ハンジ「THE Reluctant Hero」(20)



その日、彼は眉根を寄せ、
ひたすらに押し黙っていた。

何処の誰から見ても、
明らかに不機嫌そうな顔をしていたように思う。

それは彼の上官、まぁつまるところ、我が兵団の団長殿から、
“人類の英雄”は今回の作戦で直接の戦闘には参加せず、
目立った行動を控えるように、との命を受けたからだ。

――もちろん、機嫌を損ねる気持ちは分かる。

仲間が命を賭して戦おうとしているさなか、
自分だけが何もせずじっと耐えていなければならないというのは
心臓を捧げた兵士として、もどかしいことこの上ない。


だが、脚に負った怪我を治さなければ
どうにもしようがない、ということも事実。

つまり、本人の希望がどうあるにせよ、
命令通りにしているしか無いのだ。

そんな複雑に織り交ざった感情が彼の面様から顕著に見てとれ、
他の者などは見ぬ振りをし、なるべく近づかないようにしていた。

丁度、作戦を実行に移すための準備云々で
誰にもそれほどの余裕が無かっただけなのかもしれないが。

とにかく、彼はその日一人で、
どうにも気が塞いでいるように見えたので
作戦準備完了の報告がてら、彼の部屋を訪れることにした。



※リヴァハンです

主に2人が喋ってるだけの短い話
タイトルは進撃サントラから
ネタバレは特にありませんが原作に寄った話です




「何か用か」

「不本意そうな顔してるね」

「……何の話だ」

「英雄って呼ばれることにだよ」

「…………」

「前は英雄といえば調査兵団そのものを指す言葉だったけど…」

「今では、貴方を指す代名詞だ」

「………」



「………英雄なら、」

「うん?」

「……こんなところで、引きこもってることなんて無いだろう」

「あはは、まぁ英雄だって怪我もするさ」

「………」

「ショックだった?まさかエルヴィンに言われるなんてーって」

「………そんなんじゃねぇよ」

「へぇ?」



「誰が持ち上げようと…俺は権力を持った王政の人間でも無ければ、巨人でも無い」

「人一人で出来る事なんて限られてるし、まして、死んだ仲間が帰るわけでも無いだろう」

「…ま、確かにね」

「…………だから、それについては気乗りしねぇだけだ」

「ふーん」

「……じゃあ、重いのかな?」

「…重い?」

「うん」



「貴方は、民衆からの期待も希望も、死んでいった仲間達が託していった願いも」

「全てを背負い込もうとするでしょう」

「………」

「重圧に押しつぶされてしまわないか心配だよ」

「………」

「…だからね、貴方が怪我してちょっとほっとしてるんだ」

「はぁ?」

「きっとエルヴィンもそうだと思うよ」



「そりゃあ、人類の進撃には痛手だけどさ」

「貴方には少し……休息が必要だと思うから」

「………心臓を捧げた兵士とは思えねぇ発言だな」

「あはは、口外禁止だからね」

「………」

「まっそんなわけだから、大人しくじっとしていてくれ」

「………どうだろうな」

「っちょ、ほんと勘弁してよ!?」



「…なら、見張っておけ」

「……私分隊長だから、リヴァイのことだけ見てらんないんだけど?」

「…だったら、可能になるよう知恵を絞れ」

「無茶言うなぁ…」

「………」

「……もしかして、一人になるのが寂しいの?」

「…………馬鹿言え」

「ブフッ」




「…………あ、そうだ」

「何だ」

「じゃあ私が、貴方の英雄になってあげるよ!」

「はぁ?」

「貴方が辛い時は、出来うる限りで傍にいよう」

「絶望の底にいたら、救い出して、希望の光を見せよう」

「……」

「唯一無二の貴方の、英雄にさ」



「どうかな?」

「………告白か?」

「ブフオォ」

「…汚ぇな、唾飛ばすんじゃねぇよ」

「ゲホッゴホッ……そんなんじゃねーっつーの」

「…ほう、そうか?」

「言っておくけど、貴方とどうこうなるつもりはないからね」

「……」



「なに~期待させちゃった?」

「……別に」

「分かってるでしょ」

「私達に選択肢なんて、無い」

「………」

「…今は、心臓を捧げて」

「自分達に出来る事をやるだけだよ」

「……あぁ」




「…ねぇリヴァイ」

「何だ」

「いつか…」

「いつの日か、さ」

「巨人が居なくなって、平和になって」

「その時まで……生きていられたら」

「……」

「私だけの英雄になってよ」



「………告白か?」

「うん」

「……チッ」

「舌打ち!?」

「…………不本意だが、」

「その時は要求を飲んでやる」

「あっはは、かわいくねー」



.




「そろそろ時間かな」

「そうだな」

「…必ず、女型を捕えてみせるよ」

「………あぁ、頼む」




――じゃあ、行ってくる。



終わり

ものすごく短くてあれですが、以上で終わりとなります
今朝The Reluctant Heroesを聴いていて思いついたものを形にしてみました
目を通してくださった方がいるか分かりませんが、ここまでお付き合いいただきありがとうございました

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom