蓮実「なんてったってシンデレラ!」 (68)

長富蓮実ちゃん誕生日おめでとうSS

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私の趣味は周りの女の子に比べると少し古い。

『ちょっと待ってプレイバックプレイバック♪』

お母さんの影響で、今友達が聞いているアイドルよりも、昭和に活躍したアイドルの曲を好んで聞いていた。

山口百恵、中森明菜、松田聖子、ピンクレディー。カラオケで歌うとみんなはキョトンとするのは一種のお約束だ。それでも彼女たちはまでメジャーな部類。
マイナーと言うと語弊があるけど、今の女子高生が知らないようなアイドルも私は好き。時代に逆行していると言われても、好きなものは好きだった。

昭和のアイドル達の映像を見て真似て踊って。小さなころから漠然と『アイドルになりたい』と思うようになっていた。
だけど私の描くアイドル像は、現代に求められているものとは違うのだろう。

そう思っていた。彼に会うまでは。

「うん、いいんじゃない? そんなアイドルでも」

「本当ですか?」

「それが長富さんの良さを最大限引き出せるならね」

彼との出会いは数分前に遡る。

「??♪」

いつものように古着屋を巡っていた時のこと。

「ああ?日本のどこかに?」

いい日旅立ち。私の好きなアイドルの代表曲。CMだったりカバーされたりで、世間一般においても認知度は高いはず。

「私を待ってる人が」

「あのー、ハンカチ。落としましたよ?」

「いた?」

後ろから声を掛けられる。振り向くとスーツを着た男性がそこに立っていた。

「このハンカチ、貴女のですよね」

彼の手には黄色いハンカチが。これは私のものだ。幸せの黄色いハンカチって勝手に呼んでいたけど、落としていたとは。

「あっ、はい! そうです。すみません、拾ってくださって」

「いえいえ、どういたしまして。ところでさっき口遊んでいた歌って」

「いい日旅立ちですか? この曲好きなんです」

「へぇ、珍しいですね。若いのに百恵ちゃんだとは」

男性はもの珍しそうに私を見ている。そんなに山口百恵を口ずさむ女子高生は珍しいのかな。

「うーん、ダメもとで聞いてみるか?」

何かを考えるように腕を組む。聞いてみるって何を聞くんだろう?

「何がですか?」

まさかこれが世間一般に言うナンパって奴じゃ?

「あのさ! アイドルに興味ない?」

「へ? アイドル、ですか?」

「うん。百恵ちゃんみたいなアイドルに。実はさ、俺こういう者なんだよね」

そう言うと私に一枚の名刺を渡す。CGプロダクション……、芸能事務所?

珍しい
支援

画像先輩が80年代アイドルの写真を拾ってくるスレはここですか?

「あの、アイドルって」

「プロデューサーをやってるんだ。聞いたことない? CGプロダクション。最近所属しているアイドルがCDデビューしたりで結構名前も売れてきたと思うんだけど」

「申し訳ないです。私昨今の芸能事情には疎くて……」

私の時計は30年ぐらい遅れている。だから学校の皆と会話が合わないこともしばしばあった。

「あーそりゃ残念。まぁ後ろめたい事務所ってことじゃないのは理解して欲しいんだけど、えっと名前聞いてなかったね」

「私の名前ですか?」

「うん」

「長富蓮実です。長く富んで蓮の実が咲くって憶えてください。富むって字は上にちょんってついてますからね」

富と言う字が冨と間違えられたり、蓮実の実が美の方に書かれたりと結構名前を間違えられやすいので、初対面の人にはこう説明している。

「長富さんね。オーケーオーケー。さて本題に入ろうか。さっきも言ったけど、俺は芸能事務所のプロデューサー。事務所が大きくなったことを受けて、新しいアイドルを探しているってとこなんだ」
「色々探してみたんだけど、どうもうまくいかなくてね。さっきも婦警さんに追い回されたところだよ」

「それは、大変でしたね」

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長富蓮実(16)

「で、驚くかもしれないけど聞いてほしいんだ。長富さん、うちの事務所でアイドルにならない?」

「へ?」

「要は君をスカウトしているってとこかな。あっ、やっぱり引くよね? 急にそんなこと言われたら。出来れば110番だけは遠慮願いたいんだけど……」

彼は私をスカウトしている。何に? アイドルに。

「私がアイドル、ですか?」

「うん、アイドル。ほら。あそこの街頭テレビに映っているようなアイドル」

彼の目線の先には私と同じぐらいの年齢の女の子たちがキャッチーな歌を歌っている。きっと今流行のアイドル達なんだと思うけど、名前も顔も分からなかった。

「あの子らみたいに、テレビに出たりライブをしたりしてさ。厳しいことも多いけど、その分楽しいことも多いよ。うちの事務所の子らを見てそう思う」

「すみません、どうして私をスカウトしたんでしょうか? こう言ってしまうのもどうかと思いますけど、他にも可愛い女の子はいるはずです」

私は今時の女の子じゃない。ハイカラさんが通るなんて学校で言われているぐらいだ。もちろん蔑称じゃないし、私自身割と気に入っている。

「私は時代遅れな女の子ですから」

だから貴方が望んでいるものとは違うんだ、そう彼に言い聞かせる。

「そうかな? 時代って作ろうと思えば作れるものだと思うよ?」

なのに彼はそんなことを意に介さず話を続ける。

「百恵ちゃんにしろ、聖子ちゃんにしろ。今なお愛されているじゃんか。リアルタイムで見ていない子でも、お母さんやお父さんから受け継がれて彼女たちの歌を知っていく。そしてまたその子供に伝えて……」
「長嶋監督っぽいことを言うと、アイドルは永遠に不滅なんだよね。彼女たちの存在は、何年経っても色褪せない」
「例えばピンクレディー。50歳を過ぎた今でも活動を続けている。あれだけ踊れるって凄いよなぁ」

