ほむら「世の中わからないものね」 (235)



キリカ「…………」モグモグ

ゆま「…………」パリパリ

さやか「…………」クチャクチャ



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さやか「……いい天気ですなぁ。本日は晴天なり〜」

キリカ「そうだね」

さやか「しかし……まさかさ」

キリカ「……うん?」

さやか「まさかキリカさんとゆまちゃんと三人で風見野の都市公園まで来て……」

さやか「こうやってベンチでお菓子を貪る日が来るとは思わなかったっスよ」

キリカ「世の中わからないもんだね」

ゆま「…………」パリパリ

キリカ「…………」モグモグ

さやか「…………」クチャクチャ


さやか「風見野にこんな公園があるなんて知らなかったなぁ」

キリカ「私は風見野自体、織莉子とちょっかい出しに来たのが初めてさ」

さやか「そうですか……なんか動機が……いえ、何でもないです」

キリカ「いいとこだね」

さやか「ですよね」

キリカ「織莉子と行きたいなぁ」

キリカ「織莉子の手作りのお弁当を美味しくいただきたい」

さやか「残念、さやかちゃんアンドゆまちゃんでした」

さやか「しかもコンビニで買ったパンとお菓子貪ってまーす」

キリカ「あーはいはい」

さやか「流さないで欲しいなって思ってしまうのでした」


さやか「ちなみにこの公園、ゆまちゃんは一度だけ来たことあるそうです」

キリカ「へー」

キリカ「それにしても公園なんて久しぶりに足を踏み入れる」

さやか「見滝原にもあるにはありますよ。おっきな公園」

キリカ「ん、知ってるよ」

キリカ「でもワルプルギスの後だから大変なことになってるわけで」

さやか「まぁそうですけど。だから風見野に来た訳ですが」

さやか「……しっかしいい天気ですね!」

キリカ「ちょっと蒸すけどね」

さやか「雲一つない日本晴れ!」ノビー

キリカ「空が広い」


キリカ「……ところで、どう?」

さやか「へ?何がです?」

キリカ「その……ほら、親友を殺そうとした人間とお出かけなんて」

さやか「……うーん、悪いとは思いますがいい気持ちではないですね」

キリカ「まぁそうだろうね」

さやか「今でこそ織莉子さんの事情も全くわからないって訳でもないけど……」

さやか「完全に割り切ったとまでは言いませんが、今やあたし達仲間ですから」

キリカ「……仲間、か」

さやか「えぇ。結果的にはワルプルギスの夜に協力してくれたじゃないですか」

キリカ「まぁ……若干ほむらに脅されてってとこもあったけどね」

さやか「お、脅すって……」


キリカ「私の場合は織莉子がそうしようって言うからそうしたまで」

キリカ「言ってしまえば、私にとってのまどかの命ってのはその程度の認識」

キリカ「今の段階ではそれ以上でもそれ以下でもない」

さやか「でも、織莉子さんが大事だからこそ必死になってくれました」

キリカ「優しい解釈をするね。私は優しかないよ」

さやか「でもキリカさん、大分丸くなった印象を受けますよ」

キリカ「そうかな。気のせいじゃない?」

さやか「何で否定しますか」

キリカ「私としては織莉子なんか丸くなったと思う」

キリカ「前は常にシリアスな感じでご尊顔も凛々しかった」

さやか「ブレませんね」


キリカ「織莉子、ワルプルギスとまどかの件で色々あって……」

キリカ「大分気が抜けちゃったね」

さやか「ほー……どんな感じに?」

キリカ「んー……お茶目になったね」

さやか「お茶目?」

キリカ「例えば膝枕してもらった時にね」

さやか「膝枕……まぁそれくらいは」

キリカ「前まではよくて頭を撫でてくれる程度だったけど……」

キリカ「頬をツンツンってしてくるように……」

キリカ「くぁー!思い出すだけで……!織莉子萌え!」

さやか「な、なるほど」


キリカ「一緒にお風呂に入った時にね」

さやか「お、お風呂……ですか」

キリカ「背中を洗ってくれてる時に……こう……」

キリカ「背筋をあの滑らかな指でツツツ……って」

キリカ「うへ、うぇひひへへへ」

さやか「……は、はぁ」

キリカ「寝る時にね」

さやか「……一緒に、ですか」

キリカ「前はベッドに潜り込んだら怒られたんだけど、許容してくれるようになったね」

キリカ「で、温かくて優しいそよ風のような吐息を私の耳にふーって……」

キリカ「う、うにゃぁぁぁぁ」クネクネ

さやか「…………」


キリカ「私のリアクションを楽しんでるんだよね。あとご飯の時にあ〜んって……」

さやか「もういいです」

さやか「あんたらの惚気話なんてもう聞きたかないです」

キリカ「まだ一部なのに」

さやか「聞いてるだけで体重痩せますわ」

さやか「ハァー……やれやれ」

さやか「時に、あたしは今ガムをいただいてますがお二方は何を?」クチャクチャ

キリカ「チョコレート」モグモグ

ゆま「…………」パリパリ

さやか「ゆまちゃんは?」

ゆま「…………」パリパリ

キリカ「ポテチに夢中になってる」


さやか「こっちを無視して食べてるのがまたいい」

キリカ「どっかで聞いたようなセリフだね」

さやか「可愛い。写メりたい」

キリカ「織莉子以外の女は可愛いと思わない」

さやか「流石です」

キリカ「可愛いといえば、織莉子の寝顔の写メ見る?織莉子には内緒だよ」

さやか「結構です」

キリカ「ガム何味?」

さやか「ソーダ味」

キリカ「あー」

さやか「何か納得された。色ですか」


キリカ「ソウルジェムよろしく、さやかは青が一番似合う」

さやか「ソウルジェム持ってませんけどね」

キリカ「未契約という設定なんだよね」

さやか「設定って何がですか」

キリカ「ほむらの努力の賜物って意味だよ」

さやか「……えーと?」

キリカ「少年漫画でよくあるじゃん。そういう……ルビって言うのかな?」

さやか「あぁ……『波紋疾走(オーバードライブ)』みたいな」

キリカ「うん」

さやか「いや、だとしても『設定(ほむらの努力の賜物)』って斬新過ぎやしませんか」

キリカ「ほむらの努力の結晶だよ」

さやか「微妙にアレンジ効かせてきた……まぁ、うん。あいつにはお世話になりっぱです」


キリカ「私は未だにほむら苦手だけどね」

さやか「まぁ半殺しにされましたからね」

キリカ「ハッキリ言って怖い」

さやか「キリカさんで言う織莉子さんを殺そうとしたわけですからね」

さやか「ほむらにとってまどかってそれくらい大切な人なんスよ。しゃーないです」

キリカ「それを最初から知ってればまた私の対応も変わったと思うんだよ」

さやか「そうですか?」

キリカ「結果論だけど、ほむらのまどかへの愛情を汲み取れれば織莉子に一言物申せたと思うんだ」

キリカ「愛情オタクの私としては……」

さやか「うーん、怪しいとこですね」

キリカ「まぁ……そうだね。織莉子がやれと言ったらやるね。やっぱ」

さやか「前言撤回が早い」


キリカ「そんなこんなで学校でも気まずい」

キリカ「廊下ですれ違った時に挨拶するかちょっと迷う」

さやか「いや、そこはしましょうよ」

キリカ「だってだってー」

さやか「友好には遠そうですね」

キリカ「うーん」

キリカ「私は織莉子みたいにコミュ能力優れてないから……」

さやか「でもまぁ、なんやかんやで学校での話相手ができたじゃないですか」

キリカ「ぼっちキャラにされたよ」

さやか「違いましたっけ?」

キリカ「ただの不登校だよ」

さやか「もっとアカンヤツでしたね。忘れてました」


キリカ「友達いないみたいな風に言うけど、話相手いなかった訳じゃないよ」

キリカ「不登校から復帰した時点で契約パワーで性格変わっちゃってたしね」

キリカ「その人が友達かは別として」

さやか「いやいやいや……別にしちゃうんですか」

キリカ「まぁ確かに恩人をきっかけに学校でよく喋るようになったとは思うよ」

さやか「へぇ」

キリカ「まぁだから特に何ってこともないけどね」

さやか「どんな話するんですか?コイバナとか?」

キリカ「『彼氏ィ〜?そんなのいらない』と『好きな人?いるよ。とっても素敵な人。大好き』ってのが両立するから混乱させちゃう」

さやか「でしょうね」

キリカ「まぁ彼女いる?って聞かれてもそういう段階にはまだいってないんだけどね……」

さやか「……ツッコミませんよ」


さやか「キリカさん的には付き合ってないんですね」

キリカ「あぁ、織莉子と付き合いたい。デートしたい。チューしたい」

キリカ「ベッドの上で織莉子のグローリーコメットが私のヴァンパイアファングを」

さやか「やめなさい」

さやか「そして意味がわかりません」

さやか「しかも子どもがいるってーのに何て話をするんスか」

キリカ「意味わかってるじゃん」

さやか「そうこと言いたいんじゃないです」

キリカ「ムラムラする」

さやか「だからやめなさいて。子どもいる」

さやか「もう、話題変えさせてください」


さやか「えっと、そうだな……んー……」

さやか「キリカさんは好きなポテチとかありますか」

キリカ「……ポテチ限定?」

さやか「キリカさん超甘党ってことでポテチのイメージがないのです」

キリカ「うーん」

キリカ「名前はちょっとうろ覚えなんだけど……」

キリカ「何とかパン工房チョコ味」

さやか「ポテチじゃなくねーっスか」

キリカ「でもあれポテチ面してるじゃん」

さやか「ポテチ面ってなんですか。形状は似てますけど」

キリカ「まず私ポテチ全然食べないもんでさぁ……織莉子だって食べない」

キリカ「だから食べるとしてもクッキーとかケーキとか……」


キリカ「だからポテチに限定されたら挙げられるのはせいぜいそれくらいだよ」

さやか「だからポテチじゃないですってば」

キリカ「そういう君はどうなの?」

さやか「わぁいうすしお、さやかうすしお大好き」

キリカ「塩味じゃダメなの?」

さやか「またそんな無粋なことを言う」

キリカ「無粋なんだ。まぁいっか」

キリカ「恩人ってピザポテト好きそうだよね」

さやか「へ?」

キリカ「お徳用をボリボリと、チーズがおいしーのよーって」

さやか「これ以上はいけない」


キリカ「それにしても」

さやか「なんです?」

キリカ「私、さやか、ゆま。この組み合わせもなかなか無かとね」

さやか「そうですねぇ。むしろ学校外でキリカさんが織莉子さんと一緒にいない時なんて見たことないような……」

さやか「っていうか何で博多弁話したんスか今」

キリカ「『なかなかなか』って響きが良くて、言ってみたくて」

さやか「な、なるほど?」

キリカ「理解してくれるんだ。君はいいヤツだ」

さやか「そういや方言話す女の子って萌えだそうですよ」

キリカ「織莉子以外の女は可愛いと思わない」

さやか「流石です」


さやか「キリカさんは博多弁よりも関西弁が似合いそう」

キリカ「なんやてさやか。んなわけあらへんでおまんがなっちゅーねん」

キリカ「ウチ関西弁顔あらへんちゃいますのん?でんがなでんがな」

さやか「関西弁顔ってなんスか」

さやか「でも一人称が『ウチ』の女の子って可愛くない?」

キリカ「今の私可愛かった?」

さやか「関西弁がテキトーなことを除けばなかなか」

キリカ「ふーん……」

さやか「もうちょい真面目に言ってみてくださいよ」

キリカ「うん」

キリカ「…………」

キリカ「ウチ、織莉子のことごっつ好っきゃねん」

さやか「録音しました」

キリカ「やめて」

さやか「杏子に聞かせよう」

キリカ「やめて」

さやか「ほむらに聞かせよう」

キリカ「やめて」

さやか「まどかにも聞かせよう」

キリカ「やめて」

さやか「マミさんにも聞かせよう」

キリカ「やめて」

さやか「織莉子さんにも聞かせよう」

キリカ「いいよ」

さやか「意外」


キリカ「愛の言葉は言うに越したことない」

さやか「言い過ぎもよくないんじゃないスかね」

キリカ「と言うと?」

さやか「あんまり好き好き言うとその好きって言葉の価値が下がるというか」

さやか「もっと勿体ぶりましょうよ」

キリカ「ふーん。そういう考えもあるんだ」

キリカ「流石恋愛マスター。そこそこいいことを言う」

さやか「あたしフラれたの知って言ってますよね」

キリカ「うん」

さやか「キリカさんって性格悪いスね」

キリカ「まぁね」


キリカ「で、何の話だっけ」

さやか「方言萌え」

キリカ「さやかはどう思う?」

さやか「織莉子さんは京都弁が似合うんじゃないでしょーか」

キリカ「…………」

さやか「お、想像してる」

キリカ「語尾に『どすえ』しかボキャブラリーがなかった」

さやか「そないどすかぁ、キリカはん」

キリカ「方言が可愛いとか嘘なんじゃないの」

さやか「遠回しにディスられましたねあたし」

キリカ「じゃあ試しにゴワスとか言ってよ」

さやか「嫌です」

キリカ「そーやか」


キリカ「杏子みたいに雅なイメージとかけ離れてるヤツは逆に似合うんじゃない?京都弁」

さやか「…………」

キリカ「お、想像してる」

さやか「そないん、ウチが許さへん」

キリカ「萌える?」

さやか「何かムカつきました」

キリカ「何で?」

さやか「さぁ?」

さやか「他に何かいい感じのないかな……まどかに津軽弁とかどうスかね」

キリカ「これ以上方言で話を膨らませられないよ。私は」

さやか「せやな」


キリカ「じゃ、話題を変えて……そういえばさやか」

さやか「何スか?」

キリカ「ガムを噛むときの効果音って、大抵クチャクチャ、だよね」

さやか「そうスね」

キリカ「そんな音、口開けて咀嚼しないと出ないよね」

キリカ「でも世間では『ガムの効果音=クチャクチャ』で定着されている」

さやか「そうスね」

キリカ「再現しなくていいよ」

さやか「…………」モグモグ

キリカ「…………」

さやか「…………」モグモグ

キリカ「というのは冗談で、さやか」

さやか「何ですか?」クチャクチャ


キリカ「ガム噛みながらチョコとかポテチ食べるとガム溶けるって知ってた?」

さやか「チョコは聞いたことあるけど……ポテチもですか?」

キリカ「何でも含まれてる油が溶かすんだってさ」

さやか「へぇー」

キリカ「ガム噛みながらチョコ食べてたら溶けて無くなってさ、驚いて織莉子に聞いたら、そうなんだって」

さやか「ガム噛みながらチョコ食べないでください」

キリカ「味無くなったけど捨てる紙が手元になくてね。チョコ味のガムになると思ったんだ」

さやか「杏子みたいなことを……」

キリカ「チョコ味のガム、ないことはないんだけどね」

キリカ「それはさておき、私は思ったんだ」

さやか「何をですか?」


キリカ「ガムを噛んでたら後から入ってきたチョコやポテチに溶かされる」

キリカ「ガムをさやかとすれば、私とゆまはチョコとポテチなんだなーって」

さやか「なるほど。あたしとキリカさんは見た目が似てるという噂があり……」

さやか「さらに、ゆまちゃんのベホマラーがあればあたしのベホイミとめいそうは必要ない」

さやか「あたしの存在意義が微妙だな、と」

さやか「あたしは二人に喰われちまった、と。外見的にも能力的にも……」

キリカ「…………」

さやか「…………」

キリカ「…………」

さやか「泣いていいですかね、あたし」

さやか「自分、涙いいスか」

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さやか「くぅ……後から入ってきたのにあれこれ言われるなんて悔しいです」

