綾乃「彼女を初めて『結衣』と呼んだ日」 (21)
(ゆるゆりSS、付き合っている結綾の話、R-18)
「ん…」
「綾乃…」
電気を消した部屋で、2人一緒にベッドの上。
夜空に現れたばかりの月の光がそこに入り込んでいて、お互いの姿はうっすらと見えるくらいだった。
聞こえるのは船見さんと私の声、そして唇を重ね合う水音。
「ちゅ」
「ふあっ…」
キスは――いつも彼女のリードがあったけど、もう何度もした。
その先のことだって、少しは経験してきた。
普段の彼女の手にかかれば、私はあっという間に嬉しさの頂点にまで昇り詰めてしまう。
なのに――。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1457611772
「背中、いい?」
「ええ…」
「やっぱり綺麗、綾乃の体」
「う、うん…。――っぁ…」
口づけを止めた彼女の手が、既に覆い隠すものをなくした私の体に沈む。
その指の1本1本が、胸を優しく撫でる。
でも、最近のそれは…。
「どう、気持ちいい?」
「……」
「よく、なかったかな…?」
「い、いいえ…。でも…」
「何?」
「ちゃんと――んんっ、触ってほしい…」
「触ってって、どこを?」
「そ、そんなの――んぁっ…」
並々ならぬ慣れを見せてきた…
と見せかけて、その手つきは以前よりたどたどしいものになっている気がしたのだ。
「綾乃の声で、言ってもらえないかな」
「やだ…、言わなくても分かるでしょ…?」
「…うーん、そっか」
「っっ、んうぅ…」
彼女に焦らされるのは、正直に言えば嫌いではない。
でもそのやり方には、優しさよりも意地の悪さが感じられるようになっている気がしていた。
…なんて、言えるワケない。
「ひょっとして…」
「っん…な、何かしら…?」
「私のこと、本当は嫌い…?」
「そ、そんなこと…」
「綾乃が喜んでくれないと、私は悲しいんだ…」
「っ…」
彼女の思いはこの通り、ちゃんと私の方向を向いている。
だからこそ、私を導いてくれるその手の異変が、とても気になってしまうのだ。
「お願い、何でも言って」
「いいの…?」
「うん」
「船見さんがそうやって私に意地悪するの、ツラいの…」
「えっ…?」
頑張って伝えた答えに、彼女は驚いた様子だった。
「だって触ってくれないんだもの、私の弱いところ…」
「そんなつもり、ないんだけど…」
「とっても、寂しいのよ…?」
私は彼女を見つめてそう言い、私の好きな人の答えを待つ。
「それを言うなら、私だって…」
「えっ?」
「私だって、寂しかった…!」
目線の先の彼女の言葉は、とても意外なものだった。
「そうなの…?」
「だって綾乃、私の名前を呼んでくれないんだもん…」
「い、いつも呼んでるじゃない、船見さんって――」
「結衣」
「あっ――」
「結衣って、呼んで…」
「わ、私」
「お願い、綾乃」
「いいの?」
「『いいの?』って、どういう――」
「私、まだ船見さんに頼ってばかりだから…」
「そんなの…」
「こういうことだって、いつも私がされてばっかりで…」
「大丈夫だよ」
「私がしてあげたことなんて、ないから…」
「気にしないで」
「そう言われても、気にしちゃうわ…」
その優しさが、私には少しだけ痛かった。
彼女に対する引け目が、どんどん口から溢れてくる。
「じゃあさ、今日は私をリードしてみてよ」
「えっ!?そ、そんなの…」
「綾乃になら、きっと私も…」
「嘘、つかない…?」
「ふふっ、体が嘘つけるワケないだろ。好きな人の前なんだから」
その言葉に、私ははっとした。
思えば彼女は、いつも私のことを気にかけてくれていた。
そして今日も、私に蟠りがあることを見抜いていた。
それが分かっているのに、彼女が嘘をつくかもしれないなんて思うのは野暮なことだった。
ちゃんと彼女を喜ばせてあげたい、と強く思いながら、
「じゃあ、行くわね…」
意を決して、私は彼女にもう一度口づけをした。
「んちゅ…」
「んん…」
さっきと違うのは、私が覆いかぶさっていること。
その体勢から私は、自分がリードするんだということを再確認した。
「可愛い…」
「ぅあ…」
耳元で囁くと、彼女はやはり可愛い声を返してくれる。
そして、なるべく優しく舌で耳を撫でた。
「ん…はぁあ…」
また、蕩けるような声が漏れる。
次に左手で彼女の肩を持ち上げ、支えようとする。
すると彼女は自ら上体を浮かせた。
「大丈夫…?」
「うん…」
彼女を覆うものを、1つ1つ剥がしていく。
そしてありのままの姿で、私たちは抱きしめあった。
「んっ、んあっ」
「っあっ、はぁっ」
胸の先で主張するその思いは、私も彼女も同じだった。
彼女が揺れ動く私の存在を確かめ合う度に、その思いは擦れ合って直接伝わって来る。
本当は優しい彼女が戻ってきてくれたようで、私は嬉しくなる。
…と、つい一緒にゴールを目指すことも考えてしまう。
でも今は、私がリードする番なんだ。
そう思い直して、私は彼女の背中に回していた手を戻し、私より少し大きめの胸に触れる。
「んっ…んっあっ、あはぁ…」
先端を撫でると、さらに彼女の声は高まりを見せた。
それと同時に、彼女の脚の付け根に光る蜜が見えた。
「脚、開ける…?」
「う、うん…」
「い、入れるわね…」
「来て、綾乃…」
その声を合図に私は自分の指を舐める。
そしてつらつらと彼女の蜜壷の出入り口を撫でながら、その奥へと入っていった。
「ふあぁっ…!」
「大丈夫?」
「気持ちい――あ、ひぁああ…」
そこからはもう、既に彼女の思いが滲み出ていた。
「結衣…」
「んぅ…ふぅ、あ、綾乃…!」
「喜んで、くれてるのかしら…」
結衣の答えを聞きながら私は中を撫でつつ、彼女のスポットを探す。
「いいよ、綾乃――んっんっ、んあっ」
「ここかしら…」
「そこ、っぅんっ…」
その私を最後まで動かし続けたのは、今まで結衣がくれた恩を返そうという思いだった。
「結衣…、結衣…」
「ぁあ、っぁああぁ――」
〜
「やっと、名前で呼んでくれたね」
「…ええ」
「とっても、気持ち良かった」
「それなら、私も良かった」
しっとり汗ばんだ結衣と、同じ毛布の中。
「綾乃の隣にいられて、やっぱり嬉しいよ」
「私もよ、結衣」
「…その、ごめんな。意地悪、しちゃって…」
「え!?いや、意地悪自体が嫌ってワケじゃないのよ…!?」
「そ、そうなの…??」
「あ、えーと…。意地悪は嫌いじゃないんだけど、寂しがってた結衣は意地悪のしかたも意地悪だったっていうか…」
「ぷっ、そんな風に言われると、何か変な感じ…」
「も、もう…。笑わないでよ…」
「ごめんごめん。言いたいことは、ちゃんと分かってるからさ」
「ホント?」
「ホントだよ。だから次は、また私も綾乃を喜ばせられると思う」
やっぱり結衣は、意地悪だ。
そこに見え隠れする優しさをかみしめつつ、顔を合わせて私たちは笑いあった。
「そう、嬉しいわ。結衣、大好き」
「私も。綾乃、大好き」
隣に見える、大切な人の表情。
月はいつの間にか空高くまで昇り、その光に私たちは照らされていた。
終わり
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません