俺ガイルSS『なぜか学校の階段には怪談話がつきまとう』 (835)

ガガガ文庫 渡航 著 「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている」SS

生まれてはじめて最後まで執筆したSS。酔った勢いでうぷしてみる。



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「奉仕部で学校の怪談の真偽を確かめて欲しい?」

夏休み前のある日の放課後、奉仕部の顧問である平塚先生から、突然とんでもない案件を持ち込まれた。

俺はといえば、一日でも、いや一分一秒でも早く夏休みが来ないかとスマホのカレンダー画面を睨んでいたところである。
残念ながら今のところ捗ばかしい効果は見られない。
誰かフリックするだけで時間が過ぎ去るアプリとか開発してくれねぇもんかな。あとトラウマを削除する機能とか。

結衣「ふわわわわ」

例によってピンクがかった茶髪をお団子に結い上げた由比ヶ浜結衣がバカっぽい声をあげる。
こいつ霊感とか全然なさそうだけど超怖がりだからな。それでいて怖い話が好きだったりするし。なんなのその矛盾した思考。


八幡「つーか、それって奉仕部の活動の範疇なんですかね?」

俺はあきらめてスマホをしまいながら、当然の疑問を口にする。

平塚「比企谷、怖いのかね?」

先生が形の良い指でピシリと俺を指差した。人を指差してはいけませんって学校で習わなかったのかよ?

八幡「や、一番怖いのは生きた人間ですから」

俺は無意識に俺の席の反対側、窓際に座る黒髪の美少女 ――― 雪ノ下雪乃を見ながら答えた。

雪乃「比企谷くん、何その胡乱な目は?私に何か言いたいことでもあるのかしら?」

八幡「いや、別に…」

あわてて目を逸らす。言いたいことは山ほどあるのだが怖いから言えないだけだってことくらい、いい加減気がつけよ。
だが、敢えてそれを口にしない俺はマジでジェントルメン。あまりに紳士的すぎて思わず複数形なくらい。

平塚「ふむ、ありきたりなセリフだが、キミがその腐った眼で言うとなかなか説得力があるものだな」

八幡「ほっといてください」こちとらスマホとにらめっこしてて目が疲れてんだよ。つか、それ絶対に褒め言葉じゃねーだろ。


平塚「キミはどうなんだね雪ノ下?」

雪ノ下は、それまで読んでいた文庫本をパタリと音を立てて閉じ、形の良い足を揃えて体ごと平塚先生の方に向き直った。

雪乃「私はそもそも幽霊だの心霊だの、科学的に証明されていないものは一切信じていません。
   ですから、そのような信憑性があやしまれるような案件に対して奉仕部が対応するということ自体、全く意味のない事だと思います」

八幡「要するに、怖いからやだってことか?」

雪乃「比企谷くん、あなた一度、臨死体験をしてみたいのかしら?」ニコッ

八幡「…俺は怪談なんかよりもお前の方がよっぽど怖えよ」夏なのに冷や汗が流れちゃう。

夏でもこの部屋にエアコンがなくても過ごせているのはある意味彼女の功績。おまえの先祖、雪女かなんかなの?地球氷河期説の根拠って案外こいつなんじゃね?


結衣「でも、どうして怪談なんですか?」

由比ヶ浜が素朴な疑問を口にした。あまりに素朴すぎて日本語的におかしいのだが、そのあたりはスルー。

平塚「うむ。キミたちも知っているとは思うが、先日この怪談話に関わる怪我人が出てな。職員室でも問題視されるようになったのだよ」

ふくよかな胸の前で腕を組まれると、迫力倍増でそちらの方を問題視してしまいそうになるんですけど。
しかし、その話なら俺も聞いている。バカな生徒がわざわざ真夜中の学校に忍び込んでやらかしたらしい。自業自得だが、学校側の管理責任も問われているのだろう。
つか、そもそも夜間は鍵が掛かってるはずの校舎にどうやって入ったんだよ?ナニⅢ世なの?

平塚「まぁ、私も生活指導の担当として、このまま放置もできないというわけだ」

八幡「で、なんでまたそれが俺たちに?」

平塚「我々教師が“実際に調べててみたけどやっぱり何もありませんでした”と言ったところで、生徒達が納得すると思うのかね?」

八幡「学校側が風紀を正すために真相をうやむやにしたと思われる…ということですか」

平塚「察しがいいな。そのとおりだ」

舐めてもらっちゃこまる。うやむやにするのとか超得意だし。特に責任問題とかもうちょっとした政治家並み。
俺は悪くない。全部秘書が悪いんです。
もっとも、小学校時代は悪いことは全て俺のせいにされたりしてたのだが。遠足の日に雨が振ったり、クラスで飼ってた金魚が死んだり。
なにそれ祟り神かなにかかよ。


雪乃「比企谷くんに、いえ、臭いものに蓋…ということね」

八幡「何気に俺を臭いもの扱いするな。ちゃんと毎日風呂入ってるし、シャツだって…」くんくん。

結衣「匂い嗅いちゃうんだっ?!」

雪乃「比企谷くん?」ニコッ

八幡「おいよせやめろ雪ノ下、笑顔で俺にハブ○ーズ向けんな」

結衣「あはは。ヒッキーとゆきのんって、うちのパパとママみたい」

八幡&雪乃「なっ?!」///

結衣「って、あ、べ、別にふたりが夫婦みたいに見えるとかじゃなくて!」アセアセ

八幡「…わーってるよ」そんな風に言われたら反応に困っちゃうだろうが。

しかし由比ケ浜のとーちゃん、ハ○リーズかけられてるのかよ。家族のために汗水たらして働いてもその扱い。いや汗水たらすからこその扱いか。どっちにせよやっぱり働いちゃったら負けだな。


雪乃「んッ、ん。…とにかく、確たる依頼人がいない以上、それは奉仕部の活動とはなりえないのではないでしょうか」

平塚「まぁ、そう言われればそうなのだが」

八幡「…だな。じゃ、この話はなしってことで」

何気ないふりを装いながら、実は俺も内心ホっとしていた。
別に怖いわけじゃないから。いつも小町にホラー映画とか付き合わされてるし。つか怖いなら見なきゃいいだろっつーの。
なんで女の子ってわざわざ怖いもの見たがるわけ?
俺が夜中ひとりでトイレいけなくなっちゃったらどうしてくれんだよ…ってやっぱ怖いんじゃねーか。

結衣「よかったぁ~」

大げさに安堵の息をもらす由比ヶ浜の隣で、雪ノ下がそのささやかな胸を小さくなでおろしているのが見えた。
普段はそれこそナ○ニアの白い魔女もかくやというくらい冷たく覚めた顔してるくせに、時折こうして年相応の女の子らしい一面を覗かせることがある。

雪乃「比企谷くん、何かしら?」

俺の視線に気がついた雪ノ下が半眼になって詰問する。少し頬が赤くなっているせいか、いつもの迫力はない。

八幡「…別に」

俺は笑いを噛み殺しながら顔を背けた。

結衣「あっ!もしかしてゆきのんもやっぱり怖いのとかダメなの?」

雪乃「わ、私は別に…」

雪ノ下が何か言いかけたタイミングで部室の扉がノックされた。

雪乃「…どうぞ」

俺を睨みつけながら憮然として雪ノ下が応える。どうやら命拾いしたようだ。
つか、睨む相手が違うだろ。おまえ最近由比ヶ浜に甘すぎじゃね?あまあますぎて海に潜っちゃうまである。それあまちゃんだし。じぇじぇじぇ?


「失礼します…平塚先生がこちらに来ていると伺ったのですが」

そう言いながら、ひとりの女生徒が奉仕部の部室に入ってきた。
知らない顔である。もっとも、向こうだって俺のことなんて知らないだろうだからイーヴン。むしろここでは地の利を知ってる分、俺の方が有利なくらい。
非常口の位置は確認済みだし…って、なんで逃げること前提なんだよ。

平塚「うむ。私に何か用かね?」

女生徒「はい。…というか、実は奉仕部にお願いがあって来たのですが」

平塚「ほう。ちょうど部員がみんな揃っているところだ。良ければ話してみたまえ」

女生徒「あの…ここでは生徒の悩みを解決してくれるというのは本当なんですか?」

雪乃「そうね。正確には悩みを解決するのではなく、悩みを解決するための手助けをするところなのだけれど」自然な流れで雪ノ下が引き継ぐ。

女生徒「実は私ではなくて友達の事でご相談に来たんです」

雪乃「あら、お友達のためにわざわざ奉仕部に相談にくるなんて随分と殊勝な心がけね。比企谷くんも少しは見習ったら?」

八幡「見習うも何もそれ以前に俺に友達なんていないけどな…って、おまえわかってていってるだろ?!」

雪乃「ごめんなさい。知ってても知らないふりをするのが思い遣りというものですものね」

八幡「そーだよな。そこまでわかってるならついでにダメ押しするようなマネもやめような」


雪乃「比企谷くんの残念な交友関係はともかく、お話を伺うわ」

八幡「ちょっと待て。交友関係について言わせてもらえば、お前にだけは残念とか言われたくねーんだけど」

雪乃「あら、私にだって友達くらいいるわよ。…そうね、例えば由比ヶ浜さん…とか」///

結衣「ゆきのん…」///

おいおい百合なら間に合ってるから他でやってくれ。スィーツとかプティまりとかオトメとかいろいろあんだろ。

八幡「…んで?“とか”ってからには当然他にもいるんだろ?」

結衣「うわっ。ヒッキー感じ悪ぅ~。マジさいてー」プンプン

雪乃「コホン。とりあえず、自己紹介をさせていただくわ。私はこの奉仕部で部長を務めている2年J組の雪ノ下です。
   彼女は同じ学年でF組の由比ヶ浜さんよ。で、そこにいるのが…」

八幡「って、おまえ、ごまかしてんじゃねぇかよっ?!」

雪乃「…えっと、ごめんなさい。あなた誰だったかしら?」

八幡「だから、可愛らしく小首をかしげながら真顔で聞くなっつーの。マジでちょっと傷ついちゃうだろ…由比ヶ浜と同じF組の比企谷だ」

雪乃「…だそうよ。大丈夫。よく吠えるけど予防接種は受けているはずだから」

八幡「俺を犬扱いすんなっ。どうせまたヒキガヤ犬とかいうつもりなんだろっ?!」

雪乃「あら、そんな失礼なことしないわよ…だって犬が可哀想だもの」

八幡「うぐっ、俺は犬以下の扱いなのか…」スクール・カーストってレベルじゃねぇぞこれ。

俺もしかして死んだらミニチュアダックスフントとかに生まれ変わっちゃうの?いやそこまで本に執着ないけど。


結衣「あはは…。えーと…はじめまして…かな?」

八幡「おい由比ヶ浜おまえクラスメートだろっ?!アホだアホだとは思っていたが、俺の顔を忘れちゃうほど残念な記憶力だったのかよっ?!」

もしかしておまえの両親、トリだったりするわけ?

結衣「違うしっ!彼女に言ったんだしっ!てかあたしそんな頭悪くないしっ!」

八幡「よかったー。名前はともかく、クラスメートにまで顔忘れられてたりしたら、ちょっとだけ死にたくなっちゃうところだぜ」

雪乃「名前の件はもう諦めてるのね…」

結衣「もう、ヒッキーってなんでそんなに僻みっぽいのかな…」

雪乃「ヒーガミくんの話はもういいから、お話の続きを聞きましょう?」

八幡「おまえ、今わざと名前間違えたろッ?」


女生徒「あ、私は2年B組の篠塚志乃といいます」ペコリと頭をさげる。

結衣「B組というと、ざ…」

八幡「おっと由比ヶ浜、その名を口にしちゃダメだ。噂をすれば影っつーだろ」

結衣「じゃあ、中二?」

八幡「そいつもダメだ。シナプスがはじけちゃうから。とりあえずここは“名前を言ってはいけないあのひと”で」

雪乃「彼はいつから悪の魔法使いになったのかしら?」

雪ノ下がこめかみに手を当てながらため息をつく。
まぁ、あいつことだ。間違いなく三十越えたら“魔法使い”にはなりそうだけどな。もちろん違う意味で。

篠塚「あの…話の続きをしてもいいですか?」

雪乃「ごめんなさい。比企谷くん、靴下をあげるからちょっと黙っててちょうだい」

八幡「…誰が屋敷しもべ妖精だよ」

篠塚「皆さんは、総武高で流行ってる怪談をご存知ですか?」

八幡&雪乃&結衣&平塚「怪談?!」


取り敢えず、今日はここまでで。ノシ


ここで、先程から話題になっている怪談について説明しておこう。

夜の特別棟で、目をつむって階段を後ろ向きに降りると、本来12段か14段のはずの階段が13段になることがあるらしい。
どの階段なのかははっきりしないのだが、その階段を降りた先で窓ガラスを覗くと、そこには運命の人が映っているという。

ただし、映った相手に声をかけられて、うっかり返事をすると呪われてしまうという、都市伝説のような恋占いのような怪談話である。

この目をつむって階段を逆に降りるにというのがクセもので、先日怪我をした生徒も逆向きに階段を降りていて足を踏み外したらしい。

どうやら代々総武高校の生徒たちの間に語り継がれているらしく、時代時代によって細部が変わったりするものの、大筋ではだいたい同じである。
何期生の誰それが試して同じ学年の誰それと結婚しただの、返事をしてしまった生徒が行方不明になっただのホントかウソかわからないような噂までまことしやかに伝わっている。

怪談話のお決まりとして、この話の元を辿れば戦前同じ敷地にあったとされる軍事施設にまでたどり着くらしいが、この学校自体、旧校舎時代を含めて戦後の創立だし、その前はただの更地だったらしいから、さすがにそれはウソっぽい。


雪乃「…ところで、その怪我をしたお調子者って誰なのかしら?」

結衣「えっと…あはは…」

俺と由比ヶ浜がチラリと視線を交わす。

八幡「…俺たちのクラスの戸部ってやつだ」苦笑混じりにその“お調子者”の名を告げる。

雪乃「なるほど…それで、その怪談とあなたのお友達にどんな関係があるのかしら」

篠塚「私の友達が、学校に忍びこんでその占いを試すと言ってるんです。私は止めたんですけど、全然聞いてくれなくて」

雪乃「で、私たちにどうして欲しいのかしら?」

篠塚「できればそれをやめさせて欲しいんです」

八幡「別にいーんじゃねーの?その友達とかがバカやって怪我したとしても、それはそれで青春の1ページ(笑)っつーもんだろ」

雪乃「あいからわず無責任な男ね」雪ノ下がため息をつく。

八幡「ばっかおまえ、自分の事だけでも手いっぱいなのに、他人の事まで手伝わされたうえに責任まで持ってられるかっつーの」

ちなみにこれを“仕事”に置き換えるとそのまま会社にも当てはまる。だから俺の意見は決して間違っていないはずである。

平塚「まぁ待て比企谷。そうは言っても、また怪我人でも出たらコトだ。生活指導としては看過できんな」


結衣「…で、そのお友達って?」

篠塚「同じB組の生徒なんですけど…実はここしばらく学校を休んでて…」

八幡「風邪でも引いたのか?」

篠塚「いえ、そういうわけではないんですが…」そう言ってチラリと雪ノ下の顔を伺う。

雪乃「ヒキコモリくんですら毎日堂々と登校しているのに、それは由々しき問題ね。何かあったのかしら?」

八幡「おい待て雪ノ下、ヒキコモリくんて誰のことだ?」

雪乃「あら、誰もあなたの事だなんて言ってないわよ。ヒキコモリガヤくん」

八幡「勝手に人の名前を長くするんじゃねぇっ」なんで俺の中学時代のあだ名知ってんだよ。

結衣「大丈夫だよっ!あたしはヒッキーって呼んでるからっ!」

八幡「いや、短けりゃいいってもんでもないだろ」それ意味同じだし。何が大丈夫なんだよ。

篠塚「それが…その、最近、失恋したらしくて…電話してもメールしても返事がないんです…」

雪乃「なるほど。そうなると直接説得するのは難しそうね…」

あ、なんかやな予感。


篠塚「手紙を渡した時に、はっきりとフラれたらしいんですけど、絶対にその人が運命の人だって信じてて。だからそれを証明したいって…」

結衣「それで怪談なんだ…」

篠塚「悪い人ではないんですけど、思い込みが激しいんです。彼…」

結衣「彼?」

篠塚「あ」思わず口を押さえる。

友達、ね。ふーん、なんとなく状況はわかった。
平塚先生も由比ヶ浜も気がついたようだが、ただひとり雪ノ下だけは全く気がついた様子はない。
こいつ、そっちの方面で苦労した経験とかなさそうだからな。

つまり、篠塚さんの友達というのは彼女の想い人でもあるのだろう。
止めたいというのことは、もちろん本当に心配しているという事でもあるのだろうが、少なからず嫉妬も含まれているのかもしれない。

雪乃「つまり、どういうことなのかしら?」

結衣「あー、つ、つまり、私たちで、怪談が単なる噂であることを証明できればそれでいいってことだよね?」

さすが、空気を読める気遣いの人、由比ヶ浜さんである。会ったばかりの人間に対しても、さり気なくフォローしている。
もうエア・マスターという称号を贈りたいくらい。風の精霊とか召喚できちゃいそうなレベル。

篠塚「そ、そうですね。もしそれができれば彼も…友達もきっとあきらめてくれると…思うんです」

言葉尻が小さくなったのは、やはり自信がないからだろう。


八幡「いや、それであきらめるくらいなら、最初から好きになったりしないだろ」

雪乃「さすが失恋の第一人者だけあって一家言ありそうな口ぶりね」

八幡「勝手に俺をその道のエキスパートみたく言うな」

雪乃「あら、違うのかしら?」

八幡「俺だって人並みに振ったり振られたりした経験くらいはある」

雪乃&結衣「えっ?!」

なにその意外そうな顔。

八幡「まぁ、主に女の子が俺が振ったり、俺が女の子に振られたりだけどな…」

雪乃「あらそう…」ホッ

結衣「なーんだ…」ホッ

え、なにこの微妙な雰囲気。俺が振られるのが当然ってこと?それ、何かおかしくね?

八幡「だ、だからだな、そんな回りくどいことしなくても、その友達を振った相手とやらが誰か他の男とイチャコラしてるところを見せれば一発なんじゃないのかってことだよ」

現実から目を背ける人間に対しては、イヤというほど現実ってヤツを見せつけてやるのが一番である。それこそ幻想をブチ壊してやればいいのだ。それどこの禁書目録だよ。

現実を目の当たりにして三日三晩涙で枕を濡らせばきっとあきらめもつく。枕だって塩味になる。ソースはもちろん俺。ソースなのに塩味。なにそれ意味わかんね。


結衣「ヒッキー、デリカッセンないしっ」

八幡「いやそう言われても俺、お惣菜屋じゃねーし」

雪乃「由比ヶ浜さん、それをいうのならデリカシーでしょ」

結衣「そう、それ!その、で、でりかしー?」

八幡「一番現実的な方法を提示しただけだ。それにこの場合別にデリカシーいらんだろ。下手に期待を持たせると却って傷が深くなる」

雪乃「それはあなたの経験則から導き出した答えなのかしら?」

八幡「いや、俺の友達の友達がその昔だな…」

雪乃「あなたには現在はもちろん、過去にも未来にも友達がいるとは思えないのだけれど…」

過去はともかく未来まで否定しちゃうのかよ。さすがは雪ノ下、容赦ねぇな。

篠塚「あの…でも、もし、そうしていただけるのでしたら」篠塚さんがチラリと俺を見る。

八幡「いただける?」

タダでいただけるものなら何でもいただくのが俺の主義だが、さすがにこの話の流れでいただけるものは何もない。つか逆にいただけない。


結衣「えーと、ちなみに、その篠塚さんのお友達が振られた相手って…?」

篠塚「それが…その…」

雪乃「大丈夫よ。ここにいる人たちはみんな信用できる人たちばかりだから、プライバシーは遵守するわ」

結衣「うんうん」

雪乃「そういうわけだから、とりあえず比企谷くんは席を外してくれるかしら」

八幡「はいよ」ガタッ

結衣「外しちゃうんだっ?!」

八幡「…っておい、俺はそんなに信用できない人なのかよ」

雪乃「あら、信用できないという一点において、私はあなたに全幅の信頼を寄せているわよ」

八幡「ばっかおまえ、俺には他人の秘密をバラす相手がいねーから全然問題ねぇんだよ」

結衣「そこまで卑屈になっちゃうんだっ?!」

雪乃「冗談よ。もちろんあなたにそんな仲のいい友達がいるとは思えないものね」

八幡「甘いな雪ノ下。俺には仲の悪い友達だっていないんだぜ」

結衣「なんか理由が哀しいし」


篠塚「えっと…あの…そうじゃなくて…」

雪乃「安心していいわ。比企谷くんは性根の腐った最低のクズ男だけれど、決して信頼を裏切るような真似はしないわ。最低のクズ男だけど」

八幡「なぜ敢えて二度言う必要がある?」

篠塚「いえ、そうじゃなくて、私の友達を振った相手というのは…」

結衣「ふむふむ」

篠塚「その……………………雪ノ下さんなんです」



雪乃「…え?」

結衣「…へ?」

八幡「…あ?」


皆の視線が一身に集まる中、当の雪ノ下は言葉に詰まってただ目をパチクリさせている。

やがて、何か思い当たったかのように胸の前でポンと手を打った。

雪乃「そ、そういえば、この間、B組の男子からお手紙を渡されたことがあったかしら」

八幡「おまえ、なんでそんな大事な事忘れちゃってるわけ?」ふつう、B組の男子で手紙と聞けばピンとくるだろ。

雪乃「し、仕方ないじゃない。だって…その…男子から手紙を渡されるとか…しょっちゅうだし」

結衣「ほわわ、ゆきのん、すごい。やっぱりモテモテなんだ~」

雪乃「そ、そんなことはないわ。それに、最近は誰かさんのお陰で手紙の数も減ってきたし…」ゴニョゴニョ

誰かさん?何それ、黒ヤギさんとか白ヤギさんがお手紙食べちゃったの?

しかし、その口ぶりからすると雪ノ下にも仲のよい男子がいるということなのだろう。

男子と楽しそうに会話している雪ノ下の姿はちょっと想像できない。
男子を楽しそうに罵倒している姿ならいくらでも想像できるのだが…いや、それはそれでちょっと問題があるような気もするが。


八幡「いや、確かに雪ノ下は見た目だけは美人だからな。男である俺の目から見ても、それは十分頷ける」

雪乃「え?き、急に何を言い出すのかしら?」

八幡「だからこの際だ…おまえ、いっそのこと、一生黙ってた方がいいんじゃねぇのか?」特に俺に対する露骨な暴言とか。

雪乃「…あなたも弁護士がくるまでは黙秘してた方がいいわよ」

八幡「だからなんで容疑者扱いなんだよ」

八幡「つか、おまえもらったラブレターとかちゃんと読んでるのかよ。目の前で高笑いしながら破り捨てたりとかしてねーだろーな」

雪乃「失礼ね。人をなんだと思っているのかしら。全部目を通しているわ。誤字脱字を直してからお返ししてるし」

結衣「返しちゃうんだっ?!」

八幡「どんな赤ペン先生なんだよっ?!」

メールで変換ミスっただけでも赤面モノなのに、直筆の手紙でそんなことされたら二度と手紙なんて書けなくなるだろ。

しかも相手は国語どころか全科目学年一位の雪ノ下である。ラブレターに“もっとがんばりましょう”なんてハンコが押してあったら泣くだけじゃすまないぞ、それ。


篠塚「い、いえ、あ、あのですね…ですから、おふたりが、一緒にいるところを見せつけることができれば…あるいはって…」

八幡「ん?おふたりって…?」

篠塚「え?あ、はい。雪ノ下さんと比企谷くんは随分仲がいいみたいなんですけど、その…やっぱり、つきあってたりするんですか?」

八幡&雪乃&結衣「えっ?!」

雪乃「…篠塚さん?あなた、初対面の人間に対して随分と失礼なことをおっしゃるのね」ゴゴゴゴ…

八幡「初対面じゃないにしても、お前も俺に対してかなり失礼なことを言ってることにそろそろ気がつけよな」

結衣「ま、まぁまぁ ふたりとも」

篠塚「えっ?!ち、違うんですか?」

八幡&雪乃「ちがうよっ!(わっ!)」

篠塚「そ、そうなんですか。私はてっきり…あの…だから断ったのかと…」


八幡「…雪ノ下、おまえ、いったいどんな断り方したんだよ…」

雪乃「そ、そんなことまであなたに言う必要はないでしょ…」

八幡「んで、おまえ、その、さっきの口ぶりからすると、気になる男子とかいるわけ?」

雪乃「えっ?な、なぜそんな事を聞くのかしら?」

八幡「いや普通に誰だか知らねーけど、そいつとイチャコラしてるとこ見せつけてやればって…」

雪乃「……………いないわね。気に入らない男子なら、ちょうど今、目の前にいるのだけれど」

なにムッとしてんだよ。しかし、そうなるとイチャコラ作戦はダメだな。

あとは特別棟の窓ガラスを全て叩き割るという手もあるのだが、ついでに盗んだバイクで走り出しちゃうまであるかもしれないので却下。

平塚「ふむ、しかしこれで依頼人が現れたわけだな」

それまで黙って成り行きを見ていた先生が、我が意を得たりとばかりにニヤリと笑う。
ああ、そういえば居たんですね。途中から忘れてました。


雪乃「まだ依頼を受けるとは言ってません」

平塚「ほう、やはり怖いのかね」

雪乃「怖くなんて…ないです」

平塚「なら構うまい。学校に妙な噂が広まるのは生活指導としてもあまり好ましからざることではあるしな。
   第一、こうして依頼人が出た以上、奉仕部として調査に乗り出しても何ら問題あるまい」

八幡「まぁ確かに実際に生徒が何人かで試してみたけど何もおきませんでしたってことなら、真実味があるかもな」

雪乃「そうね。比企谷くんひとりが試しただけでは、何も起きなくて当然だと思われても仕方がないものね」

八幡「ばっかおまえ、もしかしたら俺を養ってくれる包容力と経済力にあふれる女性が現れる可能性もないとはいえないだろっ」

「それはないし」「ありえないわね」由比ヶ浜が真っ先にツッコみ、雪ノ下が冷たい声で追随する。なんなのそのコンボ。格ゲーだってもっと俺に優しいだろ。

平塚「という訳だ篠塚。キミの友達を直接説得はできないが、奉仕部で怪談の真偽を確認するということで構わないか?」

篠塚「はい。お願いします」そういって篠塚さんはぺこりと頭を下げた。


今日はここまでです。ノシ

うぷのコツつかむまでサゲ進行できましたが、感想とかあればお願いします…お手柔らかに。


みんなトンクス。

原稿は完成してるので、後は細部を訂正しながら、うぷするだけです。
つか、書きながら更新するなんて、漏れには絶対にムリぽ。

長い作品でもないので、このペースなら1週間以内に完結します…すると思います。


「お手紙、お返しします」

「…理由をきかせてもらっていいですか」

「あなただからダメというわけじゃないの。うまく説明できなくて申し訳ないのだけれど」

「なら、せめて友達に…」

「…ごめんなさい」

「じゃあ、やっぱりF組のヒキタニと?」

「…なぜここで彼の名前が出てくるのか理解できないのだけれど」

「でも、彼とあなたはお友達ですよね」

「友達…ではないわ」

「友達じゃない?それってどういう…」

「…言葉通りの意味よ。ごめんなさい。もういいかしら。失礼するわ」


結衣「ゆきのん?」

雪乃「え?あ、何かしら」

結衣「どうしたの?ぼーっとしてるよ?」

雪乃「ごめんなさい。ちょっと考え事をしてたものだから」

結衣「ふーん?」

八幡「…一応、戸塚と材木座にも連絡してみたが、今日はふたりとも都合が悪いそうだ」

スマホをしまいながら百合ゆりしたふたりに声をかける。おまえら最近仲良すぎだろ。ますます俺が居づらくなっちゃうじゃねぇか。
もう俺この部活にいなくてもよくね?このままフェードアウトしてひっそりと退部しちゃうまである。怪談だけに幽霊部員とか。なにそれ我ながらうますぎ。

雪乃「あなたに人望がないことは十分承知しているから別に問題ないわ」

八幡「孤高の魂は己れ以外に拠り所を必要としねえんだよ」

雪乃「不思議ね。もしそのセリフをあなた以外の人間の口から聞いたら本当にカッコいいと思えるのでしょうけれど」

八幡「ほっとけ」


戸塚の方はテニススクールで特別講習があるらしい。

戸塚「ごめんね。八幡」

八幡「いや、ぞんぜん気にしてないから。講習大変だな。頑張れよ」

戸塚の申し訳なさそうなかわいらしい声が耳元にこびりついて離れない。思わず録音して毎日寝る前に聴きたくなるくらい。戸塚かわい過ぎてとつかわいい。

今回の件であわよくば戸塚に抱きつかれちゃうようなドッキリハプニングとか期待したんだけどな。
あるいはわざと窓の外に立って運命の人を演出しちゃうとか。
怖いぜ学校の怪談。このまま戸塚ルートまっしぐらになるかもしれない。

ついでに誘った材木座は格ゲー仲間で集まりがあるとかなんとかいって生意気にも断ってきやがった。

材木座「ごめんね。八幡」

八幡「うるせぇキメェ[ピーーー]っ」

なんで同じセリフ返してくんだよ。それ、嫌がらせか?
もっとも、あいつがくると怪談じゃなくて漫談になっちゃいそうな気もするので、ある意味来なくて正解。
材木座ウザ過ぎて、ざいもくざい。うまくねーな。ちっ、とことん使えねーヤツだぜ。


話し合いの結果、一端家に帰り、暗くなってから私服に着替えて学校に戻ることにした。

平塚「善は急げというだろう?」

なにが善なのかはよくわからないが、このまま放置しておけば、篠塚さんの友達に限らず第二第三の戸部みたいなヤツが現れないとも限らない。
確かに何かしらのアクションを起こすなら早い方がいいだろう。

おやじとおふくろは今日もまた仕事で遅くなるらしいので、妹の小町が用意してくれた晩飯をちゃっちゃと済ませる。

八幡「小町、ちゃんと戸締りしとけよな」

玄関で靴を履きながら小町に声をかけた。

妹の心配をしてあげるのは別にシスコンじゃなくても兄として当然の義務。
卒業式の日に実妹にウェディングドレス着せてチューしちゃうどこぞの変態兄貴とは違うのだ。
…ちょっとだけ羨ましい気がしないでもないが。


小町「はいはい。大丈夫だよ。それより、お土産忘れないでね」

八幡「学校行ってくるだけだっつってんだろ」むしろお前の頭の方を心配してしまいそうになるぜお兄ちゃんは。

小町「夜道は暗いから気を付けてね…ってこれ小町的にポイント高いかも」

八幡「わかったかわかった。心配するな」

小町「何言ってるのっ。心配しないわけないじゃない!小町にとっては、たったひとりのお兄ちゃんなんだよ?!」

八幡「こ、小町」不覚にも、うるっときた。

小町「ただでさえ挙動不審なのに、夜道なんか歩いてたら絶対お巡りさんにつかまるって」

八幡「…って、そっちの心配かよっ」

小町「痴漢の容疑者の妹なんて世間様に後ろ指差されることになったら、小町、転校するしかなくなるよ」

よよよ、とわざとらしく泣き崩れる真似をする。

八幡「今すぐ俺の感動をかえせっ!」

心配をするとみせかけてちゃっかり自分の保身をはかってやがる。
これだから妹ってヤツは…可愛いから許すけど。


待ち合わせ場所に指定された家の近くのコンビニに着くと、平塚先生の車が止まっているのが見えた。
既に全員そろっているようだ。

結衣「あ、ヒッキーだっ」

由比ヶ浜が真っ先に気がついて俺に手を振る。私服だし、暗いし、結構離れていたのに、よく気がつくな。
夜目が効くの?ネコなの?つか、その前に恥ずかしいから大声でその名前で呼ぶのやめてくれない?

平塚「うむ、時間には正確なのだな。感心したぞ」

雪乃「その分なら刑務所の規則正しい生活にも十分順応できそうね」

八幡「だからなぜ犯罪者扱いなんだよ」


そういえば、うちの親はいつも帰りが遅いし雪ノ下は一人暮らしだからいいとしても、由比ヶ浜はなんといって家を出てるのだろう。
平塚先生がいる手前、小声で聞いてみる。

八幡(由比ヶ浜、おまえ、ちゃんと親に断ってきてんだろうな?)ヒソヒソ

結衣(えへへ~。実は親に気づかれないですむ出入り口があるの)ヒソヒソ

八幡(なにおまえ、内緒で夜遊びとかしてるわけ?やっぱりビッチだな)ヒソヒソ

結衣「ビッチいうなしっ!」

八幡(声でけぇよ!)雪ノ下が怪訝そうな顔でこっち見てんじゃねぇか。

結衣(あわわ。だって近くのコンビニに出かけるだけで心配してついてくるとか言うんだもん。もう子どもじゃないってのっ)ヒソヒソ

八幡(そりゃ子ども扱いじゃなくて年頃の娘だから心配してんだろ)ヒソヒソ

結衣(えっと…それってヒッキーも心配ってこと…?)モジモジ

八幡(当たり前だろ?俺だって心配だ)ヒソヒソ

結衣(そ、そうなんだっ)パァッ

八幡(小町が夜中にひとりでコンビニ行くって言い出したら絶対についてく)ヒソヒソ

結衣(………そっちなんだ)ガクッ

平塚「さて、それでは学校に向かうぞ。れっつらごーだ」

わけのわからないノリの先生に引き連られ、俺たちは車に乗り込んだ。


学校に着くと、普段は生徒が使わない職員通用口から校内に入る。

平塚先生は入口で防犯セキュリティを解除し、雪ノ下をともなって特別棟の鍵を取りに、いったん職員室へ向った。

ふたりで残された俺と由比ヶ浜は手持ち無沙汰となり、なんとなく気まずい雰囲気が流れる。いや別に知らない仲でなし、気まずくなる理由はないんだけどね。
だからモジモジしながら俺の方をチラチラ見るのやめてくんない?そのせいでますます俺が意識しちゃって余計気まずくなるんだってば。

「あの」「おい」

ふたり同時に声をかける。なにこれ超恥ずかしいんですけど。

由比ヶ浜がどうぞどうぞとばかりに俺にゆずる仕草をする。仕方ない、ここはひとつ、俺から話題を振ることにしよう。
とにかく俺の乏しい対人スキルを駆使して、数少ない選択肢の中から一番どうでもいい話題をチョイスする。

八幡「…怪談を試したってことは、戸部のヤツ、好きな女子でもいるのか?」

うわっ自分でふっといてなんだが、ホントにどうでもいい話題だなこれ。答えを聞いても意味ない質問ベスト・オブ・ザ・イヤーかもしれない。

戸部はサッカー部が大会前の部活で遅くなった帰りに、ひとりで学校に忍びこんだらしい。

普段からチャランポランなお陰でレギュラーから外れてはいたものの、ケガのせいでしばらくは松葉杖をつき、部活も休むハメになってしまったとか。

しかし戸部がそんな乙女チックな男とは知らなかったな。いや、俺はあいつについてほとんど何も知らないんだけど。


結衣「たぶん…何となく想像はつくんだけど」

八幡「相手はやっぱり三浦だったりするわけ?」

いつも三浦のこと持ち上げてるしな。勢い余って怪我しちゃうくらい怪談も好きみたいだし、よほど怖いものが好きなのだろう。
怖い怖いとかいいつつ絶叫マシンに率先して乗るタイプなのかもしれない。
ま、蓼食う虫も好き好きって言うし、俺の知らないところで好き勝手やってる分にはノープロブレム。いや、傍から見てる分には面白いからむしろ推奨。

結衣「んー。優美子じゃないと思う…」

八幡「そうなの?」

ふーん。その顔は知ってて黙ってるって顔だな。まぁ、戸部が誰を好きになろうと俺には全然関係ないけど。

八幡「あー…もしかして…おまえ…とか?」

できるだけさりげない風を装って聞いてみる。まぁついでだし。話の流れだし。特に深い意味はないんだけど…で、答えまだなの?

結衣「ちがうちがう!」由比ヶ浜が慌てて手を振る。

八幡「いや、なにもそんな勢いで否定することもないだろ」そんなに戸部嫌いなのかよ?確かにあの長髪はかなりウザいけど。

結衣「だ、だって…」

八幡「…ま、ならいーんだけど」ボソッ

結衣「えっ?」

八幡「な、なんでもねーよ」


結衣「と、ところで、ヒッキーは、き、気になる子とかいるの?」モジモジ

八幡「いる」

結衣「え?いるんだ?!だ、誰?」

八幡「戸塚だ」キッパリ

結衣「彩ちゃん、男の子だし!」

八幡「ばっかおまえ、愛は年齢や国境を越えちゃうくらいだから、性別を超えても不思議はねーだろ?」

結衣「不思議はなくても問題大ありだよ!」

八幡「ちっ、細かいことにうるせぇやつだ。おまえ、俺のかーちゃんかよ?」

結衣「全然細かくないしっ。お母さん違うしっ」

八幡「そういうお前はどうなんだ?ビッチなんだから気になるヤツのひとりやふたり…」

結衣「だからビッチいうなしっ! …へっ? あ、あたし?」///

八幡「あ~、い、いや、いい。なんでもない。忘れてくれ」アセアセ

結衣「そ、その…聞きたい…の?」チラッ

八幡「いや、別に、その、なんつーか…これはアレだ、アレだから」アレがアレしてナニだから…って意味わからん。さすがにこれで通じたら天才すぐるだろ。

結衣「…あ、あたしは、その…ひ、ひっ」

八幡「ひ?」ってもしかしてそれ…



「比企谷くん?」


結衣「えっ?ひゃっ!違うしっ!いや、違うくないけどっ」

雪乃「由比ヶ浜さん、何をいってるの?比企谷くん、平塚先生がお呼びよ」

八幡「お、おう悪りぃ。さんきゅーな」

ヤバいところだった。危なく勘違いしちまうじゃねーか。

これがいわゆる吊り橋効果ってヤツ?吊り橋を揺らしたら恋に落ちる前にふたりとも橋から落ちちゃった、みたいなアレ?いや違うだろそれ。

とにかく落ち着け、俺。こんな時は、深呼吸して気持ちを鎮めるに限る。

ハッ・ハッ・フー、ヒッ・ヒッ・フーってそれラマーズ法だって。俺、妊婦なの?


中途半端な時間にうぷしてスマソ。今日はここまででノシ

あと、17の8行目を脳内訂正お願いします。


八幡「まぁ、主に女の子が俺が振ったり、俺が女の子に振られたりだけどな…」
                   
                  ↓

八幡「まぁ、主に女の子が俺を振ったり、俺が女の子に振られたりだけどな…」


> 52

それはこれから(ry

ちょっとだけ更新します。


平塚「よし、それじゃあこれから調査を始める。全員で固まってても意味があるまい。ふた手に分かれよう」

雪乃「なるほど効率重視ですね。わかりました。では、平塚先生と私と由比ヶ浜さんの三人が同じ組ということで問題ないかしら?」

八幡「ちょっと待て、問題ありすぎだろ。なぜナチュラルに俺をひとりにしようとする?」

雪乃「あら、孤高の魂は己れ以外に拠りどころを必要としないんじゃなかったのかしら?」

八幡「ぐっ…なぜ…それを今ここで…」

雪乃「それとも、ひとりじゃ怖い…とか?」

勝ち誇ったような笑みを浮かべた。さっきのこと、まだ根に持ってやがったのか。こんなところで復讐するとはこの負けず嫌いさんめ。

八幡「こ、怖いわけねぇだろ。みんなと一緒にいたのに、誰も俺のことに気がつかなかった時の方がよっぽど怖い思いしたし」

雪乃「…ある意味あなたの存在自体が怪談みたいなものなのね」

結衣「ひ、ヒッキー、大丈夫だよ。きっとみんな気がついてて無視してただけだから」

八幡「先生、この学校にはイジメが存在します」

平塚「まぁ、この場合は明らかにイジメられる側に問題があるとしかいいようがないからな」

八幡「ぐっ」それでも教師かよっ。


平塚「仕方ない。私と比企谷、雪ノ下と由比ヶ浜の組でいいだろう」

雪ノ下と由比ヶ浜がそろって微妙な顔をする。なにそれ、そんなに俺をひとりにしたいの?

結衣「そ、それもちょっと…どうかなって…」

平塚「不服か?ならば、比企谷に一緒に回る相手を選ばせるという手もあるが」

うわー、なんですかそれ?小学校時代のトラウマが再発しちゃうんですけど。
おまえら俺と組むのがそんなにいやなの?もしかして罰ゲーム扱いなの?もう、死んじゃおっかなー。

雪乃「確かに校内とはいえ、暗いところでその男とふたりきりなんて、恐怖以上に身の危険を感じますが」

八幡「死んでもおまえだけは襲ったりしないから安心しろよ」

雪乃「あら、それは由比ヶ浜さんだったら襲うことがあるかもしれないという意味かしら?」ひやりと冷たい視線を俺に向ける。

結衣「えっ?そ、そうなの?」すかさず由比ヶ浜が俺から距離をとろうとする。

八幡「だーっ!なんでそうやってすぐに揚げ足をとろうとするわけ?」明らかに冤罪だろ。弁護士呼べ弁護士。

雪乃「そう。なら試してもいいのよ?」雪ノ下が挑むような眼で俺を見据える。

八幡「え?試す…?」ゴクッ

雪乃「ご希望なら今すぐ息の根をとめてあげるわよ?それでも襲うことができたら褒めてあげてもいいわ」

八幡「…って、そっちですか」

だからおまえの場合は冗談に聞こえないんだっつの。つか、もちろんそれ冗談だよね?


結局、平塚先生の提案とおり、俺と先生、雪ノ下と由比ケ浜の組み分けとなった。

余ったぼっちが先生と組まされる確率の高さは異常。

雪ノ下と由比ヶ浜が不機嫌そうな顔で俺を見ている。一体俺にどうしろと?

平塚「べ、別に比企谷なんかと一緒に回りたくなんかないんだからねっ」

八幡「なぜ、ここでツンデレるんですか?」でもちょっとかわいいかも。ひらつかわいい。

平塚「いざとなったら盾にして逃げるつもりなんだからねっ」

八幡「…とても教師の言葉とは思えませんね」こんなのが先生やってて日本の教育界はホントに大丈夫なのかよ。

雪乃「とはいえ…確かにちょっと夜の学校は不気味ね」

不安そうに暗い廊下の先に目をやる。

結衣「大丈夫。ゆきのん!泥船に乗ったつもりで私にまかせてっ」

雪乃「由比ヶ浜さん、あなたいつからタヌキになったのかしら?」頭痛がするかのようにこめかみを指で抑える。

結衣「へっ?」

八幡「それを言うなら大船だろ」

結衣「そう、それ!大船。えっと、ディカプリオみたいなヤツ?」

雪乃「それはもしかしてタイタニック号のことを言ってるのかしら?」

どっちにしろ沈んじゃうのかよ。

良くも悪くも由比ヶ浜のアホさ加減に毒気を抜かれる形となり、俺たちは二手に別れて特別棟を巡ることにした。


短くてスマソ。続きはまた明日の深夜に。ノシ


平塚「まったく、キミと雪ノ下は顔を合わせるたびにケンカばかりしているな」

八幡「俺の方は十分譲歩しているつもりなんですけどね」

譲歩しすぎてそのうちに自分の居場所がなくなるまである。

平塚「フフ。ケンカするほど仲がいいとうことか」

八幡「雪ノ下と仲がいいだなんて、冗談でもやめてください」

世間一般で言う仲良しの定義が覆されちゃうだろ。ハブとマングースくらい仲良しとか、どんなだよそれ。食物連鎖崩れちゃうだろ。

平塚「雪ノ下も年頃の女の子だ。素直になれない所は察してやれ」

年頃の女の子とか聞くと、箸が転んでも笑っちゃうみたいなイメージがあるが、雪ノ下ならロンドン橋が落ちるのをワイングラス片手に高笑いしながら眺めてそうだよな。

八幡「いやいやいや俺に対する罵倒なんて素直すぎんでしょ」

素直というよりもむしろ率直。少し歯に衣着せた方がいいくらい。苦い薬だってオブラートに包むよね?

平塚「ふむ。しかし、キミはどんなに罵倒されながらも決して彼女と距離を置こうとしないのだな」

八幡「心の距離なら千里の彼方ですけどね」

同じ部活に所属する以上、物理的には今の状況で精一杯。もう5センチ移動したら廊下だから。

平塚「そうかね。キミたちは案外似たもの同士かも知れないと思っているのだがな」

全然似てねーし。月とすっぽん、美女と野獣くらい似てない。なにそれ我ながら例えが的確過ぎて逆に落ち込んじゃうんだけど。


八幡「ところで平塚先生」

平塚「なにかね」

八幡「もしかして俺たちを駆り出した理由って…」

平塚「ふむ?」

八幡「万が一自分で占いを試した時に、何も起こらなかったら困るからじゃ…」

平塚「比企谷、歯を食いしばれっ!!!」

どごぉっ

八幡「う゛っ…」

い、いきなりボディを殴りやがった。歯を食いしばる意味ねぇじゃねぇーか。

平塚「貴様はどうしてそうやって妙齢の女性に対してデリカシーのない…おっと」

どうやら平塚先生の携帯が鳴ったようだ。またもや命拾い。つかなんで俺は日常生活で生命の危険にさられれる頻度がこんなに高いんだよ。
 
平塚「どうした?…ふむ、ふむ、なにっ?そうか。わかったすぐそちらに向かう」

パタンッと閉じると、大きくため息をついた。

平塚「説教は後だ。比企谷、戻るぞ」

八幡「どうしたんですか?嫁にも行かないうちに出戻るなんて…いえ、なんでもありません」

お願いですから握り締めた携帯をミシミシ言わせて無言の圧力を与えないでください。

誰かもう本当にもらってやってくれよ。


雪乃「由比ヶ浜さんが、ノリノリで階段を後ろ向きに降りて、足をすべらせてしまったの」

八幡「ノリノリって…おまえ、アホか?」

結衣「アホっていうなしっ。痛っ」

幸い落ちた場所が比較的低い場所だったらしく、足首を軽くひねっただけですんだららしい。

平塚「やれやれ、ミイラとりがミイラとはこのことだな。由比ヶ浜、歩けるか?」

結衣「へ、平気です」

平塚「無理はするな。どれ、保健室まで連れて行こう。湿布くらい置いてあるだろう」

雪乃「でしたら私も一緒に…」

平塚「いや、悪いがキミたちは私が戻るまでふたりで回っていてくれるか?」

八幡&雪乃「えっ?」

平塚「なに、ぐるっと一周してくれればいい。何かあったら携帯に電話しなさい」

結衣「ゆきのん、ヒッキー、役に立てなくてごめんね」

片手で拝むようにして謝る。別に謝られるようなことでもないのだが、やはりここで言うべきことは言っておかないとな。

八幡「いいか、由比ヶ浜…」

結衣「えっ…な、なに?」

八幡「俺が30分して戻らなかったら、迷わず警察に通報してくれ。犯人は雪ノ下だ」

結衣「夜の学校で事件が起きちゃうんだっ?!」

雪乃「…この男は、本当に行方不明にして欲しいのかしら?」

八幡「だからお前が言うと冗談に聞こえないっつーの」目がマジすぐるだろ。こいつ絶対に過去に何人か殺ってるよな。


結衣「でも、ほんと、気をつけてね。暗いし…その…ふたりきり…だし…」モジモジ

八幡「真っ先にケガしたお前が言っても説得力ねーだろ」

結衣「うるさいっ!もう、ヒッキーのばかっ!べーっだ」可愛らしく舌を出す。おまえ小学生かよ。

こうして平塚先生が由比ケ浜を連れて保健室に向かい、特別棟の暗い廊下には俺と雪ノ下の二人だけが残されることになった。


八幡「仕方ねぇな。雪ノ下、行くぞ」

雪ノ下はしばらくためらっていたが、一人でこの場に取り残される恐怖に負けたのか、おっかなびっくり俺の後からついてきた。

強硬に主張すれば、三人で一緒に保健室に行くという選択肢もあったはずなのだが、部長としての責任感の方が勝ったのだろう。
まじめな性格だけに損な役回りだな。
俺なら適当に口実を作って間違いなくサボる。そもそも怪談が事実かどうかなんて俺にとっては超どうでもいい話だし。

二人で無言のまま連れ立って暗い廊下を歩くうちに、不意に俺の足取りが鈍る。
やだなにこれもしかして霊障ってヤツ?それともすねこすり?あやかしがたりっちゃうの?と思ったら、いつのまにか雪ノ下がちんまりと俺の服のスソをつかんでいた。

雪乃「こ、これは別に怖いとかじゃなくて、暗くて足元がよく見えないからであって」

八幡「わーってるよ。なら、いっそのこと手でも握っててやろうか?」

雪ノ下が押し黙る。うわ超怖いんですけど。この後にどんな罵詈雑言がとんでくるかと身構えていると、

雪乃「よ、よかったら、お、お願いできるかしら?」消え入るような小さな声が聞こえてきた。

まじですかっ?!そんなに怖いんですかっ?!怪談の方から裸足で逃げ出しちゃうような、あの雪ノ下雪乃さんともあろうお方がっ?!

