弟「壁から手が出てる…」(330)
手「……」
弟「な、なんだよこれ」
手「……」
弟「気のせいとかじゃ、ないよな」
手「……」ピクッ
弟「!?」
手「」バタバタバタ!!
弟「うっ、うわあああああああ!」
手「」バタバタ!
弟「ぁ…あ、…ぁ」ガタガタ
手「………」
弟「…?」
手「」グキグキグキッ
弟「っぎやあああああああああああ!!」
姉「うるせえええええええええええ!!!」ドンッ
弟「ひっ!」
手「ビクッ」
姉「もう、こんな時間に隣でギャーギャーうるさいよ!」ガチャ
弟「……ぁ…、ね…」ガクガク
姉「なによ」
弟「か…かべ…!かべ…!」
姉「かべ?壁がどうかしたの?」
弟「そこ…いる…!手…!」
姉「て?」
手「………」ブラーン
姉「………ぁ」
姉「か…壁から……手が…」
弟「…ぁ、ぁ……!」ガクガク
手「」グキッグキッ!
姉「…!」
姉「ぁ……」
弟「…ね、…ねえちゃ……!」
姉「ぁ……、ぁ、」
姉「あんただったのねっ!!」クワッ
手「!?」ビクンッ
姉「あたしの睡眠を妨害するやつはあんただったのね…!」
弟「え?」
姉「弟くんの部屋の壁から声がしてたのよ」
弟「こ…声?」
姉「そうよ、なんか詰まったような声。むー、むーって」
弟「」←腰抜けた
姉「それのおかげでこっちは気になって全っ然眠れなかったのよ」
姉「だけど、その声の主が今分かったわ」
弟「そ…それって」
姉「そう、この手よ」
手「!?」ジタバタ
弟「それは分かったけどさ、これ…どうすんの?」
手「……」ブラーン
姉「そうねぇ…」
姉「ま、とりあえずこの手の主が見てみたいわね」
弟「えっ?まさか…!?」
姉「この手を引っ張ってみる」
弟「あわばばばばばば」ガクガク
姉「どうしてこんなことしてるのかとか、目的も知りたいしね」
弟「しりたくないしりたくない」
姉「本人が出てきたらこういうことを二度としないよう教えなきゃ!」
弟「やめて、やめてやめてやめて」
弟「姉ちゃんそれはやばいよ!」
姉「どうして?」
弟「どうしてって…その手があるところから詰まったような声が出てたんだろ?」
姉「そうよ?」
弟「つまり、その手のあるじは苦しんでるってことじゃん」
姉「そうね。で?」
弟「だから!つまりこの霊は邪念が強いってことなんじゃないの!?」
姉「さあどうかしら。あたしこの手の物はよく見るけど、これ
そんなに怖くないわよ?」チラッ
手「!」ピクッ
姉「ほらwさっきからピクピク反応してかわいいし♪」
弟「ねーよ!」
姉「ここで問答していても始まらないわ。怖いのなら弟くんはあっち見てなさい」
弟「えぇぇ」
姉「その間にさっさと話しつけて帰ってもらうから、ね?」
弟「うう、分かった」クルリ
姉「準備はいい?」
弟「いっ、いつでも…!」
姉「よし、じゃあ行くわよ」
弟「……」ゴクリ
姉「んっ、よいしょっと!」グイ
幽霊巫女「きゃっ!」
弟「Σ(゚Д゚;!」
幽霊巫女「いたた…おしりが……」
弟「(;゙゚'ω゚')」
姉「ついに正体を現したわね!…って」
幽霊巫女「ぁ………」
姉「………」
弟「………」
姉弟「巫女!?」
幽霊巫女「あっ…はい。はじめまして、巫女といいます」ペコリ
弟「………」
姉「………」ポカーン
巫女「あ、あの、助けていただき本当にありがとうございます」
弟「あ…ああ。いえ、とんでもない」
姉「あんたはなにもしてないでしょう」ポカ
弟「いたっ」
巫女「ぁ…あの、えと」
姉「ごめんなさいね、うちの弟くん怖いの苦手で」
巫女「い、いえとんでもないです!私の方こそ驚かせてしまって」
姉「まあ壁から手が出てたら誰でも驚くわよね~」
姉「あたし慣れてるけど」
弟「お、おれはこういうのはじめてなんだ!仕方ないだろ!」
巫女「あぅ…驚かせてしまって本当に申し訳ありませんでした…」
弟「いや、思ってたのと全然違ったからいいけどさ」
姉「ふんふん。悪いやつだったら蹴り飛ばそうと思ってたんだけど、
ちがうみたいだしよかったよかった」
弟「け、蹴り飛ばすって」
巫女「あわわ…」
姉「ところで。巫女ちゃん、だっけ?ちょっと聞きたいことが
あるんだけど」
巫女「は、はい。なんなりと」
姉「どうしてコイツの部屋の壁に埋まってたの?」
巫女「それは、ええと…宛もなくふらふらと彷徨っていたら
いつの間にかあそこに引っかかってました」
弟「引っかかる?幽霊なのに?」
巫女「はい」
姉「………」
姉「ぶっっ!!」
巫女「!?」
姉「幽霊でもどっかに引っかかることってあるのねwくひひww」
巫女「///」
弟「おいちょっと姉ちゃん、巫女さんに失礼だろ!」
姉「ひーーっwwwひーーっwww」ゲラゲラ
弟「ごめんね巫女さん。うちの姉ちゃん、遠慮がなくて…」
巫女「いいえ。私こんな姿ですし、遠慮がないほうが嬉しいです」
弟「そ、そっか」
巫女「はい。それにこういう形でお二人とお話できてとても嬉しいです」
弟「? というと?」
巫女「私、壁に引っかかる前からこのおうちに住まわせてもらっていて。
いつかおはなししたいなって思ってたんです…!」
巫女「職業柄、清掃は得意なのでお掃除すれば気づいてくれるかもって
思って庭掃除とかしてたんですけど…」
弟「…誰もきづかなかったと」
巫女「はい。でもお姉さんは薄々気付いておられたみたいですね」
姉「かwwwwwべwwwwwないわwwwwww」
弟「にしたって遠慮なさすぎ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
姉「さってと。騒音の謎も解けたわけだし、あたしもう寝るわ」
巫女「お騒がせして本当に申し訳ありませんでした…」
姉「いいのいいの。それじゃあおやすみ~」バタン
弟「…行っちゃった」
弟「………」
巫女「………」
弟「…えと、俺ももう寝るから」
巫女「え?あ、はい…!おやすみなさい…!」
弟「う、うん」モゾモゾ
弟「……………」
弟(明日にはどっかに行ってるだろう…)
朝
弟「おはよう姉ちゃん」
姉「おはよー」
弟「ごはんはどっちにする?パン?」
姉「コメー」
弟「わかった。ちょっとまってて」
姉「アンタ、昨日は良く眠れた?」
弟「えっ、ああ。良く眠れたけど。なんで?」
姉「おかしいなー」
姉「あのあとあたし自分の部屋に戻ったじゃん」
弟「うん」
姉「そのあと布団かぶってぐっすり眠ったのよ。そこまではいいんだけど」
弟「うん」
姉「深夜になったら今度は廊下をバタバタ走る音に目を覚ましたわけ」
弟「ふーん」
姉「あんたじゃないでしょうね」
弟「ち、違うよ!」
姉「うーん…、じゃあみこっちかしら」
弟「それはないと思うよ。あのあとどこかに行っちゃったみたいだし」
姉「なにいってんの。庭でお掃除してるじゃない」
巫女「~♪」
弟「(゚д゚)」
弟「なんだ、いたんだ…」
姉「なになに?美人な幽霊がいてくれて嬉しいの?w」
弟「べ、べつに!?いたってどうってことないし!」
姉「(・∀・)ニヤニヤ」
姉「ま、それは置いといて。問題は廊下走りの正体よ」
弟「巫女さんとはまた別のお化けかな」
姉「そうかもしれないわね」
弟「うちってそういうのを寄せるものでもあるのかな…」
姉「あっ、そういえばうちに霊媒師みたいな人が来たことあったわよね」
弟「ああ、来たね。ニ三回くらい」
弟「すごい顔していきなり入ってきたからびっくりした」
姉「あの時さぁ、霊媒師の人なんか訴えてたわよね」
弟「あぁ、あなたの家に祀ってあるものはちゃんと管理しないと祟られるだの何だの
って言ってたね。お稲荷さんだったかな」
姉「そうそれそれ!裏の庭にあるあれよ~」
弟「お稲荷さんの祟りはすごいんだってねー。最近はちゃんと管理してないなー…………」
弟「………」
姉「………」
弟「……………」
弟「そ…それだ」ガクガク
巫女「お二方!」ガラッ
弟「なっ、なに?」
巫女「裏に祀られている稲荷の神の祠が大変なことになってます!
