あかり「ゆるゆりクリスマス!」(189)

【0.プロローグ】

12月20日
 七森中学校
  ごらく部部室

京子「いやぁ今学期も無事に終わりましたなぁ」ダラダラ

ちなつ「そうですねえ」

結衣「みんなは冬休みになんか予定あるの?」

あかり「あかりはクリスマスにお姉ちゃんとお出かけするんだぁ」

あかり「『レッドクリムゾンチキン』買いに行くんだよぉ」

ちなつ「え…なにそれ…」

京子「CMでやってた辛いチキンでしょ、クリスマス限定のやつ」

結衣「そういえばあかりの姉さん、あのお店でバイトしてんだっけ…」

あかり「あかり、今から楽しみで夜も眠れないよぉ」

ちなつ「昨日は何時に寝た?」

あかり「9時40分だよ?」

京子「あー、私はクリスマスなにしよっかなー」ダラダラ

結衣「なんだ、まだ決めてないのか」

ちなつ「てっきり去年みたいになにか企画してるのかと思いました」

京子「あぁー?そうだねえ」

京子(あかりを抜いてごらく部三人…生徒会と合わせて八人か…)

京子「…ちょっと生徒会室行ってくる」

結衣「気を付けろよ」

七森中学校
 生徒会室

千歳「綾乃ちゃん、クリスマスはどうするのん?」

綾乃「そうね…まだ特に予定はないけど…」

千歳「だったら歳納さんと一緒に過ごしたらええんちゃう?」

綾乃「なっ!?何言って…!?」

綾乃「…でもそうね、一緒にいれたらいいかもね」カアァ

綾乃「どうせ歳納京子のことだから、また何か企んでるだろうし…」ブツブツ

千歳「『かも』じゃだめやで、綾乃ちゃん」

綾乃「…?だめって?」

千歳「待ってるだけじゃだめやねん、自分から仕掛けていかな!」

綾乃「じ、自分から仕掛ける…!?」

千歳「歳納さんが動くのを待ってるんじゃだめや!積極的に、綾乃ちゃんの方から誘っていかな!」

綾乃「そ、そんな事言われても…」モジモジ

綾乃(…でも、千歳の言うとおりかも)

綾乃(去年のクリスマスも、結局ずっと船見さんと公園にいただけだったし)

綾乃(今年は自分から攻めていかなきゃだめなのかも!)カッ

綾乃「頑張れ私!ファイトファイトファイファイビーチよ!!」

京子「おー!!」

綾乃「って!とっ、歳納京子ーーっ!!?」ガタン

京子「うん、京子ちゃんだよ」

綾乃「な、なんでいるの!?」ドキドキ

京子「いや、今来たんだけど綾乃、何か考えてたみたいだから…」

綾乃「そ、それで何か用かしら…」

京子「いや、今年もごらく部と生徒会でなんかやろうと思ってるだけど何も思いつかなくてさー」

京子「綾乃、何かやりたい事ない?」

綾乃「そ、そうね…」

千歳(綾乃ちゃん!チャンスやで!)

千歳(ここで歳納さんに『今年は二人で過ごしたい』って言うんや!)

綾乃(千歳…直接心の中に…!?)

綾乃「うぅ…」チラッ

京子「ん?」

綾乃(い、言わなきゃ…)ドキドキ

綾乃(今年は、私から攻めていかなきゃ…!)

綾乃「わっ、私は…!」

綾乃「歳納京子と…あなたと、一緒にいたい…!」

京子「…うん、いいよ?」サラッ

綾乃「…えっ、いいの!?」

京子「23日は祝日だし…私と綾乃でどっか行こっか?」

綾乃「あの…そうじゃなくて…」オロオロ

京子「?」

綾乃(千歳…)キョロキョロ

千歳「…………ふぅ」ドッバドバドバイ

綾乃(鼻血噴いて倒れてる…)

綾乃「えっと…えっと…!」

綾乃「…!」キッ

綾乃「とっ、歳納京子!!」グイッ!

京子「わっ!?」

綾乃「こ、ことっ…!今年の…!く、クリスマスは!!」

綾乃「今年のクリスマスは!私と二人っきりで遊びに行くわよ!!」

京子「…………」

綾乃「はっ!?」

綾乃(つ、つい歳納京子の肩を掴んで…!なんてことを…!)

京子「い、いいよ…!」

綾乃「…え?」

京子「いいよ、二人でデート行こう?」

京子「クリスマスの予定、開けとくからさ」ニコッ

綾乃「……デ、デ、デっ!?」キューン

綾乃(と、歳納京子の笑顔…っ!か、可愛っ…!!)ドキドキ

綾乃(肩も…小っちゃくて、背も、低い…し…)ドキドキ

綾乃(あああ…歳納京子の目に、私が映っててててててて)ドキドキドキ

綾乃「ぐはっ」ブシュゥッ ドサッ

京子「うわーっ!?綾乃も鼻血噴いて倒れたー!!?」

結衣「…京子からメールだ」ポチポチ

あかり「どうしたの?」

結衣「『今年のクリスマス中止のお知らせ』『ついでに今日の部活も各自解散』だそうで…」

ちなつ「なんですかそりゃ」

結衣「よく分かんないけど京子はクリスマス、綾乃と過ごすんだってさ」ポチポチ

ちなつ「そうですか…」

ちなつ「…………」

ちなつ(チャンス!!)

ちなつ(あかりちゃんは既に予定あり!京子先輩もいない!)

ちなつ(結衣先輩と二人っきりで素敵なクリスマスを過ごすチャンスよチーナ!!)

ちなつ(あかりちゃん!!)

ちなつ(ちょっと教室の花瓶の水でも換えてきて!!)

あかり(ちなつちゃん…直接心の中に…!?)