それは私も思う。私のお母さんよりも年上なのに、今のアイドル達にも負けないぐらいに歌って踊って。生涯現役でパフォーマンスを見せるんじゃないだろうか。

「でもそれは彼女たちだからであって、私は普通の……」

昭和趣味な女の子。そう言おうとするも、彼に妨げられる。

「君なら過去の先輩たちと同じように、何年経っても愛される存在になる。そう思うんだよね」

「どうしてそう言い切れるんですか?」

「うーん、何でだろ。直感?」

「直感、ですか?」

「うん。根拠も何もありゃしないけど、君ならうまくいく。そんな直感が俺の中を走った」

彼の言葉に説得力は全くなかったけど、自信に満ち溢れている彼を見ると、なんとなく私も上手くいくような。そんな気がしてきた。

「君の憧れたステージは決して遠い存在じゃないと思う。そりゃあの頃と比べると大きく変わっているけど、アイドルを愛する気持ちに時代なんてものは無いからさ」

「私、今の流行に乗り遅れています。それでも、ステージに立てるんですか?」

「うん、いいんじゃない? そんなアイドルでも」

「本当ですか?」

「それが長富さんの良さを最大限引き出せるならね」

あっ、レッスンはちゃんとしなきゃダメだよ? と彼は付け加える。

「もし興味があるなら、今から事務所に案内するけど?」

「そうですね……」

話だけでも聞いてみよう。そう思い彼について……。

ピピピピーピーピーピピピ

「あっ」

「長富さん? どうかした?」

「いや、頭の中でモールス信号がリズミカルに……」

「モールス信号?」

男はオオカミなのよ気をつけなさい年頃になったなら慎みなさい

羊の顔していても 心の中じゃ

「オオカミが牙をむく?」

「はい?」

そういうものよ

この人だけは大丈夫だなんて うっかり信じたらダメダメダメ

「ダメダメよっ」

「SOS?」

「はい。乙女のピンチです。お母さんに言われていて……」

パッと見誠実そうな彼が送りオオカミになるなんて考えられないけど、昔の人の言葉は聞いておくものだ。

「まぁ怪しいことこの上ないわな。このまま俺がどこか連れ去ると思っているかもしれないし、そうだ! この住所に来て欲しいな」

「えっと、この近くですね」

「気が向いたらで良いから、訪ねて欲しいんだ。長富さんのことは話しておくから、事務所に来たらプロデューサーに会いに来たって言ってくれればいいよ」

「分かりました。それじゃあ後程伺います」

「オッケー。俺は色々準備することが有るからんじゃまたあとで!」

「はい」

そう言って彼は事務所の方角へと走っていった。

「あっ……」

聞き忘れていたけど、履歴書とか必要になるのかな? 特に何も言われていないから向こうで処理してくれるか。

「アイドルかぁ」

子供の頃は聖子ちゃんごっこに百恵ちゃんごっこと称して往年のアイドルの物まねをしていたっけ。段ボールのステージを作って、お母さんが観客で。
時々お母さんと一緒にピンクレディーごっこやWinkごっこをして。そんな彼女たちと同じステージに立つなんて思ってもなかったな。

「アイドルになるって言ったら驚くかな?」

鼻唄を口ずさみながら、事務所へと向かう。きっと後戻りは出来なくなる。だけど普通から飛び出してみたいと思ってしまったんだ。

「すみません」

「はい、どうかしましたか?」

事務所に入ると緑色の服を着た女性が迎えてくれた。事務員さんだろうか、胸にちひろとひらがなで書かれたネームプレートを付けている。

「私、プロデューサーさんに言われてきた長富と言う者なんですけど」

「蓮実ちゃんですね! 少し待っていてくださいね!」

そう言うと彼女は私を応接間へと案内してくれた。綺麗に掃除された部屋の中にはこの事務所所属のアイドル達の写真が貼られていた。

「全く分かりません……」

売れてきたと言うから、きっと凄い人たちなんだろうけど、いかんせん私は疎いので誰が誰だか分らなかった。ただ一つ言えるのは、やけに年齢層が幅広いなと言うこと。

私と同じぐらいの子もいれば、小学生ぐらいの外国の子に大人の色気を醸し出しているアダルトな方まで色とりどりだ。

「今はみんなお仕事でいないんですけど、そろそろプロデューサーさんが戻ってくると思います。そうですね、楓さんの曲聞いてみますか?」

「楓さん?」

「聞いたことないですか? 我が事務所の稼ぎ頭なんですけど」

どうやら楓さんと言う人の名前は高垣楓と言うらしく、この事務所で1番最初にCDデビューを果たしたんだそうだ。

「上手いですね」

「楓さんうちの事務所で一番うまいですからね。歌唱力だけなら、日本トップクラスですよ」

昔のアイドル達の方が歌が上手かったなんてことをよく聞くけど、彼女の歌声はそんな風潮を吹き飛ばすぐらいのものだった。今のアイドルはダメだ! なんて言う人も、この歌を聴くと考えが変わることだろう。

「あっ、そろそろプロデューサーさんが帰ってきますね。それじゃあ後は彼に任せますので!」

「おっ、お早いお着きで。来てくれてありがとう。信じていたよ」

ちひろさんが足早に部屋を出たと同時に彼が入ってくる。両手には何やら大きな荷物を持っているけど、何だろう。

「あっ、これ気になる?」

「はい。少し目立っていますし」

「まぁこれは後のお楽しみってことで! それじゃあ面接始めるかな」

「履歴書持ってきてないんですけど」

「大丈夫。こっちで簡単な質問内容を用意してるから。本格的にデビューとなれば、プロフィールカードを作成してもらうことになるけどね」

「プロフィールカードですか?」

「こういうのね。アイドルの情報をまとめた名刺みたいなもの。HPとか見ても載ってるよ」

彼が見せてくれたのは外国人の子のカードだ。メアリー・コクラン……。アメリカ出身アイドルとは、なかなかグローバルな事務所みたいだ。

「11歳でアイドルって凄いですね」

「年齢層も広いからねこの事務所。下は11歳、上は今年の12月で31歳。下手すりゃ親子レベルの年の差だもんな。まあこれは良いや」

あっさりと流されたけど、31歳のアイドルと言う言葉に衝撃を受ける。その差20歳。同じ事務所と言うことは、レッスンもステージも同じと言うこと。
一体どんな事務所なんだろう……。

「それじゃあ面接始めるか。まずはそうだな、簡単な自己紹介をお願いしようかな。長富さんのこと名前と昭和のアイドルが好きってことだけしか知らないし」

「分かりました。長富蓮実です。年は16歳、誕生日は3月19日です」

「あらま、昨日だったのか。おめでとさん」

パチパチパチと拍手を貰う。

「ありがとうございます」

「そうと知っていたら何かプレゼントを買ってたんだけど、残念だ。それでそれで?」

「えっと。趣味は古着屋巡りとボウリングです」

とりわけボウリングに関しては少し自信がある。母の英才教育の賜物だ。

「意外な趣味だね」

「そうですか? 母の影響が強いんですけど……」

「お母さんか。そう言えば昭和のアイドルにハマっているのもお母さんの影響だったよね」

「はい、そうです」

「今の長富さんはお母さんの影響を受けまくってるってことか。あっ、それが悪いってわけじゃないよ?」

慌ててフォローを入れる。確かに彼の言うとおり、私と言う存在は母親によって形成されたと言っても過言じゃないだろう。

「長富さんがお母さんのこと好きなんだろうなってのがよく伝わったし。それじゃあ次の質問、こんなアイドルになりたい! って言うのはあるかな?」

聞くまでもないかも知れないけど、と悪戯っぽく付け加える。

「憧れたアイドルはたくさんいます。百恵ちゃんに聖子ちゃん、キョンキョン。数え出したらキリがないです。でも彼女たちに共通しているのは、世代を超えて愛されているということ」
「私も彼女たちのように、いつまでも愛されるアイドルになりたい。そう考えています」

「いつまでも愛されるアイドル、か。良い目標だと思うよ。キミらしくてね」

「そうですか?」

「うん。まぁ質問はこんなところで良いかな」

意外だった。もっといろいろ突っ込まれると思っていたのに。

「スカウトした時点で採用通知しているようなものだしね。後は長富さんの気持ちだけだったんだ」

「私の気持ち……」

「アイドルってさ、華やかに見えるけどその裏じゃ凄く大変なんだ。白鳥って水面下で必死にバタ足してるでしょ? アイドルも同じだ」
「それは長富さんが挙げたアイドル達だってそう。いいや、アイドルに限ったことじゃない。歌手だってなんだって、スターの座をつかむために泥臭く頑張っている」
「それでもアイドルとして大成するのは一握りだけ。スカウトしておいて何を言うんだ! って思うかもしれないけど、
アイドルとして活動していくのなら覚悟しておいてほしい」

