エレン「アニの捕獲に成功した」(51)

また幼児退行ネタだよ

コミック8~10巻未読の人はネタバレ注意な!

※似たようなタイトルの前作とは何の繋がりもございません

アニ「エレン」

エレン「おう」

アニ「そとにでたい」

エレン「無理だ」

アニ「……いじわる」

エレン「俺だって出たいっつーの」

アニ「エレンはつめたい」

エレン「そうだな」

アニ「……ふたりきりなのに、つめたい」

エレン「ああ」

アニ「もう、いい」プイッ

アニ「たいくつ」

エレン「寝とけ」

アニ「ねむくない」

エレン「じゃあ起きとけ」

アニ「おきてる」

エレン「なら、いいじゃねえか」

アニ「つまらない!」

エレン「全部、お前のせいだからな」

アニ「……エレンきらい」

エレン「俺もだ」

アニ「!? う、うそ。わたしエレンきらいってほどじゃない」

エレン「俺は嫌いだ」

アニ「…………」シュン

エレン「おい、飯食えよ」

アニ「いらない」

エレン「食え、死なれたら困る」

アニ「エレンはわたしのこときらいなんでしょ」

エレン「ああ嫌いだよ」

アニ「……じゃあほっといてよ」グスッ

エレン「でも任務だ。嫌いでも何でも、お前に死なれたら困るんだよ」

アニ「ほっといて!」

エレン「…………」ハァ

アニ「エレンきらい」

エレン「俺もだよ」

ハンジ『アニ・レオンハートは精神に異常をきたして、幼児退行してしまった』

エレン『は!?』

ハンジ『現時点ではそう判断するしかない。演技かどうかも判断できない』

ハンジ『厄介なのは、現時点では巨人勢力について情報が引き出せないってことだ』

エレン『そんな! あんなに犠牲を払ってまで捕まえたのにどうにか出来ないんですか!?』

アルミン『アニに外傷はない。恐らく心因性のものだよ。だから時間をかければ元に戻るかもしれない』

エレン『本当か!?』

ハンジ『でも、保証はないよ。一生このままかもしれないし、そういうフリをして脱出の機会を虎視眈々と狙っているだけかもしれない』

エレン『ど、どっちなんですか!?』

ハンジ『だーかーら、わかんないって。上のほうでもそれで意見がぶつかりあってるよ』

エレン『それは……前に俺がされたように、裁判にかけられるってことですか?』

アルミン『まともに受け答えができないだろうし、現状で裁判を開くことはないと思う。話し合ってるのは情報源としての価値があるかどうかだからね』

エレン『(情報源……価値……)』

ハンジ『今の精神状態では、情報源としての価値はない。だからエレンの代わりに解剖するべきって声も上がってる』

エレン『え!? 駄目ですよ、そんなの! 人類の敵の正体を知るチャンスですよ!?』

ハンジ『そうだね。私もそう思う、けどモタモタしてると知性を持った巨人……超大型と鎧の巨人が再び現れる可能性がある』

アルミン『アニを奪還するためにですか? でもアニの所在を隠蔽している間は、その可能性は低いですよね?』

ハンジ『そう願いたいね。でも時間がないのは紛れもない事実だ。拷問して聞き出すべきなんて声も出ている』

エレン『拷問……!?』

ハンジ『強いショックを与えれば戻るかもしれないし、演技だとしたら化けの皮が剥がれるだろ?』

エレン『だ、だからってそんな……惨いことをするなんて……』

ハンジ『エレン? さっき君が言ったじゃないか。人類の敵の正体を知るチャンスだって』

ハンジ『形振り構ってる暇はないんだよ、人類にはね』

エレン『(あいつは……リヴァイ班のみんなを殺した)』

エレン『(でもだからって拷問なんて。そんなことして、それは人として正しいことなのか?)』

エレン『(形振り構ってられないのは、わかる。けど、それでも……)』

ハンジ『悩んでるね、エレン』

エレン『えっ!? はい……い、いえ! そんなことは』

ハンジ『君が望むなら、条件付で最初の選択肢を選んでもらう、ということも出来るんだけど』

エレン『俺が、望むなら……って』

