とある最狂の一方通行 (117)
前回に懲りず旧約三巻の再構成を再び書きます
【注意事項】
・ダークナイトリスペクト
・一応、鬱展開なので苦手だと思った方はブラウザバックを
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8月25日 午後八時 とある廃工場
そこはかつて太陽が昇っている間中、動いていた工場だった。
工場の大部分を占める大規模な産業機械が絶え間なく稼働し続け
作業員たちは、そこで家計を支える為に一生懸命働いていた。
だが学園都市の科学技術は光の速さで進化していき、
その工場は次第に『時代遅れ』という評価を受けるようになり
たった数ヶ月で閉鎖が決定され、今や誰一人この工場を訪れ者はいない。
―――昨日までは
「あァ、疲れた。ったく、俺は社畜かっつゥの」
夜の帳が落ちた廃工場に、やけに高い少年の声が響く。
その瞬間、雲の隙間から顔を出した月が工場を照らし出した。
映し出された少年の姿は、針金のように細い体。
少女のような繊細な肌に白い髪、ルビーのような真紅の眼。
月明かりの頼りない光が照らしだしたのはそれだけではない。
少年の足元には、黒いビニールで掴まれた細長い何かが転がっていた
やがて、雲が完全に晴れていき力強くなった月明かりが
暗闇に包まれていた廃工場を照らし出していく。
照らし出されたのは、数え切れないほどの死体だった。
それも唯の死体ではなかった。ある者は四肢を切断され、
ある者は全身の血を抜かれていたりと人がやったのは間違いないものの、
人間がやったとは認めがたい殺害方法だった。
「くかか、すげェな。塵も積もれば山となるってかァ?」
変わり果てた人間の姿を見て、少年は無邪気な笑みを浮かべる。
まるで、ジグソーパズルを完成させた子供のように
不意に、バン! と騒音が鳴り響き工場の扉が開けられた。
「あァ?」
白い少年は、半笑いを浮かべたまま注意をそちらに向ける
そこに立っていたのは、平凡そうな高校の制服を着たツンツン頭の少年
―――上条当麻だった。
上条は工場に入ると、辺りの惨状を見渡すと、白い少年に視線を向ける
「中々、いい出来じゃねえか」
「だっろォ? 結構苦労したンだぜこれ」
凄惨な光景の真っ只中にいるにも拘わらず
少年たちの会話は至って日常そのものだった。
乾ききれない血で濡れた床を踏みしめ、
上条は白い少年の元へ歩き出す。
「ところで、もう一つの件もやってくれたか?」
「あァ、ちゃァァンと、お望み通りにしたぜ」
そう言うと、白い少年は屈んで足元の黒いビニール袋を毟り取る。
包まれていた中身の正体は、外国人らしき容貌の白衣を着た男だった。
だが、辺りに転がっている惨殺体とは違い、その体には傷一つなく
その口から洩れる僅かな吐息が生きている事を物語っている。
「起きろ、待ちに待ったお前の出番だぜ?」
白い少年が男の背中を蹴った瞬間、規則的だった寝息は途切れ
白衣の男は慌てたように目を覚ました。
「な、何ダ? 一体何が……」
起きているんダ、と男が喋ろうとした瞬間
バキィ!! と上条の拳が男に容赦なく突き刺さる。
男の身体は、地面に思いっきり叩きつけられ
手足を乱暴に投げだしながら、ゴロゴロと転がっていく。
「ご苦労さん、じゃあ俺が出るまで入り口監視しといてくれ」
「誰か来たら?」
「殺せ」
「了解ィ」
それだけ言うと、白い少年は舞い上がる様に跳躍し
上条が開いた扉の外に着地すると、扉を乱暴を閉めた。
直後、人を殴る生々しい音が扉から唸る様に伝わってくる。
その様に白い少年―――、一方通行は残虐な笑みを浮かべた
悪意と狂気が交差した時、それが英雄が闇に堕した瞬間だった。
とまあ、こんな感じでプロローグを
次は、実験編に入ります。
次回の投下は一週間後ぐらい
それでは、また
乙でした
乙
期待
乙
1のセロリ爆発エンドが
忘れられんわ
どうも、>>1です。
レッツ投下
八月一五日 午後八時五五分 とある路地裏
夜空の月明かりが輝いて見える程の闇に包まれた中、
常盤台中学の制服を着た少女が立っていた。
額に掛けられているのは軍用の暗視ゴーグル。
そして、その手にはサブマシンガンが握られている。
「実験開始まで残り五分、準備の方はよろしいでしょうか?
と、ミサカは被験者に対して確認作業を行います」
無機質な瞳の少女の視線の先には、一人の少年が立っていた。
物騒な装備をした少女とは違い少年は何も持っていない。
一方通行<<アクセラレータ>>
それが少年の名前だった。
「まァそれはさておき、今日やっとオーダーメイドの服が出来たンだ。
お前らを殺して貰った金で買ったンだが、どォだ?」
一方通行は、自身の服の袖を見せびらかすように掴みながら
顔を引き裂いたような笑みを浮かべながら少女にそう尋ねる。
しかし、それに対し少女の表情が変わる気配はない。
「ミサカは服というものに興味を持ったことはありません、
よって、ミサカにはその服が良質なものか否かの判断が出来ません、
とミサカは懇切丁寧に説明しました」
少女が感情の籠ってない声でそう言うと、一方通行は引き延ばした顔を
元に戻し、興が削がれたと言わんばかりに溜息をついた。
「ほンっと、クッソつまンねェ人生送ってンなァ。
なンか趣味とかねェのか? 例えば、本読んだりとかよォ」
「本、ですか。そういえば、研究所に『走れメロス』という本が
置いてあったので、ふと気になったので読んでみました
と、ミサカは昨日の事のように思い出してみます」
おォそォか、と一方通行は再び嬉しそうに歪んだ笑顔を作る。
少女には、少年が何故自分の言動に一喜一憂するのか理解できないが
彼女は、それを少年に問いかけることはしなかった。
「アレ置いた俺なンだけどよォ、お前はどう感じた?」
「典型的な友情物語、と言ったところでしょうか?
とミサカは学習装置から得た情報からそう答えてみます」
「ぶっはっはっははははははははははははは!!!」
少女がそう答えた途端、一方通行は何かが爆発したように笑い出す。
少女は眉ひとつ動かさないものの、心の中で軽く混乱していた。
「いきなり、どうしたのですか? とミサカは被験者の精神状態を心配します」
「いやァ、まさかお前らの口から面白れェ冗談を出るとはなァ。
今のは完全に不意打ちだっつゥの、ったく」
何を言っているのだろう、と少女は内心訝しんでいた。
少女としては、冗談を言ったつもりは全くない。
一方通行は、そんな少女の様子を気にすることなく、
醜悪な笑みを浮かべながら少女に語り掛ける。
「メロスが本当にただの誠実な青年だと思うか?
それは違ェ、アイツの本質は、所詮ディオニスと全く同じ。
自分の思い通りにならねェ人間を片っ端から殺そうとするクソ野郎だ。
ただ、その姿が善に見えるか悪に見えるかの違いでしかねェ。
あの本が伝えたいのは、美しい友情なンかじゃねェ。
人間の奥底に深く根付いている醜い傲慢さだ」
「随分と捻くれた意見ですね、とミサカは率直に意見を述べてみます」
僅かに嘲りを含んだ少女の無機質な声に対して
一方通行は再び爆発するような笑い声をながら、言葉を続けた。
「あの本の中では勝ったのはメロスだ。だが現実はそォとは限らない。
お前らに見せてやるよ、メロスがディオニスに変わる瞬間を。
まァ、とりあえずお前は絶対見れねェけどな」
「その様ですね、とミサカは暗に実験開始時間が来たことを告げます。
被験者・一方通行は所定の位置に付いてください」
「短ェ間だが、人生ってヤツを存分に楽しめよ」
会話が噛みあわなくなっているのにも拘らず、
少女はサブマシンガンにマガジンを入れスライドを引き、
一方通行は両腕をゆっくりと横合いに伸ばし、笑みを浮かべた。
「潰す方としても、そっちの方が楽しいンだから頼むぜェ?」
「午後九時〇〇分、第九九八二実験を開始します」
少女の無機質な声がそう宣言した瞬間、残酷な『実験』が幕を開ける。
今回はここまで
次回の更新は不定期になりそうです、すいません
それではまた
乙
斜め上の展開を期待してるぜ
どうも、>>1です。
「俺」と「オレ」
「僕」と「ボク」
「私」と「あたし」と「わたくし」
どう違うというんだ(困惑)
区別するべきなのだろうか?
それはさておき朝っぱらからレッツ投下
八月一五日 午前九時ジャスト とある路地裏
「ヒャッハッ!」
瞬間、まるで待ちわびていたサッカーの試合が始まったような
歓声のような叫びをあげながら一方通行は強く地面を踏み込んだ。
瞬間、踏みしめられた地面が爆発するように吹き飛ばされ、
一方通行の華奢な体はロケット噴射でも起こしたように跳躍し、
たった一歩で一〇メートルも離れていた少女の懐へと飛び込んでいく。
そして、弾丸並の速度で少女の目と鼻の先まで迫った一方通行は、
触れるだけで人を殺せる凶悪な右腕を少女の顔目がけて突き出す。
だが、針金のように細い右腕が少女に突き刺さるかのように思えた瞬間
少女はまるで伸縮したバネが一気にはじけるような動きで横合いに飛んだ。
「オッホゥ!?」
標的を失った一方通行は間抜けな声を上げながら、
そのまま自身の凶悪な能力で生み出した勢いを殺せず
手足を乱暴に投げだしながら地面を転がっていく。
少女は、その隙をついて電撃を非常灯に向けて放ち
周囲の空間を暗闇に沈めると大きな室外機の傍に隠れた。
別に少女の手にあるサブマシンガンや暗視ゴーグルに
取り付けられた追加機能ではない。
電撃の正体は、欠陥電気<<レディオノイズ>>
少女が保有する異能力者級の発電系統の能力だ。
「そこで避けるとはなァ、さすがに一万回ぐれェになると
俺の動きとかも大体予測ぐらい出来たりすンのかァ?」
少女に向かって一方的に話しかけながら、立ち上がろうとする一方通行だが、
フラフラとよろめくその体は、もう一回派手に地面に倒れこんだ。
だが、実際には一方通行の身体には傷どころか汚れすらついていない。
少女の目には、その振る舞いはふざけているようにしか見えなかった。
「おっとっと、ンだこりゃ?」
一方通行は、お道化た様に立ち上がり、傍に落ちていた何かを拾い上げる。
それは、実験開始の前に少女が適当に投げ捨てた鞄だった。
「チョイと、荷物検査ってなァ」
そう言いや否や一方通行は鞄を勝手に開けると中身を探り始める。
一〇秒ほどして、彼は鞄の中から手を引き抜いた。
その手に握られているのは、球状の形をした黒い物体。
―――主に軍用で用いられる手榴弾と呼ばれる小型兵器だ。
「最近の女子中学生っつゥのは、随分とアグレッシブな趣味なンだなァ」
少女は、親しげに話しかける一方通行の言葉には耳を貸さず
暗視ゴーグルのレンズに鮮明に見える少年の姿に狙いを正確に定める。
瞬間、少女は勢いよく室外機の陰から飛び出すと
サブマシンガンの銃口を一方通行に向けて一気に引き金を引いた。
ガガガガッ! と凄まじい速さでサブマシンガンから放たれた銃弾は
空気中に螺旋状の渦を刻みながら、少年に襲い掛かる。
カチッ、と弾丸が少年の元までたどり着く前に弾倉が空になった。
放たれた銃弾は約三〇発、何発かは外すかもしれないが
多く見積もっても、精々一桁台ぐらいぐらいだろう。
服の厚みからして、一方通行が防護服を着ていない事は明らかだ。
放たれた数多の銃弾は、一方通行の華奢な体に無数の風穴を開ける
―――本来ならば、そうなるはずだった。
刹那、少女のサブマシンガンとゴーグルがほぼ同時に砕け散り、
少女の右肩が『何か』に貫かれ、血がにじみ出る様に服にシミを作る。
正体は、サブマシンガンから放たれた弾丸。
一方通行の身体を貫くはずの弾丸は、彼の身体に触れた途端
ビデオの巻き戻しのように、放たれた勢いのまま
綺麗に弾丸の軌道をなぞる様に少女に跳ね返されたのだ。
「―――見ィつけった」
楽しそうで、どこか狂気を帯びた少年の声が路地裏に響き渡る。
武器を失った少女は、その声を聞いた途端すかさず走り出した。
―――
――
―
八月一五日 午前九時一〇分 とある操車場
「はあ、はあ、はあ………」
銃で撃たれた肩が燃える様に痛むのにも拘わらず、
少女は荒い息は吐きながら、階段を下っていく。
その姿を一方通行は操車場の真上の橋の上から、
歪んだ笑みを浮かべながら、見ていた。
「まさか、この歳で鬼ごっこするとはなァ。
まァ、小っせェ頃に遊んだ記憶なンざねェけど」
少女が階段を下り終えるのと同時に一方通行は
何の躊躇いもなく、身軽に手すりを飛び越える。
かなりの高さから飛び降りたのにも拘わらず
一方通行は、無重力状態のように緩やかに落下し、
少女の目の前に立ちふさがる様に、着地した
「鬼ごっこ、しゅーりょォー」
すかさず少女は横合いに向かって走り出そうとするが
最初の一歩が踏み出されたところで、一方通行が動いた。
「終了つったのが聞こえなかったのかなァ?」
ドン、と一方通行が強く地面を踏みしめた瞬間、
轟!!! と地面が爆発するように捲り上げられ
無数の砂利が散弾銃のように辺り一帯に飛散する。
地面に蜘蛛の巣状の亀裂を生み出す程の衝撃に
少女の身体は、まるで紙風船のように打ち上げられた。
ろくに着地の体制も取れなかった少女の身体は
ぐちゃり、と耳を塞ぎたくなるような音と共に地面と激突する。
逃げろ、と少女の生存本能が悲鳴を上げるが、足が折れている為
少女は走るどころか、立ち上がる事さえ出来ない。
「ブアッハハハハ! 残念でしたァ!」
一方通行は、再びたった一歩で少女との距離を詰めると
倒れこんでいる少女に無線を合わせるように屈みこんだ。
少女は立ち上がる事を諦めて、手で使って体を引き摺ろうとするが
金縛りにあったかのように体はいう事を聞かず、歯を食いしばろうとするも
力がうまく入らず、唇から口の中を満たしていた血が滴りおちた。
「悪ィな。血って、ンな美味しいもンじゃねェだろ。
―――口直しにいいものをやるよ」
一方通行は、左手を使って少女の口を強引に抉じ開け、
右手に持っていた手榴弾をその中にねじ込ませるとピンを引き抜いた。
「生きるか死ぬかは自分で決めるとイイ」
それだけ言うと、一方通行は少女に背を向けて歩き出す。
まるで自分はもう何もしない、とでも言う様に
その後姿を少女はジッと見つめていた。
―――ある瞬間を見逃さないようにする為に
(ミサカは、標的の能力を正確には把握出来ていませんが
これまでの戦闘から周りに何らかのバリアのようなものを
常に張り巡らせることが出来ると、ミサカは推測します)
先程の戦闘で、少女はそれが不意打ちでも破れない事を知った。
だがしかし、それは確認作業にすぎず切り札は他にある。
少女が着目したのは、一方通行の足。
その細い足はしっかりと地面を踏みしめている。
つまり、足の裏にはバリアは展開されていない。
そう予測した少女はこの場所のどこかに地雷を埋め込んでいた。
幸運な事に、その場所は一方通行の進路上にある。
少女が待っているのは、一方通行の足がそこに届いた瞬間だ。
一方通行の足が、後数歩でその場所を踏みしめようとした時
遠くの方から少女とよく似た声が響き渡る。
「見つけた!」
その声は、まるで迷子の子供を見つけたような母親のように力強く優しかった。
少女は一方通行から目を離し慌てて壊れかけた身体を無理矢理動かし、声がした方向を振り返る。
彼女の目に写ったのは、橋の上から焦燥に満ちた表情でこちらを見つめる
自身の容姿を完璧に再現したように、そっくりな少女の姿だった。
その姿に、少女は初めて恐怖する。
少女が自身を殺そうとする一方通行に恐怖しなかったのは
自身の命に価値を見出していなかったからだ。
だが、橋の上に立っている少女は違う。
このままでは、『実験』に巻き込まれてしまうに違いない。
少女にとって、その事が何よりも怖かった。
「逃げ―――」
こちらに向かおうとする少女を制するべく口を開いた時
ポトリ、と少女の口から手榴弾が滑り落ちる様に落ちる。
少女の感情の無い顔が、初めて驚愕に彩られた瞬間
手榴弾は爆発し、無数の破片が少女の身体を貫いた。
今回の分はこれにて終了です。
次の投下は一週間後ぐらいです
それでは次回の投下で~
乙
乙
生々しいわぁ…
乙
乙でした
忘れそうなので生存報告だけ
戦闘シーンと締めは粗方出来ているのですが
導入部がまったく思いつかない
思いつき次第投下しますのでご容赦を
それではまた
舞ってます
待ってる
予定より大分遅れましたが投下します
八月一五日 午後九時一二分 とある操車場
無数の破片に貫かれ、一瞬の内に見るに堪えない無残な姿と化した少女を見て、
一方通行は口が裂けるほどの勢いで、狂ったように笑い出した。
「アッハギャハハハハハハ! 最ッ高の花火だなァ、オイ!?
予定とは違うが、これはこれで楽しめたから別にいいか、ンでェ?
こンな至高のエンターテイメントを見せてくれたのは誰ですかァ?」
「はあああああああああああああああっ!!!」
直後、橋の上にいた少女はその場から躊躇わずに飛び込み
着地するや否や咆哮を上げながら一方通行に向かって走り出す。
そして、急ブレーキを掛けたかのように一方通行の一〇メートル手前で
立ち止まった瞬間、少女の身体から溢れんばかりの電流が周囲に炸裂し
吸い寄せられた砂鉄が竜巻のように渦を巻き始める。
「おォ、すっげェ。大した余興だ」
刹那、呑気そうな声を出していた一方通行の華奢な身体が砂鉄の渦に巻き込まれた。
砂鉄の勢いは止まらず、一方通行のいる空間を容赦なく蹂躙していく。
「磁力で砂鉄を操ってンのか、名案だな」
にも拘わらず、一方通行は平然と少女に話しかける。
その様子を見た彼女の顔が驚愕の一色に染め上げられた瞬間、
一方通行を覆っていた砂鉄の竜巻が一瞬で吹き呼ばれた。
「だが、すぐに飽きちまう。顔洗って出直して来やがれ」
一方通行が傷一つ負っていない事に狼狽する少女だったが
突然、その表情は驚愕から恐怖へと変わっていく。
その目線にあったのは、少女と瓜二つの女の死体。
手榴弾の破片を至近距離で受け、頭部が完全に吹き飛ばされ
人間かどうかの区別もつかない程、グチャグチャになった肉片。
それに気づいた一方通行は、さらに凶悪な笑みを浮かべた。
「あァ、そいつが怖ェのか? よし、分かった。
俺が不思議な不思議な手品で消し去ってやろう」
「……何で?」
「あァ?」
「何で、こんなイカれた実験にアンタは協力してる訳!?
それだけの力があって、無理矢理やらされてる訳じゃないんでしょ!
あの子に何か恨みでも持ってるの!? 答えなさい!!!」
少女は、体中から紫電を撒き散らしながらコインを構え
一方通行の華奢な身体に、しっかりと狙いを定める。
少女は有らん限りの憎しみを籠めて、一方通行を睨みつけるが
対する一方通行は神妙な顔をしながら、頭を掻きはじめた。
「えーっと、……何だったけかなァ? あー、……ちょっと待ってろ。
すぐに思い出すから。うーン……その………あァ、そォだそォだ!
闘おうという意思さえ奪う程の絶対的な力を得る為、だったけかなァ」
でもまァ、と一方通行は背伸びをしながら一拍置いて口を開く。
「今はもう、そンな事はどォでもいい。特に意味なンざねェよ。
獲物を追い、狩りをする―――まさに神ゲーじゃねェか」
「……んな事の為に」
瞬間、少女は心の中で何かが音を立てて崩れ落ちるような錯覚を覚えた。
そして、その隙間を埋めるかのように少女の心に負の感情が渦巻いていく。
「ン? もっとハッキリと言ってくれませンかねェ?」
「そんなふざけた理由で! そんな下らない事の為に!
あの子を、殺したのかああああああああああああああ!!!」
身体を駆け巡る衝動に身を委ね、少女は一方通行に向けてコインを弾いた。
直後、凄まじい勢いで加速されたコインは、オレンジ色の軌跡を描きながら
音速の三倍を超える速度で轟音と共に真っ直ぐと飛んでいく。
その名は超電磁砲<<レールガン>>
―――超能力者第三位、御坂美琴の能力名にして必殺技だった。
そして、空気を引き裂きながらレーザー光線のように突き進むコインは、
歪んだ笑みを浮かべる一方通行に命中する―――ように見えた。
直後、オレンジ色の光線が何か見えない力にへし折られるように
ある方向に向きを変え、そのまま突き進んでく。
その先にいるのは、目を覆いたくなる程の凄惨な死体。
もはや人としての原型は消失し、性別の区別も分からないが
元が誰であったかなど、その場に分からない人間はいない。
瞬間、超電磁砲がその悲惨な光景を操車場の一部と共に消し飛ばした。
「じゃじゃーン! 見事にィ、消えた」
茫然とする美琴に対して、一方通行は観客に手品を披露するように
右手を横合いに引き伸ばし、濁った眼で彼女を射抜くように見つめる。
「ところで、今日出来立てホヤホヤの特注の服だ。
こいつら殺した金で買ったンだけどよォ、どォだ?」
今はもう塵と化した美琴と瓜二つの少女にやった様に、
一方通行は服の端を見せびらかすように指先で摘み上げる。
美琴には、とてもその姿が人間だとは思えなかった。
「……アンタはイカれてる」
「いや、頭が少し良いだけさ」
一方通行は跳躍し美琴の距離を一歩で詰めると
美琴の後ろ髪を、レモンを握り潰す様に掴んだ。
痛みに耐え切れず美琴が思わず呻き声を上げると、
すかさず一方通行が開いた口に右手の親指を捻じ込み
グラスを持つように、美琴の顎を掴みあげた。
「何で、さっきからそンなしかめっ面ばっかしてンだよ。
―――死ンだ後でも笑えるようにしてやるよ」
「お待ちください」
一方通行が笑いながら、右手に力を込め始めた瞬間
機械の様に冷たく感情の無い声がその場に響く。
「あァ?」
「それ以上の戦闘は」
「今後の実験に」
「多大な影響を」
「及ぼす恐れがあります」
「とミサカ達は被験者に警告します」
まるで空間転移したように、突然現れた多くの少女たちが
口々に一方通行に言葉を投げかけた。
その姿はまるでコピーしたかのように美琴瓜二つの姿だ。
―――先程、一方通行に惨殺された少女のように
「ンだよ、ちょっとからかっただけじゃねェか」
一方通行は一瞬だけ顔から笑みを消し、不満げにそうに答えると
再び顔を引き裂いたような笑みを浮かべながら、美琴を見る。
「そォいや、自己紹介がまだだったなァ。
―――超能力者第一位、一方通行<<アクセラレータ>>だ。
お前の出来損ないには、割と楽しませて貰ってンだ。
今後とも、愉快で素敵なスリルと興奮をよろしくゥ」
一方通行は、薄く引き延ばすようにそう言い捨てると
愕然とする美琴を置いて、その場を立ち去った。
今回の投下はここまで
元ネタはダークナイトとクウガから
知らない人は見てみよう(ステマ)
それでは次回の投下で~
乙
まさに悪党ですな
ダークナイトはいい悪役してたね
スランプから抜けましたので投下します
八月二十一日 午後四時三〇分 とある路地裏
「どうかしたのかな。何か気になる点でも?」
「いや、そうじゃなくて……」
とある高校の学生である上条当麻は、警備員に守られる形で路地裏を歩いていた。
理由は至極単純、路地裏で一般人が目にすることのないあるものを見てしまったからだ。
すぐさま、警備員に通報し発見した場所まで誘導したのだが、そこには何もなかった。
「そこに、そこにあったはずなんです、けど……」
「何?」
その言葉に釣られて、警備員達は一斉に地面を見る。
だが、地面には特に異常はないばかりかゴミ一つ落ちていなかった。
緊張の面持ちを浮かべていた警備員達は、お互いのヘルメットを見合い溜息をつく。
子供のイタズラ通報に騙された時のような雰囲気が彼らの間に漂った瞬間、
轟!!! と何かが警備員の一人を直撃し、吹き飛ばした。
「な、何だ!?」
警備員達は、慌てて腰のホルダーから拳銃を引き抜き辺りを警戒する。
直後、カラカラという音と共に警備員達の元へ何かが転がってきた。
警備員達が一斉に、その物体に拳銃を向けるが引き金が引かれる事はない。
何故ならその正体は、ただのビデオカメラ。当然危険物では判断した為だろう。
何時まで経っても第二撃が来ない事に安堵しかけた彼らだが
突然、遠くの方から鳴り響いた男の叫び声で再び緊張を取り戻し
声のした方向へと、脇目も振らずに走り出し上条もそれに必死についていく。
「うっ、これは……」
声の音源へと辿り着いた全員が揃って反射的に口元に手を当てた。
叫び声を上げたのは、吹き飛ばされた警備員。
頑丈な装備のおかげで大した怪我はないようだ。
だが、そんな事に安堵する余裕を吹き飛ばす程の問題が彼らに立ち塞がる。
彼に直撃し、彼と共に吹き飛ばされたもの、それは―――
「みさか……?」
―――先ほど上条が路地裏で見つけた少女の死体だった。
―――
――
―
上条達の元に放り込まれたビデオカメラには一個の映像ファイルがあった。
恐る恐るといった感じで、警備員が再生ボタンをゆっくりと押す。
『お前は超電磁砲か?』
『違います、とミサカは応答します』
画面には、路地裏でグッタリと倒れている少女が映し出されており
その姿は、その場にいる誰もが知っていたが、誰も口には出さなかった。
そして、映像は少年と思われる声とのやり取りから始まっていく。
『違う? じゃあ、何でそンな姿してンだ? うン?』
『それは……ぐっ……』
少女が答えようとした瞬間、彼女の口から血が滴り落ちる。
見るからに重傷を負っていそうな彼女は、喋るのもやっとなのだろう。
『はァ……しょうがねェなァ』
それに見兼ねたように撮影者がカメラを自分自身に向けたのだろう。
映像がブレながら素早く移り変わり、撮影者自信を映し出す。
白髪に白い肌に赤い目、そして狂ったような笑みを浮かべながら
撮影者である異様な外見の少年は口を開いた。
『喋る事も出来ねェ劣等生の代わりに俺が教えてやるよ。
こいつらは超電磁砲の体細胞から生み出された軍用のクローン。
通称、「妹達」ある研究者が超能力者を量産しようとして作ったンだ』
衝撃的すぎる少年の言葉に、その場にいた全員が驚愕する。
だが、当の少年は軽い冗談を言うような口調で話を進めていく。
『だが、生み出されたクローンは強能力者止まりの出来損ないの乱造品。
当然、コストの割に大した成果を得られない計画は、すぐに打ち切られる。
だが、その研究者はそんな計画の生で借金まみれで破綻寸前だった。
だから、その欠陥品をコストの割に見合う成果を叩きだす実験に転用した。
それが、この俺「一方通行」が参加している絶対能力進化計画だ。
実験内容はとても簡単、二万人の妹達を殺す事―――こんな風に』
そういい、カメラの映像が再び少女に移り変わり
撮影者である少年、一方通行の細い腕が少女に触れた。
瞬間、少女の身体は空気を入れすぎた風船のように破裂し
辺り一帯に赤黒い液体を撒き散らしていく。
瞬間、映像も真っ赤に染まるが、一瞬の内に消え去り
映像は再び少年の顔のアップを映し出していた。
『たった今一〇〇三一人目の妹達が死ンだ、残るは九九六九人。
止める方法も、これまた単純。この俺を倒す事。たったそれだけだ。
ちなみに、次の実験の開始時間は今日の午後八時三〇分。
場所は第七学区のアホみてェにでっけェ列車の操車場だ。
止めたきゃ来い、だが出来なきゃこいつのように殺す。
安心しろ、約束は守る男さ。ブッアヒャハハハハハ!
