京子「ごらく部が監視されている」 (92)

*長編注意・地の文あり注意・一部キャラ崩壊注意*

*原作のネタバレ要素は特にありません*

*作品のジャンルは冒険恋愛ギャグミステリーです*

【第1部】

<第1章>

ある日の放課後 ごらく部部室

京子「あー、最近暇だなー。何か面白いことでもないかな?」

結衣「面白いことなんてそうそうないよなー」

いつものように部室でダラダラしていると、

ガラッ

ちなつ「遅くなりましたー」

京子「おっ、ちなちゅ~~!!」

ちなつ「ちなちゅ言うな」スイッ

軽い身のこなしで京子のボディータッチを避けるちなつ。

ちなつ「結衣先輩、今からお茶淹れますからね♪」

結衣「あぁ、ありがとう」

あかり「ちなつちゃん、スルースキルうまくなったねぇ」

京子「あかり、いたんだ」

あかり「ひどいよ京子ちゃん!」アッカリーン

いつものようにちなつがお茶の準備をしていると、ある事に気づく。

ちなつ「あれっ?」

結衣「どうしたのちなつちゃん?」

ちなつ「この棚の内側に変な黒いものが付いてるんですけど・・・」

京子「どれどれ・・・って、これはまさか!?」

棚に取り付けられていたテープをはがし、その黒いものを棚から出してみる。

京子「やっぱり、これは盗聴器だ!」

あかり「えぇぇ~~、なんでそんなものがここに!?」

結衣「おいっ、こっちにも似たようなものがあったぞ」

結衣が指さした物、それは小型カメラだった。ふすまの板の隙間に設置されていて、簡単には気づかない。
ちょうどごらく部の部屋の中が枠に入るような角度で設置されていた。

結衣「どうしてこんなものが・・・」

京子「他にもまだあるかもしれない!探してみよう!」

30分後、畳の上には盗聴器3つと小型カメラ3つが並べられて置かれていた。

京子「まさかこんなに仕掛けられているとは・・・」

呆然とした表情の京子。あかりは気を失いかけていた。

ちなつ「何か怖いです、きゃー結衣センパイ!」ダキッ

ここぞとばかりに?結衣に抱きつくちなつ。

結衣「ちなつちゃん、よしよし。しかしいったい誰がこんなことを・・・」

京子「考えたって分かるわけないだろ。とりあえず今日はもう帰ろうぜ」

京子「ほらっ、仕掛けられていたカメラとかは回収できたんだし、心配無いよ」

あかり「そのカメラや盗聴器はどうするの?」

結衣「証拠品として私が預かっておくよ」

京子「てかっ、あかり気がついたんだ」

あかり「始めから気絶してないよぉ!」

ひとまず今日は部活を終了して家に帰ることにした。

各々が自宅についた頃、もし七森中のある場所の前を通りかかる人がいたならば、
次のような会話が聞けたであろう。

???「カメラを仕掛けたのがバレてしまったわ」

???「でも今日までの映像はバッチリ撮れましたね!」

???「明日からは他の方法を使わないとダメですわね」

???「そうやなぁ」

???「・・・」

一方こちらは京子の部屋である。

京子「ごらく部にカメラを仕掛けるなんて一体誰が、何の目的で・・・」

京子「ダメだ、考えても分からない、今日はもう寝よう!」

あかりの部屋では・・・

あかり「うーん、それにしても人の生活をこっそりのぞき見たりするのって最低だよねぇ」

あかね「何か言ったかしら」

あかり「あっお姉ちゃん!ううん、別に何でも無いよ」

あかね「そう・・・。もう9時半よ、早く寝なさい」

あかり「うん、おやすみ・・・」

翌日の学校

向日葵「へぇ、そんなことがあったんですの」

あかり「そうなんだよ~」

ちなつ「私と結衣先輩のあんなことやこんなことを見ようとしてたに違いないよ、きっと」

あかり「そうなのかなぁ・・・(苦笑)」

あかり「向日葵ちゃん、何か心当たりある?」

向日葵「そうですわねぇ。特にこれといって無いですわ」

あかり「そうだよねぇ」

ちなつ「櫻子ちゃんは?」

櫻子「えっ!?」

櫻子「あっごめん、何の話?」

ちなつ「ごらく部の部室に盗聴器やカメラが仕掛けられてたんだけど心当たりある?」

向日葵「まったく、人の話を聞いてなかったんですの?」

櫻子「あっ、ええと・・・、な、無いよ、全然ない!心当たりなんかない!」

そう言うと櫻子は急いで教室から出て行ってしまった。

向日葵「あっ、ちょっと待ちなさい、櫻子!」

向日葵も後を追って教室から出て行った。

あかり「どうしたんだろ、櫻子ちゃん」

ちなつ「なんかさ、私たちがこの話を始めてからずっと様子がおかしかったよね」

あかり「まさか、櫻子ちゃんが犯人!?」

ちなつ「どうだろ、櫻子ちゃんがあんなことするかな?」

でもちなつは気づいていた。向日葵が部屋から出ていくとき、明らかに焦っていたことに。

その日の放課後、ごらく部

京子「結局手がかりなしかぁ」

ちなつ「京子先輩も誰かに聞いてみたんですか?」

京子「うん、綾乃に聞いてみたんだけど・・・」

京子『なぁ~綾乃、ごらく部にカメラ仕掛けたのってもしかして綾乃?』

綾乃『な!な、何言ってるのよ、そんなことあるわけないないナイアガラよ!』

結衣『ぶほっ』

京子「てな感じで・・・」

ちなつ「いきなりそんな聞き方はないんじゃ・・・」

結衣「・・・」

京子「そっちは何か情報あった?」

そこでちなつはさっきあった出来事を話した。

京子「うーん、ちょっと怪しいなぁ」

あかり「京子ちゃんもそう思う?」

京子「あかり、いたんだ」

あかり「ずっといたよ!」

結衣「・・・」

ちなつ「結衣先輩、どうしたんですか?ずっと黙ってますけど」

結衣「ん、あぁ何でもないよ」

京子「もし何かあったら言えよ」

結衣「ああ」

あかり「結衣ちゃんにはいたんだって言わないんだねっ!」アッカリーン

ちなつ「あかりちゃん・・・」

結局、この話はそれで終わりとなった。何の手がかりもない状況でこれ以上はどうしようもなかったのだ。
謎は残ったが、仕方ない。

<第2章>

それ以降特に怪しいことも起こらず時が経ち、みんなの記憶からこの事件のことがアッカリーンされ始めた頃・・・

京子「あー、最近暇だなー。何か面白いことでもないかな?」

結衣「面白いことなんてそうそうないよなー」

いつものように部室でダラダラしていると、

京子「ん、何だあれ?」

仰向けに寝ていた京子がふと天井に小さな穴が開いているのを見つけた。

今までだったら特になんとも思わなかっただろうが、あんな事が前にあったもんだから気になった。

机に登って恐る恐る覗いてみると・・・

京子「何か空間があるぞ!」

結衣「おい、京子どけ!」

結衣はそう言って机に登るやいなや天井の板を壊し始めた。

ちなつ「結衣先輩何してるんですか!?」

あかり「危ないよ、結衣ちゃん!」

皆が止めるのも構わずたまたま部室に置いてあった斧で天井を壊す結衣。

ついに人が一人通れるほどの大きな穴があいた。結衣はすぐによじ登る。

京子「どうだ結衣、何かあったか~?」

結衣「人がいた形跡がある!」

しばらくして結衣が降りてきた。

どうやら何者かが天井裏に作られたこのスペースに潜んでごらく部を監視していたらしい。

そう言って空になったあんぱんの袋と牛乳パックをみんなに見せた。

天井裏に捨てられていたという。まるで刑事が容疑者を尾行するときのようだ。

京子「私たち何かの容疑者になってたりするのかな・・・?」

ちなつ「そんな訳ないじゃないですか、私たちは被害者ですよ!」

あかり「それにしても結衣ちゃんすごいね~」

結衣「・・・」

京子「結衣。どしたの?」

結衣「どしたのじゃねーよ!何でそんなに呑気でいられるんだよ!
   私たちあの事件の後もずっと監視されてたってことだろ!
   考えてもみろ!数日間得体の知れない奴にずっと見られてたんだぞ!
   これで落ち着いていられるかよ!」