キリカ「それほむらにも同じこと言えるわけ?」

さやか「それは別の世界のあたしですから。関係ないですから」

キリカ「まぁ大丈夫だよ。君は契約していない」

キリカ「未契約者というポジションでキャラ立ってるよ」

さやか「まどかと被ってます」

キリカ「試そうとかはしないの?」

さやか「え?何が?」

キリカ「ガム溶かすヤツ」

さやか「しません」

さやか「っていうか話題逸らしましたね」


さやか「いいですよ。いいですよーだ」

さやか「さやかちゃんはさやかちゃんというキャラがありますから」ツーン

さやか「契約していようがいなかろうが、見た目や能力や立ち位置が被っていようが」

さやか「さやかちゃんはさやかちゃんですもの」

さやか「イジられキャラでも何でもござれよ」

キリカ「そう拗ねなさんな」

さやか「あなたがそれを言う?」

キリカ「言う」

さやか「……それにしても、あたしとキリカさんそんな似てますかね」

キリカ「もう許してやりなよ」

さやか「誰をですか?」


ゆま「…………」

さやか「おっとゆまちゃん。食べ終わってたのね」

キリカ「おいしかった?」

ゆま「…………」コクリ

さやか「ジュース飲む?」

ゆま「…………」コクッ

さやか「どうぞ」

ゆま「…………」クピクピ

キリカ「隣から借りてきた猫みたいだな」

さやか「キリカさんが怖いんだもんねー?子ども嫌いの殺人未遂。おー怖っ」

キリカ「しかもまだ完全に諦めたってわけでもないからね」

さやか「まどかに手ぇ出しちゃダメですよ」

キリカ「織莉子が言わなきゃしないよ」


ゆま「……けぷっ」

キリカ「おゲップ。はしたない」

さやか「可愛い」

キリカ「織莉子以外の女は可愛いと思わない」

さやか「ブレないなー」

キリカ「かつ、私は子どもが苦手」

ゆま「…………」ピクッ

さやか「だからぁ、子どもを挟んでそんなこと言わんでください。デリカシーのない」

さやか「さぁ、次は何して遊ぼうか?ゆまちゃん」

ゆま「…………」

さやか「バトミントンあるよ。ラケットは昔のだけど羽は新品」

キリカ「バ『ド』ミントンだよ」


さやか「今のゆまちゃんくらいの頃……もうちょっと前だったかな?いやぁ懐かしい」

さやか「あたしとゆまちゃんチームで。二対一」

キリカ「え、私もやるの」

さやか「当たり前です。この三本のラケットが目に入りませんか」

さやか「もちろんキリカさんには魔法少女というハンデがあるので、この特にボロいラケット使っていただきます」

キリカ「ゆまも魔法少女なのに……」

キリカ「ってうわボロッ。しかもガット切れてるとこあんじゃん」

さやか「ラケットでチャンバラした結果です」

キリカ「やんちゃ坊主か君は」

さやか「恭介は昔から腕っ節がダメでしたね」

キリカ「やんちゃ坊主か君は」


キリカ「しっかしこれ……シャトルがガットを通り抜けないかな」

さやか「大丈夫ですよ」

キリカ「君さっき『これ』をハンデ扱いしてたよね?」

さやか「そんじゃ、尋常に勝負です!」

キリカ「あー……はいはい、うん。わかったよ」

さやか「さ、行こ。ゆまちゃん」

ゆま「…………」コクリ

さやか「さ、キリカさんも。時間は無限に有限だよ」

キリカ「…………」

さやか「何です。浮かない顔して」

さやか「やっぱりハンデに十点差って厳しい?」

キリカ「あれ?いつの間に設定したのかな?」


さやか「じゃあトイレですか?」

キリカ「いや……そうでなくて」

キリカ「私……本当に遊んでていいのかな、って思って」

ゆま「…………」

さやか「…………」

さやか「いいんですよ。『アレ』は向こうに任せておけば」

さやか「それに風見野にと遠出はしたものの、ゆまちゃんが『また』狙われるとは限らない。その時はキリカさんだけが頼りなんですよ」

キリカ「……わかったよ」

さやか「大丈夫ですって。まどかなんかきっと今頃ココア飲んでますぜ」

キリカ「いや知らないけど……うーん、ココアか。ココア飲みたいな」

さやか「おっと、甘味トークで勝負を先延ばしになんかさせませんよー!」

キリカ「はいはい、わかってる。わかってるよ」

今回はここまで。お疲れ様でした
小ネタスレに投下したネタを元に書きました
別にヤマもなければオチもないよ

多分すぐに完結する。早くて四日

乙乙!

つまんね

日常系いいね
あとキリカワイイ



なんか見たことあると思ったらそうだったか

                   '"  ̄ ̄ ̄  '   、
          /⌒\ /              \/ ̄ ̄|
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       ⌒7  :/. : :| |    |  | 八    | | \  |     |: :゚, 〈⌒
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        | | :〈__人|   ゝ;;::          ::;;|| 八  人|   |
        |ノ|   | /゚ |   |;::     c{ っ   ::;||/ ムイ⌒|   八
.          八  /∨ :八  |;;::    __   ::;;;|  /  Vヘ.| /
.            ∨     \|ヽ;;::   ー   ::;;/|/     ∨
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               |;;::              ::;;|


まどか(ほむらちゃん、マミさん、杏子ちゃん、ゆまちゃん……)

まどか(そして、織莉子さんとキリカさん……)

まどか(魔法少女のみんなのおかげで、見滝原を襲った伝説級の魔女……)

まどか(ワルプルギスの夜は撃退された)

まどか(倒すこと自体はできなかったけど、見滝原は救われたんだ)

まどか(そして、ほむらちゃんは時間遡行という長い長い迷宮を越えて、わたしを……)

まどか(……ううん、みんなを救ってくれた)

まどか(その過程の結果偶然そうなっただけ、全員を救うだなんてそういう意図はなかった)

まどか(ほむらちゃんはそう言ってたけど……)

まどか(わたし個人としては、そうでないと思ってる)


まどか(仮に本当に偶然だとしても、神様が奇跡を起こしてくれたんだなって考えることにするよ)

まどか(……こうして超えられたワルプルギスの夜)

まどか(ほむらちゃんと出会った時は昨日のことのように思い出せる……)

まどか(でも、あの避難所で過ごした時間は遠い昔のように思える……)

まどか(ほむらちゃんに大切に思われていることを誇りに思うのと同時に)

まどか(本当に、申し訳ない気持ちとか色んな感情が渦巻いて、心苦しかった)

まどか(そんな夜を越えて数日)

まどか(ワルプルギスに伴ったスーパーセル)

まどか(キュゥべえが言うにはそれこそ壊滅的な状態に十分なりうる程の大きなものだったらしい)

まどか(でもみんなのおかげで……その嵐の元凶を撃退してくれた)

まどか(この災害における怪我人は何とゼロ!)

まどか(……ただし魔法少女は除く。みんな苦戦を強いられましたから)




まどか「……どうぞ。先生」コト…

和子「ありがとう。鹿目さん」

和子「……ん、美味しい」



和子「増して教え子が私のために作ってくれたとあっては……」

和子「人生で一番美味しいココアと言えます」

まどか「そ、そんな大げさな……」

和子「鹿目さんはいいお嫁さんになりますね」

まどか「お、お嫁さ……!?か、からかわないでくださいよ先生!」

和子「ふふ、将来が楽しみ」

まどか「もう……」

和子「ココアはよく飲むんですか?」

まどか「あ、はい。いつもパ……ち、父が作ってくれるんです」

和子「父だなんて……私の前だからってそんな畏まらなくてもいいんですよ?」

まどか「それでもやっぱり……」

和子「まぁ、無理もないですね」


知久「まどか。ここにいたんだね」

まどか「パパ」

和子「あら、知久さん。娘さんお手製のココア、いただいてます」

まどか「へ?」

知久「あ、先生。お荷物はもう大丈夫ですか?」

和子「はい、おかげさまで……恐れ入ります」

知久「いえいえ、これくらいのこと」

和子「それに先生だなんて……知久さんまでそんな畏まった言い方しなくてもいいですよ?」

まどか「…………」

知久「そんな、娘がお世話になってますからね」

和子「うーん……そういうものですか」


まどか「ねぇ、パパ、わたしに何か用だったの?」

知久「あぁ、そうそう」

知久「これからタツヤと買い物に行ってくるって言おうと」

和子「お買い物ですか」

知久「えぇ、食材を買いに」

和子「お買い物程度なら私が代わりに行きますよ?」

知久「いえいえ、お気遣いなく」

まどか「先生はお客さんですから」

和子「客だなんて……そんなもてなされる立場じゃないのに……」

知久「それに僕の仕事が無くなってしまいますからね」

和子「ふふ、それは申し訳ないですね」


タツヤ「かーず!」

知久「タ、タツヤ」

和子「あら、タツヤくん。パパとおでかけ嬉しいのね」

和子「それと『お姉さん』は究極生物じゃありませんよ〜」

タツヤ「かーず!」

まどか「コラッタツヤ。先生に失礼だよ」

タツヤ「ふぇー?」

和子「ふふ、まぁまぁ鹿目さん。お気になさらず」

和子「多分詢子の口調が移ったのでしょう」

知久「す、すみません」

和子「いえいえ」


タツヤ「かーず!いてく!」

和子「うん。行ってらっしゃい」

和子「あとかーずじゃなくて『お姉さん』って呼んでくれたらそれはとっても嬉しいなって」

タツヤ「まろか!いてく!」

まどか「う、うん。行ってらっしゃい」

和子「スルーされた……」

和子「やはり子どもにあれこれ言っても仕方ないか……」

知久「えっと……それじゃあ……行ってきます」

和子「あ、行ってらっしゃい」

まどか「行ってらっしゃーい」


和子「……かーず、かぁ」

和子「年端もいかない子に『お姉さん』と『おばさん』……どう呼ばれるか、という緊張をせずに済みましたけど……」

和子「かーず……ですか」

まどか「……あはは」

和子「全く、詢子ったら……」

和子「それにしても知久さんとタツヤくん。並んで見たらやっぱり雰囲気似てますね」

まどか「そうですか?」

和子「えぇ。やっぱり男の子はお父さんに似るものなのかしら」

和子「鹿目さんは詢子似ね。性格は知久さん寄りだけど」

まどか「…………」

まどか「……先生」

和子「はい?」


まどか「……先生は、パパのこと名前で呼ぶんですか?」

和子「へ?」

まどか「あの……三者面談とかではパパのこと……」

和子「……あぁ、成る程。覚えてたんですね」

和子「そうですね……確かに教え子の親に対して名前で呼ぶのは違和感があるでしょうね」

和子「知久さんは私にとっては友人の彼氏……もといご主人」

和子「なので実はそんな改まる間柄でもなくてですね」

和子「もちろん学校では先生という立場である以上そう呼ぶ訳にもいきません」

まどか「そ、そうなんですか……」

和子「まぁ……そうは言っても、特にそこまで親しいというわけではないんですけどね」

まどか(そっか……そうだよね)

まどか(ママの親友っていうなら、パパとも顔見知りって、十分あり得るよね)


まどか(……交通は既に元通り。いくつかのお店も営業を再開した)

まどか(一見、いつもの日常に戻ったかのように錯覚はするけど……)

まどか(実際、ワルプルギスによるスーパーセルで被害を負った建物は少なくない)

まどか(ワルプルギスがビルを倒壊させたり、大きい物から小さいのまで、被害の大きさは様々)

まどか(そして……わたし達の学校も、ガラスが割れたり精密機器の故障とかしたり、色々と被害があった)

まどか(……そうこともあって、学校はしばらくお休みです)

まどか(いつ再開するのか、それは今のところは未定……早乙女先生もわからない)

まどか(まだ具体的なことが決められていなかったんだろうなって)

まどか(マミさんは「受験生なのに」って愚痴を言っていました。一方同じ三年生だけどキリカさんは特に何も言ってなかった)

まどか(さやかちゃんは「不謹慎かもだけどさ」って言いつつ学校がお休みだということをちょっと喜んでいた)

まどか(ほむらちゃんは……困った感じの顔をしていた)


まどか(……そして)

まどか(そして……先生のお家も、不幸にも被害に遭っちゃって……)

まどか(耐震性とかの都合上しばらくの間住めなくなっちゃいました)

まどか(だから先生は落ち着くまで休職?するらしく、実家へ戻るんだそうです)

まどか(そこでその間、先生のお家にある荷物をウチで預かることになりました)

まどか(なので今日は、朝から先生の家から我が家まで、お荷物のお引っ越し)

まどか(わたしはその荷物の置き場所を作ったり、何なり……)

まどか(しかも今夜だけだけど、先生はウチにお泊まりするそうです!)

まどか(ママが「今夜は飲むぞー」って張り切ってました)

まどか(先生が家に来て、しかもウチに泊まるだなんて)

まどか(こんな日が来るとは思わなかったなって)

まどか(世の中わからないものだなって、思ってしまうのでした)


まどか「…………」

和子「……鹿目さん?」

まどか「ふぇ?あっ、ご、ごめんなさい。ボーっとしてましたっ」

和子「何も謝ることは……」

和子「……うーん……ごめんなさいね、鹿目さん」

まどか「へ?」

和子「やっぱり先生が家にいるなんて落ち着きませんよね?」

まどか「い、いえっ、とんでもないですっ」

和子「今夜だけですが、鹿目さんにもホント、ご迷惑をかけます」

まどか「め、迷惑だなんてそんな……」

詢子「むしろ飢えた独身女と夫を同じ屋根の下に置く方が落ち着かないね。私が」

和子「詢子」

まどか「ママ」


まどか「…………」

和子「……鹿目さん?」

まどか「ふぇ?あっ、ご、ごめんなさい。ボーっとしてましたっ」

和子「何も謝ることは……」

和子「……うーん……ごめんなさいね、鹿目さん」

まどか「へ?」

和子「やっぱり先生が家にいるなんて落ち着きませんよね?」

まどか「い、いえっ、とんでもないですっ」

和子「今夜だけですが、鹿目さんにもホント、ご迷惑をかけます」

まどか「め、迷惑だなんてそんな……」

詢子「むしろ飢えた独身女と夫を同じ屋根の下に置く方が落ち着かないね。私が」

和子「詢子」

まどか「ママ」


和子「……教え子の親であり親友の夫との不倫。まるで昼ドラの設定ね」

和子「って誰が飢えた女よ!」

詢子「ちくしょう!娘の前で何て話をしやがる!」

和子「自分で言ったんでしょうが!」

まどか「あ、あはは……」

詢子「ハハ、やっぱ面白いわ。あんた」

和子「もう……生徒の前なのよ。先生としての威厳が崩れちゃうじゃないの」

詢子「んなもん最初からないだろ」

和子「……懐かしいわね。知久さんと付き合い始めた頃の詢子の惚気話といったら」

詢子「やめろ」

まどか(……気になるかも)

詢子「やめてくれ。謝る。すまん」

和子「よろしい」

まどか(先生が今まで見せたことのないような悪〜い笑顔を……)

まどか(先生のこういう面……何だか新しい)


詢子「ま、まぁまどかが落ち着かないのも無理ないよな?まどか。先公が自宅にいるんだぞ」

まどか「う、うん……ちょっと」

和子「気にしなくていいんですよ。私はただの母親の友人」

まどか「い、いやぁ、でも……」

詢子「なぁ和子、想像してみ?」

和子「何を?」

詢子「中学校の頃の担任が自分の家の居間にいる光景」

和子「中学の担任かぁ……うーん、覚えてないわ」

詢子「じゃあ教職課程の講師」

和子「……あなたは私をどうしたいのよ。追い出したいの?居させたいの?」

詢子「居て欲しい」

和子「何で私が気まずくなるようなこと言ったのよ」

詢子「面白いから」

和子「くっ……!」


まどか「わ、わたしは先生のこと好きだから、いてくれて嬉しいです!」

和子「鹿目さん……なんていい子なんでしょう。その優しさが胸に染みます」ジーン

和子「ああ、鹿目さんみたいな優しい彼氏が欲しいわ」

まどか(せ、切実な表情だ……)

詢子「まどかはあんたにゃ勿体ない」

和子「……そうかもね。はぁ……」

詢子「早くしないといよいよ崖っぷちだぞ」

和子「……あまりに悔しいから詢子と知久さんとの馴れ初めを英文にして期末テストに出そうかしら」

詢子「生まれて初めての土下座をする日が来るかもしれん」

まどか「パパとの馴れ初め?……気になる」

詢子「気にならないでくれ……」


和子「冗談のつもりで言ったけど、よく考えたら両親の馴れ初め……」

和子「それって思春期の娘にとって結構大事じゃない?」

詢子「む、否定はできない……か?」

まどか「…………」ジー

詢子「ぐぅ……!き、期待の眼差し……!」

和子「いいじゃない。今更恥じらう年でもないでしょう」

詢子「あんたと同級生だったんだがそれは」

和子「くすん」

まどか「わたし、気になるなって」

詢子「……ま、まどかに気になる男ができたら話してやるよ!」

まどか「むぅ……いじわる」

まどか(……あのママが動揺している)

まどか(パパとの馴れ初めとか惚気話とかで照れてたのもそうだけど……)


まどか(あの据わったママが戸惑う姿……)

まどか(別に見たことないわけじゃないんだけど……何だか新鮮)

和子「鹿目さんは好きな人いるの?」

まどか「い、いません。いませんよっ」

詢子「ふふふ……仮にいたとしてもまどかはそういうの恥ずかしがって言い出せない性格だ」

詢子「つまり、結果的にはそういう条件を出すことでどっちみち私は言わずに済むというわけだ」

まどか「む、むむむ……ず、ずるい……」

詢子「大人はズルイ生き物なのだ」

和子「好きな人自体はいないこともないですけどね」

まどか「ふぇっ!?」

詢子「……え?どゆこと?」


和子「鹿目さんたら暁美さんといっつも一緒で」

まどか「せ、先生っ」アタフタ

詢子「ああ……そういう。ビックリしたわ」

まどか「た、確かにほむらちゃんのことは好きだけど……」

詢子「本当にな。家でもほむらちゃんのことばかりでさ」

詢子「やれ優しいだのやれカッコイイだの……」

まどか「ママ!」

詢子「確かにほむらちゃんは美人だ」

詢子「何度かウチに呼んだことあるし、私にはわかる。絶対モテるだろ」

和子「生徒のそういう話には首を突っ込まない主義でね。守秘義務もある」

詢子「……妬みか?」

和子「結婚式の時の詢子ったら柄にもなく緊張して……」

詢子「やめろ」


まどか「ママの結婚式……」

詢子「く、くそぅ……人の恥じらいと娘を利用して脅すなんて卑怯だぞ教師さんよ……!」

和子「何のことかしらねーわからないわー」

詢子「……そ、それで?どうなのさ。まどか」

まどか「え?」

詢子「ほむらちゃんの評判よ」

まどか「あ、う、うん……クールでカッコイイってみんな言ってる」

和子「そうね。それに成績もいい。勉強も運動もバッチリよ」

詢子「へぇ、心臓が悪くて入院生活が長かったって聞いてるのに運動できるんだ」

和子「えぇ……暁美さんの主治医とお話する機会があったんだけど、主治医の先生すごい驚いてたわ」

まどか「そんな機会あったんだ」

和子「担任だからね」


和子「ただ気になるのは……ある日を堺に急に人が変わったみたいだとか話してたのよね……」

まどか「う……」

詢子「あん?なんだそりゃ」

和子「暁美さん、転入前は眼鏡におさげだったんだけど、急に取っちゃったそうよ。それに性格もまるで別人のよ……」

まどか「ほ、ほむらちゃんってカッコイイけどさ!」

詢子「ん?」

まどか「じ、実は可愛いとこもあるんだよ!」

詢子「ほほう、例えば?」

まどか「とっても照れ屋さんだったり、驚いた声がすごく可愛いの」

まどか「完璧に見えて、うっかりさんなとこもあってね、それで……」

詢子「あぁ、わかった、わかったよ」

詢子「油断をすると長々と聞かされるからな。もうストップだ」

まどか「つ、つい……」モジモジ

和子「そんな面もあったのね……担任ながら初めて知る、意外な一面」

まどか(ふぅ……何とか誤魔化せた……かな?)


