咲-saki- SOS団編 (418)
タイトルの通り、咲×ハルヒです。
ですが、両作品のキャラの絡みは原作での主人公勢の他校との絡み程度にとどめ、あくまでもキョン視点中心で書きます。
咲キャラの視点でも書くことがあります。イメージ的には、SIRENのような群衆劇を想像して頂ければ良いでしょう。
展開はまだ考え中ですが、展開次第で咲キャラがないがしろに扱われたりすることがあるかもしれません。
あくまで主役はハルヒ達なのでご容赦下さい。
基本的に遅筆&不定期更新です。キャラ違うとかもあるかもしれません。
それでもよいと言う方はどうかお付き合い下さい。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1379291784
前スレからの誘導の為に、書き溜めが無い状態で立てましたので更新はまた後日です。
2,3日後には投下できると思います。
立て乙です
トリップ変えました。テストをかねて投稿します。
21世紀。
世界の麻雀競技人口は数億人を越え、プロの麻雀プレイヤーは、人々の注目を集めていた。
高校でも大規模な全国大会が毎年開催され、そこではプロに直結する成績を残すべく、
高校生麻雀部員達が覇を競っていた…
らしい。
「どうかされましたか?」
一人チェスをしていた古泉が、俺に問うた。開幕から野郎の台詞で申し訳ないが、今俺が直面している状況が余りにも何もなさ過ぎて、描写を始めるきっかけが無かったのさ。
場所はいつものように文芸部室。時間は放課後。ハルヒのやつは重要な用事があるだとかなんとかいってHR終了と同時に教室を飛び出しており不在。さらに部室にはハルヒはおろか朝比奈さんと長門も居らず、俺が部室の扉をノックしたときはHRが早く終わったという古泉だけが部室に居た。部室で一番始めに邂逅を果たすのがコイツとは珍しいこともあったもんだ。
今日の日付は、いろいろあって世界が分裂したりハルヒの分身が登場したりパンジー野郎と永遠にオサラバできたりしたあの驚愕続きの事件が終息した後暫く経った六月の初旬である。
初夏という言葉が幅を効かせ始め、俺の好む季節が到来してきたと、一年に一度のささやかな喜びに浸りつつ、定位置に座った俺はスリープモードのPCばりにあらゆる活動を小休止していた。
と、自覚していたのだが、どうやらこのエセ精神分析医は、俺の様子から違うものを読み取ったらしい。
俺にも心当たりがあるのだが、一応否定してみる。
俺は至って正常だぞ。
「そうですか。いえ、まるで、去年までの涼宮さんのような雰囲気を醸し出しておられたものでね。」
「ほう、そりゃなんだ?」
「そうですね………」
数秒ほど虚空を見つめた後、
「退屈をこらえているかのよう、ですかね。」
……去年の12月までの俺なら意地になって否定していただろうが……
こいつに看破されるのは少々いい気持ちはしないが、認めよう。このような境地に至れるくらい、俺も成長したのだと思いたい。
図星である。
キョンのモノローグを考えるのは時間がかかりますので、更新レス数が少なくてもご容赦下さい。
また書き溜めてきます。
乙です
いつものように妹のフライングボディプレスで目覚め、俺の布団で眠るシャミセンを退かし、朝飯くって歯磨いて顔洗って、のそのそ準備をして学校へのハイキングコースを登破する。そして授業を渋々受けて放課後部室へ向かう。そして無為に過ごす。
世界分裂事件からこっち、そんなSOS団的平常営業が毎日続いていた。
そのように過ごすうち、どうしてもぬぐえない感情が胸の奥でわだかまり続け、初めは気にしないでいたのだが、どうやらコイツは日を追う毎に拡大していき、俺の精神のキャパシティを埋め尽くさんばかりに肥大化していたらしい。
去年の俺からは想像もつかないが、どうやら俺はこう思っているらしかった。
退屈だ。と。
人類は、文明を作り上げた代償として自ら進化を止めてしまったという。
現代人の環境適応能力は、人類がアウストラロピテクスだった頃よりかは大幅に下がっているはずであるが、それでも一年以上も同じ環境に居りゃあ嫌でも慣れるというもので、しかもむしろ今の俺はハルヒがあれやこれやを団活に持ち込むと言うことが長い期間起きていないと逆に妙な違和感を感じるようになってしまっているらしい。もちろん、SOS団部室で過ごすインターバルが嫌って訳では全然無いぞ。
北高に入学し、ハルヒと出会いSOS団員となってから数々の非日常的事件を経験してきた俺には、ある種の余裕とでも呼ぶべき物が生まれていた。
高校生活はあと二年程残っている。それまでに一体どんなやっかい事に巻き込まれるのか、朝比奈さん(大)にでも聞かない限り俺が知ることができないけども、おおよそどのような状況になっても、俺が衝動的にしろ理性的にしろとる行動は、少なくとも事態を悪化させるようなことにはならない、来るなら来い、というような……うーむ、自信って言った方が適切だったか?
つまりだ、そういうように思えるようになるほど、俺の経験値は去年とは比べものにならないほど蓄積しているのさ。
ハルヒが持ち込むやっかい事、または外来のやっかい事を解決するために奔走することが、俺達が定期的に直面するイベントであり、ここ最近それが起こる前兆すら見られない。
それはそれで世界にとってはいいことなのだろうし、現状維持を主目的とする古泉たち機関にとっても歓迎するところだろう。長門は基本的には観測が任務だし、朝比奈さん絡みのやっかいごとは考えてみれば前兆すらなく突然に飛来する。
力を持っているのに闘えないというか、試す機会がないというか。
天才的な剣術の技量を持ちながら若くして病死した沖田総司もこんな風に思っていたんじゃなかろうかと予想する。
これも朱に交わった結果、ハルヒイズムに感染した結果ということなのだろうか。
ハルヒの自信には往々にして根拠がないが、俺が抱くに至ったこれには経験という根拠があることが違いではある。
去年の今頃の俺にこのモノローグを聞かせたらなんて言うだろうか。
なんつーか、骨の髄までSOS団員になっちまったな。俺。
力尽きました。また後日。
乙です
乙!
「……さぁ、どうだろうな。」
「図星ですか?」
古泉の笑顔がますますニヤケ度を上昇させ、俺に近づいてくる。吐息をかけるな。気色悪い。
俺はにべもなく返答する。
「ノーコメントだ。」
俺はこれ以上この話を続けるつもりは無いという意思表示もかねて、
「ところで、ハルヒはおろか朝比奈さんと長門まで居ないのはどういうことだ。お前は何か聞いているか。」
と古泉に聞いた。何かしらハルヒが話を持ち込むときは、なぜか俺以外の全員に既に通達されている事が殆どであるからな。
「いいえ。詳細は僕にも知らされませんでしたね。長門さんと朝比奈さんもおそらく涼宮さんと行動を共にしているかと。」
一応階級の上ではハルヒに次ぐ地位を持つ古泉にも知らされていないとはな。去年の二月のあれじゃあるまいし、男共には教えられないイベント事でも企画しているのだろうか。
総じて嫌な予感しかしないのは今回に限ったことでは無く、一年間SOS団員として団長閣下に振り回された経験による裏付けがされた予想である。単勝で張ってもいいぞ。500円くらいならな。
ハルヒの思いつきにより主に精神的に傷害を受けるハメになるのは大体俺であり、その最たる物が昨年の俺史に残る事件である去年十二月のトナカイの一件だ。四月末に鶴屋邸で開かれた八重桜の花見大会で、若気の至りという言葉でも擁護しきれないほどに悲惨すぎて鶴屋さんを除く参加者には哀れみでウケた余興もだな。思い出したくないので詳細は書かない。
はて、六月なんてのは、国民の休日も一日も無いし、無課金アバター並に地味な月だぞ。時期的に中途半端な今、一体何を企画するんだ。
まぁハルヒの行動は宝くじの当選番号と同じくらい予想がつかないから、考えるだけムダか。
何時だって行き当たりばったりなハルヒには、まず「やる」という不動の決定事項があって、5W1HのHow、つまりはどのようにやるのかというのはやりながら考えていく。今朝比奈さんと長門はそれに付き合わされているんだろうな。
今日は終わりかな、乙です
「遅れてごっめーん!」
思考に沈んでいるうち、部室のドアが毎日一回来る強烈な衝撃に晒される音で目が覚め、振り返れば遅れたことなどミジンコ程も悪びれていないハルヒが、背後に歩哨のように立つ朝比奈さんと長門を引き連れ来襲した。
長門は本を数冊抱えており、ハルヒは自分の鞄の他に工具箱みたいなサイズの蓋付きの直方体の箱を手に持ち、朝比奈さんは古い海図みたいに丸まった敷物のような物が入ったビニール袋を提げていた。朝比奈さんが持っているビニール袋には、見覚えのある近所の商店街の名前が印字されており、それがハルヒが映画撮影の時に荒らし回った商店街出身であることを示していた。
俺は誰もが思うであろう事由を問いただす。
「ずいぶんと遅かったが、商店街にまで行って何買って来たんだ。」
「今説明するわ。あ、みくるちゃん、着替えは後でいいからお茶お願いね。有希、その本は一旦あたしにちょうだい。」
朝比奈さんが珍しく制服姿でお茶を煎れにポットまで小動物のようにとてとて動く。実に愛らしい。
それとは対照的にハルヒは繊細さの欠片も無い所作でずかずかどっかと団長席に座り、団長と書かれたいつもの腕章を装着。
長門はハルヒに本を渡した後、本棚前へ移動して一冊本を取り出し、即刻窓際の定位置に座って広げる。ちらっと見えたが、少なくとも日本語で書かれた本ではない。
全員に朝比奈印のお茶が行き渡るとハルヒが、
「で、何を買ってきたかだけど、麻雀牌とマットよ。本は教本よ。応用編。」
麻雀牌?古泉以外が部室に娯楽物を持ち込むなど初めてだ。麻雀なんてずいぶんとご無沙汰だが、今になって雀士根性にでも目覚めたのか。
「パイとマットだ?それは別にいいが、なんで教本なんてもってくるんだ。確かに完璧とは言えねえけど、もう俺ら全員ルールも役も知ってるだろうよ。」
「それも、これから取り組む活動に関係する物よ。みくるちゃん、ボードに書いて。」
「はぁい。」
ホワイトボード前にいそいそと移動する朝比奈さんを満足げに眺めた後、ハルヒはやにわに椅子から立ち上がってホワイトボード前まで移動し、
「私たちSOS団は、麻雀のIHに出場します!」
高らかに宣言した。朝比奈さんが丸まっちい字でボードに麻雀のIH出場、と書く。
こういった場合、一番最初にハルヒに対して口火を切るのはいつの間にか俺というよう暗黙の了解ができあがっており、俺は渋々聞き返す。
「インターハイだ?陸上とかじゃなくて麻雀の?」
「そ。詳細はこれよ。」
ハルヒが俺の所までペーパーを回してきた。
音読してみる。
「第71回、全国高校生麻雀大会 兵庫県予選大会開催のお知らせ」
高校生麻雀大会?たかが麻雀で全国規模の大会が71回も開かれている事自体にわかには信じがたい。今から71年前っていったら戦前からって事になる。
「甲子園並みに有名な大会らしいわよ。SOS団の名前を全国に知らしめるにはいい機会だわ。」
ハルヒの言葉をよそに、真っ先に俺が感じたのは、デジャブである。
思い返せば、こんな風に俺達がくつろいで居たときに掃除当番で後れたハルヒが、野球大会に出るだのと言い出したのも去年の今頃だったか。
ちょうどあの灰色空間の中で、長門&朝比奈さん(大)によって指示されていたとはいえ俺の人生の中でも思い出したくない行動ベスト3に入るアレをハルヒにしちまった後から数週間後だったかな。どうやらSOS団にはシュミレーションゲームで言う所の強制イベントが定期的に発生するという宿命めいたものがあるらしい。今更か。
うーんプロローグが終わるのがいつになるやら。
今日は以上です。
乙です
キョンが風越のキャプテンと親戚だったりしたあれのリメイク?
>>24
前スレに書いてあるけど、話を一新して書き直してるんだって。従姉妹設定は無くしているんだと。
>>25
なる
どう変わってくんだろう
……って、開催日時が今日から数えて三日後なんだが……ってことはつまり、
「ふふん。バカキョンもこの一年でアホキョンくらいにレベルアップしたみたいね。何を隠そうもう団体戦にエントリー済みよ。当番校まで行ってちゃちゃっとね。」
数日前に団活を休みにしたのはそういう理由だったのか。いや全く……
俺は心の中で微苦笑する。こういう所は変わっていないようだ。
まぁ、ハルヒからこの手の超積極性をとったら多分それはハルヒでは無くなるだろうし、しおらしいハルヒなど、違和感ありまくりだが。
乙ー
いつも通り、こいつが先陣を切って颯爽と突っ走り、俺達はそれについていく。
それがSOS団の様式美とでもいうべき活動の形態だ。
あと、俺への評価はちったあ改めてくれませんかね団長さん。お前は知らないだろうし知ってもらったら困るんだが、今まで俺は世界のために様々な形で貢献してきたんだぜ。そうせざるを得ない状況に追い込まれたってのもあるけどもさ。ううむ、脇腹が疼いてきた。
それとだ、その呼称名は語感だけ変わっただけで実質意味は同じ&谷口と同列と言われているみたいで癪に障るからやめてもらいたいんだが。
「野球と違って人数は五人でいいらしいわ。」
確かにそうだが、人数の要件を満たしているという理由だけで参加を決定したんじゃ無いだろうな。
大会のルールなんて見たことがないが、俺達が以前やったようなルールで大丈夫なのか。
「去年の夏休みに孤島の別荘でやったのと大体同じルールだから大丈夫でしょ。ノーレートな所とか。」
逆に高校生の全国大会で金銭を賭ける競技があったらご教授願いたい。俺にも人並みの正義感ってもんがあるから、即刻しかるべき所に訴えてやる。消費者生活センターだっけ?
冗談は置いておいて、去年やったときのハルヒは確か役を次々と自分なりに生み出しては上がり続けるという奇特なプレースタイルだったはずなのだが、はてさてそれがこんな正式な大会で通用するのか。
するわけねーだろ。ダイナミックかつクリエイティブなチョンボとして認定されるのが関の山だ。
それに、俺達が暇潰しの片手間にやるような麻雀と、全国規模でガチ勢達が凌ぎを削る大会での麻雀とは天と地ほどの差があると思うのだがどうだろう。
途中で切ってすみませんでした。今日はここまでです。
乙です
「そんなこと気にしてんの?スポーツは体ができあがってないと満足に出来ないけど、麻雀なら腕が動けば誰にだってできるわよ。張ったらリーチして和了って悪かったらオリればいいだけなんだし。簡単でしょ。あたしは絶対にオリたりしないけどね。つまんないから。」
全国のプロ雀士が聞いたら激怒しそうな事をいけしゃあしゃあと言い放ち、
「とにかく、これに出るわよ!思いついたら即行動ってのがあたしのモットーだし、SOS団の標語にもあるわ!運が良ければいいとこまでいけるんだから、頑張りましょう!!」
そんな標語がいつの間に存在していたとは知らなかった。
「楽しそうですね。そういえば、僕の叔父の知り合いが、去年までその大会の運営に関わっていたと記憶しています。いくらか便宜を図って貰えるかもしれません。」
古泉はあっさり首肯しやがった。まぁコイツがハルヒに対してイエスマンでなかったことなんてありゃしなかったから当然だな。それにしてもコイツの叔父の知り合いってのは日本中あらゆる業界にいるんじゃねえか。
「そうなの?なら古泉君はその人に色々訊いて頂戴。キョン、ルール確認を兼ねてみんなで打ってみるから準備して。ここには長机しか無いから空き教室に行って二個机を持ってきなさい。それくっつけてマットを敷いてやるから。」
まぁそんな命令が来る事は大体予期していたよ。俺は適当に生返事を返して椅子から立ち上がり、いつもハルヒによって虐げられている部室の扉を労りの意味もかねて丁寧に開け、また丁寧に閉めて廊下に出る。
廊下を歩きながら気づいたのだが、俺は我ながら気持ちの悪いことにニヤニヤしているらしい。
ハルヒに命令されたから喜んでるだとかそんな風に取らないで頂きたい。断じて違う。今までもこれからも。
SOS団員全員でインターバルや不思議探索以外の活動へ従事することへの期待感の表れととってほしい。しかも今回は宇宙も未来も超能力も絡まないただの高校生麻雀大会。
まぁ要するに、あれだ。
結局新入部員はゼロ。懸案要素だった佐々木団はフェードアウトしたし、いつものようにただ単に、ハルヒは退屈を感じていただけなんだ。
それは去年と変わらない。
そして、コイツと一年共に過ごした俺もな。
これは去年と違っているな。
多分ハルヒには退屈を感じたら働く何かこう、センサーめいたものがあって、退屈を打破するためのあらゆる事物を探すんだろう。
そして、それに引っかかったイベントはもれなく「団活」となり、俺達はそれに取り組むことになる。
そう、今回のこれも「団活」だ。ハルヒの退屈払拭センサーに引っかかったのが、たまたまIHだった、だけのこと。
全国規模の大会が開かれている、と言うからには当然高校野球のような汗と涙の滲むスポ根ドラマ的な展開が全国のあちらこちらで開かれているのだろう。頂点を目指したい。プロになりたい。なんていう目標を掲げ、必死に練習してきた者達ばかりが参加する大会なのだろう。
だが、俺達がこれからこれに挑むにあたって持つスタンスは、全くもって違う。
SOS団にとっては、何かをするにはたった一つの理由だけで十分だ。おそらく口に出せば、日本中の高校麻雀部員たちから総スカンを喰らうこと請け合いだが、あえて言うことにしようか。
ただの、”退屈しのぎ”だ。
退屈しのぎといっても、何かに負けると言うことが好きではないハルヒの事だ。県予選なんざスルッと突破して、全国大会にまで進出することはもはやカニとジャンケンして勝つこと並に確実と言えるだろう。
古代の哲学者達はなんで哲学などというしちめんどくさいモンを考え続けていたかしっているかい?
ただ単に、暇だったからなんだ。
話が逸れたな。つまり今回は、宇宙的、あるいは未来的、若しくは超能力的な事物、現象とは全く関係の無い……
ハルヒの、いや、もう違うな。俺達SOS団の、ただの”退屈しのぎ”の話だ。
はい。プロローグはここまでです。
この先どうするかはまだ完全に固まっていません。
なので次の更新までは少しお時間頂きます。申し訳ありません。
それでは。
乙です
乙、期待してる
とりあえず、直近の展開をどうするかは決まりましたが、まだまだ調整が必要なようです。
その調整が必要な場面までは書けそうなので、これから投稿していきます。
何世紀か前に書かれたもので、目が覚めたら自分の体が毒虫になっていたっていう有名な小説があるらしい。読んだことは無いが佐々木がそう言っていた。
それに端を発したのかどうかは知らないが、目が覚めたら、昨日までの日常生活が一変するようなイベントに見舞われる又は既に見舞われているっていうのは物語の展開の手法として良くあるものだ。俺の読んでた小説とかにもあった。
去年の春に、まさにそのような状況に俺は陥った。
目が覚めたらハルヒと一緒にハルヒが作り出した灰色空間の中に閉じ込められていた。どうやって転送されたのか、なんで着ていた服が寝間着ではなく制服だったのか。俺は知らない。とにかく、そんときは無我夢中でヒントに従って脱出した。
その出来事から、長門と朝倉の決闘に遭遇したことや古泉に誘われ閉鎖空間に行った事で半信半疑だった俺の世界への認識が完全に様変わりし、以降やれやれと首振りながらも奔走することになった。
例に則して言うならこんな感じだな。
当然ながら、睡眠状態になれば生物は意識を失っている状態になる。
その間に物事が進行しているって形にすれば、いちいち過程やらなにやらを描写しなくて済むから便利なんだろう。
いやはや、文学の手法一つをとっても、何世紀も前のものが今でも使われているってのは、先人の偉大さという物がよく分かる格好の例じゃないか。
未来は過去の中にあるって言ったのはだれだっけな。俺達も、あらゆる先人の知恵ってのを正しく受け継ぎ、これからの時代をより良くするために尽力しなければ、先人にもこれからの人類にも顔向けできないじゃないか。是非とも、各国の専門分野を受け持つ人々には頑張って貰いたい物だ。
で、上から目線で一般論を並べ立てて何が言いたかったか。はっきり言ってそんなことはどうでもいいんだ。
重要なのは、目が覚めたとき、この状況に直面した今の俺はどのようなアクションを取ればいいかである。
こればっかりは先人達も経験したことがないんじゃないか。
どういう状況下かって?百人中百人が、こう言うだろうな。
ここはどこだと。
今日は以上です。
次の更新もまた数日後になると思います。それでは。
乙です
見回すも、辺りは暗闇に包まれている。光源が何も無い。目を開けているのに目を瞑っているのと同じ視界だ。
俺は我が家の愛する万年床で寝ていた筈である。しかし、俺の上体は起きており、加えて俺は椅子に座っていた。座り心地は快適だ。
しかも、体に纏っていた衣服の感触が違う。寝間着代わりのスウェットではない。これは半袖のYシャツか…?
この場所について真っ先に思い当たるのはあのけったくそ悪い閉鎖空間だが、あそこは全ての物が灰色だった。
こんな鯨の腹の中のような真っ暗闇ではない。それにハルヒが機嫌を損ねているわけでもない。少なくとも前日までは。
だとするとだ、これはただの俺の夢なんだろうか。
それにしては現実感がありすぎる気もするんだが…明晰夢という現象を知らないわけでは無いが、これがそうなのであろうか。
とりあえず、立ち上がってみようか、いやこんな暗闇じゃあ、と頭の中で逡巡していると、
ガタン
という音と共に強い光が俺の頭上から降り注いだ。音から察するに照明か。
余りに急に浴びせられたもんだから瞳孔がそれに対応するのに手こずっているせいで細目にしか目を開けられない。眼前に手を掲げて光を遮るというこういうときお決まりのポーズも取らざるをえない。
光が出て明確に気づいたが、やはり俺は制服を着ていた。ただし夏服だ。衣替えの季節はまだもう少し先だった気がするが…
だんだんと目が慣れ、やがてはっきりと目が開けられるようになった俺の前には、
「雀卓…か?」
思わず呟いた。しかもこれは今や麻雀好きな一家に一台あるとかないとか言われている自動卓ってヤツじゃないか。
スイッチ一つで賽子が回れば山も積まさった状態で下から上がってくるという優れもの。
しかし、俺は今まで自動卓なんてものを間近で見たことなんか無い。
夢ってのは、意識的にしろ無意識的にしろ、見るものの頭の中に記憶してある情報しか出てこないんじゃなかったっけ。
照明で照らされた雀卓だけが眼前にはっきりと見え、やはり辺りは暗闇に包まれている。他に見える物と言えば背景が黒いお陰でやたらと目につく宙を舞う埃くらいだ。
さて、俺は一体いつまでこうしていればいいんだろう、そう思った時、何の前触れもなくそれは起こった。
今日はここまでにします。
>>1に書き忘れたのですが、このスレは疑問質問意見感想雑談またはそれに準ずる書き込みなら自由にして下さって結構です。
ただし、荒らすのはおやめ下さい。
それでは。
乙です
突如として、三人の少女が、俺の右左向かいに現出したのだ。
そうだな、今までこいつらはカメレオンのように背景の色と同化していて、一斉にそれを解いたみたいな現れ方だった。当然俺はこんなんじゃ驚かない。
一番言いたいのは、俺はこいつら三人の事を知らないし、会ったこともないことだ。ということは、今の状況俺の夢説は肯定しづらくなる…のか?
いや、人間案外道ですれ違った人間の顔とか服装とかは記憶する物だそうだから、無意識のうちに脳内に残った誰かさん三名が登場したんだろう多分。
学校の制服を着ていることは同じだが、三者共にデザインが違うから違う学校の物なんだろう。ついでに、こいつら三人いやに落ち着いている。
俺の向かいに居るヤツは妹を想起させるような幼めの顔つきだが、その表情は真剣に染まっている。身長はおそらく俺より頭一つ以上小柄だろう。表情は真剣なのだが、青い襟で赤色のタイの半袖白セーラーの肩に引っかけているマントがどことなくネタ臭を感じさせた。ゲン担ぎか?
左のヤツは、白い襟の白セーラー服に青色のタイだ。ハルヒくらいの長さのショートヘアで、整った相貌にどことなくSOS団黎明期の長門を彷彿とさせる無表情をたたえている。
右の少女は三人の中唯一のロングヘアーだ。長さは髪を切る前のハルヒくらい。是非ともポニーテールに…いや失礼。忘れてくれ。それは置いておいて、もう夏だってのに黄色い長袖のカーディガンを着込んでいるんだが暑くないのかね。
座して黙っていても全く状況が飲み込めないので、この三人に自らコミュニケートを試みることにした。
タコス、あらたそ、宥姉か?
「…おい、あんたら。」
見知らぬ女子にこちらから話しかけるというのは九割以上の確率でこちらが世間的にも精神的にも損害を被ることだが、俺にとって今の事態は非常事態(いまいち緊張感がないが)なのだからやむを得まい。若干攻撃的な声色になってしまったが、こいつら三人がまだ見ぬ新手の敵でないという保証もないのだ。
「…………」
完全に無視。というか、俺の声が聞こえてるのかこいつら。
「ここはどこだ。あんたらは誰だ。」
「…………」
三人とも、石像に話しかけた方がまだましな返答が来るのではないかと思える程の無反応。こちらを見もせず、雀卓の上をジッと見つめ続けている。
三人ともここまで同一の反応を見せることから察するに、俺に気づいている上で意図的にスルーしているというよりは、俺の姿が見えず、かつ、俺の声も聞こえていないと言うことなのだろう。俺とこいつら三人のNPCの間に長門がなんたらフィールドでも張っているのだろうか。だとしたら、そろそろ出てきてもいいぞ。長門。
「…………」
結論。
こいつらは俺のように突然ここへ飛ばされてきたわけではなさそうだ。こういった事態に免疫のある俺でこそ、今の状況でこんなにも冷静な思考が出来ているのだから、知らずにきたのならもっとうろたえている様子を見せるはず。だとしたら、こいつら三人長門や九曜のような人間外の存在であるか、一切合切まとめて全部俺の明晰夢の中であるか、だ。だがもし前者であるなら、俺とのコミュニケーションを一切シャットアウトしている理由が分からん。しかもなんで出てくる場所がよりにもよって雀卓なのかなのもな。だから、俺としては後者を支持したいんだが、何か異論はあるかい?