あかり「あ…あかり、ちょっと花瓶の水換えてコヨウカナー」スタスタ

結衣「…?あぁ、行ってらっしゃい」

ガララ ピシャッ

ちなつ「ゆっ、結衣先輩はクリスマスどうしますか!!?」

結衣「…うーん、どうしよっかな、急に予定が空いちゃったし」

結衣「でもまぁ毎年忙しなかったし、たまには一人で静かなクリスマスを…」

ちなつ「そ、そうですか…」シュン

結衣「…………」フト

結衣「…でも、どうしよっかなぁ」

ちなつ「…?」

結衣「いきなり一人ってのも寂しいし」

結衣「誰かと一緒に過ごすってのも悪くないかもね」

ちなつ「………!」

ちなつ「そ、それって…」

ちなつ「私と、一緒とかじゃ…だめですか?」

結衣「…うん、いいよ」ニコッ

結衣「今年のクリスマスはちなつちゃんと一緒だ」

ちなつ「きゃーー!私頑張ります!結衣先輩を全力で楽しませてあげますっ!!」

結衣「いや…普通でいいよ、普通で」

【1.シェイクハンズ】

12月25日
 赤座さんち

あかね「とうとうこの日がやってきたわね…」

あかね「あかりとクリスマスデートなんて…頑張ったわ、私」

あかね「…いいや、頑張るのはこれからね」

あかね「今日こそ、今日こそあかりにこの気持ちを…」

あかね「そして…」

あかね「…………」

あかね「…きゃー♪」カアァ

あかね「あぁ、早くあかりが起きないかしら」ワクワク

【A.M.5:30】

改めて【A.M.10:21】

あかね「さぁあかり、行きましょうか」

あかり「うん!」

あかり「お姉ちゃんのお店は駅前にあるんだよね」テクテク

あかね「そうよ、…クリスマスはそれはそれは混むわ」

あかね「お姉ちゃん頑張ってお休みとったのよ、あかりと出かける為に!」

あかり「あはは…」

あかね「クリスマスに二人でおでかけかぁ…うふふ」テクテク

あかね「これはデートになるのかしらね」フト

あかり「…えっ!?」カアァ

あかり「ど、どうなのかなぁ…」テレテレ

あかり「も、もし姉妹でもデートになるんなら…」

あかり「………」ドキドキ

あかね「………」ドキドキ

あかね(しまった…墓穴を掘った、沈黙が痛いわ…)

ギュッ

あかね「…あかり?」

あかり「で、デートは、手を繋ぐんだよね、お姉ちゃん」ギュー

あかね「…そ、そうね」ギュッ

あかね「…あかりの手、あったかいわね」

あかり「…お姉ちゃんの手もあったかいよ」

あかり「…手、繋いでいる人多いね」

あかね「まぁ…クリスマスだから」キョロキョロ

あかね「カップルだらけねえ」

あかね「…私たちも、カップルに見えてるのかしら」ポソッ

あかり「お、お姉ちゃっ…!?」アタフタ

あかり「ほ、ほらっ!あそこ!!手繋いでない人もいるから!」パシッ

あかね「あぁっ」ガックシ

あかね「…って、あれは」

あかり「知ってる人?」

あかね「ともこさん?」

ともこ「あっ、赤座さん…!」ドキン

撫子「こんにちわ、赤座先輩」ペコリ

あかり「二人共奇遇ね、こんなところで」

撫子「…そっちの小さい子は?」

あかり「はっ初めまして、妹の赤座あかりです」ペコリ

撫子「あぁ…例の」

撫子「色々噂は聞いてる…赤座先輩から」

あかり「うわさ…?お姉ちゃんが?」

あかね「…だめよ大室ちゃん、軽い口の女の子は嫌われるわよ?」ゴゴゴゴゴゴ

あかり(あれ…このお姉ちゃんの顔見覚えがある…、ちなつちゃんみたい)

あかね「二人は今日はどうしたの?おでかけ?」

ともこ「いや…たまたまそこで会っ」

撫子「吉川先輩にクリスマスデートに誘われて、ここで待ち合わせしてました」スラッ

ともこ「!?」

あかね「あらあら…じゃあお邪魔したら悪いわね」ニヤニヤ

ともこ「待っ、違っ」

あかね「あかり、行きましょう」ギュ

あかり「う、うん」

ともこ「あ、赤座さーーーーん!!!」







あかり「…お姉ちゃん、何気に手繋ぎなおしたね」

あかね「あらあら、ばれちゃった」ギュー

【2.孤独じゃない同盟】

ともこ「なっ、なんであんな嘘つくの!!」

撫子「面白そうだったんで…つい」

撫子「それに吉川先輩から誘ったのは本当じゃないですか」

ともこ「それは…そうだけど」

撫子「…今年も、言えなかったんですね」ハァ

撫子「片思い歴何年目ですか」ヤレヤレ

ともこ「…四年目」

撫子「……」ポンポン

ともこ「無言で頭撫でるのやめて」

ともこ「いいじゃない…独り身同士でクリスマスを過ごしましょうよ」

ともこ「一人でも、二人でいれば、一人じゃない。言わば『孤独じゃない同盟』」

ともこ「来年こそはきっと…」

撫子「っていうか私、彼女いるんでそもそも独り身じゃありませんし」

ともこ「えっ…」ガーン

ともこ「じゃあ今日、なんで来たの…」

撫子「彼女は今日はバイトなんで、明日会うんです」

撫子「それに今日は妹達は出かけるみたいで、私だけ予定なしみたいに思われたら癪だなぁ…と」

ともこ「そ、そう…私ったらなんてピエロ…」ガーン

撫子(吉川先輩が本気で落ち込んでいる)

撫子「…元気出してくださいよ、先輩」ナデナデ

ともこ「………うん」

撫子「いいこと教えてあげますから」

ともこ「……うん?」

撫子「吉川先輩は押しが足りないんですよ」

ともこ「押し?」

撫子「ただでさえ赤座先輩は妹ラヴなんですから、もっと積極的にいかないと駄目です」

撫子「先輩の妹さんみたいに…」

ともこ「そうね…ってなんでちなつの事知ってるの」

撫子「結構前に隣の家でマフラー編んでるのを見ました」

ともこ「なんで隣の家の事知ってるの」

ともこ「でも…そうね、積極的にいかなきゃ、とは思ってたけど…」

ともこ「赤座さんって、あかりちゃんの事が好きじゃない?」

撫子「そうですね」

ともこ「あかりちゃんって、結構大人し目の女の子だし…」

ともこ「積極的な女の子は赤座さんのタイプじゃないんじゃないかしら」

撫子「そうですね…じゃあ」

撫子「強気に、的確にこちらの想いを伝えつつ、それでいてがっついてると思われない告白の方法がありますよ」

ともこ「そんなものが…!それって…!?」

撫子「土下座」

ともこ「………」

撫子「土下座」

ともこ「…からかってる?」

撫子「本気ですけど…」

撫子「何を隠そう、私も今の彼女に土下座で告白しましたし」

ともこ「…彼女さんの反応は?」

撫子「泣いて喜んでOKくれましたよ」

ともこ(絶対に嘘だ…)