なんだか物凄く怒っています!」
姉「あはは、やっぱりか」
弟「…もう帰りたい」
巫女「普通ならあんなことには…いったい祠に何をしたんです!」
姉「何も」
SS速報のパクりなのか同一作者なのかはっきりしろ
巫女「お二人とも何もしていないんですか?」
弟「う、うん。何も」
姉「…そうよ?」
巫女「で、でも何もしていないならどうしてあんなに怒っているのかしら……」
弟「わはははははは…」
同一作者
本当はVIPでやりたかったんだがすいとんくろた
巫女「お二人とも、本当に何もしていないんですね?」
弟「うん…ていうかその…」
姉「あ、あはははははは」
巫女「?」
弟「あの…実を言うとね…」
姉「あたしたち、祠には『本当に何もしていない』の」
巫女「………」
巫女「ええぇぇぇっ!?」
巫女「お、お供え!お供えくらいはなさっていますよね…!」
姉「全然」
巫女「それでしたら周りのお掃除くr
姉「全く」
巫女「」クラッ
弟「巫女さん…?えと、なんかヤバイのかな?」
巫女「ヤバいも何もこのおうちはおしまいです…!」
姉「なん…ですって…?」
弟「」
巫女「稲荷の神はとても強い力を持つ神様です。善しにも悪しにも
与える影響は大きいんです」
巫女「その為、世間一般では祟りが恐ろしい神様として認知されていますが…」
弟「ど、どういったことをするとお稲荷さんは怒るの…?」
巫女「稲荷の神さまへの接し方がいいかげんな場合です」
巫女「祟りが恐ろしいとされるのは力が強いが故です。清廉とした心と
態度で臨めば大きな福を与えて下さいます」
姉「…あたしら特になんとも思ってなかったわね」
弟「やっぱり怒ってる…?」
巫女「それはもう物凄く」
姉「一体どうすればいいのかしら…」
弟「や、やっぱり謝りに行くのが一番じゃないかな。許してくれるか
どうか分かんないけど…」
巫女「私も謝るのが一番だと思います」
巫女「それに、このまま放っておくと何が起きるかわかりません…」
弟「だよね。…よし、それじゃあ謝りに行こう」
姉「大丈夫かしら…?」
弟「わかんないけど、とりあえず謝っておこうよ」
姉「う…うん」
家の庭
弟「そういうわけで祠の前に来たけど」
姉「…うえっ」
弟「わっ、姉ちゃんどうしたの!?」
姉「…やばい。これ、ほんとにやばいよ…」
弟「ええっ、なにが?」
姉「なんか…変なモノがそこら中を漂ってるの……」
巫女「…どうやらお稲荷さまは周りの良く無いものを片端から
集めているようです」
弟「そ、それって」
巫女「死者の魂から不運の靄まですべてです」
弟「」
弟「とりあえずどうすればいいんだ…」
巫女「私がお稲荷さまを呼びます」
巫女「それをお稲荷さまが承諾なさってくれたのなら、おそとに
出てきて下さるはずです」
巫女「出てこられたら弟さんと姉さん、お二人から謝罪の意を
お伝え下さい」
姉「わ、分かったわ」
巫女「謝罪は言葉を選ぶことより、心が大切ですからね」
弟「う…うん」
巫女「それでは、いきますよ」
弟(いったいどんな儀式を………)
巫女「あのー…すみません、お忙しいところ申し訳ないのですが…」
弟「案外普通だった」
巫女「はい、…はい、そうです。…ええ」
姉「どうやら取り次いでくれてるみたいね」
弟「姉ちゃん、どうしよう…」
姉「きちんと謝ればきっと許してくれるわ。心よ、こころ」
弟「う、うん。頑張る」
巫女「お二人とも」
姉弟「はいっ!」
巫女「稲荷の神さまは『今からそちらに行く』と仰っています。
心の準備はよろしいですか?」
弟「お、おう」
姉「お…お稲荷さまでもなんでもどんとこい!」
巫女「分かりました。…稲荷の神さま、いらっしゃってくださいー」
稲荷の神「…来た」フリフリ
弟「き…狐っ娘だとおおおおおおおおおおおお!?」
姉「かっ、かわいいぃぃぃぁぁぁぁぁぁぁあぁああ!!」
稲荷神「……………」ピキッ
巫女「お二人とも!いけません!」
弟「はっ!あ、あの!お供え物とか、掃除とか全然しなくて
本当に申し訳ありませんでした!」
姉「わたしたちは自らへの満足と優越に溺れ、日々恩恵を受けているにも
関わらずそれを忘れていた忘恩の徒です」
稲荷神「……………」
姉「そんな哀れな私たちに今一度服をもたらしてくださいませんか。
自分勝手なのは承知しています」
弟「ほんとうに!ほんとうに申し訳ありませんでしたっ!」ゴツンゴツン!
稲荷神「……………」
巫女「こんな彼らですが、心を改め奉仕に尽くすと言っています。
どうか許してあげて下さいませんか?」
姉「………」ドキドキ
弟 orz「………」ドキドキ
稲荷神「……………」
稲荷神「…やだ」
稲荷神「…許さないもん」つん
巫女「そ…それはなにゆえ……?」
稲荷神「だってだって、お酒くれないんだもん」
弟「お…お酒って?」
姉「多分御神酒のことじゃないかしら……?」
稲荷神「油揚げだって何年もたべてない…」
稲荷神「今日は何かくれるかなって思っても、全然来てくれない」
稲荷神「もう怒ったもん。…許さないもん」
巫女「こ、これは困りましたね」
弟「あの、お稲荷…ちゃん?」
稲荷神「……っ」カァ
弟「えと…お酒なら買ってくるよ。今日学校だし、帰りに」
稲荷神「………」
弟「毎日なにか新しいものをお供えするし、掃除もする。誓うよ」
稲荷神「………、…」そわそわ
弟「絶対に、悪いようにはさせない」
稲荷神「…!」
弟「……だから」
弟「家におばけを集めるのだけはやめて…っ」ガタガタ
稲荷神「がくっ」
巫女「だそうですよ。如何なさいます?」
稲荷神「……………」
稲荷神「…そ、そこまで言うのなら、いいかな……」
弟「ほんとに!? あ、ありがとう!」
稲荷神「……………」
稲荷神「ちゃんとわたしのお世話、してよね」
弟「します!します!絶対します!良い人だ!」
稲荷神「……、………///」ぷいっ
姉「っはあ。なんとか許してもらえたか~」
巫女「これにて一件落着です」
姉「さってと。許してもらえたみたいだし、あたしは学校行くとしますか」
弟「でも姉ちゃんまだ朝ごはん食べてないじゃん。いいの?」
姉「いいのいいの。ダイエット中だしぃ~w」
弟「はぁ。朝ごはん抜くと良いこと無いっていってるのに…」
姉「それでは行って参りますっ。みこっち、弟くんのことよろしくね」
巫女「え…?あ、は、はいっ!」
姉「んじゃっ!」ダダダーッ
弟「…行っちゃったよ」
巫女「…行っちゃいましたね」
稲荷神「………足、速い」
巫女「さて弟さん、私は姉さんに弟さんのことを任されました!」
弟「う、うん」
巫女「これがどういう意味なのかわかりますか?」
弟「ええと、取り憑かれた?」
巫女「違います…」
弟「うーん、じゃあなに?」
巫女「つまり、私は弟さんの守護霊になったということなのです!」
弟「ええっ、誰が決めたの?」
巫女「私です!」ドヤッ
弟(うおおおおおおおおおおおおお!)
弟(ついにっ!ついに来たっ!)
弟(俺にも美人な守護霊に憑かれる時がっ!)
弟(しかも巫女!巫女!巫女!ktkr!)
巫女「? えと、なにか?」
弟「いや、なんでもないよ」
弟(守護!守護!守護!守られてる!Foooooooo!!)
弟「…じゃなかった。それよりも早く学校に行こう」
弟「えと、巫女さんもついてくるの?」
巫女「もちろんですとも!」
弟(いいね!いいね!)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
学校 弟のクラス
弟「はい学校に着きました」
巫女「………」キョロキョロ
巫女「これが学校ですか?」
弟「うん。そうだよ」
巫女「ふぅむ、使っている筆記具が寺子屋とだいぶ違いますね」
弟(て、寺子屋?)
巫女「ん…あれ?なんですかこれ。何も書けませんよ?」ガリガリ
弟「巫女さん、シャーペンの芯が出てないんだよ」
巫女「芯?…?」
弟「ほら、ここ押すと先っちょから芯が出てくるでしょ。すると文字が書ける」サラサラ
巫女「…うーん。現代の筆記具は使いづらいです」
弟「筆の名残は全くないからね」
弟「シャーペンは一度日本で開発されたんだけど、あんまり売れなかったんだ」
巫女「ふむふむ」
弟「平仮名や漢字には払いとか留めとかがあるでしょ。だから日本人はしょっちゅう芯を折っちゃうんだ」
弟「で。日本人には扱いにくいので外国に出してみたらおお受けして、もう一回日本に帰ってきたんだ」
巫女「外国…英吉利や亜米利加とかですか?」
弟「え…?まぁとにかく外国」
巫女「日本は開国したのですか?」
弟「うん。嘉永何年だったかな…覚えてないや」
巫女「嘉永?私は天保までしか知りません」
弟(巫女さんが生きていた時代は江戸時代なのか)
ガララ
女教師「は~いみなさんおはよう~今から出席とりますね~」ツカツカ
巫女「あっあっ、どなたかいらっしゃいましたよ?」ワクワク
弟「あぁ、あれはこのクラスの担任の先生」
巫女「師匠みたいなものですか?」
弟「ああそうそうそんな感じ」
弟(師匠というものがなんなのか分かんないけど)
巫女「前にあるあの緑色の板はなんですか?」
弟「あれは黒板といって、あそこに授業の内容を書きこんでいくんだよ」
巫女「黒板?緑色なのにですか?」
弟「うん」
巫女「………気になりますね」スタスタ
弟「あっ、ちょっと巫女さん!?」
女教師「今日は午後に避難訓練があるので皆さんしっかりと訓練に励みましょうね~」
巫女「うーん…どうやって書くのかしら」ウロウロ
弟「………」ハラハラ
女教師「それでは今から避難経路を黒板に描きま~す」
女教師「まず、ここが教室で~」カキカキ
巫女「…!」
弟(巫女さんが書き方を学び取った!)
弟(やばい、皆が注目してるところに文字なんか書かれたら)
巫女「なるほど、これで文字が書けるのですね!」
巫女「えー、とりあえず…食前の祈りを込めた一句を書いてみましょうか」コホン
巫女「たなつもの 百の木草も天照す 日の大神の 恵み得てこそ」
スラスラ
クラスメート「なぁ、あのチョーク浮いてないか?」
クラスメート「ま、マジだ!」
女教師「ちょ、チョークが勝手に文字を…なんてミステリアスなんでしょう!」
クラスメート「ゆ…幽霊だあぁぁ」
クラスメート「…、……、…」ガクガクブルブル
オカルト「こっ、これはっ!」ガタッ
オカルト「これは我が校の怪談七不思議を塗り替える大事件だっっ!」
ワーワーギャーギャー
巫女「えっえっ?なに?なに!?」
弟「………………」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
色々あって放課後
友「弟!見たか?今朝の浮遊するチョーク!」
弟「あーみたみた。一体誰があんな事したんだろうねぇ」
巫女「………///」
オカ「そりゃあ勿論霊的な何かさ。間違いない!」
弟「へえ、例えば?」
オカ「この学校で謎の死をとげた生徒の霊とか、行方不明になった生徒とか。
もしかしたら学校の妖怪かも知れない!」
友「なあ。あの浮いたチョークさ、なんか黒板に文字書いてたよな。達筆すぎて
全然読めなかったけど」
オカ「ま、まさか江戸時代とかの霊だというのかっ!?」
巫女「ぎくっ」
弟「うーん、そうかもねぇ~」
オカ「こうしちゃいられない!この学校ができる前には何があったのかを
今すぐ調べなければ!」
友「その調査、俺も協力するぜオカ!」
オカ「おお、そいつは頼もしい!じゃあまずはここら一帯のだな」
巫女「ふふっ、お二人とも楽しそうで何よりです」
弟「はぁ、どんなに探しても見つからないってのに」
巫女「一所懸命に何かを探究するというのはとても良いことですよ?」
弟「たしかにそうなのかも知れないけどさ」
弟(…そろそろ帰らないとな。途中でお稲荷ちゃんのお供え物買うしか無いし)
弟「巫女さん、そろそろうちに帰ろう」ガタッ
オカ「え?」
友「弟、今なんて言った…?」
弟「え?何って………あっ!」
弟(しまった!感覚でつい巫女さんのことを…)
巫女「お、弟さん…?」
オカ「……………」
オカ「さては弟、お前が今回の事件の黒幕だな…?」
弟「ま、まさかぁ!そんなわけないじゃん知らないよ~」
友「嘘だッ!おまえ今あたかも隣に人がいるような感覚で喋っただろ!」
弟「ちちち違うって!これはただの独り言で…」
オカ「否!断じて否!!」
友「弟、お前は何かを知っている!」ビシィ
弟(しまったぁぁぁ)
巫女「ど、ど、ど、どうしましょう…!」アセアセ
弟(ここでバカ正直に巫女さんのこと話したらきっと家に帰して貰えない)
弟(着いたとしてもその頃にはもうお稲荷ちゃんは怒ってて)
弟(またよからぬものを家中に集め始める。そうなったら家はお終いだ!)
弟「巫女さん…」
巫女「はい…?」
弟「…逃げるよっ」ダッ
友「あっ、こら待ちやがれ!」
オカ「話を詳しく聞かせろぉぉぉぉ!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~コンビニ~~~~~~~~~~~~
弟「はあっ、はあっ、はあっ」
巫女「弟さん大丈夫ですか?」
弟「うん…。適当なコンビニに逃げ込んじゃったけど…ここまで来れば
アイツらも追ってこないだろ」
巫女「そうですね、もう姿も見当たりませんし」
巫女「一応逃げ切れたと思います」
弟「はあぁぁぁ」ヘナヘナ
店員「お客さんそんな所で寝ないで下さい」
弟「すいません…」
弟「ちょうどいいや、ここでお供え物を買っていこう」
弟「とりあえずはおまんじゅうでも買っておくかな」
巫女「そうですね。あと必要なのは御神酒です」
弟「御神酒って?」
巫女「日本酒のことです。これがあれば稲荷の神さまも許してくれると思います」
弟「御神酒って日本酒の事だったの?それじゃあ俺は買えないよ」
巫女「えっ?どうしてですか?」
弟「だって俺未成年だもん」
巫女「みせいねん???」
弟「成人してないってこと。未成年者はお酒を買っちゃいけないんだ」
巫女「へぇぇ」
巫女「それでしたらもう一つくらいはお供え物を購入しないといけませんね」
弟「油揚げは流石にないし………あ」
巫女「どうかなさいましたか?」
弟「ふふん、こいつがあった」
巫女「どん、○え?」
弟「そう…容器にお湯を入れて五分待つだけでうどんができてしまうという
魔法のアイテムだよ」
巫女「たった五分でうどんが…!?すごい!!」
弟「このどん○衛をパフォーマンスしながらつくればお稲荷ちゃんは驚きのあまり
目を回してしまい祟りどころではなくなるだろう…ふふふ」
巫女「………」ジュルリ
弟「巫女さんも食べたい?」
巫女「…!」コクコク
弟「じゃあ巫女さんの分も買おうか」
巫女「わぁ……!ありがとうございます!」
弟「いいよこれくらい。今朝はお世話になったし、これはその恩返し」
巫女(弟さんのおごり…!)
弟「すいませーん会計お願いしまーす」
店員「は~いただいま~」
巫女「どん○え!どん○え!」ズンチャカ
じたく
弟「ただいまー」
巫女「只今帰りました」
姉「おとうとぉ~~おそいよぉぉぉお姉ちゃんお腹空いたぁぁ~」ズルズル
弟「はいはい、今から作るから待ってろ」
弟「まったく…晩ご飯くらい自分で作れるようになりなよ。仮にも一家の長女なんだから」
姉「だってぇ~おとうとがいればぁ~勝手にご飯ができるんだも~ん」
弟「そんなんだから彼氏できないんだよ…」
姉「うるさぁ~~い!」
稲荷神「姉弟のやりとり………羨ましいなり」
巫女「弟さん!どん○え!どん○え!」
弟「あ、そうだね。今から作るよ。まずはお湯を沸かさないと」
弟「巫女さん、悪いけど袋から取り出してくれる?」
巫女「はい!」ガサガサ
姉「うがあぁぁおとうとぉ~ご飯はまだか~!」
弟「うっさいちょっとくらい我慢しろ!」
姉「うえぇぇ~おとうとがいぢめるぅぅぅぅ」エンエン
弟「………」無視
稲荷神「………」じー
弟「お稲荷ちゃんの分もあるよ。あとおまんじゅうもね」
稲荷神「…!」
ヤカン『ピーーーーーー』
巫女「弟さん!お湯が沸きましたよ!」
弟「よし、それじゃあお湯を容器に入れようか」
巫女「はい!」
稲荷神「………」わくわく
弟「それ、じょーーっと…」
稲荷神「……!!」
稲荷神(油揚げが入ってる…!)
弟「これで良しっと。あとは五分待つだけだ」
巫女「五分待つだけ!?すごい!すごすぎる!」
稲荷神「………」グイグイ
弟「ん、どうした?」
稲荷神「…今から五分待つの?」
弟「うん、そうだよ」
稲荷神「五分ってどれくらいなの」
弟「んー、簡単な曲が一曲終わるくらいかな」
稲荷神「そんなに待つの?」
弟「う、うん」
稲荷神「………」
弟「………」
稲荷神「やだ」
弟(やっぱりそうきたか…)
弟(巫女さんどうにかして誤魔化して…!)チラッ
巫女「え、えと…それじゃあどん○えができるまでの間に和歌で遊びましょうか!」
弟(なんて古い遊び…)
巫女「い、稲荷の神さまと姉さんも参加してくださいね?」
姉「川柳とか?あたしやるー!」
巫女「ありがとうございます。稲荷の神さまは如何なさいます?」
稲荷神「………やる」ふんす
弟「…助かった」
姉「うし、じゃあ詠む順番はじゃんけんで決めましょう。異論は?」
弟「ない」
巫女「特にないです」
稲荷神「………」こくり
じゃんけんぽん!
姉「はい、順番が決まりました!」
巫女「私、弟さん、姉さん、稲荷の神さまの順ですね」
弟「和歌なんて作れるかな」
姉「簡単よ。五七五のなかに言葉を入れればいいんだもの」
弟「じゃあ分かりやすい例を出してよ」
姉「エビフライ とんかつからあげ メンチカツ」
弟「姉ちゃんがことのほか餓えているということが分かった」
姉「よく理解した」
巫女「ふふっ、皆さん準備はよろしいですか?」
姉「ええ!いまのあたしに死角はないわ!かかって来なさい!」
稲荷神「………」メラメラ
巫女「えー、それでは私から一句」コホン
巫女「天津神 國津神たち 御覧わせ 思ひ健びて 吾が為す業を」
弟「」
姉「」
稲荷神「びゅーてぃふる」ぱちぱち
弟(おいおい、昔の人が詠む和歌に敵うはずないじゃまいか)
姉(大事なのは心よ、こころ。感じたことを言えばいいの)
巫女「さて、次は弟さんです」
弟「えっ、あぁ、そうだね」
巫女「頑張ってくださいね」ニコ
弟「! よ、よっしゃあああああああああ!」
弟(と気合は入れてみたものの…全然思いつかない)
弟(しかしパスするのも気が引ける)
弟(…ええい適当に言ってしまえ!)
弟「姉上や 料理の一つも出来ぬとは 未来の婿は お先真っ暗」
姉「………………………………………………」
弟(…決まった)
ありがとう
姉「あたしも一句」
弟(なにいっ!?)
姉「弟よ 彼女の一人も出来ぬとは 未来永劫 童貞決定」
弟「……………………」
姉「……………」ニヤ
弟「それは貴様とて同じじゃゴルァァァァ!!」
姉「と、そうこうしてる内に五分経ったわね」
弟「ふう…それじゃあさっそく食べますかー」
巫女「やった!やった!」
稲荷神(……………まだわたし詠んでない)
弟「じゃーん!五分ほっといただけでうどんが完成~」
巫女「すごい!すごいです!」
姉「ほら~、いなりんの大好きな油揚げよー?」
稲荷神「……一句」
稲荷神「たれが見ても 我を懐かしくなる如き 長き手紙を 書きたき夕べ」
弟「ごめん忘れてないよ忘れないよ」
巫女「さて、いただく前に感謝の意を込めて和歌を詠みましょう」
弟「なんでこんな時に和歌詠むの」
巫女「私たちは食事をいただく前に必ず決まった和歌を詠むんですよ」
姉「それっていただきますみたいなもの?」
巫女「わかりやすく言うとそうです」
姉「へぇ~!」
弟「その和歌って今日学校の黒板に書いたあの和歌のこと?」
巫女「…そ、その通りです///」
姉「え、なになに?みこっちがなんかしでかしたの?」
弟「あーそれがさぁ、今日の朝にさぁ黒板に」
巫女「あーあーあー、アーアーアーアー阿ー」
稲荷神「………聞こえない」
巫女「と、とにかく私が詠みますので皆さんもその後に続いて下さいっ」
弟「はいよーどぞー」
巫女「それではいきますよー」コホン
巫女「たなつもの 百の木草も天照す 日の大神の 恵み得てこそ」
一同「たなつものーもものきぐさもあまでらすー日の大神のー恵みえてこそー」
巫女「はい、ありがとうございます」
弟「………うーん。なんつーか」
姉「すごい違和感…」
稲荷神「めんどくさい。いただきますのほうがいい」ずぞぞぞ
巫女「なっ、そのような罰当たりなこと…!いけません!」
稲荷神「五穀豊穣の神であるわたしがゆるす」もぐもぐ
姉「歌が言ってることは正しいんだけどね」
弟「まあ、やっぱりちょっと面倒だよね」モグモグ
巫女「うぅ、やはり神道文化には馴染めませんか…」
姉「けど、あたしは神社好きよ。雰囲気とか」
巫女「…!」
弟「神社の巫女には独特の気品があっていいよね」
巫女「……///」
稲荷神「お世話してくれる。やさしい」
巫女「…なんだか俄然やる気が出てきました!」
稲荷神「巫女さん、もう亡き人だけどね」はむはむ
巫女「」
姉「いなりん…あんたって子は…」
巫女「いいんです、生物にとってそれは仕方のないことですから…」グス
弟「巫女さんが生きていた時代は江戸時代なんだっけ?」
巫女「今はそう呼ばれているみたいですね。たしか年号は天保だったように思います」
姉「天保かぁ」
巫女「そうです。あの頃は大変でしたよ。様々なことがありましたから」
弟「様々なこと?」
巫女「飢饉があったんです」
弟「飢饉って凶作の年に起きるやつだっけ」
巫女「はい。全国的なものでしたから、一揆や打ち壊しがあちこちで行われていました」
姉「それって暴れるやつよね」
巫女「凶作続きで満足のいく食生活が営めない状況でしたからね」
巫女「ものが無いものですから、食べ物の物価も跳ね上がってしまい、
一日一食なんて日はそう珍しくないというような有様でした」
弟「食事の内容は…?」
巫女「食べられるものなら何でも、というような感じです」
っていうか>>1の和歌のセンスが地味に高い。コピペか?
