佐天「飛んでくる蚊をすべて自動で撃ち落とす能力かぁ」(144)

計測器「射程範囲1km、命中精度95%、連発能力100発/s 総合評価4」

佐天「え」

初春「凄いですね佐天さん! レベル4ですよ!」

佐天「うーん、もうちょっと広がりのある能力だと良かったんだけど……」

初春「いやいやレベル4なのに贅沢言ったらいけませんよ!」

佐天「贅沢……なのかなぁ」

佐天「そもそも能力が自動なのがねー」

初春「そうなんですか?」

ピキュン

初春「……今のが、佐天さんの能力ですか……?」

佐天「まあね。蚊があたしの半径約1km圏内にに近づいたんだと思う」

初春「確かに自分で使ってるって感じじゃないですね……」

佐天「そうなのよ~、御坂さんや白井さんみたいに能動的に使えるだけで能力者って気分になれるのに」

佐天「この際初春の能力でも良かったな~」

初春「私のはついでですか……」

佐天「うーん、とにかく適当にぶらつくかなあ」

初春「それって危なくないですか?」

佐天「いや~そうでもないんだなこれが」

初春「?」

佐天「見せたげるよ」

テクテク

初春「佐天さん! 迂闊に建物の中を動き回って暴発したら……」

佐天「~♪」

ピキュン

初春「!?」



初春「……何とも、ない?」

佐天「何かね、間に障害物があっても直進するビームを出すんだけど」

佐天「標的に当たるまでは無害で蚊だけを撃ち落とすみたいなんだって」

初春「凄いですね佐天さん!」

佐天「でもぶっちゃけこんな能力じゃあね……初春、能力の交換ができるならあたしと交換する?」

初春「そ、それは遠慮します……」

佐天「……だよね……」

~身体検査~

佐天「佐天涙子です! よろしくお願いします!」



ピキュキュキュキュキュキュキュキュキュン!

