魔物
そう呼ばれる生き物がいるのは聞いていた
だけど、そんなものは自分には関係ない。遠い遠い何処かの話
そう思っていたんだ
その日は良く晴れた一日だった
昨日までの霧は山からすっかり消え、何処までも見通せるかのような景色
こんな日は決まって父さんと狩りに出かけるんだ
父さんと山で狩りをして、母さんの家事を手伝って、一日が終わる
そんないつもの日常
その夜までは、確かにそんないつもの日常のはずだったんだ
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最初の異変は誰かの叫び声
この集落は人口が多くない。だから一人だって知り合いじゃない人はいやしない
けどその声に主はわからない
日常では決して発さない声色
しいて言えば、昼間仕留めた狐の断末魔に似ていた
その声を皮切りに何人かが外に出る気配
父さんも猟銃を持って様子を見に扉に手をかける
「大丈夫。少し様子を見に行くだけだ。家はお前に任せたぞ」
それが、僕の見た動いている父さんの最後
動いていない父さんは、その少し後に見ることとなる
家に入ってきた、黒い大きな狼のような魔物
その牙にこびり付いた汚れのような父さんの顔を
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暗い森を四人の男女が進んでいく
背の高い女性。筋肉質な男に細い男
そして小柄な少女の四人組
「ちょいと時間がかかっちまったねぇ」
「致し方ないでしょう。天気には勝てません」
「大丈夫ですかユコ。足は痛くない?」
「問題ない。それよりも魔物の気配が近くなった」
四人の空気が変わった
歩幅は少し狭くなり、辺りに神経を張り巡らせる
「…確か、この先には」
「集落。皆、戦闘準備」
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・
「あああああああッ!!」
母さんが狼に椅子を投げつける
狼の顔に当たる。だけど狼は怯まない
面倒くさそうにゆっくりと家の中に踏み入れる
母さんはもう一つの椅子を持つ
しかし、投げたのは狼の反対側。僕の後ろの窓に向けて
「早く逃げなさいッ!!」
今まで見たこともない剣幕に押され、僕の体はやっと動く
割れた硝子に手を切った。けどそんなことは気にしていられない
早く逃げなきゃ。早く逃げなきゃ
そればかりが頭の中を支配する
ガンッ
何かがすごい勢いでぶつかった
生ぬるい液体が体を濡らす
もう、僕の血か母さんの血かわからない
家の壁ごと窓を破り、狼の口は僕の眼前に——
大きく、血塗れた牙
まだ父さんの顔はこびり付いている
ああ、僕もこうなるんだ
そう思った瞬間、狼の口が蹴飛ばされた
「大丈夫かい坊主。可愛い顔が台無しじゃないの」
「言う事が一々気持ち悪いですよ」
「言うねぇ」
蹴飛ばしたのは煙草を咥えた大柄な男。知らない顔だ
後ろから来た痩せた男。こいつも知らない
「お喋りは後です。来ますよ」
「あいあい。そんじゃ、いっちょヤりますか」
狼が吼える
それを合図に三人は武器を持ち、戦いは始まった
「無事?」
声のするほうへと向き直る
そこには、僕と変わらないような少女が手を差し伸べていた
覚えているのはそれが最後
僕は意識を手放した
勢いで始めてしまいましたが妄想を文章にするのって大変ですね
稚拙な部分も多々あるかと思いますが、少しでも楽しんで頂ける人がいれば幸いです
今日はここまで
続きは時間が出来次第ちょいちょい投下していくつもり
書き溜めも頑張りますが
乙
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