彼の言葉は厳しいもので、私がアイドルに対して抱いていた甘い幻想を一瞬にして打ち砕く。
彼女たちはプロだった。だからテレビの中では苦労なんて一切見せず私たちを楽しませる。それがアイドルと言うもの。
だけど私は、それでも憧れのステージに立ってみたいと思った。
どうしてかは分からないけど、目の前にいるのが彼だったから。そう思うと不思議と勇気が出てくる。

「プロデューサーさん。私頑張ってみようと思います。厳しい道のりかも知れません。でもきっとその先には素晴らしい光景が待っていると思いますから」

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メアリー・コクラン(11)

これは私にとって、初めての大きな決断だった。小さな一歩に見えても、私にとっては月に足跡を残したような大きな一歩。

「よし、その気合が有れば大丈夫だね。長富さん、俺はまだ頼りなく見えるかもしれないけど、約束するよ。歴代のアイドル達に負けないぐらい。君を輝かせるって」
「だから信じて付いて来て欲しい。よろしく、蓮実」

「! こちらこそよろしくお願いします!」

約束を強く結ぶように固く握手を交わす。こうしてアイドル長富蓮実は誕生した。

「良く似合ってますよ!」

「そうですか? 嬉しいですね」

「俺もビックリだったよ。まさかオーダーメイドって言っても良いぐらいにピッタリな服が有るなんて」

契約を済ませた後は、ちひろさんに従って身体測定と衣装合わせをする。どうやら彼の大量の荷物は私のステージ用の衣装だったらしい。
柔らかいクリーム色の服はどこか懐かしく感じて、鏡に映る私は昭和のアイドルを体現したような姿だった。

「昭和らしさと今時の女の子って言うバランスを上手いこと取ったつもりだよ。古臭すぎず、かといって派手すぎず。蓮実だからこそ魅力を引き出せる衣装ってとこだね」

「これが私かぁ。ふふっ。透明人間っ現る現るっ♪」

記憶に残っているアイドルのダンスをその場で踊ってみる。何年振りかだったので体は上手く動かなかったけど、やっぱり歌って踊るのは楽しい。

「透明人間ってあの服結構エッチですよね」

「用意しようか?」

「そ、それは結構です」

この世の奇跡と言われることは全てが透明人間の仕業らしい。
スプーンが曲がるのも透明人間の仕業。
おみくじで普通しか出ないのも透明人間の仕業。
何もしていないのにファンが減るのも透明人間の仕業。

だから私がこうやってアイドルになったのも、透明人間の仕業だ。

「消えますよっ消えます消えますっ♪」

「上機嫌ですね蓮実ちゃん」

「やる気にあふれているって感じですね。ダンスとビジュアルはこれからですけど、歌声は透き通っていて聞いていて心地良い。楓さんのようにボーカルを武器に活動方針を立てますか」

事務所から帰った後、母にアイドルになったことを話した。最初は流石に面食らっていたけど、自分の娘がアイドルになると言うことが余程嬉しかったのか、
どこからともなく家庭用カラオケを持ってきて、私を巻き込んで一晩中懐メロを歌い明かした。

「まさか蓮実がアイドルになるなんてね。私も鼻が高いわ」

「まだ始まったばかりだよ」

「大丈夫でしょ。なんたって蓮実はアイドル英才教育を施しているんだから」

昭和のアイドルばかり聞かせていたのも英才教育の一環だったのだろうか。とりあえず感謝した方がいいのかな。

>何もしていないのにファンが減るのも透明人間の仕業。

透明人間のせいだったんですかみくにゃんのファンやめます。

「こんな感じで良いかな?」

事務所に向かう道で、昨日書いたプロフィールカードを見直す。今日は他のアイドル達との顔見せだ。
プロデューサーさんからどんな人たちが所属しているか事前に聞いているけど、そろいもそろって曲者ぞろいだ。

上手くやっていけるか心配だけど、昭和トークが出来そうな人が3人ほどいるのが救いかな。

長富蓮実

年齢 16歳
身長 161cm
体重 45kg
BMI 17.36
3サイズ B:83 W:56 H:85
バストサイズ D
誕生日 3月19日
星座 魚座
血液型 A型
利き腕 右
出身地 島根
趣味 ボウリング、古着屋巡り

幼い頃からの夢の一歩を踏み出して胸がいっぱいになる。だけど私はまだまだアイドルの卵。それでも、彼とならトップアイドルを目指せると信じている。

「よしっ」

気合を入れて事務所へ初出勤。不安と期待を抱いて、ドアを開ける。

とりあえず今日はここまで。
最初は蓮実ちゃんがひたすら昭和の歌になぞらえたギャグを連発するSSの予定でしたが、ネタが浮かばなかったので普通のSSになりました。

あまり長くなり過ぎないようにします。のんびり待っていただけたら幸いです。

最後に蓮実はもう17だから〜誕生日おめでとう

昭和と言ったら安部さんくるで
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プレイバックPart2 山口百恵
http://youtu.be/VUeBkl687lQ

いい日旅立ち 山口百恵
http://youtu.be/8plYNvu-jTY

SOS ピンクレディー
http://youtu.be/KeC3Ie0EuTk

透明人間 ピンクレディー
http://youtu.be/JHbxvd09stw

一応ネタにした曲も貼っていきます。続きは今日の夜にでも

美穂SSの人キタ!今回も楽しみにしてます

「ようこそ事務所へ! みんなもう来ているよ」

ドアの先には相変わらずスーツ姿の彼がいた。話を聞くに、所属アイドルは全員そろっているらしい。

「プロデューサー! その娘が新しいアイドルなの?」

ひょっこりとプロデューサーの後ろから金髪の異邦の少女が顔を見せる。彼女は昨日サンプルで見せて貰ったプロフィールカードの子だ。
えっと、確か名前は……。

「こら! 待ってなさいって言ってただろうが!」

「ねぇ! アナタ名前何って言うの?」

プロデューサーの言葉を無視して私に話しかける。名前がパッと出てこないけど、とりあえず私だけでも自己紹介しないと。

「長富蓮実です。よろしくお願い致します」

「ハスミね! 良いわ! アタシメアリー! メアリー・コクランよ!」

確かそんな名前だったっけ。失礼なことかもしれないけど、横文字の名前を憶えるのは苦手だ。
子供の頃はテレサ・テンとジュディ・オングを間違って記憶していたっけ。一応アグネス・チャンは間違えなかったはず。

「ハスミはこのオフィスで一番の新しいんだから、センパイであるアタシに何でも聞きなさい!」

「たかだか2か月先に入社したぐらいで威張らないの! 蓮実もあんま気にしなくていいよ?」

そうは言うけど、私は右も左も分からない状態だ。

「いえいえ。先輩には変わり有りませんから。よろしくお願いしますね、センパイ」

「そ、そうよ! 分かってるじゃない! シャテイにしてあげてもいいわ!」

「はいはい、良かったね。飴ちゃんあげようか?」

「もう! 子ども扱いしないでヨ!」

「ははは、悪い悪い。んじゃ、アイドルの皆を紹介するから入ってきてくれ」

部屋の中には写真で見たアイドルたちが。艶めかしく大人な女性に、ハイカラな金髪の女の子と揃いも揃って個性が強い。
時代が時代ならみんな似たような髪型だったのに。やはり私の中のギャップは簡単に無くなりそうにない。

「コホン! ではまずCGプロダクションにまたアイドルが入社したんだ。蓮実、自己紹介を」

「はい。長富蓮実、16歳です。まだまだ未熟者で皆様にご迷惑をおかけするとは思いますが、よろしくお願いいたします」

「今日から一緒に活動していくメンバーを紹介するか。昨日渡した資料に目を通して貰ったと思うけど、自己紹介は重要だからね。んじゃそうだな。同い年の唯から」

プロデューサーに言われて、帽子を被ったハイカラな女の子が手を上げる。不良さん?

