仁美「私が……魔法少女……?」 (269)
ある日、見滝原に雲を越すほどに大きい、山のような大木のような――とても大きな何かが生まれました。
そう、例えるならそれは北欧神話のユグドラシルのようで、荘厳で神々しく。
そして圧倒的で、絶望的でした。
それがもたらしたのは前代未聞の現象であり災害であり――。
この時、世界はまだまだ私の知らないことだらけなんだなと痛感しました。
それは見滝原を壊滅させ、そして日本全土に渡って甚大な損害をもたらしました。
ライフラインの一切が用を成さないことから、その規模がおおよそ推測されます。
私はひとりで、多分戦場跡地よりもひどく荒廃し、寂寞とした見滝原を当て所もなく歩いています。
通い慣れた学校。
友達と歩いた通学路の並木道。
放課後、よく寄り道したデパート――。
見知った街並みは見る影もありません。
家も家族も、学校も友達も――街も人も。
すべてが失われました。
いっそ、死んだほうが楽だったと思います。
こうして生き残ったのはある種の罰なのかもしれません。
一人の友人を殺した、罰。
――生きていても辛いだけ。
ならこのまま歩き疲れてどこかで野垂れ死ぬのも――。
仁美「……」
仁美「……」
仁美「……!」
仁美「…………あれは……」
「……戦わないのかい?」
「私の戦場はここじゃない」
仁美「暁美……さん?」
仁美「待って……あけ……」
――
――――
――――――
QB「……以前は素質が認められなかったけど、魔女に数度関わることで後天的に素質が発現した……ってとこかな」
仁美「……んっ……」
QB「気がついたかい?」
仁美「……」
仁美「…………しゃべる……ねこちゃん……? いよいよ気が触れたのかしら……」
QB「いいや、君は相当参っているようだけど、精神状態にはまだ問題はないようだ」
仁美「……そうですか。本当に世の中はまだまだ私の知らないことだらけですわね……」
QB「僕はキュゥべえ。よろしくね」
仁美「私は……志筑……仁美と申します」
――
――――
――――――
QB「どこへ行くんだい?」
仁美「当て所はないですけど……他にやることもないですから……」
QB「まぁ何をしても無意味じゃないかな。この有様じゃ」
仁美「まるで世界の終焉……という風情ですわ……」
QB「うん、間違ってないよ。あと十日そこそこってところでこの地球は滅びるだろうね。アレによって」
仁美「……やはり……そうですか……」
仁美「目が覚めたらすべてが夢だった……そんな素敵なオチでしたら良かったのに……」
QB「そうだね。でもこの現実を夢へと覆す――。そんなことなら出来るかもしれないよ」
仁美「? ……それは……一体どういう……」
QB「ねぇ、なんでも願い事が一つ叶うとしたら……。興味がないかい?」
仁美「……そんなこと……できますの……?」
QB「君ならできるさ。だから――」
QB「僕と契約して、魔法少女になってよ!」
仁美「…………こんな年にもなって魔法少女とは……。可笑しいですわ」
QB「そうおかしくはないだろう? だって、今君の周りは不可思議なものでいっぱいじゃないか」
仁美「……確かにこれらに比べたら些事な……可愛らしいことですわね」
QB「僕が願い事をなんでも叶える。それと引き換えに魔女と戦う宿命を背負ってもらう。それが魔法少女さ」
仁美「魔女……?」
QB「アレの類さ。まぁアレが魔女の最たるものだけどね」
仁美「あんなの……どうこうできるわけないですわ……」
QB「確かに。あれを倒せば世界は救われる。だけどそれは叶わないだろう」
QB「だけど、その願い事によっちゃそれは関係なくなるだろう?」
仁美「……本当なんですか……?」
QB「真実さ。まぁ確かに、仁美の今までの常識を元に考えれば突拍子もなく、眉唾物な話に聞こえるのは仕方がないね」
仁美「そうですわね……」
QB「まぁともあれ今は理解できずとも鵜呑みにしておくのが吉さ。それに魔法少女になれば、何をするにしろ多少は良い方に事を運べるんじゃないかな」
仁美「……なら選ぶべきは明白ですわね」
仁美「だけど……少し……願い事を考えさせてください」
QB「僕は構わないさ。願いはひとつきり。よく考えるといい」
仁美「……はい」
QB「だけどあまり悠長に考えることもできない状況だということも留意してね」
仁美「承知していますわ……」
――
――――
――――――
QB「もうすぐ日が暮れるね」
仁美「こんな世界でも……夜は来るんですのね」
QB「今日は野宿かい?」
仁美「いえ……どこか屋根のある場所で……。といってもどこも半壊して敷地の境界もあやふやですし……野宿と言っても相違ないかもしれませんわね……」
QB「どこかあてでもあるのかい?」
仁美「いえ、特に……」
QB「道すがら良さげな建物は見なかったかい?」
仁美「いえ……見ていませんでした。道中野垂れ死んでもそれはそれでいいかと思っていましたので……」