ハンジ『君がアニの監視役となり、二人で地下に幽閉させてもらうって方法さ』

エレン『はぁ!?』

ハンジ『私とアルミン的にそれが今、ほぼ全ての条件を満たした最有力の手だと思うんだけど』

エレン『ど、どういうことですか!?』

アルミン『まずアニの生命を保障できる。エレンを捕まえようとした以上、アニは簡単にエレンを殺そうとはしない』

ハンジ『まだ兵団的にはエレンも脅威対象だ。二人揃って幽閉するなら、監視の手間も省ける』

エレン『ま、待ってください!』

ハンジ『アニに大なり小なりショックを与えることも出来る。君が望むなら拷問をしてもいいよ』

エレン『ハンジ分隊長!』

ハンジ『クリアできないのは時間だけ。まあ簡単に言っちゃえば、君にアニの処遇を一任するってわけさ』

エレン『そ、そんなこと急に言われても、俺は……!』

ハンジ『選んだ結果は誰にもわからない。だからエレンの決断を、誰も責めたりはしない』

エレン『そういう問題じゃないでしょう!?』

ハンジ『じゃあこれはどういう問題だ?』

エレン『ど、どういう問題って……』

ハンジ『君個人の問題? アニ自身の問題? 兵団の問題? 違うだろ、エレン。これは人類全ての問題だ』

ハンジ『酷なようだけど、君の意見は重要視しないし、されない。ただ人類にとっての最善策を、君が選ぶか選ばないかだ』

アルミン『エレン、辛いことかもしれないけど、よく考えて欲しい』

アルミン『そして僕は君がどんな答えを出しても、その意見を尊重するよ』

エレン『……どうして、俺なんだよ』

ハンジ『巨人になれるから。アニと同期だから。そして何よりも』

ハンジ『そういう運命に選ばれたんだよ、君は』

エレン「はぁ……」

エレン(今、何日目だ? 何時間経った? 外はどうなっている?)

アニ「エレン?」

エレン「なんだよ」

アニ「なんでエレンはわたしのこときらいなの?」

エレン「……仲間をたくさん殺した」

アニ「……そんなのしらないもん」

エレン「っ! 殺したんだよ、何人も! 調査兵団の皆を! 虫を潰すようにな!」

エレン「どうしてそんなことが出来た! なんの大儀があった! いつまでもガキみたいなフリしてるんじゃねえよ!」

アニ「……ふぇ」ポロポロ

エレン「!? ……くそっ」

アニ「うぅぅぅ……」ポロポロ

エレン(なんなんだよ、どうすればいいんだよ、これ……)ハァ

エレン『俺とお前はしばらく同じところで住むことになった』

アニ『あなただれ?』

エレン『……エレンだよ。エレン・イェーガー。知ってるだろ』

アニ『』フルフル

エレン『そっか。なら覚えてくれ、俺はエレンだ』

アニ『エレン……』

エレン『(駄目だな、想像以上に、キツい)』

アニ『エレンとわたしはどうしてここにすむの?』

エレン『アニが元通りになるようにだよ』

アニ『もとどおり?』

エレン『お前は元々、なんつーか、全然違う感じだったんだよ』

アニ『わたしはわたしだよ』

エレン『いや、今のお前は違う。お前は……何歳だ?』

アニ『8さい!』

エレン『……そっか』

アニ『ねえ、エレン。ちがうわたしってどんなのだった?』

エレン『大男を蹴り飛ばしてたよ』

アニ『なにそれ、へんなの』クスクス

エレン『ああ。そんなにちっせーのに、すっげー強かった』

アニ『……おとうさんがむりやりれんしゅうさせるんだもん』

エレン『親父さんのことは覚えてるんだな』

エレン『(ってことは、8歳まで記憶が戻ってるってことか?)』

エレン『なあ! お前の家のこと教えてくれよ』

アニ『わからない』

エレン『……は!? なんで!?』

アニ『わからないもん』

エレン『(都合の悪いところはわからない、か。確かにフリをしてる可能性もあるな)』

エレン『はあ、どうすっかな……』

アニ「」グスッ

エレン(やっと泣き止んだか)

エレン「なあ、アニ」

アニ「」プイッ

エレン「……あー、もう」

エレン(ミカサが拗ねたとき、どうしたっけ……あぁ、そういえば)