「ちゃーっす! ゆいでーす!」

「ちゃーっす?」

聞きなれない言葉だったので思わず?を付けて返してしまう。ちゃーっす、なんのことだろう?

「そこ、素で返されたらリアクションに困るって! 軽く行こうよ、軽く」

「軽くで良いんでしょうか?」

目指すなら本気で行きたいんだけど、もしかしたら私は難しく考え過ぎなのかもしれない。彼女ぐらい緩い方が良いんだろうか。

「そうそう! アイドルは軽く本気で! それがゆいのモットーだから!」

どうやら仕事に対しては真剣みたいで少し安心する。

「キャッチコピーみたいなものですか?」

「まぁそうなるのかなプロデューサーちゃん」

「そこで俺に振られても」

「そーゆーとこ。よろしくね!」

悪い人ではないと思うけど、私の交友にはいないタイプの子だから仲良くなれるか少し心配だ。
昭和のアイドルの話題を出しても古臭いとか言われそうで。

「趣味はカラオケ! ハスミンはどんな歌歌うの?」

「ハスミン?」

「あだ名だよあだ名! 蓮実でハスミン。呼びやすくていいでしょ? つーことだから!」

ハスミンなんて呼ばれたのは初めてだ。それも会って5分もしていない女の子に。

「で、カラオケで何歌う?」

「カラオケですか。そうですね、聖子ちゃんとか……」

「聖子ちゃん?」

言って気付く。彼女からすれば、松田聖子は親バカな元アイドルと言う印象しかないはずだ。きっと変な顔をされる——。

「聖子ちゃん? プロデューサーちゃん、今流行のアイドルに聖子ちゃんっていたっけ? 聖とか聖來とかなら聞いたことあるけど」

「プロデューサーちゃん。今流行のアイドルに聖子ちゃんっていたっけ? 聖とか聖來とかなら聞いたことあるけど」

「松田聖子だよ、聞いたことない?」

「あー知ってるよ! はいはい、その聖子ね。ゆいも歌うよ?」

「へ? そうなんですか?」

意外な返答にポカンとしてしまう。そんな私に気付いていないのか、大槻さんはぺらぺらと続ける。

「カラオケ行ってるとさ、色んな曲を聞くんだよね。松田聖子って別におかしくなくない? ゆいあの曲好きだよ? 青い珊瑚礁とかさ。夏っぽくていいよね!」

「! その曲私も歌います! 青いなら、蒼いフォトグラフもおススメです!」

「そうなの? また今度歌ってみるね! なんだ、結構話せるクチって感じ? ハスミン今度カラオケ行こうよ! ひたすら歌合うって超エキサイティン! みたいな? つーか今から行こっ!」

「こらこら、勝手に話を進めない。また別の日に行きなさい!」

「あっ、プロデューサーちゃんも参加だかんね?」

「俺もかよ!」

「ふふっ、そうですね。今度一緒に行きましょう」

「約束だかんね! 後でメアド交換しよっ!」

想像もしていなかった。私と対極の存在と言っても良い大槻さんとカラオケに行くことになるなんて。こんなに仲良くなれるなんて。
これも透明人間……、じゃなくてアイドルの魔法なのかな。きっと、大槻さんとは仲良くなれる。そんな気がしていた。

「んじゃ次は」

「はいはい! ここであずきの自己紹介大作戦だね! 名付けてプランJ!」

何故か事務所で着物を着ているお団子の女の子が手を上げる。もしかして私服なのかな。これはこれでハイカラさんだ。

「どれだけプランが有るんだか。この子は桃井あずき、何かと作戦名をつけたがるお年頃だな」

スパイ大作戦とか怪奇大作戦みたいなものかな。

「酷い! 折角最高のプランを考えてきたのに! しかも自己紹介されちゃった!?」

信じられない! と言いたげにプロデューサーに反論するけど、いつものことなのか彼は全く気にしていないみたいだ。

「それはおいおいで良いだろ? 時間も押しちゃうし、そんじゃ次はレナさんお願いします」

「初めまして、お嬢ちゃん。私は兵藤レナ。よろしくね」

お嬢ちゃん、か。凄い余裕を感じるな。見たところ20代後半だろうか? 大人の魅力に溢れていて、スタイルが良い。

「レナさんは元ディーラーって言うちょっぴり変わった経歴の持ち主なんだ」

「あれ? ディーラーって、カジノは日本で出来ないんじゃ」

「ああ、昔ベガスの方でちょっとね。そこそこ名の知れた美人ディーラーだったのよ? どう? 勝負してみる?」

そう言って胸元からハートのエースを見せる。中々出てこなくて、このままじゃやめられないと評判なのに。
ディーラーからアイドルというのは、異色の経歴の持ち主と言わざるを得ないけど、和声プレスリーと呼ばれた本郷直樹も自衛隊出身だ。

これまでどうして来たかって言う経歴は重要じゃないんだろう。大切なのはアイドルとして輝きたいという気持ちじゃないかな。
そのうち看護師アイドルに婦警アイドルだなんて変わり種も増えてきそうだ。

「さて、そちらの方が志乃さん……、おーい。志乃さーん」

「ふぅ。あら? お客さんかしら?」

「いやいや、新人アイドルです!」

もしかして志乃さんって今グラスでお酒飲んでいる人のことかな……。

「志乃さん、飲み過ぎはダメって言ったじゃないですか。自己紹介お願いします!」

「ふふっ、慌てちゃダメよ」

「あのですね、今日はレッスンが入ってるんですよ? またダンスレッスン中に倒れても面倒見ませんからね?」

「それは困っちゃうわね」

「でしょ? だから自己紹介お願いします」

恐らく彼女がプロデューサーが言っていた最年長のアイドルだと思う。彼女の前ではプロデューサーも可愛い年下の男の子。私相手には余裕を見せても、志乃さん相手にはタジタジだ。

「柊志乃よ、よろしくね」

「よ、よろしくお願いします」

「趣味はお酒を飲むこととワインツーリズム。飲んで飲んで飲まれて飲んでが私のモットーよ」

「それ、アイドル関係ないですよね!?」

静かに眠るまで飲むつもりなのだろうか。

「ぶっちゃけると素面のところ見たことないんだよなぁ……。まぁそれはさておき」

今さらりととんでもないことを言わなかった?

「そして彼女が、うちの特攻隊帳の高垣楓さん。CDデビューも果たして、去年は色んな賞をもらった実力派アイドルだよ」

「ふふっ、よろしくね」

「こちらこそよろしくお願いいたします」

ふんわりとした髪からは優しい香りがして、なんとも不思議なオーラを身に纏っている。

「……」

「?」

黙りこくってどうかしたんだろうか。

「柊さん。お酒の飲み過ぎは肝臓にいかんぞう。ふふっ」

えっ?