撫子「いや本当ですって、本当」

ともこ(心を読まれた…)

撫子「土下座は便利ですよ、極めれば告白だけでなく謝罪・懇願にも使えます」

ともこ「むしろそっちのが本来の使い方よね?土下座って」

撫子「それじゃあ練習してみましょうか、さんはいっ」

ともこ「…地面が冷たい」ゲザッ

撫子「そこで『地面が冷たい』とアピールできる顔をすれば相手により一層悲壮感を訴えることが出来ます」

ともこ「土下座してたら相手に顔は見えないんじゃないかな…」ゲザッ

撫子「姿勢が固いですよ…先輩」

ともこ(柔らかい土下座ってどんな…あぁヒザ冷たっ、つっこむのめんどくさっ)

撫子「もっと、こうですよ、こう」ゲザアアァ

ともこ「はい…」ゲザー

撫子「ちゃんと見てます?先輩」ゲザアァァァ

ともこ「はい…」ゲザーー

ともこ(あぁ…なんか人の視線をすごく感じるわ…)ザワザワ

ともこ(でも、もうなんかどうでもいいや…うふふふ…)ザワザワ

【3.春を待つ花】

大室さんちの隣
 古谷さんち

櫻子「もう準備できた?」

向日葵「も、もうちょっと待って下さいな」モタモタ

櫻子「ったく…向日葵は起きるの遅いし、準備も遅いし」

櫻子「そんなんだからおっぱいなんだよ」

向日葵「…だったらあなたも遅く起きれば?」

櫻子「天才か!!」

向日葵(これで毎朝起こしに来る馬鹿が来なくなりますわ)

向日葵「っと、準備できましたわ」

櫻子「はいはい、行きますか」

向日葵「じゃあ私達、出かけてきますから…」

花子「行ってらっしゃい」

楓「気を付けてーなの」

櫻子「行ってきまーす」

ガラガラ ピシャッ

櫻子「さーて…何買いに行くんだっけ」

向日葵「今夜のクリスマスパーティー用のものと、来年のおせちの食材を…」

向日葵「メモは私が持ってるから大丈夫ですわ」

櫻子「ん!任せた!」

向日葵「…今日は人通りが多いですわね」

櫻子「今日はクリスマスだかんねー」

櫻子「ふー、さむさむっ」

向日葵「あら?あなたマフラーは…?」

櫻子「あぁ、忘れちった」

向日葵「人に準備が遅いだの言っておいて自分がそれですの…?」

櫻子「うっさいなー!いいんだよ子供は風の子なんだから!」

櫻子「…へっきし!!」ブェクション

櫻子「………」ジーッ

向日葵「…貸しませんわよ」

櫻子「ケチおっぱい!」

向日葵(それにしても、今日は本当に寒いですわ…)

向日葵(もしかしたら雪が降るかも…)

櫻子「……?なんだろあれ」

向日葵「え?…人だかりができてますわね」

櫻子「行ってみよー!早くはやくー!」ダッシュ

向日葵「ちょ、櫻子…!」

櫻子「なんだろー、手品でも…うわ」

向日葵「往来で土下座してる方々がいますわ…」ヒキッ

櫻子「なんだろ…いったい何の…」

櫻子「あ゛…ねーちゃん…!?」ギョッ

向日葵「え、あ!?撫子さんですわ!!」ギョッ

向日葵「あ…逃げて行きましたわ」

櫻子「ねーちゃん、なにしてんだろ…」

向日葵「…あの女の人は?」

櫻子「…?さぁ、誰だろ」

向日葵「………!」ピクッ

向日葵「か…」

櫻子「蚊?」

向日葵「かのじょ…さん…とか…?」テレテレ

櫻子「あぁ?あー…あの人がねーちゃんのかの…」

櫻子「………」

櫻子「アアアアアアアアアアアアアアァ!!?」

櫻子「ね、ねーちゃんにかのっ…!?アアアアアアアァ!?」

向日葵「う、うるさいですわっ!」

櫻子「そ、そんなわけないじゃん!ばーかばーか!!ばかわり!!」カアアァ

向日葵「い、いやでも!前にそんな電話を…!」

櫻子「電話?」

向日葵「前に櫻子の家に行ったときに撫子さんが電話でそんな話を…!」カアァ

櫻子「そんな話ってどんな話だよ?」

向日葵「え、えっと…耳貸しなさいな…!」

向日葵「ごにょごにょごにょ…」

櫻子「と、泊まっ…!柔っ…!?布団ん!!??」

櫻子「ね、ねーちゃん…そんな事してたの…!?」

向日葵「それは…分かりませんけど…」モジモジ

櫻子「こ、恋人どうしって…!そんなこと…!」カアァ

櫻子「……向日葵は、そういうこと……したい?」チラッ

向日葵「え、えっ!?別にっ!私はそういうつもりでは…!!」

向日葵「っていうか!櫻子となんて…!そんな…」

櫻子「は、はぁっ!?ちげーし!つーかなんで私とになるんだよ!変態ひまわり!!」ドキーン

向日葵「あ、あなたが変な事言うからっ…!」アタフタ

櫻子「変な事言ったのは向日葵だろー!このエッチ向日葵!この…!へっ…へっ…!」

櫻子「へっきし!!」ブェキショィ

向日葵「………」

櫻子「ひっきしょい!ふっくし!!」クシュンクシュン

櫻子「うっうぅ…さむ…!」プルプル

向日葵「…櫻子」ファサッ

櫻子「わっ、な、なんだよ!?」

向日葵「マフラー…貸して差し上げますわ」

櫻子「へ?あ、ありがと…」

櫻子「…へへ、あったかい…」ニコニコ

向日葵「ほら、行きますわよ」グイッ

櫻子「引っ張るなよー!歩きにくいだろー!!」

【4.ロケット・スターター】

お昼
 どっかのレストラン

京子「あ゛ぁー、おいしかったー」ドッカ

綾乃「お行儀悪いわよ、歳納京子」

綾乃(緊張して…味なんて分からなかったわ)