巫女「そんなこともあってか、私は次第に痩せ細り、病弱になっていきました」
巫女「一日中咳が止まらないんです。境内のお掃除も辛く感じるようになりまして」
姉「………」
巫女「徐々に身体が衰えていくなか、私は労咳を患いました」
弟「労咳って?」
姉「結核のことよ」
弟「えっ、じゃあ巫女さんは…」
巫女「はい、たくさんのお医者様に診ていただいたのですが症状は良い方向
に向かうことはありませんでした」
巫女「結局は一度も寝床から立つことはなく、そのまま病死」
巫女「これが私の生前の出来事です」
姉「………」
弟「その時に仕えていた神社は覚えてないの?」
巫女「覚えています。割とこの近くの神社です」
弟「お墓は…?」
巫女「残念ながらお墓はないです。それくらい切羽詰まった状況でしたから」
>>142
神社では本当にこういう和歌を食前に詠む
巫女「私が成仏しなかったのは、やはりこの世に未練があるからだと思います」
姉「でも悪い霊にはならなかったのね。どうしてかしら」
巫女「私が神社に仕える人間だったからかも知れません」
姉「あ、なるほど」
稲荷神「…巫女さんは、成仏しようとはおもわないの?」
巫女「私は皆さんに出会うことにより、弟さんを守護するという新たな役目を見出す
ことが出来ました」
巫女「私が成仏する時は弟さんを最後まで護り抜いた時でしょう」
稲荷神「……そっか」
弟「な、なんか照れる」
姉「みこっちはあんたが梅干しになるまで見守ってくれるって。よかったね」
弟「うん。まぁその時は姉ちゃんも腐ったいちごになってるだろうねw」
姉「……………てめぇ」
弟「神社にやり残したことはないの?」
巫女「出来ることはしていましたので特には。…あっ、1つだけあります」
弟「それはなに?」
巫女「神社の神様とお話がしたいです」
弟「えぇ?」
巫女「生きている間に神様に会ったことがないので是非会ってみたいです…!」
姉「神様に会いたいねぇ」
弟「そんな事出来んのかな」
巫女「稲荷の神さまにはこうして会うことが出来ましたし、生身の肉体よりは
魂の方が遭遇しやすいのでは?」
稲荷神「ふん。わたしはと・く・べ・つ・に・あってあげてるだけなんだからね」
巫女「がーん!」
姉「ここにいるのは特別サービスだったの?」
稲荷神「そう。一応このいえに祀られているから、さーびす」フリフリ
稲荷神「神社の神様はなかなかあってくれないとおもう」
巫女「そ…そんなぁ」ガクッ
姉「賽銭箱にブタ貯金箱ねじ込めば会えるんじゃない?」
弟「賽銭箱こわしたら余計にあってくれないだろ」
姉「じゃあYUKITIを投資」
弟「そんな金どこにあんだYO!」
巫女「それについては問題ありません。ここに天保一分銀があります」
弟「」
姉「お…お、お…」
巫女「価値はおそらく…」
稲荷神「現代のお金になおすと、けっこうな値」
姉「……………」
弟「……………」
弟「く、く、く」
姉「下さぁぁっぁぁい!」
巫女「だ、ダメです!金銭の貸し借りはいけません!」
巫女「これを奉納すれば懐かしがって出てきて下さるかも知れません」
稲荷神「おもいだしてくれるかもね、巫女さんのこと」
巫女「はい!」
姉「そして生き返らせてもらうと」
巫女「それはないです…」
弟「うん、じゃあ明日その神社に行ってみようか。お参りってことで」
姉「それいいわね、あたしも行くわ。暇だし」
弟「お互い休日はとことん暇ですからな」
姉「う、うっさい!その内予定だらけになって朝帰りとかするようになるんだからね!」
弟「ないない、男勝りな姉ちゃんにそれはない」
姉「こ、このぉ~」
姉「ま、まあいいわ。明日に備えてあたしは寝る!」
姉「おいでーいなりん~♪」
稲荷神「うん」てくてく
巫女「そろそろ就寝する時間帯ですね。弟さんも寝ましょうね」
弟「あーい」
姉「んじゃっ、おやすみー」
巫女「おやすみなさい」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~あさ~~~~~~~~
弟「おはよう」
姉「遅い!待ち侘びたぞ!!」
弟「……………」
姉「はやく朝ごはん作れ!早く!速く!」
弟「威張るな!朝飯くらい自分で作れ!」
姉「やだ!そんなことしたら家が炭になるわ!いいの!?」
弟「ちっ!そんなことになるくらいなら俺が作るよバーカ!」
姉「ありがとう!」
ジュージュー
弟「ったく…なんで弟の俺が姉の世話しなきゃなんないんだよ」
姉「おっ、朝からチャーハンとはなかなかやるわね~♪」
弟「誰だって作れるよチャーハンくらい朝でも」
姉「なん…だと…」
弟「ところで巫女さんは?どこに行ったの?」
姉「みこっちなら今朝も庭掃除よ。いなりんは神社に行くのに必要なものを
取りに行くって祠に戻っていったわ」
弟「神社に行くのに必要なもの?なにそれ」
姉「さぁ……」
稲荷神「……………」じー
弟「あ、お稲荷ちゃん」
稲荷神「……………」コツコツ
姉「窓を開けて欲しいのかしら?」
弟「そうみたい。姉ちゃん開けてやって」
姉「うん」カララ
姉「はい」
稲荷神「………ありがとう」
姉「わざわざ祠に戻って何しに行ってたの?」
稲荷神「えっとね。探検せっと、取りにいってたの」
姉「探検セットって?」
稲荷神「…これのこと」じゃーん
弟「?」
姉「この巾着袋が探検セットなの?」
稲荷神「そう…!」ふんす
弟「……ふ、………く…!」フルフル
稲荷神「きょうは巫女さんの神社にいくんでしょ?だったらちゃんと準備しなきゃ」
弟「…k、……くふっ」
姉「ふふっ、いなりんはしっかり者なのね」
弟「そ、その探検セットの中には何が入ってるんだ?w」
稲荷神「えっと、まずはこれ」じゃん
弟「竹筒?」
稲荷神「水筒。水は大事」
姉(またまたアンティークなものがでてきたわね)
稲荷神「あとあと、弟が小さい頃に庭でなくした方位磁針」
弟「は?」
稲荷神「昔、庭で探検ごっこしてたでしょ?わたし知ってるんだからねっ」
弟「なっ…///」
姉「そういえばやってたわね~宝の地図を探す!とかいってたわ」
弟「………///」ジュージュー
姉「おれが宝を見つけたらそれを使っておねえちゃんを幸せにしてあげるんだ
なんていっちょ前なこと言って~」
稲荷神「………」にやにや
弟「む、むかしは幼かったんだよ!はいチャーハン!」ゴトッ
姉「ありがとー♪」モグモグ
巫女「お、弟さんの純粋な時期…///」
弟「み…巫女さん!?」
姉「いまから弟のシスコンぶりを全国的に吐露する」
弟「なっ、やめろ!マジでやめろ!」
稲荷神「わーいわーい」ぱちぱち
巫女「ドンドンチャカチャカぱふぱふー」パチパチ
弟「盛り上げるなっ」
姉「さーてどの話にしようかな?小学生の時、あたしの胸に埋もれるのが
大好きだった話にしようかなぁ?」
弟「やめろやめろ本当にやめろ!」
姉「それとも、あたしのにおいをくんくんするのが大好きだった話にしようかなぁ?」
弟「やっめろーーっ!」
巫女「…なんだか、とっても」
稲荷神「羨ましいなり」
姉「う~ん決めた!一緒にお風呂にはいってた時期を皆に教えr」
弟「姉ちゃん!余計なこと言うともう一生飯作ってやんないぞ!」
姉「………」ピタッ
巫女「………あら?」
弟「ほっ」
稲荷神「もー、なんでやめるのおねい」
姉「だって、弟にご飯を供えてもらわないと大変なことになるから…」
稲荷神「…ふぁ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
おそと
姉「さて、じゃあみこっちの神社に行きましょっかー」
稲荷神「探検せっと………わくわく」
弟「巫女さん、神社の場所は?」
巫女「町外れにある山のところにあります。ここからそれ程遠くはない筈です」
弟「あああの神社か。結構近所だね」
稲荷神「……………」しゅん
姉「あ、でも方位磁針は必要かも~」
稲荷神「…!」
巫女「という訳ですので、方角の確認宜しくお願いしますね」
稲荷神「う、うん…!」
稲荷神「んと……こっちが北。あっちが南で…」
巫女「あちらが卯、こちらが酉の方角ですね」
姉「ふふっ。こういうの見てると昔のあんたを思い出すわね」
弟「ま、まだ言ってんのかよ」
姉「別にからかってなんかないわよ。懐かしいと思っただけ」
弟「昔むかしって、今はダメなんすか」
姉「ダメね!実の姉にご飯作ってやらんと脅すようであれば!」
弟「ダメなのは俺じゃなくて姉ちゃんだったか」
・
・
・
-しばらく歩いて、鳥居前-
巫女「着きました!ここが生前私がご奉仕していた神社です!」
稲荷神「けっこうひろい」
弟「なかなか綺麗だね」
姉「無駄に広い…いなりんが迷子になりそうだわ」
巫女「ああ、懐かしい限りです…。あっ、ここは生前よく掃除したところ!」
巫女「こ、これはっ、清掃中によく座って怒られた岩!」
巫女「そしてこの階段!ここの石階段では何度つまずいて転んだかわかりません!」
稲荷神「……………」
弟「巫女さんってしっかりした人だなって思ってたけど」
姉「案外ドジなのかもね…」
巫女「さて。それでは神社本殿まで頑張って石段を登りましょう!」
稲荷神「おー」
弟「帰宅部の俺にこの階段は…」
姉「健康運動には最適ね、頑張る!」ズンズン
弟「っく、運動部である姉ちゃんが憎いぜ」
巫女「運動は大切ですね」
弟「この石階段、見ただけで足が痛くなってくる…」
巫女「弟さん、大丈夫です。頑張って一緒に登りましょう?」
弟「は、はい巫女さん!」シャキーン
-すこしのぼって-
弟「はぁ、はぁ、はぁ、きつい…」
巫女「弟さん頑張って。もう少しですよ?」
稲荷神「がんばれ」
弟「ぜぇ、ぜぇ…なんで二人ともしれっとしてるんだよ」
巫女「なんといっても幽霊ですからね」
稲荷神「神様だから飲まず食わずで日本縦断しても疲れない」
弟「ひぇぇぇー」
姉「お~いおとうと~おそいぞぉ~」
巫女「あ。姉さんはもう登り終わってますねえ」
弟「んなバカな…」
稲荷神「さすがおねい」
姉「や~いおとうとのもやし筋肉ぅ~、ごぼう体躯ぅ~wwwwww」
弟「……………」
巫女「あ…あら…?」
稲荷神「…おねいが弟に罵詈雑言を」
弟「…………………」ピキッ
弟「こんちくしょぉぉぉおおおおおお!」ズダダダダ
弟「てめぇゴラァァァァァァ!」バッ
姉「きゃっ!…もう、疲れてお姉ちゃんに飛び込んでくるなんて甘えんぼさんっ///」
弟「ちげぇよ!怒りのあまり掴み掛かってんじゃゴルァ!!」ガクンガクン
姉「あぅ、あぅ、あぅ~、ごめんなさいぃ~」
巫女「ま、まぁまぁ。お陰で早く到着することが出来ましたよ?」
稲荷神「………結果おーらい」
弟「ん…まぁそうか。ある意味では姉ちゃんのおかげかな」
姉「ふふん、あたしに感謝なさいっ」
弟「はいはいありがとう」
弟「さてさて、早速神様に出てきてもらうとしますかね」
姉「今更だけど、とんでもないことをしようとしてることを自覚しなさいよ?」
巫女「言いだしっぺが言うのもなんですが、私もそうだと思います」
弟「うーむ…確かに。怖い神様だったらどうしよう」
稲荷神「その時はわたしと巫女さんでなんとか許してもらうから、安心して」
巫女「許してくださるかどうかは神様次第ですが…」
弟「怒ってたらおれ土下座しまくるよ」
姉「ふふ、その畏れの気持ちがあればきっと大丈夫よ。大切なのは…」
弟「こころ、だよな。まかしとけ!」
巫女「では、お祈りに移るとしましょう。皆さん二拝二拍手一拝の作法はご存知ですよね」
弟「二拝二拍手一拝?」
姉「なにそれ…わたし知らない」
巫女「ええっ!?」
稲荷神「………なんてばちあたり。わたしだったら大激怒」
弟「って言われても知らないものは知らないんだもん」
姉「うんうん」
巫女「えと…二拝二拍手一拝というのはお参りするときの作法です」
弟「お賽銭箱にチャリンしてジャラジャラしてパンパンじゃないの?」
巫女「全く以て違いますっ!」
弟「え…違うの?」
巫女「違います。ちゃんとした順序があるんですよ」
姉「作法があったなんて、あたし知らなかったわ」
弟「参道の真ん中歩いちゃいけないとか、手水舎の作法とかは知ってたんだけどなぁ」ポリポリ
稲荷神「…巫女さん、どうする?」
巫女「そうですね…いい機会ですし、お二人には二拝二拍手一拝の作法を覚えて
いただきましょう」
弟「それって複雑な作法とかじゃない?」
巫女「大丈夫です!とても簡単ですよ」
弟「なら覚えるお!」
姉「複雑な作法だったらあんたどうするつもりだったのよ」
巫女「えー、私がお参りの作法を順を追って説明しますので、皆さんよく見てて下さいね」
姉弟「はーい」
稲荷神「…わたしはしなくていいよね。だって神様だもん」ふんす
巫女「いいえ、稲荷の神さまもご一緒にお願い致します」
稲荷神「えー…どうして?」
巫女「同じ神様といえども相手方のおうちにお邪魔するわけですから、きちんと
ご挨拶をしないと」
稲荷神「…むぅ、わかった」
巫女「ありがとうございます」
巫女「それでは説明に移らせて頂きます」
弟「うん」
姉「よろしく!」
稲荷神「……………」むすー
巫女「まず最初に、拝殿の前で軽いお辞儀をします」
巫女「次にお賽銭箱のなかにお金を奉納」
巫女「入れ終えたら鈴緒の前に立ち、鈴を鳴らします」
弟「すずおって?」
巫女「鈴を鳴らす縄のことです」
巫女「鳴らし終えたら、いよいよ二拝二拍手一拝の作法です」
巫女「拝殿に向かって二回、深くお辞儀をします」
姉「えっ、二回もお辞儀するの?」
巫女「はい、二回です。その後に二回手を打ちます」
巫女「これを『かしわで』といいます。これは是非覚えておいてくださいね」
姉「う、うん」
弟(巫女さん、熱心だなぁ)
姉(あんた、これから礼儀正しい人間になるわね)
弟(俺が?なんで?)