「あー、うん。面食らうよね。楓さん、美人で歌が上手くて完璧なんだけど、ダジャレが好きと言うかどこかとぼけているというか……」

見た目に寄らずフランクな方、って認識で良いのかな。

「で、さっきメアリーは自己紹介してくれたし、うちの事務所のメンバーはこんなとこかな」

予想していた以上に個性の強い面々だ。でも悪い人たちじゃなさそうだし、この事務所で上手くやっていけると思う。

「他のスタッフだけど、社長がいて、ちひろさんは事務員で色々フォローしてくれている。アイドルのケアだったりと万能選手だな。ちょっとお金にがめつい所が有るけど」
「後はレッスンを見てくれるトレーナーさんを外部で雇っているんだ。今日はトレーナーさんへの顔見せの意味も兼ねてレッスンになっている。ジャージとか持ってきた?」

「あっ、はい。大丈夫です」

事前に言われていたので学校のジャージを持って来ている。いよいよ本格的にアイドルとしての活動が始まっていくんだ。
そう考えると、私の心は赤く火花散らしてもっともっと! とア・ツ・ク熱いビートを鳴らし出す。

ステージに立つ前からこれなんだ。本番を迎えたら、そのままどこかへ飛んで行っちゃいそう。

「それじゃあ行こうか。志乃さんは酔いを醒ましてから来てくださいね」

「分かったわ……」

「いや、飲まないでください!」

必ずここへ帰って来ると、他人事みたいに手を振る志乃さんに笑顔で答えてレッスン場へと向かう。と言っても目的地は宇宙の彼方じゃなくて、歩いて5分で到着するような近場だ。

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大槻唯(17)

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桃井あずき(15)

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兵藤レナ(27)

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柊志乃(31)

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高垣楓(25)

「長富さんですね。プロデューサーさんから聞いています。私がCGプロダクションのレッスンを担当しているトレーナーです。よろしくお願いしますね」

ジャージがよく似合うトレーナーさんは私が羨むぐらい美人で、事務所に所属しているアイドルと言われても違和感がなかった。

「こちらこそ、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします」

「ご丁寧にどうも。ですがレッスンは厳しくするつもりですので、そのつもりで。事前に頂いた情報によると、歌に関しては即戦力と聞いています」
「一度長富さんの現状を知るために、一曲踊っていただきましょうか」

「今ここでですか?」

「ええ。どうやら先日はピンクレディーを踊ったとか。私も上の姉と一緒に踊ったことはありますね。いやぁ懐かしい話ですね」
「それはまた別の話でしたね。とりあえず、先日と同じ曲で大丈夫ですので、一曲お願いいたします」

ということは、透明人間か。真夜中のカラオケ大会イン自宅でも踊ったっけ。ぜぇぜぇと息を切らす母親を見て何とも言えない気持ちになったのは秘密だ。

「ピンクレディーなのでもう1人いた方が絵になる気もしますけど、今日は長富さんの動きを見るためなので」

「はいはい! それじゃあ、ゆいが一緒に踊っちゃおっかな!」

トレーナーさんの言葉を遮るように、大槻さんが手をあげる。流石にレッスン場では帽子を外していて、なんだか新鮮だ。

「おいおい唯、一緒に踊るってお前」

「ピンクレディ?っしょ? ミイちゃんケイちゃんぐらい知ってるって! まぁどんなダンスか知らないけど……」

「知らんのかい」

呆れたようにプロデューサーは返す。ダンスを知らないんじゃ、踊りようがない気もするけど大槻さんには案が有るみたいで。

「でも即興でダンスを覚えるってレッスンとかアリだと思わない?」

「その場でダンス大作戦だね!」

「アズキ、そのプランネームそのままじゃないの! でもユイの言うとおりだわ」

どうやらみんな大槻さんの案には賛成らしい。

「おやまぁ。みなさんレッスン熱心なことで。まぁ大槻さんの言うことは一理ありますね。新譜のダンスを素早く習得することで、基礎レッスンに費やす時間は増えますから」

「そうですけど、良いんですか? 蓮実はまだ初心者ですよ? 柔軟の仕方から始めないと」

「おっと、そうでした。ピンクレディーを踊れるって聞いていたので、ダンス経験者かと勘違いしていました」

別に経験者と呼べるものではない。ただ母と一緒にテレビを見て踊っていたぐらいだ。

「柔軟をして体を温めた後、曲の練習をしてもらいましょう。折角なので、ボーカル、ダンス、ビジュアルの3点が総合的に評価できる曲を持ってきました。聞いたことあると思いますよ? 色んな方がカバーしてますし」

トレーナーさんがレコーダーのスイッチを入れると、ノリのいいドラムソロが聞こえてくる。この曲は聞き覚えがある。

「あっ、これゆいも知ってる! 学園天国っしょ?」

「ええ。今尚愛される名曲です。今回はこの曲のオリジナルであるフィンガー5のダンスを30分で練習して見せてください」

曲は良く知っているし歌詞もそらで歌えるけど、ダンスとなるとイマイチ記憶に残って無かったりする。どんなダンスだっけ。

「PCに入れておきますので、彼らの動きを真似ながら練習してくださいね。一応動きをまとめた紙も用意しています」

流石トレーナーさんと言うべきか、準備が良いな。

「あっ、飽くまで長富さんの今の力量を図るテストの一環なので、センターは長富さんが担当してくださいね」

「私ですか?」

いきなり私がセンターで良いのかな。ってこれは私のテストなんだよね。

「ええ。初めてと言うことで緊張して失敗したり、体が動かなくなるかもしれませんが、そういうものです。失敗して、苦手を治していって初めて成功します。勉強と同じですね」
「テストと言っても落第はありません。長富さんに合わせた最良のレッスンプランを用意しますので」
「ですが! 他のみなさんはこれまでの総ざらいと考えてくださいね。もしあんまりな動きをしていたら……。新しい栄養ドリンクの実験台になって貰いますのでそのつもりで」

