フミカネ氏の現代風のシャーゲルの絵と、某まとめサイト様のコメントを見て、書きました。
今回も少し地の文が入っています、なるべく減らしていますが苦手な方はブラウザバック推奨です。
前スレ 【R-18】芳佳「リーネちゃんの調教報告書其の伍」
【R-18】芳佳「リーネちゃんの調教報告書其の伍」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1372067207/)
「なぁ、リベリアン。この後の予定はあるのか?」
コーヒーを片手に聞いてくる彼女に私は一口レモンティーを飲んで答える。
「いや、目当ての服は買ったし、後は街をブラブラ歩いて帰るのもいいかなぁ。カタブツは?」
軽々しい呼び名の応酬。
私はそれが嫌いじゃない。
しかし彼女も私も、本当の愛称で呼び合うことはあまり無い。
それはきっと、互いにこの呼び名が好ましく思っているからに違いないと思っている。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1373299185
冬の日、日曜日、昼下がりの午後。
田舎から大都会の街までやってきた私達は喫茶店で休んでいた。
大きな紙袋と箱を隣の席いっぱいに占領させながら。
昨日、学校の帰りに私が久しぶりに街へ出たいと強請ると、彼女は了承してくれた。
普段は生徒会の仕事が忙しいだの、何かと理由をつけるクセに、なぜだか今回は素直に首を縦に振った。
やけに素直な彼女に拍子抜けしたが、嬉しくてそんな些細な疑問は私の頭からはすぐに抜け落ちた。
まぁ、結局は。
いくら彼女は渋っても、いつも私をエスコートしてくれるのだが。
「実はな、こんなものがあるんだ」
彼女は椅子にかけたコートの内ポケットからチケットを2枚取り出して私に見せる。
「映画のチケット?」
「あぁ、そうだ。ミーナに貰ったんだ。行けなくなったからとな。ちょうど久しぶりに映画を観たかったのだが、
ハルトマンはこういうのには興味が無いからな。お前ならば、と思ったがどうだ?」
「あたしはジっとしてるのは趣味じゃないんだが……ん、アクションか。まぁそれなら退屈しないで済みそうだね」
「決まりだな。なら、行くとしよう。次の上映時間までもう1時間もない」
今の時代には似合わない、そこだけ昔にタイムスリップしたような喫茶店を出てから、
近くのコインロッカーにぎゅうぎゅうと買い物の成果を詰め込むと、街行く人を避けながら映画館の方まで歩く。
私は外を吹く風を恨めしく思った。
「さ、さむっ……」
「そろそろ雪が降ってもおかしくはないな」
「うぅ、寒い……」
「一度言えば分かる。……これくらいで根をあげるとは……全く」
「仕方ないだろー、このコートにはコレ合わせたかったんだからさぁ」
私はコートの中を指す。
今日は久しぶりの街ということで、私なりにもオシャレをしてきたつもりだ。
丈の短い赤のトレンチコートに茶色のロングブーツ、黒のレギンス。
対して彼女はカーキ色のコートにピチッとしたスリムパンツ、黒のショートブーツに黒のエンジニアキャップといった装いだった。
一見こういうコトに興味の無さそうな彼女は、意外にも何らかの一貫性の考えを持っているようで、こうした服装を好んでいた。
「手袋でもしたらどうだ」
黒の革手袋をはめながら私に提案する。
「このコーデじゃあ、手袋は合わないんだよ」
「なんだ、機能でなく外見を取るとは……お前らしい」
「ほっといてくれ」
歩くこと15分。
映画館に着くと彼女は待ってろと言い、窓口の方に向かう。
私は館内の独特な匂いを肺いっぱいに充満させながら、顔が綻んでいたのに気づく。
いや、今に始まったことではない。
彼女と一緒にいるだけで、私は嬉しいのだから。
ざわざわと声がする方を見ると、今しがた別のスクリーンで終わった映画の観客が出てくるところだった。
ぼーっと眺めていると、そこには見知った顔がいた。
「待たせたな。さぁ、ポップコーンでも買おう。おぃ、聞いてるのかリベリアン」
「おぃ、カタブツ。あいつら、見てみろよ……」
「ふむ……今終わって出てきたようだな。これは……なんだ、この映画は。大凡、中等部の彼女達が見るモノではなさそうだ」
彼女は今上映している映画一覧の掲示板を指差すと、くっくっと笑う。
どうやら外国のヒューマンドラマのようだったが、きっとタロットばかり引いてる彼女の趣味ではないだろう。
つまり……。
そこまで余計な詮索を一人でしていると、彼女は肩を叩いてくる。
「さぁ行こう、もう時間だ。ポップコーンが買えなくなる」
「え?あぁ……。ん? なぁ、ポップコーン好きなのか?」
「好きか嫌いかではない。映画といったらコレだろう?」
彼女はニヤッと笑う。
「そんなものか?」
「そんなものだ」
私達は塩とキャラメル仕切りで隔てられ、一緒のカップに入ったポップコーンを買うと、案内されたスクリーンに向かった。
彼女は上映終了後にすぐに感想を言い合うのではなく、映画館を出てから話し合うことに美学を感じるらしい。
以前そう話していたのを覚えていた私は、隣の彼女に倣うことにした。
映画館のドアを開けて、外の風にカラダを晒してから私は口を開いた。
「お約束のシーン、あったな……」
「言うな」
「最後も、熱いキスを……」
「言うなっ」
スパイアクションモノで洋画特有のお約束シーンがあり、ピンチになり、機転を利かせて悪を倒し、
捕らえられたヒロインを救い、抱き合って、Fin.
しかも途中のラブシーンでは、主役とヒロインが私達に似た格好をしているのでは、もう目も当てられない。
彼女も意識しているのだろうか。
そうだとしたら嬉しいし、恥ずかしいし……。
それから調子を取り戻した私達は、他愛無い会話を続けながら駅に向かう。
ハルトマンのアルバイト先での失敗談は傑作だった。
尽きることの無い会話に、私はふとこれで今日のデートも終わりなんだと気付くと、急に熱が冷めていくのを感じた。
一人だけ置いてけぼりにされたような、寂しさ。
外界と遮断されたような、そんな感覚。
隣にはコイツがいるのに。
明日には、また会えるのに。
独り占めしたい、もっと一緒にいたい、我侭を言ってみようか、彼女はきっと答えてくれる。
行き場の無い感情が、私の中に渦巻く。
駅が見えてくる。今日のおしまい。
人が押し寄せて、向こうが見えない。
休日の、終わり。
いいさ。明日もまた会えるんだ。急ぐことはない。
そう分かってるのに、踏ん切りもつかないまま、こんなところまできてしまった。
「どうかしたか?リベリアン」
「いや、別に何も。寒いよ……早く帰ろう」
「あぁ、そうだな。早く帰って明日の委員会の資料を作成しなくてはならんからな」
「そっか……。そうだよ、な……。うん、じゃあ行こう」
「……」
彼女は何かを考えるように黙ると、左手の手袋を外し始めた。
するとソレを、私に差し出してくる。
「ほら。寒いんだろう?コレを使え。半分しか無いがな」
「あ、あぁ……ありがと」
彼女が精一杯気にかけてくれたのだろうが、見当違いの行動に私は呆れる。
それでも。
私のために考えて、そうしてくれるのなら、私は嬉しい。
私は素直に手袋を受け取ると、左手にはめる。
似合わない。
しかしこのミスマッチしたモノがまた良いのではないかとさえ思えてくる。
でもそれはきっと、彼女から渡されたモノだから、なのだと私は知っている。
なんだ、私も案外安直な小娘なんだなと感じるのだった。
「でもさ、これじゃあお前が寒いだろ」
「あぁ。だからこうするんだ」
彼女は私の右手を取ると、灰色のコートの左側のポケットに自分の手を上から重ねて突っ込む。
「なんだ、こんなに冷えていたのか。すまないな、気付かなくて」
「い、いや、その…え、バルク……なにして……」
声にならない訴えを気にせず彼女は続ける。
「あぁ、すまん。嫌か?」
「嫌じゃ……ない」
嫌なんかじゃない。嫌なんかじゃ、ない。
「うむ。これで暖かいな。どうだ?暖かくなってきたか?」
ニコリと笑う彼女に、私は目を合わせられなくて足元を見る。
暖かいのを通り越して、もう熱い。カラダ中が火照る。
さっきまでの鬱屈とした考えなんて吹き飛んでしまう。
本当、こんなところは察しが悪いというか、きっといつまでも気付かないんだろうなぁ。
「風邪でもひかれると困る。日々の生活には張り合いが無くてはな。夕食を取ってから帰ろうか」
「……いいのか? 帰ったら忙しいんじゃないのか?」
「言っただろう。良いも悪いも風邪でも引かれたら困るのは私だからな。少しくらい大丈夫だ。暖かいモノでも食べて帰ろう」
まさしく困ったような顔をする彼女は、顔を引き締め、握る力を少し強める。
「じゃあ、行くか。駅の中を通るから離れるなよ、シャーリー」
「……じゃあ離すなよ、トゥルーデ」
彼女はふっと鼻を鳴らすと、私をこの日初めて引っ張っていくのだった。
それから彼女とは年が変わるまで何度かデートを重ねたが、どんなに寒い日でも私は頑なに手袋を持っていかなかったし、
彼女もまた小言の一つも言わず片方の手袋を私に貸して、手を繋いでくれるのに胸が躍ったのは、また別のお話。
テテテテンッ デデデンッ! つづく
オワリナンダナ
読んでくれた人ありがとう。
原宿、渋谷のお題を新宿と勘違いしていました。
ちなみにテアトル新宿にいるイメージで書きました。
次回は木曜日の夜くらいに。
某まとめサイト様、いつもありがとうございます。
それでは、また。
ストパン3期アルマデ戦線ヲ維持シツツ別命アルマデ書キ続ケルンダナ
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