P「はぁ…レンタルですか?」(783)

P「おはようございます」

小鳥「おはようございます。プロデューサーさん、社長が少しお話ししたい事があると言ってましたよ」

何だろう?
最近は特に問題も無いはずなんだけど

P「わかりました」

俺は 社長室のドアをノックし、ドアを開いた

社長「やあ、おはよう」

P「おはようございます」

社長「早速なんだが君にこんな話があるんだ」

社長は俺に封筒を差し出してきた
それを受け取り中身を確認する

内容は

とあるプロダクションへの3ヶ月間のレンタル移籍と書いてあった

P「レンタル…俺がですか?」

社長「知り合いに大手のプロダクションの社長がいてね。そこが人手不足だから君を貸して欲しいという事だ」

P「はあ…」

社長「どうするかは君に任せる。ウチだって暇では無いからね」

P「…」

社長「明後日までには返事をくれたまえ。以上だ」

P「はい、失礼します」

レンタルか…どうするかな?
ウチも最近は仕事が軌道に乗り、安定している

他の所で挑戦するのも悪くない

俺は自分の机で先ほどの書類とにらめっこをしている

小鳥「社長、何の話だったんですか?」

P「俺の移籍の話です」

小鳥「ええっ!?プロデューサーさん、辞めちゃうんですか!?」

P「3ヶ月間のレンタルらしいですよ」

小鳥「断りますよね?」

P「え?何でですか?」

小鳥「プロデューサーさんがいなくなっちゃったら皆はどうするんですか?」

P「その辺は社長がカバーしてくれるらしいです」

小鳥「そんな…そちらではどんなお仕事をするんですか?」

P「レコーディングスタジオでのディレクション業務みたいですね。だから特に誰かをプロデュースするわけではありません」

小鳥「プロデューサーさんはそれで良いんですか?」

P「音楽と深く関われるしとても魅力はありますね」

小鳥「この話…受けるんですね?」

P「かなり前向きに考えています」

音楽の仕事に専念できる…俺もたくさんの事が学べて良い事ばかりだ

今日一日考えて答えを出そう
決断は早い方がいい

春香「おはようございます」

小鳥「春香ちゃん、おはよう」

P「おはよう」

小鳥「春香ちゃん、プロデューサーさんがね…」

P「音無さん、ダメです」

小鳥「プロデューサーさん…」

春香「?」

765プロではプロデューサーをやっているが、実際は営業とアイドルのマネージメントが中心だ

人が少ないから仕方が無いが、俺のプロデューサー像と大きく離れてしまっている

皆とは当時はそれなりに仲良く過ごしてきたが、仕事が軌道に乗ってからは挨拶と最低限の会話くらいしかしていない

P「本当に…良い機会かもしれないな」

春香「何が良い機会なんですか?」

小鳥「…」

P「何でも無い、気にしないでくれ」

春香「はあ…」

昼になった
アイドルの皆が昼食をとっている

俺は変わらず自分の席で座ったままだ
皆が俺に仕事の事以外で話しかけてくる事は無くなった

特に寂しくは無いが現実はこんなものだ
変な噂の種にならないし、これで良い

美希「ハニー、それ何?」

P「美希か、別に何もない」

星井美希…彼女だけは例外だ
何も無い時でも俺に話しかけてくる

美希「この紙……え?」

P「おい、勝手に読むなよ」

美希「ハニー、今すぐこの紙捨てて」

P「それは無理だ」

美希「ダメ!!ダメなの!!そんなの絶対にダメ!!」

美希が声を張りあげるから皆が俺の所に集まってくる

真「美希、どうしたの?」

雪歩「美希ちゃん、ちょっと怖いですぅ…」

響「ケンカはダメだぞ!!みんな仲良くだ」

美希「だって…ハニーが居なくなっちゃう!!」

P「美希、余計な事を言うな」

真「プロデューサーが居なくなる?」

響「え?辞めちゃうのか?」

P「辞めない。何でもないから皆は戻ってくれ」

俺は何とかその場を収めた
美希を除いた皆は戻って行った

美希「ねえ…美希はイヤだよ?ハニーと離れたくない…」

P「別に辞めるわけじゃない。出張みたいなもんだ」

美希「やだよ…お願い、断って…断って欲しいの」

P「俺は受けようと思っている」

美希「みんなは…みんなはどうなるの?」

P「社長と律子がバッチリフォローしてくれる。問題ない」

美希「ハニー…」

P「そろそろ仕事の時間だろ?行っておいで」

美希「わかった…ハニー、その紙ちゃんと捨ててね?」

昼食が終わると俺と音無さんの2人になった

小鳥「プロデューサーさん。美希ちゃんもあんなに止めてたんですから…この話はお断りにしませんか?」

P「いえ、気が変わりました。今すぐ返事をします」

小鳥「受けるんですか?」

P「はい、それが俺にとってベストな選択だと信じています」

小鳥「そうですか…」

P「社長に返事をしてきます」

俺は席を立ち社長室へ行く
そしてこの話を受ける事を伝えた

夕方

美希「みんな!!どうしよう…ハニーが辞めちゃうの!!」

春香「プロデューサーさんが?まさか」

千早「そう言えば最近はまともに話もしていないわね」

やよい「私はあいさつくらいしかしてませんね~」

美希「みんな!!そんなのんきな事言ってる場合じゃないの!!」

春香「小鳥さん。今朝の事、ですよね?」

千早「今朝?何かあったの?」

美希「ハニー…やだよ…ミキ、死んじゃいそう…」

小鳥「ええ、実はね…」

春香「何だ、レンタルだから辞めるわけじゃ無いんだ」

千早「そうよね、いくらなんでもそんな簡単に辞めたりはしないわ」

美希「みんな何もわかってないの!!」

春香「美希、3ヶ月くらいならプロデューサーさんが居なくても大丈夫だよ」

千早「最近は安定して仕事もあるし、あちらからのオファーも増えたから問題無いわ」

律子「私も居るわ。だから問題無いわよ」

春香「律子さん、何時の間に」

律子「さっきから居たわよ。失礼な」

美希「みんな…レンタルからの完全移籍って珍しく無いんだよ?」

春香「まさか、プロデューサーさんが私達の事を置いて辞めたりなんかしないって」

千早「そうね、私もそう思うわ」

律子「私もプロデューサーなんだからみんなのサポートくらい余裕よ」

やよい「難しい話はよくわからないです」

美希「男の人は…やり甲斐のある仕事の方を優先するんだよ?ハニー…かなり前向きだった」

春香「まあまあ、今日はもう帰ろうよ」

千早「そうね」

やよい「帰りましょう」

美希「…ハニー」

翌日
俺は事務所には行かず、レンタル先のスタジオに向かった

中規模のレコーディングスタジオだがとても雰囲気の良いスタジオだ

スタッフやエンジニアに挨拶し、今日は色々と中を見させてもらった

久し振りに心が躍るような気分だ

明日からここで俺の仕事が始まる

楽しみだ

社長「…と言うわけで、しばらくは律子君が全体のプロデューサーとなる。みんな、よろしく頼むよ」

律子「みんな、私も立派なプロデューサーよ。彼が帰って来ても居場所が無いくらい頑張るわ。よろしくね」

春香「本当に行っちゃったね。でも少しの間だし、全然問題無いよ」

真「最近は存在感も無かったし大丈夫。ボク達だけで十分やれるさ」

伊織「そうかしら…私はかなり不安よ」

亜美「いおりん、どったの?」

真美「だいじょぶだよ。真美たちお仕事いっぱいあるし」

響「そうそう、現場でもすぐに次の仕事の話が来るから大丈夫だぞ」

伊織(その仕事は…誰が取ってくるのよ)

美希「ハニー…ミキもそっち行きたいの…」

俺は今日から新しい場所でのスタートを切った

歌の収録以外にもインストゥルメンタルのレコーディングやナレーションもあり、大変ながらも楽しい時間が過ぎた

P「はあ…疲れた」

エンジニア「その割には楽しそうに仕事しますね」

P「ええ、楽しいですよ。やりたかった仕事をやってるんですから」

エンジニア「ウチも人手不足だから助かりますよ。ずっと居れば良いのに」

P「そんなうまい話は無いですよ。ははは」

エンジニア「…そうでもないんですけどね」

春香「今日も平和に終わったね」

千早「そうね、今の所はプロデューサーが居なくても大丈夫みたい」

真「ボク、今日も新しい仕事の話が来たんだよ。だからプロデューサーが居なくても大丈夫」

雪歩「そう、なのかなぁ…」

あずさ「でもやっぱり寂しいわ…」

亜美「今日も平和な一日であった…」

伊織(居なくなってすぐに影響が出るわけ無いじゃない…)

律子「今日一日みんなの管理をやってみたけど問題無いわ。いける」

春香「さすが律子さん」

伊織「そろそろ定例ライブの準備はしなくて良いのかしら?」

律子「おっと、いつもは彼がやってたから忘れてたわ」

伊織「…不安ね」

1週間が過ぎた
俺は仕事にも慣れ、今ではしっかりとスタジオワークが出来るようになった

こちらの社長も喜んでくれ、俺もこの仕事に対する熱意が益々燃えあがる

P「お疲れ様でした」

エンジニア「お疲れ様です。今日は少しハードでしたね」

P「いえいえ 、まだまだいけますよ」

エンジニア「社長があなたを凄く気に入ってましたよ」

P「そうですか。それは光栄です」

エンジニア「もうウチでいいじゃ無いですか」

P「そんな上手くは行きませんって」

エンジニア「そうかなぁ?」

俺はスタジオを出て街を歩く

今日も楽しかった
日高愛って言う子の収録の時は少し耳が痛かったが…

歩いていると春香が本屋から出て来た
プライベートな時間だ、そっとしておいてやろう

俺は春香の前をそのまま通り過ぎた

そしてしばらくすると…

春香「プロデューサーさん!!」

P「ああ、どうしたの?」

春香「何でそのまま通り過ぎたんですか!?」

P「いや、気付かなかっただけだよ」

春香「ウソ!!目が合いました!!」

こいつ…こう言う所だけは鋭いな
これからは誰かに会ったらその道は通らないようにしよう

P「ごめん、プライベートの邪魔をしたく無かったんだ」

春香「プロデューサーさん、私服ですね」

P「スタジオワークだからな」

春香「そうですか」

P「じゃ、気を付けて帰れよ」

春香「はい…」

俺は春香と別れその場を去った

春香(いつもは…会ったら駅まで送ってくれたのに…)

