてみたんですが、それらしい痕跡はありませんでした」

古畑「窓はー? トイレに窓ついてなかった?」

西園寺「ありました。ただ、そこから持ち出すのも無理です」

古畑「何で?」

西園寺「女子トイレの窓の外はビルの裏側に繋がってるんですが、
    そこは他のビルにも囲まれていて、外には繋がっていないんです。
    ちょうど、中庭みたいな形になっていると言えばいいでしょうか」

古畑「そこにも拳銃は無かったの?」

西園寺「はい。ありませんでした。
    女子トイレの窓から拳銃を投げ捨てたのなら、
    ビルに囲まれたスペースの中で見つかるはずなんです。
    しかし、見つからなかった以上は
    ここに捨てられたわけでもないということになります」

古畑「他のビルの窓の中に投げ捨てられたってことは」

西園寺「他のビルは、その空間に面した壁に窓がついていませんでした」

古畑「うーん……」

西園寺「やはり犯人は、非常口の外からやってきて、
    荷物をどかして非常口から侵入した後、
    また非常口から出て行ったのでしょうか……」

古畑「いやー、違うと思うんだけどなあ」

今泉「あ、何の話してるんですか?」

古畑「何でもないよ」

今泉「そんな、仲間外れにしないでくださいよ。
   どしたのワサワサ? どしたのワサワサ?」

古畑「うるさいドーン!」バチンッ!

今泉「痛っ!! そんな強く叩かなくてもいいじゃないですか!」

西園寺「今泉さん。504号室のお客さんに話を聞いていたのでは?」

今泉「そうなんだけどさ、なんか変な娘なんだよ。
   自分のことを忍者って言っててさ……」

古畑「うーん、ちょっと話を聞いてみようか」

~カラオケ店・504号室~

あぎり「呉織あぎりですー。
    あ、これ、名刺代わりの手裏剣です。どうぞー」

古畑「えー、頂戴いたします。
   その、呉織さんは忍者でいらっしゃるとか?」

あぎり「はいー。あ、これ忍法の遁術セットですー。
    お安くしときますよー」

古畑「遁術?」

あぎり「はい、右から火遁の術、水遁の術、土遁の術ですー」

今泉「ね、古畑さん。何だか変な娘でしょ?」

古畑「うーん……今日は殺し屋に会ったり、忍者に会ったり、
   変な日だなあ」

あぎり「あ、殺し屋ってもしかしてソーニャのことですかー?」

古畑「あれ、お知り合いなんですか?」

あぎり「ええー。同じ学校に通ってますよー」

古畑「ひょっとして、折部やすなさんもご存じで?」

あぎり「はいー、知ってますよー」

古畑「あのー……ちょっとお聞きしたいことがあるんですが……」

あぎり「…………はい、そうですけどー?」

古畑「なるほど、ありがとうございます。
   ちょっと失礼……」

~スポットライト~

古畑「えー、ようやく拳銃がどこに消えたのか分かりました。
   これでこの事件も無事、解決しそうです。
   皆さんは、折部やすながどうやって
   拳銃を消してしまったのか分かりましたか?
   ヒントは……、忍法ぉ~! んーふふふ。
   古畑任三郎でした」

とりあえず問題部分は終了。
途中でさるくらった時はどうしようかと思ったけど、すぐに再会できて良かった。
>>159で、けすなってなってるのは単なるミスで、あぎりさんの変装だったからじゃないぞ。
また、しばらくトリック当ての時間をとる。
推理をどうぞ。

>>188
時間どれくらい?

>>191
前回の小衣ちゃんが一時間くらいだったから、とりあえず二時までとろうかと思うけど、
正解が出たら前倒しで解答編に入る。

ホースの片方を何かで塞いで水を入れる

限界まで入ったら零さないように残った方にも栓をする

10M の棒完成

ゴミ袋に証拠品を入れて棒にくくりつける

窓から屋上に投げ飛ばす

と考えたがヒント完全無視だな…

やすなの携帯がなくなってるのもヒントだよな
拳銃はデリンジャー?

>>200
問題文中で言及されていないけど、【屋上にも凶器は存在しない】

>>201
そう。デリンジャー。

ヘリウムは冒頭で使い切ってるし、
やすなはヘリウムを入れられるような容器も持ち運んでないんだぜ。

>>203
デリンジャーってよくある2発のやつ?
それともリンカーン大統領暗殺に使われ単発のやつ?

>>244
単発。なぜなら2連式より軽いから。

>>1
アクアラングってボンベ含む?