「そ、それは勘弁! ハスミン、頑張ろ!」

栄養ドリンクの実験台と言う言葉を聞いた途端、揃って慌てたように柔軟を始める。良く分からないけど、青汁みたいなものなのかな。
大槻さんと組んで柔軟体操をする。

「いたたた!」

「ハスミン、息吐きながらやってみたらも少し伸びるってプロデューサーが言ってたよ!」

「い、息ですか? ふぅ……」

なんだかんだ言っても、大槻さんも私より先にアイドル活動を始めている。だから彼女のアドバイスは経験に基づいていて効果的なものばかりだった。

「それじゃあ次ハスミンが押す番ってことで!」

「はいっ」

「タメ語でオッケーだっての。そんなに歳離れてないしさ、敬語使われるの苦手だったり」

「すみません、誰に対してもこんな感じなので……」

言われてみれば家族に対しても敬語で話しているので、いきなり砕けた口調になるのは私からすれば難しいことだったりする。

「うーん、ハスミンらしいと言うかなんつうか。まっ、軽く考えてこうョ?」

「善処してみます……」

アイドルとしての最初の難関は、フランクに喋れるようになることなのかもしれない。
のりピー語マスターすべきなのかな。

青い珊瑚礁 松田聖子
http://youtu.be/Yp5nHTjTABY

蒼いフォトグラフ 松田聖子
http://youtu.be/N3Rp1h1Nv1U

ハートのエースが出てこない キャンディーズ
http://youtu.be/7YP5qY11uxA

年下の男の子 キャンディーズ
http://youtu.be/REhTVDawRX0

酒と泪と男と女 河島英五
http://youtu.be/v0t--pFDTBE

ダンシングヒーロー 荻野目洋子
http://youtu.be/V9ljO0WWnFA

宇宙戦艦ヤマト ささきいさお
http://youtu.be/8Y_JM9XA4Oc

学園天国 フィンガー5
http://youtu.be/13ml7EINDMo

PCの調子も良くないので、今日はここまでにします。携帯にその都度送らなくちゃいけないので、メールボックスが大変なことになってます。

湯煙り組がメインになりますが、ぶっちゃけCuのアイドル以外はイマイチキャラを掴めてません。おかしい所が有れば言って頂ければと思います。

読んでくださった方、ありがとうございました。次は木曜か金曜ぐらいに更新します。

書いてきます

「ダンスなんですけど、柊さん大丈夫ですか?」

「大丈夫よ。踊れなくなるほど飲むなんて愚かな真似はしないわよ」

と言うものの、柊さんの頬はほんのりと紅く上気している。とてもじゃないけど今からダンスをするって人に見えない。

「ああ、大丈夫だよ。蓮実は知らないんだと思うけど、志乃さんはお酒を飲めば飲むほどパフォーマンスの精度が上がる。まぁ特異体質なんだ」

「特異体質ですか……」

「俄に信じがたいんだけど、実際そうだからなぁ。ファンの皆もそれを望んでいるというかなんというか。流石に飲み過ぎは注意することにしてるけど、程よい量ならカンフル剤になるから目を瞑ってんだこれが」

酔拳の使い手なんだろうか。どうやらこの世界は私の知らないことばかりのようだ。

「普通はムリよね。志乃さんだから許されるというかなんというか」

「……私には出来ないな」

彼女のその姿勢には、大人組の2人も感心? しているみたいだ。

「それじゃあ、始めましょうか……」

「あれ? 柊さん?」

と柊さんは立ち上がり、私たちとは反対の方向に語りかける。思いっきり酔っぱらっているようにしか見えない。大丈夫なんですよね?

「プロデューサーさん、特異体質なんですよね?」

「あー、そうなんだけどねえ……。あの後また飲みましたね。こりゃダメなパターンだな……」

すみません、志乃さんリタイヤです。困った顔をしたプロデューサーがトレーナーさんに告げる。トレーナーさんもやっぱりです、かと返すあたり割とある光景なのかもしれない。

「とりあえず6人でやって貰おうか。一本多いけどね」

プロデューサーは上手いこと言っただろ? と言うように得意げな顔を見せる。なるほど、フィンガー6か。

「私らからすれば、キョンキョンなんだけどね」

とは兵藤さんの談。なるほど、ドラマ『愛し合ってるかい!』世代って事か。色々な歌手がカバーしているので、誰の曲かと言う質問で大体の年齢が分かるのだ。

「その時はまだ1歳ぐらいだったから、一切の記憶がないの。いっさいの、ね」

「……」

「ふふっ」

「楓さん、自重してください」

……割と上手だと思ったのは私だけだろうか。

「楓さんに振った私がバカだったわ……」

「もう! そんなチャバンしてる場合じゃないでしょ!」

「そうそう! 早く作戦考えないと! 作戦名は任せて! 108式まであるよ!」

「時間もないしさ、チャッチャとパート割り振って練習しようよ! ハスミンはデカ眼鏡のパートで良いとしてっ!」

「デカ眼鏡って……。間違ってはないんだけど、他に言いようが有ると思うのよね」

デカ眼鏡……、トンボ眼鏡のことを言っているのかな。

「それじゃあこのプランで決定!」

年下組が急かすようにダンスや歌のパートを決めて、早速練習に取り掛かる。柔軟もしていたこともあって、昨日よりは体が動く。

「うーん、今の違うくない?」

「ちょっとタイミングがずれたわ!」

「そうね。私と楓ちゃんはこっちで、あずきちゃんとメアリーちゃんは反対側、センターは蓮実ちゃんと唯ちゃんって方が良いわね」

「ダンスは少し苦手。でも頑張らないと」

「プランナンバーは6700だね!」

「恋のテレフォンナンバーですか?」

そもそもどこから数えて108式なんだろう。いや、ツッコんだら負けな気がする。

アイドルとしての経験が長いこともあってか、練習中も積極的に意見が飛び交う。
大袈裟に言ってしまえば、トレーナーさんがいなくても機能するんじゃないかと思ったぐらいだ。

「そこまでっ! 準備は出来ましたか?」

トレーナーさんが手を叩いて、練習時間の終了を告げる。
準備が出来たかどうかと聞かれると微妙なところだけど、みんながついているなら大丈夫。不思議とそんな気がしていた。

「それでは始めましょう。再三言っていますが。長富さんの力量を見るのが目的ですので、長富さんは自分の出せる全力でパフォーマンスをしてください」
「バックの皆さんは周囲の動きと合わせることを意識してくださいね。1人で踊っているんじゃないということをお忘れなく」
「それでは、ミュージックスタート!」

テンポの良い音楽が流れてきて、私は身体を動かす。

「アーユーレディー!」

「イエー!」

見てくれているのはプロデューサーとトレーナーさんと志乃さんの3人だけ。それなのに私の目には、数えきれないほどの観客が映っていた。
本物じゃないのに、まるで本当にステージに立っているみたいで。憧れた女の子たちと同じようにコールを受けて。

そうか、これがアイドルなんだ——。まだ始まったばかりでこれだけ楽しいんだ。
ここから先は厳しくても、楽しいが上回ってくれるだろうから。

「センキュー!」

ダンスはフィンガー5だけど、最後はキョンキョンっぽく締めてみる。こういうのをライブで出来たなら、凄く楽しいんだろうな。

「長富さん、楽しそうにパフォーマンスをしてくれて何よりです」

踊り終わると息も切れ切れでその場にへばりこんでしまう。ライブになると後何曲も踊らなくちゃいけないんだよね。
体力をつけなくちゃ話にならないってことか。

「ありがとうございます」

「プロデューサーの言うとおり、歌唱力は文句なしです。ダンスも普段体を動かしていないのかぎこちなさが残りますけど、それはこれからのレッスンで感覚を取り戻してくれればと思います」
「ビジュアルに関しては、初心者と言うこともあってまだ要領がイマイチ分かっていないみたいですね」

ビジュアルに要領って有るのか。多分アピールのことを言っていると思うけど、今の私にはそんなことをしている余裕はない。

「アピール等に関しては、私たちの指導が追い付かない所が有ります。個人個人でツボが違いますからね。こればっかりは、努力でどうにもならない部分が有るのも事実です」
「長富さんは昭和のアイドルを好んで聴くと聞いています。ですので、過去の彼女たちの映像を注意深く見てはどうでしょうか?」

なるほど、それは面白そうだ。思い返してみると、彼女たちが私たちの心を掴んで離さない理由なんて今まで考えたことなかったし。

歌が上手いから?
ダンスが上手いから?