驚き半分、呆れ半分に黙って手を差し出すと、小さくてひんやりとした手が俺の掌にすべりこむようにして入ってきた。

なにこれ超柔らかいし、スベスベ。普段どんな石鹸使ってんだよ。


雪乃「…ね」ボソボソ

八幡「ん?」

雪乃「意外と大きな手ねっていったの」

八幡「…まぁ、一応、男だからな」一応なのかよ。

雪乃「…それに、女の子と手を繋ぐのに慣れてるみたいね」

トゲのある口調はいつもと変わらないが、少し拗ねたような怒ったような声に聞こえるのは廊下の反響のせいだろうか。

八幡「…ちっちゃい頃から小町とよく繋いでたからな。あいつ、チョコマカ動き回るから手ぇ繋いでないとどこ行くかわかんねーんだよ」

ちなみにその頃の名残で今でも時々手を繋いで歩くこともあるのだが、シスコンだと思われちゃうのでその辺は黙っておく。

雪乃「そう。家ではいいお兄さんなのね」

クスリと小さく笑う声が聞こえた。ふと空気が緩むのを感じる。チラリと雪ノ下の顔を伺うと、なぜか上機嫌である。
小町効果すげえな。その場に居なくても場を和ませちゃうなんて、お兄ちゃん鼻が高いよ。

雪乃「わたしにも、そんな優しいお兄さんが欲しかったわ」

八幡「まぁ確かに、リアルではおまえんち怖い姉ちゃんしかいねーからな」

太陽のように明るく、地獄のように腹黒いあねのんの顔が思い浮かぶ。
あのひとなら、“パンがないなら飢え死にすればいいじゃない”とか平気でいいそうだよな。なにアントワネットなの?


雪乃「それに、同性だとどうしても比較されてしまうし」

八幡「姉妹だろうが親子だろうが、人間なんて本来比較するべきもんじゃねぇだろ。長所も短所もひとそれぞれなんだからな」

雪乃「姉は完璧よ。私が憧れて常に追い続けている女性だもの」

八幡「完璧なのは外面だろ。長所だけで人間が成立するわけがない。短所だって人間を構成する大切な要素だ」

雪乃「とりたてて長所のないあなたが口にすると妙に説得力があるわね」

八幡「ばっかおまえ、おれは長所1割、短所1割、ぼっち8割で構成されてるんだよ」

雪乃「ほとんどの構成要素はぼっちなのね…」

俺にだって長所くらいある。顔立ちが整っていることと、国語学年三位。なにより可愛い妹がいる点で圧倒的な勝ち組。異論は認めない。
もっとも全科目学年一位の美少女で、おまけに超のつく美人の姉までいるこいつに面と向かって言えることでもないが。
野球なら1回裏完全試合でコールド負け。もしこいつに可愛い妹がいたら試合すら成立しないレベル。

八幡「でも、もし俺に弟がいて、そいつが俺よりもデキがよかったらやっぱりイヤだからな。だからおまえの気持ちもわからんでもない」

雪乃「生まれたのが妹さんでよかったわね」

八幡「なにそのデキの悪い兄確定みたいな言い方」


雪乃「あら、違ったかしら?」

八幡「心配するな。例え俺に弟がいたとしても、そいつが頭角を表す前に徹底的に排除するから」

なんなら卵のうちに巣から追い落とすまである。カッコウの托卵かよ。

雪乃「…あなたの卑劣さには、さすがの私も時々恐怖を禁じえないわね」

八幡「卑劣さにかけては俺の右に出る者はいないからな」

雪乃「わたし、今あなたの右側に立っているのだけけれど?」

うん、それはそれであながち間違いでもないかも知れない。


では今日はこの辺で。ノシ

明日また同じくらいの時間帯に更新します。


みんなトンクス。

つか、おまいら小学生かっつー(w

しかし、眠い中で更新すると気をつけてはいても、やっぱり粗が出てまうね。脳内訂正お願いスマソ。

63の6行目

世間一般で言う仲良しの定義が覆されちゃうだろ。ハブとマングースくらい仲良しとか、どんなだよそれ。食物連鎖崩れちゃうだろ。
                        ↓
世間一般で言う仲良しの定義が覆されちゃうだろ。ハブとマングースくらい仲良しとか、どんなだよそれ。食物連鎖崩れてるし。

65の4行目

幸い落ちた場所が比較的低い場所だったらしく、足首を軽くひねっただけですんだららしい。
                        ↓
幸い落ちた場所が比較的低い場所だったらしく、足首を軽くひねっただけですんだらしい。

70の6行目

雪乃「わたし、今あなたの右側に立っているのだけけれど?」
            ↓
雪乃「わたし、今あなたの右側に立っているのだけれど?」


怖さを紛らわすためか、いつもより饒舌な雪ノ下とふたりで特別棟をぐるりと一周したが、とりたてておかしな事は起きない。
やはり怪談なんてただの噂に過ぎないのだろう…そんな思いが強くなってきた頃、最後の階段にさしかかった。

いち、に、さん、し…惰性になりつつあるが、それでもとりあえず段数を数えてみる。
怖いお目付け役がいる手前、ズルできねーしな。
由比ヶ浜の二の舞にならないように、左右に別れてそれぞれ手すりをつかんだまま、目をつむってゆっくり降りる。

八幡&雪乃「…じゅうに、じゅう…さん」

八幡&雪乃「…?!」

思わず目を見開き、雪ノ下と顔を見合わせる。確かに13段…だったよ…な?

雪乃「コホン。…比企谷くん。あなたの数学の成績が学年最下位なのは知っているのだけれど、まさか数もまともに数えられないなんて、よく高校受験に合格できたものね。あなたの頭のお粗末さ加減には、呆れるのを通り越して失望したわ」

八幡「んなわけねーだろ。いくら俺だって100まではちゃんと数えられる…はずだ。つか、ふつー呆れるのをとおりこしたら感心すんだろ」

雪乃「怪談にかこつけて、かよわい美少女を怖がらせようなんて見下げ果てた男ね」

八幡「この際だからおまえがかよわいかどうかは置くとしても、俺もそこまで悪趣味じゃ…」

いや、ちょっとまて、これじゃあ雪ノ下が美少女だってことを暗に認めてるようなもんじゃねぇか。
俺は何か嫌味のひとつでも言ってやろうと口を開きかけた。

丁度その時、窓から月の光が差込み、雪ノ下の細い輪郭を青く縁取る。その幻想的な美しさに、さすがの俺も言葉を失ってしまった。
雪ノ下はそんな俺を見つめながら不思議そうに小首を傾げる。
だからお前はなんで無意識にそんな可愛い顔すんだよ。不意打ちとか超ヒキョーだろ。
心臓が、実は知らないうちに止まってたんじゃねーのかと思えるくらいの勢いで高鳴りはじめる。なにこれいつの間にかエイリアンの卵でも産み付けられちゃったの?


八幡「じゃ…じゃあ、お前は何段だったんだよ」不自然に声が掠れる。

雪乃「12プラス1。もしくは14マイナス1ね」

八幡「世間一般じゃそれを13っていうんじゃねーのか?」

雪乃「見解の相違ね。残念だわ」さして残念そうでもなく雪ノ下が言い放つ。

八幡「お前とは一生わかりあえなくて結構だよ」そんな狷介な見解があってたまるか。山田くん、座布団一枚。

八幡「つかプラスマイナス1なんて誤差の範囲内だ。四捨五入したら1なんて0と同じだろ」

雪乃「1という数字の存在を否定することを平気で言うのね。しかも妙に自信たっぷりで、あたかも説得力があるかのように聞こえてくるから不思議だわ」

八幡「実際のはなし、ぼっちなんかいない者と見なされて、人数のうちに入らないだろ?だから1≒0という俺の主張は正しい。Q.E.D.証明終了だ」

雪乃「あなたの経験に裏打ちされていたのね…」

何のかんの言いながら、俺も雪ノ下も窓に背を向けたまま、決してそちらを見ようとはしなかった。




「…ちまん」



八幡「ん?なんか言ったか?」

雪乃「ひ、比企谷くん、変な声を出すのはやめなさい。訴えるわよ」

八幡「出してねぇし」つか、どこに訴えるつもりだよ。労働基準監督署か?俺じゃなくてブラック企業訴えろよ。



「は…ち…まん」



今度ははっきりと聞こえた。背後の窓からだ。恐る恐る声のする方に振り向く。

八幡「うわっ?!」

雪乃「ひっ?!」

それまでふたりが背を向けていた窓ガラスいっぱいに、いつの間にか不気味な肉の塊が貼りついていた。なにこれ超グロいんですけどっ?!

思わず身体が勝手に逃げる体勢に入る。怖いわけじゃないよ。せんりゃくてきてったい。諺にもあるし、三十六計逃げるにしかずって。

恐怖のあまり使い古されたコントのように左右の手足がそろって動いてしまいそうになる。
み、右足ってどっちだっけ?箸を持つ方か?いや、ふつう足で箸持たねーし。


雪乃「ひ、比企谷くん、ま、待って!」

振り向くと、雪ノ下がその場にしゃがみこんでいた。どうやら腰が抜けたらしい。

八幡「立てるか?!」手を伸ばして引き寄せようとする。

雪乃「え、ええ」気丈に答えてはいるが、やはり立ち上がれないでいる。

八幡「ちっ」

仕方ねぇな。俺は強引に雪ノ下の体を抱き寄せると、有無を言わさず両手で抱え上げた。
いわゆるお姫様抱っこというヤツだ。ふわりと軽い感触が両腕にかかる。ちゃんとメシ食ってんのかよ?
つか、女の子って、なんでこんなに柔らかいわけ?

八幡「しっかりつかまってろよ」

雪乃「!」/// コクコク

威勢よく抱き上げたはいいが、当然のことながら、いかに軽いとはいっても人一人分である。
5、6歩進んだだけで息が切れ、ヨロヨロしてしまう。
おまけに雪ノ下がぎゅっと首に抱きついているので余計に息が苦しい。近い近い近い近い。何このいい香り。くんかくんか。

「おわっ?!」

雪ノ下に気をとられたあまり何もないところでつまずいてしまい、体勢が崩れた。


ビクっとして雪ノ下が急に顔をあげる。いやこの体勢でそれはマズいだろ。咄嗟に顔をそらそうとしたが間に合わない。


―――― ?!


…今、ごく軽くだけど、確かにお互いの唇が触れあったような……

驚いた顔で息を飲む雪ノ下と目が合ってしまう。
何か言い訳しようと口を開くが、気が動転してしまい、パクパクと口が動くだけで声が出ない。あれ時差かなっ?って腹話術の人形かよっ?
俺がひとりいっこく堂していると、背後でガラリと窓が引き開けられる音がした。

やべぇ、中から鍵かかってんじゃねぇのかよっ?!

…って、え?窓?って、えっ?!


「ま、待てぇい、八幡っ!どこへ行くのだっ?!我だ!よもや貴様、終生の友敵(ライバル)の顔を見忘れたとでも言うのか?!」

イヤでも聴きなれた声と芝居がかったセリフに、思考と同時に足の方もピタリと止まった。
そして、ギリギリと首の音を立てるようにして、ゆっくりと肩ごしに振り反る。


八幡「き」


八幡「き、きさまかぁ~?!」


「うむ。我である」


そこには腕組みしながらドヤ顔でそっくりかえる[ピザ] ―――― 材木座義輝の姿があった。


本日はここまで。ノシ

初投稿なんですが、意外と禁止ワードが多いのね…

明日も深夜の更新になりまつ。


雪乃「…」(材木座を見る)

八幡「…」(材木座を見る)

材木座「…」(二人を見る)

雪乃「…」(八幡を見る)

八幡「…」(雪ノ下を見る)

雪乃「…」///(目を逸らす)

八幡「…」///(目を逸らす)

材木座「…」(少し飽きてきたので意味もなく周囲を見回し始める)

雪乃「…ひ、比企谷くん。と、とりあえず、お、おろしてもらってもいいかしら」///

八幡「お、おう。すまん」///

俺は雪ノ下を脚からそっと床に下ろした。
雪ノ下は俺達から顔をそむけながらいそいそと服装の乱れを直す。怒っているのだろう、夜目にも顔が赤くなっているのがわかる。


八幡「…材木座、てめぇここで何してんやがんだ」

つか、この空気どうしてくれんだよ。ことと次第によっては責任とってこの場で切腹しろ。ハラワタぶちまけて謝罪しろ。俺が介錯つとめてやるまである。

材木座「ぶほむ。いや、予定よりも早く用事が済んだのでな。遅れて合流した次第だ。いや、待たせてしまったな」

何のつもりか腹を突き出して見せる。もしかしたら胸を張ったのかもしれないが、目視では区別できない。

八幡「いや、誰もてめぇのことなんざ待ってねぇし…つか、来なくていいって言わなかったか?」

材木座「おうふ。せっかく急いで馳せ参じたというのに、酷い言われようであるな。さすがの我と言えども傷ついてしまうではないか」

ひとさし指をつきあわせてスネたってダメだ。全然かわいくねぇし。おまえメンタル弱すぎだろう。それこそトウフ並み。砕け散れよ。

材木座「ところで八幡よ、肝試し大会はもう終わってしまったのかのう?」

八幡「肝試しじゃねぇっ!!!」相変わらず人の話を全然聞いてねぇのな、こいつは。

材木座「むふう。そうであったか。それは残念であるな。しかし鍵もかけておらぬとはなんとも不用心よのう…どれ、よっこいせと」

八幡「土足で窓から入ってこようとすんじゃねぇっ!」

すぱこんっ

材木座「ぶべらっ!」

やり場のない怒りに身を任せて材木座の顔をサッシで挟み込む。良い子はマネしないでね。


材木座「い、今のは幻の秘技、窓打顔面断裂斬(ウィンドフェイスクラッシャー)!!…よもやその技の遣い手が未だに残存しておったとは…」

八 幡「う」ガッ「る」ガッ「せ」ガッ「え」ガッ「よ」ガッ

材木座「きゅう」

八幡「ん?!ありゃ…この窓、鍵がイカレてるぜ」カチャカチャ

材木座「は、八幡よ…い、今の衝撃で、我の頭の骨もイカれてしまったようであるが…」ヨロヨロ

しつけぇな。まだ生きてたのかよ。

八幡「イカレてるのは頭ん中だろ。それにそれは元からだ。心配すんな」少なくとも俺は全然気にしない。今はそれどころじゃねーし。

鍵は回るので一見ロックされているかのように見えるのだが、実際には鍵の用を為していないようだ。
なるほど確か特別棟は普段から貴重品が置いてないせいか防犯用のセンサーもないし、どうりで生徒が簡単に入り込めたはずだ。
このことは後で平塚先生に報告しておいたほうがいいだろう。


とりあえず異常なしということで、グズつく材木座には外から回らせ、窓を締めてから元の場所に戻ることにする。

八幡「やれやれ、雪ノ下、戻るぞ」

返事がない。
雪ノ下は俺の声に気がつく素振りも見せず、先ほどの窓ガラスを見つめたまま固まっている。

八幡「おい、雪ノ下?」肩に手をかける。

雪乃「ひゃうっ!?」ビクッ

八幡「おわっ?!」ドキッ

雪乃「な、何かしら?」アセアセ

八幡「何かしらじゃねぇよ。俺の方がびっくりしたぜ。どっから声出してんだよ」

雪乃「え、ええ。ごめんなさい。な、なんでもないわ」

八幡「戻るぞ」

雪乃「そ、そうね」そういいつつ、窓の方を見つめたまま動こうとしない。

…んだってんだよ。
俺は今しがた締めたばかりの窓ガラスを覗き見る。当然、材木座の姿は既にない。
ただひとり、雪ノ下の姿が暗闇にひっそり浮かんでいるだけだった。
何もねぇじゃねぇか…俺はホッと息をつく。
まぁ、ある意味で確かに幽霊なんかよりよっぽど怖いヤツが映ってはいるけどな。

八幡「もう、いいか?いくぞ」俺は無意識に手を差し出した。

おっと、お兄ちゃんモードがオートで発動してしまったようだぜ。
気がついて手をひっこめようとする前に、雪ノ下が何も言わずそっとその手をとった。

ちょっと驚いたが、自分から差し出した手を振り解くのもなんなので、そのまま彼女の手を引っ張るようにしてその場を離れる。
雪ノ下はまだ窓が気になるのか、チラチラと背後を振り返っているようだった。


さっきの件については、どちらも口にしない。あれは事故だから。ノーカンだから。ピータンだから…それアヒルの卵料理だし。

…ですよねー雪ノ下さん?

さり気なく雪ノ下の顔を伺うと、彼女は空いた方の手の指先で、そっと自分の唇に触れていた。

…うん、なるほど。よし、やっぱり見なかったことにしよう。

不意に握った手にキュっと力が込められ、足が止まる。

八幡「ん?ど、どうした?」

雪ノ下「ね、ねぇ、比企谷くん、変なことを聞くようだけど?」

八 幡「え?」ドキッ

変なことってどんなことですか?あんなことやこんなこととか?いやそれはちょっと…別にお前の唇って柔らかいのなって、そんなこと考えてないよ?

雪ノ下「…さっき窓ガラス見た時、あなたには誰かが映っているのが見えたかしら?」

八 幡「は?そりゃ…」そこまで答えて口ごもる。

雪ノ下「真面目に答えて」じっと俺の目を見つめる。

八 幡「い、いや、よく見てなかったし…」雪ノ下の真っ直ぐな視線に耐え切れず、俺は目を逸らした。

雪ノ下「そう。なら…別にいいのだけれど」言葉とは裏腹に少し残念そうな声音が尾を引く。

八 幡「…おまえは…何か見えたのか?」

雪ノ下はチラリと俺の顔を伺うと、何か言いかけたが、やがてふるふると首を振り、結局そのまま黙って俯いてしまった。
それがどのような意味の否定であるのかは、当然ながら俺には知る由もない。
ただ、その時の彼女の顔が、赤く染まって見えたのは、多分ふたりを包むこの暗闇のせいだろう。


確かにあの時、俺には雪ノ下がただひとり窓ガラスに映っている姿が見えた。
つまりそれは、本来一緒に映ってるはずの自分の姿が映っていなかった、という事になる。

そしてそれ以前に ―― 窓ガラスに映っていた雪ノ下が、なぜかいつも見慣れている制服姿だったことに今になって気がついてしまった。

そんなこと現在進行形で手を繋いでいる相手に言えるわけない。


生徒昇降口まで戻ると、平塚先生と由比ヶ浜、外回りで合流した材木座の三人が待っていた。

気づかれる前に、どちらからともなく手を離す。俺は手持ち無沙汰になった手をそれとなくポケットに突っ込んだ。

平塚「ご苦労。湿布薬を探すのに思いのほか手間取ってしまってな。そちらは異常なかったかね?」

八幡「異常なヤツならひとりいましたけどね」ジロリと材木座を睨めつける。

材木座「なぬ?妖怪変化か?どーれ、我が成敗してくれよう。臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前!カァーッ!」

八幡「てめーのことだよ、○ブ」バシッ

材木座「ほげっ?!」

顔にサッシの跡つけたまま、なにカッコつけて早九字なんて切ってんだよ。これだから中二病患者は…だいたい、九字切る順番が逆だろ。

八幡「東側の一階の窓、カギが壊れてます。そこを修理すればもう生徒は入ってこれないでしょう。それから…」

チラリと雪ノ下の方を見てから続ける。

八幡「…特に異常はありませんでした」

一瞬、俺の言葉に対して雪ノ下がピクリと反応したかに見えたが、結局、何も言おうとはしなかった。


今日はここまでです。ノシ

スミマセン、またやってしまいました。

98、雪ノ下→雪乃でお願いします。初稿はみんな苗字で書いていたので、その名残りです。

明日も同じ時間に更新する予定です。日曜日の深夜までには完結させるつもり。


くくくく…

どこからか、地を這うかのように低く不気味な笑い声が響いてきた。

平塚「…くくく。そうか、そうであったか…」

結衣「ひ、平塚先生?」

平塚「ふ、ふ、ふはははははははははははははははははは」

やべぇ、なんか取り憑いたのかっ?首がぐるぐる回ったりしちゃうの?首が回らないように額に差押えの札でも貼っちゃう?

平塚「ふははははは。やはり怪談なぞ、単なる噂に過ぎなかっという訳だなっ!街談巷説、道聴塗説。学校の怪談、恐るるに足りぬわっ!」

…えっと、もしもし?なんかセリフが悪の黒幕じみてませんか?つか、“やはり”ってことはもしかして…?

雪乃「もしかして平塚先生、ご自分でも試されたことがあるんですか?」

それいっちゃダメだろ雪ノ下!やめたげてよぉっ。

平塚「な、なにを根拠に?!」

あー、もう、わかったわ。それ、完全に身に覚えのあるヤツの言うセリフだし。


平塚「だ、誰も3回ほど試したことがあるなんて一言もいっていないんだからねっ」

だからなぜツンデレる。

結衣「うわぁ…試したんだ…3回も…」あの由比ヶ浜がドン引きしている…って、どんだけアレなんだよ。

平塚「う…いや…そのだな…」ダラダラ

なぜ目を逸らすんですか。両目が世界水泳選手権並みに泳いでますよ?

雪乃「先生、正直に答えていただけますか?」雪ノ下が冷静に突っ込む。おまえって誰にでも遠慮しねーのな。でも、今回は許す。

平塚「…実は…その…4回…だ」

八幡「って、そっちかよっ?!」

限界だった。もう色々な意味で。

八幡「つーことは、もしかして今回俺たちに調査させたのも…?」

平塚「うむ…本当にそんなことがあるのか、知りたかったのだ…。わ、私もお年頃なのでな…」モジモジ

なんのお年頃だよ?適齢期か?更年期か?終末期か?もしかして世紀末とかアルマゲドンとかラグナロクかよ?
つか、4回も試したってことは、やっぱり何も起きなかったってことですよね?それってもういい加減、詰んでるってことじゃね?

しかし、どうりで強引に奉仕部を担ぎ出そうとしたわけだよな。
今明かされる驚愕の真実。あまりに驚愕すぎて俺たちのいる空間がそのまま、えもいわれぬ脱力感に支配されてしまったくらい。

平塚「キミたちには手間をかけさせたな。先生方には明日、私から報告しておこう」ルンルン

生徒をダシにして、なに嬉しそうな顔してんですか…この先生、マジ最悪だな…。

もう、誰か本当にもらってやってあげてよぉ…これ以上俺たちに迷惑が及ばないうちに。


雪乃「ところで由比ヶ浜さん、足の方は大丈夫なの?」

結衣「うん、ちょっとヒネッただけだから。湿布も貼ってもらったし」

雪乃「そう、よかったわね」

結衣「それより、ゆきのん、な、何ともなかった?」チラリと俺を見る。

八幡「なにそれ、もしかして俺のこと疑ってるわけ?」

結衣「違うしっ!ただ…その…暗いところでずっと二人きりだったわけだし」モジモジ

八幡「やっぱ信用してねえじゃねーか。心配するな。例え核戦争で生き延びたのが俺たちふたりきりになったとしてもだな…」

材木座「むふう。そういえば我が声をかけた時、八幡はそこなる女子と手をつな…だばはっ」

雪乃「あら、材木座くん、どうしたのかしら。お腹でも痛いの?あれほど拾い食いはおやめなさいといったのに。早く帰った方がいいわよ?」

材木座「い、今誰か我の足を思い切り蹴飛ばしたような…ふぅむ、しかもその後、お姫様だっ…でばはっ」

八幡「おっと材木座、頭痛か?脳みそもないクセに。そういえば執筆の続きはいいのか?締切近いんだろ?早く帰った方がいいんじゃねぇか?」

材木座「い、今、誰か我の頭を思い切り叩いたような?」

八幡&雪ノ下「気のせいだ(よ)っ!」

材木座「ひいっ?!」


平塚「さて、調査も終えたことだし、撤収するぞ」

八幡「うす」

いろいろな意味で釈然としないものが残るが、まあ約一名喜んでいる人がいるのに、わざわさ水を挿すのも悪いからな。
しかし、これがぬか歓びでないといいのだが…うん、まぁ、がんばってね。運命って自分で切り開くもの…らしいからさ。

駐車場に向かおうとする俺の肩へ、遠慮がちに手がそっと置かれた。

結衣「…あ、あのヒッキー、悪いんだけど、車まで肩かしてもらってもいい?」///

八幡「お、おう」服の背中越しに、暖かな手の感触が伝わる。

雪乃「コホン。あの、由比ヶ浜さん、私でよかったら手を貸すわよ?」

なぜか雪ノ下が割り込んできた。

八幡「え?あ、でも…」

由比ヶ浜の顔が、俺と雪ノ下の間を行ったり来たりしている。

いつになく微妙な空気が流れる。あれ?なんか妙にいたたまれない気がしてきたのは気のせい?

気がつくと、いつの間にかふたりの視線がじーっと俺に注がれている。え、なんで俺なわけ?

たらーりと背中に冷や汗が流れる。四六のガマかよ。ヒキガヤだけにヒキガエルとか?
確かにそれ、中学時代の俺のあだ名だったけど…って俺、いくつあだ名あったんだよ。


八幡「あー…あれだ、ほら、なんなら材木座におぶってもらえば?あいつ、力だけはありそうだし」アセアセ

デ○キャラは大抵力持ちって相場がきまってるしな。あとカレー好きとか。
ちなみに○ブにとってカレーは飲み物、チキンは肉ではなくスナックという位置づけらしい。

材木座「はぽん。わ、我が?」

材木座が硬直する。じかに由比ヶ浜に触れられたら、石になるまであるかもしれない。

結衣「え?そ、それはちょっと…イヤかなーって」

材木座「ぐはっ」

雪乃「そうね、暑苦しそうだし、なんだか湿っていそうな感じですものね」

材木座「ぶほっ」

おまえら、あんまり材木座を追い詰めんなよ。血ぃ吐いてるだろ。
あ、それみろ、いじけてアスファルトにのの字なんか書き始めちゃったじゃねぇか。

八幡「仕方ねぇな。肩貸すだけだぞ」

結衣「あ、ありがと」///

八幡「トイチでいいから」

結衣「といち…って?」

雪乃「十日で一割の利子ってことよ。現行の法定利率を遥かに超えてるわね。闇金と同じくらい悪質だわ」

結衣「肩貸すだけで、利子とるんだっ?」

八幡「世の中そんなに甘くねーんだよ」特に俺に対してな。

結衣「でも、それって、どうやって払えばいいの?」


そういいながら、怪我した方の足を持ち上げてサンダルを直す。
俺の肩でバランスをとりながら前屈みになったので、ふくよかな胸の谷間が目に飛び込んできた。
やべぇ、俺も前屈みになっちゃう。

八幡「…さすがは万乳引力」ボソッ

結衣「はっ?!も、もしかして、か、カラダで払え、とかっ?!さ、サイテー!スケベっ!変態っ!マジありえないしっ!」

俺の視線に気がついた由比ヶ浜が、急いで自分の胸元を隠すようにかきよせた。

八幡「だーっ!まだ何もいってねーだろっ!」

雪乃「“まだ”ってことは、もしかして、これから言う予定があったということなのかしら?」雪ノ下が冷ややかな目で俺に詰め寄る。

なにこの理不尽な詰め将棋。主に俺の社会的信用が詰まれる寸前なんですけど。あ、もう詰んでる?

八幡「だからおまえらはなんでそうやって俺を犯罪者に仕立て上げようと…す…る…」

振り向いた俺の視線が、雪ノ下のささやかな胸元に注がれる。

八幡「…いや…すまん、雪ノ下。今のは俺が全面的に悪かった。だから、その、あんまり気にするな」

雪乃「…なぜ私に向かって謝るのかしら。というか、なぜかその謝罪からは悪意しか感じられないのだけれど、気のせい?」

八幡「そんなことはないぞ。それなりに需要があるらしいし…ごく一部で」例えば特殊な趣味の人たちとか。

雪乃「…あなたからそんな優しい目で見つめられる理由が思い当たらないのだけれど…?」

雪ノ下が非難がましい目で俺を見つめ返してくる。

八幡「…まぁ、なんだ、支払いの件に関しては、そのうちまた、てきとーにな」

結局、由比ヶ浜は俺と雪ノ下に挟まれるようにして、あたかも拿捕された宇宙人のごとく車まで連行されることになった。


本日はここまでです。ノシ

予定とおり、日曜日の深夜までには完結しそうですね。
あと、もう少しだけお付合いください。

いち乙。健康には気を付けてな
なんていうか材木材も乙・・・

まだまだ書いてもいいのよ?


>>119

トンクス。健康だけが取り柄です。

>>120

長いのはムリぽ。
でも、今書きかけのSSが完成したら、またうぷするかもでつ。
リアルタイムで皆の反応がわかるというのが掲示板の醍醐味でつね。

>>119
ミスった誤爆してた
これじゃただの木材じゃん

>>122

だいたいあってる。


家に帰り着いた頃には時刻はかなり回ってしまっていたのだが、おやじとおふくろはまだ仕事から帰っていないようだった。
もしかしたら今日も午前様かもしれない。
俺は働くつもりはないが、親にはしっかりと働いてもらいたい。んでもって一生俺を養い続けてくれないもんかな。

八幡「ただいま~」

小町「お帰り~。お疲れ様ぁ。お風呂にする?ご飯にする?それとも、こ・ま・ち?」

八幡「なんだそりゃ」ヒクッ

小町「え~、今の小町的にポイント高くなかった?」

八幡「お兄ちゃん的にはお前の頭の偏差値ポイントの方が心配だ」

小町「ふーんだ。小町はお兄ちゃんの妹なんだから、それは最初から諦めてるもん」

八幡「…まぁ、それを言われたら何も言い返せないけどな」

兄妹喧嘩って、ある意味地雷だらけだよな。下手に親の悪口なんか言ったら即座に自分に跳ね返ってくるし。まぁ当たり前の話なんだが。

小町「晩御飯、いつもより早かったからお腹空いてない?」

八幡「少し空いたかな」

小町「カップラーメンでいいなら作ってあげるよ?」

八幡「おお、頼むわ」

小町はとっとこ台所に向かい、カップラーメンにお湯を注ぐ。ちゃっかり自分の分も用意していたようだ。
俺はリビングのソファーに腰を沈め、点けたままになっていたテレビを見るともなしに見た。
色々ありすぎて、頭の整理が追いつかない。


小町「ところでお兄ちゃん、今日は雪乃さんと結衣さんが一緒だったんでしょ?」

八幡「おー…」

つけっぱなしのテレビを目に写したまま、上の空で応える。

小町「どっちかと、ふたりきりになる機会とかあったの?」

八幡「あー…」

小町「キスくらいはした?…なんちゃって~。ヘタレなお兄ちゃんがまさかそんなこと…」

八幡「…まぁな」

グワシャンッ!

八幡「うわっ、お前何やってんだよ?つか、今落としたの、もしかして俺のカップラーメンじゃね?!」

小町「お、おお兄ちゃん、キキキ、キスしたの?」

八幡「…したっつーか、なんつーか」

小町「したんだ?ほんとにしちゃったんだ?あわわわわわ」

八幡「いや、あれは事故みたいなもんだったし…」

小町「どうしよ?!こういう場合は、やっぱりお赤飯炊いたほうがいいのかな?!」

いいからまず、目の前のカップラーメン作ろーぜ?な?


小町にしつこくせがまれたので、仕方なく簡単に事情を話す。
ガラス窓に写った雪ノ下のくだりについては適当にぼかしておいた。

小町「中二さん、ナイスアシストだねっ!たまには役に立つこともあるんだ?」

八幡「まるで普段は役にたたねーような言い草だな」

小町「違うの?」

八幡「…だいたいあってる」

小町「でも、それってちょっとビミョーだね」

八幡「だろ?だから事故だ事故」

小町「そ う じ ゃ な く て」

八幡「はぁ?」

小町「雪乃さんにとっても微妙ってこと」

八幡「微妙もなにもあいつ、確か帰国子女なんだから、その…キスなんて挨拶代わりだし、それこそ日常チャメシゴトだったんじゃねーの?」

小町「ハァ…これだからゴミィちゃんは…」

八幡「ゴミィちゃん、言うな」

小町「それとこれとは別でしょ?女の子にとって男の子とのファーストキスってのは、大切なものなのっ!小町だって…」

八幡「つか、おまえのファーストキスなら既に俺がもらってるぜ?」

小町「ええええええええええええ?いつの間に?寝込みでも襲ったの?…でも、それはそれで小町的にアリかも?」

はわわわわと小町が赤い顔でうろたえている。

八幡「違ぇよっ!ちっちゃい頃、おまえ抱っこしてアイス食ってたら、いきなりおまえが俺の口の周り舐めやがったんだよ」

小町「そんなの記憶にないからノーカンだよっ」

八幡「おかげで俺はオヤジに殺されそうになったんだからな」それだけはよく覚えてる。

あれ、よく考えたらそれって俺にとってもファーストキスなんじゃね?

小町はプンプンしながら頬を赤く染めてそっぽを向いていたが、時々チラチラと俺の顔を盗み見る。
俺の妹がこんなにかわいいわけがある。
もし世界妹選手権があればぶっちぎりで優勝するまである。妹は正義。異論は認めない。


ちょっとだけ更新。続きはまた今晩。ノシ

というかよく八幡が小町にキスのこと話したな


>>129

それはこれから(ry

続き行きマッスル


小町「でも、お兄ちゃん、よく話してくれたねー」

八幡「おまえが巧みに誘導尋問するからだろ?」

我が妹ながら恐るべきやつ。将来、Cから始まるアルファベット三文字の組織に就職したらいいと思うよ?

小町「お兄ちゃんが勝手に答えたんでしょ」

実際は疲れてたんで脳みそがうまく回らなかっただけでーす。

八幡「つーか、さ、こういう場合ってどうしたらいーんだ?その…女の子的立ち場として」

小町「なるほど、それが聞きたかったんだ」

八幡「やっぱり、責任…」

小町「え?キスくらいで責任とるつもりなの?お兄ちゃん案外、古風…」

八幡「…とってもらって、もう一生養ってもらうとか?」

小町「ていっ」

八幡「痛てっ」

妹から脳天にチョップを食らわされた。なんたる屈辱。クセになりそう。

小町「そうだねー雪乃さんならたぶん、大丈夫、かな?」

八幡「え?養ってくれんの?」

小町「…そっちじゃないし」

だからその蔑むみたいな目で兄を見るのはやめなさい。おまえ、雪ノ下かよ?

八幡「なんでそー思うんだよ?」

小町「んー、女のカン?」

出た、女のカン。根拠は全くないくせに、的中率だけはやけに高いという伝説のアレだな…小町もついに使いこなすようなったのか。
お兄ちゃん、複雑な心境だよ。

八幡「普通に接してればいいのか?」

小町「お兄ちゃんの場合は、いつもキョドってるから世間一般にいう“普通に接する”こと自体がムリだと思うよ?」

八幡「おまえ、兄をなんだと思ってるんだ?」

小町「と に か く 、いつも通り自然でいいんだよ」

八幡「それって、なかったことにする…ということか?」

小町「ちょっとちがうんだけど…もうそれでいいや…」

小町はそういいながら、寄ってきたカマクラを抱き上げて撫ではじめた。
投げっぱなしジャーマンスープレックスみたいな妹だな。




「フラグは立ってるみたいだけど、雪乃さんルートを攻略するには、あせらず、ゆっくりと時間をかけないとね…。ね、カマクラ?」ボソッ

「ニャア?」



翌日の放課後、再び奉仕部の部室に訪れた篠塚さんを前に、昨晩の調査について結果を報告する。

平塚先生は生徒を勝手に利用したカドで教頭先生と学年主任にコンボでセッキョーをくらっている最中らしい。
かわいそうだけど仕方ないよね。うん。自業自得だし。

雪乃「とりあえず、私達で試したのだけれど…その…特にこれといって異常はなかったわ」

歯切が悪いのは材木座のお陰で醜態をさらしてしまったせいだろう。
気のせいかうっすらと目の下にクマがあるようにも見える。

俺は特に口を挟むことはせず、昨日のアレについては忘れることにした。覚えることは苦手だが忘れることは超得意。
特に授業で習ったこととか、テストの成績とか、借りたお金とか、締切とか、納期とか。最後のふたつなんなんだよ。

篠塚「そうですか…やっぱりただの噂だったんですね」

期待通りの報告を聴いても今ひとつ浮かない顔をしているのは、この事実をもってしても彼女の持つ悩みが根本的に解決されるわけではないからだろう。

篠塚さんの想い人に雪ノ下のことを諦めさせ、かつ自分に振り向かせるのであれば、もっと他に何か別の方法を講じる必要がある。
彼女にその意思さえあれば、手助けすること自体決してやぶさかではないのだが、残念ながらそれが雪ノ下の掲げる奉仕部の趣旨に沿うとは思えない。

まぁ、俺達は俺達なりに役目を果たしたわけだし、ここから先は篠塚さん本人の…

結衣「…あの、余計なお世話かもしれないけど」

由比ヶ浜が遠慮がちに口を挟む。

結衣「もし、篠塚さんが友達のことを…彼のことを好きだったら、自分からはっきりそのことを伝えた方がいいと思うよ」

篠塚&雪乃「え?」

…って、雪ノ下のやつ、やっぱり気がついてなかったんだな…。


雪ノ下がもの問いたげな視線を俺に投げかけてきたので、小さく首を振って見せる。すると少し間をおいてからコクコクと頷き返してきた。
俺を信用したわけではないのだろうが、とりあえずこの場は由比ヶ浜に任せて静観することにしたようだ。

結衣「時には待つことも大切だと思うけど、待ってるだけじゃ何も解決しない…かも…」

そう言ってチラリと俺の方を見る。なにそれ、俺にフォローしろってことか?

八幡「…そうだな。自分が待たれている自覚がないヤツをいくら待ってても意味がないからな」

小手先だけの技を弄すのではなく、やはり正攻法でいくのがよい時もあるだろう。いや、よく知らないけど。

雪ノ下が呆れたように首を振る。え?俺、何か間違ったこと言った?そこは、いいね!ボタンを押すところでしょ?

結衣「そっか。そだよね」

由比ヶ浜は由比ヶ浜で、何事か納得したようにフムフムと頷いた。いや、別にお前に言ったわけじゃないんだけど?

なんなのおまえら?俺が知らないところで勝手に俺とコミュニケーション成立させないでくれる?

しかし、篠塚さんも思うところがあったのだろう、神妙な顔で俯いていたが、やがて、

篠塚「…そうですよね。私、頑張ってみます」ポショリと小さく呟いた。

結衣「うん、応援してるから、頑張ってね」

基本、由比ヶ浜は他人の事でも親身になって考えることができるいいヤツなんだよな。
だから俺みたいなヤツにだって普通に接してくれてるし。

しかし、誰にでも優しいってのは、ある意味それだけで罪だ。
喪男なら「あれ、もしかしてこいつ、俺に気があるんじゃね?」って勘違いして、告白して、マジで引かれて、挙句の果てにその事をみんなに言いふらされて、またひとつトラウマを生んでしまうまである。なにそれ誰のこと?

だから俺は絶対に勘違いしたりしない。石橋を叩いてなお渡らないのが俺の信条なのだから。

結衣「うまくいくといいね」

八幡「お、おう」

そう、例え今みたいに、俺に対して太陽のように輝く笑顔が向けられたとしても。


結衣「はぁ~運命の人かぁ~」

篠塚さんが立ち去った後、由比ヶ浜が盛大なため息をつきながらひとりごちた。

八幡「…運命の人っつっても、必ずしも将来結ばれる相手とは限らねーんじゃないのか」

雪乃「そうね。自分が殺しかけた相手だって、ある意味では運命の人になるわけだし…」

八幡「おまえそのデフォで物騒な思考なんとかならなんわけ?」

ってことは、俺がいつも殺されかけている相手も運命の人ってことだよな。さすがにその発想はなかったわ。何この人、超怖えよ。

雪乃「だって、それはあなたが…」

八幡「はぁ?俺がなんだよ?」

雪乃「…何でもないわ」

おまえが何か言いかけて途中でやめるなんて、絶対何でもないわけがないだろ。効果的すぎて却って怖いんですけど?生殺しですか?半殺しですか?それ、どんなプレイだよ。

結衣「そうかな~。絶ぇっ対、将来結ばれる相手だと思うんだけど…」

八幡「あ、なんでそう決め付けるわけ?」

結衣「へ?だって、そのほうがずっとロマンチックじゃない。ねっ?」ニコッ

八幡&雪乃「…なっ?!」///

結衣「ほわ?どうしたのふたりとも…なんか顔が赤いよ?」

八幡「…おまえが恥ずかしい事を平気で口にするからだっつーの」///

結衣「なにそれぇ?!超ムカつくー!ね、ゆきのん、ヒッキーってば、マジさいてーだよね?」

雪乃「え?え、ええ、そうね。さすがに今のはちょっと……恥ずかしいというか…」///

結衣「ゆきのんまでっ?!」


まともに雪ノ下の顔が見れず、つい目を背けてしまったので彼女が今どんな顔をしているのか俺からは見えないし、想像もつかない。

だがもし万が一、こんなヤツと結ばれるようなことになりでもしたら、働かずに養われるという俺の将来設計が根本から狂ってしまうことになるのは間違いないだろう。

人生の基本設計の段階からして、既にアリとキリギリスくらい違う。

ちなみに勤勉の代名詞のようなハタラキアリだが、集団の中でも3割は何もしないでブラブラしているという。
キリギリスを諦めてアリになるとしたら、俺は敢えてその働かないハタラキアリを目指す。それが八幡流。

だから例え昨晩の出来事が何を意味しているのであれ、彼女が ―― 雪ノ下雪乃が俺にとって、運命の人だなんてのは絶対にゴメンである。

―― ただ、ほんの一瞬だけ、彼女の身体を抱き上げた時、こいつには純白のウェディングドレスがよく似合いそうだな…などと何の脈絡もないことを考えてしまったのは、やはり何かの気の迷いだったに違いない。


今日はここまで。明日でラストですノシ



いや別に今日投下してくれても全く構わないんだからねっ!!


>>138

だからなぜそこでツンデレる?w


後日談だ。

結局、鍵の壊れた窓は、防犯上の理由でサッシごと交換された。
これで少なくとも夜中に学校に忍び込む生徒はいなくなるだろう。
試すバカがいなくなれば噂なんてすぐに忘れ去られ、じきに別のものにとって変わられる。そんなもんだ。

ちなみにこの学校には総武高七不思議と言われる怪談話があるらしい。

一つ、何度数えても生徒の数が合わないクラス

二つ、近づくと寒気がする美少女

三つ、なぜか嫁にいけない女教師

四つ、アニメの話をしているといつの間にか忍び寄る暑苦しい影

五つ、女子生徒よりもかわいい男子生徒

六つ、毎回急病人がでる調理実習

七つ、六つしかない七不思議

…って、ぜんぜん怪談じゃねぇし。つか、一極に集中してない?例えば俺のまわりとか。


それからしばらく経ったある日の放課後、俺は部室に向かう途中で、珍しく雪ノ下にばったりと出くわしてしまった。

雪乃「比企谷くん、まだ生きてたの?意外にしぶといのね」

八幡「…出会い頭に俺の生存権を否定すんなよ。それもう人権侵害だろ」

雪乃「あら、あなたのような人間に基本的人権が認められているとでも思っているのかしら」

八幡「人権ってのは、あまねく全ての国民に対して憲法で保障されてんだよっ!」

雪乃「知らなかったの?昨日、国会で改正されて、条文に“但し、比企谷八幡を除く”って一文が追加されたのよ」

八幡「そんなわけあるかっ。なんで俺だけピンポイントなんだよっ?!」

だいたいなんだよそのイケメンみたいな特別扱い。全然うれしくねえし。流行ったらどうすんだっつーの。

俺がいつもの如く謂れのない罵倒を受けているところへ、女生徒がひとり遠慮がちに歩み寄ってきた。


「あの、この間は、どうもありがとうございました」

ふと顔を見ると、先日奉仕部に相談にきたB組の篠塚さんである。

ちなみにすぐに彼女だと分かったのも、俺にとって顔と名前が一致する女子の数が少ないからである。多分、俺の顔と名前が一致するであろう女子の数はもっと少ない。ヤバいくらい激レア即ゲット。レアモンスター並のエンカウント率。経験値高そうだな。

八幡「いや、特に俺は何もしてないことになってるみたいだし…。礼なら雪ノ下と由比ヶ浜に言ってくれ」

結局怪談の真偽については、学年でも5本の指に入るであろう美少女ふたりが試してみたが何も起きなかった、ということで今や否定的な意見が主流となっている。
もっとも由比ヶ浜については怪我して途中リタイアだし、雪ノ下に関しては何しろ性格がアレだから別に何も起きなくても不思議はないのだが。

俺?俺にいたっては、その場にいたことすらなかったことにされている。それってある意味怪談じゃね?つか、もう俺の存在感のなさは伝説の域。あいあむれじぇんど。

篠塚「お陰様で、あの…彼と…その…つきあうことになりました」

篠塚さんの向けた視線の先に、俺たちから少し距離を置いて立つ男子生徒の姿があった。遠目だが、なかなかのイケメンであることがわかる。

イケメンでリア充か…いや、イケメンだからこそのリア充か…なんていうか、こう…うまく言えないんだけど…爆発しねぇかな。つか、むしろ砕け散ればいいのに。

男子生徒は俺と目が合うと少し複雑そうな表情で、軽く頭を下げた。多分挨拶のつもりなのだろう。俺もぎこちなく会釈を返す。

雪乃「そう。良かったわね。お幸せに」

自分が振った男の彼女になった女子に対して、なんの屈託もなくこんなセリフの言えるこいつは、やはりある意味で天然なのだろう。
いや、どちらかというと天然危険物。半径100メートル以内から避難した方がいいレベル。誰か爆弾処理班呼べよ。


篠塚「はい、ありがとうございます。それからあの…」

雪乃「なにかしら?」

篠塚「あの…おふたりも、お幸せに」

八幡&雪乃「なっ?!」///

雪乃「だから」

八幡「違うっての」

俺たちの言葉を笑顔で聞き流すかのように、篠塚さんはペコリと頭を下げて小走りに彼氏の元へと戻る。
仲良さそうに手をつないで歩み去るふたりの後ろ姿は、ひねてすさんでいるであろう俺の目から見ても十分微笑ましい。
それは雪ノ下も同じだったようで、艶々した形のいい唇が微かに綻んでいた。

…やべ、つい、あの晩のこと思い出しちまったじゃねぇか。生涯封印しようと思ってたのに。


八幡「…別に他人に心配されんでも、俺はいつだって一人で十分ハッピーだし…」誤魔化すようにひとりごちる。

雪乃「比企谷くん、あなたの場合それは“幸せ”じゃなくて、“おめでたい”というのよ」

雪ノ下がやれやれといった風に左右に首を振った。なにおまえ扇風機かなんかなの?どうりで風当たりが強いと思ったぜ。俺に対して。

しかし、あの晩の事を気にしているのが俺だけだと思うと、やっぱりなんとなく癪にさわる。

八幡「あー…、ところで雪ノ下」

雪乃「え?」

八幡「今日は繋がなくてもいいのかよ?」そう言って片手を差し出してみせる。

雪乃「!」///

一瞬にして顔が真っ赤に染まる。次の瞬間には俺が朱に染まりそうですが。返り討ちで。

雪乃「アレは…その…アレだから…」

…なにキョドってんだよ、らしくねーな。お前は他人に話しかけられた時の俺かっつーの。ふふん。でもこれで一矢報いてやったな。八幡大勝利!

これ以上の挑発は過剰な報復行動を招く恐れがあるのでやめておく。人生、何事も引き際が肝心なのだ。攻撃に際してもラン・アンド・アウェイが俺の信条。いやそれ逃げてるだけだろ。


八幡「さ、行くぞ。今頃、由比ヶ浜が部室で待ってるはずだからな」

雪乃「…」

返事がないので振り向くと、雪ノ下はなぜか中途半端な姿勢のまま、俺に向けて片手を差し出して立っているところだった。

八幡「どうかしたのか?」

雪乃「え?」言われて初めて気がついたかのように、まじまじと自分の手を見つめている。いや確認するまでもなくそれ間違いなくお前の手だから。

八幡「もしかして…」ゴクリ


八幡「………後ろから殴るつもりだったのか?」

周りに誰もいないからって、不意打ちとかマジ怖えよコイツ。マスター・アサシンかよ。おまえ、なにタイルなの?