京子「結衣、ちょっと落ち着いて」

ちなつ「そうですよ結衣先輩!私今からお茶淹れますんでそれ飲んで落ち着いてください!」

あかり「結衣ちゃん、どうしちゃったの・・・」アタフタ

数分後

京子「どう、落ち着いた?」

結衣「あぁ、ごめん取り乱したりして」

結衣「・・・」

結衣「そうだみんな、これどう思う?」

そう言って結衣が取り出したのは、青っぽい色をした髪の毛だった。

あかり「これがどうかしたの?」

結衣「実はさっき天井裏を調べてる時に見つけたんだ」

京子「えっ、じゃあ犯人のって事じゃん!」

結衣「うん、その可能性が高いよね。それで聞きたいんだけどこの髪の毛の色の子に心当たりある?」

ちなつ「えっと、それってもしかして・・・」

ちなつはあかりの方を見た。あかりにはちなつの言わんとしていることが理解できた。

それはつまり・・・

あかり「向日葵ちゃん」

京子「えっ、向日葵ちゃんって古谷さんの事?あの生徒会の?」

結衣「そういえばあの娘髪の色青っぽかったなぁ」

京子「じゃあ古谷さんが犯人って事!?」

あかり「そういうことになっちゃうのかなぁ」

ちなつ「向日葵ちゃんが天井裏からごらく部を覗き見してるなんて想像するだけで怖いんですけど」

あかり「でも確かに向日葵ちゃんなら天井裏を改造する事くらい簡単にできるかも」

京子「あかり、それってどういうことだ?」

あかり「えっとね、向日葵ちゃんって2級建築士の資格を持ってるんだって」

京子「えっ、まだ中学生なのに?」

ちなつ「そうなんですよ。何かあまりにも才能があるから飛び級でもらったらしいですよ。
    休日には家屋の設計とかやってるんですって」

あかり「この前は『絶対に1級建築士になってやりますわ!』って意気込んでたよぉ」

京子「へぇ、古谷さんってすごいんだな」

結衣「でも待って、他にも怪しい人がいる」

京子「だれ!?」

結衣「前から気になってたんだけどさ、ほら、前にカメラが見つかったとき京子、綾乃に聞いてただろ」

京子『なぁ~綾乃、ごらく部にカメラ仕掛けたのってもしかして綾乃?』

結衣「って。そしたら綾乃は」

綾乃『な!な、何言ってるのよ、そんなことあるわけないないナイアガラよ!』

結衣「って答えてたよね」

京子「それがどうかしたのか?」

結衣「何か引っかかるんだよ。綾乃はあの時初めてカメラのことを知ったわけだろ。
   それにしては返事がさぁ。まるで前から知ってたかのような反応だよね」

ちなつ「確かにそうですね。本当に初めて聞いたのなら、カメラ?何の事?って感じになりそうですよね」

ちなつ「さすが結衣先輩です!キャー(≧∇≦*)、尊敬します~!」

あかり「すごいね結衣ちゃん!」

しばらく間があって、

ちなつ「そうなってくるとやっぱり櫻子ちゃんも怪しいですよね。
    あの時の反応もおかしかったし、それを見た向日葵ちゃんの様子も。
    なんか櫻子ちゃんのせいでバレそうになったから慌ててたようにも見えましたし・・・」

京子「つまり疑わしいのは綾乃、古谷さん、大室さんの3人ってことだね」

結衣「3人とも生徒会だな」

京子「ハッ、まさか、これは生徒会による陰謀なのでは!?」

あかり「そんなまさか・・・」

結衣「・・・」

<第3章>

それからもごらく部の活動は続いた。いつどこから見られているかわからないという恐怖はあったが、
彼女らには活動を止めるという選択肢はなかったのだ。

しかし警備を厳重にし、警戒を怠らないようにした。ごらく部の建物の入口にはセキュリティロックがかけられ、
中に入るにはカードを差し込み、暗証番号を入力して指紋を認証しなければならなくなった。

カードを持っているのはあかり、京子、結衣、ちなつの4人。暗証番号を知っているのもその4人だけ。
指紋もその4人の指紋だけが登録されていた。

また建物の周りには鉄条網が張られ、さらに監視カメラが大量に取り付けられ、
赤外線レーダーで侵入者を感知できるようにした。

4人以外の人が少しでも接近すればレーダーが感知しそれを知らせるとともに、
侵入者をレーザー光線で気絶させることができる。

ごらく部はさながら要塞のようであった。

いつしかごらく部は「七森中の化け物屋敷」と生徒たちに呼ばれるようになった。

そんなある日の放課後

京子「結衣~、部活行こうぜ」

結衣「悪い、先に行っててくれ。ちょっと用事があるんだ」

京子「用事って?」

結衣「大した用事じゃない。多分すぐに終わるよ」

そう言って結衣は教室を出ていった。

京子は用事とは何のことだろうと気になって後を付けようかとも考えたが、
「幼馴染でもプライベートは大切だよね~」と思ったのでそのまま部活に行くことにした。

その日結局結衣は部活に来なかった。

次の日

向日葵「おほほほ、そうですわね赤座さん」

あかり「だよねーー!」

櫻子「あかりちゃんの話面白いー!」

放課後の教室で楽しそうに語らい合う3人の女の子。その様子を片目で見ながらちなつは思っていた。

ちなつ(あかりちゃん、最近向日葵ちゃんと櫻子ちゃんとすごく仲良くしてるよね・・・。
    前よりもはるかに仲良くなってる。何かあったのかな?
    あの2人はごらく部を盗撮した犯人かもしれないのによく仲良くできるよねー)

現にあかりはごらく部に来る回数が減っていた。3日に1回くらいは休む。

その時は何をしているのかというと、どうやら生徒会に出入りしているらしい。

ちなつ(盗撮事件の容疑者密集地帯である生徒会にホイホイ出入りするなんて、
    あかりちゃんは一体何を考えているの?)