自宅に帰ってすぐに美希から電話があった

P「はい、なんか用か?」

美希「用が無いと電話しちゃダメって法律はないの」

P「そうだね。どうしたの?」

美希「ハニーに会いたいの…ミキ、もう1週間もハニーの顔見てない…」

P「まだ1週間だぞ?」

美希「やなの!!ハニーに会いたいの!!」

P「勘弁してくれ。明日は休みだからゆっくり寝て過ごすよ」

美希「律子が今日美希の仕事のスケジュールの調整が出来てなくて大変だったの」

P「すぐに慣れるよ」

美希「ハニー…帰って来てよ」

P「それは無理だ」

美希「ハニー…美希、寂しくて死んじゃうよ?」

P「それくらいで死なないでくれ」

美希「やだ、やだ、ハニー…」

P「もう切るぞ…」

美希「ハニー!?…切れちゃった…ミキ、本当に死んじゃいそう…」

俺は次の日、昼過ぎまで寝ていた
起きると身だしなみを整え街に出た

レコーディングの資料を買いに行くためだ

P「今日はゆっくりできるな~」

しばらく歩いていると

P「やばい…美希だ、回り道しよう」

まだかなり遠い距離だ。気付かれるはずも無い
俺は少し小走りで違う道を行った

そして本屋の前には

美希「ハニー、何で逃げたの?」

P「何の話だ?俺は少し急いでいただけだ」

美希「お休みの日に走って本屋に行く事なんて滅多に無いと思うな」

P「お前は何してるんだよ、仕事は?」

美希「遅刻して怒られた。帰れって言われたからここに居るの」

P「お前、遅刻なんてした事無いじゃないか」

美希「律子が撮影の時間を勘違いしてこうなったの」

P「じゃあ、謝りに行かなきゃ…律子は?」

美希「竜宮小町の現場」

P「社長は?」

美希「春香の現場」

P「…」

美希「美希…どうしたらいいの?」

P「謝るしか…無いだろ」

美希「でも、美希帰れって言われて…もう無理なの」

P「そんなわけにもいかないだろ、悪いのは全面的に765プロなんだから」

美希「ハニー…助けて…」

P「わかった…俺が一緒に謝りに行く。お前もちゃんと頭下げろよ?」

美希「うん、ミキ…ちゃんとする」

P「じゃあ、行くぞ」

美希「はいなの!!」

俺は美希と一緒に現場の監督に謝った
意外にもそこまで腹が立ったわけでは無いらしく何とかこの場は収まりそうだ

P「本当に申し訳ありませんでした」

監督「いや、こっちも撮影中は気が立っちゃってね」

P「これ、差し入れです。みんなで食べてください」

監督「悪いね、後で頂くよ」

P「あの、美希の事…よろしくお願いします」

監督「大丈夫だよ。そろそろ始めようか」

P「はい!!美希、行ってこい」

美希「はいなの!!」

収録は夕方を過ぎた
今日は働いたのと変わらない一日だった…

P「お疲れ様」

美希「ハニー、助かったの」

P「そう、じゃあ俺は帰るな」

美希「ダメ!!美希と一緒に居るの!!」

P「帰らせてくれよ…俺、疲れたよ…」

美希「ミキが癒してあげるから大丈夫なの」

P「お前といると疲れるよ…」

美希「そんなのってないの!!」

P「とにかく俺はもう帰る。じゃあな」

俺は足早にその場を去った

美希「ハニー…」

俺は自宅に戻ってベッドに転がった

P「俺も最初はよくミスしたな…音無さんが一緒に謝りに行ってくれて…」

そう、律子もまだ駆け出しだ
竜宮小町はそれなりに売れているが律子はまだまだキャリアが浅い

P「人数が多くて大変だけどすぐに慣れるさ」

そして1時間後、電話に着信
画面を見ずに通話ボタンを押す

P「はい」

千早「あの、私です」

P「うん、何か用?」

千早「明日…歌の収録があるんです」

P「そう、頑張って」

千早「少し教えていただきたい所があって…今から良いですか?」

P「そう言うのは律子に聞け」

千早「律子の携帯にかけたのですが…疲れて寝てしまってるみたいで…」

P「まあ、自分で曲の解釈をしてみろ。それも勉強だ」

千早「それが難しくて…お願いします」

P「俺は疲れた。もうダメ」

千早「お願いします…」

P「切るぞ?」

千早「お願い…します」

あ、やばい…少し涙声だ

P「ごめんなさい。駅前の喫茶店で会おう」

千早「はい…」

俺は重い身体を引きずって待ち合わせの場所に行った
すでに千早は着いていたようだ

P「遅くなった」

千早「プロデューサー…お疲れの所すみません」

P「いいよ、早速やろうか」

千早「はい…お願いします」

俺は千早の持ってきた譜面にチェックすべき所を書き込み伝えた
作業自体はそんなに時間はかからず20分くらいで終わった

千早「助かりました」

P「そう、それなら良かったよ」

千早「プロデューサー、あの…」

P「じゃあ、俺帰るな」

俺は伝票を持ちレジへ向かった

千早「プロデューサー、何か冷たいわね…」

俺は帰り道を歩いているとやよいに会った
プライベートだからな…と言うわけにはいかない

P「やよい、買い物?」

やよい「あ、プロデューサー」

P「こんな遅くに買い物なんだな?」

やよい「はい、半額セールなので」

P「そう、家まで送るよ」

やよい「はい!!お願いします!!」

やよいは放置出来ない
まだまだ子供だからな

やよい(プロデューサーはいつでも優しいな)