と、おもむろに向かいのマントが卓中央のボタンを押した。
賽子が回り、ウィィンという音と共に山が下からせり上がってくる。出目は七。賽子を回すのが親だからそこから数えてトイナナ。つまり俺の前の山からの取り出しということになる。親の対面だから今の俺は西家か。
……未だ状況が飲み込めていないんだが、これはゲームの開始と受け取るのが、今の状況に対する適切な対応だろう。これが俺の夢なのか、はたまた全く別の物なのか。さっぱり分からんが、目覚ましにはちょうどいいな。
はい、今回はここまでです。
やっと対局の描写なのですが、一人称視点での描写は中々難しく、また、いい描写なのかもわかりません。
とりあえず試験的に更新していきますので、わかりずらいとかミスがあるとか、ございましたら是非是非教えて下さい。
ちなみに、麻雀の知識はある程度あるといっても私は東風荘でRが1200台の超絶雑魚です。振り込みマシーンです。
まだまだ勉強していきます。
乙です
先ほどオーラスで親倍に振り込んでトップから最下位へ転落しました。悲しいです。
もうすぐ透華していきます。
俺がメンツに含まれているのかという疑問がちらっと生じたが、積まれた山は各人の前に17トンずつある。三麻ならもっと山の数が少ないはずであるからそういう心配はなさそうだ。
つまり、俺はこいつらにまるっと無視されたが、麻雀のメンツとしては認識されているということか。どういうメカニズムなんだか。
さて、(多分)東一局が始まる。ドラは5ピンだ。
俺は配牌五向聴。うーむ、チートイが一番近い悪い配牌だな。
ツモでもいいのが全然来ずに漫然と巡目を過ごしていると、
「リーチ!」
対面から威勢の良いリーチの発声。俺の声は周囲に聞こえないのにこいつらが発した音声は俺の耳に届くらしい。
全く聞き覚えの無い声だ。俺の脳内に保存されているmp.3やWAVのファイルを参照しても、この声または類する物は見つからなかった。印象的には、やはり幼い印象を受ける。ただし妹とは違った感じだ。
現物が無いので先ほど切られていたので安全度的に高いはずであろう字牌を切ったら、
「ロン!18000!」
2m3m4m7m8m9m9m9m9m東東白白
2m3m4m7m8m9m9m9m9m東東白白 白
リーチ一発白ホンイチで親っぱね。待ちは東と白の王手飛車。
コイツ、三巡目に東が切られているにもかかわらずスルーしてやがる。俺なら絶対ポンするんだがな。
そもそも五巡目の字牌待ちなんて読めるか。事故としか言いようがねえ。
そうそう、点数の表示は各プレイヤー10万点だ。IH団体戦と同じ。これが2万5千点持ちだったら超危険水域だが、まだ大丈夫だ。
俺は粛々と点棒を払い、2000バックを貰い、見よう見まねで、空いた穴に牌を流した。
なぜ見よう見まねかって?慣れてないんだよ。自動卓を持ってる恵まれた連中と違って、俺達SOS団は手積みでやってるからさ。
対面が百点棒を対面からみて卓の右端に置いた。(多分)東一局一本場だろう。賽子の目は5で、ドラは…北か。
配牌は、これまたいいとは言えない物だった。ん?どんな配牌かって?こんなもんだ。
西中南南2p4p4p9p9p3s9s8m9m
な?どうにもならんだろ?こりゃオリさ。それとも9と字牌集めてホンローサンショクトイトイでも狙うかい?そんな無理はしない。
てな理由で、西と中を手出ししただけであと4巡はツモ切り続き。最後に切った2mが上家に当たった。
「ロン。1300。」
この手の安和了の時は、俺達は百点棒の数で点数宣言している。5百点棒なんてあの古い麻雀牌セットには無かったからな。
上家の声には表情も相まって長門のような感情に乏しい機械的な印象を受けた。
結果は、2m5mの両面待ちのヤオのみの手。喰って和了しているから、どうやらこの対局はクイタンありらしい。後付けも…たぶんアリだろう。ナシナシ、アリアリならよく聞くが、アリナシってあんまり聞かない。
そういや赤はあるんだろうか。今の局では一度も見えなかったが…
まあいい。追々分かるだろ。とにかく被害が少ないからまだ良かった。対面の親も流れたしな。
次は東二局。その次の局で俺の親番だ。精々振らないように、慎重かつ大胆に行こう。今はダメでも、親番で取り返してやる。
本日は以上です。では。
乙です
このスレでの牌の表し方を記述することを忘れていました。
おそらくこのスレを読んで頂いている方々は前スレから来られた方が殆どでしょうが、前スレから来ていない方が居られるかもしれないので一応書いておきます。
マンズ…数字の後にm
ピンズ…同上p
ソーズ…同上s
三元牌…白發中
風牌…東南西北
赤牌…赤5m,p,s
その他、この描写法はわかりにくい等、意見要望などございましたら是非お寄せ下さい。
では。
こんばんは。9時半頃から投下していきます。
と、思っていたのだが、不幸な事というのは続くものらしいな。俺の上家、白襟セーラーの親番、東二局が中々終わらない。
状況はすぐに三本場にまで突入した。今まで、俺のザンクの放銃、2100オール、4100オールと順当にツモ和了している。なぜすぐにかというと、その全てが7巡目以内という速攻だからだ。
はっきり言ってツキまくっている。帰り道には気をつけるんだな。
しかし今回は違うぞ。俺はなんとも幸運な配牌一向聴だ。
9m2m5p6p6p6p7p7s8s9s北北北
いい形とは言えないが。ドラは3mだからドラが無い。役も無いしつきそうもない。それに高い確率で愚形が残る。だが、デジタル麻雀では相手より早いテンパイをすることが大事だ。今の状況を考えれば、ツキまくっている親を止めるのが第一。デジタル打ちを目指す俺はこういう結論だが、他に異論はあるかい?
俺がリーチをかければ、少なくとも親は取り敢えず現物とか対子やアンコ落としで回すだろうから、手の進行を遅らせることが出来る。
大方の人間はそうするだろう。一発で当たるなんてことは絶対避けたいはずだ。
その間に他家が和了ってくれるかもしれない。他家からの差し込みが期待できるかもしれないし、テンパイ即リーで決定。で、いいよな。
三巡目までツモ切り、四巡目に1mを掴んだので、やっぱ愚形が残ったかと内心嘆きつつリーチを宣言した。ペン3mのドラ待ち。するとマントとカーディガンが驚いたようにこちらを見た。俺の声が聞こえたのか、河に横向きに置かれた牌でリーチが分かったのか、さてどっちなんだろうね。
いつもはマット上にポイと放り投げている1000点棒をくぼみに置き、手牌を伏せた。当たり牌は一種類だけだし、もう開いている必要が無いからな。
カーディガンとマントは差し込もうとしたのか無筋を打ったが、残念ながら俺の当たり牌では無かった。俺の上家の白セーラーはというとなんと3pを強打。おいおい回しもしないのか。俺の捨て牌は字牌や端牌のみ。これも無筋だぜ?
しかもツモって一寸の逡巡も無く捨てた。まるでこれを捨てても放銃しないと確信しているかのようだ。
で、一発ならなかった俺がツモったのは最後の6p。リーチしているので当然ツモ切りせざるを得ない。カン出来ない形だし。
「ロン。12900。」
4p4p4p5p7p7p8p9p西西白白白
白ホンイチ、えーと20符+面前ロン和了、カンチャン待ち、字牌が頭、白がアンコだから…50符4翻で満貫か。俺が三枚持っている6pで当たるとは。先ほどは3p切りを訝しんだが、12000のテンパイなら誰でも押すわな。
って待てよ。3pを打つ以前からテンパイしていたのか。
4pと西のシャンポンの形から7pツモってカンチャンに受け直したって事だな。ファインプレーじゃないか。
タイミング的に俺が掴むのが6pだと分かっていたかのようだが……ハルヒじゃあるまいしそんなわけないわな。
本日は以上です。では。
乙です
こんばんは。投下を始めていきます。
相手のプレーの賞賛もいいが、場況も考えよう。
とうとう四本場に突入してしまった。
点棒状況は圧倒的な白セーラーのリードだ。もちろん俺がダントツのラス。ううむ、親番が遠い…
対面のマントは渋面を作っていた。景気悪い表情してても事態は好転しないぜ。対して下家のカーディガンは最初期の朝比奈さんを彷彿とさせる今にも泣きそうな表情をしている。おいおいたかが麻雀で負けてるくらいで泣くか普通。
俺?別にどうも。平常心だ。親がツキまくってるだけだろ。いずれどっかに綻びが出るさ。
配牌は…これまた良くない。つーか和了を諦めるレベルだ。7種7牌って国士にも遠いしシュンツ手も遠いし、最も悪い配牌の一つだろう。
なので、ここは和了を諦めつつ、クズ手の王、国士無双を狙ってみることにする。受入を広く保ち、最速の和了を目指すのが一つの形態であるデジタルの打法からは離れるけどな。普通ならチャンタやホンイチと両天秤にかけながら目指すけど、一直線にロマンを追求するのも悪いことじゃないだろう。いざとなったら最低7巡は安全度の高い牌を切ることができるし。
そんなわけで序順から中張牌を積極的に切っていく。バレバレだろうが気にしない。
すると対面のマントが俺の捨て牌を2回続けざまにポンした。おいおい北家はあんまりポンしちゃいけないんじゃないのか。親のツモ回数が増えるだろうが。
と危惧していると案の定6巡目で白襟セーラーが、
「リーチ」
と来たもんだ。もちろん現物切り。下家のカーディガンも現物を切る。一発消しのためかマントがそれをリャンメンでチー。3副露。セオリー通りだとすると、まさかマント。お前も張ったのか?
ちょうどマントが捨てた北を俺がトイツで持っていたのでポンした。国士放棄。和了れるなら和了ってくれ。
「ツモ!300・500は700・900!」
マントが和了った。良くやった。俺がアシストした形になるのかな?何にせよやっとこ東二局が終わる。俺の親番だ。
俺が放銃とツモではき出した点棒、利子つけて返してもらうぜ白襟セーラー。
本日は以上です。では。
乙です
先ほど締めましたが、なんだか今日は調子が良くて筆の乗りがよいので、もう少しだけ投稿していくことにします。
が、しかし。
「ロン。1000」
俺の親番は5巡で終わった。白セーラーのタンヤオのみの和了によって。ちなみに俺の放銃。またかよ。
俺はというと、まだどういう手にするのかという方針すら固まっていない段階であった。配牌が重かったせいもある。
これまで七局打っているが、そのうちの五局が白襟セーラーの和了だ。
………なんというか。
今なら、長門のマジカルバットによってホームランの嵐を浴びた上ヶ原パイレーツのピッチャーの気持ちが分かるような気がする。
要するに、だんだんやる気がなくなってきた。どうせお前が和了るんだろ、ってなもんだ。
ネット麻雀ならば、勝てないと悟ったならウィンドウ右上の×ボタンを押せばすぐに対局から抜けられるが(マナー違反だからよい子は真似しないように)、実際に卓を囲むと当然ながらそうはいかない。
ここまで圧倒的な差をつけられて、2回しか無い親番のうちの1つまでもゴミ手で蹴られるとなると、なんかもう勝つ気も失せてくる。
こう、拮抗した勝負で、終盤までめくり合戦で僅かに遅れを取って敗北とか、さんざ読みを巡らせた上可能性が2択しかなく、運を天に任せて切ったのが放銃となり負けとかならいい勝負だった。お疲れさんで済むが、運が半分以上を占める麻雀でここまでやられると、巻き返せる可能性なんか限りなく低いわけで。
クイズ番組の常套手段の一つである、最後の得点は何倍ですみたいな逆転可能なギミックがあるわけじゃないしな。
俺がラス親なわけでもないし。
白襟セーラーと俺の点差なんて約8万点。俺が子のトリプルを三回和了してもまだ足りない。
こうなってくると、さっさとこの対局を終わらせて休みたいという、肉体的精神的疲労から来る休息への欲求が頭をもたげてくる。
そんなことは出来るはずが無いわけで、俺はこの溜まった負の感情のはけ口でもあるかのように、いつもより小手返し&そのフェイクを入れる。俺に出来るささやかな抵抗がこれぐらいなのかと、情けなくなってきた。
では本当に今日はこの辺で。
乙です
東四局は俺が白襟セーラーにニンロクの放銃。南一局も俺が白襟セーラーにゴンニの放銃。
そしてやってきた白襟セーラーの親番。南二局。ドラは中。
白セーラーは二巡目に
「リーチ。」
と宣言し西を打った。勘弁してくれ。安牌なんて持ってない。こんな時に限って字牌も無いので、取り敢えず端牌の9pを切る。当たらなかったがヤツが一発でツモった。
「ツモ。3900オール。」
2p3p3p3p1s2s3s6s7s8s白白白
リーチ一発ツモ白。裏ドラが無くて幸いだったが。
ここまでほぼ連続で巡目一桁台で和了っている上、この局でも変則待ちで一発ツモとは、こいつは向こう何年間かの運を今使っているに違いない。
俺が最近買ったRPGのキャラは、運のパラメーターが大体40くらいでカンストするけども、コイツの運のパラメータには ∞ と書かれているのかもしれない。
ところで、人が一生のうちに遭遇する幸運の量ってのは決まってる物なのか。教えてくれませんかね神様仏様ハルヒ様。
そんなどうでもいいことを考えてしまうくらい、どうにもならない状況になりつつある。
どういう状況かって?
俺の残り点数が5万点を切った事だ。詳細に言うか?43000点だ。
訂正:誤→2p3p3p3p1s2s3s6s7s8s白白白
正→2p3p3p3p1s2s3s6s7s8s白白白 1p
別にこの対局に勝たなければならない理由はないし、現に俺は戦意喪失しつつあるんだが、このまま何も出来ないうちにゲームエンドってのも後味が悪い。
この状況は十中八九俺の明晰夢の中だろうが、自分の夢なんだからもっとこう、漫画的な逆転劇が起こって欲しいと願ってもよいだろうよ。明晰夢ってのは、夢の中の状況を自分の思うとおりに変化させることができるんじゃなかったっけ。
俺は麻雀の漫画など読んだことがないが、盛り上げどころがあるとしたら今この状況からの逆転なんじゃないのか。弱いヤツをワンサイドゲームで蹂躙して終わりなんてのは、なんだったっけ。そうそうカタルシスってのが無いだろ。俺の深層心理よ。期待してるぜ。
本日は以上です。では。
乙です
という俺の期待など知らぬとばかりに、白襟セーラーはどんどん和了る。一本場には俺が満貫放銃。二本場では六巡目にまたもや俺が跳満放銃。すっかり俺は白襟セーラーのお得意様と化してしまったようだ。ちなみにこの時点で俺の残り点数は二万点を切っている。
三本場には五巡目でマントから倍満を取った。俺が描写するのをめんどくさがっているからこんな風に省略気味になっているのでは無い。本当に言うことが何も無いのだ。配牌が配られた、と思ったらすぐ和了るんだから。字牌整理すら終わらぬうちにな。
ちなみに、和了の牌姿全てに裏含むドラがなく、全て面前手役によるものだ。ドラ表示牌が赤5pだった事があるので赤もドラもあるルールなんだろうが……
これまで一度もドラを見たことが無い。
俺の手牌にも無いし、河にも見えない。当然白襟セーラーの手牌にも。
これも十分奇っ怪な話だが、それ以上に奇っ怪なのは、ドラが無いのにこの打点でこのスピードって事だ。配牌でほぼ張ってるってことじゃねえか。誰か止めてくれ。
まるで、この局では白襟セーラーが和了するという未来が確定している…以前の古泉の講釈をなぞれば、
局の開始―――――白襟セーラーの和了
ってなもんだ。
俺は、去年の冬合宿の終わりに朝比奈さんと長門と共にあの時空へ旅立った。あれは、俺があの時空へ飛ぶことが既定事項であり、自らが体験した事を確定した過去とするために赴いた。
今回は確定した過去、ではなく、確定した未来、と来たもんだ。未来ってのはくっついたり分かれたりして変化する物だってのが俺の抱いた最新の考察であるのに。
あの白襟セーラーが和了することは、未来人風にいって既定事項なのであろうか。
そんなキリがない事を考えてしまうほど、こいつは和了りすぎだ。
「ロン。37200。」
2p2p3p3p4p4p5p5p6p6p7p7p8p 8p
……あーらら。
俺、ハコ下。ハコ下になることなんてハルヒと打ってりゃしょっちゅうだから別になんの感慨もないが。またか、くらいなもんだ。
このメンツじゃ借り、なんて言えるわけもないしそもそも言ったことも無いし、他の二者の表情はまるで世界の終わりに直面したようなものであるから、ハコ下になっても続行するわけではなさそうだ。
すなわちトビ終了。ゲームセット。あーやっと終わった。まさかワンモアなんてのはないよな?
「ロン。37200。」
2p2p3p3p4p4p5p5p6p6p7p7p8p 8p
……あーらら。
俺、ハコ下。ハコ下になることなんてハルヒと打ってりゃしょっちゅうだから別になんの感慨もないが。またか、くらいなもんだ。
このメンツじゃ借り、なんて言えるわけもないしそもそも言ったことも無いし、他の二者の表情はまるで世界の終わりに直面したようなものであるから、ハコ下になっても続行するわけではなさそうだ。
すなわちトビ終了。ゲームセット。あーやっと終わった。まさかワンモアなんてのはないよな?
ここまで為す術も無くやられると、悔しいとかそんな感情が発生する以前の問題で、「こんなやつとは金輪際打ちたくない」という嫌悪を抱かざるを得ない。。
ハルヒ?いや、アイツは別だ。アイツの独善に付き合わされること一年と少し。そんなこと慣れちまってる。
誰しも、長時間格ゲー上級者に何十タテされるのは嫌だしなにより退屈だろ。俺がこの対局中に抱いていた感情はまるっきりそれだ。
あー苦痛だった。もうやりたくねぇ。
…あれ、なんだか眠くなってきたぞ。夢の中で眠るってのもおかしい話だが、キリがいいんだろうな。文字通り俺の目の前が真っ暗になり始めた。視界がだんだんブラックアウトしていく。現実の俺が覚醒に至ろうとしているのかもしれない。はたまた俺の予期しない事が起ころうとしているのか。毒虫にはなりたくないな。
視界がブラックアウトしていくのと同時に薄れ行く意識の中、最後に見えたのは大粒の涙を流しながらしゃくりあげているカーディガンと、唇を噛みしめ下を向き必死に涙をこらえているらしいマントと……
いつの間にか立ち上がりそれらを無表情無感動に見下ろしている白襟セーラーの姿だった。
二重投稿してしまい申し訳ありませんでした。
本日は以上です。
乙
乙です
「ぐえっ!?」
腹部に勢いと共に重い物がのしかかる。この妹の布団剥がしからのフライングボディプレスという外来からの衝撃によって、俺の意識は完全覚醒を強いられた。朝っぱらから何の気構えもする間も無く身体に衝撃が走るのは、気持ちの良い目覚めとは無縁のものである。
お陰で俺は今まで見ていた…
………
あれ。なんだったっけ。
確か今まで見た中でも一際珍妙で不可解な夢を見ていた気がするのだが、どんな夢だったっけ。目覚めた瞬間に雲散霧消してしまったらしいな。何かの拍子があればババっと思い出せそうなんだが。最も、その何かの拍子が来るのが一日後かはたまた一年後なのか、全く分からんのだがな。
んー…
まぁ別にいいか。忘れるって事はどうせ大した内容の夢じゃ無いんだろう。少なくとも、ハルヒ絡みの物では無い事は確実に言える。根拠などないが、強いて言うなら今までの一年間の経験で培われた勘ってやつさ。例えば、骨董品の鑑定を生業とする人は、ちらと眺めるだけで大体その物がホンモンなのかパチモンなのか分かるという。曰く、本物を沢山見てきたから、だそうだ。
俺にとっちゃあホンモノってのはこの一年間でのハルヒ絡みのイベントに付随する全ての物事であり、それに直面する中で抱いた感情であり、巡らした思考etcである。
その中にはもちろん、予兆を察知するってのも含まれているわけで。つまりは、俺が、自分がおかしいと感じなければ大丈夫だろうと思えるくらいには自分の勘を信用できているってことだ。何か異常があったならそん時に考えりゃいいさ。期待してるぜ。俺。
薄目を開けながら毎度毎度思う。もうちょっとマシな起こし方は無いのだろうか。理想を言えば、俺の呼称をあのあだ名から「お兄ちゃん」へと回帰させ、布団剥ぎなどという荒事はせず、布団の上から手心を加えつつ軽く揺するという方法を提案したいのだがどうだろう。その場合是非ともミヨキチにご登場願い、妹に指南して欲しい物だ。それ以前に自分で起きろという反論は受け付けない。
完全に目を開けると超至近距離に妹の顔があった。お前は俺に頭突きでもしようってのか。邪魔。どけ。
妹はしっしっと手を払う俺の上からさっと降りると
「おカゼ、どお?」
猫みたいな笑顔で言った。遷した本人がこんなに元気そうなのに、こいつからの二次罹患者である俺が未だ床に伏していなければならんとは理不尽だ。
え?なんで俺が風邪っぴきになったかって?
おおそうだ。状況説明がまだだったな。読者諸賢を置き去りにするわけにはいかない。
今日の日付は六月の某日。ちょうどハルヒがIH出場を部室で宣言した日から四日後にあたる。曜日は土曜日だ。
時刻は午前9時を少し回ったところ。俺以外のSOS団員+この件に際し生じた欠員の埋め合わせの為に緊急招集された鶴屋名誉顧問は、予選会場へ赴いている。
そして俺は風邪の神様に完全敗北して病床に伏し、戦果も何も上げること無く戦線離脱。自宅へ恥ずかしながら帰って参った、と言うわけだ。
話はハルヒによるIH出場宣言の翌日、すなわち今日から三日前に遡る。
麻雀牌セットとマットを広げ、ラス抜けが見に回って他が打つ、という方法で麻雀をプレイしようという時に、俺の携帯にお袋から電話がかかってきた。
取れば、妹が具合が悪いといって家で寝ている。自分は晩飯の買い物に行かねばならないから家でだれか見ている人が必要だ。だから早く帰ってこいとの事だったので、ハルヒの宣言によりその日のSOS団内麻雀大会が中止となり、SOS団員全員が妹の看病に俺の家に押しかけることと相成った。
ここまではいいんだ。まさに普遍的な学生生活の一ページではないか。
翌日、どうも頭が重く、倦怠感があり、油が切れたわけでも無いのに体の節々が軋むように痛んだ。もちろん俺が九曜のパトロンとの異次元コミュニケーションツールとして利用されたわけでもなく、どうやら俺は妹が罹患していた風邪菌をもらってしまったらしいと気づいたのは団活中である。残念ながら朝比奈印のお茶はディスペルハーブの効果を持ち合わせていなかったようだ。
結局長門に「貴方の体温が通常より上昇しており、風邪に罹患している高度の蓋然性が認められる」と面と向かって言われ、あげくハルヒに帰宅命令を出され、マスタードガスをもろに喰らった第一次大戦中兵士のような虚ろな足取りで家に帰宅し、すぐさま布団を被って寝た。ハルヒ達は団活を切り上げて同行するつもりだったようだが、俺が拒否った。遷したら困るから。遷るとも思えないけど、一応な。
ちなみに我が家は、極力薬は使わないという方針である。薬にばかり頼っていては、自分の体の抵抗力が弱まるからだとかなんとか。
風邪に関してはモロにその方針が当てはまっており、インフル以外では枕元に飲み物とティッシュ箱を置いてひたすら寝るというのが我が家の風邪の治し方である。傷寒論の作者からブーイングが来そうだ。
なので総じて直るまでの期間が長い。だから俺は大会期間中も床に伏していなければならなかったのだ。
どうやら俺の体内に居座った風邪の神は、インフルエンザという名前こそついていないが相当にタチの悪い奴だったらしく、特に昨日なんかβルートの長門のように、飯とトイレの時間以外殆ど意識を失っていた。数日分の睡眠時間を使った気がするぜ。
本日は以上です。
乙です
乙です
こんばんは。9時頃から投稿を始めます。
上体を起こしながら、くそ。なんだって俺だけ風邪に罹患せねばならんのだ、と思ったが、そういやSOS団内には普通の人間は一人もいなかった。おそらく妹産の風邪菌は遷る対象を消去法で俺に決定したんだろう。古泉や朝比奈さんが何か病気に罹患した所など俺は見たことがないし、長門が地球上の病原菌に負けるなんてことはありえないというのが古泉の弁である。特にハルヒの体内に入っちまった暁には風邪菌が自[ピーーー]るんじゃないかね。
妹はまだ俺に言付けることがあるようで、
「ハルにゃんたち、昨日来てたんだよ?ちょっと来て帰ったけど。」
「そうなのか?」
「うん。今日も来るって。『試合なんてさっさと終わらせてすぐ行くから』って言ってた。」
上体を起こしながら、くそ。なんだって俺だけ風邪に罹患せねばならんのだ、と思ったが、そういやSOS団内には普通の人間は一人もいなかった。おそらく妹産の風邪菌は遷る対象を消去法で俺に決定したんだろう。古泉や朝比奈さんが何か病気に罹患した所など俺は見たことがないし、長門が地球上の病原菌に負けるなんてことはありえないというのが古泉の弁である。特にハルヒの体内に入っちまった暁には風邪菌が自殺するんじゃないかね。
妹はまだ俺に言付けることがあるようで、
「ハルにゃんたち、昨日来てたんだよ?ちょっと来て帰ったけど。」
「そうなのか?」
「うん。今日も来るって。『試合なんてさっさと終わらせてすぐ行くから』って言ってた。」
別に階段から落ちて昏倒したわけでもないのにそんなに気にかけなくてもいいのだがな。悪い気はしないけどさ。
あと、麻雀だぜ?そんなすぐ終わるわけ無いだろ、と普通なら思われるだろうが、この台詞を言ったのは誰あろう涼宮ハルヒなのである。
アイツが自分で宣言したことを成就させなかったことなど思いつく限り一度も無いので、今回もそうなるんだろうな。対戦相手に合掌。安心しろ。骨は拾ってやる。
どうやら、昨日で峠を通り越したらしい。若干の気怠さが体に残るのみである。俺は妹と共に階下に降り、妹が焼いてくれたパンを食った。
喰いながら俺はのほほんと考える。ハルヒが介在せず、SOS団的、宇宙的、未来的あるいは超能力的懸案事項が無いときの休日の朝という物がこんなにも安らぐものだとは。
驚愕し通しだったあの事件から結構経つが、それ以降はひたすらSOS団員達と共に休日も構わず日常を過ごす事にかまけていたので改めてこんな風に思うことが無かった。世界分裂事件以降、ハルヒは、長門がぶっ倒れてその間団活が機能不全になった分を取り返そうとするかのように、やれ不思議探索だ買い物だなどと俺達を振り回した。お陰で月日が経つのに鈍感になっちまった結果、退屈なんつう感情を抱くことになっちまった。
体調を崩して一人で休んでいるときに初めて安らぎを自覚するというのも変な感じがするが。
久しくこの感覚を忘れていたような気がする。やっぱ緩急ってのが人生には必須だと俺は思うね。大変な事が終わった後の休息時間の方が、ただのそれよりも有難く感じられる物だ。ただ、俺にとっての「急」の部分は世界でオンリーワンの物なので、全ての人にこのことが当てはまるとは限らないが。
さて、今日は土曜日であるから当然ながら学校は休日であり、俺はいま完全フリーの状態だ。
風邪が治った妹も今からミヨキチとどっかに遊びに行くらしいので家には俺一人。
麻雀大会の県予選なんざ中継するメディアなど我が県には存在しないので、試合の結果は終わってからでないと分からない。
さて、どうやらSOS団員たちは俺の家に押しかける心づもりらしいので、顔洗って普段着にでも着替えておきましょうかね。スウェットで出迎えるわけにもいくまい。
本日は以上です。では。
乙
乙です
着替えてから二時間ほどたったころであろうか。リビングで寝っ転がっていると、突然玄関のドアの方面からガチャガチャっとどう考えても空き巣が立てるとしか思えない音が聞こえた後、家人へ呼び出しを告げるチャイムがピンポンピンポンピンポンと間髪入れずに三回鳴り響いた。その後、ドンドンドンとノックからはほど遠い打撃音が聞こえた。
「こらー!キョン!いつまでも引きこもってないで出て来なさい!」
ドアの向こうでがなり立てる人物には心当たりしかない。あのバカ。覚えてろよ。
家に来るのは別に構わないんだが、玄関前で近所に誤解を与えるような発言は厳に謹んで貰いたい。これでも近所の間では爽やか好青年で通ってるんでね。(やや誇張)俺はまだ現代日本の就活戦線から脱落したあげく退役を決め込んだわけではないし、そうなるつもりも無い。無用なスティグマを俺に押しつけないで貰いたいね。
つーか、来るの早すぎだろ。まだ昼飯時にもなってないぞ。すぐ終わらせるという宣言を成就させるのは予想済みだったが、こんなにも早いとは思わなかった。
試合のある会場へは車で3,40分くらいの距離だ。電車とバスで行くなら待ち時間も考慮すれば1時間はかかる。試合開始は9時から。決勝戦は各戦半荘2回。試合終了後は表彰式だのなんだのあるはずだから…こいつ、先鋒戦に出て速攻で飛ばし勝ちを収めたに違いない。オーダー変更は自由というルールだったからな。
10万点持ちで飛ばし勝ちなんてのはよっぽど相手がツイてないかぎり不可能だろうが、不可能を可能にしてしまうのが涼宮ハルヒなのである。
俺は渋々玄関へ赴き、施錠を解除した。途端にドアが開けられ、
「やっと開けたわね。団長がわざわざ来るってんだから正装で正座待機してすぐ開けるぐらいしなさいよ。」
身勝手なことを抜かしやがる大輪の花もかくやという笑顔と対面。玉音放送開始5分前の日本臣民じゃあるまいし、そんなことするか。
ハルヒの背後には二日ぶりの邂逅となる団員全員&花見以来の対面となる鶴屋さんがずらりと並んでいた。
本日は以上です。
乙です
今更だが混一色はホンイツな
なかなかおもろい
乙
>>122
調べましたら判明しました。確かにホンイツとも言うようですね。私が麻雀を教わった友人がホンイチと言っておりましたのでそのように覚えたため、ホンイチと記述しておりました。ただどちらでも良いそうなので記述は変更しないでおこうと思います。
>>123 ありがとうございます。嬉しいです。
「………」(ミリ単位の頷き)
「キョン君、大丈夫ですかぁ?」
「やぁ。どうも。」
「よっ!元気かいキョン君!ハルにゃんが料理食べさせてくれるって事だから来ちゃったにょろ!」
四者四様の反応だったが、最後の鶴屋さんの言葉が気にかかる。ハルヒが料理…?