ポン ポン ボン ドーン……



計測器「射程範囲1045m、命中精度96%、連発能力105発/s 総合評価4」



佐天「……成長しても嬉しくない……」

佐天「それにしても検査用の蚊ってどこから用意してるのかな……」

初春「どうでした佐天さん! 今日の検査は!」

佐天「うん、成長してたみたいだったよ」

初春「さすがは佐天さん! それにしても佐天さんだけ特別試験場で検査なんて大変ですね」

佐天「仕方ないよ。柵川中の敷地じゃ射程が計れないだろうしね」

初春「半径1kmの中学校なんてあるとは思えないですけどね……」

~職員室~

佐天「失礼します」

先生「来てくれたか。我が校きっての能力者の君にこれを言うのは忍びないんだが……」

佐天「?」



佐天「移動規制……ですか?」

先生「うむ。何でも学園都市のプロジェクトで古代の蚊を再生復元するというのがあるらしいんだ」

佐天「そこでその邪魔をしないように……ですか」

先生「そうだ。後に指定する特定の学区に入るときには、必ず連絡を入れて監視員をつけてくれ、ということだ」

先生「我が校としても抗議したんだが、どうやらお偉いさんの肝煎りらしくてな……申し訳ない」



佐天「分かり……ました」

ガラッ

初春「何の用でした? 佐天さん!」

佐天「……能力のせいで外出規制だって」ピラッ

初春「これは……ひどいですね」

佐天「まあ仕方ないよ。第五学区なんてあまり行かないし」

初春「それでもこれ第七学区に食い込んでますよね?」

佐天「あーあ……何でこんな能力だったんだろう」

~とある大学の研究施設~

研究員「再生法は確立しました。繁殖も問題ないと思われます。しかし……」

「しかし、何だと言うのか」

研究員「現在の繁殖条件を用いると非常に危険な病原体の媒介となり得ます」

研究員「繁殖を完全に制御して個体の放出を防がなければ、大惨事もあり得ます」

「ワクチンの類いは?」

研究員「一応製法と共に準備してありますが……『外』には存在しません」

「成程好都合だ……ご苦労だった。君たちの仕事はここまでだ」

研究員「は?」



ターン

佐天「はぁ……意外に影響がないとは言え、制限されてるって事実がのしかかるわ~」

初春「佐天さん! こんな時こそパーッとお出掛けしませんか! 今日は非番だから付き合いますよ!」

佐天「そうだね、じゃあ……」

ヒュン

黒子「ここに居ましたの初春!」

初春「白井さん!」

黒子「緊急事態ですわ初春! 一緒に来てくださいまし」

黒子「佐天さん、申し訳ないですが初春をお借りしますの!」

黒子「あとこれはまだ公開していませんが、間もなく避難警報が発令する予定です。今日は外出を控えてくださいまし」

佐天「えっ避難警報って一体何が……」

シュン



佐天「行っちゃった。まあいいか、どうせこんな身の上ですよ」

~第一七七支部~

シュン

黒子「初春を連れてきましたの」

固法「ありがとう」

初春「一体何なんですか! 緊急事態って!」

固法「テロリストよ」

初春「テロ……!」

固法「そう。要求は学園都市の解体と科学技術の公開」

初春「そ……そんなことできるわけないじゃないですか!」

固法「要求を受け入れない場合には致死性の生物兵器をばらまくと」

固法「犯人の言い分ではこの生物兵器が発動すれば24時間以内に学園都市の機能は停止、被害は日本全土に及ぶだろうと」

初春「そんな……」

固法「兵力では向こうは全く及ばないけど、生物兵器の正体をつかんで無力化するまでは手出しが出来ない状況ね」

初春「犯人の所在は?」

黒子「第五学区のとある大学付属研究施設ですの」

初春「監視カメラは?」

固法「衛星カメラでは犯人グループは十名前後、正確な人数は把握できてないみたい」

固法「施設の機密性を保つため内部を写せるカメラは備えていないわ」

初春「ということは……」

黒子「誰かが内部の様子をバレないように調べ出す必要がありますわね」

初春「それってもしかして」

黒子「わたくしが参るしかありませんわね。初春、ここを頼めるかしら?」

初春「危険ですよ白井さん! 万一のことがあったら……」

黒子「貴女は誰の心配をしていますの? いっそ犯人グループの心配をするくらいでちょうどいいくらいですの」

黒子「わたくしの位置は常に把握できるようにしてくださいまし」

シュン

初春「白井さん……大丈夫でしょうか……」

固法「彼女を信じるしかないわね。生物兵器の正体をつかんでくれれば……」

佐天「こんにちは!」

初春「佐天さん! どうしてここに!?」

佐天「やだなぁ初春、そんなに驚かなくても……」

初春「それどころじゃないんですよ! 想像以上に危険な話なんですよ!」

佐天「てへぺろ」

固法「全く、冗談では済まないというのに」

~事情説明中~

佐天「ふぇ~、それは……」

初春「だから白井さんは避難してって言ったのに……」

佐天「で、これはいろんな場所の映像かぁ」

佐天「あれ? あの見慣れない装置は?」

固法「学園都市製の音響兵器の一種ね。相手が若年層の場合が多いからその年代にしか聞こえない音で無力化するの」

佐天「へぇ~」

固法「通称モスキートと呼ばれるわ」

佐天「へー、蚊ですk ピキュン



ドゴーン

固法「………………」

初春「………………」



佐天「………………」

佐天「……えっ?」

初春「佐天さんの能力って……蚊を自動で撃墜する能力じゃないんですか」

佐天「……そうだと思ってたけど」

固法「まさか、その『蚊』って、あなたがそう認識したものを攻撃する能力じゃ……」

初春「佐天さん! この金属バットを蚊だと思い込んでください!」

佐天「どっから出したんだか……どれどれ」

佐天(これは蚊だこれは蚊だこれは蚊だ……)

佐天(………………!!)



佐天「ダメみたい。やっぱりこれが蚊じゃないってどこかで認識してるからかな」

固法「そうみたいね……くれぐれも精神とか幻影を操る能力者に変なことされないように」

佐天「はい……」

~第五学区・研究施設付近~

黒子(ここまでは順調ですのね……問題はここから)

黒子(建物内部の見取り図・監視カメラの範囲は事前に情報提供を受けたとはいえ……)

黒子(何も見えない中に直接テレポートするわけにはいきませんの)

黒子(どうにか取っ掛かりを……)

ギイ……

黒子(犯人グループの誰かのようですの。見張りの交代かしら)

「~~~」

「~~~」



黒子(やはり距離がありますわね。強行突破しかありませんの)

ヒュン

犯人「ん?」

ヒュン

犯人「何だ!?」

バキッ

犯人「」

黒子「一気に決めますの!」

ヒュン

黒子「釘を扉にテレポートさせて視界を確保して……と」ヒュン

黒子「前方よし、ですの」

ヒュン

黒子「生物兵器の正体を掴むと仰いましても……素人には恐らく分かりませんわね」

黒子「犯人グループを一網打尽にする方が遥かに早いですの」

ヒュン

犯人「」

犯人「」

犯人「」

黒子「これで約半数と言ったところですのね……さて、次は」



チクッ

黒子「?」

黒子「全く、季節外れの蚊ですのね」ペシッ

黒子「さて、次のフロアは……」



黒子「はぁ……はぁ……何ですの……」

黒子(急に……体が……)



黒子(まさか……生、物……)



