フウ「人斬り」ジン「抜刀斎」ムゲン「だあ?」(117)

フウ「なあにそれ?」モグモグ

店のおじさん「いえね、あっしも聞いた話なんですが……そりゃあ恐ろしい人斬りだそうで」

ムゲン「どうせその辺のチンピラがいきがってるだけだろうよ」ムシャムシャ

ジン「……いや、聞いた事がある。京の町に出没する滅法強い剣士がいる、と」モグモグ

フウ「ふーん。じゃあ江戸はあんま関係ないんじゃない?」

ジン「主、しかもそれは『結構前』の噂だと聞くが……」

おじさん「いえそれがねぇ……」

フウ「え、ジン。結構前ってどういう意味?」

ジン「どういう意味もなにも……一昔前の噂程度の話だ。実際、その姿を見た者は少なく信憑性もあまり無い」モグモグ

ムゲン「過去のなんちゃらってやつだな」ムグムグ

フウ「なんちゃらって何よ、なんちゃらって……」

モモさん「キッ、キイッ」

おじさん「その人斬り抜刀斎が最近江戸に出没するって噂がねぇ……」

フウ「……こわっ」

ムゲン「どうってこたぁねえよ。たかが辻斬りだぁ」

おじさん「辻斬りだなんて、とんでもない! 死体を見た人の話じゃあ身体は八つに引き裂かれ、そりゃあ無惨な……ああっ」

ジン「なるほど、最近の辻斬り騒動か。だが、しかし……妙だな」

フウ「ん? どうかしたのジン?」

ジン「私の記憶が正しければそもそも人斬り抜刀斎は……」

ガシャアン!

フウ「ひっ! な、なに!」

チンピラ「なんだこの店はぁ! こんな冷めて固い米客に出すんかぁ、ワレ!」

チンピラ2「店主を呼べ、店主をぉぉおお!」

フウ「な、なになに!?」

おじさん「ま、またあいつらか……ああやって難癖つけては飯代踏み倒してく……ううっ」

チンピラ「おう、店主! 今日も代金はタダでいいよなぁ!」

おじさん「へ、へいっ! そりゃあも……」

ズイッ。

ムゲン「ああ~、せっかく人が三日振りに飯食ってるってのに、うるせえうるせえ」

チンピラ「ああん? なんだ、てめは……」

ムゲン「なあ、おっさん。こいつら追っ払ったら飯代はタダでいいよな?」

おじさん「え……」



店外

薫「ふんふ~ん」

剣心「薫殿、ずいぶんとご機嫌でござるな」

弥彦「なんたって二週間ぶりの赤べこだからなぁ!」

薫「久しぶりにみんなで美味しいご飯食べましょ」

佐之助「へへっ、ゴチになるぜ」

薫「……あんたは呼んでないってのに、もう」

ガシャアアン!

薫「!」

チンピラ「ひ、ひいいっ!」

チンピラ2「た、たすけてぇええ!」ダダダッ

ムゲン「けっ、一昨日きやがれってんだ」

フウ「ちょっとムゲン、やりすぎ!」

ムゲン「扉くらいどうって事ねえだろ。なあ、おっさん」

おっさん「な、な、な……」

ムゲン「ああ、礼には及ばねえよ。ま、これで明日から平和に商いが……」

おじさん「な、なんてことしてくれたんだぁああ! こ、これで……この店は終わりだぁ!」

ムゲン「……へ?」

ジン「……」

弥彦「なんの騒ぎだ?」

佐之助「さあ?」

おじさん「あ、あいつらは暴力団のしたっぱだ……そいつを追い払ったとなりゃあ」

薫「……なんだか厄介事みたいね」

ムゲン「……」

弥彦「ただのチンピラ同士の喧嘩じゃねえのか?」

佐之助「言えてるな。あの風貌じゃあどっちが悪者かわかりゃしねえ」ケラケラ

薫「ちょっと佐之助!」

ムゲン「……おい、そこのトンガリ頭。今なんつった」ズイッ

フウ「ち、ちょっとムゲン。なに絡んでんのよ」

佐之助「ああ?」

ムゲン「あぁん?」

薫「や、やめなさいってば……」

ムゲン「こちとら食事邪魔されて気が立ってんだ。手加減しねえぞ、コラ」

佐之助「奇遇だな。こっちも飯食う前で気が立ってんだ」

ムゲン「てめぇ……上等だぁ!」ダッ

佐之助「やんのか、コラ!」ダッ


薫「やめなさぁああい!」

ガッ!

ムゲン「!」

佐之助「!」

剣心「佐之、よすでこざるよ」グイッ

佐之助「剣心……!」

ジン「往来で堂々と喧嘩など、酔っぱらいかお前は」ググッ

ムゲン「てめぇ……!」

剣心「連れが失礼をつかまつった、面目ないでこざるよ」ペコッ

ジン「こちらこそ。野獣のような男で申し訳ない」ペコッ

佐之助「勝手に話すすめんじゃねえよっ!」

ムゲン「そうだぜ、俺はこいつをぶんなぐらなきゃ気がすま……!」

ジン「やれやれ。今はそんな時じゃないだろう」

フウ「そうよ! お店のおじさん、泣いちゃってるじゃない! アンタの責任なんだからね!」

おじさん「ヒック、ヒック、終わりだぁ……」

ムゲン「そりゃあ……」

剣心「……」

ジン(腰には刀、彼も武士か)

剣心(……ふむ)

剣心「主、先ほどの客人、もしら炎龍組のチンピラではござらんか」

薫「ち、ちょっと剣心」

剣心「乗り掛かった船、でこざるよ。薫殿」ニコッ

佐之助「炎龍組っていやあ……ああ、あいつらか」

フウ「あいつらって、あなた奴らと顔見知り? も、もしかして仲間……?」

佐之助「ちげーよ。ちょっと組長と知り合いでな。まあ、あながち間違いでもねえけど」

おじさん「そ、それは本当ですか! で、でしたら今回の事をな、なんとか許してもらえるようおとりつぎを……!」

佐之助「おとりつぎも何も、俺が言やあ奴等はなんも出来ねえよ。ったく、まだ弱いものイジメばかりしてんのか」

おじさん「お、おおっ!」

ジン「……どうやら、我々の出る幕はなさそうだな」

フウ「ね。ムゲンが殴った時はどうなるかと思ったけど……」

ムゲン「……ま、よかったなおっさん」ポンポン

佐之助「……ちょい待ち。俺はまだ口聞きするたぁ言ってないぜ。おい、そこのチンピラ」

ムゲン「あ?」

佐之助「元々はお前が原因だろ。お前が俺に謝るってんなら、この問題解決してやってもいいぜ」

ムゲン「はぁ、なんで俺がお前なんかに!」

ジン「……頭一つですむ問題だ」

フウ「ほら謝っちゃいなさいよ、ムゲン!」

薫「け、剣心~」ワタワタ

剣心「……」ニガワライ


ムゲン「ちっ、しかたねーな……」スッ

ムゲン「よっ、ほっ」グイッ、グイッ

ムゲン「……」ヨーイ

ムゲン「ドンッ!」

ダダダダダッ!

弥彦「あ、あいつ逃げやがった!」

佐之助「お、おい! 待てよてめぇ!」

ムゲン「わははは、じゃあな~てめぇら!」

フウ「……さいってぇ~」

ジン「不毛だ……」

路地裏

ムゲン「ふ~、ここまでくりゃあなんとか。ま、あいつらなら何とかなるだろ」

ムゲン「……と、夢中で走ったからな。よくわからねー場所にきちまったな」

ムゲン「さぁて、どうすっかなあ」スタスタ

警官「……ん。おい、貴様」

ムゲン「金は持ってねえし、宿だってどっか……」ブツブツ

警官「えぇい、貴様! 無視するな!」グイッ

ムゲン「とっとっと! なんだてめぇは!」

警官「……貴様こそ、その背中の刀はなんだ」

ムゲン「なにって、刀に決まってんだろうが。バカかてめー」

警官「ほう。け、警官に向かっていい度胸だな……しょっぴくぞ、貴様」プルプル

ムゲン「ああ~、そりゃあ勘弁。こちとらあんま暇じゃないんでね。じゃ、さいなら~」クルッ

警官「あ、ま、まて……!」

「……やれやれ」

ザワッ!

ムゲン「……(殺気)!!」ゾワッ

バッ!

「みすみす、目の前で逃亡を許すのはいけないなぁ」

警官「あ、お……お疲れ様ですっ!!」ビシッ

ムゲン(奴の殺気じゃねえ……だったら……)

「……やれやれ」

「君はいいから、応援を呼んできなさい。あとは私がなんとかしよう」ニコニコ

警官「し、しかし……」

「……」ニコニコ

警官「は、はっ! 了解しました、藤田五郎警部補!」ビシッ

ダダダダダッ。

ムゲン(この殺気はぁ……)

藤田「刀を持っている人間をむざむざと逃すわけにはいきませんね。大人しく、お縄についてもらえるとありがたいのですが」ニコニコ

ムゲン「……てめぇ、なにもんだ」

藤田「藤田五郎、と申します。一応警官でしてね、見逃すわけにもいかないのですよ」

ムゲン「……」チヤッ

藤田「ほう、抜く気、ですか?」

藤田「ならばこっちも……」ニイッ

ムゲン「けっ、待ってましたって顔してるぜ?」

藤田「とんでもない。もめ事は嫌いでね……刀を抜けば収まってくれる騒ぎもあるものでして」

藤田「まあ、もっともアナタはそんなタマじゃないみたいですが……」ニコッ

ムゲン「へっ、ご名答!」ザッ

藤田「!」

ムゲン「おらあっ!」

ガギン!