ハルヒは俺の頭上に浮かぶクエスチョンマークを発見したかのように、
「分かってると思うけど、あたし達は全国大会に出場したのよ。祝勝会ぐらいやるでしょ。あ、あんたの母親の許可は得てるからね。」
イベント狂のお前ならそれぐらい企画すると思っていたけどさ。会場が俺の家だということの断りが俺に対して無かったが、このような事態が始めてって訳でもないし、まぁハルヒだしな。
そういや、オフクロは昼飯を用意していなかったな。そして昨日、妹はハルヒ達が来たと言っていた。そういうことだったのか。昨日ハルヒがどういうことをオフクロに言ったのか知らないが、オフクロからしてみれば、昼飯を用意する手間が省けるから歓迎するだろうな。
「そ・の・つ・い・で・に!あんたが不真面目にも団の業務をサボるのは団長として看過できない事態だから、あたしが直々にあんたに特製対風邪用料理を作ってあげんの。団員特権として、タダで提供してあげるから感謝しなさい。」
そこまで強調せんでもいいのに。まぁこいつはこいつで俺の事を心配してくれたんだろう。少なくとも、いつぞやのルソー並には。団員の心配をするのは団長の役目だって言ってたしな。
去年の十二月にあった消失の事件の時は、休んだ日にちの分の茶店おごりを要求されたが、今回はなさそうで一安心だ。俺の財布はSOS団に所属して以来、スーパーライト級からライトフライ級ぐらいにまで減量を果たしているからな。
よく見れば、古泉がパンパンになっているスーパーの袋を両手に提げている。アレが材料か。ここに居る全員分とはずいぶんと買い込んだな。
ハルヒの料理の旨さは俺が身をもって知っているのだから、これは僥倖といえば僥倖だな。
「さ、お邪魔するわよー。」
ハルヒのその言葉を合図に団員たちがぞろぞろ上がり込んでくる。こいつらを家に入れるのはこれで三回目かな。鶴屋さんは二回目だ。一回目があの無限にループした夏休み、二回目がバンドを結成するだのと宣言したハルヒがメンバーのオーディション会場を勝手に俺の家にした時だ。オーディションを受けに来た二名の内、一名が鶴屋さんだったな。
俺が脳内アカシックレコードを巻き戻していると、
「あんた、治りかけてるようだけど顔色は良くないわよ。治りかけの時こそ徹底的に風邪菌を追い出さなきゃいけないのよ。さっさと上行って休みなさい。できたら呼んであげるから。」
すれ違いざまにハルヒがずずいっと俺に顔を近づけ、俺の胸に指をつきつけのたまう。お前は俺のオフクロか。
飯を作って貰う手前、文句など何も言えないし言うつもりも無いけどさ。
ハルヒの対風邪対策論を聞くのは長門がぶっ倒れた時以来二回目だが、風邪菌に対しても一切の容赦がないな。
今日の麻雀の試合でもその容赦のなさをもって相手を相手を屠った結果、俺の家まできたんだろうが。
こいつに格ゲーやらせたらたとえ相手の体力が残り数ドットであろうが当てるのが難しい一撃必殺技をわざわざたたき込んで勝つプレイングをしそうだ。
本日は以上です。
乙です
俺は唯々諾々と従い、お役ご免を言い渡された古泉と共に二階に上がった。ちゃんと俺の部屋は換気も掃除もしてあるので遷る心配は多分ない。
俺達と入れ替わるようにシャミセンが階下へ降りていく。どうせ妙になついている長門あたりの所へ行ったんだろう。
「で、どうだったんだ今日の試合の顛末は。」
俺の部屋に入った俺と古泉は地べたにトルコ人か昔の仕立屋のようにあぐらをかいて座り、することもないので会話に興ずる。
「あなたの想像するとおりだと思いますよ。涼宮さんの独擅場でした。」
「具体的には?」
「先鋒戦、涼宮さんは起家だったのですが、東一局2本場でゲームエンドです。」
だろうな。有言実行という言葉をこれほど体現した出来事も滅多に無いんじゃないか。
「ごもっとも。同じ選手に親のトリプルを三回連続で直撃して終わりました。試合時間僅か10分ですよ。僕たちの出番はありませんでした。」
朗らかに言う古泉。なんだか楽しそうに見えるのは、今SOS団が取り組んでいる活動が、何の非日常的要素も含まない事からの気疲れの無さから来る物と予想する。くそ。なんだか俺がその場に居なかったことが悔やまれるぜ。
「昨日も涼宮さんの一人舞台でしたよ。準決勝に勝ち進むチームが僕たち以外決まっていませんでしたので、別のブロックの試合が全て終了するまで待機していなければならない時間が発生したほどです。ここまで極端なやり方で勝利を収めてしまうと、全国からの様々なマークがきつくなるでしょうね。既にインタビューの依頼が何本も来ていますし。」
ハルヒはそれを知っているのか?あと応じるのかそれに。俺としてはアイツに余計なインスピレーションをあたえるのは良いとは言えないと思うんだが。
「報道陣は機関が完全にシャットアウトしています。そういったものににかこつけて僕たちSOS団に近づこうとする勢力はごまんといるでしょうからね。それに、一切情報が無い謎めいた強者、なんて、涼宮さんが好みそうなパッケージだと思いませんか。」
ちょっと短いですが本日はここまでとさせて下さい。
この先話をどうするかまだちょっと固まっていませんので。
それでは。
乙です
相変わらずのニヤケ面でこんな事を言った。こいつ、だんだん思考がハルヒ化していないか?
ま、俺も人のこと言えないんだけどさ。
「お前、もしかしなくても楽しそうだな。」
「そう見えますか?」
古泉はさらっとしらばっくれ、
「確かに、多少の余裕を感じていると認めざるを得ないでしょうね。なんといっても敵対勢力絡みの事案では無いのですから。気楽に活動していけるという物です。」
だからといってハルヒが負けることをもって潔しとするとは到底思えないので、日本全国の高校麻雀部員達の夢を「暇潰し」という理由で悉く打ち砕きながら全国優勝を決めるビジョンしか俺には浮かんでこない。
なんといっても一番ピッチャーだけが凄くても他がダメなら物理法則をねじ曲げることでもしなければ勝つことができないという実証が昨年なされている野球と違い、運、という人間にはどうすることも出来ない要素が半分以上を占める麻雀の大会である。
ハルヒの前では全てが白か黒だ。それも、可能、不可能の白黒では無く、全てがハルヒの力により実現可能という前提の元、ハルヒがそれを望む、望まないと言う意味での白黒なのだ。
「ごもっとも。ですが今回は少し違う状況になるやもしれませんよ。」
あいつは今のところ勝負事では常勝不敗を貫いているんだが、なぜそう思うんだ。
「涼宮さんの望みが、勝利のみに向かない可能性もありますので。」
俺は沈黙をもって続きを促す。
「野球大会を覚えて居られますよね。敗北する可能性が濃厚になりましたが、涼宮さんが負けることを良しとせず、神人を閉鎖空間内で暴れさせた結果、世界の崩壊を危惧した僕が利害の一致する長門さんにバットの強化を依頼したことです。」
ああ。それがどうした。
「かなり強引な方法だった、と思いませんか。貴方や僕や涼宮さんならまだしも、非力な小学生児童である貴方の妹さんまでもがホームランを打つというのは確実に不可能です。涼宮さんは、負けることを良しとしない、という願いによって不可能を可能にしたと言うことです。裏を返せばそれは、負けないためならどのような手段を講ずるという単純な勝利への欲求がそうさせたものだというように推測されます。」
言われてみれば確かにそうだ。あんときの俺はハルヒのやることなすことにツッコミを入れつつ自分が貧乏くじを引いたと嘆息するばかりで、現実に起こっていることから目を反らしてひたすら流されているきらいがあったから冷静に考える事をしなかったからそんな考えは持たなかったが、よく考えてみればそうだな。
もちろん今は違うぜ。俺はこっちの世界を自ら望み、選択した。その責任を背負ってこれからも歩んでいくつもりだ。
本日は以上です
本日は以上です。
乙です
構成に行き詰まっています…すみませんが更新が数日滞ると予想されます。すみません。
把握
ハルヒ強すぎて咲キャラあっさり吹っ飛びそうだけど
雀卓の上でだけは神のごとき力に抗って欲しいな
和のデジタル対長門のデジタルとか超アツそう
「それに、この大会に出ると言っていた時の涼宮さんの言動も思い出して下さい。以前の涼宮さんならば、絶対に勝つ、優勝する等と言う所ですが、彼女の言葉の中にはそのような単語は一つも登場していませんでしたよ。」
言われてみれば確かにそうだったような。ってか、ハルヒの発言をいちいち覚えてるお前の方にむしろ驚くよ俺は。
「先日の世界分裂の件で、涼宮さんは感情的な能力の発露を制御し、無自覚の状態で意図的に…言葉の上では矛盾していますが…操れるようになっている可能性が出てきている。簡単に言えば、理性的に能力を行使できるようになっているんです。話は多少変わりますが、週末の不思議探索も考えてみて下さい。涼宮さんは当初は本気で超常現象を探そうとしていたはずです。しかし、今やその目的は彼女の中では形骸化しているように思います。団員達とショッピングすることや適当にぶらつくことが主目的となっている。そうなっていると思いませんか。」
俺も一年間ハルヒとツラ付き合わせてるんだ。それくらいの察しはついている。で、何が言いたいんだ。
「つまり、涼宮さんは団員達とみんなで楽しめればそれでいいという考えになりつつあるんですよ。ですから勝ちに拘るということが無いかも知れません。だからといって即刻敗退なんてことはないでしょうけどね。麻雀は、涼宮さんにとっては和了る、和了らない、という極々単純な二択を選択するゲームにすぎません。その中で涼宮さんが何を望んでそれがどう発現するのか、涼宮さんの精神分析担当として、また一人のテーブルゲーム好きとして期待させてもらっても居ます。ですが、一番の楽しみはなんと言っても貴方を含めたSOS団の皆さんと過ごす事ですよ。豊かな心をはぐくませて貰っていますし。」
色々脱線したが、つまるところコイツはこの先が楽しみだって事を言いたいだけだろう。もしかしたら二日ばかり俺が居なくて自論を展開する相手が居なかったから喋りたくてうずうずしていたのかも知れない。喋るときはこいつ一日に2万語話さないと死ぬんじゃないかと思うぐらい喋るからな。
「ところで、IHについて色々情報収集がなされた結果、面白い情報を得られましたよ。機密情報扱いのね。」
なんだ?八百長とかか。
「そうだったら愉快千万ですが、違います。運営サイドに『能力者』と呼ばれる選手達の存在です。」
能力者だ?
なにやら厨二病臭い単語だが、ジャンルを問わなければSOS団員5人中4人は何らかの人外的能力を持っているので俺には案外身近な言葉である。
しかし麻雀で能力者なるテクニカルタームが当てはまる存在ってのは一体どう言ったことをしでかすんだ?
本日は以上です。
乙です
乙!
「能力者と言われる者達はここ2,3年の内に急激に現れているようです。カンをすれば必ず有効牌を引くかリンシャンで和了る、海底牌が分かっているとしか思えない打牌、和了が速攻かつ和了る度に点数が上がる、ドラが他家にいかず全て自分に集まる、など、能力は多岐にわたるそうですよ。能力者が能力を行使した場合、阻害要因が無いときは必ずその事象が起こる、とのことです。」
なるほどね。でもそれ、ハタからみたらただの牌の偏りとか幸運の連続に見えるが。確率は極々低いがゼロじゃないんだから、連続で起こることだってあるだろうよ。『能力』なんてこじつけなんじゃないのか。
と反論しかけて、とっさに俺の頭によぎったのは佐々木の確率論講釈だ。
確率なんて事をいいだしたらこの世に不可能な物は無くなる。しかし例えば俺が壁に走って体当たりをしたとき、壁を壊さず向こう側にすり抜ける確率もゼロでは無いが、一秒に一回体当たりするとして百億年くらいかかっても成功しないような確率だから、これは不可能と言っても言い。
だいたい要約するとこんな事だ。
これを参考に考えたらどうだろう。リンシャンやハイテイで和了ること、毎回毎回速攻で和了れる配牌が来ること、他家に一切ドラが行かず全て自分に集まるetc……計算したことなんて無いし俺の数学の成績の悲惨さが物語るようにそもそも計算の仕方が分からんが、とにかく確率で言うと極々低いんだろう。しかし、どんなに起こる確率が低かろうと、実行しようとしたときは100パーセント成功する。それすなわち、可能であると考えてもいいんじゃないか。
そして、そういった事を起こすこと前提の戦術を取っているヤツを『能力者』って名付けてるんだろうな。おそらくFBIの超能力捜査官みたいに、それが出来るメカニズムは出来る本人にしか分からないんだろう。これは例として扱うには少々どころか大分うさんくさいが。
「ですが、対戦相手の心配をする必要は無いでしょう。なんといっても僕らの側には涼宮さんがいるのですからね。」
まぁその通りだな。俺達は俺達で、この大会という名の団活を飽きるまでやればいい。それがいつまで続くかなんて、俺達にもわからんさ。
俺の個人的な心境を吐露すれば、麻雀には楽しみを感じている。観るのもやるのもな。だから出来れば長く続けていたいが、ま、ハルヒが飽きればそこまでよ。
古泉とはその後もとりとめの無い話を続けた。そのうちハルヒが俺達を階下から呼び、祝勝会が開催される運びとなった。
ただし俺はハルヒが用意した別メニューの食事を頂戴したがね。
そこからは普通にどこにでもある気心知れた学生同士の食事風景だから、特筆すべきことは何も無い。大いに楽しめたさ。
ただ、宴会が終わってみんなが帰る際に、
「そういえばキョン、如何なる理由があろうとも三日分の欠勤は容赦できないから、あんた、東京行ったらあたしたちにご飯を奢ること。いいわね!」
と、団長様から命令を拝領した。くそ、忘れていると思っていたのに。野球の時みたいに谷口や国木田が付属していないだけ良かったと考えるべきか。
ま、昔のメロンじゃ無いが、病気した結果ハルヒが作る料理を食えたんだから、別にいいかというような心境にもなった。
みんなが帰った後こそ何も書くことなど無い。SOS団員であるという事を俺から取っ払えば、俺はたちまち一般人Aに成り下がる。何の取り柄も無い量産型男子高校生が一人で過ごす休日ほど描写する価値の無いものはそうそうないだろ?フツーに夜まで過ごしてフツーに寝たさ。
明日は月曜日。一週間の中で精神的に一番鬱になる曜日だ。三日ぶりに会う谷口や国木田に快気祝いに何か集ろうか、なんて考えているうちに俺は眠りに落ちた。
本日は以上です。
次はどこか他の誰かの視点で書こうと思っているのですが、具体的に誰かは決まっていません。
なので、次の更新も少し遅れます。ご了承ください。
乙です
相変わらずの字の多さ乙かる
キョン以外のキャラの一人称視点を書くのが予想外に難しく、なかなか進みません。
取り敢えず更新しますけども、地の文が少なめになっていることご容赦下さい。
幕間劇:阿知賀編①
「よし、全員居るね。さ、乗った乗った!」
ハルちゃんが快活な声でみんなを促す。わたし鷺森灼は助手席へ、他のみんなは後ろへ、それぞれ乗り込んだ。
「みんな疲れたんなら寝ちゃってもいいからねー。」
はーいと既に眠そうな穏乃の声が後ろから聞こえる。それに憧が「早っ!もう眠いの?」とツッコミを入れた。部室でもう何度も繰り広げられている二人の掛け合いだ。この仲の良い二人の掛け合いはなんとも微笑ましい。
「玄ちゃぁん…寒い…」
「ああごめんねお姉ちゃん。はいカイロ。それと……はい。膝掛け。」
「ありがとぉ……あったかい……」
穏乃と憧の後ろには玄と宥さんが乗っていた。寒がりな宥さんの為に玄がせっせと世話を焼いている。私には兄弟が居ないから、こんな風に甲斐甲斐しくされる宥さんがちょっと羨ましかったりする。
「じゃ、出発するよー。みんなシートベルトつけた?」
その言葉を合図に車が発進する。私は慌ててシートベルトをつけた。
私たち阿知賀女子麻雀部は、厳しい奈良県予選を突破して全国へコマを進めることができた。
学校としてはハルちゃんや望さんの世代以来10年ぶりのIH出場ということもあって、地元の熱狂ぶりは凄まじかった。
後援会が復活したり、クラスメイトや地元吉野の人たちから応援の言葉をたくさん貰えたり、ハルちゃんが10年前に残した影響は、とても強いものなんだったなあと感じる事が沢山あった。
そして私は今部長。そして当時のハルちゃんと同じ立場に立てたんだと思うと、心の底からうれしさがこみ上げてくる。
私は誘ってくれた玄以外の部員とはつながりが無かったから、部に入った当時は正直に言って言いしれぬ疎外感のような物を感じてはいたんだけど、今となっては全員が私の大切な仲間で、友人だ。この仲間達と全国に行くことが出来て本当に嬉しい。
そんな私たちは、今、毎週土日に近隣の各県の二位となった高校と練習試合を組み、遠征を行っている。
ルールの改正によって、全国の代表校以外の高校とであれば試合をしてよいことになっているからだ。
今日は金曜日。放課後に練習をしたあと、みんな一旦家に帰って準備をしてハルちゃんの車で現地の宿まで行って泊まり、翌日に練習試合の相手の高校まで行って試合をして、翌日に帰るという二泊三日というスケジュールだ。
そして今日の目的地は兵庫県。練習試合の相手は劒谷高校という。
兵庫県といえば、水面下でではあるけど、今年のIHで最も話題に上がっている県だ。
麻雀部すら無かったある高校に大会数日前に突然麻雀部が結成され、滑り込みで団体戦に出場。そして対戦相手を悉く飛ばして勝利し、決勝戦に至っては、先鋒戦をたったの3局で勝利を決めてしまった。当然決勝戦も飛ばし勝ちだ。10万点持ちの団体戦で、全ての試合を飛ばして勝ってるなんて普通ではあり得ない。
その高校の名前は兵庫県立北高校。選手達はSOS団という団体名を名乗っているらしい。
でも、なぜか雑誌もテレビの特集も、兵庫県という単語がNGワードであるかのように一切の報道をせず、先述した噂とチーム名と選手の名前以外に彼らについての情報は殆どと言っていいほど無い。ネット上にも情報が上がっておらず、何らかの作為的な介入すら囁かれている。
今年からの出場だから当然選手達の以前のハイフや映像は存在しないし、彼らは全員高校から麻雀を始めているようで、高校以前の大会の牌譜もない。
まさにダークホース。私たちも10年ぶりの出場と言うことでそう呼ばれるような存在だけど、彼らはそれ以上だ。
地区大会が終われば牌譜や映像は公開される。見たけども、なんというか、壮絶と表現することしか出来ない試合だった。
兵庫の代表とはいつあたることになるかは当然分からないけど、私たちが勝ち進めばいずれはあたる相手だ。ううん、私たちは勝ち進むから絶対に当たると考えた方がいい。
組み合わせ次第では一回戦から当たることも十分ありうる。そうなったら一回戦は一位しか勝ち抜けないから、兵庫の代表を含めた他の三校をサンコロにしなければならない。
私は後ろの席を見やった。どうやらみんな眠っているみたい。
穏乃と憧は憧が肩を貸すような形でくっついて眠っており、その後ろの席の玄と宥さんは宥さんが玄に抱きつくような眠ってる。玄、暑いのか寝苦しそう。
私は晩成の部長みたいなすごい人望があるわけじゃないし、実力が飛び抜けているわけでも無い。でも、みんなは私が部長をやることに賛同してくれたし、色々助けてくれたし、ここまでついてきてくれた。
そして隣で運転するハルちゃんを見た。
見ててね。ハルちゃん。絶対に私たちでハルちゃんが越えられなかった壁を、越えてみせる。
どんな敵が相手でも。
そして、みんなで優勝したい。何度もそう心に誓っているけど、今一度堅くそう決心した。
これからの予定は…宿についたらミーティングしてしっかり休む。そして翌日は練習試合。激戦区兵庫県の二位だ。侮って言い相手じゃ無い。
これからの事に思いをはせつつ、私は窓の外の景色を見続けていた。
以上です。
次もどこか他の高校視点でもう一つ話を挟んだら、キョン視点に戻る予定です。
乙です
毎回面白いな
乙 阿知賀にスポットが当たって嬉しい。
最近別の用事で忙しくて中々執筆の時間が取れないで居ます。
まぁ一過性の用事ですので終われば時間は取れるんですがね。
では書けた分だけ投下していきます。
幕間劇:千里山編①
千里山高校麻雀部は、その歴代の功績から学内でも設備的にかなり優遇されていて、大部屋の練習場と、レギュラーメンバー用の部室、PCが設置されている牌譜の保管庫など、様々な部屋が与えられている。わたし船久保浩子は、練習が終わった後保管庫に籠もって他の高校のめぼしい選手達の情報の整理に取り組んでいた。それぞれの県で地区大会が終わって数日経った今、ネット上には牌譜や映像といった情報が公開されている。私はそれを整理し、和了率や副露率といった基本的データや、配牌やツモで来る牌の種類、打牌選択の傾向分析などのデータの作成を行う。もちろんその選手の試合の映像も見る。表情や仕草が映っているものも。牌譜の上では、打牌をする際にノータイムなのか長孝した末なのか分からないからだ。その選手の価値判断の基準を知ること…その選手がどの場面で長孝するか、またはノータイムで打つのか、それを把握することも重要だ。
打牌関連のもの以外の要素である表情や仕草も立派な卓上の情報だ。完全ポーカーフェイスの選手も多いから有効な情報になることは多くは無いけど。
麻雀の勝敗を決める要素は個人の実力が大きなウエイトを占めるが、個人的には相手についてのあらゆる情報もそれと同じくらい重要だと考えている。
実力が飛び抜けて高く、相手の情報を考慮すること無く打っていれば勝てる者達…すなわち自らの「実力」のみで勝利を得られる者達など、片手の指で数えられるほどしかいない。例を挙げれば一昨年のIHから出てきた宮永照、去年は神代小萌や天江衣…すなわち「魔物」と揶揄される者達だ。
「魔物」ほど強い力を持たないにしろ、明らかにセオリーから外れたスタイルを取ることが出来る力を持つ者達も、普通の打ち手よりもアドバンテージを持っている。
私にはそんな力などない。力の勝負では彼らに勝てないのだ。
だからこそ、無数のデータを収拾し、分析し、対策を練り、対応する。
どんな相手だろうが、人間である以上性格があり、判断の基準はそれに影響を受ける。そしてそれがプレイに打牌や表情、仕草という形で現れるはずだ。
もちろん、全てがデータ通りになるというわけでは無い。相手は機械では無く、生きた人間であるから、体調や精神状態により、同じような場面でも違う打牌をすることだってある。
重要なのは、データを元にどれだけ自分が対応することが出来るか、だ。
より多くの相手を知ることで、自分の対応の風呂敷を広げ、時には応用できるようにする…これはかなり高度なことだけど。
収拾、分析、対応、そして時には応用…それが私のデータ麻雀だ。
ちょっと少ないですが以上です。以下レスです。
>>162
ありがとうございます。その一言が励みになります。
>>163
私は咲を阿知賀編から知ったので、まず阿知賀勢を描きたいなと思っていました。
私の趣向で出番をキャラ毎に差別することはしませんが、おそらくこれからも阿知賀の誰かの視点で書くことはあると思います。
乙です
私以外の千里山のレギュラー4人は、どれも私よりも「実力」が高い…すくなくとも私はそう思っている。
特に、江口先輩、園城寺先輩、清水谷先輩の三人は、三年生である事もさることながら、全国でもトップクラスの実力を持っている。
高い「実力」をもつ彼らに、私が分析した情報を与えて彼らが「対応」することができれば、殆どの相手には負けることはないだろう。というのはオバちゃ…愛宕監督の言。
監督はそれほどまでに、私の分析する情報を信頼してくれていると思うと、俄然気合いが入るもので、ここ数日、私は完全下校時刻ギリギリまで残って帰る日が続いている。
……あれ、もう7時半か。完全下校時刻まであと30分。そろそろ終えないと鍵を管理している守衛さんにまた怒られる。
私はデータを自前のUSBに保存してPCの電源を落とし、椅子から立ち上がって数時間の酷使を強いた両目を閉じながら伸びをして凝り固まった首や肩をほぐす。
椅子の傍らに置いた自分の鞄を持って、保管庫のドアに鍵をかけて廊下に出た。
「…ん?」
レギュラーメンバー用の部室のドアが半開きになって中から光が漏れている。私以外にレギュラーメンバーで残っている人がいるんだろうか。いや、多分監督だろうけど。
とりあえず入る。
ここまでしか固まっておりませんので切ります。この話以外と長くなりそう……
では。
乙です
「…ん?」
レギュラーメンバー用の部室のドアが半開きになって中から光が漏れている。私以外にレギュラーメンバーで残っている人がいるんだろうか。いや、多分監督だろうけど。
とりあえず入る。
「失礼します。」
学年関係なく、この部屋に入るときは挨拶してから入るのが決まりだ。
「よ、フナQ。お疲れさん。」
「あ、お疲れ様です。先輩だけですか。」
「おう。竜華は怜を病院に送っていったし、泉はもう帰した。監督は職員室や。曰くてきとーに帰っていいそうや。」
「そうですか。」
入って来た私に片手を挙げて応えたのは江口先輩だった。部屋中央のソファーに座ってテレビを見ていたのだろうか。
「あ、これ見てはったんですか。」
「ああ。兵庫代表、SOS団とかいう奴らの試合の映像や。兵庫のはコイツと後一人以外は心配ないんやけどな。」
SOS団。全国屈指の激戦区である兵庫県を勝ち抜いて代表になったチーム。大会数日前に滑り込みで出場し、対戦相手を全て飛ばして勝利してきた。
このチームはある一人の選手がずば抜けて強く、ほぼワンマンチームといって差し支えない。もう一人あなどれない選手はいるけど、その他の連中は、はっきり言ってほぼ座っているだけだったからだ。
その選手についてデータはすぐにまとまった。だが、すぐ、というのは局数が圧倒的に少ないからだ。決勝に至ってはたったの3局。
しかも、彼女の試合は全ての試合が東場で終了している。彼女が親のまま、他が飛んで試合が終わるのだ。
情報量が少なすぎるからデータをどれだけ睨んでも今のところ付け入れそうな所は出てこない。データの上でもくせ者だ。
「涼宮ハルヒですか……圧倒的ですよね。」
「ああ。同卓してる奴らとの力の差が歴然や。かなり手強いで。こいつ。」
江口先輩は普段希にしか見せないような険しい表情で、試合の映像を映し出すテレビの画面を見つめていた。
SOS団。全国屈指の激戦区である兵庫県を勝ち抜いて代表になったチーム。大会数日前に滑り込みで出場し、対戦相手を全て飛ばして勝利してきた。
このチームはある一人の選手がずば抜けて強く、ほぼワンマンチームといって差し支えない。もう一人あなどれない選手はいるけど、その他の連中は、はっきり言ってほぼ座っているだけだったからだ。
その選手についてデータはすぐにまとまった。だが、すぐ、というのは局数が圧倒的に少ないからだ。決勝に至ってはたったの3局。
しかも、彼女の試合は全ての試合が東場で終了している。彼女が親のまま、他が飛んで試合が終わるのだ。
情報量が少なすぎるからデータをどれだけ睨んでも今のところ付け入れそうな所は出てこない。データの上でもくせ者だ。
「涼宮ハルヒですか……圧倒的ですよね。」
「ああ。同卓してる奴らとの力の差が歴然や。かなり手強いで。こいつ。」
江口先輩は普段希にしか見せないような険しい表情で、試合の映像を映し出すテレビの画面を見つめていた。
「スタイルはウチと同じやな。鳴きを用いずにリーチ主体……手作りは滅茶苦茶やけど全てが当たっとる。コイツ怜と同類かもしれへんな。」
例えば、1m2m赤5m6mから一つ切るとする。状況は自分が特に大きな役を狙う必要も無く、巡目も浅い。でも1m2mがメンツとなるのに必要な3mは二枚切れている。あなたは何を切る?
殆どの打ち手が、受入枚数を考えてペンチャンを落とすはず。
こんなのは誰でも分かる常識だ。
でも、受入枚数が多い方が正解となる訳ではない。裏目という物があるからだ。
この場合では、ペンチャンを外したあとで残り二枚あった3mをツモったら、それは裏目となる。だからペンチャンを落としたのは失敗。不正解となる。
しかしこんなのは誰にでも起こることだ。防ぐ手立ては無いし、いちいち気にするほどの物では無い。
涼宮の打牌にはこういう失敗が全く無いのだ。
裏目を引かないというのは園城寺先輩もそうだが、一巡先を見るのには体力の消耗を伴うので頻繁に使用することが出来ない。だから、一巡先を見ることをしていなければ普通に裏目ることもある。また、二巡以降先で裏目ることもある。
涼宮は二巡以降先どころか、まるで涼宮が目指す手牌の形に合うようにツモが来ていると言わざるを得ないのだ。
ツモ牌は当然ながら普通の人間には誰にも分からない。だからこそ受入を広く構えるのは誰もが行うことであり、それは麻雀の常識だ。しかし涼宮は全く違う。
自らが欲する形になるように打牌をし、ツモがそれに沿うように来る。また、相手がテンパイする時に出て行く牌がちょうど当たり牌であるケースも多い。
それを前提として打牌をしているとしか思えず、打牌を端からみたら初心者以下に見えるのだ。
江口先輩が滅茶苦茶と表現したのはこのことだ。
ちなみに先ほどの例は実際の試合の牌譜からだ。ここから涼宮はノータイムで赤5mを落とす。そして次のツモで3mをツモる。結局は、牌効率や速度を完全無視した打牌を続け、配牌から七枚あった中張牌の出来メンツを全て落としてチャンタ手にしてリーチ。リーチ一発ツモチャンタドラ3で倍満とした。今年のルールは一発、裏、赤がある。赤がある麻雀でチャンタなんて天然記念物なのに。
他にも、このように手順も牌効率も何もかも無視した無茶苦茶としか言いようのないケースが沢山あったが、挙げていけばキリがない。
二重投稿して申し訳ありませんでした。本日は以上です。では。
乙です
乙ー
「でも、無警戒な振り込みがいくつもある。ムラがありすぎや。つけ入るところがあるとしたらここやけど…子の時だけやもんな……」
そうなのだ。涼宮の打牌は、自分が和了ることしか考えていない。たとえ何向聴からでもリーチにつっぱり、平気で無筋を強打する場面もいくつもあった。ただ、彼女が振り込むのは子の時だけなのだ。親の時は一切振り込まず、ひたすらに和了りつづける。流局となったケースもいくらかあるが。宮永照のように、他家が手を進める暇を与えず速攻で連荘するわけではないのだけれど、今のところ涼宮が親の時に和了した者は皆無だ。
まだ完全に調べ尽くした訳ではありませんから、どっかに攻略法はあるはずですよ。というか、ないわけないです。地区と全国のレベルの差は歴然ですし、全国の中ではいくらか制限されることもあるはずです。」
でもこの言葉は予想半分、願望半分だ。ざっと見たところでは、彼女の打牌には粗も、傾向らしき物も見つからないのだから。
だが、宮永照の連続和了だって止められる時はあるのだ。きっとどこかに突破口はあるはず。
私が応えると江口先輩はテレビを消して立ち上がって伸びをしつつ、
「……せやな。今から辛気くさい話してもしゃあない。まだ時間はあるんや。じっくり対策は練られるし、オレもまだまだ成長するで。」
私と言うより、自分に言い聞かせるように言うと、鞄を持って私に向き直った。
「帰ろか。フナQ。はよ帰らんとおっちゃんにどやされるで。監督にもな。」
短くて済みませんが以上です。まだこの話は続きます。
短くて済みませんが以上です。まだこの話は続きます。
乙です
おつ
乙!
江口先輩の家と私の家は、途中までは方向が同じで、今日のように一緒に下校することもある。
学校を出てからしばらく歩くと、先輩が両手を頭の後ろで組みつつ天を仰いで、
「オレな、中坊の頃からずっと竜華と怜と三人で全国で闘うの、ずっと夢やってん。」
江口先輩と園城寺先輩と清水谷部長の関係は聞き及んではいた。中等部の頃からずっと仲が良かったらしい。当時は江口先輩の実力が飛び抜けて高かった。特待生で進学したことがそれを物語っているし、去年に至っては二年生でエースを勤めている。
そんな江口先輩の後を追うように、清水谷部長も園城寺先輩もめきめきと実力を上げ、レギュラーとなった。実力では私など彼女らには及びもつかない。
江口先輩が今語った夢は、他の二人も思い描いているであろうことは容易に想像できる。園城寺先輩がレギュラー選出された時の三人の喜びようは凄かったし、体調の変化が激しい園城寺先輩のために「ときシフト」を考え出したのも江口先輩と清水谷部長なのだから。
先輩達にとっては、今年のIHが最後だ。大学という次のステージはあるけれど、高校生という立場は大学生とはまた違ったもののはず。終わればもう二度と挑戦することが叶わない最後の大会だ。三人そろってIHに出ることは今回限り。特に江口先輩は昨年度にエースとして出場したものの精彩を欠いており、とても悔いていた。そのリベンジも含め、優勝にかける想いも一際強いはずだ。
私にとっても、「このメンバーでの」IHは二度と訪れない。来年があるという考えは捨てて、先輩方のため今年に全力を尽くす。何ヶ月も前にそう決めた。
「やっとここまで来たっちゅう感じや。」
江口先輩の表情は、満願の想いという言葉がしっくりくるような、そんな表情だ。
「絶対…優勝しましょうね。」
「あったりまえや。そのためには…」
いきなり私の体が江口先輩にひょいと引き寄せられたかと思えば、江口先輩に肩を抱かれて頬と頬がくっついた。感触から察するに、どうやら私を抱き寄せて頬ずりしているらしい。
あまりに突然の出来事に一瞬戸惑い、江口先輩に頬ずりされている!という現状を把握した途端頬が熱くなる。
「お前の力が不可欠やフナQ。情報についてはよろしく頼んだで。」
「ちょ、なにすんですか。離してくださいよ。」
「えーただの先輩後輩のスキンシップやのにー。」
「いつも過剰すぎるんですよそれがっ。」
路上で歩きながら軽く揉み合ってしまった。だがこれはまだ軽い方で、私は合宿中、夜中に年甲斐も無く強行された枕投げなども手伝っていわゆる「深夜のテンション」状態の先輩にちゅーをされかけた事もある。ちなみにその時は清水谷先輩と泉が先輩を引きはがしてくれた。このときもスキンシップの一環だったらしい。
毎度毎度思うんだけど、この人のパーソナル領域はどうなっているんだろう。ゼロ距離接触がデフォなんだろうか。
そうこうしているうちに、あっという間に先輩といつも分かれている所へ来た。
「んじゃ、また明日なフナQ!」
「はい。お疲れ様です。失礼します。」
何事も無かったようににひっと笑う先輩。たたーっと走り去っていく。
この切り替えの早さ。ある意味尊敬する…。
走り去る先輩の後ろ姿を見送りつつ、私は大きな息を吐いた。
さて……家に帰ったら情報整理の続きしなきゃ。
本日は以上です。次からキョン視点に戻ります。
乙です
おつおつ
全国的には甲子園と同じくらいの知名度があるらしい全国高校生麻雀大会の全国大会にまで出場した我らSOS団だが、だからといってその前後を通じ、団の活動は「たまに」麻雀をするという項目が加わっただけで一切変化することはなかった。
ハルヒ曰く「毎日やってたら飽きる」ようで、俺達が麻雀をプレーするのは多くて週二くらいの頻度になっている。その他は、普通にぬるいインターバルを謳歌し、休日には恒例である不思議探索にも出かけている。当然、他の代表チームの情報なんざ仕入れている訳も無く、他の学校の名前すら知らん。
牌譜なんぞ見る気にもならんね。思うんだが、あれって何のために見るんだろうな。自分のプレーを見直すために自分の牌譜をみるというのなら分かる。
だが、相手の牌譜を見て何が分かるんだ?配牌やツモなんて当然ながら一局毎に違うのだし、そこから何か見えてくる物でもあるんだろうか。あるのかどうかも分からない雲を掴むような作業をする意味が分からん。
しかし、そのような作業に従事する者達も確かに存在するらしい。ま、ご苦労さんとだけ言っておこう。
話が逸れたな。
とにかく俺達がおよそ野球と並ぶ国民的スポーツらしい麻雀大会の県代表チームがとる行動をとっているとは到底思えないだろうが、そんなことはしたいことをしたいときにやる我らがSOS団の前では全く関係ないのだ。俺達は俺達で完結しており、今や他のどの勢力の干渉も受けない一つの主権国家のようなものになりつつある。
俺が読んでいるスポ根漫画でいえば、主人公の家族から始まり、主人公のチームを応援する自分の学校の生徒達、よき勝負を演じた敵チームの面々など、他にもさまざまな人々が主人公と関わり、それを通じて絶対に負けられないだとか思いを背負っているだとかいうような陳腐な動機が付与される。
大概において敵チームにも同じような動機付けがあって、試合の最中に回想という形でそれが挿入され、お互いが「負けられない」という思いを持って闘っていると見せることで場面が盛り上がるものだ。
実際、各代表チームには後援会があったり、地域や学校を上げて代表チームを応援するらしい。俺達以外の代表チームの連中は、周りの人たちの為にも自分たちの為にも、絶対に負けられないし、恥ずかしい試合をすることなどできるわけがないというモチベーションで挑んでいるんだろう。だからあらゆる相手に対する研究をし、自分のプレーを磨くのにも余念がないだろうな。
すまんな。俺達はそんなことこれっぽっちも思ってねえんだ。
俺達の事を応援する人間なんて鶴屋さんぐらいなんじゃないか。加えて俺達は相手の研究どころか、麻雀すら思い出したようにしかやらない始末。
このようなモチベーションとスタンスで参戦する俺達は、彼らからしてみれば徹底的に異物なんだろうな。
だが、俺達から言わせればそれがどうしたという話である。万物交々、俺達が是といえば是となり、否といえば否となる。俺達は俺達のみの思想に立脚し、行動しているのだ。
おそらくというか絶対、ハルヒが飽きたりしない限り俺達は勝ち進んでいくことになるだろうから、俺達が通った道には他のチームの連中が死屍累々といった有様になることは想像に難くない。
はてさて、俺達はいったいどれだけの麻雀部員の夢を、彼らを応援する人達の気持ちを、暇潰しという他から見ればハタ迷惑な動機で打ち砕いていくことになるんだろうな。
ま、しょうがないわな。そんときは、俺達と当たっちまったことが運の尽きだったと思って、諦めてくれ。
本日は以上です。
乙です
乙!
怜の超能力がばれたらハルヒに拐われそうやな
更新を滞らせてしまい申し訳ありません。これから先どうするかがはっきり決まっていないので進めようにも進められない状況でした。とりあえず固まったところまで更新します。
…と、俺らしくも無くこんな強気モノローグをするのは、今までに言ったことが無い我が国の首都たる東京という都市の地を踏んだという事実に対して少々浮ついている感情があるからかもしれないな。俺は年齢的にはまだ「子供」にカテゴライズされるわけで、オノマトペで「ワクワク」と表される感情に身を任せるのもたまには良いだろう。
そう、俺達は今、東京に来ているのだ。移動手段はJRを用いた。
といっても来たばかりでは無い。東京には昨日到着した。そして今日IH会場で行われた組み合わせ抽選会、開会式は終了し、日も沈んでかなり経った今、我らが宿泊先であるなんとかセンターという施設の俺と古泉にあてがわれた二人部屋にてニヤケスマイル男と共に暇をもてあましている所だ。ちなみにハルヒたち女どもは別の棟で、そこはSOS団の男子禁制というハルヒ団長による時限立法までなされた。
組み合わせ抽選の結果、なんと俺達の初戦は八月八日、つまり今日、八月三日の五日後となった。トーナメント表で言えば右ブロックの下半分からだ。初戦まで約一週間の暇な日が続くというなんともやる気をなくす日程である。当然ながら、普段の団活に挑む程度のモチベーションしか麻雀大会に対して持っていない俺達は練習とか試合観戦とかする気なんざさらさら無く、ハルヒが出発前に練りに練った国家主席クラスのハードスケジュールな東京遊覧が連日催される。
その中にはもちろん東京での不思議探索が入っている。その中には当然俺の奢りによる食事会も含まれているわけで、東京に行くならとオフクロが多めに持たせてくれた現金達のいくらかとは短い付き合いになる事を覚悟していなければならないだろう。
ちなみにというか当然だが、東京に来ているメンバーはSOS団正規メンバー五人で、こういう行事の前にはハルヒ級の嗅覚を発揮し是が非でも俺についていこうとする我が妹は居ない。最後までぐずっていたがね。俺達は届け出さえ出せば平日でも特欠という形で休むことが認められるが、小学校にそんな制度あるわけないから無理に決まっているわな。
………
中々慌ただしい一日だったけども、繰り返すが今は暇である。食堂で晩飯は喰ってきたし、俺達の居る個室には風呂がついていてついさっき交代でそれにも入った。詰まるところもうやることがなく、寝るしかないのだが別に夜型でも無いのに俺の目は妙に冴えていて、三大欲求のうちの一つたる睡眠欲に体が支配されるまでにはまだ至っていなかった。
「古泉」
なにやら長門の読む本みたいな小難しいタイトルの文庫本(言うまでもないと思うが日本語の本だ)に目を落としていた古泉は殊勝なことに本を閉じて俺に顔を向けた。
「なんでしょう。」
「ちょっくら売店まで行ってくる。何か必要なモンは?」
「ありませんよ。どうぞお気をつけて。」
別に何か買わなければならんものがあるわけじゃなかったが、部屋でジッと座っているよりは歩行している方が身体的に健康だろう。俺は古泉のように何か読むモンでも持ってきたわけじゃないしな。えーと財布財布。携帯は…別にいいか。すぐ戻るし。
読む物か……あーそうだ、雑誌でも買うか。麻雀の。
もちろん、今まで麻雀の雑誌など買ったことも読んだこともないし興味すらなかったけど、いやしくも今の俺は麻雀の大会中の身だ。ちょっくら情報を仕入れることくらいはしてもバチは当たらないだろう。
無論、こんな事俺達以外の奴らにとっては常識以前の話だろうが、「団活」という、他と比べて異質なモチベーションで大会に参加している俺が今のような事を思いついただけムカデ並みの進歩と思って頂きたい。
なんとも便利な事に、今俺達が泊まっている施設の敷地内にコンビニがあり、俺と古泉が部屋を借りている棟から少し歩いた別の棟の一階にそれはある。24時間営業では無いが。
店内に入ると見事なまでにほぼ無人であった。店員も奥に一時的に引っ込んでいるのか居ない。入店を知らせるチャラけた音楽も鳴ったんだがな。閉店時間も近いし、時刻的にもよい子はもう寝る時間だし在庫整理とかしてんのかな。
えーと麻雀雑誌は…っと。お、あったあった。遠目からだが名前が見える。「Weekly麻雀Today」というらしい。表紙に映っているのは有名な麻雀プロらしいが、当然ながら俺は見たことも名前をきいたことも無い。
どれどれ、少しめくって見てみようかと思いおもむろに雑誌に手を伸ばすと、左からにゅるりと手が出てきて俺の手とぶつかった。
「おっと。」
反射的に左に顔を向ければ、そこには俺とは同年代であろう野郎が立っていた。
同じ本に手を伸ばしてあ、とかいうシチュエーションは男女の出会いとして誰もが妄想しかつ使い古されたものであるが、その相手が見知らぬ野郎であることのなんとつまらなく誰も得しないものか。しかも、左に居るこいつ、あろうことか金髪である。芸能人とか以外で俺と同年代で頭髪が黒以外の色となっている人間には、大概碌なヤツが居ないというのが世間一般のイメージであろう。俺もご多分に漏れずそれには全面的に同意するのであるし、どういうわけか今店内は俺達以外無人なのであるから、基本的に受け身である俺は「おいこら」から始まるなにがしかの因縁をつけられる可能性があるやもしれんと考えざるを得ない。
冷静になって考えれば一宿泊用施設の中にあるようなコンビニにそんなやつが出没するなんてあり得ないのだが、当時の俺は真っ先に自己保身へと走った。我ながら情けない。ハルヒ絡みの事件にさんざ遭遇したおかけでその手の場面にはちっとは免疫がついていると自認しているが、対一般人が相手となるとその免疫も通用しないのである。
とっさに以前やった格ゲーの持ちキャラの構えを脳内で再現していると
「す、すみません。先どうぞ。」
こちらが何か言う前に、予想とは裏腹に腰の低そうなリアクションが返って来た。声色も恐る恐るといった感じで、むしろ向こうの方が俺よりも吃驚していたようだ。
さして気にするほどの事でも無いと判断した俺はああどうもとだけ返し、雑誌を取ってレジへと向かう。レジ前にさしかかったとき、誰かが入店したことを知らせる音が鳴ったので反射的にそちらに顔を向けるとあろうことかハルヒ達SOS団女性陣がそこに居た。よくよく見れば、見知らぬ女子を一人伴っている。見ようによっては女顔の少年に見えなくも無いが多分女だろう。ペットショップから一般家庭に連れてこられたばかりの愛玩動物のようなおどおどとした表情のそいつは長門くらいの長さのショートカットで背はハルヒより少し低く長門と同じくらいで、俺から見て左の側頭部の髪が横にハネている。目が合うとおずおずと会釈した。別にそんなことせんでいいんだが。
「あれ?咲?」
俺の後ろからさっきの野郎の声がした。どうやらハルヒの横に居るあの小動物に向けられているらしい。
「あっ、京ちゃん。」
繁華街で迷子になった子供が母親を見つけたときのような表情で応えたそいつは、ハルヒに会釈してありがとうございましたと言った後、とてとてと俺の横通り過ぎていった。
そいつがさっきの野郎となにやら離しながら奥に入っていくのを何となく見送った後、
「ありゃ何だ。またどっかから拉致ってきたのか。」
「そんなわけ無いでしょ。あたし達もここに来たくて棟から出ようとしたんだけど、そしたら入り口をあの子が涙目でうろついてて可哀想に思ったから声かけてみたのよ。そしたらコンビニはどこですかーって。迷ったんじゃないかしら。」
あの小動物少女がどこの棟の宿泊客か知らんが、このコンビニがある棟まではどこの棟からでも一本道であるはずだがな。一体どうやったら迷うことができるんだか。
「そんなことより、分かってるわね。さっきもミーティングで言ったけど、明日の朝、8時に食堂に集合よ。朝ご飯はみんなで食べるんだからね。行動計画もその時に詳しく説明するわ。もし遅刻したら1秒につき10円の罰金だからねっ!」
たった5分の遅刻で3000円も取られるのか。時は金なりというがさすがにレートが高すぎやしないか。懲罰的損害賠償は日本では認められていないんだぜ。
「じゃ、そーいうわけだから。」
俺の抗議をまるっと無視して朝比奈さんと長門を伴い店の奥にずんずん進むハルヒ。別れ際朝比奈さんはかぐや姫もかくやと言うほどの微笑で「おやすみキョン君」と言ってくれたのでこれだけでも出かけた甲斐があったというものだ。今日は安眠できそうだな。朝比奈さんのエンジェルボイスはそんじょそこらの安眠グッズよりも何千倍も心を癒やしてくれる事請け合いだ。
あの小動物少女がどこの棟の宿泊客か知らんが、このコンビニがある棟まではどこの棟からでも一本道であるはずだがな。一体どうやったら迷うことができるんだか。
「そんなことより、分かってるわね。さっきもミーティングで言ったけど、明日の朝、8時に食堂に集合よ。朝ご飯はみんなで食べるんだからね。行動計画もその時に詳しく説明するわ。もし遅刻したら1秒につき10円の罰金だからねっ!」
たった5分の遅刻で3000円も取られるのか。時は金なりというがさすがにレートが高すぎやしないか。懲罰的損害賠償は日本では認められていないんだぜ。
「じゃ、そーいうわけだから。」
俺の抗議をまるっと無視して朝比奈さんと長門を伴い店の奥にずんずん進むハルヒ。別れ際朝比奈さんはかぐや姫もかくやと言うほどの微笑で「おやすみキョン君」と言ってくれたのでこれだけでも出かけた甲斐があったというものだ。今日は安眠できそうだな。朝比奈さんのエンジェルボイスはそんじょそこらの安眠グッズよりも何千倍も心を癒やしてくれる事請け合いだ。
雑誌を買った後部屋に帰還。古泉へ挨拶も早々に自分のベッドに上がり、雑誌を広げた。
「……ん?」
雑誌にはIH団体戦特集と題打たれており、各都道府県の代表校と選手の紹介が、選手の写真や記事の編集者のコメントやら以前の大会の成績やらと共に紹介されていた。選手の写真は大小様々であり、雑誌が特に持ち上げている選手は全身の写真だったり、コメントが長かったりする。そこの長野県のページを開いたときだ。
でっかく写真が載ってる原付とかいう選手では無く、隅の方に顔が判別できる程度の大きさで載っている選手の顔に見覚えがあったのだ。いつ見たかと聞かれればついさっき。
「おや、どうかなさいましたか?」
隣のベッドに腰掛けていた古泉が俺の頭から飛び出た疑問符を察知したらしい。
「いや…さっき、こいつに似ている人物にコンビニで会ってな。」
「失礼」
雑誌を古泉に見せる。古泉は雑誌を一瞥するなり、
「ああ、この方達でしたら、僕たちとも涼宮さん達とも別の棟に宿泊していらっしゃいますね。なにしろ予算上宿泊場所がここしか選択肢が無かったもんですからいつかは邂逅するとは思っていましたよ。実は、代表校同士は試合をしてはならないという大会規定上、宿泊場所が被っているというのは好ましくないのですが、運営に掛け合って許可して貰ったという経緯があります。」
させた、の間違いじゃなかろうかとちらっと思ったが、そんな邪推は無用だな。機関の交渉プロセスに興味が無いわけでは無いが、それは今関係ない話である。
「そうか。ならさっきこいつに会った。ハルヒがなにやらちょっかいかけたらしいんだが…」
ハルヒ、と聴いた途端古泉の声色が変わった。仕事モードってやつか。
「涼宮さんが?……監視対象を増やさなければならないようですね。」
ひょっとして、こいつが異世界人とかそういうオチじゃなかろうな。
古泉はふっと笑みを見せ、
「それはありませんね。IHの全国出場者含む全関係者の身元を調べましたが、不自然な点は何一つありませんでした。全員普通の地球人類ですよ。その点はご安心を。」
じゃあなぜ監視するんだ。
「我々の基準では、涼宮さんと一定以上の関係性が生じた時点でもはやその人物は無関係な一般人ではありません。その人物を少なくとも数年間は監視しなければならないのですよ。涼宮さんの一挙手一投足には必ず意味がある、というのが我々の多数派の意見でしてね。つまりは、涼宮さんが彼女と知り合ったのにも何か理由があるはずである、とこういう結論になるわけです。」
ずいぶんとまぁ…ご苦労さんとしかいいようがないが、全く落ち度がないのにハルヒにちょっかいかけられただけで本人は知らないとしても機関に監視されるハメになったこいつには一応合掌しておくか。されたくも無いだろうがな。
本日は以上です。では。
乙です
エターなっていません。現在麻雀の勉強中です。
ずっと一人で悶々とやっていましたが、私はやふー知恵袋の上級者たち曰く基本のきの字もできていないそうです。
これから先対局の描写を書く際にクオリティが著しく低い物になってしまうと考え、投稿せずひたすらネトマをやっています。何をどう改善すればよいのかてんで見当がつきませんけど、まぁやらないよりはましかなあと思いまして…
申し訳ありませんが、次回更新は未定です。報告が遅れて申し訳ありません。
了解
楽しみにしております
ほ
>>1です。
あけましておめでとうございます。
アニメの二期が始まるタイミングで再開したいと思います。
では。
粋だな把握
了解 後、酉を忘れてるよ…
さて、その後は古泉と二言三言会話してのち就寝。色々慌ただしかった一日も終わった……はずだったんだがな。
なんだろう。最近こんな経験をしたような覚えがある気がしてならないんだが。デジャビュってやつだ。
何がって?今から説明するような状況に読者諸賢ももう飽きたやもしれんが、体験する身になってみると毎度一喜一憂させられるぞ。無論、このポジションはもはや俺固有のモノとなっているので今更譲り渡す気なんざさらさらないがね。
おっと、また話がそれたな。
とにかく順を追って語ることにしよう。
自明の通り俺は就寝したさ。寝る瞬間なんぞ15年間の人生の間に体験した事がないので目を閉じてからどれぐらい経過した後なのかなど知るよしも無いが、とにかく、俺は気がつけば床について居らず、それどころかつっ立った状態でいた。
感覚的に言えば、去年の七夕に朝比奈さんに連れられて三年前のハルヒの落書きを手伝った後、朝比奈さんがTPDDを無くして元の時間に帰れなくなった為に長門の部屋にお邪魔して畳の部屋で朝比奈さんと布団を並べて寝て、電気が消えたと思ったらまた付いた時のあの一瞬。あれに酷似している。
で、あたりを見回すとまず目に入るのが意外に高い天井と照明。電気は通っているらしいな。しかも周りの色が灰色じゃ無い。
まず断定。
ここは例の空間ではなさそうだ。
そして人が3,4人両手を水平に広げ、横に並んで立ってもまだ余裕がありそうな横幅。形状をスパッと言っちまえばティッシュの箱を、長い方の側面を下にして立てたような形をした空間に俺はいた。こういった場合に遭遇する際のユニフォームと半ば化している制服を纏って。ただし夏服な。制服の尻ポケットに入れっぱなしにしてあった携帯電話も存在していた。期待を込めて画面を見つめるも電波は無かったがな。
と、此処まで思っておいて気づくことがある。何がって、この事態に対しては、我ながら淡泊な反応をしているな、ってことだな。免疫ってのがつくとこういう風になるのか。
後ろの壁には自動で開くらしい鉄扉があるが、近づいてもダメもとで引っ張ってもびくともしない。同様のものでさらにデカい鉄扉が側面の壁にもあったが、これは扉の横にカードか何かを当てて認証するための機械がついているのでこれで開けるんだろう。当然カードなんて持ってない。
文字通りこの箱庭に俺は閉じ込められた状態だ。外に連絡する手段は無し。ここから出る手段も無し。去年の夏合宿で遭遇したクローズドサークルとやらのミニチュア版って感じか。完全犯罪を成し遂げるには確かにいい環境かもな。
「うーん…」
状況を確認しても落ち着いていられるのはなんとなくこの先ヤバイ状況になるなんてことがちらりとも俺の脳裏に浮かばないからで、なぜかといえばこの状況下に置いて「俺の中での」現実的な今の状況の原因は二つのどれかしかない。すなわち、夢、またはハルヒ。前者なら勝手に醒めるんだろうし、後者であっても今ひとつ深刻には捉えることができないのだが、やはりこれも一年間ハルヒとツラ付き合わせて徐々にアイツという人間に対して理解が生じてきた結果なのか。
なんでこんな所まで連れてきやがったのかは知らんがね。もっとも、今まで登場したことの無い新キャラが九曜のようにいつのまにか登場していて潜伏期間を終えて牙を向いてきたっていう可能性もなきにしもあらずだが、それならそれでかかってきやがれってんだ。ただし、俺の命はハルヒ、長門、朝比奈さん、古泉によって担保されているぞ。もちろん俺だけに限らずSOS団全員同様だ。迂闊に手を出したら火傷どころじゃすまんぜ。
まぁこんな風にメンチを切っても実際ヤバげな場面に遭遇したら結局俺は冷静じゃなくなるんだろうけどさ。心の準備をしておいた方がまだましだろ。最大公約数的に。
と、突然尻ポケットが振動した。
「おわ?」
我ながら恥ずかしいリアクションを取ってしまい不覚。心の準備はムダであったようだ。
驚いたせいか一時的に手が震え、携帯電話を取り落としそうになりながら開く。メール新着一件。
「ふむ…」
なんとなく送信者は予想がついている。案の定送信者名を見れば前にもみたような文字化け。
受信ボックスを開くと途端に画面が真っ暗になった。以前は長門が昏倒するという非常事態だったこともありかなり慌てたものだが、今の長門はピンピンしているはずであり、さほど危機感は感じていない。
希望を持って画面を見つめれば、画面左上隅白いカーソルが瞬きだし今にも文字を刻もうとスタンバっていることを示していた。
程なくして、カーソルが右へ平行移動。文字を刻み始めた。
yuki.n> みえてる?