そしてさらに時間は流れ
レンタル移籍をしてから1ヶ月が過ぎた

俺はこの職場での信頼を得る事が出来、もっと深い所まで作品作りに関わらせてもらって居る

エンジニア「あの、これ…社長からです」

P「ん?…へえ」

エンジニア「何です?」

P「レンタル期間が1ヶ月延長らしいです」

エンジニア「おお、それはいい事だ」

P「俺も楽しいしちょうど良いですよ」

エンジニア「このままずっと延長が続きますよ」

P「まさか、そんな事は無いですよ」

エンジニア「それはどうかな?」

そして次の日
俺は765プロに向かった

必要になった私物を取りに行くためだ
事務所に着きドアを開けた

小鳥「プロデューサーさん、お久しぶりですね」

P「そうですね。みんなはどうです?」

小鳥「ははは…まあ、何とか」

P「それを聞いて安心しました。取りにきたものがあるだけなのですぐに行きます」

小鳥「お茶くらい…」

P「お気遣いありがとうございます。お気持ちだけ受け取っておきます」

小鳥「はい…何かプロデューサーさんが遠いなぁ」

P「はい?」

小鳥「何でもありません…」

亜美「あっ!?兄ちゃん!!」

あずさ「お久しぶりです」

伊織「あんた、ちょっとくらいは顔出しなさいよね」

P「あれ、律子は?」

伊織「打ち合わせでライブ会場に残ってるわ。少し準備が遅れててね」

P「そう、大変だね」

伊織「そんな事よりたまには顔出しなさいよね」

亜美「おやおやぁ~?いおりんは兄ちゃんが居なくなってさびしいのかにゃ~?」

伊織「そうよ。悪いの?」

亜美「あれ?…いおりん?」

伊織「とにかく、まだあんたはここの人間なんだからたまには来なさい。わかった?」

P「ああ、そうするよ」

伊織「ふん…」

俺は事務所を出て駅に向かった
その途中の服屋で美希が服を広げて物色中だった

プライベートだからな…
俺はそのまま駅に向かった

そして駅前に着いた所で

美希「ハニー、何で声かけてくれないの?」

P「いや、買い物の邪魔したら悪いじゃないか…」

美希「ハニーより大事なものなんてないの」

P「はあ…俺行くわ」

美希「ハニー!!あと2ヶ月も我慢できないの!!死ぬの!!」

P「悪い、1ヶ月延びた」

美希「」

美希「いやあああああああああっ!!!!」

P「おい!?美希!?」

美希「ダメなの!!ハニー!!ハニー!!ハニー!!ダメダメダメダメダメダメ!!!!!」

P「おい!!叫ぶな!!」

やばい…こいつはもう有名人だ
このままだとワイドショーの美味しいエサだ

P「美希!!こっちこい!!」

美希「あ!?お姫様抱っこなの!!」

俺は美希を近くの公園に連れて行った
そこに2人で座っている

美希「お姫様抱っこのままで良いのに」

P「お前、アイドル続けられなくなるぞ」

美希「ハニーのお嫁さんになるから問題ないの」

P「お前な…」

美希「何で延びたの?」

P「そりゃあ、俺があっちにいる間は765プロにも金が入るからな」

美希「でも、ミキはハニーと離ればなれはイヤなの」

P「あと3ヶ月の我慢だよ」

美希「ミキ…待てないよ…今でももう死にそうなの…」

美希は俺に抱きついてきた

P「おいおい…こんな所でダメだろ。離してくれ」

美希「や!!」

P「美希、わがまま言うな」

美希「や!!」

P「仕方ないな…」

俺は美希を抱えたまま公園の人気のない茂みの方へ行った

P「ほら、美希…」

美希を抱きしめた
すると美希の身体が一瞬反応したが特に抵抗は無かっ

美希「ハニーから抱きしめてもらうの…初めて」

P「お前は本当に手がかかる子だ」

美希「ミキ、ちょっとだけ泣いてていい?」

P「いいよ」

美希「ありがとなの…」

美希はその後2時間離してくれなかった
身体を離すとすぐに激しく泣き出してしまうからだ

P「もういいだろ?ほら」

美希「えへへ…お礼にミキの事、襲っていいよ?」

P「そんな事はしない」

美希「ミキ、ハニーとならどこでも良いよ?」

P「お前はまだ明るい時間に何をしようとしてるんだ」

美希「じゃあ暗くなってからまたここに来ようね」

P「だめだこいつ…何とかしないと」

美希「でも、やっぱり寂しいよ…」

俺は美希を家まで送った

美希は家の前でも俺を抱きしめ離さなかったが何とか離れることが出来た

そして道を歩いていると

響「…」

真「…」

あれ?何か険悪な雰囲気だな
でもプライベートだからな…

俺は道を変えて駅に向かった

貴音「貴方様…」

P「貴音か、久しぶりだな」

貴音「はい…」

P「顔見れて良かったよ。気を付けて帰れよ」

貴音「あの、貴方様」

P「ん?」

貴音「何でも…ありません」

P「そう、じゃあ」

貴音(心配をかけては…いけない)

貴音も何か元気が無かったな
まあ、何かあれば相談でもして来るさ

俺は特に気に留める事も無く自宅へ戻った

帰るとすぐに着信があった
千早からだ

P「はい」

千早「お忙し所すみません、あの、歌の事で…」

P「律子に聞いてくれ」

千早「聞いたのですが…わからないって」

P「じゃあ一緒に考えろ。それも勉強だ」

千早「でも、収録は明日なんです」

P「悪い、仕事中なんだ。切るな」

千早「あっ…どうしよう…」

P「今日はもう疲れた…何もする気がおきない」

俺も人間だ。ずっと動き続ける事は出来ない
申し訳ないけどね

そして1週間が過ぎた
定例ライブはどう言うわけか竜宮小町のワンマンライブに変更されたみたいだ

何らかの狙いがあるんだろう

P「終わった~」

エンジニア「お疲れ様です」

P「今日はストリングスのオケが良い感じで録れましたね」

エンジニア「はい、私は天才ですから」

P「ええ、本当にいい腕してますよ」

エンジニア「コンビも定着しましたね」

P「ええ、いい仕事が出来そうです」

エンジニア「社長があと2ヶ月延ばしたいって」

P「へぇ~」

エンジニア「いひひ…」

そして当初の契約期間の3ヶ月が経過した
ただ、まだ3ヶ月残っている

俺としてもギャラが多くもらえるので特に問題はない。やり甲斐もある。

ただ、その後の定例ライブはまた竜宮小町のワンマンだった

大きく売り出すのか?