藤田「……なるほど、視界外からの攻撃。武器は速さ、ですか」

ムゲン「なっ……(い、いとも簡単に止めた)」

藤田「だが、見える!」シュッ

ムゲン「っとと!」バッ

ムゲン「くっ……! はぇえ……」

藤田「逃がさないと言ったでしょう?」ズイッ

ムゲン「!」

藤田「はあっ!」ガッ

ムゲン「ぐうっ! こんのお!」シュッ!

ガギッ!

藤田「……下駄に仕込み鉄、か。なるほど、どうりで」ググッ

藤田「だが、甘い!」グイッ

ムゲン「うおっ! とおっ!」グルングルン

藤田「ぐっ……体を捻り上げての蹴撃……型にはまらぬ型というわけか」

ムゲン「へっ、さっさとお陀仏しちまいなっ!」ザッ

藤田「……ふふっ」ザワッ

ムゲン(また、殺気か……!)ゾワッ

藤田「……おや、どうしました。まるで子犬みたいな顔して」

ムゲン「へっ……俺が子犬ならてめぇは犬の皮を被った獣だな」

藤田「ふふっ、これはおかしな事をおっしゃる。私はただの警官ですよ」

ムゲン「……ただの警官がそんなギラギラした殺気醸し出すかよ。戦ってる時のてめぇはまるで……」

ムゲン「血に餓えたおみたい、だぜ」

藤田「……ほう」ピクッ

藤田「なるほど、ただのチンピラじゃあなさそうだ」スッ

ムゲン(……気配が変わった)

藤田「ふん」

ムゲン「……それによ、てめぇからはプンプンと匂ってくるんだよ」

ムゲン「渇いた血の匂いがよ……」

藤田「……」

ムゲン「案外お前さんみたいのがよ」

ムゲン「人斬り抜刀斎、ってやつじゃねえのか?」

藤田「……」ピクッ

藤田「俺の前で、その名前を出したのは失敗だったな」ヒユッ

ムゲン「あ? 消え……」

ザシュッ

ムゲン「う、うおおっ!」スッ

藤田「ち……損ねたか」

ムゲン(はえぇ、なんてもんじゃねえ……!)

藤田「あの頃に比べたら腕も鈍る、か」コキッ

ムゲン「……やっぱりてめぇが人斬りか!」

藤田「……阿呆が」スッ

ムゲン「なるほどな、警官が犯人ならそりゃあ捕まえるのも難しいってわけだ」

藤田「何を勘違いしているのか知らんが、貴様みたいなのが町をうろつくのは危険だ。ここで倒す」

ムゲン「……へっ。それともお前からすりゃあ、俺が人斬り抜刀斎にでも見えるってか?」

藤田「……ふぅ」ヤレヤレ

藤田「奴は貴様のような狂犬では……ないっ」スッ

ズアッ!

ムゲン(……構えからの突き、突進……これくらいな)

ヒユッ

ムゲン(な、み、見えね……)

藤田「しまいだ」

ムゲン「!!」

ザクッ

……。

赤べこ

デブフウ「なんかぁ、ごめんなさいねぇ。騒ぎ静めてもらって、おまけにご飯までおごってもらってぇ」ガツガツ

薫「い、いえ。こっちこそなんかすいません……」

剣心「まあたいした問題にならずよかったでこざるな。あの店主も組の問題も丸くおさまって」

ジン「口聞きすまぬ、佐之助殿とやら」

佐之助「ま、ちったあ感謝してくれりゃそれでいいぜ。あのチンピラは許さねえけどな」ガツガツ

ジン「奴か」

デブフウ「もう~、こんないい人から逃げるなんてムゲンのやつぅ」ガツガツ

弥彦「……ていうか誰だよあんた」

妙さん「ありがとうございました~」

ガラッ

デブフウ「まんぷっく、まんぷっく」

ジン「……色々と世話になった。連れの非礼も詫びよう」

剣心「それはお互い様でござるよ。なあ、佐之?」

佐之助「けっ」プイッ

薫「ふふっ。で、二人はこれからどうするの?」

ジン「とりあえず、宿を探す」

デブフウ「あとついでにムゲンもね」

薫「そっ……か。私たちは町外れの剣術道場にいるから、なにかあったら訪ねて来てね」

ジン「……」

フウ「へえ、薫さんって道場持ってるんだ!」

弥彦「と言っても、門生がいるわけじゃねえけどな」

薫「弥彦うるさい! これでも神谷活心流の看板背負ってるんだがらね!」

ジン「……」

ジン(看板、か)

フウ「……ん、どうかしたジン?」

ジン「……いや」

剣心「ふむ」

影「……スッ」

剣心「!」ピクッ

ジン「!」ピクッ

スウッ

剣心(……気配が消えた)

ジン(気のせい、か……?)