ドサッ



「ボス、どうやら侵入者はこのガキのようですぜ」

「ふん……おい、見せしめだ。生物兵器の宣伝と人質の存在をアピールしてやれ」

「はっ」

~第一七七支部~

初春「白井さん……大丈夫でしょうか……」

佐天「大丈夫だって」

ピコーン

固法「画像通信が入ったわ。白井さんではないとしたら……」パチン



『学園都市は最も愚かな選択をした』

「「「白井さん!?」」」

『我々の忠告を無視した愚か者は、生物兵器の犠牲となった』

『その生命は持って2時間という。一人の愚か者が死に至る様を見届けるがいい』

『なお、我々が留まっている建物を破壊することがあれば、即座に生物兵器が撒き散らされる手筈になっている』

『今度こそ選択を誤ることの無いよう切に願う……』



一同「………………」

初春「白井さん……」

固法「最悪の事態ね……」

佐天「……仮にですけど、生物兵器の問題が全て片付いたとしたら、白井さんを守りつつ短時間で制圧できる可能性は?」

固法「……警備員の意見も聞かないと何とも言えないけど、恐らく問題はないと思う」

初春「でも佐天さん、生物兵器の問題が片付くなんてこと……」

佐天「大丈夫だよ初春。……多分」

黒子「ぅぅぅ……」

犯人「あれから一時間は経ったというのに、何の音沙汰もありませんね」

ボス「譲歩するならそれでよし、このままガキがくたばっても学園都市の影響力は低下する」

犯人「さすがですねボス」

ボス「全てはこの古代兵器様様だ。かつて恐竜を絶滅させた生物兵器が現代に蘇るとはな」

ボス「はっはっはっは!」

ピキュン ボン!

ボス「?」



ドガシャアァァァァン!!

犯人「!?」

ボス「何事だ!」



「そこまでじゃんよ!」

~五分前・第五学区内~

黄泉川「こんなところまでよく来たじゃん」

佐天「協力していただいてありがとうございます」

黄泉川「どうしようもない犯人どもをさっさと捕まえるじゃん。そのための協力は惜しまないじゃんよ?」

佐天「能力は先程お見せした通りです」

佐天「研究施設に向かって駆動鎧で加速して距離1kmに接近した時点であたしの能力が発動したら」

黄泉川「そのまま建物内部へ一直線じゃん」

佐天「はい、よろしくお願いします」

黄泉川「それにしても脅しのつもりで人質の居場所をリアルタイムで流すなんて馬鹿なやつらじゃん?」

ボス「馬鹿な……この建物の中には無数の生物兵器が……」

黄泉川「そいつらは一匹残らず撃ち落としたじゃんよ」

佐天(白井さんの手のひらに潰れた蚊が写ってて助かりました)

佐天「一刻も早く! 白井さんを!」

黄泉川「この建物は警備員に完全に包囲されてるじゃんよ? 大人しくすれば命は保証するじゃん」

ボス「くっ……」ダッ

黄泉川「今さらどこに逃げるじゃんよ!」

ボス「何てことだ……この建物ごと破壊するならともかく、生物兵器だけを除去する能力者とは……」

ボス「だが俺は終わらんぞ、学園都市に復讐するまでは……」

ボス「……皮肉なものだ。まさか学園都市の技術に頼ることになるとはな……」



黄泉川「やっと追い詰めたじゃんよ!」

ボス「それはどうかな?」

黄泉川「!?」

ボス「これは学園都市製の攻撃ヘリ、通称六枚羽の改良型」

ボス「本来人が乗るような代物ではないが、この場はこれで退かせて貰う」

黄泉川「くっ! 逃がすわけにはいかないじゃんよ!」

ボス「そんな駆動鎧で何ができる! ではお別れだ諸君!」



バラララララ……



黄泉川「……まさか学園都市から逃げられるとは思わないけど」

黄泉川「子供に危害を加えて人質にするような奴はこの手で捕まえたかったじゃんよ……」

佐天「分かりました」

黄泉川「?」



佐天「落ちろカトンボ!」ピキュン



ドゴーン

~~~

初春「お手柄ですね佐天さん!」

佐天「いやーあはは……」

黄泉川「人質の子は学園都市最高の医者のところで一命を取り止めたみたいじゃんよ」

初春「白井さん……よかった……」

佐天「それにしても怖い事件だったねー」

初春「佐天さんがいなかったらと思うと背筋が凍りますね」

佐天「だけどさ」

初春「?」

佐天「正直この能力って、本当に存在意義に疑問を持ってたんだ」

初春「佐天さん……」

佐天「だけどこうやって誰かのために役立てられたら、やっぱりこの能力を持っててよかったって思えるようになれたんだ」

初春「……おめでとうございます! 佐天さん!」

黄泉川「でも制御は完璧にして欲しいじゃんよ? 備品の音響兵器がバラバラじゃんよ」

佐天「済みません……」

黄泉川「下手したら向こうの兵器博物館に置いてあるモスキート戦闘機もはk ピキュン



モクモクモク ナンダ? カジカ? バクハツガ!

一同「………………」

佐天「鋭意、努力します……」





佐天「飛んでくる蚊をすべて自動で撃ち落とす能力かぁ」

おわったー

書くのが遅くて申し訳ない
うまく行った佐天さんもいいよね

読んでくれた・支援してくれた方々に感謝
ありがとうございました

   /.   ノ、i.|i     、、         ヽ
  i    | ミ.\ヾヽ、___ヾヽヾ        |
  |   i 、ヽ_ヽ、_i  , / `__,;―'彡-i     |
  i  ,'i/ `,ニ=ミ`-、ヾ三''―-―' /    .|

   iイ | |' ;'((   ,;/ '~ ゛   ̄`;)" c ミ     i.
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