携帯が鳴った。春香からだ

P「はい」

春香「千早ちゃんが…引きこもってしまいました」

P「…は?」

春香「行ってあげてくれませんか?」

P「そうだな、心配だから様子を見てくる」

春香「お願いします…あの」

P「ん?まだ何かあるのか」

春香「いえ…失礼します」

春香からの電話を切り出掛ける準備をする
何か、元気が無かったな

春香「お仕事…減っちゃったな…」

千早の住む部屋の前に来た
何と無く…黒いオーラが見えるような…

P「千早、俺だ。開けてくれ」

少しすると扉が静かに開いた

千早「プロデューサー…」

P「お前、どうしたんだよ?」

千早「私…もう歌えません」

P「何言ってるんだ…しっかりしろ」

千早「失敗ばかりでもう歌いたくないです…」

P「ひどいな…入らせてもらうぞ」

千早「あ…部屋、散らかってますから…」

千早の部屋はものすごく荒れていた
俺は取り敢えず掃除を始めた

P「少し片付けたらメシ作るから待ってろ」

千早「あ…そっちは下着があるので…私が」

P「ん、わかった」

簡単に掃除をし、冷蔵庫の残り物で焼き飯を作り千早に食べさせる

千早「…おいし」

P「どうしたんだ?お前が歌えないだなんて」

千早「歌の収録…上手くいかないんです」

P「律子は?あいつがいるだろ」

千早「忙しそうで取り合ってくれません」

P「お前、歌いたくないのか?」

千早「歌いたいです…けど…」

P「けど…」

千早「どうすればいいかわからない…相談できる人もいない…もう駄目です」

P「あ、そうだ」

千早「?」

P「ウチのスタジオに来いよ。それなら俺がアドバイス出来るし」

千早「良いんですか?」

P「ああ、明日話しておくよ」

千早「じゃあ、歌います」

P「よし、それで良い。俺は帰るぞ」

千早「あの…明日まで…そばに居てくれませんか?」

俺はベッドで眠る千早のそばで座り手を握っている

P「千早、不安だったんだな…悪い事したな」

反省しないといけない
次からはみんなからの話はちゃんと聞こう

千早「プロデューサー…うふふ…」

P「明日、ちゃんとしておくからな」

俺は千早の手を握ったまま目を閉じた
そして深く眠りについた

千早「プロデューサー…す、き…」

翌日
俺は千早の部屋を出てすぐにスタジオと765プロに千早の事について話をした

その結果千早のレコーディングは無事に完了し、千早の引きこもりも解決した

そして数日後

エンジニア「何か、1ヶ月だけ帰還命令が出てますよ?」

P「え?何でだろ?」

エンジニア「まあ、久しぶりにあちらの仕事でも楽しんで来ればいいじゃないですか」

P「そうですね。じゃあ、ちょっと行ってきます」

エンジニア「お早いお帰りを~」

P「はい」

エンジニア「最後の情けですよ…いひひ」

エンジニア「ふぅ……行ったか」

ベリベリ

伊織「プロデューサーを独占するのは私よ」

俺は数日後765プロに戻った
少し雰囲気が暗いが特に変わった様子も無いようだ

P「おはようございます」

小鳥「おはようございます。お久しぶりです」

P「どうもです、じゃあ仕事しますか」

小鳥「お茶淹れてきますね♪」

P「ありがとうございます」

あれ?
ホワイトボードが真っ白じゃないか

ダメだな、面倒くさくてもちゃんと書かないと

ごはん食べる

P「ほら、お前らも早く仕事いけ」

春香「お仕事…ありません」

真「何かいきなり契約切られちゃいました…」

響「自分は1ヶ月仕事してないぞ…」

千早「プロデューサー!!ドラマの主題歌のお話を頂きました!!」

P「千早、空気を読もうな」

千早「はい!!」

P「とにかく…レッスンある奴は行ってこい。仕事は俺が適当に見つけておくから」

俺はみんなをレッスンに出してから営業の電話をした

ある程度の仕事の目処をつけた所で昼になった

小鳥「プロデューサーさん、お疲れ様です」

P「久し振りなんで疲れますね」

小鳥「ふふっ♪」

P「あれ?律子は」

小鳥「体調を崩してて先週からお休みです」

P「そうですか。風邪かな?」

小鳥「午後からは竜宮小町のお仕事があるんですけど」

P「ああ、俺が行きますよ」

小鳥「良かった…社長も年で手が回らなかったんですよ」

P「社長も大変ですね。でもやり手の人ですから安心ですよ」

小鳥「はい…そうですね」

P「はい、竜宮小町集合~」

伊織「顔出せって言ったでしょ」

P「ごめんな。でも忙しかったから」

伊織「行くわよ」

伊織は俺と手を繋いできた
お兄ちゃんっ子なんだろうな

亜美「もう~本当にいおりんは兄ちゃん大好きなんだね~」

伊織「そうよ、大好きよ。これで良い?」

亜美「あ…うん…いいよ」

あずさ「あらあら~」

そう言えば竜宮小町を連れて仕事って初めてだな
新鮮で面白い

伊織「~♪」

社長「アイドルを他事務所に派遣すれば儲かるんじゃね?逃げられたら困るからPにぞっこんにさせたるわwww」

竜宮小町の仕事も無事に終わり事務所に帰る
皆には明日からの仕事の事について説明すると何か安心したのかの様な表情で帰って行った

P「何だ?明日の仕事の話をしたくらいで」

小鳥「…」

P「伊織、早く帰れよ。暗くなっちゃうぞ」

伊織「迎えが来るまでまってるの。それよりもこっち来なさい」

P「はいはい」

伊織は俺をソファに座らせた

伊織「…」

静かに俺の膝の上に腰をおろした

P「伊織はお兄ちゃんっ子なのか?」

伊織「そう言う事にしておくわ」

美希「忘れ物なの」

伊織「あら、早く帰らないと暗くなるわよ?」

美希「伊織、何してるのかな?」

伊織「え?座ってるわよ」

美希「どこに?」

伊織「プロデューサーの膝の上だけど?」

美希「離れて」

伊織「迎えが来たら離れるわよ」

美希「ダメ!!今すぐ!!離れるの!!」

伊織「イヤよ」

小鳥「ぴよぴよ」

俺はその後、伊織の迎えが来るまでそのまま座って居た
伊織は迎えが来ると素直に俺から離れて事務所を出たのだった

P「美希、帰るか」

美希「ミキもするの」

P「伊織乗せたままだったから痺れてる。無理」

美希「治るまで待つの。いつまでも待つの」

P「はあ…もういいよ。おいで」

美希「うん!!」

俺は足の痺れを残したまま帰宅した
美希は対抗心が強いんだな…

1週間もすると仕事も安定して来て皆の暗い雰囲気も次第に薄れていった
女の子が大勢いるんだ。喧嘩だってあるだろう。

P「律子は…まだ治らないんですか?」

小鳥「ええ、過労らしいです」

P「へえ、そのうち治るでしょう」

小鳥「はい…」

P「俺があっちに戻るまでに定例ライブやりますよ」

小鳥「大丈夫ですか?…その、一人で準備とか…」

P「慣れてしまえばそんなに大変じゃないですよ」

小鳥「そうですか…」

小鳥(律子さんが定例ライブ放棄したって聞いたら…怒るだろうな)