クックハ! ハハハ、ハハ、アヒャハハハハハハハハ!!』
少年の狂ったような爆笑を最後に映像はぷっつりと切れる。
その場にいた彼らの間には、しばらく言葉は交わされなかった。
―――
――
―
やがて、警備員の一人が悪い空気を遮断するように口を開いた。
「……これを本部に届けよう。こんなもの、俺達の手に負える事件じゃ―――」
刹那、話していた警備員の腹に巨大な風穴が開けられる。
そして、後から遅れるように重々しい銃声が鳴り響く。
(……狙撃!?)
だが、警備員の傷は『貫かれた』というより『砕かれた』という方がしっくり来る。
対戦車ライフルのような大型銃器が使われた事は素人である上条にも分かった。
「クソッ!」
警備員の一人が、咄嗟に発煙筒を放った事で辺り一帯が白煙に包まれる。
これで狙撃は防げると安心した彼らの耳を、サブマシンガンの銃声が揺るがしていく。
上条は咄嗟に地に伏して、サブマシンガンの弾幕から逃れたものの
他の警備員達は間に合わなかったのか、崩れ落ちるように地面に倒れた。
しばらく地面に伏せていた上条だったが、やがて恐る恐るといった様子で立ち上がる。
その場に襲撃者の姿は無く、更にはビデオカメラまでもが消えていた。
―――
――
―
八月二一日 午後五時二〇分 とある研究所
「何の真似だ、一方通行!?」
「何だよ、冗談みてェな顔がすげェ事になってンぞ?」
研究者、天井亜雄は一方通行に向かって食い掛かっていた。
他の研究者も一方通行に対し責めるような視線を向ける。
「俺が何したってンだよ、ひっでェ奴らだ」
「惚けるな! 実験の事を外部に流そうとしただろう!
隠蔽処理に警備員を五人殺した! どれだけ大変か分かっているのか!?」
「大変なのは、お前等とお前の経済状況だろォが。俺には関係ない」
「いい加減にしろ! 今回のお前の行動で、どれだけの不具合が生じたと思ってる!?
見ろ! 路地裏に入った警備員が行方不明になったって騒ぎになってるぞ!!」
激昂する天井亜雄はパソコンの画面を思いっきり指で弾いた。
その画面には、警備員が神隠しにあったという内容のニュースが載っている。
一方通行は、酷くつまらなさそうにそれを見てから天井に視線を移した。
「分かった、分かりましたよォ。消せばいいンだろ消せば」
刹那、ゴッ!! と一方通行は天井の後頭部を片手で掴み
そのまま、思いっきりパソコンの画面に叩きつけた。
パソコンの液晶が砕け散るのと同時に、周りに血飛沫を撒き散らしながら
天井亜雄の身体が糸が切れた操り人形のように床に崩れ落ちる。
「じゃじゃーン、二回目も、見事にィ、消えたァ」
一方通行の行動に恐怖を覚え、震えている研究員を酷く濁った目で
射抜くように見ながら、一方通行はすぐ傍の机に置いてある鞄に手を伸ばす。
それは、次の実験に使用される妹達に支給される装備でもあった。
「お前らさァ、女子中学生にこンなもン持たしてンじゃねェよ。
もっと夢と希望が詰まったもンでも渡しとけよ、ったく」
そう言い放ち、一方通行は鞄に入っていた手榴弾を適当に抛り棄てる。
―――あろう事か、安全ピンを引き抜いた状態で
束の間の怒号、そして爆発。
ズタズタと引き裂かれていく研究員や機材を見ながら、
一方通行は口を引き裂いたような笑みを浮かべた。
「絶対能力者になンて、死ンでも成るもンか」
今回の投下はここまで
原作と食い違ってる点がありますが、どうかスルーを
次回は、上条さんと一方通行の戦闘になるので時間がかかりそうです。
早ければ一週間以内、遅くとも2週間以内には書き上げます。
それでは次回の投下で
ふむ いろいろわからなくなって来た(困惑) 楽しみにしてる
おつ
おつ
おつおつ
上条さんはここから狂うのか
どうも、>>1です。
レッツ投下
八月二十一日 午後八時二十五分 とある操車場
そこは、五分後に開始される絶対能力進化計画第一〇〇三二次実験の開始地点。
その実験に参加予定である妹達の一人であるミサカ一〇〇三二号がその場に着いた時
被験者である一方通行はコンテナの上で手足を乱暴に放り出しながら寝ていた。
「実験開始まで残り五分ですが、準備の方はよろしいのでしょうか?
と、ミサカは見るからにしてやる気が全くない被験者に確認をとります」
「あァ、何だお前か。折角来てくれたトコ悪ィンだけどな?
帰って良いぜ? 正直言って俺もう実験飽きちまったし」
「はい? あなたの突然すぎる心境の変化はミサカには理解できませんが、
残念ながらこの実験を進めるに辺り、あなたの意思は関係ありません
と、ミサカは暗に選択権があるなんて勘違いするんじゃねえよと伝えます」
一〇〇三二号がそう言った瞬間、一方通行は飛び跳ねる様に上体を起こし
体を回転させると、コンテナから足を投げ出し彼女の方に向き直る。
「ブッアヒャッハハッハハ! お前ら如きが俺を思い通りに出来るとでも?
絶対に無理だ、諦めな。俺は早く新しい玩具で遊びたくてたまらねェンだ」
爆発するような笑いを上げ、一方通行は訴えるような口調で言った。
だが、一〇〇三二号はそんな様子に眉ひとつ動かさず彼を問いただす。
「玩具とは? とミサカは浮かんだ疑問を被験者にぶつけてみます」
「あァ、ヒーロー」
一方通行は興奮を抑えているような震えた声でそう言う。
そして、心の底から楽しみだと言わんばかりに歪んだ笑みを浮かべる。
「例えば、この実験の内容を学園都市中、ひいては世界中が知ったとする。
多くの人間が、お前らに同情を寄せ、俺をクズだと糾弾すンだろォな。
中には、義憤に駆られて俺を殺しに来るやつまで現れるかもしれねェ」
「こないだのお姉様のような人間を待っているのですか?
