京子「リセット!」(399)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

京子「うえええん」

「どうして泣いてるの?」

京子「う、うう、みんなが、わたしにいじわるするの……」

「そっか……」

京子「うう、ひっく……」

「ともだちとか、いないの?」

京子「……うん」グスン

「ともだち、ほしい?」

京子「……」コクン

「じゃあ」

京子「……?」

「じゃあ、私が」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~娯楽部~

京子「結衣~、手に何か書いてあるよ?」

結衣「ん?ああ、今日帰りに買おうと思ってた物なんだ」

結衣「こうして書いておけば、忘れないだろ?」

京子「なるほど!」

ちなつ「流石です!結衣先輩!」

あかり「結衣ちゃんはしっかりものだよねぇ」

京子「よし!わたしも結衣を見習って、忘れないように手に書いておこう!」カキカキ

結衣「なんて書いたの?」

京子「あかり」

あかり「んん!?」

ちなつ「あれ、あかりちゃん、居たんだ」

あかり「最初から居たよ!?」

綾乃「としのーきょーこー!」

千歳「お邪魔しますなあ」

京子「ありゃ、綾乃に千歳じゃん、どしたの?」

綾乃「と、歳納京子、またプリント忘れてるでしょ!」

京子「あ、ごめんごめん!明日出すから許してよぉ」

綾乃「だ、だめよ!これは今日まとめる必要があるプリントだから、すぐに出して!」

京子「ええー、わたし、プリント家に忘れてきちゃったんだけど……」

綾乃「し、仕方ないわね、予備を渡してあげるから、生徒会室まで来て頂戴!」

京子「ううう……じゃ、みんな、ちょっと行ってくるよ」

結衣「私も行こうか?」

京子「いいっていいって、子供じゃないんだし」

結衣「……いや、子供だろ、ほらちょっとこっちおいで」

京子「え?」テコテコ

結衣「……」クイッ

京子「あ」

結衣「ん、これでちゃんとリボン真っ直ぐになったね」

京子「あ、ありがと、結衣///」

結衣「何時もの事だよ」ニコ

綾乃「……」

ちなつ「……」

あかり「……」

~生徒会室~


京子「おっじゃまっしまーす!」ドーン

綾乃「も、もう乱暴に開けないでっ」

綾乃「ほら、歳納京子、さっさとプリントを済ましてしまいなさい!」ピラッ

京子「はーい、椅子借りるね?」ガタゴト

千歳「あはは、歳納さん、ゆっくりしていってな?」

京子「うー、このプリント、難易度高い……」

千歳「綾乃ちゃん、うちはちょっと外に出てるさかい……」ボソ

綾乃「え、ええっ、歳納京子と二人っきりにするつもり!?」ボソボソ

千歳「今日こそ、頑張ってな?」ボソ

綾乃「う、うう///」

千歳「ふふふ……」

京子「んーーー……できたー!」

綾乃「お、お疲れ様、歳納京子」

京子「ふー、じゃ、私は娯楽部に戻るよ」ガタッ

綾乃「ま、待ちなさい!」

京子「へ?」

綾乃「ちょ、ちょっと、休憩していきなさいよ、ほ、ほら、プリンもあるし」

京子「おお!くれるの!?」

綾乃「ええ、いいわよ、今日はプリン余ってるしね」

京子「あやの大好き!」

綾乃「///」

京子「うめえ♪」モグモグ

綾乃「そ、そう、それは良かったわ」

京子「しかし、綾乃も大変だよね、プリント忘れた子の為に部室まで一々出張するなんて」モグモグ

綾乃「べ、別にプリント忘れた子全員の所に行ってる訳じゃないわよ……」

京子「ん?」

綾乃「こんな事やってるの、歳納京子に対してだけ、よ///」

京子「あー……確かに……私、頻繁に忘れるからなあ……」

綾乃「……そういう、意味じゃなくて」

京子「え、じゃ、なんで?」

綾乃「……と、歳納京子に会いたいから、その、プリントを口実に、してる、だけよ……」ボソ

京子「へ?」

綾乃「///」

京子「綾乃、それって、あの、どういう意味、かな」

綾乃「だ、だから!」ドンッ

京子「……!」ドキッ

綾乃「と、歳納京子……」スッ

京子(う、うあ、綾乃の顔、近い……)

綾乃「わ、わたしは……」

京子「……」ドキドキ

綾乃「歳納京子のことが好きで……会いたいから、プリントを取りに行ってるのよっ///」

京子「……」

京子「え、えっ、ええっ、えええっ!?」

綾乃「///」カアーッ

京子「あ、え、す、好きって、あの、え///」

綾乃「あのっ……歳納京子!」

京子「は、はいっ///」

綾乃「だ、だから、こ、恋人として、つ、つ、つ、つきあって……」

綾乃「くださいいいっ///」ペコー

京子「あ、あやの……」

綾乃「///」ペコー

京子(綾乃、凄く、真剣だ、ど、どうしよう……)

京子(わ、わたし、綾乃の事、嫌いじゃないし、寧ろ好きだし、けど)

京子(け、けど……)

京子「ご、ごめん、綾乃」

綾乃「……!」

京子「い、一日だけ、考えさせてくれないかな」

綾乃「歳納京子……」

京子「私もいい加減な気持ちで返答とかしたくないし……明日の朝にはちゃんと返事するから」

京子「お、お願い!」

綾乃「ええ、も、勿論いいわよっ!」

京子「ありがと、綾乃……」ホッ

綾乃「……私のほうこそ、ありがと」

京子「え?」

綾乃「ちゃんと私の事を真剣に考えてくれて、嬉しかったから……」

京子「綾乃……」

綾乃「わ、わたし、どんな返事されても、それを受け入れるわ」

綾乃「だから、歳納京子、変な気遣いとかは、あの、不要だから……」

京子「うん……」

京子(綾乃、本当に私の事を想ってくれてるんだな……ありがとう……)

京子(私も、ちゃんとその誠意に応えないと……)

~帰路~

京子「……」

結衣「……京子、どうしたの、さっきから何か沈んでるけど」

京子「え?」

結衣「綾乃に酷いこと言われた?」

京子「そ、そういう訳じゃないけど……」

結衣「京子、みずくさいよ?悩んでることがあったらちゃんと言ってよ」

京子「う、うん……」

京子(結衣、小さい頃から私の王子様だった、結衣)

京子(正直に言うと、凄く惹かれてる……)

京子(けど、結衣は私の事を、どう思ってるんだろ)

京子「あのさ、結衣」

結衣「ん?」

京子「じ、実は、私、綾乃に告白されたんだ」

結衣「ふーん……」

京子「……」

結衣「……え」

京子「好きです、恋人になってくださいって」

結衣「……」

京子「けど、すぐに返事は出来なくて、明日の朝まで待ってもらうようにお願いした」

結衣「……そ、そっか」

京子「……結衣、わたし、どうしよう」

結衣「ど、どうしようって?」

京子「私が決めなくちゃならない問題だって言うのは判る、けど、あの」チラッ

結衣「……」

京子「結衣の意見も、聞きたいかなって……」

結衣「私の、意見……」

京子「……」ドキドキ

結衣「……いいんじゃないかな」

京子「……え」

結衣「綾乃、良い子だしさ、京子と、きっとお似合いだよ」

京子「……ゆ、結衣」

結衣「私は、応援するよ、京子」

京子「結衣は、結衣はそれでいいの?」

結衣「うん、私にとってもいい話だしね、ほら、京子のお守りをしなくてよくなるし」

京子「……!」

結衣「……」

京子「そ、そっか……」

結衣「うん……」

京子「……うん、わかった、参考になったよ、ありがと、結衣」

結衣「……うん」

京子「……」

結衣「……」

京子「……じゃ、私はこっちだから」

結衣「……京子、あの、私は」

京子「ばいばい、結衣」タッ

結衣「あ……」

京子(わたし、馬鹿だな、何勘違いしてたんだろ、恥ずかしい)

京子(けど、これで私の気持ちも決った、ありがとう、結衣……)

~翌朝~

京子「綾乃!」

綾乃「と、歳納京子!?」

京子「あはは、そんなに驚かなくてもいいじゃん、綾乃」

綾乃「だ、だって、貴女の通学路はここから随分離れてるでしょ?」

京子「うん、綾乃に会いたくて、早起きしてこっちまで来たんだ」

綾乃「……え」

京子「……綾乃!」ガシッ

綾乃「は、はひっ!」

京子「き、昨日の告白の返事だけど……」

綾乃「え、ええっ……い、今、聞かせてくれるの?」

京子「うん、早い方がいいでしょ?」

綾乃「ま、待って!まだ心の準備がっ……!」

京子「私も、私も綾乃の事が」

綾乃「あっ、ま、待ってってっ///」

京子「好き!」

綾乃「……!」ドキューン

京子「大好き!」

綾乃「……!!」ドキュンドキューン

京子「愛してる!」

綾乃「……!!!」ドゴーンッ

京子「だ、だから、あの、恋人になってくださいっ///」

綾乃「あっ、あっあっあっ///」

京子「だ、だめ、かな……」

綾乃「だ、駄目なわけ、ないじゃないっ……」

京子「あやの……?」

綾乃「あ、ありがとう、歳納京子……」ウルッ

綾乃「私を、私を選んでくれて、ありがとう……」ヒック

京子「あ、綾乃、泣いてるの?」

綾乃「な、ないてなんて、ないわよぉ」グスン

京子「あやの……」キュン

綾乃「う、ううっ……」ヒック

京子「ごめんね、綾乃、泣かないで……」

綾乃「と、としのうきょうこ、としのうきょうこぉっ」ギュッ

京子「あやの……」ナデナデ

京子(綾乃、泣くくらい私のことが好きだったんだ……)

京子(凄く、綾乃の事が愛おしい)

京子(綾乃、私の事を好きになってくれて、ありがとう……)

~娯楽部~

京子「という訳で、綾乃と付き合うことになりました!」

ちなつ「お、おめでとうございます!京子先輩!」

あかり「京子ちゃん、幸せそうで良かったよぉ」ニコ

結衣「……おめでとう、京子」

京子「えへへ、照れますな///」

あかり「……けど、杉浦先輩、生徒会で忙しいだろうから、京子ちゃん寂しく無いかな?」

京子「その辺は平気だよ!私が生徒会の手伝いに行くから!」

結衣「……そっか」

京子「という訳で、今からさっそく生徒会の手伝いに行こうと思います!」

京子「結衣、あとは宜しくね!」

結衣「……うん、任せてよ、京子」

あかり「行ってらっしゃい、京子ちゃん」

~生徒会室~

京子「綾乃~、書類整理終わったよ?」

綾乃「は、早いわね」

京子「だって、早く仕事終わらせれば、綾乃と遊ぶ時間が増えるじゃないですかっ♪」ダキッ

綾乃「も、もう、歳納京子、抱きついてこないで、みんな見てるじゃない///」テレテレ

千歳「……」ドロリ

向日葵「い、池田先輩から粘液状の鼻血がっ」

千歳「け、けど、ほんま二人が結ばれて良かったわ……」ツメツメ

綾乃「千歳……」

千歳「歳納さん」

京子「ん?」

千歳「綾乃ちゃんを、幸せにしてあげてな?」

京子「……うん、私、大好きな綾乃をいっぱいいっぱい、幸せにしてあげる!」ニコ

綾乃「も、もうっ///」

千歳「……うん」ニコ

~数週間後~

~娯楽部~

京子「それでさ、綾乃ったらラムレーズンを生徒会の冷蔵庫いっぱいに用意してくれてさ」

ちなつ「す、杉浦先輩、尽くしすぎです……」

あかり「あはは、京子ちゃん、良かったねぇ」

結衣「……」

京子「結衣、聞いてる?」

結衣「……え、あ、うん」

京子「うーん、結衣、何か顔色悪くない?」

結衣「……そんな事無いよ」

京子「ちなつちゃん、結衣どうしちゃったの?」

ちなつ「わ、判りません、最近ずっと、調子が悪いみたいで……」

あかり「……」

結衣「いや、単にゲームのやりすぎだよ、夜遅くまで頑張っちゃって」

京子「もー、結衣、一人だと自堕落になっちゃうのかなあ」

京子「よし、今日は久しぶりに結衣の家に泊まりに行って生活環境を改善してあげよう!」

結衣「……いや、いいよ」

京子「遠慮しなくていいって、結衣~」

結衣「……いいって言ってるだろ」

京子「じゃ、あかりとちなつちゃんも今日はお泊りの準備して、みんなで結衣の家に集まろうっか?」

ちなつ「あ、いいですね、結衣先輩の家にお泊り!」

あかり「うわあ、お泊り会、久しぶりだねえ」

結衣「いらないって言ってるだろ!」ガンッ

京子「……!」ビクッ

ちなつ「……!」ビクッ

あかり「……」

京子「ゆ、ゆい、どうしちゃったの……?」

結衣「……あ、ごめん……」

ちなつ「……」

あかり「……」

京子「……」

結衣「あの、さ、ちなつちゃんと、あかりは、泊まりに来てもいいよ」

ちなつ「え……」

京子「……え」

あかり「……結衣ちゃん、京子ちゃんは?」

結衣「……京子は、駄目」

京子「な、なんで、結衣、何でそんないじわる、言うの?」ウルッ

結衣「……だって、お前は綾乃と恋人同士なんだろ」

京子「う、うん、けど」

結衣「なら、他の女の子の家に泊まったりなんかしちゃ、駄目だ」

京子「え、え、ど、どういう意味?」

結衣「綾乃が私と京子の関係を誤解したら可愛そうだろ、そういうの、よく無いと私は思う」

京子「結衣……」

ちなつ「結衣先輩……」

あかり「……」

京子「あ、じゃあ、あの、綾乃も呼ぼうよ」

結衣「……!」

京子「そ、そうすればさ、綾乃も別に気にしないと思うし、ね、そうしよう」

結衣「……やめて」

京子「今から携帯で綾乃に確認を」ピッ

結衣「……」ガッ

京子「ゆ、結衣、何するの!携帯返して!」

結衣「……」バキッ

京子「結衣!?」



ガシッバキッ


結衣「はぁ……はぁ……」

京子「ゆ、結衣、酷いよ、私の携帯を壊すなんて……」プルプル

結衣「……京子のほうが、酷いよ」

京子「え……」

結衣「な、なんで、私に構うの?」

京子「ゆ、結衣?」

結衣「わたし、わたし我慢しようとしてるのに、どうして、どうして京子の方から構って来るんだよ!」ウルッ

京子「結衣、な、泣いてるの?」

結衣「わ、私の気持ちも知らないで!」グスン

京子「結衣、あの、わたし、何か悪いこと……」ビクビク

結衣「京子の事なんて、大嫌いだ!」

京子「……!」

京子「う、あ……」ウルッ

結衣「……!」ビクッ

京子「ひ、ひどいよ、ゆい、ひどいよぉ」グスン

結衣「あ、ああ……」ジリッ

京子「ゆいに、そんなこと言われるなんて……ううっ」ヒック

結衣「きょ、きょうこ、あの、ごめ……」

京子「わ、わたしだって、わたしだって」グスン

結衣「やめ、やめて……言わないで……」

京子「わたしだって、ゆいのこと!」ヒックヒック




京子「だいっきらい!」



結衣「……!」

結衣「……は、はは」

結衣「あはははははははははははははははは」

ちなつ「ゆ、結衣先輩……」

あかり「……」

結衣「そう、そうだよね、京子は私のことが嫌いなんだよね」

結衣「だから私より綾乃の事を選んだんだろ」

京子「な、なに言ってるの、結衣」グスン

結衣「し、知ってたくせに」

京子「え……」

結衣「私が京子の事好きだって、知ってたくせに!」

京子「……!」

結衣「もう、いい、もういいよ、娯楽部も、京子も、全部、全部どうでもいい!」タッ

ちなつ「結衣先輩!」

あかり「結衣ちゃん!」

京子「……ゆ、結衣が、私の事を……?」

あかり「京子ちゃん……」

ちなつ「わ、わたし、結衣先輩を探しに行って来ます!」タッ

京子「そ、そんな、嘘だよ……」

あかり「……」

京子「私、結衣に聞いたもん、そしたら応援してくれるって……」

あかり「……京子ちゃん」

京子「あ、あかり……」

あかり「……京子ちゃんは、どうしたい?」

京子「わ、私は、私は……」

あかり「あかりは、あかりは京子ちゃんの味方だから」

あかり「だから、聞かせて、京子ちゃんが望むことを」

京子「……わ、わたし、わたし」

京子「結衣と、仲直りしたいよ、このままなんて、嫌だよぉ……」ウルッ

あかり「そっか……」

京子「ううっ、ひっく……」グスン

あかり「じゃあ」

京子「……?」

あかり「じゃあ、私が」

あかり「結衣ちゃんを探すの手伝ってあげる」ニコ

~屋上~

京子「ゆ、結衣!」

結衣「……京子、良くここが分かったね」

京子「あ、あかりが教えてくれたんだ、きっとここにいるだろうって」

結衣「……そっか」