定例ライブの準備に取り掛かる
今まで使っていた会場は使えないと言う事らしいので、同じ様な規模の会場を押さえ、スタッフを準備する

一日あれば充分だ

あとはプロモーションと皆のレッスンだな

俺は夕方になるとみんなを集めた

P「いきなりだけど俺がやりたいから来週定例ライブやるよ」

そう言うと皆が嘘の様に喜び出した

何かあるのか?
いつもやってる事なのに

新鮮な気持ちを失わない良い子達だ

次の日からはレッスンに仕事、皆はとても忙しそうだ
最近は少し仕事を入れ過ぎて恨みを買うかと不安だったが皆文句一つ言わずに取り組んでくれる

この子達にはもう俺の力は必要ないなと思えるくらいの働きぶりだった

P「俺が疲れた」

千早「プロデューサー、聞きたい事が…」

P「お前はいつもついて来て金魚のフンみたいになってるぞ」

千早「はい、それで良いです」

美希「ハニー!!ミキの事も無くちゃんと相手するの!!」

伊織「ダメよ、今から彼は竜宮小町のレッスンに付くんだから…」

俺は伊織に引きずられながらスタジオに入った

夕方になると俺は真美を呼び出した

真美「兄ちゃん、何か話があるの?」

P「ああ、お前3ヶ月もCD出してないじゃないか」

真美「だって…りっちゃん…」

P「今日お前に合いそうな曲を制作会社から引っ張って来たから2日で覚えてすぐに録るぞ」

真美「うん…わかったよ!!」

P「ちゃんと練習しとけよ」

真美「わかった~!!」

これで良い
律子は音源にはあまり力を入れない方針なんだろうな

でも、真美は喜び過ぎだろ
大袈裟だな

俺がこちらに来てから2週間後に竜宮小町をメインとした定例ライブを敢行した

短い期間のプロモーションだったが満員御礼でなかなか悪くない結果だった

律子も復帰していたので仕事は順調に進んだ

律子「終わりましたね…」

P「ああ、相変わらず竜宮小町はすごいな」

律子「私のユニットですから」

P「うん、さすが律子だ」

律子「はあ…」

P「あと2週間か…張り切って行こう」

律子「…」

ライブの後は事務所で打ち上げをした
皆は笑顔で賑やかだ

律子も復帰したし一安心だな

特に誰にも話しかけられる事も無く打ち上げは終わった

P「さて、帰ろう」

伊織「待ちなさい」

P「早く帰って寝たいんだけど」

伊織「あんた、1ヶ月こっちに来てるけど契約期間はどうなってるの?」

P「ああ、だから1ヶ月延びるよ」

伊織「もう断りなさい」

P「大丈夫だよ。律子も復帰したし」

俺は伊織の頭を撫でてこの場を去った

伊織(来月から…大丈夫かしら)

