京子「そうだ、ちなつちゃん家に行こう」 (36)
京子「・・・結衣は実家で用事があるとかで、あかりはあかねさんと出かけたらしいし、ヒマだなぁ・・・あ、ちなつちゃんちに行ってみよう」
・・・
京子「辛うじて、ちなつちゃんへのおみやげゲット!いやー、疲れた。けどこれなら喜んでくれるだろう」
・・・
ピンポーン
ちなつ『・・・はーい!・・・ん?京子先輩?』
ガチャ
ちなつ「・・・どうしたんですか?」
京子「迎えにきた!」
ちなつ「・・・どこにですか?約束をした覚えはありませんけど」
京子「愛の逃避行にさ」キュピーン
ちなつ「お断りします」バタン
京子「ちょっとまってー、遊びにきただけなんだよー!!」ドンドン
ちなつ「ドア叩いて叫ばないでください。近所迷惑です」ガチャ
京子「ごめんごめん・・・ほら、手土産にケーキも買ってきたから」
ちなつ「はぁ・・・どうぞ上がってください」
京子「おじゃまします」
ちなつ「お茶入れてきますから、私の部屋に行っててください。2階上がって、最初の部屋です」
京子「わかったー」
・・・
ちなつ「お待たせしました・・・あ、これって駅前にできたケーキ屋さんのですか?」
京子「うん、2時間並んで、ちょうどこの2つで最後だった」
ちなつ「2時間!?やっぱり人気ありますね・・・私もらっちゃっていいんですか?」
京子「ちなつちゃんへの手土産だし・・・このくらいは用意しないと私じゃ門前払いかと思って」
ちなつ「別に手ぶらでも門前払いしませんよ」
京子「ホント!?」
ちなつ「京子先輩のことも、す・・・」
京子「え?」
ちなつ「・・・き、嫌いじゃないですし」 ぷい
京子「さっき、門前払いしなかった?」
ちなつ「それは京子先輩が変なこと言うから・・・それにドアは閉めたけど、カギまでは閉めなかったので、叩かないで開けることを期待してたんですが」
京子「そ、そうだったの、あはは・・・それにしたっていきなり来て手ぶらじゃ失礼だし・・・」
ちなつ「・・・結衣先輩やあかりちゃんちへは手ぶらですよね?」
京子「幼馴染みだし」
ちなつ「まぁ、小さい頃からしょっちゅう行っていればそうでしょうね」
京子「ささ、どうぞ 」
ちなつ「ありがとうございます。いただきます」パクッ
ちなつ「・・・おいしい!」
京子「うまー!」
ちなつ「行列が出来るだけありますねー」
京子「しかも開店2時間前に並んでギリギリだし」
ちなつ「東京のテレビからも取材に来ますしね・・・ごちそうさまでした」
京子「ごちそうさまでした」
ちなつ「さて、何しましょうか?」
・・・
京子「うわ!また負けたー・・・あ!もう夕方だ」
ちなつ「京子先輩と二人だけでこんなに盛り上がるなんて・・・」
京子「・・・じゃあ、そろそろ・・・」
ちなつ「あ・・・せ、せっかくですし・・・ゆ、夕御飯食べていきませんか?」
京子「え!?でも悪いよ」
ちなつ母「食べていきなさいな」
京子「・・・じ、じゃあ、頂いていきます」
ちなつ母「これから準備するからまだ待っててね」
京子「家に電話しとくか・・・」
・・・
京子母『結衣ちゃんち?』
京子「いや、 後輩のちなつちゃん」
京子母『まあ!また人様の迷惑を考えずに』
京子「で、でもこっちが食べさせてと頼んだわけじゃ・・・」
京子母『当たり前です!!・・・吉川さんのお母さんに変わって』
京子「う、うん」
・・・
京子母『京子がご迷惑をおかけします』
ちなつ母「・・・いいんですよ、ちなつ、あんまりお友達連れてこないから」
京子母『そうですか』
ちなつ母「それに、京子ちゃん、ちなつにあの駅前のケーキを買ってきて下さったみたいで」
京子母『あの子、朝早く出ていったと思ったら』
ちなつ母「だから、そのお礼も兼ねて、京子ちゃんに食べていって欲しいんですよ」
京子母『わかりました、よろしくお願いします』
・・・
ちなつ「うわ!お母さん、フンパツし過ぎ」
ちなつ母「何言ってんの?お客様なのよ」
ともこ「ほら、ちなつのお客さまなんだからもっとおもてなししなきゃ」
ちなつ「おもてなしって・・・京子先輩、どうぞ」コポコポ
京子「ありがとう、ちなつちゃん」
ちなつ「いただきます」
京子「・・・うめ・・・いや、お、おいしい・・・です」
ちなつ母「ありがとう。別に遠慮しないで好きに食べていいのよ」
・・・
京子「ごちそうさまでした!」
ちなつ母「お粗末様でした」
ザー
ともこ「?・・・雨?」
ちなつ「天気予報で言ってたっけ?」ピ
全国担当気象予報士『・・・今晩は全国的に荒れ模様となります。お気をつけください。この後は各地の天気です』
富山担当気象予報士『富山県・石川県の天気です。今晩は夜遅くまで強い雨が降り、ところにより、強風や雷を伴うでしょう。富山県全域に大雨洪水暴風雷波浪警報が発令されました。明日は朝までには雨風は弱まり、昼からは晴れ間が覗きます・・・』
ゴロゴロ・・・ドーン!