姉(守護霊のみこっちがあんたのダメな所を徹底的に直してくれる気がする)
弟「………うわぁ」
巫女「かしわでをした後に、それぞれのお願い事を祈って下さい」
巫女「祈り終えたら、今度は深いお辞儀を一回だけします」
巫女「そして、最後にもう一度だけ軽くお辞儀をします。これでおしまいです」
巫女「皆さん、覚えられましたか?」
弟「うーん、なんとなく…」
姉「おっけー!完璧よ!」
稲荷神「………くやしいけど、おぼえました」
巫女「それでは早速やってみましょうか」
姉「お祈りの時はどうやって祈る?」
巫女「神様、どうかこちらに居らっしゃって下さい。でいいと思います」
姉「居らっしゃってくださいね、分かったわ」
弟「お稲荷ちゃんもちゃんとお祈りするんだよ?」
稲荷神「………わかってるの」
巫女「さあ、それでは参りましょう!」
姉弟「おーーっ!」
稲荷神「……………」シラー
巫女「まずは軽いお辞儀です」
一同「ペコリ」
巫女「次に私の所持金、天保一分銀をお供えします」
弟「(;゙゚'ω゚')=3」ギンギン
稲荷神「弟、欲にまみれすぎ」
弟「い、いや別に欲しいってわけじゃないんだよ?」
稲荷神「わたしだって神様だよ。人の欲は手に取るようにわかる」
弟「…ごめんなさい」
巫女「お金を奉納し終えました!次は鈴をなr
姉「あたしが鳴らす!絶対鳴らす!」
弟「あっ…ズルい!俺も鳴らしたい!」
稲荷神「…………」
姉「ちょっと!あたしが鳴らすの!邪魔しないでよ!」
弟「なんだよ!何でもかんでも姉優先だと思うなよ!」
『ナンデスッテー!』 『ルセェ!ヒッコミヤガレバーロー!』
巫女「……………」ガックリ
稲荷神「…巫女さん、これ、ならしていい?」
巫女「宜しくお願いします…」
稲荷神「それっ」ジャラジャラ
弟「…しまった!!」
姉「や、やられた」
巫女「お二人とも道がそれています…」
弟「う、し…仕方ないな」
姉「…鈴は又の機会に鳴らすとしましょう」
弟「ふん、今度来るときは譲んないぞ」
姉「いってなさい。次に鈴を手にするのはあたしよ」
稲荷神「…なんて幼い学生たち」
巫女「それがお二人のいいところ……だと思います」
巫女「時間がかかってしまいましたが…最後にお祈りです」
弟「よし」
姉「…神様出てきて~」
巫女「………」
稲荷神「………」
弟「………」
シーン
弟「…出なくね?」
姉「出ないわね…」
稲荷神「…うん」
弟「声をかけたら出て来てくれるんじゃないかな」
姉「たしかいなりんのときもそうだったわよね」
稲荷神「わたしのときみたいに直接訴えれば、出ざるを得なくなると思う」
巫女「そ、そうでしょうか…」
弟「ダメ元で一回やってみよう」
姉「そうね、せっかく来たんだし。やれるだけのことはしましょ?」
巫女「分かりました。やってみます!」
巫女「それでは…」コホン
巫女「あ、あのー…以前この神社に仕えさせていただいた巫女と申します。
どなたかいらっしゃいませんかー…?」
弟(…やっぱり呼びかけはシュールだった)
巫女「すみませーん」
シーン
稲荷神「………」
姉「返事、ないわね…」
弟(ダメか?)
巫女「あの、すみませーん!」
『はぁーーいいまいきまーす!』
巫女「………」
稲荷神「………」
姉弟(いやがったああああああああああああ)
神社の神様「はーい、どなたー?」ガラッ
巫女「」←失神寸前
弟(小学校低学年のろりろり幼女、だと…)
姉「あ、かわいい…」
稲荷神(…わたしときゃらくたー被るし)
神様「えっと…あたしになにか御用ですか?」
巫女「えっ…?あっ、え、えと…」アワアワ
神様「言っときますけど、むやみやたらの縁結びはお断りですよ?」
神様「そういったものは自分の力で達成してね。それじゃっ」スパンッ
巫女「あっあっ…!違います待って待って下さいっ!」
神様「…新聞とかもうちは取らないからね」
巫女「それも違います…」
神様「ふーん、じゃあなぁに?」
巫女「あっ、いや…それといった理由は特にはないのですが…」
神様「ふんふん、つなり縁結び目的で来たわけではないと」
巫女「は…はい、そうです」
神様「ていうかあなたここの神社の人じゃん」
巫女「えっ…!?わ、わかりますか!?」
神様「うん。随分前の巫女装束を着ているのね。どっからそんなの引っ張り出してきたのよ」
巫女「こ…これは、その」
神様「すっごい本格的なコスプレイヤーかなにか?」
巫女「こ…こすぷれいやあ…?」
稲荷神「巫女さんは昔、ここの神社にいた人。覚えてない?」
神様「む?あなた稲荷神なのに人間と一緒にいるなんて珍しいわね」
稲荷神「……別にいいでしょ」ぷい
弟「はじめまして、人間でーす」
姉「同じくでーすこんにちはー」
稲荷神「…それよりも巫女さんのこと、覚えてないの」
巫女「………はぅ」
神様「うーんちょっと待ってー。今思い出すから」
神様「うむむ、あたし今までたくさんの巫女さんに奉仕してもらったからなー。
思い出すのがなかなか困難なの」
神様「…悪いけどちょっとこっち来て顔見せてくれる?」
巫女「そ、そんな!私如きがあなた様の拝殿に足を踏み入れるなど…!」
神様「別に気にしなくていいよ。あなた達巫女は堅すぎるのがよくないわね」
巫女「で…ですが」
神様「いいから早くこっち来る!」グイ
巫女「きゃっ!?」
弟「巫女さんが突然強引にに引き寄せられた……神通力だ」ガクガク
神様「ふーむ、ふんふん。綺麗な顔立ちね」
巫女「あ…あの…ぁぅ」
神様「あなた幽霊なのね。どうりで着てるものが古いと思った」
巫女「は、はい…その通りです」
神様「この巫女装束、江戸時代くらいにうちの神社が使ってたやつね」
神様「まてよ、江戸時代……」
神様「…………」
神様「あー思い出したー!社務所の所でいつもつまずいてみくじ棒
ぶちまけてた人だぁー!」
弟「ぶっ!!!」
神様「名前はたしか巫女さん…だったかな?」
巫女「は…はい///」
神様「やっぱり!久しぶり~♪」
巫女「…お久しぶりです。こうして顔を合わせるのは初めてですが」
神様「巫女さん、生前はドジ踏んでばかりだったけど今は大丈夫なの?」
巫女「い、いえ。この癖みたいなのはなかなか治らなくて…」
弟「俺達が発見した時は、幽霊なのになぜか壁にめり込んでました」
姉「…ふ…、…っく…wwwwww」
神様「あははっ、巫女さんらしいね」
巫女「う…うぅー」
神様「で、そこの三人とはどういった関係なの?」
巫女「あっ、この方たちは私を壁から救ってくれたひとたちです」
神様「ほーほー、名前は?」
弟「俺は弟っていいます。こっちは俺の姉ちゃん」
姉「よろしく~!」
弟「それとこの子はうちの家に祀られているお稲荷ちゃんです」
稲荷神「……………」つーん
姉「こらっ、いなりんったらちゃんと挨拶しなさい」
稲荷神「……稲荷の神ですよろしく」
神様「なるほどなるほど。みなさんよろしくー!」
弟(…テンション高い神様だな)
稲荷神「さ、おはなし終わったし、早く帰ろ。弟」
弟「え…?いや…まだまだ早いだろう」
稲荷神「…だっておはなし終わったじゃん」
弟「たしかに俺たちはそうかも知れないけど。まだ巫女さん喋ってるじゃん」
稲荷神「…やだ。つかれた帰りたい。もう歩きたくない」
弟「神様は飲まず食わずで日本縦断しても疲れないってさっき」
稲荷神「とにかくつかれたの…!もう歩きたくないの…!」
稲荷神「だから弟がおんぶしなさい…!」
弟「えぇぇ…急にどうしちゃったんだよ……」
稲荷神「弟、おんぶ…!」
弟「んなこと言われたって…」
姉「もしかしたら~いうこと聞かないとまたいなりんに色々なもの集められるかもね~」
弟「(;゙゚'ω゚')!!」
稲荷神「そ、そうだよ、また集める…!」
弟「」ガクガク
稲荷神「だからわたしのことおんぶ…!」
弟「わかったわかったからあつめるのはほんとカンベンしておねがい」
稲荷神「じゃあおんぶ」
弟「はぁ…仕方ないな、ほら」
稲荷神「……ふふっ」ちょこん
姉「いなりん~あたしの背中にもおいで~♪」
稲荷神「やだ」
姉「がーん!」
弟「姉ちゃんにおんぶされるとジェットコースターに乗ってる気分になるからね」
姉「そ…そんな、そっちの方が面白いだろうと思ってやってたのに…」
弟「全然面白くない」キッパリ
姉「……………」ガーン
弟「さて、暇だしおみくじでもやっていこうか」
稲荷神「おー」
姉「…弟、昔はあんなに可愛くて素直だったのに……」
弟「すいません神様、おみくじってどこでやってますか」
神様「おみくじ?ああ。今日はおみくじやってないの」
弟「え、なんでですか」
神様「今日は神社庁に出張だかなんだかで神主さんや巫女さんが一人もいないの。
社務所もしまってるからできないわね」
弟「なんと」
稲荷神「……たいくつ」
神様「……………」
神様「あなたたち、いま退屈だよね?退屈って言ったよね?」
弟「へ?えぇ、まぁ…退屈です」
神様「だったら境内のお掃除してくれないかな!」
弟「け…境内の掃除?」
神様「そう!今日はだれも掃除してくれる人がいないからかわりにやってくれない?」
弟「こ、このバカでかい境内をですか…」
神様「うん!よろしく頼めないかなー?」
巫女「はい、分かりました!神社のためならこの私、どんなことでも致す所存にございます!」
弟「え。あっ、ちょっと」
神様「ほんと!?ありがとー!それじゃあ弟さんたちにもよろしくお願いするねー」
弟「あ、いや、おれは」
巫女「弟さん、これはとても大事な神様からの天命です。すごいことです!