京子「あ、あの、結衣、私謝らないといけないことが……」

結衣「……うん、聞くよ、京子」

京子「……ごめん、私、結衣の気持ちをちゃんと考えてなかった」

京子「自分の事しか、考えてなかった」

京子「結衣が私の事を好きで、ずっと我慢してくれてるなんて、思ってなかった……」

結衣「……」

京子「ご、ごめんなさい!」

結衣「……」クスッ

京子「ゆ、結衣?」

結衣「京子は、優しいなあ……」

京子「そ、そんな事無いよ、結衣の気持ちに気づいてあげられなかったんだし……」

結衣「いや、京子は優しいよ」

京子「結衣……」

結衣「好きでも無い私の為に、そんなに必死になってくれるんだもん」

京子「結衣、それは違うよ!」

結衣「……何が違うの?」

京子「わ、私は、あの、結衣のことが、好きだよ!」

結衣「それは、どういう意味で好きなの?」

京子「ど、どういう意味って……」

結衣「私はね、京子の事を、一人の女の子として好きなんだよ」

結衣「幼馴染とか、友達とか、そういうレベルじゃなくて」

結衣「抱きしめてえっちな事をしたいって思うほど、好きなんだよ」

京子「ゆ、結衣……」

結衣「京子が言う『好き』は、私のこの気持ちに応えてくれるの?」

京子「……!」

結衣「……」

京子「……ご、ごめん」

結衣「……」

京子「……」

結衣「……ふふふ」

京子「ゆ、結衣?」

結衣「……判ってたよ、京子」

結衣「綾乃と結ばれた京子は、絶対に私を選ばないだろうなって」

京子「結衣……ごめん」

結衣「……謝る必要は無いのに、やっぱり京子は優しいね」ニコ

結衣「けど、私は京子のその優しさに耐えられそうにないの」

京子「結衣?」

結衣「だから、耐え切れなくなった私が壊れちゃう前に」

結衣「壊れた私が、京子を傷つけてしまう前に」

京子「結衣、だ、だめ」

結衣「……終わらせちゃうね」

京子「……結衣、駄目だよ、柵の外に出たら」

京子「あぶないよ……」




結衣「京子……」フワッ




結衣「幸せになってね」ニコリ




グシャッ


京子「……あ」

京子「う、うそ、うそだ、こ、こんなの」

京子「結衣が……飛び降りるなんて」

京子「こんなの、夢に決まってる……そうに決って……」

京子「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

あんな笑顔を見せられて

幸せになんてなれるはずがない

あれはきっと

結衣の復讐だったんだ

結衣の気持ちを判ってあげられなかった

私への復讐

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

京子「うえええん」

「どうして泣いてるの?」

京子「う、うう、ゆいが、ゆいがしんじゃったの……」

「そっか……」

京子「うう、ひっく……」

「ゆいちゃんのこと、好き?」

京子「……うん」グスン

「また、ゆいちゃんと仲良くしたい?」

京子「……」コクン

「じゃあ」

京子「……?」

「じゃあ、私が」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~娯楽部~

京子「結衣~、手に何か書いてあるよ?」

結衣「ん?ああ、今日帰りに買おうと思ってた物なんだ」

結衣「こうして書いておけば、忘れないだろ?」

京子「なるほど!」

ちなつ「流石です!結衣先輩!」

あかり「結衣ちゃんはしっかりものだよねぇ」

京子「よし!わたしも結衣を見習って、忘れないように手に書いておこう!」カキカキ

結衣「なんて書いたの?」

京子「あかり」

あかり「んん!?」

ちなつ「あれ、赤座さん、居たんだ」

あかり「最初から居たよ!?」

千鶴「歳納!」ガラッ

千歳「……おじゃましますな」

京子「ありゃ、千鶴に千歳じゃん、どったの」

千鶴「お前、またプリント出し忘れてるだろ」アイアンクロー

京子「い、痛い!痛いって千鶴!」

千鶴「はーやーくーだーせー」グイグイ

結衣「ま、まあまあ、千鶴、落ち着いて……」

ちなつ「千鶴先輩も何時も大変ですよね」

千鶴「まあ、私は生徒会副会長だから、こういうのも仕事のうち」

京子「うう、顔に手形がついた……」

千鶴「ほら、プリント持ってきてやったから、早く書け」

京子「はーい」

あかり「あの、千歳先輩?」

千歳「……え、ああ、確か赤座さんやったかな……なんやろ」

あかり「いえ、何か元気がないかなって」

京子「ほへ、千歳、どうかしたの?」

千鶴「お前はプリントを早く終わらせろ」

京子「えー、けど千歳の事も心配じゃん」

千鶴「た、確かに姉さんの事は大切なことだけど……」

千歳「あはは、ごめんな、心配かけさせて……」

千歳「……あの、歳納さん?」

京子「ん?」

千歳「な、なんか、忘れてへん?」

京子「え、他にもプリントってあったっけ」

千歳「い、いや、プリントとちごて」

京子「他に忘れてること……?」

京子「うーん……わかんないや」

千歳「そ、そんな訳無いやろ、歳納さん」

京子「千歳?」

千歳「と、歳納さんやったら、覚えてるかもしれへんと思てたのに!」

京子「ち、千歳、どうしたの、落ち着いて」

千歳「な、なんでなん!?なんでみんな、あの子の事、忘れてしもうてるん!?」

結衣「あ、あの子って?」

千鶴「姉さん、落ち着いて……」

千歳「う、うち、うちも名前覚えてへんけど、確かに、確かにいたんや……」ウルッ

千歳「うちの、大切な友達で、何時も頑張り屋さんで、歳納さんのことが大好きな……」ヒック

京子「わ、私のことが?」

千歳「た、確かに、確かに居たはずなんや、なんで、なんで……居なかったことに……」グスン

あかり「千歳先輩……」

千歳「い、いやや、あの子の事、忘れるん、いやや!」グスン

千鶴「姉さん、落ち着いて、姉さん!」

京子「ち、千歳?」

千歳「いやや!!やめ、やめて!」ガクガク

結衣「ち、千鶴、保健室、保健室連れて行こう!」ガシッ

千鶴「ね、姉さん、大丈夫、私がついてるから、ね?」ガシッ

千歳「忘れとう、ない、うちの、うちの友達なんや、大切な、忘れ……と、ない……」

京子「千歳……」

あかり「……」

~数日後~

結衣「京子、本当にいくの?」

京子「うん……入院しちゃったとは言っても、私と千歳は友達だったし」

結衣「けど、心の病気だから、あんまり人に会わないほうがいいかもって千鶴が言ってたし……」

京子「それでも、それでも会いたいんだよ、結衣」

結衣「……ん、判った」

~病室~

千鶴「来てくれて、ありがとう、歳納、船見さん……」

千鶴「今なら、落ち着いてるから、面会しても問題ないと思う……」

京子「ありがとう、千鶴……」

京子(千鶴も、凄くやつれちゃってるな……)

