結衣「だから……」(72)
京子「ふぃー! 今日も楽しかったなぁー!」
結衣「そうだな」
京子「ふんふふーん」
結衣「ゴキゲンだなぁ」
京子「色々ね~」
結衣「そっか」
京子「結衣はー楽しくないー?」
結衣「帰り道に特に楽しさはないな」
京子「そっかー」
京子「いやー今日も夕日が綺麗だなぁー!」
結衣「冬至はいつだっけか」
京子「さぁー」
結衣「冬至にはゆず湯に入るんだったか、カボチャを食べるんだったか」
京子「ゆずー。 じゃあ冬至にはまた結衣のうちに泊まりにいかないとだね!」
結衣「なんでだよ」
京子「ゆず湯にはいりたいじゃん」
結衣「家でやるだろ」
京子「そうかなぁ」
結衣「そうだと思うけどな」
京子「じゃ、いつもどおり無条件で行くね」
結衣「……」
京子「にしし」
京子「一番星ー見つけたー」
結衣「明るいな」
京子「明るいから一番星なんだよ」
結衣「違うだろ」
京子「違うのかー」
結衣「……」
京子「ふんふふーん」
結衣「……」
京子「よっ、と」
結衣「おい、車道にあんまり出るなよ」
京子「大丈夫大丈夫」
結衣「……はぁ」
京子「ふふーん」
結衣「なんだか、やけに楽しそうだな」
京子「なんでだろうねぇー」
結衣「私が聞きたいよ」
京子「ふふふ」
結衣「ん?」
京子「実は!」
結衣「実は?」
京子「特に何もない!」
結衣「……」
京子「特に何もない! から、楽しいんだよー」
結衣「わからん」
京子「平和だってことさ、嬢ちゃん」フッ
結衣「はぁ……」
結衣「……」
京子「♪」
結衣「……」
京子「~♪」
結衣「……」
京子「……♪」
結衣「……」
京子「あっ!」
結衣「ん?」
京子「みらくるんの新刊部室に忘れた」
結衣「はぁ」
京子「まいっか」
結衣「そうか……」
京子「で、結衣さんはテンション低いっすね!」
結衣「そうでもないけど」
京子「いやいや、いつもより沈黙が重いですよ」
結衣「そうかなぁ」
京子「はい」
結衣「……」
京子「……」
結衣「ちょっと考え事をね」
京子「ほほう。 この京子様が聞いてしんぜよう」
結衣「……うーん」
京子「……言いたくない?」
結衣「いや……。 なんだか、京子が前を歩いてるなぁって」
京子「?」
結衣「前は私が京子を引っ張ってたのになーってさ。
今は京子が前を歩いて、私を引っ張ってくれてる気がして」
京子「センチメンタルってやつですなぁー」
結衣「センチメンタルかなー。 親心ってのもあるような。
泣き虫だった娘が成長した……みたいな」
京子「お母様ー」
結衣「……なんかいやだな」
京子「酷い!」
京子「お母様が京子を虐めるんですお父さま。
はっはっは、お母さんなりの愛なんだよあれが。
そんな厄介なもの要りません!」
結衣「……」
京子「ま、どっちでもいいじゃんー」
結衣「そうなんだけどな」
京子「引っ張ったり、引っ張られたり、人生色々ー」
結衣「中学生にして人生を語るか」
京子「人生色々って最後につけるとそれっぽくなるんだよ」
結衣「ラムレーズン、人生色々」
京子「ね?」
結衣「確かに」
京子「ねー、結衣」
結衣「ん?」
京子「見てほら。 誰もいない河川敷」
結衣「ほんとだな」
京子「寒いからかな?」
結衣「だろうな」
京子「誰もいないよね」
結衣「ん、あぁ」
京子「というわけで!」
結衣「?」
京子「大暴露大会!」
結衣「はぁ?」
京子「結衣ったら、まだ何かもやもやしてるでしょー」
結衣「……」
京子「誰もいないんだから、この場でぶっちゃけちゃおうよ」
結衣「……それはできない」
京子「どうして?」
結衣「……」
京子「大親友の京子様にも話せないの?」
結衣「……」
京子「ねー結衣ー」
結衣「……怖いんだよ」
京子「何が?」
結衣「……」
京子「メロン熊が?」
結衣「真面目に話すつもりがないならもうやめよう、京子」
京子「ごめんごめん」
結衣「……」
結衣「この間京子はさ、歳とらなくて、ずっと一緒に居られるのがいいって言ってたよな」
京子「うん」
結衣「……暴露大会だからはっきり言うけど、私もソレがいいと思ってるんだ」
京子「ふへへ」
結衣「でもさ、京子がどんどん先へ歩いて行く気がするんだ」
京子「……」
結衣「気づいたら私は京子の後ろをついて行ってる」
京子「……」
結衣「本当は止まってるなんてことなくて、ほんの少しだけど動いてるんじゃないかって思ったりして」
京子「……」
結衣「いつか、京子が私の手を離して、先に行ってしまうんじゃないかって」
結衣「そうなったらきっと、ごらく部も何か変わってしまうんじゃないかって」
京子「……」
結衣「時間が進むのは当たり前なのに、ソレが怖いんだよ私は」
京子「そっか」
結衣(そして私は、その京子にすがり続けて足枷になるのが、怖い)
京子「もし進んでるとしてさー」
結衣「……うん」
京子「それでごらく部が解体されたとしても、いいじゃん?」
結衣「は?」
京子「進んでるならしょうがない!