雪乃「…な、なんでもないわ」///

雪ノ下はあわてて手をひっこめると、顔を真っ赤にしながらさっさと俺を追い越して先に行ってしまう。

追い抜き様に「ばかっ」と、小声で言われた気がするが、もしかしてそれは俺のことなのだろうか?だとしたら雪ノ下にしては随分とお優しい罵倒である。

激しい罵詈雑言に慣れてしまったせいか、ちょっと物足りない感じがしてしまうあたり、それはそれで問題があるのかもしれないが。いや、やっぱり普通に考えておかしいだろ、それ。

丁度その時、校内に迷い込んだセミが一匹、やかましく鳴きはじめた。

―― やれやれ、今年の夏も暑い日が続きそうだな。

俺は再度スマホを取り出して念入りに夏休みの確認をしながら、ゆっくりと雪ノ下の後を追いかけるように部室へ向かう。

俺の青春ラブコメ…特にまちがってないよな?



               やはり俺の青春ラブコメはまちがっているSS 『なぜか学校の階段には怪談話がつきまとう』 了


以上です。ノシ

お付合いありがとうございました。
また、遠からず投稿したいと思いますので、その際はよろしくお願いします。


うんっ、1わかった!




…おまいらが血も涙もない人間だということが。

でも、確かにスレがもったいないね。すぐにはムリだけど頑張ってみるわ。ノシ


歌の途中スミマセンが、次回作、8月中にうぷする…予定です。

タイトルは、『いかにせば比企谷八幡は雪ノ下陽乃の彼氏(偽)足り得るか』

6巻と7巻の間の話です。八陽とみせかけてその実、八雪。

八雪は俺の中で正義。異論は認めない。

つーことで、今暫くお待ちください。ノシ


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俺ガイルSS『いかにせば比企谷八幡は雪ノ下陽乃の彼氏(偽)足り得るか』

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ガガガ文庫 渡航 著 やはり俺の青春ラブコメはまちがっている SS 

6巻と7巻の間の話です。

予定よりも長くなってしまいました。中だるみがあったらご勘弁。


結衣「ヒッキー、今日は一段と目が腐ってるよ!?どうしちゃったの?!」

部室に入ってくるなり由比ヶ浜結衣があいさつもそこそこに顔を引き攣らせた。

八幡「…ああ、気分転換に昔のゲームソフト引っ張り出したら、ついついハマっちまってな。気がついたら徹夜だ」

俺は自分でもわかるほどにどろりと濁った目を由比ヶ浜に向ける。
お陰で授業の内容はほとんど頭に入っていない。まぁ、それは今日に限ったことではないのだが。

ちなみに今日の由比ヶ浜の髪型は、いつもと同じピンクかかった茶髪をお団子にまとめてはいるものの、よく見ると団子の位置が微妙に違うような気がする。
もしかして俺の知らない公転周期があって、少しづつ移動しているのかもしれない。なにそれ超恐いんですけど。

結衣「気分転換って、テスト前でもないのに勉強してたの?」

八幡「いや、漫画読んでたら飽きたんで気分転換」

結衣「それ気分転換じゃないし…」

八幡「つか、おまえ一応クラスメートなんだから、放課後になる前に気がつくだろ普通」

結衣「だって休み時間の間ずーっと一人で机に突っ伏したままだったじゃない?話しかけるタイミングがないっていうか…」モジモジ

八幡「…よく見てんなー。“はっ、もしかして、あなたストーカー?社会的に抹殺されたいのかしら?”」

結衣「あ、似てるー…って、本人いるしっ?!」

振り返ると、俺の反対側、窓際の席に座る黒髪の美少女 ―― 雪ノ下雪乃が、いつの間にか俺に対して氷のような視線を向けていた。
思わず部屋の体感温度が2度ほど下がり、ついでに俺の寿命も3年ほど縮む。ついでなのかよ。


雪乃「あら、そうだったの。あなたの目が腐っているはいつものことだから全然気がつかなかったわ。飼い主として失格ね」

八幡「なにおまえいつから俺の飼い主になったんだよ?」もしかしておまえの正体、人気覆面作家だったりするわけ?ハサミとか振り回しちゃうの?

雪乃「しつけのなっていない犬を調教するのは飼い主の務めでしょ?ね、ヒキガヤ犬?」ニコッ

ムチとかが妙に似合いそうな超いい笑顔ですね。でも俺にそんな趣味ないですから。全力で遠慮するから。
それにそれ既にしつけじゃなくて虐待ですよね。だれか動物愛護団体呼べよ。あるいは五代将軍とか。

だがしかし、俺もただ黙って聞いているわけではない。目には目を、歯には歯を、皮肉には皮肉で返すのが俺の流儀。例え最後は一方的に罵倒されて終わるにしても、だ。そして俺には究極の最終兵器がある。例えばそう、土下座だ。


八幡「だったら雪ノ下、おまえ俺のこと養ってくれるわけ?」


―――― ふっ、どうだ?これなら何も言い返せまい?まがりなりにも俺の飼い主を名乗るのなら、当然それくらい…



雪ノ下&結衣「…え?」



…って、え?なに、その超ビミョーな反応。


結衣「…そ、それって、ゆきのんがヒッキーを養うってこと…?」

雪乃「…と、突然そんなこと言われても、わ、私としても、こ、困るというか…」///



八幡「…は?おまえらいったい、なに言って…」


平塚「うぃーす」ガラッ

オヤジみたいな声をあげながら、奉仕部の顧問、平塚静先生が部室の戸を開けて入ってきた。お陰で微妙な空気も雲散霧消する。

雪乃「先生、部室に入る時はノックを…」

平塚「ん?あぁ、そうかね?まぁ細かい事は気にするな」

相変わらずラフでフランクでアバウトでワイルドな対応ですね。俺が女だったらマジでホレちゃいそう。この先生、いっそ性転換でもしたらすぐ結婚できるんじゃね?

結衣「ひ、平塚先生も目の下に隈ができてますよ?」

平塚「“も”?…うむ、教師仲間のつきあいというやつでな。徹夜マージャンだ」かったるそうに片手で口を覆いながら生欠伸をする。おいもう放課後だぜ。まぁ人のこと言えないけどな。


結衣「平塚先生って、マージャンもやるんですか?」

平塚「うむ。これでも“哭きの静”といえばそこそこ名の知れた存在でな」平塚先生が自慢げに胸を張る。

いやいやいやいや確かにその胸は自慢するだけのモノはあると思いますけど、何か違うんじゃね?それって教師以前に女性としてどうよ?

八幡「…そんなことばっかしてるからますます婚期が遅れるんじゃないですか?」

平塚「ぐっ…そ、そういう比企谷も今日はいつに増して目の腐り方に磨きがかかってるようだな。そのうち女の子ではなくハエがたかるようになるぞ?」

「ははは…」「ふふふ…」乾いた笑いの応酬が部室にむなしく響きわたる。なにこれ超大人の会話。


雪乃「規則正しい生活を送らないとそのうち身体壊すわよ」雪ノ下が文庫本に目を落としたまま、ことさら素っ気なく呟いた。

平塚「ほう、雪ノ下が自分から他人の心配をするなんて珍しいな」

雪乃「誰もその男のことなんて心配してません」

平塚「そうかね。私も比企谷のことだなんて一言も言ってないのだがな」

雪乃「!」///

だから真っ赤な顔で俺睨んでどうすんだよ。俺だってどんな顔したらいいか困っちゃうだろ。とりあえず、笑えばいいと思うよ?

八幡「…まぁ俺のことはともかく、確かにお前は長生きしそうだよな」

人類が衰退した後でも妖精さんたちと一緒に普通に暮らしていそう。なにそれどこの調停官なの?

雪乃「比企谷くん、それはどういう意味なのかしら?」

八幡「…いや、なんでもない」

余計なこと言うと、ただでさえ摩耗気味な俺の寿命が更に短くなりそうだからな。既に風前の灯だけど。だれか命の蝋燭足してくれよ。


平塚「あー、実は今日、奉仕部に客が来る予定でな…」

結衣「ほわわ?お客様?…依頼人じゃなくて、ですか?」

平塚「まぁ、そうだ」

雪乃「“お客様”というからには、やはり外部の方なんですか?」

平塚「うむ。部外者は困ると言ったのだが、どうやってか総務にねじ込んだらしくてな」

平塚先生にしては、いつになく歯切れが悪い。もしかして苦手な人物なのだろうか。
この人が苦手とするなんて、石頭の教頭とねちっこい学年主任以外には、ダマグモキャノンとかアカヘビガラスあたりしか思い浮かばねぇぞ?

八幡「相当、影響力のある人なんですね」

平塚「まぁ、そうだな…キミたちもよく知っている人物なのだが…」

結衣「私たちも知ってる人…なんですか?」

八幡「部外者で、先生が苦手で、影響力があって、しかも俺たちの知っている人物…?そうか、わかったぞ!犯人は執事だ!」

雪乃「…あなたの頭はいつも平和でいいわね」

八幡「この部活は必要以上に殺伐としてるけどな」今すぐ殺人事件が起きないのが不思議なくらい。

もちろん犯人は雪ノ下で犠牲者が俺。犠牲者が犯人を言い当てるなんて斬新だな。ガリレオもびっくりだぜ。生きてるうちにダイイングメッツセージ残しちゃう?

そう言ってる傍から、部室の扉がノックされた。


平塚「どうやら来たようだな…入っていいぞ」

「失礼しまーす」

平塚先生の掛けた声とともに、戸がゆっくり引き開けられる。

「あ、いたいた。比企谷くん、やっはろー」

耳に心地よい明るく柔らかな声。男が夢見る理想的なボディライン。女神のように美しく整った顔だち。

そこには、強化外骨格のような鉄壁の外面を纏う美女にして奉仕部部長である雪ノ下雪乃の姉 ―― 雪ノ下陽乃が完璧な笑顔を浮かべて立っていた。


とりあえず、今日はここまで。ノシ

投稿する時間帯は未定ですが、続きは明日、また。


八幡「は、陽乃さん?!」

目の前に現れた人物のあまりの意外さに、思わずその名前を口にすると、雪ノ下と由比ヶ浜が揃ってムッとした顔を俺に向ける。

んだよ、俺がなんかしたのかよ?もしかして名前言っちゃいけなかったの?ヴォルデモードなの?

雪乃「…なぜあなたが姉のことを気安く名前で呼んでいたりしているのかしら?」

八幡「あ?そりゃ、おまえと同じ名字なんだし、ふたりとも名字で呼んだりしたら、それこそ紛らわしいだろ?」

雪乃「それはそうなのだけれど…」雪ノ下が釈然としない顔で呟く。

陽乃「あら、だったらその場合、より親しい方を名前で呼ぶものじゃないかしら。比企谷くん、雪乃ちゃんのことも名前で呼んであげたら?きっと喜ぶわよ」

雪乃「え?」///

八幡「は?こいつを?名前で?俺が?なんで?」イミフだろそれ。むしろイナフにイミフである。

つか、恐くて名前でなんかで呼べるわけねーだろ。緊張して、例え三文字でも絶対に噛む自信がある。間違いなく間違えて噛む。いや何いってんの俺?
それどころか気恥ずかしさのあまり悶絶して、呼んだ途端に自分の舌を噛み切るまであるかもしれない。
なんで女の子の名前呼んだだけで敵に捕まった忍者みたいな最期迎えなきゃならないんだよ。


わけもわからず当惑している俺の袖が、ちょいちょいと引かれた。

八幡「あ?なんだよ?」振り向くと由比ヶ浜が上目遣いに俺を見ている。

結衣「ひ、ヒッキー、わ、私のことも名前で呼んでいい…から…ね?」/// モジモジ

八幡「いや、おまえの場合、そもそもひとりしかいねーわけだから、それこそ名前で呼ぶ必然性皆無だろ?」

結衣「むぅ…」

なに膨れてんだよ?お前、フグなの?もしかして由比ヶ浜じゃなくて越ヶ浜だったの?

陽乃「あー、そうだっ!ならいっそのこと、比企谷くんが私のことを“義姉さん”って呼ぶのはどうかしら?」

雪乃&八幡「!」///

八幡「…なぜかその言葉には不穏なアクセントが含まれている気がするんですけど?」ヒクッ

どうかな、じゃねぇだろ。どさくさにまぎれて何言ってんだよこのひとは。

はっ?!もしかして実は妹の小町狙いなの?
俺に自分のことを姉と呼ばせることで、ゆくゆくは小町を自分の妹にするつもりだとしたら、なんという深謀遠慮な目論見。諸葛亮孔明もびっくりの策士さんだぜ。

だが“小町のお兄ちゃん”という称号は世界でただひとり、俺だけのものだ。
例え相手が姉といえど、小町に“お兄ちゃん”と呼ばれる権利は絶対に譲るつもりはない…まぁ、さすがに譲られても困るかもしれないが。姉なんだし。


雪乃「こ、コホン。…ところで今日はいったい何の用なのかしら、姉さん?」///

いつものことながら雪ノ下の声は、実の姉に向けるにしてはあまりにもよそよそしく、過剰なトゲが含まれているような気がする。
おまえトゲトゲしすぎだろ、クリのイガかよ?
もしこれでツンデレだとしたら、あまりにもツンツンしすぎて、デレ成分いったいどこやったんだよって感じだ。

陽乃「あら、雪乃ちゃん、ごあいさつね。お姉ちゃんがかわいい妹の様子を見に来たって別に不思議はないでしょ?」

八幡「うんうん、その気持ちわかるわー。俺だって妹の小町のことが心配で心配で、できれば24時間監視したいくらいだからな」

結衣「うわぁ…。でた、シスコン…」なぜか由比ヶ浜がドン引きしている。

八幡「あぁ?妹のいないお前に妹を持つ兄の気持ちの何がわかるっつーんだよ?」

結衣「ヒッキーのシスコンが犯罪レベルだってことくらいわかるしっ!」

ちっ、これだから一人っ子は困るんだよな、常識がなくて。
こんなのはまだグレイ・ゾーンだ。

ちなみにどこぞの電〇文庫の兄みたく、妹に告白して、あまつさえ公開プロポーズまでしちゃうのは明らかにレッド・ゾーン。
更にそこから先はトワイライト・ゾーンに突入しちゃうので素人の兄には注意が必要。コミケで売ってる薄くてアレな本とかな。


雪乃「姉さんが私の心配?ありえないわね。今度は何を企んでいるのかしら?」雪ノ下がピシリと言い返す。

陽乃「比企谷くーん、今の聞いたー?雪乃ちゃんたら酷いんだよー。くすんくすん」

八幡「はは…」もちろん俺の口からは砂漠のように乾いた笑いしか出ない。むしろ笑いが出ただけでも誉めて欲しいくらい。笑ゥはぁちぃまん。どーん!!!!

まぁ、この人の場合、日頃の言動からしてアレだから、妹のこうした態度も致し方ないと思うのだが。
これでも文化祭の一件依頼、いもうとのんの態度は軟化している方だ。これで柔らかくなったくらいなんだから、もとはどんだけバリバリに硬質だったんだよって感じ。
いいから誰かもうこいつのためにシカクいタイドをマルくする問題集とか作ってやれよ。


平塚「まぁ待て、雪ノ下。陽乃もこうしてわざわざ学校まで来たんだ。話ぐらい聞いてやったらどうだ?」平塚先生がとりなすように割って入る。

雪乃「せ、先生がそうおっしゃるなら…」雪ノ下が不承不承という感じで頷いた。

陽乃「うふっ、静ちゃん、ありがと」

平塚「その名前で呼ぶのはやめろといったはずだ」///

なぜか照れる平塚先生。でもちょっとかわいいかも。しずかわいい。俺も呼んじゃおっかな。瞬殺されそうですけど。

陽乃「でも今日はね、実は雪乃ちゃんじゃなくて、比企谷くんの方に用というか、お願いがあってきたの」

八幡&雪乃&結衣「えっ?!」

八幡「…俺にお願い?貴女が?」なんかイヤな予感がする。つか、むしろイヤな予感しかしない。

アレだ、俺の野生の勘が全力で赤信号を点している。
例え飼いならされた社畜になっても、持って生まれた本能と野生の勘をバカにしてはいけない。
俺の場合少なくともテストの時の鉛筆ころがしと同じ的中率を誇る。いやなんか微妙だなそれ。


八幡「…か、金ならないですよ?なんなら飛び跳ねてみせましょうか?」

陽乃「比企谷くん、私のこと、何か誤解してない?」

まぁ、確かに理解しているとは言えないが。つか、できたらしたくない。女性不信とかなりそうだし。いやそれ以前に俺、人間不信だけど。

雪乃「比企谷くんからお金を借りようなんて考える人はいないから安心なさい。あなたの懐事情なんて、火を見るより明らかですもの」雪ノ下がため息まじりにつぶやく。

八幡「なんでお前が俺のサイフの中身まで把握してるんだよっ?!」火を見るよりって、実は既に火の車なんですけどね。残念でした。俺が。

雪乃「あら、だっていつも二言目にはカネがない、カネがないって言ってるでしょ?」

八幡「え?まじ?俺、そんなこと言ってた?」

雪乃「あなたの場合、わざわざ口にしなくても、ちゃんと顔に書いてあるわよ?」

八幡「俺の顔、ツイッターじゃねぃし」

雪乃「当然よ。だってあなたの顔はフォローのしようがないもの」

八幡「うまいこと言ったつもりかっ!?」

雪乃「いい加減、お小遣いの管理くらいちゃんとしておかないと、将来借金で身を持ち崩すことになるわよ。
   あなたのような計画性のない男にお金を貸してくれるような奇特な人がいれば、の話だけれど」

うん、八幡知ってる。ご利用は計画的にって、消費者金融も明るい家族も言ってるし。


陽乃「あら、だったら将来は雪乃ちゃんが面倒みてあげればいいんじゃないの?金銭面に限らず色々と、ね?」

雪乃「なっ?」///

八幡「イヤだ…それだけはイヤすぐる」

きっと財形貯蓄だの生命保険だので俺の手元にはスズメの涙程度しか残らない。
昼飯代だって1コインで、それでいて自分は陰でママ友と豪勢なランチとかしてるに違いない。なにそれ具体的過ぎていったいどこの誰の話だよ。

雪乃「この男に貸すようなお金なんて一円たりとてもないわ。それならドブに捨てる方がまだましね」

八幡「いやドブに捨てるくらいなら恵まれない人たちに寄付してやれよ。そうだな、例えば俺とか。俺なんか超恵まれてないぞ、特に友達に」

雪乃「あなたの場合、恵まれている、いない以前に、最初から最期まで友達と呼べる人がいないだけでしょ?」

結衣「…最後までいないんだ」

八幡「つか、おまえなんかにカネ借りたりなんかしたら、そこいらの闇金よりも相当エゲツなく取り立てしそうだよな」

地の果てまでも追ってきたうえに、払えないなら内臓売れとか言い出しかねない。
肺や腎臓ならふたつあるからいいよね、とか。ぜんぜんいくねえし。借金返済のために臓器売買で俺の身体から臓器がバイバイしちゃいそうなんですけど。

雪乃「あなたこそ、借りた恩を十倍にして返してくれそうよね………仇(あだ)で」

なにそれどこのバブル組だよ。


陽乃「おやおや、相変わらず仲がいいんだねー。お姉ちゃんが許すから、もう、さっさと付き合っちゃえば?」

結衣「えっ?!」

雪乃「だ、だから」///

八幡「違うっつーの」///

なんでそうなるんだよ。目が腐ってんじゃねえの?あ、それは俺でした。

八幡「あー…、それで、お金のことじゃないとしたら、俺に頼みっていったいなんなんですかね?」

あまり心臓によさそうでもないが、一応聞いてみる。
だいたい、この人が俺に頼み事なんて見当もつかない。いもうとのんじゃないけど、やはり勘繰りたくもなってしまうのは仕方ないだろう。

陽乃「あ、そうそう!」思い出したかのように胸の前でポンと手を打つ。

自分の魅力を充分に理解してるだけに、可愛らしい仕草が逆にあざとい感じもするのだが、よく似合っているから困る。いや別に俺が困る必要はないのだが。

陽乃「比企谷くん、突然で申し訳ないんだけど、私の彼氏になってくれないかなぁ?」


今日はここまでです。ノシ

続きはまた明日の深夜にでも。

この展開よく見るな


>>218

て、テンプレは王道だから(震え声)


雪乃「えっ?!」

結衣「へっ?!」

八幡「はぁっ?!」

笑顔のまま、またサラリととんでもない事を言いだしやがったな。



陽乃「…といっても1日だけでいいんだけど」



八幡「ど…」

雪乃「どういうことなのかしら?」

いや、それ俺のセリフなんだけど。

八幡「と…」

雪乃「当然理由を説明してくれるのでしょうね?」

だからそれ俺のセリフだろ?なんでお前が先に言っちゃうんだよ?勝手にちはやふるなよ。かるたクィーンなの?

陽乃「あら、なぜそんなことまで雪乃ちゃんに説明する必要があるのかしら。もしかして…妬いてるのかな?」

雪乃「ば、バカバカしい。ここは奉仕部の部室で、比企谷くんは奉仕部の部員なのだから、奉仕部の部長である私が知る権利は充分にあると思うのだけれど」///

まあ、バカバカしいのは俺も同意見なんだが、奉仕部奉仕部ってやけに奉仕部を強調してるけど、これって奉仕部の活動と関係あんのかよ。

チラリと平塚先生を見る…ハイ、我関せずですねー、わかってましたけど。勝手に俺が持参したマンガ読んでんじゃねーよ。


陽乃「仮にもしそうだとしたら、私が比企谷くんに個人的にお願いする分には、奉仕部にも雪乃ちゃんにも関係ないってことになるのかしら?」

雪乃「っ!」///

正論…だよな。しかし、なんでまたこの人は敢えて自分の妹を挑発するような言い方をするのかね。
文化祭の一件で少しは歩み寄りでも見せたかと思ったんだけど、違うの?もしかして歩み寄りすぎてそのまま擦れ違っちゃったとか?

目から火花でも散りそうな勢いでにらみ合う。あらゆる意味で対極ともいえるふたりだが、さすがに姉妹だけあってこんなところだけはよく似ている。
でもキミたち、そういうことは家に帰ってからやってくんない?

八幡「あー、今日のMAXコーヒーはまた格別おいしいなー」

結衣「ヒッキー、現実見ようよ…」

八幡「現実見てるからこそ、いたたまれなくなって逃避してんだろ」

逃避とか逃亡とか逃走とか、逃げるのは超得意。問題は逃げた後のことなのだが、それはまた別の問題だから。
とりあえず当面の問題が一時的に回避できればそれで十分だろ。
なんの解決にもなってないかもしれないけど、大抵のことは時間とか周りの人間がなんとかしてくれると思う。たぶん。
ほとぼりが冷めた頃、何喰わぬ顔して戻ってくれば全然OK。戻る場所がまだ残っていればの話だけど。

陽乃&雪乃「どうなのかしら、比企谷くんっ?!」

八幡「え?俺っ?」って、そういえば俺のことでしたね。

ずっと蚊帳の外だったんで忘れてましたよ。ついでにこのひとたちも忘れてそのまま帰ってくれるんじゃないかと淡い期待をしてたんだけどやっぱりムリでしたか。
むしろ俺が先に帰るべきでしたね。

しかし誰だよこんなトラブル連れて来たの?だから平塚先生、俺のマンガ読んでないでなんか言えよ。


八幡「…とりあえず、俺にもわかるように事情を説明してもらっていいですかね?」

どうやらデリケートな問題みたいなので、当たり障りのないように切り出す。
いろいろと当たったり触ったりするとマズい部分もあるから。特に相手が女性の場合。もう会話にも女性専用車両とか導入すべきだろ。

陽乃「ふぅ、ま、いっか。実はね、私、ある資産家のご子息から正式に結婚を前提とした交際を申し込まれたの」

雪乃「えっ?」

結衣「ふわっ?」

八幡「…すげぇな」

平塚「?!」ピクッ

三人三様の驚き方をする一方で、約一名、耳をそばだてながら聞いてないフリをしてる人もいますが…。興味あるなら今からでも話の輪に加わっていいんですよ?

陽乃「ふふん。まぁねー」これ見よがしにふくよかな胸を張る。

だからですね僕が思うにそういう態度がですねいもうとのんの神経を逆撫でするのではないかと思うのですよ。
もしかしてわかっててやってません?
ほらみろ、雪ノ下がムッとしてるじゃねーか。ファイトだ、いもうとのん。人生あきらめたら負けだぜ?牛乳とか飲むといいらしいぞ?


八幡「…しかし、あなたに結婚を申し込むような度胸のある男が本当にいるんですね…世の中、広ぇな」ゴクリッ

陽乃「ん?どうしてかなー?その言葉の裏には何か別の含みがあるように聞こえるんだけど?」ニコッ

八幡「いえ…別に」だからその笑顔が怖いんだってばさってばさ。なんなのこの姉妹。笑顔のままで人殺しちゃうの?離れ校舎の暗殺教室なの?

陽乃「でも、私もまだまだやりたい事があるし、この年でもう将来の事まで決めちゃうのもどうかなって思うのよね」

八幡「…やりたいことって、もしかして政界進出とか考えてたりするんですか?」

陽乃「やだもうっ!比企谷くんたら、冗談ばっかり!」

おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい目が笑ってねーぞ。マジなのかおい。
ちなみに英語で言うとoi!ここまでオイとか連発してんの、パンクバンドくらいしか知らねぇぞ。中指立てちゃう?

陽乃「だから私としては、できるだけ角が立たないように上手くお断りしたいわけなの」

ならその前に妹相手に角たてんなよ。いたるところ角だらけで迷路どころか迷宮みたいな感じになってるぞ。最深奥のレベル99にラスボスでも潜んでいそう。ヒースクリフとか。しかもその反動がこっちきて大変なんだからさ。


八幡「…んで、それが俺とどんな関係があるんですか?」

陽乃「それがね、咄嗟に“好きな人がいるから”って言って断っちゃったんだけど…」

バサッ

部室に本が落ちる音が響いた。

平塚「こ、断った…だと?」平塚先生が信じられないものを見るような目で陽乃さんを凝視しながら愕然と呟く。

やっぱ聞いてたんですね。つかそれ俺のマンガだってば。他人のものはもっと丁寧に扱えって学校で習わなかったのかよ。


陽乃「その時、つい比企谷くんの名前を出しちゃったの」

八幡&雪乃&結衣「えっ?!」

雪乃「姉さん、それは、いったい…」

八幡「まぁ、待て」俺は片手で雪ノ下を制…

雪乃「なんのつもりなのかしら?!」…って聞いちゃいねェし。

ですよねー、俺に雪ノ下を制御できるハズありませんよねー。
こいつ、姉のことになると冷静に対応できないからな。いつものクール・ビューティー雪乃さんはどこいったんだよ。
つか、普段の俺に対する扱いがヘヴィ・デューティーに過ぎんだろ。

八幡「貴女ほどの才覚があるなら、他に何とでも言い抜けられたでしょうに、なんでまたよりによってそんなすぐバレるような嘘をついたんですか?」

陽乃「あら、嘘じゃないわよ。私、比企谷くんのこと好きだってのは本当のことだし」

雪乃&結衣「!」

八幡「…まぁ、好きにも色々ありますからね」

過去にありとあらゆる勘違いを繰り返してきた俺が今更そんな初歩的な釣りにひっかかってたまるクマ。
中学ん時にも女子の間で俺に告白する罰ゲームってのが流行ってたくらいだし…って俺よく今まで自殺しなかったよな。我ながら感心しちゃうぜ。


陽乃「ふーん、意外に反応が薄いのね。仮にも女の子に好きだって言われたんだから、こういう時はもう少し喜んでくれてもいいんじゃない?」

陽乃さんがつまらなそうな顔をする一方で、

雪乃「さすがね。やはり伊達に目が腐ってるわけじゃないということなのかしら」雪ノ下が感心したかのように頷く。

八幡「なにそれもしかして褒めてんの?」

雪乃「あら、最上級の賛辞よ?姉に好きだと言われながら喜ばない男なんて初めて見たわ…例えそれが社交辞令だとわかっていたにしても」

八幡「ばっかおまえ、“好き”とか“大好き”なんて言葉をいちいち真に受けてたら、ますます調子にのっておねだりされちゃうだろっ、俺が小町にっ」

結衣「って、やっぱりシスコンだっ?!」

八幡「シスコンじゃねぇってんだろ?俺は必要以上に妹を溺愛してるだけだっつーの」

雪乃「…それを世間一般ではシスコンというのよ」雪ノ下があきれたようにため息をつく。

うん、まぁ、そうとも言うかもしれませんね、最近は。


陽乃「でも、比企谷くん、そんなんじゃいざという時に女の子のOKサインを見逃しちゃうわよ?」

八幡「ふっ、上等。もしそんな機会があったら是非ともお目にかかりたいものですね」なんなら血眼になって捜すまである。

結衣「セリフはかっこいいのに、その自信が悲し過ぎる…」

むしろ俺が女の子に告白した時KOされないように、誰かタオル投入すべき。パンチドランカーになっちゃったらどうすんだよ。もう再起不能だろ。ちなみに今のところ戦績はオールKO勝ちで無敗。相手が。

陽乃「おやおや、なかなか手強いのね」陽乃さんが楽しそうに微笑む。但し、ネズミを前にしたネコが浮かべそうな剣呑なヤツだ。

だいたい、ぼっちなんて、他人の好悪感情の埒外にいる存在だからな。他人に影響を与えず、また自分も影響を受けない。天上天下唯我独人。いわゆる無縁の境地。
そんな俺が今さら年上の女性に好きとかいわれたくらいで動揺するわけがないわけがない…ってあれ?もしかして俺、今、動揺してね?

雪乃「それで、比企谷くんに姉さんの彼氏のフリをしろというのはどういうことなのかしら?」

陽乃「私が比企谷くんの話したらね、その人がどうしても一度お会いしたいって言うのよ」

うんざりした顔をしているところを見ると、相手が相当しつこかったのだろう。しつこい男は大抵嫌われる。別にしつこくなくても嫌われる時は嫌われるのだが。ソースはもちろん俺。なにそれ超悲しいんですけど。


今日はこんなところで。ノシ

明日また同じ時間帯に更新します。


陽乃「で、申し訳ないんだけど、一日だけ比企谷くんに彼氏役をお願いできないかなってことなの」

八幡「なるほど、事情はよくわかりました。ですが…」そもそもなんで俺よ?それがよくわからん。

雪乃「それなら姉さんの有り余る人脈を活かして、もっとふさわしい男性を彼氏役に仕立てあげればいい話じゃないの?」

八幡「まぁ…そうだよな?」苦し紛れにしても人選がおかしいだろ。ミスキャストどころの話じゃねぇぞ。血統さかのぼってサンデーサイレンスかノースフライトまである。

陽乃「そう?例えば?」

陽乃さんは動ずる風もなく、逆に聞き返してきやがった。なにその余裕?
ここは彼女にとってある意味アウェーなのに、まるで自分の家みたいに落ち着いて見える。年上の貫録ってやつか?
教室の隅でいじけてるどこぞの先生とはえらい違いである。いいから俺のマンガ返せよ。それから頼むから誰か嫁にもらってやってくれ。悲しすぎるだろ、見てる方が。

雪乃「そうね、葉山くんなんてどうかしら。彼なら適任だと思うのだけど」

結衣「隼人くんかぁ。あ、それ、いいかも!」おもわず“いいね!”ボタンを押しそうな勢いで由比ヶ浜が賛同する。賛成票2票。同義的支持。

なるほど、確かに葉山なら何事もソツなくこなせそうだな。確か家ぐるみのつきあいだと聞いてるし、その点では何の支障もないだろう。
爽やかなイケメンだし、社交的だし、それこそいつ喪男の恨みを買って爆発しても恥ずかしくないほどのリア充度だ。って、爆発しちゃうのかよ、おい。

しかし、いくらなんでもそれくらい陽乃さんが思いつかないはずはない。きっと何か理由があるはずだ。葉山にあって俺にないもの…唯一俺が葉山に優っている点があるとしたら、やはりそれは可愛い妹がいることくらいだろうか。もう圧倒的大勝利。間違いない。


陽乃「隼人…ね。それも考えはしたのだけれど、今回の場合はちょっとそうはいかないのよ」珍しく陽乃さんの顔が曇る。

雪乃「どういうことなのかしら?」

陽乃「実は、相手はあの岩清水さんなの」

雪乃「岩清水さんって、あの岩清水コンツェルンの岩清水静夫さん?!」

結衣「ふぇ?…こんつえる?」

雪ノ下と由比ヶ浜が同時に驚きの声を上げる。由比ヶ浜の場合は、多分意味がよくわかっていない。
字面からして千葉駅西口の立ち食いソバ屋と間違っていそうな気もするが、そこは敢えて放置。なぜなら勘違いさせといた方が面白いから。
ちなみにあれはイッ○ウェルな。


しかし、岩清水コンツェルンか…一介の高校生である俺でも岩清水の名前くらいは知っている。

確か第一次世界大戦後の不況で経営危機になった岩清水財閥を引き継いだ傑物・岩清水志都美によって再建されたと言われる企業グループだ。
放蕩を繰り返してグループの経営を傾けた長男・次男を中枢から失脚させ、企業再建の際もかなりの辣腕をふるったと聞く。

石油、天然ガス、鉄鋼、電子部品から衣料、食料品に至るまで幅広く手を広げ、経済界はもちろん、政界にもかなりの影響力を持っているらしい。

その岩清水の名を名乗る以上は、恐らく陽乃さんの求婚者というのも、岩清水の本家か、少なくとも親族筋ということなのだろう。
どちらにせよ、超のつく大金持ちであることは、ほぼ間違いない。


陽乃「そうなの。隼人のお父さんもお仕事の関係でお付き合いがあるから、彼はちょっとパスね」

雪乃「そう…私は直接お会いしたことはないのだけれど、岩清水さんのことなら色々とお話は聞いているわ…」

陽乃「だったら雪乃ちゃんにも事の重大さが理解できるわよね?」

雪乃「…そうね」珍しく雪ノ下が言葉に詰まる。よほど悔しいのだろう、唇を噛んでいる。

八幡「相手が相手だけに、今後のことも考えて、できるだけ心証を悪くしたくない…ってことですか」

どうやら俺が考えていた以上にデリケートな問題のようだ。

陽乃「そ。さすがに比企谷くん、高校生らしからぬ慧眼ね」

八幡「よく言われます…………目が腐ってるって」主に貴女の妹さんからですけど。

雪乃「だからといって何も…」

陽乃「だからこそ、なのよ。いっそ全く面識のない比企谷くんならって、つい名前を出しちゃったのだけれど…」

雪乃「ほ、本当に理由はそれだけなのかしら?」

陽乃「あら、何を心配しているの?いくら私だって、さすがに妹のモノを横取りするほど悪趣味じゃないわよ?」

雪乃「べ、別にわたしのモノと言う訳では…」///

八幡「おい、さっきまで飼い犬呼ばわりしてたのどこの誰だよ?」

結衣「…ヒッキーって、けっこう根に持つタイプなんだね」

八幡「そんなことはないぞ。絶許ノートなんてまだ3冊目だし」

結衣「3冊もあるんだ…」


雪乃「たしかに、いくらなんでも姉さんの趣味がそこまで悪いとは思わないけれど…」雪ノ下が複雑な顔で俺を見る。

いや複雑なのはむしろ俺でしょ。本人が目の前にいるんだから、そこらへんはもっと配慮してオブラートにくるんだ会話とかしろよ。

八幡「つか、単に面識がないだけなら、別に俺じゃなくてもいいんじゃないですか。そうですね、例えば材木座とか?」

結衣「って、中二っ?!」

雪乃「…比企谷くん、これは真面目な話なのよ?」

八幡「あいつの存在はそんなに不真面目なのかよ?」

雪乃「あら、違ったかしら?」雪ノ下が素で聞いてきやがった。だからかわいらしく首をかしげるなっつーの。

八幡「…だいたいあってる」

結衣「あってるんだ?!」

八幡「まぁ、待て由比ヶ浜、俺は何もあいつの存在自体を全否定してるわけじゃないんだぜ」

結衣「そ、そうなの?」

八幡「肯定できる部分がほとんどないと言ってるだけだ」

結衣「それ、意味同じだしっ?!」

八幡「ならおまえ、材木座のいいところとか言ってみろよ」

結衣「それは……………えっと………あー…………ごめん。私が間違ってた…かも?」

材木座瞬殺だな。迷わず成仏しろよ。同じぼっちのよしみで骨は俺が拾ってやる。


雪乃「いいのよ、由比ヶ浜さん。材木座くんにしろ、比企谷くんにしろ、きっと他人からは理解できない部分で、何かしら世の中の役に立つところがあるかもしれないでしょ?」雪ノ下が由比ヶ浜を優しくフォローする。

結衣「ゆきのん…」///

出たっ、百合ゆり。ゆりのしたゆりのとゆりがはまゆり。ちょっとお姉さん、あなたの妹さんが公衆の面前で百合行為に走ろうとしてますよ?なんか言ってやったらどうです?

雪乃「…例えば、ほら、死んだら畑の肥になるとか」

結衣「それ、死なない限り世の中の役に立たないってことだよねっ?!」

八幡「しかも何気に俺まで同列扱いなのかよ…」百合は百合でも雪ノ下の場合はクロユリでしたね。花言葉は“呪い”でしたっけ?

陽乃「材木座くんって、この間の文化祭の打ち上げの時にお会いした、あの面白い子?」

八幡「アレを面白いと言える貴女は正直、尊敬に値しますね」ちなみに頭の中はもっと面白い。むしろ面白すぎて逆に笑えないまである。

陽乃「そうね、でも彼の場合はちょっと…別の意味で問題があるのよね…」形の良い眉を寄せ、何やら難しい顔をしている。

八幡「別の問題?材木座に?」

俺たちは思わず顔を見合わせた。材木座に問題なんて…

八幡「ありすぎて見当もつかねぇな…」

結衣「心当り多すぎるし…」

雪乃「むしろ問題しかないと言った方がいいくらだものね…」

正直、材木座のことでここまで深刻な話になるとは予想だにしなかったぜ。やっぱりあいつは、いない時の方がシリアスな扱いなんだな。

あわよくば材木座にこの役を押しつけようと思ったが、やっぱり無理なようだ。最初から期待はしていなかったとはいえ、つくづく使えないヤツだぜ。知ってたけど。

まぁ、いずれにせよ、あいつが絡むといつもロクな事にならねーしな。だいいち、いるだけで暑苦しくて、ウザい。
だが、幸いというかなんというか、今回の件に関してのみ言えば、材木座が関与してくる余地は一ミリだってなさそうだ。
なんといっても相手は資産家の御曹司である。不確かな要素が入り乱れる中で、それだけは唯一安心できる点なのかも知れない。



…そんな風に考えていた時期が俺にもありました。


八幡「で、今日はそのために、わざわざ学校まで来んだりしたんですか?」コネまで使ってご苦労なこった。

陽乃「そうなの。本当は別の場所で比企谷くんをつかまえてもよかったんだけど…」

八幡「ちょっ、それって俺の居場所を逐一把握してるってことですかもしかして?」ヒクッ

結衣「ヒッキー、何あわてて体ハタいてるの?」

八幡「いや、発信器でもついてんのかと思って…」

陽乃「イヤね、わざわざそんなことしなくても、他にも方法は色々とあるでしょ?」

八幡「その方が却って怖いんですけど?」なんですかその色々って。もしかしてその辺りに手飼いの乱破とか素破を忍ばせてるの?畳の縁とか踏んだりしたらダメなの?

陽乃「でも、それだとやっぱりフェアじゃないし、変な誤解されても困るからねー」

八幡「は?この場合、別にフェアとかフェアじゃないとか関係ないんじゃないですか?」

だいたいフェアってなんだよ。幕張メッセでコンサートでも開くつもりなの?いっそのことチーバくんも呼んじゃう?

陽乃「そうかしら。たぶん、そうは思わない人もいると思うんだけど…」

そう言って陽乃さんがチラリと意味あり気な視線を向けた先で、雪ノ下と由比ヶ浜が、なぜか揃ってこれ以上はないくらい不満そうな顔をしていた。


今日はこんなところで。ノシ

明日はもう少し早い時間帯に更新します。



核心部分は面白いんだけど、いかんせん話が脱線しやすくて冗長に間延びしてる印象かな。
引き延ばしのために話に贅肉つけてるように見える。


>>242

書いてて、それありますね。
つか、話の流れが不自然になりそうな要素を片端から潰してくと、説明臭くなって冗長になるんですよ。
もっとコンパクトにダイエットできるといいですが、残念ながらその力量がない。
だから、基本的に、長いのはムリポなんです。


個人的には八幡の脳内脱線のネタ密度は大好きです


>>244

さんすこです。筆が滑ります。ついでにネタもスベってますが(死

>>all

今回のSSは水増しするまでもなく、最初からネタ盛り込み過ぎて、くどくて長いです。
間違いなく9月中には完結すると思いますが、そのつもりでお付き合いくださいまし。ノシ


結衣「で、でも、やっぱり、それはちょっと…どうかなーって…」

陽乃「あら、なぜかしら?」

雪乃「不適合というよりむしろ不適切ね。第一、男女交際どころか、まともに友達すらいないこの男に、そんな役が務まるとは思えないわ。姉さんが恥をかくだけよ」

八幡「おい待て雪ノ下、さすがに今の発言には問題があると思うぞ」

雪乃「そうね。ごめんなさい。訂正するわ」珍しく雪ノ下が素直に謝る。

八幡「わかればいいんだ」

雪乃「あなたには、まともでない友達すらいないものね」

八幡「その発言にはもっと問題があるだろっ!?」

雪乃「真実って、いつも残酷なものなのね」俺から目を逸らし、悲しげにため息をつく。

八幡「残酷なのは真実じゃなくて、それを口にしているおまえ自身だということにいい加減気がついたらどうなんだよっ?!あとその態度やめろマジで傷ついちゃうから」

結衣「真実であることは否定しないんだ…」


陽乃「そうかしら?そんなことないと思うけど。だって、この間、雪乃ちゃんとデートしてる時だって、随分楽しそうだったわよ?」

八幡&雪乃「!」///

結衣「へっ?で、デート?」由比ヶ浜がわたわたと俺と雪ノ下の顔を交互に見る。

雪乃「あ、あれは、で、デート…なんかじゃないわ」///

八幡「…由比ヶ浜の誕生日プレゼント選んでただけだし」

結衣「ふ、ふたりで選んだんだ…」

八幡「小町も一緒だったけどな」途中までだけど。嘘は言ってないよ。ハチマン ウソ ツカナイ。インディアン モチ ツカナイ。

なぜかやたら気まずい空気が流れる。例えるなら、まるで俺が女の子に話しかけた時みたいな超ビミョーな雰囲気。なにそれ例えが悲しすぎね?

陽乃「おやおやぁ、わたし何かまずいこと言っちゃったのかな?」

だから超ド級の爆弾落としといて今更テヘペロで済まそうとすんなよ。


雪乃「ゆ、由比ヶ浜さん、とりあえず、その話はまた後でゆっくり」

結衣「う、うん」

そうそう、それくらいで常日頃から百合ゆりしているふたりの関係にヒビが入るわけがないのだ。甘いぜ、陽乃さ…

陽乃「あら、由比ヶ浜ちゃんだって、雪乃ちゃんに内緒で、夏休みに比企谷くんと花火デートしてたじゃない?」

雪乃「えっ?!そ、そうなの?」

八幡「だ――――――――っ!違うって!」

だからなんでこの人はそういう誤解を招くようなことを平気で言うわけ?!しかもこのタイミングとか、完全にワザとだろ?!つかイヤがらせ?!ホントは俺のこと嫌いなんじゃね?!俺がいったい何したっていうんだよぉっ?!

結衣「あ、あれは小町ちゃんにサブレ預かってもらったお礼でっ!」/// アセアセ

雪乃「…比企谷くん、とりあえず、その話もまた後でゆっくり」ニコッ

雪ノ下さん、超恐いっスよその笑顔。その話の後に俺の人生がわずかでも残っているのか非常に心配なんですけど?思わずノートに遺書を走り書きしたくなる。芋おいしうございました…。

俺がジト目で睨みつけるのを、陽乃さんが涼しいで受け流す。まるで柳に風だ。やはり役者が一枚上らしい。

しかし雪ノ下は俺が夏休み中に陽乃さんに会ったことは知ってたはずだから、その件はてっきり折り込み済みだと思って油断してたぜ。

情報を小出しにしておいてここぞという時に俺たちに揺さぶりをかけるなんて、雪ノ下陽乃 ―― やっぱり天使のような見た目と裏腹に、悪魔みてぇな腹黒い女だな。こんな腹黒いの千葉動物公園のレッサーパンダくらいしか見たことねぇぞ。○太くんかよ。


八幡「あ、ちょっと待ってくださいよ。よく考えてみたら、この話、俺にどんなメリットがあるんですか?」

むしろこのままではデメリットの方が多い。思わず五人のゴッドハンド召喚しちゃうくらい。あれはベヘリットだが。

常に損得勘定で動く俺ではないのだが、手間暇を考えたら今回はさすがにリスクが大きい。ハイリスク・ローリターンを絵に描いて額縁に入れたまま二科展あたりに出品するレベル。

不要なリスクは極力回避するのは、なにもぼっちならずとも処世術における基本中の基本だ。なら、どう考えても断った方が無難だろ。


陽乃「…そうね、雪乃ちゃん風の言い方をするなら、私に恩を売ることができるわよ?」

八幡「恩?」

陽乃「ひとつ貸しがつくれる、と考えてもいいわ」

八幡「貸し…ですか」予想外の申し出に思わず戸惑ってしまう。

陽乃「そう、貸しよ。この雪ノ下陽乃に貸しができるの。決して悪くない取引だと思うけれど」

胸に手を当て、傲然と言い放つ姿はある意味で不遜ともとれるのに、その魅力に一点の陰りも見えないのは、やはり持って生まれたのカリスマの為せる技だろう。

雪乃「姉さん、この男に借りをつくるなんて、ロクでもないことになるわよ?」

陽乃「あら、そうかしら?」

雪乃「借りは、か、カラダで返せとかいってくるかも知れないし…」

八幡「なるほど、女性の弱みに付け込むなんてホントに卑怯で卑劣で最低なヤロウだな。しかも本当に言いだしかねないところが…って、もしかしてそれ俺のこと言ってんのかよっ?」

結衣「えっ?!そうなの?ひ、ヒッキーってば、最低っ!変態っ!マジありえないしっ!」

八幡「ちょっ、待ておまえら、俺はまだ何も言ってないのに、なんでそうやって決めてかかるわけ?!」

雪乃「ほらみなさい、“まだ”ってことはこれから言うつもりだったってことでしょ?語るに落ちたわね」

八幡「だから上げてもねぇ足とるんじゃねぇよっ!冤罪だろ冤罪!俺は断固として無罪を主張するぞっ!」

雪乃「控訴棄却よ。恨むならあなたの日頃の言動を恨みなさい。あとその腐った目とか」

八幡「いつの間に一審有罪判決?!つかなんで俺が被告みたいな扱いになってるんだよっ?!」

雪乃「なにか弁明はあるのかしら?ヒコクガヤくん?」

八幡「だからそれ名前が違うだろっ!」


なにこれもしかして魔女裁判か何かだったの?俺、男なのに魔女なの?いつの間に男女平等がこんなところまで浸透しちゃってるわけ?
つか由比ヶ浜も真に受けてんじゃねぇよ。明らかに風評被害とか発生してんだろ。これ以上拡散しないように報道規制とかすべき。
キミたち、情報リテラシーって知ってる?いくら普段から百合ゆりしてるからって、マイナスりてらしーじゃないよ?

八幡「だ、だいたいだな、フェミニストを自認する俺が女性に対してそんなこと…」

雪乃「全く考えてもいなかったと言えるのかしら?」

八幡「あ、当たり前だろっ!天地神明に誓ってだな…」

結衣「ヒッキー、目がすんごい勢いで泳いでるよ?」

雪乃「ふーん、腐ってるくせに活きがいいなんて、あなたの目は随分と器用なマネができるのね?」

…この流れって、もしかして俺を詰みにきてない?このまま有無をいわさず有罪判決受けて火焙りにされちゃうの?
日本は法治国家じゃなかったの?正義は何処へ行っちゃったの?





陽乃「あら、それならそれで、私は別にかまわないんだけど。ふふっ」陽乃さんが艶っぽく笑う。




八幡「…………」

雪乃「………比企谷くん、なぜそこで沈黙するのかしら?」


あ、完全に詰んだわ。これ。


八幡「だーっ!待てっ!だから、誤解だっつーの」

雪乃「李下の冠、瓜田の靴…ね。やはりあなたには一度キツくお灸をすえる必要があると思うのだけれど。しつけの一環として」

八幡「うわーっ、まだ飼い犬ネタ引っ張るのかよっ?!」スミマセン、もう駅の階段とかでスマホ見たりしないから勘弁してください。


陽乃「で、どうなのかしら?比企谷くんならこの申し出の価値がよくわかると思うんだけど?」


天使の笑顔を浮かべて小悪魔が耳元で囁く。我知らず背筋がぞくっとした。
有名なゲーテの“ファウスト”を例にとるまでもなく、悪魔と取引した男には大抵、悲惨な末路が待っている。だがしかし…


八幡「…いいでしょう。わかりました。引き受けます」俺は力なく言った。


雪乃&結衣「えっ?!」

陽乃「きゃー、ありがとー!」陽乃さんが、俺の腕に抱きついてくる。

近い近い近い近いってば。なんでそんなに一気に距離つめてくるわけ?縮地法使ったの?勝手に俺のATフィールド無効化すんなよ。
しかもあいかわらずやわらかいし、いいにおいだなー…っておい、そうじゃねぇだろ。

結衣「ヒッキー近すぎっ!」

雪乃「比企谷くん、殺されたくなければ今すぐ姉から離れなさいっ!」

すかさず氷のような叱責がとんできた。今なんか恐いこといった!

