日向「七海を徹底的に無視する」 (41)
七海「ふぁ……あ、おはよう。日向くん」
日向「………………」
七海「あれ……? 日向くん、おはよう……」
日向「…………」
七海「…………えっと」
七海「うん。聞こえなかった……のかな」
狛枝「おはよう、日向くん、七海さん」
日向「あぁ、おはよう狛枝」
七海「…………むー。ねぇ、日向くん」
狛枝「見てよ、この雲ひとつ無い快晴を! 今日も希望に満ちた朝だよね!」
日向「いつも大げさなんだよ……」
七海「日向くん」
日向「狛枝、早くレストランに行こう。今日は朝から無性に腹が減ってさ」
狛枝「そうだね。ああ、ボクみたいなゴミクズが皆と朝食を共にできるなんてーー」
七海「………………」
レストランーー
小泉「日向に無視されてる?」
七海「……と、思うよ」
終里「気のせいなんじゃねーの?」
澪田「千秋ちゃんにゾッコンLOVEな創ちゃんが無視するなんて絶対ありえねーっす!」
西園寺「まーねー。いっつも見てて吐き気がするくらい、リア充オーラまき散らしてるしねー」
七海「…………?」
小泉「あ、自分で気付いてないんだ……」
ウサミ「みなさーん、今日は自由行動でちゅ! 休むもよし、働くもよしでちゅ!」
左右田「つまりいつも通りってことじゃねーか」
ウサミ「そうでちゅ。今日もみんなどんどん仲良くなってくだちゃい! らーぶ、らーぶ♪」
弐大「健康の秘訣は快食・快眠・快便じゃあ!! クソしたらひとっ走り行くかのう!」
終里「置いてくなよ弐大のおっさん、オレも付き合うぜ!」
九頭龍「うるせぇ連中だな……ペコ、俺らは海でも見に行くか」
辺古山「はい…………えっ?」
九頭龍「い、言っとくけど、で、ででデートとかじゃねぇぞ! 貝殻の収穫に行くだけだからな!」
辺古山「……ふふ。承知しました、ぼっちゃん」
左右田「クソ、どいつもこいつもイチャイチャしやがって! 俺だって負けてらんねぇ! ソーー」
ソニア「田中さん、今日はスーパーに行きませんか?」
田中「いや、それより破壊神暗黒四天王への供物が終焉を迎えようとしている。一大事だ」
ソニア「あそこにはペットの餌も売ってます。だからお誘いしたのですよ」
田中「ほう。この刹那の間でそこまで見極めていたとは、貴様は良い斥候になれるな」
ソニア「ありがとうございますっ。さぁ、行きましょう!」
左右田「………………」
十神「哀れな愚民め。勝負の土俵にすら立てんとはな」
左右田「うっせうっせ! こっそり見てんじゃ…………ん?」
七海「………………」
左右田「おい、どうした七海。なんで一人なんだ? 日向はどうした?」
七海「……左右田くん」
左右田「ーーぶはっ! ぶわははははは!!」
七海「……笑い事じゃないもん」
左右田「ないない、それはない! 日向が七海を無視するなんて天地がひっくり返ってもねーよ!」
七海「でも、今だって先にどこかに行っちゃったよ?」
左右田「そりゃあ一人になりたい日だってあるだろ。彼女なら察してやれよ」
七海「……カノジョ?」
左右田「え? だってお前ら、付き合ってるんだろ?」
七海「…………」フルフル
左右田「………………えー」
図書館ーー
日向「さてと……今日は読書でもしながら、のんびり過ごすかな」
七海「……日向くん」
日向「…………」
七海「隣、座ってもいいかな」
日向「…………」
七海「……勝手に座るよ?」
日向「………………」
七海「………………」
七海「……えっと。ちょっと、聞きたいことがあるんだ」
日向「………………」
七海「私……何か、したかなぁ……」
日向「………………」
七海「だとしたら、ごめんね。私、いつもこんな調子だから……どこかで、不愉快にさせたかも」
日向「………………」
七海「でも、わからないんだ」
日向「………………」
七海「私が……普通の人間じゃないから、かな……」
七海「ねぇ、日向くん。私、日向くんと話ができないと、なんだか嫌な気持ちになるよ」
日向「………………」
七海「胸が締めつけられるような、何かを無くしたような……」
日向「………………」
七海「恋愛ゲームは苦手だけど、これが『悲しい』って気持ち……なんだと思う」
日向「………………」
七海「私に悪いところがあったら、直すから。なにか言ってよ、日向くん……」
日向「………………」
七海「デートの途中にお昼寝しないように頑張る。ゲームの話もやめるよ? だから……」
日向「………………」