詢子「知らなかったのか。和子」

和子「えぇ……暁美さん、一人でいることが多いなとは思ってたけど……」

和子「全然楽しそうじゃないというか、その辺りちょっと心配してたのよ」

詢子「へぇ。その根拠は?」

和子「戦友を失った兵士みたいな目をしていたわ」

詢子「何でそんなのがわかんだよ」

和子「過去に付き合ってた人が……ね」

詢子「あんたの男性遍歴面白すぎだろ」

まどか(ほむらちゃん……)

まどか(あの時のほむらちゃんは、わたしのために本当に辛くて苦しい思いをしてて……)

まどか(ずっと、わたしのために戦ってくれて……)

まどか(ほむらちゃんは、ずっと孤独とも戦って……)


和子「転入していつ頃かは覚えてないけど、いつの間にか鹿目さんと仲良しになってたわね」

和子「あれから少しずつ表情が柔らかくなってきたって感じね」

詢子「確かにある日を堺にまどかはほむらちゃんのことばかり話すように……」

まどか「マ、ママ!」

和子「それから鹿目さんを中心に美樹さんや志筑さん……三年生だけど巴さんや呉さんとも一緒にいるのを見るようになったわ」

詢子「呉?マミちゃんは知ってるけどその子は初耳だな」

詢子「どんな子?」

まどか「う、うん……キリカさんは……その、ちょっと変わった人、かな?」

まどか「学校は違うんだけど織莉子さんっていう人といつも一緒」

詢子「キリカちゃん。その友達の織莉子ちゃん……その子らとも友達?あんたも、ほむらちゃんも」

まどか「ま、まぁ……うん」

詢子「ふーん」

まどか(……キリカさんと織莉子さんに命を狙われたなんて絶対に言えない)


和子「ま、何と言っても暁美さんは鹿目さんとが一番の仲良しね」

和子「鹿目さんと話してる時は特に安らいでる」

まどか「そ、そうですか?」

詢子「いや、そうとは限らないぞ」

和子「ほほう?」

詢子「ゆまちゃんって子がまどかの知り合いにいるんだけどさ」

和子「ゆま……あぁ、美樹さんの口からそんな名前を聞いたことあるような」

詢子「杏子ちゃんの妹なんだっけ?」

和子「また聞き慣れない名前」

まどか「い、いや、妹ではないんだけど……」

詢子「で、まだちっこいんだけどさ、ゆまちゃんて子がこれまためんこいんだよ」

まどか「何で方言?」


詢子「人見知りだけど懐かれさえすれば甘えてくる。まるで仔猫」

詢子「タツヤに対してお姉さんぶるのがこれまた可愛い」

和子「なるほど」

詢子「私にお酒臭いと面と向かって言える素直な子」

和子「酒は自重なさい酒は」

詢子「ゆまちゃんと遊んでる時のほむらちゃんの顔と言ったら……その二人のやり取りを肴に酒が飲める」

和子「だから自重なさいて」

まどか(確かに……ほむらちゃんの笑顔はとっても可愛いけど……)

まどか(な、何でだろう。何でわたしが恥ずかしい気持ちになっちゃってるんだろう)

和子「へぇ……暁美さん子ども好きなのね」

詢子「私らからすりゃほむらちゃんも十分子どもだがね」

和子「どうやら暁美さん、私が思ってたより見滝原に打ち解けてたようね。安心したわ」

詢子「親元離れて知ってる人が誰もいないようなとこに単身来ているんだ」

詢子「しっかり者とは思うが一ヶ月も経たずに学校外に友達がいるって上等なもんだよ」

和子「そうね。心配しすぎだったわ」

まどか(……本当は一ヶ月どころじゃないけどね)


詢子「まどかが中学上がる時はどうだったかな」

まどか「どうって?」

詢子「ほむらちゃんとは状況が全く違うが……新しい環境になる時さ」

和子「鹿目さんが入学した頃……それなら覚えてるわ」

和子「いつも美樹さんの隣にいたわね。べったりと。印象的だったわ」

詢子「あぁ……それじゃあ比較にならんな」

まどか「あ、あぅ……」

詢子「まどかに親離れは到底無理だな」

まどか「ほむらちゃんと比較されると……すごい劣等感」

まどか「ほむらちゃんが特別なのっ」

詢子「はは、そりゃそうだよな。普通中学生ってのは、一人暮らしにゃ早すぎる」


詢子「あの頃のまどかは『さやかちゃんさやかちゃん』ばっかりだったな……」

詢子「今では『ほむらちゃんほむらちゃん』だけど」

まどか「や、やめてよぉ……」

和子「鹿目さんは昔から甘えん坊さんなのね」

まどか(昔から?)

詢子「まぁ流石に中学生にもなったし、テンションあがって抱きついてくるってことはなくなったがな」

まどか「ちょ……!」

和子「あら、でもたまに暁美さんに抱きついて……」

まどか「わー!わー!先生!言わないでー!」

詢子「マジか……ほむらちゃんにまどか盗られた……」

まどか「変なこと言わないで!」

詢子「テンションハグの癖が治ってないあんたが悪い」


詢子「やっぱ昔から甘えん坊だな」

和子「引っ込み思案な傾向も昔のままよね」

まどか(……昔のまま?)

詢子「控えめな所は直ってきてるぞ」

和子「あら、それは失礼なことを……」

まどか「……先生、わたしの昔の頃、知ってるんですか?」

和子「え?」

詢子「何言ってんだまどか。そんなん当たり前だろ。和子は私の旧友だ」

詢子「産まれた子を親友に自慢するくらい当然さ」

和子「そうそう。だからちっちゃい頃の鹿目さんも知ってるんだから」

和子「……尤も、鹿目さんは覚えてない頃でしょうけどね」

詢子「実際覚えてなかったしな」

まどか「……そう言えば……そうなるんですね」


詢子「まぁ仕方ないか」

詢子「和子がまどかと教師生徒として『再会』したのは……いつ以来?」

和子「鹿目さんが全く覚えてなかったことを踏まえると……」

和子「鹿目さんが今のタツヤくんくらいの頃……もうちょい前?」

詢子「私もよく覚えてないけど、それくらいかね。となると十年くらいか」

和子「十年……もうそんなに」

和子「たまに飲みに行っても娘さんと面会なんてできなかったものね」

まどか「……先生がママと知り合いなのは知ってましたけど……」

まどか「中学生になる前にもう先生と会ってたんですね……わたし」

和子「えぇ、そうですよ。実は私、鹿目さんを抱っこしたこともあるんだから」

まどか「えっ!そ、そうなんですか……!?」

詢子「白々しいなー。数年前その時の写真見せた時『このおばさん誰?』って言ってただろ」

まどか「え゙」


和子「……当時二十代前半よ。流石に捏造でしょ」

詢子「うん」

和子「詢子が知久さんと付き合い始めた頃のラブラブしてる写真があるんだけど」

詢子「すまない」

まどか「ママとパパの写真、他にもありますか?」

和子「えぇ、それはもう——」

詢子「と、とにかくだ!まどかと和子は何気に古い仲なんだ!」

和子「強引な話題逸らし。滑稽ね」

詢子「くそぅ……どっちかと言うと私があんたを振り回すポジションなのに……弱みを握りよってからに」

まどか「えっと……何というか、今更って感じだけど……」

まどか「ちょっと……いや、割と結構ビックリ」

詢子「だろうなぁ」

まどか「そんな過去があるなら言ってくれればよかったのに」

和子「言う必要もないと思いましたからね。さっき詢子が言ったように、鹿目さんは覚えてないわけですし」


和子「でもまさか、鹿目さんが私が勤める学校、それも担任として……」

和子「こんな風に巡り合わさった時は奇跡かと思ったわ」

詢子「ああ、世界は狭いなぁってつくづく思ったよ」

詢子「まぁ哲学的な言い方だが、人との出会い自体が奇跡みたいなもんだがな」

まどか「奇跡……」

詢子「何千何万といる同年代の人間から、私と和子は出会ったし、まどかもお友達と出会ったわけだし」

和子「あ、何かいい先生らしいセリフ。いただき」

詢子「ほむらちゃんにとっても、東京からはるばる見滝原に来て、まどかに然りゆまちゃんに然り、人との出会いがあった」

詢子「来た時期的にはちょっと都合の悪い偶然もあったが、あの子にも奇跡があったわけだ」

まどか(魔法少女の契約、さやかちゃんと上条くんの一件もあって、ちょっとだけ『奇跡』って言葉に苦手意識はあるけど……)

まどか(わたしと先生との関係、意外な所で奇跡が起こってたんだ)

まどか(わたしが意識しなかったところでも、奇跡って起きてるんだ)


まどか(ほむらちゃんが、魔法少女のわたしに出会って仲良しになれたこと)

まどか(ほむらちゃんが、わたしとの出会いをやり直したいと願ってくれるほどそのわたしを好きになってくれたこと)

まどか(ほむらちゃんが、何の取り柄のないわたしのためにたくさんの辛い思いをしながら、諦めてくれなかったこと)

まどか(きっとそれは、何よりも素敵な奇跡なんだと思うから)

まどか(クラスの子以外の友達——魔法少女の素質がなかったらマミさんと仲良くなれなかっただろうし……)

まどか(マミさんと知り合いになってなければ杏子ちゃんとゆまちゃんとも出会ってなかったかもしれない)

まどか(今は苦手だけど……織莉子さんとキリカさんとの出会いも……多分)

まどか(何か……そんな感じで。それから、それから——)

まどか「…………」ポー…

和子「……鹿目さん?」

詢子「あぁ、まどかは今、考え事をしているようだ」

和子「考え事」

詢子「頭の使い方の要領が悪いというか、何かに集中するとこうなるんだよな」


まどか「…………」

詢子「あっ!窓の外に何かいい感じのものが!」

まどか「!」バッ

詢子「目覚めたか」

まどか「あれ?」

和子「流石、娘のことをよく理解してるわね」

詢子「まどかや。その奇跡ほむらちゃんは今頃東京か?」

まどか「き、奇跡ほむらちゃんって……」

和子「そういえば最近学校で『きせき○○』ってよく聞くのよね」

詢子「流行ってるのか?その言い回し」

和子「さぁ……何でも防御力が上がるんですって」

詢子「は?」

和子「それはさておき、暁美さん実家に帰ってるのね」


詢子「らしい。まぁこんなこともあったし親御さんも心配しているんだろ」

まどか「……ほむらちゃんはまだ見滝原にいるよ」

詢子「あれ?今日じゃなかったっけ……まぁいいか」

和子「しっかし、見滝原に来て一ヶ月も経たずに『コレ』だものねぇ」

詢子「あぁ、大変だろうなぁ。よりによってあんな嵐よ」

詢子「そりゃあんたの住処もああなるわ」

和子「あー、そんな無神経なことを言うー」

和子「心が抉れたわー。悲しいわー」

和子「やっぱ暁美さんは特に心配したわ」

まどか(切り替え早い!)

詢子「そうなんだ」

和子「そうよ。連絡が取れなくって本当に心配したんだから……」

まどか(外にいた時だったのかな?)


和子「その上一人暮らしだし、パニックになってないかって、病気のことだってあったし」

詢子「へぇ……ま、建物はアレだが怪我人ゼロだったのは本当に何よりだったな」

和子「えぇ、全くね……本当に大変だったことでしょうね……暁美さん」

まどか(……ほむらちゃんは、もっともっと、大変な思いをしていたんだよね)

まどか(そのスーパーセルの元凶と戦ってた)

まどか(そんなこと、口が裂けても言えないよ……)

まどか(それに今も、ほむらちゃんは……)

まどか(ああ……心配だな……)

まどか(ほむらちゃん……)

まどか(気になるな……)

今回はここまで。
コレジャナイとかキニシナイ。そんな感じに気楽に書きましたとです。ホトトギス

さっさと投下して終わらせるつもりだったけど、リアルの都合上少し遅れるかも

今回はここまで。
コレジャナイとかキニシナイ。そんな感じに気楽に書きましたとです。ホトトギス

さっさと投下して終わらせるつもりだったけど、リアルの都合上少し遅れるかも

キリカまで友好的なのは少ないからイイネ!
あんまり見ないキャラの絡みがおもろい



詢和イイね!

はいはいまたまたまどほむまどほむ

俺はこれを待っていたのだ

うーんこの

つまんねぇのでもう書かなくていいです

>>77-78

これは大事なことですね


織莉子(私……美国織莉子は……)

織莉子(生きる目的を知りたいと契約をした時、世界を滅ぼす魔女が誕生するという予知を見た)

織莉子(その未来を阻止すること。世界を滅ぼす魔女になりうる少女……鹿目さんの抹殺が、私の人生の目的と考えた)

織莉子(それが、世界を救うことだと、正義だと信じていた)

織莉子(キリカと出会い、ある魔法少女と対峙し……色々あった)

織莉子(結果的には……私は鹿目さんを殺すことはできなかった)

織莉子(鹿目さんを守る暁美さん達に……私とキリカは敗北した)

織莉子(ソウルジェムに、暁美さんの銃を向けられ……)

織莉子(死を覚悟した時)

織莉子(鹿目さんは暁美さんを止めた)

織莉子(そして鹿目さんは私達に取引を持ちかけた)


織莉子(……魔法少女のこと。わたしも理解しているつもりです)

織莉子(そして、ほむらちゃんのことも……あなた達のことも)

織莉子(わたしは絶対に魔法少女になりません)

織莉子(どうか……信じてください)

織莉子(だけどもし……万が一、万が一わたしが魔法少女になっちゃったら)

織莉子(契約してしまったら……殺してくれても構いません)

織莉子(その代わりと言っても何ですが……ほむらちゃん達に協力してください)

織莉子(みんなと一緒に、ワルプルギスの夜と戦ってください)

織莉子(あなたとキリカさんの力が必要です)

織莉子(みんなが命をかけて戦っているから……戦うから、わたしも命を預けます)

織莉子(……鹿目さんは、そう言った)

織莉子(彼女の言葉。一言一句覚えている)


織莉子(命を狙ったにも関わらず、実際に殺そうとしたにも関わらず、鹿目さんは私を生かそうと……)

織莉子(鹿目さんのあの言葉……)

織莉子(あの時正直な所、私は感動した……という事実がある)

織莉子(友達のために自分の命を……担保と言うか『半分』私達に差し出したのだ)

織莉子(……こうして私は鹿目さんと……そう、契約をした)

織莉子(私とキリカは生き延び、暁美さん達と一緒にワルプルギスの夜と戦った)

織莉子(そして生き延びた。今を生きている)

織莉子(鹿目さんは魔法少女になったら殺す、その契約はワルプルギスを越えた今も継続はしている)

織莉子(まだ予知能力が完全に制御できていない故、世界を滅ぼす魔女の姿はあれ以来見てないけど……)

織莉子(あの魔女は産まれないと断言はできない)

織莉子(……死にたくないがために応じたとも言えるあの契約も、今にして思うと)

織莉子(…………)


織莉子(私は今……正直な所)

織莉子(世界を滅ぼす魔女の産まれる可能性を排除するよりも……)

織莉子(産まれないことを信じて過ごす今の方が、安心感を抱いている……というのもまた事実)

織莉子(私にとっての平穏な暮らしは、今、この現状だと思いつつある)

織莉子(生かしてくれたという意味で……鹿目さんに感謝の気持ちを持っている自分がいる)

織莉子(そして実際に殺さないでくれた、暁美さんにも……そんな気持ちがないこともない)

織莉子(私は……共闘関係を結んだことで、彼女達のことが好きになっている……のだと、思う)

織莉子(…………)

織莉子(……鹿目さんは勿論のこと)

織莉子(美樹さん、巴さん、佐倉さん、ゆまちゃんと……暁美さんは仲がいい)

織莉子(共闘を結んでからというもの……)

織莉子(同じ学校ということでキリカも暁美さんと一緒にお昼を食べたりとか、楽しそうな学校生活を送っている)

織莉子(同じ学校だから、そう遠くない未来に、キリカと暁美さんが談笑をしているような光景が見られるでしょう)


織莉子(……しかし、私は学校が違うから……そういう機会は圧倒的に少ない)

織莉子(心のどこかで……疎外感がないこともない)