今日もひとりでごらく部に行こうと思って教室を出ようとすると、

あかり「あっ、ちょっと待ってよちなつちゃん!あかりと一緒に行こっ!」

ちなつ「えっ?う、うん・・・」

あかり「向日葵ちゃん、櫻子ちゃんまたね~~!」

向日葵「また明日ですわ」

櫻子「バイバイあかりちゃーん」

こうして2人でごらく部に向かった。

ちなつ「あかりちゃん最近あの2人と仲いいよね」

あかり「そうかな~?ちなつちゃんはあんまりお話してないよね」

ちなつ(だって犯人かもしれないのよ!)

その日のごらく部では

京子「結衣~、昨日は何してたんだよ、結局部活来なかったじゃんか」

ちなつ「そうですよ!私寂しかったんですよ!」

結衣「ごめん、大したことじゃないから気にしないで」

京子「むむむ、何か怪しいな・・・。なにか隠してるだろ?」

結衣「隠してるわけ無いだろっ!」

京子「ふーん、まぁいいや。それより今日は何しよっか?」

あの一件以降、警備を厳重にしたのが功を奏したのか事件は一度も起こらず、
ごらく部は平和な時を過ごしていた。

京子「ちなつちゃーん!」ダキッ

ちなつ「わっΣ(゚д゚;)、ちょっとやめてください京子先輩っ!」

ちなつ「助けてください結衣センパイ~」

結衣「おいこら」

あかり「あはは、また元の日常に戻ってよかったねぇ」

京子「あかり、いたんだ」

あかり「・・・」

ちなつ(あれっ?いつものように言い返さないのかな?)

その時だった。

ナモリナモリナモリナモリナモリナモリナモリナモリーーーー

警報ベルが高らかに鳴り響いた。誰か侵入者がいることを意味している。

こんなことは初めてだった。

京子「誰だ!」

結衣「落ち着け!たぶん侵入者は今頃レーザー光線で気絶しているはずだ。
   赤外線レーダーを切ってから侵入者を確保しに行こう」

レーダーを切らなければ自分たちも巻き添えをくらってしまうからである。結衣はレーダーを切った。

結衣「あかりとちなつちゃんはここで待ってて。行くぞ京子!」

結衣と京子はドタドタと出て行った。しばらくして、彼女らが連れてきたのは気絶した櫻子だった。

ちなつ「櫻子ちゃん!どうして・・・?」

結衣「どうしても何もあるか!やっぱりコイツが犯人だったんだ!」

結衣は台所に向かうとバケツいっぱいに水を汲んで帰ってきた。

そしてなんと櫻子の顔に思いっきり水をぶちまけたではないか。

あかり「ちょっと結衣ちゃん何してるのぉ」

結衣「目覚めさせて白状させてやる」

ちなつ「結衣先輩、怖いです・・・」ガクブル

すると、ゲホゲホッと咳き込みながら櫻子が意識を取り戻した。

結衣「おいっ、どういうことだ。やっぱりお前が今までの事件の犯人だったのか?」

櫻子「え、えーーっと、何の事かなぁ(笑)」

結衣「とぼけたって無駄だぞ。白状しないのならこうしてやる!」

バシーーン

周りの3人には一瞬何が起きたのか分からなかった。

あの結衣が櫻子のほっぺたを引っぱたいたのだ。

櫻子「いたーい!またほっぺた引っぱたかれた!」

ちなつ(また?)

京子「ちょ、結衣やりすぎだって」

結衣「こうでもしないと喋らないだろ」

結衣「もう1回いくぞっ!」

櫻子「あぁぁ、待って!分かった!話すよ!全部話すからやめて!」

櫻子はついに観念したらしい。櫻子が事件について話し始めた次の瞬間!