俺は反射的に飛びすさる。なにこれパブロフの犬状態じゃね?いつの間に飼い犬根性が染みついちゃったの?

陽乃「ふふ。キミならきっと引き受けてくれると思ってたわ」勝ち誇ったように陽乃さんが笑を浮かべる一方で、

雪乃「全く、この男は、いったいどこまで失望させれば気が済むのかしら…」雪ノ下が蔑むような冷たい視線を俺に向けてくる。

八幡「…だから違うっつーの」

とっさに振りほどいたとはいえ、腕にはまだ陽乃さんの柔らかい感触が残っていた。
たしかに陽乃さんの申し出は男として魅力を感じないわけではないのだが…いや、十分すぎるほど感じるのだが、俺にはまた別の考えがあった。
しかし、それをこの場で言うわけにはいかない。少なくとも雪ノ下がいる前では。

なぜか不機嫌の絶頂といった顔をする雪ノ下と由比ヶ浜には悪いが、これはあくまでも陽乃さんと俺の取引である。

そして、雪ノ下陽乃というカードは、万が一の時に、俺にとって唯一の切り札となるかもしれないのだから。


とりあえずここまでで。ノシ

今週は久しぶりに土日が休みなので、またヒマみてうぷします。


陽乃「そうと決まれば話は早いわ。岩清水さんとの件については日曜日にセッティングしておくから、土曜日に一緒に服を選びにいきましょう」

八幡&雪乃&結衣「えっ?!」

陽乃「仮にも私の彼氏役なんだから、中身はともかく外見はそれなりのカッコしてもらわなくちゃね。中身はともかく」

なるほどこの場合、中身の方はどうでもいいんですね。つかなんで敢えて2回言う必要があんだよ。

八幡「俺にそんな余分なカネはないと言ったはずですよ」実のところ必要なカネすらもない。次の小遣いの日まで小町に借金しようかと考えていたくらいだし。

陽乃「あら、大丈夫よ。今回は無理なお願いを聞いてもらうんだから、それくらい私の方で持たせてもらうわ」

八幡「や、それはさすがにちょっと…俺にも男としてのプライドというか…」

雪乃「あなたにプライドなんて高尚なものがあったなんて初耳なのだけれど?」

八幡「ばっかおまえ、男にはプライドが必要なんだぜ?…いざという時に捨てる時のためとか、超必要だろ?」

結衣「捨てることが前提なんだっ?!」

八幡「プライドを捨てる時は全力で捨てるのが俺のプライドだからな」

もちろん謝る時は土下座がデフォルト、場合によったら、土下寝するまである。どこの死刑囚だよ。

雪乃「あなたのプライドは取り外し可能なオプション機能みたいなものなのね…」

ちなみに良心とか良識も状況に応じてキャストオフできるまである。まるで仮面ライダーカ○トか、美少女フィギュアのコンパチ仕様みたいだなそれ。


陽乃「私としては、今回の件に関して、できるだけ万全を期したいのよ」

八幡「そういうことなら…まぁ…仕方ないですかね…俺、制服以外にあんまフォーマルな服とか持ってないし」

雪乃「でも、この際だからお父さんのスーツとかでもいいんじゃないの?」

八幡「オヤジのスーツとかって一張羅だし。だいいち加齢臭が染み込んでるからな…」ついでに妻子持ちの社畜中年男の人生の悲哀も染み込んでいたりする。できたら一生着たくない。社畜が感染(うつ)ったりしたらやだし。

結衣「ふえ?ヒッキーのパパって、そんなにインド料理とか好きなの?」

八幡「カレーの臭いじゃねぇよっ!そんなスパイシーな香りじゃねぇし!俺のオヤジ、インド人かなんかかよ?」

雪乃「インド人もびっくりね」ボソッ

八幡「…おまえ、ホントは年いくつなんだよ」さすがはユキペディアさんだな。平塚先生でさえそんなネタ知らねーぞ…たぶん。

陽乃「あ、どうせなら、共通の話題をつくるために映画なんて一緒にどう?もちろんお食事を御馳走してもいいわよ?」

雪乃&結衣「なっ?!」

八幡「って、それじゃまるで…」

陽乃「そ、デートよ。彼氏なんだもの」それが当り前であるかのように言い放つ。

一瞬、まるで地球が静止したかのような沈黙に包まれた。咳払いも躊躇われるような気まずさ。

材木座がいたなら「むぅっ結界かっ?!」とかいい出しかねないレベル。ホントよかった。いなくて。

逆に耳が痛くなるような深い静寂の中で、雪ノ下が憮然とした顔つきで睨みつけ、普段は温厚な由比ヶ浜ですら珍しく非難がましい眼を向けている。
こんな目で見られたら、普通なら大の男でもたじろいでしまうだろう。かよわい女性なら尚更だ。だがしかし…

だからなんでおまえら俺の方見てんだよ?それって睨む相手が違うんじゃね?


八幡「こほん…すみませんが、俺、小町以外の女の子とデートなんて、ギャルゲーでしか経験したことないですよ?」しかも強制イベントだけだし。

雪乃「小町ちゃんとのお出かけはあっさりデートだと認めるのね…」

結衣「ヒッキー、ギャルゲーなんてしてるんだ…」

八幡「そりゃ、いざという時のシュミレーション…っておまえ誘導尋問うめぇなっ?!危なく洗いざらいしゃべっちゃうところだったじゃねぇか?!」

結衣「自分で勝手に自白してるだけだし…」

八幡「しかし、不思議なことにいつもなんでかバッド・エンドになっちゃうんだよなこれが…」

結衣「うわー…ゲームなのにリアルなんだ…」だから俺を憐みの目で見るんじゃねぇよ、ホントに泣きたくなってくんだろ。

つか、ソフト会社はもっと企業努力の一環としてゲームの難易度を下げて、もっと喪男に夢を持たせるべきじゃね?特に俺とか。

八幡「はっ、もしかしてバグがあったのか?!…俺の買ったゲーム全部っ!」

結衣「いやさすがにそれはありえないし…」

雪乃「バグがあるとすれば、それはむしろあなた自身の方だと思うのだけれど」首を振りながら雪ノ下がため息をつく。

八幡「動きゃいいんだよ、動きゃ」

雪乃「納期直前に開き直ったプログラマーみたいなこと言うのね…」

八幡「大丈夫だ。問題が起きても“あ、俺、そういう仕様ですから”…って言い張ればなんとかなるから」マニュアルにもそう書いてあるし。

雪乃「それ以上暴走する前に、あなたという存在ごとこの世から完全にデリートしておいた方がいいような気がしてきたわ」

八幡「おまえならデリートどころかフォーマットしかねないよな、この世界ごと」

雪乃「それは最終手段よ」

八幡「一応考えてはいるんですね…」おまえもしかしてマトリックスの親玉かなんかかよ。


陽乃「だったら、それこそ当日失敗しないように、今から色々練習しておいた方がいいでしょ?」

八幡「げっ、マジっすか…」

陽乃「大丈夫、私がリードしてあげるから、比企谷くんは何も心配しなくていいわよ」

心配するなと言われても、なぜか安心できる要素がひとつも思い浮かばない。

それどころか、ひとりで気楽に過ごせるはずの貴重な休日が消えてなくなるかと思うと、むしろ気が沈む。
ネガティブなシンキングがシンキングしてしまうまである。

雪乃「だったら、私もご一緒させていただくわ」

結衣「あ、あたしも行くっ」

八幡「だからなんでそうなるんだよっ?!おまえら俺のこと好きすぎだろっ?!」

雪乃&結衣「っ!?」///



陽乃「あーあ、いっちゃった…」ボソッ


…ちょっと待てなんだこのビミョーな空気は。おまえらそんなに俺がキライなの?まじ泣きそうになるんですけど。いやホントちょっとだけ目の端に涙溜まっちゃったし。

結衣「だ、だって、ヒッキーが陽乃さんとふたりきりでデートなんて…」

雪乃「だ、誰かがちゃんと監視してないと、あなた何をしでかすかわからないでしょ?」

八幡「俺はそんなに信頼されてねーのかよ?」

雪乃「あら、私はあなたの人間としてのクズっぷりに全幅の信頼を寄せているって言わなかったかしら?クズガヤくん?」

八幡「そんな信頼はいらねーよっ!つか名前違ぇだろっ!どんだけバリエーションがあんだよ?!」

雪乃「それに、この男をまともに仕立て上げるつもりなら、第三者の忌憚のない意見を参考にした方がいいんじゃないかしら」

八幡「おまえは逆に少し遠慮した方がいいだろ、俺に対する数々の暴言とか」

結衣「あ、そうだよね!ヒッキーの場合、ヒネてるから、素直に他の人の意見に耳を貸すとは思えないし」

八幡「おまえも日頃から人の話聞こうな、特に授業中とか」

く…、さては数に頼んで俺の退路を塞ごうって魂胆だな。せっかくデートすると見せかけて隙を見て途中で逃げ出そうかと思ってたのに、計算が狂ったぜ。


八幡「…甘いな、おまえら。常に少数派に属する俺の場合、自分の意見が通ることなんて滅多にないんだぜ?」

雪乃「あなたの場合、その少数派にさえ属していない、ただのぼっちでしょ?」

八幡「まあそうともいう」

陽乃「あらあら、せっかく、土曜日はふたりきりで楽しいデートにしようと思ったのに、あてが外れちゃったわね」

八幡「ははは…。それだけは絶対にイヤです勘弁してください」全身全霊をもって全力全速でお断りする。

この人とふたりだけでデートなんて、むしろ荒行や苦行に近いものがあるだろ。真冬の滝ごりや千日回峰が、水遊びやハイキングに思えるくらい。
俺の中の新しいパワーとか目覚めちゃったらどうすんだよ。思わずレベル6に到達するまである。

陽乃「ふーん、あ、そう。でも、比企谷くんがそう言うなら仕方ないわねー。なにしろ私はお願いする立場なんだし?」

ここで絶対ひと悶着あると思ったら、意外にもあっさりと陽乃さんが引きさがった。
あまりにもあっさりし過ぎて裏でなんか企んでないか恐いくらい。

もしかしてわざと間違った集合場所教えるとか…俺に。あるいはわざと間違った集合時間を教えるとか…俺に。いやだからなんで俺なんだよ。

確かに昔みんなで遊びに行く約束した時にそんなこともあったけど…って、どうして勝手にトラウマほじくり返しちゃうわけ?
つか俺、地雷多すぎでしょ。紛争地帯なみ。ODAとか人道支援で除去してくれないの?


陽乃「…ただし、ひとつだけ条件があるわ」陽乃さんがそう言いながら形の良いひとさし指を立てた。

やっぱり転んでもロハでは起きないわこのひと。藁つかんで長者になるタイプだな。ちなみに俺の場合は藁つかんで溺れるタイプ。

雪乃「…なにかしら?」当然の如く雪ノ下と由比ヶ浜がそんな彼女を訝しげに見つめる。

陽乃「日曜日に岩清水さんとお会いする時には、ふたりともついて来ちゃダメ。例え何があっても絶対に私たちの邪魔をしないこと」

雪乃&結衣「…っ!」

陽乃「さっきも言ったけど、今回の件に関しては万全を期しておきたいの。どう?約束できるかしら?」

しばらく重く深い沈黙が続いたが、

雪乃「…わかったわ」雪ノ下が観念したかのように答え、きつく唇を引き結ぶ。由比ヶ浜も無言で頷いた。

おいおい、たかだか1日だけ彼氏のフリするくらいで、何をそこまで念入りに釘をさす必要があるんだよ?逆に丑の刻参りで藁人形に釘さされちゃうだろ、俺が。

決して軽い気持ちで引き受けたわけではないのだが、なんとなく雲行きが怪しくなってきたような気がするのは気のせいなのだろうか。

どこかで根本的に選択肢を間違えてしまったのかもしれない。セーブポイントに戻ってやり直していいですかね?そうだな、人生の初めあたりから。

しかし、理由はともかく美女三人とお出かけって、一体どんなハーレム・イベントだよ。しかも全然うれしくねぇし。つか、正直苦痛以外のなにものでもない。
普通、女の子とデートって、もっと胸が弾むもんじゃなかったの?あー…、いや、どう見ても一人だけ物理的に無理な人もいますけど…。
がんばれ、いもうとのん!人生投げちゃダメだとプロ野球の投手もいってるぞ。いってねぇか。あと、イソホラボンとかもいいらしいぞ?


本日はこんなところで。ノシ

時間は未定ですが、続きはまた明日。


おまいら、なんか楽しそうでつね?ww


出かける前にちょっとだけ更新しなう。


八幡「あー…、ところでその岩清水さんって、実際どんな方なんですか?」念のためにヒトとナリくらいは聞いて置いた方がいいだろう。

故人曰く、己を知り敵を知れば諦めろ…って諦めてどうすんだよ。

陽乃「そうね、参考になるかどうかわからないけど、一応、写真を持って来たわ」

そういって綺麗に装丁された写真を取りだす。とりあえずとかいいながら随分と用意がいいんだな。

八幡「えっと、これは…?」その体裁は、まるで見合い写真のように見える。

陽乃「本人が送ってきたの。…バラの花束を添えて」

結衣「ほわわ、それって、ちょっとステキかも…」///

ちっ、これだからセレブリア充ってヤツは…。爆発すればいいのに。いやむしろ今すぐ砕け散るべき。俺は怨念を込めた目で陽乃さんから受け取った写真を睨みつける。

雪乃「比企谷くん、あなたの腐った目に殺気が宿ってるわよ?」

八幡「いや、殺気じゃなくて紛れもない殺意だ」

リア充、死すべし。世の喪男の嫉み、思い知れ。

八幡「…つか、いちいち腐った目言うな。それ俺にかかる枕詞かよ」

雪乃「ついでに言うと季語としては“永遠の冬”ね…なぜならあなたには春が来ないから」

八幡「ほっとけっ!」


俺が自分の生霊が写り込むんじゃないかと思うくらいの勢いで睨みつけているその写真には、細面で眼鏡をかけた30歳位の好青年が写っていた。
口元から覗く白い整った歯並びがやけに眩しい。たぶん直射日光の下なんかで見たら乱反射してヤバイことになる。
事故防止のためにお歯黒とか塗るべき。ついでに眉毛剃れ。麿とか名乗れ。牛車で移動しろ。

陽乃さんとの年齢差は10歳くらいか。少し離れた感じはあるが、不自然というほどでもないだろう。

結衣「ほわ~、ちょっとイケメンかも…」由比ヶ浜が俺の顔を背中越しに覗きこむ。

…顔、近えよ。おまけに髪が俺の頬に触れてこそばゆいし。つか何気に俺の肩に手を置くなよ、勘違いしてフラレちゃったらどうすんだよ?
いやまずフラレる前にホレることから始めようぜ、俺。いろいろすっ飛ばして結論に飛びつきすぎでしょ。

雪乃「わ、私も見てもいいかしら?」雪ノ下が俺の傍らに立ち、モジモジしている。

八幡「おお、いいぜ。ほれ」俺が雪ノ下が見やすいように写真を差し出す。

雪乃「………………」なぜか急にムッとした表情になり、ひったくるようにして写真を受け取った。

なんだよそんなに俺から直接手渡しされるのがイヤなのかよ?そういえばいたよな、中学時代にそういう女子。
「比企谷くんからプリント受け取りたくないから、そこに置いて」とか臆面もなくいいやがって。自意識過剰だっての。
まぁ、問題はクラスのほとんどの女子が俺に対して自意識過剰だった点だけど。…あれ?もしかして単に俺が嫌われてただけとか?

陽乃「岩清水さんご本人には、パーティーの席とかで何度かお会いしているのだけれど…」

雪乃「なるほど、そこで姉さんを見染めたってことなのかしら?」

陽乃「まぁ、そういうことになるのかしらね…」

なぜか曖昧に言葉を濁す陽乃さんの態度に違和感を感じたが、雪ノ下は写真に集中していて気がつかなかったようだ。

八幡「それって…」


平塚「コホン…あー…陽乃?」俺の言葉をさえぎるようにして平塚先生が割って入る。つか、まだいたんですね。

陽乃「あら、何かしら静香ちゃん?」

平塚「私をその名前で…いや、まぁいい…陽乃はその話を断るのだろう?」

陽乃「え?ええ。そのつもりだけど?」

平塚「こ、断るんだったら、そ、その、わ、私に、紹介してくれてもいいんだぞ?」/// ゴニョゴニョ

陽乃&八幡&雪乃&結衣「えええええええええええええええええええええええ?」

そ、そこまで堕ちたか、平塚静よっ?!


まるでティラノサウルスが強力なプレデター(捕食者)じゃなくて実はスカベンジャー(腐肉漁り)だったかもしれないという学説を聞いた時のような驚き。

陽乃「あー…、えーっと…ごめんなさい、今回の件はちょと…」さすがの陽乃さんが引いている。

すげえぜ平塚先生、あの陽乃さんをここまでたじろがせるなんて、もしかしてジオンの赤い彗星とタメ張るんじゃね?

平塚「そ、そこをなんとか…」食い下がる平塚先生。必 死 だ な 。




陽乃「…そ、それに岩清水さん、若いコの方が好みらしいし…」




…あ、ここで詰みですね。ありがとうございました。




平塚「…こ、これでもこの学校では若手なのだがな」平塚先生が涙ぐんで、ガックリと肩を落とす。

うう、可哀そうでもう見てられない。もし映画化されたりしたら、間違いなく全世界が泣く。

もう、いいんですよ、先生。いよいよとなったら、俺がきっともらってあげるから…。いやむしろ俺のこともらって、養ってくれてもいいよ?


続きはまた今晩。ノシ


あ、急いでうぷしたらボロが出た。これだから寝起きは…脳内訂正ヨロ。

>>277

5行目

結衣「ほわ~、ちょっとイケメンかも…」由比ヶ浜が俺の顔を背中越しに覗きこむ。
                      ↓
結衣「ほわ~、ちょっとイケメンかも…」由比ヶ浜が俺の肩越しに写真を覗きこむ。

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八幡「おお、いいぜ。ほれ」俺が雪ノ下が見やすいように写真を差し出す。
                ↓
八幡「おお、いいぜ。ほれ」俺は雪ノ下が見やすいように写真を差し出す。

>>278

2行目

陽乃「あら、何かしら静香ちゃん?」
        ↓
陽乃「あら、何かしら静ちゃん?」

乙乙乙乙乙乙乙

はっ!?つ、つい…(汗


サーバ移転、終わったかな?


簡単に土曜日の打ち合わせをした後、陽乃さんはやっと部室を後にした。

俺はもう雪ノ下陽乃という天災に巻き込まれたものとして、全てを諦めるしかなかった。諦めるのだけは超得意。
過去に唯一諦めきれなかった事と言えば、諦めるのを諦めることだけだったし、それすらも最後には諦めるのを諦めることを諦めたことよって事なきを得た。
我ながら意味不明だが、既に説明することすら諦めているので無問題。

とにかく、つまり、要するに、だ、人生万事諦めが肝心であるということである。特に結婚生活においては必須事項。重いなそれ、いったいどこの誰のことだよ。後で平塚先生にも教えてあげよう。いらんお世話だと殴られるかもしれないけど。

つか今回の人的損害(特に俺)の反省点を活かして、気象庁は、雪ノ下陽乃注意報とか出すべきだろ。メアド登録するから俺のスマホに配信してくれよ。7秒あれば逃げ切ってみせるぜ…ってやっぱり逃げること前提なのかよ。

陽乃「じゃあね、比企谷くん、土曜日、楽しみにしてるわよ」去り際に片手を振りながら、パチコンと長い睫毛の片目をつぶってみせる。

八幡「あー…、はい」ヒクッ

ミシリと音を立てるように部屋の気圧が増す。なにこれ俺の周りだけGが高くなってね?肩凝るんですけど?


次いで、平塚先生も長く重いため息をつきながらノロノロと退室する。しかも俺のマンガ持ってっちゃったよ。あとでちゃんと回収しとかないとな。

それからしばらくして下校のチャイムがなると、雪ノ下が由比ヶ浜に優しく声をかけ、うって変わってむっつりした表情のまま俺の前を素通りする。

戸口で一端足を止め、俺の方を振り向いて何か言いたそうな顔をしていたが、結局何も言わずにそのまま部室から出て行ってしまった。もちろん、挨拶どころか会釈すらない。おいおい、今日びATMや自動販売機だってもっと愛想よく挨拶とかしてくれんぜ?マックだってスマイル0円だし。

どうやら先ほどのことで誤解されたままらしいが、それならそれで致し方あるまい。誤解といえどひとつの解だ。既に回答欄の埋まっている以上、俺のとった行動に対して、今更別の解を求めることはできない。


八幡「さて、俺も帰るとしますか…」ガタッ

ため息とともにひとりごちながら立ちあがると、不満気な顔をした由比ヶ浜と目があう。

八幡「んだよ?おまえも俺になんか文句とかあるわけ?」

結衣「別に文句があるわけじゃない…けど」

八幡「なら、なんだよ?」相変わらず嘘の下手なヤツだな。

結衣「…ヒッキーってさ、陽乃さんのこと、どう思ってるの?」おずおずと切り出す。

八幡「まぁ、何考えてるかわかんねーし、正直“恐い女”…かな」つかマジ超怖いし。

結衣「ふーん。だったら、ゆきのんのことは?」

八幡「そりゃ………“イヤな女”だよな」

結衣「ひどっ!」

八幡「いやむしろ俺の方がいつも酷い目に遭わされてるだろ…」


結衣「じゃ、じゃあ…あ、あたし…は?」///

八幡「はぁ?なんだそりゃ。やっぱり“アホな女”だろ?」

結衣「なにそれっ?!まじありえないんだけど?!」プンプン

八幡「わ、わかったから、そんなに怒るなって、だ、だったらビッチでどうだ?」ちょっと三浦入ってるぞ?朱に交わって黒くなってんじゃねーか?

結衣「どうだっ…って、だからビッチいうなしっ!」

なんだよ、聞かれたから答えただけじゃねぇか。正直に答えて怒られるんなら、人に道聞かれても、授業中に先生に指されても無視するしかなくなるだろ。

結衣「…どうして陽乃さんのお願い聞き入れたの?なんかいつものヒッキーらしくないっていうか…」

八幡「おまえの言ういつもの俺ってどんなだよ」生半可な知識で勝手に俺を語っちゃったりするなよな。そういうのが一番イラッとすんだから。

結衣「え?た、例えば、テキトーな事言って、のらりくらり誤魔化して逃げちゃう…とか?」

八幡「…反論したいところだが、表現が的確だけに何も言い返せないのが我ながら悲しいな…」もしかして俺の知らない間に、比企谷検定とか受けてんのかよ。


ま、こいつになら話してもいいか…

八幡「由比ヶ浜、おまえ、文化祭の時のこと、覚えてるだろ?」

結衣「あ、そういえば、ふたりでどこかに遊びに行く約束したよねっ?!」

八幡「あー…そういえば、そんなこともありましたね…」(遠い目)

結衣「もう忘れてるしっ?!」

八幡「あ、いや、そうじゃなくて、雪ノ下がガッコ休んで、ふたりで家まで見舞いにいったよな?」

結衣「そうだね。あの時は大変だったね。もう、さがみんったら…」プンプン

雪ノ下のことなのに、まるで自分のことのように怒っている由比ヶ浜を見て、思わず苦笑が浮かぶ。

八幡「まぁ、確かに直接の原因は相模なんだが、正直、雪ノ下の性格上、いずれああなるとわかっていながら止められなかったの俺の責任でもあると思う」

結衣「そ、そんなことないし。わ、私だって…」

八幡「まぁ待て。だけど、そうなる遠因を造ったのは、実は陽乃さんだ」

結衣「え?ど、どういうこと?」

俺は文化祭実行委員会にいなかった由比ヶ浜のために、事情をかいつまんで話す。少し俺の憶測も交えているが、たぶん大筋ではあってるはずだ。


結衣「…ふーん。そうだったんだ」

八幡「まぁ、陽乃さんには陽乃さんの考えがあったみたいだけどな…」

結衣「でも、だからって…」

由比ヶ浜のいいたいことは良くわかる。こいつはホントいいヤツだからな。しかしだからといって必ずしも世界が平等に俺たちに優しいとは限らない。
特に俺に対しては超厳しい。もう少し甘やかしてもいいんじゃね?俺、誉められて伸びるタイプなんだけど。いや、今は俺の事は別にどうでもいい。

八幡「だから、また同じようなことが起きた時の事を考えて、今度はしっかりと雪ノ下をサポートできるようにしておきたいんだ」

結衣「あ、もしかして、それで…?」

八幡「陽乃さんに対する貸しも、いずれは何か役に立つ時がくるかもしれないからな…」

ぼっちであるところのメリットは人間関係が希薄な分、他人の影響力を受けずに済むという点にこそあるのだが、同時にそれは他人に影響を与えにくいというデメリットをも内包する。つまりは役に立たない。
だったら影響力を持つ人間の力を利用するまでだ。そして、雪ノ下陽乃という人間は、俺にはない他人への影響力というものを十分に備えている。これを利用できる機会を逃す手はないだろう。

結衣「…そんなこと考えてたんだ。や、やっぱり、ヒッキーはゆきのんのこと…」由比ヶ浜の声が急に湿り気を帯び、小さくなる。



八幡「…はぁ?何いってんのおまえ?やっぱりアホなの?」


結衣「だからアホっていうなしっ!…って、へ?」

八幡「いざという時に雪ノ下を助けてやれっていったの、おまえだろ?もう忘れちゃったのかよ?」

結衣「えっ?あ、そ、そうだけど…」

八幡「約束した以上は守らねーとな。なに?その…ぼっちの主義に反するっつーか…」

結衣「そ、そうなんだ?あ、そ、そうだよね?ヒッキー、基本人間のクズだけど、そういうとこ変に律義だもんねっ?!」

八幡「人間のクズ言うな」

結衣「でも、そっかー、そうだったんだー」…って聞いちゃいねーし。

なぜか急激に由比ヶ浜の機嫌が良くなっていた。なんか鼻歌まで歌ってやがる。よくわからんが現金なヤツだぜ。

八幡「やっぱりおまえは、そんな風に嬉しそうにしてる時の方が可愛いよな…」ボソッ

結衣「えっ?!」///

八幡「や、なんでもねーし」///

って、俺ってば何言っちゃってるわけ?

結衣「あ!だったら、ふたりで遊びに行く約束の方も忘れないでね?」

八幡「あー…それはまたそのうちテキトーに…」俺は咄嗟に目をそらしたが、由比ヶ浜が追うようにして顔を覗き込んでくる。あの、顔近いんですけど…。

結衣「で、いつにする?!ん?ん?」

ふぇーん、由比ヶ浜さん、その笑顔超こわいです。


サーバの移転とかで、予定より遅くなりましたが、今日はこのへんで。ノシ

続きはまた明日の深夜になりまつ。


細かいとこかもしれないけど、6巻から7巻の間で何の前触れなく呼び方が陽乃さんになるのは不自然かなと思う


>>299

突然現れた拍子に思わず名前を叫んでしまったので、後はなし崩し…ということでご理解を。
ネタバレになりまするので、今はこれ以上書けませぬが平にご容赦を。


小町「陽乃さんの彼氏?お兄ちゃんが?!」

八幡「まぁ…彼氏のフリ、だけどな」

小町の作った夕食を平らげたあと、俺たちは台所で肩を並べて食器を洗いながら、今日あった出来事について話していた。
お、こいつ少し背が伸びたかも。胸の方は相変わらずだけど。今のうちに牛乳とか飲んどいた方がいいな、さもないと大きくなってから小さくなっちゃうよ?雪ノ下みたく。

ちなみにおやじとおふくろは今日も仕事で帰りが遅いらしい。
こう毎日だと、もしかして当節流行りのブラック企業とかに勤務してるんじゃないかと少し心配になってきたりもする。
ふたりには健康で長生きしてもらいからな。少なくとも次に俺を養ってくれる相手が見つかるまでは。


小町「…ふーん。お兄ちゃんは基本クズでひねデレてるし面倒もかかるから、確かに年上の奥さんの方がいいかもしれないけど…」小町が顎に人差指を当てながら呟く。

八幡「なんでいきなりそんな飛躍すんだよ」いくらなんでも飛ばし過ぎだろ。制限速度守らないとそのうち事故起こすぞ?

小町「で、土曜日はデートなんだ?」

八幡「まぁな。小町も来るか?」

小町「えー…?それはちょっとぉ~。さすがに小町的にポイント低いって言うか~」

八幡「雪ノ下と由比ヶ浜も来るみたいだぜ。ついでに戸塚や材木座にも声かけてみっか…」俺はスマホを取り出す。

小町「ちょい待ち」パシッ

ドボンッ

八幡「うわなにすんだよおまえ、俺のスーパー・ポータブル・コミュニケート・デヴァイスが泡だらけになっちまったじゃねぇか。“組織”から緊急指令が入ったらどうすんだよ?!」

小町「中二さんみたいなこと言わない」

八幡「完全に犠牲」


小町「もしかしてデートって、四人でお出かけなの?」

八幡「ああ。なんか知らんがそういうことになったみたいだな…」

小町「やっぱり心配なんだねぇ」ニヤニヤ

八幡「まぁ姉妹だからな。超仲悪いけど」つか一方的に雪ノ下がライバル視しているだけで、陽乃さんの方は多分、歯牙にもかけていない。

小町「そっちじゃないし」なぜか小町はあきれ顔である。

八幡「え?そっちって、どっちだよ?」あっちこっち?なにそれどこの県立猫毛高校?

小町「やれやれ…お兄ちゃんに分かれって方がムリか…」

八幡「だからその兄を蔑むような目で見るのはやめれ」

小町「そうだねー…、例えば、お兄ちゃん、もし小町が誰かとデートするっていったらどうするの?」

八幡「全力で阻止する。常識だろ?」

小町「…それどこの常識だし」


八幡「なら、俺もついてく。心配だからな」ついでに影で色々と妨害工作するまである。

小町「だから、雪乃さんと結衣さんも多分そんな気持ちなんじゃないのかなーって…」

八幡「えっ?それってつまり…」

小町「そうそう」

八幡「百合な上にシスコンってことか?!随分と爛れた関係だな…」

小町「…小町的には爛れてるのはお兄ちゃんの頭ん中だと思う」

八幡「はっ?!わかった!もしかして妬いてるのかっ?!」

小町「あっ!お兄ちゃん鋭いっ!めずらしく!」

八幡「…いや別にめずらしかねーだろ。つか、あくまでも彼氏のフリだけなんだから、なにもヤキモチ妬く必要はないんだぜ。小町が」

小町「…あー、はいはい。そうだねー…(棒)」

八幡「…んだよ、その超テキトーな返事…」


小町「でも、やっぱり小町はその日別の用事があるからいーや」

八幡「え?そんなこと言ってたっけ?」

小町「だって、陽乃さんの彼氏役するってのはオフレコなんでしょ?知ってるのは4人だけってことだよね?」

八幡「ま、それもそうだな…」厳密には平塚先生も含めて5人なんだけど。

あの後また独りカラオケとか行ってウサ晴らしてんのかな。可哀想すぎて想像するだに目頭が熱くなるぜ。。
自伝とか書いたら「女教師哀史」って題名がつきそうだよな。もしくは「あゝ三十路峠」とか。タイトル聞いただけでごはん三杯分は泣ける。

小町「せっかくのデートなんだし、邪魔しても悪いしねー」

八幡「は?別に邪魔じゃねーだろ」むしろ緩衝材の役目果たしてくれそうで期待してるくらいだし、なんなら盾にするまである。

あいつらといると、もしかしてオイル切れてんじゃねぇの?ってくらいやたらギスギスしているし。


小町「…それに、修羅場に巻き込まれたくないからねぇ…」ボソッ

八幡「あ?なんか言ったか」

小町「んーん。べっつに~」

八幡「なにその思わせぶりなフリ。ちょっとイラっ☆とすんぞ」

小町「と・に・か・く!お兄ちゃん、しっかりね」そういって優しく俺の肩に手を置く。

八幡「小町…」

小町「ん?なにかな?」

八幡「とりあえず俺の服で泡を拭うのやめれ…あと、お土産とか期待すんなよ?」

小町「ちっ、バレたか」そう言って可愛らしくチロリと舌を出す。

いつものことながら、俺の妹はどこに出しても恥ずかしくないくらい超可愛い。もちろん、どこにも出すつもりはないが。


土曜日の昼過ぎ、待ち合わせ場所に指定されたカフェに着くと、既に陽乃さんがテラスの席に着いているのが見えた。

敢えて探すまでもなく、一目でわかってしまうあたりはさすがである。今日はいたって清楚な服装のようだが、そのまばゆいばかりの美しさは遠目にも人を惹きつける。

実際、俺がたどり着くまでのわずかな間にも何人かの男達が彼女に声を掛けていたが、皆一様にザコキャラのごとく見事なまでに軽くあしらわれていた。

これがもし、いもうとのんの方だったら、多分、無駄な人死にが出る。あいつをナンパなどしようものなら、それこそあの切れ味鋭い舌鋒にかかり、夢破れた漢たちの累々たる屍の山が築かれるまであるかもしれない。
この平和な日本で、しかも女の子との待ち合わせ場所に向かうというありふれた日常の光景の中で、なんで骸と血の山河を超えてく世紀末的バイオレンスなシチュエーションを経験しなきゃならないんだよ。修羅の国の人なの?


陽乃「あ、比企谷くん、こっちこっち」俺に気がついた陽乃さんが手を振る。

輝かく笑顔に思わず胸がドキリと脈打つ。もしかしてこれって………心筋梗塞?AEDどこよ?

周りの男たちから俺に向けられる羨望と嫉妬の視線が超痛い。今俺に注がれる視線を可視化したらたぶんウニになるんじゃないかと思えるくらい。
質量なんて与えた日には、矢襖になって武蔵坊弁慶ばりに立ち往生を遂げているところだ。

俺の磨き抜かれたステルス機能を無効化するとは、もしかして左手に幻想殺しとか宿してたりするの?どこの禁書のナニ条さんだよ。


八幡「ちわ」俺は周りを見回しながら苦笑を隠せないでいたが、陽乃さんの方はまるで気にもしていない。たぶんもう慣れっこなのだろう。

陽乃「早かったわね」

八幡「貴女ほどではないです」

ちらりと時計を見ると、まだ待ち合わせの時間より20分ほど早い。

八幡「もしかして待たせちゃいましたか?」

陽乃「予定より早く着いちゃったんだけど、本読んでたからそうでもなかったわよ」そう答えながら、ちょっとだけ意外そうな顔をする。

八幡「どうかしました?」

陽乃「比企谷くんって、意外と女の子に対して気の遣えるタイプだったのね。あ、ごめんなさい。そんな風には見えなかったから」

八幡「何いってるんですか。俺はこう見えて超気遣いの人ですよ?いつもは空気読まないフリしてるだけです」

気を遣ってるからこそ場の空気がしらけないように常に発言を控えてるし、相手を困らせない様に、遊びに行こうと誘われても断るのだ。誘われた事ないけど。


陽乃「読まないフリ…ね。ふーん」何事か納得したかのように、目を細める。

八幡「な、なんスか?」

陽乃「文化祭の時もそうだったのかな…って」全てを見透かしたような瞳を俺に向ける。

八幡「あー…読む読まないといえば、何の本読んでたんですか?」

陽乃「ふふ、なんだと思う?」

居心地が悪くなったのでわざとらしく話題を逸らしたのだが、何事もなかったかのように話に乗ってくれるあたりやはり年上の余裕というヤツを感じる。
いもうとのんならこちらが吐くまで問い詰める。つか追い詰める。心理的なプレッシャーが半端ない。たぶん、吐く前に泣く。つまり泣きながら鳴くことになる。超恐い。


八幡「アドルフ・ヒトラーの“我が闘争”とか…ですか?」もしくはマキャヴェッリの“君主論”とかも似合いそうですね。

この人の場合、ホントに実践しそうでシャレにならないけど。あれ、ハウ・ツー本とかじゃないんだから。

陽乃「あはは。残念。これよ」そういいながら上品な革製カバーをはずしてタイトルを見せる。

リルケ詩集 ―― 正直、意外だった。まぁ、独和対語訳ってのが、この人らしいといえばらしいか。

八幡「初期の恋愛詩集ですか。意外と乙女チックなんですね」

陽乃「あら、失礼ね。私だって乙女よ?」

八幡「え、いや、そういう意味ではなくてですね…」俺は言葉に詰まって頭を掻く。

陽乃「言ってなかったかしら?こう見えて私まだヴァ…」

八幡「誰も聞いてませんっ!!!!」///

なに、しらっとカミングアウトしようとしてんだよ。油断も隙もあったもんじゃねーな。
まぁ一見遊んでいるように見えて、その実、良家の子女なんだから身持ちは堅くて当然なのか。意外といえば意外だし、判断に困るよな…とりあえず保留。


当の本人は狼狽する俺の顔を見ながらクスクスと笑っている。やべ、完全に年下の初心な少年を弄んでやがるよな。やっぱり小悪魔だわこのひと。

八幡「こほん。あー、実は俺も…好きなんですよ」

陽乃「えっ?」急にポカンと口を開ける。

八幡「はっ?」俺、今、何か変なこと言った?

陽乃「えっと、それは…どういう意味なの…かしら?」///

なぜか頬を赤く染め、珍しくわたわたと取り乱している。なんかしらんけど、初めて見たよ、このひとのこんな顔。意外とかわいいとこあるのな。

八幡「“世の恋人たちを見るがいい、やっと告白したかと思えば、もう欺いている”でしたっけ?詩ではないけど、俺の好きなリルケの格言のひとつです」

陽乃「あ、ああ。えっと…“マルテの手記”の一節ね。さすがヒネてるだけのことはあるわね」

八幡「俺に言わせれば、恋愛なんて、それこそ嘘と欺瞞の塊みたいなものですからね」

陽乃「あは。それは同感かも」

いつものように計算高い表情を浮かべて笑う。でもそれはそれで変な勘違いをしないで済む分、俺にとっては安心できる類の笑顔だった。


うい、今日はこのへんで。ノシ

続きはまた明日、同じ時間帯に。


「ずいぶんと楽しそうにお話中のところ、申し訳ないんだけど?」


凍てつく氷のような冷え冷えとした声に振り向くと、いつの間にか俺の背後に憮然とした表情の雪ノ下と由比ヶ浜が立っていた。

なにおまえ普段からやたら俺に冷たいと思ったら冷蔵庫だったの?フリーザーとか搭載してんの?怒ると最終形態に変身したりしちゃうわけ?

陽乃「あら雪乃ちゃん、随分遅かったのね?あ、由比ヶ浜ちゃんと一緒だったんだ。やっはろー」

結衣「あ、や、やっはろー、です」だからそれ敬語のつもりかよ?

ふたりの私服姿を見るのは久しぶりなのだが、なぜか今日は揃って機嫌が悪いようだ。
なんで着いた途端にそんな不機嫌な顔してるわけ?気分悪いんだったらいっそのこともう帰っちゃえば?なんだったら俺が先に帰っていい?…って、いいわけねぇか。


結衣「ヒッキーってば、デレデレしすぎだしっ」プンプン

八幡「はぁ?べつにデレデレなんてしてねーだろ」ダラダラはしてるのはいつものことだし、目もドロドロに腐っている。つまりは普段通りだ。俺的に異常なし。オール・グリーン。

雪乃「由比ヶ浜さん、この男の顔がだらしないのは別に今に始まったことではないわ。それを攻めるのは酷というものよ。本人に罪は…あるのでしょうけれど」

八幡「そうだよな。おまえの口が悪いのも今に始まったことじゃねぇしなっ」多分、未来永劫そのまんまだと思うしな。

もう日本の警察はこいつを“言論のひとり凶器準備集合罪”とかの名目で取り締まるべきだろ。ついでに治安維持法とかも復活しちゃえよ。このまま放置したらそのうち絶対ヤバイことになるぜ?主に俺が。

陽乃「さてさて、みんな揃ったようだし、そろそろ、行きましょうか」陽乃さんが、ひとつ伸びをしてから椅子から立ち上がった。

八幡「そうですね…じゃあ俺、とりあえず帰らせてもらいます」シュタッ

結衣「だから、とりあえずとかいってそのまま帰ろうとするなしっ!」

ちっ、ドサクサにまぎれてこのままバックレちゃおうか思ったのに。


陽乃「ちょっと待ってて。今、お会計済ませてくるから」陽乃さんはそう言ってハンドバックを取ると席を離れた。

俺はテーブルに残されたうっすらとリップ跡の残っているティーカップを見るともなしに見る。…これ、オークションに出したら高く売れねぇかな?

雪乃「私たちが来るまでの間、姉さんとなんの話をしていたのかしら?」雪ノ下が仏頂面のまま尋ねる。

八幡「あ?ごく普通の世間話だけど?」

雪乃「あなたが他人と“ごく普通の世間話”ができるとは思えないのだけれど?」

八幡「そんなことはない。“うん”とか“ああ”とか“ふーん、そうなんだ”とか言ってれば大抵の会話は成り立つようになっている。内容なんて二の次だ」

結衣「二の次なんだ?!」

八幡「当たり前だろ?日常会話なんて、だいたい当たり障りのないことだけ言ってるだけだし、内容なんてほとんどあってないようなもんだからな」

今日はいい天気ですね、とか、そんなの空見りゃ一目瞭然だろ。なんでわざわざ同意求めんだよ。俺はハチマンであってイエスマンじゃねーっつーの。世界の真ん中で、イエス・ウィ・ハチマン!とか叫べばいいのかよ?

雪乃「あなたは普段から他人に対して、その“当たり障りのないこと”すら言ってないでしょ?たまにはうんとかすんとか言ってみたらどうなの?」

八幡「うん?すん?」

雪乃「…処置なしね」雪ノ下が見放したかのようなため息をつく。こいつこういうところはやたらシビアだから、もしかして今のでホントに俺を見限ったのかもしれない。


陽乃「お待たせ~。さ、比企谷くん、行きましょ」

支払いを済ませて戻ってきた陽乃さんが、ごく自然な流れで俺の腕をとる。あまりにも自然すぎて、逃げることに関してはエキスパートとさえ言われる俺が思わず逃れるタイミングを失ってしまうくらい。

結衣「むぅっ…」由比ヶ浜が不満気な声をあげ、

雪乃「姉さん、その男から腕を離しなさいっ!」雪ノ下の叱責が飛ぶ。

陽乃「あら、いいじゃない。今日はデートなんだし。それにまだ反対側の腕なら空いてるわよ?」

悪びれることなく答える陽乃さんの言葉に、雪ノ下と由比ヶ浜が顔を見合せた。

いや、おまいら、これ罰ゲームとかじゃないんだから、別に無理しなくていいんだぜ?
授業で男女のペア決める時みたく、余った者同士でお互いに譲り合うフリして俺のこと押し付けるのとかやめてよね。あれ、ホントにいたたまれなくなるんだからさ。


八幡「ははは(棒)、腕組むのは勘弁してください」

俺はトラウマに押しつぶされそうになりながらも、できるだけ失礼のないように、やんわりと陽乃さんに取られた方の腕を引き抜いた。
ちょうど肘の部分が胸にあたってドキドキしてしまう。由比ヶ浜ならともかく、雪ノ下ならこうはならない。たぶん。怖くて言えないけど。
陽乃さんはチラリと俺の顔を見て、軽く肩をすくめて見せたが特に気分を害したというわけでもなさそうだ。

陽乃「比企谷くん的には肩を組んで歩く方がいいのかしら?」そういいながらそっと俺に寄り沿う。だから余計に近いってば。

八幡「…いや、俺の嗜好とかの問題じゃないですから」当然わかってていってますよね、それ?

適度な車間距離とか保たないと事故起こしちゃうだろ、俺の下半身が暴走してっ!

俺が飛び跳すさるように離れる姿を見て、陽乃さんは意味ありげな笑みを浮かべたが、特に無理強いするつもりはないようだ。
そのまま俺たちの先導をするために、つっつかつっつかと先へ行ってしまう。
その魅力的な後姿を目で追ううちに、俺は初めて自分の過ちに気づかされてしまっていた。


…やっぱり、女性の価値は胸よりお尻かもしれないな、うん。


安心しろ雪ノ下。おまえにもまだ望みはあるかもしれないぞ?


結衣「ヒッキー、どうしたの?」由比ヶ浜が声を掛けきたので、俺の崇高で哲学タイムは打ち切られ、むりやり現実に引き戻される。

雪乃「比企谷くん、なにをグズグズしているの?さっさとしないと置いていくわよっ!?」

八幡「いやだから俺置いてくって、おまえらだけでいったい何処へ何しに行くつもりなんだよ?」既に本来の目的とか忘れてねぇか?

先行する三人の後姿を眺めながら、俺はやれやれと小さくため息をつく。もうマジで早くおうち帰りたいんですけど?
まるでホームシックにかかった子どもみたいだな。つか、この倦怠感をはじめとする頭痛や眩暈の症状は、むしろシックハウスに近いかもしれない。…って、家とか全然関係ねいだろ、これ。


今日の予定について詳しくは聞いていなかったのだが、どうやら陽乃さんの方で色々と手配してくれたらしい。
俺は自分の意志に係らず、言われるがままについていくしかない。雷が来ても大樹の陰に寄り、長ければヘビにでも喜んで巻かれてしまうのが俺という人間のポリシーだから。

陽乃「まずはその頭からね」

雪乃「姉さん、この男の頭の中は今更手を加えてどうなるものでもないわよ?あきらめた方がいいと思うのだけれど」

陽乃「それは知ってるけど、私が言ってるのは中身ではなくて髪型の方よ」

八幡「…俺の頭の中は世間一般でいったいどういう評価受けてんだよ」

雪乃「あら、聞きたいの?あなた、意外とチャレンジャーなのね…」

八幡「…いや、やっぱ遠慮しとくわ…」

おまえの口から聞かされたら、多分しばらく立ち直れそうもないし。

八幡「…っていうか、頭だったら先月切ったばっかりだぜ?」

雪乃「あら、脳の手術でも受けたの?その時に医者からもう手遅れだとは言われなかったのかしら?」

八幡「床屋に行ったという意味だ。おまえそれ、わかってていってんだろ?」

雪乃「ならいっそのことロボトミー手術とか受けてみたらどうかしらね?そうすればあなたのそのヒネた性格も少しは素直になるかも知れないわよ?一度試してみる価値はあるんじゃない?」

八幡「一度試したらもう二度目はねーけどな」つか人道的に問題ありすぎだろ、その発言をするおまえ自身。

雪乃「ところで床屋に行ったのならその飛び出した毛はなんとかならなかったの?」

八幡「いや、一応このアホ毛が俺のトレードマークだからな。これとっちゃったら誰だかわんなくなるし」

結衣「だ、大丈夫だよ!ヒッキーにはまだその腐った目が残ってるからっ!」

八幡「…アホ毛と腐った目だけが俺のアイデンティティの全てなのかよ」

どこらへんに大丈夫な要素があるのか誰か俺に詳しく説明してくれよ。


陽乃さんに先導されるまま、俺達はオサレな感じの美容室に連れて行かれた。
メンズ・ノンケとかポップ・アイに載っていそうなアレだ。読んだことないけど多分そんな感じ。

オサレな店にオサレなカリスマ美容師さんとかがいて、それこそ難解でオサレな専門用語を駆使してオサレな会話をしている…ただひとつ違うのは、今日のお客様はぼっちだったのです…ってナレーションが入りそうな店だ。

つまり、普段の俺なら絶対に近寄らないような処である。むしろ鬼門といっていいくらい。方違えしてでも避けるべきだろ。だれぞ陰陽師呼べよ。

八幡「あー、俺、オサレなお店に入ると死んじゃう病気なんで…」

雪乃「…それはまた新しいパターンね。あなたの場合、そのうち行ける場所がなくなるんじゃないの?」

八幡「いいんだよ、将来的にはずっと家に籠る予定なんだから」

結衣「根っからのヒッキーなんだね…」

雪乃「もういっそのことヒキコモリガヤくんとか名乗ったらどうなのかしら?」

八幡「それならもう中学時代に名乗ってたぜ…勝手に周りが」

結衣「哀しすぎる黒歴史だね…」

八幡「だいたい、髪切られたうえに金払うってなんなんだよ?そんなんじゃ時計の鎖も買えねーだろ?」

雪乃「“賢者の贈り物”…ね。あなたはまともに数も数えられないくせに、どうしてそういった知識だけは豊富なのかしら?」雪ノ下が呆れ顔で突っ込む。

結衣「ふわ?“賢者の贈り物”って…?」

雪乃「ほら、貧しい夫婦がクリスマスプレゼントにお互いの髪と時計を売って、それぞれ時計の鎖とベッコウの櫛を購う話よ?」

結衣「あ、それなら知ってる!たしか…」

八幡「人間の醜いエゴや勝手な好意の押し付けを戒めた、有難くも救いようのない話だ。最後はみんな死ぬ」

結衣「って死なないしっ!」

雪乃「あなたにかかると道徳的なお話も全て悲劇になってしまうのね…」

八幡「俺の今までの人生は悲劇の連続みたいなものだったからな」

雪乃「顔だけは喜劇なのに?」

八幡「だからそういうセリフは小首を傾げながら可愛らしい顔で言うなっつーの…」


今日はこのへんで。ノシ

更新時間は未定ですが、続きはまた明日…できると思います。


お前はこの話が終わったあとも永遠に俺ガイルのSSを書き続けるマシーンになれ

>>336

最近、しょっちゅうネタとか考えてるせいか、思考形態や言動が八幡っぽくなってきて困る。


陽乃「電話で予約してある比企谷ですけど」陽乃さんがカウンターで店のスタッフに声をかける。

スタッフ「あ、承っております。男性の方、一名様ですね。こちらへどうぞ」

特に待たされることもなく案内されたイスに座ると、早速、俺を担当する美容師さんが声をかけてくる。若くてキレイ系のお姉さんだ。

美容師「いらっしゃいませー。どんな感じにしますか?」ニコッ

感じのいい営業用スマイルが腐った俺の目には超眩しい。消費電力量とか高そうだな。JISの照度基準とかに照らし合わせてもちょっと明るすぎでしょ。元気玉かよ。
俺に見せる笑顔といえば、冷笑と嘲笑と失笑と苦笑くらいしかない誰かさんは少し見習うべき。敢えて誰とはいわないが。雪ノ下とか。

八幡「は、はぁ、テキトーにお願いします」常に日蔭者の俺としては、鏡越しとはいえその明るい笑顔を直視できず、つい目が泳いでしまう。

落ち着けよ、俺。別にお巡りさんに職務質問受けているわけじゃないんだから。


俺は普段から髪型とかに気を遣わないなの方だが、それは単に俺自身が無精であるというだけではなく、放って置いても髪型がそれなりになんとかなってしまうからである。
まあブショウであることには間違いがないのだが、別に兜の前立てに“愛”の文字とかあしらっているわけではない。なにそれどこの義風堂々だよ。

だから朝も特にセットとかしないし、当然、整髪料も使わない。人によっては1時間近く時間をかけるヤツもいるみたいだが、そんな時間があるなら間違いなく1分1秒でも長く寝るだろフツウ。育ち盛りの若者には十分な睡眠時間が必要だし、俺なんかちゃんと8時間以上の睡眠時間を確保しているぜ。それでも足りない時は授業中まで寝てるし、超健康優良児。不健全だけど。

しかし、いくら緩いといっても校則もあることだし、今回もあまり奇抜な髪型とかにはしない方が無難だろう。それにあまり目立つと外敵に襲われる心配がある…いるのかよ外敵。


どちらにせよ適当に調髪して簡単に整えてもらう程度にすることに決め、俺はその旨をざっくりと美容師さんに伝える。いや、ざっくりと切られちゃっても困るんだけどね、首とか。


俺が慣れない店の雰囲気にテンパって、ひたすらキョドっているにも関わらず、その美容師さんは気にした風もなく、プロらしくちゃっちゃと作業をすすめながら気さくに話かけてくる。

仕事とはいえ、この俺に会話を仕掛けてくるとは、この人、かなりコミュ力が高えな。もしかしてスカウターとかで計測したら限界値突破してんじゃねーのか?