ああ、くそ。解かれた!
解答編入る。

>>251
含む。

~夜・山の中~

やすな「うわあ……暗いよー」

ソーニャ「そんなにくっつくな! 歩きにくいだろ」

やすな「そう言いながらソーニャちゃんだって、
    私の服をつかみっぱなしのくせにー。
    やーい、怖がりー」

ソーニャ「うるさい! お前が迷わないようにしてやってるんだ!
     ほら、こっちだ。行くぞ」

やすな「うう、暗くて怖いー」

ソーニャ「何だよ、お前だって怖がってるじゃないか。
     ……ついたぞ、この辺りだ。手分けして探すぞ」

やすな「あ。ソーニャちゃん、電話かけてみればすぐに見つかるかも」

ソーニャ「……それもそうだな。それじゃ」ピッ

キルミーベイベー♪ どしたのワサワサ♪

ソーニャ「……あそこか。
     ふー、一時はどうなることかと思った」

ガサゴソ……

ソーニャ「ようやくこの銃も手元に戻ったな」

カッ――――

やすな「うおっ、眩し!!」

ソーニャ「なんだこの光!? サーチライト!?」

古畑「えー、お待ちしておりましたー」

ソーニャ「この声、さっきの刑事か!? 何でここに……」

古畑「んーふっふっふ。
   いやー、危ないところでした。あのまま拳銃が見つからなかったら、
   完全犯罪になってしまうところでした」

ソーニャ「くそ、近づくな!
     こっちには銃があるんだ。撃つぞ」チャキッ

古畑「あーあー、行けませんそんな。
   未成年者が喫煙なんかしては」

ソーニャ「……何言ってるんだ?」

古畑「それ、拳銃じゃなくて、銃の形したライターなんです。
   そういうライターを売っている店があるので、買ってきてすり替えておきました。
   そこにあった拳銃は――あ、見えますか? はい、これですー」ヒラヒラ

ソーニャ「……」カチッ

やすな「あ、火が……」

古畑「んーふふふ。残念でした」

やすな「何でここが……」

古畑「えー、それにお答えする前に私からも質問を。
   お二人は何でここに拳銃があると分かったんですか?
   私の答えは、それと全く同じです」

やすな「……」

古畑「あのカラオケボックスは隅々まで調べましたが、
   結局拳銃は見つかりませんでした。
   ただですね、女子トイレには窓がありました」

ソーニャ「……」

古畑「窓の外は付近のビルで囲まれた空間になっていて、
   そこからも拳銃は発見できなかったんですけれども……
   その空間は空に繋がっていました。
   ふふふ……拳銃は、そこから空へ飛んで行っちゃったんですねー」

やすな「……うう」

古畑「引っかかったのはですね、折部さん。
   あなたが個室と女子トイレを百回以上も往復もしていたことです。
   まあどう考えても異常ですからねー。
   一体なんでそんなことをする必要があったのか……
   それを考えたら謎が解けましたー」

やすな「……」

古畑「お二人の隣の部屋、504号室には呉織あぎりさんが……
   えー、お二人もご存知ですよね? 彼女がいました。
   そして、彼女は水遁の術と称して潜水用のアクアラングを持っていました。
   アクアラング……酸素ボンベです」

ソーニャ「……」

古畑「ただ、酸素ボンベの中身って、100%酸素というわけではないんです。
   そんな高濃度の酸素を吸ったら死んじゃいますからね。
   酸素自体の濃度は20%程度で……じゃあ他は何なのかと言うと、
   ボンベのタイプにもよるんですが、彼女の持っていたボンベは
   残りの80%がヘリウムでした。
   ヘリウム、ヘリウムと言えば声が高くなるパーティグッズに使われたり、
   んーふふふ、風船を浮かせたりします」

やすな「……」

古畑「風船用のヘリウムは純度が100%なので吸い込むと酸欠になりますが、
   酸素が20%混じった混合ヘリウムなら吸い込んでも大丈夫です。
   で、この混合ヘリウム、風船に入れると浮くんです。
   えー、細かい計算は……ああ、ちょっと待ってください、メモしてきたんです」

ガサゴソ……

古畑「はい、1モル、つまり22.4リットルあたりの重さが空気の場合は約29グラム。
   酸素20%ヘリウム80%の混合気体は9.6グラム。
   空気の重さから混合ヘリウムの重さを引いた約10グラムの浮力が発生します。
   1リットル辺りに直すと約0.9グラムの浮力ですね。
   一方、人間の肺活量は平均して3リットルくらいで……んーふふふ。
   いや、面白いことを考えたものです」

やすな「……」

古畑「折部さん、あなたは肺の中に混合ヘリウムを入れて運搬することにより、
   女子トイレで風船を膨らましたわけです。
   実際に風船として使ったのは、掃除用具入れにあったゴミ袋ですか?
   一回辺り、3グラム程度の浮力を発生するヘリウムを運搬して……
   んーふふふ、百回以上も。いや、ご苦労様でした」

やすな「……くそう、くそう」

古畑「凶器は小型のデリンジャー拳銃……
   しかもこれ、素材のせいか随分軽い。
   200グラムくらいしかないんじゃないですか?」

ソーニャ「……」

古畑「そのまま消えちゃえば証拠もなくなっていたかも知れませんが……
   この銃を回収しようとしたのは失敗でしたね。
   連絡先を確認したとき、折部さんが携帯を持っていなかったのを思い出しまして……
   それで気づいたんです。
   携帯も一緒に飛ばして、GPS機能を使って回収するつもりなんだと。
   私も先ほど聞いた折部さんの電話番号から、
   携帯の位置を特定してここで待っていたわけでして」