ビュッ グサッ

あかり「えっ・・・」

気が付いたら櫻子は倒れていた。矢が突き刺さった胸から大量の血を流しながら。

すぐに救急車が呼ばれたが時すでに遅し。櫻子は帰らぬ人となってしまった。

その日の夜、結衣の家で緊急会議が開かれた。

あかり「櫻子ちゃん・・・」グスッ

結衣「まず状況を整理しよう。大室さんは建物の外から放たれた弓矢で心臓を一突きでほぼ即死」

京子「まさに『櫻子のハートにドッキューン!』になっちゃったな」

ちなつ「京子先輩それ笑えませんから」

ちなつ「部室の壁に小さな隙間がありました。たぶんそこから狙ったのだろうと思います」

京子「これはプロによるものだな。あんな小さな隙間を通して大室さんの心臓に1発で命中させるなんて
   常人にはとてもできない」

結衣「犯人は弓矢の扱いにひどく長けている者ということか・・・」

ちなつ「ん、あれそういえば・・・」

結衣「どうしたのちなつちゃん?」

ちなつ「七森中って1年生の体育の授業で弓道をやるじゃないですか」

あかり「!」

そう、七森中では1年生の1学期に弓道、2学期に馬術、3学期にフェンシングをするのである。

京子「そういえば私らも去年やったな~。あれは大変だった」

ちなつ「で、その授業のとき初めてやる人が多いからみんな悪戦苦闘してたんですが、
    一人だけ抜群に上手な人がいたんです」

結衣「それは・・・?」

ちなつ「向日葵ちゃんです」

ちなつ「向日葵ちゃん、あまりにも上手いから先生にプロになれるよと言われたくらいなんですよ。
    櫻子ちゃんには『おっぱいが大きいくせになんでそんなに上手いんだよ!』って言われてましたけど。
    ねっ、あかりちゃん?」

あかり「えっ、うんそうだね・・・」

ちなつ「?」

結衣「ということは大室さんを殺したのは古谷さんということに・・・」

京子「でもあの2人ってすごく仲良かったんじゃなかったっけ?」

ちなつ「そうですよね。向日葵ちゃんが櫻子ちゃんを殺すなんて考えられないんですが・・・」

結衣「いや、そんなの分からないよ。あのとき大室さん事件の事話そうとしてたでしょ。
   だから口封じのために殺されたのかもしれない。いや、恐らくそうだ」

京子「なるほど、大室さんと古谷さんがグルで、真相がバラされそうになったから口を封じたってことか。
   全く恐ろしいことするねぇ」

ちなつ「でも向日葵ちゃんはどうやって部室に近づけたんでしょうか?
    ちょっとでも近づけばレーダーが感知すると思いますけど」

結衣「あぁ、それは私たちが櫻子ちゃんを確保するときにレーダーのスイッチを切ったでしょ。
   その隙に中に侵入したんだと思う」

結衣「あの後監視カメラの映像を調べてみたけど誰も映ってなかったんだ。
   たぶんカメラに映らないように移動したんだろう。カメラは何台もあるのに。
   向日葵ちゃんはなかなかのやり手だね」

結衣「とにかく私らは気を引き締めてかからないといけない。
   相手は秘密を守るためならたとえ味方でも平気で殺すような奴だ」

結衣「明日からも気を付けよう」

あかり「・・・」

<第4章>

翌日、櫻子の葬式が行われた。その会場で、

向日葵「あぁぁ、櫻子!どうして、どうして!うぅぅぅ」グスッ

結衣(なんだあいつは、自分が殺したくせに。今までの事からあいつが犯人に決まっているのに、
   決定的な証拠がない。ちょっと話しかけてみようか)

結衣「古谷さん・・・」

綾乃「ちょっと船見さん、今は話しかけないであげて」

結衣「あ、綾乃っ?うん、分かった」

結衣(チッ、綾乃のやつめ)

場面は変わって次の日の放課後である。

京子「結衣~、部活行こうぜ」

結衣「悪い、先に行っててくれ。ちょっと用事があるんだ」

京子「また~?今度はすぐ終わるのか~?」

結衣「すぐ終われたらいいけど」

そう言って結衣は急いで教室から出て行った。

京子は結衣を少し怪しく思ったが特に気にしないことにした。

結衣は今日も部活に来なかった。

次の日、京子が登校してくると学校が少し騒がしい。

京子「おはよう綾乃、何かあったの?」

綾乃「あぁおはよう歳納京子。実は昨日から千歳が行方不明なのよ」

京子「えっ、千歳が!?」

綾乃「放課後一緒に生徒会の仕事をしてたんだけど、ちょっと目を離した隙にいなくなってしまったの」

京子「千歳は子供かっ」

綾乃「先に家に帰ったんだろうと思ってたんだけど、昨日は家にも帰ってないみたいで」

綾乃「あと、生徒会室の近くで千歳の物と思われる血痕を発見したわ」

京子「それはたぶん鼻血だろ。いつもの事だ」

綾乃「そうよね、いつもの事よね」

綾乃「それと、今朝下足箱を調べたら外履きがあったの」

京子「てことはまだ校内にいる可能性が高いってことか」

綾乃「ええ、だから今日は千歳の捜索をするわ。授業には出られないからよろしく」

京子「私も手伝うよ。千歳が心配だし」

綾乃「あなたは授業に出たくないだけでしょ。大丈夫よ、私が探すから。心配はノンノンノートルダムよ!」

京子「ちぇ~~」

結衣「・・・」

綾乃は放課後になるまで必死に千歳を探したが、結局見つからなかったようだ。

向日葵「おほほほほ、面白いですわね、赤座さん」

あかり「そう?ありがとう!」えへへ

ちなつ(櫻子ちゃんが殺されてからますます仲良くなったよね、あの2人)

