結衣「綾乃とキスの練習」(98)
綾乃「だだだ駄目よ船見さん!こういうのはお付き合いしてからじゃないと!」
結衣「いやかな?」
綾乃「べ、べべ別にいやとかじゃないけど……!」
結衣「私はしたいな、綾乃とキス」
綾乃「は、はいぃ!?」
結衣「それにほら、練習だからさ。ほんとのキスは付き合ってからかもしれないけど」
結衣「これは友達のキス。千歳ともしただろ?」
綾乃「えぅ……あれは事故というか……」
結衣「私とは練習でもしたくない?」
綾乃「そ、そういうわけじゃ!」
結衣「していいのか?」
綾乃「えと……あの……」
結衣「綾乃?」
綾乃「あぅ……はい……」カァァ
結衣「じゃあ、綾乃、目を瞑ってくれない?流石に、見られてると恥ずかしいから……」
綾乃「え、ええ、そうね///」
綾乃「こ、これでいいかしら?」
結衣「うん、いいよ……じゃあ、行くね」
チュルッ
綾乃(あれ、確かに、唇に何か当たってるけど、これって、船見さんの唇じゃ、ないわよね?)
綾乃(ちょっと、固いし、それに、細い?)
綾乃(何か、液体が唇にかかるのが感じられるし、何だろ……不思議な味)
結衣「綾乃、もうしばらく我慢してね、もうすぐ、終わるから」
綾乃(……船見さん、何してるんだろ)
結衣「あとは、目にも……」
チュルッ
綾乃(え、目にも、何か、液体が……って)
綾乃(な、なに、なにか、染みる、目にしみるわっ)
ングング
綾乃(え!?あれ!?口が、開かない!?)
綾乃(目、目も!?)
結衣「あ、もう乾いたみたいだね、もういいよ、綾乃」
結衣「まあ、もう喋れないし、眼も開けられないだろうけど」
結衣「接着剤のキス、美味しかった?」クスクス
結衣「綾乃さ、修学旅行の夜の事、覚えてる?」
綾乃「ん、んぐっ、んぐんぐ!」
結衣「あははは、綾乃、何言ってるか判んないよ」バンッ
綾乃「……!」ビクッ
結衣「怖いでしょ?目が見えないって」
結衣「ちょっと壁を叩いただけでも、ビクッとなっちゃうよね」
綾乃「……」プルプル
結衣「綾乃には、存分に、怖がってもらわないと……」
結衣「私も、怖かったんだから、あの日、あの夜、綾乃に、京子の唇を奪われるんじゃないかって」
綾乃「……!?」
結衣「うん、当然、あの時、京子が綾乃を温めてあげてた、あの時、私も起きてたよ」
結衣「当然でしょ、京子も綾乃も千歳も起きてたんだよ?私だけ、寝てる訳ないじゃない」
結衣「京子は、優しい子だからさ、綾乃みたいなヤツでも助けてあげるんだよ」
結衣「逆に言うと、優しさ以上の物じゃなかったんだよ、あれは」
結衣「けど、綾乃、勘違いして、京子に」
結衣「京子に」ギリッ
結衣「キス、しようとしてたよね」
綾乃「……!」ブンブン
結衣「嘘ばっかり、千歳が撮影してるのに気付かなかったら、絶対してたでしょ?」
結衣「してないなんて、言わせない、同じ状況なら、私はしてたから」
結衣「けど、私と綾乃は違うんだよ、積み重ねてきた歴史も、想いの深さも、全然違うんだよ」
綾乃「……!」ブンブンブンブン
結衣「なに?私の想いの深さと綾乃の想いの深さが同じだっていいたいの?」
結衣「嘘つき」
綾乃「……!」
結衣「綾乃の、うそ、つき」ゲシッ
綾乃「……!」バタンッ
結衣「綾乃は、今、キスの練習を私としようとしてたでしょ、私なら、そんな事はしないよ」
結衣「綾乃に誘われても、絶対にしない」
結衣「そんな程度の想いで、京子にキスしようなんて、1万年、早いん、だよっ」ゲシッゲシッ
綾乃「……!」バタンバタン
結衣「はぁ…はぁ…はぁ…」
綾乃「……」グッタリ
結衣「綾乃?生きてる?」