京子「この後どうしよっか?」

綾乃「どうしよっか?って…どこか行きたいところとか無いの?」

京子「いやこういうのはむしろ誘った綾乃が決めるモノじゃないの…?」

綾乃「そ、それもそうね…」

綾乃(でも…行きたいところなんて、私は歳納京子と一緒ならどこでも…)

綾乃「って何思わせんのよ!!」ガー

京子「えっ、なに!?」ビクッ

綾乃(結局決まらないまま出てきちゃった…)トテトテ

京子「どーするー?映画でも行く?」

綾乃「…映画?」

京子「去年、ちなつちゃんとデートした時は映画見に行ったんだー」

綾乃「…で、デート中に他の女の子とデートした話するなんて…デリカシーないのね…」

京子「あれー?やきもち焼いてくれるの?」グリグリ

綾乃「べ、別にっ!!そういうんじゃないからっ!」フンッ

綾乃「映画館行くんでしょっ?早く来なさいよ!」スタスタ

京子「ごめん~、綾乃ごめんってー」スタスタ

綾乃(歳納京子の…ばか…)

映画館

綾乃「結構作品数多いわね…」

京子「綾乃ー!これ見ようぜー!!」

京子「『劇場版魔女っ娘ミラクるん-A wakening of the Trailblazer-』!!」

綾乃「え…でも私、魔女っ娘ミラクるんってよく分からないし…」

京子「大丈夫!これは前半でテレビ版をリメイクしつつ総集編にして、後半でテレビ版とは違った結末を楽しめるストーリーだから!」

京子「『魔女っ娘ミラクるん』が初めての人でも、ファンの人でも視れる会心の出来だよ!しかも3D!」

京子「むしろこれを見ずして何がクリスマスだ!絶対これ見よう!!」

綾乃「は、はいっ!」

京子「やったー!じゃチケット買ってくるー!」ダッシュ

綾乃(…なんか、うまく乗せられたような)

京子「っはー!楽しかったぁ~!」

京子「やっぱ最高だよねミラクるん!ラストバトルでライバるんとミラクるんが合体魔法を放つところなんてさー…」ベラベラ

綾乃(確かに…分かりやすかったし、ストーリーも面白かったわ)

綾乃(でも…なんだか置いてけぼりな気分)

綾乃(…映画見てる時、今日一番楽しそうだった)

綾乃(歳納京子は、映画見たいだけだったのかな…)

綾乃(私とデート…なんて、楽しくなかったかな)

綾乃(そうよね…私なんかと一緒にいるより…)

京子「…綾乃?」

綾乃「…………」

京子「ど、どうしたの?」

綾乃「…なんでも、ないわ」

京子「え、えっと…」オロオロ

綾乃「…………」

京子「…………」オロオロ

千歳「あれ?綾乃ちゃんに歳納さーん!」

千鶴「………げっ」

京子「あっ!千歳、千鶴ー!!」

綾乃「……千歳」

千歳「なにしとんー?」

京子「なんだか綾乃の調子がよくなくて…」オロオロ

千歳「綾乃ちゃんどうしたん?」

京子「3D酔い…?」

綾乃「……なんでも、無いから」

千歳「うちにちょっと話してみー?楽になるかもしれへんで」

綾乃「…………」

京子「あ、あの私…あっちに千鶴といるから…」

千鶴(えっ…)

千歳「うん」

綾乃「………」

千歳「綾乃ちゃん、なにかあったん?」

綾乃「…歳納京子は」

綾乃「私なんかといて楽しいのかな…って」

綾乃「今日だって、他の女の子の話したり…映画だって勝手に決めちゃうし…」

綾乃「私なんかより…吉川さんとか、船見さんの方が…!」

千歳「…ごめんなー、綾乃ちゃん」ナデナデ

千歳「うちが『積極的に』なんてゆーたから…綾乃ちゃん焦ってもうたんかな」

千歳「歳納さん、悪気があってそういう事するのと違うんは分かるやろ?」

綾乃「…うん」

千歳「焦らず騒がず、いつも通りでええんやで」

千歳「頑張ってな」

綾乃「いや、別に私は焦ってなんか…」

千歳「千鶴ー、いくでー」

千鶴「……うん」

千歳「ほな綾乃ちゃん、歳納さん、またなー?」

京子「まったねー」

綾乃「ちょ、千歳…」

綾乃(…行っちゃった)

京子「綾乃、大丈夫?」

綾乃「え、えぇ、大丈夫よ」

綾乃(…焦ってる?私が?)