ちなつ(ていうかマジであり得ないんですけど、なんで殺人鬼とあんなに楽しそうに話せるの?
    なんか2人とも私の方をチラチラ見てくるし。私が会話に入れてないことを気にしてるのかな?
    そんなの大きなお世話よ!私は殺人鬼と話したくないから。部活先に1人で行こうっと)

ちなつは教室を出てごらく部の部室に向けて歩き始めた。

ちなつ(それに私には結衣センパイがいるし♪あぁ、結衣センパイ!昨日は部活に来てなかったから
    今日は1日ぶりに先輩に会える!)

ちなつはもう部室の近くにまで来ていた。

ちなつ(結衣センパイもう来てるかなぁ?今日は先輩とあんなことやこんなこと・・・」

ドゴッ

それはあまりに一瞬の出来事だった。ちなつは薄れゆく意識の中でぼんやりとだが確認した。
笑いながら自分を引きずっていく青色の髪の女の子を。

京子「今日はあかりもちなつちゃんも来ないね」

結衣「そうだな」

京子「昨日は結衣も来なかったし、なかなか4人が集まらないね」

京子「って昨日結衣何してたんだよ。また部活来なかったじゃないか」

結衣「何でも無いよ」

京子「何でも無い事ないだろ。やっぱり何か隠してる?」

結衣「隠してねぇよ」

京子「またまたそんなこと言って~。水臭いよ結衣。教えてくれたっていいだろ~」すりすり

結衣「何でも無いって言ってるだろ!」バンッ

京子「えっ、結衣・・・。どうしたの?そんな、うぅ」

結衣「はっ!いや、ごめん違うんだ。本当に京子が知らなくていい事だから。だから泣くな、な?」

京子「うん、うん、うぅぅぅ、結衣~~!」ダキッ

結衣「よしよし」なでなで

次の日、学校の騒ぎはさらに大きくなっていた。

ちなつが行方不明になったのだ。

噂を聞いた京子と結衣はすぐにあかりの教室に駆け付ける。

京子「あかり、ちなつちゃんが行方不明になったっていうのは本当か!?」

あかり「うん、そうみたい。昨日の夜家に帰ってこなかったんだって。学校にもいないし」

結衣「ちなつちゃんを最後に見たのはいつ?」

あかり「昨日の放課後あかりが向日葵ちゃんとお話ししてたら勝手にどこか行っちゃったよ。
    たぶんごらく部に行ったんじゃないかなぁ」

京子「いや、昨日ちなつちゃんは来なかったぞ」

あかり「えっそうなの?」

結衣「ってことは教室からごらく部に向かう途中で何かがあったってことだな」

向日葵「池田先輩に続いて吉川さんまで・・・。心配ですわ」

結衣(こいつがやったんじゃないだろうな・・・)

京子「それはそうとあかり最近部活来ないよな。どうしたんだ?」

あかり「あ、えーっとそれは・・・」

向日葵「赤座さんには生徒会の仕事を手伝ってもらっていますの。赤座さんは物分かりが良くて助かりますわ。
    櫻子とは大違い」

京子(死んだ人の悪口を言うのはやめた方が・・・)

あかり「そ、そうなんだよぉ。生徒会の仕事は楽しいよぉ」

結衣「・・・」

その日の昼休み、京子と結衣が教室でドミノ倒しをして遊んでいると、

綾乃「大変よ!歳納京子ーー!」ガラッ

バタバタバッターーン

京子「どうしたんだよ綾乃、いきなりっ。まだ途中だったのにドミノ全部倒れちゃっただろ!」

綾乃「今そんなことはどうでもいいのよ!千歳が見つかったわ!」

京子・結衣「!」

3人は荷物もドミノもそのままで急いで千歳のもとへ。

何と千歳は今は使われていない古い倉庫の奥に閉じ込められていた。

全身はぐるぐる巻きに縛り付けられ、口には猿ぐつわ。完全に身動きが取れない状態だった。
さらに全身には多数の殴られた痕。

千歳はすぐに赤座あかね記念病院に搬送され、入院することになった。
幸い命に別状はなかったが、出血がひどいのと、ほぼ丸2日間何も食べていなかったので極度に衰弱していた。
綾乃・結衣・京子の3人は千歳に付きっきりで看病した。