綾乃「……」ピクッ
結衣「そっか、生きてるのか……」
結衣「あのさ、私、昔からやってみたかったことがあるんだ」
結衣「こうね、鼻の穴に、接着剤を流しこんだら、どうなるだろうなーって」
綾乃「……!」ビクッ
綾乃「……!」バタンバタン
結衣「あははは、まだ元気だね、綾乃」
結衣「ほらっ」ゲシッ
綾乃「……!」ガクッ
結衣「無理だよ、綾乃、逃げられない」
結衣「可哀そうらにえ、綾乃、最後に、何か思い残した事ない?」
結衣「あ、そっか、喋れないなら、思い残した事を言えないよね」
結衣「ごめんごめん」
結衣「けど、折角塞いだ唇を開放するのも、あれだよなあ」
結衣「……そうだ」
結衣「あのさ、頬をガッツリ切り裂いたら、声の通る穴ができるわけだから、喋れるようになるんじゃないかな?」
結衣「綾乃、どう思う?」
綾乃「……」ガクガクガク
結衣「そうだよ、いい機会だし、ちょっとやってみようよ!」
綾乃「……」フルフルフルフルフル
結衣「ちょうど、包丁も用意してるしね……」
綾乃「……」フルフルフルフルフルフルフルフルフルフル
結衣「もう、綾乃、首振り過ぎ、包丁がちゃんと頬に刺さらないじゃない」
結衣「よいしょっと……」ガシッ
結衣「よし、首を足で押さえてあげたらもう暴れられないよね」
結衣「じゃあ、いくよ~綾乃~」
結衣「ちょっと痛いかもしれないけど、我慢してね~」
綾乃「……!!!!!!!!」ジタバタジタバタ
グサッ
グリグリグリッ
綾乃「~~~~~~~~~~~~~~~!!!」バッタンバッタン
結衣「……うーん、普通の包丁では、綺麗に切れないなあ」
結衣「ごめんね、綾乃、もう一回……」
グリグリグリグリグリグリッ
綾乃「…………」グッタリ
結衣「あれ、綾乃、気絶しちゃった?」
結衣「しょうがないなあ、綾乃は」
結衣「よし、何とか頬を裂いて声の通り道を作ったぞ」
結衣「おーい、綾乃~?起きて~?」パシパシ
綾乃「……!」ビクッ
綾乃「い、いひゃい、いひゃぃよぉ!」グスン
綾乃「ふ、ふやみ、ひゃん、も、もう、やめれ、たすれれ……」ビクビク
結衣「……」
結衣「あはははははははははははははははははははははははははははははは!!!」
結衣「綾乃、なにその喋り方!面白すぎ!」
結衣「ねえ、それで例のギャグやってみてよ!」
綾乃「も、もう、ゆりゅひて……」ポロポロ
結衣「やれよ」
綾乃「……!」ビクッ
綾乃「や、やりゅから、もう、ひりょいこと、しないえ……」ヒックヒック
結衣「いいから、はやく」
綾乃「びゃ、びゃっきん、びゃっきん、がみゅよ……」
結衣「……」
結衣「ぷっ」
結衣「ぷくくくくくくく、やっぱり、綾乃のギャグは、最高だよ!」クスクスクス
結衣「他人の顔色窺う気満々のそのギャグ、何時も哀れ過ぎて大爆笑してたけど、今日のは一番面白い!」クスクスクスクス
綾乃「ふ、ふやみひゃん、おねぎゃい、たすれれ、たすれれ……」グスン
結衣「うん、そうだね、私の気も済んだし、そろそろ助けてあげる」
結衣「じゃあ、まず、その頬の傷を縫ってあげるね」
綾乃「ひぇ?」
結衣「ちょうど、ソーイングセット持ってるしさ」
結衣「大丈夫、こう見えても、祭り縫いは得意なんだ」クスクスクス
綾乃「や、やっ、ひょんな、縫いかひゃ、いやよっ」ヒック
結衣「そう言わないで、鏡を見るのが嫌になるような縫い跡を残してあげるからさ……」
綾乃「いひゃ、いひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
チクチクチクチクチクチクチク
結衣「よし、縫合終了」
結衣「あとは、接着剤の中和剤を……」
チュルッ
綾乃「……」
結衣「ほら、これで唇も眼も開けられるようになったでしょ?」
綾乃「……」
結衣「綾乃、起きて?」ユサユサ
綾乃「……あ、あれ、船見さん」
結衣「よかった、綾乃、いきなり倒れるんだもん、びっくりしたよ」ニコッ
綾乃「あ、そ、そう、私、変な夢、見てた……」
結衣「へえ、どんな夢?」
綾乃「お、思い出したく、ないわ……」
結衣「まあ、所詮、夢だしね、気にする事ないと思うよ」
綾乃「そ、そうね……いたっ」
結衣「どうしたの?綾乃?」
綾乃「い、いや、何か、頬が痛くて……」
結衣「虫歯かな?お大事にね」
綾乃「う、うう、歯医者、いやだなあ……」
結衣「それはそうと、綾乃、ちょっと話があるんだ」
綾乃「え?」
結衣「綾乃、私とキスの練習しない?」
綾乃「え?」
綾乃「だだだ駄目よ船見さん!こういうのはお付き合いしてからじゃないと!」
結衣「いやかな?」
綾乃「べ、べべ別にいやとかじゃないけど……!」
結衣「私はしたいな、綾乃とキス」
綾乃「は、はいぃ!?」
結衣「それにほら、練習だからさ。ほんとのキスは付き合ってからかもしれないけど」
結衣「これは友達のキス。千歳ともしただろ?」
綾乃「えぅ……あれは事故というか……」
結衣「私とは練習でもしたくない?」
綾乃「そ、そういうわけじゃ!」
結衣「していいのか?」
綾乃「えと……あの……」
結衣「綾乃?」
綾乃「あぅ……はい……」カァァ
結衣「そっか、実はこれで5回目なんだ」
綾乃「へ?」
結衣「ううん、こっちの事……それよりさ、綾乃」
結衣「流石に、目を開けてられると、恥ずかしいから、瞑っててくれない?」
綾乃「そ、そうね……」
綾乃「こ、これでいいかしら」
結衣「うん、それでいいよ、綾乃」
ギュィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィンッ
綾乃「え、あの、船見さん?この音は」
結衣「チェーンソー」
綾乃「え?」
綾乃「あがががががががががががががっ!!!!」ガクガクガクガクッ
結衣「大丈夫、大丈夫だよ、綾乃、腕が落ちても、またソーイングセットで縫ってあげるからね」
綾乃「や、やめめめめめてててててててててててててててっ」ガクガクガクッ
結衣「ほら、もうすぐ、終わるから、ね?ああ、もう意識ないか、綾乃はすぐ気絶するなあ……」
ボトンッ
結衣「ふう、やっと終わった……このチェーンソー、重すぎなんだよな……」
綾乃「……」ガクガク
結衣「あはははははははは、綾乃、気絶してるのに痙攣してる」
結衣「相変わらず、面白いなあ」クスクス
プルルルッ
結衣「あ、電話だ」
結衣「え、あれ、京子!?」ドキッ
結衣「な、なんだろ」ドキドキッ
ピッ
結衣「もしもし、どうしたの京子」
『あ、結衣~?今どこに居るの?』
結衣「まだ学校だよ、ちょっと綾乃の仕事を手伝っててさ」
『えー、綾乃の?私のご飯作ってくれるのより、綾乃の方が大事なのか―』
結衣「え、そ、そんな事ないよ!」
『ほんとかー?』
結衣「本当だよ、この世の中に、京子よりも大切なものなんて、無いから」
『ゆ、結衣、それは言い過ぎだって///』
結衣「京子、私は本気だよ?私、今まで黙ってたけど、京子の事が……京子の事が……」
ガシッ
結衣「……?」
綾乃「………」ハァハァ
結衣「なんだ、綾乃か、足掴まないでよ」
綾乃「あ、あなたの、あたなのことを、ゆるさな、い」
『あれ、綾乃の声するよ、やっぱり忙しい?』
結衣「あー、そんな事ないよ、もう終わるから」
綾乃「と、としのう、きょうこ、た、たすけ、て」
『え、いま、綾乃、助けてって……』
結衣「もう、綾乃、私が手伝ってあげてるんだから、京子まで呼ぶ必要ないよ」
結衣「それに、もうすぐ、終わるだろ」
綾乃「……としのう、きょう、こ……おねがい……」
綾乃「わ、わたし、このままじゃ、ふなみさんに、ころ」
結衣「すけ!」
『え?』
綾乃「た、たす」
結衣「きがけ!」
『もー、二人とも、悪ふざけは止めてよ?』
結衣「あははは、ごめんごめん」
綾乃「と、としのう、きょうこ、おねがい、たすけて……」
『はいはい、もう判ったから、綾乃、あんまり結衣をこき使わないであげてね?」
結衣「大丈夫だって、京子」
『じゃ、結衣、早く帰ってきてね~』
結衣「ん、もうすぐ帰るよ」
ピッ
綾乃「……」
結衣「じゃ、綾乃、私はそろそろ帰るね?」
綾乃「……」
結衣「綾乃も、早く家に帰りなよ?」
綾乃「……」
結衣「じゃあ、また明日」
綾乃「……」
ギィー
バタンッ
~結衣宅~
京子「あ、結衣、おかえり~」
結衣「ただいま、京子」
京子「ごっはっん!ごっはっん!」
結衣「はいはい、ちょっと待ってなよ」ガサゴソ
京子「今日の晩御飯は何かなぁ~♪」
結衣「今日は肉鍋……」
京子「おう!豪勢だねえ!」
結衣「……にしたかったけど、お肉が無いので、ウドンだ」
京子「ウドンも好き!」
京子「~♪」モグモグ
結衣「京子、おいしい?」
京子「うん、美味しいよ?結衣も食べれば?」
結衣「ん、そうする」チュルチュル
京子「あー、もうお腹いっぱい!」
結衣「食べるの早いな」チュルチュル
京子「結衣~、ラムレある?」ゴロン
結衣「うん、但し、1個だけね」
京子「いやっほーい!」タッ
京子「うお!10個もあるじゃん!買い置きし過ぎ!」
結衣「……京子が何時来てもいいようにって、買い置きしておいた」
京子「もう、結衣、可愛い事いってくれるよね///」
京子「そういえばさ、綾乃の手伝いってなんだったの?」
結衣「んー、別に、大したことないよ、倉庫の整理」
京子「そっかー……綾乃、私にも声掛けてくれれば良かったのに」
結衣「まあ、綾乃は京子の事が嫌いだしね、仕方がないよ」
京子「……え?」
結衣「え、京子、ひょっとして、気付いてなかったの?」
京子「ま、またまた、冗談ばっかり」
結衣「え?」
京子「……まじ?」
結衣「だって、何時も怒鳴り込んできてたじゃん、綾乃」
結衣「京子の事が嫌いじゃなきゃ、あんな言い方してこないだろ」
京子「そ、そう、かな……」ガーン
京子「わたし、わたし、綾乃にも嫌われてたんだ……」ガーン
結衣「京子、そんなにショック受けないでよ」
京子「そ、そりゃ、ショックだよ、好きな子に嫌われてるって判ったら……」
結衣「……は?」
京子「う、うう、明日、どんな顔で綾乃に会えばいいんだろ……」
結衣「京子?」
京子「え、なに」
結衣「あの、いま、好きな子って……」
京子「あれ、私、言ってなかったっけ」
京子「綾乃の事が、好きだって」
結衣「……冗談、だよな?」
京子「いや、冗談じゃないよ、私は、綾乃の事が好き」
京子「修学旅行の晩にね、綾乃の布団に潜り込んで、思い切って告白しようかと思ったんだけど……あの、不覚にも途中で寝ちゃって///」
京子「けど、うーん、嫌われてたのか、私……じゃあ、あの時の綾乃、本当は嫌だったのかなあ……」
京子「はぁ……憂鬱……」
結衣「……」
京子「結衣、どったの?」
結衣(綾乃と京子、両想いだったのか……)
結衣(悪い事しちゃったな)
結衣(京子、悲しむだろうなあ……)
結衣(どうしよう、綾乃の手をくっつけて元に戻しておけば、綾乃、生き返るかな?)