【5.液体系姉妹】

千鶴「姉さん、杉浦さんとなに話してたの?」

千歳「んー?ちょっとな」

千歳「綾乃ちゃんに恋のアドバイスやー」

千鶴「ふーん…?」

千歳「千鶴は歳納さんとなにしてたん?」

千鶴「…世間話?」

千歳「世間話?」

千鶴「うん、世間話」

千歳「世間話…」

千歳「てっきり歳納さんのことやから、また千鶴とコミュニケーションとろうとしてたんかと…」

千鶴「うん…私もそう思ったんだけどね」

千鶴「踏みとどまったみたいだった」

千歳「そうなんや…」

千歳「どうしたんかなぁ」

千鶴「いつもブン殴ってるのが効いたかな…」

千歳「もぉー、そんな事したらあかんゆーとるやん」

千鶴「いや…つい」

千歳「つい、て…」

千鶴「…杉浦さんは?」

千歳「あぁ、綾乃ちゃん?」

千歳「大丈夫やで、なんも心配あらへん!」

千歳「うふふふ、二人の想いが微妙にすれ違いながらってのも…」カチャッ

千鶴「ね、姉さん!外で鼻血はだめだよ」

千鶴「場合によっては救急車呼ばれるよ」

千歳「そんな事言って千鶴も眼鏡外しとーやん」

千鶴「いやこれはさっきの姉さんと杉浦さんで…」ダバァー

千鶴「それに私はよだれ出てても『すごいお腹空いてる人』としか思われないし…」ダバー

千歳「ずるいなぁ」

千歳「それやったらうちも『妄想してる人』で片づけられへんのかなぁ」

千鶴「多分無理だと思うよ…」ダバァー

千歳「千鶴だけずるいで、ほら眼鏡かけ」カシャッ

千鶴「はっ」ピタッ

千鶴「………」ダバー

千歳「なっ!?眼鏡かけさせたんに千鶴の妄想がとまらへん!?」

千鶴(説明しよう、私の妄想力はすでに姉さん一人の顔を見るだけでトリップ出来るほどに高められているのだ)ダバー

千鶴(むしろ眼鏡をかけて姉さんの顔がよく見えるようになったので妄想の精度が高まったといえる!)ダバー

千鶴(そのうちギガロマニアックスとかに目覚めるに違いない)ダバー

千歳「ち、千鶴がそうくるんならうちにも考えがあるで!」

千歳「ふんっ」カシャン

千歳「……はぁ~」ブシャァッ

千歳(うちが街中で妄想して鼻血出せば千鶴は止めざるをえーへん)ブシャァ

千歳(止める為には妄想を中止せなあかんからよだれも止まる、ナイス作戦やで)ブシッ

千鶴(鼻血出してる姉さんを杉浦さんが…ええなー)ダッバァー

千歳(なっ…!?妄想を続行した!?)

千歳(ええで…うちの妄想と、千鶴の妄想)

千歳(どっちが強いか、勝負や!!)


…この戦いは「第一次百合妄想大戦」として後世に広く伝わっていくこととなる--

【6.花と楓と海の幸】

夕方
 古谷さんち

花子「…遅いし!」

花子「お昼前に出かけて行って、帰ってくるのがこの時間」

花子「いったい何やってたんだし」

櫻子「いや…その、ちょっと」

向日葵「面目ありませんわ…」

花子「二人でなにしてたんだか知らないけど…待たされたこっちの身にもなって欲しいし」

楓「まぁまぁ花子お姉ちゃん、二人共無事に帰ってきたんだからいいの」

花子「…今日のところは楓に免じて許してやるし」

向日葵「す、すぐにご飯作りますわ」ドタバタ

花子「花子も手伝うし」トテトテ

櫻子「はぁー…なんか疲れた…!」ドサッ

楓「櫻子お姉ちゃん、寝るならこたつで寝るの」

櫻子「あ゛ぁー…」ズルズル

楓「こんな時間までお外で何してたの?」

櫻子「いや…道中いろいろあって…」

櫻子「……柔らかかった」ポッ

楓「?」

向日葵「じゃあまずはシチューから作りますわよ」

花子「合点承知」ガサゴソ

向日葵「じゃあまずじゃがいもを…」

花子「…向日葵ねーちゃん」ガサゴソ

向日葵「何か?」

花子「じゃがいもが無いし」

向日葵「あら…」

花子「あと、お肉とコンソメとお海老とレタスともふくらげと蝋燭がないし」

向日葵「あ、あら…?」

花子「……何しに行ってたの?」

向日葵「…………すいませんですの」

花子「と、いう訳でちょっとお買い物に行ってくるし」

櫻子「なんで…?」ゴロゴロ

花子「買い忘れが多すぎ…こんなんじゃパーティーなんてできないし」

向日葵「でも暗くなってきたし…危ないですわ」

花子「楓連れてくから大丈夫だし」

楓「行ってきまーすなの」

花子「向日葵ねーちゃんは作れるモノ作っといてね!」

櫻子「いってらっしゃーい…」ダラダラ

花子「櫻子も向日葵ねーちゃん手伝えし!!」

楓「うぅ…寒いの…!」

花子「もう暗くなってきたし…さっさと買ってさっさと帰るし」スタスタ

楓「あっ、花子お姉ちゃん待ってー」トテトテ

花子「んもう、楓はのろまだし」

楓「花子お姉ちゃん、背おっきいから追いつくの大変なの」トテテ

花子「…ほら、手繋いであげるし」スッ

花子「しっかり握ってろし」プイッ

楓「…えへへ」ギュッ

楓「花子お姉ちゃん、ありがとうなの」

花子「………」スタスタ

近所のスーパー

楓「着いたのー」

花子「さて…じゃあまずは」

まり「あっ、楓ちゃーん」トテトテ

楓「あっ、まりちゃんなの!」

楓「まりちゃん、こんなところで何してるの?」

まり「お姉ちゃんのうちに遊びに来たの!」

花子「……誰?」

楓「楓の友達なの、まりちゃんって言うの」

楓「ずっと前に公園で会ったの」

まり「まり、うに買いに来たんだ!」

楓「じゃあ楓たちと一緒にお魚売り場いくの!」

花子「ちょい待ち、花子たちの買い物にお魚は無いし」

花子「寄り道しないで、買うものだけ買って帰るし」

花子(っていうかこの子のお母さんどうしたんだし)

楓「えー、でもー…」

花子「…はぁ、しょうがないなぁ」

花子「ちょっとだけ、ちょっとだけ寄り道させてあげるし!」

楓「ありがとう花子お姉ちゃん!」

花子(これじゃ櫻子たちの事怒れないし…)

まり「うにー、うにー」

楓「お魚売り場…人でいっぱいなの…」

花子(まぁお魚売り場にはお刺身とか売ってるから、この時間は混んでて当然だし)

まり「う、うに取れない…!」ピョンピョン

花子「…ちょっとどいてろし」グイ

楓「花子お姉ちゃんは背おっきいからうに取ってくれるの!」

まり「うにー!」

花子「くっ…!」ギュウギュウ

花子(人多っ!!)

花子「無理だったし」

まり「うに…」ショボン

楓「まりちゃん、元気だすの」ナデナデ

花子(流石に人が多すぎてうにのところまで行けないし…)

花子(でもうに取ってあげなきゃこの子がかわいそうだし…)

花子(でも…花子たちもお買いものしなきゃだし…)

まり「………」ジーッ

楓「花子お姉ちゃん…」ジーッ

花子「うっ…」

花子(ど、どうしよう…)

花子(ええぃ!覚悟を決めるし!)キッ!