薫「……と、そろそろ帰らないと。じゃあ二人とも、気をつけてね」

フウ「あ、はい。ありがとうございます」

佐之「ほら剣心、けえるってよ」

剣心「……ああ」

ジン「……ふむ」

剣心「お互い、気のせいだといいでござるな」

ジン「まったくだ」

フウ「?」

薫「?」

……。

薫「うう~ん、なんだか面白い人たちだったわね」

弥彦「悪い奴には見えなかったよな。ただ一人を除いて」

佐之助「あいつは極悪人に決まってるぜ、目を見りゃわかる。なあ、剣心?」

剣心「……」

剣心(気配が無い。もしや向こう……?)

佐之助「剣心?」

弥彦「どうしたんだよ、ボーッとしちまって」

剣心「……すまぬが拙者急用が出来たでござるよ」クルッ

薫「へ? ち、ちょっと! どうしたのよいきなり!」

剣心「夕食までには帰るでこざるよ。弥彦、佐之、すまぬが留守を頼んだでござる」

薫「ち……ちょっと……ああ、行っちゃった。もう、なによ剣心たら」

佐之「愛人のとこにでも遊びにいったんじゃねえのか?」

薫「……ムッ!」キッ

佐之助「冗談だよ、冗談」

ワイワイ ガヤガヤ

弥彦「……ん、なんだ。ずいぶん騒がしいな」

「……大怪我してるぞ、早く医者を!」

「怖いまた例の辻斬り……?」

佐之助「……事件みてえだな」

佐之助「はいよ、ちょっとごめんよ」

弥彦「うわっ、一面血だらけだ……って……こ、こいつは!」

薫「ああっ、さ、さっきの……」

ムゲン「う、ううっ……」

佐之助「チンピラ野郎じゃねえか……」

薫「ひどいケガ、日本刀が刺さったままなんて……」


佐之助(こりゃあ、なんかヤバい予感がプンプンしやがる)


藤田「……」ニイッ

……。

ヒタヒタ

フウ「いやあ、いい人たちだったね薫さんて」

ジン「……」ヒタヒタ

ヒタヒタ

フウ「事件解決してご飯までおごってもらえてさ。いいな~ああいうお姉さん的な人」

ヒタヒタ

ジン(……こちら、か)

フウ「ちょっとジン。聞いてる? さっきから何をそんなぶっきらぼうに歩いて……」

ジン「フウ。隙を逃げるんだ」

フウ「……へっ?」

ジン「隠れてないで出てこい。その殺気……隠しても私には丸分かりだ」

忍「……」スッ

フウ「え、なになに!?」

忍「……」

ジン(数が多い……十人はいるか)

ジン「何者だ?」

忍「……」スッ

ジン「来るか!」チャッ

ザシュ、ザシュ!

忍「……っ!」

ジン「……」

ザシュザシュザシュ!

忍(……やる)スッ

ジン「とどめだ」

忍(……!)ボウッ!

ジン「くっ、煙幕。目眩ましか……」


フウ「キャアアアア!」

ジン「フウ!」

フウ「た、助けてぇ!」

忍「……」タタタッ

ジン「フウ! くっ……」ダッ

忍「!」ザッ

ジン「どけぇ!」シュッ

キィン!

ジン「! 私の太刀が……止められた」

宗次郎「困るなぁ、うちの使いをそんなに倒されちゃあ」

ジン(……子供?)

ジン「……どけ」

宗次郎「イヤです」ニッコリ

シュッ!

ジン「!!」ザクッ

ジン「ぐっ……」ポタッ ポタッ

宗次郎「あれ、皮一枚ですんじゃった。以外と素早いんですね」

宗次郎「ですが次はちゃんと斬りますよ」スッ

ジン(……気配が読めない)

ジン「……フウをさらう目的はなんだ。貴様らは一体」

宗次郎「ああ、すいません。お喋りしてる時間はないんです、それに僕らの正体ももちろん明かせません」

ジン「……貴様が人斬り抜刀斎か?」

宗次郎「僕が? 嫌だなぁ、そんな訳ないじゃないですか」ニッコリ

ジン「……」

宗次郎「まあ、ちょっとあの人には人質になってもらうだけですよ。人斬り抜刀斎を誘き寄せる餌として、ね」

ジン「……?」

ジン(一体何を言っている)

ジン「貴様は……」

宗次郎「ふふっ」

宗次郎「これから死ぬ人に名前なんて名乗っても仕方ありませんよ」ニッコリ

宗次郎「では、これで……」スッ

シュッ

ジン「……!!」

ザシュッ!