織莉子(でも……私はそれも仕方がないと考えている)

織莉子(私と違って、キリカはとってもいい子)

織莉子(すぐに皆と仲良くなれるでしょう)

織莉子(本当に鹿目さんを殺したいと思ったのは、結局のところ私だけ)

織莉子(キリカは私の言いなりだっただけに過ぎない)

織莉子(だから……キリカはともかく、私の場合は、憎まれて当然)

織莉子(鹿目さんに避けられて当然。友達を殺そうとした人間は嫌われて当然)

織莉子(特に……暁美さんには……)

織莉子(内心寂しいけど……自業自得というもの)

織莉子(それは、まぁ、重々承知の上なのだけれど……)





ほむら「…………」コポポ…

織莉子「…………」

ほむら「……どうぞ」カチャ

織莉子「……どうも」






ほむら「…………」

織莉子「…………」

織莉子(そんな私が……)

織莉子(そんな私が、そういう暁美さんの家に招かれて……)

織莉子(お茶をいただくことになるとは)

織莉子(しかも……二人きりで)

織莉子(波乱のある人生だとは自分自身でそう思うけど……)

織莉子(どうしてこうなったのかしら)

織莉子(世の中はわからないものね)


織莉子「……い、いただきます」

ほむら「…………」

織莉子(いい香り。ダージリンね)

織莉子(味は……うん。なかなか)

織莉子(暁美さん、紅茶淹れられるのね)

織莉子「……美味しいわ」

ほむら「……どうも」コクリ

織莉子「…………」

織莉子「……ねぇ、暁美さん」

ほむら「……?」


織莉子「昨日『魔女』が現れたのは知っている?」

ほむら「…………」コクリ

織莉子「それで、あなたは戦っていたらしいわね」

ほむら「…………」コクリ

織莉子「途中で佐倉さんとゆまちゃんが助太刀に来たものの、結局逃がしてしまった」

ほむら「…………」コクリ

織莉子「ところで暁美さんは大丈夫だった?怪我は?」

ほむら「…………」フルフル

織莉子「……なるほど」

織莉子(やはり『自覚症状』がないようね)

織莉子(暁美さん……自分の異変に気が付いていない)

織莉子(口づけ自体は確認してないけど……本人はその変化に気付いていない)

織莉子(それが、どんなに大きな変化でも)


織莉子「暁美さん。それともう一つ」

ほむら「……?」

織莉子「あの魔女についてわかったことがあるわ」

織莉子「あの魔女の口づけを喰らうとね……『精神が逆行』するらしいの」

ほむら「……逆行?」

織莉子「そう。昔の自身になるとかならないとか。詳しくはわからないけれど……」

ほむら「……なるほど」

織莉子「…………」

ほむら「…………」

織莉子「…………」

ほむら「…………」

ほむら「……美国さん?」


織莉子「…………」

ほむら「あのー……」

織莉子「暁美さん」

ほむら「はい」

織莉子「あなた、おさげにした……いえ、戻したのね」

ほむら「へ?あ、その……な、何だか落ち着かなくて」

織莉子「眼鏡もかけちゃって」

ほむら「や、やっぱり落ち着かなくって……」

ほむら「そ、それに私、元々目が悪くて、視力は魔法で治してて……」

ほむら「だから、本当に微量な違いですが……節約に……」

織莉子「…………」


織莉子(暁美さんは、過去の暁美さんに……)

織莉子(通称メガほむ状態とやらになってしまった)

織莉子(メガほむと初めに言い出したのは美樹さん……何がどうメガなのかはわからない)

織莉子(私は暁美さんの過去の姿……)

織莉子(もとい、メガほむを知らないから何とも言えないけど……)

織莉子(記憶はそのままに、性格が遡逆し、私の知っている暁美さんからかけ離れてしまった)

織莉子(……精神が逆行する。そして自覚症状なし。それが魔女の呪い)

織莉子(精神が遡るとファッション感覚とかもズレるのかしら?)

ほむら「あの……それで、その魔女が……?」

織莉子「魔女の口づけを喰らってしまったらしいのよ」

ほむら「え!?」


織莉子「ゆまちゃんは虐待を受けていた頃に……めっきり塞ぎ込んじゃって。そして佐倉さんも変わってしまった」

ほむら「そ、そんな……私を助けようとして佐倉さんとゆまちゃんが……」

織莉子(二人じゃないんだけど……)

織莉子(しかし、精神の逆行……もしその口づけをキリカが喰らってたらどうなってたのかしら)

織莉子(キリカは契約をしたことで性格が変わった。精神が逆行したとなれば、その書き換えられた性格はどうなるのかしら)

織莉子(契約の内容がなかったことになって契約以前のキリカに?)

織莉子(それとも『その時』が今のキリカだったらというIfのキリカに?)

織莉子(興味がないこともない)

ほむら「だ、だとしても……」

織莉子「ん?」

ほむら「どうして二人は魔女の呪いを受けて……私は無事だったんでしょうか……」

織莉子(いや、あなたも喰らってるのよ)

織莉子(と、まぁそう言ったところで自覚がない以上、言っても無駄ね)


ほむら「そっか……二人が口づけを喰らってるって言うなら……」

ほむら「確かに、私だけ見滝原を離れる訳にはいきませんね……」

織莉子「離れる?」

ほむら「あ、私、ワルプルギスの夜の後……両親から東京に帰ってくるよう言われまして」

ほむら「本当なら昨日か今日にでも戻ろうと思ってました」

ほむら「でも、巴さんから行っちゃダメって言われて……」

織莉子(まぁ魔女の口づけを喰らってる人を単身帰らせて目を離す訳にはいかないものね……)

織莉子(……ん、東京?)

織莉子「……あなたが東京に帰るだなんて、初耳なのだけれど……」

ほむら「へ?」

織莉子「帰郷する予定だったのね」


織莉子「巴さんや鹿目さん達には既に話してあったと見て取れるけれど……」

ほむら「……あ」

ほむら「す、すみません……黙ってて」

織莉子「……別に意地悪してるわけじゃないわ。気にしないで」

織莉子(そう……決しておどおどしてる暁美さんを見て楽しんでるということは絶対にないのよ)

ほむら「その……連絡先を知らなかった、ということもあるんですが……」

ほむら「やっぱり……まどかを狙った、ということで……」

ほむら「その……正直、見滝原を離れるのは嫌だったんですが……せめて、内密にと思って……その……」

織莉子「そう……」

織莉子(……信用されていないのね。無理もないけど)

織莉子(しかし……東京、か)

織莉子(いつかお父様と行って、電波塔に上ったっけ……懐かしいわ)


織莉子「……あの、さっきから気になっていたのだけれど……」

ほむら「……は、はい」

織莉子「話すなら、目を見て話してくれないかしら」

ほむら「え?あ……」

織莉子「まるで私が威圧してるみたいじゃない」

ほむら「す、すみません。そんなつもりでは……」モジモジ

織莉子「そんなでよく私とキリカを半殺しにできたものね」

ほむら「あ、あの時必死だったというか、ついカッとなっちゃったというか……」

ほむら「その……やりすぎました。あの時は……ごめんなさい……です」

ほむら「じ、自分でもなんであそこまでやっちゃったのか……本当に、頭が真っ白に……」

織莉子(……精神は逆行すれど記憶は混濁していない)

織莉子(その時点の性格ではあり得ないようなことは、そういう風に解釈されるのね……)

織莉子(都合が良いというか複雑で面倒というか……)


織莉子「謝ることはないわ。私はそうされて当然のことをしたのだから……」

ほむら「美国さん……」

織莉子(……それにしても)

ほむら「…………」ソワソワ

織莉子「…………」

織莉子(私にジッと顔を見られて……落ち着かない様子ね)

ほむら「…………」チラッ

織莉子「…………」ジー

ほむら「…………」サッ

織莉子(また目を逸らされた。目を合わせられないみたいね)

織莉子(無理もないわね。目の前にいるのが親友の命を狙った人間なのだから)

織莉子(私だって、半殺しにされた相手だから……正直苦手だもの。『こんな』になっても……)

織莉子(それにしてもこの状態では鹿目さんを鹿目さんと呼ばない……よっぽどの大親友だったということね)

織莉子(境遇は全く違えど、私とキリカの関係を思えば、親近感がないこともない)


織莉子「…………」

ほむら「…………」

織莉子「ああァッ!」ガタッ

ほむら「ひッ!?」ビクッ

織莉子「……失礼、見間違えです」

ほむら「え?え……?な、何に……?」

織莉子「…………」

ほむら「え?え?」

織莉子「何てね……ふふ……」

ほむら「あの……美国さん?」

織莉子「何でも……何でもないわ……ふふ、ふふふ」

ほむら「お、脅かさないで……ください」

織莉子(……小動物ね)

 
織莉子(しかし、しかし、これは、これは、これは……!)

織莉子(何て……何て面白いのでしょう)

織莉子(ヤ、ヤバイわ……ちょ、ちょっと楽しい!)

織莉子(これがあの、私とキリカを半殺しにした暁美さんだと言うの!?)

織莉子(あの殺気立った顔が嘘のよう!)

織莉子(姉妹とか従妹とか言われて紹介されても普通に信じるレベルね)

織莉子(鹿目さんエリミネートモードの頃なら、これ程のチャンスはなかったでしょうに)

織莉子(尤も、それはしない契約をしたけども)

織莉子(あぁ、もうこの人が別人にしか思えない)

織莉子(暁美さんには嫌われて当然ね、なーんて考えていた矢先……)

織莉子(この人と話すのが楽しいと思ってる自分がいる!)


織莉子「…………」

ほむら「あ、あのー……」

織莉子「……あ、失礼。何でもないわ。ちょっと考え事を」

ほむら「はぁ……」

織莉子「…………」

織莉子「ふぅ……」カチャ

織莉子「紅茶、おかわりいただいてもいいかしら」

ほむら「あ、はい。どうぞ」

織莉子「ありがとう……」

織莉子「このティーセットはどこで買われたの?このデザイン、結構好きなのだけれど」

ほむら「それは……巴さんのお下がりというか……貰った物です」

織莉子「なるほど。巴さんのセンスだったのね」

織莉子「そう言えば巴さんが新しいティーセットを買ったという話をキリカから……」


織莉子「じゃあメーカーは……」

ほむら「……わかんないです」

織莉子「でしょうね」

織莉子「紅茶の淹れ方は誰かから教わったのかしら?」

ほむら「いえ、巴さんから教わりました……」

ほむら「……と言っても別の時間軸の巴さんですけど」

織莉子「……そう」

織莉子「……ちょっと無神経な質問だったかしら」

ほむら「い、いえ、そんなことは……」

織莉子「……あなたの紅茶、本当、美味しいわ」

ほむら「あ、ありがとうございます……」


ほむら「…………」

織莉子「…………」

ほむら「…………」

織莉子「…………」

織莉子(それにしても……)

織莉子(それにしても、何で私なんだろう)

織莉子(魔女の口づけを喰らって保護をするって言うなら、普通に考えて鹿目さんか巴さんのポジションよね)

織莉子(佐倉さんに出会う前の頃に戻ったゆまちゃんは、キリカと美樹さんに任されている……)

織莉子(巴さんと仲違いする前の佐倉さんは、かつての師を一緒に件の魔女を探している……)

織莉子(……暁美さんはワルプルギスの夜を越えて時間停止能力を失ってしまったらしい)

織莉子(魔女が現れるのを予知できないこともないとは言え、戦力的に私を護衛として置くのはイマイチ)

織莉子(佐倉さんはゆまちゃんみたいにとても戦える状態じゃないということもないらしいし……)

織莉子(魔女の口づけを受けたらその魔女と再び出くわす可能性が高いとか、そういう理由だとしても私と暁美さんが二人きりになる理由がない)

織莉子(何故?)


織莉子(鹿目さんは今、何をしているんだろう、何で私なのかしら)

織莉子(……この暁美さんが話題を振ってくるとは思えない)

織莉子(このまま沈黙のままになるくらいなら……)

織莉子(どうせ大した話題もないし、聞いてみよう)

織莉子(「あの」暁美さんだったら精神的に萎縮して言いにくいけど……)

織莉子(「この」暁美さんならすごい話しやすいわ)

織莉子「ところで気になっていたのだけれど……」

ほむら「あ、はい」

織莉子「何で私なの?」

ほむら「?」

織莉子「いえ、あの、普通に考えて……鹿目さんでいいじゃない」

ほむら「いい……とは?」


織莉子「あなた、鹿目さんのこと好きなんでしょう?」

ほむら「へ?え、えぇ、好きですけど……?」

織莉子「じゃあ鹿目さんでいいじゃない。私を家に招く理由がわからないわ」

織莉子(私としても、巴さんに任せられたから来たまで)

織莉子(何故私である必要があるのか、それは話してくれなかった)

ほむら「……えっと」

ほむら「まどかは今日、予定がありまして」

織莉子「予定?」

ほむら「引っ越しのお手伝いをしています」

織莉子「え!?引っ越し!?」ガタッ

ほむら「!」ビクッ

織莉子「か、鹿目さん引っ越すの!?どこに!?」

織莉子「契約されたらどうするの!場所を教えなさい!」


ほむら「あ……い、いえ!あの、そ、そうじゃなくて……」

織莉子「何がそうじゃないと——」

ほむら「え、えっと、その、詢子さんのお友達の荷物を預かるんだそうで……」

ほむら「えっと、災害の影響で」

織莉子「じゅ、詢子さん?」

ほむら「あ、まどかのお母さんです」

織莉子「そう……なるほど、ね。鹿目さんの家に……」

織莉子「確かに外せない用事ね。災害の影響ということはそのお友達の方のご自宅が壊れたのかしら?なら尚更ね」

織莉子「引っ越しなんて言うからビックリしたわ……」

ほむら「ご、誤解させるようなこと言ってすみません……まどかが話してくれた通りの言葉を使って……」

織莉子「いえ……私が勝手に動揺をしただけだから気にしないで。取り乱してごめんなさい」

織莉子(……あぁ、ビックリした)

織莉子(鹿目さんとろくに会話もせずにいつの間にか離ればなれなんて目も当てられないというものよ)


織莉子「はぁ……まぁわかったわ。余ったから私はあなたの介護を任されたと考えるわ」

ほむら「介護?」

織莉子「いえ……何でもないわ」

織莉子(どうせ自覚症状ないし……)

ほむら「えっと……」

ほむら「私も手伝うって言ったんですけど……断られて」

織莉子「まぁ、そうでしょうね」

ほむら「?」

織莉子「とにかく、このシチュエーションの理由は一部判明したわ」

織莉子(でも、だとしてもキリカか巴さんと一緒にいればいいのに)

ほむら「…………」

織莉子「……あ、私の今の言葉、あなたはその意味を理解する必要はないわ」


織莉子「あなたには関係のない……」

ほむら「も……な……です」

織莉子「……ん?今、何か言ったかしら?」

ほむら「で、でも……なくはない……です……って」

織莉子「なくはない?」

ほむら「わ、私と……その、美国さんと二人きりになった理由、です」

織莉子「……?」

ほむら「え、えっと……」

ほむら「と、巴さんは……気を使ってくれているんです」

織莉子「…………」

ほむら「一緒に、ワルプルギスの夜と戦って、全員無事に生き残れたのは……」

ほむら「みんなは勿論……あなたと呉さんのおかげでもあります」


ほむら「美国さんの予知で攻撃を先読みして、呉さんの魔法で立ち回る」

ほむら「ワルプルギスの夜撃退に貢献してくれて……本当に、感謝しています」

ほむら「本当、本当に……感謝しきれない恩義も事実、存在しています」

織莉子「暁美さん……」

ほむら「だけど……やっぱり……」

ほむら「美国さんと呉さんワルプルギスの夜を倒す悲願を協力してくれたとあっても……」

ほむら「実際に、別の世界でまどかを殺した……」

ほむら「そんなあなた達を憎んでいる私もいます」

織莉子「まぁ……そうでしょうね」

ほむら「すみません……」

織莉子「……謝らないで」


ほむら「……まどかは、私の初めての親友なんです」

ほむら「こんな私に……優しくしてくれて、仲良くしてくれて……」

ほむら「私の命も、まどかに救われたこともあって……」

ほむら「まどかは、私の生き甲斐……です」

ほむら「『今回』も……ついカッとなって、酷いことはしました」

ほむら「あの時は、本当に、本当に憎くて、殺してしまいたいって」

ほむら「そういう衝動に……支配されていた……みたいです」

ほむら「もし、まどかが止めてくれなかったら……私は本当にソウルジェムを撃っていた……」

ほむら「私は『この世界』で殺人をするところだった」

ほむら「……そういう憎しみも、過去も」

ほむら「昔のことだって割り切れたらどんなにいいことかと思います」

織莉子「……そう」


ほむら「……今は難しいですけど、いつかは……」

ほむら「いつかは、因縁とか戦った過去とかを抜きにして……」

ほむら「……な、仲良くできたらな、何て……思ったり」

織莉子「……え?」

ほむら「な、仲直り……できたら、いいな、なんて……」

ほむら「その……思ってて……」

織莉子「あ、暁美さん……!」

ほむら「あ、あぅ……」

織莉子(顔が真っ赤に……暁美さん、肌が白いからなおさら紅く見えるわ)