結衣「ほら、京子、行こう?」

京子「う、うん」

千歳「ほんま、照れ屋さんなんやから……」ブツブツ

京子「ち、千歳?お見舞いに来たんだけど」

千歳「あ、歳納さんや、ほら、歳納さん来てくれはったよ」ブツブツ

結衣「ち、千歳、誰と話してるの?」

千歳「良かったなあ、ほんま、良かったなあ」ブツブツ

京子「千歳……」

千歳「ほら、照れてんと、ちゃんと歳納さんに挨拶してあげなあかんよ」ブツブツ

結衣「……千歳、やめてよ、そこには誰も居ないじゃないか」

京子「結衣!」

千歳「何言うてるん、船見さん」キョトン

結衣「……」ゾクッ

京子「ち、千歳」




千歳「あやのちゃん、ちゃんとここに居てるやん」



結衣「だ、誰だよ、あやのって……」ゾクゾクッ

京子「あや、の……」

千歳「ほら、あやのちゃん、照れてへんと、歳納さんの前に出てきてあげて」ブツブツ

京子「あ……や……の」

結衣「京子、駄目、千歳の言葉を聴いちゃ駄目、あ、頭がおかしくなる」

結衣「ほら、もう帰ろう、やっぱり来ちゃいけなかったんだよ!」グイッ

京子「う、うん……」

千歳「ふふふ、あやのちゃんは、ほんま、照れ屋さんなんやから……」ブツブツ


バタンッ


千鶴「と、歳納、船見さん、姉さんの様子はどうだった?」

結衣「う、うん、私たちの言葉、届かなかったみたい……ごめん……」

千鶴「そ、そうか……」

結衣「さ、京子、もう帰ろう」

京子「う、うん」

京子「アヤノ」ブツブツ

京子「あやの」ブツブツ

京子「……」

京子「綾乃……」




『ちゃんと私の事を真剣に考えてくれて、嬉しかったから……』

『わ、わたし、どんな返事されても、それを受け入れるわ』



京子「……!」

京子「あ、あ、あ、綾乃、綾乃!」

結衣「きょ、京子?」

京子「そ、そうだよ、私、どうして綾乃の事、忘れて……!」

結衣「京子、駄目だ、千歳の妄想に囚われちゃ駄目だ!」

京子「ゆ、結衣、けど、わたし、わたし綾乃の事覚えて……!」

結衣「頼む、京子、お願いだからおかしくならないで、わたし、わたし」

結衣「大好きな京子がおかしくなるのなんて、嫌だよ!」ウルッ

京子「結衣……」

京子「……」

京子「あ、あれ、さっきまで頭に浮かんでた誰かの記憶が、どんどん薄く……」

結衣「きょ、京子?」グスン

京子「え、結衣、なんで泣いてるのさ」

結衣「よ、良かった、元に戻ってくれて、良かったよお」ギュッ

京子「ちょ、結衣、こんな所でやめてよっ///」

結衣「京子、京子ぉっ」ギューッ

京子「結衣……何か心配かけさせちゃったのかな……ごめんね」

結衣「京子、わたし、わたし、京子の事……」

京子「結衣?」

結衣「好き、なんだ……」

京子「え、あ、あの、それって///」

結衣「幼馴染とか、友達とか、そういうレベルじゃなくて」

結衣「きょ、京子の事を、一人の女の子として好きなんだよ」

結衣「ずっと大切に抱きしめていたいって思うほど、好きなんだよ」

京子「///」

結衣「だ、だから、あの、京子、私の恋人に、なってくれないかな……」

京子「あ、あの、私は、私は……」

千鶴「……歳納」

京子「う、うあ!?」

結衣「ち、千鶴、居たの!?」

千鶴「……」

京子「え、あ、あの、千鶴?」

千鶴「姉さんが」

京子「ち、ちとせが、どうかしたの?」




千鶴「自殺した」



千歳は自分の血で遺書を書いていた

「わすれたくない」

「わすれるな」

それが千歳が残した言葉

それは多分

名前も覚えていないあの子を忘れて幸せになろうとした私への

復讐の言葉なのだろう

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

京子「うえええん」

「どうして泣いてるの?」

京子「う、うう、ちとせが、わたしにひどいことを言うの……」

「そっか……」

京子「うう、ひっく……」

「ひどいこと、言われたくない?」

京子「……うん」グスン

「じゃあ」

京子「……?」

「じゃあ、私が」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~娯楽部~

京子「結衣~、手に何か書いてあるよ?」

結衣「ん?ああ、今日帰りに買おうと思ってた物なんだ」

結衣「こうして書いておけば、忘れないだろ?」

京子「なるほど!」

ちなつ「流石です!結衣先輩!」

京子「よし!わたしも結衣を見習って、忘れないように手に書いておこう!」カキカキ

結衣「なんて書いたの?」

京子「あかり」

ちなつ「あかりって……ああ、赤座さんの事ですか?」

京子「うん、あかりも娯楽部部員なんだよ」

結衣「一応、私と京子の幼馴染なんだけど、めったに顔見ないなあ」

京子「最近、学校にも来て無いみたいだし……ちょっと心配だよ……」

結衣「そういえば、京子、プリントまだ出してなかっただろ」

京子「え、あ、忘れてた……けど、まあ明日でいいんじゃない?今日はこれからあかりの家に行こうよ!」

結衣「だーめ、ほら、コピーとっといてあげたから、ちゃんと書いて生徒会に提出してきな」

京子「はーい」ムスー

ちなつ「何か、結衣先輩って、京子先輩のお姉さんみたいですね」

結衣「まあなあ、小さい頃から一人でこいつの面倒見てたし、確かに姉妹みたいな感じなのかも」

京子「私のほうが先に生まれたから私のほうが姉だよね?」

結衣「それでもいいから、早くプリント書きなよ、京子お姉ちゃん?」

京子「///」

結衣「お、お前、何赤くなってるの///」

京子「だ、だって結衣が突然お姉ちゃんとか言い出すし///」

ちなつ「……」ムスー

ちなつ「同じ学年で姉妹って事は、双子設定になるんですかっ」グイッ

結衣「ち、ちなつちゃん、そんな狭い所に割り込んでこなくてもっ」

京子「ちなつちゃん、私とひっつきたくて来てくれたんだよね~♪」

ちなつ「違いますけど?」

京子「ちなつちゃん冷たいっ」

結衣「あはは……けど、双子なんて見たこと無いよね、実際は」

京子「あー、確かに見たこと無いね、一度は会ってみたいかも!」

京子「よし、プリントできたー!」

結衣「ん、じゃあ一緒に生徒会室へ届けに行こうか」

京子「いや、私一人で行けるって、子供じゃないんだし」

結衣「……いや、子供だろ、ほらちょっとこっちおいで」

京子「え?」テコテコ

結衣「……」クイッ

京子「あ」

結衣「ん、これでちゃんとリボン真っ直ぐになったね」

京子「あ、ありがと、結衣///」

結衣「何時もの事だよ」ニコ

ちなつ「……」ムスー

京子「じゃ、ちょっと生徒会室に行ってきます!あ、もう遅いから、二人とも先に帰っててくれていいよ?」

結衣「いや、校門のところで待ってるよ」

京子「ありがと、結衣にゃん!」

結衣「寄り道せずに戻って来いよ~」

京子「生徒会に知り合いとか居ないから、寄り道なんてしようがないですよーだ」

ちなつ「……」

~生徒会室~

京子「はー、生徒会室に入るの、緊張するなあ……」

京子「スーーハーー」


コンッコンッ


京子「お、お邪魔しまーす、プリント届けに……」ガラッ


『ほら、歳納京子、さっさとプリントを済ましてしまいなさい!』

『あはは、歳納さん、ゆっくりしていってな?」


京子「……え」

向日葵「あら、わざわざすみません、えーと……」

京子(え、今の声、なんだったんだろ……あ、名前と用件言わないと)

京子「……あ、ご、ごめん、私、2-5の歳納京子です、プリント届けに来ました」

向日葵「歳納先輩、申し訳ありません、わざわざ届けていただいて」

京子「う、うん……いいけど、あの」

向日葵「?」

京子「生徒会って、三人だけだっけ?」

向日葵「ええ、二年の方は誰もいらっしゃらなくて……正直、ちょっと苦労しています」クスッ

京子「そ、そっか……忙しいところ、ごめんね」

向日葵「いえいえ、これも生徒会副会長として当然の勤めですから」ニコ

櫻子「……」イラッ

向日葵「ふくかいちょーとして、当然の」チラッ

櫻子「何度も同じ事いうな!馬鹿向日葵!」ブンッ

向日葵「いたっ……ペン投げないでちょうだい、櫻子!」

京子「……」クスッ

向日葵「あ、す、すみません、見苦しいところを///」

京子「いや、いいよ、じゃ、私は部活に戻るね」ニコ

向日葵「はい、また何かありましたら、生徒会副会長のこの向日葵に」

京子「うん、ありがとうね、向日葵ちゃん」

京子「では、失礼しました……」


パタン


京子(生徒会って固いイメージしかなかったけど、わりと緩い感じの組織なんだなあ)

京子「また機会があれば遊びに行こうっと!」

京子「さて、結衣が待ってるから急がないと……」タッタッタッ

~校門~

京子「あ、ちなつちゃんと結衣、居た居た」

京子(あ、あれ、二人とも、寄り添って……)

京子(……え、き、キス、してる?)

結衣「……あ、きょ、京子///」

ちなつ「……」

京子「あ、あはは、ご、ごめん、何か、邪魔しちゃったか……な……」ジリッ

結衣「ち、違うんだ、京子、話を聞いてっ!」

ちなつ「違わないですよ、京子先輩、ご想像の通りです」

京子「ち、ちなつ、ちゃん」

ちなつ「私と結衣先輩は、そういう関係ですから、京子先輩は……」

結衣「……!」



パチンッ


京子「……!」

ちなつ「……あ」ポカン

結衣「ちなつちゃん、そういう悪い冗談は止めて」

京子「ゆ、結衣が、ちなつちゃんを……」

ちなつ「ぶ、ぶった、結衣先輩が、結衣先輩が、私を……」ウルッ

結衣「京子、違うんだ、さっきのキスはちなつちゃんが無理やり……」

京子「え……」

ちなつ「う、うわああああああああああああああん!」タッタッタッ

京子「あ、ち、ちなつちゃん!」

結衣「……」

京子「ゆ、結衣、いったい何が……」

結衣「さっき、ちなつちゃんに抱きつかれて、その、告白されたんだ」

京子「え……」

結衣「……」

京子「そ、それで、あの、結衣はなんて応えたの……?」

結衣「……ちなつちゃんの想いに応えることはできないって」

京子「ど、どうして!?結衣だって、ちなつちゃんの事はかわいいって言ってたじゃん!」

結衣「あれは、後輩として可愛いって意味だよ、けど、ちなつちゃんはそれでは満足できないって」

結衣「そ、そしたら、突然、あの、キスされて……」

京子「……け、けど、ぶつのは、幾らなんでもやりすぎだよ……」

結衣「そ、それは!きょ、京子の前で、変な嘘つくから、つい……」

京子「う、うん、確かに嘘はよくないけど、ちゃんと口で言ってあげれば……」

結衣「……嘘が問題なんじゃなくて、京子の前でってのが、嫌だったんだよ」ボソ

京子「へ?」

結衣「だ、だって、京子に勘違いされたら、わたし、わたし……」

京子「ゆ、結衣?」

結衣「……京子」ガシッ

京子「ふえ///」

結衣「ち、ちなつちゃんには悪い事したけど、あの勇気は見習いたいから、あの、私も正直に言うね」

京子「あ、あの、結衣?」

結衣「わ、私は、京子の事が、好きなんだ、子供の頃から、ずっと」

京子「……!」

結衣「京子以外の子とは結ばれるつもりは無いし、京子が他の子と結ばれるのも、嫌なんだ!」

京子「ゆ、ゆい///」

結衣「だ、だから、お願い、わ、私と、つ、付き合って///」

京子「け、けど、あの、ちなつちゃんも結衣の事、好きなんでしょ///」

結衣「……ちなつちゃんの事は、私が対処しておくから、京子が気に病む事じゃないよ」

京子「け、けど……」

結衣「……大丈夫、さっきはぶっちゃったけど、今度はちゃんと話するから……」

京子「……」

結衣「い、今すぐ返事を聞かせてくれなくてもいいから、さ」

京子「う、うん……」

結衣「……」

京子「……」

結衣「京子、あの、今日は……」

京子「あ、ご、ごめん、今日は一人で家に帰るよ……」

結衣「そ、そっか……」

~帰路~

京子(結衣が、私の事を好きで、ちなつちゃんは結衣の事が好き……)

京子(私が結衣を受け入れれば、ちなつちゃんが悲しんじゃう……)

京子(私、2人とも悲しませたくないよ……)

京子(どうしよう……どうしたら、いいのかな……)