花子「…とぉりやあぁーーーっ!!!」

【7.チーナのクリスマス大作戦 立志風雲篇】

結衣「…もう夜だね」

ちなつ(今日一日結衣先輩と一緒にいたのに…)

ちなつ(前のデートの時と何も変わらなかった…)ガーン…

ちなつ(せっかくのクリスマスデート…結衣先輩との距離を縮められると思ってたのに…!)

結衣「…ちなつちゃん?聞いてる?」

ちなつ「はっ!?はい!?なんでしょう!?」

結衣「いやあの…これから」

結衣「…私の家来ない?って話」

ちなつ「はっ、えっ、はいぃーーっ!?」ドキーン

結衣「今日実家でクリスマスパーティーやるみたいだからさ、よかったらちなつちゃんも一緒にどうかなって」

ちなつ「え、実家…?実家でしたか…」

結衣「もし嫌ならいいんだけど…どう?」

ちなつ「い、行きます!行かせて下さい!」

結衣「ありがとう、じゃあ行こうか」

結衣「そういえばちなつちゃん、私の実家くるの初めてだね」

ちなつ「はい!」

ちなつ(これはチャンスだわ…!)

ちなつ(デートタイム延長の上に結衣先輩のご家族にもアピールできるチャンス!)

ちなつ(頑張れちなつ、結衣先輩とのクリスマスはここからよっ!)

近所のスーパー

結衣「せっかくだから少し何か買って行こうか」

結衣「ちなつちゃん、なまもの食べれる?」

ちなつ「大丈夫です」

結衣「そっか、じゃあお寿司でも買って…」

まり「おねーちゃーーん!!」バッ

結衣「ま、まりちゃん!?」

まり「あ、ミラクるんのお姉ちゃんも…」

ちなつ「こ、こんばんわまりちゃん」

結衣「ど、どうしたの一人で」

まり「あのね、まり、結衣おねーちゃんのお母さんとうに買いにきたんだけどね」

まり「結衣おねーちゃんのお母さんとはぐれちゃって、一人でうに探しにいったの」

まり「でもね人がいっぱいいて、うに取れなくて…」

まり「でも、花子おねーちゃんが取ってくれたんだ!」

花子「……頑張ったし」ゼェハァ

楓「お疲れ様、なの」

結衣「…お友達?」

まり「うん!」

花子「じゃまりちゃん、花子たちは行くから…」フラフラ

楓「またねーなのー」

ちなつ(大丈夫かな、あの子…)

結衣「っていうか母さんいるのか…じゃあ合流して…」

まり「おねーちゃん、おねーちゃん」

結衣「ん?」

まり「おねーちゃんはミラクるんのおねーちゃんとデートなの?」

結衣ちな「!!??」

まり「まりね、知ってるんだよ、テレビでみたもん!」

まり「二人でおでかけしたらデートなんだよ!」

ちなつ「ちょっまりちゃんなにいってあわわわわ…!」

結衣「そ、そうだね」

ちなつ「結衣先輩っ!?」

結衣「ミラクるんのお姉ちゃんとおでかけしたから、デートかな」

ちなつ「あわわわわわわわわわ」プシュー

まり「ひゅーひゅー」

結衣「こらこら、お姉ちゃんをからかうんじゃないぞ?」

ちなつ「はわわわわわわわわ」ガガガガ

まり「…ミラクるんのお姉ちゃんがおかしいよ」

結衣「ご、ごめんちなつちゃん、デートとか、嫌だったかな…」

ちなつ「…っ!!」クルッ

ちなつ(ど、どうしよう、今絶対顔真っ赤…!)

ちなつ(こんな顔、先輩に見せられないよぉっ…!!)

結衣「ごめん、ちなつちゃん…嫌だったんなら謝るから…!」オロオロ

ちなつ「ち、違いますっ」

結衣「え?」

ちなつ「い、今ちょっと顔赤くて…!」プシュー

ちなつ「嬉しくて、ちょっと舞い上がっちゃってますんで…!」

ちなつ「き、気にしないでくださいっ!」

ちなつ「全然、嫌だったとかじゃないですからっ…!」

結衣「……う、うん」カアァ

まり「ひゅーひゅー」

結衣母「ひゅーひゅー」

結衣「……」

結衣「…って、なんで母さんいるんだよ!?」

結衣母「だってお母さん、まりちゃんと一緒に来たんだし…」

結衣「い、いつから見てた!?」

結衣母「結衣がお店の中で堂々とデート宣言したあたりから」

結衣「…………!!」

結衣母「さぁさ、家に帰ってご飯にするわよ」

結衣母「そっちで頭から煙吹いてるお嬢さんもご一緒に」

結衣「ちなつちゃ…ちなつちゃーーん!!」

ちなつ「はうぅ」プシューーー

【8.聖夜のホワイト大爆発】


 西垣先生の家

りせ「…………」トントントン

りせ「…………」グツグツ

りせ「…………」ジュー

先生「おーなんだ、今日はごちそうだなぁ」

りせ「…………」

先生「『丁度出来上がったからご飯にしよう』って?」

先生「いや、もうちょっとで実験が終わるからそれが終わったら…」

りせ「…………」ガシッ

先生「…『今食え』って?」

先生「ははは…まいったね」

先生「相変らず松本の料理はうまいなぁ」モグモグ

先生「このチキンなんてほどよい焼き加減で…」

りせ「…………」

先生「『クリスマスだから張り切った』…だと」

先生「そうか…今日はクリスマスだったか…!」

先生「研究に夢中ですっかり忘れてたよ」

りせ「…………」ガーン

先生「す、すまん…」

りせ「…………」

先生「黙らないでくれ…」

りせ「…………」モグモグ

先生「…………」モグモグ

りせ「…………」モグモグ

先生(沈黙でご飯を食べるのはつらいな…)

先生(いや…私が悪いんだが)

先生(最近、部屋にこもりっぱなしですっかり日付の感覚を失っていた…)

先生(そうか…もう25日だったのか…)

先生(参ったな…日付が変わるまでに完成するかな…?)