ほむら「と、巴さんは、そういうとこも気遣って、美国さんと私でお話する機会を作ってくれたんです」

ほむら「その根拠に……えと、呉さんは子ども嫌いだって聞いてますけど……」

織莉子「まぁ……そうね。確かに子ども嫌いね。ゆまちゃんも苦手だそうよ」

ほむら「だから、呉さんとゆまちゃんを仲良くさせようと……」

ほむら「巴さんは呉さんとゆまちゃんを出かけさせたんだそうです……」

ほむら「美樹さんと一緒に……」

織莉子「…………」

織莉子「それと同じように……」

織莉子「巴さんは、私とあなたを……仲直りさせよう……と?」

ほむら「…………」コクリ

織莉子「…………」


ほむら「す、少なくとも私は……」

ほむら「いつまでも……気まずい間柄でいたくない……というのが……本心です」

ほむら「い、いつまでも、その、ギクシャクした関係をしたくないというか……」

ほむら「まどかを信じて狙わないでいてくれているあなた達を……その」

ほむら「し、信じて、いたい……というか……」

ほむら「そんな……気持ちが……あ、あったり……」

織莉子「…………」

織莉子「そう……」

織莉子「……確かに私、あなたが苦手よ」

織莉子「あなた達からすれば自業自得に見えるでしょうけど……あなたに殺されかけたのだもの」

織莉子「鹿目さん抹殺は、私にとってある種の生きる目的だった。それを否定するあなたが憎くもあった。本当に……」

ほむら「…………」

織莉子「だけど……あなたは鹿目さんを救うことが生きる目的だった」

織莉子「今になって思うと……私とあなたは……似ているのかもね」


織莉子「…………」

織莉子(……ダメね)

織莉子(あんなに辿々しく、もじもじしながら話されたら……)

織莉子(あの暁美さんを忘れて……私の気持ちが流れ出てしまう)

織莉子(こんな気弱で優しかった暁美さんが……『アレ』になってしまったのは……)

織莉子(タイムリープはそこまで人を変えてしまうのか)

織莉子(私とキリカもそれの一因になったと思うと……)

織莉子(今更ながら、ちょっと同情してしまうわね……)

織莉子(とは言え私も私の正義で行動していた訳だし、罪悪感とまでは言わないけど……)

織莉子(……暁美さん)

織莉子「…………」

織莉子「……暁美さん」

ほむら「……はい」


織莉子「もし鹿目さんが契約をしたら、彼女のソウルジェムを私は命に替えても破壊する」

織莉子「それは変わらない。それが共闘を結んだ時の契約だから」

織莉子「悪いとは思うけど……それは理解してちょうだい」

ほむら「…………」

織莉子「それでも……それでも、暁美さん」

織莉子「えっと……その……」

ほむら「……美国さん?」

織莉子「……ありがとう」

織莉子「私と、友達になれたら……なんて言ってくれて」

ほむら「い、いえ……そんな……私がお礼を言われるようなことは……」

織莉子「私……本当のことを言うと、諦めていた」

ほむら「え……?」


織莉子「私は、あなたに嫌われて当然で……」

織莉子「あなたのためにも、極力距離を取った方がいい……そう、思っていた」

織莉子「それなのにあなたは……むしろ、歩み寄ってくれた」

織莉子「巴さんに背中を押されたからとか、そういうこともあったかもしれない」

織莉子「でも、実際に近づいてくれたという事実が……とても嬉しい」

織莉子「あなたの方から、仲直りしたいなんて言ってくれて……」

織莉子「とてもいい予行練習になるわ」

ほむら「よこ……?」

織莉子「あ、何でもないわ。今のは忘れて」

織莉子「あ、あの……暁美さん」

ほむら「は、はい」


織莉子「万が一鹿目さんが契約したら……なんて思考を持った私ですけど、あなたさえ良かったら……」

織莉子「あなたが再び、魔女と戦える力を得るまで……」

織莉子「その……あなたを守らせて欲しい」

ほむら「……え?」

織莉子「あなたは……ワルプルギスの夜を越えて、鹿目さんとの出会いをやり直すという願いを成し遂げた」

織莉子「だから時間遡行能力……もとい、時間停止能力を失った」

織莉子「そしてあなたの武器は消耗品。いつか無くなってしまい……言ってしまえば、戦う力を失う」

織莉子「そんなあなたを……守りたい」

ほむら「み、美国さんが……私……を?」

織莉子「と、とは言え、私だけでは大した力にならないから……キリカにも手伝ってもらうけれど……」

織莉子「魔法少女にさせないために鹿目さんを……罪滅ぼしと恩義のために、あなたを……」

織莉子「私の力を、あなたのためにも使わせて欲しい」


織莉子「私は……鹿目さんを抹殺することを人生の目的と考えた」

織莉子「でも、それは……今のところはいい。契約された後に考える」

織莉子「万が一鹿目さんが契約されても、後味の悪い結果になるでしょうけど……」

織莉子「なんて……万が一っていう言葉を無意識に使うほど、みんなを信用しつつある私もいる」

織莉子「……どうせ、巴さんや佐倉さん、ゆまちゃんも既にあなたを守ってくれることでしょう」

織莉子「わざわざ私が守ることを宣言してもイマイチパッとしない」

織莉子「だから……言い方を変えると……」

織莉子「私を……改めて、その輪に入れてくれませんか」

織莉子「しつこいようだけど……鹿目さんを契約させない、したら命を狙うという条件付きで……」

ほむら「美国さん……」

織莉子「あなたを守ることを、取りあえずの生き甲斐にさせてください」

ほむら「…………」



織莉子「えっと……その」

織莉子「回りくどいことを言ったけど……」

織莉子「た、単刀直入に言うと……ね、暁美さん」

ほむら「…………」

織莉子「私と……あの……」

織莉子「きょ、共闘関係……でなく……」

織莉子「と……と……」

織莉子「ともだ……!」

ほむら「……美国織莉子?」

織莉子「…………」

織莉子「……へ?」

ほむら「あなた、何をしているの?私の家で……」

織莉子「……暁美さん?」


ほむら「うっ……何だか頭が痛む……」

ほむら「私は確か……」

織莉子「あ、あの……」

ほむら「美国織莉子……説明、してくれるかしら……」

織莉子「……もしかして」

QB「やぁ二人とも」

ほむら「……!」

織莉子「キュゥべえ」

QB「朗報だよ」

QB「たった今、魔女はマミと杏子の手によって倒された」

ほむら「魔女……?」

QB「これで魔女に呪い……もとい、ほむら、杏子、ゆまは元に戻った」


ほむら「元に戻ったって……?」

織莉子「そ、そう……?そ、それはよかった……」

QB「何だか顔が赤いように見えるけど」

織莉子「——ッ!」

織莉子「な、ななな、何でもないわ!別に!」

QB「?」

織莉子「わ、わかったから。もうわかったわ。ここはもういいの。鹿目さんに報告にでも行ってなさい」

QB「うん。わかったよ」ヒョイ

織莉子「ふぅ……」

ほむら「…………」

織莉子「え、えーっと……」

織莉子「あ、暁美さん、気分はどう?」


ほむら「え?えぇ……少し頭がボーっとするけ……ど……」

ほむら「……!」

ほむら「み、美国織莉子!」

織莉子「え!?何!?」

ほむら「み、見ないで!向こうを向いてて!」

織莉子「え!?何で!?」

ほむら「いいから!」

織莉子「わ、わかった……な、何よもう……」クルッ

ほむら「うぅ……」

織莉子「ど、どうしたの?暁美さん……」

ほむら「よりによってこのおさげの姿をあなたに見せることになるなんて……」シュル


織莉子「……嫌なのかしら?」

ほむら「私にとって『この時』の私の姿は……」

ほむら「まどかや家族にならまだしも、人に見せるのは恥ずかしい……というか、何て言えばいいのか……」

ほむら「弱かった、過去の自分の姿でもある、というか……」

織莉子「……何となく言いたいことは伝わったわ」

ほむら「それはなにより……」

織莉子「……可愛いのに」ボソッ

ほむら「ん?今何か言った?」

織莉子「い、いえ、何でも。気のせいよ」

織莉子(いけないいけない。うっかり『メガほむ』の感覚で口に漏れてしまったわ……)

織莉子(聞こえてなかったようで何よりだけど……)


織莉子(どうやら精神が逆行してる間のことは覚えてないみたいだし……)

織莉子(ああ……それにしても私ったら……)

織莉子(何であんな恥ずかしいこと言っちゃったのかしら)

織莉子(「あの」暁美さんが別人過ぎてあまりに話しやすかったものだから、つい……)

織莉子(暁美さんが向こうを向けと言ってくれて、何気に助かってるのは私なのよね)

織莉子(も、もう顔赤くないかしら……?)

織莉子(うぅ……思い出せば思い出すほど恥ずかしい)

織莉子(少しキザったらしかったかしら)

織莉子(いつか仲直りするというなら……)

織莉子(もうちょっと、さらっと……)

織莉子(うーん……なんて言おう)


ほむら「…………」

織莉子「…………」

ほむら「…………」

織莉子「…………」

織莉子(落ち着いた……かしら)

織莉子(暁美さん、まだ黙って……もういい加減おさげは解けたでしょうね)

織莉子「……もういい?」

ほむら「…………」

織莉子(無言……ダメってことはないでしょう……でも)

織莉子「いいならいいっていいなさ……」

ほむら「いえ、待って」


織莉子「……まだおさげ解けていないの?」

ほむら「……そのままでいいから、少し聞いてくれる?」

織莉子「……何の話?」

ほむら「折角あなたと二人きりという機会、多分今後そういうこともないと思う」

ほむら「こんな時にというものだけど、ハッキリと言っておこうと思って」

織莉子「…………」

ほむら「正直な所、今の私は……」

ほむら「あなたと呉キリカを憎いという気持ち……決して忘れないと思う」

ほむら「この時間軸では未遂に防げたけど、別の時間軸で実際にまどかを殺された……そういう『私の過去』がある」

織莉子「…………」

ほむら「だから、仲間じゃないけど味方……そういう微妙な関係が丁度いいんじゃないかしら」

織莉子「……そう」


織莉子「それが……いいと思うわ」

ほむら「……そう、思っていた」

織莉子「え?」

ほむら「ねぇ、あなたさえ良ければ、これから買い物に付き合ってくれない?」

織莉子「へ?」

ほむら「東京にいる両親に何かお土産でもと思って。あなたそういうの詳しそうだし」

織莉子「あ、あの?」

ほむら「お金もおろしたいから。あなた、今は持ち合わせはあるかしら?」

織莉子「……暁美さん?」

ほむら「まだこっち向かないで!」

織莉子「!」

ほむら「私だって……恥ずかしいんだから」

織莉子「え、えっと……?」


ほむら「私……こう見えて照れ屋だから……多分今、顔真っ赤だと思うから……」

ほむら「さっきの姿同様、恥ずかしい様は見せたくないのよ」

織莉子(ど、どういうこと……?)

ほむら「ど、どうなの?買い物、付き合ってくれるの?くれないの?」

織莉子「ま、まぁ……私でいいなら……」

ほむら「じゃあ、行きましょう。今から、二人きりで」

織莉子「ふ、二人きり?」

ほむら「す、少しは……蟠りが解消できるかも」

織莉子「…………」

織莉子「暁美さん……もしかして、あなた……」

ほむら「何かしら?」


織莉子「……魔女の口づけ喰らってる間の記憶……」

ほむら「…………」

ほむら「……ふふ」

ほむら「さぁ?何のことかしらね?わからないわ」

織莉子「…………」

ほむら「もう落ち着いたわ……振り向いていいわよ。……織莉子」

織莉子「……!」

織莉子「暁美さん……私のことを……名前で……!」

ほむら「私を守ってくれるんでしょ?エスコートよろしく」

織莉子(確信犯!)


織莉子(は、恥ずかしい……)

織莉子(てっきり「メガほむ」のペースに飲まれて……あんな恥ずかしいことを……しかも覚えられて……)

織莉子(……でも)

織莉子(きっと……暁美さんがあの魔女に襲われていなければ……)

織莉子(そして、鹿目さんに用事があって、何故か私がこの場にキャスティングされなければ)

織莉子(私とかつての暁美さんという……二人きりのシチュエーションが完成されていなければ)

織莉子(彼女はきっと、私と仲良くなりたいなんて言ってくれなかったと思う……そういう性格じゃないから)

織莉子(そして私もきっと……仲良くなりたいという気持ちは私の中でなかったことにしていた。お互いに……)

織莉子(精神を逆行させる魔女……)

織莉子(魔女がいて得することはないと言っていい……だけど、こればかりは……)

織莉子(あの魔女のおかげ……かもしれないわね)

ほむら「な、何よ、さっきから黙って。もしや……そ、そんなに名前呼びは変だった?」


織莉子「…………」

ほむら「……な、何か言いなさい。さやかも杏子もフルネーム呼びから変えた時さらっと受け入れたのに」

織莉子「……いいえ」

織莉子「ちょっと考え事をしてただけよ。……ほむら」

ほむら「考え事?」

織莉子「そう……」スッ

ほむら「……?」

織莉子「仲直りの印に、握手でもどうかしら」

ほむら「……それは良い考えね」ギュッ

織莉子「格好つけてるところ申し訳ないけど……」

織莉子「残念ながら、メガほむ、堪能させてもらったわ」


ほむら「め、メガほむ……?」

ほむら「初めて聞く呼び方だけど、何となく意味はわかるわ……」

ほむら「わ、忘れなさい!あの時のことは!」

織莉子「今も、私の胸に……」

ほむら「くっ……!」

ほむら「……あまり調子に乗らないことよ」

ほむら「私が生き甲斐のくせに」

織莉子「そ、その言い方には語弊があるわ!」

ほむら「期待しているわ?」

織莉子「……なるべく早くの復帰をお願いするわ」

ほむら「どうなるものかしらね」


織莉子「ともかく、あなたもメガほむに感謝するといいわ」

織莉子「こうやって、私があなたに話せるのは彼女のおかげだから」

ほむら「……そうね」

ほむら「『ああ』なってなかったら、こんな風に自分の気持ちをうち明けることはなかったわ」

織莉子「でしょうね……私もよ」

ほむら「…………」

織莉子「…………」

ほむら「これからも……よろしく」

織莉子「えぇ、こちらこそ」

織莉子「ふふ、こんなことになるなんて……」

織莉子「世の中って、わからないものね」

今回はここまで。今夜再開します。多分終われる
ってことでもうちょいだけお付き合いくらさい


織莉子とメガほむとか斬新だ
ゆまにセリフがなかったのは伏線?だったのか

ただ二人のキャラに違和感がある





さやか「……ふぅーぃ」

さやか「美味しいなぁ。やっぱりマミさんの紅茶は落ち着きます」

マミ「いつも美味しそうに飲んでくれるわね。美樹さん」






さやか「いやー、マミさん。昨日はお疲れ様でした」

マミ「美樹さんこそ。ゆまちゃん、ありがとうね」

さやか「いえいえ、とんでもない」

さやか「ゆまちゃんはいい子にしてたし……あたしもあたしで収穫ありましたから」

マミ「あら、そう?」

さやか「えぇ、キリカさんとこんな風に話す機会ができるとはってね」

さやか「キリカさんって意外に面白い人で……楽しかったなぁ」

マミ「それは何より」

さやか「天気もなまらよかったし」

マミ「何で方言?」


さやか「あ、そうだ。マミさん。何か方言話してみてくださいよ」

マミ「え?何で?」

さやか「キリカさんとの雑談で、方言の話が出まして」

マミ「急に言われても……」

さやか「何でもオッケーです。時代は方言萌えなのだ!」

マミ「じゃあ中央イタリアのトスカーナ方言でも……」

さやか「ご勘弁を」

マミ「冗談よ」

さやか「あたしの知ってるイタリア語はティロ・フィナーレだけです」

マミ「だけ?」

さやか「だけです」


マミ「トッカとか色々言ってたのになぁ……記憶に残ってない?」

さやか「トッカとかって、ダジャレみたい」

マミ「…………」

さやか「冗談返しです。確かリボン?」

さやか「ところで、昨日の魔女どうでした?」

マミ「あぁ、あの魔女ね。動きは鈍足だけど結構頑丈だったわ」

さやか「ほぇー」

マミ「でも、流石に経験者がいたからね」

さやか「あぁー、杏子と一緒だったんだっけ」

マミ「えぇ。倒すのは簡単だったわ」

さやか「流石マミさん」


さやか「しかし変な魔女の呪いもあったもんですね」

さやか「まさか性格を退化させるだなんて」

マミ「退化とは微妙に違うんじゃない?」

マミ「精神を遡らせるというか……『戻す』って表現の方がいいかしら?」

さやか「(精神が)遡逆の物語」

マミ「ん?」

さやか「ゆまちゃんは杏子と出会う前、ほむらはメガほむ、杏子がマミさんの弟子時代……でしたっけ?」

マミ「そうね。みんなその頃の性格というか……精神になってしまったのよ」

マミ「……メガほむという単語を理解できてしまうのはちょっと暁美さんに失礼な気が」

さやか「便宜上便宜上」

さやか「あらゆるものには名前が必要なのでゴワス」


さやか「メガほむもそうですが、ゆまちゃんやほむらのそういう面を見たら……」

さやか「本当に人って変わるもんだなって」

さやか「本当に……いい意味でも、悪い意味でも」

マミ「そうね。ゆまちゃん、普段はあんなに元気で明るい子なのに……」

マミ「実際には、そういう暗い過去があっただなんてね」

さやか「杏子の功績も褒めたもんだけど……」

さやか「そういう過去を……『完全に』とは無責任に言えないことだけど乗り越えられた」

さやか「敬意を表しちゃいますよ」

マミ「その通りね。私、ゆまちゃんのことなおさら好きになっちゃった」

さやか「ペロペロしたい」

マミ「そういう好きじゃないのよ」

さやか「冗談ペロリ」


さやか「織莉子さんに押し付ける前にメガほむと話したけど……」

さやか「小動物みたいで萌えあがれーって感じでした」

マミ「それはよくわからないけど……確かに可愛らしかったわね」

さやか「普段とのギャップでこれまた……」

マミ「世に言うギャップ萌えってものね」

さやか「まどかなんかテンション上がって抱きついて頬擦りしてましたね」

マミ「あんな鹿目さんも初めて見たわ」

マミ「すぐに我に返ってあわあわ言いながら謝ってたけど」

さやか「ぶっちゃけもう元に戻っちまってるなんてチト勿体ない気分」

マミ「録画の一つでもしておくべきだったわね」

さやか「あいつの弱みを握るチャンスだったのに!」


さやか「織莉子さんに押し付ける前にメガほむと話したけど……」

さやか「小動物みたいで萌えあがれーって感じでした」

マミ「それはよくわからないけど……確かに可愛らしかったわね」

さやか「普段とのギャップでこれまた……」

マミ「世に言うギャップ萌えってものね」

さやか「まどかなんかテンション上がって抱きついて頬擦りしてましたね」

マミ「あんな鹿目さんも初めて見たわ」

マミ「すぐに我に返ってあわあわ言いながら謝ってたけど」

さやか「ぶっちゃけもう元に戻っちまってるなんてチト勿体ない気分」

マミ「録画の一つでもしておくべきだったわね」

さやか「あいつの弱みを握るチャンスだったのに!」


さやか「……そういや杏子とゆまちゃんは?」

マミ「お買い物に行ってもらったわ」

マミ「美樹さんが来るって言ってるのに強引に『行かせろ!』って……ゆまちゃんはそれについていったスタイル」

さやか「ほほう」

マミ「今にして思えば美樹さんから逃げるためだったのね」

さやか「イジりがいのあるネタを仕入れさせちまったって思ったんでしょうね」

さやか「魔女の口づけなんだから仕方ないのに」

さやか「あたしがそんなことするかーっての」

マミ「あなたさっき暁美さんの弱みをどうこうって言ってたわよね」

さやか「えへへ」

マミ「そうやって笑って誤魔化す」


さやか「杏子の遡逆した精神……」

さやか「杏子がマミさんを『マミさん』って呼んでたんだそうで」

マミ「えぇ、あの頃はね」

さやか「マミさんの弟子時代の杏子……くーっ!あたしも一度見たかった!」

マミ「でも言うほど変わってないように見えると思うわよ?」

さやか「えー、そう?」

マミ「少し性格が素直で丸い、私をさん付けで呼んでたくらいで、本質的にはあんまり」

さやか「……話に聞いただけでも十分結構な違いに思えるのですが」

マミ「そう?」

さやか「あいつがさん付けとか、ほむらが歯ギターする並に想像できませんもん」

マミ「あなた暁美さんを何だと思っているのよ」


マミ「まぁとにかく、少なくとも私はあんまり違和感は覚えなかったわ」

さやか「多分両方の杏子を知ってるからでしょうね」

マミ「……なるほどね」

マミ「それもそうね」

さやか「マミさんと弟子杏子。二人っきりでどんなことを?」

マミ「そうね……基本的には魔女を探して見滝原を歩き回っていたわ」

さやか「デートっすか」

マミ「好きに表現なさい」

マミ「お買い物に行ったり、ファミレスでお昼ご飯を食べたりね」

さやか「デートじゃないっスか」

マミ「好きに表現なさい」


さやか「どうでした?デート」

マミ「そのデート推しは何?まぁいいけど。楽しかったわ」

マミ「あのお洋服を見ていた時なんか杏子ったら……」

さやか「……ん?」

マミ「?」

さやか「え?杏子?」

マミ「どうしたの?」

さやか「マミさん、佐倉さんって呼んで……」

マミ「……あぁ、そういうことね」

マミ「昨日、あの子自分をいい加減佐倉さんでなく名前で呼んで欲しいって言ってきたのよ」

さやか「おほっ、そう言う話を聞きたかった!」

さやか「それでそれで」ニヤニヤ


マミ「やっぱり普段から使ってる呼び方を変えた直後って違和感が拭えないものね」

マミ「じゃあ杏子、って言ったらあの子照れちゃって……」

マミ「言った私が恥ずかしかったわ……」

さやか「むふふ……いいねぇ、いいねぇ」

さやか「でもわかります」

さやか「あたしもメガほむに『美樹さん』って呼ばれて倒れそうになったもの」

マミ「倒れそうにって……」

さやか「ふふふ……杏子には早く戻ってきてもらわないと!」

マミ「イジる気ね」

さやか「勿論です」

マミ「でもね、美樹さん」

さやか「?」


マミ「魔女を倒した後、私が杏子って呼ぶと怒るのよ」

さやか「えー、何で?」

マミ「やっぱり照れくさいのよね」

さやか「恥ずかしがり屋だなーアイツ……」

マミ「自分で呼んで欲しいって言ったのに」

さやか「うるせー!仕方ねぇだろ!あんときは頭イカれてたんだからよぉ!」

さやか「って言いますね」

マミ「流石美樹さん。杏子と全く同じ事を」

さやか「一言一句?」

マミ「そっくり」

さやか「あたしって、ほんと杏子マスター」


マミ「でも大分、杏子との距離が縮まった気がするわ」

さやか「あたしもキリカさんとの距離がアレしました」

マミ「ちょっと不謹慎だけど、あの魔女のおかげでもあるのよね」

マミ「あの魔女がいなかったら、ずっと『佐倉さん』で、名前呼びのタイミングなんてなかったでしょうし」

さやか「確かに」

さやか「杏子ったらツンデレだからねー」

マミ「そうね。本当に」

さやか「まさか魔女にちょっぴり感謝する日が来るなんて……良いネタありがとー」

マミ「世の中わからないわねぇ」

さやか「世の中わからないなー」





杏子「……っくしゅん!」

ゆま「大丈夫?」

杏子「あー……この店冷房効きすぎじゃねーか?」

ゆま「そうかな」

杏子「今日はそんな暑かねーのに」

ゆま「……あ」




ゆま「キョーコ、キョーコ」

杏子「何だよ。おやつは最後にっていつも言ってるだろ」

ゆま「アレ見て」

杏子「ん?」

杏子「へぇ、ホールケーキが半額」

杏子「ワルプルギスのスーパー何とかってやつの影響かね」

杏子「消費期限ギリギリだから半額か……」

杏子「どうせ売れ残ったら捨てるんだしもっと安くするか消費期限長く設定すりゃいいのに」

ゆま「買えないかな?」

杏子「ダメダメ。半額つってもワンコインで買える値段じゃねー」


ゆま「むぅ……」

杏子「ケーキなんて食べたいって言わなくてもマミが勝手に買ってくるじゃねーか」

ゆま「そうじゃないの」

ゆま「ゆま、マミお姉ちゃんにケーキ渡したいの」

杏子「そう言ってもどうせあたしらも食うことになるだろ。何が違うんだよ」

ゆま「……ゆま達、マミお姉ちゃんに助けてもらったじゃない」

ゆま「魔女の口づけをつけられて……」

杏子「…………」

ゆま「ゆま、何だか急に何もかもが怖く感じて、泣きたいけど泣いたら怒られる気がしちゃって……」

ゆま「その時までマミお姉ちゃんのお料理食べてたはずなのに、何故だかご飯がコンビニのパンかおそーざいじゃなくってビックリしちゃったり…」

杏子「……やめろ」


ゆま「だけど……マミお姉ちゃんは、ゆまを抱きしめてくれて……」

ゆま「そしたら急に、嬉しくなって」

ゆま「泣いちゃったけど、怒られなくって、もっと嬉しくなっちゃって……」

杏子「やめろって……」

ゆま「ゆま、ここにいていいんだって、思ったの。何の役に立たなくても、いてもいいって」

ゆま「さやかお姉ちゃんとキリカお姉ちゃんと公園に行って遊んで、今までにないくらいに楽しく感じちゃった」

杏子「ゆま……」

ゆま「魔女の口づけのせいだって、今だからわかるけど……」

ゆま「その時は本当に、何でそんな気持ちになったのかわかんなかった」

杏子「ゆま!」

ゆま「!」


杏子「もうその話はやめろ」

ゆま「キョーコ……」

杏子「あんたは十分役に立っている」

杏子「あんたはいるだけでもいい。笑ってくれるだけでも十分なんだ」

杏子「それだけでマミ達……もちろんあたしにだって、役に立てている」

ゆま「キョーコ……!」

杏子「大体テメー話が重いんだよ!」

杏子「そんな話されたらマミさんマミさん言って甘えてたあたしの立場がねーだろうが!」

ゆま「キョーコ……?」

杏子「仕方ねぇだろ!あんときは頭イカれてたんだからよぉ!」

ゆま「…………」


杏子「あーくそぅ、恥ずかしいこと思い出させやがって……」

ゆま「えーっと……ご、ごめん」

杏子「全く……」

杏子「……で、何の話だっけ?」

ゆま「えっとね」

ゆま「マミお姉ちゃんに恩返しがしたい」

杏子「恩返しぃ?」

ゆま「魔女のこともそうだけど……」

ゆま「ゆま達、マミお姉ちゃんにお世話になりっぱなしだよね」

杏子「まぁ……そうだな」


ゆま「ご飯を作ってくれたり、お風呂一緒に入ってくれたり」

ゆま「遊んでくれたり、魔女と戦ってる時にとっても心配してくれる」

ゆま「怖い夢見た時お布団の中に入れてくれて抱きしめてくれたり……」

杏子「やめろ……聞いてるだけで恥ずかしくなる」

ゆま「何で?」

杏子「とにかくだ」

ゆま「それでね、魔女のせいで全部怖くなった後」

ゆま「お世話になりっぱなしってのをツーカンしたの」

杏子「まぁ……そうだな」

杏子「あたしも色んなことがあって……」

杏子「あたしにとってもマミという存在の大きさを痛感した」


ゆま「でしょ?だからマミお姉ちゃんに……」

杏子「気持ちはよくわかったよ」

ゆま「お小遣いで買えないかな。ケーキ」

杏子「つってもマミの金だしな」

ゆま「うーん……それじゃ何か、薄い」

杏子「ゆまの口から『薄い』という感想を聞く日が来るとは」

ゆま「?」

杏子「いや、何でもない」

杏子「……まぁ、何だ。あんたの気持ちもよくわかるよ。マミに日頃の礼っての、したいんだな」

ゆま「したい!」

杏子「あぁ、あたしもしたい。ま……後々考えようや」

ゆま「うんっ」


杏子「取りあえず買い物は済ませよう」

ゆま「何買うの?」

杏子「芋、塩、茶」

ゆま「メモ無くしたの?」

杏子「冗談だよ。無くしてないよ。あるよ」

杏子「冷蔵庫にまだ色々あるからな……買う物はそもそも少ない」

ゆま「……あ」

ゆま「キョーコ、キョーコ」

杏子「今度は何だよ。」

ゆま「見て、見て」

杏子「ん?」


杏子「あー……あの人は」

杏子「まどかの親父さんじゃん」

知久「……ん?」

知久「おや、杏子ちゃん。それにゆまちゃん」

ゆま「こんにちは!」

知久「うん、こんにちは」

ゆま「あ、タッくんも!」

タツヤ「こんちゃ!」

杏子「はいこんちは」

知久「こんなところで会うなんて奇遇だね。おつかいかな?」

杏子「まぁそんなとこ」


タツヤ「ゆまちゃ!」

ゆま「もー、こら、タッくん」

ゆま「ゆまのことは『ゆまお姉ちゃん』って呼んでって言ってるでしょ?」

タツヤ「ゆまおちゃ?」

ゆま「ゆ・ま・お・ね・え・ちゃ・ん」

タツヤ「ゆまにっちゃ」

ゆま「おねえちゃん!」

ゆま「ゆまは年上だから『お姉ちゃん』って呼ぶんだよ?」

タツヤ「うー?」

杏子「出た。ゆまのお姉ちゃん面」

知久「ハハ、微笑ましいね」


杏子「ゆまの知り合いに自分より年下はいないもんだから……」

杏子「ゆまにとってはみんな年上だから、嬉しいんだろうな」

知久「なるほどね」

杏子「威張っても威厳が全然ない」

ゆま「ゆまおねえちゃん!」

タツヤ「ぎむねまちゃ!」

ゆま「え!?何それ!?」

知久「ギムネマ茶っていうハーブティーのことだね」

知久「その響きが気に入ってるみたいなんだ」

杏子「響きがそんな似てるわけでもなしに、何でこの流れで……」

知久「さぁ……」


ゆま「ゆまお姉ちゃん!」

タツヤ「ゆまっちゃ!」

杏子「ゆまなぁ……タツヤはまだ小さいんだから、無茶さすな」

杏子「まだまどかをまろかって呼ぶ段階なんだから」

ゆま「それはわかってるけど……」

タツヤ「ゆまねーちゃ!」

ゆま「うん……もうそれでダキョーする」

杏子「ゆまの口から『妥協』という言葉が出るとは思わなんだ。どこで覚えたんだ」

知久「僕もタツヤがどこでギムネマ茶をどこで覚えたのかわからないんだけどね」

杏子「……つーかさ、あたしは?」

杏子「あたしの名を言って見ろ」

タツヤ「…………」


タツヤ「キョーコ!」

ゆま「キョーコはそれでいいや」

杏子「おい」

杏子「まさかの呼び捨てか……」

杏子「っていうか絶対にゆまの影響だろ!」

ゆま「ゆまわかんなーい」

タツヤ「なーい」

杏子「くっ」

杏子(……まぁお姉ちゃん呼びされてももどかしいしモモのこと思い出すからな)

杏子(別に嫌な思い出ってわけじゃあないが、いい気持ちはしない)


ゆま「いいじゃん!ゆまとお揃い!キョーコ!」

タツヤ「キョーコ!」

ゆま「キョーコ!」

タツヤ「キョーコ!」

杏子「くそっ、仲良いなテメーら」

知久「……何だかゴメンね。杏子ちゃん」

杏子「いや、別に呼び捨てでもいいんスけどよぉ……」

杏子「まぁなんだ。他の客に迷惑だから大声出すな」

ゆま「はーい」

タツヤ「あーい」


知久「ハハ、こうしてみると、杏子ちゃんはお姉さんみたいだね」

杏子「……あたしが姉ぇ?」

知久「うん」

杏子「あたしよりももっと姉らしいヤツがいるよ」

杏子「いや、むしろ母性……母親のような」

知久「そ、そうなんだ」

ゆま「キョーコ、キョーコ」

杏子「何だ」

ゆま「お菓子見に行っていい?」

杏子「は?」


ゆま「お菓子ー」

タツヤ「おかしー」

杏子「……まぁいいだろ。お菓子は五百円までだ」

ゆま「うん!」

ゆま「おじさん、タッくんと一緒に行っていいですか?」

タツヤ「ゆまねーちゃ!」

知久「うん、じゃあタツヤをお願いしちゃおうかな」

知久「よろしく頼むよ」

ゆま「はーい」

ゆま「行こっ、タッくん!」

タツヤ「あい!おかし!」


知久「……おじさん、か」

杏子「ん?」

知久「そっか……おじさんか」

知久「僕も年をとったんだな……」

杏子「な、なんか悪いね」

知久「いや、いいんだよ」

杏子「……なぁ、親父さん」

知久「ん、何だい?」

杏子「あのさ……ちょっと、いいかな」

杏子「相談したいことが……あるんだ」

知久「相談?うん、僕でよければ」

杏子「ありがとさん」


杏子「まどかより一つ上だが……」

杏子「女子中学生が、されて喜ぶものってどんなのが挙げられるかね」

杏子「何かあげるとして……何が喜ばれる?」

知久「……プレゼント?」

杏子「い、いや、プレゼントなんて大層なもんじゃないんだ!その……何というか」

杏子「ぶっちゃけ、マミに何かあげたいんだよ」

知久「マミちゃんに……ねぇ」

杏子「あたしとゆまは色々迷惑かけたし、世話にもなった」

杏子「マミはあたしとゆまに何でも与えてくれたけど、あたしとゆまはマミに何もしてやってない」

杏子「だからゆまと何かあげてやりたいなって話をしてて……」

杏子「何が喜ばれるかな?」


知久「……なるほど。要するに日頃の感謝を伝えたい……ってことだね」

杏子「うん」

知久「僕に聞くよりもマミちゃんに聞くなり、好みに関しては杏子ちゃんの方が……」

杏子「恥ずかしくて聞けないし、正直あたし、結局あんまマミのことわかっちゃいないんだよ」

杏子「そりゃ紅茶でもくれてやればそれなりに喜んでくれるだろうけどさ……」

知久「なら紅茶のギフトなんてどうだい?」

杏子「いや、何か、こう……紅茶は最早日用品みたいなもんだから」

杏子「もうちょっと、何か……いい言葉思いつかないけど、イイ感じの」

知久「うーん……じゃあティーセットなんてどうかな」

杏子「つい最近新調しちゃったよ」

知久「ああ……」


杏子「年頃の女の子が貰って嬉しいの。なんかないかな?」

杏子「ほら、まどかの誕生日の時とか」

杏子「何あげたら喜んでた?」

知久「うーん……まどかの誕生日か」

知久「まどかにはぬいぐるみが効くけど……」

知久「まどかはまだまだ子どもだからね」

知久「大人っぽいマミちゃんと比べると、ちょっと……」

杏子「まぁ、何となくそうは思ってたけど……」

知久「ごめん、参考になりそうなのは思いつかないや」

杏子「うーん……」


杏子「……じゃあ、そうだな。逆に」

知久「逆?」

杏子「親父さんは、まどかから何貰ったら嬉しいよ?」

知久「僕が?」

杏子「性別とか色々違うけどさ、あたしにとってマミは保護者みたいなもんだし」

杏子「保護者的に被保護者から何貰ったら嬉しい?」

知久「うーん……」

知久「急に言われても……特に何が欲しいってこともないなぁ」

知久「健康でいてくれることが何よりだから」

杏子「その答えじゃ困るな。なんつーか反応しにくい」

知久「ハハ、それは悪かったね」


杏子「対象が対象だから誕生日に貰って嬉しかったものってのはなしで」

知久「そりゃあね。うーん、そうだな……」

知久「……手作りの料理、かな」

杏子「手作り……?」

杏子「そんなんでいいの?」

知久「僕個人としてはね。でも実際、父親としては娘が作ったってだけで相当のものだよ」

杏子「なるほど……娘じゃねーけどさ」

杏子「手作りの……か」

杏子「でもあたしに料理なんて……」

知久「陳腐な言葉だけど、大切なのは気持ちだよ」

杏子「そりゃごもっとも」


杏子「…………」

杏子「わかったよ。親父さん。料理という方向性でゆまと考えてみる。ありがとさん」

知久「お役に立てたようで何よりだよ」

杏子「さしあたりケーキでも焼いてみるかな。さっき安売りの見たし、アイツケーキ好きだし」

知久「なるほど。杏子ちゃん、お菓子作りは……?」

杏子「いや、全くできない」

知久「ケーキはちょっと難しいよ?」

杏子「へぇ、そうなんだ」

杏子(……できればマミに内密で料理を作ってやりたいな。じゃあキッチンやオーブンを占領して実験するわけにもいかない)

杏子(さやか……あいつは駄目だ。イメージ的に料理できると思えない)

杏子(つーか例えできてもあいつに教えを乞うのは嫌だ)

杏子(絶対にからかってくる。イジってくる。ニヤニヤしながら)


杏子(ほむらは東京に行っているし……)

杏子(そういやあいつも魔女の口づけ喰らったんだったな。昨日の今日で大丈夫なんかね)

杏子(じゃあまどかか……?)

杏子「ふむ……」

知久「よかったらウチにあるお菓子の本、貸そうか?」

杏子「え?いいの?」

知久「買ったはいいけど全然使ってないからね」

杏子「マジか。いやーホント、何から何まで助かるよ親父さん」

杏子「本の通りにやりゃ失敗はないわな。そんじゃ、帰りに寄らせてよ」

知久「え、これからすぐに?」

杏子「駄目かな?」


知久「いや、僕は構わないけど……寄り道してもいいのかい?おつかいの途中だろう?」

杏子「大丈夫大丈夫。どうせ本借りるだけだからね」

知久「まぁそれなら……まどかも喜ぶだろうし」

杏子「まどかいるの?」

知久「ああ、今日は友達が来ているそうだよ」

杏子「友達?」

知久「何て言ったっけかな……そうだ。織莉子ちゃんとキリカちゃん」

杏子「え?あの二人が来てんの?」

知久「あぁ、僕は会ったことないけど……」

知久「杏子ちゃんも二人の知り合い?」

杏子「あ、あぁ、まぁ……」


杏子(あの二人が……まどかと?)

杏子(何気にめっちゃヤバイことじゃねーか?それって)

杏子(……いや、落ち着け)

杏子(まどかが契約しない限り手を出さないと契約したからな)

杏子(あの死闘を共にしたんだ。信頼関係ってもんがある)

杏子(大体、家に招かれて殺人なんて馬鹿なことする奴らじゃない)

杏子(まぁ大丈夫だろう)

杏子(……織莉子とキリカか)

杏子(そういやワルプルギスの夜以来会ってないな)

杏子(ちょっくら、会ってみるかね)


杏子(あいつも自炊してるそうだし……)

杏子(何かキリカが『織莉子のケーキは世界一ィィィ』とか言ってたし、料理の腕には期待できる)

杏子(折角だから織莉子にも相談しよう)

杏子(最悪あいつの無駄にでかい家のキッチンを貸してもらえばいいか)

知久「あ、そういえば……」

杏子「ん?」

知久「いや、あの本……全然使ってないって言ったよね」

杏子「うん」

知久「だからちょっと、置き場所についてちょっと記憶が……」

杏子「本棚とかじゃないの?」

知久「多分その辺りにあるとは思うんだけど……」

知久「ちょっと詢子さんにメールで聞いてみよう」

杏子「うん。よろしく」






「……くふふ」

「『誰だ?』って聞きたそうな表情してんで自己紹介させてもらいますが……」

「わたしは魔法少女の優木沙々!」




沙々「自分より優れたものにコンプレックスを抱く、ちょっと自信過剰なところが玉に瑕な腹黒系女子!」

沙々「固有魔法は洗脳……『自分より優れている人間を操る能力』を持っています!魔女を操るとかもできるぞ!」

沙々「かつて洗脳能力を駆使して織莉子とキリカをぶちのめそうと見滝原に来たけど返り討ちに遭った!」

沙々「あれから数週間!わたしはあの白黒共に復讐しに戻ってきた!」

沙々「あわよくば既にくたばってればいいなと思い立って、縄張りをゲットと思いやって来た!」

沙々「魔法少女が魔女になるという事実を受け入れられずにソウルジェムを砕いて自殺したような気がしたけど気のせいでした!」

沙々「ではではっ、今度こそ見滝原貰っちゃいます!やってやるです!」

沙々「詳しくはネットで!」

QB「君のことは知ってるよ」

沙々「はい。久しぶりです」


沙々「ワルプルギスの夜が撃退されたという噂を聞きましてね」

沙々「つまり、見滝原の魔法少女はあの伝説級の魔女と戦ったってこと」

沙々「イコール、消耗しているはずです!だから来た!」

QB「……消耗を狙うならワルプルギスの夜の直後に来ればよかったんじゃないかい?」

沙々「し、仕方ねェーだろー!その噂を聞いたのが昨夜なんだからよー!」

沙々「ってことで、前回の反省を活かして最初はキリカを狙うぞー」

沙々「悔しいことだけど、一度負けたってことでアイツはわたしより優れた人間と認めます。でもなので操れます」

沙々「さぁ、居場所を教えなさい」

QB「…………」

沙々「……おや?あそこにいるポニテ……」

沙々「あの指……まさか魔法少女!」

QB「ん?あぁ、杏子だね」


沙々「杏子って……佐倉杏子?」

沙々「確か風見野の魔法少女……」

QB「おや、知っていたんだね」

沙々「結構強いらしいってね」

沙々「風の噂で聞いてました。風見野だけに」

QB「…………」

沙々「ツッコミ入れろ。わたしがスベったみたいじゃないですか」

沙々「……なるほど。彼女も来ていたとはね」

沙々「横にいるおっさんは誰だ?親かな?」

沙々「くふふ、親同伴で殺人に来たか。裏を書きますねー」

QB「…………」


沙々「強いらしいからね……あいつが何人か戦ったあとに漁夫の利狙っちゃいますか」

QB「杏子が誰と?」

沙々「うん?」

沙々「そりゃもちろん。織莉子とキリカ……あるいは他にいるかもな見滝原の……」

QB「それはありえないよ」

沙々「は?」

QB「杏子はあの二人と共闘関係を結んでいるからね」

沙々「……え?パードゥン?」

QB「杏子はあの二人と共闘関係を結んでいるからね」

沙々「アレってわたしと同じく、ワルプルギスの夜の後を狙った魔法少女じゃないの?」

QB「一緒に戦ったんだよ」


沙々「嘘だろオイ……」

QB「本当だよ」

沙々「ってことは……あの二人、ワルプルギスやっつけちゃったんですか?」

QB「そうだね。杏子を含めて、他にもあと三人」

沙々「げっ」

沙々(あの強いと噂の杏子があの二人と共闘関係……?)

沙々(し、しかもあの伝説級の魔女、ワルプルギスの夜をやっつけた魔法少女……?)

沙々(最悪洗脳さえできれば問題ない……そう思ってた)

沙々(でも、織莉子とキリカと共闘を結んでいる、イコール。わたしの手を知っている)

沙々(しかも、全部でそんなんが六人いるってことでしょ?……あれ?わたし詰んでね?)

沙々「くふふ、くふふふふふ」

沙々「笑うしかねー」



ゆま「ねぇ、タッくん」

タツヤ「あい?」

ゆま「このお菓子、食べたことある?」

タツヤ「ないー」

ゆま「これね、お姉ちゃん食べたことあるんだけどね、とっても美味しいよ」

タツヤ「へー」

ゆま「タッくんはどのお菓子が好きかな?」

タツヤ「んー……」

タツヤ「こえ!」

ゆま「……?あの棚の上の?」

タツヤ「うん!」


ゆま「美味しそうだね」

タツヤ「おいしーよ!」

ゆま「これ欲しいなぁ」

ゆま「うぅー……でも、ここからじゃ届かないよぅ」

タツヤ「いつもパパがとゆ!」

ゆま「おじさんみたいにおっきくなりたいなぁ」

ゆま「店員さんにとってもらおっか」

「……これ欲しいの?」

タツヤ「ふぇ?」

「はい、どうぞ」スッ

ゆま「あ、ありがとう……」


沙々「くふふ……久しぶりですね、お嬢ちゃん」

ゆま「……!」

沙々(……わたしは、この幼女を知っている。千歳ゆまを知っている!)

沙々(くふふ……織莉子とキリカに追いつめられた時にたまたま近くにいたアンタを人質にとって……)

沙々(逃げようとしたけど、なんだかんだで負けた……)

沙々(その顔を見てるとあの時を思い出してチト、ムカッ腹立ちますが……まぁいいでしょう)

タツヤ「?」

ゆま「…………」

沙々「くふふ……」

沙々「おやおや、おやおやおや……可愛い男の子ですね。弟さん?」

沙々「それともデート?くふふ、良いご身分ですねぇ」

沙々「ま、そう警戒しないでくださいよ。魔法少女関係ない子どもを巻き込むほど落ちぶれちゃいねーからね」





沙々「それに……わたしはもう見滝原の縄張りに興味はありません」

沙々「縄張りを奪おうってのは……諦めることにしました」

沙々「べ、別に怖じ気ついたわけでなくて、わたしは……」

ゆま「……誰?」

沙々「」





キリカ「…………」ソワソワ

織莉子「…………」

キリカ「ね、ねぇ……織莉子」

織莉子「ん、キリカ?」

キリカ「あの……私……」

織莉子「どうしたの?」

キリカ「私、かなり今ヤバイ」

織莉子「何が?」

キリカ「何がって、そりゃ織莉子」

キリカ「私達が今、どこにいるかを考えればわかるよね」

織莉子「そうね」

織莉子「鹿目さんの家ね」


キリカ「そう!私達は今、抹殺しようとしたヤツの家に来た訳だよ!」

キリカ「気まずいに決まってる!」

織莉子「そうね」

キリカ「ヤッバァーイ!ドキがムネムネ!」

織莉子「大丈夫よ。キリカ。鹿目さんのご両親は、私達と鹿目さんとの関係を知らない」

織莉子「むしろお友達として紹介されている」

織莉子「気まずいのは仕方ないけど、我慢よ。我慢」

キリカ「そんな簡単に割り切れるほど私は人間ができちゃいないよ……」

織莉子「でも、鹿目さんとも仲良くなるってほむらと約束しちゃったんだもの」

織莉子「あなたはまだしも、学校が別の私は鹿目さんに会う機会が限られる」

織莉子「今がチャンスよ」

キリカ「うーん……織莉子がそう言うなら」


織莉子「キリカがいてくれて本当に心強いわ」

キリカ「えへへ……織莉子に頼りにされてる。嬉しい」

織莉子「手みやげも用意したことだし」

キリカ「その袋だね」

織莉子「これぞ、ほむらから教わった……鹿目さん好みのお菓子よ」

キリカ「まどかの好物?」

織莉子「そう。ほむらと一緒に買い物に行った時に勧められたの。これが好きなんだって。これで掴みはバッチリ」

キリカ「…………」ジー

織莉子「……キリカ?」

キリカ「…………」

織莉子「……いくらキリカでもつまみ食いはさせないわよ」

キリカ「え?あ、いや、そうじゃないんだけど……」



キリカ(昨日の今日でほむらって呼ぶようになって……)

キリカ(そして私が風見野行ってた間にほむらと二人で買い物)

キリカ(別に浮気だなんて騒ぐつもりはない。そこまで融通の効かない私じゃあない)

キリカ(私だって何度も織莉子と二人でお買い物行ってるもん。一度くらい……)

キリカ(……でも、やっぱモヤモヤする。ほむらがちょっと妬ましい)

織莉子「どうしたの?キリカ」

キリカ「……ううん。別に」

織莉子「ならいいけど……」

織莉子「さぁ、鹿目さんとの仲良しを成し遂げるわよ!」

キリカ「どうしたの織莉子?」

織莉子「テンションをあげなきゃやってられないわ」

キリカ「そ、そう……」



織莉子「さ、キリカ。ピンポン押して」

キリカ「え?わ、私がするの?」

織莉子「お願い」

キリカ「う、うーん……」

キリカ「意見させていただければ、こういうのって織莉子が押した方が……」

キリカ「ほら、ここは代表者というか」

織莉子「……ど、どうしても?」

キリカ「緊張するのは最初だけってヤツだよ。織莉子のコミュ能力なら余裕余裕」

織莉子「さ、最初だけだから……ね?キリカ……」

キリカ「……!」キュン

キリカ(も……モジモジ織莉子萌え!)

キリカ「…………」


キリカ(……ふむ)

キリカ(確かに私はまどかとは学校で会って、一応、何度か一緒に帰宅したことがある)

キリカ(私達が来ることはまどかもわかっている)

キリカ(だから少なくとも顔見知りであるまどかが対応してくるはずだ)

キリカ(まどかは、殺そうとした私には学校で顔を何度か合わせた故に少しは慣れたが……)

キリカ(織莉子には慣れていない)

キリカ(だからなんやかんや言って、私が対応することが合理的かな)

キリカ(なるほどね)

キリカ「よし押そう。さぁ押そう」

織莉子「助かるわ」

キリカ「ほい、ピンポーン」




まどか「ほむらちゃん、今頃どの辺かなー」

詢子「ほむらちゃん、今度こそ東京に行ってるなんだな?」

まどか「うん」

詢子「和子は今頃実家かな」

まどか「わかるの?」

詢子「わからんけど何となく。テキトー言ったわ」

まどか「…………」ソワソワ

詢子「おいおい、さっきから落ち着かないな」

まどか「う、うん」

詢子「キリカちゃんと織莉子ちゃんって友達なんだろ?何をそんな……」

まどか「えっと……と、友達と言っても……実をいうとそこまで仲良いわけじゃなくて」


まどか「二人とも上級生だし」

詢子「えー、仕方ないな」

まどか(自分を殺そうとした人達、だなんて言えないけど……)

まどか(そんな人達がわたしに会いに家に来るっていうんだもん)

まどか(そんなつもりないのはわかってても、緊張しちゃうよ……)

ピンポーン

まどか「!」

詢子「お、来たようだね」

まどか「う、うん……」

まどか(で、でも……いつまでもそんなんじゃダメだよね)

まどか(ほむらちゃんは織莉子さんと仲直りしたんだもん)


詢子「どんな子かねぇ」

まどか(わ、わたしだっていつまでもぎこちない関係は嫌だもん)

まどか(わたしは絶対に契約なんてしないもん……だから、何も心配はないもん。そう、約束した……!)

まどか「…………」モジモジ

詢子「……まどか?」

まどか「う、うん……行ってくる、ね」

詢子「……仕方ないねぇ、私が行く」

まどか「えっ」

詢子「むしろ私に行かせろー」ガタッ

まどか「あ、ちょ……!」


キリカ(大丈夫……落ち着け)

キリカ(まどかに「や、来たよ」って言えばいい。それだけでいいんだ)

キリカ(今日は休日、まどかの親もいるだろう)

キリカ(そんときは「お邪魔します」の一言でいいんだ。それだけでいいんだ)

織莉子「……」ソワソワ

キリカ(普段落ち着いてる織莉子がソワソワしてる!ギャップ萌え!)

ガチャ

キリカ(よし!来たね!)

キリカ「や、やぁ!まど——」

詢子「やぁ」

キリカ「……え?」

織莉子「…………」


詢子「キリカちゃんに織莉子ちゃんだね。まどかから聞いてるよ」

詢子「どっちがどっち?」

キリカ「え、あ、あの、その、あの、その、えっと、その、あの」

キリカ(まさかの親登場!?何で!?ヤバイ!このパティーンは想定外だ!)

キリカ(まずいよ!契約パワーで私の性格は割と社会に適合できる感じになった!)

キリカ(でもやっぱ私そういうのダメな人だから!)

キリカ(抹殺対象の親に愛想良く対応できる程できた人間違うから!)

キリカ(そんな風に割り切れないよ!)

織莉子「…………」

織莉子(この人が鹿目さんの母親……どことなく雰囲気が似てる)

織莉子(そしてキリカがパニクっている……)


織莉子(てっきり鹿目さんが出ると思ってたけど……)

織莉子(とにかく挨拶をしなければ)

織莉子(鹿目さんなら言葉に詰まるけど……)

織莉子(違うなら大丈夫)

織莉子(私達とこの人は、ただの初対面。割り切れる。オーケー)

織莉子「初めまして、鹿目さんのお母様」

織莉子「私は美国織莉子と申します」

キリカ「あ、あぅ……わ、私は呉キリカ……です」

キリカ(流石織莉子。物怖じず……)

詢子「うん。娘がお世話になってるようで」

詢子「いらっしゃい。どうぞあがって」

織莉子「お邪魔します」


キリカ「や、やぁ、まどか」

まどか「あ……」

織莉子「ど、どうも……」

まどか「……は、はい」ペコリ

まどか「…………」ソワソワ

織莉子(……あれ、デジャブ。メガほむデジャブ)

詢子「まぁここに座って」

織莉子「はい、ありがとうございます」

キリカ「ど、ども」

キリカ(まどかにはアレだったのに、まど母には堂々と……)

キリカ(私はまどかは平気だけど、親となると……)

キリカ(うーん)


詢子「織莉子ちゃん、だっけ」

織莉子「はい」

詢子「そして、キリカちゃん」

キリカ「はい」

詢子「ふっ、まどかは凄いな」

まどか「?」

詢子「あんたがつれてくる女の子はみんな美形だね」

織莉子「え……!?」

詢子「将来が楽しみだね」

織莉子「い、いえ、そ、そんな……」

キリカ「お、織莉子はともかく、私まで……?うぅ……」

詢子「照れながら謙遜しちゃって……可愛いねぇ」


詢子「ふむ……なぁ、織莉子ちゃん」

織莉子「は、はい?」

詢子「いきなりだけど、ツインテールとかどうよ」

織莉子「……は?」

詢子「ほむらちゃんもそうなんだけど……」

詢子「長い髪を見るとイジりたくなるんでね」

織莉子「えっと……?」

まどか「ママ……恥ずかしいからやめてよ……」

詢子「織莉子ちゃんは大人っぽいからツインテールだとちょっと子どもっぽくになるかな」

まどか「すぐ隣にツインテールの人がいますよー」

詢子「まどかだから仕方ない」

まどか「…………」


詢子「ふむ……織莉子ちゃん」

織莉子「は、はい?」

詢子「いきなりだけど、ツインテールとかどうよ」

織莉子「……は?」

詢子「ほむらちゃんもそうなんだけど……」

詢子「長い髪を見るとイジりたくなるんでね」

織莉子「えっと……?」

まどか「ママ……恥ずかしいからやめてよ……」

詢子「織莉子ちゃんは大人っぽいからツインテールだとちょっと子どもっぽくになるかな」

まどか「すぐ隣にツインテールの人がいますよー」

詢子「まどかだから仕方ない」

まどか「…………」


織莉子「あ、あの……」

詢子「でも元がサイドテールだし、ツインでも違和感小さいかもな」

キリカ「是非」

詢子「三つ編みとかどうだろうか」

キリカ「是非」

織莉子「…………」

詢子「キリカちゃんもどうだい。一緒にリボンつけるかい」

キリカ「是非」

織莉子「ちょっと、キリカ」

詢子「よし、後で全員で織莉子ちゃんの髪をイジるか!」

織莉子「あ、あの……」

キリカ「織莉子の髪モフモフ」

まどか「あはは……」


詢子「そういや織莉子ちゃん、名前は忘れたけど……あのお嬢様学校の生徒だとか」

織莉子「え?あ、はい」

織莉子「学校は違いますが、仲良くさせてもらっています」

織莉子(将来的に……させてもらいます。頑張ります)

織莉子「ただ、今は……」

詢子「あの嵐の影響で?」

織莉子「はい……」

詢子「お互い大変ってわけだ」

詢子「しかしなんだな」

詢子「まどかの人脈ってすげーな」

まどか「へ?」


詢子「どこで知り合ったんだ」

まどか「えっと……」

キリカ「あの、私……」

詢子「ん?……あぁ、なるほど」

詢子「友達の友達ってヤツか」

キリカ「いや、こいび……」

織莉子「…………」ギュッ

キリカ「ひゃぉぅ!」

まどか「!?」

詢子「どうした!?」


キリカ『織莉子!お尻を抓るなんてあんまりだよ!』

織莉子『あなたとんでもないこと言いそうになったでしょ!』

キリカ『場を和ませようとするジョークだよ!あんまりだよ!』

キリカ『でもちょっと気持ちよかった!』

織莉子『何を言っているのよ!?』

詢子「え、えーっと……」

織莉子「鹿目さんのお母様」

詢子「ん?」

織莉子「少しタイミングを逃しましたが、こちら……つまらないものですが」スッ

詢子「え?あ……う、うん。ありがとね」

詢子「お、これは……」


まどか「あ……」

詢子「へぇ、よかったな。まどかの好きな菓子だぞ」

まどか「あ、ありがとうございます」

詢子「これ美味いんだよなー」

詢子「よし!早速みんなで食うか!」

詢子「お茶でもいれてくるよ」

織莉子「そんなお構いなく……」

詢子「いいからいいから。むしろ飲み物なしで食えるもんじゃない。喉乾くぞ」

まどか「あ、わたしがやるよ?」

詢子「あんたの客だろうに。あんたがいなくてどうする」

詢子「少しはおふくろらしいことさせろい」

詢子「それじゃ、ごゆっくり〜」


織莉子「…………」

まどか「…………」

キリカ「…………」

織莉子「……面白い人ね」

キリカ「うん」

まどか「何か……ごめんなさい」

織莉子「いえいえ」

キリカ「しかし織莉子の美しい髪に目を付けるとは、いい目はしてると思う」

織莉子「キリカ……あなたね……」

キリカ「私の髪留め貸すよ?」

織莉子「いや、だから……」

まどか「…………」


織莉子「ま、まぁさておき……鹿目さん」

まどか「あ、は、はい」

キリカ「あんま緊張するない」

織莉子「今日は、急にお邪魔しちゃってごめんなさい」

まどか「い、いえ……」

織莉子「今日は、あなたとお話がしたかったというのもあるけど……」

まどか(織莉子さんが……わたしとお話したい?)

まどか(それって……嬉しいなって)

キリカ「実は折り入って相談したいことがあるんだ」

まどか「相談……ですか?」

キリカ「ほむらは今週中に帰ってくるらしいね」

まどか「はい」


織莉子「実は、ほむらが東京から戻ってきたら……」

織莉子「私の家でちょっとしたパーティを企画したいと思うんです」

まどか「……パーティ、ですか?」

キリカ「ワルプルギスの夜の祝勝会だね」

織莉子「どうせお互いスーパーセルによる休校中」

キリカ「やるなら今しかないっしょ」

織莉子「……どうかしら?」

まどか(みんなでパーティ……)

まどか「……いいと思います」

まどか「是非っ。是非やりましょうっ!」

キリカ「そういってくれて助かるよ」


織莉子「そこで、鹿目さんにお願いしたいのだけれど……」

織莉子「鹿目さんの方で巴さん達に連絡をして欲しいの」

キリカ「連絡先知らないんだよね」

織莉子「私はともかくキリカまで?」

キリカ「都合がいいだろう?」

まどか「何の?」

織莉子「えっと、とにかく、お願いできる?」

まどか「あっはい。勿論です」

織莉子「それと鹿目さんにはもう一つ、頼みたいことが」

まどか「何でしょう?」


織莉子「……祝勝会で振る舞う料理、一緒に作ってほしいの」

まどか「料理を……ですか?」

織莉子「今のところケーキでも焼こうと考えているわ。他にはクッキーとか」

キリカ「私も!私も!」

織莉子「あら、キリカも作りたいの?」

キリカ「うん!」

織莉子「分量を無視して砂糖マシマシにしないと誓えるなら」

キリカ「……うん。大丈夫」

織莉子「一瞬考えた……」

キリカ「織莉子のほっぺについたクリームを舐め取りたい」

織莉子「で、どう?鹿目さん。一緒に作ってくれる?」

まどか「……え、えっと」

まどか(今のがスルースキルっていうやつだね……)


まどか「でもわたし……そんな、ケーキなんて作ったことないですよ?」

織莉子「大丈夫。私が教えます」

まどか「でも……」

キリカ「わかってないなぁ、まどかは」

まどか「?」

キリカ「ほむらにとって一番のご馳走は何よりも君の手料理なんじゃないかな?」

キリカ「ほむらは君を愛しているんだ。君の手作りケーキがどれほど素晴らしいことか」

まどか「そ、そう……ですか?」

織莉子「勿論よ。何と言ってもこの祝勝会……」

織莉子「主役はほむらなのだから。契約付きの、私の友達」

織莉子「ほむらが一番喜ぶものを用意するのは当然よ」

キリカ「私も織莉子の手料理が世界一だと思う」

織莉子「も、もう、キリカったら……」


まどか「でもわたし……そんな、ケーキなんて作ったことないですよ?」

織莉子「大丈夫。私が教えます」

まどか「でも……」

キリカ「わかってないなぁ、まどかは」

まどか「?」

キリカ「ほむらにとって一番のご馳走は何よりも君の手料理なんじゃないかな?」

キリカ「ほむらは君を愛しているんだ。君の手作りケーキがどれほど素晴らしいことか」

まどか「そ、そう……ですか?」

織莉子「勿論よ。何と言ってもこの祝勝会……」

織莉子「主役はほむらなのだから。契約付きの、私の友達」

織莉子「ほむらが一番喜ぶものを用意するのは当然よ」

キリカ「私も織莉子の手料理が世界一だと思う」

織莉子「も、もう、キリカったら……」


まどか(あの織莉子さんが……)

まどか(わたしを抹殺するって言ってた、あの織莉子さんが今……)

まどか(わたしに、ケーキ作りに誘ってくれた)

まどか(わたしの知らない間にほむらちゃんと友達になって……)

まどか(ほむらちゃんのために、パーティを計画してくれた)

まどか「…………」

まどか(……わたしは、織莉子さんに苦手意識を持っている)

まどか(今はこうして優しく微笑んでいるけど、かつてとても冷たい目でわたしを殺そうとした)

まどか(ハッキリ言って、未だにその殺意に満ちた顔がちょっと浮かんできて……ちょっと怖いって思いもある)

まどか(……克服できるかな)

まどか(織莉子さんと、一緒に料理を作って……仲良く、なれるかな?)

まどか(ほむらちゃんみたいに、わたしのことを友達って呼んでくれるように……)


織莉子「鹿目さん、ケーキでなくとも、お菓子作りとかは?」

まどか「調理実習とかパパが作ってるのを手伝ったくらいしか……」

キリカ「なるほど」

織莉子「全くってほどでもないのね」

織莉子「ふむ……そうね」

織莉子「練習に、今度ケーキを一緒に作りましょう」

まどか「練習……ですか」

キリカ「まどかを家に呼ぶんだね?」

織莉子「えぇ」

まどか「いいんですか?」

織莉子「もちろん。ふふ、案外難しいんだから、覚悟してなさい」


まどか「……はい!」

キリカ「そして食べよう。味見は任せろー」

織莉子「キリカの愛情の籠もったケーキ食べたいなー」

織莉子「もちろん分量を守ったケーキ」

キリカ「頑張って作るぞー!やろう!まどか!」

まどか「は、はい!頑張りましょうっ、キリカさん」

織莉子「……でも流石に私達と鹿目さんだけで集まるのは他のみんなの心臓に悪いわね」

まどか「し、心臓って……」

キリカ「他に誰か呼ぶ?むしろ全員呼ぶ?」

織莉子「でも言ってしまえばたかが練習だし……それに皆を巻き込むのも何だか申し訳ないわ」

キリカ「流石織莉子。気遣いのできる乙女」



詢子「いいねぇ、ケーキ作りかい」

まどか「ママ」

詢子「私が若い頃は女子力がどうのこうの言われて和子と一緒に作らされたもんよ」

詢子「ほい、紅茶いれたよ」

織莉子「ありがとうございます」

キリカ「いただきまーす」

まどか「ママが紅茶なんて珍しい」

詢子「ティーバッグだがね。このお菓子には紅茶が合うんだ」

キリカ「織莉子、織莉子」

織莉子「ん、どうしたの?キリカ」

キリカ「スティックシュガー使う?」

織莉子「…………」


織莉子「キリカ……人前ではやめなさい」

キリカ「えぇー」

詢子「どうかしたのかい?」

織莉子「い、いえ……」

キリカ「お願い。織莉子。たった二本だよ?」

キリカ「これ一本五グラムくらいだからたったの十グラムだよ」

まどか「……キリカさんはね、甘い物が好きなの」

詢子「……好き、なんだ」

まどか「…………」コクリ

織莉子「もう……仕方ないわね」

キリカ「わーい」ザー


詢子「…………」

キリカ「……ふぅ、美味しい」

詢子「そ、そうかい。それはよかった……」

織莉子「恥ずかしい……」

まどか「…………」

詢子「変わった子だね……」

キリカ「よく言われます」

詢子「……そ、そうだ。織莉子ちゃん」

織莉子「はい」

詢子「ケーキ作りの人員が欲しいんだってね」

織莉子「え、えぇ……三人だけとなると、私とキリカは三年生なんで鹿目さん萎縮させるというか……」

織莉子(殺そうとした二人の中に入り込ませるとかできません、なんて言えない)


詢子「なるほどね。……だったら、丁度いいのが入ったよ」

キリカ「へ?」

詢子「知久からメールが来てさ」

詢子「ケーキ作りたいヤツがこれから家に来るよ」

まどか「ケーキを作りたい人……?どんなメールだったの?」

詢子「ほれ」スッ

まどか「えーっと……」

まどか「…………」

まどか「……杏子ちゃんとゆまちゃんがこれから来るの?」

詢子「残念ながらあんまり長居してくれないっぽい。買い物帰りなんだって。でも約束くらいはできるだろ?」

キリカ「……杏子とゆまがケーキを?何で?」

織莉子「さぁ……」

まどか「…………」






まどか「あの……」

キリカ「ん、どうしたの?まどか」

まどか「何となく、なんですけど……」

まどか「杏子ちゃんとゆまちゃんがケーキを作る理由……」

まどか「わかっちゃったかも」

織莉子「……どういうこと?」




——新幹線


ほむら(……東京行きの新幹線。……もう少し。もう少しで、久しぶりに両親に会える)

ほむら(暦の上では一ヶ月にもならないけれど、ループの期間を全て足したらどれだけ久しぶりになるのだろうか……)

ほむら(新幹線に揺られる間、織莉子に勧められて買った本でも読もうかと思ったけれど……)

ほむら「まさか……こんな所で会うなんてね」

仁美「えぇ……本当に」

ほむら(……志筑仁美。彼女が同じ車両にいるだなんて)

仁美「お隣、空いてますか?」

ほむら「えぇ、どうぞ」

仁美「よかった。それじゃ失礼して……」

仁美「ほむらさんのご実家は東京と聞いてますが、これから東京に?」

ほむら「えぇ……もしかしてあなたも?」

仁美「はい。私も東京の知り合いの所に行くことになりまして」

ほむら「……一人で?」

仁美「一人で新幹線。これも経験ですわ」

仁美「結果的にはほむらさんとご一緒に、ですけど」

ほむら「……自由席で?」

仁美「指定席より安いですから」


ほむら(……魔女の口づけを喰らっていなければ、今頃きっと私は既に東京にいた)

ほむら(魔女に出会ってズレた日付に加えて、この時間帯、この車両、同じ方面、自由席か指定席か)

ほむら(全てを踏まえ、彼女と新幹線で出会い、今隣にいる……)

ほむら(それは、とんでもない確率ね)

ほむら(奇跡……という言葉を使って差し支えないでしょう)

ほむら(魔女の口づけが解除されたあの後、まどかと会って……まどか、人の出会いは奇跡がどうこうと話していた)

ほむら(一言に奇跡と言っても、またこんな変わったところで起きたものね)

ほむら(……思えば彼女とはそこまで親しくない)

ほむら(まどかとさやかという共通の友人がいるクラスメート程度の関係……少なくとも私はそう認識している)

ほむら(織莉子と友達になれた。彼女とも、仲良くなりたい)

ほむら(この奇跡は、チャンスと考えよう)

仁美「新幹線でほむらさんと出会えるなんて、こんなこともあるんですね」

ほむら「えぇ……全く」

ほむら「世の中わからないものね」

これで終わりです。お疲れさまでした

本当はもっとさらーっと終わらせるつもりだったのに何かいつの間にかこんな冗長な感じに……
まぁ書きたいこと書けたんで別にどうでもいいやって感じです

沙々は正直出す意味はなかったけど出したくなったから無理矢理出しました

では


新鮮な組み合わせが見れて楽しかったよ


この織莉キリはかわいいな。


織莉ほむのくだりが特に良かった
余韻が残る終わり方も好き


沙々が出たSSは個人的に初めてだが、そんなキャラだったけか

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