俺はその後も皆には申し訳ない量の仕事を押し付けてしまった。でも誰も文句を言わない
皆の力量と体力にはただただ頭が下がる思いだ

美希も千早も精神的に安定して来た様だ
毎日が楽しそうで安心した

そして765プロでの仕事の最終日の朝になった

P「じゃあ明日からまたあっちだから」

春香「はい、わかりました」

真「心配しないでください」

やよい「お仕事忙しいけど頑張ります」

美希「ハニー…」

伊織「…」

小鳥「プロデューサーさん、やっぱり明日からはあちらなんですか?」

P「ええ、まだ契約が残ってますから」

皆元気そうだから大丈夫だろう

俺は早目に帰宅し、明日の準備をして寝た

俺は再びスタジオで仕事を始めた
やはり色々な音楽に触れると刺激になる

夢中になって仕事をし、一日が終わった

エンジニア「久しぶりの仕事はどうですか?」

P「いやあ、やっぱり良いですね」

エンジニア「まだまだ先は長いですからじっくり行きましょう」

P「そうですね」

エンジニア「明日はかなり忙しいですよ?」

P「余計にやる気が出ますよ」

エンジニア「そうですね…ふひ」

そして1週間が過ぎた
俺はオフなので適当に街を歩いている

前から春香、千早、真が歩いて来る
楽しそうに話している
女の子は笑顔が一番だ

プライベートだからな…
俺は声をかけずに通り過ぎた

かなり遠目だがあれは恐らく美希だ
やはり服を物色していた

あいつはかなり遠い所でも人の事を感知出来るみたいだ

俺は踵を返し、公園でゆっくりする事にした

公園に入りベンチに向かう

美希「ハニー、何で避けるの?」

P「何の事?」

美希「目が合ったの」

合ってません

美希「美希は見てたの。春香達の事も無視して行ったよね?」

P「あのさ、お互いオフの時にまで仕事関係の人間と関わるのってしんどいだろ?」

美希「わけがわからないの」

P「お前たちは10代の女の子なんだから一応気を使ってるんだよ」

美希「ミキには必要ないよ。あと寂しくて死にそうなの。死ぬの」

P「まだ1週間で何言ってるんだよ」

美希「律子は竜宮小町ばっかりで皆の事見てないよ?」

P「まさか、単に竜宮小町のプロモーション中なんだろう」

美希「そうなかぁ…」

美希「美希ね、色々考えたんだ」

P「何を?」

美希「この寂しさを解消する方法」

P「ふ~ん」

美希「でもハニーのお仕事の邪魔はダメ」

P「理解してくれて嬉しいよ」

美希「一緒に住めば解決なの」

P「じゃあ、さようなら」

美希「ハニー…そんなのってないの」

俺は美希を公園に残して自宅に戻った

俺は自宅へ帰り玄関のドアを開けた

伊織「どこ行ってたのよ」

P「いや、ちょっとぶらぶらと」

伊織「まあいいわ。別に怒ってないし」

P「ありがとう」

伊織「ふん…」

P「伊織…」

伊織「何?」

P「どうやって入ったの?」

伊織「それを聞いてどうするの?」

P「あ、そうだね…ごめん」

P「伊織…何か話があるのかな?」

伊織「あるわ、かなり大事な話よ」

P「そうか、じゃあ聞くよ」

千早の時の事を考えると無視は出来ない
伊織は竜宮小町だ。何かあったら大変な事になる

伊織「あんた、あのスタジオ行くのやめなさいな」

P「何でだよ。せっかくの良い機会なのに」

伊織「あんたがいない時の765プロは大変な事になっていたのよ」

P「社長と律子がいるから大丈夫だよ」

伊織「社長はあんたみたいにタフじゃないの。律子はまだ19歳よ」

P「でも、皆の笑顔で送り出してくれたじゃないか」

伊織「私は皆みたいに平和ボケしてないの」

P「でも、でもさ」

伊織「男がでもでもとか女々しく言わないの!!」

P「…ごめん」

伊織「何でそんなにあっちの仕事が良いの?皆の事が嫌いになったの?」

P「…」

伊織「私の事も…嫌いなの?」

P「…違うよ」

伊織「だったら…どうして…」

P「男が…夢を追うのはいけない事か?」

伊織「夢?」

P「プロデューサーの仕事って…アイドルのマネージャーじゃないと思うんだ」

伊織「…ものすごく痛い所を突くわね」

P「もちろんいろんな経験は必要だ。だから今までやって来た事は意味があると思うんだ」

伊織「だったら…このままで良いじゃない」

P「でも、俺はもっと上に行きたい。ちゃんとしたプロデューサーを目指したいんだ」

伊織「…」

P「律子がプロデューサーになった時はこれでやっとプロデューサーらしい事が出来ると思ったら…勝手に竜宮小町作って…」

P「そして竜宮小町に予算を持っていかれたら俺はもう出来る事が限られて来るだろ?」

伊織「耳が痛いわ…」

P「来る日も来る日も営業とマネージャーの日々…あと3ヶ月くらい夢を見る事がそんなに悪い事か?俺はそんなに765プロに貢献出来ていなかったのか?」

伊織「そんな事は…無いわ」

P「だから、少しで良い…俺にプロデューサーの仕事をさせて欲しいんだ」

伊織「わかったわ…あんたの本音が聞けて良かった」

P「伊織…」

伊織「そうね、少しの間くらい私達で頑張れなくてどうするのよ」

P「うん、だからその間は皆で頑張って欲しい」

伊織「やっぱり男は大きい夢を持っている方が良いわ」

P「伊織 、ありがとう」

伊織「私が好きな男なんだからそれくらい野心があって当然だわ」

P「?」

伊織「私…あんたが好きよ」

俺「?」

伊織「私…あんたが好きよ」

伊織氏ね

外野は黙れ

P「伊織はお兄ちゃんっ子なんだな」

伊織「違うわ、一人の男としてよ」

P「そうか、ありがとう…」

伊織「どういたしまして」

P「でもな、俺たちは…その、ダメだろ?」

伊織「今は無理ね。でも、気持ちを伝える事くらいは良いでしょ?」