七海「ねぇ、日向くーー」
罪木「あ、あのぅ! なっ、七海さん、図書館では静かにした方がいいと思いますぅ……」
七海「…………そう、だね……」
日向「………………」
七海「………………」
罪木「ふゆぅ……」
夕方 レストランーー
西園寺「あ、このウインナー美味しいじゃん」モグモグ
花村「でしょう? 良かったら僕の下半身のフランクフルトもご賞味あれ!」
西園寺「……キモ」
十神「汚らわしいポークビッツはしまっておけ、愚民が」ガツガツ
小泉「これが無ければ花村もマシなんだけどね……」
花村「いやぁ、そんなに褒めないでも……ムムッ!?」
十神「ん、どうした?」ガツガツ
日向「………………」モグモグ
七海「………………」カチャカチャ
花村「そこぉ~~~~ッ!! なーにしちょるっぺかおんしらぁ!!」
日向「!?」
七海「…………?」
ウサミ「えっと、『何をしているんだお前達』と言ってるでちゅ」
澪田「今のは通訳なくても分かるっすよ!?」
ウサミ「ハッ!? な、なぜか自然と通訳してしまいまちた……」
花村「そんな陰気な顔で、僕の笑顔満点になる料理を食べるなんて許さないよ!」
日向「…………」
花村「笑顔の無い食卓なんて……鶏さんの入ってない親子丼だよ!!」
終里「ただの卵丼だな!」
弐大「ぬうう、卵丼でもワシは一向に構わんぞ!」
九頭龍「花村が言いてーのはそういうことじゃねーよ、筋肉バカ共」
左右田「……あの話、マジなのか」
九頭龍「あん? 何がだよ」
左右田「日向、七海から聞いたぜ。なんでもお前、七海を無視してるらしいじゃねーか」
小泉「え、あれって本当だったの!?」
左右田「俺もただの思い過ごしだと思ってたんだけどよ。今まさに、そんな状態っつーか……」
日向「………………」
七海「………………」
罪木「そ、それに今日、図書館で本当に日向さんが無視してるのを見ましたぁ」
西園寺「ゲロブタは黙ってな! 息がクセーんだよ!」
罪木「ふゆぅ! す、すみませぇん、私なんかが喋ってごめんなさいぃ……」
澪田「でっ、実際のとこどーなんっすか、創ちゃん!?」
日向「……お前らには関係ないだろ」
九頭龍「なんだと?」
ソニア「ええーい、ひかえおろう!!」
日向「!?」
ソニア「お二人は大切なご友人ですので! その不仲を見過ごしては武士の名折れというものです!」
七海「……ソニアさん」
七海「でも日向くんはもう、私のことなんて……」
日向「…………それは違うぞ!!」
七海「!?」
澪田「うっぴょー! 名言きたっすよ!」
左右田「やっぱり何か理由があるんだな!」
日向「もちろんだ……別に七海が嫌いになったわけじゃない! ただ……」
七海「……ただ?」
日向「七海……昨日、一緒にスーパーに行って、俺が水着をプレゼントしただろ」
七海「…………? う、うん……プレゼントなんて初めてだったから嬉しかった」
日向「でもその後で海に行ったのに、その水着、着てくれなかったよな……」
七海「それは……」
日向「だからそれが悔しくて、つい嫌がらせをしてしまった……ごめん!」
七海「えっ」
小泉「えっ」
左右田「えっ」
十神「これも毒味しておこう」ガツガツ
日向「俺のセンスが悪くて、七海に気に入ってもらえなかったのかと思ったんだ……」
七海「……それは違うよ、日向くん」
日向「え……」
小泉「あのね、日向……女性物の水着は、普通は一度洗ってから使うもんなの」
ソニア「ええ。一度水に浸して、縮んだり、透けたりしていないかを確認するんです」
左右田「ソニアさんの透けた水着ですか!?」
田中「むう……」
辺古山「たとえプレゼントされた物とはいえ、貰ってすぐ着る度胸は流石の私にも無いな」
西園寺「日向おにぃ、そんなことも知らないの? もしかして童貞?」
日向「………………」
七海「だから……今度海に行った時は、ちゃんと着ていくつもり」
日向「な、なんだ……そうだったのか」
七海「日向くんは色々教えてくれるけど、知らないこともあるんだね」
日向「七海に比べたら、知らないことだらけだよ」
七海「ふぁぁ……なんだか、安心したら眠くなってきちゃった……」
日向「寝てもいいぞ。コテージまで運んでおいてやるから」
七海「うん…………」
小泉「……本気で心配しただけ無駄だったね」
十神「フ……俺には分かっていたがな」
左右田「アホらし。つか、なんでこいつら付き合ってねーんだ……」
終里
このSSまとめへのコメント
七海かわいいいいいいいいい