それだけじゃない。他にもきっと、何かあるはずだ。それを見つけることが出来た時、また1つアイドルの楽しさが分かる気がした。

「なにそれ超オモシロそうじゃん! ハスミンちでやろーよ!」

「え? 私の家ですか?」

「ハスミンちこの辺っしょ?」

「ええ、とりあえずは」

出身地は島根だけど、数年前に東京に引っ越していていた。一応生まれたところと言うことで、プロフィールカードには島根と書いている。
後で知ったことだけど、毎回鳥取から東京に通っていた声優の卵がいたとか。夢を叶えるためにはそこまでしなくちゃいけないんだろうな。

その先が茨の道でも、凍てつく夜も。幸せを訪ねていくには、後ろを向いちゃいけないんだ。

「それじゃあ今日は蓮実ちゃんちでお泊り大作戦だね!」

「今日はハスミの歓迎会よ! 良いでしょ!」

「え、えっとお泊り?」

決意を新たにしていると、周りの皆は勝手に話を進めていく。ひょっとしなくても私の家に泊まるつもり?

「こらこら、勝手に話を進めないの。困ってるだろ? 蓮実自身は良いのか? このままじゃこいつら君の家に押しかけるぞ」

「気にしませんよ。母も喜ぶと思いますし」

アイドル仲間も紹介したいし。濃すぎる面々を見て、母はどんな反応を見せるのかな。
彼女の時計も平成に変わるころには止まっている。あの頃はいなかったようなアイドル達にギャップを感じそうだ。

「んじゃ私たちもお邪魔しちゃおうか、楓さん」

「お泊り会、初めてかも」

「お土産に美味しいお酒持って行こうかしら」

「御三方も行くんですか? 本当に良いのか?」

なんとアダルトトリオも来るらしい。構わないけど、そこまで広かったっけ?

「ほ、ほどほどでお願いしますね……」

お母さんと仲良くなりそうな気もするけど、余り飲み過ぎないようにだけ気を付けて欲しいかも。

「はいはい、お泊り会のお話はそこまで。レッスンを再開しますよ」

最終的にカメラが変わるたびに涙が流れるようになるのか

わいわいがやがやと浮足立つ私たちをトレーナーさんがぴしゃりと制止する。休憩時間は終わり、先ほどの動きのフィードバックを行う。

「志乃さん、少し早いですね。隣の2人と合わせることを意識してくださいね」

流石に今度は柊さんも参加している。ちょうど良い位に酔っているのか、年齢を一切感じさせない動きを見せてくれた。
冗談かと思っていたけど、酒が入れば精度が上がるというのもあながち間違いじゃなさそうだ。

「お疲れ様でした。今日のレッスンはここまでにしましょう」

『ありがとうございました!』

レッスンは夕方まで続いた。体には今まで感じたことが無い程の疲れがどっとのしかかるけど、不思議と不快じゃない。むしろ心地いいぐらい。

「くぅ〜! つっかれたー! プロデューサーちゃん、ドリンクドリンクぅ〜」

終わるや否や、大槻さんは甘えるようにプロデューサーにドリンクを貰う。彼女のように軽く皆と接することが出来ればいいんだけどな。まだまだ時間がかかりそうだ。

「ほら、蓮実も。スポーツドリンク、あんまり一気に飲まないようにね」

「ありがとうございます。うん。美味しいです」

良く大人は仕事終わりにビールを美味しそうに飲んでいるけど、なんとなく気持ちが分かった気がする。

「どうだった? 初めてのレッスンは」

「そうですね。しんどかったですけど、楽しかったです」

「そう言ってくれると俺も嬉しいよ。でもアイドルってのはまだまだこんなものじゃないよ。言っちゃえばプロローグ、序章に過ぎない」
「近いうちにオーディションを受けて貰おうかと思うんだ。アイドルになったからには、露出してナンボだからね」

オーディションと言う言葉に身が引き締まる。アイドルは競争社会だ。皆で仲良くトップアイドルなんてわけにもいかない。

昭和でも平成でもそれは同じ。活躍の機会は自分で勝ち取らなくちゃ意味がないのだ。

「もちろんレッスンをこなして、人前に出てもいい位になってからになるけどね。それまで君が思っていたようなアイドルプランとは異なるだろうけど、辛抱して欲しいな」

辛抱だなんてとんでもない。レッスンがアイドルとして輝くために必要なのは重々承知している。

「大丈夫です。私、待つのは得意ですから」

「まぁ待つよりかは、自分から積極的に行かなくちゃなんも始まらないけどね」

「そうでしたね。プロデューサーさん、苦労をおかけすると思いますが、よろしくお願いいたします」

「ハスミ! ハリーアップ!」

「ハスミーン! 早く早く〜ッ!」

プロデューサーと話している間に、みんなは着替えを済ましたみたいだ。ジャージ姿なのは私だけ。

「あっ、今行きます! それではプロデューサーさん、失礼いたします」

「ああ、楽しんできておいで」

待たせるわけにもいかないので、急いで着替えを終わらせて彼女たちに合流する。

「それじゃあ、蓮実ちゃんの家に行きましょうか」

「キャンディー買ってこうよ! ほら、ハスミンママにもあげたいしさ!」

「長富さんのお母さんはお酒を飲まれる方かしら?」

「人並みには飲むと思いますけど」

少なくとも柊さんよりかは飲まないと思う。何かお土産を買っていこうということで、レッスン場の近くのスーパーでお菓子とお酒(当然未成年組はノータッチ)を買って家へと帰る。

「ここがハスミの家ね!」

この家を建てたのは数年前。母の理想とこだわりが色々詰まっていて、ある種のアトラクションみたいになっているのだ。
大きな窓と小さなドアー、部屋には古い暖炉が有って、ブルーのじゅうたんを敷きつめて。庭には真っ赤なバラと白いパンジーが咲いて。

歌詞通りに造る当たり、母の強いこだわりが見て取れる。あの曲と違うところと言うと、『いとしいあなた』は今ローン返済のために必死で働いていると言うところだろうか。

「いやぁ、最近のアイドルはずいぶんとハイカラだねぇ」

前もってアイドル仲間が泊まりに来ることを言ってはいたけど、いざ目の前にすると母は面食らってしまったようだ。

「ハイカラ? 何それ?」

「知らないわ。横文字が全部アメリカ産ってわけじゃないもの」

「ハイカラーだったかしら?」

「高い色ってこと? いやぁ、照れるなぁ?」

「それならアタシもハイカラよ!」

大槻さんとメアリーちゃんが何故かえへへと笑っているけど、このカラーは色って意味じゃない。襟だったはず。
ハイカラー、高襟。西洋化の進んでいった明治時代の造語らしいけど、漫画でしか聞いたことが無いから私もよく覚えていない。