と、ミサカは突然の急展開に戸惑いつつ問いかけます」
「あァ、アイツはダメだ。そりゃお前らよりはちっとばっかし強いだろォけど
それだけだ。自分よりも強い敵に出会えば、たちまち心がポッキリ折れちまう。
まァ、良くてスキルアウトみてェな雑魚の相手しか出来ねェだろォな」
途端に笑みを浮かべていた一方通行の表情がつまらなそうなものになり、
高揚していた声色も面倒臭そうな、それでいて呆れたものに変わっていく。
「それでも、まだマシな方だろォな。大抵は安全地帯では、いろいろ立派な事言えても
俺の前に立てば、義憤や正義なンてポイして泣いて喚いて媚びへつらって命乞い。
―――うっぜェ。俺みたいなヤツはいつバチが当たるか分かったもンじゃねェからな。
そンなつまンねェヤツを相手にしてる時間はもったいなくてしょうがねェ。
俺が会いたいのは、今はまだ正気を保ったままの俺と同じ化け物なンだ」
そこまで言って、一方通行はおもむろに視線を一〇〇三二号から横に逸らした。
途端に、一方通行は口を引き裂くように笑いながら、コンテナが勢いよく飛び降り
拍手を初めて知った子供のように、手をブラブラさせながら不器用に叩き始めた。
「さァて、無駄話はここまでだ。メインゲストも来た事だしよォ」
その言葉に釣られて、一〇〇三二号は一方通行の見ているものを視線で追いかける。
それを見た彼女の表情が初めて驚愕に染まり、思わず眉を潜めた。
「本日の実験によォこそ、ヒーロー」
両者の視線の先―――積み上げられたコンテナの隙間に上条当麻が立っていた。
そして、一方通行は古くから友人を出迎える様に手を広げ一〇〇三二号に近づく。
「いやァ、良かった良かったァ。証拠が潰された時はさすがに焦ったが
お前自身がそうだったとはなァ。つかよくあンな状況で生きてられたな」
「……今すぐ、御坂妹から離れろ」
上条は、そんな一方通行に突き刺すように言い放つ。
一回の高校生とは思えない最大限の憎しみが篭った目で睨みつけながら
「ン? ミサカ? あァ、確かコイツの名前の原型だったけか」
一方通行は、手を伸ばせば触れられる距離に一〇〇三二号がいる事を確認し、納得する。
どうやら、何の気なしに歩き回ってる内に偶然彼女の傍に近づいたようだった。
「いや、わざとじゃないンだけどな? それはそうと、超電磁砲の知り合いか。
いとも簡単に諦めた挙句に他人にバトンタッチか、本当にひっでェ女だ」
「ぐちゃぐちゃ言ってねえで離れろっつってんだろ、三下!!!」
雑談でもするかのような一方通行の言葉を遮る様に、上条は怒号を飛ばす。
対する一方通行は、言葉を詰まらせ、不思議そうな顔を上条に向ける。
「サンシタ……三下か。それは、今まで言われた事が無かったなァ。
でも、まァ中々いい響きじゃねェか。次の実験で使うことにするか」
その言葉が引き金と化したのか、上条は一方通行に向かって勢いよく駈け出す。
両者の距離は一〇メートル程しかない為、三,四歩程ですぐに詰められる。
そして、上条が右拳を握りしめ一方通行に思いっきり殴りかかろうとした瞬間
一方通行は、その場を動かずにリズムを刻むように足元の爪先で地面を軽く叩いた。
刹那、一方通行の足元の砂利が地雷を踏んだかのように爆発する。
四方八方に飛び散る砂利がショットガンのように上条と一〇〇三二号に襲い掛かり
上条の体は後方に吹き飛ばされ、一〇〇三二号の体は横方のコンテナに激突した。
「御坂妹!?」
「心配すンな、そいつにはもう手は出さねェよ」
思わず叫んだ上条の耳に、上から返事をするような声が辺りに響き渡る。
驚きながら声のした方向を見た上条の目に、何メートルも飛び上がり
自身に向けて、垂直落下する一方通行の細い体が映し出された。
上条は慌てて地面を飛び跳ねる様に、脇目も振らずにその場を離れる。
少しの間を置いて、先程まで上条がいた場所に一方通行が派手に着地した。
直後、一方通行の足元のレールが縮められたバネが一気に伸びる様に
横合いに飛び出し、必死に逃げようとした上条を容赦なく薙ぎ払う。
「言ったろ? 約束は守る男だってなァ!!!」
横合いに飛び出したレールは、今度はくの字に捻じ曲がり垂直に起き上がった。
そして、撫でるような一方通行の細い手が触れた瞬間、砲弾のように射出される。
撃ち出されたレールは、何とか立ち上がった上条の目の前に突き刺さり
凶器と化した無数の小石が、まるで豪雨の様に上条の全身を叩いた。
「がっ……、はっ……!」
「オイ、どォしたァ!? 俺に喧嘩売るって事は切り札があるンだよなァ?
早く出さねェと、墓の中に持ち込むことになっちまうぞ!!!」
瞬間、一方通行の足元の砂利がロケットのように爆発し
一瞬の間も置かずに、上条との距離をゼロに詰める。
上条は、満身創痍の体を必死に動かし一方通行の体をギリギリで避けた。
しかし、一方通行はそれが予想通りだと言わんばかりに笑みを深める。
荒い息を吐きながらも、上条の思考の端がそれを疑問として捕えた直後
一方通行の細い手が地面に突き刺さったレールを掴み、体操選手のように
滑らかに回転し、勢いを保ったまま体の向きを一八〇度正反対に変えた。
「なっ!?」
上条がもう一度慌てて避けようとした瞬間、一方通行の蹴りが上条の腹に突き刺さる。
空気と血を吐き出しながら、上条の体は死体のように手足を乱暴に投げだしながら
操車場の無機質で冷たい地面を何メートルも転がり続け、ようやく動きを止めた。
全身が痛みと言う名の悲鳴を上げる中、それでも上条は立ち上がる。
そんな上条を労うかのように一方通行は不器用な拍手をした。
「いやァ、そンな状態になってもまだ義憤を捨てねェとはな。
本当に持ってるらしい、何者にも屈しない強い意思とやらを」
疲労のあまり視界が明滅する上条に、一方通行は親しげに話しかける。
そして、満足したような笑みを浮かべたまま腰を低く沈めた。
「本当に楽しい時間だった―――だが、まだ足りねェ、全然足りねェ。
お前の首を晒しあげて、次のヒーロー探しと行きますかァ!!!」
轟!!! と一方通行は銃弾の如く上条の元へと駆けだす。
あまりの速さに、両者の距離は一秒と経たず詰められる。
「く、っそおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
生まれたての子羊のように足が震え、身動きがとれない中
自暴自棄になった上条は、反射的に右腕を振り上げた。
そして、どこに突き出しているのか分からない上条の右手は
ぐしゃり、と鈍い音と共に一方通行の顔面を殴り飛ばす。
「「え?」」
殴り飛ばされた一方通行は勿論、殴り飛ばした上条でさえ驚いた。
まさか適当に放った拳が当たり、力があまり入っていない拳が
一方通行にダメージを与えるなんて思いもしなかっただろう。
一方通行も、また一瞬だけ上条と同じように驚いた後に
今までにないくらい、狂ったように笑い始めた。
「アッハギャハハハハハハハ!! これがお前の切り札ってかァ!?
何これすっげェ、超すげェ。反射をブチ破る能力なンざ聞いた事ねェ!
ハハ、見ろよコレ! 鼻血出てるぜ!? 自分の血なンざ見たことなかったが
人並みに赤かったンだなァ! コーヒーばっか飲ンでるから茶色かと思ってたが」
殴られたにも拘わらず、一方通行は興奮した様子で狂笑を上げる。
自身の顔面を汚すように溢れ出る鼻血さえ無視して
「実験を止めるには、お前を倒せばいいんだよな?」
そんな一方通行に向かって歩き出しながら、上条は冷徹にそう言い放つ。
そして、ようやく上体を起こした一方通行の頬を容赦なく殴り飛ばした。
「……妹達だって、生きてんだぞ」
紙風船のように投げ出される一方通行を睨みつけながら
上条は奥歯を噛み締めながら、自らの想いを吐き出すように告げる。
「お前に殺された妹達も、これからお前に殺されるはずだった妹達も
全力を振り絞って必死に生きて、精一杯努力してきたんだ!
何だって、テメェみたいな人間の食い物にならなきゃいけねえんだ!」
しかし、それでも尚一方通行の顔からは笑みが消えることは無かった。
かろうじて開かれる濁った紅い眼には、余裕と狂気が入り混じっている。
「言うねェ、本当はそンな事どうだっていい癖に」
「……何?」
思いがけない一方通行の言葉に思わず、上条の歩みが止まった。
引き攣った顔を浮かべる上条に、一方通行は疲れたような笑いかける。
「気付いてねェのか? 俺をその変な右手で殴り飛ばしたときのお前の顔。
すっげェ気持ちよさそうで、人生で最高の瞬間みてェな顔をしてるぜ。
ヒハハ、狂気を隠して一般人を演じ続けるのは辛いもンだろ?」
「テ、メェ……」
刹那、上条の中で何かが音を立ててキレたような気がした。
湧き上がる激情に身を任せ、上条は右手をきつく握りしめながら走り出す。
あと一歩踏み込めば上条の拳が一方通行に届くと思われた時、
一方通行の倒れていた地面が爆発し、彼の姿が一瞬で消えた。
「クソッ、どこだ!?」
普通に考えれば、逃走したと考えるのが妥当なのだが
あの一方通行に限ってそれは無いと、上条は確信する。
瞬間、上条の背後で、ビュン! と風を切る音が響いた。
「!?」
「はァァァあああああああああああああ!!!」
咄嗟に振り返った上条の目に映ったのは、咆哮を上げながら近づいてくる一方通行。
そして、その手には一メートル程の長さで親指程の太さの鉄パイプが握られている。
そして、ゴギリ! という鈍い音と共に上条当麻の体は地面に崩れ落ちた。
「さて、こっからどォし―――」
「止まりなさい一方通行!」
少女の絶叫が辺りに響き渡り、一方通行は面倒くさそうに声をした方向を向く。
そこには、コインを握りしめた手を突きつける御坂美琴が立っていた。
「クッソうぜェな、雑魚散らししか出来ねェ客寄せパンダに興味は―――」
一方通行はそこまで言いかけ、何かに気付いたように言葉を止める。
その視線にあるのは、美琴の傍で上体を起こした一〇〇三二号の姿。
コンテナに激突した時のダメージが致命傷にならなったのか、
彼女は意識を取り戻し、ゆっくりと立ち上がろうとしていた。
「よし、分かった。折角姉妹が愉快に素敵に再開したンだ、三分間待ってやろう。
その後、お前らを殺す。もしどちらかが片方が死ねば、そいつは殺さない」
「! 何を!?」
「超電磁砲がクローンを殺せば、実験は二度としない、何ならここで自害してやる。
クローンが超電磁砲を殺せば、実験は継続。俺は手を出してないから支障はねェだろ?」
「アンタってヤツはっ!!!」
美琴の全身から紫電が溢れ、超電磁砲が音速の三倍で一方通行目がけて撃ち出された。
だが、それは一方通行の体に触れた瞬間、空へと向きを変え、失敗した花火のように消え去った。
「安心しろ。約束は守るし、こう見えても寛容な男だ」
「そうですか、とミサカは被験者に確認を取りつつ覚悟を決めます」
そう言って、一〇〇三二号はセーターの内側から拳銃を取り出す。
そして、安全装置を外すと、スライドを引いて初弾を装填する。
「あ、アンタ……?」
「申し訳ありません、ミサカにはこのような選択しか思いつきませんでした
と、ミサカはミサカを助けようとしてくれたお姉様に謝罪を述べます」
ゆっくりと、拳銃が握られている一〇〇三二号の腕が振り上げられていく。
同時に、一方通行の狂気を含んだ笑みがさらに深まっていった。
「ビビるな! 殺せ!!」
やがて、銃口が美琴に向けられ、一方通行は叫び、美琴は目を閉じる。
だが、引き金は引かれず、一〇〇三二号の腕がさらに上昇していく。
「………はァ?」
一方通行の間抜けな声と同時に、銃口が一〇〇三二号の顎に押し付けられ
ドガン!! と銃声が鳴り響き、そのまま彼女の頭を撃ちぬいた。
瞬間、一方通行の顔から笑みが消え、狼狽が色濃くにじみ出る。
そして、何か信じられないようなものを見たかのように青ざめていく。
目を開け、目の前の惨状を見た美琴が叫び声を上げるが
一方通行の耳には、一切入る事は無かった。
ここで、生き残った美琴を殺す事は、彼にとって蟻を潰すより簡単だ。
それでも、彼には出来ない。狂気に覆われたプライドが、それを許さない。
「クソッ! 近頃の奴らは空気が読めねェやつばかりだ!
まァいい、この鬱憤は残りの妹達全員にぶつけ―――」
がさり、と一方通行の言葉を遮る様に彼の背後で物音がした。
一方通行はうんざりとした顔で、恐る恐ると言った様子で振り返る。
そこでは、気絶したはずの上条当麻が立ち上がろうとしていた。
傷だらけの全身を震える足で支えながら、ゆっくりと
「丁度イイ所で立ち上がってくれたじゃねェか」
直後、天に向かって吠える様に絶叫した一方通行は上条に向かって突撃した。
そうして弾丸並の速度で上条との距離を一瞬で詰めると、触れるだけで人を斬殺する
悪魔の如き凶悪な両腕を上条の顔面に向かって、突き出した。
上条は、残り少ない体力を全て使い、頭を低く沈めると、一方通行の右腕を避け、
更に追撃と言わんばかりに襲い掛かる左腕を右腕で払いのけた。
「歯を食いしばれよ、最強―――」
人間の理性の裏に隠れる狂気を集約したような男に、
上条は勝利宣言と言わんばかりに獰猛に笑いかける。
「―――俺の最弱はちっとばっか響くぞ」
そして、上条の右拳が一方通行の顔面に突き刺さり
一方通行の華奢な体は、操車場の地面に勢いよく叩きつけられ
乱暴に手足を投げ出しながら、ビー玉のように転がっていった。
今回の投下は、ここまで。
後2回ほどの投下での終了を予定しています(意味深
それでは次回の投下で
なんとゾクゾクする展開
乙です
乙
イカツイエンドを期待してるぜぃ
どうも、>>1です。
後二回程の投下といったが、すまんあれは嘘だ。
というわけで、今回含めて3回の投下の予定に変更になります(既視感)
それではレッツ投下
八月二十二日 午後八時一五分 とある取調室
無機質な蛍光灯が照らす狭い部屋に二人の男女が向かい合う様に座っていた。
女の名前は黄泉川愛穂、とある学校の体育教師であり警備員に所属している。
男の名前は一方通行、昨日まで絶対能力進化計画に参加していた少年だ。
黄泉川は深刻そうな顔をしながら、対する一方通行は半笑いを浮かべながら
お互いの表情を探り合う様に見つめ合いながら、向き合っている。
「今日の朝、常盤台中学からとある女子生徒の捜索願が出された。
その生徒は同居人にも告げずに寮から姿を消し、今も帰宅していない。
―――単刀直入に聞く、超能力者第三位、御坂美琴は今どこにいる?」
「何で俺に聞くンだ? 聞く相手ならお前らの身内にいるはずだぜ?」
その言葉に一方通行を睨みつけていた黄泉川の顔が僅かに動揺の色を見せる。
その顔を見た一方通行は、聞き分けのない子供を宥めるような笑みを浮かべた。
「なァに驚いてンだか、子供の安全を守る警備員はそンな悪党じゃねェと?
まァ、この街の大抵のヤツはそう信じてる。だから超電磁砲も騙された。
だが教えてやるよ。人間ってヤツは三人集まった時から腐敗が始まるンだ。
そして集まれば集まる程見る見るうちに腐っていく、ガン細胞のようにな」
表情を凍り付かせる黄泉川に一方通行は勝ち誇ったような笑みをむける。
黄泉川は狼狽している自身の心を落ち着かせるように、しばらく目を閉じ
数回ほど深呼吸をした後に、再び目を開き一方通行の顔を睨みつけた。
「もう一度聞く、御坂美琴はどこにいる?」
「うーン、どこだと思う?」
「……分かった、私が気に食わないなら相手を変えてやろう」
そう言って黄泉川は席を立ち、そのまま出口へと向かう。
さすがに一方通行も予想外だったのか、若干眉をひそめた。
「オイオイ、怖いお巡りさンが来るンじゃねェだろォな?」
「お前にとってはそうかもな」
そして、黄泉川が扉を開け部屋を出るのと同時に
入れ違いになるようにツンツン頭の少年が入ってきた。
少年の名は上条当麻、一方通行を倒し実験を止めた少年だ。
「おォ、多くのクローンと一人の少女を見事に救ったヒーローじゃねェか。
だが、その後は酷かったな。悪役の俺を散々殴り飛ばして満足したら即退場。
そして、後の面倒事は他人に丸投げ。―――実に非情だ、さすがの俺も驚いた」
「……実験を止められた恨みか?」
「はァ? 一〇〇三〇回も楽しめたンだ、満足するには充分だ」
一〇〇三〇という言葉に疑問を抱きながらも、上条はそこには触れず
本当の美琴の場所を吐き出させる為に慎重に話を進めていく。
「お前は無敵の強さが欲しかったんじゃないのか?」
「昔はな、でも今は違う。そンな事は俺にとってはどォでもいい。
それに、あンな実験やったところで絶対になンざなれる訳ねェだろ」
突然の言葉に、上条は意表を突かれ驚きと焦燥を隠せずにひどく狼狽えた。
一方通行は、そんな様子が可笑しくてたまらないと言わんばかりに笑いを上げる。
「ブックッアッハッハッハハハハハ! オイオイ、さすがに冗談だろ?
二万体のクローン殺してレベルアップ? 本気でンなもン信じてるとはなァ。
研究者も妹達も超電磁砲もお前も、なンでポケモンみてェな事信じてンだァ?
ヒッハハ! 現実世界とゲームの区別ぐらい、さすがの俺でもつくもンだぜ」
「ゲーム感覚で現実世界の人間を殺したヤツが何言ってやがる」
「無差別じゃない、人選はした。使い捨てのクローンに馬鹿な研究者。
普通に穏やかに健やかに表社会に暮らしている一般人は狙わねェよ」
「だが、お前は俺を殺そうとした」
「クッヒャッハッハッハハハッハハッハハハ!」
上条がそう言った途端に、一方通行は破裂するような爆笑を上げた。
思わず怪訝そうな顔を浮かべる上条に一方通行は訴える様に語り掛ける。
「俺がお前を殺す? 誤解だ誤解。ちゃンと最低限の手加減はした。
お前は唯一確固とした生きる意志を持ったうえで俺に立ち向かってくれた。
死ぬことに恐怖を抱いていない妹達とは比べ物にならない程、胸が高鳴った。
お前が死ンだらどォなる? 俺はたちまち悪党から人形遊びをするクズに逆戻り。
―――イヤだ、絶対にイヤだ! お前がいなきゃ俺はもうこの世界で生きていけない」
「何が悪党だ! お前はゲーム感覚で人を殺すクズだ!」
「真っ当な口を叩くな! お前は人間じゃない、俺と同じ化け物だ。
どンなに受け入れがたくてもその事実が変わる事はない、永遠にな。
早いうちにそのふざけた幻想をぶち壊さねェと手遅れになっちまうぞ」
激昂する上条を一方通行は濁った目で射抜くように見つめる。
その目にはホームレスを見るような憐れみと同情が込められていた。
「まァ、お前が実験を止めようと必死に頑張った理由も分かる。
―――クローンつっても、見てくれは可愛いからな」
瞬間、上条は一方通行の服を掴み彼の華奢な体を椅子から引き摺り上げる。
上条の目には明確な憎悪が灯り、彼の体は烈しい怒りに震えていた。
「そうやって人の命を弄ぶつもりか!? 妹達や警備員の人達のように!
吐け! 美琴はどこにいる!? 言わねぇと、ここでテメェをぶち殺すぞ!!」
「オイオイ、冤罪は良くねェな。確かに妹達を殺した、おまけに笑いながらな。
だが警備員を殺したのは俺じゃない。俺は飛び道具があまり好きじゃないンだ。
何なら犯人を教えてやろうか? 驚く事にお前もよく知ってる奴だ」
「……何?」
上条の体がピタリと時間が停止したかのように動かなくなる。
憎しみから噴き出る衝動を頭の中を駆け巡る疑問が抑制していく。
「妹達だ、一〇〇三一号を回収しにきた奴らが実験を隠すために警備員を殺したンだ。
死ンだ警備員も可哀想だよなァ、実験内容を知ったっつゥだけの理由で死ぬなンて
―――でもまァ別にいっかァ! 妹達だって精一杯努力して必死に生きてることだし
五人程度殺した事なンて忘れて彼女たちに生きる希望を与えようじゃねェか!!
クックッカヒッヒヒャハハッハハカハッアハギャハヒヒギャハハハッハハ!!!」
刹那、頭の中を駆け巡る疑問は怒りへと変貌を遂げ上条の憎しみをさらに加速させる。
ガン! と上条は自身の内から湧く感情に身を任せ、一方通行の華奢な体を机に叩きつけた。
「ハハハ、何故キレる?」
対する一方通行は背中に伝導する痛みに顔を歪ませながらもさらに笑みを深める。
上条はそんな一方通行に見向きもせずに自らが座っていた椅子で扉の取っ手に挟んだ。
外から複数の足音が響き、ガンガン! と扉を抉じ開けようとする衝撃音が響き渡る。
しかし、椅子がつっかえ棒として機能している為、外から開けることが不可能だ。
「人の命の重さなんて所詮そンなもンだ。冷静になればいくらだって軽くできる」
ゆっくりと起き上がった一方通行は、上条に笑いながら話しかける。
しかし、上条はその言葉に一切答えず勇み足で一方通行に近づいていく。
「妹達の、お前に殺された奴らの痛みを思い知れ!」
ゴッ、と上条の本気の拳が一方通行の顔面に容赦なく突き刺さる。
殴り飛ばされた一方通行の細い体は狭い部屋を転がり壁にぶつかった。
「クッハハハハ! 屁でもねェぜ! そンな常識やモラルに縛られた奴の拳なンて!
重い荷物を捨てなきゃ、お前の拳は俺を傷つけることは出来ない、絶対になァ!!」
挑発するように狂笑を上げる一方通行の首を上条は右手で思いっきり掴み上げた。
そしてさらに殴りかかろうとした瞬間、一方通行は笑いを止め静かに口を開きだす。
「さて、こンなことしてる場合か? 別に止める気はねェンだが忠告はしておく。
お前の愛しの超電磁砲が後数分でグチャグチャの醜い肉塊になっちまう。
心配すンな、場所は教えてやる。俺とお前が熱く拳で語り合った場所だ。
後はもう分かるな? ほら、急げ急げ。ヒロインが泣きながら待ってるぜ?」
その言葉を聞いた上条は、一方通行の軽い体を乱暴にその辺に抛り棄てると
扉の取っ手に挟まっている椅子を蹴り飛ばし、扉を開けるとその場を去っていった。
今回の投下はここまで
たまにはゲスレーターを書いてみようと思ってこうなった。
反省も後悔もしていない。ほんの、少しも、まるっきり
それでは、次回の投下で
一つ言い忘れた事が
一方通行が能力を使わない理由は次の投下にて
そんな大した理由じゃないけど
次の投下もまた一週間以内の予定です。
それではまた
一方通行さんまじジョーカー
永遠のあと3回
もっと続けてもいいのよ?
どうも、>>1です。
朝っぱらから暗いですが、投下
八月二十二日 午後八時二十分 警備員輸送車内
一方通行から情報を吐き出させた上条当麻は無理言って警備員に同行していた。
美琴の安否の報せを立ち尽くして待っているだけでは、気が狂いそうだったからだ。
だがそうしてまでも、胸の騒めきは治まらず心拍数が一定になることはない。
不安と緊張が渦巻き、ともすれば叫びそうになるほどの焦燥が上条の心を駆け巡る。
(頼む、無事でいてくれ……)
上条は、そんな自分の心を鎮める様に祈る様に両手を組んだ。
理不尽な暴力と押し付けられた罪に追い詰められた末に自らの命を諦めかけていた少女。
それでも、彼女は見切りをつけていた自らの人生に希望を見出し前を向き始めた。
そんな彼女が今人間とは思えない程の悪意を持った誰かに殺されかけている。
確証こそないものの、今までの状況を踏まえて上条はそう確信していた。
(絶対に死ぬんじゃねえぞ、御坂)
上条は組んだ両手を何かを潰さんばかりに万力のような力で堅く握りしめる。
―――まるで自らの両手から大切なものが零れ落ちていくのを防ぐように
―――
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同時刻 取調室
「なァ、俺何で能力使えないンだっけ?」
「この施設は能力者対策として何個ものキャパシティダウンが設置されてるんだ。
よって、ベクトル操作などという馬鹿げた力を使う事は絶対に出来ないぞ、クズめ」
分からない事を先生に質問する小学生のように気軽に話しかける一方通行に
彼の見張りを任された警備員の男は苦いものを吐き捨てる様にそう言った。
そんな男の様子を見た一方通行は底意地の悪い余裕の笑みを浮かべる。
「なァ、知りたくないか? 何で俺があの無能力者相手に接近戦で挑ンだか?
コンテナとかレールとかブンブン投げまくってたら楽に勝てたはずなのに」
「さあな、どうせ殺す時の感触を楽しむ等という狂った理由だろう」
「それも解には相応しいが満点じゃねェ。正確に言うとそれだけじゃないンだ。
俺はベクトル操作という能力が使える、だからあらゆるベクトルを観測できる。
だから人の身体に触れると感じ取れるのさ、人間の心拍数、血液や生体電気の流れを。
そいつらが俺に届けてくれるンだ、俺に殺されるヤツの理性の内に隠れている本性をな」
一方通行は何かの感触を確かめる様に自らの右手を広げたり握ったりを繰り返す。
そして、自らの右手から男の顔に目を移し人間とは思えない程歪んだ笑みを浮かべた。
「だから、アンタのお仲間をこの手で殺せなかった事は実に残念だ。
遠目から見ても、醜い本性が暴かれる様を楽しむことが出来たからなァ。
なァ、教えてやろうか? 誰が土下座しながら命乞いしたと思う? ンン?
そして、誰が子供のように泣き喚いて無様にションベン垂らしたと―――」
ゴン! と警備員の男が一方通行の言葉を遮るように壁を叩きつけた。
その顔は、凄まじい憤怒と後悔が入り混じった鬼のような形相に歪んでいる。
「実に面白い―――俺にも体験させてくれよ」
男はゆっくりと一方通行に近づき、掌に爪が食い込むほど右手をきつく握りしめ
体を捻じり右腕を大きく振りかぶると、勢いよく拳を一方通行の顔面めがけて放った。
バキッ! と骨が砕けるような聞くだけで痛みを連想させる鈍い音が響き渡る。
―――殴られた一方通行の顔面からではなく、男の右拳から
「ぐっがァァァああああああああああああああああああ!!?!!?」
男は激痛で地面をのた打ち回り、焦燥と混乱に満ちた表情で一方通行を見た。
その顔には、口の両端を刃物で引き裂いたかのような笑みが浮かべられている。
「の、能力は使えないはず……」
「悪ィな、それはただの軽い冗談だ」
そして、一方通行はゆっくりと男に近づいていく。
その歩く様子は、激情に駆られた男の歩みそのものだった。
―――
――
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八月二十二日 午後八時二十四分 とある操車場
「……私、ここで死ぬのかな」
夜の帳が訪れ、人一人いない筈のその空間で御坂美琴は諦めた様にそう呟いた。
彼女は一般的な大きさのドラム缶に対能力者用の黒いベルトで縛り付けていて
その上、傍には金属製のC4爆弾が設置され、タイマーは残り一分を切っている。
悪夢のような実験から救ってくれったとある少年に感謝しながら帰宅した夜
警備員に『現場検証に立ち会ってほしい』と呼び止められ操車場に連れてこられ
後ろ首を硬いもので殴られ気絶し、起き上がったら既にそうなっていた。
能力を封じられ、その場から逃げ出せずずっと助けを待っていた彼女には
警備員によって誰も操車場に入れない様になっているなどと知る由もない。
そして、やがて助けが来ない事を悟った彼女は鉄橋での出来事を思い出していた。
世界から見放され自らの命を絶つことでしか何も解決できない窮地に立たされた時だ。
だが、その時と違い不思議と涙は一切出る事無く、恐怖さえ湧いてこなかった。
また実験の時のように、あの少年がヒーローのように自分の事助けてくれる。
そんな事有り得ないと分かっていながら、そう思うだけで美琴は心から安心できた。
やがて、操車場の真上に位置する鉄橋の上からパトカーのようなサイレンが鳴り響く。
ふと音の方向を見やれば、人員輸送車から装甲服を着た数人の警備員達に交じって
学生服というあまりにも場違いな服装のツンツン頭の少年が中から姿を現した。
その様子を視界に収めた瞬間、ようやく美琴の目から涙が流れる。
少年に来てくれたことに満足したように美琴は笑いながら、口を開く。
「……さよなら」
刹那、警告音のような無機質な電子音が辺りに鳴り響き
爆炎と衝撃が少女の未熟な身体を容赦なく蹂躙していく。
今回の投下はここまで
次回の投下で最終回になります。
続きの話も薄らとは考えてるけど、実現できるかどうか
亀更新ですいませんが次の投下も一週間以内の予定です。
それでは、また
乙
なんかまだ仕掛けが
ある予感が…
おつ
続けてくれ!
上げないで下さいよォ
どうも、>>1です。
それでは最終話投下
八月二十二日 とある午後八時二十五分 操車場上の鉄橋
それは上条当麻と数人の警備員が輸送車から降りた数秒後の出来事だった。
ドガン!! と凄まじい爆発音が鳴り響き操車場の一角が炎と煙に包み込まれる。
上条には、その光景が何を意味をするのか容易に想像がついた。
誰もが救われ笑顔で日常に戻れる幻想が砕け散った悲惨な結末。
理解は出来ても絶対に認めたくない現実が上条の心を食い潰していく。
「御坂ァァァああああああああああああああああああああああああ!!!」
上条はもう二度と会えないであろう少女の名を叫びながら、
警備員の制止を振り切り鉄橋から操車場へと飛び降りた。
当然、何の力も持たない彼の足は落下の衝撃に耐えられずにぽっきりと折れ
地面に激突するように倒れこむと、そのまま彼の意識は闇に吸い込まれていく。
―――
――
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八月二四日 午後三時 とある病室
御坂美琴誘拐事件は被害者死亡に加えて逃亡した一方通行はただの誤認逮捕という形で
上層部の圧力によって強制的に片を付けさせられ、警備員による捜査は打ち切られた。
黄泉川に苦々しい顔でそう告げられた上条だが、彼は特に彼女を責めることはしなかった。
心の中に穴が空いてしまったような彼は全ての事柄をどうでもいいと思い始めていたからだ。
そんな彼の病室をノックし、上条が返事をしていないのにも拘わらず扉は開かれ
上条と同じくらいの身長をした極めて細い体つきの看護師が入ってきた。
そんな無礼な態度に無言で入ってきた看護師に文句の一つも言わずにしばらくその姿を
興味のない瞳で見ていた上条だったが、ふと看護師の顔を見た瞬間にその眼は大きく見開かれる。
白い髪、紅い目、その姿は紛れもなく超能力者第一位『一方通行』のものだった。
「よォ、久しぶりだな。つっても昨日会ったばっかりだっけか」
瞬間、上条の空虚な顔つきが途端に灼熱の怒りに染め上げられ一方通行に殴り掛かろうとする。
だが、ダメージの蓄積した体は思い通りに動かず起き上がる事さえ出来なかった。
「だから言ったろ? 早いうちにふざけた幻想をぶち壊さねえと取り返しがつかねェって」
「ふざけやがって……、このイカれた化け物が!!」
「イカれた化け物、ねェ。別に否定はしねェが勘違いしてるようだから一つ教えてやる。
確かに俺は実験で一万人余りの妹達を殺した、大した理由も無ければ微塵の後悔もない。
だが、そもそもこンな実験を思いつき、計画を立てたのは俺じゃない、人間だ。
お前らと同じ、家族も友人もいる人間。超電磁砲を殺したのも俺じゃない、人間だ」
一方通行は起き上がれない上条に目線を合わせる様に
その辺から椅子を引っ張り出すと、そこに腰かける。
「何故研究者はこンな実験が進められたと思う? 彼らの思い通りになったからさ。
人間は物事が自分の思い通りになる事に快感を感じる、それがどンなに酷い事でもな。
なのに、何故世論は悪を糾弾し善を崇めようとする? 人間は善人ぶりたいからさ。
世界に適応できないヤツは周りの人間から嫌われ排除され淘汰される、ことごとくな。
江戸時代に弾圧されたキリスト教徒、人種差別時代に奴隷のように扱われた黒人のように」
そして、暴れようとする上条に一方通行は優しく笑いかけた。
―――誰もから見放された罪人を改心させようとする神父のように
「お前もその一人だ、世界がどうであろうとお前は自分の意思を貫き通せる化け物だ。
生まれてきた時代が良かったなァ、一歩間違えば拷問を経由した処刑コースだ。
だからこそ、そンなお前の強さに惚れ、お前を進化させようとする奴らがいる。
超電磁砲の死はその通過点に過ぎない、お前が悲しみを乗り越え強くなるためのな。
そして、もしお前が連中の期待通り悲しみを乗り越え、立派に前に進んだとしようか。
味を占めた奴らはお前からもっと大切な奪おうとする、超電磁砲以上のな」
その言葉に上条の動きがピタリと止まる。その顔には怒りではなく焦燥が浮かんでいた。
それを見た一方通行は満足そうに笑いながら、上条の手を持ち上げ両手で握りしめていく。
「俺だって最初からこうだった訳じゃない、かつてはお前と同じ様に人間であろうとした。
だからこそ、お前と同じ苦しみを俺は味わったンだ―――地獄のような痛みと屈辱を。
でも今はもう解放された、自分の認識を『人間』から『化け物』へと変えた時からな」
そして、一方通行は上条の手を握りしめていた両手の内から片方の手を離し
警備員から奪った拳銃を取り出すと上条の右手に握らせ銃口を自らの額に押し付けた。
「目を覚ませヒーロー、たった一発の銃声で、かつての俺の様に」
そしてトリガーに指を掛けさせ、スライドを引いて初弾を装填させた瞬間
ガッ! と何者かが一方通行の首を固定し上条から引き離すと、床に組み伏せた。
「あァ!? 何だ何だよ何ですかァ!? 今イイとこなのに……」
「黙れ! これ以上ウチの生徒から何を奪うつもりだ一方通行!!」
その正体は黄泉川愛穂、上条当麻の様子が心配で見舞いに来ていたのである。
予想外の事態に驚きながらも能力を取り戻した一方通行は彼女を吹き飛ばそうとしたが
バン! という銃声が鳴り響き、彼の動きが止まりその紅い目は大きく見開かれた。
一方通行の顔には激痛など一切なく、ただ驚愕という感情に塗りつぶされている。
ぬるりと赤い液体が一方通行の顔を流れていく、しかしそれは一方通行のものではない。
ガクン、と黄泉川は頭から血を流しながら力なく床に倒れこんだ。
その様子を上条は冷徹な目つきで射抜きながら、一方通行に話しかける。
「お前は殺さない、だが贖罪として俺の手足となってもらう。」
「……へェ、おもしれェ。ンで俺は何をすればいい?」
そうだな、と上条はしばらく考え込み右手で乱暴に頭を掻き上げた、
その目に既に平凡な少年の面影は無く、ただ静寂な狂気が灯されている。
「三日後で退院するから、それまでに御坂美琴の死に関与した人間全員殺せ。
実行者、命令者はもちろん実験に携わった研究者、爆弾の製造者に至るまで全員だ。
実験の最高責任者だけは無傷で捕えておいてくれ、俺が思う存分嬲って殺せるように。
あ、ついでにそこの女の死体の処理もやっといて、誰にも見つからずにな」
「あァ、お安い御用さ」
そう言って、一方通行は動かなくなった黄泉川の身体を肩に抱えると
床を軽く蹴って、その衝撃の向きを操作し地面に流れた血を吹き飛ばすと
そのまま飛び上がり、背中から竜巻を生やし病室の窓から大空に飛び立った。
「あんな事も出来んのかー、便利な奴だな」
そう呟く上条の顔に、ほんの少しまで彼が感じていた苦悩や哀しみなどない。
その顔は、とても清々しく心に疚しいことなど何一つない純粋な少年のようだった。
―――限りなくどす黒く禍々しい狂気が渦巻く濁った目を除いて
というわけで、最終話です。
続きを作るとしたら、一方通行「俺達は」上条「混沌の使者」、の予定です。
まあ、作る可能性はかなり低いのですが
ここまで見てくださった方々、レスをつけてくださった方々には感謝を
それではHTML化依頼を出しに行ってきます。
それでは、またどこかで
おつ
プロローグが終わったな
続編期待
続けてくれ!
ようやく理解が追いついた
乙
上条さん闇堕ちか…
魔神になるのも早いのか
続編の期待を込めて乙
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