京子「・・・」
ちなつ母「京子ちゃんは、今夜泊まってもらった方がいいわね」
京子「・・・い、いや、それはいくらなんでも申し訳無いですよ」
ちなつ母「気にしなくたって大丈夫よ。ちなつもいいでしょ?」
ちなつ「え?・・・う、うん。さすがに帰れないですよ」
京子「ありがとう、ちなつちゃん」
ちなつ「・・・お客様用の布団持ってきますね」
京子「あ!自分で持っていくよ、どこにあるの?」タタタ
ちなつ母「あ!歳納さん?吉川ですぅー。こんな天気ですから・・・いえいえ、いいんですよ・・・」
・・・
京子「ふぃー、いいお湯だった」
ちなつ「じゃあ、私入ってこようかな」ガチャ
ともこ「ちなつへのお古のつもりで取っておいた中学生の時のパジャマ、ちょうどよさそうね」
京子「ピッタリです。ありがとうございます」
ともこ「・・・ちなつは、学校ではどうかしら?小学生の時に転校ばかりで、一緒に入学した友達がいないから心配だったの」
京子「えぇと・・・私が知ってる限りでも3人友達がいます。聞いた話ではクラスの子とも仲良くできているみたいですよ」
ともこ「まぁ、もう3人も友達が!?」
ちなつ母「うれしいねぇ」ホロリ
ともこ「京子ちゃんもちなつのこと、これからもよろしくね?」
京子「はいっ」
・・・
ちなつ・京子「おやすみなさい」
ともこ・母「おやすみなさい」
・・・
ちなつ「そうだ・・・」ズルズル
京子「どうしたの?」
ちなつ「ベッドに2人で寝れないなら、床に布団を2つ並べればいいんですよね」
京子「そんなに私と一緒に寝たいんだね、ちなちゅー!」
ちなつ「ちなちゅー言うな!・・・せ、せっかくですし一緒に」
京子「ありがとう」
ちなつ「・・・家族以外の人と二人っきりで寝るの生まれて初めてです」
京子「え!?そ、そうなの?」
ちなつ「はい」
京子「あれ?あかりの家で泊まりがけの勉強会してなかったっけ?」
ちなつ「あの時は、向日葵ちゃんと櫻子ちゃんもいましたし」
京子「そっか・・・結衣じゃなくてごめんね」
ちなつ「べっ、別にそんなことは!・・・な、何ですか?京子先輩らしくない」
京子「・・・普段無茶苦茶してても、実は結構気を使ってるんだよー?」
ちなつ「・・・知ってます」ニコ
京子「あれ?」
ちなつ「・・・私をごらく部に入れてくれたのも、茶道部が無くなってて、中学校生活が入学早々つまづいた私に気を使ってだし、いつも抱きついてくるのも私が3人に遠慮しないように気を使ってくれてるんですよね?」
京子「・・・」
ちなつ「どうですか?」
京子「・・・まぁ・・・その通りだよ」
ちなつ「・・・なぜですか?」
京子「・・・」
ちなつ「・・・もしかして、昔、一度だけ・・・出会ってたことに関係してたりしてます?」
京子「・・・覚えてたんだ?」
ちなつ「・・・京子先輩こそ」
京子「・・・あの時のちなつちゃん、ひとりぼっちで寂しそうだったから」
ちなつ「・・・そこに気づかれないように強気でいましたけど、今考えると滑稽です。笑うなら笑ってください、さあ!」
京子「そこまで言わなくても・・・ちなつちゃんのことが気になって、話をしたくて、私がちなつちゃんを連れ出したら・・・」
ちなつ「勘違いした結衣先輩とあかりちゃんに、制裁されて逃げ帰りましたね・・・あはは」
京子「本当にあの時はごめんなさい」
ちなつ「連れ出した理由が本当に私と話したいからだったなら、許します・・・今まで京子先輩に、はめられたって思い込んでました。ごめんなさい!」
京子「いや、はめたようなものだよ・・・」
ちなつ「悪いのは勘違いした結衣先輩とあかりちゃんじゃないですか・・・二人はあの日のこと覚えてるんでしょうか?」
京子「なんとなしに聞いてみたことがあるけど、忘れてるみたいだったね」
ちなつ「そうですか・・・まぁいいです。この話は二人だけの秘密ですよ?」
京子「うん」
ちなつ「・・・そういえば、あの時の京子先輩、泣き虫でしたよね」
京子「ま、まぁね・・・」
ちなつ「・・・でも、実は今でも泣き虫ですよね!?」
京子「!!・・・な、何をい、言ってるのかな??い、今のわ、私がな、泣き虫・・・」
ちなつ「・・・目が潤んでます・・・
あの、からかったりとかそういうつもりはないんです。さっき、雷が強かった時、必死で震えるの堪えてるみたいだったので、性格なんてそう簡単に変わるわけがないのに無理して強気な女の子を演じてるみたいに思って、なんと言うか・・・」
京子「・・・ごめんね、実はその通りなんだ・・・ぐずっ」
ちなつ「京子先輩・・・」
わかった
落としてくれ
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tudukihayo