ミカサ『頭を撫でてくれたら機嫌を直す』

エレン(なんてことがあったな。あれ、脅迫に近かったよな)

エレン「アニ」ナデ

アニ「!」

エレン「ごめんな、泣かせるつもりはなかったんだ」ナデナデ

アニ「……もっと」

エレン「ん?」

アニ「もっとなでてくれたらゆるします」

エレン「なんで敬語なんだよ」ナデナデ

アニ「♪」

エレン(なんとか機嫌直してくれたか)

アニ「エレン」

エレン「なんだよ」

アニ「わたしがいっぱいえれんのともだちころしちゃったの?」

エレン「……そうだよ」

アニ「そっかぁ。なんでころしちゃったの?」

エレン「お前しかわからねえよ、そんなこと」

アニ「わたししらないもん」

エレン「知ってるよ」

アニ「だからわたしのこときらいなの?」

エレン「……だからってわけじゃないかもしれないけど、よくわからないな」

アニ「エレンもしらないんだ」

エレン「いや、俺はわからないんだ」

アニ「エレンはわたしとちがうの?」

エレン「ん?」

アニ「しらないから、ここにいるんじゃないの?」

エレン「違うよ。俺はお前の監視役だ」

アニ「かんしやく?」

エレン「変なことしないか見張るってことだよ」

アニ「なにもしないもん」

エレン「どうだろうな。アニは……嘘つき、だったからな」

アニ「うそつきじゃないよ!」

エレン「今のアニは、そうかもな」

アニ「ちがうわたしはうそつきだったの?」

エレン「ああ、大嘘つきだ。俺の同期全員騙してたんだからな」

アニ「ふーん……」

エレン「人類の敵なのにさ、俺たちに混じって訓練受けてさ、成績四位を取ってさ」

アニ「てきなの?」

エレン「敵だよ。俺の母さんや、アルミンの爺ちゃんを殺すキッカケを作ったし、ウォール・マリアを陥落させた」

アニ「……? よくわからない」

エレン「っ! ……まあ、知らないんだからしょうがない、か?」

アニ「そうだよ」

エレン「……でもちょっと腹が立ったから」グシャグシャ

アニ「! や、やめてよ! かみのけぐしゃぐしゃしないで!」

エレン「このくらいで勘弁してやろう」

アニ「エレンきらい!」プイッ

エレン「ははは、俺もだよ」

エレン「なあ、アニ。巨人になる方法、知ってるか?」

アニ「しらない」

エレン「そっか。じゃあお前、友達いたか? よく一緒に居た幼馴染とか」

アニ「もりのなかでおとうさんとふたりでくらしてたから」

エレン「うーん……じゃあ、親父さんのこと教えてくれよ」

アニ「……なんで?」

エレン「知りたいからだよ」

アニ「それは」

エレン「うん?」

アニ「こうりゃくほうということでしょうか」

エレン「攻略?」

アニ「ごあいさつてきな」

エレン「ご挨拶?」

アニ「もういい。おしえない」プィ

エレン「なんで!?」

エレン「わかったよ! お前の親父さんを攻略するためだ!」

アニ「さっきのいいかたからしてあきらかにちがうでしょ」

エレン「うっ……じゃ、じゃあ、ほかの事教えてくれよ!」

アニ「たとえば?」

エレン「例えば、なんでお前は技術を教わってたんだ?」

アニ「……よくしらないけど、せんしにするためだって」

エレン「戦士? ってことは他にもアニみたいな戦士はいるのか?」

アニ「しらない」

エレン「会ったことがないのか」

アニ「そのとちゅうでここにきたから」

エレン「途中?」

アニ「いどうしてる、ばしゃのなかでねむって、きがついたらここだったの」

エレン「なるほど、だから俺を覚えてないのか」

エレン(なら8歳で戦士になるために、兵団みたいなところに入ったのか)