ジン「が……」

宗次郎「さよなら、です」

診療所

恵「……はぁ」

ジン「……」

ムゲン「……」

薫「それで、二人の具合はどうなんですか?」

恵「なんとか峠は越えたわ。二人とも、発見と治療が早かったのが幸いね」

弥彦「しっかし剣心がこのメガネの兄ちゃんを運んで来た時はびっくりしたぜ」

剣心「……」

佐之助「おめぇ、まさかこいつの動きを察して」

剣心「……というわけではござらんよ。もしかしたら、くらいには思っていたが」

剣心「まさかこんな状態になっているとは……」

恵「いずれも刀による裂傷、刺傷。二人とも急所を外れてるのが不幸中の幸いね」

薫「……でも、一体誰がこんなひどい事を」

剣心「……」

剣心(この二人、かなりの手練れの様子。それをここまで痛めつけるとは……)

剣心「……」

恵「何にしろ、今日はもう帰ってちょうだい。目を覚ましたら連絡するわ」

薫「すいません恵さん」

恵「医者が患者の面倒を見るのは当たり前でしょ、さ、おやすみなさい」

剣心「……」

……ピシャッ。

シーン。

ムゲン「……」

ジン「……」

ムゲン「よう、てめぇは誰にやられた」

ジン「そういう貴様こそ。ボロボロじゃないか」

ムゲン「ち……あの似非警官野郎め」

ジン「ふむ、我々が襲われたのは別の人間のようだな」

ジン「私は忍者と謎の少年にやられた」

ムゲン「……俺はてめぇは嫌いだが剣の腕だけはちょっとばかし認めてやってもいいくらいだ。それが負けるってこたぁ」

ジン「完敗だった。そういうお前も……」

ムゲン「くそっ! いらつくぜ!」ダンッ

ムゲン「て、て、……」ズキッ

ジン「暴れるな。傷に響く」

ムゲン「どこのどいつだか知らねえが、上等だ!」

ジン「……考えは同じようだな」

ムゲン「おうよ、奴らにお返ししなきゃこっちの気がすまねえ!」

ジン「ふむ……実は私たちが襲われたのには、一つだけ覚えがある」

ムゲン「あ?」

ジン「それは……あの道場の人間たちの関わりかもしれぬ」

ムゲン「……なんでえそりゃあ」

ジン「実はあの後、店の外で気配を感じてな……」

ジン「以上、あくまで推測だが、狙われてるのは案外あの一家かもしれん」

ムゲン「……一家って、奴ら家族だったか?」

ジン「知らん」

ムゲン「……まあんなこたぁどうでもいい。狙われる理由がわかりゃあ、あとは……」

ジン「どうする気だ?」

ムゲン「へっ、決まってらぁ。てめぇも同じ考えだろうが」

ジン「……うむ」

ムゲン「そうと決まりゃあまずは……」

ジン「この身体の回復だな。どうやら敵は思った以上に」

ムゲン「ああ」

『強い……』

二日後、道場

大久保「……志々雄真実が生きている」

剣心「!」

斎藤「ふん、そのための三文芝居さ」

薫「ねえ剣心、それって……」


剣心「志々雄、真実……」

大久保「頼む、奴を……」

剣心「……」

ガララッ。

ムゲン「話は聞かせてもらったぜぇ」

大久保「!」

ジン「……なるほど、どうやらとんでもない相手のようだ」

弥彦「お前らは……」

ムゲン「よっ、はじめまして。まだ挨拶もしてなかったよな。最も……」

斎藤「……」

ムゲン「知ってる顔はいるみてぇだけどなあ」

斎藤「ふん。雑魚の顔など忘れた」

ムゲン「んだと、てめぇ!」

ジン「落ち着け。それより、先ほどの話……」

剣心「……全て事実でござるよ」

薫「剣心!」

剣心「斎藤に襲撃されたムゲン殿は別として、おそらくジン殿が遭遇したのは……」

斎藤「ふん、後から調べて見ればそっちのメガネの方が当たりだったわけだ。せっかくの警戒網が野良犬一匹のせいで台無しだ」

ムゲン「てめぇ……!」

剣心「下らぬ挑発はよせ」

斎藤「巷で広がる抜刀斎の噂、ここ最近での不穏な動き……まあ、こちらの『切り札』に傷がないだけでもよしとするか」

大久保「……酷い言い方かもしれんがその通りだ。緋村、お前がいてくれればそれだけで奴らには脅威になる」

大久保「……あまりこんな考えは持ちたくないが、私も今は上に立つ人間なのだ。わかってくれ」

剣心「大久保卿……」

ムゲン「けっ、国とか政治とかはどうでもいいんだよ。やるかやられるかだろうが」

ジン「……」

斎藤「不本意ながら、俺もそいつに賛成だな」

剣心「斎藤」

斎藤「俺たちはそうやって生きてきたはずだ」

斎藤「何者かに雇われ、属すのは所詮肩書きと上辺のみ。刀を握り戦場に立てば、そこにはもう生か死しかない」

剣心「……拙者は伊達や酔狂で人斬りをしていたのではござらん」

斎藤「フン、そんなもの何度も刃を交えた俺が一番よく知っている。しかし、志々雄はそんな甘い考えじゃ斬れないって事さ」

大久保「その通りだ、奴は……まさしく狂人」

剣心「……」

大久保「また再び訪ねる。それまでに答えを出しておいてくれ」

剣心「……」

ジン「しばし待たれてほしい」

大久保「む?」

ジン「実は私たちの連れが一人拐かしに合ったのだが……何か心当たりはないだろうか」

斎藤「ふん、あの小娘か」シュボッ

斎藤「おそらくは志々雄一派の手の内だろう。人斬り抜刀斎と接点がある人物だ。奴らもタダでは帰すまい」

ジン「……人斬り?」

斎藤「フウッ」ピンッ

斎藤「こいつが、あの人斬り抜刀斎だ」グッ

剣心「……」

ジン「そう、か」

剣心「あまり驚かぬのでござるな」

ジン「いや、並々ならぬ気配は感じていたが。うむ……」

ムゲン「……そんなすげえ奴には見えねえけどな」

斎藤「フン、やはり実力も見抜けぬ阿呆か」

ムゲン「てめぇはぁ……いちいちうるせえんだよ!!」

剣心「こいつはこういう奴でござる。気にしていたらキリがござらん」

斎藤「……フン。せいぜい考えるんだな」ザッ

ムゲン「ま、待てよ!」

斎藤「まだ、何か用か?」

ムゲン「……奴らの足取りや手がかりはねえのかよ?」

斎藤「……」

剣心「斎藤」

斎藤「ふう、やれやれ……」

斎藤「悪いが貴様らに話せる事はない。言っただろ、これはもはや一個人の問題じゃあない」

剣心「その一個人が迷惑を被り、こうして実害も出ているんだ。聞く権利くらいはあるでござろう」

ジン「……同感だ」

大久保「……ふむ。斎藤」

斎藤「……チッ」

斎藤「これは今日俺の密偵が仕入れた情報だが……」

ジン「……この近くに奴らの拠点の一つがある、と?」

剣心「奴らがやろうとしているのはいわば革命。全国どこに拠点があってもおかしくはない、が……」

ムゲン「そこにアイツが拐われたってのかよ」

斎藤「特に目立った動きがなかったから放っておいたんだがな。着物の小娘もそこにいるだろうというのが予想だ」

剣心「……当然警官(お前たち)は動かないのでござろう」

斎藤「表向きには、な。最低限の警戒はしているが、したっぱを捕まえたとこでどうにもならん」

ジン「なるほど、それならば泳がせて今回のように動きがある機を狙うわけか」

斎藤「ご名答」

ムゲン「めんどくせぇ、片っ端からしょっぴけがいいじゃねえかよ!」

斎藤「……今捕まる連中など所詮はトカゲのしっぽだ。それじゃあ本体を潰すまでには至らん」

ムゲン「……チッ。めんどくせぇ」

ジン「……それならばフウはどうなる?」

斎藤「さあな。奴らの目的が皆目わからん、人質を取ってどう利用するかは奴ら次第だ」

剣心「……そういう言い方はないでござろう」

斎藤「フン、原因の元がよく言う」

斎藤「……ともかく今は下手に動かん事だ。なあに、奴らもそこまでバカじゃない」

斎藤「今にきっと何か動きを見せるさ」

……。

斎藤『とにかく警戒だけは怠らん事だ。当の本人がこの様子じゃあな……いつ寝首をかかれてもおかしくない』

斎藤『せいぜい気を付けるんだな』

ピシャッ。

剣心「……」

薫「剣心……」

ムゲン「ったく、そうならそうと言えってんだ」ガタッ

ジン「ああ、これで探す手間が省ける」

剣心「おろ、二人とも……」

薫「ち、ちょっと。まさかその傷で出かける気!」

ムゲン「傷なんざ関係ねえ。敵はもうこっちの動きをとらえてるんだ」

ジン「……顔を知られている私がいれ迷惑が降りかかるかもしれぬ。長居は無用」

弥彦「で、でもよ……」

ジン「それに、奴らが行動を起こすとすれば私に対してだろう。唯一、奴らの顔を見ているからな」

剣心「止めても聞かぬようでござるな」

薫「剣心!」

剣心「ならば拙者も、フウ殿を助け出すために共に……」

ムゲン「ああ、いいっていいって。こっちの問題はこっちでなんとかするからよ」ヨロッ

ジン「……同感だ。そこまで世話にはなれぬ」ヨロッ

剣心「しかし……」

ムゲン「……それによ今この道場あけるのはアブねえんだろ?」

ジン「……緋村殿、お主がここを離れるのには私も賛成出来ない」

剣心「ムゲン殿、ジン殿……」

剣心「かたじけない」

ムゲン「なぁに、いいって事よ。とりあえず、アイツを助け出すまでは俺たちがターゲットって訳だからな……」

ジン「一応の、な」

弥彦「……でもよ、具体的にこれからどうすんだよ。まさか奴らの拠点に乗り込むわけじゃねえんだろうな?」

ムゲン・ジン『乗り込んでから考える』

ムゲン「……真似すんなよ」

ジン「貴様もだ」

ムゲン「ほんじゃま、いってきま~すっと」ヨロッ

ジン「……腰が」ヨロッ


薫「……だ、大丈夫かしら? あの二人」

剣心「きっと、大丈夫でござろう」フッ

弥彦「俺も不安で仕方ねえぜ」

剣心「……」

薫「……嫌な天気ね」

ヒュゥゥ

ジン「……嫌な風だな」

ムゲン「ああ?」

ジン「何でもない」

ムゲン「……にしてもよぉ」

ジン「うむ。やはり気付いたか」

ザッ ザッ

ムゲン「……この山に入ったとたんに、とは」

ジン「全く、熱烈な歓迎だな」

忍「……」スッ

ムゲン「ひいふう……ざっと二十、ってところか」

ジン「適当だな」

ムゲン「倒しちまえばおんなじだ、構うもんか」

ジン「全く、お前という奴は」スチャッ

ムゲン「俺が十二で、てめぇが八な」

ジン「私が十二を引き受ける。その傷なら満足に動けまい」

ムゲン「けっ、そういうお前もずいぶん足腰辛そうだぜ?」

ジン「……」

忍「……やれ!」シュッ

ザシュザシュ!

ジン「……腰痛持ちだからな」スッ

ムゲン「へっ、おらぁあああ!」ダッ

ザシュザシュ!

忍「く……!」

ムゲン「さ~て、お前で十人目、と」

ジン「……待て。そいつは斬るな」

ムゲン「んだよ、お前俺より斬り足りないからってよ」

ジン「……私はもう十人だ。そいつを斬ったら、案内人がいなくなる」

ムゲン「……チッ、俺の一人負けかよ」

忍「くっ……」カリッ

ジン「というわけだ。わかったらさっさと道案内を……」

ドサッ。

ムゲン「!」

ジン「……毒、か」

ジン「どうやら敵はかなりの手練れのようだ」

ムゲン「……チッ、胸くそわりぃ」

ジン「しかし、こうなるとフウが心配だ」


ムゲン「意外と、脱走してたりしてな」

ジン「……」

……。

……。

モモさん「キッ、キキッ」カリカリ

フウ「頑張ってモモさん。あとちょっと……うん、切れそう」

モモさん「キッ……キーッ」ガリッ

ブチッ。

フウ「よしっ、外れた! ありがとうモモさん」

モモさん「キッ、キキッ」

フウ「……全く、あいつらこんなお堂に二日間も閉じ込めやがってー」

フウ「……ま、ご飯はちゃんと貰えたからいいんだけどね」

モモさん「キッ、キッ?」

フウ「……そうだね、さっさとこんな場所からはおさらばしちゃおっか」

フウ「なんか見張りの人もいなくなっちゃったし……今がチャンスよね」

モモさん「キッ、キーッ」

フウ「よーし……」

ギシッ、ギシッ。

フウ「え……」

バンッ!

フウ「き……」

きゃあああああっ!


ジン「!」

ムゲン「今の声は!」

ジン「向こうか!」

フウ「あ、あ、あ……」

フウ(あ、あれ。私を拐った人じゃ……ない?)

蒼紫「……」

フウ(……誰?)

フウ(なんだろう、なんだか凄く悲しい目をしている……)

蒼紫「……」スッ

フウ「あ、ま、待って! あ、あの……」

蒼紫「……」

フウ「あの、えっと……わ、私を拐った人じゃ……ない、ですよね?」

蒼紫「……拐かし、か」

蒼紫「俺には関係のない事だ」スッ

フウ「ま、待って……!」

蒼紫「どうした、なぜそんなに引き留める」

フウ「それは、えっとあの……よくわからないですけど……」

蒼紫「……」


ジン「フウ、どこだ!」

ムゲン「返事をしやがれ~!」

フウ「あ……あの声は」

フウ「ムゲン、ジン!」

ムゲン「へっ、ようやく見つけたぜ」

ジン「なるほど、ここが奴らの拠点か」

フウ「もう、遅いわよばかぁ!」

ムゲン「ちゃんとこうして助けに来ただろうが。感謝しやがれ」

ジン「しかし……」

蒼紫「……」

ムゲン「へっ、アイツが親玉かあ。おい、さっさとそいつから離れな。怪我したくなかったらな」

蒼紫「それは俺に言っているのか?」

ムゲン「ったりめーだ。おい、てめぇをやったのはこいつだろ?」

ジン「……いや。違う」

ジン「私が戦ったのはもっと幼い風貌をした少年だ。少なくとも奴ではない」

ムゲン「ああ? じゃあ誰だよてめえは」

蒼紫「……」

ムゲン「黙りってわけか。ま、だったらこいつに聞きゃあいいわけだよなっ!」ダッ

蒼紫「……」

ムゲン「はあっ!」シュッ

ムゲン「とった!」

蒼紫「……」ユラッ

ムゲン「!」

蒼紫「……いきなり切りかかるとは、ずいぶんとご挨拶だな」

ムゲン(奴の体が……)

ジン(まるで陽炎のように消えた……?)