結衣(いや、そもそも死んだのかどうかも判んないし)
結衣(意外と、明日の朝には平気そうな顔で登校してくるかも)
結衣(そうだよな、人間、あんな程度では死なないよな)
結衣「よし、じゃあ、明日から京子を賭けた恋の勝負、始めなきゃな」
京子「結衣?なにいってんの?」
結衣「な、何でも無いよ、京子///」
結衣「じゃあ、電気消すよ、京子」
京子「うん」
パチッ
結衣「うー。寒い……」ゴソゴソ
京子「うん、寒いね」
結衣「寒い寒い」
京子「結衣、寒いって言い過ぎ」クスクス
結衣(もう、京子、私の事は温めてくれないのか)
結衣(綾乃の事は温めた癖に)
京子「……」
結衣「……」
結衣「京子、寝た?」
京子「……」
結衣「寝ちゃったか……」
ペタッ
結衣「……?」
結衣「なんだろ、何か、物音が聞こえたような」
ペタッ
結衣「うーん、けど、随分遠くから聞こえるなあ……」
結衣「ま、気にしないでおこっと」
結衣「……」
ペタッペタッ
結衣「……」
ペタッペタッ
結衣(うーん、断続的に音が聞こえる)
結衣(どうも、下の階から聞こえてるみたいだけど、なんなんだろ)
結衣(近所迷惑だなあ……)
ペタッペタッ
ペタッペタッ
結衣「……あれ、気のせいかな、音が、この階から聞こえ始めたような……」
ペタッペタッ
結衣「……これ、足音か?裸足の足音……?」
ペタッペタッ
結衣「ひょっとして、私の部屋に、近づいてきてる?」
ペタッペタッ
結衣「そうだ、この音、廊下から……」
ペタッ
結衣「部屋の前で、止まった……」
結衣「……」
結衣「京子、ちょっと起きて」ユサユサ
京子「……」
結衣「京子、京子ったら」ユサユサ
京子「……」
結衣「お、起きて、あの、さっきから、足音が……」
ペタッ
結衣「……!?」
結衣「う、うそ、足音が、部屋の中に」
結衣「けど、何も見えない、足も、身体も、見えないのに、どうして」
ペタッ
ペタッ
ペタッ
ペタッ
結衣「足音だけが、近づいてくるの……」
結衣「きょ、京子、起きて、起きてよ!」ユサユサ
京子「……なに」ムクリ
結衣「きょ、きょうこ……」ホッ
京子「なに、船見さん」
結衣「……え」
京/乃「どうかしたの、船見さん」
結衣「きょう、こ?いや、綾乃?」
綾乃「何を驚いてるの、船見さん」
結衣「きょ、きょうこ、は?」
結衣「京子をどこにやったんだよ!綾乃!」
結衣「何で綾乃が京子の布団で寝てるんだよ!?」
綾乃「え?変な事言うわね、船見さん」
綾乃「歳納京子と最後に会ったのは、貴女でしょ?」
結衣「……え?」
綾乃「ほら、歳納京子が倉庫の整理するから、それを手伝ってたんだって、さっき言ってくれたじゃない」
結衣「……なに、を、言って」
綾乃「もう、明日の朝も早いんだから、変な事で起こさないで?」ゴロン
結衣「な、なにを……」
ペタッ
結衣「……!」ビクッ
結衣(あ、足音が、私の後ろに……)
「どうして」
結衣「……え」
結衣「この声は……」
結衣「きょうこ?」
「どうして、あんなひどいことを、したの」
「ゆい」
「しんじてたのに」
結衣「京子、どうして、どうして、腕が、無いの?」
「ゆいが、きったんじゃない」
「わたしのほほを、さいて」
「きずがのこるように、ぬって」
「そして、うでを、きりおとして」
「わたしを、そうこに、とじこめた」
「だから、わたし」
「しんじゃった」
結衣「…………うそ、だ」
結衣「嘘だ、私が腕を切ったのは、綾乃だ、綾乃のはずなんだ」
「わたしだよ、うでをきられたのは、わたしだよ」
結衣「う、嘘だよ、だって、だって、わたしが京子の腕を斬るはずが!」
「ほんとうだよ、ゆいが、ゆいが、やったんだ」
「ゆいが、わたしを」
「わたしを、ころした」
結衣「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!」
「だって、結衣は、あの時、思ったんだよね?」
「私と、綾乃が、同じ布団で寝てるのを見た時」
結衣「あの時……あの時、私は」
「私を殺したいって、思ったんだよね」
「そうすれば、私は永遠に結衣の物になるから」
結衣「う、そ……だ、私は、そんなこと、思ってなんか……」ガクッ
結衣「京子を殺したいなんて、思ってなんか……」
結衣「そ、そうだ、綾乃の事も、嫉妬はしたけど、殺したととまでは、思ってなんかいなかったはずなんだ……」
結衣「ど、どうして……どうして……」
「違うって言うなら、証拠を、見せて」
結衣「証拠……」
「結衣が私を殺さない証拠」
「結衣が綾乃を殺さない証拠」
結衣「しょうこ……」
ペタッ
結衣「……!」ビクッ
結衣(ま、また、足音が、私の後ろに……!)