先生(松本の機嫌も直さないといけないし…)

先生(本当に参った…)

りせ「…………」ガタン カチャカチャ

先生「あ、まだ食べてる途中…」

りせ「…………」スタスタ

先生(これは…本気で怒ってる)

先生(どうしよう)

先生「ま、松本…」

りせ「…………」プイッ

ドタバタ ガチャン!

先生「あ……」

先生「泣かせて…しまった」

先生「………」

先生「実験は終わった…」

先生「日付もまだ変わってない…けど」

先生「どうやって、松本に謝ればいいんだろうか…」

先生「人の心を直すのは専門外だ…」

先生「…いや」グッ

先生「なんとしても、日付の変わる前に…松本と仲直りしよう」

先生「そうじゃなきゃ実験の意味も無くなってしまうしな」

先生「松本!」ダッ

ガチャ

先生「…ここで不貞寝してたのか」

りせ「…………」プイッ

先生「さっきは…すまなかったよ」

りせ「…………」

先生「その…どうしても急ぎで作らなきゃいけないものがあって」スッ

りせ「…………」プイッ

先生「うぅっ…!」

先生「……っ!!」グッ

先生「りせ!!」ギュッ

りせ「!」

りせ「……!…!」ジタバタ

先生「だ、だめだっ!放さない…!!」ギュー

りせ「……!!……!」バタバタ

先生「クリスマスを忘れてたことは本当にごめん…!」

先生「でも、りせに見せてあげたいものがあったんだ!」

りせ「…………」

先生「い、一緒に来てくれ…!」グイッ

りせ「…………」

りせ「…………」コクリ

先生「さっきまで作ってたのは、この爆弾なんだ」

先生「ここに導火線がついてて、火をつけると空に撃ちあがる」

先生「で、地上から10kmくらいのところで爆発してだな…」

りせ「…………」キョトン

先生「あー…うん、実際にやって見せるよ」シュボッ

ジジジジジ… シュボボッ ヒュッ

りせ「…………」

先生「あっという間に見えなくなったろ?」

先生「雲の中に入ったんだ、そして…」

……  ドカンッ

りせ「…………!」

先生「要するに、雪を降らせる爆弾」

先生「ホワイトクリスマスをりせにプレゼントしたかったんだ」

先生「すまん完成が遅れて、でも間に合ってよかった」

先生「どうかな?気にいって…うぉっ!?」グイッ

りせ「…………」ガシィ

チュッ

先生「…………」

りせ「…………」カアァ

先生「はは…これはこれは…」

先生「私の方が豪華なプレゼントをもらってしまったな」

【9.冬のファイトファイトファイファイビーチ】

京子「お、雪だっ!」

綾乃「…ほんとだ」

京子「いえーい!ホワイトクリスマスー♪」

綾乃「ちょ、ちょっと…走ると転ぶわよ!!」

京子「まだ積もってないから大丈夫~♪」

綾乃「そうじゃなくて霜が…!」

京子「ぐわああああ」ステーン

綾乃「…何してんのよ」グイッ

京子「こ、腰が…!」ヨイショ

綾乃「まったく、ほんとにあんたって子は…」

京子「えへへ…ごめんごめん」

京子「…あのさー?綾乃?」

綾乃「なによ?」

京子「えっと…あの、その」モジモジ

京子「…今日、楽しかった?」

綾乃「えっ?」

綾乃「え、えぇ、まぁ楽しかったわよ」

綾乃「映画も面白かったし…ゲームセンターにも連れて行ってもらったし」

綾乃「私、普段映画とか、ゲームセンターなんて行かないから新鮮だったわ…」

京子「そっか…よかった…」ホッ

京子「綾乃が楽しくなかったらどうしようって思ってたんだー」

綾乃「え?」

京子「せっかく綾乃から『遊びに行こう』って言ってくれたんだし」

京子「綾乃が楽しくなかったら、やだなぁって思って…」

綾乃「……」

綾乃(ひょっとして)

綾乃(今日、色々気を使ってくれてた?)

綾乃(そういえば、結構リードしてくれてたし)

綾乃(映画も私が見やすいようなのを選んでくれてたのかもしれないし)

綾乃「……へへ」

京子「どしたの?」

綾乃「別に、ちょっと嬉しいだけよ」

綾乃(…そうよね)

綾乃(この自分勝手で、自己中心的で、無鉄砲な子供みたいな)

綾乃(でも、たまに気の利く、とっても優しいこの子が)

綾乃(私が好きになった、歳納京子なのよね…)

綾乃(今日のことだって、別にいつもの事じゃない)

綾乃(ふふ、千歳の言ったとおりね)

綾乃(私、勝手に焦って、勝手に勘違いして…悪い方に考えすぎてたわ)

綾乃「ふふふっ」

京子「綾乃?マジでどうしたの?」

綾乃「…秘密っ!」

綾乃「…今年も、そろそろ終わりね」スタスタ

京子「そうだねえ」トテトテ

綾乃(結局、今年も告白はできなかったけど)

綾乃(でも二人っきりで遊びに行けたし、進歩したわ)

綾乃(…来年は、きっと)

京子「…綾乃んち、こっちだよね?」

綾乃「あっ、そうね」

綾乃「じゃあ、私はここで…」

京子「うん、またね綾乃」

綾乃「おやすみなさい、歳納京子」

綾乃「…よいお年を」

京子「え?なに言ってんの」

綾乃「えっ?」

京子「今年はまだ終わってないんだからさー」

京子「大みそかはごらく部と生徒会でなんかやろうね」ニッ

京子「年が終るのは、それからっしょ?」

綾乃「……そ、そうね!」

綾乃(今年はまだ、終わってない!)

綾乃(頑張れ私、ファイトファイトファイファイビーチ!!)