蒼紫「先に断っておくが、俺は何も関係ない。ここに来たのも偶然だ」

ムゲン「……そんな言い訳、誰が信じるかよぉ!」シャッ

蒼紫「……」フゥ

ムゲン「おら、おらっ!」シャッ シュッ

ムゲン(く、ダメだ捉えられねぇ……!)ズキッ

蒼紫「その傷で俺に触れる事は無理だ」ユラッ

ジン(また消えた!)

ムゲン「無理かどうかは……まだわかんねえだろうがぁ!」バッ

蒼紫「……」ユラッ

フウ「ち、ちょっとジン! なんとかしてよ!」

ジン「……あの男には殺気がない。奴は完全に遊ばれているだけだ」

ムゲン「はぁ、はぁ、はぁ……」

蒼紫「もう止せ。治りかけの傷口だ、余計悪くなっても知らんぞ」

ムゲン「……チッ」

ジン「勝負は見えている」

ムゲン「てめぇ、名前は……?」

蒼紫「……」

蒼紫「四乃森蒼紫」

ムゲン「……けっ、キザッたらしい名前だぜ」

ジン(だが、出来る)

ジン(あの水面を揺らぐような動きと体捌き……よほど体術に長けていなければ出せない動きだ)

ジン(武器は……長刀か)

蒼紫「……」

ムゲン「くっ、くくくっ」

蒼紫「……?」

ムゲン「はっはっはは!」

フウ「ムゲンが……」

ジン「壊れたか」

ムゲン「ふ、ふ、ははははっ!」

蒼紫「どうした。なにがそんなにおかしい?」

ムゲン「……いやぁ、嬉しいねえ。江戸にはこんな強え奴らがたくさんいるってな」

ムゲン「そいつらとこうして戦えるだけでそりゃあ……おかしくもなるってもんさ」

蒼紫「……おめでたい奴だ」クルッ

フウ「あ、ま、待ってよ!」

ムゲン「いいんだよ、奴は今回の件には関係ねえみてえだからな」

フウ「でもっ!」

ジン「うむ。刃を交える理由がない」

ムゲン「そういうこった」

フウ「……」

ムゲン「……にしても次から次に強い奴らが出てくるな」

ムゲン「これであの伝説の人斬り抜刀斎がまだ控えてるんだから……江戸は恐ろしいもんだぜ」

蒼紫「……」ピクッ

ムゲン「さて、人質も助けたしそろそろ帰……」

蒼紫「待て」

ムゲン「あ?」

蒼紫「今、人斬り抜刀斎と言ったか?」

ムゲン「言ったけど、それがなんだよ」

蒼紫「……」

蒼紫「……貴様は人斬り抜刀斎を知っているのか」

ムゲン「へっ、顔色変わってるぜ兄ちゃんよ」

蒼紫「……答えろ」

フウ「ち、ちょっとムゲン……!」

ムゲン「ここ数日でちょっと、な。まあお知り合いってわけよ」

蒼紫「……奴との勝負は?」

ムゲン「あぁ?」

ジン「……ふむ、なるほど、抜刀斎とは顔見知りというわけか」

蒼紫「知っているさ。嫌と言うほどに、な」

蒼紫「答えろ、お前は抜刀斎の何だ。その傷は奴との戦いでついた傷か」

ムゲン「へっ、だったらどうするよ」

蒼紫「貴様が奴を倒したかどうかだけ知れればそれでいい」

ジン(こいつ……)

蒼紫「答えろ」

蒼紫「奴は……人斬り抜刀斎は今も最強のままなのか」

ムゲン「……へっ。一番強いのは」

ムゲン「この俺様よ」
シュッ!

ガキン!!

フウ「!」

ムゲン「……ようやく獲物抜きやがったな、この野郎」ググッ

蒼紫「……貴様ごときには必要ないと思っていたが事情が変わった」ググッ

フウ「ち、ちょっとちょっと! なんでドンパチ始めちゃうのよ!」

ジン「……馬鹿者が」

ムゲン「へっ、こうでもしなきゃあ……斬り合いできねえだろうが、よっ!」ブンッ

蒼紫「ふんっ」ガギッ

ムゲン「へっ、脇差し一本で勝てると思うなよ!」ビュッ

ガキン!

ジン「……いや、あの長さは確か」

フウ「え?」

ムゲン「おらあっ!」ブンッ

蒼紫「……!」ガギッ

グイッ

蒼紫「むんっ」

ダダダッ!

ムゲン「ぐはぁ!」

フウ「ムゲン!」

ジン「……小太刀。防御に優れた刀と聞く。そしてやはり体術を使うか」

蒼紫「……」

ムゲン「ってて……ヤロー思い切り傷口狙いやがって」

フウ「やめてムゲン! あの人と戦う理由なんてないんでしょ! さっさと帰ろうよ!」

ジン「いや……そうはいかないようだ」

蒼紫「……」

蒼紫「人斬り抜刀斎の名前を出したのが運の尽きだ」スチャツ

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