京子「……あ」

ちなつ「……」

京子「ちなつ、ちゃん」

ちなつ「京子先輩……さっきは、あの、すみませんでした……」ペコ

京子「え、あ、うん……嘘は、いけないよね」

ちなつ「……はい、嘘は、いけないと思います」

京子「……うん」

ちなつ「……」

京子「……」

ちなつ「京子先輩、結衣先輩に告白されたんですよね?」

京子「……え、ど、どうしてそれを」

ちなつ「私を見て、眼を逸らしましたし……」

京子(流石にちなつちゃん、勘が鋭いな……)

京子「……うん、私、結衣に告白されたよ」

ちなつ「それで、京子先輩は、どうするつもりです?」

京子「わ、わたしは、その……」

ちなつ「嘘は、いけませんよね、京子先輩」

京子「え……?」

ちなつ「京子先輩は、結衣先輩の事を、多分、好きじゃないと思います」

京子「え、そ、そんな事無いよ、結衣の事は、その」

ちなつ「姉妹として、友達として、幼馴染として、好きなんじゃないですか?」

京子「……!」ドキッ

京子(そ、そうなのかも、だって、結衣は私の姉妹みたいなもので、幼馴染で、友達で)

京子(け、けど、結衣は私の王子様だって、小さい頃からずっと思ってて……)

ちなつ「京子先輩は、卑怯です」

京子「……!」ビクッ

ちなつ「結衣先輩の事を、愛していないのに、安全牌として確保してる……卑怯ですよ」

京子「わ、私は……そんなつもりは……」

ちなつ「じゃあ、正直に、嘘をつかずに言ってください」

ちなつ「結衣先輩の事を、どう思ってるのかを」

京子「わ、私は、私は……」


 『京子が言う『好き』は、私のこの気持ちに応えてくれるの?』

 『……ご、ごめん』


京子(な、なに、この声、このやり取り、こんなやり取りしたこと無いのにっ!)

京子(私、本当にそうなのかな、本当に、結衣のこと、好きじゃないのかな……)

ちなつ「……応えられないんですね」

京子「あ……」

ちなつ「私は、即答できます、結衣先輩のことが好き、大好き」

ちなつ「恋人になりたいんです」

京子「……」

ちなつ「京子先輩、悩むくらいなら邪魔しないでください、お願いします……」

京子「……う、ん」

京子(な、なに、返事してるの、私)

京子(駄目だよ、ちなつちゃんに結衣を取られちゃうよ)

京子(……取られちゃうって、何)

京子(結衣は物じゃないんだから、そんな考え方するのはおかしいよね)

京子(じゃあ、じゃあわたし、やっぱり、結衣の事、その程度にしか考えてなかったんじゃ……)

あかり「京子ちゃん?」

京子「あ、あかり……」

あかり「どうしたの、こんな所に一人で」

京子「あ……」

京子(ちなつちゃん、何時の間にか居なくなってる……)

京子(何も応えられない私に飽きれて、家に帰っちゃったのかな……)

あかり「……京子ちゃん?」

京子「あ、うん、なんでもないよ、あかり」ニコ

京子(……何の関係も無いあかりを不安にさせちゃ駄目だよね)

京子「あかりこそ、どうしたの?最近学校にも出てきてないみたいだけど」

あかり「……うん、あかり、もう学校には行かない事になってるから」

京子「……え?」

あかり「……ちょっと家庭の事情でね、しばらく休学する事にしたの」

京子「え、ええー!な、何でそんな大切なこと、言ってくれなかったの!」

あかり「あはは、ごめんね、京子ちゃん」

京子「最近、娯楽部にも来ないし、心配してたのに!」

あかり「……あかりの事、心配してくれてたの?」

京子「うん、当たり前だよ、幼馴染で友達なんだし」

あかり「……そっかぁ……嬉しいなあ」ニコ

あかり「京子ちゃん」

京子「ん……?」

あかり「あのね、あのね、あかり、京子ちゃんが、だーいすき!」

京子「あかり……」

あかり「もし京子ちゃんが何か悪いことをしてたとしても、あかりは絶対それを否定しないから」

あかり「だから、京子ちゃん、何があって、どうしたいのか、あかりに言ってみて?」

京子「べ、別に何もないよ、何時も通りの可愛い京子ちゃんだろ?」

あかり「……うん、京子ちゃんは可愛いねえ」ニコ

京子「よ、よせやい///」

あかり「けど、何時も通りって言うのは嘘」

京子「……!」

あかり「あかりだって、結衣ちゃんと一緒に京子ちゃんを守ってきたんだから」

あかり「京子ちゃんに何か辛い事があったんだってことくらい、判るよ」

京子「……」

あかり「あかりじゃ、頼りにならないかもしれないけど……話を聞いてあげる事くらいならできると思うから」

あかり「ね?京子ちゃん」

京子「あか……り……」

京子「わ、わたし、わたしっ……」ウルッ

あかり「……京子ちゃん、泣かないで」ナデナデ

~数分後~

あかり「そっか……結衣ちゃんとちなつちゃんが……」

京子「わ、わたし、どうしたらいいのか、判らなくて」ヒック

あかり「うん……」ナデナデ

京子「結衣も、ちなつちゃんも傷つけたくないよ……」グスン

あかり「京子ちゃんは優しいね……」ナデナデ

京子「……や、やさしくないよ、これは……」

京子「ただ、我儘なだけ……」

あかり「うん……けど、あかりは、京子ちゃんのそういう所が好きだから……」

京子「あかり……私、どうしたらいいのかな……」

あかり「それは、京子ちゃんが選ぶべきことだよ……」

京子「う……」

あかり「けどね、京子ちゃん」

京子「……?」

あかり「あかりは、京子ちゃんがどんな選択をしても、京子ちゃんの味方だから」

京子「あかり……」

あかり「だから、京子ちゃんの思うとおり、やってみて?」

京子「わ、私の思うとおり……」

京子(私は、多分、結衣が好き)

京子(けど、どうしてだろう、結衣を拒絶してしまった記憶が少し残ってる)

京子(こんな私と一緒になっても、結衣は幸せになれないんじゃないかな……)

京子(けど、結衣を無条件に愛してあげられるちなつちゃんなら)

京子(ちなつちゃんなら、結衣を幸せにしてあげられるんじゃ)

京子(なら、私は、私は……)

京子「あ、あかり……」

あかり「ん?」

京子「……私、決めたよ」

あかり「そっか……」

あかり「頑張って、京子ちゃん」ニコ

~翌朝~


結衣「京子!」タッタッタッ

京子「結衣、おはよう、ごめんね、朝から呼び出して」

結衣「い、いや、いいけどさ……どうかしたの?」

京子「え……?」

結衣「ちょっと顔色悪いからさ……」

京子「……何でも無いよ、ちょっと寝不足なだけ」

結衣「そっか……」

京子「あ、あのさ、結衣」

結衣「ん?」

京子「昨日の、告白の事なんだけど……」

結衣「……うん」

京子「あ、あれの返事、今するね……」

結衣「あ……う、うん」ドキドキ

京子「スーーハーー」

結衣「……」ドキドキドキ




京子「ごめん、結衣とは恋人にはなれない」



結衣「京子!やっと恋人になれ……///」

結衣「……え?」

京子「結衣の事は、あの、友達としてしか、見れないみたい……ご、ごめん」

結衣「……」

京子「……」

結衣「……あははは」

京子「……結衣?」

結衣「あのさ、京子、その冗談はちょっとキツいよ……」

京子「……」

結衣「きょ、京子、私の事、好きだろ?」

京子「うん」

結衣「ほ、ほら、だったら……!」

京子「友達として、好き」

結衣「……」

結衣「……嘘」

京子「嘘じゃないよ、結衣」

結衣「う、嘘だよ、だって、私、京子の事なら何でもわかるよ?」

結衣「京子が私と一緒に寝るときにどれだけドキドキしてたかも、知ってるんだから!」

結衣「ちゃ、ちゃんと鼓動が、私に伝わってたんだからな!」

京子「……結衣」

結衣「な、なに?」

京子「それは、私の鼓動が伝わってたんじゃなくて……結衣の鼓動が自分の身体に響いてただけだよ」

結衣「……そんな事、ない」

京子「そうだって」

結衣「そんなことない!」

結衣「京子、ど、どうしてそんな嘘を……あ、あの、もしかして、ちなつちゃんに何か言われた?」

京子「……!」

結衣「そ、そうなのか?だったら、ちなつちゃんを問い詰めて……!」

京子「違うよ、結衣、これは私が自分で考えた結論」

京子「結衣にとって都合が悪い結論だからって、ちなつちゃんに罪を押しつけるのは止めてあげて」

結衣「きょ、きょうこ……」

京子「……恋人にはなれないけど、あの、友達ではあるからさ」

京子「これまで通りの関係を続ける……って言うのは、ど、どうかな?」

結衣「……」

京子「結衣……?」

結衣「……」フラッ

京子「結衣……」

結衣「……」フラッフラッ

京子(……ちなつちゃん、あとは、宜しくね)

京子(ゆいを、ゆいを支えてあげてね……)

京子「……さて、私も学校に行こうっと」

京子「学校行って、結衣がいる教室で授業を受けて」

京子「結衣がいる娯楽部で放課後を過ごして」

京子「結衣と下校して」

京子「それで……それで……」ウルッ




京子「そんな日常は、もう戻ってこないんだよね……私は、そういう道を選んだんだから……」



~数週間後~

~2-5教室~


京子「……」ジー


ユイセンパイ、ハヤクー

……ワカッタカラ、ヒッパラナイデ


京子(ちなつちゃん、凄いパワーだな、結衣を引っ張ってる)

京子(結衣も、渋々ながら、楽しそうにしてるじゃん)

京子(これで、ハッピーエンドだよね……2人とも幸せそうだし)

京子(もしかしたら、遠くない未来……)

京子(こんな事もあったなーって、結衣と笑いあって話せる日が、また来るかも)

京子(そうしたら、ちなつちゃんともまた親しくしてもらえて)

京子(あかりも呼んで、娯楽部で皆集まって過ごして)

京子(結衣の家にお泊りしたり)

京子(そういう事が出来るようになる日が来るかも……)

京子(そう考えると、少し楽しいな)

京子「……よし、帰ろう」

京子「余は満足じゃ」

~京子宅~

京子「ただーいまー……」

京子「……ん、何か荷物来てる」

京子「……なんだろね、これ、差出人は……ゆ、結衣!?」ドキッ

京子(結衣から、に、荷物?何だろ)ドキドキ

京子(というか、何ドキドキしてるの、まだ結衣に未練あるのか私はっ)

京子「な、何が入ってるんだろ」ガサガサ

京子「……これは」

京子「……結衣の家に置いたままになってた、ハブラシ」

京子「お茶碗……カップ、バスタオル、下着、シャツ」

京子「……全部、全部、私のだ」

京子「……」

京子「そっか、私が結衣の家に行く事は、もう無いんだから」

京子「返されて当然だよ、ね」

京子「……」ゴソッ

京子「ふふ、懐かしいな、このハブラシ……カップ……」

京子「私と結衣の思い出が詰まった、色々な雑用品……」

京子「返されちゃった……」

京子「……」ズキッ

京子(あ、あれ……)

京子(胸が、心が、痛い……痛い、す、凄く、痛い……)ズキッ

京子(いやだ、結衣、いやだよ、こ、こんな、何で、私と結衣の思い出なのに……)ズキッズキッ

京子(そ、そっか……)ズキッズキッ

京子(そんな物、もう結衣には必要ないんだね……)ズキッズキッ


京子(結衣にとって私はもう、本当に、要らない存在になっちゃったんだ)バキッ


京子「……あ」ガク

京子(だ……めだ……何かが、私の中で、何かが)

京子(折れた)

京子(もう、いいや……)

京子(もう……学校も、行かない)

京子(外にも、出ない)

京子(何も、見ない)

京子(何も、信じない)

京子(何も……何も……)

京子(何も望まない)

京子(もういいよ……)

京子(もういい……)

京子(もう……)


こうして、私は心を閉ざした

誰の声も受け入れず

部屋の中でずっと過ごした

何年か経って

結衣達が無事卒業したという話を聞いたこともあったが

私の心は何も動かなかった

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

京子「うえええん」

「どうして泣いてるの?」

京子「わたし、ひとりはいやなの、さびしいのは、いやなの……」

「そっか……」

京子「うう、ひっく……」

「じゃあ」

京子「……?」

「じゃあ、私が」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~娯楽部~

京子「結衣~、手に何か書いてあるよ?」

結衣「ん?ああ、今日帰りに買おうと思ってた物なんだ」

結衣「こうして書いておけば、忘れないだろ?」

京子「なるほど!」

京子「よし!わたしも結衣を見習って、忘れないように手に書いておこう!」カキカキ

結衣「なんて書いたの?」

京子「あかり」

結衣「あかり?蛍光灯でも買うの?」

京子「へ?いや、あかりだよ、ほら」

結衣「え?」

京子「幼馴染のあかりだって」

結衣「幼馴染って……私と京子だけだろ?」

京子「え……?」

結衣「ま、1年に幼馴染とかがいれば新入部員0って事態は避けられたんだろうけどなあ」

京子「……」

結衣「ま、非公式な部活だし、生徒会の人達も何も言ってこないし、気にしなくていいと思うけどね」

結衣「こ、今年も、あの、2人で過ごそうよ、京子///」

京子「え……?」

結衣「……はぁ、京子は相変わらずマイペースだよね」ツネッ

京子「い、いたいっ、頬ひっぱらないで結衣っ」

結衣「はいはい」パッ

京子「うう、結衣、酷いよ、可愛い京子ちゃんの顔に傷がついたらどうしてくれるつもり?」

結衣「……そうだな、ちょっと心配だから、見せてみて?」

京子「んー」

結衣「……うん、ちょっとだけ腫れてるね」

京子「あー、やっぱり……結衣、どう責任取ってくれるのさ~」

結衣「ん、こんなもの……」チュッ

京子「え、あ、なっ///」

結衣「こんな腫れ、舐めておけば治るよ///」

京子「ゆ、ゆい、何するのさ///」

結衣「な、なにって、子供の頃、よく傷舐めてやってただろっ///」

京子「た、確かに、あの、やってたけどさっ///」

結衣「じゃあいいじゃん、別にいいじゃんっ///」

京子「う、ううー///」

結衣「じゃ、今日の部活はどうする?また寝転がって漫画でも読む?」

結衣「あ、耳かきしてあげてもいいよ、京子好きでしょ?」

京子「あ、あの、結衣さん、何でそんなにテンション高めなの?」

結衣「だ、だって、あの、もう私達、二年生だぞ?」

京子「う、うん」

結衣「一年の頃と同じ事ばっかりやってても仕方ないだろ」

結衣「だからさ、ちょっと2人の関係も、一歩進めてみようかなって」

京子「い、一歩ってなにさっ」

結衣「だ、だから、あの、ほら、チューとか……」

京子「ちゅ、ちゅーか……え?」

結衣「……」

京子「……」

結衣「///」カーッ

京子「///」カーッ

京子「な、何言ってるんだよ結衣///」

結衣「え、え、私何か変な事言ったかっ///」

京子「ちゅ、ちゅーって言っただろ、チューって///」

結衣「い、言ったよ、けど変じゃないだろっ///」

京子「へ、変だよ、友達同士でチューとか変だよっ///」

結衣「じゃ、じゃあ、あの、友達じゃなくなればいいよなっ///」

京子「え……」

結衣「きょ、京子っ!」ガシッ

京子「あっ///」

結衣「あ、あのさ、京子、私、ずっと京子に言いたかったことが///」

京子(う、うあ、結衣の顔、近い……)


『わ、わたしは……』

『歳納京子のことが好きで……会いたいから、プリントを取りに行ってるのよっ///』


京子「……え、誰?」

結衣「は?」

京子「あ、い、いや、何でも……」


『幼馴染とか、友達とか、そういうレベルじゃなくて』

『きょ、京子の事を、一人の女の子として好きなんだよ』


京子「あ、あれ、ゆい……?」

結衣「な、なに?」

京子「え、あ……ご、ごめん」

京子「何だろ、何か記憶が……」


『京子以外の子とは結ばれるつもりは無いし、京子が他の子と結ばれるのも、嫌なんだ!』


京子「結衣に、何度も告白された記憶が……」

京子(それに、知らない女の子の声も)

結衣「わ、わたしまだ告白してないぞ」

京子「う、うん、そだよね……」

京子「な、なんだろ、何か、怖い事があったような気が……」ウルッ

結衣「きょ、京子、泣いてるの?」

京子「あ、あれ、何で私……」ポロポロ

結衣「……京子」ギュッ

京子「あ……」

結衣「ごめんね、私、ちょっと急ぎ過ぎたかも……京子を不安にさせちゃったよね」ナデナデ

京子「あ///」

京子(結衣が、頭撫でてくれた……)

京子(気持ちいいな、あの時も、頭撫でて貰って……)


『……京子ちゃん、泣かないで』

『京子ちゃんは優しいね……』


京子「……あかりだ」

結衣「ん?」ナデナデ

りせっと!
って言うからスピンオフの葵ちゃんとひろちゃんが出るのかと思ったのに

京子「ねえ、結衣、今日の部活、あかりを探してもいいかな?」

結衣「あかり……?」

京子「うん、私達の幼馴染の、あかり」

結衣「だから、私達に他の幼馴染は……」

京子「そういうゴッコ遊びでも、駄目?」

結衣「……」ハァ

結衣「じゃあ、架空の幼馴染を探すロールプレイングをするって事?」

京子「さっすが、結衣、察しがいいね」

結衣「回りくどいなあ、京子の遊びは……ま、いいけどね」

結衣「私は京子がくれる楽しいが好きだから」ニコ

京子「ありがと、結衣」ニコ

京子(私と結衣は、きっと何かを忘れてる)

京子(けど、結衣が忘れてて私が忘れてない存在がある)

京子(幼馴染の、あかり)

京子(きっと、あかりに聞けば、何を忘れてるのか判るはず……)

京子(あかり、待っててね)

>>264
前にもほぼ同じことを言われた

~公園~

京子「おーい、あかりー」

結衣「あかりー」

京子「あーかーりー」

結衣「……あのさ、京子」

京子「ん?」

結衣「この遊び、どうやったら終りなの?」

京子「そりゃ、あかりを見つけるまでだよ?」

結衣「それまでずっと、あかりあかりって叫び続けるの?」

京子「あー……確かにそれはちょっと辛いね」

結衣「だろ?」

京子「あかりあかりって言ってたらあかりがゲシュタルト崩壊起こしそうだし」

結衣「い、いや、そういう意味じゃなくて」

京子「何か、奇抜な呼び方を……そうだ」

京子「アッカリーンというのはどうかな?」

結衣「そんな呼び方……いいな」

京子「でしょ?」

結衣「あかり、あかり、あっかりーん、あっかりーん」

結衣「なんだろ、まるで自分が名付けたかのような呼び方だ」

結衣「あっかりーん、アッカリーン!」

京子「アッカリーン!」

結衣「アッカリーン!」

京子「アッカリーン!」クスッ

結衣「アッカリーン~♪」クスクス

京子「アッカリィーン」クスクス

結衣「あははははは!」

京子「あはは、結衣がおかしくなっちゃった」

結衣「きょ、京子だってっ」クスクス

京子「あー、何か久しぶりに笑った気がするよ」

結衣「そっか?昨日もこんな感じで笑ってただろ?」

京子「うん、そうなんだけどね……」

結衣「あー、笑ってたらもうこんな時間だよ、京子、今日はもうお開きにしようっか?」

京子「えー、もうちょっと探そうよ」

結衣「駄目、晩御飯の支度もしないといけないし」

京子「ぶー、結衣のケチ」

結衣「もう、京子は……ほら、ラムレーズン買ってやるから」

京子「ほんと?」

結衣「うん」

京子「じゃあ……今日はこれまでにしよっか」

結衣「また明日、だな」

京子「うん」

京子「アッカリーン、また明日……」

~数日後~

~放課後~


結衣「なあ、京子、今日もあかりを探しに行くの?」

京子「うん、見つけるまで続けるつもり」

結衣「……」

京子「結衣?」

結衣「あのさ、京子と一緒にそういう遊びをするのは楽しいけど」

結衣「そろそろ、別の遊びをしようよ」

京子「え?」

結衣「ほら、買い物行ったり、映画行ったりさ」

結衣「あ、勿論、あかり探しもするよ、けど、毎日はしなくていいと思うし」

京子「結衣……」

結衣「ほら、京子が好きなミラクるんの映画、新作来てるだろ、あの無料券が二枚あるからさ、今日は……」

京子「やだ」

結衣「……京子」

京子「私はあかりを探すから、行きたいなら結衣一人で行って来てよ」

結衣「……」

京子「……」

結衣「あの、さ、京子」

京子「なに?」

結衣「京子の中では、あかりって子は存在するんだろ?遊びとかじゃなくて」

京子「……うん」

結衣「それは、あの……私が知らない京子個人の幼馴染って事なの?」

京子「え?」

結衣「京子、本当はその子が好きで、会いたくて探してるんじゃないかなって……あはは」

京子「わ、私が、あかりの事を好き?」


『あかりは、あかりは京子ちゃんの味方だから』

『あのね、あのね、あかり、京子ちゃんが、だーいすき!』


京子「そ、それは無い……と、思う」

結衣「……」

京子「だ、だってあのあかりだよ?お子ちゃまなあかりだよ?」

京子「無いって!好きになるなんてっ!」

結衣「……そう」

結衣「……京子」

京子「え?」

結衣「私は、もうあかり探しには付き合わないから」

京子「ゆ、結衣……?」

結衣「他の遊びをする気になったら、呼んでよ……」

京子「ちょ、ゆい、どうしたの?」

京子「ゆいっ!」

京子「……結衣、どうしちゃたのかな」

京子「私が無理言ったから、怒っちゃったのかな……」

京子「こんな時、あかりなら、怒らずについてきてくれるのに……」

京子「……だめだめ」ブンブン

京子「結衣とあかりを比べるような事考えちゃ、2人に失礼だよ……」

京子「そ、そうだ、あかりを見つけて、何を忘れてるのかを教えてもらえれば、結衣もきっと判ってくれるよね……」

~公園~

京子「あかりー?アッカリーン!」


~路地裏~

京子「おーい、アッカリーンやーい!」


~小学校前~

京子「あかりー?」


~中学校前~

京子「あかりさーん」


~娯楽部前~

京子「あかり……」

京子「今日も、見つからないや」

京子「あれから、何日も探してるのに、どうして……」

京子(……本当は、あかりなんて、居ないのかな)

京子(変な記憶も、所謂デジャブってヤツで、記憶が変なふうに組み上がって出来ただけの物なのかな……)

京子(もしそうなら……結衣にわるい事しちゃったな……)

京子「……そうだ、結衣に謝ろう」

京子「2人っきりの友達なんだし、結衣の傍から離れるべきじゃなかったんだ……」

京子「もう、あかり探しは、やめよう……」

京子「……結衣、娯楽部に来てるかな」

京子「……」ソーッ



キョウコ、キョウコォ


京子「あ、結衣の声がする……やっぱり、結衣、来てるんだ」

京子「よーし、いきなり襖を開けて脅かしちゃおっと……」


キョウコォ……


京子(何で私の名前を何度も呼んでるんだろ……ま、中に入れば判るよね)



キョウコッキョウコッ


京子「はーい!京子ちゃんでーす!」ドーン

結衣「……!?」グスン

京子「え……」

結衣「きょ、京子……?」ゴシゴシ

京子「ゆ、結衣、泣いてたの……?」

結衣「え、いや、あの、ほら、この漫画見てたら、ちょっと感動して泣けてきちゃって……」

京子「……それ、ギャグ漫画だけど」

結衣「あ、うん、面白くて泣けてきたんだ……」ゴシゴシ

京子(嘘、だよね、だって、さっきまで私の名前呼んでたし……)

京子(私が、あかり探しとかしてる間、結衣は1人で寂しく、この部室にいたのかな……)

京子(泣いちゃうくらい寂しい思いをしながら……)

京子(わたし、馬鹿だ、忘れちゃったことなんて、もうどうでもいいじゃないか)

京子(だって、だって私には、こんな素敵な女の子が傍に居てくれるんだから……)

結衣「あ、京子、ちょっと待ってね、今お茶を」

京子「ゆーい」ギュッ

結衣「あ……」

京子「……ごめんね、寂しがらせて」

結衣「……別に、寂しくなんて無かったよ」

京子「そっか……」

結衣「だって、京子は絶対に戻ってきてくれるって、信じてたから……」ウルッ

京子「……それでも、ごめんね」

結衣「へ、変な奴だな、謝る必要なんてないのに」グスン

京子「……結衣、わたし」


『わすれたくない』

『わすれるな』


京子(うるさい、邪魔するな)

京子「わたし、結衣の事が……」


『京子先輩は、卑怯です』


京子「……」

結衣「京子?」





京子「結衣、わたしは、結衣の事を、愛してるよ」



京子「友達とか、幼馴染とかじゃなくて、一人の女の事して、結衣の事を」

京子「愛してます」

結衣「……」ポカン

京子「……」

結衣「……」ポカン

京子「ゆ、結衣、何か言ってよ///」

結衣「……え、あ、うん」

京子「///」

結衣「あの、京子……もう一度、言ってくれるかな?」

京子「え、えー!」

結衣「ごめん、本当にごめん、最初の言葉聞いて、頭が真っ白になってたから、その次の言葉聞いてなかったの」

京子「そ、そんなの、やだよ///」

結衣「お、お願い、京子、ね?ね?」

京子「う、ううーっ///」

京子「と、友達とか、幼馴染とかじゃなくて、一人の女の事して、結衣の事を///」

京子「あ、愛してますっ///」ムスッ

結衣「……」ポー

京子「……結衣さん」

結衣「あ、あの、もう一回」ポー

京子「や、やだ///」

結衣「お願い、もう一回!」

京子「結衣、その前に言うべきこと、あるでしょ!」

結衣「え……あ、そ、そうだな」




結衣「私も、京子の事を、愛してる、ずっと一緒に居たい」



結衣「……こ、これで、あの、どうかな///」

京子「……」ポー

結衣「京子?」

京子「え、あ、あの……嬉しかった///」

結衣「……うん」ニコ

結衣「じゃあ、あの、京子の告白、もう一回、もう一回聞かせて?」

京子「や、やだって!もう十分でしょっ///」

結衣「何度だって聞きたいよ、だって、ずっと待ってた言葉だから!」

京子「やだっ」

結衣「聞かせてっ」

京子「やーだっ!」

結衣「京子っ!」

京子「……あー、もー!判ったからっ///」




「何度でも聞かせてあげるよ、2人っきりの時間は、まだ沢山あるんだから」


終わったら「完」って書くよー
最後だから書き貯めてるよー

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

京子「うえええん」

あかり「どうして泣いてるの?」

京子「う、うう、みんなが、わたしにいじわるするの……」

あかり「そっか……」

京子「うう、ひっく……」

あかり「ともだちとか、いないの?」

京子「……うん」グスン

あかり「ともだち、ほしい?」

京子「……」コクン

あかり「じゃあ」

京子「……?」

あかり「じゃあ、私が」

あかり「友達ができるように、おねがいしてあげる!」

京子「お願い?」

あかり「うん、あかり、天使様から、何でもお願いが叶う力をわけて貰ったんだ!」

京子「天使様から?」

あかり「うん!」

あかり「だから、このお願いは、絶対に効くよ!」

京子「ほ、ほんと?あかりちゃん、私にも、友達ができる?」

あかり「うん!」




あかり「お願いします、京子ちゃんに、たくさん友達ができるような世界にしてください!」



あかり「……ふぅ」

京子「お、お願い、叶ったのかな」

あかり「うん、叶ったと思うよ、何時もの通り、何かがあかりの中から抜き取られたような感覚があったし」

京子「あ、ありがとう!えっと、あの、名前なんだっけ……」

あかり「あかりだよ!?さっき名前呼んでくれたよね!?」

京子「あ、そ、そうだった……ごめんね、あかりちゃん」

京子(うん、思い出した)