その甲斐があったのだろうか、数時間後、千歳は意識を取り戻したのだが・・・

京子「記憶喪失?」

綾乃「ええ。事件前後の記憶が全くないみたい。困ったわねぇ。犯人が誰か分かると思ったのに」

京子「まぁ、しょうがないよね。命があっただけでも良かったと思わなくちゃ。
   お医者さんも生きているのが奇跡だと言ってたくらい重症だったんだし」

綾乃「そうね、本当によかったわ・・・うぅぅ」グスッ

京子「綾乃・・・」

結衣「・・・」

次の日の放課後

結衣「綾乃、今日も千歳のお見舞いに行くの?」

綾乃「もちろんよ!1日でも早く良くなってほしいもの。今日は古谷さんも連れて行くわ」

結衣「じゃあさ、千歳の病状に変化があったらすぐに教えてね。たとえば記憶が戻ったとかさ」

綾乃「分かったわ」

綾乃を見送った後、

京子「じゃあ結衣、始めよっか」

結衣「ああ」

2人は何を始めようというのだろう。昨日途中で綾乃に破壊されたドミノの続きか?

いや、そうではない。2人にはやらなければいけないことがあるのだ。それはちなつの捜索である。

昨日の千歳の発見やらなんやらですっかり忘れてしまっていたのだが、
そういえばちなつが行方不明だったということに京子が今朝気付いたのである。

京子「でも一体どこを探せばいいんだろう?」

結衣「大丈夫、大体の見当はついている」

そう言って結衣が向かった先は生徒会室だった。

京子「ここは・・・生徒会室?」

結衣「あぁそうだ。よし、入るぞ」

ギィィ

中は真っ暗だった。人は誰もいない。所々に置いてあるたくさんの変な装置。
規則的に鳴り響いている怪しい機械音。京子は改めて生徒会室という所は不気味な場所だと思った。

だが、七森中の生徒に言わせればあの要塞と化したごらく部の方がよっぽど不気味である。

そして数分後

結衣「この掃除用具入れが怪しいな」

京子「うん・・・」

結衣「開けるぞ!」ガコッ

京子・結衣「!」

そこには、変わり果てた姿のちなつが・・・

京子「ちなつちゃん!なんでこんな事に!」

結衣「遅かったか・・・」

しばらくして救急車が到着、赤座あかね記念病院に運ばれたがもう既に死亡して2日近くたっていた。

京子「2日ってことはちなつちゃんはいなくなったその日に殺されたって事だな」

無数の殴られた跡や刺された跡が全身にあったが、それが直接の死因ではない。
直接の原因は毒物によるものだった。注射器で毒を注射され、それによって死に至った模様。
ちなつの右腕には注射器で刺された跡があった。

京子「ひどい、いったい誰がこんな事を・・・」

結衣「京子、あの後少し調べてみたんだが、どうも古谷さんは弱冠13歳にして
   看護師免許を持っているらしい。注射器の扱いに関してはプロのようだ」

京子「古谷さんって何でもできるんだな。尊敬するよ」

結衣「だが、それだけでは証拠にならない。死体が生徒会室に有ったという事実も状況証拠になりそうだが、
   やはりまだ足りないな。古谷さんが犯人なのはもはや明らかなんだけど」

京子「生徒会室でちなつちゃんの体内から発見されたものと同じ毒が見つかれば決定的な証拠になるんじゃ!?」

結衣「そう思って調べたんだが全く見つからなかった。古谷さんは相当のプロだ。
   そう簡単には隙を見せない。私たちのような一般人では歯が立たないかもしれないな」

京子(結衣もそこそこすごいと思うけどなぁ)

結衣「よし、思い切って聞いてみるか」

京子「へっ?聞くって?」

結衣「古谷さんに聞いてみるんだよ。もちろん『お前が犯人か』なんて聞き方はしないさ。
   『ちなつちゃんの死体が生徒会室に有ったけど何か知ってる?』こう聞くんだ。
   そしてうまく誘導して古谷さんの失言を誘えばいい」

結衣はこの方法は結構良いのではないかと思った。だがその考えは甘かった。そんなに簡単にいくわけがない。

いざ勢い勇んで向日葵に突撃したはいいが、何のためらいも無くスラスラと受け答える向日葵に圧倒され、
さらに彼女はペラペラと屁理屈を並べ立てて結衣を犯人に仕立て上げようとしてきたのだから
もう疲労困憊疲弊して向日葵に別れを告げて京子のところに戻るしかなかった。

結衣「あの娘は天才だ。全く末恐ろしい」

<第5章>

結局今回も事件の真相が明らかにされることはなく、数日が経過。

その間結衣は度々身の危険を感じるようになっていた。

学校では身の回りの物がよく無くなり、机には多数の落書き。
上履きの中に大量の画鋲が入れられていたこともあった。
さらには結衣が一人暮らしをしているマンションの郵便受けに猫の死骸が入れられていたことも。
またある日には、放課後部室で食べていたおはぎの中に針が入っていて、危うく怪我をするところだった。