QB「そうかい」
仁美「とりあえず……もう少し散策します」
――
――――
――――――
QB「……君には何か目的でもあるのかい?」
仁美「……いえ。でも……誰か生きてる人が……助かりそうな人がいたらと思いまして……」
QB「残念だけどここいらに生き残っている人はいないようだよ」
仁美「そう……ですか……」
QB「君は不幸中の幸いってやつだね」
仁美「……皮肉ですわね」
QB「そうとも捉えられるかもね」
QB「まぁ市民全員が死んだとは考えづらいね。人間は存外生命力が強いからね。生き残った人は君が知らないうちに皆何処かへ避難したんだろう」
仁美「あっ……そういえば明美さん! さっき明美さんを――」
QB「暁美ほむらかい?」
仁美「ご存知ですの?」
QB「知ってるもなにも、彼女も魔法少女なのさ」
仁美「!」
QB「多分彼女の能力は……言動から推し量るに時間操作だね」
仁美「時間……操作……?」
QB「あくまで推論なんだけどね。当の本人に聞いたわけじゃないから。でも一応理にかなった、濃厚なものではある」
仁美「あの……もう少し詳しく教えてくださりますか……?」
QB「そうだね……端的にいえば、過去から現在、そして未来までの時間が時間軸で成り立っていると仮定して、その時間軸をある程度操作できるというものだろう」
仁美「……にわかに信じがたい話ですわね……」
QB「どの程度まで可能かは定かではないけど……一時的に時間を止めたり、時間軸を遡って過去へと戻ることもできるみたいだね。現に彼女はこの時間軸を見限り、過去へと戻っていったみたいだ」
仁美「! それは……だとしたらこんな、こんな結末を変えられるんですか!?」
QB「万一変えられたとしても、現状は変わらないさ」
仁美「でも……過去が変わったら未来も……!」
QB「過去が変わったら、それは“今”じゃないだろう?」
仁美「……」
QB「それは中途で分岐した別の時間軸、いうなれば平行世界――僕たちにとってはありえた可能性、ということになるね」
仁美「……そんな」
QB「忘れてないかい? 君も願い事如何によってはそのような魔法少女になりえるんだよ?」
仁美「!」
QB「まぁそこのあたりも加味して考慮しておくといいよ」
仁美「……」
QB「夜も深まってきたし、とりあえずは雨風をしのげ、且つ倒壊の恐れのない建物探しだね」
仁美「……どこもかしこも半壊していて骨が折れそうですわね……」
――
――――
――――――
QB「屋根には大穴が空いてるけど、今夜は雲が少しまばらにかかっているくらいだからまず雨の心配もない。耐久性も……まぁ今すぐにも自壊するということもないようだから、ひとまずはここで問題ないさ」
仁美「はい……」
QB「まぁ捉えようによっては風流、趣があるって感じなんじゃないかな」
仁美「ですわね……」
――
――――
――――――
仁美「……とても……穏やかな夜ですわ……」
QB「そうだね」
仁美「……もうすぐ世界が滅びるなんて信じられないくらい……」
QB「……」
仁美「ねぇ……キュゥべえ……さん……」
QB「キュゥべえでいいよ。どうしたんだい?」
仁美「明美さんの他にも……魔法少女っているんでしょうか……」
QB「うん、そうだね。君の知っている人だと……さやかかな」
仁美「えっ……さやか……さん?」
QB「うん。美樹さやか」
仁美「……」
QB「どうしたんだい?」
仁美「い、いえ……。あの、さやかさんはどんな願いを……」
QB「上條恭介。知ってるよね」
仁美「!」
QB「彼女は上條恭介の左手を治して欲しい、という願いと引き換えに魔法少女になったのさ」
QB「君も知ってのとおり、彼の左手には治る見込みがなかったのだろう? それこそ奇跡や魔法でもない限りはさ」
仁美「そ……んな……私……じゃあわたしは……」
QB「……僕は彼女の魔法少女になっての顛末を知ってるよ。聞きたいかい?」
仁美「……」
――
――――
――――――
QB「――そして彼女は魔女になった。絶望を飽和した、魔法少女の成れの果てにね」
QB「魔女になったらもう助からない。絶望を振りまくだけの、自我のない存在としてあり続けるしかないんだ」
QB「だから彼女は倒された。他の魔法少女によってね。これが彼女の最後さ」
仁美「……それじゃ……やはり……全部私が悪いんじゃないですの……」
QB「……」
仁美「…………ごめんなさい」
仁美「ごめんなさいさやかさん……ごめんなさい……」
仁美「ごめんなさい……」
――
――――
――――――
日常から遊離した世界。
悪夢のような、壊れた世界。
だけど紛れもないこの世界で私は夢を見ました。
それは今よりもずっと現実味があって、だけど今ではもうありえないこと。
一ヶ月前までは当たり前で、いつまでも続くように思えた、確かに幸せだった日常の夢。
私がいて、まどかさんがいて、さやかさんがいる憧憬。
夢でもどうかさめないでいて。