一緒にお掃除頑張りましょう!」
弟「は…はい、分かりました…」
・・・・・
姉「ええーっ、この広い神社を掃除すんのー!?」
弟「うん。流れでなぜかそうなった」
姉「そんな…そんなことしてたら夕方になっちゃうわよ!」
神様「最後まで掃除してくれたら縁結びしてあげるよ?」
姉「やります!何なりとお申し付け下さい神様!」
神様「宜しい!」
弟「はぁぁ…バカ姉。そういうわけだからお稲荷ちゃんも掃除手伝ってね」
稲荷神「おんぶ、おわり?」
弟「うん。おわり」
稲荷神「………ざんねん」
巫女「さぁさぁ、皆さん箒ですよ~」
弟「ども。でもよく場所がわかったね」
巫女「今でも配置があまり変わってないみたいなんです。こんなに嬉しいことはありません!」
姉「…みこっちが輝いている」
神様「あはは、死んだ後でもその場所が変わってないっていうのは嬉しいものだよ」
姉「あらあらwwちっちゃいくせにいっちょ前なこというのね~♪」
神様「ち、ちっちゃいゆうな!つーかちっちゃくない!」
姉「ちっちゃいわよぉ~かわいい~♪」ギュー
神様「は、はなせーーっ!」ジタバタ
弟「姉ちゃんやめなよ。仮にも神社の神様だぞ」サッサッ
稲荷神「………バチあたりすぎ」さっさっ
神様「そ、そうだよ!サボってないで掃除しなさいっ」
姉「おーけーじゃあ神様のお耳を掃除してあげる~ww」
神様「み…耳を掃除?」
姉「そうよぉ~」
神様「あたし毎日掃除してるし!それにここに綿棒は」
姉「いざって時の応急処置セットの中にあるんだなーこれがぁ~」
神様「……………」
巫女「……………」
神様「なんでよーーっ!」
姉「さてさて…」グイッ
神様「……へ?」
姉「んふふ、コレであなたの穴を犯しまくってあげる…」
神様「いやっ、押し倒さないで…!きゃっ!」
姉「へっへっへ、幼女のちいさな穴が丸見えだ…」ジュルリ
神様「ふぇぇ…!やめて…犯さないでよぉ…!」
姉「その怯えた顔……最高だっ!」グイッ
神様「ひっ…ひゃあぁぁあぁぁぁぁぁぁあ!!」ビクビクッ
神様「あッ…!やめっ…!動かさないでぇっ!」
姉「へへっ、どうだ…?おれの耳掃除は…?」
神様「きもちいいっ!きもちいいのおぉぉおぉぉぉおお!!」
弟「残念な美人とはまさに君のことだよ姉ちゃん…癖がありすぎだよ…」
姉「いいじゃないの~耳掃除好きなんだから~」
神様「…ひっ、ひっ…、ひもちいぃぃぃ…!」ビクンビクン
稲荷神「………日持ちがいいの?」
神様「ち…ちがっ…、ちがうのぉぉ…っ!」
稲荷神「?」
巫女「日持ちが良いではなくて耳掃除が気持ち良いという意味だ、と仰っています」
神様「そ…そうっ!そうぅぅぅ!」ゾクゾクッ
弟「耳掃除ぐらいで大袈裟な…」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
しばらくして
巫女「ふぅ…いっぱい落ち葉があつまりましたね」
弟「こうもたくさん集まってると飛び込みたくなるね」
稲荷神「…もふもふ」
巫女「ふふっ。境内もだいぶ綺麗になりましたし、そろそろ休憩しましょうか」
弟「やったぁーやっと終わったぁー」
姉「長かったわねぇ~…もう夕方になっちゃった」
弟「姉ちゃんは落ち葉をまき散らしてただけだろ」
姉「し、失礼な!あれでも一生懸命にやったほうなの!」
巫女「あはは…」
弟「神様、境内の掃除完了しました」
神様「」グッタリ
弟「し…死んでいる…」
姉「なわけないでしょ。耳掃除で疲れちゃったのよ」
神様「ひ…ひもちぃ…」ビクンビクン
弟「姉ちゃん、いったい何を」
姉「何ってそりゃあ耳掃除よ」
巫女「普通耳掃除でこんなにはなりませんよ…」
姉「じゃあきっとあたしがテクニシャンすぎるのね♪」
稲荷神「……いらない才能」
神様「ふぇ…ここは…?」
弟「神様の神社です」
神様「…あれ、なんであたし気絶してたの…?」
弟「それは姉ちゃんの昇天耳掃除を食らったからです」
神様「ふぁ、そうだったそうだった」
姉「うふふ~気持ち良かったでしょ~?」
神様「き、気持ちいいなんて生易しいもんじゃなかったわ」
神様「あれは快感の波よ…!そう…、一種の快楽なのよ!」
弟「神様ってもしかして」
稲荷神「みみふぇち…?」
神様「ま、まぁそれはいいとして。お願いした掃き掃除は終わった?」
姉「ええ、大体は。綺麗になったでしょ?」
稲荷神「…この落ち葉のやまを見よ」
ドッサリ
神様「おおー、さすがあたしが見込んだ人たち。ありがとー」
弟「いやーなんのなんの」
巫女「お安い御用です!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
姉「さてと。もう夕方になっちゃったし、そろそろ帰りましょっか」
巫女「そうですね。あまり遅くなると提灯が必要になっちゃいますし」
弟「巫女さん…今の時代は外灯というものがあってですね…」
稲荷神「提灯がなくても外は明るいんだよ」
巫女「えっ、提灯いらないんですか!?」
稲荷神「いらないの」
弟「むしろ提灯もって歩いてたら奇異の目で見られますね」
姉「それ以前に提灯自体がないわね」
巫女「そ、そうなんですか…。気づきませんでしたよ…」
稲荷神「巫女さんはむかしから弟の家にしかいなかったもんね」
巫女「はい。気づいたら弟さんの家にいましたから、外のことについてはあまり
詳しくありません」
弟「じゃあだいぶ前からうちにいたの?」
巫女「はい!弟さんがはいはいしていたくらいの時期からずっと見守ってました!」
弟「な…なんと」
巫女「赤ちゃんだった弟さんはもう可愛くて可愛くて抱きしめたくなるくらいでしたよ!」
巫女「あぁ…今思えばあの時に抱きしめておけばよかった…」
弟「こわいこわい…」
弟「昔の話はいいとして。早く帰らないと日が沈んじゃうよ」
姉「そうね。あぁーおなかすいたぁ~」
巫女「帰ったらすぐに食事を摂りましょうね」
稲荷神「ごはんごはん」
神様「…ねぇねぇ、ほんとにみんな帰っちゃうの?」
姉「ええ。遅いとさすがに危ないしね」
神様「ええー…そんなぁ…」
弟「遅くまで遊ぶのはよくないからね」
神様「…うぅー」
稲荷神「…もしかして、さびしいの?」
神様「ち、違うよ!」
神様「あたしは神様だもんっ。別に寂しいとか、そういう感情は…ないもん」
神様「………」
稲荷神「え、えと…さびしいんだったら、わたしが友達になってあげてもいいよ…」
神様「えっ、ほんと!?」
稲荷神「うん…」
神様「や、やった!」
稲荷神「い…言っとくけど、特別になんだからね…しかたなくなんだから…!」
神様「なっ、あたしだってなってあげてもいいって言われたからなってあげただけ
だもん…!別にあなたと友達になりたいってわけじゃないんだから…!」
稲荷神「なによなによ…!せっかく互いにお友達になれたのに…!」
神様「ふ、ふんっ!なってくれたって全然嬉しくなんかないんだからねっ!」
稲荷神「わ…わたしだって嬉しいとか思ってるわけじゃないもん…!」
神様「別にいつでも一緒に遊びたいってわけじゃないけどあなたの家の場所教えなさいよ!」
稲荷神「わたしだっていつでも一緒に遊びたいとかそうゆうわけじゃないから…
教えてあげないっ…!」
神様「なっ、なんでよ!別にいいでしょ!」
姉「二人とも素直になりなさい…」
神様「だってお稲荷ちゃんがつんつんしてるんだもん!」
稲荷神「だってだって、神様がつんつんしてるんだもん…!」
姉「…はぁ。神様ってみんなこんな感じなの?」
巫女「どうなんでしょう。私にも分かりません…」
弟「ふむ、神は総じてツンデレ…か。今ならこれを題材にして五十枚くらい
論文が書けそうだ」メモメモ
姉「はいはい。二人ともお互いの話をよく聞きましょうね」
稲荷神「…はぁい」
神様「わ…わかったわよ」
姉「はい、まずはいなりん。家の場所を教えてあげて?」
稲荷神「え、えっと…あそこの道をまっすぐ行ったところの右側がわたしの家だよ…」
神様「うんと…あそこの道?」
稲荷神「ううん、もういっこ向こうの道…あれ」
神様「そ、そう……///」
神様「あ、あの…教えてくれてありがとう」
稲荷神「うん…」
神様「えと…今度、お稲荷ちゃんのおうちに遊びに行くね…?」
稲荷神「うん…いつでもいいよ。わたし、待ってるから」
神様「あ、ありがとう」
稲荷神「……あぅ…///」
神様「………/////」カァァ
姉「はーい、ふたりともよく出来ましたー!」パチパチパチ
弟「決めた。おれ保育士になる」
巫女「一体なにを考えてるんですか弟さん…」
~~~~~~~~~~~~~~~~~
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
神様「みんな、今日はほんとにありがとう。すっごく楽しかったよ」
姉「なんのなんの。これしきのことお安い御用でござる~」
神様「ふふっ、みんなも暇なときにはここに遊びに来てね」
弟「うん。毎日ここに来ることは出来ないけど、空いた時間に神社に行くよ」
巫女「私も弟さんと定期的にこちらに参らせて頂きますので、その時はどうか
宜しくお願い致します!」
神様「えへへ…なんだか嬉しいな」
姉「ほらほら、隠れてないでいなりんもお別れの挨拶しなさい」
稲荷神「…あ、遊びに来てよね。約束だよ…!」
神様「うん。わたしとみんなと、お稲荷ちゃんとの約束」
神様「それじゃ、またね」
弟「あれ…消えた……?」
巫女「どうやら、神様はお帰りになられたようですね」
稲荷神「……………」しゅん
姉「なーにしょぼくれてんのよ。家から近いんだし、またここに遊びに来ればいいじゃない」
弟「うんうん。近所のお友達っていえるくらい近所なんだからな」
稲荷神「……もうちょっとお話ししたかったの」
稲荷神「それに、きつい態度で接しちゃったこと、まだ謝れてないから…」
姉「なんだ、しょぼくれてたのはそういうことか」
弟「…あの神様ならケータイとか持ってそうだよなぁ。アドレス聞いときゃよかったかも」
姉「耳掃除を毎日してるっていってたくらいだし、案外ノーマルな生活してんのかもね」
稲荷神「神様、おこってないかな…。おこってたらやだな…」
巫女「大丈夫ですよ。縁というものは見ず知らずの人に軽く挨拶するだけでも結ばれます」
巫女「稲荷の神さまは神様とお友達になられたのですから、お二人の縁はそれを遥かに
凌駕するものになったはずです」
姉「だからきっと平気よ。知らない人なら別れてそれっきりだけど、あなたたち二人は
また会うことが出来るんだから」