ハンジ「うーん、情報量としてはあまり芳しくないね」

エレン「す、すいません」

ハンジ「でもアニが演技をしている可能性は、少し減ったかな。聞いている限りでは本当に子供のような振る舞い方だ」

エレン「そうですか! よかった……」

ハンジ「…………。それからエレン、出来れば君の訓練兵団のときの思い出話でもしてみてくれないか?」

エレン「思い出話、ですか?」

ハンジ「仮にアニの記憶が8歳まで退行したことが事実だとしたら、その空白期間を埋める出来事を話すのはいい刺激になると思うんだよ」

エレン「なるほど、わかりました」

ハンジ「次の報告はまた一週間後だからね。あと、一時間くらいなら自由時間をあげよう。ミカサも君を心配してた」

エレン「はい、ありがとうございます。失礼しました」ガチャ バタン

ハンジ「さってっとー……エレンを監視役にしたのは間違いだったかもね」

ハンジ「まあしょうがないか。私たちはもう選んだんだ。託したよ、エレン」

ミカサ「エレン!」

エレン「ミカサ、アルミン!」

アルミン「久しぶりだね。首尾はどう?」

エレン「ハンジさんに報告に言ったら、よくないって言われちまったよ」

アルミン「そっか。難しいね」

ミカサ「エレン、大丈夫? 怪我はない? あの女に何かされなかった?」

エレン「大丈夫だって。それに今のアニは何か出来るような状態じゃない」

ミカサ「それはわからない。あいつは嘘をついて兵団に潜り込んでいた。今更語ることが出来ないなんてことはない」

アルミン「そうだね。完全に否定できない以上、油断はしないほうがいいよ」

エレン「アルミンもかよ。大丈夫だって、ハンジさんも演技じゃない可能性が高いって言ってたんだ」

アルミン「エレン、確率や可能性っていうのは決してゼロになるものじゃないし、絶対というものもないんだ。最悪の事も常に想定したほうがいいよ」

エレン「わかってるよ。大丈夫だって!」

ミカサ「エレンが戻ってしまった……」

アルミン「まだ任務は続いてる。それにアニが寝てる間に戻らないと、監視の意味がないよ」

ミカサ「なぜアニを回復させる必要があるの? それだとエレンが危険」

アルミン「ミカサ、何回も説明したじゃないか。アニはエレンを捕まえようとした以上、エレンに危害を加えるより、エレンの確保を優先するはずだ」

アルミン「それに今、ここには僕らも含め五十名の兵士が潜伏してる。何かあっても対応できるさ」

ミカサ「壁外遠征の時、アニに一人に何人の兵士が殺された?」

アルミン「……地の利はこっちにあるよ」

ミカサ「アルミン!」

アルミン「ミカサ、今ここで君が暴走してエレンを助け出そうとしても、何もならない。僕らにはどうしようもないんだよ」

ミカサ「……なんでみんな私からエレンを奪おうとするの? ただ私は、エレンと一緒に居たいだけなのに」

アニ「エレン!」ガバッ

エレン「うわ! アニ、起きてたのか?」

アニ「どこいってたの」ギュ

エレン「ちょっとな。すぐ戻ってきただろ?」

アニ「こわかった」ギュゥ

エレン「ごめん。って……そろそろ離してくれよ」

アニ「やだ。またどこかいっちゃう」ギュゥゥ

エレン「く、苦しいって」

アニ「しらない」ギュゥゥゥ

エレン「大丈夫だって、どこにも行かない」

アニ「しんじない」ギュゥゥゥゥ

エレン(しょうがないか。落ち着くまで大人しくしてよう)

アニ「すー……すー……」

エレン(抱きしめたまま寝ちまったよ)

エレン「まあ、しょうがないか」ナデナデ

アニ「ん……すー……」

エレン「なあ、アニ。お前、本当に全部忘れちまってるんだよな」

エレン「俺たちを騙していたことも、たくさん調査兵団のみんなを殺したことも、全部」

エレン「ならさ、忘れてる間なら俺もお前の罪については忘れるよ」

エレン「だって何聞いても、しらない、だもんな。一人で怒ったところでしょうがねえよな」

エレン「それに今のお前は、一歩間違った俺の姿に見えるんだ」

エレン「今は運よくこんな扱いだけど、あの裁判がうまくいかなかったらこうだったかもしれない」

エレン「そう考えると、俺はお前のことを、放っておけないんだ」

エレン「……おかしいよな、お前が憎かったはずなのに」

エレン「おやすみ、アニ」ナデナデ

アニ「エレン」

エレン「ん……? ああ、俺、寝ちゃってたのか」

アニ「ごはんきたよ」

エレン「おう、ありがとう」

アニ「たべよ」

エレン「捕虜扱いでも訓練兵団のときより豪華だよな、食事は」

アニ「くんれんへいだん?」

エレン「ん? あ、ああ、そうだ! アニ、俺とお前が昔いたところの話してやるよ!」

アニ「わたしとエレンのはなし?」

エレン「おう。どうせ時間はたっぷりあるしな」

アニ「うん、ききたい!」

エレン「よし! じゃあ最初から話すかな。えっと、俺たちが入団したときに、通過儀礼ってのがあってだな」

エレン(それから一週間は、アニに訓練兵団時代の思い出を話すことに終始した)

エレン(他の同期のこと、訓練の内容、起こったトラブル、そして俺とアニの思い出)

エレン(アニは真剣に聞いて、疑問に思ったことは尋ね、驚いたら驚き、面白かったら笑い、その反応はやはり子供そのものだった)

エレン(そして一週間が経って、再び重い扉が開かれた)

ハンジ「回復の兆しはなし、か」

エレン「はい……俺の力及ばず、すいません」

ハンジ「んー、ならアプローチを変えてみるしかないか。でも正直、アニに対して拷問するのはあんまり気が進まないよね」

エレン「え、拷問!?」

ハンジ「うん。でもまあ、傷が巨人化のキッカケならあんまり無茶するわけにはいかないしね、どうするべきか」

エレン「駄目ですよ! 今のアイツは、本当にただの子供みたいな状態なんですよ!?」

ハンジ「エレン、それでも何か手を打つ必要がある。今日は牢に帰ってもらうけど、明日の朝一、アニとエレンは牢から出てもらうよ」

エレン「待ってください!」

ハンジ「それとも、君にはもう関わらないでもらったほうがいいかな?」

エレン「え?」

ガッ!

期待

エレン「っ……はっ!?」

ミカサ「エレン、目が覚めた?」

エレン「ミカサ!? こ、ここはどこだ!?」

ミカサ「エレンに宛がわれた部屋。地下だけど、あんな牢獄より過ごしやすいはず」

エレン「牢獄って……そうだ、アニは?」

ミカサ「心配しなくていい。彼女はハンジ分隊長が預かっている」

エレン「ってことは……拷問を受けてるのか!?」

ミカサ「そう」

エレン「くそっ!」ガバッ

ミカサ「エレン」ガッ

エレン「離せよ、ミカサ!」

ミカサ「離さない、絶対に」

エレン「なんでだよ! アニに拷問とか、何考えてんだよ!」

ミカサ「人類の為。必要な犠牲」

エレン「んなわけないだろ! 目の前で苦しめることの、何が……」

ミカサ「エレン、あれは人間ではない。巨人。だから情を移しては駄目」

エレン「なら、俺だって巨人だ!」

ミカサ「違う。エレンは巨人になってしまった人間。アレは、人間に化けた巨人」

エレン「巨人だったら飯食ったり、笑ったり、泣いたりするはずがねえ、だからアニは人間だ!」

ミカサ「エレン。貴方は、アニに何を思っているの? アニのせいで、おばさんが死んでしまった。兵士もたくさん死んだ。リヴァイ班の仲間を殺したのもあの女、違う?」

エレン「……ああ、そうだよ。あいつは人類の敵だ」

ミカサ「なら」

エレン「でもな、今のアイツは何も知らない、子供みたいな状態なんだよ!」

ミカサ「それが免罪符になるわけではない」

エレン「わかってるよ!」

ミカサ「わかっていない!」

ミカサ「エレンは密室であの女と長い期間居たから情が移ってしまった、だから冷静な判断が出来ない!」

エレン「俺は冷静だ! アニは人類の敵だし、あいつから情報を引き出さないといけないのもわかってる!」

ミカサ「なら、わかるでしょ? どんな手段を使っても、アニから情報を引き出さなきゃいけないのは」

エレン「…………」

ミカサ「エレン、あの女のことは忘れるべき。全部忘れて、とにかく今は休むべき」

ミカサ「貴方は疲れている。壁外調査から今日まで、ろくに休める時間もなかった」

ミカサ「落ち着いて、身体と心を休めて。そうすればまた冷静に物事を見ることができる」

エレン「ミカサ、俺は冷静だ。冷静なんだよ」

ミカサ「……エレン」

エレン「冷静に、アニを助けてやりたいって、そう思うんだ!」ガバッ

ミカサ「……!?(布団で視界を!?)」

エレン「おらぁ!」ドゴォ

ミカサ「うぐっ! え、エレン……」

エレン「こんな卑怯な手使わないと、お前に勝てないなんて情けねえよな」

ミカサ「ごほっ、ま、待って、エレン!」

エレン「ミカサ、もし今俺の考えてることが成功しても失敗しても、お前とはもう二度と会えないはずだ」

ミカサ「駄目、絶対に駄目! 行かせない!」グググ

エレン「目が覚めたら、全部終わってるさ」ゴッ

ミカサ「エ、レン……」

エレン「ごめんな、ミカサ。これから先もずっと、お前は俺の大事な家族だよ」

エレン(アニをどこに連れて行く? 拷問するにしても、下手に傷を付けたら巨人化しちまうだろ)

エレン(昔実験したみたいな、古井戸か? いや、巨人相手に立体機動装置を使わないわけがない)

エレン(万が一巨人化したときのことを考えて、あの特定目標拘束装置を使うだろう……この付近で一番でかい森と言えば)

エレン「訓練でよく使ってた、あの森か」

エレン「まずは馬と立体機動装置を手に入れないとな」

アニ「う、うぅ…いたいよ……たすけて、エレン…」

ハンジ「そろそろ思い出してくれないかな? さすがに可愛い女の子に涙流されると、すごく罪悪感に苛まれるよ」チャキ パァン

アニ「きゃぁ! う、うぅぅぅ!」

ハンジ「君の身体はワイヤーで拘束。あの巨大樹の森で君を苦しめた特定目標拘束装置も準備してある」

ハンジ「逃げるのは絶望的だろうね。なら君に残された手段は、全部白状するか、死んでも情報を渡さないかの二択なんだけど」

ハンジ「個人的には白状することをオススメするよ? 死にたくないだろ?」

アニ「しにたくない……いたいのやだよ……」

ハンジ「はぁ……傷が治る様子もないし、こっちとしては助かるのか困るのか微妙なとこだね」

アルミン「ハンジ分隊長、これ以上は、意味があるのですか? これ以上彼女を苦しめることに、意味があるとは思えません!」

ハンジ「ないね。こうなったら、もう判断してしまうしかない」

ハンジ「アニは情報源にはなりえない。憲兵団に引渡し、解剖を行なう」

ハンジ「解剖は死体でも問題ない。全員、銃を構えて」

アニ「やだああああああ! エレン、たすけてよ、エレェェェェェェン!」

ハンジ「……君は本当に心を失っていたんだね。ごめんね、痛かったね、これで、楽になるよ」

カッ!

ハンジ「!?」

パァン!

アルミン「巨人の腕!? まさか!」

エレン「アニ! 大丈夫か!?」

アニ「えれん……?」

エレン(傷が塞がってない……やっぱりアニは演技なんかしてなかったのか)

アルミン「エレン! 君は何を……!」

エレン「ハンジ分隊長、俺はやっぱり納得できません!」

ハンジ「君は何を言ってるんだ! 今君のやってることは人類に対する明確な裏切り行為だぞ!」

エレン「アニの回復を待てばいいだけです! もう少し、俺とアニにチャンスをください!」

ハンジ「私もそう思う。けどね、時間がないんだ。一刻も早く現状を打開する手段が必要なんだ」

ハンジ「アニから情報を得られるのがベストだけど、解剖して何か分かればそれでも構わない」

ハンジ「アニをこのまま生かしておいても、正気を取り戻して情報を教えてくれる可能性が低い以上、解剖することを選ぶ。それが兵団の選択だ」

エレン「…………」

アルミン「エレン! 君が何を思っているのかわからない! けど君は、正しい選択を選ぶことが出来るはずだ!」

エレン「……選択、選択か。なあ、アルミン。俺は前の壁外調査で選択を誤った」

エレン「俺がもう少し早く、巨人に変身し、アニを迎え撃てば、リヴァイ班のみんなは死なずに済んだかもしれない」

エレン「俺は、出来ることをやらずに、最悪の結果を招いてしまった。なら……俺は!」

アルミン「エレン、結果なんて誰にもわからない。結果を知って、後で「あのときこうしていれば」なんて言うのは簡単だ」

エレン「アニと、二週間だけだけど、一緒に過ごしてわかったよ。俺はただ、欲しかった」

エレン「新しい信頼を。訓練兵団に居たときのような、心の拠り所を。もうたくさんなんだよ、化け物扱いは……仲間はずれは!」

エレン「仲間を信じるのが正しい事だって……そう思いたかっただけなんだ。そっちの方が、都合がいいから」

アルミン「じゃあ、僕たちの……僕とミカサのことは、信じれないって言うのか? 心の拠り所になり得ないって言うのか?」

エレン「……だってお前たちは、巨人になれないじゃないか」

アルミン「っ!?」

エレン「だから選ぶんだよ、俺が今、この瞬間に後悔しないほうをな」スッ

エレン「アニ、俺がお前を守ってやる。絶対に」ガリッ

カッ

エレンゲリオン「ガアアアアアアアアアアアアア!」

ハンジ「!? エレンを直ちに拘束しろ!」

ドーン!

エレンゲリオン「!」

ハンジ「後ろに跳躍した!?」

アルミン「エレンは拘束装置の存在を知っているはずです、あの装置の弱点も!」

ハンジ「射線が限られることを感づいて避けたのか。全員立体機動に移れ! エレンを行動不能にしろ!」

エレンゲリオン「ガアアアアアアアアアアアアアア!」

ミカサ「……アルミン」

アルミン「やあ、ミカサ」

ミカサ「エレンは、行ってしまったのね」

アルミン「ああ。女型の巨人……アニに対峙したときから分かっていたことだけど、知性を持った巨人には立体機動装置を持ってしても、立ち向かうのは不可能に近い」

アルミン「だからエレンが人類の切り札だったんだ。けど、そのエレンが敵に回った」

アルミン「そうなってしまった以上、僕たちが敵うはずなかったんだよ」

ミカサ「……駆逐」

アルミン「え?」

ミカサ「駆逐してやる。この世から、全ての巨人を」ギリッ

アルミン「……その中に、エレンは」

アルミン「いや、今は考えないでおこう」

ライナー「結果はどうあれ、アニの救出とエレンの奪取は成功した」

ベルトルト「よろしくね、エレン」

エレン「……お前らとよろしくする気はねえよ」

ライナー「そうか。だが俺たちの手助けがないと、お前は壁内で死んでいただろう? 借りは返してもいいと思うぞ」

エレン「ああ。アニの為だ。仕方ない」

アニ「エレン、このひとたち、だれ?」

エレン「ライナーとベルトルトだ。しばらくはこいつらと一緒に居ることになる」

ベルトルト「……死んでお別れよりはマシ、かな」

ライナー「ああ。そう思っとけ」

アニ「エレン」

エレン「なんだ?」

アニ「これからずっといっしょ?」

エレン「さあな。お前がお前で居る限りは、一緒にいるよ」

アニ「わたしはわたしだよ」

エレン「ああ、お前はお前だ」グシャグシャ

アニ「や、やめてよ! エレンきらい!」

エレン「そっか。俺は……

おわり


正直兵団はアニを捕まえてもどうやって情報を引き出すつもりだったんだろう

乙!


拷問してるときのハンジが淡々としてて良かった

乙!!

俺が今後の原作の展開で妄想してた内容をこんな感じでアウトプットするとは…

非常に面白かった

滅茶苦茶面白かった

両方合わせて読みました。切なさと少し甘さが、入っている。良かったです。乙。

このエレンは兵士じゃないな…
面白かった 乙

おつです
面白かった
原作のアニはどうなるんだろうな…

ロリアニが純真で可愛いw

兵士になり損ねたエレンか…
とにかく乙

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