奇しくも一年前のあのときと同じ挨拶だな長門。おう。見えてるともよ。ここはどこなんだ。
返信。即座に着信。
yuki.n> 通常空間と重複している異時空間。涼宮ハルヒが力を行使した結果、生成されたものと思われる。
ハルヒ製の空間とな。ということは俺がこんな所に連れてこられたのは九曜のパトロンとか朝倉たち情報統合思念体の過激派どもみたいな俺達の敵の仕業では無いんだな。とりあえずは安心だ。そうだ、ハルヒ製といえば古泉は入ってこられないのか。
yuki.n> 不可能。その空間は彼が侵入可能な閉鎖空間とは異なるもの。
そうか。まぁ今は長門と通信が出来ているだけ、孤立無援って訳でもないからまだ心強いぜ。これから何が起きるのか分かるか。ハルヒあたりが出てくるのか。
yuki.n> 涼宮ハルヒはこちらに存在しており、ベッドで就寝している。
何?ハルヒはそっちにいるのか?
ハルヒが俺をこちらに呼び寄せたならば何らかの形で接触があると考えるのが自然で、去年のあの一件でだってそうだった。
だが、ハルヒは向こうに現存しており、此処には居ないという。貴重な俺の睡眠時間を奪いやがった上、俺だけ此処に放り込んでおいて自分はグースカ寝てやがるのか。
去年の夏休み、クソ暑い中着ぐるみを着て風船を配り歩くという地獄を味わった後、休憩室でダレている時にハルヒがアイスを口にくわえてやってきた時に感じたような憤りを覚える。
なんだって俺をこんな密室に閉じ込めやがったんだ。俺は実験につかうマウスじゃねーんだぜ。
yuki.n> 目的は不明。だが推測は可能。
どういうことだ。
yuki.n> あなたが今いるのは、IHの決勝で使われるステージの入り口。
IH会場?決勝ステージ?
なんでよりにもよってこんなところなんだ。何のために。と思考停止しかけたが、古泉の言を思い出して我に返った。
ハルヒの一挙手一投足には必ず意味がある。
麻雀をやるための場所に連れてきたって事は、当然麻雀がしたいんだろうと思うが…麻雀ってのは四人ないし三人でやるもんだろう。
だがここには俺しか居ない。扉の向こう側に既に居るのかも知れんが俺には入る術が無い。
そもそもだ。ハルヒが向こうにいるんじゃ、自分は参加できないだろう。まさか俺専用の麻雀トレーニングルームとNPCを用意したわけではあるまい。俺が激弱なのは認めるが。
yuki.n> 涼宮ハルヒはおそらくそちらに現出するだろう。前例があることから推測するにおそらくそれは彼女の無意識の具現体となると考えられる。
ハルヒの無意識の具現体。
つい数ヶ月前に聞いた古泉解説がふっと頭をよぎった。
つまりあれだ。いつぞやのヤスミだ。
今回はバレバレな暗号名を冠した存在ではなく、正真正銘のハルヒとして俺の目の前に現れる可能性があるってことか。
それにくわえてだ。
yuki.n> もし涼宮ハルヒの目的がその空間で麻雀をすることと仮定するならば、涼宮ハルヒの周囲の人物が貴方以外にその空間に呼び寄せられていない以上、必然的に他の一般人がその空間に転送されてくる可能性が高い。
俺は頭を掻いた。ついにパンピーを巻き込みやがったか。いや、まだ確定はしていないがその可能性は十分にある。
しかし、そうだとしたら無差別に呼び寄せるなんてことはしないだろう。少なくとも面識があるやつを呼び寄せるんじゃないか。
誰か見当がつきそうなやつは、と考えた瞬間あまりにもあっさりと俺の頭は解答をはき出した。
俺達(鶴屋さん含む)以外でハルヒと面識があって、かつ麻雀をやっている者。
つい先ほど顔を合わせた少女が頭に浮かぶ。
………あの小動物か。ちくしょうめ。何時知ったのか知らんが多分ハルヒは知っていたんだろうな。ヤツがIHの選手であるということを。
yuki.n> その可能性が極めて高い。
俺は嘆息する。IH選手同士は大会期間中は対局してはならないという大会規定は皆が承知の通りである。
おそらく顛末はこんな感じだろう。ヤツと一回打ってみたいけど、俺達が今いる世界ではできない。だから現実でない別の空間をつくってそこでやればいい。
なんつー短絡的な思考であろう。唯我独尊な団長の無意識の発現が久々のお目見えである。
例の世界分裂事件終了後から、ハルヒは去年の今頃のような暴走台風状態とは比較にならないほどに落ち着いた状態(それでも常人を遥かに超すが)を維持しているようだと古泉共々思っていたのだが、いやはや、やはりハルヒはハルヒであった。
しかも長門がいうには問題はパンピーだけではないようで、
yuki.n> 涼宮ハルヒの無意識具現体に、今起こっている事態が自らが見る夢の中以外で起こっていることと悟られてはならない。涼宮ハルヒがそれ以外の認識をしてしまった結果、世界にどのような影響が与えられるのか未知数。
だそうだ。要は、ハルヒが出てくればハルヒの気が済むまで穏便に事を運べとそういうことだ。どのような形であれ、この状況がハルヒによって起こされたものだとハルヒに悟られてはならない。
だが、これはあんまり難しい仕事でもないだろう。俺が身の振り方を注意すれば良いことだ。連れてこられたパンピーどもはどうせ混乱してわけらからん事になるだろうし、あまり問題にする必要は無いだろう。やつらは俺達が抱える背景について何を知っているわけでも無い。
要は、俺が「ハルヒの夢の中の俺」を演じることができればいいのだ。まぁ具体的にどうするかは明確に思いつかんが、余計な行動は慎み、大人しくハルヒに従っていればいいんじゃないかな。
なんか軽く済ませてしまったが、長門がわざわざ警告すると言うことはそれだけリスクが超大であるということだから、気を引き締めてかからないといかんだろう。当然ながらスタッフロールでハルヒに喋らせて解決する手法は今回は使えない。現実と虚構、この二つの区別をハルヒにしっかり保持させるのが肝要だ。
yuki.n> まもなく涼宮ハルヒその空間の周りに構築するフィールドによりこの通信が遮断される。あとは頼んだ。
そうメッセージを刻むと、ディスプレイ上からカーソルは消滅し、俺が毎日飽きるほどみる待受画面へと変わった。俺は携帯電話をポケットにしまった。
あとは頼んだ、か。思えば、俺が長門になにかを依頼されるのなんて今まで無かったのではないだろうか。
なんとも誇らしげな気分になっているのは錯覚ではあるまい。今まで俺は意図的にしろそうでなかったにしろ、長門に頼ってきた。特に去年はな。
俺が長門に何事かを任されるというこの構図は、日頃長門にかかる負担を減らしてやりたいと考えている俺がまさに望むところである。長門は仲間であり、仲間の為に尽力するのは当たり前であろう。もちろん他のSOS団員に対してもそれは例外であるはずは無い。まぁハルヒの場合は命令だが。朝比奈さんの依頼を無下にできる男など太陽系レベルで存在するわけはないし、古泉も…まぁ数には含めといてやるか。いや冗談だ。吹雪の山荘事件での言質もあるし、藤原に佐々木版閉鎖空間へ拉致されたときに登場してくれた時にはずいぶんと心の支えになったことは認めなければなるまい。なあ副団長。
ここから先はペーパーに書いた文章をPCに起こしていないので切ります。また明日投稿します。
乙です
乙!楽しみにしてる
「……え?」
突如、後ろから明らかに女声と思われる声。
思考中断。どうやらお越しなすったようだ。本人にとっては不運にもハルヒと面識を得ちまい、呼ばれちまった今回の客人が。振り向けば、驚愕、恐怖その他様々な感情が入り交じったような表情をした少女が一人。
「あ……」
雑誌で見たそのままの姿、北高のものとは異なるセーラー服を身に纏っている。名前は宮永…何だっけ。まあどうでもいいや。
「あ、あの…」
コイツに対する俺のスタンスを言っておこう。「徹底的にシラを切る」だ。迂闊に情報を与えて余計なインスピレーションを与えるのは好ましくないと考えるからだ。
俺としてはコイツが現状に対して混乱していてくれた方が都合がいい。一般人は一般人のままで居てくれ。古泉理論によるともう一般人じゃないらしいが。
そういえば、というか考慮するのが遅かった気がしないでも無いが、麻雀をするには人員が四人必要なわけで、ハルヒがしようとしているのが三麻でも無い限りあと一人、誰かがまた連れてこられる事が確定しているんだが、はてさて、どうなるのやら。
「ここ…どこだか分かりますか…」
所在なげなその姿が、なんとなく文芸部室に連れてこられた時の朝比奈さんとダブった。といっても彼女は元からハルヒを遠くから監視する任務に就いていて、まさにその対象に直々にかっ攫われてくる事なんて晴天の霹靂だっただろうから、コイツとはバックボーンが天と地ほど異なるんだろうが。
問いかけに対しては純真無垢な表情(のつもり)で適当に返事をしたが、それ以降はお互いに見つめ合ったまま無言。自己紹介とか悠長な事やる流れではないしする気も無い。
俺は最初期の長門と部室に居たときと似たような穏やかでない心境となり、何やら耐えきれなくなって来たので背を向け、ここへの入り口であろう鉄扉の前へ移動した。別に意味は無い。開かないし。…ってあれ。開いた。
扉の向こうは炭坑のような廊下が続いていた。一定間隔で照明が配置されているので明度はこちらの方が上か。とりあえず進んでみようとしたが、
「むっ」
「わぷっ」
久方ぶりに感じる事となったこんにゃくに体ごとぶつかったような感触。全くに不意打ちだったため歩みの速度が緩まる訳もなく俺は顔からまともにダイブし、カルガモの子供のように最初から俺に追随していたらしい宮永も俺の背中で顔を打ったっぽい。つーか近すぎだろ。こいつの自業自得という面が強いと思うが一応謝っておくことにする。
「あ、すまん。だが行けないんだ。ほら」
宮永の方に向き直り不可視の壁に手を突き出して行けないというジェスチャー。鼻を打ったらしい涙目の宮永も理解したようだ。
しかし宮永は別のものを発見したようで、
「あれ…」
つられて廊下に再び目をやれば石を投げて届く距離に人がいた。服装は…宮永のものと同じセーラー服だ。俺はそいつにも見覚えがあった。
さっき見てた雑誌でフィーチャーされていた人物のうちの一人だ。宮永よりずいぶんとデカく載っていたから覚えている。名前は確か…原村とかいったはず。
長門の話には出てこなかったが、こいつもハルヒと面識を得ていたのだろうか。それとも、宮永のチームメイトという理由だけで連れてこられた数合わせなのか。
なんにせよたった今そこに自分が居ることに気づいたような挙動不審ぶりを見せているからして、コイツが今回の犠牲者その二で間違いなさそうだ。にしてもあのサッカーボールみたいな球体はなんだろう。
「のどかちゃん!」
宮永は原村を呼んでいるらしいが、向こうはこちらに来られるのか。ゲーム的に考えれば、こちらから壁を越えることが出来なくても、向こうからは行けるといった選択的透過性を持っているような気がする。
果たしてその通りだった。まるで壁など存在していないかのように原村はこちらへ到達した。こいつが通った後に再び戻ろうとしても無情にも壁は通してくれなかった。
ついでに言うと、宮永の声も向こうには届いていなかったようで、原村は怪訝な顔をしながらこちらに歩いてきた。俺に対する疑念が殆どなのだろうけど。
顔を見て思ったんだがコイツはちゃんと日光を浴びているんだろうな。雑誌がアイドル的に持ち上げるのも頷けるんだが、長門と同等かそれ以上に肌が白い。こいつは吸血鬼か何かか?
ちなみに去年の夏休みでは、俺やハルヒは真っ黒に日焼けしていたにもかかわらず、長門は夏休み前と後で寸分違わぬ肌色をしていた。メラニン色素が家出でもしたのかと思ったほどだ。孤島で見せたアルコールへの耐性といい、さすが宇宙人としか言いようがない。
そうそう、どうでもいいがサッカーボール風の球体は俺の妹が好きそうなデザインの動物のぬいぐるみだった。種類はペンギンだろう多分。
さて、これでハルヒが望んで居るであろう徹麻大会inIH会場を執り行える人員がそろったわけだが、次は何が起こるのか。
ピピッ
全員が振り向いた。無機質な電子音。若干小さめの音だがこの俺達の息づかいさえ良く聞こえる無音空間の中ではいやに大きく響いた。
発生源はおそらくあの巨大鉄扉のあたりか…と見当をつけたとき、
ゴゴゴ…
いかにも巨大なギミックの機械が駆動する音を惜しげも無く立てて、鉄扉がゆっくりと開いた。確かあの扉はカードキーか何かで開くはずであるが、ハルヒマジックにかかればそんなもの赤子の手を捻るが如く、か。呼び寄せた三人がそろったから開いたという事だろう。消失の件で文芸部室にSOS団員が全員そろった時にPCの電源がつく、という長門製脱出装置と奇しくも作動方法が同一だ。
俺は我が意を得たりとばかりに速やかに鉄扉に向かって歩く。二人が少し離れてついてくるのを感じつつ扉の向こうの空間へ。
若干キツめの照明の光が俺の網膜に突き刺さり少し目がくらんだが、徐々に慣れていく。
なんとも広い空間だ。安普請の北高の体育館くらいあるかもしれない。
前方には鉄骨が複雑に組まれたやたら高い土台があり、その上にはおそらく円形の舞台が設置されている。下からじゃ分からないが、多分あそこの上には麻雀卓と椅子が設置されているだろう。俺達のすぐ正面には舞台に上がるための階段があり、その段数をみても舞台が結構高い事がわかる。
やったら手が込んでいるな。テレビで見た地区大会の会場とはグレードが違う。
だが、世間一般の感覚を持っていると自負している俺から言わせて貰うと、たがだか麻雀を打つためにこんな広い空間を用意する必要性がどこにあるんだと言わざるを得ない。
一応出場している身だがもっと言っていいか。アホかと。
古泉サイドとつながりがあるらしい運営者の事は分からんが、こんなことに金と時間を費やすくらいならもっと他にやることがなかったのかと、俺でなくても言いたくなるに違いない。
で、本来なら真っ先に描写するべきだったんだろうが、ステージに登る階段の中腹当たりに、俺が見慣れたセーラー服を着た、両手を腰に当て仁王立ちしている女が一人。ご丁寧に「団長」と書かれた腕章までしていやがる。誰なのかは言わなくてもわかるだろ。
静謐な空間に明るい声音が響く。
「待ってたわ!」
そいつはカンカンカンと音を立て軽快に階段を降りてきて、俺達の前に来ると、ビシッというSEがよく似合いそうなオーバーアクションで俺達に人差し指を突きつけ、
「さぁ、打(ぶ)つわよ!」
キリがいいので本日は以上です。続きは明日。
ここで訂正が一つ。
IH決勝ステージ前の空間への入り口ですが、阿知賀編一六話を見直してみたところどうやら自動ドアではなく観音開きの扉っぽいのです。
ですので本日の更新分ではしれっとドアを押して開いてます。
あとsageて更新している理由は、場面的に地味だからです。
では。
乙です
乙!
おつおつ
すみませんが、体調の方が優れないので明日、今日の分と二回分更新します。
では
把握
大方の予想通り、ハルヒは麻雀をやりたいらしい。最後にSOS団に卓を囲んだのは確か一週間以上前だったかな。ちなみに麻雀マットと牌セットは俺と古泉の部屋に置いてあるからやろうと思えば合宿施設内でもできる。
こいつを見た途端、色々とツッコミたい事項がわらわらと大量に浮かんできたが俺はそれらを強引に飲み下した。例えば?いつからそんなポーズで待機していたのかとか、どうせなら直接この部屋に召喚しろよとかそもそも不法侵入だぞとか。
俺が脳内誤魔化し作業に従事中なのかを感じ取ったのか
「キョン、あんた何かいいたそうな顔してるけど、何かあんの?」
「別に」
即答する。触らぬハルヒに祟り無し。今の俺はハルヒの夢の産物である。俺の言葉からどんな余計なインスピレーションがこいつに与えられてしまうか分かったもんじゃない。未知数というものほど怖いモノはないと実感する次第である。今や現実と虚構の区別は理科の実験で使うカバーガラス並に薄っぺらくて脆くなっている。ハルヒがその渦中に居ちまっているからな。
宮永と原村という不確定要素があるにはあるが、こいつらにカンしては放っておけば害はないだろう。思う存分困惑しててくれ。この事態にもハルヒにもな。ハルヒのコミュニケート手段は同年代には些かハードランディング気味だからより困惑に拍車がかかるかも知れないが。
と思いつつ後ろを見てみれば
「………」
「………」
総員二名、キョトン顔。まぁムリも無いな。
「まぁいいわ。ところであんた咲ちゃんと同じセーラー服だけど、誰?その変なぬいぐるみは?」
ハルヒの視線を追えば、どうやら俺の後ろにいる原村に向けられているようだ。今の言葉で思い出したが宮永の下の名前は咲といったんだったな。知ったところで俺にとっては全くもってどうでもいい情報だが。
無意識に、とはいえ自分で呼んでおいて名前も知らないとは不躾ここに極まれりと言えるだろう。
ということは原村よ、どうやらお前はハルヒの眼中に無かったようだ。あくまでも意識して連れてきたのは宮永だけということか。つまりは俺と同じただの数合わせ。今回一番哀れなのはこいつかもしれんな。
数秒遅れて後ろの原村が口を開きかけたところで
「まぁ麻雀打てれば誰でもいいわ。さぁさ、上に行きましょう!」
遅いと思ったのか早々に見切りをつけて階段へ歩き出す。仕方ないので俺も溜息つきつき、あとに続く。
原村に関してはとことん興味が無いらしい。だったら最初から聞くなよな。と俺で無くてもツッコミたくなろう。
自分で質問したにもかかわらず言葉ぶった切り。相手の意向は完全無視。俺達にとっちゃあいつものことだし、最近では朝比奈さんの人権を少しは考慮するようになってきた兆しが見えてきたので最初期よりも遥かにマシになってきたのだが、それでもハルヒを知らない奴らから見れば不躾極まりない態度に映るだろうな。
「待って下さい」
さすがに機嫌を損ねたのか若干棘のある声でハルヒを制止したのは原村だ。
「私たちはまだ何も言っていないんですが」
以降、ハルヒの原村の激しい激論バトル…とはならない。多少の問答が続く。
しかしいちいち論うと何行にもなってしまうので全て割愛させていただく。一例を挙げるとすれば
「ここには麻雀できる人間が四人いるわ。まぁキョンは弱っちいけど、お情けで数に入れてあげるとするわ。で、あっちには卓があるわけ。とすれば、やることは一つじゃない?」
とかなんとか。俺に対しての失礼なコメントにはこの際目を瞑ろう。
初めは毅然とした態度で果敢にもハルヒに突っかかっていた原村だが、次第にその表情が変化していき、最後には小魚の群れに飛び込んだが四方八方に逃げられ目移りしてしまった魚のような、つまりは何が何だか訳が分からんという顔になっていった。
俺が口で勝てないと思うヤツは今のところ長門、佐々木、国木田、古泉…はなんかプライドが傷つくので除外、そしてハルヒであり、この中ではハルヒは佐々木と並ぶ地位にいる。
佐々木は豊富な知識によって裏付けされた霞ヶ関文学並に隙の無い論理でもって来るが、ハルヒの論理はそもそもハルヒにしか理解できず、粗がないというかそもそも見つけられないものなのだ。
反論の暇を与えないスピードで繰り出される謎理論攻撃には対処法はない。まさしくあれよあれよと言う間にハルヒの要求にうなずかされ、それを実行させられるという寸法だ。いわゆるひとつの根負けってやつかもしれない。
今回もその例に漏れず、あれよあれよという間に二人は説き伏せられ、その場からハルヒ先導の下移動、言われるがまま場決めをし、それに従い席に着いていた。
ああ、俺は全てにおいて黙って従ったさ。
席順は、東家:原村、南家:俺、西家:宮永、北家:ハルヒとなった。
「おいハルヒ、ルールはどうする。」
「もうすぐだし、IHのルールでいいでしょ。25000点持ちで。」
「そうか、で、いつまでやるつもりだ」
「飽きるまで。」
真顔で言い放った。さいですか。
何はともあれ、ハルヒにより強引に眠りを妨げられ、無理矢理連れてこられたメンツによる徹麻大会が、今此処に開幕する。
他の二人は知らんが、俺は別に勝っても負けてもどうでもいいし、気楽にやるけどね。
本日はここまでにします。
次は書くのがちょっと難しい和の視点になる予定です。
乙です
おつ この面子はわからんなー
滞っていてすみません。当方まだ学生であります故、期末試験というイベントがありまして…
めどが立ったら再開します。
了解
私の現実認識を遥かに凌駕した事態が今起こっている。
確かに私は合宿所の部屋の布団で寝ていた筈。
こんなのは創作上の、それこそSFかファンタジーの世界で起こるような事だろう。現実で起こりうるわけが無い。
無いが、非常に現実感がある。夢を見ている脳というのは秩序だった考えをする機能が失われているから、今の私の主観が夢の産物だったとしても此処まで物事を整理して理論的に考えられているということがおかしい。
私の前を歩くのは涼宮さん、という人だ。
すくなくとも、彼女は私や咲さんのような境遇にはないらしい。
突然、私たちと麻雀を打てと迫ってきた。この事態に私も咲さんも困惑し通しで普通の精神状態では無かったというのにそんなことお構いなしに、だ。
言動を見れば分かる。
とにかく自分中心で、他人に対する想像力を持たず、他人の権利を平気で侵害する。おそらく彼女の周りにはそれを許容してくれる人間しかおらず、それが当然だと考えているのだ。自分が周りの人たちにどれだけ迷惑をかけているかなど、考えもしないのだろう。正直に言って私が一番関わりを持ちたくないタイプの人間だ。
訳の分からない論理に従うのは気が進まないが、彼女の精神が未発達だと考えればいくらかマシだ。子供の我儘を聞いてやっていると思えばいい。
そしてこの人の後ろに立っているあの男性、あの人も大概だ。
会った時からこの事態に適応して悟ったように行動している。やりとりから推測するに彼女に近しい人間らしいし、少なくともこの人も普通ではないという気がする。
ただ、会う男性はみな私の事をじろじろ見てくるけど、彼はそんなことしてこなかったからその意味では鬱陶しくなくていい。
伴われるままに場決めをし、席に着く。
モチベーションは高いとは言えないが、麻雀が始まれば話は別。エトペンがあって幸いだった。私が彼女に言いたいことは、全て半荘の結果で示そう。
「おい、ハルヒ、ルールはどうする」
「もうすぐだし、IHのルールでいいでしょ。25000点持ちでね。」
「そうか。で、いつまでやるつもりだ」
「飽きるまで」
……もうコメントすることすら馬鹿馬鹿しい。無視することにする。
「んじゃ、サイをどーぞ!」
言われるまでも無い。
本日は短いですがこれで。
和がちょっとストイックすぎた感じがするかもしれませんが、両親が法曹ということで若干厳めしい感じにしました。
私の印象だと、自分が認めた人間には柔らかな対応をしますが、それ以外の人にはとことん手厳しいイメージです。
例えば、作中で部長を認める発言もありましたが、回想で描かれた出会った当初はかなり悪待ちにつっかかってましたからね。それから実際に部長と何回か闘ったり、大会の結果で示されたりして、自分とは相容れない麻雀をするけど、部長が強い人だと分かって認めるようになった、ってな経緯があったと妄想しています。
それでは。
乙!
確かに和そんな感じするなぁ
乙です
ハルヒの一声を合図に、強引に集められたメンツによる、強引にセッティングされた徹麻大会の幕が切って落とされた。
最後に俺とハルヒが麻雀をしたのはたしか一週間前くらいだったかな。手積みでやっているお陰で牌の扱いの熟練度は一般人程度にはあると自負しているが、自動卓でやるのは初めてなので若干所作がおっくうになるかも知れんが許してくれ。って俺は誰に謝っているんだろう。
はっきり言ってやる気を無くす配牌だったので描写することはしない。ツキの状態の悪いときはツモが縦にしか重ならないとかいう誰かがいっていた言葉の通り、ツモでは牌がトイツにしかならず、漫然と切るを繰り返していたのだが、1mをポンで仕掛けていた親がいたのにうっかりドラの東を切っちまい、ポンされた。オヤマン確定。すまん。
その数巡後、威勢良く河に牌を叩きつけリーチを宣言したハルヒがその宣言牌(無スジど真ん中であった)で親にあたった。子の時のハルヒは何故かいつも上がらないし、またハルヒは絶対にオリないので当然と言えば当然の結果であるが…
「キョン、あんたが鳴かしたんだからあんたが払いなさい」
その負担を俺に集るなよな。さっき自分でIHルールでやるっていったじゃねえか。他人にの失点を肩代わりするなんてルールはどこにも書いてないしそもそもする気も無い。
ハルヒは反論しようと口を開きかけたが、局の最中は機械のように静かだった原村の「あの、早くしてくれませんか…」というどこか棘のある声が効いたのかつーんとしながら払った。
原村のヤツは相当苛ついているようだな。元から激しやすいのか、こと麻雀に関することだけ厳しいのか、あるいは両方か知らんが、そんなんでいちいちイラついていたらこれからもっとそのボルテージが上昇することになるかもしれんな。
さて、局は進んで東一局一本場。ドラは9mだ。序盤は比較的静かに進行し、七巡目で俺にテンパイが入った。
8m2225678s33p(南南南)ツモ7m
先に5678sにくっついたら8m落とすつもりだったが、今回はドラを受ける形になれた。
ソーズの連続形を生かすのも、まぁ待ちの広さという点では勝るかもしれんが、ノミ手じゃちょっと、な。ってことで打8s。
次巡に原村がリーチしたが俺が先にツモった。しかもドラだ。南とドラ一丁で30符2翻、ゴットーだ。一本場だから6本11本だな。しかもリーチ棒のおまけ付き。
開かれた俺の手を見てハルヒが一言
「やっすいわね~」
いいじゃねえか最初だし。ほら、早く6本寄越せ。
あ、そうそう。一応言っておくが、IHの試合においてはハルヒは人の上がりにいちゃもんつけるとかはしないぞ。郷に入れば郷に従えという言葉の通り、ま、フツーのやつらよりはトラッシュトークじみた言葉を発しているかも知れんが他からバッシングを受けるほどしゃべるわけではない。多分、今のハルヒは部室で俺らと打ってる時に近い感覚で打ってるんだろう。
また局は進み東2局。ドラは3p。俺に配牌でピンズが9枚字牌が2枚押し寄せてきた。これはやる気がにわかに出てくる。基本静かにしているつもりだったが、折角だから上がっておきたい。
112446799p36s南西発
だけど少し形が悪いか。3pが鳴ければまだマシか。5pも欲しいな。出来れば赤いな。
ハルヒがいるということは、どうせこの対局に南場はこないんだ。一度しか来ない親番だし、牌効率なんざ無視して高打点を取りに行こうじゃないか。
そう思って、まずは發を捨てた。メンホン?いやいや、もちろんそれもあるが、メンチン、夢はでっかくスーアンやチューレンだ。
が、数巡後のこと。
「ポン」 ■■■■■■■■■■(3p3p3p)
上家がドラの3pをポン。ちなみに鳴かせたのはハルヒだ。
11244がほぼ死にメンツと化した。なんとかして高打点の手を作っていきたいんだが…いや、まて、まだあるぞ。11244を生かせる形が。
すなわち、トイトイかチートイだ。幸い今、149pと南がトイツになっている。鳴いてホンイチトイトイになれば満貫は堅い。チートイならリーチかければ跳ねるかもしれん。
112446799p9s南南西 ツモ7p
上家のポンで回ってきた俺のツモは7pだった。これで5トイツ。安全牌として残していた9s切って攻める。鳴ける牌がでたら即ポンだ。
そして次のツモが6p。我ながら良く当たったと思う。これでメンホンチートイのテンパイだ。さて、余った2pと西、どちらを切るかだが、タンキ待ちは字牌の方が出やすいというセオリーに従って2pを切ってリーチを宣言した。
が、しかし。
「カン」 ■■■■■■■■■■(2222p)
俺の下家、今まで静かだった宮永が俺の切った2pを明カン。親リー相手に明カンとは、かなり思い切ったことをするもんだな。まぁ今回に限って言えば俺の待ちはタンキだから上がれる確率は多くは無いが、そんなこと向こうには分かりっこないし、第三者が状況だけをみたら確実に悪手だと判断するんじゃ無いだろうか。
そう思う俺をよそに、
「ツモ。リンシャンカイホウ。8000」 4567899p西西西(2222p) 6p
リンシャンツモ。あんぐり。リンシャンツモなんて始めて見た。ちなみに新ドラ表示牌は3pだった。そして宮永、お前もピンズ染めだったのか。こういうことに気づかないから俺はまだまだ初心者なんだろうな。いや、それよりも…よく見れば俺は2p切ろうが西を切ろうがカンされれば同じ結果になっていたようだ。残念。
まぁでも、俺の河は明らかに変則手みたいな捨て牌相だったし、それを読んだ上での明カンだったかもしれん。だとしてもかなり思い切った事をしたな。顔に似合わず豪快なプレイングだ。
しかし、3pポンされてもう1枚は表示牌、6pは俺2枚持ち自分1枚使い、9pは俺2枚使い自分2枚使いで実質上がり牌は残りの6p1枚っきりだったっていうのに、よくツモれたもんだ。よっ、ラッキーガール。
「カン」 ■■■■■■■■■■(2222p)
俺の下家、今まで静かだった宮永が俺の切った2pを明カン。親リー相手に明カンとは、かなり思い切ったことをするもんだな。まぁ今回に限って言えば俺の待ちはタンキだから上がれる確率は多くは無いが、そんなこと向こうには分かりっこないし、第三者が状況だけをみたら確実に悪手だと判断するんじゃ無いだろうか。
そう思う俺をよそに、
「ツモ。リンシャンカイホウ。8000」 4567899p西西西(2222p) 6p
リンシャンツモ。あんぐり。リンシャンツモなんて始めて見た。ちなみに新ドラ表示牌は3pだった。そして宮永、お前もピンズ染めだったのか。こういうことに気づかないから俺はまだまだ初心者なんだろうな。いや、それよりも…よく見れば俺は2p切ろうが西を切ろうがカンされれば同じ結果になっていたようだ。残念。
まぁでも、俺の河は明らかに変則手みたいな捨て牌相だったし、それを読んだ上での明カンだったかもしれん。だとしてもかなり思い切った事をしたな。顔に似合わず豪快なプレイングだ。
しかし、3pポンされてもう1枚は表示牌、6pは俺2枚持ち自分1枚使い、9pは俺2枚使い自分2枚使いで実質上がり牌は残りの6p1枚っきりだったっていうのに、よくツモれたもんだ。よっ、ラッキーガール。
うーむ、また連投してしまった…
すごく混雑してたから投稿しなおせ、とのメッセージが出た時は毎回この現象が起きてしまいます…
大した事では無いのですが。
今回はここまでです。では。
乙!
乙です
おつ
ほしゅ
それを見たハルヒは
「へぇ~さっすがね~」
と呟いてから、嫌みったらしいようなニヤリとした笑みを浮かべ、
「まるで、リンシャン牌が何か分かっているみたいね?」
と勘ぐったが、そんな訳なかろう。ハルヒじゃあるまいしな。
といいたいところだが、宮永においてはハルヒが言うようにリンシャン牌が何か分かっている前提でプレイしているのではないかと推察せざるを得ない材料がある。なんといってもハルヒがこいつを呼び出したという事実に尽きる。しかもわざわざ麻雀を打つために、である。まぁ、古泉によって以前その手の打ち手がいるとの講釈を受けていたからこその推察なのだが。
しかも言われた当人の反応が、
「……っ!」
ポーカーフェイスが得意でないのか、小説ならこんな感じで表現されるような明らかな動揺を示す表情をさっと浮かべ、すぐにハルヒから目を反らして牌を流し始めたのである。
十中八九、俺の推察は当たっているのではないだろうか。当たっていたところで現時点ではどうしようも無いのだがね。
さて、俺の親番はあっけなく流れ、宮永の親番である東3局となる。だが、この局では特筆すべきことはなく、ハルヒが終盤に形テンを入れての一人テンパイで流局した。
ここまでの点棒状況は、俺18300、ハルヒ15400、宮永32400、原村34900である。
意外に俺が善戦していないか?確かに満貫の放銃はしたが、一発裏ありカンドラあり、そして赤牌が4枚入りという今年のIHの超絶インフレルールではチーポンと仕掛けても満貫クラスの手が比較的作りやすいし、まだまだ逆転可能な圏内だろう。まぁそれは相手にも言える事で、さらに引き離される可能性もなきにしもあらずだが。
さて、東四局がやってきた。ハルヒの親番である。
予選でのハルヒは、親番でとにかく連荘して対戦相手を飛ばして勝利してきた。たしか親番で一番多くて9本積んだんじゃなかったっけ。
今回も相手が正直やってらんないレベルの和了をしまくってあっさり終わらせてしまうのか、はたまた別の展開が待っているのか。
参考までに予選でのハルヒの暴れようをかいつまんで挙げると、必ず5,6巡目にはテンパイしているし、満貫以下の手を上がっていない。速度と打点が両方高いという理想的な麻雀である。
特徴としては、どうやらハルヒはタンキ待ちが好きらしく、それに伴ってロン和了が多いって事かな。中張牌でタンキ待ちとかザラだ。両スジに引っかかっているから振らないと思って捨てたのが、「はいそれ当ったりー!」となることが多々あった。
もちろん、端牌でのタンキ待ちも多いので、相手に与えるプレッシャーは大きい。タンキ待ちならば自分から4枚見える牌以外は全て当たり牌の可能性が残るからな。
タンキで待っている割に和了がインチキレベル(実際インチキにかなり近似している気がしないでもないが)なので、散々それを見せつけられたら相手も牌を切る毎にビクビクせざるをえないだろう。
それを今回のゲスト二人が知っている様子はいまはなさそうだが…
あとは、メンゼンテンパイ即リーチが全てで、フーロすることが全くなかったってことかな。だから必然的に打点も高くなる。所謂「鉄ポン」や「鉄チー」と人が呼ぶような状況でも決して鳴かず、当然のように必要牌をツモってくるのだ。
現代風の、牌効率を重んじて最速のテンパイを目指す手づくりをするプレイヤーからすればなにやっとんじゃコイツと思われかねないプレイングであるが、ハルヒがやればそれはすべからく和了というゴールに結びつくのだ。
「やーっと親番が来たわねー。気張って稼ぐわよー。」
無意識にとはいえ望んでいたであろう相手と卓を囲んでいるのも相まってか、ハルヒは上機嫌そうだ。こりゃあ南場は来ないかもな。そんなに早く終わらせるのかという気もするけど。
ま、高見の見物といかせてもらいましょうかね。
キリがいいのでここまでにして、また明日投稿します。
乙です
読み返したら間違いがあったので訂正。
>>276の
満貫以下の手を上がっていない という文は
満貫より下の手を和了っていない と読み替えて下さい。
結構重要な間違いでした。すみません。
乙!
「リーチ!」
言ってる側から来た。東四局。3巡目親リー。ドラは西。ハルヒの河は 東北1p(リーチ) で全く読めない。
よほどいい手では無い限り第一打は現物か字牌しか打てんだろう。
と言ってもまだまだ序盤なので、もしこちらもいい手だったらまだ手牌を曲げるときではないので押すが、俺の手はグダグダなのでベタオリ確定だ。ハルヒ相手にオリていても振り込む場面も多々あるんだがな。
ハルヒの次のツモ番である原村は、一発目に掴んだ牌をそのままツモ切りした。それは南だったのだが…
「あ、それだわ。リーチ一発、ドラ二丁で満州!」678m999s345p西西南南 南
なんとまあ、台パンレベルの放銃だ。南は表示牌とハルヒの手の中で3枚なのだから、最後の1枚を一発目に掴んだことになる。
これで原村は三位に落ちた。半荘なんだからまだまだ挽回のチャンスはある、というのが常識的な考えだが、ハルヒが相手となるとそうはいかないだろうな。
そう思う俺をよそに、打ち込みに回った原村の表情は変わらない。いつまでその余裕が続いていくのか。どうなんだろうね。
東四局一本場、ドラは2p。
満貫の放銃でわたし原村和は三位になった。
しかしまだ南場がある。挽回できる機会はあるのでそこまで深刻な事態では無い。
元々、25000点持ちの麻雀は私のホームグラウンドだ。「のどっち」として、このルールで何千局と打ってきた。経験も場数も、同年代の誰よりもあると胸を張って言える。
とはいえ、得点的に劣勢に追い込まれたのは事実。この局はスピードより打点を重視して手作りをする。
当然、他家から先制攻撃が入ったら後退するのは言うまでも無い。
配牌はこうだった。
135679m88p123s南南
配牌イーシャンテン。南をポンすればテンパイだが、ここは一気通貫を狙う。2mと8mが先に入ってくれれば平和もつく。ツモれば7700で裏が乗れば満貫。出上がりなら40符だから満貫確定だ。
最初のツモは8m。頭は南に決め、8pを切った。
それからは手が動かず、ツモ切りが続いた。
中盤、私がツモったのはドラの2p。生牌だ。手が一瞬(といってもコンマ数秒程度だが)止まったが、ツモ切った。
親の捨て牌を見ると、捨て牌には中張牌がバラ切りで、上や下の数字が出ていないことからチャンタ系と読める。三色もあるかもしれない。他家は目立った動きが無いので無視。
涼宮さんは前順から数えて赤5pツモ切り、3p、1p、1pという順に手出しをしている。あからさまな逆切りだ。
遅く出てきたヤオチュー牌ということは、間違いなくあれは関連牌だ。
2pが当たるケースはタンキとカン2pのみ。5pを切っているので、133pに4pを引いて打3pそして、他のどこかが埋まっての34pのダマリャンメン待ちはない。
チャンタ系と読めるし、かつ三元牌も東も序盤に枯れていたのでリーチがきていない以上2pタンキはほぼ無い。
2pタンキが当たるとすれば1223pという形で、既に他の123のメンツも出来上がっている状態だが、このような悪い待ちをわざわざ選ぶような人間には心当たりが一人しか無いので除外。
チートイツテンパイはほぼ否定可能。1pが2枚とも手出しだからだ。もしコレが当たるとすれば、3p手出しで2p待ちのチートイツテンパイが入り、その状態からわざわざテンパイを崩し、次とその次に前にツモってきたのと同じ牌をツモってまた張り直しているか、1pが2枚とも空切りであるという普通そうそう起こらない希有なケースしかなく、こんな事を気にしているようではキリがない。
シャンポン待ちはリーチが来ていないので除外。
そしてカン2pならば、このような手出しはしない。
3p、1p、1pと手出ししてカン2pが当たるケースは、始めに113pと持っていてまず3pの空切りがあり、他のどこかが埋まって1pを切り、次に1pをツモっての空切りになる。空切りであるとすれば最後の3pをツモっていることになり、またドラ表示牌が1pであるから、元々1pは一枚少ない。河を見れば、3pは今の手出しで3枚見え。ワンチャンス。
上記のようなケースが起きる確率はごく低い。
連続で同じ牌をつもる確率は低いし、そもそも空切り自体、相手に余計な情報を与えることになるので通常はしない。捨て牌でチャンタ系なのが見え見えなのにわざわざ引っ張ったヤオチュー牌を空切りするなど、テンパイしていることと待ちの周辺の情報をむざむざ相手に与えていることになる。
ますます相手が13pと持っている可能性は低いと読む。ここは押しの一手だ。
続きはまた明日。では
乙です
乙!
案の定、涼宮さんから声が上がることは無かったのだが、
「ポン」
今まで動きの無かった咲さんが2pをポンして打9mとした。親に対してこれは強い。テンパイが濃厚か。
次の順、涼宮さんは5pをツモ切り。そして次の私のツモは待望の2m。8pと振り替えた安牌を切ってリーチを宣言した。4mも7mも場に出ていないことから、ツモれる可能性は比較的高いだろう。
下家の男性は現物を切った。そして咲さんは…
「カン」
先ほど鳴いた2pをツモって加カン。またリンシャンでツモるのだろうか。相変わらず私の打つ麻雀とはかけ離れた独特の戦術だ。
たとえ役無しの状態からでも無理矢理上がることが出来るのが咲さんの強みといえるだろう。
咲さんのカンが入ると、それを知るものは皆息を止めたように静まりかえり、咲さんが静かに手を伸ばすのを見守る。
そこには誰にも邪魔できないような静謐な何かが存在しているようにも思える。
今回もそれに漏れず、咲さんが慣れた手つきでリンシャン牌に手を伸ば…そうとしたその時。
「ローン! 親倍プラス3本!」
それを妨げたのは涼宮さんだった。蛍返しで手牌を公開。
咲さんがにわかに愕然とした面持ちで涼宮さんを見やる。私も開かれた手を見て愕然とした。
13p12378999m123s 2p
カン2p待ち。私が2pを切った時にロンできていたということに。山越しで咲さんに直撃したのだ。
つまり、意図的な見逃しだ。私からロンしてもジュンチャン三色ドラ1の跳満だったというのに。
私の表情を見やったのか彼女は得意げに、
「先にポンって言われた時にピーンと来たわ。これチャンカン狙えるんじゃ無いかな-ってね。親っぱねと親倍、選ぶなら当然後者でしょ。さ、次々ー」
真顔でチャンカンを狙った、などと言える人間を初めて見た。
どうあれ、彼女は重大なミスを犯している。自らのトップを盤石にするには、私から直撃して私の点数をトビ寸前までにしておけばいいのに、彼女はそれをしなかった。
こんなことは、長期的な目線で麻雀を捉えられない愚か者のすることだ。
麻雀はトップを獲ることが目的のゲームだ。そのために最適な行動を取ることがプレイヤーには求められる。彼女はそのことも理解していないと見える。
いつしか、私は拳を握りしめていたようだ。
このような人間に絶対に負けたくない。
あのとき私から直撃しなかったことを絶対に後悔させてみせる。
書き溜めに入りますので次の投稿は早くて二日後です。では。
おつ
乙です
純チャン三色チャンカンドラ1→7翻(ハネ満)
ここにあと1翻付けるとしたら
ドラ9mにするか1-4待ちのピンフくらいしかなさそう
裏ドラもカンドラもないし(多分)
乙!
>>290からの書き直しです。
咲さんのカンが入ると、それを知るものは皆息を止めたように静まりかえり、咲さんが静かに手を伸ばすのを見守る。
そこには誰にも邪魔できないような静謐な何かが存在しているようにも思える。
今回もそれに漏れず、咲さんが慣れた手つきでリンシャン牌に手を伸ば…そうとしたその時。
「ローン! 親っぱねプラス3本!」
それを妨げたのは涼宮さんだった。蛍返しで手牌を公開。
咲さんがにわかに愕然とした面持ちで涼宮さんを見やる。私も開かれた手を見て愕然とした。
13p12378999m123s 2p
カン2p待ち。私が2pを切った時にロンできていたということに。山越しで咲さんに直撃したのだ。
つまり、意図的な見逃しだ。私からロンしてもジュンチャン三色ドラ1の跳満だったというのに。
私の表情を見やったのか彼女は得意げに、
「先にポンって言われた時にピーンと来たわ。これチャンカン狙えるんじゃ無いかな-ってね。一回上がってみたかったのよねーチャンカン。さ、次々ー」
真顔でチャンカンを狙った、などと言える人間を初めて見た。
どうあれ、彼女は重大なミスを犯している。自らのトップを盤石にしてゲームを終える為には、私から直撃して私の点数をトビ寸前までにしておけばいいのに、彼女はそれをしなかった。
こんなことは、長期的な目線で麻雀を捉えられない愚か者のすることだ。
チャンカンは確かに出現頻度は低い偶然役だ。希少価値があるのは理解できる。しかし同じ一ハンならばドラが1枚あればいいだけの話。今回のIHのルールは赤4枚なので、平均して一人がドラを2枚持つ計算になる。
希少価値などというステータスは対局の結果になんの影響も及ぼさない。
。
麻雀はトップを獲ることが目的のゲームだ。そのために最適な行動を取ることがプレイヤーには求められる。彼女はそのことも理解していないと見える。
いつしか、私は拳を握りしめていたようだ。
このような素人に絶対に負けたくない。
あのとき私から直撃しなかったことを絶対に後悔させてみせる。
なにやら、原村の表情が若干鋭くなったのは気のせいでは無いだろう。静かに気合いでも入れ直したのか。なんだかプライドが高そうだし、先ほどまで相手の手のひらの上にいた、という状況が発生していたという事実自体が気にくわないのかもしれないな。
長門の無表情から情報を汲み取ることSOS団随一(自称)の俺が言うんだから間違いないだろう。
まあそれはさておき、東4局2本場。ドラは9s。ここまで傍観を決め込んでいた俺だったが、こんな配牌を手にした。
西4p9m3s西9p6m9m3s6m4p9p西
理牌して
西西西6699m4499p33s
だ。いきなりチートイを張る形という中々お目にかかれない配牌だろう。何をツモってもチートイでダブリーが打てる。
普通の麻雀ならば喜び勇んでダブルリーチといくところであるが、俺は少し逡巡する。
ハルヒが同卓している状況下でこの配牌が来るということに若干の疑問を感じざるを得ない。
ご承知の通り、物理法則も確率統計の壁も何もかも土星の彼方まで吹っ飛ばし、自らの望みを叶える力をハルヒは持つ。
勝負事において勝利以外の文字がハルヒの頭の中にないことはおわかりだろう。この対局で勝ちたいと思っているなら、それを阻害するような要因など発生しないような気がするのだが…
野球においては、ハルヒが勝ちたいと思っていてもハルヒ以外の俺達個人個人の身体能力も経験も上ヶ原パイレーツの面々に比ぶべくもなかったのであるから、このままでは勝利するのは不可能であった。だから長門特製マジカルバットの助けを借りざるを得なかった。
しかし麻雀というのは、全てがこの卓上で解決するものだ。配牌が積まれるのは純粋な無作為化が行われた上でだ。どの順番で牌が積まれるかなんて、数え切れないほどのパターンが存在する。全ては偶然によるのだ。そこには野球のように人が介在するわけでは無い。機械がすべてそれをやる。ハルヒの力が介在するとしたら、これほど自然に介在するような例は無いのではないか。ハルヒが勝ちを望んだ結果、長門が力を行使して急ごしらえしたマジカルバットや俺の投げた大リーグボールで草葉の陰のニュートン先生にケンカを売るようなことにはならないのだ。いかにハルヒの有利なように配牌やツモが来たって、全てはハルヒの力を知らない者から見たら偶然で片付けられる。ハルヒはもちろん無自覚。徹底的に平穏そのものだ。
で、話が戻るが、俺は果たして上がりにいっていいのであろうか。その結果、どうなることになるのやら。もはや麻雀以外の要素も勘案しなければならない。
ここはハルヒの生み出すあの閉鎖空間に準ずるものらしいし、ハルヒの思うことに添った行動をとるようにしないと元いた世界がおかしくなっちまうかも知れないという話である。
そういえば、麻雀においては「読み」という要素がかなりの比重を占める。今回はそれだけでなく、俺がハルヒの胸中(といっても例の如く無意識らしいが)を読まなければならないわけだ。読む、というよりはこれから先の展開を予想する、といったところか。こんなのは古泉の仕事で俺の本業じゃないって言うのに。
まぁとにかく、それを考えるとだ…
ただ単純に勝負に勝ちたいなら問答無用で相手を吹っ飛ばせばいい。わざわざ俺にこういう機会が訪れるってことは多分偶然じゃ無いと思うわけだ。思えばこのような思考回路自体、ハルヒ達と一年ツラ付き合わせた俺で無いとまず浮かんでこないんだろうな。
ハルヒは多分、今はこいつらに勝つ、というよりはできるだけ長く闘っていたいんじゃないかと思う。
今のチャンカンもその前の満直も、その為の示威行動で、相手に自分はある程度やり手なんだぜと見せつけるためなんじゃないか。
だから、ここで自分がまた高打点を上がったらゲスト二人の点数が減ってますますゲーム続行への道が狭まるから、俺が和了って自分の連荘を止めろと、そういいたいんじゃないか。
さらに言うなら、自分が手加減して相手のトビ終了を避けたと思われるとゲスト二人がさらにのっぴきならない心理状態に陥るだろうから、俺がここで上がって止めろといいたいんじゃないか?
という結論に至ったので、和了りにいくとしようか。そういう背景抜きにしても、こんな大物手、手積みなら積み込みめば容易に出せるが、自動卓ではそうそうお目にかかれるものじゃないし、和了りにいきたいね。俺は。
ここまでにしてまた明日投稿します。では
乙です
乙!
ってなわけで、第一ツモに手を伸ばす。ツモってきたのは8s。待ちとしていいとは言えないが、ダブルリーチが打てないのは嫌なので、西を切って曲げた。
さぁどうなるかと思っていたら、なんと2巡後にツモ。いらっしゃいませ。
「ツモ。4000・2000の二本付け。」
満貫以上の点数を上がるのは久しぶりだな。裏は乗らなかったので満貫だ。
「あーもう。ついてないわねー」
とかなんとかいいながら渋々点棒を払うハルヒ。他の人の目からみたらさっきまで十分ついてただろ。
点棒状況は俺26900、ハルヒ41500、宮永11900、原村19700で、なんと俺が二位だ。たまに行う仲間内の麻雀では古泉と仲よく3位4位と下から数えてワンツーフィニッシュを決めることが多い俺だが、(当然古泉が4位だ)現時点ではかなり善戦しているといってよいだろう。
これで南入。南一局に入る。思い起こせば、半荘なんて打つのは久しぶりで、だんだん疲れてきた。ネトマじゃなくて、リア麻を一回やってみりゃ分かるが、これが以外と疲れる。半荘ともなると所要時間一時間は優に越す。その間相手の河だの自分の手牌だの色々注意しなければならないので、肉体的な疲労はあまり感じなくても精神的な疲労がハンパない。こんなのを年間二千試合くらい繰り返している麻雀プロってのは相当な精神力の持ち主じゃないとやってれらないだろうな。
さて、ここからはダイジェスト版でお送りしよう。
肝心の宮永と原村なのだが、東場とは打って変わって怒濤の攻勢を見せるようになった。
まず原村だが、親番で俺やハルヒから直取りして一気にトップへ。なんと親番で四本積んだ。顔を見るとさっきの吸血鬼顔とは打って変わってなんか熱っぽいような、肌が上気した感じになっている。体調が悪いわけでもなさそうだが、まぁどうでもいいな。
そんな原村の猛攻を止めたのが、そんな原村とは対照的に九曜を彷彿とさせる機械のような玲瓏な表情となった宮永である。伝家の宝刀リンシャンツモを駆使し1万点を切りそうな状態から一気にほぼ3万点近くまで戻した。
場況はまさに宮永と原村のたたき合いという様相を呈しており、俺とハルヒはほぼそれを黙ってみているだけだった。
その宮永の親は原村が軽く上がって流し、とうとうオーラス。南四局が始まる。
ここまでの点棒状況は、俺12600、ハルヒ15600、宮永28800、原村43000となっている。南入とは真逆の状況に立たされているSOS団勢。ひでえもんだ。
だがここからはハルヒの親が始まる。自分が勝利する、という形でこの対局を終えるのに、その辻褄合わせのために理不尽な点棒搾取が始まる気がしてならない。
「リーチ!」
俺に取っては半ば必然にも思えるダブルリーチ。チョンチョンでもってきた牌の片割れを一瞥するやそれを河に勢いよく叩きつけ宣言した。理牌もしてない。完全にマナー違反である。
原村は第一打字牌で、それが南だった。ハルヒのダブリー後第一打南で俺がデジャブを感じた時
「あ、それ当たり。満州!」
ここまできたらやっぱりな、といっていいのかもしれん。原村の一発放銃。重ね重ね理不尽ここに極まれり。
ハルヒが慣れた手つきで王牌に手を伸ばしながらもう片方の手でぱたぱた手牌を倒していく。直後の牌姿はこう。
1p6m中6s南2p7m5s中8m3p4s中
で、ハルヒが裏めくった後理牌して
123p678m4赤56s中中中南
である。よくまあ、見て数秒でテンパイと判断できるもんだ。珍しく裏は乗らなかったので、ダブリー一発中赤で親満である。十分高いな。
打ち込んだ原村の表情は変わらない。まぁまだ一位だしな。次の局に勝負と割り切っているんだろう。
意外にも宮永は、なんか苦しいような、もどかしいようなそんな印象を感じさせる表情なのだが、一位との差が縮まったというのになにに対して思い悩んでいるのか。
まぁ推測しても何の意味も無いんだがな。
続きは明日。
乙です
満州って何
乙!
中国東北部……
>>312
満貫の事をもじった言い方です。とある麻雀のVシネを見ていたらこんな言い方をしていたので採用してみました。
特に深い意味はありません。
オーラス一本場、ドラは西。
ハルヒが親番の局にしては珍しく、静かに進行していく。ちなみに俺はもう何もしない。だってラスることはほぼ確定しているからな。ラスったって別にどうでもいいし。
この状態で俺が着順を一つあげるには跳満を宮永から出上がりするか、倍満をツモるしかない。満貫以上が比較的出やすいとはいえ、ハルヒじゃあるまいしそうそうそんな高い手が来るわけでもないし、ハルヒの邪魔をするのがまずやってはいけないことだと思うので、ここは静観に努めるとしよう。
「リーチ!」
中盤にさしかかってから、ハルヒがリーチ。和了る気はないが一応捨て牌は見ておこうか。
赤5m8p3m6m1p4p3m8p東南1m(リーチ)
うーむ、確かツモ切りが結構多かったから、最初からずいぶんと整っていたっぽい。字牌の出が遅いし、ソーズが切れていないから、ソーズのチンイチか?もしかしたらメンホンチートイかもしれん。何にせよ、一色手絡みが濃厚な変則手っぽい。
メンチンをリーチとか正気かと思われるかもしれんが、ハルヒはどんな手でテンパイしようが必ずリーチをかけるのだ。
このリーチに対して、原村は片スジの5p打ち。強いが、そりゃそうだ。得点的に自分がノーテンだったら一位から落ちるかもしれんからな。何が何でもテンパイ維持に向かうだろう。
宮永は、一発でつかんだ牌を目にするとなにやらぎょっとした顔になって数秒間固まり、それを手牌にしまってメンツの中から選んだであろう真ん中の数牌切り。現物である。なんだ。オリか?ほぼ自分は三着でいいよと言っているようなものだが、そんな姿勢でいいのかIH選手。俺が言うなって?ごもっとも。
その後、ハルヒは上がることなく、流局した。おいおいこりゃあ少しイレギュラーだぞ。ハルヒが親で上がらない局があるなんて。
結果は原村とハルヒの二人テンパイ。ハルヒの手はというと…
「テンパイ。っかー上がれなかったかー」
東1m白9p西1s1p發南9m9s中
一瞬ぎょっとした。国士かよ。えーと北待ちか。場に2枚と、ドラ表示牌で1枚だから残り1枚だったのか。王牌にでも眠っていたんじゃないか。
俺がそう言おうと口を開きかけると、既にそう思ったのかハルヒは王牌を全部ひっくり返している。
しかしそこに最後の北は無かった。
「止められた?おっしーなー」
とか呟きながらボタンを押して牌を流すハルヒ。俺達もそうした。
止めたのは俺ではない。だとしたら残りは後一人。
視線を右へ転じる。
目が合う。すぐに反らされた。
宮永咲。こいつだ。
ハルヒの捨て牌は、赤5m8p3m6m1p4p3m8p東南1m(リーチ)西西發9p5s9p
とても国士には見えない。
ソーズの一色手と見るのが自然じゃないか。
だ。俺も原村もソーズは怖くて打てなく、宮永もソーズを一切打っていない。
ここへ場に3枚切れの北もってきて普通止めるか?
安全牌の中では現物が100%の安全牌で、次いで3枚切れの字牌、2枚切れの字牌と続く。当たる待ちの形が少なくなっていくにつれて、危険度は下がっていくという構造だ。
2枚切れの字牌はシャンポン、タンキしかなく、3枚切れの字牌が当たるパターンは国士しかない。
止められたーとかハルヒは軽く言っているが、俺なら絶対打ち込むぞ。ハルヒの捨て牌ができすぎているからな。
『仕方ない放銃』ってやつだ。
というか…ハルヒの和了が誰かによって妨げられるのって、多分コレが初めてだ。
単なるヤマカンなのか、俺には分からないハルヒからの何らかの気配から国士の匂いを察したのか…
こいつ、なかなか侮れない。ハルヒがご指名なすっただけのことはあるようだな。
書き溜めに入りますので、続きは二、三日後。では。
乙です
>>318の書き直し。
ハルヒの捨て牌は、赤5m8p3m6m1p4p3m8p東南1m(リーチ)西西發9p5s9p
とても国士には見えない。
ソーズの一色手と見るのが自然じゃないか。
だ。俺も原村もソーズは怖くて打てなく、宮永もソーズを一切打っていない。
ここへ場に3枚切れの北もってきて普通止めるか?
安全牌の中では現物が100%の安全牌で、次いで3枚切れの字牌、2枚切れの字牌と続く。当たる待ちの形が少なくなっていくにつれて、危険度は下がっていくという構造だ。
2枚切れの字牌はシャンポン、タンキしかなく、3枚切れの字牌が当たるパターンは国士しかない。
止められたーとかハルヒは軽く言っているが、俺なら絶対打ち込むぞ。ハルヒの捨て牌ができすぎているからな。
『仕方ない放銃』ってやつだ。
というか…東場の俺の和了は特別だから除くとして、ハルヒの和了が誰かによって妨げられるのって、多分コレが初めてだ。
単なるヤマカンなのか、俺には分からないハルヒからの何らかの気配から国士の匂いを察したのか…
こいつ、なかなか侮れない。ハルヒがご指名なすっただけのことはあるようだな。
ハルヒ少牌
乙!
やっぱり、ハルヒはこいつらと長く闘っていたいということなのか。
ハルヒが本気で和了ろうと思っていたのなら流局などという事象は起きないはずだ。
唐突だが、ハルヒの和了という願いのレベルがあまり強くなく、それを引き起こす要因は発生するものの、それの発現はその時打っているメンツ次第、というレベルの願いだった、という仮説を思いついたんだがどうだ?
俺みたいな、相手の河とか手出しツモ切りとか、誰もが得ることの出来る情報でしか卓上の状況を分析することが出来ない、まぁいってみりゃあ凡人には止められないレベルでも、宮永のように、普通のやつらとは別次元にいるような打ち手には止めることが出来る。というレベルの。
というのは俺の想像の飛躍のしすぎか?ハルヒの事情を知っている俺に言わせればハルヒは宮永を試した、といっていいと思う。ここで振り込んで飛ぶような普通のヤツなんかお呼びでは無い…ってな。
もしアレを掴んだのが宮永ではなく原村だったら…どうなっていたんだろうな。
俺は原村も原村で相当な実力者だと思うんだがね。これまでのこいつの打牌をみた印象を言うと、まずツモってから打つのがめっちゃ早い。それでいて非常に無駄が少なく、効率の良い手作りをしていると思った。多分この形でこの牌が来たらここを外す、といったパターンを全て暗記しているんじゃないだろうか。まるで機械だ。
俺が見習うべきと思う場面が幾度もあった。ああ、俺のプレイスタイルは今ネトマで流行っているような打ち方と考えて貰って差し支えないぞ。だからこそこいつの上手さがよく分かる。リンシャンツモで連続で和了する宮永のプレイスタイルは俺にとっちゃあはっきり言って宇宙だ。
だが、少なくともハルヒの眼中に無かったってことは一般人レベルとハルヒにはみなされているんだろうな。
さて、オーラス一本場、供託千点という状況の中で各人の点数は俺11100、ハルヒ28100、宮永27300、原村32500だ。
ハルヒのヤツ、リーチかけなきゃ良かったのに。そしたら原村との点差はもう1000点縮まっていたものを。
千点場に出さなければ、ハルヒがテンパイ他三人ノーテンで流局すればハルヒの勝ちという状況が作れたんだがね。つまり勝ち筋を一つ失ったことになる。勝ち筋とかそういうのをうだうだ考えずに、勝てれば良かろうというのがハルヒ流だが。何せこいつは張ったらリーチして和了って悪かったらオリればいいなどと豪語するヤツなのだ。
今回も、ハルヒは序盤から中張牌をブンブン切り飛ばし、明らかにヤオチュー牌関連の手役が濃厚。俺は基本ツモ切り、原村は序盤の字牌整理の後は普通に手を進めているようで、宮永も同様っぽい。それにしてはツモ切り多めだけど。
中盤にさしかかった頃、ハルヒがまたリーチをかける。
「リーチ!今度こそ上がれるといいわねー」
とかなんとか言いながら、なぜか宮永の方をみてニヤニヤ笑っている。宮永はというと渋面を作っていた。なんとなく、ハルヒがぶーたれている時と同じような雰囲気を感じる。やりたいことがあるのにできない、というような。
ハルヒの河はというと、
6m5m7s3p7p5p4s4m3s(リーチ)
何だこの河。先ほどよりも圧倒的にあからさますぎんだろ。取り敢えず、原村や宮永に振らないようにオリだな。
今のところ、ヤオチュー牌は序盤の字牌整理の時にちらほら出ただけで、未だ大部分は場に出ていない。これはツモ和了されるかな。原村は多分場に複数出ているヤオチュー牌をツモってしまったんだろう。それを手牌にしまってメンツの中ごろからであろう5p切り。こういう場合はその牌タンキの形式テンパイを狙いに行くのがセオリーだ。俺も字牌をツモってきたので形式テンパイ狙いかな。
続きはまた明日。では。
乙です
宮永もツモった牌が危険と感じたのかメンツを崩して現物を切った。ちょうどそれが欲しかったのでポンしてまた中張牌切り。多分これで次の字牌をツモらないかぎりは形式テンパイ維持できる。
その後、一向にハルヒがツモ和了することはなく、各人の河には中張牌が所狭しと並べられていく。大した偏りだ。滅多に起きないような事をいちいち疑ってかかったらキリがないが、ハルヒパワーによるものなのかもしれんな。
そろそろ海底が見えてきた時、牌をツモっていくごとにだんだん表情が何かに怯えるようなものへ変わっていった宮永の手が止まった。何してんだコイツ。
そして、おそるおそるといった様子で緩慢に手牌から出した牌を河にコトリと置いた。キューマンだ。
「やーっと出てきたわね。それよそれ。」
南1p東9p9m西發1s北1m白中9s
へぇー……国士無双十三面ってやつか。
宮永と原村のリアクションは言うに及ばずだが、当然ながら俺は驚かない。
だいたいこいつが本気で願えば毎局天和するぐらい余裕のよっちゃんなのだ。
ハルヒらしい派手な和了といえるな。宮永にはシバ棒一本残さない完璧なオーバーキルである。あとちゃんと理牌しろよ。
「ダブルはないんだったわよね。だったら48000点かしら?」
意気消沈とした様子の宮永に問いかけているようだが当然返事はない。死体蹴りみたいなことはやめとけ。原村も心配そうに宮永を見つめるばかりで反応無し。
俺はついやれやれと言いそうになって口を開きかけたが飲み込んだ。永劫封印したのだこれは。
なんというか…まぁ…とりあえず、これでゲームセット。
短いですが続きは明日。
乙です
ライジングサンワロタ
国士十三面をフリテンじゃない状態で上がったプロいるよね。
ハルヒは満足げな顔で大きく後ろに伸びをしており、宮永は…いや、この状態のこいつをじろじろ見るのはやめておく。一言でいってボーゼンという感じだ。俺から言わせればたかが麻雀に負けただけであんなに意気消沈するほどのことかと思うものの、俺達とは違って本気でIH優勝を目指すガチ勢共はみんなこんな反応を示すのだろうな。。
「ん~…と、飽きたわ!」
そういっていきなり立ち上がったハルヒは
「帰るわ。じゃねー」
とか言いながら俺の横を素通りして階段へ歩き出した。若干テンパる俺。
帰るってどこに。お前の中で今の帰るというワードは一体どういう意味を持つんだ。自分で作り出した箱庭だから出るのも容易だっていうのか。
「あ、そうだ。咲ちゃん?」
階段までさしかかったハルヒは顔だけこちらに向けながら
「多分あんたとはまたやることになると思うんだけど、次やるときはさ」
「あたしと、ちゃんと、闘ってね?」
………
何やら意味深なセリフである。この期に及んで挑発の類いともとれるかもしれんが、どちらかといえば諭すような、そんな口調である。対局中の宮永の姿勢に対し何か感じ取ったものでもあったのだろうか。
「ちゃんと闘え」
このようなセリフを吐くということはハルヒはそう思っていないんだろうが、俺からしてみれば今まで宮永のどこにそんな様子があったのか分からんし、別にそんなこと無かったと思うんだがね。
自分から叩きつぶしておいてその言いぐさはないだろうと思われるんじゃないか。
しかし言われた当人は、うつろな感じでハルヒの方を見ているようだが果たして話を聞いているのか分からん。魂でも抜けたか。繰り返しになるが、負けたのがそんなにヘコむほどのことなのか。
短くてすみませんが書き溜めて明日続きを投下します。
乙です
「それじゃねー」
フリフリと片手を振って、気分良く階段を降りていくハルヒ。黙ってみているわけにも行かないので一応制止しようと俺も立ち上がり、
色々と待て。俺が想定していたようなシナリオとはかなり違うぞ。今までの俺の経験上、視界がブラックアウトしたり、不意に無重力下におかれてぐわんぐわんなったあと現実世界に帰還するみたいな、そんな展開を予想していたのに。俺達を召喚したならそのアフターケアくらい手配しておいてくれよ。それとももっと後にそれは来るのか?
……あーもっと後ね…
そうだな。その可能性の方がまだあるぞ。さっきまで長門と連絡が取れていたんだ。そこまで深刻な事態では無いはず。まだ慌てるには早いか。
若干自分の中で迷走したが、仕方ないことだと思うことにする。謎空間に放り込まれるのは数ヶ月ぶりなんでね。少しカンが鈍ったというか、そんなんだ。
「おい、ハル…」
と言ったきり俺は絶句した。理由は簡単。言葉をかけた対象が、それが届く前に忽然と消失しやがったからだ。瞬く間という言葉の通り、まさしく瞬きで俺の視界が暗くなったその時に消えやがったらしい。デビットさんもびっくりの超早業である。
と、イレギュラーな事象はまだ起きた。何が起きたかというと、ハルヒが座っていた位置に移動して宮永と何か会話をしていたらしい原村であるが、その会話が突如中断。前触れも何も無く原村が言葉を切り、その頭が糸の切れたマリオネットのように下に傾いで停止した。
宮永は「え…のどかちゃん?のどかちゃん!?」とかいいながら原村を揺すっている。まぁ突然こうなったんだから当然の反応だわな。しかし俺は違う印象を感じている。それと同時にアル予感もな。まるで、”どこかでみたような気の失い方”だ。
短いのでsage投稿です。
この先固まってないので固まってから投稿します。
乙です
「お疲れ様です。」
予感は的中したようだな。まぁでも突如背後から声がして一瞬飛び上がりかけたのだが、その声がこの一年間嫌というほど聴いて完全に耳になじんだ野郎の声であったと認識したとたん、俺の脳内での緊張が解けていく。
ゆっくり振り向くと、赤い玉でも不完全な人の形をした赤い光でもなく、もはや日常風景の一部と化しつつある制服姿のニヤケ顔をみとめた。
「やっと来たか。」
「ええ。涼宮さん…まぁ正確に言えばその無意識具現体ですか、長門さんによれば、その存在がこの空間から消失したことで空間にかけられていたプロテクトが解除されたそうで、僕の力でも入ってこられるようになったんですよ。」
そうか。ところでその長門はどこだ。いるんだろ。
「長門さんならあちらに」
古泉の示す先を向くと、昏倒した原村の背後に閉じたコンパスみたいな立ち姿の制服の宇宙人娘。安堵の感情が胸中に広がる。ようやくこの事態に収拾がつくな。
しかしそんな俺と違って宮永は恐慌状態もいいとこらしい。「ひっ」と小さな悲鳴をもらして椅子から弾かれたように立ち上がり後ずさりして長門から離れる。
まぁ、長門と初対面でしかも無表情で突然背後に現れたらそんな反応のようなものは誰でも示すだろうから無理もないか。
あと、朝比奈さんの姿が見えないが。
「朝比奈みくるは合宿所で待機中」
どうやら原村の後頭部に手を当てていたらしい長門は、機械音声のような平坦なイントネーションでこう告げた。さらに、
「現時点より2時間13分45秒前までの記憶をこの人間の脳内から消去した。」
続けて、
「この人間は必要ない。直ちに送還する」
と言った途端、長門の口元だけが八倍速再生されたみたいに目にもとまらぬ速さで動き、原村の姿が一瞬にしてかき消えた。
と、それがよほどのショックだったのか、それとも超常現象ラッシュを前に累積されたビックリ許容量が閾値を突破したのか、去年の夏の合宿で多丸さんのドッキリ殺人現場を目撃した時の朝比奈さんのように、へなへなと座り込みがっくりとうつむいて停止した。古泉が素早く反応し宮永の頭が地面と衝突するのを防ぐ為抱きとめ、そのまま宮永を壁にもたれさせかけた。なんとなく去年の七夕の時に眠り姫と化した朝比奈さんと光景がダブる。
まぁ無理もないだろう。こいつは俺という超絶レアケース一般人ではなく、ただのパンピーだ。ハルヒと出会う前の俺のように、超常現象の類とは無縁の生活を送ってきたのだ。それが目を覚ましたら突然知らない場所にいてなぜか麻雀をやらされ、おまけに今度は突然人が二人目の前に現れ、あまつさえ今度は自分の仲間が目の前から忽然と消失。
宮永のそれは一般人として正常な反応である。若干過剰だと言えるかもしれないが。
でも、夢じゃないんだな。これが。
「心配はいらない。元の場所に…部屋に返しただけ。」
俺であれば、宮永に対して労りの旋律が今の言葉に含まれていることが分かるが、宮永からしてみればぜんぜん安心できないことに相違ない。絶賛気絶中らしいので耳に届いていないだろうけど。一年っぺの時に朝倉に襲われた時の俺ってこんな感じだったっけ。いやここまで極端ではなかったよな…ってこんな事考えている場合じゃねえな。
この状況ををみてまず浮かんでくるだろ。なんで原村をハブって宮永だけここに残したのかってことだ。
言うまでも無く、一番穏便に済ますには、二人とも即座に昏倒させて元の場所に送り届けておけばいいはずだ。では何らかの意図があってそうされたということになる。誰の意図なのかはさておいておくとしてだ。
「今回の対応に関しては、朝比奈さんサイドは既定事項の範囲内だと容認しているようです。長門さんサイドの多数派も然りで、もちろん僕たちもね」
古泉が俺の思考を読み取ったかのように喋りだし、喋りながらさっきまでハルヒが座っていた椅子に体を預け、長い足を組んだ。画になってるのが忌々しい。
長門もいつの間にか椅子に腰掛けており、光景だけ見たら三麻でも始まりそうだが、無論そんなことするはずもない。古泉の専売特許、解説タイムだ。
「ここ最近の涼宮さんが、部室のPCで何をご覧になっていたか、ご存じですか?」
さぁな。麻雀やったのだって一週間以上ぶりだし、このイベントを終わらせた後夏休みに何しようかとか考えていたんじゃねえの。
「それはそれで別の問題になりそうですが、違います」
もったいぶらずに言え。そうするのはもはやお前のクセだという風に割りきってはいるが、だからって無制限に容認するわけねえぞ。
「IHの各県予選決勝戦の大将戦の映像です。我々の所を除いた46都道府県全てのね」
……ははーん、なるほど。確かそこの宮永は大将だったっけ。そう雑誌に書いてあった気がする。
俺達が全国大会団体戦で決勝に行くことはもはや必然と考えていい。そしてまず間違いなくオーダー的にハルヒは大将で出るんだろうなとは思っていたけど、その時点から対戦相手の品定めをしていたってことか。そこで宮永がお気に召したと、そういうことか。
まぁ気持ちは分かる。どんな競技でも、強そうなヤツと一度闘ってみたい、ってのはおそらく誰もが抱く願望だろうし、ハルヒならなおさらだろう。
もっともハルヒの場合はその願望が現実になってしまうと言う点が大いに懸念すべき事項なのであるが。
「その当時は、涼宮さんのその行動を特に僕たちは気にするほどのレベルではないと考えていたのですが、内心そこの宮永咲さんに目をつけていたのでしょうね。もしかすると、合宿所の場所が彼らと一緒になったところから、涼宮さんの無意識の采配が働いていたのかも知れません」
古泉が喋り終わるのを待っていたかのように今度は長門が口を開く。
「涼宮ハルヒは、高校生麻雀競技において唯一自分に比肩しうる存在として彼女を認識していると推測される。それが今回の事態を引き起こした主要因。しかし今回の対局では、彼女が自らの中に潜在している能力の全てを発揮していると涼宮ハルヒは判断していなかったようである」
乙です
あーっとすまん。もう少しかみ砕いて言うと?どういうことだ?
数秒間のラグの後、宮永をちらっと見つつ長門は答えた。
「口語的に言えば、彼女は本気ではなかった、または本気を出せなかった、と涼宮ハルヒは考えている。」
本気ではなかった…ねぇ…
長門にケチをつける訳じゃ無いが、俺は対局中の宮永からそういう消極的な印象は受けなかった。
もちろん、始まったばっかりの時は異常事態への適応が全然出来ていなかっただろうし戸惑い半分でやってたんだろうが、ハルヒに満直喰らったあとの南場なんかまるで感情を失ったかのような無表情でカンカン言ってたぞ。アレで手を抜いていたって言うのか。麻雀において本気出すっていう事が具体的になんなのかと聞かれると詰まるがな。
麻雀で手を抜くってことは、和了れるのにそれをスルーするとか、ぬるい放銃してさっさと場を進めるとか、そういう行動しか思い浮かばないが、ハルヒの思った宮永の手抜きっていうのはどういったものなんだろうな。
「直接本人に聞けば早いでしょう。ね。宮永咲さん。気絶したのは一瞬だけで、僕たちの話は最初から聴いておられたのでしょう?」
一瞬だけ?こいつ落ちてたんじゃ…って、よくよく見れば宮永の顔がなんかぴくっと動いた気がする。
おそらく、宮永は起きるタイミングを見失っていたんだろうな。状況に圧倒されてというか、自分以外の人間があくせく動いててその平穏を乱すんじゃ無いかとかいらぬ警戒をしたりとかで、それと似たような感覚を味わったことは俺も何度もあるさ。
あ、よほど恥ずかしいと思っているのか耳に赤みが差してきた。
どうやら本当に起きていたようで、のそっと立ち上がり、「あ、ああの…ごめんなさい。」とかいいつつこちらに頭を下げた。
その謝罪を古泉はさらっと流し、宮永を席に座るよう促す。これで全員が席に座ったことになる。まるで尋問でもしているかのような構図だ。
で、さっきの話に戻るんだが。
「えっと…その、わかりません。ただ自分が思う通りに打っていただけなので…」
ときたもんだ。
俺達の方を見ず、下を向いて麻雀卓に向かって喋っている。見知らぬ人間複数人を前に自分が音頭をとって話すという事自体に慣れていないものと見える。ここのところは俺も人のこと言えるほど熟練しているわけでもないがね。
それにしても、自分が思った通りに打ってあんなにリンシャンを連発できるって一体麻雀の最中はどういった思考回路をこいつはしているんだろう。
さっきの対局で話を端折った部分では、リーチして一発で掴んだ牌がカン材でそれをカンして4000オールって場面もあった。次のツモが分かるとかならもうそれハルヒクラスじゃねえか。
さっきの国士一点止めもだ、おそらく常人の十人が十人とも打込むだろ。いわゆる一つの第六感ってやつなのか。
「おそらくですがね。その理由も答えも、貴方の中にあるのだと思いますよ」
唐突に古泉。お前はハルヒ専門の精神分析医じゃなかったのか。一般人にも門戸を開いたのか。
そして、珍しく長門が能動的に口を開いた。
「涼宮ハルヒに言われたことについては、熟慮することを推奨する。それが貴方の利益になる。」
言われた当人は二人を見て目をパチクリさせている。そりゃそうだ。知り合ってまだ五分と経ってないやつらにこんな事言われても、高校入学時から今まで経験値が豊富な俺ならともかく、先ほどまで超常現象とは無縁に暮らしていたこいつには急に納得できるわけが無い。
「今の貴方では、涼宮さんに相対することは出来ませんよ。僕の言葉以前に自ら実感したでしょうがね」
時間がないのだろうか。早くも古泉はまとめにかかっているようだ。
「ですから、「あ、あのっ」
古泉の言葉を切ったのはもちろん宮永だ。古泉は若干意外そうな顔つきになった後、子を見る親のような目で宮永を見ている。健気にでも映っているのか。
宮永は若干意思の籠もったような目で古泉を見やりながら、
「あの、内容はともかく、その、どうして私にそんなことを言うんですか……」
古泉はふっと微笑み、
「理由は簡単です」
だな。俺もソラで言えるぜ。
「涼宮さんが全力を出した貴方と相対することを望んでいるから」
「我々から言えることは、この一言に尽きます。」
「あなたが内なる問題に気づき、払拭した上全力で涼宮さんと相対してくれることを祈っていますよ。」
古泉がそう言い終えるとほぼ同時くらいのタイミングで、突然俺達の頭上から一筋の光が差し込んだ。
ちょうど曇りの日に雲の隙間から太陽光が漏れるとそれが光の筋となって見えるだろ。そんな感じだ。
見上げれば、天井や壁、至る所にヒビが入り、そのヒビから真っ白な光が漏れ始めた。ヒビはだんだん放射状に広がっていく。
古泉はそれらを一瞥し、
「さて、もうそろそろこの空間が崩壊を始めるようですね。このままここに居ては、崩壊に巻き込まれてしまいます」
どうやら今回のコレは、あの青白い巨人を倒さなければ出られないというわけではなく、役目を果たせば暫くして崩壊する、というタイプの空間だったらしい。
「では長門さん、お願いしますね」
しかしその言葉を果たした耳に入れていたのかどうか。長門はなぜか俺の方に歩み寄り片手の手のひらを差し出した。
いきなりなんだ。長門が俺に物を要求するなんてこと、坂中の件でのシャミセン以来だぜ。
「かして」
何を。シャミセンなら状態オールグリーンだぞ。
「あなたの携帯電話」
携帯?いいけど、何に使うつもりだ。注射器とかピストルとかに変化させる事はしてくれるなよ。脇腹が疼いてくる。
俺から携帯を受け取った長門は何故か宮永に近寄り、
「手、だして」
言われるがままに手を出す宮永に携帯を手渡すと
「証明」
とだけいって離れた。なるほどね。
なら、俺が言うべきことはコレだろう。
「すまないが、それ、朝のうちに落とし物センターに届けておいてくれないか。別に夜でもいいけど」
めまぐるしい状況変化にどぎまぎし通しの宮永が俺を見てとりあえずといった感じで曖昧に頷く。今のやりとりが記憶から飛んでも、おそらく嫌でも思い出すことになるんだろうな。
空間の崩壊とやらはますます進行しているらしい。何の衝撃も感じないし音だって聞こえないが、少しずつ差し込む光の光量が
「脱出する」
そう言って長門は手を差し上げ、高速詠唱を始める。
その光景を最後に俺の視界はブラックアウト。まるで運転中の脱水機の中に放り込まれたような、これまで何回も経験したアレが来たのち…
次に目を開けたとき、俺は寝間着代わりのスウェットを身に纏っていて、部屋の天井を見上げていた。
本日は以上です。
乙です
乙!
乙!次はいつかなー(期待)
うっ
生存報告です。
生存報告のみです。すみません。
把握
生存報告キター
今日は暇が無いので無理ですが明日は必ず更新します。
モチベーションは尽きていませんが、書く時間が取れないので亀更新状態がいまのところは続きそうです。
了解
いやにあっけなく終わったな、というのが正直な感想である。
払い腰をかけられたかと思ったほど勢いよくベッドから落下した、去年の四月に体験したアレ…あまり引き合いに出したくは無いのだが…に比べればずいぶんと軟着陸したもんだ。
「一仕事終わりましたね。久方ぶりのイレギュラーだったので、少々不安でしたよ」
備え付けられたスタンドの電気をつけながらいつの間にか現れていた古泉は何やらほっとしたような口調である。
まぁ確かにそれには同意する。そろそろ何らかの事態が時候の挨拶でもするかのようにやってくるだろうなという覚悟は一ヶ月前にしていたが、やはり心の準備というものは準備でしか無いわけで、パッと物事の渦中に投げ出されてしまえばアドリブで何でもこなさなければならないことには必ずなる。ましてや常人の思考回路とはかけ離れた思考を持つ団長様の巻き起こすイベントなんだからな。それに今回は無関係なパンピー付きだ。できればもう会いたくはないな。
「いえ、貴方には、これからも彼女と邂逅を果たす機会があると考えた方がいいでしょうね。涼宮さんがあなたを召喚した理由に思い当たりは?」
なんでだ。長門にK.Oされたアイツみたいに、ただの数会わせって事じゃ無いのか。
「簡単な事です。彼女と貴方を引き合わせたかったんでしょう。」
引き合わせ?すまんが俺はこれ以上交友関係を広げることになんの必要性も感じていない。むしろこれ以上は面倒だとすら思っている。俺の交友関係は、SOS団と鶴屋さん、国木田、谷口その他諸々ついでに佐々木で精一杯だ。これ以上はキャパオーバーだぜ。
「言ったでは無いですか。彼女の抱える内なる問題。彼女が全力を出すことができない理由。それを払拭できるのは、あなただと涼宮さんは考えているのだと思われます」
俺はそこまでお人好しではないんだがね。知り合ってまだ体感時間で数時間しか経過していない初対面の女相手に、俺に何をしろと。いくらハルヒでもそりゃあ乱命だろ。できるわけねえ。自分の子供を守ってくれ、しかし子供に器がないならお前が王になれ、なんて主君に言われた諸葛孔明もこんな心境になったに違いない。。
というかだな、そんな問題、チームメイト同士で解決でもなんでもすりゃあいいじゃねえか。何か競技をやっている部活動団体のチームメイトってのは、そういった精神的な連帯があるものなんじゃねえのか。
「いえ、彼らは…少なくとも結束したチームとは言いがたいですね。彼らに宮永氏の抱える問題を解決することはできません」
なぜそれが分かる。いやまぁ大体想像はつくんだが。
「出場全チームのメンバーはもちろん、チームの内情その他諸々の事情までくまなく調査しましたからね。中でも長野県のチームは危うい均衡の上にあります。すこしつつけばすぐに瓦解してしまうくらいのね。」
「ですから、貴方しか居ないのです」
結局そこに帰るのか。
「それが、涼宮さんの無意識の采配、ということですね」
なんともはや、去年の文化祭を見ているようだ。台本はハルヒの頭の中、というか、ハルヒがその場で撮りたいシーンをとってそれをストーリーの文脈も何も無くただ繋げるだけというミッションだったが、今回はそのハルヒすら口出ししないのだ。しかしこうならなければならない、という台本は間違いなくハルヒの頭の中にあるわけで、役者はそれの通りに動かなければならない、って訳か。っていうか俺もその役者の一人か今回は。雑用を志望したいんだがダメか?監督と俳優以外ならなんでもござれ。
「ダメですね。あなたはむしろ去年の僕、主演男優です。主演女優はあの宮永氏、ということになりましょうか」
ハルヒを取り巻く事態の当事者、すなわち主人公のような立場になることを容認してはや半年以上が経っていたが、こういう場面のこの立ち位置は是非とも辞退したい。別に地球外知性とか、未来人組織と張り合うわけではなく、ただのパンピー相手なのだ。
「既定事項です」
いきなりなんだ。一言多いんだよ。しかも、ウインクまでしやがって気色悪い。まさかと思うが、朝比奈さん(大)をイメージしたとか言うまいな。今ので俺の不快指数が一気に急上昇したぞ。
超難易度の宿題をこれから出すぞと予告された心境だ。ヤツの問題を解決できるのは俺だけで、俺がそれを解決しなければ宮永が全力を出すことは難しく、でなければハルヒは満足できない…
しかし考えてもみろ。古泉は分かってて言ってないに違いないが、別にこれを達成できなかったとして、ハルヒが機嫌を損ねて世界がどうこうなんてこと、起きると思うか?
主に去年のSOS団的活動の様式美であった、ハルヒの無理難題またはそれに付随する奇っ怪事を俺達が東奔西走して火消しに回るってのは、放って置いたら世界がどうなるのか分からないっていう危機感が全て前提にあった。
しかし、ハルヒと一年ツラ付き合わせてきた今の俺達は、こんなことでハルヒが機嫌を損ねて世界がどうこうなるなんてことこれっぽっちも考えていない。
じゃあやらないのか、という事になるが…
ハルヒの為に俺自らが自分の意思100%で能動的に動く、ってのは2回目か?1回目は考えるのに四苦八苦したハルヒへのSOS団1周年記念プレゼントの件だ。
まぁなんだ。折角ハルヒの力で東京まで来たんだし、こういう経験をさせてくれたっていう恩義もある。だからまぁ、腕まくりして出て行ってやろうじゃないか。
それからも二言三言会話はしたが、(古泉による精神攻撃で不愉快になったのもあり)さすがにもう寝ようということになってスタンドの電気を消して俺達は各々布団に入った。
古泉によれば現在時刻午前三時である。宮永のやつも今頃目が醒めているのかもしれん。今さっき起きていたことが夢ではない、ということを証明する物が手の中にあるであろうヤツは、今目覚めて何を思っているのだろうかね。考えてみれば、ハルヒが起こす超常現象をパンピーと共有するなんてこと初めてだ。会ったりしたら挨拶ぐらいはしようか。
じゃあ鶴屋さんはどうなんだと言われるかも知れないが、あの人は今のところギリギリのところで無関係という状態を保っている。もしかしたら、すべての事情を理解した上あえて無関係でいるという可能性も無きにしもあらずだが、見ているだけで楽しい、という本人の弁もあるし。
さて、これから何時間寝られるのか。明日もどうせ東京遊覧が行われるんだろうが、余り疲れないところがいいな…と思っているうちに意外と早く俺は眠りに落ちた。
ちなみに、寝る前に制服のポケットをあさってみたが、やはり携帯は無かった。
本日は以上です。
あまりにも今日の更新分は描写があっさりしすぎだなと思っています。
ですが話を進めるためにとりあえず仮という形でこの部分はこのままにしておき、後で時間があるときに書き直したいとおもいます。
それでは、
乙です
乙!
忘れないうちに生存報告です。
把握
突然ですが宣伝です!
ここの屑>>1が形だけの謝罪しか見せていないため宣伝を続けます!
文句があればこのスレまで!
加蓮「サイレントヒルで待っているから。」
加蓮「サイレントヒルで待っているから。」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1401372101/)
まだかよ
「ふぅ...」
夜を徹して書き上げた取材計画と取材事項リストに目を通し終え、わたし西崎順子は大きく伸びをする。時刻は午前3時ちょっと前。人間どころか鳥も獣も寝静まる時間帯だ。といっても、夜討ち朝駆けと俗に言われるマスコミの仕事において、午前3時に終わるのは早い方なんだけど。
たった今、書き上げたと表現したが、実はどの資料にも抜けている項目がある。
そう、兵庫についてだ。
上司によれば、全国大会が始まって間も無く、こんな御触書とでも言うようなものが、全てのマスコミ各社に発令されたらしい。
----兵庫県代表高校に対するあらゆる接触を禁ずる。
聞いたときは思わずあきれた。今が江戸時代で、徳川幕府が出したものならば絶対的な考慮を持つのだろうけど、今の時代にこんな取材制限、許される訳がないと思う。
しかし、この憲法すら著しく犯している乱命は、今のところ全ての関係各所に遵守されている。何がそうさせているのか、誰だって疑いたくもなろうというもの。しかし私の上司もそのまた上司に厳命されただけで、皆がが気持ち悪いほど遵守する理由はわからないという。
今日(厳密に言えば昨日か)の午前に、カメラもレコーダーもメモ翌用紙さえ持ち込まないという条件で入らせてもらった組み合わせ抽選会会場も、異様な雰囲気に包まれていた。
往々の競技において、相手が誰なのかということが決められる抽選会は、緊迫した雰囲気につつまれ、いわゆる強豪高校と呼ばれる学校の抽選結果は、大会の行方を左右する重要な要素だ。極端な事をいえば、弱小と呼ばれる所でも、つよい相手と当たらなければ決勝まで進めることもままあるのだ。ましてや麻雀という競技は運も絡むものだから。
※前の投稿でsage忘れた...
強豪校の抽選結果は、すぐさま速報としてあらゆる媒体で伝えられ、世間を騒がせるものだ。
今回の抽選会もそうだったのだが、会場に居たものしか感じられないであろうこれまでとは違う雰囲気があった。
なにせ、全国屈指の激戦区から、結成間もない麻雀部が、全ての試合をトビ終了で勝ち上がってきているのだから。ついでに、何故か一切報道がされていないというのもある。これで注目するなという方が無理な話。
予備抽選の結果ではなんと兵庫が1番であった。つまり、1番最初にくじを引くことになっていたわけだ。
なぜか、試合の映像では兵庫の代表選手の顔が映っているものがなかったので、会場にて始めてその姿を見たが、中々の美人が3人揃いで、ハンサムなのと普通の男子が2人の、ごく一般的な高校生グループにしか見えなかった。
しかし、各校の関係者たちの中には、彼らを化物かなにかを見るような目で見ていた者たちもいた。
兵庫県代表校の名前が呼ばれると、それまでザワついていた会場が、一瞬のうちに水を打ったように静まり返った。
そして、ずんずん前に進み出る部長らしきカチューシャの女子生徒(多分、涼宮という名前だろう)が乱暴にくじをひき、部員達の元に帰り、そのまま彼らを引き連れて会場を後にするまで、彼女の一挙手一投足に全員が注目していたと感じられるくらい、会場は依然蚊の羽音が聴こえるのではないかと思うほど静まり返っていた。
くじ引きの結果、彼らはトーナメント表の右下、シードでいえば臨海女子がいるブロックとなった。偶然、私の近くに居た臨海女子のメンバーの表情が若干固くなったような気がしたのを覚えている。
今年のIHは、今までのものとは違う-----
ルール変更が発表された大会前の時点からそう思っていたけど、このSOS団とかいう集団が、さらに今年のIHを異色なものにしている。
「まぁ...観る側としては、一悶着も二悶着もあった方が面白いんだけど。」
誰に言うともなくひとりごちる。
記者としては、取材する対象が面白い、というのが何より重要だ。
営利的な意味でも、そして何より、取材をして、それを記事として描く身としても。
私はもう参加者としてIHを楽しむ事はできないけれど、少なくとも記者として、一般人とは異なる立場からIHを見ることができるのだ。
「楽しいIHに、なればいいわね。」
またつぶやくと、私は短い仮眠を取りに、宿泊している安宿のベッドに向かうのだった。
本日は以上です。
乙です
おつ
更新待ってたぜ!乙!
がんばれがんばれ
ちょっと忙しいので、今週土曜日か日曜日に更新します。
了解
すみませんが、投稿は明日の夜にします。
把握
「すまないが、それ、朝のうちに落とし物センターに届けておいてくれないか。別に夜でもいいけど」
めまぐるしい状況変化にどぎまぎし通しの宮永が俺を見てとりあえずといった感じで曖昧に頷く。今のやりとりが記憶から飛んでも、おそらく嫌でも思い出すことになるんだろうな。
空間の崩壊とやらはますます進行しているらしい。何の衝撃も感じないし音だって聞こえないが、少しずつ差し込む光の光量が増加してきている。
「脱出する」
そう言って長門は手を差し上げ、高速詠唱を始める。
その光景を最後に俺の視界はブラックアウト。まるで運転中の脱水機の中に放り込まれたような、これまで何回も経験したアレが来たのち…
目を開ければ、今日から宿泊している部屋の天井と再開を果たす…はずだったのだが。なんだか微妙に模様がちがうような気がするのは気のせいだろうか。一年間とすこし、ハルヒ達とツラ付き合わせて多種多様な体験をしてきた俺の経験を根よとする勘ってのが、何やらコレで一件落着では無いらしいことを警告している。
上体を起こし、周囲を見渡す。
すぐに違和感を感じた。
「すまないが、それ、朝のうちに落とし物センターに届けておいてくれないか。別に夜でもいいけど」
めまぐるしい状況変化にどぎまぎし通しの宮永が俺を見てとりあえずといった感じで曖昧に頷く。今のやりとりが記憶から飛んでも、おそらく嫌でも思い出すことになるんだろうな。
空間の崩壊とやらはますます進行しているらしい。何の衝撃も感じないし音だって聞こえないが、少しずつ差し込む光の光量が増加してきている。
「脱出する」
そう言って長門は手を差し上げ、高速詠唱を始める。
その光景を最後に俺の視界はブラックアウト。まるで運転中の脱水機の中に放り込まれたような、これまで何回も経験したアレが来たのち…
目を開ければ、今日から宿泊している部屋の天井と再開を果たす…はずだったのだが。なんだか微妙に模様がちがうような気がするのは気のせいだろうか。一年間とすこし、ハルヒ達とツラ付き合わせて多種多様な体験をしてきた俺の経験を根拠とする勘ってのが、何やらコレで一件落着では無いらしいことを警告している。
上体を起こし、周囲を見渡す。
すぐに違和感を感じた。
電気をつけていないため、暗くてよく見えんが、机と椅子、電灯はかすかに確認できる。てか、んなもんどの部屋にもある。しかし決定的に異なる要素があった。
それは、俺が今いるここがなぜか一人部屋で、あのニヤケスマイル野郎は影も形もベッドごと消え去ったと言うことだ。室内の構造物と共に古泉が消失するなんて、去年の12月の縮小版を見たような気分だぜ。
「どうなってやが…」
思わず飛び出たつぶやきは、さらなる驚愕によって中断させられた。
喉に手を当て、本番前のアナウンサーよろしくあーあーと声を出してみる……より焦燥が俺の頭を支配し、嫌な汗がじんわり出てきた。
なぜって、喉の振動は感じられるから、俺が声を発しているというのは当然である。しかしその声が、俺が今まで聴いたことがない、全くもって他人の声だったからだ。
ふと目線を視線を落とせば、暗いからよく見えんが、身につけているTシャツや半ズボンは俺の持っているものとは別のものとなっている。
弾かれたように立ち上がり(なんだかいつもより目線が高い気がした)、玄関側にある洗面所へと向かう。一人部屋というだけあって手狭であり、わずか数歩でたどり着く。
残念ながらと言うべきか、ここまで状況証拠がそろい踏みなもんだから、現状がどうなっているのかほぼ見当がついてしまっているのだが、それでも一縷の希望というやつを片手人差し指一本で持つくらいの気概で(要するに九分九厘諦めの境地である)、洗面所のドア前に立つ。
意図していないのだが、ドアを開ける所作が緩慢になる。当然、洗面所は真っ暗で何も見えない。部屋に入り、壁伝いに電源スイッチを探し、一呼吸置いて押した。ポチッとな。古いか。
瞬間、妙な納得と諦めが俺の胸中を満たし、俺は盛大な溜息をついた。だがまぁ、溜息一つで済んだのは、今までさんざん規格外な目に遭ってきたからだと思いたい。
もうおわかりかと思うが、鏡に映っていた俺の姿は、あろうことか数時間前に邂逅を果たしたあのパツキンの野郎だったのだ。
さて、現象を確認したあと、思考するべきは何か。さすがに違う人間に憑依合体するのは初めてであるが、おろおろするほど俺は経験値不足では無い。今から考えるべきは、それが何故行われたのかということと、下手人、つまり誰がやったのかということを考えなければならない。その上、どのような行動を起こせば良いのかということを筋道立てて考える事が、SOS団員には求められるのだ。もっとも、これは専ら古泉の役目だが…
などと考えていると、携帯電話の着信音らしきチャラけたメロディが無音の室内にけたたましく響いた。
探すまでも無く音源はさっきまで座っていたベッドの上の携帯電話―スマートフォンってやつだ―だった。画面を見れば番号非通知だ。こんな深夜に、番号非通知で電話をかけてくる人間が、果たして一般的な高校生であろうこの野郎ええいめんどくさい、今の『俺』の交友関係にあるだろうか。
と考えれば、この非通知着信は誰からかなんて推測するまでも無く、この狙ったかのような絶妙なタイミングで電話をかけてくる人物には心当たりがある。申し添えておくが、アイツがどうやってこのパツキン男の携帯番号を知ることができたかなんて、考えるだけ時間の無駄である。故に俺は考えない。
スマートフォンなんて扱うのは初めてなので少々手こずったが、画面表示をスライドして電話を繋いで間髪入れずに言ってやる。
「古泉か?」
『おや、どなたでしょう?それとも、声変わりでもなされたのですか?』
「ぶっとばすぞ」
『はは、冗談です』
毎度毎度一言多いヤツだ。
『既に状況は確認されている事と思います。今貴方がいらっしゃるのは、我々がいるのとは別の棟のようです。今からそちらに向かいますので、少々お待ちを』
ああ、待ってやるさ。第一俺は死んじゃいないし、生き霊として化けて出てくる程誰かの事を恨んだりしているわけでもないのに、何故よりにもよってこのパツキン野郎に憑依するはめになったのか、アカウンタビリティってやつをきちんと履行してもらわねばな。
本日は以上です。次はもう少し早めに更新できると思います。
乙です
乙!
キョンcv.福潤って結構アリですね
どうかした?
早く
スマホから生存報告です。明後日あたりには投稿したいと思っております。
トリップ間違えました。
了解
生存報告ありがたい
早く来て
生きています。モチベもありますが、日々の業務に忙殺され、書く時間が確保できない状況です。
今週末には投下したいと思っております。
待ってる…
書きためがある程度溜まったので、明日の夜に投下します。
了解
すみません...
更新は明日日曜日の夜にさせて下さい。
電話を切った(これも少々手こずった)後、古泉が来るまでに現状について考えを巡らせておくとしよう。
先ほどまで、俺はハルヒ主催の強制参加イベント、徹麻大会inIH会場に出張り、今しがた無事に帰還を果たしたところである。
しかして、無事に舞い戻ったと思ったら、戻るべき自分の身体がどこの馬の骨とも知らん野郎のとすり替えられていた。
シャミセンの脳内に突如移植されたいつぞやの宇宙ウイルスの気持ちが少しは分かる気がする。
一回なってみりゃわかると思うが、動かしているのが勝手知ったる自分の身体ではないというのは、なんとも言えぬ一種独特な違和感というか、そのようなものを感じる。
それもそのはずで、有史以来、いや、確実に有史以前も含むだろうが、今の俺が直面しているこの現状を今までに体験した人間はいるだろうか。いやない。反語。
そんなことを考えているうち、この部屋の入口のドアが規則正しく三拍子を刻んだ。ドアを開ければ、体感的には数分ぶりの0円スマイルと、その後ろにある能面のような無表情とご対面。
「やあ、どうも。しかし、それにしても…」
「何だ」
また仰々しいセリフでこの事態の深刻さを伝えようとでもしているのかと思いきや、
「まさか、身長的にあなたに見下ろされる日が来ようとは思いませんでしたよ」
なんともこの場に合わぬセリフであるが、思わず俺は破顔した。どういうつもりで言ったのかはわからんが、少なくとも気が楽になった気がする。そして、古泉の後ろで突っ立っている長門がミリ単位のうなずきを返してくれ、俺はひとまず安息を得た。
さて、それぞれが思い思いの落ち着いたところで(なぜか長門は突っ立ったままだったが)、
俺は早速ぶちまけずにいられなかった一番の疑問を呈することにした。
「で、俺は一体何がどうなってこんな有様になっちまったんだ」
発せられるのはやはり俺のものとは違う、俺よりも若干テノールよりの音声。無意識にだろう、若干顔がしかめっ面になるのを感じる。
「ええ、まず現象から説明させていただきますと…長門さん?」
古泉に水を向けられた長門が静かに話し出したところによると…
乙です
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