【10.チーナのクリスマス大作戦 怒涛回天篇】

結衣「じゃあまたね、まりちゃん」

まり「ばいばいおねーちゃん」

まり「ミラクるんのおねーちゃんも、ばいばーい」

ちなつ「ばいばい、まりちゃん」

ブロローン…

結衣「……さて、もうこんな時間か」

ちなつ「あ…」

結衣「ちなつちゃんも、もう帰らなきゃね」

結衣「送ってくよ」

結衣「…今日は、楽しかったよ」

ちなつ「私も、楽しかったです」

結衣「ちなつちゃんと二人っきりで過ごすのってあんまりないからね」

結衣「まぁ、後半は私の家族もいたけど…」

ちなつ「そうですねえ」

結衣「…デートで映画見に行って以来だったよ」

ちなつ「で、デートって…」カアァ

結衣「おでかけより、デートのほうが嬉しいんでしょ?」

ちなつ「……はい」ポッ

結衣「私も、デートのほうが嬉しいな」

結衣「…はい、ちなつちゃんこれ」ガサッ

ちなつ「これは…」

結衣「クリスマスプレゼント、開けてみて」

ちなつ「………」ドキドキ ガサガサ

ちなつ「あっ、手袋!」

結衣「本当はもっと早く渡せればよかったんだけど…ごめんね」

ちなつ「いえ!嬉しいです…!ありがとうございます!」

結衣「喜んでもらえてよかった」ニコッ

ちなつ「今日はこれつけて寝ます!」

結衣「いや…寝る時は外そうよ…」

ちなつ「あ…でも私、何も用意してない…」

結衣「別にいいよ、私が勝手にあげただけだしさ」

ちなつ「いいえ、そういうわけには…」オロオロ

ちなつ(でも何もないし…どうしよう)

結衣「本当にいいから、ね?」

ちなつ「でも…」

結衣「……?冷たっ…!」

ちなつ「どうしたんですか?」

結衣「いや、なにか顔に…」

結衣「…雪、だ」

ちなつ「あ…ほんとだ…」

ちなつ「……綺麗」

結衣「…そうだね」

ちなつ「……積もるかなぁ?」

結衣「だろうね…」

結衣「……」

ちなつ「……」

結衣「あ、そうだ…ちなつちゃん」

ちなつ「はい?」

結衣「クリスマスプレゼントの代わりっていうか…お願い」

ちなつ「はいっ!私に出来る事ならなんでもどうぞ!」

結衣「じゃあね…」

結衣「また一緒に、二人でデートしよう」

ちなつ「えっ…」ドキッ

結衣「いい?」

ちなつ「もっもちろんです!二十四時間三百六十五日!結衣先輩のお好きな時に駆けつけます!!」

結衣「じゃあ早速、ちなつちゃんの家までお散歩デートしようか」

ちなつ「は、はい!」

結衣「これからもいっぱいデートしようね、ちなつちゃん」

ちなつ「…はいっ!!」

【11.レッドクリムゾン・ハート】

あかね「…見てあかり、窓の外」

あかり「わぁ…雪だぁ…!」

あかね「降るかなぁ、とは思ってたけど…割と遅く降り出したわね」

あかり「そうだねえ」

あかね「…あかり、眠くない?平気?」

あかり「うん大丈夫だよぉ、っていうか…」

あかり「お口の中が辛くて眠れないよぉ…」ヒリヒリ

あかね「そうね……」ヒリヒリ

あかね「まさか『レッドクリムゾンチキン』がこれほどまでとは…」ヒリヒリ

あかり「あかり、ケーキの味分かんなかった…」ヒリヒリ

あかね「大丈夫?お水飲む?」

あかり「うん…ありがとうお姉ちゃん…」ゴクゴク

あかり「…でもあかり、ちょっと嬉しいなぁ」

あかり「お口辛いおかげでちょっと夜更かしできるよぉ」

あかね「そうね、あかりいつも9時には寝ちゃうものね」

あかね「お姉ちゃんとちょっとおしゃべりしましょうか?」

あかり「うん!」

あかね「今日はあかりとたくさん一緒にいれて楽しかったわ」

あかり「あかりもだよぉ」

あかね「あかりが中学校に入ってから、一緒にいられる時間も少なくなっちゃったから…」

あかり「小学生の時は帰ってきてもまだお姉ちゃんお家にいたもんね」

あかね「あかりがごらく部に入ってからは、あかりの帰ってくる時間とアルバイトに行く時間が重なっちゃって…」

あかね「まぁでも休日は一緒にいれるけど…」

あかり「あ…でも最近は週末もお姉ちゃんが早くからアルバイトだったから寂しかったかも…」

あかね「クリスマスにお休みとる為に、ちょっと頑張っちゃって…」

あかね「ごめんね、寂しかった?」

あかり「うぅん、平気」

あかり「ごらく部のみんなと遊んだから」

あかね「ごらく部ね…」

あかね「昔はあかり、『おねえちゃん、おねえちゃん』って私の後をくっついて離れなかったのに」

あかね「最近はごらく部のみんなにあかりを取られちゃって、お姉ちゃん寂しいわ」

あかり「わわわ!いつの話してるのぉ!?」

あかり「それあかりが小っちゃかった頃の話だよぉ」プンプン

あかね「ふふ、私から見ればあかりはまだ小っちゃいわ」

あかり「……そうなの?」

あかね「13歳なんて、まだまだお子様よ」

あかり「…そうかなぁ」

あかね「そうよ?」

あかり「あかり、早く大人になりたいなぁ」

あかり「早く大人になって、いろんな事を知りたいよ」

あかね「…私はあまり大人になりたくないわね」

あかり「なんで?」

あかね「…これ以上、あかりと一緒の時間が減るのは嫌だわ」

あかね「大人になるって事は、自由な時間が減るってことだから」

あかり「…お姉ちゃん」

あかり「大丈夫、あかりはいつでもお姉ちゃんと一緒だよぉ」ギュー

あかね「……あかり」ギュ

あかり「……」Zzz

あかね「………」

あかね「あらあら」クスッ

あかね「ちゃんと布団かけて…っと」ポンポン

あかり「………」Zzz

あかね「………」ナデナデ

あかね「ずっと一緒にいられたら、いいね……」

あかね「…おやすみ、あかり」

チュッ

あかね「…ふふっ」

ガチャ パタン

あかり「………うん」Zzz

あかり「…おやすみ、お姉ちゃん」Zzz





おしまい

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