P「そうだね…でも意外だな」

伊織「何が?」

P「だってさ、アイドルの皆は仕事意外だと俺とはほとんど話が無いから…」

伊織「まあ、仕事も増えてきてありがたみが薄れたからじゃない?」

P「そうか、でも俺はそれでも良いかな」

伊織「何で?都合の良い様に使われて空気扱いなのよ?」

P「美希みたいに懐いてくれる子もいるし、伊織みたいに好きだと思ってくれている子もいる」

伊織「…」

P「そしてありがたみが無くても良いよ。俺は別に感謝されたいわけじゃないし、それが当たり前の日常であればそのままで良い」

伊織「私は…嫌よ」

P「皆が楽しくやっていけてたら良いじゃないか」

伊織「あんたが走り回って取ってきた仕事が当たり前の事だと思われるのは腹が立つわ」

伊織「まあ、律子が駆けずり回って取ってきた仕事なら当たり前のようにこなすけどね」メシウマ

P「伊織がそう思ってくれてるならそれだけで充分だ。ありがとう」

伊織「もう止めない。あんたもその間は皆の相談に乗る必要も無いわ」

P「でも、千早なんかは結構危なかったし…」

伊織「バカじゃないんだから自分でなんとかさせるわよ。あと携帯出しなさい」

俺は自分の携帯を伊織に差し出す
すると伊織はそれを取り上げ自分の持っている携帯を手渡してきた

伊織「それ、家族用だから皆からはかかってこないわ。両親にも話しておくから心配せずに使いなさい」

P「うん、ありがとう」

P「美希愛してるよ」


美希「ハニー!!美希もなの!」


伊織「」

伊織「さてと、皆に結婚の報告メールでも送りますか」

伊織「あと私、今日はここに泊まるわ」

P「それはまずいだろ」

伊織「しばらくは事務所に来ないんだから甘えさせなさいよ」

P「じゃあ俺はソファで寝るか…」

伊織「あんたはここの主でしょうが。ベッドで寝なさいよ」

P「伊織がソファ?」

伊織「私は客よ?そんなの嫌だわ」

P「…じゃんけん?」

伊織「一緒に寝れば良いじゃない」

可愛いのは伊織

結婚したいのはあずさ

犯したいのは響

顔面に唾を吐きたいのはやよい

P「だからそれは…」

伊織「好きな人に甘えるくらい別に良いでしょ?」

P「俺…男だよ?」

伊織「信じてるわ。別に何かされても裏切られたとは思わないけど」

P「でもなあ…」

伊織「もっと気楽に考えれば良いじゃない。一緒に寝れば話し相手も出来るし暖かいわよ?」

P「そう考える事にするよ」

伊織「そうそう、素直が一番よ。お風呂入ってくるわ」

P「…いってらっしゃい」

伊織が風呂から出たあと俺も引き続いて入った
そしてベッドに向かうと伊織はすでにベッドに潜っていた

P「あのさ」

伊織「どうしたの?」

P「何で何も着てないんだ?」

伊織「失礼ね、下着は着けてるじゃない」

P「パジャマは?」

伊織「私はいつも下着で寝るの」

P「はぁ…」

伊織「もっとくっつきなさいよ。一緒に寝る意味がないじゃない」

P「わかったよ。腕枕とかどうだ?」

伊織「良いわね、早速してちょうだい」

伊織を抱き寄せて腕に彼女の頭を乗せる。
空いた手を背中に回して密着させた

伊織「これは良いわね。とても幸せな気分よ」

P「そうか、良かった」

伊織「やっぱり今日はエッチな事しないでね」

P「最初からしないよ」

伊織「よく考えたら明日は早いのよ。だから次の時までお預け」

P「だからしないって」

伊織「あんたなんか伊織ちゃんが本気出したらすぐにでも襲いかかりたくなるはずよ」

P「そうだね」

伊織「そうよ…にひひっ」

このインポ野郎が

俺たちは遅い時間まで話をして眠った
伊織は普段の気の強さとは裏腹にとても可愛い寝顔だった

伊織「そろそろ起きなさい」

P「ん…朝だな」

伊織「おはよう」

P「はい、おはよう」

伊織「男って本当に朝はそうなるのね」

P「何が?」

伊織は俺の股間を指差した

P「まあ、男だからね」

伊織「正常で安心したわ。これで次の時は問題無く出来そうね」

P「女の子がそんな事言うもんじゃありません」

伊織「好きな人と深く繋がりたいのは女も一緒よ」

P「そうだね…」

伊織「そうよ。私は顔洗って来るからあんたは朝ごはんの準備でもしてなさい」

P「わかりました」

朝食を食べた後
伊織は先に出るらしく準備をしていた

伊織「じゃあ、私は行くわ」

P「気を付けて」

伊織「いってらっしゃいのキスをしなさい」

P「え?でも伊織って…」

伊織「ファーストキスよ。ありがたいでしょ?」

P「…」

伊織「早くしなさい。怒るわよ?」

伊織「子宮に……////」

伊織とラブラブHしたい

響は無理矢理犯したいけどマンコから臭豆腐の匂いがしそう

P「わかった…」

伊織の頬に手を添えると目を閉じた
そして互いの唇が軽く触れ合う

伊織「…ん…ふ…」

P「…」

伊織「…ちゅ…ふふ…良いものね、キスって」

P「…そうだね」

伊織「次は私からしてあげるわ。じゃあね」

P「いってらっしゃい」

伊織はとても上機嫌で迎えの車に乗って行った

P「俺も用意して行くか…」

※伊織と美希は同年です

そして1ヶ月が過ぎた

伊織から渡された携帯なので当然誰からも電話はかかって来ない

これだけでもかなり精神的には楽になった

P「皆も頑張ってるだろう…心配はいらないな…おっ?」

着信がある
俺は通話ボタンを押した

P「はい」

伊織「今日はどうだった?」

P「特に何も無かったよ」

伊織「そう…私も普通の日だったわ」

P「そう…」

伊織「もう寝るわ。おやすみ」

P「はい、おやすみ」

通話が切れる

この電話だけは毎日かかってくる

伊織の部屋

伊織「あら、今までかかって来なかったのに…1ヶ月で音を上げる奴は誰かしら?」