弟「それは俺達の間でも同じ」
稲荷神「…うん。お友達になれたんだもの。また会えるよね」
姉「そうそう!もう一度あってから謝るなりケンカするなりすればいいのよ?」
巫女「それこそがまさに友達と呼ぶべきものなのですから」
・
・
・
姉「さって。日も暮れてきたし、みんなでおうちに帰りましょうか」
稲荷神「むぅ………おなかすいた」
巫女「私もです。幽霊だというのに、今日はなんだかどっと疲れました…」
姉「あたしも今日は久々に疲れたわ~。おとうと~今日の晩御飯なあに~?」
弟「んー、まだ考えてないや。だから今日の夕食はコンビニ弁当でいい?」
姉「あたしは食べられるものなら何でもかまわないわ~」
稲荷神「………油揚げはいってるものならなんでもいい」
弟「よし、コンビニで決定ね。巫女さんは何が食べたい?」
巫女「…ふふふ。それはコンビニと聞いた時点で既に決まっています…!」
弟「まさか……やっぱり巫女さんは…?」
巫女「どん○えです!」
お終い
~弟たちのその後~
その壱 巫女さんの桧扇
巫女「あぁ、一体どこにいってしまったんでしょう…」
巫女「ここにもない,ここにもない」ゴソゴソ
巫女「どうしましょう…大切なモノなのに…」
姉「おはよう~みこっち」
巫女「あっ、姉さん。お早うございます」
姉「なにかを探してるっぽいね…なくしものか何か?」
巫女「ええ、私がいつも肌身離さず持っていた桧扇がなくなってしまったんです」
弟「おはよう。どうしたの、こんなところで」
巫女「あっ、弟さん」
姉「なんかね、みこっちの桧扇がなくなっちゃったんだって」
弟「ひ…秘奥義?巫女さんそんなものを隠し持ってたの!」
巫女「えっ?えっ?」
姉「ちっがうわよ!桧扇よ、ひおうぎ!」
弟「は?ひおうぎってなにさ」
巫女「桧扇というのは簡単に言うと扇のことです」
姉「みこっちが持ってたその扇がなくなっちゃったってわけ。あんた知らない?」
弟「うーん、知らないなぁ」
姉「ほんとに?踏んづけて壊しちゃったから秘密裏に処理したとかじゃないの?」
弟「んなことするか!仮にそうなっても素直に謝るよ!」
姉「そぉ?それじゃあいなりんかしら」
稲荷神「…ちがうよ。わたしじゃないよ」
弟「うわっ!」
姉「あらいなりん、おはよー」
稲荷神「うん、おはよ」フリフリ
巫女「稲荷の神さまは私の桧扇、ご存知ないですか?」
稲荷神「巫女さんがいつも持ってたのはしってるけど、今回それがどこに行ったのかはしらない」
巫女「そうですか…うぅ」
姉「ふむ、いなりんも知らないとなると…」
巫女「この家にいる人はだれも桧扇を見ていないということになりますね」
弟「巫女さんて結構ドジだし、どっかでうっかり落としてきたんじゃないの?」
巫女「流石の私でも桧扇のような大切なものは落とさないですっ」
巫女「…多分ですけど」
弟「…巫女さんが何を言ってもそれらが空しく聞こえてくるよ」
巫女「がーん…!」
姉「まぁ、みこっちのことだからね。神社の清掃中に落としたんじゃないかしら」
稲荷神「巫女さん、昨日はやたらと張りきってたから、その時におとしたのかも」
弟「今回の事件、犯人は巫女さんである可能性が高まって参りましたがどうでしょう」
巫女「そ…そんな…!」
巫女「そ、それならば証拠!そうです、証拠を示して下さい!」
弟「証拠は巫女さんの普段からのドジっぷり」
巫女「で、ですがそれでは具体的な証明にはなっていません!」
巫女「それに、今回の事件の被害者である私が犯人なはずないではありませんか!」
姉「…言動が少しずつ犯人が吐く内容になってきたわね」
稲荷神「ますます巫女さんが怪しい」
巫女「と、とにかく私が犯人でないことは確かかと思われますっ」
弟「うーん、巫女さんじゃないのなら一体だれが犯人なのさ」
稲荷神「実を言うと弟?」
弟「ちがわい!」
姉「もしかして神様だったりして~www」
神様「違うよ!あたしは知らないよ!第一ここに来たのは今日が初めてだもん!」
弟「さらっとでてきなさんな」
神様「いいでしょ、今日はお稲荷ちゃんと遊びにここに来ただけなんだから」
稲荷神「………」もじもじ
姉「なーに隠れてんの。遊びに来てくれたんだからちゃんと挨拶しなさい」
稲荷神「…ぁ……あの、こんにちは…」
神様「こ…こんにちわ」
稲荷神「……………」
神様「……………」
稲荷神「………///」
姉「神様も知らないとなると、もう本当に誰も知らないってことになるわね」
神様「そうね」
弟「第三者の可能性は?」
姉「ないでしょう。桧扇を盗るためにわざわざ犯罪を犯してまで人の家に侵入する?」
神様「しないわね」
弟「うん、しないね」
稲荷神「それに、誰かが入ってきたらわたしが気づくもん」
弟(周囲察知能力…神通力だ……)ガタガタ
神様「ふふん、ここはあたしの神の頭脳を使う時かしらね!」
弟「おおっ、なんか頼もしい」
姉「さすが神さまー」パチパチパチ
神様「エッヘン!誉めて、誉めて!」
弟「神の頭脳SUGEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!」
姉「きゃぁぁああぁぁあぁぁああぁああああすごおぉぉぉぉおおおぉぉおおい!!」
神様「もっとっ…!もっと誉めてぇっ!」
姉弟「きゅあぁぁっぁぁああぁぁあぁああぁぁっぁあああっ!!!」
稲荷神「………いいからはやく神の頭脳、つかってよ」
巫女「!」コクコク
神様「よっし、それじゃあまずはある程度状況を整理しましょう」
弟「なんか推理小説っぽいな」
姉「うんうん」
神様「ふふん。それじゃあ巫女さん、桧扇がなくなったと気付いたのはいつ頃?」
巫女「今朝早朝です」
神様「じゃあ昨日はなにをやってた?」
巫女「えと…皆さんと神社から帰ったあと、夕食を食べました」
神様「ふんふん。その後は?」
巫女「弟さんと一緒に寝室に戻りました。弟さんはぱそこんをなさっていて、
私は暇だったので散らかった部屋を片付けていました」
神様「なるほど。じゃあ寝るまでの経緯を教えてくれる?」
巫女「えっと、弟さんがなかなか眠ろうとしないものですから、注意して寝かしつけました」
巫女「その後はうたた寝をしていたのですが、気付いたら朝だったのでお庭の掃除に
出かけました」
神様「なるほどなるほど。で、掃除中になんとなく無いことに気づいたと」
巫女「はい」
神様「おっけーありがとー」
神様「じゃあつぎは姉さん。何をしていたか包み隠さず話してね」
姉「うん」
神様「はい。じゃあ夕食後に何をしてたか教えて」
姉「あたしも弟と同じでご飯のあとは自分の部屋に戻っていったわ。部屋では
主に勉強をしてた」
神様「主にってことは、ほかにもなにかしてたのね」
姉「うん。だんだん勉強そっちのけで中学の卒業アルバムとか修学旅行のお土産とかを
いじるようになっていったの」
姉「そしたらお土産がいくつかないことに気付いて、弟くんに知らないって聞きに行ったわ」
神様「それでそれで?」
姉「弟くんはパソコンしながら知らない~って言ってた。みこっちは弟くんの部屋を
片付けていたわね」
姉「生返事だったから結構しつこく聞いたんだけど、それでも知らないって言うから
諦めて自室に戻っていったわ」
姉「それで、最後にいじったのいつだっけな~って思い出そうとしてたら、いなりんが
つまらないから下に来てってあたしの部屋に来たの」
姉「そのあとはもういいやってなったから、いなりんと一緒にリビングでテレビ見てた。
途中で一緒にお風呂にも入ったわ」
神様「ふむふむ。じゃあ寝るときは?」
姉「いなりんがうとうとし始めたから祠に帰したの。あたしも眠くなったから部屋に戻って
そのまま寝た」
神様「ふむ。特になんてことない普通の生活ね。お稲荷ちゃんはどう?」
稲荷神「みんなお部屋に戻っていったからリビングでテレビ見てた。途中で退屈になった
から、おねいの部屋に行って下に来てってゆった」
稲荷神「そのあとはおねいの言うとおり」
神様「ふんふん。これもまた普通の生活ね」
神様「じゃあ最後。弟さん。夕食後は何をしてた?」
弟「巫女さんと一緒に部屋に戻ったよ。課題があったけど、勉強するのが嫌だったから
ネットに逃げた」
弟「途中で姉ちゃんがいきなり部屋に来て修学旅行のお土産がなんだって騒ぎ始めたから、
自分でどこかに放り投げたんじゃないの~って返事しといた」
姉「もう、ああいう時はもうちょっと真剣にこたえてよ」
弟「姉ちゃんて卒アルだろうが賞状だろうが、そういう大事なものでもところ構わず
放っておく癖あるじゃん」
弟「そのくせ後々になって騒ぐんだもん。いつものことだろうって感じであんまり
聞く気にならなかったんだ」
姉「…うぅー」
神様「姉さんが帰っていったあとは何をしてた?」
弟「巫女さんが部屋を片付けてて、なんとなく悪い気がしたから手伝った」
弟「そしたらいろんなものが出てきたよ。昔のおもちゃとか、お土産っぽい扇も出てきて、
面倒だったからそれらを全部ゴミ袋に入れて片付けた」
神様「うんうん。それでそれで?」
弟「ネットを再開した。けっこう遅くまでやってたら巫女さんに注意されたから
そのまま寝ました」
神様「ふんふん。ふむふむ。なるほど。ありがとー」
神様「以上のことをまとめると、いずれもみんな普通の生活を送っているように
見えるわね」
姉「何の変哲もないごくごく普通のアットホームな生活よね」
稲荷神「………」こくこく
神様「そうだね。一見なんにも事が起きていないように見えるよね」
弟「うんうん」
神様「ふふふ。でもね、その『普通の生活』という言葉に埋もれて見えなくなって
しまっている部分があるのよ!」ビシィッ
巫女「なっ………」
一同「な、なんだってーーーっ!?」
神様「弟さんっ!」
弟「は、はいっ」
神様「あなたは先程、こう言いましたね。『いろんなものが出てきたよ。昔のおもちゃとか、
お土産っぽい扇も出てきて』と」
弟「言ったけど…それがどういう」
神様「まだ気付かないというの?いいわ、簡単に言ってあげる」
神様「つまり、片付けをしている時には桧扇とおぼしき物体が弟さんの部屋にあったと
いうことなのよ!」ビシッ
弟「なっ…!?」
神様「昨日から誰も見ていないという桧扇を、あなたは、あなただけは見ていた!」
神様「そして、それを無意識のうちにゴミ袋にぶち込んでしまったっ!つまり!」
神様「今回の騒動はすべてあなたから始まった出来事であり、そして何よりも弟さん、
あなたが今回の事件の真犯人なのよ!」バーン!!