ソーニャ「私があの銃を手放したくないって言ったせいで……」

古畑「えー、以上です。
   こんな山の中にいつまでいるのもなんですし、
   こちらへどうぞ」

~パトカー内~

古畑「ただ、私にも一つだけ分からないことがありまして……
   結局、なんで銃なんか持っていたんです?」

やすな「いやー……それは……」

ソーニャ「殺し屋だからだ」

古畑「…………ああ、それはさきほど聞きました」

ソーニャ「殺し屋だから」

古畑「…………はあ」

ソーニャ「殺し屋だから」

古畑「……まあ、それについてはゆっくり話をお聴きします。
   君、パトカー出して」

(おしまい)

街中に落ちた時の事は考えなかったのか

>>286
まあ、どうにかして現場から凶器を持ち出さないとアウトだったから一か八か空にリリースしたと思って貰えれば……

以上、お疲れ様。
よくこんなマジキチじみたトリック解けたな。

>>305
推理物のトリックなんてたいていマジキチじみてますから

てかトリックってどうやって考えるの?
できれば教えて

今泉「いつもおしゃべりな人が急に黙ったら、
   自分が何かマズイことをしたんじゃないかと考えてみてください。
   口に出さなくても心の中では、とても怒っているのかもしれません。
   ひょっとしたら……殺してやりたいとか思われているのかも」

>>311
古今東西のトリックを研究して分解して組み合わせる。
あと、見聞きした情報をトリックに応用できないか考えてみる。
今回はフロッグボイスと風船に入っているのが両方ともヘリウムってところから、色々調べてこのトリックにした。

~鑑識課~

今泉「ちくしょう! いつもいつも、古畑のやつ、俺をいじめやがって!」

桑原「今日はいつになく荒れてるねー」

今泉「だってひどいんだよ! 今日も人の額をぺチぺチぺチぺチとさ!
   まったく、俺をなんだと思ってるんだ!」

桑原「それにしても今日の事件は変わった事件だったみたいだね。
   犯人、女子高生で現役の殺し屋だって?」

今泉「うん、そうなんだよ。信じられないよね」

桑原「いやー、殺し屋って本当にいるんだねえ」

今泉「俺もビックリしたよ。
   裏には巨大な組織があるかもしれないって話になってた」

桑原「うわあ……怖いなあ……」

今泉「そう言えば、古畑が殺し屋への連絡方法を聞き出してたな。
   確かメモを貰ったような……」ガサゴソ

桑原「ちょっと、オタクそんな物騒なもの持ち歩いてるの?
   落としたりしたらどうするの」

今泉「大丈夫大丈夫。
   あったこれだ。この番号に電話すればいいんだな」

桑原「って、何かけようとしてるの!?」

今泉「いや、依頼しちゃおうかと思ってさ。
   これで古畑の奴を……」

桑原「ちょっとちょっとやめなさいよ今泉さん!!」

今泉「えい」ピッ

桑原「ああ!?」

今泉「……あ、もしもし。
   はい、依頼をお願いしたいんですけど……」

桑原「ちょ、ちょっと!」

今泉「相手出たよ。何だか変に甲高い声してる。
   きっと声変えてるんだよ」(ヒソヒソ

桑原「うわー、何だか本格的だねえ」(ヒソヒソ

今泉「あのねえ。横暴な上司に悩まされてるんだけど、何とかして貰えませんかねえ」

桑原「…………」

今泉「うーん、まあ、命は勘弁してやってもいいんだけど、
   ちょっと脅かすくらいしてやりたいんですよ」

桑原「殺し屋に何頼んでるのアンタ」

今泉「はい、はい、じゃあ報酬はそれで……
   そうです。古畑って奴です……
   え、なんであんた古畑さんの名前知ってるの?」

桑原「……?」

今泉「ええっ! いや、違うんです! これはその、桑原君がやれって!!
   はい、はい……はい、お疲れ様でした!!」

桑原「ちょっと、どうしたのよ今泉さん!」

今泉「……電話の相手、古畑さんだった」

桑原「…………」

今泉「…………」

桑原「…………」

今泉「…………うわあああああん!!」ダキッ

桑原「…………」

(おしまい)

以上。本当にお疲れ様でした。

本当に今年一番だと思う
前に超電磁砲でやってたよね
その時より面白くなってるよ

>>340
あ、ミルキィと小衣ちゃんは俺だけど超電磁砲は俺じゃない。

超電磁砲は倒叙ものじゃないって点だけ気になるけど、
御坂の部屋にあったサイダーの缶が犯人特定の決め手になるロジックや、
他作品の主役級に犯人役をやらせて後味が悪くならないって点は上手くできてると思う。

小衣ちゃんのスレタイ教えてくれ

>>350
古畑「IQ1300……?」

>>273にちょっとミスがあった。
「空気の重さから混合ヘリウムの重さを引いた約10グラムの浮力が発生します。」
正しくは
「空気の重さから混合ヘリウムの重さを引いた約20グラムの浮力が発生します。」だった。

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