八幡「そして、彼らは正しさを知る」 (71)
──才能、という言葉がある。
人が生まれ持った才能。才知の働きを指す言葉だ。
それは絶対的な力を持っており、努力などという薄っぺらいものでは、到底太刀打ちできるものではない。
そう、どんな頑張りも、この「才能」という言葉の前では非常に無力なのだ。
俺のように諦め──もとい、許容して生きている人間がいるのとは逆にまた、この才能という概念に悩み、苦しむ人間が存在するのだ。
たとえどんなに努力しようとも、それが才能を越えることはまず無い。精々、同等になれるかどうか、というところである。
なら努力することは無駄か、と問われれば──その答えもまた、人それぞれなのだろう。
「そんなことない! 努力は、することに意味があるんだもん!」
少なくとも、俺と同じクラスのアイツなら──そう答えるんだろうな。
ID変わりますが>>1です。
お願いします
八幡「おいーっす」
由比ヶ浜「やっはろー!」
雪ノ下「あら、おはよう由比ヶ浜さん。今日も元気そうね」
由比ヶ浜「うん! ゆきのんもね」
八幡「……おい、俺の存在を忘れてるぞ」
雪ノ下「……? ねぇ由比ヶ浜さん。今なにか声がしなかった?」
由比ヶ浜「えぇ!? ……ま、まぁ何か聞こえた、かなぁ……」
八幡「やめろやめてくれ。うっかり自殺しちゃいそうになるだろうが」
雪ノ下「冗談よ。ごきげんよう」
八幡「あいよ」
由比ヶ浜「いやー、それにしても今日は暖かいねー」
雪ノ下「そうね。予報によれば今週一杯は暖かいそうよ」
楽しそうにお喋りを始めた二人。
俺は邪魔にならないようにいつもの席に座り、文庫本を広げた。
由比ヶ浜「それでね、この前作った料理をお母さんにあげたら褒めてくれたの!」
雪ノ下「へぇ……それは良かったわね。ちなみに感想は?」
由比ヶ浜「うん、確かねー「とっても美味しそうだったわ」って言ってた! えへへ~」
いやそれ全然褒められてないだろ。気づこうよ。
──そんな感じで、怠惰に時間が過ぎていく。
高校生活に限りがあるというのは今更言うまでもないことだが、俺はこの時間が、まぁ、嫌いではない。
……独りごちていると、不意に部室のドアが開かれた。
平塚先生かと思ったが、どうやら久しぶりの相談者のようだ。
???「えーっと、奉仕部ってここでいいのかな?」
雪ノ下「ええ、そうよ。なんの用かしら?」
???「いや、悩み事があるって平塚先生に相談したら、ここを紹介されてさ」
由比ヶ浜「とにかく座って座って!」
そう言って立てかけてあったパイプ椅子をガシャーンと開いて、名も知らぬ男子生徒へ着席を促す。
彼はおずおずと座り、辺りを物珍しそうに見回した。
八幡「んで、お前誰?」
荒井「あ、俺二年の荒井っていうんだ。よろしく」
そう言って幸の薄そうな笑顔を見せる。愛想笑いだとここまでハッキリわかると、指摘するのも馬鹿らしい。
雪ノ下「それで、要件は?」
荒井「あー、えっとさ、なんか言いづらいんだけど……」
由比ヶ浜「じゃあ私紅茶入れるね!」
忙しなく立ち上がり、紙コップに紅茶を注いで差し出す。
「どうも」と言って受け取った荒……川だっけ? まぁなんでもいいか。とにかく、彼はようやく話を始めた。
荒井「俺の友達が、不登校になっちまったんだ」
雪ノ下「……それで?」
荒井「え、いや……できれば、どうしてそんなことになっちまったのか、理由を探って欲しいんだよ」
八幡「いや、なんでそれを関係どころか面識もない俺達に頼むんだよ? そういうのは友達間でどうにかするもんじゃねえの?」
荒井「いや、関係のない第三者からの説得のほうがいいと思ってさ……」
由比ヶ浜「どゆこと?」
荒井「……そいつ、名前は平川っていうんだけどさ。なんかある日突然「俺は今を楽しみたいんだ!」とか言って学校に来なくなっちまって」
八幡「うわぁ……」
ついつい声が出てしまう。それ完全に高二病じゃねえか。
身に覚えがないわけではないので痛々しさが分かってしまう。
雪ノ下「彼がそうなってしまった経緯は分かるかしら?」
荒井「いや、それが全然。本当に突然だったからさ……だから、アイツが今何をしているのかってのも調べて欲しいんだ」
由比ヶ浜「だ、大丈夫かな……? どっかで危ない目に合ってたりとか……」
荒井「それはないと思う。Twitterでは定期的に呟いてるからさ」
八幡「じゃあそれで声かければいいんじゃねえの?」
荒井「何度もやったけど反応がないんだよ。全部無視されるんだ」
そう言って困ったようにスマートフォンを弄ぶ荒井。よし覚えた。
その姿を、雪ノ下は困ったように見つめている。
雪ノ下「……状況が不明瞭すぎてなんとも言えないわね。明日、また来てくれるかしら?」
荒井「えっ……おう、分かった。できるだけ早めに頼むな」
八幡「ほんで、どうするつもりだ?」
再び三人だけになった部室。俺は雪ノ下にそう問いかける。
雪ノ下「とにかく、彼の友達の情報を集めるわよ。……由比ヶ浜さん」
由比ヶ浜「ふえ!? なに?」
雪ノ下「できるだけ多くの人に、平川くんについて聞いてきてもらえる? 目撃情報とか、なんでもいいわ」
由比ヶ浜「……うん! 分かった!! 教室に残ってる皆に聞いてきてみるね!」
頼られたのが嬉しいのか、鼻歌交じりで部室を後にする由比ヶ浜を見送り、部室には俺と雪ノ下だけになる。やべぇなに話せばいいんだ。
八幡「あー……また面倒そうな依頼がきたな」
雪ノ下「たしかにね……まぁ、それでも、どうにかしようとしている人間を見捨てることはできないわ」
八幡「優秀なこって。しっかし、不登校ねぇ……」
小学、中学と特にいい思い出はないが、流石の俺でも不登校はしなかった。
何故ならそれは、紛うこと無い「逃げ」の行為だからだ。
見たくないことから目を背けることは悪ではない、だが、見て見ぬふりをするのは褒められたことではないだろう。
雪ノ下「まぁ、正直接しづらい話題ではあるわね。とにかく、由比ヶ浜さんの情報を待ちましょう」
速報でやれ
由比ヶ浜「ただいまー!」
八幡「おう」
雪ノ下「どうだったかしら?」
由比ヶ浜「まぁまぁ収穫あったよー! えーっとねぇ」
雪ノ下「なになに……駅前の居酒屋で働いているのを見た……? これほんとうかしら?」
八幡「別におかしなことでもないだろ。俺は断固遠慮するけどな」
大体まず居酒屋そのもののテンションが好きではない。
なんだよ「よろこんでー」って。全然喜ばしくねぇっつの。
由比ヶ浜「それがねぇ、なんか結構夜遅くまで働いてるらしいんだって」
雪ノ下「具体的には?」
>>20
立ててから俺もそう思いました……でもまぁ後の祭りなので続けます。
落ちたら速報に移動しようと思います
由比ヶ浜「えーっと、夜の7時から──よ、夜中の3時!?」
雪ノ下「にわかには信じられないわね……」
八幡「いや、それもまぁおかしいことじゃない」
由比ヶ浜「そなの?」
八幡「例えば、居酒屋の経営者が父親の知り合いだったりすれば問題無いだろ。いやまぁ法的には問
題あるのかもしれないけど、名目上は「お手伝い」ってことにしてれば問題ない」
雪ノ下「なるほど……では、今夜早速向かいましょうか」
八幡「待て待て。夜遅くに学生が居酒屋に集団で行くのはあんまりオススメできないぞ」
最悪通報まである。
この年で警察のご厄介になるのは遠慮したい。愛する妹のためにも。
由比ヶ浜「あ、じゃあ平塚先生に一緒に行ってもらうってのはどうかなぁ?」
八幡「……それだったらいいんじゃねえの?」
夜の11時までに帰宅してれば問題ない。それに私服で行くのだから目立つ行動をしなければ警戒されることもないだろう。
八幡「まぁ来てくれるか分からんけどな」
雪ノ下「大丈夫でしょう。きっと年中暇でしょうから」
由比ヶ浜「たしかにー!」
ほんともう誰か平塚先生を幸せにしてあげて……。
平塚「よし、今日は私のおごりだ。じゃんじゃん呑み……もとい、食べてくれたまえ」
現在時刻は19時24分。
俺達は、電話したら即答でオーケーだった平塚先生と共に、例の居酒屋に来ていた。
由比ヶ浜「……ほんとに来てくれたね」
八幡「言ってやるな。本人が楽しそうだからいいじゃねぇか」
むしろ一番楽しんでるまである。
雪ノ下「………」
八幡「なにお品書きとにらめっこしてんだよ。そいつに親でも殺されたのか」
雪ノ下「い、いえ……こういうところには初めてきたから勝手が分からなくて……」
由比ヶ浜「だいじょぶだよゆきのん! 普通のお店と同じようにすればいいの!」
雪ノ下「その普通のお店にもあまり行ったことがないのだけれど……」
平塚「大丈夫だ、ツマミは私が適当に選んでおいてやろう。君たちは飲み物だけ選びたまえ」
八幡「とりあえず生」
平塚「アルコール以外でな」
だって一回言ってみたかったんだもん……。
平塚「ったく……すいませーん」
店員「はい、ただいまー」
程なくしてやってきた店員。ソイツの顔を見て、雪ノ下が呟いた。
雪ノ下「……いたわ。平川くんよ」
八幡「……なんで分かるんだよ」
確かに名札には平川と書かれているが、ただ単に苗字が同じという可能性もある。
すると雪ノ下は持っていた携帯の画面をこちらに向けた。そこには大人しそうな青年が映っている。
雪ノ下「髪の色が違うけど、顔立ちがほぼ同じよ。同一人物と断言して差し支えないわ」
八幡「こんな写真いつの間に?」
雪ノ下「依頼者から貰ったのよ」
八幡「……なるほどな」
ちなみに今回の依頼のことは平塚先生には伝えてある。
流石に理由をつけないと居酒屋には連れてきてくれなそうだったから……。いや、そうでもないかな?
由比ヶ浜「あたしメロンソーダ!」
雪ノ下「じゃあ私は麦茶を」
八幡「あー、んじゃ俺も麦茶で」
平塚「あとは、これとこれとこれ。あと、これもお願いします」
平川「はい、よろこんで!」
曇りのない満面の笑顔を浮かべ、彼は厨房へと引っ込んでいった。
──約一時間が経過し、腹もいい感じに満たされてきた頃。
アルコールの影響で赤みがかかった頬の平塚先生は、俺達にこう問うてきた。
平塚「ところでお前ら、将来設計はキチンと立てているか?」
八幡「なんですか急に……進路相談ですか?」
平塚「そんなようなところだ。どうなんだ?」
八幡「俺はまぁ……スカラシップで大学入って、卒業したら専業主夫になって養ってもらうのが夢ですけど」
雪ノ下「ここまで断言されるとこちらが間違っているのではないかと思ってしまうわね……」
平塚「いやいや、なにも考えていないよりは救いがあるだろう。雪ノ下は?」
雪ノ下「私も進学です」
平塚「まぁ妥当だろうな。ぜひともその頭脳を活かしてくれ。由比ヶ浜は?」
由比ヶ浜「あ、あたし? あたしはねぇ……進学とか就職とか、よく分かんないけど……でも、結婚はしたい、かなぁ……」
酒も飲んでないのに頬を赤らめながら答える由比ヶ浜。乙女かお前は。乙女だな。うん。
その答えを聞いて、平塚先生はニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべた。
平塚「ほう……意中の男性でもいるのかね?」
由比ヶ浜「やッ、やめてくださいよ先生!! そんな、そんな好きな人とか全然……ッ///」
平塚「いないのかね? 本当に?」
由比ヶ浜「それ以上やめてください! もうッ!」
誤魔化すようにジョッキを手に持ち、ぐっと飲み干す由比ヶ浜。
……え、ていうかそれ平塚先生のじゃね?
雪ノ下「ちょ、由比ヶ浜さん。それお酒よ?」
由比ヶ浜「うぇ!? ……うわーん、まずい……」
平塚「ははっ、酒の旨さが分からないうちはまだ子どもだよ。というより、具合は大丈夫か?」
由比ヶ浜「うーん、そんなでもないけど……ちょっと気持ち悪いかも」
八幡「大丈夫か? トイレならあっちだぞ」
ボーっとした顔で宙を見上げる由比ヶ浜。こいつはかなりキテるな……。
|´・ω・`)っ④
由比ヶ浜「どっちぃ~?」
八幡「ちっ……平塚先生、ちょっと俺、こいつトイレまで運んできます」
トイレが男女兼用なのは既に確認済みである。
平塚「あぁ、なにかあったら呼びたまえ」
八幡「ほれ行くぞ」
足取りの覚束ない由比ヶ浜を引っ張り、トイレへと向かう。
扉の前に着いたところで、後ろから衝撃があった。
八幡「ちょ、由比ヶ浜さん?」
体の向きを変えると、由比ヶ浜のやたらと扇情的なトロリとした瞳に捉えられ、身動きがとれなくなる。
構造上トイレは周りから見えづらくなっており、おまけに置かれている観葉植物のせいで客席からはほぼ死角のような場所になってしまっている。
喧噪のせいで、助けを求めることもできない。
由比ヶ浜「……ヒッキー」
聞いたこともないような、女を意識させる声。おいおいどういうこった。
由比ヶ浜「ヒッキーってさ、好きな子……いるの?」
八幡「な、なんで急にそんな話になるんですかね……」
思わず敬語である。
由比ヶ浜「……あたしはね。いるよ……」
そう言い、服のボタンを外しはじめる。
一つ、二つ、三つ──あっという間に、ピンク色の下着が見えるようになる。
それに包まれた、二つの豊満な胸。頑張れ俺の理性……。
由比ヶ浜「……ひっきー」
粘ついた声。下半身に血液が溜まっていくのが分かる。
バンバンバンバンバンバンバン
バン バンバンバン
バン (∩`・ω・) バンバン
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バン はよ
バン (∩`・ω・) バン はよ
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由比ヶ浜「……おっぱい、好きなの?」
悪戯げな笑みを浮かべる由比ヶ浜。知らないウチに、胸へと視線が釘付けになってしまっていたようである。
由比ヶ浜「あのね、ちょっとなら……触ってもいい、よ?」
ゴクリ、と。ツバを飲み込む。今や俺と由比ヶ浜との距離は、互いの息がかかるまでになっている。
まるで、操られるように。引き寄せられるように、俺の右手が由比ヶ浜の胸へと向かっていく。
そして──触れる直前。
~♪
場違いな軽快な音楽が空気を引き裂く。どうやら由比ヶ浜の携帯が鳴ったようだ。
八幡「……電話」
由比ヶ浜「……うん」
由比ヶ浜「……ゆきのんからだ。大丈夫か、って」
八幡「心配かける前に戻ろうぜ。気分は?」
由比ヶ浜「……まだちょっとボーっとするけど、大丈夫だよ。ありがとヒッキー」
……雪ノ下からのメールが来ていなかったら。そんな想像を打ち消し、俺達は席へと戻った。
平塚「よし、皆忘れ物はないかね?」
雪ノ下「大丈夫です。由比ヶ浜さん、気分は?」
由比ヶ浜「うん、もうダイジョブだよ! 心配かけちゃってごめんねぇ」
ようやくいつもの調子に戻ったようである。顔の赤みもだいぶ引いている。
平塚「それぞれの家までは私が送って行こう。タクシーを呼ぶからちょっと待っていたまえ」
先生の厚意を受け取り、俺達はタクシーに乗り込む。
帰り道、俺と由比ヶ浜が会話をすることはなかった。
次の日。約束通り部室へとやってきた荒井は、なにやら大きな本を抱えていた。
荒井「なにかの役に立てばいいと思って」
雪ノ下「これは……卒業アルバムかしら?」
由比ヶ浜「うわー、懐かしい!」
八幡「何に使うんだよ……」
荒井「いや、俺から与えられる平川の情報ってこれくらいしかなくってさ」
話を聞くところによると、どうやら荒井と平川は小学校、そして中学校も同じ学校に通っていたようである。
由比ヶ浜「これ、最後の真っ白なページに寄せ書きとかするんだよね!」
投稿スピード素晴らしすぎてわろた
>>48
前回書き溜めなしでスレ立てして拙い文章を晒してしまったので……
八幡「……は、なに言ってんのお前。あれ落書きスペースだろ?」
雪ノ下「いや、あれって印刷ミスではないの?」
由比ヶ浜「……あぁうん、そうだね、きっと。あはは……」
由比ヶ浜の乾いた笑いは置いておいて、卒業アルバムを手に取る。
こんなのなんの役に立つんだよ……。役に立つどころか嫌な思い出が濁流のように溢れてきちゃうよ。
荒井「アイツ、昔は頭良かったのにさ。どうしてこんなことになっちまったのかな……」
そう言う彼の顔はとても寂しそうである。いやそんなの俺も知りてぇよ。
適当にペラペラと流し見して、飽きたので放る。すると風圧で、机の上に置いてあった数枚の紙が舞って床へと落ちた。
昨日、由比ヶ浜がクラスの連中に聞いて回った平川の情報が纏められた紙だ。誰か片付けろよな……。
拾い上げ、そちらもペラペラと捲る。やたら丸っこい字で書かれた文章を読んでいくと、ひとつ引っかかることがあった。
『平川くんは小学校も中学校も頭が良かったんだけど、高校に入ってから微妙になった』
『逆に昔からの友達だった荒井くんが高校デビューで変わった』
八幡「……ふぅん」
雪ノ下「なにか分かったの?」
八幡「……まぁ、なんとなくだが分かった」
荒井「本当か? 一体、どうしてアイツは……?」
まさか責任の一端が自分にあるとは思わない荒井は、心底心配そうな声を出す。
全くもって。言いたくないことを言わなくてはならないようだ。
八幡「……お前さ、平川とは昔から仲良かったのか?」
荒井「え、まぁ……そうだな」
八幡「ちなみに、どっちのが上とかあったか?」
無いはずないだろ? どんなに外面では仲よさそうに繕っても、人は絶対に心のなかで他人を見下すのだから。
荒井「……こう言うのはなんだけど、俺なんかアイツの足元にも及ばなかったよ。勉強も、部活も」
ポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチ
ポチ ポチポチポチポチポチポチ
ポチ(∩`・ω・) ポチポチポチポチポチ
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ドゴォォォォン!!
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Σ(* ・ω・)((´:,(’ ,; ;'),`
⊂ヽ ⊂ )/ ̄/ ,; ;'),
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パンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパン
パン パンパンパンパンパンパンパンパン
パン( `・ω・) パンパンパンパンパンパンパン
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ドゴォォォォン!!
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八幡「でもそれは昔の話だろう。高校に入ってから……変わったんじゃねえのか?」
目を見開いて驚きの表情をする荒井。ウチの部員の情報網を甘く見ないでやってくれ。
荒井「……確かに、高校で立場は逆転したかもな。でもそれがなにか関係あるのか」
八幡「アイツ──平川はな。悔しかったんだよ」
時間が流れるにつれ、環境が変わるにつれ、状況が変わるにつれ。
見下していた相手に抜かされて、置いて行かれる感覚。きっと奴は、日常のほんの些細なミスにすら焦りを感じていたはずである。
昔はこんな感じじゃなかった。
昔の俺はすごかった。
昔の俺は──。
八幡「自分より下だと思っていた人間に、自分の上に立たれ──事実かそうでないかは別として、きっとアイツは息苦しかったんだろ」
だからこそ、過去の自分を捨てるために、新しい環境へ行くことを選んだ。
学校をやめ、人間関係をリセットし、新たな関係を創りだそうとしたのだ。
文化祭の一件で知った相模の気持ちと、きっと平川の気持ちは似通っている。
ただ、井の中の蛙でいつづけるか、リスクを承知で井戸から出るか──違ったのはそれだけなのだ。
由比ヶ浜「……なんか、悲しいね」
ほんとにな。きっと、ほんの少しのすれ違いだったんだ。
だが、過ぎた時間を──壊れてしまった関係を戻すことは、とても難しい。きっとそれは、彼らが一番理解していたのだろう。
荒井「……そう、だったのか。知らないうちに、俺はアイツを傷つけていたんだな」
八幡「悲観するこたねぇよ。平川だって、きっとお前のせいだなんて思ってない」
荒井「そうだと、いいな……」
八幡「あぁ、ちなみに平川だけどな」
もう一つの依頼を思い出す。きっと、これが荒井が知りたかった答えなんだろう。
八幡「アイツ、楽しそうにバイトしてたぜ。友達もいるみたいだった」
荒井「──そうか。そうか! 今度行ってみるよ!」
八幡「そうしろ」
晴れやかな表情で教室を去っていく荒井。
扉が閉まる直前に、彼は顔だけこちらに向け「ありがとう」と言った。
雪ノ下「……一件落着、かしらね」
八幡「んだなー、ああ疲れた」
由比ヶ浜「二人は、元通りの関係に戻れるのかな?」
八幡「……無理だろ」
一度壊してしまったものはもう元には戻らない。
無理やり戻したところで、きっと歪になってしまうから。
──でも。
八幡「新しく、やり直すことならできるかもな」
優しい風が窓の間を抜け、カーテンを柔らかく揺らした──。
雪ノ下「それじゃあ、私は鍵を返してくるわね。さようなら、二人共」
由比ヶ浜「うん、まったねー」
雪ノ下と別れ、二人だけの廊下を歩く。
聞こえるのは、互いの足音と──呼吸の音だけである。
不意に、居酒屋での一件を思い出した。
危うく本当に間違えそうになってしまった、あの瞬間を。
由比ヶ浜「……ねぇ、ヒッキー」
そう、こんな感じの声で……って、由比ヶ浜さん?
八幡「な、なんだよ……」
由比ヶ浜「……この間の続き、さ。したくない?」
彼女の頬が赤いのは、きっと夕日のせいだろう。
そして、俺の胸がこんなに高鳴るのも、きっと……夕日があまりにも美しいからなのだろう。
──やはり、俺の青春ラブコメは間違っている。
……かも、しれない。
~おしまい~
以上になります。
最後まで支援してくださった方、本当にありがとうございました。
|´・ω・`)っ乙
このSSまとめへのコメント
時間かけてるくせにそうでもねぇ
最後のエロはっっっ!?