それにひきかえ俺ときた日には…チラリと鏡に映った自分の姿を見る。

「ふっ…コミュ力…たったの5か…ゴミめ」ボソッ

思わずセルフで突っ込んでしまうくらい悲しい。


美容師「ん?どうかしたのかな?」

八幡「い、いえ別に…」

美容師さんは俺がリラックスできるように、タメ口に切り替えてくれたようだ。このあたりの臨機応変に対応できるスキルもコミュ力の高さゆえなのだろう。
まるで突然十年来の友達でもできたのかと錯覚してしまうような親近感。いや俺、友達いないからよく知らんけど。

美容師「学生さん?」

八幡「はぁ、まぁ」

美容師「いくつ?」

八幡「じゅう…しち…です」

美容師「どこのガッコ?」

八幡「ち、千葉の総武高校…です」

美容師「彼女とかいるの?」

やべ、やっぱり職務質問なんじゃね、これ?もしかして事件当日のアリバイとか聞かれちゃうの?もういっそのことゲロして楽になっちゃう?
カツ丼とか食わしてもらえるかもしれないし。

つか、普段あまりしたことないから、こういうオープンな会話とかって超苦手なんですけど。
今更、日本語が喋れないフリもできねーし、ここはやはりオーソドックスに寝たフリとか?いやいっそのこと死んだフリした方が…って別にクマに襲われたわけじゃないんだから。

再び勢いよく泳ぎだした俺の眼が美容師さんのネームプレートを捉えると、そこには「日隈」と書いてあった。

…うん、やっぱり死んだフリいっとく?


八幡「…いえ、今はいません」

俺は死んだフリを諦めて会話を続けつつも、とりあえず“今は”の部分をさりげなく強調しておく。

本当は過去や現在は勿論、未来についても確率的にも統計的にも実に怪しいところなのだが、初対面の人にちょっと見栄を張って答えるくらいなら許されるよね?
嘘じゃないよ。あくまでも希望的観測だから。例え相手が「ってことは、昔はいたのかな?」って勘違いしたとしても、それはそれで仕方ないし。ここが日本語の難しいところだよね?うん、国語学年3位の俺が言うんだから間違いない。よかった。英語で会話しなくて。しろと言われてもムリだけど。


日隈「…ってことは前はいたってことなのかな?」

八幡「…………………………いません」


なんでいたいけな少年のわずかな虚勢さえ詰みにくるかな、この人。


美容師「そう?あんな可愛いコ三人も連れて、なかなか隅に置けないと思うけど?」チラリと待合室の方を見る。三人ともソファに腰掛けて俺を待っている。別に待っていなくてもいいのに。

陽乃さんはヘアカタログ系のファッション雑誌を見ているし、由比ヶ浜はちょこまかしながら、時折雪ノ下に話しかけ、雪ノ下はそれに対して適当に返事をしているようだ。
時々、由比ヶ浜が引いているところを見ると、声こそ聞こえないがなんとなく会話の内容は想像できる。

十中八九、俺の悪口だな。間違いない。


「ゆきのん、ゆきのん、ほら、この髪型、なんかヒッキーに似合うと思わない?」

「そうかしら?」

「あ、反応薄いー。じゃあこれなんかどうかな?悪くないと思うけど」

「ふぅー、由比ヶ浜さん、何をもってその髪型が比企谷くんに似合うと言っているのかしら?」

「え?な、なんとなく…かな?雰囲気とか…?ヒッキーも、もう少しオシャレとかすればカッコよく見えるじゃないかなーって」

「いいこと、由比ヶ浜さん、あの男は髪型を変えたくらいで更生するようなまともな人間ではないのよ?だいいちあの腐った目から滲み出るような負のオーラが…」

「あ、で、でも、ヒッキーの毛って、意外と柔らかくてネコっ毛なんだよ?」

「ね、猫?ひ、比企谷くん、猫なの?」

「え?あ、あー…、別にヒッキーが猫ってわけじゃないんだけど、確かに猫みたいな手触り…かな…?」

「わ、私も、こ、今度触らせてもうおうかしら…」///

「…ゆきのん、猫ならなんでもいいんだね…」


確かに見てくれはいいかもしれないが…いや、見てくれだけはかなりレベル高いことを認めるのはやぶさかではないのだが、中身はアレだから。
アレ過ぎるくらいアレだから。もうアレがアレしてナニしちゃってるレベル。具体的に言葉に出しちゃうと、俺の生命がアレしちゃってナニしそうだからそれこそ何も言えないですけどね。

八幡「あー…えーと…す、隅が好きなんです」例えば教室の隅とか。ちなみに重箱の隅をつつくのとかも超得意だし。

俺がしどろもどろにテキトーな返事をすると、

日隈「なにそれー?キミって面白いコなんだね」何がツボにはまったのか、コロコロと笑う。

ふと鏡越しに背後を見ると、雪ノ下と由比ヶ浜が、不機嫌そうな顔でこちらを見ていた。
だから俺にどうしろっていうんだよ?拘束されてんだから、逃げるわけにはいかねーだろ?
しかも相手はハサミとか剃刀とか物騒な刃物持ってるし、不用意に動いて万が一刺されちゃったりしたらどうすんだよ?


日隈「ね、ところでだれが本命なの?」ヒソヒソ

なんかこの人、とんでもない思い違いをしているようだ。

八幡「や、俺、競馬とかやらないんで本命とかないですから」

日隈「とかいっちゃって。そうね、私の見立てでは…」

八幡「は?」いや、だから勝手に見立てんなよ。

日隈「あの、黒髪の子かな」どうやら雪ノ下のことらしい。なに勘違いしてんだよこの人。残念でした正解は4番の戸塚です。

八幡「…どうして、そう思うんですか?」一応、念のために聞いている。今後あらぬ誤解を招かぬよう肝に銘じるためだ。なんなら座右の銘にするまである。

日隈「ふふ。内緒。でも知ってる?それ“当たりです”って言ってるのと同じなんだよ?」

八幡「…勘弁してください」

本命なんてとんでもないが、雪ノ下のことだから大穴ならあるかもしれない。例えば俺を陥れるために、落し穴掘るとか。マジでありえるから超怖い。しかも穴底に竹やりとか仕込んでいそうだし。いや、その前にむしろ俺が自分自身が穴を掘りそうな気もするんですけどね。墓穴とか。


ちょっと短いですが、キリがいいので今日はここまででノシ

明日また深夜に更新しますね。


セットが終わり、だいたい小一時間ほどでやっと解放された。

日隈「お疲れ様。比企谷くん…だっけ?良かったらまた来てね」

八幡「あ、あー…、はい。ありがとうございます」

去り際に日隈さんがとびきりの営業スマイルを向けてくれた。社交辞令にしても美人さんに言われるのはやっぱり嬉しいもんだな。

きっとこうやってついフラフラと飲み屋のホステスとかにお金つぎ込んで身を持ち崩してしまう男はたくさんいるんだろう…うちのクソオヤジとか。
俺もその素質を遺伝子レベルで受け継いでいるかもしれないと思うと、さすがにちょっと不安になってくる。無意識のうちに鼻の下が伸びているあたりとか特に。

八幡「ふー、拘留所から釈放された時の気持ちがよくわかるぜ。シャバの空気はやっぱうまいなぁ」俺はごまかすようにひとりごちる。

雪乃「あら、普段から空気を読むことすらしないあなたがいうと、なぜだかものすごく違和感を感じるわね…ヒギシャヤくん?あら、噛んでしまったわ」

って、何気に噛んだふりして俺の名前間違えるなよ。誰が被疑者だよ?つか、それ、ぜってーわざとだろ?


八幡「生きてるって実感するよなーっ」

雪乃「死んだ魚みたいな目でそんな清々しいセリフいわないでくれるかしら。とても不快だわ」

なぜか雪ノ下の機嫌が超悪い。ついでに俺に対する態度はもっと悪い。しかもそれがデフォルトだという事実が一番最悪なような気がする。

とりあえず、恐らくこれで一生分の日常会話のストックと、俺の持つ相槌スキルは全て使い果たした。
もうしばらくは誰とも話したくない気分だ。手持ちの矢弾の尽き果てた今、誰かに話しかけられたりでもしたら、マジでヤバいかもしれない。
特に相手が雪ノ下とかの場合は、言葉の暴力とかもうフィジカルな凶器と同レベルだからな。ペンは剣より強く、雪ノ下の罵詈雑言は更に強い。法律で規制しろ規制。


陽乃「へぇ、きれいになったじゃない。悪くないわよ?」

結衣「なんて言ってカットしてもらったの?」

八幡「や、別に…。テキトーにお願いしますって言っただけだけど」

雪乃「比企谷くん、あなたの生き方じゃないんだから、なんでも適当はよくないわよ?」

八幡「なぜ俺の生き方が適当だと断言する?」

雪乃「じゃあ、いきあたりばったりではなく、堅実な将来設計とか考えてるのかしら」

八幡「当たり前だ。まずとりあえず今の俺の学力でも入れそうな大学選んで進学すんだろ?」

雪乃「…いきなり志が低いのね」

八幡「で、在学中に優しくて可愛い彼女を見つける」

結衣「べ、別に…大学になってからじゃなくても…いいんじゃない…かな?」モジモジ

八幡「まあいいから話の続きを聞け」腰折るなよ。おまえもしかしてスズメなの?

雪乃「それで、その彼女にフラれてからどうするのかしら?首でも吊るの?随分短くて悲しい人生なのね」

八幡「いつの間にすでにフラれたことが確定してるんだよ…」つか勝手に俺のこと死なすなよ。

雪乃「だって計画にはリアリティがあった方がいいでしょ?」

八幡「リアリティだけあって、夢がねーだろ」リアルで死なすなよ。

俺の人生は夢すら見させてもらえないのかよ?まぁ、おまえといるだけで十分悪夢だけどな。ドリーム・キャッチャーとか必要なくらい。ダース単位で。


八幡「あー…で、卒業したらその彼女と結婚して、俺は専業主夫になり、奥さんが働いて一生養ってもらうわけだ。どうだ、これ以上ないくらいパーフェクトな人生設計だろ?」

雪乃「…どうだと言われても、そこまで目を腐らせながら嬉々として将来の夢を語る人なんて初めて見たわ」雪ノ下がかなりの勢いで引いている。

結衣「やっぱり、腐ってるのは目だけじゃなかったんだ…」由比ヶ浜がポショリと呟く。だからやっぱりってなんだよ、やっぱりって。

雪乃「由比ヶ浜さん、この男の場合、腐った性根が目に顕れているの。だからその表現は必ずしも正しいとはいえないわね。ミミズだってオケラだって、ましてやゾンビや比企谷くんだって、一応それなりに一生懸命生きているのよ?差別しちゃいけいないと思うわ」

いやいつも差別的発言を繰り返してるのはむしろおまえの方だっつーの。つか、さすがにゾンビは生きてねぇだろ。


八幡「はぁ?おまえら何言っちゃってるの?誰にだって職業選択の自由が認められてるんだぜ?しかも昨今の男女共同参画の風潮にも沿ってるし、専業主夫なんて、今、まさにトレンディな職種だろ」

雪乃「もっともらしい事を言ってるように聞こえるけど、要は“働いたら負け”とかいってるニートと同じレベルの理屈ね。こういう男に騙されちゃだめよ由比ヶ浜さん」

八幡「俺を悪い男の見本みたく言うな」

雪乃「あら、見本じゃなくて、まさに悪い男そのものでしょ?ホルマリン漬けのまま“腐れ目・バ科・低属・悪い男(個体名:ヒキガヤハチマン)”と書いたラベルを張って、学術標本としてしかるべき場所に展示してもいいくらいだと思うけれど」

八幡「ばっか、何いちゃってるんだよおまえ、俺は他人に悪い影響も良い影響も与えない、クリーンでエコな人畜無害の無印ぼっちなんだよっ!」

雪乃「毒にも薬にもならない男ってのが、ある意味いちばん最悪なのよね…」

だから俺の存在価値をバッサリ切り捨てるようなこと言うなよ。こいつもしかして夜な夜な辻斬りとかしてんじゃねぇの?


陽乃「なるほど、でもその計画にはひとつだけ致命的な欠点があるみたいね」


それまで黙って話を聞いていた雪乃さんがいきなり会話に加わってきた。つか、いつの間に“会話”って一方的な罵倒を意味するようになったんだよ。

八幡「えっ?そ、そうですか?」それは聞き捨てならねぇな。俺のこの完全無比な人生設計に欠点がある…だと?

雪乃「ひとつだけ…なのかしらね?」雪ノ下が別の意味で首を傾げる。

陽乃「さて質問です。比企谷くんは、どうやって、その可愛くて優しくて将来性のある女の子を口説き落とすつもりなのでしょう、か?」


…………しまった。盲点だったぜ。


八幡「…うっ、そ、それは…土下座…とか?」

結衣「いきなり土下座とかされたら女の子の方でも引くってば…」そう言いながら由比ヶ浜が既に引いていた。人間引き際が肝心だよな?意味違うけど。

雪乃「…どうやらそれについては何も考えていなかったみたいね…相変わらず、無策というか無謀というか無能というか…とにかく死んでくれないかしら?」雪ノ下が心底蔑むような眼で俺を見る。だから[ピーーー]なよ。生命は尊いんだぜ?特に俺の命とか。

八幡「そ、そんな些細なことにまで気が回らなかっただけだっつーの」策士、策に溺れるとはまさにこのことか?

結衣「…それって全然、些細なことじゃないと思う」

雪乃「つまり、あなたの言うその完璧な計画とやらは、基本設計の段階からして既に破綻してるということよ。もう、いっそのことすっぱりと諦めてもっと堅実な方法を模索しなさい、そうすればあるいは…」


陽乃「…だから、大学に入ってからじゃなくて、今のうちに彼女候補を見繕っておいた方がいいと思うわよ?」陽乃さんが雪ノ下のご高説を遮るようにして、意外な発言をする。

八幡「え?」あまりにも意外すぎて、この人が何を言ってるのかイマイチよくわからない。もしかして俺の頭が悪いだけかもしれないがそのあたりは華麗にスルー。

結衣「そ、そうだよっ。あたしもそう思うっ」なぜか由比ヶ浜が食い気味に賛同する。もしかして腹が減ってるのかもしれない。食い気味だけに。

八幡「え?でも、優しくて可愛くて、しかも将来性のある女子なんて、それこそある意味、絶滅危惧種みたいなもんじゃないですか?」

自分で言っといてなんだけど、どこにいんだよ、そんなの。まさしくレッドデータガール。電子機器とか壊しちゃうかもしれない。
多分、時代が時代なら同じ重さの金と交換されるくらい貴重。高翌嶺の花どころか、ギアナ高地にのみ咲く幻の蘭みたいな希少種。

雪乃「しかも、あなたみたいな腐った目をした人間のクズに好意を持ってくれる女子なんて言ったら、それこそ都市伝説みたいなものですものね」

八幡「まぁ確かに、少なくとも今現在のところ、俺の周りにはいないわな…」

結衣「そ、そうでもないんじゃないかな」/// ゴニョゴニョ

陽乃「もしかして案外近くにいるかも知れないわよ?ね、雪乃ちゃん」陽乃さんが、そういって意味ありげな含み笑いをしてみせる。

雪乃「さ、さあ。それはどうかしらね」///

いや、別に俺の彼女は白いメリーさんとか、メリーさんの羊とか、戦場のメリークリスマスとかじゃなくていいから。
“もしもしあたしメリーさん、今あなたの後ろにいるの…”とか俺のスマホにかかってきたらどうすんだよ。恐くて夜ひとりでトイレ行けなくなるだろ。


美容室が済んだので、次はいよいよ本日のメインテーマとなる服選びである。

ス○ラスブ○ゴ、タ○・ユア・○イ、ア○アスキュー○ムとか、いったいそれどこの国の格闘技だよみたいなブランドやら店の名前言われたが、当然のことながら、あまりピンとこない。
ただし、連れてこられた店内で、チラリと値札を見ただけだが、今後生涯を通じて俺が独力で買うことも着ることもないであろうということだけはよくわかった。

シャツ一枚で俺の小遣いの三か月分は間違いなく吹き飛ぶ。もしかして半年分かもしれない。なにそれ婚約指輪かなんかかよ。
こんな高い服で気軽に外出なんかできるわけねーだろ。服着たまま誘拐されちゃったらどうすんだよ。これってもしかして床の間に飾っておくもんなわけ?

結衣「あー…、あまりオシャレなのはヒッキーに似合わないと思うんだけど…」

雪乃「由比ヶ浜さん、おしゃれな服が似合わないんじゃないの。この男に似合う服自体が存在しないのよ」

雪ノ下が由比ヶ浜に対して母が娘に懇々と諭すように話しかける。

結衣「そうかなー。あ、ボーダー柄とか似合うんじゃない?」

雪乃「それは彼の心が邪(ヨコシマ)だからかしら」

八幡「そうじゃねーだろ」

雪乃「でも、確かに囚人服も横縞よね」

八幡「それいつの時代の話だよ?」

雪乃「今のうちに慣れておいた方がいいかもしれないわよ…囚人服」

八幡「だからなぜ俺が刑務所に収監されて服役することを前提に話をすすめてるんだよ」


結局のところ、服のコーディネートは全て陽乃さんにお任せすることにした。

スポンサーだから仕方ないよね。いや別に俺の意見がことごとく却下されたわけじゃないから。最初から聞いてもらえなかっただけだし。

結衣「そういえば、ヒッキーって、いつもどうやって服選んでるの?」

八幡「や、かーちゃんが買ってきたのをテキトーに着てるだけだけど?」多分、ユニシロとか、そこいらのバーゲン品だと思う。

あとはテキトーに金渡されて小町と一緒に買いに行く。小町がいろいろとアドバイスをくれるんで、服選ぶのはいつもすげぇ他人任せだったりする。


「お、小町ぃ、これなんかいいと思わね?」

「うーん、そうかなー。でも、お兄ちゃんにはこっちの方が似合うと思うよ?」

「そ、そうか?」

「うん、全然いいよっ!カッコイイっ!モテモテだねっ!ね、これにしよ、これ」

「そうか、うん。そうだな。よしわかった。これくださーい」

「あ、でも、そうすると、ちょっとお金が余っちゃうねー。そうだっ!パフェでも食べてかない?もちろんお兄ちゃんの奢りでっ!」


八幡「…みたいな感じだ。どうだ、可愛くてよくできた妹だろ?うらやましいか?」

結衣「…ヒッキー、それ完全に小町ちゃんに騙されてるし」


まるで着せ替え人形のように、とっかえひっかえで服を着替えさせられたのだが、陽乃さんはイマイチ納得していないようだ。

雪乃「むしろ中身を替えた方が早いんじゃないかしら?」

八幡「それじゃ意味ねーだろ」

雪乃「じゃあ、せめて顔だけでもきれいなのにとりかえたら?」

八幡「いや俺アンパ〇マンじゃねぇし」

雪乃「そうよね…どう見てもヒキガヤ菌はバイキ〇マンって感じだものね」

八幡「何気にヒキガヤ菌言うな」過去のトラウマが甦ってきちゃうだろ。

くっ…俺の封じられた記憶がっ…って中二病みたいにだなそれ。

陽乃「顔もかわいいし、どの服も決して似合わないってわけじゃないのに、どうしてトータルだとこんなに不審人物に見えてしまうのかしら…?」

雪乃「確かに、身なりが整っているだけ余計に胡散臭く感じられるわね」

結衣「…なんか、結婚詐欺師みたい」

ポショリと漏らした由比ヶ浜の言葉に、雪ノ下が微妙な顔をする。つか、おまえら服選ぶ前にまず言葉選んだらどうなんだよ?

雪乃「きっとその腐った魚のような目が全てを台無しにしてるのね」

結衣「ならずっと目をつぶっているとか?」

八幡「歩けねーだろ」

雪乃「どうせなら目をつぶすとか?」

八幡「なんでそうなるんだよ」

陽乃「いっそのこと目玉ごとえぐり出してついでに鼻と耳も削ぎ落とすとか?」

八幡「…もう少し穏便な方法思いつかないんですかね?」ヒクッ

それ、いつの時代のどこの国の刑罰だよ。おまえら姉妹そろって世界刑罰大事典かなんかなの?


つーことで本日はこのへんで。ノシ

おまいらいい加減寝ろください。

続きはまた明日。


ZZZZZZZZ…

はっ、いかん、つい寝ちまうとこだったぜ。


八幡「サングラス?俺が?」

結衣「そ、どうかな?」

由比ヶ浜がまた突飛なことをいいだした。とっぴすぎてとっぴっぴな感じだ。スポーツ万能な緑の恐竜とか、頭にプロペラつけた茶色い雪男とか出てきそうだなそれ。

八幡「いや俺、サングラスどころか眼鏡すらかけたことないんだけど…」

雪乃「不思議ね。それだけ腐った魚のような目をしていれば、少なからず視力にも悪い影響がありそうなものなのだけれど」

八幡「そうか?むしろDHAが多く含まれていて頭がよくなりそうなもんだろ?」

雪乃「…あなたのその自分の欠点を肯定するところ、逆に尊敬に値するんじゃないかとさえ思えてきたわ」

八幡「ならもっとそれなりに敬意とか払えよ…」

陽乃「あ、ちょうど私、持ってるわよ。男女兼用のデザイナーズ・サングラスだから、別におかしくないでしょ」

俺は仕方なく陽乃さんが差し出したオサレなデザインのサングラスを受け取り、そっとかけてみる。

思ったより軽いし、視界もそれほど暗くないのな。これなら自分のコピー増やしたり、違法入国の宇宙人とかも余裕で捕まえられるかもしれない。


結衣「…へ?」///

雪乃「…え?」///

陽乃「…あら?」///

想定外の反応にとまどう。まさか上下逆に乗せちゃったとか?

八幡「…んだよ?そんなに似合わねぇか?」

もしかして知らないうちにウルトラセブンとかに変身しちゃったわけじゃないよな。いやどっちかっつーと俺、ウルトラハチマンなんですけど。直訳すると超八幡。なんか、ぼっち臭がハンパないなそれ。


陽乃「い、意外と似合うものなのね…」陽乃さんが戸惑いがちに呟き、

結衣「ちょ、ちょっとカッコイイ…かも」由比ヶ浜がそこはかとなく感心し、

雪乃「せっかく笑う準備までして待っていたというのに…」雪ノ下が失望の溜息をつく。

いや別にウケねらってやってるわけじゃねえし。もしかして、くまだま○し的な何かを期待してたのかよ?いや、俺にそんな持ちネタねぃし。
今日はそういう趣旨の集りだったわけ?やっぱり俺もう帰っていい?

三者三様の表現ではあるが、別にクサしているというわけでもないらしい。どうやら別の意味で期待に添えなかったようだが、それは俺の感知するところではない。

言い出しっぺの由比ヶ浜が一番驚いているあたり、なんかダメ元でその場しのぎの意見言ってみたらなんとなく採用されちゃったよみたいな雰囲気だな。
こうやってまた余計な仕事しょいこんじゃったりするんだよな社畜ってヤツは…。単なる思いつきで言ったんだから明日の朝イチで企画書なんてまとめられるわけねーじゃねーか。しかもプレゼンまでしろってか?…って、だからそれいったいどこの誰の話なんだよ。


八幡「もういいだろ?なんか疲れてきたし。そろそろあきらめて帰らない?」

さすがに慣れない服装が苦しくなってきたので、ネクタイを緩め、ついでに髪に手を突っ込んで丁寧にセットされた髪型を少し崩す。

結衣「…あ、それいいかも!」

八幡「え?…帰っていいの?じゃ、おつかれっ!」

結衣「そうじゃないしっ。だから自然に帰ろうとするなしっ!」

八幡「なにをいう、自然回帰は人間の原点だろ」

雪乃「むしろあなたは土に還るべきだと思うのだけれど」

八幡「さらりと怖いこといってんじゃねーよ」


陽乃「うん、でも、そのやさぐれた感じがなんかちょいワルっぽくていいかもしれないわね」

雪乃「そうね、比企谷くんの場合、やさぐれたり、うらぶれたり、おちぶれたりするのとかは得意ですものね」

八幡「うるせーよ」ついでにいうと落ちこぼれるのも超得意だったりする。現在進行形で。

結衣「あ、でもほら、孫にも衣装って言うし?!」

八幡「おまえもしかしてそれ誉めてるつもり?」

雪乃「由比ヶ浜さん、その諺のしめすところのマゴは子子孫孫の孫ではなくて、馬の子という意味なのよ?まぁどこの馬の骨ともわからない点では確かに言い得て妙かもしれないのだけれど」

八幡「馬だけにウマいこといったつもりか?!」

陽乃「30点」

相変わらず点数のつけかたがショッパイな、このひと。


しかし、ちょいワルの馬っていったいどんなだよ?黒王号とか松風みたいなヤツのことか?俺、世紀末覇者でも傾奇者でもねぇぞ?

八幡「つーか、おまえ、もう少しなんか言いようがあんだろ?」

雪乃「ごめんなさい。言葉がたりなかったようね。その服装は本当にとてもよく似合ってると思うわ、あなたの卑小な小悪党ぶりに」

八幡「…いや、よくわかったよ。おまえに俺を誉めるつもりが一切ないということだけはな…」


陽乃「よし、とりあえず、これでルックスについてはクリアね。後は、作法とかマナーなんだけど…」

八幡「ゲッ、まだあるんですか」

陽乃「当然でしょ。仮にも私の彼氏なんだから、完璧とはいえないまでも、それなりのレベルになってもらわなくちゃね」

経験値稼いでないんだから、装備だけ充実させてもレベルアップとかムリでしょ。

つか、あんまり彼氏彼氏強調しないでもらえますかね?なんか雪ノ下と由比ヶ浜の俺を見る視線が徐々に冷たくなるから。
あー秋も近いなよー。俺の周りだけ一足飛びに冬だけど。この分だと俺に春とかは当分来そうにないよな。


その時丁度、どこかで聞いたことのあるような軽快なメロディが聞こえてきた。

どうやら陽乃さんのスマホに着信があったようだ。ハンドバックから取り出し、画面を確かめると、形のいい眉を顰める。

陽乃「ちょっとゴメンなさい…はい、もしもし?」

陽乃さんは少し場所を移動して何やら話こんでいたが、少し間をおいてから、

陽乃「雪乃ちゃん、ごめんなさい、先に支払い済ませててもらっていいかしら?」と慌ただしく雪ノ下に声をかける。

雪乃「わかったわ」雪ノ下はそう答えて、店員さんを捜しにカウンターに向かった。


残された俺と由比ヶ浜は急に手持無沙汰となり、ふたり並んで立ったまま、陽乃さんと雪ノ下の戻りを待つこととなった。

何気に広い店内を見回しているうちに、正面に置かれた姿見越しに由比ヶ浜と目が合う。

八幡「…な、なんだよ」///

結衣「…べ、別に」///

なぜか気まずいような雰囲気が流れる。いや別にやましいことは何ひとつないよ?

うっすらと化粧したことで、いつもより少し大人びて見える由比ヶ浜の頬が、ほんのりと桜色に染まってかわいいだなんて思ってもいないし、目を伏せたまま手にしたポーチをちんまりと持ってもじもじしている姿がなんとなくいじましいなんてぞんぜん考えてもいない。


だいたい俺が由比ヶ浜とふたりきりになったくらいで…って、だから上目遣いで俺の方をチラチラみんじゃねぇよ。
おまえがそうやって過剰に意識するから相乗効果でますます俺の居心地が悪くなるんだろ。

もうこの地球上に俺のいていい場所とか残されてないのかもしれない。いや流石に悲観的すぎだろそれは。


八幡「…コホン。あー…、由比ヶ浜…」俺は現状を打破すべく、最後の手段に出る。もう最後かよ。他に方法とかないの?

結衣「え?な、なに…かな?」///

八幡「こうしてふたりだけになったわけだしさ、」

結衣「う、うん」ドキドキ

八幡「俺もう帰っていいかな?」

結衣「そうだね…って、いいわけないしっ!」

八幡「ちっ」

結衣「なんでいつもそうやってすぐ帰ろうとするかな…」

八幡「まあいわゆる動物の帰巣本能ってヤツだな」

ちなみに俺の帰巣本能は渡り鳥並み。例えどこにいても家の方向だけは直感的に把握している。

結衣「…生まれながらのヒッキーなんだね」

八幡「カッコよく、ナチュラルボーン・ヒッキーと呼んでくれていいんだぜ」

結衣「意味同じだし、全然カッコ悪いし…」


結衣「あ、ヒッキー、ネクタイが曲がってるよ?」

由比ヶ浜が俺のキメ顔を無視して服装の乱れを指摘する。おまえいつの間に風紀委員よ?

八幡「さっき緩めたからだろ?」俺は別段気にならないが、いざ直そうと思っても普段あまりネクタイしないだけに要領がわからん。

ネクタイは社畜の象徴みたいなもんだし、できたら一生したくない。首いヒモ巻くなんて自[ピーーー]るか死刑の時意外ありえないだろ。いやどちらかというとそれがありえちゃったりしたら困るんだけど。

ちなみにうちのガッコはわりかし校則が緩いので、公式な行事に参加する時以外は、特にネクタイの着用が義務付けられていない。
材木座のように一部生徒は常時ネクタイしているが、俺は基本ノーネクタイだし、葉山なんかはオサレな紐タイを着用している。
戸塚に至ってはいつもジャージだ…いいのかそれ?でもかわいいから許す、俺が。
そういえば戸塚の制服姿って、見たことがない気もするが、超似合いそうだよな…特にスカートとか。


結衣「もう、ホラッ。かしてみるしっ」

俺がモタモタしているのを見かねたのか、由比ヶ浜が正面に回り、ネクタイの結び目をちゃっちゃと直しはじめる。
お互いの顔の位置がかなり近いのも気にしていないようだ。こいつは時々あざといくらい女らしさを見せるかと思えば、無意識のうちにやたら無防備な面をさらす時もあるからな。俺としてもどっちが素なのか判断に困ることがある。
ふわりとしたフローラル系の香水の匂いが鼻孔をくすぐる。このシチュって、なんとなく…新婚さんみたい…じゃね?

八幡「おまえ、なんでネクタイの締め方とか知ってんの?」黙っているのも恥ずかしいので、照れ隠しに話しかける。

結衣「んー?たまにパパのネクタイとか直してあげることもあるしー…」


「お似合いですね」


八幡&結衣「え?」///


突然、声をかけられて戸惑う。いつの間にか初老の店員さんが傍らに立っていた。どうやら雪ノ下と行き違いになったようだ。

結衣「え?ひゃっ?そ、そんなんじゃないです!」///

店員「そうですか?そんなことないと思いますよ?」にこりと上品な笑みを浮かべる。

結衣「えっと…そう…なの…かな?」/// 由比ヶ浜がチラリと上目遣いに俺を見る。

ちょっと待て、由比ヶ浜。おまえ何勘違いしてんだよ、ちげえだろ、そうじゃなくてだな…


店員「ええ、サイズも丁度いいようですし、色もお客様によく似合ってらっしゃいます」

結衣「え?あ、そ、そっち? ですよねー。あ、あはは…」///

ほれみれ、変なこと考えてんじゃねーよ。俺の方が反応に困っちゃうだ…

店員「おふたりともお若くてらっしゃるようですが、もしかして、ご夫婦ですか?」

八幡&結衣「なっ?!」///

結衣「ちちちちちちちちち、ち、違います。そそそそそそんな、ふふふふふふ夫婦なんて言われたら…あああああああたし…こここここ困ります」/// 

そうですねー。俺もどんな顔していいか困りますよねー。つか、いい加減、ネクタイから手を離せよ、首締まって苦しいんだってば。



「あら、由比ヶ浜さん、その男を縊り[ピーーー]なら、及ばずながら私も手を貸すわよ?」


物騒な物言いをしながら雪ノ下が戻ってきた。

結衣「あ、あ、あ、ゆきのん?だ、大丈夫だからっ!ひ、ひとりでできるしっ!」///

そう言って更にキツく俺のネクタイを締め上げる。ギブギブ。ギブアップだってば。いや、ホント、そろそろ頸動脈が締まるから。マジでやばいから。

雪乃「あ、あら、そう…」あの雪ノ下が珍しく引いている。

結衣「へ?」やっと由比ヶ浜が気がついて、俺のネクタイから手を離した。

八幡「ゲホッ…おまえ、自分で何いってるか全然わかってねーだろ…」

正直、少しだけお花畑が見えました。その向こうで、死んだじーちゃんとばーちゃんが手を振ってるのも。


今日はこんなところで。ノシ

できたらまた明日更新します。最近帰りが午前様なので、ちょっとムズいかもですが(白目

「馬子にも衣装」の馬子って、馬の子、じゃなくて、馬を引く仕事をしてるような子供の意じゃなかったっけ?
要するに、普段汚い格好でそんな仕事をしてるような子供でも、きれいなおべべを纏えばあら不思議、みたいな。


>>407

さんすこ、知らんかったわ(汗
では訂正オナシャス。

>>390

雪乃「由比ヶ浜さん、その諺のしめすところの“マゴ”は子子孫孫の“孫”という字ではなくて、“馬の子”と書くのよ?まぁどこの馬の骨ともわからない点では確かに言い得て妙かもしれないのだけれど」

>>407

厳密には子供じゃなくてもいい。馬を引く仕事の人全般のことだね


>>409

蘇我馬子…い、いやなんでもないです。


雪乃「姉さん、遅いわね…」

八幡「そういえばそうだな。もしかして先に帰っちゃったとか?」

結衣「まさか、ヒッキーじゃあるまいし…」

八幡「や、俺は今から帰るところだけど?」

結衣「だから隙見てすぐ帰ろうとするなしっ!」

雪乃「私、ちょっと探してくるわ」

八幡「…ひとりで大丈夫か?迷ったりするなよ?」

雪乃「あなた私のことなんだと思っているのかしら?」

八幡「迷子予備軍だろ?」


こいつの方向音痴が遺伝だとすると、もしかしたら、あねのんの方もかなりヤバイかもしれない。多分、今頃アラスカあたりだろう。
ここで雪ノ下を捜索に行かせたら二次遭難に発展する恐れもある。

雪乃「失礼ね。大丈夫よ。普段からちゃんと地図とコンパス持ち歩いてるから」

八幡「大都会(俺的に)のド真ん中でフツウにオリエンテーリングとかしてんじゃねーよ」

いやむしろこいつの場合は生死をかけたサバイバルなのかもしれない。雪ノ下ならまず間違いなく住宅地とかでもフツウに遭難しそうだよな。救助隊の皆さんも忙しいんだからあんまり手ぇ煩わすなよ。一応、3日分の非常食とかも持ってかせたほうがいいのか?


八幡「さて、じゃあ俺もちょっと…」雪ノ下が姿を消したところで、由比ヶ浜に声をかける。

結衣「え?ヒッキー、どこ行くの?あたしも行くっ!」

八幡「…いや、トイレなんだけど?おまえも一緒に来るのか?」

女子とツレションとかはさすがにちょっと絵面的にも倫理的にも問題あんだろ。これがもし戸塚なら…やっぱり問題あるような気がするけど。
もうこの際性別は、男性・女性・戸塚ってくくりでいいんじゃね?早く法律改正とかしろよ。俺が戸塚と結婚できるように。

結衣「あっ、やっ、そーゆーことは先に言うしっ!ヒッキーのばかっ!」///

八幡「なんでトイレ行くくらいでいちいちバカ呼ばわりされなきゃいけないんだよ…」

おまえ、バカって言う方がバカだって学校で習わなかったのかよ?ホントにバカだよな。


トイレで用を足して、ハンカチで手を拭きながら元の場所に戻ろうとすると、どこからか陽乃さんと雪ノ下の低い話し声が聞こえてきた。

どうやら迷子になることなく無事姉妹の再会を果たすことができたようだな。
もしかして女子もツレションとかしたりするのかもしれない。でも個室だから会話とか超やりにくそう。壁叩いてモールス信号送ったりしてるの?

俺はふたりの姿を求めてあたりを見回す。すぐ近くにいるはずなのに、声だけはすれども姿は見えない。
仕方なく、声のする方向を頼りに歩き出そうとすると、不意にふたりの声が少しだけ大きくなる。


陽乃「…じゃあ、雪乃ちゃんにとって比企谷くんは、何なのかしら」


思わず足が止まる。なに話してんだよこいつら。


雪乃「彼とは同じ部活動の部長と三下の部員よ。それ以上でもそれ以下でも、それ以外のなにものでもありえないわ」

おいおい三下は余計だろ。確かにその通りだけど。

陽乃「ふーん。だったら仮に、私が本当に比企谷くんとお付き合いすることになっても、別に構わないわけね?雪乃ちゃんにとって比企谷君はただの三下なんだから。」

いや、だから三下じゃなくて部員だっつーの。つか誰と誰が付き合うって?

雪ノ下「…っ!それは…」言葉をつまらせる。

やれやれ、なに張り合ってんだか。
普段の雪ノ下なら、“あら、姉さん、随分趣味が悪いのね。あんな腐った目の持ち主でよければどこへなりとも連れてってくださって結構よ。もっとも、連れて歩くだけで姉さんの評判が地に落ちることは火を見るより明らかなのだけれど”くらいのことは言ってのけるだろうに…何それ我ながら超悲しすぎね?

とにかく、お前は金輪際ギャンブルとかはやるな。絶対に熱くなって身を滅ぼす。いや、負けた八つ当たりで逆に世界の方を滅ぼすぐらいのことはやりかねん。もう一生寝てろよ。ルルイエとかで。


雪乃「た、例え姉さんであっても、雪ノ下の家名に泥を塗るようなマネは許されないわ」

家の名まで汚れるのかよ…俺どんな汚染物質なんだよ?世間的に除染されちゃうようなレベル?排除するためにゼオライトとかベントナイトとか必要なの?

陽乃「いい加減、素直に認めたら?雪乃ちゃん、あなたは比企谷くんのことが…」

雪乃「違うわっ」

雪ノ下がひときわ大きな声で姉の声を遮る。その響きは、まるで自分自身に言い聞かせるようにも聞こえた。

陽乃「やれやれ、本当にふたりとも頑固なんだから。そんなところはよく似ているのね」

え?ふたりって俺も入ってるの?いつの間にツーマンセル?

陽乃「…それとも、お互い自分の気持ちに気がつかないフリをしているのは、もしかしたらあのコのためなのかしら?」


その時俺の頭に浮かんだのは、今、ここにいないひとりの女の子だった。絶えず周りの空気を読み、それゆえに深く踏み込みことのできない、優しくて元気でそれでいて臆病なところもある女の子。彼女は今この時でさえ、ずっと待ち続けているはずだ。雪ノ下のことを。

雪ノ下「ゆ、由比ヶ浜さんは関係ないわ」

陽乃「あら、私はなにも由比ヶ浜ちゃんのことだなんて言ってないわよ?」

雪ノ下「…っ!」

やれやれ、ぼっちが慣れない友達を持つと、やっぱりそれだけで弱点になるんだな。その点、俺には弱点も死角もない。なんといっても友達がいないし。


雪乃「ね、姉さんには関係のないことでしょ?」

陽乃「あら、関係なくはないわ。雪乃ちゃんは私にとってたったひとりのかわいい妹なんだから」

うんうん、その気持ちはよくわかるわー。俺だって小町のこと超大好きだし。その一点においては意外と気が合うかもしれないな。妹に向ける愛のベクトルが違いすぎるけど。

陽乃「…それに、正直、比企谷くんにも興味があるしね。もちろん、ひとりの男性として、ね」

ほらきた。だがそんな見え透いた手に引っかかるようなら、今頃山のような絵と壺と借金を抱えこんでいる。
しかし、なんといっても俺には偉大なる師匠、先達がいるのだ。クソオヤジという名の反面教師が。


まぁ、実際のところ、俺としても決して年上の女性とかきらいというわけじゃないんですけどね。思わず平塚先生の顔が浮かぶが、もちろん拝み手でスルー。
だけど、陽乃さんのことは信用できないし、はっきり言って超苦手だ。今回の件からして、本当のところ、何を考えているかわからない。

だから今の言葉も決して額面通り受け取るつもりはない。裏書きのない小切手は空手形と同じで全然信用ならないからな。


陽乃「比企谷くんも、なんだかんだいいながら雪乃ちゃんのために泥をかぶっているけど、そのうちにきっと笑い事じゃ済まなくなくなるわよ?」

雪乃「そ、それは…」

陽乃「今だって口にはしないけれど、随分と酷い目にあってるらしいわね。色々と隼人や静ちゃんから聞いてるわ」

雪乃「え?」

恐らく相模のシンパによる工作活動のことを言っているのだろう。確かに多少煩わしいが、それほど大したことではない。

俺の黒歴史とトラウマの繰り返しはいつものことだし、それだってせいぜい高校卒業するまでの間のことであって永遠というわけではない。
長い人生からしてみればほんの一時期である。耐えて忍んでやり過ごす。春を待つ福寿草の境地である。雑草のしぶとさをなめんなよ。
まあ、俺に春がくるかどうかは定かではないのだが………く、くるよね?

つか、それよりか、空気に流されやすい戸部の面白半分の言動とかの方がよっぽどウザい。超ウザい。だが、それとても単なる“ウザさ指数”でいえば、材木座がダントツブッチだし。


陽乃「本来、彼のポジションとスタンスは“ぼっち我関せず”のはずでしょ?そんな彼があなたのせいで傷だらけになって行くのは、お姉ちゃん、見ていて忍びないな」

つか、俺が酷い目にあったのは元をただせばあなたのせいですよね?しかも笑いながら見てませんでしたっけ?

陽乃「それから、これはよく覚えておきなさい。いくら拙い正義を振り回しても、比企谷くんの好意に一方的に甘えているうちは、あなたはいつまでたっても“私”にはなれないわ」

それは姉に憧れる雪ノ下に対して、あまりにも一方的で断定的で、しかも決定的な宣告であった。


では、今日はこのへんで。ノシ


おっと、もう少しあったわ(汗


俺は足音を忍ばせて回れ右をすると、その場を離れ、由比ヶ浜のところへと戻った。

結衣「あ、ヒッキー!おっそーい!もう、なにやってたの?!」プンプン

八幡「ああ、悪い。ちょっとな…」

結衣「どうしたの?なんかあったの?」俺の雰囲気から何かを察したのか、由比ヶ浜が心配そうに話しかけてくる。

八幡「いや、別に。なんでもない」

結衣「ふーん。だったら別にいいんだけど…」

全然よくもなさそうに由比ヶ浜が気遣わしげな目で俺をみつめる。俺はそんな彼女の目を直視できず、そっと逸らしてしまった。

結衣「…だけどさ、何かあったら、ひとりで全部抱え込まないで、あたしにも相談とかしてね?」

八幡「今更お前に言われるまでもなく俺に悩みなら抱えきれないほどあるけどな。欲しいなら少しわけてやりたいくらいだぜ?」

結衣「あはは…なにそれー?」

由比ヶ浜が無理に明るく笑ってみせる。そして

結衣「…でも、ホントに、嘘はナシだよ?」おずおずと付け加えた。

八幡「ああ、もちろんだ。嘘はつかない」

――― 俺はそう言って、またひとつ嘘をついた。


ということで今度こそ、続きはまた明日の夜。ノシ

…たぶん。


結局、陽乃さんに用事が入ったとかで、その日は急遽そのままお開きとなった。
先程の電話で岩清水の名を口にしていたのが聞こえたような気がしたので、もしかしたら日曜日の件と関係があるのかもしれない。

あの後、陽乃さんと雪ノ下は何事もなかったかのように素知らぬ顔をして戻ってきた。
気のせいか普段から白い雪ノ下の顔が、やや青白く見える。

由比ヶ浜もそれに気がついたようだが、俺の顔をチラリと見ただけで特に何も言わなかった。


車で家まで送っていくという陽乃さんの申し出を固辞し、俺は両手に大きな荷物を抱えたままひとりで店を出る。
高級な服って箱入りなのな。箱入りなのは娘だけかと思ったぜ、あるいは魍魎とか。

この世には不思議なことなどなにもないのだよ…理不尽なことなら山のようにあるけどな。

店を出てしばらくしたところで、折悪く天気予報では言ってなかった雨に出くわし、傘を持っていない俺は足止めを食らってしまった。

コンビニでビニール傘を買うにしても両手がふさがっているので、差すにさ差せない。
仕方なくシャッターの降りた店の軒先でしばし雨宿りをすることにした。

やれやれついてないな。もしかしたらめずらしく女子とお出かけなんてしたからだろうか。雪や雹に降られなかっただけまだマシなのかも知れないが。あるいはカエルとか魚とか。ファフロツキーズかよ。

そういえば小学生の頃、雨粒を目で追って数えたり、雨の水滴を除ける修行とかいって遊んだことがあるよな。え?それもしかして俺だけ?

ぼんやりしながら雨が止むのを待っていた俺の隣に、同じように雨を逃れてきたものか、パタパタと飛びこんでくる人影があった。
御愁傷様だな。狭いスペースだが少し移動して場所を譲る。譲りあいの精神は大事だよね?別に俺の店ってわけじゃないし。

「すみません…って、え、あ?比企谷…くん?」

会釈と共に掛けられた声に振り向くと、声の主は先程店で別れたばかりのはずの雪ノ下だった。


八幡「なんだ雪ノ下か…まだ帰ってなかったのか?」

雪乃「え、ええ。雨に降られちゃって。あなたこそ、まだ…」

八幡「ご覧の通りだ」

雪乃「…生きてたの?」

八幡「そっちかいっ?!」

相変わらず口の悪い女である。おまけに態度も悪いし、性格はもっと悪い。これでこいつがこれほどまでに美人じゃなくて、俺がフェミニストでなかったら間違いなくブン殴って、返り討ちにあっているところだ。よかった、俺がフェミニストで。命拾いしたな、俺が。


八幡「由比ヶ浜は?一緒じゃなかったのか?」

雪乃「急に雨が降ってきたから、姉さんに頼んで車で家まで送ってもらったわ」

八幡「で、お前は?」

雪乃「私は…あの車に乗るのは、まだ少し…抵抗があるというか…」

八幡「ふーん…」

先程の、あねのんとのこともあるのだろう。

それに多分、高校入学式初日、俺が由比ヶ浜の飼い犬…あのサックリとした食感とバターの風味のクッキーみたいな洋菓子のような名前の犬…サブレだっけ?…を庇って、雪ノ下の乗った車に跳ねられ、入院したことをまだ気にしているようだ。

何度もいうようだが、悪いのは俺だし、もっと悪いのは手綱を離した由比ヶ浜だし、もっともっと悪いのは車道に飛び出したサブレだし、なんといっても一番悪いのは巡り合わせというヤツなのだから、ただ後部座席に座っていただけの雪ノ下が気にするようなことではない。

つか、もっと別に気にすべきことがあんだろ?例えば普段の俺に対する扱いとか態度とか言動とか。


雨脚が更に強くなり、この調子ではしばらくは止みそうもない。路面に黒い染みが広がり、雨水が溜まり始めた。急激な降水量のせいで、下水の排水処理が追いつかないようだ。

雪乃「…どうして姉の頼みを引き受ける気になったのかしら?」ごくさり気ない風に雪ノ下が話しかけてきた。顔はお互い正面に向けたままだ。

俺らしくない…あの由比ヶ浜でさえ、そう言っていた。ならば聡明な雪ノ下が気がつかないわけがない。だが、俺はそれに応えるつもりはない。だから答えは決まっている。

八幡「…別に」

雪乃「そう…」雪ノ下も無理に追及しようとはしない。それすらも俺の中では折り込み済みだ。

ブツ切りの会話だが、不思議と居心地の悪さはなかった。由比ヶ浜と違って、こいつが相手の場合、変な意識をしないで済むからだろう。
後は生命の危険だけ気をつけていれば万事OK。この状況は、まるでライフ・オブ・パイだな。雪ノ下にパイはないけど。


雪乃「…あの時はあんなことを言ってしまったのだけれど、あなたのことだから、きっと何かちゃんとした理由があるのでしょうね」

八幡「そりゃ随分と信頼されたものだな」思いがけないセリフに俺が皮肉交じりに混ぜっ返す。逃げ道の確保は忘れない。逃げるのかよ。

雪乃「そうね…あなたには文化祭の時も随分と助けてもらったし」意外にも素直な返事が返ってきたことで、逆に俺の方が面くらってしまった。

八幡「…いや、あれは別にそういうんじゃねーし」あくまでも俺が勝手にやったことだ。こいつが恩とかを感じる必要は微塵もないし、そんなことは求めてもいない。

雪乃「でも、そのせいでうちのクラスの女の子たちに…」/// ゴニョゴニョ

八幡「え?おまえのクラスで、俺のことでなんか言われたりしてんの?」

もしかして俺に係ったことでイジメとか?…は、ありえねーか。雪ノ下が相手となると、イジメる方もそれ相応の覚悟が必要だからな。
こいつの場合、正論で相手をとことんまで論破して、心が折れるまでまで絶対に許さねーし。相手が俺の場合とか特に。


雪乃「いえ、そうではなくて、その…あなたと、とのことで…色々と…」///

八幡「色々ってなんだよ?」

雪ノ下がなぜか赤い顔で俺の方をチラリと見たが、ひとつ溜息をつくと、意を決したようにポツポツと語り始める。

雪乃「い、インカムで、め、夫婦漫才してた…とか…」///

八幡「ぐっ」///

雪乃「か、カップルでトロッコ乗っていた…とか…」///

八幡「がっ」///

雪乃「そ、それから…」

八幡「す、すみません、雪ノ下さん、聞いた俺が悪かったです。そこいらで勘弁してください」限界です。悶え死にます。

雪乃「わ、私が休んだ日、へ、部屋に、その…お、お見舞いに来た…とか…」///

らめえええええええええええええ。もうホントやめてええええええええええええええ。

確かにホントのことだけど、他人の口から聞かされると破壊力抜群だな。
客観的事実って、案外怖いもんなんですね。


雪乃「あの、私、こういう性格だからうまく言えないのだけれど…その…あなたには、とても感…」

雪ノ下が何かを言おうとしたタイミングを見計らったかのように、目の前を車が走り過ぎ、その拍子にタイヤが水溜りの水を跳ね上げた。

「うわっと」「きゃっ」

すんでのところで避けたが、少し足に水がかかる。

少し間をおいて、同じ方向から今度はトラックが走ってきた。

俺は再び水溜りの水が跳ねる前に、背を向けてひょいと雪ノ下の前に出る。

狭い軒下なので、必要以上に身体が寄ってしまうのは、仕方あるまい。
できるだけ顔をそむけたのだが、雪ノ下から漂う淡いジャスミン系の香りが認識できる程度には近づいてしまった。

八幡「てっ」

雪ノ下に気をとられたせいか、店先に立てられたの幟竿にしこたま頭をぶつけてしまう。

さきほどとは比べ物にならないくらい勢いよく跳ねられた水は俺のズボンに少しかかったが、とっさに避けた両手の荷物の方は無事なようだ。
ホッとため息をつく。これでもし汚したりでもしたら、色々と後が怖いからな。場合によったら国外逃亡とか考える必要さえあるかもしれない。


雪乃「だ、大丈夫?」おずおずと雪ノ下が声をかけてくる。

八幡「ああ」

雪乃「そ、その、あ、ありがとう」/// 消え入るような小さな声。

八幡「や、別に。そんなんじゃねーし。たまたま避けた方向におまえがいただけだし」

雪乃「わざわざ水が飛ぶ方に避けることもないんじゃないかしら?」

八幡「だから、たまたまだよ。たーまーたーま」/// あまりにタマタマすぎてピジョンに喰われちゃったり、進化してナッシーになったりするまである。

雪乃「…いつもそうやって私のために泥を被ろうとするのね…」ボソッ

雪ノ下の呟きは俺の耳にも届いたのだが、雨音にまぎれて聞こえなかったフリをした。

別にゾウとかじゃないんだから、暑さ対策のためにいつもいつも好き好んで泥とかかぶっているわけではない。
もともと泥にまみれたような人生だ。今更少しくらい汚れが増えたところで誰も気がつかないし、俺も気にしない…それだけの話だ。


雪乃「おでこ、ちょっと血が滲んでるわよ」

八幡「こんなのツバつけときゃ治るし」

雪乃「不衛生よ」

八幡「おまじないみたいなもんだ。それに唾液には滅菌作用があるらしいからな…」

雪乃「ふーん。そうなの。知らなかったわ」

どうやらさすがのユキペディアさんにも知らないことがあるらしい。

もしかしてそれが気に入らなかったのかもしれない。急に不機嫌そうに黙り込んでしまった。

なにこれ、女心と秋の空っていうけど、こいつの場合夏の大気並みに不安定なんじゃね?腫れ、時々血の雨、ところにより雪ノ下。
そういえばノストラダムスが予言した世紀末に空から降ってくるのって、恐怖の大王じゃなかったっけ?ま、似たようなもんだが。


とりあえず今日はここまでで。ノシ

明日休みなんで、早いうちにまた更新します。


明日休みとかウラヤマシス


>>443

他人が休んでる時はもちろん、休んでない時にも当然のように働かされてるから(震え声


>>443-445

さんすこです。皆さんのコメがいつも励みになってます。

ゆるされない事言うかもだけどさ
きもいよ?正直
のんきにおっさんがこんなss書いてさ
ん?ってなるわ本当
かんちがいするのは人の勝手だけど
わーわー人が褒めるのは社交辞令だからだよ?
いみ分からん事やってないでちゃんと働けよ
いい加減にしろよ人生舐めんのも

こんなことやっててさぁ
れんあいとか出来ないだろお前
かのじょとかこんなとこいる奴にできる訳ねーわ
らくに人生終わると思うなよ?
もういい年してるんだろ?じゃあ社畜やっとけよ
期間長いことここでss書いてるみたいだけどさ
待ってる人なんかいないんだよお前の事なんか


>>448

ごめん、なにそれ、旨いの?


女の子からメールもらった時とか、最初に縦読みして、次に斜め読みして、最後に深読みすることにしているから(震え声

…って、だから、おまいらのせいで最近八幡化がマジパ(ry

頭文字を漢字にするとたまにマジで叩かれるから辛いんだ
だからひらがなにして分かりやすくした。てか斜めも同時とかレベル高杉ンゴww…ンゴ……

……頑張れって事だよ言わせんな恥ずかしい


>>454

すぺしゃるさんすこ。

でも漏れは藻前を絶対に許さない…なぜなら、社畜だけはマジで言い当ててるからだっ


楽しいな、ここは。ほっこり


雪ノ下の沈黙を機に、それまでとはうって変った、気まずい空気が流れはじめた。

あー、早く雨止んでくれねーかな。いっそのこと、ポケット・ティッシュで、てるてるぼうずでも作っちゃう?
そういえば、てるてるぼうずって、雨止まなかったらクビ切っちゃうんだっけ?なにそれもしかして新手のリストラかなんかなの?つか、何代目浅右衛門だよ?

雪乃「…両手がふさがっているのに、どうやってするつもりなのなのかしら?」不意に雪ノ下が口を開いた。

八幡「…は?」

なに?それ、てるてるぼうずのこと?というか、もしかしてさっきの会話まだ続いてたの?

やれやれ、言われて気がついたが、確かに道路は既に雨で水浸しになっていて、荷物を置けるような状況でもない。

八幡「…かといって、さすがに俺のベロがいくら長いとかいっても、額まで届くほどじゃないしな…」ってベロリンガじゃねぃし。

雪乃「舌の数だけなら、2枚どころか3枚くらいありそうなのにね…」

八幡「…おまえの場合は舌に棘が生えているうえに毒が含まれてるけどな。しかも致死性の」


雪乃「…仕方ないわね」

雪ノ下はため息をつきながら、肩にかけたポーチの中をから、パンダのパンさんの柄のプリントされた可愛らしい絆創膏を取り出した。

八幡「…おまえ、パンさん好きすぎだろ」

雪乃「うるさいわねっ。別にいいでしょ」///

八幡「もしかして、それ、俺の額に貼るつもりなのかよ…」うわー、超恥ずかしい。むしろイヤがらせに近いかもしれないな、俺的には。

雪乃「いいから黙って額を出しなさいっ!」

きつい言葉とは裏腹に俺の頭に手を乗せてやさしく引き寄せ、そっと前髪を掻き上げた。


わさ

雪乃「…!」

八幡「…?」


わさわさ

雪乃「……」///

八幡「……」


わさわさわさわさわさわさわさわさわさわさ

雪乃「…………」///

八幡「…………」


…なぜ俺の髪を必要以上に撫でまわす?


雪乃「ほ、ホントに猫の毛みたいなのね…」///

恍惚とした表情でぽしょりと呟く。

八幡「は?おまえ、何いってんの?」

問うた拍子に思わず目が合ってしまう。我に返った雪ノ下の頬が、一瞬にして赤く染まった。

雪乃「えっ?やっ?あ、あの、正視に堪えないから、その腐った目を閉じてもらっていいかしら?」///

八幡「…へいへい」なんか酷いこと言われたような気もするが、俺は大人しく目をつむる。

逆らうと後が怖いからな。別に照れたわけじゃないから。ホントだよ?

…でも、こいつってホント睫毛長いのな。爪楊枝くらい余裕で乗るんじゃね?黒く美しい髪と、同じくらい黒い瞳、磨き抜かれた大理石のように滑らかで白い肌の残像が瞼の裏に残る。そういえば、こんな間近で見る機会って日常ではあまりないもんな。恐くて半径3メートル以内とか近寄れないし。

雪ノ下にいわれるがまま、目を閉じてじっと待っていたが、なぜか不自然な間が空く。

八幡「おい…?」さすがに少し不安になってきたので、おずおずと声をかけてみる。

もしかして俺が見てないのをいいことに、顔に落書きとかしてんじゃねーだろうな?油性ペンとかマジやめてね。あれってホントになかなか落ちないんだか…ら…



雪乃「…おまじないよ」



突然、思いのほか近くから小さく囁くような声が聞こえ、俺の額に柔らかな感触が伝わった。

八幡「?!」俺は反射的に目を開けそうになるが、

雪乃「まだ開けないのっ!」ぴしゃりと言われて逆にきつく目を閉じてしまった。

八幡「…うぃ」///

今度は同じ位置にペタリと絆創膏らしきものが貼られる感覚が伝わる。

雪乃「…お、終わったわよ」///

俺が目を開けると、雪ノ下は既に俺から離れた位置に立ち、耳を赤くしてそっぽを向いてるところだった。

八幡「…お、おう。さんきゅーな」///


気がつくと既に雨は上がり、日が差し始めている。やはり一過性の通り雨だったようだ。

雪乃「…じゃあ、明日は姉さんに恥をかかせないように、しっかりね」

雪ノ下はそう言い残すと、そのまま俺の方を見ようともせずに、そそくさと立ち去ろうとした。



八幡「おい、雪ノ下」



俺のかけた声にビクリと反応して足を止める。そして赤い顔をしたまま、ゆっくりと振り向いた。

アスファルトの路面を濡らした水が雲の合間から射しこむ太陽の光を反射してキラキラと光っている。だがしかし一番輝いて見えるのはその光に彩られた雪ノ下自身だった。

雪乃「な…何…かしら…?」///










八幡「………いや、駅なら方向が逆だぜ?」




俺は額にパンさんの絆創膏を貼ったまま、家に向かって歩いていた。人と擦れ違う度にクスクスと笑われているような気がしたが、不思議とそれほど悪い気はしない。

八幡「しかし…なんでよりによってパンさんなんだよ…」

家に帰り着くまで、ずっと顔が火照っていた気がするのは、なにも少女趣味の絆創膏のせいだけではなかったのかも知れない。

もちろん、左の頬にくっきりと残った紅葉の跡のせいでもない…と思う。


短いですが、キリがいいので今日はこのヘンで。ノシ


なんとか家に帰り着いた頃には既に辺りは暗くなりつつあった。

八幡「ただいまー」

オヤジとオフクロは仕事が追いこみらしく、今週末も出勤で、まだ帰っていないようだ。
順風満帆に社畜航路まっしぐらだな。行先はバミューダかサルガッソーのような気もするが。
しかしこうも連日となると、いかな薄情な俺といえども、さすがに不安になってくる。今度、機会見て生命保険の増額を進言しておこう。


小町「お兄ちゃん、おっかえりー」

小町がパタパタと足音をたてながら、玄関まで迎えきた。

八幡「やれやれ疲れたぜ」俺は荷物を置いてどっかりと框(かまち)に腰を落とす。

小町「どうしたのお兄ちゃん、随分と大荷物だね」

八幡「ああ、これな?」

小町「わ、それってブランド品じゃないっ!?お兄ちゃん、こんなものいったい…」

八幡「まあ、な…」

小町「…どっから盗んできたの?!」

八幡「…おまえは兄をなんだと思ってるんだ?」

小町「やだなー冗談だってば。ところで110番って何番だっけ?」

八幡「いいから電話を置け」お兄ちゃんはそこいらの凶悪犯罪なんかより、お前の頭の方がよっぽど質が悪いような気がしてきたぞ?


小町「ありゃ?そのおでこ、どうしたの?」

八幡「ああ、ちょっとぶつけてな」

小町「パンさんなんだ…ふーん…ってことはもしかして…ふむふむ」

八幡「どうかしたのか?」

小町「んー、別に…順調にフラグ立ってるなーって」

八幡「フラグ?俺に?それってもしかして死亡フラグのことか?」いや、フラグよりも先に俺の墓標の方が立っちゃいそうだけどな。


小町「それで、今日のデートはどうだったの?」

八幡「別に…髪切って、服買ってもらっただけだ」

小町「ま、まさかお兄ちゃん、女の子に貢がせたの?!」

八幡「なんか聞こえが悪いな…兄をまるでホストみたく言うな」どちらかと言うと相手の方がホスト(宿主)だし。むしろ俺はパラサイト的な何かだったりする。

小町「ど、どうしよう。クズだクズだと思ってはいたけれど、これで女の子に貢がせることまで覚えちゃったら、ますます真っ当な人の道から踏み外しちゃうよっ?」

八幡「ばっかおまえ、将来的には全面的に奥さんに養ってもらうつもりなんだから、今からこれ位で慌ててどうする?」

小町「それじゃヒモ街道まっしぐらだよっ」

八幡「ヒモじゃなくて専業主夫だけどな」

小町「開き直ってるしっ?!」


八幡「はぁ?なにいっちゃってるわけ?家の中で働くか、外で働くかだけの違いであって、働くことはすべからく尊いんだぞ」

要は社畜になるか家畜になるかの二択しかないってことだが。なにそれ自分で言ってて超哀しいんですけど。

小町「だからって、他に選択肢とかないの?」

八幡「あとはそうだな、自宅警備員とか、コンビニパトロール隊とか、ネット監視員とか、一級在宅士とか、代表戸締役とかか?」

小町「うわ、もうだめだー。世の中の迷惑にならないように、もういっそのことお兄ちゃんを殺してあたしも…」

八幡「ちょっと待て、気持ちはわかるが、お兄ちゃん、おまえの愛が重いよっ!」つか他人に迷惑かけてねーだろ、身内にはかけてるかもしれないけど。

小町「逃げる」

八幡「…って逃げんのかよっ?!」

小町「でも大丈夫、安心していいよ。…小町、きっとお兄ちゃんの分まで長生きして幸せになって見せるから」

八幡「今の発言のいったいどのあたりに俺が安心できる要素が含まれてんだよ…」

やっぱりちゃっかりしてんのな。さすが俺の妹だけのことはあるぜ。


今日は俺が当番なので、冷蔵庫の中のありあわせの材料を使ってちゃっちゃと夕飯を作る。自慢じゃないがこう見えて主婦力は高い。

そこいらの“自称”家事手伝いとか言ってるねーちゃんよりか遥かに家事のスキルは高いと自負しているが、なんといっても一番得意なのは手を抜くことだ。

仕事にしろ家事にしろ、いかにしてそれと分からないように手を抜くかが肝心だから。場合によったら仕事のスキルそのものよりも需要だったりする。これ社会に出てから大事だから今のうちによくメモしておくように。俺は社会に出るつもりないけど。


俺も小町も育ち盛りだけに、一応栄養のバランスを考えて、てきとーに千切った野菜のサラダとかも出したりするのだが、俺のキライなトマトだけは断固として入れない。だらか彩り的には超地味だったりする。食えりゃいいんだ食えりゃ。
ちなみに俺のトマト嫌いは筋金入り。スペインのトマト祭りなんか見に行った日には、流れ弾に当たって死ぬ自信すらある。

あとは肉、な。焼いてよし、煮てよし、炒めてよし、生でよし…ってさすがに生は危ねぇか。
育ち盛りの健康な男の子なら、とりあえず何はなくとも、肉を口に放りこんでさえおけば文句は言わない。口に肉を咥えたまま文句をいうのは、あれでなかなか至難の業だからな。


小町「でも、お兄ちゃん、ホントにいいの?」

食事を終えて食器をかたしながら小町が俺に話しかける。

八幡「あ?何がだよ?」

小町「今更だけど、陽乃さんと恋人のフリなんてして」

八幡「まぁ…、頃合いを見計らって別れたことにするって言ってたから、別にいーんじゃね?」

俺の輝かしい戦績に、またひとつ敗北の二文字が刻まれるだけのことである。そのうち耳なし芳一みたくなりそうだな。

小町「そうじゃなくて、今日だって雪乃さんと結衣さんが一緒だったんでしょ?」

八幡「それがどうかしたのか?」

小町「やれやれ、これだからゴミィちゃんは…」

八幡「誰がゴミィちゃんだよ?」それもしかして夢の島公園の新しいゆるキャラかなんかなの?


小町「いい?お兄ちゃん、こんなモテ期はお兄ちゃんの短い一生の中でもう絶対にこないんだよ?」

八幡「俺の一生そんなに短いのかよ…つか、モテ期?俺が?いつよ?」

小町「はぁ~。ダメだこりゃ…」

八幡「はっ?それってもしかして…」

小町「やれやれ、やっと気がついたんだ?」

八幡「戸塚のことかっ?戸塚のことなんだなっ?戸塚に違いないっ!」

小町「お兄ちゃん、戸塚さんのこと好き過ぎだしっ?!」

八幡「何を言う?俺が一番好きなのは小町に決まってるだろ?」

小町「へ?あわわわわ、お兄ちゃんたら、いくらなんでもそんな正直に。でもそれ小町的にポイント高いっていうか…」///


わたわたと顔を赤らめる小町をしり目に、俺は全く別のことを考えていた。

確かに表面上は、明日、資産家の御曹司とやらをうまいこと騙くらかして陽乃さんお彼氏のフリを押し通せばそれで一件落着のはずである。
そして俺が晴れてお役御免となり、今回の件が全てが丸く収まり、何事もなくいつもの怠惰な日常生活に戻れるなら、全くもってお安い御用だ。

だがしかし、帰り際に誰にも気づかれぬよう、陽乃さんが俺に向かってそっと囁いた言葉が、いつまでも頭の中でリフレインしていた。

「―――比企谷くん、私は本気だからね?」

もしかして俺が偶然立ち聞きをしていたのを、彼女は知っていたのだろうか。


本日はここまで。ノシ

やっとストーリーも終盤に差し掛かろうとしています。長かった(遠い目

言い訳がましいですが、9月に入り、仕事が立て込んできたので、もしかして毎日の更新はムズいかもです。

社畜人生まっしぐらだぜ、おーいえー(棒

9月中の完結は間違いないと思いますので、できれば気長にお付き合いくださいまし。



気長に待ってる。頑張れ社畜(笑)


>>483

あの、それ社畜る方を応援してません?もしかして?


_(」∠ε:)_


――― そして当日。

俺は昨日、陽乃さんに買ってもらったばかりの真新しい服に袖を通し、鏡の前で服装を整え、持ち物のチェックを入念に済ませる。

サイフ、よし!

スマホ、よし!

ハンカチ、よし!

ズボンのチャック、よし!

材木座、なし!

パーフェクトだな。我ながら恐ろしいほどキマっているぜ。とくに材木座のあたり。

おやつは300円までだっけ?たしかバナナはおやつに含まないんだよな…って遠足じゃねぇし。


俺が不得意とするところのネクタイについては小町が締めてくれた。

こうして甲斐甲斐しく世話をやいてくれる妹がいる限り、もう俺には一生ヨメなんていらないんじゃないかとさえ思えてくる。
いや、マジで実際いらないんじゃね?もう国は世界に先駆けて兄妹婚認めちゃえよ。いや俺すでにシスコンしてるけど。

小町「高そうな服だねー。どっちかというとお兄ちゃんが服に着られてるって感じ?」いそいそとネクタイを締めながら小町が話しかけてくる。

なんとなく幸せを感じちゃってるあたり、俺、超ヤバい。何がヤバイって、社畜の象徴ともいえるネクタイをすることに抵抗を感じないのが一番ヤバイ。
これってもしかして巧妙に仕組まれた人類総社畜化計画の一環なのかもしれないって思うくらいヤバい。


八幡「おいおい、俺は中身より包装の方が高そうな贈答品かなんかかよ?」

小町「もらってくれる人がいるなら熨斗とかつけて喜んで贈っちゃうんだけど?あんがい喜ばれるかもだよ?」

八幡「…さすがにそれはありえそうにねーな…」つか、ありがた迷惑なだけだろ。

自分でいうのもなんだが、まるでもらった方が迷惑する結婚式のビミョーな引き出物みたいな感じすらする。新郎新婦の名前入りのでかい皿とか。アレ、使うタイミングなんてぜってー来ねぃし、かといって捨てるに捨てらんねーんだよな。

小町「でも、すごくよく似合ってるよ?カッコイイ!ほんと…」

八幡「そ、そうか?」遠慮するな。もっと誉めていいぞ。俺が許す。

小町「…まるでお兄ちゃんじゃないみたいだよっ!」

八幡「…褒めてんのかよそれ?」

小町「お兄ちゃんの晴姿、天国のお父さんとお母さんにも見せてあげたかったね」小町がクスンと鼻を鳴らしながらしんみりと呟く。

八幡「いやいやいやいやいやいや、ふたりとも部屋で寝てるだけだから」

変な後付け設定とかやめてくれる?後でつじつま合わせが大変なんだから、いや、マジでオナシャス。


八幡「じゃあ、いってくるぜっ」

小町「あ、ちょぉっと待ったぁ~!」

八幡「なんだよ?」おまえ紅鯨団かなんかなの?いや今時そんなの誰もしらねーし。つかなんで俺が知ってるんだよ?

小町「これこれ」

八幡「…おまえ、ライターなんか持ってきて、どうすんの?」俺、タバコなんて吸わねぇぞ。もちろん放火とかもしねぇし。火遊びしたくてもする相手がいない。なら言うなよ。

小町「そうじゃなくて、ほら、時代劇とかで、ここ一番って時に、験担ぎとかいって火打ち石とかで切火してお清めするのがあるでしょ?」

八幡「お、おう、なんかしらんが気が利くな」なにこいつ時代劇とか見てるわけ?最近の女子中学生の間で流行ってるとか?もしかして歴女なの?

その割には日本史の点数、イマイチだったよな?新撰組の一番隊のメンツ覚えるなら、その前に平安遷都の年号くらい知っとけよ。ナクヨウグイスホーホケキョだっけ?なんか違うか。

カチッ カチッ カチッ

小町「んっんっんっ?なかなか点かないなぁ~」気がつくといつの間にか小町がマジで俺の背中に火をつけようとしている。

八幡「って、なにやってんのおまえっ?!」

小町「はて?カチカチ山のカッチン鳥が鳴くそうな」

八幡「俺どこの性悪タヌキさんだよっ?!つか、マジで俺の服に火とかつけるな。シャレにならんことになるからっ、俺の命がっ!」

小町に火ダルマにされたうえに陽乃さんに血ダルマにされることになりかねない。こればっかりはさすがの俺も手も足も出ない。ダルマだけに。


小町「そういえば、今日は雪乃さんと結衣さんは一緒じゃないの?」

八幡「ああ、そういう約束だからな。変な邪魔とかが入らないように、実は今日の場所も陽乃さんに口止めされてんだよ」

小町「でも、ふたりとも心配してるんじゃない?」

八幡「まぁ、確かに俺が何かとんでもないヘマをやらかす可能性はなきにしもあらずだからな」

小町「…やれやれ、結衣さんが手を焼くわけだよ」

八幡「はぁ?」いくらあいつが料理下手でも、まさ自分の手とか焼いたり…するかもしれねーな。うん。

小町「で、今日は幕張のホテル・ニュー・ロイヤル・リーガル・プラザ・ワ○ントン・ホテルだっけ?」

八幡「…なんかホテルが一個多いような気がするけど、確かそんな名前だったはずだ…ってなんでおまえがしってんの?!」

小町「お兄ちゃんの机の上にパンフレット落ちてたよ?」小町がさっと差しだす。

八幡「それは“置いてあった”と言うんだ。日本語で。」陽乃さんにもらったヤツだな。まったく油断も隙もあったもんじゃねぇな。

小町「で、晩御飯はどうするの?」

八幡「あー、今日は会食とかいってたからいーや」


小町「…ふーん、ってことは、レストランなんだね…」ボソッ


小町「でもさ、お兄ちゃんって、基本ビビリでヘタレだし、今回もなんかのっぴきならないことに巻き込まれそうで、小町、心配しちゃうよ」

八幡「まぁ、バレたらバレまでのことだけどな。いざとなったら誠心誠意…土下座すればいいだけの話だ」

小町「…お兄ちゃん、最近、土下座姿が板についてきてるよ?それにそろそろ見飽きてきたし」

八幡「カマボコじゃねーんだから勝手に板とかにつけたりすんなよ」つか、妹に土下座姿見飽きられる兄ってどんなだよ?俺、謝罪の王様かなんかなの?

小町「ま、いーか。じゃ、頑張ってねー」

八幡「おう、ちょっくらいってくらぁ」


「さて、と。この場合はやっぱり雪乃さんかな?結衣さんじゃ、ちょっと頼りないし…」

ピッ・ポッ・パポッ・ピピピッ…


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to:雪乃さん

subject:心配です

body:

今、お兄ちゃんが珍しくおめかししてお出かけしました。ガーンも、もしかしてもしかしてデートなのかも?!

かわいい妹としてはお兄ちゃんのことが心配で心配でたまりません(あ、ここ小町的にポイント高いと思いません?)

でも、いくら心配でも、かよわくてかわいい女子中学生の身分ではなにもできません。しくしく。

ああ、こんな時、誰か代わりに様子を見にいってくれる親切な人でもいればいいのにっ。

例えばお兄ちゃんのことをよく知ってる人とかっ。

ちなみに兄の行き先きは幕張のホテル・ニュー・ロイヤル・リーガル・プラザ・ワシ○トンのレストランだそうです。

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「ほい、送信っと」ポチッ


ピンピロリロリーン♪


「もう返信?!はやっ?!」


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from:雪乃さん

subject:re:心配です

body:了解。

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「やれやれ、全く世話のやけるお兄ちゃんだねぇ~」


本日はここまで。ノシ


ただいまー(白目


_(:3」∠)_


アレだから、三連休なんて、都市伝説だから(震え声


本日更新予定の予定。

…ところで本日っていつまでが本日に入るの?

お!社畜ゥー!

台風来るけど仕事なん?


>>517

なにそれ、旨いの?


指定された待ち合わせの場所に着くと、そこには既に見慣れた黒塗りの高級車が停まっていた。

金持ちの乗る運転手つきの黒塗り高級車っていうと、映画とかでよく見るあのダックスフントをみたいな胴長の車 ―― リムジンを想像しがちだが、道路事情の悪い日本では、せいぜいベンツかBMW、もしくはベントレーやマイバッハあたりだろう。いや俺もよくはしらんけど。
とりあえず車体の前とか後ろにやたら自己主張の強いエンブレムつとかけてるヤツだと思えばいい。
俺みたいな庶民には黒塗りの高級車なんて皆同じに見えるのは仕方がない。どうせ自力では一生乗る機会なんてないしな。

俺が知る中で、最も成金趣味な車といえば、やはりあの、キンキラキンに飾られた宮型霊柩車くらいだが、もしかしたらアレなら一生のうちに一度くらいは乗れるかもしれない。最期に。


そいえば俺が高級車に轢かれたと聞いた時、クソオヤジが真っ先に車の方を心配をしてかーちゃんに殴られたという話は聞いている…なにやってんだよあの男は。いつものことだけど。

俺が近づくと、後部座席のスモークガラスの窓が開き、陽乃さんが美しい笑顔を覗かせた。

陽乃「時間通りね、比企谷くん」

わざわざ運転手が降りてきて後部座席の前に回り、恭しく無言で一礼するとドアを開けてくれた。

八幡「スミマセン」俺は運転手に会釈すると広い車内に乗り込む。陽乃さんが身体の位置をずらせて、俺に席を譲ってくれた。

陽乃「あ、靴は脱がなくていいのよ?」ニコッ

八幡「…一応それくらいは知ってます」

うん、もちろん知ってたし。でも一瞬迷ったことは俺の胸の内に秘めて置くことにした。


今日の陽乃さんの服装は、一見してフォーマルだが、鮮やかな色合いで、胸ぐりのざっくりと深いものだった。
やや露出度が高い気もするが、不思議と上品にまとまっている。
やはり自分の美しさを最大限に引き出すコツというものを知っているのだろう。

ともすれば俺の視線が陽乃さんの胸元に吸い寄せされそうになるのを意志の力で無理やり引き剥がす。俺、こんだけウィルパワー強いんならもしかしてスプーンだって余裕で曲げられちゃうんじゃねぇの?

ブラックホールの重力は、光でさえ捻じ曲げてしまうというが、陽乃さんの乳力はおれのヒネた視線ですら真っ直ぐに捕えてしまう。
思わずじっくりと肉眼で天体観測しそうになっちまったぜ。目の前の双子惑星を。

陽乃「出してちょうだい」

運転手「かしこまりました」

運転手が一礼して車を走らせる。ほとんど動き出したのがわからないような静けさだ。もしかして地面から浮いてるのかもしれない。
いやこの場で浮いているのはもしかしなくても俺一人だけなのかもしれないけれど。


陽乃「この車は初めてだったかしら?」

八幡「確かに中に乗るのは初めてですね…」ふかふかのシートに腰まで埋まりつつ、答える。ふかふかすぎてうまくバランスがとれない。インナーマスッスルとか鍛えられそうだな、これ。

車の外観、特にバンパーの色とか形とか、特に硬さについては熟知している。頭ではなく身体が。

八幡「もしかして今日の運転手さんて…?」

チラリとバックミラー越しに運転手の表情をうかがってしまう。

陽乃「違うわよ。あの時の運転手には、もう辞めてもらったから」

八幡「え?…そ、それってやっぱり俺のせいなんですか?」

陽乃「別に比企谷くんが気にすることではないと思うのだけれど?」

八幡「いえ、そうは言ってもやっぱり…」

さすがに後味が悪い。俺は改めてあの時の後先考えない自分の軽率な行動を恥じた。
過去をふりかえるだに、他にも恥じるべきことはたくさんあるような気もするのだが、とりあえず今はそこらへんについてあまり深く考えないことにしておく。更に落ち込んじゃうから。


陽乃「そういえば、あの事故のこと、雪乃ちゃんは何か言っていたのかしら?」

八幡「いえ、特に何も。跳ねられたのが俺だったことについても、あまり知らなかったみたいですね」

そのことに気がついていたら、多分あいつのことだ、もっと自分の事を責めるに違いない。なぜあの時ブレーキでなくアクセルを踏むようい言わなかったのか、とか。

陽乃「そう。…でも、やっぱりまだ気にしてるみたいね。あれ以来、あまりこの車に乗ろうとはしないもの」

八幡「気にすることでもないと思いますけどね。既に済んだことですし」だから他に気にすべきことはたくさんあんだろ?特に日頃の俺の扱いとか。

陽乃「あら、本人はそうは思っていないみたいよ?」

八幡「あー…あいつは潔癖なところがありますからね」潔癖なうえに肩が凝りそうなくらい完璧主義。よかったなムネなくて。大きいと色々大変らしいぞ?

しかし、加害者と被害者の越えられない一線…か…。
つまり、あの時から既に決まっていたんだな俺があいつの被害者になる運命は…しかも現在進行形ですよ?


陽乃「…本当は今日、来てもらえないんじゃないかと思っていたわ」

窓の外の景色に目を遣りながら、陽乃さんがポツリと呟いた。

八幡「…なぜ、そう思ったんですか?」

陽乃「だって、あなたが私に対して無理に義理立てする必要なんて、どこにもないでしょう?」

八幡「そうですか?貴女にひとつ貸しができる…それは、ご自分でもおっしゃっていた通り、俺にとって決して損な取引でもないと思いますけどね?」ごまかすように嘯く。

陽乃「ねぇ、比企谷くん、そのことなんだけど…」

八幡「はい?」

陽乃「それって、もしかして…」

彼女が何を言わんとしてるのかを察して、俺の身体が少し硬くなる。

陽乃「…雪乃ちゃんのため…なのかしら?」

八幡「…!」


相変わらず鋭いな。俺の浅はかな考えなんて全てお見通しというわけだ。

陽乃「…やっぱりそうだったんだね」

俺の沈黙を肯定と受け取ったのか、小さくため息をつく。

八幡「…でも、貴女もそれを折り込み済みのうえで俺を指名したんじゃないんですか?」

陽乃「えっ?」

単にカマをかけたつもりだったのだが、どうやら図星のようだ。一瞬、陽乃さんの顔色が変わる。もしかして何か地雷踏んじゃったとか?緊急脱出ボタンどこよ?

八幡「もっとも、貴女の本当の目的が何なのかまではわかりませんけどね…」

陽乃「…比企谷くん?前にもいったと思うけど、私、勘のいいガキは嫌いよ…」

陽乃さんが俺から顔を背ける。なぜかその声は小さく、いつもの陽乃さんらしくなかった。

そしてそれはまるで、スネているかのようにさえ聞こえたのは俺の気のせいだったのだろうか。

俺は彼女に気づかれないように小さく安堵のため息をつきながら、いざという時のためにドアノブに伸ばしかけていた手をそっと元に戻した。


というわけで寝ます。ノシ


予め陽乃さんから伝えられていたとおり、今日の目的地はメッセからほど近いところにある高級ホテル最上階のレストランだ。

車から降りて最上階まで見上げようとしたら首と腰が痛くなった。マジかよ。革靴じゃなくて登山靴とか履いてきた方がよかったんじゃねぇの?とりあえず現地のシェルパとか雇っちゃう?

陽乃「比企谷くん、こっちよ」

陽乃さんは、場違いな環境に戸惑う俺の腕をとり、慣れた様子でエスコートしてくれる。

その自信に満ち溢れた躊躇いのない足取りは、既に何度かここを利用した事があるに違いない。それはまさしくセレブな世界で生きてきた証でもあるのだろう。
やはり俺なんかとは住む世界が違うということを改めて痛感する。

そして雪ノ下も本来はこちら側の人間であるハズだ。俺のようなぼっちの相手をすることもなく、華々しく着飾って社交界で燦然と輝いていて然るべき存在なのだろう。それこそ陽乃さんのように。

いつもはすぐ近くに感じる雪ノ下の存在がイヤに遠く思える。俺は無意識に前髪で隠れた額の傷跡にそっと指を這わせた。
さすがに姉妹だけあって、陽乃さんと雪ノ下は見る角度によっては顔がよく似ている。昨日のことを思い出すと、少しばかり動悸が速くなった。

もしかして、これって………………不整脈?求心飲んどく?


そういえば、前にあったよな、こんなこと。あれは確か川…川…川なんとかさんの件で、やはりホテルのバーに行った時のことだっけ?

陽乃「もっと堂々としてていいのよ?」

八幡「いや、あまり目立つと狙撃されたりしちゃうかもしれないじゃないですか」さすがにそれはないか。弾の無駄だし。

陽乃「あまりキョロキョロしていると、不審者と思われるわよ?」

俺も聞いたことがあるが、高級ホテルのロビーを悪用して信用詐欺とかがあるらしい。そういえば先ほどから俺の一挙手一投足にガードマンの熱い視線を感じる。やれやれ人気者はつらいな。

八幡「大丈夫ですよ…貴女と一緒でも限りこんな場所に来たりしませんから」一緒にいると痴漢とかストーカーに間違われるかもしれませんけどね。


ともすれば、いつもの癖で明るい場所を避け壁際に寄ろうとする俺だが、陽乃さんは俺と腕を組んだまま、フロアの真ん中を堂々と横切る。
勢い俺も引きずられるようにしてそちらを通らざるをえない。散歩中にイヤイヤしている犬みたいだなまるで。

でも、そうして無意識に他人の視線を避けようとしてしまうあたり、もしかして俺ってばスパイや特殊部隊の素質とかあんじゃね?キャッチセールスやティッシュ配ってるバイトさんだって向こうから避けるくらいだし。俺がフツウに歩いているだけで声をかけてくるのはお巡りさんだけである。

俺たちはフロントの前を通り抜けると、真っ直ぐエレベーターへ乗り込み、そのまま最上階のレストランへと直行した。

同乗した客や従業員の視線が俺達…というかむしろ陽乃さんに集まる。やっぱり美人だし、そりゃ当然目立つわな。
傍から見ると、俺と陽乃さんって、カップルに見えちゃったりするのかな?腕も組んでることだし。

丁度その時、音声アナウンスが次に停止する階を告げた。 

「ポーン♪ ゴカイ デース」

…ああそうかよ。


成層圏に届いてしまうのではないかというくらい長時間乗ったエレベーターから解放されると、すぐ目の前が件のレストランだった。

ガラス窓から下界を見下ろすと、人も車も芥子粒のように小さく見え、なんだか自分が偉くなったような錯覚を起こす。

なるほど、思わず「見ろ、人がまるでゴミのようだ」とか言いながら高笑いしたくなる気持ちもわからんでもない。しないけど。

俺たちは、レストランに入り、給仕に案内されるまま、予約していたテーブル席に着く。緊張のあまり、やはり、なんとなくそわそわしてしまう。

陽乃「比企谷くん、もしかして緊張しているのかしら?」

八幡「はぁ、まぁ」

こんな場違いな所に連れてこられて緊張しないわけがない。緊張のあまり蚊取り線香とか焚きたくなるくらい緊張しているのでやはり緊張しているのだろう。って何言ってんの俺?

陽乃「私の言ったとおりにしていれば大丈夫よ」テーブルの下で、陽乃さんがそっと俺に手に自分の手を重ねた。

八幡「そうスか…。そ、そうですよね?」そう言われて、俺は安堵のため息をつく。

…つか、そういえば俺、まだ何もいわれてなんですけど?なにが大丈夫なんだよ?


陽乃「…あ、私、比企谷くんにとても大切なことを言い忘れてたことに、今、気がついたんだけど」

八幡「は?」なんだよ今更?

陽乃「ごめんなさい。話は後よ。岩清水さんが来たわ」陽乃さんがそれとなく居住まいを正す。




「陽乃さん、大変お待たせしました」




俺の背後から、よく透る声が聞こえてきた。どうやら岩清水コンツェルンの御曹司とやらがお見えになったらしい。

ちっ、声からして既にイケメンなのな。金持ちでイケメンなんて世の中どうしてこんなに不公平なの?政府は早急に格差是正を促すべきだろ。

イラっとしながら、ゆっくりと振り向いた俺のサングラスのレンズには、










――― なぜか、材木座の顔が映っていた。


本日はここまで。ノシ

書きながらアドリブも入れてるせいか、読み返すと誤字脱字がハンパないですね。恥ずかしっ。

きっとあれだ、東大寺にあるよく似た童子さんだよ


>>543

誰が中の人の話をしとるか


とりあえずざっと気になるところ拾い出してみました。脳内訂正ヨロ。
やっぱり、寝入り鼻や寝起きは誤字脱字が多いでつね。

>>519

4行目

とりあえず車体の前とか後ろにやたら自己主張の強いエンブレムつとかけてるヤツだと思えばいい。
                       ↓
とりあえず車体の前とか後ろにやたら自己主張の強いエンブレムつけてるヤツだと思えばいい。

>>522

2-3行目

インナーマスッスルとか鍛えられそうだな、これ。
         ↓
インナーマッスルとか鍛えられそうだな、これ。

4行目

車の外観、特にバンパーの色とか形とか、特に硬さについては熟知している。頭ではなく身体が。
                 ↓
車の外観、バンパーの色とか形とか、特に硬さについては熟知している。頭ではなく身体が。

>>523

3-4行目

なぜあの時ブレーキでなくアクセルを踏むようい言わなかったのか、とか。
                  ↓
なぜあの時ブレーキでなくアクセルを踏むように言わなかったのか、とか。

>>533

7行目

八幡「大丈夫ですよ…貴女と一緒でも限りこんな場所に来たりしませんから」
                 ↓
八幡「大丈夫ですよ…貴女と一緒でもない限り、こんな場所に来たりしませんから」

>>535

9行目

陽乃「私の言ったとおりにしていれば大丈夫よ」テーブルの下で、陽乃さんがそっと俺に手に自分の手を重ねた。
                    ↓
陽乃「私の言ったとおりにしていれば大丈夫よ」テーブルの下で、陽乃さんがそっと俺の手に自分の手を重ねた。

11行目

…つか、そういえば俺、まだ何もいわれてなんですけど?なにが大丈夫なんだよ?
                ↓
…つか、そういえば俺、まだ何もいわれてないんですけど?なにが大丈夫なんだよ?




八幡「…ざ」



八幡「…材木座…だと…?」



御曹司「は?ざい…?」

いぶかしげに俺をみつめる男のツラはまさに材木座そのものだった。

御曹司「これはこれは、はじめまして…私は」


どごぉっ


御曹司「ふげほっ」

皆まで言い終わる前に、いきなり俺の渾身の右フックが材木座の左頬にさく裂する。

八幡「材木座!、てめぇ、ここでなにしてやがるっ?!」

殴っただけでは飽き足らず、両手で胸倉をつかんで強く揺さぶった。

御曹司「あばばばばば?な、なにをするでおじゃるるるるう?」

陽乃「比企谷くん、ストップ!ストーップ!」

陽乃さんが慌てて止めに入る。

八幡「だってコイツ、材木座ですよ?!こともあろうに材木座の分際で資産家の御曹司を騙るなんてっ!」

陽乃「違うのっ!彼は違うのっ!似てるけど違うのっ!別人なのっ!」

八幡「別人?!」俺は材木座の顔をした男と陽乃さんの顔を交互に見つめる。

御曹司「…」(白目を剥いて泡を吹いている)


八幡「よし、じゃあ質問だっ!答えろっ!」

俺が更に強く揺さぶると、材木座の顔をした男がコクコクと頷く。もしかして首が据わってなくてガクガクしてるだけかもしれないが、そんなのは知ったこっちゃねぇ。

八幡「セーラー○ーンに出てくるジ○ダイト役の声優の名前はっ?!」

御曹司「小○坂○也」ボソッ

八幡「やっぱ材木座じゃねーかっ!」ガコッ ガコッ

御曹司「あべほせっ」

陽乃「違うの!そうじゃないの!彼が、その人が岩清水さんなのっ!」


八幡「はぁっ?!」


俺は再度、俺に胸倉をつかまれたまま伸びている男の顔を見降ろす。



岩清水「…は、はじめましゅて…い、いわしみぢゅれしゅ…」


八幡「うそだっ!こんなマヌケ面がこの世にふたりと存在するはずがねぇっ!」つか写真と全然違うじゃねーか?!

岩清水「ま、マヌケ面とは失礼な」御曹司がマヌケ面で反論する。

陽乃「岩清水さん、ごめんなさい。彼、緊張のあまり、ちょっと動揺していて」

陽乃さんが、材木座のツラをした御曹司の顔にかいがいしくハンカチを当てながら謝罪する。

岩清水「う、うむ。よくわからぬのだが、ここは陽乃さんに免じて穏便にすませることにしよう」

レストラン内が一時騒然となったが、岩清水と陽乃さんのとりなしで俺の突然の暴走も大目に見てもらえたようだ。
どうやらこのホテルで二人はVIP待遇らしい。岩清水と雪ノ下の名のなせる業なのだろう。VIPといっても真空断熱材やヴァーチャルIPアドレスのことではない。誰もしらねーっつーのそんなの。

陽乃さんに宥められて、地に堕ちた威厳をとりつくろうかのように服装の乱れを直してはいるが、何気に前屈みになった陽乃さんの胸の谷間に目が吸い寄せられている。
同じ男として、その気持ちは痛いほどよくわかる。特に股間が。


しかし、見れば見るほど顔はそっくりだが、確かに高価そうな、よい仕立ての衣服に身を包み、材木座にはない育ちの良さからくる気品というヤツが感じられないこともない。材木座の顔から気品を感じるようなことがあるとは予想だにしなかったが。
それによく見れば、年齢もかなり上だ。やはり、別人なのだろう。
別人だとしたら、これはやっぱりシクッたのかもしれないな…ファーストインプレッションは最悪なものとなってしまった。まあ、お互い様だが。

ここはひとつ陽乃さんの顔を立てて、素直に謝罪しておいた方がいいだろう。

八幡「すみません。取り乱してしまって。知人によく似ていたものですから」

岩清水「ほう、お友達ですか?」

八幡「ちげえよっ!!誰が友達だっ?!」

岩清水「へひぃっ?!」


材…いや岩清水が過剰な反応を見せるのは、今日の俺の服装とサングラスという井出達が、ちょっとヤバいヤツみたいな感じに見えているからだろう。
俺には全くそんなつもりはないのだが、育ちがいいだけに無菌培養されたかのような御曹司の方が少しばかり及び腰になっているようだ。
その証拠に不安げに目でチラチラと俺の顔色を窺っているのがわかる。

陽乃さんもそれに気がついたらしく、さり気なくフォローしてくれる。

陽乃「ごめんなさい、彼、生まれつき頭が…じゃなくて目が弱くてサングラスが手放せないの」

石清水「そうなんですか。頭が…」だから納得したように頷くなよ。

なんだよ頭が弱いって。当たってるだけに何も言い返せねぇじゃねぇか。しかし材木座の顔したヤツに頭弱いとか言われると余計にハラが立つ。


八幡「拝見したお写真とは全然違うんですね」俺は思い切りイヤミったらしく言ってやった。

岩清水「おや、もしかしてアレをご覧になったんですか。いやはや、写真映りが悪くてお恥ずかしい」

どう好意的に見積もっても200パーセントくらい修正してある。ほとんどどころか全くの別人。多分、背景以外原型とどめてねーし。
つか、これもうサギだろサギ。クロだのシロだのいう以前に、完全なサギ。

山で罠にかかった白い大きな鳥を助けてもなかなか恩返しにこないんでおかしいと思って問い詰めたら、実はツルではなくてサギでしたみたいな感じに、ものの見事にサギだよな。
今度から見合い写真には“これはイメージ画像です”って注意書きとか、法律で義務つけるべきだろ。


陽乃「改めてご紹介するわ。こちらが岩清水さん」

岩清水「むほん。はじめまして。岩清水静夫です」尊大な態度で挨拶をする。

いやいやどうみても御曹司って面には見えない。藁半紙かせいぜいいいとこ再生紙だ。便所紙にしてトイレで流しても詰まりそうな顔をしている。

八幡「…どうも」俺はペコリと頭を下げ、グラスに注がれた水を口に含む。いきなり大声を出したんで、少しばかり喉が渇いた。今のうちに喉を潤しておくことにする。

陽乃「…それで、彼が私のフィアンセの比企谷くんです」

八幡「ぶっ?!」

岩清水「ぬわはっ?」

吹いた水が岩清水の顔を直撃する。顔がズブ濡れになったが、別に水が滴れば誰でもイイ男になるってわけでもねぇみたいだな。
まあ顔が材木座なんだから当然か。つか、今、陽乃さん、なんて言いました?
俺、渡辺○美じゃないんだから、モノマネなんてできませんよ?あれはビヨンセか。ちょっと違う。いや全然違うだろそれ。


八幡(ちょっ?ふぃ、ふぃあんせって?)ヒソヒソ

雪乃(しっ。いいからここは黙って私に合わせて)ヒソヒソ

岩清水「そうですか。あなたが比企谷くんですか。想像していた方とは随分違いますね…」育ちがいいところを見せて、慌てず騒がず顔をナプキンでぬぐう材…岩清水。

八幡「それはこっちのセリフです。俺の予想を遥かに下回る顔…てっ!?」

陽乃「比・企・谷・く・ん?」ニコッ

陽乃さんが笑顔を浮かべたまま、テーブルの下で俺のスネを蹴り、そのままぐりぐりと甲を踏みつける。
なにその足技コンボ。地味だけど超痛いんですけど?ピン・ヒール尖りすぎでしょ。もしかして毎晩研いでたりするのかよ?


今日はとりあえずここまでデス。ノシ


_(」∠ε:)_


_(:3」∠)_


_(」∠ε:)__(:3」∠)_


八幡「…比企谷八幡です」俺はペコリと頭を下げて簡単に名前を告げた。

陽乃「比企谷くんは妹の同級生なんです」

岩清水「妹君の?ああ、雪乃ちゃん、でしたか?」メガネを外し、丁寧に拭く。

なにぃ…?雪乃ちゃん…だと?

八幡「…おい?」

岩清水「な、なにぬね?」

八幡「雪ノ下のことをよく知りもしねぇくせに、ちゃんづけなんかで呼ぶんじゃねぇっ!!」

岩清水「ひっ、ご、ごめんなさい」

八幡「あいつにそんな可愛らしさなんて微塵もねぇだろっ!」

スコンッ

陽乃「ひ・き・が・や・く・ん?」ニコッ

八幡「…スミマセン」調子に乗り過ぎました。ってメニューの角で頭叩くなよ。マナー違反だろ、それ。金属で補強してあるし。


陽乃「比企谷くんと妹が同じ学校の部活仲間なんです」

岩清水「ほほう」

陽乃「妹が色々とお世話になっている関係で、私も時々会う機会があって、そこで知り合ったの。そうよね?」

こくこくこくこく。怖いのでひたすら黙って頷く。ムチウチになるんじゃないかと思うくらい高速。たぶん軽く音速は超えてる。

岩清水「なるほど。で、比企谷くんと陽乃さんの妹君は、どんな部活に所属しているのかな?」

八幡「奉仕部です」

岩清水「奉仕部?」

八幡「ええ、具体的に言うと、俺が一方的に雪ノ下に労働や奉仕を強要される独裁政権…ではなくてですね…」

チラリと陽乃さんの表情を窺う。

八幡「生徒の抱える悩みや問題を解決する手助けをすることを本来の目的とする…はずの部活です」少なくとも俺はそう聞かされている。信じてはいないが。


岩清水「随分と地味な部活のようですね。多才な陽乃さんの妹さんなら、運動系でも文化系でも、もっと華やかな部活で活動できそうなものですが?」

御曹司がおもねるような口調で陽乃さんに話しかける。お追従というヤツだろう。

陽乃「そうですね。私も最初聞いた時は正直、意外でした」

雪ノ下が奉仕部に所属しているのは雪ノ下の意思ではなく平塚先生の考えなのだが、敢えてここでは言わないことにしておく。俺に至っては強制だし。

陽乃「でも、妹は昔から何をやっても私には叶いませんでしたから、比較されるのを避けたのかもしれまんせんね」

懐かしむような口調だが、事実のみを淡々と述べているようでもある。

確かに素質は抜群なのだろうが、体力が続きそうにないからな。だいいち、いくら雪ノ下といえども、相手が陽乃さんではさすがに分が悪い。

陽乃「テニス、バレエ、乗馬、合気道、私に隠れて必死になって練習していたものよ」

なるほど、あいつの負けず嫌いさんは筋金入りだからな。たぶん素材はガンダニュウム合金とかだろ。

陽乃「あ、でもそういば、唯一、一度だけ私が負けた競技があったかしら…たしか…」

八幡「…水泳ですか?水泳でしょう?水泳ですね?」

陽乃「あら、なぜわかったのかしら?」

八幡「…いやなんとなく」

あいつ、水の抵抗とか超少なそうだからな。思わず涼しげな胸元が脳裏に浮かぶ。


形ばかりの自己紹介が終わったらお決まりの御歓談タイムというヤツである。

にこやかな笑顔を浮かべながらお互い当たり障りのない会話の裏で、それぞれの腹の中を探り合う、アレだ。
自らの手の内を明かさず、極力相手の情報を引きだす情報戦。ここで下手を打つと嘘がバレてなにもかもがオジャンである。

しかしサングラスをしている分、ポーカーフェイスにかけては俺の方が有利。それにいざとなったら切り札もあることだし。土下座とか。
それに引き換え、岩清水の方はそれこそブタである。いやもちろん手札の話しだお?

岩清水「…いやぁ、しかし、陽乃さんが年下好みとは知りませんでしたね」

陽乃「あら、だって若い子の方が何かとコントロールしやすいし自分の色にも染めやすいでしょう?」

八幡&岩清水「あー…」(って、理由が怖えよっ!!!)

二人揃ってドン引きである。御曹司に至っては顔から血の気まで引いてるようだ。気持ちはわかるが、この人の本性はこんなもんではない。
人は見かけが全てじゃないんだぜ?せいぜい8割だ。でもそれほとんどが見かけってことじゃね?


陽乃「それに、年齢さえ重ねていれば世の中が見えているというわけでもないと思います。むしろ若くても意外と物事の本質を見抜いている場合もありますから。多少ヒネているかも知れないけれど」

意味あり気に俺を見る。なにそれ誰のことだよ?確かに服の上からでもブラのサイズいい当てられるけど。なんでそんなことまで知ってんの?

岩清水「ときに、比企谷くん、将来についてはどのように考えているのかね?」

いきなり俺に振ってきた。

八幡「そうですね。とりあえず、高校卒業後は文系の大学に進学します。大学を卒業したら…」

岩清水「ふむふむ」

八幡「結婚して、専業主夫として家庭に入り、死ぬまで奥さんに扶養してもらいます」キッパリ

岩清水「せ、専業主夫?」

予想外の答えだったのだろう。岩清水が俺と陽乃さんの顔を交互に見ている。ふ、いつの時代においてもパイオニアとパイマニアは常に奇異の目で見られる宿命なのさ。


八幡「はい。そのために日夜家事の腕を磨いています」俺は自慢気に胸を張る。男の胸なんざ誰も見たくない。俺だってそうだ。

陽乃「…つまり、大学を卒業したら、彼には公私共に私のマネジメントをしてもらうつもりなの」

まるで理解できないといった顔の岩清水のために、陽乃さんがフォローすることにしたようだ。

陽乃「私は家庭に縛られるタイプの女ではないですから、家事や事務処理は優秀な彼に任せることにして、仕事の方に集中したいと考えているんです」

岩清水「ほほう…なるほど。そういうことですか」

どうやら納得してしまったようだ。基本的に言ってることは同じなのだが、言ってる人間が違うだけで受け取り方も違うという好例だろう。俺も騙されないように気をつけなくては。美人が相手の場合は特に。

しかし、さすがにそれは持ち上げ過ぎだろ。いったいどこで落とすつもりなんだよ。


八幡「買いかぶり過ぎですよ。俺はそんなに…」

陽乃「比企谷くん、あなたは自分が思っているよりもずっと優秀よ。磨けばもっと光るわ。…それに、信念のためなら汚れ仕事も厭わないようだし」

文化祭の時の俺のヒールっぷりを指していっているのだとしたらそれは間違いだ。
例え何もしなくても、いや何もしないからこそ、俺はいつもヒール扱いなのだから。

落ちない窓の汚れ、教室の隅に放置されたゴミ。誰も気にしないからこそ安心して無視できる人間。
時々、なにかの拍子に思い出したように口の端にのるときは、悪意と軽蔑と嘲笑の対象となるような存在。

自分よりも常に下に位置付けられているからこそ、公然と叩いてもよいものだと勘違いしてるかのようだが、本当の処はそうではない。
彼らは怯えているのだ。俺を叩き、見下すことで、自分がそうではないと安心を得ようとしているに過ぎない。

確かにカーストの最下層のそのまた底辺を這いずり回るぼっち。それが俺である。別に自慢できるような立場ではないが、だからといって卑下するつもりもない。自分の信念を曲げて、友達とかいうわけのわかない虚構を相手におもねるくらいなら、俺はひとりで十分だ。
今までも、そしてこれからも。


陽乃「…だけど私なら、自分のために大切な人が…あなたが傷つくのを見過ごすようなマネはしないわ。そう、絶対にね」


八幡「…え?」


カシャン

プランターボックスに遮られた隣席のテーブルから大きな音が響く。

「失礼。ごめんなさい」若い女性が謝罪する小さな声がした。

だが俺は陽乃さんの言葉に気を取られるあまり、それがどこかで聞いたことのある声だったことにすら気がつかなかった。


では本日はここまでで。ノシ

次回からまた深夜の更新になると思います(涙声


またやっちったよ。

>>562

1行目

陽乃「比企谷くんは妹の同級生なんです」
        ↓
陽乃「比企谷くんは妹と同じ学校の同学年なんです」


ついでにセリフがカブってるから差し替えときますね。

>>563

陽乃「比企谷くんと妹が同じ学校の部活仲間なんです」
           ↓
陽乃「それで、比企谷くんと妹が同じ学校の部活仲間ということもあって…」


岩清水「なるほど、陽乃さんが御自身の将来について真剣にお考えなのはよく分かりました」

御曹司は顎の前で手を組み、感じ入ったかのように何度も頷く。

しかしやがて、

岩清水「…ですが、これはそれで片付くような簡単な話ではありません」

それまでとはうって変ったかのように、静かな声音で重々しく切り出した。

岩清水「というのも、貴女もご存じのとおり、そもそもこのお話は、あなたのお父上が当家に融資の依頼を持ち込まれたことに端を発しています」


八幡「えっ?」

意外な話の流れについていけず、俺は思わず陽乃さんの顔を窺ってしまう。

陽乃「ええ。勿論、そのことは、存じています」

彼女はチラリと視線を返して寄こしたが、そのまま何食わぬ顔で岩清水との会話を続けた。

陽乃「…確か、両家の間で血縁関係を結ぶことで結束を強くすれば、ビジネスの上でもより大きなメリットがある…というお話でしたかしら?」

岩清水「そうです。あなたのお父上から融資の相談を受けた時、両家の間で縁談の話が持ち上がったわけです」

なるほど、いわゆる政略結婚というヤツだな。どうやら良家のボンボンが陽乃さんの魅力にのぼせ上った、という単純な図式ではなかったようだ。

そんな大事なことを今まで黙っているなんて、いったいこの人は何を考えているんだよ?いやもしかしたら俺が何も考えていなかっただけかもしれないが。

考えてみれば、相手はあの陽乃さんである。何かしら裏があって然るべきだと気がついてもよさそうなものだ。

そうとも知らずにホイホイ依頼を受けてしまった俺は、まさに道化以外の何物でもない。しかも陽乃さんの操り人形とくれば、まさに傀儡。いったいなにサーカスのあるるかんだよ?


岩清水「…それに、たしか貴女の御母上はかなり乗り気だったと記憶しておりますが?」

陽乃「ですが、父は今回の件について私の意志に委ねると申しております」

岩清水「僕としても最初この話に関しては消極的だったのですが、実際にお会いしてみれば、このように才気に富んだ美しい姫君だ…」

芝御曹司の居がかったセリフに、思わず歯が浮きそうなる。なにこれもしかして歯周病?

岩清水「…しかし、いざ話を進めてみると、貴女には既に婚約者がいるいう話じゃないか。トンビに油揚とはまさにこのことだ」

トンビってもしかして俺のことか?どちらかというと、トンビはむしろそっちだろ?まさにタカがトンビを生んだってヤツだよな。
産院で取り違えたんじゃねぇの?今からでも遅くないからDNA鑑定とかしてもらった方がいいぜ?ついでに分子レベルに分解して異次元に転送してもらえよ。ハエとかと一緒に。


岩清水「本来は、このお話は融資の話ごとなかったことにしてよかったのですが、僕の我儘でお互いの家に迷惑をかけるわけにもいかない」

陽乃「ご厚情いたみいります。さすが太っ腹ですことね」

恩着せがましい言い方にチクリと陽乃さんが皮肉で返す。もちろん岩清水は気がつかない。贅肉の塊だけに皮肉ぐらいでは通じないのかもしれない。

岩清水「かといって、このままハイそうですかと引き下がったのでは、僕のメンツは丸潰れだ」

陽乃「ですから私も、こうして礼を尽くして、お申し出の通りフィアンセを同席したうえで岩清水さんにお会いしているわけです」

岩清水「…そう、僕もこのような美しい女性の婚約者はいったいどれほどのものかと、是非一度お目にかかりたいと思ってムリを申し上げたわけだが…」


岩清水「…失礼ながら、先ほどからおふたりを見る限り、とても結婚を前提にお付き合いしているような仲には見えません」

そりゃ当然だろ。どう見たって俺と陽乃さんでは全く釣り合わない。キャスティングの段階で既に無理があったのだ。

おそらく陽乃さんも俺ならば与し易いと考えたのだろうが、逆にそれが仇になってしまったようだ。

自慢じゃないが、例え相手が陽乃さんでなかったとしても、友達すらいない俺に誰かの恋人役なぞ務まるはずもないのだ。確かにに自慢にならねーな、それ。

さて、ならばここらでそろそろ俺の出番かもしれない。俺は余裕たっぷりに周囲を見回すと、土下座するのに適当なスペースを物色し始めた。


陽乃「いいえ、そんなことありませんわ。ふたりはラブラブよ。ね、比企谷くん?」


そういいながら陽乃さんは腕に抱きつくかのように見せかけつつ、その実、俺が下手な行動に出ないように腕をがっちりと捕まえている。
ご丁寧に肘関節をキッチリと極められているので、身動きすらままならない。なにこれ超恐いんですけど。

八幡「そ、そうですねー(棒)」

俺の肘関節はそろそろブラブラになりそうだけどねー。


岩清水「そうですか。そこまで言い張るのでしたら、それをこの場で証明していただけますか?」

御曹司のメガネがキラリと不気味に光った。

陽乃「証明…ですか?」予想外の申し出にさすがの陽乃さんも怪訝そうな顔をする。

岩清水「そう、証明です」

何かとてつもなくイヤな予感がしてきた。そしてイヤな予感ほど的中率が高いというのが俺の経験則。まぁ俺くらいになると、いい予感がすることなどほとんどないが。

岩清水「そうですね。もしこの場でおふたりがキスをして見せてくれたなら、とりあえずふたりの関係をそれと認めてもいいでしょう」



八幡&陽乃「?!」



ガタガタッ

再び隣席から、今度は先程とは比べものにならないくらい大きな物音が聞こえてきたのだが、今の俺にはそれを気にする余裕など全くなかった。


八幡「き、キス…ですか?」

ハードル高すぎだろ。しかも人前で、陽乃さんと?

岩清水「まさか、婚約者なのに、まだ一度もしたことがないなんてことはありませんよね?」

いや別に婚約者だからというワケではなく、そもそも俺には女性とキスした経験というものすらない。彼女いない歴=年齢の俺を舐めちゃいけない。いや人生の辛酸ならイヤというほど嘗めてるけど…ってそれ関係ねぃだろ。

何か言い逃れる術はないものかと、戸惑いがちに陽乃さんの様子を窺う。

陽乃「あら、そんなことでよろしければ、お安い御用ですわ」

八幡「はぁっ?!」

何いっちゃってるの、この人?キスだぜキス。マウス・トゥ・マウスでチューだからって、別にネズミとか関係ないんだぜ?

陽乃「でも、その前にひとつ確認させていただいてよろしいかしら?」

岩清水「ほう、何ですか?」

陽乃「もし、岩清水さんの前で比企谷くんとのキスをお見せしたら、ビジネスの話に関係なく、結婚は無条件で諦めていただけるということでよろしいかしら?」

岩清水「無論、僕も男だ。二言はありません」御曹司が、椅子ごとひっくり返りそうな勢いで腹を突き出す。もしかして胸を張ったつもりなのかもしれない。

陽乃「そうですか。なるほど、よくわかりました」

その答えを聞いた陽乃さんがニコリと笑みを浮かべる。それはまるで満開の牡丹のように艶やかな笑顔だった。


短くて申し訳ありませんが、本日はこの辺で。ノシ

相変わらず誤字脱字が多くて申し訳ない。テキトーに脳内補正してください。


岩清水「さて、いかがですか?」御曹司が俺と陽乃さんの顔を交互に見ながら再度問いかける。

そのふてぶてしい顔からは、できるはずがあるまいという多寡を括ったような表情が見て取れた。

材木座そっくりだけに、余計にムカつくことこの上ない。

陽乃「ええ、勿論ですわ。比企谷くん、いつもみたいに、して。優しくね?」

陽乃さんは、本当にそれがなんでもないことであるかのように俺に向き直り、目をつむって形のいい唇を軽く突きだして見せた。

…って、ま、マジですか?ちょっとーちょっとちょっとー…って、俺は思わずひとりで双子芸人してしまいそうになる。

陽乃「どうしたの?岩清水さんの前だからって、別に恥ずかしがらなくてもいいのよ?」

いや恥ずかしがってるんじゃなくて、怖いだけなんですけど。超怖い。マジ怖い。ごく控えめに言ってスゲェ怖い。あと怖い。


八幡「お、おう」

スー・ハー・スー・ハー

陽乃(…比企谷君、何してるのかしら?)ヒソヒソ

八幡(え?し、深呼吸ですけど)ヒソヒソ

陽乃(ふざけないでくれるかしら?)ヒソヒソ

八幡(あ、やっぱり?そうですよねー)ヒソヒソ

陽乃(当たり前でしょ?さ、早く)ヒソヒソ

八幡(準備体操からの方がいいですよねー?)ヒソヒソ

陽乃「比企谷くん?」小声だが彼女の声はハッキリと俺の耳に届いた。

八幡「は、はい?」思わず返事が上滑りになる。

陽乃「私、比企谷くんが相手なら…別にいいのよ?」

そう言って俺の首に両手を回し、潤んだ目で上目遣いにじっと見つめた。


ゴクリ

俺は思わず大きな音を立てて生唾を飲み込んでしまう。

もしこれが演技だとしたら大した役者だと思ってしまいそうなものだが、恐らく十中八九これは演技であり、残りの一・二もまず間違いなく芝居である。

きっと彼女はそうやってずっと世間を欺き続けてきたのだ。その完璧に造られた外面とともに。

だから、例え今、俺と偽りのキスをしたとしても、彼女は全く歯牙にもかけぬはずだ。
そんなことは彼女にとっては取るに足らない些細な出来事であり、単なる挨拶程度、もしくは通過儀礼のひとつにすぎないのだから。

――― なら、俺は?俺はどうなのだろう。ここに至って、いったい何を躊躇う必要があるというのだろう。

客観的に見て主観的に見ても、このような機会に陽乃さんのような年上の美人とキスができるなら是非もないはずだ。
俺のファースト・キスの相手としても全く申し分ない。逆にお釣りが出てきてもおかしくないくらいだ。なにそれ自動販売機かよ。


―――しかし、だとしたらこの心の片隅に引っ掻かっているものはなんだろう。

俺の目は陽乃さんの顔を通じてもうひとつの顔を重ねて見ていた。

同じ顔なのに、全く違う顔。同じ瞳なのに、全く違う瞳。同じ笑顔なのに、全く違う笑顔。清廉で、潔白で、決して嘘をつかないまっすぐな美しい瞳。

彼女はどんな時でも決して嘘をつかない。
そして俺もまた自分にだけは絶対に嘘はつかない…まぁ、他人にはいくらでも嘘をつくけど。罪悪感の欠片もなく。

もし、ここで俺がここで偽りのキスなんてしようものなら、恐らく、俺はもう二度と彼女に顔向けができなくなるだろう。
例えそこにどんな理由があるにしても。そして彼女もそんな俺の事を決して赦しはすまい。それこそ未来永劫、永遠に。

それは俺にとって、彼女と対等な立場に、友達になる資格を一生逃すことを意味する。彼女の性格からしても、まず間違いないだろう。
俺の知る彼女 ――― 雪ノ下雪乃とはそういう女なのだから。

そして、同じように彼女の性格を熟知しているがゆえに、俺と同様の結論に至っているであろう人物がもうひとり。

その女性は今、俺の目の前にいた。


俺の頭の隅で警戒灯がチカチカと点灯する。

降って湧いたような幸運に身を委ねることさえできない俺の捻くれた性格に、自分自身で嫌気が差してくる。辟易したといってもいい。

だがしかし…

――― 誰もが憧れるような美女の恋人を演じたうえに、成り行きとはいえ、キスまでするだと?

もしここで材木座にこの状況の意味を尋ねたら、返ってくる返事は決まっている。

「それ、なんてエロゲ?」

どう考えても話が美味しすぎるだろ。MAXコーヒー並みに甘い。人生とはすべからく、もっと切なくて苦くて辛いものなのだ。特に俺にとっては必要以上に。だからなんでだよ?


だったら冷静に現状を把握しろと研ぎ澄まされた第六感がささやく。或いはそれは俺のゴーストなのかもしれない。

いつものようにクールに。冷めた目で。人間心理の裏の裏まで読む。裏の裏は実は表なのだが、そこは敢えてスルー。

陽乃さんの唇は目の間に迫っている。甘い吐息が俺の頬をなぶる。ともすれば蕩けそうになる俺の脳味噌に無理やりカツを入れる。

時間がないのなら頭の回転を速くするしかない。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ…艶々してて柔らかそうな唇だな…ってそうじゃないだろ、考えろ。

改めて今までの陽乃さんの言動の裏を読む。一見して、俺をその気にさせるような甘言の数々。思わせぶりな言い回し。意味ありげな視線。俺だって決して気がつかなかったワケじゃない。
逆に過敏に反応し過ぎていたくらいだ。特に下半身とか。

そしてその瞬間、人間心理(主に裏)のスペシャリストである俺は、ひとつの可能性につきあたる、



もしかして、陽乃さんにとって“俺”という存在は、妹の精神的な自立や成長を阻害する、邪魔者に過ぎないのではないだろうか…と。



だとしたら―――

だとしたら、この機会に俺をたらしこんで自分に惚れさせ、そして完膚なまでにフるという筋書きの可能性は考えられないだろうか?

煩わしい求婚者と、妹についた悪い虫を同時に排除できるならまさに一石二鳥。

もし、俺を排除できないにしても、既成事実を造って、逆に雪ノ下の気持ちが俺から離れるようにしむければいいだけの話だ。


そう、だからこそ、この役は他でもない、この俺、比企谷八幡でなければならなかったのではないのだろうか―――。


多角的に眺めても瑕疵はないこの理論の唯一無二の致命的の欠点といえば、他ならぬ俺が考えついた理論であるという点なのだが、それはこの際、脇へ置く。


しかしそれと同時に、僅かではあるが、別の可能性がないわけではない。

例えばそう、彼女が本気で俺に好意を持っているという可能性である。

俺はそのふたつの可能性、――― ひとつは可能性ともいえない可能性だが ――― を瞬時に秤にかける。

そして俺の灰色の脳細胞(腐ってるわけではない)が即座に回答を叩きだす。


結論 ――― 恐らくこれは陽乃さんによって巧妙に仕組まれたハニートラップである。


なぜなら、俺みたいな男が、こんな美女に好かれるわけがない。

雪ノ下に言われるまでもなく、真実とは常に残酷なものなのだから。


八幡「すみません、俺にはやっぱり…」そっと彼女の肩を押しやる。

陽乃「…どうして…なの?」陽乃さんの俺を見つめる瞳が奥が一瞬だけ揺らぐ。

その目には俺の推理を根底から揺らがせるようなものさえ感じられた。

だが、罠をいう罠を全て踏みしだき、嘘という嘘に全て身を晒してきた俺は、そんな可能性さえも否定する。

そして、自分の心の動揺を押し隠すために、つい言わなくてもいいセリフすら口にしてしまう。




八幡「…もしかして、貴女は、俺を妹から遠ざけたいだけなんじゃないんですか?」




陽乃「…え?」

彼女が心底、意外そうな顔をした。


もしかして俺は今、自分の勘違いで、彼女を傷つけてしまっただけなのかも知れない。

俺が傷つけてしまったのが、この女性の心なのか、プライドなのか、またはその両方なのかは定かではない。

だが、虚飾を全て剥ぎ取られたような寂し気な彼女の表情は、いつになく年相応に見えて、まるで、まるで妹そっくりだった。

陽乃「…比企谷君。お願い」

俺を見上げるその可愛らしい顔の破壊力たるや凄まじいものがある。俺の僅かな理性を痕跡も残らぬくらい跡形もなく砕け散らせるに十分なほどだ。

俺の心の中で天使と悪魔が葛藤する。

悪魔(別にいーじゃん、やっちゃえよ。役得、役得)

…なるほど一理ある。

天使(別にいーじゃん、やっちゃえよ。役得、役得)

…っておまえ天使だろ?!仕事しろよ?!

俺の躊躇いの間隙を突くかのように、陽乃さんの美しい顔がスッと近づいてきた。逃げようにも首に回された両手のせいで間合いが切れない。


岩清水「おおっ?!」御曹司が両手の拳を握って前に乗り出す。って、なにやってんだよ。


俺が観念しかけたその瞬間…


バンッ


三度にわたり、隣席のテーブルから今度ばかりは凄まじいまでの音が響いてきた。

だがしかし、今の俺には…………って、さすがにそれは気になるだろ、おい?!


「ちょっと、待ちなさいっ!!」


陽乃&八幡&岩清水「…えっ?!」


俺は今度こそ、その声の主の正体に気がつき、愕然として振りむいた。


今日はこんなところですかね。ノシ

明日の更新はまた深夜になります。多分。

冗長すぎ


>>604

だから長いと言ったで(ry



|_・) ソー


|ミ  サッ


常連さんの閲覧が終わったであろうところを見計らって、実はひっそりsage更新を狙っていたりする。






八幡「…って、おまえ、ここでなにしてんの?」




青みがかった長い黒髪をお手製のシュシュで束ねたポニーテール。やや垂れ目がちの大きな目。左目の下に泣き黒子。

俺のクラスメートにして稀代のブラコン、小町の友達であるところの佐野厄除け大師みたいな名前のヤツの姉、それからえーと、えーと…

確か名前は、川…川…川村?川口?川越?とりあえず川なんとかサキ、略してカワサキだ。だいたいあってる、はず。多分。


川崎「あんたこそ、こんなところで、その女と何しようとしてるわけ?」

鋭い目つきで俺を睨みつける。何怒ってんだよ、怖えな。思わず目を逸らしちゃうだろ。もし俺に尻尾があったら間違いなく巻いてるレベル。

八幡「…何ってアレだよ、ホラ、その、アレがアレしてナニだから…」逸れた目が今度は勢いよく宙を泳ぐ。まるでムーンウォーク。いやむしろムーンサルトするまである。

川崎「前のホテルでお世話になった先輩が、今はここで働いているっていうから、ちょっと挨拶がてら遊びにきたんだけど…」

八幡「そ、そうかよ。ぐ、偶然だな」

川崎「…そしたら、あ、あんたによく似た男が女連れで入ってきたから、つい気になって様子見てたんだけど、あ、べ、別に気になったわけじゃないけど…」///

八幡「…どっちなんだよ?」意味不明で俺が気になるだろ、逆に。

川崎「き、今日は、に、似合わないカッコしてるのね。に、似合ってるけど」///

八幡「…だからどっちなんだよ」


陽乃「比企谷くん、どちら様なのかしら?」陽乃さんがニコニコしながら俺に尋ねた。なぜか背中に冷や汗が流れる。

八幡「あー…、クラスメートのカワサキ(予想)です」たぶん。

チラリとカワサキ(推定)を見ると、不服そうではあるものの、特に否定をしないので、恐らく名前は間違いないとみていいだろう。

川崎「と、とにかく、あんたはここでいったい何をしようとしてたわけ?そ、その、わ、私というものがありながらっ?」

八幡「…は?」

川崎「な、何よその態度…?」

八幡「…おまえ、何いっちゃってるわけ?頭どうしたの?」

川崎「な、なんで知ってるのよっ?ちょ、ちょっと切っただけなのに。よ、よく見てるのね。ありがとぅ…」///

八幡「いやいやいやいやいや、そうじゃねーなくてだな…」あたまの中がハッピーターンすぎんだろ。メイド・バイ亀○製菓かよ?


川崎「え?だ、だって、あんた、あ、あたしのこと好きだっていったじゃないっ?!」

八幡「だから、は?」なにそれ初耳なんだけど。

川崎「…言ったでしょっ?!」ムッ

八幡「いつだよっ?!誰がそんな怖いこと…」


川崎「文化祭の時!教室で!あ、あたしに、その、あ、愛してるって…」ゴニョゴニョ


八幡「あー…」もしかしてそんなこともあったかもしれませんね。てへぺろ。

陽乃「ふーん…そうなんだー…へー…」

急に体感温度が2度ほどさがる。もしかして、いもうとのんでもいるのかとあたりを見回してしまうくらい。

残念、いませんでした。…って誰に言ってるんだよ?


川崎「ほ、ほらみなさい!しかも、あ、あんた、わ、私の下着見たんでしょ?」ゴニョゴニョ

八幡「下着って…スケスケの黒のレース?」

川崎「そ、そうそう…って、透けてないしっ!!ばかじゃないのっ?!ばっかじゃないのっ?!」///

いや、それはあくまでも俺の希望でしたね。

川崎「だったら、あ、あんた、責任とりなさいよね」

八幡「責任?」

もしかしておまえと付き合えとか?いや、さすがにそれはないか。こいつ、筋金入りのブラコンだもんな。俺は徹頭徹尾シスコンだし。全く以てありえない系。

つか、そんなんでいちいち責任とってつきあわなきゃいけないんだったら、真っ先に材木座とつきあうことになっちゃうだろ?
まあ、あいつの場合は、さすがに下着とか見てないけど。いや頼まれても見たくねぇけどな。


八幡「あー…、とりあえずサキサキ」

川崎「サキサキいうなっ!」///

八幡「事情は後で話す。機会があったら」たぶん一生ないと思うけど。

川崎「はぁ?」

八幡「ギャルソン(給仕)!」俺は映画のようにカッコつけて指をパチリと鳴らす。

給仕「はい、何か?」マジキタヨコレ。

八幡「こちらのレディがお帰りだ。丁重にお送りしてくれ」

給仕「畏まりました」

ものは試しとは思ったが、さすがに岩清水と雪ノ下のVIP効果は絶大らしい。虎の威をかる狐の気分だが、この場合は致し方あるまい。長引かせると色々めんどくさそうだし。


川崎「え?や?ちょ?」

川崎の抵抗も空しく給仕にずるずると引きずられるようにして去ってゆく。


…あ、まぁ、一応、俺のピンチ救ってくれたわけだから、とりあえず礼くらい言っておくか。



八幡「じゃあな、サンキュー川崎!愛してるぜっ!」



川崎「や、ちょ、こ、こんな公衆の面前で!きゃああああああああああああああああああああああああ」///

遥か彼方から川崎の悲鳴のような声が長く尾を引いて響いていた。

八幡「やれやれ」なんなんだよ、いったい。



陽乃「…比企谷くん、あなた、絶対ロクな死に方しないと思うわよ?」


ではホントに今日はこの辺で。ノシ

次回はメインストーリーの方が進む…といいですね(他人事

>>172
同意。でれのんは神。ぽんかん⑧は大神。

>>146
八幡「そんなわけあるかっ。なんで俺だけピンポイントなんだよっ?!」

だいたいなんだよそのイケメンみたいな特別扱い。全然うれしくねえし。流行ったらどうすんだっつーの。

嫌な奴になるかも知れないけど言いたい。

八幡「んなわけあるか。どんだけピンポイントで除外してんだよ。何、国会議員ってそんな暇なの?」

わあい、八幡、特別扱いされちゃった。国のお偉いさんにまで知られてるなんてすごいや。何それ欠片も嬉しくない。


スミマセンが、帰りが予定より遅くなってしまったので更新はまた後ほど…


_(」∠ε:)_


岩清水「…い、今のはいったい?」

川崎の連れ去られた方向を茫然と見つめつつ、御曹司が誰にともなく呟いた。

陽乃「まったく、そうやって無自覚にフラグを乱立させないでくれるかしら…」

陽乃さんがこれ以上はないくらい冷たい目で俺を見ている。なるほど、雪ノ下のあの目は実は姉譲りだったんですね。納得。でも誰得なんだよそんな知識。

八幡「俺、生まれてこの方、フラグ立てた事なんて一度もありませんよ?」むしろ俺くらいになると立ててもいないフラグを自ら回収しちゃうレベル。

陽乃「あら、そうかしら?でも今私との間にはちゃんとフラグが立ってるでしょ」

そういって陽乃さんは再び俺の首に両手を絡めた。

あー、確かに今、俺の頭上にフラグが屹立したのを感じましたよ?特大の死亡フラグというヤツが。

実は俺、コレがすべて終わったら、今度こそ戸塚にプロポーズするつもりなんだ…って自分で後押ししてどうすんだよ。


予期せぬ川崎の乱入のおかげで、一時的なピンチは回避したとはいえ、実のところ事態は1ミリも進展していない。いや、むしろ後退してるだろ、これ。

また俺のモノローグとかムリヤリ入れちゃう?

例えば、そうだな。俺がまだ、ぼっちじゃなかった頃の話をしてみようか…って、考えるまでもなく、俺の17年間の歴史の中で、ぼっちじゃなかった時代なんて、どこ探しても見当たらないんですけどね。モノローグ強制終了。

陽乃「さ、比企谷くん、邪魔者も消えたことだし、改めてさっきの続きをしましょうか?」

八幡「え?や、ちょ、ちょっと…陽乃さん?」

陽乃「大丈夫、痛いのは最初だけよ」

八幡「…痛いのかよ」





「お、お待ちなさいっ!」




八幡&陽乃&岩清水「えっ!」



…って、この場面、もうさっき済んだろ。なんか話がループしてね?あと何回やったら夏休み終わんだよ?


振り向くと、そこには、なぜか息急き切って、それこそ息も絶え絶えの状態の雪ノ下が立っていた。

雪乃「…」ハァッ ハァッ ハァッ ハァッ


八幡「…!」

陽乃「…!」」

岩清水「…?」



八幡「…雪ノ下」

雪乃「な…なにかしら?」ハァッ ハァッ ハァッ ハァッ



八幡「…とりあえず、椅子に掛けて少し休んだ方がいいんじゃねぇのか?」

相変わらず体力なさ過ぎだろ、おまえ。


どうやら雪ノ下は、とるものもとりあえず、急いでここまで駆け付けて来た様子だった。

八幡「いったいどこから走ってきたんだよ?…って、まさかお前、ここに来るまでの間に、また道に迷ってたりしてたじゃねぇだろうな?」

雪乃「…」///

雪ノ下が黙って目を逸らしたところを見ると、どうやら正解だったらしい。
こいつ絶対に今、JRの千葉駅とか行かない方がいいな。

とりあえず服装も着の身着のままでやってきたらしいが、こうして普段着で高級レストランにいても、違和感がない。
むしろその美しさは際立っているとさえ言えた。美人ってのはそれだけでドレスコードをも凌駕するらしい。

その証拠に、岩清水も突然現れた彼女に対して何も言えずにただ茫然と固まっていた。


最初に口火を切ったのはあねのんだった。

陽乃「雪乃ちゃん、邪魔はしないでって言って置いたはずだけど?」

雪乃「ね、姉さんだって私たちに嘘をついていたわけだから、その時点で約束そのものが反故になっていいはずよ?」

陽乃「嘘?いったいなんのことかしら?」

雪乃「お話はお父さんから全て伺ったわ。もう言い逃れはできないわよ?」

陽乃「あら、私は言い逃れなんてするつもりはないわよ」

雪乃「姉さん個人のことならともかく、雪ノ下家の問題に無関係な比企谷くんを巻き込むなんてどうかしてるわ」

陽乃「無関係とはいえないでしょ?それに、私は今回の件で私は一度も嘘なんてついていないし」


まぁ、確かに嘘はついていないよな。真実の部分を巧妙に隠していたけど。

しかし、女ってのはなぜこう嘘がうまいんだろうな。嘘をつかずに男を騙すのとか超得意だし。

特に窮地に陥った時の女のウソ泣きなんて、あれ、もう犯罪レベルじゃね?
なんで悪くもない俺の方が逆に犯罪者扱いされてクラス中から糾弾までされちゃうわけ?それなんか違うくない?…って俺の負の経験値とかはこの際どうでもいい。

つか、だからキミたち骨肉の争いは家に帰ってからやれよ。このままだとそれこそ骨が砕け、肉が飛び散っちゃうことになりそうだろ、俺の。




雪乃「そう…。あくまでも白を切り通すつもりなのね…。だったら、私は全てをお話するまでよ…岩清水さんに」




雪乃「…って、え?」


御曹司に向き直った雪ノ下が、戸惑いの表情を浮かべる。

雪乃「あ、あなたは、ざ、ざ、ざ…」

そして、なぜか俺を救いを求めるかのような眼差しで見た。


八幡「…………材木座、な」ボソッ


雪乃「…ご、ごめんなさい。ありがとう」///


改めて呼吸を整え、仕切りなおすことにしたようだ。


スゥ…


雪乃「…あ、あなたは財津くんっ?!」

岩清水「ほへ?」



八幡「…だから、材木座だって言ってんだろっ?!いい加減名前くらい覚えてやれよっ!」いや、ホントは違うんだけどね。

雪乃「お、覚えてるわよっ。ちょっと忘れただけじゃない」

八幡「…間違ったんじゃなくて、忘れたのかよ…」って、だから忘れんの早すぎだろ。

雪乃「ざ、材木材?」

八幡「材・木・座」

雪乃「廃材?」

八幡「ざ・い・も・く・ざ」

雪乃「産廃?」

八幡「………だいたいあってる」つかおまえそれ、途中からわざとやってるだろ?

雪乃「コホン、なぜこんなところに材木座くんがいるのかしら?冗談は、その耐えられないほど軽い存在価値だけにしていただける?」

八幡「っておまえ、いくらなんでも存在ごと根こそぎ否定すんなよ」フツウは、せいぜい顔だろ?それでも十分過ぎるくらい酷い。もちろん材木座の顔の話だ。


岩清水「え?あ?お?」


事情がわからず、御曹司が右往左往してる。その顔からは戸惑いが隠せない。まあ、気持ちはわかる。雪ノ下の。

八幡「あー…、雪ノ下、そちらは材木座じゃなくて、岩清水…さん…だ。よく似てるけど別人…らしいぜ?」

雪乃「え?」

信じられないといった表情で姉の顔を伺う雪ノ下に対し、陽乃さんは軽く肩をすくめて答えた。

陽乃「そう。こちらの方が岩清水静夫さんよ」

雪乃「姉さん、いくらなんでもそれは岩清水さんに対して失礼じゃないからしら?彼はこんな比企谷くんのお友達みたいな顔はしていないはずよ?」

八幡「うんうん、確かに非常に失礼だよな。おまえのその発言が。特に俺に対して」


陽乃「申し訳ありません、岩清水さん。妹の雪乃です」あねのんが、いもうとのんを御曹司に紹介する。

岩清水「え?雪乃さん…?陽乃さんの妹君にあらせられる?」

雪乃「た、大変礼しました。姉がいつもお世話になっています」戸惑いつつも、礼儀正しく頭を下げる。だが、その目はまだ半信半疑のままだ。

岩清水「こ、これはこれは、やはり姉妹ですな。よく似てらっしゃる。なるほど、妹さんの方も、陽乃さんに負けず劣らずお美しい」

御曹司が感に堪えないように歯の浮いたセリフを口にしながら、姉と妹を交互に見比べる。


八幡「ところで、なんでおまえがここにいんだよ?」当然の疑問だ。

雪乃「え?そ、それは…その…気になったからに決まってるじゃない…」なぜか急に雪ノ下の顔が真っ赤に染まる。

八幡「え?もしかして…」

雪乃「そ、そうよ、あ、あなたのことが、気に…」/// ボソボソ

八幡「そんなにねーちゃんのことが気になってたのかよ?」おまえ、やっぱりツンデレのシスコンだったわけ?

雪乃「……………入らないからよ」

突然現れといて、なに怒ってんだよ、こいつ?



岩清水「ふむ、よし決めた!」


場の空気を全く読んでいない御曹司が、何を思ったのか、胸の前でポンと手を打つ。

岩清水「陽乃さんが比企谷くんと婚約しているなら仕方ない。残念だがこの際、陽乃さんの事はすっぱりと諦めることにしよう」

八幡&陽乃&雪乃「…え?」

予想外の急展開に唖然とする。もしかしてこれで一件落着とか?なんでまた急に?まぁそれはどうでもいい話だけど…




岩清水「…うん。そして、ここで改めて僕は、雪乃さんに求婚することにしよう」



今日はお休みなので、続きはまた今夜にでも。ノシ



さりげなく修正。

>>642

2行目

八幡「いったいどこから走ってきたんだよ?…って、まさかお前、ここに来るまでの間に、また道に迷ってたりしてたじゃねぇだろうな?」
                 ↓
八幡「いったいどこから走ってきたんだよ?…って、まさかお前、ここに来るまでの間に、また道に迷ってたりしてたんじゃねぇだろうな?」

>>643

8行目

陽乃「無関係とはいえないでしょ?それに、私は今回の件で私は一度も嘘なんてついていないし」
                     ↓
陽乃「無関係とはいえないでしょ?それに、私は今回の件で一度も嘘なんてついてないし」


ハッピーENDが見えてきたな

>>655

長かったですね(遠い目


さ あ 、 盛 り 上 が っ て 参 り ま し た 。

…自分一人だけですが。


雪乃「え?」


八幡「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ?」


さすがにそれは俺の想像の斜め上を行っていた。

八幡「ま、マジッスか?」冷や汗がダラダラと流れる。

岩清水「僕はすこぶる真面目だよ?」

いやいやいや、そんな材木座みたいな顔で真面目とかいわれても反応に困るんだけど。


八幡「い、命とか惜しくないんですか?!」

雪乃「比企谷くん、それ、どういう意味なのかしら?」ニッコリ

スイマセン、俺は自分の命が超惜しいので、今の発言は撤回します。

しかし、雪ノ下の見てくれに騙されてるんだとしたら、それこそ酷い目にあわされるぜ?…俺みたいに。

だが、それ以前に、今は俺が最も気にしなくてはならないことが他にある。そう、こればかりは決して譲れない大切なものが。

八幡「お、おい、ちょっと待てよ。俺は絶っ対に認めないからなっ」キッパリと断言する。

雪乃「ひ、比企谷くん?!」///


岩清水「ほう、それはなぜかね?」

八幡「材木座の顔した兄弟なんて、例え義理だとしても絶対御免だ!断固として拒否する!」

陽乃「…って、そっちなのね?」


岩清水「おやおや、でもキミは陽乃さんの婚約者なのだから、私が雪乃さんにプロポーズしても関係ないだろう?」

八幡「関係はなくても問題大ありだろそれ。だいたい、なんでいきなりそうなるんだよ?」

岩清水「これはもともと雪ノ下家と岩清水家の縁談話なのだから、僕としては相手が陽乃さんでも雪乃さんでも一向に構わないのだよ」

理屈でいえば確かにそうかもしれない。だがやはり釈然としないものがある…


もしかして、陽乃さんはこうなる可能性を危惧して、身を挺して妹を庇っていたのではないだろうか?

その可能性に思い当った時、俺は愕然として彼女の顔を見た。一見無表情を貫いているようだが、一瞬だけ俺に向けた目にはチラリと批難の色が見て取れた。

―― だから、あれほど早くしろと言ったのに、と。

事態の早期解決を望んで無難な俺をパートナーに選んだにも関わらず、その俺がグズグズしていたばかりに、全てぶち壊してしまったのかもしれない。

そしてそれが結果として雪ノ下を窮地に追い込んでしまったようだ。岩清水にとっては、彼女はまさに跳んで火に入る夏の虫なのだから。


岩清水「…それとも、キミはもしかして、雪乃さんまで自分のモノだと言い張るつもりなのかね?」

八幡「いや、そういうわけじゃないですけど…」どちらかと俺の方が持ち物扱いされてますけどね。飼い犬とか言われてるし。

岩清水「さあさあ、二兎を追うもの一兎も得ずという諺もある。この際だ、ここでハッキリしたらどうなのかね?」

八幡「え?ハッキリって、いったい何を…ですか?」

岩清水「君は、陽乃さんと雪乃さんのどちらを選ぶのか、ということだよ」

八幡「はぁ?!」

御曹司が面白そうに俺を見ている。どうやら余裕が出てきたので、俺を嬲ることに決めたようだ。材木座顔、赦すまじ。
しかし、ちょっと待てよ。どうせならここで戸塚を選ぶって選択肢は認められないのかよ?あるいは小町とか。

岩清水「だから、キミは“ふたりの女性”のうち、いったいどちらを選ぶんだね?」

八幡「…っ!」


ふたりの女性のうち、どちらを選ぶのか ―― 岩清水の言葉はなぜか全く違う意味で俺の気持ちを波立たせるものがあった。

ふたりの女性 ―― そのうちのひとりは今、俺の目の前で窮地に立たされ、そしてもうひとりは、今、ここではないどこかにいる。


いつまでも小春日和の微睡みに垣間見る夢のような状態が続くはずはない。そんなことは誰よりも俺が一番よくわかっているはずだ。

しかし、だからといって、変化することが仕方ないなんて言うのは嘘だ。変化することを諾々と受け入れるてしまった人間の詭弁である。

変わることが、変わってしまうことが常に正しい事だなんて誰にも言えないはずだ。

ただの感傷なのかもしれない。単なる悪あがきなのかもしれない。それでも、時を経ても変わらないものだってあるし、誰にだって変わって欲しくないものだってある。

だからこそ、変わらないことを願う気持ちもまた、決して間違いではないはずだ。


陽乃「…そうね。でも、この際だから比企谷くんもハッキリしておいた方がいいんじゃないかしら?」

比企谷「え?」

俺は、陽乃さんの岩清水に同調するかのような言葉に面食らう。なぜ今このタイミングでそんな事を…?

陽乃「あなたはこの先、いったい“誰”を選ぶつもりなのかしら?」

だがしかし、彼女の冷静な指摘は、改めて俺の気持ちを酷く掻き乱していた。




雪乃「………本当にバカな男ね。今はまだ、その時ではないのでしょう?」



俺の心の動揺を全て見透かしたように、雪ノ下の澄んだ声が響く。

その目はまっすぐ俺の目をみつめていた。一点の曇りもなく。それこそまるで透明な湖のように。

陽乃「雪乃ちゃん、あなたお呼びでないわよ。それに、あなただって比企谷くんからその答えを聞きたいはずよ?」

雪乃「そうはいかないわ。これは私たちだけの問題よ。姉さんこそお呼びじゃないわ。引っ込んでてちょうだい」ピシリと言い返す。

だが、例えさすがの雪ノ下といえども、この場ではさすがに打つ手がない。完全な手詰まり状態だ。それは彼女もわかっているのだろう、虚勢は張っていてもその表情にいつもの冴えはなかった。


陽乃「あらそうかしら。でも、残念ね雪乃ちゃん」

雪乃「え?」

陽乃「今、この時点では、比企谷くんは、雪乃ちゃんでも由比ヶ浜ちゃんでもなく、この私のものよ」

そう言って、唐突に、なんの前触れもなく、そして全く躊躇うこともなく、ふたりの目の前で俺の唇に自分の唇をそっと重ねた。


とりあえず今日はこんなところでしょうかね?

月末は地獄のスケジュールになっているので、できるだけ早めに完結させます。ノシ
この分なら、来週早々に完結しそうですね。


八幡は急いて答えを出す必要無いさ、きっと


>>668

そうでつね。

でも漏れは急いでSSを完結させる必要がありそうでつね、スケジュール的に(白目



八幡「!!!!!」



え?これもしかして俺のファースト・キスなの?記念すべきファースト・キスって、こんなんでいいわけ?なんか想像してたのと違うんじゃね?(俺的に)

なに?もっと、こう、なんつーの?嬉し恥ずかし、みたいな、あるいはリア充バクハツしろいやむしろ砕け散れキサマ的なものであって、少なくとも、こういう不意打ちというか闇打ちというか騙打ち的な何か、ではないような気がする。(俺的に)


永遠ともいえる数瞬が過ぎ去ると、陽乃さんがやっと顔を離した。その頬は心なしか赤く染まっている。

陽乃「ふふっ。実は私も初めてなんだ」俺の心臓を鷲掴みにするような笑顔でそっと囁く。

さすがの俺もそこで“何回目のファースト・キスですか?”とはとても聞けない。怖いし。


雪乃「ね、姉さん、な、なんてことを…!」

雪ノ下の顔は怒りに青ざめ、声は震えていた。

俺は思わず我に返る。

陽乃「あら、何かしら?雪乃ちゃんには関係ないんでしょ?だって比企谷くんはあなたにとって、ただの三下なんですもの」

…だから部員だってばさってばさ。

岩清水「…ずるい」

御曹司がうらやましそうに指を咥えて俺の顔を見ている。さっき自分でけしかけといて何いってやがんだよ、コイツ。


八幡「陽乃さん!それから雪ノ下も!ちょっと、くちづけっ!…じゃなかった、もちつけっ!」

いやいやいや落ち着く必要があるのはむしろ俺の方でしょ?

陽乃「ほーら御覧なさい。この期に及んですら、あなたは比企谷くんから名前ですら呼んでもらえない」

陽乃さんが勝ち誇ったような笑みを浮かべる。

陽乃「…やっぱりあなたの負けね、雪乃ちゃん」ニッコリ

だからなんでそうやって妹を挑発するかな、この人は。そういう言い方が、一番雪ノ下の神経を逆撫でするんだってば…




カチリッ





ん?今なんか幻聴が聞こえたような…?





雪乃「…負けですって?…この私が?」雪ノ下の瞳孔がすっと窄まり、その瞳から光彩が消える。

あ、やっべー…、今、絶っ対、なんか変なスイッチ入っちまったよ…


雪乃「…あまり私を見縊らないでもらいたいものね」

雪ノ下はそう言って、ゆっくり俺に歩み寄る。口元には氷の笑みを浮かべたその顔は鬼気迫るほど美しかった。

雪乃「姉さん」

陽乃「何かしら?」

雪乃「…確かに今はまだ、全ての面において私は姉さんの足元にも及ばないかもしれない…いえ、きっとそうなのでしょう。それは認めるわ」

あの雪ノ下があっさりと負けを認める。つまり陽乃さんとは、雪ノ下にとってそこまでの存在なのだろう。

しかし、姉に話しかけつつも、彼女はまっすぐ俺に据えた目を決して逸らさない。

そして俺といえばそんな雪ノ下に魅入られたかのように身動きすらできないでいた。


気がつくといつの間にか店内全体が静寂に包まれている。

今更ながら決然とした表情の雪ノ下は神々しいまでに美しく光輝いている。嘘をつくことで俗世の垢に塗れることをしないその魂の潔癖さが、更にその美しさを際立たせているのだろう。

雪乃「姉さんのいう通り、私はこの男の好意に対して、甘えることも、頼ることも、そして、この身を委ねることも決して不快だとは思っていない」

そして頬を赤らめてうつむく。おまえ今、何言った?

雪乃「…むしろそれを望んているといってもいいわ」

だから何言っちゃってるんだよ、おまえ?!

雪乃「…だけれど」


雪乃「だけれど、私は、いつかきっと姉さんを超えてみせるわ。私なりのやり方で」

一瞬だけ姉に目をやり、再び俺へと視線を戻す。


雪乃「…そして、この男に…比企谷くんに、私のことを名前で呼ばせてみせる」


そう言って、雪ノ下は俺のネクタイをひっつかむと、乱暴なまでに荒々しく引き寄せ、形の良い自分の唇を俺の唇へと無理やり押し付けた。

あたかも大切な何かを、強引に奪い去るかのように。






…おい、だからこんなんでいいのかよ、キスって?俺もよく知らないけど。



雪乃「…上書き完了、ね」///



そっと呟きながら雪ノ下の顔が俺の顔から離れてゆく。別れを惜しむかのように少しだけ引かれた糸を恥ずかしそうにチロリと舐めとった。



陽乃「…ふーん。雪乃ちゃん、この間の文化祭の時もそう思ったけど、やっぱりあなた、なかなか言うようになったものね」

雪乃「姉さんに鍛えられたお陰よ。感謝しているわ。…それから、この男にも、ね」そういいながら、そっと目を伏せる。

陽乃「いいわ。その挑戦、受けてあげる」そう宣言する彼女の目は、既に庇護すべき妹ではなく、一人の好敵手を見る目へと変わっていた。

それが姉妹の本来あるべき姿なのかどうかは俺にはわからない。ただ、雪ノ下はこの時初めて姉と同じ土俵に立ったのだと思う。

決して仲睦まじいとか、微笑ましいといえる状況ではないのだが、俺はつい微笑まずにはいられなかった。

…それはもしかして、苦笑だったのかもしれない。


そして、雪ノ下がここまで意を決して自分の役割を演じるなら、俺もまたそれなりに与えられた役を演じ切る責任があるだろう。

例えそれが単なる道化役であるにしても、及ばずながら手を貸すとしよう。

こいつが、くだらないことで引け目を感じたりしないように。




八幡「…おい、雪乃」





雪乃&陽乃「!」


初めて名前で呼ぶと、雪ノ下が目をパチクリさせて俺を見た。その頬が更に赤く染まる。

雪乃「…き、急に名前で呼んだりしないでくれるかしら?」///

八幡「んだよ、名前で呼べっつったのおまえだろ?」呼ぶ方だって充分に恥ずかしいんだぜ、これ?

日頃から三浦を名前で呼び捨てにしている葉山って、ある意味スゲェよな。もしかしてリア充って鉄の心臓なの?

雪乃「そ、それはそうなのだけれど、何もこのタイミングで…。わ、私にも、こ、心の準備というものが…」///

八幡「おまえって、さ、本当に、負けず嫌いなのな…」

雪乃「そ、そうかしら?そんなことはないと思うのだけれど」/// ゴニョゴニョ

いやいやいや、いくらなんでも姉への対抗心だけでフツウはここまでしねぇって。

八幡「…でも、おまえのそういう所、俺は決して嫌いじゃないぜ?」

雪乃「なっ?!」///

本当はむしろ好ましいとさえ思えるのだが、敢えてそれは口にしない。なぜならば、俺とは、比企谷八幡とはそういう男なのだから。


雪乃「コホン…比企谷くん、私のことが好きなら好きとはっきり言ってくれていいのよ?あなたの告白は回りくどくて、とてもわかりづらいわ。よくそれで国語学年三位をキープできるものね?」

八幡「ば、ばっかおまえ、何言っちゃってんだよ。誰がおまえみたいに性格の悪い女なんかに惚れたりするかっつーのっ!」つか、ここでダメ出しとかするか?フツウ?

雪乃「あら、違ったのかしら。私はてっきり…」

八幡「それに、告白だってことがちゃんと伝わってんなら日本語としての機能は十分果たしてんだろっ」ボソッ

雪乃「えっ?!そ、それって…?」///

八幡「や、例えばの話しだよっ」///

英語でいいなおせとか言われてもムリだからな。俺、そんな高度な言語スキルねぃし。いやそれ以前に2度と言えるかっつーの。



陽乃「イチャイチャしているところを邪魔して申し訳ないんだけど?」



雪乃「だ、だから、だ、だれも…」///

八幡「してないっつーの」///



岩清水「…してるし」ボソッ



陽乃「岩清水さん、これで、貴方の雪乃ちゃんへの求婚もなし、ということでいいのかしら?」

岩清水「はぽん?」

って、おまえ実はマジで材木座じゃねーの?

陽乃「だってさっきお約束しましたよね?」

八幡「あー…!」俺は彼女の言わんとすることにやっと気がついた。

雪乃「え?」雪ノ下がよくわからないといった顔で俺を見ている。

岩清水「や、約束?」そして、まるでイミフといった顔をした男がもうひとり。

御曹司が、材木座のような…じゃなかった、狐につままれたような顔で陽乃さんの顔を見ている。


陽乃「あら、だって“岩清水さんの前で比企谷くんとキスをしたら、結婚の話は無条件で諦める”のではなかったのかしら?」

雪乃「え?そ、そんな約束をしていたの?」

八幡「…みてーだな」

岩清水「え?!い、いやだからそれは…陽乃さんとの約束であって…」

陽乃「しかも“男に二言はない”んですよね。さすが岩清水家の御曹司だけあって、太っ腹ですこと。ステキ」

八幡「…さすがですね」…貴女こそ。


岩清水「え?や?ちょ?だからそれはですね…」御曹司が汗だくで必死に言い訳を考えているのが手にとるようにわかった。

雪乃「まさか、岩清水家の御曹司ともあろう方が約束を違えるようなことはなさいませんよね?」

完全に状況を把握した雪ノ下がニッコリと笑みを浮かべながら冷静にトドメをさす。

これで完全に詰み、だな。

岩清水「…む、むほん。も、勿論、と当然ですとも…」

御曹司が遂に観念したらしく、涙目になって呟いた。


……………しかし、陽乃さんてば、相変わらず見事な策士っぷりですね。

俺が畏敬の念をもって、改めてその美しい顔を見やると、彼女はそれに気がついたのか、悪戯っぽく、可愛らしく、それこそ天使のような笑顔で、パチリと片目をつむって返した。


――― あ…もしかして…これも全部、陽乃さんの計算のうちだったとか…?!


やれやれ、どうやら俺たちはまた陽乃さんの掌の上でずっと踊らされていたらしい…。

この人、世が世なら万の軍勢を縦横無尽に操っていたかもしれないな。なにそれどこの海の知将だよ?

そうとも知らずにひとりで勘違いして慌てふためいていた俺ってば、超恥ずかしい。顔から火が出そう。消火器どこだよ。

こんなことくらいで取り乱すなんて、俺もまだまだ修行が足りないみたいだな。この分では、ぼっちの道を極めるのは当分先のようである。


岩清水「…やれやれ、どうやら僕はフラれてしまったようですね」

俺の前に座った御曹司が、面白くもなさそうに、ボソリと呟くのが聞こえた。

そして、


「あーあ、私も…かな…」

小さく追随したその声は、誰の耳にも届くことなく宙へと消え去った。


とりあえず、ここまで。ノシ

調子に乗って話を膨らませすぎたので、風呂敷を畳むのにも少しボリュームを割いてしまいました。

もうしばらく続きますので、よろしければおつきあいください。


はるのん切ないな…と一瞬思ったけど、寧ろ戦いはこれからなんだよね
土俵に上がったばかりで諦めるこたあないよ

>>692の続きが
懐から拳銃を取り出した
だと一瞬でも予想したバカは俺一人でいい

>>696
よう、ぼっちバカ


みんな、コメさんくす。励みになります。

特に夜中にひっそり更新してる時の“俺ってば何してんだろ”感は異常。

>>695

これだけみなさんの貴重な時間を割いても、実は原状復帰だけでなにひとつ解決していないという驚愕の事実に一番驚いてるのは実は自分自身だったりする。

>>696

なかなかやる

でも、ここで死なれるとまだ困るんで

>>697

呼んだ?



幕間劇 ~やはりこの兄妹は残念過ぎる~


陽乃「でも、残念だったわねー、雪乃ちゃん。比企谷くんの、ファースト・キスをお姉ちゃんに奪われて」

雪乃「あら、必要ならこの先何度でも上書きしてあげるわよ?」

八幡「え?」///

雪乃「た、例えばの話よ」///

陽乃「あらあら、ふたりとも照れちゃって。かわいいなー」



八幡「あのー…」




陽乃「ん?どうしたの、比企谷くん?」

八幡「あー…実はその件なんだけど」

陽乃&雪乃「え?」

八幡「…よく考えてみたら俺のファースト・キスの相手って」

陽乃&雪乃「?」

八幡「小町だったわ…」



陽乃&雪乃「…は?」


「あ、お兄ちゃん、今度のお休み、買い物つきあってくんないかなー?」

「やだよ。俺、超忙しいし。ヒマつぶすのに」

「ふーん、そっかー。それは残念だねー、そういえば小町、最近よく街でナンパとかされるんだけどなー…」チラッ

「…ちっ、わーったよ」

「わーい、お兄ちゃん大好きっ、小町ポイントの還元で漏れなくお兄ちゃんのほっぺにチューしてあげちゃうっ!」

「ヤメロ、いらんっ。わかったから、暑いし、ひっつくな…って、うわっ」「ひゃっ」ガタガタガタ

 

 むにゅ



「?!」///

「!?」///

「あわわわわわわわわわ。ま、ま、いっか。よくあることだし。き、兄妹だもんね?」///

「いやいやいやいや、兄妹だからこそまじーんじゃねーのか、これ?」///


八幡「…と、まぁ、そういうことがあってだな…」
















陽乃&雪乃「……………………シスコン」ボソッ


では。ノシ


妹は正義。異論は認めない。

やはり俺に妹がいないのはまちがっている。


冗長常套上等!

=== 岩清水静夫の災難 ===


結局、岩清水の勧めで雪ノ下も合流し4人で会食を終えた後、ホテルの外に出ると既に夕刻にさしかかる時刻だった。

腹を割って話すと、岩清水…さんは資産家の御曹子とも思えない人柄と気やすさで、俺は少しばかり後悔と罪悪感を感じていた。

岩清水「比企谷くん、これから修羅場だよ~」うりうりと肘で俺の脇腹を小突く。う、うぜえ。前言撤回。こいつに感じる罪悪感は、ねえっ!



「あ、お兄ちゃん?!」



聞きなれた声に思わず振り向くと、通りの向こうから手を振りながら小町が走り寄ってくる。


八幡「小町?!なんでここにいんだよ?」

小町「心配だから迎えに来たんだよ?あ、陽乃さん、雪乃さん、やっはろーです。兄がいつもお世話になってます」如才なく挨拶する。

いつの間にか由比ヶ浜のあいさつがじわじわと浸透しているようだな。日本語の乱れとか大丈夫なのかよ?いや、そもそも日本語じゃねえし。

雪乃「あ、あら、小町ちゃん、こんにちは」///

なぜか雪ノ下がうろたえている。

陽乃「小町ちゃん、やっはろー。ううん、相変わらず可愛いわね。持ち帰りたいくなるくらい。ね、小町ちゃんも私の妹にならない?」

小町「そうですねー。もちろん喜んで妹にならせてもらいますよ?手間のかかる兄ですがよろしくしちゃってください」

陽乃「…だって、さ。雪乃ちゃん?」

雪乃「ん、んっ!」///

八幡「あー…、残念ながらうちの小町にはポイント・サービスはあってもテイクアウトまではしてないんでな…」

なに不穏な裏取引とかしてんだよ。

つか、小町…雪ノ下…ん…?

俺が小町と雪ノ下の顔を交互に見ていると、雪ノ下がついと視線を逸らした…ってまさかコイツら…?


小町「おや?今日は中二さんも一緒だったんですか?…プッ、なんですかそのカッコ。全然似合ってませんよ?」

おっと、小町のヤツ、岩清水さんと材木座を勘違いしてやがるな。ま、誰が見てもそっくりだし、仕方ないか。

八幡「あーコイツは…いや、この人は…」俺は小町を前に硬直した様子の岩清水を示して紹介しかける。

岩清水「ひ、比企谷くん!こ、こちらのお嬢さんは、い、いったい?」

八幡「あー…、妹の小町です…ってまさか、おいっ?」

御曹司は俺を無視して小町に駆け寄ると、迷わずその手を取った。

岩清水「小町さん、僕と、け、結婚してくださいっ!」


陽乃&雪乃&八幡&小町「はあっ?!」


………こ、こいつというヤツは。節足動物並みに節操なさすぎだろ。


小町「へ?なになになになになに?中二さん、どうしちゃったの?」小町がテンパッって岩清水と俺の顔を交互に見る。

八幡「おい、コラッ、テメェ俺の妹にナニしてくれてんだ?!」

ドスッ

岩清水「ほげらっ」

俺が背中を思い切り蹴りつけた拍子に、御曹司は勢いあまってゴロゴロ転がり、三回転半して壁にぶつかってからやっと止まった。

八幡「いいかよく聞け!小町は俺のもんだ!絶対誰にもやらんっ!」俺は世間体とかを全く気にすることもなく、大声で吠えた。世界の中心で声を大にして愛を叫ぶ。妹に対する。

雪乃「…相変わらず一貫したシスコンっぷりなのね」雪ノ下がため息をつく。

陽乃「あらあら、ライバルは意外なところにもいたのね」陽乃さんは面白がっているようだ。

小町「あわわ、お兄ちゃんたら、もうみんなの前でそんなにハッキリと…でもそれ小町的にはアリっていうかぁ、あ、今の小町的にポイント高いかも」/// モジモジ

小町は小町で顔を真っ赤にしながらテレテレしている。

雪乃「…やっぱり兄妹ね。変なところでよく似ているわ。いえむしろ、変なところがよく似ている、というべきかしら」雪ノ下が呆れたように再度深いため息をついた。


岩清水「お、お義兄さん、そんなつれないこと言わないで…」

八幡「うるせえよっ!誰がお義兄さんだっ?気持ち悪い呼び方すんじゃねぇっ!兄上とか兄者も却下だからなっ?!」

材木座の例もあるので先手を打っておく。あとブラザーとかも禁止な、黒人みたくなっちゃいそうだから。

岩清水「こ、小町さん、私と結婚すれば、一生お金に不自由させませんよ?!」俺の言葉に耳を貸さず、片膝立ちになって必死にアプローチする。

小町「あー、えーっと…ごめんなさい。それ小町的にというより、生理的にムリっていうかぁ…お友達もちょっと遠慮したいかなって…傍にいるだけで暑苦しいし…」

岩清水「ぐほぉっ」

あ、血を吐いて倒れた。我が妹ながら情け容赦ないヤツだな…。

面倒くさいので地面でピクピクと断末魔の痙攣を起こす岩清水をそのまま放置する。

今度こそ本当に終わりだろう。その場にいた誰もがそう確信した。

しかし…



「ややっ?!それなるは、もしかして八幡ではないかっ?!これは奇遇!」




…だーかーらー、今日は一体なんなんだよっ?!



高らかに俺の名を呼ぶ声のする方をイヤイヤ振り仰ぐと、夕日を背にゴミ箱の上で腕を組んでふんぞり帰るデ○の姿が目に映った。

つかおまえ、いつからそこに登って準備してたんだよ?

逆光なので、顔はよく見えないが、その声とシルエットだけで残念ながら見当がついてしまう…誠に遺憾ながらという言葉はこういう時にこそふさわしい。あまりに遺憾すぎていかんともしがたいまである。

陽乃「あらあら」

雪乃「どうやらあなたの本物のお友達が現れちゃったみたいね?」

八幡「…友達じゃねぇし」つか、こいつと友達になるくらいなら俺は迷わず一生ぼっちの道を選ぶ。

小町「ち、中二さんが…ふ、ふたりっ?!」小町が愕然と目を見張る。

「遠からん者は音にも聴け、近くば寄って目にも見よ。やぁやぁ我こそはその名も高き剣豪将軍、材木座義輝であーる!皆の者、頭が高ぁい!控えおろう!」

八幡「………う、うぜぇ」超という言葉をつけただけでは飽き足らないウザさ。ウザさてんこ盛り。ついでにツユだく。野菜盛り増し。おかわり自由。いらねーよ。

雪乃「さすがにあなたのお友達だけのことはあるわね」雪ノ下がさすがにうんざりした様子でため息交じりに呟く。

八幡「だから友達じゃねーっていってんだろ」あんまし友達友達言われるとホントに友達のような気がしてくるから不思議な。でもそれ違うから。

やれやれ、しかしここにきて、真・材木座義輝まで登場しやがった。今日はホントいったいなんなの?仏滅なの?厄日なの?天中殺なの?


材木座「よもやこのようなところで相見えようとはな。やはりお主と我は天の定めし宿命の友敵(ライバル)。
    幾多の戦場を駆け抜け、数多の矢の下と剣戟の狭間を潜り抜けた輝ける栄光と前世の記憶は…」

ドヤ顔で中二テイスト満載の芝居がかった長ったらしい口上を述べている最中、更に面倒くさいことに、俺の足もとで死んでいたハズの岩清水までが息を吹き返しはじめた。

八幡「…おい、どーすんだよ、これ」

雪乃「知らないわよ。あなたが責任持ってなんとかなさい」

陽乃「じゃ、比企谷くん、あとよろしくー」

雪ノ下姉妹が珍しく肩を揃えて去っていく。そういうとこは息がぴったりなのな。つか、おまえら後で覚えてろよ。


仕方ねぇな、とりあえず、だ…



八幡「小町ぃ、俺たちも帰るぞ」

小町「そだねぇ」

材木座「な、は、八幡、ちょ、ちょっと待つのだ」

おっかなびっくりのていで、そろそろとゴミ箱から降り始める。恐いなら最初から高いとこ上るなよ。バカは高いところが好きなのな。プライドも高いし頭も高い。

小町「中二さん、超カッコ悪…」

八幡「それがあいつのデフォルトだけどな」まさに材木座クオリティ。

材木座「むははははは、待たせたな、八幡よ」

だから今更立ちポーズきめたって遅いんだよ。だいいち、全然キマッてないだろそれ。

八幡「ちっ、誰も待ってねぇーっつーの。小町、目ぇ合わすんじゃねーぞ」

材木座「ま、待ってよぉ、八幡、お願いだからぁ~」

八幡「うるせぇっ!わかったから俺の足にすがるんじゃねぇよっ!キメェッ!」

ドガッ

材木座「だばはっ」

俺が材木座を蹴り倒すと、丁度目を覚ました岩清水の前に倒れこんだ。


材木座「ぼふん?」

岩清水「はぽん?」

うわ、二つ並べて見ると、ますますクリソツだな…。近づけたら化学反応とか起こしてバクハツすんじゃね?いやむしろ、しろ。世の中の平和のために。

そのままお互いに見つめ合うこと数秒。おもむろに、

材木座「むっ?!」サッ(左手を上げる)

岩清水「むっ?!」サッ(右手を上げる)

材木座「むむっ?!」サッ(右手を上げる)

岩清水「むむっ?!」サッ(左手を上げる)

材木座「むむむっ?!」サッサッ(両手を振る)

岩清水「むむむっ?!」サッサッ(両手を振る)


小町「あ、なんかふたりでチューチュートレインとか始めてるよ?」

八幡「小町、そっちを見ちゃダメだ」

この産廃みたいなヤツらどうやって収拾つけんだよ?有料でもいいから誰か引き取ってくんねーかな?保健所とか。


スミマンセン。続きはまた、後ほど。ノシ


…では続きをば




「…ほう、ここにいたか材木座よ」




材木座「ほへ?」


美しいはずの夕陽が急に血の色に染まって見えた。まさにブラッディ・サンセット。逢魔が時の名にふさわしい景色だ。

振り向くと、そこには長い黒髪を無造作に風になびかせた白衣姿。口にしたシガーからは紫煙が漂い、その目には見紛うことなき殺意が宿っている。


(注)歩きタバコは、路上喫煙等の防止に関する条例で禁止されています。


その表情は確かに美しくはあったがそれ以上に全身から滲みだす殺気が強すぎて、岩清水でさえ声の主に背を向けたまま、ただただ恐怖に打ち震える他なかった。

材木座「し、静御前殿?!」ボソッ


なにおまえ陰で平塚先生のことそんな風に呼んでたのかよ?どっちかっつーと巴御前って感じだがな。確かに女傑の名がふさわしい。

平塚「四方八方十六方に至るまでおまえを捜したのだが、連絡がつかん…」

平塚先生が訥々と語り始める。

平塚「誰もおまえの居場所はおろか、連絡先すら知らなかったのでな…」

小町「…さすがは中二さん。お兄ちゃんとどっこいのぼっちだけのことはあるんだね…」ボソッ

材木座「あばばば?」

材木座があわててポケットからスマホを取り出して電源を入れた。一瞬仰け反ったかと思うと、その顔がみるみる青ざめていく。リトマス紙みたいだなまるで。

おそらく、着信履歴が怒涛の列をなして画面を埋め尽くし、メールが濁流の如く一気呵成になだれ込んでいるに違いない。

材木座「お、重い。重い過ぎる…」材木座が手にしたスマホのあまりの重さ(主に精神的な)に堪えかねたかのようにガクリと膝を折る。

その気持ち俺にも痛いほど理解できた。俺も前に一度経験したことあるけど、あれ、一種の精神的なブラクラだからな。


平塚「唯一の頼みの綱であった比企谷も電源を落としている始末…」ジロリと俺を睨む。

八幡「や、そうだっけ?」

小町「お食事会だからって、気を遣って小町が電源切っておいたんだよ?」ヒソヒソ

なるほど、そういうことか。俺のスマホ、めったに着信ないから全然気がつかなかったぜ。


八幡「でも、なんでコイツがここにいるとわかったんです?」

平塚「キミの居場所をつきとめれば、芋づる式だと考えたのでな」

俺、芋かよ?どっちかっつーと、俺妹?確かにシスコンだけど。

小町「はいはーい。お兄ちゃんの居場所は小町が通報しますた」

八幡「…って、やっぱり小町かよ!たぶん雪ノ下の件も、おまえの差し金だろ?」

小町「えへへ~。バ・レ・た?てへぺろ」

ちっ、あまりのバカわゆさに、怒る気にもならねーぜ。


八幡「そういや、材木座、おまえ、なんでここにいんだよ?」これ聴くの今日で何度めだろうな。

材木座「いやなにを訊くをやある。これはつまるところ八幡いるところ我ありということの証左に外ならぬではないか」

八幡「それで説明したつもり?つか、目ェ逸らすな!」

材木座「…いや実は…来る途中で小町殿の姿を見かけたのでな、陰働きで護衛をば…」

小町「ひっ?!」小町がドン引きしている。

八幡「…って、もうそれストーカーだろっ!?」間違いなく迷惑条例に抵触してるレベル。つかこいつの場合、存在からして既に違反してるけど。


平塚「…ところで材木座よ。キサマ、この間の進路希望調査にまたロクでもないことを書いたそうだな?」

八幡「なにおまえ、またなんかやらかしたの?まぁ大体想像つくけどな。ぷすー」

小町「お兄ちゃんも第一希望に“専業主夫”って書いてダメ出し食らったって言ってなかったっけ?」

八幡「まぁそんなこともあったかもしれないが俺はきれいさっぱり忘れた」

知ってるか?人間の目というのは前を見るために顔の正面についているんだぜ?だから過去を振り返っちゃダメなんだ。得に俺の過去なんて直視できないトラウマばかりだしな。


八幡「で、材木座、第一希望なんて書いたの?言ってみ?」

材木座「ふむ、そこは当然、“売れっ子ラノベ作家”であるな」

八幡「…第二希望は?」

材木座「“プロ○ェクトXに出るようなゲームクリエイター”」

八幡「んで、ちなみに第三希望はよ?」超投げやりに聞く。

材木座「“声優さんと結婚したい”」

いやいやいやいやいやいやいやいや、それ、進路希望じゃなくて、ただの妄想じゃん。しかも小学生レベル。


平塚「キサマんとこの担任が進路指導に、進路指導が学年主任に泣きついてな。学年主任が教頭に相談して、回りまわって教頭からなぜか私のところへ直々なんとかしろと押し付けられた…いや仰せつけられたというわけだ」

わお、いわゆるたらい回しってヤツだな、スゲェぜ、さすが天下の公務員。仕事しろよ。

平塚「おかげで私は休日出勤だ…なんでも進路希望調査結果を県教委へ報告する期限は、明日の朝イチらしいからな」

…教育委員会って企業じゃないけどブラックだったんですね。しかもかなり濃ゆ目。

平塚「ええええい、考えるだに腹立たしいわっ!このクソ忙しい時にっ!…そんなワケで、材木座、とりあえずキサマ一発、殴らせろっ!」

材木座「へひぃっ?!」材木座がまるで有罪判決を受けたような顔で固まっている。いや違うぞ材木座、実質、死刑判決だからな、それ。


平塚「…というのは、まぁ冗談だ」ニヤッ

材木座「そ、そうですよねー。実は、僕もそうじゃないかと思ってましたー」

八幡「おい、材木座、恐怖のあまりしゃべり方が素に戻ってんぞ?」

平塚「…無論、一発で済むわけあるまい?」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

材木座「ふべらっ」

うわー…百回死んでもまだお釣りがきそう勢いだな。

材木座の身体がぶよぶよとトコロテンのように波打っている。ふるえてるのかもしれない。

材木座「は、八幡よ、ばさらだー」材木座が身を翻す。

おまえ反権威志向の戦国大名かなんかかよ?もしかして下剋上とかしちゃうわけ?


平塚「逃すかっ!」平塚先生がとっさに手にしたケータイを投げつける。


ブンッ ガッ ガッ

材木座「ぶべらっ」

岩清水「ほげれっ」


ものの見事に材木座の後頭部を直撃し、あまりの威力の凄まじさに、跳ね返って岩清水の顔も打ち砕く。今日は災難続きだな、御曹司。いろいろと。

平塚「ふっ」パシッ

再度跳ねかえったケータイを事も無げに片手でキャッチしてみせる。いったいあんたどこの学園都市のレベル5だよ。




平塚「…ん?材木座がふたり?同じ顔がふたつ…だと?」



平塚先生は地面に伸びたふたりの男の顔を訝しげに見比べていたが、やがて、



平塚「…ふむ、まぁこの際どちらでもよいか」



いやいやいやいやいや、フツウにいくねーだろ、それ。

しかし、平塚先生はさして気にした風もなく、手近にあった襟首をむんずとつかむ……………………あの、それ、岩清水なんですけど?

岩清水「へ?え?あ?ちょ、ちょっ?」

状況がよく理解できていないらしい御曹司が引きずられながらも戸惑いの声をあげる。

平塚「問答無用!」

平塚先生はそのまま、岩清水の襟をつかんでズルズルと引きずり、やがて夕陽の彼方に消え去ってしまった。

ドナドナド~ナ~ド~ナ~♪





小町「いいの…かな…?」

八幡「いいわけねーだろ…」




そういや確か中央アジアのキルギスという国には目を付けた相手を拉致同然にかっさらって強引に結婚させる「誘拐婚」の風習があるらしいな…。

もしかしたら平塚先生、念願の玉の輿に乗れるかもよ?ぐっじょぶ!平塚先生。そして、ぐっらっく!御曹司。


では、今日はこの辺で。ノシ

いよいよ明日で最後の更新になります。

最終章のタイトルは“そして比企谷八幡はもとの怠惰な生活に立ち戻る”デス。


=== そして比企谷八幡はもとの怠惰な生活に立ち戻る ===


翌日の放課後、俺はいつものように特別棟にある奉仕部の部室に向かった。

部室の戸を開くと、そこにはいつものように雪ノ下が椅子にかけ、まるで一幅の絵画のように本を読んでいる見慣れた光景があった。

開け放たれた窓から吹き込む風で、白いレースのカーテンが僅かに揺れて静かに波打つ。

見慣れることあっても見飽きることはない。そしてつい見惚れてしまうのもまたいつものことである。


雪乃「なに間抜けな顔をしてぼーっと突っ立っているのかしら。…まぁ、あなたの場合、顔が間抜けなのはいつものことなのだけれど」

俺の姿に気がついた雪ノ下がいつも通り挨拶する。挨拶なのかよそれ。慣れされたのはこの光景だけではないみたいだな。いいのかよ慣れて。

八幡「…ほっとけ」

俺は昨日のことを思い出して、いささかぎこちない返事を返すと、いつもの定位置に座を占める。雪ノ下の反対側。一番離れた場所。


雪ノ下はそんな俺を一瞥しただけで、またすぐに手許の文庫本に目を戻しながら、

雪ノ下「…昨日はお疲れ様」まるでひとり言のように呟く。

八幡「ああ。結局、おまえまで巻きこんじまって悪かったな」

雪乃「そうね。でもあれはどちらかというと、私の家の問題にあなたを巻き込んでしまった…という方が正解かしらね」

八幡「いや、それもそうなんだが、その、ほら…」さすがに直接的な表現は恥ずかしいので言葉を濁す。察しろよそれくらい。

雪乃「なにかしら?いつも以上に挙動不審で、正直ものすごく気持ち悪いのだけれど?もしかして眼だけじゃなくて頭も腐りはじめたの?」

八幡「あー…、まぁ、おまえの場合、帰国子女なんだから、その、なんつーか、挨拶代わりみたいなもんなのかもしれねーけど、一応…」

そう言われて雪ノ下の方も、俺が言わんとしてることにやっと気がついたようだ。みるみる頬が赤く染まるのがわかった。


雪乃「あ、あれは…そ、その場の勢いというか…」///

八幡「でも、さすがにあれだけ迫真の演技とか見せられたら、誰だって納得しちゃうよな」

雪乃「え?」

八幡「おまえ、マジで女優目指せば?オスカーとか狙えるんじゃね?」

実写版でスノー・ホワイトとかやったら絶対適役だぜ。白雪姫じゃなくて雪女の方な?

雪乃「演技…ね」

八幡「え?違うのか?」

雪乃「…いいえ。それならそれで一向に構わないわ」なぜかあきらめたような顔で溜息をついた。

八幡「ま、演技なんだから、お互い今回のことはノーカンってことで…」

雪乃「ノーカン?」

八幡「そうノーカン」晴れの日はピーカン。デートはワリカン。俺はそんなセコいマネしないけどな。する相手いないし。

雪乃「…そうね。その方がいいかもしれないわね。今はまだ…」

誰にともなくそっと呟く。


雪乃「でも、そんなにイヤでもなかったわよ?」

八幡「えっ?」///

雪乃「だって、唾液には滅菌作用があるんでしょ?だったら安心よね、ヒキガヤ菌?」

八幡「だからだれがヒキガヤ菌だよ」

雪乃「あら、そういえば確かヒキガヤ菌にはバリアが効かないんだったかしら?」

八幡「だから俺のトラウマ抉るようなマネすんじゃねーよっ!」じわじわ効いてくるんだぞ、それ。

雪乃「だったら熱湯で煮沸消毒が必要かしらね、あなたごと」

八幡「石川五右衛門かよ」

いつも通りの奉仕部、いつも通りの雪ノ下で俺は安心した。いや、罵詈雑言を浴びせられて安心しちゃっててホントにいいよのかよ、俺。


八幡「なぁ、雪ノ下」

雪乃「…」

雪ノ下が何か言いたげな顔で無言のまま俺に視線を寄こす。

八幡「ん?どうかしたのか?」

雪乃「…も、もう名前で呼ぶのはやめたのかしら?わ、私としては別にどうでもいいのだけれど…」

八幡「あ?だって今日はおまえの姉ちゃんいねーだろ。だったらいつも通り、雪の下でいいだろ、別に?」

雪乃「それはそうなのだけど…」

なぜか不服そうな顔をしている。


雪乃「それで、いったい何の用なのかしら?」

何恐い顔してんだよ?

八幡「おまえ、由比ヶ浜とは友達なんだろ?」

雪乃「…ええ。そうよ。それがどうかしたの?」

八幡「だったら、さ、俺が由比ヶ浜と友達になれば、必然的に俺はお前の友達ってことになるよな?」

雪乃「…なぜそうなるのかしら?あなたの言ってる言葉の意味がよく理解できないのだけれど?」怪訝そうな顔を俺に向ける。

八幡「あ?だって、友達の友達は友達だろ?」これぞトモダチ作戦。

雪乃「…友達の友達は赤の他人よ」

頭痛でもするかのようにコメカミに手を当てながらキッパリと断言する。


雪乃「以前にも言ったと思うけれど、あなたと友達になるなんてことは、絶対にあり得ないわ」

八幡「…だろうな」

おれはあっさりと白旗をあげる。確かにそのとおりなのだろう。雪ノ下雪乃は決して嘘はつかないのだから。演技はするかもしれないけどな。

多少なりとも期待した俺が甘かった。まるでMAXコーヒーのように甘甘だ。しかも練乳増量てんこ盛り。それもう飲み物と言えねえだろ。液体といえるかすらも怪しい。



雪乃「…そうね…でも」




八幡「ん?」

いつもはそこで会話が終わるはずなのだが、今日は珍しく雪ノ下から言葉を継いだ。

雪乃「…でも、もし仮に、よ?…友達以外の選択肢があるとするなら…」モジモジ

透き通るような白い頬が赤く見えるのは、差し込む夕日の加減だろうか。
美しい一服の絵画に描かれた美少女に、突然血が通ったかのような違和感を覚える。

先程までの見慣れたはず光景が急に形をかえた。

無意識のうちに今までの彼女の俺に対する不可解な言動が互いにリンクし、それぞれの断片がパズルのピースのように一枚の絵を形作る。


―― そしてその時、俺は唐突に、そう、まさに唐突に雪ノ下が何を言わんとしているかに気がついてしまった。


心臓が早鐘のように胸郭を乱打し、呼吸が乱れる。

気が動転してうまくものが考えられない。今日の晩御飯は何にしようかな…って今更現実逃避してどうする。

そうだ、こんな時はアレだ!


…えっとなんだっけ?


って何動揺しまっくてんだよ。とりあえず無理やり言葉を継ぐ、

八幡「ちょ、ちょっと待て。そ、それはつまり…もしかして…?」

雪乃「…」/// 雪ノ下が無言のまま形のいい頤を引く。

八幡「…マジ…なのか?いつもみたいにからかってるとかじゃなくて?」

雪乃「…そうね、そ、そういうことに…なるのかしら…ね」雪ノ下が観念したかのように呟く。

その雪ノ下らしからぬ、弱々しい声音に俺の推測が確信へと変わる。

雪乃「だ、だから、つ、つまり、もし仮に、あ、あなたが…望むのなら…だけれど…」モジモジ

彼女が皆まで言う前に、俺がその言葉の先を引き継いだ。

それは当然俺の男としての義務なのだから ――


八幡「……………まさかマジでお前の飼い犬になれとか言うわけ?」



雪乃「そう…そこまで言うなら…か、飼い犬に……………………って、え?」







八幡「え…?」                       

雪乃「…え?」 



…違うの?

はっ?もしかしてネコが好きだから飼い猫になれとか?そういえばパンダって確か漢字で書くと大熊猫だよな。そこまでしてやっぱり猫が好きなの?

しかし前々から恐ろしい女だと思っていたが、まさかこれほどまでとは。
あくまでも対等ではなく主従関係を望むとは。こいつそのうち『美しいわらわにひれ伏しなさい』とか言い出すんじゃねえだろうな。どこの王下七武海だよ。

俺がドン引きしていると、なぜか当の雪ノ下はちょっとだけ涙目になって、肩をわなわなと震わせはじめた。



雪乃「………こ、この男は…」



―― 以下自主規制 ――



イテテテテ、ひどい目にあったぜ。雪ノ下のヤツ、ヒステリーかっつーの。

手当たり次第物を投げつけやがって。ハサミとかマジやべぇだろ。カッターなんか投げる前にわざわざ刃を引き出してやがったし。

危うくバラバラにされちゃうところだったぜ。ヒキガヤだけにヒキ肉、ぼっちじゃなくてミンチ。

俺は身を守るために、部室から退避せざるを得なくなったが、さすがに雪ノ下も今のところ廊下までは追ってくる様子はない。

念のために部室の扉に呪符でも貼っておいた方がいいかもしれない。黄昏なんとかのナニ夕子さんかよ。


カバンを盾にして部室から飛び出したところで、遅れて部活にやってきた由比ヶ浜に出くわした。

そういえばコイツ、休み時間の間、ずっと俺の方見てソワソワしてたっけ?

俺はいつものように机に突っ伏してたから遠慮したみたいだけど。

最近、クラスの風当たりも強いしな。そろそろ台風シーズンか。俺の周りだけ。

結衣「あれ?ヒッキー部活はどうしたの?」

八幡「…俺が聞きたいくらいだよ」

結衣「あ、ところで、昨日はどうだったの?」

八幡「別に…無事役目を終えてお役御免だ」

結衣「ふーん、そうなんだ?」

明らかに安堵した表情になる。

結衣「な、なにもなかったの?」

八幡「まあ、とりたててこれといったことは、な」思わず目が泳ぐ。

結衣「…ホントに?」だから俺を疑いの目で見るな。まあ俺が挙動不審なのはいつものことなんだから、なんとでもごまかせるが。

八幡「言ったろ?俺は嘘はつかない」

こうして嘘に嘘を重ねて、俺はそのうちに本当にのっぴきならないハメに陥るのだろう。地獄に落ちたら閻魔大王に舌を引き抜かれるのかもしれない。2枚あるからいいけど。

それに陽乃さんではないけれど、黙っていることと、嘘をつくことは違う。雄弁が銀であるとすれば沈黙は金である。俺の場合、沈黙オリンピックがあったら間違いなく金メダルだ。話す相手がいないからな。


結衣「あ、そういえば私の誕生日プレゼントの件、聞き忘れてたんだけど?」ニコニコと浮かべられた笑顔になぜか鬼気迫るものを感じる。

八幡「え?あ?ちょ、今はそんなこと話てる場合じゃ…」

背後で扉がガラリと開く。 魔 王 降 臨 。

雪乃「…そうね。そう言えば、私もまだ聞きていなかったわね。花火デートの件」

八幡「や、まて、おまえら、話せばわかる…はずだ…」

まさに前門の虎、後門の狼。逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ…って逃げ場所ないだろ、これ。




「やあやあ、比企谷くん、昨日はおつかれー」





雪乃「ね、姉さん?」

振り向くとそこにはいつものように完璧な笑顔を浮かべたあねのんの姿。

陽乃「いやー、実はさー、今度はベンチャー企業の若手社長さんにプロポーズされちゃってー」

八幡&雪乃「はぁ?!」

陽乃「それでまた、比企谷くんに彼氏役をお願いできないかなーって」

八幡「はぁあああああああああああああああ?」

雪乃「ね、姉さん、い、いくらなんでもそれは…」

陽乃「ダイジョブ、ダイジョブ~、ほら、いざとなったら、またブチューっと…」

結衣「えっ?」いやだらこっち見んな。


陽乃「そ・れ・と・も…」

陽乃さんが、ずずずずいっと俺に近づく。

陽乃「…お姉さんと、もっといいコトしちゃう?」とんでもないことを俺の耳元でポショリと囁いた。

結衣「ヒッキー!」

雪乃「姉さん!」

八幡「なんだよ?」

陽乃「何かしら?」




雪乃&結衣「近すぎっ!!」



俺が目を泳がせながら右往左往していると、廊下の向こうからドタドタと足音が聞こえてきた。今度はなんだよ?

「うわーん、ハチえもーん。聞いてよ~。進路指導の先生ったら酷いんだよ~」

すでに今回の件で散々見飽きた顔、材木座が泣きながら走り寄ってきた。って、おまえ、俺のこと好き過ぎだろ。


精神的にも肉体的にも追い詰められた俺は、窮余の策として開いたままになっていた窓から急いで飛びだす。

陽乃「あら比企谷くん?!まだ話は終わってないわよ?」

結衣「ヒッキー?まだ話の途中だしっ?」

材木座「八幡よ?!我の相談を聞いてはくれぬのかっ!」

雪乃「比企谷くん、あなた本当に私から逃げ切れると思っているのかしら?」って怖えよマジで。


…だけど俺の答えは決まっている。


八幡「うん、まあ…その…みんなまとめて、そのうちテキトーにな」



故人曰く、君子危うきに近寄らば、三十六計逃げるに如かずというじゃろ?

とりあえず、当面の危機は回避した。問題を先送りにしただけの感もあるが、あとは時間が解決してくれるはず…である。たぶんそうあって欲しいと切に願う。

俺の名を叫ぶ四人の声を尻目に、駐輪場に向かって走り出す。もう止まれない。止まったらたぶん死ぬ。ってマグロかなんかかよ?


俺の青春ラブコメ、これで多分、間違っていないはず…だよな?




                 俺ガイルSS『いかにせば比企谷八幡は雪ノ下陽乃の彼氏(偽)足り得るか』 了



以上です。ノシ

長期間に渡りお付合いありがとうございました。

読みにくいうえに、誤字脱字が多くてスミマセン。脳内訂正ヨロッ!


奉仕部って1階だったっけ?


>>768

さあ?

1巻にはそれぞれの校舎が2階の渡り廊下で結ばれているとは書いてあったけど、部室が何階の位置までは知らないです。
もしかしてまだ決まって…ゲフンゲフン。


二階以上四階未満だな、アニメで確認出来るのだと
奉仕部前の階段で登り階段と降りる階段の両方が確認出来たし、部室の窓からは木が見下ろせる位置にあるからある程度の高さにあると思われる


>>771

スマン、アニメまでよく見てなかったわ。
このSSでは1階にあったということでオナシャス。


愛を確かめ合った川ナントカさんは?

乙。面白かったっす。

>>774
確かに気になるwwwwww
八幡に説明する気がなくても川ナントカさんから問い詰めてきそうだしなwwww


やれやれ、まったく最後の最後まで俺ってヤツぁ…

>>762

1行目

精神的にも肉体的にも追い詰められた俺は、窮余の策として開いたままになっていた窓から急いで飛びだす。
                      ↓
精神的にも肉体的にも追い詰められた俺は、皆が材木座に気をとられた隙に反対側の通路に向けて逃走する。


>>774
>>776

実は最後の大円団に加える案もあったのですが、やめました。その方が端的に彼女のポジションを表わしていて、想像が捗るから。
いないことでその存在感を誇示する川なんとかさん、まじパネェー。

>>779
>想像が捗るから

なんて事だ……兄妹同士むすばれて
「比企谷 川なんとか」さんになる大勝利ENDだと!?


拉致られた材…岩清水については誰も気にしていないのが笑えますね。

ちなみに“怪談”はお姫様抱っこ、“偽彼氏”はデコチューが描きたかったがために書いた作品です。後は単なるお膳立てです。

八雪は正義。異論は認めない。

“偽彼氏”ではゆきのんをわかりやすくデレさせる(嫉妬させる)には、やはりあねのんの存在が必要不可欠だと考えたので敢えてテンプレを使ってみました。

皆さんに楽しんでいただけたのでしたら、社畜冥利に尽きるというものです。


>>781

…あー…もしかして川なんとかさん、ポニテをぴょこぴょこさせながら駐輪場で待ち伏せとかしてるかも知れませんねー…捗るなー。

   【このスレは無事に終了しました】

  よっこらしょ。
     ∧_∧  ミ _ ドスッ

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     /    つ. 終  了 |
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   【放置スレの撲滅にご協力ください】  
   
      これ以上書き込まれると

      過去ログ化の依頼が

      できなくなりますので

      書き込まないでください。

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      | |     |l ̄| |       l スレ立て終わりっと
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二二二 」 _ __ lニ二二l、           ____
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 └─(    )(ニ|  ̄|./二ニ)     ヽ              /
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      | |     |l ̄| | >>816 l スレ立て終わりっと
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ハニャーン   \     / / /\\  \      ( ・∀・ )
  ∧∧  Σ  ミ / / / ▽\\  \  ●ヽ●⊂__ .)]]__
Σ(#゚Д゚)   Σ  ./ /__/、〃 。 \\  \_| | //   ,ハ: | |ΞΞ||
 ⊂⊂´ヽ、ノ   | ̄ ̄; ◎) /|    \\./ ̄/ ̄|⌒ノ ).| |ΞΞ||
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このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年02月19日 (水) 19:29:09   ID: XTv_Q-oI

すごく面白いのにコメントがないのが不思議
続編希望!

2 :  SS好きの774さん   2014年10月29日 (水) 21:38:40   ID: Iad6G7UU

序盤はいいけど中盤辺りからキャラがだんだんブレて来てる

3 :  SS好きの774さん   2014年12月12日 (金) 19:10:26   ID: E6M3YeIv

はるのん可愛い

4 :  SS好きの774さん   2015年07月22日 (水) 20:46:59   ID: -O-ddLSX

八幡、鈍感すぎだろ

5 :  SS好きの774さん   2015年11月25日 (水) 18:17:23   ID: wyv5oLyR

八幡は鈍感というよりわかってて話かえたり言及しないで逃げるキャラだとおもうのだけれど?

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