「……ハイカラさんが肺から通る」

こっそりと高垣さんが何かつぶやいていたけど、よく聞き取れなかった。

「まぁここにいても仕方ないし、どうぞ中に入ってくださいな。蓮実、案内してあげて」

「それじゃあ私の部屋に荷物を置きましょうか。あれ?」

ここまで来て気付いたけど、私の部屋は7人もの人数が眠るスペースが無い。

「大丈夫よ。大人数が来るのは聞いていたし。来客用の部屋が有るからそちらも使ってくださいね」

普段使うことが無い部屋だったけど、まさか役に立つ日が来るとは。とりあえず私の部屋には未成年組が、来客用の部屋には大人組が泊まることになった。

「で、なんだっけ? 昭和のアイドルの映像が見たいだっけ? 色々あるけど、どれを見るの?」

用意してくれていたみたいで、何枚ものLDを持ってくる。

「これ、でかくない!?」

「初めて見たわ……。これがレーザーディスク!」

レーザーディスクってでっかいってことしか知らないわ…

金髪コンビが眼を点にして驚いている。LDを初めて見たんだろうか。

「あずきの家にも何枚かあるよ?」

「あら、懐かしいわね」

「今となればブルーレイだもんね」

「これがジェネレーションギャップ……」

大人組は流石と言うべきか。桃井さんが持っているというのが少し意外だったけど、親御さんの趣味だろうか。

「アイドルの歌もレコードからCDに変わって。時代の流れって怖いわねぇ」

もういっそCD大賞って名前にしちゃえばいいのに、と母が愚痴る。今となればレコードもLDも過去のもの。VHSだって怪しくなってきた。

一度も関わることなく天寿を全うする子だっているんだと思うと、私はやっぱり他のこと違うんだなとしみじみ考えてしまう。

「晩御飯が出来るまでまだ時間が有るから、それまで見ていたらどうかしら?」

ピンクレディー、松田聖子、太田裕美……。どのアイドルも素敵で目移りしちゃう。

「時間はたっぷりあるんだし、全部見ちゃえばいいんじゃん?」

「だね! それじゃあ早速オペレーションスタートだね!」

「ねぇ、どれがおススメなの?」

「おススメですか……」

全部おススメですと言う返答はダメだろうか。正直なことを言うと、私でも見たことのないLDもあったりする。
レコード同様汚れや傷がつきやすいと言うのもあって、丁寧に扱わなくちゃいけないので、怖くて触っていないのもあるのだ。
これらは母と父にとって大切な思い出だから、見れなくなるなんてことは嫌だった。
そう考えると、DVDやブルーレイは便利になったもんだと思う。それでも私はLD独特の映像が好きだった。

「あら、おニャン子クラブ。本当に懐かしいわね」

「私が生まれたころはまだ活動してたわね。といっても2歳ぐらいでほとんど覚えてないけど」

柊さんと兵藤さんは懐かしそうにおニャン子のLDを手に取る。

「しっかし、秋元康は凄いわよね。こう何度もヒットを量産して」

今流行の48人アイドルグループのことを言っているのだろう。正直言うと、秋元康が歌詞を書いてくれるのなら、応募しようかなと思ったこともある。結局ないなと思って行動を起こさなかったけど。
でもこの事務所で良かったんだろう。彼女たちとまだ会って1日も経っていないのに、不思議と居心地の良さを感じていた。

「それじゃあおニャン子を見ますか?」

「おニャン子なら知ってる! あれでしょ? 国生さゆり。面白いよねあの人。バレンタインディキッスだっけ?」

大槻さんの世代(私も含まれているが)からすると、国生さゆりはバラエティで活躍している元アイドル、と言う印象が強いのだろう。

「ハスミ、これどうやって見るの?」

「そのまま入れて……、これで見れるようになりました」

テレビをつけると少し古ぼけた映像が映る。

「なんつーか時代感じちゃうよね」

「今のテレビが綺麗すぎるのよね。メアリーちゃんぐらいの子って、テレビが白黒だったってこと知らないんじゃないの?」

「それぐらい知ってるわよ!」

「セーラー服を脱がさいないでっ♪」

桃井さんはミニスカ浴衣で踊り始める。歌詞とのアンマッチさがなんともおかしく見える。

「ご飯できたわよー!」

母が呼びに来るまで私たちはLDを漁っては見て漁っては見ていた。
キャンディーズ、薬師丸ひろ子、光GENJI。男性女性関係なく、懐かしのアイドル達の姿に魅了されていた。

「ようこそ ここへ 遊ぼうよ パラダイス♪」

「大槻さん上機嫌ですね」

「いやさぁ、ちょーっちゆいナメてたかも。昭和のアイドルもなかなか侮れないって、うん」

「ハスミの趣味も悪くないわね」

「思いついた! 次の作戦は時代に逆らってみて行こう!」

嬉しかったことと言うと、未成年組も気に入ってくれたと言うことか。古臭いと一刀両断されるどころか、却って新鮮に映ったみたいだ。

「懐かしいものを見れて良かったかな?」

「このお酒美味しいわね」

「志乃さん、あんまり飲み過ぎちゃダメですよ?」

「まぁまぁいいんじゃないかしら? 蓮実、注いであげなさい」

大人組と母は仲良くお酒を飲んでいる。こっちはこっちで交流を深めたみたいだ。

ご飯後も未成年組は私の部屋でLDを見ていた。大人組と母は意気投合したみたいで、どこかへと飲みに出かけてしまった。
なのでこの家には子供しかいない。

「やっぱ恋バナっしょ! どうハスミン? 気になる子とかいないの?」

「わ、私はそういうのは疎くて……」

「蓮実ちゃんなら周りも放っていないって!」

「ホントのこと教えなさい!」

3人に詰め寄られるも、心当たりがないものは無い。そもそも私の親しい男性は、

「プロデューサーさん?」

「ええ!? そう来たか……」

「プロデューサーさんも隅に置けないなぁ」

「やるじゃない……!」

「あっ、そう言うのじゃないんです! 私の交友にいる男性はプロデューサーさんぐらいですので」

慌てて訂正するも、彼女たちの中では私はプロデューサーさんに気が有る、ということになってしまったみたいだ。
その後大人組が帰って来た後も尋問は続いた。
お酒に酔った4人が、とてもじゃないけど私の口から喋れないようなことをマシンガンの如く言い続けて未成年組が顔を真っ赤にしたのはまた別の話。

とりあえずここまで。一応最後まで考えてます。読んでくださった方ありがとうございました。

恋のダイヤル6700 フィンガー5
http://youtu.be/xmicbFtt17E

炎のたからもの ボビー
http://youtu.be/OkqvtFRllrY

あなた 小坂明子
http://youtu.be/_LATAgvBV9w

はいからさんが通る 南野陽子
http://youtu.be/uxF0FQBiK_4

セーラー服を脱がさないで おニャン子クラブ
http://youtu.be/kwm8Zskinsg

パラダイス銀河 光GENJI
http://youtu.be/witiRRDz1ts

個人的にあなたが一番好き

乙!

「そろそろオーディションを受けてみようか」

「オーディションですか?」

レッスン漬けの生活が一ヶ月ほど続いた頃、プロデューサーが私にそう言った。

「うん。レッスンだけってわけにもいかないしね。アイドルになったんなら、テレビに出ないと。でもまだデビューしたてだから、余り大きなオーディションはお勧めしないけどね」

何枚かの資料を机の上に置く。どうやらこの書類は全部オーディションに関する物らしい。番組名から合格者人数、求められるイメージまで詳細に記入されていた。

「プロデューサーさんとしてはどれを受けるべきって有りますか?」

「そうだねぇ……。例えばこれとか? 合格者人数は多いから、受かりやすいっちゃ受かりやすいけど、お色気路線と言うかなんというか」

合格者人数16人。確かにこの中では一番合格者を出すみたいだ。ただお色気路線という言葉が引っ掛かる。好き嫌いを言える立場じゃないのは分かっているけど、私とは縁のない言葉だ。

さて他のオーディションはどうだろう?

「あっ」

「ん? どったの?」

目についたものから見ていると、一枚興味深いものが有った。

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