弟「ひっ…!」ビクッ
巫女「そ…そんなっ、それじゃあ…!」
稲荷神「まさか…弟が」
姉「この事件を巻き起こしたというの!?」
神様「そうよっ!」
弟「…………うっ」
弟「うわあああああああああっ!」
神様「弟さん。意図的ではないにしろ、あなたがすべての事の発端だったの」
弟「……………」ガクッ
神様「と同時に。巫女さん。あなたのごくありふれた、ものを落とすというミスからも
今回の事件の原因が生まれているのよ」
巫女「あ…あぅ…」ガクッ
弟「み…巫女さん……」
巫女「弟さん…ごめんなさい。すべては私の愚かしい行動から生まれたものでした。
本当に申し訳ございません…」
弟「…違うよ。ものを落とすのは誰にでもあること。悪いのは確認もせずに桧扇を捨てた俺だ」
巫女「弟さん…」
神様「ま、ものがなくなる事件でよくあることが起きただけよね」
稲荷神「うん」
姉「それはいいけど、桧扇が入ったゴミ袋はどこにやったのよ」
弟「えっと、袋ならさっきゴミ捨て場に出しに行ったばかりだよ」
姉「…あんた、はやく取りに行かないと収集車がゴミ袋を回収して行っちゃうわよ?」
弟「…………」
巫女「…………」
弟・巫女「ああぁぁぁぁああぁぁっ!」
『巫女さんのドジは死んでも治らない』 終
その弐 姉の縁結びについて
-神様の神社-
姉「ねぇねぇ神様。ちょっといいかしら?」
神様「ん?なあに?」
姉「神様は、あの時交わした約束覚えてる?」
神様「やくそく?うーん、なんだっけ」
姉「あれよあれ、あたしの縁結びよ。掃除し終えたらやってあげるって神様言ったじゃない」
神様「あ、そういえばそんなことを言ったね、あたし」
神様「すっかり忘れてたよ。あのとき言ってくれればやってあげたのに」
姉「そうかも知れないけど、みんながいたから恥ずかしくて言い出せなかったの」
神様「なるほど。そういうことか」
姉「うん。今は弟たち、神社探検しに行ってていないでしょ?今なら聞けるなって思って言ってみたの」
姉「だからお願い、あたしの恋愛運を診て!」
神様「うん。やくそくだからね。いいよ」
姉「や、やった!」
神様「よし。それじゃあまずは恋愛診断ね」
姉「………」ドキドキ
神様「ちょっと顔見せてくれる?」
姉「う、うん…」
神様「ふーむ、ふむふむ。目の輝きが…うんうん」
姉「………」ドキドキ
神様「うん、じゃあ次は手のひら」
姉「はい」
神様「うーむ、うんうん」
姉「………」ドキドキ
神様「おっけー。今度は姉さんの全体的なものを見たいから、ちょっとあたしから
離れて立ってくれる?」
姉「こ、こう…?」
神様「はいはい、結構」
神様「ふーん、ふんふん。なるほどねー」
姉「えっと…どう?」
神様「結論から言うと、姉さんに縁結びは必要ないわね」
姉「へぇー」
姉「ってええっ!?」
姉「あたしって今まで男の人と付き合ったりしたことないのよ?手だって異性と繋いだこと
あるの弟くんしかいないのよ!?」
神様「つまり、これといった人と惹かれ合ったことがないんでしょう?」
姉「そう!そう!」
神様「男とは友達なだけであって、それ以上ではないんでしょ?」
姉「ええ!ええ!」
神様「そしてあなた自身、異性に対して惹かれたことがないのね?」
姉「うん!うん!」
神様「…あなた自身は恋愛に対してすごく真面目なのね」
姉「…………」
神様「本当は縁結びなんかでどこの馬の骨とも知れない男なんかと結ばれたくないんでしょう」
姉「うん…。本当は自分で出会った人と結ばれたい」
神様「やっぱりあたしが適当に探した男と結ばれるなんていやよね。それじゃあ急ぎのお見合い結婚
と同義だもの」
姉「………」コクン
神様「あなたと吊り合う器の大きな男に出会うのは先になるかもしれないけど
一度出会ったらもう離れることはないでしょうね」
神様「だから焦る必要はないよ。特に意識せずあなた自身の姿でいればいずれ誰かと結ばれるわ」
姉「つまり…このままでもあたしの将来安泰ってこと…?」
神様「そう」
姉「……………」
姉「いよっしゃあぁぁぁああぁぁあぁぁぁあああああぁぁぁあああああ!!」
神様「!!?」
姉「そうか、そうだったのね!」
神様「え?そうって、何が…?」
姉「あたしも捨てたもんじゃなかったってことよ!あたしの周りの男性はあたしの
魅力に気付くこともできない人たちばっかりだったってだけなんだわ!」
姉「そう!きっとそうなのよ!見てなさい弟!もう二度と『姉ちゃんも俺と同じ穴のムジナ
なんだよwww』なんて言わせないんだから!」
姉「言葉のあとに生えた草を刈り取って二度と生えなくしてやるんだからっ!!」
神様「……………」
神様(言っておいてなんだけど、大丈夫かな)
『お姉ちゃんだってやれば出来るんだから!』 終
その参 巫女さんの気苦労
巫女「お、弟さん!」
弟「なぁにー巫女さん」ゴロゴロ
巫女「あ、あのですね、隠したいのであればもっと完璧に隠して欲しいのですよ!」
弟「えぇー?かくしてほしいってなにをー」
巫女「…それを私に言わせるおつもりですかっ!」
弟「そんなこといわれたって何行ってんのか分かんないんだもん。もっと分り易く言ってよ」
巫女「わ、分かりました…単刀直入に申し上げますよ…!」
弟「いいよーどぞー」
巫女「……………」
弟「…………?」
巫女「…え、えっと!」
弟「どうしたの?単刀直入にいうんじゃなかったの?」
巫女「ま、待って下さい。まだこころの準備が…」
弟「はいー?」
巫女「ま、まずは最初に確認を取っておきますけど、よろしいですか?」
弟「うん。いいよ」
巫女「えっと…弟さんは私がこれから見せるものに傷つかないですか?」
弟「ま…まさかギタギタにされた俺の写真とかパソコンとかじゃ」
巫女「い、いえ。それよりももっと、こう…個人的なものと言いますか」
弟「じゃあ変わり果てた俺のぱんつとかスか」
巫女「違います!」
弟「よくわかんないけど、傷つかないからとりあえずその物を見せてよ」
巫女「…よろしいのですか?ほんとのほんとに傷つきませんか…?」
弟「うん。ホントのホント。誓います」
巫女「えと…それじゃあ、見せます」
弟「うん」
弟(一体何だろう)
巫女「………こ、これです」
つ弟のえろの嗜み
弟「」
巫女「え、えと…弟さんが春画を見るのは一向にかまわないのですが、その…隠すのであれば
もっと完璧に隠していただきたいのです」
弟「もっと…かんぺきに…?」
巫女「はい…。弟さんが見られたくないであろうものを見てしまうと、なんだかとても
申し訳ない気持ちになるのです」
弟「………」
巫女「隠すのが難しいというのであれば、そのままお部屋に置いて頂いても私は一向に構いません」
弟「……………………」
巫女「私にはなんの気遣いも要りません。無論、隠し事も一切無用です」
弟「……………………………………」
巫女「弟さんはもう立派な男の子なのですから、こういうものを持つのは当然ですよね」
巫女「恥ずかしがらなくてもいいのですよ。私はありのままの弟さんが大好きですから」
弟「……………」
弟「そのやさしさが、逆に辛いよ」
巫女「え…?」
弟「み、巫女さんは優しすぎるんだよ!」
弟「巫女さんの優しさがでかすぎて俺の心はもうわけがわかんないよ!嬉しいのやら
悲しいのやら区別がつかないよっ!」ブワッ
巫女「あ…あの…!」
弟「み…巫女さんのばかああぁぁぁぁああぁああああっ!!」バタン!
巫女「お…弟さん!待って下さい弟さぁぁん!」
『巫女さんの優しさは山より高く、海より深い』 終
もうねるおやすみありがとう
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