通話ボタンを押す

千早「プロデューサー…あの、明後日歌の収録があるんですが…」

伊織「…」

千早「どうすれば良いかわからなくなって…」

伊織「…」

千早「プロデューサー…何か言ってください…不安で死にそうです…」

伊織「あんた…流石に重すぎるわ…プロデューサーが胃ガンで死ぬわよ?」

千早「えっ!?えっ!?水瀬さん!?何で!?」

伊織「あんた歌手志望でしょ!!自分の歌くらいなんとかしなさい!!」

千早「でも、プロデューサーが…」

伊織「自分で勉強して解決しなさい!!アーティストが人に頼ってどうするのよ!!」

千早「水瀬さん…プロデューサーに…会わせて」

伊織「もう寝なさい!!」

電話を切る

伊織「ふう…千早ってあんなに重かったのね…」

伊織「また着信…真ね」

通話ボタンを押した

真「プロデューサー…仕事、来ないんですけど」

伊織「…」

真「忙しいとは思うんですけど…ちょっとお願いとか出来ませんか?」

伊織「…」

真「プロデューサー…」

伊織「ウチには営業は居ないんだから自分で仕事取ってきなさい」

真「え?…伊織!?何で!?」

伊織「芸能人は個人事業と変わらないから頑張ってね。おやすみ」

電話を切る

亜美&真美「ミキミキ・・!」

美希「ハニーの今後は・・・託したの・・・」

伊織「崇め奉りなさい!」

P「ひ~」

伊織「最後は…美希ね。おめでとう…これが3000回目の着信よ。記念に出てあげるわ」

通話ボタンを押した

美希「ハニー…やっと出てくれたの…ハニー…もうね、ミキはダメなの…死ぬの…溶けて死ぬの…」

伊織「…」

美希「ハニーがミキとラブラブしてくれたら生き返ると思うな」

伊織「…」

美希「だからハニー…声が聞きたいの…抱っこして欲しいの…キスして欲しいの…」

伊織「…」

伊織は電話を切ったあと電源を落とした

伊織「もはやただのストーカーね…ちょっとだけ怖かったわ」

伊織「みんなつまらない事ばかりで電話して…しょうがないわね」

伊織は自分の携帯電話を手に取った

伊織「でも…」

メモリーを呼び出して発信する

伊織「…私は今からそのつまらない話をさせてもらうわ」

呼び出し音が途切れ相手に繋がった

伊織「もしもし…今日はどうだった?」

アイドルの数が多いからダメなんだろ?いらないやつを解雇すればいいんだよ

べろちょろのひとだ!

そして月日は流れ、3ヶ月が過ぎた
今日がこのスタジオでの最終日だ

楽しく仕事が出来た
あとはこの経験を生かして765プロにもっと貢献出来る様にしたい

エンジニア「最後の仕事、どうでした?」

P「楽しかったです。今までありがとうございました」

エンジニア「案外すぐに会えそうですけどね」

P「?」

エンジニア「いえいえ、それではまた…近いうちに」

P「はあ…それでは失礼します」

俺は最後にスタジオに頭を下げてから出て行った

とても良い経験になった

エンジニア「行ったね…」

電話をかける

エンジニア「…あ、パパ?あの人の契約、また更新しておいてくれる?うん…ありがと、じゃあ…」

エンジニア「これでまたすぐに…いひひ」

伊織「それは通らないわ」

エンジニア「どちら様?」

伊織「765プロの水瀬伊織よ」

エンジニア「そうなんだ…でも残念、もう更新が決まったわ」

伊織「あっそう…勝手にすれば。でもね…」

エンジニア「…」

伊織「お嬢様の力を思い知りなさい」

俺はまた765プロに帰ってきた
雰囲気はかなり重苦しかったが自分の家みたいなもんだ

さっさと明るくしてしまえばいい

P「おはようございます」

小鳥「おはようございます。プロデューサーさん」

P「今日から心機一転頑張りますよ!!」

小鳥「あちらからは…?」

P「流石に更新はありませんよ。良い経験になりました」

小鳥「そうですか。ふふっ」

早速何も書いてないホワイトボードに予定を書き込んでいく

美希がげっそりと痩せていたが無理なダイエットをしたのだろう。きちんと食べる様に言っておいた

千早が事務所の隅っこでうわ言を言いながらフラフラしていたが、話しかけるとすぐに治った

食事を毎日きちんと取るようにアドバイスしておいた

そして1週間もすると今までと変わらない765プロの日常の風景になった

皆のおかげで夢を見れた
ありがとう


美希にとっては寺にでも入れられた気分だっただろうな

俺は伊織を事務所の屋上に呼んだ

伊織「どうしたの?」

P「ありがとう…伊織のおかげで楽しく仕事が出来たよ」

伊織「そう…良かったわね」

P「伊織、俺はお前の事が好きだよ」

伊織「…そう」

P「あのさ…次の休みにデートでもしない?」

伊織「ええ、喜んで」

P「あと…キス、して良い?」

伊織「もちろん…喜んで」

伊織は優しく微笑んだ
その目には少し涙が滲んでいた…

数日後…

P「でもやっぱりスタジオは良いよな~」

伊織「ここで頑張って765プロのスタジオを作れば良いじゃない」

美希「ハニー…抱っこ」

伊織「はいはい、私がしてあげるわ」

美希「デコちゃんはいらないの」

伊織「あっそう。じゃあ向こういってなさい」

美希「そんなのってないの」

P「でもスタジオの夢は捨てきれないな……そうだ!!」

伊織「どうしたの?」

P「独立すれば良いんだ!!」

美希「」

伊織「良い話があるわよ?」

End

おわり
みんなのレスが多すぎてビビる

なめんなあああああああああああああ

美希を不憫にするなああああああああああああああああ!!!

うわあああああああああああああああああああああああああああああ!!

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