京子(あかりは、私の為に、お願いをしてくれた)

京子(それから、あかりが友達になってくれて)

京子(結衣と出会って)

京子(色んな友達と出会って)

京子(綾乃や千歳と出会って)

京子(ちなつちゃんや、千鶴や、ひまっちゃんや、櫻子ちゃんや、会長さんや、西垣ちゃんと出会って)

京子(毎日が、楽しかった)

京子(けど)

京子「うえええん」

あかり「どうして泣いてるの?」

京子「う、うう、ゆいが、ゆいがしんじゃったの……」

あかり「そっか……」

京子「うう、ひっく……」

あかり「ゆいちゃんのこと、好き?」

京子「……うん」グスン

あかり「また、ゆいちゃんと仲良くしたい?」

京子「……」コクン

あかり「じゃあ」

京子「……?」

あかり「じゃあ、私が」

あかり「京子ちゃんと結衣ちゃんが、また仲良くなれるようにしてあげる」




あかり「お願いします、こんな悲しい事は起こらないようにして、京子ちゃんが結衣ちゃんと仲良くできるような世界にしてあげてください」



京子(結衣と私を仲良くさせる為に、綾乃が消えちゃって)

京子(そしたら千歳まで、おかしくなっちゃって)

京子(自殺しちゃって)

京子(……私は、またあかりに縋って)

京子「うえええん」

あかり「どうして泣いてるの?」

京子「う、うう、ちとせが、わたしにひどいことを言うの……」

あかり「そっか……」

京子「うう、ひっく……」

あかり「ひどいこと、言われたくない?」

京子「……うん」グスン

あかり「じゃあ」

京子「……?」

あかり「じゃあ、私が」

あかり「千歳先輩が京子ちゃんに酷いこと言わないように、してあげる」




あかり「お願いします、京子ちゃんが千歳先輩に酷いことを言われないような世界にしてあげてください」


京子(千歳と千鶴が消えて)

京子(結衣の想いとちなつちゃんの想いに耐えられなくなった私は)

京子(考える事を放棄して)

京子(お見舞いに来てくれたあかりに、また泣きついて)

京子「うえええん」

あかり「どうして泣いてるの?」

京子「わたし、ひとりはいやなの、さびしいのは、いやなの……」

あかり「そっか……」

京子「うう、ひっく……」

あかり「じゃあ」

京子「……?」

あかり「じゃあ、私が」

あかり「京子ちゃんが寂しくないようにしてあげる」




あかり「お願いします、京子ちゃんがこんな寂しい目にあわないような世界にしてあげてください」



京子(ちなつちゃんが、消えて)

京子(……そしてお願いをするたびに、あかりの存在は、薄くなっていった)

京子(最後に、あかりを見つけられなかったのは、きっと)

京子(きっと、気配だけじゃなく、あかりの姿自体が、薄くなってしまったからだと思う)

京子(それが、願い事の代償)

京子(本当は、私が払うべきだった、代償)

京子(私がずっと忘れてた事)

京子(結衣以外は、みんな消えちゃった)

京子(私のせいで、消えちゃった)

京子(こんな、こんなことなら)

京子(ずっと、一人でいればよかった)

京子(ごめんね、ごめんね、みんな)

京子(ごめんね、結衣)

京子(ごめんね、あかり)

「じゃあ」

京子「……?」

「じゃあ、私が」

京子「あかり?」

「京子ちゃんのお願い、叶えてあげる」

「だから、もう泣かないで」

京子「あかり、だめ、やめて、もういいから」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「京子ちゃんに友達がいなくても、寂しくない世界にしてあげてください」


~生徒会室~


京子「この書類、間違ってるわ、修正お願いね」

書記「は、はい……」

会計「副会長様、相変わらず厳しいー!」ボソッ

書記「聞かれるわよ」ボソ

会計「聞かれても気にしないって、あの人」ボソ

会計「小学校の頃から、ずーっと友達いなくて、それでも自分を曲げずにまっすぐ生きてきた人だもん」ボソ

会計「これくらいの陰口でへそ曲げるような人じゃないよ」ボソ

書記「顔は綺麗なんだけどねえ」ボソ

京子(そう、わたしはずっと一人で生きてきた)

京子(子供の頃から、ずっと)

京子(不思議と寂しいと思った事は無い)

京子(きっと、これからも一人で生きて行くんだろうな、わたしは)

京子(別に、平気だけど)

京子「……ん?」

京子(今、茶道部へ続く道に誰かいたような……)

京子「そういえば、茶道部部室の無断使用の噂があったよね」

書記「え、あ、はい、本当に噂だけで実害は無いんですけど」

書記「茶道部部室に入って行く人影を見た、という話が幾つか」

京子(なら、今の人影が、その無断使用者?)

京子(……生徒会副会長としては、放っておけないかな)

京子「私はちょっと茶道部の様子を見てくるから、貴女達はそのまま仕事を続けててね」

書記会計「「はーい」」

~茶道部~

京子「……扉は、閉まってる」ガタガタ

京子「やっぱり気のせいかな」

京子「一応、中を確認してみようか……茶道部の鍵は借りてきてるし」カチャカチャ


ガラッ


京子「……何だろ、一度も来た事ないはずなのに」

京子「何か親近感が……」

京子「……部室の中も、無人」

京子「……ふぅ」

京子「結局、無駄骨、と」

京子「……まあいいか、座布団もあるみたいだし、ちょっと休憩して行こう」


ポフッ


京子(あ、何か、本当に安らぐ)

京子(どうしてだろ、来た事ないはずなのにな)

京子(……不思議だな、こうしてると、何か声が聞こえてくる気が)


『ん、これでちゃんとリボン真っ直ぐになったね』

『流石です!結衣先輩!』

『結衣ちゃんはしっかりものだよねぇ』

『としのーきょーこー!』

『お邪魔しますなあ』

『た、確かに姉さんの事は大切なことだけど……』


京子「……気のせいだよ」

京子「私には、こうやって語り合う友達なんて、居なかったんだから」

京子「……さ、そろそろ、生徒会室に帰ろう」

京子「まだ、仕事が溜まって……」

京子「……あれ」

京子「……これ、私の字だけど、何時書いたんだっけ」


『よし!わたしも結衣を見習って、忘れないように手に書いておこう!』

『なんて書いたの?』





京子「あかり」



「なあに、京子ちゃん」

京子「……あかり」

「うん、あかりは、ずっと傍に居るよ」

京子「あかり……」

「どうしたの、京子ちゃん」

京子「……ごめん」

京子「あかりの事まで、忘れちゃってて、ごめん」

「京子ちゃん、泣かないで、あかりが、あかりがまた、京子ちゃんが泣かない世界にしてあげるから」

「ね?」

京子「うん……あかり、もう一度だけ、お願いしてくれるかな、それで最後だから」

「うん、あかりは、京子ちゃんのお願い、何でも聞くよ」

京子「ありがとう、あかり」

京子「じゃあ」




京子「全部のお願いごとをなかった事にして、あかりを元に戻してください」


「……いいの?京子ちゃん、友達、一人も居ない世界に戻っちゃうよ?」

京子「今だって、友達なんて一人も居ないよ」

「ううん、今の世界は友達がいなくても京子ちゃんが寂しくないようになってるから」

「けど、全部元に戻ったら……」

京子「……いいよ」

「京子ちゃん……また泣いちゃうよ?」

京子「うん、泣くと思う」

京子「けど、私が泣いたとしても、その世界には、あかりや」

京子「結衣や、綾乃や、千歳や千鶴や、ちなつちゃんやひまっちゃんや櫻子ちゃんや会長さんや西垣ちゃんが居てくれるから」

京子「私が頑張れば、きっとその人達は、友達になってくれるだろうから」

京子「だから、いいよ」

「……うん、わかった、京子ちゃんがそう言うなら」

「……じゃあ、お願いごと、するね」

京子「うん……」

「京子、ちゃん」

京子「ん?」

「だいすき」

京子「私も、あかりが大好きだよ……」

京子「ずっと、守ってくれて、ありがとう……」




「全部のお願いごとをなかった事にして、全部を元に戻して」



京子「うえええん」

「どうして泣いてるの?」

京子「う、うう、みんなが、わたしにいじわるするの……」

「そっか……」

京子「うう、ひっく……」

「ともだちとか、いないの?」

京子「……うん」グスン

「ともだち、ほしい?」

京子「……」コクン

「じゃあ」

京子「……?」

「じゃあ、私が」




あかり「私が、友達になってあげる!」



泣き虫だった私にもお友達ができた

一人目のお友達、あかりちゃん

あかりちゃん、言ってた

これから、どんどん友達を増やそうって

友達が増えれば、喧嘩してしまう事もあるだろうけど

泣かずにちゃんと自分の力で向かい合えば

仲直りできるって

わたしも、あかりちゃんみたいに、なれればいいな

あかりちゃん、だいすき


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眠い、寝る

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