そう叶わない願いを思うのでした。
――
――――
――――――
QB「仁美! 起きて!」
仁美「……んっ……どうなさいましたの……?」
QB「アレが動き出したんだ! このまま留まるのは危険だよ!」
仁美「……そう、ですわね……」
――
――――
――――――
仁美「……」
QB「どうしたんだい?」
仁美「聞こえるんですの……」
QB「聞こえる?」
仁美「泣き声……とても悲痛な……」
QB「……」
仁美「……行かなくては……」
仁美「あの大樹の元に……」
QB「……危険だよ」
仁美「それでも……行かなければならないのですわ……私は……」
――
――――
――――――
仁美「これは……どうなっていますの……?」
QB「……仁美、気をつけて」
仁美「えっ……」
QB「ここから魔女の結界……いわば魔女の領域になっているんだ」
仁美「えっ……と……それは……」
QB「そうだね、今簡単に魔女の説明をしちゃおうか」
QB「通常の魔女は現実に形を成すことは出来ない。条理にそぐわない不安定な存在だからね。だから自分好みに調節した結界――常人では干渉し得ない、いうなれば虚数空間の中でしか存在できないんだ」
QB「そんなとこから一方的に人間に干渉して悪さをするから質が悪い。――まぁこれが通常の魔女なんだ」
QB「だけど例外もある。極めて稀だけど力が強大過ぎる魔女は結界の中でなくとも顕現化出来るんだ。アレみたいに」
QB「そもそも魔女は結界のなかでしか存在できないというのは、人が自力で空を飛べないのと同じくらい当然な道理なんだ」
QB「それを捻じ曲げて現実に現れるわけだから、それだけでその法外さは理解できるだろう」
QB「それだけでも十分過ぎるほどに脅威なんだけど、それに増して今問題なのがアレが現実世界を魔女の結界に塗り替え、侵食しているんだ。こんなことは今まで前例がない」
QB「これによって今まで自分の結界の中にしか存在できなかった魔女がこの結界で変容した現実世界に姿を現すことができるようになる」
QB「きっと……このまま世界を結界で塗りつぶして滅ぼすつもりなんだろう。数多の魔女が蔓延る世界に作りかえることでね」
仁美「えっと……つまり、ここからはいつ魔女に出くわしてもおかしくないということですか?」
QB「それもそうだけど、それよりリスキーなのは、いくら今はこの結界が現実と分け隔てなくリンクしているとはいえ、これほど茫漠な結界――しかも更に拡大中となれば一度踏み入れたら出られる可能性は極めて乏しいということなんだ」
仁美「……」
QB「それでも、進むかい?」
仁美「……無論、ですわ……」
――
――――
――――――
仁美「……あちらも現実とは思えないですが……ここは本当に別世界ですわね……」
QB「……仁美、隠れて」
仁美「えっ……」
QB「……見てごらん」
使い魔『〜♪』
仁美「な、何ですかあれ……。もしかしてあれが……?」
QB「あれは使い魔。魔女の手下だね」
使い魔『〜♪』』
QB「……あれ自体はさほど害悪なものではないみたいだ」
QB「だけど使い魔によっては異物の排除や偵察といった任を与えられているものもいるから油断はできないね」
仁美「……」
QB「それに、無論、使い魔がいるってことは、それを遣わせた魔女がここらにいるってことさ」
QB「本命にたどり着く前に別の魔女に見つかったら厄介極まりないからね」
QB「ましてや君は今はただの人間だ」
QB「気をつけてね、仁美」
仁美「……」
――
――――
――――――
QB「……結構歩いたね」
仁美「……」
QB「願い事は決まったかい?」
仁美「……まだ、ですわ」
QB「そうかい」
仁美「……」
QB「……」
仁美「……キュゥべえ。そろそろ聞かせてもらえますか。アレの正体は……」
QB「……察しがついているようだね」
仁美「まどかさん……ですね」
QB「そう。あれは鹿目まどかの成れの果てさ」
仁美「……どうして……」
QB「そうだね。少し長い話になるけど……道すがら話すにはちょうどいいかな」
QB「伏せる必要もないし、僕のことも含め全部話すさ」
――
――――
――――――
仁美「……」
QB「まぁ信じるも信じないもいいし、理解してくれともいわないよ」
仁美「……それじゃ……あなたのせいで……まどかさんは……」
QB「僕を恨むかい?」
仁美「……今あなたを憎んだって現状はかわりませんわ……」
QB「……そうかい」
――
――――
――――――
QB「結界の形式が変わってきた……」
QB「仁美、目標は近いかもしれないよ」
仁美「……」
仁美「……これは……」
QB「結界は魔女になる前の思い出や趣味嗜好が色濃く反映される」
QB「いわば、心の中の世界だね」
仁美「……まどかさん……」
――
――――
――――――
仁美「ねぇ……キュゥべえ。魔女になったら、もう元には戻れないのですか?」
QB「まず、不可能だろうね……。さやかが好例だろう」
仁美「っ……」
QB「自我もなく、ただ絶望を振りまくだけの存在であり続けるしかない」
仁美「……もしも、私がまどかさんを人間に戻してと願ったら……?」
QB「……前に願い事をなんでもっていったのは、大抵の魔法少女は例に漏れずその因果に見合った願いを望むからなんだ」
QB「だけどあまりに願いが突飛すぎると……といっても君にはそのラインは分かりづらいか」
QB「まぁ今回のようなあまりに法外な現象に関わるとなると、高確率で失敗してしまうか、成功しても多かれ少なかれ綻びが生じて破綻する」
QB「”願い事をなんでも”っていった手前で申し訳ないんだけど……。だからその願いは難しい……」
仁美「そう……ですか……」
QB「感情を持ち合わせていない僕が言うのもなんだけど……。魔女になった魔法少女を真に救いたいのなら、やっぱり倒して楽にしてあげるしかないんじゃないかな」
仁美「……」
QB「君はまどかを助けたいんだろう?」
QB「先に倒すなんて言ったけどそれもまず不可能だ。この最悪の魔女に勝てる魔法少女なんてこの世には存在しないだろう」
QB「だけど君はそれらも承知でここまで来たんだろう?」
QB「たとえすべてが無駄なことだとしても僕は見届けるよ。君自身が決めたことだ、どうせ止めても聞かないだろう?」
QB「それに……君はきっと最後の魔法少女だろうしね」
仁美「……ありがとう、キュゥべえ」
――
――――
――――――
仁美「……」
QB「……これは驚いたな」
仁美「……まどか……さん……?」
「…………」
「……仁美……ちゃん……?」
仁美「まどかさん……」
まどか「仁美ちゃん!」
仁美「……もう大丈夫。私が……私がついてますわ……」
まどか「仁美ちゃん……」
まどか「……ありがとう……」
――
――――
――――――
まどか「……仁美ちゃん。瞳ちゃんはどうしてここに……?」
仁美「まどかさんが……泣いてる声が聞こえましたの。放っておけませんせんわ。友達ですもの」
まどか「あはは……。私……ここで一人でね、寂しかったんだ……」
仁美「……」
まどか「……仁美ちゃん……私、どうしたらいいかわかんないよ……」
まどか「大切なものも……全部壊しちゃった……」
仁美「……」
まどか「私ね、この街を守りたかったの……。大切な人がたくさんいる街……」」
まどか「……明美さんがね、一人でこの街を守ろうと戦ってたの」
まどか「とても痛ましくてね……かなうわけないのは明白だった」
まどか「だけど、明美さんは戦ってた」
まどか「……私はそれを黙って見ていることなんてできなかった」
まどか「だから願ったの。この街を守れるだけの、みんなを救えるだけの力をちょうだい、ってね」
まどか「……どうしてこうなったんだろう……」
まどか「ごめんね仁美ちゃん……。本当に……ごめんなさい……」
仁美「……まどかさんは悪くはありませんわ」
まどか「……仁美ちゃん、ありがとう……」
仁美「……」
まどか「……私……どうしたらいいんだろう……」
まどか「どうしたらいいかわかんないし……どうしようもないよ……」
まどか「もう……こんなの……やだぁ……」
仁美「……」
――
――――
――――――
まどか「……ねぇ、あなた……」
QB「……自己紹介がまだだったね。僕の名前はキュゥべえ。よろしくね」
まどか「キュゥべえ……、どうしてこうなったの?」
まどか「私、だまされたの?」
QB「……」
まどか「……ねぇ……答えてよ……」
まどか「キュゥべえ!」
まどか「……答えてよ……」
QB「……」
仁美「……」
まどか「……もういいよ。こんな世界……」
仁美「えっ……?」
まどか「仁美ちゃんだってそう思うでしょ? 家族もクラスのみんなも……さやかちゃんもいなくなったこんな壊れた世界……生きている方がつらいでしょ?」
仁美「まどかさん! まだ……、まだ私がいるじゃないですか!」
仁美「それに……私にはまだあなたがいますわ……」
仁美「私はもう……何も無くしたくない……」
まどか「……」
仁美「まどかさん……、一緒に……帰りましょ?」
まどか「……ありがとう、仁美ちゃん……」
ぷ~ん(笑)
ぷ~ん(笑)
まどか「……でもごめんね仁美ちゃん。それはできないんだ」
仁美「えっ……」
まどか「私、こんな身なりだけど、もう人間じゃないんだよ……?」
まどか「本当の私は……仁美ちゃんの大切なものもぜんぶめちゃくちゃにした張本人」
まどか「否が応にもわかるでしょ?」
まどか「アレを含めたこの場所自体が私みたいなものだからさ。もうここから出られないの」
まどか「それに……もう私が私を保てなくなるみたい……」
まどか「だからさ……せめて最後まで楽しかった思い出と一緒にここにいさせて……」
仁美「……」
\/ ヽヽ レ | ──, ‐┼‐ / ‐┼‐ /
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\__ / ○' `つ //\ノ `つ //\ノ
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\l| ll l| l|~'ー.,,_ .》′ ゙゙ミ| ,r′ }
\ l| ll l| l|゙`ー-┬ト .ミノ′ 〕
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゙ ヾー、_l| l| / / :!., リ ノ
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l! .´゙フ'ーv .,y ] '゙ミ
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| ノ′ ヽ 〔 ミ
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.| .ミ .< 〔 〕
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{ ¨^^¨′¨'ー-v-r《 〔
仁美「……キュゥべえ」
QB「……このまどかは相反する気持ちが一時的に結界の影響で具現化したようなものだね」
QB「まどかは完全に魔女になっていなかったんだ。完全に魔女になっていたら自我なんてなくなる。つまり一気に地球を滅ぼそうと動くはずなんだ」
QB「まどかとしての意識がまだあったから……だから活動が断続的になっていたんだろう」
QB「君が聞いたように……泣きながら必死で抑えようとしたんじゃないかな」
仁美「……」
まどか「……ごめんね……ほんとうに……ごめん……」
仁美「……」
仁美「……キュゥべえ。私、願い事が決まりました」
QB「……そうかい」
QB「君の願いは、その身を捧げるに足るものかい?」
仁美「……勿論」
まどか「だめだよ仁美ちゃん。キュゥべえの言うことを鵜呑みにしちゃ……私みたいに……」
仁美「ごめんなさいまどかさん……たとえ騙されていようが、もうこれにすがるしかないのですわ」
まどか「……」
QB「……言ってごらん」
仁美「……まどかさんを助けたい。ここにいるまどかさんを元に戻して欲しいです」
QB「……本当にそれでいいのかい? ほむらみたいに時間軸を移動できるような――」
仁美「いえ、いいんです。私はここにいるまどかさんを見捨てたくありません」
仁美「……それに、他の時間軸には暁美さんがいますもの」
仁美「きっと、こんな悲しい結末をなんとかしてくださいますわ」
まどか「……仁美ちゃん」
仁美「ごめんなさい、まどかさん……」
QB「……わかった」
仁美「…………あっ……ぐっうぅ……あぁ……!」
QB「……受け取るといい。それが君が選んだ運命だ」
仁美「…………」
仁美「……これ――」
―――――――――――――――!!!!!!!!!
仁美「ッ! なん、ですの……? この地鳴りのような……」
―――――…………
仁美「……止んだ……」
まどか「……? あれ……私……」
仁美「まどかさん……?」
QB「……相反する膨大な増悪で構成された直情的で単純思考の魔女のまどかと、この以前の理性的なまどかを、本来二者同一であるべき条理を覆して切り離したんだ」
QB「だけどこの別離状態は長くは続かないだろう。あくまで一時的な措置だ。なにせこの魔女の復元しようとする力が強すぎる。二つを完全に断ち切ることは出来なかった」
QB「完全に断ち切るには――」
仁美「あれを……。倒せばいいのですね?」
QB「……そうだね」
仁美「……まどかさん」
まどか「……」
仁美「……一緒に……戦いましょう」
まどか「……」
仁美「それで……一緒に帰りましょ?」
まどか「……」
まどか「……うん」
――
――――
――――――
QB「仁美、気をつけてね。言った手前でなんだけど、戦力差は絶望的だ」
仁美「……確かにこちらが劣勢なのは火を見るより明らかですわね……」
QB「あの強大な魔女は、まどかが本来備えていた膨大な因果の力を多分に含んでいるけれど、魔法少女であるこっちのまどかは切り離す際の都合上、魔法少女の平均的な強さしか持ち合わせていないんだ」
仁美「……」
QB「有り体に言うけれど、仁美もほかの魔法少女より抜きん出ているものもない。つまり普通の魔法少女、しかもなりたての二人がいきなり世界最悪の魔女を相手にするという最悪のキャスティングなんだ」
仁美「……絶望的、ですわね」
QB「それでも、勝率はゼロじゃあないと思う。まどかがカギだ。あの魔女を打倒するための重要な糸口になるだろう」
ごめん少し書きだめしてくるのでしばし保守をお願いします…
すいません保守ありがとうございます
これからもう少しくさくなると思いますがどうかお付き合いください…
まどか「……わたし……」
――――――――――――!!!!!!
仁美「! 結界が……ッ!?」
仁美(黒ずんで……禍々しく……)
QB「結界の形式が変わった。歯止めを利かせていたまどかがいなくなったから、これから本格的に活動を始めるだろうね」
仁美(……なんて凄惨で……残酷で……哀しい……。とても正視できない……)
まどか「仁美ちゃん! 大丈夫!?」
仁美「だ、大丈夫です……。すみません……」
QB「ここで挫けてたら話にならないよ」
仁美「ええ……大丈夫ですわ……」
QB「仁美。ここからは秒単位で人が死ぬ。時間をかけた分だけ被害が大きくなる」
仁美「……」
QB「もう数日と猶予もないだろう。早急に事を終わらせなければ、人間は社会秩序、ひいては文明を維持できなくなる。復興さえかなわないほどに。気をつけてね」
仁美「……キュゥべえ。今更になって、さして利益にもならなそうな私の手助けをするにはどうしてですか……?」
QB「……今はもう宇宙全体の利益を気にする必要がないからね。損得勘定をいれて立ち回らなくてもいいから」
QB「今の僕は気ままな傍観者だ。だからこれは単なる僕の気まぐれだね」
仁美「……そうですか」
QB「今まで宇宙に大いに貢献してくれた星をすげなく損亡してしまうのもあまり気が進まないしね。今まで共栄関係にあったよしみってやつかな」
まどか「……」
QB「僕たちは今回の件を期にこの星に見切りを付け、既に撤退を始めている。きっと戻ることはないだろう」
仁美「……」
QB「僕たちが関与することはないから、さやかのような末路を辿るものはいなくなるけど、反面、上條恭介を救ったような奇跡はもう起きない」
QB「君たちのような人は、奇跡に頼らず、これからはどんな困難も自分たちの力で乗り越えていくしかないんだ」
QB「つまり、これからの未来は君たちが真に切り開いて行くんだ」
仁美「……」
まどか「……」
QB「まぁそれも、この局面を打破できたらの話だね」
まどか「……私……負けない……」
仁美「必ず、乗り越えてみせますわ」
QB「……そうかい。じゃあもう僕に言えることもできることもないな」
QB「せめて、最後に奇跡でも祈っておくよ」
仁美「……短い間でしたが、お世話になりました」
QB「……うん」
まどか「……行こう、仁美ちゃん」
仁美「……えぇ」
QB「ばいばい仁美。そして、まどか」
―――
――――――
――――――――
――――――――――――
まどか「……」
仁美「……」
まどか「……」
仁美「……」
まどか「……疲れたね……」
仁美「……そう……ですわね……」
まどか「見渡す限りめちゃくちゃ……。どこまで世界が壊れちゃったかわからないね……」
まどか「ちゃんと……守れたかな……?」
仁美「……きっと……大丈夫ですわ……」
まどか「あは……は……。世界をめちゃくちゃにした張本人が……世界のことを心配するなんて……変だよね……」
仁美「…………」
まどか「……仁美ちゃん?」
仁美「……」
まどか「……寝てるの……?」
仁美「……」
まどか「……仁美ちゃん……」
仁美「……私も、もう消えちゃうみたい」
まどか「やっぱりあの魔女も私で、二つで一つなのに、それでも自分だけ助かるなんてむしのいい話ないよね……」
まどか「……そううまいこといかないよね。因果応報、ってやつかな」
仁美「……」
まどか「……仁美ちゃん……」
まどか「それでも、私はちゃんと助けられたよ」
まどか「仁美ちゃんがチャンスをくれたおかげで……私がしたことの――自分の始末をつけることができた」
まどか「仁美ちゃんのおかげだよ」
仁美「……」
まどか「……仁美ちゃん。仁美ちゃんは生きて……」
まどか「じゃないと……何を守るために戦ったかわからなくなっちゃうから……」
仁美「……」
まどか「……仁美ちゃん」
まどか「……この世界の……最後に残った大切な人……」
まどか「私の……大事な友達……」
仁美「……」
まどかは仰向けになっている仁美の上に、抱きかかえるようにしてかぶさった。
まどか「……じゃあね」
まどかの輪郭が次第に薄まって虚空に溶けていく。
ひゅう、と涼やかな一陣の風が吹いた後には、そこには仁美だけが残されていた。
満身創痍だった仁美の体からは嘘のように傷が消えていており、その仁美の胸の上にはまどかのソウルジェムがぽつりと置いてあった。
やがてまどかのソウルジェムはころころと下へと転がっていき、仁美の手から零れ落ちていたソウルジェムにこん、とぶつかった後、それらは諸共に崩れてなくなった。
仁美「……」
仁美「……」
仁美「…………」
仁美「………………ま……」
仁美「……ど……」
仁美「……っ……さ……」
仁美「……………………」
――――
―――――――
――――――――――
―――――――――――――――
――二十年後
「じゃあ終わります。皆さん気をつけて帰ってください。では当番の方」
「きりーつ、れい」
「「「さようなら」」」
「はい、さようなら」
男生徒「仁美先生さよならー」
仁美「さようなら。部活動頑張ってね」
男生徒「うぃ~」
生徒1「いやぁ~今日も一日長かったぁ~」
女生徒2「だね~」
女生徒1「よっしゃ! じゃあこれから例の喫茶店の新メニュー大試食会といきますか!」
女生徒2「えへへ~ナントカデリシャスパフェだっけ? もう今からヨダレが止まんないよ~」
女生徒3「あらま、はしたない」
女生徒1「っつても一番楽しみにしてんのはお前だろ~? 一週間前から口を開けばパフェパフェと……」
女生徒3「ぐっ……」
女生徒2「よし! じゃあ早速喫茶店へレッツゴーだよ!」
仁美「寄り道もほどほどにねー」
女生徒1「はーい。先生もあんまり寄り道しすぎると婚期が手遅れになるから気をつけてー」
仁美「ぐっ……まさか私がこのセリフを言われる日が来るとは夢にも思いませんでしたわ……」
女生徒3「やばい……予想以上にクリティカルヒットしちゃってる……」
女生徒1「ご、ごめん先生! ほんのジョークですよ! あ、ほら、あの、今日の喫茶店の新メニューおごるから立ち直ってください!」
女生徒2「うん! 先生も行こうよ!」
仁美「私にはまだやることが残っていますので……。あなたたちには今度お酒を手に恋愛、ひいては結婚の難しさを特別講習して差し上げますわ……」
女生徒1「あ、あはは。楽しみにしてます……」
女生徒3「生々しい現実よりも乙女チックな理想を追っていたいので遠慮したいです……」
女生徒2「えー。私は興味あるけどな……」
仁美「まあともあれ……先生が受けたダメージは鋭意製作中の抜き打ちテストで倍返しして差し上げますので、恐れおののくといいですわ……」
女生徒1「えぇーー!」
女生徒2「そ、そんなのってないよ……」
女生徒3「そんな……殺生な……」
仁美「まぁ冗談です。寄り道もするなとは言いませんが、予習復習、勉強のほうも怠ることのないように」
女生徒1「先生冗談がリアルすぎ……」
仁美「それと先生の婚期に関する話題はNGワードに指定します。この禁を破ったら……」
女生徒1「ひいぃぃぃー!」
女生徒3「職権乱用ー!」
仁美(まだ何も言ってないですが……威圧効果はばつぐんですわね……)
仁美「じゃあ、行く先でハメを外しすぎたり、ご両親に心配をかけることのないようにね」
女生徒1「りょーかいです。ほいじゃ先生、さようなら」
女生徒2「先生さようならー!」
女生徒3「さようなら」
仁美「はい、さようなら。また明日ね」
――
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――――――
女生徒1「そういえばあんた、今どうなのアレ?」
女生徒2「ん? ああ、ちゃんと休日とかに声優養成所に通ってるよ」
女生徒3「声優って難しいんでしょ?」
女生徒2「うん。なるのも難しいし、それでご飯を食べていくというのも更に難しいんだよ」
女生徒1「いやぁー。よくもまぁそんな茨の道を……。いっつもなよなよしてたあんたがよく決断したもんだよ」
女生徒2「あはは。これは諦めたくないからね。これが私の夢だから」
女生徒「むっ……悔しいけどかっこいい……」
女生徒「でもレッスンやらオーディションやらやってて辛い! 辞めたい! なんてことないの?」
女生徒「そうだねー。辛いこともいっぱいあるよ……。でも、ほら、あれだよあれ」
女生徒「あれ?」
女生徒「ほら……先生が最初のホームルームの時に言ってた……」
女生徒「……ああ、“艱難辛苦汝を玉にす”?」
女生徒「そうそれ!」
>>194訂正
女生徒1「むっ……悔しいけどかっこいい……」
女生徒3「でもレッスンやらオーディションやらやってて辛い! 辞めたい! なんてことないの?」
女生徒2「そうだねー。辛いこともいっぱいあるよ……。でも、ほら、あれだよあれ」
女生徒1「あれ?」
女生徒2「ほら……先生が最初のホームルームの時に言ってた……」
女生徒3「……ああ、“艱難辛苦汝を玉にす”?」
女生徒2「そうそれ!」
女生徒1「おいおい簡単に忘れるなよー。先生泣くぞ?」
女生徒3「っていうあなたも今の今まで忘れてたり?」
女生徒1「いやいやいや、そんなことあるわけないじゃないですかあはははは」
女生徒2「うんうん、ともかくそれをいつも忘れないようにしてるんだよ」
女生徒1「今忘れてたじゃん」
女生徒2「そ、それはすぐに出てこなかっただけで……」
女生徒3「というかニュアンス的にその言葉の使いどころがおかしいような……」
女生徒2「えぇー!?」
女生徒1「でもいい言葉だしなんかかっこいいから万事オッケーよ!」
女生徒2「うんうん、万事オッケー! あはははは」
すいません…くっさい内容でお目汚ししていまってるだけでもアレなのに、これから夜勤でコンビニのバイトに行ってきます…
きれいにまとめようとしたら冗長気味になってしまいました……
あともう少しで終わるのですが、落ちてたらまた立て直したいと思います……
>>1です
すいません保守ありがとうございます
あらかた書きだめもできたので順次投下していきます
もう少し僕の見苦しくてくさい自慰におつきあいお願いします……
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――1年前
仁美「――はい、ではホームルームを始めます」
仁美「最初のホームルームではみんなで簡単な自己紹介をしたいと思います」
仁美「では一番の方」
生徒1「えっ!?」
仁美「から始める前に私の自己紹介を先にしますので、出席番号、名前、簡単になにか一言を考えておいてください」
生徒「あっ、はい……」
仁美「はい、ではあらためてまして皆さんはじめまして。このクラスの担任となりました志筑仁美です」
仁美「まず……皆さんご入学おめでとうございます」
仁美「皆さんがこれから中学生として生活する上で覚えていて欲しい言葉があります」
仁美「艱難辛苦汝を玉にす」
仁美「意味は困難や苦労を乗り越えて人は立派になっていく、というものです」
仁美「勉強に部活に人付き合い。それをもとに挫折に失敗、喧嘩に失恋。人はなんでも思いどおりには生きられません。特にあなた方の年には思うことがたくさんあると思います」
仁美「人は酸いも甘いも噛み分けて成長していきます。楽しいこと、嬉しいことだけではなく、苦しいこと、辛いこと、悲しいことも。それは避けては通れないものです」
仁美「――だけどそれらは決して無駄じゃない。これから先を生き抜く糧に――強さになってくれます」
仁美「嫌な思いを繰り返さないための。自分自身が負けないための。誰かの力になれるための、です」
仁美「今のうちにいっぱい泣いて、いっぱい笑って――」
仁美「どんな困難にも挫けずに、乗り越えられる強い人に育ってください」
仁美「そして……なにより今を楽しんで、最高の中学生活をおくってください」
仁美「以上です」
パチパチパチパチパチパチパチパチ……
仁美「……ありがとうございます。では次に出席番号一番の方――」
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仁美「――っんぅーー……」
教師「では仁美先生、お先に失礼します。戸締りのほうお願いしますね」
仁美「あ、はい。お疲れ様です」
仁美「……ふぁ~……」
仁美「……もう九時すぎ……」
仁美「私も今日はこれくらいにして帰りましょう……」
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学校から出ると、外はすっかり夜の色になっています。
ですが今夜は街灯がなくても物の輪郭がわかるくらいに明るい夜でした。
空を見上げると、そこには雲一つなく澄み渡った空に、満天の星ぼしが広がっています。
それは様々な色の宝石を散りばめたように美しいものです。
優しく吹き抜ける夜風は、すっかり秋の涼やかで心地のいいものになっていました。
私は少しこの穏やかさに浸りたくなり、駐車場にある適当な縁石に座り、空を眺めました。
――そういえばあの夜。
今になっては夢幻にしか思えない、まどかさんを失い世界を救ったあの日の夜。
気を失った後、起き抜けに見た夜空も、こんな風に心を奪われるほどに綺麗なものでした。
……まどかさん。あなたが救ったこの世界で私は生きています。
やっぱり生きているっていうのは素晴らしいです。
大人になってもうまくいかないこと、ままならないこと、悲しいことや辛いことはたくさんありますが、代わりに楽しいことも嬉しいこともたくさんあります。
何事も生きていればこそです。
生きているからこんなに美しい景色を見ることができます。
私は幸せです。
ただ、みんなとこの喜びを共有できないのは残念です。
この世界にはあなたはもういませんが……別の世界ではあなたが、さやかさんが――みんなが揃ってお酒でも酌み交わして笑い合えていられることを願っています。
ふぅ、と小さく息を吐くと、視界の隅にきらりと光るものが映りました。
流れ星。
それはまるで私の願いに応えるように。
綺麗な尾をひいて消えていきました。
女生徒2「あ、流れ星」
女生徒2「え、あ、願い事願い事……」
女生徒2「ってあー……。消えちゃった……」
女生徒2「そんな消えるまで三回復唱なんて難しいよ……」
女生徒2「……」
女生徒2「まぁそんなに甘くないってことかな……」
女生徒2「……よし!」
「もしもその願いが簡単に叶っちゃうとしたらどうする?」
女生徒2「! えっ……」
「なに、怪しいものじゃないよ。って僕が言っても説得力ないかな」
女生徒2「……なに……あなた……?」
QB「やあ、こんばんは。僕の名前はキュゥべえ。よろしくね」
女生徒2「えっ……いや……あなたは……一体……」
QB「ねぇ、もしも僕がどんな願いでも叶えてあげるっていったら、君はどうする?」
女生徒2「っ……そんなこと……できるの?」
QB「うん。僕が君の願いをなんでも一つ叶えてあげる。だから――」
QB「僕と契約して、魔法少女になってよ!」
END
くっそ最後の最後にさるくらった…
最後まで僕の自慰に付き合ってもらってありがとうございます
映画とかのスピンオフっぽく書きたかったんですけど思いのほか臭くなってしまいましたね…
あと日をまたいで保守をさせてしまいすみませんでした…
それじゃあまたどこかで
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