また京子が最近前より綾乃と仲良くなっているのが結衣には気にいらない。

綾乃は親友の千歳が重傷になり、京子は大好きなちなつを亡くし、共に傷心している中で慰めあうことで
前より関係が深くなっていったらしい。

どうやら2人は放課後によく千歳のお見舞いに行っているようだ。
結衣も行かないかと誘われたのだが面倒臭いから断ってしまった。
もっとも、千歳の容態は綾乃に連絡させて逐一チェックはしていたのだが。

だが、千歳のお見舞いという名目であの2人が長い時間一緒にいることを考えると
胸が張り裂けそうな思いだった。

数々のいじめに逢いただでさえ情緒不安定になっている結衣は、
昼休みに京子が綾乃と楽しそうに話しているのを見かけるとパニックになり、
ついに放課後部室で京子に暴力をふるうようになった。

結衣「京子!おまえはっ、どうして!」バシッ バシッ

京子「やめて結衣!どうして暴力なんかふるうの!?」

結衣「お前がっ!綾乃なんかと仲良くするから!」バシッ

京子「だって!綾乃は千歳が重傷で苦しいんだよ!だから私が慰めてあげないと!」

結衣「私の事はどうでもいいのか!」バシッ

京子「えっ!?」

そこで結衣は今まで数多くの嫌がらせを受けてきたことを初めて京子に告白した。

京子に心配かけまいとして今までずっと黙っていたのだ。

京子「そんな、結衣・・・。なんで今まで黙ってたんだよ!」

結衣「だって・・・、京子に辛い思いさせたくないだろ!
   ただでさえちなつちゃんが死んで辛い思いをしてるのに!」

京子「言ってくれない方が辛いよ!」

結衣「!」

京子「ちなつちゃんが殺されて、この上結衣まで私の前からいなくなったら・・・
   もう私生きていけない!」グスッ

結衣「京子・・・」

京子「だから、何かあったら何でも言って!2人でこの試練を乗り越えていこうよ!」

結衣「京子・・・、京子~~~~!」ダキッ

京子「よしよし結衣、辛かったね。これからは綾乃よりも結衣を優先するから。
   だから泣かないで。この京子様が絶対に結衣を守ってあげるからね」

結衣「うわぁぁぁん!」

結衣は京子の胸の中でいつまでも泣き続けた。

こうしてまた一段と仲を深めた2人。数十分後結衣がようやく泣き止んで顔を上げると京子は笑っていた。

2人はそのまま夕暮れの中を手をつないで下校した。結衣は幸せだった。

・・・・・・

???「お聞きになられましたか?つまりはこういう事ですわ」

???「・・・」

いろいろあって疲れ切って帰宅した結衣。だがまだ眠るわけにはいかない。彼女にはやるべきことがあるのだ。

結衣は真っ暗な部屋の中でパソコンの前に座って何やらぶつぶつつぶやいている。

結衣「さてと、ライフル協会のホームページにアクセスしてっと」カタカタッ

結衣「えーっと、あったあった。『ライフル所持許可者一覧』、これだな」カチッ

ライフルなどというやたら物騒な言葉を口にしているが結衣はいったい何をしているのだろうか?

実は結衣は数日前にライフル協会の「射撃教習」に参加したのだ。
この教習を受けると数日後に結果が発表され、合格ならライフルを所持できるようになる。

でもなぜそんな事を?そう思うかもしれない。

先ほども言ったように結衣は最近身の危険を感じていた。嫌がらせは日に日に激しさを増している。
しかも相手はあの向日葵だ。いつ殺されるか分かったもんじゃない。

そこで護身用にライフルを手に入れることにしたのだ。
何でもアメリカでは護身用として一般家庭に銃が備え付けられているのも珍しくないというではないか。

そこでこの前ライフル協会の教習を受けに行き、今日がその合格発表の日なのだ。
合格者の名前が一覧となってホームページに掲載されるというから見てみたのだが・・・

結衣「五十音順か。『ふ』の項目は・・・」

ライフル所持許可者 一覧

『ふ』・・・・・
   ・・・・・
   フグ田マスオ
   二木佳奈多
   船見結衣
   冬海愛衣
   古谷向日葵
   ・・・・・
『へ』・・・・・
   ・・・・・
『ほ』・・・・・

結衣「や、やったー!合格したぞ!これでライフルが手に入る!もう怖いもの無しだ!」

結衣はあまりにもうれしかったので自分以外の他の名前には一瞥もくれずにホームページを閉じてしまった。

そしてそのまま布団に飛び込み、数秒後には夢の中だった。

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