いつか私らが卒業して、もし別の高校にいったりしたとしても、
きっとそれは、しょうがないことだよ」
結衣「……」
京子「……あかりが入部して少しした時の、目立ちたガール覚えてる?」
結衣「あぁ……あの無茶苦茶やったやつだろ」
京子「ニックネームの付け合いは?」
結衣「キョッピー」
京子「クリスマスシャッフルデート!」
結衣「綾乃とだったな。 今年もやるのか?」
京子「予定は未定。 千歳お酒チョコ事件とか、粘土、ちなつちゃんの紙芝居」
結衣「覚えてるけど、それがどうしたんだ?」
京子「そうそこが重要!」
結衣「?」
京子「覚えてるなら、それでいいじゃん」
結衣「……」
京子「具体的に進学とかさーそういう時間経過を考えるのは、確かに怖いけど
今まで私たちが過ごしてきた時間ってのはもう、過去じゃん?
春夏秋冬、季刊誌だけど、ひとつひとつ季節は過ぎていくのさー。
ありふれた日々だったかもしれないけど、それでももう戻せないんだよ。
そういうのに気づいちゃったらもう、毎日、一瞬を楽しくやってくのが一番だと思う!」
結衣「……そうか」
京子「そうそう」
結衣「うん……」
京子「だからさ、もし私が、今のところ、ううん、これから相当先まで、
結衣をほっといて先に行く予定なんてないけど、もし、もしそうなったとしても
今までの私たちのがあって、その下積み? 経験? 思い出、軌跡!
そんなので受け止められる大人になってると思うよ、私も、結衣も」
結衣「……そうだといいなぁ」
京子「結衣なら大丈夫だって」
結衣「そうかな……」
京子「じゃー次は私の番ね!」
結衣「あ、あぁ……」
京子「私は、全然結衣の前なんて歩いてないよ!」
結衣「はぁ……」
京子「ま、昔よりは横に来てると思うんだけどねー」
結衣「まぁな」
京子「えへへ」
結衣「泣き虫だったもんなぁ」
京子「そうそう。 泣き虫だった」
結衣「もう泣かない?」
京子「うーん、泣く時は泣く!」
結衣「ふふ、そうか」
京子「私がこけて泣いた時も、結衣は立つの手伝ってくれて、絆創膏も貼ってくれたよね」
結衣「何回やったか覚えてないぐらいな」
京子「犬が怖かった時も守ってくれたし」
結衣「隣のブルドッグは怖かったなぁ」
京子「雨の日、飛ばされた傘を探してくれたよね」
結衣「あぁ、そんなこともあったような」
京子「ちなつちゃんから私守ってくれたよね」
結衣「ちなつちゃん……?」
京子「あ、なんでもない」
結衣「……あっ!」
京子「お互い忘れよう!」
結衣「あはは……あれが……そうか……」
京子「こうやって、結衣が私を引っ張ってくれてきたから、今の私があるんだよ」
結衣「……」
京子「感謝している! 褒美をあげよう!」
結衣「褒美って」
京子「ま、それは話が終わった後で」
結衣「うん」
京子「そういうわけだからさ……」
結衣「ん?」
京子「わかってほしかったなぁー!」
結衣「……?」
京子「もう」
京子「今度は、私が結衣を引っ張ってあげたいんだよ!」
結衣「あぁ、そういうことか」
京子「うん。 こけた時は絆創膏貼ってあげるし、犬からも守ってあげちゃうし
傘が飛ばされたら探してあげるし、ちなつちゃんからも守って、守らせてあげてるし!」
結衣「最後のはもうちょっとがんばれよ」
京子「ふへへ……。 だから、結衣は私の足枷になんかなってないんだよ。
ただ、私が結衣にお礼をしたいだけなんだ。
でもさ、結衣ってかっこいいし、特に悪い部分ないじゃん?
私にしてくれた事みたいなのを返せないから、別の事を考えたりしてさ」
結衣「それがごらく部か」
京子「大体そんな感じ!」
結衣「……そっか」
京子「えへへー照れてる照れてるー」
結衣「……まぁね」
京子「えへへー」
京子「さて、ご褒美タイムですね」
結衣「一体何をするつもりなんだ」
京子「怖がりな結衣ちゃんに……」
結衣「おい」
京子「結衣ちゃんに……」
結衣「……」
京子「京子ちゃんのファーストキスをあげましょう!」
結衣「ぶっ、な、何を言ってるんだお前は」
京子「私なりの愛ですよ!」
結衣「そんな大切なものもらえんわ!」
京子「あげるっていってるんだからもらっておきなさいよ奥さんー」
結衣「……そういうのはさ」
京子「ううん、私は結衣にあげたいの」
結衣「うっ……」
結衣「……」
京子「……」ジー
結衣「……」
京子「……」ジー
結衣「……」
京子「……」ジー
結衣「……」
京子「……」ジー
結衣「……わ、わかった……」
京子「……えへへ」
結衣「……顔真っ赤だぞ」
京子「夕日のせいさ」フッ
結衣「京子は逆光だろ」
京子「そういう結衣さんこそ」
結衣「しょうがないだろ」
京子「ふふふ」
結衣「……は、はやくしろよ」
京子「て、照れてるんだよ!」
結衣「……」
京子「……よ、よーし、いくぞー」
結衣「お、ぉう」
京子「……」
結衣「……」
京子「いっ、いっちゃうぞー」
結衣「……」
京子「う、うぉぉぉ……」
結衣「……京子」
京子「はい」
結衣「……頑張って」
京子「! おう!」
結衣「……」
京子「……ええい! 覚悟ー!」
結衣「なんだその掛けご――――
京子「――ふぅ」
結衣「……」
京子「えへへ」
結衣「……」
京子「……」
結衣「……」
京子「……あの、結衣さん?」
結衣「えっと、コメントが思いつかなくて」
京子「あはは」
結衣「……ふふっ」
京子「さーて、帰ろう! 日も暮れちゃった」
結衣「あぁ、そうだな」
京子「ほらほら、せっかくだし手つなごうよ」
結衣「……そうだな」
京子「えへへ」
結衣「なんだよ」
京子「結衣が楽しそうだと私も嬉しいんだよ~」
結衣「……私も京子が楽しそうだと嬉しい」
京子「今日はデレデレですなぁーはっはっは!」
結衣「……そうかもね」
京子「あはは」
京子「ふんふふーん♪」
結衣「だーから」
京子「泣いて笑って繋いだこの手は~♪」
結衣「なんだ、歌詞わかってるのか」
京子「わかってても鼻歌で歌詞まで言うのはね」
結衣「それもそっか」
京子「えへへー。 さー二人でいこーよレッツゴー!」
結衣「おい、走るなよ」
京子「青春を謳歌しようぜー!」
結衣「お、おい、待てって、京子!」
京子「捕まえてごらんなさーい!」
結衣「もう掴んでるよ! ……あはは」
京子「えへへ。 結衣、大好きだよ!」
結衣「私もだよ。 京子」
おわり
結京さんにオススメのキス題。シチュ:帰り道、表情:「赤面」、
ポイント:「ファーストキス」、「自分からしようと頑張っている姿」です。
+聞いてたいきものがかりの茜色の約束なイメージで
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