「ほら、お迎えが来たよ、結衣」
「目を見開いて、足音の相手を、見てあげて?」
結衣「い、いやだ、見たくない、見たくないよ、京子……」ガクガク
「駄目だよ、結衣、貴女は見てしまう、どうしても見てしまう」
「だって、足音の主は、主は……」
ペタペタ
??「ゆいー、どうしたの?」ツンツン
??「悪い夢でも見てるのかなあ」
結衣「むにゃ、足音が、足音がぁ……」
??「おきなはれ!」ペタペタ
結衣「あ、あれ、私……」
京子「あ、起きた」
結衣「え、京子……」
京子「結衣、凄くうなされてたよ?」
結衣「京子……こ、ここは……」
京子「京都」
結衣「え?」
京子「結衣、寝ぼけてるの?今は修学旅行の最中だよ?」
結衣「……え?」
京子「綾乃~、結衣も目が覚めたみたいだし、また入れて~」ゴソゴソ
綾乃「なっ!?もういいわよ!十分、あったまったから///」
京子「いやいや、今度は私が寒いんだって」
綾乃「え、も、もう、じゃうしょうがないわねっ///」
結衣「……」
結衣「あ、あははは、なにそれ、全部、夢だったの……」
「殺さない証拠を見せて」
結衣「……」ゾクッ
結衣(何だろう、夢の中のあの声だけが、現実のように思い出せる……)
結衣(証拠って、なにを……)
京子「綾乃、あったけえ……!」
綾乃「もう、歳納京子、くっつきすぎよ///」
結衣「……」
結衣(証拠になるか、わからないけど……)
結衣「……京子」
京子「え、なに?」
結衣「私も入れろー!」ズサー
京子「え、ちょ、ゆい、流石に3人は狭いってっ」
綾乃「ふ、船見さん、押さないで///」
結衣「いいじゃん、私はもっと京子とくっつきたいんだよ、綾乃とはもう一杯くっついたんでしょ?じゃあ次は私の番ね」
京子「え、あの、結衣、どうしちゃったの?」
結衣「うん、証拠を示してるの」
京子「しょうこ?」
結衣「私が、色々貯め込んで殺意を熟成させない証拠」
結衣「私、もう、色々我慢するのは止めにする」
京子「え、あの、結衣、ひっつきすぎ……」
結衣「京子、私を温めてよ……私の心が壊れないように、繋ぎとめてよ」ギューッ
京子「わ、わかった、判ったから///」
京子「もう、結衣は寂しがり屋だなあ……」ギューッ
綾乃「……」
千歳「綾乃ちゃん、油断しとったら、船見さんに歳納さん取られるよ?」
綾乃「な、千歳!?」
千歳「ほら、もっと、ぎゅーっとくっつき?布団からはじき出されんように!」
綾乃「わ、判ってるわよ!この布団は、もともと私のなんだからね!」
綾乃「ふ、船見さん!歳納京子から離れて!」
結衣「いや」
綾乃「いやって、そんな子供みたいに……」
結衣「んべー」
綾乃「なっ!」
京子「ゆ、ゆいが壊れてる……」
話を纏めてみれば
「嫌な夢を見た」
ただそれだけの事
では、修学旅行の続きをどうぞ
完
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません